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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01L
管理番号 1383738
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-02-19 
確定日 2022-04-14 
事件の表示 特願2016− 72675「応力センサ」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月 5日出願公開、特開2017−181434〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年3月31日の特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。

令和 2年 1月22日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 3月24日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 7月 7日付け:拒絶理由通知書(最後)
令和 2年 9月 2日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年11月12日付け:補正の却下の決定
同日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同月24日:原査定の謄本の送達)
令和 3年 2月19日 :審判請求書及び手続補正書の提出
令和 3年11月12日付け:拒絶理由通知書
令和 3年12月24日 :意見書、手続補正書の提出


第2 本願発明について
本願の請求項1〜5に係る発明(以下、請求項の番号に従って「本願発明1」などという。)は、令和3年12月24日に提出された手続補正書により補正された請求項1〜5に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
第1領域及び該第1領域よりも厚い第2領域を有するダイヤフラムと、
前記ダイヤフラムの前記第1領域上に配置された感応膜と、
前記感応膜の変形に伴う前記ダイヤフラムの変形を検出する検出部と、を備え、
前記検出部は、前記ダイヤフラムに配置され、前記検出部に前記感応膜の縁が位置し、
前記第1領域は、前記感応膜よりも薄い領域を有し、前記第2領域は、前記感応膜よりも厚い領域を有し、
前記第1領域は、外縁部から中央部に向かうにつれて薄くなっている、応力センサ。」


第3 当審が通知した拒絶の理由
当審が令和3年11月12日付けで通知した拒絶の理由のうち、本願の請求項1に係る発明についての理由1の概要は、次のとおりである。

理由1(進歩性
本願の令和3年2月19日付け手続補正により補正された請求項1に係る発明は、下記の引用文献に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。



引用文献8:米国特許出願公開第2013/0111977号明細書


第4 当審の判断
当審は、以下に詳述するとおり、本願発明1は当業者が容易に発明をすることができたものであると判断した。

1 引用発明等の認定引用発明
ア 引用文献8の記載事項
引用文献8(米国特許出願公開第2013/0111977号明細書)には、以下の記載がある。(翻訳文は当審による。また、下線は当審が引いたものである。)

「[0003]The present invention relates to an apparatus and method for chemical sensing, and more specifically to gas detection sensors using heterostructures that form a twodimensional electron gas channel.」
(当審訳:本発明は、化学的検知のための装置及び方法に関し、より詳細には、二次元電子ガスチャネルを形成するヘテロ構造を使用するガス検出センサに関するものである。)

「[0038]FIG.1 illustrates one embodiment of a chemical sensor according to an embodiment of the invention. The sensor is formed on a substrate 101 which may, for example, be a silicon wafer although any other suitable substrate could be used. The substrate may also comprise one or more layers such as buffer layers or etch stop layers on the silicon wafer. Supported on the substrate is a heterojunction of group III nitride materials. In this example the heterojunction comprises a layer of GaN 102 and a layer of AlGaN 103 arranged so as to form a two dimensional electron gas (2DEG) channel 104. <後略> 」
(当審訳:図1は本発明の化学センサの一実施形態を示す。センサは、例えばシリコンウエハの基板101上に形成できるが、ほかの任意の適切な基板を使用することもできる。また、基板はシリコンウエハ上のバッファ層またはエッチング停止層などの一つ又は複数の層からなることができる。基板上にはIII族窒化物材料のヘテロ接合が支持されている。この例では、ヘテロ接合は、二次元電子ガス(2DEG)チャネル104を形成するように配置されたGaN102とAlGaN103の層からなる。 <後略> )

「[0039]The GaN layer 102 and AlGaN layer 103 form a flexible membrane in the region over the gap or cavity in the substrate, that is the GaN and AlGaN layers are able to bend/deform to a significant degree with respect to the supporting substrate 101. The thicknesses of the GaN layer 102 and AlGaN layer 103 may be chosen to provide sufficient flexibility of the membrane but also form a suitable 2DEG channel 104 within the flexible membrane. The GaN layer may, for example have a thickness in the range of 1-3 μm. The AlGaN layer 103 may be thinned in a certain the region of the membrane to provide a thin layer 105 within a thickness in the range of 6-10 nm.」
(当審訳:GaN層102とAlGaN層103は、基板の空隙又は空洞上に可とう性膜を形成し、GaNとAlGaNの層は支持基板101に対して有意に曲げ/変形させることができる。GaN層102とAlGaN層103の厚さは、膜に十分な柔軟性を提供するだけでなく、可とう性膜内に2DEGチャネル104を形成するように選択することができる。GaN層は、例えば1−3μmの範囲の厚さを有することができる。AlGaN層103は、膜の特定の領域で薄くされ、6−10nmの範囲の厚さの薄層105を提供することができる。)

「[0040]In one embodiment, on top of the thin AlGaN layer 105 a layer of sensing material 106 may be deposited. <後略> 」
(当審訳:一実施形態では、AlGaNの薄層105上に感知材料層106の層が堆積されてもよい。 <後略> )

「[0042] <前略> Thus the stress-induced piezoresistive effect in the 2DEG channel 104 will reflect changes in the stress induced by the sensing material 106」
(当審訳:したがって、2DEGチャネル104における応力誘導ピエゾ抵抗効果は、感知材料106により誘起される応力の変化を反映するであろう。)

「[0046] <前略> In another embodiment however the flexible membrane does form a continuous structure with the substrate, i.e. the membrane is effectively supported at all sides as forms a flexible diaphragm type arrangement. <後略> 」
(当審訳: <前略> しかしながら、別の実施形態では、可とう性膜は基板と連続した構造を形成する。すなわち、膜は可とう性ダイヤフラムタイプ配置を形成するように、全ての側面で効果的に支持される。 <後略> )

「[0048] <前略> As shown, the path of the 2DEG is arranged to be serpentine and to stay mainly towards the edges of the membrane 302. As will be appreciated if the sensing material is disposed over the whole of the membrane 302 any volume changes will lead to a deformation which will concentrate the greatest strain towards the edges of the membrane. <後略> 」
(当審訳: <前略> 図示(当審注:図3を指す)のように、2DEGの経路は曲がりくねっており、主に膜302の縁部に配置されている。感知材料が膜302の全体にわたって堆積された場合、任意の体積変化が膜の縁部へ最大の応力を集中させる変形をもたらすであろう <後略> )








また、上記Fig.1より、感知材料106がAlGaN層103の薄層105部分により形成された凹部内に堆積されており、その厚さがGaN層102及びAlGaN層103の周辺部を合わせた厚さより薄いことが読み取れる。

引用発明の認定
上記アにおいて摘記した記載事項及び図示内容を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「GaN層102とAlGaN層103により形成された、可とう性ダイヤフラムタイプ配置の可とう性膜と、([0039]、[0046])
AlGaN層の特定の領域が薄くされた薄層105上に堆積された感知材料層106と、([0039]、[0040])
応力誘導ピエゾ抵抗効果により、感知材料106により誘起される応力の変化を反映する、2DEGチャネル104と、([0042])を含み、
2DEGチャネル104は可とう性膜内に形成され([0039])、2DEGの経路は主に膜302の縁部に配置され、感知材料は膜302の全体にわたって堆積され([0048])、
感知材料106の厚さがGaN層102及びAlGaN層103の周辺部を合わせた厚さより薄い(Fig.1)、
二次元電子ガス(2DEG)チャネルを形成するヘテロ構造を使用するガス検出センサ。([0003])」

(2)技術常識
ア 引用文献3の記載事項
令和2年1月22日付け拒絶理由通知書において引用された引用文献3(特開平10−300603号公報)には、以下の記載がある。
「【0014】以上のプロセスにより表面の処理を完了し、ウェハの裏面を所望の厚み(200〜500μm)に鏡面仕上げする。そして、適当なマスク材を用いてダイヤフラム領域7におけるシリコン基板1の裏面をKOH等のアルカリ溶液にてエッチングし、ダイヤフラム領域7が所望の厚み(数μm〜数10μm程度)になるようにする。これにより、半導体圧力センサが完成する。」(下線は当審による。以下同様。)





イ 引用文献5の記載事項
令和2年1月22日付け拒絶理由通知書において引用された引用文献5(特開2005−37383号公報)には、以下の記載がある。
「【0026】
本発明のセラミックダイアフラムは、図1(a)に示すように、アルミナ等のセラミックスからなる円形等の板状のダイアフラム本体3及び該ダイアフラム本体3を支持する円筒状の環状支持部4を有するキャップ状であり、ダイアフラム本体3と環状支持部4の内面の連結部5を円弧面等の曲面状に滑らかに形成し、連結部5における応力集中を抑制する構造となっている。」

「【0030】
これにより、セラミックダイアフラム1の外面の上面部が平坦であるため、ダイアフラム本体3と環状支持部4の連結部5の近傍の厚みよりも、内面の上面部1aの中央部の厚みの方が薄くなるような形状となり、ダイアフラム本体3と環状支持部4との連結部5に発生する応力を低減することができ、耐圧力を向上できる。
【0031】
また、内面の上面部1aは、ダイアフラム本体3の中心部が凹形状の底面となるような断面形状が段付きのものや、ダイアフラム本体3の中心に向かって滑らかな断面円弧状の凹形状等、一部が凹形状であれば、種々の形状を用いることができるが、特に、図1(a)に示すような断面円弧状とすることが好ましく、応力がより均等に作用させることができる。」

「【0037】
さらに、本発明のセラミックダイアフラム1は、図1(b)に示すように内面の上面部1aにおける中央部が凹形状であることが好ましい。
【0038】
これにより、ダイアフラム本体3と環状支持部4との連結部5に発生する応力をさらに低減することができ、耐圧力を向上できる。」





ウ 引用文献9の記載事項
新たに引用する、本願の出願前に発行された引用文献9(特開昭61−42956号公報)には、以下の記載がある。
「本発明は圧力センサーに関し、特に感度ばらつきのない圧力センサに関するものである。」(1ページ左欄下から6行〜5行)

「第4図乃至第7図は本発明の他の実施例である。図において、第1図と同一番号は同一構成要素を示している。これらの実施例において、ダイアフラムの周辺部41の形状が、第4図ではダイアフラム40bが周辺に厚いテーパに、第5図ではダイアフラム40cが内側に厚いテーパ形状になっている。また、第6図では、ダイアフラム40dが周辺部41が二段のステップにより形成されている。第7図では、中央部42より漸次周辺に厚いテーパによりダイアフラム40eが形成されている。上記の実施例の他に、周辺部41が、二段以上のステップあるいはテーパからなる構成を持っても良い。また、上記ステップとテーパおよび第7図等を任意に組み合せた構成も本発明に含まれる。」(3ページ左上欄14行〜右上欄8行)














エ 引用文献10の記載事項
新たに引用する、本願の出願前(平成28年1月28日)に発行された引用文献10(特開2016−14581号公報)には、以下の記載がある。
「【0006】
以下に記載の実施の形態に係る圧力センサは、複数の歪検知素子がが載置される膜部の特性を均一化することを可能にしたものである。」

「【0097】
図13Aは、第1の実施の形態の圧力センサ110Aの空洞部111の加工工程での問題点を示す模式図である。図示の簡単化のため、膜部120の上には検知素子200のみを表示し、配線等は表示していない。
【0098】
空洞部111は深堀りRIE法により基板110をエッチングすることで形成される。加工の際、エッチングガスと基板110が接し化学反応を起こすことでエッチングが進む。
【0099】
空洞部111の加工が進み、空洞部の深さが深くなると空洞部111の底部におけるエッチングガス72の届きやすさに差が生じる。一般には空洞部111の中央部に比べ端部ではエッチングガス72が届きにくくなる。
【0100】
上記のように空洞部111の加工時に空洞部111の底部でエッチングガス72の届きやすさに差が生じるため、エッチングの速度にも空洞部111の底部の位置によって差が生じる。結果として、例えば空洞部111の底部において、中央部に比べ端部にエッチングガス72が届きにくければ、空洞部111加工後の膜部120は、図13Bのように中心部の膜厚Tcは端部の膜厚Tbと比較して薄くなる。」





オ 技術常識の認定
上記ア〜エにおいて摘記した各引用文献の記載から、次の事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識」という。)。
[技術常識]
「ダイヤフラムの製造に際して、性能の改善を目的として、又は、エッチング加工の特性により必然的に、薄膜部分が外縁部から中央部に向かうにつれて薄い構造となること。」

2 対比・判断について
(1)対比
本願発明1と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「GaN層102とAlGaN層103により形成された、可とう性ダイヤフラムタイプ配置の可とう性膜」は、本願発明1の「ダイヤフラム」に相当し、引用発明の「AlGaN層の特定の領域が薄くされた薄層105」及び「GaN層102」の薄層105に重なる部分が本願発明の「第1領域」に相当し、「可とう性膜」のそれ以外の部分が本願発明の「第2領域」に相当する。したがって、引用発明の「薄層105」を備える「GaN層102とAlGaN層103により形成された、可とう性ダイヤフラムタイプ配置の可とう性膜」は、本願発明の「第1領域及び該第1領域よりも厚い第2領域を有するダイヤフラム」に相当する。
イ 引用発明の「AlGaN層の特定の領域が薄くされた薄層105上に堆積された感知材料層106」は、本願発明1の「前記ダイヤフラムの前記第1領域上に配置された感応膜」に相当する。
ウ 引用発明の「応力誘導ピエゾ抵抗効果により、感知材料106により誘起される応力の変化を反映する、2DEGチャネル104」は、本願発明1の「前記感応膜の変形に伴う前記ダイヤフラムの変形を検出する検出部」に相当し、引用発明において「2DEGチャネル104は可とう性膜内に形成され」ることは、本願発明1において「前記検出部は、前記ダイヤフラムに配置され」ることに相当する。
エ 引用発明において「感知材料は膜302の全体にわたって堆積され」ており、また「2DEGの経路は主に膜302の縁部に配置され」ているのであるから、「2DEGの経路は主に」「感知材料」「の縁部に配置され」ているといえ、このことは本願発明1において「前記検出部に前記感応膜の縁が位置し、」ていることに相当する。
オ 引用発明において「感知材料106の厚さがGaN層102及びAlGaN層103の周辺部を合わせた厚さより薄い」ことは、本願発明1において「前記第2領域は、前記感応膜よりも厚い領域を有する」ことに相当する。
カ 引用発明の「感知材料106により誘起される応力の変化を反映する、2DEGチャネル104」「を形成するヘテロ構造を使用するガス検出センサ」は、本願発明1の「応力センサ」に相当する。

上記ア〜オの対比内容をまとめると、本願発明1と引用発明は、以下の一致点で一致し、以下の相違点1、2で相違する。

[一致点]
「第1領域及び該第1領域よりも厚い第2領域を有するダイヤフラムと、
前記ダイヤフラムの前記第1領域上に配置された感応膜と、
前記感応膜の変形に伴う前記ダイヤフラムの変形を検出する検出部と、を備え、
前記検出部は、前記ダイヤフラムに配置され、前記検出部に前記感応膜の縁が位置し、
前記第2領域は、前記感応膜よりも厚い領域を有している、応力センサ。」

[相違点1]
本願発明1が「前記第1領域は、前記感応膜よりも薄い領域を有」する、とされているのに対し、引用発明においては「感知材料層」の厚さと「薄層105」の領域における「可とう性膜」の厚さとの関係が不明である点。

[相違点2]
本願発明1が「前記第1領域は、外縁部から中央部に向かうにつれて薄くなっている」とされているのに対し、引用発明においてはそのような構成を有していない点。

(2)判断
ア 上記相違点1について検討する。
「応力誘導ピエゾ抵抗効果により、感知材料106により誘起される応力の変化を反映する」ように「感知材料層」の厚さは、必要な感度の確保や「可とう性膜」の変形に与える影響などを考慮して適宜選択されるべき設計事項であり、また、「可とう性膜」の厚さも、膜の柔軟性や強度などを考慮して適宜選択されるべき設計事項である。そして、「前記第1領域は、前記感応膜よりも薄い領域を有」することの効果について、本願の発明の詳細な説明には「第1領域101は、感応膜20よりも薄い領域を有していてもよい。その結果、感応膜20の変形によって、ダイヤフラム10の変形の度合いを向上させることができる。」(【0030】)と記載されているのみであって、ダイヤフラム10の第1の領域101の厚みについて、感応膜20の厚みを基準として設定するという程度の設計指針は上記記載から読み取れるものの、ほかの技術常識を考慮しても、これら二つの層の厚さに大小関係を設けること自体が何らかの効果を奏するものとは認められない。そうすると、前記相違点1は、当業者が必要に応じて適宜設定すべき設計事項の範囲内のものであるといえる。

イ 上記相違点2について検討する。
前記1(2)オで述べたように、「ダイヤフラムの製造に際して、性能の改善を目的として、又は、エッチング加工の特性により必然的に、薄膜部分が縁部から中央部に向かうにつれて薄い構造となること。」は技術常識であるから、引用発明において「AlGaN層の特定の領域が薄くされた薄層105」の外縁部から中央部に向かうにつれて薄い構造とする程度のことは設計事項の範囲内のものであるといえる。

ウ 上記ア及びイの検討内容をまとめると、引用発明及び技術常識に基づいて、上記相違点1及び2に係る本願発明1の構成とすることは、当業者にとって格別の困難性はない。
そして、本願発明1の奏する効果についても、引用発明及び技術常識から当業者が予測可能な範囲内のものにすぎず、格別顕著なものであるということはできない。
したがって、本願発明1は、引用発明及び技術常識に基づいて当業者が容易になし得たものである。


3 請求人の主張について
(1)主張の概要
令和3年12月24日に提出した意見書の「3.理由1(進歩性)について」において、請求人は次のような主張をしている。

「このように、本願発明は、「前記第1領域は、外縁部から中央部に向かうにつれて薄くなっている」という技術的特徴を有します。」
「また、引用文献8の図1を参照すると、請求項1の「第1領域」に対応する部分である、「AlGaN層103の特定の領域が薄くされた薄層105」及び「GaN層102」の薄層105に重なる部分は、厚さが一様であり、「外縁部から中央部に向かうにつれて薄く」なる構成ではありません。したがって、引用文献8は、本願発明の「前記第1領域は、外縁部から中央部に向かうにつれて薄くなっている」という技術的特徴を開示していません。」
「このように、引用文献4および8のいずれも、本願発明の「前記第1領域は、外縁部から中央部に向かうにつれて薄くなっている」という技術的特徴を開示していないことから、当業者であっても引用文献4および8に基づいて本願発明に容易に想到できるものではなく、本願発明の進歩性は、引用文献4および8によっては否定されないものと思料します。」

(2)検討
上記(1)の主張について検討する。
前記2(2)イにおいて説示したとおり、引用発明において「AlGaN層の特定の領域が薄くされた薄層105」の外縁部から中央部に向かうにつれて薄い構造とする程度のことは設計事項の範囲内のものであるといえる。
したがって、上記相違点2に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到できたものであるというべきであって、上記(1)の主張を採用することはできない。


第5 むすび
以上検討のとおりであるから、本願発明1は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-02-04 
結審通知日 2022-02-08 
審決日 2022-02-24 
出願番号 P2016-072675
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G01L)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 居島 一仁
特許庁審判官 中塚 直樹
濱野 隆
発明の名称 応力センサ  
代理人 杉村 光嗣  
代理人 坪内 伸  
代理人 吉澤 雄郎  
代理人 杉村 憲司  

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