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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  A23L
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  A23L
管理番号 1382396
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-03-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-07-13 
確定日 2022-02-02 
異議申立件数
事件の表示 特許第6812032号発明「羅漢果抽出物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6812032号の請求項1〜6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第6812032号についての出願は、令和1年12月25日(優先権主張平成31年3月12日)を出願日とする特願2019−234338号であって、令和2年12月18日にその請求項1〜11に係る発明について特許権の設定登録がなされ、令和3年1月13日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1〜6に係る特許について、令和3年7月13日に特許異議申立人FONTEC R&D株式会社(以下、「申立人」という)により特許異議の申立てがなされた。

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1〜6に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
羅漢果(Siraitia grosvenorii)抽出物であって、
(1)モグロシドVを0.01質量%〜70質量%;及び
(2)水不溶性成分を5質量%以下含有し、
さらに、不溶ポリフェノール含有量/総ポリフェノール含有量が、1/2以下である、
羅漢果抽出物。
【請求項2】
10質量%水溶液における波長660nmの吸光度が、0.3以下である、請求項1記載の羅漢果抽出物。
【請求項3】
総ポリフェノール含有量が、0.1質量%〜20質量%である、請求項1又は2のいずれか1項に記載の羅漢果抽出物。
【請求項4】
不溶ポリフェノール含有量が、5質量%以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の羅漢果抽出物。
【請求項5】
総タンパク質含有量が、5質量%〜90質量%である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の羅漢果抽出物。
【請求項6】
不溶タンパク質含有量が、3質量%以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の羅漢果抽出物。」
(以下、それぞれ、「本件特許発明1」等という。)

第3 申立理由の概要
申立人は、特許異議申立書において、証拠として次の甲第1号証〜甲第3号証を提出し、次の申立ての理由を主張している。

理由1−A:本件特許発明1〜4は、下記の甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1〜4に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。

理由1−B:本件特許発明1〜4は、下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

理由2:本件特許発明5〜6は、下記の甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項5〜6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。



甲第1号証:米国特許出願公開第2009/0196966号明細書
甲第2号証:特開2016−158514号公報
甲第3号証:Pharmacopeial Forum,2015年,Vol.41,No.6,pp.204−231,[online],インターネット,<URL:https://www.uspnf.com/pharmacopeial−forum>,令和3年7月12日に検索されたとされるもの。

第4 甲号証の記載

(1)甲第1号証
本願出願前の平成21年8月6日に発行された甲第1号証には、以下の記載がある。訳文にて示す。

記載(1a)
「1.ウリ科の熱加工された果実抽出物からの天然甘味料を形成する方法であって、
モグロシド及び望ましくないフレーバー及び臭気、揮発性要素、望ましくない色及び味形成成分、望ましくない水不溶性成分、及び水溶性成分をある量含有する熱処理果実抽出物の水性スラリーを調製し、
その水性スラリーから水不溶性成分の少なくとも一部を除いて清澄化された溶液を得て、
その清澄化された溶液から望ましくない色及び味の少なくとも一部を除くために、陰イオン交換樹脂で処理して、その陰イオン交換樹脂は、その清澄化された溶液中のモグロシドの量を変えず、
モグロシドよりも分子量が小さい水溶性成分の少なくとも一部を除いて天然甘味料を得て、
その甘味料は熱加工された果実抽出物より少なくとも約60%より少ない望ましくないオフフレーバー及び臭気の揮発性物質を含み、熱加工された果実抽出物より約50%より少ない望ましくない色及び味形成成分を含有する、方法。
・・・
25.熱処理を施した羅漢果抽出物からモグロシドVが提供される、請求項19の天然甘味料。
・・・」(特許請求の範囲)

記載(1b)
「一実施形態では、方法は、羅漢果などのウリ科の果実の熱処理された抽出物の水懸濁液あるいはスラリーを用意する。次に、この方法は、水性懸濁液から望ましくない水不溶性成分の少なくとも一部分を除去し、清澄化した水性溶液を形成する。次に、清澄化した水性溶液は、好ましくは陰イオン交換樹脂であるイオン交換樹脂により処理され、望ましくない色及び味形成成分の少なくとも一部分、及び望ましくないオフフレーバーや臭気形成成分の多くを除去し、処理された水溶液を形成する。最後に、処理された水溶液を濃縮し、追加のオフフレーバー、臭気及び色を除去するために清澄化される。陰イオン交換樹脂は、一般に、モグロシドと化学的又は物理的に相互作用せず、モグロサイドは水溶性であるがため、モグロシドは、単に工程を通過し、最終生成物中に回収される。」(段落0012)

記載(1c)
「図1を参照すると、熱処理された羅漢果抽出物11からの天然甘味料を調製するための方法10の一実施形態が概略的に図示される。この実施形態では、方法は、第1の熱加工された果実抽出物11の水性スラリー又は懸濁液12を調製する際に、少なくとも、水懸濁液12から望ましくない水不溶性成分の一部(少なくとも約90%、好ましくは少なくとも約97%、最も好ましくは少なくとも約99%である)が除去され、清澄化水溶液14が形成されている。清澄化された溶液14は、次に、好ましくは陰イオン交換樹脂であるイオン交換樹脂に処理された水溶液16を形成する。イオン交換樹脂は、かなりの量の望ましくない味及び色の形成成分、並びに多くのオフフレーバー及び臭気を取り除くのに一般的に有効であると同時に、所望のモグロシドと樹脂とのいかなる相互作用をも排除している。また、陰イオン交換樹脂を使用することで、一般的に当該樹脂はモグロシドと有為に相互作用しないため、当該樹脂から結合したモグロシドを遊離させるための洗浄工程を回避する。最後に、処理された水溶液を濃縮し、さらに精密濾過タイプの技術18を用いて処理される付加的な、オフフレーバー、臭気、オフカラーを濃縮して除去し、天然甘味料20を形成する。水に可溶なモグロシド及びモグロシドと結合又は相互作用しない陰イオン交換樹脂を用いることで、所望のモグロシドは、単に工程を通過して、回収された溶液中に入る。」(段落0016)

記載(1d)
「本方法の一例においては、得られた材料は、(はじめの熱処理抽出物と比較すると)望まない水不溶性成分が少なくとも97%、好ましくは少なくとも99%除去されている。」(段落0032)

記載(1e)
「もう一つの例においては、当初の熱処理を施した果実抽出物に比べて、得られた製品は、・・・フェノール類成分が少なくとも約50%(好ましくはフェノール類成分が約50〜約95%)減少している。それに加えて、得られた材料は乾物基準(HPLC)で好ましくは少なくとも約30%、好ましくは少なくとも約40%のモグロシドVを含有する。」(段落0033)

記載(1f)
「もう一つの例においては、ここに述べた本方法を本抽出物に施した後、得られた材料は、・・・望まない水不溶性成分を約0.5%以下、好ましくは約0.1%以下含有する。」(段落0034)

記載(1g)
「ここに記載した本方法の後、得られた材料の溶液は好ましくは次の色を呈する:A(1%,1cm)400nm:0.074;A(1%,1cm)500nm:0.006;A(1%,1cm)600nm:0.002;and A(1%,1cm)700nm,:0.000。したがって、400nm〜700nmの波長で呈色が95〜100%減少する。」(段落0035)

記載(1h)
「 実施例
実施例1
市販されている熱処理されたモグロシド粉末は、その初期の未修飾の組成を決定するために分析された。Mormordica 80 percent(Amax NutraSource,Inc.,カリフォルニア)、PureLo(BioBittoria,ニュージーランド)及びACT(Hamburg,ドイツ)は、不溶分含有量、色、フェノール含有量、及びフレーバー/臭気揮発性含有量を決定するために試験した。
不溶分は、重量分析法を用いて決定した。約100mgのモグロシド試料を秤量して風袋を測定した試験管に入れた。室温で約5mlの水を添加し、内容物を完全に混合する。試料は処理後の上澄み液を捨て、卓上型低速遠心機を用いて遠心分離した。試験管を逆さまにし、試験管のネックはティッシュを用いてぬぐうことによって注意深く乾燥させた。試験管は次いで残留水分を除去するために高真空下に一晩おいた。乾燥試料を含む試験管の重量を秤量する。不溶分又は残渣は、式Bを用いて計算した。

%残渣(不溶分)= (B)
(最終試験管重量−試験管風袋重量)
(はじめの試料重量) 」(段落0036〜0038)

記載(1i)
「 実施例3
実施例1から得られた未修飾のAMAX羅漢果抽出物は、さらに本明細書で開示される方法を用いて処理し、濃縮することで、望ましくない官能特性が除去された。
約50gの未修飾のAMAXの抽出物は、室温の水(約25℃)の中に懸濁させて、固体約2%を有する水性懸濁液又はスラリーを形成させた。次に水性懸濁液をWhatman#2濾紙(Whatman Inc.,Florham Park,N.J.)を用いて室温で真空濾過に供して水不溶性成分を除去して、清澄な濾液又は清澄な水溶液を形成した。浄化した濾液を、アンバーライト(登録商標)レジン(Rohm & Haas,Philadelphia,Pa.)を有する陰イオン交換樹脂カラムに通して、室温で操作され、処理された水性溶液を形成した。処理された水溶液は、次に、50psigで室温で1,000ダルトンMWCO(Pall Corporation,East Hills,N.Y.)限外ろ過膜を通過して加工処理された羅漢果抽出物を形成した。抽出物は、凍結乾燥して、羅漢果粉末を形成した。
得られた粉末材料は、実施例1の手順を使用して、色、フレーバー/臭気、揮発性物質及び不溶性含有物を決定するために試験した。また、モグロシドの含有量はHPLCを用いて決定した。結果は、Table3及び4に、上記の実施例1及び2の未変性AMAXサンプルに対する改善率と共に提供される。

」(段落0043〜0046)

(2)甲第2号証
本願出願前の平成28年9月5日に発行された甲第2号証には、以下の記載がある。

記載(2a)
「モグロシド類(モグロシドV、モグロシドIV、11−オキソーモグロシドV、シアメノシドI)と蛋白質を含み、モグロシド類の含量が0.5重量%以上70重量%未満であり、蛋白質の含量がモグロシド類150重量部に対して15重量部以下であることを特徴とする羅漢果甘味成分含有組成物。」(請求項1)

記載(2b)
「本発明の羅漢果甘味成分含有組成物は、モグロシド類の含量に対して非常に低い割合で蛋白質が含まれており、そのため、従来の羅漢果甘味成分含有品に比べて飛躍的に改善された良好な甘味質を呈し、かつ、羅漢果に由来する抗酸化性などの機能性を発揮することができる。」(段落0029)

記載(2c)
「また、本発明の羅漢果甘味成分含有組成物は、羅漢果由来の蛋白質を含むが、その含量はモグロシド類150重量部に対して15重量部以下であり、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下、さらに好ましくは2重量部以下である。蛋白質の含量が15重量部よりも多いと甘味質や機能性が大幅に低下する場合がある。」(段落0033)

(3)甲第3号証
本願出願前の平成27年に作成され公開されたといえる甲第3号証には、以下の記載がある。訳文にて示す。

記載(3a)
「検出のプロセスは確率的なものである。:検出の可能性は、粒子径、形状、色、密度、反射性など可視の属性の累積関数となる。それゆえ、人の特性の理解は、目視による検査の判定基準を確立するために重要である。人の目のレセプターは、11μmの論理的な分解能をもっているが、代表的な解像力は85〜100μmであると報告されている(3)。単一の球形粒子で作製された標準品で行われたいくつかの研究(4−6)からの検査の分析では、2,000〜3,000luxの拡散照明を使用した場合の、透明な10mL容量のバイアルに含まれる、透明な容器内の透明な溶液に単独で播種された50μmの粒子の検出の可能性が、0%よりわずかに大きいだけである。」(207頁27〜35行)

第5 当審の判断

1 甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には、熱加工された羅漢果などのウリ科果実抽出物から天然甘味料を形成する方法であって、陰イオン交換樹脂処理により、望ましくない色及び味形成成分の少なくとも一部分、及び望ましくないオフフレーバーや臭い形成成分を除去することを含む方法が記載されており(記載事項(1a)、(1b)、(1c))、実施例3として、市販されている熱処理された羅漢果抽出物であるモグロシド粉末(Mormordica 80 percent,AMAX)を用い、約50gのモグロシド粉末を、室温の水の中に懸濁させて、固体約2%を有する水性懸濁液又はスラリーを形成させ、該水性懸濁液をWhatman#2濾紙を用いて室温で真空濾過に供して水不溶性成分を除去して、清澄な濾液又は清澄な水溶液を形成し、該清澄な濾液を、アンバーライト(登録商標)レジン(Rohm & Haas,Philadelphia,Pa.)を有する陰イオン交換樹脂カラムに室温で通して、処理された水性溶液を形成し、該処理された水性溶液を、室温で1,000ダルトンMWCO限外ろ過膜で処理して得られた羅漢果抽出物を、凍結乾燥して、羅漢果粉末を形成したことが記載されており、該羅漢果粉末は、水不溶性成分(Insolubles)含有量が0.1%より少なく、フェノール類の含有量が3.29mg/gであり、モグロシドVの含有量が41.5%であったことが記載されている(記載(1h)、(1i))。
よって、甲第1号証には、
「市販されている熱処理された羅漢果抽出物であるモグロシド粉末であるMormordica 80 percentを用い、該モグロシド粉末を、水の中に懸濁させて、水性懸濁液又はスラリーを形成させ、該水性懸濁液をWhatman#2濾紙を用いて室温で真空濾過に供して水不溶性成分を除去して、清澄な濾液又は清澄な水溶液を形成し、該清澄な濾液を、アンバーライト(登録商標)レジンを有する陰イオン交換樹脂カラムに通して、処理された水性溶液を形成し、該処理された水性溶液を、1,000ダルトンMWCO限外ろ過膜で処理して得られた、水不溶性成分が0.1%より少なく、フェノール類の含有量が3.29mg/gであり、モグロシドVの含有量が41.5%である羅漢果粉末。」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。

2 対比・判断
(1)本件特許発明1について
ア 対比
甲1発明の「羅漢果粉末」は、本件特許発明1の「羅漢果抽出物」に相当する。
本件特許発明1と甲1発明を対比すると、両者は「羅漢果抽出物であって、モグロシドVを0.01質量%〜70質量%、水不溶性成分を5質量%以下含有する、羅漢果抽出物」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:本件特許発明1は不溶ポリフェノール含有量/総ポリフェノール含有量が、1/2以下であるとの特定があるのに対して、甲1発明は、不溶ポリフェノール含有量/総ポリフェノール含有量の特定がない点。

相違点の判断(申立理由1−A(新規性)について
上記相違点1について検討する。
甲第1号証には、羅漢果粉末の不溶ポリフェノール含有量及び総ポリフェノール含有量の記載はない。
総ポリフェノール含有量は、不溶ポリフェノール含有量と水溶性ポリフェノール含有量の合計であると考えられるから、水溶性ポリフェノール含有量及び不溶ポリフェノール含有量が明らかであれば、総ポリフェノール含有量が算出できると考えられる。
しかしながら、水溶性ポリフェノールは、使用される陰イオン交換樹脂の種類によって、除去される量が変わるというのが技術常識であるところ、甲第1号証には、実施例3で用いた陰イオン交換樹脂について、「アンバーライト(登録商標)レジン」との、陰イオン交換樹脂に限らない、様々な性能のイオン交換樹脂に対して用いられる商品名が示されているのみであって、実質的に陰イオン交換樹脂の種類が特定されていない。甲第1号証においては、陰イオン交換樹脂は、「望ましくない色及び味形成成分の少なくとも一部分、及び望ましくないオフフレーバーや臭い形成成分を除去する」ためのものであり(記載(1a)、(1b)、(1c))、除去対象が広範なものであるから、その使用目的から、使用した陰イオン交換樹脂の種類を特定することもできない。よって、甲1発明における水溶性ポリフェノールの含有量は不明である。
また、甲第1号証には、市販されている熱処理された羅漢果抽出物であるモグロシド粉末であるMormordica 80 percent中の不溶ポリフェノールの粒子径や、最終的に得られた羅漢果粉末の不溶ポリフェノールの粒子径を示す記載もないため、甲第1号証の実施例3における1,000ダルトンMWCO限外濾過膜処理により、不溶ポリフェノールがどれだけ除去されたかについても明らかでないから、甲1発明における不溶ポリフェノールの含有量は不明である。
してみると、甲1発明の不溶ポリフェノール含有量/総ポリフェノール含有量は不明であることから、上記相違点1は実質的な相違点である。
上記のとおり、相違点1は実質的な相違点であるので、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明ではない。

相違点の判断(申立理由1−B(進歩性)について)
上記相違点1について検討する。
甲第1号証には、羅漢果粉末の不溶ポリフェノール含有量及び総ポリフェノール含有量の記載も示唆もないことから、甲1発明において、不溶ポリフェノール含有量/総ポリフェノール含有量に着目して、それを特定の範囲とする動機付けは見当たらない。
そして、甲第2号証及び甲第3号証の記載を見ても、甲1発明において、不溶ポリフェノール含有量/総ポリフェノール含有量を1/2以下とする動機付けは見当たらない。
したがって、本件特許発明1は、甲第1〜3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件特許発明2〜4について
本件特許発明2と甲1発明を対比すると、上記相違点1のほかに、以下の点が相違する。
相違点2:本件特許発明2は、10質量%水溶液における波長660nmの吸光度が、0.3以下であると特定されるのに対して、甲1発明は、10質量%水溶液における波長660nmの吸光度の特定がない点。
そして、上記相違点1については、上記(1)で検討したとおりであるから、上記相違点2について検討するまでもなく、本件特許発明2は、甲第1号証に記載された発明ではなく、甲第1〜3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

本件特許発明3と甲1発明を対比すると、上記相違点1及び相違点2のほかに、相違点はない。
そして、上記相違点1については、上記(1)で検討したとおりであるから、上記相違点2について検討するまでもなく、本件特許発明3は、甲第1号証に記載された発明ではなく、甲第1〜3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

本件特許発明4と甲1発明を対比すると、上記相違点1及び相違点2のほかに、以下の点で相違する。
相違点3:本件特許発明4は、不溶ポリフェノール含有量が5質量%以下であると特定されるのに対して、甲1発明は、不溶ポリフェノール含有量の特定がない点。
そして、上記相違点1については、上記(1)で検討したとおりであるから、上記相違点2および相違点3について検討するまでもなく、本件特許発明4は、甲第1号証に記載された発明ではなく、甲第1〜3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件特許発明5〜6について
ア 対比
本件特許発明5と甲1発明を対比すると、上記相違点1〜3のほかに、以下の点で相違する。
相違点4:本件特許発明5は、総タンパク質含有量が、5質量%〜90質量%であると特定されるのに対して、甲1発明は、総タンパク質含有量の特定がない点。

本件特許発明6と甲1発明を対比すると、上記相違点1〜4のほかに、以下の点で相違する。
相違点5:本件特許発明6は、不溶タンパク質含有量が3質量%以下と特定されるのに対して、甲1発明は、不溶タンパク質含有量の特定がない点。

相違点の判断(申立理由2(進歩性)について)
上記相違点1については、上記(1)で検討したとおりであるから、上記相違点2〜4について検討するまでもなく、本件特許発明5は、甲第1〜3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、上記相違点1については、上記(1)で検討したとおりであるから、上記相違点2〜5について検討するまでもなく、本件特許発明6は、甲第1〜3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書において、9頁10行〜14頁6行に再現実験報告を示している。該再現実験報告は、甲第1号証の実施例3が記載されている部分である段落0045に記載の羅漢果抽出物の調製方法の再現を行い、モグロシドV、総ポリフェノール含有量、不溶ポリフェノール含有量及び不溶ポリフェノール含有量/総ポリフェノール含有量を測定又は算出した「追試試験1」と、不溶ポリフェノールを含む不溶性成分と、濾過精度との関係を調べるために行われた「追試試験2」からなるものである。
そして、申立人は、特許異議申立書において、上記追試試験1の膜処理品は、分析項目において、甲第1号証の処理品とほぼ一致する数値を示したことから、上記追試試験1は、甲第1号証の実施例を再現した実験であると評価し得るものであり、上記追試試験2から、羅漢果抽出液に存在する不溶ポリフェノールを含む不溶性成分の粒子径は0.2μm以上であり、甲第1号証の実施例3で用いられた1,000ダルトンMWCO限外濾過膜で除去されると考えられ、甲1発明は、不溶ポリフェノールを含む不溶性成分はほとんど残存せず、不溶ポリフェノール含有量/総ポリフェノール含有量が1/2以下である旨主張している。
しかしながら、当該再現実験報告中の追試試験1および追試試験2は、いずれも甲第1号証の実施例3で用いられた原料であるMormordica 80 percentではない、羅漢果抽出物を原料として用いたものであるから、甲第1号証の実施例3の再現実験であるとは認められない。さらに、該追試試験1は、甲第1号証の実施例3のものとは異なる濾紙を用いていること、及び該追試試験1で用いられた陰イオン交換樹脂は、甲第1号証の実施例3のものと同様の性能のものであるかが不明であることからも、該追試試験1は、甲第1号証の実施例3の再現実験であるとは認められない。よって、上記主張は採用できない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び証拠によっては、本件請求項1〜6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1〜6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2022-01-21 
出願番号 P2019-234338
審決分類 P 1 652・ 121- Y (A23L)
P 1 652・ 113- Y (A23L)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 吉岡 沙織
冨永 保
登録日 2020-12-18 
登録番号 6812032
権利者 サラヤ株式会社
発明の名称 羅漢果抽出物  
代理人 嶋崎 英一郎  
代理人 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所  
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