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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1382257
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-04-23 
確定日 2022-02-03 
事件の表示 特願2017−226438「半導体装置および電力変換装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 6月20日出願公開、特開2019− 96797〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年11月27日を出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 2年 9月 2日付け:拒絶理由通知
令和 2年10月16日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年 1月27日付け:拒絶査定
令和 3年 4月23日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和3年4月23日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年4月23日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正
(1)本件補正による特許請求の範囲の記載
本件補正により補正された特許請求の範囲は、次のとおりのものと認める(下線は、補正箇所を示す)。
「【請求項1】
ベース板と、
前記ベース板の上面に設けられた接着剤と、
下面と、前記下面につながり前記下面よりも前記ベース板の中央に近い位置にある斜面とを有し、前記下面と前記斜面に前記接着剤がつくことで前記ベース板に固定されたケースと、
前記上面に固定された半導体素子と、を備え、
前記接着剤のうち、前記斜面に接する部分は、前記下面に接する部分より厚く、
前記接着剤は、前記ベース板の中央方向に凸形状となっており、
前記上面は、前記ベース板の端部まで設けられた第1上面と、前記第1上面よりも上方にある第2上面とを有し、
前記接着剤は前記第1上面に塗布され、前記半導体素子は前記第2上面の直上に設けられたことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記ケースの内部に露出した電極を備えることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記接着剤は導電性粒子を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体装置を有し、入力される電力を変換して出力する主変換回路と、
前記主変換回路を制御する制御信号を前記主変換回路に出力する制御回路と、を備えた電力変換装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和2年10月16日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
ベース板と、
前記ベース板の上面に設けられた接着剤と、
下面と、前記下面につながり前記下面よりも前記ベース板の中央に近い位置にある斜面とを有し、前記下面と前記斜面に前記接着剤がつくことで前記ベース板に固定されたケースと、を備え、
前記接着剤のうち、前記斜面に接する部分は、前記下面に接する部分より厚く、
前記接着剤は、前記ベース板の中央方向に凸形状となっていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記下面は、前記斜面につながる第1下面と、前記第1下面につながり前記第1下面よりも前記ベース板の中央から遠い位置にある第2下面を有し、
前記第2下面は前記第1下面よりも下方にあることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記上面に固定された半導体素子を備え、
前記上面は、第1上面と、前記第1上面よりも上方にある第2上面とを有し、
前記接着剤は前記第1上面に塗布され、前記半導体素子は前記第2上面の直上に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ケースの内部に露出した電極を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記接着剤は導電性粒子を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の半導体装置を有し、入力される電力を変換して出力する主変換回路と、
前記主変換回路を制御する制御信号を前記主変換回路に出力する制御回路と、を備えた電力変換装置。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項3に記載された発明を特定する事項を本件補正前の請求項1に追加するとともに、本件補正前の請求項3に記載された発明を特定する事項である「第1上面」について「前記ベース板の端部まで設けられた」との限定を付加するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正における請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)において請求項1に記載したとおりのものである。

(2)引用文献
ア 引用文献1の記載、引用発明について
(ア)原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2000−323593号公報(平成12年11月24日公開、以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した)。

「【0017】ここで、本発明の第1の特徴に係る半導体装置の「シール剤たまり部」とは、第1接合シール面と第2接合シール面との間に形成される接合シール層をその他の部分に比べて多量に溜めて厚みを部分的に厚くするシール剤の貯溜部位を意味する表現である。この「シール剤たまり部」には接合シール層を部分的に厚くできる溝、切欠きのいずれかで実用的に形成することができる。「シール剤たまり部」としての溝の断面形状はU字形状、V字形状、凹型形状のいずれであってもよい。・・・(中略)・・・」

「【0023】
【発明の実施の形態】(第1の実施の形態)以下、図面を参照して本発明の第1の実施の形態を詳細に説明する。図1(A)は本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置の断面構成図、図1(B)は図1(A)に示す半導体装置の接合シール部分の拡大断面構成図である。図1(A)及び図1(B)に示す半導体装置は例えば電気自動車のインバータに使されるパワー半導体モジュールである。この半導体装置は、半導体チップ搭載面側(図1(A)中、上側表面)の周辺に第1接合シール面1Aを有する放熱板1と、放熱板1の半導体チップ搭載面側の中央上の半導体チップ3と、半導体チップ3を覆い、第1接合シール面1Aに対向する第2接合シール面50Aを有する封止ケース5と、第1接合シール面1Aと第2接合シール面50Aとの間の接合シール層7と、第1接合シール面1Aに形成され接合シール層7を部分的に厚くするシール剤たまり部101と、第2接合シール面50Aに形成され接合シール層7を部分的に厚くするシール剤たまり部501とを備えて構築されている。
・・・(中略)・・・
【0027】半導体チップ3が搭載されたセラミックス基板2は放熱板1の半導体チップ搭載面側の中央に取り付けられている。放熱板1には熱伝達性が良好で半導体チップ3に搭載されたパワーデバイスの動作で発生する熱を効率良く外部に放熱させることができるCu板を実用的に使用することができる。第1の実施の形態に係る半導体装置においては、例えば2mm〜5mmの範囲内の板厚、好ましくは3mmの板厚の放熱板1が使用される。放熱板1へのセラミックス基板2の取り付けには例えば銀(Ag)ペースト等の熱伝達性の良好な接着剤を使用することができる。
【0028】 封止ケース5は、第1の実施の形態に係る半導体装置において、半導体チップ3の側面及びセラミックス基板2の側面を覆う樹脂製枠体50と、半導体チップ3の表面上を覆い複数本の電極端子60〜64を装着したターミナルホルダー51とを備えて構成されている。樹脂製枠体50、ターミナルホルダー51はいずれも例えばエポキシ系樹脂で形成されている。ターミナルホルダー51に装着された電極端子60の一端はセラミックス基板2のパッド22に電気的に接続され、他端は外部に導出されている。電極端子61〜63はいずれもパッド28に電気的に接続されている。電極端子64の一端はパッド29に電気的に接続され、他端は外部に導出されている。
【0029】 図1(B)に特に詳細に示すように、放熱板1の半導体チップ搭載面側の周辺(セラミックス基板2の搭載領域よりも外側の周囲領域)には半導体チップ3並びにセラミックス基板2を気密封止するための第1接合シール面1Aが配設されており、同様に封止ケース5の樹脂製枠体50の下部には第1接合シール面1Aと対向する第2接合シール面50Aが配設され、この第1接合シール面1Aと第2接合シール面50Aとの間が接合シール層7を介在させて接合されている。放熱板1の第1接合シール面1Aは放熱板1表面上から側面に沿ってシール長を長くするように(シール面積を増加させるように)配設されている。樹脂製枠体50の第2接合シール面50Aは、放熱板1表面上から側面に沿って形成された第1接合シール面1Aに対向させてクランク形状で形成されており、少なくとも樹脂製枠体50の板厚よりもシール長が長くなるように(シール面積としては増加させるように)配設されている。第1の実施の形態に係る半導体装置において、2mm〜5mmの範囲内の板厚、好ましくは3mmの板厚の樹脂製枠体50が使用され、シール長はこの板厚の2倍〜5倍程度の範囲に設定されることが好ましい。接合シール層7は第1の実施の形態に係る半導体装置においてシリコン接着剤で形成されている。
【0030】 このように構成される半導体装置においては、放熱板1の第1接合シール面1Aにシール剤たまり部101が配設され、さらにシール剤たまり部101と対向する位置において樹脂製枠体50の第2接合シール面50Aにシール剤たまり部501が配設されている。シール剤たまり部101は、第1接合シール面1Aにおいてその表面から放熱板1の板厚方向に掘り下げた例えば1mm程度の深さを有する断面形状がU字形状の溝で形成され、第1の実施の形態に係る半導体装置において放熱板1の周囲全域に配設されている。このシール剤たまり部101は、それ以外の領域に比べてシリコン接着剤を多量に溜めて接合シール層7の厚みを部分的に厚くする、シリコン接着剤の貯溜部位である。第1の実施の形態に係る半導体装置においては、このシール剤たまり部101は、放熱板1と封止ケース5との間の熱膨張係数の違いにより温度サイクルで発生する繰り返し応力が比較的大きな第1接合シール面1Aの内側端部(図1(B)中、左側端部)に配設されている。シール剤たまり部101は放熱板1の製作においてエッチング加工や機械加工によって簡易に形成することができる。なお、シール剤たまり部101は、V字形状の溝、凹型形状の溝のいずれかで形成してもよい。
【0031】 シール剤たまり部501は、シール剤たまり部101と同様にこのシール剤たまり部101に対向した位置において第2接合シール面50Aの内側端部に配設されており、樹脂製枠体50の内壁から底面に向かって好ましくは30度〜60度の範囲内の角度θ、さらに好ましくは45度の角度θで切り欠いた切欠きで形成されている。この切欠きは封止ケース5の各角部に形成される単なる面取りに比べてシリコン接着剤を積極的に貯溜するために意図的に大きく形成されている。シール剤たまり部501は封止ケース5の製作において成型加工や機械加工によって簡易に形成することができる。
【0032】 このように構成される本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置においては、シール剤たまり部101を備えたことで第1接合シール面1Aと接合シール層7との間、シール剤たまり部501を備えたことで第2接合シール面50Aと接合シール層7との間のシール長を実効的に長くすることができ、双方の界面での接合力を向上させて双方の界面での剥離を防止することができるので、第1接合シール面1Aと第2接合シール面50Aとの間の接合シール層7部分における気密性を向上させることができる。さらに、シール長を実効的に長くすることで、外部から半導体チップ3に至る水等の浸入経路長を長くすることができ、たとえ浸入経路が生成されたとしても半導体チップ3への水の到達を阻止することができる。さらに、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置においては、シール剤たまり部101及び501を備えたことで、第1接合シール面1Aと第2接合シール面50Aとの間の接合シール層7を部分的に厚く形成することができ、温度サイクルによって発生する応力(放熱板1、封止ケース5のそれぞれの熱膨張率の差によって発生する繰り返し応力)を接合シール層7の厚い部分(シール剤たまり部101及び501の接合シール層7)で吸収することができるので、第1接合シール面1Aと接合シール層7との間の界面及び第2接合シール面50Aと接合シール層7との間の界面での剥離を防止することができ、接合シール層7部分における気密性を向上させることができる。従って、本発明の第1の実施の形態に係る半導体装置においては、外部から内部の半導体チップ3に至る水の浸入を防止することができ、半導体チップ3のパッド31〜34の腐食、信号配線や電源配線(例えば、パッド31〜34のそれぞれとトランジスタとの間のアルミニウム合金配線)の腐食による断線不良等をなくすことができるので、動作信頼性を向上させることができる。」

図1(B)


(イ)上記(ア)によれば、引用文献1には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
a 段落【0023】には「この半導体装置は、半導体チップ搭載面側(図1(A)中、上側表面)の周辺に第1接合シール面1Aを有する放熱板1と、放熱板1の半導体チップ搭載面側の中央上の半導体チップ3と、半導体チップ3を覆」う「封止ケース5」を有すること、段落【0027】には「半導体チップ3が搭載されたセラミックス基板2」が「放熱板1の半導体チップ搭載面側の中央に取り付けられ」ることが記載されている。また、段落【0029】には「放熱板1表面上から側面に沿って形成された第1接合シール面1A」と記載されている。
よって、放熱板と、放熱板の上側表面の中央に取り付けられた、半導体チップが搭載されたセラミックス基板と、半導体チップを覆う封止ケースとを備える半導体装置であることが記載されている。また、放熱板の上側表面の周辺に表面上から側面に沿って第1接合シール面が形成されることが記載されている。

b 段落【0028】には「封止ケース5は」「半導体チップ3の側面及びセラミックス基板2の側面を覆う樹脂製枠体50と、半導体チップ3の表面上を覆」う「ターミナルホルダー51とを備え」ることが記載されている。

c 段落【0029】には、「封止ケース5の樹脂製枠体50の下部には第1接合シール面1Aと対向する第2接合シール面50Aが配設され、この第1接合シール面1Aと第2接合シール面50Aとの間が接合シール層7を介在させて接合されている」こと、「樹脂製枠体50の第2接合シール面50Aは、放熱板1表面上から側面に沿って形成された第1接合シール面1Aに対向させてクランク形状で形成されて」いること、「接合シール層7は第1の実施の形態に係る半導体装置においてシリコン接着剤で形成されている」ことが記載されている。
よって、樹脂製枠体の下部には、第1接合シール面に対向するクランク形状の第2接合シール面が形成され、第1接合シール面と第2接合シール面との間がシリコン接着剤で形成された接合シール層を介在させて接合されることが記載されている。

d 段落【0030】には、「放熱板1の第1接合シール面1Aにシール剤たまり部101が配設され」、「シール剤たまり部101は、第1接合シール面1Aにおいてその表面から放熱板1の板厚方向に掘り下げた」「断面形状がU字形状の溝で形成され」ること、「このシール剤たまり部101は」「第1接合シール面1Aの内側端部(図1(B)中、左側端部)に配設され」ることが記載されている。
そして、図1(B)からは、第1接合シール面は、その内側端部から、断面がU字形状の溝の表面である溝面と、放熱板の上側表面の一部である周辺上側表面と、放熱板の側面に沿う第1側部とがつながったものであること、並びに、溝面により第1接合シール面にシール剤たまり部が形成されることが見て取れる。

e 段落【0031】には、「シール剤たまり部501は」「シール剤たまり部101に対向した位置において第2接合シール面50Aの内側端部に配設されており、樹脂製枠体50の内壁から底面に向かって好ましくは30度〜60度の範囲内の角度θ」「で切り欠いた切欠きで形成されている」ことが記載されている。ここで、「樹脂製枠体」の「内壁から底面に向かって」「切り欠」かれた面が、「内壁」に対して角度θで傾斜していることは明らかである。
よって、第1接合シール面のシール剤たまり部と、第2接合シール面のシール剤たまり部とは対向することが記載されている。
そして、図1(B)からは、第2接合シール面は内側端部から、樹脂製枠体の内壁から底面に切り欠かれた傾斜面と、切り欠かれなかった底面と、放熱板の側面に対向する第2側面とがつながったものであること、並びに、傾斜面により第2接合シール面のシール剤たまり部が形成されることが見て取れる。

f 段落【0017】には、「本発明の第1の特徴に係る半導体装置の「シール剤たまり部」とは、第1接合シール面と第2接合シール面との間に形成される接合シール層をその他の部分に比べて多量に溜めて厚みを部分的に厚くするシール剤の貯溜部位を意味する表現である。」と記載され、段落【0032】には、「シール剤たまり部101及び501を備えたことで、第1接合シール面1Aと第2接合シール面50Aとの間の接合シール層7を部分的に厚く形成することができ」ること、「温度サイクルによって発生する応力」「を接合シール層7の厚い部分(シール剤たまり部101及び501の接合シール層7)で吸収することができる」ことが記載されている。
よって、第1接合シール面及び第2接合シール面のシール剤たまり部の接合シール層が、他の部分の接合シール層に比べて厚く形成されることが記載されている。

g 段落【0032】に記載された第1の実施の形態の図面である図1(B)からは、「接合シール層」が「第1接合シール面」及び「第2接合シール面」の間の全域に形成されることが見てとれる。また、段落【0032】には、「第1接合シール面1Aと接合シール層7との間の界面及び第2接合シール面50Aと接合シール層7との間の界面での剥離を防止することができ、接合シール層7部分における気密性を向上させることができる」と記載されており、「第1接合シール面」及び「第2接合シール面」と「接合シール層」とは界面を有すると認められる。
よって、接合シール層は、第1接合シール面と第2接合シール面との間の全域に形成されると共に、第1接合シール面と第2接合シール面との間に界面を有することが記載されている。

(ウ)上記(イ)によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「放熱板と、
放熱板の上側表面の中央に取り付けられた、半導体チップが搭載されたセラミックス基板と、
半導体チップを覆う封止ケースとを備え、
封止ケースは、半導体チップの側面及びセラミックス基板の側面を覆う樹脂製枠体と、半導体チップの表面上を覆うターミナルホルダーとから構成され、
放熱板の上側表面の周辺に表面上から側面に沿って第1接合シール面が形成され、
第1接合シール面は内側端部から、断面がU字形状の溝である溝面と、放熱板の上側表面の一部である周辺上側表面と、放熱板の側面に沿う第1側面とがつながったものであり、
溝面により第1接合シール面にシール剤たまり部が形成され、
樹脂製枠体の下部には、第1接合シール面に対向するクランク形状の第2接合シール面が形成され、
第2接合シール面は内側端部から、樹脂製枠体の内壁から底面に切り欠かれた傾斜面と、切り欠かれなかった底面と、放熱板の側面に対向する第2側面とがつながったものであり、
傾斜面により第2接合シール面のシール剤たまり部が形成され、
第1接合シール面のシール剤たまり部と、第2接合シール面のシール剤たまり部とは対向し、
第1接合シール面と第2接合シール面との間がシリコン接着剤で形成された接合シール層を介在させて接合され、
接合シール層は、第1接合シール面と第2接合シール面との間の全域に形成されると共に、第1接合シール面と第2接合シール面との間に界面を有し、
第1接合シール面及び第2接合シール面のシール剤たまり部の接合シール層が、他の部分の接合シール層に比べて厚く形成された半導体装置。」

(3)対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
a 引用発明の「放熱板」は、本件補正発明の「ベース板」に相当する。
また、引用発明の「第1接合シール面」において「放熱板の上側表面の一部である周辺上側表面」と「放熱板の側面に沿う第1側面」とは「つながった」ものであるから、引用発明の「周辺上側表面」は本件補正発明の「第1上面」に相当し、引用発明の「第1接合シール面は内側端部から、断面がU字形状の溝である溝面と、放熱板の上側表面の一部である周辺上側表面と、放熱板の側面に沿う第1側面とがつながったものであ」ることは、本件補正発明の「前記上面は、前記ベース板の端部まで設けられた第1上面」「を有」することに相当する。
ただし、本件補正発明は「前記上面は、前記ベース板の端部まで設けられた第1上面と、前記第1上面よりも上方にある第2上面とを有」するのに対し、引用発明は「第2上面」に相当する構成がない点で、本件補正発明と相違する。

b 引用発明の「シリコン接着剤で形成された接合シール層」は、本件補正発明の「接着剤」に相当する。
また、引用発明において「接合シール層」は「第1接合シール面と第2接合シール面との間」に「介在」し、「第1接合シール面と第2接合シール面との間の全域に形成され」るものであり、「第1接合シール面」は「周辺上側表面」を含むものである。
よって、引用発明の「接合シール層」は、本件補正発明の「前記ベース板の上面に設けられた接着剤」に相当する。
ただし、本件補正発明は「前記接着剤は前記第1上面に塗布され」るのに対し、引用発明は「接合シール層」が「周辺上側表面」に形成されるものの、塗布により形成されたものであることは特定されていない点で、相違する。

c 引用発明において、「樹脂製枠体」は「半導体チップの側面及びセラミックス基板の側面を覆」い、「封止ケース」を構成するものである。一方、本件補正発明の「ケース」も、本願の願書に最初に添付さた明細書の段落【0012】に「絶縁基板16と半導体素子18はケース20に囲われている」と記載されているように、「絶縁基板」及び「半導体素子」を囲う「ケース」であると解される。よって、引用発明の「樹脂製枠体」は、本件補正発明の「ケース」に相当する。

d 引用発明の「第2接合シール面」の「底面」は、「樹脂製枠体」の下部において底面となる部分であるから、本件補正の「下面」に相当する。
また、引用発明の「第2接合シール面」における「傾斜面」は、「樹脂製枠体の内壁から底面に切り欠かれた」ものであり、本件補正発明の「斜面」に相当する。
さらに、引用発明の「第2接合シール面」において「内側端部から」「傾斜面」と「底面」とが「つながっ」ているから、「傾斜面」は「底面」よりも「内側」、すなわち「放熱板」の中央に近いものである。よって、「第2接合シール面は内側端部から、樹脂製枠体の内壁から底面に切り欠かれた傾斜面と、切り欠かれなかった底面と、放熱板の側面に対向する第2側面とがつながったものであ」ることは、本件補正発明の「下面と、前記下面につながり前記下面よりも前記ベース板の中央に近い位置にある斜面とを有」することに相当する。

e 引用発明の「接合シール層」は、「接合シール層は、第1接合シール面と第2接合シール面との間の全域に形成されると共に、第1接合シール面と第2接合シール面との間に界面を有」するから、「第2接合シール面」の「傾斜面」及び「底面」の双方と界面を有するものと認められる。また、引用発明において「第1接合シール面と第2接合シール面との間が、シリコン接着剤で形成された接合シール層を介在させて接合され」るから、「第2接合シール面」を有する「樹脂製枠体」と、「第1接合シール面」を有する「放熱板」との間が、「接合シール層」を介して「接合」されると認められる。
よって、引用発明の「樹脂製枠体」は、「接合シール層」が、「第2接合シール面」の「傾斜部」及び「底面部」の双方と界面を有することで、「放熱板」に接合されたものであり、本件補正発明の「前記下面と前記斜面に前記接着剤がつくことで前記ベース板に固定されたケース」に相当する。
ただし、本件補正発明は「前記接着剤は、前記ベース板の中央方向に凸形状となって」いるのに対し、引用発明は「接合シール層」が「放熱板」の中央に向かう凸形状であることが特定されない点で相違する。

f 引用発明において、「半導体チップ」は、「放熱板の上側表面の中央に取り付けられた」「セラミックス基板」に「搭載」されたものだから、本件補正発明の「前記上面に固定された半導体素子」に相当する。
ただし、本件補正発明は「前記半導体素子は前記第2上面の直上に設けられ」るのに対し、引用発明は「半導体チップ」が「周辺上側表面」よりも上方の表面に設けられない点で相違する。

g 引用発明の「接合シール層」は、「第1接合シール面及び第2接合シール面のシール剤たまり部の接合シール層が、他の部分の接合シール層に比べて厚く形成された」ものであり、また、「傾斜面により第2接合シール面のシール剤たまり部が形成され」るから、「接合シール層」は、「傾斜面」において「底面部」よりも「厚く形成された」ものである。また、上記fにおいて検討したとおり、「接合シール層」は「傾斜面」及び「底面面」と界面を有するものであるから、「接合シール層」は「第2接合シール面のシール剤たまり部」で「傾斜面」に接し、「他の部分」で「底面」に接するものである。
よって、引用発明の「第1接合シール面及び第2接合シール面のシール剤たまり部の接合シール層が、他の部分の接合シール層に比べて厚く形成された」構成は、本件補正発明の「前記接着剤のうち、前記斜面に接する部分は、前記下面に接する部分より厚」いことに相当する。

イ 上記アによれば、本件補正発明と引用発明とは、以下の点で一致又は相違若しくは相違する。

(一致点)
「ベース板と、
前記ベース板の上面に設けられた接着剤と、
下面と、前記下面につながり前記下面よりも前記ベース板の中央に近い位置にある斜面とを有し、前記下面と前記斜面に前記接着剤がつくことで前記ベース板に固定されたケースと、
前記上面に固定された半導体素子と、を備え、
前記接着剤のうち、前記斜面に接する部分は、前記下面に接する部分より厚く、
前記上面は、前記ベース板の端部まで設けられた第1上面を有する半導体装置。」

(相違点1)
本件補正発明では「前記接着剤は、前記ベース板の中央方向に凸形状となって」いるのに対し、引用発明では「接合シール層」が「放熱板」の中央に向かう凸形状であることが特定されない点。

(相違点2)
本件補正発明では「前記上面は、前記ベース板の端部まで設けられた第1上面と、前記第1上面よりも上方にある第2上面とを有」するのに対し、引用発明では「第2上面」に相当する構成がない点。

(相違点3)
本件補正発明では「前記接着剤は前記第1上面に塗布され」るのに対し、引用発明では「接合シール層」は「周辺上側表面」に形成されるものの、塗布により形成されたものであることは特定されていない点。

(相違点4)
本件補正発明では「前記半導体素子は前記第2上面の直上に設けられ」るのに対し、引用発明ではその旨の特定がない。

(4)判断
ア 相違点1について検討する。
本願の願書に最初に添付された明細書の段落【0016】には「接着剤フィレット24aとは、ケース20とベース板12との間をベース板12の中央方向に流動した接着剤の一部がはみ出した部分である。斜面20Aに接する接着剤フィレット24aは、外側部24cと中央部24bより厚い。接着剤フィレット24aは製造過程で押し出された部分なので、ベース板12の中央方向に凸形状となっている。」と記載され、段落【0019】には「接着剤フィレット24aは、製造過程でケース20とベース板12の間から押し出された余剰部分なので、通常はベース板12の中央方向に凸形状となっている。つまり、接着剤フィレット24aの表面は中央が盛り上がった曲面となっている。」と記載されていることから、本件補正発明に係る「凸形状」は、接着剤が製造過程で中央方向に押し出されることによって形成されるものと認められる。
一方、引用発明において「傾斜面」は「樹脂製枠体の内壁から底面に切り欠かれた」ものであるから、「底面」と比較して「内壁」側へ傾いたものである。よって、「第1接合シール面と第2接合シール面との間が」「接合される」際に「接着剤からなる接合シール層」が「傾斜面」から受ける力は、「内壁」側すなわち「放熱板」の中央方向に傾くから、「シリコン接着剤からなる接合シール層」は「放熱板」の中央方向へ向けて押し出され、その結果、「放熱板」の中央方向へ向けて凸形状に形成される。よって、上記相違点1に係る構成は、引用文献1に記載されているに等しい事項である。

イ 相違点2及び4について検討する。
放熱板に半導体素子を搭載するともに、半導体素子を覆うケースを放熱板に固定する半導体装置のパッケージ技術において、放熱板の上側表面のうち半導体素子が搭載される領域が他の領域より上方となるよう構成することは、本願出願前において周知技術である(必要であれば、特開平3−30456号公報の第2頁右上欄第1行ないし第19行、第2頁右下欄第15行ないし第3頁左上欄第7行、第1図、特開平4−179150号公報、第2図及び第3図参照。)。
よって、引用発明に上記周知技術を適用し、上記相違点2及び4に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

この点について、審判請求人は、「本願発明では、ベース板の上面は、ベース板の端部まで設けられた第1上面と、第1上面よりも上方にある第2上面とを有し、接着剤は第1上面に塗布され、半導体素子は第2上面の直上に設けられる。このように接着剤が塗布される第1上面をベース板の端部まで設けることにより、厚い接着剤フィレットの横幅を広くできるため、絶縁特性を向上できるという格別な効果を奏する。」と主張している。
しかし、請求人が主張する「厚い接着剤フィレットの横幅を広くできるため、絶縁特性を向上できるという格別な効果」を奏するためには、「接着剤フィレット」が「第1上面」と「第2上面」の段差によって形成される「側壁」に接する構成が必要であるところ、請求項1において当該構成は特定されていないため、本件補正の請求項1に記載されていない構成に基づくものであり、採用することはできない。

ウ 相違点3について検討する。
基体上に部材を接着剤により接着する際、接着剤を基体上に塗布することは、本願出願前に周知技術である(必要であれば、特開2004−247451号公報、段落【0005】及び図5、特開平7−78909号公報、段落【0004】及び図5参照。)。
よって、引用発明に上記周知技術を適用し、引用発明において、「放熱板」上に「接合シール層」となる「シリコン接着剤」を塗布し、上記相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

エ 以上のとおり、本件補正発明は、引用発明と周知技術とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし6に係る発明は、令和2年10月16日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2[理由]1(2)」において記載した請求項1のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略次のとおりである。
1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

●理由1(特許法第29条第1項第3号
・請求項 1−4
・引用文献等 1

●理由2(特許法第29条第2項)について
・請求項 1−4
・引用文献等 1

・請求項 5
・引用文献等 1,3

・請求項 6
・引用文献等 1,3,6

<引用文献等一覧>
1.特開2000−323593号公報
3.特開2014−158003号公報
4.国際公開第2017/169086号(周知技術を示す文献)

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項及び引用発明は、上記「第2[理由]2(2)ア」に記載したとおりである。

4 対比、判断
本願発明は、本件補正発明から、上記「第2[理由]1 本件補正」で検討した、「前記上面に固定された半導体素子と、を備え」、「前記上面は、前記ベース板の端部まで設けられた第1上面と、前記第1上面よりも上方にある第2上面とを有し、前記接着剤は前記第1上面に塗布され、前記半導体素子は前記第2上面の直上に設けられた」との限定(相違点2ないし4に係る構成)が削除されたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項は、上記「第2[理由]2(4)」で検討したとおり、引用発明と全て一致し相違するところはないから、本願発明は引用文献1に記載された発明である。

第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。



 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2021-11-19 
結審通知日 2021-11-24 
審決日 2021-12-07 
出願番号 P2017-226438
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 酒井 朋広
特許庁審判官 棚田 一也
須原 宏光
発明の名称 半導体装置および電力変換装置  
代理人 特許業務法人高田・高橋国際特許事務所  
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