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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1382664
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-06-23 
確定日 2022-03-10 
事件の表示 特願2015−236942号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月 8日出願公開、特開2017− 99767号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年12月3日の出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和 1年 8月 5日付け:拒絶理由通知
令和 1年10月17日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 3月13日付け:拒絶査定
令和 2年 6月23日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 3年 4月20日付け:拒絶理由通知
令和 3年 6月25日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年 9月15日付け:最後の拒絶理由通知(以下、通知された拒絶の理由を「当審拒絶理由」という。)
令和 3年11月17日 :意見書(以下単に「意見書」という。)、手続補正書の提出

第2 令和3年11月17日に提出された手続補正書による補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
令和3年11月17日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲についてする補正を含むものであって、令和3年6月25日提出の手続補正書によって補正された本件補正前の請求項1に、
「遊技者の発射操作に基づいて遊技球を発射する発射手段と、
前記発射手段により発射された遊技球を複数の経路に振り分ける振分手段と、
各前記経路の球通過を把握する把握手段と、
前記把握手段によって把握された複数の球通過結果を利用して遊技機の正常動作の範囲内で起こりうる所定の比率を演算処理可能な演算手段と、
を備え、
前記演算手段は、通常状態よりも遊技者にとって有利となる特定状態における前記球通過結果が前記所定の比率に含まれないように前記演算処理を実行可能であることを特徴とする遊技機。」とあったものを、

「遊技者の発射操作に基づいて遊技球を発射する発射手段と、
前記発射手段により発射された遊技球を複数の経路に振り分ける振分手段と、
各前記経路の球通過を把握する把握手段と、
前記把握手段によって把握された複数の球通過結果を利用して遊技機の正常動作の範囲内で起こりうる所定の比率を演算処理可能な演算手段と、
を備え、
前記演算手段は、通常状態よりも遊技者にとって有利となる特定状態における前記球通過結果が前記所定の比率に含まれないように前記演算処理を実行可能であり、
前記演算手段による演算結果は、遊技者が視認できないように出力される構成であることを特徴とする遊技機。」とする補正を含むものである(なお、下線は補正前後の箇所を明示するために合議体が付した。)。

2 補正の適否について
(1)本件補正後の請求項1に係る上記1の補正は、次の補正事項からなる。
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「演算手段」に関し、「前記演算手段による演算結果は、遊技者が視認できないように出力される構成である」とするものである。

(2)新規事項の追加について
ア 請求人の主張する補正の根拠
請求人は、意見書において、以下のように補正の根拠を主張している。
「(1)補正について
本意見書と同日付提出の手続補正書にて補正を行いました。
特許請求の範囲では、請求項1において「前記演算手段による演算結果は、遊技者が視認できないように出力される構成である」との限定を行いました。かかる限定は、出願当初明細書における段落0533欄〜段落0546欄、段落0593欄等の記載に基づいております。すなわち、第1の実施形態における段落0533欄〜段落0546欄には、演算処理や比較処理の結果は、遊技ホールのホールコンピュータに出力されて遊技ホールの管理者がその結果を把握できるようになることが記載されております。また、遊技ホールのホールコンピュータへの出力だけでなく、遊技機自身がエラー報知を行うようにした第2の実施形態においては、その作用効果欄(段落0593欄)に、「遊技ホールの管理者のみならず、遊技者自身もエラー状態に設定されたことを明確に把握することが可能となる。」と記載されております。このことからも、第1の実施形態における演算結果の出力態様は、「遊技者が視認できないように出力される」ものであることは明らかであり、上記補正の根拠が明示されているといえます。また、上記補正は、演算手段や当該演算手段の演算処理の結果を限定的に減縮する補正に相当し、最後の拒絶理由通知に対する応答時の補正の規定に沿うものであります。
明細書の補正は、上記特許請求の範囲の補正との整合を取るためのものに過ぎません。
したがって、上記各補正は適法なものであります。」

イ 上記(1)の補正に係る本件補正は、「演算手段」に関し、「前記演算手段による演算結果は、遊技者が視認できないように出力される構成である」としたものである。
しかしながら、本件補正後の請求項1の「前記演算手段による演算結果は、遊技者が視認できないように出力される構成である」という記載(以下「記載事項」という。)は、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載されていない。

ウ 当初明細書等の記載
請求人が意見書において補正の根拠とする当初明細書等の【0533】ないし【0546】、【0593】、及び、請求人が意見書で言及していない当初明細書等の【0957】、【0958】には、以下の事項が記載されている。なお、下線は合議体が付した。
(ア)「【0533】
次に、ステップS2611の出力処理について、図67のフローチャートを参照しながら説明する。本実施形態では、主制御装置81にて演算処理や比較処理を行った結果は、主制御装置81に接続された外部出力端子99を介して遊技ホールのホールコンピュータに出力される。なお、図による詳細な説明は省略するが、本実施形態では、主制御装置81から遊技ホールのホールコンピュータへの外部出力端子99として、Vエラー状態か否かを示す端子と、発射個数エラー状態か否かを示す端子と、入賞個数エラー状態か否かを示す端子と、V入賞率エラー状態か否かを示す端子と、球詰まり状態か否かを示す端子と、が設けられている。
【0534】
出力処理では、先ずステップS3201にてVエラー状態か否かを判定する。既に説明したとおり、Vエラー状態とは、役物装置400における各通過領域412〜414を遊技球が通過していないのにもかかわらずV入賞が発生している状態である。この場合、ステップS3202にて、Vエラー状態であることを示す端子に対する出力信号をHI状態に設定する。出力信号は、HI状態とLOW状態とに切換可能に設定されており、HI状態である場合にVエラー状態であることを示し、LOW状態である場合にVエラー状態ではないことを示すように設定されている。なお、以下に説明する各出力信号も、HI状態とLOW状態との関係は同様となっている。また、これら出力信号において、HI状態とLOW状態との関係が逆であってもよい。
【0535】
ステップS3202にてVエラー状態であることを示す端子がHI状態となることによって、遊技ホールのホールコンピュータでは、Vエラー状態が発生していることを特定することができる。ステップS3202の処理を実行した後は、ステップS3203にて遊技停止処理を実行する。遊技停止処理では、遊技球の発射を停止する、遊技球の払い出しを停止する等の処理を行い、遊技の進行をストップする。ステップS3202の処理を実行した後は、出力処理を終了する。なお、遊技停止処理が実行されるタイミングにおいて例えば開閉実行モード中である場合には、当該タイミングにおける遊技状態(ラウンド数や入賞数、開閉数等)をRAM114に記憶する構成とするとよい。このようにすれば、遊技の再開に際して、停止時の状態から遊技を続行させることが可能となる。この場合、停止時の状態から遊技を続行させるか、それとも通常遊技状態から(初期化された状態から)遊技を再開させるかを、遊技ホールの管理者が選択可能とするとよい。例えば、主制御装置81に設けられたRAMクリアスイッチを操作して電源をON/OFFすることで、遊技状態を初期化して再開させることができる一方、単にRAMクリアスイッチを操作せずに電源ON/OFFすると、停止時の状態から継続できる構成とするとよい。
【0536】
ステップS3202にてVエラー状態ではない場合には、ステップS3204にてVエラー状態であることを示す端子に対する出力信号をLOW状態に設定する。なお、ステップS3204の処理前から、出力信号がLOW状態である場合には、その状態を維持する。これは、他の各出力信号の状態の設定に関する処理についても同様である。
【0537】
ステップS3204の処理を実行した後は、ステップS3205に進む。ステップS3205では、V入賞個数カウンタが所定個数としての「3」であるか否かを判定する。所定個数とは、外部出力の契機となる個数であり、本実施形態ではV入賞口182aに3個の遊技球が入球するたびに、外部出力が行われる構成としている。なお、この個数は任意であり、3個よりも少なくてもよく、3個よりも多くてもよい。但し、V入賞口182aへの入賞の発生頻度を鑑みると、あまりに多くし過ぎると、出力契機がなかなか発生しないことも考えられるため、例えば所定時間(1時間)に発生し得る入賞個数以下とすることが好ましい。なお、MPU112の内部タイマカウンタや、所定のクロック回路等によって、出力タイミングを判定する構成としてもよい。ステップS3205にて3個に満たない場合には、そのまま本出力処理を終了する。一方、3個である場合には、ステップS3206にてV入賞個数カウンタをクリアする処理を行う。これにより、次回の外部出力の契機に備えることが可能となる。
【0538】
続くステップS3207では、発射個数エラー状態か否かを判定する。発射個数エラー状態である場合には、ステップS3208にて発射個数エラー状態であることを示す端子に対する出力信号をHI状態に設定し、発射個数エラー状態ではない場合にはステップS3209にて同端子に対する出力信号をLOW状態に設定する。ステップS3208にて発射個数エラー状態であることを示す端子がHI状態となることによって、遊技ホールのホールコンピュータでは、発射個数エラー状態が発生していることを特定することができる。
【0539】
ステップS3208又はステップS3209の処理を実行した後は、ステップS3210にて入賞個数エラー状態であるか否かを判定する。入賞個数エラー状態である場合には、ステップS3211にて入賞個数エラー状態を示す端子に対する出力信号をHI状態に設定し、入賞個数エラー状態ではない場合には、ステップS3212にて同端子に対する出力信号をLOW状態に設定する。ステップS3211にて入賞個数エラー状態であることを示す端子がHI状態となることによって、遊技ホールのホールコンピュータでは、入賞個数エラー状態が発生していることを特定することができる。
【0540】
ステップS3211又はステップS3212の処理を実行した後は、ステップS3213にてV入賞率エラー状態か否かを判定する。V入賞率エラー状態である場合には、ステップS3214にてV入賞率エラー状態を示す端子に対する出力信号をHI状態に設定し、V入賞率エラー状態ではない場合には、ステップS3215にて同端子に対する出力信号をLOW状態に設定する。ステップS3214にてV入賞率エラー状態であることを示す端子がHI状態となることによって、遊技ホールのホールコンピュータでは、V入賞率エラー状態が発生していることを特定することができる。
【0541】
ステップS3214又はステップS3215の処理を実行した後は、ステップS3216にて球詰まりフラグが格納されているか否かを判定する。球詰まりフラグが格納されており、球詰まり状態である場合には、ステップS3217にて球詰まり状態を示す端子に対する出力信号をHI状態に設定し、球詰まり状態ではない場合には、ステップS3218にて同端子に対する出力信号をLOW状態に設定する。ステップS3217又はステップS3218の処理を実行した後は、本出力処理を終了する。ステップS3217にて球詰まり状態であることを示す端子がHI状態となることによって、遊技ホールのホールコンピュータでは、球詰まり状態が発生していることを特定することができる。
【0542】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果を奏することができる。
【0543】
役物装置400において、球振分け部185から第1振分部材300や第2振分部材310によって各通過領域412〜414に振り分けられてV入賞が発生し得る構成において、各通過領域412〜414の通過情報を把握可能な構成とした。これにより、どのようなルートを辿ってV入賞が発生したかといった情報や、V入賞に至り易いルートの情報、などを把握することが可能となる。よって、V入賞に至らせるためのルートを利用した不正行為が行われていることやV入賞に至るルートにおける異常の発生等を特定することが可能となる。したがって、不正・異常発見の精度向上に役立てることができる。
【0544】
この場合、各通過領域412〜414の通過個数を利用して演算処理を実行し、その演算処理の結果を設定値と比較して通過個数の異常な偏りが生じているとするエラー状態が発生しているか否かの情報を、外部出力して遊技ホールの管理者等に知らせる構成とした。ここで、一般的な遊技機においては、V入賞口182a等の各入球部への入球が発生したことに基づいて、その入球情報が外部出力される構成となっている。これは、V入賞口182aをはじめとして、各入球部への入球が発生した場合には、遊技者に賞球等の特典が付与されるように設定されており、その賞球が付与されたことを遊技ホールにて把握するためである。そして、不正や異常の検知といった観点からすると、このような賞球が付与される入球部に対してその不正や異常を検知するセンサ(磁気センサや電波センサなど)が設けられる。しかし、上記のとおり不正や異常は、賞球が付与される入球部だけでなく、その入球部に至るルートにおいても発生し得るものであるから、上記のように各経路412〜414の通過情報を利用することで、不正や異常の発見の精度が大幅に上昇すると考えられる。
【0545】
ところが、入球部において直接的に不正行為が行われたり異常が発生した場合と比較して、入球部に至る経路において不正や異常が発生した場合にはそれを特定することが困難な場合が多い。これは、入球部に至る経路において行われる不正行為としては、直接的に当否抽選や賞球を発生させようとするものではなく、入球部への入球が発生し易いように通過経路を調節する行為であり、また、入球部に至る経路において発生する異常も、設計上の通過率とかけ離れた通過率となるような異常であり、これらの事象は、偶発的に発生した偏りとの差異が判断しにくいといった事情によるものである。そして、このような偶発的に発生した偏りとの差異を明確に判断しようとすると、より細かい判定基準を設ける必要が生じ、処理負荷が高騰するといった問題が生じるだけでなく、より細かい判定基準によって誤判定が行われると、結局は遊技ホールの管理者等の無駄な確認作業を招く結果となりかねない。
【0546】
そこで、このような判断をあえて遊技機側でするのではなく、遊技機側においては、その判断材料(不正や異常とも取れる事象が発生している情報、偏りの情報、各種エラーの情報)を把握・出力する構成とし、最終的な判断を遊技ホールの管理者等に委ねる構成としたことで、不正・異常の発生を作業性の面からみても好適に発見することが可能となる。」

(イ)「【0593】
通過領域412〜414の通過情報を利用した報知として、エラー状態に関する報知を演出制御装置82にて行う構成とした。これにより、遊技ホールの管理者のみならず、遊技者自身もエラー状態に設定されたことを明確に把握することが可能となる。」

(ウ)「【0957】
<特徴M群>
特徴M1.遊技者の発射操作に基づいて、遊技領域に向けて遊技球を発射する発射手段(遊技球発射機構53)と、
前記遊技領域を流下する遊技球が通過可能な通過部(左通過領域412、右通過領域413、奥通過領域414、V入賞口182a等)と、
前記通過部を通過した遊技球を検知する通過検知手段(左通過検知センサ402、右通過検知センサ403、奥通過検知センサ404、V入賞センサ192等)と、
前記通過検知手段に基づく検知結果を利用して、所定の演算処理を実行する演算手段(主制御装置81による演算処理を実行する機能)と、
前記演算手段の演算結果を、他の装置へ出力する出力手段(主制御装置81による出力処理を実行する機能)と、
を備えていることを特徴とする遊技機。
【0958】
上記構成によれば、遊技者による発射操作に基づいて、遊技領域へ向けて遊技球が発射され、その遊技球が通過部を通過すると、通過検知手段により検知される。そして、その検知結果を利用して、所定の演算処理が行われてからその演算結果が他の装置へ出力される。他の装置とは、例えば、遊技ホールに設けられたデータ表示装置や、遊技ホールのホールコンピュータ等の他、本遊技機が有する表示等を行うためのサブ側の制御装置を示す。これら他の装置にて、上記の演算結果を把握可能とすれば、例えば、単位時間当たりの通過率が遊技機の設計とは大きく異なっていたり、他の入球部や通過部の入球率/通過率との関係性が設計と異なっていたりすることを、遊技ホールの管理者等が容易に把握することが可能となる。上記のような設計とは異なる事象が発生している場合、例えば、不正行為が行われていたり、遊技機側の故障(球詰まり等)が発生していたりする可能性があり、上記のように遊技ホールの管理者が把握可能とすれば、これらの事象を迅速に解消することが可能となる。」

エ 合議体の判断
(ア)上記ウから次のことが把握できる。
a 【0533】ないし【0546】、【0957】及び【0958】の記載から、演算処理や比較処理の結果は、遊技ホールに設けられたデータ表示装置や、遊技ホールのホールコンピュータ、本遊技機が有する表示等を行うためのサブ側の制御装置に出力され、ホールコンピュータに出力された場合には、遊技ホールの管理者がその結果を把握できること。
b 【0593】、【0957】及び【0958】の記載から、エラー状態に関する報知を演出制御装置82(サブ側の制御装置)にて行う構成とし、これにより、遊技ホールの管理者のみならず、遊技者自身もエラー状態に設定されたことを明確に把握することが可能となること。

(イ)上記(ア)からみて、演算処理や比較処理の結果は、遊技ホールのホールコンピュータに出力することにより遊技ホールの管理者が把握できるようにしたものではあるが、遊技ホールに設けられたデータ表示装置や、本遊技機が有する表示等を行うためのサブ側の制御装置にも出力可能なものであるから、遊技者が視認できることを許容するものと解され、当初明細書等全体を参酌しても、「出力される」「演算結果」を「遊技者が視認できない」ようにしたことの明示的な記載もない。
そうすると、本件補正後の請求項1において、「演算手段による演算結果」が「出力される構成」を有していることは、当初明細書等の記載から把握できる事項であるが、当初明細書等の記載において、「出力される」「演算結果」が「遊技者が視認できない」ことについては明示的な記載も示唆もされていないだけでなく自明であるともいえない。

(ウ)してみると、本件補正のように、「前記演算手段による演算結果は、遊技者が視認できないように出力される構成である」との事項を追加する補正は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
したがって、上記(1)とする補正を含む本件補正は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるので、当初明細書等に記載した事項の範囲内でなされたものではない。

オ 小括
以上のとおり、本件補正は、当初明細書等の記載に基づくものではなく、新たな技術事項を導入するものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たさない。

(3)本件補正の目的
本件補正後の請求項1に係る本件補正は、上記(1)のとおり、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を限定する補正である。
そこで、請求項1に係る本件補正が特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとして、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下検討する。

3 独立特許要件について
3−1 本願補正発明
本願補正発明を再掲すると、次のとおりのものである(なお、AないしGについては、分説するため合議体が付した。以下A等を付した事項を「特定事項A」等という。)。
「A 遊技者の発射操作に基づいて遊技球を発射する発射手段と、
B 前記発射手段により発射された遊技球を複数の経路に振り分ける振分手段と、
C 各前記経路の球通過を把握する把握手段と、
D 前記把握手段によって把握された複数の球通過結果を利用して遊技機の正常動作の範囲内で起こりうる所定の比率を演算処理可能な演算手段と、
を備え、
E 前記演算手段は、通常状態よりも遊技者にとって有利となる特定状態における前記球通過結果が前記所定の比率に含まれないように前記演算処理を実行可能であり、
F 前記演算手段による演算結果は、遊技者が視認できないように出力される構成である
G ことを特徴とする遊技機。」

3−2 サポート要件について
(1)請求項1には「前記演算手段による演算結果は、遊技者が視認できないように出力される構成である」と記載されているが、上記2(2)で示した理由と同様に、明細書の【0533】ないし【0546】、【0593】(請求人が意見書において補正の根拠とした箇所)等には、演算処理や比較処理の結果は、遊技ホールのホールコンピュータに出力することにより遊技ホールの管理者が把握できるようにしたものではあるが、遊技ホールに設けられたデータ表示装置や、本遊技機が有する表示等を行うためのサブ側の制御装置にも出力可能なものであることが記載されているから、演算処理や比較処理の結果は、遊技者が視認できることを許容するものと解され、明細書の記載全体を参酌しても、「出力される」「演算結果」を「遊技者が視認できない」ようにしたことの明示的な記載もない。
そうすると、請求項1において、「演算手段による演算結果」が「出力される構成」を有していることは、明細書の記載から把握できる事項であるが、明細書の記載において、「出力される」「演算結果」が「遊技者が視認できない」ことについては明示的な記載も示唆もされていないだけでなく、出力される演算結果を全て視認不可能とすることが技術常識であったとも認められないから、当該技術常識を考慮しても「出力される」「演算結果」が「遊技者が視認できない」ことが自明であるともいえない。

(2)サポート要件のむすび
以上のように、本願補正発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
よって、本願補正発明は、特許法第36条第6項第1号の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3−3 進歩性について
(1)引用例の記載、引用発明
当審拒絶理由で引用例1として引用され、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2015−139628号公報(平成27年8月3日公開、以下「引用例1」という。)には、遊技機(発明の名称)に関し、次の事項が図とともに記載されている。なお、下線は合議体が付した。以下同じ。
ア 「【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。まず、遊技機の一例であるパチンコ遊技機1の全体の構成について説明する。図1はパチンコ遊技機1を正面からみた正面図である。」

イ 「【0032】
演出表示装置9の下方には、第1始動入賞口13を有する入賞装置が設けられている。第1始動入賞口13に入賞した遊技球は、遊技盤6の背面に導かれ、第1始動口スイッチ13aによって検出される。
【0033】
また、第1始動入賞口(第1始動口)13を有する入賞装置の下方には、遊技球が入賞可能な第2始動入賞口14を有する可変入賞球装置15が設けられている。第2始動入賞口(第2始動口)14に入賞した遊技球は、遊技盤6の背面に導かれ、第2始動口スイッチ14aによって検出される。可変入賞球装置15は、ソレノイド16によって開状態とされる。可変入賞球装置15が開状態になることによって、遊技球が第2始動入賞口14に入賞可能になり(始動入賞し易くなり)、遊技者にとって有利な状態になる。可変入賞球装置15が開状態になっている状態では、第1始動入賞口13よりも、第2始動入賞口14に遊技球が入賞しやすい。また、可変入賞球装置15が閉状態になっている状態では、遊技球は第2始動入賞口14に入賞しない。従って、可変入賞球装置15が閉状態になっている状態では、第2始動入賞口14よりも、第1始動入賞口13に遊技球が入賞しやすい。なお、可変入賞球装置15が閉状態になっている状態において、入賞はしづらいものの、入賞することは可能である(すなわち、遊技球が入賞しにくい)ように構成されていてもよい。
【0034】
以下、第1始動入賞口13と第2始動入賞口14とを総称して始動入賞口または始動口ということがある。
【0035】
可変入賞球装置15が開放状態に制御されているときには可変入賞球装置15に向かう遊技球は第2始動入賞口14に極めて入賞しやすい。そして、第1始動入賞口13は演出表示装置9の直下に設けられているが、演出表示装置9の下端と第1始動入賞口13との間の間隔をさらに狭めたり、第1始動入賞口13の周辺で釘を密に配置したり、第1始動入賞口13の周辺での釘配列を遊技球を第1始動入賞口13に導きづらくして、第2始動入賞口14の入賞率の方を第1始動入賞口13の入賞率よりもより高くするようにしてもよい。」

ウ 「【0045】
遊技機には、遊技者が打球操作ハンドル5を操作することに応じて駆動モータを駆動し、駆動モータの回転力を利用して遊技球を遊技領域7に発射する打球発射装置550(図2参照)が設けられている。打球発射装置から発射された遊技球は、遊技領域7を囲むように円形状に形成された打球レール551(図2参照)を通って遊技領域7に入り、その後、遊技領域7を下りてくる。遊技球が第1始動入賞口13に入り第1始動口スイッチ13aで検出されると、第1特別図柄の可変表示を開始できる状態であれば(例えば、特別図柄の可変表示が終了し、第1の開始条件が成立したこと)、第1特別図柄表示器8aにおいて第1特別図柄の可変表示(変動)が開始されるとともに、演出表示装置9において演出図柄の可変表示が開始される。すなわち、第1特別図柄および演出図柄の可変表示は、第1始動入賞口13への入賞に対応する。第1特別図柄の可変表示を開始できる状態でなければ、第1保留記憶数が上限値に達していないことを条件として、第1保留記憶数を1増やす。」

エ 「【0060】
なお、大当り遊技状態の発生を示す大当り情報等の情報出力信号を、ターミナル基板160を介して、ホールコンピュータ等の外部装置に対して出力する情報出力回路64も主基板31に搭載されている。
・・・略・・・
【0099】
さらに、CPU56は、例えばホール管理用コンピュータに供給される大当り情報、始動情報、確率変動情報などのデータを出力する情報出力処理を行う(ステップS30)。」

オ 「【0273】
次いで、演出制御用CPU101は、発射球数カウンタの値および始動入賞数カウンタの値にもとづいて入賞率を算出する処理を行う(ステップS3510)。ステップS3510では、演出制御用CPU101は、現在の発射球数カウンタの値を抽出することによって、通常状態における打球発射装置550からの遊技球の発射数(当日の電源投入されてからの発射数の総数B)を特定する。また、演出制御用CPU101は、現在の始動入賞数カウンタの値を抽出することによって、通常状態における始動入賞(本例では、無効始動入賞を含む)の発生数(当日の電源投入されてからの始動入賞の総数A)を特定する。そして、演出制御用CPU101は、特定した始動入賞の総数Aおよび発射数の総数Bを用いて、次の式(1)に従って、当日の電源投入されてからの通常状態における始動入賞口(第1始動入賞口13、第2始動入賞口14)への入賞率Cを算出する。」

カ 「【0282】
また、この実施の形態では、遊技状態が通常状態(低確率/低ベース状態)中の始動入賞の総数Aおよび発射数の総数Bをカウントして始動入賞口への入賞率Cを算出する場合を示したが、そのような態様にかぎられない。例えば、遊技状態が高確率状態や高ベース状態中の始動入賞の総数および発射数の総数をカウントして始動入賞口への入賞率を算出するようにしてもよい。また、遊技状態が高確率状態であるか低確率状態であるかや高ベース状態であるか低ベース状態であるかを区別することなく、遊技状態にかかわらず全ての始動入賞や発射数をカウントして始動入賞の総数および発射数の総数を求めて始動入賞口への入賞率を算出するようにしてもよい。さらに、例えば、遊技状態が時短状態(高ベース状態)中および大当り遊技状態中を除外した入賞率を算出するように構成してもよい。」

キ 「【0286】
また、この実施の形態では、第1始動入賞口13と第2始動入賞口14とを区別することなく、第1始動入賞口13および第2始動入賞口14への始動入賞の総数をカウントして始動入賞口への入賞率を算出する場合を示したが、第1始動入賞口13への総入賞数と第2始動入賞口14への総入賞数とを別々にカウントして、第1始動入賞口13への入賞率を第2始動入賞口14への入賞率とを別々に算出するようにしてもよい。」

ク 上記アないしキからみて、引用例1には、次の発明が記載されている。なお、aないしgについては本願補正発明の特定事項AないしGに概ね対応させて付与し、引用箇所の段落番号等を併記した。
「a 遊技者が打球操作ハンドル5を操作することに応じて駆動モータを駆動し、駆動モータの回転力を利用して遊技球を遊技領域7に発射する打球発射装置550が設けられており(【0045】)、
c 第1始動入賞口13を有する入賞装置が設けられており、第1始動入賞口13に入賞した遊技球は、第1始動口スイッチ13aによって検出され(【0032】)、第1始動入賞口13を有する入賞装置の下方には、遊技球が入賞可能な第2始動入賞口14を有する可変入賞球装置15が設けられており、第2始動入賞口14に入賞した遊技球は、第2始動口スイッチ14aによって検出され(【0033】)、
b 第1始動入賞口13の周辺で釘を密に配置したり、第1始動入賞口13の周辺での釘配列を遊技球を第1始動入賞口13に導きづらくして、第2始動入賞口14の入賞率の方を第1始動入賞口13の入賞率よりもより高くするようにしてもよく(【0035】)、
d 演出制御用CPU101は、特定した始動入賞の総数Aおよび発射数の総数Bを用いて、当日の電源投入されてからの通常状態における始動入賞口(第1始動入賞口13、第2始動入賞口14)への入賞率Cを算出し(【0273】)、第1始動入賞口13への総入賞数と第2始動入賞口14への総入賞数とを別々にカウントして、第1始動入賞口13への入賞率と第2始動入賞口14への入賞率とを別々に算出し(【0286】)、
e 遊技状態が時短状態中および大当り遊技状態中を除外した入賞率を算出し(【0282】)、
f 大当り情報、始動情報、確率変動情報などの情報出力信号を、ターミナル基板160を介して、ホールコンピュータ等の外部装置に対して出力する(【0060】、【0099】)、
g パチンコ遊技機1(【0014】)。」(以下「引用発明」という。)

(2)周知例の記載、周知技術
ア 周知例1
本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2001−269462号公報(平成13年10月2日公開、以下「周知例1」という。)には、弾球遊技機(発明の名称)に関し、次の事項が図とともに記載されている。
(ア)「【0013】
【実施例】図1に示すように、本実施例の弾球遊技機としてのパチンコ機10は、長方形の外枠11を有する本体とカードリーダ30とからなっている。パチンコ機10の本体の外殻は、外枠11と前面枠12にて構成され、前面枠12は、ヒンジ機構13により軸支されて外枠11に対して手前に開閉可能となっている。前面枠12には金枠14が取り付けられ、その金枠14の一方に図示しない上下のヒンジ機構によりガラス枠15が図示しない右側に軸により開閉可能に装着されている。ガラス枠15を閉じた状態(図示の状態)では、ガラス枠15に保持される図示しない2重に装填されているガラス板によって、本図では述べないが詳細を後述する遊技盤16が内部に装填されており、その前面側を覆っている。」

(イ)「【0054】S58の出力駆動制御手段サブルーチンは、ランプ及びソレノイドの出力を制御するもので、主制御装置60からのコマンド情報に基づいて作動させるものである。S59の遊技情報出力手段サブルーチンは、主制御装置60からのコマンド情報により入賞率、図柄変動率等の遊技情報を外部出力線83から遊技情報端子64を通して図示しない遊技場管理コンピュータに送信するものである。S60は、大型図柄表示装置62及び汎用図柄表示部116・216の当り当たらないの決定をするカウンタのインクリメント部であって、次のリセット割込の入力されるまで随時ループをするものである。次のS61の「割込処理手段」は、NMI割込ルーチンにより割込受信するとS62の「コマンド情報受信処理手段」においてデータを一旦バッファに記憶する。このあと次回メインルーチン処理で先に説明したS54でこの内容の分析処理をする。」

イ 周知例2
本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2008−93141号公報(平成20年4月24日公開、以下「周知例2」という。)には、遊技機(発明の名称)に関し、次の事項が図とともに記載されている。
(ア)「【0010】
図1に、本発明を用いたパチンコ機の外観を示す。このパチンコ機(遊技機)2は、基体となる本体部材3に、上部扉4及び下部扉5からなる2枚の前面扉6が本体部材3に対して回動自在となるように、図示しないヒンジ部を介して組み付けられる。上部扉4の中央には開口4aが設けられており、この開口4aは上部扉4の裏側に取り付けられるガラス等の透光性を有する部材により遮蔽される。なお、上部扉4が閉じている状態では、遊技の際に遊技領域25を流下するパチンコ球110(図2参照)や、遊技領域25に設けられた構造物は、上記開口4aを遮蔽するガラスを介して視認される。なお、符号8は、本体部材3を遊技場等に固定するための固定枠である。」

(イ)「【0049】
本実施形態では、入賞率が基準入賞率を超過した場合には、音声制御装置やランプ制御装置にエラー信号の出力を行う形態としているが、この他に、遊技場に配設される遊技機を統括的に管理するホールコンピュータなどの管理装置に、エラー信号を出力することも可能である。」

ウ 周知例3
本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2015−97627号公報(平成27年5月28日公開、以下「周知例3」という。)には、遊技機に関し、次の事項が図とともに記載されている。
(ア)「【0044】
[第1実施形態]
[構成の説明]
(1)全体の構成について
図1は、機内に遊技球を封入して遊技を行う第1実施形態の封入式の弾球遊技機50(以下封入式遊技機50ともいう)の正面図である。図1に示すように、封入式遊技機50は、台間ユニット100と隣り合わせで遊技施設に配置される。台間ユニット100には、カード挿入口100aと、現金挿入口100bとが設けられており、カード挿入口100aにICカードを挿入するか現金挿入口100bに現金を挿入することで、封入式遊技機50に設けた球貸しボタン102aの操作が可能(球貸しが可能)となる。」

(イ)「【0081】
(2)電気的構成について
次に、封入式遊技機50の電気的構成を図3,4に示したブロック図を用いて説明する。詳細な図示は省略するが、主制御装置80,払出発射制御装置84,演出図柄制御装置82,サブ統合制御装置83,遊技レコーダ200は、いずれもCPU,ROM,RAM,入力ポート,出力ポート等を備えている。
・・・略・・・
【0088】
遊技レコーダ200は、主制御装置80に接続されており、主制御装置80と双方向通信を行うことができる。遊技レコーダ200は、封入式遊技機50の外部に設けられた外部電源300から供給された電力により、搭載しているプログラムに従って動作し、主制御装置80から取得した情報に基づき出玉率を算出すると共に、出玉率が異常な値となった場合には、外部に異常信号を出力する。」

(ウ)「【0197】
(18)出玉率算出処理について
次に、図23を用いて、遊技レコーダ200にて実行される出玉率算出処理について説明する。本処理は、封入式遊技機50の稼働中に、遊技レコーダ200を統括制御するマイコンにより周期的に実行される。
・・・略・・・
【0208】
そして、肯定判定が得られた場合には(S1115:Yes)、S1120に処理を移行すると共に、否定判定が得られた場合には(S1115:No)、本処理を終了する。
S1120では、遊技レコーダ200は、出玉率が異常である旨を示す異常信号を外部に出力する。
【0209】
具体的には、遊技レコーダ200は、例えば、出力部280を介して払出発射制御装置84に対して異常信号を送信し、遊技の進行や遊技球の発射を停止させても良いし、サブ統合制御装置83に異常信号を送信し、出玉率の異常が生じた旨を報知する構成としても良い。
【0210】
また、遊技レコーダ200は、例えば、配線240,入力コネクタ230を介して主制御装置80に異常信号を送信し、遊技の進行を停止させても良い。
また、遊技レコーダ200は、払出発射制御装置84や台間ユニット100を経由してホールコンピュータ87に異常信号を送信し、ホールコンピュータ87を介して出玉率の異常が生じた旨を報知したり、出玉率の異常が生じた旨をホールコンピュータ87に記憶させても良い。」

エ 上記アないしウからみて、以下の事項が本願の出願前に周知であると認められる。
「パチンコ遊技機内で算出された算出結果に対応する情報をパチンコ遊技機外のホールコンピュータに出力する、パチンコ遊技機。」(以下「周知技術」という。)

(3)対比
本願補正発明と引用発明を対比する。
ア 特定事項Aについて
引用発明の「遊技者」の「打球操作ハンドル5」の「操作」は、「遊技球を遊技領域7に発射する」ための操作であるから、本願補正発明の「遊技者の発射操作」に相当する。
また、引用発明の「遊技球を遊技領域7に発射する打球発射装置550」は、本願補正発明の「遊技球を発射する発射手段」に相当する。
したがって、引用発明のaは、本願補正発明の特定事項Aに相当する。

イ 特定事項Bについて
引用発明の「釘」は、その「配置」や「配列」によって「遊技球を第1始動入賞口13に導きづらくして、第2始動入賞口14の入賞率の方を第1始動入賞口13の入賞率よりもより高くする」ことができるものであり、遊技球を第1始動入賞口13や第2始動入賞口14に振り分けるものであるといえるから、本願補正発明の「遊技球を複数の経路に振り分ける振分手段」に相当する。
したがって、引用発明のbは、本願補正発明の特定事項Bに相当する。

ウ 特定事項Cについて
引用発明の「第1始動入賞口13に入賞した遊技球」を「検出」する「第1始動口スイッチ13a」及び「第2始動入賞口14に入賞した遊技球」を「検出」する「第2始動口スイッチ14a」は、本願補正発明の「各前記経路の球通過を把握する把握手段」に相当する。
したがって、引用発明のcは、本願補正発明の特定事項Cに相当する。

エ 特定事項Dについて
引用発明の「第1始動入賞口13への総入賞数」及び「第2始動入賞口14への総入賞数」は、本願補正発明の「複数の球通過結果」に相当し、引用発明の「第1始動入賞口13への入賞率」及び「第2始動入賞口14への入賞率」は、本願補正発明の「所定の比率」に相当し、引用発明の「始動入賞口(第1始動入賞口13、第2始動入賞口14)への入賞率Cを算出」する「演出制御用CPU101」は、本願補正発明の「所定の比率を演算処理可能な演算手段」に相当する。
また、引用発明は、「通常状態における始動入賞口(第1始動入賞口13、第2始動入賞口14)への入賞率Cを算出」するものであるから、引用発明の「第1始動入賞口13への入賞率」及び「第2始動入賞口14への入賞率」は、遊技機の正常動作中に算出されるものであるといえる。
したがって、引用発明のdは、本願補正発明の特定事項Dに相当する。

オ 特定事項Eについて
引用発明の「時短状態」及び「大当り遊技状態」は、本願補正発明の「通常状態よりも遊技者にとって有利となる特定状態」に相当し、引用発明の「パチンコ遊技機1」は、本願補正発明の「遊技機」に相当する。
また、引用発明は、「遊技状態が時短状態中および大当り遊技状態中を除外した入賞率を算出する」ものであるから、時短状態及び大当り遊技状態における第1始動入賞口13への入賞数及び第2始動入賞口14への入賞数は、第1始動入賞口13への入賞率及び第2始動入賞口14への入賞率の算出に用いられていないといえる。
したがって、引用発明のeは、本願補正発明の特定事項Eに相当する。

カ 特定事項Gについて
引用発明の「g 遊技機」は、本願補正発明の「G 遊技機」に相当する。

キ 上記アないしカからみて、本願補正発明と引用発明とは、
「A 遊技者の発射操作に基づいて遊技球を発射する発射手段と、
B 前記発射手段により発射された遊技球を複数の経路に振り分ける振分手段と、
C 各前記経路の球通過を把握する把握手段と、
D 前記把握手段によって把握された複数の球通過結果を利用して遊技機の正常動作の範囲内で起こりうる所定の比率を演算処理可能な演算手段と、
を備え、
E 前記演算手段は、通常状態よりも遊技者にとって有利となる特定状態における前記球通過結果が前記所定の比率に含まれないように前記演算処理を実行可能である、
G 遊技機。」である点で一致し、次の点で相違する。

・相違点(特定事項F)
本願補正発明では、「前記演算手段による演算結果は、遊技者が視認できないように出力される構成である」のに対し、
引用発明では、大当り情報、始動情報、確率変動情報などの情報出力信号を、ターミナル基板160を介して、ホールコンピュータ等の外部装置に対して出力するものの、出力されるのが「遊技者が視認できないように出力される構成である」「演算結果」であるどうか明らかでない点。

(4)判断
上記相違点について検討する。
ア 周知技術(上記(2)エ)は、パチンコ遊技機において、パチンコ遊技機内で算出された算出結果に対応する情報をパチンコ遊技機外のホールコンピュータに出力することである。
周知技術の「算出結果」が本願補正発明の「演算手段による演算結果」に相当するものであり、周知技術の「ホールコンピュータに出力」される「情報」は、遊技者が視認できるものではないから、周知技術は、本願補正発明の「前記演算手段による演算結果は、遊技者が視認できないように出力される構成である」(特定事項F)を備えるといえる。

イ 引用発明は、パチンコ遊技機において、大当り情報、始動情報、確率変動情報などの情報出力信号を、ターミナル基板160を介して、ホールコンピュータ等の外部装置に対して出力するものであるから、引用発明と周知技術とは、遊技に関する情報をホールコンピュータ等の外部装置に対して出力するパチンコ遊技機である点で技術分野が共通し、遊技に関する情報をホールコンピュータで把握できるようにするという課題を内在する点でも共通するから、周知技術を引用発明に適用し、引用発明において、大当り情報、始動情報、確率変動情報などだけではなく、算出された入賞率自体又は該入賞率に対応した情報等についても、ホールコンピュータ等の外部装置に対して出力するようになすことは当業者が適宜なし得たことである。

ウ したがって、引用発明において、上記相違点に係る本願補正発明の特定事項のようになすことは当業者が周知技術に基づいて適宜なし得たことである。

(5)本願補正発明の奏する効果は、引用発明及び周知技術の奏する効果から、予測することができた程度のものである。

(6)請求人の主張について
ア 請求人は、意見書において、概ね以下のとおり主張する。
「(2)拒絶理由に対する意見
拒絶理由通知では、引用文献1(特開2015−139628号公報)に基づいて特許法第29条第1項及び第2項違反の拒絶理由が通知されました。これに対して、上記(1)のように補正した結果、これらの拒絶理由は解消されたものと思料するため、以下、その理由を述べます。
補正後の本願の請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という)は、先ず、「遊技球を複数の経路に振り分ける振分手段と、各前記経路の球通過を把握する把握手段と、」を備えたうえで、更に、「前記把握手段によって把握された複数の球通過結果を利用して遊技機の正常動作の範囲内で起こりうる所定の比率を演算処理可能な演算手段」を備えている、という第1の特徴的構成を有しております。
このような第1の特徴的構成を備えることで、複数ある経路のうち、実際にどの経路が通過し易くなっているか等を比率(通過率、通過領域を通過した割合、外れ率等)として遊技機が把握することが可能となります。
この点について、審判請求書にも記載した通り、例えば、所定の入球部への入球が発生し易いように、意図的に遊技球を誘導するような行為については、実際に遊技球が入球しているのであるし、その遊技球を誘導する経路についても通常の遊技の範囲内で通過し得る経路であることが考えられることから、従来の不正対策ではそれに対応することが困難であり、特に、たまたまではあっても、当該所定の入球部への入球が発生し易い経路を遊技球が通過すること自体が、所謂パチンコ機の醍醐味であることからして、その経路を遊技球が通過した事象が不正行為に起因するものであるのか、それとも遊技機の遊技として正常に起こり得る事象であるのかを特定することは困難であると考えられます(段落0545欄等を参照)。
そこで、上記第1の特徴的構成のように、各径路を遊技球が通過したことの情報を用いて、所定の比率として通過率や通過個数の割合やV入賞を前提とした外れ率等を演算するようにすることで、実際にどの経路が通過し易くなっているかや、どの経路をどれくらいの割合で通過しているかを把握することが可能となり、例えば、それを基準値と比較したり、その演算結果を出力・報知する等することで、不正行為が行われていることの判断や、異常が発生していることの判断を行うことが可能となります。
そのうえで、本願発明では、今般限定したように、上記の「演算結果を遊技者が視認できないように出力するようにした」、という第2の特徴的構成を備えております。つまり、本願発明では、上記の不正行為や異常の有無の判断を、遊技者は行うことができず、遊技ホールの管理者等の限られた者のみが行えるようにしております。このようにすることで、例えば、演算結果を見ながら不正と判断されないようなギリギリの通過率となるように遊技球を誘導するような行為や、異常に有利な通過率となっているような遊技機を遊技者が選択して遊技を行うような行為を行うことができなくなり、遊技ホールの管理者等による適切な判断と対処が可能となります。
これに対して、本願発明の基本的構成が開示されているとされた引用文献1には、確かに、本願発明における「前記把握手段によって把握された複数の球通過結果を利用して遊技機の正常動作の範囲内で起こりうる所定の比率を演算処理可能な演算手段(構成D)」や、「前記演算手段は、通常状態よりも遊技者にとって有利となる特定状態における前記球通過結果が前記所定の比率に含まれないように前記演算処理を実行可能である(構成E)」といった上記第1の特徴的構成に関する記載が開示されているものの、当該引用文献1には、本願発明における第2の特徴的構成については何ら記載もされておらず、その示唆もされておりません。
それだけでなく、引用文献1には、例えば、段落0005欄に『遊技における入賞率に応じた特定演出を行うように構成されたものがある。』と記載され、段落0008欄に『遊技者の意思に従って特定演出を実行することを可能とし』と記載され、更に、段落0314欄に『低ベース状態における入賞率を報知することによって、遊技者が遊技機を選択する際に有益な情報を提供することができる。』と記載されているように、引用文献1に記載の発明は、演算した入賞率を『遊技者』に報知することを前提としており、本願発明の上記第2の特徴的構成とは真逆の発想であります。そうすると、仮に当業者であっても、引用文献1における「遊技者に対して報知する」という発明の前提や目的をないがしろにしてまで、本願発明を思い至るとは到底考えられません。
以上の次第でありますので、本願発明は引用文献1に記載された発明ではなく、更に当該引用文献1に記載された発明に基づいて容易に発明できたものでもありません。」

イ しかしながら、上記(2)エ及び上記(4)アで示したように、本願補正発明の「前記演算手段による演算結果は、遊技者が視認できないように出力される構成である」(特定事項F)は周知技術であり、該周知技術を引用発明に適用して本願補正発明の特定事項となすことは容易である。
また、引用例1には、入賞率に応じた特定演出を行うことが記載されており、当該記載より、演算した入賞率に対応した情報を遊技者に報知することを前提としているとも解されるが、遊技者に報知しているのが入賞率自体ではなく入賞率に応じた特定演出であるから、そのことをもって、ホールコンピュータに出力される情報の種類に影響を及ぼすものではないから、前記情報の種類として、算出された入賞率自体又は該入賞率に対応した情報等を含ませることを何ら阻害するものではなく、周知技術を引用発明に適用する際の阻害要因とはならない。
なお、本願補正発明において、「演算手段」は「所定の比率」を「演算処理」するものであることから(特定事項D)、特定事項Fにおける「前記演算手段による演算結果」とは、「所定の比率」を意味すると解されるが、引用例1では、入賞率に応じた特定演出を行うものの算出された入賞率自体は遊技者に表示していないことから、引用例1において入賞率に応じた特定演出を行う点が、本願補正発明の特定事項Fにおける「前記演算手段による演算結果は、遊技者が視認できないように出力される構成である」ことと矛盾するとも認められない。

してみると、上記主張は採用できない。

(7)進歩性のむすび
以上のとおり、本願補正発明は、当業者が、引用発明及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 小括
本件補正は、上記2(2)のとおり、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
また、本願補正発明は、上記3のとおり、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和3年6月25日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由は、概略、次のとおりである。
理由1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

理由2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由1(新規性)、理由2(進歩性)について
・請求項 1
・引用文献 1.特開2015−139628号公報

3 引用例
引用例1は、上記第2[理由]3 3−3(1)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明(上記第2[理由]1)は、本願補正発明(上記第2[理由]3 3−1)から、上記相違点に係る発明特定事項を削除したものである。
そして、本願発明と引用発明とを対比すると、相違点が存在しないから、本願発明は、引用例1に記載された発明である。

5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2021-12-22 
結審通知日 2022-01-05 
審決日 2022-01-18 
出願番号 P2015-236942
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (A63F)
P 1 8・ 113- WZ (A63F)
P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 瀬津 太朗
特許庁審判官 鉄 豊郎
鷲崎 亮
発明の名称 遊技機  
代理人 山田 強  
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