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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08J
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08J
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08J
管理番号 1382362
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-03-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-01-15 
確定日 2021-11-05 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6722654号発明「水性液体吸収性樹脂粒子の製造方法、水性液体吸収性樹脂粒子、吸収体及び吸収性物品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6722654号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項3、〔4及び5〕について、訂正することを認める。 特許第6722654号の請求項1及び2に係る特許を維持する。 特許第6722654号の請求項3ないし5に係る特許に対する特許異議申立を却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6722654号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、2016年(平成28年)3月7日(優先権主張 平成27年3月10日)を国際出願日とする出願であって、令和2年6月24日にその特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、同年7月15日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和3年1月15日に特許異議申立人 椎名 一男(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし5)がされたものであり、同年4月19日付けで取消理由を通知したところ、同年6月15日に特許権者であるSDPグローバル株式会社(以下、「特許権者」という。)による訂正請求及び意見書の提出がされたため、同年6月29日付けで特許法第120条の5第5項の通知をしたところ、特許異議申立人から指定期間内に何ら応答がなかったものである。

第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
令和3年6月15日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5を削除する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1に係る請求項3の訂正について
請求項3に係る訂正は、請求項3の削除を目的とするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。

(2)訂正事項2に係る請求項4の訂正について
請求項4に係る訂正は、請求項4の削除を目的とするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。

(3)訂正事項3に係る請求項5の訂正について
請求項5に係る訂正は、請求項5の削除を目的とするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項3、〔4及び5〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
上記第2で示したとおり、本件訂正は認められたため、本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A)を含有する樹脂粒子(B)を、炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価金属塩(d)及び多価グリシジル化合物(e)を用いて以下の方法[I]〜[III];
方法[I]:
炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価金属塩(d)、多価グリシジル化合物(e)及び水を含有する混合液(W1)を用いて樹脂粒子(B)を表面処理する方法;
方法[II]:
炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価グリシジル化合物(e)、及び水を含有し、多価金属塩(d)を含有しない混合液(W2)と、炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価金属塩(d)及び水を含有し、多価グリシジル化合物(e)を含有しない混合液(W3)とを用いて樹脂粒子(B)を表面処理する方法であって、混合液(W2)と混合液(W3)で同時に表面処理する工程を含む方法;
方法[III]:
炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価グリシジル化合物(e)及び水を含有し、多価金属塩(d)を含有しない混合液(W2)と、多価金属塩(d)及び水を含有し、炭素数4以下の多価アルコール(c)及び多価グリシジル化合物(e)を含有しない混合液(W4)とを用いて樹脂粒子(B)を表面処理する方法であって、混合液(W2)と混合液(W4)で同時に表面処理する工程を含む方法;
のいずれかの方法で表面処理した後、110〜145℃で加熱処理する水性液体吸収性樹脂粒子(P)の製造方法であり、無機粒子(f)を用いて樹脂粒子を表面処理する工程を含み、前記方法[I]における混合液(W1)が前記無機粒子(f)を含有し、前記方法[II]における混合液(W2)及び/又は混合液(W3)が前記無機粒子(f)を含有し、前記方法[III]における混合液(W2)及び/又は混合液(W4)が前記無機粒子(f)を含有する水性液体吸収性樹脂粒子(P)の製造方法。
【請求項2】
多価金属塩(d)がジルコニウム、アルミニウム又はチタニウムの無機酸塩である請求項1記載の製造方法。」

第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由及び取消理由の概要
1 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和3年1月15日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は、次のとおりである。
(1)申立理由1(甲第1号証に基づく新規性
本件特許発明1ないし5は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証のいずれかに記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)申立理由2(甲第1号証に基づく進歩性
本件特許発明1ないし5は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という 。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(3)申立理由3(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。概略は以下のとおり。
ア 本件特許明細書には、方法[III]を用いた実施例については1つも存在しておらず、また、混合液(W2)と混合液(W4)で同時に表面処理する方法[III]と類似する比較例1 (混合液(W2)で表面処理した後加熱処理を行い混合液(W4)で更に表面処理する点でのみ方法[III]と異なる比較例1)では、保水量、荷重下吸収量及びゲル通液性の耐壊れ性試験前後の変化率(%)が維持できていないことからも鑑みて、方法[III]を選択することにより、本件特許発明1が解決しようとする課題が解決できることを示しているとは言えない。本件特許発明2ないし5についても同様である。
イ 本件特許明細書には、実施例が1点のみ(実施例3のみ)しか存在せず、当該実施例3の1点データのみから、本件特許発明1の広い範囲に亘り、本件特許発明1が、本件参考例、審査過程で引用された引用文献、及び甲1〜6と比べて優れた効果を奏するかは不明である。本件特許発明2ないし5についても同様である。
(4)申立理由4(明確性要件)
本件特許の請求項3ないし5に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。概略は以下のとおり。
ア 比較例2では、多価金属塩を添加されていないので、比較例2の「多価金属塩(d)による被覆率」が0%となるべきものであるにもかかわらず、本件特許明細書の段落0096の表1には、比較例2の「多価金属塩(d)による被覆率」が「46%」であると記載されている。よって、本件特許明細書に記載の「多価金属塩 (d)による被覆率」の測定方法等に疑義がある。斯かる疑義が存在するので、「多価金属塩(d)による被覆率」について規定した本件特許発明3は不明確であると考えるのが妥当である。本件特許発明4及び5についても同様である。
イ 本件特許発明3は、「水性液体吸収性樹脂粒子」(物の発明)であるが、当該本件特許発明3には、「請求項1又は2記載の製造方法により得られ、エネルギー分散型X線分析法を用いた元素マッピングにより求められる粒子表面の多価金属塩(d)による被覆率が50〜100%である水性液体吸収性樹脂粒子。」という、その物の製造方法(物の材料に用いる物の製造方法)が記載されているものと認められる。即ち、本件特許発明3は、いわゆるプロダクトバイプロセスクレームに係る発明である。しかしながら、不可能・非実際的事情が存在することについて、本件特許明細書等に記載がなく、また、出願人から主張・立証がされていないため、その存在を認める理由は見いだせない。したがって、本件特許発明3は明確でない。本件特許発明4及び5についても同様である。
(5)証拠方法
甲第1号証:国際公開第2014/021388号
甲第2号証:国際公開第2012/102407号
甲第3号証:特開昭64−56707号公報
甲第4号証:特表平8−509522号公報
甲第5号証:国際公開第2014/034897号
甲第6号証:特表2007−523254号公報
なお、証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。

2 取消理由通知に記載した取消理由の概要
当審が令和3年5月7日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりであり、特許異議申立書に記載した申立理由(1)、(2)及び(4)を含むものである。
(1)取消理由1(甲1に基づく新規性
本件特許発明1ないし5は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)取消理由2(甲1に基づく進歩性
本件特許発明1ないし5は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(3)取消理由3(明確性要件)
本件特許の請求項3ないし5に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
取消理由3の概要は、申立理由4のア及びイと同旨である。

第5 取消理由についての当審の判断
1 取消理由1(新規性)、取消理由2(進歩性)について
(1)証拠等について
ア 甲1に記載された事項及び甲1発明
(ア)甲1に記載された事項
甲1には、「ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末を用いた吸水剤及びその製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。他の文献等についても同様。
「[0010] したがって本発明の目的は、残存エポキシ化合物(特にグリシジル系架橋剤)を低減し、吸水性樹脂含有量の多い薄型の衛生材料・吸収性物品に用いられるのに適した吸水剤であって、吸水倍率、加圧下吸水倍率などの物性に優れた安全性の高い吸水剤を提供することにあり、かつ、その製造方法に関するものである。」
「[0014] 本発明に係るポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末の製造方法によると、高生産性で、残存エポキシ化合物の少ない吸水性樹脂(粒子状吸水剤)を安定的に製造することができる。更に以下の(1)〜(3)の効果も奏する。」
「[0048] (2−1−4内部架橋剤)
本発明では、上記重合に際して、必要に応じて内部架橋剤が用いられる。該内部架橋剤としては、公知のものが使用でき、例えば、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチルロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,4−ブタンジオール、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、プロピレンカーボネート、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの中から、反応性を考慮して、1種又は2種以上を使用することができ、中でも2個以上の重合性不飽和基を有する化合物を使用することが好ましい。」
「[0073] (2−5)任意に粉砕・分級工程
本工程は、上記乾燥工程で得られた乾燥重合体を、粉砕及び/又は分級して、好ましくは特定粒度の吸水性樹脂粉末を得る工程である。尚、上記(2−3)ゲル粉砕工程とは、粉砕対象物が乾燥工程を経ている点で異なる。また、粉砕工程後の吸水性樹脂粉末を粉砕物と称することもある。なお、逆相重合、噴霧重合・液滴重合などを用いて、上記重合や乾燥にて目的粒度に制御できれば、粉砕・分級工程は必要なく任意工程であるが、好ましくは分級工程が行われ、必要に応じて、(2−5−1粒度)に記載の物性に調整するために粉砕工程を行うことがある。」
「[0090] (2−7−1グリシジル系架橋剤)
グリシジル系架橋剤としては、水溶性又は水不溶性のエポキシ基含有化合物であり、好ましくは水溶性(室温にて水90重量部に架橋剤10重量部を添加したときの溶解度(水溶率)が20重量%以上、よりに好ましく40重量%以上、更に好ましくは60重量%以上、より更に好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上(上限=100重量%))の化合物である。これらは高分子架橋剤(例えば、グリシジルアクレートの重合体)でもまた非高分子架橋剤でも使用できるが、好ましくは、物性面から非高分子グリシジル系架橋剤であり、モノグリシジル系架橋剤又は多価グリシジル系架橋剤より好ましい。また、非高分子架橋剤の分子量としては物性面から150〜3000が好ましく、さらには200〜1000がより好ましい。
・・・略・・・
[0092] 具体的に、本発明で用いられるモノグリシジル系架橋剤としてはグリシドール(融点−54℃)が挙げられる。また、多価グリシジル系架橋剤としては、常温で液体の水溶性エポキシ化合物として、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレンジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタリスリトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルが挙げられる。
・・・略・・・
[0095] これらのグリシジル系架橋剤の中でも多価エポキシ、さらにポリグリシジル(別称;多価グリシジル)化合物が好ましく、エチレングリコールジグリシジルエーテル(水溶率=100重量%)、ポリエチレンジグリシジルエーテル(EO単位の平均n数は2〜200が好ましく、2〜20が更に好ましく、2〜15が特に好ましい。また、水溶率が90重量%以上が好ましく、特に100重量%が好ましい)が加圧下吸水倍率などの吸水特性を向上する点でより好ましい。エポキシ架橋剤(グリシジル系架橋剤)は代表的には、ナガセケムテックの商品名デナコール(Denacol)で市販されており、かかる商品カタログも必要により参照される。

「[0118] (2−7−5多価金属カチオン/第4の架橋剤)
本発明ではグリシジル系架橋剤及び常温で固体の有機表面架橋剤に加えて、好ましくは、第4の架橋剤として常温で固体の多価金属カチオンが常温で固体の無機カチオン性表面架橋剤としてさらに併用される。ここで、第4の架橋剤は、グリシジル系架橋剤の混合と同時又は別の工程で併用されてもよい。上記第3の架橋剤としての常温で液体の有機表面架橋剤は任意であり、第3の架橋剤を未使用(0)で第4の架橋剤として常温で多価金属カチオンのみが併用されてもよいが、より好ましくは、第3の架橋剤及び第4の架橋剤も同時又は別途で併用される。
[0119] 本発明で多価金属カチオンに使用できる多価金属化合物は水溶性であることが好ましい。多価金属カチオンとして必須に2価以上であり、2〜4価であることが好ましく、3価又は4価カチオンの無機酸塩又は有機酸塩であることが好ましい。
・・・略・・・
[0121] 本発明に用いることができる多価金属カチオンは、典型金属及び族番号が4〜11の遷移金属の中から選ばれる少なくとも一つ以上の金属を含むことが好ましい。その多価金属の中でもMg,Ca,Ti,Zr,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Pd,Cu,Zn,Cd,Alを含むことが好ましく、Mg,Ca,Zn,Alがより好ましく、Alが特に好ましい。」
「[0133] (2−7−8水不溶性無機微粒子)
グリシジル系架橋剤の混合と同時又は別途、水不溶性無機微粒子をさらに併用してもよい。すなわち、本発明に係る吸水剤は、水不溶性無機微粒子を含むことが好ましい。ここで、水不溶性無機微粒子を、グリシジル系架橋剤の混合工程と同時又は別の工程で添加することが可能である。より具体的には、水不溶性無機微粒子はグリシジル系架橋剤及び/又は水溶液中に予め分散させていてもよいし、架橋剤を混合する前の吸水性樹脂粉末に予め混合していてもよいし、架橋剤と水不溶性無機微粒子とを同時に混合してもよいし、表面架橋後の吸水性樹脂(粒子状吸水剤)にさらに水不溶性無機微粒子を混合してもよい。特に好ましくは、水不溶性無機微粒子を、表面架橋後の吸水性樹脂(粒子状吸水剤)にさらに混合する。」
「[0156] (2−7−18吸水性樹脂粉末の加熱)
表面架橋剤を混合後の吸水性樹脂粉末は、加熱処理されることにより反応(表面架橋反応)し、必要によりその後、冷却処理される。
[0157] 本発明では、グリシジル系架橋剤及び常温で固体の有機表面架橋剤(グリシジル系架橋剤を除く)ならびに必要であれば第3の架橋剤および/または第4の架橋剤を含む水溶液を吸水性樹脂粉末に添加したのち加熱処理する。さらには、グリシジル系架橋剤、及び常温で固体の有機表面架橋剤(グリシジル系架橋剤を除く)ならびに必要であれば第3の架橋剤および/または第4の架橋剤がそれぞれ別々の水溶液、又は、混合水溶液として吸水性樹脂粉末に添加したのち、加熱処理する。
[0158] 前記加熱温度は、好ましくは70〜300℃であり、より好ましくは120〜250℃であり、更に好ましくは150〜250℃、さらには170〜230℃であり、該温度における加熱時間は、好ましくは1分〜2時間、5分〜1時間の範囲である。」
「[0192] (3−7)吸収体、吸収性物品
本発明の粒子状吸水剤は、吸水を目的とした用途に用いられ、特にシート状、テープ状の加工した用途に使用される。シート状、テープ状の加工した本発明の吸水剤は、止水ゴム、止水テープ、キッチンシート、ペットシート、止血シート、その他、紙オムツ、ナプキン等の吸収物品(最終消費財)に使用できる。また、本発明の吸水剤は、耐衝撃性や吸湿流動性に優れるため、吸収体や吸収性物品に使用する際、吸収性物品の製造工程でのトラブル減少や作業環境の改善が望めると共に、ダメージによる吸水性能の低下が抑えられ、粒子状吸水剤本来の性能を吸収性物品等で十分に発揮することができる。」
「[0224] [製造例1]
中和率75モル%のアクリル酸ナトリウム水溶液5500g(単量体濃度35重量%)に、トリメチロールプロパントリアクリレート(分子量296)0.38g(0.006モル%対単量体)を溶解し、単量体水溶液(a)とした後、窒素ガス雰囲気下で30分間脱気した。
[0225] 次に、内容積10Lのシグマ型羽根を2本有する双腕型のジャケット付きステンレス製ニーダーに蓋を付けて形成した反応器に、上記単量体水溶液(a)を投入し、液温を30℃に保ちながら反応器内に窒素ガスを吹き込み、系内の溶存酸素が1ppm以下となるように窒素置換した。
[0226] 続いて、10重量%の過硫酸ナトリウム水溶液24.6g及び0.2重量%のL−アスコルビン酸水溶液21.8gをそれぞれ別個に、上記単量体水溶液(a)を攪拌させながら添加したところ、約1分後に重合が開始した。そして、生成した含水ゲル状架橋重合体(a)を解砕しながら30〜90℃で重合し、重合開始から60分経過後に含水ゲル状架橋重合体(a)を反応器から取り出した。尚、得られた含水ゲル状架橋重合体(a)は、その径が5mm程度に細粒化されていた。
[0227] 上記細粒化された含水ゲル状架橋重合体(a)を、目開き300μm(50メッシュ)の金網上に広げ180℃で45分間熱風乾燥して、乾燥物を得た。なお、この乾燥物の含水率は、3.7重量%であった。次に、この乾燥物をロールミルで粉砕し、更に目開きが850μmと150μmのJIS標準篩で分級した。この一連の操作により、吸水性樹脂粉末(a)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(a)中の粒子径150μm以上850μm未満の粒子含有量は、97.3重量%であった。また、得られた吸水性樹脂粉末(a)の重量平均粒子径(D50)は、386μmであった。尚、吸水性樹脂粉末(a)のCRC(無加圧下吸水倍率)は53.0[g/g]、AAPは9.8〔g/g〕であった。」
「[0228] [製造例2]
断熱材である発泡スチロールで覆われた、内径80mm、容量1リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸291g、内部架橋剤としてのポリエチレングリコールジアクリレート(分子量 523)0.43g(カルボキシル基含有不飽和単量体に対し0.02モル%)、および1.0重量%ジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウム水溶液1.80g、IRGACURE(登録商標)184の1.0重量%アクリル酸溶液3.60gを混合した溶液(A)と、48.5重量%水酸化ナトリウム水溶液247gと50℃に調温したイオン交換水255gを混合した溶液(B)を作成した。長さ5cmのマグネチックスターラーを用い800r.p.m.で攪拌した溶液(A)に、溶液(B)をすばやく加え混合することで単量体水溶液(C)を得た。単量体水溶液(C)は、中和熱と溶解熱により、液温が約100℃まで上昇した。なお、アクリル酸の中和率は、73.5モル%であった。
[0229] 次に、単量体水溶液(C)に3重量%の過硫酸ナトリウム水溶液1.8gを加え、約1秒間攪拌した後すぐに、内面にテフロン(登録商標)を貼り付けたステンレス製バット型容器中に開放系で注いだ。また、ステンレス製バット型容器に単量体水溶液を注ぎ込むと同時に紫外線を照射した。
[0230] 単量体水溶液がバットに注がれて間もなく重合が開始し、重合は約1分以内にピーク温度となった。3分後、紫外線の照射を停止し、含水重合物を取り出した。なお、これら一連の操作は大気中に開放された系で行った。
[0231] 得られた含水重合物を、ミート・チョッパー(MEAT−CHOPPER TYPE:12VR−400KSOX 飯塚工業株式会社、ダイ孔径:6.4mm、孔数:38、ダイ厚み8mm)により粉砕し、細分化された粉砕含水重合物粒子を得た。尚、得られた粉砕含水重合物粒子は2mm以下に細粒化(細分化)されていた。
[0232] この細分化された粉砕含水重合物粒子を50メッシュ(目開き300μm)の金網上に広げ、180℃で45分間熱風乾燥を行い、乾燥物を得た。なお、この乾燥物の含水率は、3.8重量%であった。次に、この乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き850μmと目開き150μmのJIS標準篩で分級することにより、不定形破砕状の吸水性樹脂(固形分96重量%)である吸水性樹脂粉末(b)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(b)中の粒子径150μm以上850μm未満の粒子含有量は、97.1重量%であった。また、得られた吸水性樹脂粉末(b)の重量平均粒子径(D50)は、435μmであった。尚、吸水性樹脂粉末(b)のCRC(無加圧下吸水倍率)は47.3[g/g]、AAPは9.8〔g/g〕であった。」
「[0236] [実施例2]
製造例2記載の吸水性樹脂粉末(b)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、予め45℃に加熱して溶融させたエチレンカーボネート0.3重量部、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)(融点−59℃)0.5重量部、水3.0重量部からなる表面処理剤(3成分)を均一に混合して、架橋剤水溶液を調製し、当該架橋剤水溶液を調製してから約10秒で吸水性樹脂粉末に混合し、175℃で40分間加熱処理した。なお、混合時の(加熱処理前の)表面架橋剤水溶液の温度は、45℃であった。その後、目開きが850μmのJIS標準篩を通過させることで吸水性樹脂粉末(b−2)を得た。吸水性樹脂粉末(b−2)100重量部に日本アエロジル社製のヒュームドシリカAEROSIL200(BET比表面積=200±25m2/g、一次平均粒子径=約12nm)を0.3重量部加え均一に混合することで吸水性樹脂粉末(2)を得た。吸水性樹脂粉末(2)の諸物性を表1に示す。
[0237] [実施例3]
実施例2記載の吸水性樹脂粉末(b−2)100重量部に、第4の架橋剤(多価金属カチオン;無機イオン性架橋剤)として50重量%硫酸アルミニウム水溶液(酸化アルミニウム分として8重量%)を1.0重量部加え均一に混合することで吸水性樹脂粉末(3)を得た。吸水性樹脂粉末(3)の諸物性を表1に示す。」
「請求の範囲
[請求項1] ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末をグリシジル系架橋剤で表面架橋されてなる粒子状吸水剤の製造方法において、吸水性樹脂粉末中の粒子径150μm以上850μm未満の粒子含有量を95重量%以上とし、かつ常温で固体(融点25℃以上)の有機表面架橋剤(グリシジル系架橋剤を除く)を併用する製造方法。
[請求項2] 常温で液体(融点25℃未満)の有機表面架橋剤(グリシジル系架橋剤を除く)をさらに併用する、請求項1に記載の製造方法。
[請求項3] 常温で固体の無機カチオン性表面架橋剤として多価金属カチオンを、グリシジル系架橋剤の混合工程と同時又は別の工程で添加する、請求項1又は2に記載の製造方法。
[請求項4] 水不溶性無機微粒子を、グリシジル系架橋剤の混合工程と同時又は別の工程で添加する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
・・・略・・・

[請求項7] グリシジル系架橋剤及び常温で固体の有機表面架橋剤(グリシジル系架橋剤を除く)をそれぞれの水溶液として、又は、両架橋剤を含む水溶液として吸水性樹脂粉末に添加したのち、加熱処理する請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
・・・略・・・
[請求項15] 常温で液体(融点25℃未満)の有機表面架橋剤(グリシジル系架橋剤を除く)の炭素数が3〜6のジオールである、請求項2に記載の製造方法。」

(イ)甲1発明
甲1に記載された事項について、特に請求の範囲請求項1ないし4及び15を整理すると、甲1には次の発明が記載されていると認める。
「ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末をグリシジル系架橋剤で表面架橋されてなる粒子状吸水剤の製造方法において、吸水性樹脂粉末中の粒子径150μm以上850μm未満の粒子含有量を95重量%以上とし、かつ常温で固体(融点25℃以上)の有機表面架橋剤(グリシジル系架橋剤を除く)を併用し、常温で液体(融点25℃未満)の有機表面架橋剤(グリシジル系架橋剤を除く)である炭素数が3〜6のジオールをさらに併用し、常温で固体の無機カチオン性表面架橋剤として多価金属カチオンを、グリシジル系架橋剤の混合工程と同時又は別の工程で添加し、水不溶性無機微粒子を、グリシジル系架橋剤の混合工程と同時又は別の工程で添加し、グリシジル系架橋剤及び常温で固体の有機表面架橋剤(グリシジル系架橋剤を除く)をそれぞれの水溶液として、又は、両架橋剤を含む水溶液として吸水性樹脂粉末に添加したのち、加熱処理する、粒子状吸水剤の製造方法。」(以下、「甲1ア製造方法発明」という。)

イ 特許権者の提出した証拠
特許権者は、意見書に添付して以下の証拠を提出している。
乙第1号証:特開昭61−16803号公報
乙第2号証:特表平9−502221号公報
以下、「乙1」のようにいう。
(ア)乙1に記載された事項
乙1には、「吸水剤」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
「吸水性樹脂粉末に多価アルコール(A)および化合物(B)を混合して得られた混合物を加熱するには・・・加熱処理温度は90℃以上、好ましくは150〜250℃の範囲である。90℃未満の低温では、加熱処理に長時間を要するので経済的でないばかりか、多価アルコール(3)の種類や使用量によっては本発明の効果が発現するのに充分な程度まで架橋反応が進まないことがある。加熱処理温度を150〜250℃の範囲とすると、吸水性樹脂の着色や劣化の危惧なく、短時間のうちに本発明の効果を発現させるだけの架橋反応を行うことができるが、250℃を越える高温では、吸水性樹脂の種類によっては熱劣化が起こるので注意を要する。」(第4ページ右上欄第1〜18行)

(イ)乙2に記載された事項
乙2には、「水性液吸収性粉末状ポリマー、その製造方法および吸収材としての用途」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
「1.a)重合可能な酸基を含有し、少なくとも25モル%は中和された不飽和モノマーを重合された状態で 55〜99.9重量%
b)a)と共重合可能な不飽和モノマーを重合された状態で 0〜40重量%
c)架橋剤 0.1〜5.0重量%
および
d)水溶性ポリマー 0〜30重量%
(ただし、a)〜d)の重量は無水のポリマーについてである)
からつくられ、しかも酸基と反応する少なくとも二官能性の化合物とともに、150〜250℃の温度で加熱して表面架橋を受けさせてなる、水または水性もしくはしょう液性の液体を吸収する、不溶性で水膨潤性の粉末状架橋ポリマーにおいて、酸基と反応する少なくとも二官能性の化合物0.1〜5重量%を使って、150〜250℃の温度で、もう一度表面架橋処理を受けさせたものであることを特徴とする粉末状ポリマー。」(特許請求の範囲)
「化合物の多官能基と該粉末状ポリマーとの反応に基づく表面架橋処理に必要な熱処理は、150〜250℃の温度、好ましくは170〜200℃で行われる。適する温度は、処理剤の種類および選択された反応条件での反応成分の滞在時間(residence time)に依存する。
150℃の温度では該熱処理を数時間かけて行わなければならないのに対し、250℃の温度では、数分、例えば0.5〜5分間で所望の特性を得るのに充分である。」(第11ページ第1〜7行)

(2)対比・判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1ア製造方法発明を対比する。
甲1ア製造方法発明の「ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末」は、本件特許発明1の「水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A)を含有する樹脂粒子(B)」と「水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)を必須構成単位とする架橋重合体(A)を含有する樹脂粒子(B)」という限りにおいて相当する。また、甲1ア製造方法発明の「グリシジル系架橋剤」、「常温で固体の無機カチオン性表面架橋剤として多価金属カチオン」及び「水不溶性無機微粒子」は、それぞれ本件特許発明1の「グリシジル化合物(e)」、「多価金属塩(d)」及び「無機粒子(f)」に相当する。さらに、甲1ア製造方法発明の「常温で液体(融点25℃未満)の有機表面架橋剤(グリシジル系架橋剤を除く)」である炭素数が3〜6のジオールのうち、炭素数が3及び4のジオールは、甲1ア製造方法発明の「炭素数4以下の多価アルコール(c)」に相当する。
そうすると、両者は以下の点で一致する。
<一致点>
水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)を必須構成単位とする架橋重合体(A)を含有する樹脂粒子(B)を、炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価金属塩(d)及び多価グリシジル化合物(e)を用いて樹脂粒子(B)を表面処理した後、加熱処理する水性液体吸収性樹脂粒子(P)の製造方法であり、無機粒子(f)を用いて樹脂粒子を表面処理する工程を含む、水性液体吸収性樹脂粒子(P)の製造方法。
また、両者は以下の点で相違する。
<相違点1−1>
樹脂粒子(B)に含有される架橋重合体(A)について、本件特許発明1が「架橋剤を必須構成単位とする」と特定されているのに対し、甲1ア製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点1−2>
グリシジル化合物(e)について、本件特許発明1が「多価」と特定されているのに対し、甲1ア製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点1−3>
本件特許発明1が「以下の方法[I]〜[III];
方法[I]:
炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価金属塩(d)、多価グリシジル化合物(e)及び水を含有する混合液(W1)を用いて樹脂粒子(B)を表面処理する方法;
方法[II]:
炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価グリシジル化合物(e)、及び水を含有し、多価金属塩(d)を含有しない混合液(W2)と、炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価金属塩(d)及び水を含有し、多価グリシジル化合物(e)を含有しない混合液(W3)とを用いて樹脂粒子(B)を表面処理する方法であって、混合液(W2)と混合液(W3)で同時に表面処理する工程を含む方法;
方法[III]:
炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価グリシジル化合物(e)及び水を含有し、多価金属塩(d)を含有しない混合液(W2)と、多価金属塩(d)及び水を含有し、炭素数4以下の多価アルコール(c)及び多価グリシジル化合物(e)を含有しない混合液(W4)とを用いて樹脂粒子(B)を表面処理する方法であって、混合液(W2)と混合液(W4)で同時に表面処理する工程を含む方法;
のいずれかの方法で表面処理した後、無機粒子(f)を用いて樹脂粒子を表面処理する工程を含み、前記方法[I]における混合液(W1)が前記無機粒子(f)を含有し、前記方法[II]における混合液(W2)及び/又は混合液(W3)が前記無機粒子(f)を含有し、前記方法[III]における混合液(W2)及び/又は混合液(W4)が前記無機粒子(f)を含有する」と特定されているのに対し、甲1ア製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点1−4>
加熱処理する温度について、本件特許発明1が「110〜145℃」と特定されているのに対し、甲1ア製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。

そこで、上記相違点について検討する。
事案に鑑み、<相違点1−4>から検討する。
甲1の段落[0158]に、「前記加熱温度は、好ましくは70〜300℃であり」と、加熱温度について110〜145℃の範囲について、一応の記載はされている。しかしながら、特許権者が意見書でも主張するとおり、当該加熱温度は、段落[0156] の吸水性樹脂粉末の加熱の項目で説明されているとおり、表面架橋剤を混合後の吸水性樹脂粉末を、加熱処理することにより反応(表面架橋反応)させるための加熱処理に関するものである。
そして、上記1イの乙1及び乙2の記載事項に示されるように、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂粉末の表面架橋剤としての作用効果を期待するために、多価アルコールを用いて表面架橋反応させるための温度が、通常150℃程度から250°程度の温度であることは当業者の技術常識である。また、実際、甲1の実施例においても、ブロピレングリコールを用いた表面架橋処理温度は175℃となっている。
そうすると、甲1の段落[0158]に、「前記加熱温度は、好ましくは70〜300℃であり」と一応の記載はされていたとしても、上記当業者の技術常識を参酌すると、甲1ア製造方法発明における加熱温度として、本件特許発明1で特定される「110〜145℃」の温度範囲が実質的に記載されているとはいえない。即ち、相違点1−4は実質的な相違点である。
また、甲1ア製造方法発明において、架橋反応が起こり難い150℃未満の温度、特に本件特許発明1で特定される「110〜145℃」の温度範囲を選択する動機付けがないというのが相当である。
そして、本件特許発明1は、輸送やオムツ製造工程の際に樹脂粒子が壊れることが抑制されるという、甲1及びその他の証拠を参酌しても予期しない効果を奏するものである。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1ア製造方法発明であるとはいえないし、甲1ア製造方法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

イ 本件特許発明2について
本件特許発明2は請求項1を引用する発明であり、本件特許発明1の特定事項をすべて有するものである。
よって、上記アのとおり、本件特許発明2も、甲1ア製造方法発明であるとはいえないし、甲1ア製造方法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(3)取消理由1及び2についてのむすび
したがって、本件特許発明1及び2は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、取消理由1及び2によっては取り消すことはできない。

2 取消理由3(明確性要件)について
上記第2のとおり、請求項3ないし5は削除されたため、取消理由3は、その対象がなくなった。

第6 取消理由で採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由について
取消理由で採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由は、申立理由3(サポート要件)である。
そこで、この申立理由3について検討する。
1 サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

2 特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の記載は、上記第3のとおりである。

3 発明の詳細な説明の記載
本件特許の発明の詳細の記載は次のとおりである。
「【背景技術】
【0002】
現在、紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パット等の衛生材料には、パルプ等の親水性繊維とアクリル酸(塩)等とを主原料とする水性液体吸収性樹脂が吸収体として幅広く利用されている。近年のQOL(quality of life)向上の観点からこれら衛生材料はより軽量かつ薄型のものへと需要が遷移しており、これに伴って親水性繊維の使用量低減が望まれるようになってきた。そのため、これまで親水性繊維が担ってきた吸収体中での液拡散性や初期吸収の役割を水性液体吸収性樹脂それ自体に求められるようになり、加重下での吸液性及び膨潤したゲル間の通液性の高い水性液体吸収性樹脂が必要とされてきた。
【0003】
膨潤ゲル間の通液性を向上させる手法として、SAP(Super Absorbent Polymer)表面を特異的に架橋することにより水性液体吸収性樹脂表面の架橋密度を高め、膨潤ゲル表面の変形を抑制し、ゲル間隙を効率的に形成する方法が既に知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら従来の表面架橋だけでは膨潤ゲル間の通液性は十分満足いくものではなかった。
【0004】
膨潤ゲル間の通液性を向上させる手法として(1)シリカ及びタルク等の無機化合物を添加することにより物理的なスペースを形成させる方法、(2)変性シリコーン等の表面自由エネルギーの小さい疎水性高分子で表面処理することにより、膨潤ゲル同士の合着を抑制してゲル間隙を形成させる方法及び(3)硫酸アルミニウムや乳酸アルミニウム等を添加する方法が既に知られている(例えば、特許文献2、特許文献3及び特許文献4参照)。しかし上記の方法では、膨潤したゲル間の通液性を向上させることができるものの、荷重下での吸収量が低下するという問題や、輸送やオムツ製造工程の際に樹脂粒子が壊れてしまい、通液性が低下してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第00/053664号
【特許文献2】特開2012―161788号公報
【特許文献3】特開2013―133399号公報
【特許文献4】特開2014―512440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、輸送やオムツ製造工程を経た後でも、膨潤したゲル間の通液性及び荷重下での吸収性能の両立が可能な水性液体吸収性樹脂粒子の製造方法を提供することである。」
「【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A)を含有する樹脂粒子(B)を、炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価金属塩(d)及び多価グリシジル化合物(e)を用いて以下の方法[I]〜[III]のいずれかで表面処理することを特徴とする水性液体吸収性樹脂粒子(P)の製造方法;前記製造方法により得られ、エネルギー分散型X線分析法を用いた元素マッピングにより求められる粒子表面の多価金属塩(d)による被覆率が50〜100%である水性液体吸収性樹脂粒子;前記製造方法を用いて製造される水性液体吸収性樹脂粒子を含む吸収体;前記吸収体を備えた吸収性物品である。
方法[I]:
炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価金属塩(d)、多価グリシジル化合物(e)及び水を含有する混合液(W1)を用いて樹脂粒子(B)を表面処理する方法。
方法[II]:
炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価グリシジル化合物(e)及び水を含有し、多価金属塩(d)を含有しない混合液(W2)と、炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価金属塩(d)及び水を含有し、多価グリシジル化合物(e)を含有しない混合液(W3)とを用いて樹脂粒子(B)を表面処理する方法であって、以下の(1)〜(3)の工程のいずれかを含む方法:
(1)混合液(W2)で樹脂粒子(B)を表面処理した後、加熱処理を行い又は加熱処理を行わずに、混合液(W3)で更に表面処理する工程;
(2)混合液(W3)で樹脂粒子(B)を表面処理した後、加熱処理を行い又は加熱処理を行わずに、混合液(W2)で更に表面処理する工程;
(3)混合液(W2)と混合液(W3)で同時に表面処理する工程。
方法[III]:
炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価グリシジル化合物(e)及び水を含有し、多価金属塩(d)を含有しない混合液(W2)と、多価金属塩(d)及び水を含有し、炭素数4以下の多価アルコール(c)及び多価グリシジル化合物(e)を含有しない混合液(W4)とを用いて樹脂粒子(B)を表面処理する方法であって、以下の(4)〜(6)の工程のいずれかを含む方法:
(4)混合液(W2)で樹脂粒子(B)を表面処理した後、加熱処理を行わずに混合液(W4)で更に表面処理する工程;
(5)混合液(W4)で樹脂粒子(B)を表面処理した後、加熱処理を行い又は加熱処理を行わずに、混合液(W2)で更に表面処理する工程;
(6)混合液(W2)と混合液(W4)で同時に表面処理する工程。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法により得られる水性液体吸収性樹脂粒子(P)は、その表面の少なくとも一部が多価金属塩で被覆されていることにより輸送やオムツ製造工程の際に樹脂粒子が壊れることが抑制され(以下、壊れにくさを耐壊れ性という)、輸送やオムツ製造工程を経た後での加重下での吸収性及び膨潤ゲル間の通液性が非常に優れており、さまざまの使用状況においても安定して優れた吸収性能(例えば液拡散性、吸収速度及び吸収量)を発揮し、カブレが生じにくい。」
「【0039】
本発明における炭素数4以下の多価アルコール(c)としては、エチレングリーコル、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、グリセリン、1,4−ブタンジオール等が挙げられる。これらの内、安全性や入手の容易さの観点から、プロピレングリコール及びグリセリンが好ましく、更に好ましいのはプロピレングリコールである。(c)を用いることにより多価金属塩(d)による樹脂粒子の被覆率が向上し、樹脂粒子の耐壊れ性が向上する。(c)は1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0040】
炭素数4以下の多価アルコール(c)の使用量(重量%)は、吸収性能及び耐壊れ性の観点から樹脂粒子(B)の重量に基づいて、0.05〜5が好ましく、更に好ましくは0.1〜3、特に好ましくは0.2〜2である。
【0041】
本発明における多価金属塩(d)としては、ジルコニウム、アルミニウム又はチタニウムの無機酸塩が挙げられ、(d)を形成する無機酸としては、硫酸、塩酸、硝酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸及びリン酸等が挙げられる。ジルコニウムの無機酸塩としては、硫酸ジルコニウム及び塩化ジルコニウム等が挙げられ、アルミニウムの無機酸塩としては、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アンモニムアルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム及び硫酸ナトリウムアルミニウム等が挙げられ、チタニウムの無機酸塩としては、硫酸チタニウム、塩化チタニウム及び硝酸チタニウム等が挙げられる。
【0042】
これらの内、入手の容易性や溶解性の観点から、アルミニウムの無機酸塩及びチタニウムの無機酸塩が好ましく、更に好ましいのは硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム及び硫酸ナトリウムアルミニウム、特に好ましいのは硫酸アルミニウム及び硫酸ナトリウムアルミニウム、最も好ましいのは硫酸ナトリウムアルミニウムである。
【0043】
多価金属塩(d)を使用することにより、樹脂粒子(B)の表面の少なくとも一部が(d)で被覆され、樹脂粒子の耐壊れ性が向上する。(d)は1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0044】
多価金属塩(d)の使用量(重量%)は、吸収性能及び耐壊れ性の観点から樹脂粒子(B)の重量に基づいて、0.05〜5が好ましく、更に好ましくは0.1〜3、特に好ましくは0.2〜2である。
【0045】
本発明における多価グリシジル化合物(e)としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル及びソルビトールポリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル等が挙げられ、多価アルコールの価数は吸収性能の観点から2〜8価、更に好ましくは2〜3価であり、1分子当たりのグリシジル基の個数は、吸収性能の観点から好ましくは2〜10、更に好ましくは2〜4である。(e)は1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0046】
多価グリシジル化合物(e)の使用量(重量%)は、吸収性能の観点から樹脂粒子(B)の重量に基づいて、0.001〜3が好ましく、更に好ましくは0.005〜2、特に好ましくは0.01〜1である。」
「【0047】
本発明において、架橋重合体(A)を含有する樹脂粒子(B)を炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価金属塩(d)及び多価グリシジル化合物(e)を用いて表面処理する方法としては、以下の[I]〜[III]の方法等が挙げられる。
・方法[I]:
炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価金属塩(d)、多価グリシジル化合物(e)及び水を含有する混合液(W1)を用いて樹脂粒子(B)を表面処理する方法。
・方法[II]:
炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価グリシジル化合物(e)及び水を含有し、多価金属塩(d)を含有しない混合液(W2)と、炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価金属塩(d)及び水を含有し、多価グリシジル化合物(e)を含有しない混合液(W3)とを用いて樹脂粒子(B)を表面処理する方法であって、以下の(1)〜(3)の工程のいずれかを含む方法:
(1)混合液(W2)で樹脂粒子(B)を表面処理した後、加熱処理を行い又は加熱処理を行わずに、混合液(W3)で更に表面処理する工程;
(2)混合液(W3)で樹脂粒子(B)を表面処理した後、加熱処理を行い又は加熱処理を行わずに、混合液(W2)で更に表面処理する工程;
(3)混合液(W2)と混合液(W3)で同時に表面処理する工程。
・方法[III]:
炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価グリシジル化合物(e)及び水を含有し、多価金属塩(d)を含有しない混合液(W2)と、多価金属塩(d)及び水を含有し、炭素数4以下の多価アルコール(c)及び多価グリシジル化合物(e)を含有しない混合液(W4)とを用いて樹脂粒子(B)を表面処理する方法であって、以下の(4)〜(6)の工程のいずれかを含む方法:
(4)混合液(W2)で樹脂粒子(B)を表面処理した後、加熱処理を行わずに混合液(W4)で更に表面処理する工程;
(5)混合液(W4)で樹脂粒子(B)を表面処理した後、加熱処理を行い又は加熱処理を行わずに、混合液(W2)で更に表面処理する工程;
(6)混合液(W2)と混合液(W4)で同時に表面処理する工程。
【0048】
方法[I]〜[III]の内、生産性の観点から好ましいのは[I]である。
【0049】
方法[I]の具体例としては、例えば、円筒型混合機、スクリュー型混合機、スクリュー型押出機、タービュライザー、ナウター型混合機、双腕型ニーダー、流動式混合機、V型混合機、ミンチ混合機、リボン型混合機、流動式混合機、気流型混合機、回転円盤型混合機、コニカルブレンダー及びロールミキサー等の混合装置を用いて炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価金属塩(d)、多価グリシジル化合物(e)及び水を含有する混合液(W1)と樹脂粒子(B)を均一混合する方法が挙げられる。
【0050】
方法[I]により表面処理する際の温度は特に限定されないが、10〜150℃が好ましく、更に好ましくは20〜100℃、特に好ましくは25〜80℃である。
【0051】
方法[I]により表面処理した後、通常、加熱処理を行う。加熱温度は、樹脂粒子の耐壊れ性の観点から好ましくは100〜150℃、更に好ましくは110〜145℃、特に好ましくは125〜140℃である。150℃以下の加熱であれば蒸気を利用した間接加熱が可能であり設備上有利であり、100℃未満の加熱温度では吸収性能が悪くなる場合がある。また、加熱時間は加熱温度により適宜設定することができるが、吸収性能の観点から、好ましくは5〜60分、更に好ましくは10〜40分である。
【0052】
方法[II]及び[III]において、混合液(W2)〜(W4)で樹脂粒子を表面処理する方法の具体例としては、上記方法[I]における具体例と同様の方法が挙げられる。
なお、方法[II]において混合液(W2)と混合液(W3)で同時に表面処理する方法及び方法[III]において混合液(W2)と混合液(W4)で同時に表面処理する方法としては、上記混合装置に樹脂粒子(B)を仕込み、混合液(W2)と混合液(W3)、又は混合液(W2)と混合液(W4)を別々かつ同時に投入して均一混合する方法が挙げられる。
【0053】
方法[II]の工程(1)及び(2)並びに方法[III]の工程(5)において、異なる混合液での表面処理の間に加熱処理する場合、その加熱温度及び加熱時間は、上記方法[I]の表面処理後の加熱処理における加熱温度及び加熱時間と同様である。
なお、方法[III]の工程(4)においては、混合液(W2)での表面処理と混合液(W4)での表面処理の間で加熱処理を行うと耐壊れ性が低下するため、混合液(W2)での表面処理後、加熱処理を行わずに混合液(W4)で表面処理する必要がある。
【0054】
方法[II]及び[III]により表面処理した後、通常、加熱処理を行う。その際の加熱温度及び加熱時間は上記方法[I]の表面処理後の加熱処理における加熱温度及び加熱時間と同様である。
【0055】
本発明においては、無機粒子(f)を用いて樹脂粒子を表面処理する工程を含むことができ、水性液体吸収性樹脂粒子(P)は、無機粒子(f)で樹脂粒子が表面処理されてなるものでもよい。無機粒子(f)で表面処理されることにより、通液性が向上する。
【0056】
無機粒子(f)としては、コロイダルシリカ、フュームドシリカ、クレー及びタルク等が挙げられ、入手の容易性や扱いやすさ、吸収性能の観点から、コロイダルシリカ及びシリカが好ましく、更に好ましいのはコロイダルシリカである。(f)は1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0057】
無機粒子(f)の使用量(重量%)は、吸収性能の観点から樹脂粒子(B)の重量に基づいて、0.01〜5が好ましく、更に好ましくは0.05〜1、特に好ましくは0.1〜0.5である。
【0058】
無機粒子(f)での表面処理は、架橋重合体(A)を含有する樹脂粒子(B)に対して行ってもよいし、上記方法[II]の工程(1)、工程(2)及び[III]の工程(4)、工程(5)において、1回目の表面処理が終わった後であって更に表面処理を行う前の樹脂粒子に行ってもよいし、あるいは、上記方法[I]〜[III]の表面処理を行った後の樹脂粒子に行ってもよい。
【0059】
樹脂粒子(B)を無機粒子(f)を用いて表面処理する場合、上記方法[I]における混合液(W1)に無機粒子(f)を含有させる方法、上記方法[II]における混合液(W2)及び/又は混合液(W3)に無機粒子(f)を含有させる方法並びに上記方法[III]における混合液(W2)及び/又は混合液(W4)に無機粒子(f)を含有させる方法が好ましい。」
「【実施例】
【0077】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、部は重量部、%は重量%を示す。なお、水性液体吸収性樹脂粒子の多価金属塩(d)による被覆率、生理食塩水に対する保水量、荷重下吸収量及びゲル通液速度は以下の方法により測定し、壊れ性試験は以下の方法で行った。
【0078】
<多価金属塩(d)による被覆率の測定方法>
カーボンテープを貼った試料台に測定試料を10粒以上、粒子同士が重ならないように固定し、Oxford社製エネルギー分散型X線分析(EDS分析)装置を付属した、JEOL社製電界放出型走査電子顕微鏡「JSM?7000」にセットした。倍率を150倍にし、粒子1粒を画面に表示し、元素マッピングモードでEDS分析を行った。多価金属塩(d)の特徴元素(例えば、硫酸アルミニウム又は硫酸ナトリウムアルミニウムならばアルミニウム及び硫黄)の検出面積をS1、水性液体吸収性樹脂粒子(P)の特徴元素(通常はポリアクリル酸ナトリウム塩であるため、ナトリウム)の検出面積をS0とし、次式から被覆率を求めた。
被覆率(%)=(S1/S0)×100
特徴元素が複数ある場合はそれぞれの元素の被覆率を平均し被覆率とした。1種類の測定試料につき5粒の測定を行い、平均値を測定試料の被覆率とした。なお、検出面積S0及びS1として、それぞれの特徴元素の検出強度の頻度分布をヒストグラムとして出力した値を用いた。
【0079】
<保水量の測定方法>
目開き63μm(JIS Z8801−1:2006)のナイロン網で作製したティーバッグ(縦20cm、横10cm)に測定試料1.00gを入れ、生理食塩水(食塩濃度0.9%)1,000ml中に無撹拌下、1時間浸漬した後引き上げて、15分間吊るして水切りした。その後、ティーバッグごと、遠心分離器にいれ、150Gで90秒間遠心脱水して余剰の生理食塩水を取り除き、ティーバックを含めた重量(h1)を測定し次式から保水量を求めた。なお、使用した生理食塩水及び測定雰囲気の温度は25℃±2℃であった。
保水量(g/g)=(h1)−(h2)
なお、(h2)は、測定試料の無い場合について上記と同様の操作により計測したティーバックの重量である。
【0080】
<荷重下吸収量の測定方法>
目開き63μm(JIS Z8801−1:2006)のナイロン網を底面に貼った円筒型プラスチックチューブ(内径:25mm、高さ:34mm)内に、30メッシュふるいと60メッシュふるいを用いて250〜500μmの範囲にふるい分けした測定試料0.16gを秤量し、円筒型プラスチックチューブを垂直にしてナイロン網上に測定試料がほぼ均一厚さになるように整えた後、この測定試料の上に分銅(重量:310.6g、外径:24.5mm、)を乗せた。この円筒型プラスチックチューブ全体の重量(M1)を計量した後、生理食塩水(食塩濃度0.9%)60mlの入ったシャーレ(直径:12cm)の中に測定試料及び分銅の入った円筒型プラスチックチューブを垂直に立ててナイロン網側を下面にして浸し、60分静置した。60分後に、円筒型プラスチックチューブをシャーレから引き上げ、これを斜めに傾けて底部に付着した水を一箇所に集めて水滴として垂らすことで余分な水を除去した後、測定試料及び分銅の入った円筒型プラスチックチューブ全体の重量(M2)を計量し、次式から加圧下吸収量を求めた。なお、使用した生理食塩水及び測定雰囲気の温度は25℃±2℃であった。
荷重下吸収量(g/g)={(M2)−(M1)}/0.16
【0081】
<ゲル通液速度の測定方法>
図1及び図2で示される器具を用いて以下の操作により測定した。
測定試料0.32gを150ml生理食塩水1(食塩濃度0.9%)に30分間浸漬して膨潤ゲル粒子2を調製した。そして、垂直に立てた円筒3{直径(内径)25.4mm、長さ40cm、底部から60mlの位置及び40mlの位置にそれぞれ目盛り線4及び目盛り線5が設けてある。}の底部に、金網6(目開き106μm、JIS Z8801−1:2006)と、開閉自在のコック7(通液部の内径5mm)とを有する濾過円筒管内に、コック7を閉鎖した状態で、調製した膨潤ゲル粒子2を生理食塩水と共に移した後、この膨潤ゲル粒子2の上に円形金網8(目開き150μm、直径25mm)が金網面に対して垂直に結合する加圧軸9(重さ22g、長さ47cm)を金網と膨潤ゲル粒子とが接触するように載せ、更に加圧軸9におもり10(88.5g)を載せ、1分間静置した。引き続き、コック7を開き、濾過円筒管内の液面が60ml目盛り線4から40ml目盛り線5になるのに要する時間(T1;秒)を計測し、次式よりゲル通液速度(ml/min)を求めた。
ゲル通液速度(ml/min)=20ml×60/(T1−T2)
なお、使用する生理食塩水及び測定雰囲気の温度は25℃±2℃で行い、T2は測定試料の無い場合について上記と同様の操作により計測した時間である。
【0082】
<壊れ性試験の方法>
測定試料を15g量り採り、Panasonic社製ファイバーミキサーに入れ、低速・高速の切り替えスイッチを低速として1秒攪拌する処理を行った。
【0083】
<参考例1>
アクリル酸(a1−1){三菱化学株式会社製、純度100%}131部、架橋剤(b−1){ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ダイソ−株式会社製}0.44部及び脱イオン水362部を攪拌・混合しながら3℃に保った。この混合物中に窒素を流入して溶存酸素量を1ppm以下とした後、1%過酸化水素水溶液0.5部、2%アスコルビン酸水溶液1部及び2%の2,2’−アゾビスアミジノプロパンジハイドロクロライド水溶液0.1部を添加・混合して重合を開始させた。混合物の温度が80℃に達した後、80±2℃で約5時間重合することにより含水ゲルを得た。
【0084】
次にこの含水ゲルをミンチ機(ROYAL社製12VR−400K)で細断しながら、45%水酸化ナトリウム水溶液162部を添加して混合・中和し、中和ゲルを得た。更に中和した含水ゲルを通気型乾燥機{200℃、風速2m/秒}で乾燥し、乾燥体を得た。乾燥体をジューサーミキサー(Oster社製OSTERIZER BLENDER)にて粉砕した後、ふるい分けして、目開き710〜150μmの粒子径範囲に調整して、架橋重合体を含む樹脂粒子(B−1)を得た。
【0085】
ついで、得られた樹脂粒子(B−1)100部を高速攪拌(細川ミクロン製高速攪拌タービュライザー:回転数2000rpm)しながら、これに炭素数4以下の多価アルコール(c)としてのプロピレングリコール1.2部、多価金属塩(d)としての硫酸ナトリウムアルミニウム12水和物1.2部、多価グリシジル化合物(e)としてのエチレングリコールジグリシジルエーテル0.09部及び水3.5部を混合した混合液を添加し、均一混合した後、130℃で30分間加熱して、本発明の水性液体吸収性樹脂粒子(P−1)を得た。
【0086】
<参考例2>
参考例1と同様にして得られた樹脂粒子(B−1)100部を高速攪拌(細川ミクロン製高速攪拌タービュライザー:回転数2000rpm)しながら、これに炭素数4以下の多価アルコール(c)としてのプロピレングリコール0.6部、多価グリシジル化合物(e)としてのエチレングリコールジグリシジルエーテル0.09部及び水1.1部の混合液と、炭素数4以下の多価アルコール(c)としてのプロピレングリコール0.5部、多価金属塩(d)としての硫酸ナトリウムアルミニウム12水和物1.2部及び水2.3部を混合した混合液を同時に添加し、均一混合した後、130℃で30分間加熱して、参考例の水性液体吸収性樹脂粒子(P−2)を得た。

【0087】
<実施例3>
参考例1と同様にして得られた樹脂粒子(B−1)100部を高速攪拌(細川ミクロン製高速攪拌タービュライザー:回転数2000rpm)しながら、これに炭素数4以下の多価アルコール(c)としてのプロピレングリコール0.6部、多価グリシジル化合物(e)としてのエチレングリコールジグリシジルエーテル0.09部、無機粒子(f)としてのKlebosol30cal25(AZマテリアル社製コロイダルシリカ)1部及び水1.1部を混合した混合液と、炭素数4以下の多価アルコール(c)としてのプロピレングリコール0.5部、多価金属塩(d)としての硫酸ナトリウムアルミニウム12水和物1.2部及び水2.3部を混合した混合液を同時に添加し、均一混合した後、130℃で30分間加熱して、本発明の水性液体吸収性樹脂粒子(P−3)を得た。

【0088】
<参考例4>
参考例1と同様にして得られた樹脂粒子(B−1)100部を高速攪拌(細川ミクロン製高速攪拌タービュライザー:回転数2000rpm)しながら、これに炭素数4以下の多価アルコール(c)としてのプロピレングリコール1.2部、多価グリシジル化合物(e)としてのエチレングリコールジグリシジルエーテル0.09部及び水3.5部を混合した混合液を添加し、均一混合した後、130℃で30分間加熱し、室温まで冷却した後、炭素数4以下の多価アルコール(c)としてのプロピレングリコール0.5部、多価金属塩(d)としての硫酸ナトリウムアルミニウム12水和物1.2部及び水2.3部を混合した混合液を同時に添加し、均一混合した後、130℃で30分間加熱して、参考例の水性液体吸収性樹脂粒子(P−4)を得た。

【0089】
<参考例5>
参考例1と同様にして得られた樹脂粒子(B−1)100部を高速攪拌(細川ミクロン製高速攪拌タービュライザー:回転数2000rpm)しながら、これに炭素数4以下の多価アルコール(c)としてのプロピレングリコール2.0部、多価金属塩(d)としての硫酸ナトリウムアルミニウム12水和物1.2部、多価グリシジル化合物(e)としてのエチレングリコールジグリシジルエーテル0.12部及び水4.3部を混合した混合液を添加し、均一混合した後、130℃で30分間加熱して、参考例の水性液体吸収性樹脂粒子(P−5)を得た。

【0090】
<参考例6>
参考例1と同様にして得られた樹脂粒子(B−1)100部を高速攪拌(細川ミクロン製高速攪拌タービュライザー:回転数2000rpm)しながら、これに炭素数4以下の多価アルコール(c)としてのプロピレングリコール4.5部、多価金属塩(d)としての硫酸ナトリウムアルミニウム12水和物2.4部、多価グリシジル化合物(e)としてのエチレングリコールジグリシジルエーテル0.18部及び水6.1部を混合した混合液を添加し、均一混合した後、130℃で30分間加熱して、参考例の水性液体吸収性樹脂粒子(P−6)を得た。

【0091】
<参考例7>
参考例1と同様にして得られた樹脂粒子(B−1)100部を高速攪拌(細川ミクロン製高速攪拌タービュライザー:回転数2000rpm)しながら、これに炭素数4以下の多価アルコール(c)としてのプロピレングリコール3.0部、多価金属塩(d)としての硫酸ナトリウムアルミニウム12水和物3.6部、多価グリシジル化合物(e)としてのエチレングリコールジグリシジルエーテル0.12部及び水7.9部を混合した混合液を添加し、均一混合した後、130℃で30分間加熱して、参考例の水性液体吸収性樹脂粒子(P−7)を得た。

【0092】
<参考例8>
参考例1と同様にして得られた樹脂粒子(B−1)100部を高速攪拌(細川ミクロン製高速攪拌タービュライザー:回転数2000rpm)しながら、これに炭素数4以下の多価アルコール(c)としてのプロピレングリコール0.2部、多価金属塩(d)としての硫酸ナトリウムアルミニウム12水和物0.4部、多価グリシジル化合物(e)としてのエチレングリコールジグリシジルエーテル0.08部及び水1.5部を混合した混合液を添加し、均一混合した後、150℃で30分間加熱して、参考例の水性液体吸収性樹脂粒子(P−8)を得た。

【0093】
<比較例1>
参考例1と同様にして得られた樹脂粒子(B−1)100部を高速攪拌(細川ミクロン製高速攪拌タービュライザー:回転数2000rpm)しながら、これに、炭素数4以下の多価アルコール(c)としてのプロピレングリコール1.2部、多価グリシジル化合物(e)としてのエチレングリコールジグリシジルエーテル0.09部及び水3.5部を混合した混合液を添加し、均一混合した後、130℃で30分間加熱し、室温まで冷却した後、更に高速攪拌(細川ミクロン製高速攪拌タービュライザー:回転数2000rpm)しながら多価金属塩(d)としての硫酸ナトリウムアルミニウム12水和物1.2部及び水2.3部を混合した混合液を添加し、均一混合した後、130℃で30分間加熱して、比較用の水性液体吸収性樹脂粒子(R−1)を得た。

【0094】
<比較例2>
参考例1と同様にして得られた樹脂粒子(B−1)100部を高速攪拌(細川ミクロン製高速攪拌タービュライザー:回転数2000rpm)しながら、これに、炭素数4以下の多価アルコール(c)としてのプロピレングリコール1.2部、多価グリシジル化合物(e)としてのエチレングリコールジグリシジルエーテル0.09部及び水3.5部を混合した混合液を添加し、均一混合した後、130℃で30分間加熱し、室温まで冷却した後、更に高速攪拌(細川ミクロン製高速攪拌タービュライザー:回転数2000rpm)しながら無機粒子(f)としてのシリカ(アエロジル社製Aerosil200)を0.2部添加し均一混合した後、130℃で30分間加熱して、比較用の水性液体吸収性樹脂粒子(R−2)を得た。

【0095】
実施例及び参考例の水性液体吸収性樹脂粒子(P−1)〜(P−8)及び比較例1〜2の水性液体吸収性樹脂粒子(R−1)〜(R−2)についての被覆率及び性能評価結果(壊れ性試験前後の保水量、荷重下吸収量及びゲル通液性並びに壊れ性試験前後の各測定値の変化率)を表1に示す。

【0096】
【表1】



4 サポート要件の判断
本件特許の発明の詳細な説明の段落【0006】によると、本件特許発明1及び2の解決しようとする課題(以下、「本件特許発明の課題」という。)は、「輸送やオムツ製造工程を経た後でも、膨潤したゲル間の通液性及び荷重下での吸収性能の両立が可能な水性液体吸収性樹脂粒子の製造方法を提供すること」である。
そして、同段落【0007】には、「本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A)を含有する樹脂粒子(B)を、炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価金属塩(d)及び多価グリシジル化合物(e)を用いて以下の方法[I]〜[III]のいずれかで表面処理することを特徴とする水性液体吸収性樹脂粒子(P)の製造方法;前記製造方法により得られ、エネルギー分散型X線分析法を用いた元素マッピングにより求められる粒子表面の多価金属塩(d)による被覆率が50〜100%である水性液体吸収性樹脂粒子;前記製造方法を用いて製造される水性液体吸収性樹脂粒子を含む吸収体;前記吸収体を備えた吸収性物品である。
方法[I]:
炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価金属塩(d)、多価グリシジル化合物(e)及び水を含有する混合液(W1)を用いて樹脂粒子(B)を表面処理する方法。
方法[II]:
炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価グリシジル化合物(e)及び水を含有し、多価金属塩(d)を含有しない混合液(W2)と、炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価金属塩(d)及び水を含有し、多価グリシジル化合物(e)を含有しない混合液(W3)とを用いて樹脂粒子(B)を表面処理する方法であって、以下の(1)〜(3)の工程のいずれかを含む方法:
(1)混合液(W2)で樹脂粒子(B)を表面処理した後、加熱処理を行い又は加熱処理を行わずに、混合液(W3)で更に表面処理する工程;
(2)混合液(W3)で樹脂粒子(B)を表面処理した後、加熱処理を行い又は加熱処理を行わずに、混合液(W2)で更に表面処理する工程;
(3)混合液(W2)と混合液(W3)で同時に表面処理する工程。
方法[III]:
炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価グリシジル化合物(e)及び水を含有し、多価金属塩(d)を含有しない混合液(W2)と、多価金属塩(d)及び水を含有し、炭素数4以下の多価アルコール(c)及び多価グリシジル化合物(e)を含有しない混合液(W4)とを用いて樹脂粒子(B)を表面処理する方法であって、以下の(4)〜(6)の工程のいずれかを含む方法:
(4)混合液(W2)で樹脂粒子(B)を表面処理した後、加熱処理を行わずに混合液(W4)で更に表面処理する工程;
(5)混合液(W4)で樹脂粒子(B)を表面処理した後、加熱処理を行い又は加熱処理を行わずに、混合液(W2)で更に表面処理する工程;
(6)混合液(W2)と混合液(W4)で同時に表面処理する工程。」と記載され、段落【0039】に、「本発明における炭素数4以下の多価アルコール(c)を用いることにより多価金属塩(d)による樹脂粒子の被覆率が向上し、樹脂粒子の耐壊れ性が向上する。」、段落【0043】に、「多価金属塩(d)を使用することにより、樹脂粒子(B)の表面の少なくとも一部が(d)で被覆され、樹脂粒子の耐壊れ性が向上する。」、段落【0051】ないし【0053】に、「方法[I]により表面処理した後、通常、加熱処理を行う。加熱温度は、樹脂粒子の耐壊れ性の観点から好ましくは100〜150℃、更に好ましくは110〜145℃、特に好ましくは125〜140℃である。150℃以下の加熱であれば蒸気を利用した間接加熱が可能であり設備上有利であり、100℃未満の加熱温度では吸収性能が悪くなる場合がある。また、加熱時間は加熱温度により適宜設定することができるが、吸収性能の観点から、好ましくは5〜60分、更に好ましくは10〜40分である。方法[II]及び[III]において・・・その加熱温度及び加熱時間は、上記方法[I]の表面処理後の加熱処理における加熱温度及び加熱時間と同様である。」、段落【0055】に、「本発明においては、無機粒子(f)を用いて樹脂粒子を表面処理する工程を含むことができ、水性液体吸収性樹脂粒子(P)は、無機粒子(f)で樹脂粒子が表面処理されてなるものでもよい。無機粒子(f)で表面処理されることにより、通液性が向上する。」と記載されている。
そして、【実施例】において、耐壊れ性試験前後の保水量、荷重下吸収量、ゲル通液性の各変化率について測定しており、方法[II]に相当する実施例3は、各測定値が102%、82%、68%と、比較例よりも数値が高くなっていることから、方法[II]により、輸送やオムツ製造工程を経た後でも、膨潤したゲル間の通液性及び荷重下での吸収性能の両立が図れることが示されており、方法[I]に相当する参考例1、4ないし8においても、各測定値が比較例よりも高くなっていることから、輸送やオムツ製造工程を経た後でも、膨潤したゲル間の通液性及び荷重下での吸収性能の両立が図れることが示されている。
さらに、方法[III]については、実施例自体はないものの、方法[III]は、方法[I]及び方法[II]と同じく、樹脂粒子(B)を、炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価金属塩(d)及び多価グリシジル化合物(e)を用いて表面処理するものであって、方法[II]と方法[III]は、炭素数4以下の多価アルコール(c)及び多価グリシジル化合物(e)、及び水を含有する混合液(W2)を用いることは共通し、多価金属塩(d)及び水を含有する混合液として、それらに加え、炭素数4以下の多価アルコール(c)を含有する混合液(W4)を使用するか、含有しない混合液(W2)を使用するかの違いにすぎない。
そうすると、両者共に、樹脂粒子(B)が表面処理される状態においては、炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価金属塩(d)及び多価グリシジル化合物(e)が、すべて同時に存在して処理されるのであるから、実施例3の方法[II]の耐壊れ性の性能をもって、方法[III]においても同程度の性能が得られると推認されるのが相当である。
以上の検討をふまえると、当業者は、「水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A)を含有する樹脂粒子(B)を、炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価金属塩(d)及び多価グリシジル化合物(e)を用いて以下の方法[I]〜[III];
方法[I]:
炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価金属塩(d)、多価グリシジル化合物(e)及び水を含有する混合液(W1)を用いて樹脂粒子(B)を表面処理する方法;
方法[II]:
炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価グリシジル化合物(e)、及び水を含有し、多価金属塩(d)を含有しない混合液(W2)と、炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価金属塩(d)及び水を含有し、多価グリシジル化合物(e)を含有しない混合液(W3)とを用いて樹脂粒子(B)を表面処理する方法であって、混合液(W2)と混合液(W3)で同時に表面処理する工程を含む方法;
方法[III]:
炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価グリシジル化合物(e)及び水を含有し、多価金属塩(d)を含有しない混合液(W2)と、多価金属塩(d)及び水を含有し、炭素数4以下の多価アルコール(c)及び多価グリシジル化合物(e)を含有しない混合液(W4)とを用いて樹脂粒子(B)を表面処理する方法であって、混合液(W2)と混合液(W4)で同時に表面処理する工程を含む方法;
のいずれかの方法で表面処理した後、110〜145℃で加熱処理する水性液体吸収性樹脂粒子(P)の製造方法」により、本件発明の課題を解決できると認識するものである。
そして、本件特許発明1は、上記特定事項を有するものであるから、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件発明の課題を解決できるものである。
したがって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件特許発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
また、本件特許発明2についても同様である。
よって、本件特許発明1及び2に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。

5 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、上記第4 1(3)ア及びイの主張をしているので、以下検討する。
(1)主張アについて
方法[III]は、加熱処理の時期において、比較例1と異なっているところ、本件特許の発明の詳細な説明の段落【0053】に、「なお、方法[III]の工程(4)においては、混合液(W2)での表面処理と混合液(W4)での表面処理の間で加熱処理を行うと耐壊れ性が低下するため、混合液(W2)での表面処理後、加熱処理を行わずに混合液(W4)で表面処理する必要がある。」と、比較例1が本件特許発明の課題を解決できないことが説明されているのであるから、比較例1と方法[III]が類似することをもって、本件特許発明の方法[III]がサポート要件を満たさないことを主張する異議申立人の主張は首肯することができない。
(2)主張イについて
上記4で検討したとおり、方法[I]は、参考例1、4ないし8、及びその他の詳細な説明の記載よりにより発明の課題を解決できると認識するものであり、方法[II]及び[III]は、実施例3及び他の詳細な説明の記載より発明の課題を解決できると認識するものであるから、実施例が1点のみしか存在しないことをもって、本件特許発明がサポート要件を満たさないことを主張する異議申立人の主張は首肯することができない。

6 申立理由3についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、申立理由3によっては取り消すことはできない。

第7 結語
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件特許の請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件特許の請求項3ないし5に係る特許は、訂正により削除されたため、特許異議申立人による請求項3ないし5に係る特許異議の申立ては、いずれも、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A)を含有する樹脂粒子(B)を、炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価金属塩(d)及び多価グリシジル化合物(e)を用いて以下の方法[I]〜[III];
方法[I]:
炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価金属塩(d)、多価グリシジル化合物(e)及び水を含有する混合液(W1)を用いて樹脂粒子(B)を表面処理する方法;
方法[II]:
炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価グリシジル化合物(e)、及び水を含有し、多価金属塩(d)を含有しない混合液(W2)と、炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価金属塩(d)及び水を含有し、多価グリシジル化合物(e)を含有しない混合液(W3)とを用いて樹脂粒子(B)を表面処理する方法であって、混合液(W2)と混合液(W3)で同時に表面処理する工程を含む方法;
方法[III]:
炭素数4以下の多価アルコール(c)、多価グリシジル化合物(e)及び水を含有し、多価金属塩(d)を含有しない混合液(W2)と、多価金属塩(d)及び水を含有し、炭素数4以下の多価アルコール(c)及び多価グリシジル化合物(e)を含有しない混合液(W4)とを用いて樹脂粒子(B)を表面処理する方法であって、混合液(W2)と混合液(W4)で同時に表面処理する工程を含む方法;
のいずれかの方法で表面処理した後、110〜145℃で加熱処理する水性液体吸収性樹脂粒子(P)の製造方法であり、無機粒子(f)を用いて樹脂粒子を表面処理する工程を含み、前記方法[I]における混合液(W1)が前記無機粒子(f)を含有し、前記方法[II]における混合液(W2)及び/又は混合液(W3)が前記無機粒子(f)を含有し、前記方法[III]における混合液(W2)及び/又は混合液(W4)が前記無機粒子(f)を含有する水性液体吸収性樹脂粒子(P)の製造方法。
【請求項2】
多価金属塩(d)がジルコニウム、アルミニウム又はチタニウムの無機酸塩である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照
異議決定日 2021-10-25 
出願番号 P2017-505323
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (C08J)
P 1 651・ 113- YAA (C08J)
P 1 651・ 121- YAA (C08J)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 細井 龍史
植前 充司
登録日 2020-06-24 
登録番号 6722654
権利者 SDPグローバル株式会社
発明の名称 水性液体吸収性樹脂粒子の製造方法、水性液体吸収性樹脂粒子、吸収体及び吸収性物品  
代理人 古谷 信也  
代理人 古谷 信也  
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