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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C08L |
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管理番号 | 1384039 |
総通号数 | 5 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2022-05-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-12-17 |
確定日 | 2022-02-21 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | true |
事件の表示 | 特許第6713392号発明「樹脂組成物、これを用いた摩擦材、摩擦部材、及びドラムブレーキ用ブレーキシュー」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6713392号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−17〕について訂正することを認める。 特許第6713392号の請求項1,3−17に係る特許を維持する。 特許第6713392号の請求項2に係る特許についての特許異議申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6713392号(請求項の数11。以下、「本件特許」という。)は、平成28年9月28日を出願日とする出願に係る特許であって、令和2年6月5日に設定登録がされたものである(特許掲載公報の発行日は同年6月24日である。)。 その後、令和2年12月17日に、本件特許の請求項1〜11に係る特許に対して、特許異議申立人である馬場勝久(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。その後の経緯は、以下のとおりである。 令和3年 4月28日付け取消理由通知書 同年 7月 2日 意見書、訂正請求書(特許権者) 同年11月10日 意見書(申立人) 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和3年7月2日提出の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである(以下、本件特許の願書に添付された明細書を、「本件明細書」という。)。 (1)訂正事項1 請求項1における「とを含有し、前記未加硫ゴムが」を、 「とを含有し、 前記多孔質チタン酸塩化合物粒子の平均粒子径が、20〜150μmであり、 前記未加硫ゴムが、粒子状であり、 前記未加硫ゴムの平均粒子径が、1〜300μmであり、 前記未加硫ゴムが」に訂正する。 (2)訂正事項2 請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 請求項3に「組成式A2TinO(2n+1)〔式中、Aはアルカリ金属から選ばれる1種又は2種以上、n=2〜8〕」とあるのを、「組成式A2TinO(2n+1)〔式中、Aはカリウムであり、n=2〜8〕」に訂正する。 (4)訂正事項4 請求項3〜8において引用する請求項から請求項2を削除する。 (5)訂正事項5 請求項9に、「JIS D4421に準拠して測定されたロックウェル硬度が、60〜70HRSである、請求項8に記載の摩擦材。」とあるのを、 「細孔直径0.01〜1.0μmの範囲の積算細孔容積が5%以上であり、チタン酸塩化合物の結晶粒が結合してなる多孔質チタン酸塩化合物粒子と、未加硫ゴムと、熱硬化性樹脂とを含有し、 前記多孔質チタン酸塩化合物粒子の平均粒子径が、20〜150μmであり、 前記未加硫ゴムが、粒子状であり、 前記未加硫ゴムの平均粒子径が、1〜300μmであり、 前記未加硫ゴムが、天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、及びエチレン・プロピレンゴムから選ばれる少なくとも1種である、樹脂組成物の成形体であり、 JIS D4421に準拠して測定されたロックウェル硬度が、60〜70HRSである、摩擦材。」に訂正する。 (6)訂正事項6 請求項12として、「前記多孔質チタン酸塩化合物粒子が、組成式A2TinO(2n+1)〔式中、Aはカリウムであり、n=2〜8〕で表される、請求項9に記載の摩擦材。」を追加する。 (7)訂正事項7 請求項13として、「加硫ゴム粉末をさらに含有する、請求項9又は12に記載の摩擦材。」を追加する。 (8)訂正事項8 請求項14として、「前記熱硬化性樹脂がフェノール樹脂である、請求項9,12,及び13のいずれか一項に記載の摩擦材。」を追加する。 (9)訂正事項9 請求項15として、「前記多孔質チタン酸塩化合物粒子の含有量が1〜30体積%であり、前記未加硫ゴムの含有量が0.1〜30体積%であり、前記熱硬化性樹脂の含有量が1〜50体積%である、請求項9及び12〜14のいずれか一項に記載の摩擦材。」を追加する。 (10)訂正事項10 請求項16として、「請求項12〜15のいずれか一項に記載の摩擦材を備える、摩擦部材。」を追加する。 (11)訂正事項11 請求項17として、「シュー基材と、請求項12〜15のいずれか一項に記載の摩擦材からなるライニングとを備える、ドラムブレーキ用ブレーキシュー。」を追加する。 (12)一群の請求項 訂正前の請求項2〜11は、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用する関係にあり、請求項1が訂正されるのに伴い訂正されるから、上記訂正事項1〜11に係る訂正は、一群の請求項〔1〜11〕について請求されたものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項1を、本件明細書の【0034】及び【0050】を基に、多孔質チタン酸塩化合物粒子の平均粒子径及び未加硫ゴムの形状および平均粒子径について限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、本件明細書の【0036】、【0069】〜【0072】を基に、訂正前の請求項3の「組成式A2TinO(2n+1)」におけるAを、「アルカリ金属から選ばれる1種又は2種以上」から「カリウム」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (4)訂正事項4について 訂正事項4は、訂正事項2により請求項2を削除したことに伴い、請求項3〜8において引用する請求項から請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮あるいは明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (5)訂正事項5について 訂正事項5は、訂正前の請求項1を引用する請求項8を引用する請求項9を、他の請求項の記載を引用しないものとし、さらに、訂正事項1と同様に本件明細書の【0034】及び【0050】を基に発明特定事項を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (5)訂正事項6〜11について 訂正事項6は、訂正前の請求項1を引用する請求項3を引用する請求項8をさらに引用する請求項9について、訂正事項5により請求項9を他の請求項の記載を引用しないものとしたことに伴い、訂正事項5による訂正後の請求項9の記載を引用し、さらに訂正前の請求項3の記載に訂正事項3と同様の限定を付して、新たに請求項12として増項したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 また、訂正事項7〜11は、請求項12と同じく、訂正前の請求項1を引用する請求項4〜6のいずれか一項を引用する請求項8をさらに引用する請求項9、又は、訂正前の請求項1を引用する請求項8を引用する請求項9をさらに引用する請求項10若しくは請求項11について、訂正事項5による訂正後の請求項9及び先行する請求項の記載を引用し、さらに訂正前の請求項4〜6、10又は11の記載と同様の限定を付して、それぞれ新たに請求項13〜17として増項したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 3 訂正の適否についての判断のまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであるから、結論のとおり、本件訂正を認める。 第3 訂正後の本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1〜17に係る発明は、訂正された特許請求の範囲の請求項1〜17に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 (以下、請求項1〜17にかかる発明を、請求項の番号ごとに「本件発明1」等という。) 「【請求項1】 細孔直径0.01〜1.0μmの範囲の積算細孔容積が5%以上であり、チタン酸塩化合物の結晶粒が結合してなる多孔質チタン酸塩化合物粒子と、未加硫ゴムと、熱硬化性樹脂とを含有し、 前記多孔質チタン酸塩化合物粒子の平均粒子径が、20〜150μmであり、 前記未加硫ゴムが、粒子状であり、 前記未加硫ゴムの平均粒子径が、1〜300μmであり、 前記未加硫ゴムが、天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、及びエチレン・プロピレンゴムから選ばれる少なくとも1種である、樹脂組成物。 【請求項2】(削除) 【請求項3】 前記多孔質チタン酸塩化合物粒子が、組成式A2TinO(2n+1)〔式中、Aはカリウムであり、n=2〜8〕で表される、請求項1に記載の樹脂組成物。 【請求項4】 加硫ゴム粉末をさらに含有する、請求項1又は3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。 【請求項5】 前記熱硬化性樹脂がフェノール樹脂である、請求項1,3,及び4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。 【請求項6】 前記多孔質チタン酸塩化合物粒子の含有量が1〜30体積%であり、前記未加硫ゴムの含有量が0.1〜30体積%であり、前記熱硬化性樹脂の含有量が1〜50体積%である、請求項1及び3〜5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。 【請求項7】 摩擦材用である、請求項1及び3〜6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。 【請求項8】 請求項1及び3〜7のいずれか一項に記載の樹脂組成物の成形体である、摩擦材。 【請求項9】 細孔直径0.01〜1.0μmの範囲の積算細孔容積が5%以上であり、チタン酸塩化合物の結晶粒が結合してなる多孔質チタン酸塩化合物粒子と、未加硫ゴムと、熱硬化性樹脂とを含有し、 前記多孔質チタン酸塩化合物粒子の平均粒子径が、20〜150μmであり、 前記未加硫ゴムが、粒子状であり、 前記未加硫ゴムの平均粒子径が、1〜300μmであり、 前記未加硫ゴムが、天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、及びエチレン・プロピレンゴムから選ばれる少なくとも1種である、樹脂組成物の成形体であり、 JIS D4421に準拠して測定されたロックウェル硬度が、60〜70HRSである、摩擦材。 【請求項10】 請求項8又は9に記載の摩擦材を備える、摩擦部材。 【請求項11】 シュー基材と、請求項8又は9に記載の摩擦材からなるライニングとを備える、ドラムブレーキ用ブレーキシュー。 【請求項12】 前記多孔質チタン酸塩化合物粒子が、組成式A2TinO(2n+1)〔式中、Aはカリウムであり、n=2〜8〕で表される、請求項9に記載の摩擦材。 【請求項13】 加硫ゴム粉末をさらに含有する、請求項9又は12に記載の摩擦材。 【請求項14】 前記熱硬化性樹脂がフェノール樹脂である、請求項9,12,及び13のいずれか一項に記載の摩擦材。 【請求項15】 前記多孔質チタン酸塩化合物粒子の含有量が1〜30体積%であり、前記未加硫ゴムの含有量が0.1〜30体積%であり、前記熱硬化性樹脂の含有量が1〜50体積%である、請求項9及び12〜14のいずれか一項に記載の摩擦材。 【請求項16】 請求項12〜15のいずれか一項に記載の摩擦材を備える、摩擦部材。 【請求項17】 シュー基材と、請求項12〜15のいずれか一項に記載の摩擦材からなるライニングとを備える、ドラムブレーキ用ブレーキシュー。」 第4 異議申立ての申立理由と当審が通知した取消理由 1 特許異議申立ての申立理由 本件訂正前の本件発明1〜11は、下記(1)のとおりの取消理由があるから、本件特許の本件発明1〜11に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。証拠方法として、下記(2)の甲第1号証〜甲第6号証を提出する。 (1)申立理由(進歩性) 本件訂正前の本件発明1〜11は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明及び甲2〜甲6に記載された事項に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1〜11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (2)証拠方法 甲第1号証:国際公開第2016/63688号 甲第2号証:特開昭61−162537号公報 甲第3号証:特開2004−182870号公報 甲第4号証:特公昭60−32645号公報 甲第5号証:特開平5−279656号公報 甲第6号証:特開2014−224175号公報 (以下、甲第1号証〜甲第6号証を、順に「甲1」等という。) (3)令和3年11月10日提出の意見書とともに提出した文献 参考資料1:特開2016−132727号公報 参考資料2:特開2012−82368号公報 参考資料3:特開2009−114050号公報 参考資料4:特開平9−316429号公報 参考資料5:特開2005−281415号公報 参考資料6:特開昭61−162537号公報 2 当審が令和3年4月28日付け取消理由通知書で通知した取消理由 本件訂正前の本件発明1〜11は、下記(1)のとおりの取消理由があるから、本件特許の本件発明1〜11に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (1)取消理由1(進歩性) 本件訂正前の本件発明1〜11は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3に記載された発明及び甲1に記載された事項に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1〜11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (2)取消理由2(進歩性) 本件訂正前の本件発明1〜5、7〜11は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明及び甲3に記載された事項に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1〜5、7〜11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 第5 当審の判断 以下に述べるように、当審が通知した取消理由1及び2、並びに、特許異議申立ての申立理由によっては、本件発明1、3〜17に係る特許は取り消すことはできない。なお、取消理由2と申立理由は、いずれも甲1を主引用文献とする進歩性欠如の理由であるから、併せて検討する。 1 取消理由通知書に記載した取消理由について (1)取消理由1(甲3を主引用文献とする進歩性)について ア 甲3に記載された発明 甲3には、自動車などのブレーキシステムに用いられる非石綿系摩擦材は、その制動を円滑に行うために、耐摩耗性に優れること、摩擦係数が高くかつ安定していること、摩擦係数が高温時にも急激に低下しない耐フェード性に優れること、ブレーキ制動時に鳴き等の異音が発生しないこと、対面攻撃性が小さいことなどの諸性能が要求されていることが記載されている(【0003】)。 このようなことを背景にして、甲3には、自動車などのアルミニウム合金製のローターやブレーキドラムに用いられ、対面攻撃性が小さく、耐摩耗性に優れる非石綿系摩擦材の提供を課題とし(【0008】)、「繊維基材(A)、結合材(B)及び充填材(C)を主成分とする非石綿系摩擦材組成物を成形、硬化してなる非石綿系摩擦材であって、充填材(C)中に、摩擦材全体に対して、1〜10体積%の平均粒子径が0.5〜10μmのアブレシブ粒子と、4〜20体積%の未加硫ゴムを含有させることを特徴とするアルミニウム合金製ローター又はドラム用の非石綿系摩擦材」(請求項1)、上記繊維基材(A)、結合材(B)及び充填材(C)を配合した摩擦材組成物、及び、該組成物を成形した摩擦材のテストピースを作製した実施例1〜8が記載され、実施例1〜8の摩擦材を用いて制動回数1000回のブレーキ試験を行い、摩擦係数安定性(摩擦係数の最大値と最小値の比)、対面攻撃性、及び耐摩耗性等に優れるものであったこと(【0032】〜【0039】)も記載されている。また、甲3には、上記繊維基材(A)、結合材(B)であるアブレシブ粒子、未加硫ゴム及びその他の充填材(C)の種類についても記載されている(【0015】、【0017】、【0024】、【0026】、【0028】)。 そうすると、甲3には、実施例1〜8のうち、実施例1及び実施例6の摩擦材組成物及び摩擦材に着目して、以下の発明が記載されているといえる。 「繊維基材(A)であるアラミド繊維10体積%、結合材(B)であるフェノール樹脂20体積%、充填材(C)であるカシューダスト10体積%、タイヤゴム粒5体積%、炭酸カルシウム40体積%、黒鉛(グラファイト)5体積%、アルミニウム粒5体積%、アブレシブ粒子である炭化ケイ素(粒径0.5μm)1体積%、未加硫ゴム(NBR)4体積%からなる摩擦材組成物」(以下、「甲3発明A1」という。) 「甲3発明A1の摩擦材組成物の成形体である摩擦材」(以下、「甲3発明A2」という。) 「繊維基材(A)であるアラミド繊維10体積%、結合材(B)であるフェノール樹脂20体積%、充填材(C)であるカシューダスト10体積%、タイヤゴム粒5体積%、炭酸カルシウム15体積%、黒鉛(グラファイト)5体積%、アルミニウム粒5体積%、アブレシブ粒子である炭化ケイ素(粒径0.5μm)10体積%、未加硫ゴム(NBR)20体積%からなる摩擦材組成物」(以下、「甲3発明B1」という。) 「甲3発明B1の摩擦材組成物の成形体である摩擦材」(以下、「甲3発明B2」という。) イ 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲3発明A1を対比する。 甲3発明A1の「フェノール樹脂」、「未加硫ゴム(NBR)」及び「摩擦材組成物」は、本件発明1の「熱硬化性樹脂」、「未加硫ゴム」である「ニトリルゴム」及び「樹脂組成物」に相当する。 甲3発明A1の「充填材(C)」のうち、「アブレシブ粒子である炭化ケイ素」及び「未加硫ゴム」は、「摩擦材にアブレシブ粒子と未加硫ゴムとを組合せて、併用して含有させると・・・対面攻撃性が良くなり・・・摩擦材の耐摩耗性が良くなる」(【0020】)ものであり、摩擦調整材の一種であるといえるし、他の「充填材(C)」であるカシューダスト、タイヤゴム粒、炭酸カルシウム、黒鉛(グラファイト)及びアルミニウム粒は、摩擦調整材として公知のものである。一方、本件発明1の「多孔質チタン酸塩化合物」は、「摩擦特性を向上させるだけでなく・・・摩擦調整材としても期待される」(本件明細書【0045】)ものである。これらのことから、本件発明1の「多孔質チタン酸塩化合物」と甲3発明A1の「充填材(C)」は、摩擦調整材である限りにおいて共通するといえる。 そうすると、本件発明1と甲3発明A1は、 「摩擦調整材と、未加硫ゴムと、熱硬化性樹脂とを含有し、 前記未加硫ゴムが、天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、及びエチレン・プロピレンゴムから選ばれる少なくとも1種である、樹脂組成物」の点で一致し、次の点で相違する。 相違点1a−1:摩擦調整材として、本件発明1では、「細孔直径0.01〜1.0μmの範囲の積算細孔容積が5%以上であり、チタン酸塩化合物の結晶粒が結合してなる多孔質チタン酸塩化合物粒子」を含有し、その「平均粒子径が、20〜150μmであ」るのに対して、甲3発明A1は、上記多孔質チタン酸塩化合物粒子を含有しない点 相違点1a−2:本件発明1は「未加硫ゴムが、粒子状であり、前記未加硫ゴムの平均粒子径が、1〜300μmであ」るのに対して、甲3発明A1は、未加硫ゴムの形状及び大きさが不明である点 (イ)検討 相違点1a−2について検討する。 甲3には、未加硫ゴムに関して、【0024】【0025】【0029】【0037】【0038】の記載があり、具体的には、「非石綿系摩擦材の製造方法は、上記の繊維基材(A)、結合材(B)及び充填材(C)などを…混合機を用いて均一に混合し、成形用粉体を得」【0029】と記載され、充填材(C)が粉体であることは示唆されているが、未加硫ゴムの平均粒子径は記載されていない。 甲1には、摩擦材用樹脂組成物において、摩擦調整材として加硫又は未加硫の天然もしくは合成ゴムを使用することが記載されているが([0039])、それ以外に未加硫ゴムについて記載されておらず、ましてや未加硫ゴムの平均粒子径は記載されていない。 そうすると、甲3発明A1において、甲1の記載を基に、未加硫ゴムの平均粒子径を1〜300μmとすることが動機づけられず、本件発明1は、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。 (ウ)申立人の主張について 申立人は、令和3年11月10日提出の意見書とともに参考資料1〜6を提出し(第4 1(3))、摩擦材として用いられる樹脂組成物に含まれる粒子状の未加硫ゴムの平均粒子径として数十μm〜数mmの範囲を採用することは、参考資料5及び6にも開示されているように極めて一般的であり、また、本件明細書の実施例1〜2及び比較例1〜7では、未加硫ゴムとしてNBR(非繊維状粒子、平均粒子径120μm)しか用いられておらず、本件発明1の未加硫ゴムの特徴は臨界的意義が明らかでない旨を主張する。 しかしながら、参考資料6(当審注:甲2と同じ文献である。)には、粒径10μm〜3mmの未加硫ゴム粉末を用いることが記載されているが、参考資料6において解決しようとする課題は「予備成形性に優れ、初期にも摩擦係数の高い摩擦材が得られる摩擦材組成物を提供する」(第2頁左上欄7〜10行)ことであり、上記アで述べた甲3発明A1の課題と異なるものであるし、参考資料6における上記粒径は本件発明1における平均粒子径と技術的に異なるものである(上記(イ)を参照)。また、参考資料5は、未加硫ゴムを用いた比較例が記載されるにとどまり、未加硫ゴムの平均粒子径も、これを添加する技術的意義も明らかでない。 そうすると、摩擦材として用いられる樹脂組成物において、平均粒子径が1〜300μmの未加硫ゴムを用いることが一般的であると解することはできず、申立人の主張を採用することはできない。 (エ)本件発明1の効果について 本件発明1は「本発明の樹脂組成物を摩擦材として用いた場合、優れた摩擦特性と柔軟性とを付与することができる」(本件明細書の【0024】)という効果を奏するものであり、具体的には、チタン酸塩化合物と未加硫ゴムとを含有する樹脂組成物を用いた摩擦材の摩擦特性が低下するのを防ぐことができるものである(【0009】〜【0011】、【0098】〜【0100】)が、甲3及び甲1には、チタン酸塩化合物と未加硫ゴムを用いた摩擦材の摩擦特性の低下を防ぐことは記載されておらず、本件発明1の上記効果は甲3及び甲1の記載から予測し得ない効果であるといえる。 (オ)小括 したがって、本件発明1は、相違点1a−1について検討するまでもなく、甲3に記載された発明及び甲1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、甲3発明B1を主引用発明とする場合も、甲3発明B1と甲3発明A1は、炭酸カルシウム、アブレシブ粒子である炭化ケイ素、及び未加硫ゴム(NBR)の含有量が異なるのみであり、本件発明1と甲3発明B1とは、本件発明1と甲3発明A1の相違点である相違点1a−1及び相違点1a−2と同内容の点で相違するものであるから、上記(ア)〜(エ)で述べたのと同じ理由により、本件発明1は、甲3に記載された発明及び甲1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明3〜8について 本件発明3〜8は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1について上記イで述べたのと同じ理由により、甲3に記載された発明及び甲1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 本件発明9について 本件発明9は、本件発明1に係る樹脂組成物の成形体を用いた摩擦材であり、上記イ(ア)での検討を踏まえて本件発明9と甲3発明A2とを対比すると、両者は、 「摩擦調整材と、未加硫ゴムと、熱硬化性樹脂とを含有し、 前記未加硫ゴムが、天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、及びエチレン・プロピレンムから選ばれる少なくとも1種である、樹脂組成物の成形体である、摩擦材」の点で一致し、次の点で相違する。 相違点1a−3:摩擦調整材として、本件発明9では、「細孔直径0.01〜1.0μmの範囲の積算細孔容積が5%以上であり、チタン酸塩化合物の結晶粒が結合してなる多孔質チタン酸塩化合物粒子」を含有し、その「平均粒子径が、20〜150μmであ」るのに対して、甲3発明A2は、上記多孔質チタン酸塩化合物粒子を含有しない点 相違点1a−4:本件発明9は、「未加硫ゴムが、粒子状であり、前記未加硫ゴムの平均粒子径が、1〜300μmであ」るのに対して、甲3発明A2は、未加硫ゴムの形状及び大きさが不明である点 相違点1a−5:本件発明9は、「JIS D4421に準拠して測定されたロックウェル硬度が、60〜70HRSである」のに対して、甲3発明A2は、上記ロックウェル硬度の値が不明である点 そして、相違点1a−2と相違点1a−4は同内容の相違点であるから、本件発明9は、相違点1a−3及び相違点1a−5について検討するまでもなく、本件発明1について上記イで述べたのと同じ理由により、甲3に記載された発明及び甲1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、甲3発明B2を主引用発明とする場合も、本件発明9と甲3発明B2とは、本件発明1と甲3発明A2の相違点である相違点1a−3、相違点1a−4及び相違点1a−5と同内容の点で相違するものであるから、甲3発明A2を主引用発明とする場合と同じ理由により、本件発明9は、甲3に記載された発明及び甲1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 オ 本件発明10〜17について 本件発明10〜17は、本件発明8又は9を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明8について上記ウで述べたのと同じ理由、又は本件発明9について上記エで述べたのと同じ理由により、甲3に記載された発明及び甲1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 カ まとめ したがって、本件発明1、3〜17は、甲3に記載された発明及び甲1に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)取消理由2及び申立理由(甲1を主引用文献とする進歩性)について ア 甲1に記載された発明 甲1には、車両のブレーキシステムに用いられる摩擦材は、摩擦係数が高く安定し、耐フェード性、耐摩耗性に優れ、ローター攻撃性が低いことが求められること([0002])が記載され、優れた耐フェード性を示す樹脂組成物の提供を課題とし([0007])、特許請求の範囲の請求項1〜5には、以下の樹脂組成物及び摩擦材がそれぞれ記載されている。 「チタン酸塩化合物の結晶粒が結合してなる多孔質チタン酸塩化合物粒子であって、細孔直径0.01〜1.0μmの範囲の積算細孔容積が5%以上であり、当該粒子の平均粒子径が、5〜500μmであり、組成式A2TinO(2n+1)[式中、Aはアルカリ金属から選ばれる1種又は2種以上、n=2〜8]で表される多孔質チタン酸塩化合物粒子と、熱硬化性樹脂とを含有している樹脂組成物」(以下、「甲1発明1」という。)。 「甲1発明の樹脂組成物を含有している摩擦材」(以下、「甲1発明2」という。) そして、上記多孔質チタン酸塩化合物粒子は、細孔直径が小さいことから、多孔質粒子内への熱硬化性樹脂が含浸するのを抑制でき、当該粒子を含有する樹脂組成物を摩擦材として使用したとき、当該粒子がフェードガスの抜け穴となって優れた耐フェード性が得られること([0033])、及び、甲1発明1の具体例である実施例3〜11の樹脂組成物を用いたディスクブレーキ用パッドは、フェード試験において高い最低摩擦係数となり、摩擦特性に優れることが記載されている([0068]、[0069]及び表1)。 イ 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲1発明1を対比すると、「細孔直径0.01〜1.0μmの範囲の積算細孔容積が5%以上であり、チタン酸塩化合物の結晶粒が結合してなる多孔質チタン酸塩化合物粒子と、熱硬化性樹脂とを含有する、樹脂組成物」の点で一致し、次の点で相違する。 相違点1b−1:本件発明1は、「未加硫ゴムが、粒子状であり、前記未加硫ゴムの平均粒子径が、1〜300μmであり、前記未加硫ゴムが、天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、及びエチレン・プロピレンゴムから選ばれる少なくとも1種である」未加硫ゴムを含有するのに対して、甲1発明1は、未硫化ゴムを含有することが特定されていない点 相違点1b−2:多孔質チタン酸塩化合物粒子に関して、本件発明1は、「平均粒子径が、20〜150μmであ」るのに対して、甲1発明1は、「当該粒子の平均粒子径が、5〜500μmであ」る点 (イ)検討 相違点1b−1について検討すると、甲1には、樹脂組成物は、公知の繊維基材及び摩擦調整材を適宜配合し、成形、熱処理及び仕上げ処理することにより摩擦材の成形体に仕上げることができ([0037])、摩擦調整材として、未加硫の天然もしくは合成ゴムを使用できることが記載されている([0039])が、これを平均粒子径が1〜300μmの粒子状とすることは記載されていない。 一方、甲3には、繊維基材(A)、結合材(B)及び充填材(C)を主成分とする非石綿系摩擦材組成物を成形、硬化してなる非石綿径摩擦材であって、充填材(C)中に、摩擦材全体に対して、1〜10体積%の平均粒子径が0.5〜10μmのアブレシブ粒子と、4〜20体積%の未加硫ゴムを含有させること(請求項1)、自動車などのアルミニウム合金製のローターやブレーキドラムに使用され、対面攻撃性が小さく、優れた耐摩耗性を有する非石綿径摩擦材を提供することを課題とすること(【0008】)、上記摩擦材の製造方法は、繊維基材(A)、結合材(B)及び充填材(C)を混合機で均一に混合して成形用粉体を得、この粉体を予備成形物とし更に成形すること(【0029】)が記載されており、充填材(C)が粉体であることが示唆されているが、未加硫ゴムの平均粒子径の値や平均粒子径を特定する技術的意味については何ら記載されていない。 また、甲2には、摩擦材組成物において、粒径が10μm〜3mmの範囲の未加硫ゴム粉末、望ましくは未加硫ゴムの性能を調整する配合剤を添加した上記粉末を用いることにより、予備成形体の形くずれが生じず、良好な形保持性を有することが記載されているが(第2頁左下欄10行〜同頁右下欄7行、実施例)、甲2に記載の摩擦材組成物は、「予備成形性に優れ、初期にも摩擦係数の高い摩擦材が得られる摩擦材組成物を提供する」(第2頁左上欄7〜10行)ことを課題とするものであって、甲1発明1とは解決しようとする課題が異なるものであるし(上記アを参照)、上記粒径は、「凍結粉砕して粒径0.1〜1.0mmの未加硫配合ゴム粉末を得た」(第3頁右下欄10〜11行)と記載されるように未加硫ゴムの粒径範囲であると解され、本件発明1における「平均粒子径」(本件明細書の【0034】)と同じであることは記載も示唆もされていない。さらに、甲4(第1頁右欄16〜19行、実施例1及び2)、甲5(【0008】、実施例1及び2)及び甲6を見ても、摩擦材組成物に平均粒子径が1〜300μmである未加硫ゴムを添加することは記載されていない。 そうすると、甲1発明1において、甲2〜甲6の記載に基づいて、平均粒子径が1〜300μmである未加硫ゴムを添加することが動機づけられるとはいえない。 そして、本件発明1によって奏される効果は、上記(1)ア(エ)で述べたとおり、当業者が予測し得ない格別顕著なものであるといえる。 よって、本件発明1は、相違点1b−2について検討するまでなく、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ)小括 したがって、本件発明1は、相違点1b−2について検討するまでもなく、甲1に記載された発明及び甲2〜甲6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明3〜8について 本件発明3〜8は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明1について上記アで述べたのと同じ理由により、甲1に記載された発明及び甲2〜甲6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 本件発明9について 本件発明9は、本件発明1に係る樹脂組成物の成形体を用いた摩擦材であり、本件発明9と甲1発明2とを対比すると、両者は、 「細孔直径0.01〜1.0μmの範囲の積算細孔容積が5%以上であり、チタン酸塩化合物の結晶粒が結合してなる多孔質チタン酸塩化合物粒子と、熱硬化性樹脂とを含有する、樹脂組成物の成形体である、摩擦材」の点で一致し、次の点で相違する。 相違点1b−3:本件発明9は、「未加硫ゴムが、粒子状であり、前記未加硫ゴムの平均粒子径が、1〜300μmであり、前記未加硫ゴムが、天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、及びエチレン・プロピレンゴムから選ばれる少なくとも1種である」未加硫ゴムを含有するのに対して、甲1発明2は、未加硫ゴムを含有することが特定されていない点 相違点1b−4:多孔質チタン酸塩化合物粒子に関して、本件発明9は、「平均粒子径が、20〜150μmであ」るのに対して、甲1発明2は、「当該粒子の平均粒子径が、5〜500μmであ」る点 相違点1b−5:本件発明9は、「JIS D4421に準拠して測定されたロックウェル硬度が、60〜70HRSである」のに対して、甲1発明2は、上記ロックウェル硬度の値が不明である点 そして、相違点1b−1と相違点1b−3は同内容の相違点であるから、本件発明9は、相違点1b−4及び相違点1b−5について検討するまでもなく、本件発明1について上記イで述べたのと同じ理由により、甲1に記載された発明及び甲2〜甲6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 オ 本件発明10〜17について 本件発明10〜17は、本件発明8又は9を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明8について上記ウで述べたのと同じ理由、又は本件発明9について上記エで述べたのと同じ理由により、甲1に記載された発明及び甲2〜甲6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 カ まとめ 以上のとおりであるから、本件発明1、3〜17に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、特許法第113条第2号に該当して取り消すべきものであるとはいえない。 (3)本件発明2に係る特許に対する申立てについて 本件発明2に係る特許は、第2の1(2)のとおり、訂正により削除された。これにより、本件発明2に係る特許に対する申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 第6 結び 以上のとおりであるから、当審が通知した取消理由1及び2、並びに、特許異議申立ての申立理由によっては、本件発明1、3〜17に係る特許は取り消すことはできない。 また、他に本件発明1、3〜17に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、本件発明2に係る特許についての特許異議申立てを却下する。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 細孔直径0.01〜1.0μmの範囲の積算細孔容積が5%以上であり、チタン酸塩化合物の結晶粒が結合してなる多孔質チタン酸塩化合物粒子と、未加硫ゴムと、熱硬化性樹脂とを含有し、 前記多孔質チタン酸塩化合物粒子の平均粒子径が、20〜150μmであり、 前記未加硫ゴムが、粒子状であり、 前記未加硫ゴムの平均粒子径が、1〜300μmであり、 前記未加硫ゴムが、天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、及びエチレン・プロピレンゴムから選ばれる少なくとも1種である、樹脂組成物。 【請求項2】(削除) 【請求項3】 前記多孔質チタン酸塩化合物粒子が、組成式A2TinO(2n+1)〔式中、Aはカリウムであり、n=2〜8〕で表される、請求項1に記載の樹脂組成物。 【請求項4】 加硫ゴム粉末をさらに含有する、請求項1又は3に記載の樹脂組成物。 【請求項5】 前記熱硬化性樹脂がフェノール樹脂である、請求項1,3,及び4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。 【請求項6】 前記多孔質チタン酸塩化合物粒子の含有量が1〜30体積%であり、前記未加硫ゴムの含有量が0.1〜30体積%であり、前記熱硬化性樹脂の含有量が1〜50体積%である、請求項1及び3〜5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。 【請求項7】 摩擦材用である、請求項1及び3〜6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。 【請求項8】 請求項1及び3〜7のいずれか一項に記載の樹脂組成物の成形体である、摩擦材。 【請求項9】 細孔直径0.01〜1.0μmの範囲の積算細孔容積が5%以上であり、チタン酸塩化合物の結晶粒が結合してなる多孔質チタン酸塩化合物粒子と、未加硫ゴムと、熱硬化性樹脂とを含有し、 前記多孔質チタン酸塩化合物粒子の平均粒子径が、20〜150μmであり、 前記未加硫ゴムが、粒子状であり、 前記未加硫ゴムの平均粒子径が、1〜300μmであり、 前記未加硫ゴムが、天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、及びエチレン・プロピレンゴムから選ばれる少なくとも1種である、樹脂組成物の成形体であり、 JIS D4421に準拠して測定されたロックウェル硬度が、60〜70HRSである、摩擦材。 【請求項10】 請求項8又は9に記載の摩擦材を備える、摩擦部材。 【請求項11】 シュー基材と、請求項8又は9に記載の摩擦材からなるライニングとを備える、ドラムブレーキ用ブレーキシュー。 【請求項12】 前記多孔質チタン酸塩化合物粒子が、組成式A2TinO(2n+1)〔式中、Aはカリウムであり、n=2〜8〕で表される、請求項9に記載の摩擦材。 【請求項13】 加硫ゴム粉末をさらに含有する、請求項9又は12に記載の摩擦材。 【請求項14】 前記熱硬化性樹脂がフェノール樹脂である、請求項9,12,及び13のいずれか一項に記載の摩擦材。 【請求項15】 前記多孔質チタン酸塩化合物粒子の含有量が1〜30体積%であり、前記未加硫ゴムの含有量が0.1〜30体積%であり、前記熱硬化性樹脂の含有量が1〜50体積%である、請求項9及び12〜14のいずれか一項に記載の摩擦材。 【請求項16】 請求項12〜15のいずれか一項に記載の摩擦材を備える、摩擦部材。 【請求項17】 シュー基材と、請求項12〜15のいずれか一項に記載の摩擦材からなるライニングとを備える、ドラムブレーキ用ブレーキシュー。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2022-02-03 |
出願番号 | P2016-189846 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(C08L)
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最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
杉江 渉 |
特許庁審判官 |
近野 光知 橋本 栄和 |
登録日 | 2020-06-05 |
登録番号 | 6713392 |
権利者 | 大塚化学株式会社 |
発明の名称 | 樹脂組成物、これを用いた摩擦材、摩擦部材、及びドラムブレーキ用ブレーキシュー |
代理人 | 特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所 |