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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61F
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61F
管理番号 1383225
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-07-13 
確定日 2021-12-06 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6631733号発明「吸収体及びそれを備える吸収性物品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6631733号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔2〜6〕について訂正することを認める。 特許第6631733号の請求項2〜6に係る特許を維持する。 特許第6631733号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6631733号(以下「本件特許」という。)の請求項1〜6に係る特許についての出願は、平成31年2月20日の出願であって、令和元年12月20日にその特許権の設定登録(特許掲載公報令和2年1月15日発行)がされ、その後、その特許について、令和2年7月13日に特許異議申立人宮本俊明(以下「申立人1」という。)により、同じく15日に特許異議申立人出川栄一郎(以下「申立人2」という。)により、特許異議の申立てがされ、令和2年9月29日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である令和2年11月27日に特許権者から意見書の提出及び訂正の請求がされ、この訂正の請求について、令和3年1月13日に申立人1より、同じく14日に申立人2より、意見書が提出され、令和3年2月24日付けで訂正拒絶理由が通知され、令和3年3月22日に特許権者から意見書が提出され、令和3年3月30日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である令和3年5月27日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)がされ、本件訂正請求について、令和3年7月8日に申立人1、2より、それぞれ意見書の提出がされたものである。
なお、令和2年11月27日の訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。

第2 訂正の請求について
1.訂正の内容
本件訂正請求は、特許第6631733号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1〜6について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりのものである。なお、下線は当審で付記したものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

(2)訂正事項2
本件訂正前の請求項2の「前記上部SAP層は、前記基材の幅方向中央部に沿って該幅方向両側に配置され、該基材の長手方向に延在している、
請求項1に記載の吸収体。」という記載を、
「不織布で形成され、液体を透過する基材と、
前記基材の表面に配置され、高吸収性重合体であるSAPの粒子からなる上部SAP層と、
前記基材の裏面に配置され、高吸収性重合体であるSAPの粒子からなる下部SAP層と、
を備え、
前記基材の表面に複数のSAPの粒子が付着されていることによって前記上部SAP層が形成されており、
前記基材の裏面に複数のSAPの粒子が付着されていることによって前記下部SAP層が形成されており、
前記上部SAP層は、ボルテックス法により測定した液体吸収速度が45(sec)以下であり、
前記下部SAP層には、液体吸液性が35(g/g)以上であり、
前記上部SAP層は、前記基材の幅方向中央部に沿って該幅方向両側に配置され、該基材の長手方向に延在している、
吸収体。」と訂正する(請求項2を直接的又は間接的に引用する請求項3〜6も同様に訂正する。)。

(3)訂正事項3
本件訂正前の請求項4の「請求項1から3のいずれか一項に記載」という記載を、「請求項2又は3に記載」と訂正する(請求項4を直接的又は間接的に引用する請求項5、6も同様に訂正する。)。

(4)訂正事項4
本件訂正前の請求項6の「請求項1から5のいずれか一項に記載」という記載を、「請求項2から5のいずれか一項に記載」と訂正する。

2.訂正の適否
(1)一群の請求項、別の訂正単位とする求めについて
本件訂正前の請求項1〜6は、請求項2〜6が、それぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用するものであり、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正請求による訂正は、一群の請求項ごとにされたものである。
また、訂正事項2の引用関係の解消を目的とする訂正が認められる場合には、訂正後の請求項2〜6は、請求項1とは別の訂正単位として扱われることを求めるものである。

(2)訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであることは明らかである。

(3)訂正事項2について
ア 訂正事項2は、本件訂正前の請求項2が、請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項に改め、本件訂正前の請求項1の「上部SAP層」及び「下部SAP層」について、高吸収性重合体であるSAPの粒子以外の材料を含む場合を除いたものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 訂正事項2の、「前記基材の表面に配置され、高吸収性重合体であるSAPの粒子からなる上部SAP層と、」「前記基材の裏面に配置され、高吸収性重合体であるSAPの粒子からなる下部SAP層と、」とする訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書」という。)の【0019】に「吸収体6は、基材61の表面に配置され、高吸収性重合体であるSAP(Super Absorbent Polymer)の粒子を含むSAP層62L、62R(「上部SAP層」の一例)を備えている。」と、【0020】に「吸収体6が吸収性物品に配置された場合に、SAP層62Lは当該吸収性物品の着用者の左側に位置し、SAP層62Rは当該吸収性物品の着用者の右側に位置する。SAP層62L、62Rは、複数のSAP粒子が接着剤で基材61の表面に付着されることで形成される。」と、【0021】に「また、吸収体6は、基材61の裏面に配置され、SAPの粒子を含むSAP層63(「下部SAP層」の一例)を備えている。SAP層63は、基材61の裏面の略全域に形成されている。SAP層63は、複数のSAP粒子が接着剤で基材61の表面に付着されることで形成される。」と記載されており、複数のSAP粒子からなる「上部SAP層」、「下部SAP層」が、接着剤で基材に付着される旨記載されているから、訂正事項2の上記訂正は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものである。
ウ また、訂正事項2は、上記のように、本件訂正前の請求項1、2の発明特定事項をさらに限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。

(4)訂正事項3について
訂正事項3は、請求項1の削除に伴い、本件訂正前の請求項4で「請求項1から3のいずれか一項に記載の吸収体」としていたものを、「請求項2又は3に記載の吸収体」と整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであることは明らかである。

(5)訂正事項4について
訂正事項4は、請求項1の削除に伴い、本件訂正前の請求項6で「請求項1から5のいずれか一項に記載の吸収体」としていたものを、「請求項2から5のいずれか一項に記載の吸収体」と整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、本件特許明細書に記載された事項の範囲内においてするものであることは明らかである。

3.小括
したがって、訂正事項1〜4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件訂正後の請求項1、〔2〜6〕について訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて
1.本件特許発明
上記のとおり、本件訂正請求が認められるから、本件特許の請求項2〜6に係る発明(以下「本件発明2」等といい、また、本件発明2〜6を「本件発明」ともいう。)は、それぞれ、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項2〜6に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項2】
不織布で形成され、液体を透過する基材と、
前記基材の表面に配置され、高吸収性重合体であるSAPの粒子からなる上部SAP層と、
前記基材の裏面に配置され、高吸収性重合体であるSAPの粒子からなる下部SAP層と、
を備え、
前記基材の表面に複数のSAPの粒子が付着されていることによって前記上部SAP層が形成されており、
前記基材の裏面に複数のSAPの粒子が付着されていることによって前記下部SAP層が形成されており、
前記上部SAP層は、ボルテックス法により測定した液体吸収速度が45(sec)以下であり、
前記下部SAP層には、液体吸液性が35(g/g)以上であり、
前記上部SAP層は、前記基材の幅方向中央部に沿って該幅方向両側に配置され、該基材の長手方向に延在している、
吸収体。
【請求項3】
前記基材の表面側には、前記幅方向中央部に、且つ、両側の前記上部SAP層に沿うように溝が形成されている、
請求項2に記載の吸収体。
【請求項4】
前記基材の表面を覆うように配置された第1不織布シートと、
前記基材の裏面を覆うように配置された第2不織布シートと、
を備える、請求項2又は3に記載の吸収体。
【請求項5】
前記基材、前記上部SAP層、前記下部SAP層、前記第1不織布シート及び前記第2不織布シートを含んで構成される吸収性複合体の外周を被覆するコアラップシート
を備える、請求項4に記載の吸収体。
【請求項6】
着用者の排出した液体を吸収する吸収性物品であって、
液不透過性のバックシートと、
前記バックシートに接合される液透過性のトップシートと、
前記バックシートと前記トップシートとの間に配置された請求項2から5のいずれか一項に記載の吸収体と、
を備える、吸収性物品。」

2.取消理由の概要
本件発明に対して、特許権者に通知した令和3年3月30日付け取消理由(決定の予告)の概要は以下のとおりである。
理由1)本件特許は、特許請求の範囲の記載が、以下(1)及び(2)の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
理由2)本件発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された以下(3)の刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由3)本件発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された以下(3)の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(1)明確性に係る取消理由
本件特許明細書の記載をみると、上部SAP層の液体吸収速度及び下部SAP層の液体吸液性は、いずれも、上部SAP層と下部SAP層を構成するSAP自体の液体吸収速度と液体吸液性を測定し、評価しているに過ぎず、基材の表面に配置された上部SAP層としての液体吸収速度、及び基材の裏面に配置された下部SAP層としての液体吸液性を測定し、評価しているものではないから、本件発明の、「上部SAP層は、ボルテックス法により測定した液体吸収速度が45(sec)以下」、「下部SAP層は、液体吸液性が35(g/g)以上」との事項は明確でない。

(2)サポート要件に係る取消理由
上部SAP層と下部SAP層に、それぞれ、どの種類のSAPを、どの程度の量、配置するのか、それによって、上部SAP層と下部SAP層の液体吸収速度と液体吸液性がどの程度になるのか、具体的な実施例は一つも示されておらず、本件発明の吸収体とすることにより、本件発明の課題を解決し得ると認識することができないから、本件発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえず、本件発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。

(3)新規性進歩性に係る取消理由
申立人1の提出した甲第1号証〜甲第12号証を、それぞれ「甲1−1」〜「甲1−12」といい、申立人2の提出した甲第1号証〜甲第7号証を、それぞれ「甲2−1」〜「甲2−7」という。
引用文献1:国際公開第2011/136087号(甲1−4)
引用文献2:特開2017−192714号公報(甲1−7)
引用文献3:韓国公開特許第10−2018−0076272号公報(甲1−8)
引用文献4:特開2014−108165号公報(甲1−9)
引用文献5:国際公開第2011/086841号(甲1−1)
引用文献6:国際公開第2011/086842号(甲1−2)
引用文献7:国際公開第2011/086843号(甲1−3)
引用文献8:国際公開第2010/076857号(甲1−5、甲2−1)

ア 本件発明1、4は引用文献1に記載された発明である、あるいは、本件発明1、4〜6は引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 本件発明1、4〜6は引用文献2に記載された発明である、あるいは、本件発明1、4〜6は引用文献2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 本件発明1、4及び6は引用文献5〜8のいずれかに記載された発明である、あるいは、本件発明1、4〜6は引用文献5〜8のいずれかに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.取消理由(決定の予告)についての判断
(1)明確性要件に係る取消理由について
特許請求の範囲の請求項2には、「前記基材の表面に配置され、高吸収性重合体であるSAPの粒子からなる上部SAP層と、前記基材の裏面に配置され、高吸収性重合体であるSAPの粒子からなる下部SAP層と、」を備え、その「上部SAP層」及び「下部SAP層」は、「前記基材の表面に複数のSAPの粒子が付着されていることによって前記上部SAP層が形成され」、「前記基材の裏面に複数のSAPの粒子が付着されていることによって前記下部SAP層が形成され」るとされ、そのような「上部SAP層」及び「下部SAP層」は、「前記上部SAP層は、ボルテックス法により測定した液体吸収速度が45(sec)以下であり、前記下部SAP層には、液体吸液性が35(g/g)以上」となると記載されており、本件発明は明確である。
本件特許明細書には、上部SAP層と下部SAP層を構成するSAP自体の液体吸収速度と液体吸液性が、それぞれ「液体吸収速度が45(sec)以下」、「液体吸液性が35(g/g)以上」のSAPであることが記載されているが、上記のように、上部SAP層と下部SAP層はSAPから形成されるものであるから、上部SAP層と下部SAP層を構成するSAP自体の液体吸収速度と液体吸液性と、それらを用いて形成した上部SAP層と下部SAP層の液体吸収速度と液体吸液性との間で大きな差があるといえず、本件発明の「前記上部SAP層は、ボルテックス法により測定した液体吸収速度が45(sec)以下であり、前記下部SAP層には、液体吸液性が35(g/g)以上」とする記載と、本件特許明細書の記載との間に矛盾はない。

(2)サポート要件に係る取消理由について
ア 特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定される要件(サポート要件)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。以下、本件特許の特許請求の範囲の記載について検討する。
イ 特許請求の範囲の請求項2には、次のように記載されている。
「不織布で形成され、液体を透過する基材と、
前記基材の表面に配置され、高吸収性重合体であるSAPの粒子からなる上部SAP層と、
前記基材の裏面に配置され、高吸収性重合体であるSAPの粒子からなる下部SAP層と、
を備え、
前記基材の表面に複数のSAPの粒子が付着されていることによって前記上部SAP層が形成されており、
前記基材の裏面に複数のSAPの粒子が付着されていることによって前記下部SAP層が形成されており、
前記上部SAP層は、ボルテックス法により測定した液体吸収速度が45(sec)以下であり、
前記下部SAP層には、液体吸液性が35(g/g)以上であり、
前記上部SAP層は、前記基材の幅方向中央部に沿って該幅方向両側に配置され、該基材の長手方向に延在している、
吸収体。」
ウ 他方、本件特許の発明の詳細な説明には、次のように記載されている。
本件発明の解決しようとする課題については、
「【0004】
吸収体においては液体を着用者の肌からできるだけ遠位で保持することが液体の逆戻りを抑制し得る点では好ましい。しかしながら、SAP粒子を不織布基材に固定させた吸収体において、SAP粒子を着用者の肌から遠位の基材裏面側のみに配置すると、液体の吸収量が低下してしまう。吸収量の低下した吸収体では液体の漏れが生じる虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、液体の漏れと逆戻りを抑制し得る技術を提供することを目的とする。」と記載されている。
また、その課題を解決する具体的な実施形態について、
「【0018】
吸収体6は、基材61を備えている。基材61は、長方形のシート状に形成されている。基材61には、エアスルー法やニードルパンチ法等で製造された厚さが約1mm〜10mmの嵩高の不織布が用いられる。基材61は、液体を透過して拡散する。
【0019】
吸収体6は、基材61の表面に配置され、高吸収性重合体であるSAP(Super Absorbent Polymer)の粒子を含むSAP層62L、62R(「上部SAP層」の一例)を備えている。ここで、吸収体6を吸収性物品に配置した場合に、基材61の表面は肌対向面側に配置され、基材61の裏面は肌対向面側と反対側の肌非対向面側に配置される。SAP層62L、62Rは、基材61の表面に、且つ、基材61の幅方向中央部に沿って幅方向両側に配置され、基材61の長手方向に延在する。なお、基材61の長手方向は、基材61の幅方向と直交する。
【0020】
吸収体6が吸収性物品に配置された場合に、SAP層62Lは当該吸収性物品の着用者の左側に位置し、SAP層62Rは当該吸収性物品の着用者の右側に位置する。SAP層62L、62Rは、複数のSAP粒子が接着剤で基材61の表面に付着されることで形成される。SAP層62L、62R内において、SAP粒子は略均一に配置されている。基材61は、SAP層62L、62Rを保持する。SAP層62L、62Rは、基材61の長手方向全体に亘って延在している。
【0021】
また、吸収体6は、基材61の裏面に配置され、SAPの粒子を含むSAP層63(「下部SAP層」の一例)を備えている。SAP層63は、基材61の裏面の略全域に形成されている。SAP層63は、複数のSAP粒子が接着剤で基材61の表面に付着されることで形成される。SAP層63内において、SAP粒子は略均一に配置されている。基材61は、SAP層63を保持する。吸収体6は、SAP層63を設けることによって、全体としての液体の吸収、保持量を増大させる。なお、基材61内の隙間にSAPの粒子が含まれていてもよい。」
「【0025】
SAPの液体吸収速度は、上記のボルテックス法によって得られる。SAP層62L、62Rには、ボルテックス法により測定した液体吸収速度が45(sec)以下であるSAPが用いられる。このため、SAP層62L、62Rは、ボルテックス法により測定した液体吸収速度が45(sec)以下である。なお、SAP層63は、ボルテックス法により測定した液体吸収速度が45(sec)より大きい。」
「【0028】
SAP層63には、液体吸液性が35(g/g)以上であるSAPが用いられる。このため、SAP層63は、液体吸液性が35(g/g)以上である。なお、SAP層62L、62Rは、液体吸液性が35(g/g)より小さい。」
「【0029】
本実施形態に係る吸収体6は吸収性物品に配置された場合に、SAP層62L、62Rは肌対向面側に位置し、SAP層63は肌非対向面側に位置する。言い換えると、SAP層63は、SAP層62L、62Rよりも着用者の肌の遠位に配置される。そして吸収体6において、SAP層62L、62Rは、液体吸収速度が45(sec)以下である。このため、吸収体6は、着用者の肌に近い方に配置され、液体吸収速度が相対的に速いSAP層62L、62Rで迅速に尿を吸収し、この尿が漏れるのを抑制できる。また、吸収体6において、SAP層63は、液体吸収性が35(g/g)以上である。本実施形態に係る吸収体6は、相対的に大量の尿を着用者の肌から遠位に配置されるSAP層63で保持するので、肌面の濡れ感を抑え、着用感の低下を抑制できる。また、吸収体において、液体をできるだけ遠位で保持することが吸収体に体重等で圧力等が掛かった場合にも液体の逆戻りを抑制するのに有効である。本実施形態に係る吸収体6は、相対的に大量の尿を着用者の肌から遠位に配置されるSAP層63で保持するので、液体の逆戻りを抑制できる。
【0030】
また、一般的に吸収性物品を着用した状態で着用者が寝姿勢をとると、排尿時、尿はおむつの表面を流れ、この尿が漏れに繋がる。一方、本実施形態に係る吸収体6は、肌対向面側に液体吸収速度が速いSAP層62L、62Rを配置することで、吸収体6の表面を流れる尿をSAP層62L、62Rで吸収して、尿漏れを防ぐことができる。
【0031】
また、基材61の表面側(肌対向面側)において、幅方向中央部にSAPを設けず、幅方向両側にSAP層62L、62Rを配置する。基材61の表面側幅方向中央部は、吸収体6が吸収性物品に配置された場合に、尿道口に対向する位置(以下、「尿道口対向位置」と称する)に配置される。吸収体6において、尿道口対向位置にSAPを設けないことにより、排出された尿を基材61に導入して全体に拡散することができる。なお、基材61の表面側全体にSAP層を形成してもよい。」と記載されている。
エ 発明の詳細な説明の記載から、着用者の肌に近い方に配置される上部SAP層の液体吸収速度が45(sec)以下であることにより、迅速に尿を吸収し尿が漏れるのを抑制でき、着用者の肌の遠位に配置される下部SAP層の液体吸液性が35(g/g)以上であることにより、肌面の濡れ感を抑え着用感の低下を抑制できること、及び吸収体において液体をできるだけ遠位で保持することにより、吸収体に体重等で圧力等が掛かった場合にも液体の逆戻りを抑制できること(【0029】)、肌対向面側に液体吸収速度が速いSAP層62L、62Rを配置することで、吸収体6の表面を流れる尿をSAP層62L、62Rで吸収して、尿漏れを防ぐことができること(【0030】)が、それぞれ理解できる。
これらのことから、本件発明は、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであり、発明の詳細な説明に記載された発明である。
オ 上記のように、本件発明の解決しようとする課題は、上部SAP層のボルテックス法により測定した液体吸収速度を45(sec)以下とし、下部SAP層の液体吸液性を35(g/g)以上とすることで解決し得るものといえるから、上部SAP層と下部SAP層に配置されるSAPの種類及び量について、本件発明に特定されることを必要とするものとはいえない。

(3)引用文献1を主引用例とする新規性進歩性に係る取消理由について
ア 引用文献1の記載事項、引用文献1に記載された発明
引用文献1には、次のように記載されている。
「[0002] 紙おむつ等に代表される吸収性物品は、体液等の液体を吸収する吸収体が、体に接する側に配された柔軟な液体透過性の表面シート(トップシート)と、体と接する反対側に配された液体不透過性の背面シート(バックシート)とにより挟持された構造を有する。」
「[0060] 次に、本発明にかかる吸水シート構成体の構造について、図1を参照して説明する。ここで、図1は、本発明にかかる吸水シート構成体の構造を模式的に示す拡大断面図である。
[0061] 図1に示される吸水シート構成体11は、吸水性樹脂12と接着剤10を含有してなる1次吸収層13と、吸水性樹脂14と接着剤10を含有してなる2次吸収層15とを有している。ここで1次吸収層とは、当該吸水シート構成体を用いて吸収性物品を作製した時に、吸収対象の液体が供給される側をいい、2次吸収層とは、繊維基質16を挟んだ1次吸収層の反対側をいう。
[0062] そして、1次吸収層13と2次吸収層15とは、繊維基質16とにより分割されており、吸水シート構成体11は、1次吸収層13と、2次吸収層15と、繊維基質16、並びに当該1次吸収層13及び当該2次吸収層15のそれぞれの外面に位置する不織布17及び18からなる表裏2層とからなる5層構造であり、かかる吸収層が不織布17および18により、当該吸収層の上方及び下方から挟持された構造である。
[0063] また、図2及び図3に示される吸水シート構成体も、本発明にかかる吸水シート構成体の別の形態の例示である。図2においては、接着剤19を不織布17等に溶融塗布した例である。・・・・」
「[0068]<吸水性樹脂の生理食塩水保水能>
吸水性樹脂2.0gを、綿袋(メンブロード60番、横100mm×縦200mm)中に計り取り、500mL容のビーカーに入れた。綿袋に生理食塩水(0.9質量%塩化ナトリウム水溶液、以下同様)500gを一度に注ぎ込み、吸水性樹脂のママコが発生しないように生理食塩水を分散させた。綿袋の上部を輪ゴムで縛り、1時間放置して、吸水性樹脂を十分に膨潤させた。遠心力が167Gとなるよう設定した脱水機(国産遠心機株式会社製、品番:H−122)を用いて綿袋を1分間脱水し、脱水後の膨潤ゲルを含んだ綿袋の質量Wa(g)を測定した。吸水性樹脂を用いずに同様の操作を行い、綿袋の湿潤時空質量Wb(g)を測定し、次式により吸水性樹脂の生理食塩水保水能を求めた。
[0069] 吸水性樹脂の生理食塩水保水能(g/g)=[Wa−Wb](g)/吸水性樹脂の質量(g)
[0070] <吸水性樹脂の生理食塩水吸水速度>
本試験は、25℃±1℃に調節された室内で行った。100mL容のビーカーに、生理食塩水50±0.1gを量りとり、マグネチックスターラーバー(8mmφ×30mmのリング無し)を投入し、ビーカーを恒温水槽に浸漬して、液温を25±0.2℃に調節した。次に、マグネチックスターラー上にビーカーを置いて、回転数600r/minとして、生理食塩水に渦を発生させた後、吸水性樹脂2.0±0.002gを、前記ビーカーに素早く添加し、ストップウォッチを用いて、吸水性樹脂の添加後から液面の渦が収束する時点までの時間(秒)を測定し、吸水性樹脂の吸水速度とした。」
「[0096](実施例1)
ローラー型散布機(株式会社ハシマ製:シンターエースM/C)の投入口に、接着剤としてエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA;溶融温度95℃)40質量部と、吸水性樹脂としてポリアクリル酸ナトリウム架橋体(住友精化株式会社製:アクアキープSA55SX−II、質量平均粒径:360μm、生理食塩水吸水速度:42秒、生理食塩水保水能:35g/g;「吸水性樹脂A」とする)200質量部とを均一混合させたものを仕込んだ。一方、ローラー型散布機下部のコンベアーに、幅30cmのスパンボンド−メルトブローン−スパンボンド(SMS)不織布を親水化剤により親水化処理したもの(繊維:ポリプロピレン、空隙率:90%、目付量:13g/m2、厚み:150μm、親水度=16;「不織布A」とする)を敷いた。次いで、散布ローラーと下部コンベアーを稼動させることにより、前記混合物を目付量240g/m2で前記不織布上に均一に積層した。
[0097] 得られた積層体を、上部から繊維基質としての吸水紙(繊維:パルプ、空隙率:95%、目付量:25g/m2、厚み:350μm、親水度=55)で挟みつけた後、加熱温度を130℃に設定したラミネート機(株式会社ハシマ製:直線式接着プレスHP−600LF)にて熱融着させることでこれらを一体化し、吸水シート構成体中間物を得た。
[0098] 次に、ローラー型散布機の投入口に、接着剤として前記と同様のEVAの18質量部と、吸水性樹脂としてポリアクリル酸ナトリウム架橋体(住友精化株式会社製:アクアキープ10SH−PB、質量平均粒径:320μm、生理食塩水吸水速度:3秒、生理食塩水保水能:42g/g;「吸水性樹脂B」とする)50質量部とを均一混合させたものを仕込んだ。一方、ローラー型散布機のコンベアーに、得られた吸水シート構成体中間物を吸水紙側が上部になるように敷いた。散布ローラーと下部コンベアーを稼動させることにより、前記混合物を目付量68g/m2で前記吸水性シート構成体中間物の吸水紙上に、均一に積層した。」
「[0101](実施例2)
加熱温度を150℃に設定したホットメルト塗工機(株式会社ハリーズ製:マーシャル150)上に、幅30cmの前記不織布Aを敷いた後、接着剤としてスチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS;軟化点85℃)を目付量15g/m2で当該不織布上に塗布した。
[0102] 次に、ローラー型散布機(株式会社ハシマ製:シンターエースM/C)の投入口に、吸水性樹脂Aを仕込んだ。一方、散布機下部のコンベアーに、前記接着剤塗布不織布Aを接着剤塗布面が上面になるように敷いた。次いで、散布ローラーと下部コンベアーを稼動させることにより、吸水性樹脂Aを目付量200g/m2で不織布上に均一に積層した。
[0103] 得られた積層体を、上部から目付量15g/m2で接着剤としての前記SBSを前記と同様の方法で塗布した繊維基質〔スパンレース不織布(繊維:レーヨン/PET、空隙率:92%、目付量:35g/m2、厚み:300μm、親水度=38;「不織布B」とする)で挟みつけた後、加熱温度を100℃に設定したラミネート機(株式会社ハシマ製:直線式接着プレスHP−600LF)にて熱融着させることでこれらを一体化し、吸水シート構成体中間物を得た。
[0104] 前記と同様に、加熱温度を150℃に設定したホットメルト塗工機上に、得られた吸水シート構成体中間物を不織布B側が上部になるように敷き、接着剤として前記SBSを目付量10g/m2で吸水シート構成体中間物の不織布B上に塗布した。
[0105] 次に、ローラー型散布機の投入口に、吸水性樹脂Bを仕込んだ。一方、散布機下部のコンベアーに、吸水シート構成体中間物を接着剤塗布面が上面になるように敷いた。次いで、散布ローラーと下部コンベアーを稼動させることにより、吸水性樹脂Bを目付量50g/m2で、前記吸水シート構成体中間物の不織布B上に均一に積層した。
[0106] 得られた積層体を、上部から目付量10g/m2で前記SBSを前記と同様の方法で塗布した別の不織布Aで挟みつけた後、加熱温度を100℃に設定したラミネート機(株式会社ハシマ製:直線式接着プレスHP−600LF)にて熱融着させることでこれらを一体化し、吸水シート構成体を得た。得られた吸水シート構成体の構造の断面を模式的に示せば、図2のような構造であった。
[0107] 得られた吸水シート構成体を所定の大きさに切断し、吸水性樹脂Aを用いた吸収層が上方(1次吸収層)となるようにして、前記各種測定及び評価を行った。・・・・」
「図2


上記記載からみて、引用文献1には、次の「引用発明1」が記載されている。
「下から、不織布18、
生理食塩水吸水速度3秒、生理食塩水保水能42g/gの吸水性樹脂Bと接着剤からなる2次吸収層15、
スパンレース不織布からなる繊維基質16、
生理食塩水吸水速度42秒、生理食塩水保水能35g/gの吸水性樹脂Aと接着剤からなる1次吸収層13、
不織布17、の順に積層した吸収シート構成体11。」
イ 本件発明2について
(ア)本件発明2と引用発明1を対比する。
引用発明1の1次吸収層13と2次吸収層15は、吸水性樹脂と接着剤からなり、接着剤は、溶融後に、吸収性樹脂の吸収性能に影響を与えない程度に添加され、吸収性樹脂に付着されることが明らかであるから、1次吸収層13及び2次吸収層15としての吸収性能は、それぞれが含有する吸収性樹脂自体の吸収性能と同程度になるものといえる。このことから、引用発明1の「生理食塩水吸水速度」は、引用文献1の[0070]の測定方法の記載からみて、本件発明2の「ボルテックス法により測定した液体吸収速度」に相当するところ、引用発明1の1次吸収層13の吸水性樹脂Aが生理食塩水吸水速度42秒であることは、本件発明2の「上部SAP層」の「液体吸収速度が45(sec)以下」であることに相当する。また、引用発明1の2次吸収層15の吸水性樹脂Bが生理食塩水保水能42g/gであることは、本件発明2の「下部SAP層」の「液体吸液性が35(g/g)以上」であることに相当するものといえる。
そうすると、本件発明2と引用発明1とは、
「不織布で形成され、液体を透過する基材と、
前記基材の表面に配置され、高吸収性重合体であるSAPの粒子からなる上部SAP層と、
前記基材の裏面に配置され、高吸収性重合体であるSAPの粒子からなる下部SAP層と、
を備え、
前記基材の表面に複数のSAPの粒子が付着されていることによって前記上部SAP層が形成されており、
前記基材の裏面に複数のSAPの粒子が付着されていることによって前記下部SAP層が形成されており、
前記上部SAP層は、ボルテックス法により測定した液体吸収速度が45(sec)以下であり、
前記下部SAP層には、液体吸液性が35(g/g)以上である、
吸収体。」
で一致し、次の《相違点1》で相違する。
《相違点1》
本件発明2の「上部SAP層は、基材の幅方向中央部に沿って該幅方向両側に配置され、該基材の長手方向に延在している」のに対し、引用発明1の1次吸収層13は、そのように特定されていない点。
(イ)上記《相違点1》について検討する。
引用発明1に係る引用文献1には、1次吸収層13の基材への配置で、基材の幅方向中央部に沿って幅方向両側に配置することを示唆する記載はない。
申立人2は、令和3年7月8日の意見書で、「前記上部SAP層は、前記基材の幅方向中央部に沿って該幅方向両側 に配置され、該基材の長手方向に延在している」という構成は、参考資料1〜11にも記載されている旨主張する(意見書6頁)。
しかし、参考文献1(再公表特許WO01/089439号)には、第1不織布2に吸水性樹脂粉末非存在領域としての中間領域2bに沿って、両側に吸水性樹脂粉末3を配置したことが記載されているものの、この参考文献1(20頁25〜27行)に「吸水性樹脂粉末3の保持効果の高い第2ホットメルト接着剤層S2を下側に、第1不織布2を着用者側にして使い捨て吸収性物品に組み込むことが好ましい。」と記載されるように、中間領域2bの両側の「吸水性樹脂粉末3」の層は、「第1不織布」の裏側、すなわち、人の肌から遠い側に配置される本件発明2の「下部SAP層」に該当するものであるから、参考文献1には、「前記上部SAP層は、前記基材の幅方向中央部に沿って該幅方向両側に配置され、該基材の長手方向に延在している」という構成は記載されていない。
同様に、参考文献2〜11にも相違点1に係る本件発明2の構成は記載されておらず、申立人2の上記主張は採用できない。
そして、本件発明2の上記《相違点1》に係る構成は、申立人1及び申立人2が提出した他の証拠にも、記載ないし示唆がされておらず、引用発明1に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない。
(ウ)よって、本件発明2は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 本件発明4〜6について
本件発明4〜6は、本件発明2の発明特定事項を全て備えるものであるところ、本件発明2は、引用発明1ではなく、また、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明4〜6は、引用発明1ではなく、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(4)引用文献2、5〜8を主引用例とする新規性進歩性に係る取消理由について
ア 引用文献2に記載された発明
引用文献2の、特に例6〜8に示す実施態様のうち、吸収紙を「3」とした場合(トップ層(91)を「Sanwett IM930、San-Dia Polymers,Ltd.社製」、ボトム層(92)を「Aquakeep SA60SX-II、日本国Sumitomo Seika Chemicals Co., Ltd.社製」で、それぞれ形成した場合。なお、「Sanwett IM930、San-Dia Polymers,Ltd.社製」のSAPのボルテックス法により測定した液体吸収速度については引用文献3(比較例5)、「Aquakeep SA60SX-II、日本国Sumitomo Seika Chemicals Co., Ltd.社製」の液体吸液性については引用文献4(比較合成例5)参照)の積層シートに係る発明(以下「引用発明2」)は、次のとおりのものである。
「不織布材料と、
前記不織布材料の表面に配置され、Sanwett IM930、San-Dia Polymers,Ltd.社製からなるトップSAP層と、
前記不織布材料の裏面に配置され、AquakeepSA60SX-II、日本国Sumitomo Seika Chemicals Co.,Ltd.社製からなるボトムSAP層と、を備え
前記不織布材料の表面に複数の吸水性樹脂の粒子がホットメルト接着剤で貼り合わせられることによって前記トップSAP層が形成されており、
前記不織布材料の裏面に複数の吸水性樹脂の粒子がホットメルト接着剤で貼り合わせられることによって前記ボトムSAP層が形成されている、
吸水紙。」
イ 引用文献5に記載された発明
引用文献5には、次の「引用発明5」が記載されている。
「不織布で形成された、通液性を有する通気性分画層と、
前記通気性分画層の表面に配置され、吸水性樹脂Aからなる上部SAP層と、
前記通気性分画層の裏面に配置され、吸水性樹脂Fからなる下部SAP層と、を備え
前記通気性分画層の表面に複数の吸水性樹脂の粒子が熱融着および一体化されることによって前記上部SAP層が形成されており、
前記通気性分画層の裏面に複数の吸水性樹脂の粒子が熱融着および一体化されることによって前記下部SAP層が形成されており、
前記上部SAP層のボルテックス法による生理食塩水吸収速度が44秒であり、
前記下部SAP層の生理食塩水保水能が38g/gである、
吸水シート構成体。」
ウ 引用文献6に記載された発明
引用文献6には、次の「引用発明6」が記載されている。
「不織布で形成された、通液性を有する通気性分画層と、
前記通気性分画層の表面に配置され、吸水性樹脂Bからなる上部SAP層と、
前記通気性分画層の裏面に配置され、吸水性樹脂Dからなる下部SAP層と、を備え
前記通気性分画層の表面に複数の吸水性樹脂の粒子が熱融着および一体化されていることによって前記上部SAP層が形成されており、
前記通気性分画層の裏面に複数の吸水性樹脂の粒子が熱融着および一体化されていることによって前記下部SAP層が形成されており、
前記上部SAP層の生理食塩水吸収速度が27秒であり、
前記下部SAP層の生理食塩水保水能が50g/gである、
吸水シート構成体。」
エ 引用文献7に記載された発明
引用文献7には、次の「引用発明7」が記載されている。
「不織布で形成された、通液性を有する通気性分画層と、
前記通気性分画層の表面に配置され、吸水性樹脂Cからなる上部SAP層と、
前記通気性分画層の裏面に配置され、吸水性樹脂Dからなる下部SAP層と、を備え
前記通気性分画層の表面に複数の吸水性樹脂の粒子が熱融着および一体化されていることによって前記上部SAP層が形成されており、
前記通気性分画層の裏面に複数の吸水性樹脂の粒子が熱融着および一体化されていることによって前記下部SAP層が形成されており、
前記上部SAP層の生理食塩水吸収速度が27秒であり、
前記下部SAP層の生理食塩水保水能が50g/gである、
吸水シート構成体。」
オ 引用文献8に記載された発明
引用文献8には、次の「引用発明8」が記載されている。
「ティッシュで形成された、透水性基質と、
前記透水性基質の表面に配置され、エチレン−酢酸ビニル共重合体とポリアクリル酸ナトリウム架橋体との混合物からなる上部SAP層と、
前記透水性基質の裏面に配置され、前記混合物またはエチレン−酢酸ビニル共重合体と前記ポリアクリル酸ナトリウム架橋体とは異なるポリアクリル酸ナトリウム架橋体との混合物からなる下部SAP層と、を備え
前記透水性基質の表面に複数の吸水性樹脂の粒子が熱融着および一体化されていることによって前記上部SAP層が形成されており、
前記透水性基質の裏面に複数の吸水性樹脂の粒子が熱融着および一体化されていることによって前記下部SAP層が形成されており、
前記上部SAP層の生理食塩水吸収速度が42秒であり、
前記下部SAP層の生理食塩水保水能が35g/gである、
吸水シート組成物。」
カ 本件発明2と引用発明2を対比すると、引用発明2も、本件発明2と引用発明1との間の《相違点1》と同様に、引用発明2が、「上部SAP層は、基材の幅方向中央部に沿って該幅方向両側に配置され、該基材の長手方向に延在している」配置構成を備えていない点で相違する。
引用発明2に係る引用文献2には、このような配置構成に関して示唆する記載はなく、この配置構成に係る相違点は実質的なものである。また、この配置構成について記載あるいは示唆する証拠が提出されていないことは、上述のとおりである。
よって、本件発明2は、引用発明2ではなく、引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
さらに、本件発明3〜6は、本件発明2の発明特定事項を全て備えるものであるところ、本件発明2は、引用発明2ではなく、また、引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明3〜6は、引用発明2ではなく、引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
キ また、引用発明5〜8についても、本件発明2と対比すると、本件発明2が備える上記の配置構成を、引用発明5〜8が、いずれも備えていないことで相違する。
そして、引用文献5〜8には、上記配置構成に関して示唆する記載はなく、上記配置構成に係る相違点は実質的なものである。また、上記配置構成について記載あるいは示唆する証拠が提出されていないことも、上述のとおりである。
よって、本件発明2は、引用発明5〜8のいずれかではなく、引用発明5〜8のいずれかに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
さらに、本件発明3〜6は、本件発明2の発明特定事項を全て備えるものであるところ、本件発明2は、引用発明5〜8のいずれかではなく、また、引用発明5〜8のいずれかに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明3〜6は、引用発明5〜8のいずれかではなく、引用発明5〜8のいずれかに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

4.取消理由(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由について
(1)本件発明2の「前記上部SAP層は、前記基材の幅方向中央部に沿って該幅方向両側に配置され、該基材の長手方向に延在している」との事項について、
ア 申立人1は、甲1−10(特開2015−150056号公報)、甲1−11(特開2015−150057号公報)及び甲1−12(特開2015−150059号公報)に記載されている旨(特許異議申立書41頁、申立人1の令和3年7月8日の意見書9頁)、
イ 申立人1は、甲1−6(国際公開第2011/117997号)に記載されている旨(特許異議申立書43〜44頁)、
ウ 申立人2は、甲2−2(特表2010−532204号公報)に記載されている旨(特許異議申立書25頁)、それぞれ主張する。
エ しかし、上記アの主張については、甲1−10の溝を挟んで幅方向両側に配置した第1吸収体11の吸収性樹脂13は、接着剤層14によりシート部材12に固定され、そのシート部材12どうしの間に配置されるものであり(甲1−10の【0077】〜【0079】)、本件発明2のように、基材の表面に複数のSAPの粒子が付着されているものではない。また、甲1−10の記載事項から、吸収性樹脂13が溝を挟んで幅方向両側に配置されていることのみを抽出して、甲1−4(引用文献1)に記載された発明に適用する動機付けがない。甲1−11及び甲1−12についても同様である。
オ また、上記イの主張については、申立人1は、甲1−6のエンボスが形成された吸水シート構成体表面側のSAPの配置が、本件発明2の「上部SAP層は、基材の幅方向中央部に沿って該幅方向両側に配置され、該基材の長手方向に延在している」ことに該当する旨主張するが、甲1−6のエンボスは、「点状(例えば、 図3参照)、 直線(例えば、 図4及び5参照)、 曲線、 波型及びそれらを組み合わせた図形(例えば、 図6及び7参照)等が挙げられる。」([0031])旨記載され、本件発明2のように、基材の幅方向中央部にSAPを設けず、幅方向両側にSAP層を配置して、尿道口対向位置にSAPを設けないことにより、排出された尿を基材に導入して全体に拡散すること(本件特許明細書の【0031】)を意図したものではないから、甲1−6のエンボスが形成された吸水シート構成体表面側のSAPの配置は、基材の幅方向中央部の尿道口対向位置にSAPを設けず、幅方向両側にSAP層を配置したものではない。
そのため、仮に、引用発明1の1次吸収層13に、甲1−6のエンボスが形成された吸水シート構成体表面側のSAPの配置を適用したとしても、本件発明2の「上部SAP層は、基材の幅方向中央部に沿って該幅方向両側に配置され、該基材の長手方向に延在している」ことを想到することはできない。
カ また、上記ウの主張については、申立人2は、甲2−2のY字形状の貫通孔8が形成された上側吸収層のSAPの配置が、本件発明2の「上部SAP層は、基材の幅方向中央部に沿って該幅方向両側に配置され、該基材の長手方向に延在している」ことに該当する旨主張するが、甲2−2のY字形状の貫通孔8は、甲2−2に「用品の前方および中間部分に所望のお椀形状を形成するために、孔8のY字形状は、Y字の分岐脚部8b,8cの間の角度を変更することによって、かつY字の他の脚部の相対的な長さを変更することによって変更可能である。」(【0039】)、「上述したように、孔8の脚部は、吸収コアのための折り曲げ線として機能する。それによって、使用時に使用者の大腿部の間に配置される用品の中間部分は、脚部8aの縁部の周囲の折り曲げの角度が変化することのみによって、吸収コアが変形することなく、大腿部の動きに容易に追従するようになる。」(【0040】)と記載されるように、折り曲げ線として機能させるために設けられるものであって、本件発明2のように、基材の幅方向中央部にSAPを設けず、幅方向両側にSAP層を配置して、尿道口対向位置にSAPを設けないことにより、排出された尿を基材に導入して全体に拡散することを意図したものではない。
そのため、甲2−2のY字形状の貫通孔8が形成された上側吸収層のSAPの配置は、基材の幅方向中央部の尿道口対向位置にSAPを設けず、幅方向両側にSAP層を配置したものではないから、引用発明1及び甲2−2の上記構造からは、本件発明2の「上部SAP層は、基材の幅方向中央部に沿って該幅方向両側に配置され、該基材の長手方向に延在している」ことを想到することはできない。
キ よって、申立人1及び2の、本件発明2の上記事項に係る主張は、いずれも採用できない。

(2)申立人1は、本件発明は、甲1−6に記載された発明であり、あるいは、甲1−6に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張する(特許異議申立書37〜38、40〜65頁)。
しかし、この甲1−6に記載された発明は、本件発明2の「前記上部SAP層は、ボルテックス法により測定した液体吸収速度が45(sec)以下であり、前記下部SAP層には、液体吸液性が35(g/g)以上であり、」との事項、「前記上部SAP層は、前記基材の幅方向中央部に沿って該幅方向両側に配置され、該基材の長手方向に延在している、」との事項を備えておらず、甲1−6に記載された発明には、これらの事項を共に備えようとする動機付けがない。
よって、申立人1の、甲1−6に基づく新規性進歩性に係る申立理由は採用できない。

(3)申立人1は、本件発明の「ボルテックス法により測定した液体吸収速度が45(sec)以下」との記載は、スターラーバーのサイズを規定していないため、明確ではない旨主張する(特許異議申立書65頁)。
しかし、当業者であれば、生理食塩水中に入れたSAPが、適切に攪拌されるようにスターラーバーのサイズを設定でき、そのサイズによって液体吸収速度が変わるともいえないから、本件発明の「ボルテックス法により測定した液体吸収速度が45(sec)以下」との記載は明確である。
よって、申立人1の、上記明確性要件に係る申立理由は採用できない。

(4)申立人2は、本件特許の発明の詳細な説明では、上部SAP層について、「基材61の表面に、且つ、基材61の幅方向中央部に沿って幅方向両側に配置され、基材61の長手方向に延在し、基材61の表面側(肌対向面側)において、幅方向中央部にSAPを設けず、幅方向両側にSAP層62L、62Rを配置」した構成が示されているのに対し、本件発明2には、「前記上部SAP層は、前記基材の幅方向中央部に沿って該幅方向両側に配置され、該基材の長手方向に延在している」と記載され、「基材61の表面に、且つ、基材61の幅方向中央部に沿って幅方向両側に配置され、基材61の長手方向に延在し、基材61の表面側(肌対向面側)において、 幅方向中央部にSAPを設ける」構成を含むものとなっており、本件発明2は、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えており、本件発明2は、発明の詳細な説明に記載されたものではない旨主張する(特許異議申立書33〜34頁)。
しかし、本件発明2の「前記上部SAP層は、前記基材の幅方向中央部に沿って該幅方向両側に配置され、該基材の長手方向に延在している」との事項は、「基材61の表面側(肌対向面側)において、幅方向中央部にSAPを設けず、幅方向両側にSAP層62L、62Rを配置する」(本件特許明細書の【0031】)ものを意味することは明らかであり、申立人2がいうような、本件発明2が「基材61の表面に、且つ、基材61の幅方向中央部に沿って幅方向両側に配置され、基材61の長手方向に延在し、基材61の表面側(肌対向面側)において、 幅方向中央部にSAPを設ける」構成を含むものとはなっておらず、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えていない。
よって、申立人2の、上記サポート要件に係る申立理由は採用できない。

(5)申立人2は、本件発明の「前記上部SAP層は、ボルテックス法により測定した液体吸収速度が45(sec)以下であり、前記下部SAP層は、液体吸液性が35(g/g)以上である」との記載は、液体吸収速度の上限、液体吸液性の下限が記載されておらず、明確ではない旨主張する(特許異議申立書34〜35頁)。
しかし、上部SAP層の液体吸収速度の下限、下部SAP層の液体吸液性の上限は、SAPとして実現可能な範囲として理解されるものであり、本件発明の「前記上部SAP層は、ボルテックス法により測定した液体吸収速度が45(sec)以下であり、前記下部SAP層は、液体吸液性が35(g/g)以上である」との記載は明確である。
よって、申立人2の、上記明確性要件に係る申立理由は採用できない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本件発明2〜6に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件発明2〜6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件訂正請求に係る訂正により、請求項1に係る特許は削除されたため、請求項1に対して申立人がした特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであることから、特許法第120条の8第1項で準用する特許法第135条の規定により、却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】(削除)
【請求項2】
不織布で形成され、液体を透過する基材と、
前記基材の表面に配置され、高吸収性重合体であるSAPの粒子からなる上部SAP層と、
前記基材の裏面に配置され、高吸収性重合体であるSAPの粒子からなる下部SAP層と、
を備え、
前記基材の表面に複数のSAPの粒子が付着されていることによって前記上部SAP層が形成されており、
前記基材の裏面に複数のSAPの粒子が付着されていることによって前記下部SAP層が形成されており、
前記上部SAP層は、ボルテックス法により測定した液体吸収速度が45(sec)以下であり、
前記下部SAP層は、液体吸液性が35(g/g)以上であり、
前記上部SAP層は、前記基材の幅方向中央部に沿って該幅方向両側に配置され、該基材の長手方向に延在している、
吸収体。
【請求項3】
前記基材の表面側には、前記幅方向中央部に、且つ、両側の前記上部SAP層に沿うように溝が形成されている、
請求項2に記載の吸収体。
【請求項4】
前記基材の表面を覆うように配置された第1不織布シートと、
前記基材の裏面を覆うように配置された第2不織布シートと、
を備える、請求項2又は3に記載の吸収体。
【請求項5】
前記基材、前記上部SAP層、前記下部SAP層、前記第1不織布シート及び前記第2不織布シートを含んで構成される吸収性複合体の外周を被覆するコアラップシート
を備える、請求項4に記載の吸収体。
【請求項6】
着用者の排出した液体を吸収する吸収性物品であって、
液不透過性のバックシートと、
前記バックシートに接合される液透過性のトップシートと、
前記バックシートと前記トップシートとの間に配置された請求項2から5のいずれか一項に記載の吸収体と、
を備える、吸収性物品。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-11-25 
出願番号 P2019-028704
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (A61F)
P 1 651・ 537- YAA (A61F)
P 1 651・ 121- YAA (A61F)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 藤原 直欣
特許庁審判官 藤井 眞吾
井上 茂夫
登録日 2019-12-20 
登録番号 6631733
権利者 王子ホールディングス株式会社
発明の名称 吸収体及びそれを備える吸収性物品  
代理人 特許業務法人秀和特許事務所  
代理人 特許業務法人秀和特許事務所  
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