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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C09J
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C09J
審判 全部申し立て 発明同一  C09J
管理番号 1382342
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-03-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-05-07 
確定日 2022-01-05 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6601522号発明「粘着テープ、放熱シート、電子機器及び粘着テープの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6601522号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−12〕について訂正することを認める。 特許第6601522号の請求項1ないし12に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6601522号(以下「本件特許」という。)に係る特許についての出願は、平成28年8月2日(優先権主張 平成27年8月6日(以下「本件優先日」という。) 日本国受理、平成27年12月16日 日本国受理)を国際出願日とする特許出願(特願2017−533079号)の一部を平成30年3月16日に新たな特許出願(特願2018−49423号)としたものであって、令和元年10月18日に特許権の設定登録がされ、同年11月6日に特許掲載公報が発行され、令和2年5月7日にジュネスプロパティーズ株式会社(以下「申立人」という。)により、全請求項(請求項1〜12)に係る特許についての特許異議の申立てがされたものである。
以下の手続は次のとおりである。
令和2年 8月19日付 当審から取消理由通知(発送は、同月24日)
令和2年10月22日 意見書の提出と共に訂正の請求
令和2年12月 8日 申立人から意見書の提出
令和3年 4月20日付 当審から取消理由通知(発送は、5月10日)
令和3年 7月 9日 意見書の提出と共に訂正の請求(以下「本件訂正」という。)
なお、令和2年10月22日提出の訂正の請求による訂正は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げたものとみなす。
令和3年 8月24日 申立人から意見書の提出

第2 本件訂正について
1 訂正事項
本件訂正は、次の訂正事項1〜8からなるものである。
(1)訂正事項1
請求項1に「損失正接のピーク温度が−20℃〜10℃であることを特徴とする」と記載されているのを、「損失正接のピーク温度が−20℃〜10℃であり、
前記粘着部(B)から選択される任意の粘着部(b1)1個あたりの大きさは、面積0.02mm2〜5mm2であり、
前記粘着部(B)は、前記粘着テープの面積(流れ方向5cm及び幅方向5cmの正方形)の範囲に、450個〜41300個存在し、
前記2以上の粘着部(B)から選択される任意の粘着部(b1)と、前記粘着部(b1)に近接する粘着部(b2)との距離が0.5mm以下であることを特徴とする」と訂正する。(請求項1の記載を直接または間接的に引用する請求項2〜12も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
請求項2に「粘着テープ。」と記載されているのを、「粘着テープ(ただし、前記一方の面(a)に塗液をはじく性質を有する撥液性パターン部が形成されているものを除く。)。」と訂正する。(請求項2の記載を直接または間接的に引用する請求項3〜12も同様に訂正する。
(3)訂正事項3
請求項3に「前記2以上の粘着部(B)」と記載されているのを、
「前記支持体(A)の一方の面(a)側から前記粘着部(B)を観察した際の前記粘着部(B)の形状が、略円形状、略四角形状、略六角形状であり、
前記粘着部(B)の厚さが1μm〜6μmであり、
前記2以上の粘着部(B)」と訂正する。(請求項3の記載を直接または間接的に引用する請求項4〜12も同様に訂正する。)
(4)訂正事項4
請求項3に「距離が0.5mm以下」と記載されているのを、「距離が0.05mm〜0.2mm」と訂正する。(請求項3の記載を直接または間接的に引用する請求項4〜12も同様に訂正する。)
(5)訂正事項5
請求項4に「前記支持体(A)」と記載されているのを、
「前記支持体(A)の一方の面(a)側から前記粘着部(B)を観察した際の前記粘着部(B)の形状が、略円形状、略四角形状、略六角形状であり、
前記2以上の粘着部(B)から選択される任意の粘着部(b1)に近接する粘着部(b2)との距離が0.05mm〜0.15mmであり、
前記粘着部(B)は、前記粘着テープの面積(流れ方向5cm及び幅方向5cmの正方形)の範囲に450〜2075個存在し、
前記粘着部(B)から選択される任意の粘着部(b1)1個あたりの大きさは、面積1mm2〜4mm2であり、
前記支持体(A)」と訂正する。(請求項4の記載を直接または間接的に引用する請求項5〜12も同様に訂正する。)
(6)訂正事項6
請求項4に「領域の割合が10%〜99%」と記載されているのを、「領域の割合が72%〜95%」と訂正する。(請求項4の記載を直接または間接的に引用する請求項5〜12も同様に訂正する。)
(7)訂正事項7
請求項6に「総厚さが20μm以下」と記載されているのを、
「前記支持体の(A)の他方の面側に2以上の粘着部又は前記他方の面の全面に粘着層を有し、
前記支持体(A)の一方の面(a)側の前記粘着部(B)の厚さが1μm〜3μmであり、
総厚さが20μm以下」と訂正する。(請求項6の記載を直接または間接的に引用する請求項7〜12も同様に訂正する。)
(8)訂正事項8
請求項9に「前記放熱部材がグラファイトシートまたはグラフェンシートである」と記載されているのを。「前記放熱部材がグラファイトシートまたはグラフェンシートであり、前記粘着テープの前記粘着部(B)を有する面(a)が前記放熱部材側でない方向を向く状態で使用される」と訂正する。(請求項9の記載を直接または間接的に引用する請求項10〜12も同様に訂正する。)
2 訂正要件についての判断
(1)一群の請求項について
訂正前の請求項1〜12のうち、請求項2〜12は、直接または間接的に請求項1を引用するものであるから、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されることになる。したがって、訂正後の請求項1〜12は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(2)訂正事項1
ア 訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1における「粘着部(B)」を、さらに「任意の粘着部(b1)1個あたりの大きさは、面積0.02mm2〜5mm2」であり、「粘着テープの面積(流れ方向5cm及び幅方向5cmの正方形)の範囲に、450個〜41300個存在し」、「任意の粘着部(b1)と、前記粘着部(b1)に近接する粘着部(b2)との距離が0.5mm以下である」ものに特定する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
イ 実質上拡張・変更の有無
前記アのとおり、訂正事項1は、特許請求の範囲を減縮するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものでないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから、訂正事項1は特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものといえる。
新規事項の追加の有無
本件特許の願書に添付した明細書を参照すると、(ア)段落【0047】には、「前記粘着部(B)から選択される任意の粘着部(b1)1個あたりの大きさは、面積・・・0.02mm2〜5mm2である」と記載され、(イ)段落【0048】には、「前記粘着部(B)は、本発明の粘着テープの面積(流れ方向5cm及び幅方向5cmの正方形)の範囲に、10個〜1000000個・・・存在することが好ましく」と記載され、段落【0195】の【表4】に記載された実施例20では、粘着部の個数が450個と記載され、段落【0196】の【表5】に記載された実施例23では、粘着部の個数が41300個と記載されており、さらに(ウ)段落【0046】には、「前記2以上の粘着部(B)から選択される任意の粘着部(b1)と、前記粘着部(b1)に近接する(最も近くに存在する)他の粘着部(b2)との距離は、0.5mm以下であることが好ましく」と記載されている。したがって、訂正事項1は、新規事項を追加する訂正ではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法126条第5項に適合するものといえる。
(3)訂正事項2
ア 訂正の目的
訂正事項2は、請求項2に記載された「粘着テープ」を「粘着テープ(ただし、前記一方の面 (a)に塗液をはじく性質を有する撥液性パターン部が形成されているものを除く。)」に限定するものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
イ 実質上拡張・変更の有無
前記アのとおり訂正事項2は、いわゆる「除くクレーム」とするものであるから、実質上の拡張・変更する訂正とはいえないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものといえる。
新規事項の追加の有無
特開2003−253226号公報(甲1)に記載されている粘着シートには、シート状基材の表面に「塗液をはじく性質を有する撥液性パターン部」が形成されている。
訂正事項2は、甲1に記載された発明を「除くクレーム」とするものであるから、本件明細書に実質的に記載されていたものといえるから、新規事項を追加する訂正とはいえず、特許法第120条の5第9項で準用する同法126条第5項に適合するものといえる。
エ 申立人の主張に対して
申立人は、除く対象が明確でないから、訂正事項2は訂正要件を満たさないと主張する。
しかしながら、「前記一方の面 (a)に塗液をはじく性質を有する撥液性パターン部が形成されているもの」が第三者に不測の不利益をもたらすほど明確でないということはできず、申立人の主張は採用できない。
(4)訂正事項3
ア 訂正の目的
訂正事項3は、訂正前の請求項3において特定されていなかった、粘着部(B)の形状及び厚さを特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
イ 実質上拡張・変更の有無
前記アのとおり訂正事項3は、特許請求の範囲を減縮するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものとはいえないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものといえる。
新規事項の追加の有無
(ア)本件特許明細書の段落【0039】には、次の記載がある。
「【0039】
前記粘着部(B)の形状は、本発明の粘着テープを、前記支持体(A)の一方の面(a)側から観察した際に、略四角形状、略六角形状または略円形状等であることが好ましく、略円形状であることが、被着体との界面から気泡が抜けやすく(エア抜け性)、かつ、良好な接着力を保持できるため好ましい。」
(イ)本件特許明細書の段落【0063】には、次の記載がある。
「【0063】
前記粘着部(B)としては、厚さ1μm〜6μmのものを使用することが好ましく、厚さ2μm〜5μmのものを使用することが、被着体と粘着部(B)との界面から気泡を容易に除去することができ、その結果、前記粘着テープの膨れ等に起因した外観不良や、熱伝導性や耐熱性や接着力等の性能低下をより効果的に防止できるためより好ましい。また、前記粘着部(B)の厚さは、JIS K6783にしたがい、ダイヤルゲージを用いた方法で、ダイヤルゲージの接触面が平面、その径が5mm及び荷重が1.23Nである条件で測定された両面粘着テープの厚さを指す。」
(ウ)訂正事項4のうち、粘着部の形状を特定した部分は、前記(ア)の記載に基づくものであり、粘着部の厚さを特定した部分は前記(イ)の記載に基づくものであって、いずれも新規事項を追加するものではない。
(エ)したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法126条第5項に適合するものといえる。
(5)訂正事項4
ア 訂正の目的
訂正事項4は、訂正前の請求項3において、粘着部(b1)と、粘着部(b1)と隣接する粘着部(b2)との距離が0.5mm以下と特定されていたものを、0.05mm〜0.2mmに特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
イ 実質上拡張・変更の有無
前記アのとおり訂正事項4は、特許請求の範囲を減縮するものであって、実質上拡張・変更するものとはいえない。したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものといえる。
新規事項の追加の有無
(ア)本件特許明細書の段落【0046】には、次の記載がある。
「【0046】
前記2以上の粘着部(B)から選択される任意の粘着部(b1)と、前記粘着部(b1)に近接する(最も近くに存在する)他の粘着部(b2)との距離は、0.5mm以下であることが好ましく、0.05mm〜0.2mmであることがより好ましく、0.06mm〜0.15mmであることがさらに好ましく、0.08mm〜0.13mmであることが、被着体との界面から気泡が抜けやすく(エア抜け性)、かつ、良好な接着力を保持できるため特に好ましい。」
(イ)訂正事項4の「距離が0.05mm〜0.2mm」は、前記(ア)の記載に基づくものであるから、新規事項を追加するものとはいえない。したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法126条第5項に適合するものといえる。
(6)訂正事項5
ア 訂正の目的
訂正事項5は、訂正前の請求項4においてそれぞれ特定のなかった、(ア)粘着部の形状を「略円形状、略四角形状、略六角形状」と特定し、(イ)粘着部(b1)と粘着部(b2)との距離を「0.05mm〜0.15mm」と特定し、(ウ)粘着部の数を「前記粘着テープの面積(流れ方向5cm及び幅方向5cmの正方形)の範囲に450〜2075個存在」と特定し、(エ)粘着部一つの面積を「面積1mm2〜4mm2であり」と特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
イ 実質上拡張・変更の有無
上記アのとおり、訂正事項5は、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許請求の範囲を実質上拡張・変更するものではない。したがって、訂正事項5は特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものといえる。
新規事項の追加の有無
本件特許の願書に添付した明細書を参照すると、(ア)段落【0039】には、「前記支持体(A)の一方の面(a)側から観察した際に、略四角形状、略六角形状または略円形状」と記載され、(イ)段落【0046】には、「る任意の粘着部(b1)と、前記粘着部(b1)に近接する(最も近くに存在する)他の粘着部(b2)との距離は、0.5mm以下であることが好ましく、0.05mm〜0.2mmであることがより好ましく、0.06mm〜0.15mmであることがさらに好ましく」と記載されており、(ウ)段落【0195】【表4】の実施例20においては、粘着部の個数が450個と記載され、段落【0193】【表2】の実施例7においては、粘着部の個数が2075個と記載されており、(エ)段落【0193】【表2】の実施例7においては粘着部(1個あたり)の面積が1mm2とされ、段落【0192】【表1】の実施例1〜5において、粘着部(1個あたり)の面積が4mm2とされていることから、訂正事項5は新規事項を追加するものではない。したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する同法126条第5項に適合するものといえる。
(7)訂正事項6
ア 訂正の目的
訂正事項6は、請求項4における「接着部を有する領域」の「割合」を、訂正前の「10%〜99%」から「72%〜95%」に訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
イ 実質上拡張・変更の有無
前記アのとおり、訂正事項6は、特許請求の範囲を減縮するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものでないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから、訂正事項1は特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものといえる。
新規事項の追加の有無
本件特許の願書に添付した明細書を参照すると、段落【0192】【表1】の実施例4においては、「粘着部を有する領域の割合[%]」が95%であることが読み取れ、段落【0195】【表4】の実施例20においては、「粘着部を有する領域の割合[%]」が72%であることが読み取れるから、訂正事項6は新規事項を追加するものではない。したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する同法126条第5項に適合するものといえる。
(8)訂正事項7
ア 訂正の目的
訂正事項7は、請求項6に係る粘着テープについて、(ア)支持体(A)における粘着部(B)が設けられた面と反対の面に粘着部を有することを新たに特定し、(イ)粘着部(B)の厚さを1μm〜3μmと新たに特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に 掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
イ 実質上拡張・変更の有無
前記アのとおり、訂正事項6は、特許請求の範囲を減縮するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものでないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから、訂正事項1は特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものといえる。
新規事項の追加の有無
本件特許の願書に添付した明細書を参照すると、(ア)段落【0015】には、「前記粘着テープとして両面粘着テープを使用する場合、前記支持体(A)の両方の面(a)側に前記特定の粘着部(B)を2以上有し、・・・両面粘着テープ、または、・・・前記支持体(A)の他方の面側には、その全面に粘着層を有する両面粘着テープを使用することができる。」と記載され、(イ)段落【0194】【表3】の実施例11においては、「粘着部の厚さ[μm]」が1μmであることが読み取れ、段落【0192】【表1】の実施例1においては、「粘着部の厚さ[μm]」が3μmであることが読み取れることから、訂正事項7は新規事項を追加するものではない。したがって、訂正事項7は特許法第120条の5第9項で準用する同法126条第5項に適合するものといえる。
(9)訂正事項8
ア 訂正の目的
訂正事項8は、請求項9における粘着テープ使用時の放熱部材と粘着シートとの関係を新たに「前記粘着テープの前記粘着部(B)を有する面(a)が前記放熱部材側でない方向を向く状態で使用される」と特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
イ 実質上拡張・変更の有無
前記アのとおり、訂正事項8は、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから、訂正事項8は特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものといえる。
新規事項の追加の有無
本件特許の願書に添付した明細書を参照すると、段落【0110】には、「その際、前記粘着テープは、その粘着部(B)を有する面が外側(グラファイトシート側でない方向)を向く状態で使用することが好ましい。」と記載されており、訂正事項8は新規事項を追加するものではない。したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第9項で準用する同法126条第5項に適合するものといえる。
3 小括
以上から、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号を目的とするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項、第6項に適合するものであるから、本件訂正による訂正後の請求項〔1〜12〕について訂正することを認める。

第3 本件発明
前記第2のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1〜12に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1〜12に記載された事項により特定されるものであって、以下のとおりの発明(以下「本件発明1」〜「本件発明12」といい、まとめて「本件発明」という。)である。当審が、分説のためにA〜Hの記号を付した。
「【請求項1】
A:支持体(A)の少なくとも一方の面(a)側に2以上の粘着部(B)を有する粘着テープであって、
B:前記2以上の粘着部(B)の間には粘着部(B)を有しない領域が存在し、前記領域が前記粘着テープの端部に通じたものであり、
C:前記粘着部(B)のゲル分率が10質量%〜60質量%であり、
D:前記粘着部(B)の周波数1Hzで測定される動的粘弾性スペクトルに基づく損失正接のピーク温度が−20℃〜10℃であり、
E:前記粘着部(B)から選択される任意の粘着部(b1)1個あたりの大きさは、面積0.02mm2〜5mm2であり、
F:前記粘着部(B)は、前記粘着テープの面積(流れ方向5cm及び幅方向5cmの正方形)の範囲に、450個〜41300個存在し、
G:前記2以上の粘着部(B)から選択される任意の粘着部(b1)と、前記粘着部(b1)に近接する粘着部(b2)との距離が0.5mm以下であることを特徴とする
H:粘着テープ。
【請求項2】
前記支持体(A)の一方の面(a)側から前記粘着部(B)を観察した際の前記粘着部(B)の形状が、略円形状、略四角形状または略六角形状である請求項1に記載の粘着テープ(ただし、前記一方の面(a)に塗液をはじく性質を有する撥液性パターン部が形成されているものを除く。)。
【請求項3】
前記支持体(A)の一方の面(a)側から前記粘着部(B)を観察した際の前記粘着部(B)の形状が、略円形状、略四角形状、略六角形状であり、
前記粘着部(B)の厚さが1μm〜6μmであり、
前記2以上の粘着部(B)から選択される任意の粘着部(b1)と、前記粘着部(b1)に近接する粘着部(b2)との距離が0.05mm〜0.2mmである請求項1〜2のいずれ1項に記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記支持体(A)の一方の面(a)側から前記粘着部(B)を観察した際の前記粘着部(B)の形状が、略円形状、略四角形状、略六角形状であり、
前記2以上の粘着部(B)から選択される任意の粘着部(b1)に近接する粘着部(b2)との距離が0.05mm〜0.15mmであり、
前記粘着部(B)は、前記粘着テープの面積(流れ方向5cm及び幅方向5cmの正方形)の範囲に450〜2075個存在し、
前記粘着部(B)から選択される任意の粘着部(b1)1個あたりの大きさは、面積1mm2〜4mm2であり、
前記支持体(A)の一方の面(a)の面積に占める、前記粘着部(B)を有する領域の割合が72%〜95%である請求項1〜3のいずれか1項に記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記粘着テープの流れ方向1cm及び幅方向1cmの範囲に、前記粘着部(B)が120個〜2000個存在する請求項1〜4のいずれか1項に記載の粘着テープ。
【請求項6】
前記支持体の(A)の他方の面側に2以上の粘着部又は前記他方の面の全面に粘着層を有し、
前記支持体(A)の一方の面(a)側の前記粘着部(B)の厚さが1μm〜3μmであり、
総厚さが20μm以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の粘着テープ。
【請求項7】
前記粘着部(B)を有する面に平滑なステンレス板を載置し、2kgローラーを用い1往復させることでそれらを圧着させ、23℃及び50%RHの条件下で1時間放置して得られた試験片を用いて測定される180°ピール接着力が2N/20mm〜12N/20mmの範囲である請求項1〜6のいずれか1項に記載の粘着テープ。
【請求項8】
発熱部材と放熱部材との貼り合わせ、または、発熱部材に接する金属部材と放熱部材との貼り合わせに使用する請求項1〜7のいずれか1項に記載の粘着テープ。
【請求項9】
前記放熱部材がグラファイトシートまたはグラフェンシートであり、前記粘着テープの前記粘着部(B)を有する面(a)が前記放熱部材側でない方向を向く状態で使用される請求項8に記載の粘着テープ。
【請求項10】
放熱部材の一方の面側に任意の片面粘着テープが貼付され、前記放熱部材の他方の面側に請求項1〜8のいずれか1項に記載の粘着テープが貼付された放熱シート。
【請求項11】
発熱部材、または、発熱部材に接する金属部材に、請求項10に記載の放熱シートが貼付された構成を有する電子機器であって、前記放熱シートの前記粘着部(B)を有する面が、前記発熱部材または前記金属部材に貼付された構成を有することを特徴とする電子機器。
【請求項12】
支持体の少なくとも一方の面(a)に、粘着部(B)の周波数1Hzで測定される動的粘弾性スペクトルに基づく損失正接のピーク温度が−20℃〜10℃となるようにグラビア塗工方法またはスロットダイ塗工方法で粘着剤を塗工することによって、略円形状、略四角形状または略六角形状の2以上の粘着部(B)形成し、請求項1〜9の粘着テープを製造することを特徴とする粘着テープの製造方法。」

第4 当審からの取消理由通知の理由について
1 取消理由の概要
(1)令和2年8月19日付及び令和3年4月20日付の取消理由通知の概要は次のとおりである。
(2)本件発明1〜12は、後記2(1)の、本件特許出願前日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であり、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
れるべきものである。
2 刊行物の一覧
(1)申立人が提示した証拠に係るもの。なお、甲第1号証を甲1などという。
また、甲9、14、15については後記する。
甲1:特開2003−253226号公報(主たる引用刊行物)
甲2:特開2013−181054号公報
甲3:特開2010−254979号公報
甲4:国際公開第2013/099755号
甲6:特開2001−110965号公報
甲7:特開2002−319653号公報
甲8:特開2005−272763号公報
甲10:綜研化学株式会社作成、プラスチックレジン材料総覧2012と題するWebページ(https://www.ctiweb.co.jp/store/pdf/pla2012/soken.pdf)、672〜673頁
甲11:国際公開第2015/137178号
甲12:特開2016−3298号公報
甲13:特開2015−164996号公報
(2)当審が調査した文献に係るもの
引用文献A:特開2014−56967号公報
3 刊行物の記載事項
(1)甲1には次の記載がある。
ア 「【請求項1】 シート状基材の表面に、塗液をはじく性質を有する撥液性パターン部および非撥液性パターン部とからなる撥液性パターン層、ならびに粘着剤層が順に積層されており、前記粘着剤層は、前記撥液性パターン部上に相当する位置に凹部を有していることを特徴とする粘着シート。
【請求項2】 前記凹部は、前記撥液性パターン部上に相当する位置の前記粘着剤層の開孔部からなるものを含むことを特徴とする請求項1記載の粘着シート。
【請求項3】 前記粘着剤層上に、さらに剥離性シートが積層されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の粘着シート。
【請求項4】 シート状基材上に、塗液をはじく性質を有する撥液性パターン部および非撥液性パターン部とからなる撥液性パターン層を形成し、形成後、前記撥液性パターン層上を含む全面に、液状の粘着剤組成物を適用することにより、前記粘着剤層の前記撥液性パターン部上に相当する位置に凹部を生じさせることを特徴とする粘着シートの製造方法。
【請求項5】 前記凹部の少なくとも一部が、粘着剤層の開孔部からなることを特徴とする請求項4記載の粘着シートの製造方法。
【請求項6】 前記粘着剤層上に、さらに剥離性シートを積層することを特徴とする請求項5記載の粘着シートの製造方法。」
イ 「【0009】
【発明の実施の形態】図2(a)に示すように、本発明の粘着シート1は、シート状基材2上に撥液性パターン部3aおよび非撥液性パターン部3bとからなる撥液性パターン層3が積層されており、撥液性パターン層3上の全面に、粘着剤層4が積層されたものであって、粘着剤層4は、撥液性パターン部3a上に相当する位置が開孔部となることによる凹部5aを有しているものであり、開孔部において撥液性パターン部3aが露出している。この開孔部からなる凹部5aは、図2(a)に示すように、撥液性パターン部3aの左右の幅にほぼ一致したものでなくてもよく、例えば、撥液パターン部3a上の一部、例えば、中央部付近のみが開孔部となったものであってもよい。このように開孔部により凹部5aが形成されているときは粘着シート1を被着体に貼るときに、強い圧力がかかって、凹部5aの底が被着体に接触した場合にも、凹部5aと被着体が接着することがなく、従って、気泡が逃げやすい。
【0010】本発明の粘着シート1は、図2(b)に示すように、撥液性パターン層3の撥液性パターン部3a上に、非撥液性パターン部3b上にくらべれば厚みが薄い粘着剤層4が積層していて、粘着剤層4の厚みの厚薄からなる、凹部5bを有しているものであってもよい。この凹部3bも、図2(b)に示すように、撥液性パターン部3aの左右の幅にほぼ一致したものでなくてもよく、例えば、撥液性パターン部3a上の一部、例えば、中央部付近のみが凹部となったものであってもよい。」
ウ 「【0011】なお、撥液性パターン部3aが露出した凹部5aと、撥液性パターン部3a上の粘着剤層4が非撥液性パターン部3b上にくらべて薄い凹部5bとは、一つの粘着剤層上に混在していてもよい。要するに、本発明の粘着シート1においては、撥液性パターン層3の撥液性パターン部3a上において、非撥液性パターン部3b上にくらべ、少なくとも厚みが薄い凹部を有していればよい。
【0012】いずれにせよ、本発明の粘着シート1は、粘着剤層4の表面に凹部5を有しているので、被着体上に貼る時に、万一気泡が抱き込まれたとしても、凹部5を伝わって気泡が移動することが可能であり、気泡は移動して、外に出るか、もしくは、粘着シート1と被着体との間の粘着剤層4が有する幾つかの凹部に分散することができる。」
エ 「【0013】凹部5の平面形状は、後に粘着シートの製造方法の説明において説明するように、撥液性パターン部3aの形状を反映するものであるので、上記のように、気泡の移動を円滑に行なわせるためには、撥液性パターン部3aが、点状等の、互いに独立したパターン要素の集合であるよりも、連続した線が多数並べられたものであることが好ましく、さらに、線が交差する等により複合して、二方向以上に連続したもの(例えば、格子)であることがより好ましい。なお、ここで言う線は幅を有するものとする。
【0014】図3は、本発明の粘着シート1の撥液性パターン部3aの形状、特に上記したような連続したパターンのものを例示する平面図である。撥液性パターン3aは図3(a)中、黒色の幅広の線で示すように、間隔を置いて並べられた平行な直線群であり得る。あるいは、撥液性パターン部3aは、図3(b)に示すような平行な直線群が互いに直交した格子であり得る。撥液性パターン部3aは、図3(c)に示すように、狭い間隔で密に並べられた正六角形どうしの境界線であってもよい。さらに図3(d)に示すように、撥液性パターン部3aは、狭い間隔で密に並べられた楕円どうしの境界部であってもよい。なお、撥液性パターン部3aの形状は、以上のような、あるいはそのほかの幾何学的な線や形状に基づくものであってもよいし、基づかないものであってもよい。
【0015】なお、撥液性パターン部3aは、連続していない点状のものであっても、粘着剤層4の表面に点状の凹部5が生じるから、凹部5が全くないものにくらべれば、抱き込まれた気泡を受け入れる余地が大きく、気泡を分散させる等により、残留する気泡を極力小さくすることができる。
・・・
【0023】撥液性パターン部3aは、粘着シート1の撥液性パターン層3を形成する部分の面積の10%〜90%程度を占めるものであることが好ましく、10%未満では、撥液性パターン部3a上に生じる凹部5の占める面積が少なすぎ、粘着シート1を被着体上に貼ったときに、抱き込まれた気泡が凹部5を伝わって移動しにくく、抱き込まれた気泡が外に出るか、もしくは、凹部に分散して、粘着シート1上から見て、目立たなくなる効果が不十分である。また、90%を超えると、凹部の占める割合が過剰であり、粘着シート1と被着体との十分な接着力を得にくくなる。」
オ 「【0030】
【実施例】(実施例)厚み100μmの透明な2軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂(=PET)フィルムの片面に、二液硬化型ウレタン樹脂をバインダ樹脂とし、バインダ樹脂100に対し1(質量基準)の割合でシリコーンオイルを添加したインキを用い、線幅;1mm、縦横のピッチがいずれも10mmの格子パターンをグラビア印刷により形成し、印刷面に、アクリル系粘着剤(綜研化学(株)製、商品名;「SKダイン1309」/硬化剤「E−AX」=100/0.2、比は質量基準)を100g/m2になるよう塗布し、塗布後、100℃の温度で乾燥させたところ、塗布された粘着剤が格子パターンの線の部分の上ではじかれ、9mm×9mmの正方形状の粘着剤パターンが1mm間隔で縦横に配列した粘着剤層が形成された。その後、粘着剤層上に、厚み25μmのPETフィルムをセパレートフィルムとして積層し、積層後、7日間養生した。このようにして得られた粘着シートをセパレートフィルムを剥がしてガラス板上に貼り付けたところ、気泡の抱き込みがなく貼り付けることができた。」
カ 「【図2】


キ 「【図3】


(2)甲2
甲2には次の記載がある。
ア 「【0062】
上記アクリル系粘着剤のゲル分率は、特に限定されないが、接着特性と凝集力をより高度なバランスで両立して、良好な再剥離性を得る点より、20〜80%(重量%)が好ましく、より好ましくは30〜70%である。
【0063】
上記ゲル分率(溶剤不溶分の割合)は、具体的には、例えば、以下の「ゲル分率の測定方法」により算出される値である。
(ゲル分率の測定方法)
粘着剤:約0.1gを採取し、平均孔径0.2μmの多孔質テトラフルオロエチレンシート(商品名「NTF1122」、日東電工株式会社製)に包んだ後、凧糸で縛り、その際の重量を測定し、該重量を浸漬前重量とする。なお、該浸漬前重量は、粘着剤(上記で採取した粘着剤)と、テトラフルオロエチレンシートと、凧糸との総重量である。また、テトラフルオロエチレンシートと凧糸との合計重量も測定しておき、該重量を包袋重量とする。
次に、粘着剤をテトラフルオロエチレンシートで包み凧糸で縛ったもの(「サンプル」と称する)を、酢酸エチルで満たした50ml容器に入れ、23℃にて7日間静置する。その後、容器からサンプル(酢酸エチル処理後)を取り出して、アルミニウム製カップに移し、130℃で2時間、乾燥機中で乾燥して酢酸エチルを除去した後、重量を測定し、該重量を浸漬後重量とする。
そして、下記の式からゲル分率を算出する。
ゲル分率(重量%)=((A−B)/(C−B))×100
(上記式において、Aは浸漬後重量であり、Bは包袋重量であり、Cは浸漬前重量である。)」
イ 「【0088】
実施例及び比較例
グラビア印刷により溶剤型アクリル系粘着剤組成物を、片面についてシリコーン系剥離剤で重剥離処理を施した25μm厚みのPETフィルム(以下、「重剥離処理PETフィルム」と称する場合がある)上に点状に塗布し、加熱乾燥を行い、上記PETフィルムの一方の面に点状粘着剤を形成した。次に、点状粘着剤を保護するために、片面についてシリコーン系剥離剤で軽剥離処理を施した25μm厚みのPETフィルム(以下、「軽剥離処理PETフィルム」と称する場合がある)を貼り合わせた。そして、ロール形状に巻いて、粘着製品とした。
使用した印刷型は、規則的に点状粘着剤が分布し、規則的な円形状の点状粘着剤が設けられるように調整された印刷型であり、各実施例及び比較例ごとに、表1で示した点状粘着剤の大きさ、点状粘着剤の厚さ、点状粘着剤間の間隔及び面積率が得られるように調整されている。
なお、実施例及び比較例の粘着製品では、円形状の点状粘着剤が基材上に規則的に分布しており、上記円形状の点状粘着剤の大きさ、厚さ、形状は統一されており、さらに隣接する点状粘着剤間の間隔も統一されている。」
ウ 「【0092】
・・・
【表1】


エ 「【符号の説明】
【0094】
1 粘着製品
11a 基材
11b 基材
12 点状粘着剤
121中心
A 点状粘着剤の大きさ
B 点状粘着剤間の間隔(距離)」
オ 「【図3】


(3)甲3の記載
甲3には次の記載がある。
ア 「【請求項1】
樹脂基材の少なくとも一面に粘着剤層を有し、前記粘着剤層表面に剥離シートが設けられた粘着テープであって、
平滑なステンレス(SUS304)表面に2kg荷重で貼り付け、1時間静置後の300mm/minでの180゜接着力が5〜12N/25mmであり、
前記粘着剤層と前記剥離シートとの間の剥離シートの300mm/minでの180゜剥離力が30〜80mN/25mmであり、
剥離シートを除く厚さが5〜30μmであることを特徴とする放熱シート用粘着テープ。
【請求項2】
前記粘着テープの粘着剤が、炭素数4〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー50質量%以上、カルボキシル基を含有するビニルモノマーが1〜20質量%、水酸基含有モノマー0.05〜5質量%を必須成分として調製されるアクリル共重合体からなり、前記粘着剤層の粘着剤の重量平均分子量が50〜100万であることを特徴とする請求項1に記載の放熱シート用粘着テープ。
【請求項3】
厚さ30〜100μmのグラファイトシートの少なくとも一面に、請求項1に記載の放熱シート用粘着テープが貼付されたことを特徴とする放熱シート。
【請求項4】
請求項3に記載の放熱シートを使用することを特徴とする携帯電子端末機器。
・・・
【0010】
本発明の粘着テープは、放熱シート作成時にグラファイトシートを扱う工程数が少なく、かつ、グラファイトシート自体を扱う工程も作業の容易な粘着テープを貼り付ける工程であるため、放熱シート作成時にグラファイトシートの割れが生じにくく、作業性が良好である。また、粘着テープを貼り付ける際の皺の発生や、粘着テープとグラファイトシート間への気泡の混入が低減できるため歩留まりの向上に有利である。」
イ 「【0033】
架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、キレート系架橋剤等があげられる。特に粘着剤層を設ける場合は、イソシアネート系架橋剤またはエポキシ系架橋剤を使用するのが好ましい。架橋剤の添加量としては、粘着剤層のゲル分率が15〜80%になるよう調整するのが好ましい。さらに好ましいゲル分率は、20〜60%である。そのなかでも25〜45%が最も好ましい。ゲル分率が25%以上であると凝集力が高くなり接着力が良好になる。一方、ゲル分率が80%未満であると接着力が良好である。ゲル分率は、養生後の粘着剤層の組成物をトルエン中に浸漬し、24時間放置後に残った不溶分の乾燥後の質量を測定し、元の質量に対する百分率で表す。」
ウ 「【0064】
(実施例1)
(粘着テープの作製)アクリル系粘着剤組成物(a)100重量部に、日本ポリウレタン工業社製「コロネートL−45」(イソシアネート系架橋剤)を0.8重量部配合し、充分に撹拌した後、離型処理した厚さ75μmのポリエステルフィルム(東レフィルム加工社製セラピールBX6)上に、乾燥後の厚さが3μmとなるよう塗工して、100℃で2分間乾燥して粘着剤層aを得た。次に、粘着剤層aを厚さ4μmポリエステルフィルム(東レ社製ルミラー4AF53)の両面に転写し、40℃で2日間養生して、総厚10μmの両面粘着テープを得た。」
エ 「【0075】
【表1】


(4)甲4の記載
甲4には次の記載がある。
ア 「[0054] [粘着剤層]
本発明の粘着テープの粘着剤層を構成する粘着剤組成物は、通常の粘着テープに使用される粘着剤組成物を用いることができる。当該粘着剤組成物としては、例えば(メタ)アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤などが挙げられるが、(メタ)アクリレート単独又は(メタ)アクリレートと他のモノマーとの共重合体からなるアクリル系共重合体をベースポリマーとし、これに必要に応じて粘着付与樹脂や架橋剤等の添加剤が配合された(メタ)アクリル系粘着剤組成物を好ましく使用できる。
・・・
[0073] 架橋度合いの指標として、粘着剤層をトルエンに24時間浸漬した後の不溶分を測定するゲル分率の値が用いられる。ゲル分率は、好ましくは25〜70質量%である。より好ましくは30〜60質量%、更に好ましくは30〜55質量%の範囲であれば、凝集性と接着性がともに良好である。」
イ 「[0076] 本発明の粘着テープに使用する粘着剤層は、周波数1Hzにおける損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度が好ましくは温度が−40℃〜15℃であることが好ましい。粘着剤層の損失正接のピーク値を当該範囲とすることで、常温下での被着体との良好な密着性を付与しやすくなる。特に低温環境下での耐落下衝撃性の向上に際しては、−35℃〜10℃であることがより好ましく、−30℃〜6℃であることがさらに好ましい。」
ウ 「[0090] 本発明の粘着テープは、このような優れた特性を有することから、電子手帳、携帯電話、PHS、デジタルカメラ、音楽プレーヤー、テレビ、ノート型パソコン、スマートフォン、タブレット型パソコン、ゲーム機等の携帯電子機器に好適に使用できる。特に、LEDやOELDディスプレイなど情報表示装置を保護するパネルときょう体との貼り合わせ、きょう体同士の貼り合わせ、きょう体とタッチパネルやシート状テンキーなどの情報入力装置との貼り合わせ、対角3.5〜16インチのLEDやOELDなど情報表示装置ときょう体との貼り合わせのほか、内蔵型バッテリー、スピーカー、レシーバー、圧電素子、プリント基板、フレキシブルプリント基板(FPC)、デジタルカメラモジュール、センサー類、その他のモジュールや、ポリウレタンやポリオレフィン系などのクッション材ゴム製部材、加飾用部品や各種部材の固定などに好適に適用できる。なかでも、情報表示部の大画面化が進み、落下時の衝撃が大きい対角3.5〜16インチ、好ましくは3.5〜12.1インチの携帯電子端末においても、机上からの落下や歩行中の操作時の落下等の際にも優れた耐衝撃性を実現できることから、これら大画面化された携帯電子端末の部品固定用途に、特に好適に適用できる。」
エ 「[0097] [実施例3] 粘着剤組成物(A)の代わりに粘着剤組成物(B)を用い、粘着剤組成物B100質量部に対し、日本ポリウレタン社製「コロネートLー45」(イソシアネート系架橋剤、固形分45%)を1.33質量部添加したこと以外は、実施例1と同一の方法で厚さ300μmの両面粘着テープを得た。粘着剤層のゲル分率は37質量%、周波数1Hzにおける損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度は2℃であった。」
(5)甲6の記載事項
甲6には次の記載がある。
ア 「【0005】このような構造の粘着シート1にあっては、発熱性デバイスなどの発熱体とヒートシンクとを接合し、発熱体からの熱をヒートシンクに伝熱する機能を有し、接合材と熱伝導材との働きをする。ところが、基材シート2の熱伝導率は、高熱伝導性フィラーの高充填により6〜10W/m・kと高いものとなっているが、粘着層3の熱伝導性が0.2〜1W/m・kと低いため、この粘着層3が熱障壁(ヒートバリヤー)となって粘着シート1全体の熱伝導性が低下する不都合があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】よって、本発明における課題は、粘着層が存在しても粘着シート全体としての熱伝導性が低下しないようにすることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】かかる課題は、粘着層をドット状またはメッシュ状に形成し、基材シートが直接発熱体やヒートシンクに接触する領域を形成することで解決される。また、基材シートに常温で流動性を示し、低モジュラスのシリコーンゴムを用いることで、直接接触領域を多くすることができる。」
イ 「【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳しく説明する。図1は、本発明の粘着シートの一例を示すもので、この例の粘着シート1は、基材シート2上にドット状の粘着層3を形成したものである。基材シート2は、シリコーンゴムにボロンナイトライド、アルミニウムナイトライド、シリコーンカーバイトなどの高熱伝導性フィラーを30〜80wt%程度高充填した高熱伝導性の組成物からなる厚み0.5〜4mm程度のシートである。
・・・
【0010】この基材シート2の両面には、ドット状の粘着層3,3が形成されている。ここでのドット状粘着層3とは、粘着剤からなる点状の多数の粘着子3a,3a,3a…の集合状態を言う。この粘着層3をなす粘着剤としては、通常使用されているものが使用されるが、上述の高熱伝導性フィラーを充填したものや粘着力の高いものを用いてもよい。」
(6)甲7の記載事項
甲7には次の記載がある。
「【請求項1】 高分子フィルムをグラファイト化し熱伝導性を発現したグラファイト層の表面に粘着剤を複数の点状に一定の間隔をもって塗布したグラファイトシート。」
(7)甲8の記載事項
甲8には次の記載がある。
ア 「【0014】
本発明貼着用粘着シート1は、図1、図2に示すように、シート基材2の片面に粘着剤が塗工され、粘着剤塗着部Aが形成される。
【0015】
本発明貼着用粘着シート1を構成するシート基材2の材料としては、特に制約はなく、広く採用することができ、紙、熱可塑性樹脂フィルム、金属ホイル等が使用され、紙としては、和紙、洋紙、上質紙、ミラコート紙、アート紙、ホイル紙等を使用することができる。
【0016】
熱可塑性樹脂フィルムとしては、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、発泡されたポリプロピレンやポリエステルの合成紙等を用いることができる。中でも、ポリエステル、ポリオレフィン、発泡されたポリプロピレンやポリエステルの合成紙が望ましい。
【0017】
シート基材2は、必要な印刷、印字や着色が予めあるいは事後に施されて表示シートとされ、あるいは、熱可塑性樹脂フィルムに光吸収材、光反射材を練り込むことによって半透視性シート又は防熱シートとされる。シート基材2の印刷、印字は、上記の積層シートの製造の過程で、中間品となるシートに行なうこともでき、また、製造の完了したシートの表面に行なうこともできる。」
イ 「【0028】
粘着剤塗着部Aの形状は任意であり、丸型、角型、菱形、三角形、星型、筋状、クロス線状、或いは文字形状としてもよく、各種の形状とすることができる。その配列は、格子状、千鳥状、クロス状、ブロック状、あるいはランダム等任意に選定することができる。また、非塗着部Bはエアー抜きが容易なように、貼付面の縁部に連通することが好ましく、特に、実質的に非塗着部B全体が連絡して連通していることが望ましいが、個々の非塗着部の全てが連通する必要はなく、粘着剤の細い線で分割されていてもよく、また部分的に独立した部分があってもよい。」
(8)引用文献Aの記載事項
引用文献Aには次の記載がある。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の電磁波シールド対策も用いられる電磁波シールドシート、電磁波シールドシートに用いられる導電性粘着シートに関する。より詳しくは放熱性に優れる電磁波シールドシートに関する。
【背景技術】
【0002】
導電性粘着シートはその取扱いの容易さから、電気、電子機器等から輻射する不要な漏洩電磁波のシールド用、他の電気、電子機器より発生する有害な空間電磁波のシールド用に用いられている。また、電子機器の局所的な高温部(ヒートスポット)を対策するために、X−Y軸方向の熱伝導性に優れるグラファイトシートが利用されている。またグラファイトシートは粘着テープと固定され、グラファイトシート複合シートとして、使用される。
【0003】
近年、電子機器では省スペースに各種部品を高密度実装するため、放熱性と電磁波シールド特性に優れる電磁波シールドシートが求められている。」
イ 「【0027】
本発明の導電性粘着シートに使用される(メタ)アクリル系粘着剤は、得られる粘着剤層の凝集力向上のため3次元架橋構造を形成するのが好ましい。架橋構造形成の指標として、(メタ)アクリル系粘着剤の良溶媒であるトルエンに24時間浸漬した後の不溶分で表されるゲル分率を用いる。その場合、得られる粘着剤層のゲル分率が25〜70質量%であることが好ましく、より好ましくは35〜60質量%である。ゲル分率を当該範囲とすることで、特に好適なせん断方向の凝集力や、耐剥がれ性を得やすくなる。」
ウ 「【0035】
(導電性粘着剤組成物のTg)
導電性粘着剤組成物のTgは−40℃〜10℃であることが好ましい。上記範囲にあることで、接着性を確保でき、放熱性と電磁波シールド特性を高度に両立できる。より好ましくは−30℃〜0℃であり、最も好ましくは−25℃〜−5℃である。ここでTgは周波数1Hzで下記方法にて測定した損失正接のピーク温度である。
動的粘弾性測定:架橋した粘着剤を2mm厚にまで重ね合わせ試験片とした。レオメトリックス社製粘弾性試験機アレス2KSTDに直径7.9mmのパラレルプレートを装着し、試験片を挟み込み、周波数1Hzで−50℃から150℃までの損失正接を測定した。」
エ 「【0062】
(実施例1)
[導電性粘着シートの作成]
導電性粘着剤組成物(A)をニッパ社製剥離フィルム「PET38×1 A3」上に乾燥後の粘着剤層の厚さが10μmになるようにコンマコーターで塗工し、80℃の乾燥器中で2分間乾燥させた後、厚さ9μmの電解銅箔(CF−T9FZ−SV、福田金属箔粉工業社製)の両面に貼り合わせたのち、40℃で48時間養生して、実施例1の導電性粘着シートを作成した。粘着剤層のゲル分率は55質量%、Tgは−8℃であった。
【0063】
(実施例2)
導電性粘着剤組成物(A)の代わりに導電性粘着剤組成物(B)を用い、粘着剤層の厚さを10μmから8μmにした以外は実施例1と同様に実施例2の導電性粘着シートを作成した。粘着剤層のゲル分率は57質量%、Tgは−3℃であった。
【0064】
(実施例3)
導電性粘着剤組成物(A)の代わりに導電性粘着剤組成物(C)を用いた以外は実施例1と同様に実施例3の導電性粘着シートを作成した。粘着剤層のゲル分率は55質量%、Tgは−8℃であった。
【0065】
(実施例4)
導電性粘着剤組成物(A)の代わりに導電性粘着剤組成物(D)を用いた以外は実施例1と同様に実施例4の導電性粘着シートを作成した。粘着剤層のゲル分率は39質量%、Tgは−8℃であった。
【0066】
(実施例5)
導電性粘着剤組成物(A)の代わりに導電性粘着剤組成物(E)を用いた以外は実施例1と同様に実施例5の導電性粘着シートを作成した。粘着剤層のゲル分率は66質量%、Tgは−8℃であった。
【0067】
(実施例6)
厚さ9μmの電解銅箔(CF−T9FZ−SV、福田金属箔粉工業社製)の代わりに、厚さ35μmの圧延銅箔(BAY−64T−DT、JX日鉱日石金属社製)を用いた以外は実施例1と同様に実施例6の導電性粘着シートを作成した。粘着剤層のゲル分率は55質量%、Tgは−8℃であった。
【0068】
(実施例7)
厚さ9μmの電解銅箔(CF−T9FZ−SV、福田金属箔粉工業社製)の代わりに、厚さ7μmのアルミ箔(住軽アルミ箔社製)を用いた以外は実施例1と同様に実施例7の導電性粘着シートを作成した。粘着剤層のゲル分率は55質量%、Tgは−8℃であった。
【0069】
(実施例8)
導電性粘着剤組成物(A)の代わりに導電性粘着剤組成物(F)を用いた以外は実施例1と同様に実施例8の導電性粘着シートを作成した。粘着剤層のゲル分率は63質量%、Tgは−8℃であった。」
(9)甲10の記載事項
甲10には、次の記載がある。
ア 672頁上部



イ 673頁上部



ウ 673頁下部



(10)甲11の記載事項
甲11には、次の記載がある。
ア 「[請求項1]
透明両面粘着材を介して画像表示装置構成部材が積層されてなる構成を備えた画像表示装置構成用積層体の製造方法であって、少なくとも次の(1)〜(3)の工程を有することを特徴とする画像表示装置構成用積層体の製造方法。(1)枝成分としてマクロモノマーを備えたグラフト共重合体からなるアクリル系共重合体(A)と、架橋剤(B)と、光重合開始剤(C)とを含有する粘着剤樹脂組成物を作製して、該粘着剤樹脂組成物からなる粘着層を備えた単層又は多層の透明両面粘着材をシート状に成形する工程。(2)前記透明両面粘着材を介して2つの画像表示装置構成部材を貼着して積層する工程。(3)少なくとも一方の画像表示装置構成部材の外側から、活性エネルギー線を透明両面粘着材の前記粘着層に照射し、当該粘着層を架橋させて、2つの画像表示装置構成部材を接着させる工程。」
イ [請求項6]
前記工程(3)において、架橋後の透明両面粘着材は、JIS−Z−0237(ISO 29863)に準じた保持力測定において、SUS板に面積20mm×20mmで貼着させ、40℃および70℃の雰囲気下で500gfの荷重をかけた時の30分後のズレ長さが1mm未満であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の画像表示装置構成用積層体の製造方法。」
(11)甲12の記載事項
甲12には、次の記載がある。
ア 「【0091】(保持力)粘着フィルムを塗工後23℃、50%RHにて1週間静置した後、40℃、80℃、100℃及び120℃の条件でJIS Z 0237の保持力の測定法に準拠して上記粘着フィルムの保持力を測定し、下記基準で判定した。 【0092】○:1440分後においてもズレなし×:1440分後において1mm以内のズレあり」
イ 段落【0128】、【表3】
摘記は省略するが、実施例8及び9における保持力が○であることが読み取れる。
(12)甲13の記載事項
甲13には、次の記載がある。
ア 「【0133】 本発明の熱伝導性粘着シートは、保持力(80℃、100gf)が0.5mm以下であることが好ましい。上記保持力は、より好ましくは0.3mm以下であり、さらに好ましくは0.15mm以下である。」
イ 「【0152】(5)保持力上記の実施例、比較例で得られた粘着シートを評価サンプルとして、JIS Z1528の保持力の評価に準じて行った。粘着シートの片面(粘着面)に東レ社製「ルミラーS−10#25」を用いて裏打ち材つきのサンプルを得た。裏打ち材つきサンプルを10mm×20mmの面積になるように2kgローラー1往復にて貼付けを行い、30分間23℃の室温にて養生したのち、80℃の雰囲気下100gの荷重を1時間印加し、貼付け初期からのズレ量を確認して保持力(mm)の値とした。」
ウ 「【0154】


4 当審の判断
(1)甲1発明の認定
前記2(1)オに摘記した甲1の実施例1には、「透明な2軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの片面に、9mm×9mmの正方形状のアクリル系粘着剤(綜研化学(株)製SKダイン1309)の粘着剤パターンが1mm間隔で縦横に配列した粘着剤層が形成された粘着テープ」の発明(以下「甲1発明」という。)が開示されている。
(2)本件発明1との対比
ア 甲1発明の「粘着テープ」、「透明な2軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム」、「片面」、「9mm×9mmの正方形状の粘着剤」は、それぞれ本件発明1の「粘着テープ」、「支持体」、「少なくとも一方の面」、「粘着部」に相当する。
イ 甲1発明の「粘着剤パターンが1mm間隔で縦横に配列した」は、本件発明1における「2以上の粘着部(B)を有する」及び「2以上の粘着部(B)の間には粘着部(B)を有しない領域が存在し」に相当し、また、前記2(1)キに摘記した甲1の【図3】(d)の記載から、「前記領域が前記粘着テープの端部に通じたものであ」るといえる。
ウ 一致点
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、次の点で一致する。
「支持体(A)の少なくとも一方の面(a)側に2以上の粘着部(B)を有する粘着テープであって、前記2以上の粘着部(B)の間には粘着部(B)を有しない領域が存在し、前記領域が前記粘着テープの端部に通じたもの」「である粘着テープ。」である点。
エ 本件発明1と甲1発明との相違点は、次のとおりである。
(ア)相違点1
粘着部について、本件発明1においては「ゲル分率が10質量%〜60質量%」、「周波数1Hzで測定される動的粘弾性スペクトルに基づく損失正接のピーク温度が−20℃〜10℃」と特定されているのに対して、甲1発明においてはいずれも明らかでない点。
(イ)相違点2
本件発明1においては、「任意の粘着部(b1)1個あたりの大きさは、面積0.02mm2〜5mm2であ」るのに対して、甲1発明においては、粘着剤のパターンの1つの面積が、9mm×9mm=81mm2である点。
(ウ)相違点3
本件発明1においては、「粘着テープの面積(流れ方向5cm及び幅方向5cmの正方形)の範囲に、450個〜41300個存在」するのに対して、甲1発明におけるパターンを流れ方向5cm及び幅方向5cmとして計算すると、5×5=25個存在することになる点。
(エ)相違点4
本件発明1においては、「任意の粘着部(b1)と、前記粘着部(b1)に近接する粘着部(b2)との距離が0.5mm以下」であるのに対し、甲1発明1においては、粘着剤パターンが1mm間隔である点。
(3)相違点についての判断
ア 前記(2)の相違点2、3については、いずれも粘着部(b)の面積及びそれらの密度に関するものであり、変更する場合には、相互に関連する場合があるものであるから、同時に検討する。
イ そうすると、相違点2、3に係る本件発明1の構成の容易想到性は、甲1発明においては任意の粘着部1個あたりの面積が81mm2であって、流れ方向5cm及び幅方向5cmの正方形の範囲に25個粘着部が存在するのに対し、本件発明1のように任意の粘着部1個当たりの面積を面積0.02mm2〜5mm2」とし、流れ方向5cm及び幅方向5cmの正方形の範囲に450個〜41300個存在させることが当業者が容易に想到しうるか否かということといえる。
ウ 甲1には、甲1発明における粘着部1個あたりの面積の調整指針やその好ましい範囲に関する記載等が全くないので、これを10分の1以下として本件発明1に係る「0.02mm2〜5mm2」を充足するものに変更することを当業者が容易になし得るとは認められないし、5cm角の個数の調整指針やその好ましい範囲に関する記載等も全くないので、これを10倍以上することによって本件発明1に係る「450個〜41300個」を充足するものに変更することが容易になし得るとも認められない。また、甲1以外の証拠を見てもこれらの変更を当業者が容易になし得るとは認めるに足りる証拠はない。
したがって、相違点1、4について検討するまでもなく、本件発明1が特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ということはできないから、本件発明1に係る特許は特許法第113条第2項の規定により取り消すべきものとすることはできない。
エ 本件発明2〜12は、本件発明1を包含し、さらに発明特定事項を追加したものであるから、本件発明1と同様に進歩性を欠如するものということはできず、特許法第113条第2号の規定により取り消すべきものということはできない。
(4)申立人の主張に対して
ア 令和3年8月24日に申立人が提示した証拠は次のとおりである。
甲14:特開2010−174148号公報
甲15:特開2013−224430号公報
イ 甲14の記載事項
甲14には次の記載がある。
(ア)「【請求項1】
ドット状の粘着剤を間欠的に配置してなる粘着剤層と、前記粘着剤層を支持する基材とを備えた粘着製品であって、
前記粘着剤のドット径を1.5mm未満に微細化しかつ前記粘着剤層の厚みを25μm未満に収めながら所要の粘着力を確保するために、前記基材の単位面積あたり前記粘着剤の占める面積の割合である面積率を0.7以上に設定した粘着製品。
【請求項2】
前記粘着剤のドット径を0.7mm以上に設定した請求項1記載の粘着製品。
【請求項3】
前記粘着剤層の厚みを10μm以上に設定した請求項1または2記載の粘着製品。
【請求項4】
感圧転写テープ等として使用される請求項1、2または3記載の粘着製品を具備してなる転写具。」
(イ)「【0001】
本発明は、例えば封筒等の紙類やその他の部材を止着するために用いられる粘着製品に
関する。
【背景技術】
【0002】
事務用途向けに、基材に粘着剤層を設けた粘着製品(例えば、下記非特許文献1を参照)が広く流通している。このような粘着製品は、大きく二つの種類のものに分かれる。前者は、粘着剤が基材から剥離可能であり、その粘着剤を被着体の一方に転写した上で被着体同士を貼着するものであり、いわゆるテープ糊として市販されている感圧転写(感圧転写式粘着)テープや感圧転写シート等がこれに該当する。後者は、粘着剤が基材から剥離不能となっており、基材自体を被着体に貼着する粘着テープ、ラベル等がこれに該当する。
【0003】
何れの態様の製品についても、粘着力とともに重要視されているのが、取り扱う際の糊切れ性能である。糊切れを良化する有効な手法として、粘着剤を基材上に間欠的に塗布するドットパターン塗工(例えば、下記特許文献1を参照)が、粘着製品の製造工程で採用されている。ドットパターン塗工の別の長所として、粘着剤間の空隙から空気を抜くことができ、粘着剤と被着体との間に空気が閉じ込められて気泡や皺を生ずる問題を有効に回避できる点も挙げられる。
【0004】
近時では、粘着剤のドット径をより小さく、厚みをより薄くしたいという要求が高まっている。粘着剤のドット径が小さくなるほど、粘着剤が被着体の外側にはみ出すおそれが軽減するので細やかな作業に向くようになり、小形の部材の貼着にも有利となる。より幅の狭い感圧転写テープを作製することも可能になる。並びに、粘着剤層が薄くなるほど、同じ大きさのリールに巻くことのできる感圧転写テープの量、換言すればテープの長さが増大する。被着物の貼着後の仕上がりにおいても、凸凹が小さくなって平滑化する。さらには、粘着剤の全体的な消費量を削減することにもつながる。」
(ウ)「【0005】
しかしながら、粘着剤のドット径を小さくし、粘着剤層の厚みを薄くすることは、粘着力の低下、接着強度の弱体化に直結する。」
(エ)「【0043】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。特に、粘着製品の態様は、転写具2とともに用いられる感圧粘着テープに限定されない。例えば、図10に示すように、シート状をなす基材61に剥離可能な粘着剤62をドットパターン塗工した感圧転写シート6、図11に示すように、基材71に剥離不能に粘着剤72をドットパターン塗工した粘着テープ7やラベル紙(図示せず)等の粘着製品を想定することができる。」
(オ)「【図7】


ウ 甲15の記載事項
甲15には次の記載がある。
(ア)「【請求項1】
粘着剤を有してなる粘着剤層と、前記粘着剤を支持してなる基材とを有し、前記粘着剤層を介して少なくとも紙類と他の部材とを止着させ得る粘着製品であって、
前記粘着剤層を前記基材の表面に前記粘着剤を間欠的に配置してなるものとし、
前記粘着剤層を介して前記紙類と前記他の部材とを止着させた状態から前記紙類と前記他の部材とを剥離させる剥離動作を行った際に、前記紙類の表層部を前記粘着剤層の表面に付着させ前記紙類を厚み方向に破断する紙破現象を起こし得るように構成していることを特徴とする粘着製品。
【請求項2】
前記紙類が上質紙であって、当該上質紙に対して紙破現象を起こし得るように構成している請求項1記載の粘着製品。
【請求項3】
前記紙類が白封筒であって、当該白封筒に対して紙破現象を起こし得るように構成している請求項1又は2記載の粘着製品。
・・・
【請求項16】
前記粘着剤部が複数の粘着剤ブロックを有するものであり、各粘着剤ブロックの占有面積を0.05〜75平方ミリに設定している請求項13、14又は15記載の粘着製品。
【請求項17】
前記基材が前記粘着剤層に対して剥離可能に設けられたものであって、
前記粘着剤部の形状を、当該粘着剤部が基材に支持される底面の面積を頂面の面積よりも広く設定した形状としている請求項13、14、15又は16記載の粘着製品。
【請求項18】
前記アクリル系粘着剤が、ホットメルト型粘着剤である請求項17記載の粘着製品。
【請求項19】
シールや粘着テープ等として使用される粘着製品であって、
前記基材であるシール本体或いは粘着テープ本体に前記粘着剤層を剥離不能に設けていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16記載の粘着製品。
【請求項20】
感圧転写粘着テープ等として使用される粘着製品であって、前記基材に前記粘着剤層を剥離可能に設けていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17又は18記載の粘着製品。
【請求項21】
請求項20に記載の粘着製品を具備してなる転写具。」
(イ)「【0001】
本発明は、封筒などの紙類を止着するための粘着製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、事務用途において基材に粘着剤層を設けた粘着製品が多く用いられている。このような粘着製品は大きく二つの種類のものに分かれている。一方のものは、基材と粘着剤層とが予め止着された状態として、基材を支持体として紙類等に貼り付ける態様の粘着製品である。このようなものの具体例として、粘着テープやシールといったものを挙げることができる。他方のものは、基材が粘着剤層に対して剥離可能に設けられたように構成し、粘着剤層を介して二つの被着体を止着し得るものである。このようなものの具体例として、いわゆる「テープ糊」として市販されている感圧転写式粘着テープ(以下、感圧転写テープと記す)を挙げることができる。このような感圧転写テープは一般にロール状に巻かれた状態で転写具に装着され、所望の長さのみ好適に転写し得る状態で取り扱われる。」
(ウ)「【表4】


エ 申立人の主張の概要
(ア)申立人は、前記イ(ウ)に摘記した甲14の「ドット」について、一つあたりの面積が0.44mm2であって、面積率から、5cm角当たりの粘着剤の個数は4020個であると算出されると主張する。
(イ)また、申立人は、前記ウ(ウ)に摘記した甲15の「レンガ」について、粘着部一つあたりの大きさが1.7mm2であって、5cm角あたりの粘着剤の個数は962個と計算できると主張する。
オ 判断
(ア)しかしながら、甲14は、感圧転写テープや封筒や紙類等を止着するために用いられる文具の技術分野に関する刊行物(前記イ(ア)、(イ))であり、甲15も紙類と他の部材とを止着させ得る粘着製品の技術分野に関する刊行物(前記ウ(ア))であるのに対し、甲1発明は、粘着テープの技術分野に係るものであるから、直ちにこれらの事項を適用することできないというべきであって、当業者が容易になし得ることということはできない。
(イ)したがって、申立人の主張は採用できない。

第5 取消理由に採用しなかった特許異議の申立理由、及び、採用しなかった証拠
1 甲5の1〜甲5の3について
(1)申立人は、甲5の1〜3を提示している。また、甲5の1〜3は、前記第4、3(1)オに摘記した甲1の実施例に用いられている粘着剤のゲル分率及び動的粘弾性スペクトルに基づく損失正接のピーク温度を証明するための証拠である。
(2)検討
甲5の2及び甲5の3については、書証として真正に成立するものであるが、甲5の1については、文書の作成者が明らかでないから、書証として真正に成立するものではない。
そして、特許法第120条の規定により特許異議の申立てに審理における証拠調べについて準用される同法151条の規定により、更に準用される民事訴訟法第228条第1項の規定により、甲5の1を証拠として採用することはできない。
2 甲2を主引用例とする新規性欠如、進歩性欠如
(1)申立人は、前記第4、3(2)に摘記した甲2には、前記第3で分説した本件発明における構成要件A、B、Hが開示されており、これらの構成要件A、B、Hを備える発明が記載されている。また、他の構成要件については当業者が容易に想到しうる事項であると主張する。
(2)しかしながら、構成要件C〜Gは、前記第4、4(3)において検討したとおり、甲2を含む全ての証拠を検討しても、当業者が容易に想到しうるものいえないから、申立人の主張は採用できない。
3 甲6を主引用例とする新規性欠如、進歩性欠如
(1)申立人は、前記第4、3(5)に摘記した甲6には、前記第3で分説した本件発明における構成要件A、B、Hが開示されており、これらの構成要件A、B、Hを備える発明が記載されている。また、他の構成要件については当業者が容易に想到しうる事項であると主張する。
(2)しかしながら、構成要件C〜Gは、前記第4、4(3)において検討したとおり、甲6を含む全ての証拠を検討しても、当業者が容易に想到しうるものいえないから、申立人の主張は採用できない。
4 甲8を主引用例とする新規性欠如、進歩性欠如
(1)申立人は、前記第4、3(6)に摘記した甲8には、前記第3で分説した本件発明における構成要件A、B、Hが開示されており、これらの構成要件A、B、Hを備える発明が記載されている。また、他の構成要件については当業者が容易に想到しうる事項であると主張する。
(2)しかしながら、構成要件C〜Gは、前記第4、4(3)において検討したとおり、甲8を含む全ての証拠を検討しても、当業者が容易に想到しうるものいえないから、申立人の主張は採用できない。
5 甲7を主引用例とする新規性欠如、進歩性欠如
(1)申立人は、前記第4、3(6)に摘記した甲7には、前記第3で分説した本件発明における構成要件A、B、Hが開示されており、これらの構成要件A、B、Hを備える発明が記載されている。また、他の構成要件については当業者が容易に想到しうる事項であると主張する。
(2)しかしながら、構成要件C〜Gは、前記第4、4(3)において検討したとおり、甲6を含む全ての証拠を検討しても、当業者が容易に想到しうるものいえないから、申立人の主張は採用できない。
6 甲9を先願発明とする拡大先願
(1)主張の概要
申立人は、本件優先日前の平成27年1月8日を優先権主張日とする甲9(PCT/JP2015/086234、国際公開第2016/111208号)を提示し、本件発明1〜12は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない発明であると主張した。
(2)甲9の記載
ア 「[請求項1]
基材の両面に粘着剤層を有する粘着テープであって、前記粘着剤層のうち少なくとも片面の粘着剤層は粘着剤が存在する粘着剤部分と粘着剤が存在しない非粘着剤部分とが混在してなり、前記粘着剤層における粘着剤部分の面積の割合が40〜95%である、放熱シート又は磁性シートと被着体の間の貼り付けに使用される粘着テープ。
[請求項2]
粘着剤層の粘着剤部分が島状又は筋状である請求項1記載の粘着テープ。
[請求項3]
粘着剤層の厚さが0.5〜7μmである請求項1記載の粘着テープ。
[請求項4]
隣り合う粘着剤部分の隙間が0.01〜1mmである請求項1記載の粘着テープ。
[請求項5]
基材の厚さが1〜75μmである請求項1記載の粘着テープ。
[請求項6]
粘着テープの厚さが4〜85μmである請求項1記載の粘着テープ。
[請求項7]
請求項1記載の粘着テープの粘着剤層側と、放熱シート又は磁性シートとを貼り付けてなる積層体であって、貼り付け後の粘着テープの粘着剤層に非粘着剤部分が残存している積層体。」
イ 「[0025] <実施例1>
アクリル系粘着剤組成物100部に対し、アルミキレート系硬化剤の2.5%希釈溶液(川研ファインケミカル社製、商品名アルミキレートA(W))7部を添加し、攪拌して粘着剤を調製した。この粘着剤を、離型処理した厚さ25μmのポリエステルフィルムの上に全面平滑に塗布し、加熱乾燥を行い厚さ1.0μmの粘着剤層1を形成した。そしてこの粘着剤層1を、厚さ2μmの基材(三菱樹脂社製ポリエステルフィルム、商品名K100−2.0W)の片面に転写した。
[0026] またこれとは別に、前記粘着剤を、離型処理した厚さ25μmのポリエステルフィルムの上にグラビア印刷により図2に示すように四角い島状の粘着剤部分2aが等間隔に縦列で規則正しく配列するように塗布し、加熱乾燥を行い厚さ2.0μmの粘着剤層2を形成した。そしてこの粘着剤層2を、前記基材の粘着剤層1とは反対側の面に転写した。
[0027] 次いで、40℃で3日間養生して総厚5μmの両面粘着テープを得た。粘着剤層2の四角い島状の粘着剤部分2aの一辺の長さは0.5mm、非粘着剤部分の幅は0.17mm、粘着剤部分の面積の割合は56%とした。
[0028] <実施例2>
アクリル系粘着剤組成物100部に対し、イソシアネート系硬化剤(東ソー社製、商品名コロネートL45E)1.2部を添加し、攪拌して粘着剤を調製した。この粘着剤を、離型処理した厚さ25μmのポリエステルフィルムの上に全面平滑に塗布し、加熱乾燥を行い厚さ1.5μmの粘着剤層1を形成した。そしてこの粘着剤層1を、厚さ2μmの基材(三菱樹脂社製ポリエステルフィルム、商品名K100−2.0W)の片面に転写した。
[0029] またこれとは別に、前記粘着剤を、離型処理した厚さ25μmのポリエステルフィルムの上にグラビア印刷により図2に示すように四角い島状の粘着剤部分2aが等間隔に縦列で規則正しく配列するように塗布し、加熱乾燥を行い厚さ1.5μmの粘着剤層2を形成した。そしてこの粘着剤層2を、前記基材の粘着剤層1とは反対側の面に転写した。
[0030] 次いで、40℃で3日間養生して総厚5μmの両面粘着テープを得た。粘着剤層2の四角い島状の粘着剤部分2aの一辺の長さは1.3mm、非粘着剤部分の幅は0.2mm、粘着剤部分の面積の割合は75%とした。
[0031] <実施例3>
図3に示すように丸い島状の粘着剤部分2aが半分ずれた位置の横列で規則正しく配列するように形成したこと以外は、実施例2と同様にして粘着剤層2を形成し、両面テープを作製した。粘着剤層2の丸い島状の粘着剤部分2aの直径は1.1mm、非粘着剤部分の幅は0.15mm、粘着剤部分の面積の割合は70%とした。
[0032]
<実施例4>
アクリル系粘着剤組成物100部に対し、エポキシ系硬化剤(三菱ガス化学社製、商品名TETRAD−C)0.6部を添加し、攪拌して粘着剤を調製した。この粘着剤を、離型処理した厚さ25μmのポリエステルフィルムの上に全面平滑に塗布し、加熱乾燥を行い厚さ3μmの粘着剤層1を形成した。そしてこの粘着剤層1を、厚さ4μmの基材(東レ社製ポリエステルフィルム、商品名ルミラー4AF53)の片面に転写した。
[0033] 次いで前記粘着剤を、前記基材の粘着剤層1とは反対側の面にグラビア印刷により図4に示すように縦筋状の粘着剤部分2aが等間隔に規則正しく配列するように塗布し、加熱乾燥を行い、厚さ3μmの粘着剤層2を形成した。
[0034] さらにその粘着剤層2の上に、離型処理した厚さ25μmのポリエステルフィルムを貼り合わせて、40℃で3日間養生し、総厚10μmの両面粘着テープを得た。粘着剤層2の縦筋状の粘着剤部分の幅は0.8mm、非粘着剤部分の幅は0.5mm、粘着剤部分の面積の割合は62%とした。
[0035] <実施例5>
粘着剤層2の縦筋状の粘着剤部分の幅を4mm、非粘着剤部分の幅を4mm、粘着剤部分の面積の割合を50%としたこと以外は、実施例4と同様にして総厚10μmの両面粘着テープを得た。」
ウ 「[図2]


(3)判断
前記先願明細書においては、前記第3に摘記した本件発明1の構成C〜Gが記載も示唆もされていない。したがって、本件特許が特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない発明ということはできない。

第6 まとめ
以上のとおりであるから、
1 特許第6601522号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜12〕について訂正することを認める。
2 本件請求項1〜12に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由によっては、取り消すべきものとすることはできない。
また、他に本件請求項1〜12に係る特許を取り消すべきものとすべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体(A)の少なくとも一方の面(a)側に2以上の粘着部(B)を有する粘着テープであって、前記2以上の粘着部(B)の間には粘着部(B)を有しない領域が存在し、前記領域が前記粘着テープの端部に通じたものであり、前記粘着部(B)のゲル分率が10質量%〜60質量%であり、
前記粘着部(B)の周波数1Hzで測定される動的粘弾性スペクトルに基づく損失正接のピーク温度が−20℃〜10℃であり、
前記粘着部(B)から選択される任意の粘着部(b1)1個あたりの大きさは、面積0.02mm2〜5mm2であり、
前記粘着部(B)は、前記粘着テープの面積(流れ方向5cm及び幅方向5cmの正方形)の範囲に、450個〜41300個存在し、
前記2以上の粘着部(B)から選択される任意の粘着部(b1)と、前記粘着部(b1)に近接する粘着部(b2)との距離が0.5mm以下であることを特徴とする粘着テープ。
【請求項2】
前記支持体(A)の一方の面(a)側から前記粘着部(B)を観察した際の前記粘着部(B)の形状が、略円形状、略四角形状または略六角形状である請求項1に記載の粘着テープ(ただし、前記一方の面(a)に塗液をはじく性質を有する撥液性パターン部が形成されているものを除く。)。
【請求項3】
前記支持体(A)の一方の面(a)側から前記粘着部(B)を観察した際の前記粘着部(B)の形状が、略円形状、略四角形状または略六角形状であり、
前記粘着部(B)の厚さが1μm〜6μmであり、
前記2以上の粘着部(B)から選択される任意の粘着部(b1)と、前記粘着部(b1)に近接する粘着部(b2)との距離が0.05mm〜0.2mmである請求項1〜2のいずれ1項に記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記支持体(A)の一方の面(a)側から前記粘着部(B)を観察した際の前記粘着部(B)の形状が、略円形状、略四角形状または略六角形状であり、
前記2以上の粘着部(B)から選択される任意の粘着部(b1)と、前記粘着部(b1)に近接する粘着部(b2)との距離が0.05mm〜0.15mmであり、
前記粘着部(B)は、前記粘着テープの面積(流れ方向5cm及び幅方向5cmの正方形)の範囲に、450個〜2075個存在し、
前記粘着部(B)から選択される任意の粘着部(b1)1個あたりの大きさは、面積1mm2〜4mm2であり、
前記支持体(A)の一方の面(a)の面積に占める、前記粘着部(B)を有する領域の割合が72%〜95%である請求項1〜3のいずれか1項に記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記粘着テープの流れ方向1cm及び幅方向1cmの範囲に、前記粘着部(B)が120個〜2000個存在する請求項1〜4のいずれか1項に記載の粘着テープ。
【請求項6】
前記支持体(A)の他方の面側に2以上の粘着部又は前記他方の面の全面に粘着層を有し、
前記支持体(A)の一方の面(a)側の前記粘着部(B)の厚さが1μm〜3μmであり、
総厚さが20μm以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の粘着テープ。
【請求項7】
前記粘着部(B)を有する面に平滑なステンレス板を載置し、2kgローラーを用い1往復させることでそれらを圧着させ、23℃及び50%RHの条件下で1時間放置して得られた試験片を用いて測定される180°ピール接着力が2N/20mm〜12N/20mmの範囲である請求項1〜6のいずれか1項に記載の粘着テープ。
【請求項8】
発熱部材と放熱部材との貼り合わせ、または、発熱部材に接する金属部材と放熱部材との貼り合わせに使用する請求項1〜7のいずれか1項に記載の粘着テープ。
【請求項9】
前記放熱部材がグラファイトシートまたはグラフェンシートであり、前記粘着テープの前記粘着部(B)を有する面(a)が前記放熱部材側でない方向を向く状態で使用される請求項8に記載の粘着テープ。
【請求項10】
放熱部材の一方の面側に任意の片面粘着テープが貼付され、前記放熱部材の他方の面側に請求項1〜8のいずれか1項に記載の粘着テープが貼付された放熱シート。
【請求項11】
発熱部材、または、発熱部材に接する金属部材に、請求項10に記載の放熱シートが貼付された構成を有する電子機器であって、前記放熱シートの前記粘着部(B)を有する面が、前記発熱部材または前記金属部材に貼付された構成を有することを特徴とする電子機器。
【請求項12】
支持体の少なくとも一方の面(a)に、粘着部(B)の周波数1Hzで測定される動的粘弾性スペクトルに基づく損失正接のピーク温度が−20℃〜10℃となるようにグラビア塗工方法またはスロットダイ塗工方法で粘着剤を塗工することによって、略円形状、略四角形状または略六角形状の2以上の粘着部(B)形成し、請求項1〜9の粘着テープを製造することを特徴とする粘着テープの製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-12-21 
出願番号 P2018-049423
審決分類 P 1 651・ 161- YAA (C09J)
P 1 651・ 113- YAA (C09J)
P 1 651・ 121- YAA (C09J)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 蔵野 雅昭
特許庁審判官 木村 敏康
門前 浩一
登録日 2019-10-18 
登録番号 6601522
権利者 DIC株式会社
発明の名称 粘着テープ、放熱シート、電子機器及び粘着テープの製造方法  
代理人 根岸 真  
代理人 大野 孝幸  
代理人 流 良広  
代理人 岩本 明洋  
代理人 大野 孝幸  
代理人 小川 眞治  
代理人 松田 奈緒子  
代理人 廣田 浩一  
代理人 流 良広  
代理人 廣田 浩一  
代理人 根岸 真  
代理人 岩本 明洋  
代理人 松田 奈緒子  
代理人 小川 眞治  

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