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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C08F 審判 全部申し立て 2項進歩性 C08F 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C08F |
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管理番号 | 1384069 |
総通号数 | 5 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2022-05-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-02-10 |
確定日 | 2022-02-14 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | true |
事件の表示 | 特許第6738979号発明「吸水性樹脂製造装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6738979号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−4〕について」訂正することを認める。 特許第6738979号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 1 特許異議申立の経緯 特許第6738979号(請求項の数4。以下、「本件特許」という。)は、2016年(平成28年)2月23日に出願した国際出願(特願2017−502399号、優先権主張 平成27年2月24日)の一部を令和2年3月2日に新たな特許出願(特願2020−35261号)としたものであって、令和2年7月22日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、令和2年8月12日である。)。 その後、令和3年2月10日に、本件特許の請求項1〜4に係る特許に対して、特許異議申立人である株式会社日本触媒(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。 その後の手続の経緯は以下のとおりである。 令和3年 6月18日付け 取消理由通知書 同年 8月20日 意見書・訂正請求書(特許権者) 同年 9月 3日付け 通知書(申立人あて) 同年10月 7日 意見書(申立人) 2 証拠方法 ・甲第1号証 特開平11−292919号公報 ・甲第2号証 特表2002−528582号公報 ・甲第3号証 特表2009−516043号公報 ・甲第4号証 特表2015−526577号公報 ・甲第5号証 国際公開第2011/099586号 ・甲第6号証 国際公開第2010/114058号 ・甲第7号証 国際公開第2014/156289号 ・甲第8号証 国際公開第2009/119758号 ・甲第9号証 粉体工学会編、粉体工学便覧−第2版−、日刊工業新聞社、1998年3月30日第2版1刷発行、第344〜345、349〜350頁 ・甲第10号証 国際公開第2016/136761号 (以下、「甲第1号証」〜「甲第10号証」を「甲1」〜「甲10」という。) 第2 訂正の適否についての判断 特許権者は、特許法第120条の5第1項の規定により審判長が指定した期間内である令和3年8月20日に訂正請求書を提出し、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項1〜4について訂正することを求めた(以下「本件訂正」といい、また、本件設定登録時の願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面を「本件明細書」という。)。 1 訂正の内容 (1)訂正事項1 訂正事項1による訂正は、訂正前の請求項1に 「吸水性樹脂組成物を乾燥させて粉体を得る乾燥機と、 前記粉体の流量を予め定める流量となるように調整する粉体流量調整排出部材と、 前記乾燥機と前記粉体流量調整排出部材とを繋ぐ、前記粉体の流路を構成する粉体流路部材と、 前記流路を流過する前記粉体のうち、予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する捕集体と、 を有することを特徴とする、吸水性樹脂製造装置。」と記載されているのを、 「吸水性樹脂組成物を乾燥させて未分級の粉体を得る乾燥機と、 前記粉体の流量を予め定める流量となるように調整する粉体流量調整排出部材と、 前記乾燥機と前記粉体流量調整排出部材とを繋ぐ、前記粉体の流路を構成する粉体流路部材と、 前記流路を流過する前記未分級の粉体のうち、予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する捕集体(但し、振動ふるいを除く)と、 前記粉体流量調整排出部材の下流に設けられた分級器と、を有し、 前記粉体流量調整排出部材から前記分級器にかけて、前記粉体を粉砕工程を行わずに流過するように構成されていることを特徴とする、吸水性樹脂製造装置。」に訂正する。 (2)訂正事項2 訂正前の請求項2に「前記捕集体が網型の形状を有する、請求項1に記載の吸水性樹脂製造装置。」と記載されているのを、 「 吸水性樹脂組成物を乾燥させて粉体を得る乾燥機と、 前記粉体の流量を予め定める流量となるように調整する粉体流量調整排出部材と、 前記乾燥機と前記粉体流量調整排出部材とを繋ぐ、前記粉体の流路を構成する粉体流路部材と、 前記流路を流過する前記粉体のうち、予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する網型の形状を有する捕集体と、 前記粉体流量調整排出部材の下流に設けられた分級器と、を有し、 前記捕集体が、前記粉体の流路において固定的に配置されており且つその網面が捕集した前記粉体塊状物を前記網面上で移動可能とするように水平に対して傾斜して配置されていることを特徴とする、吸水性樹脂製造装置。」に訂正する。 (3)訂正事項3 訂正前の請求項3に「前記粉体流量調整排出部材によって調整される前記粉体の流量は、分級器の処理能力に基づく値である、請求項1又は2に記載の吸水性樹脂製造装置。」と記載されているのを、「前記粉体流量調整排出部材によって調整される前記粉体の流量は、前記分級器の処理能力に基づく値である、請求項1又は2に記載の吸水性樹脂製造装置。」に訂正する。 (4)一群の請求項 訂正事項1〜3に係る訂正前の請求項1〜4について、請求項2〜4はそれぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 よって、本件訂正は、一群の請求項に対してなされたものである。 2 訂正の目的、実質上の特許請求の範囲の拡張・変更及び新規事項の追加の判断 (1)訂正事項1について 訂正事項1による訂正の適否を検討するに当たり、訂正事項1による訂正を訂正される事項ごとに分けて検討する。 訂正事項1による訂正は、 「吸水性樹脂組成物を乾燥させて粉体を得る乾燥機と、」と記載されているのを、「吸水性樹脂組成物を乾燥させて未分級の粉体を得る乾燥機と、」に訂正する訂正(以下「訂正事項1−1」という。)と、「前記流路を流過する前記粉体のうち、」と記載されているのを、「前記流路を流過する前記未分級の粉体のうち、」に訂正する訂正(以下「訂正事項1−2」という。)と、「予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する捕集体と、」と記載されているのを、「予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する捕集体(但し、振動ふるいを除く)と、」に訂正する訂正(以下「訂正事項1−3」という。)と、「捕集体と、」の後に、「前記粉体流量調整排出部材の下流に設けられた分級器と、を有し、」を加入する訂正(以下「訂正事項1−4」という。)と、「を有することを特徴とする、吸水性樹脂製造装置。」と記載されているのを、「前記粉体流量調整排出部材から前記分級器にかけて、前記粉体を粉砕工程を行わずに流過するように構成されていることを特徴とする、吸水性樹脂製造装置。」に訂正する訂正(以下「訂正事項1−5」という。)である。 ア 訂正事項1−1 訂正事項1−1による訂正は、乾燥機により乾燥させて得られる粉体を、「未分級の粉体」と限定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、また、本件明細書の段落【0085】〜【0087】および図1には、乾燥機により乾燥させて得られる粉体が分級されることは記載されておらず、そして、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された全ての事項から導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかであるから、新規事項の追加に当たらず、さらに、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことは明らかである。 イ 訂正事項1−2 訂正事項1−2による訂正は、流路を流過する粉体を、「未分級の粉体」と限定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、また、本件明細書の段落【0085】〜【0087】および図1には、流路を流過する粉体が分級されることは記載されておらず、そして、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された全ての事項から導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかであるから、新規事項の追加に当たらず、さらに、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことは明らかである。 ウ 訂正事項1−3 訂正事項1−3による訂正は、捕集体を、「捕集体(但し、振動ふるいを除く)」と限定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、また、新規事項の追加に当たらないことは明らかであり、さらに、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことは明らかである。 エ 訂正事項1−4 訂正事項1−4による訂正は、請求項1に記載された吸水性樹脂製造装置について、粉体流量調整排出部材の下流に分級器を設けることを追加する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、また、本件明細書の段落【0022】、【0125】〜【0126】及び図1には、粉体流量調整排出部材の下流に分級器を設けることが記載されているから、新規事項の追加に当たらず、さらに、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことは明らかである。 オ 訂正事項1−5 訂正事項1−5による訂正は、請求項1に記載された吸水性樹脂製造装置について、粉体流量調整排出部材から前記分級器にかけて、粉体を粉砕工程を行わずに流過することを限定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、また、本件明細書の段落【0125】および図1には、粉体流量調整排出部材から前記分級器にかけて粉体を流過するにあたり粉砕工程を行うことは記載されておらず、そして、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された全ての事項から導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかであるから、新規事項の追加に当たらず、さらに、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことは明らかである。 (2)訂正事項2について 訂正事項2による訂正の適否を検討するに当たり、訂正事項2による訂正を訂正される事項ごとに分けて検討する。 訂正事項2による訂正は、訂正前の請求項2が請求項1を引用して記載するものを、請求項1の記載を引用しないものとする訂正(以下「訂正事項2−1」という。)と、「捕集体と、」の後に、「前記粉体流量調整排出部材の下流に設けられた分級器と、を有し、」を加入する訂正(以下「訂正事項2−2」という。)と、「を有することを特徴とする、吸水性樹脂製造装置。」とあるのを、「前記捕集体が、前記粉体の流路において固定的に配置されており且つその網面が捕集した前記粉体塊状物を前記網面上で移動可能とするように水平に対して傾斜して配置されていることを特徴とする、吸水性樹脂製造装置。」に訂正する訂正(以下「訂正事項2−3」という。)である。 ア 訂正事項2−1 訂正事項2−1による訂正は、請求項2が請求項1の記載を引用する請求項の記載を請求項1の記載を引用しないものとする訂正であるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正であり、また、新規事項の追加に当たらないことは明らかであり、さらに、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことは明らかである。 イ 訂正事項2−2 訂正事項2−2による訂正は、上記「(1)」で述べた訂正事項1−4と同じであり、上記「(1)エ」で述べたとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、また、新規事項の追加に当たらず、さらに、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことは明らかである。 ウ 訂正事項2−3 訂正事項2−3による訂正は、請求項2に記載された吸水性樹脂製造装置について、捕集体が粉体の流路において固定的に配置されており且つその網面が捕集した前記粉体塊状物を前記網面上で移動可能とするように水平に対して傾斜して配置されていることを限定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、また、本件明細書の段落【0088】、【0103】および図2をみれば、捕集体が粉体の流路において固定的に配置され、網面が捕集した粉体塊状物を網面上で移動可能とするように水平に対して傾斜して配置されていることが記載されているといえるから、新規事項の追加に当たらず、さらに、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことは明らかである。 (3)訂正事項3について 訂正事項3による訂正は、請求項3が引用する請求項1及び2に記載された吸水性樹脂製造装置が、訂正事項1及び2による訂正によって分級器が追加されたことに伴い、「分級器」という記載を「前記分級器」と訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であり、また、新規事項の追加に当たらないことは明らかであり、さらに、実質上特許請求の範囲の拡張・変更に該当しないことは明らかである。 3 まとめ 以上のとおりであるから、訂正事項1〜3による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1、3及び4号に掲げる目的に適合し、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するから、本件訂正を認める。 第3 特許請求の範囲の記載 上記のとおり、本件訂正は認められたので、特許第6738979号の特許請求の範囲の記載は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1〜4に記載される以下のとおりのものである。(以下、請求項1〜4に記載された事項により特定される発明を「本件発明1」〜「本件発明4」といい、まとめて「本件発明」ともいう。また、本件訂正後の明細書、特許請求の範囲及び図面を「本件訂正明細書」という。) 「【請求項1】 吸水性樹脂組成物を乾燥させて未分級の粉体を得る乾燥機と、 前記粉体の流量を予め定める流量となるように調整する粉体流量調整排出部材と、 前記乾燥機と前記粉体流量調整排出部材とを繋ぐ、前記粉体の流路を構成する粉体流路部材と、 前記流路を流過する前記未分級の粉体のうち、予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する捕集体(但し、振動ふるいを除く)と、 前記粉体流量調整排出部材の下流に設けられた分級器と、を有し、 前記粉体流量調整排出部材から前記分級器にかけて、前記粉体を粉砕工程を行わずに流過するように構成されていることを特徴とする、吸水性樹脂製造装置。 【請求項2】 吸水性樹脂組成物を乾燥させて粉体を得る乾燥機と、 前記粉体の流量を予め定める流量となるように調整する粉体流量調整排出部材と、 前記乾燥機と前記粉体流量調整排出部材とを繋ぐ、前記粉体の流路を構成する粉体流路部材と、 前記流路を流過する前記粉体のうち、予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する網型の形状を有する捕集体と、 前記粉体流量調整排出部材の下流に設けられた分級器と、を有し、 前記捕集体が、前記粉体の流路において固定的に配置されており且つその網面が捕集した前記粉体塊状物を前記網面上で移動可能とするように水平に対して傾斜して配置されていることを特徴とする、吸水性樹脂製造装置。 【請求項3】 前記粉体流量調整排出部材によって調整される前記粉体の流量は、前記分級器の処理能力に基づく値である、請求項1又は2に記載の吸水性樹脂製造装置。 【請求項4】 前記粉体流量調整排出部材が、前記粉体を一時的に貯留するホッパを含んでいる、請求項1〜3の何れか一項に記載の吸水性樹脂製造装置。」 第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要 1 取消理由の概要 当審が取消理由通知で通知した取消理由の概要は、以下に示すとおりである。 (1)取消理由1(新規性) 本件訂正前の請求項1〜4に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内または外国において、頒布された下記の甲4〜6に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 よって、本件訂正前の請求項1〜4に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 (2)取消理由2(進歩性) 本件訂正前の請求項1〜4に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲4〜6に記載された発明に基いて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、本件訂正前の請求項1〜4に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 記 ・甲第4号証 特表2015−526577号公報 ・甲第5号証 国際公開第2011/099586号 ・甲第6号証 国際公開第2010/114058号 (3)取消理由3(明確性) 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3〜4の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、下記の点で明確とはいえないから、特許法第36条第6項第2号に適合するものでない。 よって、本件訂正前の請求項3〜4に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 記 請求項3の「前記粉体流量調整排出部材によって調整される前記粉体の流量は、分級器の処理能力に基づく値である」という記載について、請求項3が引用する請求項1又は2には、「分級器」の記載はないため、請求項3の「分級器の処理能力に基づく値」とは何を意味しているのか明確であるとはいえない。 よって、本件発明3は不明確である。 また、本件発明3を引用する本件発明4も不明確である。 2 特許異議申立理由の概要 (1)申立理由1(新規性) 本件訂正前の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内または外国において、頒布された甲4及び甲5に記載された発明であり、本件訂正前の請求項1、2及び4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内または外国において、頒布された甲6に記載された発明であり、本件訂正前の請求項1〜4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内または外国において、頒布された甲10に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 よって、本件訂正前の請求項1〜4に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 (2)申立理由2(進歩性) 本件訂正前の請求項1〜4に係る発明は、本件特許の優先日前に頒布された甲1〜6、10に記載された発明及び甲1〜10に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、本件訂正前の請求項1〜4に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 (3)申立理由3(明確性) 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1〜4の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、下記の点で明確とはいえないから、特許法第36条第6項第2号に適合するものでない。 よって、本件訂正前の請求項1〜4に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 記 具体的な内容は、「第5 2(3)」で示すとおりである。 (4)申立理由4(サポート要件) 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1〜4の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、下記の点で発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。 よって、本件訂正前の請求項1〜4に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 記 具体的な内容は、「第5 2(3)」で示すとおりである。 第5 当審の判断 当審は、当審が通知した取消理由1〜3及び申立人がした申立理由1〜4によっては、いずれも、本件発明1〜4に係る特許を取り消すことはできないと判断する。 その理由は以下のとおりである。 なお、取消理由1及び取消理由2並びに申立理由1及び申立理由2のうち甲4〜6を主引用例とする理由は、甲4〜甲6を主引用例とする新規性及び進歩性の理由であるから、下記「1 取消理由について」において併せて検討する。 1 取消理由について (1)取消理由1及び取消理由2並びに申立理由1及び申立理由2のうち甲4〜6を主引用例とする理由について ア 甲4〜甲6の記載事項及び甲4〜甲6に記載された発明について (ア)甲4 甲4の請求項1には、概略、a)からe)を含むモノマー溶液を重合し、生じるポリマーゲルを乾燥させ、乾燥されたポリマーゲルを破砕し、予備粉砕し、不完全に乾燥された粒子を振動ふるいによって分離し、生じるポリマー粒子を粉砕し且つ分級することを含む吸水性ポリマー粒子の製造方法が記載され、発明の詳細な説明の段落【0069】〜【0084】には、次に、ポリマー粒子を熱により後架橋することが記載されている。 実施例においては、例1として、段落【0102】〜【0107】に、生じるポリマーゲルを通気ベルト式乾燥機上に配置し、空気/ガス混合物がポリマーゲルの周りを連続的に流れ乾燥させ、乾燥されたポリマーゲルを、歯付ロールを使用して通気ベルト式乾燥機の最後で破砕し、形成された粗いポリマー粒子を、1.5mmのギャップ幅を有するロールミルを用いて予備粉砕し、この後、不完全に乾燥された粒子を、上方の穴板は、厚さ1.3mm、開孔面積51%、および穴径14.3mmを有し、下方の穴板は、厚さ1.3mm、開孔面積51%、および穴径9.5mmを有する2つの振動ふるいのセットを用いて分離し、乾燥されたポリマーゲルを三段式のロールミルを使用して粉砕し、且つ、150〜850μmの粒径の分級物にふるい分け、表面を後架橋するため、Schugi Flexomixに、ベースポリマーを7.5t/h、表面後架橋溶液を270.0kg/hで計量供給し、ベースポリマーを表面後架橋剤溶液で被覆し、次にNARAパドル乾燥機内、190℃で45分間乾燥させ、パドル乾燥機を、圧力24bar(220℃)を有する蒸気で加熱したことが記載されている。 そうすると、甲4の実施例である例1に着目すると、甲4には以下の発明が記載されていると認められる。 「生じるポリマーゲルを通気ベルト式乾燥機上に配置し、空気/ガス混合物がポリマーゲルの周りを連続的に流れ乾燥させ、乾燥されたポリマーゲルを、歯付ロールを使用して通気ベルト式乾燥機の最後で破砕し、形成された粗いポリマー粒子を、1.5mmのギャップ幅を有するロールミルを用いて予備粉砕し、この後、不完全に乾燥された粒子を、上方の穴板は、厚さ1.3mm、開孔面積51%、および穴径14.3mmを有し、下方の穴板は、厚さ1.3mm、開孔面積51%、および穴径9.5mmを有する2つの振動ふるいのセットを用いて分離し、乾燥されたポリマーゲルを三段式のロールミルを使用して粉砕し、且つ、150〜850μmの粒径の分級物にふるい分け、表面を後架橋するため、Schugi Flexomixに、ベースポリマーを7.5t/h、表面後架橋溶液を270.0kg/hで計量供給し、ベースポリマーを表面後架橋剤溶液で被覆し、次にNARAパドル乾燥機内、190℃で45分間乾燥させ、パドル乾燥機を、圧力24bar(220℃)を有する蒸気で加熱した吸水性ポリマー粒子の製造方法」(以下「甲4発明」という。) (イ)甲5 甲5の請求項1には、「吸水性樹脂の第1分級工程と、分級後の表面架橋工程と、表面架橋後、表面架橋中、及び表面架橋前の少なくとも1つにおいて吸水性樹脂粉末への水の添加工程と、第2分級工程及び搬送工程とを順次有することを特徴とする、吸水性樹脂粉末の製造方法。」が記載され、同請求項3には、「上記第2分級工程は少なくとも吸水性樹脂粉末の非定常的凝集物を分離する工程である、請求項1又は2に記載の製造方法。」が記載され、同請求項15には、「上記搬送工程後に、第3分級工程が更に設置される、請求項1〜14の何れか1 項に記載の製造方法。」が記載され、同請求項21には、「上記搬送工程が、搬送距離として10〜1000mの空気輸送である、請求項1〜20の何れか1項に記載の製造方法。」が記載されている。 また、甲5の段落[0011]には、物性に優れた、表面架橋された吸水性樹脂粉末を、低コストで高い生産性を確保しながら効率的に得ることができる吸水性樹脂粉末の製造方法を提供することを目的とする旨の記載がされ、同[0018]に、発明を実施するための形態として、本発明に係る吸水性樹脂粉末の製造方法について図1に示す概略工程図を参照しながら詳しく説明することが記載され、同[0033]〜[0210]に、吸水性樹脂の粉末の製造方法が記載され、具体的には、同[0040]〜[0047]には、(2−1)重合工程として、吸水性樹脂の重合工程が記載され、同[0048]〜[0050]には、(2−2)ゲル解砕工程として、得られた含水ゲルを解砕し粒子状含水ゲルを得る工程が記載され、同[0051]〜[0054]には、(2−3)乾燥工程として、得られた粒子状含水ゲルを乾燥する工程が記載されている。 ここで、本件発明1との対比を主眼とすると、甲5には、請求項1を引用する請求項3を引用する請求項15を引用する請求項21を中心として、発明の詳細な説明に記載された吸水性樹脂粉末の製造方法を加味すると、以下の発明が記載されていると認められる。 「吸水性樹脂を重合する重合工程と、得られた含水ゲルを解砕し粒子状含水ゲルを得る工程と、得られた粒子状含水ゲルを乾燥する工程と、吸水性樹脂の第1分級工程と、分級後の表面架橋工程と、表面架橋後、表面架橋中、及び表面架橋前の少なくとも1つにおいて吸水性樹脂粉末への水の添加工程と、少なくとも吸水性樹脂粉末の非定常的凝集物を分離する第2分級工程及び搬送工程とを順次有する、吸水性樹脂粉末の製造方法であって、上記搬送工程後に、第3分級工程が更に設置され、上記搬送工程が、搬送距離として10〜1000mの空気輸送である吸水性樹脂粉末の製造方法」(以下「甲5発明」という。) (ウ)甲6 甲6の請求項1には、「アクリル酸(塩)を含む水溶液の重合工程、得られる含水ゲル状重合体の乾燥工程、乾燥物の粉砕工程、粉砕物の分級工程、及び、必要により分級物の表面架橋工程を含むポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の連続製造方法であって、 (a)上記乾燥工程と上記粉砕工程とが、貯蔵工程と輸送工程を含んで連結され、かつ、 (b)上記乾燥工程の終了時点から上記粉砕工程の開始時点までの乾燥物保持時間を3分以上とすることを特徴とする、粒子状吸水性樹脂の製造方法。」が記載され、実施例23として、段落[0214]〜[0216]には、「上記製造例4で得られた粒子状含水ゲル(h)を連続的に、連続通気バンド乾燥機で24分間、通気バンド乾燥した。・・・ この乾燥物(i)をフライトコンベアで輸送し、目開きが6mmの篩に投入して、目開き6mmの篩を通過しない粗大な乾燥物を連続的に分離した。・・・一方、・・・目開きが6mmの篩を通過した乾燥物(k)(重量平均粒子径(D50)は2.7mm、850μm未満の粒子径をもつ粒子は3.2重量%)を保温材で保温されたホッパーXの中で貯蔵した。・・・この乾燥物をロールミル(商品名:RM―16 株式会社浅野鉄工所製)に投入し、250kg/hrの処理速度で粉砕を行った。・・・ロールミルでの乾燥物は、80℃で投入後速やかに(5秒以内)粉砕され、ロールミルから取り出され、ロールミル粉砕物(D1)を得た。・・・ このようにして得られた粉砕物(D1)を、目開き850μmと150μmの篩で分級し、粒子径が150μm以上850μm未満の粒子状吸水性樹脂の割合(重量%)を測定した。乾燥物保持時間(11分;T1+T2+T3=8分+3分+0分)と、ロールミル粉砕物(D1)の150μm以上850μm未満の粒子径をもつ粒子の割合(重量%)との関係を下記表5および図6に示す。」ことが記載されている。 そうすると、甲6の実施例23に着目すると、甲6には以下の発明が記載されていると認められる。 「粒子状含水ゲル(h)を連続的に、連続通気バンド乾燥機で24分間、通気バンド乾燥し、この乾燥物(i)をフライトコンベアで輸送し、目開きが6mmの篩に投入して、目開き6mmの篩を通過しない粗大な乾燥物を連続的に分離し、目開きが6mmの篩を通過した乾燥物(k)(重量平均粒子径(D50)は2.7mm、850μm未満の粒子径をもつ粒子は3.2重量%)を保温材で保温されたホッパーXの中で貯蔵し、この乾燥物をロールミル(商品名:RM―16 株式会社浅野鉄工所製)に投入し、250kg/hrの処理速度で粉砕を行い、ロールミルでの乾燥物は、80℃で投入後速やかに(5秒以内)粉砕され、ロールミルから取り出され、ロールミル粉砕物(D1)を得、このようにして得られた粉砕物(D1)を、目開き850μmと150μmの篩で分級した、粒子径が150μm以上850μm未満の粒子状吸水性樹脂の製造方法」(以下「甲6発明」という。) イ 対比・判断 (ア)本件発明1について a 甲4発明 (a)対比 甲4発明の「ポリマーゲル」は、粉砕等の工程を経ることで吸水性ポリマー粒子となるから、本件発明1の「吸水性樹脂組成物」に相当する。 甲4発明の「通気ベルト式乾燥機」は、「ポリマーゲルを」「乾燥ベルト式乾燥機の最後で破砕し」「粗いポリマー粒子」を形成するから、本件発明1の「吸水性樹脂組成物を乾燥させて未分級の粉体を得る乾燥機」のうち、「吸水性樹脂組成物を乾燥させて粉体を得る乾燥機」に限り一致する。 甲4発明の「表面を後架橋するため、Schugi Flexomixに、ベースポリマーを7.5t/h」「で計量供給し」は、ベースポリマーである粉体を予め定められた流量である7.5t/hで計量供給しており、何らかの計量供給する部材があることは明らかであるから、この計量供給する部材は、本件発明1の「粉体の流量を予め定める流量となるように調整する粉体流量調整排出部材」に相当する。 甲4発明は「ポリマーゲルを通気ベルト式乾燥機上に配置し」「乾燥させ」「乾燥されたポリマーゲルを」「通気ベルト式乾燥機の最後で破砕し」「形成された粗いポリマー粒子を」「予備粉砕し」「不完全に乾燥された粒子を」「2つの振動ふるいのセットを用いて分離し」「乾燥されたポリマーゲルを」「粉砕し」「ふるい分け」「表面を後架橋するため、Schugi Flexomixに、ベースポリマーを7.5t/h」「で計量供給」しているから、「通気ベルト乾燥機」と「計量供給」する間には、何らかのポリマー粒子を流路を形成する粉体流路部材があることは明らかである。よって、甲4発明の「ポリマーゲルを通気ベルト式乾燥機上に配置し」「乾燥させ」「乾燥されたポリマーゲルを」「通気ベルト式乾燥機の最後で破砕し」「形成された粗いポリマー粒子を」「予備粉砕し」「不完全に乾燥された粒子を」「2つの振動ふるいのセットを用いて分離し」「乾燥されたポリマーゲルを」「粉砕し」「ふるい分け」「表面を後架橋するため、Schugi Flexomixに、ベースポリマーを7.5t/h」「で計量供給」は、本件発明1の「前記乾燥機と前記粉体流量調整排出部材とを繋ぐ、前記粉体の流路を構成する粉体流路部材」に相当する。 甲4発明の「通気ベルト式乾燥機の最後で破砕し、形成された粗いポリマー粒子を」「ロールミルを用いて予備粉砕し」「不完全に乾燥された粒子を」「2つの振動ふるいのセットを用いて分離し」は、何らかの流路を流過していることは明らかであり、また、甲4発明の「上方の穴板」及び「下方の穴板」は、穴径が、それぞれ「14.3mm」及び「9.5mm」であり、予め大きさが定められており、この径より大きな粒子を分離し捕集するから、甲4発明の「振動ふるい」に「セット」された「上方の穴板」及び「下方の穴板」は、本件発明1の「前記流路を流過する前記未分級の粉体のうち、予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する捕集体(但し、振動ふるいを除く)」のうち、「前記流路を流過する前記粉体のうち、予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する捕集体」に限り一致する。 甲4発明は、吸水性ポリマー粒子の製造方法に係る発明であるが、上記したとおり、吸水性ポリマー粒子を製造するに当たり製造装置が特定されているから、本件発明1の吸水性樹脂製造装置に相当するといえる。 そうすると、本件発明1と甲4発明とは、 「吸水性樹脂組成物を乾燥させて粉体を得る乾燥機と、 前記粉体の流量を予め定める流量となるように調整する粉体流量調整排出部材と、 前記乾燥機と前記粉体流量調整排出部材とを繋ぐ、前記粉体の流路を構成する粉体流路部材と、 前記流路を流過する前記粉体のうち、予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する捕集体と、 を有する吸水性樹脂製造装置。」で一致し、次の点で一応相違する。 (相違点4−1)吸水性樹脂組成物を乾燥機で乾燥させて得られる粉体が、本件発明1では「未分級」であるのに対し、甲4発明では明らかでない点 (相違点4−2)流路を流過する粉体が、本件発明1では「未分級」であるのに対し、甲4発明では明らかでない点 (相違点4−3)捕集体が、本件発明1では「振動ふるいを除く」としているのに対し、甲4発明では、「上方の穴板」及び「下方の穴板」が「振動ふるい」にセットされている点 (相違点4−4)本件発明1では、「前記粉体流量調整排出部材の下流に設けられた分級器」を有し、「前記粉体流量調整排出部材から前記分級器にかけて、前記粉体を粉砕工程を行わずに流過するように構成されている」のに対し、甲4発明では、粉体流量調整排出部材の下流に分級器を有しておらず、粉体流量調整排出部材から前記分級器にかけて、粉体を粉砕工程を行わずに流過することが特定されていない点 (b)判断 事案に鑑み、相違点4−3から検討する。 本件発明1では、捕集体が「振動ふるいを除く」としているのに対し、甲4発明では、「上方の穴板」及び「下方の穴板」が「振動ふるい」にセットされているので、相違点4−3は実質的な相違点である。 そこで、この相違点4−3の容易想到性について検討すると、甲4には、不完全に乾燥されたポリマー粒子を連続的に分離するための改善された方法を提供することを課題として(段落【0013】を参照)、上記ア(ア)で述べたように、その請求項1に、概略、a)からe)を含むモノマー溶液を重合し、生じるポリマーゲルを乾燥させ、乾燥されたポリマーゲルを破砕し、予備粉砕し、不完全に乾燥された粒子を振動ふるいによって分離し、生じるポリマー粒子を粉砕し且つ分級することを含む吸水性ポリマー粒子の製造方法が記載されており、粒子を分離する振動ふるいに着目すると、甲4発明である例1では、振動ふるいにセットされた「上方の穴板」及び「下方の穴板」を使用しているといえる。 そうすると、甲4発明においては、「上方の穴板」及び「下方の穴板」が振動ふるいにセットされることは必須の技術的事項であるといえ、甲4発明において「上方の穴板」及び「下方の穴板」が「振動ふるい」にセットされていることを、振動ふるいにセットしないこととし、相違点4−3を本件発明1のように構成することに動機づけがあるとはいえない。 そして、効果について検討しても、本件発明1は、粉体流量調整排出部剤に粉体塊状物が流入することを防止することができ、これにより、粉体塊状物の、粉体流量調整排出部材の駆動部への噛み込み等を防止して駆動負荷が増大することを抑制し、粉体流量調整排出部材の駆動が不安定になったり停止されることを防止することができ、吸水性樹脂の生産効率の低下を抑制することができるという効果を奏することが、実施例において具体的なデータとともに記載されている(段落【0016】、【0128】〜【0130】を参照)。 一方、甲4には、不完全に乾燥されたポリマー粒子を連続的に分離するための改善された方法を提供することを課題として、そして、この課題を解決したという効果を奏することが記載されているにとどまるから、本件発明1の上記効果は、当業者の予測を超えた作用効果である。 したがって、相違点4−3は容易想到とはいえない。 そうすると、相違点4−1〜4−2及び4−4〜4−5について検討するまでもなく、本件発明1は、甲4発明、甲4及び他の証拠に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (c)申立人の主張の検討 申立人は、令和3年10月7日に提出した意見書において、穴板を使用する分級手段として振動ふるいに限定されるとは甲4には記載されていない旨を主張する(意見書第5頁最下行〜第6頁13行)。 しかしながら、上記(b)で述べたとおり、甲4には、甲4発明において「上方の穴板」及び「下方の穴板」が振動ふるいにセットされることは、必須の技術的事項であるといえるから、上記申立人の主張は採用できない。 (d)小括 本件発明1は、甲4に記載された発明ではなく、また、甲4発明、甲4及び他の証拠に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 b 甲5発明 (a)対比 甲5発明の「吸水性樹脂」については、甲5の段落[0020]には、「吸水性樹脂は・・・重合体である形態に限定されず、上記性能を維持する範囲内において、添加剤等を含んでもよく、少量の添加剤を含有する吸水性樹脂組成物であっても、本発明では吸水性樹脂と総称する。」と記載されているから、本件発明1の「吸水性樹脂組成物」に相当する。 甲5発明の「得られた粒子状含水ゲルを乾燥する工程」は、「重合工程」により「重合」された「吸水性樹脂」である「粒子状」に解砕した「含水ゲル」を「乾燥する工程」であり、乾燥機があることは明らかであるから、本件発明1の「吸水性樹脂組成物を乾燥させて未分級の粉体を得る乾燥機」のうち、「吸水性樹脂組成物を乾燥させて粉体を得る乾燥機」に限り一致する。 甲5発明の「吸水性樹脂粉末の非定常的凝集物を分離する第2分級工程及び搬送工程」のうちの「搬送工程が、搬送距離として10〜1000mの空気輸送である」ことは、装置に応じて空気輸送する量が予め定められていることは明らかであり、空気搬送するための何らかの部材があることは明らかであるから、本件発明1の「粉体の流量を予め定める流量となるように調整する粉体流量調整排出部材」に相当する。 甲5発明は「得られた粒子状含水ゲルを乾燥する工程と、吸水性樹脂の第1分級工程と、分級後の表面架橋工程と、表面架橋後、表面架橋中、及び表面架橋前の少なくとも1つにおいて吸水性樹脂粉末への水の添加工程と、少なくとも吸水性樹脂粉末の非定常的凝集物を分離する第2分級工程及び搬送工程とを順次有」し、「搬送工程が、搬送距離として10〜1000mの空気輸送である」ことからすれば、「乾燥する工程」のために明らかに有する乾燥機と「搬送工程」が「空気輸送」とするための何らかの部材との間には、何らかのポリマー粒子を流路を形成する粉体流路部材があることは明らかである。よって、甲5発明の「得られた粒子状含水ゲルを乾燥する工程と、吸水性樹脂の第1分級工程と、分級後の表面架橋工程と、表面架橋後、表面架橋中、及び表面架橋前の少なくとも1つにおいて吸水性樹脂粉末への水の添加工程と、少なくとも吸水性樹脂粉末の非定常的凝集物を分離する第2分級工程及び搬送工程とを順次有」し、「搬送工程が、搬送距離として10〜1000mの空気輸送である」ことは、本件発明1の「前記乾燥機と前記粉体流量調整排出部材とを繋ぐ、前記粉体の流路を構成する粉体流路部材」に相当する。 甲5発明の「吸水性樹脂粉末の非定常的凝集物を分離する第2分級工程」は、何らかの流路を流過していることは明らかであり、また、甲5発明の「第2分級工程」は、何らかの分級するための装置があることは明らかであり、吸水性樹脂粉末の非定常的凝集物を捕集する物であるから、甲5発明の「吸水性樹脂粉末の非定常的凝集物を分離する第2分級工程」は、本件発明1の「前記流路を流過する前記未分級の粉体のうち、予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する捕集体(但し、振動ふるいを除く)」のうち、「前記流路を流過する前記粉体のうち、予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する捕集体」に限り一致する。 甲5発明の「搬送工程後に、第3分級工程が更に設置され」は、本件発明1の「粉体流量調整排出部材の下流に設けられた分級器」に相当する。 甲5発明は、搬送工程とその後に設置される第3分級工程の間に粉砕工程は行われていないから、甲5発明の「搬送工程後に、第3分級工程が更に設置され」は、本件発明1の「前記粉体流量調整排出部材から前記分級器にかけて、前記粉体を粉砕工程を行わずに流過するように構成されている」に相当する。 甲5発明は、吸水性樹脂粉末の製造方法に係る発明であるが、上記したとおり、吸水性樹脂粉末を製造するに当たり製造装置が存在することは明らかであるから、本件発明1の吸水性樹脂製造装置に相当するといえる。 そうすると、本件発明1と甲5発明とは、 「吸水性樹脂組成物を乾燥させて粉体を得る乾燥機と、 前記粉体の流量を予め定める流量となるように調整する粉体流量調整排出部材と、 前記乾燥機と前記粉体流量調整排出部材とを繋ぐ、前記粉体の流路を構成する粉体流路部材と、 前記流路を流過する前記粉体のうち、予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する捕集体と、 前記粉体流量調整排出部材の下流に設けられた分級器と、 前記粉体流量調整排出部材から前記分級器にかけて、前記粉体を粉砕工程を行わずに流過するように構成されていることを特徴とする、吸水性樹脂製造装置」で一致し、次の点で一応相違する。 (相違点5−1)吸水性樹脂組成物を乾燥機で乾燥させて得られる粉体が、本件発明1では「未分級」であるとしているのに対し、甲5発明では「乾燥する工程」の後に第1分級工程を有する点 (相違点5−2)流路を流過する粉体が、本件発明1では「未分級」であるとしているのに対し、甲5発明では第1分級工程を有する点 (相違点5−3)捕集体が、本件発明1では「振動ふるいを除く」としているのに対し、甲5発明では、第2分級工程と特定されているだけであり、振動ふるいを除いているのか否かが明らかでない点 (b)判断 相違点5−1から検討する。 吸水性樹脂組成物を乾燥機で乾燥させて得られる粉体が、本件発明1では「未分級」であるとしているのに対し、甲5発明では「乾燥する工程」の後に第1分級工程を有しており分級されているから、相違点5−1は実質的な相違点である。 そこで、この相違点5−1の容易想到性について検討すると、甲5には、製造の安定化や物性面での劣化を防き、長時間の安定運転が可能であり、物性も安定及び/又は向上する、所定量の水を添加又は含有させた、微粉の少ない高物性の吸水性樹脂粉末の製造方法を提供することを課題として(段落[0012]を参照)、その請求の範囲の請求項1には、「吸水性樹脂の第1分級工程と、分級後の表面架橋工程と、表面架橋後、表面架橋中、及び表面架橋前の少なくとも1つにおいて吸水性樹脂粉末への水の添加工程と、第2分級工程及び搬送工程とを順次有することを特徴とする、吸水性樹脂粉末の製造方法。」が記載されており、これにより、大規模な工業的スケールでの連続生産において、表面架橋後の加圧下吸水倍率や通液性等の物性を向上させ、かつ、物性の振れを小さくすることができるという効果がデータとともに記載されている(段落[0015]、[0220]〜[0246]に記載の実施例を参照)。 以上の記載からすれば、甲5には、上記課題を解決するために、吸水性樹脂に対してまず第1分級工程を行うことを前提として、その後に、吸水性粉末へ水の添加工程を行い、第2分級工程及び搬送工程を行う吸水性樹脂粉末の製造方法が記載されているといえ、この吸水性樹脂粉末の製造方法において、第1分級工程を省く動機付けがあるとはいえない。 そして、効果について検討しても、本件発明1は、上記a(b)で述べた効果を奏するものである。一方、甲5には、製造の安定化や物性面での劣化を防き、長時間の安定運転が可能であり、物性も安定及び/又は向上する、所定量の水を添加又は含有させた、微粉の少ない高物性の吸水性樹脂粉末の製造方法を提供することを課題として、そして、この課題を解決したという効果を奏することが記載されているにとどまるから、本件発明1の上記効果は、当業者の予測を超えた作用効果である。 したがって、相違点5−1は容易想到とはいえない 。 そうすると、相違点5−2及び5−3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲5発明、甲5及び他の証拠に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (c)申立人の主張の検討 申立人は、令和3年10月7日に提出した意見書において、甲5の段落[0056]によれば、第1分級工程は好ましくはあるが必須な構成であるとはいえないから、甲5発明において第1分級工程を行わないことは容易に想到し得るという旨を主張する(意見書第6頁第9行〜第7頁第5行)。 そこで、この主張について検討すると、確かに、甲5の段落[0056]には、申立人が指摘する記載はあるが、上記(b)で述べたように、甲5の記載全体をみれば、第1分級工程を省く動機付けがあるとはいえない。そして、甲5には、第1分級工程を省くことにより、本件発明1で奏される、上記a(b)で述べた効果を示唆する記載はないから、相違点5−1を本件発明1のように構成することが容易に想到できるとはいえず、申立人の主張は採用できない。 (d)小括 本件発明1は、甲5に記載された発明ではなく、また、甲5発明、甲5及び他の証拠に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 c 甲6発明 (a)対比 甲6発明の「粒子状含水ゲル」は、乾燥、粉砕等の工程を経ることで粒子状吸水性樹脂となるから、本件発明1の「吸水性樹脂組成物」に相当する。 甲6発明の「連続通気バンド乾燥機」は、「粒子状含水ゲル」を「通気バンド乾燥」し、「篩」で「粗大な乾燥物を連続的に分離」しており、粉体を得ているといえるので、本件発明1の「吸水性樹脂組成物を乾燥させて未分級の粉体を得る乾燥機」のうち、「吸水性樹脂組成物を乾燥させて粉体を得る乾燥機」に限り一致する。 甲6発明の「ホッパーX」は、「目開きが6mmの篩を通過した乾燥物」を「貯蔵し」「ロールミルに投入し」ており、ロールミルに投入する際には、予め定める流量となる量に調整していることは明らかであるから、本件発明1の「粉体の流量を予め定める流量となるように調整する粉体流量調整排出部材」に相当する。 甲6発明は「連続通気バンド乾燥機で」「通気バンド乾燥し、この乾燥物」「をフライトコンベアで輸送し、目開きが6mmの篩に投入して」「目開きが6mmの篩を通過した乾燥物」を「ホッパーXの中で貯蔵し」ているから、「連続通気バンド乾燥機」と「ホッパーX」との間には、何らかのポリマー粒子を流路を形成する粉体流路部材があることは明らかである。よって、甲6発明の「連続通気バンド乾燥機で」「通気バンド乾燥し、この乾燥物」「をフライトコンベアで輸送し、目開きが6mmの篩に投入して」「目開きが6mmの篩を通過した乾燥物」「ホッパーXの中で貯蔵し」は、本件発明1の「前記乾燥機と前記粉体流量調整排出部材とを繋ぐ、前記粉体の流路を構成する粉体流路部材」に相当する。 甲6発明の「連続通気バンド乾燥機で」「通気バンド乾燥し、この乾燥物」「をフライトコンベアで輸送し、目開きが6mmの篩に投入して」は、何らかの流路を流過していることは明らかであり、また、本件発明1の「目開きが6mmの篩」は、予め大きさが定められており、この径より大きな粒子を分離し捕集するから、甲6発明の「目開きが6mmの篩」は、本件発明1の「前記流路を流過する前記未分級の粉体のうち、予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する捕集体(但し、振動ふるいを除く)」のうち、「前記流路を流過する前記粉体のうち、予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する捕集体」に限り一致する。 甲6発明の「ホッパーX」の後に設けられた「目開き850μmと150μmの篩」は、本件発明1の粉体流量調整排出部材の下流に設けられた分級器」に相当する。 甲6発明は、粒子状吸水性樹脂の製造方法に係る発明であるが、上記したとおり、粒子状吸水性樹脂を製造するに当たり製造装置が特定されているから、本件発明1の吸水性樹脂製造装置に相当するといえる。 そうすると、本件発明1と甲6発明とは、 「吸水性樹脂組成物を乾燥させて粉体を得る乾燥機と、 前記粉体の流量を予め定める流量となるように調整する粉体流量調整排出部材と、 前記乾燥機と前記粉体流量調整排出部材とを繋ぐ、前記粉体の流路を構成する粉体流路部材と、 前記流路を流過する前記粉体のうち、予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する捕集体と、 前記粉体流量調整排出部材の下流に設けられた分級器と、 を有する吸水性樹脂製造装置」で一致し、次の点で一応相違する。 (相違点6−1)吸水性樹脂組成物を乾燥機で乾燥させて得られる粉体が、本件発明1では「未分級」であるとしているのに対し、甲6発明では明らかでない点 (相違点6−2)流路を流過する粉体が、本件発明1では「未分級」であるとしているのに対し、甲6発明では明らかでない点 (相違点6−3)捕集体が、本件発明1では「振動ふるいを除く」としているのに対し、甲6発明では、目開きが6mmの篩と特定されているだけであり、振動ふるいを除いているのか否かが明らかでない点 (相違点6−4)本件発明1では、「前記粉体流量調整排出部材から前記分級器にかけて、前記粉体を粉砕工程を行わずに流過するように構成されている」のに対し、甲6発明では、ホッパーXから目開き850μmと150μmの篩までの間で乾燥物をロールミルで粉砕している点 (b)判断 事案に鑑み、相違点6−4から検討する。 本件発明1では、「前記粉体流量調整排出部材から前記分級器にかけて、前記粉体を粉砕工程を行わず」としているのに対し、甲6発明では、ホッパーXから目開き850μmと150μmの篩までの間で乾燥物をロールミルで粉砕しているから、相違点6−4は実質的な相違点である。 そこで、この相違点6−4の容易想到性について検討すると、甲6には、物性の低下なく、より簡便に吸水性樹脂の粒子径を本質的に制御できる吸水性樹脂の製造方法を提供することを課題として(段落[0011]を参照)、上記ア(ウ)で述べたように、その請求項1に「アクリル酸(塩)を含む水溶液の重合工程、得られる含水ゲル状重合体の乾燥工程、乾燥物の粉砕工程、粉砕物の分級工程、及び、必要により分級物の表面架橋工程を含むポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の連続製造方法であって、 (a)上記乾燥工程と上記粉砕工程とが、貯蔵工程と輸送工程を含んで連結され、かつ、 (b)上記乾燥工程の終了時点から上記粉砕工程の開始時点までの乾燥物保持時間を3分以上とすることを特徴とする、粒子状吸水性樹脂の製造方法。」が記載され、請求項1に記載されたポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の連続製造方法は、含水ゲル状重合体の乾燥工程、貯蔵工程、輸送工程、粉砕工程の順番で含む連続製造方法であるといえ、この点について甲6発明である実施例23では、「ホッパーXの中で貯蔵し、」「この乾燥物をロールミル」「に投入し」「粉砕を行」うといえる。 そうすると、甲6発明においては、「ホッパーXの中で貯蔵し、」「この乾燥物をロールミル」「に投入し」「粉砕を行」うことは必須の技術的事項であるといえ、甲6発明において粉砕を行わないこととし、相違点6−4を本件発明1のように構成することに動機づけがあるとはいえない。 そして、効果について検討しても、本件発明1は、上記a(b)で述べた効果を奏するものといえる。一方、甲6には、物性の低下なく、より簡便に吸水性樹脂の粒子径を本質的に制御できる吸水性樹脂の製造方法を提供することを課題として、そして、この課題を解決したという効果を奏することが記載されているにとどまるから、本件発明1の上記効果は、当業者の予測を超えた作用効果である。 したがって、相違点6−4は容易想到とはいえない 。 そうすると、相違点6−1〜6−3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲6発明、甲6及び他の証拠に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (c)小括 本件発明1は、甲6に記載された発明ではなく、また、甲6発明、甲6及び他の証拠に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (イ)本件発明2について a 本件発明2と本件発明1との違いについて 本件発明2と本件発明1とを対比すると、本件発明2は、以下の点で本件発明1と異なる。 (a)本件発明1が「吸水性樹脂組成物を乾燥させて未分級の粉体を得る乾燥機と」と特定されているのに対して、本件発明2は「吸水性樹脂組成物を乾燥させて粉体を得る乾燥機と」と特定され、吸水性樹脂組成物を乾燥機で乾燥させて得られる粉体が「未分級」であるという特定がされていない。 (b)本件発明1が「前記流路を流過する前記未分級の粉体」と特定されているのに対し、本件発明2は「前記流路を流過する前記粉体」と特定され、流路を流過する粉体が「未分級」であるという特定がされていない。 (c)本件発明1が「捕集体(但し、振動ふるいを除く)」と特定されているのに対し、本件発明2は「網型の形状を有する捕集体」と特定され、振動ふるいを除くという特定がされていない。 (d)本件発明1が「前記粉体流量調整排出部材から前記分級器にかけて、前記粉体を粉砕工程を行わずに流過するように構成されていること」が特定されているのに対し、本件発明2はこの特定がされていない一方、「前記捕集体が、前記粉体の流路において固定的に配置されており且つその網面が捕集した前記粉体塊状物を前記網面上で移動可能とするように水平に対して傾斜して配置されていること」が特定されている。 以下では、上記で述べた本件発明2と本件発明1との違いを踏まえ、上記(ア)a(a)〜c(c)で述べた本件発明1と甲4発明〜甲6発明との対比を参考にして、本件発明2と甲4発明〜甲6発明とを対比する。 b 対比 (a)甲4発明との対比 甲4発明の「通気ベルト式乾燥機の最後で破砕し、形成された粗いポリマー粒子を」「ロールミルを用いて予備粉砕し」「不完全に乾燥された粒子を」「2つの振動ふるいのセットを用いて分離し」は、何らかの流路を流過していることは明らかであり、また、甲4発明の「上方の穴板」及び「下方の穴板」は、穴径が、それぞれ「14.3mm」及び「9.5mm」であり、予め大きさが定められており、この径より大きな粒子を分離し捕集するから、甲4発明の「上方の穴板」及び「下方の穴板」は、本件発明2の「前記流路を流過する前記粉体のうち、予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する網型の形状を有する捕集体」のうち、「前記流路を流過する前記粉体のうち、予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する捕集体」に限り一致する。 ここで、上記aで述べた本件発明2と本件発明1との違いを踏まえ、上記(ア)a(a)で述べた本件発明1と甲4発明との対比を参考にすると、本件発明2と甲4発明とは、 「吸水性樹脂組成物を乾燥させて粉体を得る乾燥機と、 前記粉体の流量を予め定める流量となるように調整する粉体流量調整排出部材と、 前記乾燥機と前記粉体流量調整排出部材とを繋ぐ、前記粉体の流路を構成する粉体流路部材と、 前記流路を流過する前記粉体のうち、予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する捕集体と、 を有する吸水性樹脂製造装置」で一致し、次の点で一応相違する。 (相違点4−5)捕集体が、本件発明2では「網型の形状を有する」のに対し、甲4発明では網型の形状を有するか否かが明らかでない点 (相違点4−6)本件発明2では、「前記粉体流量調整排出部材の下流に設けられた分級器」を有するのに対し、甲4発明では、粉体流量調整排出部材の下流に分級器を有さない点 (相違点4−7)本件発明2では、「前記捕集体が、前記粉体の流路において固定的に配置されており且つその網面が捕集した前記粉体塊状物を前記網面上で移動可能とするように水平に対して傾斜して配置されている」のに対し、甲4発明では明らかでない点 (b)甲5発明との対比 甲5発明の「吸水性樹脂粉末の非定常的凝集物を分離する第2分級工程」は、何らかの流路を流過していることは明らかであり、また、甲5発明の「第2分級工程」は、何らかの分級するための装置があることは明らかであり、吸水性樹脂粉末の非定常的凝集物を捕集する物であるから、甲5発明の「吸水性樹脂粉末の非定常的凝集物を分離する第2分級工程」は、本件発明2の「前記流路を流過する前記粉体のうち、予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する網型の形状を有する捕集体」のうち、「前記流路を流過する前記粉体のうち、予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する捕集体」に限り一致する。 ここで、上記aで述べた本件発明2と本件発明1との違いを踏まえ、上記(ア)a(b)で述べた本件発明1と甲5発明との対比を参考にすると、本件発明2と甲5発明とは、 「吸水性樹脂組成物を乾燥させて粉体を得る乾燥機と、 前記粉体の流量を予め定める流量となるように調整する粉体流量調整排出部材と、 前記乾燥機と前記粉体流量調整排出部材とを繋ぐ、前記粉体の流路を構成する粉体流路部材と、 前記流路を流過する前記粉体のうち、予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する捕集体と、 前記粉体流量調整排出部材の下流に設けられた分級器と、 を有する吸水性樹脂製造装置」で一致し、次の点で一応相違する。 (相違点5−4)捕集体が、本件発明2では「網型の形状を有する」のに対し、甲5発明では網型の形状を有するか否かが明らかでない点 (相違点5−5)本件発明2では、「前記捕集体が、前記粉体の流路において固定的に配置されており且つその網面が捕集した前記粉体塊状物を前記網面上で移動可能とするように水平に対して傾斜して配置されている」のに対し、甲5発明では明らかでない点 (c)甲6発明との対比 甲6発明の「連続通気バンド乾燥機で」「通気バンド乾燥し、この乾燥物」「をフライトコンベアで輸送し、目開きが6mmの篩に投入して」は、何らかの流路を流過していることは明らかであり、また、本件発明1の「目開きが6mmの篩」は、予め大きさが定められており、この径より大きな粒子を分離し捕集するから、甲6発明の「目開きが6mmの篩」は、本件発明2の「前記流路を流過する前記粉体のうち、予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する網型の形状を有する捕集体」のうち、「前記流路を流過する前記粉体のうち、予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する捕集体」に限り一致する。 ここで、上記aで述べた本件発明2と本件発明1との違いを踏まえ、上記(ア)a(c)で述べた本件発明1と甲6発明との対比を参考にすると、本件発明2と甲6発明とは、 「吸水性樹脂組成物を乾燥させて粉体を得る乾燥機と、 前記粉体の流量を予め定める流量となるように調整する粉体流量調整排出部材と、 前記乾燥機と前記粉体流量調整排出部材とを繋ぐ、前記粉体の流路を構成する粉体流路部材と、 前記流路を流過する前記粉体のうち、予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する捕集体と、 前記粉体流量調整排出部材の下流に設けられた分級器と、 を有する吸水性樹脂製造装置」で一致し、次の点で一応相違する。 (相違点6−5)捕集体が、本件発明2では「網型の形状を有する」のに対し、甲6発明では網型の形状を有するか否かが明らかでない点 (相違点6−6)本件発明2では、「前記捕集体が、前記粉体の流路において固定的に配置されており且つその網面が捕集した前記粉体塊状物を前記網面上で移動可能とするように水平に対して傾斜して配置されている」のに対し、甲6発明では明らかでない点 c 判断 本件発明2と甲4発明〜甲6発明との相違点を判断するに当たり、相違点4−7、相違点5−5及び相違点6−6は同じであるから、事案に鑑みこれらの相違点を併せてはじめに判断する。 (a)同一性について i 甲4発明の「上方の穴板」及び「下方の穴板」は、「振動ふるい」にセットされており、ふるいを振動させることにより粉体を分級することは明らかであることからすると、粉体流路部材に固定されていないことは明らかであり、また、「上方の穴板」及び「下方の穴板」が水平に対して傾斜して配置されているのかも明らかでないから、相違点4−7は実質的な相違点である。 したがって、本件発明2は甲4発明ではない。 ii 甲5の[0166]〜[0181]の記載をみても、甲5発明の第2分級工程に使用する分級するための装置は、粉体流路部材に固定されていることが明らかでないから、相違点5−5は実質的な相違点である。 したがって、本件発明2は甲5発明ではない。 iii 甲6の[0115]〜[0117]の記載をみても、甲6発明における目開きが6mmのふるいが粉体流路部材に固定されていることが明らかでなく、また、水平に対して傾斜して配置されているのかも明らかでないから、相違点6−6は実質的な相違点である。 したがって、本件発明2は甲6発明ではない。 (b)容易想到性について 本件発明2の捕集体に相当する部材について、甲4には、振動ふるいと記載され、粉体流路部材に固定されていないことは明らかであり、甲5の[0166]〜[0181]には、粉体流路部材に固定することの明示はなく、逆に、同[0181]には、粉体流路部材に固定されていないことは明らかである揺動式の分級装置が好ましいことが記載され、また、甲6の[0115]〜[0117]には、粉体流路部材に固定することの明示はなく、逆に、同[0117]には、粉体流路部材に固定されていないことは明らかである篩分け装置を典型的には振動させることが記載されていることからすれば、捕集体が、粉体の流路において固定的に配置されることが動機づけられるとはいえない。 また、上記(ア)のa(b)、b(b)及びc(b)で述べたとおり、本件発明2は、予測を超えた作用効果を奏するものであるといえる。 したがって、相違点4−7、5−5及び6−6は容易想到とはいえない 。 そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲4発明、甲5発明又は甲6発明及び甲4〜甲6に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 d 申立人の主張の検討 申立人は、令和3年10月7日に提出した意見書において、甲5の[0062]には、篩分級のための装置として固定された格子が記載されている旨を主張する(意見書第10頁第6〜22行)。 そこで、甲5の記載をみてみるが、ここには種々の分級装置が記載されているなかで、固定された格子が例示されているのであって、例示された分級装置から固定された格子を選択する動機づけがあるとはいえず、また、上記(ア)のa(b)、b(b)及びc(b)で述べたとおり、本件発明2は、予測を超えた作用効果を奏するものであるといえる。よって、申立人の主張は採用できない。 e 小括 本件発明2は、甲4〜甲6に記載された発明ではなく、また、甲4〜甲6に記載された発明及び甲4〜甲6に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (ウ)本件発明3及び4について 本件発明3〜4は、本件発明1または2を直接的又は間接的に引用して限定した発明であるから、本件発明3〜4は、上記(ア)及び(イ)で示した理由と同じ理由により、甲4〜6に記載された発明であるといえず、また、甲4〜6に記載された発明、甲4〜6及び他の証拠に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 ウ 取消理由1及び取消理由2並びに申立理由1及び申立理由2のうち甲4〜6を主引用例とする理由についてのまとめ 以上のとおりであるから、取消理由1及び取消理由2並びに申立理由1及び申立理由2のうち甲4〜6を主引用例とする理由では、本件発明1〜4に係る特許を取り消すことはできない。 (2)取消理由3について 取消理由3は、上記「第4 1(3)」で示したとおりであり、概略、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3の「前記粉体流量調整排出部材によって調整される前記粉体の流量は、分級器の処理能力に基づく値である」という記載について、この請求項3が引用する本件訂正前の請求項1又は2には、「分級器」の記載はないため、この請求項3の「分級器の処理能力に基づく値」とは何を意味しているのか明確であるとはいえない、というものである。 この点について、本件訂正により、請求項1及び2に「前記粉体流量調整排出部材の下流に設けられた分級器と、を有し、」という記載が加入され、請求項3の「分級器の処理能力に基づく値」の技術的な意味が明確となったので、上記取消理由3が解消したことは明らかとなった。 よって、取消理由3によっては、本件発明3及び4の特許を取り消すことはできない。 2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立人がした申立理由について (1)申立理由1(新規性)及び申立理由2(進歩性)について 申立人は、甲1〜甲6、甲10を主引用例として、申立理由1(新規性)及び申立理由2(進歩性)の主張をしている。 上記1(1)において、甲4〜6を主引用例とする申立理由1(新規性)及び申立理由2(進歩性)についての判断は終えたので、ここでは、甲1〜甲3についての申立理由2(進歩性)及び甲10についての申立理由1(新規性)及び申立理由2(進歩性)について検討する。 ア 本件特許に係る出願が分割出願の要件を満足するか否かについて 申立人は、本件特許出願は分割出願であるところ、本件特許は、捕集体の設置位置を規定していないから、原出願の分割直前の明細書等に記載された事項の範囲内であるとはいえず、原出願の時にしたものとみなされない。よって、本件特許の新規性及び進歩性の判断基準日は分割出願の日である令和2年3月2日である、と主張し、原出願の公開公報である甲10(国際公開日:2016年9月1日)を引用して、新規性及び進歩性についての主張をする。 そこで、まず、本件特許出願が分割要件を満たすか否かを検討する。 本件特許の請求項1〜4に係る発明は、上記「第3」に記載した特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定される吸水性樹脂製造装置の発明であって、概略、乾燥機と、粉体流量調整排出部材と、乾燥機と粉体流量調整排出部剤とを繋ぐ粉体流路部材と、捕集体と粉体流量調整排出部材の下流に設けられた分級器を有するものであり、申立人が主張する捕集体については、流路を通過する大きな粉体塊状物を捕集することからすれば、捕集体は粉体流路部材に存在することは明らかである。 一方、原出願の分割直前の請求の範囲の請求項1には、「前記粉体流路部材内に設けられ、該粉体流路部材内を流過する前記吸水性樹脂の粉体の、予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する捕集体」と記載されているから、捕集体は粉体流路部材に設けられることが記載されているといえる。 そうすると、本件特許の請求項1〜4に係る発明は原出願の分割直前の明細書等に記載された事項の範囲内であるといえ、分割出願の要件を満足するといえる。 イ 甲10を主引用例とする新規性及び進歩性の主張について 以上のとおりであるので、本件特許に係る出願は、原出願の時にしたものとみなされ、甲10は公知文献とはいえないから、甲10を主引用例とする申立人の主張は採用できない。 ウ 甲1〜甲3の記載事項及び甲1〜甲3に記載された発明について (ア)甲1 甲1の請求項1には、「含水ゲル状架橋重合体を乾燥物とする乾燥工程と、該乾燥物を粉砕する粉砕工程とを有する吸水性樹脂の製造方法において、 上記粉砕工程前あるいは粉砕工程中に行われる、乾燥物に含まれる含水ゲル状架橋重合体の未乾燥物を分離する分離工程を有することを特徴とする吸水性樹脂の製造方法。」が記載され、乾燥工程、粉砕工程及び分離工程には機器が存在することは明らかであることからすると、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。 「含水ゲル状架橋重合体を乾燥させる乾燥機と、乾燥物を粉砕する粉砕機とを有する吸水性樹脂の製造装置において、 上記粉砕機の前あるいは粉砕機中にて、乾燥物に含まれる含水ゲル状架橋重合体の未乾燥物を分離する分離機を有することを特徴とする吸水性樹脂の製造装置。」(以下「甲1発明」という。) (イ)甲2 甲2の請求項1には、「ヒドロゲルの乾燥法において、順次に次のプロセス: a)接触−又は対流−乾燥によるヒドロゲルの乾燥、 b)このヒドロゲルの前粉砕、 c)前粉砕されたヒドロゲルの分塊−又は破砕ロールミルを用いる磨砕、 d)湿った弾性ヒドロゲル粒子の分離及び e)湿った弾性ヒドロゲル粒子の後乾燥 を実施することを特徴とする、ヒドロゲルの乾燥法。」が記載され、乾燥、粉砕、磨砕及び分離の工程には、機器が存在することは明らかであることからすると、甲2には、以下の発明が記載されていると認められる。 「ヒドロゲルの乾燥装置において、順次に次の機器: a)接触−又は対流−乾燥によってヒドロゲルを乾燥する乾燥機、 b)このヒドロゲルを前粉砕する粉砕機、 c)前粉砕されたヒドロゲルを分塊する−又は破砕ロールミルを用いる磨砕機、 d)湿った弾性ヒドロゲル粒子を分離する分離機及び e)湿った弾性ヒドロゲル粒子を後乾燥する乾燥機 を有することを特徴とする、ヒドロゲルの乾燥装置。」(以下「甲2発明」という。) (ウ)甲3 甲3の請求項1には、「i) 乾燥したヒドロゲルを製造するためにヒドロゲルを乾燥する工程、 ii) 乾燥したヒドロゲルから不完全に乾燥したポリマー粒子を分離する工程及び iii) 分離した不完全に乾燥されたポリマー粒子を乾燥する工程 を有する吸水性ポリマー粒子の製造方法において、 分離した不完全に乾燥されたポリマー粒子を乾燥iii)の前に粉砕することを特徴とする、吸水性ポリマー粒子の製造方法。」が記載され、乾燥、粉砕、磨砕及び分離の工程には、機器が存在することは明らかであることからすると、甲3には、以下の発明が記載されていると認められる。 「i) 乾燥したヒドロゲルを製造するためにヒドロゲルを乾燥する乾燥機、 ii) 乾燥したヒドロゲルから不完全に乾燥したポリマー粒子を分離する分離機及び iii) 分離した不完全に乾燥されたポリマー粒子を乾燥する乾燥機 を有する吸水性ポリマー粒子の製造装置において、 分離した不完全に乾燥されたポリマー粒子を乾燥iii)の前に粉砕する粉砕機を有することを特徴とする、吸水性ポリマー粒子の製造装置。」(以下「甲3発明」という。) エ 対比・判断 (ア)本件発明1について a 対比 (a)甲1発明との対比 甲1発明の「含水ゲル状架橋重合体」は、吸水性樹脂の原料であり、甲1の段落【0164】によると、界面活性剤や潤滑剤を添加するから、本件発明1の「吸水性樹脂組成物」に相当する。 甲1発明の「含水ゲル状架橋重合体を乾燥させる乾燥機」は、本件発明1の「吸水性樹脂組成物を乾燥させて未分級の粉体を得る乾燥機」のうち、「吸水性樹脂組成物を乾燥させて粉体を得る乾燥機」に限り一致する。 甲1発明の「乾燥物に含まれる含水ゲル状架橋重合体の未乾燥物を分離する分離機」は、本件発明1の「前記流路を流過する前記未分級の粉体のうち、予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する捕集体(但し、振動ふるいを除く)」のうち、「予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する捕集体」に限り一致する。 そうすると、本件発明1と甲1発明とは、 「吸水性樹脂組成物を乾燥させて粉体を得る乾燥機と、 予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する捕集体と、を有する吸水性樹脂製造装置。」で一致し、次の点で相違する。 (相違点1−1)吸水性樹脂組成物を乾燥機で乾燥させて得られる粉体が、本件発明1では「未分級」であるのに対し、甲1発明では明らかでない点 (相違点1−2)本件発明1では「前記粉体の流量を予め定める流量となるように調整する粉体流量調整排出部材」を有し、「前記乾燥機と前記粉体流量調整排出部材とを繋ぐ、前記粉体の流路を構成する粉体流路部材」を有するのに対し、甲1発明では、粉体の流量を予め定める流量となるように調整する粉体流量調整排出部材を有しておらず、前記乾燥機と前記粉体流量調整排出部材とを繋ぐ、前記粉体の流路を構成する粉体流路部材が特定されていない点 (相違点1−3)捕集体で分離する粉体が、本件発明1では、「流路を流過する未分級の粉体」であるのに対して、甲1発明では明らかでない点。 (相違点1−4)捕集体が、本件発明1では「振動ふるいを除く」としているのに対し、甲1発明では、分離装置が振動ふるいを除いているのか否かが明らかでない点 (相違点1−5)本件発明1では、「前記粉体流量調整排出部材の下流に設けられた分級器」を有し、「前記粉体流量調整排出部材から前記分級器にかけて、前記粉体を粉砕工程を行わずに流過するように構成されている」のに対し、甲1発明では、粉体流量調整排出部材の下流に分級器を有しておらず、粉体流量調整排出部材から前記分級器にかけて、粉体を粉砕工程を行わずに流過することが特定されていない点 (b)甲2発明との対比 甲2発明の「ヒドロゲル」は、甲2の段落【0005】には、「ヒドロゲルは、水及び水性溶液の高い吸収能により優れており」と記載されているから吸水性樹脂であるといえ、また、吸水性樹脂に周知の添加剤を配合することは技術常識であるといえるから、本件発明1の「吸水性樹脂組成物」に相当する。 甲2発明の「接触−又は対流−乾燥によってヒドロゲルを乾燥する乾燥機」は、粉体を得ることは明らかであるから、本件発明1の「吸水性樹脂組成物を乾燥させて未分級の粉体を得る乾燥機」のうち、「吸水性樹脂組成物を乾燥させて粉体を得る乾燥機」に限り一致する。 甲2発明の「湿った弾性ヒドロゲル粒子を分離する分離機」は、甲2の【0011】には、「湿った大きいヒドロゲル粒子を粉砕された乾燥ヒドロゲル粒子から分離すること」と記載されているから、本件発明1の「前記流路を流過する前記未分級の粉体のうち、予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する捕集体(但し、振動ふるいを除く)」のうち、「予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する捕集体」に限り一致する。 甲2発明の「ヒドロゲルの乾燥装置」は、ヒドロゲルを製造する装置であるから、本件発明1の吸水性樹脂製造装置に相当するといえる。 そうすると、本件発明1と甲2発明とは、 「吸水性樹脂組成物を乾燥させて粉体を得る乾燥機と、 予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する捕集体と、を有する吸水性樹脂製造装置。」で一致し、次の点で相違する。 (相違点2−1)吸水性樹脂組成物を乾燥機で乾燥させて得られる粉体が、本件発明1では「未分級」であるのに対し、甲2発明では明らかでない点 (相違点2−2)本件発明1では「前記粉体の流量を予め定める流量となるように調整する粉体流量調整排出部材」を有し、「前記乾燥機と前記粉体流量調整排出部材とを繋ぐ、前記粉体の流路を構成する粉体流路部材」を有するのに対し、甲2発明では、粉体の流量を予め定める流量となるように調整する粉体流量調整排出部材を有しておらず、前記乾燥機と前記粉体流量調整排出部材とを繋ぐ、前記粉体の流路を構成する粉体流路部材が特定されていない点 (相違点2−3)捕集体で分離する粉体が、本件発明1では、「流路を流過する未分級の粉体」であるのに対して、甲2発明では明らかでない点。 (相違点2−4)捕集体が、本件発明1では「振動ふるいを除く」としているのに対し、甲2発明では、分離装置が振動ふるいを除いているのか否かが明らかでない点 (相違点2−5)本件発明1では、「前記粉体流量調整排出部材の下流に設けられた分級器」を有し、「前記粉体流量調整排出部材から前記分級器にかけて、前記粉体を粉砕工程を行わずに流過するように構成されている」のに対し、甲2発明では、粉体流量調整排出部材の下流に分級器を有しておらず、粉体流量調整排出部材から前記分級器にかけて、粉体を粉砕工程を行わずに流過することが特定されていない点 (c)甲3発明との対比 甲3発明の「ヒドロゲル」は、吸水性ポリマーの原料であって、吸水性ポリマーに周知の添加剤を配合することは技術常識であるといえるから、本件発明1の「吸水性樹脂組成物」に相当する。 甲3発明の「ヒドロゲルを乾燥する乾燥機」は、粉体を得ることは明らかであるから、本件発明1の「吸水性樹脂組成物を乾燥させて未分級の粉体を得る乾燥機」のうち、「吸水性樹脂組成物を乾燥させて粉体を得る乾燥機」に限り一致する。 甲3発明の「乾燥したヒドロゲルから不完全に乾燥したポリマー粒子を分離する分離機」は、甲3の実施例の記載である段落【0082】に「10mmの目開きを有する篩を用いて、不完全に乾燥されたポリマー粒子を分離した。10mm以上の粒子直径を有する分離した不完全に乾燥されたポリマー粒子」と記載されているから、本件発明1の「前記流路を流過する前記未分級の粉体のうち、予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する捕集体(但し、振動ふるいを除く)」のうち、「予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する捕集体」に限り一致する。 そうすると、本件発明1と甲3発明とは、 「吸水性樹脂組成物を乾燥させて粉体を得る乾燥機と、 予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する捕集体と、を有する吸水性樹脂製造装置。」で一致し、次の点で相違する。 (相違点3−1)吸水性樹脂組成物を乾燥機で乾燥させて得られる粉体が、本件発明1では「未分級」であるのに対し、甲3発明では明らかでない点 (相違点3−2)本件発明1では「前記粉体の流量を予め定める流量となるように調整する粉体流量調整排出部材」を有し、「前記乾燥機と前記粉体流量調整排出部材とを繋ぐ、前記粉体の流路を構成する粉体流路部材」を有するのに対し、甲3発明では、粉体の流量を予め定める流量となるように調整する粉体流量調整排出部材を有しておらず、前記乾燥機と前記粉体流量調整排出部材とを繋ぐ、前記粉体の流路を構成する粉体流路部材が特定されていない点 (相違点3−3)捕集体で分離する粉体が、本件発明1では、「流路を流過する未分級の粉体」であるのに対して、甲3発明では明らかでない点。 (相違点3−4)捕集体が、本件発明1では「振動ふるいを除く」としているのに対し、甲3発明では、分離装置が振動ふるいを除いているのか否かが明らかでない点 (相違点3−5)本件発明1では、「前記粉体流量調整排出部材の下流に設けられた分級器」を有し、「前記粉体流量調整排出部材から前記分級器にかけて、前記粉体を粉砕工程を行わずに流過するように構成されている」のに対し、甲3発明では、粉体流量調整排出部材の下流に分級器を有しておらず、粉体流量調整排出部材から前記分級器にかけて、粉体を粉砕工程を行わずに流過することが特定されていない点 b 判断 本件発明1と甲1発明〜甲3発明との相違点を判断するに当たり、相違点1−2、相違点2−2及び相違点3−2は同じであるから、事案に鑑みこれらの相違点を併せてはじめに判断する。 甲1には、含水ゲルを乾燥するに当たり、未乾燥物の発生を完全に防止するとともに、吸水性樹脂の物性の低下を防止することを課題とすること(甲1の【0008】〜【0014】参照)、甲2には、良好に加工された乾燥物を生じるヒドロゲルの乾燥法を見つけることを課題とすること(甲2の【0008】参照)、甲3には、吸水性ポリマー粒子を連続的に製造するための改善された方法の提供を課題とすること(甲3の【0014】参照)が記載されている。 この上で、甲1〜甲3には、それらの請求項1に記載された事項、すなわち、甲1発明〜甲3発明が記載されているということができる。 このように、甲1〜甲3には、上記課題を解決するための甲1発明〜甲3発明が記載されているだけであるから、他の証拠をみるまでもなく、本件発明1のように、相違点1−2、相違点2−2及び相違点3−2のうち、捕集体の下流に流量調整排出部材をさらに設ける動機づけがあるとはいえない。 したがって、相違点1−2、相違点2−2及び相違点3−2は容易想到とはいえない。 そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明〜甲3発明及び甲1〜甲3に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (イ)本件発明2について 上記「1(1)イ(イ)a」で述べた本件発明2と本件発明1との違いを踏まえ、上記(ア)a(a)〜c(c)で述べた本件発明1と甲1発明〜甲3発明との対比を参考にして、本件発明2と甲1発明〜甲3発明とを対比する。 a 対比 (a)甲1発明との対比 甲1発明の「乾燥物に含まれる含水ゲル状架橋重合体の未乾燥物を分離する分離機」は、本件発明2の「前記流路を流過する前記粉体のうち、予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する網型の形状を有する捕集体」のうち、「予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する捕集体」に限り一致する。 ここで、上記で述べた本件発明2と本件発明1との違いを踏まえ、上記(ア)a(a)で述べた本件発明1と甲1発明との対比を参考にすると、本件発明2と甲1発明とは、 「吸水性樹脂組成物を乾燥させて粉体を得る乾燥機と、 予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する捕集体と、を有する吸水性樹脂製造装置。」で一致し、次の点で相違する。 (相違点1−6)本件発明2では「前記粉体の流量を予め定める流量となるように調整する粉体流量調整排出部材」を有し、「前記乾燥機と前記粉体流量調整排出部材とを繋ぐ、前記粉体の流路を構成する粉体流路部材」を有するのに対し、甲1発明では、粉体の流量を予め定める流量となるように調整する粉体流量調整排出部材を有しておらず、前記乾燥機と前記粉体流量調整排出部材とを繋ぐ、前記粉体の流路を構成する粉体流路部材が特定されていない点 (相違点1−7)捕集体が、本件発明2では「網型の形状を有する」のに対し、甲1発明では明らかでない点 (相違点1−8)本件発明2では、「前記捕集体が、前記粉体の流路において固定的に配置されており且つその網面が捕集した前記粉体塊状物を前記網面上で移動可能とするように水平に対して傾斜して配置されている」のに対し、甲1発明では明らかでない点 (b)甲2発明との対比 甲2発明の「湿った弾性ヒドロゲル粒子を分離する分離機」は、甲2の【0011】には、「湿った大きいヒドロゲル粒子を粉砕された乾燥ヒドロゲル粒子から分離すること」と記載されているから、本件発明2の「前記流路を流過する前記粉体のうち、予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する網型の形状を有する捕集体」のうち、「予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する捕集体」に限り一致する。 ここで、上記で述べた本件発明2と本件発明1との違いを踏まえ、上記(ア)a(b)で述べた本件発明1と甲2発明との対比を参考にすると、本件発明2と甲2発明とは、 「吸水性樹脂組成物を乾燥させて粉体を得る乾燥機と、 予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する捕集体と、を有する吸水性樹脂製造装置。」で一致し、次の点で相違する。 (相違点2−6)本件発明2では「前記粉体の流量を予め定める流量となるように調整する粉体流量調整排出部材」を有し、「前記乾燥機と前記粉体流量調整排出部材とを繋ぐ、前記粉体の流路を構成する粉体流路部材」を有するのに対し、甲2発明では、粉体の流量を予め定める流量となるように調整する粉体流量調整排出部材を有しておらず、前記乾燥機と前記粉体流量調整排出部材とを繋ぐ、前記粉体の流路を構成する粉体流路部材が特定されていない点 (相違点2−7)捕集体が、本件発明2では「網型の形状を有する」のに対し、甲2発明では明らかでない点 (相違点2−8)本件発明2では、「前記捕集体が、前記粉体の流路において固定的に配置されており且つその網面が捕集した前記粉体塊状物を前記網面上で移動可能とするように水平に対して傾斜して配置されている」のに対し、甲2発明では明らかでない点 (c)甲3発明との対比 甲3発明の「乾燥したヒドロゲルから不完全に乾燥したポリマー粒子を分離する分離機」は、甲3の実施例の記載である段落【0082】に「10mmの目開きを有する篩を用いて、不完全に乾燥されたポリマー粒子を分離した。10mm以上の粒子直径を有する分離した不完全に乾燥されたポリマー粒子」と記載されているから、本件発明2の「前記流路を流過する前記粉体のうち、予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する網型の形状を有する捕集体」のうち、「予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する捕集体」に限り一致する。 ここで、上記で述べた本件発明2と本件発明1との違いを踏まえ、上記(ア)a(c)で述べた本件発明1と甲3発明との対比を参考にすると、本件発明2と甲3発明とは、 「吸水性樹脂組成物を乾燥させて粉体を得る乾燥機と、 予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する捕集体と、を有する吸水性樹脂製造装置。」で一致し、次の点で相違する。 (相違点3−6)本件発明2では「前記粉体の流量を予め定める流量となるように調整する粉体流量調整排出部材」を有し、「前記乾燥機と前記粉体流量調整排出部材とを繋ぐ、前記粉体の流路を構成する粉体流路部材」を有するのに対し、甲3発明では、粉体の流量を予め定める流量となるように調整する粉体流量調整排出部材を有しておらず、前記乾燥機と前記粉体流量調整排出部材とを繋ぐ、前記粉体の流路を構成する粉体流路部材が特定されていない点 (相違点3−7)捕集体が、本件発明2では「網型の形状を有する」のに対し、甲3発明では明らかでない点 (相違点3−8)本件発明2では、「前記捕集体が、前記粉体の流路において固定的に配置されており且つその網面が捕集した前記粉体塊状物を前記網面上で移動可能とするように水平に対して傾斜して配置されている」のに対し、甲3発明では明らかでない点 b 判断 本件発明2と甲1発明〜甲3発明との相違点を判断するに当たり、相違点1−6、相違点2−6及び相違点3−6は同じであるから、事案に鑑みこれらの相違点を併せてはじめに判断する。 上記相違点1−6、相違点2−6及び相違点3−6は、(ア)aで述べた相違点1−2、相違点2−2及び相違点3−2と同じであり、これらの相違点の判断については、上記(ア)bで述べたとおり、これら相違点を構成する動機づけがあるとはいえない。 したがって、相違点1−6、相違点2−6及び相違点3−6は容易想到とはいえない。 そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明〜甲3発明及び甲1〜甲3に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (ウ)本件発明3及び4について 本件発明3〜4は、本件発明1または2を直接的又は間接的に引用して限定した発明であるから、本件発明3〜4は、上記(ア)及び(イ)で示した理由と同じ理由により、甲1〜3に記載された発明及び甲1〜3に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 オ 小括 以上のとおりであるから、申立理由1及び申立理由2のうち甲1〜3及び甲10を主引用例とする理由では、本件発明1〜4に係る特許を取り消すことはできない。 (3)申立理由3及び申立理由4について ア 申立人の主張 申立人は申立書の中で、申立理由3及び申立理由4に関して、以下のように主張する。 (ア)捕集体と分級器の違いについて規定がない点について(明確性) a 本件訂正前の請求項1に係る発明では、捕集体と分級器の違いについては規定されておらず、捕集体が分級器である場合も考えられ、捕集体と分級器の違いを規定する必要がある。 b 本件訂正前の請求項に係る発明の吸水性樹脂製造装置は、その目的からみて、捕集体の下流に粉体流量調整排出部材が備えられているといえる。しかしながら、本件訂正前の請求項に係る発明では捕集体の下流に粉体流量調整排出部材が備えられているとは規定されていない。粉体流量調整排出部材の位置を明確にすべきである。 (イ)「分級の処理能力に基づく」という記載について(明確性) 本件訂正前の請求項3に係る発明では「粉体の流量は、分級器の処理能力に基づく値である」と規定されているが、この、「分級器の処理能力に基づく」 とは、処理能力の何倍を意味するのか何ら指針を与られておらず、技術的意義が不明である。また、分級器と粉体流量調整排出部材との関係が規定されていないので技術的意義が分からない。 (ウ)捕集体を粉体流路部材内に設けることが規定されていない点(サポート要件) 本件明細書の段落【0088】、【0127】、図2、実施例1と比較例1との対比によれば、捕集体5は第1粉体流路配管12内に設けられているという構成は、本件明細書の段落【0011】に記載される本件発明1の課題を解決できると認識できるうえで、吸水性樹脂製造装置において必須の構成である。しかしながら、本件訂正前の請求項1に係る発明では、捕集体が粉体流路部材内に設けられているとは規定されていないので、本件訂正前の請求項1〜4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されていない。 イ 判断 (ア)考え方について a 明確性 特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 b サポート要件 特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (イ)本件発明の課題 本件明細書等の段落【0009】及び【0010】によれば、本件発明の課題は、粉体塊状物が除去された状態で、高い生産効率で製造できる吸水性樹脂製造装置を提供することであると認める。 (ウ)判断 a (ア)aについて 「捕集体」については、本件発明1では「前記流路を流過する前記未分級の粉体のうち、予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する捕集体(但し、振動ふるいを除く)」と特定され、また、本件発明2では「前記流路を流過する前記粉体のうち、予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する網型の形状を有する捕集体」であり、「前記捕集体が、前記粉体の流路において固定的に配置されており且つその網面が捕集した前記粉体塊状物を前記網面上で移動可能とするように水平に対して傾斜して配置されている」と特定されており、明確である。 さらに、「分級器」については、本件発明1及び2とも、「前記粉体流量調整排出部材の下流に設けられた分級器」と特定され、段落【0125】には、分級器は吸水性樹脂粉体を分級することが記載され、同【0126】には、分級器の具体例が記載されており、明確である。 このように、本件発明においては、「捕集体」及び「分級器」がそれぞれ明確に特定されており、両者の違いを規定しないと本件発明が第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 よって、申立人の(ア)aの主張は採用できない。 b (ア)bについて 本件発明1及び2は、概略、乾燥機と、粉体流量調整排出部材と、乾燥機と粉体流量調整排出部材とを繋ぐ粉体流路部材と、捕集体と粉体流量調整排出部材の下流に設けられた分級器を有するものであり、捕集体は流路を流過する粉体にある大きな粉体塊状物を捕集するものであるから流路に存在することは明らかであり、そして、流路は乾燥機と粉体流量調整排出部材を繋いでいるから、捕集体の下流に粉体流量調整排出部材が備えられていることは明らかである。 よって、申立人の(ア)bの主張は採用できない。 c (イ)について 本件発明3は、「前記粉体流量調整排出部材によって調整される前記粉体の流量は、前記分級器の処理能力に基づく値である」と特定され、この意味において明確であり、申立人が主張するように処理能力の何倍を意味するのかの指針がなくとも、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 よって、申立人の(イ)の主張は採用できない。 d (ウ)について 上記bで述べたように、捕集体は流路に存在することは明らかであり、捕集体により粉体塊状物が除去されるから、その下流にある粉体流量調整排出部材に粉体塊状物は流入されるといえない。そうすると、本件発明は、粉体塊状物が除去された状態で、高い生産効率で製造できる吸水性樹脂製造装置を提供するという課題は解決できると認識できるから、本件発明は発明の詳細な説明に記載された発明である。 よって、申立人の(ウ)の主張は採用できない。 ウ 小括 以上のとおりであるので、申立理由3及び申立理由4によっては、本件発明1〜4に係る特許を取り消すことはできない。 第6 むすび 特許第6738979号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1〜4]について訂正することを認める。 当審が通知した取消理由1〜3及び特許異議申立人がした申立理由1〜4によっては、本件特許の請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 吸水性樹脂組成物を乾燥させて未分級の粉体を得る乾燥機と、 前記粉体の流量を予め定める流量となるように調整する粉体流量調整排出部材と、 前記乾燥機と前記粉体流量調整排出部材とを繋ぐ、前記粉体の流路を構成する粉体流路部材と、 前記流路を流過する前記未分級の粉体のうち、予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する捕集体(但し、振動ふるいを除く)と、 前記粉体流量調整排出部材の下流に設けられた分級器と、を有し、 前記粉体流量調整排出部材から前記分級器にかけて、前記粉体を粉砕工程を行わずに流過するように構成されていることを特徴とする、吸水性樹脂製造装置。 【請求項2】 吸水性樹脂組成物を乾燥させて粉体を得る乾燥機と、 前記粉体の流量を予め定める流量となるように調整する粉体流量調整排出部材と、 前記乾燥機と前記粉体流量調整排出部材とを繋ぐ、前記粉体の流路を構成する粉体流路部材と、 前記流路を流過する前記粉体のうち、予め定める大きさよりも大きな粉体塊状物を捕集する網型の形状を有する捕集体と、 前記粉体流量調整排出部材の下流に設けられた分級器と、を有し、 前記捕集体が、前記粉体の流路において固定的に配置されており且つその網面が捕集した前記粉体塊状物を前記網面上で移動可能とするように水平に対して傾斜して配置されていることを特徴とする、吸水性樹脂製造装置。 【請求項3】 前記粉体流量調整排出部材によって調整される前記粉体の流量は、前記分級器の処理能力に基づく値である、請求項1又は2に記載の吸水性樹脂製造装置。 【請求項4】 前記粉体流量調整排出部材が、前記粉体を一時的に貯留するホッパを含んでいる、請求項1〜3の何れか一項に記載の吸水性樹脂製造装置。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2022-01-31 |
出願番号 | P2020-035261 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(C08F)
P 1 651・ 113- YAA (C08F) P 1 651・ 537- YAA (C08F) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
加藤 友也 |
特許庁審判官 |
土橋 敬介 佐藤 健史 |
登録日 | 2020-07-22 |
登録番号 | 6738979 |
権利者 | 住友精化株式会社 |
発明の名称 | 吸水性樹脂製造装置 |
代理人 | 西教 圭一郎 |
代理人 | 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK |
代理人 | 西教 圭一郎 |