• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61F
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61F
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61F
管理番号 1384117
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-04-30 
確定日 2022-02-07 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6780047号発明「吸水性樹脂粒子、吸収体及び吸収性物品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6780047号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−5〕について訂正することを認める。 特許第6780047号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6780047号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成31年3月22日(優先権主張 平成31年1月30日)の出願であって、令和2年10月16日にその特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、同年11月4日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和3年4月30日に特許異議申立人 株式会社日本触媒(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし5)がされ、同年7月30日付けで取消理由通知が通知された後に同年10月4日に特許権者 株式会社住友精化(以下、「特許権者」という。)により訂正請求がされると共に意見書が提出され、同年10月11日付けで特許法第120条の5第5項の通知された後に、同年11月12日に特許異議申立人により意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和3年10月4日付けの本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の(1)ないし(3)のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「生理食塩水の保水量が32〜80g/gであり」
と記載されているのを、
「生理食塩水の保水量が32〜45g/gであり」
に訂正する。
請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし5についても同様に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に
「300rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度が35〜50秒であり」
と記載されているのを、
「300rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度が35〜42秒であり」
に訂正する。
請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし5についても同様に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に
「中位粒子径が250〜377μmである」
と記載されているのを、
「中位粒子径が250〜346μmである」
に訂正する。
請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし5についても同様に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)請求項1の訂正について
訂正事項1による請求項1についての訂正は、「生理食塩水の保水量」の数値範囲を狭くするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2による請求項1についての訂正は、「300rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度」の数値範囲を狭くするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
さらに、訂正事項3による請求項1についての訂正は、「中位粒子径」の数値範囲を狭くするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1ないし3による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)請求項2ない5についての訂正について
訂正事項1ないし3による請求項2ないし5についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3 むすび
以上のとおり、請求項1ないし5についての訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。

なお、訂正前の請求項1ないし5は一群の請求項に該当するものである。
そして、請求項1ないし5についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。

そして、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし5に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。

したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−5〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
上記第2で示したとおり、本件訂正は認められたため、本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、本件特許発明1ないし5を総称して「本件特許発明」ともいう。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】
エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子であって、
前記エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、
前記(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量に対して70〜100モル%であり、
生理食塩水の保水量が32〜45g/gであり、
300rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度が35〜42秒であり、
600rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度が40〜60秒であり、
中位粒子径が250〜346μmである、吸水性樹脂粒子。
【請求項2】
請求項1に記載の吸水性樹脂粒子を含有する、吸収体。
【請求項3】
前記吸水性樹脂粒子の含有量が吸収体1m2当たり100〜1000gである、請求項2に記載の吸収体。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の吸収体を備える、吸収性物品。
【請求項5】
おむつである、請求項4に記載の吸収性物品。」

第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由及び取消理由の概要
1 令和3年4月30日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
(1)異議申立理由1(甲第1ないし5、8、9及び11号証のいずれかに基づく新規性
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1、2、9及び11号証のいずれかに記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、本件特許の請求項1、2、4及び5に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3、4、5及び8号証のいずれかに記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)異議申立理由2(甲第1ないし5、8、9及び11号証のいずれかに基づく進歩性
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1、2、9及び11号証に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という 。)が容易に発明をすることができたものであり、また、本件特許の請求項1、2、4及び5に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3、4、5及び8号証に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(3)異議申立理由3(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
要旨は以下のとおり。
本件特許に係る発明は、吸収性物品に供された液が吸収性物品に充分浸透しなければ、余剰の液はその表面を流れる等して吸収性物品の外に漏れるといった不具合が生じ得ることから、吸収性物品に対しては、液が優れた浸透速度で浸透することが求められるということに基づき、「優れた浸透速度を有する吸収性物品を得ることが可能な吸水性樹脂粒子を提供すること」を課題としている(本件明細書の【0004】【0005】を参照)。そして、本件特許に係る発明の効果は、 浸透時間及び速乾性に基づき評価されている( 本件明細書の【0115】【0118】を参照)。上述した通り、速乾性は液戻り量を評価するものである。
甲4の請求項8の物性、【0036】における「衛生材料に圧力がかかった場合における逆戻り量が少なくなる」との記載、実施例1と比較例1との対比(表1、表2、【0104】) より、逆戻り量の低減には加圧下での吸水倍率が必須であることが理解できる。当事業者間の常識において、加圧下吸水倍率、すなわち荷重下の吸水能の範囲を規定しないすべての吸水性樹脂においては課題を解決できない。
また、甲4、甲13、甲14より、逆戻り量の抑制には表面架橋(または後架橋)が必須であることは吸水性樹脂の分野における技術常識であり、実際、本件明細書の実施例 (【0096】【01102】) の吸水性樹脂がすべて表面架橋されている。しかしながら、本件発明1〜5は課題(戻り量と浸透時間で評価される浸透速度)を解決するための必須要件(荷重下の吸水能及び表面架橋(または後架橋))が欠如している。また、加圧下の吸水倍率については本件明細書に一切開示が無い。
(4)異議申立理由4(実施可能要件
本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
要旨は上記(3)サポート要件と同じ。
(5)証拠方法
・甲第1号証:国際公開第2017/170605号
・甲第2号証:国際公開第2018/155591号
・甲第3号証:特開2016−028117公報
・甲第4号証:特開2006−176570号公報
・甲第5号証:国際公開第2008/015980号
・甲第6号証:甲第1号証の実施例2、23の実験成績証明書
・甲第7号証:甲第5号証の実施例1の実験成績証明書
・甲第8号証:国際公開第2006/123561号
・甲第9号証:特開2006−068731号公報
・甲第10号証:甲第9号証の実施例2の実験成績証明書
・甲第11号証:特開2006−057075号公報
・甲第12号証:甲第11号証の実施例12の実験成績証明書
・甲第13号証:特開2011−045724号公報
・甲第14号証:特開2011−080069号公報
なお、証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。

また、特許異議申立人は、令和3年11月12日に提出した意見書において、次の参考文献1ないし4を提出している。
・参考資料1:国際公開第2006/054487号
・参考資料2:Modern Superabsorbent Polymer Technology (1998) p. 119, 156-157, 167, 195-197
・参考資料3:国際公開第2020/067311号
・参考資料4:国際公開第2020/067311号の実施例7についての実験成績証明書
なお、以下、順に「参1」のようにいう。

2 取消理由の概要
令和3年7月30日付けで通知した取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要は次のとおりである。
(1)取消理由1(甲1、2、9及び11のいずれかに基づく新規性進歩性
本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった上記の甲1、2、9及び11のいずれかに記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった上記の甲1ないし5、8、9、11に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)取消理由2(甲3、4、5及び8のいずれかに基づく新規性進歩性
本件特許の請求項1、2、4及び5に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった上記の甲3、4、5及び8のいずれかに記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1、2、4及び5に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった上記の甲3、4、5及び8に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

第5 取消理由についての当審の判断
1 取消理由1(甲1、2、9及び11のいずれかに基づく新規性進歩性)及び取消理由2(甲3、4、5及び8のいずれかに基づく新規性進歩性)について
(1)甲1ないし5、8、9、11に記載された事項等
ア 甲1に記載された事項及び甲1発明
(ア)甲1に記載された事項
甲1には、「粒子状吸水剤」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
なお、下線は当審で付したものである。他の文献についても同様。
「[0011] 本発明者らは、鋭意検討をした結果、重合後の含水ゲルの粉砕(ゲル粉砕)における粉砕エネルギーを大きくする事によって、高吸水倍率と高吸水速度を両立した粒子状吸水剤を製造できることを見出し、可能になることを見出した。」
「[0122] 本発明で得られる吸水性樹脂粉末は、重量平均粒子径(D50)として、好ましくは200〜600μm、より好ましくは200〜550μm、更に好ましくは250〜500μm、特に好ましくは350〜450μmである。また、粒子径150μm未満の粒子の割合は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、更に好ましくは1重量%以下であり、粒子径850μm以上の粒子の割合は、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下、更に好ましくは1重量%以下である。なお、これらの粒子の割合の下限値としては、何れの場合も少ないほど好ましく、0重量%が望まれるが、0.1重量%程度でもよい。更に、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、好ましくは0.20〜0.50、より好ましくは0.25〜0.40、更に好ましくは0.27〜0.35である。なお、これらの粒度は、米国特許第7638570号やEDANA ERT420.2−02に開示されている測定方法に準じて、標準篩を用いて測定される。
[0123] 上述した粒度は、表面架橋後の吸水性樹脂(以下、便宜上「吸水性樹脂粒子」と称する場合がある)のみならず、最終製品としての粒子状吸水剤についても適用される。そのため、吸水性樹脂粒子において、上記範囲の粒度を維持するように、表面架橋処理(表面架橋工程)されることが好ましく、表面架橋工程以降に整粒工程を設けて粒度調整されることがより好ましい。」
「[0146] 〔3〕粒子状吸水剤の用途
本発明の粒子状吸水剤の用途は、特に限定されないが、好ましくは紙オムツ、生理用ナプキン、失禁パッド等の衛生用品の吸収体用途が挙げられる。特に、原料由来の臭気、着色等が問題となっていた高濃度紙オムツ(紙オムツ1枚あたりの粒子状吸水剤の使用量が多いもの)の吸収体として使用することができる。更に、上記吸収体の上層部に使用される場合に、顕著な効果が期待できる。」
「[0160] 本発明は従来にない新規な製造方法によって、粒子径ごとに本発明の新規パラメータDRC5minなどで規定された新規な粒子状吸水剤を提供し、かかるDRC5minなどで規定された新規な粒子状吸水剤は実使用時の吸収物品の逆戻り量を低減する。DRC5minは5分間という短時間での吸収性能を評価しており、吸水速度を適切に評価するための手法であり、従来公知の1時間での飽和状態での吸収性能を評価する加圧下吸水倍率(AAP)や、米国特許第7108916号に記載のFHAでは適切に評価できない特性を評価するものである。また、特許文献4(国際公開第2015/129917号)に記載のGCAはガラスフィルターの上面とマリオット管の下部のメニスカスとの間に高さ10cmの差をつけた状態での10分間の「加圧下」での液吸収能力を評価するものである。DRC5minは5分間というさらに短い時間での「無加圧下」での吸収性能を評価するパラメータである。GCAとDRC5minは測定条件が異なるため、相互に評価を類推することができないパラメータである。またDRC5minは、紙おむつにおいてパルプからの尿の吸い取り能力、ひいては肌かぶれや尿漏れの抑制をより適切に評価するものである。」
「[0164] CRC(遠心分離機保持容量)
本発明の粒子状吸水剤のCRC(遠心分離機保持容量)は、30〜50g/gであり、好ましくは31〜50g/g、32〜50g/g、33〜50g/g、34〜50g/g、35〜50g/g、36〜50g/g、30〜49g/g、30〜48g/g、30〜47g/g、30〜46g/g、30〜45g/g、30〜44g/g、30〜43g/g、30〜42g/g、30〜41g/g、30〜40g/g、30〜39g/g、30〜38g/gである。」
「[0259] [粒子状吸水剤または吸水性樹脂の物性測定]
[0260] (a)遠心分離機保持容量(CRC)
本発明の粒子状吸水剤または吸水性樹脂の遠心分離機保持容量(無加圧下吸水倍率、CRC)は、EDANA法(ERT441.2−02)に準拠して測定した。
・・・
[0265] (f)浸漬保持容量5分値:Dunk Retention Capacity(DRC5min)
図1に示す装置を用い、内径60mmのプラスチックの支持円筒100の底に、ステンレス製400メッシュの金網101(目の大きさ38μm)を融着させ、室温(20〜25℃)、湿度50RH%の条件下で、該網上に粒子状吸水剤または吸水性樹脂1.000±0.005gを均一に散布し、この測定装置一式の重量Wa(g)を測定した。
[0266] 底面積が400cm2の円形もしくは正方形のペトリ皿103の内側に直径120mmのガラスフィルター104(株式会社相互理化学硝子製作所社製、細孔直径:100〜120μm)を置き、0.90重量%食塩水106(23±0.5℃)をガラスフィルターの上面と同じレベル(ガラスフィルターの外周上に液が表面張力でわずかに浮き上がっている状態、もしくはガラスフィルターの表面の50%程度が液に覆われている状態)になるように加えた。その上に、直径110mmの濾紙105(ADVANTEC東洋株式会社、品名:(JIS P 3801、No.2)、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)を1枚載せ、濾紙の全面が濡れるようにした。
[0267] 上記測定装置一式を前記湿った濾紙上に載せ、液を吸収させた(測定中も液温度は厳密に23±0.5℃に管理される)。厳密に5分(300秒)後、測定装置一式を持ち上げ、その質量Wb(g)を測定した。そして、Wa、Wbから、下記の式に従ってDRC5min(g/g)を算出した。
DRC5min[g/g]
={(Wb−Wa)/(粒子状吸水剤または吸水性樹脂の重量)}
・・・
[0270] (h)粒度分布(PSD、σζ)
本発明に係る粒子状吸水剤の粒度分布(PSD)および粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、米国特許出願公開第2006/204755号に開示された測定方法に準じて測定した。
[0271] 即ち、目開き850μm、710μm、600μm、500μm、425μm、300μm、212μm、150μm、106μm、75μmを有するJIS標準篩(The IIDA TESTING SIEVE:内径80mm;JIS Z8801−1(2000))、又はJIS標準篩に相当する篩を用いて、粒子状吸水剤10.00gを分級した。分級後、各篩の重量を測定し、粒子径150μm未満の重量百分率(重量%)を算出した。なお、「粒子径150μm未満の重量百分率」とは、目開き150μmのJIS標準篩を通過する粒子の、吸水剤全体に対する重量割合(%)である。
[0272] また、重量平均粒子径(D50)は、上記各粒度の残留百分率Rを対数確率紙にプロットし、このグラフからR=50重量%に相当する粒子径を重量平均粒子径(D50)として読み取った。なお、重量平均粒子径(D50)は、粒子状吸水剤全体の50重量%に対応する粒子径のことをいう。また粒度分布の対数標準偏差(σζ)は下記式で表され、σζの値が小さいほど粒度分布が狭いことを意味する。
σζ=0.5×ln(X2/X1)(X1はR=84.1%、X2は15.9%の時のそれぞれの粒径)
・・・
[0278] (k)逆戻り量
逆戻り量の測定はいくつか方法が知られており、以下の測定方法はその1例であり、これに限定されるものではない。
[0279] 本発明に係る粒子状吸水剤を使用した吸収体の逆戻り量を以下の手順によって測定した。
内径7.1cm×8.1cmの長方形で、深さ3cmの樹脂製トレー(材質としては、特に限定されないが、好ましくはABS樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)樹脂等を用いることができる)に、粒子状吸水剤0.900gを均一に散布し、その上に7cm×8cmのトップシート(ユニチャーム株式会社製、商品名マミーポコテープタイプ、Lサイズ(2014年6月、本にて購入、パッケージ底面の番号:404088043)から取り出したものを使用しているが、これに限られるものではない)を粒子状吸水剤の移動が無いように上からのせた。これをモデル吸収体として、吸水時の逆戻り量の測定を行った。
・・・・
[0292] (p)ダメージ前後の微粉増加量(耐ダメージ性)
後述の測定方法により規定される本発明の粒子状吸水剤のダメージ前後の微粉増加量(150μm通過物の増加量)は、好ましくは4重量%以下、さらには3.5重量%以下である。かかる範囲でおむつ製造などの実使用に物性低下の問題がない。
<ダメージ付与後の微粉増加量>
[0293] 吸水剤に下記のペイントシェーカーテストを行い、目開き150μmのJIS標準篩で分級し、テスト前後における150μm以下の粒子径を有する粒子の増加量を測定した。
[0294] [ペイントシェーカーテスト]
ペイントシェーカーテスト(PS−test)とは、直径6cm、高さ11cmのガラス製容器に、直径6mmのガラスビーズ10g、吸水性樹脂30gを入れてペイントシェーカー(東洋製機製作所 製品No.488)に取り付け、800cycle/min(CPM)で30分間、振盪するものであり、装置詳細は特開平9−235378号公報に開示されている。
[0295] 振盪後、目開き2mmのJIS標準篩でガラスビーズを除去して、ダメ
ージを与えられた吸水性樹脂を得る。」
「[0331] [製造例2]
アクリル酸300重量部、48重量%水酸化ナトリウム水溶液100重量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)0.61重量部、1.0重量%エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム水溶液6.5重量部、脱イオン水346.1重量部からなる単量体水溶液(2)を作製した。
[0332] 次に、40℃に調温した上記単量体水溶液(2)を定量ポンプで連続供給した後、更に48重量%水酸化ナトリウム水溶液150.6重量部を連続的にラインミキシングした。尚、この時、中和熱によって単量体水溶液(2)の液温は81℃まで上昇した。
[0333] 更に、4重量%過硫酸ナトリウム水溶液14.6重量部を連続的にラインミキシングした後、両端に堰を備えた平面状の重合ベルトを有する連続重合機に、厚みが10mmとなるように連続的に供給した。その後、重合(重合時間3分間)が連続的に行われ、帯状の含水ゲル(2)を得た。得られた帯状の含水ゲル(2)を重合ベルトの進行方向に対して幅方向に、切断長が300mmとなるように等間隔に連続して切断することで、含水ゲル(2)を得た。含水ゲル(2)は、CRC36.0[g/g]、樹脂固形分48.1重量%であった。」
「[0351] [実施例1]
(ゲル粉砕)
上記製造例1で得られた含水ゲル(1)を、スクリュー押出機に供給しゲル粉砕した。該スクリュー押出機としては、先端部に直径100mm、孔径9.5mm、孔数40個、開孔率36.1%、厚さ10mmの多孔板が備えられた、スクリュー軸の外径が86mmのミートチョッパーを使用した。該ミートチョッパーのスクリュー軸回転数を130rpmとした状態で、含水ゲル(1)を4640[g/min]、同時に、水蒸気を83[g/min]でそれぞれ供給する。この時のゲル粉砕エネルギー(GGE)は26.9[J/g]、GGE(2)は13.6[J/g]であった。尚、ゲル粉砕前の含水ゲル(1)の温度は80℃であり、ゲル粉砕後の粉砕ゲル、即ち粒子状含水ゲル(1)の温度は85℃に上昇していた。
[0352] 上記ゲル粉砕工程で得られた粒子状含水ゲル(1)は、樹脂固形分49.1重量%、重量平均粒子径(D50)994μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)1.01であった。当該ゲル粉砕工程の条件を表1に、粒子状含水ゲル(1)の物性を表2に示す。
[0353](乾燥)
次に、上記粒子状含水ゲル(1)をゲル粉砕終了後1分以内に通気板上に散布(この時の粒子状含水ゲル(1)の温度は80℃)し、185℃で30分間乾燥を行い、乾燥重合体(1)を得る。熱風の平均風速は通気ベルトの進行方向に対して垂直方向に1.0[m/s]である。尚、熱風の風速は、日本カノマックス株式会社製定温度熱式風速計アネモマスター 6162で測定する。
[0354](粉砕・分級)
次いで、上記乾燥工程で得られた乾燥重合体(1)全量を3段ロールミルに供給して粉砕(粉砕工程)し、その後更に、目開き710μm及び175μmのJIS標準篩で分級することで、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(1)を得る。吸水性樹脂粒子(1)は、重量平均粒子径(D50)348μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.32であり、CRC42.1[g/g]、150μm通過粒子(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)0.5重量%である。
[0355](表面処理・添加剤添加)
次に、上記吸水性樹脂粒子(1)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、1,4−ブタンジオール0.4重量部、プロピレングリコール0.6重量部及び脱イオン水3.0重量部からなる(共有結合性)表面架橋剤溶液を均一に混合し、190℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂粉末(1)のCRCが35g/gとなるように加熱処理する。その後冷却を行い、上記ペイントシェーカーテストを実施し、製造プロセス相当のダメージを付与した後に、吸水性樹脂粒子100重量部に対して、水1重量部、ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム0.01重量部からなる水溶液を均一に混合する。60℃で1時間乾燥した後、目開き710μmのJIS標準篩を通過させ、二酸化ケイ素(商品名:アエロジル200、日本アエロジル製)0.4重量部を均一に添加する。こうして、粒子状吸水剤(1)を得た。粒子状吸水剤(1)の諸物性を表3〜6に示す。なお、ペイントシェーカーテスト後の150μm通過粒子増加量は粒子状吸水剤に対して、さらにペイントシェーカーテストを実施した際(おむつなどの吸収体製造時のプロセスダメージを想定したもの)の150μm通過粒子の増加量を示す。
[0356] [実施例2]
実施例1と以下に示す操作以外は同様の操作を行う。含水ゲル(1)のかわりに上記製造例2で得られた含水ゲル(2)を用いる。スクリュー押出機の先端部の多孔板の孔径を8mmに変更する。この時のゲル粉砕エネルギー(GGE)は31.9[J/g]、GGE(2)は17.5[J/g]であった。尚、ゲル粉砕前の含水ゲル(2)の温度は80℃であり、ゲル粉砕後の粉砕ゲル、即ち粒子状含水ゲル(2)の温度は84℃に上昇していた。
[0357] 上記ゲル粉砕工程で得られた粒子状含水ゲル(2)は、樹脂固形分47.5重量%、重量平均粒子径(D50)860μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.95であった。当該ゲル粉砕工程の条件を表1に、粒子状含水ゲル(2)の物性を表2に示す。
[0358] 次いで、実施例1と同様の乾燥・粉砕・分級操作を行い、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(2)を得る。吸水性樹脂粒子(2)は、重量平均粒子径(D50)355μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.32であり、CRC48.2[g/g]、150μm通過粒子(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)0.4重量%である。
[0359] 次に、上記吸水性樹脂粒子(2)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、エチレンカーボネート0.4重量部、プロピレングリコール0.6重量部及び脱イオン水3.0重量部からなる(共有結合性)表面架橋剤溶液を均一に混合し、190℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂粉末(2)のCRCが38g/gとなるように加熱処理する。その後、実施例1と同様の操作を行う。こうして、粒子状吸水剤(2)を得た。粒子状吸水剤(2)の諸物性を表3〜6に示す。」
「[0420] [実施例23]
実施例1において、実施例1における(共有結合性)表面架橋剤溶液を均一に混合した後の、加熱処理時間を30分から45分に変更した以外は同様の操作を行った。こうして、粒子状吸水剤(23)を得た。粒子状吸水剤(23)の諸物性を表3〜5に示す。」
「[0438]
[表3-1]

[表3-2]


「[0439][表4-1]

[表4-2]


「[0443] 実施例のように全体的に高いDRC5min値を有する粒子状吸水剤と、比較例のように全体的に低いDRC5min値を有する粒子状吸水剤とを区別するための手段として、上記のようなDRC一般指数が導かれた。
DRC一般指数(Index of DRC)=(K−DRC5min[g/g])/(D50[μm]/1000)
(ここで、Kは任意の定数である)。代表例として、K=49を使用した場合、以下同様となる。
K=49の場合、
DRC指数(Index of DRC)=(49−DRC5min[g/g])/(D50[μm]/1000)」
「請求の範囲
[請求項1] 遠心分離機保持容量(CRC)が30〜50g/gである、粒子状吸水剤であって、
重量平均粒子径(D50)が200〜600μmであり、
以下の式であらわされるDRC指数が43以下である、粒子状吸水剤:
DRC指数(Index of DRC)=(49−DRC5min[g/g])/(D50[μm]/1000)。
・・・
[請求項16] ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とする、請求項1〜15のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤。
・・・
[請求項18] 請求項1〜17のいずれか1項に記載の粒子状吸水剤を含む吸収体。
[請求項19] 請求項18に記載の吸収体を含む衛生物品。」

(イ)甲1発明
甲1には、上記実施例2で製造された粒子状吸水剤(2)、上記実施例23で製造された粒子状吸水剤(23)(それぞれ、以下、「甲1実施例2発明」、「甲1実施例23発明」という。)が記載されていると認める。

イ 甲2に記載された事項及び甲2発明
(ア)甲2に記載された事項
甲2には、「吸水性シート、長尺状吸水性シートおよび吸収性物品」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
「[0017] 特許文献22〜39等、種々の構成の吸水性シートを開示するが、これら接着剤や不織布等の構成を工夫しても紙オムツ向けの吸水特性は十分とはならなかった。例えば、(吸水性樹脂と繊維を混合し個々に型取りした吸収体を用いた)従来の紙オムツに比べ、長尺の吸水性シートまたはその裁断物を用いた紙オムツは簡便に生産できるが、紙オムツとしての吸収性能(紙オムツとしての吸収速度、漏れ、戻り量(Re−wet))という観点ではまだ改良の余地があった。
[0018] すなわち、本発明の課題は、紙オムツ等の衛生材料に適した吸水性シートを提供することである。」
「[0029] 〔1−2〕「粒子状吸水剤」
本明細書において、吸水剤とは、吸水性樹脂を主成分として含む、水性液の吸収ゲル化剤を意味する。本明細書において粒子状吸水剤とは、粒子状(別称;粉末状)の吸水剤を意味し、一粒の粒子状吸水剤であっても、複数個の粒子状吸水剤の集合体であっても粒子状吸水剤と称する。「粒子状」とは、粒子の形態を有することを意味し、粒子とは、測定可能な大きさを持つ、固体又は液体の粒状小物体(JIS工業用語大辞典第4版、2002頁)をいう。なお、本明細書において、粒子状吸水剤を単に吸水剤と称する場合もある。」
「[0033] また粒子状吸水剤の主成分となる吸水性樹脂としては、ポリアクリル酸(塩)系樹脂、ポリスルホン酸(塩)系樹脂、無水マレイン酸(塩)系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエチレンオキシド系樹脂、ポリアスパラギン酸(塩)系樹脂、ポリグルタミン酸(塩)系樹脂、ポリアルギン酸(塩)系樹脂、デンプン系樹脂、セルロース系樹脂が挙げられ、好ましくはポリアクリル酸(塩)系樹脂が使用される。
[0034] 〔1−3〕「ポリアクリル酸(塩)」
本発明における「ポリアクリル酸(塩)」とは、ポリアクリル酸及び/又はその塩を指し、主成分として、アクリル酸及び/又はその塩(以下、「アクリル酸(塩)」と称する)を繰り返し単位として含み、任意成分としてグラフト成分を含む重合体を指す。ポリアクリル酸はポリアクリルアミドやポリアクリロニトリル等の加水分解で得てもよいが、好ましくはアクリル酸(塩)の重合で得られる。
[0035] なお、上記「主成分」とは、アクリル酸(塩)の使用量(含有量)が、重合に用いられる単量体(内部架橋剤を除く)全体に対して、通常50〜100モル%、好ましくは70〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%、さらに好ましくは実質100モル%であることをいう。」
「[0085] また、特許文献4(国際公開第2015/129917号)に記載のGCAはガラスフィルターの上面とマリオット管の下部のメニスカスとの間に高さ10cmの差をつけた状態での10分間の「加圧下」での液吸収能力を評価するものである。これに対しDRC5minは、5分間というさらに短い時間での「無加圧下」での吸収性能を評価するパラメーターである。つまり、GCAとDRC5minは測定条件が異なるため、相互に評価を類推することができないパラメーターである。またDRC5minは、紙オムツにおいてパルプからの尿の吸い取り能力、ひいては肌かぶれや尿漏れの抑制をより適切に評価するものである。
[0086] 〔2−2〕遠心分離機保持容量(CRC)
本発明の粒子状吸水剤は、遠心分離機保持容量(CRC)が30g/g〜50g/gである。なお、CRCの下限値として好ましくは31g/g、以下順に32g/g、33g/g、34g/g、35g/gが好ましく、36g/gが最も好ましい。一方、CRCの上限値として好ましくは49g/g、以下順に48g/g、47g/g、46g/g、45g/g、44g/g、43g/g、42g/g、41g/g、40g/g、39g/gが好ましく、38g/gが最も好ましい。なお、上記上下限値の組み合わせは適宜選択することができ、例えば、30g/g〜38g/g、36g/g〜50g/g、32g/g〜42g/g等が選択される。
[0087] 上記CRCが30g/g未満の場合、吸収量が少ないため、紙オムツ等の衛生用品の吸収体として適さない。また、上記CRCが50g/gを超える場合、尿や血液等の体液等を吸収する速度が低下するため、高吸水速度タイプの紙オムツ等への使用に適さない。なお、CRCは、内部架橋剤や表面架橋剤等で制御することができる。
[0088] 〔2−3〕粒度(粒度分布、質量平均粒子径(D50)、粒度分布の対数標準偏差(σζ))
本発明の粒子状吸水剤は、質量平均粒子径(D50)が200μm〜600μmである。なお、より好ましい範囲として、好ましくは200μm〜550μm、より好ましくは250μm〜500μm、さらに好ましくは350μm〜450μmである。また、粒子径150μm未満の粒子の割合が、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下であり、粒子径850μm以上の粒子の割合が、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。なお、これらの粒子の割合の下限値は、何れの場合も少ないほど好ましく、0質量%が望まれるが、0.1質量%程度でもよい。さらに、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が、好ましくは0.20〜0.50、より好ましくは0.25〜0.40、さらに好ましくは0.27〜0.35である。なお、これらの粒度は、米国特許第7638570号やEDANA ERT420.2−02に開示されている測定方法に準じて、標準篩を用いて測定される。」
「[0233] なお、上記「単量体成分の濃度」とは、下記式(8)で求められる値であり、単量体水溶液の質量には、グラフト成分や吸水性樹脂、逆相懸濁重合における疎水性溶媒の質量は含めない。
[0234] (単量体成分の濃度(質量%))=(単量体成分の質量)/(単量体水溶液の質量)×100 ・・・ 式(8)
〔4−2〕重合工程
本工程は、上記単量体水溶液の調製工程で得られたアクリル酸(塩)系単量体水溶液を重合させて、含水ゲル状架橋重合体(以下、「含水ゲル」と称する)を得る工程である。」
「[0464] [粒子状吸水剤の物性測定]
以下に、本発明に係る粒子状吸水剤の物性の測定方法について記載する。なお、測定対象が粒子状吸水剤以外である場合、例えば、粒子状含水ゲルの場合、下記説明文中の粒子状吸水剤を粒子状含水ゲルに読み替えて適用する。
[0465] (a)遠心分離機保持容量(CRC)
本発明に係る粒子状吸水剤の遠心分離機保持容量(無加圧下吸水倍率、CRC)は、EDANA法(ERT441.2−02)に準拠して測定した。
[0466] (b)加圧下吸水倍率(AAP)
本発明に係る粒子状吸水剤の加圧下吸水倍率(AAP)は、EDANA法(ERT442.2−02)に準拠して測定した。
[0467] (c)粒度分布(粒度分布、質量平均粒子径(D50)、粒度分布の対数標準偏差(σζ))
本発明に係る粒子状吸水剤の粒度分布(粒度分布、質量平均粒子径(D50)、粒度分布の対数標準偏差(σζ))は、米国特許第7638570号のカラム27、28に記載された「(3)Mass-Average Particle Diameter (D50) and Logarithmic Standard Deviation (σζ) of Particle Diameter Distribution」に準拠して測定した。
[0468] 即ち、目開き850μm、710μm、600μm、500μm、425μm、300μm、212μm、150μm、106μm、75μmを有するJIS標準篩(The IIDA TESTING SIEVE:内径80mm;JIS Z8801−1(2000))、又はJIS標準篩に相当する篩を用いて、粒子状吸水剤10.00gを分級した。分級後、各篩の質量を測定し、粒子径150μm未満の質量百分率(質量%)を算出した。なお、「粒子径150μm未満の質量百分率」とは、目開き150μmのJIS標準篩を通過する粒子の、吸水剤全体に対する質量割合(%)である。
[0469] また、質量平均粒子径(D50)は、上記各粒度の残留百分率Rを対数確率紙にプロットし、このグラフからR=50質量%に相当する粒子径を質量平均粒子径(D50)として読み取った。なお、質量平均粒子径(D50)は、粒子状吸水剤全体の50質量%に対応する粒子径のことをいう。また粒度分布の対数標準偏差(σζ)は下記式(h)で表され、σζの値が小さいほど粒度分布が狭いことを意味する。
[0470] σζ=0.5×ln(X2/X1) ・・・ 式(c)
なお、式(h)中、X1はR=84.1%、X2は15.9%の時のそれぞれの粒径である。
・・・
[0474] (f)浸漬保持容量5分値(DRC5分値)
図18に示す装置を用い、内径60mmのプラスチックの支持円筒100の底に、ステンレス製400メッシュの金網101(目の大きさ38μm)を融着させ、室温(20〜25℃)、湿度50RH%の条件下で、該網上に粒子状吸水剤又は吸水性樹脂1.000±0.005gを均一に散布し、この測定装置一式の質量Wa(g)を測定した。
[0475] 底面積が400cm2の円形もしくは正方形のペトリ皿103の内側に直径120mmのガラスフィルター104(株式会社相互理化学硝子製作所社製、細孔直径:100〜120μm)を置き、0.90質量%食塩水106(23±0.5℃)をガラスフィルターの上面と同じレベル(ガラスフィルターの外周上に液が表面張力でわずかに浮き上がっている状態、もしくはガラスフィルターの表面の50%程度が液に覆われている状態)になるように加えた。その上に、直径110mmの濾紙105(ADVANTEC東洋株式会社、品名:(JIS P 3801、No.2)、厚さ0.26mm、保留粒子径5μm)を1枚載せ、濾紙の全面が濡れるようにした。
[0476] 上記測定装置一式を上記湿った濾紙上に載せ、液を吸収させた(測定中も液温度は厳密に23±0.5℃に管理される)。厳密に5分間(300秒間)後、測定装置一式を持ち上げ、その質量Wb(g)を測定した。そして、Wa、Wbから、下記式(f)に従ってDRC5分値(g/g)を算出した。
[0477] DRC5分値(g/g)={(Wb−Wa)/(粒子状吸水剤の質量)} ・・・ 式(f)
・・・
[0502] (p)ダメージ前後の微粉増加量(耐ダメージ性)
後述の測定方法により規定される本発明の粒子状吸水剤のダメージ前後の微粉増加量(150μm通過物の増加量)は、好ましくは4質量%以下、より好ましくは3.5質量%以下である。かかる範囲で紙オムツ製造等の実使用に物性低下の問題がない。
[0503] <ダメージ付与後の微粉増加量>
吸水剤に下記のペイントシェーカーテストを行い、目開き150μmのJIS標準篩で分級し、テスト前後における150μm以下の粒子径を有する粒子の増加量を測定した。
[0504] [ペイントシェーカーテスト]
ペイントシェーカーテスト(PS−test)とは、直径6cm、高さ11cmのガラス製容器に、直径6mmのガラスビーズ10g、吸水性樹脂30gを入れてペイントシェーカー(東洋製機製作所 製品No.488)に取り付け、800cycle/min(CPM)で30分間、振盪するものであり、装置の詳細は特開平9−235378号公報に開示されている。
[0505] 振盪後、目開き2mmのJIS標準篩でガラスビーズを除去して、ダメージを与えられた吸水性樹脂を得る。」
「[0563] [製造例b]
アクリル酸300質量部、48質量%の水酸化ナトリウム水溶液100質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)0.61質量部、1.0質量%のエチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム水溶液6.5質量部及び脱イオン水346.1質量部からなる単量体水溶液(b)を調製した。
[0564] 次に、40℃に調温した上記単量体水溶液(b)を定量ポンプで連続供給した後、さらに48質量%の水酸化ナトリウム水溶液150.6質量部を連続的にラインミキシングした。なお、この時、中和熱によって単量体水溶液(b)の液温は81℃まで上昇した。
[0565] 次に、4質量%の過硫酸ナトリウム水溶液14.6質量部を連続的にラインミキシングした後、両端に堰を備えた平面状の重合ベルトを有する連続重合機に、厚さが10mmとなるように連続的に供給した。その後、重合(重合時間3分間)が連続的に行われ、帯状の含水ゲル(b)を得た。得られた帯状の含水ゲル(b)を重合ベルトの進行方向に対して幅方向に、切断長が300mmとなるように等間隔に連続して切断することで、短冊状の含水ゲル(b)を得た。当該含水ゲル(b)は、CRCが36.0g/g、含水率が51.9質量%(樹脂
固形分が48.1重量%)であった。」
「[0575]・・・
[製造例1]
(ゲル粉砕)
上記製造例aで得られた短冊状の含水ゲル(a)を、スクリュー押出機に供給してゲル粉砕を行い、粒子状含水ゲル(1)を得た。なお、スクリュー押出機には、先端部に直径100mm、孔径9.5mm、孔数40個、開孔率36.1%、厚さ10mmの多孔板が備えられ、スクリュー軸の外径は86mmであった。
[0576] 製造例1におけるゲル粉砕は、上記スクリュー押出機のスクリュー軸の回転数を130rpmとした状態で、上記短冊状の含水ゲル(a)と水蒸気とをそれぞれ別の供給口から同時に供給することで行われた。なお、該含水ゲル(a)の供給量は毎分4640g、水蒸気の供給量は毎分83gであった。
[0577] 製造例1でのゲル粉砕エネルギー(GGE)は26.9J/g、ゲル粉砕エネルギー粉砕エネルギー(2)(GGE(2))は13.6J/gであった。また、ゲル粉砕前の含水ゲル(a)の温度は80℃であり、ゲル粉砕後の粒子状含水ゲル(1)の温度は85℃であった。
[0578] 上記ゲル粉砕後に得られた粒子状含水ゲル(1)は、含水率が50.9質量%、質量平均粒子径(D50)が994μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が1.01であった。表2にゲル粉砕条件及び粒子状含水ゲル(1)の物性を示した。
[0579] (乾燥)
次に、上記ゲル粉砕の終了後、1分間以内に上記粒子状含水ゲル(1)を通気ベルト式連続乾燥機の通気ベルト上に載置(この時点での粒子状含水ゲル(1)の温度は80℃)し、185℃の熱風を30分間通気させることで乾燥した。熱風の平均風速は、通気ベルトの進行方向に対して垂直方向に1.0m/sであった。該熱風の風速は、定温度熱式風速計(アネモマスター6162;日本カノマックス株式会社)を用いて測定した。
[0580] (粉砕・分級)
次いで、上記乾燥後に得られた乾燥重合体(1)全量を3段ロールミルに供給して粉砕した。その後、目開き710μm及び175μmのJIS標準篩を用いて分級することで、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(1)を得た。該吸水性樹脂粉末(1)は、質量平均粒子径(D50)が348μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.32、CRCが42.1g/g、粒子径150μm未満の粒子の割合(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)が0.5質量%であった。
[0581] (表面架橋、添加剤添加)
次に、上記吸水性樹脂粉末(1)100質量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025質量部、1,4−ブタンジオール0.4質量部、プロピレングリコール0.6質量部及び脱イオン水3.0質量部からなる表面架橋剤溶液(1)を添加して、均一になるまで混合した。その後、得られる吸水性樹脂粒子(1)のCRCが35g/gとなるように、190℃で30分間程度、加熱処理した。その後、60℃まで強制冷却した。
[0582] 次に、上記操作で得られた吸水性樹脂粒子(1)について、上述したペイントシェーカーテストを実施し、製造プロセス相当のダメージを付与した。その後、吸水性樹脂粉末(1)100質量部に対して、ジエチレントリアミン五酢酸三ナトリウム0.01質量部及び脱イオン水1質量部からなるキレート剤水溶液(1)1.01質量部を添加して、均一になるまで混合した。その後、60℃で1時間乾燥し、得られた結果物を目開き710μmのJIS標準篩に通過させた。その後、二酸化ケイ素(商品名:アエロジル200、日本アエロジル製)0.4質量部を添加して、均一になるまで混合した。
[0583] 以上の操作によって、粒子状吸水剤(1)を得た。表3〜5に粒子状吸水剤(1)の物性を示した。」
「[0585] [製造例2]
上記製造例bで得られた短冊状の含水ゲル(b)について、下記の条件変更以外は製造例1と同様のゲル粉砕を行い、粒子状含水ゲル(2)を得た。
[0586] 製造例2において、スクリュー押出機の多孔板の孔径を9.5mmから8mmに変更した。該変更によって、多孔板の開孔率は25.6%となった。なお、製造例2でのゲル粉砕エネルギー(GGE)は31.9J/g、ゲル粉砕エネルギー(2)(GGE(2))は17.5J/gであった。また、ゲル粉砕前の含水ゲル(b)の温度は80℃であり、ゲル粉砕後の粒子状含水ゲル(2)の温度は84℃であった。
[0587] 上記ゲル粉砕後に得られた粒子状含水ゲル(2)は、含水率が52.5質量%、質量平均粒子径(D50)が860μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.95であった。表2にゲル粉砕条件及び粒子状含水ゲル(2)の物性を示した。
[0588] 次いで、製造例1と同様の乾燥、粉砕、分級を行って、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(2)を得た。該吸水性樹脂粉末(2)は、質量平均粒子径(D50)が355μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.32、CRCが48.2g/g、粒子径150μm未満の粒子の割合(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)が0.4質量%であった。
[0589] 次に、上記吸水性樹脂粉末(2)100質量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025質量部、エチレンカーボネート0.4質量部、プロピレングリコール0.6質量部及び脱イオン水3.0質量部からなる表面架橋剤溶液(2)を添加して、均一になるまで混合した。その後、得られる吸水性樹脂粒子(2)のCRCが38g/gとなるように、190℃で30分間程度、加熱処理した。その後、60℃まで強制冷却した。
[0590] その後、製造例1と同様の操作を行うことによって、粒子状吸水剤(2)を得た。表3〜5に粒子状吸水剤(2)の物性を示した。」
「[表3-1]

[表3-2]

[表3-3]


「請求の範囲
[請求項1] 第1基材、第2基材、および上記第1基材と第2基材との間に挟持される粒子状吸水剤を備え、
上記第1基材および第2基材の少なくとも一方は、透水性基材であり、
上記粒子状吸水剤の少なくとも一部は下記物性(1)、(2)、(3)を満たす、吸水性シート。
(1)遠心分離機保持容量(CRC)が30g/g〜50g/g
(2)質量平均粒子径(D50)が200μm〜600μm
(3)下記式(a)で規定されるDRC指数が43以下
DRC指数=(49−DRC5分値)/(D50/1000) ・・・ 式(a)
・・・
[請求項13] 上記吸水性シート1枚当たりに使用される粒子状吸水剤の吸水性シートの単位面積当たりの含有量が100〜1000g/m2である、請求項1〜12の何れか1項に記載の吸水性シート。
・・・
[請求項40] 請求項1〜38の何れか1項に記載の吸水性シートを、液体透過性シート及び液体不透過性シートで狭持してなる、吸収性物品。
[請求項41] 上記吸収性物品に備えられている上記吸水性シートは、
該吸収性物品の使用に際して、上記第1基材の方が上記第2基材よりも先に液体と接触するように配置されている、請求項40に記載の吸収性物品。」
「[図22]



(イ)甲2発明
甲2には、上記実施例2で製造された粒子状吸水剤(2)(以下、「甲2実施例2発明」という。)が記載されていると認める。

ウ 甲3に記載された事項及び甲3発明
(ア)甲3に記載された事項
甲3には、「吸水性樹脂の製造方法、吸水性樹脂、吸水剤、吸収性物品」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
「【特許請求の範囲】
【請求項4】
水溶性エチレン性不飽和単量体を内部架橋剤の存在下で重合させることにより得られる吸水性樹脂であって、
当該吸水性樹脂の生理食塩水吸水速度が40〜80秒であり、
当該吸水性樹脂全体の割合に占める150〜850μmの粒子の質量割合が85質量%以上であり、300〜400μmの粒子の質量割合が20質量%以上であり、
300〜400μmに分級して測定したBET比表面積が0.03m2/g未満である
ことを特徴とする吸水性樹脂。
【請求項5】
当該吸水性樹脂の中位粒子径が、200〜600μmである請求項4に記載の吸水性樹脂。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の吸水性樹脂に無機微粉末を配合してなる吸水剤。
【請求項7】
請求項4又は5に記載の吸水性樹脂を含む吸収体を用いてなる吸収性物品。
【請求項8】
請求項6に記載の吸水剤を含む吸収体を用いてなる吸収性物品。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、紙おむつ、生理用品等の衛生材料に好適に用いられる吸収体を構成する吸水性樹脂の製造方法、並びに吸水性樹脂、その吸水性樹脂を用いてなる吸水剤及び吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸水性樹脂は、近年、生理用品、紙おむつ等の衛生材料の分野に広く使用されている。」
【0003】
このような吸水性樹脂としては、アクリル酸部分中和塩重合体架橋物が、優れた吸水能を有するとともに、その原料であるアクリル酸の工業的な入手が容易であるため、品質が一定で且つ安価に製造でき、しかも腐敗や劣化が起こりにくい等の数々の利点を有することから、好ましい吸水性樹脂であるとされている。
【0004】
生理用品、紙おむつ等の衛生材料において吸水性樹脂に望まれる特性としては、高い吸水能や優れた吸水速度等が挙げられる。しかしながら、例えば保水能と吸水速度とは相反する関係にある等、これら特性のバランスを満たすことは困難となる。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前述したような実情に鑑みて提案されたものであり、衛生材料に用いられる吸水性樹脂について、適度なBET比表面積を持ち、吸収体としたときにその吸収体の性能を向上させることができる吸水性樹脂の製造方法、並びに、吸水性樹脂、それを含む吸水剤及びそれを含む吸収体を用いてなる吸収性物品を提供することを目的とする。」
「【発明の効果】
【0019】
本発明に係る吸水性樹脂の製造方法によれば、適度な範囲のBET比表面積を有する吸水性樹脂を得ることができる。
【0020】
また、本発明に係る吸水性樹脂は、その粒子の粒子径を大きくすることなく、吸収体における被吸収液の拡散性及び逆戻りに対する要因のひとつである吸水速度が適度な範囲にあり、且つ適度な範囲のBET比表面積を有する吸水性樹脂である。」
「【0025】
<重合工程>
[水溶性エチレン性不飽和単量体]
水溶性エチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸(本明細書においては、「アクリ」及び「メタクリ」を合わせて「(メタ)アクリ」と表記する。以下同様)及びその塩;2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の非イオン性単量体;N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有不飽和単量体及びその4級化物等が挙げられる。これらの水溶性エチレン性不飽和単量体の中でも、工業的に入手が容易であること等の観点から、(メタ)アクリル酸又はその塩、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドが好ましく、(メタ)アクリル酸及びその塩がより好ましい。なお、これらの水溶性エチレン性不飽和単量体は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
これらの中でも、アクリル酸及びその塩が吸水性樹脂の原材料として広く用いられており、これらアクリル酸部分中和塩に、前述の他の水溶性エチレン性不飽和単量体を共重合させて用いる場合もある。この場合、アクリル酸部分中和塩は、主となる水溶性エチレン性不飽和単量体として、総水溶性エチレン性不飽和単量体に対して70〜100モル%用いられることが好ましい。」
「【0076】
本発明に係る吸水性樹脂では、その生理食塩水吸水速度が40〜80秒である。吸水性樹脂を吸収体に用いた場合に、吸収体が良好な拡散性を有する観点から、42秒以上が好ましく、45秒以上がより好ましい。」
「【0079】
また、本発明に係る吸水性樹脂は、中位粒子径が200〜600μmであることが好ましく、200〜500μmであることがより好ましく、250〜450μmであることがさらに好ましくい。」
「【0084】
また、本発明に係る吸水性樹脂は、生理食塩水保水能が30g/g以上であることが好ましい。生理食塩水保水能は、単位質量当りの吸水性樹脂が吸収し得る生理食塩水の質量を示し、吸水性樹脂の液体の吸収容量の度合いを表す。なお、生理食塩水保水能は、35g/g以上であることがより好ましく、40g/g以上であることがさらに好ましい。また、生理食塩水保水能の上限値としては、60g/g以下であることが好ましい。」
「【0095】
<4−1.評価試験方法について>
[吸水性樹脂の評価試験]
下記の実施例1〜7、及び、比較例1〜4にて得られる吸水性樹脂について、下記に示す各種の試験に供して評価した。以下、各評価試験方法について説明する。
【0096】
(1)生理食塩水保水能
吸水性樹脂2.0gを量り取った綿袋(メンブロード60番、横100mm×縦200mm)を500mL容のビーカー内に設置した。吸水性樹脂の入った綿袋中に0.9質量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)500gをママコができない様に一度に注ぎ込み、綿袋の上部を輪ゴムで縛り、30分静置させることで吸水性樹脂を膨潤させた。30分経過後の綿袋を、遠心力が167Gとなるよう設定した脱水機(国産遠心機株式会社製、品番:H−122)を用いて1分間脱水し、脱水後の膨潤ゲルを含んだ綿袋の質量Wa(g)を測定した。吸水性樹脂を添加せずに同様の操作を行い、綿袋の湿潤時の空質量Wb(g)を測定し、以下の式から生理食塩水保水能を算出した。
【0097】
生理食塩水保水能(g/g)=[Wa−Wb](g)/吸水性樹脂の質量(g)
・・・
【0104】
(3)生理食塩水吸水速度
生理食塩水吸水速度は、25℃±1℃に調節した室内で行った。恒温水槽にて25±0.2℃の温度に調整した生理食塩水50±0.1gをマグネチックスターラーバー(8mmφ×30mmのリング無し)で600rpmに攪拌して渦を発生させた。得られた吸水性樹脂2.0±0.002gを、その生理食塩水中に一度に添加し、吸水性樹脂の添加後から渦が消失し、液面が平坦になるまでの時間(秒)を測定し、当該時間を吸水性樹脂の生理食塩水吸水速度とした。
【0105】
(5)中位粒子径(粒度分布)
吸水性樹脂50gに、滑剤として、0.25gの非晶質シリカ(エボニックデグサジャパン株式会社製、カープレックス#80)を混合した。
【0106】
JIS標準篩を上から、目開き850μmの篩、目開き600μmの篩、目開き500μmの篩、目開き400μmの篩、目開き300μmの篩、目開き250μmの篩、目開き150μmの篩、及び受け皿の順に組み合わせる。
【0107】
組み合わせた最上の篩に、吸水性樹脂を入れ、ロータップ式振とう器を用いて20分間振とうさせて分級した。分級後、各篩上に残った吸水性樹脂の質量を全量に対する質量百分率として算出し粒度分布を求めた。この粒度分布に関して粒子径の大きい方から順に篩上を積算することにより、篩の目開きと篩上に残った吸水性樹脂の質量百分率の積算値との関係を対数確率紙にプロットした。確率紙上のプロットを直線で結ぶことにより、積算質量百分率50質量%に相当する粒子径を中位粒子径とした。
【0108】
なお、300〜400μmの粒径を有する吸水性樹脂の存在割合は、300μm目開きの篩上に残った吸水性樹脂の割合であり、同様に150〜850μmの粒径を有する吸水性樹脂の存在割合は、150μm、250μm、300μm、400μm、500μm、600μmの各目開きの篩上に残った吸水性樹脂の割合を全て加算した数値である。」
「【0110】
<4−2.実施例及び比較例について>
[実施例1]
実施例1では、還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、並びに、攪拌機として、翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する攪拌翼を備えた内径110mm、2L容の丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコに、炭化水素分散媒としてn−ヘプタン300gをとり、界面活性剤としてHLB3のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ株式会社、リョートーシュガーエステルS−370)0.74g、高分子系分散剤として無水マレイン酸変性エ
チレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社、ハイワックス1105A)0.74gを添加し、攪拌しつつ80℃まで昇温して界面活性剤を溶解した後、50℃まで冷却した。
【0111】
一方、500mL容の三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液92g(1.02モル)をとり、外部より冷却しつつ、30質量%の水酸化ナトリウム水溶液102.2gを滴下して75モル%の中和を行った後、増粘剤としてヒドロキシルエチルセルロース0.092g(住友精化株式会社、HEC AW−15F)、アゾ系化合物として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.092g(0.339ミリモル)、過酸化物として過硫酸カリウム0.037g(0.137ミリモル)、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.0102g(0.058ミリモル)と水43.8gを加えて溶解し、モノマー水溶液を調製した。
【0112】
そして、攪拌機の攪拌回転数を550rpmとして、前述のように調製したモノマー水溶液をセパラブルフラスコに添加して、系内を窒素で十分に置換した後、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を60分間行うことで第1段目の重合スラリー液を得た。
【0113】
一方、別の500mL容の三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液128.8g(1.43モル)をとり、外部より冷却しつつ、30質量%の水酸化ナトリウム水溶液143.1gを滴下して75モル%の中和を行った後、アゾ系化合物として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.129g(0.475ミリモル)、過酸化物として過硫酸カリウム0.052g(0.191ミリモル)、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.0116g(0.067ミリモル)と水15.9gを加えて溶解し、第2段目のモノマー水溶液を調製した。
【0114】
前記重合後スラリーの攪拌回転数を1000rpmに変更した後、前述のセパラブルフラスコ系内を27℃に冷却した後、第2段目のモノマー水溶液の全量を、第1段目の重合スラリー液に添加して、系内を窒素で十分に置換した後、再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、第2段目の重合を30分間行った。
【0115】
第2段目の重合後、125℃の油浴で反応液を昇温し、n−ヘプタンと水との共沸蒸留によりn−ヘプタンを還流しながら241gの水を系外へ抜き出した後、後架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルの2質量%水溶液4.42g(0.507ミリモル)を添加し、80℃で2時間保持した。その後、n−ヘプタンを蒸発させて乾燥することによって、乾燥品を得た。この乾燥品を目開き1000μmの篩を通過させ、球状の一次粒子が凝集した二次粒子の形態を有する吸水性樹脂233.4gを得た。このようにして得られた吸水性樹脂を、前述の各種試験方法に従って評価した。
【0116】
なお、得られた吸水性樹脂は、その全体の割合に占める150〜850μmの粒子の質量割合が98.2質量%であり、300〜400μmの粒子の質量割合が39.4質量%であった。」
「【0121】
[実施例4]
実施例4では、第1段目の単量体に添加する内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルを0.0202g(0.116ミリモル)に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、球状の一次粒子が凝集した二次粒子の形態を有する吸水性樹脂232.1gを得た。このようにして得られた吸水性樹脂を、前述の各種試験方法に従って評価した。
【0122】
なお、得られた吸水性樹脂は、その全体の割合に占める150〜850μmの粒子の質量割合が97.9質量%であり、300〜400μmの粒子の質量割合が32.6質量%であった。」
「【0144】
【表1】


「【0150】
(3)浸透時間
先ず、水平の台上に吸収性物品を置いた。吸収性物品の中心部に、内径3cmの液投入用シリンダーを具備した測定器具を置き、80mLの試験液をそのシリンダー内に一度に投入するとともに、ストップウォッチを用いて、試験液がシリンダー内から完全に消失するまでの時間を測定し、1回目の浸透時間(秒)とした。
【0151】
次に、前述のシリンダーをはずし、吸収性物品をそのままの状態で保存し、1回目の試験液投入開始から30分後及び60分後にも、1回目と同じ位置に測定器具を用いて同様の操作を行い、2回目及び3回目の浸透時間(秒)を測定した。
【0152】
1回目〜3回目の合計時間を合計浸透時間とした。なお、浸透時間が短いほど、吸収性物品として好ましいと言える。」
「【0157】
【表2】

【0158】
表2に示すように、実施例の適度なBET比表面積及び吸水速度を有する吸水性樹脂を使用した吸収性物品では、比較例に比べ、浸透時間や逆戻り量の性能に優れていた。」

(イ)甲3発明
甲3には、上記実施例4で製造された生理食塩水保水能40g/g、生理食塩水吸収速度43秒、中位粒子径375μmである吸水性樹脂(以下、「甲3実施例4発明」という。)が記載されていると認める。

エ 甲4に記載された事項及び甲4発明
(ア)甲4に記載された事項
甲4には、「吸水性樹脂粒子の製造方法及びそれを用いた衛生材料」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性エチレン性不飽和単量体を重合させて吸水性樹脂を製造する方法であって、内部架橋剤としての多価グリシジル化合物の存在下、水溶性アゾ系ラジカル重合開始剤を用いて重合を行なった後、得られた吸水性樹脂を後架橋剤で後架橋することを特徴とする吸水性樹脂粒子の製造方法。
・・・
【請求項6】
後架橋剤が多価グリシジル化合物である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
・・・
【請求項8】
請求項1〜7記載の製造方法で得られる、以下の性能を満たす吸水性樹脂粒子。
生理食塩水の吸水速度:60秒以内
生理食塩水の保水能:40〜60g/g
4.14kPa荷重下の生理食塩水吸水能:15ml/g以上
水可溶分:20質量%以下
質量平均粒子径:200〜600μm
【請求項9】
請求項8記載の吸水性樹脂粒子と親水性繊維とからなる衛生材料。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高い保水能、荷重下での高い吸水能、優れた吸水速度を持ち、かつ水可溶分が少ない、衛生材料に好適に使用できる吸水性樹脂粒子の製造方法およびそれによって得られる吸水性樹脂粒子、ならびにそれを用いた衛生材料を提供することを課題とする。」
「【発明の効果】
【0009】
本発明によると、高い保水能、荷重下での高い吸水能、優れた吸水速度を持ち、かつ水可溶分が少ない、衛生材料に好適に使用できる吸水性樹脂粒子を製造することができる。」
「【0010】
水溶性エチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸〔「(メタ)アクリル」とは「アクリル」または「メタクリル」を意味する。以下同じ〕、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸またはそのアルカリ金属塩;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のノニオン性単量体;ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有不飽和単量体またはその四級化物等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。なお、アルカリ金属塩におけるアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
【0011】
水溶性エチレン性不飽和単量体のうち好ましいものとしては、工業的に入手が容易である観点から、(メタ)アクリル酸またはそのアルカリ金属塩、アクリルアミド、メタクリルアミドおよびN,N−ジメチルアクリルアミドが挙げられる。さらに好ましいものとしては、経済的な観点から、(メタ)アクリル酸またはそのアルカリ金属塩が挙げられる。」
「【0034】
かかる吸水性樹脂粒子は、生理食塩水の吸水速度が60秒以内、生理食塩水の保水能が40〜60g/g、4.14kPa荷重下の生理食塩水吸水能が15ml/g以上、水可溶分が20質量%以下、質量平均粒子径が200〜600μmであるので、水可溶分が少なく、高い保水能を有し、かつ荷重下での吸水能が高く、優れた吸水速度を有し、衛生材料に好適に使用できるものである。
【0035】
生理食塩水の吸水速度は、速いものの方が、衛生材料として用いた場合、逆戻り量が少なく、拡散性が良いという利点を有する観点から、好ましくは60秒以内、より好ましくは55秒以内、更に好ましくは50秒以内である。生理食塩水の保水能は好ましくは40〜60g/g、より好ましくは40〜50g/gである。
【0036】
4.14kPa荷重下の生理食塩水吸水能は、高いものの方が衛生材料として用いた場合、衛生材料に圧力がかかった場合における逆戻り量が少なくなるという利点を有する観点から好ましくは15ml/g、より好ましくは20ml/gである。」
「【0038】
質量平均粒子径は、好ましくは200〜600μm、より好ましくは250〜500μm、更に好ましくは300〜400μmである。吸水性樹脂粒子の質量平均粒子径が200μm未満の場合、小粒子の存在割合が多くなり、粉立ち等により粉体の取り扱い性が悪化するおそれがある。また、衛生材料として使用した場合、ゲルブロッキングを起こしやすく、その結果、拡散性の低下および逆戻り量が増加するおそれがある。吸水性樹脂粒子の質量平均粒子径が600μmを超える場合、吸水速度が遅くなり、衛生材料として使用した場合、衛生材料からの漏れを引き起こしやすく、着用者が衛生材料を快適に使用できなくなるおそれがある。」
「【0040】
本発明の衛生材料は、水性液体を吸収・保持する吸収体を、水性液体が通過することのできる液体透過性シート(トップシート)と、水性液体が通過することのない液体不透過性シート(バックシート)との間に保持した構造を有している。液体透過性シートは、身体と接触する側に配されており、液体不透過性シートは、身体と接触することのない側に配されている。」
「【0043】
前記衛生材料に使用される吸収体は、親水性繊維と吸水性樹脂粒子から構成されている。親水性繊維としては、特に限定されるものではないが、例えば、木材から得られる綿状パルプ、メカニカルパルプ、ケミカルパルプ、セミケミカルパルプなどのセルロース繊維、レーヨン、アセテートなどの人工セルロース繊維などが挙げられる。親水性繊維は、ポリアミドやポリエステル、ポリオレフィンなどの合成繊維を含有してもよい。」
「【実施例】
【0044】
以下に、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明がこれら実施例等により限定されるものではない。
【0045】
実施例1
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計および窒素ガス導入管を備えた1000mL容の五つ口円筒型丸底フラスコにn−ヘプタン340g、HLBが3.0のショ糖脂肪酸エステル(三菱化学株式会社の商品名:S−370)0.92gを加え、分散、昇温して溶解後、55℃まで冷却した。
【0046】
これとは別に、500mL容の三角フラスコに、80質量%アクリル酸水溶液92g(1.02モル)を仕込み、これを外部から冷却しつつ、30質量%水酸化ナトリウム水溶液102.2g(0.77モル)を滴下して、アクリル酸の75モル%を中和した。さらに、水36.9g、水溶性アゾ系重合開始剤の2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.11g(0.00041モル)および内部架橋剤のエチレングリコールジグリシジルエーテル8.3mg(0.000048モル)を添加し、1段目重合用の単量体水溶液を調製した。
【0047】
この1段目重合用の単量体水溶液を、前記の五つ口円筒型丸底フラスコに、撹拌下で全量加えて分散させ、系内を窒素で十分に置換した後に昇温し、浴温を70℃に保持して、重合反応を1時間行った後、重合スラリー液を室温まで冷却した。
【0048】
別の500mL容の三角フラスコに、80質量%アクリル酸水溶液119.1g(1.32モル)を仕込み、これを冷却しつつ30質量%水酸化ナトリウム水溶液132.2g(0.99モル)を滴下して、アクリル酸の75モル%を中和し、さらに水5.8g、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.14g(0.00052モル)およびエチレングリコールジグリシジルエーテル10.7mg(0.000061モル)を添加し、2段目重合用の単量体水溶液を調製し、氷水浴を用いて冷却した。
【0049】
この2段目重合用の単量体水溶液を、前記重合スラリー液に全量添加した後、再び系内を窒素で十分に置換した後に昇温し、浴温を70℃に保持して、2段目の重合反応を2時間行った。重合終了後、120℃の油浴で加熱し、共沸蒸留により水のみを系外に除去し、ゲル状物を得た。次いで、後架橋剤として2質量%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液7.81g(0.00089モル)を添加、混合して後架橋反応を行い、さらに水分およびn−ヘプタンを蒸留により除去して乾燥し、質量平均粒子径が380μmの吸水性樹脂粒子215.5gを得た。」
「【0052】
実施例4
実施例1において、後架橋剤として用いた2質量%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液の使用量を7.81gから15.83g(0.00180モル)に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて、質量平均粒子径が320μmの吸水性樹脂粒子216.9gを得た。」
「【0076】
次に、実施例1〜7および比較例1〜4で得られた吸水性樹脂粒子を、下記に示す各種の試験に供した。その結果を表1に示す。
【0077】
(1)質量平均粒子径
吸水性樹脂粒子100gを秤量し、これをJIS−Z8801−1982対応の8つの標準篩(目開き850μm、500μm、355μm、300μm、250μm、180μm、106μm、底容器の順番に積み重ねた)の一番上の篩に入れ、ロータップ式篩振動機を用いて10分間振動させて篩い分けした後に篩毎に秤量し、その結果に基づいて積算質量が50質量%になる粒子径を次式により算出した。
【0078】
質量平均粒子径=[(50−A)/(D−A)]×(C−B)+B
【0079】
式中、Aは、粒度分布の粗い方から順次質量を積算し、積算質量が50質量%未満であり、かつ50質量%に最も近い点の積算値を求めた場合の当該積算値(g)であり、また、Bは、当該積算値を求めたときの篩目開き(μm)である。また、Dは、粒度分布の粗い方から順次質量を積算し、積算質量が50質量%以上であり、かつ50質量%に最も近い点の積算値を求めた場合の当該積算値(g)であり、また、Cは、当該積算値を求めたときの篩目開き(μm)である。
【0080】
(2)生理食塩水の吸水速度
100mL容のビーカーに、25±0.2℃の生理食塩水50±0.01gを量りとり、マグネチックスターラーバー(8mmφ×30mmのリング無し)を投入し、マグネチックスターラー(iuchi社製、品番:HS−30D)の上に配置した。引き続きマグネチックスターラーバーを600ppmで回転するように調整し、さらに、マグネチックスターラーバーの回転により生ずる渦の底部は、マグネチックスラーラーバーの上部近くになるように調整した。
【0081】
次に、JIS標準篩を用いて300〜500μmに分級した吸水性樹脂粒子2.0±0.002gを、ビーカー中の渦中央とビーカー側面の間に素早く流し込み、流し込んだ時点から渦が収束した時点までの時間(秒)を、ストップウォッチを用いて測定し、吸水速度とした。
【0082】
(3)生理食塩水の保水能
吸水性樹脂粒子2.0gを、綿袋(メンブロード60番、横100mm×縦200mm)中に量り取り、500mL容のビーカー中に入れた。綿袋に生理食塩水500gを一度に注ぎ込み、吸水性樹脂粒子のママコが発生しないように食塩水を分散させた後、綿袋の上部を輪ゴムで縛り、1時間放置して、吸水性樹脂粒子を十分に膨潤させた。遠心力167Gになるように設定した脱水機(国産遠心機株式会社製、品番:H−122)を用いて綿袋を1分間脱水して、脱水後の膨潤ゲルを含んだ綿袋の質量Wa(g)を測定した。吸水性樹脂粒子を添加せずに同様の操作を行い、綿袋の湿潤時空質量Wb(g)を測定し、以下の式から保水能を算出した。
【0083】
生理食塩水の保水能(g/g)=[Wa−Wb](g)/吸水性樹脂粒子の質量(g)」
「【0095】
【表1】


「【0098】
次に実施例8〜14および比較例5〜8で得られた衛生材料を以下の方法にしたがって評価した。その結果を表2に示す。
【0099】
(a)人工尿の調製
10L容の容器に、塩化ナトリウム60g、塩化カルシウム二水和物1.8g、塩化マグネシウム六水和物3.6g及び適量の蒸留水を入れ、完全に溶解した。次いで、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル0.02gを添加し、更に蒸留水を追加して、水溶液全体の質量を6000gに調製した。更に、少量の青色1号で着色して、人工尿とした。
【0100】
(b)浸透速度
浸透速度の測定は、衛生材料の中心付近に、直径3cmのシリンダーを用いて、50mlの人工尿を注ぎ込むと同時にストップウォッチをスタートさせ、人工尿が完全に衛生材料に浸透するまでの時間を測定することによって行った(1回目)。次に、前記シリンダーをはずし衛生材料をそのままの状態で保存し、1回目の人工尿注入開始から30分後に、再び同じ位置に前記シリンダーを置き、人工尿50mlを注ぎ込むと同時に、ストップウォッチをスタートさせ、人工尿が完全に衛生材料に浸透するまでの時間(秒)を測定した(2回目)。更に、同様の方法にて3回目まで浸透速度を測定した。
【0101】
(c)逆戻り量
前記浸透速度の測定終了から60分後、10cm×10cmに裁断した濾紙(東洋濾紙No.2)を重ねて約80g分とし、乾燥質量(g)を測定した。濾紙を衛生材料の中央部に置き、その上から5kgのおもり(底面積=10cm×10cm)を載せて5分間荷重を加えた後、おもりをはずして逆戻り液を吸収した濾紙の質量(g)を測定した。逆戻り液を吸収した濾紙の質量(g)から濾紙の乾燥質量(g)を差し引くことにより、逆戻り量(g)を算出した。
【0102】
(d)拡散長
前記逆戻り量の測定後5分以内に人工尿が浸透した衛生材料の長手方向の拡がり寸法(cm)を測定した。なお、小数点以下の数値は四捨五入した。
【0103】
【表2】

【0104】
表1より、各実施例で得られた吸水性樹脂粒子は、高い保水能を有し、かつ荷重下での吸水能が高く、優れた吸水速度、更に水可溶分が少ないことがわかる。更に、表2に示したように、このような吸水性樹脂粒子を用いると、液体の拡散性に優れ、逆戻り量が少ない衛生材料を提供することが可能であることがわかる。」

(イ)甲4発明
甲4には、上記実施例4で製造された、生理食塩水の保水能48g/g、生理食塩水の吸収速度48秒、質量平均粒子径320μmである吸水性樹脂(以下、「甲4実施例4発明」という。)が記載されていると認める。

オ 甲5に記載された事項及び甲5発明
(ア)甲5に記載された事項
甲5には、「吸水性樹脂粒子、その製造方法、およびそれを用いた吸収体」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
「[0002] 吸水性樹脂は、近年、紙オムツや生理用品等の衛生用品、保水剤や土壌改良剤等の農園芸材料、および止水剤や結露防止剤等の工業資材など、種々の分野で広く使用されている。これらの分野の中でも、特に紙オムツや生理用品等の衛生用品への使用が大きな用途となっている。
[0003] 吸水性樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸部分中和物、澱粉 アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、澱粉−アクリル酸グラフト共重合体の中和物、酢酸ビ二ル−アクリル酸エステル共重合体のけん化物等が知られている。
[0004] 通常、吸水性樹脂に望まれる特性としては、高い吸水量、優れた吸水速度、吸水後の高いゲル強度等が挙げられる。特に、衛生材料用途の吸収体に使用される吸水性樹脂に望まれる特性としては、高い吸水量、優れた吸水速度、吸水後の高いゲル強度に加えて、優れた加圧吸水能、適度な粒子径、吸収した物質の吸収体外部への逆戻りの少ないこと、吸収した物質の吸収体内部への拡散性に優れること等が挙げられる。」
「[0009] 本発明の目的は、高い水分率において粉体流動性に優れ、粒子強度に優れ、機械的な衝撃を受けた後でも粒子径の保持率および加圧吸水能の保持率が高い吸水性樹脂粒子、その製造方法、およびそれを用いた吸収体を提供することにある。」
「[0012] 本発明の吸水性樹脂粒子は、高い水分率において粉体流動性に優れ、粒子強度に優れ、機械的な衝撃を受けた後でも、粒子径の保持率および加圧吸水能の保持率が高く、吸水速度に優れた吸水性樹脂粒子であるため、高速で生産される薄型吸収体への使用に適しており、得られた薄型吸収体および吸収性物品は、被吸収液の吸収性に優れ、漏れが少ない特徴を有する。」
「[0019] 水溶性エチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸〔「(メタ)アクリ」とは「アクリ」または「メタクリ」を意味する。以下同じ〕、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸またはその塩;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のノニオン性モノマー;ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有不飽和モノマーまたはその四級化物等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。」
「[0034] このようにして得られる本発明の吸水性樹脂粒子の質量平均粒子径は200〜500μmであることが好ましく、250〜400μmであることがより好ましい。質量平均粒子径が200μm未満であれば、粒子間の間隙が少なく、吸収液の浸透性が低下し、ゲルブロッキングが生じやすくなるため好ましくない。また、質量平均粒子径が500μmを超えれば、吸水速度が遅くなりすぎ、吸収体に使用された場合、液モレが生じやすくなるため好ましくない。
なお、吸水性樹脂粒子の質量平均粒子径は、後述する「(5)質量平均粒子径」に記載されている測定方法に従って測定したときの値である。」
「[0045] 製造例1
内容積500mlの三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液92gを入れ、氷冷しながら20.0質量%水酸化ナトリウム水溶液154.1gを滴下してアクリル酸の中和を行い、アクリル酸部分中和塩水溶液を調製した。得られたアクリル酸部分中和塩水溶液に、架橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド9.2mgおよび水溶性ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.11gを添加し、これを単量体水溶液とした。
一方、攪拌機、2段パドル翼、還流冷却器、滴下ロートおよび窒素ガス導入管を備えた内容積2リットルの五つ口円筒型丸底フラスコに、n−ヘプタン340gと、界面活性剤として、ショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ株式会社の商品名;リョートーシュガーエステルS−370)0.92ggを加えてn−ヘプタンに溶解させた後、上記の重合用の単量体水溶液を加えて35℃に保ち攪拌下で懸濁した。その後、系内を窒素で置換後、70℃の水浴を用いて昇温して逆相懸濁重合を行った。
[0046] 次いで、別に、内容積500mlの三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液128.8gを入れ、氷冷しながら24.7質量%水酸化ナトリウム水溶液173.8gを滴下してアクリル酸の中和を行い、アクリル酸部分中和塩水溶液を調製した。得られたアクリル酸部分中和塩水溶液に、架橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド12.9mgおよび水溶性ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.16gを添加し、これを第2段目の逆相懸濁重合用の単量体水溶液とした。
第1段目の逆相懸濁重合の終了後、重合スラリーを冷却し、第2段目重合用の単量体水溶液を系内に滴下し、23℃に保ちながら30分間攪拌を行った。その後、系内を窒素で置換し、70℃の水浴を用いて昇温して第2段目の逆相懸濁重合を行った。重合終了後、120℃の油浴で加熱し、共沸蒸留により、266gの水を系外に除去し、2質量%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液8.83gを添加し、80℃で2時間保持し、後架橋処理を行った。さらに水およびn−ヘプタンを蒸留により除去して乾燥し、質量平均粒子径が360μm、水分率5%の吸水性樹脂粒子227.2gを得た。
[0047]実施例1
製造例1と同様にして得られた吸水性樹脂粒子200gに非晶質シリカ粒子1g((株)トクヤマ製、トクシールNP)を添加、混合後、内容積2リットルのセパラブルフラスコに入れ、撹拌しながら室温下、加湿機((株)トヨトミ製、ハイブリッド加湿器)により水添加量0.4L/hで20分間、セパラブルフラスコ内を加湿し、水分率11%の吸水性樹脂を得た。」
「[0057](2)生理食塩水保水能
吸水性樹脂粒子2.00gを、綿袋(メンブロード60番、横100mm×縦200mm)に入れ、500mLのビーカー内に入れた。この綿袋内に生理食塩水500gを注ぎ込み、開口部を輪ゴムで縛り、1時間放置した。その後、遠心力167Gの脱水機(国産遠心機(株)製、品番H−122)を用いて、前記綿袋を1分間脱水し、脱水後の膨潤ゲルを含んだ綿袋の質量Wa(g)を測定した。吸水性樹脂を添加せずに同様の操作を行い、綿袋の湿潤時空質量Wb(g)を測定し、次式により生理食塩水保水能を算出した。
生理食塩水保水能(g/g)=[Wa−Wb](g)/2.00(g)
[0058](3)吸水速度
100mlのビーカーに、25±0.2℃の温度の生理食塩水50±0.1gを入れ、マグネチックスターラーバー(8mmφ×30mm)を用いて、600rpmになるように調整した。次に吸水性樹脂2.0±0.002gを前記ビーカーに素早く添加し、添加し終わると同時にストップウォッチをスタートした。吸水性樹脂が生理食塩水を吸水し、渦がなくなるまでの時間(秒)をストップウォッチで測定し、吸水速度とした。」
「[0062](5)質量平均粒子径
JIS標準篩を上から、目開き500μm(30メッシュ)、目開き355μm(42メッシュ)、目開き300μm(50メッシュ)、目開き250μm(60メッシュ)、目開き150μm(100メッシュ)、目開き75μm(200メッシュ)、受け皿の順に組み合わせ、最上の篩に吸水性樹脂約100gを入れ、ロータップ式振とう器を用いて、20分間振とうさせた。
次に、各篩上に残った吸水性樹脂の質量を全量に対する質量百分率として計算し、粒子径の大きい方から順に積算することにより、篩の目開きと篩上に残った質量百分率の積算値との関係を対数確率紙にプロットした。確率紙上のプロットを直線で結ぶことにより、積算質量百分率50質量%に相当する粒子径を質量平均粒子径とした。」
「[0067][表1]


「[0081] 本発明によると、吸収体作成時における吸収性樹脂の衝突等による吸水性能の低下が少なく、得られた吸収性物品は加圧下における吸収性にも優れており、紙おむつ、生理用品等の衛生材料の吸収体に好適に用いることができる。」
「請求の範囲
[1] 水溶性エチレン性不飽和単量体を水溶性ラジカル重合開始剤を用いて、要すれば架橋剤の存在下に重合し、吸水性樹脂粒子前駆体を得た後、後架橋剤を添加して粒子の表面層を架橋し、非晶質シリカ粒子を添加して得られる吸水性樹脂粒子であって、水分率が10〜20%であり、粒子衝突試験前後における粒子径保持率が90%以上であることを特徴とする吸水性樹脂粒子。
・・・
[4] 請求項1または2に記載の吸水性樹脂粒子と親水性繊維と透水性シートからなる吸収体。」

(イ)甲5発明
甲5には、上記実施例1で製造された生理食塩水保水能34g/g、吸水速度41秒、質量平均粒子径365μmである吸水性樹脂(以下、「甲5実施例1発明」という。)が記載されていると認める。

カ 甲8に記載された事項及び甲8発明
(ア)甲8に記載された事項
甲8には、「吸水性樹脂粒子の製造方法、それにより得られる吸水性樹脂粒子、およびそれを用いた吸収体および吸収性物品」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
「[0002] 従来から、吸水性樹脂は、紙おむつ、生理用ナプキン等の衛生材料、ケーブル用 止水材等の工業材料に幅広く用いられている。吸水性樹脂としては、例えば、澱粉−アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、澱粉−アクリル酸グラフト重合体の中和物、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物、ポリアクリル酸部分中和物等が知られている。」
「[0007] 本発明は、水溶性エチレン性不飽和単量体を重合して得られる吸水性樹脂粒子前駆体に、少なくとも2段階で後架橋剤を添加して後架橋反応を行う工程を含むことを特徴とする吸水性樹脂粒子の製造方法を提供する。
本発明の製造方法は、特に、水分率が35%以上の吸水性樹脂粒子前駆体に後架橋剤を添加して後架橋反応を行う第1の後架橋反応工程、後架橋した吸水性樹脂粒子前駆体の水分率を35%未満に低下させる水分率調整工程、および水分率を低下させた後架橋吸水性樹脂前駆体に後架橋剤を添加して後架橋反応を行う第2の後架橋反応工程を含むことを特徴とする。」
「[0012] 水溶性エチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸〔「(メタ)アクリル」とは「アクリル」および「メタクリル」を意味する。以下同じ〕、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸またはそのアルカリ金属塩;(メタ)アクリルアミド、 N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のノニオン性不飽和単量体;ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有不飽和単量体またはその四級化物等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。なお、アルカリ金属塩におけるアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
水溶性エチレン性不飽和単量体のうち好ましいものとしては、工業的に入手が容易である観点から、(メタ)アクリル酸およびそのアルカリ金属塩、(メタ)アクリルアミドおよびN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。さらに好ましいものとしては、経済性の観点から、(メタ)アクリル酸およびそのアルカリ金属塩が挙げられる。」
「[0036] かくして得られた本発明の吸水性樹脂粒子は、生理食塩水の保水能が40〜60g/g、4.14kPa荷重下の生理食塩水吸水能が15ml/g以上、ゲル強度が500Pa以上、水可溶分が15質量%以下であり、水可溶分が少なく、高い保水能を有し、かつ荷重下での吸水能が高く優れた吸水速度を有するため、吸収性物品に好適に使用できるものである。
[0037] 生理食塩水の保水能は、高いものの方が吸収性物品に用いた場合、吸収容量を高めることができるという観点から、好ましくは40〜60g/g、より好ましくは45〜55g/gである。
4.14kPa荷重下の生理食塩水吸水能は、高いものの方が吸収性物品として用いた場合、吸収性物品に圧力がかかった場合における逆戻り量が少なくなるという利点を有する観点から、15ml/g以上であることが好ましい。」
「[0048] 実施例1
工程1:吸水件樹脂粒子前駆体の調製
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計および窒素ガス導入管を備えた 1000mL容の五つ口円筒型丸底フラスコ内に、n−ヘプタン340gおよびHLBが3.0のショ糖脂肪酸エステル〔三菱化学フーズ株式会社製、商品名:S−370〕0.92gを加え、分散させながら70℃まで昇温して溶解させた後、55℃まで冷却した。
[0049] これとは別に、500mL容の三角フラスコ内に、80.5質量%アクリル酸水溶液92g(1.02モル)を加えた。外部から冷却しつつ、このフラスコ内に、30質量%水酸化ナトリウム水溶液 102. 2g(0. 77モル)を滴下して、アクリル酸の 75モル%を中和した。さらに、水50.2g、水溶性ラジカル重合開始剤の過硫酸カリウム0.llg(0.00041モル)および架橋剤のエチレングリコールジグリシジルエーテル8.3mg (0.000047モル)を添加し、1段目重合用の単量体水溶液を調製した。
この 1段目重合用の単量体水溶液の全量を、前記五つ口円筒型丸底フラスコに、撹拌下で加えて分散させ、系内を窒素ガスで十分に置換し、浴温を 70℃に保持し、重合反応を1時間行った。その後、得られたスラリー状の反応混合物を室温まで冷却した。
[0050] これとは別の500mL容の三角フラスコ内に、80.5質量%アクリル酸水溶液119.lg(l.32モル)を加え、冷却しつつ30質量%水酸化ナトリウム水溶液132.2g(0.99モル)を滴下して、アクリル酸の 75モル%を中和し、さらに水27.4gおよび過硫酸カリウム0.14g(0.00052モル)を添加し、2段目重合用の単量体水溶液を調製し、氷水浴内で冷却した。この2段目重合用の単量体水溶液の全量を、前記で得られた反応混合物に添加した後、再び系内を窒素ガスで十分に置換し、浴温を70℃に保持し、2段目の重合反応を2時間行った。
[0051] 重合終了後、120℃の油浴で加熱し、共沸蒸留により水234gのみを系外に除去し、吸水性樹脂粒子前駆体を得た。この時の吸水性樹脂粒子前駆体の残存水分量は84gであり、水分率は 40%であった(本実施例の理論樹脂固形分量は209gである)。
[0052] 工程2:吸水性樹脂粒子の製造
得られた吸水性樹脂粒子前駆体に、後架橋剤として2質量%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液4.22g(0. 00049モル)を添加して混合した。
この混合物を120℃の油浴で加熱し、共沸蒸留により水のみを系外に除去しながら第1の後架橋反応を行った。この時28gの水分が除去され、残存水分量は60gで、水分率29%となった。
引続き、後架橋剤として2質量%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液2.53g(0. 00029モル)を添加して混合した。
この混合物を120℃の油浴で加熱し、得られたゲル状物の水分およびn−ヘプタンを蒸留により除去、乾燥しながら第2の後架橋反応を行い、質量平均粒子径が381μmの吸水性樹脂粒子222. 5gを得た。なお、この吸水性樹脂粒子の最終水分率(乾燥減量)は5%であった。
[0053] 実施例2
実施例1において、第1の後架橋反応工程に用いた後架橋剤である2質量%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液の添加量を2.llg(0.00024モル)に、第2の後架橋反応工程に用いた後架橋剤である2質量%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液の添加量を2.l lg(0. 00024モル)にそれぞれ変更し、第1の後架橋反応工程における水分率と第2の後架橋反応工程における水分率をそれぞれ45%、29%とした以外は実施例1と同様の操作を行い、質量平均粒子径が373μmの吸水性樹脂粒子222.4gを得た。なお、この吸水性樹脂粒子の最終水分率(乾燥減量)は4%であった。」
「[0054] 実施例3
工程1:吸水性樹脂粒子前駆体の調製
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計および窒素ガス導入管を備えた1000mL容の五つ口円筒型丸底フラスコ内に、n−ヘプタン340gおよび HLBが3.0のショ糖脂肪酸エステル〔三菱化学フーズ株式会社製、商品名:S−370〕0.92gを加え、分散させながら70℃まで昇温して溶解させた後、55℃まで冷却した。
[0055] これとは別に、500mL容の三角フラスコ内に、80.5質量%アクリル酸水溶液92g(1.02モル)を加えた。外部から冷却しつつ、このフラスコ内に、30質量%水酸化ナトリウム水溶液102. 2g(0.77モル)を滴下して、アクリル酸の 75モル%を中和した。さらに、水50.2g、水溶性ラジカル重合開始剤の過硫酸カリウム0.llg (0.00041モルおよび架橋剤のエチレングリコールジグリシジルエーテル8.3mg(0.000047モル)を添加し、1段目重合用の単量体水溶液を調製した。
この1段目重合用の単量体水溶液の全量を、前記五つ口円筒型丸底フラスコに、撹拌下で加えて分散させ、系内を窒素ガスで十分に置換し、浴温を70℃に保持し、重合反応を1時間行った。その後、得られたスラリー状の反応混合物を室温まで冷却した。
[0056] これとは別の500mL容の三角フラスコ内に、80. 5質量%アクリル酸水溶液 119.lg(l. 32モル)を加え、冷却しつつ30質量%水酸化ナトリウム水溶液132.2g(0.99モル)を滴下して、アクリル酸の 75モル%を中和し、さらに水27.4g、過硫酸カリウム0.14g(0. 00052モル)および亜リン酸ニナ卜リウム・五水和物0.54g(0.0025モル)を添加し、2段目重合用の単量体水溶液を調製し、氷水浴内で冷却した。
この2段目重合用の単量体水溶液の全量を、前記で得られた反応混合物に添加した後、再び系内を窒素ガスで十分に置換し、浴温を70℃に保持し、2段目の重合反応を2時間行った。
[0057] 重合終了後、120℃の油浴で加熱し、共沸蒸留により水224gのみを系外に除去し、吸水性樹脂粒子前駆体を得た。この時の吸水性樹脂粒子前駆体の残存水分量は94gであり、水分率は 45%であった (本実施例の理論樹脂固形分量は209gである)。
[0058]工程2:吸水性樹脂粒子の製造
得られた吸水性樹脂粒子前駆体に、後架橋剤として2質量%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液4.22g(0.00049モル)を添加して混合した。
この混合物を120℃の油浴で加熱し、共沸蒸留により水のみを系外に除去しながら第1の後架橋反応を行った。この時36gの水分が除去され、残存水分量は62gで、水分率30%となった。
引き続き、後架橋剤として、2質量%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液1.48g (0.00017モル)を添加して混合した。
この混合物を120℃の油浴で加熱し、得られたゲル状物の水分およびn−ヘプタンを蒸留により除去、乾燥しながら第2の後架橋反応を行い、質量平均粒子径が380μmの吸水性樹脂粒子223. lgを得た。なお、この吸水性樹脂粒子の最終水分率(乾燥減量)は5%であった。
[0059]実施例4
実施例3において、第1の後架橋反応工程に用いた後架橋剤である2質量%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液の添加量を6.33g(0.00073モル)に、第2の後架橋反応工程に用いた後架橋剤である2質量%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液の添加量を0. 53g (0.00006モル)にそれぞれ変更し、第1の後架橋反応工程における水分率と第2の後架橋反応工程における水分率をそれぞれ45%、29%とした以外は実施例3と同様の操作を行い、質量平均粒子径が 37Oμmの吸水性樹脂粒子222.7gを得た。なお、この吸水性樹脂粒子の最終水分率(乾燥減量)は5%であった。」
「[0072]B.吸水性樹脂粒子の特件評価
[0073] 実施例1〜5および比較例1〜3の吸水性樹脂粒子につき、(1)保水能、(2)吸水能、(3)ゲル強度、(4)水可溶分および (5)乾燥減量を以下の手順により測定した。
それらの結果を表1に示す。
[0074](1)吸水性樹脂粒子の生理食塩水保水能
吸水性樹脂粒子2.Ogを、綿袋 (メンブロード60番、横100mm×縦200mm)中に量り取り、 500mL容のビーカー中に入れた。綿袋に生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム水溶液、以下同様) 500gを一度に注ぎ込み、吸水性樹脂粒子のママコが発生しないように食塩水を分散させた。綿袋の上部を輪ゴムで縛り、1時間放置して、吸水性樹脂粒子を十分に膨潤させた。遠心力167Gになるよう設定した脱水機〔国産遠心機株式会社、品番:H−122〕を用いて綿袋を1分間脱水して、脱水後の膨潤ゲルを含んだ綿袋の質量Wa(g)を測定した。吸水性樹脂粒子を添加せずに同様の操作 を行い、綿袋の湿潤時空質量Wb(g)を測定し、以下の式から保水能を算出した。
[0075] [数1]
保水能(g/g) = [Wa−Wb] (g) /吸水性樹脂粒子の質量(g)」
「[0090][表1]


「[0095](5)吸収性物品試験A
人工尿の調製:10L容の容器に適量の蒸留水を入れ、塩化ナトリウム60g、塩化カルシウム・二水和物1.8gおよび塩化マグネシウム・六水和物3.6gを添加し、溶解した。次いで、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル0.02gを添加し、さらに蒸留水を追加して、全体の質量を 6000gとした。さらに、少量の青色1号で着色して、人工尿を調製した。
[0096] 浸透速度と逆戻りの測定:吸収性物品の中心部に内径3cmの液投入用シリンダーを置き、50mLの人工尿を一度に投入するとともにストップウォッチをスタートさせた。投入開始から液が吸収性物品に完全に吸収されるまでの時間を測定し、1回目の浸透速度(秒)とした。次いで 30分後および60分後にも同様な操作を行い、2回目および3回目の浸透速度(秒)を測定した。1回目の液投入開始から120分後、液投入口付近に10cm×10cmのろ紙を50g載せ、5分間5.Okgの荷重を施した。荷重後のろ紙質量を測定し、荷重前のろ紙質量を差し引いて、逆戻り量(g) とした。
[0097](6)吸収性物品試験B
液投入回数を1回、人工尿量を150mlとし、1回目投入開始から5分後に荷重開始とする以外は、吸収性物品試験Aと同様の操作を行った。
[0098] [表2]


「請求の範囲
[5] 生理食塩水保水能が40〜60g/g、4.14kPa加圧下の生理食塩水吸水能が15 ml/g以上、ゲル強度が500Pa以上、水可溶分が15質量%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか 1項に記載の製造方法で得られる吸水性樹脂粒子。
[6] 請求項5記載の吸水性樹脂粒子と親水性繊維とからなる吸収体。
[7] 請求項6に記載の吸収体を、液体透過性シートと液体不透過性シートとの間に保持してなる吸収性物品。」

(イ)甲8発明
甲8には、上記実施例2で製造された生理食塩水保水能45g/g、質量平均粒子径373μmである吸水性樹脂粒子、上記実施例4で製造された生理食塩水保水能47g/g、質量平均粒子径370μmである吸水性樹脂粒子(それぞれ、以下、「甲8実施例2発明」、「甲8実施例4発明」という。)が記載されていると認める。

キ 甲9に記載された事項及び甲9発明
(ア)甲9に記載された事項
甲9には、「吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤、その製造方法及び吸収性物品」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸基及び/又はその塩含有不飽和モノマーを重合してなり、略球状体、その凝集体又は略球状体由来の凝集体のうちの少なくとも1種である吸水性樹脂粒子を主成分とする粒子状吸水剤であって、下記(a)、(b)、(c)及び(d)を満たす粒子状吸水剤。
(a)生理食塩水への無加圧下吸収倍率(CRC)が32g/g以上
(b)質量平均粒子径(D50)が200μm以上400μm以下
(c)粒子径150μm未満の粒子の含有量が0質量%以上5質量%以下
(d)ガス検知管により測定される雰囲気濃度としての揮発性有機物の含有量が0ppm以上100ppm以下」
「【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のように多くの技術が提案されているが、近年、紙オムツ等の吸収体において吸水性樹脂の使用量が多くなって、吸水性樹脂濃度が高い(吸水性樹脂の質量比が高い)吸収体となる傾向を示しており、従来の吸水性樹脂では、高濃度での使用に十分な性能が示されず、また高濃度では消臭性能も十分とはいえないという問題がある。また、オムツ中の吸水性樹脂の使用量が増加するに伴い、残存モノマーの低減がより求められるようになっている。
【0012】
本発明の目的は、優れた吸収性物品を与えるため、オムツ等の吸収体における高濃度での実使用に好適な吸水性樹脂を含む粒子状吸水剤及びその製造方法の提供にある。すなわち、課題(優れた吸収性物品)の解決手段として、本発明はさらなる付加機能を有する吸水剤であって、消臭性能に優れ、膨潤後に発生する臭気が無く、実使用に好適な吸水剤及びその製造方法の提供にある。」
「【0026】
本発明では吸水性樹脂として、本発明を達成する上で、酸基及び/又はその塩含有不飽和モノマーを架橋重合した吸水性樹脂(架橋重合した構造である吸水性樹脂であれば良く、酸基及び/又はその塩含有不飽和モノマーを重合後に、架橋剤により架橋反応して得られる吸水性樹脂でも良い)が必須に用いられる。好ましくは、アクリル酸及び/又はその塩(中和物)を主成分とする不飽和モノマーを重合・架橋することにより得られるポリアクリル酸(部分)中和物ポリマーが用いられる。」
「【0030】
本発明でアクリル酸(塩)以外のモノマーを用いる場合、本発明を達成するため、該アクリル酸(塩)以外のモノマー(但し、下記の架橋モノマーを除く)の使用割合は、主成分として用いるアクリル酸及びその塩との合計量に対して、好ましくは0〜30モル%、より好ましくは0〜10モル%、最も好ましくは0〜5モル%とされる。」
「【0093】
本発明の吸水剤は、(b)質量平均粒子径(D50)が通常200μm以上400μm以下であり、下限が好ましくは225μm、さらに好ましくは250μm、上限が好ましくは380μm、さらに好ましくは350μmに狭く制御される。かつ、(c)150μm未満の粒子の割合が、0質量%以上5質量%以下、上限が、好ましくは3質量%、さらに好ましくは2質量%、特に好ましくは1質量%に制御される。粒度調整は、好ましくは表面架橋前にされるが、表面架橋後に粉砕及び分級、造粒されて特定の粒度に制御されてもよい。質量平均粒子径が特に200μm未満である場合、及び150μm未満の粒子の割合が5質量%を超える場合、取り扱い性、特に粉塵が問題となる。また、オムツ等の吸収性物品に使用した場合に、トップシートから漏れ出す可能性がある。また、質量平均粒子径が特に400μmを超える場合、吸収速度に劣り、オムツ等の吸収性物品に使用したときに、高物性が示されない。
【0094】
本発明の(a)無加圧下吸収倍率(CRC)は32g/g以上、下限が、より好ましくは35g/g、さらに好ましくは40g/g、特に好ましくは45g/g、上限が、より好ましくは70g/g、さらに好ましくは65g/g、特に好ましくは60g/gとされる。吸収倍率が32g/g未満である場合、オムツに使用した場合、高物性が示されない。」
「【0103】
(l)ボルテックス吸収速度 本発明の吸水剤の吸収速度は60秒以下、好ましくは1〜55秒、より好ましくは2〜50秒である。吸収速度が60秒を超える場合、オムツ等の吸収体に吸水性樹脂を使用した場合に十分な吸収能力を発揮しない場合がある。」
「【0108】
本発明の吸収性物品、特に子供用紙オムツ、大人用紙オムツや生理用ナプキンは、例えば繊維基材と吸水剤とをブレンドないしサンドイッチすることで吸収体(吸収コア)を作成し、吸収コアを液透過性を有する基材(表面シート)と液不透過性を有する基材(背面シート)とでサンドイッチして、必要に応じて、弾性部材、拡散層、粘着テープ等を装備することで、製造され得る。かかる吸収コアは密度0.06〜0.50g/cc、坪量0.01〜0.20g/cm2 の範囲に圧縮成形される。なお、用いられる繊維基材としては、親水性繊維、例えば、粉砕された木材パルプ、その他、コットンリンターや架橋セルロース繊維、レーヨン、綿、羊毛、アセテート、ビニロン等が例示できる。好ましくはそれらをエアレイドしたものである。」
「【0112】
(1)生理生理食塩水(0.90質量%塩化ナトリウム水溶液)に対する無加圧下吸収倍率(CRC/Cenrifuge Retension Capacity)
吸水剤0.20gを不織布製の袋(60mm×85mm)に均一に入れ、25±2℃に調温した生理食塩水中に浸漬した。30分後に袋を引き上げ、遠心分離機(株式会社コクサン製、型式H−122小型遠心分離機)を用いて250G(250×9.81m/s2 )で3分間水切りを行った後、袋の質量W2 (g)を測定した。また吸水剤を用いないで同様の操作を行い、そのときの質量W1 (g)を測定した。そして、これら質量W1 、W2 から、次式に従って、吸収倍率(g/g)を算出した。
無加圧下吸収倍率(g/g)=((質量W2 (g)−質量W1 (g))/吸水剤の質量(g))−1」
「【0115】
(3)質量平均粒子径(D50)、対数標準偏差(σζ)及び粒子径150μm未満の質量百分率
吸水剤を、850μm、710μm、600μm、500μm、425μm、300μm、212μm、150μm、106μm、45μmのJIS標準ふるい(JIS Z−8801−1(2000))で分級篩い分けし、粒子径150μm未満の質量百分率を実測するとともに、各粒度の残留百分率Rを対数確率紙にプロットした。これにより、R=50質量%に相当する粒子径を質量平均粒子径(D50)として読み取った。また、対数標準偏差(σζ)は下記の式で表され、σζの値が小さいほど粒度分布が狭いことを意味する。
σζ = 0.5 × ln(X2 /X1 )(X1 はR=84.1質量%、X2 は15.9質量%のときのそれぞれの粒子径)
【0116】
なお、分級篩い分けは、吸水剤10.00gを上記目開きのJIS標準ふるい(The IIDA TESTING SIEVE:内径80mm)に仕込み、ロータップ型ふるい振盪機((株)飯田製作所製、ES−65型ふるい振盪機)により5分間分級した。
【0117】
なお、質量平均粒子径(D50)とは、米国特許5051259号公報等にあるように一定目開きの標準ふるいで、粒子全体の50質量%に対応する標準ふるいの粒子径のことである。」
「【0138】
(6)吸収速度評価(Vortex法)
予め調整された0.90質量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)1000質量部に食品添加物である食用青色1号0.02質量部を添加し、液温30℃に調整した。その生理食塩水50mlを100mlビーカーに計り取り、長さ40mmで太さ8mmの円筒型攪拌子で600rpmで攪拌する中に、後述する実施例又は比較例で得られた吸水剤2.0gを投入し、吸収速度(秒)を測定した。終点は、JIS K 7224(1996)「高吸水性樹脂の吸収速度試験方法 解説」に記載されている基準に準じ、吸水剤が生理食塩水を吸液してスターラーチップを試験液で覆うまでの時間を吸収速度(秒)として測定した。」
「【0142】
(9)吸収体性能評価(10分戻り量)
吸収体としての性能評価をするために、後述する実施例及び比較例の吸水剤を用いて吸収体を作成し、戻り量評価を行った。
【0143】
まず、評価用の吸収体の作成方法が以下に示される。
【0144】
後述する吸水剤1質量部と、木材粉砕パルプ2質量部とを、ミキサーを用いて乾式混合した。次いで、得られた混合物を、400メッシュ(目の大きさ38μm)に形成されたワイヤースクリーン上に広げ、直径90mmφの大きさのウェブに成形した。さらに、このウェブを圧力196.14kPa(2kgf/cm2 )で1分間プレスすることにより、坪量が約0.05g/cm2 の評価用吸収体を得た。」
「【0148】
[アクリル酸の製造例1]
市販のアクリル酸(アクリル酸ダイマー2000ppm、酢酸500ppm、プロピオン酸500ppm含有)を、無堰多孔板50段を有する高沸点不純物分離塔の塔底に供給して、還流比を1として蒸留し、マレイン酸やアクリル酸からなる二量体(アクリル酸ダイマー)等の除去後、さらに晶析を行なうことで、アクリル酸(アクリル酸ダイマー20ppm、酢酸50ppm、プロピオン酸50ppm含有)を得た。
・・・
【0150】
[アクリル酸ナトリム水溶液の製法]
アクリル酸1390gを米国特許5210298号の実施例9に従い、48%苛性ソーダを用いて20〜40℃で中和して、濃度37質量%で、100モル%中和されたアクリル酸ナトリウムを得た。
【0151】
[実施例1]
攪拌機、還流冷却機、温度計、窒素ガス導入管及び滴下漏斗を付した2Lの四つ口セパラブルフラスコにシクロヘキサン1.0Lをとり、分散剤としてのショ糖脂肪酸エステル(第一工業薬品株式会社製、DK−エステルF−50、HLB=6)3.8gを加えて溶解させ、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した。フラスコ中に、製造例1のアクリル酸の中和物であるアクリル酸ナトリウム84.6g、製造例1のアクリル酸21.6g及びN,N’−メチレンビスアクリルアミド0.016gをイオン交換水197gに溶解し、さらにヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業株式会社製、HEC−ダイセルEP−850)0.4gを溶解させ、モノマー濃度35質量%のモノマー水溶液を調製した。このモノマー水溶液に過硫酸カリウム0.15gを加えて溶解させた後、窒素ガスを吹き込んで水溶液内に溶存する酸素を追い出した。次いでこのフラスコ内のモノマー水溶液を上記セパラブルフラスコに加えて攪拌することにより分散させた。その後、浴温を60℃に昇温して重合反応を開始させた後、2時間この温度に保持して重合を完了した。重合終了後、シクロヘキサンとの共沸脱水により含水ゲル中の水を留去した後、ろ過し、80℃で減圧乾燥し、球状のポリマー粉体を得た。得られたポリマー粉体の含水率は、5.6%であった。
【0152】
上記ポリマー100質量部に、プロピレングリコール0.5質量部と、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部と、1,4−ブタンジオール0.3質量部と、水2.7質量部とからなる表面架橋剤3.53質量部とを混合した。上記の混合物を210℃で45分間加熱処理した。表面架橋後さらに、水3質量部を添加して60℃で30分密閉して加熱し、850μmで分級することで造粒された粒子状吸水剤(1)を得た。得られた粒子状吸水剤(1)の無加圧下吸収倍率、1.9kPaでの加圧下吸収倍率、粒度分布、質量平均粒子径(D50)、対数標準偏差(σζ)及び粒子径150μm未満の質量百分率、水可溶分、耐尿性評価、吸収速度、吸湿ブロッキング率、揮発性有機溶媒、及び180℃での3時間加熱後の残存モノマーの含有量が表1及び表2に示される。
・・・
【0155】
[実施例2]
実施例1で得られた粒子状吸水剤(1)100質量部に微粒子状の二酸化ケイ素(日本アエロジル株式会社製、アエロジル200(1次粒子の平均粒子径12nm))0.3質量部を添加・混合(ドライブレンド)して、粒子状吸水剤(2)を得た。得られた粒子状吸水剤(2)を実施例1と同様に評価した結果が、表1及び表2に示される。」
「【0162】
【表1】

【0163】
【表2】



(イ)甲9発明
甲9には、上記実施例2で製造された粒子状吸水剤(2)(以下、「甲9実施例2発明」)が記載されていると認める。

ク 甲11に記載された事項及び甲11発明
(ア)甲11に記載された事項
甲11には、「不定形破砕状の粒子状吸水剤」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸基および/またはその塩含有不飽和単量体を架橋重合し、表面架橋された吸水性樹脂を主成分とする不定形破砕状の粒子状吸水剤であって、その中に造粒粒子を含み、さらに、下記(i)〜(iii)を満たす不定形破砕状の粒子状吸水剤。
(i)生理食塩水への無加圧下吸収倍率(CRC)が32g/g以上
(ii)質量平均粒子径(D50)が200〜400μm
(iii)600μm未満で150μm以上の粒子が95〜100質量%
・・・
【請求項7】
さらに、生理食塩水への該粒子状吸水剤のボルテックス吸水速度が60秒以下である、請求項1〜6の何れかに記載の不定形破砕状の粒子状吸水剤。
・・・
【請求項 12】
糞、尿または血液の吸収性物品であって、請求項1〜12の何れかに記載の不定形破砕状の粒子状吸水剤および親水性繊維を含んで成形された吸収体を含む吸収性物品。」
「【0001】
本発明は、吸水性樹脂を主成分とする不定形破砕状の粒子状吸水剤に関する。さらに詳しくは、薄型紙オムツや薄型生理用ナプキンなどに用いられる吸収体用の粒子状吸水剤で、従来になく使用後も薄型のままで、かつ、優れた吸収能を発揮する不定形破砕状の粒子状吸水剤に関するものである。」
「【0009】
そこで、本発明の解決しようとする課題は、従来、吸水速度、無加圧下吸水倍率、加圧下吸水倍率、ゲル強度、耐久性、可溶分、粒度などの数多くの物性に着目した吸水性樹脂や吸水剤が開発され使用されてきたにもかかわらず、薄型吸収体において、これらの物性の制御ないし設計でも実使用で十分な性能を発揮できなかった粒子状吸水剤に関して、実使用で好適な薄型吸収体用の粒子状吸水剤を与えることである。」
「【0021】
本発明では吸水性樹脂として、本発明を達成する上で、酸基および/またはその塩含有不飽和単量体を架橋重合した吸水性樹脂が必須に用いられ、好ましくは、アクリル酸及び/又はその塩を主成分とする不飽和単量体を重合・架橋することにより得られるポリアクリル酸の部分中和物重合体が用いられる。なお、架橋重合した構造である吸水性樹脂であれば良く、酸基および/またはその塩含有不飽和単量体を重合した後に、架橋剤により架橋反応して得られる吸水性樹脂でも良い。」
「【0029】
本発明でアクリル酸(塩)以外の単量体を併用する場合、本発明を達成するため、該アクリル酸(塩)以外の単量体の使用割合は、アクリル酸及びその塩との合計量に対して、好ましくは0〜30モル%、より好ましくは0〜10モル%、最も好ましくは0〜5モル%の割合である。」
「【0082】
本発明の不定形破砕状の粒子状吸水剤の粒径は、質量平均粒子径が通常200〜400μm、好ましくは225〜380μm、より好ましくは250〜350μm、特に好ましくは250〜330μmに狭く制御され、かつ、150μm未満の粒子の割合が、0〜5質量%、好ましくは0〜4質量%、より好ましくは0〜3質量%、特には0〜2質量%、最も好ましくは0〜1質量%に制御される。 」
「【0107】
本発明において(i)無加圧下吸収倍率(CRC)は32g/g以上、より好ましくは34〜70g/g、さらに好ましくは35〜70g/g、さらに好ましくは36〜70g/g、さらに好ましくは38〜70g/g、特に好ましくは40〜65g/gとされる。吸収倍率がこれらから外れると、おむつに使用した場合、吸収能力が足りない等の問題が生じる。」
「【0110】
(vii)ボルテックス吸収速度
本発明の粒子状吸水剤の吸収速度は60秒以下、好ましくは1〜55秒、より好ましくは2〜50秒、最も好ましくは2〜30秒である。吸収速度が60秒を超える場合、液体を吸収し終わるのに時間がかかるため、オムツやナプキンを装着している本人の不快感が長引く事になるため十分な効果を発揮しない場合もある。」
「【0127】
本発明の薄型吸収性物品の製造方法は、例えば繊維基材と粒子状吸水剤とをブレンドないしサンドイッチすることで吸収体(吸収コア)を作成し、吸収コアを液透過性を有する表面シートなどの基材と液不透過性を有する背面シートなどの基材でサンドイッチして、必要に応じて、弾性部材、拡散層、粘着テープ等を装備することで、吸収性物品、特に大人用紙オムツや生理用ナプキンとすればよい。かかる吸収性物品は密度0.06〜0.50g/cc、坪量0.01〜0.20g/cm2の範囲に圧縮成形される。なお、用いられる繊維基材としては、親水性繊維、例えば、粉砕された木材パルプ、その他、コットンリンターや架橋セルロース繊維、レーヨン、綿、羊毛、アセテート、ビニロン等を例示できる。好ましくはそれらをエアレイドしたものである。」
「【0132】
(a)生理食塩水に対する無加圧下吸収倍率(CRC/Cenrifuge Retension Capacity)
吸水剤0.20gを不織布製の袋(60mm×85mm)に均一に入れ、25±2℃に調温した生理食塩水中に浸漬した。30分後に袋を引き上げ、遠心分離機(株式会社コクサン製、型式H−122小型遠心分離機)を用いて250G(250×9.81m/s2)で3分間水切りを行った後、袋の質量W2(g)を測定した。また、吸水剤を用いないで同様の操作を行い、そのときの質量W1(g)を測定した。そして、これら質量W1、W2から、次式に従って、吸収倍率
(g/g)を算出した。
【0133】
【数1】


「【0137】
(c)質量(重量)平均粒子径(D50)、対数標準偏差(σζ)および粒子径600μm未満で150μm以上の質量百分率
粒子状吸水剤を、850μm、710μm、600μm、500μm、425μm、300μm、212μm、150μm、106μm、45μmのJIS標準ふるいで分級篩い分けし、粒子径600μm未満で150μm以上の重量百分率を実測するとともに、各粒度の残留百分率Rを対数確率紙にプロットした。これにより、R=50質量%に相当する粒径を質量平均粒子径(D50)として読み取った。また、対数標準偏差(σζ)は下記の式で表され、σζの値が小さいほど粒度分布が狭いことを意味する。
【0138】
【数3】

【0139】
なお、分級篩い分けは、粒子状吸水剤10.00gを上記目開きのJIS標準ふるい(The IIDA TESTING SIEVE:内径75mm)に仕込み、ロータップ型ふるい振盪機((株)飯田製作所製、ES?65型ふるい振盪機)により5分間分級した。
【0140】
なお、質量平均粒子径(D50)とは、米国特許5051259号公報などにあるように一定目開きの標準ふるいで粒子全体の50質量%に対応する標準ふるいの粒子径のことである。
【0141】
(d)吸収速度評価(Vortex法)
予め調整された0.90質量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)に1000質量部に食品添加物である食用青色1号0.02質量部を添加し、液温30℃に調整した。その生理食塩水50mlを100mlビーカーに計り取り、長さ40mmで太さ8mmの円筒型攪拌子で600rpmで攪拌する中に、吸水剤2.0gを投入し、吸収速度(秒)を測定した。終点は、JIS K 7224(1996年)「高吸水性樹脂の吸水速度試験方法 解説」に記載されている基準に準じ、吸水剤が生理食塩水を吸液してスターラーチップを試験液で覆うまでの時間を吸収速度(秒)として測定した。」
「【0150】
(h)吸収体性能評価
後述する吸水剤を、吸収体として性能評価するために吸収体を作成し戻り量評価を行った。
【0151】
まず、評価用の吸収体の作成方法を以下に示した。
【0152】
吸水剤1質量部と、木材粉砕パルプ2質量部とを、ミキサーを用いて乾式混合した。次いで、得られた混合物を、400メッシュ(目の大きさ38μm)に形成されたワイヤースクリーン上に広げ、直径90mmφの大きさのウェブに成形した。さらに、このウェブを圧力196.14kPa(2kgf/cm2)で1分間プレスすることにより、坪量が約0.05g/cm2の評価用吸収体を得た。」
「【0195】
[参考例4]
75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5500g(単量体濃度38質量%)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9)7.5gを溶解し反応液とした。次に、この反応液を参考例1と同様に脱気したのち、参考例1の反応器に、上記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換した。続いて、反応液を撹拌しながら、過硫酸ナトリウムの10質量%水溶液29.8g及びL−アスコルビン酸の1質量%水溶液1.5gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。重合開始後17分で重合ピーク温度86℃を示し、重合を開始して60分後に含水ゲル状重合体を取り出した。得られた含水ゲル状重合体は約1〜4mmの粒子に細分化されていた。この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目の大きさ300μm)の金網上に広げ、160℃で60分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き450μmと106μmの金網で連続的に分級した。450μm以上の粒子は、再度ロールミルで粉砕した。106μmの金網を通過した粒子は、粉砕を行った全量に対して13質量%を占めていた。106μmの金網を通過した吸水性樹脂微粒子は、90℃に加熱された水を同量混合し、再度同条件で乾燥し、粉砕し、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(d)を収率98%で得た。
【0196】
次いで、得られた吸水性樹脂粒子(d)100質量部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.1質量部、プロピレングリコール0.3質量部と、水0.3質量部とからなる表面架橋剤水溶液0.7質量部を混合した。上記の混合物を210℃に加熱されたモルタルミキサー内で20分間加熱処理することにより吸水性樹脂(4)を得た。吸水性樹脂(4)の粒度分布を表8に、質量平均粒子径、対数標準偏差を表9に示した。吸水性樹脂(4)にはほとんど造粒粒子は見られなかった。
【0197】
[実施例12]
参考例4で得られた表面架橋された吸水性樹脂(4)100質量部に、ジエチレントリアミン5酢酸ナトリウムを0.01質量部、ツバキ科植物の葉抽出物の15質量%水溶液(製品名:FS−80MO、販売者:白井松新薬株式会社(所在地:滋賀県甲賀郡水口町宇川37−1))0.1質量部、水3質量部からなる混合溶液を噴霧混合した。得られた混合物を60℃で含水率3質量%を維持したまま1時間加熱および硬化し、目開き600μmの金網を通した。得られた粒子状吸水剤100質量部に微粒子状の二酸化ケイ素(商品名・アエロジル200)0.3質量部を添加・混合(ドライブレンド)して、造粒粒子を35質量%含む粒子状吸水剤(10)を得た。粒子状吸水剤(10)について、実施例9と同様に評価して、結果を表7〜表9に示した。」
「【0206】
【表7】


「【0208】
【表9】



(イ)甲11発明
甲11には、上記実施例12で製造された粒子状吸水剤(10)(以下、「甲11実施例12発明」)が記載されていると認める。

(2)甲1に基づく新規性進歩性について
ア 本件特許発明1について
(ア)甲1実施例2発明との対比
本件特許発明1と甲1実施例2発明とを対比すると、両者は以下の点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。
<一致点>
エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子であって、
前記エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、
前記(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。
<相違点1−1>
本件特許発明1が、「生理食塩水の保水量が32〜45g/gであり、
300rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度が35〜42秒であり、
600rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度が40〜60秒であり、
中位粒子径が250〜346μm」と特定されているのに対し、甲1実施例2発明においては、そのようには特定されていない点。

そこで、上記相違点について検討する。
甲6によると、甲1実施例2発明における「中位粒子径」は355μmであり、また、甲1実施例2発明における「重量平均粒子径」が本件特許発明1の「中位粒子径」に相当する場合、甲1実施例2発明における「重量平均粒子径」は359μmであるため、甲1実施例2発明は、本件特許発明1の「中位粒子径が250〜346μm」である要件を満たさない。
よって、<相違点1−1>は実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲1実施例2発明であるとはいえない。
ところで、甲1の請求の範囲には、粒子状吸水剤について、「重量平均粒子径(D50)が200〜600μm」であることが記載されている。しかしながら、吸水性樹脂は、ある物性を変化させると他の物性にも影響する、という技術常識(例えば、参考資料2の図5.19に示されるように、粒子径が変化すると吸水速度も変化する。)を踏まえると、甲1実施例2発明において、他の吸水剤の物性値に影響を与えずに、「中位粒子径が250〜346μm」とすることは当業者にとって容易であるとはいえない。
また、仮に「中位粒子径」を「250〜346μm」に変化させることができたとしても、変化後の他の物性がどのようになるかは不明となり、もはや甲6を参照することができないし、さらに、特に「300rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度」について、甲1及びその他の証拠にもなく、また、「300rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度」を特定する動機付けは甲1及びその他の証拠にもない。
よって、甲1実施例2発明において、「中位粒子径が250〜346μm」であり、かつ「生理食塩水の保水量が32〜45g/gであり、300rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度が35〜42秒であり、600rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度が40〜60秒」とすることは当業者にとって容易であるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「優れた浸透速度を有する吸収性物品を得ることが可能な吸水性樹脂粒子を提供することができる。」(本件特許の発明の詳細な説明の【0011】)という、甲1実施例2発明からは予測し得ない格別顕著な効果を奏するものである。
よって、本件特許発明1は甲1実施例2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(イ)甲1実施例23発明との対比
本件特許発明1と甲1実施例23発明とを対比すると、両者は以下の点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。
<一致点>
エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子であって、
前記エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、
前記(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。
<相違点1−2>
本件特許発明1が、「生理食塩水の保水量が32〜45g/gであり、
300rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度が35〜42秒であり、
600rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度が40〜60秒であり、
中位粒子径が250〜346μm」と特定されているのに対し、甲1実施例23発明においては、そのようには特定されていない点。

そこで、上記相違点について検討する。
甲6によると、甲1実施例23発明における「中位粒子径」は、350μmであり、また、甲1実施例23発明における「重量平均粒子径」が本件特許発明1の「中位粒子径」に相当する場合、甲1実施例23発明における「重量平均粒子径」は356μmであるため、甲1実施例23発明は、本件特許発明1の「中位粒子径が250〜346μm」である要件を満たさない。
よって、<相違点1−2>は実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲1実施例23発明であるとはいえない。
また、上記(ア)で述べたのと同様の理由により、甲1実施例23発明において、<相違点1−2>に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は、甲1実施例2発明からは予測し得ない格別顕著な効果を奏するものである。
よって、本件特許発明1は甲1実施例23発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(ウ)小括
したがって、本件特許発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえないし、甲1に記載された発明に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

イ 本件特許発明2ないし5について
本件特許発明2ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲1に記載された発明であるとはいえないし、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

ウ 異議申立人の主張について
異議申立人は、令和3年11月12日付けの意見書において、「中位粒子径の上限を346μmとすることに臨界的意義があるとは言えないため、訂正発明1に進歩性はない。」と主張している。
しかしながら、上記アで述べたように、甲1実施例2発明及び甲1実施例23発明において、他の吸水剤の物性値に影響を与えずに、「中位粒子径が250〜346μm」とすることは当業者にとって容易であるとはいえないのであるから、本件特許発明1の「中位粒子径」において、「250〜346μm」であることの臨界的意義の如何を問わず、本件特許発明1ないし5は進歩性を有するものである。
よって、異議申立人の上記主張は首肯できない。

(3)甲2に基づく新規性進歩性について
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と、甲2実施例2発明を対比すると、両者は以下の点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。
<一致点>
エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子であって、
前記エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、
前記(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。
<相違点2−1>
本件特許発明1が、「生理食塩水の保水量が32〜45g/gであり、
300rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度が35〜42秒であり、
600rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度が40〜60秒であり、
中位粒子径が250〜346μm」と特定されているのに対し、甲2実施例2発明においては、そのようには特定されていない点。

そこで、上記相違点について検討する。
甲1実施例2発明の実験成績証明書である甲6を参照すると、甲2実施例2発明は、甲1実施例2発明と同じであることから、甲2実施例2発明における「中位粒子径」は355μmであり、また、甲2実施例2発明における「重量平均粒子径」が本件特許発明1の「中位粒子径」に相当する場合、甲2実施例2発明における「重量平均粒子径」は359μmであるため、甲2実施例2発明は、本件特許発明1の「中位粒子径が250〜346μm」である要件を満たさない。
よって、<相違点2−1>は実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲2実施例2発明であるとはいえない。
ところで、甲2の請求の範囲には、粒子状吸水剤について、「重量平均粒子径(D50)が200〜600μm」であることが記載されている。しかしながら、上記(2)ア(ア)で述べたのと同様の理由により、甲2実施例2発明において、<相違点2−1>に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は、甲2実施例2発明からは予測し得ない格別顕著な効果を奏するものである。
よって、本件特許発明1は甲2実施例2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
したがって、本件特許発明1は、甲2に記載された発明であるとはいえないし、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

イ 本件特許発明2ないし5について
本件特許発明2ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲2に記載された発明であるとはいえないし、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

ウ 異議申立人の主張について
異議申立人は、令和3年11月12日付けの意見書において、「中位粒子径の上限を346μmとすることに臨界的意義があるとは言えないため、訂正発明1に進歩性はない。」と主張している。
しかしながら、上記(2)ウで述べたのと同様、本件特許発明1の「中位粒子径」において、「250〜346μm」であることの臨界的意義の如何を問わず、本件特許発明1ないし5は進歩性を有するものである。
よって、異議申立人の上記主張は首肯できない。

(4)甲3に基づく新規性進歩性について
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲3実施例4発明とを対比する。
甲3実施例4発明の「生理食塩水保水能」は、本件特許発明1の「生理食塩水の保水量」に相当し、当該値が40g/gであるから、本件特許発明1の数値範囲を充足する。また、甲3実施例4発明の「生理食塩水吸収速度」は、甲3の段落【0104】からすると、本件特許発明1の「600rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度」に相当し、当該値が43秒であるから、本件特許発明1の数値範囲を充足する。
そうすると、両者は以下の点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。
<一致点>
エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子であって、
前記エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、
前記(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量に対して70〜100モル%であり、
生理食塩水の保水量が32〜45g/gであり、
600rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度が40〜60秒である、吸水性樹脂粒子。
<相違点3−1>
本件特許発明1が、「300rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度が35〜42秒」と特定されているのに対し、甲3実施例4発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点3−2>
「中位粒子径」について、本件特許発明1が「250〜346μm」と特定されているのに対し、甲3実施例4発明は「375μm」である点。

そこで、上記相違点について検討する。
事案に鑑み、<相違点3−1>及び<相違点3−2>を併せて検討する。
<相違点3−2>は実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲3実施例4発明であるとはいえない。
ところで、甲3の請求の範囲には、「吸水性樹脂の中位粒子径が、200〜600μmである」ことが記載されている。しかしながら、上記(2)ア(ア)で述べたのと同様の理由により、甲3実施例4発明において、<相違点3−2>に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
また、仮に、「中位粒子径」を「250〜346μm」に変化させることができたとしても、甲3実施例4発明は、そもそも、「300rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度」の値が不明であるし、「中位粒子径」を変化させた後に、他の物性がどのようになるかは不明なのであるから、当該変化後の「300rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度」の値も当然不明であり、さらに、「300rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度が35〜42秒」とする動機付けは甲3及びその他の証拠にもない。
そうすると、甲3実施例4発明において、<相違点3−1>及び<相違点3−2>に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は、甲3実施例4発明からは予測し得ない格別顕著な効果を奏するものである。
よって、本件特許発明1は甲3実施例4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
したがって、本件特許発明1は、甲3に記載された発明であるとはいえないし、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

イ 本件特許発明2ないし5について
本件特許発明2ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲3に記載された発明であるとはいえないし、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

ウ 異議申立人の主張について
異議申立人は、令和3年11月12日付けの意見書において、「中位粒子径の上限を346μmとすることに臨界的意義があるとは言えない」ため、本件特許発明1に進歩性はない旨主張している。
しかしながら、上記アで述べたように、甲3実施例4発明において、他の吸水剤の物性値に影響を与えずに、「中位粒子径が250〜346μm」とすることは当業者にとって容易であるとはいえないのであるから、本件特許発明1の「中位粒子径」において、「250〜346μm」であることの臨界的意義の如何を問わず、本件特許発明1ないし5は進歩性を有するものである。
よって、異議申立人の上記主張は首肯できない。

(5)甲4に基づく新規性進歩性について
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲4実施例4発明とを対比する。
甲4実施例4発明の「生理食塩水の吸収速度」は、甲4の段落【0080】からすると、本件特許発明1の「600rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度」に相当し、当該値が48秒であるから、本件特許発明1の数値範囲を充足する。さらに、甲4実施例4発明の「質量平均粒子径」は、甲4の段落【0077】ないし【0079】からすると、本件特許発明1の「中位粒子径」に相当し、当該値が320μmであるから、本件特許発明1の数値範囲を充足する。
そうすると、両者は以下の点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。
<一致点>
エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子であって、
前記エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、
前記(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量に対して70〜100モル%であり、
600rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度が40〜60秒であり、
中位粒子径が250〜346μmである、吸水性樹脂粒子。
<相違点4−1>
本件特許発明1が、「300rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度が35〜42秒」と特定されているのに対し、甲4実施例4発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点4−2>
「生理食塩の保水量」について、本件特許発明1が「32〜45g/g」と特定されているのに対し、甲4実施例4発明は、「48g/g」である点。

そこで、上記相違点について検討する。
事案に鑑み、<相違点4−1>及び<相違点4−2>を併せて検討する。
<相違点4−2>は実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲4実施例4発明であるとはいえない。
ところで、甲4の請求の範囲には、「生理食塩水の保水能:40〜60g/g」であることが記載されている。一方、吸水性樹脂は、ある物性を変化させると他の物性にも影響する、という技術常識を踏まえると、甲4実施例4発明において、他の吸水剤の物性値に影響を与えずに、「生理食塩の保水量が32〜45g/g」とすることは当業者にとって容易であるとはいえない。
また、仮に、「生理食塩の保水量」を「32〜45g/g」に変化させることができたとしても、甲4実施例4発明は、そもそも、「300rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度」の値が不明であるし、「生理食塩の保水量」を変化させた後に、他の物性がどのようになるかは不明なのであるから、当該変化後の「300rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度が35〜42秒」の値も当然不明であり、さらに、「300rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度が35〜42秒」とする動機付けは甲4及びその他の証拠にもない。
そうすると、甲4実施例4発明において、<相違点4−1>及び<相違点4−2>に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は、甲4実施例4発明からは予測し得ない格別顕著な効果を奏するものである。
よって、本件特許発明1は甲4実施例4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
したがって、本件特許発明1は、甲4に記載された発明であるとはいえないし、甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

イ 本件特許発明2ないし5について
本件特許発明2ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲4に記載された発明であるとはいえないし、甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

ウ 異議申立人の主張について
異議申立人は、令和3年11月12日付けの意見書において、「甲4の吸水性樹脂の保水量が本件と異なるのであれば、保水量と浸透速度の関係性について、甲8の実施例を参照したとき 、保水能(本件における保水量に相当)を下げることで浸透速度が速くなる結果が開示されており、特に保水能が45g/g付近を下回ることで、浸透速度が優れた値を示している。この記載を元に、優れた浸透速度を得るために甲4の吸水性樹脂の生理食塩水保水量を45g/g以下に設定することは、当業者であれば容易に想到できる。」と主張している。
しかしながら、上記アで述べたように、甲4実施例4発明において、他の吸水剤の物性値に影響を与えずに、「生理食塩の保水量が32〜45g/g」とすることは当業者にとって容易であるとはいえないのであるから、甲8の実施例を参照したとしても、本件特許発明1ないし5は進歩性を有するものである。
よって、異議申立人の上記主張は首肯できない。

(6)甲5に基づく新規性進歩性について
(ア)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲5実施例1発明とを対比する。
甲5実施例1発明の「生理食塩水保水能」は、本件特許発明1の「生理食塩の保水量」に相当し、当該値が34g/gであるから、本件特許発明1の数値範囲を充足する。また、甲5実施例1発明の「吸水速度」は、甲5の段落[0058]からすると、本件特許発明1の「600rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度」に相当し、当該値が41秒であるから、本件特許発明1の数値範囲を充足する。
そうすると、両者は以下の点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。
<一致点>
エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子であって、
前記エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、
前記(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量に対して70〜100モル%であり、
生理食塩水の保水量が32〜45g/gであり、
600rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度が40〜60秒である、吸水性樹脂粒子。
<相違点5−1>
本件特許発明1が、「300rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度が35〜42秒」と特定されているのに対し、甲5実施例1発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点5−2>
「中位粒子径」について、本件特許発明1が「250〜346μm」と特定されているのに対し、甲5実施例1発明は「365μm」である点。

そこで、上記相違点について検討する。
事案に鑑み、<相違点5−1>及び<相違点5−2>を併せて検討する。
<相違点5−2>は実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲5実施例1発明であるとはいえない。
ところで、甲5の段落[0034]には、「このようにして得られる本発明の吸水性樹脂粒子の質量平均粒子径は 200〜500μmであることが好ましく250〜400μmであることがより好ましい。」と記載されている。一方、吸水性樹脂は、ある物性を変化させると他の物性にも影響する、という技術常識を踏まえると、甲5実施例1発明において、他の吸水剤の物性値に影響を与えずに、「中位粒子径が250〜346μm」とすることは当業者にとって容易であるとはいえない。
また、仮に「中位粒子径」を「250〜346μm」に変化させることができたとしても、変化後の他の物性がどのようになるかは不明となり、もはや甲7を参照することができないし、さらに、特に「300rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度」について、甲5及びその他の証拠にもなく、また、「300rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度」を特定する動機付けは甲5及びその他の証拠にもない。
そうすると、甲5実施例1発明において、「生理食塩水の保水量が34g/gであり、600rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度が41秒」を維持しながら、「中位粒子径が250〜346μm」かつ「300rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度が35〜42秒」とすることは当業者にとって容易であるとはいえない。
そして、本件特許発明1は、甲5実施例1発明からは予測し得ない格別顕著な効果を奏するものである。
よって、本件特許発明1は甲5実施例1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
したがって、本件特許発明1は、甲5に記載された発明であるとはいえないし、甲5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

イ 本件特許発明2ないし5について
本件特許発明2ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲5に記載された発明であるとはいえないし、甲5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

ウ 異議申立人の主張について
異議申立人は、令和3年11月12日付けの意見書において、「中位粒子径の上限を346μmとすることに臨界的意義があるとは言えない」ため、本件特許発明1に進歩性はない旨主張している。
しかしながら、上記(2)ウで述べたのと同様、本件特許発明1の「中位粒子径」において、「250〜346μm」であることの臨界的意義の如何を問わず、本件特許発明1ないし5は進歩性を有するものである。
よって、異議申立人の上記主張は首肯できない。

(7)甲8に基づく新規性進歩性について
ア 本件特許発明1について
(ア)甲8実施例2発明との対比
本件特許発明1と甲8実施例2発明とを対比する。
甲8実施例2発明の「生理食塩水保水能」は、本件特許発明1の「生理食塩の保水量」に相当し、当該値が45g/gであるから、本件特許発明1の数値範囲を充足する。
そうすると、両者は以下の点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。
<一致点>
エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子であって、
前記エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、
前記(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量に対して70〜100モル%であり、
生理食塩水の保水量が32〜45g/gである、吸水性樹脂粒子。
<相違点8−1−1>
本件特許発明1が、「300rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度が35〜42秒であり、600rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度が40〜60秒」と特定されているのに対し、甲8実施例2発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点8−1−2>
「中位粒子径」について、本件特許発明1が「250〜346μm」と特定されているのに対し、甲8実施例2発明は「373μm」である点。

そこで、上記相違点について検討する。
事案に鑑み、<相違点8−1−1>及び<相違点8−1−2>を併せて検討する。
<相違点8−1−2>は実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲8実施例2発明であるとはいえない。
吸水性樹脂は、ある物性を変化させると他の物性にも影響する、という技術常識を踏まえると、甲8実施例2発明において、他の吸水剤の物性値に影響を与えずに、「中位粒子径が250〜346μm」とすることは当業者にとって容易であるとはいえない。
また、仮に、「中位粒子径」を「250〜346μm」に変化させることができたとしても、甲8実施例2発明は、そもそも、「300rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度」の値が不明であるし、「中位粒子径」を変化させた後に、他の物性がどのようになるかは不明なのでから、当該変化後の「300rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度」の値も当然不明であり、さらに、「300rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度が35〜42秒」とする動機付けは甲8及びその他の証拠にもない。
そうすると、甲8実施例2発明において、<相違点8−1−1>及び<相違点8−1−2>に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は、甲8実施例2発明からは予測し得ない格別顕著な効果を奏するものである。
よって、本件特許発明1は甲8実施例2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(イ)甲8実施例4発明との対比
本件特許発明1と甲8実施例4発明とを対比する。
甲8実施例4発明の「生理食塩水保水能」は、本件特許発明1の「生理食塩の保水量」に相当し、当該値が47g/gであるから、本件特許発明1の数値範囲を充足する。
また、甲8実施例4発明の「質量平均粒子径」は、本件特許発明1の「中位粒子径」に相当し、当該値が370μmであるから、本件特許発明1の数値範囲を充足する。
そうすると、両者は以下の点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。
<一致点>
エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む吸水性
樹脂粒子であって、
前記エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、
前記(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。
<相違点8−2−1>
本件特許発明1が、「300rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度が35〜42秒であり、600rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度が40〜60秒」と特定されているのに対し、甲8実施例4発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点8−2−2>
「中位粒子径」について、本件特許発明1が「250〜346μm」と特定されているのに対し、甲8実施例4発明は「370μm」である点。
<相違点8−2−3>
「生理食塩の保水量」について、本件特許発明1が「32〜45g/g」と特定されているのに対し、甲8実施例4発明は、「47g/g」である点。

そこで、上記相違点について検討する。
事案に鑑み、<相違点8−2−1>ないし<相違点8−2−3>を併せて検討する。
<相違点8−2−2>及び<相違点8−2−3>は実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲8実施例4発明であるとはいえない。
また、上記(ア)で述べたのと同様の理由により、甲8実施例4発明において、<相違点8−2−1>ないし<相違点8−2−3>に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は、甲8実施例4発明からは予測し得ない格別顕著な効果を奏するものである。
よって、本件特許発明1は、甲8実施例4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(ウ)小括
したがって、本件特許発明1は、甲8に記載された発明であるとはいえないし、甲8に記載された発明に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

イ 本件特許発明2ないし5について
本件特許発明2ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲8に記載された発明であるとはいえないし、甲8に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

ウ 異議申立人の主張について
異議申立人は、令和3年11月12日付けの意見書において、「中位粒子径の上限を346μmとすることに臨界的意義があるとは言えないため、訂正発明1に進歩性はない。」と主張している。
しかしながら、上記(2)ウで述べたのと同様、本件特許発明1の「中位粒子径」について、「250〜346μm」であることの臨界的意義の如何を問わず、本件特許発明1ないし5は進歩性を有するものである。
よって、異議申立人の上記主張は首肯できない。

(8)甲9に基づく新規性進歩性について
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲9実施例2発明とを対比すると、両者は以下の点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。
<一致点>
エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子であって、
前記エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、
前記(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。
<相違点9−1>
本件特許発明1が、「生理食塩水の保水量が32〜45g/gであり、
300rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度が35〜42秒であり、
600rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度が40〜60秒であり、
中位粒子径が250〜346μm」と特定されているのに対し、甲9実施例2発明においては、そのようには特定されていない点。

そこで、上記相違点について検討する。
甲10によると、甲9実施例2発明における「中位粒子径」は、「373μm」となっており、甲9実施例2発明は、本件特許発明1の「中位粒子径が250〜346μm」である要件を満たさない。
よって、<相違点9−1>は実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲9実施例2発明であるとはいえない。
ところで、甲9の請求の範囲には、粒子状吸水剤について、「質量平均粒子径(D50)が200μm以上400μm以下」であることが記載されている。一方、吸水性樹脂は、ある物性を変化させると他の物性にも影響する、という技術常識を踏まえると、甲9実施例2発明において、他の吸水剤の物性値に影響を与えずに、「中位粒子径が250〜346μm」とすることは当業者にとって容易であるとはいえない。
また、仮に「中位粒子径」を「250〜346μm」に変化させることができたとしても、変化後の他の物性がどのようになるかは不明となり、もはや甲10を参照することができないし、さらに、特に「300rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度」について、甲9及びその他の証拠にもなく、また、「300rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度」を特定する動機付けは甲9及びその他の証拠にもない。
そうすると、甲9実施例2発明において、<相違点9−1>に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は、甲9実施例2発明からは予測し得ない格別顕著な効果を奏するものである。
よって、本件特許発明1は甲9実施例2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
したがって、本件特許発明1は、甲9に記載された発明であるとはいえないし、甲9に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

イ 本件特許発明2ないし5について
本件特許発明2ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲9に記載された発明であるとはいえないし、甲9に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

ウ 異議申立人の主張について
異議申立人は、令和3年11月12日付けの意見書において、「中位粒子径の上限を346μmとすることに臨界的意義があるとは言えないため、訂正発明1に進歩性はない。」と主張している。
しかしながら、上記(2)ウで述べたのと同様、本件特許発明1の「中位粒子径」について、「250〜346μm」であることの臨界的意義の如何を問わず、本件特許発明1ないし5は進歩性を有するものである。
よって、異議申立人の上記主張は首肯できない。

(9)甲11に基づく新規性進歩性について
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲11実施例12発明とを対比すると、両者は以下の点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。
<一致点>
エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子であって、
前記エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、
前記(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。
<相違点11−1>
本件特許発明1が、「生理食塩水の保水量が32〜45g/gであり、
300rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度が35〜42秒であり、
600rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度が40〜60秒であり、
中位粒子径が250〜346μm」と特定されているのに対し、甲11実施例12発明においては、そのようには特定されていない点。

そこで、上記相違点について検討する。
甲12によると、甲11実施例12発明における「300rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度」は、「44秒」であり、甲11実施例12発明は、本件特許発明1の「300rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度が35〜42秒」である要件を満たさない。
よって、<相違点11−1>は実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲11実施例12発明であるとはいえない。
また、「300rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度」を特定する動機付けは甲11及びその他の証拠にもないのであるから、甲11実施例12発明において、<相違点11−1>に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は、甲11実施例12発明からは予測し得ない格別顕著な効果を奏するものである。
よって、本件特許発明1は甲11実施例12発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
したがって、本件特許発明1は、甲11に記載された発明であるとはいえないし、甲11に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

イ 本件特許発明2ないし5について
本件特許発明2ないし5は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲11に記載された発明であるとはいえないし、甲11に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

ウ 異議申立人の主張について
異議申立人は、令和3年11月12日付けの意見書において、「300rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度の上限を42秒とすることに臨界的意義があるとは言えないため、訂正発明1に進歩性はない。」と主張している。
しかしながら、上記アで述べたように、甲11実施例12発明において、「300rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度」を特定する動機付けは甲11及びその他の証拠にもないのであるから、本件特許発明1の「300rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度」において、「35〜42秒」であることの臨界的意義の如何を問わず、本件特許発明1ないし5は進歩性を有するものである。
よって、異議申立人の上記主張は首肯できない。

(10)取消理由1及び取消理由2についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし5は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、取消理由1及び取消理由2によっては取り消すことはできない。

第6 取消理由で採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由及びその他の主張について
1 異議申立理由3(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

(2)特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の記載は、上記第3のとおりである。

(3)発明の詳細な説明の記載
本件特許の発明の詳細の記載は次のとおりである。
「【背景技術】
【0002】
従来、水を主成分とする液体(例えば尿)を吸収するための吸収性物品には、吸水性樹脂粒子を含有する吸収体が用いられている。例えば、下記特許文献1及び2には、600rpmの従来Vortex法に基づく所定の吸水速度を有する吸水性樹脂粒子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−132433号公報
【特許文献2】特開2008−178667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸収性物品に供された液が吸収性物品に充分浸透しなければ、余剰の液はその表面を流れる等して吸収性物品の外に漏れるといった不具合が生じ得る。そのため、吸収性物品に対しては、液が優れた浸透速度で浸透することが求められる。
【0005】
本発明の一側面は、優れた浸透速度を有する吸収性物品を得ることが可能な吸水性樹脂粒子を提供することを目的とする。また、本発明の他の一側面は、当該吸水性樹脂粒子を用いた吸収体及び吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、吸水性樹脂粒子における600rpmの従来Vortex法に基づく吸水速度に優れる場合であっても、当該吸水性樹脂粒子が吸収性物品に用いられた際に、優れた浸透速度が得られ難い場合があることを見出した上で、300rpmの低速流動Vortex法に基づく吸水速度が好適である吸水性樹脂粒子が、優れた浸透速度を有する吸収性物品を得ることに有効であることを見出した。
【0007】
本発明の一側面は、300rpmのVortex法に基づく吸水速度が10〜50秒である、吸水性樹脂粒子を提供する。
【0008】
上述の吸水性樹脂粒子によれば、優れた浸透速度を有する吸収性物品を得ることができる。」
「【0015】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子において、回転数300rpm(rpm=min−1)のVortex法(低速流動Vortex法)に基づく吸水速度が10〜50秒である。このような吸水性樹脂粒子によれば、優れた浸透速度を有する吸収性物品を得ることができる。また、本実施形態に係る吸水性樹脂粒子によれば、吸収性物品に液が浸透した状態で吸収性部材を吸収性物品の液供給位置に接触させた際に、吸収性物品に浸透していた液が吸収性部材に吸液されにくい(すなわち、優れた速乾性が得られる)。
【0016】
1996年にJIS制定された600rpmの従来Vortex法に基づく吸水速度は、技術開発が多様であった吸水性樹脂業界において、様々な製造方法で作製された樹脂を分かりやすく比較できる簡易的指標として有益であった。しかしながら、製造方法の更なる進化、あるいは様々な改質剤による吸水特性の付与等が進む中で、当該指標が、吸収性物品(例えばおむつ)等の用途においては、充分ではないケースも生じている。
【0017】
これに対し、本発明者らは、Vortex法は、単に液と樹脂との接触・取り込みの迅速性を測るだけではなく、液体の流動により生じる渦が収束されるためには、樹脂の吸収容量が一定以上必要であるほか、形状によるブロック形成の容易さ、ゲル強度(膨らみやすさ)等の特性を総合的に評価しているものと推定した。そのうえで、昨今の吸水性樹脂においては、動的負荷の度合いが、吸収性物品における指標としては改良の余地があるとの仮説に至り、300rpmの低速流動Vortex法を見出した。
【0018】
300rpmの低速流動Vortex法に基づく吸水速度は、従来Vortex法の回転数600rpmを300rpmへ変更したこと以外は、上記特許文献1及び2にも開示されている日本工業規格JIS K 7224(1996)に準拠したVortex法に基づき得ることができる。300rpmの低速流動Vortex法に基づく吸水速度としては、25℃における吸水速度を用いることができる。具体的には、300rpmで撹拌された生理食塩水50±0.1g中に吸水性樹脂粒子2.0±0.002gを添加し、吸水性樹脂粒子の添加後から、渦が消失し液面が平坦になるまでの時間[秒]として吸水速度を得ることができる。
【0019】
300rpmの低速流動Vortex法に基づく吸水速度は、優れた浸透速度及び速乾性を得やすい観点から、48秒以下、45秒以下、42秒以下、又は、41秒以下が好ましい。低速流動Vortex法に基づく吸水速度は、40秒以下、39秒以下、38秒以下、37秒以下、36秒以下、35秒以下、34秒以下、33秒以下、又は、32秒以下であってよい。低速流動Vortex法に基づく吸水速度は、過度に速い吸収によるゲルブロッキングを回避しやすい観点から、15秒以上、20秒以上、25秒以上、又は、30秒以上が好ましい。低速流動Vortex法に基づく吸水速度は、32秒以上、34秒以上、35秒以上、又は、37秒以上であってよい。
【0020】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子において、600rpmの従来Vortex法に基づく吸水速度は、下記の範囲であってよい。従来Vortex法に基づく吸水速度は、60秒以下、55秒以下、50秒以下、48秒以下、47秒以下、46秒以下、又は、45秒以下であってよい。従来Vortex法に基づく吸水速度は、10秒以上、15秒以上、20秒以上、25秒以上、30秒以上、32秒以上、又は、34秒以上であってよい。これらの観点から、従来Vortex法に基づく吸水速度は、10〜60秒であってよい。従来Vortex法に基づく吸水速度は、日本工業規格JIS K 7224(1996)に準拠をしたVortex法に基づき得ることができる。従来Vortex法に基づく吸水速度としては、25℃における吸水速度を用いることができる。」
「【0023】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の生理食塩水の保水量は、下記の範囲が好ましい。保水量は、優れた浸透速度及び速乾性を得やすい観点から、10g/g以上、15g/g以上、20g/g以上、25g/g以上、又は、30g/g以上が好ましい。保水量は、優れた浸透速度及び速乾性を得やすい観点から、80g/g以下、75g/g以下、70g/g以下、65g/g以下、60g/g以下、55g/g以下、50g/g以下、48g/g以下、又は、45g/g以下が好ましい。これらの観点から、保水量は、10〜80g/gが好ましい。保水量は、32g/g以上又は34g/g以上であってよい。保水量は、43g/g以下、42g/g以下、40g/g以下、又は、39g/g以下であってよい。保水量は、30〜40g/gであってよい。保水量としては、室温(25±2℃)における保水量を用いることができる。保水量は、後述する実施例に記載の方法によって測定できる。
【0024】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の形状としては、略球状、破砕状、顆粒状等が挙げられる。本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の中位粒子径は、250〜850μm、300〜700μm、又は、300〜600μmであってよい。本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、後述する製造方法により得られた時点で所望の粒度分布を有していてよいが、篩による分級を用いた粒度調整等の操作を行うことにより粒度分布を調整してもよい。」
「【0025】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、例えば、重合体粒子として、エチレン性不飽和単量体を含有する単量体を重合させて得られる架橋重合体を含むことができる。すなわち、本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有することができる。エチレン性不飽和単量体としては、水溶性エチレン性不飽和単量体を用いることができる。重合方法としては、逆相懸濁重合法、水溶液重合法、バルク重合法、沈殿重合法等が挙げられる。これらの中では、得られる吸水性樹脂粒子の良好な吸水特性(吸水速度等)の確保、及び、重合反応の制御が容易である観点から、逆相懸濁重合法又は水溶液重合法が好ましい。以下においては、エチレン性不飽和単量体を重合させる方法として、逆相懸濁重合法を例にとって説明する。
【0026】
エチレン性不飽和単量体は水溶性であることが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸及びその塩、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。エチレン性不飽和単量体がアミノ基を有する場合、当該アミノ基は4級化されていてもよい。エチレン性不飽和単量体は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。上述の単量体のカルボキシル基、アミノ基等の官能基は、後述する表面架橋工程において架橋が可能な官能基として機能し得る。
【0027】
これらの中でも、工業的に入手が容易である観点から、エチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸及びその塩、アクリルアミド、メタクリルアミド、並びに、N,N−ジメチルアクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸及びその塩、並びに、アクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含むことがより好ましい。吸水特性(吸水速度、保水量等)を更に高める観点から、エチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含むことが更に好ましい。すなわち、吸水性樹脂粒子は、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種に由来する構造単位を有することが好ましい。 【0028】
吸水性樹脂粒子を得るための単量体としては、上述のエチレン性不飽和単量体以外の単量体が使用されてもよい。このような単量体は、例えば、上述のエチレン性不飽和単量体を含む水溶液に混合して用いることができる。エチレン性不飽和単量体の使用量は、単量体全量に対して70〜100モル%であることが好ましい。中でも、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が単量体全量に対して70〜100モル%であることがより好ましい。
【0029】
エチレン性不飽和単量体は、通常、水溶液として用いることが好適である。エチレン性不飽和単量体を含む水溶液(以下、単に「単量体水溶液」という)におけるエチレン性不飽和単量体の濃度は、20質量%以上飽和濃度以下が好ましく、25〜70質量%がより好ましく、30〜55質量%が更に好ましい。水溶液において使用される水としては、水道水、蒸留水、イオン交換水等が挙げられる。
【0030】
単量体水溶液は、エチレン性不飽和単量体が酸基を有する場合、その酸基をアルカリ性中和剤によって中和して用いてもよい。エチレン性不飽和単量体における、アルカリ性中和剤による中和度は、得られる吸水性樹脂粒子の浸透圧を高くし、吸水特性(保水量、吸水速度等)を更に高める観点から、エチレン性不飽和単量体中の酸性基の10〜100モル%であることが好ましく、50〜90モル%であることがより好ましく、60〜80モル%であることが更に好ましい。アルカリ性中和剤としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属塩;アンモニアなどが挙げられる。アルカリ性中和剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。アルカリ性中和剤は、中和操作を簡便にするために水溶液の状態で用いられてもよい。エチレン性不飽和単量体の酸基の中和は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液を上述の単量体水溶液に滴下して混合することにより行うことができる。
【0031】
逆相懸濁重合法においては、界面活性剤の存在下、炭化水素分散媒中で単量体水溶液を分散し、ラジカル重合開始剤等を用いてエチレン性不飽和単量体の重合を行うことができる。ラジカル重合開始剤としては、水溶性ラジカル重合開始剤を用いることができる。
【0032】
界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤等が挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル(「(ポリ)」とは、「ポリ」の接頭語がある場合及びない場合の双方を意味するものとする。以下同じ。)、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピルアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルメチルタウリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルのリン酸エステル等が挙げられる。界面活性剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0033】
W/O型逆相懸濁の状態が良好であり、好適な粒子径を有する吸水性樹脂粒子が得られやすく、工業的に入手が容易である観点から、界面活性剤は、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含むことが好ましい。吸水性樹脂粒子の適切な粒度分布が得られやすい観点、並びに、吸水性樹脂粒子の吸水特性(吸水速度等)及びそれを用いた吸収性物品の性能が向上しやすい観点から、界面活性剤は、ショ糖脂肪酸エステルを含むことが好ましく、ショ糖ステアリン酸エステルがより好ましい。
【0034】
界面活性剤の使用量は、使用量に対する効果が充分に得られる観点、及び、経済的である観点から、単量体水溶液100質量部に対して、0.05〜10質量部が好ましく、0.08〜5質量部がより好ましく、0.1〜3質量部が更に好ましい。
【0035】
逆相懸濁重合では、上述の界面活性剤と共に高分子系分散剤を併せて用いてもよい。高分子系分散剤としては、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン・ターポリマー)、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、無水マレイン酸・エチレン共重合体、無水マレイン酸・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・ブタジエン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、酸化型ポリプロピレン、酸化型エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。高分子系分散剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。高分子系分散剤としては、単量体の分散安定性に優れる観点から、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン共重合体、無水マレイン酸・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン・プロピレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、酸化型ポリプロピレン、及び、酸化型エチレン・プロピレン共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。
【0036】
高分子系分散剤の使用量は、使用量に対する効果が充分に得られる観点、及び、経済的である観点から、単量体水溶液100質量部に対して、0.05〜10質量部が好ましく、0.08〜5質量部がより好ましく、0.1〜3質量部が更に好ましい。
【0037】
炭化水素分散媒は、炭素数6〜8の鎖状脂肪族炭化水素、及び、炭素数6〜8の脂環式炭化水素からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含んでいてもよい。炭化水素分散媒としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,3−ジメチルペンタン、3−エチルペンタン、n−オクタン等の鎖状脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、trans−1,2−ジメチルシクロペンタン、cis−1,3−ジメチルシクロペンタン、trans−1,3−ジメチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などが挙げられる。炭化水素分散媒は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0038】
炭化水素分散媒は、工業的に入手が容易であり、かつ、品質が安定している観点から、n−ヘプタン及びシクロヘキサンからなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでいてもよい。また、同様の観点から、上述の炭化水素分散媒の混合物としては、例えば、市販されているエクソールヘプタン(エクソンモービル社製:n−ヘプタン及び異性体の炭化水素75〜85%含有)を用いてもよい。
【0039】
炭化水素分散媒の使用量は、重合熱を適度に除去し、重合温度を制御しやすい観点から、単量体水溶液100質量部に対して、30〜1000質量部が好ましく、40〜500質量部がより好ましく、50〜400質量部が更に好ましい。炭化水素分散媒の使用量が30質量部以上であることにより、重合温度の制御が容易である傾向がある。炭化水素分散媒の使用量が1000質量部以下であることにより、重合の生産性が向上する傾向があり、経済的である。
【0040】
ラジカル重合開始剤は水溶性であることが好ましく、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピバレート、過酸化水素等の過酸化物;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(N−フェニルアミジノ)プロパン]2塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(N−アリルアミジノ)プロパン]2塩酸塩、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]2塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}2塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ化合物などが挙げられる。ラジカル重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。ラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]2塩酸塩、及び、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}2塩酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。
【0041】
ラジカル重合開始剤の使用量は、エチレン性不飽和単量体1モルに対して0.05〜10ミリモルであってよい。ラジカル重合開始剤の使用量が0.05ミリモル以上であると、重合反応に長時間を要さず、効率的である。ラジカル重合開始剤の使用量が10ミリモル以下であると、急激な重合反応が起こることを抑制しやすい。
【0042】
上述のラジカル重合開始剤は、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、L−アスコルビン酸等の還元剤と併用して、レドックス重合開始剤として用いることもできる。
【0043】
重合反応の際、重合に用いる単量体水溶液は、連鎖移動剤を含んでいてもよい。連鎖移動剤としては、次亜リン酸塩類、チオール類、チオール酸類、第2級アルコール類、アミン類等が挙げられる。
【0044】
重合に用いる単量体水溶液は、吸水性樹脂粒子の粒子径を制御するために増粘剤を含んでいてもよい。増粘剤としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等が挙げられる。なお、重合時の撹拌速度が同じであれば、単量体水溶液の粘度が高いほど、得られる粒子の中位粒子径は大きくなる傾向にある。
【0045】
重合の際に自己架橋による架橋が生じるが、内部架橋剤を用いることで架橋を施してもよい。内部架橋剤を用いると、吸水性樹脂粒子の吸水特性(吸水速度、保水量等)を制御しやすい。内部架橋剤は、通常、重合反応の際に反応液に添加される。内部架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール類のジ又はトリ(メタ)アクリル酸エステル類;上述のポリオール類と不飽和酸(マレイン酸、フマール酸等)とを反応させて得られる不飽和ポリエステル類;N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド等のビス(メタ)アクリルアミド類;ポリエポキシドと(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるジ又はトリ(メタ)アクリル酸エステル類;ポリイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等)と(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとを反応させて得られるジ(メタ)アクリル酸カルバミルエステル類;アリル化澱粉、アリル化セルロース、ジアリルフタレート、N,N’,N”−トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン等の、重合性不飽和基を2個以上有する化合物;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、α−メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物;イソシアネート化合物(2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等)などの、反応性官能基を2個以上有する化合物などが挙げられる。内部架橋剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。内部架橋剤としては、ポリグリシジル化合物が好ましく、ジグリシジルエーテル化合物がより好ましく、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、及び、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一種が更に好ましい。
【0046】
内部架橋剤の使用量は、優れた浸透速度及び速乾性を得やすい観点、及び、得られる重合体が適度に架橋されることにより水溶性の性質が抑制され、充分な吸水量が得られやすい観点から、エチレン性不飽和単量体1モル当たり、30ミリモル以下が好ましく、0.01〜10ミリモルがより好ましく、0.012〜5ミリモルが更に好ましく、0.015〜1ミリモルが特に好ましく、0.02〜0.1ミリモルが極めて好ましく、0.025〜0.06ミリモルが非常に好ましい。
【0047】
エチレン性不飽和単量体、ラジカル重合開始剤、界面活性剤、高分子系分散剤、炭化水素分散媒等(必要に応じて更に内部架橋剤)を混合した状態において撹拌下で加熱し、油中水系において逆相懸濁重合を行うことができる。
【0048】
逆相懸濁重合を行う際には、界面活性剤(必要に応じて更に高分子系分散剤)の存在下で、エチレン性不飽和単量体を含む単量体水溶液を炭化水素分散媒に分散させる。このとき、重合反応を開始する前であれば、界面活性剤、高分子系分散剤等の添加時期は、単量体水溶液の添加の前後どちらであってもよい。
【0049】
その中でも、得られる吸水性樹脂に残存する炭化水素分散媒の量を低減しやすい観点から、高分子系分散剤を分散させた炭化水素分散媒に単量体水溶液を分散させた後に界面活性剤を更に分散させてから重合を行うことが好ましい。
【0050】
逆相懸濁重合は、1段、又は、2段以上の多段で行うことができる。逆相懸濁重合は、生産性を高める観点から、2〜3段で行うことが好ましい。 【0051】
2段以上の多段で逆相懸濁重合を行う場合には、1段目の逆相懸濁重合を行った後、1段目の重合反応で得られた反応混合物にエチレン性不飽和単量体を添加して混合し、1段目と同様の方法で2段目以降の逆相懸濁重合を行えばよい。2段目以降の各段における逆相懸濁重合では、エチレン性不飽和単量体の他に、上述のラジカル重合開始剤及び/又は内部架橋剤を、2段目以降の各段における逆相懸濁重合の際に添加するエチレン性不飽和単量体の量を基準として、上述のエチレン性不飽和単量体に対する各成分のモル比の範囲内で添加して逆相懸濁重合を行うことが好ましい。なお、2段目以降の各段における逆相懸濁重合では、必要に応じて内部架橋剤を用いてもよい。内部架橋剤を用いる場合は、各段に供するエチレン性不飽和単量体の量を基準として、上述のエチレン性不飽和単量体に対する各成分のモル比の範囲内で添加して逆相懸濁重合を行うことが好ましい。
【0052】
重合反応の温度は、使用するラジカル重合開始剤によって異なるが、重合を迅速に進行させ、重合時間を短くすることにより、経済性を高めると共に、容易に重合熱を除去して円滑に反応を行う観点から、20〜150℃が好ましく、40〜120℃がより好ましい。反応時間は、通常、0.5〜4時間である。重合反応の終了は、例えば、反応系内の温度上昇の停止により確認することができる。これにより、エチレン性不飽和単量体の重合体は、通常、含水ゲルの状態で得られる。
【0053】
重合後、得られた含水ゲル状重合体に重合後架橋剤を添加して加熱することで架橋を施してもよい。重合後に架橋を行うことで含水ゲル状重合体の架橋度を高めて吸水特性(吸水速度、保水量等)を更に向上させることができる。
【0054】
重合後架橋剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル等の、2個以上のエポキシ基を有する化合物;エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、α−メチルエピクロルヒドリン等のハロエポキシ化合物;2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の、2個以上のイソシアネート基を有する化合物;1,2−エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物;エチレンカーボネート等のカーボネート化合物;ビス[N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)]アジプアミド等のヒドロキシアルキルアミド化合物などが挙げられる。これらの中でも、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物が好ましい。架橋剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0055】
重合後架橋剤の量は、好適な吸水特性(吸水速度、保水量等)が得られやすい観点から、エチレン性不飽和単量体1モル当たり、30ミリモル以下が好ましく、10ミリモル以下がより好ましく、0.01〜5ミリモルが更に好ましく、0.012〜1ミリモルが特に好ましく、0.015〜0.1ミリモルが極めて好ましく、0.02〜0.05ミリモルが非常に好ましい。
【0056】
重合後架橋剤の添加時期としては、重合に用いられるエチレン性不飽和単量体の重合後であればよく、多段重合の場合は、多段重合後に添加されることが好ましい。なお、重合時及び重合後の発熱、工程遅延による滞留、架橋剤添加時の系の開放、及び架橋剤添加に伴う水の添加等による水分の変動を考慮して、重合後架橋剤は、含水率(後述)の観点から、[重合直後の含水率±3質量%]の領域で添加することが好ましい。
【0057】
引き続き、得られた含水ゲル状重合体から水分を除去するために乾燥を行うことにより重合体粒子(例えば、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する重合体粒子)が得られる。乾燥方法としては、例えば、(a)含水ゲル状重合体が炭化水素分散媒に分散した状態で、外部から加熱することにより共沸蒸留を行い、炭化水素分散媒を還流させて水分を除去する方法、(b)デカンテーションにより含水ゲル状重合体を取り出し、減圧乾燥する方法、(c)フィルターにより含水ゲル状重合体をろ別し、減圧乾燥する方法等が挙げられる。中でも、製造工程における簡便さから、(a)の方法を用いることが好ましい。
【0058】
重合反応時の撹拌機の回転数を調整することによって、あるいは、重合反応後又は乾燥の初期において凝集剤を系内に添加することによって吸水性樹脂粒子の粒子径を調整することができる。凝集剤を添加することにより、得られる吸水性樹脂粒子の粒子径を大きくすることができる。凝集剤としては、無機凝集剤を用いることができる。無機凝集剤(例えば粉末状無機凝集剤)としては、シリカ、ゼオライト、ベントナイト、酸化アルミニウム、タルク、二酸化チタン、カオリン、クレイ、ハイドロタルサイト等が挙げられる。凝集効果に優れる観点から、凝集剤としては、シリカ、酸化アルミニウム、タルク及びカオリンからなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。
【0059】
逆相懸濁重合において、凝集剤を添加する方法としては、重合で用いられるものと同種の炭化水素分散媒又は水に凝集剤を予め分散させてから、撹拌下で、含水ゲル状重合体を含む炭化水素分散媒中に混合する方法が好ましい。
【0060】
凝集剤の添加量は、重合に使用するエチレン性不飽和単量体100質量部に対して、0.001〜1質量部が好ましく、0.005〜0.5質量部がより好ましく、0.01〜0.2質量部が更に好ましい。凝集剤の添加量が上述の範囲内であることによって、目的とする粒度分布を有する吸水性樹脂粒子が得られやすい。
【0061】
吸水性樹脂粒子の製造においては、乾燥工程(水分除去工程)又はそれ以降の工程において、表面架橋剤を用いて含水ゲル状重合体の表面部分(表面及び表面近傍)の表面架橋が行われることが好ましい。表面架橋を行うことで、吸水性樹脂粒子の吸水特性(吸水速度、保水量等)を制御しやすい。表面架橋は、含水ゲル状重合体が特定の含水率であるタイミングで行われることが好ましい。表面架橋の時期は、含水ゲル状重合体の含水率が5〜50質量%である時点が好ましく、10〜40質量%である時点がより好ましく、15〜35質量%である時点が更に好ましい。なお、含水ゲル状重合体の含水率(質量%)は、次の式で算出される。
含水率=[Ww/(Ww+Ws)]×100
Ww:全重合工程の重合前の単量体水溶液に含まれる水分量から、乾燥工程により系外部に排出された水分量を差し引いた量に、凝集剤、表面架橋剤等を混合する際に必要に応じて用いられる水分量を加えた含水ゲル状重合体の水分量。
Ws:含水ゲル状重合体を構成するエチレン性不飽和単量体、架橋剤、開始剤等の材料の仕込量から算出される固形分量。
【0062】
表面架橋剤としては、例えば、反応性官能基を2個以上有する化合物を挙げることができる。表面架橋剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール類;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、α−メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物;2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物;3−メチル−3−オキセタンメタノール、3−エチル−3−オキセタンメタノール、3−ブチル−3−オキセタンメタノール、3−メチル−3−オキセタンエタノール、3−エチル−3−オキセタンエタノール、3−ブチル−3−オキセタンエタノール等のオキセタン化合物;1,2−エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物;エチレンカーボネート等のカーボネート化合物;ビス[N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)]アジプアミド等のヒドロキシアルキルアミド化合物などが挙げられる。表面架橋剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。表面架橋剤としては、ポリグリシジル化合物が好ましく、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、及び、ポリグリセロールポリグリシジルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一種がより好ましい。
【0063】
表面架橋剤の使用量は、好適な吸水特性(吸水速度、保水量等)が得られやすい観点から、重合に使用するエチレン性不飽和単量体1モルに対して、0.01〜20ミリモルが好ましく、0.05〜10ミリモルがより好ましく、0.1〜5ミリモルが更に好ましく、0.15〜1ミリモルが特に好ましく、0.2〜0.5ミリモルが極めて好ましい。
【0064】
表面架橋後において、公知の方法で水及び炭化水素分散媒を留去すること、加熱減圧下で乾燥すること等により、表面架橋された乾燥品である重合体粒子を得ることができる。
【0065】
上述のとおり、吸水性樹脂粒子に含まれる重合体粒子は、単量体の重合時に用いる内部架橋剤を用いて得ることが可能であり、内部架橋剤、及び、単量体の重合後に用いられる外部架橋剤(単量体の重合後に用いられる重合後架橋剤、及び、単量体の重合後の乾燥工程又はそれ以降の工程において用いられる表面架橋剤)を用いて得ることができる。内部架橋剤に対する外部架橋剤の使用量の比(外部架橋剤/内部架橋剤)は、好適な吸水特性(吸水速度、保水量等)が得られやすい観点から、5〜100が好ましく、6〜80がより好ましく、8〜60が更に好ましく、10〜40が特に好ましく、10〜30が極めて好ましい。吸水性樹脂粒子は、内部架橋剤を用いた反応物である重合体粒子を含んでよく、内部架橋剤及び外部架橋剤を用いた反応物である重合体粒子を含んでよい。重合体粒子において内部架橋剤に対する外部架橋剤の使用量の比は上述の範囲が好ましい。
【0066】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、重合体粒子に加えて、例えば、ゲル安定剤、金属キレート剤(エチレンジアミン4酢酸及びその塩、ジエチレントリアミン5酢酸及びその塩、例えばジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム等)、流動性向上剤(滑剤)等の追加成分を更に含むことができる。追加成分は、重合体粒子の内部、重合体粒子の表面上、又は、これらの両方に配置され得る。
【0067】
吸水性樹脂粒子は、重合体粒子の表面上に配置された複数の無機粒子を含んでいてもよい。例えば、重合体粒子と無機粒子とを混合することにより、重合体粒子の表面上に無機粒子を配置することができる。この無機粒子は、非晶質シリカ等のシリカ粒子であってもよい。
【0068】
吸水性樹脂粒子が、重合体粒子の表面上に配置された無機粒子を含む場合、無機粒子の含有量は、重合体粒子の全質量を基準として下記の範囲であってよい。無機粒子の含有量は、0.05質量%以上、0.1質量%以上、0.15質量%以上、又は、0.2質量%以上であってよい。無機粒子の含有量は、5.0質量%以下、3.0質量%以下、1.0質量%以下、又は、0.5質量%以下であってよい。
【0069】
ここでの無機粒子は、通常、重合体粒子の大きさと比較して微小な大きさを有する。例えば、無機粒子の平均粒子径は、0.1〜50μm、0.5〜30μm、又は、1〜20μmであってよい。平均粒子径は、粒子の特性に応じて、細孔電気抵抗法又はレーザー回折・散乱法によって測定できる。」
「【実施例】
【0089】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明の内容を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0090】
<吸水性樹脂粒子の製造>
(実施例1)
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、及び、撹拌機(翼径5cmの4枚傾斜パドル翼を2段有する撹拌翼)を備えた内径11cm、内容積2Lの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコに、炭化水素分散媒としてn−ヘプタン293gを添加し、高分子系分散剤として無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社製、ハイワックス1105A)0.736gを添加することにより混合物を得た。この混合物を撹拌しつつ80℃まで昇温することにより分散剤を溶解した後、混合物を50℃まで冷却した。
【0091】
次に、内容積300mLのビーカーに、水溶性エチレン性不飽和単量体として80.5質量%のアクリル酸水溶液92.0g(アクリル酸:1.03モル)を添加した。続いて、外部より冷却しつつ、20.9質量%の水酸化ナトリウム水溶液147.7gをビーカー内に滴下することにより75モル%の中和を行った。その後、増粘剤としてヒドロキシルエチルセルロース0.092g(住友精化株式会社製、HEC AW−15F)、水溶性ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.0736g(0.272ミリモル)、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.010g(0.057ミリモル)を加えた後に溶解させることにより第1段目の水性液を調製した。
【0092】
そして、撹拌機の回転数550rpmで撹拌しながら上述の第1段目の水性液を上述のセパラブルフラスコに添加した後、10分間撹拌した。その後、n−ヘプタン6.62gにショ糖ステアリン酸エステル(界面活性剤、三菱化学フーズ株式会社製、リョートーシュガーエステルS−370、HLB値:3)0.736gを加熱溶解することにより得られた界面活性剤溶液をセパラブルフラスコに添加した。そして、撹拌機の回転数550rpmで撹拌しながら系内を窒素で充分に置換した。その後、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を60分間行うことにより第1段目の重合スラリー液を得た。
【0093】
次に、内容積500mLの別のビーカーに水溶性エチレン性不飽和単量体として80.5質量%のアクリル酸水溶液128.8g(アクリル酸:1.43モル)を添加した。続いて、外部より冷却しつつ、27質量%の水酸化ナトリウム水溶液159.0gをビーカー内に滴下することにより75モル%の中和を行った。その後、水溶性ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.090g(0.334ミリモル)を加えた後に溶解させることにより第2段目の水性液を調製した。
【0094】
次に、撹拌機の回転数1000rpmで撹拌しながら、上述のセパラブルフラスコ内を25℃に冷却した後、上述の第2段目の水性液の全量を上述の第1段目の重合スラリー液に添加した。続いて、系内を窒素で30分間置換した後、再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合反応を60分間行った。その後、重合後架橋剤として2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液0.580g(エチレングリコールジグリシジルエーテル:0.067ミリモル)を添加することにより第2段目の含水ゲル状重合体を得た。
【0095】
上述の第2段目の含水ゲル状重合体に45質量%のジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム水溶液0.265gを撹拌下で添加した。その後、125℃に設定した油浴にフラスコを浸漬し、n−ヘプタンと水との共沸蒸留によりn−ヘプタンを還流しながら241.9gの水を系外へ抜き出した。そして、フラスコに表面架橋剤として2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液4.42g(エチレングリコールジグリシジルエーテル:0.507ミリモル)を添加した後、83℃で2時間保持した。
【0096】
その後、n−ヘプタンを125℃にて蒸発させて乾燥させることによって重合体粒子(乾燥品)を得た。この重合体粒子を目開き850μmの篩に通過させた後、重合体粒子の全質量を基準として0.5質量%の非晶質シリカ(オリエンタルシリカズコーポレーション社製、トクシールNP−S)を重合体粒子に混合することにより、非晶質シリカを含む吸水性樹脂粒子を229.2g得た。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は377μmであった。実施例1において、内部架橋剤の使用量に対する外部架橋剤の使用量の比率はモル比で10.1であった。
【0097】
(実施例2)
第2段目の重合後の含水ゲル状重合体において、共沸蒸留により247.9gの水を系外へ抜き出したこと以外は、実施例1と同様にして、吸水性樹脂粒子231.0gを得た。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は355μmであった。
【0098】
(実施例3)
第1段目の水性液の調製において、水溶性ラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.092g(0.339ミリモル)及び過硫酸カリウム0.018g(0.068ミリモル)を用いると共に、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.0045g(0.026ミリモル)を用いたこと、第2段目の水性液の調製において、水溶性ラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.129g(0.475ミリモル)及び過硫酸カリウム0.026g(0.095ミリモル)を用いたこと、第2段目の重合後の含水ゲル状重合体において、共沸蒸留により223.7gの水を系外へ抜き出したこと、及び、重合体粒子の質量に対して0.2質量%の非晶質シリカを重合体粒子と混合したこと以外は、実施例1と同様にして、吸水性樹脂粒子229.6gを得た。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は346μmであった。実施例3において、内部架橋剤の使用量に対する外部架橋剤の使用量の比率はモル比で22.1であった。
【0099】
(実施例4)
第2段目の重合後の含水ゲル状重合体において、共沸蒸留により256.1gの水を系外へ抜き出したこと以外は、実施例1と同様にして、吸水性樹脂粒子230.1gを得た。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は364μmであった。
【0100】
(実施例5)
第2段目の重合後の含水ゲル状重合体において、共沸蒸留により264.3gの水を系外へ抜き出したこと以外は、実施例1と同様にして、吸水性樹脂粒子231.1gを得た。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は361μmであった。
【0101】
(実施例6)
第1段目の水性液の調製において、水溶性ラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.092g(0.339ミリモル)及び過硫酸カリウム0.018g(0.068ミリモル)を用いると共に、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.0045g(0.026ミリモル)を用いたこと;第2段目の水性液の調製において、水溶性ラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.129g(0.475ミリモル)及び過硫酸カリウム0.026g(0.095ミリモル)を用いると共に、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.0117g(0.067ミリモル)を用いたこと;含水ゲル状重合体の作製において、重合反応を60分間行った後に、重合後架橋剤を添加することなく45質量%のジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム水溶液0.265gを添加したこと;第2段目の重合後の含水ゲル状重合体において、共沸蒸留により217.8gの水を系外へ抜き出したこと;重合体粒子の作製において、n−ヘプタンを125℃にて蒸発させることに代えて、表面架橋反応後すぐに、反応液からn−ヘプタン相を目開き38μm篩で濾別して除くことにより得られた高吸水性樹脂含水物を90℃設定の減圧乾燥機で0.006MPaの加熱減圧下で乾燥させたこと以外は、実施例1と同様にして、吸水性樹脂粒子230.5gを得た。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は367μmであった。実施例6において、内部架橋剤の使用量に対する外部架橋剤の使用量の比率はモル比で5.5であった。
【0102】
(実施例7)
第1段目の重合スラリー液の調製において撹拌機の回転数を500rpmへ変更したこと、第2段目の重合後の含水ゲル状重合体において、共沸蒸留により256.1gの水を系外へ抜き出したこと、及び、重合体粒子の質量に対して0.1質量%の非晶質シリカを重合体粒子と混合したこと以外は、実施例1と同様にして、吸水性樹脂粒子230.8gを得た。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は349μmであった。
【0103】
(比較例1)
第2段目の水性液の調製において、水溶性ラジカル重合開始剤に加えて内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.0117g(0.067ミリモル)を用いたこと、含水ゲル状重合体の作製において、重合反応を60分間行った後に、重合後架橋剤を添加することなく45質量%のジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム水溶液0.265gを添加したこと、第2段目の重合後の含水ゲル状重合体において、共沸蒸留により278.9gの水を系外へ抜き出したこと、及び、重合体粒子の質量に対して0.2質量%の非晶質シリカを重合体粒子と混合したこと以外は、実施例1と同様にして、吸水性樹脂粒子230.8gを得た。比較例1において、内部架橋剤の使用量に対する外部架橋剤の使用量の比率はモル比で4.1であった。
【0104】
(比較例2)
第1段目の水性液の調製において、水溶性ラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.092g(0.339ミリモル)及び過硫酸カリウム0.018g(0.068ミリモル)を用いると共に、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.0045g(0.026ミリモル)を用いたこと;第2段目の水性液の調製において、水溶性ラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.129g(0.475ミリモル)及び過硫酸カリウム0.026g(0.095ミリモル)を用いると共に、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.0117g(0.067ミリモル)を用いたこと;含水ゲル状重合体の作製において、重合反応を60分間行った後に、重合後架橋剤を添加することなく45質量%のジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム水溶液0.265gを添加したこと;第2段目の重合後の含水ゲル状重合体において、共沸蒸留により233.5gの水を系外へ抜き出したこと;重合体粒子の質量に対して0.2質量%の非晶質シリカを重合体粒子と混合したこと以外は、実施例1と同様にして、吸水性樹脂粒子229.6gを得た。比較例2において、内部架橋剤の使用量に対する外部架橋剤の使用量の比率はモル比で5.5であった。
【0105】
(比較例3)
第2段目の重合後の含水ゲル状重合体において、共沸蒸留により245.1gの水を系外へ抜き出したこと以外は、比較例2と同様にして、吸水性樹脂粒子229.6gを得た。
【0106】
(比較例4)
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、及び、撹拌機(翼径5cmの4枚傾斜パドル翼(フッ素樹脂にて表面処理したもの)を2段有する撹拌翼)を備えた内径11cm、内容積2Lの、4箇所の側壁バッフル付き丸底円筒型セパラブルフラスコ(バッフル幅:7mm)を準備した。このフラスコに、炭化水素分散媒としてn−ヘプタン451.4gを添加し、界面活性剤としてソルビタンモノラウレート(ノニオンLP−20R、HLB値:8.6、日油株式会社製)1.288gを添加することにより混合物を得た。この混合物を撹拌機の回転数300rpmで撹拌しつつ50℃まで昇温することによりソルビタンモノラウレートをn−ヘプタンに溶解させた後、混合物を40℃まで冷却した。
【0107】
次に、内容積500mLの三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液92.0g(アクリル酸:1.03モル)を入れた。続いて、外部より氷冷しながら20.9質量%水酸化ナトリウム水溶液147.7gを滴下することによってアクリル酸の中和を行うことによりアクリル酸部分中和物水溶液を得た。次に、水溶性ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.1012g(0.374ミリモル)をアクリル酸部分中和物水溶液に加えた後に溶解させることによりモノマー水溶液を調製した。
【0108】
上述のモノマー水溶液を上述のセパラブルフラスコに添加した後、系内を窒素で充分に置換した。その後、撹拌機の回転数700rpmで撹拌しつつ、フラスコを70℃の水浴に浸漬した後に60分間保持して重合を完了させることにより含水ゲル状重合体を得た。
【0109】
その後、撹拌機の回転数1000rpmで撹拌しつつ、生成した含水ゲル状重合体、n−ヘプタン及び界面活性剤を含む重合液に、粉末状無機凝集剤として非晶質シリカ(オリエンタルシリカズコーポレーション、トクシールNP−S)0.092gを予めn−ヘプタン100gに分散させることにより得られた分散液を添加した後、10分間混合した。その後、反応液を含むフラスコを125℃の油浴に浸漬し、n−ヘプタンと水との共沸蒸留によりn−ヘプタンを還流しながら129.0gの水を系外へ抜き出した。その後、表面架橋剤として2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液4.14g(エチレングリコールジグリシジルエーテル:0.475ミリモル)を添加した後、内温83±2℃で2時間保持した。
【0100】
その後、水及びn−ヘプタンを120℃にて蒸発させ、系内からの蒸発物がほとんど留出されなくなるまで乾燥させることにより乾燥品を得た。この乾燥品を目開き850μmの篩に通すことにより吸水性樹脂粒子90.1gを得た。
【0111】
<中位粒子径の測定>
吸水性樹脂粒子の上述の中位粒子径は下記手順により測定した。すなわち、JIS標準篩を上から、目開き600μmの篩、目開き500μmの篩、目開き425μmの篩、目開き300μmの篩、目開き250μmの篩、目開き180μmの篩、目開き150μmの篩、及び、受け皿の順に組み合わせた。組み合わせた最上の篩に、吸水性樹脂粒子50gを入れ、ロータップ式振とう器を用いて10分間振とうさせて分級した。分級後、各篩上に残った粒子の質量を全量に対する質量百分率として算出し粒度分布を求めた。この粒度分布に関して粒子径の大きい方から順に篩上を積算することにより、篩の目開きと篩上に残った粒子の質量百分率の積算値との関係を対数確率紙にプロットした。確率紙上のプロットを直線で結ぶことにより、積算質量百分率50質量%に相当する粒子径を中位粒子径として得た。
【0112】
<吸水性樹脂粒子の吸水速度>
吸水性樹脂粒子の生理食塩水の吸水速度をVortex法に基づき下記手順で測定した。まず、恒温水槽にて25±0.2℃の温度に調整した生理食塩水50±0.1gを内容積100mLのビーカーに量りとった。次に、マグネチックスターラーバー(8mmφ×30mm、リング無し)を用いて回転数300rpm(低速流動Vortex法)又は600rpm(従来Vortex法)で撹拌することにより渦を発生させた。吸水性樹脂粒子2.0±0.002gを生理食塩水中に一度に添加した。吸水性樹脂粒子の添加後から、液面の渦が収束する時点までの時間[秒]を測定し、当該時間を吸水性樹脂粒子の吸水速度として得た。結果を表1に示す。
【0113】
<吸水性樹脂粒子の保水量>
吸水性樹脂粒子の生理食塩水の保水量(室温、25±2℃)を下記手順で測定した。まず、吸水性樹脂粒子2.0gを量り取った綿袋(メンブロード60番、横100mm×縦200mm)を内容積500mLのビーカー内に設置した。吸水性樹脂粒子の入った綿袋内に生理食塩水500gを、ママコができないように一度に注ぎ込んだ後、綿袋の上部を輪ゴムで縛り、30分静置させることで吸水性樹脂粒子を膨潤させた。30分経過後の綿袋を、遠心力が167Gとなるように設定した脱水機(株式会社コクサン製、品番:H−122)を用いて1分間脱水した後、脱水後の膨潤ゲルを含んだ綿袋の質量Wa[g]を測定した。吸水性樹脂粒子を添加せずに同様の操作を行い、綿袋の湿潤時の空質量Wb[g]を測定し、下記式から吸水性樹脂粒子の生理食塩水の保水量を算出した。結果を表1に示す。
保水量[g/g]=(Wa−Wb)/2.0
【0114】
<吸収性物品の作製>
気流型混合装置(有限会社オーテック社製、パッドフォーマー)を用いて、吸水性樹脂粒子13.3g及び粉砕パルプ12.6gを空気抄造によって均一混合することにより、40cm×12cmの大きさのシート状の吸収体を作製した。次に、シート状の吸収体と同じ大きさを有する坪量16g/m2の2枚のティッシュッペーパーで吸収体の上下を挟んだ状態で全体に424kPaの荷重を30秒間加えてプレスすることにより積層体を得た。さらに、吸収体と同じ大きさを有する坪量22g/m2のポリエチレン−ポリプロピレン製のエアスルー型多孔質液体透過性シートを積層体の上面に配置することにより吸収性物品を作製した。
【0115】
<浸透時間の測定>
温度25±2℃の室内において、水平の台の上に吸収性物品を配置した。次に、内径3cmの投入口を有する容量200mLの液投入用シリンダー(両端が開口した円筒)を吸収性物品の主面の中心部に置いた。続いて、少量の青色1号で着色して25±1℃に調整した160mLの生理食塩水をシリンダー内に一度に投入した。ストップウォッチを用いて、生理食塩水がシリンダー内から完全に消失するまでの時間を測定し、当該時間を浸透時間[秒]として得た。結果を表1に示す。
【0116】
<速乾性の測定>
上述の浸透時間の測定と同様に吸収性物品に生理食塩水を供給した後、シリンダーを除去した。次に、生理食塩水の供給開始から1分後に、吸収性物品の液供給位置付近に吸収性部材として10cm×10cm、坪量94g/m2のろ紙80枚(計75g)を重ねて置いた。さらに、ろ紙の上に重り(底面:10cm×10cm、質量:2kg)を載せた。重りにより1分間荷重後、ろ紙の質量を測定し、質量の増加量を速乾性[g]として得た。速乾性の値は小さい方が好ましい。結果を表1に示す。
【0117】
【表1】

【0118】
表1によれば、吸水性樹脂粒子における600rpmの従来Vortex法に基づく吸水速度に優れる場合であっても、当該吸水性樹脂粒子が吸収性物品に用いられた際に、優れた浸透速度が得られ難い場合があることが確認される。また、300rpmの低速流動Vortex法に基づく吸水速度を調整することが、優れた浸透速度を有する吸収性物品を得ることに有効であることが確認される。」

(4)サポート要件の判断
発明の詳細な説明の段落【0005】によると、本件特許発明1の解決しようとする課題は、「優れた浸透速度を有する吸収性物品を得ることが可能な吸水性樹脂粒子を提供すること」であり、本件特許発明2ないし5の解決しようとする課題は、「当該吸水性樹脂粒子を用いた吸収体及び吸収性物品を提供すること」である(これらをまとめて、「本件特許発明の課題」という。)。
本件特許の発明の詳細な説明の実施例・比較例について見てみると、生理食塩水の保水量の最小値が30g/g、最高値が45g/gであり、300rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度が最小値32秒、最高値48秒であり、600rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度が最小値34秒、最高値50秒であり、中位粒子径が最小値346μm、最高値377μmである実施例は、浸透時間が45秒以下と優れた浸透速度となっているのに対し、本件特許発明1の各物性のいずれかを満たさない比較例1ないし4は、浸透時間が50秒以上と優れた浸透速度が得られにくくなっている。
そして、本件特許の発明の詳細な説明の段落【0015】には「本実施形態に係る吸水性樹脂粒子において、回転数300rpm(rpm=min−1)のVortex法(低速流動Vortex法)に基づく吸水速度が10〜50秒である。このような吸水性樹脂粒子によれば、優れた浸透速度を有する吸収性物品を得ることができる。」と記載され、同【0017】に、「本発明者らは、Vortex法は、単に液と樹脂との接触・取り込みの迅速性を測るだけではなく、液体の流動により生じる渦が収束されるためには、樹脂の吸収容量が一定以上必要であるほか、形状によるブロック形成の容易さ、ゲル強度(膨らみやすさ)等の特性を総合的に評価しているものと推定した。そのうえで、昨今の吸水性樹脂においては、動的負荷の度合いが、吸収性物品における指標としては改良の余地があるとの仮説に至り、300rpmの低速流動Vortex法を見出した。」との作用効果が記載されている。
また、同【0020】に「本実施形態に係る吸水性樹脂粒子において、600rpmの従来Vortex法に基づく吸水速度は、下記の範囲であってよい。・・・これらの観点から、従来Vortex法に基づく吸水速度は、10〜60秒であってよい。」、同【0023】には、「本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の生理食塩水の保水量は、下記の範囲が好ましい。・・・これらの観点から、保水量は、10〜80g/gが好ましい。」、同【0024】には、「本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の形状としては、略球状、破砕状、顆粒状等が挙げられる。本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の中位粒子径は、250〜850μm、300〜700μm、又は、300〜600μmであってよい。」と本件特許発明1の各発明特定事項の取り得る範囲について記載されている。
以上の記載事項を勘案すると、当業者は、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子において、「生理食塩水の保水量が10〜80g/gであり、600rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度が10〜60秒であり、中位粒子径が250〜850μm」であって、かつ「300rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度が32〜50秒」である事項により、本件特許発明の課題を解決できると認識するものである。
そして、本件件特許発明1は、上記特定事項より限定された事項を有するものであるから、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件特許発明の課題を解決できるものである。
また、本件特許発明2ないし5についても同様である。
よって、本件特許発明1ないし5に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。

(5)異議申立人の主張について
異議申立人は、特許異議申立書において、上記第4 1(3)のように主張をしている。
しかしながら、上記(4)で検討したとおり、本件特許発明1の各物性を満たすことにより、本件特許発明の課題を解決できるものである。
してみると、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載及び本件特許の出願時における吸水性樹脂粒子の分野の技術常識に鑑みれば、本件特許発明1ないし5が、「荷重下の吸水能」及び「表面架橋(または後架橋)」についての特定が欠如していたとしても、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
よって、特許異議申立人の当該主張は首肯できない。

(6)異議申立理由3についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、異議申立理由3によっては取り消すことはできない。

2 異議申立理由4(実施可能要件)について
(1)判断基準
本件特許発明1ないし5は何れも物の発明であるところ、物の発明の実施とは、その物の生産及び使用等をする行為であるから、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。

(2)発明の詳細な説明の記載
発明の詳細な説明の記載は、上記1(3)のとおりである。

(3)実施可能要件の判断
本件特許の発明の詳細な説明の段落【0015】ないし【0024】には、本件特許発明1ないし5の各発明特定事項についての具体的な記載があり、同【0025】ないし【0069】には本件特許発明1ないし5に使用する原料及びその量並びに製造方法について具体的な記載があり、同【0089】ないし【0118】には、実施例として、吸水性樹脂粒子の具体的な製造方法及び得られた吸水性樹脂粒子が記載されている。
したがって、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1ないし5に係る物を生産し、使用することができる程度の記載があるといえる。
よって、本件特許発明1ないし5に関して、発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を充足する。

(4)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、上記第4(4)の主張をしているが、当該主張の具体的内容はサポート要件に関するものであって、実施可能要件に関するものではない。
よって、特許異議申立人の上記主張は首肯できない。

(5)異議申立理由4についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、異議申立理由4によっては、取り消すことはできない。

3 その他の主張
特許異議申立人は、令和3年11月12日に意見書において、以下の主張をしている。
「参3に基づく拡大先願
本件特許発明1ないし5は、本件特許の出願の日前の日本語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた上記参3の日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の日本語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記日本語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
具体的には、本件特許発明1ないし5は、参3の出願の明細書に記載の実施例7と実質的に同一である。」
しかしながら、当該意見の内容は、実質的に新たな理由及び証拠を提示するものであるところ、訂正により追加された事項についての見解など訂正の請求の内容に付随して生じる場合や、適切な取消理由を構成することが一見して明らかな場合には該当しないため、当該意見は採用できない。

なお、参3の出願である特願2020−549366号(PCT/JP2019/037912、国際出願日 2019年9月26日)(以下、「先願」という。)の明細書に記載される実施例7は、本願の優先日(2019年1月30日)後の出願であって先願の優先基礎出願である特願2019−128663号(出願日 2019年7月10日)の明細書には記載されているものの、本願の優先日前の出願であって先願の優先基礎出願である特願2018−182114号(出願日 2018年9月27日)の明細書、請求の範囲又は図面には記載されていないため、仮に当該意見を採用したとしても、特許異議申立人の当該意見は首肯できない。

第7 結語
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件特許の請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子であって、
前記エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、
前記(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量に対して70〜100モル%であり、
生理食塩水の保水量が32〜45g/gであり、
300rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度が35〜42秒であり、
600rpmのVortex法に基づく生理食塩水の吸水速度が40〜60秒であり、
中位粒子径が250〜346μmである、吸水性樹脂粒子。
【請求項2】
請求項1に記載の吸水性樹脂粒子を含有する、吸収体。
【請求項3】
前記吸水性樹脂粒子の含有量が吸収体1m2当たり100〜1000gである、請求項2に記載の吸収体。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の吸収体を備える、吸収性物品。
【請求項5】
おむつである、請求項4に記載の吸収性物品。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-01-27 
出願番号 P2019-055289
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (A61F)
P 1 651・ 121- YAA (A61F)
P 1 651・ 536- YAA (A61F)
P 1 651・ 113- YAA (A61F)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 植前 充司
細井 龍史
登録日 2020-10-16 
登録番号 6780047
権利者 住友精化株式会社
発明の名称 吸水性樹脂粒子、吸収体及び吸収性物品  
代理人 吉住 和之  
代理人 沖田 英樹  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 沖田 英樹  
代理人 吉住 和之  
代理人 清水 義憲  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  
代理人 清水 義憲  
代理人 古下 智也  
代理人 古下 智也  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ