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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 B01J 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 B01J 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 B01J 審判 全部申し立て 2項進歩性 B01J |
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管理番号 | 1382375 |
総通号数 | 3 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2022-03-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-02-10 |
確定日 | 2021-11-05 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | true |
事件の表示 | 特許第6738452号発明「吸水性樹脂粒子、吸収体及び吸収性物品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6738452号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし6〕について訂正することを認める。 特許第6738452号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6738452号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、平成31年3月22日(優先権主張 平成30年12月12日)の出願であって、令和2年7月21日にその特許権の設定登録(請求項の数6)がされ、同年8月12日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和3年2月10日に特許異議申立人 株式会社日本触媒(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし6)がされ、同年4月16日付けで取消理由が通知され、同年6月18日に特許権者 住友精化株式会社(以下、「特許権者」という。)から意見書が提出されるとともに訂正請求がされ、同年同月28日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年7月30日に特許異議申立人から意見書が提出されたものである。 第2 本件訂正について 1 訂正の内容 令和3年6月18日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量の間の標準偏差が20g/g以下であり、」とあるのを「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量の間の標準偏差が8〜20g/gであり、」に訂正する。 併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし6についても、請求項1を訂正したことに伴う訂正をする。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量からなる群より選ばれる少なくとも一種が150g/g以上である」とあるのを「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量からなる群より選ばれる少なくとも一種が250〜500g/gである」に訂正する。 併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし6についても、請求項1を訂正したことに伴う訂正をする。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項2に「前記標準偏差が14g/g以下である」とあるのを「前記標準偏差が8〜14g/gである」に訂正する。 併せて、請求項2を直接又は間接的に引用する請求項3ないし6についても、請求項2を訂正したことに伴う訂正をする。 2 訂正の目的、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)請求項1についての訂正について 訂正事項1による請求項1についての訂正は、「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量の間の標準偏差」の数値範囲を狭くするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項2による請求項1についての訂正は、「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量からなる群」から「0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量」を外して群を狭くするとともに「保水量」の数値範囲を狭くするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1及び2による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)請求項2についての訂正について 訂正事項1及び2による請求項2についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項3による請求項2についての訂正は、「前記標準偏差」の数値範囲を狭くするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1ないし3による請求項2についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)請求項3ないし6についての訂正について 訂正事項1ないし3による請求項3ないし6についての訂正は、請求項1及び2についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 むすび 以上のとおり、請求項1ないし6についての訂正は、いずれも、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。 また、請求項1ないし6についての訂正は、いずれも、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。 なお、訂正前の請求項1ないし6は一群の請求項に該当するものである。 そして、請求項1ないし6についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 また、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし6に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし6〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし6に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子であって、 前記エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、 前記(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量に対して70〜100モル%であり、 0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量の間の標準偏差が8〜20g/gであり、 0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量からなる群より選ばれる少なくとも一種が250〜500g/gである、吸水性樹脂粒子。 【請求項2】 前記標準偏差が8〜14g/gである、請求項1に記載の吸水性樹脂粒子。 【請求項3】 0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量が150〜500g/gである、請求項1又は2に記載の吸水性樹脂粒子。 【請求項4】 請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸水性樹脂粒子を含有する、吸収体。 【請求項5】 請求項4に記載の吸収体を備える、吸収性物品。 【請求項6】 おむつである、請求項5に記載の吸収性物品。」 第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要 令和3年2月10日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 1 申立理由1(甲第3ないし7又は14号証に基づく新規性) 本件特許の請求項1ないし6に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3ないし7又は14号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 申立理由2(甲第1、2又は4号証に基づく進歩性) 本件特許の請求項1ないし6に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1、2又は4号証に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 3 申立理由3(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、下記のアないしウの点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 ア 保水量の上限が規定されていない本件特許発明1ないし6は保水量が1000g/gや2000g/gの吸水性樹脂を含むが、そのような吸水性樹脂は、その低い架橋密度に由来して通液性又は吸収速度性能が低いものであり、「好適な浸透速度(秒)を安定的に得る」という発明の課題を解決しない。 したがって、特定の金属塩の保水量の上限を規定していない本件特許発明1ないし6は、本件特許の比較例1の遅い浸透時間(秒)のような発明の課題(好適な浸透速度(秒))解決できない範囲(高い保水量に由来する遅い浸透時間)を含むため、当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえず、発明の詳細な説明に記載されているとはいえない。 よって、本件特許発明1ないし6に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件違反である。 イ 本件特許発明1ないし6において、単に30分後の大過剰飽の液中で飽和吸収倍率を規定するだけで、吸水速度や透過性(拡散性)は一切規定されていない。 すなわち、本件特許発明1ないし6は発明の課題(吸収体の浸透速度)の解決に吸水倍率以外の吸水速度や透過性という必須の要件が一切規定されておらず、発明の課題を解決しない範囲を含むので、本件特許発明1ないし6に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件違反である。 ウ 本件特許発明1ないし6の最も好ましい製法(逆相懸濁2段重合及び重合後の後架橋(2回))で吸水性樹脂を製造する甲第14号証の製造例1、2及び5で本件特許発明1の吸水性樹脂が得られないとしたら、本件特許の明細書には吸水性樹脂を製造する方法が記載されていないことになり、本件特許発明1ないし6に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件違反である。 4 申立理由4(実施可能要件) 本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 ・本件特許発明1ないし6の最も好ましい製法(逆相懸濁2段重合及び重合後の後架橋(2回))で吸水性樹脂を製造する甲第14号証の製造例1、2及び5で本件特許発明1の吸水性樹脂が得られないとしたら、本件特許の発明の詳細な説明には吸水性樹脂を製造する方法が記載されていないことになり、本件特許発明1ないし6に関して、発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件違反である。 5 証拠方法 甲第1号証:特開2004−290960号公報 甲第2号証:特開平4−227705号公報 甲第3号証:特開2006−68731号公報 甲第4号証:特開2005−111474号公報 甲第5号証:国際公開第2017/170605号 甲第6号証:国際公開第2018/155591号 甲第7号証:特開2001−98170号公報 甲第8号証:高分子新素材 One point○4(当審注:○付き数字の4である。) 高吸水性ポリマー、p.21〜22 甲第9号証:特開2006−68731号公報の実験成績証明書 甲第10号証:特開2005−111474号公報の実験成績証明書 甲第11号証:国際公開第2017/170605号の実験成績証明書 甲第12号証:特開2001−98170号公報の実験成績証明書 甲第13号証:特開2001−98170号公報の実験成績証明書 甲第14号証:特許第4880144号公報 甲第15号証:特表2017−514980号公報 甲第16号証:特許第3335843号公報 参考資料1:EDANA 441.2−02、P303-309 参考資料2:国際公開第2015/093594号 なお、参考資料1は令和3年7月30日に特許異議申立人から提出された意見書に添付されたものである。また、証拠の表記は、特許異議申立書及び上記意見書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。 第5 取消理由の概要 令和3年4月16日付けで通知された取消理由の概要は次のとおりである。 1 取消理由1(甲3ないし7又は14に基づく新規性) 本件特許の請求項1ないし6に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3ないし7又は14に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 なお、該取消理由1は申立理由1とおおむね同旨である。 2 取消理由2(サポート要件) 本件特許の請求項1、2及び4ないし6に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 なお、該取消理由2は申立理由3のうちアの点に基づく請求項1、2及び4ないし6に対する理由とおおむね同旨である。 ・本件特許発明1は、「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量」、「0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量」、「0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量」及び「0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量」の上限が規定されておらず、それらの「保水量」が1000g/gや2000g/gの吸水性樹脂を含むが、そのような吸水性樹脂は、その低い架橋密度に由来して通液性又は吸収速度性能が低いものであることは出願時の技術常識(例えば、甲4の【0007】ないし【0009】参照。)であり、「好適な浸透速度を安定的に得る」ことができないものである。 また、「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量」、「0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量」、「0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量」及び「0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量」が1000g/gや2000g/gの吸水性樹脂が「好適な浸透速度を安定的に得る」ことができることの裏付けとなるような出願時の技術常識があったともいえない。 したがって、本件特許発明1は、出願時の技術常識に照らしても、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえないから、本件特許発明1に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件違反に適合するとはいえない。 また、本件特許発明2及び4ないし6についても同様であり、本件特許発明2及び4ないし6に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件違反に適合するとはいえない。 3 取消理由3(実施可能要件) 本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 なお、該取消理由3は申立理由4とおおむね同旨である。 ・本件特許の実施例1ないし3と実質的に同一の製造方法で製造された甲14製造例1発明、甲14製造例2発明及び甲14製造例5発明が、上記発明特定事項1及び2を有しない場合には、本件特許の実施例1ないし3以外に、どのようにすれば、上記発明特定事項1及び2を有するようになるのか、発明の詳細な説明の記載では、当業者といえども理解できない。 したがって、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1を生産し、使用することができる程度の記載があるとはいえない。 また、本件特許発明2ないし6についても同様であり、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明2ないし6を生産し、使用することができる程度の記載があるとはいえない。 第6 取消理由についての当審の判断 当審は、取消理由1ないし3には以下のとおり理由がないと判断する。 1 取消理由1(甲3ないし7又は14に基づく新規性)について (1)甲3ないし7又は14に記載された事項等 ア 甲3に記載された事項及び甲3発明 (ア)甲3に記載された事項 甲3には、「吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤、その製造方法及び吸収性物品」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「【0148】 [アクリル酸の製造例1] 市販のアクリル酸(アクリル酸ダイマー2000ppm、酢酸500ppm、プロピオン酸500ppm含有)を、無堰多孔板50段を有する高沸点不純物分離塔の塔底に供給して、還流比を1として蒸留し、マレイン酸やアクリル酸からなる二量体(アクリル酸ダイマー)等の除去後、さらに晶析を行なうことで、アクリル酸(アクリル酸ダイマー20ppm、酢酸50ppm、プロピオン酸50ppm含有)を得た。」 ・「【0151】 [実施例1] 攪拌機、還流冷却機、温度計、窒素ガス導入管及び滴下漏斗を付した2Lの四つ口セパラブルフラスコにシクロヘキサン1.0Lをとり、分散剤としてのショ糖脂肪酸エステル(第一工業薬品株式会社製、DK−エステルF−50、HLB=6)3.8gを加えて溶解させ、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した。フラスコ中に、製造例1のアクリル酸の中和物であるアクリル酸ナトリウム84.6g、製造例1のアクリル酸21.6g及びN,N’−メチレンビスアクリルアミド0.016gをイオン交換水197gに溶解し、さらにヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業株式会社製、HEC−ダイセルEP−850)0.4gを溶解させ、モノマー濃度35質量%のモノマー水溶液を調製した。このモノマー水溶液に過硫酸カリウム0.15gを加えて溶解させた後、窒素ガスを吹き込んで水溶液内に溶存する酸素を追い出した。次いでこのフラスコ内のモノマー水溶液を上記セパラブルフラスコに加えて攪拌することにより分散させた。その後、浴温を60℃に昇温して重合反応を開始させた後、2時間この温度に保持して重合を完了した。重合終了後、シクロヘキサンとの共沸脱水により含水ゲル中の水を留去した後、ろ過し、80℃で減圧乾燥し、球状のポリマー粉体を得た。得られたポリマー粉体の含水率は、5.6%であった。 【0152】 上記ポリマー100質量部に、プロピレングリコール0.5質量部と、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部と、1,4−ブタンジオール0.3質量部と、水2.7質量部とからなる表面架橋剤3.53質量部とを混合した。上記の混合物を210℃で45分間加熱処理した。表面架橋後さらに、水3質量部を添加して60℃で30分密閉して加熱し、850μmで分級することで造粒された粒子状吸水剤(1)を得た。得られた粒子状吸水剤(1)の無加圧下吸収倍率、1.9kPaでの加圧下吸収倍率、粒度分布、質量平均粒子径(D50)、対数標準偏差(σζ)及び粒子径150μm未満の質量百分率、水可溶分、耐尿性評価、吸収速度、吸湿ブロッキング率、揮発性有機溶媒、及び180℃での3時間加熱後の残存モノマーの含有量が表1及び表2に示される。」 ・「【0155】 [実施例2] 実施例1で得られた粒子状吸水剤(1)100質量部に微粒子状の二酸化ケイ素(日本アエロジル株式会社製、アエロジル200(1次粒子の平均粒子径12nm))0.3質量部を添加・混合(ドライブレンド)して、粒子状吸水剤(2)を得た。得られた粒子状吸水剤(2)を実施例1と同様に評価した結果が、表1及び表2に示される。」 ・「【0162】 【表1】 ![]() 【0163】 【表2】 ![]() 」 (イ)甲3発明 甲3に記載された事項を、特に実施例2に関して整理すると、甲3には次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認める。 「市販のアクリル酸(アクリル酸ダイマー2000ppm、酢酸500ppm、プロピオン酸500ppm含有)を、無堰多孔板50段を有する高沸点不純物分離塔の塔底に供給して、還流比を1として蒸留し、マレイン酸やアクリル酸からなる二量体(アクリル酸ダイマー)等の除去後、さらに晶析を行なうことで、アクリル酸(アクリル酸ダイマー20ppm、酢酸50ppm、プロピオン酸50ppm含有)を得、攪拌機、還流冷却機、温度計、窒素ガス導入管及び滴下漏斗を付した2Lの四つ口セパラブルフラスコにシクロヘキサン1.0Lをとり、分散剤としてのショ糖脂肪酸エステル(第一工業薬品株式会社製、DK−エステルF−50、HLB=6)3.8gを加えて溶解させ、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出し、フラスコ中に、上記アクリル酸の中和物であるアクリル酸ナトリウム84.6g、上記アクリル酸21.6g及びN,N’−メチレンビスアクリルアミド0.016gをイオン交換水197gに溶解し、さらにヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業株式会社製、HEC−ダイセルEP−850)0.4gを溶解させ、モノマー濃度35質量%のモノマー水溶液を調製し、このモノマー水溶液に過硫酸カリウム0.15gを加えて溶解させた後、窒素ガスを吹き込んで水溶液内に溶存する酸素を追い出し、次いでこのフラスコ内のモノマー水溶液を上記セパラブルフラスコに加えて攪拌することにより分散させ、その後、浴温を60℃に昇温して重合反応を開始させた後、2時間この温度に保持して重合を完了し、重合終了後、シクロヘキサンとの共沸脱水により含水ゲル中の水を留去した後、ろ過し、80℃で減圧乾燥し、球状のポリマー粉体を得、得られたポリマー粉体100質量部に、プロピレングリコール0.5質量部と、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部と、1,4−ブタンジオール0.3質量部と、水2.7質量部とからなる表面架橋剤3.53質量部とを混合し、上記の混合物を210℃で45分間加熱処理し、表面架橋後さらに、水3質量部を添加して60℃で30分密閉して加熱し、850μmで分級することで造粒された粒子状吸水剤(1)を得、この粒子状吸水剤(1)100質量部に微粒子状の二酸化ケイ素(日本アエロジル株式会社製、アエロジル200(1次粒子の平均粒子径12nm))0.3質量部を添加・混合(ドライブレンド)して、得た粒子状吸水剤(2)。」 イ 甲4に記載された事項及び甲4発明 (ア)甲4に記載された事項 甲4には、「吸水剤およびその製法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「【0248】 (実施例15) 断熱材である発泡スチロールで覆われた内径80mm、容量1リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸192.2g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)2.79g、およびジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウム0.01gを混合した溶液(A)と、48.5重量%NaOH水溶液156.8gと40℃に調温したイオン交換水239.3gを混合した溶液(B)を、マグネチックスターラーで攪拌しながら(A)に(B)を開放系で一気に加え混合した。中和熱と溶解熱で液温が約100℃まで上昇した単量体水溶液(単量体濃度39重量%、中和率71.3モル%が得られた。さらに、この単量体水溶液に3重量%の過硫酸ナトリウム水溶液8.89gを加え、数秒攪拌した後すぐに、ホットプレート(NEO HOTPLATE H1−1000(株)井内盛栄堂製)により表面温度を100℃まで加熱された、内面にテフロン(登録商標)を貼り付けた底面250×250mmのステンレス製バット型容器中に開放系で注いだ。 【0249】 単量体水溶液がバットに注がれて間もなく重合は開始した。水蒸気を発生し上下左右に膨張発泡しながら重合は進行し、その後、底面よりもやや大きなサイズにまで収縮した。この膨張収縮は約1分以内に終了し、3分間重合容器中に保持した後、含水重合体を取り出した。 【0250】 この細分化された含水重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で40min間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmのJIS標準篩で分級することにより、重量平均粒子径325μm、対数標準偏差(σζ)0.35の不定形破砕状の吸水性樹脂を得た。得られた吸水性樹脂のCRCsは31.4g/g、ゲル層膨潤圧は40.1kdyne/cm2であった。その他の諸物性を表12、13に示した。 【0251】 得られた吸水性樹脂粒子100重量部にエチレンカーボネート0.4重量部、プロピレングリコール1重量部、純水3重量部の混合液からなる表面架橋剤を混合した後、混合物を190℃で35分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き600μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、表面が架橋された吸水性樹脂を得た。得られた吸水剤(15)の諸物性を表12に示した。」 ・「【0270】 (実施例20) 実施例15に記載の方法においてポリエチレングリコールジアクリレートを0.05モル%に変更した以外は同様の操作を行い、重量平均粒子径323μm、対数標準偏差(σζ)0.37の不定形破砕状の吸水性樹脂を得た。得られた吸水性樹脂のCRCsは43.5g/g、ゲル層膨潤圧は35.1kdyne/cm2であった。その他の諸物性を表12、13に示した。」 ・「【0282】 (実施例32) 実施例20で得られた吸水剤(20)100重量部に、ReolosilQS−20(親水性アモルファスシリカ、TOKUYAMA社製)0.3重量部を均一に混合し、吸水剤を得た。得られた吸水剤の諸物性を表14、15に示した。」 ・「【0296】 【表14】 ![]() 【0297】 【表15】 ![]() 」 (イ)甲4発明 甲4に記載された事項を、特に実施例32に関して整理すると、甲4には次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認める。 「断熱材である発泡スチロールで覆われた内径80mm、容量1リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸192.2g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)0.70g、およびジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウム0.01gを混合した溶液(A)と、48.5重量%NaOH水溶液156.8gと40℃に調温したイオン交換水239.3gを混合した溶液(B)を、マグネチックスターラーで攪拌しながら(A)に(B)を開放系で一気に加え混合し、中和熱と溶解熱で液温が約100℃まで上昇した単量体水溶液(単量体濃度39重量%、中和率71.3モル%)が得られ、さらに、この単量体水溶液に3重量%の過硫酸ナトリウム水溶液8.89gを加え、数秒攪拌した後すぐに、ホットプレート(NEO HOTPLATE H1−1000(株)井内盛栄堂製)により表面温度を100℃まで加熱された、内面にテフロン(登録商標)を貼り付けた底面250×250mmのステンレス製バット型容器中に開放系で注ぎ、単量体水溶液がバットに注がれて間もなく重合は開始し、水蒸気を発生し上下左右に膨張発泡しながら重合は進行し、その後、底面よりもやや大きなサイズにまで収縮し、この膨張収縮は約1分以内に終了し、3分間重合容器中に保持した後、含水重合体を取り出し、この細分化された含水重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で40min間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmのJIS標準篩で分級することにより、重量平均粒子径325μm、対数標準偏差(σζ)0.35の不定形破砕状の吸水性樹脂を得、得られた吸水性樹脂粒子100重量部にエチレンカーボネート0.4重量部、プロピレングリコール1重量部、純水3重量部の混合液からなる表面架橋剤を混合した後、混合物を190℃で35分間加熱処理し、さらに、その粒子を目開き600μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、表面が架橋された吸水性樹脂を得、この吸水剤100重量部に、ReolosilQS−20(親水性アモルファスシリカ、TOKUYAMA社製)0.3重量部を均一に混合し、得た吸水剤。」 ウ 甲5に記載された事項及び甲5発明 (ア)甲5に記載された事項 甲5には、「粒子状吸水剤」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「<ダメージ付与後の微粉増加量> [0293] 吸水剤に下記のペイントシェーカーテストを行い、目開き150μmのJIS標準篩で分級し、テスト前後における150μm以下の粒子径を有する粒子の増加量を測定した。 [0294] [ペイントシェーカーテスト] ペイントシェーカーテスト(PS−test)とは、直径6cm、高さ11cmのガラス製容器に、直径6mmのガラスビーズ10g、吸水性樹脂30gを入れてペイントシェーカー(東洋製機製作所 製品No.488)に取り付け、800cycle/min(CPM)で30分間、振盪するものであり、装置詳細は特開平9−235378号公報に開示されている。」 ・「[0331] [製造例2] アクリル酸300重量部、48重量%水酸化ナトリウム水溶液100重量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)0.61重量部、1.0重量%エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム水溶液6.5重量部、脱イオン水346.1重量部からなる単量体水溶液(2)を作製した。 [0332] 次に、40℃に調温した上記単量体水溶液(2)を定量ポンプで連続供給した後、更に48重量%水酸化ナトリウム水溶液150.6重量部を連続的にラインミキシングした。尚、この時、中和熱によって単量体水溶液(2)の液温は81℃まで上昇した。 [0333] 更に、4重量%過硫酸ナトリウム水溶液14.6重量部を連続的にラインミキシングした後、両端に堰を備えた平面状の重合ベルトを有する連続重合機に、厚みが10mmとなるように連続的に供給した。その後、重合(重合時間3分間)が連続的に行われ、帯状の含水ゲル(2)を得た。得られた帯状の含水ゲル(2)を重合ベルトの進行方向に対して幅方向に、切断長が300mmとなるように等間隔に連続して切断することで、含水ゲル(2)を得た。含水ゲル(2)は、CRC36.0[g/g]、樹脂固形分48.1重量%であった。」 ・「[0351] [実施例1] (ゲル粉砕) 上記製造例1で得られた含水ゲル(1)を、スクリュー押出機に供給しゲル粉砕した。該スクリュー押出機としては、先端部に直径100mm、孔径9.5mm、孔数40個、開孔率36.1%、厚さ10mmの多孔板が備えられた、スクリュー軸の外径が86mmのミートチョッパーを使用した。該ミートチョッパーのスクリュー軸回転数を130rpmとした状態で、含水ゲル(1)を4640[g/min]、同時に、水蒸気を83[g/min]でそれぞれ供給する。この時のゲル粉砕エネルギー(GGE)は26.9[J/g]、GGE(2)は13.6[J/g]であった。尚、ゲル粉砕前の含水ゲル(1)の温度は80℃であり、ゲル粉砕後の粉砕ゲル、即ち粒子状含水ゲル(1)の温度は85℃に上昇していた。 [0352] 上記ゲル粉砕工程で得られた粒子状含水ゲル(1)は、樹脂固形分49.1重量%、重量平均粒子径(D50)994μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)1.01であった。当該ゲル粉砕工程の条件を表1に、粒子状含水ゲル(1)の物性を表2に示す。 [0353](乾燥) 次に、上記粒子状含水ゲル(1)をゲル粉砕終了後1分以内に通気板上に散布(この時の粒子状含水ゲル(1)の温度は80℃)し、185℃で30分間乾燥を行い、乾燥重合体(1)を得る。熱風の平均風速は通気ベルトの進行方向に対して垂直方向に1.0[m/s]である。尚、熱風の風速は、日本カノマックス株式会社製定温度熱式風速計アネモマスター 6162で測定する。 [0354](粉砕・分級) 次いで、上記乾燥工程で得られた乾燥重合体(1)全量を3段ロールミルに供給して粉砕(粉砕工程)し、その後更に、目開き710μm及び175μmのJIS標準篩で分級することで、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(1)を得る。吸水性樹脂粒子(1)は、重量平均粒子径(D50)348μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.32であり、CRC42.1[g/g]、150μm通過粒子(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)0.5重量%である。 [0355](表面処理・添加剤添加) 次に、上記吸水性樹脂粒子(1)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、1,4−ブタンジオール0.4重量部、プロピレングリコール0.6重量部及び脱イオン水3.0重量部からなる(共有結合性)表面架橋剤溶液を均一に混合し、190℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂粉末(1)のCRCが35g/gとなるように加熱処理する。その後冷却を行い、上記ペイントシェーカーテストを実施し、製造プロセス相当のダメージを付与した後に、吸水性樹脂粒子100重量部に対して、水1重量部、ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム0.01重量部からなる水溶液を均一に混合する。60℃で1時間乾燥した後、目開き710μmのJIS標準篩を通過させ、二酸化ケイ素(商品名:アエロジル200、日本アエロジル製)0.4重量部を均一に添加する。こうして、粒子状吸水剤(1)を得た。粒子状吸水剤(1)の諸物性を表3〜6に示す。なお、ペイントシェーカーテスト後の150μm通過粒子増加量は粒子状吸水剤に対して、さらにペイントシェーカーテストを実施した際(おむつなどの吸収体製造時のプロセスダメージを想定したもの)の150μm通過粒子の増加量を示す。」 ・「[0356] [実施例2] 実施例1と以下に示す操作以外は同様の操作を行う。含水ゲル(1)のかわりに上記製造例2で得られた含水ゲル(2)を用いる。スクリュー押出機の先端部の多孔板の孔径を8mmに変更する。この時のゲル粉砕エネルギー(GGE)は31.9[J/g]、GGE(2)は17.5[J/g]であった。尚、ゲル粉砕前の含水ゲル(2)の温度は80℃であり、ゲル粉砕後の粉砕ゲル、即ち粒子状含水ゲル(2)の温度は84℃に上昇していた。 [0357] 上記ゲル粉砕工程で得られた粒子状含水ゲル(2)は、樹脂固形分47.5重量%、重量平均粒子径(D50)860μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.95であった。当該ゲル粉砕工程の条件を表1に、粒子状含水ゲル(2)の物性を表2に示す。 [0358] 次いで、実施例1と同様の乾燥・粉砕・分級操作を行い、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(2)を得る。吸水性樹脂粒子(2)は、重量平均粒子径(D50)355μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.32であり、CRC48.2[g/g]、150μm通過粒子(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)0.4重量%である。 [0359] 次に、上記吸水性樹脂粒子(2)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、エチレンカーボネート0.4重量部、プロピレングリコール0.6重量部及び脱イオン水3.0重量部からなる(共有結合性)表面架橋剤溶液を均一に混合し、190℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂粉末(2)のCRCが38g/gとなるように加熱処理する。その後、実施例1と同様の操作を行う。こうして、粒子状吸水剤(2)を得た。粒子状吸水剤(2)の諸物性を表3〜6に示す。」 ・「[0360] [実施例3] 実施例2で使用する目開き710μmの網にかえて、850μmの網を使用した以外は、実施例2と同じ操作を行う。こうして得られる吸水性樹脂粒子(3)は、重量平均粒子径(D50)431μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.35であり、CRC48.2[g/g]、150μm通過粒子(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)0.3重量%である。また、得られた粒子状吸水剤(3)の諸物性を表3〜6に示す。」 ・「[0438] [表3-1] ![]() 」 (イ)甲5発明 甲5に記載された事項を、特に実施例2に関して整理すると、甲5には次の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されていると認める。 「アクリル酸300重量部、48重量%水酸化ナトリウム水溶液100重量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)0.61重量部、1.0重量%エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム水溶液6.5重量部、脱イオン水346.1重量部からなる単量体水溶液(2)を作製し、次に、40℃に調温した上記単量体水溶液(2)を定量ポンプで連続供給した後、更に48重量%水酸化ナトリウム水溶液150.6重量部を連続的にラインミキシングし、更に、4重量%過硫酸ナトリウム水溶液14.6重量部を連続的にラインミキシングした後、両端に堰を備えた平面状の重合ベルトを有する連続重合機に、厚みが10mmとなるように連続的に供給し、その後、重合(重合時間3分間)が連続的に行われ、帯状の含水ゲル(2)を得、得られた帯状の含水ゲル(2)を重合ベルトの進行方向に対して幅方向に、切断長が300mmとなるように等間隔に連続して切断することで、含水ゲル(2)を得、上記含水ゲル(2)を、スクリュー押出機に供給しゲル粉砕し、該スクリュー押出機としては、先端部に直径100mm、孔径8mm、孔数40個、開孔率36.1%、厚さ10mmの多孔板が備えられた、スクリュー軸の外径が86mmのミートチョッパーを使用し、該ミートチョッパーのスクリュー軸回転数を130rpmとした状態で、含水ゲル(2)を4640[g/min]、同時に、水蒸気を83[g/min]でそれぞれ供給し、この時のゲル粉砕エネルギー(GGE)は31.9[J/g]、GGE(2)は17.5[J/g]であり、上記ゲル粉砕工程で得られた粒子状含水ゲル(2)をゲル粉砕終了後1分以内に通気板上に散布(この時の粒子状含水ゲル(2)の温度は80℃)し、185℃で30分間乾燥を行い、乾燥重合体(2)を得、熱風の平均風速は通気ベルトの進行方向に対して垂直方向に1.0[m/s]であり、次いで、上記乾燥工程で得られた乾燥重合体(2)全量を3段ロールミルに供給して粉砕(粉砕工程)し、その後更に、目開き710μm及び175μmのJIS標準篩で分級することで、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(2)を得、次に、上記吸水性樹脂粒子(2)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、エチレンカーボネート0.4重量部、プロピレングリコール0.6重量部及び脱イオン水3.0重量部からなる(共有結合性)表面架橋剤溶液を均一に混合し、190℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂粉末(2)のCRCが38g/gとなるように加熱処理し、その後冷却を行い、ペイントシェーカーテストを実施し、製造プロセス相当のダメージを付与した後に、吸水性樹脂粒子100重量部に対して、水1重量部、ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム0.01重量部からなる水溶液を均一に混合し、60℃で1時間乾燥した後、目開き710μmのJIS標準篩を通過させ、二酸化ケイ素(商品名:アエロジル200、日本アエロジル製)0.4重量部を均一に添加して得た粒子状吸水剤(2)。」 エ 甲6に記載された事項及び甲6発明 (ア)甲6に記載された事項 甲6には、「吸水性シート、長尺状吸水性シートおよび吸収性物品」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「[0559] [製造例a] アクリル酸300質量部、48質量%の水酸化ナトリウム水溶液100質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)0.94質量部、0.1質量%のジエチレントリアミン五酢酸三ナトリウム水溶液16.4質量部及び脱イオン水314.3質量部からなる単量体水溶液(a)を調製した。 [0560] 次に、38℃に調温した上記単量体水溶液(a)を定量ポンプで連続供給した後、さらに48質量%の水酸化ナトリウム水溶液150.6質量部を連続的にラインミキシングした。なお、この時、中和熱によって単量体水溶液(a)の液温は80℃まで上昇した。 [0561] 次に4質量%の過硫酸ナトリウム水溶液14.6質量部を連続的にラインミキシングした後、両端に堰を備えた平面状の重合ベルトを有する連続重合機に、厚さが10mmとなるように連続的に供給した。その後、重合(重合時間3分間)が連続的に行われ、帯状の含水ゲル(a)を得た。得られた帯状の含水ゲル(a)を重合ベルトの進行方向に対して幅方向に、切断長が300mmとなるように等間隔に連続して切断することで、短冊状の含水ゲル(a)を得た。当該含水ゲル(a)は、CRCが33.5g/g、含水率が50.5質量%(樹脂固形分が49.5重量%)であった。 [0562] なお、「含水率(%)=100−樹脂固形分(%)」である。 [0563] [製造例b] アクリル酸300質量部、48質量%の水酸化ナトリウム水溶液100質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)0.61質量部、1.0質量%のエチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム水溶液6.5質量部及び脱イオン水346.1質量部からなる単量体水溶液(b)を調製した。 [0564] 次に、40℃に調温した上記単量体水溶液(b)を定量ポンプで連続供給した後、さらに48質量%の水酸化ナトリウム水溶液150.6質量部を連続的にラインミキシングした。なお、この時、中和熱によって単量体水溶液(b)の液温は81℃まで上昇した。 [0565] 次に、4質量%の過硫酸ナトリウム水溶液14.6質量部を連続的にラインミキシングした後、両端に堰を備えた平面状の重合ベルトを有する連続重合機に、厚さが10mmとなるように連続的に供給した。その後、重合(重合時間3分間)が連続的に行われ、帯状の含水ゲル(b)を得た。得られた帯状の含水ゲル(b)を重合ベルトの進行方向に対して幅方向に、切断長が300mmとなるように等間隔に連続して切断することで、短冊状の含水ゲル(b)を得た。当該含水ゲル(b)は、CRCが36.0g/g、含水率が51.9質量%(樹脂固形分が48.1重量%)であった。 [0566] ・・・(略)・・・ [0575][表1] ・・・(略)・・・ [製造例1] (ゲル粉砕) 上記製造例aで得られた短冊状の含水ゲル(a)を、スクリュー押出機に供給してゲル粉砕を行い、粒子状含水ゲル(1)を得た。なお、スクリュー押出機には、先端部に直径100mm、孔径9.5mm、孔数40個、開孔率36.1%、厚さ10mmの多孔板が備えられ、スクリュー軸の外径は86mmであった。 [0576] 製造例1におけるゲル粉砕は、上記スクリュー押出機のスクリュー軸の回転数を130rpmとした状態で、上記短冊状の含水ゲル(a)と水蒸気とをそれぞれ別の供給口から同時に供給することで行われた。なお、該含水ゲル(a)の供給量は毎分4640g、水蒸気の供給量は毎分83gであった。 [0577] 製造例1でのゲル粉砕エネルギー(GGE)は26.9J/g、ゲル粉砕エネルギー粉砕エネルギー(2)(GGE(2))は13.6J/gであった。また、ゲル粉砕前の含水ゲル(a)の温度は80℃であり、ゲル粉砕後の粒子状含水ゲル(1)の温度は85℃であった。 [0578] 上記ゲル粉砕後に得られた粒子状含水ゲル(1)は、含水率が50.9質量%、質量平均粒子径(D50)が994μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が1.01であった。表2にゲル粉砕条件及び粒子状含水ゲル(1)の物性を示した。 [0579] (乾燥) 次に、上記ゲル粉砕の終了後、1分間以内に上記粒子状含水ゲル(1)を通気ベルト式連続乾燥機の通気ベルト上に載置(この時点での粒子状含水ゲル(1)の温度は80℃)し、185℃の熱風を30分間通気させることで乾燥した。熱風の平均風速は、通気ベルトの進行方向に対して垂直方向に1.0m/sであった。該熱風の風速は、定温度熱式風速計(アネモマスター6162;日本カノマックス株式会社)を用いて測定した。 [0580] (粉砕・分級) 次いで、上記乾燥後に得られた乾燥重合体(1)全量を3段ロールミルに供給して粉砕した。その後、目開き710μm及び175μmのJIS標準篩を用いて分級することで、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(1)を得た。該吸水性樹脂粉末(1)は、質量平均粒子径(D50)が348μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.32、CRCが42.1g/g、粒子径150μm未満の粒子の割合(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)が0.5質量%であった。 [0581] (表面架橋、添加剤添加) 次に、上記吸水性樹脂粉末(1)100質量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025質量部、1,4−ブタンジオール0.4質量部、プロピレングリコール0.6質量部及び脱イオン水3.0質量部からなる表面架橋剤溶液(1)を添加して、均一になるまで混合した。その後、得られる吸水性樹脂粒子(1)のCRCが35g/gとなるように、190℃で30分間程度、加熱処理した。その後、60℃まで強制冷却した。 [0582] 次に、上記操作で得られた吸水性樹脂粒子(1)について、上述したペイントシェーカーテストを実施し、製造プロセス相当のダメージを付与した。その後、吸水性樹脂粉末(1)100質量部に対して、ジエチレントリアミン五酢酸三ナトリウム0.01質量部及び脱イオン水1質量部からなるキレート剤水溶液(1)1.01質量部を添加して、均一になるまで混合した。その後、60℃で1時間乾燥し、得られた結果物を目開き710μmのJIS標準篩に通過させた。その後、二酸化ケイ素(商品名:アエロジル200、日本アエロジル製)0.4質量部を添加して、均一になるまで混合した。 [0583] 以上の操作によって、粒子状吸水剤(1)を得た。表3〜5に粒子状吸水剤(1)の物性を示した。 [0584] なお、ペイントシェーカーテスト(PS)後の150μm通過粒子増加量は、粒子状吸水剤に対して、さらにペイントシェーカーテストを実施した際の、150μm通過粒子の増加量を示す。このペイントシェーカーテストにより粒子状吸水剤に与えられるダメージは、紙オムツ等の吸収体製造時のプロセスダメージを想定したものである。 [0585] [製造例2] 上記製造例bで得られた短冊状の含水ゲル(b)について、下記の条件変更以外は製造例1と同様のゲル粉砕を行い、粒子状含水ゲル(2)を得た。 [0586] 製造例2において、スクリュー押出機の多孔板の孔径を9.5mmから8mmに変更した。該変更によって、多孔板の開孔率は25.6%となった。なお、製造例2でのゲル粉砕エネルギー(GGE)は31.9J/g、ゲル粉砕エネルギー(2)(GGE(2))は17.5J/gであった。また、ゲル粉砕前の含水ゲル(b)の温度は80℃であり、ゲル粉砕後の粒子状含水ゲル(2)の温度は84℃であった。 [0587] 上記ゲル粉砕後に得られた粒子状含水ゲル(2)は、含水率が52.5質量%、質量平均粒子径(D50)が860μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.95であった。表2にゲル粉砕条件及び粒子状含水ゲル(2)の物性を示した。 [0588] 次いで、製造例1と同様の乾燥、粉砕、分級を行って、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(2)を得た。該吸水性樹脂粉末(2)は、質量平均粒子径(D50)が355μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.32、CRCが48.2g/g、粒子径150μm未満の粒子の割合(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)が0.4質量%であった。 [0589] 次に、上記吸水性樹脂粉末(2)100質量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025質量部、エチレンカーボネート0.4質量部、プロピレングリコール0.6質量部及び脱イオン水3.0質量部からなる表面架橋剤溶液(2)を添加して、均一になるまで混合した。その後、得られる吸水性樹脂粒子(2)のCRCが38g/gとなるように、190℃で30分間程度、加熱処理した。その後、60℃まで強制冷却した。 [0590] その後、製造例1と同様の操作を行うことによって、粒子状吸水剤(2)を得た。表3〜5に粒子状吸水剤(2)の物性を示した。」 ・「[0629] ・・・(略)・・・ [表2] ![]() 」 (イ)甲6発明 甲6に記載された事項を、特に製造例2に関して整理すると、甲6には次の発明(以下、「甲6発明」という。)が記載されていると認める。なお、甲6発明は甲5発明と全く同一である。 「アクリル酸300重量部、48重量%水酸化ナトリウム水溶液100重量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)0.61重量部、1.0重量%エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム水溶液6.5重量部、脱イオン水346.1重量部からなる単量体水溶液(2)を作製し、次に、40℃に調温した上記単量体水溶液(2)を定量ポンプで連続供給した後、更に48重量%水酸化ナトリウム水溶液150.6重量部を連続的にラインミキシングし、更に、4重量%過硫酸ナトリウム水溶液14.6重量部を連続的にラインミキシングした後、両端に堰を備えた平面状の重合ベルトを有する連続重合機に、厚みが10mmとなるように連続的に供給し、その後、重合(重合時間3分間)が連続的に行われ、帯状の含水ゲル(2)を得、得られた帯状の含水ゲル(2)を重合ベルトの進行方向に対して幅方向に、切断長が300mmとなるように等間隔に連続して切断することで、含水ゲル(2)を得、上記含水ゲル(2)を、スクリュー押出機に供給しゲル粉砕し、該スクリュー押出機としては、先端部に直径100mm、孔径8mm、孔数40個、開孔率36.1%、厚さ10mmの多孔板が備えられた、スクリュー軸の外径が86mmのミートチョッパーを使用し、該ミートチョッパーのスクリュー軸回転数を130rpmとした状態で、含水ゲル(2)を4640[g/min]、同時に、水蒸気を83[g/min]でそれぞれ供給し、この時のゲル粉砕エネルギー(GGE)は31.9[J/g]、GGE(2)は17.5[J/g]であり、上記ゲル粉砕工程で得られた粒子状含水ゲル(2)をゲル粉砕終了後1分以内に通気板上に散布(この時の粒子状含水ゲル(2)の温度は80℃)し、185℃で30分間乾燥を行い、乾燥重合体(2)を得、熱風の平均風速は通気ベルトの進行方向に対して垂直方向に1.0[m/s]であり、次いで、上記乾燥工程で得られた乾燥重合体(2)全量を3段ロールミルに供給して粉砕(粉砕工程)し、その後更に、目開き710μm及び175μmのJIS標準篩で分級することで、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(2)を得、次に、上記吸水性樹脂粒子(2)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、エチレンカーボネート0.4重量部、プロピレングリコール0.6重量部及び脱イオン水3.0重量部からなる(共有結合性)表面架橋剤溶液を均一に混合し、190℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂粉末(2)のCRCが38g/gとなるように加熱処理し、その後冷却を行い、ペイントシェーカーテストを実施し、製造プロセス相当のダメージを付与した後に、吸水性樹脂粒子100重量部に対して、水1重量部、ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム0.01重量部からなる水溶液を均一に混合し、60℃で1時間乾燥した後、目開き710μmのJIS標準篩を通過させ、二酸化ケイ素(商品名:アエロジル200、日本アエロジル製)0.4重量部を均一に添加して得た粒子状吸水剤(2)。」 オ 甲7に記載された事項及び甲7発明 (ア)甲7に記載された事項 甲7には、「吸水剤組成物およびその用途」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「【0055】・・・(略)・・・ (実施例6)中和率75モル%のアクリル酸ナトリウム(親水性不飽和単量体)37重量%水溶液5,500gに、内部架橋剤としてのポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数8)2.22gを溶解させて反応液とした。次に、この反応液を、窒素ガス雰囲気下で30分間脱気した(この反応液に窒素ガスを30分間吹き込むことによって該反応液中の溶存酸素を追い出した)。次いで、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を取り付けて形成した反応器に、上記の反応液を供給し、反応液を25℃に保ちながら系を窒素ガス置換した。 【0056】続いて、反応液を撹拌しながら、重合開始剤としての過硫酸ナトリウム2.4gおよびL−アスコルビン酸0.12gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。そして、25〜95℃で重合を行い、重合を開始してから40分後に反応を終了して含水ゲル状重合体を取り出した。得られた含水ゲル状重合体は、その径が約5mmに細分化されていた。この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目開きの大きさ300μm)の金網上に広げ、170℃で70分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物を振動ミルを用いて粉砕後、分級し、不定形破砕状の吸水性樹脂前駆体(a)を得た。 【0057】得られた吸水性樹脂前駆体(a)100重量部に、プロピレングリコール0.8重量部と、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03重量部、水2.5重量部、エチルアルコール0.8重量部とからなる表面架橋剤水溶液を混合した。上記の混合物を195℃で45分間加熱処理することにより吸水性樹脂(a)を得た。得られた吸水性樹脂(a)の無加圧下吸収倍率は46g/g、加圧下吸収倍率は36g/g、平均粒径は350μmであり、粒径が106μm未満の粒子の割合は1重量%であった。次に、上記の吸水性樹脂(a)100gに、過通液緩衝剤としての微粒子状の親水性二酸化ケイ素(商品名・アエロジル200(1次粒子の平均粒径約12nm);日本アエロジル株式会社製)0.3gを添加・混合(ドライブレンド)することにより、本発明にかかる吸水剤組成物(6)を得た。得られた吸水剤組成物(6)の粒径は、吸水性樹脂(a)に対してほとんど変化せず、平均粒径は350μm、粒径が106μm未満の粒子の割合は1重量%であった。 【0058】そして、上記吸水剤組成物の諸性能を上記の方法によって測定した。その結果を表1に示す。 ・・・(略)・・・ 【0061】そして、上記吸水剤組成物の諸性能を上記の方法によって測定した。その結果を表1に示す。 (実施例10)中和率75モル%のアクリル酸ナトリウム(親水性不飽和単量体)33重量%水溶液5,500gに、内部架橋剤としてのポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数8)4.46gを溶解させて反応液とした。次に、この反応液を、窒素ガス雰囲気下で30分間脱気した(この反応液に窒素ガスを30分間吹き込むことによって該反応液中の溶存酸素を追い出した)。次いで,シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を取り付けて形成した反応器に、上記の反応液を供給し、反応液を25℃に保ちながら系を窒素ガス置換した。 【0062】続いて、反応液を攪拌しながら、重合開始剤としての過硫酸アンモニウム2.4gおよびL−アスコルビン酸0.12gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。そして、25〜90℃で重合を行い、重合を開始してから40分後に反応を終了して含水ゲル状重合体を取り出した。得られた含水ゲル状重合体は、その径が約5mmに細分化されていた。この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目開きの大きさ300μm)の金網上に広げ、170℃で70分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物を振動ミルを用いて粉砕後、分級し、不定形破砕状の吸水性樹脂前駆体(b)を得た。 【0063】得られた吸水性樹脂前駆体(b)100重量部に、プロピレングリコール0.7重量部と、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.02重量部、水2重量部、エチルアルコール0.7重量部とからなる表面架橋剤水溶液を混合した。上記の混合物を185℃で40分間加熱処理することにより吸水性樹脂(b)を得た。得られた吸水性樹脂(b)の無加圧下吸収倍率は43g/g、加圧下吸収倍率は32g/g、平均粒径は430μmであり、粒径が106μm未満の粒子の割合は3重量%であった。次に、上記の吸水性樹脂(b)100gに、過通液緩衝剤としての微粒子状の親水性二酸化ケイ素(商品名・アエロジル200(1次粒子の平均粒径約12nm);日本アエロジル株式会社製)0.3gを添加・混合(ドライブレンド)することにより、本発明にかかる吸水剤組成物(10)を得た。得られた吸水剤組成物(10)の粒径は、吸水性樹脂(b)に対してほとんど変化せず、平均粒径は430μm、粒径が106μm未満の粒子の割合は3重量%であった。」 ・「【0072】 【表1】 ![]() 」 (イ)甲7発明 甲7に記載された事項を、特に実施例6及び実施例10に関して整理すると、甲7には次の発明(以下、順に「甲7実施例6発明」及び「甲7実施例10発明」という。)が記載されていると認める。 <甲7実施例6発明> 「中和率75モル%のアクリル酸ナトリウム(親水性不飽和単量体)37重量%水溶液5,500gに、内部架橋剤としてのポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数8)2.22gを溶解させて反応液とし、次に、この反応液を、窒素ガス雰囲気下で30分間脱気し(この反応液に窒素ガスを30分間吹き込むことによって該反応液中の溶存酸素を追い出した)、次いで、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を取り付けて形成した反応器に、上記の反応液を供給し、反応液を25℃に保ちながら系を窒素ガス置換し、続いて、反応液を撹拌しながら、重合開始剤としての過硫酸ナトリウム2.4gおよびL−アスコルビン酸0.12gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始し。そして、25〜95℃で重合を行い、重合を開始してから40分後に反応を終了して含水ゲル状重合体を取り出し、得られた含水ゲル状重合体は、その径が約5mmに細分化され、この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目開きの大きさ300μm)の金網上に広げ、170℃で70分間熱風乾燥し、次いで、乾燥物を振動ミルを用いて粉砕後、分級し、不定形破砕状の吸水性樹脂前駆体(a)を得、得られた吸水性樹脂前駆体(a)100重量部に、プロピレングリコール0.8重量部と、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03重量部、水2.5重量部、エチルアルコール0.8重量部とからなる表面架橋剤水溶液を混合し、上記の混合物を195℃で45分間加熱処理することにより吸水性樹脂(a)を得、次に、上記の吸水性樹脂(a)100gに、過通液緩衝剤としての微粒子状の親水性二酸化ケイ素(商品名・アエロジル200(1次粒子の平均粒径約12nm);日本アエロジル株式会社製)0.3gを添加・混合(ドライブレンド)することにより得た吸水剤組成物(6)。」 <甲7実施例10発明> 「中和率75モル%のアクリル酸ナトリウム(親水性不飽和単量体)33重量%水溶液5,500gに、内部架橋剤としてのポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数8)4.46gを溶解させて反応液とし、次に、この反応液を、窒素ガス雰囲気下で30分間脱気し(この反応液に窒素ガスを30分間吹き込むことによって該反応液中の溶存酸素を追い出した)、次いで,シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を取り付けて形成した反応器に、上記の反応液を供給し、反応液を25℃に保ちながら系を窒素ガス置換し、続いて、反応液を攪拌しながら、重合開始剤としての過硫酸アンモニウム2.4gおよびL−アスコルビン酸0.12gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始し、そして、25〜90℃で重合を行い、重合を開始してから40分後に反応を終了して含水ゲル状重合体を取り出し、得られた含水ゲル状重合体は、その径が約5mmに細分化され、この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目開きの大きさ300μm)の金網上に広げ、170℃で70分間熱風乾燥し、次いで、乾燥物を振動ミルを用いて粉砕後、分級し、不定形破砕状の吸水性樹脂前駆体(b)を得、得られた吸水性樹脂前駆体(b)100重量部に、プロピレングリコール0.7重量部と、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.02重量部、水2重量部、エチルアルコール0.7重量部とからなる表面架橋剤水溶液を混合し、上記の混合物を185℃で40分間加熱処理することにより吸水性樹脂(b)を得、次に、上記の吸水性樹脂(b)100gに、過通液緩衝剤としての微粒子状の親水性二酸化ケイ素(商品名・アエロジル200(1次粒子の平均粒径約12nm);日本アエロジル株式会社製)0.3gを添加・混合(ドライブレンド)することにより得た吸水剤組成物(10)。」 カ 甲14に記載された事項及び甲14発明 (ア)甲14に記載された事項 甲14には、「吸収体およびそれを用いた吸収性物品」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「【0089】 製造例1: 撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計および窒素ガス導入管を備えた1000ml容の五つ口円筒型丸底フラスコにn−ヘプタン500mlを加えた。これに、界面活性剤としてHLBが3.0のショ糖エステル(界面活性剤:三菱化学フーズ株式会社製 S−370)を0.92g添加して分散させ、50℃に昇温して界面活性剤を溶解した後、30℃に冷却した。 【0090】 一方、500ml容の三角フラスコにアクリル酸75gを加えた。これに、外部から冷却しつつ、18重量%水酸化ナトリウム水溶液172gを滴下して、75モル%の中和を行い、アクリル酸の部分中和物水溶液を調製した。さらに、重合開始剤の過硫酸カリウム0.11gと、内部架橋剤としてのエチレングリコールジグリシジルエーテル9.2mgを添加し、これを1段目重合用の単量体水溶液(a)とした。次いで、別の500ml容の三角フラスコにアクリル酸96gを加え、上記のごとく冷却しつつ、21.6重量%水酸化ナトリウム水溶液184.6gを滴下して、75モル%の中和を行い、さらに過硫酸カリウム0.14g、エチレングリコールジグリシジルエーテル35.7mgを添加し、これを2段目重合用の単量体水溶液(b)とした。 【0091】 次に、丸底フラスコに1段目重合用の単量体水溶液(a)を撹拌下で全量加えて分散させ、系内を窒素で十分に置換した後70℃に昇温し、重合反応を行った。その後、重合スラリーを40℃に冷却し、2段目重合用の単量体水溶液(b)を添加した。全量添加後、再び系内を窒素で十分に置換した後70℃に昇温し2段目の重合反応を行った。2段目の重合終了後、1回目の表面架橋剤として2gの水に溶解したエチレングリコールジグリシジルエーテル42.2mgを添加し、含水ゲル状物から約70重量%(約245g)の水分をn−ヘプタンとの共沸蒸留して水分のみを系外に留去した。脱水した含水ゲル状物に2回目の表面架橋剤として、10gの水に溶解したエチレングリコールジグリシジルエーテル211.1mgを添加し、加熱乾燥し、吸水性樹脂(A)230.1g(重量平均粒子径377μm)を得た。この吸水性樹脂(A)は、実施例1および実施例7で使用した。 【0092】 製造例2: 製造例1において、1回目の表面架橋剤として、2gの水に溶解したエチレングリコールジグリシジルエーテル42.2mgに代えて、4gの水に溶解したエチレングリコールジグリシジルエーテル84.4mgを、2回目の表面架橋剤として、10gの水に溶解したエチレングリコールジグリシジルエーテル211.1mgに代えて、8gの水に溶解したエチレングリコールジグリシジルエーテル168.9mgを用いた以外は製造例1と同様の反応を行い、吸水性樹脂(B)229.5g(重量平均粒子径386μm)を得た。この吸水性樹脂(B)は、実施例2および実施例8で使用した。 ・・・(略)・・・ 【0095】 製造例5: 製造例1において、2回目の表面架橋剤として、10gの水に溶解したエチレングリコールジグリシジルエーテル211.1mgに代えて、6gの水に溶解したエチレングリコールジグリシジルエーテル126.7mgを添加した以外は製造例1と同様の反応を行い、吸水性樹脂(E)231.5g(重量平均粒子径390μm)を得た。この吸水性樹脂(E)は、実施例5および実施例11で使用した。」 (イ)甲14発明 甲14に記載された事項を、特に製造例1、2及び5に関して整理すると、甲14には次の発明(以下、順に「甲14製造例1発明」、「甲14製造例2発明」及び「甲14製造例5発明」という。)が記載されていると認める。 <甲14製造例1発明> 「撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計および窒素ガス導入管を備えた1000ml容の五つ口円筒型丸底フラスコにn−ヘプタン500mlを加え、これに、界面活性剤としてHLBが3.0のショ糖エステル(界面活性剤:三菱化学フーズ株式会社製 S−370)を0.92g添加して分散させ、50℃に昇温して界面活性剤を溶解した後、30℃に冷却し、一方、500ml容の三角フラスコにアクリル酸75gを加え、これに、外部から冷却しつつ、18重量%水酸化ナトリウム水溶液172gを滴下して、75モル%の中和を行い、アクリル酸の部分中和物水溶液を調製し、さらに、重合開始剤の過硫酸カリウム0.11gと、内部架橋剤としてのエチレングリコールジグリシジルエーテル9.2mgを添加し、これを1段目重合用の単量体水溶液(a)とし、次いで、別の500ml容の三角フラスコにアクリル酸96gを加え、上記のごとく冷却しつつ、21.6重量%水酸化ナトリウム水溶液184.6gを滴下して、75モル%の中和を行い、さらに過硫酸カリウム0.14g、エチレングリコールジグリシジルエーテル35.7mgを添加し、これを2段目重合用の単量体水溶液(b)とし、次に、丸底フラスコに1段目重合用の単量体水溶液(a)を撹拌下で全量加えて分散させ、系内を窒素で十分に置換した後70℃に昇温し、重合反応を行い、その後、重合スラリーを40℃に冷却し、2段目重合用の単量体水溶液(b)を添加し、全量添加後、再び系内を窒素で十分に置換した後70℃に昇温し2段目の重合反応を行い、2段目の重合終了後、1回目の表面架橋剤として2gの水に溶解したエチレングリコールジグリシジルエーテル42.2mgを添加し、含水ゲル状物から約70重量%(約245g)の水分をn−ヘプタンとの共沸蒸留して水分のみを系外に留去し、脱水した含水ゲル状物に2回目の表面架橋剤として、10gの水に溶解したエチレングリコールジグリシジルエーテル211.1mgを添加し、加熱乾燥し、得た吸水性樹脂(A)。」 <甲14製造例2発明> 「撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計および窒素ガス導入管を備えた1000ml容の五つ口円筒型丸底フラスコにn−ヘプタン500mlを加え、これに、界面活性剤としてHLBが3.0のショ糖エステル(界面活性剤:三菱化学フーズ株式会社製 S−370)を0.92g添加して分散させ、50℃に昇温して界面活性剤を溶解した後、30℃に冷却し、一方、500ml容の三角フラスコにアクリル酸75gを加え、これに、外部から冷却しつつ、18重量%水酸化ナトリウム水溶液172gを滴下して、75モル%の中和を行い、アクリル酸の部分中和物水溶液を調製し、さらに、重合開始剤の過硫酸カリウム0.11gと、内部架橋剤としてのエチレングリコールジグリシジルエーテル9.2mgを添加し、これを1段目重合用の単量体水溶液(a)とし、次いで、別の500ml容の三角フラスコにアクリル酸96gを加え、上記のごとく冷却しつつ、21.6重量%水酸化ナトリウム水溶液184.6gを滴下して、75モル%の中和を行い、さらに過硫酸カリウム0.14g、エチレングリコールジグリシジルエーテル35.7mgを添加し、これを2段目重合用の単量体水溶液(b)とし、次に、丸底フラスコに1段目重合用の単量体水溶液(a)を撹拌下で全量加えて分散させ、系内を窒素で十分に置換した後70℃に昇温し、重合反応を行い、その後、重合スラリーを40℃に冷却し、2段目重合用の単量体水溶液(b)を添加し、全量添加後、再び系内を窒素で十分に置換した後70℃に昇温し2段目の重合反応を行い、2段目の重合終了後、1回目の表面架橋剤として4gの水に溶解したエチレングリコールジグリシジルエーテル84.4mgを添加し、含水ゲル状物から約70重量%(約245g)の水分をn−ヘプタンとの共沸蒸留して水分のみを系外に留去し、脱水した含水ゲル状物に2回目の表面架橋剤として、8gの水に溶解したエチレングリコールジグリシジルエーテル168.9mgを添加し、加熱乾燥し、得た吸水性樹脂(A)。」 <甲14製造例5発明> 「撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計および窒素ガス導入管を備えた1000ml容の五つ口円筒型丸底フラスコにn−ヘプタン500mlを加え、これに、界面活性剤としてHLBが3.0のショ糖エステル(界面活性剤:三菱化学フーズ株式会社製 S−370)を0.92g添加して分散させ、50℃に昇温して界面活性剤を溶解した後、30℃に冷却し、一方、500ml容の三角フラスコにアクリル酸75gを加え、これに、外部から冷却しつつ、18重量%水酸化ナトリウム水溶液172gを滴下して、75モル%の中和を行い、アクリル酸の部分中和物水溶液を調製し、さらに、重合開始剤の過硫酸カリウム0.11gと、内部架橋剤としてのエチレングリコールジグリシジルエーテル9.2mgを添加し、これを1段目重合用の単量体水溶液(a)とし、次いで、別の500ml容の三角フラスコにアクリル酸96gを加え、上記のごとく冷却しつつ、21.6重量%水酸化ナトリウム水溶液184.6gを滴下して、75モル%の中和を行い、さらに過硫酸カリウム0.14g、エチレングリコールジグリシジルエーテル35.7mgを添加し、これを2段目重合用の単量体水溶液(b)とし、次に、丸底フラスコに1段目重合用の単量体水溶液(a)を撹拌下で全量加えて分散させ、系内を窒素で十分に置換した後70℃に昇温し、重合反応を行い、その後、重合スラリーを40℃に冷却し、2段目重合用の単量体水溶液(b)を添加し、全量添加後、再び系内を窒素で十分に置換した後70℃に昇温し2段目の重合反応を行い、2段目の重合終了後、1回目の表面架橋剤として2gの水に溶解したエチレングリコールジグリシジルエーテル42.2mgを添加し、含水ゲル状物から約70重量%(約245g)の水分をn−ヘプタンとの共沸蒸留して水分のみを系外に留去し、脱水した含水ゲル状物に2回目の表面架橋剤として、6gの水に溶解したエチレングリコールジグリシジルエーテル126.7mgを添加し、加熱乾燥し、得た吸水性樹脂(A)。」 (2)甲3に基づく新規性について ア 本件特許発明1について (ア)対比 本件特許発明1と甲3発明を対比する。 両者は次の点で一致する。 <一致点> 「エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子であって、 前記エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、 前記(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。」 そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。 <相違点3> 本件特許発明1においては、「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量の間の標準偏差が8〜20g/gであり、 0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量からなる群より選ばれる少なくとも一種が250〜500g/gである」と特定されているのに対し、甲3発明においては、そのようには特定されていない点。 (イ)判断 そこで、相違点3について検討する。 甲9(甲3の実施例2の実験成績証明書)によると、甲3発明における「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量」、「0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量」及び「0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量」はそれぞれ「216g/g」、「236g/g」及び「243g/g」であり、「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量からなる群より選ばれる少なくとも一種が250〜500g/g」であるという条件を満たしていない。 したがって、甲3発明は、相違点3に係る本件特許発明1の発明特定事項を有しているといえず、相違点3は実質的な相違点である。 (ウ)まとめ したがって、本件特許発明1は甲3発明であるとはいえない。 イ 本件特許発明2及び3について 本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲3発明であるとはいえない。 ウ 本件特許発明4ないし6について 本件特許発明4ないし6は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものを請求項4ないし6に記載された用途に使用した発明であるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲3に記載された発明であるとはいえない。 (3)甲4に基づく新規性について ア 本件特許発明1について (ア)対比 本件特許発明1と甲4発明を対比する。 両者は次の点で一致する。 <一致点> 「エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子であって、 前記エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、 前記(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。」 そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。 <相違点4> 本件特許発明1においては、「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量の間の標準偏差が8〜20g/gであり、 0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量からなる群より選ばれる少なくとも一種が250〜500g/gである」と特定されているのに対し、甲4発明においては、そのようには特定されていない点。 (イ)判断 そこで、相違点4について検討する。 甲10(甲4の実施例32の実験成績証明書)によると、甲4発明における「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量の間の標準偏差」は「7.0g/g」であり、「8〜20g/g」であるという条件を満たしていないし、甲4発明における「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量」、「0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量」及び「0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量」はそれぞれ「189g/g」、「199g/g」及び「203g/g」であり、「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量からなる群より選ばれる少なくとも一種が250〜500g/g」であるという条件を満たしていない。 したがって、甲4発明は、相違点4に係る本件特許発明1の発明特定事項を有しているといえず、相違点4は実質的な相違点である。 (ウ)まとめ したがって、本件特許発明1は甲4発明であるとはいえない。 イ 本件特許発明2及び3について 本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲4発明であるとはいえない。 ウ 本件特許発明4ないし6について 本件特許発明4ないし6は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものを請求項4ないし6に記載された用途に使用した発明であるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲4に記載された発明であるとはいえない。 (4)甲5に基づく新規性について ア 本件特許発明1について (ア)対比 本件特許発明1と甲5発明を対比する。 両者は次の点で一致する。 <一致点> 「エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子であって、 前記エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、 前記(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。」 そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。 <相違点5> 本件特許発明1においては、「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量の間の標準偏差が8〜20g/gであり、 0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量からなる群より選ばれる少なくとも一種が250〜500g/gである」と特定されているのに対し、甲5発明においては、そのようには特定されていない点。 (イ)判断 そこで、相違点5について検討する。 甲11(甲5の実施例2の実験成績証明書)によると、甲5発明における「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量」、「0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量」及び「0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量」はそれぞれ「207g/g」、「214g/g」及び「223g/g」であり、「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量からなる群より選ばれる少なくとも一種が250〜500g/g」であるという条件を満たしていない。 したがって、甲5発明は、相違点5に係る本件特許発明1の発明特定事項を有しているといえず、相違点5は実質的な相違点である。 (ウ)まとめ したがって、本件特許発明1は甲5発明であるとはいえない。 イ 本件特許発明2及び3について 本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲5発明であるとはいえない。 ウ 本件特許発明4ないし6について 本件特許発明4ないし6は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものを請求項4ないし6に記載された用途に使用した発明であるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲5に記載された発明であるとはいえない。 (5)甲6に基づく新規性について 甲6発明は甲5発明と同じである。 したがって、本件特許発明1ないし4は甲6発明であるとはいえない。 また、本件特許発明5及び6は甲6に記載された発明であるとはいえない。 (6)甲7の実施例6に基づく新規性について ア 本件特許発明1について (ア)対比 本件特許発明1と甲7実施例6発明を対比する。 両者は次の点で一致する。 <一致点> 「エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子であって、 前記エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、 前記(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。」 そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。 <相違点7−1> 本件特許発明1においては、「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量の間の標準偏差が8〜20g/gであり、 0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量からなる群より選ばれる少なくとも一種が250〜500g/gである」と特定されているのに対し、甲7実施例6発明においては、そのようには特定されていない点。 (イ)判断 そこで、相違点7−1について検討する。 甲12(甲7の実施例6の実験成績証明書)によると、甲7実施例6発明における「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量の間の標準偏差」は「7.3g/g」であり、「8〜20g/g」であるという条件を満たしていない。 したがって、甲7実施例6発明は、相違点7−1に係る本件特許発明1の発明特定事項を有しているといえず、相違点7−1は実質的な相違点である。 (ウ)まとめ したがって、本件特許発明1は甲7実施例6発明であるとはいえない。 イ 本件特許発明2及び3について 本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲7実施例6発明であるとはいえない。 ウ 本件特許発明4ないし6について 本件特許発明5及び6は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものを請求項5及び6に記載された用途に使用した発明であるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲7に記載された発明であるとはいえない。 (7)甲7の実施例10に基づく新規性について ア 本件特許発明1について (ア)対比 本件特許発明1と甲7実施例10発明を対比する。 両者は次の点で一致する。 <一致点> 「エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子であって、 前記エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、 前記(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。」 そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。 <相違点7−2> 本件特許発明1においては、「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量の間の標準偏差が8〜20g/gであり、 0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量からなる群より選ばれる少なくとも一種が250〜500g/gである」と特定されているのに対し、甲7実施例10発明においては、そのようには特定されていない点。 (イ)判断 そこで、相違点7−2について検討する。 甲13(甲7の実施例10の実験成績証明書)によると、甲7実施例10発明における「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量の間の標準偏差」は「7.5g/g」であり、「8〜20g/g」であるという条件を満たしていないし、甲7実施例発明10における「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量」、「0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量」及び「0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量」はそれぞれ「223g/g」、「228g/g」及び「232g/g」であり、「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量からなる群より選ばれる少なくとも一種が250〜500g/g」であるという条件を満たしていない。 したがって、甲7実施例10発明は、相違点7−2に係る本件特許発明1の発明特定事項を有しているといえず、相違点7−2は実質的な相違点である。 (ウ)まとめ したがって、本件特許発明1は甲7実施例10発明であるとはいえない。 イ 本件特許発明2及び3について 本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲7実施例10発明であるとはいえない。 ウ 本件特許発明4ないし6について 本件特許発明4ないし6は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものを請求項4ないし6に記載された用途に使用した発明であるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲7に記載された発明であるとはいえない。 (8)甲14に基づく新規性について ア 本件特許発明1について (ア)対比 本件特許発明1と甲14製造例1発明を対比する。 両者は次の点で一致する。 <一致点> 「エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子であって、 前記エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、 前記(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。」 そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。 <相違点14> 本件特許発明1においては、「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量の間の標準偏差が8〜20g/gであり、 0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量からなる群より選ばれる少なくとも一種が250〜500g/gである」と特定されているのに対し、甲14製造例1発明においては、そのようには特定されていない点。 (イ)判断 そこで、相違点14について検討する。 甲14製造例1発明の製造方法は、架橋剤であるエチレングリコールジグリジルエーテルの使用量が、重合後の1回目の架橋において0.243ミリモル(42.2mg)用いられるとともに2回目の架橋において1.213ミリモル(211.1mg)用いられており、総量で1.456ミリモル用いられているものである。 他方、本件特許の発明の詳細な説明に記載された実施例1及び2の製造方法は、架橋剤であるエチレングリコールジグリジルエーテルの使用量が、重合後の1回目の架橋において0.067ミリモル用いられるとともに2回目の架橋において0.507ミリモル用いられており、総量で0.574ミリモル用いられているものである。 すなわち、甲14製造例1発明の製造方法と本件特許の発明の詳細な説明に記載された実施例1及び2の製造方法は、架橋剤の使用量の配分や総量が異なるものであり、両者は実質的に同一であるとはいえないから、甲14製造例1発明の製造方法と本件特許の発明の詳細な説明に記載された実施例1及び2の製造方法と同じであることを理由に甲14製造例1発明が相違点14に係る本件特許発明1の発明特定事項を有しているとすることはできない。 また、他の証拠をみても、甲14製造例1発明が相違点14に係る本件特許発明1の発明特定事項を有しているとすることはできない。 したがって、甲14製造例1発明が、相違点14に係る本件特許発明1の発明特定事項を有しているとすることはできない。 よって、相違点14は実質的な相違点である。 (ウ)まとめ したがって、本件特許発明1は甲14製造例1発明であるとはいえない。 また、甲14製造例2発明の製造方法は、架橋剤であるエチレングリコールジグリジルエーテルの使用量が、重合後の1回目の架橋において0.485ミリモル(84.4mg)用いられるとともに2回目の架橋において0.971ミリモル(168.9mg)用いられており、総量で1.456ミリモル用いられているものであり、甲14製造例5発明の製造方法は、架橋剤であるエチレングリコールジグリジルエーテルの使用量が、重合後の1回目の架橋において0.243ミリモル(42.2mg)用いられるとともに2回目の架橋において0.728ミリモル(126.7mg)用いられており、総量で0.971ミリモル用いられているものであるから、甲14製造例2発明及び甲14製造例5発明の製造方法と本件特許の発明の詳細な説明に記載された実施例1及び2の製造方法は、架橋剤の使用量の配分や総量が異なるものであり、両者は実質的に同一であるとはいえないから、甲14製造例2発明及び甲14製造例5発明の製造方法と本件特許の発明の詳細な説明に記載された実施例1及び2の製造方法と同じであることを理由に甲14製造例2発明又は甲14製造例5発明が相違点14に係る本件特許発明1の発明特定事項を有しているとすることはできない。 また、他の証拠をみても、甲14製造例2発明又は甲14製造例5発明が相違点14に係る本件特許発明1の発明特定事項を有しているとすることはできない。 したがって、本件特許発明1と甲14製造例2発明又は甲14製造例5発明の対比・判断についても甲14製造例1発明との対比・判断と同様であり、本件特許発明1は甲14製造例2発明又は甲14製造例5発明であるとはいえない。 なお、特許異議申立人は、令和3年7月30日に提出された意見書において、特許権者が令和3年6月18日に提出した意見書に添付された乙第1号証の実験結果が疑わしいこと、含水率の比較から甲14に記載された製造方法は、本件明細書の吸水性樹脂粒子の製造方法と類似していること及び令和3年6月18日に提出した意見書において特許権者がした推定は技術的に失当であることを主張した上で、本件特許発明1は甲14製造例1発明、甲14製造例2発明及び甲14製造例5発明と相違しない蓋然性が高い旨主張する。 そこで、検討する。 上記乙第1号証の実験結果が疑わしい、含水率の比較から甲14に記載された製造方法は、本件明細書の吸水性樹脂粒子の製造方法と類似している及び令和3年6月18日に提出した意見書において特許権者がした推定は技術的に失当であるといったことが仮にあったとしても、上記(イ)のとおり、甲14製造例1発明、甲14製造例2発明及び甲14製造例5発明の製造方法と本件特許の発明の詳細な説明に記載された実施例1及び2の製造方法は、架橋剤の使用量の配分や総量が異なるものであり、両者が実質的に同一であるとはいえないことに変わりはない。 したがって、上記主張は採用できない。 イ 本件特許発明2及び3について 本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲14製造例1発明、甲14製造例2発明又は甲14製造例5発明であるとはいえない。 ウ 本件特許発明4ないし6について 本件特許発明4ないし6は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものを請求項4ないし6に記載された用途に使用した発明であるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲14に記載された発明であるとはいえない。 (9)取消理由1についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし6は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取消理由1によっては取り消すことはできない。 2 取消理由2(サポート要件)について (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 そこで、検討する。 (2)特許請求の範囲の記載 本件特許の特許請求の範囲の記載は、上記第3のとおりである。 (3)発明の詳細な説明の記載 本件特許の発明の詳細の記載は次のとおりである。 ・「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 通常、吸収性物品に用いられる吸収体に対しては、金属イオンを含む種々の液(尿、汗等)を吸収することが求められている。ここで、吸収体に供された液が、吸収体に充分浸透しなければ、余剰の液はその表面を流れる等して、吸収体の外に漏れるといった不具合が生じ得る。そのため、金属イオンを含む液が吸収体に充分な速さで浸透する必要があり、液の組成に依存することなく好適な浸透速度が安定的に得られることが求められる。 【0005】 本発明の一側面は、液の組成に依存することなく好適な浸透速度を安定的に得ることが可能な吸収体を与える吸水性樹脂粒子を提供することを目的とする。また、本発明の他の一側面は、当該吸水性樹脂粒子を用いた吸収体を提供することを目的とする。さらに、本発明の他の一側面は、当該吸収体を用いた吸収性物品を提供することを目的とする。」 ・「【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明者は、従来の吸水性樹脂粒子を用いた場合、吸水性樹脂粒子を含有する吸収体に対する液の浸透速度が、液中の金属イオン濃度に依存することを見出した。例えば、個人差、季節差等の因子により尿、汗等における金属イオン濃度は変動し得るが、これらの因子の変動により液の浸透速度が変動することから、従来の吸水性樹脂粒子を用いた場合には、液の組成(尿、汗等の種類毎の差異、同一種の組成変動に起因する差異など)に依っては所望の浸透速度が得られない場合がある。これに対し、本発明者は、吸水性樹脂粒子における特定の金属塩の水溶液の保水量に関して好適な標準偏差を有する吸水性樹脂粒子を得ることが、このような吸水性樹脂粒子が用いられた吸収体において、液の組成に依存することなく好適な浸透速度を安定的に達成できることを見出した。 【0007】 本発明の一側面は、0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量の間の標準偏差が20g/g以下である、吸水性樹脂粒子を提供する。 【0008】 上述の吸水性樹脂粒子によれば、液の組成に依存することなく好適な浸透速度を安定的に得ることが可能な吸収体が与えられる。 【0009】 本発明の他の一側面は、上述の吸水性樹脂粒子を含有する、吸収体を提供する。 【0010】 本発明の他の一側面は、上述の吸収体を備える、吸収性物品を提供する。」 ・「【発明の効果】 【0011】 本発明の一側面によれば、液の組成に依存することなく好適な浸透速度を安定的に得ることが可能な吸収体を与える吸水性樹脂粒子を提供することができる。また、本発明の他の一側面によれば、当該吸水性樹脂粒子を用いた吸収体を提供することができる。さらに、本発明の他の一側面によれば、当該吸収体を用いた吸収性物品を提供することができる。本発明の他の一側面によれば、金属イオンを含む液の吸液への樹脂粒子、吸収体及び吸収性物品の応用を提供することができる。」 ・「【0015】 本実施形態に係る吸水性樹脂粒子において、0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量の間の標準偏差(以下、「標準偏差S」という)は20g/g以下である。すなわち、本実施形態に係る吸水性樹脂粒子にこれらの水溶液を保水させた際に、本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、標準偏差Sとして20g/g以下を与える。標準偏差Sを与える保水量は、乾燥時の吸水性樹脂粒子の保水量である。本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、尿、汗、血液(例えば経血)等の吸収性に優れている。本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、本実施形態に係る吸収体の構成成分として用いることができる。 【0016】 本実施形態に係る吸水性樹脂粒子によれば、液の組成に依存することなく好適な浸透速度を安定的に得ることが可能な吸収体が与えられる。本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の吸液対象の液は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有してよい。本実施形態に係る吸水性樹脂粒子によれば、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属イオンの濃度に依存することなく好適な浸透速度を安定的に得ることが可能な吸収体が与えられる。本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の吸液対象の液は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン及びカルシウムイオンからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む金属塩として、塩化物塩及び硫化物塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の水溶液であってよい。 【0017】 標準偏差Sは、下記式(A)により得ることができる。式(A)において、nは4(上述の4種の水溶液)であり、xiは、各水溶液の保水量を示し、xaは、4種の水溶液の保水量の平均値を示す。 【0018】 【数1】 ![]() 【0019】 標準偏差Sは、吸収体に用いられた場合に好適な浸透速度を安定的に得やすい観点から、18g/g以下が好ましく、16g/g以下がより好ましく、14g/g以下が更に好ましく、13g/g以下が特に好ましく、12g/g以下が極めて好ましく、11g/g以下が非常に好ましい。標準偏差Sは、0g/g以上であり、0g/gを超えていてよく、5g/g以上であってよく、8g/g以上であってよく、10g/g以上であってよい。 【0020】 本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、水を保水可能であればよく、吸液対象の液は水を含むことができる。本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、ナトリウム塩水溶液、カリウム塩水溶液、マグネシウム塩水溶液、及び、カルシウム塩水溶液からなる群より選ばれる少なくとも一種を保水可能な吸水性樹脂粒子であり、例えば、塩化ナトリウム水溶液、塩化カリウム水溶液、塩化マグネシウム水溶液、及び、塩化カルシウム水溶液からなる群より選ばれる少なくとも一種を保水可能な吸水性樹脂粒子である。本実施形態に係る吸水性樹脂粒子においては、例えば、0.01質量%の塩化ナトリウム水溶液の保水量、0.01質量%の塩化カリウム水溶液の保水量、0.01質量%の塩化マグネシウム水溶液の保水量、及び、0.01質量%の塩化カルシウム水溶液の保水量の間の標準偏差が20g/g以下であってよい。 【0021】 本実施形態に係る吸水性樹脂粒子において、0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量からなる群より選ばれる少なくとも一種は、下記の範囲(例えば150g/g以上)であることが好ましい。 【0022】 0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量は、吸収体に用いられた場合に好適な浸透速度を安定的に得やすい観点から、50g/g以上が好ましく、100g/g以上がより好ましく、150g/g以上が更に好ましく、200g/g以上が特に好ましく、250g/g以上が極めて好ましい。0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量の上限は、例えば500g/g以下である。 【0023】 0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量は、吸収体に用いられた場合に好適な浸透速度を安定的に得やすい観点から、50g/g以上が好ましく、100g/g以上がより好ましく、150g/g以上が更に好ましく、200g/g以上が特に好ましく、250g/g以上が極めて好ましい。0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量の上限は、例えば500g/g以下である。 【0024】 0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量は、吸収体に用いられた場合に好適な浸透速度を安定的に得やすい観点から、50g/g以上が好ましく、100g/g以上がより好ましく、150g/g以上が更に好ましく、200g/g以上が特に好ましく、220g/g以上が極めて好ましく、250g/g以上が非常に好ましい。0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量の上限は、例えば500g/g以下である。 【0025】 0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量は、吸収体に用いられた場合に好適な浸透速度を安定的に得やすい観点から、50g/g以上が好ましく、100g/g以上がより好ましく、150g/g以上が更に好ましく、180g/g以上が特に好ましく、200g/g以上が極めて好ましく、240g/g以上が非常に好ましい。0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量の上限は、例えば500g/g以下である。」 ・「【0028】 本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、例えば、エチレン性不飽和単量体を含有する単量体を重合させて得られる架橋重合体を含むことができる。すなわち、本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有することができる。重合方法としては、逆相懸濁重合法、水溶液重合法、バルク重合法、沈殿重合法等が挙げられる。これらの中では、得られる吸水性樹脂粒子の良好な吸水特性の確保、及び、重合反応の制御が容易である観点から、逆相懸濁重合法又は水溶液重合法が好ましい。以下においては、エチレン性不飽和単量体を重合させる方法として、逆相懸濁重合法を例にとって説明する。」 ・「【0030】 これらの中でも、工業的に入手が容易である観点から、エチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸及びその塩、アクリルアミド、メタクリルアミド、並びに、N,N−ジメチルアクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸及びその塩、並びに、アクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことがより好ましい。吸水特性を更に高める観点から、エチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことが更に好ましい。」 ・「【0031】 吸水性樹脂粒子を得るための単量体としては、上述のエチレン性不飽和単量体以外の単量体が使用されてもよい。このような単量体は、例えば、上述のエチレン性不飽和単量体を含む水溶液に混合して用いることができる。エチレン性不飽和単量体の使用量は、単量体全量に対して70〜100モル%であることが好ましい。中でも、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が単量体全量に対して70〜100モル%であることがより好ましい。」 ・「【0034】 逆相懸濁重合法においては、界面活性剤の存在下、炭化水素分散媒中で単量体水溶液を分散し、ラジカル重合開始剤等を用いてエチレン性不飽和単量体の重合を行うことができる。ラジカル重合開始剤としては、水溶性ラジカル重合開始剤を用いることができる。」 ・「【0048】 重合の際に自己架橋による架橋が生じるが、更に内部架橋剤を用いることで架橋を施してもよい。内部架橋剤を用いると、吸水性樹脂粒子の吸水特性を制御しやすい。内部架橋剤は、通常、重合反応の際に反応液に添加される。・・・(略)・・・内部架橋剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。内部架橋剤としては、ポリグリシジル化合物が好ましく、ジグリシジルエーテル化合物がより好ましく、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、及び、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一種が更に好ましい。 【0049】 内部架橋剤の使用量は、得られる重合体が適度に架橋されることにより水溶性の性質が抑制され、充分な吸水量が得られやすい観点から、エチレン性不飽和単量体1モル当たり、0〜0.03モルが好ましく、0.00001〜0.01モルがより好ましく、0.00002〜0.005モルが更に好ましい。」 ・「【0053】 逆相懸濁重合は、1段、又は、2段以上の多段で行うことができる。逆相懸濁重合は、生産性を高める観点から、2〜3段で行うことが好ましい。 【0054】 2段以上の多段で逆相懸濁重合を行う場合には、1段目の逆相懸濁重合を行った後、1段目の重合反応で得られた反応混合物にエチレン性不飽和単量体を添加して混合し、1段目と同様の方法で2段目以降の逆相懸濁重合を行えばよい。2段目以降の各段における逆相懸濁重合では、エチレン性不飽和単量体の他に、上述のラジカル重合開始剤及び/又は内部架橋剤を、2段目以降の各段における逆相懸濁重合の際に添加するエチレン性不飽和単量体の量を基準として、上述のエチレン性不飽和単量体に対する各成分のモル比の範囲内で添加して逆相懸濁重合を行うことが好ましい。なお、2段目以降の各段における逆相懸濁重合では、必要に応じて内部架橋剤を用いてもよい。内部架橋剤を用いる場合は、各段に供するエチレン性不飽和単量体の量を基準として、上述のエチレン性不飽和単量体に 対する各成分のモル比の範囲内で添加して逆相懸濁重合を行うことが好ましい。」 ・「【0056】 重合後、得られた含水ゲル状重合体に架橋剤を添加して加熱することで、重合後架橋を施してもよい。重合後架橋を行うことで含水ゲル状重合体の架橋度を高めて、吸水特性を更に向上させることができる。 【0057】 重合後架橋を行うための架橋剤としては、・・・(略)・・・などが挙げられる。これらの中でも、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物が好ましい。架橋剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。 【0058】 重合後架橋に用いられる架橋剤の量は、得られる含水ゲル状重合体が適度に架橋されることにより、好適な吸水特性を示すようにする観点から、水溶性エチレン性不飽和単量体1モル当たり、0〜0.03モルであることが好ましく、0〜0.01モルであることがより好ましく、0.00001〜0.005モルであることが更に好ましい。前記架橋剤の添加量が上述の範囲内であることによって、液の組成に依存することなく好適な浸透速度を安定的に得ることが可能な吸収体を与える吸水性樹脂粒子が得られ易い。 【0059】 重合後架橋に用いられる架橋剤の添加時期としては、重合に用いられるエチレン性不飽和単量体の重合後であればよく、多段重合の場合は、多段重合後に添加されることが好ましい。なお、重合時および重合後の発熱、工程遅延による滞留、架橋剤添加時の系の開放、及び架橋剤添加に伴う水の添加等による水分の変動を考慮して、重合後架橋の架橋剤は、含水率(後述)の観点から、[重合直後の含水率±3質量%]の領域で添加することが好ましい。」 ・「【0064】 吸水性樹脂粒子の製造においては、乾燥工程又はそれ以降のいずれかの工程において、架橋剤を用いて含水ゲル状重合体の表面部分の架橋(表面架橋)が行われることが好ましい。表面架橋を行うことで、吸水性樹脂粒子の吸水特性を制御しやすい。表面架橋は、含水ゲル状重合体が特定の含水率であるタイミングで行われることが好ましい。表面架橋の時期は、含水ゲル状重合体の含水率が5〜50質量%である時点が好ましく、10〜40質量%である時点がより好ましく、15〜35質量%である時点が更に好ましい。・・・(略)・・・ 【0065】 表面架橋を行うための架橋剤(表面架橋剤)としては、例えば、反応性官能基を2個以上有する化合物を挙げることができる。・・・(略)・・・架橋剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。架橋剤としては、ポリグリシジル化合物が好ましく、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、及び、ポリグリセロールポリグリシジルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一種がより好ましい。 【0066】 表面架橋剤の使用量は、通常、重合に使用するエチレン性不飽和単量体1モルに対して、0.00001〜0.02モルが好ましく、0.00005〜0.01モルがより好ましく、0.0001〜0.005モルが更に好ましい。表面架橋剤の添加量が上述の範囲内であることによって、液の組成に依存することなく好適な浸透速度を安定的に得ることが可能な吸収体を与える吸水性樹脂粒子が得られやすい。 【0067】 表面架橋後において、公知の方法で水及び炭化水素分散媒を留去することにより、表面架橋された乾燥品である重合体粒子を得ることができる。」 ・「【実施例】 【0088】 以下、実施例及び比較例を用いて本発明の内容を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。 【0089】 <吸水性樹脂粒子の作製> (実施例1) 還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、及び、撹拌機(翼径5cmの4枚傾斜パドル翼を2段有する撹拌翼)を備えた内径11cm、内容積2Lの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコに、炭化水素分散媒としてn−ヘプタン293gを入れ、高分子系分散剤として無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社製、ハイワックス1105A)0.736gを添加することにより混合物を得た。この混合物を撹拌しつつ80℃まで昇温することにより分散剤を溶解した後、混合物を50℃まで冷却した。 【0090】 次に、内容積300mLのビーカーに、水溶性エチレン性不飽和単量体として80.5質量%のアクリル酸水溶液92.0g(アクリル酸:1.03モル)を入れた。続いて、外部より冷却しつつ、20.9質量%の水酸化ナトリウム水溶液147.7gをビーカー内に滴下することにより75モル%の中和を行った。その後、増粘剤としてヒドロキシエチルセルロース0.092g(住友精化株式会社製、HEC AW−15F)、水溶性ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.0736g(0.272ミリモル)、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.010g(0.057ミリモル)を加えた後に溶解させることにより第1段目の水性液を調製した。 【0091】 そして、上述の第1段目の水性液を上述のセパラブルフラスコに添加した後、10分間撹拌した。その後、n−ヘプタン6.62gにショ糖ステアリン酸エステル(界面活性剤、三菱化学フーズ株式会社製、リョートーシュガーエステルS−370、HLB:3)0.736gを加熱溶解することにより得られた界面活性剤溶液をセパラブルフラスコに添加した。そして、撹拌機の回転数550rpmで撹拌しながら系内を窒素で充分に置換した。その後、フラスコを70℃の水浴に浸漬させ昇温し、重合を60分間行うことにより第1段目の重合スラリー液を得た。 【0092】 次に、内容積500mLの別のビーカーに水溶性エチレン性不飽和単量体として80.5質量%のアクリル酸水溶液128.8g(アクリル酸:1.43モル)を入れた。続いて、外部より冷却しつつ、27質量%の水酸化ナトリウム水溶液159.0gをビーカー内に滴下することにより75モル%の中和を行った。その後、水溶性ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.090g(0.334ミリモル)を加えた後に溶解させることにより第2段目の水性液を調製した。 【0093】 撹拌機の回転数1000rpmで撹拌しながら、上述のセパラブルフラスコ内を25℃に冷却した後、上述の第2段目の水性液の全量を上述の第1段目の重合スラリー液に添加した。続いて、系内を窒素で30分間置換した後、再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬することにより昇温し、重合反応を60分間行った。重合後、架橋剤として2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液0.580g(エチレングリコールジグリシジルエーテル:0.067ミリモル)を添加することにより第2段目の含水ゲル状重合体を得た。 【0094】 上述の第2段目の含水ゲル状重合体に45質量%のジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム水溶液0.265gを撹拌下で添加した。その後、125℃の油浴で反応液を昇温し、n−ヘプタンと水との共沸蒸留により、n−ヘプタンを還流しながら、256.1gの水を系外へ抜き出した。そして、フラスコに表面架橋剤として2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液4.42g(エチレングリコールジグリシジルエーテル:0.507ミリモル)を添加した後、83℃で2時間保持した。 【0095】 その後、n−ヘプタンを125℃にて蒸発させて乾燥させることによって乾燥品(重合体粒子)を得た。この乾燥品を目開き850μmの篩に通過させた。そして、乾燥品の全質量を基準として0.2質量%の非晶質シリカ(オリエンタルシリカズコーポレーション社製、トクシールNP−S)を乾燥品に混合することにより吸水性樹脂粒子を230.8g得た。 【0096】 (実施例2) 第2段目の含水ゲル状重合体にジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム水溶液を添加した後に、共沸蒸留により系外へ抜き出す水の量を247.9gへ変更したことを除き実施例1と同様の操作を行うことにより吸水性樹脂粒子を231.0g得た。 【0097】 (実施例3) 第1段目の水性液を調製する際に、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.092g(0.339ミリモル)を添加し、過硫酸カリウムの使用量を0.018g(0.068ミリモル)に変更し、エチレングリコールジグリシジルエーテルの使用量を0.005g(0.029ミリモル)に変更したこと、第2段目の水性液を調製する際に、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.129g(0.475ミリモル)を添加し、過硫酸カリウムの使用量を0.026g(0.095ミリモル)に変更したこと、及び、第2段目の含水ゲル状重合体にジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム水溶液を添加した後に、共沸蒸留により系外へ抜き出す水の量を217.8gへ変更したことを除き実施例1と同様の操作を行うことにより吸水性樹脂粒子を229.6g得た。 【0098】 (比較例1) 第2段目の水性液を調製する際に、水溶性ラジカル重合開始剤に加えて、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.0116g(0.067ミリモル)を添加したこと、第2段目の含水ゲル状重合体を得る際に、重合反応を60分間行った後にエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液を添加しなかったこと、及び、第2段目の含水ゲル状重合体にジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム水溶液を添加した後に、共沸蒸留により系外へ抜き出す水の量を278.9gへ変更したことを除き実施例1と同様の操作を行うことにより吸水性樹脂粒子を230.8g得た。 【0099】 <保水量の評価> 塩化ナトリウム(NaCl)を0.01質量%含む水溶液、塩化カリウム(KCl)を0.01質量%含む水溶液、塩化マグネシウム(MgCl2)を0.01質量%含む水溶液、及び、塩化カルシウム(CaCl2)を0.01質量%含む水溶液を各々調製した。次に、2Lビーカー内に設置した綿袋(メンブロード60番、155mm×370mm)内に上述の吸水性樹脂粒子2.0gを入れた後、各水溶液2000mLを綿袋内に流し込むと同時に綿袋の全体を水溶液に浸漬させた。綿袋の上部を輪ゴムで縛り、30分静置させることで吸水性樹脂粒子を膨潤させた。30分経過後の綿袋を、遠心力を167Gに設定した脱水機(株式会社コクサン製、品番:H−122)を用いて1分間脱水した。そして、脱水後の膨潤ゲルを含んだ綿袋の質量Wa(g)を測定した。吸水性樹脂粒子を添加せずに同様の操作を行い、綿袋の湿潤時の空質量Wb(g)を測定した。下記式から吸水性樹脂粒子の保水量(単位質量あたりの保水量)を算出した。また、4種の水溶液の保水量の間の標準偏差を算出した。結果を表1に示す。 保水量[g/g]=(Wa−Wb)/2 【0100】 <吸収体の作製> 気流型混合装置(有限会社オーテック製、パッドフォーマー)を用いて、上述の吸水性樹脂粒子10g及び粉砕パルプ10gを空気抄造によって均一混合することにより、40cm×12cmの大きさのシート状の吸収体を作製した。 【0101】 <吸収体に対する浸透速度の評価> 温度25±2℃の室内において、吸収体の中心部に内径3cmの液投入用シリンダーを置いた。次に、シリンダー内に25±1℃に調整した試験液80mLを一度に投入すると共にストップウォッチをスタートさせた後、投入開始から液が吸収体に完全に吸収されるまでの吸収時間を測定した。この操作を30分間隔で更に2回(計3回)行い、吸収時間の合計値を浸透速度(秒)として得た。下記表2に示す試験液A及び試験液Bを用いて、それぞれの試験液について浸透速度を評価した。2種の試験液においてダイワ化成株式会社製の青色1号を用いた。試験液Bにおいて1質量%トリトンX溶液として、和光純薬工業株式会社製のトリトンX−100と水との混合物を用いた。また、2種の試験液の浸透速度の間の標準偏差を算出した。結果を表1に示す。 【0102】 【表1】 ![]() 【0103】 【表2】 ![]() 【0104】 表1によれば、吸水性樹脂粒子における特定の金属塩の水溶液の保水量に関して好適な標準偏差を得ることが、液の組成に依存することなく好適な浸透速度を安定的に得ることが可能な吸収体を得ることに有効であることが確認される。」 (4)判断 発明の詳細な説明の【0004】及び【0005】によると、本件特許発明1ないし3の解決しようとする課題、本件特許発明4の解決しようとする課題並びに本件特許発明5及び6の解決しようとする課題は、それぞれ「液の組成に依存することなく好適な浸透速度を安定的に得ることが可能な吸収体を与える吸水性樹脂粒子を提供すること」、「液の組成に依存することなく好適な浸透速度を安定的に得ることが可能な吸収体を与える吸水性樹脂粒子を用いた吸収体を提供すること」及び「液の組成に依存することなく好適な浸透速度を安定的に得ることが可能な吸収体を与える吸水性樹脂粒子を用いた吸収体を用いた吸収性物品を提供すること」(以下、総称して「発明の課題」という。)である。 そして、上記(3)のとおり、発明の詳細な説明には、以下の記載がある。 ・「エチレン性不飽和単量体」を構成する単量体について、「エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有することができる。」(【0028】)、「エチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことが更に好ましい。」(【0030】)及び「(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が単量体全量に対して70〜100モル%であることがより好ましい。」(【0031】)と記載されている。 ・「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量の間の標準偏差」について、「本実施形態に係る吸水性樹脂粒子において、0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量の間の標準偏差(以下、「標準偏差S」という)は20g/g以下である。」(【0015】)と記載されている。 ・「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量からなる群より選ばれる少なくとも一種」の数値範囲について、「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量は、・・・(略)・・・50g/g以上が好ましく、・・・(略)・・・上限は、例えば500g/g以下である。」(【0022】)、「0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量は、・・・(略)・・・50g/g以上が好ましく、・・・(略)・・・上限は、例えば500g/g以下である。」(【0023】)、「0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量は、・・・(略)・・・50g/g以上が好ましく、・・・(略)・・・上限は、例えば500g/g以下である。」(【0024】)、「0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量は、・・・(略)・・・50g/g以上が好ましく、・・・(略)・・・上限は、例えば500g/g以下である。」(【0025】)と記載されている。 ・「0.01質量%ナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量の間の標準偏差」が「11g/g」で、「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量」が「267g/g」、「0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量」が「263g/g」、「0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量」が「280g/g」である実施例3において「液の組成に依存することなく好適な浸透速度を安定的に得ることが可能」となることを確認した記載がある。 ところで、「標準偏差S」は4種の水溶液の保水量の平均値からの各水溶液の保水量のばらつきを示すものであるから(【0017】及び【0018】)、「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量」、「0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量」、「0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量」及び「0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量」のうち少なくとも1つの水溶液の保水量の値が定まれば、残りの水溶液の保水量の値も、「標準偏差S」を満たすような値に定まるものである。 そうすると、当業者は「エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子であって、前記エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、前記(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量に対して70〜100モル%であり、0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量の間の標準偏差が20g/g以下であり、0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量からなる群より選ばれる少なくとも一種が50g/g以上500g/g以下である、吸水性樹脂粒子」は発明の課題を解決できると認識できる。 そして、本件特許発明1は該吸水性樹脂粒子よりも「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量からなる群」がより狭くされた上に「保水量」の数値範囲もより狭くされている。 したがって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件特許発明1に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。 また、本件特許発明2及び4ないし6についても同様であり、本件特許発明2及び4ないし6に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。 (5)取消理由2についてのむすび したがって、本件特許の請求項1、2及び4ないし6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、取消理由2によっては取り消すことはできない。 3 取消理由3(実施可能要件)について (1)実施可能要件の判断基準 本件特許発明1ないし6は物の発明であるところ、物の発明の実施とは、その物の生産及び使用等をする行為であるから、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。 そこで、検討する。 (2)発明の詳細な説明の記載 本件特許の発明の詳細の記載は上記2(3)のとおりである。 (3)判断 本件特許の発明の詳細な説明には、本件特許発明1の各発明特定事項について具体的に記載されており、また、本件特許発明1の実施形態に係る吸水性樹脂粒子を得るための単量体、ラジカル重合開始剤、界面活性剤、高分子系分散剤、炭化水素分散媒、内部架橋剤、後架橋剤、表面架橋剤及び無機粒子等の原材料並びに重合方法についても具体的に記載されている。 特に、本件特許の発明の詳細な説明の架橋剤に関する記載(【0048】、【0049】、【0056】、【0058】、【0064】、【0066】)から、当業者は吸水性樹脂粒子の作製において、架橋剤の量が吸水性樹脂の吸水特性に影響を与えることが認識できる。 また、本件特許の発明の詳細な説明には、本件特許発明1の実施例と比較例に関して具体的に記載されており(【0088】ないし【0104】)、これらの記載から、当業者は架橋剤の量及び表面架橋に先立ち抜き出される水分量(水分の抜出量)が吸水性樹脂粒子の特性に影響を与えることが認識できる。 そして、本件特許の発明の詳細な説明には、実施例3として本件特許発明1の実施例が記載されている。 そうすると、当業者は、実施例3以外の場合にも、発明の詳細な説明の記載に基づき、本件特許発明1の「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量の間の標準偏差が8〜20g/gであり」という発明特定事項及び「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量からなる群より選ばれる少なくとも一種が250〜500g/gである」という発明特定事項を満たす吸水性樹脂粒子を製造できるといえる。 したがって、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1を生産し、使用することができる程度の記載があるといえる。 また、本件特許発明2ないし6についても同様であり、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明2ないし6を生産し、使用することができる程度の記載があるといえる。 なお、特許異議申立人は、令和3年7月30日に提出された意見書において、実施例同士の対比や、実施例と比較例の対比を行っても当業者は過度の試行錯誤を要する旨(以下、「主張1」という。)及び上限付近の保水量を有する吸水性樹脂粒子の説明が一切ない旨主張(以下、「主張2」という。)する。 そこで、検討する。 上記のとおり、本件特許の発明の詳細な説明の記載から、当業者は架橋剤の量及び表面架橋に先立ち抜き出される水分量(水分の抜出量)が吸水性樹脂粒子の特性に影響を与えることが認識できるから、当業者は、実施例3以外の場合にも、発明の詳細な説明の記載に基づき、架橋剤の量及び表面架橋に先立ち抜き出される水分量(水分の抜出量)を調整して、本件特許発明1の吸水性樹脂粒子を製造できるというべきであるから、上記主張1は採用できない。 また、上限付近の保水量を有する吸水性樹脂粒子の説明がないとしても、当業者は、発明の詳細な説明の記載に基づき、架橋剤の量及び表面架橋に先立ち抜き出される水分量(水分の抜出量)を調整して、本件特許発明1の上限付近の保水量を有する吸水性樹脂粒子を製造できるというべきであるから、上記主張2も採用できない。 (4)取消理由3についてのむすび したがって、本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、取消理由3によっては取り消すことはできない。 第7 特許異議申立人が主張する本件訂正により生じた新たな取消理由について 1 新たな取消理由の概要 特許異議申立人は、令和3年9月3日に提出した意見書において、新たに以下の取消理由を主張する。 (1)新たな取消理由1(甲3、5、6、7及び14に基づく進歩性)の概要 ア 甲3に基づく進歩性 本件特許発明1は甲3発明からの設計変更にすぎず又は甲1に記載された技術を組み合わせて容易に想到し得るから、進歩性を有していない。 本件特許発明2ないし6も同様である。 イ 甲5に基づく進歩性 本件特許発明1は甲5発明からの設計変更にすぎず又は甲1に記載された技術を組み合わせて容易に想到し得るから、進歩性を有していない。 本件特許発明2ないし6も同様である。 ウ 甲6に基づく進歩性 本件特許発明1は甲6発明からの設計変更にすぎず又は甲1に記載された技術を組み合わせて容易に想到し得るから、進歩性を有していない。 本件特許発明2ないし6も同様である。 エ 甲7の実施例6に基づく進歩性 標準偏差が7.3g/gである場合と、8.0g/gである場合とで、効果に大きな差があることは本件明細書に記載されていないから、本件特許発明1は甲7実施例6発明よりも顕著又は異質な効果を有しているとはいえないので、本件特許発明1は甲7実施6発明から進歩性を有していない。 本件特許発明2ないし6も同様である。 オ 甲7の実施例10に基づく進歩性 標準偏差が7.5g/gである場合と、8.0g/gである場合とで、効果に大きな差があることは本件明細書に記載されていないから、本件特許発明1は甲7実施例10発明よりも顕著又は異質な効果を有しているとはいえないので、本件特許発明1は甲7実施10発明から進歩性を有していない。 本件特許発明2ないし6も同様である。 カ 甲14に基づく進歩性 本件特許発明1は甲14製造例1発明、甲14製造例2発明及び甲14製造例5発明に甲1と類似の評価方法を導入したに過ぎず、進歩性を有していない。 本件特許発明2ないし6も同様である。 (2)新たな取消理由2(明確性要件)の概要 本件訂正により、本件特許発明1において、「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量からなる群より選ばれる少なくとも一種が250〜500g/gである」と規定され、保水量の下限が250g/gとなっている。 一方、請求項1を引用する本件特許発明3において、「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量が150〜500g/gである」と規定され、保水量の下限が本件特許発明1よりも低い150g/gとなっている。 したがって、本件特許発明3及び請求項3を直接又は間接的に引用する本件特許発明4ないし6は明確ではない。 2 新たな取消理由1(甲3、5、6、7及び14に基づく進歩性)について (1)甲3に基づく進歩性について 本件特許発明1と甲3発明を対比するに、両者の間の一致点及び相違点は上記第6 1(2)ア(ア)の一致点及び相違点3のとおりである。 そこで、相違点3について検討する。 甲3には、「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量からなる群より選ばれる少なくとも一種」に着目し、その値を調整する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもそのような記載はない。 したがって、甲3発明において、相違点3に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、設計変更にすぎないとはいえないし、甲1に記載された技術を組み合わせて容易に想到し得るものともいえない。 よって、本件特許発明1は甲3発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 また、請求項1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2ないし6についても同様である。 (2)甲5に基づく進歩性について 本件特許発明1と甲5発明を対比するに、両者の間の一致点及び相違点は上記第6 1(4)ア(ア)の一致点及び相違点5のとおりである。 そこで、相違点5について検討する。 甲5には、「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量からなる群より選ばれる少なくとも一種」に着目し、その値を調整する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもそのような記載はない。 したがって、甲5発明において、相違点5に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、設計変更にすぎないとはいえないし、甲1に記載された技術を組み合わせて容易に想到し得るものともいえない。 よって、本件特許発明1は甲5発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 また、請求項1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2ないし6についても同様である。 (3)甲6に基づく進歩性について 甲6発明は甲5発明と同じである。 したがって、上記(2)と同様に、本件特許発明1は甲6発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 また、請求項1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2ないし6についても同様である。 (4)甲7の実施例6に基づく進歩性について 本件特許発明1と甲7実施例6発明を対比するに、両者の間の一致点及び相違点は上記第6 1(6)ア(ア)の一致点及び相違点7−1のとおりである。 そこで、相違点7−1について検討する。 甲7には、「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量の間の標準偏差」に着目し、その値を調整する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもそのような記載はない。 したがって、甲7実施例6発明において、相違点7−1に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 なお、相違点7−1に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることを当業者が容易に想到し得ない以上、標準偏差が7.3g/gである場合と、8.0g/gである場合とで、効果に大きな差があることが本件特許の明細書に記載されているかどうかは関係がない。 よって、本件特許発明1は甲7実施例6発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 また、請求項1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2ないし6についても同様である。 (5)甲7の実施例10に基づく進歩性について 本件特許発明1と甲7実施例10発明を対比するに、両者の間の一致点及び相違点は上記第6 1(7)ア(ア)の一致点及び相違点7−2のとおりである。 そこで、相違点7−2について検討する。 甲7には、「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量の間の標準偏差」に着目し、その値を調整する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもそのような記載はない。 したがって、甲7実施例10発明において、相違点7−2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 なお、相違点7−2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることを当業者が容易に想到し得ない以上、標準偏差が7.5g/gである場合と、8.0g/gである場合とで、効果に大きな差があることが本件特許の明細書に記載されているかどうかは関係がない。 よって、本件特許発明1は甲7実施例10発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 また、請求項1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2ないし6についても同様である。 (6)甲14に基づく進歩性について 本件特許発明1と甲14製造例1発明、甲14製造例2発明又は甲14製造例5発明を対比するに、両者の間の一致点及び相違点は上記第6 1(8)ア(ア)の一致点及び相違点14のとおりである。 そこで、相違点14について検討する。 甲14には、「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量の間の標準偏差」及び「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量からなる群より選ばれる少なくとも一種」に着目し、その値を調整する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもそのような記載はない。 したがって、甲14製造例1発明、甲14製造例2発明又は甲14製造例5発明において、相違点14に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、甲1に記載された技術を組み合わせて容易に想到し得るものとはいえない。 よって、本件特許発明1は甲14製造例1発明、甲14製造例2発明又は甲14製造例5発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 また、請求項1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2ないし6についても同様である。 (7)新たな取消理由1についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし6は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、新たな取消理由1によっては取り消すことはできない。 3 新たな取消理由2(明確性要件)について (1)明確性要件の判断基準 特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 そこで、検討する。 (2)明確性要件の判断 本件特許の請求項1の「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量からなる群より選ばれる少なくとも一種が250〜500g/gである」という記載の意味は、「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量」、「0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量」及び「0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量」のうちの少なくとも一種が「250〜500g/g」であるという意味である。 他方、本件特許の請求項3の「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量が150〜500g/gである」という記載の意味は、「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量」、「0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量」、「0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量」及び「0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量」の4つとも「150〜500g/g」であるという意味である。 そうすると、本件特許の請求項1を引用した場合の請求項3の記載の意味は、「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量」、「0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量」及び「0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量」のうちの少なくとも一種は「250〜500g/g」であり、「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量」、「0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量」及び「0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量」のうちの「保水量」が「250〜500g/g」でないものと「0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量」は「150〜500g/g」であるという意味になる。 したがって、本件特許発明3における「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量が150〜500g/gである」という発明特定事項の意味が不明確であるとはいえない。 請求項3を直接又は間接的に引用する本件特許発明4ないし6についても同様である。 よって、本件特許発明3ないし6に関して、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 (3)新たな取消理由2についてのむすび したがって、本件特許の請求項3ないし6に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、新たな取消理由2によっては取り消すことはできない。 第8 取消理由に採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由について 取消理由に採用しなかった特許異議の申立ての理由は、申立理由2(甲1、2又は4に基づく進歩性)、申立理由3(サポート要件)のうちアに基づく請求項3に対する理由並びに申立理由3(サポート要件)のうちイ及びウに基づく理由である。 以下、検討する。 1 申立理由2(甲1、2又は4に基づく進歩性)について (1)甲1に基づく進歩性について ア 甲1に記載された事項及び甲1発明 (ア)甲1に記載された事項 甲1には、「吸水剤およびそれを用いた衛生材料」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「【特許請求の範囲】 【請求項1】 水溶性不飽和単量体の架橋重合体である吸水性樹脂を含有する粒子状吸水剤であって、 106μm以上850μm未満の粒子径を有する粒子状の吸水性樹脂が、吸水性樹脂の全質量に対して90質量%以上含まれており、下記(式1) (塩濃度吸収指数)=(一定塩濃度水溶液に対する4.83kPaでの加圧下吸収倍率)/(一定塩濃度水溶液に対する無荷重下吸収倍率) ・・(式1) (式中、上記加圧下吸収倍率は、4.83kPaの加圧下にて、一定塩濃度水溶液に60分間浸漬した場合の吸収倍率であり、上記無荷重下吸収倍率は、無加圧下にて、一定塩濃度水溶液に60分間浸漬した場合の吸収倍率である)にて、上記一定塩濃度水溶液がイオン交換水である場合の塩濃度吸収指数である第一塩濃度吸収指数が、0.60以上であることを特徴とする粒子状吸水剤。 ・・・(略)・・・ 【請求項13】 上記水溶性不飽和単量体は、アクリル酸および/またはその塩を含んでなり、 上記粒子状の吸水性樹脂は、表面改質処理が施されていることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。」 ・「【0045】 本発明においては、吸水性樹脂の良好な物性を得るために、主成分として、アクリル酸およびその塩を用い、さらに必要に応じて、通常0〜30モル%、好ましくは0〜20モル%、より好ましくは0〜10モル%で、上記他の水溶性不飽和単量体を併用すればよい。」 (イ)甲1に記載された発明 甲1に記載された事項を整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。 「水溶性不飽和単量体の架橋重合体である吸水性樹脂を含有する粒子状吸水剤であって、 106μm以上850μm未満の粒子径を有する粒子状の吸水性樹脂が、吸水性樹脂の全質量に対して90質量%以上含まれており、下記(式1) (塩濃度吸収指数)=(一定塩濃度水溶液に対する4.83kPaでの加圧下吸収倍率)/(一定塩濃度水溶液に対する無荷重下吸収倍率) ・・(式1) (式中、上記加圧下吸収倍率は、4.83kPaの加圧下にて、一定塩濃度水溶液に60分間浸漬した場合の吸収倍率であり、上記無荷重下吸収倍率は、無加圧下にて、一定塩濃度水溶液に60分間浸漬した場合の吸収倍率である)にて、上記一定塩濃度水溶液がイオン交換水である場合の塩濃度吸収指数である第一塩濃度吸収指数が、0.60以上である粒子状吸水剤であって、 上記水溶性不飽和単量体は、アクリル酸および/またはその塩を含んでなり、 上記粒子状の吸水性樹脂は、表面改質処理が施され、 主成分として、アクリル酸およびその塩を用い、さらに必要に応じて、通常0〜30モル%で、他の水溶性不飽和単量体を併用する粒子状吸水剤。」 イ 本件特許発明1について (ア)対比 本件特許発明1と甲1発明を対比する。 両者は次の点で一致する。 <一致点> 「エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子であって、 前記エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、 前記(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点1> 本件特許発明1においては、「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量の間の標準偏差が8〜20g/gであり、 0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量からなる群より選ばれる少なくとも一種が250〜500g/gである」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。 (イ)判断 そこで、相違点1について検討する。 甲1には、「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量の間の標準偏差」及び「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量からなる群より選ばれる少なくとも一種」に着目し、その値を調整する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもそのような記載はない。 したがって、甲1発明において、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は、「液の組成に依存することなく好適な浸透速度を安定的に得ることが可能な吸収体を与える吸水性樹脂粒子を提供することができる。」(本件特許の明細書の【0011】)という甲1発明及び他の証拠に記載された事項からみて格別顕著な効果を奏するものである。 (ウ)まとめ したがって、本件特許発明1は甲1発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 本件特許発明2及び3について 本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲1発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 エ 本件特許発明4ないし6について 本件特許発明4ないし6は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものを請求項4ないし6に記載された用途に使用した発明であるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲1に記載された発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2)甲2に基づく進歩性について ア 甲2に記載された事項及び甲2発明 (ア)甲2に記載された事項 甲2には、「耐塩性吸水性樹脂の製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「【特許請求の範囲】 【請求項1】 不飽和カルボン酸およびその塩よりなる群から選ばれた少なくとも1種の単量体成分(A)の水溶液を、該単量体成分(A)100重量部当たり吸水性樹脂(B)1〜30重量部の割合で存在させて水溶液重合することよりなる耐塩性吸水性樹脂の製造方法。 ・・・(略)・・・ 【請求項12】 該単量体成分(A)が(メタ)アクリル酸およびそれらの塩よりなる群から選ばれた少なくとも1種のものである請求項1に記載の耐塩性吸水性樹脂の製造方法。」 ・「【0014】単量体成分(A)には、上記不飽和カルボン酸および/またはその塩以外に、他の不飽和単量体が含まれていてもよい。 【0015】他の不飽和単量体としては、・・・(略)・・・等を挙げることができ、これらの1種、または2種以上を単量体成分(A)中の50重量%未満、好ましくは40重量%未満の範囲で用いることができる。」 ・「【0034】実施例1羽根の回転径が120mmのシグマ型羽根を2本有した内容積10リットルのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに、アクリル酸ナトリウム75モル%およびアクリル酸25モル%からなる単量体成分(A)の水溶液4400g(単量体成分の濃度37重量%)と、架橋剤としてのトリメチルメチロールプロパンアクリレート2.72g(0.05モル%対単量体成分(A))とを入れ、窒素ガスを吹き込んで反応系内を窒素置換した。次いで2本のシグマ型羽根を、回転させながら、吸水性樹脂(日本触媒化学工業株式会社製、アクアリックCA)をハンマーミルで粉砕し、100メッシュの金網を通過させて得られた粒子径1〜149μmの吸水性樹脂(B)162g(10重量%対単量体成分(A))を入れ、ジャケットに30℃の温水を通すことによって反応径内を加熱しながら、開始剤として過硫酸ナトリウム1.20gと亜硫酸水素ナトリウム1.10gとを添加した。重合反応開始後更に60分間重合反応を続行して得られたゲル重合体は、約3mmの径の細粒に細分化されていた。得られたゲル重合体を金網上で150℃の温度条件下に2時間熱風乾燥した。この乾燥物をハンマーミルを用いて粉砕し、耐塩性吸水性樹脂を得た。得られた耐塩性吸水性樹脂の性能を表1に示す。」 (イ)甲2に記載された発明 甲2に記載された事項を整理すると、甲2には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認める。 「不飽和カルボン酸およびその塩よりなる群から選ばれた少なくとも1種の単量体成分(A)の水溶液を、該単量体成分(A)100重量部当たり吸水性樹脂(B)1〜30重量部の割合で存在させて水溶液重合することにより製造される耐塩性吸水性樹脂であって、該単量体成分(A)は(メタ)アクリル酸およびそれらの塩よりなる群から選ばれた少なくとも1種のものであり、他の不飽和単量体を40重量%未満の範囲で用いることができる耐塩性吸水性樹脂。」 イ 本件特許発明1について (ア)対比 本件特許発明1と甲2発明を対比する。 両者は次の点で一致する。 <一致点> 「エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子であって、 前記エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、 前記(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点2> 本件特許発明1においては、「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量の間の標準偏差が8〜20g/gであり、 0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量からなる群より選ばれる少なくとも一種が250〜500g/gである」と特定されているのに対し、甲2発明においては、そのようには特定されていない点。 (イ)判断 そこで、相違点2について検討する。 甲2には、「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量の間の標準偏差」及び「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量からなる群より選ばれる少なくとも一種」に着目し、その値を調整する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもそのような記載はない。 したがって、甲2発明において、相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は、「液の組成に依存することなく好適な浸透速度を安定的に得ることが可能な吸収体を与える吸水性樹脂粒子を提供することができる。」という甲2発明及び他の証拠に記載された事項からみて格別顕著な効果を奏するものである。 (ウ)まとめ したがって、本件特許発明1は甲2発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 本件特許発明2及び3について 本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲2発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 エ 本件特許発明4ないし6について 本件特許発明4ないし6は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものを請求項4ないし6に記載された用途に使用した発明であるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲2に記載された発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)甲4に基づく進歩性について ア 甲4発明 甲4発明は、上記第6 1(1)イ(イ)のとおりである。 イ 本件特許発明1について (ア)対比 本件特許発明1と甲4発明を対比するに、両者の間の一致点及び相違点は上記第6 1(3)ア(ア)の一致点及び相違点4のとおりである。 (イ)判断 そこで、相違点4について検討する。 甲4には、「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量の間の標準偏差」及び「0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量からなる群より選ばれる少なくとも一種」に着目し、その値を調整する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもそのような記載はない。 したがって、甲4発明において、相違点4に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は、「液の組成に依存することなく好適な浸透速度を安定的に得ることが可能な吸収体を与える吸水性樹脂粒子を提供することができる。」という甲4発明及び他の証拠に記載された事項からみて格別顕著な効果を奏するものである。 (ウ)まとめ したがって、本件特許発明1は甲4発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 本件特許発明2及び3について 本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲4発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 エ 本件特許発明4ないし6について 本件特許発明4ないし6は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものを請求項4ないし6に記載された用途に使用した発明であるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲4に記載された発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)申立理由2についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし6は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由2によっては取り消すことはできない。 2 申立理由3(サポート要件)のうちアに基づく請求項3に対する理由並びに申立理由3(サポート要件)のうちイ及びウに基づく理由について (1)申立理由3のうちアに基づく請求項3に対する理由について 上記第6 2(4)のとおり、本件特許発明1及び2に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。 そして、本件特許発明3は、請求項1又は2を引用するものであるから、本件特許発明1及び2と同様に、本件特許発明3に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。 (2)申立理由3のうちイに基づく理由について 上記第6 2(4)のとおり、発明の詳細な説明の記載により当業者は「エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子であって、前記エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、前記(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量に対して70〜100モル%であり、0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量の間の標準偏差が20g/g以下であり、0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量からなる群より選ばれる少なくとも一種が50g/g以上500g/g以下である、吸水性樹脂粒子」は発明の課題を解決できると認識できる。 したがって、本件特許発明1において吸水速度や透過性という要件が一切規定されていないとしても、本件特許発明1は発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 また、本件特許発明2ないし6についても同様である。 したがって、本件特許発明1ないし6に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。 (3)申立理由3のうちウに基づく理由について 本件特許の明細書に吸水性樹脂を製造する方法が記載されているかどうかはサポート要件とは関係がない。 したがって、本件特許発明1ないし6に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。 なお、本件特許の発明の詳細な説明に、当業者が発明の詳細な記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1ないし6を生産し使用することができる程度の記載があることは、上記第6 3(3)のとおりである。 (4)申立理由3のうちアに基づく請求項3に対する理由並びに申立理由3のうちイ及びウに基づく理由についてのむすび したがって、本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由3のうちアに基づく請求項3に対する理由並びに申立理由3のうちイ及びウに基づく理由によっては取り消すことはできない。 第9 結語 上記第6ないし8のとおり、本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、取消理由及び特許異議申立人が提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子であって、 前記エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、 前記(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量に対して70〜100モル%であり、 0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量の間の標準偏差が8〜20g/gであり、 0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量からなる群より選ばれる少なくとも一種が250〜500g/gである、吸水性樹脂粒子。 【請求項2】 前記標準偏差が8〜14g/gである、請求項1に記載の吸水性樹脂粒子。 【請求項3】 0.01質量%のナトリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のカリウム塩水溶液の保水量、0.01質量%のマグネシウム塩水溶液の保水量、及び、0.01質量%のカルシウム塩水溶液の保水量が150〜500g/gである、請求項1又は2に記載の吸水性樹脂粒子。 【請求項4】 請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸水性樹脂粒子を含有する、吸収体。 【請求項5】 請求項4に記載の吸収体を備える、吸収性物品。 【請求項6】 おむつである、請求項5に記載の吸収性物品。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照 |
異議決定日 | 2021-10-25 |
出願番号 | P2019-054973 |
審決分類 |
P
1
651・
537-
YAA
(B01J)
P 1 651・ 121- YAA (B01J) P 1 651・ 536- YAA (B01J) P 1 651・ 113- YAA (B01J) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
大島 祥吾 |
特許庁審判官 |
細井 龍史 加藤 友也 |
登録日 | 2020-07-21 |
登録番号 | 6738452 |
権利者 | 住友精化株式会社 |
発明の名称 | 吸水性樹脂粒子、吸収体及び吸収性物品 |
代理人 | 沖田 英樹 |
代理人 | 古下 智也 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 古下 智也 |
代理人 | 吉住 和之 |
代理人 | 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK |
代理人 | 吉住 和之 |
代理人 | 清水 義憲 |
代理人 | 沖田 英樹 |
代理人 | 清水 義憲 |