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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1383072
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-05-21 
確定日 2022-04-05 
事件の表示 特願2019−523069「アクセス手順を実施する方法、デバイス、およびネットワークノード」拒絶査定不服審判事件〔平成30年5月11日国際公開、WO2018/083662、令和元年12月26日国内公表、特表2019−537891、請求項の数(24)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)11月3日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2016年11月4日 アメリカ合衆国(US))を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和元年6月26日 手続補正書の提出
令和2年6月10日付け 拒絶理由通知書
令和2年9月17日 意見書及び手続補正書の提出
令和3年1月15日付け 拒絶査定
令和3年5月21日 審判請求書及び手続補正書の提出
令和3年8月 4日 上申書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和3年1月15日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

理由1(新規性)、理由2(進歩性)について
・請求項1、3、6、8ないし10、15ないし17、19、22、24ないし26、31ないし33、35、38、40ないし42、47ないし50、52、55、57ないし59及び64に対して、引用文献1

理由2(進歩性)について
・請求項2、4、5、18、20、21、34、36、37、51、53及び54に対して、引用文献1及び2
・請求項7、23、39及び56に対して、引用文献1及び3
・請求項11ないし14、27ないし30、43ないし46及び60ないし63に対して、引用文献1及び4

引用文献等一覧
1.Ericsson,NR random access procedure [online],3GPP TSG-RAN WG1#86b R1-1609670,2016年10月1日アップロード,インターネット (以下、「引用文献1」という。)
2.Fujitsu,Discussion on PRACH configuration in NR [online],3GPP TSG-RAN WG1#86b R1-1608813,2016年9月30日アップロード,インターネット(以下、「引用文献2」という。)
3.特表2016−510555号公報(以下、「引用文献3」という。)
4.特表2016−528791号公報(以下、「引用文献4」という。)

第3 本願発明
本願の請求項1ないし24に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明24」という。)は、令和3年5月21日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし24に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
物理ランダムアクセスチャネル(PRACH)リソースの割当てを指示する複数の同期信号ブロック(SSB)を無線デバイスに対して送出することであって、前記SSBがそれぞれ、1つまたは複数の時間リソースおよび1つまたは複数の周波数リソースにおける、複数のPRACHリソースを示す、送出することと、
前記複数のSSBにおける前記複数のPRACHリソースから選択されたPRACHリソースによって与えられる時間リソースおよび周波数リソースの間に、PRACHプリアンブルを前記無線デバイスから受信することとを含む、ネットワークノードにおいてアクセス手順を実施する方法。
【請求項2】
前記1つまたは複数の時間リソースが時間間隔を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つまたは複数の時間リソースが、同期信号からの複数のタイミングオフセットを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記1つまたは複数の周波数リソースが、周波数間隔を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記1つまたは複数の周波数リソースが、1つまたは複数の周波数サブバンドを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記複数のPRACHリソースが1つまたは複数のシーケンスを更に含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記1つまたは複数のシーケンスが、ルートシーケンスのセットおよびサイクリックシフトのセットの組み合わせを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記複数のSSBが複数の物理ブロードキャストチャネル(PBCH)と関連付けられる、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記PRACHリソースの前記割当ての前記指示が、前記物理ブロードキャストチャネル(PBCH)のマスタ情報ブロック(MIB)によって与えられる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記複数のSSBが異なるビームで送出される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記MIBが、前記1つまたは複数の時間リソースを示す第1のインジケータと、前記1つまたは複数の周波数リソースを示す第2のインジケータと、前記1つまたは複数のシーケンスを示す第3のインジケータとを含み、前記第1、第2、および第3のインジケータが別個のインジケータである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記MIBが、時間リソース、周波数リソース、およびシーケンスの組み合わせを示すPRACHプリアンブルインデックスを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記PRACHプリアンブルインデックスがテーブルにマッピングされ、前記テーブルがインデックスのリストを有し、各インデックスが、1つまたは複数の時間リソース、1つまたは複数の周波数リソース、および1つまたは複数のシーケンスの1つの構成に対応する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記MIBが、時間リソース、周波数リソース、およびシーケンスの許可された組み合わせのセットを明示的にリスト化する、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
ネットワークノードの処理回路によって実行されると、請求項1から14の方法のいずれか1つを前記ネットワークノードに実施させる実行可能命令を含む、コンピュータプログラム。
【請求項16】
異種通信ネットワークの中継ノードの処理回路によって実行されると、請求項1から14の方法のいずれか1つを前記中継ノードに実施させる実行可能命令を含むコンピュータプログラムを収容した、非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項17】
アクセス手順を実施するネットワークノードであって、処理回路構成と該処理回路構成に接続されたメモリとを含み、前記メモリが命令を含み、前記命令が実行されると、
物理ランダムアクセスチャネル(PRACH)リソースの割当てを指示する複数の同期信号ブロック(SSB)を無線デバイスに対して送出することであって、前記SSBがそれぞれ、1つまたは複数の時間リソースおよび1つまたは複数の周波数リソースにおける、複数のPRACHリソースを示す、送出することと、
前記複数のSSBにおける前記複数のPRACHリソースから選択されたPRACHリソースによって与えられる時間リソースおよび周波数リソースの間に、PRACHプリアンブルを前記無線デバイスから受信することとを、前記処理回路構成が行う、ネットワークノード。
【請求項18】
請求項2から14のいずれか一項に記載の方法を実施するようにさらに設定されている、請求項17に記載のネットワークノード。
【請求項19】
無線デバイスにおいてアクセス手順を実施する方法であって、
物理ランダムアクセスチャネル(PRACH)リソースの割当てを前記無線デバイスに指示する複数の同期信号ブロック(SSB)を受信することであって、前記SSBがそれぞれ、1つまたは複数の時間リソースおよび1つまたは複数の周波数リソースにおける、複数のPRACHリソースを示す、受信することと、
前記複数のSSBの前記複数のPRACHリソースからPRACHリソースを選択することと、
前記複数のSSBにおける前記複数のPRACHリソースから選択されたPRACHリソースによって与えられる時間リソースおよび周波数リソースの間に、PRACHプリアンブルを、ネットワークノードに送信することとを含む、方法。
【請求項20】
前記PRACHリソースを選択することが、前記複数のPRACHリソースの中からPRACHリソースを無作為に選択することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記PRACHリソースを選択することが、特定の判定基準に基づいてPRACHリソースを選択することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記選択されたPRACHに基づいてPRACHプリアンブルを生成することを更に含む、請求項19から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
アクセス手順を実施する無線デバイスであって、処理回路構成と該処理回路構成に接続されたメモリとを含み、前記メモリが命令を含み、前記命令が実行されると、
物理ランダムアクセスチャネル(PRACH)リソースの割当てを前記無線デバイスに指示する複数の同期信号ブロック(SSB)を受信することであって、前記SSBがそれぞれ、1つまたは複数の時間リソースおよび1つまたは複数の周波数リソースにおける、複数のPRACHリソースを示す、受信することと、
前記複数のSSBの前記複数のPRACHリソースからPRACHリソースを選択することと、
前記複数のSSBにおける前記複数のPRACHリソースから選択されたPRACHリソースによって与えられる時間リソースおよび周波数リソースの間に、PRACHプリアンブルを、ネットワークノードに送信することとを、前記処理回路構成が行う、無線デバイス。
【請求項24】
前記無線デバイスが、請求項20から22のいずれか一項に記載の方法を実施するようにさらに設定されている、請求項23に記載の無線デバイス。」

第4 引用文献、引用発明及び技術的事項
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由で引用され、本願優先日前に公開された引用文献1(Ericsson,NR random access procedure [online](当審仮訳:NRランダムアクセス手順),3GPP TSG-RAN WG1#86b R1-1609670,2016年10月1日アップロード,インターネット
(1)「2.1 Relation between beamformed SS and PRACH configuration
If the TRP can identify which SS beamforming that was best for the UE, then the same beamforming can be used for transmitting RAR and subsequent DL transmissions.・・・(中略)・・・With beamformed SS and an association between best received SS and PRACH preamble or resource, the TRP receiving the PRACH preamble is informed about best received SS at the UE.」(第2頁第2行目ないし第8行目)
(当審仮訳:2.1 ビームフォーミングされたSSとPRACH設定の間の関係
TRPがUEにとって最良だったSSビームフォーミングを特定できれば、RARの送信とその後のDL送信に同じビームフォーミングを使用することができる。・・・(中略)・・・ビームフォーミングされたSSと、最良受信SSとPRACHプリアンブル又はリソースとの関連付けとにより、PRACHプリアンブルを受信したTRPは、UEでの最良受信SSについて通知される。)

(2)「A Master Information Block (MIB), which can be transmitted on a Physical Broadcast Channel (PBCH), is also inserted after each SS.・・・(中略)・・・In the reception of PRACH, the TRP can use the same beamforming as used when transmitting SS.」(第2頁第12行目ないし第16行目)
(当審仮訳:物理ブロードキャストチャネル(PBCH)で送信可能なマスターインフォメーションブロック(MIB)は、各SSの後に挿入される。・・・(中略)・・・PRACHの受信では、TRPはSS送出時に使用したのと同じビームフォーミングを使用することができる。)

(3)「A PRACH resource is defined which is common for several SS in Figure 2. This flexible timing indication of the PRACH resource has lower resource overhead compared to using a fixed timing, as in Figure 1. The timing from SS to the PRACH resource can be indicated in the MIB.
・・・(中略)・・・

Figure 2. Relation between synchronization signals (SS), MIB and PRACH resources, with dynamic timing between SS and PRACH」(第2頁下から第2行目ないし第3頁第13行目)
(当審仮訳:図2において、複数のSSで共通するPRACHリソースが定義されている。このようにPRACHリソースのタイミングを柔軟に指示することで、図1のような固定的なタイミングを使用する場合と比較して、リソースのオーバーヘッドを低減することができる。SSからPRACHリソースへのタイミングは、MIBで指示されることができる。
・・・(中略)・・・
(図の仮訳は省略)
図2 SSとPRACHの間が動的なタイミングの場合の同期信号(SS)、MIB及びPRACHリソースの間の関係)

引用文献1の上記記載、及び無線通信システムの分野における技術常識を考慮すると、次のことがいえる。

ア 上記「(2)」の「PRACHの受信では、TRPはSS送出時に使用したのと同じビームフォーミングを使用することができる。」との記載、及び上記「(3)」の図2の記載から、引用文献1には、TRPが複数のSS及びPBCHをUEに対して送出することが記載されているといえる。

イ 上記「(2)」の「物理ブロードキャストチャネル(PBCH)で送信可能なマスターインフォメーションブロック(MIB)は、各SSの後に挿入される。」との記載によれば、MIBは、PBCHで送信されるものである。また、上記「(3)」の「SSからPRACHリソースへのタイミングは、MIBで指示されることができる。」との記載によれば、MIBは、SSからPRACHリソースへのタイミングを指示するものである。
したがって、引用文献1には、PBCHで送信されるMIBは、SSからPRACHリソースへのタイミングを指示することが記載されている。

ウ 上記「(1)」の「ビームフォーミングされたSSと、最良受信SSとPRACH・・・(中略)・・・リソースとの関連付けとにより、PRACHプリアンブルを受信したTRPは、UEでの最良受信SSについて通知される。」との記載によれば、TRPは、PRACHプリアンブルをUEから受信するものといえる。

エ そして、引用文献1は、タイトルにあるように「NRランダムアクセス手順」に関するものであるから、引用文献1には、TRPにおいて上記「ア」ないし「ウ」に記載された動作を含むランダムアクセス手順を実施する方法が記載されているといえる。

したがって、上記「ア」ないし「エ」を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「TRPが複数のSS及びPBCHをUEに対して送出し、上記PBCHで送信されるMIBは、SSからPRACHリソースへのタイミングを指示することと、
TRPがPRACHプリアンブルをUEから受信することとを含む、TRPにおいてランダムアクセス手順を実施する方法。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由で引用され、本願優先日前に公開された引用文献2(Fujitsu,Discussion on PRACH configuration in NR [online](当審仮訳:NRにおけるPRACH設定の議論),3GPP TSG-RAN WG1#86b R1-1608813,2016年9月30日アップロード,インターネット)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。)

「2.2. PRACH in Multi-numerology scenario
・・・(中略)・・・

Fig.3. Four example cases for PRACH configuration in multi-numerology scenarios
・・・(中略)・・・
Case 2: The control signaling on the reference numerology implicitly/explicitly indicates the PRACH resources on each numerology.」(第3頁第10行目ないし第20行目)
(当審仮訳:2.2. マルチヌメロロジーシナリオにおけるPRACH
・・・(中略)・・・
(図の仮訳は省略)
図3. マルチヌメロロジーシナリオにおけるPRACH設定の4つのケース例
・・・(中略)・・・
ケース2:参照ヌメロロジーの制御信号が、各ヌメロロジーのPRACHリソースを暗黙的/明示的に指示する場合)

上記記載によれば、引用文献2には、次の技術的事項が記載されていると認められる。

「制御信号が、各ヌメロロジーのPRACHリソースを指示すること。」

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由で引用され、本願優先日前に公開された引用文献3(特表2016−510555号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。)

(1)「【0012】
RACHプリアンブルを生成するために用いられる循環遷移値は、制限されていない集合のみから選択されてもよい。」

(2)「【0319】
4.3.3 PSS関連付け方法
ルートシーケンスインデックスを決定するために、PSS信号で使用されたルートインデックスを用いることができる。例えば、端末は、検出したPSS信号に使用されたルートシーケンスインデックスを、PRACHを送信するためのルートシーケンスインデックスとして用いることができる。このとき、循環遷移(cyclic shift)値は、システム向けパラメータとして固定して用いたり、PSSで使用されるルートシーケンスインデックスと関連付けられた循環遷移値を用いることができる。
【0320】
例えば、PSS信号で使用されるルートシーケンスインデックスが次の表15のように与えられた場合、PRACHプリアンブルの生成のために用いられるルートインデックスは、PSSと同じ値を使用し、ZCZ構成パラメータが示す循環遷移値は、次の表15のようにマップすることができる。」

上記記載によれば、引用文献3には、次の技術的事項が記載されていると認められる。

「RACHプリアンブルを生成するためにルートインデックス及び循環遷移値を用いること。」

4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由で引用され、本願優先日前に公開された引用文献4(特表2016−528791号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。)

「【0176】
<表10>は、各々のCEレベル及びPRACHリソース設定のうち所定のマッピングの第2の例示的なセットを示し、PRACH設定マッピングインデックスフィールドの‘01’値で表示され得る。これは、5個のCEレベルを含み、PRACHリソース設定を各CEレベルに関連させる。第1の代案で、UE114は、例えば、4個の上述したアプローチ方式のうち一つを使用してその要求されるCEレベルを決定し、要求されるCEレベルと同一であるか、あるいはこれより大きい所定のマッピングの表示されたセットからのCEレベルに対応するリソース設定を使用してPRACHを伝送する。第2の代案で、ULカバレッジ限定されたUEが第1のCEレベルを使用してランダムアクセスプロセスを始め、ランダムアクセスプロセスが失敗する場合、第2のCEレベルを用いて継続し、このようなことを最高のCEレベルに到達するまで、あるいはランダムアクセスプロセスが成功するまで続ける。
【0177】
【表10】



上記記載によれば、引用文献4には、次の技術的事項が記載されていると認められる。

「各PRACH設定インデックスに対応してPRACHリソース(プリアンブル/時間/周波数)が設定されること。」

第5 対比及び判断
1 本願発明1について
(1)特許法第29条第1項第3号について
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明における「PRACHリソース」は、本願発明1の「物理ランダムアクセスチャネル(PRACH)リソース」に相当し、引用発明における「SSからPRACHリソースへのタイミングを指示する」ことは、PRACHリソースが割り当てられているタイミングを指示するものであるから、本願発明1の「物理ランダムアクセスチャネル(PRACH)リソースの割当てを指示する」ことに含まれる。そして、引用発明における「SSからPRACHリソースへのタイミングを指示する」ことは、「MIB」が行うものであり、「MIB」は「PBCHで送信される」ものであり、また、「SS及びPBCH」が同期信号ブロック(SSB)を構成するものであることは技術常識であるから、引用発明における「SSからPRACHリソースへのタイミングを指示する」「MIB」を送信する「PBCH」を含む「複数のSS及びPBCH」は、本願発明1の「物理ランダムアクセスチャネル(PRACH)リソースの割当てを指示する複数の同期信号ブロック(SSB)」に含まれる。
さらに、引用発明における「UE」は、無線通信システムにおいて無線通信を行う端末を表すことが技術常識であり、端末はデバイスの一種といえるから、本願発明1の「無線デバイス」に含まれ、引用発明における「UEに対して送出」することは、本願発明1の「無線デバイスに対して送出すること」に含まれる。
以上のことから、引用発明における「複数のSS及びPBCHをUEに対して送出し、上記PBCHで送信されるMIBは、SSからPRACHリソースへのタイミングを指示すること」は、本願発明1の「物理ランダムアクセスチャネル(PRACH)リソースの割当てを指示する複数の同期信号ブロック(SSB)を無線デバイスに対して送出すること」に含まれる。

イ 引用発明における「PRACHプリアンブル」は、本願発明1の「PRACHプリアンブル」に相当し、引用発明において「UEから受信すること」は、本願発明1の「前記無線デバイスから受信すること」に含まれる。
したがって、引用発明における「PRACHプリアンブルをUEから受信すること」は、本願発明1の「PRACHプリアンブルを前記無線デバイスから受信すること」に含まれる。

ウ 引用発明における「TRP」は、「Transmission and Reception Point」の略称であって、無線ネットワーク内で送受信を行うノードを意味することは技術常識であるから、本願発明1の「ネットワークノード」に含まれ、引用発明における「ランダムアクセス手順」は、本願発明1の「アクセス手順」に含まれる。
したがって、引用発明における「TRPにおいてランダムアクセス手順を実施する方法」は、本願発明1の「ネットワークノードにおいてアクセス手順を実施する方法」に含まれる。

したがって、上記「ア」ないし「ウ」を総合すれば、本願発明1と引用発明は、以下の点で一致し、また相違する。

<一致点>
「物理ランダムアクセスチャネル(PRACH)リソースの割当てを指示する複数の同期信号ブロック(SSB)を無線デバイスに対して送出することと、
PRACHプリアンブルを前記無線デバイスから受信することとを含む、ネットワークノードにおいてアクセス手順を実施する方法。」

<相違点>
本願発明1では「同期信号ブロック(SSB)」が「それぞれ、1つまたは複数の時間リソースおよび1つまたは複数の周波数リソースにおける、複数のPRACHリソースを示す」とともに、「PRACHプリアンブルを前記無線デバイスから受信する」ことが「前記複数のSSBにおける前記複数のPRACHリソースから選択されたPRACHリソースによって与えられる時間リソースおよび周波数リソースの間に」行われるという発明特定事項を含むのに対して、引用発明は、当該発明特定事項が特定されていない点。

したがって、本願発明1と引用発明は、上記相違点で相違するから、本願発明1は引用発明であるとはいえない。

(2)特許法第29条第2項について
本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、上記「(1)」で説示したとおりである。

上記相違点について検討する。
上記「第4」の「2」で説示したように、引用文献2には「制御信号が、各ヌメロロジーのPRACHリソースを指示すること。」との技術的事項が記載されている。また、同「3」で説示したように、引用文献3には「RACHプリアンブルを生成するためにルートインデックス及び循環遷移値を用いること。」との技術的事項が記載されている。さらに、同「4」で説示したように、引用文献4には「各PRACH設定インデックスに対応してPRACHリソース(プリアンブル/時間/周波数)が規定されること。」との技術的事項が記載されている。
しかしながら、上記相違点に係る「同期信号ブロック(SSB)」が「それぞれ、1つまたは複数の時間リソースおよび1つまたは複数の周波数リソースにおける、複数のPRACHリソースを示す」とともに、「PRACHプリアンブルを前記無線デバイスから受信する」ことが「前記複数のSSBにおける前記複数のPRACHリソースから選択されたPRACHリソースによって与えられる時間リソースおよび周波数リソースの間に」行われるという発明特定事項は、引用文献2ないし4には記載も示唆もされておらず、また無線通信の技術分野における周知技術であるともいえない。
よって、引用発明において、上記相違点に係る「同期信号ブロック(SSB)」が「それぞれ、1つまたは複数の時間リソースおよび1つまたは複数の周波数リソースにおける、複数のPRACHリソースを示す」とともに、「PRACHプリアンブルを前記無線デバイスから受信する」ことが「前記複数のSSBにおける前記複数のPRACHリソースから選択されたPRACHリソースによって与えられる時間リソースおよび周波数リソースの間に」行われるものとすることは、当業者といえども容易に想到し得たとはいえない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2ないし4のそれぞれに記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2ないし16について
本願発明2ないし16は、本願発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明であるとはいえず、また当業者であっても引用発明及び引用文献2ないし4のそれぞれに記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 本願発明17及び18について
本願発明17は、ネットワークノードにおいてアクセス手順を実施する「方法の発明」である本願発明1を、対応する「物の発明」としたものである。そして、本願発明17は、上記「1」で説示した相違点に対応する「同期信号ブロック(SSB)」が「それぞれ、1つまたは複数の時間リソースおよび1つまたは複数の周波数リソースにおける、複数のPRACHリソースを示す」とともに、「PRACHプリアンブルを前記無線デバイスから受信する」ことが「前記複数のSSBにおける前記複数のPRACHリソースから選択されたPRACHリソースによって与えられる時間リソースおよび周波数リソースの間に」行われるという発明特定事項を少なくとも含むものであるから、本願発明1と同様な理由により、引用発明であるとはいえず、また当業者であっても引用発明及び引用文献2ないし4のそれぞれに記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本願発明18は、本願発明17の発明特定事項を全て備えるものであるから、本願発明17と同じ理由により、引用発明であるとはいえず、また当業者であっても引用発明及び引用文献2ないし4のそれぞれに記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4 本願発明19ないし22について
本願発明19は、本願発明1のネットワークノードと対になる無線デバイスにおいてアクセス手順を実施する方法の発明であって、本願発明1について上記「1」で説示した相違点に対応する「同期信号ブロック(SSB)」が「それぞれ、1つまたは複数の時間リソースおよび1つまたは複数の周波数リソースにおける、複数のPRACHリソースを示す」とともに、「PRACHプリアンブルを、ネットワークノードに送信する」ことが「前記複数のSSBにおける前記複数のPRACHリソースから選択されたPRACHリソースによって与えられる時間リソースおよび周波数リソースの間に」行われるという発明特定事項を少なくとも含むものであるから、本願発明1と同様な理由により、引用発明であるとはいえず、また当業者であっても引用発明及び引用文献2ないし4のそれぞれに記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本願発明20ないし22は、本願発明19の発明特定事項を全て備えるものであるから、本願発明19と同じ理由により、引用発明であるとはいえず、また当業者であっても引用発明及び引用文献2ないし4のそれぞれに記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

5 本願発明23及び24について
本願発明23は、無線デバイスにおいてアクセス手順を実施する「方法の発明」である本願発明19を、対応する「物の発明」としたものである。そして、本願発明23は、上記「1」で説示した相違点に対応する「同期信号ブロック(SSB)」が「それぞれ、1つまたは複数の時間リソースおよび1つまたは複数の周波数リソースにおける、複数のPRACHリソースを示す」とともに、「PRACHプリアンブルを、ネットワークノードに送信する」ことが「前記複数のSSBにおける前記複数のPRACHリソースから選択されたPRACHリソースによって与えられる時間リソースおよび周波数リソースの間に」行われるという発明特定事項を少なくとも含むものであるから、本願発明19と同様な理由により、引用発明であるとはいえず、また当業者であっても引用発明及び引用文献2ないし4のそれぞれに記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本願発明24は、本願発明23の発明特定事項を全て備えるものであるから、本願発明23と同じ理由により、引用発明であるとはいえず、また当業者であっても引用発明及び引用文献2ないし4のそれぞれに記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 原査定について
本願発明1ないし18は、いずれも「同期信号ブロック(SSB)」が「それぞれ、1つまたは複数の時間リソースおよび1つまたは複数の周波数リソースにおける、複数のPRACHリソースを示す」とともに、「PRACHプリアンブルを前記無線デバイスから受信する」ことが「前記複数のSSBにおける前記複数のPRACHリソースから選択されたPRACHリソースによって与えられる時間リソースおよび周波数リソースの間に」行われるという発明特定事項を備えるものとなっている。
また、本願発明19ないし24は、いずれも「同期信号ブロック(SSB)」が「それぞれ、1つまたは複数の時間リソースおよび1つまたは複数の周波数リソースにおける、複数のPRACHリソースを示す」とともに、「PRACHプリアンブルを、ネットワークノードに送信する」ことが「前記複数のSSBにおける前記複数のPRACHリソースから選択されたPRACHリソースによって与えられる時間リソースおよび周波数リソースの間に」行われるという発明特定事項を備えるものとなっている。
してみれば、上記「第5」の「1」ないし「5」で説示したとおり、本願発明1、3、6、8ないし10、15ないし24(本願発明18については、本願発明3、6、8ないし10のいずれかの発明特定事項を含むもの。)は、引用発明であるとはいえず、また当業者であっても引用発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本願発明2、4、5及び18(本願発明18については、本願発明2、4及び5のいずれかの発明特定事項を含むもの。)は、当業者であっても引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本願発明7及び18(本願発明18については、本願発明7の発明特定事項を含むもの。)は、当業者であっても引用発明及び引用文献3に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本願発明11ないし14及び18(本願発明18については、本願発明11ないし14のいずれかの発明特定事項を含むもの。)は、当業者であっても引用発明及び引用文献4に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-03-15 
出願番号 P2019-523069
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04W)
P 1 8・ 113- WY (H04W)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 廣川 浩
特許庁審判官 圓道 浩史
横田 有光
発明の名称 アクセス手順を実施する方法、デバイス、およびネットワークノード  
代理人 藤井 亮  
代理人 園田 吉隆  
代理人 小梶 晴美  
代理人 冨樫 義孝  
代理人 石岡 利康  

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