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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08L
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08L
管理番号 1384105
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-04-21 
確定日 2022-02-02 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6774329号発明「液晶ポリエステル樹脂組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6774329号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−6〕について訂正することを認める。 特許第6774329号の請求項1−6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6774329号(請求項の数6。以下、「本件特許」という。)は、平成28年12月28日を出願日とする特許出願(特願2016−256462号、以下「本願」という。)に係るものであって、令和2年10月6日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、令和2年10月21日である。)

その後、令和3年4月21日に、本件特許の全ての請求項である請求項1〜6に係る特許に対して、特許異議申立人である森田弘潤(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものであり、審理対象外の請求項は存しない。

(1)特許異議申立以降の経緯
令和3年 4月21日 特許異議申立書
同年 7月21日付け 取消理由通知書
同年 9月29日 訂正請求書、意見書(特許権者)
同年10月 7日付け 通知書(申立人宛)
同年11月22日 意見書(申立人)


(2)証拠方法
ア 申立人が、特許異議申立書に添付して提出した証拠方法は、以下のとおりである。

・甲第1号証:特開2004−351860号公報
・甲第2号証:国際公開第2013/128887号
・甲第3号証:特開2013−28678号公報
・甲第4号証:特開2003−246923号公報
・甲第5号証:特開2013−194165号公報
・甲第6号証:新村出編、「広辞苑 第六版」、岩波書店、2008年、「そうか−へいきん」「へいきん」の項目
・甲第7号証:ウィキペディア(Wikipedia)「平均」に関する記載、2021年4月20日、https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%B3%E5%9D%87
・甲第8号証:特開平10−265215号公報
・甲第9号証:特開2012−206296号公報
・甲第10号証:特開2013−72070号公報
・甲第11号証:特開2013−147628号公報
・甲第12号証:特開2015−147881号公報

イ 当審が令和3年7月21日付け取消理由通知で引用した参考資料
当審が令和3年7月21日付け取消理由通知で引用した参考資料3〜7は以下のとおりである。

・参考文献3:特開2009−242453号公報
・参考文献4:特開平6−207083号公報
・参考文献5:特開平4−33946号公報
・参考文献6:特開2008−176029号公報
・参考文献7:特開2009−263640号公報


第2 訂正の適否についての判断
令和3年9月29日にした訂正請求は、以下の訂正事項を含むものである。
(以下、「本件訂正」という。また、本件の設定登録時願書に添付した明細書及び特許請求の範囲を「本件特許明細書等」という。)

1 訂正の内容
(1)訂正事項1
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、「前記(A)液晶ポリエステル100質量部に対し、前記(B)タルクと前記(C)マイカとの合計量((B)+(C))が5質量部以上100質量部以下であり、かつ、前記(B)タルクと前記(C)マイカとの重量比((B)/(C))が9/1〜1/9であり、」とあるのを
「前記(A)液晶ポリエステル100質量部に対し、前記(B)タルクと前記(C)マイカとの合計量((B)+(C))が5質量部以上100質量部以下であり、かつ、前記(C)マイカが1質量部以上20質量部以下であり、
前記(B)タルクと前記(C)マイカとの重量比((B)/(C))が9/1〜1/9であり、」に訂正する。

(2)一群の請求項
本件訂正前の請求項2〜6は、それぞれ訂正前の請求項1を直接的又は間接的に引用するものであり、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであり、本件訂正前の請求項1〜6は一群の請求項である。
よって、本件訂正は、一群の請求項に対してなされたものである。

2 判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1による訂正は、訂正前の請求項1の「液晶ポリエステル樹脂組成物」中の「(C)マイカ」の含有量について、「(B)タルク」と「(C)マイカ」との合計量について特定されていたことに加え、「(C)マイカ」の単独の含有量について「1質量部以上20質量部以下」とさらに特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。

新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項1による「液晶ポリエステル樹脂組成物」中の「(C)マイカ」の含有量を特定する訂正は、本件明細書の段落【0051】に「前記(C)マイカの配合量は、前記(A)液晶ポリエステル100重量部に対して、1質量部以上が好ましく、・・・。また、前記(A)液晶ポリエステル100重量部に対して、100質量部以下が好ましく、・・・、20質量部以下が特に好ましい」と記載されていることから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内であるといえる。
また、訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことも明らかである。

(2)まとめ
以上のとおりであるから、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる目的に適合し、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するから、本件訂正を認める。


第3 本件発明
上記「第2 訂正の適否についての判断」のとおり、本件訂正は適法であるので、特許第6774329号の特許請求の範囲の記載は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1〜6のとおりのものである(以下、請求項1〜6に記載された事項により特定される発明を「本件発明1」〜「本件発明6」といい、まとめて「本件発明」ともいう。また、本件の設定登録時の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。

「【請求項1】
(A)液晶ポリエステル、(B)タルク、および(C)マイカ、を含有し、
前記(A)液晶ポリエステル100質量部に対し、前記(B)タルクと前記(C)マイカとの合計量((B)+(C))が5質量部以上100質量部以下であり、かつ、前記(C)マイカが1質量部以上20質量部以下であり、
前記(B)タルクと前記(C)マイカとの重量比((B)/(C))が9/1〜1/9であり、
前記液晶ポリエステルの構造単位は、4−ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/イソフタル酸/4,4'−ジヒドロキシビフェニルの組み合わせであり、
前記4−ヒドロキシ安息香酸に対する前記4,4’−ジヒドロキシビフェニルのモル比率(モル比率4,4’−ジヒドロキシビフェニル/パラヒドロキシ安息香酸)が0.2〜1.0であり、
前記4,4’−ジヒドロキシビフェニルに対する前記テレフタル酸と前記イソフタル酸との合計量のモル比率(モル比率(テレフタル酸+イソフタル酸)/4,4’−ジヒドロキシビフェニル)が0.9〜1.1であることを特徴とする液晶ポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
更に、前記(A)液晶ポリエステル100質量部に対し、(D)ガラス繊維を5質量部以上100質量部以下含有する請求項1に記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
前記(D)ガラス繊維の数平均繊維長が50μm以上300μm以下である請求項2に記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)タルクの体積平均粒径が5μm以上25μm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
【請求項5】
前記(C)マイカの体積平均粒径が15μm以上45μm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の液晶ポリエステル樹脂組成物で形成された成形体。」


第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要
1 取消理由通知の概要
当審が令和3年7月21日付けの取消理由通知で通知した取消理由の概要は、以下に示すとおりである。

(1)取消理由A(進歩性
本件訂正前の請求項1〜6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

2 特許異議申立理由の概要
申立人が特許異議申立書に記載した申立て理由の概要は、以下に示すとおりである。

(1)申立理由1(サポート要件)
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1〜6の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、下記「第6 当審の判断」「2 特許異議申立書に記載された申立理由について」「(1)申立理由1(サポート要件)について」「ア 申立理由1(サポート要件)の概要」に記載した点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合するものではない。
よって、本件訂正前の請求項1〜6に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。

(2)申立理由2(新規性
ア 本件訂正前の請求項1〜6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない(以下「申立理由2−1」という。)。
イ 本件訂正前の請求項1〜6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない(以下「申立理由2−2」という。)。
よって、本件訂正前の請求項1〜6に係る発明の特許は、同法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(3)申立理由3(進歩性
ア 本件訂正前の請求項1〜6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明及び他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。(以下「申立理由3−1」という。取消理由Aと同趣旨である。)
イ 本件訂正前の請求項1〜6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である甲第2号証に記載された発明及び他の甲号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。(以下「申立理由3−2」という。)
よって、本件訂正前の請求項1〜6に係る発明の特許は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。


第5 本件明細書及び各甲号証に記載された事項
1 本件明細書に記載された事項
本件明細書には、以下の事項が記載されている。

(本a)「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ポリエステル樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ポリエステルは、優れた薄肉成形性や、高い耐熱性を有している。このため、液晶ポリエステルには、リフローハンダ工程を使用したコネクターやリレー、ボビンなどの表面実装用電子部品に採用されている。情報通信分野においては、表面実装用電子部品の高集積化、小型化、薄肉化、低背化が進んでおり、中でもコネクター部品において、薄肉化の傾向が顕著である。
【0003】
このような薄肉化されたコネクターの代表例としては、プリント配線基板同士を接合するのに使用されるボードツーボード(Board to Board)コネクターや、フレキシブルプリント基板(FPC)とフレキシブルフラットケーブル(FFC)を接続するのに使用されるFPC用コネクター等が挙げられる。Board to BoardコネクターやFPC用コネクターには、プリント配線基板を用いる電子機器の小型化に伴って、コネクターの実装面積の省スペース化が求められている。例えば、コネクターの金属端子間のピッチを0.35mm以下にした狭ピッチコネクターが提供されている。また、コネクターを嵌合した状態での厚み寸法(いわゆる、スタッキング高さ)が0.6mmt以下である低背のコネクターも提供されている。
【0004】
このような狭ピッチ化、低背化の要求に応えようとすれば、金属端子を保持する液晶ポリエステル成形品の寸法を小さくしなければならず、コネクターの強度が非常に弱くなり、実用強度を維持できなくなる可能性がある。つまり、コネクターが薄型化すると、コネクターの取り扱い時又は実装時に生じる応力によって、コネクターに捻れや割れ等の破壊を生じる可能性が高くなる。
このため、Board to Boardコネクター、FPC用コネクターに代表される薄肉のコネクターの成形材料である液晶ポリエステルには、優れた薄肉流動性と薄肉強度が同時に要求される。
例えば、1.0mmt程度の薄肉の部分へ樹脂を充填させるためには、充填材の量を少なくする必要がある。しかし、充填材の含有量が少ない組成物では強度不足となり、実装時のリフローハンダ工程の加熱処理により反り変形するという問題が生じている。
【0005】
加えて、リフローハンダ工程で、コネクターに反りが発生すると、金属端子と基板に形成されている回路との間に隙間が発生してしまう。そうすると、ハンダがその隙間を埋められるだけの体積を維持できず、金属端子と回路とが離れた状態でハンダが固まってしまう。その結果、電気的に導通できない接合不良を生じてしまう。
また、コネクターが常温まで冷却され、その後、反り変形を発生させるような場合においても、金属端子が回路から離れてしまい、電気的に導通していない接点不良を誘発して
しまう。
従って、コネクターは、リフローハンダ工程の加熱処理加熱時の反り変形が少ないことが望ましく、更に、リフロー中にハンダが固化する状態において反り変形が少ないことが求められる。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、従来の技術ではリフロー処理の前後での反りの発生には注目されていたものの、リフロー処理中の反りの発生に積極的に着目した試みはされていなかった。
特許文献1に記載の樹脂組成物を用いて得られる成形品は、通常リフローハンダの工程のハンダ厚みが0.1mm程度あることを考慮すると、リフロー処理中の反り量低減効果は不十分であった。
また、特許文献2及び3に記載の樹脂組成物を用いて得られる成形品は、リフロー処理前の反り量は低減されているものの、リフロー処理中の反り量低減効果は不十分である課題があった。
【0009】
このように、薄肉のコネクターに用いる液晶ポリエステル樹脂組成物に関しては様々な検討が行われているが、従来公知の技術では十分ではなく、さらなる改良が求められている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、高い流動性を有しながら、高い薄肉強度、耐ハンダ性を有し、かつ、リフロー処理中の反りを低減した成形品を得ることができる液晶ポリエステル樹脂組成物を提供することを課題とする。
・・・
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高い流動性を有しながら、高い薄肉強度、耐ハンダ性を有し、かつ、リフロー処理中の反りを低減した成形品を得ることができる液晶ポリエステル樹脂組成物を提供することができる。」

(本b)「【0014】
≪(A)液晶ポリエステル≫
本発明の液晶ポリエステルは、溶融状態で液晶性を示す液晶ポリエステルであり、450℃以下の温度で溶融するものであることが好ましい。なお、液晶ポリエステルは、液晶ポリエステルアミドであってもよいし、液晶ポリエステルエーテルであってもよいし、液晶ポリエステルカーボネートであってもよいし、液晶ポリエステルイミドであってもよい。液晶ポリエステルは、原料モノマーとして芳香族化合物のみを用いてなる全芳香族液晶ポリエステルであることが好ましい。
・・・
【0017】
液晶ポリエステルは、下記式(1)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(1)」ということがある。)を有することが好ましく、繰返し単位(1)と、下記式(2)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(2)」ということがある。)と、下記式(3)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(3)」ということがある。)と、を有することがより好ましい。
(1)−O−Ar1−CO−
(2)−CO−Ar2−CO−
(3)−X−Ar3−Y−
【0018】
(式(1)〜式(3)中、Ar1は、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基を表す。Ar2及びAr3は、それぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は下記式(4)で表される基を表す。X及びYは、それぞれ独立に、酸素原子又はイミノ基(−NH−)を表す。Ar1、Ar2又はAr3で表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。)
【0019】
(4)−Ar4−Z−Ar5−
【0020】
(Ar4及びAr5は、それぞれ独立に、フェニレン基又はナフチレン基を表す。Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はアルキリデン基を表す。 Ar4又はAr5で表される前記基に含まれる水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基で置換されていてもよい。)
・・・
【0023】
繰返し単位(1)は、所定の芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位である。
前記芳香族ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、4−ヒドロキシ安息香酸、メタヒドロキシ安息香酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸、1−ヒドロキシ−5−ナフトエ酸、4−ヒドロキシ−4’−カルボキシジフェニルエーテルや、これらの芳香族ヒドロキシカルボン酸の芳香環にある。水素原子の一部が、アルキル基、アリール基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる置換基で置換されてなる芳香族ヒドロキシカルボン酸が挙げられる。前記芳香族ヒドロキシカルボン酸は、液晶ポリエステルの製造において、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
繰返し単位(1)としては、Ar1が1,4−フェニレン基であるもの(パラヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位)、及びAr1が2,6−ナフチレン基であるもの(6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸に由来する繰返し単位)が好ましい。
【0024】
繰返し単位(2)は、所定の芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位である。
前記芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルチオエーテル−4,4’−ジカルボン酸や、これらの芳香族ジカルボン酸の芳香環にある水素原子の一部が、アルキル基、アリール基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる置換基で置換されてなる芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
前記芳香族ジカルボン酸は、液晶ポリエステルの製造において、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
繰返し単位(2)としては、Ar2が1,4−フェニレン基であるもの(例えば、テレフタル酸に由来する繰返し単位)、Ar2が1,3−フェニレン基であるもの(例えば、イソフタル酸に由来する繰返し単位)、Ar2が2,6−ナフチレン基であるもの(例えば、2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する繰返し単位)、及びAr2がジフェニルエーテル−4,4’−ジイル基であるもの(例えば、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸に由来する繰返し単位)が好ましい。
【0025】
繰返し単位(3)は、所定の芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン又は芳香族ジアミンに由来する繰返し単位である。
芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン又は芳香族ジアミンとしては、としては、例えば、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルチオエーテル、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、4−アミノフェノール、1,4−フェニレンジアミン、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノビフェニルが挙げられる。
前記芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン又は芳香族ジアミンは、液晶ポリエステルの製造において、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
繰返し単位(3)としては、Ar3が1,4−フェニレン基であるもの(例えば、ヒドロキノン、4−アミノフェノール又は1,4−フェニレンジアミンに由来する繰返し単位)、及びAr3が4,4’−ビフェニリレン基であるもの(例えば、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニル又は4,4’−ジアミノビフェニルに由来する繰返し単位)が好ましい。
【0026】
本明細書において、「由来」とは重合するために化学構造が変化することを意味する。
【0027】
なお、本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物から得られる成形体が、特に良好な耐熱性が要求される場合には、これらの置換基の数は少ない方が好ましく、特にアルキル基のような置換基は有しないことが好ましい。
【0028】
次に、上述した構造単位の好適な組み合わせについて説明する。
本実施形態では、上述した液晶ポリエステルの構造単位を、下記[a]〜[p]のいずれかに示した組み合わせで使用することが好ましい。
[a]:4−ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/イソフタル酸/4,4'−ジヒドロキシビフェニルの組み合わせ。
[b]:4−ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/4,4'−ジヒドロキシビフェニルの組み合わせ。
[c]:4−ヒドロキシ安息香酸/2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸の組み合わせ。
[d]:4−ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/イソフタル酸/4,4'−ジヒドロキシビフェニル/ハイドロキノンの組み合わせ。
[e]:4−ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/2,6−ナフタレンジカルボン酸/ハイドロキノン/4,4'−ジヒドロキシビフェニルの組み合わせ。
[f]:4−ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/2,6−ナフタレンジカルボン酸/ハイドロキノンの組み合わせ。
[g]:4−ヒドロキシ安息香酸/2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸/テレフタル酸/4,4'−ジヒドロキシビフェニルの組み合わせ。
[h]:4−ヒドロキシ安息香酸/2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸/テレフタル酸/イソフタル酸/4,4'−ジヒドロキシビフェニルの組み合わせ。
[i]:4−ヒドロキシ安息香酸/2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸/テレフタル酸/4−アミノフェノール/4,4'−ジヒドロキシビフェニルの組み合わせ。
[j]:4−ヒドロキシ安息香酸/2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸/テレフタル酸/ハイドロキノンの組み合わせ。
[k]:4−ヒドロキシ安息香酸/2,6−ナフタレンジカルボン酸/テレフタル酸/ハイドロキノン/4,4'−ジヒドロキシビフェニルの組み合わせ。
[l]:4−ヒドロキシ安息香酸/2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸/2,6−ナフタレンジカルボン酸/ハイドロキノンの組み合わせ。
[m]:2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸/テレフタル酸/4−アミノフェノールの組み合わせ。
[n]:2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸/テレフタル酸/2,6−ナフタレンジカルボン酸/4,4'−ジヒドロキシビフェニル/ハイドロキノンの組み合わせ。
[o]:4−ヒドロキシ安息香酸2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸/テレフタル酸/2,6−ナフタレンジカルボン酸/ハイドロキノンの組み合わせ。
[p]:2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸/テレフタル酸/イソフタル酸/2,6−ナフタレンジカルボン酸/ハイドロキノンの組み合わせ。
【0029】
前記組み合わせ[a]〜[p]の中でも、組み合わせ[a]である、パラヒドロキシ安息香酸に対する4,4’−ジヒドロキシビフェニルのモル比率(モル比率4,4’−ジヒドロキシビフェニル/パラヒドロキシ安息香酸)が0.2〜1.0であり、4,4’−ジヒドロキシビフェニルに対するテレフタル酸とイソフタル酸との合計量のモル比率(モル比率(テレフタル酸+イソフタル酸)/4,4’−ジヒドロキシビフェニル)が0.9〜1.1であり、テレフタル酸に対するイソフタル酸のモル比率(モル比率イソフタル酸/テレフタル酸)が0より大きく1以下であるものが好ましい。このような構造単位の組み合わせ及びそのモル比率を満たすことで、液晶ポリエステル樹脂組成物の溶融流動性をより良好とすることに加え、得られる成形体の耐衝撃性を良好にすることができる。
【0030】
繰返し単位(1)の含有量は、全繰返し単位の合計量(液晶ポリエステルを構成する各繰返し単位の質量をその各繰返し単位の式量で割ることにより、各繰返し単位の物質量相当量(モル)を求め、それらを合計した値)に対して、通常30モル%以上、好ましくは30〜80モル%、より好ましくは35〜70モル%、更に好ましくは35〜65モル%である。
繰返し単位(2)の含有量は、全繰返し単位の合計量に対して、通常35モル%以下、好ましくは10〜35モル%、より好ましくは15〜30モル%、更に好ましくは17.5〜27.5モル%である。
繰返し単位(3)の含有量は、全繰返し単位の合計量に対して、通常35モル%以下、好ましくは10〜35モル%、より好ましくは15〜30モル%、更に好ましくは17.5〜27.5モル%である。
【0031】
繰返し単位(2)の含有量と繰返し単位(3)の含有量との割合は、[繰返し単位(2)の含有量]/[繰返し単位(3)の含有量](モル/モル)で表して、通常0.9/1〜1/0.9、好ましくは0.95/1〜1/0.95、より好ましくは0.98/1〜1/0.98である。
【0032】
なお、液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)〜(3)を、それぞれ独立に、2種以上有してもよい。また、液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)〜(3)以外の繰返し単位を有してもよいが、その含有量は、全繰返し単位の合計量に対して、通常10モル%以下、好ましくは5モル%以下である。
【0033】
液晶ポリエステルは、繰返し単位(3)として、X及びYがそれぞれ酸素原子であるものを有すること、すなわち、所定の芳香族ジオールに由来する繰返し単位を有することが、溶融粘度が低くなり易いので、好ましく、繰返し単位(3)として、X及びYがそれぞれ酸素原子であるもののみを有することが、より好ましい。」

(本c)「【0038】
≪(B)タルク≫
本発明で使用するタルクは、水酸化マグネシウムとケイ酸塩鉱物からなる鉱物の粉砕物である。4原子のケイ素(Si)酸化物が形成する4個の四面体構造間に、3個のマグネシウム(Mg)酸化・水酸化物が構成する八面体構造を挟み込んだ構造を形成したものである。
前記タルクの製造方法としては、例えば、ローラーミル、レイモンドミル等による摩砕式粉砕法、アドマイザー、ハンマーミル、ミクロンミル等による衝撃式粉砕法、ジェットミル、ボールミル等による衝突式粉砕法等の乾式粉砕法が挙げられる。
・・・
【0042】
本発明においては、(B)タルクの体積平均粒径が5μm以上であることが好ましく、5.5μm以上であることがより好ましく、6.0μm以上であることが特に好ましい。また、体積平均粒径が25μm以下であることが好ましく、24.5μm以下であることがより好ましく、24μm以下であることが特に好ましい。
上記上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
・・・
【0044】
本発明において、(B)タルクの配合量は、前記(A)液晶ポリエステル100質量部に対し、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、12質量部以上が特に好ましい。また、前記(A)液晶ポリエステル100質量部に対し、100質量部以下が好ましく、80質量部以下がより好ましく、50質量部以下が特に好ましい。
上記上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。」

(本d)「【0045】
≪(C)マイカ≫
マイカとは、アルミニウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、鉄等を含んだケイ酸塩鉱物の粉砕物である。3原子のケイ素(Si)と1原子のアルミニウム(Al)の酸化物が形成する4個の四面体構造間に、2個もしくは3個の金属酸化・水酸化物が構成する八面体構造を挟み込んだ構造を形成した鉱物である。
【0046】
本発明で使用するマイカは、実質的に白雲母のみからなることが好ましい。
【0047】
マイカの製造方法としては、例えば、水流式ジェット粉砕、湿式粉砕、乾式ボールミル粉砕、加圧ローラーミル粉砕、気流式ジェットミル粉砕、アトマイザー等の衝撃粉砕機による乾式粉砕などがあげられる。マイカを薄く細かく粉砕することができるため、湿式粉砕法より製造されたマイカを使用するのが好ましい。
・・・
【0049】
本発明においては、(C)マイカの体積平均粒径が20μm以上であることが好ましく、21μm以上であることがより好ましく、22μm以上であることが特に好ましい。また、体積平均粒径が45μm以下であることが好ましく、44μm以下がより好ましく、43μm以下が特に好ましい。
上記上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
・・・
【0051】
前記(C)マイカの配合量は、前記(A)液晶ポリエステル100重量部に対して、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上が特に好ましい。また、前記(A)液晶ポリエステル100重量部に対して、100質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましく、30質量部以下がより好ましく、20質量部以下が特に好ましい。
上記上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
【0052】
前記マイカの配合量が上記下限値以上であれば、得られる成形体、特に長尺状コネクターのリフロー処理中の反りの発生が十分抑制され、一方、前記マイカの配合量が上記上限値以下であれば、溶融成形時の流動性が良好となり、成形がより容易になる。
【0053】
また、前記液晶ポリエステルに対する前記(C)マイカの配合量がこのような範囲である液晶ポリエステル樹脂組成物は、特に長尺状コネクターに成形しようとする場合、このコネクターの耐熱性を良好にすることができるので、実用的な耐ブリスター性の成形体を得る点でも有利である。
なお、前記液晶ポリエステルとして前記液晶ポリエステル混合物を用いる場合、この液晶ポリエステル混合物100質量部に対して、前記(C)マイカを15〜100質量部、好ましくは25〜80質量部、配合すればよい。
【0054】
本発明においては、前記(A)液晶ポリエステル100質量部に対し、前記(B)タルクと前記(C)マイカとの合計量((B)+(C))が5質量部以上100質量部以下であり、重量比((B)/(C))が9/1〜1/9である。
((B)+(C))は、10質量部以上が好ましく、15質量部以上がより好ましく、18質量部以上が特に好ましい。また、80質量部以下が好ましく、70質量部以下がより好ましく、60質量部以下が特に好ましい。
上記上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
((B)+(C))が上記の範囲であることにより、本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物を用いて成形した成形品のリフロー処理中の反りの発生を抑制することができる。
【0055】
更に、本発明においては、重量比((B)/(C))が9/1〜1/9であり、8/1〜1/1が好ましく、7/1〜1/1がより好ましく、6/1〜1/1が特に好ましい。
重量比((B)/(C))が上記の範囲であることにより、本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物を用いて成形した成形品のリフロー処理中の反りの発生を抑制することができる。」

(本e)「【0056】
≪その他の成分≫
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物には、前記液晶ポリエステル、タルク、マイカ以外の充填材や添加剤を含有させることもできる。得られる成形体の機械強度を改善するために、前記充填材としては繊維状充填材が好ましく、無機材料からなる繊維状充填材(繊維状無機充填材)がより好ましい。
前記繊維状無機充填材としては、例えば、ガラス繊維、ウォラストナイト、ホウ酸アルミニウムウイスカ、チタン酸カリウムウイスカ、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維が挙げられる。中でも、ガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、ホウ酸アルミニウムウイスカ、チタン酸カリウムウイスカが好ましい。なお繊維状無機充填材を使用する場合、前記繊維状無機充填材は単独で使用しても、2種類以上を合わせて使用してもよい。
本発明においては、上記の中でもガラス繊維を含有させることが好ましい。
【0057】
≪(D)ガラス繊維≫
ガラス繊維の数平均繊維長は、50μm以上が好ましく、70μm以上がより好ましく、100μm以上が特に好ましい。一方、液晶ポリエステル樹脂組成物の流動性の観点から、300μm以下が好ましく、250μm以下がより好ましく、200μm以下が特に好ましい。
上記上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
【0058】
ガラス繊維の配合量は、前記液晶ポリエステル(A)100質量部に対し、(D)ガラス繊維を5質量部以上100質量部以下含有することが好ましい。」

(本f)「【0069】
液晶ポリエステル樹脂組成物の成形体である製品・部品の例としては、光ピックアップボビン、トランスボビン等のボビン;リレーケース、リレーベース、リレースプルー、リレーアーマチャー等のリレー部品;RIMM、DDR、CPUソケット、S/O、DIMM、Board to Boardコネクター、FPCコネクター、カードコネクター等のコネクター;ランプリフレクター、LEDリフレクター等のリフレクター;ランプホルダー、ヒーターホルダー等のホルダー;スピーカー振動板等の振動板;コピー機用分離爪、プリンター用分離爪等の分離爪;カメラモジュール部品;スイッチ部品;モーター部品;センサー部品;ハードディスクドライブ部品;オーブンウェア等の食器;車両部品;航空機部品;及び半導体素子用封止部材、コイル用封止部材等の封止部材が挙げられる。」

(本g)「【実施例】
【0071】
以下、実施例により本発明の効果を更に詳細に説明する。液晶ポリエステルの分析および特性評価は以下の方法により行った。
・・・
【0073】
<(A)液晶ポリエステル>
(A)液晶ポリエステルとして、下記製造例で製造したLCP−1を用いた。
[製造例]
(A)液晶ポリエステル(LCP−1)の製造
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応機に、4−ヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、テレフタル酸272.1g(1.64モル)、イソフタル酸126.6g(0.76モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)及び無水酢酸1347.6g(13.2モル)を仕込み、触媒として1−メチルイミダゾールを0.2g添加し、反応器内を十分に窒素ガスで置換した。
その後、窒素ガス気流下で攪拌しながら、室温から150℃まで30分かけて昇温し、同温度を保持して30分間還流させた。
次いで、1−メチルイミダゾール2.4gを加え、副生酢酸と未反応の無水酢酸を留去しながら、150℃から320℃まで2時間50分かけて昇温し、320℃で30分保持した後、内容物を取り出し、これを室温まで冷却した。
得られた固形物を、粉砕機で粒径0.1〜1mmに粉砕後、窒素雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から295℃まで5時間かけて昇温し、295℃で3時間保持することにより、固相重合を行った。固相重合後、冷却して、粉末状の液晶ポリエステル(LCP−1)を得た。得られた液晶ポリエステルの流動開始温度は312℃であった。
【0074】
<(B)タルク>
(B)タルクとして、下記の材料を用いた。
(B−1)林化成(株)社製「GH7」(体積平均粒径:6.5μm、45μm篩残分:0%(全通)、Ig.Loss:4.7%)
(B−2)富士タルク工業(株)社製「MG115」(体積平均粒径:13μm、45μm篩残分:0.69%、Ig.Loss:5.9%)
(B−3)日本タルク(株)社製「MS-KY」(体積平均粒径:23μm、45μm篩残分:1.0%、Ig.Loss:6.2%)
【0075】
<(C)マイカ>
(C)マイカとして、下記の材料を用いた。
(C−1)ヤマグチマイカ(株)社製「AB-25S」(体積平均粒径:24μm)
(C−2)ヤマグチマイカ(株)社製「A-41S」(体積平均粒径:41μm)
【0076】
<(D)ガラス繊維>
(D)ガラス繊維として、下記の材料を用いた。
(D−1)セントラル硝子(株)社製「EFH75−01」(数平均繊維径:10.5μm)
(D−2)オーウェンスコーニングジャパン(株)社製「CS03JAPX1」(数平均繊維径:10μm)
【0077】
<添加剤>
離型剤として、エメリーオレオケミカルズジャパン社(株)社製「ロキシオールVPG861」を使用した。「ロキシオールVPG861」を下記表中、「(E−1)」と記載する。着色剤として、三菱化学(株)社製「カーボンブラックCB♯45」を使用した。「カーボンブラックCB♯45」を下記表中、「(F−1)」と記載する。
【0078】
各特性の評価方法は以下の通りである。
・・・
【0081】
<実施例1〜8、比較例1〜8>
表1に示す(A)液晶ポリエステル、(B)タルク、(C)マイカ、必要に応じてその他成分を、表1に示す重量割合でドライブレンドした後、真空ベント付き2軸押出機(池貝鉄工(株)社製「PCM−30」にて、水封式真空ポンプ神港精機(株)社製「SW−25」を用い、真空ベントで脱気しながら、スクリュウ回転数150rpmの条件で溶融混練して、直径3mmの円形ノズル(吐出口)を経由してストランド状に吐出し、水温30℃の水浴に1.5秒くぐらせた後、引き取り速度40m/分で引き取りローラーを経て回転刃を60m/分に調整されたストランドカッター田辺プラスチック機械(株)社製にてペレタイズし、液晶ポリエステル組成物のペレット状で得た。
【0082】
得られたペレットを130℃で4時間、熱風乾燥した後、以下の方法により評価した。表1にその結果を示した。
・・・
【0088】
<リフロー処理前、リフロー処理中、及びリフロー処理前後の反り測定方法>
射出成形機として、ファナック(株)社製「ROBOSHOT S2000i30B」を用いて成形し、図2に示す各寸法のコネクターを得た。射出成形条件は、シリンダー温度350℃、金型温度70℃、射出速度150mm/秒とした。
前記コネクターは、長さ18mm、幅3.5mm、高さ1.0mmの、53pin(0.3mmピッチ)FPC用コネクターであり、最小肉厚部は0.1mmである。
【0089】
≪リフロー処理前の反り測定方法≫
得られたコネクターの反り量を平坦度測定モジュール(株)コアーズ社製「Core9030C」にて測定した。室温にてコネクターをガラス平面上に置き、コネクターの底面(基板面)に対し、短尺方向に0.15mm内側の位置を、長尺方向に1.5mm内側の位置を始点として0.02mm毎に31点測定し、前記ガラス平面からの高さを求めた。(図2に示す長尺方向の両端を結ぶ線A−A´)。同様に、短尺方向に0.15mm内側の位置を、長尺方向に0.5mm内側の位置を始点として0.02mm毎に31点測定し、前記ガラス平面からの高さを求めた。(図2に示す長尺方向の両端を結ぶ線B−B´)。その後、最小二乗法によりコネクターの最小二乗平面を算出した。全62点の高さのうち最も低い点を含むように前記最小二乗平面の高さを平行移動したときの、最小二乗平面から、前記62点の高さのうち最も高い点までの距離を反り量として算出した。なお、反り量の算出にあたり、移動平均は、平均数1とループ数1とし、端点補正はせず、大幅にずれた測定点のみハネカットを行った。
【0090】
≪リフロー処理中の反り測定方法≫
得られたコネクターの反り量を平坦度測定モジュール(株)コアーズ社製「Core9030C」にて、以下の温度プロファイルにてリフロー処理を実施し、270℃に達した際に、反り量の測定をリフロー処理前と同様の方法により測定した。
温度パターン:(図3)
STEP1 50℃から100℃まで30秒間で昇温する。
STEP2 100℃から160℃まで30秒間で昇温する。
STEP3 160℃で60秒間保持する。
STEP4 160℃から220℃まで20秒間で昇温する。
STEP5 220℃で10秒間保持する。
STEP6 220℃から240℃まで10秒間で昇温する。
STEP7 240℃から270℃まで10秒間で昇温する。
STEP8 270℃に到達した時点で測定を開始する。
STEP9 270℃で10秒間保持する。
STEP10 270℃から220℃まで20秒間で降温する。
STEP11 220℃から180℃まで20秒間で降温する。
STEP12 180℃から50℃まで20秒間で降温する。
【0091】
≪リフロー処理後≫
前記温度プロファイルにてリフロー処理を行ったコネクターを1時間室温にて状態調整を行った後、リフロー処理前と同様にして反り量を測定し、リフロー処理後反り量とした。
【0092】
上記方法により、リフロー処理前、リフロー処理中、リフロー処理後についての反り量(mm)を、「1回目」として表1に記載する。
【0093】
1回目のリフロー処理を行った後、引き続いて2回目のリフロー処理を行った。具体的には、前記1回目のリフロー処理後反り量を測定した後、室温で24時間コネクターを冷却し、「リフロー処理前」の反り量を上記と同様の方法により測定し、その結果を「2回目 リフロー前反り量」とした。
続いて、上記と同様の昇温条件でリフロー処理を行い、270℃に達した際に、反り量の測定をリフロー処理前と同様の方法により測定した。その結果を「2回目 リフロー中反り量」とした。
さらに、リフロー処理を行ったコネクターを1時間室温にて状態調整を行った後、リフロー処理前と同様にして反り量を測定し、「2回目 リフロー後反り量」とした。
【0094】
【表1】

【0095】
上記結果に示した通り、本発明を適用した実施例1〜8は、高い流動性を有し、薄肉強度、耐ハンダ性等の特性がいずれも良好であり、かつ、1回目のリフロー処理中の反りがいずれも0.05mm以下であった。
これに対し、本発明を適用しない比較例1〜8は、1回目のリフロー処理中に発生する反りが0.05mmを大きく超えるものがあり、他の物性(流動性、薄肉強度、耐ハンダ性)との両立ができていなかった。
また本発明を適用した実施例1〜8は、2回目のリフロー処理における、リフロー中の反り量がおおよそ0.05mm以下であった。つまり本発明によれば、例えば両面にハンダ処理を行う場合など、2回高温に曝される場合にも反り量が低減できる液晶ポリエステル樹脂組成物を提供することができる。」

2 各甲号証に記載された事項
(1)甲第1号証に記載された事項
甲第1号証には、以下の事項が記載されている。

(甲1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶性ポリエステル樹脂組成物から紐状物を得、該紐状物を切断してペレットと粉状物との混合物を得、穴径が0.5mm〜7mmの篩を用いて該混合物を篩いにかけて粉状物を除去することを特徴とするペレットの製造方法。
【請求項2】
液晶性ポリエステル樹脂組成物が、液晶性ポリエステル樹脂と繊維状充填材および/または板状充填材とを含み、液晶性ポリエステル樹脂100重量部に対して、繊維状充填材および/または板状充填材が10〜150重量部である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
液晶ポリエステル樹脂組成物の流動開始温度が270〜400℃である請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
液晶性ポリエステル樹脂が、パラヒドロキシ安息香酸と4,4’−ジヒドロキシビフェニルとテレフタル酸および/またはイソフタル酸から得られる請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
・・・
【請求項8】
繊維状充填材が、ガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、ホウ酸アルミニウムウィスカ、およびチタン酸カリウムウィスカからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項2〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
板状充填材が、マイカおよび/またはタルクである請求項2〜8のいずれかに記載の製造方法。
・・・」

(甲1b)「【0002】
【従来の技術】
液晶性ポリエステル樹脂は、優れた溶融流動性および耐熱性を有しており、該液晶性ポリエステル樹脂にガラス繊維などの繊維状充填材やタルクなどの板状充填材などを配合した樹脂組成物を用いて得られる成形体は、薄肉部や複雑な形状を有する電子部品などの用途に好適に使用されている。
・・・
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、成形サイクルを一定にし得るペレットを製造する方法を提供することにある。」

(甲1c)「【0008】
【発明の実施の形態】
本発明で使用される液晶性ポリエステル樹脂は、サーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれるポリエステルであり、450℃以下の温度で異方性溶融体を形成するものである。
液晶性ポリエステル樹脂としては、例えば、
(1)芳香族ヒドロキシカルボン酸と芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールとを原料として得られるポリエステル、
(2)異種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を原料として得られるポリエステル、
(3)芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールとを原料として得られるポリエステル、
(4)ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルに芳香族ヒドロキシカルボン酸を反応させて得られるポリエステル、
等が挙げられる。
・・・
【0012】
芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰り返し構造単位:
・・・
上記の繰り返し構造単位は、ハロゲン原子またはアルキル基で置換されていてもよい。
【0013】
芳香族ジカルボン酸に由来する繰り返し構造単位:
・・・
上記の繰り返し構造単位は、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基で置換されていてもよい。
【0014】
芳香族ジオールに由来する繰り返し構造単位:
・・・
上記の繰り返し構造単位は、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基で置換されていてもよい。
なお、上記のアルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、上記のアリール基としては、炭素数6〜20のアリール基が好ましい。
・・・
【0016】
本発明で用いる液晶性ポリエステル樹脂は、パラヒドロキシ安息香酸と4,4’−ジヒドロキシビフェニルとテレフタル酸および/またはイソフタル酸から得られる樹脂である、即ち、前記の繰り返し構造単位A1、C1、B1およびB2からなることが好ましい。
また、該液晶性ポリエステル樹脂は、C1/A1のモル比率が0.2以上1.0以下、(B1+B2)/C1のモル比率が0.9以上1.1以下、B2/B1のモル比率が0より大きく1以下であることがより好ましい。」

(甲1d)「【0030】
本発明で用いられる液晶性ポリエステル樹脂組成物は、前記の液晶性ポリエステル樹脂と、繊維状充填材、板状充填材、または繊維状充填材および板状充填材とを含むことが好ましい。
繊維状充填材および/または板状充填材は、液晶性ポリエステル樹脂100重量部に対して、10〜150重量部であることが好ましく、20〜100重量部であることがより好ましい。
【0031】
繊維状充填材は、平均繊維径が0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜15μmであることがより好ましい。平均繊維径が0.1μm未満であると、反り量の低減と耐熱性の向上が不十分となる傾向があり、平均繊維径が20μmより大きいと、流動性と反り量の低減が不十分となる傾向がある。
該繊維状充填材の平均繊維長は、1〜300μmであることが好ましく、5〜300μmであることがより好ましい。平均繊維長が1μm未満であると、耐熱性、機械的強度の向上が不十分となる傾向があり、300μmより大きいと、流動性の向上が不十分となる傾向がある。
繊維状充填材としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、ホウ酸アルミニウムウィスカ、チタン酸カリウムウィスカ、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維などが挙げられる。これらの中で、ガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、ホウ酸アルミニウムウィスカ、チタン酸カリウムウィスカが好ましい。これらの繊維状充填材は、単独でも、2種類以上を混合して用いてもよい。」

(甲1e)「【0032】
板状充填材は、平面層状の結晶構造を有し、各層間は弱いファンデルワールス力で結合しているため、へき開が生じやすく、粉砕時に板状になる充填材である。
板状充填材の平均粒径は、1〜20μmであることが好ましく、より好ましくは5〜20μmである。平均粒子径が1μm未満では、反り量の低減が不十分となる傾向があり、平均粒子径が20μmより大きいと、反り量の低減は20μm以下のものとほとんど変わらないが、成形品の外観が悪化する傾向がある。
板状充填材としては、例えば、タルク、マイカ、カオリンクレー、ドロマイトなどが挙げられる。これらの中で、タルク、マイカが好ましく使用される。これらの板状充填材は、単独でも、2種類以上を混合して用いてもよい。」

(甲1f)「【0033】
本発明で用いられる液晶性ポリエステル樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、ガラスビーズなどの充填材;フッ素樹脂、金属石鹸類などの離型改良剤;染料、顔料などの着色剤;酸化防止剤;熱安定剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤;界面活性剤などの通常の添加剤を1種以上添加してもよい。また、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸金属塩、フルオロカーボン系界面活性剤等の外部滑剤効果を有するものを少なくとも1種添加してもよい。」

(甲1g)「【0041】
本発明の製造方法によるペレットは、上記のように射出成形機へのフィード性に優れていることから、該ペレットを用いて得られる成形品は、コネクター、ソケット、リレー部品、コイルボビン、光ピックアップ、発振子、プリント配線板、 コンピュータ関連部品、等の電気・電子部品;・・・等の半導体製造プロセス関連部品;・・・など各種用途に好適に使用し得る。」

(甲1h)「【0042】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明が実施例により限定されるものでないこと言うまでもない。
【0043】
製造例1
下記表1に記載の組成で総量が5kgになるようヘンシェルミキサーにて混合後、二軸押出し機(池貝鉄工(株)PCM30)を用いて、シリンダー温度340℃にて溶融混練を行い、ダイから紐状物を引き取り、水槽にて冷却した後、ストランドカッター(いすず化工機(株) HSC−200)にてカットし、液晶性ポリエステル樹脂組成物ペレット(LCP1)を得た。
【0044】
【表1】


・LCPのモノマー組成
パラヒドロキシ安息香酸:4,4’−ジヒドロキシビフェニル:テレフタル酸:イソフタル酸=60:20:15:5
・ガラス繊維
セントラル硝子(株) EFH75−01
・タルク
日本タルク(株) X−50
【0045】
実施例1
製造例1で得たLCP1を用い、紐状物を切断後、ロータリー選別機(有)誠和鉄工所 SPSR−250Wにて処理を行った。その後、得られたペレットから3kgを抜き取り、0.5mmの穴径を持つ篩にて粉状物の有無の確認、重量測定を行った。その後、射出成形機(日精樹脂工業(株)製 PS40E5ASE)にて、成形温度350℃、金型温度130℃で長さ127mm×幅12.7×高さ6.4mmのバーを50本成形し、各ショットの可塑化時間の平均値を求めた。結果を表2に示す。
【0046】
比較例1
製造例1で得たLCP1を用い、紐状物を切断した。また、篩は使用しなかった。その後、得られたペレットから3kgを抜き取り、0.5mmの穴径を持つ篩にて粉状物の有無の確認、重量測定を行った。その後、射出成形機(日精樹脂工業(株)製 PS40E5ASE)にて、成形温度350℃、金型温度130℃で長さ127mm×幅12.7×高さ6.4mmのバーを50本成形し、各ショットの可塑化時間の平均値を求めた。結果を表2に示す。
【0047】
【表2】

【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、、成形サイクルを一定にし得るペレットの製造方法を提供することが可能となる。」

(2)甲第2号証に記載された事項
甲第2号証には、以下の事項が記載されている。

(甲2a)「請求の範囲
[請求項1](A)ヒドロキシ末端基量(a)と、前記ヒドロキシ末端基量(a)とアセチル末端基量(b)の合計との比(a)/[(a)+(b)]が0.70〜1.00である液晶ポリエステル100重量部に対して、(B)マイカを10〜100重量部含有する液晶ポリエステル樹脂組成物であり、液晶ポリエステル樹脂組成物中の(B)マイカの体積平均粒径が10〜50μmであり、(B)マイカのアスペクト比が50〜100である液晶ポリエステル樹脂組成物。
・・・
[請求項3]請求項1または2のいずれか1項に記載の液晶ポリエステル樹脂組成物であって、
(A)液晶ポリエステルが下記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)から構成され、構造単位(I)が構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して68〜80モル%であり、構造単位(II)が構造単位(II)および(III)の合計に対して55〜75モル%であり、構造単位(IV)が構造単位(IV)および(V)の合計に対して60〜85モル%であり、構造単位(II)および(III))の合計と(IV)および(V)の合計が実質的に等モルである、液晶ポリエステル樹脂組成物。
[化1]


[請求項4]請求項1から3のいずれか1項に記載の液晶ポリエステル樹脂組成物であって、
液晶ポリエステル樹脂組成物中の(B)マイカの数平均厚みが0.15μm〜0.90μmである、液晶ポリエステル樹脂組成物。
[請求項5]請求項1から4のいずれか1項に記載の液晶ポリエステル樹脂組成物であって、
液晶ポリエステル樹脂組成物中の(B)マイカの体積平均粒径と累積粒度分布測定により測定されるメジアン径との比が1.05〜1.30である、液晶ポリエステル樹脂組成物。
[請求項6]請求項1から5のいずれか1項に記載の液晶ポリエステル樹脂組成物であって、
(A)液晶ポリエステル100重量部に対して、(D)タルクを5〜70重量部の割合で含有する、液晶ポリエステル樹脂組成物。
・・・
[請求項8]請求項1〜6のいずれか1項に記載の液晶ポリエステル樹脂組成物を射出成形してなる成形品。
[請求項9]請求項1〜6のいずれか1項に記載の液晶ポリエステル樹脂組成物からなるコネクター。」

(甲2b)「技術分野
[0001] 本発明は低そり性、強度などに優れるとともに曲げ破断たわみ量、耐衝撃値などの靭性に優れる成形品を得ることができ、流動性に優れる液晶ポリエステル樹脂組成物およびそれを用いた成形品に関する。
背景技術
[0002] 近年、プラスチックの高性能化に対する要求がますます高まり、種々の新規性能を有するポリマーが数多く開発され、市場に供されている。ポリマーの中でも、分子鎖の平行な配列を特徴とする光学異方性を有する液晶ポリエステルなどの液晶性樹脂は、優れた成形性と機械的性質を有する点で注目され、機械部品、電気・電子部品などに用途が拡大されつつある。液晶性樹脂は、特に、良流動性を必要とするコネクターなどの電気・電子部品に好適に用いられている。
[0003] これら機械部品、電気・電子部品は、近年の機器の小型化や軽量化に伴い、薄肉化や形状の複雑化が進みつつある。また、液晶性樹脂組成物を用いて得られる成形品には高い製品強度が要求されている。一方で、ピン圧入型のコネクターの場合、圧入時の製品割れを抑制するために、成形品には強度と共に靭性が要求されるようになっている。よって、強度と靭性という相反する特性をバランス良く発現する材料の創出が求められている。
[0004] 薄肉化した成形品や複雑化した成形品における強度向上のため、特定の形状や特定の粒径の充填材(例えば、板状の充填材)を配合する液晶性ポリマー組成物が開示されている(例えば、特許文献1〜4参照)。しかし、これらの手法を用いた場合、充填材の補強により靭性が低下するため、充分な靭性を得られず、強度と靭性がバランスよく発現していなかった。一方、特定構造の液晶ポリマーを用いることによる成形時の液晶ポリマー配向性を向上する方法(例えば、特許文献5参照)や同ポリマーを用いた板状充填材配合による検討(例えば、特許文献6参照)も行われている。しかし、いずれの場合も要求される高度な低そり性や、強度や、靭性を、バランス良く発現することに関しては不十分である。また、機械部品、電気・電子部品の使用時に要求される摺動特性、曲げ疲労特性についても十分ではなく、更なる向上が要求されていた。
・・・
発明の概要
発明が解決しようとする課題
[0006] 近年の成形品の小型化・精密化により、充填材の補強効果による高い強度、低そり性とともにピン圧入に耐えうる高い靭性を高いレベルで両立することが求められている。しかし、従来公知の技術では十分ではない。よって、本発明は、充填材の補強効果による高い強度や、低そり性とともに、ピン圧入に耐えうる高い靭性を有し、かつ、摺動特性、曲げ疲労特性に優れる成形品を得ることができる液晶ポリエステル樹脂組成物を提供することを課題とする。
・・・
発明の効果
[0018] 本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物によれば、マイカの高い補強効果により、良好な低そり性、強度を発現するとともに、曲げ破断たわみ量や耐衝撃値などの靭性に優れ、かつ、摺動特性、曲げ疲労特性にも優れた成形品を得ることができる。本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物は、強度、靭性が要求される成形品、特にコネクターなどに好適に用いることができる。」

(甲2c)「[0021] 本発明の実施形態としての液晶ポリエステル樹脂は、溶融時に光学的異方性を示すサーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれるポリエステルである。液晶ポリエステル樹脂の末端基は、ヒドロキシ末端基、アセチル末端基、カルボキシ末端基が挙げられる。
・・・
[0024] 本発明の実施形態としての液晶ポリエステル樹脂は、下記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)から構成されることが好ましい。構造単位(I)が構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して68〜80モル%であることが好ましく、構造単位(II)が構造単位(II)および(III)の合計に対して55〜75モル%であることが好ましく、構造単位(IV)が構造単位(IV)および(V)の合計に対して60〜85モル%であることが好ましい。構造単位(II)および(III)の合計と(IV)および(V)の合計が実質的に等モルであることが好ましい。上記構造単位から構成される液晶ポリエステル樹脂を用いることにより、成形品の靱性をより向上させ、リフロー後のそり量をより低減することができる。
[0025] [化2]


[0026] 上記構造単位(I)はp−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位を示す。構造単位(II)は4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位を示す。構造単位(III)はハイドロキノンから生成した構造単位を示す。構造単位(IV)はテレフタル酸から生成した構造単位を示す。構造単位(V)はイソフタル酸から生成した構造単位を示す。
[0027] 構造単位(I)は、構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して68〜80モル%であることが好ましい。構造単位(I)は、構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して70モル%以上がより好ましく、73モル%以上が特に好ましい。一方、構造単位(I)は、構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して78モル%以下がより好ましい。
[0028] 構造単位(II)は、構造単位(II)および(III)の合計に対して55〜75モル%であることが好ましい。構造単位(II)は、構造単位(II)および(III)の合計に対して58モル%以上がより好ましい。一方、構造単位(II)は、構造単位(II)および(III)の合計に対して70モル%以下がより好ましく、65モル%以下が特に好ましい。
[0029] 構造単位(IV)は、構造単位(IV)および(V)の合計に対して60〜85モル%であることが好ましい。構造単位(IV)は、構造単位(IV)および(V)の合計に対して65モル%以上がより好ましく、70モル%以上が特に好ましい。また、構造単位(IV)は、構造単位(IV)および(V)の合計に対して80モル%以下が好ましい。
[0030] また構造単位(II)および(III)の合計と(IV)および(V)の合計は実質的に等モルであることが好ましい。ここでいう「実質的に等モル」とは、末端を除くポリマー主鎖を構成する構造単位が等モルであることを示す。このため、末端を構成する構造単位まで含めた場合には必ずしも等モルとはならない態様も、「実質的に等モル」の要件を満たしうる。
・・・
[0052] 重合終了後、得られたポリマーを反応容器から取り出す方法としては、ポリマーが溶融する温度で反応容器内を加圧することにより、反応容器に設けられた吐出口よりポリマーを吐出させ、吐出されたポリマーを冷却水中で冷却する方法を挙げることができる。上記反応容器内の加圧は、例えば、0.02〜0.5MPaとしてもよい。上記吐出口は、反応容器下部に設けてもよい。また、ポリマーは、吐出口からストランド状に吐出させてもよい。冷却液中で冷却したポリマーをペレット状に切断することで、樹脂ペレットを得ることができる。」

(甲2d)「[0055] 本発明の実施形態の液晶ポリエステル樹脂組成物は、液晶ポリエステル樹脂100重量部に対して、マイカを10〜100重量部含有する。マイカ含有量が10重量部未満であると、液晶ポリエステル樹脂組成物を成形して得られる成形品のそり量が著しく増大するため好ましくない。マイカ含有量は25重量部以上が好ましく、40重量部以上がより好ましい。一方、マイカ含有量が100重量部を超えると、マイカの凝集体が増加することから、耐衝撃値や曲げ破断たわみ量などの靭性が低下する。さらに、マイカ含有量が100重量部を超えると、溶融成形加工時の流動性も悪くなる。マイカ含有量は85重量部以下が好ましく、75重量部以下がより好ましい。
[0056] また、本発明の実施形態の液晶ポリエステル樹脂組成物中に含まれるマイカの体積平均粒径は10〜50μmである。体積平均粒径が10μm未満の場合にはマイカの補強効果が低下するため好ましくない。一方、体積平均粒径が50μmを越える場合には液晶ポリエステル樹脂組成物の靭性が低下し、溶融成形加工時の流動性が低下するため好ましくない。高い補強効果が得られ良好な低そり性を発現するという観点から、マイカの体積平均粒径は15μm以上がより好ましく、20μm以上が特に好ましい。一方、本発明の特徴である優れた靭性および流動性を発現するという観点から、マイカの体積平均粒径は48μm以下がより好ましく、45μm以下が特に好ましい。
[0057] 液晶ポリエステル樹脂組成物中に含まれるマイカの体積平均粒径は、次の方法により求めることができる。液晶ポリエステル樹脂組成物50gを550℃で3時間加熱することにより樹脂成分を除去した後、マイカを取り出す。なお、樹脂組成物中にマイカ以外のフィラーを含有する場合には比重差により分離することができる。例えばガラス繊維を含有する場合には、マイカとガラス繊維の混合物を取り出し、これを1,1,2,2−テトラブロモエタン(比重2.970)88体積%とエタノール(比重0.789)12体積%との混合液中に分散させ、回転数10000r.p.m.で5分間遠心分離した後、浮遊したガラス繊維をデカンテーションで取り除き、沈降したマイカをろ過により取り出す。得られたマイカを100mg秤量し、水中に分散させ、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(HORIBA社製“LA−300”)を用いて、マイカの体積平均粒径を測定する。
[0058] また、本発明の実施形態の液晶ポリエステル樹脂組成物中に含まれるマイカの体積平均粒径を累積粒度分布測定により測定されるメジアン径で除した比は1.05以上であることが好ましく、より好ましくは1.10以上であり、特に好ましくは1.15以上である。一方、マイカの体積平均粒径を累積粒度分布測定により測定されるメジアン径で除した比は、1.30以下であることが好ましい。マイカの体積平均粒径を累積粒度分布測定により測定されるメジアン径で除した比を上記範囲とすることにより、成形品の摺動特性、曲げ疲労特性をより向上させることができる。
・・・
[0065] マイカは、天然に産出される白雲母、黒雲母、金雲母、人工的に製造される合成マイカのいずれでもよい。これらを2種以上含んでもよい。
[0066] マイカの製造方法としては、例えば、水流式ジェット粉砕、石臼による湿式摩砕等の湿式粉砕や、乾式ボールミル粉砕、加圧ローラーミル粉砕、気流式ジェットミル粉砕、アトマイザー等の衝撃粉砕機による乾式粉砕などが挙げられる。」

(甲2e)「[0068] 本発明の実施形態の液晶ポリエステル樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない程度の範囲で、たとえばガラス繊維、・・・などの繊維状フィラーを液晶ポリエステル樹脂組成物に含有させることが好ましく、特にガラス繊維、・・・を含有させることが好ましい。
[0069] 本発明の実施形態の液晶ポリエステル樹脂組成物中に含まれる繊維状フィラーの数平均繊維長は、30μm以上が好ましく、液晶ポリエステル樹脂組成物から得られる成形品の異方性を低減させることができる。繊維状フィラーの数平均繊維長は、100μm以上が好ましく、200μm以上がより好ましい。一方、液晶ポリエステル樹脂組成物の流動性の点から、繊維状フィラーの数平均繊維長は、500μm以下が好ましく、450μm以下がより好ましく、400μm以下がより好ましい。
・・・
[0072] 繊維状フィラーの含有量は、液晶ポリエステル樹脂100重量部に対して10〜100重量部が好ましい。繊維状無機充填材の含有量が10重量部以上であれば成形品の異方性が小さくなり好ましい。繊維状無機充填材の含有量は、20重量部以上が好ましく、30重量部以上がより好ましい。繊維状無機充填材の含有量が100重量部以下であれば、液晶ポリエステル樹脂の流動性をより高く保つことができる。繊維状無機充填材の含有量は、75重量部以下がより好ましく、50重量部以下がより好ましい。」

(甲2f)「[0073] また本発明の実施形態の液晶ポリエステル樹脂組成物に(D)タルクを更に含有する場合には、流動性を飛躍的に向上できるため好ましい。(D)タルクの含有量は、(A)液晶ポリエステル樹脂100重量部に対して、5重量部以上が好ましく、10重量部以上がより好ましい。また、(D)タルクの含有量は、70重量部以下が好ましく、45重量部以下がより好ましい。タルクの含有量が5重量部以上であると流動性が良好となるため好ましい。一方、タルクの含有量が70重量部以下であると低そり性、曲げ破断たわみ量や耐衝撃値などの靭性により優れるため好ましい。また本発明の実施形態の特徴である特定の末端構造を有する(A)液晶ポリエステル樹脂に対して、(B)特定粒径かつ特定アスペクト比のマイカ、および(D)タルクを含有した液晶ポリエステル樹脂組成物は、粒径、形状の異なる2種の充填材を併用することによる相乗効果により、流動時の充填材間の物理的な干渉を緩和することができる。このため、液晶ポリエステル樹脂組成物の流動性が、特異的に向上する。また特定の末端構造を有する(A)液晶ポリエステル樹脂に対して、(B)特定粒径かつ特定アスペクト比のマイカ、および(D)タルクを含有した液晶ポリエステル樹脂組成物は、成形加工した際の成形品表面の平滑性が優れるため、耐トラッキング破壊特性が著しく向上するため好ましい。
[0074] 本発明の実施形態の液晶ポリエステル樹脂組成物中に含まれるタルクの数平均粒径は、以下の方法により求められる。液晶ポリエステル樹脂組成物50gを550℃で3時間加熱することにより樹脂成分を除去する。その後、マイカとタルクを比重差により分離して得られたタルクを100mg秤量し、水中に分散させ、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(HORIBA社製“LA−300”)を用いてその粒径を測定し数平均値を算出することにより、タルクの数平均粒径が求められる。数平均粒径が10μm以下のタルクを用いた場合には、耐トラッキング性が特異的に優れるため特に好ましい。
・・・
[0076] タルクの製造方法としては、例えば、ミクロンミル、ロッシェミル、ジェットミルによる粉砕などが挙げられる。液晶ポリエステル樹脂組成物中でタルクと液晶ポリエステル樹脂との親和性を向上させる目的で、タルクの表面をシランカップリング剤などで処理してもよい。また不純物の除去、タルクの硬質化を目的に、熱処理加工をしたタルクを用いてもよく、ハンドリング性を改善させる目的で、圧縮したタルクを用いていてもよい。」

(甲2g)「[0077] また、本発明の実施形態の液晶ポリエステル樹脂組成物は、酸化防止剤および熱安定剤(例えば、ヒンダードフェノール、ヒドロキノン、ホスファイト類およびこれらの置換体など)、紫外線吸収剤(例えば、レゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンなど)、滑剤および離型剤(例えば、モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびポリエチレンワックスなど)、染料(例えば、ニトロシンなど)および顔料(例えば、硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラックなど)を含む着色剤、可塑剤、帯電防止剤などの通常の添加剤や他の熱可塑性樹脂を本発明の目的を損なわない程度の範囲で含有して、所定の特性を付与することができる。」

(甲2h)「実施例
[0086] 以下、実施例により本発明をさらに詳述するが、本発明の骨子は以下の実施例のみに限定されるものではない。
・・・
[0095][製造例1]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸932重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル251重量部、ハイドロキノン99重量部、テレフタル酸284重量部、イソフタル酸90重量部および無水酢酸1252重量部(フェノール性水酸基合計の1.09当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で1時間反応させた後、ジャケット温度を145℃から270℃までを平均昇温速度0.68℃/分で昇温させ、270℃から350℃までを平均昇温速度1.4℃/分で昇温させた。昇温時間は4時間であった。その後、重合温度を350℃に保持し、1.0時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、撹拌に要するトルクが20kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm2(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして液晶ポリエステル樹脂(a−1)を得た。
[0096] この液晶ポリエステル樹脂(a−1)について組成分析を行なったところ、p−ヒドロキシ安息香酸由来の構造単位(構造単位(I))と4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))とハイドロキノン由来の構造単位(構造単位(III))の合計に対するp−ヒドロキシ安息香酸由来の構造単位(構造単位(I))の割合は、75モル%であった。4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))とハイドロキノン由来の構造単位(構造単位(III))の合計に対する4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))の割合は、60モル%であった。テレフタル酸由来の構造単位(構造単位(IV))とイソフタル酸由来の構造単位(構造単位(V))の合計に対するテレフタル酸由来の構造単位(構造単位(IV))の割合は、76モル%であった。4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位(構造単位(II))およびハイドロキノン由来の構造単位(構造単位(III))の合計と、テレフタル酸由来の構造単位(構造単位(IV))およびイソフタル酸由来の構造単位(構造単位(V))の合計とは、実質的に等モルであった。また、Tmは330℃、ΔSは2.2×10-3J/g・K、数平均分子量は11,800、分散度は1.8、溶融粘度は28Pa・sであった。
[0097] また前記方法により末端基量を測定した結果、ヒドロキシ末端基量(a)は175当量/(g・10-6)、アセチル末端基量(b)は4当量/(g・10-6)、カルボキシ末端基量(c)は113当量/(g・10-6)であり、ヒドロキシ末端基量と、ヒドロキシ末端基量とアセチル末端基量の合計との比(a)/[(a)+(b)]は0.98であった。
[0098][製造例2]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸907重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル294重量部、ハイドロキノン94重量部、テレフタル酸343重量部、イソフタル酸61重量部および無水酢酸1272重量部(フェノール性水酸基合計の1.09当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で1時間反応させた後、ジャケット温度を145℃から270℃までを平均昇温速度0.63℃/分で昇温させ、270℃から335℃までを平均昇温速度1.6℃/分で昇温させた。昇温時間は4時間であった。その後、重合温度を335℃に保持し、1.0時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、撹拌に要するトルクが20kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm2(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして液晶ポリエステル樹脂(a−2)を得た。
・・・
[0101][製造例3]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸870重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル292重量部、ハイドロキノン125重量部、テレフタル酸292重量部、イソフタル酸157重量部および無水酢酸1302重量部(フェノール性水酸基合計の1.09当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で1時間反応させた後、ジャケット温度を145℃から270℃までを平均昇温速度0.64℃/分で昇温させ、270℃から330℃までを平均昇温速度1.3℃/分で昇温させた。昇温時間は4時間であった。その後、重合温度を330℃に保持し、1.0時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、撹拌に要するトルクが20kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm2(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして液晶ポリエステル樹脂(a−3)を得た。
・・・
[0104][製造例4]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸994重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル184重量部、ハイドロキノン89重量部、テレフタル酸179重量部、イソフタル酸120重量部および無水酢酸1202重量部(フェノール性水酸基合計の1.09当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で1時間反応させた後、ジャケット温度を145℃から270℃までを平均昇温速度0.81℃/分で昇温させ、270℃から355℃までを平均昇温速度1.0℃/分で昇温させた。昇温時間は4時間であった。その後、重合温度を355℃に保持し、1.0時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、撹拌に要するトルクが20kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm2(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして液晶ポリエステル樹脂(a−4)を得た。
・・・
[0107][製造例5]
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸994重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル235重量部、ハイドロキノン59重量部、テレフタル酸254重量部、イソフタル酸45重量部および無水酢酸1202重量部(フェノール性水酸基合計の1.09当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら145℃で1時間反応させた後、ジャケット温度を145℃から270℃までを平均昇温速度0.66℃/分で昇温させ、270℃から365℃までを平均昇温速度1.7℃/分で昇温させた。昇温時間は4時間であった。その後、重合温度を365℃に保持し、1.0時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に反応を続け、撹拌に要するトルクが20kg・cmに到達したところで重合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm2(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズして液晶ポリエステル樹脂(a−5)を得た。
・・・
[0119][製造例9]
撹拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸994.5重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9重量部、テレフタル酸299.0重量部、イソフタル酸99.7重量部及び無水酢酸1347.6重量部を仕込んだ。反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、1−メチルイミダゾールを0.18重量部添加し、窒素ガス気流下で30分間かけて150℃まで昇温し、温度を保持して30分間還流させた。その後、1−メチルイミダゾールを2.4重量部添加した後、留出する副生酢酸と未反応の無水酢酸を留去しながら2時間50分間かけて320℃まで昇温し、トルクの上昇が認められた時点で、内容物を取り出し、室温まで冷却した。得られた固形物を、粗粉砕機で粉砕後、窒素雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から295℃まで5時間かけて昇温し、295℃で3時間保持することにより、固相重合を行った。固相重合後、冷却して液晶ポリエステル樹脂(a−9)を得た。
[0120] この液晶ポリエステル樹脂(a−9)について組成分析を行なったところ、構造単位(I)は60モル%、構造単位(II)が20モル%、構造単位(IV)が15モル%、構造単位(V)が5モル%であった。また、Tmは351℃、ΔSは3.1×10-3J/g・K、数平均分子量は16,200、分散度は3.2、溶融粘度は34Pa・sであった。
[0121] また前記方法により末端基量を測定した結果、ヒドロキシ末端基量(a)は110当量/(g・10-6)、アセチル末端基量(b)は61当量/(g・10-6)、カルボキシ末端基量(c)は163当量/(g・10-6)であり、ヒドロキシ末端基量と、ヒドロキシ末端基量とアセチル末端基量の合計との比(a)/[(a)+(b)]は0.64であった。」

(甲2i)「[0125] 各製造例で得られた液晶ポリエステル樹脂の組成および主な特性を表1に示す。
[0126][表1]


[0127] 各実施例および比較例において用いた充填材を次に示す。
[0128] (B)マイカ
(B−1)(株)ヤマグチマイカ製“A−21”(配合前の体積平均粒径 22μm)
(B−2)(株)ヤマグチマイカ製“A−41”(配合前の体積平均粒径 47μm)
(B−3)(株)ヤマグチマイカ製“AB−25s”(配合前の体積平均粒径 47μm)
(B−4)上記(B−1)を400meshのふるいを用いて篩い分けを2回行い、篩い上に残ったマイカ粉を用いた。
(B−5)(株)レプコ製“M−200W”(体積平均粒径 53μm)
(B−6)(株)ヤマグチマイカ製“TM−20”(配合前の体積平均粒径 18μm)
(B−7)(株)ヤマグチマイカ製“NJ−030”(配合前の体積平均粒径 30μm)
(B−8)(株)ヤマグチマイカ製“NCF−322” (配合前の体積平均粒径 24μm)
[0129] (C)ガラス繊維
(C−1)日本電気硝子(株)製“ミルドファイバー EPG70M−01N”(数平均繊維長70μm、数平均繊維径9μm)
[0130] (D)タルク
(D−1)富士タルク工業(株)製“NK−48”(配合前の数平均粒径26μm、配合前の吸油量27ml/100g)
(D−2)富士タルク工業(株)製“PKP−53”(配合前の数平均粒径18.5μm、配合前の吸油量30ml/100g)
(D−3)日本タルク工業(株)製“P−6”(配合前の数平均粒径4.0μm、配合前の吸油量56ml/100g)
(D−4)日本タルク工業(株)製“SG−2000”(配合前の数平均粒径1.0μm、配合前の吸油量58ml/100g)
(D−5)Specialty Minerals社製“ULTRATALC609”(配合前の数平均粒径0.9μm)
[0131] 実施例1〜8、10〜17、比較例1〜8、10〜13
日本製鋼所製2軸押出機TEX30αを用い、シリンダC1(元込めフィーダー側ヒーター)〜C12(ダイ側ヒーター)の、C6部に中間供給口を設置し、C8部に真空ベントを設置した。ニーディングディスクをC3部、C7部に組み込んだスクリューアレンジメント(ニーディングのクリアランス(c)が0.5mm)を用い、表2〜4に示す(A)液晶ポリエステル樹脂を元込め部(供給口1)から添加し、(B)マイカおよびその他充填材を中間供給口(供給口2)から投入した。シリンダ温度を液晶ポリエステル樹脂の融点+10℃に設定し、スクリュー回転数150rpmで溶融混練した後、ダイからストランド状に吐出した液晶ポリエステル樹脂組成物は水冷バスにより冷却した。その後、ストランドカッターによりペレットを得た。得られたペレットは熱風乾燥機を用いて、150℃で3時間乾燥した後、以下の(1)〜(5)の評価を行った。また混練時の最大せん断速度における溶融粘度については、押出機シリンダ径、スクリュー回転数、ニーディング部のクリアランスから算出したせん断速度における溶融粘度を高化式フローテスターCFT−500D(オリフィス0.5φ×10mm)(島津製作所製)を用い、混練時のシリンダ温度を測定温度として評価した。
[0132] また、得られたペレット50gを550℃で3時間加熱することにより樹脂成分を除去し、液晶ポリエステル樹脂組成物中のマイカを取り出した。取り出したマイカを100mg秤量し、水中に分散させ、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(HORIBA社製“LA−300”)を用いて測定し、体積平均粒径を算出した。またレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定した粒子径分布において、全体固体粒子量に対する累積固体粒子量が50%となる粒子径をメジアン径として測定し、体積平均粒径をメジアン径で除した比を算出した。また、取り出したマイカを走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子(株)社製“JSM−6360LV”)により2000倍の倍率で観察した画像から無作為に選んだ10個の厚みを観察方向や観察角度を調節して測定し、その数平均値として、数平均厚みを算出した。マイカのアスペクト比は体積平均粒径/数平均厚みにより算出した。タルクを含有する場合には、マイカとタルクとを比重差により分離して得られたタルクを100mg秤量し、水中に分散させ、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(HORIBA社製“LA−300”)を用いて測定して数平均粒径を算出し、吸油量はJIS K−5101(2004年2月20日制定)に準拠して測定した。
・・・
[0135] また、各特性の評価方法は以下の通りである。
[0136] (1)流動性
各実施例および比較例で得られた液晶ポリエステル樹脂組成物をファナックロボショットα−30C(ファナック(株)製)を用いて、幅5.0mm×長さ50mm×0.2mm厚みの成形品を成形できる金型を用い、シリンダ温度を液晶ポリエステル樹脂の融点Tm+20℃に設定し、金型温度を90℃に設定して、射出速度400m/sの成形条件で20ショット射出成形した。幅5.0mm×0.2mm厚みの流動長を数平均値として測定した。この値が大きいほど、流動性に優れている。
[0137] (2)曲げ特性
各実施例および比較例で得られた液晶ポリエステル樹脂組成物をファナックロボショットα−30C(ファナック(株)製)を用いて、シリンダ温度を液晶ポリエステル樹脂の融点+10℃に設定し、金型温度90℃の条件で射出成形を行い、幅12.6mm×長さ127mm×厚み3.2mmの試験片に成形した。測定温度23℃でASTM D−790に準拠して試験片の曲げ強度、破断たわみ量を測定した。試験n数は3であり、値はその平均値である。曲げ強度の値が大きいほど、曲げ特性に優れ、かつ、強度に優れている。また、破断たわみ量の値が大きいほど、曲げ特性に優れ、かつ、靭性に優れている。
[0138] (3)耐衝撃値
各実施例および比較例で得られた液晶ポリエステル樹脂組成物をファナックロボショットα−30C(ファナック(株)製)を用いて、シリンダ温度を液晶ポリエステル樹脂の融点+10℃に設定し、金型温度90℃の条件で射出成形を行い、幅12.6mmmm×長さ63.5mm×厚み3.2mmの試験片に成形した。測定温度23℃でASTM D−256に準拠して試験片の衝撃吸収エネルギー値の測定をした。試験n数は10であり、値はその平均値である。この値が大きいほど、耐衝撃値に優れ、かつ、靭性に優れている。
[0139] (4)そり量
各実施例および比較例で得られた液晶ポリエステル樹脂組成物をファナックロボショットα−30C(ファナック(株)製)を用いて、シリンダ温度を液晶ポリエステル樹脂の融点+10℃に設定し、背圧を2.0MPaとして8mm計量した際の計量時間、および0.3mmピッチ70芯ファインピッチコネクター(壁厚0.2mm)金型で成形を行い、ファインピッチコネクターを得た。リフローシミュレーターcore9030c(株式会社コアーズ製)により、ファインピッチコネクターを1.6℃/秒で200℃まで昇温して2分間プリヒートし、表面最高温度260℃で30秒間リフローさせた後に室温まで冷却させてリフロー処理を行った。リフロー処理後のそり量を測定した。試験n数は5であり、値はその平均値である。
[0140] なお「そり量」は、ファインピッチコネクターの長尺方向を水平な定盤の上に静置して、万能投影機(V−16A(Nikon製))を用いて、ファインピッチコネクター底面の水平定盤に対する最大変位量とした。図1は、そり量の測定部位を示す概念図である。符号1はピン圧入方向、符号2はコネクター長尺方向を示す。測定したファインピッチコネクター底面の水平定盤に対する最大変位量を、図1では符号3として示し、そり量を表す。
[0141] (5)耐トラッキング破壊特性
実施例12〜17および比較例12〜13の液晶ポリエステル樹脂組成物を、ファナックロボショットα−30C(ファナック(株)製)を用いて、シリンダ温度を液晶ポリエステル樹脂の融点+10℃に設定し、50mm×80mm×1mm厚の角板に成形した。角板について、IEC112(A液)の試験方法に従い、比較トラッキング指数(CTI)を測定した。試験n数は5であり、値はその平均値である。この値が高いほど耐トラッキング破壊特性に優れている。
[0142] (6)摺動特性
実施例1〜11および比較例1〜11の液晶ポリエステル樹脂組成物をファナックロボショットα−30C(ファナック(株)製)を用いて、30×30×3.2mmの角板に成形した。スラスト摩耗試験機(鈴木式摩耗試験機)を用いて、相手材としてアルミニウム合金(5056)を用い、荷重P=5kgf/cm2、速度V=20m/minの条件で角板の摩耗量を測定した。試験n数は5であり、値はその平均値である。摩耗量が少ないほど摺動性に優れていることを示している。
[0143] (7)曲げ疲労特性
各実施例および比較例で得られた液晶ポリエステル樹脂組成物をファナックロボショットα−30C(ファナック(株)製)を用いて、ASTM D671の「TYPE A」片持ち曲げ疲労試験片に成形した。繰り返し振動疲労試験機B−20型((株)東洋精機製作所製)を用いて、室温、振動数30HzでASTM D671のB法に準じた方法で、試験片について曲げ疲労試験を行い、10000回時の応力を測定した。試験n数は3であり、値はその平均値である。この値が大きいほど、曲げ疲労特性に優れている。
[0144][表2]

[0145][表3]

[0146][表4]



(3)甲第3号証に記載された事項
甲第3号証には、以下の事項が記載されている。

(甲3a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶ポリマー100重量部に対して、以下の2種類のタルク(A)および(B)を、その合計量が1〜150重量部となり、
かつ、(A)/(B)の重量比が1/9〜9/1となるように配合してなる液晶ポリマー組成物:
(A)縦横比が3.1〜5.0であり、かつ平均粒子径が5〜100μmであるタルク
(B)縦横比が1.0〜3.0であり、かつ平均粒子径が5〜100μmであるタルク。
【請求項2】
液晶ポリマーが、全芳香族液晶ポリエステル樹脂である請求項1に記載の液晶ポリマー組成物。
【請求項3】
液晶ポリマーが、式(I)〜(IV)の繰返し単位から構成される液晶ポリエステル樹脂である請求項1または2に記載の液晶ポリマー組成物。
【化1】


[式中、Ar1およびAr2はそれぞれ2価の芳香族基を表す。]
【請求項4】
Ar1およびAr2が、下記の芳香族基(1)〜(4)から選択される1種以上のものである、請求項3に記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
【化2】


【請求項5】
Ar1が請求項4に記載の式(1)および/または(4)で表される芳香族基であり、Ar2が請求項4に記載の式(1)および/または(3)で表される芳香族基である請求項4に記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、液晶ポリマー100重量部に対し、繊維状、板状または粉末状の無機充填材を1〜150重量部配合してなる請求項1〜5の何れかに記載の液晶ポリマー組成物。
【請求項7】
無機充填材が、ガラス繊維、ミルドガラス、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、炭素繊維、アラミド繊維、チタン酸カリウムウイスカ、ホウ酸アルミニウムウイスカ、ウォラストナイト、マイカ、グラファイト、炭酸カルシウム、ドロマイト、クレイ、ガラスフレーク、ガラスビーズ、硫酸バリウム、および酸化チタンからなる群より選択される1種以上である、請求項6に記載の液晶ポリマー組成物。
【請求項8】
無機充填材がガラス繊維である、請求項6または7に記載の液晶ポリマー組成物。
【請求項9】
請求項1〜8の何れかに記載の液晶ポリマー組成物を成形して得られる成形品。
【請求項10】
成形品が、スイッチ、リレー、コネクター、チップ、光ピックアップ、インバータトランス、コイルボビン、アンテナおよび基板から選択される、請求項9に記載の成形品。」

(甲3b)「【技術分野】
【0001】
本発明は、成形時の流動性に優れた液晶ポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ポリマーは、耐熱性、剛性等の機械物性、耐薬品性、寸法精度等に優れており、成形品用途のみならず、繊維やフィルムといった各種用途にその使用が拡大しつつある。特にパーソナル・コンピューターや携帯電話等の情報・通信分野においては、部品の高集積度化、小型化、薄肉化、低背化等から、薄い肉厚部が形成されるケースが多い。したがってかかる分野においては、液晶ポリマーの優れた成形性、すなわち流動性が良好であり、かつバリが出ないという他の樹脂にない特徴を生かして、その使用量が大幅に増大している。
【0003】
しかし、情報・通信分野において使用される電子部品の形状は、日々、薄肉化、複雑化しており、これに応じて、液晶ポリマーにもさらなる成形時の流動性の改良が求められている。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、機械的性質を損なうことなく、成形時の流動性が改良された液晶ポリマー組成物を提供することにある。
【0009】
本発明者等は、液晶ポリマーの成形時における流動性の改善について鋭意検討した結果、特定の縦横比かつ特定の平均粒子径を有する2種類のタルクを所定の量比で液晶ポリマーに配合することにより、得られた液晶ポリマー組成物において、機械的性質を損なうことなく、流動性が著しく改善されることを見出し、本発明を完成させるに至った。」

(甲3c)「【0040】
上記のようにして得られた、液晶ポリマー100重量部に対して、以下の2種類のタルク(A)および(B)を、その合計量が1〜150重量部となり、かつ、(A)/(B)の重量比が1/9〜9/1となるように配合して、本発明の液晶ポリマー組成物が得られる:
(A)縦横比が3.1〜5.0であり、かつ平均粒子径が5〜100μmであるタルク
(B)縦横比が1.0〜3.0であり、かつ平均粒子径が5〜100μmであるタルク。
・・・
【0047】
また、本発明の液晶ポリマー組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、上述した2種類のタルク(A)および(B)以外に、さらに繊維状、板状または粉末状の無機充填材を配合してもよい。
【0048】
本発明の液晶ポリマー組成物にさらに配合してもよい無機充填材としては、たとえばガラス繊維、ミルドガラス、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、炭素繊維、アラミド繊維、チタン酸カリウムウイスカ、ホウ酸アルミニウムウイスカ、ウォラストナイト、マイカ、グラファイト、炭酸カルシウム、ドロマイト、クレイ、ガラスフレーク、ガラスビーズ、硫酸バリウム、および酸化チタンからなる群から選択される1種以上が挙げられる。これらの中では、ガラス繊維が物性とコストのバランスが優れている点で好ましい。
【0049】
本発明の液晶ポリマー組成物における、2種類のタルク(A)および(B)以外の無機充填材の配合量は、液晶ポリマー100重量部に対して、1〜150重量部、好ましくは5〜100重量部であるのがよい。
【0050】
2種類のタルク以外の無機充填材を配合する場合、2種類のタルクと合わせた合計配合量は、液晶ポリマー100重量部に対して2〜200重量部、好ましくは5〜150重量部であるのがよい。
【0051】
前記の無機充填材の配合量が150重量部を超える場合には、成形加工性が低下したり、成形機のシリンダーや金型の磨耗が大きくなる傾向がある。」

(甲3d)「【0060】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0061】
まず、実施例および比較例において使用する液晶ポリマーの合成例を記す。
以下、合成例における略号は以下の化合物を表す。
〔液晶ポリマー合成に用いた単量体〕
POB:パラヒドロキシ安息香酸
BON6:6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸
HQ:ハイドロキノン
BP:4,4’−ジヒドロキシビフェニル
TPA:テレフタル酸
NDA:2,6−ナフタレンジカルボン酸
【0062】
[合成例(LCP−1)]POB/BON6/HQ/TPA
トルクメーター付き攪拌装置および留出管を備えた反応容器に、POB:386.0g(43モル%)、BON6:183.5g(15モル%)、HQ:150.3g(21モル%)およびTPA:226.7g(21モル%)を仕込み、さらに全モノマーの水酸基量(モル)に対して1.025倍モルの無水酢酸を仕込み、次の条件で脱酢酸重合を行った。
【0063】
窒素ガス雰囲気下に室温〜145℃まで1時間で昇温し、同温度にて30分間保持した。次いで、副生する酢酸を留去させつつ350℃まで7時間かけ昇温した後、80分かけて10mmHgにまで減圧した。所定のトルクを示した時点で重合反応を終了し、反応容器から内容物を取り出し、粉砕機により液晶ポリエステル樹脂のペレットを得た。重合時の留出酢酸量は、ほぼ理論値どおりであった。
【0064】
[合成例2(LCP−2)] POB/BON6/HQ/NDA
トルクメーター付き攪拌装置および留出管を備えた反応容器に、POB:628.4g(70モル%)、BON6:24.5g(2モル%)、HQ:100.2g(14モル%)およびNDA196.7g(14モル%)を仕込み、さらに全モノマーの水酸基量(モル)に対して1.03倍モルの無水酢酸を仕込み、次の条件で脱酢酸重合を行った。
【0065】
窒素ガス雰囲気下に室温〜145℃まで1時間かけて昇温し、同温度で30分保持した。次いで、副生する酢酸を留出させつつ345℃まで7時間かけて昇温した後、80分かけて10mmHgにまで減圧した。所定のトルクを示した時点で重合反応を終了し、反応容器から内容物を取り出し、粉砕機により液晶ポリエステル樹脂のペレットを得た。重合時の留出酢酸量は、ほぼ理論値どおりであった。
【0066】
[合成例3(LCP−3)] POB/BON6/HQ/BP/TPA
トルクメーター付き攪拌装置および留出管を備えた反応容器に、POB:314.2g(34モル%)、BON6:61.2g(5モル%)、BP:169.4g(14モル%)、HQ:114.5g(16モル%)およびTPA:323.9g(30モル%)を仕込み、さらに全モノマーの水酸基量(モル)に対して1.03倍モルの無水酢酸を仕込み、次の条件で脱酢酸重合を行った。
【0067】
窒素ガス雰囲気下に室温〜145℃まで1時間かけて昇温し、同温度で30分保持した。次いで、副生する酢酸を留出させつつ350℃まで7時間かけて昇温した後、80分かけて5mmHgにまで減圧した。所定のトルクを示した時点で重合反応を終了し、反応容器から内容物を取り出し、粉砕機により液晶ポリエステル樹脂のペレットを得た。重合時の留出酢酸量は、ほぼ理論値どおりであった。
【0068】
〈タルク〉
タルク1:富士タルク株式会社製、HK−A(縦横比3.6、平均粒子径24.0μm、含水量0.13重量%)
タルク2:富士タルク株式会社製、NK−64(縦横比2.6、平均粒子径19.0μm、含水量0.50重量%)
〈繊維状無機充填材〉
ガラス繊維:CPIC社製、ECS3010A(平均繊維長10.5μm)
【0069】
[実施例1〜3、比較例1〜2]
液晶ポリマーとしてLCP−1を用い、液晶ポリマー100重量部に対して、表1に記載の量のタルクおよび繊維状無機充填材(ガラス繊維)を配合し、二軸押出機(株式会社日本製鋼所製、TEX−30α)にて溶融混練したものをペレット化し、液晶ポリマー組成物を調製した。
【0070】
得られた液晶ポリマー組成物のペレットについて、荷重撓み温度(DTUL)、引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率、Izod強度、結晶融解温度、結晶化温度および流動長を以下に示す方法にて測定した。結果を表1に示す。
【0071】
表1
【表1】


・・・
【0080】
[実施例4、比較例3〜4]
液晶ポリマーとしてLCP−2を用い、液晶ポリマー100重量部に対して、表4に記載の量のタルクおよび繊維状無機充填材(ガラス繊維)を配合し、二軸押出機(株式会社日本製鋼所製、TEX−30α)にて溶融混練したものをペレット化し、液晶ポリマー組成物を調製した。
【0081】
得られた液晶ポリマー組成物のペレットについて、実施例1と同様にして、荷重撓み温度(DTUL)、引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率、Izod強度、結晶融解温度、結晶化温度および流動長を測定した。結果を表4に示す。
【0082】
表4
【表4】


【0083】
[実施例5、比較例5〜6]
液晶ポリマーとしてLCP−3を用い、液晶ポリマー100重量部に対して、表5に記載の量のタルクおよび繊維状無機充填材(ガラス繊維)を配合し、二軸押出機(株式会社日本製鋼所製、TEX−30α)にて溶融混練したものをペレット化し、液晶ポリマー組成物を調製した。
【0084】
得られた液晶ポリマー組成物のペレットについて、実施例1と同様にして、荷重撓み温度(DTUL)、引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率、Izod強度、結晶融解温度、結晶化温度および流動長を測定した。結果を表5に示す。
【0085】
表5
【表5】


【0086】
LCP−1〜LCP−3のいずれにおいても、タルク1とタルク2を併用して配合することによって、タルク1とタルク2をそれぞれ単独で配合した場合に比べて、流動長が改善されるものであった。」

(4)甲第4号証に記載された事項
甲第4号証には、以下の事項が記載されている。

(甲4a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】液晶性ポリエステル(A)100重量部に対して液晶性ポリエステル(B)10〜150重量部を配合してなる液晶性ポリエステル樹脂混合物の100重量部に対して、繊維状および/または板状の無機充填材15〜180重量部を配合してなり、液晶性ポリエステル樹脂(A)の流動開始温度が300℃〜400℃、液晶性ポリエステル樹脂(B)の流動開始温度が260℃〜350℃で、かつ液晶性ポリエステル(A)の流動開始温度から液晶性ポリエステル(B)の流動開始温度を引いた差が20℃〜60℃であり、液晶性ポリエステル(A)と液晶性ポリエステル(B)がいずれも、芳香族ジオールおよび芳香族ヒドロキシカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種のフェノール性水酸基を脂肪族無水物でアシル化して得たアシル化物と、芳香族ジカルボン酸および芳香族ヒドロキシカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種を、エステル交換して得た液晶性ポリエステル樹脂であって、アシル化、エステル交換、またはアシル化とエステル交換の両方を窒素原子を2原子以上含む複素環状有機塩基化合物の存在下に行なうことを特徴とするコネクター用液晶性ポリエステル樹脂組成物。
・・・
【請求項4】液晶性ポリエステル(A)および(B)が、パラヒドロキシ安息香酸(I)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル(II)、テレフタル酸(III)、およびイソフタル酸(IV)に由来する構造単位からなり、II/Iのモル比率が0.2〜1.0、(III+IV)/IIのモル比率が0.9〜1.1、IV/IIIのモル比率が0より大きく1以下であって、液晶性ポリエステル(A)のIV/IIIのモル比率(α)と、液晶性ポリエステル(B)のIV/IIIのモル比率(β)との比、α/βが0.1〜0.6である請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】繊維状の無機充填材が、ガラス繊維、炭素繊維、ウォラストナイト、ホウ酸アルミニウムウィスカ、チタン酸カリウムウィスカから選ばれる少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】板状の無機充填材が、マイカ、タルク、またはこれらの混合物である請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物を用いて得られることを特徴とするコネクター。」

(甲4b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、コネクター用液晶性ポリエステル樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】液晶性ポリエステル樹脂は、分子が剛直なため溶融状態においても絡み合いがなく、成形時のせん断により分子鎖が流れ方向に著しく配向し、固化時にもその配向を維持するという特徴を有しているため、溶融流動性および耐熱性に優れている。このため、液晶性ポリエステル樹脂にガラス繊維などの繊維状補強材やタルクなどの無機充填材などを配合した樹脂組成物を用いて得られる成形体は、薄肉部や複雑な形状を有するコネクターなどの電子部品用途などに好適に使用されているが、近年の表面実装技術の進展や、携帯電話などのモバイル機器の軽薄短小化の流れに伴って、コネクターの薄肉化、反り量の低減への要望もより強くなってきている。これまでに、コネクターを薄肉化し、反り量を低減するために各種充填材を配合することが検討されてきた。例えば、特開平10−219085には、異なる流動開始温度を有する2種類の液晶性ポリエステルを混合して得られる樹脂混合物に無機充填材を配合してなる樹脂組成物を用いることにより、成形時の流動性が優れ、反り量が低減されたコネクターを製造し得ることが開示されている。しかしながら、コネクターの超薄肉化に伴い、成形時の流動性がさらに優れ、反り量がより低減されたコネクターを製造し得る樹脂組成物の開発が望まれていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、成形時の流動性が優れ、かつ反り量がより低減されたコネクターを製造し得るコネクター用液晶性ポリエステル樹脂組成物を提供することにある。」

(甲4c)「【0037】本発明で使用される板状の無機充填材は、化学結合によって平面層状の結晶構造を持ち、各層間は弱いファンデルワールス力で結合しているため、へき開が生じやすく、粉砕時に粒子が板状になる無機物である。本発明で使用される板状の無機充填材の平均粒径は、1〜20μmが好ましく、より好ましくは5〜20μmである。平均粒子径が1μm未満の場合、反り量の低減が不十分となる傾向がある。また、平均粒子径が20μmより大きい場合、反り量の低減は20μm以下のものとさほど変わらないが成形品の外観が悪化する傾向がある。板状の無機充填材としては、例えば、タルク、マイカ、グラファイトなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは、単独でも、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】本発明のコネクター用液晶性ポリエステル樹脂組成物は、液晶性ポリエステル樹脂混合物に繊維状および/または板状の無機充填材を配合することにより得ることができる。繊維状および/または板状の無機充填材の配合量は、液晶性ポリエステル樹脂混合物100重量部に対して、15〜180重量部であり、好ましくは20〜150重量部である。繊維状および/または板状の無機充填材の配合量が15重量部未満の場合、反り量の低減が不十分となる。また、繊維状および/または板状の無機充填材の配合量が180重量部より多い場合は、流動性が不十分となる上、成形機のシリンダーや金型の磨耗が大きくなる。なお、本発明のコネクター用液晶性ポリエステル樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、フッ素樹脂、金属石鹸類などの離型改良剤;染料、顔料などの着色剤;酸化防止剤;熱安定剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤;界面活性剤などの通常の添加剤を1種以上添加することができる。また、例えば、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸金属塩、フルオロカーボン系界面活性剤等の外部滑剤効果を有するものを1種以上添加することもできる。」

(甲4d)「【0042】以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明が実施例により限定されるものでないことは言うまでもない。なお、実施例中の物性等は以下の方法により測定した。
・・・
【0043】製造例1
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸 994.5g(7.2モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル 446.9g(2.4モル)、テレフタル酸 299.0g(1.8モル)、イソフタル酸 99.7g(0.6モル)及び無水酢酸1347.6g(13.2モル)を仕込んだ。反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で30分かけて150℃まで昇温し、温度を保持して3時間還流させた。その後、1−メチルイミダゾールを2.4g添加した後、留出する副生酢酸、未反応の無水酢酸を留去しながら2時間50分かけて320℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了とみなし、内容物を取り出した。得られた固形分は室温まで冷却し、粗粉砕機で粉砕後、窒素雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から295℃まで5時間かけて昇温し、295℃で3時間保持し、固層で重合反応を進め、LCP1を得た。LCP1の流動開始温度は326.6℃であった。
【0044】製造例2
1−メチルイミダゾールを添加しない以外は製造例1に準拠して反応を行い、内容物を取り出した。その後、得られた固形分は室温まで冷却し、粗粉砕機で粉砕後、窒素雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から285℃まで5時間かけて昇温し、285℃で3時間保持し、固層で重合反応を進め、LCP2を得た。LCP2の流動開始温度は323.5℃であった。
【0045】製造例3
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸 994.5g(7.2モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル 446.9g(2.4モル)、テレフタル酸 239.2g(1.44モル)、イソフタル酸 159.5g(0.96モル)及び無水酢酸 1347.6g(13.2モル)を仕込んだ。反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下で30分かけて150℃まで昇温し、温度を保持して3時間還流させた。その後、1−メチルイミダゾールを2.4g添加した後、留出する副生酢酸、未反応の無水酢酸を留去しながら2時間50分かけて320℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了とみなし、内容物を取り出した。得られた固形分は室温まで冷却し、粗粉砕機で粉砕後、窒素雰囲気下、室温から220℃まで1時間かけて昇温し、220℃から240℃まで0.5時間かけて昇温し、240℃で10時間保持し、固層で重合反応を進め、LCP3を得た。LCP3の流動開始温度は285.7℃であった。
【0046】製造例4
1−メチルイミダゾールを添加しない以外は製造例3に準拠して反応を行い、内容物を取り出した。その後、得られた固形分は室温まで冷却し、粗粉砕機で粉砕後、窒素雰囲気下、室温から220℃まで1時間かけて昇温し、220℃から245℃まで0.5時間かけて昇温し、245℃で10時間保持し、固層で重合反応を進め、LCP4を得た。LCP4の流動開始温度は285.0℃であった。
【0047】実施例1〜2、比較例1〜2
表1に示すように配合し混合した後、2軸押出機(池貝鉄工(株)PCM−30)を用いて、シリンダー温度340℃で造粒し、液晶性ポリエステル樹脂組成物を得た。得られた液晶性ポリエステル樹脂組成物を成形し、上記(1)〜(3)記載の方法で物性を測定した。結果を表2に示す。
【0048】
【表1】


ミルドGF:EFDE50−01(セントラル硝子製)
チョップドGF:CS03JAPx−01(旭ファーバーガラス製)
タルク:X−50(林化成製)」

(5)甲第5号証に記載された事項
甲第5号証には、以下の事項が記載されている。

(甲5a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶ポリエステル100質量部と、繊維状充填材及び板状充填材の合計65質量部以上100質量部以下と、を有し、
前記繊維状充填材は、数平均繊維径が5μm以上15μm以下であって数平均繊維長が200μmより長く400μm未満であり、
前記板状充填材に対する前記繊維状充填材の質量比が、3以上15以下であり、且つ、流動開始温度が250℃以上314℃未満である液晶ポリエステル組成物。
【請求項2】
前記液晶ポリエステルが、下記式(1)で表される繰返し単位と、下記式(2)で表される繰返し単位と、下記式(3)で示される繰返し単位とを有する請求項1に記載の液晶ポリエステル組成物。
(1)−O−Ar1−CO−
(2)−CO−Ar2−CO−
(3)−X−Ar3−Y−
(式中、Ar1は、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基を表す。Ar2及びAr3は、それぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は下記式(4)で表される基を表す。X及びYは、それぞれ独立に、酸素原子又はイミノ基を表す。Ar1、Ar2又はAr3で表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。)
(4)−Ar4−Z−Ar5−
(式中、Ar4及びAr5は、それぞれ独立に、フェニレン基又はナフチレン基を表す。Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はアルキリデン基を表す。)
【請求項3】
前記液晶ポリエステルが、上記式(1)で表される繰返し単位と、上記式(2)で表される繰返し単位と、上記式(3)で表される繰返し単位とからなり、前記Ar1がp−フェニレン基である液晶ポリエステル(A)と、
上記式(1)で表される繰返し単位と、上記式(2)で表される繰返し単位と、上記式(3)で表される繰返し単位とからなり、前記Ar1が2,6−ナフチレン基である液晶ポリエステル(B)と、の混合物である請求項2に記載の液晶ポリエステル組成物。
【請求項4】
前記液晶ポリエステル100質量部のうち、前記液晶ポリエステル(A)を20質量部以上含む請求項3記載の液晶ポリエステル組成物。
【請求項5】
前記繊維状充填材が、ガラス繊維、ウォラストナイトウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー及びチタン酸カリウムウィスカーからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1から4のいずれか1項に記載の液晶ポリエステル組成物。
【請求項6】
前記板状充填材が、マイカ及びタルクのいずれか一方又は両方である請求項1から5のいずれか1項に記載の液晶ポリエステル組成物。
・・・
【請求項9】
請求項1から7のいずれか1項に記載の液晶ポリエステル組成物、又は請求項8に記載の液晶ポリエステル組成物の製造方法によって製造される液晶ポリエステル組成物を、射出成形して得られる成形体。
【請求項10】
前記成形体がコネクターである請求項9の成形体。
【請求項11】
前記コネクターがCPUソケットである請求項10の成形体。」

(甲5b)「【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ポリエステル組成物、液晶ポリエステル組成物の製造方法及び成形体に関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般に樹脂組成物には、成形体の成形不良が抑制されることが求められる。ここで、想定される成形不良としては、バリやショートショットが挙げられる。「バリ」とは、成形時に金型の合せ面(パーティングライン)から漏れた樹脂が固化して生じる不良現象であり、「ショートショット」とは、成形時に樹脂材料の充填不足、及びこれに伴う不良現象の総称である(大阪市立工業研究所、プラスチック読本編集委員会、プラスチック技術協会編、「プラスチック読本 第19版」、株式会社プラスチックス・エージ、2002年5月20日、p.255参照)。
【0009】
バリは、用いる金型に対して、溶融した樹脂組成物の流動性が過剰であることが原因で発生し、ショートショットは、溶融した樹脂組成物の流動性が不足していることが原因で発生する。そのため、樹脂組成物の溶融時の流動性(以下、「溶融流動性」と称することがある)を変動させると、バリとショートショットとが同時に変動してしまう。例えば、樹脂組成物の溶融時の流動性を向上させると、射出成形時にショートショットを抑制できるが、一方で金型から漏れ出やすくなるためにバリが発生しやすくなる。
【0010】
以下の説明においては、樹脂組成物について、バリとショートショットの発生量(発生頻度)の関係を、当該樹脂組成物の「流動バランス」と称することがある。「流動バランス」が良いとは、樹脂組成物が、バリの発生とショートショットの発生とをバランス良く抑制された(同時に抑制した)溶融流動性を有していることを指し、「流動バランス」が悪いとは、バリ又はショートショットの少なくともいずれか一方が抑制されておらず、成形不良が生じるような溶融流動性を有していることを指す。
【0011】
また、樹脂組成物には、良好な流動バランスのみならず、得られる成形体の強度維持又は向上も同時に求められる。しかし、樹脂組成物に種々の充填材を加えることにより成形体の強度を向上させると、充填材の影響で樹脂組成物の溶融時の流動性を低下させ、流動バランスが悪化しまうおそれある。例えば、樹脂組成物に種々の充填材を加えることにより成形体の強度を向上させることが可能であるが、充填材の影響で樹脂組成物の溶融時の流動性が低下し、ショートショットが生じやすくなる。
【0012】
特に、上述の特許文献1〜4で用いる液晶ポリエステルは、溶融時に流動しやすいためバリが生じやすいこと、及び成形時に樹脂が配向することに起因して成形体の強度に異方性があるため、射出成形した成形体のウエルド部にクラックが発生しやすいこと、が知られている。上述の特許文献1〜4に記載された液晶ポリエステル組成物は、成形体のクラック発生の抑制(以下、「耐クラック性」と称することがある)と、溶融時の良好な流動バランスの実現と、の両立が必ずしも十分ではなく、改善が求められていた。
【0013】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、耐クラック性と良好な流動バランスとを両立し、優れた成形体を与える液晶ポリエステル組成物を提供することを目的とする。また、このような液晶ポリエステル組成物の製造方法、及び液晶ポリエステル組成物を用いて成形される成形体を提供することをあわせて目的とする。」

(甲5c)「【0030】
(液晶ポリエステル)
本実施形態に係る液晶ポリエステルは、溶融状態で液晶性を示す液晶ポリエステルであり、450℃以下の温度で溶融するものであることが好ましい。なお、液晶ポリエステルは、液晶ポリエステルアミドであってもよいし、液晶ポリエステルエーテルであってもよいし、液晶ポリエステルカーボネートであってもよいし、液晶ポリエステルイミドであってもよい。液晶ポリエステルは、原料モノマーとして芳香族化合物のみを用いてなる全芳香族液晶ポリエステルであることが好ましい。
・・・
【0033】
液晶ポリエステルは、下記式(1)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(1)」ということがある。)を有することが好ましく、繰返し単位(1)と、下記式(2)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(2)」ということがある)と、下記式(3)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(3)」ということがある)と、を有することがより好ましい。
(1)−O−Ar1−CO−
(2)−CO−Ar2−CO−
(3)−X−Ar3−Y−
(Ar1は、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基を表す。Ar2及びAr3は、それぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は下記式(4)で表される基を表す。X及びYは、それぞれ独立に、酸素原子又はイミノ基(−NH−)を表す。Ar1、Ar2又はAr3で表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。)
(4)−Ar4−Z−Ar5−
(Ar4及びAr5は、それぞれ独立に、フェニレン基又はナフチレン基を表す。Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はアルキリデン基を表す。)
・・・
【0039】
繰返し単位(1)は、所定の芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(1)として、p−ヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位(Ar1がp−フェニレン基)、又は6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸に由来する繰返し単位(Ar1が2,6−ナフチレン基)が好ましい。
【0040】
繰返し単位(2)は、所定の芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(2)としては、Ar2がp−フェニレン基であるもの(テレフタル酸に由来する繰返し単位)、Ar2がm−フェニレン基であるもの(イソフタル酸に由来する繰返し単位)、Ar2が2,6−ナフチレン基であるもの(2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する繰返し単位)が好ましい。
【0041】
繰返し単位(3)は、所定の芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシルアミン又は芳香族ジアミンに由来する繰返し単位である。繰返し単位(3)としては、Ar3がp−フェニレン基であるもの(ヒドロキノン、p−アミノフェノール又はp−フェニレンジアミンに由来する繰返し単位)、及びAr3が4,4’−ビフェニリレン基であるもの(4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニル又は4,4’−ジアミノビフェニルに由来する繰返し単位)が好ましい。
【0042】
繰返し単位(1)の含有量は、液晶ポリエステルが、繰返し単位(1)、(2)及び(3)のそれぞれで表される分子からなる物質と見做し、液晶ポリエステル中の繰返し単位(1)、(2)及び(3)の合計を100モル%として、好ましくは30モル%以上、より好ましくは30モル%以上80モル%以下、さらに好ましくは40モル%以上70モル%以下、よりさらに好ましくは45モル%以上65モル%以下である。
【0043】
同様に、繰返し単位(2)の含有量は、液晶ポリエステル中の繰返し単位(1)、(2)及び(3)の合計を100モル%として、好ましくは35モル%以下、より好ましくは10モル%以上35モル%以下、さらに好ましくは15モル%以上30モル%以下、よりさらに好ましくは17.5モル%以上27.5モル%以下である。
【0044】
同様に、繰返し単位(3)の含有量は、液晶ポリエステル中の繰返し単位(1)、(2)及び(3)の合計を100モル%として、好ましくは35モル%以下、より好ましくは10モル%以上35モル%以下、さらに好ましくは15モル%以上30モル%以下、よりさらに好ましくは17.5モル%以上27.5モル%以下である。
【0045】
繰返し単位(1)の含有量が多いほど、液晶ポリエステルの溶融流動性や耐熱性や強度・剛性が向上する傾向があるが、80モル%を超えると、溶融温度や溶融粘度が高くなる傾向があり、成形に必要な温度が高くなる傾向がある。
【0046】
繰返し単位(2)の含有量と繰返し単位(3)の含有量との割合は、[繰返し単位(2)の含有量]/[繰返し単位(3)の含有量](モル/モル)で表して、好ましくは0.9/1〜1/0.9、より好ましくは0.95/1〜1/0.95、さらに好ましくは0.98/1〜1/0.98である。
【0047】
なお、液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)〜(3)を、それぞれ独立に、2種以上有してもよい。液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)〜(3)以外の繰返し単位を有してもよく、含有量は、全繰返し単位の合計量を100モル%として、好ましくは0モル%以上10モル%以下、より好ましくは0モル%以上5モル%以下である。
【0048】
液晶ポリエステルの溶融粘度を下げるためには、繰返し単位(3)のX及びYのそれぞれが酸素原子であること(すなわち、芳香族ジオールに由来する繰返し単位であること)が好ましい。X及びYのそれぞれが酸素原子である繰返し単位(3)の量を増やすことにより、液晶ポリエステルの溶融粘度が下がるため、必要に応じてX及びYのそれぞれが酸素原子である繰返し単位(3)の量を制御し、液晶ポリエステルの溶融粘度を調整することができる。」

(甲5d)「【0052】
(繊維状充填材)
本実施形態の液晶ポリエステル組成物に含まれる繊維状充填材は、数平均繊維径が5μm以上15μm以下であり、数平均繊維長が200μmより長く400μm未満である。また、数平均繊維長は、好ましくは200μmより長く350μm以下、より好ましくは200μmより長く300μm以下である。液晶ポリエステル組成物中の繊維状充填材の数平均繊維長がこのような長さであることによって、得られる液晶ポリエステル組成物からなる成形体の耐クラック性を向上させ、バリとショートショットとを抑制することができる。
・・・
【0055】
(板状充填材)
本実施形態の液晶ポリエステル組成物に含まれる板状充填材は、無機充填材が好適である。板状無機充填材として、タルク、マイカ、グラファイト、ウォラストナイト、ガラスフレーク、硫酸バリウム及び炭酸カルシウムからなる群から選ばれる1種以上の板状充填材を例示することができる。中でも、タルク及びマイカのいずれか一方又は両方が好ましく、タルクがより好ましい。
【0056】
本実施形態の液晶ポリエステル組成物に含まれる板状充填材の体積平均粒径は、液晶ポリエステル組成物からなる成形体の耐クラック性が向上するため、好ましくは10μm以上30μm以下、より好ましくは10μm以上20μm以下である。
・・・
【0059】
(液晶ポリエステル組成物)
本実施形態の液晶ポリエステル組成物は、上述の液晶ポリエステル100質量部と、上述の繊維状充填材及び上述の板状充填材の合計65質量部以上100質量部以下と、を有している。繊維状充填材と板状充填材との合計の配合量は、液晶ポリエステル100質量部あたり、65質量部以上90質量部以下が好ましく、70質量部以上90質量部以下がより好ましい。
【0060】
繊維状充填材と板状充填材との合計の配合量が65質量部以上であると、液晶ポリエステル組成物からなる成形体の耐クラック性の向上や反り低減の効果が大きく、100質量部以下であると、液晶ポリエステル組成物の溶融流動性が十分なものとなる。
【0061】
また、液晶ポリエステル組成物においては、板状充填材に対する繊維状充填材の質量比は、3以上15以下である。板状充填材に対する繊維状充填材の質量比は、好ましくは3以上10以下、より好ましくは4以上7以下である。質量比が上記の範囲であると、薄肉部を有し、ウエルド部を有する成形品を得る上で、板状充填材と繊維状充填材とのいずれか一方を単独で用いる場合よりも、特に優れた耐クラック性と、良好な流動バランスと、が発現される。かかる効果は、本発明者らの独自の知見に基づくものである。」

(甲5e)「【実施例】
【0105】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、本実施例においては、以下の方法で測定を行った。
・・・
【0115】
(参考例1:液晶ポリエステル(1)の製造)
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、テレフタル酸239.2g(1.44モル)、イソフタル酸159.5g(0.96モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)及び無水酢酸1347.6g(13.2モル)を入れ、反応器内のガスを窒素ガスで置換した後、1−メチルイミダゾール0.18gを加え、窒素ガス気流下、攪拌しながら、室温から150℃まで30分かけて昇温し、150℃で30分還流させた。
【0116】
次いで、1−メチルイミダゾール2.4gを加え、副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、150℃から320℃まで2時間50分かけて昇温し、トルクの上昇が認められた時点で、反応器から内容物を取り出し、室温まで冷却した。
【0117】
得られた固形物を、粉砕機で粉砕し、窒素ガス雰囲気下、室温から220℃まで1時間かけて昇温し、220℃から240℃まで30分かけて昇温し、240℃で10時間保持することにより、固相重合させた後、冷却して、粉末状の液晶ポリエステル(1)を得た。液晶ポリエステル(1)の流動開始温度は、286℃であった。
【0118】
(参考例2:液晶ポリエステル(2)の製造)
テレフタル酸の使用量を299.0g(1.8モル)、イソフタル酸の使用量を99.7g(0.6モル)とし、粉砕後の固相重合の条件を、窒素ガス雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から295℃まで5時間かけて昇温し、295℃で3時間保持することとしたこと以外は参考例1と同様に行い、粉末状の液晶ポリエステル(2)を得た。液晶ポリエステル(2)の流動開始温度は、327℃であった。
【0119】
(参考例3:液晶ポリエステル(3)の製造)
参考例1と同様の反応容器に、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸1034.99g(5.5モル)、ハイドロキノン272.52g(2.475モル)、2,6−ナフタレンジカルボン酸378.33g(1.75モル)、テレフタル酸83.07g(0.5モル)、無水酢酸1226.87g(11.9モル)を入れ、反応器内のガスを窒素ガスで置換した後、1−メチルイミダゾール0.17gを加え、窒素ガス気流下、攪拌しながら昇温した。内温が145℃となったところで、同温度を保持したまま1時間攪拌した。
【0120】
次に、留出する副生酢酸、未反応の無水酢酸を留去しながら、145℃から310℃まで3時間30分かけて昇温した。同温度で3時間保温して液晶ポリエステルを得た。得られた液晶ポリエステルを室温に冷却し、粉砕機で粉砕して、粒子径が約0.1〜1mmの液晶ポリエステルの粉末(プレポリマー)を得た。得られた粉末を25℃から250℃まで1時間かけて昇温したのち、同温度から310℃まで10時間かけて昇温し、次いで同温度で5時間保温して固相重合させた。
【0121】
その後、固相重合した後の粉末を冷却し、粉末状の液晶ポリエステル(3)を得た。液晶ポリエステル(3)の流動開始温度は、333℃であった。
【0122】
(実施例1〜13、比較例1〜6)
液晶ポリエステル(1)、(2)、(3)と、チョップドガラス繊維(旭ファイバーグラス(株)製、CS03JAPX−1、数平均繊維径10μm、数平均繊維長3mm、数平均アスペクト比300)と、タルク(日本タルク(株)製、MS−KY、体積平均粒径14.2μm)とを、図2,3の表に示す割合で、2軸押出機(池貝鉄工(株)製、PCM−30HS、スクリュー回転:同方向、L/D=44)を用いて、340℃で溶融混練し、ペレット化した。
【0123】
なお、上述したペレット化前のタルクの体積平均粒径は、レーザー回折法を用いて測定した値である。
【0124】
その際、実施例1〜13、比較例1〜3,5,6においては、液晶ポリエステルの全供給量のうち55質量%とチョップドガラス繊維の全供給量のうち15質量%を、押出機の上流部供給口から供給し、液晶ポリエステルの全供給量の45質量%とチョップドガラス繊維の全供給量の85質量%と、タルクの全供給量を、押出機の下流側供給口から供給した。
【0125】
また、比較例4においては、液晶ポリエステルの全供給量を押出機の上流部供給口から供給し、チョップドガラス繊維の全供給量と、タルクの全供給量とを、押出機の下流側供給口から供給した。
【0126】
得られたペレットを、射出成形機(日精樹脂工業(株)製、ES400)を用いて、シリンダー温度340℃、金型温度65℃の成形条件で射出成形し、1021ピン対応のモデルCPUソケット成形体を得た。
【0127】
なお、実施例1のモデルCPUソケット成形体において、含まれるタルク(板状充填材)の体積平均粒径を測定したところ14.6μmであり、10μm以上30μm以下の範囲に含まれていたことを確認した。
【0128】
得られたCPUソケットについて、上述の方法で、クラック、バリ、ショートショットを評価した。評価結果を以下の表1,2に示す。
【0129】
【表1】


【0130】
【表2】



(6)甲第6号証に記載された事項
甲第6号証には、以下の事項が記載されている。

(甲6a)「そうか−へいきん[相加平均]n個の数を加えた和をnで割って得る平均値。算術平均。」(「そうか−へいきん[相加平均]」の項目)

(甲6b)「へい−きん[平均]・・・[数]・・・ふつう相加平均をさす。・・・」(「へい−きん[平均]」の項目)

(7)甲第7号証に記載された事項
甲第7号証には、以下の事項が記載されている。

(甲7a)「



(8)甲第8号証に記載された事項
甲第8号証には、以下の事項が記載されている。

(甲8a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】下記の(1) 〜(4) を満足することを特徴とするタルク。
(1) 平均粒径が3.0μm以下である
(2) 粒径から算定した粒径1.0μm以下の粒子の体積の和が全粒子の総体積の5%以上である
(3) 粒径から算定した粒径3.0μm以上の粒子の体積の和が全粒子の総体積の10%以上である
(4) 比表面積が80,000cm2 /g以上である
【請求項2】プロピレン系重合体95〜70重量%、熱可塑性エラストマー0〜25重量%及び下記の(1) 〜(3) を満足するタルク5〜25重量%からなることを特徴とするタルクを含有するプロピレン系重合体組成物。
(1) 平均粒径が3.0μm以下である
(2) 粒径から算定した粒径1.0μm以下の粒子の体積の和が全粒子の総体積の5%以上である
(3) 粒径から算定した粒径3.0μm以上の粒子の体積の和が全粒子の総体積の10%以上である
【請求項3】タルクが、下記の(5) 〜(7) を満足するものである請求項2に記載のタルクを含有するプロピレン系重合体組成物。
(5) 平均粒径が2.5μm以下である
(6) 粒径から算定した粒径1.0μm以下の粒子の体積の和が全粒子の総体積の10%以上である
(7) 粒径から算定した粒径3.0μm以上の粒子の体積の和が全粒子の総体積の20%以上である
【請求項4】プロピレン系重合体の共重合部重量と熱可塑性エラストマー重量との和が5〜50重量%である請求項2又は3に記載のタルクを含有するプロピレン系重合体組成物。
【請求項5】請求項2〜4のいずれかに記載のタルクを含有するプロピレン系重合体組成物を射出成形して得られる成形体。」

(甲8b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はタルク及びそれを含有するオレフィン系重合体組成物に関するものである。さらに詳しくは、特定の粒度分布を有するタルク及びそれを含有するプロピレン系重合体組成物に関するものである。
・・・
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような状況下で、オレフィン系重合体及びその組成物の機械的強度を著しく向上できるタルク及びそのタルクを含有するプロピレン系重合体組成物等を提供することを目的とするものである。」

(甲8c)「【図面の簡単な説明】
【図1】第1図は、本発明のタルクの粒度分布を示す。
【図2】第2図は、従来のタルクの粒度分布を示す。
【図1】


【図2】




(9)甲第9号証に記載された事項
甲第9号証には、以下の事項が記載されている。

(甲9a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダーと、前記シリンダー内に配置されたスクリュウと、前記シリンダーに上流側から順に設けられた第1供給部、第2供給部及び第3供給部とを有する押出機を用い、前記スクリュウを回転させながら、前記シリンダー内に、液晶ポリエステルを前記第1供給部から供給し、繊維状充填材及び板状充填材を前記第2供給部から供給し、粒状充填材を前記第3供給部から供給し、前記液晶ポリエステル、前記繊維状充填材、前記板状充填材及び前記粒状充填材を溶融混練して押し出す液晶ポリエステル組成物の製造方法。
【請求項2】
前記液晶ポリエステルが、下記式(1)で表される繰返し単位と、下記式(2)で表される繰返し単位と、下記式(3)で表される繰返し単位とを有する液晶ポリエステルである請求項1に記載の液晶ポリエステル組成物の製造方法。
(1)−O−Ar1−CO−
(2)−CO−Ar2−CO−
(3)−X−Ar3−Y−
(Ar1は、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基を表す。Ar2及びAr3は、それぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は下記式(4)で表される基を表す。X及びYは、それぞれ独立に、酸素原子又はイミノ基(−NH−)を表す。Ar1、Ar2又はAr3で表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。)
(4)−Ar4−Z−Ar5−
(Ar4及びAr5は、それぞれ独立に、フェニレン基又はナフチレン基を表す。Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はアルキリデン基を表す。)
【請求項3】
Ar1がp−フェニレン基又は2,6−ナフチレン基であり、Ar2がp−フェニレン基、m−フェニレン基又は2,6−ナフタレンジイル基であり、Ar3がp−フェニレン基又は4,4’−ビフェニリレン基であり、X及びYが、それぞれ酸素原子である請求項2に記載の液晶ポリエステル組成物の製造方法。
【請求項4】
前記液晶ポリエステルが、それを構成する全繰返し単位の合計量に対し、前記式(1)で表される繰返し単位を30〜80モル%、前記式(2)で表される繰返し単位を10〜35モル%、前記式(3)で示される繰返し単位を10〜35モル%有する液晶ポリエステルである請求項2又は3に記載の液晶ポリエステル組成物の製造方法。
【請求項5】
前記繊維状充填材がガラス繊維である請求項1〜4のいずれかに記載の液晶ポリエステル組成物の製造方法。
・・・
【請求項8】
前記板状充填材がタルク及び/又はマイカである請求項1〜7のいずれかに記載の液晶ポリエステル組成物の製造方法。
【請求項9】
前記板状充填材の体積平均粒径が10〜100μmである請求項1〜8のいずれかに記載の液晶ポリエステル組成物の製造方法。
【請求項10】
前記板状充填材の供給量が、前記液晶ポリエステル100質量部に対し、5〜80質量部である請求項1〜9のいずれかに記載の液晶ポリエステル組成物の製造方法。
【請求項11】
前記粒状充填材がガラスビーズである請求項1〜10のいずれかに記載の液晶ポリエステル組成物の製造方法。」

(甲9b)「【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ポリエステルと繊維状充填材と板状充填材と粒状状充填材とを含む液晶ポリエステル組成物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ポリエステルは、溶融流動性に優れ、耐熱性にも優れることから、電気・電子部品を製造するための射出成形材料として好適に用いられているが、成形体に膨張・収縮率や強度の異方性が生じ易いため、成形体に反りが生じ易く、また、成形体のウエルド強度が低くなり易いため、成形体にクラック(ウエルド割れ)が生じ易い。このような問題を解消すべく、液晶ポリエステルに繊維状充填材と板状充填材とを配合することが種々検討されている(例えば特許文献1〜3参照)。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1〜3に開示の如き、液晶ポリエステルに繊維状充填材と板状充填材とを配合してなる従来の液晶ポリエステル組成物は、その成形体のウエルド強度が必ずしも十分でなく、これを向上させるべく、繊維状充填材の含有量を増やすと、溶融流動性が低下し、充填不良が生じ易くなる。本発明者は、この問題を解消すべく、検討を行った結果、液晶ポリエステルに、繊維状充填材及び板状充填材に加えて、さらに粒状充填材を配合することにより、溶融流動性に優れ、反りやクラックが生じ難い成形体を与える液晶ポリエステル組成物が得られることを見出した。そして、この液晶ポリエステルと繊維状充填材と板状充填材と粒状状充填材とを含む液晶ポリエステル組成物を量産化すべく、さらに検討を行った結果、シリンダーと、シリンダー内に配置されたスクリューと、シリンダーに設けられた複数の供給部とを有する押出機を用い、スクリューを回転させながら、液晶ポリエステル及び各充填材を、それぞれ所定の供給部からシリンダー内に供給し、溶融混練して押し出すことにより、吐出ムラやストランド切れを防止でき、前記液晶ポリエステル組成物を安定に生産性良く製造しうることを見出し、本発明を完成するに至った。」

(甲9c)「【0028】
本発明では、液晶ポリエステルに繊維状充填材と板状充填材と粒状充填材とを配合することにより、液晶ポリエステル組成物を製造する。この液晶ポリエステル組成物は、溶融流動性に優れ、反りやクラックが生じ難い成形体を与える。
・・・
【0032】
板状充填材としては、通常、無機充填材が用いられる。板状無機充填材の例としては、タルク、マイカ、グラファイト、ウォラストナイト、ガラスフレーク、硫酸バリウム及び炭酸カルシウム等が挙げられる。中でも、タルク及びマイカが好ましく、タルクがより好ましい。板状充填材は、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。
【0033】
板状充填材の体積平均粒径は、好ましくは10〜100μm、より好ましくは10〜50μmである。板状充填材の体積平均粒径があまり小さいと、成形体に反りが生じ易くなり、あまり大きいと、液晶ポリエステル組成物の溶融流動性が不十分になる。板状充填材の体積平均粒径は、レーザー回折法により測定できる。
【0034】
板状状充填材の配合量は、液晶ポリエステル100質量部に対し、好ましくは5〜80質量部、より好ましくは30〜70質量部である。板状充填材の配合量があまり少ないと、成形体に反りが生じ易くなり、あまり多いと、液晶ポリエステル組成物の溶融流動性が不十分になる。
【0035】
粒状充填材は、繊維状及び板状以外で、球状その他の形状を有する充填材である。粒状充填材としては、通常、無機充填材が用いられる。粒状無機充填材の例としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、ガラスビーズ、ガラスバルーン、窒化ホウ素、炭化ケイ素及び炭酸カルシウムが挙げられる。中でも、ガラスビーズが好ましい。粒状充填材は、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。
【0036】
粒状充填材の体積平均粒径は、好ましくは10〜100μm、より好ましくは10〜50μmである。粒状充填材の体積平均粒径があまり小さいと、成形体に反りが生じ易くなり、あまり大きいと、液晶ポリエステル組成物の溶融流動性が不十分になる。粒状充填材の体積平均粒径は、レーザー回折法により測定できる。
【0037】
粒状充填材の配合量は、液晶ポリエステル100質量部に対し、好ましくは5〜80質量部、より好ましくは30〜70質量部である。粒状充填材の配合量があまり少ないと、成形体に反りが生じ易くなり、あまり多いと、液晶ポリエステル組成物の溶融流動性が不十分になる。」

(甲9d)「【実施例】
【0056】
〔液晶ポリエステルの流動開始温度の測定〕
フローテスター((株)島津製作所の「CFT−500型」)を用いて、液晶ポリエステル約2gを、内径1mm及び長さ10mmのノズルを有するダイを取り付けたシリンダーに充填し、9.8MPa(100kg/cm2)の荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら、液晶ポリエステルを溶融させ、ノズルから押し出し、4800Pa・s(48000ポイズ)の粘度を示す温度を測定した。
【0057】
〔液晶ポリエステル(1)の製造〕
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、テレフタル酸299.0g(1.8モル)、イソフタル酸99.7g(0.6モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)及び無水酢酸1347.6g(13.2モル)を入れ、反応器内のガスを窒素ガスで置換した後、1−メチルイミダゾール0.18gを加え、窒素ガス気流下、攪拌しながら、室温から150℃まで30分かけて昇温し、150℃で30分還流させた。次いで、1−メチルイミダゾール2.4gを加え、副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、150℃から320℃まで2時間50分かけて昇温し、トルクの上昇が認められた時点で、反応器から内容物を取り出し、室温まで冷却した。得られた固形物を、粉砕機で粉砕して、窒素雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から295℃まで5時間かけて昇温し、295℃で3時間保持することにより、固相重合させた後、冷却して、粉末状の液晶ポリエステル(1)を得た。この液晶ポリエステル(1)の流動開始温度は、327℃であった。
【0058】
〔液晶ポリエステル(2)の製造〕
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、テレフタル酸239.2g(1.44モル)、イソフタル酸159.5g(0.96モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)及び無水酢酸1347.6g(13.2モル)を入れ、反応器内のガスを窒素ガスで置換した後、1−メチルイミダゾール0.18gを加え、窒素ガス気流下、攪拌しながら、室温から150℃まで30分かけて昇温し、150℃で30分還流させた。次いで、1−メチルイミダゾール2.4gを加え、副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、150℃から320℃まで2時間50分かけて昇温し、トルクの上昇が認められた時点で、反応器から内容物を取り出し、室温まで冷却した。得られた固形物を、粉砕機で粉砕して、窒素雰囲気下、室温から220℃まで1時間かけて昇温し、220℃から240℃まで30分かけて昇温し、240℃で10時間保持することにより、固相重合させた後、冷却して、粉末状の液晶ポリエステル(2)を得た。この液晶ポリエステル(2)の流動開始温度は、286℃であった。
【0059】
〔充填材〕
繊維状充填材として、ガラス繊維(オーウェンスコーニングジャパン(株)の「CS03JAPX−1」:数平均繊維径10μm、数平均繊維長3mm、数平均アスペクト比300)を用いた。板状充填材として、タルク(日本タルク(株)の「MS−KY」:体積平均粒径14.2μm)を用いた。粒状充填材として、ガラスビーズ(ポッターズ・バロティーニ(株)の「EGB731」:体積平均粒径18μm)を用いた。
【0060】
実施例1
押出機として、スクリュー径が41mmであり、シリンダーのL/Dが62である二軸押出機を用いた。シリンダーを15個のバレルで構成し、上流側から1個目のバレルに第1供給部を設け、上流側から6個目のバレルに第2供給部を設け、上流側から8個目のバレルにオープンベント部(大気圧開放)を設け、上流側から10個目のバレルに第3供給部を設け、上流側から14個目のバレルに減圧ベント部(ゲージ圧力−0.08MPa)を設けた。
【0061】
二軸押出機のシリンダー内に、液晶ポリエステル(1)55質量部及び液晶ポリエステル(2)45質量部を第1供給部から供給し、ガラス繊維37.5質量部及びタルク62.5質量部を第2供給部から供給し、ガラスビーズ50質量部を第3供給部から供給し、シリンダー温度340℃で溶融混錬して押し出すことにより、ストランド状の液晶ポリエステル組成物を製造した。その際、ストランドの太さのムラや切れは見られなかった。
【0062】
比較例1
ガラスビーズを第2供給部から供給し、ガラス繊維を第3供給部から供給したこと以外は、実施例1と同様の操作により、ストランド状の液晶ポリエステル組成物を製造した。その際、ストランドの太さのムラや切れが見られた。」

(10)甲第10号証に記載された事項
甲第10号証には、以下の事項が記載されている。

(甲10a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維状充填材、板状充填材、粒状充填材及び液晶ポリエステルを含有する液晶ポリエステル組成物であって、
前記繊維状充填材及び粒状充填材の合計含有量に対する前記板状充填材の含有量の質量比率が0.6以下であることを特徴とする液晶ポリエステル組成物。
【請求項2】
前記繊維状充填材、板状充填材及び粒状充填材の合計含有量が50質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の液晶ポリエステル組成物。
【請求項3】
前記液晶ポリエステル100質量部に対して、前記繊維状充填材を5〜80質量部含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶ポリエステル組成物。
【請求項4】
前記液晶ポリエステル100質量部に対して、前記板状充填材を5〜80質量部含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル組成物。
【請求項5】
前記液晶ポリエステル100質量部に対して、前記粒状充填材を5〜80質量部含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル組成物。
【請求項6】
前記繊維状充填材は、平均繊維径が5〜20μmであり、且つ数平均繊維長が100μm以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル組成物。
【請求項7】
前記板状充填材は、体積平均粒径が10〜100μmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル組成物。
【請求項8】
前記粒状充填材は、体積平均粒径が10〜100μmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル組成物。
・・・
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル組成物が成形されてなることを特徴とするコネクタ。」

(甲10b)「【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ポリエステル組成物、及び該組成物を用いて得られたコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品用コネクタとしては、例えば、CPU(中央処理装置)を電子回路基板に着脱自在に実装するためのCPUソケットが知られている。そしてCPUソケットは、通常、耐熱性等に優れた樹脂で形成される。
・・・
【0005】
また、CPUソケットは一般に射出成形法で製造されるが、格子の壁面の厚さが薄いと、金型に樹脂を充填する際に部分的な充填不良(樹脂の充填量が不足する現象)が生じ易くなる。そして、充填不良が生じた部分では、機械的強度が不十分になる。そこで、充填不良の発生を抑制するためには、成形に供する樹脂組成物の溶融流動性を十分に高くする必要がある。
【0006】
このように、CPUソケット等の電子部品用コネクタでは、成形時の樹脂組成物の溶融流動性を向上させ、成形後の格子の破壊に対する耐性を向上させることが求められる。
・・・
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1〜3で開示されているコネクタ(CPUソケット)でも、ピン挿入穴が多く、格子の壁面の厚さが薄い場合には、成形時の樹脂組成物の充填不良や成形後の格子の破壊等を十分に抑制できないという問題点があった。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、格子の破壊に対する耐性が高いコネクタ、及び溶融流動性に優れ、前記コネクタの製造に好適な液晶ポリエステル組成物を提供することを課題とする。」

(甲10c)「【0049】
前記繊維状充填材は特に限定されないが、例えば、ガラス繊維、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、炭素繊維等が挙げられる。
・・・
【0053】
前記板状充填材は特に限定されないが、例えば、タルク、マイカ、グラファイト等が挙げられ、タルク、マイカが好ましい。
【0054】
前記板状充填材は、体積平均粒径が5μm以上であることが好ましく、10〜100μmであることがより好ましい。下限値以上とすることで、液晶ポリエステル特有の配向を十分に抑制でき、成形体の反りをより低減できる。また、上限値以下とすることで、液晶ポリエステル組成物の流動性がより良好となる。
・・・
【0056】
液晶ポリエステル組成物中の前記板状充填材の含有量は、前記液晶ポリエステル100質量部に対して、5〜80質量部であることが好ましく、20〜70質量部であることがより好ましい。下限値以上とすることで、成形体は肉厚が薄くても、反りや格子の破壊に対する耐性がより向上する。また、上限値以下とすることで、液晶ポリエステル組成物の溶融流動性、押し出し性及び成形性が向上し、充填不良がより抑制され、成形体の機械的強度がより向上する。
【0057】
前記粒状充填材は特に限定されないが、例えば、ガラスビーズ、ガラスバルーン等が挙げられる。そして、前記粒状充填材としては、球状のものが好ましく、ガラスビーズ、ガラスバルーン等が特に好ましい。
【0058】
前記粒状充填材は、体積平均粒径が5μm以上であることが好ましく、10〜100μmであることがより好ましい。下限値以上とすることで、液晶ポリエステル特有の配向を十分に抑制でき、成形体の反りをより低減できる。また、上限値以下とすることで、液晶ポリエステル組成物の流動性がより良好となる。
なお、前記粒状充填材の体積平均粒径は、前記板状充填材の場合と同様の方法で求められる。
【0059】
液晶ポリエステル組成物中の前記粒状充填材の含有量は、前記液晶ポリエステル100質量部に対して、5〜80質量部であることが好ましく、10〜70質量部であることがより好ましい。下限値以上とすることで、成形体は肉厚が薄くても、反りや格子の破壊に対する耐性がより向上する。また、上限値以下とすることで、液晶ポリエステル組成物の溶融流動性、押し出し性及び成形性が向上し、充填不良がより抑制され、成形体の機械的強度がより向上する。
【0060】
液晶ポリエステル組成物中の、前記繊維状充填材及び粒状充填材の合計含有量に対する
前記板状充填材の含有量の質量比率([板状充填材の含有量(質量)]/{[繊維状充填材の含有量(質量)]+[粒状充填材の含有量(質量)]})は、0.6以下であり、このような範囲とすることで、特に成形体の機械的強度が向上する。
【0061】
液晶ポリエステル組成物中の、前記繊維状充填材、板状充填材及び粒状充填材の合計含有量は50質量%以下であることが好ましい。このような範囲とすることで、液晶ポリエステル組成物の溶融流動性、押し出し性及び成形性が向上し、充填不良がより抑制される。
【0062】
前記繊維状充填材、板状充填材及び粒状充填材は、それぞれ一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。二種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて設定すればよい。」

(甲10d)「【実施例】
【0071】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。なお、液晶ポリエステルの流動開始温度は、以下の方法で測定した。
・・・
<液晶ポリエステル組成物の製造>
(液晶ポリエステルの製造)
[製造例1]
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、繰返し単位(A1)となるp−ヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、繰返し単位(C1)となる4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)、繰返し単位(B1)となるテレフタル酸299.0g(1.8モル)、繰返し単位(B2)となるイソフタル酸99.7g(0.6モル)、及び無水酢酸1347.6g(13.2モル)を仕込んだ。したがって、繰返し単位のモル比率は、繰返し単位(C1)/繰返し単位(A1)は約0.3、{繰返し単位(B1)+繰返し単位(B2)}/繰返し単位(C1)は1.0、繰返し単位(B2)/繰返し単位(B1)は約0.3である。
そして、反応器内を窒素ガスで十分に置換した後、1−メチルイミダゾールを0.18g添加し、窒素ガス気流下で30分かけて150℃まで昇温し、この温度(150℃)を保持して30分間還流させた。
次いで、1−メチルイミダゾールを2.4g添加した後、留出する副生成物の酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、2時間50分かけて320℃まで昇温した。その後、トルクの上昇が認められる時点を反応終了とみなして、反応器から内容物を取り出した。
次いで、このようにして得られた内容物(固形分)を室温まで冷却し、粗粉砕機で粉砕した後、窒素ガス雰囲気下で、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、さらに250℃から295℃まで5時間かけて昇温し、さらに295℃で3時間保持することにより、固相重合を行った。
次いで、これを冷却することにより、液晶ポリエステル(LCP1)を得た。この液晶ポリエステルの流動開始温度は327℃であった。
【0074】
[製造例2]
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、繰返し単位(A1)となるp−ヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、繰返し単位(C1)となる4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)、繰返し単位(B1)となるテレフタル酸239.2g(1.44モル)、繰返し単位(B2)となるイソフタル酸159.5g(0.96モル)、及び無水酢酸1347.6g(13.2モル)を仕込んだ。したがって、繰返し単位のモル比率は、繰返し単位(C1)/繰返し単位(A1)は約0.3、{繰返し単位(B1)+繰返し単位(B2)}/繰返し単位(C1)は1.0、繰返し単位(B2)/繰返し単位(B1)は約0.7である。すなわち、本製造例では、繰返し単位(B2)/繰返し単位(B1)が製造例1の約2倍である。
そして、反応器内を窒素ガスで十分に置換した後、1−メチルイミダゾールを0.18g添加し、窒素ガス気流下で30分かけて150℃まで昇温し、この温度(150℃)を保持して30分間還流させた。
次いで、1−メチルイミダゾールを2.4g添加した後、留出する副生成物の酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、2時間50分かけて320℃まで昇温した。その後、トルクの上昇が認められる時点を反応終了とみなして、反応器から内容物を取り出した。
次いで、このようにして得られた内容物(固形分)を室温まで冷却し、粗粉砕機で粉砕した後、窒素ガス雰囲気下で、室温から220℃まで1時間かけて昇温し、さらに220℃から240℃まで0.5時間かけて昇温し、さらに240℃で10時間保持することにより、固相重合を行った。
次いで、これを冷却することにより、液晶ポリエステル(LCP2)を得た。この液晶ポリエステルの流動開始温度は286℃であり、LCP1の流動開始温度よりも41℃低かった。
【0075】
(液晶ポリエステル組成物及びコネクタの製造)
[実施例1]
表1に示す比率で、LCP1、LCP2、充填材及び他の成分を配合し、2軸押出機(池貝鉄工社製「PCM−30」)を用いて、シリンダー温度を340℃として造粒することにより、ペレット状の液晶ポリエステル組成物を得た。
次いで、得られた液晶ポリエステル組成物を用いて、下記条件で射出成形することにより、コネクタとして図1及び図2に示すCPUソケットを製造した。
・射出成形条件
・・・
【0076】
[比較例1〜3]
各成分の配合比を表1に示す通りとしたこと以外は、実施例1と同様に、ペレット状の液晶ポリエステル組成物、及びCPUソケットを製造した。
【0077】
なお、本実施例及び比較例で使用した充填材及び他の成分は下記の通りである。
(1)繊維状充填材
ガラス繊維:CS03JAPX−1(旭ファイバーグラス社製)、平均繊維径10μm、数平均繊維長325μm(実施例1)、336μm(比較例1)、304μm(比較例2)、296μm(比較例3)
(2)板状充填材
タルク:MS−KY(日本タルク社製)、体積平均粒径14.2μm
(3)粒状充填材
ガラスビーズ:EGB731(ポッターズ・バロティーニ社製)、体積平均粒径11.3μm
(4)他の成分
カーボンブラック:CB♯45(三菱化学社製)
ジペンタエリスリトールヘキサステアレート:LOXIOL VPG2571(コグニス・オレオケミカル・ジャパン社製)
・・・
【0081】
【表1】




(11)甲第11号証に記載された事項
甲第11号証には、以下の事項が記載されている。

(甲11a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶ポリエステル樹脂100質量部と、白色顔料1質量部以上30質量部以下と、カーボンブラック0.01質量部以上0.5質量部以下と、を含有する液晶ポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
前記白色顔料を2質量部以上30質量部以下含有する請求項1に記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
前記白色顔料が酸化チタンである請求項1または2に記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の液晶ポリエステル樹脂組成物を形成材料とし、前記液晶ポリエステル樹脂組成物を溶融し成形して得られる成形体。
【請求項5】
前記液晶ポリエステル樹脂組成物を射出成形して得られる請求項4に記載の成形体。
【請求項6】
L*値が40以上75以下である請求項4または5に記載の成形体。
【請求項7】
外観部品である請求項4から6のいずれか1項に記載の成形体。
【請求項8】
ランプ周辺部材である請求項7記載の成形体。
【請求項9】
厚み1mm以上の部分を有している請求項4から8のいずれか1項に記載の成形体。」

(甲11b)「【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ポリエステル樹脂組成物および成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ポリエステルは、溶融流動性に優れ、耐熱性や強度・剛性も高いことから、電気・電子部品をはじめ各種製品・部品の材料として検討されている。
【0003】
これまで液晶ポリエステルは、微細な部品の形成材料として使用されることが多かったが、近年では、液晶ポリエステルを製品の筐体のような外観部品や比較的大型の部品等、見た目が問題となりやすい成形体の形成材料に使用する機会が増えている。これらの成形体では、他の外観部品との色調の調整やデザインの点から、調色を要求されることが多い。
【0004】
これまで、液晶ポリエステルを含む樹脂組成物においては、白色顔料やカーボンブラックを含むものが知られており、カメラモジュールや、炊事用具等で使用されている(例えば、特許文献1から3参照)。
・・・
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様は、液晶ポリエステル樹脂100質量部と、白色顔料1質量部以上30質量部以下と、カーボンブラック0.01質量部以上0.5質量部以下と、を含有する液晶ポリエステル樹脂組成物を提供する。」

(甲11c)「【0020】
[液晶ポリエステル樹脂組成物]
(液晶ポリエステル)
本実施形態の液晶ポリエステル樹脂組成物に用いられる液晶ポリエステルは、溶融状態で液晶性を示す液晶ポリエステルであり、450℃以下の温度で溶融するものであることが好ましい。なお、液晶ポリエステルは、液晶ポリエステルアミドであってもよいし、液晶ポリエステルエーテルであってもよいし、液晶ポリエステルカーボネートであってもよいし、液晶ポリエステルイミドであってもよい。液晶ポリエステルは、原料モノマーとして芳香族化合物のみを用いてなる全芳香族液晶ポリエステルであることが好ましい。
・・・
【0023】
液晶ポリエステルは、下記式(1)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(1)」ということがある。)を有することが好ましく、繰返し単位(1)と、下記式(2)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(2)」ということがある。)と、下記式(3)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(3)」ということがある。)とを有することがより好ましい。
(1)−O−Ar1−CO−
(2)−CO−Ar2−CO−
(3)−X−Ar3−Y−
(Ar1は、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基を表す。Ar2及びAr3は、それぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は下記式(4)で表される基を表す。X及びYは、それぞれ独立に、酸素原子又はイミノ基(−NH−)を表す。Ar1、Ar2又はAr3で表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。)
(4)−Ar4−Z−Ar5−
(Ar4及びAr5は、それぞれ独立に、フェニレン基又はナフチレン基を表す。Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はアルキリデン基を表す。)
・・・
【0026】
繰返し単位(1)は、所定の芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(1)としては、Ar1がp−フェニレン基であるもの(p−ヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位)、及びAr1が2,6−ナフチレン基であるもの(6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸に由来する繰返し単位)が好ましい。
【0027】
繰返し単位(2)は、所定の芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(2)としては、Ar2がp−フェニレン基であるもの(テレフタル酸に由来する繰返し単位)、Ar2がm−フェニレン基であるもの(イソフタル酸に由来する繰返し単位)、Ar2が2,6−ナフチレン基であるもの(2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する繰返し単位)、及びAr2がジフェニルエ−テル−4,4’−ジイル基であるもの(ジフェニルエ−テル−4,4’−ジカルボン酸に由来する繰返し単位)が好ましい。
【0028】
繰返し単位(3)は、所定の芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシルアミン又は芳香族ジアミンに由来する繰返し単位である。繰返し単位(3)としては、Ar3がp−フェニレン基であるもの(ヒドロキノン、p−アミノフェノール又はp−フェニレンジアミンに由来する繰返し単位)、及びAr3が4,4’−ビフェニリレン基であるもの(4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニル又は4,4’−ジアミノビフェニルに由来する繰返し単位)が好ましく、芳香族ジオールに由来する繰り返し単位が特に好ましい。
【0029】
繰返し単位(1)の含有量は、全繰返し単位の合計量(液晶ポリエステルを構成する各繰返し単位の質量をその各繰返し単位の式量で割ることにより、各繰返し単位の物質量相当量(モル)を求め、それらを合計した値)に対して、好ましくは30モル%以上、より好ましくは30モル%以上80モル%以下、さらに好ましくは40モル%以上70モル%以下、よりさらに好ましくは45モル%以上65モル%以下である。
【0030】
繰返し単位(2)の含有量は、全繰返し単位の合計量に対して、好ましくは35モル%以下、より好ましくは10モル%以上35モル%以下、さらに好ましくは15モル%以上30モル%以下、よりさらに好ましくは17.5モル%以上27.5モル%以下である。
【0031】
繰返し単位(3)の含有量は、全繰返し単位の合計量に対して、好ましくは35モル%以下、より好ましくは10モル%以上35モル%以下、さらに好ましくは15モル%以上30モル%以下、よりさらに好ましくは17.5モル%以上27.5モル%以下である。
【0032】
繰返し単位(1)の含有量が多いほど、溶融流動性や耐熱性や強度・剛性が向上し易いが、あまり多いと、溶融温度や溶融粘度が高くなり易く、成形に必要な温度が高くなり易い。
【0033】
繰返し単位(2)の含有量と繰返し単位(3)の含有量との割合は、[繰返し単位(2)の含有量]/[繰返し単位(3)の含有量](モル/モル)で表して、好ましくは0.9/1〜1/0.9、より好ましくは0.95/1〜1/0.95、さらに好ましくは0.98/1〜1/0.98である。
【0034】
なお、液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)〜(3)を、それぞれ独立に、2種以上有してもよい。また、液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)〜(3)以外の繰返し単位を有してもよいが、その含有量は、全繰返し単位の合計量に対して、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下である。
【0035】
液晶ポリエステルは、繰返し単位(3)として、X及びYがそれぞれ酸素原子であるものを有する、すなわち、所定の芳香族ジオールに由来する繰返し単位を有すると、溶融粘度が低くなり易いので好ましい。また、繰返し単位(3)として、X及びYがそれぞれ酸素原子であるもののみを有すると、より好ましい。」

(甲11d)「【0058】
(その他の成分)
液晶ポリエステル樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で白色顔料及びカーボンブラック以外の充填材、液晶ポリエステル以外の樹脂等、他の成分を1種以上含んでもよい。
【0059】
充填材は、繊維状充填材であってもよいし、板状充填材であってもよいし、繊維状及び板状以外で、球状その他の粒状充填材であってもよい。また、充填材は、無機充填材であってもよいし、有機充填材であってもよい。
【0060】
繊維状無機充填材の例としては、ガラス繊維;パン系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維;シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維等のセラミック繊維;及びステンレス繊維等の金属繊維が挙げられる。また、チタン酸カリウムウイスカー、チタン酸バリウムウイスカー、ウォラストナイトウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、窒化ケイ素ウイスカー、炭化ケイ素ウイスカー等のウイスカーも挙げられる。
【0061】
繊維状有機充填材の例としては、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が挙げられる。
【0062】
板状無機充填材の例としては、タルク、マイカ、グラファイト、ウォラストナイト、ガラスフレーク、硫酸バリウム及び炭酸カルシウムが挙げられる。マイカは、白雲母であってもよいし、金雲母であってもよいし、フッ素金雲母であってもよいし、四ケイ素雲母であってもよい。
【0063】
粒状無機充填材の例としては、シリカ、アルミナ、ガラスビーズ、ガラスバルーン、窒化ホウ素、炭化ケイ素及び炭酸カルシウムが挙げられる。
【0064】
液晶ポリエステル樹脂組成物における、白色顔料及びカーボンブラック以外の充填材の含有量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、0質量部以上100質量部以下であることが好ましい。」

(甲11e)「【0071】
本実施形態の液晶ポリエステル樹脂組成物を用いて得られる成形体としては、例えば、コネクター、ソケット、リレー部品、コイルボビン、光ピックアップ、発振子、プリント配線板、コンピュータ関連部品、等の電気・電子部品;ICトレー、ウエハーキャリヤー、等の半導体製造プロセス関連部品;VTR、テレビ、アイロン、エアコン、ステレオ、掃除機、冷蔵庫、炊飯器、照明器具、等の家庭電気製品部品;ランプリフレクター、ランプホルダー、等の照明器具部品;コンパクトディスク、レーザーディスク(登録商標)、スピーカー、等の音響製品部品;光ケーブル用フェルール、電話機部品、ファクシミリ部品、モデム、等の通信機器部品;分離爪、ヒータホルダー、等の複写機関連部品;インペラー、ファン、歯車、ギヤ、軸受け、モーター部品及びケース、等の機械部品;自動車用機構部品、エンジン部品、エンジンルーム内部品、電装部品、内装部品、等の自動車部品;マイクロ波調理用鍋、耐熱食器、等の調理用器具;床材、壁材などの断熱、防音用材料、梁、柱などの支持材料、屋根材、等の建築資材または土木建築用材料;航空機部品、宇宙機部品、原子炉などの放射線施設部材、海洋施設部材、洗浄用治具、光学機器部品、バルブ類、パイプ類、ノズル類、フィルター類、膜、医療用機器部品及び医療用材料、センサー類部品、サニタリー備品、スポーツ用品、レジャー用品、が挙げられる。
【0072】
本実施形態の成形体はフローマークが顕在化しにくいことから、これらの成形体のうち外観部品として用いられるものにおいては、良好な外観を有するものとなり好ましい。
【0073】
また、本実施形態の液晶ポリエステル樹脂組成物は、酸化チタンとカーボンブラックとを併用し、良好に外光を遮光することから、耐光性に優れた成形品を与えることができる。そのため、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、重水素ランプ、タングステンランプ、発光ダイオード等を用いたランプ周辺部材、また自動車、オートバイ等のヘッドランプ等のランプ周辺部材、太陽光に暴露される周辺部材等、耐光性が要求される種々の部材の用途に好適に使用することができる。
特に光に暴露されるランプソケット、ランプホルダー、レンズホルダー、コネクター等に好適に使用することができる。」

(甲11f)「【実施例】
【0075】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
・・・
【0081】
[液晶ポリエステル1の製造]
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、パラヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)、テレフタル酸299.0g(1.8モル)、イソフタル酸99.7g(0.6モル)及び無水酢酸1347.6g(13.2モル)を仕込み、1−メチルイミダゾール0.2gを添加し、反応器内を十分に窒素ガスで置換した。その後、窒素ガス気流下で室温から150℃まで30分かけて昇温し、同温度を保持して1時間還流させた。
次いで、副生酢酸や未反応の無水酢酸を留去しながら150℃から320℃まで2時間50分かけて昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了としてプレポリマーを得た。
【0082】
得られたプレポリマーは室温まで冷却し、粗粉砕機で粉砕した。得られたプレポリマーの粉末を、窒素雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から285℃まで5時間かけて昇温し、285℃で3時間保持することで固相重合を行い、液晶ポリエステル1を得た。得られた液晶ポリエステル1の流動開始温度は327℃であった。
【0083】
[液晶ポリエステル2の製造]
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、パラヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)、テレフタル酸239.2g(1.44モル)、イソフタル酸159.5g(0.96モル)及び無水酢酸1347.6g(13.2モル)を仕込み、1−メチルイミダゾール0.2gを添加し、反応器内を十分に窒素ガスで置換した。その後、窒素ガス気流下で室温から150℃まで30分かけて昇温し、同温度を保持して1時間還流させた。
次いで、1−メチルイミダゾール0.9gを加え、副生酢酸や未反応の無水酢酸を留去しながら150℃から320℃まで2時間50分かけて昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了としてプレポリマーを得た。
【0084】
得られたプレポリマーは室温まで冷却し、粗粉砕機で粉砕した。得られたプレポリマーの粉末を、窒素雰囲気下、室温から220℃まで1時間かけて昇温し、220℃から240℃まで0.5時間かけて昇温し、240℃で10時間保持することで固相重合を行い、液晶ポリエステル2を得た。得られた液晶ポリエステル2の流動開始温度は291℃であった。
【0085】
(実施例1〜7、参考例1〜3、比較例1)
上述の液晶ポリエステル1に対して、下記表1,2に示す配合比にてガラス繊維(EFH75−01、セントラルガラス(株)製)、酸化チタン(TIPAQUE CR−60、石原産業(株)製、体積平均粒径0.21μm)及びカーボンブラック(カーボンブラック #45B、三菱化学(株)製)を配合した後、2軸押出機(池貝鉄工(株)製 PCM−30)を用いて液晶ポリエステル樹脂組成物を得た。
得られた液晶ポリエステル樹脂組成物を、射出成形機(日精樹脂工業(株)製 PS40E5ASE型)を用いて340℃にて成形し、寸法64mm×64mm×3mmの試験片を得た。
【0086】
実施例1〜7の各試験片について測定した明度、色度およびフローマークの結果を表1に示し、参考例1〜3及び比較例1の各試験片について測定した明度、色度およびフローマークの結果を表2に示す。
【0087】
【表1】


【0088】
【表2】


・・・
【0091】
(実施例8,9、参考例4、比較例2)
上述の液晶ポリエステル1、液晶ポリエステル2に対して、下記表3に示す配合比にてガラス繊維(PF70E−001、日東紡績(株)製)、酸化チタン(TIPAQUE CR−58、石原産業(株)製、体積平均粒径0.28μm)、タルク(X−50、日本タルク(株)製)及びカーボンブラック(カーボンブラック #960、三菱化学(株)製)を配合した後、2軸押出機(池貝鉄工(株)製 PCM−30)を用いて液晶ポリエステル樹脂組成物を得た。
得られた液晶ポリエステル樹脂組成物を、射出成形機(日精樹脂工業(株)製 PS40E5ASE型)を用い、実施例8は300℃、実施例9と参考例4は350℃、比較例2は340℃で各々成形して、寸法64mm×64mm×3mmの試験片を得た。
【0092】
実施例8,9、参考例4及び比較例2の各試験片について明度、色度、フローマーク及び耐光性試験前後の色差を測定した結果を表3に示す。
【0093】
【表3】




(12)甲第12号証に記載された事項
甲第12号証には、以下の事項が記載されている。

(甲12a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶ポリエステルと、セラミック粉及び軟磁性金属粉を含む複合材料とを含み、前記複合材料は、その10質量倍の水と混合したとき、水相のpHが9.0以下である混合液を与える複合材料である液晶ポリエステル組成物。」

(甲12b)「【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ポリエステルと磁性フィラーとを含む液晶ポリエステル組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁波シールド性を有する樹脂材料として、液晶ポリエステルと磁性フィラーとを含む液晶ポリエステル組成物が検討されている。この液晶ポリエステル組成物は、液晶ポリエステルによる優れた溶融流動性を有しつつ、磁性フィラーによる電磁波吸収性を有している。例えば特許文献1〜3には、液晶ポリエステルと、磁性フィラーとしてセラミック粉及び軟磁性金属粉を含む複合材料(例えば特許文献4参照)(以下単に「複合材料」ということがある。)とを含む液晶ポリエステル組成物が記載されている。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液晶ポリエステルと複合材料とを含む液晶ポリエステル組成物は、その成形時に取り扱い易いように、溶融造粒(液晶ポリエステルと複合材料とを溶融混練し、ストランド状に押し出し、冷却後、ペレット状に裁断すること)によりペレットの形態で製造することが好ましいが、その際、ストランド切れ(押し出された溶融状態のストランドが冷却前に切れること)が生じ易いと、生産性が低下する。特許文献2及び3には、ストランド切れが生じ難い液晶ポリエステル組成物が提案されており、具体的には、溶融温度330℃での溶融造粒の際、ストランド切れが生じ難い液晶ポリエステル組成物が記載されているが、粘度を下げて押出速度(生産性)を上げる場合等、より高温で溶融造粒する際でも、ストランド切れが生じ難い液晶ポリエステル組成物が求められる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、液晶ポリエステルと複合材料とを含み、高温で溶融造粒しても、ストランド切れが生じ難い液晶ポリエステル組成物を提供することにある。」

(甲12c)「【0008】
本発明の液晶ポリエステル組成物に含まれる液晶ポリエステルは、溶融状態で液晶性を示すポリエステルであり、450℃以下の温度で溶融するものであることが好ましい。なお、液晶ポリエステルは、液晶ポリエステルアミドであってもよいし、液晶ポリエステルエーテルであってもよいし、液晶ポリエステルカーボネートであってもよいし、液晶ポリエステルイミドであってもよい。液晶ポリエステルは、原料モノマーとして芳香族化合物のみを用いてなる全芳香族液晶ポリエステルであることが好ましい。
・・・
【0011】
液晶ポリエステルは、下記式(1)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(1)」ということがある。)を有することが好ましく、繰返し単位(1)と、下記式(2)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(2)」ということがある。)と、下記式(3)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(3)」ということがある。)とを有することがより好ましい。
【0012】
(1)−O−Ar1−CO−
(2)−CO−Ar2−CO−
(3)−X−Ar3−Y−
【0013】
(Ar1は、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基を表す。Ar2及びAr3は、それぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は下記式(4)で表される基を表す。X及びYは、それぞれ独立に、酸素原子又はイミノ基(−NH−)を表す。Ar1、Ar2又はAr3で表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。)
【0014】
(4)−Ar4−Z−Ar5−
【0015】
(Ar4及びAr5は、それぞれ独立に、フェニレン基又はナフチレン基を表す。Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はアルキリデン基を表す。)
・・・
【0018】
繰返し単位(1)は、所定の芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(1)としては、Ar1がp−フェニレン基であるもの(p−ヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位)、及びAr1が2,6−ナフチレン基であるもの(6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸に由来する繰返し単位)が好ましい。
【0019】
繰返し単位(2)は、所定の芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(2)としては、Ar2がp−フェニレン基であるもの(テレフタル酸に由来する繰返し単位)、Ar2がm−フェニレン基であるもの(イソフタル酸に由来する繰返し単位)、及びAr2が2,6−ナフチレン基であるもの(2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する繰返し単位)が好ましい。
【0020】
繰返し単位(3)は、所定の芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシルアミン又は芳香族ジアミンに由来する繰返し単位である。繰返し単位(3)としては、Ar3がp−フェニレン基であるもの(ヒドロキノン、p−アミノフェノール又はp−フェニレンジアミンに由来する繰返し単位)、及びAr3が4,4’−ビフェニリレン基であるもの(4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニル又は4,4’−ジアミノビフェニルに由来する繰返し単位)が好ましい。
【0021】
繰返し単位(1)の含有量は、全繰返し単位の合計量(液晶ポリエステルを構成する各繰返し単位の質量をその各繰返し単位の式量で割ることにより、各繰返し単位の物質量相当量(モル)を求め、それらを合計した値)に対し、通常30モル%以上、好ましくは30〜80モル%、より好ましくは40〜70モル%、さらに好ましくは45〜65モル%である。繰返し単位(2)の含有量は、全繰返し単位の合計量に対し、通常35モル%以下、好ましくは10〜35モル%、より好ましくは15〜30モル%、さらに好ましくは17.5〜27.5モル%である。繰返し単位(3)の含有量は、全繰返し単位の合計量に対し、通常35モル%以下、好ましくは10〜35モル%、より好ましくは15〜30モル%、さらに好ましくは17.5〜27.5モル%である。繰返し単位(1)の含有量が多いほど、溶融流動性や耐熱性や機械的特性が向上し易いが、あまり多いと、溶融温度や溶融粘度が高くなり易く、成形に必要な温度が高くなり易い。
【0022】
繰返し単位(2)の含有量と繰返し単位(3)の含有量との割合は、[繰返し単位(2)の含有量]/[繰返し単位(3)の含有量](モル/モル)で表して、通常0.9/1〜1/0.9、好ましくは0.95/1〜1/0.95、より好ましくは0.98/1〜1/0.98である。
【0023】
なお、液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)〜(3)を、それぞれ独立に、2種以上有してもよい。また、液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)〜(3)以外の繰返し単位を有してもよいが、その含有量は、全繰返し単位の合計量に対し、通常10モル%以下、好ましくは5モル%以下である。」

(甲12d)「【0039】
液晶ポリエステル組成物は、複合材料以外の充填材、添加剤、液晶ポリエステル以外の樹脂等の他の成分を1種以上含んでもよい。
【0040】
充填材は、繊維状充填材であってもよいし、板状充填材であってもよいし、繊維状及び板状以外で、球状その他の粒状充填材であってもよい。また、充填材は、無機充填材であってもよいし、有機充填材であってもよい。繊維状無機充填材の例としては、ガラス繊維;パン系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維;シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維等のセラミック繊維;及びステンレス繊維等の金属繊維が挙げられる。また、チタン酸カリウムウイスカー、チタン酸バリウムウイスカー、ウォラストナイトウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、窒化ケイ素ウイスカー、炭化ケイ素ウイスカー等のウイスカーも挙げられる。繊維状有機充填材の例としては、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が挙げられる。板状無機充填材の例としては、タルク、マイカ、グラファイト、ウォラストナイト、ガラスフレーク、硫酸バリウム及び炭酸カルシウムが挙げられる。マイカは、白雲母であってもよいし、金雲母であってもよいし、フッ素金雲母であってもよいし、四ケイ素雲母であってもよい。粒状無機充填材の例としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、ガラスビーズ、ガラスバルーン、窒化ホウ素、炭化ケイ素及び炭酸カルシウムが挙げられる。充填材の含有量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、通常0〜100質量部である。」

(甲12e)「【0045】
液晶ポリエステル組成物の成形体である製品・部品の例としては、ハウジング;光ピックアップボビン、トランスボビン等のボビン;リレーケース、リレーベース、リレースプルー、リレーアーマチャー等のリレー部品;RIMM、DDR、CPUソケット、S/O、DIMM、Board to Boardコネクター、FPCコネクター、カードコネクター等のコネクター;ランプリフレクター、LEDリフレクター等のリフレクター;ランプホルダー、ヒーターホルダー等のホルダー;スピーカー振動板等の振動板;コピー機用分離爪、プリンター用分離爪等の分離爪;カメラモジュール部品;スイッチ部品;モーター部品;センサー部品;ハードディスクドライブ部品;オーブンウェア等の食器;車両部品;航空機部品;及び半導体素子用封止部材、コイル用封止部材等の封止部材が挙げられる。」

(甲12f)「【実施例】
【0046】
〔液晶ポリエステルの流動開始温度の測定〕
・・・
【0047】
〔液晶ポリエステルの製造〕
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、テレフタル酸299.0g(1.8モル)、イソフタル酸99.7g(0.6モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)及び無水酢酸1347.6g(13.2モル)を入れ、窒素ガス気流下、攪拌しながら、室温から150℃まで30分かけて昇温し、150℃で3時間還流させた。次いで、副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、150℃から320℃まで2時間50分かけて昇温し、トルクの上昇が認められた時点で、反応器から内容物を取り出し、室温まで冷却した。得られた固形物を、粉砕機で粉砕して、粉末状のプレポリマーを得た。このプレポリマーを、窒素ガス雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から285℃まで5時間かけて昇温し、285℃で3時間保持することにより、固相重合させた後、冷却して、粉末状の液晶ポリエステルを得た。この液晶ポリエステルの流動開始温度は、327℃であった。
・・・
【0049】
〔複合材料〕
複合材料として、次のものを用いた。
複合材料(1):(株)日立ハイテクノロジーズの電磁波吸収フィラー(体積平均粒径23μm、前記pH8.3)
複合材料(2):(株)日立ハイテクノロジーズの電磁波吸収フィラー(体積平均粒径23μm、前記pH8.1)
複合材料(3):(株)日立ハイテクノロジーズの電磁波吸収フィラー(体積平均粒径22μm、前記pH9.5)
複合材料(4):(株)日立ハイテクノロジーズの電磁波吸収フィラー(体積平均粒径26μm、前記pH9.3)
【0050】
実施例1、2、比較例1、2
液晶ポリエステル100質量部と複合材料150質量部とを、同方向2軸押出機(池貝鉄工(株)の「PCM−30HS」)を用いて、340℃で溶融混練し、ストランド状に押し出し、冷却後、裁断して、ペレット状の液晶ポリエステル組成物を得た。その際、ストランド切れの有無を目視で観察し、結果を表1に示した。
【0051】
【表1】




3 当審において職権調査により発見した文献に記載された事項
当審において職権調査により発見した参考文献3〜7には、以下の事項が記載されている。

(1)参考文献3に記載された事項
参考文献3には、以下の事項が記載されている。

(参3a)「【0005】
従来、液晶ポリエステル樹脂成形品の異方性、反り、耐熱性の改良のためにタルクを充填することが知られており・・・」

(2)参考文献4に記載された事項
参考文献4には、以下の事項が記載されている。

(参4a)「【0007】また、特開平4−13758号公報は、融点が340℃以上の液晶ポリエステルに比表面積が5m2 /g以下で、平均粒径が40μm以下のタルクを配合した組成物に関するもので、このような限定したタルクを用いることにより、配合時の加水分解および熱劣化を著しく低下させることができ、強度および耐熱性の優れた組成物を得ることが開示されているが、成形品の異方性の低減、反りの改良については記載されていない。」

(3)参考文献5に記載された事項
参考文献5には、以下の事項が記載されている。

(参5a)「タルクは、・・・で表わされる化学組成を持つ天然の白色粉末で、その構造は層状構造をなし層間結合力が弱いので剥離しやすく、滑らかな感触を与えるので滑石とも呼ばれろ。一般にタルクは樹脂用配合剤としては微粉末のものが多く用いられ、配合により樹脂の耐熱性、寸法安定性等が向上する。」(第1頁右欄第15〜20行)

(4)参考文献6に記載された事項
参考文献6には、以下の事項が記載されている。

(参6a)「【0067】
〔実施例1〕
・・・、平均繊維長が75μmのガラス繊維「EFH75−01」(ミルドファイバー、セントラル硝子株式会社製、アスペクト比:12.5)20質量部・・・を配合して、原料樹脂組成物を得た。・・・」

(5)参考文献7に記載された事項
参考文献7には、以下の事項が記載されている。

(参7a)「【0046】
また、成分(C)板状フィラーとしては下記のものを使用した。
タルク(タルクX50、日本タルク(株)製、長軸の体積平均粒径17.4μm、BET比表面積2.64m2/g)」

第6 当審の判断
当審は、当審が通知した取消理由A及び申立人がした申立理由1〜3によっては、いずれも、本件発明1〜6に係る特許を取り消すことはできないと判断する。
その理由は以下のとおりである。
なお、取消理由Aと申立理由2−1及び申立理由3−1は、甲第1号証を主引用例とする新規性又は進歩性の判断であるため、以下「1 取消理由について」「(1)取消理由A(進歩性)について」において、併せて検討する。

1 取消理由について
(1)取消理由A(進歩性)について
ア 甲第1号証に記載された発明
甲第1号証の(甲1h)の段落【0043】〜【0044】の製造例1には、
「パラヒドロキシ安息香酸:4,4’−ジヒドロキシビフェニル:テレフタル酸:イソフタル酸=60:20:15:5のモノマー組成を有する液晶ポリエステル樹脂を60重量%
「セントラル硝子(株) EFH75−01」であるガラス繊維を10重量%
「日本タルク(株) X−50」であるタルクを30重量%
の組成で総量が5kgになるようヘンシェルミキサーにて混合後、二軸押出し機を用いて、シリンダー温度340℃にて溶融混練を行い、ダイから紐状物を引き取り、水槽にて冷却した後、ストランドカッターにてカットして得た、
液晶性ポリエステル樹脂組成物ペレット」の発明(以下「甲1発明1」という。)が記載されているといえる。

イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明1とを対比する。

本件発明1の「液晶ポリエステル樹脂組成物」について、本件明細書の段落【0068】には「液晶ポリエステル樹脂組成物は、・・・、押出機を用いて溶融混練し、ペレット状に押し出すことにより調製することが好ましい」と記載されており、本件発明1の「液晶ポリエステル樹脂組成物」は「ペレット」の形態とすることも意図しているといえるから、甲1発明1の「液晶性ポリエステル樹脂組成物ペレット」は、本件発明1の「液晶ポリエステル樹脂組成物」に相当するといえる。

甲1発明1の「パラヒドロキシ安息香酸:4,4’−ジヒドロキシビフェニル:テレフタル酸:イソフタル酸=60:20:15:5のモノマー組成を有する液晶ポリエステル樹脂」は、その構造単位が「4−ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/イソフタル酸/4,4'−ジヒドロキシビフェニルの組み合わせ」であるといえ、また、「パラヒドロキシ安息香酸」に対する「4,4’−ジヒドロキシビフェニル」の「モル比率(モル比率4,4’−ジヒドロキシビフェニル/パラヒドロキシ安息香酸)」が0.33(=20/60)であり、「4,4’−ジヒドロキシビフェニル」に対する「テレフタル酸」と「イソフタル酸」との合計量の「モル比率(モル比率(テレフタル酸+イソフタル酸)/4,4’−ジヒドロキシビフェニル)」が1(=(15+5)/20)であるから、本件発明1の「(A)液晶ポリエステル」であって、「前記液晶ポリエステルの構造単位は、4−ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/イソフタル酸/4,4'−ジヒドロキシビフェニルの組み合わせであり、前記4−ヒドロキシ安息香酸に対する前記4,4’−ジヒドロキシビフェニルのモル比率(モル比率4,4’−ジヒドロキシビフェニル/パラヒドロキシ安息香酸)が0.2〜1.0であり、前記4,4’−ジヒドロキシビフェニルに対する前記テレフタル酸と前記イソフタル酸との合計量のモル比率(モル比率(テレフタル酸+イソフタル酸)/4,4’−ジヒドロキシビフェニル)が0.9〜1.1である」ものに相当するといえる。

甲1発明1の「日本タルク(株) X−50」であるタルク」は、本件発明1の「タルク」に相当する。
また、甲1発明1の「液晶性ポリエステル樹脂組成物ペレット」は、「パラヒドロキシ安息香酸:4,4’−ジヒドロキシビフェニル:テレフタル酸:イソフタル酸=60:20:15:5のモノマー組成を有する液晶ポリエステル樹脂」を「60重量%」、「日本タルク(株) X−50」であるタルク」を「30重量%」含むものであるから、「液晶性ポリエステル」100質量部に対し、「タルク」を50質量部含むものといえる。

そうすると、本件発明1と甲1発明1とは、
「(A)液晶ポリエステル、(B)タルクを含有し、
前記液晶ポリエステルの構造単位は、4−ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/イソフタル酸/4,4'−ジヒドロキシビフェニルの組み合わせであり、
前記4−ヒドロキシ安息香酸に対する前記4,4’−ジヒドロキシビフェニルのモル比率(モル比率4,4’−ジヒドロキシビフェニル/パラヒドロキシ安息香酸)が0.2〜1.0であり、
前記4,4’−ジヒドロキシビフェニルに対する前記テレフタル酸と前記イソフタル酸との合計量のモル比率(モル比率(テレフタル酸+イソフタル酸)/4,4’−ジヒドロキシビフェニル)が0.9〜1.1であることを特徴とする液晶ポリエステル樹脂組成物。」
の点で一致し、以下の点で相違するといえる。

相違点1:「液晶ポリエステル樹脂組成物」中に、本件発明1では、「(C)マイカ」を「(A)液晶ポリエステル100質量部に対し、前記(B)タルクと前記(C)マイカとの合計量((B)+(C))が5質量部以上100質量部以下であり、かつ、前記(C)マイカが1質量部以上20質量部以下であり、前記(B)タルクと前記(C)マイカとの重量比((B)/(C))が9/1〜1/9」の配合量で配合するのに対し、甲1発明1では、「液晶性ポリエステル」100質量部に対し、「タルク」を50質量部含むものであり、「マイカ」を配合していない点。

(イ)判断
相違点1について、検討する。

甲1発明1の「液晶性ポリエステル樹脂組成物ペレット」には、「マイカ」を含んでいないから、相違点1は、実質的な相違点である。
そうすると、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。

次に、本件発明1が、甲1発明1及び甲第1号証に記載された技術的事項から、当業者が容易に発明をすることができたか否かについて検討する。
甲第1号証の(甲1b)の段落【0002】には「液晶性ポリエステル樹脂は、・・・薄肉部や複雑な形状を有する電子部品などの用途に好適に使用されている」こと、(甲1g)の段落【0041】には、「本発明の製造方法によるペレットは、・・・該ペレットを用いて得られる成形品は、コネクター・・・など各種用途に好適に使用し得る」ことが記載されている。さらに、甲第1号証の(甲1a)の請求項9には、「板状充填材が、マイカおよび/またはタルクである」こと、(甲1e)の段落【0032】には「板状充填材としては、・・・タルク、マイカが好ましく使用される。これらの板状充填材は、単独でも、2種類以上を混合して用いてもよい」こと、(甲1d)の段落【0030】には「繊維状充填材および/または板状充填材は、液晶性ポリエステル樹脂100重量部に対して、10〜150重量部であることが好ましく、20〜100重量部であることがより好ましい」ことが記載されている。
しかしながら、甲第1号証には、甲1発明1において、「マイカ」を配合するとした場合に、具体的にどの程度配合できるかについては記載されておらず、甲第1号証の(甲1h)の実施例においても「マイカ」を所定量含む例は示されていない。
したがって、本件発明1は、甲1発明1及び甲第1号証に記載された技術的事項から、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

続いて、本件発明1が、甲1発明1及び他の甲号証及び当審において職権調査により発見した文献に記載された技術的事項から、当業者が容易に発明をすることができたか否かについて検討する。

甲第2号証の(甲2b)の段落[0003]には「電気・電子部品は、近年の機器の小型化や軽量化に伴い、薄肉化や形状の複雑化が進みつつある。また、液晶性樹脂組成物を用いて得られる成形品には高い製品強度が要求されている。一方で、ピン圧入型のコネクターの場合、圧入時の製品割れを抑制するために、成形品には強度と共に靭性が要求されるようになっている」こと、段落[0006]には「低そり性とともに、ピン圧入に耐えうる高い靭性を有し、かつ、摺動特性、曲げ疲労特性に優れる成形品を得ることができる液晶ポリエステル樹脂組成物を提供することを課題とする」ことが記載されている。また、(甲2a)の請求項1には「・・・液晶ポリエステル100重量部に対して、(B)マイカを10〜100重量部含有する液晶ポリエステル樹脂組成物であり、液晶ポリエステル樹脂組成物中の(B)マイカの体積平均粒径が10〜50μmであり、・・・液晶ポリエステル樹脂組成物」、請求項6には「請求項1から5のいずれか1項に記載の液晶ポリエステル樹脂組成物であって、(A)液晶ポリエステル100重量部に対して、(D)タルクを5〜70重量部の割合で含有する、液晶ポリエステル樹脂組成物」、請求項8には「請求項1〜6のいずれか1項に記載の液晶ポリエステル樹脂組成物からなるコネクター」が記載されている。また、(甲2d)の段落[0055]には、「マイカ」の配合量について、「本発明の実施形態の液晶ポリエステル樹脂組成物は、液晶ポリエステル樹脂100重量部に対して、マイカを10〜100重量部含有する。マイカ含有量が10重量部未満であると、液晶ポリエステル樹脂組成物を成形して得られる成形品のそり量が著しく増大するため好ましくない。マイカ含有量は25重量部以上が好ましく、40重量部以上がより好ましい。一方、マイカ含有量が100重量部を超えると、マイカの凝集体が増加することから、耐衝撃値や曲げ破断たわみ量などの靭性が低下する」と記載され、(甲2i)の段落[0127]〜[0130]、[0131]〜[0132]、[0146]の[表4]には、液晶ポリエステル樹脂にマイカとタルクを添加した例である実施例12〜17として、液晶ポリエステル樹脂に、マイカを21〜33重量部、タルクを10〜21重量部添加した例も記載されている。
しかしながら、上記の(甲2d)の段落[0055]に「・・・液晶ポリエステル樹脂100重量部に対して、マイカを10〜100重量部含有する。・・・マイカ含有量は25重量部以上が好ましく、40重量部以上がより好ましい」と記載されているとおり、「マイカ」の含有量について、「液晶ポリエステル樹脂100重量部に対して、マイカを10〜100重量部含有する」と記載されているものの、「マイカ含有量は25重量部以上が好ましく、40重量部以上がより好ましい」と「マイカ」を20重量部より多く量を含むことが好ましいとされていること、及び、液晶ポリエステル樹脂にマイカとタルクを添加した例である実施例12〜17にはマイカを21〜33重量部配合した例しか記載されていないことから、甲1発明1の「液晶性ポリエステル樹脂組成物ペレット」中に「マイカ」を含有することは容易に発明することができたとしても、さらに、その含有量を「10〜100重量部」の中でもより少ない量である「1質量部以上20質量部以下」とすることまでは積極的に動機づけることまではできない。

また、甲第3〜12号証及び参考文献3〜7の上記摘記を見ても、甲1発明1の「液晶性ポリエステル樹脂組成物ペレット」において、「マイカ」を含有させて、さらに、その含有量を「10〜100重量部」の中でもより少ない量である「1質量部以上20質量部以下」とすることまでは積極的に動機づける記載はない。

そうすると、本件発明1は、甲1発明1及び他の甲号証及び当審において職権調査により発見した文献に記載された技術的事項から、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(ウ)令和3年11月22日付け意見書における申立人の主張
令和3年11月22日付け意見書(特に、第6〜8頁を参照)において、上記相違点1に関して、申立人は、「・・・すなわち、「前記(C)マイカが1質量部以上20質量部以下であり」という数値範囲は 、せいぜい公知 技術から容易に予測可能な数値範囲の最適化に留まり、当業者が通常の創作能力の発揮として行う典型的な設計事項に過ぎません。」、「甲第2号証の段落【0055】の「マイ力含有量が10重量部未満であると、液晶ポリエステル樹脂組成物を成形して得られる成形品のそり量が著しく増大する」という記載は、裏を返せば、少なくともマイカの含有量が10〜20質量部の範囲で(リフロ一時を含む)反り抑制効果が得られることを示唆しており、その意味においても、かかる上限値に進歩性が認められる余地はありません」、「甲第2号証の段落【0055】の「・・・」という記載から、反り抑制のためにマイカを1質量部以上配合することは当然のことであり、かかる下限値に進歩性が認められる余地はありません」と主張している。
しかしながら、上記(イ)でも述べたとおり、甲第2号証には、液晶ポリエステル樹脂にマイカとタルクを添加した例である実施例12〜17には、液晶ポリエステル樹脂に、マイカを21〜33重量部添加した例しか記載されておらず、また、(甲2d)の段落[0055]に「・・・液晶ポリエステル樹脂100重量部に対して、マイカを10〜100重量部含有する。・・・マイカ含有量は25重量部以上が好ましく、40重量部以上がより好ましい」と記載されていることから、甲1発明1の「液晶性ポリエステル樹脂組成物ペレット」中に「マイカ」を含有することは容易に発明することができたとしても、さらに、その含有量を「10〜100重量部」の中でもより少ない量である「1質量部以上20質量部以下」とすることまでは積極的に動機づけることまではできない。

したがって、申立人の当該主張を採用することはできない。

(エ)小括
以上のとおり、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲第1号証に記載された発明及び他の甲号証及び当審において職権調査により発見した文献に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 本件発明2〜6について
本件発明2〜6は、本件発明1を直接的又は間接的に引用して限定した発明であるから、本件発明2〜6は、上記イ(イ)で示した理由と同じ理由により、甲第1号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲第1号証に記載された発明及び他の甲号証及び当審において職権調査により発見した文献に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ 取消理由A(進歩性)についてのまとめ
以上のとおりであるから、取消理由A(進歩性)、申立理由2−1(新規性)及び申立理由3−1(進歩性)によって、本件発明1〜6に係る特許を取り消すことはできない。


2 特許異議申立書に記載された申立理由について
申立理由2−1(新規性)及び申立理由3−1(進歩性)については、上記「1 取消理由について」において検討されたので、以下、申立理由1(サポート要件)、申立理由2−2(新規性)及び申立理由3−2(進歩性)について検討を行う。

(1)申立理由1(サポート要件)について
ア 申立理由1(サポート要件)の概要
申立理由1(サポート要件)の概要は、以下のとおりである。

理由1a:本件発明の技術的課題は、「高い流動性を有しながら、高い薄肉強度、耐ハンダ性を有し、かつ、リフロー処理中の反りを低減した成形品を得ることができる」ことであって、リフロー中の反りに限られるものではないところ、本件明細書の(本g)の段落【0094】の【表1】の結果について、本件明細書に評価基準の記載がないため、どのように評価すればよいか不明である。「耐ハンダ温度」、「荷重たわみ温度」、「薄肉強度」、「薄肉流動性」ともデータによっては、比較例の方が実施例よりも好ましい結果が得られている例、特に、実施例1の「荷重たわみ温度」、「薄肉強度」、実施例8の「薄肉流動性」は、実施例・比較例を通じて最低の値となっており、本件発明の課題を解決できているとはいえない。

理由1b:訂正前の本件発明1は、「タルク」及び「マイカ」について、「前記(A)液晶ポリエステル100質量部に対し、前記(B)タルクと前記(C)マイカとの合計量((B)+(C))が5質量部以上100質量部以下であり、かつ、 前記(B)タルクと前記(C)マイカとの重量比((B)/(C))が9/1〜1/9であり」と特定されているところ、本件明細書の(本g)の実施例をみると、「(B)タルク」と「(C)マイカ」との「重量比((B)/(C))」は、1(=15/15)〜0.17(=8/46)、「(B)タルク」と「(C)マイカ」との「合計量((B)+(C))」については20〜14重量部の実施例しか示されておらず、本件発明1に特定されるこれらの広範な数値範囲において所望の効果を得られると当業者において認識できる程度に開示されているとはいえない。
また、甲第2号証の(甲2f)の段落[0073]、甲第3号証の(甲3a)の段落【0009】及び(甲3d)の段落【0085】〜【0086】の記載からみて、本件発明の課題を解決するには「タルク」及び「マイカ」の縦横比(アスペクト比)や平均粒子径等の形状や大きさが重要であるといえるところ、本件発明1には、「タルク」及び「マイカ」の形状や大きさは特定されていないし、本件発明4〜5であっても十分に特定されていない。

理由1c:本件発明1は、「液晶ポリエステル」について「構造単位は、4−ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/イソフタル酸/4,4'−ジヒドロキシビフェニルの組み合わせであり、前記4−ヒドロキシ安息香酸に対する前記4,4’−ジヒドロキシビフェニルのモル比率(モル比率4,4’−ジヒドロキシビフェニル/パラヒドロキシ安息香酸)が0.2〜1.0であり、前記4,4’−ジヒドロキシビフェニルに対する前記テレフタル酸と前記イソフタル酸との合計量のモル比率(モル比率(テレフタル酸+イソフタル酸)/4,4’−ジヒドロキシビフェニル)が0.9〜1.1である」と、その構造単位について広範な範囲で特定しているが、本件明細書の(本g)の実施例では、「液晶ポリエステル」について「LCP−1」の例しか示されておらず、本件発明1に特定されるこれらの広範な範囲において本件発明の技術的課題が解決できると当業者において認識できる程度に開示されているとはいえない。

理由1d:本件明細書の実施例1は「ガラス繊維」を含まない「液晶ポリエステル樹脂組成物」であり、実施例8は「ガラス繊維」を含む「液晶ポリエステル樹脂組成物」であるが、他の比較例と比較しても明確に劣る評価となっているところ、本件発明1は、「ガラス繊維」の存在について規定されていないため、本件発明1は、当業者が本件発明の技術的課題を解決できると認識できるものではない。
「ガラス繊維」の含有量について本件発明2は「(A)液晶ポリエステル100質量部に対し、(D)ガラス繊維を5質量部以上100質量部以下含有する」と特定され、「ガラス繊維」の「数平均繊維長」について本件発明3は「(D)ガラス繊維の数平均繊維長が50μm以上300μm以下である」と特定されているが、本件明細書の実施例で用いられた「ガラス繊維」は、その配合量が(A)液晶ポリエステル100質量部に対し34〜57質量部、繊維長も130〜150μmとごく限られた範囲に過ぎないから、本件発明2〜3において特定される広範な範囲まで、その効果を一般化・抽象化できるとはいえない。

イ 判断
(ア)特許法第36条第6項第1号について
特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
以下、この観点から検討する。

(イ)判断
(a)本件発明の課題について
本件発明の課題は、本件明細書の(本a)の段落【0009】の記載からみて、「高い流動性を有しながら、高い薄肉強度、耐ハンダ性を有し、かつ、リフロー処理中の反りを低減した成形品を得ることができる液晶ポリエステル樹脂組成物を提供すること」であるといえる。
また、(本a)の段落【0005】の「従って、コネクターは、リフローハンダ工程の加熱処理加熱時の反り変形が少ないことが望ましく、更に、リフロー中にハンダが固化する状態において反り変形が少ないことが求められる」との記載、段落【0008】の「従来の技術ではリフロー処理の前後での反りの発生には注目されていたものの、リフロー処理中の反りの発生に積極的に着目した試みはされていなかった。特許文献1に記載の樹脂組成物を用いて得られる成形品は、通常リフローハンダの工程のハンダ厚みが0.1mm程度あることを考慮すると、リフロー処理中の反り量低減効果は不十分であった。また、特許文献2及び3に記載の樹脂組成物を用いて得られる成形品は、リフロー処理前の反り量は低減されているものの、リフロー処理中の反り量低減効果は不十分である課題があった」との記載からみて、段落【0009】に列記された課題のうち、特に、「リフロー処理中の反り」の「低減」に着目しているといえる。
これらの点に関して、本件明細書の(本g)の段落【0095】には、実施例及び比較例の評価について、「本発明を適用した実施例1〜8は、高い流動性を有し、薄肉強度、耐ハンダ性等の特性がいずれも良好であり、かつ、1回目のリフロー処理中の反りがいずれも0.05mm以下であった」と記載されており、「流動性」、「薄肉強度」、「耐ハンダ性」、「リフロー処理中の反り」の「低減」の個別の課題全てについて顕著な効果を奏することを意図するのではなく、これらのすべての課題について、一定水準以上のものを得ることを意図するものであると理解できる。さらに段落【0095】の「本発明を適用しない比較例1〜8は、1回目のリフロー処理中に発生する反りが0.05mmを大きく超えるものがあり、他の物性(流動性、薄肉強度、耐ハンダ性)との両立ができていなかった。また本発明を適用した実施例1〜8は、2回目のリフロー処理における、リフロー中の反り量がおおよそ0.05mm以下であった」との記載からみて、上記のとおり、特に「リフロー処理中の反り」の「低減」に着目していると理解できる。

(b)上記理由1aについて
上記(a)での検討を踏まえて、本件明細書の(本g)の段落【0094】の【表1】の結果から、まず「タルク」の配合についてをみると、「タルク」を含まない比較例2、7、8の「耐ハンダ温度」はいずれも240℃であるのに対して、「タルク」と「マイカ」の両者を含む実施例1〜8は260〜280℃の「耐ハンダ温度」であり、「耐ハンダ温度」については、実施例1〜8は、「タルク」を含まない比較例2、7、8に比べて、明らかに優れているといえる。
次に、「マイカ」の配合についてみると、1回目の「リフロー中」の反りについて、実施例1〜8は0.03〜0.05の範囲であるが、比較例1、3〜6は、0.06〜0.08であり、1回目の「リフロー後」の反りについても、実施例1〜8は0.11〜0.16であるのに対し、比較例1は0.12と小さいものの、比較例3〜6は0.17〜0.24と大きくなっている。2回目の「リフロー中」についても、実施例1〜8は0.03〜0.06であるのに対し、比較例1、3〜6は0.06〜0,08と大きくなっている。2回目の「リフロー後」の反りについても、実施例1〜8は0.15〜0.21であるのに対し、比較例1、3〜6は0.24〜0.29と大きくなっている。これらのことから、「コネクタ反り」については、実施例1〜8は、「マイカ」を含まない比較例1、3〜6に比べて、小さくなる傾向があるといえる。
その他、「流動性」、「薄肉強度」については、実施例1〜8は、「タルク」又は「マイカ」のいずれかを含まない比較例1〜8と、データによっては比較例の値の方が優れた例もあるものの、ほぼ同等程度の値を有しており、「流動性」、「薄肉強度」、「耐ハンダ性」、「リフロー処理中の反り」の「低減」の個別の課題全てについて一定水準以上のものを得ているといえる。

確かに、申立人の指摘のとおり、実施例1の「0.12mmt」の「曲げ強度」については、全ての実施例・比較例の中で最も小さい値となっているものの、「0.2mmt」及び「0.3mmt」の値については、実施例を、これと同様に「ガラス繊維」を含まない比較例1と比べると、比較例1よりも「曲げ強度」が大きくなっているので、実施例1の「薄肉強度」が特に劣っているとは評価することはできない。
また、実施例8の「薄肉流動長」の値は、全ての実施例・比較例の中で最も小さい値となっているものの、一定の「薄肉流動長」は有しているといえるし、実施例8は唯一「ガラス繊維長」が349μmと、実施例2〜7及び比較例3〜8の122〜150μmに比べて特に長いものを用いているからと推認できるので、実施例8の「薄肉流動長」の値のみをもって、本件発明が本件発明の上記解決できていないと評価することはできない。
したがって、本件発明の具体的態様である実施例1〜8は、比較例1〜8に比べて「耐ハンダ温度」、「リフロー処理中の反り」に関して優れていると評価することができ、「流動性」、「薄肉強度」については、ほぼ同等程度の値を有していることから、本件発明の課題である「流動性」、「薄肉強度」、「耐ハンダ性」、「リフロー処理中の反り」の「低減」の個別の課題全てについて一定水準以上のものを得ているといえるので、上記理由1aは理由があるとはいえない。

(c)上記理由1bについて
本件訂正により、本件発明1は、訂正前の「タルク」及び「マイカ」について、「前記(A)液晶ポリエステル100質量部に対し、前記(B)タルクと前記(C)マイカとの合計量((B)+(C))が5質量部以上100質量部以下」であり、かつ、「前記(B)タルクと前記(C)マイカとの重量比((B)/(C))が9/1〜1/9であり」との特定に加えて、「(C)マイカが1質量部以上20質量部以下」との特定も追加された。

本件明細書の(本g)の実施例では、「タルク」を15〜46質量部、「マイカ」を5〜15重量部、申立人が述べるように、「(B)タルク」と「(C)マイカ」との「重量比((B)/(C))」は、1〜0.17、「(B)タルク」と「(C)マイカ」との「合計量((B)+(C))」が20〜54質量部の例が記載されており、本件発明1で特定される範囲全般にわたるデータは示されていない。
しかしながら、本件明細書の(本d)の段落【0051】〜【0052】には「前記(C)マイカの配合量は、前記(A)液晶ポリエステル100重量部に対して、1質量部以上が好ましく、・・・が特に好ましい。また、前記(A)液晶ポリエステル100重量部に対して、・・・、20質量部以下が特に好ましい。・・・前記マイカの配合量が上記下限値以上であれば、得られる成形体、特に長尺状コネクターのリフロー処理中の反りの発生が十分抑制され、一方、前記マイカの配合量が上記上限値以下であれば、溶融成形時の流動性が良好となり、成形がより容易になる」と記載され、段落【0054】〜【0055】には「本発明においては、前記(A)液晶ポリエステル100質量部に対し、前記(B)タルクと前記(C)マイカとの合計量((B)+(C))が5質量部以上100質量部以下であり、重量比((B)/(C))が9/1〜1/9である。・・・((B)+(C))が上記の範囲であることにより、本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物を用いて成形した成形品のリフロー処理中の反りの発生を抑制することができる。・・・重量比((B)/(C))が上記の範囲であることにより、本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物を用いて成形した成形品のリフロー処理中の反りの発生を抑制することができる」と記載されている。また、上記(b)で検討したとおり、実施例1〜8と比較例1、3〜6の結果からみて「(C)マイカ」の量が「1質量部以上20質量部以下」であれば「リフロー中」「リフロー後」の反りが小さくなると当業者は推認できるといえるし、実施例1〜8と比較例2、7、8のデータからみて「タルク」を本件発明の上記特定の範囲内で含んでいれば「耐ハンダ性」が改善されることは当業者が推認できるといえる。
そうすると、本件発明1に特定される範囲内で「タルク」と「マイカ」を含有する「液晶ポリエステル樹脂組成物」は、本件発明の上記課題を解決できると当業者であれば推認できるといえる。

上記したように、本件発明1は発明の詳細な説明の記載や技術常識に照らして発明の課題を解決できると認識できる範囲であるといえるものであるが、申立人が「タルク」及び「マイカ」の縦横比(アスペクト比)や平均粒子径等の形状や大きさについても特定が必要である旨の主張をするので、以下で検討する。
「タルク」及び「マイカ」の縦横比(アスペクト比)や平均粒子径等の形状や大きさについては、本件明細書の(本a)の段落【0003】の「・・・コネクターの実装面積の省スペース化が求められている。例えば、コネクターの金属端子間のピッチを0.35mm以下にした狭ピッチコネクターが提供されている。また、コネクターを嵌合した状態での厚み寸法(いわゆる、スタッキング高さ)が0.6mmt以下である低背のコネクターも提供されている」との記載、段落【0005】の「例えば、1.0mmt程度の薄肉の部分へ樹脂を充填させるためには、・・・」との記載からみて、本件発明1の「液晶ポリエステル樹脂組成物」は「1.0mmt程度の薄肉の部分」を有する「コネクター」を用いることが意図されているといえる。
また、「タルク」の形状や大きさについて、(本c)の段落【0038】には「前記タルクの製造方法としては、例えば、・・・摩砕式粉砕法、・・・衝突式粉砕法等の乾式粉砕法が挙げられる」と記載され、段落【0042】には「本発明においては、(B)タルクの体積平均粒径が5μm以上であることが好ましく、・・・。また、体積平均粒径が25μm以下であることが好ましく、・・・」と記載されている。
「マイカ」の形状や大きさについて、(本d)の段落【0046】〜【0047】に「本発明で使用するマイカは、実質的に白雲母のみからなることが好ましい。マイカの製造方法としては、例えば、・・・。マイカを薄く細かく粉砕することができるため、湿式粉砕法より製造されたマイカを使用するのが好ましい」と記載され、段落【0049】には「本発明においては、(C)マイカの体積平均粒径が20μm以上であることが好ましく・・・。また、体積平均粒径が45μm以下であることが好ましく・・・」と記載されている。
本件発明1には、「タルク」及び「マイカ」の縦横比(アスペクト比)や平均粒子径等の形状や大きさについての特定はないものの、本件発明1の「液晶ポリエステル樹脂組成物」は、「1.0mmt程度の薄肉の部分」を有する「コネクター」を用いることが意図されているといえ、そのような用途に用いるのであれば、「タルク」の大きさについて、体積平均粒径が5〜25μm程度のもの、「マイカ」の大きさについて体積平均粒径が20〜45μm程度のもの、また、極端に大きい縦横比(アスペクト比)を有しないものを用いることは当業者であれば理解できるといえる。

以上のとおり、上記理由1bも理由があるとはいえない。

(d)上記理由1cについて
本件発明1は、「液晶ポリエステル」について「構造単位は、4−ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/イソフタル酸/4,4'−ジヒドロキシビフェニルの組み合わせであり、前記4−ヒドロキシ安息香酸に対する前記4,4’−ジヒドロキシビフェニルのモル比率(モル比率4,4’−ジヒドロキシビフェニル/パラヒドロキシ安息香酸)が0.2〜1.0であり、前記4,4’−ジヒドロキシビフェニルに対する前記テレフタル酸と前記イソフタル酸との合計量のモル比率(モル比率(テレフタル酸+イソフタル酸)/4,4’−ジヒドロキシビフェニル)が0.9〜1.1である」と特定しているところ、申立人の指摘のとおり、本件明細書の(本g)の実施例においては、「液晶ポリエステル」について「LCP−1」の例しか示されていない。
しかしながら、本件明細書の(本b)の段落【0029】には、本件発明1の「液晶ポリエステル」についての特定により「液晶ポリエステル樹脂組成物の溶融流動性をより良好とすることに加え、得られる成形体の耐衝撃性を良好にすることができる」と記載されており、(本g)の実施例及び比較例をみても、本件発明1の「液晶ポリエステル」についての発明特定事項を満たす「LCP−1」を用いることにより、良好な「溶融流動性」及び「耐衝撃性」を有する「成形体」が得られているといえるし、実施例・比較例の結果から、本件発明1の発明特定事項を満たす「液晶ポリエステル」であれば、良好な「溶融流動性」及び「耐衝撃性」を有する「成形体」が得られると当業者であれば理解できるといえる。
したがって、上記理由1cも理由があるとはいえない。

(e)上記理由1dについて
本件発明1は、「ガラス繊維」の存在について規定されていないが、本件明細書の(本e)の段落【0056】には、「液晶ポリエステル樹脂組成物」に含有させる成分として「ガラス繊維」が例示されており、本件発明1はガラス繊維を含む態様も含む発明であると解することができる。
そして、上記「(b)上記理由1aについて」で検討とおり、実施例1については、比較例1に比べて「薄肉強度」が特に劣っているとは評価することはできないし、実施例8についても本件発明が本件発明の上記解決できていないとまでは評価することはできない。
したがって、本件発明1は「ガラス繊維」の有無について規定されていないものの、(本g)の実施例・比較例の結果からみて、「ガラス繊維」がなくても、本件発明の課題を解決し得ると理解できる。
また、「ガラス繊維」を添加するとした場合の「ガラス繊維」の数平均繊維長や含有量について検討すると、本件発明1の液晶ポリエステル樹脂組成物は、上記「(c)上記理由1bについて」で検討したとおり「1.0mmt程度の薄肉の部分」を有する「コネクター」を用いることが意図されているといえるところ、本件明細書の(本e)の段落【0057】〜【0058】には、「ガラス繊維の数平均繊維長は、50μm以上が好ましく、70μm以上がより好ましく、100μm以上が特に好ましい。一方、液晶ポリエステル樹脂組成物の流動性の観点から、300μm以下が好ましく、250μm以下がより好ましく、200μm以下が特に好ましい。・・・ガラス繊維の配合量は、前記液晶ポリエステル(A)100質量部に対し、(D)ガラス繊維を5質量部以上100質量部以下含有することが好ましい」と記載されている。そして、「ガラス繊維」を含む「液晶ポリエステル」組成物を「1.0mmt程度の薄肉の部分」を有する「コネクター」に用いるのであれば、「ガラス繊維」の数平均繊維長が50〜300μ程度、含有量を5〜100質量部程度とすることは当業者であれば理解できるといえるし、この範囲であれば、本件発明の上記課題を解決し得ると推認できる。
したがって、上記理由1dも理由があるとはいえない。

ウ 申立理由1(サポート要件)のまとめ
以上のとおり、申立理由1は、いずれも理由がない。

(2)申立理由2−2(新規性)及び申立理由3−2(進歩性)について
ア 甲第2号証に記載された発明
甲第2号証の(甲2a)の請求項1を引用する請求項6に着目すると、
「(A)ヒドロキシ末端基量(a)と、前記ヒドロキシ末端基量(a)とアセチル末端基量(b)の合計との比(a)/[(a)+(b)]が0.70〜1.00である液晶ポリエステル100重量部に対して、(B)マイカを10〜100重量部含有する液晶ポリエステル樹脂組成物であり、
液晶ポリエステル樹脂組成物中の(B)マイカの体積平均粒径が10〜50μmであり、(B)マイカのアスペクト比が50〜100であり、
(A)液晶ポリエステル100重量部に対して、(D)タルクを5〜70重量部の割合で含有する、
液晶ポリエステル樹脂組成物」の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているといえる。

イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。

甲2発明の「(A)ヒドロキシ末端基量(a)と、前記ヒドロキシ末端基量(a)とアセチル末端基量(b)の合計との比(a)/[(a)+(b)]が0.70〜1.00である液晶ポリエステル」は、本件発明1の「構造単位は、4−ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/イソフタル酸/4,4'−ジヒドロキシビフェニルの組み合わせであり、前記4−ヒドロキシ安息香酸に対する前記4,4’−ジヒドロキシビフェニルのモル比率(モル比率4,4’−ジヒドロキシビフェニル/パラヒドロキシ安息香酸)が0.2〜1.0であり、前記4,4’−ジヒドロキシビフェニルに対する前記テレフタル酸と前記イソフタル酸との合計量のモル比率(モル比率(テレフタル酸+イソフタル酸)/4,4’−ジヒドロキシビフェニル)が0.9〜1.1である」「(A)液晶ポリエステル」と、「液晶ポリエステル」である限りにおいて一致する。

甲2発明の「マイカ」、「タルク」は、本件発明1の「(C)マイカ」「(B)タルク」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲2発明とは、
「(A)液晶ポリエステル、(B)タルク、および(C)マイカ、を含有する、液晶ポリエステル樹脂組成物」
である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点2:「(A)液晶ポリエステル」について、本件発明1は、その「構造単位」が「4−ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/イソフタル酸/4,4'−ジヒドロキシビフェニルの組み合わせであり、前記4−ヒドロキシ安息香酸に対する前記4,4’−ジヒドロキシビフェニルのモル比率(モル比率4,4’−ジヒドロキシビフェニル/パラヒドロキシ安息香酸)が0.2〜1.0であり、 前記4,4’−ジヒドロキシビフェニルに対する前記テレフタル酸と前記イソフタル酸との合計量のモル比率(モル比率(テレフタル酸+イソフタル酸)/4,4’−ジヒドロキシビフェニル)が0.9〜1.1である」のに対し、甲2発明では、「(A)ヒドロキシ末端基量(a)と、前記ヒドロキシ末端基量(a)とアセチル末端基量(b)の合計との比(a)/[(a)+(b)]が0.70〜1.00で」あり、その構造単位及び構造単位の比が明らかでなく、本件発明1のように特定されていない点。

相違点3:「液晶ポリエステル」100質量部に対する「マイカ」の含有量について、本件発明1では「1質量部以上20質量部以下」であるのに対し、甲2発明では、「10〜100重量部」である点。

相違点4:「液晶ポリエステル」100質量部に対する「タルク」と「マイカ」の合計量について、本件発明1では、「5質量部以上100質量部以下」であるのに対し、甲2発明では、特定されていない点。

相違点5:「(B)タルク」と「(C)マイカ」の「重量比((B)/(C))」について、本件発明1では「9/1〜1/9」であるのに対し、甲2発明では、特定されていない点。

(イ)判断
相違点2〜3について、以下に検討する。

(a)相違点2について
本件発明1の「液晶ポリエステルの構造単位は、4−ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/イソフタル酸/4,4'−ジヒドロキシビフェニルの組み合わせであり」の特定からみて、本件発明1の「液晶ポリエステルの構造単位は、「4−ヒドロキシ安息香酸」、「テレフタル酸」、「イソフタル酸」、「4,4'−ジヒドロキシビフェニル」の4つのみであり、他の構造単位は含まないものと解される。この点について、念のため、本願の審査段階における補正の経緯を確認すると、令和2年7月20日付け意見書において、特許権者は「本願出願当初の明細書の段落[0028]及び[0029]の記載を根拠に、請求項1において液晶ポリエステルを「前記液晶ポリエステルの構造単位は、4−ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/イソフタル酸/4,4'−ジヒドロキシビフェニルの組み合わせであり、前記4−ヒドロキシ安息香酸に対する前記4,4’−ジヒドロキシビフェニルのモル比率(モル比率4,4’−ジヒドロキシビフェニル/パラヒドロキシ安息香酸)が0.2〜1.0であり、前記4,4’−ジヒドロキシビフェニルに対する前記テレフタル酸と前記イソフタル酸との合計量のモル比率(モル比率(テレフタル酸+イソフタル酸)/4,4’−ジヒドロキシビフェニル)が0.9〜1.1である」と補正しました」と述べている。本件明細書の(本b)の段落【0028】及び段落【0029】の記載をみると、段落【0029】には「前記組み合わせ[a]〜[p]の中でも、組み合わせ[a]である、・・・」と記載され、段落【0028】には、「本実施形態では、上述した液晶ポリエステルの構造単位を、下記[a]〜[p]のいずれかに示した組み合わせで使用することが好ましい。[a]:4−ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/イソフタル酸/4,4'−ジヒドロキシビフェニルの組み合わせ。・・・」と記載され、例えば、「[d]:4−ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/イソフタル酸/4,4'−ジヒドロキシビフェニル/ハイドロキノンの組み合わせ。」とは別の組み合わせであると記載されている。したがって、審査段階の補正の経緯からも、本件発明1の「液晶ポリエステル」の「構造単位」は、「4−ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/イソフタル酸/4,4'−ジヒドロキシビフェニル」のみの組み合わせであり、これに「ハイドロキノン」を含む組み合わせは該当しないものといえる。
以上を踏まえて、以下に、検討する。

甲2発明は、「液晶ポリエステル」について、その構造単位を特定していないことから、相違点2は実質的な相違点である。
そうすると、本件発明2は、甲第2号証に記載された発明とはいえない。

次に、相違点2について、甲2発明及び甲第2号証に記載された技術的事項から、当業者が容易に発明をすることができたか否かについて検討する。
甲第2号証の(甲2a)の請求項3、(甲2c)の段落[0024]〜[0030]の記載をみると、「液晶ポリエステル樹脂」として、「構造単位(III)」の「ハイドロキノンから生成した構造単位」を含むことが好ましいと記載されているが、(甲2c)において「液晶ポリエステル樹脂」の具体的な態様として例示されているのは「構造単位(III)」の「ハイドロキノンから生成した構造単位」を含むのみであり、本件発明1で特定される4つの構造単位の組み合わせの具体例は記載されていない。
また、(甲2i)の段落[0144]の[表2]の実施例1〜11及び段落[0146]の[表4]の実施例1〜17で用いられる「液晶ポリエステル樹脂」のa−1〜a−5は、段落[0095]、[0098]、[0101]、[0104]、[0107]をみると、いずれも構造単位(III)」の「ハイドロキノンから生成した構造単位」を含むものである。
比較例4には、「液晶ポリエステル樹脂」a−9として段落[0119]に「ハイドロキノンから生成した構造単位」を含まない「液晶ポリエステル樹脂」が記載されているものの、この比較例4の「液晶ポリエステル樹脂」は、ヒドロキシル末端基量とヒドロキシル末端基量とアセチル末端基量の合計との比が甲2発明の範囲を満足しない例である。
そうすると、甲2発明において、本件発明1の構造単位を有する「液晶ポリエステル」を用いる動機付けとなる記載があるとはいえない。

他の甲号証の記載を確認すると、甲第1号証の(甲1h)、甲第4号証の(甲4d)、甲第5号証の(甲5e)、甲第9号証の(甲9d)、甲第10号証の(甲10d)、甲第11号証の(甲11f)、甲第12号証の(甲12f)には、実施例(製造例)として、本件発明1の構造単位を有する「液晶ポリエステル」を用いた実施例は開示されているものの、甲第2号証には、上述のとおり、「構造単位(III)」の「ハイドロキノンから生成した構造単位」を含むことが好ましいと記載されていることから、これらの甲号証の記載を参酌しても、甲2発明において、「ハイドロキノンから生成した構造単位」を含まない本件発明1の構造単位を有する「液晶ポリエステル」を用いる動機付けがあるとはいえない。

そうすると、本件発明1は、相違点2について、甲2発明及び他の甲号証に記載された技術的事項から、当業者が容易に想到することができたとはいえない。

(b)相違点3について
相違点3の「タルク」の含有量に関して、本件発明1と甲2発明とは重複する範囲があるものの、それぞれ特定する範囲が異なっているため、甲2発明について、「タルク」の含有量について「1質量部以上20質量部以下」の範囲とすることが容易に想到し得たといえるかどうかを検討する。

この点について、上記「1 取消理由について」「(1)取消理由A(進歩性)について」「イ 本件発明1について」「(イ)判断」及び「(ウ)令和3年11月22日付け意見書における申立人の主張」で述べたように、甲第2号証には、液晶ポリエステル樹脂にマイカとタルクを添加した例である実施例12〜17には、液晶ポリエステル樹脂に、マイカを21〜33重量部添加した例しか記載されておらず、また、(甲2d)の段落[0055]に「・・・液晶ポリエステル樹脂100重量部に対して、マイカを10〜100重量部含有する。・・・マイカ含有量は25重量部以上が好ましく、40重量部以上がより好ましい」と記載されていることから、甲2発明において「マイカ」の含有量が「10〜100重量部」特定されている中で、特に、その量を「1質量部以上20質量部以下」の範囲とする積極的な動機付けがあるとはいえない。

また、甲第3〜12号証及び参考文献3〜7の上記摘記を見ても、甲2発明の「液晶性ポリエステル樹脂組成物ペレット」において、「マイカ」の含有量を「10〜100重量部」の中でもより少ない量である「1質量部以上20質量部以下」とすることまでは積極的に動機づける記載はない。

そうすると、本件発明1は、相違点3についても、甲2発明及び他の甲号証に記載された技術的事項から、当業者が容易に想到することができたとはいえない。

(ウ)小括
以上のとおり、本件発明1は、相違点4〜5について検討するまでもなく、甲第2号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲第2号証に記載された発明及び他の甲号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 本件発明2〜6について
本件発明2〜6は、本件発明1を直接的又は間接的に引用して限定した発明であるから、本件発明2〜6は、上記イ(イ)で示した理由と同じ理由により、甲第2号証に記載された発明であるとはいえず、また、甲第2号証に記載された発明及び他の甲号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ 申立理由2−2(新規性)及び申立理由3−2(進歩性)についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由2−2(新規性)及び申立理由3−2(進歩性)によって、本件発明1〜6に係る特許を取り消すことはできない。


第6 むすび
特許第6774329号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−6〕について訂正することを認める。
当審が通知した取消理由および申立人がした申立理由によっては、本件発明1−6に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに本件発明1−6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)液晶ポリエステル、(B)タルク、および(C)マイカ、を含有し、
前記(A)液晶ポリエステル100質量部に対し、前記(B)タルクと前記(C)マイカとの合計量((B)+(C))が5質量部以上100質量部以下であり、かつ、前記(C)マイカが1質量部以上20質量部以下であり、
前記(B)タルクと前記(C)マイカとの重量比((B)/(C))が9/1〜1/9であり、
前記液晶ポリエステルの構造単位は、4−ヒドロキシ安息香酸/テレフタル酸/イソフタル酸/4,4’ジヒドロキシビフェニルの組み合わせであり、
前記4−ヒドロキシ安息香酸に対する前記4,4’−ジヒドロキシビフェニルのモル比率(モル比率4,4’−ジヒドロキシビフェニル/パラヒドロキシ安息香酸)が0.2〜1.0であり、
前記4,4’−ジヒドロキシビフェニルに対する前記テレフタル酸と前記イソフタル酸との合計量のモル比率(モル比率(テレフタル酸+イソフタル酸)/4,4’−ジヒドロキシビフェニル)が0.9〜1.1であることを特徴とする液晶ポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
更に、前記(A)液晶ポリエステル100質量部に対し、(D)ガラス繊維を5質量部以上100質量部以下含有する請求項1に記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
前記(D)ガラス繊維の数平均繊維長が50μm以上300μm以下である請求項2に記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)タルクの体積平均粒径が5μm以上25μm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
【請求項5】
前記(C)マイカの体積平均粒径が15μm以上45μm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の液晶ポリエステル樹脂組成物で形成された成形体。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-01-20 
出願番号 P2016-256462
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (C08L)
P 1 651・ 113- YAA (C08L)
P 1 651・ 121- YAA (C08L)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 佐藤 健史
特許庁審判官 橋本 栄和
杉江 渉
登録日 2020-10-06 
登録番号 6774329
権利者 住友化学株式会社
発明の名称 液晶ポリエステル樹脂組成物  
代理人 佐藤 彰雄  
代理人 鈴木 慎吾  
代理人 加藤 広之  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 加藤 広之  
代理人 佐藤 彰雄  
代理人 鈴木 慎吾  
代理人 棚井 澄雄  
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