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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G01N
審判 全部申し立て 2項進歩性  G01N
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G01N
管理番号 1384073
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-02-19 
確定日 2022-02-14 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6741025号発明「OCT信号処理装置、およびOCT信号処理プログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6741025号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−3〕、4、5について訂正することを認める。 特許第6741025号の請求項2ないし5に係る特許を維持する。 特許第6741025号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6741025号の請求項1〜5に係る特許についての出願は、2017年(平成29年)1月5日(優先権主張 平成28年1月7日)を国際出願日として出願され、令和2年7月29日にその特許権の設定登録がされ、同年8月19日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和3年2月19日に特許異議申立人 吉田秀人(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされ、当審は、同年5月14日付けで取消理由を通知し、特許権者は、新型コロナウイルス感染症に伴う期間延長の申し出により延長された指定期間内である同年8月18日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、当該訂正の請求を「本件訂正請求」という。)を行い、申立人は、同年10月11日に意見書を提出したものである。

第2 訂正の適否についての判断

(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。下線は訂正箇所を示す。

ア 訂正事項1
請求項1を削除する。

イ 訂正事項2
請求項2の「前記演算手段は、前記2つ以上の組ごとに演算したモーションコントラストを合成することを特徴とする請求項1のOCT信号処理装置。」を、
「OCT信号を処理するOCT信号処理装置であって、
被検物に照射された測定光の反射光と前記測定光に対応する参照光とに基づいてOCT信号を検出するOCTデバイスから、被検物上の同一位置に関して時間的に異なる3つ以上のOCT信号を取得する取得手段と、
複数のOCT信号に基づいてモーションコントラストを演算する演算手段と、を備え、
前記演算手段は、前記3つ以上のOCT信号の中から複数のOCT信号を抜き出して得られる組のうち、OCT信号間のタイムインターバルが異なる組を2つ以上選択し、選択した2つ以上の組ごとにモーションコントラストを演算し、前記2つ以上の組ごとに演算したモーションコントラストを合成することを特徴とするOCT信号処理装置。」に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3も同様に訂正する。)。

ウ 訂正事項3
請求項3の「請求項1または2のOCT信号処理装置。」を、「請求項2のOCT信号処理装置。」に訂正する。

エ 訂正事項4
請求項4の「選択した2つ以上の組ごとにモーションコントラストを演算する」を、「選択した2つ以上の組ごとにモーションコントラストを演算し、前記2つ以上の組ごとに演算したモーションコントラストを合成する」に訂正する。

オ 訂正事項5
請求項5の「選択した2つ以上の組ごとにモーションコントラストをそれぞれ演算する」を、「選択した2つ以上の組ごとにモーションコントラストをそれぞれ演算し、前記2つ以上の組ごとに演算したモーションコントラストを合成する」に訂正する。

カ 訂正後の請求項1〜3は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

ア 訂正事項1について
(ア)訂正事項1は、訂正前の請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)訂正事項1は、新規事項の追加に該当しない。
(ウ)訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

イ 訂正事項2について
(ア)訂正事項2は、訂正前の請求項2が請求項1の記載を引用する記載であったところ、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改める訂正であるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
(イ)訂正事項2は、新規事項の追加に該当しない。
(ウ)訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

ウ 訂正事項3について
(ア)訂正事項3は、引用請求項数を削減するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)訂正事項3は、新規事項の追加に該当しない。
(ウ)訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

エ 訂正事項4及び5について
(ア)訂正事項4及び5は、訂正前の演算手段(演算ステップ)を、「前記2つ以上の組ごとに演算したモーションコントラストを合成する」という記載により更に特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)訂正事項4及び5は、本件特許明細書の【0012】「演算部は、2つ以上の組ごとに演算したモーションコントラストを合成してもよい。」などの記載から導き出せることから、新規事項の追加に該当しない。
(ウ)訂正事項4及び5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−3〕、4、5について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項2ないし5に係る発明(以下、それぞれ「本件発明2」ないし「本件発明5」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項2ないし5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

(本件発明2)
「【請求項2】
OCT信号を処理するOCT信号処理装置であって、
被検物に照射された測定光の反射光と前記測定光に対応する参照光とに基づいてOCT信号を検出するOCTデバイスから、被検物上の同一位置に関して時間的に異なる3つ以上のOCT信号を取得する取得手段と、
複数のOCT信号に基づいてモーションコントラストを演算する演算手段と、を備え、
前記演算手段は、前記3つ以上のOCT信号の中から複数のOCT信号を抜き出して得られる組のうち、OCT信号間のタイムインターバルが異なる組を2つ以上選択し、選択した2つ以上の組ごとにモーションコントラストを演算し、前記2つ以上の組ごとに演算したモーションコントラストを合成することを特徴とするOCT信号処理装置。」

(本件発明3)
「【請求項3】
前記演算手段は、前記2つ以上の組ごとに演算したモーションコントラストを統計処理によって合成することを特徴とする請求項2のOCT信号処理装置。」

(本件発明4)
「【請求項4】
OCT信号を処理するOCT信号処理装置であって、
被検物に照射された測定光の反射光と前記測定光に対応する参照光とに基づいてOCT信号を検出するOCTデバイスと、
前記OCTデバイスから、被検物上の同一位置に関して時間的に異なる3つ以上のOCT信号を取得する取得手段と、
複数のOCT信号に基づいてモーションコントラストを演算する演算手段と、を備え、
前記演算手段は、前記3つ以上のOCT信号の中から複数のOCT信号を抜き出して得られる組のうち、OCT信号間のタイムインターバルが異なる組を2つ以上選択し、選択した2つ以上の組ごとにモーションコントラストを演算し、前記2つ以上の組ごとに演算したモーションコントラストを合成することを特徴とするOCT信号処理装置。」

(本件発明5)
「【請求項5】
OCT信号を処理するOCT信号処理装置において実行されるOCT処理プログラムであって、前記OCT信号処理装置のプロセッサによって実行されることで、
被検物に照射された測定光の反射光と前記測定光に対応する参照光とに基づいてOCT信号を検出するOCTデバイスから、被検物上の同一位置に関して時間的に異なる3つ以上のOCT信号を取得する取得ステップと、
前記3つ以上のOCT信号の中から複数のOCT信号を抜き出して得られる組のうち、OCT信号間のタイムインターバルが異なる組を2つ以上選択し、選択した2つ以上の組ごとにモーションコントラストをそれぞれ演算し、前記2つ以上の組ごとに演算したモーションコントラストを合成する演算ステップと、
を前記OCT信号処理装置に実行させることを特徴とするOCT信号処理プログラム。」

第4 特許異議の申立について

1 申立理由の概要
申立人は、証拠として下記2に示す甲第1号証〜甲第6号証(以下、それぞれ「甲1」〜「甲6」という。)を提出し、以下の申立理由により、請求項1〜5に係る特許は取り消すべきものである旨主張している。

理由1(新規性
請求項1、4、5に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、4、5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。

理由2(進歩性
請求項1、4、5に係る発明は、甲1に記載された発明、請求項2に係る発明は、甲1に記載された発明及び周知技術(甲2、3)、請求項3に係る発明は、甲1に記載された発明及び周知技術(甲2、4〜6)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

理由3(サポート要件)
請求項1、4、5に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないから、請求項1、4、5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

2 証拠方法
甲1:WooJhon Choi , et al. ,“Ultrahigh-Speed, Swept-Source Optical Coherence Tomography Angiography in Nonexudative Age-Related Macular Degeneration with Geographic Atrophy ” Ophthalmology , American Academy of Ophthalmology, 2015, Volume 122, Number 12, p.2532-2544
甲2:特開2014−233484号公報
甲3:特開2012−213555号公報
甲4:特開2003−319249号公報
甲5:特開平11−355787号公報
甲6:特開2015−73172号公報

第5 取消理由の概要
請求項1、4、5に係る特許に対して、当審が令和3年5月14日付けの取消理由通知において特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

理由1
新規性)請求項1、4、5に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、4、5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
進歩性)請求項1、4、5に係る発明は、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、4、5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

理由2
(サポート要件)請求項1、4、5に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないから、請求項1、4、5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

第6 各甲号証の記載
申立人が提出した各甲号証(甲1〜6)の記載事項は次のとおりである。いずれも、本件特許の優先日である平成28年(2016年)1月7日より前に公知となったものである。

1 甲1について

(1)甲1の記載
甲1には、以下の事項が記載されている。原文に続き当審訳を示す。下線は当審で付与した。以下、同様。

(甲1ア)2534頁左欄12〜16行
「The purpose of this study is to assess ultrahigh-speed, swept-source OCTA and variable interscan time analysis (VISTA) as a modality with which to visualize vascular changes that occur in the retina and CC of patients with nonexudative AMD with GA.
「本研究の目的は、GAを伴う非滲出性AMD患者の網膜及びCCに生じる血管の変化を可視化する方法としての超高速掃引光源OCTA及び時間間隔可変解析(VISTA)を評価することである。」

(甲1イ)2534頁左欄35行〜右欄1行
「Optical coherence tomography angiography was performed using an ultrahigh-speed SSOCT research prototype developed at the Massachusetts Institute of Technology and deployed to the New England Eye Center in November 2013. A similar OCT system has been described in detail, 23 and therefore only key characteristics are summarized in this article. The prototype technology used a vertical cavity surface emitting laser swept light source with a 400-kHz A-scan rate. The light source was centered at 1050 nm, which, when compared with the 840-nm wavelength used in most commercial system, enables deeper light penetration into the RPE and choroid, as well as improved immunity to ocular opacities.24 」
「光コヒーレンストモグラフィー造影は、マサチューセッツ工科大学で開発され、ニューイングランドアイセンターに2013年11月に展開された超高速SSOCT研究用プロトタイプが用いられて実行された。同様のOCTシステムは過去に詳細が説明されていることから、23この論文では重要な特徴のみを要約する。プロトタイプ技術では、400kHz、Aスキャンレートの垂直共振器面発光レーザ掃引光源を使用した。光源は1050nmを中心としており、多くの商用システムで使用されている840nmの波長と比較すると、眼の混濁に対する対策と同様にRPEと脈絡膜への光の浸透が深くなることができる。24」

(甲1ウ)2534頁右欄13〜23行
「We performed OCTA with 6×6-mm and 3×3-mm fields of view. For both fields of view, 5 repeated B-scans from 500 uniformly spaced locations were sequentially acquired. Each B-scan consisted of 500 A-scans, and the interscan time was approximately 1.5 msec (accounting for the galvanometer mirror scanning duty cycle). A total of 5×500×500 A-scans were acquired per OCTA volume with an acquisition time of approximately 3.8 seconds. The OCTA images were generated by calculating the decorrelation signal on a pixel-by-pixel basis between sequential OCT B-scans (1⇔2, 2⇔3, 3⇔4, 4⇔5) acquired from the same location with an approximately 1.5-msec interscan time.」
「我々は6mm×6mmと3mm×3mmの視野でOCTAを実行した。どちらの視野においても、500の等間隔な位置で5回の繰り返しBスキャン信号が連続して取得された。各々のBスキャン信号は500のAスキャン信号で構成され、時間間隔は約1.5msであった(主な要因は、ガルバノメーターミラーのスキャンに必要な周期)。OCTAボリューム当たり、約3.8秒の取得時間で5×500×500のAスキャン信号が取得された。OCTA画像は、同一の位置における約1.5msの時間間隔で取得した、連続するOCT Bスキャン(1⇔2,2⇔3,3⇔4,4⇔5) 間のピクセル単位のデコリレーション信号を演算することによって生成された。」

(甲1エ)2535頁の図1とその説明欄

「Figure 1. Variable interscan time analysis (VISTA). Optical coherence tomography angiography (OCTA) data are generated using 5 repeated B-scans (N=1-5) from the same location, as shown schematically in (A) and (D). The time between repeated B-scans (interscan time) was 〜1.5 msec. It is possible to calculate the OCTA decorrelation using adjacent B-scans, as in (A), or every second B-scan, as in (D), which doubles the interscan time to 〜3.0 msec. B and E, Idealized plots of the OCTA decorrelation signal versus erythrocyte flow speed. The plots are intended to represent general trends rather than exact functional form. The OCTA dynamic range, demarcated by the brackets, spans the range between the slowest detectable flow and the fastest distinguishable flow. The dynamic range both shifts and compresses as the interscan time is doubled (B) and (E). Note that the slow flow marked by the asterisk is detectable using the 〜1.5-msec interscan time of (B) but becomes detectable using the longer 〜3.0-msec interscan time of (E). The longer 〜3.0-msec interscan time provides high sensitivity to slow flows. Note, however, that the faster flows marked by the square and circle are saturated (faster than the fastest distinguishable flow) using the 〜3.0-msec interscan time of (E). The shorter 〜1.5-msec interscan time of (B) is thus superior for the purpose of distinguishing the flows corresponding to the circle and square. Variable interscan time analysis is required because a fixed interscan time cannot simultaneously visualize and distinguish the flows marked with the asterisk, square, and circle. C and F, En face OCTA images of choroidal vessels in a region of geographic atrophy. The scale bars are 500 mm, and the images are enlarged views from a 6×6-mm field of view. C, Obtained using an 〜1.5-msec interscan time. F, Obtained using an 〜3.0-msec interscan time. To facilitate comparison, arrows are superimposed on the 2 images. Note many vessels that are visible in (F) are only partially visible or completely absent in (C).」
「図1 時間間隔可変解析(VISTA)。(A)と(D)に概略的に示されるように、光コヒーレンストモグラフィー造影(OCTA)のデータが、同じ位置の5回の繰り返しBスキャン(N=1〜5)を用いて生成される。繰り返されるBスキャン間の時間(時間間隔)は、約1.5msであった。(A)のように隣接するBスキャン、もしくは、(D)のようにスキャン間隔が2倍の約3.0msである一つ置きのBスキャンを用いて、OCTAデコリレーションを演算することが可能である。BおよびEは、OCTAデコリレーション信号対赤血球流速の理想的なプロットを示している。プロットは正確な関数形式ではなく、一般的な傾向を表すことを目的している。括弧で区切られたOCTAダイナミックレンジは、最も遅い検出可能な流れと最も速い識別可能な流れの間のレンジを示す。(B)と(E)において時間間隔が2倍になることに伴い、ダイナミックレンジはシフトされるとともに圧縮される。アスタリスクで示される遅い流れは、(B)の約1.5msの時間間隔では検出不可能であるが、(E)の約3msの時間間隔では検出可能になっていることに注目すべきである。約3.0msの長い時間間隔は遅い流れに対して感度が高い。しかしながら、(E)の約3.0msの時間間隔では、(最も速い識別できる流れより速い)四角と円で示される速い流れは飽和している。したがって、円と四角に対応する流れを識別するためには、(B)の時間間隔の短い約1.5msの方が優れている。時間間隔を固定すると、アスタリスク、四角、円で示される流れを同時に可視化・識別できないため、時間間隔を変化させる解析が必要である。CとFは、地図状萎縮領域における脈絡膜血管のEn face OCTA画像である。スケールバーは500μmで、画像は6×6mmの視野からの拡大図である。Cは、時間間隔約1.5msで得られた画像であり、Fは、時間間隔約3.0msで得られた画像である。比較しやすいように、2つの画像に矢印を重ねている。(F)では見えていても、(C)では部分的にしか見えなったり、全く見えなかったりする血管が多いことに注目すべきである。」

(甲1オ)2535頁右欄1行〜2536頁左欄2行
「Variable interscan time analysis can be performed using a single scanning protocol with 3 or more repeated B-scans, calculating the OCTA decorrelation between pairs of B-scans with different interscan times. In our study, we used 2 different interscan times, an approximately 3.0-msec interscan time by correlating every second B-scan (1⇔3, 2⇔4, 3⇔5) and approximately 1.5-msec interscan time by correlating sequential B-scans (1⇔2, 2⇔3, 3⇔4, 4⇔5). Because our acquisition protocol acquired 5 repeated B-scans per location, VISTA could be performed using a single data acquisition, and multiple decorrelations from image pairs could be averaged to increase the signal-to-noise ratio.」
「時間間隔可変解析は3回又はそれ以上繰り返されるBスキャンを行う一つのスキャンプロトコルを用い、異なる時間間隔のBスキャンの組のOCTAデコリレーションを演算することで実行される。我々の研究では、連続したBスキャン信号(1⇔2,2⇔3,3⇔4,4⇔5)の相関を取る約1.5msの時間間隔と、一つ置きのBスキャン信号(1⇔3,2⇔4,3⇔5)の相関を取る約3.0msの時間間隔の、二つの異なる時間間隔を用いた。我々の取得プロトコルは、場所あたり5回の繰り返しBスキャン信号が取得されるため、VISTAは一つのデータ取得によって実行され、画像の組から得られた複数のデコリレーションはS/N比を改善するために平均化されることができる。」

(甲1カ)2538頁の図4とその説明欄

「Figure 4. Fundus autofluorescence, optical coherence tomography (OCT), and OCT angiography (OCTA) in a 75-year-old patient with nonexudative age-related macular degeneration (AMD) with geographic atrophy (GA). This patient had a visual acuity of 20/20. (A) Fundus autofluorescence and (B) the mean en face projection of the entire OCT volume clearly show the region of GA, outlined by the yellow dashed contour in (B). The GA region appears lighter because of increased light penetration into the choroid caused by RPE atrophy. The white arrow indicates the region of foveal sparing. C, A mean en face projection of the OCTA volume through the depths spanned by the retinal vasculature. The retinal vasculature appears normal. D, A 4.4-μm-thick en face OCTA choriocapillaris (CC) slab corresponding to an 〜1.5-msec interscan time. The yellow dashed contour from (B) is superimposed, and pronounced CC alteration appears within it. The CC flow in the area of foveal sparing, indicated by the white arrow, is also visible. The CC alteration is also evident outside the GA margin. E, The same 4.4-μm-thick en face OCTA CC slab as in (D), but corresponding to an 〜3.0-msec interscan time. Note how some areas with low decorrelation signal in (D) have increased decorrelation signal in (E), suggesting flow impairment, not atrophy. Enlarged views of the solid orange and green boxes in (D) and (E) are shown in (F) and (G), respectively. Note that some choroidal vessels that are not visible in (F) become visible in (G). Enlarged views of the dashed orange and green boxes in (D) and (E) are shown in (H) and (I), respectively. Note that some of the regions with low decorrelation signal in (H) have a higher decorrelation signal in (I), suggesting flow impairment along the GA margin. The OCT (top) and OCTA (bottom) B-scans through the red, blue, and purple horizontal dashed lines in (D) are shown in (J), (K), and (L), respectively. All scale bars are 1 mm.」
「図4 地図状萎縮(GA)を伴う非滲出型加齢黄斑変性(AMD)の75歳の患者における眼底自発蛍光、光干渉断層計(OCT)、OCTアンギオグラフィ(OCTA)。この患者の視力は20/20であった。(A)眼底自発蛍光と(B)OCTボリューム全体の平均en face投影図では、(B)で黄色の破線の輪郭で示したGA領域がはっきりと示されている。GA領域が明るく見えるのは、RPEの萎縮により脈絡膜への光の侵入が増えたためである。白矢印は、中心窩温存の領域を示す。Cにおいて、網膜血管系が占める深さ方向のOCTAボリュームの平均的なen face投影図では、網膜の血管系は正常に見える。Dにおいて、約1.5msの時間間隔に対応する厚さ4.4μmのOCTA 脈絡毛細管枝(CC)スラブでは、(B)の黄色の破線の輪郭を重ねており、その中に顕著なCCの変化が見られる。また、白矢印で示した中心窩温存領域のCCの流れも見える。また、GA領域の外側にもCCの変化が見られる。Eは、(D)と同じ厚さ4.4μmのOCTA CCスラブであるが、時間間隔は約3.0msである。(D)ではデコリレーション信号が低かった部分が、(E)ではデコリレーション信号が増加していることに注目すべきである。(D)と(E)のオレンジ色と緑色の実線のボックスの拡大図をそれぞれ(F)と(G)に示す。(F)では見えなかった脈絡膜の血管が(G)では見えるようになっている。(D)と(E)のオレンジと緑の破線枠の拡大図をそれぞれ(H)と(I)に示す。(H)ではデコリレーション信号が低かった領域の一部が、(I)ではデコリレーション信号が高くなっていることに注目してほしい。これは、GA領域に沿った流れの障害を示唆している。(D)の赤、青、紫の水平破線を通るOCT(上)およびOCTA(下)のBスキャンを、それぞれ(J)、(K)、(L)に示す。スケールバーはすべて1mmである。」

(甲1キ)2541頁左欄4〜10行
「Using the VISTA algorithm, we demonstrated that there was CC flow impairment beyond the GA margins and that when such flow impairment was present, it was less pronounced than the flow impairment within GA margins; increasing the interscan time showed increases in decorrelation signal around the margins of GA, but not within the regions of GA. 」
「VISTAアルゴリズムを用いて、GA領域を超えるCC流れ障害が存在すること、そしてそのような流れ障害が存在する場合、GA領域を超えるCC流れ障害は、GA領域内のフロー障害よりも顕著ではないことを実証した。時間間隔を長くすると、GAの領域周辺ではデコリレーション信号が増加したが、GAの領域内では増加しなかった。」

(甲1ク)2542頁左欄37〜41行
「Despite this limitation, we believe that VISTA is a useful method for OCTA studies because it can increase the dynamic range of OCTA and distinguish degrees of flow impairment, which would not be detectable using a fixed interscan time.」
「この制限にも関わらず、VISTAは、OCTAのダイナミックレンジを広げることが可能であり、固定の時間間隔を用いた場合には検出できない流れの減損の程度を識別することが可能であることから、OCTAの研究に役立つ方法であると我々は信じている。」

(2)甲1に記載された発明
(甲1エ)の図1及び(甲1カ)の図4の説明から、地図状萎縮領域における脈絡膜血管の、時間間隔約1.5msで得られたEn face OCTA画像(C)と、時間間隔約3.0msで得られたEn face OCTA画像(F)のそれぞれを目視で比較していることが理解できる。このことを踏まえて上記(1)の記載及び図面を総合すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「 地図状萎縮(GA)を伴う非滲出型加齢黄斑変性(AMD)の患者の網膜及び脈絡毛細管枝(CC)に生じる血管の変化を可視化する方法としての、超高速掃引光源を使用した光コヒーレンストモグラフィー造影(OCTA)及び時間間隔可変解析(VISTA)、を評価する超高速SSOCT研究用プロトタイプであって、
同じ位置の5回の繰り返しBスキャン信号(N=1〜5)を連続して取得し、各々のBスキャン信号は500のAスキャン信号で構成され、その時間間隔は約1.5msであり、OCTAボリューム当たり5×500×500のAスキャン信号が取得され、
連続したBスキャン信号(1⇔2,2⇔3,3⇔4,4⇔5)の相関を取る約1.5msの時間間隔と、一つ置きのBスキャン信号(1⇔3,2⇔4,3⇔5)の相関を取る約3.0msの時間間隔の、二つの異なる時間間隔を用いて、異なる時間間隔のBスキャンの組のOCTAデコリレーションを演算し、
地図状萎縮領域における脈絡膜血管の、時間間隔約1.5msで得られたEn face OCTA画像と、時間間隔約3.0msで得られたEn face OCTA画像とを、それぞれ表示することにより、
OCTAのダイナミックレンジを広げることが可能であり、固定の時間間隔を用いた場合には検出できない流れの減損の程度を識別することが可能であり、
地図状萎縮(GA)を伴う非滲出型加齢黄斑変性(AMD)の患者において、
ある領域の、約1.5msの時間間隔に対応する厚さ4.4μmのOCTA 脈絡毛細管枝(CC)スラブでは、GA領域の中に顕著なCCの変化が見られ、また、中心窩温存領域のCCの流れも見え、GA領域の外側にもCCの変化が見られ、
当該ある領域の、約3.0msの時間間隔に対応する厚さ4.4μmのOCTA CCスラブでは、約1.5msの時間間隔に対応する場合ではデコリレーション信号が低かった部分が、デコリレーション信号が増加していることが見てとれ、これは、GA領域に沿った流れの障害を示唆しており、
VISTAアルゴリズムを用いて、GA領域を超えるCC流れ障害が存在すること、そしてそのような流れ障害が存在する場合、GA領域を超えるCC流れ障害は、GA領域内のフロー障害よりも顕著ではないことを実証した、
超高速SSOCT研究用プロトタイプ。」

2 甲2について

(1)甲2の記載
甲2には、以下の事項が記載されている。

(甲2ア)
「【0031】
本例では、2回の撮影を行うため、データベースDは、2種類の撮影パラメータセットを格納しているが、N回の撮影を行う場合には、N種類(N≧2)の撮影パラメータセットを格納することになる。各撮影パラメータセットは、相互に異なる撮影条件で撮影を行うためのものであり、各撮影パラメータセットに基づき撮影された結果得られる各眼底画像は、相互に画素値の分布が異なるものである。
【0032】
各撮影パラメータセットは、次の3つの撮影パラメータの集合である。
3つの撮影パラメータとは、撮影時に被検眼Eに照射する光量(照射光量)、撮影部140に含まれる撮像センサ141aの信号を増幅するアンプの利得、及び、撮影における露光時間である。また、上述したように、撮影パラメータセットは、眼底画像の画素値に関与する撮影パラメータの集合である。例えば、撮影時に被検眼Eに照射する光量を大きくすると、眼底画像の画素値は大きくなる。例えば、撮影部140に含まれる撮像センサ141aの信号を増幅するアンプの利得を大きくすると、眼底画像の画素値は大きくなる。また、例えば、撮影における露光時間を長くすると、眼底画像の画素値は大きくなる。本実施形態では、相互に異なる撮影条件で撮影を行うために、上述した3つの撮影パラメータのうちの少なくとも1つの撮影パラメータを異なるようにする。
・・・
【0038】
この点、図4(a)のような眼底画像における撮影パラメータセットを見つけることが難しくても、図5−1(b)、図5−2(b)のような眼底画像における撮影パラメータセットを見つけることは比較的容易である。図5−1(b)及び図5−2(b)の眼底画像は、図4(a)の眼底画像における撮影パラメータセットを大きく変えたときに得られたものである。
・・・
【0045】
なお、本実施形態においては、ステップS102及びステップS104の撮影の結果得られた各眼底画像は、図10に示す眼底画像301のように黄斑部302と乳頭部(視神経乳頭部)303を含む眼底画像であって、各眼底画像が被検眼Eの眼底における略同一の箇所のものであるとする。また、ステップS102及びステップS104の撮影の結果得られた各眼底画像は、図5−1(b)及び図5−2(b)に示すように、各眼底画像における画素値の範囲が略同一の範囲である。
続いて、図3のステップS105において、図1の合成画像生成部150は、ステップS102の撮影の結果得られた眼底画像と、ステップS104の撮影の結果得られた眼底画像とを合成して、合成画像を生成する。このステップS105の処理の詳細について、以下に説明する。
【0046】
ステップS105の処理では、まず、ステップS102の撮影の結果得られた図5−1(b)に示す眼底画像の画素値の範囲のうち、最小値と最大値を除く画素値の範囲L1に対応する、撮影部140の撮像センサ141aに入射する入射光量を算出する。
ここで、画素値は、撮影時の露光時間、撮像センサ141aの信号を増幅するアンプの利得、及び、撮像センサ141aに入射する入射光量に関係している。このため、撮影時の露光時間及び撮像センサ141aの信号を増幅するアンプの利得の情報を保存しておくことにより、画素値に対応する入射光量を算出することが可能である。
【0047】
次いで、ステップS104の撮影の結果得られた図5−2(b)に示す眼底画像の画素値の範囲のうち、最小値と最大値を除く画素値の範囲L2に対応する、撮影部140の撮像センサ141aに入射する入射光量を算出する。
なお、本実施形態においては、図5−1(b)に示す画素値の範囲L1に対応する入射光量と、図5−2(b)に示す画素値の範囲L2に対応する入射光量とは、その範囲に、重複する部分があるものとする。
【0048】
次いで、合成画像生成部150は、ステップS102及びS104の撮影の結果得られた複数の眼底画像(本実施形態では2つの眼底画像)における画素値の範囲よりも広い画素値の範囲からなる画像であって、撮影部140の撮像センサ141aに入射する入射光量に基づき前記複数の眼底画像を合成してなる合成画像を生成する。
図6−1は、本発明の実施形態を示し、合成画像の画素値の分布の一例を示すヒストグラムの図である。この図6−1に示す合成画像は、図5−1(b)及び図5−2(b)に示す眼底画像に画素値の範囲である0〜214よりも広い画素値の範囲である0〜216からなる画像である。換言すれば、合成画像は、図5−1(b)及び図5−2(b)に示す眼底画像よりもダイナミックレンジの大きいハイダイナミックレンジ(High Dynamic Range:HDR)画像である。また、この図6−1に示す合成画像は、ステップS102の撮影の結果得られた図5−1(b)に示す眼底画像の画素値の範囲L1に対応する入射光量とステップS104の撮影の結果得られた図5−2(b)に示す眼底画像の画素値の範囲L2に対応する入射光量とを考慮して、当該複数の眼底画像(本実施形態では2つの眼底画像)を合成して得られた画像である。本実施形態では、上述したように、図5−1(b)に示す画素値の範囲L1に対応する入射光量と、図5−2(b)に示す画素値の範囲L2に対応する入射光量とは、その範囲に、重複する部分があるため、図6−1に示す合成画像では、2つの眼底画像を合成した際に重なり領域が存在している。なお、図6−1に示す合成画像において、重なり領域の画素値は、例えば、図5−1(b)に示す眼底画像の画素値と図5−2(b)に示す眼底画像の画素値との平均値で構成する。」

(甲2イ)図5−1、図5−2、図6−1


(2)甲2に記載された技術事項
上記(1)の記載及び図面から、甲2には、次の技術事項が記載されていると認められる。

「 各撮影パラメータセットは、相互に異なる撮影条件で撮影を行うためのものであり、各撮影パラメータセットに基づき撮影された結果得られる各眼底画像は、相互に画素値の分布が異なるものであり、
撮影パラメータセットを大きく変えた撮影の結果得られた、被検眼Eの眼底における略同一の箇所の2つの眼底画像における画素値の範囲よりも広い画素値の範囲からなる画像であって、撮影部140の撮像センサ141aに入射する入射光量に基づき前記2つの眼底画像を合成してなる合成画像を生成する合成画像生成部150は、
一方の眼底画像の画素値の範囲のうち、最小値と最大値を除く画素値の範囲L1に対応する、撮影部140の撮像センサ141aに入射する入射光量と、他方の眼底画像の画素値の範囲のうち、最小値と最大値を除く画素値の範囲L2に対応する、撮影部140の撮像センサ141aに入射する入射光量とは、前記画素値の範囲L1とL2に、入射光量が重複する画像値領域があるため、2つの眼底画像を合成した際に入射光量が重複する画像値領域が存在している合成画像を生成すること。」

3 甲3について

(1)甲3の記載
甲3には、以下の事項が記載されている。

(甲3ア)
「【請求項1】
被検眼の眼底に照明光を照射する照明光学系と、
前記照明光の眼底反射光を撮像素子に導く撮影光学系と、
前記照明光学系及び前記撮影光学系を制御して、露出を変更しつつ前記眼底の撮影を複数回行わせる制御部と、
前記複数回の撮影で得られた露出の異なる複数の画像に対してハイダイナミックレンジ合成を施すことにより眼底像を生成する画像生成部と、
を備えることを特徴とする眼底撮影装置。」

(甲3イ)
「【0055】
一般に、HDRは、露出を変えつつ撮影して得られた複数枚の画像を合成することにより、白飛びや黒潰れが少なく広いダイナミックレンジを持つ画像(いわゆるハイダイナミックレンジ画像)を生成する技術である。ハイダイナミックレンジ画像を表示する際には、トーンマッピングを施してダイナミックレンジを縮小する。トーンマッピングの手法としては、画像全体のコントラストを下げる手法や、画像のコントラストを局所的に下げる手法などがある。なお、HDRについては、たとえば特開2006−87063号公報などに記載されている。」

(2)甲3に記載された技術事項
上記(1)の記載から、甲3には、次の技術事項が記載されていると認められる。

「 眼底撮影装置において、画像生成部は、複数回の撮影で得られた露出の異なる複数の画像に対してハイダイナミックレンジ合成を施すことにより眼底像を生成すること。」

4 特開2006−87063号公報について
甲3には、ハイダイナミックレンジ合成の具体的手法について明記されておらず、また、甲3の【0055】には、「HDRについては、たとえば特開2006−87063号公報などに記載されている。」との記載があるので、特開2006−87063号公報(以下「甲3参考」という。)を確認する。甲3参考には、以下の事項が記載されている。

(甲3参考ア)
「【0001】
本発明は、画像合成に関するものであって、特に、多重露光画像合成システム及び多重露光画像合成方法に関するものである。
・・・
【0040】
例を挙げると、図4は本発明の実施例を示す図で、この実施例中、まず、3枚の同一情景の異なる露光時間を経た低ダイナミックレンジ画像を提供する。ユーザーインターフェース、或いは、その他の表示方式により、使用者は提供された低ダイナミックレンジ画像中、マウスなどの表示ツールを使用して表示部分を表示する。表示部分は、表示削除部分、及び/又は、表示保留部分である。
【0041】
図4に示されるように、使用者は、第一画像30中で保留したい部分、即ち、表示保留部分360を表示し、第二画像32中で削除したい部分、即ち、表示削除部分382を表示する。表示削除部分382及び表示保留部分360は、同一の低ダイナミックレンジ画像中、或いは、異なる低ダイナミックレンジ画像中で表示され、表示削除部分382及び表示保留部分360だけを選択する。
【0042】
その後、低ダイナミックレンジ画像中に表示された表示部分を検出する。詳述すると、使用者が第一画像30中に表示する保留したい表示保留部分360は、まず、第二画像32、及び、第三画像34の同一位置上に複製される。図中の362と364は、それを示したものである。なお、図4では、362及び364は、第一画像30中に表示されているが、実際には、362は第二画像32中に表示され、364は第三画像34中に表示されている。その後、画像合成を実行する時、第二画像32と第三画像34のこの表示区域(362と364の表示位置)の画像は削除され、第一画像30で表示する保留したい表示保留部分360だけをその表示区域に合成する。使用者が第二画像32中に表示する削除したい表示削除部分382は、画像合成時、直接、削除され、第一画像30及び第三画像34のこの表示区域の画像が合成される。つまり、表示部分に基づいて、低ダイナミックレンジ画像の画像合成が実行され、高ダイナミックレンジ画像が形成される。」

(甲3参考イ)図4


(2)甲3参考に記載された技術事項
上記(1)の記載及び図面から、甲3参考には、次の技術事項が記載されていると認められる。

「 多重露光画像合成システムにおいて、3枚の同一情景の異なる露光時間を経た低ダイナミックレンジ画像が提供され、使用者は提供された低ダイナミックレンジ画像中、マウスなどの表示ツールを使用して表示部分を表示し、表示部分は、表示削除部分、及び/又は、表示保留部分であり、
使用者が第一画像30中に表示する保留したい表示保留部分360を、まず、第二画像32、及び、第三画像34の同一位置上に複製し、その後、画像合成を実行する時、第二画像32と第三画像34のこの表示区域(362と364の表示位置)の画像を削除し、第一画像30で表示する保留したい表示保留部分360だけをその表示区域に合成し、使用者が第二画像32中に表示する削除したい表示削除部分382を、画像合成時、直接、削除し、第一画像30及び第三画像34のこの表示区域の画像に合成し、
つまり、表示部分に基づいて、低ダイナミックレンジ画像の画像合成を実行し、高ダイナミックレンジ画像を形成すること。」

5 甲4について

(1)甲4の記載
甲4には、以下の事項が記載されている。

(甲4ア)
「【0002】
【従来の技術】近年、露光量の異なる複数の画像を合成することによって広ダイナミックレンジの撮像画像を得る試みは、種々提案されている。
【0003】その1つは、露出量の異なる2つの原画像データから、一旦1つの広いダイナミックレンジ(以下、「Dレンジ」という)の画像を生成し、この画像に対して各種の画像処理を施して記録対象画像を生成するものである。ここで、中間段階で生成される広いDレンジの画像とは、全てのレンジをカバーできるように原画像のデータのビット数よりも多くのビット数を有した画像である。このように、広いDレンジの画像を用いて各種の画像処理を行うことにより、最良の処理を施し得る可能性を有している。
【0004】また、他の方法の1つは、2つの原画像データを画素毎に加算平均して加重合成した画像を生成するものである。この方法では、画像の演算処理が単純であるため、撮像装置への適用が容易であるという利点を備えている。」

(2)甲4に記載された技術事項
上記(1)の記載から、甲4には、次の技術事項が記載されていると認められる。

「露光量の異なる複数の画像を合成することによって広ダイナミックレンジの撮像画像を得る試みについて、
その1つは、露出量の異なる2つの原画像データから、一旦1つの広いダイナミックレンジの画像を生成し、この画像に対して各種の画像処理を施して記録対象画像を生成するものであり、
また、他の方法の1つは、2つの原画像データを画素毎に加算平均して加重合成した画像を生成するものであること。」

6 甲5について

(1)甲5の記載
甲5には、以下の事項が記載されている。

(甲5ア)
「【要約】
【課題】 本発明は画像処理装置及び画像出力装置に関し、ダイナミックレンジを拡大することができる画像処理装置及び画像出力装置を提供することを目的としている。
【解決手段】 同一画像を異なる第1と第2の露光条件で撮像する手段と、各撮像された第1と第2の画像を明度成分と色度成分に変換する手段と、前記第1と第2の画像を合成する合成手段また合成された画像をγ変換部を通して表示或いはプリントする画像出力装置とを具備して構成される。」

(甲5イ)
「【0015】3は色分解されたB,G,Rの画像成分を明度と色味からなるHLS空間、Luv空間或いはLab空間に変換する変換部である。本例ではLab空間に変換するLab変換部である。4はLab空間において、露光条件が異なる第1と第2の2つの画像を合成する画像合成部である。該画像合成部4は、同一画像についての露光条件の異なる第1と第2の画像に対して、明るい画像領域に対しては、明るい情報が多く含まれた、即ちダイナミックレンジが広い条件で撮像した第1の画像の明度成分を多く用い、暗い画像領域に対しては、暗い情報が多く含まれた、即ちダイナミックレンジが広い条件で撮像した第2画像の明度成分を合成するものである。画像合成の手段としては、単純加算平均をとる方法、2つの画像暗部と明部でウェイトを変化させてつなぎ合成する方法等がある。」

(2)甲5に記載された技術事項
上記(1)の記載から、甲5には、次の技術事項が記載されていると認められる。

「ダイナミックレンジを拡大することができる画像処理装置において、露光条件が異なる第1と第2の2つの画像を合成する画像合成部を備え、該画像合成部は、同一画像についての露光条件の異なる第1と第2の画像に対して、明るい画像領域に対しては、明るい情報が多く含まれた第1の画像の明度成分を多く用い、暗い画像領域に対しては、暗い情報が多く含まれた第2画像の明度成分を多く用いて合成するものであり、画像合成の手段としては、単純加算平均をとる方法、2つの画像暗部と明部でウェイトを変化させてつなぎ合成する方法等があること。」

7 甲6について

(1)甲6の記載
甲6には、以下の事項が記載されている。

(甲6ア)
「【0042】
図2(a)からわかるように、本実施形態では、フレーム毎に異なる露出量の画像が出力可能であって、3つの被合成画像を合成に用いる1組として周期的に連続して被合成画像が出力される。そして、出力された複数の被合成画像を合成して1つの合成画像を出力することによってHDR合成処理が行われる。
・・・
【0093】
最後に、適正露出画像の輝度レベルを基準として被合成画像の輝度レベルを合わせ、所定の合成比率に応じての被合成画像同士の合成が実行され合成画像の画像データがメモリ14へ出力される。尚、本実施形態に係る撮像装置において、合成処理は前述の動作をおこなうものに限定されるものではなく、例えば、被合成画像同士の加算平均をおこなうだけでも良い。また、上述した合成処理は、画像処理部9、CPU10、メモリ14、露出制御部18などを適宜用いることで実現する。」

(2)甲6に記載された技術事項
上記(1)の記載から、甲6には、次の技術事項が記載されていると認められる。

「撮像装置における、出力された複数の被合成画像を合成して1つの合成画像を出力することによって行われるHDR合成処理は、被合成画像同士の加算平均をおこなうこと。」

第7 当審の判断

新規性進歩性について

(1)本件発明2について

ア 対比
本件発明2と甲1発明とを対比する。

(ア)甲1発明の「同じ位置の5回の繰り返しBスキャン信号(N=1〜5)を連続して取得し」、「異なる時間間隔のBスキャンの組のOCTAデコリレーションを演算」する「超高速SSOCT研究用プロトタイプ」は、OCT信号であるBスキャン信号を演算処理する装置であるから、本件発明2の「OCT信号を処理するOCT信号処理装置」に相当する。

(イ)甲1発明の「超高速SSOCT研究用プロトタイプ」は、「超高速掃引光源を使用した」「SSOCT」装置であるから、本件発明2の「被検物に照射された測定光の反射光と前記測定光に対応する参照光とに基づいてOCT信号を検出するOCTデバイス」に相当する構成を備えていることが明らかである。また、甲1発明の「超高速SSOCT研究用プロトタイプ」は、「同じ位置の5回の繰り返しBスキャン信号(N=1〜5)を連続して取得」することから、何らかの取得するための手段を備えていることは明らかであり、当該取得するための手段は、本件発明2の「被検物に照射された測定光の反射光と前記測定光に対応する参照光とに基づいてOCT信号を検出するOCTデバイスから、被検物上の同一位置に関して時間的に異なる3つ以上のOCT信号を取得する取得手段」に相当する。

(ウ)甲1発明の「連続したBスキャン信号(1⇔2,2⇔3,3⇔4,4⇔5)の相関を取る約1.5msの時間間隔と、一つ置きのBスキャン信号(1⇔3,2⇔4,3⇔5)の相関を取る約3.0msの時間間隔の、二つの異なる時間間隔を用いて、異なる時間間隔のBスキャンの組のOCTAデコリレーションを演算」することは、本件発明2の「複数のOCT信号に基づいてモーションコントラストを演算する演算手段と、を備え、
前記演算手段は、前記3つ以上のOCT信号の中から複数のOCT信号を抜き出して得られる組のうち、OCT信号間のタイムインターバルが異なる組を2つ以上選択し、選択した2つ以上の組ごとにモーションコントラストを演算」することに相当する。

すると、本件発明2と甲1発明とは、次の点で一致し、次の点で相違する。

(一致点)
「OCT信号を処理するOCT信号処理装置であって、
被検物に照射された測定光の反射光と前記測定光に対応する参照光とに基づいてOCT信号を検出するOCTデバイスから、被検物上の同一位置に関して時間的に異なる3つ以上のOCT信号を取得する取得手段と、
複数のOCT信号に基づいてモーションコントラストを演算する演算手段と、を備え、
前記演算手段は、前記3つ以上のOCT信号の中から複数のOCT信号を抜き出して得られる組のうち、OCT信号間のタイムインターバルが異なる組を2つ以上選択し、選択した2つ以上の組ごとにモーションコントラストを演算するOCT信号処理装置。」

(相違点)
本件発明2では、「前記2つ以上の組ごとに演算したモーションコントラストを合成する」のに対し、甲1発明では、「時間間隔約1.5msで得られたEn face OCTA画像と、時間間隔約3.0msで得られたEn face OCTA画像とを、それぞれ表示する」ので、各OCTA画像を合成していない点。

イ 判断
上記相違点について検討する。

甲1発明は、「地図状萎縮(GA)を伴う非滲出型加齢黄斑変性(AMD)の患者の網膜及び脈絡毛細管枝(CC)に生じる血管の変化を可視化する方法としての、超高速掃引光源を使用した光コヒーレンストモグラフィー造影(OCTA)及び時間間隔可変解析(VISTA)」を評価するものである。
そして、甲1発明は、「VISTAアルゴリズムを用いて、GA領域を超えるCC流れ障害が存在すること、そしてそのような流れ障害が存在する場合、GA領域を超えるCC流れ障害は、GA領域内のフロー障害よりも顕著ではないことを実証し」ており、図4(甲1カ)や(甲1キ)の記載も踏まえると、時間間隔1.5msのOCTA画像では、GA領域内、及びGA領域に沿った領域で血管の存在を観察できず、時間間隔1.5msのOCTA画像より遅い流れも観察できる時間間隔3.0msのOCTA画像では、GA領域内で血管の存在を観察できず、GA領域に沿った領域で血管の存在を観察できたことから、時間間隔が異なる2つのOCTA画像を見比べることによって、GA領域内の流れの障害がGA領域に沿った領域よりも大きいことを把握し、「GA領域に沿った流れの障害」を示唆する「脈絡毛細管枝(CC)に生じる血管の変化」を目視によって確認するものである。このようにして、甲1発明では、「超高速掃引光源を使用した光コヒーレンストモグラフィー造影(OCTA)及び時間間隔可変解析(VISTA)」について、「OCTAのダイナミックレンジを広げることが可能であり、固定の時間間隔を用いた場合には検出できない流れの減損の程度を識別することが可能であ」ると評価している。
よって、甲1発明においては、患者の網膜及び脈絡毛細管枝(CC)に生じる血管の変化を目視で確認することが前提となっており、より具体的には、2つの画像における、血管の有無の相違を目視で確認するものであるから、これらの画像を加算合成すると、それぞれの画像における血管の分布が重複することになり、また、時間間隔3.0msのOCTA画像から時間間隔1.5msのOCTA画像を減算合成すると、遅い血流のみの血管の分布となり、いずれの場合も、2つの画像を見比べることにより確認していた血管の有無の相違(両方の画像におけるGA領域内での血管の不存在、一方の画像のみにおけるGA領域に沿った領域での血管の存在)を確認することが困難となるため、甲1発明において、当該2つのOCTA画像を加算合成、減算合成する動機付けは存在しないというべきである。
また、仮に、時間間隔(ダイナミックレンジ)が異なる2つのOCTA画像を合成し、ダイナミックレンジの広い1つのOCTA画像を生成することが周知技術であったとして、甲1発明において、当該周知技術を考慮すると、時間間隔(ダイナミックレンジ)が異なる2つのOCTA画像を合成することで、低速〜高速まで広範囲の流速を識別できる濃淡レベルで表示された1つのOCTA画像が生成されることが想定されるが、このダイナミックレンジの広い1つのOCTA画像では、上記したように、2つの画像における血管の有無の相違(両方の画像におけるGA領域内での血管の不存在、一方の画像のみにおけるGA領域に沿った領域での血管の存在)を目視により確認することが困難になるから、甲1発明において、当該2つのOCTA画像をダイナミックレンジの広い1つのOCTA画像に合成する動機付けは存在しないということに加えて、阻害要因があるともいうべきである。
さらに、甲2〜6、甲3参考の記載を踏まえても、甲1発明における上記判断に影響を与える事項は存在しない。
すると、上記相違点に係る本件発明2の構成とすることは、甲1発明及び甲2〜6、甲3参考に基づいて当業者が容易に想到し得ることとはいえない。

ウ 小括
したがって、本件発明2は、当業者であっても、甲1発明及び甲2〜6、甲3参考に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本件発明3について
本件発明3は、本件発明2を減縮した発明であり、上記相違点に係る本件発明2の構成を備えるものであるから、本件発明2と同じ理由により、当業者であっても、甲1発明及び甲2〜6、甲3参考に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本件発明4、5について
本件発明4、5は、それぞれ、本件発明2に対応するOCT信号処理装置、OCT信号処理プログラムの発明であり、上記相違点に係る本件発明2の構成に対応する構成を備えるものである。
よって、本件発明4、5と甲1発明との間に上記相違点がある以上、本件発明4、5は、甲1発明であるとはいえない。また、本件発明4、5は、本件発明2と同じ理由により、当業者であっても、甲1発明及び甲2〜6、甲3参考に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 サポート要件について
請求項1、4、5に対するサポート要件違反に関して、本件訂正請求による訂正により、請求項1は削除され、請求項2の構成が請求項4、5に加えられたことで、サポート要件違反に係る当該特許異議申立理由及び当審取消理由は解消した。

第8 申立人の主張について

1 申立人は、令和3年10月11日付け意見書の「3−1 甲第1号証の認定について」の欄(第1〜8頁)において、「甲第1号証の目的は、新しい診断手法として時間間隔可変解析(VISTA)を導入することであり、それにより流速の検出範囲のダイナミックレンジを拡大することであって、甲第1号証における画像の比較に関する記載」(図4における(D)と(E)および(H)と(I)の各々における同一領域の比較)は、時間間隔可変解析の効果を説明したものであり、医師が診察のために行った行為を説明するものではない。そして、新しい診断手法を導入するという甲第1号証の趣旨に鑑みれば、より効率的な診断を行うために、ダイナミックレンジの異なる2つの画像を合成する動機となる記載は十分に存在する。」と主張している。
しかしながら、甲1発明において、当該2つのOCTA画像をダイナミックレンジの広い1つのOCTA画像に合成する動機付けが存在しない理由は、第7の1(1)イで説示したとおりである。
よって、申立人の上記主張は採用できない。

2 申立人は、令和3年10月11日付け意見書の「3−2 ダイナミックレンジが異なる信号に基づいた2つの画像の合成(訂正発明2、4、5に対する甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証の説明)」の欄(第8〜9頁)において、「甲第1号証における図1の流速検出範囲の異なる二つのOCTA画像である(C)および(F)に対して3つの流速((*)、(■)、(●))」のデコリレーションシグナル(OCTA画像では明暗)の大小関係を「直接的に」把握するために、ダイナミックレンジが異なる眼底画像を合成するという上記周知の技術的事項を組み合わせて、ダイナミックレンジの広いOCTA画像を取得して本件訂正発明2,4及び5に想到することは、当業者が容易になし得た程度のことである。」と主張している。
たしかに、甲1発明において、時間間隔(ダイナミックレンジ)が異なる2つのOCTA画像を合成することで、低速〜高速まで広範囲の流速を識別できる濃淡レベルで表示された1つのOCTA画像が生成されることが想定され、このような合成によって生成されたOCTA画像は、デコリレーションシグナル(OCTA画像では明暗)の大小関係を「直接的に」把握できるかもしれない。
しかしながら、上記1と同様に、第7の1(1)イで説示したとおり、甲1発明において、当該2つのOCTA画像をダイナミックレンジの広い1つのOCTA画像に合成する動機付けが存在しないから、甲1発明から、本件発明2〜5のようにすることは当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
よって、申立人の上記主張は採用できない。

第9 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、特許異議申立書に記載した申立理由、及び意見書に記載した理由によっては、本件請求項2ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他には、本件請求項2ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項1に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項1に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。

よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】(削除)
【請求項2】
OCT信号を処理するOCT信号処理装置であって、
被検物に照射された測定光の反射光と前記測定光に対応する参照光とに基づいてOCT信号を検出するOCTデバイスから、被検物上の同一位置に関して時間的に異なる3つ以上のOCT信号を取得する取得手段と、
複数のOCT信号に基づいてモーションコントラストを演算する演算手段と、を備え、
前記演算手段は、前記3つ以上のOCT信号の中から複数のOCT信号を抜き出して得られる組のうち、OCT信号間のタイムインターバルが異なる組を2つ以上選択し、選択した2つ以上の組ごとにモーションコントラストを演算し、前記2つ以上の組ごとに演算したモーションコントラストを合成することを特徴とするOCT信号処理装置。
【請求項3】
前記演算手段は、前記2つ以上の組ごとに演算したモーションコントラストを統計処理によって合成することを特徴とする請求項2のOCT信号処理装置。
【請求項4】
OCT信号を処理するOCT信号処理装置であって、
被検物に照射された測定光の反射光と前記測定光に対応する参照光とに基づいてOCT信号を検出するOCTデバイスと、
前記OCTデバイスから、被検物上の同一位置に関して時間的に異なる3つ以上のOCT信号を取得する取得手段と、
複数のOCT信号に基づいてモーションコントラストを演算する演算手段と、を備え、
前記演算手段は、前記3つ以上のOCT信号の中から複数のOCT信号を抜き出して得られる組のうち、OCT信号間のタイムインターバルが異なる組を2つ以上選択し、選択した2つ以上の組ごとにモーションコントラストを演算し、前記2つ以上の組ごとに演算したモーションコントラストを合成することを特徴とするOCT信号処理装置。
【請求項5】
OCT信号を処理するOCT信号処理装置において実行されるOCT処理プログラムであって、前記OCT信号処理装置のプロセッサによって実行されることで、
被検物に照射された測定光の反射光と前記測定光に対応する参照光とに基づいてOCT信号を検出するOCTデバイスから、被検物上の同一位置に関して時間的に異なる3つ以上のOCT信号を取得する取得ステップと、
前記3つ以上のOCT信号の中から複数のOCT信号を抜き出して得られる組のうち、OCT信号間のタイムインターバルが異なる組を2つ以上選択し、選択した2つ以上の組ごとにモーションコントラストをそれぞれ演算し、前記2つ以上の組ごとに演算したモーションコントラストを合成する演算ステップと、
を前記OCT信号処理装置に実行させることを特徴とするOCT信号処理プログラム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-02-02 
出願番号 P2017-560401
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (G01N)
P 1 651・ 113- YAA (G01N)
P 1 651・ 537- YAA (G01N)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 井上 博之
特許庁審判官 ▲高▼見 重雄
渡戸 正義
登録日 2020-07-29 
登録番号 6741025
権利者 株式会社ニデック
発明の名称 OCT信号処理装置、およびOCT信号処理プログラム  
代理人 水越 邦仁  
代理人 武藤 広晃  
代理人 水越 邦仁  
代理人 武藤 広晃  

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