• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03B
管理番号 1383755
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-03-02 
確定日 2022-04-11 
事件の表示 特願2016−197248「照明装置および投射装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 4月12日出願公開、特開2018− 60055〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)10月5日の出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和 2年 8月13日付け:拒絶理由通知書
同年10月 8日 :意見書の提出
同年11月30日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(原査定の謄本の送達日:同年12月4日)
令和 3年 3月 2日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年 3月31日付け:前置報告書
同年 6月14日 :上申書の提出


第2 令和3年3月2日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年3月2日にされた手続補正を却下する。

[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の内容
令和3年3月2日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について補正するものであり、次の(1)に示した本件補正前(出願時のものをいう。)の特許請求の範囲の請求項1を、次の(2)に示した本件補正後の特許請求の範囲の請求項1のとおり補正することを含むものである。下線部は、補正箇所を示す。

(1) 本件補正前
「 【請求項1】
光ファイバと前記光ファイバから射出した光の発散角度を抑制するレンズとを有した単位光射出部を複数含む光供給部と、
前記光供給部からの光の光路幅を縮小させるアフォーカル光学系と、
前記アフォーカル光学系からの光の進行方向を継時的に変更する走査装置と、
前記走査装置からの光が走査するようにして入射する第1レンズアレイと、
前記第1レンズアレイに対向して配置された第2レンズアレイと、
前記第2レンズアレイに対向して配置された第2レンズアレイからの光の進行方向を変更する偏向素子と、を備え、
前記第1レンズアレイの或る領域に入射した光、並びに、前記第1レンズアレイの前記或る領域とは異なる別の領域に入射した光は、それぞれ、前記第1レンズアレイ、前記第2レンズアレイ及び前記偏向素子で光路を調整されて、少なくとも部分的に重なり合う領域に進み、
前記第1レンズアレイは、複数の第1単位レンズを含み、
前記第2レンズアレイは、前記第1レンズアレイの各第1単位レンズに対応して設けられた複数の第2単位レンズを含み、
前記第1単位レンズの取り込み角θ〔°〕、前記アフォーカル光学系から進み出た光の発散角度α〔°〕、及び、前記走査装置での走査角度β〔°〕は、次の関係を満たす、照明装置。
α+β≦θ」

(2) 本件補正後
「 【請求項1】
光ファイバと前記光ファイバから射出した光の発散角度を抑制するレンズとを有した単位光射出部を複数含む光供給部と、
前記光供給部からの光の光路幅を縮小させるアフォーカル光学系と、
前記アフォーカル光学系からの光の進行方向を継時的に変更する走査装置と、
前記走査装置からの光が走査するようにして入射する第1レンズアレイと、
前記第1レンズアレイに対向して配置された第2レンズアレイと、
前記第2レンズアレイに対向して配置された第2レンズアレイからの光の進行方向を変更する偏向素子と、を備え、
前記アフォーカル光学系は、第1レンズと、前記第1レンズよりも前記光供給部からの光の光路における下流側に配置された第2レンズと、を含み、
前記第1レンズは凸レンズであり、且つ、前記第2レンズは凹レンズであり、
前記第1レンズ及び前記第2レンズは、前記第1レンズの後側焦点が前記第2レンズの前側焦点に一致するように配置されており、
前記第1レンズアレイの或る領域に入射した光、並びに、前記第1レンズアレイの前記或る領域とは異なる別の領域に入射した光は、それぞれ、前記第1レンズアレイ、前記第2レンズアレイ及び前記偏向素子で光路を調整されて、少なくとも部分的に重なり合う領域に進み、
前記第1レンズアレイは、複数の第1単位レンズを含み、
前記第2レンズアレイは、前記第1レンズアレイの各第1単位レンズに対応して設けられた複数の第2単位レンズを含み、
前記第1単位レンズの取り込み角θ〔°〕、前記アフォーカル光学系から進み出た光の発散角度α〔°〕、及び、前記走査装置での走査角度β〔°〕は、次の関係を満たす、照明装置。
α+β≦θ」

2 本件補正の目的
(1) 本件補正の目的
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「前記光供給部からの光の光路幅を縮小させるアフォーカル光学系」について、次のア〜ウの点の限定をするものである。

ア 前記アフォーカル光学系は、第1レンズと、前記第1レンズよりも前記光供給部からの光の光路における下流側に配置された第2レンズと、を含む点
イ 前記第1レンズは凸レンズであり、且つ、前記第2レンズは凹レンズである点
ウ 前記第1レンズ及び前記第2レンズは、前記第1レンズの後側焦点が前記第2レンズの前側焦点に一致するように配置されている点

そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。
したがって、本件補正のうち、請求項1についての補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。

(2) 独立特許要件について
ア 本件補正発明
本件補正後の請求項1の記載における「前記アフォーカル光学系からの光の進行方向を継時的に変更する走査装置」との記載において、「継時的」は「経時的」と記載すべきところの明らかな誤記であるから、本件補正発明は、「継時的」を「経時的」と読み替えた、本件補正後の請求項1に記載した事項(前記1(2)参照)により特定されるとおりのものであると認める。

イ 先行技術
(ア) 引用発明
a 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用され、本願出願前に発行された、特開2016−58165号公報(平成28年4月21日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。なお、下線は、当審において、後述の引用発明の認定に直接用いるところに付したものである。

「【0028】
図1に示す投射型映像表示装置10は、スクリーン15と、映像光を投射する投射装置20と、を有している。投射装置20は、仮想面上に位置する被照明領域LZを照明する照明装置40と、被照明領域LZと重なる位置に配置され照明装置40によって照明される空間光変調器30と、空間光変調器30からのコヒーレント光をスクリーン15に投射する投射光学系25と、を有している。図示された例において、投射光学系25は、フィールドレンズ26とプロジェクションレンズ27とを、光路に沿ってこの順番で含んでいる。すなわち、ここで説明する一実施の形態において、照明装置40は、空間光変調器30を照明するための照明装置として、投射装置20に組み込まれている。とりわけ本実施の形態において、照明装置40は、コヒーレント光によって被照明領域LZを照明し、且つ、照明装置40には、スペックルを目立たなくさせる工夫がなされている。
【0029】
まず、照明装置40について説明する。図1に示されているように、照明装置40は、光の進行方向を被照明領域LZへ向ける光学素子50と、光学素子50へ光、とりわけ本例ではコヒーレント光を照射する照射装置60と、を有している。図1に示された例において、照射装置60は、コヒーレント光が光学素子50上を走査するようにして、光学素子50へコヒーレント光を照射するようになっている。したがって、ある瞬間に、照射装置60によってコヒーレント光を照射されている光学素子50上の領域は、光学素子50の表面の一部分となる。
【0030】
照射装置60は、特定波長帯域のコヒーレント光を射出する光源装置61と、光源装置61からの光の進行方向を光学素子50に向ける走査装置70と、を有している。なお、走査装置70と光学素子50とによって、光学モジュール45が形成されている。光源装置61は、高出力型の発光源として形成されている。光源装置61は、複数の光源62a〜62gと、各光源にそれぞれ対応して設けられた複数の光ファイバ64a〜64gと、各光ファイバにそれぞれ対応して設けられた複数のコリメートレンズ67a〜67gと、を含んでいる。
【0031】
各光源62a〜62gは、コヒーレント光を生成するレーザー光源からなっている。光源装置61は、同一波長帯域のレーザー光を生成する複数のレーザー光源を用いることにより、高出力を可能としている。また、光ファイバ64a〜64gは、各光源62a〜62gで生成された光を搬送するための部材である。したがって、照明装置40よって照明される被照明領域LZから離間した位置に光源62a〜62gを配置することも可能となる。すなわち、光ファイバ64a〜64gを用いることによって、光源62a〜62gの騒音や発熱、光源62a〜62g用の冷却設備設置等に効果的に対処することができる。コリメートレンズ67a〜67gは、光ファイバ64a〜64gから出射する光の光路を調整する部材である。
【0032】
図示された例において、一つの光源62a〜62gに対応して、光ファイバ64a〜64g及びコリメートレンズ67a〜67gが一つずつ設けられている。すなわち、各光ファイバ64a〜64gの入射端64ax〜64gxが、当該光ファイバ64a〜64gに対応する光源62a〜62gに接続されている。また、各光ファイバ64a〜64gの出射端64ay〜64gyに対面する位置に、当該光ファイバ64a〜64gに対応するコリメートレンズ67a〜67gが設けられている。図示された実施の形態において、第1〜第7光源62a〜62gが設けられ、これに対応して、第1〜第7光ファイバ64a〜64g及び第1〜第7コリメートレンズ67a〜67gが設けられている。また、図示された例において。七つのコリメートレンズ67a〜67gは、保持部材68によって一体的に保持され、コリメートレンズアレイ66を形成している。
【0033】
図1に示すように、本実施の形態において、コリメートレンズ67a〜67gは、光ファイバ64a〜64gから出射する光の進行方向を平行化する。とりわけ、異なる光源62a〜62gで生成された光が、互いに平行に進んで、走査装置70へ向かうようになっている。このため、光ファイバ64a〜64gは、光の射出方向が互いに一致するように、出射端64ay〜64gyの向きを揃えられている。また、コリメートレンズ67a〜67gは、光軸が互いに平行となるように、配置されている。
【0034】
図2及び図3は、光ファイバ64a〜64gの出射端64ay〜64gyと、コリメートレンズ67a〜67gとの位置関係が例示されている。図2及び図3に示された例において、複数のコリメートレンズ67a〜67gの間で、コリメートレンズ67a〜67gの大きさが一定ではない。このため、図2に示された例では、光ファイバ64a〜64gから出射する光の開口数NA(Numerical Aperture)が互いに異なる値に設定される一方で、光ファイバ64a〜64gの出射端64ay〜64gyとコリメートレンズ67a〜67gとの距離が、一定に保たれている。一方、図3に示された例では、光ファイバ64a〜64gから出射する光のNAが互いに同一であるため、光ファイバ64a〜64gの出射端64ay〜64gyとコリメートレンズ67a〜67gとの距離が互いに異なっている。
【0035】
また、図2及び図3に示された両方の例において、複数のコリメートレンズ67a〜67gは、すべて、第1の仮想平面vfp1上に配置されている。光ファイバ64a〜64gの出射端64ay〜64gyは、図2に示された例において第1の仮想平面vfp1と平行な第2の仮想平面vfp2上に配置されているが、図3に示された例では一定の仮想平面上には配置されていない。また、図示は省略するが、図3に示された形態の変形例として、光ファイバ64a〜64gの出射端64ay〜64gyが第2の仮想平面vfp2上に配置され、その一方で、複数のコリメートレンズ67a〜67gが一定の仮想平面上には配置されていないようにしてもよい。」

「【0040】
次に、走査装置70について説明する。図示された具体例として、走査装置70は、光源62からの光を反射する反射面79aを有する反射デバイス75と、反射デバイス75に接続された制御器72と、を有している。反射デバイス75の反射面79aの向きは、所定の可動範囲内において繰り返し変動可能となっている。反射面79aの向きが、繰り返し変動することにより、光源装置61から照射された光が、光学素子50上を走査するようになる。
【0041】
図示された例において、反射デバイス75は、反射面79aを有した反射部材79と、反射部材79を回転駆動する駆動装置76と、を有している。図1及び図5に示すように、駆動装置76は、一例としてモータとして構成され、ステータとして機能するケーシング77と、ロータとして機能する軸部材78と、を有している。反射部材79は、軸部材78に取り付けられており、軸部材78とともに第1回転軸Ra1を中心として回転可能となっている。ただし、反射面79aは、回転軸線Ra1に対して直交していない。言い換えると、反射面79aの法線方向nd1(図3参照)は、回転軸線Ra1と非平行であり、回転軸線Ra1に対して傾斜している。したがって、反射部材79が、回転軸線Ra1を中心として回転すると、反射面79aは、向きを変化させるようになる。このとき、反射部材79の回転が定速であれば、反射面79aは、回転軸線Ra1と直交する第1仮想直交面Vp1を中心として、周期的に向きを変動させることになる。
【0042】
ところで上述した光源装置61との組み合わせにおいて、反射デバイス75の反射面79aは、反射面79aへの法線方向ndからの観察において、円形状または楕円形状となっていることが好ましい。上述した光源装置61から放出される光は、円形状または楕円形状の反射面79a内に効率的に入射することができる。すなわち、駆動装置76によって高速駆動される反射部材79を不必要に大きくすることなく、光源装置61からの光を優れた利用効率で利用することが可能となる。」

「【0046】
次に、光学素子50について説明する。光学素子50は、各領域への入射光を当該領域の位置に応じた特定の方向に向ける光路制御機能を有している。ここで説明する光学素子50は、各領域への入射光の進行方向を補正して所定の領域LZに向ける。この領域が、被照明領域LZとなる。すなわち、光学素子50の入射面を平面分割してなる各領域に照射された照射装置60からの光は、光学素子50を経由した後に、少なくとも一部分において重なり合う領域を照明するようになる。
【0047】
一例として、図1及び図8に示された例において、光学素子50は、照射装置60からの光の入射方向に対応して形成されたレンズアレイ51を含んで構成され得る。ここで「レンズアレイ」とは、単位レンズとも呼ばれる小さなレンズの集合体であり、屈折または反射によって光の進行方向を偏向させる素子として機能する。図示された例において、光学素子50は、各単位レンズ51aに対応する各領域に入射する光を、それぞれ、少なくとも被照明領域LZの全域に入射するように拡散させる。すなわち、光学素子50は、各領域に照射装置60から入射する光を拡散させることによって、同一の被照明領域LZを照明する。
【0048】
図8に示された一具体例において、光学素子50は、凸レンズからなる単位レンズ51aを敷き詰めてなるフライアイレンズとして構成されたレンズアレイ51と、レンズアレイ51に対向して配置されたコンデンサレンズ52またはフィールドレンズと、を有している。図8の光学素子50において、レンズアレイ51が、光学素子50の最入光側に配置されており、照射装置60からの光を受ける。レンズアレイ51をなす各単位レンズ51aは、所定の発散光束をなす光線の光路をたどるようにして入射する光を、一点に収束させることができる。そして、コンデンサレンズ52は、各単位レンズ51aによる収束点によって画成される面上に配置され、各凸レンズからの光を、被照明領域LZに向ける。とりわけ、コンデンサレンズ52によれば、各凸レンズからの光を、同一の被照明領域LZのみに向けることができ、各方向からの照明光を被照明領域LZに重畳させる。なお、照射装置60から照射される発散光の発散角度を制御するため、レンズアレイ51の入射前となる光路上にコリメータレンズ等の調整手段を設けるようにしてもよい。
【0049】
また、図9に示された他の具体例において、光学素子50は、図8に示されたレンズアレイ51及びコンデンサレンズ52に加えて、これらの間に配置された第2レンズアレイ53をさらに有している。図9に示された例において、第2レンズアレイ53も、レンズアレイ51と同様に、凸レンズからなる単位レンズ53aを敷き詰めるようにして形成されたフライアイレンズとして構成されている。第2レンズアレイ53は、レンズアレイ51の各単位レンズ51aによる収束点上に各単位レンズ53aが位置するよう、配置されている。図9の光学素子50において、第2レンズアレイ53の各単位レンズ53aは、レンズアレイ51からの光を発散させる。そして、第2レンズアレイ53の各単位レンズ53aからの発散光は、コンデンサレンズ52によって、被照明領域LZに重畳される。
【0050】
次に、空間光変調器30について説明する。空間光変調器30は、被照明領域LZに重ねて配置される。そして、空間光変調器30は、照明装置40によって照明され、変調画像を形成する。照明装置40からの光は、上述したように被照明領域LZの全域のみを照明する。したがって、空間光変調器30の入射面は、照明装置40によって光を照射される被照明領域LZと同一の形状および大きさであることが好ましい。この場合、照明装置40からの光を、変調画像の形成に高い利用効率で利用することができるからである。
【0051】
空間光変調器30は、特に制限されることなく、種々の公知の空間光変調器を利用することができる。例えば、偏光を利用することなく変調画像を形成する空間光変調器、例えばデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)や、偏光を利用して変調画像を形成する透過型の液晶マイクロディスプレイや反射型のLCOS(Liquid Crystal On Silicon)を、空間光変調器30として用いることができる。
【0052】
図1に示された例のように、空間光変調器30が、透過型の液晶マイクロディスプレイである場合、照明装置40によって面状に照明される空間光変調器30が、画素毎にコヒーレント光を選択して透過させることにより、空間光変調器30をなすディスプレイの画面上に変調画像が形成されるようになる。こうして得られた変調画像は、最終的には、投射光学系25によって、等倍で或いは変倍されてスクリーン15へ投射される。これにより、観察者は、スクリーン15上に投射された当該画像を観察することができる。スクリーン15は、透過型スクリーンとして構成されていてもよいし、反射型スクリーンとして構成されていてもよい。
【0053】
次に、以上の構成からなる照明装置40、投射装置20および投射型映像表示装置10の作用について説明する。
【0054】
まず、照射装置60は、光学素子50上を走査するように光学素子50へコヒーレント光を照射する。具体的には、光源装置61の各光源62a〜62gで特定波長帯域のコヒーレント光が生成される。各光源62a〜62gで生成された光は、当該光源62a〜62gに対応する光ファイバ64a〜64g内を伝播して、光ファイバ64a〜64gの出射端64ay〜64gyから出射する。光ファイバ64a〜64gから出射した光は、出射端64ay〜64gyに対面する位置に配置されたコリメートレンズ67a〜67gで平行光束化される。そして、以上のようにして、照射装置60は、大光量平行光束を、走査装置70に向けて照射する。
【0055】
以上のように本実施の形態では、各光源62a〜62g毎に区分けして、生成された光の搬送および平行光束への整形を実施している。このような本実施の形態によれば、次の理由から、光源装置61から走査装置70へ照射される光を高精度に平行光束化することが可能となる。
【0056】
多数の光源から放出される大光量光を合成して光ファイバ99で搬送する場合、図18に示すように、光ファイバ99の出射端99yの面積も大面積化する必要が生じる。この場合、光ファイバ99からの出射光の進行方向は、当該光ファイバ99の構成に対応した特定の角度範囲内に向けられる。しかしながら、光ファイバ99からの出射光は、この特定の角度範囲内の方向に発散する発散光束の光路を辿るようにして、出射端99yの各位置から射出する。すなわち、光ファイバ99からの出射光は、厳密には、発散した面状光となっている。この場合、光ファイバ99の出射端99yに対面して配置されたコリメートレンズ98により、光ファイバ99から放出された光の光軸を調整することは可能であるが、すべての光の光路を高精度に平行化することはできない。これに対して、図2や図3に示された本実施の形態による光源装置61によれば、各光源62a〜62g毎に別の光ファイバ64a〜64gを用いているので、光ファイバ64a〜64gの出射端64ay〜64gyを大口径とする必要がない。このため、光源装置61から放出される光は、高精度に平行光束化され得る。
【0057】
次に、光源装置61から走査装置70へ進んだコヒーレント光は、走査装置70において、反射デバイス75の反射面79aで反射して進行方向を変えられる。反射面79aの向きは、周期的に変化している。この結果、図5及び図7から理解され得るように、光学素子50上へのコヒーレント光の入射位置も、周期的に変化するようになる。
【0058】
光学素子50の各領域に入射したコヒーレント光は、それぞれ、光学素子50での光路調整機能により、被照明領域LZに重畳されるようになる。すなわち、照射装置60から光学素子50の各領域に入射したコヒーレント光は、それぞれ、光学素子50で拡散ないしは拡げられて、被照明領域LZの全域に入射するようになる。このようにして、照射装置60は、被照明領域LZをコヒーレント光で照明することができる。
【0059】
図1に示すように、投射装置20においては、照明装置40の被照明領域LZと重なる位置に空間光変調器30が配置されている。このため、空間光変調器30は、照明装置40によって面状に照明され、画素毎にコヒーレント光を選択して透過させることにより、映像を形成するようになる。この映像は、投射光学系25によってスクリーン15に投射される。スクリーン15に投射されたコヒーレント光は、拡散され、観察者に映像として認識されるようになる。」

「【0066】
ところで、光源装置61からの光の光路を変化させる走査装置70は、光源装置61からの光を反射する反射部材79を含んだ反射デバイス75を有している。反射デバイス80の反射部材79は、反射面79aの法線方向nd1と非平行な回転軸線Ra1を中心として、回転するようになっている。したがって、反射部材79が回転すると、反射面79aの向きが経時的に変化し、且つ、反射面79aの向きの変化は周期性を持つようになる。このため、反射面79aで反射した光の進行方向は経時的に変化し、且つ、反射光の進行方向の変化は周期性を持つようになる。とりわけこのような反射デバイス75によれば、コンパクトな構成及び簡易な制御により、光路を大きく変化させることができる。加えて、反射デバイス75は、反射面79aの向きの変化にともなって、占有スペースを大きく変化させることはない。したがって、本実施の形態によれば、省スペースを図りながら、光学素子50上の広い領域に亘った入射光の走査が可能となる。
【0067】
また、図5から理解され得るように、図示された走査装置70を用いた場合、照射装置60から光学素子50上に入射する光の光学素子50上での走査経路は、矢印ARxで示すように、円形状となる。すなわち、簡易な構成の走査装置70を用いながら、光学素子50上での光の入射位置を広範囲に分布させること、言い換えると、大きく広げることができる。これにより、光学素子50の大きさを有効に利用して、被照明領域LZの各位置へ向かう照明光の入射角度範囲を大きく広げることができる。結果として、スペックルを目立たなくさせることができる。
【0068】
そして、本実施の形態によれば、反射面79aの法線方向nd1に対して傾斜した回転軸線Ra1を中心として当該反射面79aを回転させる走査装置70との組み合わせにおいて、光源装置61は、複数の光源62a〜62gと、各光源62a〜62gにそれぞれ対応して設けられ対応する光源から射出した光が伝播する複数の光ファイバ64a〜64gと、各光ファイバ64a〜64gにそれぞれ対応して設けられ対応する光ファイバから出射する光の光路を調整する複数のコリメートレンズ67a〜67gと、を有している。このような本実施の形態によれば、任意の瞬間において、複数のコリメートレンズ67a〜67gのうちの任意の一つのコリメートレンズから出射した光が照射されている走査装置70の反射面79a上の領域が、少なくとも部分的に、複数のコリメートレンズ67a〜67gのうちの当該一つのコリメートレンズ以外のコリメートレンズから出射した光が照射されている反射面79a上の領域と重ならないようにすることができる。すなわち、反射面79aの広い領域に光源装置61からの光を分散して照射することが可能となる。したがって、反射面79aが受光する光のパワー密度を低下させることができ、これにより、反射面79aの劣化を効果的に防止することができる。また、反射面79aの有効利用を図ることができるので、反射面79aを小型化することができる。結果として、高出力の照明装置40を効果的に小型化することができる。
【0069】
また、このような本実施の形態によれば、複数の光源62a〜62gから射出した光を、合成した状態ではなく、複数の光ファイバ64a〜64gの出射端64ay〜64gyの各々から分散して射出することができる。したがって、合成光を用いる場合と比較して、各光ファイバ64a〜64gの出射端64ay〜64gyの開口面積を小さくすること、言い換えると各光ファイバ64a〜64gの出射端64ay〜64gyから射出する光のスポット径を小さくすることができる。このため、光ファイバ64a〜64gから射出する光の進行方向を、コリメートレンズ67a〜67gを用いて、より高精度に平行化することが可能となる。結果として、光の進行方向をより高精度に制御することが可能となり、被照明領域をより高効率で照明することができる。
【0070】
すなわち、以上のような本実施の形態によれば、光源装置61からの高出力光の進行方向を、十分に小型化した走査装置70によって、反射面79aの劣化を抑制しながら、高精度に制御することができる。この結果、照明装置40によって所望の領域LZを所望の方向から高精度に明るく照明することができる。」





















引用発明の認定
前記aで摘記した記載を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明>
「 光の進行方向を被照明領域LZへ向ける光学素子50と、光学素子50へコヒーレント光を照射する照射装置60を有する照明装置40であって(【0029】)、
照射装置60は、特定波長帯域のコヒーレント光を射出する光源装置61と、光源装置61からの光の進行方向を光学素子50に向ける走査装置70を有するものであり(【0030】)、
光源装置61は、複数の光源62a〜62gと、各光源にそれぞれ対応して設けられた複数の光ファイバ64a〜64gと、各光ファイバにそれぞれ対応して設けられた複数のコリメートレンズ67a〜67gを含み(【0030】)、
光ファイバ64a〜64gから出射する光は、開口数NA(Numerical Aperture)が設定されたものであり(【0034】)、
コリメートレンズ67a〜67gは、光ファイバ64a〜64gから出射する光の進行方向を平行化しており(【0033】)、
走査装置70は、光源62からの光を反射する反射面79aを有する反射デバイス75と、反射デバイス75に接続された制御器72を有し、反射デバイス75の反射面79aの向きは、所定の可動範囲内において繰り返し変動可能となっており、反射面79aの向きが、繰り返し変動することにより、光源装置61から照射された光が、光学素子50上を走査するようになっており(【0040】)、
光源装置61から走査装置70へ進んだコヒーレント光は、走査装置70において、反射デバイス75の反射面79aで反射して進行方向を変えられ、この反射面79aの向きが周期的に変化する結果、光学素子50上へのコヒーレント光の入射位置も周期的に変化しており(【0057】)、
光学素子50は、レンズアレイ51、コンデンサレンズ52及びこれらの間に配置された第2レンズアレイ53を有しており(【0049】、【図9】)、
レンズアレイ51は、凸レンズからなる単位レンズ51aを敷き詰めてなるフライアイレンズとして構成され、光学素子50の最入光側に配置されて照射装置60からの光を受け、前記各単位レンズ51aが所定の発散光束をなす光線の光路をたどるようにして入射する光を一点に収束させるものであり(【0048】)、
コンデンサレンズ52は、レンズアレイ51に対向して配置され(【0048】)、
第2レンズアレイ53は、凸レンズからなる単位レンズ53aを敷き詰めるようにして形成されたフライアイレンズとして構成され、レンズアレイ51の各単位レンズ51aによる収束点上に各単位レンズ53aが位置するよう配置されており(【0049】)、
第2レンズアレイ53の各単位レンズ53aは、レンズアレイ51からの光を発散させ、第2レンズアレイ53の各単位レンズ53aからの発散光は、コンデンサレンズ52によって、被照明領域LZに重畳され(【0049】)、
光学素子50は、各領域への入射光を当該領域の位置に応じた特定の方向に向ける光路制御機能を有し、各領域への入射光の進行方向を補正して所定の被照明領域LZに向け、(【0046】)、
光学素子50の入射面を平面分割してなる各領域に照射された照射装置60からの光は、光学素子50を経由した後に、少なくとも一部分において重なり合う領域を照明するようになり(【0046】)、
反射面79aの有効利用を図ることができるので、反射面79aを小型化することができ、結果として、高出力の照明装置40を効果的に小型化することができる(【0068】)、
照明装置40(【0029】)。」

(イ) 技術常識1
a 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用され、本願出願前に発行された、特開2016−173391号公報(平成28年9月29日公開。以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。なお、下線は、当審において付した。

「【0025】
(照明装置)
続いて、本発明の一実施形態に係る照明装置2について説明する。図2は照明装置2の概略構成を示す図である。図2に示すように、照明装置2は、アレイ光源(光源)21Aと、コリメーター光学系22と、アフォーカル光学系23と、ホモジナイザー光学系24と、偏光分離素子50Aを含む光学素子25Aと、第1の集光光学系26と、蛍光発光素子27と、位相差板28と、第2の集光光学系29と、拡散反射素子30と、インテグレーター光学系31と、偏光変換素子32と、重畳レンズ33aとを備えている。本実施形態において、インテグレーター光学系31は重畳レンズ33aと協同して重畳光学系33を構成している。」

「【0031】
コリメーター光学系22を通過した各励起光BL及び青色光BL’は、アフォーカル光学系23に入射する。アフォーカル光学系23は、励起光BL及び青色光BL’の光束径を調整する。アフォーカル光学系23は、例えば凸レンズ23a,凹レンズ23bから構成されている。」





引用文献2の図2を参酌すると、アフォーカル光学系23は、光束径を縮小するものであることが読み取れる。

b 引用文献3の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用され、本願出願前に発行された特開2012−255982号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。なお、下線は、当審において付した。

「【0009】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施形態によるプロジェクタの一構成例を示すブロック図である。図1に示すプロジェクタ1は、レーザー光源11と、集光光学系12と、拡大光学系13aと、ホログラム記録媒体14と、振動素子15と、光変調素子16と、投射光学系17とを備える。図1では、レーザー光源11は一つだけ図示されているが、複数存在してもよい。
【0010】
集光光学系12は、レーザー光源11から射出されたレーザー光をコリメートする。拡大光学系13aは、そのコリメート光の光束径を拡大し、再生照明光としてホログラム記録媒体14へ射出する。拡大光学系13aはコリメート光の光路上から挿抜可能であって、図2のように拡大光学系13aがコリメート光の光路上から抜かれている状態では、コリメート光が光束径が拡大されずに再生照明光としてホログラム記録媒体14へ射出される。」

「【0021】
以上で説明した第1実施形態は、以下のように変形して実施できる。
〔1〕プロジェクタ1においては、拡大光学系13aを挿抜することにより、低スペックルモードの投影方法と、フリーフォーカスモードの投影方法とを切り替えるものとした。しかし、プロジェクタ1をフリーフォーカスモードとするのは、拡大光学系13aをコリメート光の光路上から抜くだけでなく、拡大光学系13aの代わりにコリメート光の光束径を縮小する光学系を挿入することにしてもよい。図3は、拡大光学系13aの代わりにコリメート光の光束径を縮小する縮小光学系13bを挿入したプロジェクタ2のブロック構成図である。縮小光学系13bをコリメート光の光路上へ挿入することにより、ホログラム再生光像の投射開口数がより小さくなり、投影光像の焦点深度がより深くなり、フリーフォーカス性がさらに向上する。」





引用文献3の図3を参酌すると、縮小光学系13bが、レーザー光源11及び集光光学系12側から順に、凸レンズ、凹レンズの順に構成されていることが読み取れる。

c 引用文献9の記載事項
当審において新たに引用され、本願出願前に発行された特開平11−212023号公報(以下「引用文献9」という。引用文献の参照番号は、前置審査も含めて審査段階のものと統一するため、前置審査で用いられた参照番号6〜8を用いず、9を用いた。)には、次の記載がある。なお、下線は、当審において付した。

「【0078】C.第3実施例:図8は、本発明の第3実施例としての照明光学系の要部を平面的に見た概略構成図である。この照明光学系300は、ほぼ平行な光束を射出する光源320と、集光レンズ360と、発散レンズ370と、第1のレンズアレイ330と、第2のレンズアレイ340と、偏光発生素子380と、重畳レンズ350と、を備えている。各構成要素は、システム光軸300LCに沿って順に配置されている。この照明光学系300は、アフォーカル光学系を構成する集光レンズ360および発散レンズ370を光源320と第1のレンズアレイ330との間に配置した点を特徴としている。第1のレンズアレイ330、第2のレンズアレイ340、偏光発生素子380、重畳レンズ350は、アフォーカル光学系で縮小された光束の幅に対応するように構成されている。また、これらの各機能は前述した照明光学系100および200における第1のレンズアレイ30、第2のレンズアレイ40、偏光発生素子180、重畳レンズ50と同じであるので、説明を省略する。
【0079】第3実施例の照明光学系300では、光源320から射出されたほぼ平行な光束の光束の幅をまず、集光レンズ360および発散レンズ370によって縮小している。これにより、アフォーカル光学系(集光レンズ360と発散レンズ370)の後段に配置された各光学要素を小型化することができるとともに、照明領域80を照明する照明光の入射角を小さくすることができる。
【0080】なお、発散レンズ370は、第1のレンズアレイ370の直後に配置してもよい。また、第3実施例においても、発散レンズ370は第1のレンズアレイ330と光学的に一体化することも可能である。さらに、第2のレンズアレイ340から重畳レンズ50までの各光学要素をすべて光学的に一体化するようにしてもよい。」





d 技術常識1の認定
前記a〜cに摘記した記載事項に例示されるように、次の事項は、技術常識(以下「技術常識1」という。)であると認められる。

[技術常識1]
「 投射装置等に使用する照明装置において、光源の後段に凸レンズと凹レンズからなるアフォーカル光学系を配置して、光源からの平行な光束の光束幅を縮小すること。」

(ウ) 技術常識2
a 引用文献10の記載事項
当審において新たに引用され、本願出願前に発行された「レンズのしくみ、中川治平、株式会社ナツメ社、2010年8月10日」(以下「引用文献10」という。)には、次の記載がある。

(106頁〜107頁)







b 技術常識2の認定
前記aに摘記した記載事項に例示されるように、次の事項は、技術常識(以下「技術常識2」という。)であると認められる。

[技術常識2]
「 凸レンズと凹レンズからなるアフォーカル光学系においては、凸レンズの後側焦点と凹レンズの前側焦点が一致すること。」

(エ) 技術常識3
a 引用文献4の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用され、本願出願前に発行された特開2008−65165号公報(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。なお、下線は、当審において付した。

「【0017】
また、本実施形態例に係る1次元照明装置は、図7にその一例の要部の概略構成図を示すように、光源1を構成する1次元状に配列された各レーザ素子の発散角度θを、波面分割の方向に関して平行ではなく、波面分割部を構成するシリンドリカルレンズアレイ4aのカップリングの角度φ以下程度に広げてシリンドリカルレンズアレイ4aに入射する構成としてもよい。この場合、レーザ素子の発散角度をθとすると、θ≦φとする。図7において、図4と対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。レーザの広がり角θはシリンドリカルレンズアレイ4a及び4bのカップリング角度φに近いほど、干渉縞を低減する効果が得られる。シリンドリカルレンズアレイ4aのカップリングの角度φより広げ、θ>φとする場合は、一部の光が迷光となってしまい、光学系の効率の損失になってしまう。なお、確実に迷光の発生を抑制するためには、レーザ素子の発散角度θをθ<φとすることがより望ましい。」

「【0019】
本発明においては、光源として1次元状に配列された複数のレーザ素子より構成する。全てのレーザ素子から出射されるレーザ光束がそれぞれ平行ではなく、光束全体が集光又は発散角ψをもつ構成であってもよい。この実施形態例に係る1次元照明装置の一例の要部の概略構成図を図10に示す。この場合、複数のレーザ素子から出射される各レーザ光Lb1、Lb2、Lb3の成す集光又は発散角度をψ、各レーザ素子のレーザ光の集光又は発散角度をθ、波面分割部に設ける入射側のシリンドリカルレンズアレイ4aの開口数をNAとすると、
cos{(ψ+θ)/2}≦NA
として構成することが望ましい。
このような構成とすることによって、複数のレーザ素子から出射される全てのレーザ光を効率よく波面分割部のシリンドリカルレンズアレイに入射する構成とすることができる。
【0020】
また、この発散角度ψと各レーザ素子のレーザ光の集光又は発散角度θとの和が、波面分割部に設けるシリンドリカルレンズアレイ4aのカップリング角度φ以内の角度で入射することが望ましい。すなわち、
ψ+θ≦φ
の関係を満たすように角度ψをつける構成とする。なお、これらψ、θ及びφはいずれもシリンドリカルレンズの光軸方向と平行な方向と成す角度である。
光源からのレーザ光に集光又は発散角度ψをもたせる方法としては、プリズム、ミラー、などの光学素子を介するか、又は、一つ一つのレーザ素子間に角度をつけて配置する構成としてもよい。このような配置構成とすることで、上記と同じ効果を生むことが可能となる。」









b 引用文献5の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用され、本願出願前に発行された特開2015−191043号公報(以下「引用文献5」という。)には、次の記載がある。なお、下線は、当審において付した。

「【0031】
図2に示すように、第1単位レンズ56の光軸と平行であり第1単位レンズ56を最大の幅を持つ部位で横切る断面において、拡散素子45から出射する拡散光の拡散角θaが、第1単位レンズ56に対応する一つの第2単位レンズ61の主点61aから一つの第1単位レンズ56の両端に延びる二つの直線分LSの間に形成される見込み角θb以下となっている。すなわち、次の関係が成り立っている。
θa ≦ θb
なお、「主点」とは、レンズの光学的な中心であり、焦点距離を定める中心点である。」

「【0052】
また本実施の形態による照明装置40では、図3に示すように、一つの第1単位レンズ56の光軸odaと平行な面であり且つ当該一つの第1単位レンズ56を最大の幅を持つ部位で横切る面において、拡散素子50から出射する拡散光の拡散角θaが、一つの第1単位レンズ56に対応する一つの第2単位レンズ61の主点61aから一つの第1単位レンズ61aの両端に延びる二つの直線分LSの間に形成される見込み角θb以下となっている。この場合、図4に示すように、拡散素子50からの発散光束に含まれ、第1単位レンズ56の光軸odaに対して最も傾斜した光L41が、第1単位レンズ56の幅方向における端部で光路を調整されて、当該第1単位レンズ56に対応する第2単位レンズ61に入射することが可能となる。したがって、拡散素子50を設けることによって、光源72で生成されるコヒーレント光の利用効率が大幅に低下することを防止することができる。」






c 技術常識3の認定
前記aで摘記したレンズの「カップリング角度」と、前記bで示したレンズの「見込み角」は、それぞれ本件補正発明のレンズの「取り込み角」に相当するところ、前記a及びbに摘記した記載事項に例示されるように、次の事項は、技術常識(以下「技術常識3」という。)であると認められる。

[技術常識3]
「 照明装置における光利用効率を高めるためにレンズに入射する光の発散角をレンズの取り込み角以下とすること。」

ウ 対比
(ア) 対比分析
以下、補正後の請求項1における、本件補正発明を特定する事項の記載の順番に沿って、本件補正発明と引用発明を対比する。
a 引用発明は、「照明装置40」であるから、本件補正発明と引用発明は、「照明装置」の発明である点で一致する。

b(a) 引用発明の「光ファイバ64a〜64g」は、本件補正発明の「光ファイバ」に相当する。
(b) 引用発明において、「光ファイバ64a〜64gから出射する光」は発散光であるところ、「コリメートレンズ67a〜67g」が、当該光の「進行方向」を「平行化」することは、本件補正発明において、「レンズ」が「光の発散角度を抑制すること」に相当する。よって、引用発明の「コリメートレンズ67a〜67g」は、本件補正発明の「前記光ファイバから射出した光の発散角度を抑制するレンズ」に相当する。
(c) 引用発明において、複数の光ファイバ64a〜64gは、各光源にそれぞれ対応して設けられ、複数のコリメートレンズ67a〜67gは、当該各光ファイバにそれぞれ対応して設けられている。この、対応する光源と光ファイバとコリメートレンズよりなる組み合わせは、本件補正発明の「単位光射出部」に相当する。そして、引用発明の「光源装置61」は、上記の組み合わせを複数備えるものであるから、本件補正発明の「単位光射出部を複数含む光供給部」に相当する。
(d) 上記(a)〜(c)の対比結果を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「光ファイバと前記光ファイバから射出した光の発散角度を抑制するレンズとを有した単位光射出部を複数含む光供給部」を備える点で一致する。

c 引用発明の「走査装置70」は、本件補正発明における「走査装置」に相当する。そして、引用発明においては、「走査装置70」の「反射面79a」の「向きが周期的に変化」しているから、光の進行方向を経時的に変更するものであるといえる。したがって、本件補正発明と引用発明は、「光の進行方向を経時的に変更する走査装置」を備える点で共通する。

d(a) 引用発明における「レンズアレイ51」は、本件補正発明における「第1レンズアレイ」に相当する。
(b) 引用発明において、「レンズアレイ51」は、「光学素子50の最入光側に配置され」、「光源装置61から走査装置70へ進んだコヒーレント光は、走査装置70において、反射デバイス75の反射面79aで反射して進行方向を変えられ、この反射面79aの向きが周期的に変化する結果、光学素子50上へのコヒーレント光の入射位置も周期的に変化す[る]」から、「前記走査装置からの光が走査するようにして入射する」ものであるということができる。
(c) したがって、本件補正発明と引用発明は、「前記走査装置からの光が走査するようにして入射する第1レンズアレイ」を備える点で一致する。

e 引用発明の「レンズアレイ53」は、本件補正発明の「第2レンズアレイ」に相当する。そして、引用発明における「レンズアレイ53」の「単位レンズ53a」のそれぞれは「レンズアレイ51の各単位レンズ51aによる収束点上」に位置するよう配置されているから、引用発明における「レンズアレイ53」は、「レンズアレイ51」に対向して配置されているといえる。したがって、本件補正発明と引用発明は、照明装置が「前記第1レンズアレイに対向して配置された第2レンズアレイ」を備える点で一致する。

f(a) 引用発明の「コンデンサレンズ52」は、本件補正発明の「偏向素子」に相当する。そして、引用発明は、「コンデンサレンズ52」が「レンズアレイ51に対向して配置」され、「レンズアレイ51」と「コンデンサレンズ52」の間に「レンズアレイ53」を有し、前記eで検討したとおり、「レンズアレイ53」は「レンズアレイ51」に対向して配置されているから、「コンデンサレンズ52」は、「レンズアレイ53」に対向して配置されているものと認められる。
(b) 光学機器におけるコンデンサレンズは、光源からの光を集光させる機能を有するレンズであるから、引用発明の「コンデンサレンズ52」は、入射される「第2レンズアレイ53の各単位レンズ53aからの発散光」を集光しており、「第2レンズアレイ」に含まれる「各単位レンズ53」からの発散光の進行方向を変更していると認められる。
(c) 上記(a)及び(b)の検討結果を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「前記第2レンズアレイに対向して配置された第2レンズアレイからの光の進行方向を変更する偏向素子」を備える点で一致する。

g(a) 引用発明における「レンズアレイ51」の「入射面を平面分割してなる各領域」のそれぞれは、本件補正発明の「前記第1レンズアレイの或る領域」と「前記第1レンズアレイの前記或る領域とは異なる別の領域」に相当する。
(b) 引用発明において、「レンズアレイ51」、「レンズアレイ53」及び「コンデンサレンズ52」が光路を調整する機能を有することは明らかである。
(c) そして、引用発明においては、入射した光は、「光学素子50を経由した後に、少なくとも一部分において重なり合う領域を照明するようにな」るから、「少なくとも部分的に重なり合う領域に進[む]」ことは明らかである。
(d) 上記(a)〜(c)の検討結果を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「前記第1レンズアレイの或る領域に入射した光、並びに、前記第1レンズアレイの前記或る領域とは異なる別の領域に入射した光は、それぞれ、前記第1レンズアレイ、前記第2レンズアレイ及び前記偏向素子で光路を調整されて、少なくとも部分的に重なり合う領域に進[む]」点で一致する。

h 引用発明における「単位レンズ51a」は、本件補正発明における「第1単位レンズ」に相当する。そして、引用発明における「レンズアレイ51」は「単位レンズ51aを敷き詰めてなる」ものであるから、本件補正発明と引用発明は、「前記第1レンズアレイは、複数の第1単位レンズを含[む]」点で一致する。

i(a) 引用発明において「レンズアレイ53」が「単位レンズ53aを敷き詰めるようにして形成されたフライアイレンズとして構成され[る]」ことは、本件補正発明における「第2レンズアレイ」が「複数の第2単位レンズを含[む]」ことに相当する。
(b) 引用発明において「各単位レンズ53a」は、「レンズアレイ51の各単位レンズ51aによる収束点上」に位置するよう配置されているから、「各単位レンズ53a」は、「レンズアレイ51の各単位レンズ51a」に対応して設けられているといえる。
(c) 上記(a)及び(b)の検討結果を踏まえると、本件補正発明と引用発明は、「前記第2レンズアレイは、前記第1レンズアレイの各第1単位レンズに対応して設けられた複数の第2単位レンズを含[む]」点で一致する。

j(a) 引用発明においては、「走査装置70」における「反射面79aの向きが、繰り返し変動する」ところ、「走査装置70」より向きが変動されて出射される光をレンズアレイ51の単位レンズ51aに十分に光学的に結合させることは、当然のことにすぎない。
(b) 一般に、光源からの発散光をコリメートしたとしても、光源が理想的な点光源ではなく、有限の大きさを持つ限り、完全なコリメート光にはならず、発散角を有することは、技術常識である。そして、前記イ(エ)cにおいて技術常識3として示したように、照明装置において、全ての光利用効率を高めるために、レンズに入射する光の発散角度をレンズの取り込み角以下となるように設計することは、極々当然の配慮事項であるから、「単位レンズ51a」が各コリメートレンズ67a〜67gから出射された若干の発散角を有するコリメート光を十分に光学的に結合すると、すなわち、単位レンズ51aの取り込み角を、その入射光の発散角(各コリメートレンズ67a〜67gから出射された若干の発散角を有するコリメート光の発散角度)よりも大きくするように設計すべきことは、当業者にとっては、明示されていなくとも記載されているに等しい事項である。
(c) したがって、「走査装置70」での走査角度分の入射角の変動を含む発散光が入射する「単位レンズ51a」について、レンズの取り込み角を前記発散角度以上とすることは、引用発明において、記載されているに等しい事項である。
(d) 上記(a)〜(c)の検討結果を総合すると、本件補正発明と引用発明は、次の点(以下「光学結合の設計条件」という。)で共通する。
「照明装置」が「 前記第1単位レンズの取り込み角θ〔°〕、走査装置に入射する光の発散角度α〔°〕、及び、前記走査装置での走査角度β〔°〕は、次の関係を満たす。
α+β≦θ」

(イ) 一致点及び相違点
前記(ア)における対比分析の内容をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の一致点において一致し、次の相違点において相違する。
[一致点]
「 光ファイバと前記光ファイバから射出した光の発散角度を抑制するレンズとを有した単位光射出部を複数含む光供給部と、
光の進行方向を経時的に変更する走査装置と、
前記走査装置からの光が走査するようにして入射する第1レンズアレイと、
前記第1レンズアレイに対向して配置された第2レンズアレイと、
前記第2レンズアレイに対向して配置された第2レンズアレイからの光の進行方向を変更する偏向素子と、を備え、
前記第1レンズアレイの或る領域に入射した光、並びに、前記第1レンズアレイの前記或る領域とは異なる別の領域に入射した光は、それぞれ、前記第1レンズアレイ、前記第2レンズアレイ及び前記偏向素子で光路を調整されて、少なくとも部分的に重なり合う領域に進み、
前記第1レンズアレイは、複数の第1単位レンズを含み、
前記第2レンズアレイは、前記第1レンズアレイの各第1単位レンズに対応して設けられた複数の第2単位レンズを含み、
前記第1単位レンズの取り込み角θ〔°〕、走査装置に入射する光の発散角度α〔°〕、及び、前記走査装置での走査角度β〔°〕は、次の関係を満たす、
α+β≦θ」
照明装置。」

<相違点>
本件補正発明は、「第1レンズと、前記第1レンズよりも前記光供給部からの光の光路における下流側に配置された第2レンズと、を含み、
前記第1レンズは凸レンズであり、且つ、前記第2レンズは凹レンズであり、
前記第1レンズ及び前記第2レンズは、前記第1レンズの後側焦点が前記第2レンズの前側焦点に一致するように配置」されてなる「前記光供給部からの光の光路幅を縮小させるアフォーカル光学系」を備え、
走査装置に入射する光が「前記アフォーカル光学系から進み出た光」であるのに対して、
引用発明は、アフォーカル光学系を光源装置61の後段に有さず、走査装置に入射する光が、「コリメートレンズ67a〜67gから進み出た光」である点。

エ 判断
(ア) 相違点の判断
以下、相違点について判断する。
投射装置等に使用する照明装置において、光源の後段に凸レンズと凹レンズからなるアフォーカル光学系を配置して、光源からの平行な光束の光束幅を縮小することは、技術常識である(前記イ(イ)dの[技術常識1]参照)。そして、アフォーカル光学系の後段において、光束幅が縮小されると、後段の光学素子は縮小された光束幅に対応する大きさで設計されるのであるから、後段の光学素子が小型化され、当該後段の光学素子も含む装置全体で小型化が可能であることは、当業者にとって自明なことである。
ここで、「凸レンズと凹レンズからなるアフォーカル光学系において、凸レンズの後側焦点と凹レンズの前側焦点が一致するものであること」は、技術常識であって、凸レンズと凹レンズからなるアフォーカル光学系が当然に備える構成である(前記イ(ウ)b参照)。
そして、引用文献1の明細書の段落【0068】に「反射面79aを小型化することができ」「高出力の照明装置を効率的に小型化することができる。」と記載されているように、引用発明において、反射面79aを含むこれより後段の照明装置の構成要素をさらに小型化することは、自明の課題である。
そうすると、反射面79aを含むこれより後段の照明装置の構成要素をさらに小型化するために、引用発明において、次のアフォーカル光学系の構成を備えるようにすることは、当業者にとっては自明の設計変更にすぎない。
「第1レンズと、前記第1レンズよりも前記光供給部からの光の光路における下流側に配置された第2レンズと、を含み、
前記第1レンズは凸レンズであり、且つ、前記第2レンズは凹レンズであり、
前記第1レンズ及び前記第2レンズは、前記第1レンズの後側焦点が前記第2レンズの前側焦点に一致するように配置」されてなる「前記光供給部からの光の光路幅を縮小させるアフォーカル光学系」
そして、その結果、走査装置に入射する光は、「コリメートレンズ67a〜67gから進み出た光」から「前記アフォーカル光学系から進み出た光」になるから、前記ウ(ア)j(d)に示した「光学結合の設計条件」についても、これに併せて変更し、「前記第1単位レンズの取り込み角θ〔°〕が、前記アフォーカル光学系から進み出た光の発散角度α〔°〕、及び、前記走査装置での走査角度β〔°〕を足し合わせた角度以上」であるというように設計変更することは、技術の具体的適用に伴って当然になすべき設計変更にすぎない。
よって、本件補正発明は、引用発明と技術常識1、技術常識2及び技術常識3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本件補正発明の奏する効果は、引用発明、技術常識1、技術常識2及び技術常識3から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものは認められない。

(イ) 請求人の主張について
a 請求人の主張の内容
(a) 令和3年3月2日に提出した審判請求書における主張
請求人は、令和3年3月2日に提出した審判請求書において、以下の主張(以下「主張1」という。)をしている。

[主張1]
令和2年11月30日付け拒絶査定で引用された引用文献1〜5には、いずれにも本件補正後の請求項1に記載される発明特定事項を全て含む次の特徴Aが開示も示唆もされていない。

[特徴A]
「 光ファイバと前記光ファイバから射出した光の発散角度を抑制するレンズとを有した単位光射出部を複数含む光供給部と、
前記光供給部からの光の光路幅を縮小させるアフォーカル光学系と、
前記アフォーカル光学系からの光の進行方向を継時的に変更する走査装置と、
前記走査装置からの光が走査するようにして入射する第1レンズアレイと、
前記第1レンズアレイに対向して配置された第2レンズアレイと、
前記第2レンズアレイに対向して配置された第2レンズアレイからの光の進行方向を変更する偏向素子と、を備え、
前記アフォーカル光学系は、第1レンズと、前記第1レンズよりも前記光供給部からの光の光路における下流側に配置された第2レンズと、を含み、
前記第1レンズは凸レンズであり、且つ、前記第2レンズは凹レンズであり、
前記第1レンズ及び前記第2レンズは、前記第1レンズの後側焦点が前記第2レンズの前側焦点に一致するように配置されており、
前記第1レンズアレイの或る領域に入射した光、並びに、前記第1レンズアレイの前記或る領域とは異なる別の領域に入射した光は、それぞれ、前記第1レンズアレイ、前記第2レンズアレイ及び前記偏向素子で光路を調整されて、少なくとも部分的に重なり合う領域に進み、
前記第1レンズアレイは、複数の第1単位レンズを含み、
前記第2レンズアレイは、前記第1レンズアレイの各第1単位レンズに対応して設けられた複数の第2単位レンズを含み、
前記第1単位レンズの取り込み角θ〔°〕、前記アフォーカル光学系から進み出た光の発散角度α〔°〕、及び、前記走査装置での走査角度β〔°〕は、次の関係を満たすこと。
α+β≦θ」

(b) 令和3年6月14日に提出した上申書における主張
請求人は、令和3年6月14日に提出した上申書において、以下の主張(以下「主張2」という。)をしている。

[主張2]
本件補正発明は、請求項1に記載される事項のうち、とりわけ主要な構成として、次の(B)及び(C)を特徴としているのに対して、令和2年11月30日付け拒絶査定で引用された引用文献1〜5と、前置報告書で引用された特開2008−225095号公報、特開2005−10755号公報及び国際公開第2016/151827号には、特徴(B)及び(C)を有する照明装置について、開示も示唆もされていない。

(B)前記光供給部からの光の光路幅を縮小させるアフォーカル光学系と、
前記アフォーカル光学系からの光の進行方向を継時的に変更する走査装置と、を備えること。
(C)前記第1単位レンズの取り込み角θ〔°〕、前記アフォーカル光学系から進み出た光の発散角度α〔°〕、及び、前記走査装置での走査角度β〔°〕は、次の関係を満たすこと。
α+β≦θ

b 請求人の主張についての判断
請求人の前記主張1は、引用文献1〜5のそれぞれが、補正後の本件補正発明に係る請求項1に記載の発明特定事項を全て備える特徴Aを開示していないため、当該特徴Aは、引用文献1〜5に記載の発明から当業者が容易に想到することができたものではないとの主張であるが、前記(ア)において説示したとおり、本件補正発明は、引用発明と、引用文献2、引用文献3等に摘記した記載事項に例示される技術常識1、引用文献4及び引用文献5に摘記した記載事項に例示される技術常識3及び技術常識2から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求人の前記主張1を採用することはできない。
また、前記(B)及び(C)の特徴を含む特徴Aが、引用発明と、引用文献2、引用文献3等に摘記した記載事項に例示される技術常識1、引用文献4、引用文献5に摘記した記載事項に例示される技術常識3及び技術常識2から当業者が容易に発明をすることができたものであることも前記(ア)において説示したとおりであるから、請求人の主張1と同様に、前記主張2を採用することはできない。
よって、請求人の主張1及び2は、採用することができない。

(ウ) 独立特許要件判断の小括
以上検討のとおり、本件補正発明と引用発明の相違点は、格別なものではない。また、本件補正発明の奏する効果には、引用発明と、技術常識1、技術常識2及び技術常識3から予測される効果を超える、格別顕著な効果の存在を認めることはできない。
よって、本件補正発明は、引用発明、技術常識1、技術常識2及び技術常識3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることはできない。

オ 補正の適否のむすび
以上検討のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反する。
したがって、本件補正は、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本件発明について
1 本件発明
本件補正は、上記第2において説示したとおり却下されたので、本願の請求項1〜4に係る発明は、本願の出願時の特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定されるものである。ただし、本件補正前の請求項1の記載における「前記アフォーカル光学系からの光の進行方向を継時的に変更する走査装置」との記載において、「継時的」は「経時的」と記載すべきところの明らかな誤記であるから、請求項1に係る発明は、「継時的」を「経時的」と読み替えた、本件補正前の請求項1に記載した事項(前記1(1)参照)により特定されるとおりのものであると認める(以下「本件発明」という。)。

2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定における拒絶の理由のうち、本件発明についての拒絶の理由は、次のとおりである。

理由1
本件発明は、本願出願前に発行された、次の引用文献1〜5に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2016−58165号公報
引用文献2:特開2016−173391号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3:特開2012−255982号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4:特開2008−65165号公報(周知技術を示す文献)
引用文献5:特開2015−191043号公報(周知技術を示す文献)

3 引用発明
原査定の拒絶理由で引用された引用文献1の記載事項及び引用発明の認定は、前記第2の2(2)イ(ア)に示したとおりである。

4 判断
(1) 本件発明と本件補正発明の関係
本件発明は、本件補正発明のうち、次の限定を省いたものである。
「アフォーカル光学系」について、「 前記アフォーカル光学系は、第1レンズと、前記第1レンズよりも前記光供給部からの光の光路における下流側に配置された第2レンズと、を含み、
前記第1レンズは凸レンズであり、且つ、前記第2レンズは凹レンズであり、
前記第1レンズ及び前記第2レンズは、前記第1レンズの後側焦点が前記第2レンズの前側焦点に一致するように配置されて[る]」ことの限定。

(2) 本件発明の想到容易性の判断
そうすると、本件発明の構成を全て含み、さらに構成を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2のエで説示したとおり、引用発明と、技術常識1、技術常識2及び技術常識3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明も、引用発明と、技術常識1、技術常識2及び技術常識3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 むすび
以上検討のとおり、本件発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-02-04 
結審通知日 2022-02-08 
審決日 2022-02-24 
出願番号 P2016-197248
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03B)
P 1 8・ 575- Z (G03B)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 岡田 吉美
特許庁審判官 清水 靖記
濱本 禎広
発明の名称 照明装置および投射装置  
代理人 宮嶋 学  
代理人 堀田 幸裕  
代理人 榎並 薫  
代理人 中村 行孝  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ