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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G02B
審判 全部申し立て 2項進歩性  G02B
管理番号 1382373
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-03-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-02-05 
確定日 2021-10-25 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6736381号発明「光学積層体、偏光板及び表示装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6736381号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 特許第6736381号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続等の経緯
特許第6736381号の請求項1〜6に係る特許(以下、請求項の番号とともに「本件特許1」などといい、総称して「本件特許」という。)は、平成28年6月27日の出願であって、令和2年7月17日に特許権の設定の登録がされたものである。
本件特許について、令和2年8月5日に特許掲載公報が発行されたところ、発行の日から6月以内である令和3年2月5日に特許異議申立人 居石美奈(以下「特許異議申立人」という。)から、全請求項に対して、特許異議の申立てがされた(異議2021−700134号、以下「本件事件」という。)。
本件事件についての、その後の手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和 3年 4月30日付け:取消理由通知書
令和 3年 7月 9日付け:訂正請求書(この訂正請求書による訂正の請 求を、以下「本件訂正請求」という。)
令和 3年 7月 9日付け:意見書(特許権者)
令和 3年 9月 8日付け:意見書(特許異議申立人)


第2 本件訂正請求について
1 訂正の趣旨及び訂正の内容
(1)訂正の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、特許第6736381号の明細書及び特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1〜6について訂正することを求める、というものである。

(2)訂正の内容
本件訂正請求において特許権者が求める訂正の内容は、以下のとおりである。なお、下線は当合議体が付したものであり、訂正箇所を示す。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「0.5mm幅の光学くしを用いた透過像鮮明度が70〜95%であり、光干渉方式により測定した、前記光学機能層の最表面の凸部の平均面積及び算術平均高さSaの積が4.7〜44.0μm3であり、平均傾斜角θaが0.124〜0.349°である」と記載されているのを、「0.5mm幅の光学くしを用いた透過像鮮明度が76〜92%であり、光干渉方式により測定した、前記光学機能層の最表面の凸部の平均面積及び算術平均高さSaの積が4.7〜29.7μm3であり、平均傾斜角θaが0.124〜0.251°である」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2〜6も同様に訂正する)。

イ 訂正事項2
願書に添付した明細書の【0007】に「0.5mm幅の光学くしを用いた透過像鮮明度が70〜95%であり、光干渉方式により測定した、前記光学機能層の最表面の凸部の平均面積及び算術平均高さSaの積が4.7〜44.0μm3であり、平均傾斜角θaが0.124〜0.349°である」と記載されているのを、「0.5mm幅の光学くしを用いた透過像鮮明度が76〜92%であり、光干渉方式により測定した、前記光学機能層の最表面の凸部の平均面積及び算術平均高さSaの積が4.7〜29.7μm3であり、平均傾斜角θaが0.124〜0.251°である」に訂正する。

(3)一群の請求項について
本件訂正請求は、一群の請求項である請求項1〜6に対して請求されたものである。

2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
訂正事項1による訂正は、光学積層体の「0.5mm幅の光学くしを用いた透過像鮮明度」、「光干渉方式により測定した、前記光学機能層の最表面の凸部の平均面積及び算術平均高さSaの積」及び「平均傾斜角θa」の数値範囲を、それぞれ、「70〜95%」から「76〜92%」に、「4.7〜44.0μm3」から「4.7〜29.7μm3」に、及び「0.124〜0.349°」から「0.124〜0.251°」に、限定するものである。
そうしてみると、訂正事項1による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号(特許請求の範囲の減縮)に掲げる事項を目的とする訂正に該当する。

また、上記訂正は、本件特許の明細書の【0051】の【表1】の実施例3、4、6、7及び10〜13の光学積層体の記載に基づくものである。
そうしてみると、訂正事項1による訂正は、当業者によって、明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正である。
加えて、訂正事項1による訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかであるから、訂正事項1による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。
これらの点は、請求項1の記載を引用して記載された、請求項2〜6についてみても、同じである。

(2)訂正事項2について
訂正事項2による訂正は、訂正事項1に係る訂正に伴って、特許請求の範囲の請求項1の記載と発明の詳細な説明の記載との整合性を図るための訂正である。
したがって、訂正事項2による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる事項(明瞭でない記載の釈明)を目的とする訂正に該当する。
また、訂正事項2による訂正は、本件特許の願書に添付した明細書の記載に基づくものであるから、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、訂正事項2による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
さらに、訂正事項2による訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれないこととされた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとならないことは明らかであるから、訂正事項3による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正に該当しない。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書、同条9項において準用する同法126条4項から6項の規定に適合する。
よって、結論に記載のとおり、特許第6736381号の特許請求の範囲及び明細書を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり、訂正後の請求項〔1−6〕及び訂正後の明細書に訂正することを認める。


第3 本件特許発明
上記「第2」のとおり、本件訂正請求による訂正は認められたから、本件特許の請求項1〜6に係る発明(以下、請求項の番号とともに「本件特許発明1」などといい、総称して「本件特許発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のものである。

「【請求項1】
透光性基体上に光学機能層が少なくとも1層以上積層されてなる光学積層体であって、
前記光学機能層の少なくとも一方の面に凹凸形状が形成されており、
0.5mm幅の光学くしを用いた透過像鮮明度が76〜92%であり、
光干渉方式により測定した、前記光学機能層の最表面の凸部の平均面積及び算術平均高さSaの積が4.7〜29.7μm3であり、
平均傾斜角θaが0.124〜0.251°であることを特徴とする、光学積層体。
【請求項2】
前記光学機能層がランダム凝集構造を形成していることを特徴とする、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項3】
前記光学機能層が放射線硬化型樹脂組成物の硬化膜からなる1層以上の層からなることを特徴とする、請求項1または2に記載の光学積層体。
【請求項4】
屈折率調整層、帯電防止層、防汚層のうちの少なくとも1層を更に備える、請求項1〜3のいずれかに記載の光学積層体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の光学積層体を構成する前記透光性基体上に、偏光基体が積層されてなることを特徴とする、偏光板。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の光学積層体を備えることを特徴とする、表示装置。」


第4 取消しの理由及び特許異議の申立ての理由の概要
1 取消理由通知について
当合議体は、令和3年4月30日付け取消理由通知書において、本件特許の特許請求の範囲の請求項1〜6に係る発明に対し、概略、以下のとおりの取消理由を通知した。

理由1:(進歩性)本件特許の特許請求の範囲の請求項1〜6に係る発明は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜6に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。

理由2:(明確性)本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。

2 特許異議申立ての理由
特許異議の申立ての理由は、令和3年4月30日付け取消理由通知書と同旨である。

3 証拠について
(1)特許異議申立人が提出した証拠は、以下のとおりである。
甲1:特開2015−206837号公報
甲2:特開2016−22661号公報
甲3:国際公開第2008/140108号
甲4:特開2007−187971号公報
甲5:特開2005−140890号公報
甲6:特開2011−232546号公報
甲7:オリンパス株式会社、”工業用顕微鏡 表面粗さ測定−用語解説・その他資料”、[online]、掲載年月日不明、オリンパス株式会社、[令和3年10月1日検索]、インターネット
<URL:https://www.olympus-ims.com/ja/metrology/surface-roughness-measurement-portal/terms-and-standards/>
甲8:株式会社東京精密、「初めての 粗さ測定 使ってみよう サーフコム ACCTee 簡易取扱説明書」、株式会社東京精密、2009年1月20日、p.1-50
甲9:特開2013−105160号公報
(当合議体注:甲1及び甲2は主引例であり、甲3〜6、9は副引例又は周知技術を示す文献であり、甲7及び甲8は技術常識を示す参考資料である。)

(2)特許権者が提出した証拠は、以下のとおりである。
乙1:解析ソフトウェア「VS−Viewer」のオンラインヘルプ、「基本操作ガイド:表面形状解析」
乙2:解析ソフトウェア「VS−Viewer」のオンラインヘルプ、「画像解析:ISOパラメータ」
乙3:本件特許権者が行った本件特許明細書の実施例1〜13の測定データの解析結果を示す表
乙4:解析ソフトウェア「VS−Viewer」のオンラインヘルプ、「画像解析:角度/法線」
乙5:国際公開第2011/135853号
(当合議体注:乙1、2、4は解析ソフトウェアについての参考資料であり、乙3は解析結果を示す資料であり、乙5は技術常識を示す参考文献である。)


第5 当合議体の判断
1 取消理由通知の「理由1:(進歩性)」について
(1)引用文献1の記載
本件出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1(特開2015−206837号公報)には、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性基材と、前記光透過性基材上に設けられ、かつ凹凸面を有する防眩層を備える防眩フィルムであって、
前記防眩層が、複数の有機微粒子と、複数の無機微粒子と、バインダ樹脂とを含み、
0.125mm幅、0.25mm幅、0.5mm幅、1.0mm幅、2.0mm幅の光学くしを用いて測定された前記防眩フィルムの透過画像鮮明度の算術平均値が70%以上95%以下であり、かつ前記算術平均値と前記各光学くしを用いて測定された前記透過画像鮮明度との差の絶対値が10%以内である、防眩フィルム。
・・・省略・・・
【請求項9】
請求項1に記載の防眩フィルムと、
前記防眩フィルムの前記光透過性基材における前記防眩層が形成されている面とは反対側の面に形成された偏光素子とを備えることを特徴とする、偏光板。
・・・省略・・・
【請求項11】
請求項1に記載の防眩フィルム、または請求項9に記載の偏光板を備える、画像表示装置。」

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、防眩フィルム、偏光板、液晶パネルおよび画像表示装置に関する。
・・・省略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものである。すなわち、映り込みが気にならない程度の防眩性を得ることができるとともに、良好なギラツキ防止性および良好な黒彩感を得ることができる防眩フィルム、偏光板、液晶パネル、および画像表示装置を提供することを目的とする。
・・・省略・・・
【発明の効果】
【0012】
本発明の一の態様の防眩フィルム、および他の態様の偏光板、液晶パネル、および画像表示装置によれば、0.125mm幅、0.25mm幅、0.5mm幅、1.0mm幅、2.0mm幅の光学くしを用いて測定された前記防眩フィルムの透過画像鮮明度の算術平均値が70%以上95%以下であり、かつ前記算術平均値と前記各光学くしを用いて測定された前記透過画像鮮明度との差が10%以内であるので、映り込みが気にならない程度の防眩性を得ることができるとともに、良好なギラツキ防止性および良好な黒彩感を得ることができる。」

ウ 「【発明を実施するための形態】
・・・省略・・・
【0015】
<<<防眩フィルム>>>
図1は本実施形態に係る防眩フィルムの概略構成図であり、図2は図1の一部を拡大した図であり、図3は図2の一部を拡大した図であり、図4は本実施形態に係る防眩フィルムの透過像鮮明度を透過像鮮明度測定装置で測定する様子を示した模式図である。
【0016】
図1に示されるように、防眩フィルム10は、防眩フィルム10は、光透過性基材11と、光透過性基材11上に設けられ、かつ凹凸面12Aを有する防眩層12とを備えている。
【0017】
防眩フィルム10の表面10Aは、凹凸面となっている。本実施形態においては、防眩層12上に低屈折率層等の機能層が設けられていないので、防眩層12の凹凸面12Aが防眩フィルム10の表面10Aとなっている。「機能層」とは、防眩フィルムにおいて、何らかの機能を発揮することを意図された層であり、具体的には、例えば、反射防止性、帯電防止性、または防汚性等の機能を発揮するための層が挙げられる。機能層は、単層のみならず、2層以上積層されたものであってもよい。
・・・省略・・・
【0023】
上記5種類の光学くしを用いて測定される防眩フィルム10の透過画像鮮明度の算術平均値は、70%以上95%以下となっている。この防眩フィルム10の透過画像鮮明度の算術平均値の下限は、80%以上であることが好ましく、この防眩フィルム10の透過画像鮮明度の算術平均値の上限は、90%以下であることが好ましい。0.125mm幅の光学くしを用いて測定される防眩フィルム10の透過画像鮮明度は70%以上となっていることが好ましく、0.25mm幅の光学くしを用いて測定される防眩フィルム10の透過画像鮮明度は70%以上となっていることが好ましく、0.5mm幅の光学くしを用いて測定される防眩フィルム10の透過画像鮮明度は80%以上となっていることが好ましく、1.0mm幅の光学くしを用いて測定される防眩フィルム10の透過画像鮮明度は80%以上となっていることが好ましく、2.0mm幅の光学くしを用いて測定される防眩フィルム10の透過画像鮮明度は90%以上となっていることが好ましい。
【0024】
防眩フィルム10の表面10Aにおいては、表面10Aを構成する凹凸の平均間隔Smが0.1mm以上0.6mm以下となっていることが好ましく、0.2mm以上0.4mm以下となっていることがより好ましい。防眩フィルム10の表面10Aにおいては、表面10Aを構成する凹凸の平均傾斜角θaが0.05°以上0.30°以下となっていることが好ましく、0.15°以上0.25°以下となっていることがより好ましい。
【0025】
防眩フィルム10の表面10Aにおいては、表面10Aを構成する凹凸の算術平均粗さRaが0.02μm以上0.20μm以下となっていることが好ましく、0.04μm以上0.10μm以下となっていることがより好ましい。
【0026】
上記「Sm」、および「Ra」の定義は、JIS B0601−1994に従うものとする。「θa」の定義は、表面粗さ測定器:SE−3400/(株)小坂研究所製取り扱い説明書(1995.07.20改訂)に従うものとする。具体的には、θaは下記式(2)で表される。
θa=tan−1Δa …(2)
式中、Δaは傾斜を縦横比率で表したものであり、各凹凸の極小部と極大部の差(各凸部の高さに相当)の総和を基準長さで割った値である。
・・・省略・・・
【0033】
<<光透過性基材>>
光透過性基材11としては、光透過性を有すれば特に限定されないが、例えば、セルロースアシレート基材、シクロオレフィンポリマー基材、ポリカーボネート基材、アクリレート系ポリマー基材、ポリエステル基材、またはガラス基材が挙げられる。
・・・省略・・・
【0043】
<<防眩層>>
防眩層12は、防眩性を発揮する層であり、図2に示されるように、複数の有機微粒子13と、複数の無機微粒子14と、バインダ樹脂15とを含んでいる。防眩層12は、防眩性を発揮するとともに、他の機能を発揮するものであってもよい。具体的には、防眩層12は、防眩性を発揮するとともに、例えば、ハードコート性、反射防止性、帯電防止性、または防汚性等の機能を発揮する層であってもよい。
・・・省略・・・
【0047】
<有機微粒子>
複数の有機微粒子13のうち少なくとも一部の有機微粒子13は2個以上の有機微粒子13が凝集した有機微粒子凝集体13Aとして存在していることが好ましい。有機微粒子凝集体13Aを構成する有機微粒子13の個数が、2個以上であることにより、凹凸面12Aにおいて、傾斜が緩やかな凸部山頂の面積が増加し、傾斜が急な凸部立ち上がり面の面積が減少するので、コントラストの劣化を抑制できる。
・・・省略・・・
【0055】
<無機微粒子>
無機微粒子14としては、特に限定されないが、例えば、シリカ(SiO2)微粒子、アルミナ微粒子、チタニア微粒子、酸化スズ微粒子、アンチモンドープ酸化スズ(略称;ATO)微粒子、酸化亜鉛微粒子等の無機酸化物微粒子が挙げられる。
・・・省略・・・
【0084】
<バインダ樹脂>
バインダ樹脂15は、光重合性化合物の重合物(架橋物)を含むものである。バインダ樹脂は、光重合性化合物の重合物(架橋物)の他、溶剤乾燥型樹脂や熱硬化性樹脂を含んでいてもよい。光重合性化合物は、光重合性官能基を少なくとも1つ有するものである。本明細書における、「光重合性官能基」とは、光照射により重合反応し得る官能基である。光重合性官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性二重結合が挙げられる。なお、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」および「メタクリロイル基」の両方を含む意味である。また、光重合性化合物を重合する際に照射される光としては、可視光線、並びに紫外線、X線、電子線、α線、β線、およびγ線のような電離放射線が挙げられる。
・・・省略・・・
【0097】
本実施形態によれば、防眩フィルムが、0.125mm幅、0.25mm幅、0.5mm幅、1.0mm幅、2.0mm幅の光学くしを用いて測定された透過画像鮮明度の算術平均値が70%以上であり、かつこの算術平均値と各光学くしを用いて測定された透過画像鮮明度との差の絶対値が10%以内となっているので、映り込みが気にならない程度の防眩性を得ることができるとともに、良好なギラツキ防止性および良好な黒彩感を得ることができる。すなわち、上記算術平均値と各光学くしを用いて測定された透過画像鮮明度との差の絶対値が10%以内となっているので、光学くし毎の透過画像鮮明度の差が小さい。これは、透過光が防眩フィルムの表面の凸部でのみ拡散され、防眩フィルムの表面の平坦部では拡散されないことを示している。すなわち、平坦部においてはほぼ傾斜が無いことを意味する。このように、平坦部にほぼ傾斜が無いことで、ギラツキの発生を抑制できるので、良好なギラツキ防止性を得ることができる。また、平坦部にはほぼ傾斜が無いことで、適度な正反射成分を持たせることができるので、動画像を表示したとき、画像の照りや輝きが増し、躍動感を得ることができる。さらに、透過画像鮮明度の算術平均値が70%以上となっているので、防眩フィルムの表面の凸部が大き過ぎない。このため、上記効果に加えて、外光の過度な拡散を生ずることもなく、明室コントラストの低下を抑制できるとともに、映像光が迷光となることも防止することができるので、良好な暗室コントラストをも得ることができる。また、透過画像鮮明度の算術平均値が95%以下となっていることで、平坦部が多過ぎない、すなわち、防眩フィルムの表面において凸部が適度に形成されて、反射光を適度に拡散させることができるので、映り込みが気にならない程度の防眩性を得ることができる。これにより、映り込みが気にならない程度の防眩性を得ることができるとともに、良好なギラツキ防止性および優れたコントラストと躍動感とを兼ね備えた良好な黒彩感を得ることができる。なお、観察者(観測者)および観察者の背景の映り込みが気にならない程度の防眩性とは、例えば、観察者がいることは認められるが、その輪郭だけは不明瞭なぼやけた状態となり、また観察者の背景にある物も存在は認められるが、輪郭や境界が不明瞭となるような防眩性を意味する。このように、観察者の輪郭などがぼやけるだけで、観察者にとってはより映り込みが気にならない状態となる。
・・・省略・・・
【0100】
<<防眩層用組成物>>
防眩層用組成物は、少なくとも、有機微粒子13、無機微粒子14および上記光重合性化合物を含んでおり、好ましくは、有機微粒子凝集体13A、第1の無機微粒子凝集体14Aおよび第2の無機微粒子凝集体14Dを含んでいる。その他、必要に応じて、防眩層用組成物に、上記熱可塑性樹脂、上記熱硬化性樹脂、溶剤、重合開始剤を添加してもよい。さらに、防眩層用組成物には、防眩層の硬度を高くする、硬化収縮を抑える、屈折率を制御する等の目的に応じて、従来公知の分散剤、界面活性剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、易滑剤等を添加していてもよい。
・・・省略・・・
【0112】
<<<偏光板>>>
防眩フィルム10は、例えば、偏光板に組み込んで使用することができる。図5は本実施形態に係る防眩フィルムを組み込んだ偏光板の概略構成図である。図5に示されるように偏光板20は、防眩フィルム10と、偏光子21と、保護フィルム22とを備えている。偏光子21は、光透過性基材11における防眩層12が形成されている面とは反対側の面に形成されている。保護フィルム22は、偏光子21の防眩フィルム10が設けられている面とは反対側の面に設けられている。保護フィルム22は位相差フィルムであってもよい。
・・・省略・・・
【0117】
<<<画像表示装置>>>
防眩フィルム10、偏光板20、液晶パネル30は、画像表示装置に組み込んで使用することができる。画像表示装置としては、例えば液晶ディスプレイ(LCD)、陰極線管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、タッチパネル、タブレットPC、電子ペーパー等が挙げられる。図7は本実施形態に係る防眩フィルムを組み込んだ画像表示装置の一例である液晶ディスプレイの概略構成図である。」

エ 「【実施例】
【0119】
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの記載に限定されない。
【0120】
<防眩層用組成物の調製>
まず、下記に示す組成となるように各成分を配合して、防眩層用組成物を得た。
(防眩層用組成物1)
・アクリル−スチレン共重合体粒子(有機微粒子、平均一次粒径2.0μm、屈折率1.52、積水化成品工業社製):3質量部
・フュームドシリカ(無機微粒子、ヘキサメチルジシラザン処理、平均一次粒径50nm、日本アエロジル社製):1質量部
・ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)(製品名「PETIA」、ダイセル・サイテック社製):60質量部
・イソシアヌル酸エトキシ変性ジアクリレート(製品名「M−215」、東亜合成社製):40質量部
・重合開始剤(製品名「イルガキュア184」、BASFジャパン社製):5質量部
・ポリエーテル変性シリコーン(製品名「TSF4460」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製):0.025質量部
・トルエン:120質量部
・メチルイソブチルケトン(MIBK):30質量部
【0121】
(防眩層用組成物2)
・アクリル−スチレン共重合体粒子(有機微粒子、平均一次粒径2.0μm、屈折率1.52、積水化成品工業社製):4質量部
・フュームドシリカ(無機微粒子、ヘキサメチルジシラザン処理、平均一次粒径50nm、日本アエロジル社製):1質量部
・ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)(製品名「PETA」、ダイセル・サイテック社製):60質量部
・ウレタンアクリレート(製品名「UV1700B」、日本合成化学社製):40質量部
・重合開始剤(製品名「イルガキュア184」、BASFジャパン社製):5質量部
・ポリエーテル変性シリコーン(製品名「TSF4460」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製):0.025質量部
・トルエン:120質量部
・シクロヘキサノン:30質量部
【0122】
(防眩層用組成物3)
・アクリル−スチレン共重合体粒子(有機微粒子、平均一次粒径2.0μm、屈折率1.52、積水化成品工業社製):2質量部
・フュームドシリカ(無機微粒子、オクチルシラン処理、平均一次粒径12nm、日本アエロジル社製):2質量部
・ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)(製品名「PETA」、ダイセル・サイテック社製):60質量部
・ウレタンアクリレート(製品名「UV1700B」、日本合成化学社製):40質量部
・重合開始剤(製品名「イルガキュア184」、BASFジャパン社製):5質量部
・ポリエーテル変性シリコーン(製品名「TSF4460」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製):0.025質量部
・トルエン:105質量部
・イソプロピルアルコール:30質量部
・シクロヘキサノン:15質量部
・・・省略・・・
【0126】
<実施例1>
光透過性基材としての厚さ60μmのトリアセチルセルロース基材(富士フイルム社製、TD60UL)を準備し、トリアセチルセルロース基材の片面に、防眩層用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。次いで、形成した塗膜に対して、0.2m/sの流速で70℃の乾燥空気を15秒間流通させた後、さらに10m/sの流速で70℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を窒素雰囲気(酸素濃度200ppm以下)下にて積算光量が100mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させることにより、硬化時の厚みが4μmの防眩層を形成し、実施例1に係る防眩フィルムを作製した。
【0127】
<実施例2>
実施例2においては、防眩層用組成物1に代えて防眩層用組成物2を用い、硬化時の防眩層の厚みを3μmとした以外は、実施例1と同様にして、防眩フィルムを作製した。
【0128】
<実施例3>
実施例3においては、防眩層用組成物1に代えて防眩層用組成物3を用いた以外は、実施例1と同様にして、防眩フィルムを作製した。
・・・省略・・・
【0135】
<透過画像鮮明度>
実施例及び比較例で得られた各防眩フィルムについて、JIS K7374の透過法による像鮮明度の測定法に準拠して、写像性測定器(型番:ICM−1T、スガ試験機社製)を設定し、トリアセチルセルロース基材側を光源に向けて設置して、透過画像鮮明度を測定した。光学くしとしては、0.125mm、0.25mm幅、0.5mm幅、1.0mm、2.0mm幅のものを用いて、透過画像鮮明度をそれぞれ測定した。また、それぞれ測定した透過画像鮮明度を合計して、算術平均値を求め、さらにこの算術平均値と各透過画像鮮明度の値との差の絶対値を求めた。
・・・省略・・・
【0140】
<Sm、θa、およびRaの測定>
実施例及び比較例で得られた各防眩フィルムの表面において、Sm、θa、およびRaを測定した。SmおよびRaの定義は、JIS B0601−1994に従うものとし、θaは表面粗さ測定器:SE−3400/(株)小坂研究所製取り扱い説明書(1995.07.20改訂)に従うものとする。
【0141】
Sm、θa、およびRaは、具体的には、表面粗さ測定器(型番:SE−3400/(株)小坂研究所製)を用いて、下記の測定条件により測定された。
1)表面粗さ検出部の触針((株)小坂研究所製の商品名SE2555N(2μ標準))
・先端曲率半径2μm、頂角90度、材質ダイヤモンド
2)表面粗さ測定器の測定条件
・基準長さ(粗さ曲線のカットオフ値λc):2.5mm
・評価長さ(基準長さ(カットオフ値λc)×5):12.5mm
・触針の送り速さ:0.5mm/s
・予備長さ:(カットオフ値λc)×2
・縦倍率:2000倍
・横倍率:10倍
・・・省略・・・
【0144】
以下、結果を表1および表2に示す。
【表1】

【0145】
【表2】

【0146】
【表3】

【0147】
表2に示されるように、比較例1においては、良好な防眩性は得られたものの、ギラツキが劣っていた。これは、比較例1においては、透過画像鮮明度の各光学くしと算術平均値との差の絶対値が大きいため、平坦な部分が少なくギラツキが生じやすくなっていたためであると考えられる。また、比較例2においては、ギラツキおよび黒彩感は良好であったものの、防眩性が劣っていた。これは、比較例2においては、透過画像鮮明度の算術平均値が大きいため、平坦な部分が多過ぎたためであると考えられる。また、比較例3においては、防眩性が良好であり、かつギラツキが気にならなかったものの、黒彩感が低かった。これは、比較例3においては、有機微粒子としてのアクリル−スチレン共重合体粒子と、不定形シリカにより防眩層表面の凹凸を形成し、またヘイズが高いのでギラツキを抑えることができたものの、透過画像鮮明度の算術平均値が小さく、平坦部がほとんど無いためであると考えられる。これに対し、実施例1〜3は、防眩性が良好であり、ギラツキが気にならず、かつ黒彩感が良好であった。」

オ 「【図1】



(2)引用発明
上記(1)によると、実施例1の防眩層用組成物1は、甲1の【0120】に記載されたものである。また、実施例1の防眩フィルムは、0.5mm幅光学くしの透過画像鮮明度が85.9%(甲1の【0144】の【表1】)であり、θaが0.185°(甲1の【0146】の【表3】)である。ここで、θaは、防眩フィルムの表面を構成する凹凸の平均傾斜角である(甲1の【0024】)。
そうしてみると、甲1には、実施例1の防眩フィルムとして、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「 光透過性基材としてのトリアセチルセルロース基材を準備し、トリアセチルセルロース基材の片面に、防眩層用組成物1を塗布し、塗膜を形成し、次いで、形成した塗膜に対して、乾燥空気を流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を照射して塗膜を硬化させることにより、防眩層を形成し、作製した防眩フィルムであって、
0.5mm幅光学くしの透過画像鮮明度が85.9%であり、
防眩フィルムの表面を構成する凹凸の平均傾斜角であるθaが0.185°である防眩フィルム。
ここで、防眩層用組成物1は、下記に示す組成となるように各成分を配合して得たものである。
・アクリル−スチレン共重合体粒子:3質量部
・フュームドシリカ:1質量部
・ペンタエリスリトールトリアクリレート:60質量部
・イソシアヌル酸エトキシ変性ジアクリレート:40質量部
・重合開始剤:5質量部
・ポリエーテル変性シリコーン:0.025質量部
・トルエン:120質量部
・メチルイソブチルケトン:30質量部」

(3)本件特許発明1について
ア 甲1の実施例1を主引例とした場合
(ア)対比
本件特許発明1と引用発明を対比する。

a 透光性基体、光学機能層、光学積層体
引用発明の「防眩フィルム」は、「光透過性基材としてのトリアセチルセルロース基材を準備し、トリアセチルセルロース基材の片面に、防眩層用組成物1を塗布し、塗膜を形成し、次いで、形成した塗膜に対して、乾燥空気を流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を照射して塗膜を硬化させることにより、防眩層を形成し、作製した」ものである。
上記組成及び製法からみて、引用発明の「光透過性基材としてのトリアセチルセルロース基材」、「防眩層」及び「防眩フィルム」は、それぞれ、本件特許発明1の「透光性基体」、「光学機能層」及び「光学積層体」に、相当する。
また、引用発明の「防眩フィルム」は、本件特許発明1の「光学積層体」の「透光性基体上に光学機能層が少なくとも1層以上積層されてなる」との要件を満たす。

b 凹凸形状
引用発明の「防眩層用組成物1」は、「アクリル−スチレン共重合体粒子:3質量部」、「フュームドシリカ:1質量部」、「ペンタエリスリトールトリアクリレート:60質量部」、「イソシアヌル酸エトキシ変性ジアクリレート:40質量部」、「重合開始剤:5質量部」、「ポリエーテル変性シリコーン:0.025質量部」、「トルエン:120質量部」及び「メチルイソブチルケトン(MIBK):30質量部」「となるように各成分を配合して得たものである」。
上記aの組成及び製法並びに上記組成から、引用発明の「防眩層」は、少なくとも一方の面に凹凸形状が形成されているといえる。
そうしてみると、引用発明の「防眩層」は、本件特許発明1の「光学機能層」の「少なくとも一方の面に凹凸形状が形成されている」との要件を満たす。

c 透過像鮮明度
引用発明の「防眩フィルム」の「0.5mm幅光学くしの透過画像鮮明度」は、「85.9%であ」る。
そうしてみると、引用発明の「防眩フィルム」は、本件特許発明1の「光学積層体」の「0.5mm幅の光学くしを用いた透過像鮮明度が76〜92%であり」との要件を満たす。

d 平均傾斜角
引用発明の「防眩フィルムの表面を構成する凹凸の平均傾斜角であるθa」は、「0.185°である」。
そうしてみると、引用発明の「防眩フィルム」は、本件特許発明1の「光学積層体」の「平均傾斜角θaが0.124〜0.251°である」との要件を満たす。

(イ)一致点及び相違点
上記(ア)より、本件特許発明1と引用発明は、
「 透光性基体上に光学機能層が少なくとも1層以上積層されてなる光学積層体であって、
前記光学機能層の少なくとも一方の面に凹凸形状が形成されており、
0.5mm幅の光学くしを用いた透過像鮮明度が76〜92%であり、
平均傾斜角θaが0.124〜0.251°である、光学積層体。」の点で一致し、次の点で相違する。

(相違点)
本件特許発明1が、「光干渉方式により測定した、前記光学機能層の最表面の凸部の平均面積及び算術平均高さSaの積が4.7〜29.7μm3であ」るのに対して、引用発明の「防眩層」は、このように特定されていない点。

(ウ)判断
上記相違点について検討する。
まず、引用発明の「防眩層用組成物1」に用いられている微粒子は、本件特許発明1に用いられているものとは相違し、引用発明が上記相違点に係る構成を有している慨然性が高いとまではいえない。
たしかに、防眩フィルムにおいて、ざらつき、ぎらつきを防止するために、凹凸形状の大きさや密度分布を制御することは、甲3(国際公開第2008/140108号)の4頁、甲4(特開2007−187971号公報)の【0094】〜【0095】、甲5(特開2005−140890号公報)の【0007】〜【0009】に記載されているように周知の課題である。
しかしながら、上記相違点に係る光学機能層の最表面の凸部の平均面積及び算術平均高さSaの積を用いること、及び上記積の値を「4.7〜29.7μm3」の範囲内とすることは、甲1〜甲5、甲6(特開2011−232546号公報)、甲9(特開2013−105160号公報)のいずれの文献にも、記載はなく、また、周知技術であるともいえない。
したがって、防眩フィルムにおいて、ざらつき、ぎらつきを防止するために、凹凸形状の大きさや密度分布を制御することは、周知の課題であるといえども、たとえ当業者であっても、引用発明において、上記相違点に係る光学機能層の最表面の凸部の平均面積及び算術平均高さSaの積を特定の数値範囲内とする構成には到らない。

さらに、進んで検討する。
甲1の【0025】には、「防眩フィルム10の表面10Aにおいては、表面10Aを構成する凹凸の算術平均粗さRaが0.02μm以上0.20μm以下となっていることが好ましく、0.04μm以上0.10μm以下となっていることがより好ましい。」と記載されている。また、甲1の【0146】の【表3】の実施例1〜3のRaは、0.067、0.067、0.092となっている。
一方で、甲5の【請求項1】及び【0018】には、それぞれ、「表面に微細な凹凸が形成されている防眩フィルムであって、凹凸の平均高さよりも高い領域を凸、凹凸の平均高さよりも低い領域を凹とし、個々の凸の投影面積又は凹の投影面積を求めて、所定の面積刻みで当該凸又は凹の頻度を求め、さらに面積×頻度により上記所定面積刻みで見かけの面積の頻度を計算し、得られる凸又は凹の見かけの面積の頻度をヒストグラムで表したときに、ピーク値が300μm2以下の位置に現れ、かつそのピークの半値幅が60μm2以下であることを特徴とする、防眩フィルム。」及び「このヒストグラムにおいて、ピーク値の現れる面積値が大きくなるほど、凹凸が粗になる。そして、300μm2の面積を有する凸又は凹は、半径約10μmの円に相当し、このような大きな凸又は凹が多数存在する場合、すなわち、上記のヒストグラムにおけるピーク値が300μm2よりも大きい位置に現れる場合は、ぎらつきが大きくなって、視認性を損なうことになる。凸又は凹の見かけの面積の頻度をヒストグラムで表したときのピーク値は、200μm2以下、さらには150μm2以下、とりわけ100μm2以下の位置に現れるようにするのが一層好ましい。また、凸又は凹の見かけの面積の頻度をヒストグラムで表したときに表れるピークの半値幅は、いわば、単位面積あたりの凸又は凹の見かけの面積の分布に相当する。」と記載されている。
しかしながら、本件特許明細書【0030】に「算術平均高さSaは、・・・算術平均粗さRaを面方向に拡張したパラメータである」とあるので、甲1の「Ra」は、本件特許発明1の「Sa」に相当するとまではいえない。また、甲5の「見かけの面積」は「個々の凸の投影面積」から求めている(甲5の【0021】)ことから、甲5の「見かけの面積」は、本件特許発明1の「凸部の平均面積」(算術平均高さSaにおける個々の凸部の断面積)に相当するとまではいえない。しかも、甲1及び甲5は、異なる構成の防眩フィルムが記載されているのであって、甲1の算術平均粗さRaと甲5の凸又は凹の見かけの面積とを組み合わせる動機付けはなく、また、組み合わせるに際にどのような値とするかも明らかではない。
したがって、たとえ当業者であっても、引用発明並びに甲1及び甲5に記載された事項によっては、上記相違点に係る凸部の平均面積及び算術平均高さSaの積を特定の数値範囲内とする構成には到らない。

イ 甲1の他の実施例を主引例とした場合
甲1の実施例2又は3を主引例とした場合であっても、甲1の実施例1を主引例とした場合と同様の上記相違点で相違するものであるから、甲1の実施例1を主引例とした場合と同様である。

ウ 甲2を主引例とした場合
甲2を主引例とした場合であっても、甲1の実施例1を主引例とした場合と同様の上記相違点で少なくとも相違するものであるから、甲1を主引例とした場合と同様である。

エ 効果
上記相違点に係る本件特許発明1の構成により、本件特許発明1は、本件明細書の【0009】に記載された「防眩性を有し、ザラツキ感が少なく、潤いのある黒表示が可能な高品位の光学積層体、並びに、これを用いた偏光板及び画像表示装置を提供できる。」、【0051】の【表1】に記載された黒みの評価が4.5以上という効果を奏するものである。

オ 小括
以上のとおり、本件特許発明1は、たとえ当業者であっても、甲1に記載された発明又は甲2に記載された発明及び甲1〜6、9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたということができない。

(4)本件特許発明2〜6について
本件特許発明2〜6は、本件特許発明1の構成を全て具備するものであるから、本件特許発明2〜6も、本件特許発明1と同じ理由により、たとえ当業者であっても、甲1に記載された発明又は甲2に記載された発明及び甲1〜6、9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたということができない。

2 取消理由通知の「理由2:(明確性要件)」について
(1)本件特許発明は、「光干渉方式により測定した、前記光学機能層の最表面の凸部の平均面積及び算術平均高さSaの積が4.7〜29.7μm3であり、平均傾斜角θaが0.124〜0.251°である」という発明特定事項を具備する。ここで、表面粗さの測定値には、通常、大きな波長成分(うねり)及び又は小さな波長成分(粗さ)が含まれるものの、本件明細書には、測定結果に対してフィルターを用いることは記載されていない。
しかしながら、本件特許明細書の【0047】に記載されるとおり、「非接触表面・層断面形状計測システム(測定装置:バートスキャンR3300FL−Lite−AC、解析ソフトウェア:VertScan4、株式会社菱化システム製)」を当業者が当該測定装置の設定どおりに適切に利用すれば、フィルターなどの解析方法が定まるので、本件特許発明の「光学機能層の最表面の凸部の平均面積及び算術平均高さSaの積」及び「平均傾斜角θa」の範囲は、明確である。
したがって、本件明細書には、測定結果に対してフィルターを用いることが記載されていなくても、当業者にとって、本件特許発明の「光学機能層の最表面の凸部の平均面積及び算術平均高さSaの積」及び「平均傾斜角θa」の範囲は、明確である。

(2)本件特許発明は、「平均傾斜角θaが0.124〜0.251°である」という発明特定事項を具備する。本件明細書には、平均傾斜角の方向は記載されていない。
しかしながら、本件特許明細書の【0047】に記載されるとおり、「非接触表面・層断面形状計測システム(測定装置:バートスキャンR3300FL−Lite−AC、解析ソフトウェア:VertScan4、株式会社菱化システム製)」を当業者が当該測定装置の設定どおりに適切に利用すれば、フィルターなどの解析方法が定まることは、上記(1)と同様である。また、本件特許発明に係る光学積層体のように、光学機能層表面の凹凸がほぼ均一に分布している場合、平均傾斜角の算出時に、X方向、Y方向及びXY方向のいずれを選択したとしても平均傾斜角θaの結果に差は生じない。
したがって、本件明細書には、平均傾斜角の方向が記載されていなくても、当業者にとって、本件特許発明の「平均傾斜角θa」は、明確である。

(3)以上のとおりであるから、本件特許発明は、明確である。


第6 特許異議申立人の主張について
進歩性について
特許異議申立人は、令和3年9月8日付け意見書において、甲1を主引例とすることについて、「「凸部の平均面積及び算術平均高さSaの積」を小さくすることによりザラツキ感を低減できることは、当業者が予測し得る範囲といえる。そして、本件明細書及び図面(特に、実施例及び図4)より、前記積と、平滑感(≒ザラツキを感じないこと)の評価とは、直線的な関係であるから、前記積の上限値である「29.7μm3」には臨界的意義は認められない。また、・・・前記積の下限値である「4.7μm3」には、何ら技術的意義は認められない。」、「特許権者が主張する効果である「ザラツキ感が少なく潤いのある黒表示」は、甲1発明に対して格段の効果を奏するとはいえない。」と主張している。また、甲2を主引例とすることについても同様の主張をしている。
しかしながら、上記「第5」「1」で述べたとおりであるから、特許異議申立人の上記主張は、いずれも採用することができない。

明確性要件ついて
特許異議申立人は、令和3年9月8日付け意見書において、「意見書の特許権者の主張は、本件明細書に記載された解析ソフトウェアとは異なるソフトウェアを引用した主張である。」、「Sフィルターの設定の仕方によって、「光学機能層の最表面の凸部の平均面積及び算術平均高さSaの積」及び「平均傾斜角しθa」は、異なる値を示す」、「解析ソフトウェアとして乙4を用いた場合には、X方向、Y方向及びXY方向のいずれの方向を選択したとしても、平均傾斜角θaの算出結果に差は生じない、ということはできない。」、「X方向及びY方向において凹凸の分布が不均一となる光学積層体が存在するため、そのような光学積層体については、特許権者の主張に基づく測定では、平均傾斜角θaの範囲を確定することができないことになる。」、「乙4の角度の計算手法は、本件明細書の記載と異なるから、乙4を引用した特許権者の主張は妥当ではない。」と主張している。
しかしながら、上記「第5」「2」で述べたとおりであるから、特許異議申立人の上記主張は、いずれも採用することができない。


第7 むすび
本件特許1〜6は、取消理由通知書に記載した取消しの理由及び特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件特許1〜6を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】光学積層体、偏光板及び表示装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、防眩性フィルムに好適な光学積層体、並びに、これを用いた偏光板及び表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の最表面には、画像の視認性を向上させるために、防眩性を有する機能性フィルムが設けられる。防眩性フィルムは、表面に微細な凹凸構造を有し、表面反射光を拡散することで外光の正反射を抑え、外交が映り込むことを防止する。
【0003】
表面に微細な凹凸形状有する機能性フィルムを形成する方法としては、紫外線硬化樹脂等のバインダーと微粒子(フィラー)とを含有する塗工液を透光性基体上に塗布して塗膜を形成し、この塗膜に紫外線を照射して硬化させる手法が一般的であり、微粒子の粒子径や添加量によって防眩性やその他の諸特性を調整することができる(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献11特開2002−196117号公報
【特許文献2】特開2008−158536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の防眩性フィルムは、ディスプレイに黒表示させた際に、外観の白みが強く、ザラツキ感の強い質感となっており、品位の低い見た目となっていた。
【0006】
それ故に、本発明は、防眩性を有し、ザラツキ感が少なく、潤いのある深い黒表示が可能な高品位の光学積層体、並びに、これを用いた偏光板及び画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、透光性基体上に光学機能層が少なくとも1層以上積層されてなる光学積層体に関するものであって、光学機能層の少なくとも一方の面に凹凸形状が形成されており、0.5mm幅の光学くしを用いた透過像鮮明度が76〜92%であり、光干渉方式により測定した、光学機能層の最表面の凸部の平均面積及び算術平均高さSaの積が4.7〜29.7μm3であり、平均傾斜角θaが0.124〜0.251°であることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明に係る偏光板及び画像表示装置は、上記の光学積層体を備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、防眩性を有し、ザラツキ感が少なく、潤いのある深い黒表示が可能な高品位の光学積層体、並びに、これを用いた偏光板及び画像表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係る光学積層体の概略構成を示す断面図
【図2】実施形態に係る偏光板の概略構成を示す断面図
【図3】実施形態に係る表示装置の概略構成を示す断面図
【図4】凸部の平均面積及び算術平均高さSaの積と平滑感の評価スコアとの関係をプロットしたグラフ
【図5】平均傾斜角と黒みの評価スコアとの関係をプロットしたグラフ
【図6】凸部の平均面積及び算術平均高さSaの積と平均傾斜角との関係をプロットしたグラフ
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、実施形態に係る光学積層体の概略構成を示す断面図である。実施形態に係る光学積層体100は、透光性基体1と、透光性基体1に積層された少なくとも1層の光学機能層2とを備える。光学機能層2の表面には、微細な凹凸が形成されている。この凹凸が外交を乱反射させることによって、光学機能層2が防眩性を発揮する。
【0012】
透光性基体としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、含ノルボルネン樹脂、ポリエーテルスルホン、セロファン、芳香族ポリアミド等の各種樹脂フイルムを好適に使用することができる。
【0013】
透光性基体の全光線透過率(JISK7105)は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。また、透光性基体の厚さは、光学積層体の生産性やハンドリング性を考慮すると、1〜700μmであることが好ましく、25〜250μmであることがより好ましい。
【0014】
透光性基体には、光学機能層との密着性を向上させるために、表面改質処理を施すことが好ましい。表面改質処理としては、アルカリ処理、コロナ処理、プラズマ処理、スパッタ処理、界面活性剤やシランカップリング剤等の塗布、Si蒸着等を例示できる。
【0015】
光学機能層は、基材樹脂と、樹脂粒子と、無機微粒子とを含有する。光学機能層は、電離放射線または紫外線の照射により硬化する基材樹脂と、樹脂粒子と、無機微粒子とを含有する塗工液を透光性基体に塗布し、塗膜を硬化させることによって形成される。
【0016】
以下、光学機能層の形成に用いる樹脂組成物の構成成分について説明する。
【0017】
基材樹脂としては、電離放射線または紫外線の照射により硬化する樹脂を使用できる。
【0018】
電離放射線の照射により硬化する樹脂材料としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等のラジカル重合性官能基や、エポキシ基、ビニルエーテル基、オキセタン基等のカチオン重合性官能基を有するモノマー、オリゴマー、プレポリマーを単独でまたは混合して使用できる。モノマーとしては、アクリル酸メチル、メチルメタクリレート、メトキシポリエチレンメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等を例示できる。オリゴマー、プレポリマーとしては、ポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレート、多官能ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレート、アルキットアクリレート、メラミンアクリレート、シリコーンアクリレート等のアクリレート化合物、不飽和ポリエステル、テトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルや各種脂環式エポキシ等のエポキシ系化合物、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル等のオキセタン化合物を例示できる。
【0019】
上述した樹脂材料は、光重合開始剤の添加を条件として、紫外線の照射により硬化させることができる。光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等のラジカル重合開始剤、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物等のカチオン重合開始剤を単独でまたは混合して使用できる。
【0020】
光学機能層に添加する樹脂粒子は、基材樹脂中で凝集して、光学機能層の表面に微細な凹凸構造を形成する。樹脂粒子としては、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレン系樹脂等の透光性樹脂材料からなるものを使用できる。樹脂粒子の材料の屈折率は、1.40〜1.75であることが好ましい。屈折率や樹脂粒子の分散を調整するために、材質(屈折率)の異なる2種類以上の樹脂粒子を混合して使用しても良い。
【0021】
樹脂粒子の平均粒径は、0.3〜10.0μmであることが好ましく、1.0〜7.0μmであることがより好ましい。樹脂粒子の平均粒径が0.3μm未満の場合、防眩性が十分に得られない。一方、樹脂粒子の平均粒径が10.0μmを超えると、凸部の平均面積及び算術平均高さSaの積が大きくなり、ザラツキ感が強くなる。
【0022】
本実施形態に係る光学積層体において、光学機能層の固形分中の樹脂粒子の含有量は、0.1〜10.0%である。樹脂粒子の含有量が0.1%を下回ると、光学機能層の表面の凹凸が少なくなり、防眩性が低下する。一方、樹脂粒子の含有量が10.0%を超えると、凸部の平均面積及び算術平均高さSaの積が大きくなり、ザラツキ感が強くなる。
【0023】
光学機能層の基材樹脂に添加する無機微粒子は、平均粒径が10〜200nmの無機ナノ粒子であることが好ましい。無機微粒子の添加量は、0.1〜5.0%であることが好ましい。
【0024】
無機微粒子としては、例えば、膨潤性粘土を用いることができる。膨潤性粘土は、陽イオン交換能を有し、該膨潤性粘土の層間に溶媒を取り込んで膨潤するものであればよく、天然物であっても合成物(置換体、誘導体を含む)であってもよい。また、天然物と合成物との混合物であってもよい。膨潤性粘土としては、例えば、雲母、合成雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ノントロナイト、マガディアイト、アイラライト、カネマイト、層状チタン酸、スメクタイト、合成スメクタイト等を挙げることができる。これらの膨潤性粘土は、1種を使用してもよいし、複数を混合して使用してもよい。また、無機微粒子としてコロイダルシリカ、アルミナ、酸化亜鉛を単独でまたは混合して用いても良い。上述した膨潤性粘土に加えて、コロイダルシリカ、アルミナ、酸化亜鉛の1種類以上を併用しても良い。
【0025】
無機微粒子としては、層状有機粘土がより好ましい。本発明において、層状有機粘土とは、膨潤性粘土の層間に有機オニウムイオンを導入したものをいう。有機オニウムイオンは、膨潤性粘土の陽イオン交換性を利用して有機化することができるものであれば制限されない。無機微粒子として、例えば、合成スメクタイト(層状有機粘土鉱物)を使用できる。合成スメクタイトは、光学機能層形成用樹脂組成物の粘性を増加させる増粘剤として機能する。増粘剤としての合成スメクタイトの添加は、樹脂粒子及び無機微粒子の沈降を抑制して、光学機能層の表面の凹凸構造形成に寄与する。
【0026】
また、光学機能層形成用の樹脂組成物には、レベリング剤を添加しても良い。レベリング剤は、乾燥過程の塗膜の表面に配向して、塗膜の表面張力を均一化し、塗膜の表面欠陥を低減させる機能を有する。
【0027】
更に、光学機能層形成用の樹脂組成物には、適宜有機溶剤を添加しても良い。有機溶剤としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、イソブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン類;ジアセトンアルコール等のケトンアルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類;エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチルセルソルブ、ジエチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;N−メチルピロリドン、ジメチルフォルムアミド、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル等のエステル類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル類;水等のうち、1種類または2種類以上を混合して使用できる。
【0028】
光学機能層の膜厚は、1.0〜10.0μmであることが好ましく、3.0〜7.0μmであることが更に好ましい。光学機能層の膜厚が1μm未満の場合、酸素阻害による硬化不良を生じ、光学機能層の耐擦傷性が低下しやすくなる。一方、光学機能層の膜厚が10.0μmを超えると、基材樹脂層の硬化収縮によるカールが強くなるため好ましくない。
【0029】
本実施形態に係る光学積層体の透過像鮮明度は、0.5mm幅の光学くしを用いて測定した測定値が70〜95%である。透過像鮮明度が70%未満の場合、過剰な防眩性となり視認性が悪化する。一方、透過像鮮明度が95%を超えると、防眩性が十分に得られない。
【0030】
本実施形態に係る光学積層体において、光干渉方式で計測した光学機能層の最表面の凸部の平均面積と算術平均高さSaとの積が4.7〜44.0μm3である。ここで、凸部とは、測定面に存在する全ての凸部の頂点及び凹部の最下点の平均レベルを通過する平均面を基準としたときに、この平均面より高い部分を指し、凸部の平均面積は、算術平均高さSaにおける凸部の断面積の平均値である。また、算術平均高さSaは、ISO 25178に準拠して測定される値であって、算術平均粗さRaを面方向に拡張したパラメータである。凸部の平均面積と算術平均高さSaとの積は、各凸部を柱状体としてモデル化した場合における、平均面上に存在する凸部の平均体積の近似値である。凸部の平均面積と算術平均高さSaとの積は、平均面上に存在する凸部の大きさを表す指標であって、光学機能層表面の平滑感・ザラツキ感に相関性があるパラメータである。凸部の平均面積と算術平均高さSaとの積が4.7μm3未満の場合、光学機能層表面に形成される凸部の大きさが小さすぎるため、防眩性が十分に得られない。一方、凸部の平均面積と算術平均高さSaとの積が44.0μm3を超える揚合、光学機能層表面に形成される凸部のサイズが大きすぎ、ザラツキ感が強くなる。
【0031】
また、本実施形態に係る光学機能層表面の凹凸形状の平均傾斜角θaは、0.124〜0.349°である。平均傾斜角は、凸部の頂点とこの凸部に隣接する凹部の最下点とを結ぶ直線が平均面に対してなす角度の平均値であり、θa=tan−1Δaで定義される値である。Δaは、一般的には、触針式表面粗さ計を用いて粗面形状を測定し、測定で求めた凹凸断面の粗さ曲線において、基準長さL内にある凸部の頂点及びこの凸部に隣接する凹部の最下点との差の絶対値の合計を、基準長さLで除した値であるが、本発明においては、従来のΔaの値を面方向に拡張し、光干渉方式で測定した測定面内にある全ての凸部及び凹部を用いて算出した値とした。平均傾斜角θaが0.124°未満の場合、光学機能層表面に形成される凸部のサイズが小さすぎるため、防眩性が十分に得られない。一方、平均傾斜角θaが0.349°を超える揚合、ディスプレイに黒表示させた際に白みが強くなる。
【0032】
本発明者らは、透過像鮮明度、凸部の平均面積と算術平均高さSaとの積、及び平均傾斜角が、それぞれ、防眩性、平滑感(ザラツキ感の少なさ)及び黒みに関係するパラメータであることを新規に見出した。上述したように、透過像鮮明度の値が特定の範囲内である場合に、視認性を損なわない良好な防眩性が得られる。また、凸部の平均面積と算術平均高さSaとの積は、小さいほど平滑感が良好となり、大きくなるにつれてザラツキ感が増す(後述する図4参照)。平均傾斜角は、小さいほど黒みが強くなり、大きくなるにつれて白みが増す(後述する図5参照)。本発明では、防眩性、平滑感及び黒みに関係する上記3つのパラメータを選択することによって、防眩性が良好で、ザラツキ感が少なく、潤いのある深い黒表示が可能な高品位の光学積層体を実現している。
【0033】
また、光学機能層中にランダム凝集構造が形成されていることが好ましい。ランダム凝集構造とは、相対的に樹脂成分を多く含有する第一の相と、相対的に無機成分を多く含有する第二の相とが三次元的に入り組んで存在し、第二の相が微粒子(樹脂粒子)の周囲に偏在した構造体のことをいう。光学機能層中にランダム凝集構造が形成されることによって、細かい凹凸を減らすことができるので、防眩性と黒表示時の黒みとを向上させることができる。ランダム凝集構造は、例えば、特許第5802043号公報に記載されている方法により形成することができる。
【0034】
図2は、実施形態に係る偏光板の概略構成を示す断面図である。偏光板110は、光学積層体100と、偏光フィルム11とを備える。光学積層体100は、図1に示したものであり、透光性基体1の光学機能層2が設けられていない側の面に、偏光フィルム(偏光基体)11が設けられている。偏光フィルム11は、例えば、透明基材3と偏光層4と透明基材5とをこの順に積層したものである。透明基材3及び5、偏光層4の材質は特に限定されるものではなく、通常、偏光フィルムに使用されるものを適宜用いることができる。
【0035】
図3は、実施形態に係る表示装置の概略構成を示す断面図である。表示装置120は、光学積層体100と、偏光フィルム11と、液晶セル13と、偏光フィルム(偏光基体)12と、バックライトユニット14とをこの順に積層したものである。偏光フィルム12は、例えば、透明基材6と偏光層7と透明基材8とをこの順に積層したものである。透明基材6及び8、偏光層7の材質は特に限定されるものではなく、通常、偏光フィルムに使用されるものを適宜用いることができる。液晶セル13は、透明電極を有する一対の透明基材の間に液晶分子が封入された液晶パネルと、カラーフィルタとを備え、透明電極間に印可された電圧に応じて液晶分子の配向を変化させることにより、各画素の光の透過率を制御して像を形成する装置である。バックライトユニット14は、光源と光拡散板と(いずれも図示せず)を備え、光源から出射された光を均一に拡散させて出射面から出射する照明装置である。
【0036】
尚、図3に示した表示装置120は、拡散フィルム、プリズムシート、輝度向上フィルムや、液晶セルや偏光板の位相差を補償するための位相差フィルム、タッチセンサを更に備えていても良い。
【0037】
本実施形態に係る光学積層体は、ギラツキを抑制する光学機能層に加えて、更に、低屈折率層等の屈折率調整層、帯電防止層、防汚層の少なくとも1層を有していても良い。
【0038】
低屈折率層は、光学機能層の上に設けられ、表面の屈折率を低下させることにより反射率を低減するための機能層である。低屈折率層は、ポリエステルアクリレート系モノマー、エポキシアクリレート系モノマー、ウレタンアクリレート系モノマー、ポリオールアクリレート系モノマー等の電離放射線硬化性材料と重合開始剤とを合む塗液を塗布し、塗膜を重合により硬化させて形成できる。低屈折率層には、低屈折粒子としては、LiF、MgF、3NaF・AlFまたはAlF(いずれも、屈折率1.4)、または、Na3AlF6(氷晶石、屈折率1.33)等の低屈折材料からなる低屈折率微粒子を分散させても良い。また、低屈折率微粒子としては、粒子内部に空隙を有する粒子を好適に用いることができる。粒子内部に空隙を有する粒子にあっては、空隙の部分を空気の屈折率(≒1)とすることができるため、非常に低い屈折率を備える低屈折率粒子とすることができる。具体的には、内部に空隙を有する低屈折率シリカ粒子を使用することで、屈折率を下げることができる。
【0039】
帯電防止層は、ポリエステルアクリレート系モノマー、エポキシアクリレート系モノマー、ウレタンアクリレート系モノマー、ポリオールアクリレート系モノマー等の電離放射線硬化性材料と、重合開始剤と、耐電防止剤とを含む塗液を塗布し、重合により硬化させることによって形成できる。帯電防止剤としては、例えば、アンチモンをドープした酸化錫(ATO)、スズをドープした酸化インジウム(ITO)等の金属酸化物系微粒子、高分子型導電性組成物や、4級アンモニウム塩等を使用できる。帯電防止層は、光学積層体の最表面に設けられても良いし、光学機能層と透光性基体との間に設けられても良い。
【0040】
防汚層は、光学積層体の最表面に設けられ、光学積層体に撥水性及び/または撥油性を付与することにより、防汚性を高めるものである。防汚層は、珪素酸化物、フッ素含有シラン化合物、フルオロアルキルシラザン、フルオロアルキルシラン、フッ素含有珪素系化合物、パーフルオロポリエーテル基含有シランカップリング剤等をドライコーティングまたはウェットコーティングすることにより形成できる。
【0041】
上述した低屈折率層、帯電防止層、防汚層の他に、または、低屈折率層、帯電防止層、防汚層に加えて、赤外線吸収層、紫外線吸収層、色補正層等の少なくとも1層を設けても良い。
【実施例】
【0042】
以下、実施形態に係る光学積層体を具体的に実施した実施例を説明する。
【0043】
(光学積層体の製造方法)
以下に示す材料を表1に記載の割合で配合した光学機能層形成用塗工液を調整し、調整した塗液を、厚さ40μmのトリアセチルセルロースフィルム(透光性基体)に塗布した。塗膜を乾燥(溶媒を揮発)させた後、塗膜に紫外線を照射して光硬化させることによって、実施例及び比較例に係る光学積層体を得た。尚、表1における「−」は、該当する材料を配合していないことを表す。
【0044】
[光学機能層形成用塗工液の使用材料]
・基材樹脂:UV/EB硬化性樹脂ライトアクリレートPE−3A(ペンタエリスリトールトリアクリレート、共栄社化学株式会社製)、屈折率1.52
・樹脂粒子:スチレン−メタクリル酸メチル共重合体粒子、屈折率1.515、平均粒径2.0μmまたは3.5μm
・無機微粒子1:合成スメクタイト
・無機微粒子2:アルミナナノ粒子、平均粒径40nm
・光重合開始剤:イルガキュア:184(BASFジャパン製)
・溶剤:トルエン及びイソプロピルアルコールを16:37の割合で混合した混合溶剤
【0045】
実施例及び比較例に係る光学積層体の透過像鮮明度、平均傾斜角、光学機能層の表面に存在する凸部の平均面積及び算術平均高さSaを以下の方法で測定した。
【0046】
[透過像鮮明度]
透過像鮮明度は、JISK7105に従い、写像性測定器(ICM−1T、スガ試験器株式会社製)を用いて、光学くし幅0.5mmで測定した。
【0047】
[平均傾斜角θa、凸部の平均面積及び算術平均高さSaの積]
光学機能層の最表面の凹凸形状を、非接触表面・層断面形状計測システム(測定装置:バートスキャンR3300FL−Lite−AC、解析ソフトウェア:VertScan4、株式会社菱化システム製)を用いて光干渉方式により測定し、測定データを装置の解析ソフトウェアで解析した。平均傾斜角θaは、解析ソフトウェアの傾斜角解析機能を用いて、測定領域全体のデータに基づいて算出した。また、凸部の平均面積及び算術平均高さSaは、解析ソフトウェアの粒子解析機能を用いて算出した。
【0048】
防眩性、膜厚条件、平滑感、黒みについては、以下の評価方法にしたがって評価した。
【0049】
[平滑感及び黒みの評価方法と評価基準]
実施例及び比較例の光学積層体を透明な粘着層を介して黒色アクリル板(スミペックス960住友化学株式会社製)に貼り合せたものを用意した。黒アクリル板に蛍光灯の光を映し込み、黒アクリル板の中心から垂直に50cm離れた位置から光学積層体表面を観察し、平滑感及び黒みを官能評価により5段階で評価した。20人の試験者の評価点を平均し、平均値を0.5刻みで丸めた値を評価スコアとした。また、評価スコアが4以上であれば、平滑感または黒みが良好であると判定した。
<平滑感の評価基準>
5:ザラツキ感がなく、滑らかな質感
4:ザラツキ感が少なく、やや滑らかな質感
3:ザラツキ感があり、滑らかさのない質感
2:ザラツキ感がやや強い
1:ザラツキ感が強い
<黒みの評価基準>
5:光学積層体表面での乱反射が殆どなく、潤いのある深い色味
4:光学積層体表面での乱反射が少なく、潤いのある色味
3:光学積層体表面での乱反射がややあり、やや白未がかった色味
2:白みがやや強い
1:白みが強い
【0050】
表1に、実施例及び比較例で用いた光学機能層形成用塗工液の組成、塗工液の塗布膜厚、透過像鮮明度、平均傾斜角θa、凸部の平均面積及び算術平均高さSaの積、平滑感及び黒みの評価結果をまとめて示す。
【0051】
【表1】

【0052】
尚、表1及び2に示す各成分の添加割合は、光学機能層形成用塗工液の全固形分質量に占める割合(質量%)である。ここで、光学機能層形成用塗工液の全固形分とは、溶剤を除く成分を指す。したがって、光学機能層形成用塗工液の全固形分中の樹脂粒子、無機微粒子の配合割合(質量%)と、光学機能層形成用塗工液の硬化膜である光学機能層中の樹脂粒子、無機微粒子の含有割合(質量%)とは等しい。
【0053】
図4は、凸部の平均面積及び算術平均高さSaの積と平滑感の評価スコアとの関係をプロットしたグラフであり、図5は、平均傾斜角と黒みの評価スコアとの関係をプロットしたグラフである。尚、図4及び5のグラフでは、表1に示す全ての実施例及び比較例の値がプロットされている。
【0054】
図4から、凸部の平均面積及び算術平均高さSaの積(すなわち、平均サイズの凸部の体積の近似値)は、平滑感の評価スコアと負の相関関係があり、相関性が極めて高いことがわかる。また、図5から平均傾斜角と黒みの評価スコアとの間にも極めて高い負の相関性があることがわかる。
【0055】
図6は、凸部の平均面積及び算術平均高さSaの積と平均傾斜角との関係をプロットしたグラフである。図6のグラフにおいて、黒丸は実施例のプロットであり、×印は比較例のプロットである。
【0056】
多数の実施例及び比較例を作成して検討したところ、図6に示すように、実施例1〜13に係る光学積層体は、凸部の平均面積及び算術平均高さSaの積と平均傾斜角とが一定の範囲内(図6の破線で囲んだ範囲内)にある場合に、表面の平滑感と黒みとを良好にできることがわかった。より具体的には、凸部の平均面積及び算術平均高さSaの積が4.7〜44.0μm3であり、かつ、平均傾斜角θaが0.124〜0.349°である場合に、滑らかでザラツキ感がなく、潤いのある深い黒表示の光学積層体を実現することができる。
【0057】
表1に示したように、実施例1〜13に係る光学積層体は、透過像鮮明度が70〜95%であり、凸部の平均面積及び算術平均高さSaの積と平均傾斜角θaとがいずれも上述した範囲内にあるため、防眩性を有しながらも、滑らかで潤いのある深い黒表示が可能であることが確認された。
【0058】
これに対して、比較例1及び7〜13では、平均傾斜角θaが上述した上限値(0.349°)を超えたため、光学機能層表面での光の散乱が過剰となり、白みがかった品位の悪い光学積層体となった。
【0059】
また、比較例1、2、4、5、9及び10では、凸部の平均面積及び算術平均高さSaの積が上述した上限値(44.0μm3)を超えたため、光学機能層の表面に形成される凸部のサイズが大きくなり、ザラツキ感のある光学積層体となった。
【0060】
また、比較例3では、平均傾斜角θaが上述した下限値(0.124°)を下回り、かつ、凸部の平均面積及び算術平均高さSaの積が上述した下限値(4.7μm3)を下回ったため、平滑感及び黒味のいずれも高評価となったが、凸部のサイズが小さすぎるために、透過像鮮明度が95%を越え、防眩性が不十分であった。比較例4でも同様に、凸部の平均面積及び算術平均高さSaの積が上述した下限値(4.7μm3)を下回ったため、凸部のサイズが小さすぎ、透過像鮮明度が95%を越え、防眩性が不十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係る光学積層体は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイといった画像表示装置に用いる防眩フィルムとして利用できる。本発明に係る光学積層体は、防眩性を有し、ザラツキ感が少なく、潤いのある深い黒表示を可能とするため、特にテレビに用いる防眩フィルムとして好適である。
【符号の説明】
【0062】
1 透光性基体
2 光学機能層
3、5、6、8 透明基材
4、7 偏光層
11、12 偏光板
13 液晶セル
14 バックライトユニット
100 光学積層体
110 偏光板
120 表示装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性基体上に光学機能層が少なくとも1層以上積層されてなる光学積層体であって、
前記光学機能層の少なくとも一方の面に凹凸形状が形成されており、
0.5mm幅の光学くしを用いた透過像鮮明度が76〜92%であり、
光干渉方式により測定した、前記光学機能層の最表面の凸部の平均面積及び算術平均高さSaの積が4.7〜29.7μm3であり、
平均傾斜角θaが0.124〜0.251°であることを特徴とする、光学積層体。
【請求項2】
前記光学機能層がランダム凝集構造を形成していることを特徴とする、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項3】
前記光学機能層が放射線硬化型樹脂組成物の硬化膜からなる1層以上の層からなることを特徴とする、請求項1または2に記載の光学積層体。
【請求項4】
屈折率調整層、帯電防止層、防汚層のうちの少なくとも1層を更に備える、請求項1〜3のいずれかに記載の光学積層体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の光学積層体を構成する前記透光性基体上に、偏光基体が積層されてなることを特徴とする、偏光板。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の光学積層体を備えることを特徴とする、表示装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-10-15 
出願番号 P2016-126637
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (G02B)
P 1 651・ 537- YAA (G02B)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 榎本 吉孝
特許庁審判官 井口 猶二
関根 洋之
登録日 2020-07-17 
登録番号 6736381
権利者 株式会社トッパンTOMOEGAWAオプティカルフィルム
発明の名称 光学積層体、偏光板及び表示装置  
代理人 特許業務法人 小笠原特許事務所  
代理人 特許業務法人 小笠原特許事務所  

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