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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C23C
審判 全部申し立て 発明同一  C23C
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C23C
審判 全部申し立て 2項進歩性  C23C
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C23C
管理番号 1382359
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-03-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-01-06 
確定日 2021-10-22 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6722005号発明「溶射用材料、溶射皮膜および溶射皮膜付部材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6722005号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜6〕、〔7〜10〕について訂正することを認める。 特許第6722005号の請求項1〜10に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6722005号(請求項の数10。以下、「本件特許」という。)の請求項1〜10に係る特許についての出願(特願2016−43940号。以下、「本願」という。)は、平成28年3月7日(優先権主張 平成27年5月8日)の出願であって、令和2年6月23日にその特許権の設定の登録がされ、同年7月15日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和3年1月6日に、特許異議申立人 本間裕美(以下、「申立人1」という。)により、すべての請求項に係る特許に対して特許異議の申立てがされ、同年1月14日に、特許異議申立人 青山敬子(以下、「申立人2」という。)により、すべての請求項に係る特許に対して特許異議の申立てがされ、同年5月17日付けで取消理由が通知され、同年7月19日に特許権者により意見書の提出及び訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)がなされ、同年8月23日に申立人2により意見書の提出がされ、同年8月30日に申立人1により意見書の提出がされたものである。

第2 訂正請求について
1 訂正請求の趣旨、及び、訂正の内容
(1)訂正請求の趣旨
本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、特許第6722005号の特許請求の範囲を、令和3年7月19日付けの訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1〜10について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである。

(2)訂正の内容
ア 訂正事項1
請求項1において、
本件訂正前の「構成元素として希土類元素(RE)、酸素(O)およびハロゲン元素(X)を含む希土類元素オキシハロゲン化物(RE−O−X)を含む溶射用材料」、及び「前記希土類元素に対する前記ハロゲン元素のモル比(X/RE)は、1.1以上であり」を、各々、
本件訂正後の「構成元素として希土類元素(RE)、酸素(O)およびハロゲン元素(X)を含む希土類元素オキシハロゲン化物(RE−O−X)からなる溶射用材料」、及び「前記希土類元素に対する前記ハロゲン元素のモル比(X/RE)は、1.1以上1.39以下であり」に訂正する(下線は訂正箇所を示す。以下同じ。)。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2〜6も同様に訂正する。

イ 訂正事項2
請求項7において、
本件訂正前の「前記希土類元素に対する前記ハロゲン元素のモル比(X/RE)が1.1以上である希土類元素オキシハロゲン化物を含む」を、
本件訂正後の「前記希土類元素に対する前記ハロゲン元素のモル比(X/RE)が1.1以上1.39以下である希土類元素オキシハロゲン化物を含む」に訂正する。
請求項7の記載を直接又は間接的に引用する請求項8〜10も同様に訂正する。

2 訂正の適否について
(1)訂正目的・新規事項の有無・特許請求の範囲の拡張又は変更について
ア 訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1において、溶射用材料が希土類元素オキシハロゲン化物を「含む」構成から「からなる」構成に減縮し、希土類元素オキシハロゲン化物の「前記希土類元素に対する前記ハロゲン元素のモル比(X/RE)」に対し上限値を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、上記訂正事項1は、本件特許の願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)の【0030】、【0032】及び表1に記載の事項を根拠にするものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

イ 訂正事項2について
訂正事項2は、請求項7において、希土類元素オキシハロゲン化物の「前記希土類元素に対する前記ハロゲン元素のモル比(X/RE)」に対し上限値を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、上記訂正事項2は、本件明細書の【0032】、【0040】の記載の事項を根拠にするものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)一群の請求項について
ア 本件訂正前の請求項1〜6について、請求項2〜6はそれぞれ、請求項1を直接又は間接的に引用しており、請求項1に連動して訂正されるから、本件訂正前の請求項1〜6は一群の請求項である。

イ 本件訂正前の請求項7〜10について、請求項8〜10はそれぞれ、請求項7を直接又は間接的に引用しており、請求項7に連動して訂正されるから、本件訂正前の請求項7〜10は一群の請求項である。

ウ 上記ア、イのとおり、本件訂正請求は、上記一群の請求項〔1〜6〕、〔7〜10〕についてされたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
そして、本件訂正は、請求項間の引用関係の解消を目的とするものではなく、特定の請求項に係る訂正事項について別の訂正単位とする求めもないから、訂正後の請求項〔1〜6〕、〔7〜10〕を訂正単位として訂正の請求をするものである。

(3)独立特許要件について
本件特許に対しては、訂正前のすべての請求項1〜10について特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する第126条第7項に規定される要件は課されない。

3 訂正請求についてのまとめ
以上のとおり、令和3年7月19日に特許権者が行った本件訂正請求による本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1〜6〕、〔7〜10〕について訂正することを認める。

第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は適法なものであるから、本件特許の請求項1〜10に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」〜「本件発明10」といい、これらをまとめて「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
構成元素として希土類元素(RE)、酸素(O)およびハロゲン元素(X)を含む希土類元素オキシハロゲン化物(RE−O−X)からなる溶射用材料であって、
当該溶射用材料のX線回折パターンにおける、
前記希土類元素オキシハロゲン化物のメインピークのピーク強度IAに対する、
希土類元素酸化物のメインピークのピーク強度IBと、希土類元素ハロゲン化物のメインピークのピーク強度ICとの合計、の強度比[(IB+IC)/IA]が0.02未満であり、
前記希土類元素オキシハロゲン化物において、
前記希土類元素に対する前記ハロゲン元素のモル比(X/RE)は、1.1以上1.39以下であり、
前記希土類元素に対する前記酸素のモル比(O/RE)は、0.9以下である、
溶射用材料。
【請求項2】
前記希土類元素ハロゲン化物を実質的に含まない、請求項1に記載の溶射用材料。
【請求項3】
前記希土類元素酸化物を実質的に含まない、請求項1または2に記載の溶射用材料。
【請求項4】
前記希土類元素オキシハロゲン化物において、
前記希土類元素に対する前記ハロゲン元素のモル比(X/RE)は、1.3以上1.39以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の溶射用材料。
【請求項5】
前記希土類元素がイットリウムであり、前記ハロゲン元素がフッ素であり、前記希土類元素オキシハロゲン化物がイットリウムオキシフッ化物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶射用材料。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の溶射用材料を基材の表面に溶射して、溶射皮膜を形成する方法。
【請求項7】
構成元素として希土類元素(RE)、酸素(O)およびハロゲン元素(X)を含む希土類元素オキシハロゲン化物(RE−O−X)を主成分とし、
X線回折パターンにおける、
前記希土類元素オキシハロゲン化物のメインピークのピーク強度ICAに対する、
希土類元素酸化物のメインピークのピーク強度ICBと、希土類元素ハロゲン化物のメインピークのピーク強度ICCとの合計、の強度比[(ICB+ICC)/ICA]が0.45以下であり、
前記希土類元素オキシハロゲン化物として、
前記希土類元素に対する前記ハロゲン元素のモル比(X/RE)が1.1以上1.39以下である希土類元素オキシハロゲン化物を含む、溶射皮膜。
【請求項8】
前記強度比[(ICB+ICC)/ICA]が0.05以下である、請求項7に記載の溶射皮膜。
【請求項9】
前記希土類元素酸化物を実質的に含まない、請求項7または8に記載の溶射皮膜。
【請求項10】
基材の表面に、請求項7〜9のいずれか1項に記載の溶射皮膜が備えられている、溶射皮膜付部材。」

第4 申立理由、及び取消理由の概要
(1)申立人1の申立理由
申立人1は、本件訂正前の請求項1〜10に係る特許は、下記(1−1)〜(1−5)の理由により取り消すべきものである旨主張し、証拠方法として下記(1−6)の甲第1〜8号証を提示した。

(1−1)申立理由1−1(拡大先願)
ア 申立理由1−1−1(取消理由Aとして一部採用)
本件特許の請求項1ないし10に係る発明は、本願の出願日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた甲第1号証に係る特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本願の発明者が上記特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また、本願の出願時において、本願の出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定に違反して特許されたものであるから、その発明についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

イ 申立理由1−1−2
本件特許の請求項1ないし10に係る発明は、本願の出願日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた甲第2号証に係る特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本願の発明者が上記特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また、本願の出願時において、本願の出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定に違反して特許されたものであるから、その発明についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(1−2)申立理由1−2(進歩性
ア 申立理由1−2−1
本件特許の請求項1ないし10に係る発明は、甲第3号証に記載された発明および甲第5号証に記載された事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その発明についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

イ 申立理由1−2−2
本件特許の請求項1ないし10に係る発明は、甲第4号証に記載された発明および甲第5号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その発明についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(1−3)申立理由1−3(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし10に係る発明は発明の詳細な説明に記載されたものとはいえず、その発明についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

(1−4)申立理由1−4(実施可能要件
本件特許の請求項1ないし10に係る発明について、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえず、その発明についての特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

(1−5)申立理由1−5(明確性
本件特許の請求項1ないし10に係る発明について、特許請求の範囲の記載は特許を受けようとする発明が明確であるとはいえず、その発明についての特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

(1−6)証拠方法
甲第1号証:特開2016−156046号公報(以下、「甲1」という。)
甲第2号証:特開2016−89241号公報(以下、「甲2」という。)
甲第3号証:国際公開第2014/002580号(以下、「甲3」という。)
甲第4号証:国際公開第2014/112171号(以下、「甲4」という。)
甲第5号証:特開2000−239067号公報(以下、「甲5」という。)
甲第6号証:「溶射技術に関する二三の研究」、蓮井淳、フジコー技報−tsukuru「創る」、No.8、p.10−18、2000年10月1日
甲第7号証:「最近の溶射技術」、蓮井淳、溶接学会誌、第58巻、第2号、p.106−114、1989年3月5日発行、URL:https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jjws/58/2/_contents/-char/ja及び https://www.jstage.jst.go.jp/article/qjjws1943/58/2/58_2_106/_pdf/-char/ja
甲第8号証:特開2017−61737号公報

(2)申立人2の申立理由
申立人2は、本件訂正前の請求項1〜10に係る特許は、下記(2−1)〜(2−6)の理由により取り消すべきものである旨主張し、証拠方法として下記(2−7)の甲第1〜4号証を提示した。

(2−1)申立理由2−1(新規性
本件特許の請求項1ないし3、5ないし10に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであるから、その発明についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(2−2)申立理由2−2(進歩性
本件特許の請求項1ないし10に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その発明についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(2−3)申立理由2−3(拡大先願)
ア 申立理由2−3−1(取消理由Aとして一部採用)
本件特許の請求項1ないし10に係る発明は、本願の出願日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた甲第2号証に係る特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本願の発明者が上記特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また、本願の出願時において、本願の出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定に違反して特許されたものであるから、その発明についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

イ 申立理由2−3−2
本件特許の請求項1ないし10に係る発明は、本願の出願日前の特許出願であって、その出願後に国際公開がされた甲第3号証に係る日本語特許出願の優先基礎出願である、特願2015−24627号(平成27年 2月10日出願)の願書に最初に添付された明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本願の発明者が上記特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本願の出願時において、本願の出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定に違反して特許されたものであるから、その発明についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(2−4)申立理由2−4(実施可能要件
本件特許の請求項1ないし10に係る発明について、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえず、その発明についての特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

(2−5)申立理由2−5(サポート要件)(取消理由Bとして一部採用)
本件特許の請求項1ないし10に係る発明は発明の詳細な説明に記載されたものとはいえず、その発明についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

(2−6)申立理由2−6(明確性
本件特許の請求項7ないし10に係る発明について、特許請求の範囲の記載は特許を受けようとする発明が明確であるとはいえず、その発明についての特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

(2−7)証拠方法
甲第1号証:国際公開第2014/002580号(上記(1−6)より「甲3」である。)
甲第2号証:特開2016−156046号公報(上記(1−6)より「甲1」である。)
甲第3号証:国際公開第2016/129457号(以下、「甲6」という。)
甲第4号証:特開2014−40634号公報

(3)取消理由の概要
当審は、上記(1)、(2)の申立理由のうち、申立理由1−1−1及び同2−3−1(拡大先願)、同2−5(サポート要件)を採用し、各々、取消理由A及び同Bとして通知した。

第5 当審の判断
当審は、本件訂正請求を認めることにより、当審による取消理由はいずれも解消し、また、申立人1、申立人2による申立理由のいずれによっても、本件特許を取り消すことはできないと判断する。

1 申立理由1−1−1、2−3−1(拡大先願)(取消理由Aとして一部採用)
(1)甲1に記載された発明
甲1は「溶射用粉末」(発明の名称)に関するものであって、その記載(【0015】、【0030】、【0033】、【0034】、【0041】、【0042】、【0047】、【0054】、【0059】【表1】)、特に段落【0033】、【0034】、【0042】の記載及び段落【0059】のNo.2に着目すると、甲1には、次の発明が記載されているといえる。

「Y5O4F7の材料組成を有する溶射用粉末。」(以下「甲1材料発明」という。)

「甲1材料発明に係る溶射用粉末を溶射して、基材に溶射皮膜を形成する方法。」(以下「甲1方法発明」という。)

「甲1材料発明の溶射用粉末を溶射して得られた溶射皮膜。」(以下「甲1皮膜発明」という。)

「基材の表面に、甲1皮膜発明に係る溶射皮膜が備えられた溶射皮膜付部材。」(以下「甲1部材発明」という。)

(2)本件発明1との対比
本件発明1(上記第3)と甲1材料発明(上記(1))とを対比すると、後者の「Y5O4F7」及び「溶射用粉末」は、各々、前者の「希土類元素オキシハロゲン化物(RE−O−X)」及び「溶射用材料」に相当する。
そして、後者の「溶射用粉末」は、「Y5O4F7」のみからなるものと認められるから、「X線回折パターンにおける、
前記希土類元素オキシハロゲン化物のメインピークのピーク強度IAに対する、
希土類元素酸化物のメインピークのピーク強度IBと、希土類元素ハロゲン化物のメインピークのピーク強度ICとの合計、の強度比[(IB+IC)/IA]」は0と認められる。
さらに、後者の「Y5O4F7」は、希土類元素に対する酸素のモル比が「0.8」であり、前者の「前記希土類元素に対する前記酸素のモル比(O/RE)は0.9以下である」ことに相当する。
そうすると、両者は、
「構成元素として希土類元素(RE)、酸素(O)およびハロゲン元素(X)を含む希土類元素オキシハロゲン化物(RE−O−X)からなる溶射用材料であって、
当該溶射用材料のX線回折パターンにおける、
前記希土類元素オキシハロゲン化物のメインピークのピーク強度IAに対する、
希土類元素酸化物のメインピークのピーク強度IBと、希土類元素ハロゲン化物のメインピークのピーク強度ICとの合計、の強度比[(IB+IC)/IA]が0.02未満であり、
前記希土類元素オキシハロゲン化物において、」「前記希土類元素に対する前記酸素のモル比(O/RE)は、0.9以下である、
溶射用材料。」である点において一致するものの、本件発明1は「前記希土類元素オキシハロゲン化物において、前記希土類元素に対する前記ハロゲン元素のモル比(X/RE)は、1.1以上1.39以下であ」るのに対し、甲1材料発明の「Y5O4F7」は、希土類元素に対するハロゲン元素のモル比が「1.4」であり、本件発明1の「前記希土類元素オキシハロゲン化物において、前記希土類元素に対する前記ハロゲン元素のモル比(X/RE)は、1.1以上1.39以下」に包含されない点で相違する。そして、この点は、甲1には記載されておらず、また、出願時の技術常識を考慮しても、甲1が当然に備えている事項でもなく、課題解決のための具体化手段における微差とはいえないので、実質的な相違点である。
よって、本件発明1は、甲1材料発明と同一であるとはいえない。

(3)本件発明2〜5との対比
本件発明2〜5は、本件発明1をさらに技術的に特定したものであるから、甲1材料発明と対比すると、少なくとも、上記(2)で検討した相違点を有する。
そして、上記(2)で検討したのと同様の理由により、本件発明2〜5は、甲1材料発明と同一であるとはいえない。

(4)本件発明6との対比
本件発明6は、本件発明1〜5に係る溶射用材料を基材の表面に適用して、溶射皮膜を形成する方法であるから、甲1方法発明(甲1材料発明に係る溶射用粉末を溶射して、基材に溶射皮膜を形成する方法)と対比すると、少なくとも、上記(2)で検討した相違点と同様の点で相違する。
そして、上記(2)で検討したのと同様の理由により、本件発明6は、甲1方法発明と同一であるとはいえない。

(5)本件発明7との対比
本件発明7(上記第3)と甲1皮膜発明(上記(1))とを対比する。
甲1皮膜発明は、「甲1材料発明の溶射用粉末を溶射して得られた溶射皮膜。」であり、当該溶射用粉末は「Y5O4F7」の材料組成を有するものである。
ここで、甲1の【0061】には、「これらの溶射皮膜は、比較的低温のAP溶射により溶射用粉末からの組成ずれを起こすことなく形成され得る」と記載されていることから、甲1皮膜発明は、溶射用粉末である「Y5O4F7」からの組成ずれを起こすことなく形成された、「Y5O4F7」からなる溶射皮膜と認められる。
したがって、後者の「溶射皮膜」は、「構成元素として希土類元素(RE)、酸素(O)およびハロゲン元素(X)を含む希土類元素オキシハロゲン化物(RE−O−X)を主成分とし、
X線回折パターンにおける、
前記希土類元素オキシハロゲン化物のメインピークのピーク強度ICAに対する、
希土類元素酸化物のメインピークのピーク強度ICBと、希土類元素ハロゲン化物のメインピークのピーク強度ICCとの合計、の強度比[(ICB+ICC)/ICA]」が0であるものと認められる。
そうすると、両者は、
「構成元素として希土類元素(RE)、酸素(O)およびハロゲン元素(X)を含む希土類元素オキシハロゲン化物(RE−O−X)を主成分とし、
X線回折パターンにおける、
前記希土類元素オキシハロゲン化物のメインピークのピーク強度ICAに対する、
希土類元素酸化物のメインピークのピーク強度ICBと、希土類元素ハロゲン化物のメインピークのピーク強度ICCとの合計、の強度比[(ICB+ICC)/ICA]が0.45以下であり」、「希土類元素オキシハロゲン化物を含む、溶射皮膜。」である点において一致するものの、本件発明7は「前記希土類元素オキシハロゲン化物として、前記希土類元素に対する前記ハロゲン元素のモル比(X/RE)が1.1以上1.39以下である希土類元素オキシハロゲン化物を含む」のに対し、甲1皮膜発明の「Y5O4F7」は、希土類元素に対するハロゲン元素のモル比が「1.4」であり、本件発明7の「前記希土類元素に対する前記ハロゲン元素のモル比(X/RE)が1.1以上1.39以下である希土類元素オキシハロゲン化物」に包含されない点で相違する。そして、この点は、甲1には記載されておらず、また、出願時の技術常識を考慮しても、甲1が当然に備えている事項でもなく、課題解決のための具体化手段における微差とはいえないので、実質的な相違点である。
よって、本件発明7は、甲1皮膜発明と同一であるとはいえない。

(6)本件発明8〜9との対比
本件発明8〜9は、本件発明7をさらに技術的に特定したものであるから、甲1皮膜発明と対比すると、少なくとも、上記(5)で検討した相違点を有する。
そして、上記(5)で検討したのと同様の理由により、本件発明8〜9は、甲1皮膜発明と同一であるとはいえない。

(7)本件発明10との対比
本件発明10は、本件発明7〜9に係る溶射皮膜が備えられている、溶射皮膜付部材であるから、甲1部材発明(基材の表面に、甲1皮膜発明に係る溶射皮膜が備えられた溶射皮膜付部材)と対比すると、少なくとも、上記(5)で検討した相違点と同様の点で相違する。
そして、上記(5)で検討したのと同様の理由により、本件発明10は、甲1部材発明と同一であるとはいえない。

(8)申立理由1−1−1、2−3−1(拡大先願)についてのまとめ
以上のとおり、本件特許の請求項1〜10に係る発明は、甲1に係る特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であるとはいえないから、同発明についての特許は特許法第29条の2の規定に違反してされたものではない。

2 申立理由1−1−2(拡大先願)
(1)甲2に記載された発明
甲2は「皮膜付き基材、その製造方法、その皮膜付き基材を含む半導体製造装置部材」(発明の名称)に関するものであって、その記載(請求項1、4、【0012】、【0025】、【0027】、【0064】、【0065】、【0070】、【0078】)、特に段落【0070】、【0078】に着目すると、甲2には、次の発明が記載されているといえる。

「組成(原子数%)がY:22atm%、F:53atm%、O:9atm%、C:15atm%のYOF粒子であり、イットリウムのオキシフッ化物とフッ化物(YF)との混合物であると考えられるフレーム溶射の原料粉末。」(以下「甲2材料発明」という。)

「甲2材料発明に係る原料粉末をフレーム溶射し、基板へ皮膜を形成する方法。」(以下「甲2方法発明」という。)

「甲2材料発明の原料粉末をフレーム溶射して得られた皮膜であって、Y2O3(立方晶および単斜晶)、YF3、YOFの各々の存在を示すピークが確認された皮膜。」(以下「甲2皮膜発明」という。)

「基板の表面に、甲2皮膜発明に係る皮膜が備えられた皮膜付き基板。」(以下「甲2基板発明」という。)

(2)本件発明1との対比
本件発明1(上記第3)と甲2材料発明(上記(1))とを対比すると、後者の「イットリウムのオキシフッ化物」及び「フレーム溶射の原料粉末」は、各々、前者の「希土類元素オキシハロゲン化物(RE−O−X)」及び「溶射用材料」に相当する。
そうすると、両者は、「溶射用材料。」である点において一致するものの、本件発明1は「構成元素として希土類元素(RE)、酸素(O)およびハロゲン元素(X)を含む希土類元素オキシハロゲン化物(RE−O−X)からなる溶射用材料であ」るのに対し、甲2材料発明の「フレーム溶射の原料粉末」は、「イットリウムのオキシフッ化物」と「イットリウムの」「フッ化物(YF)」との混合物である点で相違する。そして、この点は、甲2には記載されておらず、また、出願時の技術常識を考慮しても、甲2が当然に備えている事項でもなく、課題解決のための具体化手段における微差とはいえないので、実質的な相違点である。
よって、本件発明1は、甲2材料発明と同一であるとはいえない。

(3)本件発明2〜5との対比
本件発明2〜5は、本件発明1をさらに技術的に特定したものであるから、甲2材料発明と対比すると、少なくとも、上記(2)で検討した相違点を有する。
そして、上記(2)で検討したのと同様の理由により、本件発明2〜5は、甲2材料発明と同一であるとはいえない。

(4)本件発明6との対比
本件発明6は、本件発明1〜5に係る溶射用材料を基材の表面に適用して、溶射皮膜を形成する方法であるから、甲2方法発明(甲2材料発明に係る原料粉末をフレーム溶射し、基板へ皮膜を形成する方法)と対比すると、少なくとも、上記(2)で検討した相違点と同様の点で相違する。
そして、上記(2)で検討したのと同様の理由により、本件発明6は、甲2方法発明と同一であるとはいえない。

(5)本件発明7との対比
本件発明7(上記第3)と甲2皮膜発明(上記(1))とを対比する。
甲2皮膜発明は、「甲2材料発明の原料粉末をフレーム溶射して得られた皮膜」であるから、後者の「皮膜」は前者の「溶射皮膜」に相当する。
そうすると、両者は、
「溶射皮膜。」である点において一致するものの、本件発明7は「構成元素として希土類元素(RE)、酸素(O)およびハロゲン元素(X)を含む希土類元素オキシハロゲン化物(RE−O−X)を主成分とし、
X線回折パターンにおける、
前記希土類元素オキシハロゲン化物のメインピークのピーク強度ICAに対する、
希土類元素酸化物のメインピークのピーク強度ICBと、希土類元素ハロゲン化物のメインピークのピーク強度ICCとの合計、の強度比[(ICB+ICC)/ICA]が0.45以下であり、
前記希土類元素オキシハロゲン化物として、前記希土類元素に対する前記ハロゲン元素のモル比(X/RE)が1.1以上1.39以下である希土類元素オキシハロゲン化物を含む」のに対し、これらの点は、甲2には記載されておらず、また、出願時の技術常識を考慮しても、甲2が当然に備えている事項でもなく、課題解決のための具体化手段における微差とはいえないので、実質的な相違点である。
よって、本件発明7は、甲2皮膜発明と同一であるとはいえない。

(6)本件発明8〜9との対比
本件発明8〜9は、本件発明7をさらに技術的に特定したものであるから、甲2皮膜発明と対比すると、少なくとも、上記(5)で検討した相違点を有する。
そして、上記(5)で検討したのと同様の理由により、本件発明8〜9は、甲2皮膜発明と同一であるとはいえない。

(7)本件発明10との対比
本件発明10は、本件発明7〜9に係る溶射皮膜が備えられている、溶射皮膜付部材であるから、甲2基板発明(基板の表面に、甲2皮膜発明に係る皮膜が備えられた皮膜付き基板)と対比すると、甲2基板発明の「基板」は本件発明10の「部材」に相当するが、少なくとも、上記(5)で検討した相違点と同様の点で相違する。
そして、上記(5)で検討したのと同様の理由により、本件発明10は、甲2基板発明と同一であるとはいえない。

(8)申立理由1−1−2(拡大先願)についてのまとめ
以上のとおり、本件特許の請求項1〜10に係る発明は、甲2に係る特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であるとはいえないから、同発明についての特許は特許法第29条の2の規定に違反してされたものではない。

3 申立理由2−1(新規性)、1−2−1及び2−2(進歩性
(1)甲3に記載された発明
甲3は「溶射材料及びその製造方法」(発明の名称)に関するものであって、その記載(段落[0012]、[0018]、[0044]、[0050]、[0058]、[0060]、[0063]表3、請求項1)、特に請求項1、段落[0060]、[0063]表3の実施例10の記載によると、次の各発明が記載されているといえる。

「イットリウムのオキシフッ化物(YOF)を含む顆粒からなり、上記顆粒のYF3、YOF及びY2O3の各メインピークについてのX線回折ピーク相対強度が、YF3:YOF:Y2O3で1:100:1である溶射材料。」(以下「甲3発明」という。)

「甲3発明に係る溶射材料を用いて、基材の表面にプラズマ溶射を行う方法。」(以下「甲3方法発明」という。)

「甲3発明に係る溶射材料を、プラズマ溶射により溶射して得られた溶射膜。」(以下「甲3溶射膜発明」という。)

「甲3溶射膜発明に係る溶射膜が備えられている、部材。」(以下「甲3部材発明」という。)

(2)本件発明1との対比
ア 対比
本件発明1(上記第3)と甲3発明(上記(1))とを対比すると、後者の「顆粒」からなる「溶射材料」は、前者の「溶射用材料」に相当する。
そうすると、両者は、「溶射用材料」において一致し、次の相違点において相違する。

(相違点1)
溶射用材料について、本件発明1は「構成元素として希土類元素(RE)、酸素(O)およびハロゲン元素(X)を含む希土類元素オキシハロゲン化物(RE−O−X)からなる溶射用材料」であり、上記「希土類元素オキシハロゲン化物」の「前記希土類元素に対する前記ハロゲン元素のモル比(X/RE)は1.1以上1.39以下であり、」「前記希土類元素に対する前記酸素のモル比(O/RE)は、0.9以下である」のに対し、甲3発明は、上記特定がされていない点。

(相違点2)
本件発明1は「溶射用材料のX線回折パターンにおける、
前記希土類元素オキシハロゲン化物のメインピークのピーク強度IAに対する、
希土類元素酸化物のメインピークのピーク強度IBと、希土類元素ハロゲン化物のメインピークのピーク強度ICとの合計、の強度比[(IB+IC)/IA]が0.02未満であ」るのに対し、甲3発明は、溶射材料である顆粒の「YF3、YOF及びY2O3の各メインピークについてのX線回折ピーク相対強度が、YF3:YOF:Y2O3で1:100:1」から、上記強度比が(1+1)/100=0.02である点。

イ 検討
まず、上記相違点1が実質的な相違点であるか否かについて検討する。
甲3発明は、溶射用材料が、「イットリウムのオキシフッ化物(YOF)を含む顆粒からな」るものであるものの、希土類元素オキシハロゲン化物であるYOFのモル比(X/RE)及びモル比(O/RE)は1であり、希土類元素オキシハロゲン化物からなるものであることは記載されていないから、相違点1は実質的な相違点である。
次に、上記相違点1が容易に想到できたか否かについて検討する。
甲5は、「オキシハロゲン化物系部材」(発明の名称)に関するものであって、段落【0001】、【0013】、【0015】の記載及び【0016】表1の試料No.1〜8、13〜18によると、希土類オキシハロゲン化物からなる焼結体部材のハロゲン系プラズマのエッチング速度の結果より、YbBr1.4O0.8、YbF1.4O0.8、YF1.0O1.0、YF2.8O0.1の順にハロゲン系腐食ガス及びそのプラズマに対する耐食性が優れることが記載されている。
そして、甲3には、甲3発明におけるイットリウムのオキシフッ化物(YOF)として「モル比がY:O:F=1:1:1である化合物及び1:1:1以外の化合物の両方を挙げることができる。前記のモル比が1:1:1以外の化合物の例としては、Y5O4F7、Y7O6F9等を挙げることができる。」(段落[0012])と記載されているものの、甲3には、イットリウムのオキシフッ化物(YOF)からなる溶射材料は記載されていないから、甲5の記載を参酌しても、甲3発明の溶射用材料として、「構成元素として希土類元素(RE)、酸素(O)およびハロゲン元素(X)を含む希土類元素オキシハロゲン化物(RE−O−X)からなる溶射用材料」であり、上記「希土類元素オキシハロゲン化物」の「前記希土類元素に対する前記ハロゲン元素のモル比(X/RE)は1.1以上1.39以下であり、
前記希土類元素に対する前記酸素のモル比(O/RE)は、0.9以下である」ものに特定することの動機付けは見いだせない。

ウ 小括
よって、本件発明1は、甲3発明であるとはいえない。そして、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明及び甲5に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)本件発明2〜6との対比
ア 本件発明2〜5に係る発明は、本件発明1をさらに技術的に特定したものであるから、甲1発明と対比すると、少なくとも、上記(2)アと同様の相違点を有する。よって、本件発明2〜5は、甲3発明であるとはいえない。
そして、上記(2)イでの検討と同様の理由により、本件発明2〜5は、甲3発明及び甲5に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 本件発明6は、本件発明1〜5に係る溶射用材料を基材の表面に適用して、溶射皮膜を形成する方法であるから、甲3方法発明(甲3発明に係る溶射材料を用いて、基材の表面にプラズマ溶射を行う方法)と対比すると、少なくとも、上記(2)アと同様の相違点を有する。よって、本件発明6は、甲3方法発明であるとはいえない。
そして、上記(2)イでの検討と同様の理由により、本件発明6は、甲3方法発明及び甲5に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)本件発明7との対比
ア 対比
本件発明7(上記第3)と甲3溶射膜発明(上記(1))とを対比すると、後者の「溶射膜」は、「溶射皮膜」に相当する。
そうすると、両者は「溶射皮膜」において一致し、次の相違点において相違する。

(相違点3)
溶射皮膜について、本件発明7は「構成元素として希土類元素(RE)、酸素(O)およびハロゲン元素(X)を含む希土類元素オキシハロゲン化物(RE−O−X)を主成分とし、
X線回折パターンにおける、
前記希土類元素オキシハロゲン化物のメインピークのピーク強度ICAに対する、
希土類元素酸化物のメインピークのピーク強度ICBと、希土類元素ハロゲン化物のメインピークのピーク強度ICCとの合計、の強度比[(ICB+ICC)/ICA]が0.45以下であり、
前記希土類元素オキシハロゲン化物として、
前記希土類元素に対する前記ハロゲン元素のモル比(X/RE)が1.1以上1.39以下である希土類元素オキシハロゲン化物を含む」のに対し、甲3溶射膜発明は上記特定がされていない点。

イ 検討
上記相違点3について検討すると、甲3には、甲3発明に係る溶射材料を溶射して得られた溶射膜の化学組成について記載も示唆もされていないため、甲3溶射膜発明を構成する溶射膜について、希土類元素オキシハロゲン化物(RE−O−X)を主成分とし、希土類元素オキシハロゲン化物、希土類元素酸化物及び希土類ハロゲン化物のX線回折パターンのメインピークのピーク強度比を特定範囲とし、希土類元素オキシハロゲン化物の希土類元素に対するハロゲン元素のモル比(X/RE)を1.1以上1.39以下に特定することの動機付けは見いだせない。

ウ 小括
よって、本件発明7は、甲3溶射膜発明であるとはいえない。
また、本件発明7は、甲3溶射膜発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(5)本件発明8〜10との対比
ア 本件発明8〜9は、本件発明7をさらに技術的に特定したものであるから、甲3溶射膜発明と対比すると、少なくとも、上記(4)アと同様の相違点を有する。よって、本件発明8〜9は、甲3溶射膜発明であるとはいえない。
そして、上記(4)イでの検討と同様の理由により、希土類元素オキシハロゲン化物(RE−O−X)を主成分とし、希土類元素オキシハロゲン化物、希土類元素酸化物及び希土類ハロゲン化物のX線回折パターンのメインピークのピーク強度比を特定範囲とし、希土類元素オキシハロゲン化物の希土類元素に対するハロゲン元素のモル比(X/RE)を1.1以上1.39以下に特定することの動機付けは見いだせず、本件発明8〜9は、甲3溶射膜発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 本件発明10は、本件発明7〜9に係る溶射皮膜が備えられている、溶射皮膜付部材であるから、甲3部材発明(甲3溶射膜発明に係る溶射膜が備えられている、部材)と対比すると,少なくとも、上記(4)アと同様の相違点を有する。よって、本件発明10は、甲3部材発明であるとはいえない。
そして、上記(4)イでの検討と同様の理由により、希土類元素オキシハロゲン化物(RE−O−X)を主成分とし、希土類元素オキシハロゲン化物、希土類元素酸化物及び希土類ハロゲン化物のX線回折パターンのメインピークのピーク強度比を特定範囲とし、希土類元素オキシハロゲン化物の希土類元素に対するハロゲン元素のモル比(X/RE)を1.1以上1.39以下に特定することの動機付けは見いだせず、本件発明10は、甲3部材発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(6)申立理由2−1(新規性)、1−2−1及び2−2(進歩性)についてのまとめ
以上のとおり、本件特許の請求項1〜10に係る発明は、甲3に記載された発明とはいえないから、同発明に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものではない。また、同発明は、甲3に記載された発明及び甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、同発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

4 申立理由1−2−2(進歩性
(1)甲4に記載された発明
甲4は「溶射材料」(発明の名称)に関するものであって、その記載(段落[0011]、[0020]〜[0022]、[0024]、[0060]、[0065]、[0067]表4、請求項1)、特に請求項1、段落[0060]、[0065]、[0067]表4の実施例12の記載によると、次の各発明が記載されているといえる。

「希土類元素のオキシフッ化物を含む顆粒からなり、上記顆粒のYF3、YOF及びY2O3の各最大ピークについてのX線回折ピーク相対強度が、YF3:YOF:Y2O3で0:100:5である溶射材料。」(以下「甲4発明」という。)

「甲4発明に係る溶射材料を用いて、基材の表面にプラズマ溶射を行う方法。」(以下「甲4方法発明」という。)

「甲4発明に係る溶射材料を、プラズマ溶射により溶射して得られた溶射膜。」(以下「甲4溶射膜発明」という。)

「甲4溶射膜発明に係る溶射膜が備えられている、基材。」(以下「甲4基材発明」という。)

(2)本件発明1との対比
ア 対比
本件発明1(上記第3)と甲4発明(上記(1))とを対比すると、後者の「溶射材料」は、前者の「溶射用材料」に相当する。
そうすると、両者は、「溶射用材料」において一致し、次の相違点において相違する。

(相違点4)
溶射用材料について、本件発明1は「構成元素として希土類元素(RE)、酸素(O)およびハロゲン元素(X)を含む希土類元素オキシハロゲン化物(RE−O−X)からなる溶射用材料」であり、上記「希土類元素オキシハロゲン化物」の「前記希土類元素に対する前記ハロゲン元素のモル比(X/RE)は1.1以上1.39以下であり、
前記希土類元素に対する前記酸素のモル比(O/RE)は、0.9以下である」のに対し、甲4発明は、上記特定がされていない点。

(相違点5)
本件発明1は「溶射用材料のX線回折パターンにおける、
前記希土類元素オキシハロゲン化物のメインピークのピーク強度IAに対する、
希土類元素酸化物のメインピークのピーク強度IBと、希土類元素ハロゲン化物のメインピークのピーク強度ICとの合計、の強度比[(IB+IC)/IA]が0.02未満であ」るのに対し、甲4発明は、溶射材料である顆粒の「YF3、YOF及びY2O3の各メインピークについてのX線回折ピーク相対強度が、YF3:YOF:Y2O3で0:100:5である」から、上記強度比が(5+0)/100=0.05である点。

イ 検討
上記相違点4について検討する。
甲5は、「オキシハロゲン化物系部材」(発明の名称)に関するものであって、段落【0001】、【0013】、【0015】の記載及び【0016】表1の試料No.1〜8、13〜18によると、希土類オキシハロゲン化物からなる焼結体部材のハロゲン系プラズマのエッチング速度の結果より、YbBr1.4O0.8、YbF1.4O0.8、YF1.0O1.0、YF2.8O0.1の順にハロゲン系腐食ガス及びそのプラズマに対する耐食性が優れることが記載されている。
そして、甲4には、甲4発明における希土類元素(Ln)のオキシフッ化物(LnOF)として「モル比がLn:O:F=1:1:1である化合物でも良い。あるいは、LnOFは、前記のモル比がLn:O:F=1:1:1以外の化合物でも良い。例えば、Ln=Yの場合、LnOFとしては、YOFだけでなく、Y5O4F7、Y7O6F9等も含み、これらのうち1種以上のオキシフッ化物を含むものである。」(段落[0011])と記載されているものの、甲4には、イットリウムのオキシフッ化物(YOF)からなる溶射材料は記載されていないから、甲5の記載を参酌しても、甲4発明の溶射用材料として、「構成元素として希土類元素(RE)、酸素(O)およびハロゲン元素(X)を含む希土類元素オキシハロゲン化物(RE−O−X)からなる溶射用材料」であり、上記「希土類元素オキシハロゲン化物」の「前記希土類元素に対する前記ハロゲン元素のモル比(X/RE)は1.1以上1.39以下であり、」「前記希土類元素に対する前記酸素のモル比(O/RE)は、0.9以下である」ものに特定することの動機付けは見いだせない。

ウ 小括
よって、相違点5について検討するまでもなく、本件発明1は、甲4発明及び甲5に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)本件発明2〜6との対比
ア 本件発明2〜5に係る発明は、本件発明1をさらに技術的に特定したものであるから、甲1発明と対比すると、少なくとも相違点4を有する。よって、上記(2)イでの検討と同様の理由により、本件発明2〜5は、甲4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 本件発明6は、本件発明1〜5に係る溶射用材料を基材の表面に適用して、溶射皮膜を形成する方法であるから、甲4方法発明(甲4発明に係る溶射材料を用いて、基材の表面にプラズマ溶射を行う方法)と対比すると、少なくとも相違点4と同様の点で相違する。よって、上記(2)イでの検討と同様の理由により、本件発明6は、甲4方法発明及び甲5に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)本件発明7との対比
ア 対比
本件発明7(上記第3)と甲4溶射膜発明(上記(1))とを対比すると、後者の「溶射膜」は、「溶射皮膜」に相当する。
そうすると、両者は「溶射皮膜」において一致し、次の相違点において相違する。

(相違点6)
溶射皮膜について、本件発明7は「構成元素として希土類元素(RE)、酸素(O)およびハロゲン元素(X)を含む希土類元素オキシハロゲン化物(RE−O−X)を主成分とし、
X線回折パターンにおける、
前記希土類元素オキシハロゲン化物のメインピークのピーク強度ICAに対する、
希土類元素酸化物のメインピークのピーク強度ICBと、希土類元素ハロゲン化物のメインピークのピーク強度ICCとの合計、の強度比[(ICB+ICC)/ICA]が0.45以下であり、
前記希土類元素オキシハロゲン化物として、
前記希土類元素に対する前記ハロゲン元素のモル比(X/RE)が1.1以上1.39以下である希土類元素オキシハロゲン化物を含む」のに対し、甲4溶射膜発明は上記特定がされていない点。

イ 検討
上記相違点6について検討すると、甲4には、溶射材料を溶射して得られた溶射膜の化学組成については、記載も示唆もされておらず、また、甲4発明及び甲5等の甲号証の記載事項を参酌しても、甲4溶射膜発明を構成する溶射膜について、希土類元素オキシハロゲン化物(RE−O−X)を主成分とし、希土類元素オキシハロゲン化物、希土類元素酸化物及び希土類ハロゲン化物のX線回折パターンのメインピークのピーク強度比を特定範囲とし、希土類元素オキシハロゲン化物の希土類元素に対するハロゲン元素のモル比(X/RE)を1.1以上1.39以下に特定することの動機付けは見いだせない。

ウ 小括
よって、本件発明7は、甲4溶射膜発明及び甲5に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(5)本件発明8〜10との対比
ア 本件発明8、9に係る発明は、本件発明7をさらに技術的に特定したものであるから,甲4溶射膜発明と対比すると、少なくとも、上記相違点6を有する。
よって、上記(4)イでの検討と同様の理由により、希土類元素オキシハロゲン化物(RE−O−X)を主成分とし、希土類元素オキシハロゲン化物、希土類元素酸化物及び希土類ハロゲン化物のX線回折パターンのメインピークのピーク強度比を特定範囲とし、希土類元素オキシハロゲン化物の希土類元素に対するハロゲン元素のモル比(X/RE)を1.1以上1.39以下に特定することの動機付けは見いだせず、本件発明8、9は、甲4溶射膜発明及び甲5に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 本件発明10は、本件発明7〜9に係る溶射皮膜が備えられている、溶射皮膜付部材であるから、甲4基材発明(甲4溶射膜発明に係る溶射膜が備えられている、基材)と対比すると、甲4基材発明の「基材」は本件発明10の「部材」に相当するが、少なくとも、上記相違点6と同様の点で相違する。
よって、上記(4)イでの検討と同様の理由により、希土類元素オキシハロゲン化物(RE−O−X)を主成分とし、希土類元素オキシハロゲン化物、希土類元素酸化物及び希土類ハロゲン化物のX線回折パターンのメインピークのピーク強度比を特定範囲とし、希土類元素オキシハロゲン化物の希土類元素に対するハロゲン元素のモル比(X/RE)を1.1以上1.39以下に特定することの動機付けは見いだせず、本件発明10は、甲4基材発明及び甲5に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(6)申立理由1−2−2(進歩性)についてのまとめ
以上のとおり、本件特許の請求項1〜10に係る発明は、甲4に記載された発明及び甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、同発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

5 申立理由2−3−2(拡大先願)
(1)甲6に記載された発明
甲6は「成膜用粉末及び成膜用材料」(発明の名称)に関するものであって、甲6により出願公開されたものとみなされる特願2015−24627号の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「甲6に係る先願の当初明細書等」という。)の記載(請求項1、【0011】、【0039】、【0056】、【0062】、【0084】【表1】)、特に請求項1、段落【0056】、【0062】、【0084】【表1】の実施例7〜13、16〜34に着目すると、甲6に係る先願の当初明細書等には、次の発明が記載されているといえる。

「希土類元素のオキシフッ化物(Ln−O−F)を含有する成膜用粉末であって、上記粉末のYF3、Y−O−F及びY2O3の粉末X線回折測定法による最大ピークの相対強度が、YF3:Y−O−F:Y2O3で0:100:0である溶射用粉末。」(以下「甲6発明」という。)

「甲6発明に係る溶射用粉末をプラズマ溶射して、基材に溶射皮膜を形成する方法。」(以下「甲6方法発明」という。)

「甲6発明に係る溶射用粉末をプラズマ溶射して得られた溶射膜。」(以下「甲6溶射膜発明」という。)

「基材の表面に、甲6溶射膜発明に係る溶射膜が備えられた溶射膜付基材。」(以下「甲6基材発明」という。)

(2)本件発明1との対比
本件発明1(上記第3)と甲6発明(上記(1))とを対比すると、後者の「Y−O−F」及び「溶射用粉末」は、各々、前者の「希土類元素オキシハロゲン化物(RE−O−X)」及び「溶射用材料」に相当する。
そして、後者の「溶射用粉末」は、「Y−O−F」のみからなるものと認められ、「粉末のYF3、Y−O−F及びY2O3の粉末X線回折測定法による最大ピークの相対強度が、YF3:Y−O−F:Y2O3で0:100:0」であることから、「X線回折パターンにおける、
前記希土類元素オキシハロゲン化物のメインピークのピーク強度IAに対する、
希土類元素酸化物のメインピークのピーク強度IBと、希土類元素ハロゲン化物のメインピークのピーク強度ICとの合計、の強度比[(IB+IC)/IA]」は0と認められる。
そうすると、両者は、
「構成元素として希土類元素(RE)、酸素(O)およびハロゲン元素(X)を含む希土類元素オキシハロゲン化物(RE−O−X)からなる溶射用材料であって、
当該溶射用材料のX線回折パターンにおける、
前記希土類元素オキシハロゲン化物のメインピークのピーク強度IAに対する、
希土類元素酸化物のメインピークのピーク強度IBと、希土類元素ハロゲン化物のメインピークのピーク強度ICとの合計、の強度比[(IB+IC)/IA]が0.02未満であ」る、「溶射用材料。」である点において一致するものの、本件発明1は「前記希土類元素に対する前記ハロゲン元素のモル比(X/RE)は、1.1以上1.39以下であり、
前記希土類元素に対する前記酸素のモル比(O/RE)は、0.9以下である」のに対し、甲6発明の「Y−O−F」は、希土類元素に対するハロゲン元素および酸素のモル比が不明であり、本件発明1の「前記希土類元素に対する前記ハロゲン元素のモル比(X/RE)は、1.1以上1.39以下」及び「前記希土類元素に対する前記酸素のモル比(O/RE)は、0.9以下」を満足することが記載されていない点で相違する。そして、この点は、甲6には記載されておらず、また、出願時の技術常識を考慮しても、甲6が当然に備えている事項でもなく、課題解決のための具体化手段における微差とはいえないので、実質的な相違点である。
よって、本件発明1は、甲6発明と同一であるとはいえない。

(3)本件発明2〜5との対比
本件発明2〜5は、本件発明1をさらに技術的に特定したものであるから、甲6発明と対比すると、少なくとも、上記(2)で検討した相違点を有する。
そして、上記(2)で検討したのと同様の理由により、本件発明2〜5は、甲6発明と同一であるとはいえない。

(4)本件発明6との対比
本件発明6は、本件発明1〜5に係る溶射用材料を基材の表面に適用して、溶射皮膜を形成する方法であるから、甲6方法発明(甲6発明に係る溶射用粉末をプラズマ溶射して、基材に溶射皮膜を形成する方法)と対比すると、少なくとも、上記(2)で検討した相違点と同様の点で相違する。
そして、上記(2)で検討したのと同様の理由により、本件発明6は、甲6方法発明と同一であるとはいえない。

(5)本件発明7との対比
本件発明7(上記第3)と甲6溶射膜発明(上記(1))とを対比する。
甲6溶射膜発明の「溶射膜」は本件発明7の「溶射皮膜」に相当する。
そうすると、両者は、「溶射皮膜。」である点において一致するものの、本件発明7は「構成元素として希土類元素(RE)、酸素(O)およびハロゲン元素(X)を含む希土類元素オキシハロゲン化物(RE−O−X)を主成分とし、
X線回折パターンにおける、
前記希土類元素オキシハロゲン化物のメインピークのピーク強度ICAに対する、
希土類元素酸化物のメインピークのピーク強度ICBと、希土類元素ハロゲン化物のメインピークのピーク強度ICCとの合計、の強度比[(ICB+ICC)/ICA]が0.45以下であり、
前記希土類元素オキシハロゲン化物として、前記希土類元素に対する前記ハロゲン元素のモル比(X/RE)が1.1以上1.39以下である希土類元素オキシハロゲン化物を含む」のに対し、これらの点は、甲6には記載されておらず、また、出願時の技術常識を考慮しても、甲6が当然に備えている事項でもなく、課題解決のための具体化手段における微差とはいえないので、実質的な相違点である。
よって、本件発明7は、甲6溶射膜発明と同一であるとはいえない。

(6)本件発明8〜9との対比
本件発明8〜9は、本件発明7をさらに技術的に特定したものであるから、甲6溶射膜発明と対比すると、少なくとも、上記(5)で検討した相違点を有する。
そして、上記(5)で検討したのと同様の理由により、本件発明8〜9は、甲6溶射膜発明と同一であるとはいえない。

(7)本件発明10との対比
本件発明10は、本件発明7〜9に係る溶射皮膜が備えられている、溶射皮膜付部材であるから、甲6基材発明(基材の表面に、甲6溶射膜発明に係る溶射膜が備えられた溶射膜付基材)と対比すると、甲6基材発明の「基材」は本件発明10の「部材」に相当するが、少なくとも、上記(5)で検討した相違点と同様の点で相違する。
そして、上記(5)で検討したのと同様の理由により、本件発明10は、甲6基材発明と同一であるとはいえない。

(8)申立理由2−3−2(拡大先願)についてのまとめ
以上のとおり、本件特許の請求項1〜10に係る発明は、甲6に係る特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であるとはいえないから、同発明についての特許は特許法第29条の2の規定に違反してされたものではない。

6 申立理由1−3及び2−5(サポート要件)(取消理由Bとして一部採用)
(1)取消理由Bの概要
ア 本件明細書の【0006】の記載からみて、本件特許の請求項に係る発明が解決しようとする課題の一つ(以下、単に「課題」という。)は、「耐プラズマエロージョン性がさらに向上されるとともに、気孔率が低く硬度などの特性に優れた溶射皮膜を形成し得る溶射用材料を提供すること」であると認められる。
上記課題に対して、本件訂正前の請求項1に係る発明は、溶射用材料が、X線回折パターンにおける規定の強度比を満たし、X/REが1.1以上であり、O/REが0.9以下である希土類元素オキシハロゲン化物に加えて、様々な物性(例えば、耐プラズマエロージョン性が低い)のものを多量に含み得る溶射用材料であり、その結果として上記課題を解決できない発明を含んでいることになる。

イ 一方、本件明細書を参照すると、本件明細書の【0050】の【表1】の「X線回折メインピーク相対強度」の欄には、No.6〜8の溶射用材料について、X/REが1.1以上であり、O/REが0.9以下である希土類元素オキシハロゲン化物である、Y7O6F9、Y6O5F8又はY5O4F7からなるものが記載されている。そして、同【0059】の【表2】から、これらNo.6〜8の溶射用材料を利用して製造された溶射皮膜は、いずれも耐プラズマエロージョン特性が良好になり、気孔率とビッカース硬度が良好な値を示すことが確認されている。

ウ そうすると、本件明細書全体の記載から、課題を解決し得る溶射用材料として確認できるのは、X線回折パターンにおける規定の強度比を満たし、X/REが1.1以上であり、O/REが0.9以下である希土類元素オキシハロゲン化物からなる溶射用材料のみである。

エ したがって、本件訂正前の請求項1に係る発明及び本件訂正前の請求項1を引用する本件訂正前の請求項2ないし6に係る発明は、本件明細書に開示された発明の範囲を超えているので、発明の詳細な説明に記載したものとはいえないものであった。

(2)検討
ア 本件訂正により、請求項1は「構成元素として希土類元素(RE)、酸素(O)およびハロゲン元素(X)を含む希土類元素オキシハロゲン化物(RE−O−X)からなる溶射用材料であって、
当該溶射用材料のX線回折パターンにおける、
前記希土類元素オキシハロゲン化物のメインピークのピーク強度IAに対する、
希土類元素酸化物のメインピークのピーク強度IBと、希土類元素ハロゲン化物のメインピークのピーク強度ICとの合計、の強度比[(IB+IC)/IA]が0.02未満であり、
前記希土類元素オキシハロゲン化物において、
前記希土類元素に対する前記ハロゲン元素のモル比(X/RE)は、1.1以上1.39以下であり、
前記希土類元素に対する前記酸素のモル比(O/RE)は、0.9以下である、
溶射用材料。」に訂正され、発明の詳細な説明に記載したものとはいえない点は解消したことにより、取消理由Bは解消した。請求項2〜6についても同様である。

イ 申立人の主張について
(ア)申立人2は、令和3年8月23日付け意見書において、請求項1の規定は、溶射用材料が、希土類元素オキシハロゲン化物のみからなることを規定するものではなく、希土類元素オキシハロゲン化物以外に、希土類元素酸化物等の成分の含有を許容すると解釈できる旨主張する(上記意見書3〜4頁)。
しかしながら、請求項1〜6に記載の溶射用材料は、上記アのとおり、希土類元素オキシハロゲン化物からなる溶射用材料であって、他の成分の含有を許容するとは解釈されないものであるから、申立人2の主張は採用できない。

(イ)申立人1は、令和3年8月30日付け意見書において、
(イ−1)請求項1の規定は、溶射用材料が、希土類元素オキシハロゲン化物のみからなることを規定するものではなく、希土類元素オキシハロゲン化物以外に、希土類元素酸化物等の成分の含有を許容すると解釈できる旨、
(イ−2)Y6O5F8とY7O6F9のメインピークの回折角2θの差は0.002°でサンプリング幅0.01°より小さく両者を区別できないため、X線回折測定によって請求項1の溶射用材料及び請求項7の溶射皮膜のモル比(X/RE、O/RE)を求めることができない旨主張する(上記意見書3〜9頁)。
しかしながら、上記(ア)の検討と同様に、請求項1〜6に記載の溶射用材料は、上記アのとおり、希土類元素オキシハロゲン化物からなる溶射用材料であって、他の成分の含有を許容するとは解釈されないものであるから、申立人1の(イ−1)の主張は採用できない。
さらに、X線回折測定による化合物同定にあたっては、メインピークだけでなくその他のピークも含めたピーク位置の相互関係を基準として行うことが技術常識であって、メインピークの回折角の差がサンプリング幅より小さいとしても、当業者であればY6O5F8とY7O6F9のメインピークを区別することができると認められるから、申立人1の(イ−2)の主張は採用できない。

(3)申立理由1−3及び2−5(サポート要件)についてのまとめ
以上のとおり、本件特許の請求項1〜10に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものであるといえるから、その発明についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものではない。

7 申立理由1−4及び2−4(実施可能要件
(1)検討
ア 申立人の主張について
(ア)申立人2は、令和3年8月23日付け意見書において、発明の詳細な説明の段落【0049】には、粉末状のイットリウム含有化合物およびフッ素含有化合物を混合して焼成することで「溶射用材料」を得たと記載されているのみであって、実施例相当の製造物とその余の製造物との製造上の差異も不明であり、「イットリウムオキシフッ化物」を得たとは記載されておらず、希土類元素オキシフッ化物に希土類元素ハロゲン化物を混合して得た「溶射用材料」についても一切記載がないこと、したがって、技術常識を考慮したとしても、請求項1〜6に記載の溶射用材料及び請求項7〜10に記載の溶射皮膜は実施可能ではない旨主張する(上記意見書4〜5頁)。
しかしながら、目的とする化合物の組成に合わせて原料の混合割合を調整する等の操作を行うことは技術常識であると認められるから、当該技術常識を考慮すれば、請求項1〜6に記載の溶射用材料を得ることができるものであり、そのような溶射用材料を溶射することにより請求項7〜10に記載の溶射皮膜を得ることができるところ、申立人2は当該判断を覆すに足りる十分な根拠を示していない。よって、上記申立人2の主張は採用できない。

(イ)申立人1は、令和3年8月30日付け意見書において、Y6O5F8とY7O6F9のメインピークの回折角2θの差は0.002°でサンプリング幅0.01°より小さく両者を区別できないため、X線回折測定により、溶射用材料及び溶射皮膜に含まれる希土類元素オキシハロゲン化物のモル比(X/RE、O/RE)を求めることができない旨主張する(上記意見書9頁)。
しかしながら、上記6(2)イ(イ)のとおり、X線回折測定による化合物同定にあたっては、メインピークだけでなくその他のピークも含めたピーク位置の相互関係を基準として行うことが技術常識であって、当該技術常識を考慮しつつ本件明細書【0051】、【0054】に記載の方法を実施することにより、請求項1〜6に記載の溶射用材料及び請求項7〜10記載の溶射皮膜に含まれる希土類元素オキシハロゲン化物のモル比を決定することができると認められる。よって、申立人1の主張は採用できない。

(2)申立理由1−4及び2−4(実施可能要件)についてのまとめ
以上のとおり、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項1〜10に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるから、その発明についての特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものではない。

8 申立理由1−5及び2−6(明確性
(1)申立理由1−5の概要
ア 請求項2、3、9の「実質的に含まない」について、本件明細書【0030】に記載された「当該成分に基づく回折ピークが検出されない」こと以外にどのような構成を意味するのか不明であるから、請求項2、3、9における「実質的に含まない」の意味が明確でない。そのため、請求項2、3、9及びそれらを引用する請求項4〜6、10の記載は不明確である。
イ 請求項1、7の「構成元素として希土類元素(RE)、酸素(O)およびハロゲン元素(X)を含む希土類元素オキシハロゲン化物(RE−O−X)」は、希土類元素(RE)、酸素(O)及びハロゲン元素(X)以外に他の元素を含みうるのか不明であるため、請求項1、7及びそれらを引用する請求項2〜6、8〜10の記載は不明確である。

(2)申立理由2−6の概要
請求項7の「主成分」の意味が明確でないため、請求項7及びそれを引用する請求項8〜10の記載は不明確である。

(3)検討
ア 上記(1)アについて、請求項2、3、9の「実質的に含まない」とは、本件明細書【0030】に記載されたとおり、「当該成分に基づく回折ピークが検出されない」ことを意味することが明らかである。

イ 上記(1)イについて、請求項1、7の「構成元素として希土類元素(RE)、酸素(O)およびハロゲン元素(X)を含む希土類元素オキシハロゲン化物(RE−O−X)」は、希土類元素(RE)、酸素(O)及びハロゲン元素(X)以外の他の成分の含有を許容するとは解釈されず、希土類元素(RE)、酸素(O)及びハロゲン元素(X)のみを構成元素とすると解されるから、当該記載の意味が不明確であるとはいえない。

ウ 上記(2)について、本件明細書の【0040】の「ここで「主成分」とは、溶射皮膜を構成する構成成分のうち、最も含有量が多い成分であることを意味している。具体的には、例えば、当該成分が溶射皮膜全体の50質量%以上を占めることを意味し、好ましくは75質量%以上、例えば80質量%以上を占めるものであってよい。」との記載から、請求項7の「主成分」は、「最も含有量が多い成分」という意味であり、不明確であるとはいえない。

エ 申立人の主張について
(ア)申立人2は、令和3年8月23日付け意見書において、
(ア−1)請求項1の溶射用材料が、希土類元素オキシハロゲン化物以外に、希土類元素酸化物等の成分の含有を許容しているのか否かが不明確である旨、
(ア−2)請求項7の溶射皮膜が、2種類以上の希土類元素オキシハロゲン化物を含む場合、請求項7の記載の示す内容を一義的に定めることができず、請求項7〜10に係る発明が明確であるとはいえない旨主張する(上記意見書5〜7頁)。
しかしながら、上記6(2)アのとおり、請求項1〜6に記載の溶射用材料は、希土類元素オキシハロゲン化物からなる溶射用材料であって、他の成分の含有を許容するとは解釈されないものであるから、上記申立人2の(ア−1)の主張は採用できない。
また、上記(ア−2)の内容は、実質的に新たな理由を提示するものであり、訂正の請求の内容に付随して生じる理由とも認められないので、上記申立人2の(ア−2)の主張は採用できない。

(イ)申立人1は、令和3年8月30日付け意見書において、
(イ−1)請求項1の「からなる」が「のみからなる」という意味なのか他の成分を許容する意味なのかが不明である旨、
(イ−2)Y6O5F8とY7O6F9のメインピークの回折角2θの差は0.002°でサンプリング幅0.01°より小さく両者を区別できないため、X線回折測定により、溶射用材料及び溶射皮膜に含まれる希土類元素オキシハロゲン化物のモル比(X/RE、O/RE)を求めることができないから、請求項1の溶射用材料や請求項7の溶射皮膜に該当するか否かが判断できない旨、
(イ−3)本件明細書の【0037】、【0054】の記載から、溶射用材料中の各結晶相成分含量がどのように算出されたものであるのかが不明である旨、
(イ−4)請求項7の「主成分」が、溶射皮膜全体の50質量%以上である場合を必須とするのか否かが明確でない旨、
を主張する(上記意見書10〜13頁)。
しかしながら、上記6(2)アのとおり、請求項1〜6に記載の溶射用材料は、希土類元素オキシハロゲン化物からなる溶射用材料であって、他の成分の含有を許容するとは解釈されないものであるから、上記申立人1の(イ−1)の主張は採用できない。
また、上記6(2)イ(イ)のとおり、X線回折測定による化合物同定にあたっては、メインピークだけでなくその他のピークも含めたピーク位置の相互関係を基準として行うことが技術常識であって、当該技術常識を考慮しつつ本件明細書【0051】、【0054】に記載の方法を実施することにより、請求項1〜6に記載の溶射用材料及び請求項7〜10記載の溶射皮膜に含まれる希土類元素オキシハロゲン化物のモル比を求めることができると認められる。よって、申立人1の(イ−2)の主張は採用できない。
さらに、本件明細書の【0037】、【0054】の記載によれば、溶射用材料中の各結晶相成分含量は、溶射用材料に含まれる物質のX線回折メインピーク相対強度と、溶射用材料に含まれる酸素量及びフッ素量(当審注:【0054】の「窒素量」は、表1及び前後の記載からみて、「フッ素量」の誤記と認められる。)とを組み合わせて算出したものであるから、当業者であれば、結晶相成分含量の算出方法は明らかである。よって、申立人1の(イ−3)の主張は採用できない。
くわえて、本件明細書の【0040】の「ここで「主成分」とは、溶射皮膜を構成する構成成分のうち、最も含有量が多い成分であることを意味している。具体的には、例えば、当該成分が溶射皮膜全体の50質量%以上を占めることを意味し、好ましくは75質量%以上、例えば80質量%以上を占めるものであってよい。」との記載から、請求項7の「主成分」は、「最も含有量が多い成分」であり、特定の質量割合以上であることを必須とするものとはいえないため、申立人1の(イ−4)の主張は採用できない。

(4)申立理由1−5及び2−6(明確性)についてのまとめ
以上のとおり、本件特許の請求項1〜10に係る発明について、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるから、その発明についての特許は、特許法第36条第6項第2号の規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものではない。

第6 むすび
以上のとおり、申立人1、申立人2による申立理由、及び、当審による取消理由によっては、本件特許の請求項1〜10に係る特許を取り消すことはできない。また、他に請求項1〜10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成元素として希土類元素(RE)、酸素(O)およびハロゲン元素(X)を含む希土類元素オキシハロゲン化物(RE−O−X)からなる溶射用材料であって、
当該溶射用材料のX線回折パターンにおける、
前記希土類元素オキシハロゲン化物のメインピークのピーク強度IAに対する、
希土類元素酸化物のメインピークのピーク強度IBと、希土類元素ハロゲン化物のメインピークのピーク強度Icとの合計、の強度比[(IB+Ic)/IA]が0.02未満であり、
前記希土類元素オキシハロゲン化物において、
前記希土類元素に対する前記ハロゲン元素のモル比(X/RE)は、1.1以上1.39以下であり、
前記希土類元素に対する前記酸素のモル比(O/RE)は、0.9以下である、
溶射用材料。
【請求項2】
前記希土類元素ハロゲン化物を実質的に含まない、請求項1に記載の溶射用材料。
【請求項3】
前記希土類元素酸化物を実質的に含まない、請求項1または2に記載の溶射用材料。
【請求項4】
前記希土類元素オキシハロゲン化物において、
前記希土類元素に対する前記ハロゲン元素のモル比(X/RE)は、1.3以上1.39以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の溶射用材料。
【請求項5】
前記希土類元素がイットリウムであり、前記ハロゲン元素がフッ素であり、前記希土類元素オキシハロゲン化物がイットリウムオキシフッ化物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶射用材料。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の溶射用材料を基材の表面に溶射して、溶射皮膜を形成する方法。
【請求項7】
構成元素として希土類元素(RE)、酸素(O)およびハロゲン元素(X)を含む希土類元素オキシハロゲン化物(RE−O−X)を主成分とし、
X線回折パターンにおける、
前記希土類元素オキシハロゲン化物のメインピークのピーク強度IcAに対する、
希土類元素酸化物のメインピークのピーク強度IcBと、希土類元素ハロゲン化物のメインピークのピーク強度Iccとの合計、の強度比[(IcB+Icc)/IcA]が0.45以下であり、
前記希土類元素オキシハロゲン化物として、
前記希土類元素に対する前記ハロゲン元素のモル比(X/RE)が1.1以上1.39以下である希土類元素オキシハロゲン化物を含む、溶射皮膜。
【請求項8】
前記強度比[(IcB+Icc)/IcA]が0.05以下である、請求項7に記載の溶射皮膜。
【請求項9】
前記希土類元素酸化物を実質的に含まない、請求項7または8に記載の溶射皮膜。
【請求項10】
基材の表面に、請求項7〜9のいずれか1項に記載の溶射皮膜が備えられている、溶射皮膜付部材。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-10-11 
出願番号 P2016-043940
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C23C)
P 1 651・ 536- YAA (C23C)
P 1 651・ 537- YAA (C23C)
P 1 651・ 113- YAA (C23C)
P 1 651・ 161- YAA (C23C)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 粟野 正明
特許庁審判官 平塚 政宏
磯部 香
登録日 2020-06-23 
登録番号 6722005
権利者 株式会社フジミインコーポレーテッド 東京エレクトロン株式会社
発明の名称 溶射用材料、溶射皮膜および溶射皮膜付部材  
代理人 谷 征史  
代理人 安部 誠  
代理人 谷 征史  
代理人 谷 征史  
代理人 大井 道子  
代理人 安部 誠  
代理人 安部 誠  
代理人 大井 道子  
代理人 大井 道子  

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