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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23J
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23J
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23J
管理番号 1384032
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-10-30 
確定日 2022-03-04 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6730992号発明「甲虫粉末」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6730992号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−12〕について訂正することを認める。 特許第6730992号の請求項1ないし4、6ないし12に係る特許を維持する。 特許第6730992号の請求項5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6730992号の請求項1〜12に係る特許についての出願は、2015年12月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年12月31日 2015年10月20日 いずれもフランス(FR))を国際出願日とする出願であって、令和2年7月7日にその特許権の設定登録がされ、同年7月29日にその特許公報が発行され、その後、令和2年10月29日に芦北 智晴(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
その後の手続の経緯の概要は次のとおりである。

令和3年 4月30日付け 取消理由通知
同年 8月10日 意見書・訂正請求書の提出
同年 8月27日付け 訂正請求があった旨の通知
同年10月22日付け 取消理由通知
令和4年 1月21日 意見書・訂正請求書の提出

なお、令和3年8月10日提出の訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなされる。
また、令和3年8月27日付けの訂正請求があった旨の通知に対し、特許異議申立人からの応答はなかった。

第2 訂正の適否
令和4年1月21日付け訂正請求は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1〜12について一群の請求項ごとに訂正することを求めるものである(以下、令和4年1月21日付け訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。)。

1 訂正の内容
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の「当該重量%が甲虫粉末の全重量に対するものである」との記載を、「当該重量%が甲虫粉末の全重量に対するものであり、当該甲虫がゴミムシダマシ科に属する」と訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項5を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6の「請求項1〜5」との記載を、「請求項1〜4」と訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項11の「請求項1〜5」との記載を、「請求項1〜4」と訂正する。

2 本件訂正の適否
(1)一群の請求項について
本件訂正は、訂正前の請求項1〜12についてのものであるところ、訂正前の請求項2〜12は請求項1を引用するものであり、訂正前の請求項1〜12は特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
そして、本件訂正の請求は、訂正前の請求項1〜12についてされているから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。

(2)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1による訂正は、本件訂正前の請求項1に記載された「甲虫」の範囲を技術的に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。

新規事項の追加の有無
特許された願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)の【0013】「好ましくは、本発明の好ましい甲虫は、ゴミムシダマシ科、・・・である。」との記載があるから、訂正事項1による訂正は、本件特許明細書等に記載された事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
したがって、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無
訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるところ、そのカテゴリー変更もないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(3)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2による訂正は、請求項5を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。

新規事項の追加の有無及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無
訂正事項2による訂正は、請求項5を削除するに過ぎないから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(4)訂正事項3、4について
ア 訂正の目的
訂正事項3、4による訂正は、請求項6、11において、引用する請求項を減ずるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。

新規事項の追加の有無及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無
訂正事項3、4による訂正は、請求項6、11において、引用する請求項を減ずるものに過ぎないから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項3、4による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

3 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、令和4年1月21日提出の訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1〜12〕について訂正することを認める。

第3 本件発明
上記第2で述べたとおり、本件訂正後の請求項〔1〜12〕について訂正することを認められるので、本件特許の請求項1〜4、6〜12に係る発明は、令和4年1月21日提出の訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1〜4、6〜12に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本件発明1」などということがある。)である。

「【請求項1】
67重量%以上のタンパク質、5重量%以上のキチン及び5〜20重量%の脂肪を含有する甲虫粉末であって、当該重量%が甲虫粉末の全重量に対するものであり、当該甲虫がゴミムシダマシ科に属する、甲虫粉末。
【請求項2】
前記甲虫粉末の全重量に対して4重量%以下の灰を含有する、請求項1に記載の甲虫粉末。
【請求項3】
タンパク質成分が85%以上の消化性を呈する、請求項1〜2のいずれか1項に記載の甲虫粉末。
【請求項4】
残留水分が2〜15%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の甲虫粉末。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の甲虫粉末を製造する方法であって、以下の工程:
i)甲虫を殺す、
ii)甲虫を圧搾して圧搾塊を得る、及び
iii)圧搾塊を挽き潰す、
を含む、方法。
【請求項7】
前記圧搾塊を乾燥させる工程を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
以下の工程:
i)甲虫を殺す、
ii)甲虫を圧搾して圧搾塊を得る、
iii)圧搾塊を乾燥させる、及び
iv)圧搾塊を挽き潰す、
を含み、当該圧搾工程が、甲虫を挽き潰す工程の後に行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
以下の工程:
i)甲虫を殺す、
ii)甲虫を圧搾して圧搾塊を得る、
iii)圧搾塊を乾燥させる、及び
iv)圧搾塊を挽き潰す、
を含み、当該圧搾工程が加熱下で行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
以下の工程:
i)甲虫を殺す、
ii)甲虫を圧搾して圧搾塊を得る、
iii)圧搾塊を乾燥させる、及び
iv)圧搾塊を挽き潰す、
を含み、当該圧搾塊を挽き潰す工程が、粒径が300μm〜1mmとなるように行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
ヒト又は動物の栄養補給用の栄養組成物であって、請求項1〜4のいずれか1項に記載の甲虫粉末を含有する、栄養組成物。
【請求項12】
前記甲虫粉末がタンパク質粉を置換するものである、請求項11に記載の栄養組成物。」

第4 当審が通知した令和3年4月30日付け取消理由、令和3年10月22日付け取消理由及び特許異議申立人が申し立てた理由の概要

1 特許異議申立人が申し立てた理由の概要
[申立理由1]訂正前の本件の請求項1〜12に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、下記の甲第1〜8号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1〜12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

[申立理由2]訂正前の本件の請求項1〜12に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合しない。
よって、訂正前の請求項1〜12に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

申立理由2の具体的な理由の概要は次のとおりである。
本件特許発明1は、甲虫粉末に含有される全重量に対するタンパク質が67重量%以上、キチンが5重量%以上、及び脂肪が5〜20重量%であり、さらに本件特許発明2は、甲虫粉末の灰が4重量%以下である数値限定発明である。
一方、実施例には、全重量に対するタンパク質が67.09重量%、キチンが8.0重量%、脂肪が13.6重量%、灰が3.21重量%の組成を持つ甲虫粉末しか記載がなく、当該実施例の成分値を基に、請求項に記載の数値範囲にまで拡張する根拠は示されておらず、本特許明細書の発明な詳細な説明には、当業者が本件特許を実施できる程度に本件特許発明1乃至2が記載されていない。
また、本件特許発明3は、タンパク質成分が85%の消化性を呈する甲虫粉末であることを特定事項とするが、実施例の甲虫粉末は、ペプシン消化性が90±2%であることが明らかになっているに過ぎない。本件特許発明4は、甲虫粉末の残留水分が2〜15%であることを特定事項としているが、実施例には、水分5.32重量%の組成を持つ昆虫粉末しか記載がない。本件特許発明5は、タンパク質の全重量に対して40〜60重量%の可溶性タンパク質を含有し、その内50%のサイズが12,400g/mol以下を特定事項としているが、タンパク質の全重量に対する可溶性タンパク質の含有量は実施例として示されておらず、可溶性タンパク質のうち、6.5〜12.4kg/molの相対存在量が74.4%であることが確認さているのみである。
これら当該実施例の成分値を基に、請求項に記載の数値範囲にまで拡張する根拠は示されておらず、本特許明細書の発明な詳細な説明には、当業者が本件特許を実施できる程度に本件特許発明3乃至5が記載されていない。
上記で指摘した本件特許発明を引用するその他の本件特許発明も同様である。



甲第1号証:Animal Feed Science and Technology,197(2014),pp.1-33(以下「甲1」という。下記甲各号証についても同様。)
甲第2号証:中国特許出願公開第101117613号明細書
甲第3号証:Zoo Biology,(2007),26,pp.105-115
甲第4号証:Journal of Nutritional Science,(2014),Vol.3,e29,pp.1-4
甲第5号証:Food Chemistry,141(2013),pp.3341-3348
甲第6号証:Aquaculture,364-365(2012),pp.345-352
甲第7号証:農産加工技術研究會誌,(1955),第2巻,第1号,pp.37-40
甲第8号証:廃棄物学会論文誌,(2004),Vol.15,No.4,pp.246-255

2 当審が通知した令和3年4月30日付け取消理由の概要
[理由1]特許された本件請求項5〜12に係る発明の特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で特許法第36条第4項第1号に適合しない。
よって、特許された本件請求項5〜12に係る発明の特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

具体的に記載された理由の概要は次のとおりである。
「67重量%以上のタンパク質、5重量%以上のキチン及び5〜20重量%の脂肪を含有する甲虫粉末であって、当該重量%が甲虫粉末の全重量に対するものである、甲虫粉末」(請求項1)において、どのようにして「タンパク質の全重量に対して40〜60重量%の可溶性タンパク質を含有し、その内50%のサイズが12,400g/mol以下である」とすることができるかを当業者が理解できるとはいえず、そのようにすることができることが出願時の技術常識であるともいえない。
してみると、本件請求項5に係る発明について、発明の詳細な説明は、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。
請求項5を引用する請求項6〜12についても同様である。

3 当審が通知した令和3年10月22日付け取消理由の概要
[理由A]令和3年8月10日付け訂正請求により訂正された本件請求項6〜12に係る発明は、特許請求の範囲の記載が下記の点で特許法第36条第6項第2号に適合しない。
よって、令和3年8月10日付け訂正請求により訂正された本件請求項6〜12に係る発明の特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。


1 理由Aについて
請求項6及び11に「請求項1〜5のいずれか1項に記載の甲虫粉末」との記載があるところ、請求項5は削除されており、請求項5に甲虫粉末の記載はない。
したがって、請求項6及び11の特許を受けようとする発明は明確でない。
また、請求項6を直接的・間接的に引用する請求項7〜10、請求項11を引用する請求項12についても同様である。

第5 当審の判断
当審は、本件発明1〜4、6〜12に係る特許は、当審が通知した取消理由及び特許異議申立人が申し立てた理由により取り消すべきものではないと判断する。
理由は以下のとおりである。

1 甲各号証について
(1)甲各号証の記載事項
甲1(訳文で示す。):
1a)「要旨
2050年までに、動物製品の消費量が60-70%増加すると予想される。この消費量の増加は膨大な資源を必要とし、天然資源の利用可能性が限られおり、進行中の気候変動や食料−飼料−燃料の競合から、飼料は最も困難である。大豆粕や魚粉などの従来の飼料資源のコストは非常に高く、さらに将来的にそれらの利用可能性は制限されるだろう。昆虫の飼育は解決策の一部かもしれない。いくつかの動物種の飼料の成分としての昆虫、昆虫の幼虫または昆虫ミールの評価についていくつかの研究が行われているが、この分野はまだ始まったばかりである。ここでは、動物飼料としての製品の評価に関して研究された5つの主要な昆虫種に関する利用可能な情報を収集、統合、および議論する。アメリカミズアブ幼虫、イエバエウジ虫、ミールワーム、イナゴ−バッタ−コオロギ、およびカイコミールの栄養的品質、ならびに家禽、豚、魚種および反すう動物の食餌における大豆粕および魚粉の代替品としての使用について議論されている。これらの代替資源の粗タンパク質含有量は42-63%と高く、脂肪含有量(最大で36%オイル)も高いため、抽出してバイオディーゼル生産を含むさまざまなアプリケーションに使用できる可能性がある。イエバエのウジ虫ミール、ミールワーム、イエバエの不飽和脂肪酸濃度は高く(60-70%)、一方でアメリカミズアブ幼虫の濃度は最も低い(19-37%)。これらの代替飼料の動物への嗜好性は良好であり、動物種に応じて大豆粕または魚粉の25-100%を代替できることが研究により確認されている。カイコミールを除いて、他の昆虫ミールはメチオニンとリジンが不足しており、飼料へのそれらの補給は動物のパフォーマンスと大豆粕と魚粉の置換率の両方を高めることができる。ほとんどの昆虫ミールはCaが不足しており、特に動物の成長や産卵鶏の場合は、食事へのその補給も必要である。昆虫の餌中のCaと脂肪酸のレベルは、昆虫が飼育されている基質を操作することによって高めることができる。この論文はまた、将来の研究分野についても述べている。統合された情報は、動物の飼料として昆虫製品を大規模に使用するための新しい道を開くと期待される。」(1頁ABSTRACTの項目)

1b)「4. ミールワーム(Tenebrio molitor)
ミールワームは、ゴミムシダマシ科に属するゴミムシダマシの2種の幼虫であり、チャイロコメノゴミムシダマシ(T.molitor Linnaeus,1758)と、より小さく、あまり一般的ではない暗い小さいミールワームの甲虫(Tenebrio obscurus Fabricius,1792)を言う。甲虫ミールワームはヨーロッパに固有であるが、現在は世界中に分布している。T.molitorは、穀物や小麦粉、貯蔵された食品の害虫であるが、数がかなり少ないので、それほど重要ではないことが多い(Ramos-Elorduy et al.,2002)。ミールワームは、育種や飼育が簡単で、タンパク質組成の価値が高い。これらの理由から、これらは鳥、爬虫類、小型哺乳類、両生類、魚などのペットや動物園の動物用の飼料として工業的に生産されている。これらは、通常、生きた状態で給餌されるが、缶詰や乾燥、粉末でも販売されている(Aguilar-Miranda et al.,2002;Hardouin and Mahoux,2003;Veldkamp et al.,2012)。
T.molitorのライフサイクルは、280-630日の間で変化し得る。幼虫は(18-20℃で)10-12日で孵化し、可変する発達段階数(8-20)の後、通常は3-4か月(環境温度)の後、成熟するが、幼虫期は最大で18ヶ月継続することができる。成熟した幼虫は明るい黄褐色であり、体長は20-32mm、体重は130-160mgである。商業的なミールワーム生産者は、しばしば幼若ホルモンを餌に入れ、幼虫の成虫への脱皮を妨げ、結果的に体長2cm、体重300mg以上を達成する「巨大な」ミールワームを生む(Finke,2002)。蛹期は、25℃で7-9日、低温で20日まで持続する。成虫のT.molitorは、2-3ケ月生きる。T.obscurusのライフサイクルは特に幼虫期がより短い(Hill,2002;Hardouin and Mahoux,2003)。
ミールワームは雑食性であり、あらゆる種類の植物材料や、肉や羽毛などの動物性製品を食べることができる(Ramos-Elorduy et al.,2002)。それらは、通常は、大豆粉、スキムミルク粉末や酵母等のタンパク質で補われた穀物のふすまや粉末(小麦、オート麦、トウモロコシ)である。生果実や野菜(ニンジン、ジャガイモ、レタス)は、水分を供給するために配合される(Aguilar-Miranda et al.,2002;Hardouin and Mahoux,2003)。飼料は乾燥重量でタンパク質約20%を含むよう調製される。
ミールワームは少量の水分を含む乾燥飼料を利用できるが、水分が不足するミールワームの生産性は低い(1年あたり1世代)。生産性の向上(最大6世代/年)や共食いの防止のためには、水分の供給源を確保することが望ましい。相対湿度は、受精率や成虫の活動に正にリンクする。生の餌はカビが生えるかもしれないので監視する必要がある(Hardouin and Mahoux,2003)。
ミールワームは、比較的短期間で、低品質の植物廃棄物を、エネルギーやタンパク質、脂肪を豊富に含む高品質な飼料にリサイクルする能力を持っている。ミールワームは、ゼアラレノンをアルファ-ゼアラレノールに部分的に代謝することで解毒することができる。それらを食べる動物に影響のある範囲では、ミールワーム幼虫に蓄積されるゼアラレノンの危険性はない(Hornung,1991)。
表13
ミールワームの化学的組成

引用元:Barker et al.(1998), CIRAD(1991),Finke (2002), Jones et al.(1972), Klasing et al.(2000) and Martin et al.(1976)
数値は平均±標準偏差を表す;DM,乾燥物;括弧内の数値は最小値と最大値を表す;NDF中性デタージェント繊維;ADF酸性デタージェント繊維;NDF/ADF値は異なった方法(アミラーゼの有無と残灰を含むか否か)を用いて得られたVan Soest法の平均値である。

4.1. 化学成分
本項では、ミールワーム(T.molitor)の化学成分について説明する。これらは、ミールワーム、乾燥ミールワーム、又はミールワームミールとも呼ばれる。これらはCP(47-60%)と脂肪(31-43%)の量が多く含まれている(表13)。生幼虫は60%の水分が含まれている。灰は比較的低く(乾燥重量当たり<5%)、他の昆虫と同様にCa量は低く、Ca:P比は非常に低い(表14)。ミールワームの排他的な摂食は、Ca欠乏症および症候性骨代謝疾患を引き起こす(Klasing et al.,2000)。組成は非常に変化しやすく、飼料の影響を受けることに注意する必要がある。特に、Caの含有量は、Ca強化食を使用して操作できる。ミール中の必須アミノ酸の組成は良好である(表15)。ミールワームの脂肪酸組成は、イエバエのウジ虫ミールやイエコオロギに近い(後の項目を参照)。2つの脂肪酸は実質的に異なる:アメリカミズアブ幼虫よりもラウリン酸が遥かに低く、リノール酸が遥かに高い(表16)。

4.2. 異なる動物種に対する栄養価
ミールワームは、通常活きたまま給餌されるが、缶詰や乾燥幼虫が商業的に入手可能である。給餌試験では、幼虫の乾燥は50℃で24時間(Klasing et al.,2000)又は3日間(Ramos-Elorduy et al.,2002)、100℃で200分間(Wang et al.,1996)、天日で2日間(Ng et al.,2001)、又は3分間煮沸後に60-100℃のオーブン乾燥(Aguilar-Miranda et al.,2002)で行われた。

4.2.1. 家畜
・・・
4.2.2. 魚
4.2.2.1. アフリカナマズ(C.gariepinus)。生及び乾燥ミールワームは、アフリカナマズにとって許容可能な代替タンパク質源であることが示された。ミールワーム(乾燥および粉砕)で40%の魚粉を置き換えた場合に、対照飼料で得られたのと同様の成長パフォーマンスと飼料利用効率を示した(対照と試験飼料は同等のタンパク質である)。さらに、最大で魚粉の80%をミールワームミールで置換した同等のタンパク質を含む飼料を与えたナマズが、良好な成長と飼料利用効率を示した。活きたミールワームのみを与えたナマズは僅かに成長遅滞を示したが、活きたミールワームを午前に、市販のナマズペレットを午後に与えたナマズは、市販飼料よりも成長が優れた。活きたミールワーム、及び乾燥したミールワームは、非常に高い嗜好性であった。ミールワームを基本とした飼料を与えたナマズの胴体には、有意に高い脂肪が含まれていた(Ng et al.,2001)。
(当審注:表16は省略)

4.2.2.2. ヨーロッパヘダイ(Sparus aurata)。魚粉のタンパク質の代替率25%及び50%でミールワームを含む飼料をヨーロッパヘダイの稚魚に与えた研究では、飼料中の昆虫ミールの含有率25%までは増重量や最終重量に悪影響は見られなかったが、50%の含有率では成長の減少が見られ、特定成長率や飼料転換効率、及びタンパク質利用効率に好ましくない結果が得られた。全身の一般組成の分析では、条件毎の違いはなかった。これらの結果はヨーロッパヘダイ稚魚の飼料中の魚粉タンパク質は25%までの置換は、成長や全身の一般組成に悪影響なく可能であることを示した。

4.2.2.3. ニジマス(O.mykiss)。重量当たり25%と50%のレベル(魚粉の代替として)で飼料(45%CP含有)に加えたミールワームは、飼料含有量50%のレベルまで、成長パフォーマンスが減少することなくミールワームが利用可能であり、魚粉削減に繋がることが示された(Gasco et al.,2014a)。

4.2.2.4. ヨーロピアンシーバス(Dicentrarchus labrax)。飼料中に25%までミールワームを含有した(魚粉の代替として;全ての飼料中のタンパク質は等量である)飼料の試験では増重量には悪影響はなかったが、ミールワーム50%のレベルでは、成長や特定成長率、飼料消費量の減少が誘発された。タンパク質利用効率、飼料消費及び体組成には影響がなかった。一方で、ミールワーム含有は体脂肪の脂肪酸組成に影響を与えた(Gasco et al.,2014b)。」(12頁下から13行〜15頁17行)

1c)「7. 総括と結論
表33は、本論文で説明されている昆虫ミールのCPと脂肪の含有量を、大豆粕と魚粉のものと比較したものである。前のセクションの平均値が検討のために用いられた。これらの値は多くの出版物から収集された複数の値の平均である点が重要である。CPの含有量は高く、42から63%まで変化するが、これは大豆粕と同程度であるが魚粉よりも僅かに低い。脱脂をした後は、昆虫ミールのCPは、家畜や魚の飼料にそれぞれ一般的に使用されてきた従来の飼料源−大豆粕及び魚粉−よりも高くなると予測される(表33)。いくつかの昆虫種では、例えば(アメリカミズアブの幼虫、イエバエウジ虫ミール、ミールワーム、カイコ)脂肪は36%と高いが、これらは分離して、バイオディーゼル用途で利用することができ、残りはCPに富んだ脱脂ミールであり、飼料業界で貴重なタンパク質豊富な原材料として場所を見つけることができるだろう。ミール中の脂肪の高いレベルの存在は、ルーメン内の繊維消化を低減させ、理想的なルーメン内発酵には良い条件ではなく、したがって脱脂昆虫ミールは反芻動物にとって理想的な選択である。昆虫ミール(例えば、アメリカミズアブ幼虫)は高いレベルの灰を含むため、飼料に高いレベルで含有した場合には、特に単胃動物にとって、吸収の減少や、その他悪影響の原因となり得る。」(25頁10〜22行)

1d)「表33
魚粉及び大豆粕に対する昆虫ミールの主要な化学構成

括弧内の数値は計算して得られた脱脂ミールの数値である。」(26頁Table 33)

甲2(訳文で示す。):
2a)「ミールワームオイルの抽出方法
技術分野
本発明は、昆虫類農産物の加工技術に関し、特にミールワームから油脂を抽出する方法に関する。
背景技術
ミールワーム(Tenebrio molitor、yellow mealworm)は、成長が速く、繁殖係数が高いなどの特徴を有し、主な食物が農作物の廃棄物である。ミールワームには、様々な栄養物質を豊富に含み、研究開発の価値が高く、工場式養殖が実現しており、全国で年間生産量が十数万トンに達している。ミールワームの産業化開発は、中国農業省の「豊作計画」に入って、非常に広い将来性を備える。現在、ミールワームの適用は特殊な養殖動物の餌に限られ、総合的な深い加工がまだ空白であり、ミールワームオイルの抽出及び適用はまだ始まったばかりである。また、ミールワームオイルは、高級健康食品であり、重要な化学工業原料としても使用できる。ミールワームの虫体からの油脂抽出は、現在、主に従来の圧搾法及び有機溶剤による浸出法を使用しているが、汚染が高く、抽出率が低く、エネルギー消費量が高く、油脂品質が低いため、ミールワーム産業の開発及び利用に深刻な影響を与える。
発明の概要
本発明の目的は、高効率、低エネルギー消費、溶媒残留物なし、汚染なし、かつ高製品品質を持つミールワームオイルの抽出方法を提供することにある。
このようなミールワームオイルの製造方法は、ミールワームを乾燥させ、ふるいにかけた後、超臨界CO2流体抽出及び抽出物の分離プロセス処理を行うことを特徴とする。
乾燥されたミールワームの含水量が6-10%であり、乾燥ミールワームのふるい分け粒度が14-30メッシュである。
超臨界CO2流体抽出では、圧力が2OMpa-4OMpaで、抽出温度が35-55℃で、CO2流体の流量が800-1200L/hで、抽出時間が40-100分間である。
本発明に係るミールワームオイルの抽出方法は、ミールワームを乾燥させ、ふるいにかけた後、ミールワーム砕片を抽出釜に入れ、CO2ガスをポンプで送って超臨界CO2流体抽出を行い、その後、抽出物の分離プロセス処理を行い、すなわち、二次分離釜で粗油を分離し、得られた粗油を精留してミールワームオイルを得ることを特徴とする。
有益な効果
本発明は、世界で最も先進的な超臨界CO2抽出技術を用いてミールワームオイルを抽出し、高効率、低エネルギー消費、溶媒残留物なし、汚染なし、高安全性、高製品品質などの長所を有し、ミールワームの産業化開発及び農村の産業構造の調整を促進し、社会主義新農村を構築するために非常に重要な意味を持っている。
分析及び測定によると、本発明の方法で抽出されたミールワームオイルは、以下の成分を含む。
C12:0(ラウリン酸) 0.15-0.2%
C14:0(ミリスチン酸) 2.50-2.8%
C16:0(パルミチン酸) 17.6-18.8%
C18:3(リノレン酸) 2.6-2.89%
C18:0(ステアリン酸) 2.1-2.95%
C18:1(オレイン酸) 38.4-39.3%
C18:2(リノール酸) 33.6-34.7%
C20:0(アラキジン酸) 1.86-2.13%
C20:1(アラキドン酸) 0.26-0.56%
分析結果によると、そのミールワームオイルにおける不飽和脂肪酸は、75%程度を占め、その含有量が落花生オイルより1倍高く、動物油脂より2-3倍高いことが分かった。不飽和脂肪酸は、抗酸化フリーラジカルの機能を持ち、非常に高い栄養価値を有する。特に注意すべき点として、本発明により抽出された油脂では、人体に必須であるがそれ自体では合成できないリノール酸の含有量が比較的高い(33%以上)ため、本発明により抽出された製品であるミールワームオイルは、栄養価値が極めて高い食用油及び保健食品である。
また、この方法で調製したミールワームオイルは、粘度及び曇り点が低く、加熱実験(280℃)で油色が薄くなり、析出物がなく、透明度が高いとともに、異臭がなく、油脂特有の香り及び味を有する。
本発明により抽出されたミールワームオイルは、上記のような優れた成分及び品質を有するため、以下の新規用途をさらに開発することができる。(1)化粧品原料:保湿効果を有し、人の肌との親和性が高く、化粧品に直接配合すると良い効果が得られる。(2)工業原料:濃硫酸とのスルホン化反応によりロート油(Turkey Red Oil、一種の工業用オイル)を製造、生産することができる。(3)工業用油の改質剤:低温耐性及び潤滑性の効果を有し、低温潤滑油の添加剤として使用可能であり、精製後に変圧器、精密機器、機械用油の改質剤として使用でき、これらの機械用油に添加するとそれの性能インジケータを強化でき、潤滑油に添加すると低温潤滑性能を向上できる。
発明を実施するための形態
実施例1;
1、ミールワーム生体のマイクロ波乾燥、滅菌を行った:
温度を65-80℃、乾燥時間を15分間とした。乾燥後に、ミールワーム乾燥物の含水率が8.14%である。
説明:含水率が高すぎると、粒子の表面に連続相の水膜を形成しやすく、拡散を阻害し、溶解度を低下させ、閉塞を発生させやすく、油品質を悪化させるため、含水量6%-10%に制御する必要がある。
2、ミールワーム乾燥物を粉砕し、20メッシュでふるいにかけた;
3、20メッシュのふるいを通したミールワーム砕片16kgを抽出釜(容積50L、HA221-40-100型)に投入し、バルブを閉じ、CO2高圧ポンプでCO2ガスを送った。圧力を30Mpa、温度を45℃、維持時間を60分間とした;
4、抽出釜と第一分離釜の間のバルブを開き、抽出釜におけるCO2流体を第一分離釜に流入させた。第一分離釜の圧力を14Mpa、温度を55℃、維持時間を10分間とすると、油脂部分を析出できる;
5、第一分離釜と第二分離釜の間のバルブを開き、第二分離釜の圧力を6Mpa、温度を30℃とした;
6、分離釜の上部バルブを開き、配管に沿ってCO2を回収した;
7、第一、第二分離釜の下部バルブを開き、ミールワームオイルを分離した;
8、ミールワームオイルをポンプで精留塔の中部バルブに導入し、高圧ポンプで下部バルブからCO2ガスを送った。圧力を14Mpaとし、精留塔の底部から頂部までの温度分布をそれぞれ45℃、50℃、52℃、55℃とした;
9、常圧まで減圧し、ミールワームオイル4.11kgを得て、オイル収率が25.7%である。
本実施例では、CO2流量が11OOL/hである。
実施例2:
1、ミールワーム生体のマイクロ波乾燥、滅菌を行った:
マイクロ波作業室:温度を70-85℃、乾燥時間を21分間とし、乾燥後にミールワーム乾燥物の含水率が6.0%である。
2、ミールワーム乾燥物を粉砕し、14メッシュでふるいにかけた;
3、ふるいを通したミールワーム砕片20kgを抽出釜(容積50L、HA221-40-100型)に投入し、ポンプでCO2ガスを送った。圧力を28Mpa、温度を50℃、維持時間を40分間とした。
4、第一分離釜の圧力を12Mpa、温度を50℃、維持時間を15分間とした。
5、第二分離釜の圧力を6Mpa、温度を30℃とした。
6、精留段階の圧力を16Mpaとし、精留塔の底部から頂部までの温度分布をそれぞれ35℃、40℃、45℃、48℃とした。
7、ミールワームオイル4.70kgを得て、オイル収率が23.5%である。
本実施例では、CO2流量が10OOL/hである。(他のプロセスが実施例1と同様である。)
実施例3:
1、ミールワーム生体のマイクロ波乾燥、滅菌を行った:
マイクロ波作業室:温度を73-84℃、乾燥時間を10分間とし、乾燥後にミールワーム乾燥物の含水率が10.0%である。
2、ミールワーム乾燥物を粉砕し、30メッシュでふるいにかけた;
3、ふるいを通したミールワーム砕片15kgを抽出釜(容積50L、HA221-40-100型)に投入し、ポンプでCO2ガスを送った。圧力を32Mpa、温度を35℃、維持時間を100分間とした。
4、第一分離釜の圧力を14Mpa、温度を40℃、維持時間を20分間とした。
5、第二分離釜の圧力を6Mpa、温度を35℃とした。
6、精留段階の圧力を14Mpaとし、精留塔の底部から頂部までの温度分布をそれぞれ30℃、35℃、40℃、45℃とした。
7、ミールワームオイル3.67kgを得て、オイル収率が24.4%である。
本実施例では、CO2流量が800L/hである。(他のプロセスが実施例1と同様である。)
他の実施例におけるプロセスパラメータは、以下の表に示される。
表1 実施例4-10

従来の抽出方法で製造したミールワームオイルは、抽出時の不純物が多く、有効成分が少なく、外観及び色が悪く、バッチ間の再現性が低いが、超臨界CO2抽出方法で製造したミールワームオイルは、有効成分が高濃度であり、不純物が少なく、外観及び色が良好であり、バッチ間の再現性が良好である。また、従来の方法では、オイルの収率が低く、操作温度が高く、有効成分が損失しやすいなどの問題が存在するが、本発明の方法で製造されたミールワームオイルは、収率が従来の圧搾法の1.4-1.8倍であり、高収率、短い抽出時間、低エネルギー消費、及び低い有効成分損失などの優位性を持ち、技術的に優れているだけでなく、品質が安定で制御が容易である。」(明細書1〜4頁)

甲3(訳文で示す。):
3a)「昆虫は、粗繊維、酸性デタージェント繊維(ADF)、または中性デタージェント繊維(NDF)で測定すると、かなりの量の繊維が含まれている。セルロースとキチンの間の構造的類似性、および昆虫からのADF画分に窒素が含まれているという事実に基づいて、昆虫の繊維はキチンを表すと常に想定されてきた。この研究では、食虫動物用の食料として商業的に育てられた多くの昆虫種について、水分、粗タンパク質(窒素6.25)、脂肪、灰分、NDF、ADF、およびアミノ酸について分析した。さらに、ADF画分の窒素とアミノ酸を分析して、ADF画分にタンパク質が存在するかどうかを確認した。ADF画分には、ADFの9.3-32.7%(重量)を占めるかなりの量のアミノ酸が含まれていた。ADF画分にアミノ酸が存在するということは、ADFを使用して昆虫のキチンを推定すると、昆虫のキチン含有量が過大評価されることを意味する。アミノ酸含有量を調整したADFを使用した場合、これらの昆虫種の推定キチン含有量は2.7-49.8mg/kg (現状のまま)および11.6-137.2mg/kg (乾物ベース)の範囲であった。さらに、これらのデータは、ここで測定された種のキチン窒素の量が (全窒素の%として)非常に少なく、粗タンパク質(窒素6.25)がほとんどの種の昆虫の真のタンパク質の合理的な推定値を提供することを示唆している。」(105頁要約の箇所)

3b)「表3. ADF含有量、ADF中のアミノ酸含有量、及び昆虫キチンの推定含有量

aADF中のアミノ酸重量の合計値からADF全体重量を割ることで計算した。
b昆虫ADFに非アミノ酸ADF含有量を掛けることで計算した。」(111頁TABLE 3)

甲4(訳文で示す。):
4a)「要旨
昆虫は、高品質で効率的かつ持続可能な食用タンパク質源として提案されてきた。本研究では、昆虫種を選択してタンパク質の品質を評価した。昆虫基質は、イエバエの蛹、イエコオロギの成虫、yellow mealwormの幼虫、lesser mealwormの幼虫、Morio wormの幼虫、アメリカミズアブの幼虫と蛹、six spot roach、death’s head cockroach、アルゼンチンモリゴキブリであった。参照基質は鶏肉ミール、魚粉、大豆粕とした。基質は、DM、N、粗脂肪、灰分、アミノ酸(AA)含量、および有機物(OM) とNのin vitro消化率について分析した。栄養組成、AAスコア、およびin vitro OMとNの消化率は、昆虫基質によって大きく異なっていた。AAスコアについては、ほとんどの基質で最初に制限されるAAはMetとCysの複合要件であった。イエバエとアメリカミズアブの蛹はタンパク質含有量が高く、AAスコアも高かったが、他の昆虫基質に比べて消化性が低かった。イエコオロギのタンパク質含有量とAAスコアは高く、魚粉と同程度であったが、インビトロでのN消化率は高かった。ゴキブリは、タンパク質含量は比較的高かったが、必須AA含量、AAスコア、in vitro消化率の数値は比較的低かった。タンパク質品質の指標に加えて、有機副産物の変換効率、大量生産の実現可能性、製品の安全性、ペットの飼い主の認知などの他の側面は、昆虫を代替タンパク質源として今後のドッグフードやキャットフードへの応用に重要である。」(1頁Abstractの項)

4b)「表2.昆虫及び参照物質のIn vitro消化率(%)

OM,有機物;BSF,アメリカミズアブ;CR,ゴキブリ
*メス」(3頁Table 2)

甲5(図中を除き訳文で示す。):
5a)「2.材料と方法
2.1.使用した昆虫
T.molitor、Z.morio、A.diaperinus、A.domesticus及びB.dubiaは、オランダのエルメロにある商業供給業者であるKreca V.O.Fから購入した。Tenebrio molitor、Z.morio、A. diaperinusは幼虫期、A.domesticusとB.dubiaは成虫期のものが提供された。T.molitor及びZ.morioの飼料は、主に小麦、小麦ふすま、オート麦、大豆、ライ麦、トウモロコシ、ニンジン、ビール酵母で構成された。A.diaperinus、A.domesticus及びB.dubiaの飼料は、主にKreca V.O.F.から入手したニンジン及びチキンマッシュから構成された。すべての昆虫をふるいにかけて飼料を取り除き、処理する前に約1日間4℃で生きたまま保存した。

2.2.・・・

2.4.タンパク質抽出手順
タンパク質抽出には、窒素凍結昆虫400gを使用した。1200mlの脱塩水を事前に2gのアスコルビン酸と混合した後、1分間ブレンドした(Braun Multiquick 5(600W),Kronberg,ドイツ)。次に、得られた昆虫懸濁液を孔径500μmのステンレス鋼フィルターふるいにかけた。濾液と残渣を集めた。4℃で15,000gで30分間遠心分離した後、濾液から3つの画分を得た:上清、ペレット、および脂肪画分である。残渣、ペレットおよび上清画分を、さらなる分析のために凍結乾燥した。調べた全ての昆虫種の凍結乾燥した上清とペレット画分は、SDS-PAGEを使用して、色、タンパク質含有量、および分子量分布に関して特徴付けた。抽出手順は、新しいバッチの昆虫で2回開始し、2回実行した。

3.結果と考察
3.1.・・・

3.3.得られた画分のタンパク質分布と上澄みの色
残渣、ペレットおよび上清画分のタンパク質含有量に基づいて、物質収支を構築した(図1)。画分中のタンパク質の量は、画分の重量と組み合わせて、Dumasによって決定されたタンパク質含有量に基づいて計算した(乾物当たり)。タンパク質の回収率は86.5%から103%の範囲であった(図1)。損失は、特にB.dubiaの抽出手順中に発生した。ペレットは総タンパク質の32.6-39.4%、残渣は総タンパク質の31.4-46.6%含んでいた(図1)。得られたペレットと残渣は、5種類の昆虫すべてについて、上清(17-23.1%)よりもタンパク質含量が高かった。Z.morio(31.4%)を除き、残渣中のタンパク質量はペレット中のタンパク質量よりも多かった。
さらに、各画分の乾物ベースのタンパク質含有量は、上清で50%から61%、ペレットで65%から75%、残渣で58%から69%、脂肪で約0.1%の範囲であった。キチンは水性溶媒に不溶であるため、すべてのキチン結合窒素は、ペレットおよび残渣画分にのみ存在すると予想される(Goycoolea et al.,2000)。キチン結合窒素の存在を除いて、タンパク質から窒素への変換係数6.25にも不確実性があり、報告されているタンパク質の絶対的な含有量は不正確になり得る。
水性抽出後、全ての昆虫の上清液中で、B.dubiaは最も明るく(淡黄色)、T.molitorは最も暗い色 (こげ茶色)であった。A.diaperinus、Z.morio及びA.domesticusの上清液の色は同等であった。
この視覚的観察は、処理中に化学反応が起こったことを示した。予備実験では、発色は酵素による褐変反応が原因である可能性が最も高いことが示された。さらに、残渣とペレット画分の色は上清画分の色と似ていた。

3.4.SDS-PAGE
12.5%アクリルアミドゲルを使用した還元SDS-PAGEの結果は、5種類の昆虫すべてについて、上澄み画分が95kDa未満、ペレット画分が200kDa未満のタンパク質バンドの範囲を示している(図2)。図2では、タンパク質のバンドは5つの主要なグループ、つまり、14kDa未満、14-32kDa、32-95kDa,及び95kDa超のバンドに区別できる。サンプルバッファー中で不溶であるため、残渣画分のタンパク質バンドは、このサンプルで使用したゲル上には存在しなかった。
濃度に基づくと、14kDa未満のバンドは特にT.molitorで豊富であった。20%アクリルアミドゲルを使用したSDS-PAGE分析により、調べた全ての昆虫種において、14kDa未満のバンドは6.5から14kDaまでの範囲のタンパク質バンドから構成されていた(結果は示していない)。」(3342頁左欄下から5行〜3345頁右欄10行)

5b)「

図1.全タンパク質の割合と全回収率から示された上清、ペレット及び残渣画分のタンパク質含量(n=2)」(3343頁図1)

5c)「

図2.12.5%の均質なファストゲルを用いたSDS-PAGEで決定されたT.molitorタンパク質画分の分子量の分布であり(サンプルは、左から右へ、上清、ペレット及び残渣)、マーカーは6.5から200kDaの範囲。Mwは分子量である。」(3345頁図2)

甲6(訳文で示す。):
6a)「2.材料と方法
2.1.飼料の配合と飼料の準備
ヘルメティアミール(HM)は、商業生産者(Hermetia Futtermittel GbR、バルース/マーク、ドイツ)から入手した。HMの生産のために、アメリカミズアブの前蛹を基質から収集し、-24℃で凍結した。冷凍された蛹は、幼虫からの細胞内脂肪の漏出を可能にするために切断した。この材料をチンキプレス(Fischer Maschinenfabrik GmbH、HP-5MT-VA、ノイス、ドイツ)に移し、450barで 60℃で30分間プレスした。脱脂した材料を低温(60℃)のオーブンで20時間乾燥させ、粉砕して飼料とした。」(346頁右欄16行〜347頁左欄2行)

甲7:
7a)「乾燥魚粉からの搾油
・・・
(2)加圧温度を30℃から124℃迄変化すると搾油率は84.1%から90%迄上昇した。」(40頁右欄14〜33行)

甲8:
8a)「(1)乾燥品の物理的性状
乾燥品の性状をTable 4に,レーザー干渉法による球形近似フーリエ級数演算による測定器での乾燥品の粒度分布をFig.2に示す。おからは0.5mmをピークとする広い範囲に分布したが,練り製品残渣はほとんどが0.3〜0.6mm間に分布し、寿司残渣は0.3mm付近を中心に0.2〜0.4mmに85%が分布した。」(248頁左欄下から16〜10行)

(2)甲1発明
甲1には、動物飼料に用いるミールワーム等に関する記載があるところ(摘示1a〜1c)、ミールワームの化学的組成が具体的に示されている(摘示1b、表13、摘示1d、表33)。
したがって、甲1には、
「乾燥物あたり、粗タンパク質が52.8%、脂肪が36.1%であるミールワーム。」の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。

2 当審が通知した令和3年4月30日付け取消理由について
令和3年4月30日付け取消理由(理由1)は、請求項5に係る発明に関するものであるところ、本件訂正により請求項5は削除されたので、当該理由はない。

3 当審が通知した令和3年10月22日付け取消理由について
令和3年10月22日付け取消理由(理由A)は、令和3年8月27日付け訂正請求により訂正された請求項6及び11において、削除された請求項5を引用する記載に関するものであるところ、本件訂正によって、請求項5を削除すると共に、請求項6及び11において請求項5を引用しない記載とされたから、当該理由はない。

4 取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由について
(1)申立理由1について
ア 本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「ミールワーム」は、ゴミムシダマシ科の甲虫の総称であると認められるから、本件発明1の「甲虫がゴミムシダマシ科に属する」、「甲虫」に相当する。
本件優先日における技術常識から、甲1発明における%は重量%であると認められる。
甲1発明の「粗タンパク質」は本件発明1の「タンパク質」に相当し、甲1発明は、タンパク質、脂肪を含有する物である点で、本件発明1と共通する。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、
「タンパク質及び脂肪を含有する甲虫に係る物であって、当該甲虫がゴミムシダマシ科に属する、甲虫に係る物」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本件発明1はタンパク質及び脂肪の含有量を「67重量%以上」、「5〜20重量%」と特定し、さらに「5重量%以上のキチン」「を含有する」、「当該重量%が甲虫粉末の全重量に対するものであり」と特定しているのに対し、甲1発明は「粗タンパク質が52.8%、脂肪が36.1%である」である点。

<相違点2>
甲虫に係る物について、本件発明1は「粉末」と特定しているのに対し、甲1発明は粉末とはされていない点。

上記相違点について検討する。
相違点1について、甲1には、ミールワームについて、タンパク質及び脂肪の含有量をそれぞれ「67重量%以上」、「5〜20重量%」とし、「5重量%以上のキチン」を含有するとすることは記載も示唆もされていない。
甲1には、いくつかの昆虫種では、例えば(アメリカミズアブの幼虫、イエバエウジ虫ミール、ミールワーム、カイコ)脂肪は36%と高いが、これらは分離して、バイオディーゼル用途で利用することができ、残りはCP(粗タンパク質)に富んだ脱脂ミールであり、飼料業界で貴重なタンパク質豊富な原材料として場所を見つけることができることができること、ミール中の脂肪の高いレベルの存在は、ルーメン内の繊維消化を低減させ、理想的なルーメン内発酵には良い条件ではなく、したがって脱脂昆虫ミールは反芻動物にとって理想的な選択であること、ミールワールについて脱脂した物が、乾燥物中82.6%の粗タンパク質を含有することが記載されているが(摘示1c、1d)、脱脂した場合に、どの程度の脂肪、キチンを含有するミールワームとなるかについての記載・示唆はない。
脂肪の含有量について、甲2には、ミールワームオイルの抽出方法についての記載があり(摘示2a)、甲2に記載の発明の目的が、高効率、低エネルギー消費、溶媒残留物なし、汚染なし、かつ高製品品質を持つミールワームオイルの抽出方法を提供することであること、その製造方法は、ミールワームを乾燥させ、ふるいにかけた後、超臨界CO2流体抽出及び抽出物の分離プロセス処理を行うことを特徴とすること、具体的な実施例として、含水量が6.0〜10.0%のミールワーム乾燥物から、21.5〜25.7%のオイル収率でミールワームオイルを抽出したことが記載されているが、かかる記載を参酌しても、甲1発明のミールワーム又は脱脂したミールワームの脂肪の含量が「5〜20重量%」であるとはいえないし、甲1発明のミールワームの含水量は不明であり、甲1発明のミールワームと甲2に記載のミールワームが同じ物であるということもできないから、甲1発明に甲2に記載の抽出方法を適用して、脂肪の含有量を「5〜20重量%」とすることは当業者が容易になし得た事項であるということはできない。
キチンの含有量について、甲3には、ジャイアントミールワームの乾燥物当たりの推定キチンが55.7mg/kgであることが記載されており(摘示3b、表3)、この値を重量%に換算すると5.57×10−3重量%であるところ、この値は、本件発明1のキチンの含有量とは大きく異なるから、甲3の記載を参酌しても、甲1発明において、キチンの含有量を「5重量%以上」とすることは当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
そして、甲4には、選択した昆虫種のタンパク質の品質評価についての記載(摘示4a〜4b)、甲5には、昆虫から抽出したタンパク質の分布についての記載(摘示5a〜5c)、甲6には、アメリカミズアブの前蛹を凍結、切断、プレスして脱脂した材料とし、さらに、乾燥、粉砕して飼料とすることが(摘示6a)、甲7には、乾燥魚粉からの搾油を加圧、加温下で行うことが(摘示7a)、甲8には、乾燥品の粒度分布において、練り製品残渣はほとんどが0.3〜0.6mm間に分布することが(摘示8a)記載されているに過ぎず、これらの記載を参酌しても、甲1発明において上記相違点1に係る本件発明1の技術的事項を採用することは当業者が容易になし得た事項であるということはできない。
そして、本件発明1は、水産飼料における魚粉の置換に有利に用いられ得るという効果を奏するものである(本件明細書【0006】等)。
したがって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は甲1〜8に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

イ 本件発明2〜4、6〜12について
本件発明2〜4、6〜12は、いずれも本件発明1を引用するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て備えるから、本件発明1と同様に、甲1〜8に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

ウ まとめ
以上のとおりであるから、申立理由1は理由がない。

(2)申立理由2について
申立理由2は、訂正前の請求項1〜5(本件特許発明1〜5)における発明特定事項を指摘した理由であるところ、請求項5は削除されたから、以下では請求項1〜4について検討する。

ア 判断の前提
特許法第36条第4項第1号は、発明の詳細な説明のいわゆる実施可能要件を規定したものであって、物の発明では、その物を作り、かつ、その物を使用する具体的な記載が発明の詳細な説明にあるか、そのような記載が無い場合には、明細書及び図面の記載及び出願時の技術常識に基づき、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その物を作り、その物を使用することができる程度にその発明が記載されていなければならず、物の製造方法の発明では、その物を製造すること、その方法により生産した物の利用について具体的な記載が発明の詳細な説明にあるか、そのような記載がない場合には、明細書及び図面の記載及び出願時の技術常識に基づき、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その物を製造することができる程度にその発明が記載されていなければならないとないと解される。

イ 判断
本件発明1は「67重量%以上のタンパク質、5重量%以上のキチン及び5〜20重量%の脂肪を含有する甲虫粉末」であることを、本件発明2は「甲虫粉末の全重量に対して4重量%以下の灰を含有する」ことを、本件発明3は「タンパク質成分が85%以上の消化性を呈する」ことを、本件発明4は「残留水分が2〜15%である」ことをそれぞれ発明特定事項とするものである。
これらの点について、発明の詳細な説明には、
「【0006】
発明者らは、特定の昆虫粉末が水産飼料における魚粉の置換に有利に用いられ得ることを実証した。
【0007】
本発明は、従って、67重量%以上のタンパク質及び5重量%以上のキチンを含有する甲虫(鞘翅目)粉末であって、当該重量%が甲虫粉末の全重量に対するものである、甲虫粉末に関する。」、
「【0010】
甲虫粉末の残留水分は2〜15%、好ましくは5〜10%、より好ましくは4〜8%である。この含水量は、例えば、EC Regulation 152/2009 of 27−01−2009 (103℃/4h)に記載の方法に従い決定され得る。」、
「【0013】
好ましくは、本発明の好ましい甲虫は、ゴミムシダマシ科、コフキコガネ亜科、カツオブシムシ科、テントウムシ科、カミキリムシ科、オサムシ科、タマムシ科、ハナムグリ科、オサゾウムシ科に属するもの、又はそれらの混合物である。
【0014】
より具体的には、それらは以下の甲虫:Tenebrio molitor, Alphitobius diaperinus, Zophobas morio, Tenebrio obscurus, Tribolium castaneum及びRhynchophorus ferrugineus又はそれらの混合物である。
【0015】
「タンパク質」は、粗タンパク質の量である。粗タンパク質の定量は当業者に公知である。例えばDumas法やKjeldahl法が挙げられる。好ましくは、標準NF EN ISO 16634−1 (2008)に対応するDumas法が使用される。
【0016】
好ましくは、甲虫粉末は、68重量%、より好ましくは70重量%の粗タンパク質を含有し、当該重量パーセンテージは、甲虫粉末の全重量に対する。
【0017】
本発明において、「キチン」は、任意の種類のキチン、即ち、N−アセチル−グルコサミン単位及びD−グルコサミン単位を含む任意の種類の多糖類誘導体、特にキチン−ポリペプチドコポリマー(「キチン−ポリペプチド複合体」とも表記される)である。これらのコポリマーは、メラニン型の色素と結び付いている場合もある。
【0018】
キチンは、セルロースの次に多い生物界で合成されるポリマーである。実際に、キチンは生物界の様々な種により剛性され、それは、甲殻類や昆虫の外骨格や、真菌を囲み保護する側板の一部を構成する。より具体的には、昆虫においてキチンは、それらの外骨格の3〜60%を占める。
【0019】
キチン含量はその抽出によって決定される。そのような方法は実施例2に記載の方法AOAC 991.43で有り得、これはこの決定において好ましい。
【0020】
好ましくは、前記粉末は、5〜16%、より好ましくは8〜14%のキチンを含有し、当該重量パーセンテージは、甲虫粉末の全重量に対する。
【0021】
本発明の甲虫粉末は粗タンパク質を多く含有する。そのような成分は、通常は加水分解工程を含む甲虫の処理方法によってのみ得られる。加水分解工程は、キチン含量を、組成物の全重量に対して5重量%のオーダー、例えば5重量%未満に減少させる効果を有する。
【0022】
現在、キチンは、消化が困難であるため、抗栄養因子の一種と考えられている。これは、農業−食料の分野における応用で、昆虫ベースの組成物が何故受け入れられないのか(キチンを除去する工程が実施される)を説明する。発明者らの研究は、受け入れられた考え方に反して、顕著なキチン含量を有する(下記実施例4)本発明の甲虫粉末を与えた魚類の成長に対しキチンは何の影響も与えなかったことを実証し得る。対照的に、本発明の甲虫粉末は、水産飼料中の魚粉の一部ではなく全部を有利に置き換えられる。実際に、本発明の甲虫粉末は、この粉末を与えた動物の成長を改善できる。」、
「【0024】
有利な場合、本発明の甲虫粉末は、甲虫粉末の全重量に対し4重量%以下、尚もより有利な場合3.5重量%以下の灰を含有する。
【0025】
灰は、本発明の組成物の燃焼から生じた残留物を構成する。
【0026】
灰含量を決定する方法は当業者に周知である。好ましくは、灰含量は、EC regulation 152/2009 of 27−01−2009により定められた方法に従い決定される。
【0027】
本発明の甲虫粉末の脂肪含量は、好ましくは、甲虫粉末の全重量に対し5〜20重量%、より好ましくは9〜17重量%である。
【0028】
脂肪含量を決定する方法は当業者に周知である。例えば、好ましくは、脂肪含量は、EC regulation 152/2009により定められた方法に従い決定される。
【0029】
有利な場合、本発明の甲虫粉末のタンパク質の消化性は、粗タンパク質の全重量に対して85重量%以上である。
【0030】
消化性は、Directive 72/199/ECに記載の方法により測定されるペプシン消化性である。
【0031】
好ましくは、消化性は、86%以上、より好ましくは88%以上である。」、
「【0034】
「可溶性タンパク質」は、粗タンパク質の内、pH6〜8、有利な場合7.2〜7.6の水溶液中に溶解するものを意味する。
【0035】
好ましくは、前記水溶液は、pH6〜8、有利な場合7.2〜7.6の緩衝溶液である。好ましくは、緩衝溶液は、pH7.4±0.2のNaClリン酸緩衝溶液である。
【0036】
ヒト及び動物の消化性は、タンパク質のサイズによって大幅に決定される。動物の栄養において、動物による消化を促進するためにタンパク質のサイズを小さくすることは常識である。このタンパク質のサイズ減少は、一般に、加水分解(例えば酵素的)プロセスにより実施されるが、その実施は特に費用が掛かる。
【0037】
加水分解を含まない方法により得られた本発明の甲虫粉末は、動物による消化を促進するために十分にサイズが減少した大量の可溶性タンパク質を含有する。また、本発明の甲虫粉末は、より低コストで調製できるという利点を有する。
【0038】
有利な場合、本発明の甲虫粉末は、タンパク質の全重量に対して38〜60重量%、好ましくは43〜55重量%の可溶性タンパク質を含有する。
【0039】
好ましくは、可溶性タンパク質の60%以上、好ましくは70%以上は、サイズが12,400g/mol以下である。
【0040】
より具体的には、前記可溶性タンパク質のサイズは、6,500〜12,400g/molである。
【0041】
有利な場合、可溶性タンパク質の10%未満、好ましくは8%未満、より好ましくは6%未満が、29,000g/mol以上である。」との記載がある。
また、【0043】〜【0083】には、甲虫粉末の調製方法についての記載があり、圧搾工程は、オイル含量が圧搾塊の乾燥重量に対し20重量%以下、17重量%以下、より好ましくは15重量%以下の圧搾塊を得ることを可能とすること(【0062】)、乾燥工程の目的は、含水量2〜15%、好ましくは5〜10%、尚もより好ましくは4〜8%の圧搾塊を取得することであること(【0067】)が記載されている。
また、実施例には、
「【0096】
実施例1:本発明の甲虫粉末の調製方法
甲虫粉末を調製するのに用いた甲虫は、Tenebrio molitorの幼虫である。幼虫を受け取って直ぐ、それらは、殺す前まで、4℃で0〜15日間、それらの飼育タンク中で、目立った劣化無く保存され得た。使用した幼虫の重量(齢)は様々で、故にそれらの組成は様々で、下記表1に示すようになる。
【表1】

*%は幼虫の湿重量に対する乾燥重量として表される。
表1:重量に基づくTenebrio molitor幼虫の生化学的組成
【0097】
・工程1:昆虫のブランチング
・・・
【0099】
工程2:圧搾
ブランチングした幼虫を連続シングルスクリュー圧搾機の供給ホッパーに移した。圧搾機を通る間、脱オイル率を上げるため、幼虫の温度を70℃に維持した。脱オイルの原理は、円筒ケージ内部の材料を、中央シャフト上に配置されたスクリュー及びリングの配置によって加圧することである。ケージは区画中に分配された棒で内側に並べられ、動作面積に依存して異なる厚さの空間によって隔離される。そのように配置された隙間は、いわゆる「乾燥」物、「圧搾塊」と呼ばれるタンパク質フラクションの通過を制限しつつ、オイル/脂肪フラクションの流出を可能とするため、圧搾に組み込まれている。
【0100】
圧搾率は、48〜55%であった。
・・・
【0101】
得られた圧搾塊は、35〜40%の乾燥物、67〜75%のタンパク質及び13〜17%の脂肪を含有する。パーセンテージは重量%であり、圧搾塊の乾燥重量に対する。
【0102】
工程3:乾燥
・・・
【0105】
工程4:挽き潰し
・・・」、
「【0106】
実施例2:本発明の甲虫粉末の特徴付け
実施例1で調製した甲虫粉末を特徴付けた。
・・・
【0116】
2.結果
甲虫粉末の組成を下記表2に示す。
【表2】

表2:甲虫粉末の組成
【0117】
更に、ペプシン消化性は90±2%であった。」、
「【0142】
実施例5:圧搾前に挽き潰しをする又はしない方法
圧搾のみの方法
・・・
【0143】
圧搾前に挽き潰しをする方法
・・・
【0144】
脂質含量の測定
・・・
【0145】
結論
圧搾の前の挽き潰しの重要性が試験された(図3)。それは圧搾塊及び圧搾汁の間の脂質の分配においてより効果的であり、挽き潰しの無い場合42.7:57.3であるのに対し、ある場合、12.9:87.1である。」と記載される他、魚類飼料へ導入した具体例の記載がある。
したがって、発明の詳細な説明には、実施例1として昆虫粉末の具体的な製造方法が記載されており、実施例2の記載から、実施例1で調製した甲虫粉末が本件発明1〜4の上記発明特定事項を満たすものであることを確認することができ、具体的に使用した例が記載されているといえる。
また、【0062】、【0099】〜【0101】、【0142】〜【0145】の記載からみて、脂肪の含有割合は、圧搾方法、挽き潰しの有無によって調節し得るといえ、【0067】の記載からみて、残留水分の割合は、乾燥の程度によって調節し得るといえるところ、タンパク質、キチン、灰分の含有割合は、脂肪の含有割合、残留水分の割合に連動して変化するものであり、さらに、実施例1の表1の記載も参酌すると、タンパク質、脂質、灰はミールワームによる個体差があるといえるところ、【0036】のヒト及び動物の消化性は、タンパク質のサイズによって大幅に決定される旨の記載も参酌すると、タンパク質成分の消化性についてもある程度の個体差があると認められる。
そして、本件発明1〜4の上記発明特定事項に係る数値範囲が、上記実施例2に記載された数値と大きく異なるものとはいえず、当該数値範囲内のものとなり得ないものであるという出願時の技術常識はないから、上記各種の調節及び個体差により得られる範囲内のものであるといえる。
したがって、発明の詳細な説明には、物の発明である本件発明1〜4に係る甲虫粉末を作り、かつ、その物を使用する具体的な記載があるといえ、また、具体的な記載のない上記した各種の数値を有する甲虫粉末についても、明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づき、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その物を作り、その物を使用することができる程度にその発明が記載されているといえる。
よって、本件発明1〜4について、発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第4項第1号に適合する。

本件発明6〜10は、本件発明1〜4の甲虫粉末を製造する方法、すなわち物の製造方法の発明であり、本件発明11〜12は、本件発明1〜4の甲虫粉末を含有する栄養組成物、すなわち、物の発明であるところ、発明の詳細な説明には、上記のとおりの記載があり、また、上で述べたとおり、本件発明1〜4について、発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第4項第1号に適合するのであるから、同様に、本件発明6〜12についても、発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第4項第1号に適合する。

ウ まとめ
以上のとおりであるから、申立理由2は理由がない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、請求項1〜4、6〜12に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1〜4、6〜12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
特許異議申立の対象であった請求項5は、訂正請求により削除されたので、請求項5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
67重量%以上のタンパク質、5重量%以上のキチン及び5〜20重量%の脂肪を含有する甲虫粉末であって、当該重量%が甲虫粉末の全重量に対するものであり、当該甲虫がゴミムシダマシ科に属する、甲虫粉末。
【請求項2】
前記甲虫粉末の全重量に対して4重量%以下の灰を含有する、請求項1に記載の甲虫粉末。
【請求項3】
タンパク質成分が85%以上の消化性を呈する、請求項1〜2のいずれか1項に記載の甲虫粉末。
【請求項4】
残留水分が2〜15%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の甲虫粉末。
【請求項5】(削除)
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の甲虫粉末を製造する方法であって、以下の工程:
i)甲虫を殺す、
ii)甲虫を圧搾して圧搾塊を得る、及び
iii)圧搾塊を挽き潰す、
を含む、方法。
【請求項7】
前記圧搾塊を乾燥させる工程を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
以下の工程:
i)甲虫を殺す、
ii)甲虫を圧搾して圧搾塊を得る、
iii)圧搾塊を乾燥させる、及び
iv)圧搾塊を挽き潰す、
を含み、当該圧搾工程が、甲虫を挽き潰す工程の後に行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
以下の工程:
i)甲虫を殺す、
ii)甲虫を圧搾して圧搾塊を得る、
iii)圧搾塊を乾燥させる、及び
iv)圧搾塊を挽き潰す、
を含み、当該圧搾工程が加熱下で行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
以下の工程:
i)甲虫を殺す、
ii)甲虫を圧搾して圧搾塊を得る、
iii)圧搾塊を乾燥させる、及び
iv)圧搾塊を挽き潰す、
を含み、当該圧搾塊を挽き潰す工程が、粒径が300μm〜1mmとなるように行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
ヒト又は動物の栄養補給用の栄養組成物であって、請求項1〜4のいずれか1項に記載の甲虫粉末を含有する、栄養組成物。
【請求項12】
前記甲虫粉末がタンパク質粉を置換するものである、請求項11に記載の栄養組成物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-02-18 
出願番号 P2017-535684
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (A23J)
P 1 651・ 121- YAA (A23J)
P 1 651・ 537- YAA (A23J)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 村上 騎見高
特許庁審判官 関 美祝
冨永 保
登録日 2020-07-07 
登録番号 6730992
権利者 インセクト
発明の名称 甲虫粉末  
代理人 大島 浩明  
代理人 三橋 真二  
代理人 三橋 真二  
代理人 青木 篤  
代理人 渡辺 陽一  
代理人 武居 良太郎  
代理人 大島 浩明  
代理人 青木 篤  
代理人 武居 良太郎  
代理人 中島 勝  
代理人 渡辺 陽一  
代理人 中島 勝  
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