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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1383074
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-05-24 
確定日 2022-02-24 
事件の表示 特願2017− 43350号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 9月20日出願公開、特開2018−143605号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯の概要
本願は、平成29年3月8日の特許出願であって、令和2年11月13日付けで拒絶の理由が通知され、令和3年1月22日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年2月16日付け(謄本送達日:同年同月24日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、それに対して、同年5月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 令和3年5月24日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年5月24日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、令和3年1月22日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1における
「【請求項1】
遊技球を発射させる発射手段と、
前記発射手段により発射された遊技球が案内される遊技領域と、
前記遊技領域を移動する遊技球が入球可能な始動入球手段と、
前記遊技領域を移動する遊技球が入球可能な開状態と、入球不可能な閉状態とに状態変化可能な可変入球手段と、
前記始動入球手段に入球した遊技球を検知する始動入球検知手段と、
前記始動入球検知手段の検知が行われた場合に、前記可変入球手段を前記開状態とさせる特別遊技状態を発生させるか否かの当否抽選を行う制御手段とを備える遊技機において、
前記特別遊技状態における特定演出を導出可能な表示手段を備え、
前記特定演出の設定は、前記特別遊技状態に移行する場合に所定タイミングで表示が実行されるように設定され、
前記表示手段は、前記特別遊技状態において遊技者の遊技動作に基づいて成立しうる所定条件が満たされる場合に設定される所定表示を導出可能に構成され、
前記所定表示は、前記所定条件が満たされることを契機として導出され、
前記所定条件には、前記特定演出と重複する期間ではないことが含まれ、前記所定条件のその他の条件が満たされ、前記特定演出が導出されている場合に、前記所定表示は、前記特別遊技状態において前記特定演出の後に導出可能に構成されていることを特徴とする遊技機。」を、
審判請求時に提出された手続補正書(令和3年5月24日付け)の特許請求の範囲の請求項1における
「【請求項1】
遊技球を発射させる発射手段と、
前記発射手段により発射された遊技球が案内される遊技領域と、
前記遊技領域を移動する遊技球が入球可能な始動入球手段と、
前記遊技領域を移動する遊技球が入球可能な開状態と、入球不可能な閉状態とに状態変化可能な可変入球手段と、
前記始動入球手段に入球した遊技球を検知する始動入球検知手段と、
前記始動入球検知手段の検知が行われた場合に、前記可変入球手段を前記開状態とさせる特別遊技状態を発生させるか否かの当否抽選を行う制御手段とを備える遊技機において、
前記特別遊技状態における特定演出を導出可能な表示手段を備え、
前記特別遊技状態は、複数の期間に区切られて設定されており、
前記特定演出の設定は、前記特別遊技状態に移行する場合に前記複数の期間のうち対応する前記期間で実行されるように設定され、
前記表示手段は、前記特別遊技状態において遊技者の遊技動作に基づいて成立しうる所定条件が満たされる場合に設定される所定表示を導出可能に構成され、
前記所定表示は、前記所定条件が満たされることを契機として導出され、
前記所定条件には、前記特定演出が実行される前記期間ではないことが含まれ、前記所定条件のその他の条件が満たされ、前記特定演出が実行される前記期間である場合に、前記所定表示は、前記特別遊技状態において前記特定演出が実行される前記期間の後の前記期間に導出可能に構成されていることを特徴とする遊技機。」
にする補正を含むものである(下線は、補正箇所を明示するために合議体にて付した。)。

2 補正の適否
2−1 補正の目的及び新規事項について
本件補正は、補正前の請求項1に記載した「特別遊技状態」が「複数の期間に区切られて設定されて」いることを限定し、「前記特定演出の設定は、前記特別遊技状態に移行する場合に所定タイミングで表示が実行されるように設定され」の「所定タイミングで表示が実行される」に関して、「前記複数の期間のうち対応する前記期間で」実行されることを限定し、「前記所定条件」が「前記特定演出と重複する期間ではないことが含まれ、前記所定条件のその他の条件が満たされ、前記特定演出が導出されている場合に、前記所定表示は、前記特別遊技状態において前記特定演出の後に導出可能に構成され」るに関して、「前記特定演出と重複する期間ではない」を「前記特定演出が実行される前記期間ではない」に、「前記特定演出が導出されている場合に」を「前記特定演出が実行される前記期間である場合に」に、「前記特定演出の後に導出可能」を「前記特定演出が実行される前記期間の後の前記期間に導出可能」に、それぞれ表現形式を変更することを含むものである。
そして、補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。
また、本件補正の補正事項は、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「当初明細書」という。)の段落【0615】〜【0618】、【0661】、【0665】及び図37の記載に基づくものであり、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

2−2 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否かについて、以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、次のとおりのものであると認める(記号A〜Hは、分説するため合議体にて付した。)。

「【請求項1】
A 遊技球を発射させる発射手段と、
前記発射手段により発射された遊技球が案内される遊技領域と、
前記遊技領域を移動する遊技球が入球可能な始動入球手段と、
前記遊技領域を移動する遊技球が入球可能な開状態と、入球不可能な閉状態とに状態変化可能な可変入球手段と、
前記始動入球手段に入球した遊技球を検知する始動入球検知手段と、
前記始動入球検知手段の検知が行われた場合に、前記可変入球手段を前記開状態とさせる特別遊技状態を発生させるか否かの当否抽選を行う制御手段とを備える遊技機において、
B 前記特別遊技状態における特定演出を導出可能な表示手段を備え、
C 前記特別遊技状態は、複数の期間に区切られて設定されており、
D 前記特定演出の設定は、前記特別遊技状態に移行する場合に前記複数の期間のうち対応する前記期間で実行されるように設定され、
E 前記表示手段は、前記特別遊技状態において遊技者の遊技動作に基づいて成立しうる所定条件が満たされる場合に設定される所定表示を導出可能に構成され、
F 前記所定表示は、前記所定条件が満たされることを契機として導出され、
G 前記所定条件には、前記特定演出が実行される前記期間ではないことが含まれ、前記所定条件のその他の条件が満たされ、前記特定演出が実行される前記期間である場合に、前記所定表示は、前記特別遊技状態において前記特定演出が実行される前記期間の後の前記期間に導出可能に構成されている
H ことを特徴とする遊技機。」

(2)引用発明
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された、本願の出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2017−23745号公報(平成29年2月2日公開)(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は合議体にて付した。以下同じ。)。

ア 記載事項
(ア)「【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態を詳細に説明する。図1は、本実施の形態におけるパチンコ遊技機の正面図であり、主要部材の配置レイアウトを示す。パチンコ遊技機1は、大別して、遊技盤面を構成する遊技盤と、遊技盤を支持固定する遊技機用枠3とから構成されている。遊技盤には、ガイドレールによって囲まれた、略円形状の遊技領域2が形成されている。この遊技領域2には、遊技媒体としての遊技球が、所定の打球発射装置から発射されて打ち込まれる。」

(イ)「【0025】
遊技盤における遊技領域2の中央付近には、画像表示装置5が設けられている。画像表示装置5は、例えばLCD等から構成され、各種の演出画像を表示する表示領域を形成している。画像表示装置5の表示領域では、特図ゲームにおける第1特別図柄表示装置4Aによる第1特図の可変表示や第2特別図柄表示装置4Bによる第2特図の可変表示のそれぞれに対応して、例えば3つといった複数の可変表示部となる飾り図柄表示エリアにて、各々を識別可能な複数種類の識別情報である飾り図柄が可変表示される。この飾り図柄の可変表示も、可変表示ゲームに含まれる。」

(ウ)「【0035】
左遊技領域2Aや右遊技領域2Bにおける普通入賞球装置6Aや普通可変入賞球装置6B等の配置により、第1遊技領域である左遊技領域2Aへと誘導された遊技球は、第2遊技領域である右遊技領域2Bに設けられた通過ゲート41を通過したり、普通可変入賞球装置6Bが形成する第2始動入賞口を通過したりすることが不可能又は困難である。加えて、第2遊技領域である右遊技領域2Bへと誘導された遊技球は、第1遊技領域である左遊技領域2Aに設けられた普通入賞球装置6Aが形成する第1始動入賞口を通過することが不可能又は困難である。
【0036】
普通入賞球装置6Aに形成された第1始動入賞口に進入した遊技球は、例えば図2に示す第1始動口スイッチ22Aによって検出される。普通可変入賞球装置6Bに形成された第2始動入賞口に進入した遊技球は、例えば図2に示す第2始動口スイッチ22Bによって検出される。第1始動口スイッチ22Aによって遊技球が検出されたことに基づき、所定個数の遊技球が賞球として払い出され、第1保留記憶数が所定の上限値以下であれば、第1始動条件が成立する。第2始動口スイッチ22Bによって遊技球が検出されたことに基づき、所定個数の遊技球が賞球として払い出され、第2保留記憶数が所定の上限値以下であれば、第2始動条件が成立する。なお、第1始動口スイッチ22Aによって遊技球が検出されたことに基づいて払い出される賞球の個数と、第2始動口スイッチ22Bによって遊技球が検出されたことに基づいて払い出される賞球の個数は、互いに同一の個数であってもよいし、異なる個数であってもよい。
【0037】
普通可変入賞球装置6Bの下方には、2つの特別可変入賞球装置7A、7Bが設けられている。即ち、特別可変入賞球装置7A、7Bは、第2遊技領域となる右遊技領域2Bに設けられている。
【0038】
特別可変入賞球装置7Aは、図2に示す上大入賞口扉用のソレノイド82Aによって開閉駆動される上大入賞口扉を備え、その上大入賞口扉によって開放状態と閉鎖状態とに変化する上大入賞口を形成する。一例として、特別可変入賞球装置7Aでは、上大入賞口扉用のソレノイド82Aがオフ状態であるときに上大入賞口扉が上大入賞口を閉鎖状態にする。その一方で、特別可変入賞球装置7Aでは、上大入賞口扉用のソレノイド82Aがオン状態であるときに上大入賞口扉が上大入賞口を開放状態にする。特別可変入賞球装置7Aに形成された上大入賞口に進入した遊技球は、例えば図2に示す上大入賞口スイッチ23Aによって検出される。
【0039】
特別可変入賞球装置7Bは、図2に示す下大入賞口扉用のソレノイド82Bによって開閉駆動される下大入賞口扉を備え、その下大入賞口扉によって開放状態と閉鎖状態とに変化する下大入賞口を形成する。一例として、特別可変入賞球装置7Bでは、下大入賞口扉用のソレノイド82Bがオフ状態であるときに下大入賞口扉が下大入賞口を閉鎖状態にする。その一方で、特別可変入賞球装置7Bでは、下大入賞口扉用のソレノイド82Bがオン状態であるときに下大入賞口扉が下大入賞口を開放状態にする。特別可変入賞球装置7Bに形成された下大入賞口に進入した遊技球は、例えば図2に示す下大入賞口スイッチ23Bや特定領域スイッチ24によって検出される。」

(エ)「【0056】
遊技制御用マイクロコンピュータ100では、例えば乱数回路104等により、遊技の進行を制御するために用いられる各種の乱数値を示す数値データが更新可能にカウントされる。遊技の進行を制御するために用いられる乱数は、遊技用乱数ともいう。遊技用乱数は、乱数回路104等のハードウェアによって更新されるものであってもよいし、遊技制御用マイクロコンピュータ100のCPU103が所定のコンピュータプログラムを実行することでソフトウェアによって更新されるものであってもよい。例えば、遊技制御用マイクロコンピュータ100におけるRAM102の所定領域に設けられたランダムカウンタや、RAM102とは別個の内部レジスタに設けられたランダムカウンタに、所定の乱数値を示す数値データを格納し、CPU103が定期的又は不定期的に格納値を更新することで、乱数値の更新が行われるようにしてもよい。
【0057】
この実施の形態では、主基板11の側において、特図表示結果決定用の乱数値MR1、大当り種別決定用の乱数値MR2、変動パターン決定用の乱数値MR3、普図表示結果決定用の乱数値MR4のそれぞれを示す数値データが、カウント可能に制御される。なお、遊技効果を高めるために、これら以外の乱数値が用いられてもよい。
【0058】
特図表示結果決定用の乱数値MR1は、特図ゲームにおける特別図柄等の可変表示結果を「大当り」として大当り遊技状態に制御するか否かを決定するために用いられる乱数値である。大当り種別決定用の乱数値MR2は、可変表示結果を「大当り」とする場合に、大当り種別を複数種類のいずれかに決定するために用いられる乱数値である。変動パターン決定用の乱数値MR3は、飾り図柄の変動パターンを予め用意された複数種類のいずれかに決定するために用いられる乱数値である。普図表示結果決定用の乱数値MR4は、普図ゲームにおける普通図柄の可変表示結果を「普図当り」として普通可変入賞球装置6Bを第1可変状態となる開放状態や拡大開放状態に制御するか否かを、決定するために用いられる乱数値である。」

(オ)「【0072】
第1特別図柄表示装置4Aによる第1特図を用いた特図ゲームが開始されるときや、第2特別図柄表示装置4Bによる第2特図を用いた特図ゲームが開始されるときには、特別図柄の可変表示結果を予め定められた特定表示結果としての「大当り」にするか否かが、その可変表示結果を導出表示する以前に決定される。そして、可変表示結果の決定に基づく所定割合で、変動パターンの決定等が行われ、可変表示結果や変動パターンを指定する演出制御コマンドが、図2に示す主基板11の遊技制御用マイクロコンピュータ100から演出制御基板12に向けて伝送される。」

(カ)「【0076】
大当り遊技状態では、上大入賞口又は下大入賞口が開放状態となって特別可変入賞球装置7A又は特別可変入賞球装置7Bが遊技者によって有利な第1状態となる。そして、所定期間、あるいは所定個数の遊技球が上大入賞口又は下大入賞口に進入して入賞球が発生するまでの期間にて、上大入賞口又は下大入賞口を継続して開放状態とするラウンド遊技が実行される。こうしたラウンド遊技の実行期間以外の期間では、上大入賞口や下大入賞口が閉鎖状態となり、入賞球が発生困難又は発生不可能となる。上大入賞口に遊技球が進入したときには、上大入賞口スイッチ23Aにより入賞球が検出され、その検出毎に所定個数の遊技球が賞球として払い出される。大当り遊技状態におけるラウンド遊技は、所定の上限回数に達するまで繰り返し実行される。したがって、大当り遊技状態では、遊技者が多数の賞球を極めて容易に獲得することができ、遊技者によって有利な遊技状態となる。なお、パチンコ遊技機1は、賞球となる遊技球を直接に払い出すものであってもよいし、賞球となる遊技球の個数に対応した得点を付与するものであってもよい。」

(キ)「【0095】
一例として、第1始動入賞処理では、第1特図保留記憶数が所定の上限値となっているか否かを判定する。このとき第1特図保留記憶数が上限値に達していれば、第1始動入賞処理を終了する。一方、第1特図保留記憶数が上限値未満であれば、RAM102の所定領域に設けられた第1保留記憶数カウンタの格納値である第1保留記憶数カウント値を1加算する。こうして、第1保留記憶数カウント値は、第1始動入賞口を遊技球が通過して第1特図を用いた特図ゲームに対応した第1始動条件が成立したときに、1増加するように更新される。その後、始動入賞の発生に対応した所定の遊技用乱数を抽出して、RAM102の所定領域に保留データとして記憶させる。
【0096】
第2始動入賞処理では、第2特図保留記憶数が、所定の上限値となっているか否かを判定する。このとき第2特図保留記憶数が上限値に達していれば、第2始動入賞処理を終了する。一方、第2特図保留記憶数が上限値未満であれば、RAM102の所定領域に設けられた第2保留記憶数カウンタの格納値である第2保留記憶数カウント値を1加算する。こうして、第2保留記憶数カウント値は、第2始動入賞口を遊技球が通過して第2特図を用いた特図ゲームに対応した第2始動条件が成立したときに、1増加するように更新される。その後、始動入賞の発生に対応した所定の遊技用乱数を抽出して、RAM102の所定領域に保留データとして記憶させる。」

(ク)「【0203】
ステップS175の大当り中演出処理は、演出プロセスフラグの値が“5”のときに実行される処理である。この大当り中演出処理において、演出制御用CPU120は、大当り遊技状態における演出内容に対応した演出制御パターン等を設定し、その設定内容に基づく演出画像を画像表示装置5の画面上に表示させることや、音声制御基板13に対する指令の出力によりスピーカ8L、8Rから音声や効果音を出力させること、ランプ制御基板14に対する指令の出力により遊技効果ランプ9や装飾用LEDを点灯/消灯/点滅させることといった、大当り遊技状態における各種の演出制御を実行する。また、大当り中演出処理では、例えば主基板11から伝送される大当り終了指定コマンドを受信したこと等に対応して、演出プロセスフラグの値が“6”に更新される。
【0204】
ステップS176の大当り終了演出処理は、演出プロセスフラグの値が“6”のときに実行される処理である。この大当り終了演出処理において、演出制御用CPU120は、例えば大当り遊技状態の終了等に対応した演出制御パターンを設定し、その設定内容に基づく演出画像を画像表示装置5の画面上に表示させることや、音声制御基板13に対する指令の出力によりスピーカ8L、8Rから音声や効果音を出力させること、ランプ制御基板14に対する指令の出力により遊技効果ランプ9や装飾用LEDを点灯/消灯/点滅させることといった、大当り遊技状態の終了時における各種の演出制御を実行する。その後、演出プロセスフラグをクリアして、その値を“0”に初期化する。
【0205】
図19(A)は、図18のステップS175にて実行される大当り中演出処理の一例を示すフローチャートである。図19(A)に示す大当り中演出処理において、演出制御用CPU120は、まず、大当り終了指定コマンドの受信があったか否かを判定する(ステップS181)。このとき、大当り終了指定コマンドの受信がない場合には(ステップS181;NO)、大当り遊技状態におけるラウンド遊技の実行回数が「1」〜「4」となる第1ラウンド〜第4ラウンドの実行中であるか否かを判定する(ステップS182)。
【0206】
ステップS182にて第1ラウンド〜第4ラウンドの実行中であると判定された場合には(ステップS182;YES)、大当り中昇格演出となる演出動作の制御を行う(ステップS183)。このように、この実施の形態では、大当り遊技状態における第1ラウンド〜第4ラウンドの実行中にて、確変状態に制御するか否かの報知演出となる第6報知としての大当り中昇格演出が実行される。
【0207】
大当り中昇格演出には、確定飾り図柄が非確変大当り組み合わせであるにもかかわらず遊技状態が確変状態となる昇格がある旨を報知する大当り中昇格成功演出と、確変状態となる昇格がない旨を報知する大当り中昇格失敗演出とがある。例えば、大当り中昇格演出では、画像表示装置5の表示領域にて飾り図柄を可変表示させて非確変図柄と確変図柄のいずれかを演出表示結果として停止表示させること、あるいは飾り図柄の可変表示とは異なる演出画像の表示を行うこと等により、確変状態となる昇格の有無を、遊技者が認識できるように報知すればよい。」

(ケ)「【0228】
図22は、累積賞球数報知演出動作制御処理として、図19(A)のステップS186にて実行される処理の一例を示すフローチャートである。この累積賞球数報知演出動作制御処理において、演出制御用CPU120は、まず、大当り中昇格演出が終了したか否かを判定する(ステップS391)。ステップS391の処理では、例えば大当り中昇格演出の実行中にオン状態となる大当り中昇格演出フラグを設けておき、その大当り中昇格演出フラグがオン状態であるか否かに基づいて判定すればよい。
【0229】
ステップS391にて大当り中昇格演出が終了していなければ(ステップS391;NO)、累積賞球数報知演出動作制御処理を終了する。このように、この実施の形態では、大当り中昇格演出が終了するまでは、累積賞球数報知演出は実行されない。これは、この実施の形態では第1ラウンド〜第4ラウンドにて実行される大当り中昇格演出が、遊技状態が確変状態となる昇格があるか否かという、遊技者が注視すべき重要な演出であるところ、その大当り中昇格演出が終了するまでの間に、連チャンが継続することを前提として演出効果が向上する累積賞球数報知演出が実行されることにより、連チャンが継続するか否かを報知することにもなる大当り中昇格演出への注目度を低下させないようにするためである。
【0230】
ステップS391にて大当り中昇格演出が終了している場合には(ステップS391;YES)、累積賞球数報知演出期間であるか否かを、例えば、演出制御パターンに基づいて判定する(ステップS392)。
【0231】
ステップS392にて累積賞球数報知演出期間でない場合には(ステップS392;NO)、連チャン中における大当り中に賞球として払い出された累積賞球数が「5000個」に到達したことを報知する累積賞球数報知演出を実行済みか否かを判定する(ステップS393)。ステップS393の処理では、例えば連チャン中における大当り中に賞球として払い出された累積賞球数が「5000個」に到達したことを報知したときにオン状態にセットされる5000個到達フラグを設けておき、その5000個到達フラグがオン状態であるか否かに基づいて判定すればよい。
【0232】
ステップS393にて連チャン中における大当り中に賞球として払い出された累積賞球数が「5000個」に到達したことを報知する累積賞球数報知演出を実行済みではない場合には(ステップS393;NO)、RAM122の所定領域に記憶されている累積賞球数カウント値を読み出し、その読出値が「5000」以上であるか否かを判定する(ステップS394)。このとき、累積賞球数カウント値が「5000」以上ではない場合には(ステップS394;NO)、累積賞球数報知演出動作制御処理を終了する。
【0233】
ステップS393にて連チャン中における大当り中に賞球として払い出された累積賞球数が「5000個」に到達したことを報知する累積賞球数報知演出を実行済みである場合には(ステップS393;YES)、連チャン中における大当り中に賞球として払い出された累積賞球数が「10000個」に到達したことを報知する累積賞球数報知演出を実行済みか否かを判定する(ステップS395)。ステップS395の処理では、例えば連チャン中における大当り中に賞球として払い出された累積賞球数が「10000個」に到達したことを報知したときにオン状態にセットされる10000個到達フラグを設けておき、その10000個到達フラグがオン状態であるか否かに基づいて判定すればよい。
【0234】
ステップS395にて連チャン中における大当り中に賞球として払い出された累積賞球数が「10000個」に到達したことを報知する累積賞球数報知演出を実行済みである場合には(ステップS395;YES)、累積賞球数報知演出動作制御処理を終了する。
【0235】
ステップS395にて連チャン中における大当り中に賞球として払い出された累積賞球数が「10000個」に到達したことを報知する累積賞球数報知演出を実行済みではない場合には(ステップS395;NO)、RAM122の所定領域に記憶されている累積賞球数カウント値を読み出し、その読出値が「10000」以上であるか否かを判定する(ステップS396)。このとき、累積賞球数カウント値が「10000」以上ではない場合には(ステップS396;NO)、累積賞球数報知演出動作制御処理を終了する。
【0236】
ステップS394にて累積賞球数カウント値が「5000」以上である場合や(ステップS394;YES)、ステップS396にて累積賞球数カウント値が「10000」以上である場合や(ステップS396;YES)、ステップS392にて累積賞球数報知演出期間である場合には(ステップS392;YES)、賞球数報知演出の実行中であるか否かを判定する(ステップS397)。
【0237】
ステップS397にて賞球数報知演出の実行中である場合には(ステップS397;YES)、累積賞球数報知演出動作制御処理を終了する。このように、この実施の形態では、賞球数報知演出が実行中である場合には、累積賞球数報知演出は実行されない。これは、賞球数報知演出と累積賞球数報知演出とが互いに類似する演出であり、同時に実行されることにより、いずれの演出への注目度も低下させてしまう虞があるからである。そこで、この実施の形態では、累積賞球数報知演出よりも賞球数報知演出を優先的に実行するようにしている。
【0238】
ステップS397にて賞球数報知演出の実行中ではない場合には(ステップS397;NO)、確変確定報知演出の実行中であるか否かを判定する(ステップS398)。このとき、確変確定報知演出の実行中ではない場合には(ステップS398;NO)、エラー報知の実行中であるか否かを判定する(ステップS399)。
【0239】
ステップS399にてエラー報知の実行中ではない場合には(ステップS399;NO)、最上位のレイヤーで累積賞球数報知演出を実行するための動作制御を行った後(ステップS400)、累積賞球数報知演出動作制御処理を終了する。例えば、ステップS400の処理では、連チャン中における大当り中に賞球として払い出された累積賞球数が「5000個」に到達したことを報知する累積賞球数報知演出、あるいは「10000個」に到達したことを報知する累積賞球数報知演出を実行するために予め用意された演出制御パターン等から読み出した演出制御実行データに応じて、所定の演出態様による累積賞球数報知演出を実行するために、各種指令を作成して表示制御部123や音声制御基板13、ランプ制御基板14等に対して伝送させればよい。これにより、例えば図25(D)に示すような累積賞球数報知演出画像を、最上位のレイヤーに表示させるといった、累積賞球数報知演出が実行される。」

イ 図示内容
(ア)「【図19】



(イ)「【図22】



(ウ)「【図25】



ウ 引用発明
上記「ア 記載事項」及び「イ 図示内容」から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める((記号a等は、本願発明の記号A〜Iに対応させて付した。)。

「a 遊技領域2に、遊技媒体としての遊技球が、所定の打球発射装置から発射されて打ち込まれ(【0022】)、
左遊技領域2Aや右遊技領域2Bに普通入賞球装置6Aや普通可変入賞球装置6Bを配置(【0035】)し、
普通入賞球装置6Aに形成された第1始動入賞口に進入した遊技球は、第1始動口スイッチ22Aによって検出され、普通可変入賞球装置6Bに形成された第2始動入賞口に進入した遊技球は、第2始動口スイッチ22Bによって検出され、第1始動口スイッチ22Aによって遊技球が検出されたことに基づき、第1始動条件が成立し、第2始動口スイッチ22Bによって遊技球が検出されたことに基づき、第2始動条件が成立(【0036】)し、
普通可変入賞球装置6Bの下方には、2つの特別可変入賞球装置7A、7Bが設けられ(【0037】)、特別可変入賞球装置7Aは、上大入賞口扉用のソレノイド82Aによって開閉駆動される上大入賞口扉を備え、その上大入賞口扉によって開放状態と閉鎖状態とに変化する上大入賞口を形成(【0038】)し、特別可変入賞球装置7Bは、下大入賞口扉用のソレノイド82Bによって開閉駆動される下大入賞口扉を備え、その下大入賞口扉によって開放状態と閉鎖状態とに変化する下大入賞口を形成(【0039】)し、
大当り遊技状態では、上大入賞口又は下大入賞口が開放状態となって特別可変入賞球装置7A又は特別可変入賞球装置7Bが遊技者によって有利な第1状態となり(【0076】)、
第1保留記憶数カウント値は、第1始動入賞口を遊技球が通過して第1特図を用いた特図ゲームに対応した第1始動条件が成立したときに、1増加するように更新され、始動入賞の発生に対応した所定の遊技用乱数を抽出して、RAM102の所定領域に保留データとして記憶させ(【0095】)、第2保留記憶数カウント値は、第2始動入賞口を遊技球が通過して第2特図を用いた特図ゲームに対応した第2始動条件が成立したときに、1増加するように更新され、始動入賞の発生に対応した所定の遊技用乱数を抽出して、RAM102の所定領域に保留データとして記憶させ(【0096】)、遊技用乱数は遊技の進行を制御するために用いられる乱数(【0056】)であり、主基板11の側において、特図表示結果決定用の乱数値MR1を示す数値データが、カウント可能に制御され(【0057】)、特図表示結果決定用の乱数値MR1は、特図ゲームにおける特別図柄等の可変表示結果を「大当り」として大当り遊技状態に制御するか否かを決定するために用いられる乱数値である(【0058】)パチンコ遊技機1(【0022】)において、
b〜g 遊技領域2の中央付近には、画像表示装置5が設けられ(【0025】)、大当り中演出処理において、大当り遊技状態における演出内容に対応した演出制御パターン等を設定し、その設定内容に基づく演出画像を画像表示装置5の画面上に表示させ、大当り遊技状態における演出制御を実行(【0203】)し、大当り終了指定コマンドの受信がない場合には、大当り遊技状態におけるラウンド遊技の実行回数が「1」〜「4」となる第1ラウンド〜第4ラウンドの実行中であるか否かを判定し(【0205】)、第1ラウンド〜第4ラウンドの実行中であると判定された場合には、大当り中昇格演出となる演出動作の制御を行い、大当り遊技状態における第1ラウンド〜第4ラウンドの実行中にて、確変状態に制御するか否かの報知演出となる第6報知としての大当り中昇格演出が実行され(【0206】)、大当り中昇格演出には、確定飾り図柄が非確変大当り組み合わせであるにもかかわらず遊技状態が確変状態となる昇格がある旨を報知する大当り中昇格成功演出と、確変状態となる昇格がない旨を報知する大当り中昇格失敗演出とがあり(【0207】)、累積賞球数報知演出動作制御処理において、大当り中昇格演出が終了したか否かを判定し(【0228】)、大当り中昇格演出が終了していなければ、累積賞球数報知演出動作制御処理を終了し、大当り中昇格演出が終了するまでは、累積賞球数報知演出は実行されず(【0229】)、大当り中昇格演出が終了している場合には、累積賞球数報知演出期間であるか否かを判定し(【0230】)、累積賞球数報知演出期間でない場合には、連チャン中における大当り中に賞球として払い出された累積賞球数が「5000個」に到達したことを報知する累積賞球数報知演出を実行済みか否かを判定し(【0231】)、連チャン中における大当り中に賞球として払い出された累積賞球数が「5000個」に到達したことを報知する累積賞球数報知演出を実行済みではない場合には、RAM122の所定領域に記憶されている累積賞球数カウント値を読み出し、その読出値が「5000」以上であるか否かを判定し、累積賞球数カウント値が「5000」以上ではない場合には、累積賞球数報知演出動作制御処理を終了し(【0232】)、連チャン中における大当り中に賞球として払い出された累積賞球数が「5000個」に到達したことを報知する累積賞球数報知演出を実行済みである場合には、連チャン中における大当り中に賞球として払い出された累積賞球数が「10000個」に到達したことを報知する累積賞球数報知演出を実行済みか否かを判定し(【0233】)、連チャン中における大当り中に賞球として払い出された累積賞球数が「10000個」に到達したことを報知する累積賞球数報知演出を実行済みである場合には、累積賞球数報知演出動作制御処理を終了し(【0234】)、連チャン中における大当り中に賞球として払い出された累積賞球数が「10000個」に到達したことを報知する累積賞球数報知演出を実行済みではない場合には、RAM122の所定領域に記憶されている累積賞球数カウント値を読み出し、その読出値が「10000」以上であるか否かを判定し、累積賞球数カウント値が「10000」以上ではない場合には、累積賞球数報知演出動作制御処理を終了し(【0235】)、累積賞球数カウント値が「5000」以上である場合や、累積賞球数カウント値が「10000」以上である場合や、累積賞球数報知演出期間である場合には、賞球数報知演出の実行中であるか否かを判定し(【0236】)、賞球数報知演出の実行中である場合には、累積賞球数報知演出動作制御処理を終了し(【0237】)、賞球数報知演出の実行中ではない場合には、確変確定報知演出の実行中であるか否かを判定し、確変確定報知演出の実行中ではない場合には、エラー報知の実行中であるか否かを判定し(【0238】)、エラー報知の実行中ではない場合には、連チャン中における大当り中に賞球として払い出された累積賞球数が「5000個」に到達したことを報知する累積賞球数報知演出、あるいは「10000個」に到達したことを報知する累積賞球数報知演出を実行するために予め用意された演出制御パターン等から読み出した演出制御実行データに応じて、累積賞球数報知演出が実行される(【0239】)
h パチンコ遊技機1(【0022】)。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを、分説に従い対比する。

ア 構成Aについて
引用発明の構成aの「所定の打球発射装置」、「遊技領域2」、「普通入賞球装置6Aや普通可変入賞球装置6B」、「開放状態と閉鎖状態とに変化する」こと、「2つの特別可変入賞球装置7A、7B」のいずれか、「第1始動口スイッチ22A」または「第2始動口スイッチ22B」、「大当り遊技状態」、「特図ゲームにおける特別図柄等の可変表示結果を「大当り」として大当り遊技状態に制御するか否かを決定する」こと、「主基板11」、「パチンコ遊技機1」は、それぞれ本件補正発明の「発射手段」、「遊技領域」、「始動入球手段」、「入球可能な開状態と、入球不可能な閉状態とに状態変化可能」なこと、「可変入球手段」、「始動入球検知手段」、「特別遊技状態」、「当否抽選」、「制御手段」、「遊技機」に相当する。
よって、引用発明の構成aは、本件補正発明の構成Aに相当する構成を有する。

イ 構成Bについて
引用発明の構成b〜gの「大当り中昇格演出」、「画面上に表示させ」ること、「画像表示装置5」は、それぞれ本件補正発明の「特定演出」、「導出可能」なこと、「表示手段」に相当する。
よって、引用発明の構成b〜gは、本件補正発明の構成Bに相当する構成を有する。

ウ 構成Cについて
引用発明の構成b〜gでは「大当り終了指定コマンドの受信がない場合には、大当り遊技状態におけるラウンド遊技の実行回数が「1」〜「4」となる第1ラウンド〜第4ラウンドの実行中であるか否かを判定し、第1ラウンド〜第4ラウンドの実行中であると判定された場合には、大当り中昇格演出となる演出動作の制御を行い、大当り遊技状態における第1ラウンド〜第4ラウンドの実行中にて、確変状態に制御するか否かの報知演出となる第6報知としての大当り中昇格演出が実行され」ることから、引用発明の「大当り遊技状態」では、「大当り中昇格演出」を実行可能で、かつ、「大当り中昇格演出」を実行している期間(すなわち、大当り遊技状態における第1ラウンド〜第4ラウンドの実行中で、かつ、大当り昇格演出を実行している期間)と、それ以外の期間が存在しているといえる。
そうすると、引用発明の「大当り遊技状態」では、「大当り中昇格演出」を実行可能で、かつ、「大当り中昇格演出」を実行している期間と、それ以外の期間が存在し、設定した条件に応じて「大当り中昇格演出」の実行の可否を決定することは、本件補正発明の「前記特別遊技状態」が「複数の期間に区切られて設定され」ることに相当する。
よって、引用発明の構成b〜gは、本件補正発明の構成Cに相当する構成を有する。

エ 構成Dについて
上記ウのとおり、引用発明の「大当り遊技状態」では、「大当り中昇格演出」を実行可能で、かつ、当該演出を実行している期間と、それ以外の期間が存在しており、それを処理しているのは「大当り中演出処理」である。そして、「大当り中演出処理」では、「大当り遊技状態におけるラウンド遊技の実行回数が「1」〜「4」となる第1ラウンド〜第4ラウンドの実行中であるか否かを判定し」ていることから、「大当り遊技状態」になった時から行われていることは明らかであり、「大当り中演出処理」が大当り状態に移行する場合の処理であるといえる。
また、「大当り中昇格演出」は、上記ウのとおり、「大当り終了指定コマンドの受信がない場合には、大当り遊技状態におけるラウンド遊技の実行回数が「1」〜「4」となる第1ラウンド〜第4ラウンドの実行中であるか否かを判定し、第1ラウンド〜第4ラウンドの実行中であると判定された場合」に「演出動作の制御を行」うので、「大当り中昇格演出」を実行可能で、かつ、「大当り中昇格演出」を実行している期間と、それ以外の期間のうち、「大当り中昇格演出」を実行可能で、かつ、「大当り中昇格演出」を実行している期間(本件補正発明の「前記複数の期間のうち対応する前記期間」に相当)で「大当り中昇格演出」が実行されるように設定されるといえる。
よって、引用発明の構成b〜gは、本件補正発明の構成Dに相当する構成を有する。

オ 構成Eについて
引用発明の構成b〜gでは、連チャン中における大当り遊技状態中に賞球として払い出された累積賞球数が「5000個」又は「10000個」に到達したことを報知する累積賞球数報知演出を有しており、連チャン中における大当り中に賞球として払い出された累積賞球数が「5000個」又は「10000個」に到達するということは、遊技者が遊技球を発射して大当り及び連チャンを発生させ、連チャン中における大当り遊技状態中に払い出された賞球が累積して5000個又は10000個となったという状況であるから、引用発明において、そのような賞球が累積して5000個又は10000個となることは、本件補正発明の「前記特別遊技状態において遊技者の遊技動作に基づいて成立しうる所定条件が満たされる」ことに相当し、また、引用発明の構成b〜gの「累積賞球数報知演出」が本件補正発明の「所定表示」に相当する。
よって、引用発明の構成b〜gは、本件補正発明の構成Eに相当する構成を有する。

カ 構成Fについて
上記オのとおり、引用発明の構成b〜gでは、「累積賞球数報知演出」は、遊技者が遊技球を発射して大当り及び連チャンを発生させ、連チャン中における大当り遊技状態中に払い出された賞球が累積して5000個又は10000個となったときに実行され、上記オのとおり、そのような賞球が累積して5000個又は10000個となることは、本件補正発明の「前記特別遊技状態において遊技者の遊技動作に基づいて成立しうる所定条件が満たされる」ことに相当し、また、引用発明の構成b〜gの「累積賞球数報知演出」が本件補正発明の「所定表示」に相当する。
よって、引用発明の構成b〜gは、本件補正発明の構成Fに相当する構成を有する。

キ 構成Gについて
引用発明の構成b〜gでは、「累積賞球数報知演出」は、「累積賞球数報知演出動作制御処理において、大当り中昇格演出が終了したか否かを判定し、大当り中昇格演出が終了していなければ、累積賞球数報知演出動作制御処理を終了」しているから、「大当り中昇格演出が終了してい」ない、すなわち、上記ウでの「大当り中昇格演出」を実行可能で、かつ、当該演出を実行している期間では、「累積賞球数報知演出動作制御処理を終了」しているといえる。
また、引用発明の構成b〜gでは、「大当り中昇格演出が終了したか否かを判定し、大当り中昇格演出が終了していなければ、累積賞球数報知演出動作制御処理を終了し、大当り中昇格演出が終了するまでは、累積賞球数報知演出は実行されず、大当り中昇格演出が終了している場合には、累積賞球数報知演出期間であるか否かを判定し」、「累積賞球数報知演出」を実行することができるその他の条件が成立している場合(本件補正発明の「前記所定条件のその他の条件が満たされ」る場合、に相当)は、「累積賞球数報知演出」が「実行され」ることから、上記ウにおける「大当り中昇格演出」を実行可能で、かつ、当該演出を実行している期間では、「累積賞球数報知演出」は実行されず、その「大当り中昇格演出」が終了したと判定されたときに、「大当り中昇格演出」を実行可能で、かつ、「大当り中昇格演出」を実行している期間の後の期間であるそれ以外の期間(本件補正発明の「前記特定演出が実行される前記期間の後の前記期間」に相当)に「累積賞球数報知演出」が実行されることとなる。
よって、引用発明の構成b〜gは、本件補正発明の構成Gに相当する構成を有する。

ク 構成Hについて
引用発明の構成hの「パチンコ遊技機1」は、本件補正発明の「遊技機」に相当する。
よって、引用発明の構成hは、本件補正発明の構成Hに相当する構成を有する。

上記ア〜クによれば、本件補正発明と引用発明は、
(一致点)
「A 遊技球を発射させる発射手段と、
前記発射手段により発射された遊技球が案内される遊技領域と、
前記遊技領域を移動する遊技球が入球可能な始動入球手段と、
前記遊技領域を移動する遊技球が入球可能な開状態と、入球不可能な閉状態とに状態変化可能な可変入球手段と、
前記始動入球手段に入球した遊技球を検知する始動入球検知手段と、
前記始動入球検知手段の検知が行われた場合に、前記可変入球手段を前記開状態とさせる特別遊技状態を発生させるか否かの当否抽選を行う制御手段とを備える遊技機において、
B 前記特別遊技状態における特定演出を導出可能な表示手段を備え、
C 前記特別遊技状態は、複数の期間に区切られて設定されており、
D 前記特定演出の設定は、前記特別遊技状態に移行する場合に前記複数の期間のうち対応する前記期間で実行されるように設定され、
E 前記表示手段は、前記特別遊技状態において遊技者の遊技動作に基づいて成立しうる所定条件が満たされる場合に設定される所定表示を導出可能に構成され、
F 前記所定表示は、前記所定条件が満たされることを契機として導出され、
G 前記所定条件には、前記特定演出が実行される前記期間ではないことが含まれ、前記所定条件のその他の条件が満たされ、前記特定演出が実行される前記期間である場合に、前記所定表示は、前記特別遊技状態において前記特定演出が実行される前記期間の後の前記期間に導出可能に構成されている
H 遊技機。」
である点で一致し、相違する点がない。

以上のように、本件補正発明は引用発明である。

(4)請求人の主張について
ア 請求人は、審判請求書において、以下のとおり主張している。
「 4.本願発明と引用文献に記載の発明との対比
(1)本願発明1では、
(i)「前記特別遊技状態は、複数の期間に区切られて設定されており、
前記特定演出の設定は、前記特別遊技状態に移行する場合に前記複数の期間のうち対応する前記期間で実行されるように設定され」る構成を前提として、
(ii)「前記所定条件には、前記特定演出が実行される前記期間ではないことが含まれ、前記所定条件のその他の条件が満たされ、前記特定演出が実行される前記期間である場合に、前記所定表示は、前記特別遊技状態において前記特定演出が実行される前記期間の後の前記期間に導出可能に構成されていること」
を必須の技術的特徴としている。
これに対し、引用文献1では、段落[0206]において、『ステップS182にて第1ラウンド〜第4ラウンドの実行中であると判定された場合には(ステップS182;YES)、大当り中昇格演出となる演出動作の制御を行う(ステップS183)。このように、この実施の形態では、大当り遊技状態における第1ラウンド〜第4ラウンドの実行中にて、確変状態に制御するか否かの報知演出となる第6報知としての大当り中昇格演出が実行される。』との記載がある。
そして、引用文献1では、『大当り中昇格演出が終了するまでは、累積賞球数報知演出は実行されない。(段落[0229]参照)』構成とされているが、大当り中昇格演出が終了したか否かを判定する処理としては、段落[0228]において、『例えば大当り中昇格演出の実行中にオン状態となる大当り中昇格演出フラグを設けておき、その大当り中昇格演出フラグがオン状態であるか否かに基づいて判定すればよい。』と記載されているに過ぎず、「大当り中昇格演出が実行されるラウンドであるか否かを判別する構成」については一切記載されていない。また、一般的なパチンコ機の大当たり中昇格演出として、大当たり中昇格演出の終了のタイミングと、ラウンドの終了のタイミングとが一致しないものも多く(ラウンド期間は一定ではなく、ラウンド期間が長くなった場合に、大当たり中昇格演出の結果が既に導出されたにもかかわらず、大当たり中昇格演出が導出され続けると演出性が低下する)、引用文献1の記載において、ラウンドの終了で大当り中昇格演出フラグがオフされる構成が自明であるとは言えない。
さらに、累積賞球数報知演出が大当り中昇格演出と重複した場合に、大当り中昇格演出が終了するとすぐに累積賞球数報知演出が実行されるようになっている(段落[0230]〜[0232]等参照)。つまり、累積賞球数報知演出が所定のラウンドに対応付けて設定される構成についての記載がなく、当該構成では、累積賞球数報知演出を大当り中昇格演出との重複を回避して導出させるために、大当り中昇格演出が終わるまで、大当り中昇格演出が終わったか否かを確認する処理([図22]のS391参照)をし続ける必要がある。
従って、引用文献1をいくら参酌してみても、本願発明1の上記技術的特徴(ii)及びその作用効果を想起し得ない筈である。
(2)以上のように、本願発明1と引用文献1とでは、構成要件が全く相違するとともに、本願発明1によれば、当該構成の違いによって引用文献1では到底奏されない作用効果が奏されるのである。
してみれば、本願発明1は、引用文献1とは同一ではないのはもちろんのこと、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易になし得た程度のものではなく、新規性及び進歩性を有するものと確信する。
また、本願発明1が新規性及び進歩性を有するものである以上、本願発明1の構成要件を全て具備する本願の請求項2に係る発明(本願発明2)についても、当業者が容易になし得た程度のものではなく、新規性及び進歩性を有するものと確信する。」

イ 請求人の主張について検討する。
請求項1の「前記特別遊技状態は、複数の期間に区切られて設定されており、
前記特定演出の設定は、前記特別遊技状態に移行する場合に前記複数の期間のうち対応する前記期間で実行されるように設定され」との記載では、「複数の期間」が「大当たり状態」の各「ラウンド」であり、特定演出を「大当たり状態」の「ラウンド」に対応させて設定していることは特定されているとはいえず、その字義どおり、「複数の期間に区切られて設定されて」いる期間と解釈することが相当であるところ、上記(3)ウで説示したとおり、引用発明と相違するところはない。
よって、請求人の主張は採用することはできない。

(5)独立特許要件のむすび
以上のとおりであるから、本件補正発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 小括
本件補正発明は、上記2のとおり、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和3年1月22日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記「第2[理由]1 補正の内容」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものであり、再掲すると、次のとおりのものである。

「【請求項1】
A 遊技球を発射させる発射手段と、
前記発射手段により発射された遊技球が案内される遊技領域と、
前記遊技領域を移動する遊技球が入球可能な始動入球手段と、
前記遊技領域を移動する遊技球が入球可能な開状態と、入球不可能な閉状態とに状態変化可能な可変入球手段と、
前記始動入球手段に入球した遊技球を検知する始動入球検知手段と、
前記始動入球検知手段の検知が行われた場合に、前記可変入球手段を前記開状態とさせる特別遊技状態を発生させるか否かの当否抽選を行う制御手段とを備える遊技機において、
B 前記特別遊技状態における特定演出を導出可能な表示手段を備え、
D’前記特定演出の設定は、前記特別遊技状態に移行する場合に所定タイミングで表示が実行されるように設定され、
E 前記表示手段は、前記特別遊技状態において遊技者の遊技動作に基づいて成立しうる所定条件が満たされる場合に設定される所定表示を導出可能に構成され、
F 前記所定表示は、前記所定条件が満たされることを契機として導出され、
G’前記所定条件には、前記特定演出と重複する期間ではないことが含まれ、前記所定条件のその他の条件が満たされ、前記特定演出が導出されている場合に、前記所定表示は、前記特別遊技状態において前記特定演出の後に導出可能に構成されている
H ことを特徴とする遊技機。」

2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。

1.(新規性)この出願の下記の請求項1及び2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.(進歩性)この出願の下記の請求項1及び2に係る発明は、その出願前に日本国内において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
●理由1(特許法第29条第1項第3号)について
・請求項1及び2
・引用文献等 1

●理由2(特許法第29条第2項)について
・請求項1及び2
・引用文献等 1

<引用文献等一覧>
1.特開2017−23745号公報

3 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1である特開2017−23745号公報の記載事項及び引用発明の認定については、前記「第2 2 2−2(2)引用発明」に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記「第2[理由]」で検討した本件補正発明において、構成Cに「前記特別遊技状態は、複数の期間に区切られて設定されており、」とあった限定を省き、構成Dで「前記特別遊技状態に移行する場合に前記複数の期間のうち対応する前記期間で実行される」とあったもののうち「前記複数の期間のうち対応する前記期間で実行される」との限定を「所定タイミングで表示が実行される」に戻し、構成Gの「所定条件」に関して、「前記特定演出が実行される前記期間である場合に」を「前記特定演出と重複する期間ではない」に、「前記特定演出が実行される前記期間である場合に」を「前記特定演出が導出されている場合に」に、「前記特定演出が実行される前記期間の後の前記期間に導出可能」を「前記特定演出が実行される前記期間の後の前記期間に導出可能」に、それぞれ表現形式を戻すものである。
そうすると、前記「第2 2 2−2(3)対比」における検討内容からみて、本願発明は、引用発明に一致するものであって、相違する点はない。
したがって、本願発明は引用発明である。

5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2021-12-08 
結審通知日 2021-12-14 
審決日 2022-01-04 
出願番号 P2017-043350
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 113- Z (A63F)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 ▲吉▼川 康史
特許庁審判官 太田 恒明
澤田 真治
発明の名称 遊技機  
代理人 川口 光男  

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