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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
管理番号 1384063
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-02-04 
確定日 2022-01-20 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6735181号発明「冷凍加熱調理済米飯および冷凍炒め米飯の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6735181号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1〜5]、6について訂正することを認める。 特許第6735181号の請求項1〜5に係る特許を維持する。 特許第6735181号の請求項6に係る特許についての異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6735181号の請求項1〜6に係る特許についての出願は、平成28年8月12日(優先権主張 平成27年8月12日)の出願であって、令和2年7月15日に特許権の設定登録がされ、令和2年8月5日にその特許公報が発行され、令和3年2月4日に、その請求項1〜6に係る発明の特許に対し、佐藤 武史(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
その後の手続の経緯は以下のとおりである。
令和 3年 4月26日付け 取消理由通知
同年 6月15日 意見書・訂正請求書の提出(特許権者)
同年 8月20日付け 特許法第120条の5第5項の規定に
基づく通知書
同年 9月24日 意見書の提出(申立人)

第2 訂正の適否について

1 訂正の内容
特許権者は、特許法第120条の5第1項の規定により審判長が指定した期間内である令和3年6月15日に訂正請求書を提出し、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1〜6について訂正することを求めた(以下「本件訂正」という。)。その訂正内容は、以下のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1について、訂正前の「B型粘度計によって80℃、20rpmで測定した粘度が50〜180cPである調味液を用いた、冷凍炒め米飯の製造方法。」を、訂正後「B型粘度計によって80℃、20rpmで測定した粘度が50〜180cPである調味液を用いて米飯を炒め調理することを備える、冷凍炒め米飯の製造方法。」(決定注:下線は訂正部分を示す。以下同様。)に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2〜5も同様に訂正する。)

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項6を削除する。

2 訂正の適否

(1)一群の請求項ごとに訂正を請求することについて
訂正前の請求項1〜5について、請求項2〜5は請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1〜5に対応する、訂正後の請求項1〜5は、特許法施行規則第45条の4に規定する関係を有する一群の請求項であって、本件訂正の請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してなされたものである。

(2)訂正事項1について

ア 訂正の目的の適否
本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1の「冷凍炒め米飯の製造方法」として、「B型粘度計によって80℃、20rpmで測定した粘度が50〜180cPである調味液を用い」ることしか特定されていなかったところ、当該調味液を用い「て米飯を炒め調理することを備える」と、「冷凍炒め米飯の製造方法」の工程を具体的に規定することにより、「冷凍炒め米飯の製造方法」の工程を限定するものである。
したがって、本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

新規事項の追加の有無
訂正事項1の「調味液を用いて米飯を炒め調理することを備える」とする事項については、願書に添付した特許請求の範囲の請求項2に「B型粘度計によって80℃、20rpmで測定した粘度が50〜180cPである調味液と炊飯した米飯とを混合する工程、前記混合物を炒め調理して炒め米飯を得る工程・・請求項1に記載の製造方法」(決定注:下線は当審が付与。以下同様。)と記載され、また、願書に添付した明細書に、「【0032】[実施例1]炒めチキンライスの連続炒め製造・・・【0033】・・・調味液を、炊飯した米飯に加えて混合・・・炒め調理を行った。」と記載され、本件発明1の構成を備えた冷凍炒め米飯の製造方法が記載されている。
そうすると、本件訂正の訂正事項1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「特許明細書等」という。)に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
上記ア及びイで述べたとおり、訂正事項1は、特許明細書等に記載の範囲で特許請求の範囲を減縮するものであって、カテゴリーを変更するものではないから、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(3)訂正事項2について

ア 訂正の目的の適否
訂正事項2は、訂正前の本件特許の特許請求の範囲の請求項6を削除する訂正であるから、この訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであることは明らかである。

新規事項の追加の有無
訂正事項2は、請求項を削除する訂正であるから、特許明細書等に記載した事項の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであることは明らかである。
したがって、訂正事項2は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
訂正事項2は、上述のとおり、請求項の削除をするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないことは明らかである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

3 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するので、訂正後の請求項[1〜5]、6についての訂正を認める。

第3 本件発明
本件訂正により訂正された請求項1〜6に係る発明(以下「本件発明1」〜「本件発明6」といい、まとめて「本件発明」ということがある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
B型粘度計によって80℃、20rpmで測定した粘度が50〜180cPである調味液を用いて米飯を炒め調理することを備える、冷凍炒め米飯の製造方法。
【請求項2】
B型粘度計によって80℃、20rpmで測定した粘度が50〜180cPである調味液と炊飯した米飯とを混合する工程、
前記混合物を炒め調理して炒め米飯を得る工程、および
前記炒め米飯を冷凍する工程
を含む請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記炒め工程における炒め温度が130〜200℃である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記炒め工程を、生米1000g重量当たり7〜15重量%の油脂を加えて行う、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記粘度が80〜160cPである、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
(削除) 」

第4 特許異議申立理由及び取消理由

1 特許異議申立理由の概要
申立人は、証拠方法として以下の甲第1号証〜甲第22号証及び参考文献1を提出して、以下の申立理由を主張している。

(証拠方法)
甲第1号証:cookpadの公式ホームページ、「コーンリゾット風」、[online]、2010年7月4日、[令和3年1月24日検索]、インターネットURL: https://cookpad.com/recipe/1176203(以下「甲1」という。)
甲第2号証:カゴメ株式会社の公式ホームページ、「お客様の声とカゴメの改善点」、[online]、公知日不明、[令和3年1月24日検索]、インターネットURL: https://www.kagome.co.jp/customer/voice/_10446(以下「甲2」という。)
甲第3号証:農産加工技術研究會誌、6巻、2号、(1959年)、p.41−47(以下「甲3」という。)
甲第4号証:文部科学省の公式ホームページ、「第2章 日本食品標準成分表 Excel(日本語版) 17調味料及び香辛料類(Excel:68KB)」、[online]、更新日:2017年12月22日、インターネットURL: https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365420.htm (以下「甲4」という。)
甲第5号証:じゅんちゃんハウスのブログ、「リゾットの冷凍保存方法」、[online]、2013年6月28日、[令和3年1月24日検索]、インターネットURL:http://abcde555555.jugem.jp/?eid=1(以下「甲5」という。)
甲第6号証:YAHOO!知恵袋の公式ホームページ、「リゾットって冷凍できますか??」、[online]、2010年4月13日、[令和3年1月25日検索]、インターネットURL: https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1239438562 (以下「甲6」という。)
甲第7号証:産経新聞2014年9月5日掲載記事、「フライパン 予熱温度の確認は水滴で」、[online]、2014年9月5日、[令和3年1月25日検索]、インターネットURL:https://www.fcg-r.co.jp/compare/foods_140905.html (以下「甲7」という。)
甲第8号証:特開2002−330714号公報(以下「甲8」という。)
甲第9号証:大分県産業科学技術センター研究報告(Web)(大分県産業科学技術センター研究報告書(Web))、[online]、2006年、[令和3年1月25日検索]、インターネットURL:http://www.oita-ri.jp/wp-content/uploads/2015/05/2006_14.pdf (以下「甲9」という。)
甲第10号証:特開平2−255049号公報(以下「甲10」という。)
甲第11号証:ベターホームの公式ホームページ、「ベターホームのお料理教室 鍋肌」、[online]、公知日不明、[令和3年1月28日検索]、インターネットURL: http://www.betterhome.jp/jiten/nabe/nabe.php (以下「甲11」という。)
甲第12号証:広島大学学術情報レポジトリ、博士論文「化工澱粉のレオロジー特性に関する研究」、[online]、平成19年9月、[令和3年2月3日検索]、インターネットURL:https://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/ja/list/HU_type/9020/p/13/item/26468及びhttps://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/files/public/2/26468/20141016154329280497/diss_otsu3996.pdf (以下「甲12」という。)
甲第13号証:ヤマキ株式会社の公式ホームページ、「チャーハン」、[online]、公知日不明、[令和3年2月3日検索]、インターネットURL: https://www.yamaki.co.jp/recipe/%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%8F%E3%83%B3 (以下「甲13」という。)
甲第14号証:エバラの公式ホームページ、「焼肉チャーハン」、[online]、公知日不明、[令和3年2月3日検索]、インターネットURL:https://www.ebarafoods.com/recipe/detail/recipe091.php
甲第15号証:特開2001−120217号公報(以下「甲15」という。)
甲第16号証:Rakutenレシピの公式ホームページ、「ツナ缶とトマトケチャップで作る☆簡単リゾットレシピ・作り方」、[online]、2012年5月30日、[令和3年9月20日検索]、インターネットURL: https:// recipe rakuten.co.jp/recipe/1400003308(以下「甲16」という。)
甲第17号証:みんなの知識 ちょっと便利帳の公式ホームページ、「計量スプーン・計量カップによる重量表(単位g)」、[online]、公知日不明、[令和3年9月20日検索]、インターネットURL: https://www.benricho.org/doryoko_cup_spoon/ (以下「甲17」という。)
甲第18号証:キッコーマン食品株式会社の公式ホームページ、「2013年7月12日 デルモンテから、リコピンたっぷり1.5倍!「デルモンテ リコピンリッチ トマトケチャップ」新発売!」、[online]、2013年7月12日、[令和3年9月20日検索]、インターネットURL: https://www.kikkoman.co.jp/corporate/news/13033.html (以下「甲18」という。)
甲第19号証:特開2009−60860号公報(以下「甲19」という。)
甲第20号証:特開2011−120480号公報(以下「甲20」という。)
甲第21号証:北陸作物学会報、48巻、(2013)、p.48−54、[online]、[令和3年9月20日検索]、インターネットURL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/hokurikucs/48/0/48_KJ00010034335/_article/-char/ja及びhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/hokurikucs/48/0/48_KJ00010034335/_article/-char/ja/ (以下「甲21」という。)
甲第22号証:沖縄食糧株式会社の公式ホームページ、「お米資料館[沖縄食糧株式会社]---安心・安全なお米を沖縄の食卓へ お米ができるまで」、[online]、公知日不明、[令和3年9月20日検索]、インターネットURL: http://www.okishoku.co.jp/siryo.html (以下「甲22」という。)
参考文献1:特開2009−232729号公報(以下「参考1」という。)

(申立理由の概要)
申立理由1(進歩性
訂正前の本件発明1、3〜6は、本件優先日前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明及び甲1〜甲8に記載された技術的事項に基いて、本件優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、訂正前の本件発明1、3〜6に係る特許は、同法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

申立理由2(サポート要件)及び申立理由3(実施可能要件
訂正前の本件発明1〜6は、特許請求の範囲の記載が以下(1)〜(9)の点で、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、訂正前の本件発明1〜6に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許優先日に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
また、訂正前の本件発明1〜6に係る特許は、以下(1)〜(9)と同様の理由から、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

(1)訂正前の本件発明1〜6には、測定時の粘度が所定の範囲(「B型粘度計によって80℃、20rpmで測定した粘度が50〜180cP」)にあることのみ規定され、米飯と混合する際の調味液の粘度について規定がなく、粘度測定時の調味液が80℃で所定粘度を有していたとしても、米飯と混合する際に調味液に温度変化がある場合には、脱液が起こったり、調味液の風味が変質や損失する等して、課題を解決できないと解されるから、訂正前の本件発明1〜6は、本件発明の課題を解決できない範囲を含むものであり、本件明細書に記載された発明ではない。
また、同様の理由から、発明の詳細な説明の記載は、訂正前の本件発明1〜6の課題を解決する方法を十分かつ明確に記載したものではない。

(2)訂正前の本件発明1、3〜6には、所定の粘度の調味液をどのように用いて冷凍炒め米飯又は冷凍加熱調理済米飯を得るのか、一切規定がなく、当業者は、炒め調理中に調味液を米飯に添加する場合にまで、本件発明の課題が解決されると理解できないから、訂正前の本件発明1、3〜6は、本件発明の課題を解決できない範囲を含むものであり、本件明細書に記載された発明ではない。
また、同様の理由から、発明の詳細な説明の記載は、訂正前の本件発明1、3〜6の課題を解決する方法を十分かつ明確に記載したものではない。

(3)訂正前の本件発明1〜6には、米飯表面成分の組成について一切特定がなく、また調味液の組成についても一切規定がない。脱液の程度や低粘度成分の浸透を左右する調味液の米飯への吸収性は、米飯表面が親水性か親油性か、調味液は親水性か親油性かによって大きく異なることが明らかであり、親水性である米飯の表面に対して親水性の調味液を付着させた例以外でも、本件実施例で記載された脱液防止や成分浸透に基づく効果が得られるとは理解できないから、訂正前の本件発明1〜6は本件発明の課題を解決できないものを包含しており、本件明細書に記載された発明ではない。
また、同様の理由から、発明の詳細な説明の記載は、訂正前の本件発明1〜6の課題を解決する方法を十分かつ明確に記載したものではない。

(4)訂正前の本件発明1〜3、5、6について、たとえ粘度が所定値であり、脱液防止や焦げ付き防止を図ることができたとしても、使用油脂量がゼロである場合、或いは、実施例で使用した油脂量と大幅に異なる量である場合にまで、本件発明の課題が解決できると当業者は理解できないから、訂正前の本件発明1〜3、5、6は本件発明の課題を解決できないものを包含しており、本件明細書に記載された発明ではない。
また、同様の理由から、発明の詳細な説明の記載は、訂正前の本件発明1〜3、5、6の課題を解決する方法を十分かつ明確に記載したものではない。

(5)訂正前の本件発明1〜6の「調味液」について、トマトケチャップを用いたトマトライス向けの調味液以外に、どのような調味液を用いた場合にも、本件明細書の実施例で得られた効果と同様の効果が得られると当業者は理解できないから、訂正前の本件発明1〜6は本件発明の課題を解決できないものを包含しており、本件明細書に記載された発明ではない。
また、同様の理由から、発明の詳細な説明の記載は、訂正前の本件発明1〜6の課題を解決する方法を十分かつ明確に記載したものではない。

(6)訂正前の本件発明1〜6の「B型粘度計によって80℃、20rpmで測定した粘度が50〜180cPである調味液」について、本件発明1には「調味料」とその粘度だけ規定されているに過ぎないから、もともと粘度が高い調味料の粘度を所定範囲に低下させたものだけでなく、当初から所定範囲内の粘度を有する調味料をも包含することになるが、このような場合であっても本件発明の課題が存在することやかかる課題を解決できるとは本件明細書からは認められないから、訂正前の本件発明1〜6は本件発明の課題を解決できないものを包含しており、本件明細書に記載された発明ではない。
また、同様の理由から、発明の詳細な説明の記載は、訂正前の本件発明1〜6の課題を解決する方法を十分かつ明確に記載したものではない。

(7)訂正前の本件発明1〜6の「冷凍炒め米飯」について、特定粘度を有する調味料を米飯に混合するだけで香ばしい風味が得られることは、本件明細書の実施例に一切示されていないことから、炒め工程を経た米飯であることが定義されていない訂正前の本件発明1〜6は、本件発明の課題を解決できないものを包含しており、本件明細書に記載された発明ではない。
また、同様の理由から、発明の詳細な説明の記載は、訂正前の本件発明1〜6の課題を解決する方法を十分かつ明確に記載したものではない。

(8)訂正前の本件発明1〜6の特定粘度の調味液を「用いた」について、どのように当該調味液を用いて冷凍炒め米飯又は冷凍加熱調理済米飯を得るのか一切記載がなく、種々の態様がクレームの文言上訂正前の本件発明1〜6に該当し得ると解されるところ、当該種々の態様はいずれも本件発明の課題を解決できると解されないから、訂正前の本件発明1〜6は本件発明の課題を解決できないものを包含しており、本件明細書に記載された発明ではない。
また、同様の理由から、発明の詳細な説明の記載は、訂正前の本件発明1〜6の課題を解決する方法を十分かつ明確に記載したものではない。

(9)訂正前の本件発明6には、「冷凍加熱調理済米飯」と特定され、炒め工程を行うことは記載されていない。特定粘度の調味液を米飯に混合して加熱すれば、どのような加熱方法であっても香ばしい風味が得られることは技術常識にもなく、また本件明細書の実施例に一切開示されておらず、当業者は訂正前の本件発明6が課題を解決できると理解できないから、訂正前の本件発明6は、本件明細書に記載された発明ではない。
また、同様の理由から、発明の詳細な説明の記載は、訂正前の本件発明6の課題を解決する方法を十分かつ明確に記載したものではない。

申立理由4(明確性要件)
訂正前の本件発明1〜6は、特許請求の範囲の記載が以下(1)〜(3)の点で、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、訂正前の本件発明1〜6に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

(1)訂正前の請求項1、6の「調味液を用いた」との記載、及び、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項3〜5の記載は、加熱調理前の使用に限定するのか、加熱調理中の使用も包含されるのか、それ以外なのか、不明確である。

(2)訂正前の請求項1の「冷凍炒め米飯」との記載及び訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項5の記載、並びに、訂正前の請求項6の「加熱調理済米飯」との記載が、米飯食品の種類を指すのか、それとも、米飯の炒め工程を経たことを指すのか、解しがたく不明確である。

(3)訂正前の請求項3、4の「前記炒め工程」との記載について、引用される訂正前の請求項1、2には「炒め工程」は記載されておらず、「前記炒め工程」が何を指すか不明確である。

2 当審が通知した取消理由の概要
訂正前の本件発明1〜6に対して、令和3年4月26日付けで当審が特許権者に通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。

理由1(明確性要件)訂正前の本件発明1〜6は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。



訂正前の本件発明1に記載の「冷凍炒め米飯」、及び、訂正前の本件発明6に記載の「冷凍加熱調理済米飯」とは、結局のところ、炒め調理工程を経て製造される「冷凍炒め米飯」を意味するのか、それとも、炒め調理工程を経て製造される「冷凍炒め米飯」のみならず、炒め調理工程を経ずに製造される「冷凍炒め米飯」をも含むものを意味するのか、どちらを意味するのか明らかでなく、不明確である。
本件発明1を直接引用して特定されている本件発明2〜5についても、同様の取消理由が存在する。

なお、当審が通知した取消理由1は、申立理由4のうち(2)に対応するものである。

理由2(サポート要件)訂正前の本件発明1〜6は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。



発明の詳細な説明の記載及び本件出願当時の技術常識を踏まえても、訂正前の本件発明1に記載の「冷凍炒め米飯」、及び、訂正前の本件発明6に記載の「冷凍加熱調理済米飯」として、炒め調理工程を経ずに製造される「冷凍炒め米飯」の場合、どのように実施すれば、調味液の脱液及び焦げ付きの発生が抑制された、香ばしい風味を有する「冷凍炒め米飯」の製造方法を提供するのか不明であるから、当該場合を含む訂正前の本件発明1、6が、調味液の脱液及び焦げ付きの発生が抑制された、香ばしい風味を有する「冷凍炒め米飯」の製造方法を提供するという課題を解決できると当業者が認識することができるとはいえない。
したがって、訂正前の本件発明1、6は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえず、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえない。
本件発明1を直接引用して特定されている本件発明2〜5についても、同様の取消理由が存在する。

なお、当審が通知した取消理由2は、申立理由2のうち(7)〜(9)に対応するものである。

第5 当審の判断
当審は、本件発明1〜5に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び申立人が申し立てた理由並びに証拠によっては、取り消すことはできないと判断する。
本件発明6に係る特許については、訂正により、削除されたため、本件特許の請求項6に対して、申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
理由は以下のとおりである。

1 当審が通知した取消理由についての判断

(1)理由1(明確性要件)について

ア 本件発明1の「冷凍炒め米飯」について、本件発明1の「冷凍炒め米飯の製造方法」は、訂正によって「・・調味液を用いて米飯を炒め調理することを備える」方法となったのであるから、本件発明1の「冷凍炒め米飯」は、炒め調理工程を経て製造される「冷凍炒め米飯」を意味すると理解でき、不明確な点はない。
したがって、本件発明1の「冷凍炒め米飯」との記載は、明確である。

イ 申立人は、令和3年9月24日提出の意見書13頁5〜16行において、本件発明1の「調味液を用いて米飯を炒め調理する」との意味が不明であること、その理由は、本件明細書には「【0012】調味液(・・・)とは加熱調理工程の前に味付けのために用いる液であり、本発明では炊飯した米飯に混合される」と定義されており、本件発明1の「調味液を用いて米飯を炒め調理する」の意味が、加熱調理(炒め調理)中に調味液を用いることと、加熱調理(炒め調理)前に用いることのいずれを意味するのか不明であるし、前者を意味するのであれば、本件明細書の「調味液」の定義である「加熱調理工程前に」用いること(【0012】)と整合せず、後者であっても「加熱調理工程前に味付けのために用いる液」を用いて米飯を炒め調理する意味は不明である旨主張している。
しかしながら、本件明細書の段落【0012】の上記記載は関連した記載ではあるものの、調味液の使用時期を限定的に定義したものではなく、訂正によって、本件発明1は「調味液を用いて米飯を炒め調理する」こととなったため、それ自体の記載として明確であり、その意味は、調味液を炒め調理工程で用いるという程度の意味で不整合もないといえる。
したがって、申立人の前記主張は採用することができない。

ウ まとめ
したがって、本件発明1、及び、本件発明1を直接又は間接的に引用して特定されている本件発明2〜5は、明確であるといえ、特許法第36条第6項第2号に適合するものである。
よって、本件発明1〜5に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たすものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものではない。

(2)理由2(サポート要件)について

ア 特許法第36条第6項第1号の判断の前提について
特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものとされている。
以下、この観点に立って、判断する。

イ 特許請求の範囲の記載
前記第3に記載したとおりである。

ウ 発明の詳細な説明の記載
発明の詳細な説明には、背景技術(【0002】〜【0004】)、発明が解決しようとする課題(【0005】)及び実施例(【0027】〜【0043】)が記載されている。

エ 判断

(ア)本件発明1〜5の解決しようとする課題について
発明の詳細な説明の背景技術の記載(【0002】〜【0004】)、発明が解決しようとする課題の記載(【0005】)、及び、実施例の記載(【0027】〜【0043】)からみて、本件発明1〜5の解決しようとする課題は、調味液の脱液及び焦げ付きの発生が抑制された、香ばしい風味を有する冷凍炒め米飯の製造方法を提供することであると認める。

(イ)調味液の脱液及び焦げ付きの発生が抑制された、香ばしい風味を有する冷凍米飯の製造方法に関し、発明の詳細な説明には、実施の態様として、次のように記載されている。
「【0006】
発明者らは、一般の炒飯に使用される塩または醤油を主成分とする調味液は粘度が低いがトマトケチャップ等の果肉を含む調味素材や味噌などのペースト状の調味素材を含む調味液は粘度が高いこと、粘度が高い調味液を使用する場合、特定の粘度範囲でないと米飯と混合したときに米飯からの脱液が多くなりこの脱液のために、風味が不十分となったり焦げ付きが発生したりする、という知見を得て、本発明を完成した。」、
「【0010】
1.製造方法
本発明の製造方法は、B型粘度計によって80℃、20rpmで測定した粘度が50〜180cPの調味液を用いる。当該粘度を有する調味液は米飯と混合した際に脱液しにくく調味液を無駄にすることなく有効に使用することができ、さらに炒め調理の際に焦げ付きが発生しにくい。」、
「【0013】
本発明で用いる調味液の粘度はB型粘度計を用いて、80℃、20rpmで測定した粘度が50〜180cP(センチポイズ)であり・・・。粘度がこの範囲であると良好な風味を与えることができ、さらに炒め調理の場合には焦げ付きを防止することができる。この理由は限定されないが、粘度がこの範囲である調味液は炊飯した米飯に付着または吸収されやすいので脱液しにくく、その結果、加熱調理機内で調味液が遊離して存在しにくいためと推察される。したがって、粘度が前記上限値を上回ると脱液が多くなって風味を損ない、かつ炒め調理の場合には焦げ付きが発生する。一方、粘度が前記下限値を下回ると調味液中の調味素材の濃度が低下するので、味付けが十分でなくなる。さらに調味液中の低粘度成分が米飯に過度に浸透するので、香ばしい炒め感や米のほどよいしっとり感が得られにくくなる。これに加えて、調味液の脱液を減じることができるので調味液を無駄にすることなく有効に使用できるという効果も奏する。」、
「【0020】
・・・一般に、粘度の低い調味液を用いる「低粘度タイプ冷凍炒め米飯」は、好ましい炒め食感を得るために250℃以上の高い炒め温度が必要である。しかし、本発明では炒め温度が200℃以下と低くても香ばしい炒め食感を得ることができる。この理由は限定されないが、本発明で用いるトマトケチャップ等の果肉を多く含む調味素材を含む調味液は米飯への付着が良好であるので、炒め工程において速やかに当該調味素材の膜(例えば果肉を主成分とする膜)が米飯表面に形成され、米飯内部からの水分の蒸発が阻害されるためではないかと推察される。」

さらに、発明の詳細な説明の実施例(【0027】〜【0043】)には、本件発明1〜5の実施例として、B型粘度計によって80℃、20rpmで測定した粘度が50〜180cPの調味液を用いて米飯を炒め調理することにより、調味液の脱液及び焦げ付きの発生が抑制された、香ばしい風味を有する冷凍米飯の製造方法を提供できることを具体的に確認したことが記載されている。

これらの実施の態様の記載及び実施例の記載より、B型粘度計によって80℃、20rpmで測定した粘度が50〜180cPの調味液を用いて米飯を炒め調理すれば、米飯と混合した際に脱液しにくく、炒め調理の際に焦げ付きが発生しにくく、香ばしい風味を有する冷凍米飯を製造できることが理解できるとともに、このことは、調味液は米飯と混合した際に、炊飯した米飯に付着または吸収されやすいので脱液しにくく、その結果、加熱調理機内で調味液が遊離して存在しにくいとの作用機構の推定も示されていることから、炒め調理をはじめとする加熱調理の場合には、焦げ付きを防止することができ、調味液の脱液及び焦げ付きの発生が抑制された、香ばしい風味を有する冷凍米飯の製造方法を提供でき、当業者が本件発明1〜5の前記課題を解決し得ると認識できるといえる。

(ウ)申立人の主張について
申立人は、令和3年9月24日提出の意見書の[6]において、(A)本件発明の課題である香ばしい炒め風味、焦げ付き防止や脱液防止の効果は、調味液が少なすぎたり、多すぎて液量が多い場合には課題とならないと解され、本件発明1〜5は課題を解決しないものを含んでいる旨、(B)トマトケチャップなど塩または醤油以外の調味料により主として味付けされる炒め米飯(チキンライス等)以外において、本件発明の課題が解決されると当業者は理解できない旨を主張している。
しかしながら、当該(A)及び(B)について、調味液の量が極端な場合に課題の存在の程度が異なることや、調味液の種類によって課題解決の程度が異なることがあったとしても、B型粘度計によって80℃、20rpmで測定した粘度が50〜180cPの調味液を用いて米飯を炒め調理すれば、本件発明1〜5の前記課題を一定程度解決し得ると当業者は認識できることは、前記(イ)で述べたとおりである。
したがって、申立人の前記主張は採用することができない。

オ まとめ
したがって、本件発明1〜5は発明の詳細な説明に記載したものであるといえ、特許法第36条第6項第1号に適合するものである。
よって、本件発明1〜5に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たすものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものではない。

2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立の理由についての判断

(1)申立理由1(進歩性)について

ア 甲1〜甲22及び参考文献1の記載

(ア)甲1に示されている事項
甲1a「コーンリゾット風」(標題)

甲1b「材料(1人分)
ごはん お茶碗1杯(強)
コーン 大さじ4くらい?
■*ソース
ケチャップ 大さじ2
水 大さじ5
ほんだし 小さじ1
醤油 大さじ1/2
■仕上げ
粉チーズ 大さじ2〜3
黒こしょう 少々 」(写真の右)

甲1c「作り方
1 コーンをフライパンで軽く炒めご飯を入れて炒め合わせます。
2 ボールにソースの分量を全部入れて良く混ぜ合わせ、1に入れて軽く煮炒めます。
3 火を消して粉チーズを入れて混ぜてお皿に盛り、黒こしょうをかけたら完成です!!」(写真の下)

(イ) 甲2の記載
甲2a「お客様の声とカゴメの改善点
・・・・・
トマトケチャップの栄養成分表示に、「大さじ1杯(18g)あたり」の成分表示を追加いたしました。」(標題〜2行)

(ウ) 甲3の記載
甲3a「

」(43頁右欄 第4図)

(エ) 甲4の記載(甲4は、本件優先日後の2017年12月22日を更新日とするものである。)
甲4a「



(オ)甲5の記載
甲5a「リゾットの冷凍保存方法」(標題)

(カ)甲6の記載
甲6a「リゾットって冷凍できますか??・・・」(質問)

甲6b「出来ますよ、冷凍のリゾットも売られていることだし・・・。
ただし冷凍するなら米は固めで。一人分ずつ小袋(密閉できるジップロックみたいなもの)に入れると便利です。解凍は少し自然解凍させてから電子レンジ、または少量の水を加えて鍋で温めます。」(ベストアンサー)

(キ)甲7の記載
甲7a「フッ素樹脂加工フライパンの温度と目安
フライパン温度 料理
・・・・・・・・・・・・・
200℃ 炒め物
250℃ チャーハン」(表)

(ク)甲8の記載
甲8a「【0017】実施例4、比較例5〜7
・・・それぞれの米の1.2倍量(実施例4、・・)・・・炊飯米225g、・・サラダ油15g・・」

(ケ)甲9の記載
甲9a「改善項目の粘度,色調,濃縮率の関連について,ピューレの加熱濃縮による経時的変化を調べた.ピューレは生及び解凍トマトをジューサーにかけ,ステンレス製寸胴鍋に入れて,ガス強火で撹拌しつつ90℃まで加熱,裏ごし後(標準ふるい普及型IDφ200,1.0mm)加熱濃縮した.また,原料による違いを比較するために,熟度別ピューレを試作・分析をした.なお,ピューレの粘度は簡易のスプーンテスト(試案)で判断した.

」(1頁右欄下から4行〜2頁左欄表1)

甲9b「

」(3頁右欄図4、図5)

(コ)甲10の記載
甲10a「 しかしながら、通常、調味液は冷たいままの状態で添加されており、その結果、既に加熱調理されている米飯や麺等との品温の差が大きくなり、米飯や麺等の表面のベタツキの原因となっていた。また、添加する調味液の温度が低いために、調味液の添加によって、米飯や麺等の品温も低下し、それを望ましい温度にまで再度上げるのに加熱時間が長くなる。その結果、必要以上に米飯や麺等が加熱されたり、調味液の風味が揮散ないし変質するといった問題があった。」(1頁右下欄7〜16行)

甲10b「比較例1
調味液の温度が常温(20℃)であること以外は、すべて実施例1と同様に実施してチャーハンを得た。
比較例2
調味液の温度が100℃であること以外は、すべて実施例1と同様に実施してチャーハンを得た。
・・・・・
試 料 官 能 評 価
・・・・・
比較例1 米粒表面が粘っている
比較例2 調味液の沸騰、焦げが生じ、風味、味が不良 」(3頁左下欄1〜末行)

(サ)甲11の記載
甲11a「鍋肌」(標題)

甲11b「■こげたしょうゆや、ごま油のこうばしい香りは、なんともいえず食欲をそそりますね。香りを出すコツは、調味料を直接材料にかけずに、鍋の表面が出ている側面から加えること。
■この鍋の側面を鍋肌といいます。鍋にまわった熱で、水分が一瞬でとぶため、こうばしさが、よりきわ立ちます。」(写真右)

(シ)甲12の記載
甲12a「

」(9頁)

(ス)甲13の記載
甲13a「チャーハン」(標題)

甲13b「作り方
・・・・・
4 ○3に○1を加えてさらに炒め合わせ、仕上げに鍋肌から「めんつゆ」を入れて炒める。」(作り方)(決定注:○数字は、丸付き数字を表す。以下同様。)

(セ)甲14の記載
甲14a「焼肉チャーハン」(標題)

甲14b「焼肉チャーハンの作り方
・・・・・
(4) 火が通ったらごはんと(2)を加えて炒め合わせ、「黄金の味」で味付けして、出来あがりです。」(焼肉チャーハンの作り方)

(ソ)甲15の記載
甲15a「【請求項1】調味液と熱可逆性ゲル化剤からなるゲル状の調味液に、調味油が含有されているあわせ調味料
【請求項2】調味油量が、調味量全体に対して0.5〜10重量%である請求項1に記載のあわせ調味料
【請求項3】熱可逆性ゲル化剤を含む調味液の粘度が、60℃において、100〜30000mPa・sの範囲である請求項1又は2に記載のあわせ調味料」

甲15b「【0002】
【従来の技術】近年、米飯にからめるだけで、チャーハンやドライカレーが調理でき、・・・
・・・・・
【0011】本発明における調味液とは、調味成分を水等に分散または溶解したものをいう。具体例としては、果汁や野菜汁、醤油類:例えば、うすくち醤油、濃い醤油、たまり醤油、しろ醤油、醤油もろみ等、みそ類:例えば、米みそ、麦みそ、豆みそ、調合みそ等、ソース類:例えば、ウスターソース、中濃ソース、濃厚ソース等、また、みりんやワイン等から適宜選択され、これらに食塩、糖類、酸類、その他香辛料や香料、色素等の添加物を分散又は溶解したものが挙げられる。」

甲15c「【0014】得られたあわせ調味料は他の具材と共に加熱調理して使用する。使用する際、ゲル状の調味液は溶解するわけであるが、この時の、調味液の粘度は、ある程度高い方が望ましい。そのため、熱可逆性ゲル化剤を含む調味液の粘度が60℃において、100〜30000mPa・sの範囲になるように作成することが望ましい。100mPa・sより低い粘度になるように作成すると、あわせ調味料を加熱したときに調味油と共に、調味液成分も広がってしまい、具材等と調味油が良くからまる前に調味液と具材等がからまり、美味しい料理が調理できなくなるためである。また、30000mPa・sより高い粘度(あまりにも高い粘度)で使用すると、加熱しても、調味液が広がりづらくなり、調味液と具材等とがからまりづらくなるためである。
【0015】本発明におけるあわせ調味料をからめる具材としては、米飯類、麺類、野菜、肉、その他加工食品全般が挙げられる。これら具材は、加熱調理する際に、混合しても良いし、また、あわせ調味料中に、含ませてもかまわない。
・・・・・
【0018】・・・例えば、フライパン等であわせ調味料と具材等を炒めて使用したり、・・」

(タ)甲16の記載
甲16a「ツナ缶とトマトケチャップで作る☆簡単リゾットレシピ・作り方」(標題)

甲16b「材料(2人分)
・・・・・
カルロース米(冷ご飯でも) カップ1
・・・・・
トマトケチャップ 大さじ5
水 1カップ〜
・・・・・ 」(材料)

甲16c「作り方
・・・・・
3 ○2の中に○1と米とケチャップを入れてさらに炒める。
4 ○3に水(かぶる位)を入れて蓋をして弱火で7分途中アクを取り混ぜる。・・・」(作り方)

(チ)甲17の記載
甲17a「計量スプーン・計量カップによる重量表(単位g)」(標題)

甲17b「 計量器の種類
・・・・・ 大さじ1 ・・・
食品名 ・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
トマトケチャップ・・18g ・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・」(表)

(ツ)甲18の記載
甲18a「(*1)「デルモンテ トマトケチャップの大さじ1杯(18g)あたりのリコピン含有量は3.6mgです。」(ニュースリリースの注釈1)

(テ)甲19の記載
甲19a「【請求項1】
食品の上に載せて電子レンジ又はオーブンで加熱して解凍し且つ温める冷凍調味ソースであって、DEが2〜40の澱粉分解物、調味原料及び水分を含み且つ60℃における粘度が800mPa・s以下である調味ソースが盤状に冷凍されていることを特徴とする冷凍ソース。」

甲19b「【0007】
そこで、本発明は、米飯等の食品の上に載せて電子レンジ又はオーブンで加熱して解凍し且つ温めたときに、当該食品に絡みつつ、当該食品への水分の吸収を抑制することのできる冷凍調味ソースを提供することを目的とする。
また、本発明は、冷凍調味ソースを用い、電子レンジ又はオーブンで加熱して、調味ソースを食品に絡ませつつ、調味ソースの水分の吸収を抑制することのできる調味ソース掛け食品の製造方法を提供することを目的とする。」

甲19c「【0026】
【表2】

【0027】
(実施例7)
表3に記載の原料を使用すること以外は、実施例1と同様にして冷凍カレーソースを製造した。この冷凍カレーソースを使用して、実施例1と同様にして調味ソース掛け食品(焼きカレー)は、表面に適度の焦げ目が付いたチーズで覆われ、内部ではカレーソースが溶融して炊飯米に絡んでおり、それでいて米飯が殆ど膨潤せず好ましい食感、風味を有していた。尚、このカレーソースは、60℃における粘度は約95mPa・s(ローターNo.2、60rpm)であった。」

(ト)甲20の記載
甲20a「【0011】
また、乾燥調味料と異なり、液状の調味液であるので、米飯粒に混ざりやすく、かつ非常においしい炒飯を容易に得ることができる。」

(ナ)甲21の記載
甲21a「表−8 測定後の評価/米飯商品に加減・参考例
米飯商品に合わせた最良値の基準
一般米の評価基準 白米 ・・
・・・ 炊き上がり重量率・・2.3〜2.5 ・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」(52頁表−8)

(ニ)甲22の記載
甲22a「参考資料
米一合は約150グラム 」(参考資料1行)

(ヌ)参考1の記載
参考1a「【0024】
表1



イ 甲1に記載された発明
甲1は、「コーンリゾット風」(甲1a)のレシピに関し示すものであって、甲1には、その材料(1人分)(甲1b)及び作り方(甲1c)が示されている。

そうすると、甲1には、コーンリゾット風(1人分)の製造方法として、
「1 コーン(大さじ4くらい?)をフライパンで軽く炒めご飯(お茶碗1杯(強))を入れて炒め合わせ、
2 ボールにソースの分量(ケチャップ 大さじ2、水 大さじ5、ほんだし 小さじ1、醤油 大さじ1/2)を全部入れて良く混ぜ合わせ、1に入れて軽く煮炒め、
3 火を消して粉チーズ(大さじ2〜3)を入れて混ぜてお皿に盛り、黒こしょう(少々)をかける、
コーンリゾット風(1人分)の製造方法。」
の発明(以下「甲1発明」という。)が示されているといえる。

ウ 本件発明1について

(ア)甲1発明との対比

a 甲1発明の「ソースの分量(ケチャップ 大さじ2、水 大さじ5、ほんだし 小さじ1、醤油 大さじ1/2)」は、味付けのために用いる液といえ、加熱調理工程の一つである「軽く煮炒め」する前に、「1」にあるコーン及びご飯の味付けのために用いられている液と理解されるから、本件発明1の「調味液」に相当する。

b 甲1発明の「1に入れて軽く煮炒め」は、「1」にあるコーン及びご飯に、「ソースの分量(・・・)」を入れて「煮炒め」することであり、ご飯は炊飯した米飯であり、aで述べたことも踏まえると、「調味液」を用いてご飯等を炒め調理することを備えているといえるから、本件発明1の「調味液を用いて米飯を炒め調理することを備える」ことに相当する。

c 甲1発明の「コーンリゾット風」は、コーン及びご飯を煮炒めしたものであり、炒め米飯等といえるから、甲1発明の「コーンリゾット風」と本件発明1の「冷凍炒め米飯」とは、炒め米飯である点で共通する。

d そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「調味液を用いて米飯を炒め調理することを備える、炒め米飯の製造方法」
である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:調味液が、本件発明1では、B型粘度計によって80℃、20rpmで測定した粘度が50〜180cPであるのに対し、甲1発明では、そのような粘度であるか明らかでない点

相違点2:炒め米飯が、本件発明1では、冷凍であるのに対し、甲1発明では、冷凍でない点

(イ)判断

a 相違点について
相違点1について検討する。

(a)甲1発明の「ソースの分量(ケチャップ 大さじ2、水 大さじ5、ほんだし 小さじ1、醤油 大さじ1/2)」の粘度について、甲1には、記載も示唆もされておらず、不明である。
また、甲1発明の「ソースの分量(ケチャップ 大さじ2、水 大さじ5、ほんだし 小さじ1、醤油 大さじ1/2)」の粘度が、本件発明1で特定される、「B型粘度計によって80℃、20rpmで測定した粘度が50〜180cPである」であることは甲1には記載はなく、また、「ソースの分量(ケチャップ 大さじ2、水 大さじ5、ほんだし 小さじ1、醤油 大さじ1/2)」であれば、そのような粘度であることが技術常識であるとも認められない。
そうすると、甲1発明の「ソースの分量(ケチャップ 大さじ2、水 大さじ5、ほんだし 小さじ1、醤油 大さじ1/2)」の粘度が、「B型粘度計によって80℃、20rpmで測定した粘度が50〜180cPである」ことが記載されているに等しいとはいえない。
したがって、相違点1は、実質的な相違点といえる。

(b)甲1発明において、調味液の粘度を、「B型粘度計によって80℃、20rpmで測定した粘度が50〜180cPである」とすることの容易想到性について、以下検討する。

本件発明1は、調味液の脱液及び焦げ付きの発生が抑制された、香ばしい風味を有する冷凍炒め米飯の製造方法を提供しようという課題の下、「粘度が高い調味液を使用する場合、特定の粘度範囲でないと米飯と混合したときに米飯からの脱液が多くなりこの脱液のために、風味が不十分となったり焦げ付きが発生したりする、という知見を得て」(本件明細書の段落【0006】)、「B型粘度計によって80℃、20rpmで測定した粘度が50〜180cPである」調味液を用いて米飯を炒め調理することにより、当該課題を解決したものである。

他方、甲1発明は、「コーンリゾット風」のレシピ(甲1a〜甲1c)であり、そのレシピの提供を目的とするものといえ、本件発明1の課題と異なるものである。
そのような甲1発明において、調味料である、「ソースの分量(ケチャップ 大さじ2、水 大さじ5、ほんだし 小さじ1、醤油 大さじ1/2)」の粘度を、本件発明1で特定される、「B型粘度計によって80℃、20rpmで測定した粘度が50〜180cPである」ようにしようという動機付けがあるとは認められない。

また、以下に示す、
トマトケチャップの栄養成分表示に、「大さじ1杯(18g)あたり」の表示を追加したことを示すにとどまる甲2、
醤油やアミノ酸液の加熱時の粘度挙動が蒸留水と同様であり、また粘度差が数cPであることが示されているにとどまる甲3、
濃いくち醤油の水分量は67.1%であることが示されているにとどまる甲4(また、甲4は、前述のとおり、本件優先日後に更新されたものでもある。)、
リゾットを冷凍保存する又はできることが記載されている甲5、甲6、
フライパンでの炒め物の温度が200℃、炒飯の加熱温度は250℃であることが記載されているにすぎない甲7、
実施例において、生米1.2倍量の水で炊飯した米飯225gに対し、サラダ油15gを用いて炒め炒飯を製造したことが記載されているにとどまる甲8、
に記載された事項を検討しても、甲1発明のような「コーンリゾット風(1人分)の製造方法」において、「ソースの分量(・・・)」の粘度を、「B型粘度計によって80℃、20rpmで測定した粘度が50〜180cPである」ようにすることを動機付けることとなる記載や示唆がないし、本件優先日当時の技術常識からも動機付けられるものでもない。

したがって、甲1発明において、「ソースの分量(・・・)」の粘度を、「B型粘度計によって80℃、20rpmで測定した粘度が50〜180cPである」ようにすることは、当業者といえども、甲1〜甲8に記載された技術的事項から容易に想到し得たとはいえない。

b 本件発明1の効果について
本件発明1の効果は、本件明細書の効果の記載(【0007】)及び実施例の記載(【0027】〜【0043】)より理解されるように、調味液の脱液及び焦げ付きの発生が抑制された、香ばしい風味を有する冷凍炒め米飯の製造方法を提供できることであり、そのような効果は、甲1〜甲8の記載された技術的事項から当業者が予測できる範囲を超えた顕著なものといえる。

c 申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書の14頁11行〜15頁下から2行において、相違点1に関し、「本件明細書の表1には、ケチャップに対する水の質量比が702/300(=2.34)倍〜615/310(=1.98)倍となるように混合した場合に、B型粘度計によって80℃、20rpmで測定した粘度が50〜120cPになることが記載されている。・・・甲1においてほんだし小さじ1、醤油大さじ1/2の粘度への影響は極少なく、甲1の「ケチャップ大さじ2、水大さじ5、ほんだし小さじ1、醤油大さじ1/2を混合したソース」をB型粘度計によって80℃、20rpmで測定した粘度が、水をケチャップに対して2.24倍で混合させた場合と同様であり50〜120cPの範囲内になる蓋然性は極めて高い」から、実質的な相違点ではない旨主張している。

しかしながら、本件明細書に記載されている事項を根拠として、甲1発明の調味液である「ケチャップ大さじ2、水大さじ5、ほんだし小さじ1、醤油大さじ1/2を混合したソース」が、「B型粘度計によって80℃、20rpmで測定した粘度が50〜180cPである」蓋然性が高い旨を主張しており、本件明細書の表1(調味液の粘度)の値は、本件明細書の実施例の条件において作成された結果にすぎないので、そのような表の結果を前提とした申立人の相違点1の判断に関する主張は採用できない。
したがって、申立人の前記主張は採用できない。

(ウ)小括
したがって、相違点2を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明、及び、甲1〜甲8に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえない。

オ 本件発明2〜5について
本件発明2〜5は、本件発明1を技術的に更に限定した発明であるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明2〜5は、甲1に記載された発明、及び、甲1〜甲8に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえない。

カ 令和3年9月24日提出の意見書における、申立人の新たな主張について
令和3年9月24日提出の意見書において、申立人は、新たに甲15〜甲22及び参考1を提出し、甲15を主引用例として、本件発明の新規性違反及び進歩性違反を、また、甲16、甲19又は甲20をそれぞれ主引用例として、本件発明の進歩性違反を、主張している。

なお、甲15、甲16、甲19又は甲20をそれぞれ主引用例として、各引用発明を認定し検討したとしても、各引用発明における調味液の粘度が、本件発明1で特定される、「B型粘度計によって80℃、20rpmで測定した粘度が50〜180cPである」ことについての記載はなく、その蓋然性が高いといえる論理的説明も本件優先日前公知の証拠等を示した説明もなされていないから、調味液の粘度が「B型粘度計によって80℃、20rpmで測定した粘度が50〜180cPである」とは判断できない。また、各引用発明における調味液であれば、そのような粘度であることが技術常識であるとも認められない。
したがって、本件発明1は、甲15に記載された発明であるとはいえない。

なお、また、甲1〜甲22及び参考1に記載された事項を検討しても、甲15、甲16、甲19又は甲20の各引用発明における調味液の粘度を、本件発明1で特定される、「B型粘度計によって80℃、20rpmで測定した粘度が50〜180cPである」ようにすることを動機付けることとなる記載や示唆がないし、本件優先日当時の技術常識からも動機付けられるものでもない。
したがって、本件発明1は、甲15、甲16、甲19又は甲20に記載された発明、並びに、甲1〜甲22及び参考1に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

キ まとめ
以上より、本件発明1〜5に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものではなく、また、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではないから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものではない。

(2)申立理由2(サポート要件)及び申立理由3(実施可能要件)について
前記第4 1 申立理由2(サポート要件)の(1)〜(6)及び申立理由3(実施可能要件)の(1)〜(9)についても申し立てているので、以下検討する。

ア 申立理由2(サポート要件)及び申立理由3(実施可能要件)の(1)について

本件発明1〜5の「調味液」と米飯との混合について、発明の詳細な説明には、一般的な態様の記載として、「【0016】調味液と米飯との混合は、例えば、80℃以上に加熱した米飯と80℃程度に加熱した調味液を混合することにより行う。加熱は任意の装置を使用して実施できる。・・・」と記載されており、実施例(【0027】〜【0043】)では、炊飯し80℃以上に加熱された米飯と、約80℃に加熱した調味液(B型粘度計によって80℃、20rpmで測定した粘度が50〜180cPの調味液)とを混合し、米飯を炒め調理することにより、調味液の脱液及び焦げ付きの発生が抑制された、香ばしい風味を有する冷凍米飯の製造方法を提供できることを具体的に確認したことが記載されている。

そうすると、米飯と混合する際の調味液の粘度について特定がなく、米飯と混合する際の調味液に温度変化があったとしても、一般的な態様の記載に例示され、実施例で具体的に実施され前記効果が確認されている、80℃以上に加熱した米飯と80℃程度に加熱した調味液を混合することにより行うことを参考に、加熱された米飯の温度から判断し、例示と同程度の温度となるよう調味液の温度を適宜調整して混合し、米飯を炒め調理すれば、調味液の脱液及び焦げ付きの発生が抑制された、香ばしい風味を有する冷凍米飯の製造方法を提供できると当業者は理解でき、本件発明1〜5の課題を解決し得ると認識できるといえ、本件発明1〜5は発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。

また、上記述べたことを踏まえると、当業者は本件発明1〜5を、当業者に通常期待し得る程度を超える過度の試行錯誤なく実施できるといえ、発明の詳細な説明の記載は、本件発明1〜5を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえる。

イ 申立理由2(サポート要件)及び申立理由3(実施可能要件)の(2)について

本件発明1、3〜5の「調味液」について、発明の詳細な説明には、「【0012】調味液(便宜上「炒め調味液」ともいう)とは加熱調理工程の前に味付けのために用いる液であり、本発明では炊飯した米飯に混合される。」と記載されており、実際に、実施例(【0027】〜【0043】)では、炊飯した米飯と、調味液(B型粘度計によって80℃、20rpmで測定した粘度が50〜180cPの調味液)とを混合して米飯に味付けをし、その後、米飯を加熱調理工程である炒め調理することによって、調味液の脱液及び焦げ付きの発生が抑制された、香ばしい風味を有する冷凍米飯の製造方法を提供できることを具体的に確認したことが記載されている。

そうすると、本件発明1、3〜5の「調味液」については、発明の詳細な説明に明確に記載されており、当該記載に従い実施例で具体的に実施され前記効果が確認されている方法に基づき米飯を炒め調理すれば、調味液の脱液及び焦げ付きの発生が抑制された、香ばしい風味を有する冷凍米飯の製造方法を提供できると当業者は理解でき、本件発明1、3〜5の課題を解決し得ると認識できるといえ、本件発明1、3〜5は発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。

また、上記述べたことを踏まえると、当業者は本件発明1、3〜5を、当業者に通常期待し得る程度を超える過度の試行錯誤なく実施できるといえ、発明の詳細な説明の記載は、本件発明1、3〜5を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえる。

ウ 申立理由2(サポート要件)及び申立理由3(実施可能要件)の(3)及び(4)について

本件発明1〜5について、実施例(【0027】〜【0043】)では、炊飯した米飯と、調味液(B型粘度計によって80℃、20rpmで測定した粘度が50〜180cPの調味液)とを混合して米飯に味付けをし、その後、米飯を加熱調理工程である炒め調理することによって、調味液の脱液及び焦げ付きの発生が抑制された、香ばしい風味を有する冷凍米飯の製造方法を提供できることを具体的に確認したことが記載されている。

本件発明1〜5の効果を奏する作用機構については、前記1(2)で述べたように、発明の詳細な説明の実施の態様の記載より、B型粘度計によって80℃、20rpmで測定した粘度が50〜180cPの調味液を用いれば、調味液は米飯と混合した際に、炊飯した米飯に付着または吸収されやすいので脱液しにくく、その結果、加熱調理機内で調味液が遊離して存在しにくいと推察されることから、炒め調理をはじめとする加熱調理の場合には、焦げ付きを防止することができ、調味液の脱液及び焦げ付きの発生が抑制された、香ばしい風味を有する冷凍米飯の製造方法を提供できるというものである。
また、油脂について、発明の詳細な説明には、一般的な実施の態様の記載として、「【0017】・・炒め調理には油脂を用いてよい。・・【0018】 油脂の量は、生米1000gに対して、7〜15重量%が好ましく・・。」と記載されている。

脱液の程度や低粘度成分の浸透を左右する調味液の米飯への吸収性は、米飯表面成分の組成、調味液の組成又は油脂量により、一定程度変化することがあるとしても、本件発明1〜5は、「調味料」の種類や「米飯」の表面成分の組成又は油脂量を発明の技術的思想とするものではなく、上記実施の態様の記載や実施例の記載より、調味液の脱液及び焦げ付きの発生が抑制された、香ばしい風味を有する冷凍米飯の製造方法を提供できると当業者は理解でき、一定程度本件発明1〜5の課題を解決し得ると認識できるといえるのであるから、本件発明1〜5は発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。そして、その範囲からかけ離れた米飯、調味液又は油脂量は、本件発明1〜5の範囲外であると理解される。

また、上記述べたことを踏まえると、当業者は本件発明1〜5を、当業者に通常期待し得る程度を超える過度の試行錯誤なく実施できるといえ、発明の詳細な説明の記載は、本件発明1〜5を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえる。

エ 申立理由2(サポート要件)及び申立理由3(実施可能要件)の(5)及び(6)について

本件発明1〜5について、実施例(【0027】〜【0043】)では、炊飯した米飯と、調味液として、ケチャップのみならず様々な調味成分を含み、B型粘度計によって80℃、20rpmで測定した粘度が50〜180cPの調味液とを、混合して米飯に味付けをし、その後、米飯を加熱調理工程である炒め調理することによって、調味液の脱液及び焦げ付きの発生が抑制された、香ばしい風味を有する冷凍米飯の製造方法を提供できることを具体的に確認したことが記載されている。

本件発明1〜5の「調味液」について、発明の詳細な説明には、一般的な実施の態様の記載として、「【0012】・・調味液は、調味成分として砂糖、醤油、塩、発酵調味料、各種エキス、トマトケチャップ、トマトソース、ウスターソース、オイスターソース、チリソース、味噌、コチュジャン、香辛料等の通常使用される調味素材、ならびに調味および粘度調整のための水や酒等の低粘度成分を含む。」と記載されており、トマトケチャップを用いたトマトライス向けの調味液に限られておらず、当初から本件発明1〜5の所定範囲内の粘度を有する調味料をも包含していると理解される。
また、本件発明1〜5の効果を奏する作用機構について、前記1(2)で述べたように、発明の詳細な説明の実施の態様の記載より、B型粘度計によって80℃、20rpmで測定した粘度が50〜180cPという特定の粘度の調味液を用いれば、調味液は米飯と混合した際に、炊飯した米飯に付着または吸収されやすいので脱液しにくく、その結果、加熱調理機内で調味液が遊離して存在しにくいと推察されることから、炒め調理をはじめとする加熱調理の場合には、焦げ付きを防止することができ、調味液の脱液及び焦げ付きの発生が抑制された、香ばしい風味を有する冷凍米飯の製造方法を提供できるというものである。
これは、B型粘度計によって80℃、20rpmで測定した粘度が50〜180cPという特定の粘度の調味液であれば、粘度を当該所定範囲内になるよう調整した調味料のみならず、当初から当該所定範囲内の粘度を有する調味料であっても同様に、この作用機構により、同様の効果を奏するものと理解される。

そうすると、この作用機構を踏まえると、本件発明1〜5の「調味液」は、トマトケチャップを用いたトマトライス向けの調味液に限るものではなく、B型粘度計によって80℃、20rpmで測定した粘度が50〜180cPという特定の粘度の調味液であれば、トマトケチャップを用いたトマトライス向けの調味液以外の、当初から当該所定範囲内の粘度を有する調味料も含め、段落【0012】に例示されているような調味料を用いて、米飯を炒め調理しても、調味液の脱液及び焦げ付きの発生が抑制された、香ばしい風味を有する冷凍米飯の製造方法を提供できると当業者は理解でき、本件発明1〜5の課題を解決し得ると認識できるといえ、本件発明1〜5は発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。

また、上記述べたことを踏まえると、当業者は本件発明1〜5を、当業者に通常期待し得る程度を超える過度の試行錯誤なく実施できるといえ、発明の詳細な説明の記載は、本件発明1〜5を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえる。

オ 申立理由3(実施可能要件)の(7)〜(9)について
前記1(2)で述べたことを踏まえると、当業者は本件発明1〜5を、当業者に通常期待し得る程度を超える過度の試行錯誤なく実施できるといえ、発明の詳細な説明の記載は、本件発明1〜5を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえる。

カ まとめ
したがって、本件発明1〜5は発明の詳細な説明に記載したものであるといえるから、特許法第36条第6項第1号に適合するものであり、本件発明1〜5に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たすものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものではない。
また、本件発明1〜5に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものではない。

(3)申立理由4(明確性要件)について

ア 申立理由4(明確性要件)の(1)について
訂正前の請求項1に記載の「調味液を用い」について、本件明細書の段落【0012】の記載は関連した記載ではあるものの、調味液の使用時期を限定的に定義したものではなく、訂正によって、本件発明1は「調味液を用いて米飯を炒め調理する」こととなったため、それ自体の記載として明確であり、その意味は、調味液を炒め調理工程で用いるという程度の意味で不整合もないといえる。
本件発明1を直接又は間接的に引用して特定されている本件発明3〜5も、同様に明確であるといえる。

イ 申立理由4(明確性要件)の(3)について
本件発明1には「米飯を炒め調理することを備える」との特定があり、また、本件発明2には「前記混合物を炒め調理して炒め米飯を得る工程」との特定があり、請求項3、4の「前記炒め工程」は、これらの記載を指すものと理解され、そのように理解して不明確であるとは認められないから、請求項3、4の「前記炒め工程」という記載が不明確であるとはいえない。

ウ まとめ
したがって、本件発明1〜5は明確であるといえ、特許法第36条第6項第2号に適合するものである。
よって、本件発明1〜5に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たすものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消すことができない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1〜5に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び申立人が申し立てた理由並びに証拠によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件発明1〜5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件発明6に係る特許については、訂正により、請求項6が削除されたため、本件特許の請求項6に対して、申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
B型粘度計によって80℃、20rpmで測定した粘度が50〜180cPである調味液を用いて米飯を炒め調理することを備える、冷凍炒め米飯の製造方法。
【請求項2】
B型粘度計によって80℃、20rpmで測定した粘度が50〜180cPである調味液と炊飯した米飯とを混合する工程、
前記混合物を炒め調理して炒め米飯を得る工程、および
前記炒め米飯を冷凍する工程
を含む請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記炒め工程における炒め温度が130〜200℃である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記炒め工程を、生米1000g重量当たり7〜15重量%の油脂を加えて行う、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記粘度が80〜160cPである、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-01-07 
出願番号 P2016-158729
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (A23L)
P 1 651・ 121- YAA (A23L)
P 1 651・ 537- YAA (A23L)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 瀬良 聡機
特許庁審判官 齊藤 真由美
冨永 保
登録日 2020-07-15 
登録番号 6735181
権利者 テーブルマーク株式会社
発明の名称 冷凍加熱調理済米飯および冷凍炒め米飯の製造方法  
代理人 小林 泰  
代理人 新井 規之  
代理人 新井 規之  
代理人 竹内 茂雄  
代理人 小野 新次郎  
代理人 山本 修  
代理人 小野 新次郎  
代理人 竹内 茂雄  
代理人 山本 修  
代理人 小林 泰  
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