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審決分類 審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  F25J
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F25J
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  F25J
審判 全部無効 2項進歩性  F25J
審判 全部無効 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  F25J
審判 全部無効 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  F25J
管理番号 1383463
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-05-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2019-01-31 
確定日 2022-01-24 
訂正明細書 true 
事件の表示 上記当事者間の特許第5997105号「空気分離方法」の特許無効審判事件についてされた令和 1年 9月26日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(令和01年(行ケ)第10150号、令和 2年 9月15日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 特許第5997105号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜4〕について訂正することを認める。 特許第5997105号の請求項1〜3に係る発明についての審判の請求は成り立たない。 特許第5997105号の請求項4に係る発明についての審判の請求を却下する。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯等
特許第5997105号(以下、「本件特許」という。)は、エア・ウォーター・クライオプラント株式会社(以下、「被請求人」という。旧商号:神鋼エア・ウォーター・クライオプラント株式会社)が保有するものであり、その請求項1〜4に係る発明について、平成25年6月5日に特許出願され、平成28年9月2日に特許権の設定登録がされたものである。
これに対して、大陽日酸株式会社(以下、「請求人」という。)から、平成31年1月31日に、本件特許の請求項1〜4に係る発明の特許について、本件無効審判の請求がされた。
本件無効審判の経緯(提出書類等)は、概略、以下のとおりである。

平成31年 1月31日 :審判請求書(請求人)
同年 3月25日 :手続補正書(方式)、上申書(証拠説明書添
付)(請求人)
令和 1年 6月 3日 :審判事件答弁書(証拠説明書添付)、訂正請
求書(被請求人)
同年 7月 9日付:審理事項通知
同年 8月 5日 :口頭審理陳述要領書(証拠説明書添付)(請
求人)
同年 8月19日 :口頭審理陳述要領書(被請求人)
同年 9月 2日 :口頭審理
同年 9月 9日付:審理終結通知
同年 9月20日 :上申書(請求人)
同年 9月26日付:請求不成立審決
同年10月 4日 :審決謄本送達
同年11月 1日 :審決取消訴訟の提起(請求人)
令和 2年 9月15日 :審決取消しの判決言渡
同年10月 6日 :訂正請求申立書(被請求人)
同年10月20日付:訂正請求のための期間指定通知
同年10月30日 :訂正請求書(被請求人)
同年11月16日 :上申書(被請求人)
令和 3年 1月 4日 :審判事件弁駁書(請求人)
同年 2月 3日 :証拠説明書(請求人)
同年 3月 2日付:審決の予告
同年 5月11日 :訂正請求書、上申書(被請求人)
同年 6月30日 :審判事件弁駁書(証拠説明書添付)(請求人


第2 当事者の主張
1 請求人の趣旨及び理由
(1)請求人の請求の趣旨は、「特許第5997105号の特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」というものである。

(2)請求人の請求の理由(無効理由及び証拠方法)は、平成31年3月25日付け手続補正書(方式)によって補正された審判請求書(以下、「審判請求書」という。)、平成31年3月25日提出の上申書、令和1年8月5日提出の口頭審理陳述要領書、令和1年9月20日提出の上申書、令和3年1月4日提出の審判事件弁駁書、及び、令和3年6月30日提出の審判事件弁駁書の記載からみて、概略、次のとおり整理することができる。

(無効理由)
ア 無効理由1(新規性欠如に関する無効理由)
訂正前の請求項1、2、4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

イ 無効理由2(進歩性欠如に関する無効理由)
訂正前の請求項1〜4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証〜甲第3号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

ウ 無効理由3(実施可能要件違反の無効理由)
本件明細書の発明の詳細な説明の【表3】〜【表8】では、液体酸素の比率を10%以上80%以下とすることで、空気圧縮機圧力に臨界的意義があるかのように説明しているが、【表3】〜【表8】に示すような液体酸素の抜き出し量としても、同表に記載されたような空気圧縮機の圧力に臨界点を持たない。
すなわち、例えば【表3】において、液体酸素抜き出し量が0%の場合、ガス酸素純度が89%として説明されているが、一方で、段落【0059】において、【表3】は、ガス酸素純度が70%の場合について記載したものと説明されているから、発明の詳細な説明の記載自体が矛盾しており、加えて、液体酸素抜き出し量が0%の場合、ガス酸素純度、及び液体酸素純度がともに、液体酸素抜き出し量が10%〜100%の他の例(ガス酸素純度が70%で、液体酸素純度が89%)と異なっており、これらの間で何を比較しているのか不明である。
このため、【表3】の液体酸素抜き出し量が0%の場合の値は、明らかに信用できないものである。
そこで、【表3】において、液体酸素抜き出し量が0%の場合、液体酸素抜き出し量が10%〜100%の他の例と同じく、ガス酸素純度を70%とすると、空気凝縮容器からの液体酸素抜き出し量の変化に対して、空気圧縮機圧力は一律に増減し、その変化においてなんら臨界点を有しないから、訂正前の請求項1に係る発明において「容器内から取り出す液体酸素及びガス酸素の量比率は、前記液体酸素の比率を10%以上80%以下」としたことによって、空気圧縮機圧力を低減することはできない。
したがって、本件明細書の発明の詳細な説明は、訂正前の請求項1〜4に係る発明を、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものでないので、特許法第36条第4項第1号の規定に違反するから、本件特許は、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。

エ 無効理由4(サポート要件違反の無効理由)
訂正前の請求項1に係る発明は、「前記容器内から取り出す前記液体酸素及び前記ガス酸素の量比率は、前記液体酸素の比率を10%以上80%以下とし」との発明特定事項を有しているが、前記ウに記載したのと同様の理由により、液体酸素の抜き出し量の比率を10%以上80%以下としても、空気圧縮機の圧力に臨界点を持たず、空気圧縮機圧力を低減するという効果を享受することはできない。
よって、訂正前の請求項1〜4に係る発明は、効果を享受しえない範囲にまで権利範囲が及んでいるので、特許法第36条第6項第1号の規定に違反するから、本件特許は、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。

オ 無効理由5(明確性要件違反の無効理由)
訂正前の請求項1の「空気又は昇圧空気」における「空気」が何を指しているのかが明確でない。
よって、訂正前の請求項1〜4に係る発明は不明確であるため、特許法第36条第6項第2号の規定に違反するから、本件特許は、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。

(証拠方法)
甲第1号証:米国特許第5682766号明細書
甲第2号証:特開平10−259989号公報
甲第3号証:国際公開第2012/127148号
甲第4号証:斉藤章他、高炉専用空気分離装置(TO−プラント)の最適
純度の検討、日立評論、1973年、Vol.55、No.7、p.683-688
甲第5号証:米国特許第4006001号明細書
甲第6号証:日立ニュース、日立評論、1973年、Vol.55、No.7、p.756-
762、及び、日立評論1973年7月号のウエブサイト(htt
p://hitachihyoron.com/jp/archive/1970s/1973/07.html)
の印刷物
甲第7号証:米国特許第5396773号明細書
甲第8号証:特開平8−210769号公報
甲第9号証:倉登美男他、低純酸素製造装置、日本酸素技報、1986年、
No.5、p.15-19
甲第10号証:特開平10−2664号公報
甲第11号証:米国特許第5916262号明細書

なお、甲第1号証〜甲第5号証は、平成31年1月31日提出の審判請求書と共に、甲第6号証は、平成31年3月25日提出の上申書と共に、甲第7号証は、令和1年8月5日提出の口頭審理陳述要領書と共に、甲第8号証及び甲第9号証は、令和1年9月20日提出の上申書と共に、甲第10号証は、令和3年1月4日提出の審判事件弁駁書と共に、甲第11号証は、令和3年6月30日提出の審判事件弁駁書と共に、それぞれ提出されたものである。

2 被請求人の反論
被請求人の反論の趣旨は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」というものであり、証拠方法として、以下の乙第1号証が令和1年6月3日提出の審判事件答弁書と共に提出されている。

(証拠方法)
乙第1号証:米国特許第5682766号明細書

第3 訂正請求について
1 訂正請求の内容
被請求人は、本件特許の特許請求の範囲を、令和3年5月11日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めており、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである(下線は訂正箇所として、当審が付した。)。
なお、令和1年6月3日及び令和2年10月30日にされた訂正請求については、特許法第134条の2第6項の規定により取り下げられたものとみなす。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「熱交換部に空気又は昇圧空気を供給する空気供給ライン」と記載されているのを、
「熱交換部に昇圧空気を供給する空気供給ライン」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2〜3も同様に訂正する。)

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に
「前記液体酸素の比率を10%以上80%以下とし」と記載されているのを、
「前記液体酸素の比率を10%以上20%以下とし」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2〜3も同様に訂正する。)

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に
「前記ガス酸素の比率を20%以上90%以下とし」と記載されているのを、
「前記ガス酸素の比率を80%以上90%以下とし」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2〜3も同様に訂正する。)

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1に
「液体酸素供給ライン及びガス酸素供給ラインをさらに備え、」
と記載されているのを、
「液体酸素供給ライン及びガス酸素供給ラインをさらに備え、かつ、前記容器内のガス酸素を前記低圧精留塔に戻す戻しラインを備えず、」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2〜3も同様に訂正する。)

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項1に
「前記液体酸素供給ラインを介して高純度酸素を回収し」と記載されているのを、
「前記液体酸素供給ラインを介してのみ高純度酸素を回収し」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2〜3も同様に訂正する。)

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項1に
「前記ガス酸素供給ラインを介して前記高純度酸素よりも相対的に純度の低い低純度酸素を回収」と記載されているのを、
「前記ガス酸素供給ラインを介してのみ前記高純度酸素よりも相対的に純度の低い低純度酸素を回収」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2〜3も同様に訂正する。)

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項1に
「回収する、
ことを特徴とする空気分離方法。」と記載されているのを、
「回収し、
前記高純度酸素は純度97.7%以下である
ことを特徴とする空気分離方法。」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2〜3も同様に訂正する。)

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項4を削除する。

ここで、訂正前の請求項2〜4は、訂正前の請求項1を引用し、これら請求項1〜4は一群の請求項を構成するものであるから、前記訂正事項1〜8に係る特許請求の範囲についての訂正(本件訂正)は、特許法第134条の2第3項の規定に従い、この一群の請求項〔1〜4〕を訂正の単位として請求されたものである。

2 訂正要件の判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項1は、請求項1に記載された「空気又は昇圧空気を供給する空気供給ライン」における「昇圧空気」と区別された「空気」の意味が不明であったため、これを削除することにより、「空気供給ライン」で「容器内の熱交換部」に送られるのが「昇圧空気」であることを明らかにするものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。

イ 新規事項の有無について
訂正事項1は、前記アのとおり、並列的に記載された発明特定事項の一方を削除するものであり、新たな技術的事項を導入するものでないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものと認められる。
よって、訂正事項1は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1は、前記アのとおり、並列的に記載された発明特定事項の一方を削除するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項2は、請求項1に記載された「液体酸素の比率」を「10%以上80%以下」から「10%以上20%以下」に減縮するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

イ 新規事項の有無について
本件明細書の【0014】には、「液体酸素の比率を10%以上80%以下」とすることが記載されており、訂正後の「液体酸素の比率を10%以上20%」という発明特定事項を包含する内容である。そして、「液体酸素の比率」を「20%以下」と特定することについても、本件明細書の第1実施形態(【0022】〜【0037】)及び実施例3(【0059】〜【0063】)には、液体酸素の抜き出し量を「20%」とすることも記載されているから、訂正事項2は、新たな技術的事項を導入するものであるといえず、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものと認められる。
よって、訂正事項2は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項2は、前記アのとおり、特許請求の範囲を減縮するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項3は、請求項1に記載された「ガス酸素の比率」を「20%以上90%以下」から「80%以上90%以下」に減縮するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

イ 新規事項の有無について
本件明細書の【0014】には、「ガス酸素の比率を20%以上90%以下とする」ことが記載されており、訂正後の「ガス酸素の比率を80%以上90%以下」という発明特定事項を包含する内容である。そして、「ガス酸素の比率」を「80%以上」と特定することについても、本件明細書の第1実施形態(【0022】〜【0037】)には、ガス酸素の抜き出し量を「80%」とすることも記載されているから、訂正事項3は、新たな技術的事項を導入するものであるといえず、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものと認められる。
よって、訂正事項3は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項3は、前記アのとおり、特許請求の範囲を減縮するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項4は、請求項1に記載された「空気分離装置」を「容器内のガス酸素を低圧精留塔に戻す戻しライン」を備えないものに減縮するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

イ 新規事項の有無について
本件明細書の段落【0022】〜【0047】及び本件図面の【図1】〜【図4】には、第1〜第4実施形態の空気分離装置として、「容器内のガス酸素を低圧精留塔に戻す戻しライン」を備えない「空気分離装置」が記載されているから、訂正事項4は、新たな技術的事項を導入するものであるといえず、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものと認められる。
よって、訂正事項4は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項4は、前記アのとおり、特許請求の範囲を減縮するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項5は、請求項1に記載された「液体酸素供給ラインを介して高純度酸素を回収」することを、「液体酸素供給ラインを介してのみ高純度酸素を回収」することに減縮するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

イ 新規事項の有無について
本件明細書の段落【0022】〜【0047】及び本件図面の【図1】〜【図4】には、空気凝縮器容器から高純度酸素を回収する手段として、「液体酸素供給ライン」のみを備えた「空気分離装置」が記載されているから、訂正事項5は、新たな技術的事項を導入するものであるといえず、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものと認められる。
よって、訂正事項5は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項5は、前記アのとおり、特許請求の範囲を減縮するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(6)訂正事項6について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項6は、請求項1に記載された「ガス酸素供給ラインを介して」「低純度酸素を回収」することを、「ガス酸素供給ラインを介してのみ」「低純度酸素を回収」することに減縮するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

イ 新規事項の有無について
本件明細書の段落【0022】〜【0047】及び本件図面の【図1】〜【図4】には、空気凝縮器容器から低純度酸素を回収する手段として、「ガス酸素供給ライン」のみを備えた「空気分離装置」が記載されているから、訂正事項6は、新たな技術的事項を導入するものであるといえず、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものと認められる。
よって、訂正事項6は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項6は、前記アのとおり、特許請求の範囲を減縮するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(7)訂正事項7について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項7は、請求項1に記載された「高純度酸素」の純度を「97.7%以下」に減縮するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

イ 新規事項の有無について
本件明細書の第1実施形態(【0022】〜【0037】)には、高純度酸素(液体酸素)の純度を「97.7%」、「95.8%」、「92.5%」、「88.6%」とすることが記載され、さらに、当該純度が低くなるほど、主凝縮器液体酸素純度、空気圧縮機圧力及び空気圧縮機原単位が低くなる傾向があることや、「空気圧縮機2の吐出圧力を低減することができ、該圧縮機の消費動力の低減が可能となる。よって、空気分離装置1の稼動コストを従来よりも抑えることができる。」(【0036】)ことも記載されていることからして、「純度97.7%以下の高純度酸素」という技術的事項は、本件明細書に記載した事項に対して、新たな技術的事項を導入するものともいえないため、訂正事項7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものと認められる。
よって、訂正事項7は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項7は、前記アのとおり、特許請求の範囲を減縮するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(8)訂正事項8について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項8は、訂正前の請求項4を削除するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

イ 新規事項の有無について
訂正事項8は、訂正前の請求項4を削除するものであり、本件明細書に記載した事項に対して、新たな技術的事項を導入するものでないことは明らかであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものと認められる。
よって、訂正事項8は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項8は、前記アのとおり、特許請求の範囲を減縮するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは明らかであるから、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

3 訂正請求についての結論
以上のとおり、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
したがって、本件訂正の請求は適法にされたものと認められるから、訂正後の請求項〔1〜4〕について訂正することを認める。

第4 本件発明について
1 特許請求の範囲の記載
前記第3のとおり、本件訂正の請求は適法にされたものであるから、本件特許の特許請求の範囲の記載は、以下のとおりである(以下、各請求項に係る発明を「本件発明1」などといい、総じて「本件発明」という。)。

「【請求項1】
原料空気を圧縮する空気圧縮機と、
前記原料空気を用いて熱交換を行う主熱交換器と、
前記原料空気を酸素及び窒素に分離する高圧精留塔及び低圧精留塔と
を有する空気分離装置を用いて原料空気から酸素を回収する空気分離方法であって、
前記空気分離装置に備えられた前記高圧精留塔は1塔であり、
前記空気分離装置は、
前記低圧精留塔から液体酸素が導入されかつ熱交換部が設けられた容器、
前記容器内の熱交換部に昇圧空気を供給する空気供給ライン、
前記熱交換部で前記液体酸素と熱交換した空気を前記高圧精留塔に導入するラインを備え、
前記熱交換部は前記液体酸素を用いて熱交換を行うことによりガス酸素を生成し、前記容器内の前記液体酸素と前記ガス酸素とを前記主熱交換器にそれぞれ供給する液体酸素供給ライン及びガス酸素供給ラインをさらに備え、かつ、前記容器内のガス酸素を前記低圧精留塔に戻す戻しラインを備えず、
前記容器内から取り出す前記液体酸素及び前記ガス酸素の量比率は、前記液体酸素の比率を10%以上20%以下とし、前記ガス酸素の比率を80%以上90%以下とし、
前記液体酸素供給ラインを介してのみ高純度酸素を回収し、
前記ガス酸素供給ラインを介してのみ前記高純度酸素よりも相対的に純度の低い低純度酸素を回収し、
前記高純度酸素は純度97.7%以下である
ことを特徴とする空気分離方法。
【請求項2】
前記空気分離装置は、前記容器内で前記熱交換部の上方に精留パッキン又は精留皿が設けられた請求項1に記載の空気分離方法。
【請求項3】
前記空気分離装置は、前記低圧精留塔から前記容器に液体酸素を供給する供給ラインと、該供給ラインに設けられ、前記低圧精留塔から前記容器に前記液体酸素を移送する液酸移送ポンプとを備えた請求項1または2に記載の空気分離方法。」

2 本件特許の明細書及び図面の記載事項
本件明細書及び図面には、次の事項が記載されている。

(1)「【0006】
さらに、図6及び図7に示すような空気分離装置もある。図6の空気分離装置は、空気圧縮機2、吸着器3、主熱交換器4、高圧精留塔5、低圧精留塔6、主凝縮器6a、及び酸素圧縮機7を主に備える。図6の空気分離装置では、低圧精留塔6で生成されたガス酸素が主熱交換器4と酸素圧縮機7を介して、その状態で外部に供給されるものと空気が混合されて外部に供給されるものとに分かれる。
【0007】
また図7の空気分離装置は、空気圧縮機2、吸着器3、主熱交換器4、高圧精留塔5、低圧精留塔6、主凝縮器6a、昇圧圧縮機8、及び液酸ポンプ9を主に備える。図7の空気分離装置では、低圧精留塔6で生成された液体酸素が液酸ポンプ9で昇圧されて主熱交換器4を通った後、その状態で外部に供給されるものと空気が混合されて外部に供給されるものとに分かれる。」

(2)「【発明が解決しようとする課題】
【0009】
原料空気圧縮機の稼動コストの割合は空気分離装置全体の稼動コストのほとんどを占めることから、該原料空気圧縮機の消費動力を低減して稼動コストをさらに低減することが強く望まれている・・・。上記特許文献1・・・の空気分離装置では、上塔内のガス酸素のみを取り出すのではなく、液体酸素も取り出して利用することで、酸素圧縮機の流量の低減を図って消費動力を小さくしている。しかしながら、原料空気圧縮機についてはその消費動力の低減をさらに進める余地は残っている。
【0010】
また、低圧蒸留塔からの液体酸素を塔外に設置した凝縮器容器内で蒸発させてガス酸素を得る構成の空気分離装置(・・・)、並びに図6及び図7の空気分離装置においても、原料空気圧縮機の消費動力をより低減し得る余地がある。
【0011】
本発明は、かかる従来の事情に鑑みてなされたものであり、空気圧縮機の消費動力を従来よりも低減して稼動コストを小さくすることができる空気分離装置を提供することを目的とする。」

(3)「【発明の効果】
【0018】
本発明に係る空気分離装置によれば、2種以上の純度の酸素を取り出すことができ、そのうち一種を低純度酸素(ガス酸素)で取り出すことによって、低圧精留塔内の主凝縮器に必要な酸素の純度を低減できる。その結果、空気圧縮機の吐出圧の低減を図ることができ、該圧縮機の消費動力を低減できる。したがって、空気分離装置の稼動コストを従来よりも小さくすることができる。」

(4)「【0022】
1.第1実施形態
図1は本発明の第1実施形態に係る空気分離装置1の全体構成を示すブロック図である。
【0023】
図1において本実施形態に係る空気分離装置1は、空気圧縮機2、吸着器3、主熱交換器4、高圧精留塔5、低圧精留塔6、低圧精留塔6内に設けられた主凝縮器6a、昇圧圧縮機8、液酸ポンプ9、空気凝縮器容器10、及び空気凝縮器容器10内に設けられた空気凝縮器10aを主として備えている。なお、主熱交換器4、高圧精留塔5、低圧精留塔6、主凝縮器6a、液酸ポンプ9、空気凝縮器容器(容器)10、及び空気凝縮器(熱交換部)10aは保冷箱7内に配されている。
【0024】
原料空気は、空気圧縮機2により高圧精留に必要な圧力(約0.3〜0.5MPa)に昇圧圧縮される、吸着器3により二酸化炭素、水分、炭化水素等の不純物が除去される。原料空気が吸着器3を経た後、その一部は保冷箱7内の主熱交換器4に供給され、その残りは昇圧圧縮機8に送られて昇圧された後に主熱交換器4に供給される。
【0025】
吸着器3を経て主熱交換器4に供給された原料空気は、この主熱交換器4で冷却された後、供給ラインL1により高圧精留塔5内の底部に導入される。また、吸着器3及び昇圧圧縮機8を経て主熱交換器4に供給された原料空気は、この主熱交換器4で冷却された後、供給ラインL2により高圧精留塔5内の底部に導入される。高圧精留塔5内に導入された原料空気は、この高圧精留塔5内を上昇中に下降液と向流接触を行い、蒸留により低沸点成分が増加することで液体窒素と酸素リッチな液体空気とに精留分離される。
【0026】
高圧精留塔5内で精留分離された液体窒素及び酸素リッチな液体空気は、それぞれ供給ラインL8及び供給ラインL9により低圧精留塔6内に導入される。低圧精留塔6内に導入された液体窒素と酸素リッチな液体空気は上昇ガスと向流接触を起こし、蒸留により低圧精留塔6内で高純度のガス窒素と液体酸素とに分離される。また、高圧精留塔5内のガス窒素は図示しない供給ラインにより低圧精留塔6の主凝縮器6aにも導入される。主凝縮器6aは、導入されたガス窒素と低圧精留塔6内の底部に溜まった液体酸素との間で熱交換を行って、該液体酸素を気化させつつ該ガス窒素を凝縮することにより液化させる。この熱交換に必要なガス窒素と液体酸素との温度差を確保するために、高圧精留塔5及び低圧精留塔6の各運転圧力が設定される。低圧精留塔6内で気化した上記ガス酸素は低圧精留塔6内で上昇ガスとなり精留分離に利用される。分離された高純度のガス窒素は製品窒素として低圧精留塔6の頂部より導出され、供給ラインL10により外部に供給される。なお、低圧精留塔6内の残部ガスの一部は、必要に応じて供給ラインL11により吸着器3に送られ、吸着材の再生ガスとして利用される。
【0027】
低圧精留塔6内で精留分離された液体酸素は、供給ラインL3により空気凝縮器容器10内に供給される。
【0028】
ここで、供給ラインL1から分岐した供給ライン(空気供給ライン)L4が空気凝縮器容器10に接続されている。この供給ラインL4により、主熱交換器4を経た原料空気が空気凝縮器容器10内に送られるようになっている。
【0029】
次に、空気凝縮器容器10内に設けられた空気凝縮器10aは、上述の供給ラインL3により送られてきた液体酸素と供給ラインL4により送られてきた空気との間で熱交換を行う。該熱交換により気化したガス酸素(低純度酸素)は、供給ライン(ガス酸素供給ライン)L5により主熱交換器4に送られて常温に戻された後、必要に応じて空気が混合されて酸素富化燃焼用酸素として外部(酸素富化炉)に供給される。なお、酸素富化燃焼用として必要な酸素純度は極めて低く、通常約30%程度の純度で足りる。
【0030】
一方、空気凝縮器容器10の底部には供給ライン(液体酸素供給ライン)L6が接続されており、該供給ラインL6の途中に液酸ポンプ9が設けられている。このような構成において空気凝縮器容器10内の液体酸素は、供給ラインL6により液酸ポンプ9に送られて必要圧に昇圧された後、主熱交換器4で蒸発及び昇温されることによりガス酸素(高純度酸素)となり、酸化用酸素として外部(酸化炉)に供給される。
【0031】
なお、液酸ポンプ9により液体酸素が昇圧されると、該液体酸素の沸点が上がる。そのため、主熱交換器4で熱交換を成立させて液体酸素を蒸発させるためには、昇圧圧縮機8で圧力をかけることで沸点を上げた原料空気を上記の如く主熱交換器4に導入する必要がある。
【0032】
上述したように本実施形態に係る空気分離装置1によれば、酸素富化燃焼用の低純度酸素と酸化用の高純度酸素が必要とされる場合、つまり、必要とされる高純度酸素が全体の酸素の一部である場合に、その必要とされる高純度酸素の純度を確保しつつも低圧精留塔6内の液体酸素の純度を下げることができる。以下、表1を用いて詳しく説明する。表1は、図1の空気分離装置1において空気凝縮器容器10から取り出す全体酸素量(純酸素)に占める液体酸素(純酸素)の取り出す比率を20%に固定し、ガス酸素の純度を変えた場合の空気凝縮器容器10内の液体酸素の純度、主凝縮器6aの液体酸素の純度、空気圧縮機2の吐出圧力、空気圧縮機原単位、及び空気圧縮機原単位率を特定した。上記ガス酸素の純度については、99.6%,95.0%,90.0%,80.0%,70.0%に変えた。なお、表1において空気圧縮機原単位率とは、ガス酸素の純度が99.6%であるときの空気圧縮機の動力原単位を100%(基準値)とした場合に、各ガス酸素純度に対応する空気圧縮機の動力原単位を比率で示したものである。また、上記比率20%は、空気凝縮器10aから取り出すガス酸素及び液体酸素の合計の中の純酸素流量を分母とし、液体酸素量の中の純酸素流量を分子として算定したものである。
【0033】
【表1】

【0034】
表1において、空気凝縮器容器10から取り出す高純度酸素(液体酸素)の純度が92.5%であってその量が全体酸素量の20%であり、残り量の80%の酸素を酸素富化用の低純度酸素(純度80%)として取り出す場合、高純度酸素の92.5%という純度を得るために必要な主凝縮器6a内の液体酸素の純度は82.2%であることが分かる。
【0035】
低圧精留塔6内の液体酸素が空気凝縮器容器10に導入されると、該容器内で液体酸素は原料空気との熱交換によって加熱されて気化する。この場合、相対的に沸点の低い窒素が気化し易くなるので、当該気化により液体中の窒素が減少し、空気凝縮器容器10内の液体酸素の純度は例えば92.5%に上がる。なお、空気凝縮器容器10から取り出すガス酸素の純度は、上記気化した窒素が多めに含まれるので80%となる。
【0036】
このように、主凝縮器6aから取り出す液体酸素の必要純度を約10%低減できるので、該10%分の酸素の沸点を下げることが可能となる。したがって、低圧精留塔6内で液体酸素とガス窒素との間で行われる熱交換の温度差を大きくすることができ、高圧精留塔5内の必要圧力を下げることができる。これにより、空気圧縮機2の吐出圧力を低減することができ、該圧縮機の消費動力の低減が可能となる。よって、空気分離装置1の稼動コストを従来よりも抑えることができる。」

(5)「【0050】
また、戻しラインL12は供給ラインL5から分岐して低圧精留塔6に接続されている。空気凝縮器容器10内で蒸発した酸素の一部を、バルブvaでその流量を調整しつつ低圧精留塔6内に戻すことができる。空気凝縮器容器10からの液体酸素の取り出し量がガス酸素の取り出し量に対して大きくなる場合、精留パッキン11における精留分離効果を高めるため(向流接触において下降液である液体酸素と上昇するガス酸素との量を適切に調整するため)、上記のように空気凝縮器容器10内の酸素の一部を低圧精留塔6に戻すことができる。」

(6)「【0059】
3.実施例3
図1の空気分離装置1において、ガス酸素純度を70%,80%,90%として、空気凝縮器容器10からの液体酸素の抜き出し量(取り出し比率)を変えた場合の空気圧縮機の吐出圧をそれぞれ算定した。算定結果を表3〜表5に示す。なお、表3がガス酸素純度70%のものであり、表4がガス酸素純度80%のものであり、表5がガス酸素純度90%のものである。また、各表において液体酸素抜き出し量は全酸素(純酸素)に対する割合であり、液体酸素抜き出し量が0%及び100%であるものは従来例(比較例)に相当する(以下、同じ)。
【0060】
【表3】

【0061】
【表4】

【0062】
【表5】

【0063】
表3〜表5において、ガス酸素純度に関わらず、空気圧縮機の吐出圧を最も小さくできるのは、液体酸素の抜き出し量が10%であるときということが確認できた。またその中でも、ガス酸素純度が90%,80%,70%と低下するにつれて、空気圧縮機の吐出圧を低減できることが確認できた。」

(7)「【図1】



(8)「【図6】



(9)「【図7】



第5 甲号証の記載事項
1 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、「CRYOGENIC RECTIFICATION SYSTEM FOR PRODUCING LOWER PURITY OXYGEN AND HIGHER PURITY OXYGEN」(発明の名称)(当審仮訳:低純度酸素及び高純度酸素を精製するための極低温精留システム)に関して、次の事項が記載されている。

(1)「1. A method for producing lower purity oxygen and higher purity oxygen comprising:
(A) partially condensing feed air by indirect heat exchange with higher purity oxygen to produce liquid feed air and gaseous feed air;
(B) turboexpanding the gaseous feed air and passing the turboexpanded gaseous feed air into a medium pressure column;
(C) separating feed air within the medium pressure column by cryogenic rectification to produce nitrogen-enriched fluid and oxygen-enriched fluid, and passing nitrogen-enriched fluid and oxygen-enriched fluid into a lower pressure column;
(D) producing nitrogen-richer fluid and oxygen-richer fluid by cryogenic rectification within the lower pressure column, and passing oxygen-richer fluid from the lower pressure column into a side column; and
(E) separating oxygen-richer fluid by cryogenic rectification within the side column into lower purity oxygen and said higher purity oxygen, recovering lower purity oxygen from the side column and recovering higher purity oxygen from the side column.」(請求項1)
(当審仮訳:1.低純度酸素及び高純度酸素を精製する方法であって、
(A)高純度酸素との間接的な熱交換によって原料空気を部分的に凝縮して、液体原料空気及びガス原料空気を精製し、
(B)ガス原料空気をターボ膨張し、ターボ膨張したガス原料空気を中圧塔に導入し、
(C)中圧塔内の原料空気を極低温精留により分離して、窒素富化流体及び酸素富化流体を精製し、窒素富化流体及び酸素富化流体を低圧塔に導入し、
(D)低圧塔内で極低温精留により、窒素超富化流体及び酸素超富化流体を精製し、低圧塔から酸素超富化流体を側塔に導入し、
(E)側塔内で極低温精留により、酸素超富化流体を低純度酸素と高純度酸素に分離し、側塔から低純度酸素を回収し、側塔から高純度酸素を回収する。)

(2)「This invention relates generally to the cryogenic rectification of feed air and, more particularly, to the cryogenic rectification of feed air to produce lower purity oxygen and higher purity oxygen.」(第1欄第6〜9行)
(当審仮訳:本発明は、一般に原料空気の極低温精留に関し、より詳細には、低純度酸素及び高純度酸素を精製するための原料空気の極低温精留に関する。)

(3)「Lower purity oxygen is generally produced in large quantities by the cryogenic rectification of feed air in a double column wherein feed air at the pressure of the higher pressure column is used to reboil the liquid bottoms of the lower pressure column and is then passed into the higher pressure column.
Some users of lower purity oxygen, for example integrated steel mills, often require some higher purity oxygen in addition to lower purity gaseous oxygen. While it has long been possible to produce some higher purity oxygen along with lower purity oxygen, conventional systems cannot effectively produce significant quantities of higher purity oxygen along with lower purity oxygen.
Accordingly it is an object of this invention to provide a cryogenic rectification system which can effectively produce both lower purity oxygen and higher purity oxygen with high recovery.」(第1欄第14〜30行)
(当審仮訳:低純度酸素は、一般に、2塔の原料空気の極低温精留によって大量に精製され、高圧塔の圧力で原料空気を使用して低圧塔の底部液体を再沸騰させ、その後、高圧塔に導入する。
例えば、一体型製鉄所などの低純度酸素の使用者は、低純度ガス酸素に加えて、高純度酸素を必要することがある。従来から、低純度酸素と共に、いくらかの高純度酸素を精製することは可能であったが、従来のシステムでは、低純度酸素と共に、効果的に大量の高純度酸素を精製できない。
したがって、本発明の目的は、低純度酸素と高純度酸素の両方を高回収率で効果的に精製することができる極低温精留システムを提供することである。)

(4)「The above and other objects, which will become apparent to one skilled in the art upon a reading of this disclosure, are attained by the present invention, one aspect of which is:
A method for producing lower purity oxygen and higher purity oxygen comprising:
(A) partially condensing feed air by indirect heat exchange with higher purity oxygen to produce liquid feed air and gaseous feed air;
(B) turboexpanding the gaseous feed air and passing the turboexpanded gaseous feed air into a medium pressure column;
(C) separating feed air within the medium pressure column by cryogenic rectification to produce nitrogen-enriched fluid and oxygen-enriched fluid, and passing nitrogen-enriched fluid and oxygen-enriched fluid into a lower pressure column;
(D) producing nitrogen-richer fluid and oxygen-richer fluid by cryogenic rectification within the lower pressure column, and passing oxygen-richer fluid from the lower pressure column into a side column; and
(E) separating oxygen-richer fluid by cryogenic rectification within the side column into lower purity oxygen and said higher purity oxygen, recovering lower purity oxygen from the side column and recovering higher purity oxygen from the side column.」(第1欄第45行〜第2欄第3行)
(当審仮訳:本開示を読むことにより当業者が明らかになる上記及び他の目的は、本発明によって達成され、その1つの態様は、
低純度酸素及び高純度酸素を精製する方法であって、
(A)高純度酸素との間接的な熱交換によって原料空気を部分的に凝縮して、液体原料空気及びガス原料空気を精製し、
(B)ガス原料空気をターボ膨張し、ターボ膨張したガス原料空気を中圧塔に導入し、
(C)中圧塔内の原料空気を極低温精留により分離して、窒素富化流体及び酸素富化流体を精製し、窒素富化流体及び酸素富化流体を低圧塔に導入し、
(D)低圧塔内で極低温精留により、窒素超富化流体及び酸素超富化流体を精製し、低圧塔から酸素超富化流体を側塔に導入し、
(E)側塔内で極低温精留により、酸素超富化流体を低純度酸素と高純度酸素に分離し、側塔から低純度酸素を回収し、側塔から高純度酸素を回収する。)

(5)「As used herein, the term "reboiler" means a heat exchange device that generates column upflow vapor from column liquid. A reboiler may be located within or outside of the column. A bottom reboiler is a reboiler which vaporizes liquid from the bottom of the column, i.e. from below the mass transfer elements.」(第2欄第64行〜第3欄第2行)
(当審仮訳:本明細書で使用する「リボイラー」という用語は、塔液体から塔上昇気化ガスを生成(精製)する熱交換装置を意味する。リボイラーは、塔の内部又は外部に配置することができる。底部リボイラーは、塔の底部、すなわち物質移動要素の下方から液体を気化させるリボイラーである。)

(6)「As used herein, the term "lower purity oxygen" means a fluid having an oxygen concentration within the range of from 50 to 98 mole percent.
As used herein, the term "higher purity oxygen" means a fluid having an oxygen concentration greater than 98 mole percent.」(第3欄第20〜25行)
(当審仮訳:本明細書で使用する「低純度酸素」という用語は、50〜98モル%の範囲内の酸素濃度を有する流体を意味する。
本明細書で使用する「高純度酸素」という用語は、98モル%を超える酸素濃度を有する流体を意味する。)

(7)「FIG. 1 is a schematic representation of one preferred embodiment of the invention.
・・・
The invention will be described in detail with reference to the Drawings. Referring now to FIG. 1, feed air 60, which has been cleaned of high boiling impurities such as water vapor, carbon dioxide and hydrocarbons, and which has been compressed to a pressure generally within the range of from 50 to 60 pounds per square inch absolute (psia), is cooled by indirect heat exchange with return streams by passage through main heat exchanger 1. Resulting cooled feed air stream 61 is passed into bottom reboiler 20 of side column 11 wherein it is partially condensed by indirect heat exchange with side column 11 bottom liquid which comprises higher purity oxygen. The partial condensation of the feed air in bottom reboiler 20 produces liquid feed air and remaining gaseous feed air which are passed in two-phase stream 62 into phase separator 40.」(第3欄第32〜57行)
(当審仮訳:図1は、本発明の1つの好ましい実施形態の概略図である。
・・・
本発明を、図面を参照して詳細に説明する。図1に示すように、水蒸気、二酸化炭素及び炭化水素のような高沸点不純物が洗浄され、一般に50〜60ポンド/平方インチ絶対圧(psia)の範囲内に圧縮された原料空気60は、主熱交換器1を通過することにより、戻り流れとの間接熱交換によって冷却される。得られた冷却された原料空気流61は、側塔11の底部リボイラー20に導入され、側塔11の高純度酸素を含む底部液体との間接熱交換によって部分的に凝縮される。底部リボイラー20内の原料空気の部分凝縮は、液体原料空気及び残りのガス原料空気を生成(精製)し、2相流62で相分離器40に通される。)

(8)「Gaseous feed air resulting from the partial condensation of the feed air in bottom reboiler 20 is turboexpanded and then passed into the lower portion of first or medium pressure column 10. The embodiment of the invention illustrated in FIG. 1 is a preferred embodiment wherein this gaseous feed air is superheated, at least in part, prior to the turboexpansion. Referring back now to FIG. 1, gaseous feed air resulting from the partial condensation of feed air in bottom reboiler 20 is passed out from phase separator 40 in stream 63. A first portion 64 of stream 63 is heated by partial traverse of main heat exchanger 1 to form heated stream 65. A second portion 66 of stream 63 is passed through valve 67 and resulting stream 68 is combined with stream 65 to form stream 69 which is turboexpanded to generate refrigeration by passage through turboexpander 30 to about the operating pressure of medium pressure column 10. Resulting turboexpanded feed air stream 70 is passed from turboexpander 30 into the lower portion of medium pressure column 10. A second feed air stream 80, which has been cleaned of high boiling impurities and compressed to a pressure within the range of from 120 to 500 psia, is cooled by passage through main heat exchanger 1 and resulting cooled feed air stream 81 is also passed into medium pressure column 10.」(第3欄第58行〜第4欄第13行)
(当審仮訳:底部リボイラー20内の原料空気の部分凝縮の結果生じるガス原料空気は、ターボ膨張され、次いで、第1の塔又は中圧塔10の下部に導入される。図1に示す本発明の実施形態は、このガス原料空気が、ターボ膨張前に少なくとも部分的に過熱される好ましい実施形態である。図1に示すように、底部リボイラー20内の原料空気の部分凝縮の結果生じるガス原料空気は、相分離器40から流れ63として排出される。流れ63の第1の部分64は、主熱交換器1の部分的な横断によって加熱されて、加熱された流れ65を形成する。流れ63の第2の部分66がバルブ67を通過し、得られた流れ68が流れ65と合流して流れ69を形成し、ターボ膨張器30を通過することによって中圧塔10の操作圧力付近までターボ膨張され、寒冷を発生させる。得られたターボ膨張した原料空気流70は、ターボ膨張器30から中圧塔10の下部に導入される。高沸点不純物が清浄化され、120〜500psiaの範囲の圧力に圧縮された第2の原料空気流80は、主熱交換器1を通過することによって冷却され、得られた冷却原料空気流81は、中圧塔10に導入される。)

(9)「Medium pressure column 10 is operating at a pressure generally within the range of from 30 to 40 psia and below the operating pressure of a conventional higher pressure column of a double column system. Within medium pressure column 10 the feed air is separated by cryogenic rectification into nitrogen-enriched vapor and oxygen-enriched liquid. Nitrogen-enriched vapor is passed from the upper portion of medium pressure column 10 in stream 92 into bottom reboiler 21 of lower pressure column 12 wherein it is condensed by indirect heat exchange with lower pressure column 12 bottom liquid. Resulting nitrogen-enriched liquid 93 is divided into first portion 94, which is passed into the upper portion of column 10 as reflux, and into second portion 95, which is subcooled by passage through subcooler or heat exchanger 2. Subcooled stream 96 is passed through valve 97 and then passed in stream 98 as reflux into the upper portion of lower pressure column 12.」(第3欄第14〜30行)
(当審仮訳:中圧塔10は、一般に30〜40psiaの範囲内の圧力で操作され、2塔システムの従来の高圧塔の操作圧力よりも低い圧力で操作されている。中圧塔10内の原料空気は、極低温精留により窒素富化気化ガス及び酸素富化液体に分離される。窒素富化気化ガスは、中圧塔10の上部から流れ92により低圧塔12の底部リボイラー21に導入され、低圧塔12の底部液体との間接熱交換によって凝縮される。得られた窒素富化液体93は、還流として中圧塔10の上部に流入する第1の部分94と、過冷却器又は熱交換器2を通過することによって過冷却される第2の部分95とに分割される。過冷却流96は、バルブ97を通過し、次いで還流として流れ98により低圧塔12の上部に流入する。)

(10)「Liquid feed air resulting from the partial condensation of feed air in bottom reboiler 20 is passed into lower pressure column 12. Oxygen-enriched liquid is passed from the lower portion of medium pressure column 10 into lower pressure column 12. The embodiment of the invention illustrated in FIG. 1 is a preferred embodiment wherein these two liquids are combined and passed into the lower pressure column. Referring back to FIG. 1, liquid feed air resulting from the partial condensation of feed air in bottom reboiler 20 is withdrawn from phase separator 40 as stream 71 and passed through valve 72. Oxygen-enriched liquid is withdrawn from the lower portion of medium pressure column 10 in stream 73 which is combined with stream 71 to form stream 74. Stream 74 is subcooled by passage through subcooler 3 and resulting stream 75 is passed through valve 76 and then as stream 77 into lower pressure column 12. A third feed air stream 82, which has been cleaned of high boiling impurities and compressed to a pressure within the range of from 50 to 60 psia is cooled by passage through main heat exchanger 1. Resulting stream 83 is further cooled by passage through heat exchanger 4 and resulting stream 84 is passed through valve 85 and then as stream 86 into the upper portion of lower pressure column 12.」(第4欄第31〜53行)
(当審仮訳:底部リボイラー20内の原料空気の部分的凝縮から生じる液体原料空気は、低圧塔12に導入される。酸素富化液体は、中圧塔10の下部から低圧塔12に導入される。図1に示す本発明の実施形態は、これら2つの液体を組み合わせて低圧塔に通す好ましい実施形態である。図1に示すように、底部リボイラー20内の原料空気の部分凝縮から生じる液体原料空気は、流れ71として相分離器40から抜き出され、バルブ72を通過する。酸素富化液体は、中圧塔10の下部から流れ73として抜き出され、流れ71と合流して流れ74を形成する。流れ74は過冷却器3を通過することによって過冷却され、得られた流れ75はバルブ76を通り、次いで流れ77として低圧塔12に導入される。高沸点不純物が除去され、50〜60psiaの範囲内の圧力に圧縮された第3の原料空気流82は、主熱交換器1を通過することによって冷却される。得られた流れ83は、熱交換器4を通過することによってさらに冷却され、得られた流れ84は、バルブ85を通過し、次いで、流れ86として、低圧塔12の上部に流入される。)

(11)「Second or lower pressure column 12 is operating at a pressure less than that of medium pressure column 10 and generally within the range of from 18 to 22 psia. Within lower pressure column 12 the various feeds into the column are separated by cryogenic rectification into nitrogen-richer fluid and oxygen-richer fluid. Nitrogen-richer fluid is withdrawn from the upper portion of lower pressure column 12 as stream 100, warmed by passage through heat exchangers 2, 3, 4 and 1 and removed from the system in stream 102 which may be recovered in whole or in part as product nitrogen gas having a nitrogen concentration of 99 mole percent or more. Oxygen-richer fluid is withdrawn from the lower portion of lower pressure column 12 in liquid stream 91 and passed into the upper portion of side column 11.」(第4欄第54〜67行)
(当審仮訳:第2の塔又は低圧塔12は、中圧塔10の圧力よりも低い圧力で、一般に18〜22psiaの範囲内で操作されている。低圧塔12内で、塔への種々の供給原料は、極低温精留によって窒素超富化流体と酸素超富化流体とに分離される。窒素超富化流体は、低圧塔12の上部から流れ100として抜き出され、熱交換器2、3、4及び1を通過することによって加温され、流れ102として取り出され、全体又は一部が99モル%以上の窒素濃度を有する製品窒素ガスとして回収される。酸素超富化流体は、液体流91により低圧塔12の下部から抜き出され、側塔11の上部に導入される。)

(12)「Side column 11 is operating at a pressure generally within the range of from 18 to 22 psia. Oxygen-richer fluid is separated by cryogenic rectification within side column 11 into lower purity oxygen and higher purity oxygen. A top vapor stream 90 is passed from the upper portion of side column 11 into the lower portion of lower pressure column 12.」(第5欄第1〜7行)
(当審仮訳:側塔11は、一般に18〜22psiaの範囲内の圧力で操作されている。酸素超富化流体は、側塔11内の極低温精留により低純度酸素と高純度酸素とに分離される。頂部気化ガス流90が側塔11の上部から低圧塔12の下部に導入される。)

(13)「Either or both of the lower purity oxygen and the higher purity oxygen may be withdrawn from side column 11 as liquid or vapor for recovery.」(第5欄第8〜10行)
(当審仮訳:低純度酸素及び高純度酸素のいずれか又は両方は、回収のために、液体又は気化ガスとして側塔11から抜き出されてもよい。)

(14)「Higher purity oxygen collects as liquid at the bottom of side column 11 and some of this liquid is vaporized to carry out the aforedescribed partial condensation of the feed air in bottom reboiler 20. In the embodiment of the invention illustrated in FIG. 1, higher purity oxygen is withdrawn as liquid from side column 11 in stream 106 and a portion 107 of stream 106 is recovered as product liquid higher purity oxygen. Another portion 108 of stream 106 is pumped to a higher pressure by passage through liquid pump 34 and resulting pressurized stream 109 is vaporized by passage through main heat exchanger 1 and recovered as product elevated pressure higher purity oxygen gas in stream 110.」(第5欄第10〜22行)
(当審仮訳:高純度酸素は、側塔11の底部で液体として集まり、前述の底部リボイラー20内の原料空気の部分的凝縮が行われ、この液体の一部が気化される。図1に示すように、高純度酸素は、流れ106により側塔11から液体として抜き出され、流れ106の一部分107は製品高純度液体酸素として回収される。流れ106の他の部分108は、液体ポンプ34を通過することによってより高い圧力に圧送され、得られた加圧流109は、主熱交換器1を通過することによって気化され、流れ110により製品高圧高純度酸素ガスとして回収される。)

(15)「Lower purity oxygen is withdrawn from side column 11 at a level from 15 to 25 equilibrium stages above level from which higher purity oxygen is withdrawn from side column 11. In the embodiment of the invention illustrated in FIG. 1 lower purity oxygen is withdrawn from side column 11 as liquid in stream 103 and pumped to a higher pressure by passage through liquid pump 35. Pressurized stream 104 is vaporized by passage through main heat exchanger 1 and recovered as product elevated pressure lower purity oxygen gas in stream 105.」(第5欄第23〜32行)
(当審仮訳:低純度酸素は、高純度酸素が側塔11から抜き取られる位置よりも15〜25平衡段高い位置で側塔11から抜き出される。図1に示すように、低純度酸素は、流れ103により液体として側塔11から抜き出され、液体ポンプ35を通過することにより高い圧力に圧送される。加圧流104は、主熱交換器1を通過することによって気化され、製品高圧低純度酸素ガスが流れ105により回収される。)

(16)「With the practice of this invention large quantities of higher purity oxygen may be recovered in addition to lower purity oxygen. Generally with the practice of this invention, the quantity of higher purity oxygen recovered in gaseous and/or liquid form will be from 0.5 to 1.0 times the quantity of lower purity oxygen recovered in gaseous and/or liquid form.」(第5欄第33〜39行)
(当審仮訳:本発明の実施により、低純度酸素に加えて、大量の高純度酸素を回収することができる。一般に、本発明の実施では、気体及び/又は液体形態で回収される高純度酸素の量は、気体及び/又は液体形態で回収される低純度酸素の量の0.5〜1.0倍である。)

(17)「The production of significant quantities of higher purity oxygen is enabled by the withdrawal of lower purity liquid oxygen from a point above the base of column 11. The withdrawal of this oxygen decreases the quantity of liquid (L) descending below that point compared to the quantity of vapor (V) rising within the column from reboiler 20 located at its base. The purity which can be achieved for the liquid oxygen stream 106 taken from the base of column 11 is limited by the ratio of L to V within column 11 below the point where stream 103 is removed; the greater this ratio, the more impure stream 106 will be. By virtue of withdrawing stream 103, the production of higher purity oxygen from the base of column 11 is facilitated due to the resulting decrease in the L to V ratio.」(第5欄第40〜53行)
(当審仮訳:大量の高純度酸素の精製は、低純度液体酸素を側塔11の底部より上方から抜き出すことによって可能となる。この酸素の回収は、その底部に位置するリボイラー20から側塔内に上昇する気化ガス量(V)と比較して、その点よりも下に下降する液体量(L)を減少させる。側塔11の底部から取られた液体酸素流106について達成され得る純度は、流れ103が除去される地点より下の側塔11内のVに対するLの比によって制限される。この比が大きいほど、不純な流れ106がより多くなる。流れ103を抜き取ることにより、結果としてVに対するLの比が減少するため、側塔11の底部からの高純度酸素の精製が促進される。)

(18)「



2 甲第2号証の記載事項
甲第2号証には、「空気分離方法および空気分離装置」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。

(1)「【0026】これに対し本例では、図3に示す如く、精留塔上塔8c底部の液体空気をライン34から液体のままで抜き出して蒸発器31へ導入する。該蒸発器31には加熱用熱交換器32が内装されており、この加熱用熱交換器32には、主熱交換器7で冷却されてから精留塔下塔8aへ供給される圧縮空気の一部が分岐して供給される様に構成されている。そして、精留塔上塔8cから抜き出された液体酸素を蒸発器31で加熱することによって蒸発させ、ライン33から前記と同様に主熱交換器7で寒冷を回収してから製品酸素ガスとして抜き出す一方、加熱用熱交換器32で蒸発エネルギーを与えて冷却された圧縮空気は、精留塔下塔8aの下部へ送給される。この方法を採用することによってもたらされる利益としては、下記<1>〜<3>(当審注:<1>は丸囲い数字を示す。以下同様。)が挙げられる。
・・・
【0028】<2>製品酸素ガスの純度アップが図れる。即ち前記図2に示した如く、精留塔上塔8cにおける液体酸素の液面よりもやや上方から酸素ガスを抜き出す場合、上塔8c内での気液平衡から、酸素ガスの純度を液体酸素の純度以上に高めることは不可能であり、例えば液体酸素の酸素濃度が90%である場合は、抜き出される酸素ガスの純度は87〜88%程度とならざるを得ない。ところが、本例の様に上塔8c底部の液体酸素を液体状態のままで蒸発器31に抜き出してから加熱蒸発させる方法を採用し、蒸発器31における圧力を温度を適正に制御すると、上塔8c底部の液体酸素純度を維持した酸素ガスを製品ガスとして抜き出すことが可能となる。即ち、蒸発器31内の温度圧力条件を制御し、最初に揮発する窒素含量の高いガスを放出させることによって気相の酸素濃度が入側(即ち上塔8c内から送られてくる)液体酸素と同じ濃度となる気液平衡状態(例えば気相の酸素濃度が90%、液相の酸素濃度が92%)を確保し、この状態を維持しながら、液体酸素の導入と気体酸素の抜き出しを連続的に行うと、90%濃度の酸素ガスを製品ガスとして連続的に得ることが可能となる。」

(2)「【図3】



3 甲第3号証の記載事項
甲第3号証には、「DEVICE AND METHOD FOR SEPARATING AIR BY CRYOGENIC DISTILLATION」(発明の名称)(当審仮訳:極低温蒸留による空気分離装置及び方法)に関して、次の事項が記載されている。

(1)「


(第1頁第5〜6行)
(当審仮訳:本発明は、空気蒸留によって空気を分離するための装置及び方法に関する。)

(2)「










(第4頁第1行〜第5頁第20行)
(当審仮訳:図1に示すように、本装置は、交換ライン21と、中圧塔27と低圧塔29とからなる二重塔を備える。
全ての空気1は、中圧塔27の圧力と実質的に等しい圧力P1の空気を生成するために、主圧縮機2で圧縮される。圧力P1の空気は、冷却器7で冷却され、浄化装置9で浄化され、3つに分かれる。第1の部分11は、主圧縮機の最終段階で、圧縮機の第2の部分の一部である最終段階によって形成され得るブースターによって加圧される。圧力P1は、5バール(絶対圧)未満、または4.5バール(絶対圧)、好ましくは4バール未満、さらには3.5バール(絶対圧)未満である。
第1の部分11は、ブースター又は独立した圧縮機5によって圧力P2にされ、冷却器(図示せず)内で冷却され、交換ライン21に送られる。交換ラインは、ろう付けされたプレートを備えたアルミニウム製の間接熱交換器で構成されている。次に、第1の部分11は、ガス状で気化器41に送られ、そこで少なくとも部分的に凝縮してから、膨張して中圧塔27に送られる。圧力P2は、15バール(絶対圧)未満、好ましくは10バール未満であり、さらに6バール(絶対圧)未満である。第1の部分11は、流れ1の半分未満であり、好ましくは、流れ1の3分の1未満である。
圧力P1の第2の部分13は、交換ライン21内で完全に冷却され、2つの流れに分割される。第1の流れ23は、低圧塔29の底部リボイラー33に送られ、ここで少なくとも部分的に凝縮され、流れ11と混合されて中圧カラムに送られる。第2の流れ25は、ガス状で中圧塔27に送られる。
第3の部分15は、ブースターチャージャー17で加圧され、交換ライン21で部分的に冷却され、中間ラインで交換ラインから引き出され、ブースターチャージャー17に結合されたタービン19内で膨張されてから低圧塔29に送られる。
酸素富化液体流55の流れ、中間流れ53、及び窒素富化液体51の流れは、中圧塔27から取り出され、熱交換器31で冷却され、膨張され、低圧塔29の異なるレベルに送られる。
中圧ガス状窒素49は、低圧塔29の中間気化器35で凝縮され、中圧カラム27の上部で還流として送られる。中圧ガス状窒素流47の別の流れは、交換ラインで加熱される。
液体酸素37は、少なくとも80モル%、おそらくせいぜい98モル%である。酸素は、低圧塔29の底部から抜き出され、ポンプ39によって9バール(絶対圧)未満、さらには5バール(絶対圧)未満の圧力に加圧され、気化器41に送られる。液体パージ43とは別に、酸素は、圧力P2で空気の一部分11と熱交換することによって気化器41内で気化する。次に、この酸素は、交換ライン21で加熱される加圧ガス状酸素45の第1の流れを形成する。空気の一部分11は、部分的に凝縮され、二重塔に送られる。
パージ液体43は、ポンプ63内で少なくとも10バール(絶対圧)、または少なくとも15バール(絶対圧)、あるいは少なくとも20バール(絶対圧)の圧力に加圧され、次いで交換ライン21内で気化する。このように生成された第2のガス流59は、加圧ガス貯蔵部3に送られ、膨張されて、ライン61を介して流れ45と混合される。)

(3)「



4 甲第7号証の記載事項
甲第7号証には、「PROCESS FOR THE MIXED PRODUCTION OF HIGH AND LOW PURITY OXYGEN」(発明の名称)(当審仮訳:高純度酸素及び低純度酸素の混合製造方法)に関して次の事項が記載されている。

(1)「1. An apparatus for simultaneously producing both high and low purity oxygen, which comprises a double rectification column having therein a lower pressure fractionating means with two reboilers therein, and a higher pressure fractionating means, wherein an intermediate outlet is provided between the two reboilers of the lower pressure fractionating means at least one theoretical stage above the lower of the two reboilers for extracting a low purity oxygen stream therefrom and an outlet for withdrawing a high purity liquid oxygen stream from a bottom portion of said column; and which apparatus further comprises conduit means to flow at least a portion of the low-purity oxygen stream to heat exchanging means to produce a low purity oxygen product stream.」(請求項1)
(当審仮訳:1. 高純度酸素及び低純度酸素の両方を同時に作製するための装置であって、2つのリボイラーを有する低圧分留手段と高圧分留手段とを内蔵した二重精留塔を含み、低圧分留手段の2つのリボイラーの間に設けられ、そこから低純度酸素流を抽出するための下方のリボイラー上に少なくとも1つの理論上の段を備えた中間出口と、前記塔の底部から高純度の液体酸素流を引き出すための出口と、そして、低純度の酸素流の少なくとも一部を熱交換手段に流して低純度の酸素生成物流を生成するための導管手段とを備える装置。)

(2)「Accordingly, it is an object of the present invention to provide a process for producing oxygen at both low and high purity.」(第2欄第3〜5行)
(当審仮訳:したがって、本発明の目的は、低純度及び高純度の酸素の両方を製造するためのプロセスを提供することである。)

(3)「In accordance with the present invention, it has been surprisingly discovered that the double reboiler process can produce a high proportion of high purity oxygen product while maintaining high overall oxygen recovery. For example, up to 30% of 99.9% purity liquid oxygen can be produced in conjunction with 95% purity gaseous oxygen and with a recovery of between 99.5% and 97.5%, which is, indeed, unexpected. This result is unexpected because 30% is a high proportion for a cryogenic air separation process.」(第3欄第59〜68行)
(当審仮訳:本発明によれば、驚くべきことに、高い総酸素回収率を維持しながら二重リボイラープロセスは、高純度の酸素生成物を高い割合で生成することができることが発見された。例えば、99.9%純度の液体酸素の最大30%を、95%純度の気体酸素と共に、88.5%から97.5%の回収率で製造することができ、これは確かに予期しないことである。30%は、極低温空気分離プロセスによって高い割合であるため、この結果は予想外である。)

(4)「



5 甲第8号証の記載事項
甲第8号証には、「低純度酸素生成のための側コラム付き極低温精留システム」(発明の名称)に関して次の事項が記載されている。

(1)「【0010】
【発明の実施の形態】以下の説明では、便宜上、流体の流れと、その流れを通す導管とを同じ参照番号で表すこととする。例えば、供給空気の流れ1は、導管1とも称される。図1を参照して説明すると、供給空気24をベース負荷供給空気圧縮機25に通すことによってほぼ2.67〜4.57Kg/cm2 (絶対圧)(38〜65psia)の範囲の圧力にまで圧縮し、次いで、冷却器26に通すことによって冷却して圧縮熱を除去する。かくして加圧された供給空気27を浄化器28に通すことによって水蒸気や二酸化炭素等の高沸点不純物を除去し、得られた供給空気の流れ1を主熱交換器70に通して戻り流との間接熱交換によって冷却する。総供給空気1のうちのほぼ10〜25%を占める少部分をターボ膨脹機に通して冷凍を創生させ、次いで熱交換器71に通して更に冷却し、低圧コラム200内へ通す。
【0011】総供給空気1のうちのほぼ75〜90%を占める多部分は、側コラム300の下方部分内に通常配置される底部リボイラー350に通す。底部リボイラー350内で圧縮供給空気を少くとも部分的に凝縮させた後、得られた供給空気を弁50を通して高圧コラム100へ通す。
【0012】高圧コラム100は、低圧コラム200とともに複コラムを構成する。高圧コラム100は、第1コラムとも称され、低圧コラム200は、第2コラムとも称される。高圧コラム100は、ほぼ2.11〜4.22Kg/cm2 (絶対圧)(30〜60psia)の範囲の圧力で作動する。高圧コラム100内において、供給空気を極低温精留によって窒素富化蒸気(窒素濃度を高められた蒸気)と酸素富化液体(酸素濃度を高められた液体)に分離する。窒素富化蒸気は、流れ4として主凝縮器250へ通し、そこで低圧コラム200の底部液との間接熱交換によって凝縮させ、得られた窒素富化液体を流れ6と5に分割する。流れ6は、コラム100内へ還流としてし、流れ5は、熱交換器72に通すことによって冷却し、弁52を通してコラム200内へ還流として戻す。
【0013】一方、酸素富化液体は、高圧コラム100の下方部分から流れ7として抽出し、熱交換器73に通すことによって冷却し、弁51を通して低圧コラム200内へ送る。低圧コラム200は、高圧コラム100より低い圧力で、ほぼ1.12〜1.76Kg/cm2 (絶対圧)(16〜25psia)の範囲の圧力で作動する。主凝縮器250は、慣用の熱サイホン型ユニットであってもよく、あるいは液体貫流型ユニットであってもよく、あるいは液体流下型ユニットであってもよい。
【0014】低圧コラム200内において、このコラムへの各供給物を極低温精留によって窒素豊富蒸気と粗液体酸素に分離する。窒素豊富蒸気は、コラム200の上方部分から流れ8として抽出し、熱交換器72,73及び70に順次に通すことによって暖め、系から流れ33として廃物として大気へ排出するか、あるいは、前部又は一部を回収してもよい。窒素豊富蒸気の流れ33は、通常、0.1〜2.5モル%の範囲の酸素濃度を有し、残りは実質的に全部が窒素である。粗液体酸素は、50〜88モル%の範囲の酸素濃度を有しており、第2即ち低圧コラム200の下方部分から流れ10として抽出し、側コラム300内へ通す。
【0015】側コラム300は、低圧コラム200と同様の圧力、即ち、ほぼ1.12〜1.76Kg/cm2 (絶対圧)(16〜25psia)の範囲の圧力で作動する。側コラム300内において、流下する粗液体酸素を上昇する蒸気に接触させて、酸素生成物流体と残留蒸気とに格上げ(精製)する。この残留蒸気は、通常、25〜65モル%の範囲の酸素濃度、30〜79モル%の範囲の窒素濃度を有しており、これを側コラム300の上方部分から低圧コラム200内へ通す。
【0016】一方、上記酸素生成物流体は、粗酸素液体より高い、70〜99モル%の範囲の酸素濃度を有しており、側コラム300の下方部分に液体として集め、その少くとも一部分を底部リボイラー350(慣用の熱サイホン型、液体貫流型又は液体流下型ユニット)内の圧縮供給空気と間接熱交換させることによって蒸発させ、相手の圧縮供給空気を凝縮させる。(この蒸発により、側コラム300内の粗酸素液体を分離するための上昇蒸気が創生される。) 酸素生成物流体は、ガス及び、又は液体として回収することができ、酸素生成物ガスは、側コラム300から流れ11として抽出し、熱交換器71,70に順次に通すことによって暖め、酸素生成物ガス34として回収することができる。一方、酸素生成物液体は、側コラム300から流れ12として抽出し、酸素生成物液体35として回収することができる。この酸素生成物流体は、70〜99モル%の範囲の酸素濃度を有する。」

(2)「【図1】



6 甲第10号証の記載事項
甲第10号証には、「低純度及び高純度の酸素製品を製造する圧縮原料空気流の低温蒸留方法」(発明の名称)に関して次の事項が記載されている。

(1)「【請求項1】 低純度(97%未満)の酸素製品流(38)と窒素に富む流れ(28)を製造する低純度塔(25)を含み、この塔(25)には適当な第一のプロセス流(30、212)を凝縮させてこの塔(25)のための沸騰の負荷を供給する塔底リボイラー(31、211)がある蒸留設備(15、25)において圧縮原料空気流(10)を低温蒸留するための方法であって、酸素濃度が当該低純度塔(25)への原料(26’)のそれと少なくとも等しい酸素に富む流れ(35、611)を当該蒸留設備(15、25)から抜き出しそして高純度塔(23)で精留して高純度(97%より高い)の酸素製品流(36)を提供し、この高純度塔(23)の塔底液のリボイラーの熱は適当な第二のプロセス流(21)の凝縮によって供給し、この第二のプロセス流(21)は上記第一のプロセス流(30、212)より高い圧力にあることを特徴とする圧縮原料空気流の低温蒸留方法。」

(2)「【図1】



7 甲第11号証の記載事項
甲第11号証には、「CRYOGENIC RECTIFICATION SYSTEM FOR PRODUCING LOW PURITY OXYGEN AND HIGH PURITY OXYGEN」(発明の名称)(当審仮訳:低純度酸素及び高純度酸素を精製するための極低温精留システム)に関して次の事項が記載されている。

(1)「A second portion of the low purity oxygen is passed from the lower pressure column into the upper portion of an auxiliary column. In the embodiment of the invention illustrated in FIG. 1, low purity oxygen liquid is withdrawn from column 11 in stream 120, a first portion 121 of stream 120 is processed as described above, and a second portion 125 of stream 120 is passed into the upper portion of auxiliary column 13. Alternatively, first portion 121 and second portion 125 could be withdrawn separately from lower pressure column 11. Low purity oxygen liquid flows down auxiliary column 13 against upflowing vapor and in the process nitrogen and argon within the downflowing liquid are stripped out of the downflowing liquid into the upflowing vapor resulting in the production of high purity oxygen liquid at the bottom of auxiliary column 13, and remaining vapor in the upper portion of auxiliary column 13. The remaining vapor is withdrawn from the upper portion of auxiliary column and passed in stream 126 into lower pressure column 11.」(第5欄第36〜54行)
(当審仮訳:低純度酸素の第2の部分は、低圧カラムから補助カラムの上部に渡される。図1に示された本発明の実施形態では、低純度酸素液は、ストリーム120でカラム11から取り出され、ストリーム120の第1の部分121は、上述のように処理され、ストリーム120の第2の部分125は、補助カラム13の上側部分に渡される。別の方法として、第1の部分121及び第2の部分125は、低圧カラム11から別々に取り出され得る。低純度の酸素液体は、上昇する蒸気に対して補助カラム13を流れ落ち、その過程で、下降する液体内の窒素及びアルゴンが下降する液体から上昇する蒸気に剥ぎ取られ、その結果、補助カラム13の底部に高純度の酸素液体が生成され、補助カラム13の上部に残りの蒸気が生成される。残りの蒸気は、補助カラムの上部から取り出され、流れ126で低圧カラム11に渡される。)

(2)「At least a portion of the high purity oxygen vapor is passed up auxiliary column 13 as the aforesaid upflowing vapor. At least some of at least one of the high purity oxygen vapor and high purity oxygen liquid is recovered as product high purity oxygen. The embodiment of the invention illustrated in FIG. 1 illustrates the recovery of both high purity oxygen vapor and high purity oxygen liquid. In this embodiment a portion of the high purity oxygen vapor is withdrawn from the lower portion of auxiliary column 13 in stream 127, warmed by passage through main heat exchanger 17 and recovered as high purity oxygen product in stream 129. High purity oxygen liquid is withdrawn from the lower portion of auxiliary column 13 in stream 130 and recovered a high purity oxygen product. In a variation not illustrated in FIG. 1, high purity oxygen may be withdrawn from the auxiliary column as liquid, raised to a higher pressure, vaporized and the recovered as elevated pressure high purity oxygen product vapor.」(第6欄第第8〜25行)
(当審仮訳:高純度酸素蒸気の少なくとも一部は、前記上昇気流の蒸気として補助カラム13を通過する。高純度酸素蒸気及び高純度酸素液体の少なくとも一方の少なくとも一部は、製品高純度酸素として回収される。図1に示す本発明の実施形態では、高純度酸素蒸気と高純度酸素液体の両方を回収する例を示している。この実施形態では、高純度酸素蒸気の一部は、補助カラム13の下部から流路127で取り出され、主熱交換器17を通過することで暖められ、流路129で製品の高純度酸素として回収される。高純度酸素液体は、補助カラム13の下部から流路130で引き出され、高純度酸素製品として回収される。図1に図示されていない変形例では、高純度酸素が液体として補助カラムから取り出され、より高い圧力に上昇して気化し、上昇した圧力の高純度酸素製品蒸気として回収されてもよい。)

(3)「FIG. 3 illustrates another embodiment of the invention wherein reboiler 15 is driven by a portion of the feed air and the low purity oxygen feed to the auxiliary column is pressurized prior to introduction. As before the elements common with the previously described embodiments will not be discussed again in detail.
Referring now to FIG. 3, a portion 85 of feed air stream 57 is cooled by passage through supplemental heat exchanger 118 and resulting cooled stream 86 is passed into reboiler 15 wherein it is at least partially condensed by indirect heat exchange with the at least partially vaporizing high purity oxygen liquid. Resulting feed air stream 87 from reboiler 15 is passed into stream 81 and then into higher pressure column 10 as part of stream 82. All of low purity oxygen stream 120 is pressurized in liquid pump 19 and the portion of stream 120 which is passed into auxiliary column 13 is taken downstream of pump 19 as illustrated by stream 128. Remaining vapor withdrawn from the upper portion of auxiliary column 13 is not passed into column 11. Rather, as shown by stream 95, remaining vapor is passed through heat exchanger 118 and may be recovered as additional low purity oxygen. In the embodiment illustrated in FIG. 3, stream 95 is warmed by passage through heat exchanger 118 and resulting stream 130 is combined with stream 123 to form stream 131 for recovery. In addition a portion 115 of stream 110 is warmed by passage through heat exchanger 118 and removed from the system in stream 116.」(第6欄第51行〜第7欄第10行)
(当審仮訳:図3は、リボイラー15が供給空気の一部によって駆動され、補助カラムへの低純度酸素供給が導入前に加圧される、本発明の別の実施形態を示す。前述のように、先に説明した実施形態と共通する要素については、改めて説明しない。
次に、図3を参照すると、供給空気流れ57の一部85は、補助熱交換器118を通過することによって冷却され、その結果、冷却された流れ86は、リボイラー15に渡され、そこで、少なくとも部分的に気化している高純度酸素液体との間接的な熱交換によって少なくとも部分的に凝縮される。リボイラー15からの結果としての供給空気流れ87は、流路81に通され、次いで流路82の一部として高圧カラム10に通される。低純度酸素流120の全てが液体ポンプ19で加圧され、補助カラム13に渡される流れ120の部分は、流れ128で示されるようにポンプ19の下流に取り込まれる。補助カラム13の上側部分から取り出された残りの蒸気は、カラム11には渡されない。むしろ、流れ95で示されるように、残りの蒸気は、熱交換器118を通過し、追加の低純度酸素として回収されてもよい。図3に示す実施形態では、流れ95は、熱交換器118を通過することによって温められ、その結果、流れ130は、流れ123と組み合わされて、回収のための流れ131を形成する。されに、流れ110の一部115は、熱交換器118を通過することによって温められ、流れ116でシステムから取り出される。)

(4)「



第6 各無効理由についての当審の判断
事案に鑑み、無効理由3(実施可能要件違反の無効理由)、無効理由4(サポート要件違反の無効理由)、無効理由5(明確性要件違反の無効理由)、無効理由1(新規性欠如に関する無効理由)、無効理由2(進歩性欠如に関する無効理由)の順に検討する。

1 無効理由3(実施可能要件違反の無効理由)について
(1)実施可能要件適合性
ア 前記第4の2(3)によれば、本件発明に係る「空気分離方法」のための「空気分離装置」は、2種以上の純度の酸素を取り出すものであって、そのうち1種を低純度のガス酸素で取り出すことによって、低圧精留塔内の主凝縮器に必要な酸素の純度を低減でき、その結果、空気圧縮機の吐出圧の低減を図ることができ、該圧縮機の消費動力を低減できることにより、「空気分離装置」の稼動コストを従来よりも小さくすることができるものである。

イ 本件発明において用いられる装置は、前記第4の2(4)及び(7)によれば、「空気圧縮機」、「吸着器」、「主熱交換器」、「高圧精留塔」、「低圧精留塔」、「低圧精留塔」内に設けられた「主凝縮器」、「昇圧圧縮機」、「液酸ポンプ」、「空気凝縮器容器」及び「空気凝縮器容器」内に設けられた「空気凝縮器」を主として備え、「戻しライン」を備えない「空気分離装置」であり、それぞれの意味するところは、図面をもって具体的に示されている(【0023】、【図1】)。
また、工程についても、前記第4の2(4)及び(6)によれば、(i)「低圧精留塔」内で精留分離された液体酸素が、「空気凝縮器容器」内に供給され、「空気凝縮器容器」内で気化したガス酸素(低純度酸素)が、供給ライン(ガス酸素供給ライン)のみにより「主熱交換器」に送られて常温に戻された後、必要に応じて空気が混合されて酸素富化燃焼用酸素として外部(酸素富化炉)に供給されること(【0027】〜【0029】)、(ii)「空気凝縮器容器」内の液体酸素は、供給ライン(液体酸素供給ライン)のみにより「液酸ポンプ」に送られて必要圧に昇圧された後、「主熱交換器」で蒸発及び昇温されることによりガス酸素(高純度酸素)となり、酸化用酸素として外部(酸化炉)に供給されること(【0030】)、(iii)「空気凝縮器容器」内の液体酸素(高純度酸素)の抜き出し量は、例えば10%〜20%の間とすること(【0034】、【表1】、【0059】、【表3】〜【表5】)、(iv)液体酸素の純度は、例えば97.7〜88.6%とすること(【0034】、【表1】、【0059】、【表3】〜【表5】)が、具体的に示されている。
そして、前記第4の2(3)及び(4)によれば、以上のような「空気分離装置」では、必要とされる高純度酸素が全体の酸素の一部である場合に、必要とされる高純度酸素の純度を確保しつつ、「低圧精留塔」の「主凝縮器」から取り出す液体酸素の純度を低減し、低減分の酸素の沸点を下げることが可能となり、また、「低圧精留塔」内で液体酸素とガス窒素との間で行われる熱交換の温度差を大きくすることにより、「高圧精留塔」内の必要圧力を下げることができ、これにより、「空気圧縮機」の吐圧力を低減し、ひいては該圧縮機の消費動力の低減が可能となるので、「空気分離装置」の稼動コストを従来よりも抑えることができるとして、効果及びその機序の説明もされている(【0018】、【0032】、【0035】、【0036】)。

ウ 本件明細書の発明の詳細な説明には、前記ア及びイのことがその具体的な実施の形態も含めて記載されており、当業者は、これらの記載をみれば、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明を実施することができる。
よって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件に適合する。

(2)請求人の主張の検討
無効理由3における請求人の主張は、前記第2の1(2)ウのとおり、本件明細書において、液体酸素抜き出し量を10%以上80%以下とすることで、空気圧縮機圧力に臨界的意義があるかのように説明しているが、液体酸素抜き出し量が0%の場合、ガス酸素純度を70%とすると、空気凝縮容器からの液体酸素抜き出し量の変化に対して、空気圧縮機圧力は一律に増減し、その変化においてなんら臨界点を有しないから、訂正前の請求項1に係る発明において「容器内から取り出す液体酸素及びガス酸素の量比率は、前記液体酸素の比率を10%以上80%以下」としたことによって、空気圧縮機圧力を低減することはできないというものである。
しかしながら、当該主張は、本件発明が、「原料空気圧縮機の消費動力を低減して稼動コストをさらに低減することが強く望まれている」(前記第4の2(2)の【0009】)との課題を解決することができないことを主張するものであって、サポート要件違反に係るものといえるので、実施可能要件違反に係る主張としては適切でないから、当該主張は採用できない。
なお、当該主張については、後記「2 無効理由4(サポート要件違反の無効理由)について」の項目の(4)において改めて検討する。

(3)無効理由3に対する結論
以上のとおり、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号の規定する要件に適合するから、無効理由3は理由がない。

2 無効理由4(サポート要件違反の無効理由)について
(1)サポート要件の判断の枠組み
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。

(2)本件明細書の記載
ア 本件明細書には、前記第4の2(2)によれば、本件発明の課題として、従来の空気分離装置においては、空気圧縮機の消費動力をより低減し得る余地があったことから、これを更に進め、稼動コストを小さくすることができる空気分離装置を提供することであると記載されている(【0009】〜【0011】)。

イ 当該課題を解決するための手段としては、前記1(1)イの各構成からなる装置を用い、各工程からなる作業を行うことが記載されている(【0023】、【図1】、【0027】〜【0030】、【0034】、【表1】、【0059】、【表3】〜【表5】)。

ウ 本件発明の効果としては、前記第4の2(3)のとおり、本件発明の方法によれば、2種以上の純度の酸素を取り出すことができるところ、そのうち一種を低純度酸素(ガス酸素)で取り出すことによって、低圧精留塔内の主凝縮器に必要な酸素の純度を低純度とし、その結果、空気圧縮機の吐出圧を低減、ひいては、該圧縮機の消費動力を低減することができ、以上の結果、空気分離装置の稼動コストを従来よりも小さくすることができるということが記載されている(【0018】)。

(3)サポート要件適合性
ア 本件明細書には、前記(2)のとおり、空気分離装置の稼動コストを従来よりも小さくすることができるための方法について、用いられる装置の構成やその動作が記載され、具体的に説明されているから、空気分離装置を用いて酸素等を生産する当業者であれば、本件明細書の記載から、前記(2)アの課題を解決するために、前記(2)イの解決手段を備え、前記(2)ウの効果を奏することによって課題を解決することのできる発明を認識することができる。

イ 本件発明に係る特許請求の範囲の記載は、前記第4の1のとおりであるところ、本件明細書には、同発明が記載されており、当業者は、本件明細書の記載により本件発明の課題を解決できると認識することができる。

ウ 以上によれば、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるということができるから、その特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合する。

(4)請求人の主張の検討
ア 請求人の主張の概要
前記1(2)で検討したとおり、請求人の無効理由3に係る主張はサポート要件違反に係るものといえるので、無効理由4に係る主張と併せると、請求人の主張は、概略、以下のとおりのものといえる。

(ア)主張1
本件明細書の【表3】は、ガス酸素純度70%、液体酸素純度89%の条件で、訂正前の請求項1に係る発明の効果(「空気圧縮機」の圧力低減)を示したものであり、「空気凝縮器容器」下部には、酸素純度89%の液体酸素が生成され、「空気凝縮器容器」上部には、酸素純度70%のガス酸素が生成されていることを前提条件として、当該効果を比較したものと解されるところ、比較例としての「液体酸素抜き出し量」が100%の場合は、「空気凝縮器容器」上部には、酸素純度70%のガス酸素が存在した状態で、「空気凝縮器容器」下部から酸素純度89%の液体酸素を100%抜き出す場合を示している一方、「液体酸素抜き出し量」が0%の場合は、「空気凝縮器容器」上部から酸素純度89%のガス酸素を抜き出す場合が示されており、このときの「空気凝縮器容器」下部には、酸素純度が89%よりかなり高い濃度(請求人の試算では約95%)の液体酸素が存在する状態となるため、実施例と比較例は、明らかに異なる条件で比較しており、これでは、訂正前の請求項1に係る発明における実施例の優位性を示すことにはならず、【表3】において、一方の比較例(液体酸素抜き出し量が0%)が著しく信頼性を欠き、そもそも、何を比較しているのかわからず、技術的意味がない。
そして、前記比較において、実施例(液体酸素抜き出し量が10%〜80%)及び比較例(液体酸素抜き出し量が100%)と同じ条件で、比較例(液体酸素抜き出し量が0%)を検討すると、主凝縮器液体酸素純度は70%、空気圧縮機圧力は260kPaGと推定されるため、「空気圧縮機圧力」は、主凝縮器液体酸素純度が低くなれば、単純に低くなる関係にあり、結局、液体酸素抜き出し量はなんら臨界的意義を持たず、空気圧縮機圧力を低減するという効果を享受することはできない。
また、【表4】から【表8】についても同様に、比較例(液体酸素抜き出し量が0%)が実施例の優位性を示すデータとしての信頼性を著しく欠いているから、空気圧縮機圧力を低減するという効果を享受することはできない(審判請求書第55頁第8行〜第59頁第17行、第60頁第13行〜第61頁第5行、口頭審理陳述要領書第7頁第2行〜第9頁末行)。

(イ)主張2
前記(ア)のとおり、液体酸素抜き出し量はなんら臨界的意義を持たず、訂正前の請求項1に係る発明において「容器内から取り出す液体酸素及びガス酸素の量比率は、前記液体酸素の比率を10%以上80%以下」としたことによって、本件発明の課題を解決することができないから、訂正前の請求項1〜4に係る発明は、サポート要件を満足しない(審判請求書第55頁第8行〜第59頁第17行、第60頁第13行〜第61頁第5行、口頭審理陳述要領書第7頁第2行〜第9頁末行)。

(ウ)主張3
答弁書における被請求人の「本件特許発明では、2種以上の純度の酸素を製造することを前提としているから、空気凝縮器容器10からの液体酸素抜き出し量を0%としたうえで、純度89%の高純度酸素と、純度70%の低純度酸素を製造するには、空気分離装置で純度89%の高純度酸素を製造し、これを希釈等して純度70%の低純度ガスを製造すればよい。」との主張は、突如、希釈という技術を導入している点で、他の実施例と整合が取れておらず妥当ではないし、仮に希釈という技術を導入するのであれば、全ての実施例においても希釈した場合で比較すべきであり、具体的には、全量89%の液体酸素として抜き出し、そのうちガス酸素として抜き出す量についてのみ気化して希釈することとなるが、実施例において、そのようなことを行っていない以上、比較例において、希釈などという技術を導入すべきではない。
そもそも、仮に2種以上の純度の酸素を製造することを前提としても、全量を高純度にしたうえで、そのほとんどを低純度に希釈するなどといった無駄な方法はありえず、最初から、一部を高純度にしつつ、残部は低純度の酸素とする方法を採用すべきであり、被請求人の前記主張は、比較例として不合理な方法を採用することを述べるものであり、妥当ではない(口頭審理陳述要領書第10頁第1〜21行)。

イ 請求人の主張1に対する判断
前記(2)の検討を踏まえて、前記第4の2(6)の「実施例3」における【表3】をみると、【表3】は、本件発明の具体例として、純度が70%の「ガス酸素(低純度酸素)」、純度が89%の「液体酸素(高純度酸素)」の2種類の純度の酸素を取り出す「空気分離装置」において、「空気凝縮器容器」からの「液体酸素抜き出し量」を0%から100%の間で変化させたときの「主凝縮器液体酸素純度」及び「空気圧縮機圧力」を示すものであるといえるところ、「液体酸素抜き出し量」が100%の場合は、「ガス酸素(低純度酸素)」が抜き出されない、いわば、前記第4の2(9)の【図7】の従来技術に相当する運転形態の比較例といえ、「液体酸素抜き出し量」が10%以上20%以下の本件発明に係る実施例と比較して、「主凝縮器液体酸素純度」が89%となり、「空気圧縮機圧力」が高くなることが理解されるものである。
一方、「液体酸素抜き出し量」が「0%」の場合は、「液体酸素(高純度酸素)」が抜き出されない、いわば、前記第4の2(8)の【図6】の従来技術に相当する運転形態の比較例といえ、このときに「空気分離装置」から70%、89%の2種類の純度の酸素を取り出すのであれば、「主凝縮器液体酸素純度」を少なくとも89%とする必要があることは明らかである。
そして、「主凝縮器液体酸素純度」を少なくとも89%とするのであれば、「空気圧縮機圧力」を、「液体酸素抜き出し量」が100%の場合と同じかそれ以上とする必要があるから、「液体酸素抜き出し量」が10%以上20%以下の本件発明に係る実施例と比較して、「空気圧縮機圧力」が高くなることが理解されるものであり、このことは、【表3】の「液体酸素抜き出し量」が0%のときの「空気圧縮機圧力」が、100%のときの「空気圧縮機圧力」と同じ「381kPaG」とされていることと合致するものである。
そうしてみると、【表3】は、本件発明に係る実施例と従来技術に相当する運転形態の比較例との間の「空気圧縮機圧力」を比較しているのであって、何を比較しているのかが不明であるとはいえない。
また、請求人が主張するように、「液体酸素抜き出し量」が「0%」のときの「ガス酸素(低純度酸素)」純度を70%と解した場合には、純度89%の高純度酸素が取り出せなくなることは明らかであって、「空気分離装置」から2種類の純度の酸素を取り出すという本件発明の前提となる構成と合致しないから、「液体酸素抜き出し量」が「0%」のときの「ガス酸素(低純度酸素)」純度を70%と解することはできない。
そうすると、【表3】は、本件発明に係る実施例と従来技術に相当する運転形態の比較例との間の「空気圧縮機圧力」を比較するものであって、【図6】の従来技術に相当する運転形態といえる「液体酸素抜き出し量」が「0%」の比較例や、【図7】の従来技術に相当する運転形態といえる「液体酸素抜き出し量」が「100%」の比較例に対して、「液体酸素抜き出し量」が10%以上20%以下の本件発明に係る実施例の場合には、「空気圧縮機圧力」が小さくなることによって、前記(2)アの課題を解決でき、前記(2)ウの効果を奏することを開示するものといえ、このことは、【表4】〜【表8】についても同様である。
したがって、請求人の主張1は採用できない。

ウ 請求人の主張2に対する判断
本件発明の課題は、前記(2)アのとおりであり、その課題解決手段は、前記(2)イのとおりであって、本件発明が、発明の詳細な説明により当業者が当該課題を解決できると認識できる範囲内のものであるといえることは、前記(3)で検討したとおりである。
すなわち、本件発明1における課題解決手段は、前記第4の1に記載された本件発明1の発明特定事項の全部に対して判断されるものであるところ、請求人の主張2は、この課題解決手段を、本件発明1の発明特定事項の一部である「前記容器内から取り出す前記液体酸素及び前記ガス酸素の量比率は、前記液体酸素の比率を10%以上20%以下」とすることに限定して主張するものであるから、失当である。
したがって、請求人の主張2も採用できない。

エ 請求人の主張3に対する判断
前記第4の2(1)、(8)及び(9)によれば、本件明細書及び図面には、従来技術として、高純度酸素を製造してから、その一部に空気等を添加して、低純度酸素とすることが記載されているから、答弁書における被請求人の主張は、本件明細書及び図面に記載されている従来技術に基づくものであって、突如、希釈という技術を導入するものではない。
また、本件発明は、従来技術で必要とされた希釈を行うことなく低純度酸素を製造できるものであって、従来技術で希釈が行われているからといって、本件発明の実施例においても希釈を行わなければならない理由はないし、希釈を行う従来技術を本件発明の比較例とすることが不合理であるともいえない。
したがって、請求人の主張3も採用できない。

(5)無効理由4に対する結論
以上のとおり、本件特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合するから、無効理由4は理由がない。

3 無効理由5(明確性要件違反の無効理由)について
本件訂正により、本件発明1は、「前記容器内の熱交換部に昇圧空気を供給する」との発明特定事項を有するものとなり、「空気」に関する記載は削除されたので、本件発明1は明確である。
このことは、本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明2及び3についても同様である。
よって、本件特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号に規定する要件に適合するから、無効理由5は理由がない。

4 無効理由1(新規性欠如に関する無効理由)について
(1)甲第1号証に記載された発明(甲1発明)
ア(ア)甲第1号証には、前記第5の1(2)によれば、低純度酸素及び高純度酸素を精製するための原料空気の極低温精留に関する事項が記載されているといえ、前記第5の1(4)によれば、低純度酸素及び高純度酸素を精製する方法に係る発明が記載されており、当該方法は、(A)高純度酸素との間接的な熱交換によって原料空気を部分的に凝縮して、液体原料空気及びガス原料空気を精製し、(B)ガス原料空気をターボ膨張し、ターボ膨張したガス原料空気を中圧塔に導入し、(C)中圧塔内の原料空気を極低温精留により分離して窒素富化流体及び酸素富化流体を精製し、窒素富化流体及び酸素富化流体を低圧塔に導入し、(D)低圧塔内で極低温精留により窒素超富化流体及び酸素超富化流体を精製し、低圧塔から酸素超富化流体を側塔に導入し、(E)側塔内で極低温精留により酸素超富化流体を低純度酸素と高純度酸素に分離し、側塔から低純度酸素を回収し、側塔から高純度酸素を回収するものである。

(イ)また、甲第1号証には、前記(ア)の方法に係る発明の1つの好ましい実施形態の概略図として(前記第5の1(7))、図1(Fig.1、前記第5の1(18))が記載され、同図に図示された装置を用いた方法は、前記第5の1(7)に記載されているように、水蒸気、二酸化炭素及び炭化水素のような高沸点不純物が洗浄され、一般に50〜60ポンド/平方インチ絶対圧(psia)の範囲内に圧縮された原料空気60は、主熱交換器1を通過することにより、戻り流れとの間接熱交換によって冷却され、得られた冷却された原料空気流61は、側塔11の底部リボイラー20に導入され、側塔11の高純度酸素を含む底部液体との間接熱交換によって部分的に凝縮されるものであり、底部リボイラー20内の原料空気の部分凝縮は、液体原料空気及び残りのガス原料空気を精製し、2相流62で相分離器40に通されるものである。
そして、前記第5の1(8)〜(12)、(14)及び(15)に記載されているように、底部リボイラー20内の原料空気の部分凝縮の結果生じるガス原料空気は、ターボ膨張され、次いで、中圧塔10の下部に導入され、中圧塔10内の原料空気は、極低温精留により、窒素富化気化ガス及び酸素富化液体に分離され、窒素富化液体は、中圧塔10の上部から低圧塔12の上部に流入し、酸素富化液体は、中圧塔10の下部から低圧塔12に導入され、低圧塔12内で、窒素富化気化ガス及び酸素富化液体は、極低温精留によって、窒素超富化流体と酸素超富化流体とに分離され、酸素超富化流体は、液体流91により低圧塔12の下部から抜き出され、平衡段を備えた側塔11の上部に導入され、側塔11内の極低温精留により、低純度酸素と高純度酸素とに分離され、頂部気化ガス流が側塔の上部から低圧塔の下部に導入されるものであり、高純度酸素は、側塔11の底部で液体として集まり、前述の底部リボイラー内の原料空気の部分凝縮が行われると共に、液体の一部が気化されて気化ガスとなり、液体は、流れ106により側塔11から抜き出され、流れ106の一部分107は製品高純度液体酸素として回収され、流れ106の他の部分108は、液体ポンプ34を通過することによってより高い圧力に圧送され、得られた加圧流109は、主熱交換器1を通過することによって気化され、流れ110により製品高圧高純度酸素ガスとして回収され、一方、低純度酸素は、高純度酸素が側塔11から抜き取られる位置よりも15〜25平衡段高い位置で、側塔11から流れ103により液体として抜き出され、液体ポンプ35を通過することにより高い圧力に圧送され、主熱交換器1を通過することによって気化され、製品高圧低純度酸素ガスが流れ105により回収されるものである。

(ウ)さらに、甲第1号証には、前記第5の1(13)に、「低純度酸素及び高純度酸素のいずれか又は両方は、回収のために、液体又は気化ガスとして側塔11から抜き出されてもよい。」と記載されていることから、判決の判示をふまえると、前記(イ)の図1に記載された形態(あくまで1つの好ましい実施形態として記載されたもの)のほかにも、その変形例として、低純度酸素を側塔11から液体又は気化ガスとして抜き出すことが記載されているに等しいというべきである。

(エ)そして、このような変形例にあっても、前記第5の1(16)に記載されているように、低純度酸素製品に加えて、大量の高純度酸素製品を回収することができ、気体及び/又は液体形態で回収される高純度酸素製品の量は、気体及び/又は液体形態で回収される低純度酸素製品の量の0.5〜1.0倍であるものということができるし、さらに、前記第5の1(6)によれば、高純度酸素は、98モル%を超える酸素濃度を有する流体であり、低純度酸素は、50〜98モル%の範囲内の酸素濃度を有する流体ともいえる。

イ 前記アの記載事項を、前記変形例に注目して整理すると、甲第1号証には、
「(A)高純度酸素との間接的な熱交換によって原料空気を部分的に凝縮して、液体原料空気及びガス原料空気を精製し、(B)ガス原料空気をターボ膨張し、ターボ膨張したガス原料空気を中圧塔に導入し、(C)中圧塔内の原料空気を極低温精留により分離して、窒素富化流体及び酸素富化流体を精製し、窒素富化流体及び酸素富化流体を低圧塔に導入し、(D)低圧塔内で極低温精留により、窒素超富化流体及び酸素超富化流体を精製し、低圧塔から酸素超富化流体を側塔に導入し、(E)側塔内で極低温精留により、酸素超富化流体を低純度酸素と高純度酸素に分離し、側塔から低純度酸素を回収し、側塔から高純度酸素を回収する、低純度酸素及び高純度酸素を精製する方法であって、
水蒸気、二酸化炭素及び炭化水素のような高沸点不純物が洗浄され、一般に50〜60ポンド/平方インチ絶対圧(psia)の範囲内に圧縮された原料空気は、主熱交換器を通過することにより冷却され、得られた冷却された原料空気流は、側塔の底部リボイラーに導入され、側塔の高純度酸素を含む底部液体との間接熱交換によって部分的に凝縮され、底部リボイラー内の原料空気の部分凝縮は、液体原料空気及び残りのガス原料空気を精製し、
2相流で相分離器に通され、底部リボイラー内の原料空気の部分凝縮の結果生じるガス原料空気は、ターボ膨張され、次いで、中圧塔の下部に導入され、
中圧塔内の原料空気は、極低温精留により、窒素富化気化ガス及び酸素富化液体に分離され、窒素富化液体は、中圧塔の上部から低圧塔の上部に流入し、酸素富化液体は、中圧塔の下部から低圧塔に導入され、
低圧塔内で、窒素富化液体及び酸素富化液体は、極低温精留によって、窒素超富化流体と酸素超富化流体とに分離され、酸素超富化流体(液体)は、低圧塔の下部から抜き出され、平衡段を備えた側塔の上部に導入され、
側塔内の極低温精留により、酸素超富化流体(液体)は、低純度酸素と高純度酸素とに分離され、頂部気化ガス流が側塔の上部から低圧塔の下部に導入され、
98モル%を超える酸素濃度を有する高純度酸素は、側塔の底部で液体として集まり、前述の底部リボイラー内の原料空気の部分凝縮が行われると共に、液体の一部が気化されて気化ガスとなり、液体は側塔から抜き出され、その一部分は高純度液体酸素製品として回収され、他の部分は、液体ポンプを通過することによってより高い圧力に圧送され、得られた加圧流は、主熱交換器を通過することによって気化され、高圧高純度酸素ガス製品として回収され、
50〜98モル%の範囲内の酸素濃度を有する低純度酸素は、高純度酸素が側塔から抜き取られる位置よりも高い位置で側塔から液体又は気化ガスとして抜き出され、主熱交換器を通過して、高圧低純度酸素ガス製品が回収され、
低純度酸素製品に加えて、大量の高純度酸素製品を回収することができ、気体及び/又は液体形態で回収される高純度酸素製品の量は、気体及び/又は液体形態で回収される低純度酸素製品の量の0.5〜1.0倍である、方法。」
の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

(2)本件発明1について
ア 甲1発明との対比
(ア)本件発明1と甲1発明とを対比すると、両者の対応関係は、次のとおりに解することができる。
・甲1発明の「主熱交換器」、「中圧塔」及び「低圧塔」は、本件発明1の「主熱交換器」、「1塔」の「高圧精留塔」及び「低圧精留塔」にそれぞれ相当する。
・甲1発明の「(A)高純度酸素との間接的な熱交換によって原料空気を部分的に凝縮して、液体原料空気及びガス原料空気を精製し、(B)ガス原料空気をターボ膨張し、ターボ膨張したガス原料空気を中圧塔に導入し、(C)中圧塔内の原料空気を極低温精留により分離して、窒素富化流体及び酸素富化流体を精製し、窒素富化流体及び酸素富化流体を低圧塔に導入し、(D)低圧塔内で極低温精留により、窒素超富化流体及び酸素超富化流体を精製し、低圧塔から酸素超富化流体を側塔に導入し、(E)側塔内で極低温精留により、酸素超富化流体を低純度酸素と高純度酸素に分離し、側塔から低純度酸素を回収し、側塔から高純度酸素を回収する、低純度酸素及び高純度酸素を精製する方法」は、この(A)工程に供される原料空気が、具体的には「主熱交換器を通過することにより冷却され、得られた冷却された原料空気」であることから、本件発明1の「前記原料空気を用いて熱交換を行う主熱交換器と、前記原料空気を酸素及び窒素に分離する高圧精留塔及び低圧精留塔とを有する空気分離装置を用いて原料空気から酸素を回収する空気分離方法」に相当する。
・甲1発明の「側塔」は、「低圧塔の下部から抜き出され」た「酸素超富化流体(液体)」が「導入」されるから、本件発明1の「前記低圧精留塔から液体酸素が導入され」る「容器」に相当する。
・甲1発明の「側塔の底部リボイラー」は、前記第5の1(5)によれば、リボイラーが熱交換装置を意味していることから、本件発明1の「容器」に設けられた「熱交換部」に相当する。
・甲1発明の「一般に50〜60ポンド/平方インチ絶対圧(psia)の範囲内に圧縮された原料空気は、主熱交換器を通過することにより冷却され、得られた冷却された原料空気流は、側塔の底部リボイラーに導入され、側塔の高純度酸素を含む底部液体との間接熱交換によって部分的に凝縮され、底部リボイラー内の原料空気の部分凝縮は、液体原料空気及び残りのガス原料空気を精製し、2相流で相分離器に通され、底部リボイラー内の原料空気の部分凝縮の結果生じるガス原料空気は、ターボ膨張され、次いで、中圧塔の下部に導入され」るためには、原料空気を「50〜60ポンド/平方インチ絶対圧(psia)の範囲内に圧縮された原料空気」にするための「空気圧縮機」、前記圧縮された原料空気を側塔の底部リボイラーに導入するための「ライン」、及び、底部リボイラーからのガス原料空気を中圧塔に導入するための「ライン」が使用されていることは明らかであるから、甲1発明は、本件発明1の「原料空気を圧縮する空気圧縮機」、「前記容器内の熱交換部に昇圧空気を供給する空気供給ライン」、「前記熱交換部で前記液体酸素と熱交換した空気を前記高圧精留塔に導入するライン」を備えることを満足する。
・甲1発明の「高純度酸素は、側塔の底部で液体として集まり、前述の底部リボイラー内の原料空気の部分凝縮が行われると共に、液体の一部が気化されて気化ガスとな」ることは、本件発明1の「前記熱交換部は前記液体酸素を用いて熱交換を行うことによりガス酸素を生成」することに相当する。
・甲1発明の「高純度酸素は、側塔の底部で液体として集まり」、「液体は側塔から抜き出され、その一部分は高純度液体酸素製品として回収され、他の部分は、液体ポンプを通過することによってより高い圧力に圧送され、得られた加圧流は、主熱交換器を通過することによって気化され、高圧高純度酸素ガス製品として回収され」るためには、側塔の高純度酸素の液体を、そのまま高純度液体酸素製品として回収するための「ライン」、及び、同液体を、主熱交換器に供給し、最終的に高圧高純度酸素ガス製品として回収するための「ライン」がそれぞれ使用されていることは明らかであるから、甲1発明は、本件発明1の「前記容器内の前記液体酸素」を「前記主熱交換器に」「供給する液体酸素供給ライン」を備え、「前記液体酸素供給ラインを介して」「高純度酸素を回収」する構成を有するものといえる。
・甲1発明の「低純度酸素は、高純度酸素が側塔から抜き取られる位置よりも高い位置で側塔から液体又は気化ガスとして抜き出され、主熱交換器を通過して、高圧低純度酸素ガス製品が回収され」るためには、側塔の低純度酸素の液体又は気化ガスを主熱交換器に供給し、最終的に高圧低純度酸素ガス製品として回収するための「ライン」のみが使用されていることは明らかであるから、甲1発明は、本件発明1の「前記容器内」の「前記ガス酸素とを前記主熱交換器に」「供給する」「ガス酸素供給ライン」を備え、「前記ガス酸素供給ラインを介してのみ前記高純度酸素よりも相対的に純度の低い低純度酸素を回収する」ことを満足する。

(イ)以上の点に照らすと、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、それぞれ、次のように認定することができる。
<一致点>
「原料空気を圧縮する空気圧縮機と、
前記原料空気を用いて熱交換を行う主熱交換器と、
前記原料空気を酸素及び窒素に分離する高圧精留塔及び低圧精留塔と
を有する空気分離装置を用いて原料空気から酸素を回収する空気分離方法であって、
前記空気分離装置に備えられた前記高圧精留塔は1塔であり、
前記空気分離装置は、
前記低圧精留塔から液体酸素が導入されかつ熱交換部が設けられた容器、
前記容器内の熱交換部に昇圧空気を供給する空気供給ライン、
前記熱交換部で前記液体酸素と熱交換した空気を前記高圧精留塔に導入するラインを備え、
前記熱交換部は前記液体酸素を用いて熱交換を行うことによりガス酸素を生成し、前記容器内の前記液体酸素と前記ガス酸素とを前記主熱交換器にそれぞれ供給する液体酸素供給ライン及びガス酸素供給ラインをさらに備え、
前記液体酸素供給ラインを介して高純度酸素を回収し、
前記ガス酸素供給ラインを介してのみ前記高純度酸素よりも相対的に純度の低い低純度酸素を回収する空気分離方法。」である点。
<相違点1>
本件発明1では、「前記容器内から取り出す前記液体酸素及び前記ガス酸素の量比率は、前記液体酸素の比率を10%以上20%以下とし、前記ガス酸素の比率を80%以上90%以下」としているのに対して、甲1発明では、「気体及び/又は液体形態で回収される高純度酸素製品の量は、気体及び/又は液体形態で回収される低純度酸素製品の量の0.5〜1.0倍である」点。
<相違点2>
本件発明1では、「前記容器内のガス酸素を前記低圧精留塔に戻す戻しラインを備え」ていないのに対して、甲1発明では、「頂部気化ガス流が側塔の上部から低圧塔の下部に導入され」るように構成されている点。
<相違点3>
本件発明1では、「前記液体酸素供給ラインを介してのみ高純度酸素を回収」しているのに対して(なお、この高純度酸素は主熱交換器を経て得られたガス酸素である。)、甲1発明では、側塔の高純度酸素の液体の回収経路としては、主熱交換器に供給し、最終的に「高圧高純度酸素ガス製品」として回収するための「ライン」を介する経路のほかに、同液体をそのまま「高純度液体酸素製品」として回収するための「ライン」を介する経路が存在し、この二つのラインを介し高純度酸素を回収している点。
<相違点4>
本件発明1の高純度酸素は、「純度97.7%以下」であるのに対して、甲1発明の高純度酸素は、「98モル%を超える酸素濃度」である点。

イ 相違点の検討
相違点1〜4がそれぞれ実質的なものであるか否かについて検討する。

(ア)相違点1について
甲1発明は、「気体及び/又は液体形態で回収される高純度酸素製品の量は、気体及び/又は液体形態で回収される低純度酸素製品の量の0.5〜1.0倍」である方法であるところ、側塔から抜き出す低純度酸素は液体又は気化ガスであるため、回収される高純度酸素製品と低純度酸素製品の量比率と、容器内から取り出す液体酸素とガス酸素の量比率は必ずしも同じではないから、甲1発明における「容器内から取り出す液体酸素及びガス酸素の量比率」は明らかではない。
したがって、甲1発明は、「前記容器内から取り出す前記液体酸素及び前記ガス酸素の量比率は、前記液体酸素の比率を10%以上20%以下とし、前記ガス酸素の比率を80%以上90%以下」である方法ということはできず、相違点1は実質的な相違点である。
そして、甲1発明では、側塔の底部から抜き出された高純度酸素はすべて液体形態であり、最終的にその一部分が高純度液体酸素製品として、他の部分が高圧高純度酸素ガス製品として、それぞれ回収されていることから、「気体及び/又は液体形態で回収される高純度酸素製品の量」は、側塔の底部から抜き出された液体形態の高純度酸素の量に等しく、また、仮に、側塔から抜き出される低純度酸素が気体形態(気化ガス)で抜き出される場合について検討すると、側塔から抜き出された気体形態の低純度酸素は、最終的に高圧低純度酸素ガス製品として回収されることから、側塔から抜き出された気体形態の低純度酸素の量は、「気体及び/又は液体形態で回収される低純度酸素製品の量」に等しいといえる。
そうしてみると、甲1発明の「気体及び/又は液体形態で回収される高純度酸素製品の量は、気体及び/又は液体形態で回収される低純度酸素製品の量の0.5〜1.0倍である」ことは、側塔の底部から抜き出された液体形態の高純度酸素(液体酸素)の量が、側塔から抜き出された気体形態の低純度酸素(ガス酸素)の量の0.5〜1.0倍であることを意味しているといえ、両者の量比率は、換算すると、液体酸素の比率が33.3〜50%、ガス酸素の比率が50〜66.7%になるから、仮に、側塔から抜き出される低純度酸素が気体形態である場合について検討しても、本件発明1が規定する「前記容器内から取り出す前記液体酸素及び前記ガス酸素の量比率は、前記液体酸素の比率を10%以上20%以下とし、前記ガス酸素の比率を80%以上90%以下」とは数値範囲が明らかに異なるため、相違点1は実質的な相違点といえる。

(イ)相違点2〜4について
相違点2は、「戻しライン」を有するか否かという実質的なものであるし、相違点3は、高純度酸素の回収に「液体酸素供給ライン」以外の「ライン」を使用するか否かという実質的なものである。また、相違点4は、高純度酸素の純度の基準が明らかに異なっている。
したがって、相違点2〜4は、いずれも実質的な相違点であるといえる。

ウ 小括
以上のとおり、相違点1〜4はいずれも実質的なものであるから、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるといえない。

(3)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の特定事項を全て含むものであるから、前記(2)に示した理由と同様の理由により、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明であるといえない。

(4)無効理由1に対する結論
以上のとおり、本件発明1及び2は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当しないから、無効理由1は理由がない。

5 無効理由2(進歩性欠如に関する無効理由)について
(1)本件発明1について
ア 甲1発明との対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、両者の一致点及び相違点は、それぞれ、前記4(2)ア(イ)で認定したとおりである。

イ 相違点の検討
前記相違点1〜4に係る本件発明1の特定事項の容易想到性について検討する。

(ア)相違点1について
a 上記4(2)イ(ア)で検討したとおり、甲1発明における「容器内から取り出す液体酸素及びガス酸素の量比率」は不明であり、甲第1号証には、「気体及び/又は液体形態で回収される高純度酸素製品の量は、気体及び/又は液体形態で回収される低純度酸素製品の量の0.5〜1.0倍」であることは記載されていても、「容器内から取り出す液体酸素とガス酸素の量比率」を調整することについては記載も示唆もされていないから、甲1発明において、「前記容器内から取り出す前記液体酸素及び前記ガス酸素の量比率は、前記液体酸素の比率を10%以上20%以下とし、前記ガス酸素の比率を80%以上90%以下」とすることは当業者が容易に行うことではない。

b また、甲1発明は、従来から低純度酸素と共にいくらかの高純度酸素を精製することは可能であったが、従来のシステムでは低純度酸素と共に効果的に大量の高純度酸素を精製できなかったことにかんがみてなされたものであって、その目的は、低純度酸素と高純度酸素の両方を高回収率で効果的に精製することができる極低温精留システムを提供することである(前記第5の1(3))。そして、甲1発明の実施により、低純度酸素に加えて、大量の高純度酸素を回収することができるものであって、この大量の高純度酸素(気体及び/及び液体形態で回収される高純度酸素製品)の程度は、通常、気体及び/又は液体形態で回収される低純度酸素製品の量の0.5〜1.0倍である(前記第5の1(16))。ここで、これら高純度酸素製品と低純度酸素製品の量比率は、前記4(2)イ(ア)で検討したとおり、仮に、側塔から抜き出す低純度酸素が気体形態で抜き出されたとしても、側塔の底部から抜き出された液体形態の高純度酸素(液体酸素)と側塔から抜き出された気体形態の低純度酸素(ガス酸素)との量比率に換算すると、液体酸素の比率が33.3〜50%、ガス酸素の比率が50〜66.7%にあたるものである。
そうすると、甲1発明は、従来のようないくらかの高純度酸素の精製・回収ではなく、大量の高純度酸素の精製・回収を主目的としたものであって、当該大量の高純度酸素の程度は、仮に、側塔から抜き出す低純度酸素が気体形態で抜き出されたとしても、液体酸素の比率に換算して33.3〜50%にまで及ぶような量であると理解するのが合理的である。そして、このような理解に照らせば、当該液体酸素の比率を低下させることは、前記主目的とは逆行する技術的思想にあたるため、甲1発明が予定するところではないと考えるのが合理的である。
そうである以上、甲1発明における前記液体酸素の比率「33.3〜50%」を「10〜20%」に減少させること(これに合わせてガス酸素の比率「50〜66.7%」を「80〜90%」に増加させること)は、当業者が容易に想到し得るような事項であるといえない。

c 仮に、甲1発明が、前記液体酸素(側塔の底部から抜き出された液体形態の高純度酸素)の比率が「33.3%」未満の場合を許容しているとしても、本件発明1のように同比率が「10〜20%」にまで低減された形態について、これが甲1発明の主目的に係る「大量の高純度酸素」にあたるとは直ちにいえないため、前記相違点1に係る本件発明1の特定事項を容易想到の事項であるということはできない。以下、この点について詳述する。
まず、甲1発明の主目的については、前記bのとおり、従来のシステムでは得ることができないような大量の高純度酸素を精製・回収することであるということができる。
そして、甲第7号証には、前記第5の4(1)〜(4)によれば、2つのリボイラーを有する低圧分留手段と高圧分留手段とを内蔵した二重精留塔を含む装置を用いて、高純度酸素及び低純度酸素を同時に製造する方法において、高純度酸素を最大30%の比率で製造できることが記載されているが、前記装置は、甲1発明のような側塔を備えた空気分離装置でないため、甲第7号証は、高純度酸素を大量に精製・回収することを目的とするにあたり、側塔から取り出す高純度酸素(液体酸素)の比率を「10〜20%」、低純度酸素(ガス状酸素)の比率を「80〜90%」として回収することについて記載ないし示唆するものではない。
また、甲第3号証(前記第5の3参照)、甲第8号証(前記第5の5参照)、甲第10号証(前記第5の6参照)及び甲第11号証(前記第5の7参照)は、空気分離装置を用いて原料空気から低純度酸素及び高純度酸素を同時に製造する方法を記載するものであるが、大量の高純度酸素を精製・回収することについて記載ないし示唆するものではない。さらに、甲第2号証、甲第4号証、甲第5号証及び甲第9号証は、そもそも空気分離装置を用いて原料空気から低純度酸素及び高純度酸素を同時に製造する方法を開示するものではない。
したがって、これらの証拠を参酌しても、側塔を備えた空気分離装置を用いて低純度酸素及び高純度酸素を同時に製造する技術分野において、側塔から取り出す高純度酸素の比率を「10〜20%」で精製・回収することが、甲1発明が目的とする大量の高純度酸素を精製・回収することに該当するとまではいえない。
そうである以上、大量の高純度酸素の精製・回収を目的とする甲1発明において、側塔から取り出す液体酸素の比率を「33.3〜50%」から33.3%未満に変更することが仮に排除されていないとしても、33.3%未満からさらに進んで「10〜20%」まで低減させること、そして、これに合わせて、ガス酸素(側塔から抜き出された気体形態の低純度酸素)の比率を「80〜90%」に増加させることは、当業者が容易に想到し得るような事項であるといえない。

d さらに加えて、本件発明1は、相違点1に係る特定事項を有することにより、前記第4の2(2)及び(3)のとおり、低圧精留塔内の主凝縮器に必要な酸素の純度を低減でき、その結果、空気圧縮機の吐出圧の低減を図ることができ、該圧縮器の消費動力を低減でき、空気分離装置の稼働コストを従来よりも小さくすることができるものであるところ、甲第1号証及び上記cで検討した各甲号証の記載を検討しても、低圧精留塔内の主凝縮器に必要な酸素の純度を低減し、その結果、空気圧縮機の吐出圧の低減を図り、該圧縮器の消費動力を低減し、空気分離装置の稼働コストを従来よりも小さくすることを目的として、「前記容器内から取り出す前記液体酸素及び前記ガス酸素の量比率は、前記液体酸素の比率を10%以上20%以下とし、前記ガス酸素の比率を80%以上90%以下」とすることは記載も示唆もされていない。
したがって、甲1発明において、空気分離装置の稼働コストを従来よりも小さくするとの目的のために「前記容器内から取り出す前記液体酸素及び前記ガス酸素の量比率は、前記液体酸素の比率を10%以上20%以下とし、前記ガス酸素の比率を80%以上90%以下」とすることも当業者が容易に想到し得るような事項であるとはいえない。

e 以上のとおりであるから、「気体及び/又は液体形態で回収される高純度酸素製品の量は、気体及び/又は液体形態で回収される低純度酸素製品の量の0.5〜1.0倍」である方法の甲1発明において、「前記容器内から取り出す前記液体酸素及び前記ガス酸素の量比率は、前記液体酸素の比率を10%以上20%以下とし、前記ガス酸素の比率を80%以上90%以下」とすることは、当業者が容易に想到し得る事項ではない。

(イ)相違点2について
まず、甲1発明において、「頂部気化ガス流が側塔の上部から低圧塔の下部に導入され」るようなライン(以下、「甲1ライン」という。)が設けられている意義について考える。
甲第1号証には、「大量の高純度酸素の精製は、低純度液体酸素を側塔11の底部より上方から抜き出すことによって可能となる。この酸素の回収は、その底部に位置するリボイラー20から側塔内に上昇する気化ガス量(V)と比較して、その点よりも下に下降する液体量(L)を減少させる。側塔11の底部から取られた液体酸素流106について達成され得る純度は、流れ103が除去される地点より下の側塔11内のVに対するLの比によって制限される。この比が大きいほど、不純な流れ106がより多くなる。流れ103を抜き取ることにより、結果としてVに対するLの比が減少するため、側塔11の底部からの高純度酸素の精製が促進される。」との記載(前記第5の1(17))がある。
この記載は、甲1発明の側塔内における、上昇する気化ガスによる精留分離効果について記載したものと解される。
すなわち、この側塔内においては、底部リボイラーにより気化した気化ガスの上昇流と液体酸素の下降流が向流接触し、その際、気化ガスによって液体酸素の純度が高められるという精留分離効果が奏されるところ(甲第8号証の【0015】の記載(前記第5の5(1))、甲第11号証の第5欄第36〜54行の記載(前記第5の7(1))、さらには本件明細書の【0050】の記載(前記第4の2(5))も参酌した。)、前記記載は、この精留分離効果を担保するためには、当該上昇気化ガス流量と下降液体流量を所定の量比とすること(液体酸素の純度を高めるためには相応の上昇気化ガス流量が必要となること)を教示するものと解される。
そうすると、このような教示に照らせば、前記のとおり大量の高純度酸素の精製・回収をもたらす手法として甲第1号証に明示された、低純度液体酸素を側塔11の底部より上方から抜き出す手法はもとより、「甲1ライン」により頂部気化ガス流を側塔から低圧塔に戻す手法についても、上昇気化ガス流量の相対量を増加させて前記精留分離効果を促進するものであるから、同様の効用をもたらす手法と理解するのが合理的である。加えて、この「甲1ライン」は、側塔上部に存在する極低純度のガス酸素をそのまま「低純度酸素」として回収するのではなく、再び低圧塔に戻して高純度酸素の精製・回収を図るためのものであるから、いずれにしても前記「甲1ライン」は、前記(ア)の甲1発明の主目的の達成に大きく寄与しているものと解するのが相当である。
なお、請求人は、令和3年6月30日提出の審判事件弁駁書第4〜5頁の「(イ)」の項において、このような「甲1ライン」についての理解は、本件明細書の段落【0050】の記載と齟齬する旨主張するが、同段落の記載は、「液体酸素の取り出し量がガス酸素の取り出し量に対して大きくなる場合」、精留分離効果を高めるために、戻しラインを使用することにより、上昇するガス酸素流量を増やして、上昇流と下降流の量比を適切に調整することができること(相応の上昇気化ガス流量が確保できること)について記載したものであって、前記の理解と齟齬するものではない。
このような「甲1ライン」の意義に照らすと、甲1発明の「頂部気化ガス流が側塔の上部から低圧塔の下部に導入され」るように構成されている部分(「甲1ライン」)は、甲1発明の主目的の達成において重要な役割を果たすものである以上、これをわざわざ取り除くことは、当該主目的の達成とは逆行する行為であるといわざるを得ない。
しかも、前記(ア)cで検討したとおり、甲第3号証、甲第7号証、甲第8号証、甲第10号証及び甲第11号証には、空気分離装置を用いて原料空気から低純度酸素及び高純度酸素を同時に製造する方法が記載されているものの、甲第7号証は、甲1発明のような側塔を備えた空気分離装置を使用することについて、また、甲第3号証、甲第8号証、甲第10号証及び甲第11号証は、大量の高純度酸素を精製・回収することについて、それぞれ記載するものではないし、さらに、甲第2号証、甲第4号証、甲第5号証及び甲第9号証には、そもそも空気分離装置を用いて原料空気から低純度酸素及び高純度酸素を同時に製造する方法について記載されていないため、甲1発明のような側塔を備えた空気分離装置において、側塔から低圧精留塔への戻しラインを備えることなく、大量の高純度酸素を精製・回収することが、本件出願当時における周知技術ないし公知技術であるともいえない。
したがって、甲第1号証の記載事項はもとより、甲第2号証及び甲第3号証の記載事項、並びに、甲第4号証、甲第5号証、甲第7号証〜甲第11号証に記載された周知技術を参酌しても、甲1発明において、当該「甲1ライン」を取り除くことが、当業者が容易に想到する事項であるとはいえない。

(ウ)相違点3について
甲第1号証には、前記第5の1(16)に摘示したとおり、「一般に、本発明の実施では、気体及び/又は液体形態で回収される高純度酸素の量は、気体及び/又は液体形態で回収される低純度酸素の量の0.5〜1.0倍である。」と記載されており、高純度酸素製品は、液体形態及び液体形態として回収されるだけでなく、気体形態のみで回収されることも、液体形態のみで回収されることも可能であることが示唆されている。
そうしてみると、甲1発明において、高純度酸素製品として、気体形態の高純度酸素製品のみを回収することは、当業者が所望する製品形態に応じて適宜選択し得ることであるというべきである。そして、その場合、当然のことながら、「高純度液体酸素製品」として回収するための「ライン」は使用されず、「高圧高純度酸素ガス製品」として回収するための「ライン」のみが使用されることになるから、甲1発明において、相違点3に係る本件発明1の特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。

(エ)相違点4について
甲第1号証には、前記第5の1(6)に摘示したとおり、「本明細書で使用する『低純度酸素』という用語は、50〜98モル%の範囲内の酸素濃度を有する流体を意味する。本明細書で使用する『高純度酸素』という用語は、98モル%を超える酸素濃度を有する流体を意味する。」と記載されているものの、当該酸素濃度の低純度酸素及び高純度酸素でなければ、甲1発明を実施することができないとは記載されていない。むしろ、高純度酸素及び低純度酸素の2種類の酸素流体を得るにあたって、その境界となる酸素純度は、目的に応じて設定されるものというべきであり、事実、甲第10号証(前記第5の6参照)には、この境界酸素純度を97%とした例も認められることに照らすと、高純度酸素の純度(酸素濃度)が低純度酸素より高ければ、高濃度酸素の酸素濃度が98モル%以下であっても、甲1発明が実施できると解するのが合理的である。
そうしてみると、前記のとおり、一般に境界酸素純度は当業者が適宜設定すべきものであるというべきところ、甲1発明にそのようにしてされた設定の変更を阻害する要因は見当たらないから、甲1発明において、高純度酸素の純度(境界酸素純度)を97.7%以下に設定することは、当業者が適宜なし得る設計的事項と解するのが相当である。

ウ 小括
以上のとおり、前記相違点1〜4のうち、相違点1及び2に係る本件発明1の特定事項とすることは容易想到の事項といえない。また、前記相違点4に係る事項を容易想到とした場合、甲1発明における高純度酸素の範囲は広がり、その量比率は増加することになるから、前記相違点1に係る事項を容易想到することがより一層困難となることなどを考慮すると、相違点1〜4に係る本件発明の特定事項をすべて具備することは、なおのこと容易想到の事項であるとはいえないから、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証、甲第3号証に記載された事項、及び、周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものといえない。

(2)本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1の特定事項を全て含むものであるから、前記(1)に示した理由と同様の理由により、本件発明2及び3は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証、甲第3号証に記載された事項、及び、周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものといえない。

(3)請求人の主張の検討
ア 請求人の主張の概要
令和3年6月30日提出の審判事件弁駁書における、請求人の相違点1及び2に対する主な主張は、概略、以下のとおりである。

(ア)主張4
甲1発明において、高純度酸素製品や低純度酸素製品の必要とされる量に応じて、側塔から抜き出された高純度酸素の液体及び低純度酸素の気化ガスの量比率を変更することは、当業者が適宜なし得る設計的事項に過ぎず、本件発明1の量比率とすることにも、格別の困難性はなく格別の効果もないから、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の特定事項を採用することは、当業者が容易に想到できる(第6〜8頁の「2 液体酸素及びガス酸素の比率について」の項))。

(イ)主張5
戻しラインが設けられていない空気分離装置は、例えば、甲第11号証(前記第5の7(2)及び(3)参照)に記載されているように周知技術であり、戻しラインを設けるか否かは、低圧精留塔から容器に導出される下降液の流量と、容器から取り出す製品酸素の流量をもとに適宜設計すべき事項であり、また、甲第1号証の特許請求の範囲(前記第5の1(1)参照)には、戻しラインを設けることが規定されていないため、甲1発明において、戻しラインは必須の構成でなく、これを設けないようにすることに阻害要因はない上、そうすることに技術的意義もないから、甲1発明において、相違点2に係る本件発明1の特定事項を採用することは、当業者が容易に想到できる(第2〜6頁の「1 戻しラインについて」の項)。

イ 請求人の主張4に対する判断
前記(1)イの「(ア)相違点1について」で検討したとおり、甲1発明は、液体酸素(高純度酸素)の比率が33.3〜50%であることを一つの指標として、そのような大量の高純度酸素を精製・回収することを主目的としたものであるから、このような主目的に反してまで、前記比率を低下させるほどの動機付けがあるといえないし、さらに、高純度酸素の比率を10〜20%で回収することが大量の高純度酸素の精製・回収に該当することを認めるに足りる証拠もない以上、この点を単なる設計的事項として扱うことは妥当でない。
よって、請求人の主張4は採用できない。

ウ 請求人の主張5に対する判断
前記(1)イの「(イ)相違点2について」で検討したとおり、「甲1ライン」は、甲1発明の主目的の達成に寄与するものであって、有意な技術的意義を有するものである上、甲第1号証は、当該「甲1ライン」を設けていない形態を具体的に記載するものではないから、当該形態が想定されているとは直ちにいえない。そうである以上、戻しラインが設けられていない空気分離装置が周知技術であるとしても、そのことは、前記相違点2についての判断、すなわち、甲1発明において、このように有意な技術的意義を有する「戻しライン」を取り除いてしまうことは当業者にとって容易想到の事項とはいえないとした判断に影響するものではない。
よって、請求人の主張5は採用できない。

(4)無効理由2に対する結論
以上のとおり、本件発明1〜3は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証、甲第3号証に記載された事項、及び、周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものといえないから、無効理由2は理由がない。

第7 むすび
以上の検討のとおり、本件特許の請求項1〜3に係る発明についての特許は、請求人が主張する無効理由によっては無効とすることはできない。
請求項4は、訂正により存在しないこととなったため、本件特許の請求項4に係る発明についての特許に対する無効審判請求は不適法な請求であり、その補正をすることができないものであるから、特許法第135条の規定により却下する。
本件審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料空気を圧縮する空気圧縮機と、
前記原料空気を用いて熱交換を行う主熱交換器と、
前記原料空気を酸素及び窒素に分離する高圧精留塔及び低圧精留塔と
を有する空気分離装置を用いて原料空気から酸素を回収する空気分離方法であって、
前記空気分離装置に備えられた前記高圧精留塔は1塔であり、
前記空気分離装置は、
前記低圧精留塔から液体酸素が導入されかつ熱交換部が設けられた容器、
前記容器内の熱交換部に昇圧空気を供給する空気供給ライン、
前記熱交換部で前記液体酸素と熱交換した空気を前記高圧精留塔に導入するラインを備え、
前記熱交換部は前記液体酸素を用いて熱交換を行うことによりガス酸素を生成し、前記容器内の前記液体酸素と前記ガス酸素とを前記主熱交換器にそれぞれ供給する液体酸素供給ライン及びガス酸素供給ラインをさらに備え、かつ、前記容器内のガス酸素を前記低圧精留塔に戻す戻しラインを備えず、
前記容器内から取り出す前記液体酸素及び前記ガス酸素の量比率は、前記液体酸素の比率を10%以上20%以下とし、前記ガス酸素の比率を80%以上90%以下とし、
前記液体酸素供給ラインを介してのみ高純度酸素を回収し、
前記ガス酸素供給ラインを介してのみ前記高純度酸素よりも相対的に純度の低い低純度酸素を回収し、
前記高純度酸素は純度97.7%以下である
ことを特徴とする空気分離方法。
【請求項2】
前記空気分離装置は、前記容器内で前記熱交換部の上方に精留パッキン又は精留皿が設けられた請求項1に記載の空気分離方法。
【請求項3】
前記空気分離装置は、前記低圧精留塔から前記容器に液体酸素を供給する供給ラインと、該供給ラインに設けられ、前記低圧精留塔から前記容器に前記液体酸素を移送する液酸移送ポンプとを備えた請求項1または2に記載の空気分離方法。
【請求項4】
(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2021-11-17 
結審通知日 2021-11-22 
審決日 2021-12-15 
出願番号 P2013-119277
審決分類 P 1 113・ 113- YAA (F25J)
P 1 113・ 537- YAA (F25J)
P 1 113・ 851- YAA (F25J)
P 1 113・ 853- YAA (F25J)
P 1 113・ 536- YAA (F25J)
P 1 113・ 121- YAA (F25J)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 日比野 隆治
特許庁審判官 関根 崇
宮澤 尚之
登録日 2016-09-02 
登録番号 5997105
発明の名称 空気分離方法  
代理人 特許業務法人アスフィ国際特許事務所  
代理人 特許業務法人 志賀国際特許事務所  
代理人 特許業務法人アスフィ国際特許事務所  
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