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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B01J
管理番号 1383547
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-08-26 
確定日 2022-03-31 
事件の表示 特願2018−219480「ペレット充填システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 6月 4日出願公開、特開2020− 81958〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年11月22日の出願であって、令和1年12月16日付けで拒絶理由が通知され、令和2年2月20日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年5月18日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年8月26日に審判が請求されるとともに手続補正書が提出され、その後、同年10月19日付けで前置報告がされ、これに対し、同年11月26日に審判請求人から上申書が提出されたものである。

第2 令和2年8月26日にされた手続補正についての補正の却下の決定
1 補正の却下の決定の結論
令和2年8月26日にされた手続補正を却下する。

2 理由
(1)補正の内容
令和2年8月26日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に対する補正を含むものであって、本件補正前後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。

ア 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正前、すなわち、令和2年2月20日に手続補正がされた特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「円筒状の反応器(20)に円柱状のペレットが(10)が充填されるペレット充填システムであって、
上記反応器(20)は、ペレット(10)が充填され、内部を気体または液体が流通して化学物質を製造する化学反応のための容器(20)で構成され、
上記ペレット(10)の円柱の直径をd(mm)とし、円柱の高さをh(mm)とし、直径と高さの比αをα=d/hとすると、
1.0≦d≦5.0、及び
1.0<α≦1.6
の関係を満たし、
上記反応器(20)の直径が、20mmより大きく3000mm以下の範囲に含まれることを特徴とするペレット充填システム。」

イ 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「円筒状の反応器(20)に円柱状のペレットが(10)が充填されるペレット充填システムであって、
上記反応器(20)は、ペレット(10)が充填され、内部を気体または液体が流通して化学物質を製造する化学反応のための容器(20)で構成され、
上記ペレット(10)の円柱の直径をd(mm)とし、円柱の高さをh(mm)とし、直径と高さの比αをα=d/hとすると、
1.0≦d≦5.0、及び
1.0<α≦1.6
の関係を満たし、
上記反応器(20)の直径が、40mm以上で100mm以下の範囲に含まれ、
ペレット(10)が触媒成分を含み、
触媒成分が結晶性物質により構成されている
ことを特徴とするペレット充填システム。」
にする補正を含むものである(下線は、補正箇所を示す。)。

(2)補正の適否
ア 目的要件
上記請求項1についての補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「反応器(20)の直径」について、「20mmより大きく3000mm以下の範囲」であったものを「40mm以上で100mm以下の範囲」に、同じく「ペレット(10)」について「触媒成分を含み、触媒成分が結晶性物質により構成されている」に、それぞれ限定するものであり、さらに、補正前の請求項1に記載された発明と、補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であると認められるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

イ 独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「本件補正発明」という。また、本件補正後の明細書を「本件補正明細書」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(本件補正発明が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するものであるか)を検討する。

(ア)引用例
特開昭62−48652号公報
(拒絶査定における引用文献3である(以下、「引用例3」という。)。)

(イ)引用例に記載された事項
本願出願前に頒布された刊行物であることが明らかな引用例3には、以下の事項が記載されている(下線は当審において付与した。)。

3a 「2.〔 特許請求の範囲 〕
(1) 少なくとも1種の難還元性金属酸化物と緊密に接しているコバルト及びニツケルから選択される周期律表第VIII族の少なくとも1種の金属を含む触媒であつて、その中の第VIII族金属原子が酸素及び(もし存在するならば)炭素の原子を除く全部の原子の数の80〜98%をなすような触媒の存在下に、
式(略)
の少なくとも1種のアミノ化合物と、
式(略)
の少なくとも1種のアルコールと、
を反応させることからなるアルキルアミンの製法。」(1頁左下欄4行〜右下欄2行)

3b 「アルコールとアンモニアとの反応は、存在する再循環される過剰アルキル化アミンの割合に応じてある程度まで発熱性であり、従つて本発明方法は、沸とう水のような冷媒またはジフエニル/ジフエニルエーテルのような有機・熱交換液と熱交換関係で実施するのが好ましい。この理由のため、触媒は冷媒によつて取り巻かれた管(単または複数;典型的には内径20〜200mm)中に配置されるのが好ましい。別法として、冷媒を管内に通しそして触媒をその管の外側の空間に配置してもよい。」(3頁右下欄1行〜11行)

3c 「難還元性酸化物は、周期律表の第IA族以外のA亜族の金属のいずれの酸化物であつてもよい。好ましくは、第IIIA族(稀土類、トリア及びウラニアを包含)または第IVA族の金属酸化物であるのが好ましい。そのような酸化物の2種またはそれ以上が存在するのが好ましく、特にアルミニウムと1種またはそれ以上の稀土類(殊にランタン及び/またはセリウム)との酸化物の組合せが好ましい。稀土類の混合物からなるいわゆる工業用品位のものが使用できる。」(4頁左上欄11行〜20行)

3d 「実施例 1
322g/lの硝酸ニツケル六水和物、23.6g/lの硝酸アルミニウム九水和物及び8.1g/lの硝酸セリウムを含む約70℃の水溶液を小さな沈澱容器に連続的に供給し、またその容器中のpHを約7に維持する量の約70℃の炭酸ナトリウム(150g/l)水溶液を供給することにより、沈澱を生成させた。この沈澱を容器から連続的に取り出し、高温でろ過し、洗浄し、110℃で16時間乾燥した。乾燥沈澱を次いで350℃で4時間焼成した。焼成品は(900℃での強熱後)下記の組成を有した。
酸 化 物 重 量 %
NiO 98.1
Al2O33.7
CeO23.1
Na2O 0.1
900℃での強熱減量は11.3重量%であつた。従つてニツケル原子は焼成触媒前駆体中の原子(酸素以外)の合計数の約93%をなしていた。焼成品は下記の粉体特性も有した。
BET(窒素)法表面積 21.3 m2/g
ヘリウム法密度 5.07g/cm3
水銀法密度 2.44g/cm3
気孔容積 0.21m2/g
この焼成品をその重量の1.5%に当るグラフアイトと混合し、圧縮して直径3.7mm、高さ3.3mmの円柱状ペレツトに成形した。
このペレツトの床を実験用反応器に仕込み、次いでこの床に、水素と窒素の同容量混合物流を通しながら350℃に32時間加熱した。次いで窒素/水素ガス流を窒素流に切り換え、また反応器も約100℃に冷却した。100℃で1時間後、0.5容量%の空気を窒素流中へ2時間にわたり混入した。次いでガス流中の空気の濃度を30分毎に倍増させ、空気と窒素との割合がほぼ等しくなるまでこれを続けた。次いで反応器を室温へ冷却した。
この予備還元及び空気安定化された触媒(触媒A)24ml(37.6g)を、内径1.9cmの実験用反応器に仕込み、9容の窒素:1容の水素からなるガス流で150℃において一晩再還元した。次いで、エタノール(0.127モル/時)、アンモニア(0.254モル/時)及び水素(0.25モル/時)の混合物を180℃でその触媒上に通し、出口ガスをエチルアミン類、メタン及びそれらよりも高い分子量の生成物(実質物)について分析した。この試験操作を200℃の反応温度を用いて繰り返えした。」(4頁右下欄9行〜5頁右上欄17行)

(ウ)引用例3に記載された発明
引用例3は、発明の名称を「アルキルアミンの製法」とする特許文献であり、請求項1に係る「少なくとも1種の難還元性金属酸化物と緊密に接しているコバルト及びニツケルから選択される周期律表第VIII族の少なくとも1種の金属を含む…触媒の存在下に、…アミノ化合物と、…アルコールと、を反応させることからなるアルキルアミンの製法。」(摘記3a)について記載するものである。
そのアルキルアミンの製法の具体例を記載する「実施例1」(摘記3d)には、NiO、Al2O3、CeO2及びNa2Oの組成を有する焼成品を「グラフアイトと混合し、圧縮して直径3.7mm、高さ3.3mmの円柱状ペレツトに成形した」こと、この円柱状ペレットが「予備還元及び空気安定化された触媒(触媒A)…を、内径1.9cmの実験用反応器に仕込み…エタノール(0.127モル/時)、アンモニア(0.254モル/時)及び水素(0.25モル/時)の混合物を180℃でその触媒上に通し」、反応させてアルキルアミンであるエチルアミン類を製造したことが記載されている。
そうすると、引用例3には、
「NiO、Al2O3、CeO2及びNa2Oを含む焼成品をグラファイトと混合し、圧縮して成形した直径3.7mm、高さ3.3mmの円柱状ペレットを予備還元及び空気安定化した触媒を、内径1.9cmの実験用反応器に仕込み、エタノール、アンモニア及び水素の混合物を180℃でその触媒上に通し、反応させるアルキルアミンの製法。」
が記載されているといえる。
そして、当該「アルキルアミンの製法」における「触媒」はペレット状であると認められると共に、この触媒は、「内径1.9cmの実験用反応器に仕込」まれ、当該実験用反応器に充填されるものであるから、上記製法は、そのための装置(システム)に着目してみると、ペレット充填システムの発明として表現することができる。
すなわち、引用例3には、
「内径1.9cmの実験用反応器に、
NiO、Al2O3、CeO2及びNa2Oを含む焼成品をグラファイトと混合し、圧縮して成形した直径3.7mm、高さ3.3mmの円柱状ペレットを予備還元及び空気安定化した触媒ペレットが充填される、ペレット充填システムであって、
上記実験用反応器は、エタノール、アンモニア及び水素の混合物を180℃でその触媒上に通し、反応させアルキルアミンを製造するための反応器である、
ペレット充填システム」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

(エ)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「内径1.9cmの実験用反応器」は、反応器の大きさを「内径」で表していることから、本件補正発明の「円筒状の反応器(20)」に相当し、また、この反応器に触媒ペレットが充填され「エタノール、アンモニア及び水素の混合物を180℃でその触媒上に通し、反応させることからなるアルキルアミンを製造するための反応器」であるから、本件補正発明の「ペレット(10)が充填され、内部を気体または液体が流通して化学物質を製造する化学反応のための容器(20)で構成され」るものといえる。
また、引用発明の触媒は、「NiO、Al2O3、CeO2及びNa2Oを含む焼成品をグラファイトと混合し、圧縮して成形した直径3.7mm、高さ3.3mmの円柱状ペレットを予備還元及び空気安定化した触媒」であるから、「直径3.7mm、高さ3.3mmの円柱状ペレット」であると認められる。そして、その触媒の直径と高さの比(直径/高さ)は1.12(=3.7/3.3)と計算されるから、本件補正発明の「上記ペレット(10)の円柱の直径をd(mm)とし、円柱の高さをh(mm)とし、直径と高さの比αをα=d/hとすると、
1.0≦d≦5.0、及び1.0<α≦1.6 の関係を満た」すものといえる。
さらに、引用発明の触媒は、「NiO、Al2O3、CeO2及びNa2Oを含む焼成品をグラファイトと混合し…予備還元及び空気安定化した触媒」であるから、本件補正発明の「触媒成分を含む」ものといえる。
そして、引用発明の「ペレット充填システム」は、本件補正発明の「円筒状の反応器(20)に円柱状のペレットが(10)が充填されるペレット充填システム」であるといえるから、本件補正発明と引用発明とは、
「円筒状の反応器(20)に円柱状のペレットが(10)が充填されるペレット充填システムであって、
上記反応器(20)は、ペレット(10)が充填され、内部を気体または液体が流通して化学物質を製造する化学反応のための容器(20)で構成され、
上記ペレット(10)の円柱の直径をd(mm)とし、円柱の高さをh(mm)とし、直径と高さの比αをα=d/hとすると、
1.0≦d≦5.0、及び
1.0<α≦1.6
の関係を満たし、
ペレット(10)が触媒成分を含む、
ことを特徴とするペレット充填システム。」
で一致し、以下のA、Bの点で一応相違するといえる。

A:「反応器」が、本件補正発明は、「直径が、40mm以上で100mm以下の範囲に含まれ」るのに対して、引用発明は、「内径1.9cm」である点

B:「触媒成分」が、本件補正発明は、「結晶性物質により構成されている」のに対して、引用発明は、そのような物質により構成されているかは不明である点

(オ)相違点の判断
a 相違点Aについて
(a) 引用発明が記載される実施例1は、摘記3dのとおり「内径1.9cmの実験用反応器」を用い、エチルアミン類などについて分析する「試験操作」を実施する例といえる。
そして、引用例3には、アルコールとアンモニアとの反応は発熱性であるため、「触媒は冷媒によって取り巻かれた管(単または複数;典型的には内径20〜200mm)中に配置されるのが好ましい」ことが記載されている(摘記3b)。
そうすると、試験操作である引用発明において内径19mmの実験用反応器を用いたとしても、この製法を実機に適用するに際しては、反応によって生じる発熱などを考慮の上、上記の「典型的には内径20〜200mm」のようなより大きい内径の反応器、例えば内径が、「40mm以上で100mm以下の範囲に含まれ」る反応器を用いることは、製造規模などに応じ、当業者が容易に選択し得る事項であるというべきである。
なお、上記では本件補正発明の「直径」は「内径」であると解したが、「外径」であったとしても、上記のとおり、「40mm以上で100mm以下の範囲に含まれ」る反応器を用いることが当業者にとって容易想到な事項であることに変わりはない。

(b)本件補正発明の効果について
本件補正発明において、「反応器」を「直径が、40mm以上で100mm以下の範囲に含まれ」ものとする点の効果について、本件補正明細書をみると、反応器の大きさについては、段落【0019】に、
「触媒ペレット(10)は、充填管(21)を用いて反応器(20)に落下させることにより、反応器(20)の中にランダムな向きで充填される。反応器(20)の直径は40mm〜100mmである。」
と記載されるだけであって、上記の効果を把握する手掛かりとなるような記載は他にはなく、まして、この直径を選択した技術的意義についての記載はない。
そうすると、本件補正発明において、反応器の直径を特定のものとしたことによって、格別の効果が奏されると認めることはできない。

(c)審判請求人の主張について
前置報告書に対する上申書「2.」で審判請求人は、反応器の内径について、概ね次のように主張する。
本願発明の課題は、触媒成分を含むペレットを容器に充填したときに嵩密度が過度に大きくなったり小さくなったりするのを抑制し、触媒の反応性が低下するのを抑制することであるところ、本願発明の技術分野において、反応器の内径については、内部の熱を除去することを考慮する観点を持つ必要があり、その観点において、反応器は極力小さい内径を選択するのが当業者の認識である。引用文献3において、実施形態の反応器の直径として、好ましい範囲とされる20〜200mmよりさらに小さい方へ外れた19mmが選択されているのは上記の観点に基づくからである。
これに対して、本願発明では、反応器の直径を40mm以上で100mm以下の範囲とし、その範囲の下限を引用文献3の範囲より大きくしているのは、本願発明の上記の課題を解決するためであり、上記の観点からではないため、反応器の直径を40mm以上で100mm以下の範囲にすることを特定事項として含む本願発明は、引用文献3に記載された発明(引用発明)から容易に想到し得ないものである。

そこで検討するに、反応器の内径については、内部の熱を除去する観点から、反応器は極力小さい内径を選択するのが当業者の認識であるとしても、反応器の径は、この観点のみから決定されるものではなく、除熱が適切にできる範囲内で、生産規模等に応じた最適な大きさが選択されるものであると解すべきである。
そして、上記(a)のとおり、実験室レベルで小さい径の反応器を用いていたとしても、実機レベルでは、その生産規模に対応したより大きい内径の反応器にすることは、当業者が通常行っていることである。
また、本願発明の反応器の直径が、本願発明の上記の課題を解決するために採用されたものであると認めるに足りる本件特許明細書の記載がないことは、上記(b)のとおりである。
したがって、審判請求人の上記主張は採用できない。

b 相違点Bについて
引用発明の触媒ペレットにおける触媒成分のAl、Ce酸化物は、引用例3の請求項1に係る「難還元性酸化物」(摘記3a,3c)に相当し、これら触媒成分は予備還元及び空気安定化を経た後も酸化物(Al2O3、CeO2)の形態であると認められる。
そして、Al2O3、CeO2は、通常は結晶性の物質であるから、引用発明の「触媒成分」は「結晶性物質により構成されている」と考えるのが合理的である。
そうすると、上記相違点Bは、両者の実質的な相違点とはいえない。

(カ)まとめ
以上によれば、本件補正発明は、その出願前に頒布された刊行物である引用例3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、本件補正発明は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しない。

(3)むすび
以上のとおり、本件補正発明は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しないものであるから、請求項1についてする補正を含む本件補正は、同規定に違反しているものと認められるので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記1の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲に記載された発明は、令和2年2月20日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2の2(1)アに示したとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定は、「この出願については、令和 1年12月16日付け拒絶理由通知書に記載した理由1,2によって、拒絶をすべきものです。」というものであって、その理由2は、「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明…に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものである。
そこにおける「下記の請求項」は、「下記の刊行物」が、「引用文献等:3」すなわち、「3.特開昭62−048652号公報」であるとき、「請求項1−6」である。
そして、原査定の備考には、
「●理由2(特許法第29条第2項)について
・請求項 1−8
・引用文献等 1−5」
の記載がある。
この備考の記載における「引用文献等 3」は、上記拒絶理由通知の「引用文献等:3」であり、前記第2の2(2)イの項における引用例3と同じ刊行物である(以下、同様に「引用例3」という。)。
そうすると、原査定の拒絶の理由は、本願発明は、引用例3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。

3 引用例3に記載された事項及び引用例3に記載された発明
引用例3に記載された事項は、前記第2の2(2)イ(イ)に記載したとおりである。
そして、引用例3に記載された発明は、同(ウ)に記載したとおりのものである(以下、同様に「引用発明」という。)。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の2(2)アで示したとおり、本件補正発明の「反応器(20)の直径」についての「40mm以上で100mm以下の範囲」が「20mmより大きく3000mm以下の範囲」となり、さらに、「ペレット(10)」についての「触媒成分を含み、触媒成分が結晶性物質により構成されている」との特定がないものに相当する。
そうすると、本願発明と引用発明とを対比すると、両者の一致点は本件補正発明との一致点と同じであり、相違点が下記A’となる。
A’:「反応器」が、本願発明は、「直径が、20mmより大きく3000mm以下の範囲に含まれ」るのに対して、引用発明は、「内径1.9cm」である点

そこで、当該相違点A’について検討するに、この相違点A’は、上記相違点Aに係る本願補正発明の「40mm以上で100mm以下」という事項が「20mmより大きく3000mm以下」と広範囲になったものであるから、前記第2の2(2)イ(オ)「a 相違点Aについて」に記載したのと同様に判断をすることができる。
なお、「a 相違点Aについて」の「(b)」に関し、本件補正が却下された結果、「本件補正明細書」の段落【0019】の該当記載は、
「触媒ペレット(10)は、充填管(21)を用いて反応器(20)に落下させることにより、反応器(20)の中にランダムな向きで充填される。反応器(20)の直径は特に限定されないが、20mm〜3000mmであることが好ましく、30mm〜1000mmであることがより好ましく、40mm〜100mmであることがさらに好ましい。」(段落【0024】)となった。
しかし、この他に反応器の直径についての記載はなく、この直径を選択した技術的意義についての記載はないことに変わりはない。
よって、本件補正明細書が補正前の明細書になったとしても、そのことは、第2の2(2)イ(オ)「a 相違点Aについて」(b)、(c)における判断に影響しない。

5 まとめ
以上の検討のとおり、本願発明は、その出願前に頒布された刊行物である引用例3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。



 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-01-18 
結審通知日 2022-01-25 
審決日 2022-02-08 
出願番号 P2018-219480
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B01J)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 宮澤 尚之
特許庁審判官 関根 崇
後藤 政博
発明の名称 ペレット充填システム  
代理人 特許業務法人前田特許事務所  

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