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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 B22F 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 B22F 審判 全部申し立て 2項進歩性 B22F |
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管理番号 | 1383240 |
総通号数 | 4 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2022-04-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-09-17 |
確定日 | 2022-01-07 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | true |
事件の表示 | 特許第6670635号発明「押出材用アルミニウム合金アトマイズ粉末、押出材用アルミニウム合金アトマイズ粉末の製造方法、押出材の製造方法、鍛造品の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6670635号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜7〕について訂正することを認める。 特許第6670635号の請求項1〜2、4〜7に係る特許を維持する。 特許第6670635号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6670635号の請求項1〜7に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成28年 2月29日を出願日として特許出願され、令和 2年 3月 4日にその特許権の設定登録がされ、同年 3月25日に特許掲載公報が発行されたものであり、本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和 2年 9月17日 :特許異議申立人藤井香(以下、「申立人」と いう。)による請求項1〜7に係る特許に対 する特許異議の申立て 令和 3年 1月 6日付:取消理由通知 令和 3年 2月25日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 なお、令和 3年 2月25日にされた訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)について、申立人に対して期間を指定して意見を求めたが、当該期間内に意見書は提出されなかった。 第2 本件訂正請求について 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。なお、下線は訂正された箇所を表す。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「粉末押出材の素材となるアルミニウム合金アトマイズ粉末であって、 粉末粒子表面に金属間化合物晶出物が分散し、」とあるのを、 「粉末押出材の素材となるアルミニウム合金アトマイズ粉末であって、 前記アルミニウム合金アトマイズ粉末におけるアルミニウム合金は、その成分組成としては、質量%でFe:2.0〜12.0%、Ti:0.5〜1.5%、Zr:0.5〜1.5%、Mg:0.5〜2.5%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるものであり、 粉末粒子表面に金属間化合物晶出物が分散し、」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「Al−Fe系金属間化合物もしくはAl−Si−Fe系金属間化合物のいずれか一方もしくは双方である」とあるのを「Al−Fe系金属間化合物である」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (4)訂正事項4 (4−1) 特許請求の範囲の請求項4に「請求項1〜3のいずれかの請求項に記載の」とあるのを、「請求項1〜2のいずれかの請求項に記載の」に訂正する。 (4−2) 特許請求の範囲の請求項4に「酸化性ガスとともに上方に噴出することにより」とあるのを「酸化性ガスとともに旋回しながら上方に噴出することにより」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項6に「請求項1〜3のいずれかの請求項に記載された」とあるのを「請求項1〜2のいずれかの請求項に記載された」に訂正する。 2 訂正の適否 (1)訂正事項1 ア 訂正の目的の適否 訂正事項1に係る請求項1についての訂正は、訂正前の請求項1において規定されていなかったアルミニウム合金アトマイズ粉末の合金成分組成を、「質量%でFe:2.0〜12.0%、Ti:0.5〜1.5%、Zr:0.5〜1.5%、Mg:0.5〜2.5%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるもの」に減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 イ 新規事項の有無 本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。)には、 a 「Al−Fe系合金の具体的な成分組成としては、質量%でFe:2.0〜12.0%、Ti:0.5〜1.5%、Zr:0.5〜1.5%、Mg:0.5〜2.5%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる組成とすることが好ましく、さらに必要に応じてCu:0.5〜2.5%を含有していてもよい。」(段落【0061】)、 b 「アルミニウム合金として、Al−Fe系合金を用い、図1に示すような上向きノズル方式のガスアトマイズ装置によって、アトマイズ粉末(本発明例)を作成した。 アルミニウム合金の具体的な成分組成は、Fe:5.01%、Mg;1.52%、Ti:0.80%、Zr:0.99%、残部実質的にAlとした。」(段落【0081】) と記載されている。 したがって、訂正事項1に係る請求項1についての訂正は、本件明細書等に記載されたものであると認められ、本件明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1に係る請求項1についての訂正は、発明特定事項であるアルミニウム合金アトマイズ粉末の合金成分組成条件を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 (2)訂正事項2 ア 訂正の目的の適否 訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項2の金属間化合物晶出物を「Al−Fe系金属間化合物」のみに減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 イ 新規事項の有無 本件明細書の段落【0047】には「Al−Si−Fe系合金において主として晶出するAl−Si−Fe系金属間化合物は、薄い板状もしくは針状に晶出することが確認されており、そこで図5でも、金属間化合物晶出物32を板状に描いている。一方、Al−Fe系合金において主として晶出するAl−Fe系金属間化合物は、微小塊状もしくは粒状に晶出することが確認されている。」と記載されている。 そして、通常、元々Siが含まれていないアルミニウム合金を使用すれば、金属間化合物晶出物にSiが含まれないもの、すなわち、「Al−Fe系金属間化合物」のみとなることは明らかである。 そうすると、本件明細書には、金属間化合物晶出物の条件を「Al−Fe系金属間化合物」のみとしたものも記載されているということができるから、訂正事項2は、新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項2の金属間化合物晶出物の条件を「Al−Fe系金属間化合物」のみに減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。 (3)訂正事項3 ア 訂正の目的の適否 訂正事項3は特許請求の範囲の請求項3を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 イ 新規事項の有無 訂正事項3は請求項の削除であり、新規事項を追加するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項3は、請求項の削除であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。 (4)訂正事項4 (4−1) ア 訂正の目的の適否 訂正事項4−1は、訂正事項3による請求項3を削除することに伴い、引用する請求項から請求項3を削除するものであるから、削除された請求項を引用するという明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえ、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 イ 新規事項の有無 引用する請求項から一部の請求項を削除することは、新規事項を追加するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 引用する請求項から一部の請求項を削除することは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。 (4−2) ア 訂正の目的の適否 訂正事項4−2は、特許請求の範囲の請求項4の、アルミニウム合金の溶湯を、上向きノズルによって上方に噴出するとの態様を、「旋回しながら」という態様に減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 イ 新規事項の有無 本件明細書の段落【0043】には「従来の一般的なガスアトマイズ法に従って、非酸化性ガス(窒素ガスあるいは不活性ガス)を用いてアトマイズした場合は、アトマイズ粉末は真球体もしくはそれに近い球体となることが確認されている。すなわちアトマイズ時には、ノズルからのアルミニウム合金溶湯は、アトマイズガスによって微小液滴に分断され、さらにその微小液滴はアトマイズガスの旋回流によって上方に旋回しながら凝固する。」と記載されている。 したがって、訂正事項4−2に係る請求項4についての訂正は、本件明細書等に記載されたものであると認められ、本件明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項4−2は、特許請求の範囲の請求項4の、アルミニウム合金の溶湯を、上向きノズルによって上方に噴出する条件を、「旋回しながら」という条件に減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。 (5)訂正事項5 ア 訂正の目的の適否 訂正事項5は、訂正事項3による請求項3を削除することに伴い、引用する請求項から請求項3を削除するものであるから、削除された請求項を引用するという明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえ、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。 イ 新規事項の有無 引用する請求項から一部の請求項を削除することは、新規事項を追加するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 引用する請求項から一部の請求項を削除することは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。 (6)一群の請求項について ア 本件訂正前の請求項1〜7は、請求項2〜7がそれぞれ、請求項1を直接又は間接的に引用しており、請求項1に連動して訂正されるから、本件訂正前の請求項1〜7は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 イ 上記アのとおり、本件訂正請求は、上記一群の請求項〔1〜7〕についてされたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 そして、本件訂正は、請求項間の引用関係の解消を目的とするものではなく、特定の請求項に係る訂正事項について別の訂正単位とする求めもないから、訂正後の請求項〔1〜7〕を訂正単位として訂正の請求をするものである。 (7)独立特許要件について 特許異議の申立ては、訂正前の全ての請求項である請求項1〜7に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 3 本件訂正請求についての結言 上記のとおり、本件訂正による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において読み替えて準用する同法第126条第4項乃至第6項の規定に適合するものである。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜7〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2で検討したとおり、本件訂正は適法になされたものであるから、本件訂正請求により訂正された請求項1〜7に係る発明(以下、「本件発明1〜7」といい、これらをまとめて「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1〜7に記載された次のとおりのものである。なお、下線は訂正された箇所を表す。 「【請求項1】 粉末押出材の素材となるアルミニウム合金アトマイズ粉末であって、 前記アルミニウム合金アトマイズ粉末におけるアルミニウム合金は、その成分組成としては、質量%でFe:2.0〜12.0%、Ti:0.5〜1.5%、Zr:0.5〜1.5%、Mg:0.5〜2.5%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるものであり、 粉末粒子表面に金属間化合物晶出物が分散し、 前記粉末粒子表面に存在する前記金属間化合物晶出物の一部が、その晶出物に隣接するアルミニウム母相から突出しており、これにより、粒子表面に微小な凹凸が付与されていることを特徴とする押出材用アルミニウム合金アトマイズ粉末。 【請求項2】 前記金属間化合物晶出物が、Al−Fe系金属間化合物であることを特徴とする請求項1に記載の押出材用アルミニウム合金アトマイズ粉末。 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 請求項1〜2のいずれかの請求項に記載の押出材用アルミニウム合金アトマイズ粉末を製造するにあたり、アルミニウム合金の溶湯を、酸化性雰囲気中において上向きノズルによって酸化性ガスとともに旋回しながら上方に噴出することにより、微小液滴として霧化させながら急冷凝固することを特徴とする押出材用アルミニウム合金アトマイズ粉末の製造方法。 【請求項5】 前記酸化性雰囲気及び前記酸化性ガスが空気であることを特徴とする請求項4に記載の押出材用アルミニウム合金アトマイズ粉末の製造方法。 【請求項6】 請求項1〜2のいずれかの請求項に記載された押出材用アルミニウム合金粉末を圧縮成形し、得られた圧粉体を、熱間で押出成形することを特徴とすることを特徴とする押出材の製造方法。 【請求項7】 請求項6に記載の押出材の製造方法によって得られた押出材に、さらに熱間鍛造を施して鍛造品を得ることを特徴とする鍛造品の製造方法。」 第4 特許異議申立について 1 申立理由の概要 申立人は、証拠方法として後記する甲第1〜3号証を提出し、以下の申立理由により、本件訂正前の請求項1〜7に係る本件特許を取り消すべきものである旨主張している。 (1)申立理由1(新規性・進歩性) 請求項1〜3、6〜7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、同発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、取り消されるべきものである。 (2)申立理由2(進歩性) 請求項4〜5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、取り消されるべきものである。 2 証拠方法 甲第1号証:平野忠男外1名、「急冷凝固粉末を用いたAl−Si−X系粉 末冶金合金の特性」、軽金属、1987.10.30、Vol.37, No.10、 p.670-676 甲第2号証:特開平7−54012号公報 甲第3号証:岩尾修、「アルミニウム粉末の製造法」、軽金属、 1987.10.30、Vol.37, No.10、p.646-655 第5 取消理由 1 令和 3年 1月 6日付けで通知した取消理由の概要 本件訂正前の請求項1〜7に係る特許に対して、令和 3年 1月 6日付けで通知した取消理由通知により、当審が特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 (1)取消理由1(明確性要件)(職権で通知) 請求項2の「Al−Fe系金属間化合物もしくはAl−Si−Fe系金属間化合物のいずれか一方もしくは双方である」との記載、及び請求項3の「前記アルミニウム合金アトマイズ粉末におけるアルミニウム合金が、Al−Fe系合金もしくはAl−Si−Fe系合金である」との記載について、本件明細書の段落【0053】、【0061】、【0081】を参照すると、これらの記載中の「Al−Fe系」及び「Al−Si−Fe系」が、含有元素の質量割合が高いものから順番に記載された組成であるとも解釈し得るし、含有元素の質量割合の順番を規定しない組成であるとも解釈し得ることとなるから、これらの記載中の「Al−Fe系金属間化合物もしくはAl−Si−Fe系金属間化合物」及び「Al−Fe系合金もしくはAl−Si−Fe系合金」の記載の示す内容を一義的に定めることができない。 したがって、請求項2、3及び請求項2、3を引用する請求項4〜7は、明確でないから、同発明に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。 (2)取消理由2(新規性・進歩性)(申立理由1の一部を採用) 請求項1〜3、6〜7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1号証に記載された発明及び甲第1号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到できたものであるから、同発明に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであるか、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるため、取り消すべきものである。 (3)取消理由3(進歩性)(申立理由2の一部を採用) 請求項4〜5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到できたものであるから、同発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるため、取り消すべきものである。 第6 当審の判断 当審は、本件訂正請求を認めることにより、当審による取消理由はいずれも解消し、本件特許を取り消すことはできないと判断する。 1 取消理由通知によって通知した理由について (1)取消理由1(明確性要件)(上記第5の1の理由(1)について) 上記取消理由1に対して、特許権者は、令和 3年 2月25日提出の訂正請求で、請求項1のアルミニウム合金アトマイズ粉末におけるアルミニウム合金の成分組成を「質量%でFe:2.0〜12.0%、Ti:0.5〜1.5%、Zr:0.5〜1.5%、Mg:0.5〜2.5%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるもの」と特定する訂正を行った。 その結果、本件発明1では、アルミニウム合金中に含まれるFe等の含有量が明確になった。 そして、アルミニウム合金中に含まれるFe等の含有量が明確になれば、当該アルミニウム合金中に晶出する金属間化合物の組成は、把握できる。 そうすると、本件発明1を引用する本件発明2の「Al−Fe系金属間化合物」は、本件発明1のアルミニウム合金中に含まれるFeの含有量が明確になったことにより、その取り得る組成が確定されるので、その意味する範囲が明確となったといえる。 したがって、上記取消理由1は、解消された。 (2)取消理由2(新規性・進歩性)(上記第5の1の理由(2)について) ア 刊行物の記載事項 (ア)甲第1号証の記載事項 本件特許に係る出願日前に日本国内で頒布された刊行物である、平野忠男外1名、「急冷凝固粉末を用いたAl−Si−X系粉末冶金合金の特性」、軽金属、1987.10.30、Vol.37, No.10、p.670-676には、以下の事項が記載されている。 a 「 」(670頁左欄1行〜右欄14行) b 「 」(671頁左欄1行〜23行) c 「 」(671頁左欄33行〜右欄8行) d 「 」(672頁) (当審訳:図2 (a)ASCM20−7.5Fe合金、(b)ASCM20−7.5Ni合金及び(c)ASCM20−7.5Mn合金のアトマイズ粉末の光学的微細組織) イ 甲第1号証に記載された発明 (ア)上記ア(ア)dの図2は、アトマイズ法によって製造された押出材用の粉末であって、特に(c)に注目すると、ASCM20−7.5Mn合金の粉末が示されている。 ここで、上記ア(ア)bによると、過共晶組成のAl−Si系をベースとして遷移金属元素(Fe、Ni、Mn)を添加したものであって、特に、3wt%Cuと1wt%Mgが添加されたものをASCM系と呼ぶと説明している。 また、Siを16wt%、Feを5wt%含むASCM系をASCM16−5Feと呼ぶと説明している。 そうすると、ASCM20−7.5Mn合金とは、上記ASCM系において、Siを20wt%、Mnを7.5wt%を含むものであり、結局、Siが20wt%、Cuが3wt%、Mgが1wt%、Mnが7.5wt%、残部Alである合金を表していることが理解される。 (イ)上記ア(ア)cによれば、図2のいずれの遷移金属元素を添加した粉末においても、棒状の金属間化合物が晶出しており、当該金属間化合物は、長さが5μm程度の小さいものから粉末を貫通する大きいものまであり、図2(c)の粉末においては、X線回折の結果から、金属間化合物がAl−Mn−Si系であったとされている。そして、図2(c)から、針状の物体が粉末の表面から突出する様子を見て取ることができるところ、当該針状の物体が上述の金属間化合物に相当するものであることは明らかである。なお、図2(a)からは、目視によって、金属間化合物が粉末の表面から突出している様子は明瞭には確認できないが、上記ア(ア)cには、図2のいずれの粉末においても棒状の金属間化合物が晶出しており、粉末を貫通する大きいものがあると記載されているから、図2(a)の粉末においても、金属間化合物が粉末の表面から突出しているものと認められる。 (ウ)上記ア(ア)cによれば、上記金属間化合物は、Si濃度が低下している母相中に晶出していると説明されている。 (エ)上記ア(ア)bによれば、押出材用の粉末の製造方法として、所定組成に調整した溶湯を、大気アトマイズ法によって、102K/s以上の冷却速度で凝固させアトマイズ粉末とすることが記載されている。 (オ)したがって、上記ア(ア)a〜dの記載と上記(ア)〜(エ)の検討によれば、図2(c)の押出材用の粉末に注目すると、甲第1号証には、次の押出材用アルミニウム合金アトマイズ粉末が記載されていると認められる(以下、「甲第1号証発明」という。)。 「粉末押出材用アルミニウム合金アトマイズ粉末であって、前記アルミニウム合金アトマイズ粉末におけるアルミニウム合金は、Siを20wt%、Mnを7.5wt%、Cuを3wt%、Mgを1wt%含み残部AlであるASCM20−7.5Mnであり、当該粉末の母相中にAl−Mn−Si系金属間化合物が晶出し、上記金属間化合物が上記粉末の表面から突出している押出材用アルミニウム合金アトマイズ粉末。」 ウ 対比 そこで、本件発明1と甲第1号証発明とを対比する。 (ア)甲第1号証発明の「粉末押出材用アルミニウム合金アトマイズ粉末」、「当該粉末の母相」、「Al−Mn−Si系金属間化合物」は、それぞれ、本件発明1の「粉末押出材の素材となるアルミニウム合金アトマイズ粉末」、「アルミニウム母相」、「金属間化合物」に相当する。 (イ)甲第1号証発明の認定の基礎とした図2(c)において、「粉末の表面から突出して」いる「金属間化合物」が当該表面に多数存在していることが見て取れ、上記ア(ア)cには、「棒状の金属間化合物が晶出している」と記載されているから、当該突出した金属間化合物は当該粉末表面に分散しているということができるし、当該突出した棒状の金属間化合物によって粉末表面に微小な凹凸が生じているともいえる。したがって、甲第1号証発明において、「当該粉末の母相中にAl−Mn−Si系金属間化合物が晶出し、上記金属間化合物が上記粉末の表面から突出して」いることは、本件発明1の「粉末粒子表面に金属間化合物晶出物が分散し、前記粉末粒子表面に存在する前記金属間化合物晶出物の一部が、その晶出物に隣接するアルミニウム母相から突出しており、これにより、粒子表面に微小な凹凸が付与されていること」に相当する。 (ウ)そうすると、本件発明1と甲第1号証発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「粉末押出材の素材となるアルミニウム合金アトマイズ粉末であって、 粉末粒子表面に金属間化合物晶出物が分散し、 前記粉末粒子表面に存在する前記金属間化合物晶出物の一部が、その晶出物に隣接するアルミニウム母相から突出しており、これにより、粒子表面に微小な凹凸が付与されていることを特徴とする押出材用アルミニウム合金アトマイズ粉末。」 (エ)一方、本件発明1に係る発明と甲第1号証発明とは、次の点で相違する。 <相違点> 「アルミニウム合金アトマイズ粉末におけるアルミニウム合金」の「成分組成」が、本件発明1では、「質量%でFe:2.0〜12.0%、Ti:0.5〜1.5%、Zr:0.5〜1.5%、Mg:0.5〜2.5%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるものであ」るのに対し、甲1号証発明では、「Siを20wt%、Mnを7.5wt%、Cuを3wt%、Mgを1wt%含み残部Alである」点。 エ 判断 以下、上記相違点について検討する。 甲第1号証は、学術文献であり、上記ア(ア)aの記載から、この学術文献の著者は、ガスアトマイズ法により製造された急冷凝固粉末を熱間押出しする方法により耐摩耗性、高温強度などに優れたAl−Si−X系粉末冶金合金を開発していたところ、この学術文献によって、当該Al−Si−X系粉末冶金合金の組織、特性について調査した結果を報告したものであり、Al−Si−X系粉末冶金合金以外の粉末冶金合金について何らの知見を示すものではなく、Al−Si−X系粉末冶金合金以外の粉末冶金合金への組成の変更を示唆するものでもない。 そして、甲第1号証には、甲第1号証発明におけるASCM20−7.5Mnを、Al−Si−X系粉末冶金合金以外の粉末冶金合金の組成である「質量%でFe:2.0〜12.0%、Ti:0.5〜1.5%、Zr:0.5〜1.5%、Mg:0.5〜2.5%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるもの」に変更することを動機付ける記載は見出せない。 したがって、上記相違点に係る本件発明1の構成は、甲第1号証発明及び甲第1号証の記載事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 よって、本件発明1は、甲第1号証発明及び甲第1号証の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 また、本件発明2、6〜7は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであって、本件発明1をさらに減縮したものであるから、本件発明1において上記エで判断したのと同様の理由によって、甲第1号証発明及び甲第1号証の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 オ 小括 以上から、本件発明1、2、6〜7は、甲第1号証に記載された発明ではなく、甲第1号証に記載された発明及び甲第1号証の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 以上から、上記取消理由2は、解消された。 (3)取消理由3(進歩性)(上記第5の1の理由(3)について) ア 刊行物の記載事項 (ア)甲第3号証の記載事項 本件特許に係る出願日前に日本国内で頒布された刊行物である、岩尾修、「アルミニウム粉末の製造法」、軽金属、1987.10.30、Vol.37, No.10、p.646-655には、以下の事項が記載されている。 a 「 」(647頁右欄最下行〜648頁左欄下から3行) イ 甲第1号証に記載された発明 上記(2)のイにおける検討によれば、甲第1号証には、次の押出材用アルミニウム合金粉末の製造方法が記載されていると認められる(以下「甲第1号証発明B」という。)。 「甲第1号証発明の押出材用アルミニウム合金アトマイズ粉末を製造するにあたり、所定組成に調整したアルミニウム合金の溶湯を、大気アトマイズ法により、102K/s以上の冷却速度で凝固する押出材用アルミニウム合金アトマイズ粉末の製造方法。」 ウ 対比 (ア)本件発明4は、「請求項1〜2のいずれかの請求項に記載の押出材用アルミニウム合金アトマイズ粉末を製造するにあたり、アルミニウム合金の溶湯を、酸化性雰囲気中において上向きノズルによって酸化性ガスとともに旋回しながら上方に噴出することにより、微小液滴として霧化させながら急冷凝固することを特徴とする押出材用アルミニウム合金アトマイズ粉末の製造方法。」というものである。 (イ)そこで、本件発明4と甲第1号証発明Bとを対比する。 (ウ)上記(2)イ(オ)及び上記(2)エから、甲第1号証発明Bの「甲第1号証発明の押出材用アルミニウム合金アトマイズ粉末」は、本件発明4の「請求項1〜2のいずれかの請求項に記載の押出材用アルミニウム合金アトマイズ粉末」に相当する。 (エ)甲第1号証発明Bの「所定組成に調整したアルミニウム合金の溶湯」、「押出材用アルミニウム合金アトマイズ粉末の製造方法」は、それぞれ、本件発明4の「アルミニウム合金の溶湯」、「押出材用アルミニウム合金アトマイズ粉末の製造方法」に相当する。 (オ)また、「アトマイズ法」とは、金属の溶湯に対してアトマイズノズルから噴霧ガス(アトマイズガス)を噴射し、前記溶湯を霧状にしつつ冷却し、金属粉末を製造する方法であり、「大気アトマイズ法」とは、アトマイズガスとして空気(酸素を含むので酸化性雰囲気に該当する。)を用いる方法である。そうすると、甲第1号証発明Bの「大気アトマイズ法」は、本件発明4の「酸化性雰囲気中」において「ノズルによって酸化性ガスとともに」「噴出すること」に相当し、甲第1号証発明Bの「大気アトマイズ法により、102K/s以上の冷却速度で凝固する」ことは、本願発明4の「微小液滴として霧化させながら急冷凝固する」ことに相当すると認められる。 (カ)そうすると、本件発明4と甲第1号証発明Bとは、以下の点で一致する。 <一致点> 「押出材用アルミニウム合金アトマイズ粉末を製造するにあたり、アルミニウム合金の溶湯を、酸化性雰囲気中においてノズルによって酸化性ガスとともに噴出することにより、微小液滴として霧化させながら急冷凝固する押出材用アルミニウム合金アトマイズ粉末の製造方法。」 (キ)一方、本件発明4と甲第1号証発明Bとは、次の点で相違する。 <相違点1> 本件発明4は、本件発明1を直接又は間接的に引用しているため、「押出材用アルミニウム合金アトマイズ粉末」における「アルミニウム合金」が、「質量%でFe:2.0〜12.0%、Ti:0.5〜1.5%、Zr:0.5〜1.5%、Mg:0.5〜2.5%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるものであ」るのに対し、甲第1号証発明Bでは、甲第1号証発明を引用しているため、「押出材用アルミニウム合金アトマイズ粉末」における「アルミニウム合金」が、「Siを20wt%、Mnを7.5wt%、Cuを3wt%、Mgを1wt%含み残部Alである」点。 <相違点2> 本件発明4では「アルミニウム合金の溶湯を、酸化性雰囲気中において」「酸化性ガスとともに上方に噴出する」ための「ノズル」が、本件発明4では「上向きノズル」であるのに対し、甲第1号証発明Bでは、そのような特定がされておらず不明である点。 エ 判断 以下、上記相違点について検討する。 (ア)相違点1について 上記(2)のエで検討した理由と同じ理由で、上記相違点1に係る本件発明4の構成は、甲第1号証発明B及び甲第1号証の記載事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 (イ)相違点2について 上記ア(ア)において摘記した甲第3号証の記載から、アルミニウム合金アトマイズ粉末の製造方法において、アルミニウム合金の溶湯を、上向きに設置された噴霧ノズル、すなわち上向きノズルによって、アトマイズガスとともに上方に噴出させる上吹きアトマイズ法が周知技術であることがわかる。 したがって、甲第1号証発明Bの大気アトマイズ法として、甲第3号証の記載の上吹きアトマイズ法を適用することは、当業者が容易に想到し得たことである。 よって、本件発明4は、甲第1号証発明B及び甲第1、3号証の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 また、本件発明5は、本件発明4を直接引用するものであって、本件発明4をさらに減縮したものであるから、本件発明4において上記エで判断したのと同様の理由によって、甲第1号証発明B及び甲第1、3号証の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 オ 小括 以上から、本件発明4〜5は、甲第1号証に記載された発明ではなく、甲第1号証に記載された発明及び甲第1、3号証の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 以上から、上記取消理由3は、解消された。 第7 むすび 以上のとおりであるから、当審の取消理由及び異議申立理由によっては、本件特許の請求項1〜2、4〜7に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1〜2、4〜7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、本件特許の請求項3に係る特許は、以上のとおり、本件訂正により削除され、同請求項に係る特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 粉末押出材の素材となるアルミニウム合金アトマイズ粉末であって、 前記アルミニウム合金アトマイズ粉末におけるアルミニウム合金は、その成分組成としては、質量%でFe:2.0〜12.0%、Ti:0.5〜1.5%、Zr:0.5〜1.5%、Mg:0.5〜2.5%を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるものであり、 粉末粒子表面に金属間化合物晶出物が分散し、 前記粉末粒子表面に存在する前記金属間化合物晶出物の一部が、その晶出物に隣接するアルミニウム母相から突出しており、これにより、粒子表面に微小な凹凸が付与されていることを特徴とする押出材用アルミニウム合金アトマイズ粉末。 【請求項2】 前記金属間化合物晶出物が、Al−Fe系金属間化合物であることを特徴とする請求項1に記載の押出材用アルミニウム合金アトマイズ粉末。 【請求項3】 (削 除) 【請求項4】 請求項1〜2のいずれかの請求項に記載の押出材用アルミニウム合金アトマイズ粉末を製造するにあたり、アルミニウム合金の溶湯を、酸化性雰囲気中において上向きノズルによって酸化性ガスとともに旋回しながら上方に噴出することにより、微小液滴として霧化させながら急冷凝固することを特徴とする押出材用アルミニウム合金アトマイズ粉末の製造方法。 【請求項5】 前記酸化性雰囲気及び前記酸化性ガスが空気であることを特徴とする請求項4に記載の押出材用アルミニウム合金アトマイズ粉末の製造方法。 【請求項6】 請求項1〜2のいずれかの請求項に記載された押出材用アルミニウム合金粉末を圧縮成形し、得られた圧粉体を、熱間で押出成形することを特徴とすることを特徴とする押出材の製造方法。 【請求項7】 請求項6に記載の押出材の製造方法によって得られた押出材に、さらに熱間鍛造を施して鍛造品を得ることを特徴とする鍛造品の製造方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2021-12-27 |
出願番号 | P2016-038370 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(B22F)
P 1 651・ 537- YAA (B22F) P 1 651・ 113- YAA (B22F) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
池渕 立 |
特許庁審判官 |
土屋 知久 太田 一平 |
登録日 | 2020-03-04 |
登録番号 | 6670635 |
権利者 | 昭和電工株式会社 |
発明の名称 | 押出材用アルミニウム合金アトマイズ粉末、押出材用アルミニウム合金アトマイズ粉末の製造方法、押出材の製造方法、鍛造品の製造方法 |
代理人 | 勝俣 智夫 |
代理人 | 三國 修 |
代理人 | 及川 周 |
代理人 | 三國 修 |
代理人 | 志賀 正武 |
代理人 | 及川 周 |
代理人 | 荒 則彦 |
代理人 | 鈴木 三義 |
代理人 | 勝俣 智夫 |
代理人 | 鈴木 三義 |
代理人 | 荒 則彦 |
代理人 | 志賀 正武 |