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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A01N
審判 全部申し立て 2項進歩性  A01N
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A01N
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A01N
管理番号 1383261
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-12-02 
確定日 2022-01-20 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6704099号発明「殺菌またはウイルス不活性化剤組成物、および殺菌またはウイルス不活性化効力増強方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6704099号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜13〕、〔14〜22〕について訂正することを認める。 特許第6704099号の請求項1〜22に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第6704099号は、令和2年1月28日に特許出願され、同年5月13日に特許権の設定登録がされ、同年6月3日にその特許公報が発行され、その後、請求項1〜17に係る特許に対して、令和2年12月2日に株式会社アデプト(以下「申立人1」という。)により特許異議の申立て(以下「申立1」という。)がされ、同年12月2日に川崎 義孝(「崎」は立つ崎、以下「申立人2」という。)により特許異議の申立て(以下「申立2」という。)がされ、同年12月3日に鈴木 正(以下「申立人3」という。)により特許異議の申立て(以下「申立3」という。)がされたものである。そして、その後の経緯は以下のとおりである。

令和3年 3月12日付け:取消理由通知
同年 5月26日受付:訂正の請求及び意見書の提出(特許権者)
同年 7月30日付け:特許法第120条の5第5項に基づく通知
同年 9月 2日 :意見書の提出(申立人2)
同年 9月 4日 :意見書の提出(申立人3)
同年 9月24日 :意見書の提出(申立人1)

第2 訂正の可否
1 訂正の内容
令和3年5月26日受付訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである。なお、訂正前の請求項1〜10、11〜17は、それぞれ一群の請求項である。

訂正事項1:訂正前の特許請求の範囲の請求項1の
「(B)殺菌効力増強成分としてクエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、炭酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩から選ばれた1種又は2種以上」を
「(B)殺菌効力増強成分としてクエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、亜硫酸塩から選ばれた1種又は2種以上」に、
「(ただし、グレープフルーツ種子抽出物とベンジルアルコールと安息香酸ナトリウムとの組み合わせ、グレープフルーツ種子抽出物と酢酸ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物と、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、リン酸一ナトリウムから選ばれた1種以上との組み合わせを除く)」を
「(ただし、グレープフルーツ種子抽出物とベンジルアルコールと安息香酸ナトリウムとの組み合わせ、グレープフルーツ種子抽出物と酢酸ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物と、クエン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウムから選ばれた1種以上との組み合わせを除く)」に、それぞれ訂正する。

訂正事項2:訂正前の特許請求の範囲の請求項1の
「(B)殺菌効力増強成分としてクエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、炭酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩から選ばれた1種又は2種以上」を
「(B)殺菌効力増強成分として炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムのいずれか」に、
「殺菌剤組成物(ただし、グレープフルーツ種子抽出物とベンジルアルコールと安息香酸ナトリウムとの組み合わせ、グレープフルーツ種子抽出物と酢酸ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物と、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、リン酸一ナトリウムから選ばれた1種以上との組み合わせを除く)」を
「殺菌剤組成物であって、
前記殺菌組成物中の前記炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムの配合量が0.5質量%以下であり、細菌及び/又はカビ(ただし、ストレプトコッカスミュータンス菌を除く)を殺菌する、殺菌剤組成物(ただし、グレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物と炭酸水素ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物とグリシンと炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物と炭酸水素ナトリウムと、アルケミラウルガリスの葉の抽出物との組み合わせを除く)」に、それぞれ訂正し、訂正後の請求項2とする。

訂正事項3:訂正前の特許請求の範囲の請求項1の
「(B)殺菌効力増強成分としてクエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、炭酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩から選ばれた1種又は2種以上」を
「(B)殺菌効力増強成分として炭酸塩(ただし、炭酸塩が炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムのいずれかである場合を除く)」に訂正し、
「(ただし、グレープフルーツ種子抽出物とベンジルアルコールと安息香酸ナトリウムとの組み合わせ、グレープフルーツ種子抽出物と酢酸ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物と、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、リン酸一ナトリウムから選ばれた1種以上との組み合わせを除く)」を削除し、訂正後の請求項3とする。

訂正事項4:訂正前の特許請求の範囲の請求項1の
「(B)殺菌効力増強成分としてクエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、炭酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩から選ばれた1種又は2種以上」を
「(B)殺菌効力増強成分としてリン酸塩」に、
「殺菌剤組成物(ただし、グレープフルーツ種子抽出物とベンジルアルコールと安息香酸ナトリウムとの組み合わせ、グレープフルーツ種子抽出物と酢酸ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物と、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、リン酸一ナトリウムから選ばれた1種以上との組み合わせを除く)」を
「殺菌剤組成物であって、
細菌及び/又はカビ(ただし、レジオネラニューモフィラ菌を除く)を殺菌する、殺菌剤組成物(ただし、グレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物とリン酸一ナトリウムとの組み合わせを除く)」に、それぞれ訂正し、訂正後の請求項4とする。

訂正事項5:訂正前の特許請求の範囲の請求項2の
「ウイルス不活性化剤組成物」を
「ウイルス不活性化剤組成物(ただし、グレープフルーツ種子抽出物と炭酸水素ナトリウムと、アルケミラウルガリスの葉の抽出物との組み合わせを除く)」に訂正し、訂正後の請求項5とする。

訂正事項6:訂正前の特許請求の範囲の請求項3の
「請求項1又は請求項2」を
「請求項1乃至5のいずれか」に訂正し、訂正後の請求項6とする。

訂正事項7:訂正前の特許請求の範囲の請求項4の
「殺菌効力増強成分が、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、イノシン酸二ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、ソルビン酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムから選ばれた1種又は2種以上」を
「殺菌効力増強成分が、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、イノシン酸二ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、ソルビン酸カリウム、亜硫酸ナトリウムから選ばれた1種又は2種以上」に、
「請求項1又は請求項3」を
「請求項1」に訂正し、訂正後の請求項7とする。

訂正事項8:訂正前の特許請求の範囲の請求項5の
「請求項1、3、4」を
「請求項1乃至4、6、7」に訂正し、訂正後の請求項8とする。

訂正事項9:訂正前の特許請求の範囲の請求項6の
「請求項1、3乃至5」を
「請求項1乃至4、6乃至8」に訂正し、訂正後の請求項9とする。

訂正事項10:訂正前の特許請求の範囲の請求項7の
「請求項2又は請求項3」を
「請求項5又は6」に訂正し、訂正後の請求項10とする。

訂正事項11:訂正前の特許請求の範囲の請求項8の
「請求項2、3、7」を
「請求項5、6、10」に訂正し、訂正後の請求項11とする。

訂正事項12:訂正前の特許請求の範囲の請求項9の
「請求項2、3、7、8」を
「請求項5、6、10、11」に訂正し、訂正後の請求項12とする。

訂正事項13:訂正前の特許請求の範囲の請求項10の
「請求項2、3、7乃至9」を
「請求項5、6、10乃至12」に訂正し、訂正後の請求項13とする。

訂正事項14:訂正前の特許請求の範囲の請求項11の
「(B)殺菌効力増強成分としてクエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、炭酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩から選ばれた1種又は2種以上」を
「(B)殺菌効力増強成分としてクエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩から選ばれた1種又は2種以上」に、
「(ただし、グレープフルーツ種子抽出物とベンジルアルコールとを含む殺菌剤組成物に、安息香酸ナトリウムを添加する場合、グレープフルーツ種子抽出物を含む殺菌剤組成物に酢酸ナトリウムを添加する場合、および/又はグレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物とを含む殺菌剤組成物に、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、リン酸一ナトリウムから選ばれた1種以上を添加する場合を除く)」を
「(ただし、グレープフルーツ種子抽出物とベンジルアルコールとを含む殺菌剤組成物に、安息香酸ナトリウムを添加する場合、グレープフルーツ種子抽出物を含む殺菌剤組成物に酢酸ナトリウムを添加する場合、および/又はグレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物とを含む殺菌剤組成物に、クエン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、リン酸一ナトリウムから選ばれた1種以上を添加する場合を除く)」に、それぞれ訂正し、訂正後の請求項14とする。

訂正事項15:訂正前の特許請求の範囲の請求項11の
「(B)殺菌効力増強成分としてクエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、炭酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩から選ばれた1種又は2種以上」を
「(B)殺菌効力増強成分として0.5質量%以下の炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムのいずれか」に、
「(ただし、グレープフルーツ種子抽出物とベンジルアルコールとを含む殺菌剤組成物に、安息香酸ナトリウムを添加する場合、グレープフルーツ種子抽出物を含む殺菌剤組成物に酢酸ナトリウムを添加する場合、および/又はグレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物とを含む殺菌剤組成物に、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、リン酸一ナトリウムから選ばれた1種以上を添加する場合を除く)」を
「(ただし、グレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物とを含む殺菌剤組成物に炭酸水素ナトリウムを添加する場合、および/又はグレープフルーツ種子抽出物とグリシンとを含む殺菌剤組成物に炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムを添加する場合を除く)」に、それぞれ訂正し、訂正後の請求項15とする。

訂正事項16:訂正前の特許請求の範囲の請求項11の
「(B)殺菌効力増強成分としてクエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、炭酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩から選ばれた1種又は2種以上」を
「(B)殺菌効力増強成分として炭酸塩(ただし炭酸塩が炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムのいずれかである場合を除く)」に訂正し、
「(ただし、グレープフルーツ種子抽出物とベンジルアルコールとを含む殺菌剤組成物に、安息香酸ナトリウムを添加する場合、グレープフルーツ種子抽出物を含む殺菌剤組成物に酢酸ナトリウムを添加する場合、および/又はグレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物とを含む殺菌剤組成物に、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、リン酸一ナトリウムから選ばれた1種以上を添加する場合を除く)」を削除し、訂正後の請求項16とする。

訂正事項17:訂正前の特許請求の範囲の請求項12を、訂正後の請求項17とする。

訂正事項18:訂正前の特許請求の範囲の請求項13の
「殺菌効力増強成分が、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、イノシン酸二ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、ソルビン酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムから選ばれた1種又は2種以上」を
「殺菌効力増強成分が、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、イノシン酸二ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、ソルビン酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムから選ばれた1種又は2種以上」に、
「請求項11」を
「請求項14」に訂正し、訂正後の請求項18とする。

訂正事項19:訂正前の特許請求の範囲の請求項14の
「請求項12」を
「請求項17」に訂正し、訂正後の請求項19とする。

訂正事項20:訂正前の特許請求の範囲の請求項15の
「殺菌またはウイルス不活性化効力増強成分」を
「ウイルス不活性化効力増強成分」に、
「請求項13又は請求項14」を
「請求項19」に、
「殺菌またはウイルス不活性化効力増強方法」を
「ウイルス不活性化効力増強方法」に訂正し、訂正後の請求項20とする。

訂正事項21:訂正前の特許請求の範囲の請求項16の
「請求項11、13、15」を
「請求項14乃至16、18」に訂正し、訂正後の請求項21とする。

訂正事項22:訂正前の特許請求の範囲の請求項17の
「請求項12、14、15」を
「請求項17、19、20」に訂正し、訂正後の請求項22とする。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る「(B)殺菌効力増強成分」の選択肢から「炭酸塩」と「リン酸塩」を削除し、この削除に伴い、いわゆる「除く」クレーム中の選択肢から「炭酸塩」と「リン酸塩」に相当する「炭酸水素ナトリウム」と「リン酸一ナトリウム」を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。また、選択肢を削除しただけであるから、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(2)訂正事項2は、訂正前の請求項1に係る「(B)殺菌効力増強成分」の選択肢を「炭酸塩」である「炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムのいずれか」に限定し、この限定に伴い、いわゆる「除く」クレーム中の選択肢を「炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムのいずれか」に関与する「グレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物と炭酸水素ナトリウムとの組み合わせ」とし、新たに「および/又はグレープフルーツ種子抽出物とグリシンと炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物と炭酸水素ナトリウムと、アルケミラウルガリスの葉の抽出物との組み合わせ」を除くものとし、更に、「炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムの配合量」を「0.5質量%以下」に限定し、殺菌する対象を「細菌及び/又はカビ(ただし、ストレプトコッカスミュータンス菌を除く)」に限定するものであり、結果として、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められ、これを新請求項2とするものであり、該新請求項2は、全体として不明確とはいえないので、明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。また、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(3)訂正事項3は、訂正前の請求項1に係る「(B)殺菌効力増強成分」の選択肢を「炭酸塩(ただし、炭酸塩が炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムのいずれかである場合を除く)」に限定し、この限定に伴い、いわゆる「除く」クレームには「炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウム」のいずれでもない炭酸塩を含む特定は存在しなかったから、これを削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められ、これを新請求項3とするものであり、該新請求項3は、全体として不明確とはいえないので、明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。また、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(4)訂正事項4は、訂正前の請求項1に係る「(B)殺菌効力増強成分」の選択肢を「リン酸塩」に限定し、この限定に伴い、いわゆる訂正前の「除く」クレーム中の選択肢の中から「リン酸塩」に関与する「グレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物とリン酸一ナトリウムとの組み合わせ」を選択して訂正後の選択肢とし、更に、殺菌する対象を「細菌及び/又はカビ(ただし、レジオネラニューモフィラ菌を除く)」に限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められ、これを新請求項4とするものであり、該新請求項4は、全体として不明確とはいえないので、明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。また、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(5)訂正事項5は、訂正前の請求項2に係る「ウイルス不活性化剤組成物」から「グレープフルーツ種子抽出物と炭酸水素ナトリウムと、アルケミラウルガリスの葉の抽出物との組み合わせを除く」ものとするものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められ、これを新請求項5とするものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。また、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(6)訂正事項6及び8〜13は、訂正前の請求項1が新請求項1〜4に、訂正前の請求項2、3、4、5、7、8が新請求項5、6、7、8、10、11に、それぞれ訂正されたことに伴い、訂正前の請求項1あるいは2を直接的又は間接的に引用する訂正前の請求項を新請求項に訂正し、加えて、引用する請求項についても新請求項に訂正するものであり、他の訂正事項に伴う請求項番号の整理にすぎないので、明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。また、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(7)訂正事項7は、訂正前の請求項4に係る「殺菌効力増強成分」の選択肢から「炭酸水素ナトリウム」と「炭酸ナトリウム」と「リン酸水素二ナトリウム」を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。また、訂正前の請求項1が新請求項1〜4に、訂正前の請求項2が新請求項5に、それぞれ訂正されたことに伴い、訂正前の請求項1あるいは3を引用する訂正前の請求項4を新請求項7に訂正し、加えて、引用する請求項についても新請求項に訂正するものであり、他の訂正事項に伴う請求項番号の整理にすぎないので、明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。そして、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(8)訂正事項14は、訂正前の請求項11に係る「(B)殺菌効力増強成分」の選択肢から「炭酸塩」を削除し、この削除に伴い、いわゆる「除く」クレーム中の選択肢から「炭酸塩」に相当する「炭酸水素ナトリウム」を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められ、これを新請求項14とするものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。また、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(9)訂正事項15は、訂正前の請求項11に係る「(B)殺菌効力増強成分」の選択肢を「炭酸塩」である「炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムのいずれか」に限定し、この限定に伴い、いわゆる訂正前の「除く」クレーム中の選択肢の中から「炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムのいずれか」に関与する「グレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物とを含む殺菌剤組成物に炭酸水素ナトリウムを添加する場合」を選択して訂正後の選択肢とし、新たに「および/又はグレープフルーツ種子抽出物とグリシンとを含む殺菌剤組成物に炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムを添加する場合」を除くものとし、更に、「炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムの配合量」を「0.5質量%以下」に限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められ、これを新請求項15とするものであり、該新請求項15は、全体として不明確とはいえないので、明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。また、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(10)訂正事項16は、訂正前の請求項11に係る「(B)殺菌効力増強成分」の選択肢を「炭酸塩(ただし、炭酸塩が炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムのいずれかである場合を除く)」に限定し、この限定に伴い、いわゆる「除く」クレームには「炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウム」のいずれでもない炭酸塩を含む特定は存在しなかったから、これを削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められ、これを新請求項16とするものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。また、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(11)訂正事項17は、訂正前の請求項12を新請求項17とするものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。また、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(12)訂正事項18は、訂正前の請求項13に係る「殺菌効力増強成分」の選択肢から「炭酸水素ナトリウム」と「炭酸ナトリウム」を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。また、訂正前の請求項11が新請求項14〜16に、訂正前の請求項12が新請求項17に、それぞれ訂正されたことに伴い、訂正前の請求項11を引用する訂正前の請求項13を新請求項18に訂正し、加えて、引用する請求項についても新請求項に訂正するものであり、他の訂正事項に伴う請求項番号の整理にすぎないので、明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。そして、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(13)訂正事項19、21、22は、訂正前の請求項11が新請求項14〜16に、訂正前の請求項12〜15が新請求項17〜20に、それぞれ訂正されたことに伴い、訂正前の請求項11あるいは12を直接的又は間接的に引用する訂正前の請求項を新請求項に訂正し、加えて、引用する請求項についても新請求項に訂正するものであり、他の訂正事項に伴う請求項番号の整理にすぎないので、明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。また、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(14)訂正事項20は、訂正前の請求項15に係る「殺菌またはウイルス不活性化」を「ウイルス不活性化」のみとするものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。また、訂正前の請求項13〜14が新請求項18〜19に訂正されたことに伴い、新請求項20に訂正し、加えて、引用する請求項についても「ウイルス不活性化効力増強方法」に係る新請求項19のみに訂正するものであり、他の訂正事項に伴う請求項番号の整理にすぎないので、明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。そして、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項ないし第6項の各規定に適合するので、本件訂正を認める。

第3 本件訂正後の請求項1〜22に係る発明
本件訂正により訂正された訂正請求項1〜22に係る発明(以下、「本件訂正発明1」〜「本件訂正発明22」、まとめて「本件訂正発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1〜22に記載された以下の事項によって特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(B)殺菌効力増強成分としてクエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、亜硫酸塩から選ばれた1種又は2種以上と、を水に混合してなる殺菌剤組成物(ただし、グレープフルーツ種子抽出物とベンジルアルコールと安息香酸ナトリウムとの組み合わせ、グレープフルーツ種子抽出物と酢酸ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物と、クエン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウムから選ばれた1種以上との組み合わせを除く)。
【請求項2】
(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(B)殺菌効力増強成分として炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムのいずれかと、を水に混合してなる殺菌剤組成物であって、
前記殺菌組成物中の前記炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムの配合量が0.5質量%以下であり細菌及び/又はカビ(ただし、ストレプトコッカスミュータンス菌を除く)を殺菌する、殺菌剤組成物(ただし、グレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物と炭酸水素ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物とグリシンと炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物と炭酸水素ナトリウムと、アルケミラウルガリスの葉の抽出物との組み合わせを除く)。
【請求項3】
(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(B)殺菌効力増強成分として炭酸塩(ただし、炭酸塩が炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムのいずれかである場合を除く)と、を水に混合してなる殺菌剤組成物。
【請求項4】
(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と(B)殺菌効力増強成分としてリン酸塩と、を水に混合してなる殺菌剤組成物であって、
細菌及び/又はカビ(ただし、レジオネラニューモフィラ菌を除く)を殺菌する、殺菌剤組成物(ただし、グレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物とリン酸一ナトリウムとの組み合わせを除く)。
【請求項5】
(A)ウイルス不活性化成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(B)ウイルス不活性化効力増強成分としてクエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、炭酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩から選ばれた1種又は2種以上と、を水に混合してなるウイルス不活性化剤組成物(ただし、グレープフルーツ種子抽出物と炭酸水素ナトリウムと、アルケミラウルガリスの葉の抽出物との組み合わせを除く)。
【請求項6】
pHが6〜11である請求項1乃至5のいずれかに記載の殺菌またはウイルス不活性化剤組成物。
【請求項7】
前記殺菌効力増強成分が、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、イノシン酸二ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、ソルビン酸カリウム、亜硫酸ナトリウムから選ばれた1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の殺菌剤組成物。
【請求項8】
前記グレープフルーツ種子抽出物の配合量が0.005質量%以上であることを特徴とする請求項1乃至4、6、7のいずれかに記載の殺菌剤組成物。
【請求項9】
前記殺菌効力増強成分の配合量が0.0005質量%以上であることを特徴とする請求項1乃至4、6乃至8のいずれかに記載の殺菌剤組成物。
【請求項10】
前記ウイルス不活性化効力増強成分が、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、炭酸水素ナトリウムから選ばれた1種又は2種以上であることを特徴とする請求項5又は6に記載のウイルス不活性化剤組成物。
【請求項11】
前記グレープフルーツ種子抽出物の配合量が0.1質量%以上であることを特徴とする請求項5、6、10のいずれかに記載のウイルス不活性化剤組成物。
【請求項12】
前記ウイルス不活性化効力増強成分の配合量が0.01質量%以上であることを特徴とする請求項5、6、10、11のいずれかに記載のウイルス不活性化剤組成物。
【請求項13】
請求項5、6、10乃至12のいずれかに記載のウイルス不活性化剤組成物をノンエンベロープウイルスに対して接触させるノンエンベロープウイルスの不活性化方法。
【請求項14】
(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(C)水と、を含有する殺菌剤組成物に、
(B)殺菌効力増強成分としてクエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩から選ばれた1種又は2種以上を添加することを特徴とする殺菌効力増強方法(ただし、グレープフルーツ種子抽出物とベンジルアルコールとを含む殺菌剤組成物に、安息香酸ナトリウムを添加する場合、グレープフルーツ種子抽出物を含む殺菌剤組成物に酢酸ナトリウムを添加する場合、および/又はグレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物とを含む殺菌剤組成物に、クエン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、リン酸一ナトリウムから選ばれた1種以上を添加する場合を除く)。
【請求項15】
(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(C)水と、を含有する殺菌剤組成物に、
(B)殺菌効力増強成分として0.5質量%以下の炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムのいずれかを添加することを特徴とする殺菌効力増強方法(ただし、グレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物とを含む殺菌剤組成物に炭酸水素ナトリウムを添加する場合、および/又はグレープフルーツ種子抽出物とグリシンとを含む殺菌剤組成物に炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムを添加する場合を除く)。
【請求項16】
(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(C)水と、を含有する殺菌剤組成物に、
(B)殺菌効力増強成分として炭酸塩(ただし炭酸塩が炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムのいずれかである場合を除く)を添加することを特徴とする殺菌効力増強方法。
【請求項17】
(A)ウイルス不活性化成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(C)水と、を含有するウイルス不活性化剤組成物に、
(B)ウイルス不活性化効力増強成分としてクエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、炭酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩から選ばれた1種又は2種以上を添加することを特徴とするウイルス不活性化効力増強方法。
【請求項18】
前記殺菌効力増強成分が、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、イノシン酸二ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、ソルビン酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムから選ばれた1種又は2種以上であることを特徴とする請求項14に記載の殺菌効力増強方法。
【請求項19】
前記ウイルス不活性化効力増強成分が、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、炭酸水素ナトリウムから選ばれた1種又は2種以上であることを特徴とする請求項17に記載のウイルス不活性化効力増強方法。
【請求項20】
前記ウイルス不活性化効力増強成分が、炭酸水素ナトリウムであることを特徴とする請 求項19に記載のウイルス不活性化効力増強方法。
【請求項21】
前記殺菌効力増強成分の添加量が前記殺菌剤組成物に対して0.0005質量%以上であることを特徴とする請求項14乃至16、18のいずれかに記載の殺菌効力増強方法。
【請求項22】
前記ウイルス不活性化効力増強成分の添加量が、前記ウイルス不活性化剤組成物に対して0.01質量%以上であることを特徴とする請求項17、19、20のいずれかに記載のウイルス不活性化効力増強方法。」

第4 取消理由の概要及びこれに対する当審の判断
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1〜17に係る特許に対して、当審が令和3年3月12日付け取消理由通知で特許権者に通知した取消理由の要旨は以下のとおりである。

「理由1:(新規性)下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
理由2:(進歩性)下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。


第3 刊行物1を主引用例とする理由
・理由1、2
・本件発明1、3〜6、11、13、15、16

8.刊行物1を主引例とする理由のまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1、3〜6、11、13、15、16は、刊行物1に記載された発明であり、それに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 刊行物2を主引用例とする理由
・理由1、2
・本件発明1〜10

12.刊行物2を主引例とする理由のまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1〜9は、刊行物2に記載された発明であり、それに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本件発明10は、刊行物2〜5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 刊行物6を主引用例とする理由
・理由1、2
・本件発明1、3〜6

6.刊行物6を主引例とする理由のまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1、3〜6は、刊行物6に記載された発明であり、それに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 刊行物7を主引用例とする理由
・理由1、2
・本件発明1、3〜6

6.刊行物7を主引例とする理由のまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1、3は、刊行物7に記載された発明であり、本件発明1、3〜6は、刊行物7に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 刊行物7と刊行物8を引用例とする理由
・理由2
・本件発明1、3〜6、11、13、16

7.刊行物7と刊行物8を引用例とする理由のまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1、3〜6、11、13、16は、刊行物7、8に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

<刊行物一覧>
刊行物1:韓国公開特許第10−2004−0083742号公報
(特許異議申立2の甲第1号証)
刊行物2:米国特許出願公開第2015/0359835号明細書
(特許異議申立2の甲第2号証)
刊行物3:米国特許出願公開第2007/0148262号明細書
(特許異議申立1の甲第7号証)
刊行物4:熊野浩太郎「ヒトパルボウイルスB19感染症の様々な病態」、
日本臨床免疫学会会誌、2008年、第31巻、第6号、
p.448−453
(特許異議申立1の甲第13号証)
刊行物5:中国特許出願公開第108339017号明細書
(特許異議申立2の甲第5号証)
刊行物6:特開2005−320301号公報
(特許異議申立3の甲第2号証)
刊行物7:古畑勝則ら、「レジオネラ属菌に対するグレープフルーツ種子
抽出物の抗菌作用」、麻布大学雑誌、麻布大学、2004年、
第9・10巻、p.154−157
(特許異議申立3の甲第1号証)
刊行物8:アサマパートナーニュース、アサマ化成株式会社、2000年、
第75号、p.1−4
(特許異議申立1の甲第9号証)」

2 上記取消理由についての検討
前記第2において検討し、認められた本件訂正後の請求項と訂正前の請求項との対応を下記に示す。取消理由通知前すなわち訂正前の各請求項に係る発明に対する検討は、下記の対応する訂正後の各請求項に係る発明を基に行う。

訂正後 訂正前請求項との対応関係
請求項1 請求項1を訂正
請求項2 請求項1の一部を抜き出して訂正
請求項3 請求項1の一部を抜き出して訂正
請求項4 請求項1の一部を抜き出して訂正
請求項5 請求項2を訂正
請求項6 請求項3
請求項7 請求項4を訂正
請求項8 請求項5
請求項9 請求項6
請求項10 請求項7
請求項11 請求項8
請求項12 請求項9
請求項13 請求項10
請求項14 請求項11を訂正
請求項15 請求項11の一部を抜き出して訂正
請求項16 請求項11の一部を抜き出して訂正
請求項17 請求項12
請求項18 請求項13を訂正
請求項19 請求項14
請求項20 請求項15を訂正
請求項21 請求項16
請求項22 請求項17

(1)「刊行物1を主引用例とする理由」について
ア 刊行物1に記載された発明(刊行物1の記載事項は日本語訳で示す。)
刊行物1には、「弱アルカリ性の条件、つまり、pH7〜9において、真菌及び細菌に対して、生育の抑制や殺菌効果を有する、グレープフルーツ種子抽出物と、前記グレープフルーツ種子抽出物のpHを調整するpH調整剤と、を含む、抗菌組成物」が記載され(第2頁34〜35行、翻訳文【0010】)、「前記pH調整剤は、重炭酸ナトリウム又は炭酸ナトリウムのいずれか」であること(第2頁36〜37行、翻訳文【0011】)、実施例として、「精製水」を含む抗菌組成物が記載されている(第3頁10〜12行、翻訳文【0017】)。
したがって、刊行物1には、以下の発明が記載されているといえる。

引用発明1:「pH7〜9において、真菌及び細菌に対して、生育の抑制や殺菌効果を有する、グレープフルーツ種子抽出物と、前記グレープフルーツ種子抽出物のpHを調整するpH調整剤として重炭酸ナトリウム又は炭酸ナトリウムと精製水を含む、抗菌組成物」

イ 本件訂正発明1について
(ア)本件訂正発明1と引用発明1を対比する。
a 引用発明1の「pH7〜9において、真菌及び細菌に対して、生育の抑制や殺菌効果を有する」、「抗菌組成物」は、本件訂正発明1の「殺菌剤組成物」に相当する。
b 引用発明1の「グレープフルーツ種子抽出物」について、刊行物1には、「抗菌効果を有する」と記載されているから(第2頁26〜28行、翻訳文【0006】)、本件訂正発明1の「(A)殺菌成分」としての「グレープフルーツ種子抽出物」に相当する。
c 引用発明1の「重炭酸ナトリウム又は炭酸ナトリウム」について、刊行物1には、「殺菌力を増大させる役割を果たす」と記載されているから(第3頁下から4行〜第4頁1行、翻訳文【0023】)、引用発明1の「重炭酸ナトリウム又は炭酸ナトリウム」は、本件訂正発明1の「(B)殺菌効力増強成分」に相当する。
d 引用発明1は、「グレープフルーツ種子抽出物とベンジルアルコールと安息香酸ナトリウムとの組み合わせ、グレープフルーツ種子抽出物と酢酸ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物と、クエン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウムから選ばれた1種以上との組み合わせ」には該当しないから、本件訂正発明1の「(ただし、グレープフルーツ種子抽出物とベンジルアルコールと安息香酸ナトリウムとの組み合わせ、グレープフルーツ種子抽出物と酢酸ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物と、クエン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウムから選ばれた1種以上との組み合わせを除く)。」に相当する。

(イ)以上によれば、本件訂正発明1と引用発明1とは、
「(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(B)殺菌効力増強成分と、を水に混合してなる殺菌剤組成物(ただし、グレープフルーツ種子抽出物とベンジルアルコールと安息香酸ナトリウムとの組み合わせ、グレープフルーツ種子抽出物と酢酸ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物と、クエン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウムから選ばれた1種以上との組み合わせを除く)。」で一致し、以下の点で相違するといえる。

相違点1a:「(B)殺菌効力増強成分」に関し、本件訂正発明1は「クエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、亜硫酸塩から選ばれた1種又は2種以上」であるのに対し、引用発明1は「重炭酸ナトリウム又は炭酸ナトリウム」である点。

(ウ)上記相違点1aについて検討する。
刊行物1には、引用発明1における「pH調整剤」として用いられる物質は重炭酸ナトリウム又は炭酸ナトリウムのいずれかしか開示されておらず、これ以外の物質が引用発明1において「pH調整剤」として示唆されていると解しうる記載は存在しないし、技術常識から記載されているに等しいともいえない。
このため、本件訂正発明1は刊行物1に記載された発明とはいえない。
また、刊行物1には、引用発明1において、「pH調整剤」として重炭酸ナトリウム又は炭酸ナトリウム以外の物質を用いうることを想起させる記載ないし示唆は存在しない。
このため、本件訂正発明1は刊行物1に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 本件訂正発明2について
(ア)本件訂正発明2と引用発明1を対比する。
上記イ(ア)a〜cで指摘した点と併せ、更に、
e 引用発明1は、「ストレプトコッカスミュータンス菌」を殺菌するものには該当しないから、本件訂正発明2の「細菌及び/又はカビ(ただし、ストレプトコッカスミュータンス菌を除く)を殺菌する」ものに相当する。

(イ)以上によれば、本件訂正発明2と引用発明1とは、
「(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(B)殺菌効力増強成分として炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムのいずれかと、を水に混合してなる殺菌剤組成物であって、
細菌及び/又はカビ(ただし、ストレプトコッカスミュータンス菌を除く)を殺菌する、殺菌剤組成物。」で一致し、以下の点で相違するといえる。

相違点1b:「(B)殺菌効力増強成分」の配合量に関し、本件訂正発明2は「0.5質量%以下」であるのに対し、引用発明1は配合量の規定がない点。
相違点1c:本件訂正発明2は「(ただし、グレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物と炭酸水素ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物とグリシンと炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物と炭酸水素ナトリウムと、アルケミラウルガリスの葉の抽出物との組み合わせを除く)」ものであるのに対し、引用発明1はグレープフルーツ種子抽出物とグリシンと炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムとの組み合わせである点。

(ウ)上記相違点1bについて検討する。
刊行物1には、その実施例において、重炭酸ナトリウム又は炭酸ナトリウムを0.4w/v%、0.2w/v%、0.1w/v%用いたものが記載されている(3頁表1)。この数値はw/v%ではあるが、水の比重やその他の成分の存在量からみて、本件訂正発明2の「0.5質量%以下」との規定を満たすものと解するのが相当である。
このため、相違点1bは実質的な相違点とはいえない。

(エ)上記相違点1cについて検討する。
刊行物1の実施例にはグリシンを含有する組成物が記載されており、引用発明1においてグリシンを含まないとすることは記載も示唆もされていないので、本件訂正発明2と引用発明1とはこの点において明らかに相違する。
このため、本件訂正発明2は刊行物1に記載された発明とはいえない。
また、この組み合わせを除くことは刊行物1の記載からは想起されない。
このため、本件訂正発明2は刊行物1に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ 本件訂正発明3について
(ア)本件訂正発明3と引用発明1を対比する。
引用発明1は、上記イ(ア)a〜cで指摘したとおりである。

(イ)そうすると、本件訂正発明3と引用発明1とは
「(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(B)殺菌効力増強成分として炭酸塩と、を水に混合してなる殺菌剤組成物」で一致し、以下の点で相違するといえる。

相違点1d:本件訂正発明3は「(ただし、炭酸塩が炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムのいずれかである場合を除く)」ものであるのに対し、引用発明1は炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムを用いるものである点。

(ウ)上記相違点1dについて検討する。
刊行物1には、引用発明1における「pH調整剤」として用いられる物質は重炭酸ナトリウム又は炭酸ナトリウムのいずれかしか開示されておらず、これ以外の物質が引用発明1において「pH調整剤」として示唆されていると解しうる記載は存在しないし、技術常識から記載されているに等しいともいえない。
このため、本件訂正発明3は刊行物1に記載された発明とはいえない。
また、刊行物1には、引用発明1において、「pH調整剤」として重炭酸ナトリウム又は炭酸ナトリウム以外の物質を用いうることを想起させる記載ないし示唆は存在しない。
このため、本件訂正発明3は刊行物1に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

オ 本件訂正発明4について
(ア)本件訂正発明4と引用発明1を対比する。
上記イ(ア)a〜cで指摘した点と併せ、更に、
f 引用発明1は、「レジオネラニューモフィラ菌」を殺菌するものには該当しないから、本件訂正発明4の「細菌及び/又はカビ(ただし、レジオネラニューモフィラ菌を除く)を殺菌する」ものに相当する。
g 引用発明1は、「グレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物とリン酸一ナトリウムとの組み合わせ」には該当しないから、本件訂正発明4の「(ただし、グレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物とリン酸一ナトリウムとの組み合わせを除く)」に相当する。

(イ)以上によれば、本件訂正発明4と引用発明1とは、
「(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と(B)殺菌効力増強成分と、を水に混合してなる殺菌剤組成物であって、
細菌及び/又はカビ(ただし、レジオネラニューモフィラ菌を除く)を殺菌する、殺菌剤組成物(ただし、グレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物とリン酸一ナトリウムとの組み合わせを除く)」で一致し、以下の点で相違するといえる。

相違点1e:「(B)殺菌効力増強成分」に関し、本件訂正発明4は「リン酸塩」であるのに対し、引用発明1は「重炭酸ナトリウム又は炭酸ナトリウム」である点。

(ウ)上記相違点1eについて検討する。
刊行物1には、引用発明1における「pH調整剤」として用いられる物質は重炭酸ナトリウム又は炭酸ナトリウムのいずれかしか開示されておらず、リン酸塩が引用発明1において「pH調整剤」として示唆されていると解しうる記載は存在しないし、技術常識から記載されているに等しいともいえない。
このため、本件訂正発明4は刊行物1に記載された発明とはいえない。
また、刊行物1には、引用発明1において、「pH調整剤」として重炭酸ナトリウム又は炭酸ナトリウム以外の物質を用いうることを想起させる記載ないし示唆は存在しない。
このため、本件訂正発明4は刊行物1に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

カ 本件訂正発明6〜9について
本件訂正発明6〜9は、本件訂正発明1〜4を更に限定するものである。したがって、本件訂正発明1〜4は刊行物1に記載された発明とはいえず、また、本件訂正発明1〜4は刊行物1に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないことに鑑みると、本件訂正発明6〜9も刊行物1に記載された発明とはいえず、また、本件訂正発明6〜9も刊行物1に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

キ 本件訂正発明14〜16について
本件訂正発明14は本件訂正発明1を、本件訂正発明15は本件訂正発明2を、本件訂正発明16は本件訂正発明3を、それぞれ係る「殺菌剤組成物」の発明を「殺菌効力増強方法」という方法の発明としたものである。
そして、本件訂正発明14においては、殺菌効力増強成分としてリン酸塩が選択肢として存在するが、相違点の判断に影響はなく、上記イ〜エで検討したことと同様の理由により、本件訂正発明14〜16も刊行物1に記載された発明とはいえず、また、本件訂正発明14〜16も刊行物1に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ク 本件訂正発明18、20、21について
本件訂正発明18、20、21は、本件訂正発明14〜16を更に限定するものである。本件訂正後の請求項20は本件訂正後の請求項19を引用し、本件訂正後の請求項19は、取消理由の対象ではない本件訂正前の請求項12に対応する本件訂正後の請求項17を引用するものであるが、ここで併せて検討すると、本件訂正発明14〜16は刊行物1に記載された発明とはいえず、また、本件訂正発明14〜16は刊行物1に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないことに鑑みると、本件訂正発明18、20、21も刊行物1に記載された発明とはいえず、また、本件訂正発明18、20、21も刊行物1に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ケ まとめ
以上のことから、当審が通知した刊行物1を主引用例とする理由には、理由がない。

(2)「刊行物2を主引用例とする理由」について
ア 刊行物2の記載事項
刊行物2には、以下の事項が記載されている。(日本語訳で示す。)

(2−1)「[0002] 本発明は、少なくとも1つのグレープフルーツ種子抽出物、少なくとも1つのアルケミラウルガリスの葉の抽出物、少なくとも1つのステビア抽出物、少なくともクルクミンを含む組成物に関する。
[0003] 本発明はまた、医療デバイスの形態において、又は化粧用組成物の前記組成物に、また口腔の疾患、特に出血、口腔粘膜及び/又は舌の病変、病変以外の炎症性疾患、歯肉および/または歯の過敏症、口臭、歯の発疹、および細菌、真菌、およびウイルス感染の治療におけるそれらの使用に関する。」

(2−2)「実施例II
I.本発明による組成物(C)の調製。
[0185] 本発明に基づく組成物(C)を以下の手順で調製した。特に断りのない限り量は重量パーセントで示す。

a.i.:有効成分

II.手順

[0189] 最終pH7.3〜7.7の組成物が得られた。」

(2−3)「III.本発明による組成物(C)の抗菌性保護の研究。
[0190] この例では、本発明による組成物(C)の抗菌性保護はISO規格11930に従って評価される。
[0191] この評価は、5種類の異なる株の微生物(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、大腸菌(Escherichia coli)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、及びアスペルギルス・ブラジリエンシス(Aspergillus brasiliensis)) に調製された接種材料を接種した組成物(C)に基づいている。

IV.結果

[0197] 本発明による組成物(C)は、ISO規格11930の抗菌性保護に関して、プロファイルAの評価基準を満たしたため、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、大腸菌(Escherichia coli)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、及びアスペルギルス・ブラジリエンシス(Aspergillus brasiliensis)に対して有効である。」

(2−4)「実施例III
[0198] この実施例では、本発明による組成物(C)の殺ウイルス活性は、実施例IIに記載されたのと同じく、NFEN規格14476に従って検討されている。
・・・
II.結果
[0203] 「本発明による組成物(C)は、NFEN規格14476の方法に従って20℃でI型ヘルペスウイルスと接触してから45秒後に有効であり、ウイルスの99.99%を超える減少率であった。」

イ 刊行物2に記載された発明
刊行物2には、「少なくとも1つのグレープフルーツ種子抽出物、少なくとも1つのアルケミラウルガリス抽出物、少なくとも1つのステビア抽出物、少なくともウコンを含む組成物」及びその「細菌、真菌、およびウイルス感染の治療における使用」に関する発明が記載され(摘記(2−1))、上記組成物の具体例である「組成物(C)」として、「キサンタンガム、ヒアルロン酸ナトリウム、PEG−40水添ヒマシ油、クローブ抽出物、炭酸水素ナトリウム、アルケミラウルガリス抽出物、セージバイオ 水−グリセロール抽出物 80、ウコン、キンセンカ葉抽出物、パンテノール、アボガド油、ステビア抽出物、キシリトール、塩化セチルピリジニウム、グレープフルーツ種子抽出物、水からなる組成物」が記載され、該「炭酸水素ナトリウム」は1.1重量%(99.47%有効成分)含有されることが記載され、また、組成物のpHは7.3〜7.7であったことが記載されている(摘記(2−2))。
そして、刊行物2には、上記組成物(C)が、抗菌性組成物として有用であったこと、殺ウイルス活性のある組成物であったことも記載されている(摘記(2−3))。
以上によると、刊行物2には、以下の発明が記載されているといえる。

引用発明2−1:「キサンタンガム、ヒアルロン酸ナトリウム、PEG−40水添ヒマシ油、クローブ抽出物、炭酸水素ナトリウム、アルケミラウルガリス抽出物、セージバイオ 水−グリセロール抽出物 80、ウコン、キンセンカ葉抽出物、パンテノール、アボガド油、ステビア抽出物、キシリトール、塩化セチルピリジニウム、グレープフルーツ種子抽出物、水からなる組成物であって、炭酸水素ナトリウムは1.1重量%(99.47%有効成分)含有され、pHが7.3〜7.7である抗菌性組成物」
引用発明2−2:「キサンタンガム、ヒアルロン酸ナトリウム、PEG−40水添ヒマシ油、クローブ抽出物、炭酸水素ナトリウム、アルケミラウルガリス抽出物、セージバイオ 水−グリセロール抽出物 80、ウコン、キンセンカ葉抽出物、パンテノール、アボガド油、ステビア抽出物、キシリトール、塩化セチルピリジニウム、グレープフルーツ種子抽出物、水からなる組成物であって、炭酸水素ナトリウムは1.1重量%(99.47%有効成分)含有され、pHが7.3〜7.7である殺ウイルス活性組成物」

ウ 本件訂正発明1について
(ア)本件訂正発明1と引用発明2−1を対比する。
a 引用発明2−1の「pHが7.3〜7.7である抗菌性組成物」は、本件訂正発明1の「殺菌剤組成物」に相当する。
b 引用発明2−1のグレープフルーツ種子抽出物は、当業者の技術常識(例えば、刊行物1の第2頁17〜19行、翻訳文【0004】参照)からみて、「殺菌成分」として含まれていると理解できるから、引用発明2−1の「グレープフルーツ種子抽出物」は、本件訂正発明1の「(A)殺菌成分」としての「グレープフルーツ種子抽出物」に相当する。
c 引用発明2−1は、「水」も含むから、「(A)殺菌成分」としての「グレープフルーツ種子抽出物」を水に混合してなる殺菌剤組成物であるということができ、そうすると、引用発明2−1の組成物は、本件訂正発明1の「(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物」「を水に混合してなる殺菌剤組成物」に相当するといえる。
d 引用発明2−1は、「グレープフルーツ種子抽出物とベンジルアルコールと安息香酸ナトリウムとの組み合わせ、グレープフルーツ種子抽出物と酢酸ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物と、クエン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウムから選ばれた1種以上との組み合わせ」に該当しないから、本件訂正発明1の「(ただし、グレープフルーツ種子抽出物とベンジルアルコールと安息香酸ナトリウムとの組み合わせ、グレープフルーツ種子抽出物と酢酸ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物と、クエン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウムから選ばれた1種以上との組み合わせを除く)。」に相当する。

(イ)以上によれば、本件訂正発明1と引用発明2−1は、「(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物を水に混合してなる殺菌剤組成物(ただし、グレープフルーツ種子抽出物とベンジルアルコールと安息香酸ナトリウムとの組み合わせ、グレープフルーツ種子抽出物と酢酸ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物と、クエン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウムから選ばれた1種以上との組み合わせを除く)。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点2a:本件訂正発明1は、「クエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、亜硫酸塩から選ばれた1種又は2種以上」が混合され、これが「殺菌効力増強成分」となるものであるのに対し、引用発明2−1は、「炭酸水素ナトリウム」が混合され、これが殺菌効力増強成分となるものであるか不明な点

(ウ)上記相違点2aについて検討する。
刊行物2には、「クエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、亜硫酸塩」のいずれについてもこれを添加することの記載ないし示唆は存在しない。
このため、本件訂正発明1は刊行物2に記載された発明とはいえない。
また、刊行物2には、引用発明2−1において、「炭酸水素ナトリウム」に代えて、あるいは追加して「クエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、亜硫酸塩から選ばれた1種又は2種以上」を用いうることを想起させる記載ないし示唆は存在しない。
このため、本件訂正発明1は刊行物2に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ 本件訂正発明2について
(ア)本件訂正発明2と引用発明2−1を対比する。
上記ウ(ア)a〜cで指摘した点と併せ、更に、
e 引用発明2−1は、「ストレプトコッカスミュータンス菌」を殺菌するものには該当しないから、本件訂正発明2の「細菌及び/又はカビ(ただし、ストレプトコッカスミュータンス菌を除く)を殺菌する」ものに相当する。

(イ)以上によれば、本件訂正発明2と引用発明2−1とは、
「(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(B)炭酸水素ナトリウムと、を水に混合してなる殺菌剤組成物であって、
細菌及び/又はカビ(ただし、ストレプトコッカスミュータンス菌を除く)を殺菌する、殺菌剤組成物。」で一致し、以下の点で相違するといえる。

相違点2b:本件訂正発明2は「(B)殺菌効力増強成分」として炭酸水素ナトリウムを混合するのに対し、引用発明2−1は炭酸水素ナトリウムが「殺菌効力増強成分」となるように混合するものであるのか不明であり、また、当該成分の配合量に関し、本件訂正発明2は「0.5質量%以下」であるのに対し、引用発明2−1は「1.1重量%(99.47%有効成分)」である点。
相違点2c:本件訂正発明2は「(ただし、グレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物と炭酸水素ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物とグリシンと炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物と炭酸水素ナトリウムと、アルケミラウルガリスの葉の抽出物との組み合わせを除く)」ものであるのに対し、引用発明2−1はグレープフルーツ種子抽出物と炭酸水素ナトリウムと、アルケミラウルガリスの葉の抽出物との組み合わせである点。

(ウ)上記相違点2bについて検討する。
刊行物2には、「炭酸水素ナトリウム」を「殺菌効力増強成分」となるように添加することの記載ないし示唆は存在しない。また、その配合量においても、「1.1重量%(99.47%有効成分)」とすること以外の記載ないし示唆は存在しない。
このため、本件訂正発明2は刊行物2に記載された発明とはいえない。
また、「炭酸水素ナトリウム」を「殺菌効力増強成分」とすること、その配合量を「0.5質量%以下」とすることは刊行物2の記載からは想起されない。
このため、本件訂正発明2は刊行物2に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(エ)上記相違点2cについて検討する。
引用発明2−1は「グレープフルーツ種子抽出物と炭酸水素ナトリウムと、アルケミラウルガリスの葉の抽出物との組み合わせ」によるものであるから、本件訂正発明2と引用発明2−1とはこの点において明らかに相違する。
このため、本件訂正発明2は刊行物2に記載された発明とはいえない。
また、この組み合わせを除くことは刊行物2の記載からは想起されない。
このため、本件訂正発明2は刊行物2に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

オ 本件訂正発明3について
(ア)本件訂正発明3と引用発明2−1を対比する。
引用発明2−1は、上記ウ(ア)a〜cで指摘したとおりである。

(イ)そうすると、本件訂正発明3と引用発明2−1とは
「(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(B)炭酸塩と、を水に混合してなる殺菌剤組成物」で一致し、以下の点で相違するといえる。

相違点2d:本件訂正発明3は「(B)殺菌効力増強成分」として炭酸塩を混合するのに対し、引用発明2−1は炭酸水素ナトリウムが「殺菌効力増強成分」となるように混合するものであるのか不明であり、また、本件訂正発明3は「(ただし、炭酸塩が炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムのいずれかである場合を除く)」ものであるのに対し、引用発明2−1は炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムを用いるものである点。

(ウ)上記相違点2dについて検討する。
刊行物2には、炭酸水素ナトリウムしか開示されておらず、これ以外の炭酸塩が引用発明2−1において用いられると解しうる記載は存在しない。そもそも、刊行物2には、「炭酸水素ナトリウム」を「殺菌効力増強成分」となるように添加することの記載ないし示唆は存在しない
このため、本件訂正発明3は刊行物2に記載された発明とはいえない。
また、刊行物2には、引用発明2−1において、炭酸水素ナトリウム以外の炭酸塩を用いうること、該炭酸塩を「殺菌効力増強成分」とすること、を想起させる記載ないし示唆は存在しない。
このため、本件訂正発明3は刊行物2に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

カ 本件訂正発明4について
(ア)本件訂正発明4と引用発明2−1を対比する。
上記ウ(ア)a〜cで指摘した点と併せ、更に、
f 引用発明2−1は、「レジオネラニューモフィラ菌」を殺菌するものには該当しないから、本件訂正発明4の「細菌及び/又はカビ(ただし、レジオネラニューモフィラ菌を除く)を殺菌する」ものに相当する。
g 引用発明2−1は、「グレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物とリン酸一ナトリウムとの組み合わせ」には該当しないから、本件訂正発明4の「(ただし、グレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物とリン酸一ナトリウムとの組み合わせを除く)」に相当する。

(イ)以上によれば、本件訂正発明4と引用発明2−1とは、
「(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物を水に混合してなる殺菌剤組成物であって、
細菌及び/又はカビ(ただし、レジオネラニューモフィラ菌を除く)を殺菌する、殺菌剤組成物(ただし、グレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物とリン酸一ナトリウムとの組み合わせを除く)」で一致し、以下の点で相違するといえる。

相違点2e:本件訂正発明4は「(B)殺菌効力増強成分」としてリン酸塩を混合するのに対し、引用発明2−1は炭酸水素ナトリウムを混合するものであり、またこれが「殺菌効力増強成分」となるように混合するものであるのか不明である点。

(ウ)上記相違点2eについて検討する。
刊行物2には、炭酸水素ナトリウムしか開示されておらず、リン酸塩が引用発明2−1において用いられると解しうる記載は存在しない。そもそも、刊行物2には、「炭酸水素ナトリウム」を「殺菌効力増強成分」となるように添加することの記載ないし示唆は存在しない
このため、本件訂正発明4は刊行物2に記載された発明とはいえない。
また、刊行物2には、引用発明2−1において、リン酸塩を用いうること、用いた際に係るリン酸塩を「殺菌効力増強成分」とすること、を想起させる記載ないし示唆は存在しない。
このため、本件訂正発明4は刊行物2に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

キ 本件訂正発明5について
(ア)本件訂正発明5と引用発明2−2を対比する。
h 引用発明2−2の「pHが7.3〜7.7である殺ウイルス活性組成物」は、本件訂正発明5の「ウイルス不活性化剤組成物」に相当する。
i 引用発明2−2のグレープフルーツ種子抽出物は、当業者の技術常識(例えば、刊行物3の[0012]参照)からみて、「ウイルス不活性化成分」として含まれていると理解できるから、引用発明2−2の「グレープフルーツ種子抽出物」は、本件訂正発明5の「(A)ウイルス不活性化成分」としての「グレープフルーツ種子抽出物」に相当する。
j 引用発明2−2の「炭酸水素ナトリウム」は、「炭酸塩」であるから、本件訂正発明5の「(B)成分」としての「クエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、炭酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩から選ばれた1種又は2種以上」に相当する。
k 引用発明2−2は、「水」も含むから、「(A)ウイルス不活性化成分」としての「グレープフルーツ種子抽出物」を水に混合してなるウイルス不活性化剤組成物であるといえる。

(イ)以上によれば、本件訂正発明5と引用発明2−2は、「(A)ウイルス不活性化成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(B)成分としてクエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、炭酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩から選ばれた1種又は2種以上と、を水に混合してなるウイルス不活性化剤組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点2f:本件訂正発明5の(B)成分は「ウイルス不活性化効力増強成分」として用いられるものであるのに対し、引用発明2−2の「炭酸水素ナトリウム」は「ウイルス不活性化効力増強成分」であるのか明らかでない点。
相違点2g:本件訂正発明5は「(ただし、グレープフルーツ種子抽出物と炭酸水素ナトリウムと、アルケミラウルガリスの葉の抽出物との組み合わせを除く)」ものであるのに対し、引用発明2−2はグレープフルーツ種子抽出物と炭酸水素ナトリウムと、アルケミラウルガリスの葉の抽出物との組み合わせである点。

(ウ)上記相違点2fについて検討する。
刊行物2には、「炭酸水素ナトリウム」を「殺菌効力増強成分」となるように添加することの記載ないし示唆は存在しない。
このため、本件訂正発明5は刊行物2に記載された発明とはいえない。
また、「炭酸水素ナトリウム」を「殺菌効力増強成分」とすることは刊行物2の記載からは想起されない。
このため、本件訂正発明5は刊行物2に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(エ)上記相違点2gについて検討する。
引用発明2−2は「グレープフルーツ種子抽出物と炭酸水素ナトリウムと、アルケミラウルガリスの葉の抽出物との組み合わせ」によるものであるから、本件訂正発明5と引用発明2−2とはこの点において明らかに相違する。
このため、本件訂正発明5は刊行物2に記載された発明とはいえない。
また、この組み合わせを除くことは刊行物2の記載からは想起されない。
このため、本件訂正発明5は刊行物2に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ク 本件訂正発明6〜13について
本件訂正発明6〜9は、本件訂正発明1〜4を更に限定するものである。また、本件訂正発明6及び10〜13は、本件訂正発明5を更に限定するものである。したがって、本件訂正発明1〜4及び5は刊行物2に記載された発明とはいえず、また、本件訂正発明1〜4及び5は刊行物2に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないことに鑑みると、本件訂正発明6〜13も刊行物2に記載された発明とはいえず、また、本件訂正発明6〜13も刊行物2に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ケ まとめ
以上のことから、当審が通知した刊行物2を主引用例とする理由には、理由がない。

(3)「刊行物6を主引用例とする理由」について
ア 刊行物6に記載された発明
刊行物6の請求項1の記載から、刊行物6には、以下の発明が記載されているといえる。

引用発明6:「水にグレープフルーツ種子抽出物が0.05〜5.0重量%含有され、炭酸水素ナトリウムによりpHを6.5〜8.5の範囲に調整されていることを特徴とする根管洗浄液」

イ 本件訂正発明1について
(ア)本件訂正発明1と引用発明6を対比する。
a 刊行物6の【0001】には、本発明は、根管内在菌を殺菌できる根管洗浄液に関するものであると記載されているから、引用発明6の根管洗浄液は、殺菌剤組成物であるということができ、そうすると、引用発明6の「根管洗浄液」は、本件訂正発明1の「殺菌剤組成物」に相当する。
b 刊行物6の【0012】には、炭酸水素ナトリウムにて中和せしめるとグレープフルーツ種子抽出物の殺菌効果を失わせることなく、中性を示す低刺激性の根管洗浄液とすることができると記載されているから、引用発明6の「グレープフルーツ種子抽出物」は殺菌成分であるといえる。そうすると、引用発明6の「グレープフルーツ種子抽出物」は、本件訂正発明1の「(A)殺菌成分」としての「グレープフルーツ種子抽出物」に相当する。
c 引用発明6は、「グレープフルーツ種子抽出物とベンジルアルコールと安息香酸ナトリウムとの組み合わせ、グレープフルーツ種子抽出物と酢酸ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物と、クエン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウムから選ばれた1種以上との組み合わせ」には該当しないから、本件訂正発明1の「(ただし、グレープフルーツ種子抽出物とベンジルアルコールと安息香酸ナトリウムとの組み合わせ、グレープフルーツ種子抽出物と酢酸ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物と、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、リン酸一ナトリウムから選ばれた1種以上との組み合わせを除く)。」に相当する。

(イ)以上によれば、本件訂正発明1と引用発明6は、「(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物を水に混合してなる殺菌剤組成物(ただし、グレープフルーツ種子抽出物とベンジルアルコールと安息香酸ナトリウムとの組み合わせ、グレープフルーツ種子抽出物と酢酸ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物と、クエン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウムから選ばれた1種以上との組み合わせを除く)。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点6a:本件訂正発明1は、「クエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、亜硫酸塩から選ばれた1種又は2種以上」が混合され、これが「殺菌効力増強成分」となるものであるのに対し、引用発明6は、「炭酸水素ナトリウム」が混合され、これが殺菌効力増強成分となるものであるか不明な点

(ウ)上記相違点6aについて検討する。
刊行物6には、「クエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、亜硫酸塩」のいずれについてもこれを添加することの記載ないし示唆は存在しない。
このため、本件訂正発明1は刊行物6に記載された発明とはいえない。
また、刊行物6には、引用発明2−1において、「炭酸水素ナトリウム」に代えて、あるいは追加して「クエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、亜硫酸塩から選ばれた1種又は2種以上」を用いうることを想起させる記載ないし示唆は存在しない。
このため、本件訂正発明1は刊行物6に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 本件訂正発明2について
(ア)本件訂正発明2と引用発明6を対比する。
上記イ(ア)a〜bで指摘した点と併せ、更に、
d 引用発明6は、炭酸水素ナトリウムが混合されており、本件訂正発明2の「炭酸水素ナトリウム」に相当する。
e 引用発明6は、「グレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物と炭酸水素ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物とグリシンと炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物と炭酸水素ナトリウムと、アルケミラウルガリスの葉の抽出物との組み合わせ」には該当しないから、本件訂正発明2の「(ただし、グレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物と炭酸水素ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物とグリシンと炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物と炭酸水素ナトリウムと、アルケミラウルガリスの葉の抽出物との組み合わせを除く)」に相当する。

(イ)以上によれば、本件訂正発明2と引用発明6は、「(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と(B)成分として炭酸水素ナトリウムと、を水に混合してなる殺菌剤組成物であって、
細菌及び/又はカビを殺菌する、殺菌剤組成物(ただし、グレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物と炭酸水素ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物とグリシンと炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物と炭酸水素ナトリウムと、アルケミラウルガリスの葉の抽出物との組み合わせを除く)。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点6b:本件訂正発明2は「(B)殺菌効力増強成分」として炭酸水素ナトリウムを混合するのに対し、引用発明6は炭酸水素ナトリウムが「殺菌効力増強成分」となるように混合するものであるのか不明であり、また、当該成分の配合量に関し、本件訂正発明2は「0.5質量%以下」であるのに対し、引用発明6は「pHを6.5〜8.5の範囲に調整」する程度である点。
相違点6c:殺菌の対象となる「細菌及び/又はカビ」において、本件訂正発明2は「(ただし、ストレプトコッカスミュータンス菌を除く)」ものであるのに対し、引用発明6は係る対象が特定されていない点。

(ウ)上記相違点6bについて検討する。
刊行物6の実施例には、引用発明6に係る「根管洗浄液」の「pHを6.5〜8.5の範囲に調整」する程度の量として、「0.5質量%以下」との規定を満たすと解される「0.1重量%」、「0.2重量%」、「0.4重量%」としたものが記載されており、配合量自体においては両者は一致すると解しうる。しかし、「炭酸水素ナトリウム」を「殺菌効力増強成分」となるように添加することの記載ないし示唆は存在しない。
このため、結果として、引用発明6は炭酸水素ナトリウムが「殺菌効力増強成分」となるように「0.5質量%以下」混合していることにならず、本件訂正発明2は刊行物6に記載された発明とはいえない。
また、「炭酸水素ナトリウム」を「殺菌効力増強成分」とすることは刊行物6の記載からは想起されない。
このため、本件訂正発明2は刊行物6に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(エ)上記相違点6cについて検討する。
引用発明6に係る「根管洗浄液」は殺菌の対象となるものがストレプトコッカスミュータンス菌であるから、本件訂正発明2と引用発明6とはこの点において明らかに相違する。
このため、本件訂正発明2は刊行物6に記載された発明とはいえない。
また、これを除くことは刊行物6の記載からは想起されない。
このため、本件訂正発明2は刊行物6に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ 本件訂正発明3について
(ア)本件訂正発明3と引用発明6を対比する。
引用発明6は、上記イ(ア)a〜bで指摘したとおりである。

(イ)そうすると、本件訂正発明3と引用発明6とは
「(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(B)炭酸塩と、を水に混合してなる殺菌剤組成物」で一致し、以下の点で相違するといえる。

相違点6d:本件訂正発明3は「(B)殺菌効力増強成分」として炭酸塩を混合するのに対し、引用発明6は炭酸水素ナトリウムが「殺菌効力増強成分」となるように混合するものであるのか不明であり、また、本件訂正発明3は「(ただし、炭酸塩が炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムのいずれかである場合を除く)」ものであるのに対し、引用発明6は炭酸水素ナトリウムを用いるものである点。

(ウ)上記相違点6dについて検討する。
刊行物6には、炭酸水素ナトリウムしか開示されておらず、これ以外の炭酸塩が引用発明6において用いられると解しうる記載は存在しない。そもそも、刊行物6には、「炭酸水素ナトリウム」を「殺菌効力増強成分」となるように添加することの記載ないし示唆は存在しない
このため、本件訂正発明3は刊行物6に記載された発明とはいえない。
また、刊行物6には、引用発明6において、炭酸水素ナトリウム以外の炭酸塩を用いうること、該炭酸塩を「殺菌効力増強成分」とすること、を想起させる記載ないし示唆は存在しない。
このため、本件訂正発明3は刊行物6に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

オ 本件訂正発明4について
(ア)本件訂正発明4と引用発明6を対比する。
上記イ(ア)a〜bで指摘した点と併せ、更に、
f 引用発明6は、「レジオネラニューモフィラ菌」を殺菌するものには該当しないから、本件訂正発明4の「細菌及び/又はカビ(ただし、レジオネラニューモフィラ菌を除く)を殺菌する」ものに相当する。
g 引用発明6は、「グレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物とリン酸一ナトリウムとの組み合わせ」には該当しないから、本件訂正発明4の「(ただし、グレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物とリン酸一ナトリウムとの組み合わせを除く)」に相当する。

(イ)以上によれば、本件訂正発明4と引用発明6とは、
「(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物を水に混合してなる殺菌剤組成物であって、
細菌及び/又はカビ(ただし、レジオネラニューモフィラ菌を除く)を殺菌する、殺菌剤組成物(ただし、グレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物とリン酸一ナトリウムとの組み合わせを除く)」で一致し、以下の点で相違するといえる。

相違点6e:本件訂正発明4は「(B)殺菌効力増強成分」としてリン酸塩を混合するのに対し、引用発明6は炭酸水素ナトリウムを混合するものであり、またこれが「殺菌効力増強成分」となるように混合するものであるのか不明である点。

(ウ)上記相違点6eについて検討する。
刊行物6には、炭酸水素ナトリウムしか開示されておらず、リン酸塩が引用発明6において用いられると解しうる記載は存在しない。そもそも、刊行物6には、「炭酸水素ナトリウム」を「殺菌効力増強成分」となるように添加することの記載ないし示唆は存在しない
このため、本件訂正発明4は刊行物6に記載された発明とはいえない。
また、刊行物6には、引用発明6において、リン酸塩を用いうること、用いた際に係るリン酸塩を「殺菌効力増強成分」とすること、を想起させる記載ないし示唆は存在しない。
このため、本件訂正発明4は刊行物6に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

カ 本件訂正発明6〜9について
本件訂正発明6〜9は、本件訂正発明1〜4を更に限定するものである。したがって、本件訂正発明1〜4は刊行物6に記載された発明とはいえず、また、本件訂正発明1〜4は刊行物6に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないことに鑑みると、本件訂正発明6〜9も刊行物6に記載された発明とはいえず、また、本件訂正発明6〜9も刊行物6に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

キ まとめ
以上のことから、当審が通知した刊行物6を主引用例とする理由には、理由がない。

(4)「刊行物7を主引用例とする理由」について
ア 刊行物7に記載された発明
刊行物7には、「pH7.0とpH9.0のリン酸緩衝液中にGSEを含む溶液」が記載され、この溶液を用いてGSEの殺菌効果を検討したところ殺菌効果を示すことが明らかとなったこと、上記GSEはグレープフルーツ種子抽出物であることが記載されている(p157左欄、要約)。
したがって、刊行物7には、以下の発明が記載されているといえる。

引用発明7:「pH7.0又はpH9.0のリン酸緩衝液中にグレープフルーツ種子抽出物を含む殺菌効果を示す溶液」

イ 本件訂正発明1について
(ア)本件訂正発明1と引用発明7を対比する。
a 引用発明7の「殺菌効果を示す溶液」は、本件発明1の「殺菌剤組成物」に相当する。
b 刊行物7には、グレープフルーツ種子抽出物の殺菌効果を検討したと記載されているから(p157、要約)、引用発明7の「グレープフルーツ種子抽出物」は、「殺菌成分」であるということができ、本件発明1の「(A)殺菌成分」としての「グレープフルーツ種子抽出物」に相当する。
c リン酸緩衝液は、通常リン酸塩と水を含むから、引用発明7は、本件発明1の「(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物」「を水に混合してなる殺菌剤組成物」に相当する。
d 引用発明7は、「グレープフルーツ種子抽出物とベンジルアルコールと安息香酸ナトリウムとの組み合わせ、グレープフルーツ種子抽出物と酢酸ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物と、クエン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウムから選ばれた1種以上との組み合わせ」には該当しないから、本件発明1の「(ただし、グレープフルーツ種子抽出物とベンジルアルコールと安息香酸ナトリウムとの組み合わせ、グレープフルーツ種子抽出物と酢酸ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物と、クエン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウムから選ばれた1種以上との組み合わせを除く)。」に相当する。

(イ)以上によれば、本件発明1と引用発明7は、「(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物を水に混合してなる殺菌剤組成物(ただし、グレープフルーツ種子抽出物とベンジルアルコールと安息香酸ナトリウムとの組み合わせ、グレープフルーツ種子抽出物と酢酸ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物と、クエン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウムから選ばれた1種以上との組み合わせを除く)。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点7a:本件訂正発明1は、「クエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、亜硫酸塩から選ばれた1種又は2種以上」が混合され、これが「殺菌効力増強成分」となるものであるのに対し、引用発明7は、「リン酸塩」が混合され、これが殺菌効力増強成分となるものであるか不明な点

(ウ)上記相違点7aについて検討する。
刊行物7には、「クエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、亜硫酸塩」のいずれについてもこれを添加することの記載ないし示唆は存在しない。
このため、本件訂正発明1は刊行物7に記載された発明とはいえない。
また、刊行物7には、引用発明7において、「リン酸塩」に代えて、あるいは追加して「クエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、亜硫酸塩から選ばれた1種又は2種以上」を用いうることを想起させる記載ないし示唆は存在しない。
このため、本件訂正発明1は刊行物7に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 本件訂正発明2について
(ア)本件訂正発明2と引用発明7を対比する。
上記イ(ア)a〜cで指摘した点と併せ、更に、
d 引用発明7は、殺菌の対象となる「細菌及び/又はカビ」において、ストレプトコッカスミュータンス菌を対象とするものではないから、本件訂正発明2の「(ただし、ストレプトコッカスミュータンス菌を除く)」に相当する。
e 引用発明7は、「グレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物と炭酸水素ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物とグリシンと炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物と炭酸水素ナトリウムと、アルケミラウルガリスの葉の抽出物との組み合わせ」には該当しないから、本件訂正発明2の「(ただし、グレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物と炭酸水素ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物とグリシンと炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物と炭酸水素ナトリウムと、アルケミラウルガリスの葉の抽出物との組み合わせを除く)」に相当する。

(イ)以上によれば、本件訂正発明2と引用発明7は、「(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物を水に混合してなる殺菌剤組成物であって、
細菌及び/又はカビ(ただし、ストレプトコッカスミュータンス菌を除く)を殺菌する、殺菌剤組成物(ただし、グレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物と炭酸水素ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物とグリシンと炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物と炭酸水素ナトリウムと、アルケミラウルガリスの葉の抽出物との組み合わせを除く)。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点7b:本件訂正発明2は「(B)殺菌効力増強成分」として炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムを混合し、また、係る「炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムの配合量が0.5質量%以下」であるのに対し、引用発明7は「リン酸塩」を混合するものであり、またこれが「殺菌効力増強成分」となるように混合するものであるのか不明である点。

(ウ)上記相違点7bについて検討する。
刊行物7には、「炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウム」を混合すること、また、これを「殺菌効力増強成分」として用いることの記載ないし示唆は存在しない。
このため、本件訂正発明2は刊行物7に記載された発明とはいえない。
また、「炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウム」を混合することやこれを「殺菌効力増強成分」とすることは刊行物7の記載からは想起されない。
このため、本件訂正発明2は刊行物7に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ 本件訂正発明3について
(ア)本件訂正発明3と引用発明7を対比する。
引用発明7は、上記イ(ア)a〜cで指摘したとおりである。

(イ)そうすると、本件訂正発明3と引用発明7とは
「(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物を水に混合してなる殺菌剤組成物」で一致し、以下の点で相違するといえる。

相違点7c:本件訂正発明3は「(B)殺菌効力増強成分」として「炭酸塩(ただし、炭酸塩が炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムのいずれかである場合を除く)」を混合するのに対し、引用発明7は「リン酸塩」を用い、また、これが「殺菌効力増強成分」となるように混合するものであるのか不明である点。

(ウ)上記相違点7cについて検討する。
刊行物7には、「炭酸塩(ただし、炭酸塩が炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムのいずれかである場合を除く)」を混合すること、また、これを「殺菌効力増強成分」として用いることの記載ないし示唆は存在しない。
このため、本件訂正発明3は刊行物7に記載された発明とはいえない。
また、「炭酸塩(ただし、炭酸塩が炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムのいずれかである場合を除く)」を混合することやこれを「殺菌効力増強成分」とすることは刊行物7の記載からは想起されない。
このため、本件訂正発明3は刊行物7に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

オ 本件訂正発明4について
(ア)本件訂正発明4と引用発明7を対比する。
上記イ(ア)a〜cで指摘した点と併せ、更に、
f 引用発明7は、「リン酸緩衝液」中に「リン酸塩」を含むものであるから、本件訂正発明4の「(B)成分」の「リン酸塩」に相当する。
g 引用発明7は、「グレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物とリン酸一ナトリウムとの組み合わせ」には該当しないから、本件訂正発明4の「(ただし、グレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物とリン酸一ナトリウムとの組み合わせを除く)」に相当する。

(イ)以上によれば、本件訂正発明4と引用発明7とは、
「(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と(B)リン酸塩と、を水に混合してなる殺菌剤組成物であって、
細菌及び/又はカビを殺菌する、殺菌剤組成物(ただし、グレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物とリン酸一ナトリウムとの組み合わせを除く)」で一致し、以下の点で相違するといえる。

相違点7d:本件訂正発明4は「(B)殺菌効力増強成分」としてリン酸塩を混合するのに対し、引用発明7はリン酸塩が「殺菌効力増強成分」となるように混合するものであるのか不明である点。
相違点7e:殺菌の対象となる「細菌及び/又はカビ」において、本件訂正発明4は「(ただし、レジオネラニューモフィラ菌を除く)」ものであるのに対し、引用発明7は係る対象が特定されていない点。

(ウ)上記相違点7dについて検討する。
刊行物7には、リン酸緩衝液に由来する「リン酸塩」を「殺菌効力増強成分」となるように添加することの記載ないし示唆は存在しない
このため、本件訂正発明4は刊行物7に記載された発明とはいえない。
また、刊行物7には、引用発明7において、リン酸塩を「殺菌効力増強成分」とすることを想起させる記載ないし示唆は存在しない。
このため、本件訂正発明4は刊行物7に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(エ)上記相違点7eについて検討する。
引用発明7に係る「殺菌効果を示す溶液」は殺菌の対象となるものがレジオネラニューモフィラ菌であるから、本件訂正発明4と引用発明7とはこの点において明らかに相違する。
このため、本件訂正発明4は刊行物7に記載された発明とはいえない。
また、これを除くことは刊行物7の記載からは想起されない。
このため、本件訂正発明4は刊行物7に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

カ 本件訂正発明6〜9について
本件訂正発明6〜9は、本件訂正発明1〜4を更に限定するものである。したがって、本件訂正発明1〜4は刊行物7に記載された発明とはいえず、また、本件訂正発明1〜4は刊行物7に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないことに鑑みると、本件訂正発明6〜9も刊行物7に記載された発明とはいえず、また、本件訂正発明6〜9も刊行物7に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

キ まとめ
以上のことから、当審が通知した刊行物7を主引用例とする理由には、理由がない。

(5)「刊行物7と刊行物8を引用例とする理由」について
ア 刊行物7に記載された発明
上記(4)アで述べたとおり、刊行物7には、以下の発明が記載されているといえる。

引用発明7:「pH7.0又はpH9.0のリン酸緩衝液中にグレープフルーツ種子抽出物を含む殺菌効果を示す溶液」

イ 本件訂正発明1のうち「(B)殺菌効力増強成分」を「クエン酸塩」とした発明について
(ア)本件訂正発明1と引用発明7の対比及び一致点は上記(4)イ(ア)〜(イ)に示したとおりであり、相違点は以下のとおりである。

相違点8a:本件訂正発明1は、「(B)殺菌効力増強成分としてクエン酸塩を混合してなる」殺菌剤組成物であるのに対し、引用発明7は、「(B)殺菌効力増強成分としてクエン酸塩を混合してなる」殺菌剤組成物ではない点

(イ)上記相違点8aについて検討する。
a 刊行物8には以下の記載がある。
「キレーターに属する一連の化合物の代表的なものは、エチレンヂアミンテトラ酢酸塩(EDTA塩)、正リン酸塩、重合リン酸塩類、クエン酸塩、さらには主として鉄イオンだけを封鎖するラクトフェリンなどで、食品工業での主要な役割は、食品添加物の分類においても認められるように、酸化防止剤としての作用である。
そして、これらのキレーターに抗菌作用があることは良く知られているが、抗菌作用を積極的に利用して、食品微生物を効果的に制御しようとする研究は、あまり多くはない。
ここでは、キレーターの利用によって、より効果的、且つ安全な食品の保存や、特定の微生物を制御する方法について検討してみたい。
キレーターの抗菌作用は、やはり金属イオン封鎖作用に基づくものと推定されている。その作用はキレーター自体が単独でも十分特定の微生物の発育を阻止する作用のある場合と、他の何らかの抗菌作用を持っている物質と共同作用によって、微生物を静菌あるいは殺菌したり、また、加熱のような物理的な殺菌ないし静菌作用と組み合わせることによって、非常にその殺菌作用を強めたり、あるいは、単独では有効でないグラム陰性細菌などの微生物をも殺菌することができるような場合とがある。」(1頁左欄タイトルの下から1〜21行)
「1.殺菌剤の作用の増強
MacGregorらは、第四アンモニウム化合物に対して、耐性となったE.coliやSerratia marcescensをEDTAの溶液で処理すると、再び第四アンモニウム化合物に対して感受性となることを示している(MacGregor,D.R. and Elliker,P.R.: Can.J.Micobiol.4,499(1958))。
硬水中では、硬度に影響されて、塩化ベザルコニウムなどの逆性石鹸の殺菌力は低下する。キレーターは硬度を下げるので、配合または組み合わせて使用すると効果的である。
また、硬水でなく蒸留水でも、EDTAの添加は、殺菌剤の作用を強めるといわれている(Kabara,J.J.: Food Preservatives.11 Phenols and Chelators. p207 Blackie and Son, Ltd.(1991))。」(1頁左欄下から5行〜右欄7行)

b すなわち、刊行物8には、「キレーターに属する一連の化合物の代表的なもの」として、「正リン酸塩、重合リン酸塩類、クエン酸塩」が記載され、「これらのキレーターに抗菌作用があることは良く知られている」と記載されている。さらに、刊行物8には、「1.殺菌剤の作用の増強」として、「硬水中では、硬度に影響されて、塩化ベザルコニウムなどの逆性石鹸の殺菌力は低下する」こと、「キレーターは硬度を下げるので、配合または組み合わせて使用すると効果的である」ことが記載されている。

c これに対し本件発明の詳細な説明には以下の記載がある。
「【0061】
本発明の殺菌、ウイルス不活性化剤組成物は、水系タイプであり、溶媒としては主に水が用いられる。水としては、イオン交換水や逆浸透膜水等の精製水や、通常の水道水や工業用水、海洋深層水等が挙げられる。
【0062】
更に、本発明の殺菌、ウイルス不活性化剤組成物には、その他の成分として、必要に応じて、無機抗菌、ウイルス不活性化剤、有機抗菌、ウイルス不活性化剤、防藻剤、防錆剤、溶剤、キレート剤、香料、消臭成分等を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することにより、抗菌効果、ウイルス不活性化効果、防藻効果、防錆効果、洗浄効果、芳香性、消臭性等を付与するようにしてもよい。」

d すなわち、本件訂正発明は、「イオン交換水や逆浸透膜水等の精製水や、通常の水道水や工業用水、海洋深層水等」といった、水の硬度の如何に関わらないものと認識され、また、「キレート剤」(キレーター)は、その他の成分として配合しうるものと認識されている。
刊行物8からは、「正リン酸塩、重合リン酸塩類、クエン酸塩」のような「キレーターに属する一連の化合物」が「硬度を下げるので、配合または組み合わせて使用すると効果的である」ことはうかがえるものの、水の硬度の如何に関わらなくとも、「殺菌剤の作用の増強」が図れるものであるのか明らかでない。
そうすると、「イオン交換水や逆浸透膜水等の精製水や、通常の水道水や工業用水、海洋深層水等」の如何なる水を用いた殺菌剤組成物においても、刊行物7に記載された「リン酸緩衝液」に含まれる「リン酸塩」の代わりとして、「クエン酸塩」を用いて本件訂正発明の「殺菌剤組成物」を構成してみることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(ウ)したがって、本件訂正発明1は、刊行物7及び8に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 本件訂正発明2〜4について
本件訂正発明2〜4の各々は、「(B)殺菌効力増強成分」として「クエン酸塩」を選択しうるものではない。
したがって、刊行物8の記載如何に関わらず、本件訂正発明2〜4は、刊行物7及び8に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ 本件訂正発明6〜9について
本件訂正発明6〜9は、本件訂正発明1〜4を更に限定するものである。したがって、本件訂正発明1〜4は刊行物7及び8に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないことに鑑みると、本件訂正発明6〜9も刊行物7及び8に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

オ 本件訂正発明14、18、21のうち「(B)殺菌効力増強成分」を「クエン酸塩」とした発明について
本件訂正発明14、18、21は、本件訂正発明1、7、9の「殺菌剤組成物」の発明を「殺菌効力増強方法」という方法の発明としたものである。
そして、上記イ及びエで述べたとおり、本件訂正発明1、7、9は刊行物7及び8に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないことに鑑みると、本件訂正発明14、18、21も刊行物7及び8に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

カ 本件訂正発明15〜16について
本件訂正発明15〜16の各々は、「(B)殺菌効力増強成分」として「クエン酸塩」を選択しうるものではない。
したがって、刊行物8の記載如何に関わらず、本件訂正発明15〜16は、刊行物7及び8に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

キ まとめ
以上のことから、当審が通知した刊行物7と刊行物8を引用例とする理由には、理由がない。

(6)申立人1の意見書における主張についての検討
申立人1の意見書における主張につき、上記取消理由通知に関連する「第3」〜「第6」について検討する。取消理由通知で採用しなかった申立人1の申立ての理由(下記第5 1(1)ア及びイに相当。)に係る「第2」は、下記第5 2(1)において併せて検討する。

ア 訂正発明1について
申立人1は、「訂正前の「(B)殺菌効力増強成分」も訂正後の「(B)殺菌効力増強成分」も、グレープフルーツ種子抽出物に一定の有機酸塩又は無機酸塩を組み合わせるというものにすぎず、訂正は、刊行物に記載された有機酸塩又は無機酸塩を削除したというものにすぎない。
グレープフルーツ種子抽出物に一定の有機酸塩又は無機酸塩を組み合わせること自体は、炭酸塩やリン酸塩との組合せによって明らかになっているから、当業者がグレープ種子抽出物に一定の有機酸塩又は無機酸塩を組み合わせることは、容易であるというべきである。」と主張する。
しかし、「当業者がグレープ種子抽出物に一定の有機酸塩又は無機酸塩を組み合わせることは、容易である」とすること、とりわけ、殺菌効力増強成分として「一定の有機酸塩又は無機酸塩を組み合わせること」が容易であるとすることの根拠が明らかでなく、申立人1はその根拠を示さない。
よって、該主張を採用することができない。

イ 訂正発明2について
申立人1は、「訂正発明2では、「殺菌組成物中の炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムの配合量」を所定量に限定しているが、各成分の配合量を適宜改変することは、単なる最適化であって、当業者が通常行う設計事項にすぎない。
また、訂正発明2では、殺菌剤組成物による殺薗対象から所定の菌を除いているが、殺菌剤の殺菌対象として具体的に何を選択するか又は選択しないかは、当業者がその用途に応じて適宜選択しうる事項であり、殺薗対象を限定することに格別の困難性は無い。また、特許権者は、除外した菌と、除外していない菌との間に、効果の違いがあることを実証していない。
さらに、訂正発明2では、殺菌剤組成物の組成物から所定の組合せを除いているが、グレープフルーツ種子抽出物と特定の有機酸塩、無機酸塩とを組合せること自体が周知技術である前提のもとでは、その組合せとして具体的に何を選択するか又は選択しないかは当業者が通常行う設計事項にすぎないものであり、その選択に格別の困難性はない。」と主張する。
しかし、「各成分の配合量を適宜改変することは、単なる最適化であって、当業者が通常行う設計事項」というが、本件【0053】にて「殺菌…効力増強成分の配合量が多すぎる場合、殺菌…効力増強効果の顕著な向上が期待できない上に、殺菌…剤組成物のコストが高くなる。配合量と殺菌…効力増強効果とのバランスを考慮すると、…0.5質量%以下とすることがさらに好ましい。」とあり、数値設定の理由が説明されており、配合量の設定による本願発明の効果が確認されている。
また、本件訂正発明2において、刊行物1、2、6各々に係る発明は除かれていることに鑑みると、グレープフルーツ種子抽出物と一定の有機酸塩、無機酸塩とを組合せること自体が周知技術であるとしても、殺菌効力増強成分として「炭酸水素ナトリウム」又は「炭酸ナトリウム」を用いて「殺菌剤組成物」を構成しようとすることは想起できない。
よって、該主張を採用することができない。

ウ 訂正発明3について
申立人1は、「…グレープフルーツ種子抽出物と一定の有機酸塩、無機酸塩とを組合せること自体が周知技術である前提のもと…」と主張する。
しかし、「炭酸水素ナトリウム」又は「炭酸ナトリウム」以外の炭酸塩を用いて「殺菌剤組成物」を構成しようとすることは、pH調整剤として重炭酸ナトリウム又は炭酸ナトリウムを示すに留まる刊行物1、炭酸水素ナトリウムを使用することを示すに留まる刊行物2、pH調整剤として炭酸水素ナトリウムを示すに留まる刊行物6からは想起できない。
よって、該主張を採用することができない。

エ 訂正発明4について
申立人1は、「…殺菌剤の殺菌対象として具体的に何を選択するか又は選択しないかは、当業者がその用途に応じて適宜選択しうる事項…」と主張する。
しかし、本件訂正発明4において、刊行物7に係る発明は除かれていることに鑑みると、グレープフルーツ種子抽出物と一定の有機酸塩、無機酸塩とを組合せること自体が周知技術であるとしても、リン酸塩を選択することは想起できず、また、刊行物7に係る発明は、レジオネラニューモフィラ菌の殺菌に係るものであり、その他の菌の殺菌に対しても効果を有するものか明らかでない。更に、殺菌剤の殺菌対象として具体的に何を選択するか又は選択しないかは、当業者がその用途に応じて適宜選択しうると解される根拠を見出せない。
よって、該主張を採用することができない。

オ 訂正発明5について
申立人1は、「…グレープフルーツ種子抽出物と特定の有機酸塩、無機酸塩とを組合せること自体が周知技術である前提のもと…」と主張する。
しかし、「ウイルス不活性化剤」組成物において、このような周知技術は確認できない。また、本件訂正発明5において、刊行物2に係る発明は除かれている。
よって、該主張を採用することができない。

カ 訂正発明6〜13について
申立人1は、「当業者が通常行う設計事項にすぎない。」と主張する。
しかし、上記ア〜オで検討したとおりであるから、該主張を採用することができない。

キ 訂正発明14〜17について
申立人1は、「訂正発明1〜5とカテゴリー上の相違があるにすぎない。」、「したがって、訂正発明1〜5と同様に、新規性違反・進歩性違反により取り消すべきである。」と主張する。
しかし、上記ア〜オで検討したとおりであるから、該主張を採用することができない。

ク 訂正発明18〜22について
申立人1は、「当業者が通常行う設計事項にすぎない。」と主張する。
しかし、上記ア〜オで検討したとおりであるから、該主張を採用することができない。

(7)申立人2の意見書における主張についての検討
申立人2の意見書における主張につき、「3 意見の内容」の(1)〜(20)について検討する。

ア 前提
まず、申立人2は、「訂正特許請求の範囲には、ウイルス不活性化剤組成物と、殺菌剤組成物とが別々の請求項で記載されているが、ウイルス不活化効果を有する組成物は殺菌効果を有していたり、殺菌効果を有する組成物はウイルス不活化効果を有していたりするので、結局は同じ発明である。」と主張する。
しかし、「ウイルス不活化効果を有する組成物は殺菌効果を有していたり、殺菌効果を有する組成物はウイルス不活化効果を有していたりする」からといって、そのことをもって何故本件訂正発明においても、係る「殺菌剤組成物」と「ウイルス不活性化剤組成物」とが「結局は同じ発明」であるといえるのか、明らかでない。
よって、該主張を採用することができない。

イ 訂正発明1について
申立人2は、「訂正後の請求項1の発明では、グレープフルーツ種子抽出物とベンジルアルコールと安息香酸ナトリウムとの組み合わせ、グレープフルーツ種子抽出物と酢酸ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物と、クエン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウムから選ばれた1種以上との組み合わせが除かれているが、刊行物7、8には、グレープフルーツ種子抽出物とベンジルアルコールと安息香酸ナトリウムとの組み合わせ、グレープフルーツ種子抽出物と酢酸ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物と、クエン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウムから選ばれた1種以上との組み合わせが記載されていないので、これらの組み合わせが除かれていることは明白である。
また、単に除くクレームで発明を特定したとしても、格別な効果を奏し得る発明になった訳でもないので、進歩性は依然として欠如している。」と主張する。
しかし、本件【0061】には「本発明の殺菌、ウイルス不活性化剤組成物は、水系タイプであり、溶媒としては主に水が用いられる。水としては、イオン交換水や逆浸透膜水等の精製水や、通常の水道水や工業用水、海洋深層水等が挙げられる。」と記載されている。本件訂正発明における「水」は硬水、軟水の如何に関わらない。
この点について、取消理由通知でも示したとおり、刊行物8には、「1.殺菌剤の作用の増強」として、「硬水中では、硬度に影響されて、塩化ベザルコニウムなどの逆性石鹸の殺菌力は低下する」こと、「キレーターは硬度を下げるので、配合または組み合わせて使用すると効果的である」ことが記載されており(第1頁左欄下から5行〜右欄4行)、硬水で用いるためにキレーターとして「正リン酸塩、重合リン酸塩類、クエン酸塩」を用いる技術が開示されている。
更に、本件【0062】には「更に、本発明の殺菌、ウイルス不活性化剤組成物には、その他の成分として、必要に応じて、…キレート剤…を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することにより、抗菌効果、ウイルス不活性化効果、防藻効果、防錆効果、洗浄効果、芳香性、消臭性等を付与するようにしてもよい。」と記載されており、本件訂正発明の「殺菌効力増強成分」はキレート剤としての認識はないといえる。
そうすると、キレーターとして認識されている刊行物8に記載されたクエン酸塩を刊行物7に記載された発明に適用することができるとはいえない。
よって、該主張を採用することができない。

ウ 訂正発明2について
申立人2は、「炭酸水素ナトリウムの配合量を0.5質量%以下にすることは、甲第1号証の実施例5、6、7に記載されているとおり、何ら新しいものではないし、そのような数値範囲にすることによって顕著な作用効果を奏し得るものもない。
また、参考資料2には、段落[0119]に重炭酸塩が様々な抗菌剤の抗菌活性を増強することが記載され、段落[0120]に重炭酸塩として重炭酸ナトリウム(炭酸水素ナトリウム)等が例として記載され、段落[0121]に重炭酸ナトリウムの濃度が0.5重量%以下で良いことが記載されている。この参考資料2に係る組成物は、段落[0169]に明記されているように、様々な物に対して使用することが想定されており、物に対して使用した場合にも同様な効力を発揮するものである。また、参考資料2に係る組成物は段落[0187]に記載されているように、ウイルス、細菌、真菌等に対して効力を発揮することについても記載されているので、様々な菌に対しても効力を発揮することは当業者であれば当然に推測する。」と主張する。
申立人2は、参考資料を挙げて主張するので、これと併せ検討する。
参考資料2には、段落[0119]に重炭酸塩が様々な抗菌剤の抗菌活性を増強することが記載され、段落[0120]に重炭酸塩として重炭酸ナトリウム(炭酸水素ナトリウム)等が例として記載され、段落[0121]に重炭酸ナトリウムの濃度が0.5重量%以下で良いことが記載されているが、参考資料2は、重炭酸ナトリウムによってグレープフルーツ種子抽出物においても抗菌活性の増強が図れることを明らかにしない。
よって、該主張を採用することができない。

エ 訂正発明3について
(ア)申立人2は、「参考資料2には、炭酸水素ナトリウムが殺菌効力増強剤として作用することが記載されているので、この特定によっても新規性を有しない発明である。炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムのいずれかである場合を除くことによって格別な作用効果を奏するものではなく、進歩性を有さない。」と主張する。
しかし、上記ウで示したことと同様、重炭酸ナトリウム以外の重炭酸塩によってグレープフルーツ種子抽出物においても抗菌活性の増強が図れることを明らかにしない。

(イ)なお、申立人2は、異議申立書において主張しない新たなものである、「本願の出願当初明細書には、炭酸塩の具体例として炭酸水素ナトリウムと炭酸ナトリウムしか記載されていないので、これらを除いた訂正後の請求項3の発明はサポート要件違反でもある。」と主張する。
しかし、本件発明の詳細な説明には、重炭酸ナトリウム以外の炭酸塩の実施例はないが、それ以外の炭酸塩では本件訂正発明の課題を解決し得ないと解される根拠を見いだすことができず、また、申立人2はそれを示さない。

(ウ)よって、該主張を採用することができない。

オ 訂正発明4について
申立人2は、「殺菌効力増強剤としてのリン酸塩は、取消理由通知書で挙げられている刊行物7にも記載されているように、周知慣用技術であるため、殺菌効力増強剤としてリン酸塩を特定しても新規性を有さない発明である。また、リン酸塩を配合することで、レジオネラニューモフィラ菌に対して効力を発揮することは公知であるので、レジオネラニューモフィラ菌以外の菌に対しても同様に効力を発揮することは当然のことであり、レジオネラニューモフィラ菌を殺菌対象から除いたからといって新規性進歩性が認められるものではない。」と主張する。
しかし、「リン酸塩を配合することで、レジオネラニューモフィラ菌に対して効力を発揮することは公知であるので、レジオネラニューモフィラ菌以外の菌に対しても同様に効力を発揮することは当然」とする根拠を見いだすことができない。
よって、該主張を採用することができない。

カ 訂正発明5について
申立人2は、「甲第2号証、甲第3号証に記載の発明から容易に想到し得るものである。訂正後の請求項5の発明では、グレープフルーツ種子抽出物と炭酸水素ナトリウムと、アルケミラウルガリスの葉の抽出物との組み合わせを除くことが特定されているが、参考資料2に明記されているように、炭酸水素ナトリウムだけでウイルス不活性化効力が増強することは公知であって、従来から慣用されている技術的事項であることから、アルケミラウルガリスの葉の抽出物との組み合わせを除くことは容易に想到し得るものである。」と主張する。
しかし、訂正後の請求項5の発明では、グレープフルーツ種子抽出物と炭酸水素ナトリウムと、アルケミラウルガリスの葉の抽出物との組み合わせを除くことが特定されたため、新規性は否定されないし、「参考資料2に明記されているように、炭酸水素ナトリウムだけでウイルス不活性化効力が増強することは公知であって、従来から慣用されている技術的事項である」からといって、「アルケミラウルガリスの葉の抽出物との組み合わせを除くことが容易に想到し得る」と解される根拠を見いだすことができない。
よって、該主張を採用することができない。

キ 訂正発明14〜16について
申立人2は、「訂正後の請求項14〜16については、それぞれ、上記(1)〜(3)で述べた理由により、新規性進歩性を有さないものである。」(注:「上記(1)〜(3)」とは、上記イ〜エにおける申立人2の主張。)と主張する。
しかし、上記イ〜エで述べたとおりであるから、該主張を採用することができない。

ク 訂正発明17について
(ア)申立人2は、「訂正前の請求項2に対しては取消理由通知書において取消理由が通知されていた。訂正後の請求項17の発明は単純にウイルス不活性化剤組成物にウイルス不活性化効力増強成分を添加することを特定しただけであり、訂正前の請求項2の発明と比較したとき、両者の間に実質的な相違はない。よって、訂正前の請求項2に生じていた取消理由と同じ取消理由が訂正後の請求項17の発明に対しても通知されるべきである。
仮に、「グレープフルーツ種子抽出物と水を含有するウイルス不活性化剤組成物」を用意するステップと、「ウイルス不活性化効力増強成分を添加する」というステップ、という複数のステップを含むことに特徴があると解釈されたとしても、何らかの組成物の効力を増強させようとする際に、当該組成物に対して別の効力増強成分を添加するというステップは当然に行われているステップであり、何ら困難性はない。また、ウイルス不活性化剤組成物にウイルス不活性化効力増強成分を添加したからといって格別な作用効果を生じるものでもなく…」と主張する。
しかし、「訂正後の請求項17の発明は…訂正前の請求項2の発明と比較したとき、両者の間に実質的な相違はない。」と主張するが、訂正前の請求項2に係る発明は「組成物」という物の発明であり、刊行物2に記載された発明とは物として区別がつかないのに対し、本件訂正発明17は「ウイルス不活性化効力増強方法」であり、刊行物2にはウイルス不活性化の効力を増強することは記載されていない。

(イ)なお、申立人2は、異議申立書において主張しない新たなものである、「出願当初の明細書には、グレープフルーツ種子抽出物と水とを含有するウイルス不活性化剤組成物に、ウイルス不活性化効力増強成分としてクエン酸塩等を添加するというステップに関して一切記載がないので、訂正後の請求項17の発明はサポート要件違反である。」と主張する。
しかし、「出願当初の明細書には、グレープフルーツ種子抽出物と水とを含有するウイルス不活性化剤組成物に、ウイルス不活性化効力増強成分としてクエン酸塩等を添加するというステップに関して一切」記載がなくとも、本件訂正発明17は、該発明に係るステップの順番によって本件訂正発明の課題である「…ウイルス不活性化成分として銀系抗菌剤を含まない…ウイルス不活性化剤組成物、および…ウイルス不活性化効力増強方法を提供する」(本件【0012】)ことを解決したという特別な記載はなく、当該ステップでも本件訂正発明の課題を解決できるものと理解できる。

(ウ)よって、該主張を採用することができない。

(8)申立人2及び申立人3の意見書における新たな主張についての検討
申立人2の意見書における主張のうち「3 意見の内容」の(21)、及び、申立人3の意見書における主張は、異議申立書において主張しない新たなものであるが、これらにつき、以下検討する。

ア 申立人2は、「(21) 2種以上の塩の組み合わせについて」において、「訂正後のいくつかの請求項では、2種以上の塩の組み合わせを特定している。ところが、2種以上の塩の組み合わせに関する具体的な記載については、出願当初明細書には一切記載されていないし、2種以上の塩の組み合わせが可能であることの示唆もなされていない。したがって、2種以上の塩の組み合わせを特定している請求項は、サポート要件違反である。」と主張する。
しかし、本件【0013】には「上記目的を達成するために本発明は、…(B)殺菌効力増強成分としてクエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、炭酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩から選ばれた1種又は2種以上と、を水に混合してなる」と記載されており、2種以上の塩の組み合わせでも本件訂正発明の課題「…ウイルス不活性化成分として銀系抗菌剤を含まない…ウイルス不活性化剤組成物、および…ウイルス不活性化効力増強方法を提供する」(本件【0012】)ことを解決できるものと理解できる。
よって、該主張を採用することができない。

イ 申立人3は、「グレープフルーツ種子抽出物とクエン酸3Na・2水和物との組み合わせについて、pHが6.38で除菌効果が十分あるとしても、さらにpHが低くなった場合には、本件特許発明の効果が得られると判断できません。
したがって、訂正後の本件特許発明1、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、17、18、19、21、22は、訂正によってサポート要件を満たさなくなっていると思料します。」と主張する。
しかし、「さらにpHが低くなった場合には、本件特許発明の効果が得られると判断でき(ない)」とする根拠を見いだすことができない。
よって、該主張を採用することができない。

3 まとめ
以上のとおりであるから、取消理由通知で通知した取消理由には、いずれも理由がない。

第5 異議申立ての理由について
1 申立人の異議申立ての理由の概要
(1)申立人1の異議申立ての理由は、概要以下のとおりである。
<証拠方法>
甲第1号証:特許第6704099号公報(本件特許公報)
甲第2号証:特願2020−506286号(本件)の令和2年3月2日
付け拒絶理由通知書
甲第3号証:特願2020−506286号(本件)の令和2年3月19日
の電話応対記録
甲第4号証:特願2020−506286号(本件)の令和2年3月26日
提出の意見書
甲第5号証:申立人1が衛生微生物研究センターに依頼して作成された令和
2年09月23日付け試験検査報告書
甲第6号証:有限会社エービーシーテクノのサイト「抗菌剤・グレープ
フルーツ種子抽出物製剤「D−100」、http://www.abc
techno.com/d100/、印刷日令和2年11月8日
甲第7号証:米国特許出願公開第2007/0148262号明細書
甲第8号証−1:大王製紙株式会社の「エリエール」ブランドの商品情報の
サイト、「エリエール 除菌できるウェットティシュー(ノン
アルコールタイプ)携帯用」、https://www.elleair.jp/
products/wet/disinfectant_virus_non_alcohol_portable.php
印刷日令和2年8月21日
甲第8号証−2:PR TIMESのサイト、「『エリエール 除菌できる
アルコールタオル・ウェットティシュー』が除菌ウェット
ティシューで初めて第7回マザーズセレクション大賞を受賞
!!」、https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000122.
000001310.html、掲載日平成27年12月1日
甲第9号証:アサマパートナーニュース、アサマ化成株式会社、
2000年、第75号、p.1−4
甲第10号証:内藤茂三、「食品工場の微生物制御への有機酸の利用技術」
一般財団法人 食品分析開発センターSUNATECのメール
マガジン、http://www.mac.or.jp/mail/120401/03.shtml、
掲載日平成24年4月
甲第11号証:大王製紙株式会社のニュースリリースのサイト、「〜医療の
現場で認められた瞬間除菌力!!〜『エリエール 除菌できる
アルコールタオル』リニューアル 新登場」、https://www.
daio-paper.co.jp/wp-content/uploads/news/2005/n170318b.
html、掲載日平成17年3月18日
甲第12号証:大王製紙株式会社のニュースリリース、「−何度も開け閉め
したくなる!業界初*、新発想のスライドオープン容器−
〜フタの開閉からシート取り出しまで片手でOK!〜
「エリエール 除菌できるウェットティシュー スライド
ボックス<ノンアルコールタイプ>」、平成24年8月21日
甲第13号証:熊野浩太郎、日本臨床免疫学会会誌、31巻6号
(2008)、448〜453頁
甲第14号証:「カガクなキッチン」のサイト、「クエン酸の化学式・
構造式や性質を詳しく解説」、https://kagakucook.com/
citric-acid-properties/、改訂日令和2年11月21日
(以下、申立人1の甲第1〜14号証を「甲A1」〜「甲A14」という。)

<申立人1の異議申立ての理由>
ア 申立理由A1
甲5を参照すると、本件請求項1〜17に係る発明の場合、明細書の記載どおりに実施をしても、殺菌効力増強成分やウイルス不活性化効力増強成分として働かないのであるから、実施可能要件に違反し、本件請求項1〜17に係る発明の特許は取り消すべきである。

イ 申立理由A2
殺菌効力増強成分やウイルス不活性化効力増強成分として働かない以上、課題は解決できず、本件請求項1〜17に係る発明は発明の詳細な説明に記載されたものであるとはいえない。したがって、サポート要件に違反し、本件請求項1〜17に係る発明の特許は取り消すべきである。

ウ 申立理由A3
本件請求項1〜17に係る発明は、甲A7に記載された発明であるか、甲A7に記載された発明及び甲A8−1、A8−2、A9、A10に記載された技術的事項から当業者が容易に想到できるから、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反し、本件請求項1〜17に係る発明の特許は取り消すべきである。

エ 申立理由A4
本件請求項1〜17に係る発明は、甲A8−1及びA8−2で特定される公然実施された発明であるか、甲A8−1及びA8−2発明に記載された発明であるか、甲A8−1及びA8−2発明に記載された発明から当業者が容易に想到できるから、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反し、本件請求項1〜17に係る発明の特許は取り消すべきである。

(2)申立人2の異議申立ての理由は、概要以下のとおりである。
<証拠方法>
甲第1号証:韓国公開特許第10−2004−0083742号公報
及び翻訳文
甲第2号証:米国特許出願公開第2015/0359835号明細書
及び部分翻訳文
甲第3号証:特開2009−292736号公報
甲第4号証:中国特許出願公開第104824056号明細書及び
部分翻訳文
甲第5号証:中国特許出願公開第108339017号明細書及び
部分翻訳文
(以下、申立人2の甲第1〜5号証を「甲B1」〜「甲B5」という。)

<申立人2の異議申立ての理由>
ア 申立理由B1
本件請求項1、4〜6、11、13、16に係る発明は、甲B1に記載された発明であるか、甲B1に記載された発明から当業者が容易に想到できるから、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反し、係る発明の特許は取り消すべきである。

イ 申立理由B2
本件請求項2、3、7〜10、12、14、15、17に係る発明は、甲B2に記載された発明、あるいは、甲B2に記載された発明及び甲B3〜B5に記載された技術的事項から当業者が容易に想到できるから、特許法第29条第2項の規定に違反し、係る発明の特許は取り消すべきである。

ウ 申立理由B3
本件請求項2、3、7〜10、12、14、15、17に係る発明は、甲B3に記載された発明、あるいは、甲B3に記載された発明及び甲B2、B4、B5に記載された技術的事項から当業者が容易に想到できるから、特許法第29条第2項の規定に違反し、係る発明の特許は取り消すべきである。

エ 申立理由B4
本件請求項2、3、7〜10、12、14、15、17に係る発明は、甲B4に記載された発明、あるいは、甲B4に記載された発明及び甲B2、B3、B5に記載された技術的事項から当業者が容易に想到できるから、特許法第29条第2項の規定に違反し、係る発明の特許は取り消すべきである。

オ 申立理由B5
本件請求項2、3、7〜10、12、14、15、17に係る発明は、甲B5に記載された発明、あるいは、甲B5に記載された発明及び甲B2〜B4に記載された技術的事項から当業者が容易に想到できるから、特許法第29条第2項の規定に違反し、係る発明の特許は取り消すべきである。

(3)申立人3の異議申立ての理由は、概要以下のとおりである。
<証拠方法>
甲第1号証:古畑勝則他、麻布大学雑誌、第9・10巻、2004年、
154〜157頁
甲第2号証:特開2005−320301号公報
甲第3号証:特開2009−292736号公報
甲第4号証:株式会社順皇堂の製品案内のサイト、「重曹のちから」、
http://junkodo.co.jp/portfolio/jyusoupower/、
発表日令和元年6月

<申立人3の異議申立ての理由>
ア 申立理由C1
本件請求項1、3〜6、11、13、16に係る発明は、甲C1に記載された発明であるか、甲C1に記載された発明から当業者が容易に想到できるから、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反し、係る発明の特許は取り消すべきである。

イ 申立理由C2
本件請求項1、3〜6、11、13、15、16に係る発明は、甲C2に記載された発明であるか、甲C2に記載された発明から当業者が容易に想到できるから、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反し、係る発明の特許は取り消すべきである。

ウ 申立理由C3
本件請求項1〜3、7〜10、12、14、15、17に係る発明は、甲C3に記載された発明から当業者が容易に想到できるから、特許法第29条第2項の規定に違反し、本件発明に係る発明の特許は取り消すべきである。

エ 申立理由C4
本件請求項1に係る発明は、甲C4に記載された発明であるから、特許法第29条第1項の規定に違反し、係る発明の特許は取り消すべきである。

2 検討
上記第4 2(6)で述べたとおり、申立人1の意見書における主張のうち、「第2」における主張は、下記(1)及び(2)と同旨であるから、ここで併せて検討する。

(1)申立理由A1
ア 申立人1は、異議申立書において、甲A5を示しつつ、「本件特許発明の場合、明細書の記載どおりに実施をしても、殺菌効力増強成分やウイルス不活性化効力増強成分として働かないのであるから、「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる」とはいえず、実施可能要件に違反し、本件特許発明1〜17は全て無効であるというべきである。」(申立1の異議申立書46頁下から4行〜47頁1行)と主張する。

イ また、申立人1は、意見書において、「しかしながら、異議申立書にも記載しているとおり、異議申立人が外部機関(衛生微生物研究センター)に依頼して甲4の意見書記載の実験を行ったところ、甲4のような結果にならなかった。
甲4のように特許出願人という利害関係を有する者が、甲3の応対記録からすればこのような実験結果を提出すれば特許される」との思惑に基づいて自社内で行った実験結果と、異議申立人が第三者機関に依頼して取得した実験結果のどちらが信用できるかは、火を見るより明らかである。まして、特許権者は自らの実験結果が正しいことを証明する実験結果(外部機関に依頼して客観性が担保されているもの)を提出しさえしていないのである。
したがって、たとえ特許権者が訂正請求を行ったとしても、「殺菌効力増強成分及びウイルス不活性化効力増強成分として有機酸塩を用いる本件特許発明が特許された理由」そのものが根底から崩れている事実に変わりはない。」と主張する。

ウ しかし、本件訂正発明は、グレープフルーツ種子抽出物のみでは菌を抑えられないが、「殺菌効力増強成分」や「ウイルス不活性化効力増強成分」を入れると菌を抑えられるというデータを出している。
甲A5は、グレープフルーツ種子抽出物で菌を抑えられなくて、「殺菌効力増強成分」や「ウイルス不活性化効力増強成分」を入れてもやはり大して抑えられないというデータを出していない。つまり、グレープフルーツ種子抽出物で菌を十分抑えられる条件で実施しているので、「殺菌効力増強成分」や「ウイルス不活性化効力増強成分」の効果を否定することになっていない。
そうすると、甲A5によっては、本件訂正発明の「本件特許発明の場合、明細書の記載どおりに実施をしても、殺菌効力増強成分やウイルス不活性化効力増強成分として働かない」ものと認識することはできず、「「殺菌効力増強成分及びウイルス不活性化効力増強成分として有機酸塩を用いる本件特許発明が特許された理由」そのものが根底から崩れている事実に変わりはない。」との主張には根拠がない。

エ そして、本件発明の詳細な説明は、その実施例から、本件訂正発明による「殺菌効力増強成分」や「ウイルス不活性化効力増強成分」の効果が確認されたと理解することができる。

オ したがって、本件発明の詳細な説明は、当業者が本件訂正発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものといえるから、申立人1が主張する申立理由A1には理由がない。

(2)申立理由A2
上記(1)で述べたとおりであるから、本件訂正発明は、殺菌効力増強成分やウイルス不活性化効力増強成分として働くことが理解でき、本件発明の詳細な説明に記載されたものと確認できる。
したがって、本件訂正発明は、本件発明の詳細な説明に記載されたものといえるから、申立人1が主張する申立理由A2には理由がない。

(3)申立理由A3
ア 甲A7に記載された発明(甲A7の記載事項は日本語訳で示す。)
甲A7には、「リンゴ酸とグレープフルーツ種子抽出物を含む殺菌剤及びウイルス不活性化剤組成物」(請求項1)、「プラム抽出物、クエン酸及びキトサンの中から選ばれた少なくとも1種類の成分が含まれる請求項1に記載の殺菌剤及びウイルス不活性化剤組成物」(請求項3)、「有効な量の請求項1に記載の殺菌剤及びウイルス不活性化剤組成物を含ませることによって細菌ないしウイルスが存在することによって感染しやすい飲料水を消毒する方法」が記載され、実施例として、グレープフルーツ種子抽出物とリンゴ酸を水に混合してなる抗微生物組成物(実施例1)、これを用いた殺菌作用やウイルス不活性化作用の試験(実施例2〜5)が記載されている。
したがって、甲A7には、以下の発明が記載されているといえる。

甲A7発明:「グレープフルーツ種子抽出物と、リンゴ酸と、任意にクエン酸と、を水に混合してなる殺菌剤組成物又はウイルス不活性化剤組成物」

イ 本件訂正発明1〜5及び14〜17について
本件訂正発明1〜5及び14〜17と甲A7発明との相違点について検討する。
上記第4で検討したことに鑑みると、本件訂正発明1〜5及び14〜17は「(B)殺菌効力増強成分」あるいは「(B)ウイルス不活性化効力増強成分」が用いられ、いずれも無機酸か有機酸の塩であるのに対し、甲A7発明は「リンゴ酸」、更には「クエン酸」が混合され、これが「殺菌効力増強成分」あるいは「ウイルス不活性化効力増強成分」となるものであるか不明な点(「相違点A7」という。)で少なくとも相違するといえる。
相違点A7について検討する。
甲A7には、「リンゴ酸」や「クエン酸」しか開示されておらず、これらの塩が甲A7発明において用いられると解しうる記載は存在しない。
このため、本件訂正発明1〜5及び14〜17は甲A7に記載された発明とはいえない。
また、甲A7には、甲A7発明において、「リンゴ酸」や「クエン酸」の塩を用いうること、該塩を「殺菌効力増強成分」あるいは「ウイルス不活性化効力増強成分」とすること、を想起させる記載ないし示唆は存在しない。
このため、本件訂正発明1〜5及び14〜17は甲A7に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 本件訂正発明6〜13及び18〜22について
本件訂正発明6〜13は本件訂正発明1〜5のいずれかを、本件訂正発明18〜22は本件訂正発明14〜17のいずれかを、それぞれ更に限定するものである。したがって、本件訂正発明1〜5及び14〜17は甲A7に記載された発明とはいえず、また、本件訂正発明1〜5及び14〜17は甲A7に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないことに鑑みると、本件訂正発明6〜13及び18〜22も甲A7に記載された発明とはいえず、また、本件訂正発明6〜13及び18〜22も甲A7に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ まとめ
したがって、申立人1が主張する申立理由A3には理由がない。

(4)申立理由A4
ア 甲A8−1及び甲A8−2について
(ア)申立人1は、「甲8の1及び甲8の2で特定される、本件特許発明の優先日以前に販売されていた甲8発明(エリエール除菌できるウェットティッシュノンアルコールタイプ携帯用)によって無効にすべきものである」と主張する。
このため、甲A8−1及び甲8−2により、「甲8発明(エリエール除菌できるウェットティッシュノンアルコールタイプ携帯用)」が、本件訂正発明の優先日以前に販売されていたか、すなわち、本件訂正発明の優先日以前に公然実施されていたと解することができるか、検討する。

(イ)甲A8−1に係る「エリエール除菌できるウェットティッシュノンアルコールタイプ携帯用」は、甲A8−1のいずれの記載からも、これが本件訂正発明の優先日以前に販売されていたと解することはできない。そして、甲A8−2には、「エリエール除菌できるウェットティッシュノンアルコールタイプ携帯用」なる記載は存在せず、甲A8−1に記載されたものと同一のパッケージも存在しない。
このため、甲A8−1と甲A8−2において紹介された商品は同一のものであると解することはできない。

(ウ)そうすると、甲A8−2が「2015年12月1日」に公開された情報であるとしても、甲A8−1に係る「エリエール除菌できるウェットティッシュノンアルコールタイプ携帯用」は、この公開された情報により「2015年12月1日」の時点で公然実施されていたと解することはできず、他に、これが本件訂正発明の優先日以前に公然実施されていたと解しうるものは見出せない。

(エ)そして、申立人1が主張する「甲8発明(エリエール除菌できるウェットティッシュノンアルコールタイプ携帯用)」は、本件訂正発明の優先日以前に公然実施されていたと解することができないことに鑑みると、甲A8−1に記載された如何なる発明も本件訂正発明の優先日以前に公知であったということはできない。

(オ)よって、本件訂正発明は、甲A8−1及び甲A8−2からは、特許法第29条第1項第2号又は第3号のいずれにも該当するとはいえず、同条第1項の規定に違反して特許されたものではない。また、同条第2項の規定に違反して特許されたものでもないのは明らかである。

イ まとめ
したがって、申立人1が主張する申立理由A4には理由がない。

(5)申立理由B1及びB2
上記第4 2(1)及び(2)と同旨により、申立人2が主張する申立理由B1及びB2には理由がない。

(6)申立理由B3
ア 甲B3に記載された発明
(ア)甲B3の特許請求の範囲には、以下の記載がある。
「【請求項1】
アルカリ電解水を含有すると共に、その全体のpHを8〜14としたことを特徴とする抗ノロウイルス組成物。
【請求項2】
グレープフルーツ種子抽出物を含有すると共に、このグレープフルーツ種子抽出物の含有量を0.5重量%以上10.0%重量以下としたことを特徴とする請求項1記載の抗ノロウイルス組成物。」
したがって、甲B3には、以下の発明が記載されているといえる。

甲B3発明:「グレープフルーツ種子抽出物とアルカリ電解水を含有すると共に、このグレープフルーツ種子抽出物の含有量を0.5重量%以上10.0%重量以下とし、その全体のpHを8〜14としたことを特徴とする抗ノロウイルス組成物」

そして、甲B3発明の下記の構成については、上記第4で検討したことと同様、次のことがいえる。
a 甲B3発明の「全体のpHを8〜14としたことを特徴とする抗ノロウイルス組成物」は、本件訂正発明2の「ウイルス不活性化剤組成物」に相当する。
b 甲B3発明のグレープフルーツ種子抽出物は、当業者の技術常識(例えば、甲B1の第2頁17〜19行、翻訳文【0004】参照)からみて、「殺菌成分」として含まれていると理解できるから、引用発明2−1の「グレープフルーツ種子抽出物」は、本件訂正発明1の「(A)殺菌成分」としての「グレープフルーツ種子抽出物」に相当する。
c 甲B3発明は、「アルカリ電解水」も含むから、「(A)殺菌成分」としての「グレープフルーツ種子抽出物」を水に混合してなるウイルス不活性化剤組成物であるということができ、そうすると、甲B3発明の組成物は、本件訂正発明1の「(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物」「を水に混合してなるウイルス不活性化剤組成物」に相当するといえる。

イ 本件訂正発明5及び17について
本件訂正発明5及び17と甲B3発明との相違点について検討する。
上記第4で検討したことに鑑みると、本件訂正発明5及び17は「(B)ウイルス不活性化効力増強成分」が用いられ、いずれも無機酸か有機酸の塩であるのに対し、甲B3発明は「アルカリ電解水」が用いられ、これが「ウイルス不活性化効力増強成分」としての作用を有するのか不明な点(「相違点B3」という。)で少なくとも相違するといえる。
相違点B3について検討する。
甲B3のみならず他の甲各号証には、甲B3発明において、本件訂正発明5や17に規定される無機酸や有機酸の塩を用いうること、該塩を「ウイルス不活性化効力増強成分」とすること、を想起させる記載ないし示唆は存在しない。
このため、本件訂正発明5及び17は甲B3に記載された発明及び他の甲各号証から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 本件訂正発明6、10〜13、20、22について
本件訂正発明6、10〜13は本件訂正発明5を、本件訂正発明18、20、22は本件訂正発明17を、それぞれ更に限定するものである。したがって、本件訂正発明5及び17は甲B3に記載された発明及び他の甲各号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないことに鑑みると、本件訂正発明6、10〜13、20、22も甲B3に記載された発明及び他の甲各号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ まとめ
したがって、申立人2が主張する申立理由B3には理由がない。

(7)申立理由B4
ア 甲B4に記載された発明
(ア)甲B4には、以下の記載がある。(日本語訳で示す。)
「1.以下の原料から重量部で調製される抗菌性ベッドシーツ消毒液:炭酸水素ナトリウム3〜5部、大黄2〜4部、スベリヒユ3〜6部、アルキルアルコールアミド1〜2部、カルボキシメチルセルロースナトリウム2.5〜4.6部、クエン酸塩1.2〜1.9部、ドクダミ6〜12部、グレープフルーツ抽出物4〜8部、消毒剤3〜7部、ポリエチレングリコール3〜6部、リゾチーム15〜25部、蒸留水20〜40部、イソプロピルアルコール4〜8部、ホソバヤマジソ2.5〜4.5部、及び蛇床子5〜7部。」(請求の範囲)
「[0002] 「すべての人は、人生の1/3をベッドで過ごす。シーツが汚れていると、一連の健康的な危険が潜在的に生じ得る。」シーツはそんなに汚れていないように見えるが、何千もの細菌・ウイルスが広がっているため、シーツを交換したくない場合は、喘息、鼻炎、湿疹などの病気に簡単に罹り得ると、ロンドンの手術アレルギー専門医のアダム・フォックス博士は強調している。多くの家族は3、4週間に1回洗うだけであり、若い男性はシートを洗う習慣がないため、間違いなく健康のために大きな潜在的危険を抱えている。一般の人々はシート用の粉末洗剤や液体洗剤を使っており、清潔性については問題ないが殺菌性に欠け、人体への侵入を避けることはできない。」
「[0003] 従来技術の課題について、本発明で解決すべき課題は、一種の抗菌性ベッドシーツ消毒液を提供し、良好な殺菌性及び消毒性を有し、刺激臭がなく、人体及び環境に影響を及ぼさないことである。
[0004] 従来技術の問題を解決するために、本発明によって提供される解決手段は、一種の抗菌性シート消毒液であり、それは、以下の重量部の原料からなる。
炭酸水素ナトリウム3〜5部、大黄2〜4部、スベリヒュ3〜6部、アルキルアルコールアミド1〜2部、カルボキシメチルセルロースナトリウム2.5〜4.6部、クエン酸塩1.2〜1.9部、ドクダミ6〜12部、グレープフルーツ抽出物4〜8部、消毒剤3〜7部、ポリエチレングリコール3〜6部、リゾチーム15〜25部、蒸留水20〜40部、イソプロピルアルコール4〜8部、ホソバヤマジソ2.5〜4.5部、及び蛇床子5〜7部。
[0005] 本発明は、以下のような有益な効果を有する:本発明の抗菌性シーツ消毒液は、良好な殺菌特性及び消毒性を有し、刺激臭がなく、人体及び環境に影響を及ぼさない。」
「[0006] 実施例1
一種の抗菌性シーツ消毒液は、以下の重量部の原料で構成される:
炭酸水素ナトリウム3部、大黄2部、スベリヒユ3部、アルキルアルコールアミド1部、カルボキシメチルセルロースナトリウム2.5部、クエン酸塩1.2部、ドクダミ6部、グレープフルーツ抽出物4部、消毒剤3部、ポリエチレングリコール3部、リゾチーム15部、蒸留水20部、イソプロピルアルコール4部、ホソバヤマジソ2.5部、及び蛇床子5部。
[0007] 実施例2
一種の抗菌性シーツ消毒液は、以下の重量部の原料で構成される:
炭酸水素ナトリウム5部、大黄4部、スベリヒユ6部、アルキルアルコールアミド2部、カルボキシメチルセルロースナトリウム4.6部、クエン酸塩1.9部、ドクダミ12部、グレープフルーツ抽出物8部、消毒剤7部、ポリエチレングリコール6部、リゾチーム25部、蒸留水40部、イソプロピルアルコール8部、ホソバヤマジソ4.5部、及び蛇床子7部。」
したがって、甲B4には、以下の発明が記載されているといえる。

甲B4発明:「グレープフルーツ抽出物を含み、炭酸水素ナトリウムを含み、水を含んでいる抗菌性ベッドシーツ消毒液。」

イ 本件訂正発明5、6、10〜13、17、20、22について
甲B4発明の「グレープフルーツ抽出物」は、種子の抽出物であることが明らかでないから、「グレープフルーツ種子抽出物」に相当するとはいえない。
そうすると、本件訂正発明5、6、10〜13、17、20、22と甲B4発明とは、本件訂正発明5、6、10〜13、17、20、22は「グレープフルーツ種子抽出物」を用いるのに対し、甲B4発明は「グレープフルーツ抽出物」を用いる点で少なくとも相違するといえる。
そして、甲B4のみならず、他の甲各号証を参照しても、甲B4発明において、「グレープフルーツ抽出物」の代わりに、あるいは、追加して「グレープフルーツ種子抽出物」を用いうることを想起させる記載ないし示唆は存在しない。
このため、本件訂正発明5、6、10〜13、17、20、22は甲B4に記載された発明及び他の甲各号証から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ まとめ
したがって、申立人2が主張する申立理由B4には理由がない。

(8)申立理由B5
ア 甲B5に記載された発明
(ア)甲B5には、以下の記載がある。(日本語訳で示す。)
「本発明は、キトサン及びグレープフルーツ種子抽出物を有効成分として含む抗ウイルス組成物に関する。より具体的には、本発明は、キトサン及びグレープフルーツ種子抽出物を有効成分として含む抗ウイルス組成物、及びその組成物を含む消毒組成物に関する。前記本発明の抗ウイルス組成物及び本発明の抗ウイルス組成物を含む消毒組成物は、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス及びロタウイルスに対して著しく優れた活性阻害効果を有することが初めて確認された。細胞毒性がなく、人体に無害であり、ウイルス抑制効果が非常に高いため、産業利用の可能性がある。」(要約)
「1.キトサン含有およびグレープフルーツ種子抽出物が有効成分とする抗ウイルス用組成物

11.請求項1〜7の任意の請求項に係る組成物を用いた消毒用組成物
12.請求項11に係る組成物に基づいた消毒洗浄剤、ボディソープ、口内洗浄液、ウェットティッシュ、洗濯石鹸、ハンドソープ、加湿装置充填材、マスク、軟膏あるいはフィルタ充填材の組み合わせた群から選択されるいずれか一種」
「[0040] 投与経路によれば、本発明の医薬組成物は、経口投与又は非経口投与のための投薬形態に処方することができる。処方する場合、1つ又は複数のバッファー(生理食塩水やPBSなど)、抗酸化剤、静菌剤、キレート剤(EDTAやグルタチオンなど)、充填剤、増量剤、結合剤、補助剤(水酸化アルミニウムなど)、懸濁剤、増粘剤、湿潤剤、崩壊剤又は界面活性剤、希釈剤又は賦形剤などを用いて製造することができる。」
「[0080] <実施例1>本発明の組成物の調製
[0081] この実施形態では、キトサン、アルコール、及びグレープフルーツ種子抽出物を使用して、天然の抗ウイルス性消毒洗浄剤を調製する。この例では、錦湖化学(株)(韓国慶尚北道蔚珍郡)によって製造されたキトサン粉末が使用された。
[0082] 40gのキトサン(DD:98.79%、17.93cP)及び100gのクエン酸を、キトサンが完全に溶解するまで、40〜50℃で1Lの蒸留水に溶解した。グレープフルーツ種子抽出物(DF−100、Food Additives Bank Co.,Ltd.、韓国)2gを加え、200メッシュのふるいでろ過した。約10Lの精製水を最終容量11,400mLまで加え、よく混合した。最後に、8,600mLの95%アルコール(Woori Ethanol Supplies Company、韓国)を追加して混合する。
[0083] 表2に、本発明の組成物の成分含有量(%)を示す。
[0084] 表2
[0085]
組成物 含有量
キトサン 0.2%
アルコール 40%
水 59.29%
クエン酸 0.5%
グレープフルーツ種子抽出物 0.01%」
したがって、甲B5には、以下の発明が記載されているといえる。

甲B5発明:「グレープフルーツ種子抽出物を含み、バッファーを含み、蒸留水を含む、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス及びロタウイルスに対して著しく優れた活性阻害効果を有する抗ウイルス組成物。」

イ 本件訂正発明5、6、10〜13,17、20、22について
本件訂正発明5、6、10〜13,17、20、22と甲B5発明とを対比する。
本件訂正発明5、6、10〜13,17、20、22は、「(B)ウイルス不活性化効力増強成分」として、各請求項に例示される無機酸や有機酸の塩、すなわち、
「クエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、炭酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩から選ばれた1種又は2種以上」(本件訂正発明5、17)
「クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、炭酸水素ナトリウムから選ばれた1種又は2種以上」(本件訂正発明10)
「炭酸水素ナトリウム」(本件訂正発明20)
を用いるのに対し、甲B5発明は単に「バッファー」すなわち緩衝剤を用いる点で少なくとも相違するといえる。
そして、甲B5のみならず、他の甲各号証を参照しても、甲B5発明において、「バッファー」として上記各々の無機酸や有機酸の塩を用いうることを想起させる記載ないし示唆は存在しない。
このため、本件訂正発明5、6、10〜13,17、20、22は甲B5に記載された発明及び他の甲各号証から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ まとめ
したがって、申立人2が主張する申立理由B5には理由がない。

(9)申立理由C1及びC2
上記第4 2(3)〜(5)と同旨、更には、訂正前の請求項11、13、15、16に係る発明すなわち本件訂正発明14〜16、18、20、21については、「殺菌効力増強方法」あるいは「ウイルス不活性化効力増強方法」に係るものであり、甲各号証には殺菌効力やウイルス不活性化効力を増強することについての記載ないし示唆は存在しないことから、本件訂正発明14〜16、18、20、21が甲C1又は甲C2に記載された発明、あるいは、甲C1又は甲C2に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないことから、申立人3が主張する申立理由C1及びC2には理由がない。

(10)申立理由C3
甲C3は甲B3と同一である。このため、上記(6)と同旨により、申立人3が主張する申立理由C3には理由がない。

(11)申立理由C4
ア 甲C4について
(ア)甲C4には、以下の記載がある。
「台所・住宅用洗浄剤です。合成界面活性剤無添加、除菌、消臭に。食器洗い、まな板の除菌、冷蔵庫内など洗剤を避けたい箇所の清掃、玩具の洗浄、消臭、壁・床・OA機器等清拭などにご利用になれます。

そのまま使えるスプレータイプのボトルと、詰め替え用があります。

[液性]弱アルカリ性
[成分]イオン水、重曹、炭酸ソーダ、グレープフルーツシードエキス

・発表:2019/6」

(イ)上記記載のうち、「発表:2019/6」からみて、甲C4は令和元年6月に発表されたものと認められる。そうすると、甲C4は本件訂正発明の優先日以前に公知であったということはできない。

(ウ)よって、本件訂正発明は、甲C4からは、特許法第29条第1項第3号のいずれにも該当するとはいえず、同条第1項の規定に違反して特許されたものではない。

イ まとめ
したがって、申立人3が主張する申立理由C4には理由がない。

3 まとめ
以上のことから、申立人が主張する申立ての理由にはいずれも理由がなく、これらの申立の理由によっては本件訂正発明に係る特許を取り消すことはできない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、異議申立ての理由及び当審からの取消理由によっては、請求項1〜22に係る発明の特許を取り消すことはできない。また、他に当該特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(B)殺菌効力増強成分としてクエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、亜硫酸塩から選ばれた1種又は2種以上と、を水に混合してなる殺菌剤組成物(ただし、グレープフルーツ種子抽出物とベンジルアルコールと安息香酸ナトリウムとの組み合わせ、グレープフルーツ種子抽出物と酢酸ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物と、クエン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウムから選ばれた1種以上との組み合わせを除く)。
【請求項2】
(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(B)殺菌効力増強成分として炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムのいずれかと、を水に混合してなる殺菌剤組成物であって、
前記殺菌組成物中の前記炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムの配合量が0.5質量%以下であり、細菌及び/又はカビ(ただし、ストレプトコッカスミュータンス菌を除く)を殺菌する、殺菌剤組成物(ただし、グレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物と炭酸水素ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物とグリシンと炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムとの組み合わせ、および/又はグレープフルーツ種子抽出物と炭酸水素ナトリウムと、アルケミラウルガリスの葉の抽出物との組み合わせを除く)。
【請求項3】
(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(B)殺菌効力増強成分として炭酸塩(ただし、炭酸塩が炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムのいずれかである場合を除く)と、を水に混合してなる殺菌剤組成物。
【請求項4】
(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(B)殺菌効力増強成分としてリン酸塩と、を水に混合してなる殺菌剤組成物であって、
細菌及び/又はカビ(ただし、レジオネラニューモフィラ菌を除く)を殺菌する、殺菌剤組成物(ただし、グレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物とリン酸一ナトリウムとの組み合わせを除く)。
【請求項5】
(A)ウイルス不活性化成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(B)ウイルス不活性化効力増強成分としてクエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、炭酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩から選ばれた1種又は2種以上と、を水に混合してなるウイルス不活性化剤組成物(ただし、グレープフルーツ種子抽出物と炭酸水素ナトリウムと、アルケミラウルガリスの葉の抽出物との組み合わせを除く)。
【請求項6】
pHが6〜11である請求項1乃至5のいずれかに記載の殺菌またはウイルス不活性化剤組成物。
【請求項7】
前記殺菌効力増強成分が、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、イノシン酸二ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、ソルビン酸カリウム、亜硫酸ナトリウムから選ばれた1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の殺菌剤組成物。
【請求項8】
前記グレープフルーツ種子抽出物の配合量が0.005質量%以上であることを特徴とする請求項1乃至4、6、7のいずれかに記載の殺菌剤組成物。
【請求項9】
前記殺菌効力増強成分の配合量が0.0005質量%以上であることを特徴とする請求項1乃至4、6乃至8のいずれかに記載の殺菌剤組成物。
【請求項10】
前記ウイルス不活性化効力増強成分が、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、炭酸水素ナトリウムから選ばれた1種又は2種以上であることを特徴とする請求項5又は6に記載のウイルス不活性化剤組成物。
【請求項11】
前記グレープフルーツ種子抽出物の配合量が0.1質量%以上であることを特徴とする請求項5、6、10のいずれかに記載のウイルス不活性化剤組成物。
【請求項12】
前記ウイルス不活性化効力増強成分の配合量が0.01質量%以上であることを特徴とする請求項5、6、10、11のいずれかに記載のウイルス不活性化剤組成物。
【請求項13】
請求項5、6、10乃至12のいずれかに記載のウイルス不活性化剤組成物をノンエンベロープウイルスに対して接触させるノンエンベロープウイルスの不活性化方法。
【請求項14】
(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(C)水と、を含有する殺菌剤組成物に、
(B)殺菌効力増強成分としてクエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン醉塩、亜硫酸塩、リン酸塩から選ばれた1種又は2種以上を添加することを特徴とする殺菌効力増強方法(ただし、グレープフルーツ種子抽出物とベンジルアルコールとを含む殺菌剤組成物に、安息香酸ナトリウムを添加する場合、グレープフルーツ種子抽出物を含む殺菌剤組成物に酢酸ナトリウムを添加する場合、および/又はグレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物とを含む殺菌剤組成物に、クエン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、リン酸一ナトリウムから選ばれた1種以上を添加する場合を除く)。
【請求項15】
(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(C)水と、を含有する殺菌剤組成物に、
(B)殺菌効力増強成分として0.5質量%以下の炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムのいずれかを添加することを特徴とする殺菌効力増強方法(ただし、グレープフルーツ種子抽出物と澱粉加水分解物とを含む殺菌剤組成物に炭酸水素ナトリウムを添加する場合、および/又はグレープフルーツ種子抽出物とグリシンとを含む殺菌剤組成物に炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムを添加する場合を除く)。
【請求項16】
(A)殺菌成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(C)水と、を含有する殺菌剤組成物に、
(B)殺菌効力増強成分として炭酸塩(ただし、炭酸塩が炭酸水素ナトリウム又は炭酸ナトリウムのいずれかである場合を除く)を添加することを特徴とする殺菌効力増強方法。
【請求項17】
(A)ウイルス不活性化成分としてグレープフルーツ種子抽出物と、(C)水と、を含有するウイルス不活性化剤組成物に、
(B)ウイルス不活性化効力増強成分としてクエン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、イノシン酸塩、グアニル酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、ソルビン酸塩、炭酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩から選ばれた1種又は2種以上を添加することを特徴とするウイルス不活性化効力増強方法。
【請求項18】
前記殺菌効力増強成分が、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、イノシン酸二ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、ソルビン酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムから選ばれた1種又は2種以上であることを特徴とする請求項14に記載の殺菌効力増強方法。
【請求項19】
前記ウイルス不活性化効力増強成分が、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、炭酸水素ナトリウムから選ばれた1種又は2種以上であることを特徴とする請求項17に記載のウイルス不活性化効力増強方法。
【請求項20】
前記ウイルス不活性化効力増強成分が、炭酸水素ナトリウムであることを特徴とする請求項19に記載のウイルス不活性化効力増強方法。
【請求項21】
前記殺菌効力増強成分の添加量が、前記殺菌剤組成物に対して0.0005質量%以上であることを特徴とする請求項14乃至16、18のいずれかに記載の殺菌効力増強方法。
【請求項22】
前記ウイルス不活性化効力増強成分の添加量が、前記ウイルス不活性化剤組成物に対して0.01質量%以上であることを特徴とする請求項17、19、20のいずれかに記載のウイルス不活性化効力増強方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-01-07 
出願番号 P2020-506286
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (A01N)
P 1 651・ 536- YAA (A01N)
P 1 651・ 113- YAA (A01N)
P 1 651・ 537- YAA (A01N)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 瀬良 聡機
特許庁審判官 大熊 幸治
冨永 保
登録日 2020-05-13 
登録番号 6704099
権利者 大日本除蟲菊株式会社
発明の名称 殺菌またはウイルス不活性化剤組成物、および殺菌またはウイルス不活性化効力増強方法  
代理人 特許業務法人 佐野特許事務所  
代理人 特許業務法人 佐野特許事務所  
代理人 河部 康弘  
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