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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B29C
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B29C
審判 全部申し立て 1項2号公然実施  B29C
管理番号 1384114
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-04-28 
確定日 2022-02-14 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6780155号発明「樹脂製容器の製造方法、射出コア型、射出成形用金型および樹脂製容器の製造装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6780155号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし3〕、〔4ないし8〕、〔9及び10〕について訂正することを認める。 特許第6780155号の請求項1、2、6、7、9及び10に係る特許を維持する。 特許第6780155号の請求項3ないし5、8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6780155号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし10に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)3月31日(優先権主張 平成31年4月4日)を国際出願日とする出願であって、同年10月16日にその特許権の設定登録(請求項の数10)がされ、同年11月4日に特許掲載公報が発行された。
その後、その特許に対し、令和3年4月28日に特許異議申立人 株式会社青木固研究所(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし10)がされ、同年7月9日付けで取消理由が通知され、同年9月7日に特許権者 日精エー・エス・ビー機械株式会社(以下、「特許権者」という。)から意見書が提出されるとともに訂正請求がされ、同年同月27日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年10月22日に特許異議申立人から意見書が提出されたものである。

第2 本件訂正について
1 訂正の内容
令和3年9月7日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「樹脂製」と記載されているのを、「ポリエステル製」に訂正する。
併せて、請求項1を引用する請求項2についても同様に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、「・・・有底のプリフォームを射出成形する射出成形工程と、前記プリフォームをブロー成形して・・・容器を製造するブロー成形工程と、を有する」と記載されているのを、「・・・有底のプリフォームを射出成形する射出成形工程と、射出成形された前記プリフォームを冷却しつつ温調する温調工程と、前記プリフォームをブロー成形して・・・容器を製造するブロー成形工程と、を有する」に訂正する。
併せて、請求項1を引用する請求項2についても同様に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に、「前記射出コア型の前記胴部規定部の表面のうち、前記溝が形成されている部分の周方向の中心線平均粗さRa1が、0.2μm以上15μm以下である、・・・容器の製造方法。」と記載されているのを、「前記射出コア型の前記胴部規定部の表面のうち、前記溝が形成されている部分の周方向の中心線平均粗さRa1が、0.2μm以上15μm以下であり、前記射出成形工程において、前記コア型および前記射出キャビティ型から前記プリフォームを高温状態で離型する、・・・容器の製造方法。」に訂正する。
併せて、請求項1を引用する請求項2についても同様に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項4を削除する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項5を削除する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項6に「樹脂製」と記載されているのを、「ポリエステル製」に訂正する。
併せて、請求項6を引用する請求項7についても同様に訂正する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項6に「前記射出成形部が、請求項4に記載の射出コア型を含む」と記載されているのを、独立形式に改め、「前記射出成形部が、ポリエステル製の有底のプリフォームを射出成形するための射出コア型であって、前記プリフォームの底部の形状を規定する底部規定部と、前記プリフォームの胴部の形状を規定する胴部規定部と、前記プリフォームのネック部の形状を規定するネック部規定部と、を有し、前記胴部規定部の表面に前記底部規定部から前記ネック部規定部へ延びる溝が形成されており、前記胴部規定部の表面のうち、前記溝が形成されている部分の周方向の中心線平均粗さRa1が、0.2μm以上15μm以下である、射出コア型を含み」に訂正する。
併せて、請求項6を引用する請求項7についても同様に訂正する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項6に、「・・・有底のプリフォームを射出成形する射出成形部と、前記プリフォームをブロー成形して・・・容器を製造するブロー成形部と、を備える」と記載されているのを、「・・・有底のプリフォームを射出成形する射出成形部と、射出成形された前記プリフォームを冷却しつつ温調する温調部と、前記プリフォームをブロー成形して・・・容器を製造するブロー成形部と、を備える」に訂正する。
併せて、請求項6を引用する請求項7についても同様に訂正する。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項6に「射出コア型を含む、・・・容器の製造装置。」と記載されているのを、「射出コア型を含み、前記射出成形部が、前記コア型および前記射出キャビティ型から前記プリフォームを高温状態で離型するように構成されている、・・・容器の製造装置」に訂正する。
併せて、請求項6を引用する請求項7についても同様に訂正する。

(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項8を削除する。

(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項9に「前記温調部は、射出成形された前記プリフォームを冷却しつつ温調するための温調コア型を含み、前記温調コア型は、前記プリフォームを冷却しつつ温調する際に前記プリフォームの胴部に接触する胴部接触部を有し、前記射出コア型の前記胴部規定部の表面の周方向の中心線平均粗さRa1が、前記温調コア型の前記胴部接触部の表面の周方向の中心線平均粗さRa2よりも大きい、請求項8に記載の樹脂製容器の製造装置。」と記載されているのを、独立形式に改め、「樹脂製の有底のプリフォームを射出成形する射出成形部と、射出成形された前記プリフォームを冷却しつつ温調する温調部と、前記プリフォームをブロー成形して樹脂製容器を製造するブロー成形部と、を備える樹脂製容器の製造装置であって、前記射出成形部が、樹脂製の有底のプリフォームを射出成形するための射出コア型であって、前記プリフォームの底部の形状を規定する底部規定部と、前記プリフォームの胴部の形状を規定する胴部規定部と、前記プリフォームのネック部の形状を規定するネック部規定部と、を有し、前記胴部規定部の表面に前記底部規定部から前記ネック部規定部へ延びる溝が形成されており、前記胴部規定部の表面のうち、前記溝が形成されている部分の周方向の中心線平均粗さRa1が、0.2μm以上15μm以下である、射出コア型を含み、前記温調部は、射出成形された前記プリフォームを冷却しつつ温調するための温調コア型を含み、前記温調コア型は、前記プリフォームを冷却しつつ温調する際に前記プリフォームの胴部に接触する胴部接触部を有し、前記射出コア型の前記胴部規定部の表面の周方向の中心線平均粗さRa1が、前記温調コア型の前記胴部接触部の表面の周方向の中心線平均粗さRa2よりも大きい、樹脂製容器の製造装置。」に訂正する。
併せて、請求項9を引用する請求項10についても同様に訂正する。

2 一群の請求項について
訂正前の請求項2及び3は訂正前の請求項1を直接引用するものであるから、訂正前の請求項1ないし3は一群の請求項に該当するものである。そして、請求項1ないし3についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
訂正前の請求項5ないし10は訂正前の請求項4を直接又は間接的に引用するものであるから、訂正前の請求項4ないし10は一群の請求項に該当するものである。そして、請求項4ないし10についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。

3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)請求項1についての訂正について
訂正事項1による請求項1についての訂正は、「プリフォーム」および「容器」の原料樹脂を「ポリエステル」に限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項2による請求項1についての訂正は、射出成形工程とブロー成形工程との間に「射出成形された前記プリフォームを冷却しつつ温調する温調工程」を設けるものに限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項3による請求項1についての訂正は、「前記射出成形工程において、前記コア型および前記射出キャビティ型から前記プリフォームを高温状態で離型する」ものに限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1ないし3による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)請求項2についての訂正について
訂正事項1ないし3による請求項2についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)請求項3ないし5についての訂正ついて
訂正事項4ないし6による請求項3ないし5についての訂正は、訂正前の請求項3ないし5を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)請求項6についての訂正について
訂正事項7による請求項6についての訂正は、「プリフォーム」および「容器」の原料樹脂を「ポリエステル」に限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項8による請求項6についての訂正は、訂正前の請求項6が訂正前の請求項4を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項4を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めているから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
訂正事項9による請求項6についての訂正は、射出成形部とブロー成形部に加えて、「射出成形された前記プリフォームを冷却しつつ温調する温調部」を備えるものに限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項10による請求項6についての訂正は、「前記射出成形部が、前記コア型および前記射出キャビティ型から前記プリフォームを高温状態で離型するように構成されている」ものに限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項7ないし10による請求項6についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)請求項7についての訂正について
訂正事項7ないし10による請求項7についての訂正は、請求項6についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮又は他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(6)請求項8についての訂正ついて
訂正事項11による請求項8についての訂正は、訂正前の請求項8を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(7)請求項9についての訂正について
訂正事項12による請求項9についての訂正は、訂正前の請求項9が訂正前の請求項8を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項8を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めているから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。

(8)請求項10についての訂正について
訂正事項12による請求項10についての訂正は、請求項9についての訂正と同様に、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

4 本件訂正のまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1又は4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
また、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし10に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
そして、特許権者から、訂正後の請求項〔9及び10〕に係る訂正について認められるときには、訂正後の請求項〔9及び10〕は、請求項〔4ないし8〕とは別の訂正単位として扱われることの求めがあり、これを認める。
したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし3〕、〔4ないし8〕、〔9及び10〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
上記第2のとおり、訂正後の請求項〔1ないし3〕、〔4ないし8〕、〔9及び10〕について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1ないし10に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、令和3年9月7日に提出された訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
ポリエステル製の有底のプリフォームを射出成形する射出成形工程と、
射出成形された前記プリフォームを冷却しつつ温調する温調工程と、
前記プリフォームをブロー成形してポリエステル製容器を製造するブロー成形工程と、
を有するポリエステル製容器の製造方法であって、
前記射出成形工程は、少なくとも射出コア型および射出キャビティ型によって形成されるキャビティ内に溶融樹脂を充填してプリフォームを形成する充填工程を含み、
前記射出コア型は、
前記プリフォームの底部の形状を規定する底部規定部と、
前記プリフォームの胴部の形状を規定する胴部規定部と、
前記プリフォームのネック部の形状を規定するネック部規定部と、を有し、
前記胴部規定部の表面に、前記底部規定部から前記ネック部規定部へ延びる溝が形成されており、
前記射出コア型の前記胴部規定部の表面のうち、前記溝が形成されている部分の周方向の中心線平均粗さRa1が、0.2μm以上15μm以下であり、
前記射出成形工程において、前記コア型および前記射出キャビティ型から前記プリフォームを高温状態で離型する、
ポリエステル製容器の製造方法。
【請求項2】
前記射出キャビティ型は、
プリフォームの底部の外形を規定する内底部と、
プリフォームの胴部の外形を規定する内壁部と、
前記内壁部を挟んで前記内底部の反対側に位置する開口部と、を有し、
前記内壁部の表面に、前記内底部から前記開口部へ延びる溝が形成されている、
請求項1に記載のポリエステル製容器の製造方法。
【請求項3】 (削除)
【請求項4】 (削除)
【請求項5】 (削除)
【請求項6】
ポリエステル製の有底のプリフォームを射出成形する射出成形部と、
射出成形された前記プリフォームを冷却しつつ温調する温調部と、
前記プリフォームをブロー成形してポリエステル製容器を製造するブロー成形部と、を備えるポリエステル製容器の製造装置であって、
前記射出成形部が、
ポリエステル製の有底のプリフォームを射出成形するための射出コア型であって、
前記プリフォームの底部の形状を規定する底部規定部と、
前記プリフォームの胴部の形状を規定する胴部規定部と、
前記プリフォームのネック部の形状を規定するネック部規定部と、を有し、
前記胴部規定部の表面に前記底部規定部から前記ネック部規定部へ延びる溝が形成されており、
前記胴部規定部の表面のうち、前記溝が形成されている部分の周方向の中心線平均粗さRa1が、0.2μm以上15μm以下である射出コア型を含み、
前記射出成形部が、前記コア型および前記射出キャビティ型から前記プリフォームを高温状態で離型するように構成されている、
ポリエステル製容器の製造装置。
【請求項7】
前記射出成形部が、
前記プリフォームの底部の外形を規定する内底部と、
前記プリフォームの胴部の外形を規定する内壁部と、
前記内壁部を挟んで前記内底部の反対側に位置する開口部と、を有し、
前記内壁部の表面に、前記内底部から前記開口部へ延びる溝が形成されている、
射出キャビティ型を含む、
請求項6に記載のポリエステル製容器の製造装置。
【請求項8】 (削除)
【請求項9】
樹脂製の有底のプリフォームを射出成形する射出成形部と、
射出成形された前記プリフォームを冷却しつつ温調する温調部と、
前記プリフォームをブロー成形して樹脂製容器を製造するブロー成形部と、を備える樹脂製容器の製造装置であって、
前記射出成形部が、
樹脂製の有底のプリフォームを射出成形するための射出コア型であって、
前記プリフォームの底部の形状を規定する底部規定部と、
前記プリフォームの胴部の形状を規定する胴部規定部と、
前記プリフォームのネック部の形状を規定するネック部規定部と、を有し、
前記胴部規定部の表面に前記底部規定部から前記ネック部規定部へ延びる溝が形成されており、
前記胴部規定部の表面のうち、前記溝が形成されている部分の周方向の中心線平均粗さRa1が、0.2μm以上15μm以下である、射出コア型を含み、
前記温調部は、射出成形された前記プリフォームを冷却しつつ温調するための温調コア型を含み、
前記温調コア型は、前記プリフォームを冷却しつつ温調する際に前記プリフォームの胴部に接触する胴部接触部を有し、
前記射出コア型の前記胴部規定部の表面の周方向の中心線平均粗さRa1が、前記温闊コア型の前記胴部接触部の表面の周方向の中心線平均粗さRa2よりも大きい、
樹脂製容器の製造装置。
【請求項10】
前記温調コア型の前記胴部接触部の表面の周方向の中心線平均粗さRa2が、0.1μm以上0.4μm以下である、請求項9に記載の樹脂製容器の製造装置。」

第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和3年4月28日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。

1 申立理由1(公然実施発明に基づく進歩性
本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

2 申立理由2(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし10に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
なお、その理由の要旨は、本件特許明細書には、底部規定部からネック部規定部の境界まで一連に延びる溝が記載されていない、というものである。

3 証拠方法
(1)甲第1号証:特許異議申立人製品(機種:SBIII-250-50,金型番号 B-28570)の販売実績を示す証拠
(甲第1号証の1)金型手配明細
(甲第1号証の2)成形報告書
(甲第1号証の3)出荷指示書
(甲第1号証の4)請求書 INVOICE
(甲第1号証の5)包装明細 PACKING LIST
(甲第1号証の6)航空貨物運送状
(2)甲第2号証:特開2008−279611号公報
(3)甲第3号証:特許異議申立人製品(機種:SBIII-1OOL-20,金型番号 BI-5520)の販売実績を示す証拠
(甲第3号証の1)成形報告
(甲第3号証の2)金型出荷リス卜
(甲第3号証の3)出荷指示書
(甲第3号証の4)試験成績書
(甲第3号証の5)運送依頼書の控え
(甲第3号証の6)取引証明
(4)甲第4号証:特許異議申立人製品(機種:SBIII-250LS-50,金型番号 B-19483)の販売実績を示す証拠
(甲第4号証の1)金型手配明細
(甲第4号証の2)出荷指示書
(甲第4号証の3)請求書 INVOICE
(甲第4号証の4)包装明細 PACKING LIST
(甲第4号証の5)成形報告書
(甲第4号証の6)船荷証券
(5)甲第5号証:特許異議申立人従業員による納入済み特許異議申立人製品調整作業を示す証拠
(甲第5号証の1)復命書(機種:SBIII-500LL-75,金型番号:BL-0450)
(甲第5号証の2)復命書(機種:SB3-250-100,金型番号:BG-0150)
(甲第5号証の3)復命書(機種:SBIII-500LL-50,金型番号:BLS-0600)
(6)甲第6号証:特許異議申立人製の射出コア型に関する表面粗さ測定試験成績書
(7)甲第7号証:国際公開2013/012067号
なお、甲号証の表記は、おおむね特許異議申立書の記載に基づく。
以下、順に「甲1」、「甲1の1」のようにいう。

第5 取消理由の概要
令和3年7月9日付けで通知された取消理由の概要は次のとおりである。

1 取消理由1(甲3関連の公然実施発明に基づく新規性進歩性
本件特許の請求項1、4、6に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、甲3にみられるように公然実施をされた発明であり、特許法第29条第1項第2号に該当し特許を受けることができないものであり、また、本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、上記発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
なお、該取消理由1は申立理由1を包含する。

2 取消理由2(甲4関連の公然実施発明に基づく新規性進歩性
本件特許の請求項1、4、6に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、甲4にみられるように公然実施をされた発明であり、特許法第29条第1項第2号に該当し特許を受けることができないものであり、また、本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、上記発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
なお、該取消理由2は申立理由1を包含する。

第6 取消理由についての判断
当審は取消理由1及び2は下記のとおり理由がないと判断する。

1 取消理由1(甲3関連の公然実施発明に基づく新規性進歩性
(1)各証拠に記載された事項
ア 甲3の1に記載された事項
甲3の1には、おおむね次の事項が記載されている。
なお、下線は各証拠において付されていたものに加え、合議体が付したものもある。以下同様。

・「



・「



イ 甲3の2に記載された事項
甲3の2には、おおむね次の事項が記載されている。
・「



ウ 甲3の3に記載された事項
甲3の3には、おおむね次の事項が記載されている。
・「



・「



エ 甲3の4に記載された事項
甲3の4には、おおむね次の事項が記載されている。
・「



・「



・「



・「



・「



オ 甲3の5に記載された事項
甲3の5には、おおむね次の事項が記載されている。
・「



カ 甲3の6に記載された事項
甲3の6には、おおむね次の事項が記載されている。
・「



キ 甲2に記載された事項
甲2には、おおむね次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。以下同様。)。
・「【技術分野】
【0001】
この発明は、射出成形したポリエチレンテレフタレート(PET)のプリフォームを予備ブローした後に本ブロー成形し、その本ブロー成形でボトルに耐熱性を付与する射出延伸ブロー成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
PETボトルの成形方法に、プリフォームを射出成形時にガラス転移点以下に急冷して、プリフォームの胴部内外の表層が冷却温度と時間との関連から半硬化状態で内部が高温であるうちに射出金型と射出コアから離型し、そのプリフォームを表面温度がピーク温度に達するまでの間に延伸ブロー成形して胴部が薄肉のボトルに成形する、所謂、ホットパリソン方式と称されている射出延伸ブロー成形法がある。
【0003】
またホットパリソン方式における耐熱ボトルの成形手段として、射出ステーションにて高温離型したプリフォームを温調ステーションに移し、プリフォームを温度調整を行ったのち延伸吹込成形ステーションに移して、中空成形品(ボトル)に延伸吹込成形し、そのボトルを2次加工ステーションに移して、熱処理用金型で高温の空気をボトル内に吹き込んで熱処理するのがある。
【0004】
また温調手段として、冷却した温調型に高温離型したプリフォームを収容し、そのプリフォームを予備ブローにより胴部のみを膨張して、胴部肉厚と温度を均一化する方法かあり、さらに温調型と吹込型を並設し、その両型をプリフォームに対し交互に移動して、予備ブローして温調してから本ブロー成形により延伸吹込成形を行うものもある。
【特許文献1】特開平07−505742号公報
【特許文献2】特開昭60−247541号公報
【特許文献3】特開昭58−208020号公報
【特許文献4】特開昭58−194521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記射出延伸ブロー成形におけるプリフォームでは、胴部内外の表層が半硬化状態で内部が高温であるうちに射出金型と射出コアから離型されていることから、図9にグラフ示すように、プリフォームの胴部の内部中央と表面の温度に著しい高低差がある。また胴部断面の温度分布でも図10に示すように中央部が高温の山形を呈している。この図9、図10は実測表面温度と、その実測表面温度からシュミレイションした中央部温度を示すものである。このような胴部温度は、時間の経過にともなう表面からの放熱により内部の熱エネルギーが減少して中央部の温度が降下し、また反対に表層は内部から加熱された状態となるので表面温度は上昇する。この相対的な温度変化により温度差は減少して、温度分布も高い山形t1 から低い山形t2 に、さらにはなだらかな丘形t3 に変化して均一化してゆく。しかし、温度が均衡するまでの時間は長く、表面温度がピーク温度に達した後でもある程度の温度差を保っている。
【0006】
プリフォームの外表面温度がピーク温度に達する前の延伸ブロー成形では、胴部内外の温度が不均一で、その温度差から成形されたボトルの胴部横断面における結晶密度に差が生ずるが、内部中央よりも温度が低く結晶温度領域にある表層の方が結晶密度が高密度であることによって、表面光沢及び落下強度が良好な良質のボトルが得られる。このボトルの落下強度は表層の領域(厚さ)を増すほど向上するが、表層領域の増加は内部中央の高温領域の縮小となり、蓄熱量の低減ともなるので、冷却による表層の形成には制限がある。また結晶密度の分布状態から表層が剥離し易くなることもある。そこで温調手段の採用によりプリフォームの胴部温度を内外均一に調整することが行われている。
【0007】
またホットパリソン方式により延伸ブロー成形したボトルは、コールドパリソン方式によるものと比べて結晶密度が低密度とされ、密度の分布状態が不均一であることから耐熱処理に難点があるとされている。このため高温離型したプリフォームの温度を均一に調整してからボトルに延伸ブロー成形し、そのボトルを熱処理して耐熱性を有するボトルとしている。したがって、ホットパリソン方式による耐熱ボトルの成形は時間を要し、成形したボトルを2次加工により耐熱処理するので歩留りが悪くコスト高となる課題を有する。
【0008】
この発明は、上記射出延伸ブロー成形における耐熱ボトルの成形の課題を解決するために考えられたものであって、その目的は、予備ブロー手段の採用によりプリフォームの胴部表面からの放熱を一時的に抑制して内部の蓄熱量の減少を阻止し、本ブロー成形に至までの胴部温度を高く維持してボトルの延伸ブローとヒートセットの両方を本ブロー成形により可能とする新たな耐熱ボトルの射出延伸ブロー成形方法を提供することにある。」

・「【0012】
図1〜図5は、この発明に係わる耐熱性ボトルの延伸ブロー成形方法に採用される金型装置の1例を示すものである。
【0013】
図1は、射出成形操作部に設置した有底のプリフォーム10(図2参照)の射出キャビティ型1で、キャビティ11の周囲に冷却水路11aを有し、底部に射出ノズル12を有する。この射出キャビティ型1の上端部は、プリフォーム10のネック部を成形するネック型13の嵌合凹部に形成してある。またネック型13は移送板14の下側に取付けた左右一対の支持枠部材15に開閉自在に設けてあり、その移送板14は昇降盤17の下側面に間欠回転自在に設けてある。
【0014】
16はプリフォーム10の内側を成形する射出コアで、昇降盤上に上下動自在に設けた型締ブロック18の下面に下向きに取付けてあり、その内部には冷却水路16aが設けてある。この射出コア16は、昇降盤17と共に移送板14が降下して射出キャビティ型1とネック型13とがほぼ同時又は型閉してから、型締ブロック18と共に降下して、移送盤14に穿設した穴部からネック型13を通して射出キャビティ型内に挿入され、キャビティ面との間に有底のプリフォーム10を射出成形するキャビティ11を形成する。
【0015】
図3は、延伸ブロー成形操作部に設置したプリフォーム10の予備ブロー型2と、ボトル成形用の本ブロー型3とを示すもので、その両方は基盤4上に往復動自在に設置した座体41の上に開閉自在に設けた一対の型締板40に取付けて並設してあり、その型締板40の開閉動作により両型は同時に型開閉するようにしてある。また座体41の内部には移動装置42が水平に設けてある。この移動装置42は両型の移動方向に長く基盤4に固定した油圧シリンダ42aと、座体41の側壁に先端を止着したピストン42bとからなり、該ピストン42bの伸縮により座体41と共に両型をプリフォーム10に対し交互に移動する周知のものからなる。
【0016】
上記金型装置では、予備ブロー型2と本ブロー型3とを同一座体41上に並設しことによって、座体41の横移動により予備ブロー型2の位置に本ブロー型3を移すことができる。こりによりネック型13に保持されたプリフォーム10を移動せずに型交換ができることから、予備ブローから本ブロー成形への移行が短時間で行えるようになる。
【0017】
図4は上記予備ブロー型2の1例を示すもので、上記一対の型締板40の対向面に取付けて左右に開閉自在に設けた一対の割型20,20からなり、中央上端には上記ネック型13が嵌合する凹所が形成してある。この割型20,20の型閉によりプリフォーム10の胴部を収容する予備ブローキャビティ21が形成される。この予備ブローキャビティ21は高さがプリフォーム10の胴部高さと同一で、直径がプリフォーム胴部直径よりも0.5〜2.75mm大きく、胴外面とキャビティ面との間に0.25〜1.375mmのブロー間隙が生ずるキャビティからなり、割型内にヒートパイプ20aを有する。
【0018】
図5は、上記本ブロー型3の1例を示すように、上記一対の型締板40の対向面に取付けて左右に開閉自在に設けた一対の割型30,30と底部中央の底型32とからなり、中央上端には上記ネック型13が嵌合する凹所が形成してある。この本ブロー型3には図では省略するが加熱手段が設けてあり、割型30,30の型閉により図6に示す形態のパネル付きボトル6のブローキャビティ33が形成される。
【0019】
図中5は予備ブロー型2と本ブロー型3の両方に共用される延伸ブロー手段で、上記昇降盤17の上に昇降自在に設けた型締ブロック51の下面に下向きに取付けたブローコア52と、その内部中央にエアの流通間隙53を周囲に設けて上下動自在に挿通した伸長ロッド54とからなり、そのブローコア52は型締ブロック51と共に降下して上記ネック型13と嵌合する。また伸長ロッド54はブローコア52がネック型13と嵌合したのち伸長し、予備ブロー型内ではプリフォーム10の固定ロッドとして機能する。また本ブロー型3ではブローキャビティ内のプリフォーム10を上記底型32の型面まで伸長する延伸ロッドとして機能する。
【0020】
次に上記金型装置による、ポリエチレンテレフタレート(PET)の耐熱ボトルの成形方法について説明する。
先ずプリフォーム10を射出成形する。射出キャビティ型1と射出コア16の温度はガラス転移点以下の14〜16℃に設定するが、上記ネック型13については、型締により射出キャビティ型1と接触している間に冷却されるので特に温度設定はされていない。
【0021】
上記金型装置の温度が設定温度に達したら、ネック型13を降下して射出キャビティ型1と型閉し、その型閉とほぼ同時又は型閉してから、射出コア16をキャビティに挿入して型締し、プリフォーム成形用のキャビティ11を形成する。型締終了後に、射出ノズル12から設定温度260°〜270℃で溶融したポリエチレンテレフタレートの樹脂をキャビティ11に射出充填する。
【0022】
キャビティ11に充填された溶融樹脂は、上記温度に設定されたキャビティ型1とネック型13及び射出コア16とにより急冷されて、首部と胴部及び底部が一体の上記プリフォーム10(図2参照)となる。この冷却時間(保圧終了後の設定時間)はプリフォーム胴部の肉厚により異なるが、何れの場合でも胴部内の冷却が未完で高温状態にあり、内外表面に半硬化状態に生じた表層(スキン層)によりプリフォーム形態が保たれて離型が可能となる時間(3〜7秒)に制限される。
【0023】
冷却時間が肉厚に対応した時間よりも短いと、表層の半硬化が不十分で射出コアからの抜取りが行えず、離型によりプリフォーム10の形態が損なわれる。また反対に長くなると過冷却となって、内外の表層領域の厚さが増して胴内部の高温領域が狭くなり、それに伴う内部の熱エネルギーの不足から、離型後の外表層の加熱軟化が不十分となって、離型後にプリフォーム胴部(以下胴部と略称する)を予備ブローにより調整(肉厚及び温度)してボトルの本ブロー成形を行う場合でも、偏肉が生じて耐熱性のあるボトルを成形することが困難となる。
【0024】
上記射出冷却時間の経過後、ネック型13と射出コア16とを上昇して、ネック型13によりプリフォーム10をキャビティ11から離型する。これによりプリフォーム10は、図2に示すように、中空状態でネック型13に保持され、移送板14による上記予備ブロー型2への移送が可能となる。
【0025】
離型後のプリフォーム10をネック型13により保持して中空状態で放置すると、胴部壁における内外の温度差が図9及び図10に示すように著しいことから、外表面が内部熱により加熱されて外表面温度がピークに達するまで急上昇してゆく。胴部肉厚3.0〜4.5mmのプリフォームでは離型直後からピーク温度に達するまでの時間は16秒以内で、ピークを過ぎると外表面温度は徐々に降下してゆく。
【0026】
次に離型したプリフォーム10を、ネック型13と共に移送板4により直ちに上記予備ブロー型2の上に移し、射出キャビティ型1とネック型13の型閉後に予備ブローする。この際、プリフォーム10を予備ブローするまでの時間は離型後5±0.5秒に制限し、予備ブロー型2の温度を110〜117℃の範囲に設定しておく。
【0027】
予備ブローは、上記割型20.20の型閉前にブローコア52を上方からネック型13に嵌合し、伸長ロッド54をブローコア52内からプリフォーム底面まで挿入して、型閉後にプリフォーム10を予備ブローキャビティ内に固定する。その後にブローコア52からプリフォーム胴部内に予め設定した低圧エア(例えば1.4〜1.7MPa)のエアブローを短時間(0.5〜1.0秒)を行う。
【0028】
このエアブローにより胴部は、予め設定した胴部外径とキャビティ内径の差分だけ膨張により伸びて薄減するので、成形時に生じた偏肉がなくなる。また上記温度に加熱されているキャビティ面との接触により外表面からの放熱が抑制されて内部熱量が蓄積され、胴部肉厚の薄肉化に伴い内部温度にもある程度の移動が生じて、プリフォーム成形時に生じた温度むらも解消されるようになる。
【0029】
図7,図8は、胴部肉厚3.5mm、4.2mmの2種のプリフォームについて、予備ブローをしない通常成形の場合の外表面温度aの経時変化と、予備ブローした後の外表面温度b〜fの経時変化を示すものである。この温度グラフから明らかなように、延伸ブロー成形の目安となる外表面温度は、射出キャビティ型1から抜き出された時から内部熱により加熱されて急上昇する。しかし、予備ブローをしない場合にみられるように、外表面温度は離型後8〜9秒辺りから上昇は緩やかとなってピーク温度に達する。これは外表面からの放熱により内部熱量が減少することによるもので、胴部肉厚3.0〜4.5mmでは、外部から加熱を行わない限りピーク温度を高くすることはできない。
【0030】
上記予備ブロー型2における設定温度105〜117℃は、温度グラフからみると、離型後5±0.5秒の外表面温度(3.5mm:114〜117℃、4.2mm:114〜116℃)と同じ又は以下ではあるが、予備ブローされている0.5〜1.0秒の間、その設定温度により保温された状態にあって外表面からの放熱が抑制され、放熱による内部熱量の損失が減少して放熱分が蓄熱される。これにより予備ブロー後の外表面温度は予備ブローを行わない通常成形の場合よりも上昇し、ピーク温度も高くなる。
【0031】
また設定温度100℃でも予備ブロー後の温度は予備ブローしない通常成形のときよりも上昇するが、その後の本ブロー成形でヒートセットしても耐熱性については通常成形の場合とあまり変わらない。設定温度120℃では予備ブロー後の温度が著しく上昇し、本ブロー成形した際に胴部がブローキャビティ面に貼り付いて成形不良となる。また予備ブローの開始時間を離型後4秒以前に設定することは、機械の作動速度による制約から難しく、外表面温度も低く内部との温度差も大きいことから予備ブローによる上記効果を期待することができない。離型後6秒以後では外表面と内部との温度差が小さく、予備ブローによる放熱抑制の効果は期待できない。
【0032】
なお、温度グラフにおいて予備ブロー型2から離型した後の外表面温度が、胴部肉厚4.2mmでは胴部肉厚3.5mmとの比較において低くいが、これはプリフォームの離型が可能となるまでの冷却時間が、肉厚3.5mmの場合よりも長く設定され、表層領域が厚く形成されることによるものである。
【0033】
上記予備ブローが終了したら割型20,20を型開してプリフォーム10を離型し、型開した割型20,20の間にプリフォーム10をネック型13に保持して残す。次に台座41を横移動して割型20,20と本ブロー型3の割型30,30との位置替えを行う。これによりプリフォーム10はネック型13と共に割型30,30の中央に位置するので、プリフォーム10はその後の型閉により形成されたブローキャビティ33に収まる。
【0034】
本ブロー型3の型閉前に、上記ブローコア52を上方からネック型13に嵌合し、伸長ロッド54をプリフォーム10の内底面まで挿入して、型締後にキャビティ底面まで伸長して延伸を行う一方、ブローコア52から高圧エア(例えば2.5〜3.5MPa)をプリフォーム内にブローして、プリフォーム10をキャビティ一杯に膨張してボトル6を形成する。このブロー時間は予め設定された時間(例えば6〜9秒)行い、ボトル胴部及び底部をヒートセットする。このヒートセットによりボトル6の胴部及び底部は90℃辺りの充填温度でも変形せずに耐えるようになる。
【実施例】
【0035】
使用成形機の機種 SBIII−250LS−50S(株)青木固研究所製
材料樹脂 ポリエチレンテレフタレート(PET)
温度測定機器 TVS−200 赤外線熱画像 日本アビオニクス製
成形品 耐熱ボトル(丸胴パネル付き500ml)
全高 207mm
首下長さ 186mm 胴部横幅 68mm
胴部肉厚(2例、胴部中央平均値)
(1) 0.35mm
(2) 0.40mm
【0036】
プリフォーム
全高 98mm
首下長さ 77mm
胴部外径(中央) 23.9mm
胴部肉厚(2例、平均値)
(1) 3.5mm
(2) 4.2mm
以下、胴部肉厚3.5mmを(1)、胴部肉厚4.2mmを(2)とする。
【0037】
成形条件(室温19℃) 但し温度、時間、圧力は設定値
プリフォーム成形条件
射出温度 260〜270℃
金型温度(キャビティ型・コア型) 16℃
充填保圧時間 (1) 7.2秒, (2) 9.5秒
冷却時間 (1) 3.5秒, (2) 5.0秒
【0038】
予備ブロー条件
予備ブロー開始時間(射出金型離型後) 5.0秒
キャビティ内径(中央部) 24.9mm
金型温度(℃) 105,110,115
ブローエア圧 1.6MPa
ブロー時間 (1) 0.7秒, (2) 0.8秒
【0039】
本ブロー成形条件
本ブロー開始時間(予備ブロー型離型後) 3.2秒
金型温度(℃) 103〜107
延伸倍率 縦(軸方向) 2.4倍
横(半径方向) 2.85倍
ブローエア圧 3MPa
ブロー時間 (1) 7.0秒 (2) 8.0秒
【0040】
予備ブロー後の外表面温度(A)と本ブロー成形時の外表面温度(B)
予備ブロー型温度 (A) (B)
105℃ (1) 118.8 122.3
110℃ (1) 119.6 123.9
115℃ (1) 125.2 128.4
予備ブロー型温度 (A) (B)
105℃ (2) 112.5 120.1
110℃ (2) 115.4 124.1
115℃ (2) 118.7 125.9
但し、(A)予備ブロー後1.2秒の温度、
(B)予備ブロー後3.2秒の温度
【0041】
[結果]
実施例.1 (充填温度90℃)
予備ブロー型 設定温度 115℃
本ブロー型 設定温度 103℃
容積変化(ml) 但し、形状安定後(14日間放置)のボトル
充填前内容量 充填後内容量 容量差
胴部肉厚(1) 546.9 543.5 −3.4
胴部肉厚(2) 548.3 545.8 −2.5
【0042】
実施例.2 (充填温度87℃)
容量変化(ml) 同上
充填前内容量 充填後内容量 容量差
胴部肉厚(1) 548.3 546.4 −1.9
胴部肉厚(2) 547.3 546.4 −0.9
【0043】
比較例.1 (充填温度90℃)
通常成形(予備ブローなし)
ブロー型 設定温度 103℃
容量変化(ml) 同上
充填前内容量 充填後内容量 容量差
胴部肉厚(1) 537.6 526.5 −11.1
胴部肉厚(2) 537.9 521.3 −16.6
【0044】
比較例.2 (充填温度87℃)
通常成形(予備ブローなし)
ブロー型 設定温度 103℃
容積変化(ml) 同上
充填前内容量 充填後内容量 容量差
胴部肉厚(1) 533.7 527.0 −6.7
胴部肉厚(2) 535.8 528.0 −7.8
【0045】
上記実施例1,2と比較例1,2との対比から明らかなように、この発明による実施例の方が、予備ブローを行わない比較例よりも容量差が小さい。容量減少は主に加熱によるボトル胴部の熱収縮によるものであるから、加熱充填後の容量減少が小さいこの発明によるPETボトルは、従来の通常成形(比較例)によるボトルよりも熱収縮し難く、また予備ブローによる肉厚分布の均一化及び胴壁内中央と表層側との温度差の低減と相俟って熱変形も生じにくい耐熱性を有するボトルとなる。」

ク 甲7に記載された事項
甲7には、おおむね次の事項が記載されている。
・「[0001] 本発明は、射出成形されたプリフォームの温度を制御するプリフォームの温度調整装置及びプリフォームの温度調整方法に関する。」

・「[0041] プリフォームから容器を製造する装置は、有底プリフォームを射出成形する射出成形装置と、射出成形された有底プリフォームの温度及び肉厚を所望状態に調整する温度調整装置と、温度調整された有底プリフォームをブロー成形して中空の容器とするブロー成形装置とを、少なくとも備えている。有底プリフォームは、例えば、ブロー成形装置上に回転可能に保持される回転盤のネック型にて、順次、射出成形装置、温度調整装置、ブロー成形装置に移送される。」

・「[0043] 図2から図4に基づいて温度調整装置を説明する。
[0044] 図2に示すように、プリフォーム1は回転盤6に設けられたネック型7によって口頭部2が保持され、温度調整装置11に供給される。温度調整装置11は、プリフォーム1の外側部分を取り囲む温度調整ポット12と、プリフォーム1の内側部分に挿入される温度調整コア13を備えている。
[0045] 図2、図3に示すように、温度調整ポット12は複数一組でポットベース15に固定されている。温度調整ポット12は、温度調整ポットとしての冷却ポット16と温度調整ブロックとしての2つの加熱ブロック17が連結台18を介して一体的にされ、ポットベース15に固定されている。
[0046] 冷却ポット16は、プリフォーム1の底部4及び底部4に連続する胴部3の下方部位(周囲部の一部)3aの外周面部を保持する内壁面16aを備えている。加熱ブロック17は、プリフォーム1の胴部3の下方部位3aを除く部位の外周面に非接触で対向する内壁面17aを備えている。図では加熱ブロック17は2段式で示されているが、1段にしても3段以上にしても構わない。また、各々の加熱ブロックは独立して温度制御可能であり、例えば100〜450℃の温度範囲で適宜設定することができる。同様に冷却ポット16でも、例えば、10〜90℃の範囲で温度調整が可能である。」

(2)甲3発明について
甲3の1ないし3、5及び6によると、特許異議申立人が、「機種:SBIII−100L−20」の成形機及び「金型番号:BI−5220」の金型を、第三者であるエスアンドエスプロダクツ株式会社に対して、本件特許の優先日前に譲渡(2018年4月13日出荷、同年同月16日納品)したといえる。
ところで、甲2には、プリフォームを射出成形し、当該プリフォームをブロー成形してボトルを製造するための成形機の具体的な機種として「SBIII−250LS−50S(株)青木固研究所製」(【0035】)が記載され、その成形機に用いられる金型について、図1からは、射出コア16が、プリフォーム10の底部の形状を規定する底部規定部と、前記プリフォーム10の胴部の形状を規定する胴部規定部と、前記プリフォーム10のネック部の形状を規定するネック部規定部と、を有していることが看取できる。
そうすると、甲3の1の金型は、甲2と同じ成形機である「SBIII」シリーズの機種に用いられるものであり、甲3の4の図1の試供品外観からすると、金型として、上記甲2に記載のような構造を有しているといえる。
また、甲3の1の「インコアを磨き、ペーパー600番であらした所、良くなった。全コアをペーパー600番で縦あらししています。」(第2ページ下から2行目及び最終行)の記載、及び、甲3の4の試験結果の図14ないし16に示される測定箇所表面拡大画像から、インコアを含む全コアは、ペーパー600番で縦あらしをされることにより、底部規定部からネック部規定部へ延びる溝が形成されたものであるといえる。
さらに、甲2には、樹脂製の有底のプリフォーム10を射出成形する射出成形工程(射出成形部)と、前記プリフォーム10をブロー成形してボトル6を製造するブロー成形工程(ブロー成形部)と、を有するボトル6の製造方法(製造装置)であって、前記射出成形工程は、射出コア16および射出キャビティ型1によって形成されるキャビティ11内に溶融樹脂を充填してプリフォーム10を形成する充填工程と、射出金型と射出コアから前記プリフォーム10を胴部内の冷却が未完で高温状態にあるうちに離型する工程とを含む事項(【0012】ないし【0034】)が記載されており、図1からは、射出キャビティ型1が、プリフォーム10の底部の外形を規定する内底部と、プリフォーム10の胴部の外形を規定する内壁部と、前記内壁部を挟んで前記内底部の反対側に位置する開口部と、を有していることが看取できる。
そして、甲3の1の金型が搭載される成形機は、甲2の実施例で使用された成形機と同じ「SBIII」シリーズの機種であることからすると、上記甲2に記載のような構成を有しているとともに、甲2に記載のような製造方法を実行するものであるといえる。また、甲3の1には、成形報告において原料種別「PET」と記載されているから、PET製の有底のプリフォームを射出成形していたといえる。
加えて、一般に、成形機の納品時又は納品後所定の期間内に、納品先でも当該成形機が正常に動作するかを確認する目的で、成形試験を行うことは技術常識である。
したがって、甲3の1ないし3及び5、甲2の記載並びに本件特許の優先日前における技術常識を総合的に勘案すれば、以下の甲3装置発明及び甲3製法発明が、本件特許の優先日前に、公然に実施されていたと認める。

<甲3装置発明>
「PET製の有底のプリフォームを射出成形する射出成形部と、
前記プリフォームをブロー成形してボトルを製造するブロー成形部と、を備えるボトルの製造装置であって、
前記射出成形部が、
樹脂製の有底のプリフォームを射出成形するための射出コアと射出キャビティ型と、を含み、
前記射出コアが、
前記プリフォームの底部の形状を規定する底部規定部と、
前記プリフォームの胴部の形状を規定する胴部規定部と、
前記プリフォームのネック部の形状を規定するネック部規定部と、を有し、
前記胴部規定部の表面に、ペーパー600番で縦あらしをされることにより、前記底部規定部から前記ネック部規定部へ延びる溝が形成されており、
前記射出キャビティ型が、
前記プリフォームの底部の外形を規定する内底部と、
前記プリフォームの胴部の外形を規定する内壁部と、
前記内壁部を挟んで前記内底部の反対側に位置する開口部と、を有し、
前記射出成形部が、射出金型と射出コアから前記プリフォーム10を胴部内の冷却が未完で高温状態にあるうちに離型するように構成されている
ボトルの製造装置。」

<甲3製法発明>
「PET製の有底のプリフォームを射出成形する射出成形工程と、
前記プリフォームをブロー成形してボトルを製造するブロー成形工程と、を有するボトルの製造方法であって、
前記射出成形工程は、射出コアおよび射出キャビティ型によって形成されるキャビティ内に溶融樹脂を充填してプリフォームを形成する充填工程を含み、
前記射出コアは、
前記プリフォームの底部の形状を規定する底部規定部と、
前記プリフォームの胴部の形状を規定する胴部規定部と、
前記プリフォームのネック部の形状を規定するネック部規定部と、を有し、
前記胴部規定部の表面に、ペーパー600番で縦あらしをされることにより、前記底部規定部から前記ネック部規定部へ延びる溝が形成されており、
前記射出キャビティ型は、
プリフォームの底部の外形を規定する内底部と、
プリフォームの胴部の外形を規定する内壁部と、
前記内壁部を挟んで前記内底部の反対側に位置する開口部と、を有し、
前記射出成形工程において、射出金型と射出コアから前記プリフォーム10を胴部内の冷却が未完で高温状態にあるうちに離型する
ボトルの製造方法。」

(3)対比・判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲3製法発明を対比する。
甲3製法発明における「PET製の有底のプリフォーム」は、本件特許発明1における「ポリエステル製の有底のプリフォーム」に相当する。
甲3製法発明における「ボトル」は、PET製の有底のプリフォームをブロー成形したものであるから、本件特許発明1における「ポリエステル製容器」に相当する。
甲3製法発明における「射出コア」は、本件特許発明1における「射出コア型」に相当する。
甲3製法発明における「前記射出成形工程において、射出金型と射出コアから前記プリフォーム10を胴部内の冷却が未完で高温状態にあるうちに離型する」は、本件特許発明1における「前記射出成形工程において、前記コア型および前記射出キャビティ型から前記プリフォームを高温状態で離型する」に相当する。

したがって、両者は、
「ポリエステル製の有底のプリフォームを射出成形する射出成形工程と、
前記プリフォームをブロー成形してポリエステル製容器を製造するブロー成形工程と、を有するポリエステル製容器の製造方法であって、
前記射出成形工程は、少なくとも射出コア型および射出キャビティ型によって形成されるキャビティ内に溶融樹脂を充填してプリフォームを形成する充填工程を含み、
前記射出コア型は、
前記プリフォームの底部の形状を規定する底部規定部と、
前記プリフォームの胴部の形状を規定する胴部規定部と、
前記プリフォームのネック部の形状を規定するネック部規定部と、を有し、
前記胴部規定部の表面に、前記底部規定部から前記ネック部規定部へ延びる溝が形成されており、
前記射出成形工程において、前記コア型および前記射出キャビティ型から前記プリフォームを高温状態で離型する、
ポリエステル製容器の製造方法。」
の点で一致し、次の点で相違する。

<相違点3−1>
本件特許発明1は「射出成形された前記プリフォームを冷却しつつ温調する温調工程」を有することが特定されるのに対し、甲3製法発明はそのような特定がされていない点。

<相違点3−2>
射出コアの胴部規定部の表面について、本件特許発明1は「前記溝が形成されている部分の周方向の中心線平均粗さRa1が、0.2μm以上15μm以下」と特定されるのに対し、甲3製法発明はそのような特定がされていない点。

まず、新規性について検討する。
上記<相違点3−1>は、実質的な相違点であるから、本件特許発明1は、甲3製法発明であるとはいえない。
次に、進歩性について検討する。
甲3の1の金型が搭載される成形機は甲2の実施例で使用されたものと同じ「SBIII」シリーズの機種であるから、甲3製法発明も甲2に記載されるのと同様の製造工程を実施するものと解される。そして、甲2には、高温離型したプリフォームの温度を均一に調整してからボトルに延伸ブロー成形し、そのボトルを熱処理して耐熱性を有するボトルとした場合、成形に時間を要するという課題を有すること(【0007】)、予備ブロー手段の採用によりプリフォームの胴部表面からの放熱を一時的に抑制して内部の蓄熱量の減少を阻止し、本ブロー成形に至までの胴部温度を高く維持していること(【0008】)も記載されていることからみて、「SBIII」シリーズの成形機を使用した製造方法においては、温調工程を備えていないし、まして、高温離型したプリフォームをブロー成形前に冷却することはない。
してみれば、たとえ、甲7に記載されるように冷却ポッド及び冷却コアを含む温度調整装置を用いて、高温離型したプリフォームを冷却しつつ温度調整することが公知技術であったとしても、「SBIII」シリーズの成形機を使用する甲3製法発明において、上記公知技術を適用し、高温離型したプリフォームの温度を冷却しつつ温度調整する動機付けはないし、むしろ、甲3製法発明において、「温調工程」を設けると成形に時間を要するという問題が生じ、さらに、「プリフォームを冷却」するとプリフォームの蓄熱量を減少させてしまうという問題も生じるため、「プリフォームを冷却しつつ温調する」ことに阻害要因があったといえる。
そして、甲3製法発明において、他の証拠に記載された事項を考慮しても<相違点3−1>に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、<相違点3−2>を検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲3製法発明及び他の証拠に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件特許発明2について
本件特許発明2と甲3製法発明を対比すると、上記<相違点3−1>及び<相違点3−2>で相違する。
そして、<相違点3−1>ついては、上記アで検討したとおりである。
よって、<相違点3−2>を検討するまでもなく、本件特許発明2は、甲3製法発明及び他の証拠に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件特許発明6について
本件特許発明6と甲3装置発明を対比する。
甲3装置発明における「PET製の有底のプリフォーム」は、本件特許発明6における「ポリエステル製の有底のプリフォーム」に相当する。
甲3装置発明における「ボトル」は、PET製の有底のプリフォームをブロー成形したものであるから、本件特許発明6における「ポリエステル製容器」に相当する。
甲3装置発明における「射出コア」は、本件特許発明6における「射出コア型」に相当する。
甲3装置発明における「前記射出成形部が、射出金型と射出コアから前記プリフォーム10を胴部内の冷却が未完で高温状態にあるうちに離型するように構成されている」は、本件特許発明6における「前記射出成形部が、前記コア型および前記射出キャビティ型から前記プリフォームを高温状態で離型するように構成されている」に相当する。

したがって、両者は、
「ポリエステル製の有底のプリフォームを射出成形する射出成形部と、
前記プリフォームをブロー成形してポリエステル製容器を製造するブロー成形部と、を備えるポリエステル製容器の製造装置であって、
前記射出成形部が、
ポリエステル製の有底のプリフォームを射出成形するための射出コア型であって、
前記プリフォームの底部の形状を規定する底部規定部と、
前記プリフォームの胴部の形状を規定する胴部規定部と、
前記プリフォームのネック部の形状を規定するネック部規定部と、を有し、
前記胴部規定部の表面に前記底部規定部から前記ネック部規定部へ延びる溝が形成されており、
前記胴部規定部の表面のうち、前記溝が形成されている部分の周方向の中心線平均粗さRa1が、0.2μm以上15μm以下である射出コア型を含み、
前記射出成形部が、前記コア型および前記射出キャビティ型から前記プリフォームを高温状態で離型するように構成されている、
ポリエステル製容器の製造装置。」
の点で一致し、次の点で相違する。

<相違点3−3>
本件特許発明6は「射出成形された前記プリフォームを冷却しつつ温調する温調部」を有することが特定されるのに対し、甲3装置発明は、そのような特定がされていない点。

<相違点3−4>
射出コアの胴部規定部の表面について、本件特許発明6は「前記溝が形成されている部分の周方向の中心線平均粗さRa1が、0.2μm以上15μm以下」と特定されるのに対し、甲3装置発明はそのような特定がされていない点。

そして、上記<相違点3−3>は上記<相違点3−1>と実質的に同じであるから、その判断も上記アと同様である。
よって、<相違点3−4>を検討するまでもなく、本件特許発明6は、甲3装置発明でないし、甲3装置発明及び他の証拠に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件特許発明7について
本件特許発明7と甲3装置発明を対比すると、上記<相違点3−3>及び<相違点3−4>で相違する。
そして、<相違点3−3>ついては、上記ウで検討したとおりである。
よって、<相違点3−4>を検討するまでもなく、本件特許発明7は、甲3装置発明及び他の証拠に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、令和3年10月22日付けの意見書において、上記訂正事項2、9について「前記訂正事項は、甲第7号証に示されている(本件特許異議申立書の第4頁、21頁参照)。よって、甲第1号証から甲第7号証に基づけば、訂正事項2,9は容易に想到される。」と主張している。
しかしながら、上記(3)ア、ウで検討したとおりであって、上記訂正事項2、9は、甲3発明及び他の証拠に基づいて当業者が容易に想到できたものではない。
よって、他の訂正事項についての主張を検討するまでもなく、特許異議申立人の上記主張は首肯できない。

(5)取消理由1についてのむすび
したがって、本件特許発明1、2、6及び7は、特許法第29条第1項第2号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1、2、6及び7に係る特許は、取消理由1によっては取り消すことはできない。

2 取消理由2(甲4関連の公然実施発明に基づく新規性進歩性
(1)各証拠に記載された事項
ア 甲4の1に記載された事項
甲4の1には、おおむね次の事項が記載されている。
・「



・「



イ 甲4の2に記載された事項
甲4の2には、おおむね次の事項が記載されている。
・「



・「



ウ 甲4の3に記載された事項
甲4の3には、おおむね次の事項が記載されている。
・「



エ 甲4の4に記載された事項
甲4の4には、おおむね次の事項が記載されている。
・「




オ 甲4の5に記載された事項
甲4の5には、おおむね次の事項が記載されている。
・「



カ 甲4の6に記載された事項
甲4の6には、おおむね次の事項が記載されている。
・「



・「



キ 甲6に記載された事項
甲6には、おおむね次の事項が記載されている。
・「



・「



(2)甲4発明について
ア 甲4発明
甲4の1ないし6によると、本件特許の優先日前に、特許異議申立人が、「機種:SBIII−250LS−50」の成形機及び「金型番号B−19483」の金型を、本件特許の優先日前に輸出(2017年4月13日工場出荷、同年同月22日出港)したといえる。
ところで、甲2には、プリフォームを射出成形し、当該プリフォームをブロー成形してボトルを製造するための成形機の具体的な機種として「SBIII−250LS−50S(株)青木固研究所製」(【0035】)が記載され、その成形機に用いられる金型について、図1からは、射出コア16が、プリフォーム10の底部の形状を規定する底部規定部と、前記プリフォーム10の胴部の形状を規定する胴部規定部と、前記プリフォーム10のネック部の形状を規定するネック部規定部と、を有していることが看取できる。
そうすると、甲4の1の金型は、甲2と同じ成形機である「SBIII」シリーズの機種に用いられるものであることからすると、金型として、上記甲2に記載のような構造を有しているといえる。
また、甲4の5の「機種SBIII−250LS−50」、「型番B−19483」、「離型性を良くする為、インコアを#240にてあらし」(いずれも第1ページ)の記載によると、甲4の1のインコア、すなわち、射出コアは、#240にてあらされているものである。
さらに、甲2には、樹脂製の有底のプリフォーム10を射出成形する射出成形工程(射出成形部)と、前記プリフォーム10をブロー成形してボトル6を製造するブロー成形工程(ブロー成形部)と、を有するボトル6の製造方法(製造装置)であって、前記射出成形工程は、射出コア16および射出キャビティ型1によって形成されるキャビティ11内に溶融樹脂を充填してプリフォーム10を形成する充填工程を含む事項(【0012】ないし【0034】)が記載されており、図1からは、射出キャビティ型1が、プリフォーム10の底部の外形を規定する内底部と、プリフォーム10の胴部の外形を規定する内壁部と、前記内壁部を挟んで前記内底部の反対側に位置する開口部と、を有していることが看取できる。
そして、甲4の金型が搭載される成形機が、甲2と同じ「SBIII」シリーズの機種であることからすると、上記甲2に記載のような構成を有しているとともに、甲2に記載のような製造方法を実行するものであるといえる。また、甲4の1には、成形樹脂名「PP」と記載されているから、PP製の有底のプリフォームを射出成形していたといえる。
加えて、一般に、成形機の納品時又は納品後所定の期間内に、納品先でも当該成形機が正常に動作するかを確認する目的で、成形試験を行うことは技術常識である。
したがって、甲4の1ないし6、甲2の記載並びに本件特許の優先日前における技術常識を総合的に勘案すれば、以下の甲4装置発明及び甲4製法発明が、本件特許の優先日前に、公然に実施されていたと認める。

<甲4装置発明>
「PP製の有底のプリフォームを射出成形する射出成形部と、
前記プリフォームをブロー成形してボトルを製造するブロー成形部と、を備えるボトルの製造装置であって、
前記射出成形部が、
樹脂製の有底のプリフォームを射出成形するための射出コアと射出キャビティ型と、を含み、
前記射出コアが、
前記プリフォームの底部の形状を規定する底部規定部と、
前記プリフォームの胴部の形状を規定する胴部規定部と、
前記プリフォームのネック部の形状を規定するネック部規定部と、を有し、
前記射出コアの表面は、#240にてあらされており、
前記射出キャビティ型が、
前記プリフォームの底部の外形を規定する内底部と、
前記プリフォームの胴部の外形を規定する内壁部と、
前記内壁部を挟んで前記内底部の反対側に位置する開口部と、を有する、
ボトルの製造装置。」

<甲4製法発明>
「PP製の有底のプリフォームを射出成形する射出成形工程と、
前記プリフォームをブロー成形してボトルを製造するブロー成形工程と、を有するボトルの製造方法であって、
前記射出成形工程は、射出コアおよび射出キャビティ型によって形成されるキャビティ内に溶融樹脂を充填してプリフォームを形成する充填工程を含み、
前記射出コアは、
前記プリフォームの底部の形状を規定する底部規定部と、
前記プリフォームの胴部の形状を規定する胴部規定部と、
前記プリフォームのネック部の形状を規定するネック部規定部と、を有し、
前記射出コアの表面は、#240にてあらされており、
前記射出キャビティ型は、
プリフォームの底部の外形を規定する内底部と、
プリフォームの胴部の外形を規定する内壁部と、
前記内壁部を挟んで前記内底部の反対側に位置する開口部と、を有する、
ボトルの製造方法。」

(3)対比・判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲4製法発明を対比する。
甲4製法発明における「ボトル」は、有底のプリフォームをブロー成形したものであるから、本件特許発明1における「容器」に相当する。
甲4製法発明における「射出コア」は、本件特許発明1における「射出コア型」に相当する。
甲4製法発明において「あらし」の方向は特定されていないが、あらされた部分の少なくとも一部は、長手方向に延びている溝が含まれている蓋然性が高く、また、甲6の試験結果(第2ページの表1試験結果「#240測定箇所1Ra0.456μm」,「測定箇所2Ra0.258μm」,「測定箇所3Ra0.212μm」)を参酌すれば、甲4製法発明において#240であらされた部分の周方向の中心線平均粗さRaは甲6に記載の測定箇所1ないし3のRaと同程度である蓋然性が高いから、甲4製法発明の「#240であらされ」た「射出コアの表面」は、本件特許発明1に規定された「前記胴部規定部の表面に、前記底部規定部から前記ネック部規定部へ延びる溝が形成されており、前記射出コア型の前記胴部規定部の表面のうち、前記溝が形成されている部分の周方向の中心線平均粗さRa1が、0.2μm以上15μm以下」との発明特定事項を満足するといえる。
甲4製法発明における「前記射出成形工程において、射出金型と射出コアから前記プリフォーム10を胴部内の冷却が未完で高温状態にあるうちに離型する」は、本件特許発明1における「前記射出成形工程において、前記コア型および前記射出キャビティ型から前記プリフォームを高温状態で離型する」に相当する。

したがって、両者は、
「有底のプリフォームを射出成形する射出成形工程と、
前記プリフォームをブロー成形して容器を製造するブロー成形工程と、を有する容器の製造方法であって、
前記射出成形工程は、少なくとも射出コア型および射出キャビティ型によって形成されるキャビティ内に溶融樹脂を充填してプリフォームを形成する充填工程を含み、
前記射出コア型は、
前記プリフォームの底部の形状を規定する底部規定部と、
前記プリフォームの胴部の形状を規定する胴部規定部と、
前記プリフォームのネック部の形状を規定するネック部規定部と、を有し、
前記胴部規定部の表面に、前記底部規定部から前記ネック部規定部へ延びる溝が形成されており、
前記射出コア型の前記胴部規定部の表面のうち、前記溝が形成されている部分の周方向の中心線平均粗さRa1が、0.2μm以上15μm以下であり、
前記射出成形工程において、前記コア型および前記射出キャビティ型から前記プリフォームを高温状態で離型する、
ポリエステル製容器の製造方法。」
の点で一致し、次の点で相違する。

<相違点4−1>
プリフォーム及び当該プリフォームをブロー成形して製造される容器の原材料として、本件特許発明1は「ポリエステル製」と特定されるのに対し、甲4製法発明はPP製である点。

<相違点4−2>
本件特許発明1は「射出成形された前記プリフォームを冷却しつつ温調する温調工程」を有することが特定されるのに対し、甲4製法発明はそのような特定がされていない点。

事案に鑑み、<相違点4−2>から検討する。
まず、新規性について検討する。
上記<相違点4−2>は、実質的な相違点であるから、本件特許発明1は、甲4製法発明であるとはいえない。
次に、進歩性について検討する。
甲4の1の金型が搭載される成形機は甲2の実施例で使用されたものと同じ「SBIII」シリーズの機種であるから、甲4製法発明も甲2に記載されるのと同様の製造工程を実施するものと解される。そして、甲2には、高温離型したプリフォームの温度を均一に調整してからボトルに延伸ブロー成形し、そのボトルを熱処理して耐熱性を有するボトルとした場合、成形に時間を要するという課題を有すること(【0007】)、予備ブロー手段の採用によりプリフォームの胴部表面からの放熱を一時的に抑制して内部の蓄熱量の減少を阻止し、本ブロー成形に至までの胴部温度を高く維持していること(【0008】)も記載されていることからみて、「SBIII」シリーズの成形機を使用した製造方法においては、温調工程を備えていないし、まして、高温離型したプリフォームをブロー成形前に冷却することはない。
してみれば、たとえ、甲7に記載されるように冷却ポッド及び冷却コアを含む温度調整装置を用いて、高温離型したプリフォームを冷却しつつ温度調整することが公知技術であったとしても、「SBIII」シリーズの成形機を使用する甲4製法発明において、上記公知技術を適用し、高温離型したプリフォームの温度を冷却しつつ温度調整する動機付けはないし、むしろ、甲4製法発明において、「温調工程」を設けると成形に時間を要するという問題が生じ、さらに、「プリフォームを冷却」するとプリフォームの蓄熱量を減少させてしまうという問題も生じるため、「プリフォームを冷却しつつ温調する」ことに阻害要因があったといえる。
そして、甲4製法発明において、他の証拠に記載された事項を考慮しても<相違点4−2>に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、<相違点4−1>を検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲4製法発明及び他の証拠に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件特許発明2について
本件特許発明2と甲4製法発明を対比すると、上記<相違点4−1>及び<相違点4−2>で相違する。
そして、<相違点4−2>ついては、上記アで検討したとおりである。
よって、<相違点4−1>を検討するまでもなく、本件特許発明2は、甲4製法発明でないし、また、甲4製法発明及び他の証拠に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件特許発明6について
本件特許発明6と甲4装置発明を対比する。
甲4装置発明における「ボトル」は、有底のプリフォームをブロー成形したものであるから、本件特許発明6における「ポリエステル製容器」に相当する。
甲4装置発明において「あらし」の方向は特定されていないが、あらされた部分の少なくとも一部は、長手方向に延びている溝が含まれている蓋然性が高く、また、甲6の試験結果(第2ページの表1試験結果「#240測定箇所1Ra0.456μm」,「測定箇所2Ra0.258μm」,「測定箇所3Ra0.212μm」)を参酌すれば、甲4装置発明において#240であらされた部分の周方向の中心線平均粗さRaは甲6に記載の測定箇所1ないし3のRaと同程度である蓋然性が高いから、甲4装置発明の「#240であらされ」た「射出コア」は、本件特許発明6の「前記胴部規定部の表面に前記底部規定部から前記ネック部規定部へ延びる溝が形成されており、前記胴部規定部の表面のうち、前記溝が形成されている部分の周方向の中心線平均粗さRa1が、0.2μm以上15μm以下である射出コア型」に相当する。
甲4装置発明における「前記射出成形部が、射出金型と射出コアから前記プリフォーム10を胴部内の冷却が未完で高温状態にあるうちに離型するように構成されている」は、本件特許発明6における「前記射出成形部が、前記コア型および前記射出キャビティ型から前記プリフォームを高温状態で離型するように構成されている」に相当する。

したがって、両者は、
「有底のプリフォームを射出成形する射出成形部と、
前記プリフォームをブロー成形して容器を製造するブロー成形部と、を備える容器の製造装置であって、
前記射出成形部が、
ポリエステル製の有底のプリフォームを射出成形するための射出コア型であって、
前記プリフォームの底部の形状を規定する底部規定部と、
前記プリフォームの胴部の形状を規定する胴部規定部と、
前記プリフォームのネック部の形状を規定するネック部規定部と、を有し、
前記胴部規定部の表面に前記底部規定部から前記ネック部規定部へ延びる溝が形成されており、
前記胴部規定部の表面のうち、前記溝が形成されている部分の周方向の中心線平均粗さRa1が、0.2μm以上15μm以下である射出コア型を含み、
前記射出成形部が、前記コア型および前記射出キャビティ型から前記プリフォームを高温状態で離型するように構成されている、
ポリエステル製容器の製造装置。」
の点で一致し、次の点で相違する。

<相違点4−3>
プリフォーム及び当該プリフォームをブロー成形して製造される容器の原材料として、本件特許発明1は「ポリエステル製」と特定されるのに対し、甲4製法発明はPP製である点。

<相違点4−4>
本件特許発明6は「射出成形された前記プリフォームを冷却しつつ温調する温調部」を有することが特定されるのに対し、甲4製法発明は、そのような特定がされていない点。

事案に鑑み、<相違点4−4>から検討する。
そして、上記<相違点4−4>は上記<相違点4−2>と実質的に同じであるから、その判断も上記アと同様である。
よって、<相違点4−3>を検討するまでもなく、本件特許発明6は、甲4装置発明でないし、また、甲4装置発明及び他の証拠に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件特許発明7について
本件特許発明7と甲4装置発明を対比すると、上記<相違点4−3>及び<相違点4−4>で相違する。
そして、<相違点4−4>ついては、上記ウで検討したとおりである。
よって、<相違点4−3>を検討するまでもなく、本件特許発明7は、甲4装置発明でないし、また、甲4装置発明及び他の証拠に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人が令和3年10月22日付けの意見書でした主張は、上記1(4)と同様であるから、首肯できない。

(5)取消理由2についてのむすび
したがって、本件特許発明1、2、6及び7は、特許法第29条第1項第2号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1、2、6及び7に係る特許は、取消理由2によっては取り消すことはできない。

第7 取消理由で採用しなかった特許異議申立書に記載した申立理由及び特許異議申立人が主張する本件訂正により新たに生じたとする取消理由についての当審の判断

取消理由で採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由は、申立理由1のうち甲1関連及び甲5関連に基づく理由、ならびに申立理由2(サポート要件)である。
また、特許異議申立人は、令和3年10月22日提出の意見書において、新たに本件訂正請求により以下の取消理由が生じたと主張する。

・新たな理由(明確性要件)
訂正事項3、10における「高温状態」は、比較の基準若しくは程度が不明確な表現に相当する。また、本件特許明細書に、「高温」がどの程度の温度帯を示すものか一切記載されていない。
よって、訂正後の請求項1、2、6及び7に係る発明は明確でなく、特許法第36条第6項第2号の要件を満たさない。

そこで、これらの申立理由及び新たな理由について検討する。

1 申立理由1(甲1関連の公然実施発明に基づく進歩性
(1)各証拠に記載された事項
ア 甲1の1に記載された事項
甲1の1には、おおむね次の事項が記載されている。
・「



・「



イ 甲1の2に記載された事項
甲1の1には、おおむね次の事項が記載されている。
・「



・「



ウ 甲1の3に記載された事項
甲1の3には、おおむね次の事項が記載されている。
・「



・「



エ 甲1の4に記載された事項
甲1の4には、おおむね次の事項が記載されている。
・「



オ 甲1の5に記載された事項
甲1の5には、おおむね次の事項が記載されている。
・「



カ 甲1の6に記載された事項
甲1の6には、おおむね次の事項が記載されている。
・「



(2)甲1発明について
ア 甲1発明
甲1の1ないし6によると、本件特許の優先日前に、特許異議申立人が機種「SBIII−250−50」、金型番号「B−28570」という製品を、本件特許の優先日前に譲渡(2016年4月22日工場出荷)したといえる。
また、甲1の2には、顧客からの受注に基づき、上記製品の出荷直前に、出荷予定の上記製品を用いて樹脂(PP)製容器の成形作業を行った際の製品の具体的な情報として「製品ヒケ対策の為、インジェクションコア製品部をペーパー2000番にて縦荒しを行っています。」と記載されている。
ところで、甲2には、プリフォームを射出成形し、当該プリフォームをブロー成形してボトルを製造するための成形機の具体的な機種として「SBIII−250LS−50S(株)青木固研究所製」(【0035】)が記載され、その成形機に用いられる金型について、図1からは、射出コア16が、プリフォーム10の底部の形状を規定する底部規定部と、前記プリフォーム10の胴部の形状を規定する胴部規定部と、前記プリフォーム10のネック部の形状を規定するネック部規定部と、を有していることが看取できる。
そうすると、甲1の金型は、甲2と同じ成形機である「SBIII」シリーズの機種に用いられるものであることからすると、金型として、上記甲2に記載のような構造を有しているといえる。
さらに、甲2には、樹脂製の有底のプリフォーム10を射出成形する射出成形工程(射出成形部)と、前記プリフォーム10をブロー成形してボトル6を製造するブロー成形工程(ブロー成形部)と、を有するボトル6の製造方法(製造装置)であって、前記射出成形工程は、射出コア16および射出キャビティ型1によって形成されるキャビティ11内に溶融樹脂を充填してプリフォーム10を形成する充填工程を含む事項(【0012】ないし【0034】)が記載されており、図1からは、射出キャビティ型1が、プリフォーム10の底部の外形を規定する内底部と、プリフォーム10の胴部の外形を規定する内壁部と、前記内壁部を挟んで前記内底部の反対側に位置する開口部と、を有していることが看取できる。
そして、甲1の金型が搭載される成形機が、甲2と同じ「SBIII」シリーズの機種であることからすると、上記甲2に記載のような構成を有しているとともに、甲2に記載のような製造方法を実行するものであるといえる。
加えて、一般に、成形機の納品時又は納品後所定の期間内に、納品先でも当該成形機が正常に動作するかを確認する目的で、成形試験を行うことは技術常識である。
したがって、甲1の1ないし6、甲2の記載並びに本件特許の優先日前における技術常識を総合的に勘案すれば、以下の甲1装置発明及び甲1製法発明が、本件特許の優先日前に、公然に実施されていたと認める。

<甲1装置発明>
「PP製の有底のプリフォームを射出成形する射出成形部と、
前記プリフォームをブロー成形してボトルを製造するブロー成形部と、を備えるボトルの製造装置であって、
前記射出成形部が、
樹脂製の有底のプリフォームを射出成形するための射出コアと射出キャビティ型と、を含み、
前記射出コアが、
前記プリフォームの底部の形状を規定する底部規定部と、
前記プリフォームの胴部の形状を規定する胴部規定部と、
前記プリフォームのネック部の形状を規定するネック部規定部と、を有し、
前記射出キャビティ型が、
前記プリフォームの底部の外形を規定する内底部と、
前記プリフォームの胴部の外形を規定する内壁部と、
前記内壁部を挟んで前記内底部の反対側に位置する開口部と、を有する、
ボトルの製造装置。」

<甲1製法発明>
「PP製の有底のプリフォームを射出成形する射出成形工程と、
前記プリフォームをブロー成形してボトルを製造するブロー成形工程と、を有するボトルの製造方法であって、
前記射出成形工程は、射出コアおよび射出キャビティ型によって形成されるキャビティ内に溶融樹脂を充填してプリフォームを形成する充填工程を含み、
前記射出コアは、
前記プリフォームの底部の形状を規定する底部規定部と、
前記プリフォームの胴部の形状を規定する胴部規定部と、
前記プリフォームのネック部の形状を規定するネック部規定部と、を有し、
前記射出キャビティ型は、
プリフォームの底部の外形を規定する内底部と、
プリフォームの胴部の外形を規定する内壁部と、
前記内壁部を挟んで前記内底部の反対側に位置する開口部と、を有する、
ボトルの製造方法。」

(3)対比・判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1製法発明を対比する。
甲1製法発明における「ボトル」は、有底のプリフォームをブロー成形したものであるから、本件特許発明1における「容器」に相当する。
甲1製法発明における「射出コア」は、本件特許発明1における「射出コア型」に相当する。
甲1製法発明における「前記射出成形工程において、射出金型と射出コアから前記プリフォーム10を胴部内の冷却が未完で高温状態にあるうちに離型する」は、本件特許発明1における「前記射出成形工程において、前記コア型および前記射出キャビティ型から前記プリフォームを高温状態で離型する」に相当する。

したがって、両者は、
「有底のプリフォームを射出成形する射出成形工程と、
前記プリフォームをブロー成形して容器を製造するブロー成形工程と、を有する容器の製造方法であって、
前記射出成形工程は、少なくとも射出コア型および射出キャビティ型によって形成されるキャビティ内に溶融樹脂を充填してプリフォームを形成する充填工程を含み、
前記射出コア型は、
前記プリフォームの底部の形状を規定する底部規定部と、
前記プリフォームの胴部の形状を規定する胴部規定部と、
前記プリフォームのネック部の形状を規定するネック部規定部と、を有し、
前記射出成形工程において、前記コア型および前記射出キャビティ型から前記プリフォームを高温状態で離型する、
ポリエステル製容器の製造方法。」
の点で一致し、次の点で相違する。

<相違点1−1>
プリフォーム及び当該プリフォームをブロー成形して製造される容器の原材料として、本件特許発明1は「ポリエステル製」と特定されるのに対し、甲1製法発明はPP製である点。

<相違点1−2>
本件特許発明1は「射出成形された前記プリフォームを冷却しつつ温調する温調工程」を有することが特定されるのに対し、甲1製法発明はそのような特定がされていない点。

<相違点1−3>
射出コア型の胴部規定部の表面に関して、本件特許発明1は「前記胴部規定部の表面に、前記底部規定部から前記ネック部規定部へ延びる溝が形成されており、前記射出コア型の前記胴部規定部の表面のうち、前記溝が形成されている部分の周方向の中心線平均粗さRa1が、0.2μm以上15μm以下」と特定されるのに対し、甲1製法発明はそのような特定がされていない点。

事案に鑑み、<相違点1−2>から検討する。
上記第6 1(3)ア及び第6 2(3)アと同様の理由により、たとえ甲7に記載されるように冷却ポッド及び冷却コアを含む温度調整装置を用いて、高温離型したプリフォームを冷却しつつ温度調整することが公知技術であったとしても、「SBIII」シリーズの成形機を使用する甲1製法発明において、上記公知技術を適用し、高温離型したプリフォームの温度を冷却しつつ温度調整する動機付けはないし、むしろ、甲1製法発明において、「温調工程」を設けると成形に時間を要するという問題が生じ、さらに、「プリフォームを冷却」するとプリフォームの蓄熱量を減少させてしまうという問題も生じるため、「プリフォームを冷却しつつ温調する」ことに阻害要因があったといえる。
そして、甲1製法発明において、他の証拠に記載された事項を考慮しても<相違点1−2>に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、<相違点1−1>及び<相違点1−3>を検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1製法発明及び他の証拠に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件特許発明2について
本件特許発明2と甲1製法発明を対比すると、上記<相違点1−1>、<相違点1−2>及び<相違点1−3>で相違する。
そして、<相違点1−2>ついては、上記アで検討したとおりである。
よって、<相違点1−1>及び<相違点1−3>を検討するまでもなく、本件特許発明2は、甲1製法発明及び他の証拠に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件特許発明6について
本件特許発明6と甲1装置発明を対比する。
甲1装置発明における「ボトル」は、有底のプリフォームをブロー成形したものであるから、本件特許発明6における「容器」に相当する。
甲1装置発明における「前記射出成形部が、射出金型と射出コアから前記プリフォーム10を胴部内の冷却が未完で高温状態にあるうちに離型するように構成されている」は、本件特許発明6における「前記射出成形部が、前記コア型および前記射出キャビティ型から前記プリフォームを高温状態で離型するように構成されている」に相当する。

したがって、両者は、
「有底のプリフォームを射出成形する射出成形部と、
前記プリフォームをブロー成形して容器を製造するブロー成形部と、を備える容器の製造装置であって、
前記射出成形部が、
ポリエステル製の有底のプリフォームを射出成形するための射出コア型であって、
前記プリフォームの底部の形状を規定する底部規定部と、
前記プリフォームの胴部の形状を規定する胴部規定部と、
前記プリフォームのネック部の形状を規定するネック部規定部と、を有し、
前記射出成形部が、前記コア型および前記射出キャビティ型から前記プリフォームを高温状態で離型するように構成されている、
ポリエステル製容器の製造装置。」
の点で一致し、次の点で相違する。

<相違点1−4>
プリフォーム及び当該プリフォームをブロー成形して製造される容器の原材料として、本件特許発明6は「ポリエステル製」と特定されるのに対し、甲1装置発明はPP製である点。

<相違点1−5>
本件特許発明6は「射出成形された前記プリフォームを冷却しつつ温調する温調部」を有することが特定されるのに対し、甲1装置発明は、そのような特定がされていない点。

<相違点1−6>
胴部規定部の表面に関して、本件特許発明6は「前記胴部規定部の表面に前記底部規定部から前記ネック部規定部へ延びる溝が形成されており、
前記胴部規定部の表面のうち、前記溝が形成されている部分の周方向の中心線平均粗さRa1が、0.2μm以上15μm以下である射出コア型を含み」と特定されるのに対し、甲1装置発明はそのような特定がされていない点。

事案に鑑み、<相違点1−5>から検討する。
そして、上記<相違点1−5>は上記<相違点1−2>と実質的に同じであるから、その判断も上記アと同様である。
よって、<相違点1−4>及び<相違点1−6>を検討するまでもなく、本件特許発明6は、甲1装置発明及び他の証拠に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件特許発明7について
本件特許発明7と甲1装置発明を対比すると、上記<相違点1−4>ないし<相違点1−6>で相違する。
そして、<相違点1−5>ついては、上記ウで検討したとおりである。
よって、<相違点1−4>及び<相違点1−6>を検討するまでもなく、本件特許発明7は、甲1装置発明及び他の証拠に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)申立理由1(甲1関連の公然実施発明に基づく進歩性)についてのまとめ
したがって、本件特許発明1、2、6及び7は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1、2、6及び7に係る特許は、申立理由1によっては取り消すことはできない。

2 申立理由1(甲5関連の公然実施発明に基づく進歩性
(1)各証拠に記載された事項
ア 甲5の1に記載された事項
甲5の1には、おおむね次の事項が記載されている。
・「




イ 甲5の2に記載された事項
甲5の2には、おおむね次の事項が記載されている。
・「







ウ 甲5の3に記載された事項
甲5の3には、おおむね次の事項が記載されている。
・「



(2)公然実施について
特許法第29条第1項第2号にいう「公然実施」とは、発明の内容を不特定多数の者が知り得る状況でその発明が実施されることをいうものである。 甲5の1ないし3には、「SBIII−500LL−75」、「SB3−250−100」」、「SBIII−500LL−50」という機種について成形調整またはスタートアップという調整作業を実施したことは記載されているものの、それらが不特定多数の者が知り得る状況で実施されたとは認められない。
そうすると、甲5の1ないし3からは、特許異議申立人の主張する公然実施発明は認定できない。

(3)申立理由1(甲5関連の公然実施発明に基づく進歩性)についてのまとめ
したがって、本件特許発明1、2、6及び7は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1、2、6及び7に係る特許は、申立理由1によっては取り消すことはできない。

3 申立理由2(サポート要件)
(1)発明の詳細な説明の記載
・「【0007】
本発明は、短い成形サイクル時間であってもプリフォームを適切に離型することができ、良質の樹脂製容器を製造できる、樹脂製容器の製造方法、射出コア型、射出成形用金型および樹脂製容器の製造装置を提供することを目的とする。」

・「【0021】
ここで図3を参照して、胴部規定部122の態様を説明する。図3は射出コア型102の胴部規定部122の表面を撮影した顕微鏡写真である。図3に示されるように、胴部規定部122の表面には、底部規定部112からネック部規定部132へ延びる(図2および図3における上下方向D1に沿って延びる)第1の溝144が形成されている。換言すると、第1の溝144は図2及び図3における胴部規定部122の周方向D2と交差する方向に延在している。なお、ここで言う「交差する」とは、第1の溝144の延在方向が周方向D2と厳密に直交することを意図するものではなく、斜めに(例えば交差角度が30°〜150°程度に)交差する態様を含む意図で使用される。ただし、第1の溝144の延在方向が、周方向D2と交差角度75〜105°で略直角に交差すると射出成形後の離型性の観点で好ましい。第1の溝144の幅は10μm〜50μmとすることができ、第1の溝144の深さは0.2μm〜25μmとすることができる。特に、第1の溝144の幅は20μm〜40μm、第1の溝144の深さは4μm〜14μmの範囲で設定されるとより望ましい。」

・「【0036】
本実施形態の樹脂製容器の製造方法で用いられる射出コア型102では、胴部規定部122の表面に、底部規定部112からネック部規定部132へ延びる第1の溝144が形成されている。換言すると、胴部規定部122の表面には、射出コア型102の抜き方向に延在する第1の溝144が形成されている。射出コア型102を抜く際に第1の溝144が空気の流通路として機能することで、従来の不規則な加工が施された射出コア型よりも高温状態のプリフォーム300の射出コア型102への密着を好適に抑制することができる。これにより、プリフォーム300の変形を好適に抑制することができる。また、射出コア型の表面に加工を施すとその加工面の形状がプリフォームにある程度転写される。従来の射出成形工程においてプリフォームを冷却する手法では、プリフォームに転写された形状が最終成形品にも表れるおそれがあったため、射出コア型の加工面の形状に制限があった。しかしながら本実施形態の樹脂製容器の製造方法では、離型時にプリフォーム300が高温状態にあり軟性が非常に高いことから、後工程に向かうにつれてプリフォーム300の内面への転写が自然に緩和されて目立たなくなる。これにより、短い成形サイクル時間で高温状態でプリフォーム300を離型しても良質の樹脂製容器を製造できる。」

・「



(2)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

(3)検討
以下、上記(2)の判断基準に基づいて検討する。
発明の詳細な説明の段落【0007】によると、本件特許発明の解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は、短い成形サイクル時間であってもプリフォームを適切に離型することができ、良質の樹脂製容器を製造することである。
発明の詳細な説明の段落【0036】によると、「溝」が「底部規定部からネック部規定部」まで、切れ目なく一連に延びているか、途中で切れているかに関わらず、「底部規定部からネック部規定部」の方向に延びている「溝」があれば、上記発明の課題を解決できると当業者が認識できる。そして、明細書(特に、段落【0021】、【図3】)の記載は、「溝」が「底部規定部からネック部規定部」まで、切れ目なく一連に延びているか、途中で切れているかは特定していないので、双方包含するものであるといえる。
そして、本件特許の請求項1及び請求項1を引用する請求項2、請求項6及び請求項6を引用する請求項7、並びに、請求項9及び請求項9を引用する請求項10は、「胴部規定部の表面に、底部規定部からネック部規定部へ延びる溝」との特定事項を包含しており、該「溝」には、一連に延びる溝も、途中で切れている溝も含まれるから、本件特許発明1、2、6、7、9及び10は、当業者が上記発明の課題を解決できると認識する。

(4)特許異議申立人の主張について
特許異議申立書に記載された特許異議申立人の主張は、おおむね以下のとおりである。
「本件特許発明1、本件特許発明4の前記事項のうち、「前記底部規定部から前記ネック部規定部へ延びる溝」は、「前記底部規定部から」のように溝の始点を特定する文言と、「前記ネック部規定部へ」のように溝の終点を特定する文言で構成される。そのため、これらの文言からすれば、前記事項は、胴部規定部の表面において、胴部規定部の底部規定部との境界から、胴部規定部のネック部規定部との境界まで一連に延びる溝を意味すると解される。・・・(中略)・・・本件特許発明1、本件特許発明4で規定される「前記底部規定部から前記ネック部規定部へ延びる溝」なる事項は、本件明細書及び図面に記載も示唆もされておらず、本件明細書において、当業者が理解できる程度に十分に説明されていない。」
しかし、上記(3)で検討したとおりであるから、特許異議申立人の上記主張は首肯できない。

(5)申立理由2(サポート要件)についてのまとめ
したがって、本件特許の請求項1、2、6、7、9及び10に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、申立理由2によっては取り消すことはできない。

4 新たな申立理由(明確性要件)
(1)明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。

(2)明確性要件の判断
ホットパリソン方式において、プリフォームを「高温」で離型するとの表現が、「プリフォームの内部が冷却未完の状態」で離型することを意味することが本件特許出願時における技術常識であったといえ(たとえば甲2、甲7参照)、しかるに、本件特許の請求項1、6に係る「高温状態」も、プリフォームの内部が冷却未完の状態を意味すると当業者が理解できるから、本件特許の請求項1、6に係る「前記プリフォームを高温状態で離型する」との記載は明確である。

(3)新たな申立理由(明確性要件)についてのまとめ
したがって、本件特許の請求項1及び6、請求項1を引用する請求項2、ならびに請求項6を引用する請求項7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、新たな申立理由によっては取り消すことはできない。

第8 結語
以上のとおりであるから、取消理由、特許異議申立人の主張する特許異議の申立ての理由及び証拠、並びに、特許異議申立人が主張する本件訂正請求により生じたとされる取消理由によっては、本件特許の請求項1、2、6、7、9及び10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1、2、6、7、9及び10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件特許の請求項3ないし5及び8に係る特許は、訂正により削除されたため、特許異議申立人による請求項3ないし5及び8に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル製の有底のプリフォームを射出成形する射出成形工程と、
射出成形された前記プリフォームを冷却しつつ温調する温調工程と、
前記プリフォームをブロー成形してポリエステル製容器を製造するブロー成形工程と、を有するポリエステル製容器の製造方法であって、
前記射出成形工程は、少なくとも射出コア型および射出キャビティ型によって形成されるキャビティ内に溶融樹脂を充填してプリフォームを形成する充填工程を含み、
前記射出コア型は、
前記プリフォームの底部の形状を規定する底部規定部と、
前記プリフォームの胴部の形状を規定する胴部規定部と、
前記プリフォームのネック部の形状を規定するネック部規定部と、を有し、
前記胴部規定部の表面に、前記底部規定部から前記ネック部規定部へ延びる溝が形成されており、
前記射出コア型の前記胴部規定部の表面のうち、前記溝が形成されている部分の周方向の中心線平均粗さRa1が、0.2μm以上15μm以下であり、
前記射出成形工程において、前記コア型および前記射出キャビティ型から前記プリフォームを高温状態で離型する、
ポリエステル製容器の製造方法。
【請求項2】
前記射出キャビティ型は、
プリフォームの底部の外形を規定する内底部と、
プリフォームの胴部の外形を規定する内壁部と、
前記内壁部を挟んで前記内底部の反対側に位置する開口部と、を有し、
前記内壁部の表面に、前記内底部から前記開口部へ延びる溝が形成されている、
請求項1に記載のポリエステル製容器の製造方法。
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】(削除)
【請求項6】
ポリエステル製の有底のプリフォームを射出成形する射出成形部と、
射出成形された前記プリフォームを冷却しつつ温調する温調部と、
前記プリフォームをブロー成形してポリエステル製容器を製造するブロー成形部と、を備えるポリエステル製容器の製造装置であって、
前記射出成形部が、
ポリエステル製の有底のプリフォームを射出成形するための射出コア型であって、
前記プリフォームの底部の形状を規定する底部規定部と、
前記プリフォームの胴部の形状を規定する胴部規定部と、
前記プリフォームのネック部の形状を規定するネック部規定部と、を有し、
前記胴部規定部の表面に前記底部規定部から前記ネック部規定部へ延びる溝が形成されており、
前記胴部規定部の表面のうち、前記溝が形成されている部分の周方向の中心線平均粗さRa1が、0.2μm以上15μm以下である、射出コア型を含み、
前記射出成形部が、前記コア型および前記射出キャビティ型から前記プリフォームを高温状態で離型するように構成されている、
ポリエステル製容器の製造装置。
【請求項7】
前記射出成形部が、
前記プリフォームの底部の外形を規定する内底部と、
前記プリフォームの胴部の外形を規定する内壁部と、
前記内壁部を挟んで前記内底部の反対側に位置する開口部と、を有し、
前記内壁部の表面に、前記内底部から前記開口部へ延びる溝が形成されている、
射出キャビティ型を含む、
請求項6に記載のポリエステル製容器の製造装置。
【請求項8】(削除)
【請求項9】
樹脂製の有底のプリフォームを射出成形する射出成形部と、
射出成形された前記プリフォームを冷却しつつ温調する温調部と、
前記プリフォームをブロー成形して樹脂製容器を製造するブロー成形部と、を備える樹脂製容器の製造装置であって、
前記射出成形部が、
樹脂製の有底のプリフォームを射出成形するための射出コア型であって、
前記プリフォームの底部の形状を規定する底部規定部と、
前記プリフォームの胴部の形状を規定する胴部規定部と、
前記プリフォームのネック部の形状を規定するネック部規定部と、を有し、
前記胴部規定部の表面に前記底部規定部から前記ネック部規定部へ延びる溝が形成されており、
前記胴部規定部の表面のうち、前記溝が形成されている部分の周方向の中心線平均粗さ Ra1が、0.2μm以上15μm以下である、射出コア型を含み、
前記温調部は、射出成形された前記プリフォームを冷却しつつ温調するための温調コア型を含み、
前記温調コア型は、前記プリフォームを冷却しつつ温調する際に前記プリフォームの胴部に接触する胴部接触部を有し、
前記射出コア型の前記胴部規定部の表面の周方向の中心線平均粗さRa1が、前記温調コア型の前記胴部接触部の表面の周方向の中心線平均粗さRa2よりも大きい、
樹脂製容器の製造装置。
【請求項10】
前記温調コア型の前記胴部接触部の表面の周方向の中心線平均粗さRa2が、0.1μm以上0.4μm以下である、請求項9に記載の樹脂製容器の製造装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-02-03 
出願番号 P2020-544062
審決分類 P 1 651・ 112- YAA (B29C)
P 1 651・ 537- YAA (B29C)
P 1 651・ 121- YAA (B29C)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 大島 祥吾
特許庁審判官 岩本 昌大
細井 龍史
登録日 2020-10-16 
登録番号 6780155
権利者 日精エー・エス・ビー機械株式会社
発明の名称 樹脂製容器の製造方法、射出コア型、射出成形用金型および樹脂製容器の製造装置  
代理人 秋元 正哉  
代理人 吉澤 大輔  
代理人 特許業務法人 信栄特許事務所  
代理人 特許業務法人 信栄特許事務所  
代理人 秋元 輝雄  
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