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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H02J
管理番号 1384083
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-03-15 
確定日 2021-12-06 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6755829号発明「無線給電システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6755829号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の〔1−6〕について訂正することを認める。 特許第6755829号の請求項4ないし6に係る特許を維持する。 特許第6755829号の請求項1ないし3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6755829号の請求項1ないし4に係る発明についての出願は、平成29年4月25日に出願され、令和2年8月28日にその特許権が設定登録され、令和2年9月16日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立での経緯は、次のとおりである。
令和 3年 3月15日:特許異議申立人永井道雄による請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立て
令和 3年 7月 9日付け:取消理由通知書
令和 3年 9月 9日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和 3年10月27日 :特許異議申立人による意見書の提出

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和3年9月9日の訂正請求の趣旨は、特許第6755829号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであり、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に、
「前記送電側フィルタおよび受電側フィルタは、L−C−L構成のT型フィルタを少なくとも1つ含む、請求項1から請求項3いずれか一項記載の無線給電システム。」と記載されているうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、
「送電装置と、受電装置とを備えた無線給電システムであって、
前記送電装置は、
高周波電源から供給される交流電流に応じた磁界を発生する送電側コイルと、
一以上のインダクタおよび一以上のキャパシタを有する送電側フィルタと、を備え、
前記受電装置は、
送電側コイルが発生する磁界に応じた交流電流を発生する受電側コイルと、
前記受電側コイルが発生する交流電流が供給される受電側負荷と、
一以上のインダクタおよび一以上のキャパシタを有する受電側フィルタと、を備え、
前記送電側フィルタおよび受電側フィルタは、前記送電側コイルと受電側コイルとが電磁的に結合していない状態の前記高周波電源から見た送電装置のインピーダンスが、電磁的に結合している状態の前記高周波電源から見た送電装置および受電装置のインピーダンスに対して高くなるよう構成されており、
前記送電側フィルタおよび受電側フィルタは、バンドパスフィルタであり、L−C−L構成のT型フィルタを少なくとも1つ含む、無線給電システム。」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項4に、
「前記送電側フィルタおよび受電側フィルタは、L−C−L構成のT型フィルタを少なくとも1つ含む、請求項1から請求項3いずれか一項記載の無線給電システム。」と記載されているうち、請求項2を引用するものについて、独立形式に改め、
「送電装置と、受電装置とを備えた無線給電システムであって、
前記送電装置は、
高周波電源から供給される交流電流に応じた磁界を発生する送電側コイルと、
一以上のインダクタおよび一以上のキャパシタを有する送電側フィルタと、を備え、
前記受電装置は、
送電側コイルが発生する磁界に応じた交流電流を発生する受電側コイルと、
前記受電側コイルが発生する交流電流が供給される受電側負荷と、
一以上のインダクタおよび一以上のキャパシタを有する受電側フィルタと、を備え、
前記送電側フィルタおよび受電側フィルタは、前記送電側コイルと受電側コイルとが電磁的に結合していない状態の前記高周波電源から見た送電装置のインピーダンスが、電磁的に結合している状態の前記高周波電源から見た送電装置および受電装置のインピーダンスに対して高くなるよう構成されており、
前記送電側フィルタおよび受電側フィルタは、電磁的に結合している状態の前記高周波電源から見た送電装置および受電装置のインピーダンスが、前記高周波電源の出力インピーダンスと等しくなるよう構成されており、
前記送電側フィルタおよび受電側フィルタは、バンドパスフィルタであり、L−C−L構成のT型フィルタを少なくとも1つ含む、無線給電システム。」に訂正して、新たに請求項5とする。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項4に、
「前記送電側フィルタおよび受電側フィルタは、L−C−L構成のT型フィルタを少なくとも1つ含む、請求項1から請求項3いずれか一項記載の無線給電システム。」と記載されているうち、請求項3を引用するものについて、独立形式に改め、
「送電装置と、受電装置とを備えた無線給電システムであって、
前記送電装置は、
高周波電源から供給される交流電流に応じた磁界を発生する送電側コイルと、
一以上のインダクタおよび一以上のキャパシタを有する送電側フィルタと、を備え、
前記受電装置は、
送電側コイルが発生する磁界に応じた交流電流を発生する受電側コイルと、
前記受電側コイルが発生する交流電流が供給される受電側負荷と、
一以上のインダクタおよび一以上のキャパシタを有する受電側フィルタと、を備え、
前記送電側フィルタおよび受電側フィルタは、前記送電側コイルと受電側コイルとが電磁的に結合していない状態の前記高周波電源から見た送電装置のインピーダンスが、電磁的に結合している状態の前記高周波電源から見た送電装置および受電装置のインピーダンスに対して高くなるよう構成されており、
前記送電側フィルタおよび受電側フィルタは、電磁的に結合している状態の前記高周波電源から見た送電装置および受電装置のインピーダンスが、前記高周波電源の出力インピーダンスと等しくなるよう構成されており、
前記送電側フィルタおよび受電側フィルタが有する前記インダクタのインピーダンスおよび前記キャパシタの容量は、前記送電側コイルと受電側コイルとの間の距離、および前記受電側負荷のインピーダンスに応じて決定され、
前記送電側フィルタおよび受電側フィルタは、バンドパスフィルタであり、L−C−L構成のT型フィルタを少なくとも1つ含む、無線給電システム。」に訂正して、新たに請求項6とする。

(7)一群の請求項について
本件訂正前の請求項1ないし4は、請求項2ないし4が、訂正の対象となる請求項1を直接又は間接的に引用しているものであるから、一群の請求項であり、これら訂正前の請求項1ないし4に対応する訂正後の請求項1ないし6も一群の請求項である。
本件訂正請求は、一群の請求項〔1−6〕に対して請求されたものである。

2 訂正の適否についての判断
(1)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1ないし3について
訂正事項1ないし3は、請求項1ないし3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

イ 訂正事項4について
(ア)訂正の目的
訂正事項4は、訂正前の請求項4が請求項1から請求項3いずれか一項の記載を引用するものであったのものを、請求項2、3の引用を削除し、請求項1を引用するものについて、請求項1との引用関係を解消するものであるから、特許請求の範囲の減縮、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
加えて、訂正事項4は、訂正前の請求項4に記載の「前記送電側フィルタおよび受電側フィルタ」を「バンドパスフィルタ」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項4における、「送電側フィルタおよび受電側フィルタ」が「バンドパスフィルタ」であることについては、明細書の段落【0072】に記載されているから、訂正事項4は新規事項の追加に該当しない。
そして、訂正事項4は上述のとおり、訂正前の請求項4に係る発明について引用関係を解消すると共に特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

ウ 訂正事項5について
(ア)訂正の目的
訂正事項5は、訂正前の請求項4が請求項1から請求項3いずれか一項の記載を引用するものであったのものを、請求項1、3の引用を削除し、請求項2を引用するものについて、請求項1及び請求項2との引用関係を解消するものであるから、特許請求の範囲の減縮、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
加えて、訂正事項5は、訂正前の請求項4に記載の「前記送電側フィルタおよび受電側フィルタ」を「バンドパスフィルタ」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項5における、「送電側フィルタおよび受電側フィルタ」が「バンドパスフィルタ」であることについては、明細書の段落【0072】に記載されているから、訂正事項5は新規事項の追加に該当しない。
そして、訂正事項5は上述のとおり、訂正前の請求項4に係る発明について引用関係を解消すると共に特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

エ 訂正事項6について
(ア)訂正の目的
訂正事項6は、訂正前の請求項4が請求項1から請求項3いずれか一項の記載を引用するものであったのものを、請求項1、2の引用を削除し、請求項3を引用するものについて、請求項1、請求項2及び3との引用関係を解消するものであるから、特許請求の範囲の減縮、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
加えて、訂正事項6は、訂正前の請求項4に記載の「前記送電側フィルタおよび受電側フィルタ」を「バンドパスフィルタ」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項6における、「送電側フィルタおよび受電側フィルタ」が「バンドパスフィルタ」であることについては、明細書の段落【0072】に記載されているから、訂正事項6は新規事項の追加に該当しない。
そして、訂正事項6は上述のとおり、訂正前の請求項4に係る発明について引用関係を解消すると共に特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)小活
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−6〕について訂正することを認める。

第3 本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし6に係る発明(以下「本件発明1ないし6」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
送電装置と、受電装置とを備えた無線給電システムであって、
前記送電装置は、
高周波電源から供給される交流電流に応じた磁界を発生する送電側コイルと、
一以上のインダクタおよび一以上のキャパシタを有する送電側フィルタと、を備え、
前記受電装置は、
送電側コイルが発生する磁界に応じた交流電流を発生する受電側コイルと、
前記受電側コイルが発生する交流電流が供給される受電側負荷と、
一以上のインダクタおよび一以上のキャパシタを有する受電側フィルタと、を備え、
前記送電側フィルタおよび受電側フィルタは、前記送電側コイルと受電側コイルとが電磁的に結合していない状態の前記高周波電源から見た送電装置のインピーダンスが、電磁的に結合している状態の前記高周波電源から見た送電装置および受電装置のインピーダンスに対して高くなるよう構成されており、
前記送電側フィルタおよび受電側フィルタは、バンドパスフィルタであり、L−C−L構成のT型フィルタを少なくとも1つ含む、無線給電システム。
【請求項5】
送電装置と、受電装置とを備えた無線給電システムであって、
前記送電装置は、
高周波電源から供給される交流電流に応じた磁界を発生する送電側コイルと、
一以上のインダクタおよび一以上のキャパシタを有する送電側フィルタと、を備え、
前記受電装置は、
送電側コイルが発生する磁界に応じた交流電流を発生する受電側コイルと、
前記受電側コイルが発生する交流電流が供給される受電側負荷と、
一以上のインダクタおよび一以上のキャパシタを有する受電側フィルタと、を備え、
前記送電側フィルタおよび受電側フィルタは、前記送電側コイルと受電側コイルとが電磁的に結合していない状態の前記高周波電源から見た送電装置のインピーダンスが、電磁的に結合している状態の前記高周波電源から見た送電装置および受電装置のインピーダンスに対して高くなるよう構成されており、
前記送電側フィルタおよび受電側フィルタは、電磁的に結合している状態の前記高周波電源から見た送電装置および受電装置のインピーダンスが、前記高周波電源の出力インピーダンスと等しくなるよう構成されており、
前記送電側フィルタおよび受電側フィルタは、バンドパスフィルタであり、L−C−L構成のT型フィルタを少なくとも1つ含む、無線給電システム。
【請求項6】
送電装置と、受電装置とを備えた無線給電システムであって、
前記送電装置は、
高周波電源から供給される交流電流に応じた磁界を発生する送電側コイルと、
一以上のインダクタおよび一以上のキャパシタを有する送電側フィルタと、を備え、
前記受電装置は、
送電側コイルが発生する磁界に応じた交流電流を発生する受電側コイルと、
前記受電側コイルが発生する交流電流が供給される受電側負荷と、
一以上のインダクタおよび一以上のキャパシタを有する受電側フィルタと、を備え、
前記送電側フィルタおよび受電側フィルタは、前記送電側コイルと受電側コイルとが電磁的に結合していない状態の前記高周波電源から見た送電装置のインピーダンスが、電磁的に結合している状態の前記高周波電源から見た送電装置および受電装置のインピーダンスに対して高くなるよう構成されており、
前記送電側フィルタおよび受電側フィルタは、電磁的に結合している状態の前記高周波電源から見た送電装置および受電装置のインピーダンスが、前記高周波電源の出力インピーダンスと等しくなるよう構成されており、
前記送電側フィルタおよび受電側フィルタが有する前記インダクタのインピーダンスおよび前記キャパシタの容量は、前記送電側コイルと受電側コイルとの間の距離、および前記受電側負荷のインピーダンスに応じて決定され、
前記送電側フィルタおよび受電側フィルタは、バンドパスフィルタであり、L−C−L構成のT型フィルタを少なくとも1つ含む、無線給電システム。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし4に係る特許に対して、当審が令和3年7月9日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
1)下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、下記の請求項に係る発明は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
2)下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。



引用文献1:竹内 琢磨、他3名, “Double-LCCを用いた走行中ワイヤレス電力伝送の基礎実験”, 電子情報通信学会技術研究報告,社団法人 電子情報通信学会, 2016年5月27日発行, Vol.116, No.74, p.5-10(甲第1号証)
引用文献2:特開2017−70062号公報(甲第2号証)
引用文献3:大手 昌也、他5名,“電磁界共振結合を用いた非接触電力伝送システムにおける電力反射による電力伝送効率への影響の考察”,電気学会研究会資料.IIC, 電気学会産業計測制御研究会[編],2010年3月8日,2010(15-22),p.35-39(甲第3号証)
引用文献4:國枝 博昭,「なっとくする電気回路」,第11刷,株式会社 講談社,2004年8月1日,p114-117(甲第4号証)

●理由1(新規性)及び理由2(進歩性)について
・請求項 1
・引用文献 1

●理由2(進歩性)について
・請求項 2、3
・引用文献 1ないし3

・請求項 4
・引用文献 1,2

2 当審の判断
(1)特許法第29条第1項新規性)について
請求項1に係る特許は、訂正により削除されたため、請求項1に係る取消理由は、対象が存在しないものとなった。

(2)特許法第29条第2項進歩性)について
請求項1ないし3に係る特許は、訂正により削除されたため、請求項1ないし3に係る取消理由は、対象が存在しないものとなった。
以下、請求項4(訂正後の請求項4ないし6)に係る取消理由について検討する。

ア 引用文献の記載事項、引用発明
(ア)引用文献1の記載事項、引用発明
取消理由通知において引用した引用文献1には、図面とともに、次の技術事項が記載されている。(なお、下線は当審が付与した。以下、同様である。)
a 「あらまし 走行中の電気自動車に対してワイヤレス電力伝送を行うことで車載バッテリー容量の削減と航続距離の延長が期待できる.この走行中ワイヤレス電力伝送の実現のために,送電を行う一次側と受電する二次側を一つのシステムとみなしたシステム構成の検討が行われてきた.本稿では,一次側と二次側それぞれの共振回路にLCC を適用したDouble-LCC と従来のSS を用いる構成との特性比較を行う.主にそれぞれの相互インダクタンスに対する特性の変化について検討を行い,Double-LCC に関しては基礎実験を行うことでその特性を実証する.」

b 「1. はじめに
近年,環境性能の高さから注目を集めている電気自動車の問題点として電池容量による航続距離の短さがある.この問題の解決案として,走行中の電気自動車へ路面側の設備からワイヤレス電力伝送を行う走行中ワイヤレス電力伝送の研究が数多く報告されている[1]〜[4].これまでに報告されている研究においては,相互インダクタンスや負荷状態の変化と無関係に共振周波数が一意に定まるSS 方式が主に用いられてきたが,車両位置の検知とそれに合わせた路面側の給電装置の電力伝送のON/OFFを路面側で制御する必要があった[4].本稿で扱う,送電側受電側いずれにもLCC トポロジー[5], [6] を用いたDouble-LCC 方式[7] においても同様に相互インダクタンスや負荷の状態に関係なく共振周波数が一意に決まる.更に,Double-LCC 方式を用いる場合には車両位置の検知と路面側の給電装置のON/OFF制御が不要になるため,路面側の設備を簡潔化することが可能になり走行中ワイヤレス電力伝送の実現性を高めることが出来る.本稿では,従来用いられてきたSS 方式とDouble-LCC 方式の特性比較を主に相互インダクタンスLmの変化に着目して行う.更にDouble-LCC 方式に関しては基礎実験を行うことでその特性を実証する.」

c 「2. 走行中ワイヤレス電力伝送システム」

d 「2.2 Double-LCC+AC-bus
本稿では,図2 に示したような一つのインバータで発生させたAC で,共振回路トポロジーにLCC トポロジーを用いた送電コイルを駆動する方式について検討を行う.こちらの方式を用いることで,定電圧駆動しているインバータから一次側送電コイルに定電流特性を持たせるイミタンス変換特性を実現することが出来るため[6],インバータ数の削減を実現できる.また,この場合における一次側LCC トポロジーの入力インピーダンス特性によって二次側の車両が存在しない際には送電コイルに電流が流れないため,送電のON/OFF 用にセンサや制御を適用する必要がなく,一次側の設備を簡潔化することが可能である.」

e 「3. Lm 変動に伴う入力インピーダンスZin の変化
SS 方式を定電圧駆動のインバータに用いると,二次側の車両が離れてゆく毎に小さくなる送受電コイルの相互インダクタンスLm により,共振回路トポロジーの入力インピーダンスZin が小さくなるため送電コイルに大電流が流れ回路破壊に至る.これを防ぐために車両の検出と送電のON/OFF を行う必要がある.一方で,Double-LCC 方式を定電圧駆動のインバータに用いる場合はLm の減少に伴ってZin が大きくなるため,車両検出と送電のON/OFF を行う必要が無い.本章ではSS 方式およびDouble-LCC 方式に定電圧駆動のインバータに用いたそれぞれの場合に関して,Lm の変化に伴うZin の変化について検討する.なお,本章での検討においては各コイルの抵抗成分は十分に小さいものとして無視する.」

f 「3.1 SS 方式
図3 にSS 方式を用いた場合における回路図を示す.この回路図において,二次側の整流器の入力から車載バッテリーを見た時の等価負荷抵抗をRL とし,T 型等価回路で記述したものを図4 に示す[8].この等価回路において,入力インピーダンスZin を求める.」

g 「



h 「3.2 Double-LCC 方式
図5 に送電側および受電側にLCC トポロジーを用いた場合における回路図を示す.この回路図において,等価負荷抵抗RLを用いてT 型等価回路で記述したものを図6 に示す.この等価回路において,入力インピーダンスZin を求める.
まず,Z2 を求めると式(9) の様に表される.ここで,式(10)で表される共振条件を用いるとZ2 は式(11) で表すことが出来る.

式(11) に対して,式(12) の共振条件を適用すると,Z2 は式(13) の様に求められる.

次に,Z2 を用いてZ1 を求めると,式(14) のように求めることが出来る.

最後にZin を求めると式(15) で表すことが出来る.

ここで,式(16) で表される共振条件を適用すると,Zin は式(17) で表される.

これに式(18) の共振条件を適用することでZin は式(19) の様に求めることが出来る.

ここで,Lm → 0 となる場合を考えると,Iin は,Vin およびZin を用いて,式(20) で表される.

以上より,Double-LCC 方式を用いることで一次側コイル上に二次側の車両が存在しない場合においては自動的に送電が停止するため,一つのインバータで複数のコイルを駆動することが可能となる.更に,送電のON/OFF を行う必要もなくなるため,一次側の設備を簡潔に構成することが可能になる.」

i 「



j 「5. 実験
本稿ではDouble-LCC 方式を用いた場合について実験を行った.実験に用いたパラメータを表2 に示し,実験構成を図9 に示す.一次側と二次側コイル間のギャップは100 mm とし,一次側の送電コイル間は400 mmとした.負荷は電子負荷(KIKUSHUI: PLZ-4W) を用いてVload = 15 V の定電圧負荷を模擬した.2 つの送電コイル(Tx No.1, Tx No.2) を定電圧駆動のインバータ1 つで駆動し,一次側送電コイルと二次側受電コイル(Rx) の位置関係の変化に伴うLm の変化および一次側入力電流I0 の変化を計測した.表3 にLm の測定結果を示す.なお,位置関係の変化は送電コイルNo.1 と受電コイルとの中心が一致した状態をノミナル位置として,そこから送電コイルNo.2 に向けて長辺方向に200 mm(受電コイルの長辺方向半径が送電コイルNo.1 端から出る),400 mm(受電コイルが2 つの送電コイル間に位置する) ずつ移動させた場合について測定を行った.」

k 「




注:表2の当審訳)

l 「



m 「





注:表2の当審訳)

n 「5. 1 ノミナル位置における電力伝送
図10 に一次側送電コイルNo.1 と二次側受電コイルの中心が一致している場合の実験結果を示す.CH.1 およびCH.2 はいずれも一次側インバータ入力電圧V1 を表している.CH.3は送電コイルNo.1 のLCC トポロジー入力電流を表し,CH.4は送電コイルNo.2 のLCC トポロジー入力電流を表している.Lm = 10.6 μH である送電コイルNo.1 は正弦波に近い入力電流波形が現れ電力伝送を行っているのに対して,Lm = 0 μH であるNo.2 のコイルにはほぼ入力電流が発生していないことが確認できる.これらの電流波形の歪みは,主にDouble-LCC において回路上に並列に接続されたC0,C’0 のESR による影響であると考えられる.この時,一次側の送電電力が10.3W,二次側の受電電力が6.6W であった.これにより,複数のコイルを1 つのインバータで駆動した場合でも,相互インダクタンスLm が高いコイルに優先的に電力が流れこむことで車両の検知と送電のON/OFF が不要になることが確かめられた.」

o 「5. 3 送電コイル上に受電コイルが存在しない場合
図12 に一次側送電コイルNo.1 の中心から二次側受電コイルの中心が400 mm 送電コイルの長辺方向に変移し,2 つの送電コイル間に位置する場合の実験結果を示す.コイルNo.1 およびコイルNo.2 それぞれの相互インダクタンスLm = 0.88 μH と小さな値であり,いずれの入力電流波形からも電力伝送を行っていないことが確認できる.この時,一次側の入力電力が2.63W,二次側の受電電力は0W であった.これにより,単一のインバータで複数のコイルを駆動した際に,一次側の全コイル上に車両が存在しない場合であってもSS 方式の様に大電流が流れることはなく,送電のON/OFF 制御無しで運用可能であることが確かめられた.」

p 引用文献1の上記記載事項及び図面により、次のことがいえる。
(a)上記aの記載から、引用文献1は、ワイヤレス電力伝送の実現のために、送電を行う一次側と受電する二次側を一つのシステムとみなしたシステム構成において、一次側と二次側それぞれの共振回路にLCC を適用したDouble-LCC と従来のSS を用いる構成との特性比較を行い、Double-LCC に関しては基礎実験を行うことでその特性を実証したものであることがわかる。

(b)上記aによれば、ワイヤレス電力伝送システムは、送電を行う一次側と受電する二次側からなる。

(c)上記j及び図9(b)の実験構成によれば、一次側が一次側送電コイルL1を備え、二次側が二次側受電コイルL2と整流器と負荷を備えることがわかる。また、上記d及びjによれば、一次側送電コイルL1は、定電圧駆動のインバータで発生させたACで駆動する。

(d)上記d、hおよびjによれば、Double-LCC 方式を用いたワイヤレス電力伝送システムは、一次側と二次側がLCCトポロジーを備える。(以下、一次側が備えるLCCトポロジーを「一次側LCCトポロジー」といい、二次側が備えるLCCトポロジーを「二次側LCCトポロジー」という。)
そして、上記図5、図9(b)の回路図に示されるLCC トポロジーについて、表2における用語の定義も踏まえると、一次側LCCトポロジーは、一次側補償インダクタL0と一次側補償キャパシタC0と一次側共振キャパシタC1から構成され、二次側LCCトポロジーは、二次側補償インダクタL’0と二次側補償キャパシタC’0と二次側共振キャパシタC2から構成されることがわかる。
また、上記図5、図9(b)の回路図によれば、「一次側LCCトポロジー」が「一次側補償インダクタL0」と「一次側補償キャパシタC0」により構成される回路(以下、「一次側LC回路」という。)を含むことも確認できる。
同様に、上記図5、図9(b)の回路図によれば、「二次側LCCトポロジー」に含まれる「二次側補償インダクタL’0」と「二次側補償キャパシタC’0」からなる回路(以下、「二次側LC回路」という。)が確認できる。
よって、Double-LCC 方式を用いたワイヤレス電力伝送システムは、一次側が、一次側補償インダクタL0と一次側補償キャパシタC0からなる一次側LC回路と一次側共振キャパシタC1から構成される一次側LCC トポロジーを備え、二次側が、二次側補償インダクタL’0と二次側補償キャパシタC’0からなる二次側LC回路と二次側共振キャパシタC2から構成される二次側LCC トポロジーを備える。

(e)上記eによれば、Double-LCC 方式を定電圧駆動のインバータに用いる場合は、送受電コイルの相互インダクタンスLmの減少に伴って共振回路トポロジーの入力インピーダンスZinが大きくなる。
ここで、「送受電コイルの相互インダクタンスLm」とは、送電コイルと受電コイル間の電磁的な結合の強度を示すものであり、上記j、n、表3に示されるように、一次側送電コイルと二次側受電コイルが近接して配置され、両者が電磁的に結合している場合は、相互インダクタンスLm>0となるのに対して、両者が離れて配置され、電磁的に結合していない状態では、Lm=0となるものである。
また、上記hの式(15)、(19)及び図6によれば、Lm>0の場合の共振回路トポロジーの入力インピーダンスZinが、一次側のLCC トポロジーの入力側から見た一次側と二次側のインピーダンスとして規定されており、図9(b)に示されるとおり、一次側のLCC トポロジーの入力側には、インバータの出力が接続されるから、上記共振回路トポロジーの入力インピーダンスZin とは、インバータから見た一次側と二次側の入力インピーダンスである。
一方、Lm=0の場合は、上記hの式(14)によりZ1=0であるから、式(15)から、共振回路トポロジーの入力インピーダンスZinは、インバータから見た一次側の入力インピーダンスである。
そして、上記h及び式(19)によれば、共振回路トポロジーの入力インピーダンスZin は、Lm→0となる場合に、Zin→∞となるのに対して、Lm>0となる場合は何らかの実数として求められるから、Lm→0となる場合、即ち、一次側送電コイルL1と二次側受電コイルL2が電磁的に結合していない状態のインバータから見た一次側の入力インピーダンスZinは、Lm>0となる場合、即ち、一次側送電コイルL1と二次側受電コイルL2が電磁的に結合している状態のインバータから見た一次側と二次側の入力インピーダンスZinよりも高くなることがわかる。

(f)上記表2によれば、共振周波数foは、90kHzである。

q したがって、Double-LCC 方式を用いたワイヤレス電力伝送システムに着目すると、上記p(a)ないし(f)から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「送電を行う一次側と、受電する二次側をからなり、Double-LCC 方式を用いたワイヤレス電力伝送システムであって、
一次側は、
定電圧駆動のインバータで発生させたACで駆動する一次側送電コイルL1と、
一次側補償インダクタL0と一次側補償キャパシタC0からなる一次側LC回路と一次側共振キャパシタC1から構成される一次側LCCトポロジーと、を備え、
二次側は、
二次側受電コイルL2と、
二次側補償インダクタL’0と二次側補償キャパシタC’0からなる二次側LC回路と二次側共振キャパシタC2から構成される二次側LCCトポロジーと、
整流器および負荷と、を備え、
一次側送電コイルL1と二次側受電コイルL2とが電磁的に結合していない状態でインバータから見た一次側の入力インピーダンスZinが、電磁的に結合している状態でインバータから見た一次側と二次側の入力インピーダンスZinに対して高くなり、
共振周波数が90kHzである、ワイヤレス電力伝送システム。」

(イ)引用文献2の記載事項
取消理由通知において引用した引用文献2には、図面とともに、次の技術事項が記載されている。
「【0037】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態に係る非接触充電システム1を模式的に示す模式図である。この図1に示すように、非接触充電システム1は、受電装置2およびバッテリ3を含む車両4と、受電装置2に非接触で電力を送電する送電装置5とを含む。なお、送電装置5には、電源6が接続されており、電源6から送電装置5に交流電力が供給される。
【0038】
受電装置2は、車両4の底面に配置されるケース13と、このケース13内に収容された受電回路14とを含む。
【0039】
受電回路14は、受電部10と、フィルタ11と、整流器12とを含む。受電部10は、受電コイル20および受電キャパシタ21を含み、受電コイル20および受電キャパシタ21によってLC共振回路が形成される。受電装置2は、たとえば、車両4の底面に配置されている。
【0040】
送電装置5は、ケース18と、ケース18内に収容された送電回路19とを含む。送電回路19は、送電部15と、フィルタ16と、変換器17とを含み、送電回路19には、送電装置5の外部に設けられた電源6から交流電力が供給される。送電部15は、送電コイル22および送電キャパシタ23を含む。送電装置5は、たとえば、地面に配置される。
【0041】
図2は、送電回路19および受電回路14を示す回路図である。この図2に示すように、変換器17はノード30およびノード37に接続され、送電部15は、ノード38およびノード39に接続されている。
【0042】
LCフィルタ16は、ノード30およびノード37と、ノード38およびノード39とに接続されている。」

「【0049】
受電回路14において、受電部10はノード60およびノード61に接続されており、整流器12はノード62およびノード63に接続されている。フィルタ11は、ノード60およびノード61と、ノード62およびノード63とに接続されている。」

「【0119】
なお、図5中の一点鎖線で示す曲線は、図4からコイル51を省略したときにおいて、LCフィルタ16の周波数特性を示す。」

図5及び段落【0119】の記載より、LCフィルタはローパスフィルターであることが見て取れる。

以上の記載より、引用文献2には次の技術が記載されている。
「非接触充電システムにおいて、送電部および受電部にローパスフィルターであるLCフィルタを設ける技術。」

イ 本件発明4について
(ア)対比
本件発明4と引用発明とを対比する。
a ワイヤレス電力伝送システムにおいて、インバータが発生させる交流の周波数は、共振回路の共振周波数と同程度である。そうすると、引用発明のワイヤレス電力伝送システムの共振周波数は90kHzであるから、引用発明のインバータは90kHz程度の交流を発生させるものである。ここで、本件特許明細書の段落【0030】に「例えば、1KHz以上の高周波」と記載されていることから、90kHzは高周波である。よって、引用発明の「インバータ」は、高周波を発生させる電源といえるから、本件発明4の「高周波電源」に相当する。

b コイルは供給される交流電流に応じた磁界を発生するものである。また、引用発明の「AC」が交流電流を意味することは明らかである。よって、引用発明の「定電圧駆動のインバータで発生させたACで駆動する一次側送電コイルL1」は、本件発明4の「高周波電源から供給される交流電流に応じた磁界を発生する送電側コイル」に相当する。

c 引用発明の「一次側LCCトポロジー」に含まれる「一次側補償インダクタL0と一次側補償キャパシタC0からなる一次側LC回路」は、一のインダクタL0と一のキャパシタC0を有するから、本件発明4と「一以上のインダクタおよび一以上のキャパシタを有する送電側LC回路」である点で共通する。
但し、送電側LC回路について、本件発明4は「送電側フィルタ」であるのに対して、引用発明は一次側LC回路がフィルタであるか明らかでない点で相違する。

d 引用発明の「一次側」は、上記b及びcで説示した「一次側送電コイルL1」と「一次側LC回路」を備えるものであり、装置として構成されることも明らかである。よって、引用発明の「一次側」は、本件発明4の「送電装置」に相当する。

e 受電コイルは、送電コイルが発生する磁界の中に配置された場合に、磁界に応じた交流電流を発生するものである。よって、引用発明の「二次側受電コイルL2」は、本件発明4の「送電コイルが発生する磁界に応じた交流電流を発生する受電側コイル」に相当する。

f 引用発明の「二次側LCC トポロジー」に含まれる「二次側補償インダクタL’0 と二次側補償キャパシタC’0 からなる二次側LC回路」は、一のインダクタL’0と一のキャパシタC’0を有するから、本件発明4と「一以上のインダクタおよび一以上のキャパシタを有する受電側LC回路」である点で共通する。
但し、受電側LC回路について、本件発明4は「受電側フィルタ」であるのに対して、引用発明は二次側LC回路がフィルタであるか明らかでない点で相違する。

g 上記eで説示したとおり、「二次側受電コイルL2」は、一次側送電コイルL1が発生する磁界に応じた交流電流を発生するものであり、この交流電流が「整流器および負荷」に供給されることも明らかである。よって、引用発明の「整流器および負荷」は、本件発明4の「前記受電コイルが発生する交流電流が供給される受電側負荷」に相当する。

h 引用発明の「二次側」は、上記eないしgで説示した「二次側受電コイルL2」と「二次側LC回路」と「整流器および負荷」を備えるものであり、装置として構成されることも明らかである。よって、引用発明の「二次側」は、本件発明4の「受電装置」に相当する。

i 上記「(ア)h」の記載によれば、式(19)で表される入力インピーダンスZinを求める過程で、式(10)、式(12)、式(16)及び式(18)の共振条件を適用しているので、「一次側送電コイルL1」、「一次側補償インダクタL0」、「一次側補償キャパシタC0」、「一次側共振キャパシタC1」、「二次側受電コイルL2」、「二次側補償インダクタL’0」、「二次側補償キャパシタC’0」及び「二次側共振キャパシタC2」が協働して動作することで、引用発明は「一次側送電コイルL1と二次側受電コイルL2とが電磁的に結合していない状態でインバータから見た一次側の入力インピーダンスZinが、電磁的に結合している状態でインバータから見た一次側と二次側の入力インピーダンスZinに対して高くな」るという特性が得られることが理解でき、当該特性は、「一次側LC回路」と「二次側LC回路」が、「一次側送電コイルL1」、「一次側共振キャパシタC1」、「二次側受電コイルL2」及び「二次側共振キャパシタC2」と協働して動作することで得られるものといえる。
したがって、引用発明の「一次側送電コイルL1と二次側受電コイルL2とが電磁的に結合していない状態でインバータから見た一次側の入力インピーダンスZinが、電磁的に結合している状態でインバータから見た一次側と二次側の入力インピーダンスZinに対して高くな」るという特性を備えていることと本件発明4とは、「前記送電側コイルと受電側コイルとが電磁的に結合していない状態の前記高周波電源から見た送電装置のインピーダンスが、電磁的に結合している状態の前記高周波電源から見た送電装置および受電装置のインピーダンスに対して高くなるよう構成されている」点で共通するといえるが、
本件発明4は、「前記送電側フィルタおよび受電側フィルタ」が、前記送電側コイルと受電側コイルとが電磁的に結合していない状態の前記高周波電源から見た送電装置のインピーダンスが、電磁的に結合している状態の前記高周波電源から見た送電装置および受電装置のインピーダンスに対して高くなるよう構成されているのに対して、引用発明は「一次側LC回路」、「二次側LC回路」、「一次側送電コイルL1」、「一次側共振キャパシタC1」、「二次側受電コイルL2」及び「二次側共振キャパシタC2」が、一次側送電コイルL1と二次側受電コイルL2とが電磁的に結合していない状態でインバータから見た一次側の入力インピーダンスZinが、電磁的に結合している状態でインバータから見た一次側と二次側の入力インピーダンスZinに対して高くなように構成されている点で相違する。
さらに、送電側LC回路および受電側LC回路が、本件発明4は「バンドパスフィルタであり、L−C−L構成のT型フィルタを少なくとも1つ含む」のに対して、引用発明はそのような特定がない点で相違する。

j 引用発明の「ワイヤレス電力伝送システム」は、本件発明4の「無線給電システム」に相当する。

k 以上によれば、本件発明4と引用発明とは
「送電装置と、受電装置とを備えた無線給電システムであって、
前記送電装置は、
高周波電源から供給される交流電流に応じた磁界を発生する送電側コイルと、
一以上のインダクタおよび一以上のキャパシタを有する送電側LC回路と、を備え、
前記受電装置は、
送電側コイルが発生する磁界に応じた交流電流を発生する受電側コイルと、
前記受電側コイルが発生する交流電流が供給される受電側負荷と、
一以上のインダクタおよび一以上のキャパシタを有する受電側LC回路と、を備え、
前記送電側コイルと受電側コイルとが電磁的に結合していない状態の前記高周波電源から見た送電装置のインピーダンスが、電磁的に結合している状態の前記高周波電源から見た送電装置および受電装置のインピーダンスに対して高くなるよう構成されている無線給電システム。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
送電側LC回路について、本件発明4は「送電側フィルタ」であるのに対して、引用発明は一次側LC回路がフィルタであるか明らかでない点。
(相違点2)
受電側LC回路について、本件発明4は「受電側フィルタ」であるのに対して、引用発明は二次側LC回路がフィルタであるか明らかでない点。
(相違点3)
本件発明4は、「前記送電側フィルタおよび受電側フィルタ」が、前記送電側コイルと受電側コイルとが電磁的に結合していない状態の前記高周波電源から見た送電装置のインピーダンスが、電磁的に結合している状態の前記高周波電源から見た送電装置および受電装置のインピーダンスに対して高くなるよう構成されているのに対して、引用発明は「一次側LC回路」、「二次側LC回路」、「一次側送電コイルL1」、「一次側共振キャパシタC1」、「二次側受電コイルL2」及び「二次側共振キャパシタC2」が、一次側送電コイルL1と二次側受電コイルL2とが電磁的に結合していない状態でインバータから見た一次側の入力インピーダンスZinが、電磁的に結合している状態でインバータから見た一次側と二次側の入力インピーダンスZinに対して高くなように構成されている点。
(相違点4)
送電側LC回路および受電側LC回路が、本件発明4は「バンドパスフィルタであり、L−C−L構成のT型フィルタを少なくとも1つ含む」のに対して、引用発明はそのような特定がない点。

(イ)判断
事案に鑑み、まず、上記相違点3、4についてまとめて検討する。
引用文献2には、非接触充電システムにおいて、送電部および受電部にローパスフィルターであるLCフィルタを設ける技術が記載されている(上記「ア(イ)」)。
ここで、上記「(ア)i」で述べたように、引用発明は「一次側送電コイルL1」、「一次側補償インダクタL0」、「一次側補償キャパシタC0」、「一次側共振キャパシタC1」、「二次側受電コイルL2」、「二次側補償インダクタL’0」、「二次側補償キャパシタC’0」及び「二次側共振キャパシタC2」が協働して動作することで、一次側送電コイルL1と二次側受電コイルL2とが電磁的に結合していない状態でインバータから見た一次側の入力インピーダンスZinが、電磁的に結合している状態でインバータから見た一次側と二次側の入力インピーダンスZinに対して高くなように構成されているので、さらに入力インピーダンスZinを調節する必要はなく、引用文献2に記載されたLCフィルタを適用する動機はない。また、仮に、引用発明に引用文献2に記載された技術を適用しても、引用発明の「一次側LC回路」及び「二次側LC回路」はローパスフィルターであるLCフィルタとなり、上記相違点4に係る構成を得ることはできない。
そして、引用文献2には送電側コイルと受電側コイルとが電磁的に結合していない状態の高周波電源から見た送電装置のインピーダンスが、電磁的に結合している状態の高周波電源から見た送電装置および受電装置のインピーダンスに対して高くなるように、LCフィルタを構成することは記載されていないので、仮に引用発明に引用文献2に記載された技術を適用しても、上記相違点3に係る構成を得ることもできない。

なお、特許異議申立人が、令和3年10月27日に意見書とともに提出した、参考資料1(特開2016−19425号公報)、参考資料2(再公表2014−157030号)及び参考資料3(特開2016−116449号公報)には、送信側および受信側における、L−C−L構成のT型フィルタを少なくとも1つ含むバンドパスフィルタを、送電側コイルと受電側コイルとが電磁的に結合していない状態の高周波電源から見た送電装置のインピーダンスが、電磁的に結合している状態の高周波電源から見た送電装置および受電装置のインピーダンスに対して高くなるよう構成することは記載されておらず、引用発明に上記参考資料1ないし3記載の技術を適用しても、上記相違点3、4に係る構成を得ることはできない。

よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明4は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

ウ 本件発明5及び6ついて
本件発明5及び6は、本件発明4の構成を全て含み、さらに構成を付加して限定した発明であるから、上記イと同様な理由により、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

エ 小活
本件発明4ないし6は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものでないから、本件発明4ないし6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでない。

オ まとめ
以上のことより、当該取消理由通知書に記載した取消理由により、本件発明4ないし6に係る特許を取り消すことはできない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立人は特許異議申立書において、訂正前の特許請求の範囲に関し、請求項2又は3を引用する請求項4に係る発明は、甲第1号証記載の発明、甲第2号証記載事項及び周知技術(甲第3号証の1、甲第4号証)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨を主張している。
しかしながら、甲第3号証の1及び甲第4号証には、インピーダンスマッチングについての周知技術が記載されているものの、上記相違点3、4に係る構成について記載されているわけではない。
そうすると、訂正前の請求項2又は3を引用する請求項4に係る発明に対応する、訂正後の本件発明5又は6は、上記相違点3、4に係る構成を有するものであるから、たとえインピーダンスマッチングについての周知技術(甲第3号証の1、甲第4号証)を考慮しても、上記「第4 2(2)ウ」に記載したように、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
したがって、特許異議申立人のかかる主張は、採用することができない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した異議申立理由によっては、請求項4ないし6に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に請求項4ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項1ないし3は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項1ないし3に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
送電装置と、受電装置とを備えた無線給電システムであって、
前記送電装置は、
高周波電源から供給される交流電流に応じた磁界を発生する送電側コイルと、
一以上のインダクタおよび一以上のキャパシタを有する送電側フィルタと、を備え、
前記受電装置は、
送電側コイルが発生する磁界に応じた交流電流を発生する受電側コイルと、
前記受電側コイルが発生する交流電流が供給される受電側負荷と、
一以上のインダクタおよび一以上のキャパシタを有する受電側フィルタと、を備え、
前記送電側フィルタおよび受電側フィルタは、前記送電側コイルと受電側コイルとが電磁的に結合していない状態の前記高周波電源から見た送電装置のインピーダンスが、電磁的に結合している状態の前記高周波電源から見た送電装置および受電装置のインピーダンスに対して高くなるよう構成されており、
前記送電側フィルタおよび受電側フィルタは、バンドパスフィルタであり、L−C−L構成のT型フィルタを少なくとも1つ含む、無線給電システム。
【請求項5】
送電装置と、受電装置とを備えた無線給電システムであって、
前記送電装置は、
高周波電源から供給される交流電流に応じた磁界を発生する送電側コイルと、
一以上のインダクタおよび一以上のキャパシタを有する送電側フィルタと、を備え、
前記受電装置は、
送電側コイルが発生する磁界に応じた交流電流を発生する受電側コイルと、
前記受電側コイルが発生する交流電流が供給される受電側負荷と、
一以上のインダクタおよびー以上のキャパシタを有する受電側フィルタと、を備え、
前記送電側フィルタおよび受電側フィルタは、前記送電側コイルと受電側コイルとが電磁的に結合していない状態の前記高周波電源から見た送電装置のインピーダンスが、電磁的に結合している状態の前記高周波電源から見た送電装置および受電装置のインピーダンスに対して高くなるよう構成されており、
前記送電側フィルタおよび受電側フィルタは、電磁的に結合している状態の前記高周波電源から見た送電装置および受電装置のインピーダンスが、前記高周波電源の出力インピーダンスと等しくなるよう構成されており、
前記送電側フィルタおよび受電側フィルタは、バンドパスフィルタであり、L−C−L構成のT型フィルタを少なくとも1つ含む、無線給電システム。
【請求項6】
送電装置と、受電装置とを備えた無線給電システムであって、
前記送電装置は、
高周波電源から供給される交流電流に応じた磁界を発生する送電側コイルと、
一以上のインダククおよび一以上のキャパシタを有する送電側フィルタと、を備え、
前記受電装置は、
送電側コイルが発生する磁界に応じた交流電流を発生する受電側コイルと、
前記受電側コイルが発生する交流電流が供給される受電側負荷と、
一以上のインダクタおよび一以上のキャパシタを有する受電側フィルタと、を備え、
前記送電側フィルタおよび受電側フィルタは、前記送電側コイルと受電側コイルとが電磁的に結合していない状態の前記高周波電源から見た送電装置のインピーダンスが、電磁的に結合している状態の前記高周波電源から見た送電装置および受電装着のインピーダンスに対して高くなるよう構成されており、
前記送電側フィルタおよび受電側フィルタは、電磁的に結合している状態の前記高周波電源から見た送電装置および受電装置のインピーダンスが、前記高周波電源の出力インピーダンスと等しくなるよう構成されており、
前記送電側フィルタおよび受電側フィルタが有する前記インダクタのインピーダンスおよび前記キャパシタの容量は、前記送電側コイルと受電側コイルとの間の距離、および前記受電側負荷のインピーダンスに応じて決定され、
前記送電側フィルタおよび受電側フィルタは、バンドパスフィルクでありL−C−L構成のT型フィルタを少なくとも1つ含む、無線給電システム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-11-19 
出願番号 P2017-085855
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (H02J)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 須原 宏光
山本 章裕
登録日 2020-08-28 
登録番号 6755829
権利者 株式会社ダイヘン
発明の名称 無線給電システム  
代理人 森本 悟道  
代理人 谷川 英和  
代理人 谷川 英和  
代理人 森本 悟道  
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