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審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  E04F
審判 全部無効 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  E04F
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  E04F
審判 全部無効 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正  E04F
管理番号 1382847
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-04-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2020-04-06 
確定日 2022-01-05 
訂正明細書 true 
事件の表示 上記当事者間の特許第6031065号発明「内装用短尺コーナー材による施工方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第6031065号の明細書を、訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり、訂正後の請求項〔1−2〕について訂正することを認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 本件の経緯
1 手続の経緯
本件は、請求人が、被請求人が特許権者である特許第6031065号(以下、「本件特許」という。平成26年5月21日出願、平成28年10月28日登録、請求項の数は2。)の、特許請求の範囲の1及び2に係る発明の特許を無効とすることを求めるものであり、その手続の経緯は、以下のとおりである。

令和2年 4月 6日; 審判請求
令和2年 7月10日; 審判事件答弁書及び訂正請求書の提出
令和2年 7月20日付け; 書面審理通知(起案日)
令和2年 7月30日付け; 審尋(口頭審尋における審尋事項の通知)
令和2年 8月20日; 請求人より回答書の提出
令和2年 9月 3日; 被請求人より回答書の提出
令和2年 9月15日受付; 請求人より上申書の提出
令和2年 9月17日; テレビ会議システムを用いた口頭審尋
令和2年 9月25日付け; 補正許否の決定
令和2年10月 5日付け; 被請求人より上申書の提出
令和2年12月25日付け; 審理終結通知

2 補正許否の決定
令和2年9月25日付け補正許否の決定は、以下のとおりである。

「上記特許無効審判事件について、審判請求人が提出した令和2年9月14日付け(特許庁受付日:令和2年9月15日)上申書による請求の理由の補正については、特許法第131条の2第2項の規定に基づき、下記のとおり決定します。



1)上記上申書の第2頁第12行から第3頁第21行において新たに主張された特許法第29条に関する無効理由についての請求の補正は、特許法第131条の2第1項に規定される請求の理由の要旨を変更する補正であって、同法第134条の2第1項の訂正の請求により請求の理由を補正する必要が生じたものではなく、当該補正に係る請求の理由を審判請求時の請求書に記載しなかったことにつき合理的な理由があるものでもないから、許可しない。」


第2 訂正請求
1 訂正内容
本件無効審判事件の被請求人より令和2年7月10日に提出された訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)は、本件特許の明細書を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書のとおり、訂正後の請求項1及び2について訂正することを求めるものであって、次の訂正事項1を訂正内容とするもの(以下、「本件訂正」という。)である(下線は、訂正箇所を示す。)。

・訂正事項1
願書に添付した明細書の段落【0025】に記載された「接続」を「接合」に訂正する。

2 訂正の適否の判断
(1)訂正の目的
訂正事項1による訂正箇所を含む、段落【0025】中の一文、及び後続する一文は、訂正前後について見ると、次のとおりである。
(訂正前)
「このとき、第1、第2内装用短尺コーナー材21−1、21−2の端面を接続して切除は行わず、第2内装用短尺コーナー材21−2に対して第3内装用短尺コーナー材21−3のオーバーラップ部分Gを削除する。
さすれば、前記第2工程Bにおいて、メジャーを使用しなくとも、容易に施工することができ、作業効率を向上させることができる。」
(訂正後)
「このとき、第1、第2内装用短尺コーナー材21−1、21−2の端面を接合して切除は行わず、第2内装用短尺コーナー材21−2に対して第3内装用短尺コーナー材21−3のオーバーラップ部分Gを削除する。
さすれば、前記第2工程Bにおいて、メジャーを使用しなくとも、容易に施工することができ、作業効率を向上させることができる。」

上記の記載から明らかなように、訂正前後における明細書の段落【0025】の記載は、いずれも、内装用短尺コーナー材を用いて施工を行う段階に関する記載である。
そして、内装用短尺コーナー材を用いた施工に関し、本件訂正の前後において記載の変更がない、特許請求の範囲の請求項1には、「前記内装用短尺コーナー材の端部を突き合わせる際に、オーバーラップ部分を切除したカット面を対峙しないように反転させ、少なくとも前記内装用短尺コーナー材の端部のカット面を対峙させないように接合する第3工程」と記載されている。また、本件訂正の前後において記載の変更がない、明細書の段落【0022】には、「更に、前記第3工程Cにおいては、2本の前記第1、第2内装用短尺コーナー材1−1、1−2の長手方向側の端部1−1a、1−2a、1−1b、1−2bを突き合わせる際に、図1(a)及び(b)に示す如く、例えば上方の第2内装用短尺コーナー材1−2の下端部1−2bのオーバーラップ部分Gを切除して新たな端部1−2cに現出させたカット面11が、下方の第1内装用短尺コーナー材1−1の長手方向側の端部1−1aに対峙しないように反転させて接合する。」と記載されている。
上記特許請求の範囲の請求項1の記載、及び、明細書の段落【0022】の記載を踏まえると、訂正事項1は、内装用短尺コーナー材を用いた施工において、内装用短尺コーナー材の長手方向の端部を、カット面を対峙させないように突き合わせる際の記載として、訂正前の段落【0025】では、請求項1及び段落【0022】等と異なる「接続」という語が用いられていたのを、訂正後の段落【0025】では、請求項1及び段落【0022】等と同じ「接合」という語に訂正し、表記を統一したものと認めることができる。
そのため、訂正事項1は、訂正前の段落【0025】において、請求項1及び段落【0022】等と異なる表記を用いた誤記の訂正を目的としたものと認めることができ、また、当該表記の不統一による不明瞭な記載の釈明を目的としたものとも認めることができる。
したがって、訂正事項1は、特許法第134条の2第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正、及び、同項ただし書第3号に掲げる不明瞭な記載の釈明を目的としたものと、認める。

(2)新規事項の有無
上記(1)に判断したとおり、訂正事項1は、段落【0025】について、訂正前の特許請求の範囲の請求項1、及び段落【0022】に記載された事項との、用語の不統一を解消する、不明瞭な記載の釈明、及び誤記の訂正を目的としたものと認めることができる。
ここで、上記(1)で言及したとおり、訂正前の特許請求の範囲の請求項1、及び明細書の段落【0022】には、内装用短尺コーナー材の長手方向の端部を、カット面を対峙させないように突き合わせることに関して、「接合」という語が用いられていたから、訂正事項1による訂正後の段落【0025】に記載される「第1、第2内装用短尺コーナー材21−1、21−2の端面を接合して切除は行わず、第2内装用短尺コーナー材21−2に対して第3内装用短尺コーナー材21−3のオーバーラップ部分Gを削除する。」という事項は、不明瞭な記載の釈明を目的として、願書に添付された特許請求の範囲及び明細書に記載された事項を総合すれば導出できた事項である。
また、願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1、及び段落【0022】には、訂正前の特許請求の範囲の請求項1及び段落【0022】と同様の記載が存在するから、訂正事項1は、誤記の訂正を目的として検討しても、願書に最初に添付された特許請求の範囲及び明細書に記載された事項を総合すれば導出できた事項である。
したがって、訂正事項1は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

(3)特許請求の範囲の拡張又は変更の有無
本件訂正において、特許請求の範囲の請求項1及び2に記載の変更はない。また、訂正事項1により、段落【0025】の表記を請求項1と整合させたことによって、特許請求の範囲が拡張又は変更されるものでないことは、明らかである。
したがって、訂正事項1は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(4)請求人の主張について
本件訂正請求について、請求人は、令和2年8月20日提出の回答書において、次の旨を主張している(第4頁第1行−第7頁第10行)。
ア 明細書の段落【0012】に「接続」の語が用いられており、段落【0012】における「接続」の語は、プラスチック製材料により断面L字状に形成されている(段落【0011】参照)内装用短尺コーナー材の第1側面と第2側面とについて用いられていること、及び、この技術分野において、熱可塑性プラスチック製材料からなる断面L字状のコーナー材は、典型的には、押出成形により熱融着して一体化されることから、明細書における「接続」の語は、熱融着により一体化することを意味するものである。そのため、訂正前の明細書における段落【0025】に記載された「接続」も、短尺コーナー材の端面を、熱融着して一体化することを意味する、明瞭なものであった。明瞭なものであった訂正前の段落【0025】における「接続」という記載を、「接合」へと訂正する訂正事項1は、訂正前の段落【0025】における「接続」という記載が明瞭であったのであるから、不明瞭な記載の釈明を目的とするものではない。
イ 用語「接合」は、発明の詳細な説明に定義も具体例も存在せず、もともと明瞭ではない。段落【0025】において上記アのとおり明瞭であった「接続」の語を、不明瞭な記載である「接合」へと訂正する訂正事項1は、訂正後の「接合」という記載が不明瞭なものであるから、不明瞭な記載の釈明を目的とするものではない。
ウ 訂正事項1による、明細書の段落【0025】における「接続」の記載の、「接合」への訂正は、請求項1における「接合」の意味を変更し、請求項1の内容を変更する結果をもたらすから、訂正事項1は特許法第134条の2第1項各号に該当せず、認められるべきでない。

上記請求人の主張アについて判断する。
本件明細書においては、「接合」という語も「接続」という語も、一般的な意味において用いられていることが明らかであり、個別の箇所における具体的な意味については、文脈に応じて解釈されるものである。そして、上記(1)に指摘したとおり、明細書の段落【0025】の記載は、訂正前及び訂正後のいずれにおいても、内装用短尺コーナー材を用いて、施工を行う段階に関するものである。
その一方、請求人が言及する明細書の段落【0011】−【0012】の記載は、プラスチック製材料によりコーナー材を断面L字状に形成する段階に関するものであるから、内装用短尺コーナー材を用いて施工を行う段階に関する、訂正前後の段落【0025】とは、異なる段階における異なる技術的事項に関する説明である。そのため、明細書の段落【0011】−【0012】における「接続」の記載から、訂正前の段落【0025】における「接続」の語についても、内装用短尺コーナー材を用いた施工の段階において、内装用短尺コーナー材を形成する段階と同様に、熱融着により一体化するという構成であることが、明瞭に示されていたということはできない。
そして、訂正前の段落【0025】と、請求項1及び段落【0022】等との間には、内装用短尺コーナー材を用いた施工の段階の説明として、上記(1)に示したとおり、表記の不統一があったから、訂正事項1は、不明瞭な記載の釈明を目的としたものと認めることができる。なお、訂正事項1は、上記(1)に示したとおり、誤記の訂正を目的としたものとも、認めることができる。

上記請求人の主張イについて判断する。
訂正事項1について、「接続」という語も「接合」という語も一般的な用語であり、当該用語単独としてみれば不明瞭なものではないところ、訂正前の段落【0025】における「接続」の語と請求項1及び段落【0022】等における「接合」の語との間には表記の不統一があり、訂正後の段落【0025】においては請求項1及び段落【0022】等と同じ「接合」の語が用いられたことにより、表記の不統一もなくなったことは、上記請求人の主張アに関して上述したとおりである。
そして、訂正後の段落【0025】においては、「接合」の語自体として不明瞭なところはなく、請求項1及び段落【0022】と表記が統一されたという点でも、不明瞭なところはないから、訂正事項1については、上記(1)に示したとおり、不明瞭な記載の釈明を目的としたものと認めることができる。

上記請求人の主張ウについて判断する。
訂正事項1について、不明瞭な記載の釈明、及び、誤記の訂正を目的としたものと認めることができることは、上記(1)に示したとおりである。
訂正事項1により、特許請求の範囲の拡張または変更があったか否かについて検討すると、本件訂正により、特許請求の範囲の請求項1及び2の記載に変更はない。また、本件訂正前から特許請求の範囲の請求項1に記載される「接合」の意味が、段落【0025】における不統一な記載を請求項1における「接合」と整合させた訂正事項1によって、訂正前より拡張されたり、あるいは訂正前とは変更された内容となったと考えるべき事情はない。
したがって、請求人の上記主張ウについて、訂正事項1は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合しない旨をいう趣旨としても、請求人の当該主張は採用することができない。

よって、上記請求人の主張について検討しても、本件訂正について、上記(1)ないし(3)と異なる判断をすべき事情は見いだせない。

(5)本件訂正のまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第2号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであって、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するから、本件訂正を認める。


第3 本件訂正発明、並びに訂正明細書及び図面の記載
1 本件訂正発明
明細書に係る本件訂正は、上記第2のとおり認められた。
本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下、「本件訂正発明1」等といい、本件訂正発明1及び2をまとめて「本件訂正発明」という。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
市販のコーナー材よりも短尺に形成した内装用短尺コーナー材を、小型の搬送用車両に横置き状態に積層して所定の作業場所まで搬送する第1工程と、所定の作業場所の床側の幅木と天井との間に、少なくとも2本の前記内装用短尺コーナー材を直線上にセットし、これらの内装用短尺コーナー材のオーバーラップ部分を切除する第2工程と、前記内装用短尺コーナー材の端部を突き合わせる際に、オーバーラップ部分を切除したカット面を対峙しないように反転させ、少なくとも前記内装用短尺コーナー材の端部のカット面を対峙させないように接合する第3工程と、前記内装用短尺コーナー材を接合した後に、内装用短尺コーナー材の表面に通常のパテ施工を含む内装仕上げを行う第4工程とを有することを特徴とする内装用短尺コーナー材による施工方法。
【請求項2】
前記内装用短尺コーナー材は、長さが1000〜1800mmの範囲の寸法からなることを特徴とする請求項1に記載の内装用短尺コーナー材による施工方法。」

2 訂正明細書及び図面の記載
本件訂正により訂正された明細書(以下、「訂正明細書」という。)、及び図面には、次の記載及び図示がある(段落【0025】の下線部は、本件訂正により訂正された箇所である。)。

(1)技術分野、及び背景技術
「【技術分野】
【0001】
この発明は内装用短尺コーナー材による施工方法に係り、特に建物の隅部分に装着されて角部を平坦に先仕上げする際に使用されるコーナー材を内装用短尺コーナー材とし、搬送コストの低減及び搬送効率の向上、そして、施工の際の作業効率の向上などを図る内装用短尺コーナー材による施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物においては、壁面を壁紙や布地等の壁装材を貼り付けて仕上げをする場合に、予め下地の壁面を平坦に先仕上げしておく必要がある。
2つの壁面が交差して角部を形成する出隅部分などは、先仕上げが困難なため、出隅部分の角部及びこの角部を挟んで両側にある2つの壁面に装着することにより、角部を平坦に先仕上げするコーナー材が提案されている。」

(2)発明が解決しようとする課題
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のコーナー材による施工方法においては、長さが2500mmのコーナー材を使用していた。
そして、搬送作業時には、長さ2500mmのコーナー材を横置き状態に収容可能な荷台スペースを有する1ボックスワゴンタイプの車両やバンタイプの車両を使用する必要があった。
この結果、長尺なコーナー材であるため搬送が困難となり、搬送効率が低いとともに、長尺なコーナー材を搬送するために、車両の準備費用や燃費などを含めた搬送コストが嵩み、経済的に不利であるという不都合がある。
【0005】
また、所定の作業場所に長尺なコーナー材を搬送した後に施工を実施する際には、所定の作業場所の床側の幅木と天井との間に長尺なコーナー材を取り付ける。
このとき、所定の作業場所の床側の幅木と天井との間の距離が、一般的な日本家屋の場合、2000〜2300mm程度のなるため、長尺なコーナー材をそのまま取り付けることができず、メジャーによって所定の作業場所の床側の幅木と天井との間の距離を測定した後に、この測定した距離に合致するように長尺なコーナー材をカットする必要があった。
この結果、施工に際しては、測定用のメジャーを必ず使用する必要があり、測定作業という作業工程が増加しており、作業効率が悪いという不都合がある。
【0006】
この発明は、内装用短尺コーナー材を使用することによって、搬送コストの低減及び搬送効率の向上、そして、施工の際の作業効率の向上などを実現することを目的とする。」

(3)課題を解決するための手段、及び発明の効果
「【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、この発明は、上述不都合を除去するために、市販のコーナー材よりも短尺に形成した内装用短尺コーナー材を、小型の搬送用車両に横置き状態に積層して所定の作業場所まで搬送する第1工程と、所定の作業場所の床側の幅木と天井との間に、少なくとも2本の前記内装用短尺コーナー材を直線上にセットし、これらの内装用短尺コーナー材のオーバーラップ部分を切除する第2工程と、前記内装用短尺コーナー材の端部を突き合わせる際に、オーバーラップ部分を切除したカット面を対峙しないように反転させ、少なくとも前記内装用短尺コーナー材の端部のカット面を対峙させないように接合する第3工程と、前記内装用短尺コーナー材を接合した後に、内装用短尺コーナー材の表面に通常のパテ施工を含む内装仕上げを行う第4工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、施工の際に、少なくとも2本の内装用短尺コーナー材を使用し、以下の効果を奏することができる。
(1)内装用短尺コーナー材を使用することによって、搬送を容易として、車両の準備費用や燃費などを含めた搬送コストを低減することができるとともに、搬送効率を向上させることができる。
(2)内装用短尺コーナー材を使用することによって、メジャーを使用しなくとも、容易に施工することができ、作業効率を向上させることができる。
(3)内装用短尺コーナー材の端部のカット面を対峙させないように接合することによって、十分な密着性を確保して隙間の発生を防止することができる。
(4)内装用短尺コーナー材を接合した後に、内装用短尺コーナー材の表面に通常のパテ施工を含む内装仕上げを行うため、従来の施工と何ら遜色なく完成させることができる。」

(4)実施例
「【0011】
図1〜図5はこの発明の実施例を示すものである。
図2において、1は内装用短尺コーナー材である。
この内装用短尺コーナー材1は、プラスチック製材料により形成する。
なお、より詳細に説明すると、内装用短尺コーナー材1をプラスチック製材料により形成する際には、例えば汎用ポリスチレン(「GPPS」)にゴムを加えて耐衝撃性を持たせた耐衝撃性ポリスチレン、つまり、HIPS樹脂製材料を使用する。
このとき、前記内装用短尺コーナー材1は、図2及び図3に示す如く、第1側面2と、この第1側面2に対して略直交する第2側面3とによって断面L字形状に形成する。
また、前記内装用短尺コーナー材1は、長さが1000〜1800mmの範囲の寸法からなり、例えば長さを1300mmの寸法とする。
そして、前記内装用短尺コーナー材1は、前記第1側面2と前記第2側面3とに複数個の孔部4を規則正しく形成する。
なお、複数個の孔部4は、前記内装用短尺コーナー材1を2つの壁面が交差して角部を形成する後述する出隅部分10に貼り付けた際に、内装用短尺コーナー材1の前記第1側面2及び前記第2側面3の内側内の空気を排出して密着性を向上させる機能がある一方、原材料の使用量の低減に寄与している。
更に、前記内装用短尺コーナー材1においては、前記第1側面2と前記第2側面3との夫々の開放側端部2x、3xの内側に長手方向に沿って、例えば幅寸法が10mmの両面テープ5を夫々貼り付ける。
【0012】
ここで、前記内装用短尺コーナー材1の断面L字形状について詳述する。
この内装用短尺コーナー材1は、図3に示す如く、幅寸法を例えば27mmとした第1側面2と、この第1側面2に対して略直交、かつ、同様の幅寸法を有する第2側面3とによって断面L字形状に形成されている。
そして、前記内装用短尺コーナー材1を形成する際に、前記第1側面2と前記第2側面3とが接続する夫々の基端側端部2y、3yの厚みを、例えば0.7mmとする。
また、前記第1側面2及び前記第2側面3の夫々の開放側端部2x、3xの厚みは、前記基端側端部2y、3yから開放側端部2x、3xに向かって厚みが漸次減少するように、例えば0.5mmとする。
更に、前記内装用短尺コーナー材1の断面L字形状の角度は、例えば88〜89度とする。
この内装用短尺コーナー材1の断面L字形状の角度の設定は、2つの壁面が交差して角部を形成する出隅部分に前記内装用短尺コーナー材1を前記両面テープ5にて貼り付けた際に、この両面テープ5の厚みを勘案するとともに、内装用短尺コーナー材1の前記第1側面2及び前記第2側面3によって、出隅部分の角部の両側にある2つの壁面への密着性を向上させている。
【0013】
前記内装用短尺コーナー材1を使用する用施工方法においては、図4に示す如く、第1工程A〜第4工程Dまでの4つの工程を備えている。
【0014】
詳述すれば、前記第1工程Aは、長さ2500mmの市販のコーナー材よりも短尺、例えば長さ1300mmに形成した前記内装用短尺コーナー材1を、小型の搬送用車両に横置き状態に積層し、この小型の搬送用車両によって所定の作業場所6(図5参照。)まで搬送する工程である。
つまり、長さ1300mmの前記内装用短尺コーナー材1としたことにより、小型の搬送用車両の荷台部分に横置き状態に積層可能とし、搬送を容易として、車両の準備費用や燃費などを含めた搬送コストを低減することができるとともに、搬送効率を向上させている。
しかも、小型の搬送用車両による搬送のみでなく、所定の作業場所6での前記内装用短尺コーナー材1の搬送も容易となり、作業効率の向上にも寄与している。
【0015】
前記第2工程Bは、所定の作業場所6の床7側の幅木8と天井9との間において、2つの壁面が交差して角部を形成する出隅部分10に少なくとも2本、例えばの実施例においては2本の前記第1、第2内装用短尺コーナー材1−1、1−2を直線上にセットし、これらの第1、第2内装用短尺コーナー材1−1、1−2のオーバーラップ部分Gを切除する工程である。
つまり、長さ1300mmの前記内装用短尺コーナー材1を使用することによって、所定の作業場所6の床7側の幅木8と天井9との間の距離が一般的な日本家屋の2000〜2300mm程度である場合に、メジャーを使用しなくとも、つまりスケールによって採寸を行うことなく、容易に施工することができ、作業効率を向上させている。
【0016】
前記第3工程Cは、2本の前記第1、第2内装用短尺コーナー材1−1、1−2の長手方向側の端部1−1a、1−2a、1−1b、1−2bを突き合わせる際に、図1(a)及び(b)に示す如く、例えば上方の第2内装用短尺コーナー材1−2の下端部1−2bのオーバーラップ部分Gを切除して新たな端部1−2cに現出させたカット面11が、下方の第1内装用短尺コーナー材1−1の長手方向側の端部1−1aに対峙しないように反転させて接合する工程である。
つまり、上方の第2内装用短尺コーナー材1−2の下端部1−2bのオーバーラップ部分Gを切除して新たな端部1−2cに現出させたカット面11が、下方の第1内装用短尺コーナー材1−1の長手方向側の上端部1−1aに対峙しないように接合することによって、図1(b)に示す如く、2本の前記第1、第2内装用短尺コーナー材1−1、1−2の長手方向側の端部1−1a、1−2aを接合させ、この端部1−1a、1−2aにおける十分な密着性を確保して隙間の発生を防止している。
【0017】
前記第4工程Dは、前記第1、第2内装用短尺コーナー材1−1、1−2を接合した後に、第1、第2内装用短尺コーナー材1−1、1−2の表面に通常のパテ施工を含む内装仕上げを行う工程である。
つまり、図1(b)に示す如く、前記第1、第2内装用短尺コーナー材1−1、1−2の長手方向側の端部1−1a、1−2aを接合する。
そして、前記第1、第2内装用短尺コーナー材1−1、1−2の表面、つまり、前記第1側面2及び前記第2側面3の外側面に通常のパテ施工を含む内装仕上げを行う。
このとき、内装仕上げとしては、上述したパテ施工のみでなく、クロス張りなども含まれるため、「内装クロス仕上げ」と換言することもできる。
このため、前記第1、第2内装用短尺コーナー材1−1、1−2の端部1−1a、1−2aを接合した後に、第1、第2内装用短尺コーナー材1−1、1−2の表面である前記第1側面2及び前記第2側面3の外側面に内装仕上げを行うため、従来の施工と何ら遜色なく完成させることができ、不具合が全くないものである。
【0018】
これにより、前記内装用短尺コーナー材1を使用する用施工方法において、上述した第1工程A〜第4工程Dまでの4つの工程を行うことによって、作業時間を短縮することができる。
【0019】
次に、図4の前記内装用短尺コーナー材1、この実施例においては、前記第1、第2内装用短尺コーナー材1−1、1−2による施工方法の4つの第1工程A〜第4工程Dまでの作業工程に沿って、作用を詳細に説明する。
【0020】
先ず、前記第1工程Aにおいては、図4に示す如く、長さ2500mmの市販のコーナー材よりも短尺、例えば長さ1300mmに形成した前記内装用短尺コーナー材1を、小型の搬送用車両に横置き状態に積層する。
そして、この小型の搬送用車両によって所定の作業場所6まで搬送する。
【0021】
また、前記第2工程Bにおいては、所定の作業場所6の床7側の幅木8と天井9との間に、2つの壁面が交差して角部を形成する出隅部分10に少なくとも2本、例えばの実施例においては2本の前記第1、第2内装用短尺コーナー材1−1、1−2を直線上にセットする。
このとき、図5に示す如く、上述した所定の作業場所6の床7と天井9との間の距離L1から、幅木8の高さ寸法L2を引いた床7側の幅木8と天井9との間の距離L3を対象とする。
この距離L3は、一般的な日本家屋の2000〜2300mm程度である。
そして、所定の作業場所6の床7側の幅木8と天井9との間の距離L3において、図1(a)に示す如く、長さ1300mmの2本の第1、第2内装用短尺コーナー材1−1、1−2を直線上にセットするものである。
また、セット後は、メジャーを使用することなく、前記第2内装用短尺コーナー材1−2の下端部1−2bのオーバーラップ部分Gを切除する。
【0022】
更に、前記第3工程Cにおいては、2本の前記第1、第2内装用短尺コーナー材1−1、1−2の長手方向側の端部1−1a、1−2a、1−1b、1−2bを突き合わせる際に、図1(a)及び(b)に示す如く、例えば上方の第2内装用短尺コーナー材1−2の下端部1−2bのオーバーラップ部分Gを切除して新たな端部1−2cに現出させたカット面11が、下方の第1内装用短尺コーナー材1−1の長手方向側の端部1−1aに対峙しないように反転させて接合する。
このとき、上方の第2内装用短尺コーナー材1−2の下端部1−2bのオーバーラップ部分Gを切除して新たな端部1−2cに現出させたカット面11が、下方の第1内装用短尺コーナー材1−1の長手方向側の上端部1−1aに対峙しないように接合している。
【0023】
更にまた、前記第4工程Dにおいては、図1(b)に示す如く、前記第1、第2内装用短尺コーナー材1−1、1−2の長手方向側の端部1−1a、1−2aを接合した後に、第1、第2内装用短尺コーナー材1−1、1−2の表面である前記第1側面2及び前記第2側面3の外側面に通常のパテ施工を含む内装仕上げを行う。
このとき、前記第1、第2内装用短尺コーナー材1−1、1−2に形成した複数個の前記孔部4内にパテが入り込むようにパテ施工を行い、その後にクロス張りも行って内装仕上げを行う。
【0024】
なお、この発明は上述実施例に限定されるものではなく、種々の応用改変が可能である。
【0025】
例えば、この発明の実施例においては、前記内装用短尺コーナー材の長さを1300mmの寸法として説明したが、長さを1000〜1800mmの範囲の寸法とする特別構成とすることも可能である。
すなわち、所定の作業場所の床側の幅木と天井との間の距離が一般的な日本家屋の2000〜2300mm程度であるため、2本の第1、第2内装用短尺コーナー材のみでなく、図6に示す如く、3本の第1〜第3内装用短尺コーナー材21−1、21−2、21−3を使用することが可能である。
このとき、第1、第2内装用短尺コーナー材21−1、21−2の端面を接合して切除は行わず、第2内装用短尺コーナー材21−2に対して第3内装用短尺コーナー材21−3のオーバーラップ部分Gを削除する。
さすれば、前記第2工程Bにおいて、メジャーを使用しなくとも、容易に施工することができ、作業効率を向上させることができる。
【0026】
また、この発明の実施例においては、前記内装用短尺コーナー材を形成する際に、幅寸法を例えば27mmとした第1側面と、この第1側面に対して略直交、かつ、同様の幅寸法を有する第2側面とによって断面L字形状に形成する構成としたが、第1側面と第2側面との幅寸法を相違させる形状とすることが可能である。
さすれば、密着性を確保する必要がある側に幅寸法の大なる側面を位置させることによって、前記内装用短尺コーナー材を取り付けた際の十分な密着性を確保することができ、その後の通常のパテ施工を含む内装仕上げの作業を行う前記第4工程を円滑に行うことができる。
また、一方の側面の幅寸法を全て変更する構成のみでなく、中間部位などの少なくとも一部の幅寸法を変更することも可能である。
更に、前記内装用短尺コーナー材を取り付けた際の密着性を上昇させる際に、この内装用短尺コーナー材の断面L字形状の角度を、全て一律とせず、部分的に変更する構成とすることも可能である。」

(5)図1


(6)図2


(7)図6



第4 請求人の主張及び証拠方法
1 請求人が主張する無効理由
(1)請求人は、本件訂正前の請求項1及び2に係る発明(以下、「本件発明1」等という。)に対して、本件発明1および2についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書を提出し、以下の無効理由を主張している。

ア 無効理由1
本件発明1及び2は、発明の詳細な説明に記載したものでなく、特許請求の範囲の請求項1及び2の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしていないから、本件発明1及び2に係る特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

イ 無効理由2
本件発明1及び2は、明確でなく、特許請求の範囲の請求項1及び2の記載は、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていないから、本件発明1及び2に係る特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

ウ 無効理由3
本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明1及び2について、これらの発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではなく、特許法第36条第4項第1号の規定を満たしていないから、本件発明1及び2に係る特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

(2)その後、被請求人から本件訂正請求がされたのに対して、請求人は、当審からの審尋に対する回答書、及び令和2年9月15日受付の上申書を提出するとともに、証拠として甲第1号証を提出し、本件訂正発明1及び2についての特許は、依然、上記無効理由1ないし3により無効である旨を主張している。

2 提出された証拠
請求人により提出された証拠は、次のとおりである。

・甲第1号証:
鈴木五郎監修、「全面改訂版 クルマ用語の正しい知識」、第303−304頁、発行所 株式会社芸文社、昭和62年3月20日発行

3 請求人の具体的な主張
(1)無効理由1;サポート要件違反
ア 接合に関して
請求項1に記載される用語「接合」は、明細書の段落【0012】、及び本件訂正前の明細書の段落【0025】に記載される用語「接続」と不統一であり、その結果、特許請求の範囲と明細書との対応関係が不明瞭となっている。
明細書の段落【0012】に記載される「接続」は、コーナー材1における2つの同様の幅寸法の第1、第2側面2,3を、つぎあわせてつなぐことによって一体化する構成を表すことが明らかであり、本件訂正前の段落【0025】に記載される「第1、第2内装用短尺コーナー材21−1、21−2の端面を接続して切除は行わず」における「接続」も、段落【0012】の「接続」と同じく、切除は行わないコーナー材21−1、21−2の端面を、つぎあわせてつなぐことによって一体化する構成である。
そして、本件訂正発明の効果として、明細書の段落【0008】に記載される「(3)内装用短尺コーナー材の端部のカット面を対峙させないように接合することによって、十分な密着性を確保して隙間の発生を防止することができる。」及び「(4)内装用短尺コーナー材を接合した後に、内装用短尺コーナー材の表面に通常のパテ施工を含む内装仕上げを行うため、従来の施工と何ら遜色なく完成させることができる。」という効果を得るために、本件訂正前の明細書における訂正前の段落【0025】においては、図2に示されるように、コーナー材の端部における長手方向に垂直な平面状の端面である平端面同士を密着させて、つぎあわせてつなぐことによって、一体化して「接続」していると解される。
そうであるところ、請求項1においては、平端面同士をつぎあわせてつなぐことによって一体化する構成を意味する、発明の詳細な説明に記載された用語「接続」とは不統一な、「接合」の語が用いられている。
そのため、本件訂正発明1及び2は、請求項及び発明の詳細な説明に記載された用語が不統一であり、その結果、両者の対応関係が不明瞭となるという、審査基準第II部第2章第2節サポート2.2サポート要件違反の類型(2)に該当し、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしていない(審判請求書第19頁第22行−第23頁下から4行、及び、令和2年8月20日提出の回答書第4頁第1行−第7頁第10行)。

イ コーナー材の端部に関して
発明の課題は、明示的な記載がなくとも、発明の有利な効果に基づいて理解することができる。
そして、本件訂正発明の効果として、明細書の段落【0008】に記載される、「(3)内装用短尺コーナー材の端部のカット面を対峙させないように接合することによって、十分な密着性を確保して隙間の発生を防止することができる。」という効果、及び、「(4)内装用短尺コーナー材を接合した後に、内装用短尺コーナー材の表面に通常のパテ施工を含む内装仕上げを行うため、従来の施工と何ら遜色なく完成させることができる。」という効果を得るためには、「コーナー材の端部」は、コーナー材の長手方向に垂直な平面状の端面を有する、平端面でなければならない。
そうであるところ、請求項1には、コーナー材の端部が、平端面であることは特定されておらず、本件訂正発明1及び2における「コーナー材の端部」は、長手方向の端面に孔部の一部が臨む切欠きがある、切欠き端面を含む。そして、コーナー材の端部が切欠き端面である場合には、端部のうち切欠きが臨む部分においてはコーナー材が密着することができず、隙間を生じるから、明細書の段落【0008】に記載される「(3)」及び「(4)」の効果を奏することができない。
したがって、「コーナー材の端部」について、コーナー材の長手方向に垂直な平面状の端面を有する、平端面であることを特定しない、本件訂正発明1及び2は、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することになるという、審査基準第II部第2章第2節サポート2.2サポート要件違反の類型(4)に該当し、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしていない(審判請求書第28頁第13行−第30頁下から5行、令和2年8月20日提出の回答書第11頁第18行−第14頁第18行、及び、令和2年9月15日受付の上申書第3頁下から6行−第5頁第12行)。

(2)無効理由2;明確性要件違反
ア 接合に関して
請求項1における用語「接合」は、記載自体が不明確である。
また、請求項1における「接合」は、明細書の段落【0008】に記載される、「(3)内装用短尺コーナー材の端部のカット面を対峙させないように接合することによって、十分な密着性を確保して隙間の発生を防止することができる。」という効果、及び、「(4)内装用短尺コーナー材を接合した後に、内装用短尺コーナー材の表面に通常のパテ施工を含む内装仕上げを行うため、従来の施工と何ら遜色なく完成させることができる。」という効果が得られる構成でなければならないところ、これらの効果を得るために必要な平端面同士をつぎあわす構成を明確に特定していない。その結果、当業者は、請求項1及び2の記載によっては、本件特許発明がいかなる発明であるかを正確に把握することができないから、請求項1及び2の記載は、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確である。
したがって、本件訂正発明1及び2は、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていない(審判請求書第第23頁下から3行−第25頁第21行、令和2年8月20日提出の回答書第7頁第11行−第8頁下から5行)。

イ コーナー材の端部に関して
明細書の段落【0008】に記載される、「(3)内装用短尺コーナー材の端部のカット面を対峙させないように接合することによって、十分な密着性を確保して隙間の発生を防止することができる。」という効果、及び、「(4)内装用短尺コーナー材を接合した後に、内装用短尺コーナー材の表面に通常のパテ施工を含む内装仕上げを行うため、従来の施工と何ら遜色なく完成させることができる。」という効果が得られるためには、コーナー材の突き合わせる端部の端面は、軸線方向に垂直であり、平面状である平端面でなければならないところ、請求項1及び2に記載される「コーナー材の端部」は、発明特定事項として不可欠な平端面の構成が不足している。
したがって、本件訂正発明1及び2は、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていない(審判請求書第30頁下から4行−第32頁第8行、令和2年8月20日提出の回答書第14頁第19行−第15頁第3行、及び、令和2年9月15日受付の上申書第3頁下から6行−第5頁第12行)。

ウ 3本以上の内装用短尺コーナー材を用いる場合に関して
請求項1における「少なくとも2本の前記内装用短尺コーナー材を直線上にセットし、これらの内装用短尺コーナー材のオーバーラップ部分を切除する第2工程」及び「前記内装用短尺コーナー材の端部を突き合わせる際に、オーバーラップ部分を切除したカット面を対峙しないように反転させ、少なくとも前記内装用短尺コーナー材の端部のカット面を対峙させないように接合する第3工程」について、3本及び4本以上のコーナー材では、どのようにオーバーラップ部分を形成し、どこを切除して、どこをどのように接合するのか、具体的に記載されておらず、発明特定事項が不足していることが明らかである。
したがって、本件訂正発明1及び2は、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていない(審判請求書第33頁第14行−第34頁第12行、及び、令和2年8月20日提出の回答書第16頁第6行−第17頁第7行)。

エ 発明の範囲を曖昧にする記載に関して
請求項1における「市販のコーナー材」、「小型の搬送用車両」、「横置き状態」、「通常のパテ施工」、「短尺コーナー材」は、曖昧な表現であり、発明の詳細な説明及び技術常識を参酌しても、その範囲が明確に定まらない。
なお、「横置き状態」について、被請求人はコーナー材を寝かせて置いた状態である旨を主張するが、甲第1号証において、「横置きエンジン」とは、エンジンのクランク軸の方向が、車の進行方向に対して横向き(直角方向)になっているもののことをいう旨が説明されているように、クルマ用語として「横置き」とは、車両の車幅方向に向けて置くことが、用語の有する普通の意味であるから、請求項1に記載される「横置き状態」とは、被請求人が主張するように、コーナー材を寝かせて置いた状態を意味するものではない。
したがって、本件訂正発明1及び2は、不明確であり、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていない(審判請求書第36頁第7行−最終行、令和2年8月20日提出の回答書第17頁下から4行−第21頁下から2行、及び、令和2年9月15日受付の上申書第5頁第13行−第6頁第9行)。

オ 内装用短尺コーナー材の断面L字形状をなす第1側面と第2側面との幅寸法を相違させた場合に関して
明細書の段落【0026】には、「また、この発明の実施例においては、前記内装用短尺コーナー材を形成する際に、幅寸法を例えば27mmとした第1側面と、この第1側面に対して略直交、かつ、同様の幅寸法を有する第2側面とによって断面L字形状に形成する構成としたが、第1側面と第2側面との幅寸法を相違させる形状とすることが可能である。」と記載されているところ、内装用短尺コーナー材の端部を突き合わせて接合する際に、幅寸法の異なる第1側面と第2側面とを端部で接合すると、接合箇所付近で比較的複雑な段差が生じ、明細書の段落【0008】に記載される「十分な密着性を確保して隙間の発生を防止することができる。」という効果、及び、「従来の施工と何ら遜色なく完成させることができる。」という効果を得ることができない。
そうであるところ、請求項1及び2においては、内装用短尺コーナー材の断面L字形状をなす第1側面と第2側面との幅寸法を相違させた場合について、接合箇所付近で生じる複雑な段差に拘わらず、十分な密着性を確保して隙間の発生を防止し、従来の施工と遜色ない仕上げを行うという効果を達成するための発明特定事項が、具体的に記載されていない。
したがって、本件訂正発明1及び2は、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていない(令和2年8月20日提出の回答書第25頁第21行−第26頁最終行)。

(3)無効理由3;実施可能要件違反
ア 接合に関して
請求項1の用語「接合」について、発明の詳細な説明には、抽象的または機能的に記載してあるに過ぎず、発明の詳細な説明においては、請求項1の用語「接合」と、明細書の段落【0012】及び本件訂正前の明細書の段落【0025】に記載される用語「接続」との違いも不明確である。
また、請求項1における「接合」に関し、発明の詳細な説明には、コーナー材の端部に孔部の一部である切欠きがある切欠き端面を接合し、切欠きの部分で接合部に隙間を生じることとなる場合について、隙間なく密着させ従来と遜色ない施工とするという、発明の効果を達成できるように、発明の実施をすることができるだけの説明が記載されていない。
そのため、本願発明の詳細な説明は、本件訂正発明1及び2における「接合」について、
(i)対応する技術的手段が単に抽象的又は機能的に記載してあるだけで、具現すべき材料、装置、工程等が不明瞭である。
(ii)その具現すべき材料、装置、工程等が出願時の技術常識に基づいても当業者が理解できないため、当業者が請求項に係る発明の実施をすることができない。
という、審査基準第II部第1章第1節実施可能要件3.2実施可能要件違反の類型における3.2.1(1)の条件(i)及び(ii)の両方に該当するので、特許法第36条第4項第1号の規定を満たしていない(審判請求書第25頁下から7行−第28頁第12行、及び令和2年8月20日提出の回答書第8頁下から4行−第11頁第17行)。

イ コーナー材の端部に関して
明細書の段落【0008】に記載される、「(3)内装用短尺コーナー材の端部のカット面を対峙させないように接合することによって、十分な密着性を確保して隙間の発生を防止することができる。」という効果、及び、「(4)内装用短尺コーナー材を接合した後に、内装用短尺コーナー材の表面に通常のパテ施工を含む内装仕上げを行うため、従来の施工と何ら遜色なく完成させることができる。」という効果が得られるためには、コーナー材の突き合わせる端部の端面は、軸線方向に垂直であり、平面状である平端面でなければならない。
そうであるところ、請求項1及び2に記載される「コーナー材の端部」は、端部の端面が平端面ではなく、端部に孔部の一部である切欠きがある切欠き端面である場合を含む。
そして、請求項1及び2に記載される「コーナー材の端部」について、端部の端面が切欠き端面である下位概念の場合に関しては、切欠きの部分で接合部に隙間を生じることとなるところ、発明の詳細な説明には、コーナー材の端部が切欠き端面の場合について、隙間なく密着させ従来と遜色ない施工とするという、発明の効果を得ることができるだけの記載がされていない。
そのため、本願発明の詳細な説明は、本件訂正発明1及び2における「コーナー材の端部」について、
(i)請求項に上位概念の発明が記載されており、発明の詳細な説明にその上位概念に含まれる「一部の下位概念」についての実施の形態のみが実施可能に記載されている。
(ii)その上位概念に含まれる他の下位概念については、その「一部の下位概念」についての実施の形態のみでは、当業者が出願時の技術常識を考慮しても実施できる程度に明瞭かつ十分に説明されているとはいえない具体的理由がある。
という、審査基準第II部第1章第1節実施可能要件3.2実施可能要件違反の類型における3.2.2(1)の条件(i)及び(ii)の両方に該当するので、特許法第36条第4項第1号の規定を満たしていない(審判請求書第32頁第9行−第33頁第13行、令和2年8月20日提出の回答書第15頁第4行−第16頁第5行、令和2年9月15日受付の上申書第3頁下から6行−第5頁第12行、及び令和2年9月15日受付の上申書第6頁第10行−第7頁第16行)。

ウ 3本以上の内装用短尺コーナー材を用いる場合に関して
請求項1における「少なくとも2本の前記内装用短尺コーナー材を直線上にセットし、これらの内装用短尺コーナー材のオーバーラップ部分を切除する第2工程」及び「前記内装用短尺コーナー材の端部を突き合わせる際に、オーバーラップ部分を切除したカット面を対峙しないように反転させ、少なくとも前記内装用短尺コーナー材の端部のカット面を対峙させないように接合する第3工程」について、本願発明の詳細な説明には、3本及び4本以上のコーナー材の場合について、どのようにオーバーラップ部分を形成し、どこを切除して、どこをどのように接合するのか、当業者が理解できる程度の記載がされていない。
そのため、本願発明の詳細な説明は、本件訂正発明1及び2において3本以上の内装用短尺コーナー材を用いる場合に関して、
(i)発明の実施の形態の記載において、発明特定事項に対応する個々の技術的手段の相互関係が不明瞭である。
(ii)その技術的手段の相互関係が出願時の技術常識に基づいても当業者が理解できないため、当業者が請求項に係る発明の実施をすることができない。
という、審査基準第II部第1章第1節実施可能要件3.2実施可能要件違反の類型における3.2.2(2)の条件(i)及び(ii)の両方に該当するので、特許法第36条第4項第1号の規定を満たしていない(審判請求書第34頁第13行−第36頁第6行、及び、令和2年8月20日提出の回答書第17頁第8行−第23行)。

エ 抽象的な記載に関して
請求項1に記載される技術的手段としての「市販のコーナー材」、「小型の搬送用車両」、「横置き状態」、「通常のパテ施工」、「短尺コーナー材」について、発明の詳細な説明における記載が抽象的又は機能的である。
そのため、本願発明の詳細な説明は、本件訂正発明1及び2における上記の技術的手段について、
(i)対応する技術的手段が単に抽象的又は機能的に記載してあるだけで、具現すべき材料、装置、工程等が不明瞭である。
(ii)その具現すべき材料、装置、工程等が出願時の技術常識に基づいても当業者が理解できないため、当業者が請求項に係る発明の実施をすることができない。
という、審査基準第II部第1章第1節実施可能要件3.2実施可能要件違反の類型における3.2.1(1)の条件(i)及び(ii)の両方に該当するので、特許法第36条第4項第1号の規定を満たしていない(審判請求書第37頁第1行−下から5行、及び、令和2年8月20日提出の回答書第21頁最終行−第22頁第14行)。

オ 「十分な密着性を確保して隙間の発生を防止することができる」効果に関して
発明の詳細な説明の段落【0008】には、発明の効果として、「十分な密着性を確保して隙間の発生を防止することができる。」と記載されているが、「隙間」とは何と何との「隙間」であるのか、「密着性」とは何と何との「密着性」であるのか、具体的に記載されておらず、発明の詳細な説明は、発明の効果に関する発明の技術的手段相互の関係を明確に理解できるよう説明していない。
そのため、本願発明の詳細な説明は、本件訂正発明1及び2について、段落【0008】に記載される発明の効果に関する技術的手段について、
(i)発明の実施の形態の記載において、発明特定事項に対応する個々の技術的手段の相互関係が不明瞭である。
(ii)その技術的手段の相互関係が出願時の技術常識に基づいても当業者が理解できないため、当業者が請求項に係る発明の実施をすることができない。
という、審査基準第II部第1章第1節実施可能要件3.2実施可能要件違反の類型における3.2.2(2)の条件(i)及び(ii)の両方に該当するので、特許法第36条第4項第1号の規定を満たしていない(審判請求書第37頁下から4行−第38頁第12行、及び、令和2年8月20日提出の回答書第22頁第15行−第24頁最終行)。

カ 「従来の施工方法と何ら遜色なく完成させることができる」効果に関して
発明の詳細な説明の段落【0008】には、発明の効果として、「内装用短尺コーナー材を接合した後に、内装用短尺コーナー材の表面に通常のパテ施工を含む内装仕上げを行うため、従来の施工と何ら遜色なく完成させることができる。」と記載されているが、何が「遜色なく」であるのか、及び何を「完成させることができる。」のかが、具体的に記載されておらず、発明の詳細な説明は、発明の効果を得るために具現すべき構成を理解することができるように記載されていない。
そのため、本願発明の詳細な説明は、上記の効果に関する本件訂正発明1及び2におけるである「通常のパテ施工」について、
(i)対応する技術的手段が単に抽象的又は機能的に記載してあるだけで、具現すべき材料、装置、工程等が不明瞭である。
(ii)その具現すべき材料、装置、工程等が出願時の技術常識に基づいても当業者が理解できないため、当業者が請求項に係る発明の実施をすることができない。
という、審査基準第II部第1章第1節実施可能要件3.2実施可能要件違反の類型における3.2.1(1)の条件(i)及び(ii)の両方に該当するので、特許法第36条第4項第1号の規定を満たしていない(審判請求書第38頁第13行−第39頁第9行、及び、令和2年8月20日提出の回答書第25頁第1行−第20行)。

キ 内装用短尺コーナー材の断面L字形状をなす第1側面と第2側面との幅寸法を相違させた場合に関して
明細書の段落【0026】には、「また、この発明の実施例においては、前記内装用短尺コーナー材を形成する際に、幅寸法を例えば27mmとした第1側面と、この第1側面に対して略直交、かつ、同様の幅寸法を有する第2側面とによって断面L字形状に形成する構成としたが、第1側面と第2側面との幅寸法を相違させる形状とすることが可能である。」と記載されているとおり、本件訂正発明1及び2は、突き合わせて接合する「コーナー材の端部」について、断面L字形状をなす第1側面と第2側面との幅寸法を相違させた場合を含む。
そして、突き合わせて接合する「コーナー材の端部」について、断面L字形状をなす第1側面と第2側面との幅寸法とが相違している場合には、コーナー材の端部の接合部分で、第1側面と第2側面との幅寸法の相違に依拠した複雑な段差を生じることとなるところ、発明の詳細な説明には、かような段差が生じるにも拘わらず、明細書の段落【0008】に記載される「十分な密着性を確保して隙間の発生を防止することができる。」という効果、及び、「従来の施工と何ら遜色なく完成させることができる。」という効果を達成することができるだけの説明がされていない(令和2年8月20日提出の回答書第27頁第1行−同頁第13行)。

ク 内装用短尺コーナー材の中間部位の幅寸法を異ならせた場合に関して
明細書の段落【0026】には、「また、一方の側面の幅寸法を全て変更する構成のみでなく、中間部位などの少なくとも一部の幅寸法を変更することも可能である。」とも記載されているところ、内装用短尺コーナー材の側面の中間部位などの少なくとも一部の幅寸法を変更する実施例の場合についても、長手方向に隣接する内装用短尺コーナー材の端部が密着せず、隙間が発生している構成と類似し、または同じとなる。
そして、本願発明の詳細な説明には、内装用短尺コーナー材の側面の中間部位の幅方向を異ならせることにより、内装用短尺コーナー材の端部が密着せず、隙間が発生している構成と類似し、または同じとなる実施例の場合について、「十分な密着性を確保して隙間の発生を防止することができる。」という効果、及び、「従来の施工と何ら遜色なく完成させることができる。」という効果を達成することができるだけの説明がされていない。
したがって、本願発明の詳細な説明は、本件訂正発明1及び2を実施することができる程度の記載がされたものではなく、特許法第36条第4項第1号の規定を満たしていない(令和2年8月20日提出の回答書第27頁第13行−第28頁第3行)。

第5 被請求人の主張及び証拠方法
1 被請求人の主張の概要
被請求人は、本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、請求人の主張する無効理由にはいずれも理由がない旨を主張し、証拠方法として乙第1号証ないし乙第30号証(枝番含む)を提出している。

2 提出された証拠
被請求人により提出された証拠は、次のとおりである。

・乙第1号証:
広辞苑第7版、第1639頁、発行所 株式会社岩波書店、2018年1月12日発行
・乙第2号証:
広辞苑第7版、第1641頁、発行所 株式会社岩波書店、2018年1月12日発行
・乙第3号証:
広辞苑第7版付録 漢字小辞典、第1頁及び第96頁、発行所 株式会社岩波書店、2018年1月12日発行
・乙第4号証:
広辞苑第7版付録 漢字小辞典、第1頁及び第56頁、発行所 株式会社岩波書店、2018年1月12日発行
・乙第5号証:
(株)シノダ八王子店 小野克己 作成、「特許公報(B2) 特許第603165号の件」、2020年6月17日
・乙第6号証:
株式会社シノダ 会社概要、株式会社シノダ ホームページ、2020年7月4日出力
・乙第7号証の1:
株式会社コバソウ 金井克弘 作成、「「特許公報(B2)」拝見して、内容の理解ができるか否かの件」、令和2年6月15日
・乙第7号証の2:
株式会社コバソウ 金井克弘 送信、電子メールの写し、「特許公報の件」、2020年6月15日送信
・乙第8号証:
株式会社コバソウ 会社案内、株式会社コバソウ ホームページ、2020年7月4日出力
・乙第9号証:
被請求人 従業員 坂本勝美 作成、「ショートコーナー接合実験報告書」、令和2年6月22日報告
・乙第10号証:
被請求人 従業員 坂本勝美 作成、「市販コーナー材について調査報告」、令和2年6月29日報告
・乙第11号証:
「スーパービバホームとは」、ホームセンタービバホーム ホームページ、2020年7月4日出力
・乙第12号証:
広辞苑第7版、第1020−1021頁、発行所 株式会社岩波書店、2018年1月12日発行
・乙第13号証:
広辞苑第7版、第2417頁、発行所 株式会社岩波書店、2018年1月12日発行
・乙第14号証:
広辞苑第7版、第3009頁、発行所 株式会社岩波書店、2018年1月12日発行
・乙第15号証:
広辞苑第7版、第1364頁、発行所 株式会社岩波書店、2018年1月12日発行
・乙第16号証:
「車両の制限に関する法令」、国土交通省関東地方整備局 ホームページ、2020年7月5日出力
・乙第17号証:
広辞苑第7版、第1627頁、発行所 株式会社岩波書店、2018年1月12日発行
・乙第18号証の1:
被請求人 従業員 坂本勝美 作成、「新商品! ショートコーナー○R SHE−27P 特徴と使用方法」、2014年2月27日初版作成、2019年1月15日最終更新(当審注;「○R」は、「○」の中に「R」を示す。)
・乙第18号証の2:
被請求人 従業員 坂本勝美 作成及び出力、PC画面のスクリーンショット、2020年7月9日出力
・乙第18号証の3:
被請求人 従業員 坂本勝美 作成、補足、2020年7月9日作成
・乙第19号証:
インターネット 画像検索結果(「クロス下地 コーナー材 パテ施工」を検索ワードとした)、2020年7月5日出力
・乙第20号証:
「クロスのパテ打ち工事/建築日記101日目」、スウェーデンハウスで学ぶマイホームの基礎知識 インターネットホームページ、2020年7月5日出力
・乙第21号証:
広辞苑第7版、第2367頁、発行所 株式会社岩波書店、2018年1月12日発行
・乙第22号証:
広辞苑第7版、第877頁及び第879頁、発行所 株式会社岩波書店、2018年1月12日発行
・乙第23号証:
広辞苑第7版、第2265頁、発行所 株式会社岩波書店、2018年1月12日発行
・乙第24号証:
広辞苑第7版、第2985頁、発行所 株式会社岩波書店、2018年1月12日発行
・乙第25号証:
(株)シノダ八王子店 小野克己 作成、「特許公報(B2) 特許第603165号の件」、2020年8月26日作成
・乙第26号証:
株式会社コバソウ 金井克弘 作成、「職務経歴」、2020年8月作成
・乙第27号証:
インテリア岩森 所属 岩森信之 作成、「貴方は、今回の施工方法について、特許記載事項の内容及び現地での説明を理解しましたか。」に対する回答、令和2年8月26日作成
・乙第28号証:
清水内装 所属 清水友樹 作成、「貴方は、今回の施工方法について、特許記載事項の内容及び現地での説明を理解しましたか。」に対する回答、令和2年8月26日作成
・乙第29号証:
インターネット 画像検索結果(「クロス工事 コーナー材 パテ」を検索ワードとした)、2020年4月15日出力
・乙第30号証:
「クロスのパテ打ち工事/建築日記101日目」、スウェーデンハウスで学ぶマイホームの基礎知識 インターネットホームページ、2020年5月10日出力(当審注;乙第20号証と同じホームページの出力で、本件無効審判事件と並行している侵害訴訟において、請求人が証拠として提出したものの写し。)

3 被請求人の具体的な主張
(1)無効理由1;サポート要件について
ア 接合に関して
本件訂正発明1及び2における「接合」は、内装用短尺コーナー材の端部のカット面以外の端面同士を「つなぎあわすこと」の意味で用いている。
そして、本件訂正前の明細書の段落【0025】における「接続」の記載は、本件訂正により、「接合」へと訂正されたから、訂正明細書の段落【0025】と、特許請求の範囲の請求項1及び2との間に、対応関係が不明瞭となっているところはない。訂正明細書の段落【0007】、【0008】、【0009】、【0016】、【0017】、【0022】及び【0023】に記載される「接合」についても、特許請求の範囲の請求項1及び2との間で、記載は整合しており、対応関係が不明瞭となっているものではない。
したがって、本件訂正発明1及び2について、「接合」という事項に関して、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との間に、請求人が主張する不備はなく、本件訂正発明1及び2は、特許法第36条第6項第1号違反には該当しない(審判事件答弁書第2頁下から9行−第7頁第8行、及び、令和2年9月3日提出の回答書第2頁下から3行−第7頁下から7行)。

イ コーナー材の端部に関して
訂正明細書で述べている発明の効果は、内装用短尺コーナー材の端面同士を接合する際に、カット面の端面を接合すると、ハサミの入れ方によって平端面同士がぴったり合致せず、平坦面同士に隙間が生じる場合がある一方、内装用短尺コーナー材の工場出荷時の端面同士を接合すれば、端部の平坦面同士はぴったり合致して、平坦面同士の隙間は生じないことを示しているものである。本件特許の図2に示す端部は、たまたま端面に切欠きがない端部を示しているが、カット面ではなく工場出荷時の端面同士を接合すれば、端部の切欠きの有無に拘わらず、端部の平坦面同士が密着し、平坦面同士に隙間がなく、従前のコーナー材と遜色がない仕上がりとなる効果は発生するものである。
そのため、「コーナー材の端部」について、端部に切欠きのない平端面でしか、発明の効果が生じないとして、本件訂正発明1及び2には、発明の詳細な説明に記載された課題を解決するための手段が反映されていない不備がある旨をいう、請求人の主張は失当であり、本件訂正発明1及び2は、特許法第36条第6項第1号違反には該当しない(審判事件答弁書第12頁第2行−第13頁下から7行、及び、令和2年9月3日提出の回答書第12頁第12行−第15頁第2行)。

(2)無効理由2;明確性要件について
ア 接合に関して
請求項1に記載する「接合」の語は、平易な日本語であり、辞書にも記載される「つぎあわすこと」という一般的な意味と同じ意味で用いていることは明らかであるから、発明の詳細な説明に定義を記載していなくとも、明確である。また、訂正明細書の段落【0009】、【0017】及び図1(b)にも、内装用短尺コーナー材の端部同士を接合することを具体的に説明しており、当業者は本件訂正発明1及び2を十分に理解できる。
したがって、請求人の主張は失当であり、本件訂正発明1及び2は、特許法第36条第6項第2号違反には該当しない(審判事件答弁書第7頁第9行−第9頁下から5行、及び、令和2年9月3日提出の回答書第7頁下から6行−第10頁第10行)。

イ コーナー材の端部に関して
訂正明細書で述べている発明の効果は、内装用短尺コーナー材の端面同士を接合する際に、カット面の端面を接合すると、ハサミの入れ方によって平端面同士がぴったり合致せず、平坦面同士に隙間が生じる場合がある一方、内装用短尺コーナー材の工場出荷時の端面同士を接合すれば、端部の平坦面同士はぴったり合致して、平坦面同士の隙間は生じないことを示しているものであり、コーナー材の端部の切欠きの有無は問題としていない。
そのため、発明の効果を得るためには、コーナー材の突き合わせる端部の端面が、図2に示されるとおり平面状である平端面でなければならないとし、本件訂正発明1及び2について、必要な発明特定事項である図2の平端面の構成が不足している旨をいう、請求人の主張は、失当である。本件訂正発明1及び2は、特許法第36条第6項第2号違反には該当しない(審判事件答弁書第13頁下から6行−第15頁第3行、及び、令和2年9月3日提出の回答書第15頁第3行−同頁下から4行)。

ウ 3本以上の内装用短尺コーナー材を用いる場合に関して
訂正明細書の段落【0025】及び【図6】において、内装用短尺コーナー材を3本使用する場合について説明しており、【図6】の符号Gに示すとおり、内装用短尺コーナー材を3本使用する場合にも、オーバーラップする部分は、1箇所のみである。内装用短尺コーナー材を4本以上使用する場合にも、オーバーラップする部分は、1箇所のみである。そのため、内装用短尺コーナー材が何本であっても、2本の場合と同様に、オーバーラップする1箇所を切除し、切除した内装用短尺コーナー材を反転させて端部同士を接合することは、当業者が容易に理解できる。
したがって、内装用短尺コーナー材が3本及び4本以上の場合について、本件訂正発明1及び2が不明確である旨をいう請求人の主張は、失当である(審判事件答弁書第16頁下から7行−第18頁第5行、及び、令和2年9月3日提出の回答書第17頁第4行−第18頁第12行)。

エ 発明の範囲を曖昧とする記載に関して
請求人が、発明の詳細な説明及び技術常識を参酌しても不明確であると主張する、請求項1に記載される「市販のコーナー材」については、訂正明細書の段落【0004】、【0014】及び【0020】の記載から,2500mmのコーナー材であり、長尺なコーナー材であると理解することができる。なお、被請求人が実際の店舗において市販されているコーナー材を調査したところ、乙第10号証に示すとおり、販売されていた2種類のコーナー材はいずれも長さが2500mmのものであった。
請求人が不明確であると主張する、請求項1に記載される「小型の搬送用車両」については、含まれる用語がいずれも一般的な用語であり、世間一般の常識や技術常識からイメージできる通常の大きさの搬送用車両や大型の搬送用車両よりも小型の搬送用車両として、世間一般の者が認識できるものであるから、明確である。
請求人が不明確であると主張する、請求項1に記載される「横置き状態」については、コーナー材を車両の進行方向ではなく車両の車幅方向に向けて置いた状態という解釈、若しくは、コーナー材を立て掛けて置くのではなく寝かせて置いた状態という解釈の、いずれかの解釈しかない。そうであるところ、訂正明細書の段落【0004】に、1ボックスタイプの車両やバンタイプの車両に、長さ2500mmのコーナー材が「横置き状態に収納可能」であると記載している一方、通常の1ボックスタイプの車両やバンタイプの車両では、長さ2500mmのコーナー材を車幅方向に向けて置くことは不可能である。また、訂正明細書の段落【0014】及び【0020】に、「長さ1300mmに形成した前記内装用短尺コーナー材1」を「小型の搬送用車両」に「横置き状態に積層可能」とすると記載しており、「横置き状態に積層」するとは、内装用短尺コーナー材を寝かせて積み重ねた状態であることが明らかである。そのため、本願請求項1に記載する「横置き状態」とは、コーナー材を寝かせて置いた状態を指すことが明確である。なお、請求人は甲第1号証を示して、「横置きエンジン」の説明から、「横置き状態」とは車幅方向に向けた状態を示すと主張しているが、甲第1号証の記載は車のエンジンに関するものであり、内装用短尺コーナー材を用いた施工方法に関する本件訂正発明1及び2とは、全く無関係である。
請求人が不明確であると主張する、請求項1に記載される「通常のパテ施工」については、訂正明細書の段落【0017】の記載、及び技術常識、並びに、インターネットの画像検索において「クロス下地 コーナー材 パテ施工」の語を入れて検索を行った結果を示す乙第19号証、及び、乙第19号証の検索結果のリンク先である第20号証にも示されるように、コーナー材の外側にパテ材を塗って壁を平滑化させることを意味することが、当業者にとっては明確である。
請求人が不明確であると主張する、請求項1に記載される「短尺コーナー材」については、訂正明細書の段落【0011】の記載から、長さが1000〜1800mmの範囲の寸法からなり、例えば長さを1300mmの寸法とするコーナー材であることが、当業者にとって明確である。
したがって、請求項1に記載される「市販のコーナー材」、「小型の搬送用車両」、「横置き状態」、「通常のパテ施工」、「短尺コーナー材」の用語が不明確であるから、本件訂正発明1及び2に係る特許を無効とすべき旨をいう請求人の主張は、失当であり、本件訂正発明1及び2は明確である(審判事件答弁書第20頁第2行−第29頁下から5行、及び、令和2年9月3日提出の回答書第19頁第13行−第23頁最終行)。

オ 内装用短尺コーナー材の断面L字形状をなす第1側面と第2側面との幅寸法を相違させた場合に関して
訂正明細書の段落【0026】には、「また、この発明の実施例においては、前記内装用短尺コーナー材を形成する際に、幅寸法を例えば27mmとした第1側面と、この第1側面に対して略直交、かつ、同様の幅寸法を有する第2側面とによって断面L字形状に形成する構成としたが、第1側面と第2側面との幅寸法を相違させる形状とすることが可能である。」の記載の後に、「さすれば、密着性を確保する必要がある側に幅寸法の大なる側面を位置させることによって、前記内装用短尺コーナー材を取り付けた際の十分な密着性を確保することができ、その後の通常のパテ施工を含む内装仕上げの作業を行う前記第4工程を円滑に行うことができる。」と記載している。同段落の後半部において、「密着性を確保する必要がある側に幅寸法の大なる側面を位置させる」と記載していることから、訂正明細書の段落【0026】には、断面L字形状の第1側面と第2側面との幅寸法を相違させた内装用短尺コーナー材を用いる場合に、密着性を確保する必要がある側では、第1側面と第2側面のうち、幅寸法の大きい側面を位置させて接合させることが示されているのであって、請求人が主張するように、接合箇所付近に複雑な段差を生じさせることは記載されていない。
そのため、本件訂正発明1及び2について、接合箇所付近に複雑な段差が生じるにも拘わらず、十分な密着性を確保して隙間の発生を防止する発明特定事項が不足しており、本件訂正発明1及び2は特許法第36条第6項第2号の規定に違反している旨を言う、請求人の主張は、失当である(令和2年10月5日提出の上申書第3頁下から7行−第6頁第11行)。

(3)無効理由3;実施可能要件について
ア 接合に関して
訂正明細書において、「接合」の語は、いずれも、内装用短尺コーナー材の端部の端面同士をつなぎ合わせることを意味するよう、統一しており、「接合」と「接続」の技術的意味は棲み分けられている。そして、訂正明細書における「接合」の技術的意味は明確であり、「接合」に関する記載が抽象的又は機能的であるということもない。
また、訂正明細書で述べている発明の効果は、内装用短尺コーナー材の端面同士を接合する際に、カット面の端面を接合すると、ハサミの入れ方によって平端面同士がぴったり合致せず、平坦面同士に隙間が生じる場合がある一方、内装用短尺コーナー材の工場出荷時の端面同士を接合すれば、端部の平坦面同士はぴったり合致して、平坦面同士の隙間は生じないことを示しているものであり、コーナー材の端部のうち孔の部分の議論をしているのではなく、端部のうち平坦面同士の密着、隙間無しの議論をしているのである。そのため、コーナー材の端部に孔部の一部である切欠きがあるか否かにかかわらず、カット面を対峙しないように反転させて接合することにより、発明の効果を得ることが、発明の詳細な説明には記載されている。
したがって、本件訂正発明1及び2における「接合」について、発明の詳細な説明の記載は、不明瞭ではなく、効果を得るために具現すべき事項も当業者は理解できるから、この点に関する請求人の主張は、失当である(審判事件答弁書第9頁下から4行−第12頁第1行、及び、令和2年9月3日提出の回答書第10頁第11行−第12頁第11行)。

イ コーナー材の端部に関して
訂正明細書で述べている発明の効果は、内装用短尺コーナー材の端面同士を接合する際に、カット面の端面を接合すると、ハサミの入れ方によって平端面同士がぴったり合致せず、平坦面同士に隙間が生じる場合がある一方、内装用短尺コーナー材の工場出荷時の端面同士を接合すれば、端部の平坦面同士はぴったり合致して、平坦面同士の隙間は生じないことを示しているものであり、訂正明細書は、コーナー材の端部における切欠きの有無を問題としていないことが明らかである。
したがって、本件発明の詳細な説明は、本件訂正発明1及び2に含まれる一部の下位概念を除いては、隙間なく密着させ従来と遜色ない施工とするという、発明の効果を得ることができるだけの記載がされていないものではないから、この点に関する請求人の主張は、失当である(審判事件答弁書第15頁第4行−第16頁下から8行、及び、令和2年9月3日提出の回答書第15頁下から3行−第17頁第3行)。

ウ 3本以上の内装用短尺コーナー材を用いる場合に関して
訂正明細書の段落【0025】及び【図6】において、内装用短尺コーナー材を3本使用する場合について説明しており、【図6】の符号Gに示すとおり、内装用短尺コーナー材を3本使用する場合にも、オーバーラップする部分は、1箇所のみである。内装用短尺コーナー材を4本以上使用する場合にも、オーバーラップする部分は、1箇所のみである。そのため、内装用短尺コーナー材が何本であっても、2本の場合と同様に、オーバーラップする1箇所を切除し、切除した内装用短尺コーナー材を反転させて端部同士を接合することは、当業者が容易に理解できる。
したがって、本件発明の詳細な説明は、内装用短尺コーナー材が3本及び4本以上の場合について、個々の技術的手段の相互関係が不明瞭なものではなく、この点に関する請求人の主張は、失当である(審判事件答弁書第18頁第6行−第20頁第1行、及び、令和2年9月3日提出の回答書第18頁第13行−第19頁第12行)。

エ 抽象的な記載に関して
上記(2)エにおける明確性についての反論と同様に、訂正明細書の発明の詳細な説明には、「市販のコーナー材」、「小型の搬送用車両」、「横置き状態」、「通常のパテ施工」、「短尺コーナー材」について、当業者にとって正確に把握可能に記載しており、これらの点についての説明は明瞭である。そのため、これらの点に関する請求人の主張は、失当である(審判事件答弁書第29頁下から4行−第30頁下から2行、及び、令和2年9月3日提出の回答書第24頁第1行−同頁下から3行)。

オ 「十分な密着性を確保して隙間の発生を防止することができる」効果に関して
訂正明細書の段落【0008】に記載する、「十分な密着性を確保して隙間の発生を防止することができる」という発明の効果について、段落【0016】及び図1(b)の記載も参酌すれば、段落【0008】で言及する「隙間」及び「密着性」とは、接合する内装用短尺コーナー材の端部の端面と端面との間の「隙間」及び「密着性」について記載していることが明らかである。
したがって、訂正明細書の段落【0008】に記載される「隙間」及び「密着性」の効果に関して、技術的手段の相互関係が不明瞭であるということはなく、この点に関する請求人の主張は、失当である(審判事件答弁書第30頁最終行−第33頁第1行、及び、令和2年9月3日提出の回答書第24頁下から2行−第27頁第2行)。

カ 「従来の施工方法と何ら遜色なく完成させることができる」効果に関して
訂正明細書の段落【0008】に記載する、「従来の施工方法と何ら遜色なく完成させることができる」という発明の効果について、段落【0017】の記載を参酌すれば、段落【0008】で言及する「完成させることができる」とは、内装仕上げを完成させることができる意味であり、「遜色なく」とは、従来の施工すなわち従前の長尺のコーナー材を使用した施工と比較して遜色ない意味であることが、理解できる。
したがって、訂正明細書の段落【0008】に記載される発明の効果について、対応する技術的手段の説明が不明瞭ということはなく、この点についての請求人の主張は、失当である(審判事件答弁書第33頁第2行−第35頁下から8行、及び、令和2年9月3日提出の回答書第27頁第3行−同頁最終行)。

キ 内装用短尺コーナー材の断面L字形状をなす第1側面と第2側面との幅寸法を相違させた場合に関して
訂正明細書の段落【0026】には、上記(2)オに説明したとおり、コーナー材の端部の接合箇所付近に、複雑な段差を生じさせることは記載されていない。
そのため、訂正明細書の段落【0026】に記載される、内装用短尺コーナー材の断面L字形状をなす第1側面と第2側面との幅寸法を相違させた場合について、端部の接合箇所付近に複雑な段差が生じることを前提として、発明の詳細な説明には、隙間なく密着し従来と遜色ない施工を完成するという発明の効果を得るように、本件訂正発明1及び2を実施可能な説明がなされていない旨をいう、請求人の主張は、失当である(令和2年10月5日提出の上申書第6頁第12行−第7頁第9行)。

ク 内装用短尺コーナー材の中間部位の幅寸法を異ならせた場合に関して
訂正明細書の段落【0026】における、内装用短尺コーナー材の「一方の側面の幅寸法を全て変更する構成のみでなく、中間部位などの少なくとも一部の幅寸法を変更することも一部の幅寸法を変更する実施例の場合」との記載は、長手方向における端部ではなく、中間部位の幅寸法を変更する記載である。
そのため、内装用短尺コーナー材の中間部位に関する段落【0026】の記載を根拠に、長手方向に隣接するコーナー材の端部が密着せず、隙間が発生している構成と同様となるとして、発明の詳細な説明には、隙間なく密着し従来と遜色ない施工を完成するという発明の効果を得るように、本件訂正発明1及び2を実施可能な説明がなされていない旨をいう、請求人の主張も、失当である(令和2年10月5日提出の上申書第7頁第10行−第8頁最終行)。


第6 当審の判断
1 無効理由1;サポート要件について
(1)サポート要件の判断基準、及び判断基準に従っての判断
ア サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり、サポート要件の存在は、特許権者が証明責任を負う。

イ 本件訂正発明の課題、及び、本件訂正発明の効果
訂正明細書の段落【0004】−【0006】に記載される、発明が解決しようとする課題は、
(ア)長さが2500mm程度の長尺なコーナー材を用いると搬送コストが嵩む、
及び、
(イ)一般的な日本家屋の場合に2000mm〜2300mm程度となる床側の幅木と天井との間に、長尺なコーナー材はそのまま取り付けることができず、長尺なコーナー材をカットする際に、測定用のメジャーを使用して測定を行う作業工程が増加するため、作業効率が悪い、
という2点である。
そして、訂正明細書の段落【0008】に記載される発明の効果は、
「(1)内装用短尺コーナー材を使用することによって、搬送を容易として、車両の準備費用や燃費などを含めた搬送コストを低減することができるとともに、搬送効率を向上させることができる。
(2)内装用短尺コーナー材を使用することによって、メジャーを使用しなくとも、容易に施工することができ、作業効率を向上させることができる。
(3)内装用短尺コーナー材の端部のカット面を対峙させないように接合することによって、十分な密着性を確保して隙間の発生を防止することができる。
(4)内装用短尺コーナー材を接合した後に、内装用短尺コーナー材の表面に通常のパテ施工を含む内装仕上げを行うため、従来の施工と何ら遜色なく完成させることができる。」
というものである。

ウ 本件訂正発明と、課題及び効果との関係
(ア)本件訂正発明が有する構成
本件訂正発明1及び2は、上記第3の1に認定したとおりのものであり、本件訂正発明1及び2は、本件訂正発明1が有する「第1工程」ないし「第4工程」の各工程を含むものである。

(イ)本件訂正発明と、上記イ(ア)及び(イ)の課題、及び段落【0008】の「(1)」及び「(2)」の効果との関係
発明が解決しようとする課題のうち、上記イ(ア)の課題、及び、発明の効果のうち、段落【0008】に記載される「(1)」の効果は、本件訂正発明1及び2が有する、「市販のコーナー材よりも短尺に形成した内装用短尺コーナー材を、小型の搬送用車両に横置き状態に積層して所定の作業場所まで搬送する第1工程」という構成により、課題が解決され、かつ効果が得られるものと、理解することができる。
発明が解決しようとする課題のうち、上記イ(イ)の課題、及び、発明の効果のうち、段落【0008】に記載される「(2)」の効果は、本件訂正発明1及び2が有する、「所定の作業場所の床側の幅木と天井との間に、少なくとも2本の前記内装用短尺コーナー材を直線上にセットし、これらの内装用短尺コーナー材のオーバーラップ部分を切除する第2工程」という工程により、課題が解決され、かつ効果が得られるものと、理解することができる。

(ウ)本件訂正発明と、段落【0008】の「(3)」の効果との関係
訂正明細書の段落【0008】に記載される、「(3)」の効果は、訂正明細書の段落【0004】−【0006】に記載される発明が解決しようとする課題と直接対応するものではないが、「内装用短尺コーナー材の端部のカット面を対峙させないように接合することによって、」と記載されていることから、本件訂正発明1及び2に記載される、「少なくとも前記内装用短尺コーナー材の端部のカット面を対峙させないように接合する第3工程」に対応する効果であると、理解することができる。
また、当該段落【0008】の「(3)」の記載が、「内装用短尺コーナー材の端部のカット面を対峙させないように接合することによって、十分な密着性を確保して隙間の発生を防止することができる。」という記載であることから、段落【0008】の「(3)」において言及する「隙間」とは、「内装用短尺コーナー材の端部のカット面を対峙させないように接合すること」によって「発生を防止」することができる「隙間」であり、「内装用短尺コーナー材の端部のカット面」を「対峙」させた場合に生じることが予想される「隙間」を意味するものと、当業者であれば理解することができる。同様に、同段落【0008】の「(3)」で言及する「十分な密着性を確保」についても、「内装用短尺コーナー材の端部のカット面」を「対峙」させた場合に比較して、「十分な密着性を確保」することができる趣旨であると、当業者であれば理解することができる。
これに反して、訂正明細書の段落【0008】の「(3)」で言及する「隙間」について、「内装用短尺コーナー材の端部のカット面」を「対峙」させるか否かと無関係に生じる隙間を意味することを示す記載は、訂正明細書のその他の段落を参照しても、見いだすことができない。同様に、訂正明細書の段落【0008】の「(3)」で言及する「十分な密着性を確保」について、「内装用短尺コーナー材の端部のカット面」を「対峙」させないことにより、「内装用短尺コーナー材の端部のカット面」を「対峙」させた場合よりも「十分な密着性を確保」できることを意味するものではなく、内装用短尺コーナー材の端部の面全体について、密着しない箇所が全く存在しないことを意味することを示す記載も、訂正明細書のいずれの箇所にも見いだすことができない。
したがって、訂正明細書の段落【0008】に記載される「(3)」の効果は、「内装用短尺コーナー材の端部のカット面を対峙させないように接合すること」で得られる、「十分な密着性を確保して隙間の発生を防止することができる」という効果である。そして、当該効果は、本件訂正発明1及び2が有する、「所定の作業場所の床側の幅木と天井との間に、少なくとも2本の前記内装用短尺コーナー材を直線上にセットし、これらの内装用短尺コーナー材のオーバーラップ部分を切除する第2工程」によって切除した「カット面」について、「前記内装用短尺コーナー材の端部を突き合わせる際に、オーバーラップ部分を切除したカット面を対峙しないように反転させ、少なくとも前記内装用短尺コーナー材の端部のカット面を対峙させないように接合する第3工程」という構成により、合理的に得ることができる効果であると、当業者は理解することができる。

(エ)本件訂正発明と、段落【0008】の「(4)」の効果との関係
訂正明細書の段落【0008】に記載される、「(4)」の効果は、訂正明細書の段落【0004】−【0006】に記載される発明が解決しようとする課題と直接対応するものではないが、「内装用短尺コーナー材を接合した後に、内装用短尺コーナー材の表面に通常のパテ施工を含む内装仕上げを行うため、」と記載されていることから、本件訂正発明1及び2に記載される、「前記内装用短尺コーナー材を接合した後に、内装用短尺コーナー材の表面に通常のパテ施工を含む内装仕上げを行う第4工程」に対応する効果であると、理解することができる。
また、訂正明細書の段落【0008】の「(4)」の記載は、「(3)」の記載に続いて「(4)内装用短尺コーナー材を接合した後に、内装用短尺コーナー材の表面に通常のパテ施工を含む内装仕上げを行うため、従来の施工と何ら遜色なく完成させることができる。」と記載するものであることから、「(3)」で言及する「内装用短尺コーナー材の端部のカット面を対峙させないように接合」した後に「(4)」で言及する「内装用短尺コーナー材の表面に通常のパテ施工を含む内装仕上げを行う」ことによって、可能な効果として、「従来の施工と何ら遜色なく完成させることができる」ことを示すものであると、当業者は理解することができる。
これに反して、訂正明細書の段落【0008】の「(4)」に記載される効果について、「内装用短尺コーナー材の端部のカット面を対峙させないように接合」した後に「内装用短尺コーナー材の表面に通常のパテ施工を含む内装仕上げを行う」ことでは得ることができない、特別な完成度の内装仕上げを完成する効果を意味することを示す記載は、訂正明細書のいずれの箇所にも見いだすことができない。
したがって、訂正明細書の段落【0008】に記載される「(4)」の効果は、「内装用短尺コーナー材の端部のカット面を対峙させないように接合」した後に「内装用短尺コーナー材の表面に通常のパテ施工を含む内装仕上げを行う」ことで得られる、「従来の施工と何ら遜色なく完成させることができる」という効果である。そして、当該効果は、本件訂正発明1及び2が有する、「前記内装用短尺コーナー材の端部を突き合わせる際に、オーバーラップ部分を切除したカット面を対峙しないように反転させ、少なくとも前記内装用短尺コーナー材の端部のカット面を対峙させないように接合する第3工程」、及び、「前記内装用短尺コーナー材を接合した後に、内装用短尺コーナー材の表面に通常のパテ施工を含む内装仕上げを行う第4工程」という構成により、合理的に得ることができる効果であると、当業者は理解することができる。

エ 小括
以上のとおり、本件訂正発明1及び2は、本件訂正発明1が有する「第1工程」ないし「第4工程」により、訂正明細書に記載される発明の課題を解決することができ、かつ訂正明細書に記載される発明の効果を奏するものであると、合理的に理解することができるものである。
したがって、本件訂正発明1及び2は、発明の詳細な説明の記載により、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。

(2)請求人の主張について
ア 接合に関して
請求人は、請求項1に記載される用語「接合」は、明細書の段落【0012】、及び本件訂正前の明細書の段落【0025】に記載される用語「接続」と不統一であり、その結果、本件訂正発明1及び2は、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載との対応関係が不明瞭となっているから、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしていない旨を主張している。
しかしながら、訂正明細書の段落【0012】の記載は、「断面L字形状に形成」されている「内装用短尺コーナー材1」について、「そして、前記内装用短尺コーナー材1を形成する際に、前記第1側面2と前記第2側面3とが接続する夫々の基端側端部2y、3yの厚みを、例えば0.7mmとする。」というものであるから、断面L字形状の内装用短尺コーナー材1が形成される段階において、断面L字形状をなす第1側面2と第2側面3との関係について、「接続」という語を用いるものである。そのため、訂正明細書の段落【0012】における「接続」という語の使用は、本件訂正発明1及び2における、施工の段階における内装用短尺コーナー材の端部についての「接合」という構成とは、無関係であり、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との間で不整合を生じるものではない。
また、本件訂正前の段落明細書の段落【0025】における「接続」の記載は、本件訂正により、「接合」の記載へと訂正されているから、訂正明細書の段落【0025】の記載が、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との間で不整合を生じるものでもない。
そして、本件訂正発明1及び2が、訂正明細書に記載される発明の課題を解決することができ、かつ訂正明細書に記載される発明の効果を奏するものであると、合理的に理解することができるものであることは、上記(1)に判断したとおりであり、請求人の主張について検討しても、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とが整合しないことに依拠して、上記(1)の判断を変更すべき事情は見いだせない。

イ コーナー材の端部に関して
請求人は、本件訂正発明1及び2における「コーナー材の端部」が、長手方向の端面に孔部の一部が臨む切欠きがある、切欠き端面である場合には、端部のうち切欠きが臨む部分においてはコーナー材が密着することができず、隙間を生じるから、訂正明細書の段落【0008】の「(3)」に記載される「密着」及び「隙間」なしという効果を達成できず、その結果同段落【0008】の「(4)」に記載される「遜色なく完成させる」という効果も達成できない旨を主張している。そして請求人は、訂正明細書の段落【0008】の「(3)」及び「(4)」に記載される発明の効果を考慮すれば、発明の詳細な説明に記載された課題を解決するための手段となる、「コーナー材の端部」がコーナー材の長手方向に垂直な平面状の平坦面である構成が、本件訂正発明1及び2には反映されていないので、本件訂正発明1及び2は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求している旨を主張している。
しかしながら、訂正明細書の段落【0008】における記載は、上記(1)ウ(ウ)及び(エ)に示したとおり、内装用短尺コーナー材の端部を突き合わせる際に、所定の作業場所においてオーバーラップ部分を削除した「カット面」を「対峙させないように」することで達成できる「密着」及び「隙間」なしという効果について記載するものであり、オーバーラップ部分の削除と無関係にコーナー材の端部の一部に形成されている切欠きの部分についてまで、コーナー材の端部を全面にわたって隙間なく密着させることを、発明の効果として記載するものではない。
そのため、本件訂正発明1及び2において、「コーナー材の端部」が長手方向に垂直な平面状の端面を有する平端面に限定されておらず、長手方向の端面に孔部の一部が臨む切欠き切欠き端面を含んでいるから、本件訂正発明1及び2は訂正明細書の段落【0008】に記載される「(3)」及び「(4)」の効果を達成できない範囲まで拡張されているとする、請求人の主張は、採用することができない。
そして、本件訂正発明1及び2が、訂正明細書に記載される発明の課題を解決することができ、かつ訂正明細書に記載される発明の効果を奏するものであると、合理的に理解することができるものであることは、上記(1)に判断したとおりであり、請求人の主張について検討しても、訂正明細書における段落【0008】に記載される発明の効果に依拠して、上記(1)の判断を変更すべき事情は見いだせない。

(3)サポート要件のまとめ
以上のとおり、本件訂正発明1及び2は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反するものではなく、請求人の主張について検討しても、当該判断を変更すべき事情はない。
したがって、本件訂正発明1及び2に係る特許は、特許法第123条第1項第4号の規定により、無効とされるべきものではない。

2 無効理由2;明確性要件について
(1)明確性要件の判断基準、及び判断基準に従っての判断
明確性要件の判断基準
特許法第36条第6項第2号は、特許請求の範囲の記載に関し、特許を受けようとする発明が明確でなければならない旨規定する。同号がこのように規定した趣旨は、仮に、特許請求の範囲に記載された発明が明確でない場合には、特許が付与された発明の技術的範囲が不明確となり、第三者の利益が不当に害されることがあり得るので、そのような不都合な結果を防止することにある。そして、特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から検討されるべきである。

イ 判断基準に従っての判断
本件訂正発明1は、上記第3の1に認定したとおり、「第1工程」ないし「第4工程」の4つの工程を有する「施工方法」の発明であり、各工程において用いられる用語、及び各工程の関係も、平易なものであって特段不明確なものではない。そのため、本件訂正発明1は、「施工方法」の発明全体として見た場合、第三者の利益を不当に害するほどに、発明が不明確というものではない。
そして、後記(2)に示すとおり、請求人が主張する個別の構成について検討しても、第三者に不測の不利益を生じさせる程に、本件訂正発明1が不明確となるような事情はない。
本件訂正発明2は、本件訂正発明1の構成を全て有したうえで、用いる「内装用短尺コーナー材」の長さの範囲を、具体的に数値で特定したものであるから、本件訂正発明1と同様に、第三者に不測の不利益を生じさせる程に発明が不明確なものではない。
したがって、本件訂正発明1及び2は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反するものではない。

(2)請求人の主張について
ア 接合に関して
請求人は、本件訂正発明1及び2において用いられる「接合」という語は、用語自体が不明確である旨を主張している。
しかしながら、「接合」という用語自体は一般的な用語であり、特段不明確なものではない。
また、本件訂正発明1及び2における「接合」という構成は、特許請求の範囲の請求項1の記載から、
(ア)「内装用短尺コーナー材による施工方法」において、「内装用短尺コーナー材の端部を突き合わせる際」に行われる「接合」
であり、かつ、
(イ)「所定の作業場所の床側の幅木と天井との間に、少なくとも2本の前記内装用短尺コーナー材を直線状にセットし、これらの内装用短尺コーナー材のオーバーラップ部分を切除する第2工程」を経たうえで、「オーバーラップ部分を切除したカット面を対峙しないように反転させ、少なくとも前記内装用短尺コーナー材の端部のカット面を対峙させないように」行われる「接合」
であるところ、上記(ア)及び(イ)の文脈において、「接合」という語が一般的な用語とは異なる特異な意味となるような事情はない。
そのため、本件訂正発明1及び2について、請求項1における用語「接合」は、請求人が主張するように、不明確な記載ではない。
また、請求人は「接合」という構成に関し、本件訂正発明1及び2は、訂正明細書の段落【0008】に記載される「(3)内装用短尺コーナー材の端部のカット面を対峙させないように接合することによって、十分な密着性を確保して隙間の発生を防止することができる。」という効果、及び、「(4)内装用短尺コーナー材を接合した後に、内装用短尺コーナー材の表面に通常のパテ施工を含む内装仕上げを行うため、従来の施工と何ら遜色なく完成させることができる。」という効果を得るために必要な構成を明確に特定していない旨も主張している。
しかしながら、訂正明細書の段落【0008】に記載される「(3)」及び「(4)」の効果は、上記1(1)ウ(ウ)及び(エ)に示したとおり、本件訂正発明1及び2が有する「第3工程」及び「第4工程」の構成により、合理的に得ることができると理解することができる効果である。そのため、本件訂正発明1及び2は、「接合」に関する構成として、請求人が主張するように、訂正明細書の段落【0008】に記載される発明の効果を得るための具体的な構成を特定していないものではない。
したがって、本件訂正発明1及び2は、「接合」という構成に関し、請求人が主張する点で不明確なものではない。

イ コーナー材の端部に関して
請求人は、明細書の段落【0008】に記載される、「(3)内装用短尺コーナー材の端部のカット面を対峙させないように接合することによって、十分な密着性を確保して隙間の発生を防止することができる。」という効果、及び、「(4)内装用短尺コーナー材を接合した後に、内装用短尺コーナー材の表面に通常のパテ施工を含む内装仕上げを行うため、従来の施工と何ら遜色なく完成させることができる。」という効果が得られるためには、コーナー材の突き合わせる端部の端面は、軸線方向に垂直であり、平面状である平端面でなければならないところ、本件訂正発明1及び2は「コーナー材の端部」について、端部の端面が軸線方向に垂直でかつ平面状である平端面であることを特定していないから、発明の効果を得るための具体的な構成を特定しておらず、不明確である旨を主張している。
しかしながら、訂正明細書の段落【0008】に記載される「(3)」及び「(4)」の効果は、上記1(1)ウ(ウ)及び(エ)に示したとおり、「内装用短尺コーナー材の端部のカット面を対峙させないように接合すること」、及び、「内装用短尺コーナー材を接合した後に、内装用短尺コーナー材の表面に通常のパテ施工を含む内装仕上げを行う」ことにより、達成される効果である。これに反して、訂正明細書の段落【0008】に記載される「(3)」の効果について、「内装用短尺コーナー材の端部のカット面」を「対峙」させるか否かと無関係に生じる隙間まで完全に無くす意味であること、あるいは、「内装用短尺コーナー材の端部」の全面について、密着しない箇所を完全に無くす意味であることを示す記載は、訂正明細書中に見いだすことができない。同様に、訂正明細書の段落【0008】に記載される「(4)」の効果について、「内装用短尺コーナー材の端部のカット面を対峙させないように接合」した後に「内装用短尺コーナー材の表面に通常のパテ施工を含む内装仕上げを行う」ことでは得ることができない、特別な完成度の内装仕上げを完成する効果を意味することを示す記載も、訂正明細書中に見いだすことができない。
そのため、本件訂正発明1及び2において、「コーナー材の端部」が長手方向に垂直な平面状の端面を有する平端面に限定されていないから、本件訂正発明1及び2は、訂正明細書の段落【0008】に記載される「(3)」及び「(4)」の効果を得るための具体的構成を特定していない旨をいう請求人の主張は、上記1(2)イで指摘したと同様に、採用することができない。

ウ 3本以上の内装用短尺コーナー材を用いる場合に関して
請求人は、本件訂正発明1及び2における「少なくとも2本の前記内装用短尺コーナー材を直線上にセットし、これらの内装用短尺コーナー材のオーバーラップ部分を切除する第2工程」、及び「前記内装用短尺コーナー材の端部を突き合わせる際に、オーバーラップ部分を切除したカット面を対峙しないように反転させ、少なくとも前記内装用短尺コーナー材の端部のカット面を対峙させないように接合する第3工程」について、3本及び4本以上のコーナー材では、どのようにオーバーラップ部分を形成し、どこを切除して、どこをどのように接合するのか、具体的に記載されていないから、発明特定事項が不足していることが明らかであり、発明が不明確である旨を主張している。
しかしながら、オーバーラップ部分を切除する箇所と接合する箇所について、本件訂正発明1及び2では、3本以上の内装用短尺コーナー材を用いる場合にも、「少なくとも前記内装用短尺コーナー材の端部のカット面を対峙させないように接合する第3工程」を行うのであるから、3本以上の内装用短尺コーナー材のうち、両端がいずれも他の内装用短尺コーナー材と対峙することとなる、中間部に配置する内装用短尺コーナー材については、「オーバーラップ部分を切除したカット面」を形成しないことが、明らかである。また、「床側」の端または「天井」側の端に配置する内装用短尺コーナー材についても、「第3工程」においては「オーバーラップ部分を切除したカット面を対峙しないように反転」させることで「少なくとも前記内装用短尺コーナー材の端部のカット面を対峙させない」ようにするのであるから、1つの内装用短尺コーナー材の両端をいずれも「カット面」とすることなく、片方の端部のみに「オーバーラップ部分を切除したカット面」を形成することは、明らかである。
そして、本件訂正発明1及び2において、「オーバーラップ部分を切除する第2工程」では、「所定の作業場所の床側の幅木と天井との間に、少なくとも2本の前記内装用短尺コーナー材を直線上にセット」したうえで、「これらの内装用短尺コーナー材のオーバーラップ部分を切除する」ものであるから、3本以上の内装用短尺コーナー材を用いる場合にも、「オーバーラップ部分」の「切除」は、基本的に1本の内装用短尺コーナー材の1箇所で足り、「オーバーラップ部分」の「切除」を行う箇所を複数設ける必要がないことは、明らかである。なお、内装用短尺コーナー材のオーバーラップ部分の切除が、基本的に1本の内装用短尺コーナー材の1箇所のみで足りることについては、「所定の作業場所の床側の幅木と天井との間」の距離、及び、内装用短尺コーナー材の長さに応じて、用いる内装用短尺コーナー材が、2本となる場合と、3本以上となる場合とで、事情が変わるものではない。訂正明細書の段落【0025】及び【図6】にも、3本の内装用短尺コーナー材を用いる場合について、オーバーラップ部分の切除が、2本の内装用短尺コーナー材を用いる【図1】(a)の場合と同様に、1箇所のみで足りることが示されている。
したがって、本件訂正発明1及び2は、「少なくとも2本の前記内装用短尺コーナー材」として、3本以上の内装用短尺コーナー材を用いる場合についても、オーバーラップ部分の形成と切除、及びどこをどのように接合するかは、「第2工程」及び「第3工程」の全体から明確に理解することができるものであり、この点について請求人が主張するように発明が不明確ということはない。

エ 発明の範囲を曖昧とする記載に関して
(ア)「市販のコーナー材」について
請求人は、特許請求の範囲の請求項1に記載される「市販のコーナー材」は、発明の詳細な説明及び技術常識を参酌しても、その範囲が明確に定まらないから、本件訂正発明1及び2は不明確である旨を主張している。
本件訂正発明1及び2は、「内装用短尺コーナー材による施工方法」の発明であり、「市販のコーナー材」は、本件訂正発明1及び2の「内装用短尺コーナー材による施工方法」において直接使用するものではない。特許請求の範囲の請求項1において、「市販のコーナー材」は、「内装用短尺コーナー材」を説明するうえで、「市販のコーナー材よりも短尺に形成した」と記載されているものである。
また、「市販のコーナー材」について、訂正明細書の【発明が解決しようとする課題】の欄には、段落【0004】に、「従来のコーナー材による施工方法においては、長さが2500mmのコーナー材を使用していた。」と記載されており、段落【0005】に、「所定の作業場所の床側の幅木と天井との間の距離が、一般的な日本家屋の場合、2000〜2300mm程度のなるため、長尺なコーナー材をそのまま取り付けることができず、メジャーによって所定の作業場所の床側の幅木と天井との間の距離を測定した後に、この測定した距離に合致するように長尺なコーナー材をカットする必要があった。」と記載されている。そのうえで、訂正明細書の【課題を解決するための手段】の欄には、段落【0007】に「市販のコーナー材よりも短尺に形成した内装用短尺コーナー材」を用いることが、記載されている。
これらの記載を参酌すれば、本件訂正発明1に記載される「市販のコーナー材」としては、長さが2500mm程度であり、一般的には2000mm〜2300mm程度である日本家屋の床側の幅木と天井との間にそのまま取り付けることができない長さの、従来のコーナー材が想定されているものと、当業者であれば理解することができる。
そして、本件訂正発明1及び2の施工方法に用いる「内装用短尺コーナー材」について、「小型の搬送用車両に横置き状態に積層して所定の作業場所まで搬送する」ことが可能であり、また「所定の作業場所の床側の幅木と天井との間に、少なくとも2本の前記内装用短尺コーナー材を直線上にセットし、これらの内装用短尺コーナー材のオーバーラップ部分を切除する」ことが可能であるという機能面からの特定に加えて、「市販のコーナー材よりも短尺に形成した」との説明を併せて記載したことによって、本件訂正発明1が、第三者に不測の不利益を生じさせる程に不明確になるという事情はない。本件訂正発明2については、「内装用短尺コーナー材」の長さの範囲を直接特定していることもあり、「内装用短尺コーナー材」の説明として「市販のコーナー材よりも短尺に形成した」との記載が存在するからといって、発明が不明確となるものではない。
したがって、本件訂正発明1及び2について、請求項1における「市販のコーナー材」の記載から、発明が不明確となるものではない。

(イ)「短尺コーナー材」について
請求人は、特許請求の範囲の請求項1に記載される「短尺コーナー材」は、発明の詳細な説明及び技術常識を参酌しても、その範囲が明確に定まらないから、本件訂正発明1及び2は不明確である旨を主張している。
請求項1に記載されているのは、「短尺コーナー材」ではなく「内装用短尺コーナー材」であるところ、「内装用短尺コーナー材」の長さがどの程度であるかについては、請求項1の記載から、「小型の搬送用車両に横置き状態に積層して所定の作業場所まで搬送する」ことが可能であること、また「所定の作業場所の床側の幅木と天井との間に、少なくとも2本の前記内装用短尺コーナー材を直線上にセットし、これらの内装用短尺コーナー材のオーバーラップ部分を切除する」ことが可能であること、及び、「市販のコーナー材よりも短尺に形成した」ことを、当業者は理解することができる。
さらに、訂正明細書の段落【0004】において、「従来のコーナー材」として長さ2500mmのコーナー材が例示されており、「内装用短尺コーナー材」は長さ2500mmの従来のコーナー材より短いと理解できる。また、同段落【0004】において、長さ2500mmの従来のコーナー材を横置き状態に収容可能な車両として、「1ボックスタイプの車両」や「バンタイプの車両」が例示されていることから、「内装用短尺コーナー材」は、「1ボックスタイプの車両」や「バンタイプの車両」より小型の搬送用車両に、「横置き状態に積層」できる長さと理解することができる。また、同段落【0005】において、一般的な日本家屋の場合に、床側の幅木と天井との間の距離は2000mm〜2300mmであると説明されており、「内装用短尺コーナー材」は、このような一般的な日本家屋の床側の幅木と天井との間に、そのまま取り付けることができる長さであると、理解することができる。これら訂正明細書の記載を勘案すると、本件訂正発明1における「内装用短尺コーナー材」がどの程度「短尺」であるかは、請求項1において長さの範囲を数値範囲で明記していなくとも、請求項1の記載及び訂正明細書の記載から合理的に理解できるものであり、第三者に不測の不利益を生じさせる程に不明確というものではない。
また、本件訂正発明2は、「内装用短尺コーナー材」の長さを直接数値範囲で特定しており、その点からも、「内装用短尺コーナー材」がどの程度「短尺」であるかについて、不明確なものではない。
したがって、本件訂正発明1及び2は、請求項1における「内装用短尺コーナー材」の「短尺」という記載から、発明が不明確となるものではない。

(ウ)「小型の搬送用車両」について
請求人は、特許請求の範囲の請求項1に記載される「小型の搬送用車両」は、発明の詳細な説明及び技術常識を参酌しても、その範囲が明確に定まらないから、本件訂正発明1及び2は不明確である旨を主張している。
「小型の搬送用車両」という用語は、「搬送用車両」であって「小型」のものであることが明らかであり、特段の定義がなければ当業者が理解できないものではない。また、訂正明細書の段落【0004】において、「従来のコーナー材」である「長さが2500mmのコーナー材」を「横置き状態に収容」するために、「1ボックスワゴンタイプの車両やバンタイプの車両を使用する必要があった。」と記載されていることから、本件訂正発明1及び2における「小型の搬送用車両」としては、「長さが2500mmのコーナー材」を「横置き状態に収容可能」である「1ボックスワゴンタイプの車両やバンタイプの車両」に比較して、小型の車両が想定されていると、当業者は理解することができる。そして、本件訂正発明1及び2における「内装用短尺コーナー材」は、上記(イ)に示したとおり、「短尺」の程度につき特段不明確ではないところ、本件訂正発明1及び2における「小型の搬送用車両」は、請求項1の記載から、本件訂正発明1及び2における「内装用短尺コーナー材」を「横置き状態に積層して所定の作業場所まで搬送する」ことができるものである。
これらのことからすれば、本件訂正発明1及び2における「小型の搬送用車両」が、どのような車両であるかは、当業者が合理的に理解することができるものである。そして、この点につき、第三者に不測の不利益を生じさせる程に、本件訂正発明1及び2が不明確となるといった事情はない。
したがって、本件訂正発明1及び2は、請求項1における「内装用短尺コーナー材」の「短尺」という記載から、発明が不明確となるものではない。

(エ)「横置き状態」について
請求人は、特許請求の範囲の請求項1に記載される「横置き状態」は、発明の詳細な説明及び技術常識を参酌しても、その意味が明確に定まらないから、本件訂正発明1及び2は不明確である旨を主張している。
請求項1における「横置き状態」に関する記載は、「市販のコーナー材よりも短尺に形成した内装用短尺コーナー材を、小型の搬送用車両に横置き状態に積層して所定の作業場所まで搬送する」、というものである。当該請求項1の記載から、「横置き状態」とは、「市販のコーナー材よりも短尺に形成した内装用短尺コーナー材」を「小型の搬送用車両」により「所定の作業場所まで搬送する」際の状態であり、かつ、当該「内装用短尺コーナー材」を「積層」した際の状態であると、当業者であれば理解することができる。また、搬送対象物である「内装用短尺コーナー材」を「小型の搬送用車両」で「搬送」するときの状態であることからすれば、垂直方向に立て掛けた不安定な状態ではなく、横に寝かせた安定な、かつ積層可能な状態とすることは、きわめて自然な選択であるところ、請求項1における記載が「横置き」と「積層」を組み合わせた「横置き状態に積層して」というものであることも勘案すれば、請求項1における「横置き状態」とは、内装用短尺コーナー材を横に寝かせて、積層可能とした状態であることが、明確である。
この点に関し、請求人は甲第1号証を提出し、クルマ用語として「横置き」とは、車の進行方向に対して直角な車幅方向に向けることが、用語の有する普通の意味であるから、請求項1における「横置き状態」を寝かせておいた状態と解することはできない旨も、主張している。
しかしながら、甲第1号証は、車のカタログ等における「横置きエンジン」の語が、車両に据え付けられるエンジンについて、エンジンのクランク軸の方向を車両の進行方向に対して横向きとされていることを意味する旨を説明しているものであって、搬送の際に一時的に搬送用車両に乗せる荷物について、「横置き」の語が車幅方向に向ける意味であることを示すものではない。そして、上述したとおり、請求項1に記載される「市販のコーナー材よりも短尺に形成した内装用短尺コーナー材を、小型の搬送用車両に横置き状態に積層して所定の作業場所まで搬送する」における「横置き状態」とは、内装用短尺コーナー材を積層可能に寝かせて置いた状態の意味であることが、明確である。
したがって、本件訂正発明1及び2は、請求項1における「横置き状態」という記載から、発明が不明確となるものではない。

(オ)「通常のパテ施工」について
請求人は、特許請求の範囲の請求項1に記載される「通常のパテ施工」は、発明の詳細な説明及び技術常識を参酌しても、その意味が明確に定まらないから、本件訂正発明1及び2は不明確である旨を主張している。
請求項1における「通常のパテ施工」に関する記載は、「前記内装用短尺コーナー材を接合した後に、内装用短尺コーナー材の表面に通常のパテ施工を含む内装仕上げを行う」、というものである。当該請求項1の記載から、「通常のパテ施工」とは、「内装用短尺コーナー材の表面」に「内装仕上げ」として行われる「パテ施工」であり、当該「パテ施工」に「通常の」という語が付記されているものである。そして、「内装用短尺コーナー材の表面」に「内装仕上げ」として行われる「パテ施工」とは、「内装用短尺コーナー材の表面」に「内装仕上げ」を施す「施工」のうち、「パテ」を用いた「施工」であることが明らかであるから、当該「パテ施工」の意味は、当業者であれば十分に理解することができる。また、「通常」とは、「普通であること。なみ。通例。」(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)という意味であるから、「パテ施工」の前に「通常の」という語が付記されたことによって、請求項1に記載される「前記内装用短尺コーナー材を接合した後に、内装用短尺コーナー材の表面に通常のパテ施工を含む内装仕上げを行う」という文脈における「パテ施工」の意味が、第三者に不測の不利益を生じさせる程に不明確となるような事情はない。
したがって、本件訂正発明1及び2は、請求項1における「通常のパテ施工」という記載から、発明が不明確となるものではない。

オ 内装用短尺コーナー材の断面L字形状をなす第1側面と第2側面との幅寸法を相違させた場合に関して
請求人は、明細書の段落【0026】には、「また、この発明の実施例においては、前記内装用短尺コーナー材を形成する際に、幅寸法を例えば27mmとした第1側面と、この第1側面に対して略直交、かつ、同様の幅寸法を有する第2側面とによって断面L字形状に形成する構成としたが、第1側面と第2側面との幅寸法を相違させる形状とすることが可能である。」と記載されているところ、内装用短尺コーナー材の端部を突き合わせて接合する際に、幅寸法の異なる第1側面と第2側面とを端部で接合すると、接合箇所付近で比較的複雑な段差が生じ、明細書の段落【0008】に記載される「十分な密着性を確保して隙間の発生を防止することができる。」という効果、及び、「従来の施工と何ら遜色なく完成させることができる。」という効果を得ることができないと主張している。そして、請求項1及び2においては、内装用短尺コーナー材の断面L字形状をなす第1側面と第2側面との幅寸法を相違させた場合について、接合箇所付近で生じる複雑な段差に拘わらず、十分な密着性を確保して隙間の発生を防止し、従来の施工と遜色ない仕上げを行うという効果を達成するために必要な発明特定事項が、不足している旨を主張している。
しかしながら、訂正明細書の段落【0026】には、「また、この発明の実施例においては、前記内装用短尺コーナー材を形成する際に、幅寸法を例えば27mmとした第1側面と、この第1側面に対して略直交、かつ、同様の幅寸法を有する第2側面とによって断面L字形状に形成する構成としたが、第1側面と第2側面との幅寸法を相違させる形状とすることが可能である。」の記載の後に、「さすれば、密着性を確保する必要がある側に幅寸法の大なる側面を位置させることによって、前記内装用短尺コーナー材を取り付けた際の十分な密着性を確保することができ、その後の通常のパテ施工を含む内装仕上げの作業を行う前記第4工程を円滑に行うことができる。」と記載されている。同段落の後半部において、「密着性を確保する必要がある側に幅寸法の大なる側面を位置させる」と記載していることから、訂正明細書の段落【0026】には、断面L字形状の第1側面と第2側面との幅寸法を相違させた内装用短尺コーナー材を用いる場合にも、密着性を確保する必要がある側では、第1側面と第2側面のうち、幅寸法の大きい側面を位置させて接合させることが示されているのであって、請求人が主張するように、接合箇所付近において、断面L字形状のうち幅寸法が異なる第1側面と第2側面とを対峙させて、段差を生じさせることは、直接的には記載されていない。
また、上記1(1)ウ(ウ)及び(エ)にも示したとおり、訂正明細書の段落【0008】における「密着性を確保」及び「隙間の発生を防止」という効果の記載は、「内装用短尺コーナー材の端部のカット面を対峙させないように接合すること」により達成される効果の説明であり、「内装用短尺コーナー材の端部のカット面」を「対峙」させるか否かと無関係に生じる隙間まで完全に無くすこと、あるいは、「内装用短尺コーナー材の端部」の全面について、密着しない箇所を完全に無くすことを意味するものではない。そのため、「内装用短尺コーナー材」を接合する端部の端面に、内装用短尺コーナー材の断面寸法に依拠して、「内装用短尺コーナー材の端部のカット面」を「対峙」させるか否かとは無関係に密着しない部分が一部生じる場合があるとしても、本件訂正発明1及び2について、訂正明細書の段落【0008】における効果の記載から、発明に不可欠な構成が欠如しているという不備が生じるものではない。

(3)明確性要件のまとめ
以上のとおり、本件訂正発明1及び2は、第三者に不測の不利益を生じさせる程に発明が不明確なものではなく、請求人の主張について検討しても当該判断を変更すべき事情はないから、本件訂正発明1及び2に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。
したがって、本件訂正発明1及び2に係る特許は、特許法第123条第1項第4号の規定により、無効とされるべきものではない。

3 無効理由3;実施可能要件について
(1)実施可能要件の判断基準、及び判断基準に従っての判断
実施可能要件の判断基準
特許法第36条第4項第1号は、発明の詳細な説明には、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に、明確かつ十分な説明を記載しなければならない旨を規定するところ、実施可能要件を充足するためには、明細書の発明の詳細な説明に、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度に発明の説明が記載されていることを要する。

イ 判断基準に従っての判断
本件訂正発明1は、上記第3の1に認定したとおり、「第1工程」ないし「第4工程」の4つの工程を有する「施工方法」の発明であるところ、発明の詳細な説明の記載は、上記第3の2(4)に摘記したとおり、第1工程ないし第4工程を含む実施例について具体的な説明を記載しているから、本件訂正発明1について、当業者であれば過度の試行錯誤を要することなく発明の実施をすることができるだけの説明を記載したものである。
そして、後記(2)に示すとおり、請求人が主張する個別の事項について検討しても、訂正明細書における発明の詳細な説明の記載は、当業者であっても本件訂正発明1を実施するうえで過度の試行錯誤を要することとなる不備を有するものではない。
本件訂正発明2は、本件訂正発明1において、用いる「内装用短尺コーナー材」の長さの範囲を具体的に数値で特定したものであるから、訂正明細書における発明の詳細な説明の記載は、本件訂正発明1と同様に、本件訂正発明2についても、当業者であれば過度の試行錯誤を要することなく発明の実施をすることができるだけの説明を記載したものである。
したがって、訂正明細書における発明の詳細な説明の記載は、本件訂正発明1及び2について、特許法第36条第4項第1号の規定に違反するものではない。

(2)請求人の主張について
ア 接合に関して
請求人は、訂正明細書の発明の詳細な説明における記載は、請求項1における用語「接合」について抽象的または機能的な説明しかしておらず、また「接合」の用語と訂正明細書の段落【0012】に記載される「接続」の用語との違いも不明確なものであるから、訂正明細書の発明の詳細な説明は、本件訂正発明1及び2における「接合」についての説明が不明瞭であり、当業者が実施をすることができる程度の説明を記載したものではない旨を主張している。
しかしながら、本件訂正発明1及び2における「接合」に関する構成を特定する請求項1の記載は、上記2(2)アに示したとおり明確であり、当該記載における「接合」の用語の意味も、一般的な用語の意味と特段変わるものではないから、「接合」に関する訂正明細書の段落【0007】、【0008】、【0016】、【0017】、【0022】、【0023】、【0025】等の説明についても、本件訂正発明1及び2を当業者が実施することができない程に機能的あるいは抽象的というものではない。また、上記1(2)アに示したとおり、訂正明細書における段落【0012】における「接続」との記載と、本件訂正発明1及び2における「接合」に関する構成とは無関係であるから、段落【0012】における「接続」の記載により、訂正明細書の発明の詳細な説明の記載が、本件訂正発明1及び2における「接合」に関する構成を、実施することができない程に、不備があるものとなることはない。
また請求人は、本件訂正発明1及び2における「接合」という構成に関し、訂正明細書の発明の詳細な説明における記載には、コーナー材の端部に孔部の一部である切欠きがある切欠き端面を接合し、切欠きの部分で接合部に隙間を生じることとなる場合について、訂正明細書の段落【0008】に「(3)」及び「(4)」として記載される発明の効果である、隙間なく密着させ従来と遜色ない施工とするという効果を得るように、実施することができるだけの説明が記載されていない旨も主張している。
しかしながら、上記1(1)ウ(ウ)及び(エ)に示したとおり、訂正明細書の段落【0008】の「(3)」及び「(4)」に記載される効果は、「内装用短尺コーナー材の端部のカット面」を「対峙」させないことにより、「内装用短尺コーナー材の端部のカット面」を「対峙」させた場合よりも「十分な密着性を確保」できること、及び、そのうえで通常のパテ施工を含む内装仕上げを行えば、従来と遜色ない内装仕上げを完成できることを示すものであり、本件訂正発明1及び2における「接合」に関する「第3工程」及び「第4工程」によって得られると合理的に理解できる効果を示すにとどまる。そして、訂正明細書の段落【0008】の「(3)」及び「(4)」の記載が、本件訂正発明1及び2の効果として、内装用短尺コーナー材の端部の面全体について、密着しない箇所が全く存在しないものとしなければならないことを示すような記載は、訂正明細書中には見いだすことができない。そのため、訂正明細書の段落【0008】における「(3)」及び「(4)」の記載から、訂正明細書の発明の詳細な説明が、発明の効果に関して、本件訂正発明1及び2を当業者が実施することができないこととなる不備を生じるものではない。
したがって、訂正明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件訂正発明1及び2における「接合」という構成に関し、請求人が主張する不備を有するものではなく、当業者が本件訂正発明1及び2を実施することができる程度の説明を記載したものである。

イ コーナー材の端部に関して
請求人は、本件訂正発明1及び2における「コーナー材の端部」という構成に関し、訂正明細書の発明の詳細な説明における記載には、コーナー材の端部に孔部の一部である切欠きがある切欠き端面を接合し、切欠きの部分で接合部に隙間を生じることとなる場合について、訂正明細書の段落【0008】に「(3)」及び「(4)」として記載される発明の効果である、隙間なく密着させ従来と遜色ない施工とするという効果を得ることができるだけの説明が記載されていないから、訂正明細書の発明の詳細な説明は、本件訂正発明1及び2を実施することができる程度の説明を記載したものではない旨を主張している。
しかしながら、上記1(1)ウ(ウ)及び(エ)に示し、上記アでも指摘したとおり、訂正明細書の段落【0008】の「(3)」及び「(4)」に記載される効果は、「内装用短尺コーナー材の端部のカット面」を「対峙」させないことにより、「内装用短尺コーナー材の端部のカット面」を「対峙」させた場合よりも「十分な密着性を確保」できること、及び、そのうえで通常のパテ施工を含む内装仕上げを行えば、従来と遜色ない内装仕上げを完成できることを示すものであり、本件訂正発明1及び2における「第3工程」及び「第4工程」によって得られると合理的に理解できる効果を示すにとどまる。そして、訂正明細書の段落【0008】の「(3)」及び「(4)」の記載が、本件訂正発明1及び2の効果として、内装用短尺コーナー材の端部の面全体について、密着しない箇所が全く存在しないものとしなければならないことを示すような記載は、訂正明細書中には見いだすことができない。そのため、訂正明細書の発明の詳細な説明は、訂正明細書の段落【0008】における「(3)」及び「(4)」の記載から、コーナー材の端部に切欠きがあって、端部の一部である切欠きの部分については、「カット面」を「対峙」させないこととは無関係な隙間が生じる場合について、本件訂正発明1及び2を当業者が実施することができないこととなる不備を生じるものではない。
したがって、訂正明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件訂正発明1及び2における「コーナー材の端部」という構成に関し、請求人が主張する不備を有するものではなく、当業者が本件訂正発明1及び2を実施することができる程度の説明を記載したものである。

ウ 3本以上の内装用短尺コーナー材を用いる場合に関して
請求人は、本件訂正発明1及び2における「少なくとも2本の前記内装用短尺コーナー材を直線上にセットし、これらの内装用短尺コーナー材のオーバーラップ部分を切除する第2工程」、及び「前記内装用短尺コーナー材の端部を突き合わせる際に、オーバーラップ部分を切除したカット面を対峙しないように反転させ、少なくとも前記内装用短尺コーナー材の端部のカット面を対峙させないように接合する第3工程」について、3本及び4本以上のコーナー材では、どのようにオーバーラップ部分を形成し、どこを切除して、どこをどのように接合するのか、訂正明細書の発明の詳細な説明において、当業者が実施できる程度の説明が記載されていない旨を主張している。
しかしながら、上記2(2)ウに指摘したとおり、本件訂正発明1及び2は、特許請求の範囲の請求項1及び2の記載として、内装用短尺コーナー材を3本以上用いる場合についても、オーバーラップ部分をどのように形成して当該オーバーラップ部分を切除したカット面を形成し、当該カット面を対峙しないように反転させた接合を行えばよいのか、合理的に理解可能な特定がされている。そのうえで、訂正明細書の段落【0025】及び【図6】には、3本の内装用短尺コーナー材を用いる場合について、オーバーラップ部分の切除が、2本の内装用短尺コーナー材を用いる【図1】(a)の場合と同様に、1箇所のみで足りることが、具体的に示されている。そして、4本以上の内装用短尺コーナー材を用いた場合にも、オーバーラップ部分の切除は、内装用短尺コーナー材を2本用いる場合及び3本用いる場合と同様に、基本的に1箇所のみで足りることを、当業者であれば十分に理解することができる。また、3本以上の内装用短尺コーナー材を用いた場合について、オーバーラップ部分をカットしたカット面を対峙しないように反転させた接合を、2本の内装用短尺コーナー材を用いた【図1】(b)の場合と同様に、行うことができることも、当業者であれば十分に理解することができる。
したがって、訂正明細書の発明の詳細な説明は、本件訂正発明1及び2における「少なくとも2本の前記内装用短尺コーナー材」として、3本以上の内装用短尺コーナー材を用いる場合についても、請求人が主張する不備を有するものではなく、当業者が本件訂正発明1及び2の実施をすることができる程度の説明を記載したものである。

エ 抽象的な記載に関して
請求人は、訂正明細書の発明の詳細な説明は、本件訂正発明1及び2における技術的手段としての「市販のコーナー材」、「小型の搬送用車両」、「横置き状態」、「通常のパテ施工」、「短尺コーナー材」について、発明の詳細な説明における記載が抽象的又は機能的であり、本件訂正発明1及び2の実施をすることができない旨を主張している。
しかしながら、上記2(2)エに指摘したとおり、本件訂正発明1及び2における「市販のコーナー材」、「小型の搬送用車両」、「横置き状態」、「通常のパテ施工」、「短尺コーナー材」は、訂正明細書及び特許請求の範囲の記載から、その意味を当業者が十分に理解することができるものであり、発明の詳細な説明における記載も、「市販のコーナー材」等についての説明が抽象的又は機能的に過ぎるということはなく、本件訂正発明1及び2を当業者が実施することができないような不備を生じているものではない。
したがって、訂正明細書の発明の詳細な説明は、本件訂正発明1及び2における「市販のコーナー材」、「小型の搬送用車両」、「横置き状態」、「通常のパテ施工」、「短尺コーナー材」について、請求人が主張する不備を有するものではなく、当業者が本件訂正発明1及び2の実施をすることができる程度の説明を記載したものである。

オ 「十分な密着性を確保して隙間の発生を防止することができる」効果に関して
請求人は、発明の詳細な説明の段落【0008】には、発明の効果として、「十分な密着性を確保して隙間の発生を防止することができる。」と記載されているが、「隙間」とは何と何との「隙間」であるのか、「密着性」とは何と何との「密着性」であるのか、具体的に記載されておらず、発明の効果に関する技術的手段相互の関係を明確に理解できるよう説明していないから、発明の詳細な説明は、本件訂正発明1及び2を実施することができる程度の記載がされたものではない旨を主張している。
しかしながら、請求人が言及する当該段落【0008】の記載は、「(3)内装用短尺コーナー材の端部のカット面を対峙させないように接合することによって、十分な密着性を確保して隙間の発生を防止することができる。」というものであるから、上記1(1)ウ(ウ)に示したとおり、当該段落【0008】の「(3)」において言及する「隙間」とは、「内装用短尺コーナー材の端部のカット面を対峙させないように接合すること」によって「発生を防止」することができる「隙間」であり、「内装用短尺コーナー材の端部のカット面」を「対峙」させた場合に生じることが予想される「隙間」を意味するものと、当業者であれば理解することができる。同様に、当該同段落【0008】の「(3)」で言及する「十分な密着性を確保」についても、「内装用短尺コーナー材の端部のカット面」を「対峙」させた場合に比較して、「十分な密着性を確保」することができる趣旨であると、当業者であれば理解することができる。
そして、訂正明細書の段落【0008】に記載される「(3)」の効果は、本件訂正発明1及び2が有する、「所定の作業場所の床側の幅木と天井との間に、少なくとも2本の前記内装用短尺コーナー材を直線上にセットし、これらの内装用短尺コーナー材のオーバーラップ部分を切除する第2工程」によって切除した「カット面」について、「前記内装用短尺コーナー材の端部を突き合わせる際に、オーバーラップ部分を切除したカット面を対峙しないように反転させ、少なくとも前記内装用短尺コーナー材の端部のカット面を対峙させないように接合する第3工程」という構成により、合理的に得ることができる効果であると、当業者は理解することができる。
そのため、訂正明細書の段落【0008】における「(3)」の記載は、本件訂正発明1及び2が有する、発明の効果を得るための構成について、技術的手段相互の関係を不明瞭とするものではなく、請求人が主張する不備を有するものではない。

カ 「従来の施工方法と何ら遜色なく完成させることができる」効果に関して
請求人は、発明の詳細な説明の段落【0008】には、発明の効果として、「内装用短尺コーナー材を接合した後に、内装用短尺コーナー材の表面に通常のパテ施工を含む内装仕上げを行うため、従来の施工と何ら遜色なく完成させることができる。」と記載されているが、何が「遜色なく」であるのか、及び何を「完成させることができる。」のかが、具体的に記載されておらず、発明の効果を得るために具現すべき構成を理解することができるように記載されていないから、発明の詳細な説明は、本件訂正発明1及び2を実施することができる程度の記載がされたものではない旨を主張している。
しかしながら、請求人が言及する当該段落【0008】の記載は、「(3)内装用短尺コーナー材の端部のカット面を対峙させないように接合することによって、十分な密着性を確保して隙間の発生を防止することができる。」という記載に続けて、「(4)内装用短尺コーナー材を接合した後に、内装用短尺コーナー材の表面に通常のパテ施工を含む内装仕上げを行うため、従来の施工と何ら遜色なく完成させることができる。」と記載するものであることから、上記1(1)ウ(エ)に示したとおり、「(3)」で言及する「内装用短尺コーナー材の端部のカット面を対峙させないように接合」した後に「(4)」で言及する「内装用短尺コーナー材の表面に通常のパテ施工を含む内装仕上げを行う」ことによって、可能な効果として、「内装仕上げ」を「従来の施工と何ら遜色なく完成させることができる」ことを示すものであると、当業者は理解することができる。
そして、当該効果は、本件訂正発明1及び2が有する、「前記内装用短尺コーナー材の端部を突き合わせる際に、オーバーラップ部分を切除したカット面を対峙しないように反転させ、少なくとも前記内装用短尺コーナー材の端部のカット面を対峙させないように接合する第3工程」、及び、「前記内装用短尺コーナー材を接合した後に、内装用短尺コーナー材の表面に通常のパテ施工を含む内装仕上げを行う第4工程」という構成により、合理的に得ることができる効果であると、当業者は理解することができる。
そのため、訂正明細書の段落【0008】における「(3)」の記載は、本件訂正発明1及び2が有する、発明の効果を得るための構成についての説明が不明瞭なものではなく、請求人が主張する不備を有するものではない。

キ 内装用短尺コーナー材の断面L字形状をなす第1側面と第2側面との幅寸法を相違させた場合に関して
請求人は、訂正明細書の段落【0026】記載されるように、内装用短尺コーナー材の断面L字形状をなす第1側面と第2側面との幅寸法を相違させる場合については、内装用短尺コーナー材の端部を突き合わせて接合する際に、幅寸法の異なる第1側面と第2側面とを突き合わせた接合箇所付近で比較的複雑な段差が生じるところ、発明の詳細な説明には、このように内装用短尺コーナー材の断面L字形状をなす第1側面と第2側面との幅寸法を相違させた場合について、接合箇所付近で生じる複雑な段差に拘わらず、明細書の段落【0008】に記載される「十分な密着性を確保して隙間の発生を防止することができる。」という効果、及び、「従来の施工と何ら遜色なく完成させることができる。」という効果を得ることができるように、実施することができるだけの説明が、記載されていない旨を主張している。
しかしながら、上記2(2)オに示したとおり、訂正明細書の段落【0026】には、内装用短尺コーナー材の断面L字形状をなす第1側面と第2側面との幅寸法を相違させた場合について、「さすれば、密着性を確保する必要がある側に幅寸法の大なる側面を位置させることによって、前記内装用短尺コーナー材を取り付けた際の十分な密着性を確保することができ、」とも記載されており、訂正明細書の段落【0026】では、内装用短尺コーナー材の端部の接合箇所においても、接合する複数の内装用コーナー材の第1側面は同じ第1側面の側に、第2側面は同じ第2側面の側に、配置することを意図していると解される。そのため、訂正明細書の段落【0026】の記載は、請求人が主張するように、内装用短尺コーナー材の接合箇所において、断面L字形状のうち幅寸法が異なる第1側面と第2側面とを対峙させて、接合箇所付近に段差を生じさせることを、記載したものではない。
また、上記1(1)ウ(ウ)にも示したとおり、訂正明細書の段落【0008】における「密着性を確保」及び「隙間の発生を防止」という効果の記載は、「内装用短尺コーナー材の端部のカット面を対峙させないように接合すること」により達成される効果の説明であり、「内装用短尺コーナー材の端部のカット面」を「対峙」させるか否かと無関係に生じる隙間まで完全に無くすこと、あるいは、「内装用短尺コーナー材の端部」の全面について、密着しない箇所を完全に無くすことを意味するものではない。そのため、「内装用短尺コーナー材」を接合する端部の端面に、内装用短尺コーナー材の断面寸法に依拠して、「内装用短尺コーナー材の端部のカット面」を「対峙」させるか否かとは無関係に密着しない部分が一部生じる場合があるとしても、本件訂正発明1及び2について、訂正明細書の段落【0008】における効果の記載から、当業者であっても発明を実施することができないという不備が生じるものではない。

ク 内装用短尺コーナー材の中間部位の幅寸法を異ならせた場合に関して
請求人は、明細書の段落【0026】には、「また、一方の側面の幅寸法を全て変更する構成のみでなく、中間部位などの少なくとも一部の幅寸法を変更することも可能である。」とも記載されているところ、内装用短尺コーナー材の側面の中間部位などの少なくとも一部の幅寸法を変更する実施例の場合についても、長手方向に隣接する内装用短尺コーナー材の端部が密着せず、隙間が発生している構成と類似し、または同じとなる旨を主張している。そして請求人は、本願発明の詳細な説明には、内装用短尺コーナー材の側面の中間部位の幅方向を異ならせることにより、内装用短尺コーナー材の端部が密着せず、隙間が発生しているのと同様となる実施例の場合について、明細書の段落【0008】に記載される「十分な密着性を確保して隙間の発生を防止することができる。」という効果、及び、「従来の施工と何ら遜色なく完成させることができる。」という効果を達成することができるように、発明を実施することができるだけの説明がされていない旨を主張している。
しかしながら、本件訂正発明1及び2において、内装用短尺コーナー材の接合を行うのは、「内装用短尺コーナー材の端部」であるから、内装用短尺コーナー材の端部ではない中間部位の幅寸法が一部変更されているか否かは、本件訂正発明1及び2における「内装用短尺コーナー材」の端部の接合には、関係がない。また、本件訂正発明1及び2において、内装用短尺コーナー材の「オーバーラップ部分を切除した」際に、内装用短尺コーナー材の幅寸法を一部変更した中間部位が、「オーバーラップ部分を切除したカット面」となる場合があるとしても、「オーバーラップ部分を切除したカット面」は、本件訂正発明1及び2においては、「カット面を対峙しないように反転」させて、「カット面を対峙させないように接合」を行うから、内装用短尺コーナー材の中間部位の幅寸法の一部が変更されているか否かは、依然として、本件訂正発明1及び2における「内装用短尺コーナー材」の端部の接合に、影響するものではない。
そして、上記1(1)ウ(ウ)及び(エ)にも示したとおり、訂正明細書の段落【0008】における「密着性を確保」及び「隙間の発生を防止」という効果の記載は、「内装用短尺コーナー材の端部のカット面を対峙させないように接合すること」により達成される効果の説明であり、同段落【0008】における「従来の施工と何ら遜色なく完成させることができる。」という記載も、「内装用短尺コーナー材の端部のカット面を対峙させないように接合」を行ったうえで通常のパテ施工などを行えば得ることが出来る効果を説明したものであるから、「内装用短尺コーナー材」として中間部位の幅寸法を一部異ならせたものを要するか否かと関係するものではない。
したがって、訂正明細書の発明の詳細な説明の記載は、段落【0026】における内装用短尺コーナー材の中間部位の幅寸法を一部異ならせる記載に依拠して、同段落【0008】における発明の効果の記載との関係において、本件訂正発明1及び2を当業者が実施することができない不備を生じるものではない。

(3)実施可能要件のまとめ
以上のとおり、訂正明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件訂正発明1及び2について、当業者であれば、過度の試行錯誤を要することなくその発明を実施することができる程度に、発明の説明が記載されている。そして、請求人の主張について検討しても、当該判断を変更すべき事情はない。そのため、本件訂正発明1及び2に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。
したがって、本件訂正発明1及び2に係る特許は、特許法第123条第1項第4号の規定により、無効とされるべきものではない。


第7 むすび
以上のとおり、本件訂正発明1及び2に係る特許は、特許法第36条第6項第1号、同条同項第2号、及び、同条第4項第1号の規定を満たしているから、審判請求人の主張する特許法第36条の無効理由によっては、本件訂正発明1及び2に係る特許を無効とすることはできない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。


 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】内装用短尺コーナー材による施工方法
【技術分野】
【0001】
この発明は内装用短尺コーナー材による施工方法に係り、特に建物の隅部分に装着されて角部を平坦に先仕上げする際に使用されるコーナー材を内装用短尺コーナー材とし、搬送コストの低減及び搬送効率の向上、そして、施工の際の作業効率の向上などを図る内装用短尺コーナー材による施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物においては、壁面を壁紙や布地等の壁装材を貼り付けて仕上げをする場合に、予め下地の壁面を平坦に先仕上げしておく必要がある。
2つの壁面が交差して角部を形成する出隅部分などは、先仕上げが困難なため、出隅部分の角部及びこの角部を挟んで両側にある2つの壁面に装着することにより、角部を平坦に先仕上げするコーナー材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−35311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のコーナー材による施工方法においては、長さが2500mmのコーナー材を使用していた。
そして、搬送作業時には、長さ2500mmのコーナー材を横置き状態に収容可能な荷台スペースを有する1ボックスワゴンタイプの車両やバンタイプの車両を使用する必要があった。
この結果、長尺なコーナー材であるため搬送が困難となり、搬送効率が低いとともに、長尺なコーナー材を搬送するために、車両の準備費用や燃費などを含めた搬送コストが嵩み、経済的に不利であるという不都合がある。
【0005】
また、所定の作業場所に長尺なコーナー材を搬送した後に施工を実施する際には、所定の作業場所の床側の幅木と天井との間に長尺なコーナー材を取り付ける。
このとき、所定の作業場所の床側の幅木と天井との間の距離が、一般的な日本家屋の場合、2000〜2300mm程度のなるため、長尺なコーナー材をそのまま取り付けることができず、メジャーによって所定の作業場所の床側の幅木と天井との間の距離を測定した後に、この測定した距離に合致するように長尺なコーナー材をカットする必要があった。
この結果、施工に際しては、測定用のメジャーを必ず使用する必要があり、測定作業という作業工程が増加しており、作業効率が悪いという不都合がある。
【0006】
この発明は、内装用短尺コーナー材を使用することによって、搬送コストの低減及び搬送効率の向上、そして、施工の際の作業効率の向上などを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、この発明は、上述不都合を除去するために、市販のコーナー材よりも短尺に形成した内装用短尺コーナー材を、小型の搬送用車両に横置き状態に積層して所定の作業場所まで搬送する第1工程と、所定の作業場所の床側の幅木と天井との間に、少なくとも2本の前記内装用短尺コーナー材を直線上にセットし、これらの内装用短尺コーナー材のオーバーラップ部分を切除する第2工程と、前記内装用短尺コーナー材の端部を突き合わせる際に、オーバーラップ部分を切除したカット面を対峙しないように反転させ、少なくとも前記内装用短尺コーナー材の端部のカット面を対峙させないように接合する第3工程と、前記内装用短尺コーナー材を接合した後に、内装用短尺コーナー材の表面に通常のパテ施工を含む内装仕上げを行う第4工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、施工の際に、少なくとも2本の内装用短尺コーナー材を使用し、以下の効果を奏することができる。
(1)内装用短尺コーナー材を使用することによって、搬送を容易として、車両の準備費用や燃費などを含めた搬送コストを低減することができるとともに、搬送効率を向上させることができる。
(2)内装用短尺コーナー材を使用することによって、メジャーを使用しなくとも、容易に施工することができ、作業効率を向上させることができる。
(3)内装用短尺コーナー材の端部のカット面を対峙させないように接合することによって、十分な密着性を確保して隙間の発生を防止することができる。
(4)内装用短尺コーナー材を接合した後に、内装用短尺コーナー材の表面に通常のパテ施工を含む内装仕上げを行うため、従来の施工と何ら遜色なく完成させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は内装用短尺コーナー材の施工状態を示し、(a)は内装用短尺コーナー材のセット状態を示す概略図、(b)は内装用短尺コーナー材を接合した後の状態を示す概略図である。(実施例)
【図2】図2は内装用短尺コーナー材の概略拡大斜視図である。(実施例)
【図3】図3は内装用短尺コーナー材の拡大断面図である。(実施例)
【図4】図4は内装用短尺コーナー材による施工方法の作業工程を示す図である。(実施例)
【図5】図5は内装用短尺コーナー材による施工前の所定の作業場所の概略説明図である。(実施例)
【図6】図6は3本の内装用短尺コーナー材による施工方法を示す説明図である。(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下図面に基づいてこの発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例】
【0011】
図1〜図5はこの発明の実施例を示すものである。
図2において、1は内装用短尺コーナー材である。
この内装用短尺コーナー材1は、プラスチック製材料により形成する。
なお、より詳細に説明すると、内装用短尺コーナー材1をプラスチック製材料により形成する際には、例えば汎用ポリスチレン(「GPPS」)にゴムを加えて耐衝撃性を持たせた耐衝撃性ポリスチレン、つまり、HIPS樹脂製材料を使用する。
このとき、前記内装用短尺コーナー材1は、図2及び図3に示す如く、第1側面2と、この第1側面2に対して略直交する第2側面3とによって断面L字形状に形成する。
また、前記内装用短尺コーナー材1は、長さが1000〜1800mmの範囲の寸法からなり、例えば長さを1300mmの寸法とする。
そして、前記内装用短尺コーナー材1は、前記第1側面2と前記第2側面3とに複数個の孔部4を規則正しく形成する。
なお、複数個の孔部4は、前記内装用短尺コーナー材1を2つの壁面が交差して角部を形成する後述する出隅部分10に貼り付けた際に、内装用短尺コーナー材1の前記第1側面2及び前記第2側面3の内側内の空気を排出して密着性を向上させる機能がある一方、原材料の使用量の低減に寄与している。
更に、前記内装用短尺コーナー材1においては、前記第1側面2と前記第2側面3との夫々の開放側端部2x、3xの内側に長手方向に沿って、例えば幅寸法が10mmの両面テープ5を夫々貼り付ける。
【0012】
ここで、前記内装用短尺コーナー材1の断面L字形状について詳述する。
この内装用短尺コーナー材1は、図3に示す如く、幅寸法を例えば27mmとした第1側面2と、この第1側面2に対して略直交、かつ、同様の幅寸法を有する第2側面3とによって断面L字形状に形成されている。
そして、前記内装用短尺コーナー材1を形成する際に、前記第1側面2と前記第2側面3とが接続する夫々の基端側端部2y、3yの厚みを、例えば0.7mmとする。
また、前記第1側面2及び前記第2側面3の夫々の開放側端部2x、3xの厚みは、前記基端側端部2y、3yから開放側端部2x、3xに向かって厚みが漸次減少するように、例えば0.5mmとする。
更に、前記内装用短尺コーナー材1の断面L字形状の角度は、例えば88〜89度とする。
この内装用短尺コーナー材1の断面L字形状の角度の設定は、2つの壁面が交差して角部を形成する出隅部分に前記内装用短尺コーナー材1を前記両面テープ5にて貼り付けた際に、この両面テープ5の厚みを勘案するとともに、内装用短尺コーナー材1の前記第1側面2及び前記第2側面3によって、出隅部分の角部の両側にある2つの壁面への密着性を向上させている。
【0013】
前記内装用短尺コーナー材1を使用する用施工方法においては、図4に示す如く、第1工程A〜第4工程Dまでの4つの工程を備えている。
【0014】
詳述すれば、前記第1工程Aは、長さ2500mmの市販のコーナー材よりも短尺、例えば長さ1300mmに形成した前記内装用短尺コーナー材1を、小型の搬送用車両に横置き状態に積層し、この小型の搬送用車両によって所定の作業場所6(図5参照。)まで搬送する工程である。
つまり、長さ1300mmの前記内装用短尺コーナー材1としたことにより、小型の搬送用車両の荷台部分に横置き状態に積層可能とし、搬送を容易として、車両の準備費用や燃費などを含めた搬送コストを低減することができるとともに、搬送効率を向上させている。
しかも、小型の搬送用車両による搬送のみでなく、所定の作業場所6での前記内装用短尺コーナー材1の搬送も容易となり、作業効率の向上にも寄与している。
【0015】
前記第2工程Bは、所定の作業場所6の床7側の幅木8と天井9との間において、2つの壁面が交差して角部を形成する出隅部分10に少なくとも2本、例えばの実施例においては2本の前記第1、第2内装用短尺コーナー材1−1、1−2を直線上にセットし、これらの第1、第2内装用短尺コーナー材1−1、1−2のオーバーラップ部分Gを切除する工程である。
つまり、長さ1300mmの前記内装用短尺コーナー材1を使用することによって、所定の作業場所6の床7側の幅木8と天井9との間の距離が一般的な日本家屋の2000〜2300mm程度である場合に、メジャーを使用しなくとも、つまりスケールによって探寸を行うことなく、容易に施工することができ、作業効率を向上させている。
【0016】
前記第3工程Cは、2本の前記第1、第2内装用短尺コーナー材1−1、1−2の長手方向側の端部1−1a、1−2a、1−1b、1−2bを突き合わせる際に、図1(a)及び(b)に示す如く、例えば上方の第2内装用短尺コーナー材1−2の下端部1−2bのオーバーラップ部分Gを切除して新たな端部1−2cに現出させたカット面11が、下方の第1内装用短尺コーナー材1−1の長手方向側の端部1−1aに対峙しないように反転させて接合する工程である。
つまり、上方の第2内装用短尺コーナー材1−2の下端部1−2bのオーバーラップ部分Gを切除して新たな端部1−2cに現出させたカット面11が、下方の第1内装用短尺コーナー材1−1の長手方向側の上端部1−1aに対峙しないように接合することによって、図1(b)に示す如く、2本の前記第1、第2内装用短尺コーナー材1−1、1−2の長手方向側の端部1−1a、1−2aを接合させ、この端部1−1a、1−2aにおける十分な密着性を確保して隙間の発生を防止している。
【0017】
前記第4工程Dは、前記第1、第2内装用短尺コーナー材1−1、1−2を接合した後に、第1、第2内装用短尺コーナー材1−1、1−2の表面に通常のパテ施工を含む内装仕上げを行う工程である。
つまり、図1(b)に示す如く、前記第1、第2内装用短尺コーナー材1−1、1−2の長手方向側の端部1−1a、1−2aを接合する。
そして、前記第1、第2内装用短尺コーナー材1−1、1−2の表面、つまり、前記第1側面2及び前記第2側面3の外側面に通常のパテ施工を含む内装仕上げを行う。
このとき、内装仕上げとしては、上述したパテ施工のみでなく、クロス張りなども含まれるため、「内装クロス仕上げ」と換言することもできる。
このため、前記第1、第2内装用短尺コーナー材1−1、1−2の端部1−1a、1−2aを接合した後に、第1、第2内装用短尺コーナー材1−1、1−2の表面である前記第1側面2及び前記第2側面3の外側面に内装仕上げを行うため、従来の施工と何ら遜色なく完成させることができ、不具合が全くないものである。
【0018】
これにより、前記内装用短尺コーナー材1を使用する用施工方法において、上述した第1工程A〜第4工程Dまでの4つの工程を行うことによって、作業時間を短縮することができる。
【0019】
次に、図4の前記内装用短尺コーナー材1、この実施例においては、前記第1、第2内装用短尺コーナー材1−1、1−2による施工方法の4つの第1工程A〜第4工程Dまでの作業工程に沿って、作用を詳細に説明する。
【0020】
先ず、前記第1工程Aにおいては、図4に示す如く、長さ2500mmの市販のコーナー材よりも短尺、例えば長さ1300mmに形成した前記内装用短尺コーナー材1を、小型の搬送用車両に横置き状態に積層する。
そして、この小型の搬送用車両によって所定の作業場所6まで搬送する。
【0021】
また、前記第2工程Bにおいては、所定の作業場所6の床7側の幅木8と天井9との間に、2つの壁面が交差して角部を形成する出隅部分10に少なくとも2本、例えばの実施例においては2本の前記第1、第2内装用短尺コーナー材1−1、1−2を直線上にセットする。
このとき、図5に示す如く、上述した所定の作業場所6の床7と天井9との間の距離L1から、幅木8の高さ寸法L2を引いた床7側の幅木8と天井9との間の距離L3を対象とする。
この距離L3は、一般的な日本家屋の2000〜2300mm程度である。
そして、所定の作業場所6の床7側の幅木8と天井9との間の距離L3において、図1(a)に示す如く、長さ1300mmの2本の第1、第2内装用短尺コーナー材1−1、1−2を直線上にセットするものである。
また、セット後は、メジャーを使用することなく、前記第2内装用短尺コーナー材1−2の下端部1−2bのオーバーラップ部分Gを切除する。
【0022】
更に、前記第3工程Cにおいては、2本の前記第1、第2内装用短尺コーナー材1−1、1−2の長手方向側の端部1−1a、1−2a、1−1b、1−2bを突き合わせる際に、図1(a)及び(b)に示す如く、例えば上方の第2内装用短尺コーナー材1−2の下端部1−2bのオーバーラップ部分Gを切除して新たな端部1−2cに現出させたカット面11が、下方の第1内装用短尺コーナー材1−1の長手方向側の端部1−1aに対峙しないように反転させて接合する。
このとき、上方の第2内装用短尺コーナー材1−2の下端部1−2bのオーバーラップ部分Gを切除して新たな端部1−2cに現出させたカット面11が、下方の第1内装用短尺コーナー材1−1の長手方向側の上端部1−1aに対峙しないように接合している。
【0023】
更にまた、前記第4工程Dにおいては、図1(b)に示す如く、前記第1、第2内装用短尺コーナー材1−1、1−2の長手方向側の端部1−1a、1−2aを接合した後に、第1、第2内装用短尺コーナー材1−1、1−2の表面である前記第1側面2及び前記第2側面3の外側面に通常のパテ施工を含む内装仕上げを行う。
このとき、前記第1、第2内装用短尺コーナー材1−1、1−2に形成した複数個の前記孔部4内にパテが入り込むようにパテ施工を行い、その後にクロス張りも行って内装仕上げを行う。
【0024】
なお、この発明は上述実施例に限定されるものではなく、種々の応用改変が可能である。
【0025】
例えば、この発明の実施例においては、前記内装用短尺コーナー材の長さを1300mmの寸法として説明したが、長さを1000〜1800mmの範囲の寸法とする特別構成とすることも可能である。
すなわち、所定の作業場所の床側の幅木と天井との間の距離が一般的な日本家屋の2000〜2300mm程度であるため、2本の第1、第2内装用短尺コーナー材のみでなく、図6に示す如く、3本の第1〜第3内装用短尺コーナー材21−1、21−2、21−3を使用することが可能である。
このとき、第1、第2内装用短尺コーナー材21−1、21−2の端面を接合して切除は行わず、第2内装用短尺コーナー材21−2に対して第3内装用短尺コーナー材21−3のオーバーラップ部分Gを削除する。
さすれば、前記第2工程Bにおいて、メジャーを使用しなくとも、容易に施工することができ、作業効率を向上させることができる。
【0026】
また、この発明の実施例においては、前記内装用短尺コーナー材を形成する際に、幅寸法を例えば27mmとした第1側面と、この第1側面に対して略直交、かつ、同様の幅寸法を有する第2側面とによって断面L字形状に形成する構成としたが、第1側面と第2側面との幅寸法を相違させる形状とすることが可能である。
さすれば、密着性を確保する必要がある側に幅寸法の大なる側面を位置させることによって、前記内装用短尺コーナー材を取り付けた際の十分な密着性を確保することができ、その後の通常のパテ施工を含む内装仕上げの作業を行う前記第4工程を円滑に行うことができる。
また、一方の側面の幅寸法を全て変更する構成のみでなく、中間部位などの少なくとも一部の幅寸法を変更することも可能である。
更に、前記内装用短尺コーナー材を取り付けた際の密着性を上昇させる際に、この内装用短尺コーナー材の断面L字形状の角度を、全て一律とせず、部分的に変更する構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 内装用短尺コーナー材
1−1 第1内装用短尺コーナー材
1−1a、1−1b 長手方向側の端部
1−2 第2内装用短尺コーナー材
1−2a、1−2b 長手方向側の端部
2 第1側面
2x 開放側端部
2y 基端側端部
3 第2側面
3x 開放側端部
3y 基端側端部
4 孔部
5 両面テープ
6 所定の作業場所
7 床
8 幅木
9 天井
G オーバーラップ部分
10 出隅部分
11 カット面
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2020-12-25 
結審通知日 2020-12-25 
審決日 2021-01-05 
出願番号 P2014-105244
審決分類 P 1 113・ 536- YAA (E04F)
P 1 113・ 537- YAA (E04F)
P 1 113・ 852- YAA (E04F)
P 1 113・ 853- YAA (E04F)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 森次 顕
特許庁審判官 有家 秀郎
住田 秀弘
登録日 2016-10-28 
登録番号 6031065
発明の名称 内装用短尺コーナー材による施工方法  
代理人 村上 弓恵  
代理人 小林 七郎  
代理人 村上 弓恵  
代理人 西教 圭一郎  
代理人 弁理士法人高田・高橋国際特許事務所  
代理人 特許業務法人高田・高橋国際特許事務所  
代理人 小林 七郎  

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