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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 A63F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63F
管理番号 1382795
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-11-26 
確定日 2022-03-15 
事件の表示 特願2015−151355号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 2月 9日出願公開、特開2017− 29322号、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年7月30日の出願であって、平成30年12月19日付けで拒絶の理由が通知され、平成31年2月19日に意見書及び手続補正書が提出され、令和1年7月12日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年8月28日に意見書及び手続補正書が提出され、令和2年1月28日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年3月23日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年8月28日付け(送達日:同年9月8日)で、同年3月23日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、それに対して、同年11月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出され、これに対し、当審において、令和3年10月27日付けで拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年12月17日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願発明は、令和3年12月17日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「A 所定条件の成立に応じて乱数値を取得する取得手段と、
B 前記取得手段により取得された乱数値を記憶する記憶手段と、
C 前記取得された乱数値に基づいて、複数の当選種別のうち、いずれかの当選種別を判定する当選種別判定手段と、
D 第1表示制御情報を格納する格納手段と、
E 前記格納手段に格納されている第1表示制御情報のうち、前記当選種別判定手段により判定された当選種別に対応する第1表示制御情報と、前記取得された乱数値と、に基づいて、第2表示制御情報を生成し、生成した第2表示制御情報に基づいて、表示手段の表示を制御する表示制御手段と、を備え、
F 第2表示制御情報のデータ量は、第1表示制御情報のデータ量以下であり、
G 前記表示制御手段は、前記複数の当選種別のうち少なくとも一の当選種別について、互いに異なる複数の第2表示制御情報を生成することが可能である
H ことを特徴とする遊技機。」
(なお、記号A〜Hは、分説するために当審判合議体が付した。)

第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
原査定の理由の概要は次のとおりである。
請求項1には、「第1表示制御情報を格納する格納手段と、前記格納手段に格納されている第1表示制御情報のうち、前記当選種別判定手段により判定された当選種別に対応する第1表示制御情報に基づいて、第2表示制御情報を生成し」と記載され、第2表示制御情報は第1表示制御情報のみに基づいて生成されると認められるところ、当該事項は、発明の詳細な説明に記載されておらず、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

2 原査定の理由についての判断
令和3年12月17日提出の手続補正書による補正により、第2表示制御情報は第1表示制御情報と乱数値に基づいて生成することが限定されたため、本願の請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものとなり、本願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものとなった。
したがって、原査定を維持することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

−−−−−以下、当審拒絶理由の概要−−−−−
1.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

2.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

3.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



●理由1(サポート要件)について
(2)「予め定められた一の値」との記載について
本願発明において「予め定められた一の値」という場合には、「乱数値データ」のみならず、例えば固定値のような「乱数値データ」とは異なるものも含まれる。
本願発明において、「第1表示制御情報と、予め定められた一の値と、に基づいて、第2表示制御情報を生成」するとされているところ、発明の詳細な説明には、「合成用表示データ」(本願発明の「第1表示制御情報」に対応)と「乱数値データ」から「出力用表示データ」(本願発明の「出力用表示データ」に対応)を生成することは記載されているが、「合成用表示データ」(本願発明の「第1表示制御情報」に対応)と「乱数値データ」とは異なる数値から「出力用表示データ」(本願発明の「出力用表示データ」に対応)を生成することは記載されていない。

(3)「第1表示制御情報と、予め定められた一の値と、に基づいて」との記載について
本願発明において、課題を解決するための手段に関連する構成は、構成Cの
「第1表示制御情報と、予め定められた一の値と、に基づいて、第2表示制御情報を生成し」
であるが、当該構成では、例えば、「第1表示制御情報」を構成する8ビットの2値データの全体と、「予め定められた一の値」を構成する8ビットの2値データの全体とを組み合わせて「第2表示制御情報を生成」するものを含んでおり、このように構成した場合には、生成される「第2表示制御情報」のデータ量が、「当選種別に対応する第1表示制御情報」のデータ量よりもさらに大きくなってしまう場合も想定され、本願発明の課題を解決することができないことから、本願発明は、上記課題を解決できないものを含んでいる。

●理由2(新規性)、理由3(進歩性)について
・請求項1
・引用文献1

<引用文献等一覧>
1.特開2013−154137号公報
−−−−−以上、当審拒絶理由の概要−−−−−

2 当審拒絶理由の理由1(サポート要件)について
令和3年12月17日提出の手続補正書による補正により、本願発明において、第2表示制御情報は第1表示制御情報と乱数値に基づいて生成すること、第2表示制御情報のデータ量は、第1表示制御情報のデータ量以下であることが限定された結果、この拒絶の理由は解消した。

3 当審拒絶理由の理由2(新規性)及び理由3(進歩性)について
(1)本願発明
本願発明は、「第2 本願発明」に記載したとおりのものである。

(2)引用文献、引用発明等
ア 引用文献1に記載された事項
当審拒絶理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在のパチンコ遊技機は、大当り遊技の内容(大入賞口の開放時間及び開放回数)と、大当り遊技終了後の遊技状態との組合せが多様化の傾向にあり、それにより大当り図柄の種類も多くなり、今後その傾向(大当り図柄の増加)はますます大きくなることが考えられる。そうなると、図柄表示指定データのデータ容量も増加し、主制御装置の負担が増えることが懸念される。
【0006】
図柄表示指定用のデータ容量が増加することに対する解決策の1つとして、大当り図柄の決定に用いる図柄決定用乱数の値をそのまま2進数に置き換えて特別図柄表示装置のポートへ出力する構成が考えられる。この構成ならば、図柄決定用乱数に対応する図柄表示指定データを主制御装置に備えておく必要が無く、大当り図柄の種類が増えても容量の問題は発生しない。
【0007】
しかしながら、単純に乱数値を2進数に変換しただけでは、大当り図柄の表示態様と乱数値との関係が容易に判別でき、特別図柄を見ただけで大当り遊技の内容(種類)や大当り遊技終了後の遊技状態(確変or通常)等が判明してしまう虞があり、サブ制御装置が主制御装置からの信号に応じて制御する演出図柄でどのような演出を行っても意味の無いものになってしまう。
【0008】
そこで本発明は上記した事情に鑑み、図柄決定用乱数の値をそのまま特別図柄の表示指示用のデータに変換しても、表示された特別図柄の種類と図柄決定用乱数との関係を判別し難くすることが可能な遊技機を提供することを目的とする。」

「【0022】
図1は、本実施例のパチンコ機の遊技盤8の正面図である。なお、このパチンコ機の全体的な構成は公知技術に従っているので図示及び説明は省略する。遊技盤8には公知のガイドレール25a、25bによって囲まれた略円形の遊技領域26が設けられ、多数の遊技釘27が植設されている。遊技領域26の略中央には、窓部28aを有する液晶枠飾り28が設けられており、演出図柄表示装置54b(図2参照)のLCD画面が遊技者から視認可能に構成され、図示しない公知のワープ入口、ワープ通路、ステージ等も設けられている。」

「【0050】
変動パターン決定用乱数の更新処理(S50)は、「0」〜「1020」の1021個の整数を繰り返し作成するカウンタとして構成され、本処理毎で+1され最大値を超えると初期値である「0」に戻る。尚、大当り判定用乱数、大当り図柄決定用乱数、リーチ判定用乱数、変動パターン決定用乱数は第1特別図柄始動口31又は第2特別図柄始動口32に遊技球が入球することで抽出され、当り判定用乱数は普通図柄作動ゲート42を遊技球が通過することで抽出される。」

「【0056】
次に、図4を用いて主制御措置50が実行する始動入賞処理を説明する。この処理は、本発明の図柄乱数抽出手段を含む処理となる。始動入賞処理を開始すると、第1特図始動スイッチ31a又は第2特図始動スイッチ32aが遊技球を検出したか否か判定する(S100)。肯定判定なら(S100:yes)、主制御装置50に既に格納されている保留記憶数が最大値(本発明では4個)未満であるか否か判定する(S105)。肯定判定なら(S105:yes)、大当り判定
用乱数、大当り図柄決定用乱数、リーチ決定用乱数、変動パターン決定用乱数を抽出し(本発明の図柄乱数抽出手段に該当)保留記憶し保留記憶数を示す保留記憶カウンタに1を加算する(S110)。」

「【0061】
次に、図5を用いて、主制御装置50が実行する特図当否判定処理を説明する。当否判定処理を開始すると、特図の始動条件が成立しているか否か判定する(S150)。この判定処理では、大当り遊技中でないこと、特別図柄が変動中又は確定表示中でないことを確認する。
【0062】
S150が否定判定なら(S150:no)リターンし、肯定判定なら(S150:yes)特図の保留記憶があるか否か判定する(S155)。否定判定なら(S155:no)リターンし、肯定判定なら(S155:yes)、保留記憶のシフト処理を行い、これにより最も古い保留記憶を当否判定の対象とするとともに、対象となった保留記憶数を示す保留記憶カウンタから1を減算し(S160)、該減算した保留記憶カウンタの値を示す保留数指示コマンドをサブ統合制御装置53に送信する(S165)。
【0063】
続く、大当り判定用乱数比較処理では、特図当否判定の対象とした保留記憶の大当り判定用乱数と、予め設定された特図当否判定テーブル(大当り判定用及び小当り判定用)とを比較して、大当り判定用乱数の値が特図当否判定テーブル内の判定値と一致するか比較する(S170)。
【0064】
続いてS170の比較結果が大当りか否かを判定し(S175)、肯定判定なら(S175:yes)、読み出した大当り図柄決定用乱数の値に応じて、後述する内容(図6、7を用いて詳細説明)で大当り図柄表示データの基となる合算値を算出し、大当り図柄データとして図柄確定時まで記憶する(S180)(本発明の合計値算出手段に該当)。
【0065】
S180に続いては、大当り図柄決定用乱数の値に基づいて決定する大当り遊技終了後の遊技状態をモードバッファに記憶する。モードバッファは、当否判定時に決定した大当り遊技終了後の遊技状態(確変又は非確変)を、大当り遊技が終了するまで(大当り遊技終了時に遊技状態を設定するまで)記憶する装置であり、設定するモードバッファの値により大当り遊技終了時に設定される遊技状態が異なる内容になる。
【0066】
S175が否定判定なら(S175:no)、S170の比較結果が小当りか否かを判定し(S200)、肯定判定なら(S200:yes)、読み出した小当り図柄決定用乱数の値に基づいて小当り図柄を選択し図柄確定時まで記憶する(S210)。
【0067】
S185又はS210に続いては、大当り遊技、又は小当り遊技の大入賞口33aの開放パターンを設定し(S215)、上記した内容に応じて変動パターン選択テーブルから変動パターンを選択する(S225)。S200が否定判定なら(S200:no)、ハズレ図柄選択処理を行い(S220)、上記と同様に変動パターン選択処理を行う(S225)。S225の変動パターン選択処理に続いては、上述の抽選結果を示すデータ(大当り図柄の種類、小当り図柄の種類、ハズレの種類(リーチの有無)、変動時間等)を含んだ変動指示コマンドをサブ統合制御装置53に出力するとともに、特図表示装置29において特別図柄を変動表示させる処理を行い(S230)、リターンする。
【0068】
次に図6を用いて、大当り図柄決定用乱数(本発明の図柄乱数に該当)の内容について説明する。上記したように大当り図柄決定用乱数は「0」〜「99」の100個の整数(本発明の「予め定められた連続した値の数値群」に該当)で構成され、初期値(本発明の初期値に該当)が「0」、最大値が「99」となっている。また、大当りに当選した場合に抽出していた大当り図柄決定用乱数が「10〜29」「40〜59」「70〜89」の60個の中のいずれかであった場合は、大当り遊技終了後に確率変動状態に移行する構成となっている。」

「【0070】
図7は、上記した予め定められた演算内容、詳しくは、乱数値毎に設定された加算値と、各乱数値と加算値の合算値と、合算値を2進数に変換した図柄表示指示データとの関係を示している。
【0071】
本実施例でも、抽出した乱数値に所定の加算値を合算し、該合算値を2進数に変換したものを図柄表示指示データとしているため、抽出した各乱数値に対応した専用の図柄データを記憶する必要は無が、抽出した乱数値と特別図柄の表示態様との関係が判別し難くなるように単純に加算値の種類を増やした場合、加算値自体の記憶が記憶容量に負担をかけてしまう。
【0072】
従って、本実施例では、加算値の種類を必要以上に多くする必要がないように、大当り図柄決定用乱数全体の配列を公差が同一の複数種類の等差数列として記憶し、初項の異なる等差数列ごとに異なる加算値を対応させることによって加算値の種類を4種類としている。但し、加算値の数(等差数列の数)はこれに限るわけではない。」

「【図6】



「【0081】
次に図8、9を用いて、図柄表示指示データ(大当り図柄決定用乱数の値と対応する加算値との合算値を2進数に変換したデータ)の内容と、該データに応じて実際に特別図柄表示装置29に表示される大当り図柄の表示(点灯)態様について説明する。
【0082】
本実施例の特図表示装置29は、8個のLEDが図に示す点灯位置に配置され、8ビットで構成された図柄表示指示データの各ビットの値が、対応した点灯位置に配置されたLEDの点灯及び消灯を指示する。」

「【0084】
従って、例えば、図9の(点灯態様例1)に示すように、大当り図柄決定用乱数として0を抽出した場合は、合算値11(加算値11との合算値)が2進数に変換されて図柄表示指示データは00001011となり、特別図柄表示装置29はこの図柄表示指示データを受けて、点灯位置が0、1、3のLEDを点灯させる(点灯位置2、4、5、6、7のLED消灯)。
【0085】
また、(点灯態様例2)に示すように、大当り図柄決定用乱数として確変値である21を抽出した場合は、合算値44(加算値23との合算値)が2進数に変換されて図柄表示指示データは00101100となり、特別図柄表示装置29はこの図柄表示指示データを受けて、点灯位置が2、3、5のLEDを点灯させる。
【0086】
また、(点灯態様例3)に示すように、大当り図柄決定用乱数として確変値である42を抽出した場合は、合算値77(加算値35との合算値)が2進数に変換されて図柄表示指示データは01001101となり、特別図柄表示装置29はこの図柄表示指示データを受けて、点灯位置が0、2、3、6のLEDを点灯させる。
【0087】
また、(点灯態様例4)に示すように、大当り図柄決定用乱数として91を抽出した場合は、合算値142(加算値51との合算値)が2進数に変換されて図柄表示指示データは10001110となり、特別図柄表示装置29はこの図柄表示指示データを受けて、点灯位置が1、2、3、7LEDを点灯させる。」

「【図7】



イ 認定事項
(ア)認定事項1
引用文献1の【0068】の「大当りに当選した場合に抽出していた大当り図柄決定用乱数が「10〜29」「40〜59」「70〜89」の60個の中のいずれかであった場合は、大当り遊技終了後に確率変動状態に移行する構成となっている」との記載、及び図6において、「大当り図柄決定用乱数値」が「10〜29」「40〜59」「70〜89」については、「確率変動値」に「○」が記入されているのに対して、「大当り図柄決定用乱数値」が「0〜9」「30〜39」「60〜69」「90〜99」には、「確率変動値」に「○」が記入されていないことから、大当り図柄決定用乱数が「0〜9」「30〜39」「60〜69」「90〜99」の40個の中のいずれかであった場合は、大当り遊技終了後に確率変動状態に移行しないものと認められる(以下、「認定事項1」という。)。

(イ)認定事項2
図7及び【0070】から、加算値は、11、23、35、51の4つの値のいずれかであり、合算値は、11〜159の計100個の整数値であり、合算値を2進数に変換した図柄表示指示データすなわち出力値は、8桁の2進数であると認められる(以下、「認定事項2」という。)。

ウ 引用発明
上記「1 引用文献1の記載」及び「2 認定事項」によれば、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(当審にて、本願発明の分説A〜Hに対応させて、記号aからhを付した。)。

「abc 主制御装置50は、第1特別図柄始動口31又は第2特別図柄始動口32に遊技球が入球することで抽出される大当り図柄決定用乱数の値に基づいて、大当り遊技終了後の遊技状態(確変又は非確変)を決定し(【0050】、【0061】、【0065】)、大当り図柄決定用乱数を抽出し保留記憶し(【0056】)、
d 大当り図柄決定用乱数全体の配列を公差が同一の複数種類の等差数列として記憶し、初項の異なる等差数列ごとに異なる加算値を対応させることによって加算値の種類を4種類とし(【0072】)、
e1 大当り図柄決定用乱数は「0」〜「99」の100個の整数で構成され、大当りに当選した場合に抽出していた大当り図柄決定用乱数が「10〜29」「40〜59」「70〜89」の60個の中のいずれかであった場合は、大当り遊技終了後に確率変動状態に移行し(【0068】、図6)、大当り図柄決定用乱数が「0〜9」「30〜39」「60〜69」「90〜99」の40個の中のいずれかであった場合は、大当り遊技終了後に確率変動状態に移行せず(認定事項1)、
e2 主制御装置50は、大当り図柄決定用乱数の値に応じて、大当り図柄表示データの基となる合算値を算出し、大当り図柄データとして図柄確定時まで記憶し、特図表示装置29において特別図柄を変動表示させる処理を行い(【0061】、【0064】、【0067】)、大当り図柄決定用乱数の値と対応する加算値との合算値を2進数に変換したデータである図柄表示指示データの各ビットの値が、特図表示装置29の対応した点灯位置に配置されたLEDの点灯及び消灯を指示し(【0081】、【0082】)、
f 加算値は、11、23、35、51の4つの値のいずれかであり、合算値は、11〜159の計100個の整数値であり、合算値を2進数に変換した図柄表示指示データすなわち出力値は、8桁の2進数であり(認定事項2)、
g 大当り図柄決定用乱数として0を抽出した場合は、合算値11(加算値11との合算値)が2進数に変換されて図柄表示指示データは00001011となり、特別図柄表示装置29はこの図柄表示指示データを受けて、点灯位置が0、1、3のLEDを点灯させ(【0084】)、大当り図柄決定用乱数として確変値である21を抽出した場合は、合算値44(加算値23との合算値)が2進数に変換されて図柄表示指示データは00101100となり、特別図柄表示装置29はこの図柄表示指示データを受けて、点灯位置が2、3、5のLEDを点灯させ(【0085】)、大当り図柄決定用乱数として確変値である42を抽出した場合は、合算値77(加算値35との合算値)が2進数に変換されて図柄表示指示データは01001101となり、特別図柄表示装置29はこの図柄表示指示データを受けて、点灯位置が0、2、3、6のLEDを点灯させ(【0086】)、大当り図柄決定用乱数として91を抽出した場合は、合算値142(加算値51との合算値)が2進数に変換されて図柄表示指示データは10001110となり、特別図柄表示装置29はこの図柄表示指示データを受けて、点灯位置が1、2、3、7のLEDを点灯させる(【0087】)
h パチンコ機。(【0022】)」

(3)対比
ア 構成A〜Cについて
引用発明の
「第1特別図柄始動口31又は第2特別図柄始動口32に遊技球が入球すること」及び
「第1特別図柄始動口31又は第2特別図柄始動口32に遊技球が入球することで抽出される大当り図柄決定用乱数」は、
それぞれ本願発明の
「所定条件の成立」及び
「所定条件の成立に応じて」「取得する」「乱数値」、
に相当する。
引用発明において、「大当り遊技終了後の遊技状態」が「確変」又は「非確変」である「大当り」が存在することは明らかであり、このことは、本願発明において、「複数の当選種別」が存在することに相当する。
引用発明の
「第1特別図柄始動口31又は第2特別図柄始動口32に遊技球が入球することで抽出される大当り図柄決定用乱数の値に基づいて、大当り遊技終了後の遊技状態(確変又は非確変)を決定」し、「大当り図柄決定用乱数を抽出し保留記憶」する「主制御装置50」は、
本願発明の
「A 所定条件の成立に応じて乱数値を取得する取得手段と、
B 前記取得手段により取得された乱数値を記憶する記憶手段と、
C 前記取得された乱数値に基づいて、複数の当選種別のうち、いずれかの当選種別を判定する当選種別判定手段」
に相当する。
したがって、引用発明は、本願発明の構成A〜Cに相当する構成を備える。

イ 構成Dについて
引用発明の「加算値」は、本願発明の「第1表示制御情報」に相当する。
引用発明が「加算値」を記憶するための構成を備えていることは明らかであり、このことは、本願発明が「第1表示制御情報を格納する格納手段」を備えていることに相当する。
したがって、引用発明は、本願発明の構成Dに相当する構成を備える。

ウ 構成Eについて
引用発明の構成e2の
「大当り図柄決定用乱数の値と対応する加算値との合算値を2進数に変換したデータである図柄表示指示データ」及び
「図柄表示指示データの各ビットの値が」、「対応した点灯位置に配置されたLEDの点灯及び消灯を指示」する「特図表示装置29において特別図柄を変動表示させる処理を行」う「主制御装置50」は、
それぞれ本願発明の
「第1表示制御情報と、前記取得された乱数値と、に基づいて」「生成」した「第2表示制御情報」及び
「生成した第2表示制御情報に基づいて、表示手段の表示を制御する表示制御手段」
に相当する。
したがって、引用発明の構成e2は、本願発明の構成Eと
「第1表示制御情報と、前記取得された乱数値と、に基づいて、第2表示制御情報を生成し、生成した第2表示制御情報に基づいて、表示手段の表示を制御する表示制御手段と、を備え」る点で共通する。

エ 構成Gについて
引用発明の構成e2によれば、「主制御装置50」は、「大当り図柄決定用乱数の値に応じて、大当り図柄表示データの基となる合算値を算出し、大当り図柄データとして図柄確定時まで記憶し、特図表示装置29において特別図柄を変動表示させる処理を行」うことから、「大当り図柄決定用乱数の値と対応する加算値との合算値を2進数に変換したデータである図柄表示指示データ」を生成するものと認められ、このことは、本願発明の「前記表示制御手段」が「第2表示制御情報を生成することが可能である」ことに相当する。
引用発明の構成gによれば、大当り図柄決定用乱数として、0、21、42、91を抽出した場合、それぞれ図柄表示指示データは、00001011、00101100、01001101、10001110となる。
大当り図柄決定用乱数として、「21」、「42」を抽出した場合、引用発明の構成e1によれば、いずれも「大当り遊技終了後に確率変動状態に移行」するという同一の種別の大当り遊技が行われ、図柄表示指示データは、それぞれ「00101100」、「01001101」という互いに異なるデータが生成されることとなり、このことは、本願発明の「前記表示制御手段は、前記複数の当選種別のうち少なくとも一の当選種別について、互いに異なる複数の第2表示制御情報を生成することが可能である」ことに相当する。
同様に、大当り図柄決定用乱数として、「0」、「91」を抽出した場合、引用発明の構成e1によれば、いずれも「大当り遊技終了後に確率変動状態に移行」しないという同一の種別の大当り遊技が行われ、図柄表示指示データは、それぞれ「00001011」、「10001110」という互いに異なるデータが生成されることとなり、このことは、本願発明の「前記表示制御手段は、前記複数の当選種別のうち少なくとも一の当選種別について、互いに異なる複数の第2表示制御情報を生成することが可能である」ことに相当する。
したがって、引用発明は、本願発明の構成Gに相当する構成を有する。

オ 構成Hについて
引用発明の「パチンコ機」は、本願発明の「遊技機」に相当する。

カ 一致点及び相違点
ア〜オによれば、本願発明と引用発明は、下記一致点で一致し、下記相違点1及び相違点2で相違する。

(一致点)
「A 所定条件の成立に応じて乱数値を取得する取得手段と、
B 前記取得手段により取得された乱数値を記憶する記憶手段と、
C 前記取得された乱数値に基づいて、複数の当選種別のうち、いずれかの当選種別を判定する当選種別判定手段と、
D 第1表示制御情報を格納する格納手段と、
E’ 第1表示制御情報と、前記取得された乱数値と、に基づいて、第2表示制御情報を生成し、生成した第2表示制御情報に基づいて、表示手段の表示を制御する表示制御手段と、を備え、
G 前記表示制御手段は、前記複数の当選種別のうち少なくとも一の当選種別について、互いに異なる複数の第2表示制御情報を生成することが可能である
H 遊技機。」

(相違点1)[構成E]
「第2表示制御情報」(図柄表示指示データ)が基づいて生成される「第1表示制御情報」(加算値)が、本願発明では、「前記格納手段に格納されている第1表示制御情報のうち、前記当選種別判定手段により判定された当選種別に対応する」ものであるのに対して、引用発明では、当選種別に対応するものではない点。

(相違点2)[構成F]
本願発明では、「第2表示制御情報のデータ量は、第1表示制御情報のデータ量以下であ」るのに対して、引用発明では、図柄表示指示データ(第2表示制御情報)のデータ量(8桁の2進数)は、加算値(第1表示制御情報量)のデータ量(11、23、35、51の4つの値)以下ではない点。

(4)判断
相違点1について検討する。引用発明は「図柄決定用乱数の値をそのまま特別図柄の表示指示用のデータに変換しても、表示された特別図柄の種類と図柄決定用乱数との関係を判別し難くすることが可能な遊技機を提供する」(【0008】)ことを課題とするものであるところ、引用文献1には、「加算値」を当選種別に対応させる技術思想は記載も示唆もされていない。
仮に、引用発明において「大当り図柄決定用乱数全体の配列を公差が同一の複数種類の等差数列として記憶し、初項の異なる等差数列ごとに異なる」ものである「加算値」を、当選種別に対応するものに置き換えるとすると、当選種別ごとに図柄表示指示データが連続する値となって、表示された特別図柄の種類と図柄決定用乱数との関係を判別しやすくなり、上記課題を解決することができなくなると考えられることから、引用発明において、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者といえども容易に想到できたとはいえない。
したがって、本願発明は、引用発明ではなく、また、相違点2について検討するまでもなく、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2022-02-22 
出願番号 P2015-151355
審決分類 P 1 8・ 537- WY (A63F)
P 1 8・ 121- WY (A63F)
P 1 8・ 113- WY (A63F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 鉄 豊郎
特許庁審判官 北川 創
▲高▼橋 祐介
発明の名称 遊技機  
代理人 吉村 徳人  
代理人 吉村 公一  

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