• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08J
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C08J
管理番号 1382709
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-08-27 
確定日 2022-03-29 
事件の表示 特願2017−511740「エンボス加工された無光沢および光沢プラスチックフィルムならびにその作製方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 3月 3日国際公開、WO2016/033152、平成29年10月 5日国内公表、特表2017−529431〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)8月26日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理 2014年8月29日 2014年11月18日 いずれもアメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和元年8月 5日付け:拒絶理由通知書
令和2年1月 9日 :意見書の提出
同年4月23日付け:拒絶査定
同年8月27日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和3年1月14日 :上申書の提出

第2 令和2年8月27日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年8月27日にされた手続補正を却下する。

[理由](補正の適否の判断)
1.本件補正の内容
令和2年8月27日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の独立請求項である請求項15について、以下の(1)の補正をすることを含むものである。
(1)本件補正後の特許請求の範囲の請求項15
本件補正により、特許請求の範囲の請求項15の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「エンボス加工熱可塑性ポリマーフィルムを作製する方法であって、
第1のエンボスロールと非エンボスカウンタロールとの間に約30gsm以下の坪量および少なくとも約15gの衝撃強度を有する熱可塑性ポリマーフィルムを前進させるステップであって、前記第1のエンボスロールが、前記熱可塑性ポリマーフィルム上に無光沢仕上げを与えるのに適した少なくとも1つのマイクロエンボスパターンと、第1のエンボス深さを有する少なくとも1つのエンボスパターンと、を備える、ステップと、
前記マイクロエンボスパターンおよび前記エンボスパターンを前記熱可塑性ポリマーフィルムに与えるのに十分な圧力を印加するステップと、
を含む、方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の請求項15
本件補正前の、願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項15の記載は次のとおりである。
「エンボス加工熱可塑性ポリマーフィルムを作製する方法であって、
第1のエンボスロールと非エンボスカウンタロールとの間に約30gsm以下の坪量を有する熱可塑性ポリマーフィルムを前進させるステップであって、前記第1のエンボスロールが、前記熱可塑性ポリマーフィルム上に無光沢仕上げを与えるのに適した少なくとも1つのマイクロエンボスパターンと、第1のエンボス深さを有する少なくとも1つのエンボスパターンと、を備える、ステップと、
前記マイクロエンボスパターンおよび前記エンボスパターンを前記熱可塑性ポリマーフィルムに与えるのに十分な圧力を印加するステップと、
を含む、方法。」

2.補正の適否
(1)新規事項の追加
本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、これらを「当初明細書等」という。)には、エンボス加工を施された後の熱可塑性ポリマーフィルムの衝撃強度について記載されているのみであり、本件補正により追加された「第1のエンボスロールと非エンボスカウンタロールとの間に・・・少なくとも約15gの衝撃強度を有する熱可塑性ポリマーフィルムを前進させる」点、即ちエンボス加工が施される前の熱可塑性フィルムが少なくとも約15gの衝撃強度を有する点は、当初明細書等には記載されていない。
そして、上記補正により追加された点は、エンボス加工されることによりフィルムの衝撃強度がどのように変化するかは不明であることからすると、当初明細書等から自明な事項とはいえないから、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。したがって、本件補正は、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

(2)独立特許要件
仮に、上記請求項15の記載についての補正が新規事項の追加に当たらないものとすると、当該補正は、補正前の請求項15に係る発明を特定するために必要な事項である「約30gsm以下の坪量を有する熱可塑性ポリマーフィルム」について、「少なくとも約15gの衝撃強度を有する」という限定を付加するものであって、補正前の請求項15に記載された発明と補正後の請求項15に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、当該補正後の請求項15に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

ア 本件補正発明
本件補正発明は、上記1.(1)に記載したとおりのものである。

イ 引用文献の記載事項
(ア)引用文献1
a 原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先権主張の日(以下、「優先日」という。)前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特表平06−509132号公報(平成6年10月13日公表。以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
「熱可塑性フィルム11は一般にポリエチレンのようなポリオレフィンである。」(第3頁右上欄第12〜14行)
「フィルム11は間隔をおいて離れた対向する加熱器14と15との間を下方向に通過する。加熱器14および15はフィルム11をその軟化点以上に上昇させる。次にエンボス加工用金属ロール18とゴムまたはゴム様物質のような弾性材料の外層でカバーされた支持ロール19とにより形成されたニップ17中に、加熱軟化されたフィルム11を通過させる。本態様においてフィルム11がロール18とロール19との間を通過されるにつれて、エンボスマクロパターンおよびエンボスミクロパターンが付与されて本発明による深いエンボス加工された熱可塑性フィルム20を生成する。」(第3頁右上欄第16行〜左下欄第1行)
「おむつライナーを包含する多くの応用分野のために、1ミルがエンボス加工されていないフィルム10の好ましい厚さである。」(第3頁左下欄第12〜14行)
「図3の態様において、第1の多数のランダムミクロくぼみ24がマクロセル21およびランド22の領域に設けられている。本態様において、図1に関してマクロセル21はエンボス加工用金属ロール18上のめすパターンにより提供される。第1の多数のミクロパターン24はエンボス加工用金属ロール18の表面上に粗いサンドブラスト(sandblast)パターンを置くことにより提供される。」(第3頁左下欄第23〜右下欄第5行)
「図4に示されるように、深さ”D”は2.5ミル〜15ミルが好ましい。図3および図4に示されるフィルム20の深さ”D”は4ミルである。」(第3頁右下欄第10〜12行)
「本態様において第2の多数のミクロくぼみ26はランダムに置かれそしてエンボス加工用金属ロール18上に置かれた微細なサンドブラストパターンにより形成される。第2の多数のミクロくぼみ26は光沢をなくしそして審美的に心地よい外観を有する深いエンボス加工されたフィルムを形成する助けとなることが分かった。好ましくは、第2の多数のミクロくぼみ26はロール18上に85ミクロインチRAより小さいそして好ましくは50ミクロインチRAより小さいパーソメーター測定値を有する微細なサンドブラストパターンを置くことにより形成される。」(第4頁左上欄第4〜14行)
「上に記載したように、フィルム20は3種のすべてのパターンがエンボス加工用金属ロール18上に置かれている一段階方法により造られる。」(第4頁左上欄第20〜23行)
「フィルム20および30および本発明に従う他の態様はおむつバックシート、パンティライナーおよび衛生ナプキンに特に使用されることができる。」(第4頁右下欄第25行〜第5頁左上欄第3行)



」(図1)


」(図3)


」(図4)

b 引用文献1に記載される「深さ”D”」がマクロセル21の深さを指すことは、上記摘記事項および図3−4から明らかである。

c 引用文献1には、エンボス加工用金属ロール18からフィルム11に印加される圧力について記載されていないが、ロール通過後のフィルム20にミクロくぼみ26及びマクロセル21が形成されていることから、微細なサンドブラストパターンとめすパターンをポリエチレンフィルム11に与えるのに十分な圧力が加えられていることは明らかである。

d 上記a〜cから、引用文献1には、次の発明(以下、「引用方法発明」という。)が記載されていると認められる。
「おむつライナーに用いられるエンボス加工されたポリエチレンフィルム20を作製する方法であって、
エンボス加工用金属ロール18と弾性材料の外層でカバーされた支持ロール19との間に1ミルのポリエチレンフィルム11を通過させるステップであって、前記エンボス加工用金属ロール18が、微細なサンドブラストパターンと、めすパターンとを備えるステップと、
前記微細なサンドブラストパターンと前記めすパターンを前記ポリエチレンフィルム11に与えるのに十分な圧力を印加するステップと、
を含む方法。」

(イ)技術常識を示す文献
本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開昭57−205438号公報には、次の記載がある。
「本発明は、紙おむつ、生理用ナプキンなどの体液処理用品に用いられる防水フィルムに関するものである。」(第1頁左下欄第16〜18行)
「また幼児用の紙おむつに使用する場合などは、尻もちをついたときに破れないようにするため、必要な強度を保持していることが要求される。」(第1頁右下欄第10〜13行)
「体液処理用品用の防水フィルムとして使用するにはフィルムの膜厚は8〜30μ程度とするのが適当である。」(第2頁右下欄第4〜6行)

ウ 引用方法発明との対比
本件補正発明と引用方法発明を対比する。
(ア)ポリエチレンは熱可塑性ポリマーの一種であるから、引用方法発明の「エンボス加工されたポリエチレンフィルム20」は本件補正発明の「エンボス加工熱可塑性ポリマーフィルム」に相当する。
(イ)引用方法発明の「エンボス加工用金属ロール18」と「弾性材料の外層でカバーされた支持ロール19」は、それぞれ、本件補正発明の「第1のエンボスロール」と「非エンボスカウンタロール」に相当する。
(ウ)引用文献1に記載されている「エンボス加工用金属ロール18と・・・支持ロール19とにより形成されたニップ17中に、加熱軟化されたフィルム11を通過させる」ために、ポリエチレンフィルム11が前進させられていることは明らかであるから、引用方法発明の「ポリエチレンフィルム11を通過させるステップ」は、本件補正発明の「熱可塑性ポリマーフィルムを前進させるステップ」に相当する。
(エ)「ミクロくぼみ26」はポリエチレンフィルムの光沢をなくすから、引用方法発明の「微細なサンドブラストパターン」は、本件補正発明の「熱可塑性ポリマーフィルム上に無光沢仕上げを与えるのに適したマイクロエンボスパターン」に相当する。
(オ)「マクロセル21」に「4ミルの深さ」を形成するため、めすパターンが所定のエンボス深さを有していることは明らかであるから、引用方法発明の「4ミルの深さを有するマクロセル21を形成するめすパターン」は、本件補正発明の「第1のエンボス深さを有する少なくとも1つのエンボスパターン」に相当する。

以上のことから、本件補正発明と引用方法発明との一致点および相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「エンボス加工熱可塑性ポリマーフィルムを作製する方法であって、
第1のエンボスロールと非エンボスカウンタロールとの間に熱可塑性ポリマーフィルムを前進させるステップであって、前記第1のエンボスロールが、前記熱可塑性ポリマーフィルム上に無光沢仕上げを与えるのに適した少なくとも1つのマイクロエンボスパターンと、第1のエンボス深さを有する少なくとも1つのエンボスパターンと、を備える、ステップと、
前記マイクロエンボスパターンおよび前記エンボスパターンを前記熱可塑性ポリマーフィルムに与えるのに十分な圧力を印加するステップと、
を含む、方法。」

【相違点1】
エンボス加工前の「熱可塑性ポリマーフィルム」について、本件補正発明は「約30gsm以下の坪量」を有するのに対して、引用方法発明は当該構成について特定されていない点。
【相違点2】
エンボス加工前の「熱可塑性ポリマーフィルム」について、本件補正発明は「少なくとも約15gの衝撃強度」を有するのに対して、引用方法発明は当該構成について特定されていない点。

エ 判断
以下、相違点について検討する。
(ア)相違点1について
引用方法発明においては、熱可塑性ポリマーフィルムとして厚さ1ミルのポリエチレンフィルムが用いられている。ここで、1ミルとは1000分の1インチ、すなわち、25.4μmである。
引用文献1には使用するポリエチレンフィルムの坪量について記載されていないものの、『化学大事典8(縮刷版第34刷、共立出版株式会社、1993年6月1日発行)』を参照するに、ポリエチレンの密度は、製法によって分布は見られるものの、通常0.92〜0.96程度であって、引用方法発明のポリエチレンフィルムの坪量は高々24.4gsm程度(25.4×0.96)であり、本件補正発明の数値範囲に包含されるから、相違点1は実質的な相違点でない。
また、仮に相違点1が実質的な相違であったとしても、エンボス加工後のフィルムが適切な厚みとなるように、適切な厚みを有する加工前フィルムを選択することは当業者が容易に想到し得たことであり、ポリエチレンという特定材質のフィルムにおいて厚みを選択することは、坪量を選択することと同義である。そして、本願補正発明のような「約30gsm」という上限値に格別の臨界的意義は認められないから、相違点1は当業者が適宜決定すべき設計事項にすぎない。

(イ)相違点2について
引用文献1には使用するポリエチレンフィルムの衝撃強度について記載されていないものの、上記イ(イ)にも見られるように、おむつに用いられるフィルムには、薄さと適切な強度の両立が求められることは当業者にとって技術常識である。してみると、引用方法発明もおむつ用のフィルムを作製する方法であって、ポリエステルフィルム11として少なくとも約15gの衝撃強度を有している蓋然性が極めて高いから、相違点2は実質的な相違点でない。
また、仮に引用方法発明のポリエチレンフィルムが約15gの衝撃強度を有していなかったとしても、上記技術常識に照らして、エンボス加工後のフィルムが適切な強度を保持できるように、適切な強度を有する加工前フィルムを選択することは当業者が容易に想到し得たことであり、本件補正発明のような「約15g」という下限値にも格別の臨界的意義は認められないから、相違点2は当業者が適宜決定すべき設計事項にすぎない。

(ウ)そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用方法発明の奏する作用効果および技術常識から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(エ)したがって、本件補正発明は、引用方法発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、あるいは、引用方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび(補正の却下の決定のむすび)
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるか、または、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものを含むものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
令和2年8月27日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし15に係る発明は、本願の願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項15に係る発明(以下「本願発明15」という。)は、その請求項15に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1.(2)に記載のとおりのものであると認められる。また、その請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、次のとおりであって、却下された令和2年8月27日にされた手続補正では補正されていなかった。
「【請求項1】
約30gsm以下の坪量および少なくとも約15gの衝撃強度を有する、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含む熱可塑性ポリマーフィルムにおいて、
前記熱可塑性ポリマーフィルムの少なくとも一部が、マイクロエンボスパターンでマイクロエンボス加工されており、かつ前記熱可塑性ポリマーフィルムの少なくとも一部が、マイクロエンボス深さよりも大きい第1のエンボス深さを有する第1のエンボスパターンでエンボス加工されていることをさらに特徴とする、熱可塑性ポリマーフィルム。」

2.原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1−9、12、13、15に係る発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、あるいは、引用文献1に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。

3.引用文献
(1)引用方法発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1およびその記載事項は、前記第2[理由]2.(2)イに記載したとおりである。

(2)引用フィルム発明
また、引用文献1には、引用方法発明によって作製されるフィルムとして次の発明(以下、「引用フィルム発明」という。)が記載されていると認められる。
「おむつライナー等に用いられるエンボス加工されたポリエチレンフィルムであって、前記ポリエチレンフィルムの少なくとも一部が、50ミクロインチRAより小さい微細なサンドブラストパターンでエンボス加工されており、かつ、前記ポリエチレンフィルムの少なくとも一部が、4ミルの深さを有するマクロセル21を形成するめすパターンでエンボス加工されているポリエチレンフィルム。」

4.対比・判断
(1)本願発明15について
本願発明15は、前記第2[理由]2.(2)で検討した本件補正発明から、「少なくとも約15gの衝撃強度」に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明15の発明特定事項と全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2[理由]2.(2)ウ、エに記載したとおり、引用方法発明であるか、あるいは、引用方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明15も、引用方法発明であるか、あるいは、引用方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用フィルム発明を対比する。
前記第2[理由]2.(2)ウに記載した相当関係、および、引用文献1に記載された「めすパターン」に形成された所定の深さが微細なサンドブラストパターンの深さよりも明らかに大きいことを考慮すれば、本願発明1と引用フィルム発明との一致点および相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含む熱可塑性ポリマーフィルムにおいて、
前記熱可塑性ポリマーフィルムの少なくとも一部が、マイクロエンボスパターンでマイクロエンボス加工されており、かつ前記熱可塑性ポリマーフィルムの少なくとも一部が、マイクロエンボス深さよりも大きい第1のエンボス深さを有する第1のエンボスパターンでエンボス加工されている、熱可塑性ポリマーフィルム。」
【相違点1−1】
「熱可塑性ポリマーフィルム」について、本願発明1は「約30gsm以下の坪量」を有するのに対して、引用フィルム発明は当該構成について特定されていない点。
【相違点1−2】
「熱可塑性ポリマーフィルム」について、本願発明1は「少なくとも約15gの衝撃強度」を有するのに対して、引用フィルム発明は当該構成について特定されていない点。

イ 判断
以下、相違点について検討する。
(ア)相違点1−1について
引用文献1には、エンボス加工前の熱可塑性ポリマーフィルムとして厚さ1ミル(25.4μm)のポリエチレンフィルムが用いられているものの、エンボス加工後のフィルム厚または坪量については記載されていない。
しかしながら、エンボス加工によってフィルムの密度や厚さが一定程度の影響を受けるとしても、これらの積である坪量については大きな影響を受けず概ね保持されるものと考えられる。してみると、前記第2[理由]2.(2)エにも記載したとおり、引用方法発明のエンボス加工前ポリエチレンフィルムの坪量は高々24.4gsm程度であるところ、エンボス加工された引用フィルム発明の坪量も、本願発明1の数値範囲に包含される蓋然性が極めて高いから、相違点1−1は実質的な相違点でない。
また、仮に引用フィルム発明のポリエチレンフィルムが約30gsm以下の坪量を有していなかったとしても、上記第2 2(2)イ(イ)に記載の技術常識に照らして、通常利用されている厚みを有するフィルムを選択することは当業者が容易に想到し得たことであり、本件発明1のような「約30gsm」という上限値にも格別の臨界的意義は認められないから、相違点1−1は当業者が適宜決定すべき設計事項にすぎない。

(イ)相違点1−2について
引用文献1にはポリエチレンフィルムの衝撃強度について記載されていないものの、前記第2[理由]2.(2)イ(イ)にも見られるように、おむつに用いられるフィルムには、薄さと適切な強度の両立が求められることは当業者にとって技術常識であることに鑑みれば、引用フィルム発明もおむつ用のフィルムであることから、少なくとも約15gの衝撃強度を有している蓋然性が極めて高いから相違点1−2は実質的な相違点でない。
また、仮に引用フィルム発明が約15gの衝撃強度を有していなかったとしても、上記第2 2(2)イ(イ)の技術常識に照らして、適切な強度を付与することは当業者が容易に想到し得たことであり、本願発明1のような「約15g」という下限値にも格別の臨界的意義は認められないから、相違点1−2は当業者が適宜決定すべき設計事項にすぎない。

(ウ)そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明1の奏する作用効果は、引用フィルム発明の奏する作用効果および技術常識から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(エ)したがって、本願発明1は、引用フィルム発明であるか、あるいは、引用フィルム発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび(結論)
上記のとおりであるから、本願発明1および本願発明15は、特許法第29条第1項第3号に該当し、あるいは同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。


 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 大島 祥吾
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2021-10-22 
結審通知日 2021-10-25 
審決日 2021-11-10 
出願番号 P2017-511740
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C08J)
P 1 8・ 121- Z (C08J)
P 1 8・ 113- Z (C08J)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 大島 祥吾
特許庁審判官 加藤 友也
奥田 雄介
発明の名称 エンボス加工された無光沢および光沢プラスチックフィルムならびにその作製方法  
代理人 実広 信哉  
代理人 村山 靖彦  
代理人 阿部 達彦  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ