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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  E04B
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  E04B
管理番号 1384098
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-04-06 
確定日 2021-12-16 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6770343号発明「屋根」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6770343号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、3、4〕について訂正することを認める。 特許第6770343号の請求項1、3、4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許6770343号(以下「本件特許」という。)に係る特許出願は、平成28年6月15日に特許出願され、令和2年9月29日にその特許権の設定登録がされ、同年10月14日に特許掲載公報が発行されたものであり、その後の特許異議の申立ての経緯は以下のとおりである。

令和3年 4月 6日 特許異議申立人丸山博隆(以下「申立人」とい
う。)による請求項1、3及び4に係る発明の
特許に対する特許異議の申立て
同年 7月 9日付け 取消理由通知
同年 9月13日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出

なお、同年10月1日付けで当審から申立人に対し訂正請求があった旨を通知するとともに相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人から意見書の提出はされなかった。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和3年9月13日提出の訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)による訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)に係る訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、3及び4について訂正することを求めるものであり、その内容は以下のとおりである(訂正請求書第1頁下から2行目の「特許第6770343号の特許請求の範囲」は、「特許第6770343号の明細書及び特許請求の範囲」の誤記と認めた。下線は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「建物の軒桁に支持され、前記軒桁より外側へ跳ね出した下垂木と、
前記下垂木の上方に設けられ、前記下垂木より外側へ跳ね出し前記下垂木よりせいが小さい上垂木と、
前記上垂木の上に設けられた屋根材と、
を有する屋根。」
と記載されているのを、
「建物の軒桁に支持され、前記軒桁より外側へ跳ね出した下垂木と、
前記下垂木の上方に設けられ、前記下垂木より外側へ跳ね出し前記下垂木よりせいが小さい上垂木と、
前記上垂木の上に設けられた屋根材と、を有し、
前記上垂木及び前記下垂木が、屋根の頂部において棟木に支持されている、屋根。」
と訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に
「前記上垂木の下面には軒天板が張られ、前記上垂木の庇先端側には鼻隠し板が設けられている請求項1又は請求項2に記載の屋根。」
と記載されているのを、
「建物の軒桁に支持され、前記軒桁より外側へ跳ね出した下垂木と、
前記下垂木の上方に設けられ、前記下垂木より外側へ跳ね出し前記下垂木よりせいが小さい上垂木と、
前記上垂木の上に設けられた屋根材と、を有し、
前記上垂木の下面には軒天板が張られ、前記上垂木の庇先端側には鼻隠し板が設けられている、屋根。」
と訂正する。

(3)訂正事項3
願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の段落【0005】に、
「請求項1の屋根は、建物の軒桁に支持され、前記軒桁より外側へ跳ね出した下垂木と、前記下垂木の上方に設けられ、前記下垂木より外側へ跳ね出し前記下垂木よりせいが小さい上垂木と、前記上垂木の上に設けられた屋根材と、を有する。」
と記載されているのを、
「請求項1の屋根は、建物の軒桁に支持され、前記軒桁より外側へ跳ね出した下垂木と、前記下垂木の上方に設けられ、前記下垂木より外側へ跳ね出し前記下垂木よりせいが小さい上垂木と、前記上垂木の上に設けられた屋根材と、を有し、前記上垂木及び前記下垂木が、屋根の頂部において棟木に支持されている。」
と訂正する。

(4)訂正事項4
本件明細書の段落【0008】に、
「請求項3の屋根は、請求項1又は請求項2に記載の屋根において、前記上垂木の下面には軒天板が張られ、前記上垂木の庇先端側には鼻隠し板が設けられている。」
と記載されているのを、
「請求項3の屋根は、建物の軒桁に支持され、前記軒桁より外側へ跳ね出した下垂木と、前記下垂木の上方に設けられ、前記下垂木より外側へ跳ね出し前記下垂木よりせいが小さい上垂木と、前記上垂木の上に設けられた屋根材と、を有し、前記上垂木の下面には軒天板が張られ、前記上垂木の庇先端側には鼻隠し板が設けられている。」
と訂正する。

2 本件訂正についての当審の判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1に記載された「上垂木」及び「下垂木」について、「前記上垂木及び前記下垂木が、屋根の頂部において棟木に支持されている」と記載することにより、上垂木及び下垂木の支持の態様を具体的に特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
本件明細書等の段落【0015】に、「上垂木40は下垂木30に沿って延設されており、屋根20の棟部分(頂部)においては、下垂木30及び上垂木40が、軒桁12と平行な方向へ延設された図示しない棟木に支持されている。」と記載されている。
よって、訂正事項1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
上記アのとおり、訂正事項1に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

エ まとめ
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の要件を満たしている。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2に係る訂正は、訂正前の請求項3が訂正前の請求項1または2の記載を引用する記載であったものを、請求項2を引用しないものとしたうえで、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び同項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。

イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
訂正事項2に係る訂正は、上記アのとおり、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ まとめ
したがって、訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の要件を満たしている。

(3)訂正事項3及び4について
ア 訂正の目的について
上記訂正事項3及び4に係る訂正は、それぞれ、上記訂正事項1及び2に係る訂正に伴い特許請求の範囲と明細書の記載を整合させる訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
上記訂正事項3及び4に係る訂正は、上記訂正事項1及び2に係る訂正と同様に、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項3及び4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

ウ まとめ
したがって、訂正事項3及び4に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の要件を満たしている。

(4)一群の請求項
本件訂正前の請求項3及び4は、本件訂正前の請求項1を直接的又は間接的に引用しているから、本件訂正前の請求項1及び同請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項3及び4は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、訂正事項1及び2に係る訂正は、当該一群の請求項〔1、3、4〕に対し請求されたものである。
そして、訂正事項3及び4に係る訂正は、上記一群の請求項〔1、3、4〕に関係する明細書についての訂正であるから、本件訂正請求は一群の請求項ごとにされたものである。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、訂正後の請求項〔1、3、4〕について訂正を認める。

第3 本件訂正発明
本件訂正後の請求項1、3及び4に係る発明は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、3及び4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、各請求項に係る発明を「本件訂正発明1」などといい、まとめて「本件訂正発明」という。)。

「【請求項1】
建物の軒桁に支持され、前記軒桁より外側へ跳ね出した下垂木と、
前記下垂木の上方に設けられ、前記下垂木より外側へ跳ね出し前記下垂木よりせいが小さい上垂木と、
前記上垂木の上に設けられた屋根材と、を有し、
前記上垂木及び前記下垂木が、屋根の頂部において棟木に支持されている、屋根。」

「【請求項3】
建物の軒桁に支持され、前記軒桁より外側へ跳ね出した下垂木と、
前記下垂木の上方に設けられ、前記下垂木より外側へ跳ね出し前記下垂木よりせいが小さい上垂木と、
前記上垂木の上に設けられた屋根材と、を有し、
前記上垂木の下面には軒天板が張られ、前記上垂木の庇先端側には鼻隠し板が設けられている、屋根。」

「【請求項4】
前記屋根材と前記軒天板の間には断熱材が配置されている請求項3に記載の屋根。」

第4 特許異議申立理由の概要及び証拠
1 特許異議申立理由の概要
申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、以下の申立理由を主張するとともに、証拠方法として、以下の2に示す各甲号証(以下、各甲号証を「甲1」等ということがある。)を提出している。

(1)新規性
ア 本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明1」という。)は、甲第1号証に記載された発明であるから、その発明の特許は、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない発明に対してなされたものであり、本件発明1に係る特許は同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

イ 本件発明1は、甲第2号証に記載された発明であるから、その発明の特許は、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない発明に対してなされたものであり、本件発明1に係る特許は同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

(2)進歩性
ア 本件発明1、3及び4は、甲第4号証に記載された発明及び甲第1〜3、6、7号証に例示された周知技術から当業者が容易になし得た発明であり、その発明の特許は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明に対してなされたものであるから、本件発明1、3及び4に係る特許は、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

イ 本件発明1、3及び4は、甲第5号証に記載された発明及び甲第1〜3、6、7号証に例示された周知技術から当業者が容易になし得た発明であり、その発明の特許は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明に対してなされたものであるから、本件発明1、3及び4に係る特許は、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

2 申立書に添付して提出された証拠方法
甲第1号証 「五重塔のはなし」編集委員会編著、
「五重塔のはなし」、(株)建築資料研究社、
2010年8月31日発行、第216〜217頁
甲第2号証 佐藤日出男、「社寺建築の工法」、理工学社、
1983年5月10日発行、第89〜90頁
甲第3号証 パワースポット清正井/明治神宮:とりこのつぶろぐ
、[online]、2021年3月15日印刷、
インターネット<URL:http://blog.livedoor.jp/
aoitorikotori/archives/1560310.html>
甲第4号証 特開2001−90242号公報
甲第5号証 特開平5−148935号公報
甲第6号証 特開2010−84481号公報
甲第7号証 特開2008−13917号公報

第5 取消理由通知に記載した取消理由の概要
令和3年7月9日付け取消理由通知に記載した取消理由の概要は以下のとおりである。

1.(新規性)本件特許の請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。

2.(進歩性)本件特許の請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。

第6 当審の判断
1 証拠に記載された事項
(1)甲1
ア 甲1の記載事項
甲1には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付加した。以下、同様。)。
(ア)「・・・五重塔に限らず、伝統建築の深い軒は「てこ」と「持ち送り」を利用して成り立っています。「長柱構法」の骨組を例に図示すると、屋根の重さは束を介して桔木に流れ、土居桁からその下の丸桁へと流れていきます。丸桁は升や肘木に支えられて尾垂木の先端付近に乗り、三〜四段ほどに重ねられた繋肘木の先端を流れて最終的に一番下の大斗から柱へと流れていきます。ここで登場した桔木が、てこの原理を使ってやねの形状を保持している重要な部材です。よく見ると、桔木は塔の中心部へ向かって長く延びているのがわかります。軒先の方で屋根の瓦などを受け、また茅負(かやおい)に差し込まれて軒先を保持し、土居桁を支点として中へ延びた部分の重さでバランスさせるわけです。桔木のほかに、地垂木や丸桁桔木といった部材も同様にてこの原理で先端の部材を支持しています。・・・」(216頁上段13行〜下段11行、ふりがなは省略した。)

(イ)「

」(217頁)

(ウ) 上記(イ)の「軒を支える仕組み」の図からは以下の点が看取される。
a 軒は、地垂木と地垂木の上方の先端上部に茅負がある部材を有する。
b 地垂木が丸桁に支持され、丸桁よりも外側へ跳ね出している。
c 地垂木の上方の先端上部に茅負がある部材は、地垂木より外側へ跳ね出している。

イ 甲1発明
上記アより、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

(甲1発明)
「軒は、地垂木と地垂木の上方の先端上部に茅負がある部材を有し、
地垂木が丸桁に支持され、丸桁よりも外側へ跳ね出し、
地垂木の上方の先端上部に茅負がある部材は、地垂木より外側へ跳ね出した、
伝統建築の深い軒の屋根。」

(2)甲2
ア 甲2の記載事項
甲2には、次の事項が記載されている。
(ア)「社寺建築の軒」(89頁第1行)

(イ)「

」(89頁下)

(ウ) 上記(イ)の「軒廻り部材構成」の図からは以下の点が看取される。
a 軒は、軒廻り部材として、地垂木と飛えん垂木を有する(上段左の側断面図、中段右の斜視図)。
b 地垂木が丸桁に支持され、丸桁よりも外側へ跳ね出している(上段左の側断面図、中段右の斜視図)。
c 飛えん垂木が、地垂木の上方に設けられ、地垂木より外側へ跳ね出している(上段左の側断面図、中段右の斜視図)。
d 垂木の成が△、下幅が○で表される(上段の垂木の図)。
e 飛えん垂木の外側端部の成は飛えん垂木の成△×0.8である。地垂木の外側端部の成は地垂木の成△×1.15である。飛えん垂木は、外側端部の成が、地垂木より小さい。(上段右の垂木端部詳細図)

イ 甲2発明
上記アより、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。

(甲2発明)
「軒廻り部材として、地垂木と飛えん垂木を有し、
地垂木が丸桁に支持され、丸桁よりも外側へ跳ね出し、
飛えん垂木が、地垂木の上方に設けられ、地垂木より外側へ跳ね出し、
飛えん垂木は、外側端部の成が、地垂木より小さい、
社寺建築の軒。」

(3)甲3
ア 甲3の記載事項
甲3には、次の事項が記載されている。
(ア)「

」(2頁2段目右側)

(4)甲4
ア 甲4の記載事項
甲4には、次の事項が記載されている。
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】小屋組の棟木に取り付けられる棟木用金具と、桁に取り付けられる桁用金具と、登り梁の上下端部に取り付けられる1対の梁用金具とを組み合わせてなり、登り梁の上下端部をそれぞれ棟木及び桁に接合するための接合金具であって、
上記棟木用及び桁用金具は、棟木又は桁に取り付けられる支持片と、該支持片から突出する接合片とを有していて、
上記接合片には、該接合片の厚さ方向に貫通する中心用孔及び調整用孔が所定の間隔をあけて設けられており、
上記梁用金具は、登り梁の上下端部にそれぞれ取り付けられる支持片と、該支持片から突出する接合片とを有していて、
上記梁用金具の接合片には、該接合片の厚さ方向に貫通しかつ上記棟木用又は桁用金具の中心用孔に対し中心用ボルトを挿通して連結可能な中心用孔と、接合片の厚さ方向に貫通し、上記棟木用又は桁用金具の調整用孔に対し調整用ボルトを挿通して連結可能な調整用孔とが設けられており、
上記棟木用及び桁用金具と梁用金具との各調整用孔の少なくともいずれか一方が、中心用孔を中心として略円弧状に延びる円弧孔からなり、
上記棟木用及び桁用金具の中心用孔と各梁用金具の中心用孔とにそれぞれ中心用ボルトを挿通してナットで締結固定するとともに、棟木用及び桁用金具の調整用孔と各梁用金具の調整用孔とに調整用ボルトを挿通してナットで締結固定することにより、棟木用及び桁用金具と各梁用金具とが上記登り梁を所定の傾斜角度に保持して固定接合されるように構成されていることを特徴とする小屋組の接合金具。
・・・
【請求項4】請求項1〜3のいずれか1つの接合金具を使用した小屋組の接合構造であって、
棟木及び桁にそれぞれ棟木用及び桁用金具が取り付けられている一方、登り梁の上下端部にそれぞれ梁用金具が取り付けられており、
上記棟木用及び桁用金具の中心用孔と各梁用金具の中心用孔との間、並びに棟木用及び桁用金具の調整用孔と各梁用金具の調整用孔との間にそれぞれボルトが挿通されてナットで固定接合されていることを特徴とする小屋組の接合構造。
・・・」

(イ)「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、木造住宅の小屋組において棟木及び桁にそれぞれ登り梁の上下端部を取り付けるための接合金具、接合構造及び接合方法に関し、特に、登り梁の加工や取付けを容易にするための技術分野に属する。
・・・
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来の方法では、棟木及び桁の間に載せ掛けされる登り梁の両端部を屋根勾配に合わせて1本1本切断した後に略三角形状又は略四角形状にかき込まなければならないので、施工現場で家屋毎に異なる作業が必要であり、加工が煩雑になり易い上、熟練を要し、施工に時間がかかるとともに、専用の加工機も必要となるという問題があった。
【0005】本発明は斯かる点に鑑みてなされたもので、その目的は、登り梁の両端部をそれぞれ棟木及び桁に接合するための接合金具を改良することにより、異なる屋根勾配に対しても、その屋根勾配に合わせた登り梁の加工は不要として、施工の容易化、施工時間の短縮化、専用加工機の不要化を図ることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、この発明では、小屋組の棟木、桁及び登り梁上下端部にそれぞれ取り付けられる金具を設けて、この金具同士を互いに連結し、金具間の相対角度の変化により登り梁を屋根勾配に対応した傾斜角度に変更できるようにした。」

(ウ)「【0019】
【発明の実施の形態】図1は本発明の実施形態に係る小屋組の接合構造を示し、1は小屋組の頂部に配置された棟木、2は小屋組の側部に棟木1と平行に配置された軒桁であって、この軒桁2は柱3上に載置されている。上記棟木1と軒桁2との間には、端面を略直角に切断した木質材料等(金属材料でもよい)からなる複数の登り梁4,4,…(1つのみ図示する)が掛け渡され、この隣り合う登り梁4,4間には複数の母屋5,5,…が掛け渡され、この母屋5,5,…上には上記棟木1、軒桁2及び登り梁4上に亘り垂木6,6,…(1つのみ図示する)が載せ掛けられ、この垂木6,6,…上に野地板7が載せ掛けられている。
【0020】本発明の特徴は、上記棟木1及び軒桁2と登り梁4の上下端部との接合構造、それに用いられる接合金具10、並びに接合方法にある。この接合金具10は、棟木1に取り付けられる棟木用金具11と、軒桁2に取り付けられる桁用金具23と、登り梁4の上下端部に取り付けられる1対の梁用金具35,35とを組み合わせてなり、登り梁4の上下端部をそれぞれ棟木1及び軒桁2に接合するためのものである。これらの金具11,23,35はいずれも鉄やアルミニウム等の金属からなる。」

(エ)【図1】は以下のとおり。




(オ)上記(エ)の図1からは、登り梁4の下端部は軒桁2より内側にあること、及び、垂木6は、登り梁4より外側へ跳ね出し、登り梁4よりせいが小さいことが看取される。

イ 甲4発明
上記アより、甲4には、次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。

(甲4発明)
「小屋組の頂部に配置された棟木1と、小屋組の側部に棟木1と平行に配置された軒桁2との間に複数の登り梁4,4が掛け渡され、棟木1に取り付けられる棟木用金具11と、軒桁2に取り付けられる桁用金具23と、登り梁4の上下端部に取り付けられる1対の梁用金具35,35とで、登り梁4の上下端部をそれぞれ棟木1及び軒桁2に接合するものであり、登り梁4の下端部は軒桁2より内側にあり、隣り合う登り梁4,4間には複数の母屋5,5が掛け渡され、この母屋5,5上には棟木1、軒桁2及び登り梁4上に亘り登り梁4より外側へ跳ね出し登り梁よりせいが小さい垂木6,6が載せ掛けられ、この垂木6,6上に野地板7が載せ掛けられている、木造住宅の小屋組。」

(5)甲5
甲5には、次の事項が記載されている。
ア 甲5の記載事項
(ア)「【請求項1】複数の支持部材の上に横架された棟梁および複数の母屋と、前記棟梁および複数の母屋の前記支持部材の上の位置に固着され屋根の傾斜方向に延出された登梁連結片を有する連結金物と、前記登梁連結片に端部をボルト止めすることにより連結した登梁と、前記棟梁および複数の母屋の上に立設した複数の立上金物と、これらの立上金物にボルト止めした垂木とを備えた小屋組。」

(イ)「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、小屋組に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の小屋組は、棟梁および母屋、登り梁、垂木を溶接により接合していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、溶接作業は熟練を要し、また精度が要求されるため施工費用がかかるという問題点があった。したがって、この発明の目的は、費用の低減を図った小屋組を提供することである。
・・・
【0005】
【作用】この発明の構成によれば、登梁を連結金物の登梁連結片にボルト止めし、また垂木を立上金物にボルト止めしたので、溶接箇所が少なくなる。このため、作業がしやすく施工費用がかからない。また、連結金物および立上金物は、それぞれ大部分の接合箇所において共用できる。それゆえ、母屋や登梁等の部材と同様に上記両金物を所定の形状に多数製造しておくことにより、工業化に適したものとなる。」

(ウ)「【0006】
【実施例】この発明の一実施例の小屋組を図1ないし図13に基づいて説明する。この小屋組は、棟梁1および複数の母屋2…と、これらの棟梁1および複数の母屋2…に固着され登梁4…をボルト止めにより連結した連結金物3…と、棟梁1および複数の母屋2…に設けられ垂木5…をボルト止めした立上金物6…とを備えている。
【0007】棟梁1は、建物の中央に位置する柱7a…およびこれらの柱7a…の間に架設した大梁(図示せず)、の上に立設した支持部材である束9aの上に横架される。母屋2は、軒側に位置する支持部材である柱7bおよびこの柱7bと上記柱7aの間に架設した大梁8b、の上に立設した支持部材である束9bの上に棟梁1と平行に横架される。・・・
・・・
【0009】立上金物6,6′は、図5ないし図8に示すように、棟梁1あるいは母屋2の上フランジにボルト止めできるようにボルト挿通孔13a,13aを設けた水平片13と、垂木5をボルト止めできるようにボルト挿通孔14a,14aを設けた垂直片14とからなる略L形の部材である。棟梁1に配される立上金物6′は上端が山形状で、母屋2の上に配される立上金物6は上端が傾斜状である。
【0010】また、登梁4はH形鋼で形成され、両端部のウエブの一面にブレース取付片21が溶接してある(図11)。垂木5はリップ溝形鋼で形成しているが、これ以外でもよい。図1、図9および図10は登梁4…および垂木5…の連結構造を示したものである。すなわち、図1は図2のA部の拡大図である。この場合、母屋2の片側の溝にその溶接片10を溶接することにより連結金物3を固着して、その上向きとなった登梁連結片11に登梁4の端部をボルト15により固定している。この状態でブレース取付片12,21が登梁4のウエブを挟んで両側に位置する。また、母屋2の上フランジにその水平片13をボルト16により固定することにより立上金物6を立設して、その垂直片14に垂木5をボルト止めしている。
【0011】また、図9は図2のB部の拡大図である。この場合、母屋2の両側の溝に連結金物3,3を配している。。これらの連結金物3,3は、登梁連結片11,11が屋根の傾斜に合うように相互に逆向きとなるように溶接片10,10を溶接している。そして、同様にそれぞれの登梁連結片11,11に登梁4,4の端部をボルト15により固定している。また、母屋2の上フランジに同様に立上金物6を立設している。この位置では一対の垂木5,5の端部を垂直片14にボルト止めしている。」

(エ)【図2】及び【図9】は以下のとおり
「【図2】

【図9】



(オ)上記(ウ)段落【0006】、【0007】の記載を踏まえると、上記(エ)の【図2】、【図9】からは、小屋組は、棟梁1および母屋2に固着される登梁4と、複数の母屋2に固着される登梁4とを有し、複数の母屋2に固着される登梁4の下端部は、軒側に位置する柱7b上に横架される母屋2より内側にあること、垂木5は、登梁4より上方に設けられ、登梁4より外側へ跳ね出し登梁4よりせいが小さいこと、及び垂木5は、立上金物6、6’により棟梁1及び母屋2に固着されていることが看取される。

イ 甲5発明
上記アより、甲5には、次の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されていると認められる。

(甲5発明)
「棟梁1および複数の母屋2と、これらの棟梁1および複数の母屋2に固着され登梁4をボルト止めにより連結した連結金物3と、棟梁1および複数の母屋2に設けられ垂木5をボルト止めした立上金物6とを備えている小屋組であって、登梁4は、棟梁1および母屋2に固着されるものと、複数の母屋2に固着されるものがあり、複数の母屋2に固着される登梁4の下端部は、軒側に位置する柱7b上に横架される母屋2より内側にあり、垂木5は、登梁4より上方に設けられ、登梁4より外側へ跳ね出し登梁4よりせいが小さく、立上金物6、6’により棟梁1及び母屋2に固着されている、小屋組。」

(6)甲6
ア 甲6の記載事項
甲6には、次の事項が記載されている。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建物の屋根を外張り断熱構造に構築するための通気性屋根パネルと、該屋根パネルで構築した木造外張り断熱屋根構造に関するものであり、木造家屋建築の技術分野に属するものである。」

(イ)「【0010】
また、図8(C)に示す従来例3の野地パネルは、従来例2同様に、垂木一体化物であるため、施工現場での屋根構築は合理化出来るが、下側面材が天井板であるため、室内から小屋組みの露見する建物に限定される。
また、必要厚さの断熱材の上面に通気空間を形成するため、従来例2同様に、パネル厚が大となる。
しかも、上側面材と下側面材とが垂木を介して一体化しているため、上側面材と下側面材とは熱橋構造となり、夏季の高温化した通気空間から断熱材が熱的に保護されていない事と相俟って、野地パネル(屋根パネル)自体の断熱作用は、断熱材での設定値より低下する。」

(ウ)「【0039】
即ち、屋根複合パネル1の断面構造は、図1(A),(B)に示す如く、野地垂木の機能を有する、幅a1が45.5mmの縦桟2Wが、断熱層2Bの幅中央に、幅が半幅a2の22.75mmの縦桟2W´が、断熱層2Bの両側面に、断熱層2Bに対して、下面と上面を面一形態で、断熱層2Bと一体化しており、断熱層2Bの肉厚部2T、条溝G、及び縦桟2W,2W´の全上面に面当接する形態に、遮熱反射層2Cを貼着し、遮熱反射層2C上の縦桟2W,2W´の部位に通気胴縁2D,2D´を配置し、通気胴縁2D,2D´上から厚さT4(12mm)の屋根下地材を、釘nで通気胴縁2D,2D´を介して縦桟2W,2W´に打設一体化したものである。」

(エ)「【0052】
そして、パネル1の上下当接部、即ち屋根下地材2Aの横方向当接界面hfには、慣用の気密テープを貼着して気密処理する。
また、軒部用パネル1Cの下端は、図7(B)に示す如く、鼻隠し23Aの上面の切欠C23に、屋根下地材2Aの下端突出d2(標準:30mm)の、先端の半寸15mmを載置して釘打ちし、鼻隠し23Aとパネル断熱層下端面Dsとの間に、下端突出d2の半寸(15mm)の通気用の間隔adを形成する。
【0053】
屋根仕上げは、慣用の手法で、屋根パネル面上に、図7(A)に示す如く、防水シート9、屋根仕上材10を配置し、棟部7では、棟下地材25C、棟換気材25B、棟材25A、水切材25D、防水処理材25Eで慣用の換気構造を形成し、鼻隠し23Aの間隔ad(15mm)から流入する上昇空気流aを、通気層G´(深さG´d:20mm)及びパネル条溝G(深さGd:15mm、幅a1:45.5mm)の上下二段の通気層を経て棟部7から排出する構造とする。
従って、本実施例で構築した屋根構造は、屋根複合パネル1相互の上下左右接合が相欠け接続となったことと、パネルの縦桟2W,2W´が垂木を兼用し、小屋組み屋根へのパネル群の張設が、縦桟2W,2W´での長ねじによる固定となったことにより、作業性良く実施出来た。」

(オ)【図1】、【図6】、【図8】(C)は以下のとおり
「【図1】

【図6】

【図8】(C)


(7)甲7
ア 甲7の記載事項
甲7には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
本発明は、垂木間に断熱材が配置された屋根構造に関する。」

(イ)「【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態にかかる切妻屋根の屋根構造を示す斜視図であり、図2は、この屋根構造のX−X断面図である。なお、図1では、後述する断熱材等の部材を一部省略して記載している。
この屋根構造では、図1に示すように、軒桁10、母屋11及び棟木(不図示)に複数本の垂木12がそれぞれ略平行に掛け渡され、これら垂木12、12間には、図2に示すように、断熱パネル13(後述する断熱パネル13A、13Bを含む)が嵌め込まれて配置されている。この断熱パネル13の上面には透湿防水シート(不図示)が貼着されており、この透湿防水シートの端部同士は垂木12の上部にて重ね合わされている。また、垂木12の上部には、それぞれ透湿防水シートを挟んで通気垂木14が配置される。これら通気垂木14の上部には野地板15は固定され、この野地板15の上部には、図示を省略したが、防水シートを介して瓦等の屋根部材が配置されている。
・・・
【0010】
ところで、本実施形態にかかる屋根は切妻屋根であり、この切妻屋根は、図1に示すように、当該切妻屋根の妻側の端部(螻羽)40が建物の壁面41から外側に張り出すように形成された螻羽の出42を有する。この螻羽の出42は、妻側に配置された垂木12の外側に所定間隔で張り出した複数本の螻羽垂木43を備え、これら螻羽垂木43は、複数本(本構成では2本)の上記垂木12、12に掛け渡されることによって支持されている。これら螻羽垂木43の先端には、図3に示すように、垂木12に略平行に配置された縦枠材44が固定され、この縦枠材44は、垂木12の先端に配置された横枠材45に固定される。これにより垂木12と螻羽垂木43とを囲う枠体が形成される。また、螻羽の出42は、図2に示すように、螻羽垂木43の下方に配置される螻羽天井仕上材46と、この螻羽垂木43の先端に縦枠材44を介して配置される破風板47とを備える。」

(ウ)【図1】、【図2】、【図3】、【図4】は以下の通り。
「【図1】


【図2】

【図3】

【図4】



2 取消理由通知に記載した取消理由について
(1)対比
本件訂正発明1と甲2発明とを対比する。
ア 甲2発明の「社寺建築」及び「丸桁」は、それぞれ、本件訂正発明1の「建物」及び「軒桁」に相当する。

イ 甲2発明の「丸桁に支持され、丸桁よりも外側へ跳ね出し」た「地垂木」は、本件訂正発明1の「建物の軒桁に支持され、軒桁より外側へ跳ね出し」た「下垂木」に相当する。

ウ 本件訂正発明1は、「庇先端部の見付せいを小さくする」ことを課題とするものであるから、本件訂正発明1の「せい」は、「先端部の見付せい」を意味していると理解できる。
そうすると、甲2発明の「地垂木の上方に設けられ、地垂木より外側へ跳ね出し」、「外側端部の成が、地垂木より小さい」「飛えん垂木」は、本件訂正発明1の「下垂木の上方に設けられ、下垂木より外側へ跳ね出し下垂木よりせいが小さい上垂木」に相当する。

エ 「垂木」が一般に、「屋根の裏板または木舞を支えるために、棟から軒にわたす材。」(広辞苑第6版)を意味することに鑑みると、甲2発明の「飛えん垂木」の上に「屋根材が設けられ」ることは自明である。
また、「軒」が一般に、「屋根の下端の、建物の外部に差し出たところ。」(広辞苑第6版)を意味することに鑑みると、甲2発明の「軒」が「屋根」の一部であることは自明である。
そうすると、甲2発明の「軒」は、本件訂正発明1の「屋根」に相当する。

オ 以上から、本件訂正発明1と甲2発明とは、以下の一致点、相違点を有する。
(一致点)
「建物の軒桁に支持され、軒桁より外側へ跳ね出した下垂木と、
下垂木の上方に設けられ、下垂木より外側へ跳ね出し下垂木よりせいが小さい上垂木と、
上垂木の上に設けられた屋根材と、を有する、屋根。」

(相違点1)
本件訂正発明1は、「上垂木及び下垂木が、屋根の頂部において棟木に支持されている」のに対し、甲2発明はそのようなものではない点。

(2)判断
新規性について
上記相違点1は実質的な相違点であるから、本件訂正発明1は甲2に記載された発明ではない。

進歩性について
相違点1に係る本件訂正発明1の構成について、甲2には、示唆する記載はなく、また、自明な事項でもないから、本件訂正発明1は甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明1は甲第2号証に記載された発明ではない。
また、本件訂正発明1は甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由について
(1)甲1を主引用発明とした新規性について(第4の1(1)ア)
ア 対比
(ア)甲1発明の「伝統建築」、「丸桁」及び「屋根」は、それぞれ、本件訂正発明1の「建物」、「軒桁」及び「屋根」に相当する。

(イ)甲1発明の「丸桁に支持され、丸桁よりも外側へ跳ね出し」た「地垂木」は、本件訂正発明1の「建物の軒桁に支持され、軒桁より外側へ跳ね出し」た「下垂木」に相当する。

(ウ)甲1発明の「地垂木より外側へ跳ね出した」「地垂木の上方の先端上部に茅負がある部材」は、本件訂正発明1の「前記下垂木の上方に設けられ、前記下垂木より外側へ跳ね出し前記下垂木よりせいが小さい上垂木」と、「前記下垂木の上方に設けられ、前記下垂木より外側へ跳ね出した上垂木」である点で共通する。

(エ)甲1に「屋根の瓦」との記載があり、また、「屋根」が一般に、雨等の浸入等を防ぐために上部に屋根材を設けたものであることに鑑みると、甲1発明の「地垂木より外側へ跳ね出した」「地垂木の上方の先端上部に茅負がある部材」の上に「屋根材が設けられ」ることは自明である。

(オ)以上から、本件訂正発明1と甲1発明とは、以下の一致点、相違点を有する。
(一致点)
「建物の軒桁に支持され、軒桁より外側へ跳ね出した下垂木と、
下垂木の上方に設けられ、下垂木より外側へ跳ね出した上垂木と、
上垂木の上に設けられた屋根材と、を有する、屋根。」

(相違点1’)
本件訂正発明1は、「上垂木及び下垂木が、屋根の頂部において棟木に支持されている」のに対し、甲1発明はそのようなものではない点。
(相違点2)
本件訂正発明1は、上垂木が「下垂木よりせいが小さい」と特定されているのに対し、甲1発明は上垂木が下垂木よりせいが小さいか不明である点。

イ 判断
上記相違点1’及び相違点2について検討する。
上記相違点1’及び相違点2は実質的な相違点であるから、本件訂正発明1は甲1に記載された発明ではない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明1は甲第1号証に記載された発明ではない。

(2)甲4を主引用発明とした進歩性について(第4の1(2)ア)
ア 本件訂正発明1
(ア)対比
本件訂正発明1と甲4発明とを対比する。
a 甲4発明の「木造住宅」及び「軒桁2」は、それぞれ、本件訂正発明1の「建物」及び「軒桁」に相当する。
b 甲4発明の「棟木1と」「軒桁2との間に」「掛け渡され」た「登り梁4,4」と本件訂正発明1の「建物の軒桁に支持され、前記軒桁より外側へ跳ね出した下垂木」とは、「建物の軒桁に支持され」た「下垂木」の点で共通する。
c 甲4発明の「隣り合う登り梁4,4間に」「掛け渡され」た「母屋5,5上に」「載せ掛けられ」た「登り梁4より外側へ跳ね出し登り梁よりせいが小さい垂木6,6」は、本件訂正発明1の「前記下垂木の上方に設けられ、前記下垂木より外側へ跳ね出し前記下垂木よりせいが小さい上垂木」に相当する。
d 甲4発明の「垂木6,6上に」「載せ掛けられ」た「野地板7」は、本件訂正発明1の「上垂木の上に設けられた屋根材」に相当する。
e 「棟」が一般に「屋根の最も高い水平部分。」(広辞苑第6版)を意味することに鑑みると、甲4発明の棟木は「屋根」の最も高い部分である「頂部」に設けられたものと認められる。
そうすると、甲4発明の「登り梁4,4」が「棟木1と」「軒桁2との間に」「掛け渡され」るとともに、「垂木6,6が」「棟木1、軒桁2及び登り梁4上に亘り」「載せ掛けられた」ことは、本件訂正発明1の「前記上垂木及び前記下垂木が、屋根の頂部において棟木に支持されている」ことに相当する。
f 以上から、本件訂正発明1と甲4発明とは、以下の一致点、相違点を有する。
(一致点)
「建物の軒桁に支持された下垂木と、
下垂木の上方に設けられ、下垂木より外側へ跳ね出し下垂木よりせいが小さい上垂木と、
上垂木の上に設けられた屋根材と、を有し、
上垂木及び下垂木が、屋根の頂部において棟木に支持されている、屋根。」

(相違点3)
本件訂正発明1は、下垂木が「軒桁より外側へ跳ね出し」ているのに対し、甲4発明は「登り梁4」(下垂木)の下端部は軒桁2より内側にあり、「軒桁より外側へ跳ね出し」ていない点。

(イ)判断
上記相違点3について検討する。
甲1及び甲2には、下垂木が「軒桁より外側へ跳ね出し」ていることが示されており(上記2(1)イ、3(1)ア(イ))、甲3にも、同様の事項が開示されているといえる。
しかし、甲1及び甲2の「地垂木」(下垂木)は、伝統建築(社寺建築)の軒を構成するものであって、建物の「軒桁」に支持されるとともに屋根の頂部の「棟木」に支持されるものではない。甲3も、垂木の屋根の頂部側の構造は不明であり、また、軒天板及び鼻隠しを用いることが周知であることを示すために例示された甲6、甲7にも、建物の「軒桁」に支持されるとともに屋根の頂部の「棟木」に支持される下垂木を「軒桁より外側へ跳ね出し」たものとすることについては記載も示唆もされていない。
そうすると、建物の「軒桁」に支持されるとともに屋根の頂部の「棟木」に支持される垂木を「軒桁より外側へ跳ね出し」たものとすることは、申立書に添付された証拠から周知技術ないし公知技術であるとはいえない。
よって、甲1ないし甲3に示された周知技術や甲6、甲7の記載から本件訂正発明1の相違点3に係る構成を導き出すことはできない。

(ウ)小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明1は甲4発明及び甲1ないし甲3、甲6及び甲7に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件訂正発明3
(ア)対比
本件訂正発明3と甲4発明とを対比する。
a 上記アのa〜dの本件訂正発明1と甲4発明との対比については、本件訂正発明3と甲4発明との対比においても同様である。
b そうすると、本件訂正発明3と甲4発明とは、以下の一致点、相違点を有する。
(一致点)
「建物の軒桁に支持された下垂木と、
下垂木の上方に設けられ、下垂木より外側へ跳ね出し下垂木よりせいが小さい上垂木と、
上垂木の上に設けられた屋根材と、を有する、屋根。」

(相違点3’)
本件訂正発明3は、下垂木が「軒桁より外側へ跳ね出し」ているのに対し、甲4発明は「登り梁4」(下垂木)の下端部は軒桁2より内側にあり、「軒桁より外側へ跳ね出し」ていない点。
(相違点4)
本件訂正発明3は、「上垂木の下面には軒天板が張られ、上垂木の庇先端側には鼻隠し板が設けられている」のに対し、甲4発明はそのように特定されていない点。

(イ)判断
上記相違点3’について検討する。
甲1及び甲2には、下垂木が「軒桁より外側へ跳ね出し」ていることが示されており(上記2(1)イ、3(1)ア(イ))、甲3にも、同様の事項が開示されているといえる。
しかし、甲1及び甲2の「地垂木」(下垂木)は、伝統建築(社寺建築)の軒を構成するものであって、構法上必然的に丸桁(軒桁)より外側へ跳ね出し、伝統建築(社寺建築)の意匠上の一要素ともなっているものである。
それに対し、甲4発明の「登り梁4」(下垂木)は、「棟木1に取り付けられる棟木用金具11と、軒桁2に取り付けられる桁用金具23と、登り梁4の上下端部に取り付けられる1対の梁用金具35,35とで、登り梁4の上下端部をそれぞれ棟木1及び軒桁2に接合する」ものであり、「登り梁4の下端部は軒桁2より内側にあ」るものであるから、下垂木が「軒桁より外側へ跳ね出し」ていることが伝統建築(社寺建築)において周知技術であるとしても、それを甲4発明の「登り梁4」に適用する動機はない。
また、甲4発明が「登り梁の両端部をそれぞれ棟木及び桁に接合するための接合金具を改良することにより、異なる屋根勾配に対しても、その屋根勾配に合わせた登り梁の加工は不要として、施工の容易化、施工時間の短縮化、専用加工機の不要化を図ること」を課題とした発明であり、「登り梁4の下端部は軒桁2より内側にあ」ることは、「登り梁4」の「下端部に取り付けられる」「梁用金具35,35」と「桁用金具23」との接合に好適な位置として選択されていると考えられるところ、甲4発明の「登り梁4」(下垂木)に下垂木が「軒桁より外側へ跳ね出し」ているという周知技術を採用すると、金具を採用したことによる施工の容易化等の利点を減じることとなるから、甲4発明への上記周知技術の適用には阻害要因があるともいえる。
さらに、軒天板及び鼻隠しを用いることが周知であることを示すために例示された甲6、甲7にも、甲4発明の「登り梁4」(下垂木)を「軒桁より外側へ跳ね出し」たものとすることが容易であることを示す証拠となる記載はない。
よって、相違点4について検討するまでもなく、本件訂正発明3は、甲4発明、甲1ないし甲3に示された周知技術及び甲6、甲7に記載された事項から当業者が容易に想到し得たものではない。

(ウ)小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明3は甲4発明及び甲1ないし甲3、甲6及び甲7に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件訂正発明4
本件訂正発明4は、本件訂正発明3の構成を全て含み、さらに限定を加えたものであり、本件訂正発明3については上記イで検討したとおりである。
そうすると、本件訂正発明4は、上記イと同様の理由で、甲4発明及び甲1ないし甲3、甲6及び甲7に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)甲5を主引用発明とした進歩性について(第4の1(2)イ)
ア 本件訂正発明1
(ア)対比
本件訂正発明1と甲5発明とを対比する。
a 「小屋組」が一般に「家の屋根を支え受けるために組み立てた骨組。」(広辞苑第6版)を意味することに鑑みると、甲5発明の「軒側に位置する柱7b上に横架される母屋2」は、本件訂正発明1の「建物の軒桁」に相当するといえる。
b 甲5発明の「複数の母屋2に固着される」「登梁4」と本件訂正発明1の「建物の軒桁に支持され、前記軒桁より外側へ跳ね出した下垂木」とは、「建物の軒桁に支持され」た「下垂木」の点で共通する。
c 甲5発明の「登梁4より上方に設けられ、登梁4より外側へ跳ね出し登梁4よりせいが小さ」い「垂木5」は、本件訂正発明1の「前記下垂木の上方に設けられ、前記下垂木より外側へ跳ね出し前記下垂木よりせいが小さい上垂木」に相当する。
d 「垂木」が一般に、「屋根の裏板または木舞を支えるために、棟から軒にわたす材。」(広辞苑第6版)を意味することに鑑みると、甲5発明の「垂木5」の上に「屋根材が設けられ」ることは自明である。
e 甲5発明の「垂木5」が「立上金物6、6’により棟梁1及び母屋2に固着されている」ことと、本件訂正発明1の「前記上垂木及び前記下垂木が、屋根の頂部において棟木に支持されている」こととは、「棟」が一般に「屋根の最も高い水平部分。」(広辞苑第6版)を意味することに鑑みると、「前記上垂木が、屋根の頂部において棟木に支持されている」ことで共通する。
f 以上から、本件訂正発明1と甲5発明とは、以下の一致点、相違点を有する。
(一致点)
「建物の軒桁に支持された下垂木と、
下垂木の上方に設けられ、下垂木より外側へ跳ね出し下垂木よりせいが小さい上垂木と、
上垂木の上に設けられた屋根材と、を有し、
上垂木及び下垂木が、屋根の頂部において棟木に支持されている、屋根。」

(相違点3’’)
本件訂正発明1は、下垂木が「軒桁より外側へ跳ね出し」ているのに対し、甲5発明は「登梁4」(下垂木)の下端部は「軒側に位置する柱7b上に横架される母屋2」(軒桁)より内側にあり、「軒桁より外側へ跳ね出し」ていない点。
(相違点5)
本件訂正発明1は、「下垂木が、屋根の頂部において棟木に支持されている」のに対し、甲5発明は、建物の軒桁(軒側に位置する柱7b上に横架される母屋2)に支持される登梁4(下垂木)は、「複数の母屋2」に固着されるものであって「屋根の頂部において棟木に支持されている」ものではない点。

(イ)判断
上記相違点3’’及び相違点5について併せて検討する。
甲1及び甲2には、下垂木が「軒桁より外側へ跳ね出し」ていることが示されており(上記2(1)イ、3(1)ア(イ))、甲3にも、同様の事項が開示されているといえる。
しかし、甲1及び甲2の「地垂木」(下垂木)は、伝統建築(社寺建築)の軒を構成するものであって、建物の「軒桁」に支持されるとともに屋根の頂部の「棟木」に支持されるものではない。甲3も、垂木の屋根の頂部側の構造は不明であり、また、軒天板及び鼻隠しを用いることが周知であることを示すために例示された甲6、甲7にも、建物の「軒桁」に支持されるとともに屋根の頂部の「棟木」に支持される下垂木を「軒桁より外側へ跳ね出し」たものとすることについては記載も示唆もされていない。
そうすると、建物の「軒桁」に支持されるとともに屋根の頂部の「棟木」に支持される垂木を「軒桁より外側へ跳ね出し」たものとすることは、申立書に添付された証拠から周知技術ないし公知技術であるとはいえない。
よって、甲1ないし甲3に示された周知技術や甲6、甲7の記載から本件訂正発明1の相違点3’’に係る構成を導き出すことはできない。
したがって、本件訂正発明1は、甲5発明、甲1ないし甲3に示された周知技術及び甲6、甲7に記載された事項から当業者が容易に想到し得たものではない。

(ウ)小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明1は甲5発明及び甲1ないし甲3、甲6及び甲7に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件訂正発明3
(ア)対比
本件訂正発明3と甲5発明とを対比する。
a 上記アのa〜dの本件訂正発明1と甲5発明との対比については、本件訂正発明3と甲5発明との対比においても同様である。
b そうすると、本件訂正発明3と甲5発明とは、以下の一致点、相違点を有する。
(一致点)
「建物の軒桁に支持された下垂木と、
下垂木の上方に設けられ、下垂木より外側へ跳ね出し下垂木よりせいが小さい上垂木と、
上垂木の上に設けられた屋根材と、を有する、屋根。」

(相違点3’’’)
本件訂正発明3は、下垂木が「軒桁より外側へ跳ね出し」ているのに対し、甲5発明は「登り梁4」(下垂木)の下端部は「軒側に位置する柱7b上に横架される母屋2」(軒桁)より内側にあり、「軒桁より外側へ跳ね出し」ていない点。
(相違点4’)
本件訂正発明3は、「上垂木の下面には軒天板が張られ、上垂木の庇先端側には鼻隠し板が設けられている」のに対し、甲5発明はそのように特定されていない点。

(イ)判断
上記相違点3’’’について検討する。
甲1及び甲2には、下垂木が「軒桁より外側へ跳ね出し」ていることが示されており(上記2(1)イ、3(1)ア(イ))、甲3にも、同様の事項が開示されているといえる。
しかし、甲1及び甲2の「地垂木」(下垂木)は、伝統建築(社寺建築)の軒を構成するものであって、構法上必然的に丸桁(軒桁)より外側へ跳ね出し、伝統建築(社寺建築)の意匠上の一要素ともなっているものである。
それに対し、甲5発明の「登梁4」(下垂木)は、横架材である棟梁及び母屋の間、及び、母屋と母屋の間に設けられて構造材としての機能を果たすものであり、そのため、「登梁4の下端部」は「軒側に位置する柱7b上に横架される母屋2」(軒桁)より内側にあるものとなっているものである。そうすると、下垂木が「軒桁より外側へ跳ね出し」ていることが伝統建築(社寺建築)において周知技術であるとしても、それを甲5発明の「登梁4」に適用する動機はない。
また、軒天板及び鼻隠しを用いることが周知であることを示すために例示された甲6、甲7にも、甲5発明の「登梁4」(下垂木)を「軒桁より外側へ跳ね出し」たものとすることが容易であることを示す証拠となる記載はない。
よって、相違点4’について検討するまでもなく、本件訂正発明3は、甲5発明、甲1ないし甲3に示された周知技術及び甲6、甲7に記載された事項から当業者が容易に想到し得たものではない。

(ウ)小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明3は甲5発明及び甲1ないし甲3、甲6及び甲7に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件訂正発明4
本件訂正発明4は、本件訂正発明3の構成を全て含み、さらに限定を加えたものであり、本件訂正発明3については上記イで検討したとおりである。
そうすると、本件訂正発明4は、上記イと同様の理由で、甲5発明及び甲1ないし甲3、甲6及び甲7に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第7 むすび
以上のとおり、本件訂正発明1、3及び4に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び申立人が申し立てた特許異議申立理由及び証拠によっては、取り消すことはできない。さらに、他に本件訂正発明1、3及び4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。


 
発明の名称 (54)【発明の名称】屋根
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根に関する。
【背景技術】
【0002】
木造建築では、屋根材が取付けられる垂木が軒桁から庇先端部まで跳ね出している。このため、屋根の庇先端部の見付せいは垂木のせいに依存する。庇先端部の見付せいを小さくするためには、下記特許文献1に示すように垂木を切欠いて先端部のせいを小さくする方法もあるが、この方法では、垂木の加工に手間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−218324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事実を考慮して、垂木に複雑な加工を施さずに屋根の庇先端部の見付せいを小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の屋根は、建物の軒桁に支持され、前記軒桁より外側へ跳ね出した下垂木と、前記下垂本の上方に設けられ、前記下垂木より外側へ跳ね出し前記下垂木よりせいが小さい上垂木と、前記上垂木の上に設けられた屋根材と、を有し、前記上垂木及び前記下垂木が、屋根の頂部において棟木に支持されている。
【0006】
請求項1の屋根では、軒桁に支持された下垂木の上方又は側方に上垂木を設け、下垂木より外側へ跳ね出した上垂木のせいを下垂木のせいより小さくすることで、屋根庇先端の見付せいを小さくできる。つまり、垂木を屋根庇先端まで跳ね出した場合の垂木のせいと屋根材の厚みの合計である見付せいより、上垂木のせいと屋根材の厚みの合計である見付せいが小さくなる。
【0007】
また、せいの小さい上垂木を下垂木よりも外側へ跳ね出すだけで屋根の庇先端部の見付せいを小さくできるので、下垂木に複雑な加工を施す必要がない。
請求項2の屋根は、建物の軒桁に支持され、前記軒桁より外側へ跳ね出した下垂木と、前記下垂木の側方に設けられ、前記下垂木より外側へ跳ね出し前記下垂木よりせいが小さい上垂木と、前記上垂木の上に設けられた屋根材と、を有する。
【0008】
請求項3の屋根は、建物の軒桁に支持され、前記軒桁より外側へ跳ね出した下垂木と、前記下垂木の上方に設けられ、前記下垂木より外側へ跳ね出し前記下垂木よりせいが小さい上垂木と、前記上垂木の上に設けられた屋根材と、を有し、前記上垂木の下面には軒天板が張られ、前記上垂木の庇先端側には鼻隠し板が設けられている。
【0009】
請求項3の屋根によると、上垂木が外から見えないので見た目がよい。
【0010】
請求項4の屋根は、請求項3に記載の建物において、前記屋根材と前記軒天板の間には断熱材が配置されている。
【0011】
請求項4の屋根によると、軒天板の結露を抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る屋根によると、垂木に複雑な加工を施さずに屋根の庇先端部の見付せいを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る屋根の庇部分を示した側断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る屋根の庇根元部分を示す、図1における2−2線断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る屋根の庇先端部分の詳細を示す、図1における3−3線断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る屋根の庇先端部分を示す、部分拡大断面図である。
【図5】(A)は本発明の実施形態に係る下垂木の端部が軒桁の上部に配置された変形例を示す側断面図であり、(B)は下垂本の端部が軒桁の内側面に固定された変形例を示す側断面図であり、(C)は下垂木が矩形状の1つの部材で構成された変形例を示す正面断面図である。
【図6】(A)は本発明の実施形態に係る上垂木が下垂木の側方に配置された変形例を示す正面断面図であり、(B)は側断面図である。
【図7】(A)は本発明の実施形態に係る上垂木のピッチが下垂木のピッチよりも細かくされた変形例を示す正面断面図であり、(B)は側断面図である。
【図8】本発明の実施形態に係る屋根の効果を説明するための比較例を示す立断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1には、本発明の実施形態に係る屋根20の庇部分の断面図が示されている。屋根20は、建物10の軒桁12に支持された下垂木30と、下垂木30の上方に設けられ、下垂木30より外側(軒桁12よりも屋外側)へ跳ね出す上垂木40と、上垂木40の上に設けられた屋根材50と、を備えている。
【0015】
上垂木40は下垂木30に沿って延設されており、屋根20の棟部分(頂部)においては、下垂木30及び上垂木40が、軒桁12と平行な方向へ延設された図示しない棟木に支持されている。
【0016】
なお、以下の説明において、屋根20における軒桁12よりも内側の部分(図1では左側)を本体部22、軒桁12の外側の部分(図1では右側)を庇24と称し、さらに庇24のうち下垂木30が配置されている部分を庇根元部24A、下垂木30が配置されていない部分を庇先端部24Bと称する。
【0017】
(下垂木)
図1に示すように、下垂木30は建物10の軒桁12の上に載置され、下垂木30の先端30Eは軒桁12よりも外側(軒桁12よりも屋外側)に配置され、下垂木30の軸方向に対して傾斜して形成されている。互いに隣接する下垂木30の間で、軒桁12の上部には、軒桁12の延設方向に沿って面戸板18が配置され、軒桁12と後述する軒天板60との間の隙間が塞がれている。
【0018】
なお、本実施形態において下垂木30の先端30Eは軒桁12よりも外側に配置されているが、本発明の実施形態はこれに限られない。例えば図5(A)に示す下垂木31のように、先端31Eを軒桁12の上部に配置して、軒桁12の上部で軒桁12の延設方向に沿って通し材とされた面戸板19を先端31Eに固定してもよい。この場合、下垂木31の先端31Eが面戸板18により隠されるので、屋外に下垂木31が露出せず、庇24の見付せいを小さくすることができる。
【0019】
また、例えば図5(B)に示す下垂木33のように、先端33Eを軒桁12の内側面に固定して、面戸板のない構成としてもよい。この場合、屋根を構成する部品点数を減らすことができる。
【0020】
なお、庇24の「見付せい」とは、図1に示すように、後述する上垂木40の材軸方向と直交する方向(図1に一点鎖線R2で示す方向)に沿った庇24の厚みを示しており、庇根元部24Aにおいては、下垂木30の下端から後述する屋根材50の上端までの厚みが見付せいH3とされ、庇先端部24Bにおいては、後述する軒天板60の下端から屋根材50の上端までの厚みが見付せいH4とされている。
【0021】
図2に示すように、下垂木30は、芯材32と、芯材32を両側から挟み込んで保持する一対の脇材34と、を備えており、脇材34は芯材32よりもせいが大きく形成され、図示しないビスを用いて芯材32に固定されている。このため、下垂木30は断面形状が略コの字型に形成されている。
【0022】
なお、本実施形態における「せい」とは、下垂木30及び上垂木40の材軸方向(図1に一点鎖線R1で示す方向)と直交する方向(図1に一点鎖線R2で示す方向)に沿った下垂木30(下垂木30を構成する脇材34)及び上垂木40の厚みを示しており、図1、図2において、それぞれH1及びH2で示されている。
【0023】
芯材32、脇材34はそれぞれ規格寸法の無垢の木材とされ、本実施形態においては芯材32はツーバイフォー材(約38mm×89mm)、脇材34はツーバイエイト材(約38mm×184mm)とされている。
【0024】
なお、本実施形態において下垂木30は軒桁12(図1参照)の延設方向に約900mmピッチで配置されているが、このピッチは変更してもよく、例えば900mmよりも大きくする場合は下垂木30が負担する荷重が増えるので、芯材32としてツーバイシックス材(約38mm×140mm)を用いたり、脇材34としてツーバイテン材(約38mm×235mm)を用いたりして、下垂木30の強度を高めることができる。
【0025】
また、ピッチを900mmより小さくする場合は下垂木30が負担する荷重が減るので脇材34としてツーバイシックス材、ツーバイフォー材などを用いて、下垂木30のせいを小さくすることができる。
【0026】
なお、本実施形態において下垂木30は芯材32、脇材34を組み合わせて略コの宇型に構成されているが、本発明の実施形態はこれに限られない。例えば図5(C)に示す下垂木35のように、1つの部材で矩形状に構成してもよい。このように構成することで、下垂木の加工を簡略化できる。さらに、下垂木30を形成する材質としては規格寸法の無垢の木材に限られず、必要な材料強度や寸法に応じて、規格外寸法としてもよいし、集成材、樹脂と粉末木材とを混錬凝結した合成木、角型鋼管、溝形鋼などを用いてもよい。
【0027】
(軒天板)
下垂木30には軒天板60が載置され、軒天板60の端部が下垂木30の脇材34に上からビス62で固定されている。また、図3に示すように、下垂木30がない庇先端部において軒天板60の端部は、上垂木40に下からビス66で固定されている。軒天板60は構造用合板によって形成されており、隣接する下垂木30及び上垂木40に両端が固定された状態で、構造上及び意匠上支障となる撓みを生じない程度の剛性を備えている。
【0028】
なお、本実施形態においては軒天板60の表面が露出しているが、意匠上必要があれば、軒天板60の表面を、図2に点線で示すように仕上げ材64で被覆してもよい。仕上げ材64の材質としては、ケイ酸カルシウム板、木板や金属板などを適宜用いることができる。
【0029】
また、本発明の実施形態においては軒天板60は必ずしも必要ではなく、軒天板60を設けない構成とすることもできる。軒天板60を設けなければ、上垂木40が露出するが、庇先端部の見付せいを小さくすることができる。
【0030】
(上垂木)
図2に示すように、軒天板60の上部には上垂木40が配置され、上垂木40と下垂木30とで軒天板60の端部を挟み込んでいる。上垂木40は下垂木30の芯材32にビス42で固定されている。上垂木40は、どの面を底面として配置してもせいが等しくなるように正方形の無垢の木材で形成されており、施工性が高められている。なお、上垂木40を形成する材質としては、下垂木30と同様、無垢の木材に限られず、集成材、樹脂と粉末木材とを混錬凝結した合成木、角型鋼管、溝形鋼などを用いることができる。
【0031】
上垂木40のせいH2は、図1に示すように、上垂木40が、屋根材50及び後述する野地板52の荷重を支持し、かつ下面に軒天板60が張られた状態で構造上及び意匠上支障となる撓みが生じない寸法とされている。なお、庇先端部24Bの跳ね出し幅はL1とされ、跳ね出し幅L1に下垂木30の軒桁12からの跳ね出し幅L2を加えた値が、庇24の軒桁12からの跳ね出し幅L3とされている。
【0032】
上垂木40は屋根材50及び野地板52の荷重を支持している。これに対し下垂木30は、屋根材50、野地板52、上垂木40、軒天板60等の荷重を支持しており、上垂木40よりも支持する荷重が大きい。このため、下垂木30のせいH1は、上垂木40のせいH2よりも大きい。換言すると、上垂木40は、下垂木30よりも負担する荷重が小さいので、せいH1をせいH2と比較して小さくすることができる。
【0033】
図4に示すように、上垂木40の先端40Eは上垂木40の延設方向と直交する方向(図1における軒桁12と平行な方向)に延設された垂木受け44にビス46で接合されている。さらに、垂木受け44の側面44E及び軒天板60の端面60Eをそれぞれ覆うように、鼻隠し板48が垂木受け44にビス49で固定されている。鼻隠し板48は軒先の剛性を高めかつ意匠性を向上させるために硬度の高い化粧木により形成され、鼻隠し板48の端面48Eは上垂木の材軸方向に対して傾斜して形成されている。
【0034】
(屋根材)
図2に示すように、上垂木40の上部には野地板52を介して屋根材50が載置されている。野地板52は耐水合板とされ、端部が上垂木40にビス54で固定されている。屋根材50はアルミニウム亜鉛合金メッキ鋼板とされ、野地板52との間には図示しない改質アスファルトルーフィング下地が敷設されて止水性を確保している。また屋根材50は長軸方向が上垂木40の延設方向に沿うように敷設された竪ハゼ葺きとされ、雨水が流れ易くなっている。
【0035】
(断熱材)
野地板52と軒天板60との間には、硬質ウレタンフォームにより形成された断熱材70が配置されている。断熱材70は図1に示すように、建物10の軒桁12よりも内側の屋内空間を覆うように配置されており、屋内空間の断熱性が高められ、屋内空間まで延設され天井仕上げ材とされた軒天板60の結露を抑制している。
【0036】
なお、断熱材70は例えば図1に2点鎖線で示すように、庇の先端部分まで延設してもよい。断熱材70をこのように配置することで、屋外の軒天板60の結露が抑制される。また、断熱材70は必ずしも野地板52と軒天板60との間に設ける必要はなく、例えば図1に破線で示すように屋内空間に天井材14を張り、天井材14と軒天板60との間に小屋裏空間16を形成する場合などは、断熱材70は天井材14の上部に載置してもよい。さらに、断熱材70はグラスウールやロックウール、セルロースファイバーなどの繊維系断熱材としてもよい。
【0037】
(作用・効果)
本実施形態の屋根20の効果を説明するために、図8を用いて従来技術とされた比較例に係る屋根200について説明する。屋根200は、軒桁12に支持された垂木400と、垂木400の下に張られた軒天板600と、垂木400の上に野地板520を介して張られた屋根材500と、を備えている。垂木400は軒桁12の延設方向に沿って約900mmピッチで配置されており、庇の先端部まで延設されている。垂木400の先端400Eには鼻隠し板480が固定されている。庇240の軒桁12からの跳ね出し幅は本実施形態における庇24の跳ね出し幅L3と等しく形成されている。
【0038】
なお、従来技術においては垂木400の下に軒天板600が張られない場合もあるが、上垂木40の下に軒天板60が張られた本実施形態と条件を等しくするために、ここでは軒天板600が張られた場合を説明する。
【0039】
垂木400のせいH5は、垂木400が、屋根材500及び野地板520の荷重を支持し、かつ下面に軒天板600が張られた状態で構造上及び意匠上支障となる撓みが生じない寸法とされている。垂木400に支持された庇240の跳ね出し幅L3は、本実施形態における庇24の跳ね出し幅L3と等しく、上垂木40に支持された庇先端部24Bの跳ね出し幅L1よりも大きい。このため比較例の垂木400は、本実施形態の上垂木40と比較して、より大きな曲げモーメントを負担する必要がある。したがって垂木400のせいH5は、本実施形態における上垂木40のせいH2よりも大きく形成する必要があり、庇240の見付せいH6は、本実施形態における庇先端部24Bの見付せいH4よりも大きくなる。
【0040】
すなわち、本実施形態における屋根20によると、庇の跳ね出し幅が等しい比較例に係る屋根200と比較して、庇先端部24Bの見付せいH4を小さくすることができる。
【0041】
また、仮に本実施形態における上垂木40のせいH2を、比較例における垂木400のせいH5と等しくした場合、上垂木40の強度が大きくなるので、庇先端部24Bの跳ね出し幅L1を大きくして、跳ね出し幅L3とすることができる。つまり、庇24の跳ね出し幅を大きくすることができる。
【0042】
さらに、仮に比較例における庇240において庇先端部の見付せいを小さくしようとした場合、図8に破線で示したように、垂木400を切欠き加工しなければならない。このように入隅部400Hを形成する切欠き加工は、一般に手作業で行う必要があり、施工効率が悪くなる。また、入隅部400Hが構造的な弱点となる場合もある。本実施形態における屋根20では、このような切欠き加工を必要としないので、施工が容易である。
【0043】
(変形例)
次に、本実施形態の変形例について説明する。本実施形態においては、上垂木40は下垂木30の上方に設けられているが、本発明の実施形態はこれに限られない。例えば、図6(A)に示す上垂木41のように、下垂木30の側方に設けてもよい。この場合、上垂木41は下垂木30のいずれか一方の側面に設けてもよいが、荷重のバランスを考慮して、下垂木30の両側に設けることが好適である。上垂木41をこのように配置することで、図6(B)に示すように、上垂木40を下垂木30の上方に配置する場合の庇根元部24Aの見付せいH3と比較して、見付せいH7を小さくすることができる。
【0044】
また、上垂木40は下垂木30と同ピッチとされているが、本発明の実施形態はこれに限られない。例えば図7(A)に示す上垂木43のように、ピッチを下垂木30よりも細かくしてもよい。このようにすれば上垂木43一本あたりが負担する荷重が減るので上垂木43のせいを小さくすることができる。したがって、図7(B)に示すように、上垂木40と下垂木30とを同ピッチとした場合の庇先端部24Bの見付せいH4と比較して、見付せいH8を小さくすることができる。なお、この場合、下垂木30の上に載置されない上垂木43Bは棟木まで延設する必要はなく、受梁36を下垂木30間に適宜架け渡し、その上部に端部43BEを配置すればよい。
【符号の説明】
【0045】
10 建物
12 軒桁
20 屋根
30、31、33、35 下垂木
40、41、43 上垂木
48 鼻隠し板
50 屋根材
60 軒天板
70 断熱材
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の軒桁に支持され、前記軒桁より外側へ跳ね出した下垂木と、
前記下垂木の上方に設けられ、前記下垂木より外側へ跳ね出し前記下垂木よりせいが小さい上垂木と、
前記上垂木の上に設けられた屋根材と、を有し、
前記上垂木及び前記下垂木が、屋根の頂部において棟木に支持されている、屋根。
【請求項2】
建物の軒桁に支持され、前記軒桁より外側へ跳ね出した下垂木と、
前記下垂木の側方に設けられ、前記下垂木より外側へ跳ね出し前記下垂木よりせいが小さい上垂木と、
前記上垂木の上に設けられた屋根材と、
を有する屋根。
【請求項3】
建物の軒桁に支持され、前記軒桁より外側へ跳ね出した下垂木と、
前記下垂木の上方に設けられ、前記下垂木より外側へ跳ね出し前記下垂木よりせいが小さい上垂木と、
前記上垂木の上に設けられた屋根材と、を有し、
前記上垂木の下面には軒天板が張られ、前記上垂木の庇先端側には鼻隠し板が設けられている、屋根。
【請求項4】
前記屋根材と前記軒天板の間には断熱材が配置されている請求項3に記載の屋根。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-12-02 
出願番号 P2016-119177
審決分類 P 1 652・ 121- YAA (E04B)
P 1 652・ 113- YAA (E04B)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 森次 顕
特許庁審判官 土屋 真理子
住田 秀弘
登録日 2020-09-29 
登録番号 6770343
権利者 株式会社竹中工務店
発明の名称 屋根  
代理人 特許業務法人太陽国際特許事務所  
代理人 特許業務法人太陽国際特許事務所  
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