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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08J
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08J
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08J
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08J
管理番号 1384118
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-04-30 
確定日 2022-02-14 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6780048号発明「吸水性樹脂粒子、吸収体及び吸収性物品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6780048号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−8〕について訂正することを認める。 特許第6780048号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6780048号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、平成31年3月22日(優先権主張 同年1月30日)の出願であって、令和2年10月16日にその特許権の設定登録(請求項の数8)がされ、同年11月4日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和3年4月30日に特許異議申立人 株式会社日本触媒(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし8)がされ、同年8月20日付けで取消理由通知が通知された後に同年10月22日に特許権者 住友精化株式会社(以下、「特許権者」という。)により訂正請求がされると共に意見書が提出され、同年同月29日付けで特許法第120条の5第5項の通知された後に、同年12月2日に特許異議申立人により意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和3年10月22日付けの本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の(1)ないし(5)のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「前記(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量に対して70〜100モル%であり、」
と記載されているのを、
「前記(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量に対して70〜100モル%であり、
前記無機粒子の含有量が、前記重合体粒子の全質量を基準として5.0質量%以下であり、
温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させた後の前記吸水性樹脂粒子の水分率が20質量%以下であり、
生理食塩水の保水量が40〜50g/gであり、」
に訂正する。
請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし8についても同様に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に
「固めかさ密度が0.500g/cm3以上であり、」
と記載されているのを、
「固めかさ密度が0.750g/cm3以上であり、」
に訂正する。
請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし8についても同様に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に
「温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの固めかさ密度の変化量が0.020g/cm3以上であり、」
と記載されているのを、
「温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの固めかさ密度の変化量が0.020〜0.038g/cm3であり、」
に訂正する。
請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし8についても同様に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項2に
「固めかさ密度が0.500〜0.950g/cm3である、」
と記載されているのを、
「固めかさ密度が0.750〜0.950g/cm3である、」
に訂正する。
請求項2を直接又は間接的に引用する請求項4ないし8についても同様に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項4に
「生理食塩水の保水量が30〜55g/gである」
と記載されているのを、
「生理食塩水の保水量が40〜45g/gである」
に訂正する。
請求項4を直接又は間接的に引用する請求項5ないし8についても同様に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)請求項1の訂正について
訂正事項1による請求項1についての訂正は、「前記無機粒子の含有量が、前記重合体粒子の全質量を基準として5.0質量%以下であり、温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させた後の前記吸水性樹脂粒子の水分率が20質量%以下であり、生理食塩水の保水量が40〜50g/g」なる発明特定事項を直列的に付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2による請求項1についての訂正は、「固めかさ密度」の数値範囲を狭くするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
さらに、訂正事項3による請求項1についての訂正は、「温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの固めかさ密度の変化量」の数値範囲を狭くするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1ないし3による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)請求項2の訂正について
訂正事項1ないし3による請求項2についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項4による請求項2についての訂正は、「固めかさ密度」の数値範囲を狭くするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1ないし4による請求項2についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)請求項3の訂正について
訂正事項1ないし4による請求項3についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)請求項4の訂正について
訂正事項1ないし4による請求項4についての訂正は、請求項1ないし3についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項5による請求項4についての訂正は、「生理食塩水の保水量」の数値範囲を狭くするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1ないし5による請求項4についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)請求項5ない8についての訂正について
訂正事項1ないし5による請求項5ないし8についての訂正は、請求項1ないし4についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3 むすび
以上のとおり、請求項1ないし8についての訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
なお、訂正前の請求項1ないし8は一群の請求項に該当するものである。
そして、請求項1ないし8についての訂正は、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
そして、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし8に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−8〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
上記第2で示したとおり、本件訂正は認められたため、本件特許の請求項1ないし8に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、本件特許発明1ないし8を総称して「本件特許発明」ともいう。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】
エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、当該重合体粒子の表面上に配置された無機粒子と、を含む吸水性樹脂粒子であって、
前記エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、
前記(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量に対して70〜100モル%であり、
前記無機粒子の含有量が、前記重合体粒子の全質量を基準として5.0質量%以下であり、
温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させた後の前記吸水性樹脂粒子の水分率が20質量%以下であり、
生理食塩水の保水量が40〜50g/gであり、
固めかさ密度が0.750g/cm3であり、
温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの固めかさ密度の変化量が0.020〜0.038g/cm3であり、吸湿後の当該固めかさ密度が吸湿前よりも小さい、吸水性樹脂粒子。
【請求項2】
前記固めかさ密度が0.750〜0.950g/cm3である、請求項1に記載の吸水性樹脂粒子。
【請求項3】
前記固めかさ密度が0.830〜0.950g/cm3である、請求項1に記載の吸水性樹脂粒子。
【請求項4】
生理食塩水の保水量が40〜45g/gである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸水性樹脂粒子。
【請求項5】
中位粒子径が250〜600μmである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の吸水性樹脂粒子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の吸水性樹脂粒子を含有する、吸収体。
【請求項7】
請求項6に記載の吸収体を備える、吸収性物品。
【請求項8】
おむつである、請求項7に記載の吸収性物品。」

第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由及び取消理由の概要
1 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和3年4月30日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
(1)異議申立理由1(甲第1ないし3号証のいずれかに基づく新規性
本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1ないし3号証のいずれかに記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)異議申立理由2(甲第4及び5号証のいずれかに基づく新規性
本件特許の請求項1、2、4ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4及び5号証のいずれかに記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(3)異議申立理由3(甲第1ないし5及び17号証のいずれかに基づく新規性進歩性
本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1ないし5及び17号証のいずれかに記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、下記の甲第1ないし5及び17号証のいずれかに記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(4)異議申立理由4(甲第8号証に基づく進歩性
本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第8号証に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(5)異議申立理由5(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし8についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
要旨は以下のとおり。
ア 本件発明の解決しようとする課題は、「優れた浸透速度を有する吸水性物品を得ることが可能な吸水性樹脂粒子を提供すること」である(本件明細書の段落【0005】)。
本技術分野において、浸透速度を向上させるために、膨潤した吸水性樹脂粒子ゲルの間の空隙を確保し、そのために生理食塩水の保水量が低い吸水性樹脂粒子を用いることは、通常に行われている。つまり、吸収体における浸透速度と生理食塩水の保水量とが逆相関の関係にあることは、本件特許の優先日時点において周知の技術常識であった。
この技術常識を踏まえると、生理食塩水の保水量が高い吸水性樹脂粒子は、たとえ固めかさ密度およびその変化量が本件発明1の範囲に含まれたとしても、本件発明の課題を解決できるとは当業者に認識できない。つまり、生理食塩水の保水量について何ら特定しない態様を含みうる本件特許の請求項1ないし3及び5ないし8に係る発明は、これにより本件発明の課題を解決できると当業者が認識できない発明である。
次に、本件明細書に記載された実施例を参照すると、実施例に係る吸水性樹脂粒子の生理食塩水の保水量は39〜44g/gであるのに対し、比較例1に係る吸水性樹脂粒子の生理食塩水の保水量は54g/gである。上述の通り、吸収体における浸透速度と生理食塩水の保水量とは逆相関の関係にあるから、比較例1の結果からは、吸収体における浸透速度の低下が、固めかさ密度およびその変化量に起因するのか、生理食塩水の保水量に起因するのか、当業者には理解できない。そうすると、本件明細書の記載からは、「生理食塩水の保水量が30〜55g/g」という比較例1を超える高い保水量の領域をも含む数値範囲において、本件発明の課題を解決できるとは当業者に認識できない。つまり、本件発明4は、これにより本件発明の課題を解決できると当業者が認識できない発明である。
イ 本件請求項1では、吸水性樹脂粒子が含む無機粒子について、「当該重合体粒子の表面上に配置された無機粒子」とのみ記載されている。一方、本件明細書の実施例を参照すると、無機粒子として使用されているのは、非晶質シリカ(オリエンタルシリカズコーポレーション社製、トクシールNP−S)の一例のみである(段落【0100】、【0101】、【0102】、【0107】を参照)。
ここで、無機粒子として疎水性度が高い粒子を使用すると、吸収速度が低下することは従来知られている。すると、本件明細書の実施例を参照したとしても、疎水性度の高い無機粒子を含んでいる場合にまで「優れた浸透速度を有する吸収性物品を得ることが可能な吸水性樹脂粒子を提供する」という本件発明の課題が解決されるかどうか、当業者には認識できない。
(6)異議申立理由6(実施可能要件
本件特許の請求項1ないし8についての特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
要旨は以下のとおり。
吸水性樹脂粒子を吸湿させる「30±1℃、相対湿度30±5%にて1時間」という条件は、本技術分野で通常に採用されるケーキング促進試験の条件とほぼ同じである。
29.5cm×23.0cmのバットに入れた吸水性樹脂粒子をこの条件で吸湿させると、ケーキングが発生しシート状の凝集塊となる場合もある。ところが、本件明細書には、このような場合に、どのようにしてシート状の凝集塊を測定容器に入れるのか、何ら記載されていない。測定容器の内径は5.0cmであるから、シート状の凝集塊が生じた場合、これが測定容器に入らない可能性があることは、当業者には当然に予期される事項である。そして、吸水性樹脂粒子を測定容器に入れなければ、固めかさ密度は測定できないことは明白である。仮に、解砕してから測定容器に入れるとすると、解砕の仕方によって固めかさ密度が変化することも明白である。
しかるに本件明細書にはこの点について何ら記載されていないので、本件明細書の記載は、当業者が本件特許の請求項1ないし8に係る発明を実施することができる程度に明確に記載されたものとは言えない。
(7)証拠方法
・甲第1号証:国際公開第2014/054656号
・甲第2号証:国際公開第2008/015980号
・甲第3号証:特開2006−068731号公報
・甲第4号証:特開2005−111474号公報
・甲第5号証:国際公開第2017/170605号
・甲第6号証:国際公開第2005/075070号
・甲第7号証: Modern Superabsorbent Polymer Technology (1998) p.69-74,p.251-257及び抄訳
・甲第8号証:国際公開第2006/123561号
・甲第9号証:実験成績証明書(甲第1号証の実施例3及び実施例4−3の追試)
・甲第10号証:実験成績証明書(甲第2号証の実施例3の追試)
・甲第11号証:実験成績証明書(甲第3号証の実施例2の追試)
・甲第12号証:実験成績証明書(甲第4号証の実施例32の追試)
・甲第13号証:実験成績証明書(甲第5号証の実施例2、11−5の追試)
・甲第14号証:対比表
・甲第15号証:特開平07−088171号公報
・甲第16号証:国際公開第2016/104374号
・甲第17号証:特開2016−028114号公報
以下、順に「甲1」のようにいう。

2 取消理由の概要
令和3年8月20日付けで通知した取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要は次のとおりである。
(1)取消理由1(甲1ないし3及び17のいずれかに基づく新規性進歩性
本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1ないし3及び17のいずれかに記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、下記の甲1ないし3及び17に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)取消理由2(甲4及び5のいずれかに基づく新規性進歩性
本件特許の請求項1、2、4ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲4及び5のいずれかに記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1、2、4ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲4及び5に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(3)取消理由3(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし8についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(4)取消理由4(実施可能要件
本件特許の請求項1ないし8についての特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

なお、上記取消理由1は、上記異議申立理由1及び3を含むものであり、上記取消理由2は、上記異議申立理由2及び3を含むものであり、上記取消理由3は、上記異議申立理由5を含むものであり、上記取消理由4は、上記異議申立理由6を含むものである。

第5 取消理由についての当審の判断
1 取消理由1(甲1ないし3及び17のいずれかに基づく新規性進歩性)について
(1)甲1ないし3及び17に記載された事項等
ア 甲1に記載された事項及び甲1発明
(ア)甲1に記載された事項
甲1には、「多元金属化合物からなる粉塵低減剤、多元金属化合物を含む吸水剤及びその製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。他の文献についても同様。
「[0002] 吸水性樹脂粒子は吸湿により流動性を失うため、種々の検討がなされており、代表的な方法として、粘土やシリカ等の無機粒子を添加する方法が知られている。しかし、該方法では、添加した微粒子が粉塵となって作業環境の悪化を引き起こし、また、加圧下吸水倍率等の吸水性能の低下の原因となっていた。」
「[0009] (発明が解決しようとする課題)
本発明の目的は、加圧下吸水倍率等の吸水剤に求められる吸水物性を損なうことなく、吸湿ブロッキングを抑制し、かつ粉塵の発生量が少ない粉塵低減剤、及び該粉塵低減剤を用いた吸水剤の製造方法、そして吸湿ブロッキングが抑制され粉塵の発生量の少ない吸水剤を提供することにある。本発明の他の目的は、ハイドロタルサイト構造を有する2価及び3価の金属カチオンと水酸基とを含有する無機化合物を用いた場合に、低下する耐尿性と耐経時着色性とが改善された吸水剤を提供することにある。」
「[0024] 本明細書における「ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂」とは、任意にグラフト成分を含み、繰り返し単位として、アクリル酸及び/又はその塩(以下、アクリル酸(塩)と称する)を主成分とする重合体を意味する。
[0025] 具体的には、重合に用いられる総単量体(架橋剤を除く)のうち、アクリル酸(塩)を50〜100モル%含む重合体をいい、好ましくは70〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%、特に好ましくは実質100モル%を含む吸水性樹脂をいう。また、本発明では、ポリアクリル酸塩型(中和型)の重合体もポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂と総称する。」
「[0166] (2−10)その他の添加剤添加工程
本工程は(表面架橋)吸水性樹脂に種々の機能を付与するために、多元金属化合物の添加剤を添加する工程であり、一つ又は複数の工程から構成される。該添加剤としては、無機/有機微粒子、カチオン性高分子化合物、水溶性多価金属カチオン含有化合物、界面活性剤、着色防止剤、耐尿性向上剤、消臭剤、香料、抗菌剤、発泡剤、顔料、染料、肥料、酸化剤、還元剤、等が挙げられ、また、該添加物の、機能を付与あるいは高めたものであってもよい。
[0167] 前記添加剤の量は、特に断りがない限り、表面架橋吸水性樹脂粉末100質量%に対して10質量%未満、好ましくは5質量%未満、より好ましくは1質量%未満である。また、これらの添加剤は、表面架橋剤添加工程と同時に、あるいは別工程で行ってもよい。」
「[0168] (無機/有機微粒子)
無機微粒子としては、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、タルク、金属リン酸塩(例えばリン酸カルシウム、リン酸バリウム、リン酸アルミニウム)、金属硼酸塩(例えばホウ酸チタン、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸鉄、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸マンガン、およびホウ酸カルシウム)、珪酸またはその塩、粘土、珪藻土、ゼオライト、ベントナイト、カオリン、活性白土等の水不溶性微粒子状無機粉体等、多元金属化合物以外の無機微粒子が挙げられる。有機微粒子としては、乳酸カルシウム、乳酸アルミニウム、金属石鹸(長鎖脂肪酸の多価金属塩)等の有機微粉末が挙げられる。無機/有機微粒子の体積平均粒子径(レーザー回折散乱粒度計で規定)は10μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。無機/有機微粒子の体積平均粒子径の下限は特に限定されないが、5nm以上であることが好ましい。」
「[0212] (3−2)CRC(無加圧下吸収倍率)
多元金属化合物を混合する吸水性樹脂及び混合して得られた吸水剤の無加圧下吸収倍率(CRC)は25(g/g)以上を示し、30(g/g)以上を示す物が好ましく、33(g/g)以上を示す物がより好ましい。無加圧下吸収倍率が低いとおむつ等の衛生材料に使用する場合の効率が悪くなる。なお、CRCは高いほど好ましいが、他の物性(例えばAAP)とのバランスから、好ましくは、上限60(g/g)以下、さらには50(g/g)以下、45(g/g)以下とされる。CRCは重合時ないし表面架橋での架橋密度で制御できる。」
「[0215] (3−3)固形分
吸水剤の固形分は、実施例に記載の方法により算出される値であり、85〜99質量%であることが好ましく、88〜98質量%であることがより好ましく、90〜95質量%であることが更に好ましい。固形分が85重量%未満の場合、無加圧下吸収倍率や加圧下吸収倍率が低下するため好ましくなく、98重量%より高い場合、搬送などによる機械的ダメージによる加圧下吸収倍率の低下が大きいため好ましくない。」
「[0227] また、本発明で上記工程を経て吸水性樹脂や最終製品として得られる吸水剤は、標準篩分級で規定される質量平均粒子径が600μm以下であることが好ましく、性能を向上させるために550〜200μmの範囲であることがより好ましく、500〜250μmの範囲であることがさらに好ましく、450〜300μmの範囲であることが最も好ましい。また、粒径が300μm未満の粒子の比率が10質量%以上であることが好ましく、10〜50質量%の範囲であることがより好ましく、10〜30質量%の範囲であることがさらに好ましい。」
「[0238] 〔4〕粒子状吸水剤の用途等
本発明の吸水性樹脂は紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、医療用パッド等の衛生材料に使用される。その場合(a)着用者の体に隣接して配置される液体透過性のトップシート、(b)着用者の身体から遠くに、着用者の衣類に隣接して配置される、液体に対して不透過性のバックシート、及びトップシートとバックシートの間に配置された吸水体を含んでなる構成で使用されることが好ましい。吸水体は二層以上であっても良いし、パルプ層などとともに用いても良い。」
「[0239] 〔5〕実施例
以下、実施例に従って発明を説明するが、本発明は実施例に限定され解釈されるものではない。また、本発明の特許請求の範囲や実施例に記載の諸物性は、以下の測定法(5−1)〜(5−13)に従って求めた。尚、特に断りのない限り、各実施例での各工程は実質常圧(大気圧の±5%、更に好ましくは1%以内)で行われ、同一工程では意図的な加圧又は減圧による圧力変化は加えずに実施した。
[0240] (5−1)粒度及び質量平均粒子径(D50)
本発明に係る吸水性樹脂粉末/吸水剤の粒度は、欧州特許0349240号に開示された測定方法に準じて行った。
[0241] 即ち、目開き850μm、710μm、600μm、500μm、420μm、300μm、212μm、150μm、106μm、45μmを有するJIS標準篩(JIS Z8801−1(2000))又は相当する篩を用いて、粒子状吸水剤10gを分級し、各篩上に残った吸水性樹脂粉末及び全篩を通過した吸水性樹脂粉末/吸水剤の質量をそれぞれ測定した。
[0242] (5−2)CRC(無加圧下吸水倍率)
ERT441.2−0.2に従い、0.90質量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水とも称する)に対する無加圧下で30分の吸水倍率(CRC)を求めた。
・・・
[0245] (式1) AAP[g/g]=(W5−W4)/W3
(5−4)固形分
吸水性樹脂粉末において、180℃で揮発しない成分が占める割合を表す。含水率との関係は、{固形分=100−含水率}となる。
[0246] 固形分の測定方法は、以下のように行った。
[0247] 底面の直径が約5cmのアルミカップ(質量W6[g])に、約1gの吸水性樹脂粉末を量り取り(質量W7[g])、180℃の無風乾燥機中において3時間静置し、乾燥させた。乾燥後のアルミカップと吸水性樹脂粉末との合計質量(W8[g])を測定し、次式2より固形分を求めた。
[0248] (式2) 固形分[質量%]={(W8−W6)/W7}×100
(5−6)吸湿ブロッキング率
吸水性樹脂粉末/吸水剤約2gを、直径52mmのアルミカップに均一に散布した後、温度25℃、相対湿度90±5%RHに調整した恒温恒湿器(エスペック株式会社製;MODEL: SH−641)に1時間静置した。
[0249] その後、上記アルミカップ中の吸水性樹脂粉末/吸水剤を目開き2000μm(8.6メッシュ)のJIS標準篩(The IIDA TESTING SIEVE/内径80mm)上に静かに移し、ロータップ型篩振とう機(株式会社飯田製作所製;ES−65型篩振とう機/回転数230rpm、衝撃数130rpm)を用いて、温度20〜25℃、相対湿度50%RHの条件下で5秒間分級した。
[0250] 次いで、上記JIS標準篩上に残存した吸水性樹脂粉末/吸水剤(質量W9[g])及びJIS標準篩を通過した吸水性樹脂粉末/吸水剤(質量W10[g])の質量を測定し、下式3に従って吸湿流動性(吸湿ブロッキング率)を算出した。吸湿ブロッキング率はその値が低い程、吸湿流動性に優れている。
[0251] (式3) 吸湿ブロッキング率[質量%]={W9/(W9+W10)}×100」
「[0277] [製造例2]
断熱材である発泡スチロールで覆われた、内径80mm、容量1リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸291g、内部架橋剤としてのポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)0.43g(カルボキシル基含有不飽和単量体に対し0.02モル%)、および1.0質量%ジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウム水溶液1.80g、IRGACURE(登録商標)184の1.0質量%アクリル酸溶液3.60gを混合した溶液(A)と、48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液247gと50℃に調温したイオン交換水255gを混合した溶液(B)を作製した。長さ5cmのマグネチックスターラーを用い800r.p.m.で攪拌した溶液(A)に、溶液(B)をすばやく加え混合することで単量体水溶液(C)を得た。単量体水溶液(C)は、中和熱と溶解熱により、液温が約100℃まで上昇した。なお、アクリル酸の中和率は、73.5モル%であった。
[0278] 次に、単量体水溶液(C)に3質量%の過硫酸ナトリウム水溶液1.8gを加え、約1秒間攪拌した後すぐに、内面にテフロン(登録商標)を貼り付けたステンレス製バット型容器中に開放系で注いだ。また、ステンレス製バット型容器に単量体水溶液を注ぎ込むと同時に紫外線を照射した。
[0279] 単量体水溶液がバットに注がれて間もなく重合が開始(重合開始時の温度98℃)し、重合は約1分以内にピーク温度となった。3分後、紫外線の照射を停止し、含水重合物を取り出した。なお、これら一連の操作は大気中に開放された系で行った。
[0280] 得られた含水重合物を、ミートチョッパー(MEAT−CHOPPER TYPE:12VR−400KSOX 飯塚工業株式会社、ダイ孔径:6.4mm、孔数:38、ダイ厚み8mm)により粉砕し、細分化された粉砕含水重合物粒子を得た(質量平均粒子径1000μm)。
[0281] この細分化された粉砕含水重合物粒子を50メッシュ(目開き300μm)の金網上に広げ、180℃で熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルで粉砕し、さらに目開き850μmと目開き150μmのJIS標準篩で分級することにより、不定形破砕状の吸水性樹脂(固形分96質量%)である吸水性樹脂粉末(b)を得た。尚、吸水性樹脂粉末(b)のCRC(無加圧下吸水倍率)は47.3[g/g]であった。
[0282] 次に、上記吸水性樹脂粉末(b)をドイツレーディゲ社製回転ミキサーに移し、吸水性樹脂粉末(b)100質量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.015質量部、プロピレングリコール1.0質量部及び水3.0質量部からなる表面架橋剤水溶液を均一に混合し、100℃で45分間加熱処理を行った。その後、目開きが850μmのJIS標準篩で整粒させることで、表面が架橋された吸水性樹脂粒子(b−1)を得た。吸水性樹脂粒子(b−1)は、不定形であり、150μm以上850μm未満の範囲に95質量%以上含まれていた。
[0283] [製造例3]
製造例2において、エチレングリコールジグリシジルエーテルの添加量を0.03質量部に変更した以外は、製造例2と同様の操作を行い、表面が架橋された吸水性樹脂粒子(b−2)を得た。
・・・・
[0287] [実施例1]
製造例2で得た吸水性樹脂粒子(b−1)100質量部にハイドロタルサイト(製品名DHT−6、協和化学工業株式会社製、Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O[一般式(1)のx=0.25、m=0.50]、体積平均粒子径0.5μm)0.3質量部を混合した。混合は吸水性樹脂30gを容量225mlのマヨネーズ瓶にハイドロタルサイトと共に入れ、ペイントシェーカー(東洋精機製)の振動(室温下で3分間)によって混合し、吸水性樹脂粒子(吸水剤)(1)を得た。吸水性樹脂粒子(1)の性能を後の表1に示す。また、吸水性樹脂粒子(1)の粒度測定結果を表3に示す。吸水性樹脂粒子(1)は、150μm以上850μm未満の粒度範囲に98.6質量%含んでいた。また、XRD測定によるハイドロタルサイトの含有量は0.3質量%であった。
・・・
[0289] [実施例3]
製造例3で得た吸水性樹脂粒子(b−2)100量部に実施例1で使用したハイドロタルサイト0.3質量部を実施例1と同様に混合し、吸水性樹脂粒子(3)を得た。吸水性樹脂粒(3)の性能を後の表1に示す。また、XRD測定によるハイドロタルサイトの含有量は0.3質量%であった。吸水性樹脂粒子(3)は、150μm以上850μm未満の粒度範囲に98.6質量%含んでいた。」
「[0312][表1]


「[0436] [製造例4−2]
断熱材である発泡スチロールで覆われた、内径80mm、容量1リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸291g、内部架橋剤としてのポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)0.43g(カルボキシル基含有不飽和単量体に対し0.02モル%)、および1.0質量%ジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウム水溶液1.80g、IRGACURE(登録商標)184の1.0質量%アクリル酸溶液3.60gを混合した溶液(A)と、48.5質量%水酸化ナトリウム水溶液247gと50℃に調温したイオン交換水255gを混合した溶液(B)を作製した。長さ5cmのマグネチックスターラーを用い800r.p.m.で攪拌した溶液(A)に、溶液(B)をすばやく加え混合することで単量体水溶液(C)を得た。単量体水溶液(C)は、中和熱と溶解熱により、液温が約100℃まで上昇した。なお、アクリル酸の中和率は、73.5モル%であった。
[0437] 次に、単量体水溶液(C)に3質量%の過硫酸ナトリウム水溶液1.8gを加え、約1秒間攪拌した後すぐに、内面にテフロン(登録商標)を貼り付けたステンレス製バット型容器中に開放系で注いだ。また、ステンレス製バット型容器に単量体水溶液を注ぎ込むと同時に紫外線を照射した。
[0438] 単量体水溶液がバットに注がれて間もなく重合が開始(重合開始時の温度98℃)し、重合は約1分以内にピーク温度となった。3分後、紫外線の照射を停止し、含水重合物を取り出した。なお、これら一連の操作は大気中に開放された系で行った。
[0439] 得られた含水重合物を、ミートチョッパー(MEAT−CHOPPER TYPE:12VR−400KSOX 飯塚工業株式会社、ダイ孔径:6.4mm、孔数:38、ダイ厚み8mm)により粉砕し、細分化された粉砕含水重合物粒子)を得た(質量平均粒子径1000μm)。
[0440] この細分化された粉砕含水重合物粒子を50メッシュ(目開き300μm)の金網上に広げ、180℃で熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルで粉砕し、さらに目開き850μmと目開き150μmのJIS標準篩で分級することにより、不定形破砕状の吸水性樹脂(固形分96質量%)である吸水性樹脂粉末(b)を得た。尚、吸水性樹脂粉末(b)のCRC(無加圧下吸水倍率)は47.3[g/g]であった。
[0441] 次に、上記吸水性樹脂粉末(b)をドイツレーディゲ社製回転ミキサーに移し、吸水性樹脂粉末(b)100質量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.015質量部、プロピレングリコール1.0質量部及び水3.0質量部からなる表面架橋剤水溶液を均一に混合し、100℃で45分間加熱処理を行った。その後、目開きが850μmのJIS標準篩で整粒させることで、表面が架橋された吸水性樹脂粒子(4−2)を得た。
[0442] [製造例4−3]
製造例4−2において、エチレングリコールジグリシジルエーテルを0.03質量部に変更した以外は、製造例2と同様の操作を行い、表面が架橋された吸水性樹脂粒子(4−3)を得た。
[0443] [実施例4−1]
製造例4−1で得た吸水性樹脂粒子(4−1)100質量部にMg/Al比が3.0/1のハイドロタルサイト(製品名DHT−6、協和化学工業株式会社製)0.3質量部を混合した。混合は吸水性樹脂30gを容量225mlのマヨネーズ瓶にハイドロタルサイトと共に入れ、ペイントシェーカー(東洋精機製)の振動(室温下で3分間)によって混合し、吸水剤(4−1)を得た。吸水剤(4−1)の性能を後の表4−1に示す。また、吸水剤(4−1)の粒度測定結果を表4−2に示す。
[0444] [実施例4−2]
製造例4−1で得た吸水性樹脂粒子(4−1)100質量部にMg/Al比が2.1/1のハイドロタルサイト(製品名DHT−4H、協和化学工業株式会社製)0.3質量部を混合した。混合は吸水性樹脂30gを容量225mlのマヨネーズ瓶にハイドロタルサイトと共に入れ、ペイントシェーカー(東洋精機製)の振動(室温下で3分間)によって混合し、吸水剤(4−2)を得た。吸水剤(4−2)の性能を後の表4−1に示す。また、吸水剤(4−2)の粒度測定結果を表4−2に示す。
[0445] [実施例4−3]
製造例4−2で得た吸水性樹脂粒子(4−2)100量部に実施例4−1で使用したハイドロタルサイト0.3質量部を実施例4−1と同様に混合し、吸水剤(4−3)を得た。吸水剤(4−3)の性能を後の表1に示す。また、吸水剤(4−3)の粒度測定結果を表4−2に示す。」
「[0458] (吸収性物品の吸収速度(コア・アクイジション)・戻り量の評価方法)
測定すべき吸収性物品は、下記の方法により作製した。即ち、先ず、吸水剤(又は吸水性樹脂)60重量部と、木材粉砕パルプ40重量部とを、400メッシュ(目の大きさ38μm)に形成されたワイヤースクリーン上にバッチ型空気抄造装置を用いて空気抄造することにより、120mm×400mmの大きさのウェブに成形した。さらに、このウェブを油圧式プレス機でプレスすることにより、密度が約0.1g/cm3の吸収体を得た。次いで、この吸収体に液不透過性のバックシートおよび液透過性のトップシートを備え、吸収性物品を得た。
[0459] そして、上記の吸収性物品の上に、120mm×400mmの大きさの20メッシュのワイヤーメッシュを配置し、全体に20g/cm2(1.9kPa)の荷重を均一に加えると共に、該吸収体の中心部分に、直径70mm、高さ100mmの円筒を押し当て、該円筒を垂直に立てた。次いで、該円筒内に37℃のテスト液75gを7ml/秒の速度で注ぎ、テスト液を注ぎ始めた時点から、該テスト液が吸収体に全て吸収されるまでの時間を測定し、1回目の吸収速度(秒)とした。その後、上記測定に用いた吸収体を用いて、60分間隔で同様の測定を3回繰り返し、2回目の吸収速度(秒)、3回目の吸収速度(秒)、および4回目の吸収速度(秒)を測定した。4回目のテスト液を入れた後、30分後、吸収性物品から荷重を外して、ペーパータオル(製造元:王子製紙株式会社、キッチンタオルエキストラドライ、120mm×450mmに裁断して30枚重ねたもの)を吸収性物品にのせ、その上に、43g/cm2(4.2kPa)の荷重を1分間放置した。ペーパータオルの重量変化を測定することで、ペーパータオルが吸収した液量を求め、これを戻り量(g)とした。なお、テスト液は、0.9質量%塩化ナトリウム水溶液とした。
[0460] [実施例4−8]
実施例4−3で得られた吸水剤(4−3)を用いて、吸収性物品の吸収速度(コア・アクイジション)・戻り量の評価を行った。吸収体評価結果を表4−3に示す。」
「[0462]
[表8]

[0463]
[表9]

[0464][表10]



(イ)甲1発明
甲1には、上記実施例3で製造された、CRCが34.5g/gである吸水性樹脂粒子(3)、上記実施例4−3で製造された、CRCが37.6g/g、質量平均粒子径が347μmである吸水剤(4−3)(以下、それぞれ「甲1実施例3発明」、「甲1実施例4−3発明」)が記載されていると認める。

イ 甲2に記載された事項及び甲2発明
(ア)甲2に記載された事項
甲2には、「吸水性樹脂粒子、その製造方法、およびそれを用いた吸収体」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
「[0002] 吸水性樹脂は、近年、紙オムツや生理用品等の衛生用品、保水剤や土壌改良剤等の農園芸材料、および止水剤や結露防止剤等の工業資材など、種々の分野で広く使用されている。これらの分野の中でも、特に紙オムツや生理用品等の衛生用品への使用が大きな用途となっている。
[0003] 吸水性樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸部分中和物、澱粉 アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、澱粉−アクリル酸グラフト共重合体の中和物、酢酸ビ二ル−アクリル酸エステル共重合体のけん化物等が知られている。
[0004] 通常、吸水性樹脂に望まれる特性としては、高い吸水量、優れた吸水速度、吸水後の高いゲル強度等が挙げられる。特に、衛生材料用途の吸収体に使用される吸水性樹脂に望まれる特性としては、高い吸水量、優れた吸水速度、吸水後の高いゲル強度に加えて、優れた加圧吸水能、適度な粒子径、吸収した物質の吸収体外部への逆戻りの少ないこと、吸収した物質の吸収体内部への拡散性に優れること等が挙げられる。」
「[0009] 本発明の目的は、高い水分率において粉体流動性に優れ、粒子強度に優れ、機械的な衝撃を受けた後でも粒子径の保持率および加圧吸水能の保持率が高い吸水性樹脂粒子、その製造方法、およびそれを用いた吸収体を提供することにある。」
「[0012] 本発明の吸水性樹脂粒子は、高い水分率において粉体流動性に優れ、粒子強度に優れ、機械的な衝撃を受けた後でも、粒子径の保持率および加圧吸水能の保持率が高く、吸水速度に優れた吸水性樹脂粒子であるため、高速で生産される薄型吸収体への使用に適しており、得られた薄型吸収体および吸収性物品は、被吸収液の吸収性に優れ、漏れが少ない特徴を有する。」
「[0019] 水溶性エチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸〔「(メタ)アクリ」とは「アクリ」または「メタクリ」を意味する。以下同じ〕、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸またはその塩;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のノニオン性モノマー;ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有不飽和モノマーまたはその四級化物等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。」
「[0034] このようにして得られる本発明の吸水性樹脂粒子の質量平均粒子径は200〜500μmであることが好ましく、250〜400μmであることがより好ましい。質量平均粒子径が200μm未満であれば、粒子間の間隙が少なく、吸収液の浸透性が低下し、ゲルブロッキングが生じやすくなるため好ましくない。また、質量平均粒子径が500μmを超えれば、吸水速度が遅くなりすぎ、吸収体に使用された場合、液モレが生じやすくなるため好ましくない。
なお、吸水性樹脂粒子の質量平均粒子径は、後述する「(5)質量平均粒子径」に記載されている測定方法に従って測定したときの値である。」
「[0045] 製造例1
内容積500mlの三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液92gを入れ、氷冷しながら20.0質量%水酸化ナトリウム水溶液154.1gを滴下してアクリル酸の中和を行い、アクリル酸部分中和塩水溶液を調製した。得られたアクリル酸部分中和塩水溶液に、架橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド9.2mgおよび水溶性ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.11gを添加し、これを単量体水溶液とした。
一方、攪拌機、2段パドル翼、還流冷却器、滴下ロートおよび窒素ガス導入管を備えた内容積2リットルの五つ口円筒型丸底フラスコに、n−ヘプタン340gと、界面活性剤として、ショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ株式会社の商品名;リョートーシュガーエステルS−370)0.92ggを加えてn−ヘプタンに溶解させた後、上記の重合用の単量体水溶液を加えて35℃に保ち攪拌下で懸濁した。その後、系内を窒素で置換後、70℃の水浴を用いて昇温して逆相懸濁重合を行った。
[0046] 次いで、別に、内容積500mlの三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液128.8gを入れ、氷冷しながら24.7質量%水酸化ナトリウム水溶液173.8gを滴下してアクリル酸の中和を行い、アクリル酸部分中和塩水溶液を調製した。得られたアクリル酸部分中和塩水溶液に、架橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド12.9mgおよび水溶性ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.16gを添加し、これを第2段目の逆相懸濁重合用の単量体水溶液とした。
第1段目の逆相懸濁重合の終了後、重合スラリーを冷却し、第2段目重合用の単量体水溶液を系内に滴下し、23℃に保ちながら30分間攪拌を行った。その後、系内を窒素で置換し、70℃の水浴を用いて昇温して第2段目の逆相懸濁重合を行った。重合終了後、120℃の油浴で加熱し、共沸蒸留により、266gの水を系外に除去し、2質量%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液8.83gを添加し、80℃で2時間保持し、後架橋処理を行った。さらに水およびn−ヘプタンを蒸留により除去して乾燥し、質量平均粒子径が360μm、水分率5%の吸水性樹脂粒子227.2gを得た。
[0047]実施例1
製造例1と同様にして得られた吸水性樹脂粒子200gに非晶質シリカ粒子1g((株)トクヤマ製、トクシールNP)を添加、混合後、内容積2リットルのセパラブルフラスコに入れ、撹拌しながら室温下、加湿機((株)トヨトミ製、ハイブリッド加湿器)により水添加量0.4L/hで20分間、セパラブルフラスコ内を加湿し、水分率11%の吸水性樹脂を得た。
[0048]実施例2
製造例1と同様にして得られた吸水性樹脂粒子200gに非晶質シリカ粒子1g((株)トクャマ製、ファインシールT−32)を添加、混合後、内容積2リットルのセパラブルフラスコに入れ、撹拌しながら室温下、加湿機((株)トヨトミ製、ハイブリッド加湿器)により水添加量0.4L/hで30分間、セパラブルフラスコ内を加湿し、水分率13%の吸水性樹脂を得た。
[0049]実施例3
製造例1と同様にして得られた吸水性樹脂粒子200gに非晶質シリカ粒子1g((株)トクヤマ製、トクシールNP)を添加、混合後、内容積2リットルのセパラブルフラスコに入れ、撹拌しながら室温下、加湿機((株)トヨトミ製、ハイブリッド加湿器)により水添加量0.4L/hで45分間、セパラブルフラスコ内を加湿し、水分率17%の吸水性樹脂を得た。」
「[0057](2)生理食塩水保水能
吸水性樹脂粒子2.00gを、綿袋(メンブロード60番、横100mm×縦200mm)に入れ、500mLのビーカー内に入れた。この綿袋内に生理食塩水500gを注ぎ込み、開口部を輪ゴムで縛り、1時間放置した。その後、遠心力167Gの脱水機(国産遠心機(株)製、品番H−122)を用いて、前記綿袋を1分間脱水し、脱水後の膨潤ゲルを含んだ綿袋の質量Wa(g)を測定した。吸水性樹脂を添加せずに同様の操作を行い、綿袋の湿潤時空質量Wb(g)を測定し、次式により生理食塩水保水能を算出した。
生理食塩水保水能(g/g)=[Wa−Wb](g)/2.00(g)
[0058](3)吸水速度
100mlのビーカーに、25±0.2℃の温度の生理食塩水50±0.1gを入れ、マグネチックスターラーバー(8mmφ×30mm)を用いて、600rpmになるように調整した。次に吸水性樹脂2.0±0.002gを前記ビーカーに素早く添加し、添加し終わると同時にストップウォッチをスタートした。吸水性樹脂が生理食塩水を吸水し、渦がなくなるまでの時間(秒)をストップウォッチで測定し、吸水速度とした。」
「[0062](5)質量平均粒子径
JIS標準篩を上から、目開き500μm(30メッシュ)、目開き355μm(42メッシュ)、目開き300μm(50メッシュ)、目開き250μm(60メッシュ)、目開き150μm(100メッシュ)、目開き75μm(200メッシュ)、受け皿の順に組み合わせ、最上の篩に吸水性樹脂約100gを入れ、ロータップ式振とう器を用いて、20分間振とうさせた。
次に、各篩上に残った吸水性樹脂の質量を全量に対する質量百分率として計算し、粒子径の大きい方から順に積算することにより、篩の目開きと篩上に残った質量百分率の積算値との関係を対数確率紙にプロットした。確率紙上のプロットを直線で結ぶことにより、積算質量百分率50質量%に相当する粒子径を質量平均粒子径とした。」
「[0067][表1]


「[0081] 本発明によると、吸収体作成時における吸収性樹脂の衝突等による吸水性能の低下が少なく、得られた吸収性物品は加圧下における吸収性にも優れており、紙おむつ、生理用品等の衛生材料の吸収体に好適に用いることができる。」
「請求の範囲
[1] 水溶性エチレン性不飽和単量体を水溶性ラジカル重合開始剤を用いて、要すれば架橋剤の存在下に重合し、吸水性樹脂粒子前駆体を得た後、後架橋剤を添加して粒子の表面層を架橋し、非晶質シリカ粒子を添加して得られる吸水性樹脂粒子であって、水分率が10〜20%であり、粒子衝突試験前後における粒子径保持率が90%以上であることを特徴とする吸水性樹脂粒子。
・・・
[4] 請求項1または2に記載の吸水性樹脂粒子と親水性繊維と透水性シートからなる吸収体。」

(イ)甲2発明
甲2には、上記実施例1で製造された、生理食塩水保水能(量)が34g/g、質量平均粒子径が365μmである吸水性樹脂、上記実施例2で製造された、生理食塩水保水能(量)が33g/g、質量平均粒子径が365μmである吸水性樹脂、上記実施例3で製造された、生理食塩水保水能(量)が33g/g、質量平均粒子径が372μmである吸水性樹脂(以下、「甲2実施例1発明」ないし「甲2実施例3発明」という。)が記載されていると認める。

ウ 甲3に記載された事項及び甲3発明
(ア)甲3に記載された事項
甲3には、「吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤、その製造方法及び吸収性物品」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸基及び/又はその塩含有不飽和モノマーを重合してなり、略球状体、その凝集体又は略球状体由来の凝集体のうちの少なくとも1種である吸水性樹脂粒子を主成分とする粒子状吸水剤であって、下記(a)、(b)、(c)及び(d)を満たす粒子状吸水剤。
(a)生理食塩水への無加圧下吸収倍率(CRC)が32g/g以上
(b)質量平均粒子径(D50)が200μm以上400μm以下
(c)粒子径150μm未満の粒子の含有量が0質量%以上5質量%以下
(d)ガス検知管により測定される雰囲気濃度としての揮発性有機物の含有量が0ppm以上100ppm以下」
「【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のように多くの技術が提案されているが、近年、紙オムツ等の吸収体において吸水性樹脂の使用量が多くなって、吸水性樹脂濃度が高い(吸水性樹脂の質量比が高い)吸収体となる傾向を示しており、従来の吸水性樹脂では、高濃度での使用に十分な性能が示されず、また高濃度では消臭性能も十分とはいえないという問題がある。また、オムツ中の吸水性樹脂の使用量が増加するに伴い、残存モノマーの低減がより求められるようになっている。
【0012】
本発明の目的は、優れた吸収性物品を与えるため、オムツ等の吸収体における高濃度での実使用に好適な吸水性樹脂を含む粒子状吸水剤及びその製造方法の提供にある。すなわち、課題(優れた吸収性物品)の解決手段として、本発明はさらなる付加機能を有する吸水剤であって、消臭性能に優れ、膨潤後に発生する臭気が無く、実使用に好適な吸水剤及びその製造方法の提供にある。」
「【0026】
本発明では吸水性樹脂として、本発明を達成する上で、酸基及び/又はその塩含有不飽和モノマーを架橋重合した吸水性樹脂(架橋重合した構造である吸水性樹脂であれば良く、酸基及び/又はその塩含有不飽和モノマーを重合後に、架橋剤により架橋反応して得られる吸水性樹脂でも良い)が必須に用いられる。好ましくは、アクリル酸及び/又はその塩(中和物)を主成分とする不飽和モノマーを重合・架橋することにより得られるポリアクリル酸(部分)中和物ポリマーが用いられる。」
「【0030】
本発明でアクリル酸(塩)以外のモノマーを用いる場合、本発明を達成するため、該アクリル酸(塩)以外のモノマー(但し、下記の架橋モノマーを除く)の使用割合は、主成分として用いるアクリル酸及びその塩との合計量に対して、好ましくは0〜30モル%、より好ましくは0〜10モル%、最も好ましくは0〜5モル%とされる。」
「【0093】
本発明の吸水剤は、(b)質量平均粒子径(D50)が通常200μm以上400μm以下であり、下限が好ましくは225μm、さらに好ましくは250μm、上限が好ましくは380μm、さらに好ましくは350μmに狭く制御される。かつ、(c)150μm未満の粒子の割合が、0質量%以上5質量%以下、上限が、好ましくは3質量%、さらに好ましくは2質量%、特に好ましくは1質量%に制御される。粒度調整は、好ましくは表面架橋前にされるが、表面架橋後に粉砕及び分級、造粒されて特定の粒度に制御されてもよい。質量平均粒子径が特に200μm未満である場合、及び150μm未満の粒子の割合が5質量%を超える場合、取り扱い性、特に粉塵が問題となる。また、オムツ等の吸収性物品に使用した場合に、トップシートから漏れ出す可能性がある。また、質量平均粒子径が特に400μmを超える場合、吸収速度に劣り、オムツ等の吸収性物品に使用したときに、高物性が示されない。
【0094】
本発明の(a)無加圧下吸収倍率(CRC)は32g/g以上、下限が、より好ましくは35g/g、さらに好ましくは40g/g、特に好ましくは45g/g、上限が、より好ましくは70g/g、さらに好ましくは65g/g、特に好ましくは60g/gとされる。吸収倍率が32g/g未満である場合、オムツに使用した場合、高物性が示されない。」
「【0103】
(l)ボルテックス吸収速度
本発明の吸水剤の吸収速度は60秒以下、好ましくは1〜55秒、より好ましくは2〜50秒である。吸収速度が60秒を超える場合、オムツ等の吸収体に吸水性樹脂を使用した場合に十分な吸収能力を発揮しない場合がある。」
「【0105】
(18)吸収性物品
本発明の粒子状吸水剤の用途は特定に限定されないが、好ましくは、吸収体及び吸収性物品に使用される。
【0106】
本発明の吸収体は、上記の粒子状吸水剤を用いて得られる。なお、本発明で吸収体とは、粒子状吸水剤と親水性繊維とを主成分として成型された吸収材とのことであり、本発明の吸収体は、吸水剤と親水性繊維との合計質量に対する吸水剤の含有量(コア濃度)が、好ましくは20質量%以上100質量%以下、下限が、さらに好ましくは30質量%、特に好ましくは40質量%である。
【0107】
さらに、本発明の吸収性物品は、上記した本発明の吸収体、液透過性を有する表面シート、及び液不透過性を有する背面シートを備える。
【0108】
本発明の吸収性物品、特に子供用紙オムツ、大人用紙オムツや生理用ナプキンは、例えば繊維基材と吸水剤とをブレンドないしサンドイッチすることで吸収体(吸収コア)を作成し、吸収コアを液透過性を有する基材(表面シート)と液不透過性を有する基材(背面シート)とでサンドイッチして、必要に応じて、弾性部材、拡散層、粘着テープ等を装備することで、製造され得る。かかる吸収コアは密度0.06〜0.50g/cc、坪量0.01〜0.20g/cm2 の範囲に圧縮成形される。なお、用いられる繊維基材としては、親水性繊維、例えば、粉砕された木材パルプ、その他、コットンリンターや架橋セルロース繊維、レーヨン、綿、羊毛、アセテート、ビニロン等が例示できる。好ましくはそれらをエアレイドしたものである。
【0109】
本発明の吸水剤は優れた吸収特性を示すものである。このような吸収性物品としては、具体的には、近年成長の著しい大人用紙オムツをはじめ、子供用オムツや生理用ナプキン、いわゆる失禁パッド等の衛生材料等が挙げられ、それらに特に限定されるものではないが、本発明の吸収性物品の中に存在する吸水剤が戻り量も少なく、ドライ感が著しいので、装着している本人、介護の人々の負担が大きく低減される。」
「【実施例】
【0110】
以下に、本発明の実施例と比較例とを具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、吸水性樹脂、粒子状吸水剤(以下、吸水剤という)、吸収性物品の諸性能は以下の方法で測定した。下記測定方法の説明においては、吸水剤の物性を測定する場合として説明する。また実施例において使用される電気機器はすべて100V、60Hzの条件で使用した。さらに、吸水性樹脂、吸水剤、吸収性物品は、特に指定されない限り、25℃±2℃、相対湿度50%RHの条件下で使用した。また、生理食塩水として0.90質量%塩化ナトリウム水溶液を用いた。
【0111】
また、吸水剤(吸水性樹脂)が吸湿している場合、適宜、減圧乾燥(例、60〜80℃で16時間程度)して吸水剤(吸水性樹脂)の含水率を平衡(5質量%前後、2〜8質量%)になるまで乾燥したのち、測定する。比較として市販品の吸水剤(吸水性樹脂)やオムツ、オムツから取り出される吸水剤(吸水性樹脂)で比較試験する際に、流通過程で吸湿している場合、適宜、減圧乾燥(例、60〜80℃で16時間程度)して吸水剤(吸水性樹脂)の含水率を平衡(5質量%前後、2〜8質量%)になるまで乾燥したののちに比較すればよい。
【0112】
(1)生理生理食塩水(0.90質量%塩化ナトリウム水溶液)に対する無加圧下吸収倍率(CRC/Cenrifuge Retension Capacity)
吸水剤0.20gを不織布製の袋(60mm×85mm)に均一に入れ、25±2℃に調温した生理食塩水中に浸漬した。30分後に袋を引き上げ、遠心分離機(株式会社コクサン製、型式H−122小型遠心分離機)を用いて250G(250×9.81m/s2 )で3分間水切りを行った後、袋の質量W2 (g) を測定した。また吸水剤を用いないで同様の操作を行い、そのときの質量W1 (g)を測定した。そして、これら質量W1 、W2 から、次式に従って、吸収倍率(g/g)を算出した。
無加圧下吸収倍率(g/g)=((質量W2 (g)−質量W1 (g))/吸水剤の質量(g))−1」
「【0115】
(3)質量平均粒子径(D50)、対数標準偏差(σζ)及び粒子径150μm未満の質量百分率
吸水剤を、850μm、710μm、600μm、500μm、425μm、300μm、212μm、150μm、106μm、45μmのJIS標準ふるい(JIS Z−8801−1(2000))で分級篩い分けし、粒子径150μm未満の質量百分率を実測するとともに、各粒度の残留百分率Rを対数確率紙にプロットした。これにより、R=50質量%に相当する粒子径を質量平均粒子径(D50)として読み取った。また、対数標準偏差(σζ)は下記の式で表され、σζの値が小さいほど粒度分布が狭いことを意味する。
σζ = 0.5 × ln(X2 /X1 )
(X1 はR=84.1質量%、X2 は15.9質量%のときのそれぞれの粒子径)
【0116】
なお、分級篩い分けは、吸水剤10.00gを上記目開きのJIS標準ふるい(The IIDA TESTING SIEVE:内径80mm)に仕込み、ロータップ型ふるい振盪機((株)飯田製作所製、ES−65型ふるい振盪機)により5分間分級した。
【0117】
なお、質量平均粒子径(D50)とは、米国特許5051259号公報等にあるように一定目開きの標準ふるいで、粒子全体の50質量%に対応する標準ふるいの粒子径のことである。」
「【0138】
(6)吸収速度評価(Vortex法)
予め調整された0.90質量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)1000質量部に食品添加物である食用青色1号0.02質量部を添加し、液温30℃に調整した。その生理食塩水50mlを100mlビーカーに計り取り、長さ40mmで太さ8mmの円筒型攪拌子で600rpmで攪拌する中に、後述する実施例又は比較例で得られた吸水剤2.0gを投入し、吸収速度(秒)を測定した。終点は、JIS K 7224(1996)「高吸水性樹脂の吸収速度試験方法 解説」に記載されている基準に準じ、吸水剤が生理食塩水を吸液してスターラーチップを試験液で覆うまでの時間を吸収速度(秒)として測定した。」
「【0142】
(9)吸収体性能評価(10分戻り量)
吸収体としての性能評価をするために、後述する実施例及び比較例の吸水剤を用いて吸収体を作成し、戻り量評価を行った。
【0143】
まず、評価用の吸収体の作成方法が以下に示される。
【0144】
後述する吸水剤1質量部と、木材粉砕パルプ2質量部とを、ミキサーを用いて乾式混合した。次いで、得られた混合物を、400メッシュ(目の大きさ38μm)に形成されたワイヤースクリーン上に広げ、直径90mmφの大きさのウェブに成形した。さらに、このウェブを圧力196.14kPa(2kgf/cm2 )で1分間プレスすることにより、坪量が約0.05g/cm2 の評価用吸収体を得た。」
「【0148】
[アクリル酸の製造例1]
市販のアクリル酸(アクリル酸ダイマー2000ppm、酢酸500ppm、プロピオン酸500ppm含有)を、無堰多孔板50段を有する高沸点不純物分離塔の塔底に供給して、還流比を1として蒸留し、マレイン酸やアクリル酸からなる二量体(アクリル酸ダイマー)等の除去後、さらに晶析を行なうことで、アクリル酸(アクリル酸ダイマー20ppm、酢酸50ppm、プロピオン酸50ppm含有)を得た。
・・・
【0150】
[アクリル酸ナトリム水溶液の製法]
アクリル酸1390gを米国特許5210298号の実施例9に従い、48%苛性ソーダを用いて20〜40℃で中和して、濃度37質量%で、100モル%中和されたアクリル酸ナトリウムを得た。
【0151】
[実施例1]
攪拌機、還流冷却機、温度計、窒素ガス導入管及び滴下漏斗を付した2Lの四つ口セパラブルフラスコにシクロヘキサン1.0Lをとり、分散剤としてのショ糖脂肪酸エステル(第一工業薬品株式会社製、DK−エステルF−50、HLB=6)3.8gを加えて溶解させ、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した。フラスコ中に、製造例1のアクリル酸の中和物であるアクリル酸ナトリウム84.6g、製造例1のアクリル酸21.6g及びN,N’−メチレンビスアクリルアミド0.016gをイオン交換水197gに溶解し、さらにヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業株式会社製、HEC−ダイセルEP−850)0.4gを溶解させ、モノマー濃度35質量%のモノマー水溶液を調製した。このモノマー水溶液に過硫酸カリウム0.15gを加えて溶解させた後、窒素ガスを吹き込んで水溶液内に溶存する酸素を追い出した。次いでこのフラスコ内のモノマー水溶液を上記セパラブルフラスコに加えて攪拌することにより分散させた。その後、浴温を60℃に昇温して重合反応を開始させた後、2時間この温度に保持して重合を完了した。重合終了後、シクロヘキサンとの共沸脱水により含水ゲル中の水を留去した後、ろ過し、80℃で減圧乾燥し、球状のポリマー粉体を得た。得られたポリマー粉体の含水率は、5.6%であった。
【0152】
上記ポリマー100質量部に、プロピレングリコール0.5質量部と、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部と、1,4−ブタンジオール0.3質量部と、水2.7質量部とからなる表面架橋剤3.53質量部とを混合した。上記の混合物を210℃で45分間加熱処理した。表面架橋後さらに、水3質量部を添加して60℃で30分密閉して加熱し、850μmで分級することで造粒された粒子状吸水剤(1)を得た。得られた粒子状吸水剤(1)の無加圧下吸収倍率、1.9kPaでの加圧下吸収倍率、粒度分布、質量平均粒子径(D50)、対数標準偏差(σζ)及び粒子径150μm未満の質量百分率、水可溶分、耐尿性評価、吸収速度、吸湿ブロッキング率、揮発性有機溶媒、及び180℃での3時間加熱後の残存モノマーの含有量が表1及び表2に示される。
・・・
【0155】
[実施例2]
実施例1で得られた粒子状吸水剤(1)100質量部に微粒子状の二酸化ケイ素(日本アエロジル株式会社製、アエロジル200(1次粒子の平均粒子径12nm))0.3質量部を添加・混合(ドライブレンド)して、粒子状吸水剤(2)を得た。得られた粒子状吸水剤(2)を実施例1と同様に評価した結果が、表1及び表2に示される。」
「【0162】
【表1】

【0163】
【表2】



(イ)甲3発明
甲3には、上記実施例2で製造された、無加圧下吸収倍率が34g/g、質量平均粒子径が381μmである粒子状吸水剤(2)(以下、「甲3実施例2発明」)が記載されていると認める。

エ 甲17に記載された事項及び甲17発明
(ア)甲17に記載された事項
甲17には、「吸水性樹脂及び吸収性物品」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
「【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述したような実情に鑑みて提案されたものであり、吸収体に使用した際に、高い吸水能力を維持しながら、被吸収液に対する高い拡散性を有し、逆戻り量を低減させることができる吸水性樹脂及びその吸水性樹脂を含む吸収体を用いてなる吸収性物品を提供することを目的とする。」
「【0024】
本発明に係る吸水性樹脂は、人工尿吸収倍率が30.0g/g以上であることが好ましい。人工尿吸収倍率は、単位質量当りの吸水性樹脂が吸収し得る人工尿の質量を示し、吸水性樹脂の液体の吸収容量の度合いを表す。なお、人工尿吸収倍率は、32.0g/g以上であることがより好ましく、34.0g/g以上であることがさらに好ましく、36.0g/g以上であることがよりさらに好ましい。また、人工尿吸収倍率の上限値としては、60.0g/g以下であることが好ましい。」
「【0028】
また、本発明に係る吸水性樹脂は、中位粒子径が200〜600μmであることが好ましく、250〜500μmであることがより好ましく、300〜450μmであることがさらに好ましく、350〜450μmであることがよりさらに好ましい。」
「【0075】
≪3.吸収体、吸収性物品≫
本発明に係る吸水性樹脂は、例えば、生理用品、紙オムツ等の衛生材料に用いられる吸収体を構成するものであり、前記吸収体を含む吸収性物品に好適に用いられる。」
「【実施例】
【0081】
≪4.実施例≫
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例等により何ら限定されるものではない。
・・・・
【0090】
(3)中位粒子径(粒度分布)
JIS標準篩を上から、目開き850μmの篩、目開き600μmの篩、目開き500μmの篩、目開き400μmの篩、目開き300μmの篩、目開き250μmの篩、目開き150μmの篩、及び受け皿の順に組み合わせた。
【0091】
組み合わせた最上の篩に、吸水性樹脂50gを入れ、ロータップ式振とう器を用いて20分間振とうさせて分級した。分級後、各篩上に残った吸水性樹脂の質量を全量に対する質量百分率として算出し、粒度分布を求めた。この粒度分布に関して粒子径の大きい方から順に篩上を積算することにより、篩の目開きと篩上に残った吸水性樹脂の質量百分率の積算値との関係を対数確率紙にプロットした。確率紙上のプロットを直線で結ぶことにより、積算質量百分率50質量%に相当する粒子径を中位粒子径とした。
【0092】
なお、吸水性樹脂全体の割合に占める300〜400μmの粒子の質量割合は、前述の測定において、全体に対する300μm目開きの篩上に残った吸水性樹脂の質量割合である。同様に、吸水性樹脂全体の割合に占める150〜850μmの粒子の質量割合は、150μm、250μm、300μm、400μm、500μm、600μmの各目開きの篩上に残った吸水性樹脂の質量割合を合算したものである。
【0093】
(4)人工尿の調製
イオン交換水に、下記の通りに無機塩が存在するように配合して溶解させたものに、さらに少量の青色1号を配合して人工尿を調製した。
<人工尿組成>
NaCl:0.780質量%
CaCl2:0.022質量%
MgSO4:0.038質量%
【0094】
(5)人工尿吸収倍率
吸水性樹脂2.0gを量り取った綿袋(メンブロード60番、横100mm×縦200mm)を500mL容のビーカー内に設置した。吸水性樹脂の入った綿袋中に上述の人工尿500gを注ぎ込み、ママコができないように軽く内部を攪拌した後、綿袋の上部を輪ゴムで縛り、30分間静置させることで吸水性樹脂を自由膨潤させた。30分経過後、上記の吸水性樹脂入りの綿袋を、遠心力が167Gとなるよう設定した脱水機(国産遠心機株式会社製、品番:H−122)を用いて1分間脱水して余剰液を取り去った後、脱水後の膨潤ゲルを含んだ綿袋の質量Wb(g)を測定した。測定後、中の膨潤ゲルを除去したあと、風袋として空の綿袋のみで同様の作業を行い、湿潤時の空質量Wc(g)を測定し、以下の式から人工尿吸収倍率を小数点第一位まで算出した。
【0095】
人工尿吸収倍率(g/g)=[Wb−Wc](g)/吸水性樹脂の質量(g)
・・・
【0099】
[吸水性樹脂を使用した吸収体及び吸収性物品の評価試験]
(1)吸収体及び吸収性物品の作製
吸水性樹脂12gと解砕パルプ(レオニア社製,レイフロック)12gを用い、空気抄造によって均一混合することにより、40cm×12cmの大きさのシート状の吸収体コアを作製した。次に、吸収体コアの上下を、吸収体コアと同じ大きさで、坪量16g/m2の2枚のティッシュッペーパーで挟んだ状態で、全体に196kPaの荷重を30秒間加えてプレスすることにより、吸収体を作製した。さらに、吸収体の上面に、吸収体と同じ大きさで、坪量22g/m2のポリエチレン−ポリプロピレン製エアスルー型多孔質液体透過性シートを配置し、同じ大きさ、同じ坪量のポリエチレン製液体不透過性シートを吸収体の下面に配置して吸収体を挟みつけることにより、吸収性物品とした。
【0100】
(2)吸収性物品の浸透時間
水平の台上に吸収性物品を置き、その吸収性物品の中心部に、内径3cmの液投入用シリンダーを具備した測定器具を置き、80mLの人工尿をそのシリンダー内に一度に投入するとともに、ストップウォッチを用いて、人工尿がシリンダー内から完全に消失するまでの時間を測定し、1回目の浸透時間(秒)とした。次に、シリンダーをはずし、吸収性物品をそのままの状態で保存し、1回目の人工尿投入開始から30分後及び60分後にも、1回目と同じ位置に測定器具を用いて同様の操作を行い、2回目及び3回目の浸透時間(秒)を測定した。1回目〜3回目の合計時間を合計浸透時間とした。浸透時間が短いほど、吸収性物品として好ましいと言える。」
「【0104】
<4−2.実施例及び比較例について>
[実施例1]
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、並びに、攪拌機として、翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する攪拌翼を備えた内径110mm、2L容の丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコに、炭化水素分散媒としてn−ヘプタン300gをとり、界面活性剤としてHLB3のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ株式会社、リョートーシュガーエステルS−370)0.74g、高分子系分散剤として無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社、ハイワックス1105A)0.74gを添加し、攪拌しつつ80℃まで昇温して界面活性剤を溶解した後、50℃まで冷却した。
【0105】
一方、500mL容の三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液92g(1.02モル)をとり、外部より冷却しつつ、21質量%の水酸化ナトリウム水溶液146.0gを滴下して75モル%の中和を行った後、増粘剤としてヒドロキシルエチルセルロース0.092g(住友精化株式会社、HEC AW−15F)、アゾ系化合物として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.092g(0.339ミリモル)、過酸化物として過硫酸カリウム0.037g(0.136ミリモル)、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.0101g(0.058ミリモル)を加えて溶解し、モノマー水溶液を調製した。
【0106】
そして、攪拌機の回転数を500rpmとして、上述のように調製したモノマー水溶液をセパラブルフラスコに添加して、系内を窒素で十分に置換した後、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を60分間行うことで第1段目の重合スラリー液を得た。
【0107】
一方、別の500mL容の三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液128.8g(1.43モル)をとり、外部より冷却しつつ、27質量%の水酸化ナトリウム水溶液159.0gを滴下して75モル%の中和を行った後、アゾ系化合物として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.129g(0.475ミリモル)、過酸化物として過硫酸カリウム0.052g(0.191ミリモル)、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.0116g(0.067ミリモル)を加えて溶解し、第2段目のモノマー水溶液を調製した。
【0108】
前記重合後スラリーの撹拌回転数を1000rpmに変更した後、上述のセパラブルフラスコ系内を25℃に冷却した後、第2段目のモノマー水溶液の全量を、第1段目の重合スラリー液に添加して、系内を窒素で十分に置換した後、再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、第2段目の重合を30分間行った。
【0109】
第2段目の重合後、125℃の油浴で反応液を昇温し、n−ヘプタンと水との共沸蒸留によりn−ヘプタンを還流しながら239gの水を系外へ抜き出した後、後架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルの2質量%水溶液4.42g(0.51ミリモル)を添加し、80℃で2時間保持した。その後、n−ヘプタンを蒸発させて乾燥することによって、乾燥品を得た。この乾燥品に対して0.3質量%の非晶質シリカ(エボニックデグサジャパン株式会社製、カープレックス#80)を混合し、それを目開き1000μmのふるいを通過させ、球状粒子が凝集した形態の吸水性樹脂234.0gを得た。この吸水性樹脂を、前述の各種試験方法に従って評価した。
【0110】
なお、得られた吸水性樹脂は、その全体の割合に占める150〜850μmの粒子の質量割合が95.5質量%であり、300〜400μmの粒子の質量割合が25.0質量%であった。また、得られた吸水性樹脂の生理食塩水吸水速度は、60秒であった。
【0111】
[実施例2]
実施例2では、第2段目の重合後、n−ヘプタンと水との共沸蒸留によりn−ヘプタンを還流しながら242gの水を系外へ抜き出したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、球状の一次粒子が凝集した二次粒子の形態を有する吸水性樹脂231.8gを得た。これにより、実施例1にて得られた吸水性樹脂とは保水能が異なる吸水性樹脂を得た。この吸水性樹脂を、前述の各種試験方法に従って評価した。
【0112】
なお、得られた吸水性樹脂は、その全体の割合に占める150〜850μmの粒子の質量割合が96.6質量%であり、300〜400μmの粒子の質量割合が27.6質量%であった。また、得られた吸水性樹脂の生理食塩水吸水速度は、66秒であった。
【0113】
[実施例3]
実施例3では、第2段目の重合後、n−ヘプタンと水との共沸蒸留によりn−ヘプタンを還流しながら236gの水を系外へ抜き出したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、球状の一次粒子が凝集した二次粒子の形態を有する吸水性樹脂230.7gを得た。これにより、実施例1にて得られた吸水性樹脂とは保水能が異なる吸水性樹脂を得た。この吸水性樹脂を、前述の各種試験方法に従って評価した。
【0114】
なお、得られた吸水性樹脂は、その全体の割合に占める150〜850μmの粒子の質量割合が96.3質量%であり、300〜400μmの粒子の質量割合が25.3質量%であった。また、得られた吸水性樹脂の生理食塩水吸水速度は、78秒であった。
【0115】
[実施例4]
実施例4では、第一段目の重合時の攪拌回転数を550rpmに変更し、後架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルの2質量%水溶液を6.62gに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、球状の一次粒子が凝集した二次粒子の形態を有する吸水性樹脂231.4gを得た。この吸水性樹脂を、前述の各種試験方法に従って評価した。
【0116】
なお、得られた吸水性樹脂は、その全体の割合に占める150〜850μmの粒子の質量割合が97.4質量%であり、300〜400μmの粒子の質量割合が42.1質量%であった。また、得られた吸水性樹脂の生理食塩水吸水速度は、63秒であった。」
「【0135】
<4−3.評価結果について>
[吸水性樹脂の評価結果]
下記表1に、吸水性樹脂及びその吸水性樹脂を用いて形成した吸収体の評価結果を示す。なお、この表1には、下記式(I)で表される吸収体有効指数Kも併せて示す。
吸収体有効指数K=液流れ量(g)×人工尿吸収倍率(g/g) ・・・(I)
【0136】
【表1】

【0137】
[吸収性物品の評価結果]
次に、下記表2に、上述した実施例1、2、3、及び比較例1、2、3にて得られた吸水性樹脂を用いて作製した吸収性物品に関して、その吸収性物品の人工尿の浸透時間、逆戻り量、拡散長の測定結果を示す。
【0138】
【表2】



(イ)甲17発明
甲17には、上記実施例4で製造された、人工尿吸収倍率が39.8g/g、中位粒子径が360μmである吸水性樹脂粒子(以下、「甲17実施例4発明」という。)が記載されていると認める。

(2)甲1に基づく新規性進歩性について
ア 本件特許発明1について
(ア)甲1実施例3発明との対比
本件特許発明1と甲1実施例3発明とを対比すると、両者は以下の点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。
<一致点>
エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、当該重合体粒子の表面上に配置された無機粒子と、を含む吸水性樹脂粒子であって、
前記エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、
前記(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。
<相違点1−1−1>
本件特許発明1が、「固めかさ密度が0.750g/cm3以上であり、
温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの固めかさ密度の変化量が0.020〜0.038g/cm3であり、吸湿後の当該固めかさ密度が吸湿前よりも小さい」と特定されているのに対し、甲1実施例3発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点1−1−2>
本件特許発明1が、「前記無機粒子の含有量が、前記重合体粒子の全質量を基準として5.0質量%以下」と特定されているのに対し、甲1実施例3発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点1−1−3>
本件特許発明1が、「温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させた後の前記吸水性樹脂粒子の水分率が20質量%以下であり」と特定されているのに対し、甲1実施例3発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点1−1−4>
本件特許発明1が、「生理食塩水の保水量が40〜50g/g」と特定されているのに対し、甲1実施例3発明においては、そのようには特定されていない点。

そこで、上記相違点について検討する。
事案に鑑み、<相違点1−1−1>及び<相違点1−1−4>を併せて検討する。
甲9によると、甲1実施例3発明における「生理食塩水の保水量」は、「36.8g/g」となっており、また、甲1実施例3発明における「CRC」が本件特許発明1の「生理食塩水の保水量」に相当する場合、甲1実施例3発明における「CRC」は「34.5g/g」であるから、いずれにしても甲1実施例3発明は、本件特許発明1の「生理食塩水の保水量が40〜50g/g」である要件を満たさない。
よって、<相違点1−1−4>は実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲1実施例3発明であるとはいえない。
また、吸水性樹脂は、ある物性を変化させるように製造すると他の物性にも影響する、という技術常識を踏まえると、甲1実施例3発明において、他の吸水剤の物性値に影響を与えずに、「生理食塩水の保水量」を「40〜50g/g」とすることは当業者にとって容易であるとはいえない。
仮に「生理食塩水の保水量」を「40〜50g/g」に変化させることができたとしても、変化後の他の物性がどのようになるかは不明となり、もはや甲9を参照することができないし、さらに、特に「固めかさ密度が0.750g/cm3以上であり、温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの固めかさ密度の変化量が0.020〜0.038g/cm3であり、吸湿後の当該固めかさ密度が吸湿前よりも小さ」くすることについて、甲1及びその他の証拠にもなく、また、当該事項とする動機付けは甲1及びその他の証拠にもない。
よって、甲1実施例3発明において、「生理食塩水の保水量が40〜50g/g」であり、かつ「固めかさ密度が0.750g/cm3以上であり、温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの固めかさ密度の変化量が0.020〜0.038g/cm3であり、吸湿後の当該固めかさ密度が吸湿前よりも小さ」くすることは当業者にとって容易であるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「優れた浸透速度を有する吸収性物品を得ることが可能な吸水性樹脂粒子を提供することができる。」(本件特許の発明の詳細な説明の【0011】)という、甲1実施例3発明からは予測し得ない格別顕著な効果を奏するものである。
よって、本件特許発明1は、その他の相違点を検討するまでもなく、甲1実施例3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(イ)甲1実施例4−3発明との対比
本件特許発明1と甲1実施例4−3発明とを対比すると、両者は以下の点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。
<一致点>
エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、当該重合体粒子の表面上に配置された無機粒子と、を含む吸水性樹脂粒子であって、
前記エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、
前記(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。
<相違点1−2−1>
本件特許発明1が、「固めかさ密度が0.750g/cm3以上であり、
温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの固めかさ密度の変化量が0.020〜0.038g/cm3であり、吸湿後の当該固めかさ密度が吸湿前よりも小さい」と特定されているのに対し、甲1実施例4−3発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点1−2−2>
本件特許発明1が、「前記無機粒子の含有量が、前記重合体粒子の全質量を基準として5.0質量%以下」と特定されているのに対し、甲1実施例4−3発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点1−2−3>
本件特許発明1が、「温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させた後の前記吸水性樹脂粒子の水分率が20質量%以下であり」と特定されているのに対し、甲1実施例4−3発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点1−2−4>
本件特許発明1が、「生理食塩水の保水量が40〜50g/g」と特定されているのに対し、甲1実施例4−3発明においては、そのようには特定されていない点。

そこで、上記相違点について検討する。
<相違点1−2−1>について
甲9によると、甲1実施例4−3発明における「固めかさ密度の変化量」は0.040g/cm3であるから、甲1実施例4−3発明は、本件特許発明1の「温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの固めかさ密度の変化量が0.020〜0.038g/cm3」である要件を満たさない。
よって、<相違点1−2−1>は実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲1実施例4−3発明であるとはいえない。
また、「固めかさ密度が0.750g/cm3以上であり、温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの固めかさ密度の変化量が0.020〜0.038g/cm3であり、吸湿後の当該固めかさ密度が吸湿前よりも小さ」くすることについて、甲1及びその他の証拠にもなく、当該事項とする動機付けは甲1及びその他の証拠にもない。
よって、甲1実施例4−3発明において、「固めかさ密度が0.750g/cm3以上であり、温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの固めかさ密度の変化量が0.020〜0.038g/cm3であり、吸湿後の当該固めかさ密度が吸湿前よりも小さ」くすることは当業者にとって容易であるとはいえない。
そして、本件特許発明1は、甲1実施例4−3発明からは予測し得ない格別顕著な効果を奏するものである。
よって、本件特許発明1は、その他の相違点を検討するまでもなく、甲1実施例4−3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(ウ)小括
したがって、本件特許発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえないし、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

イ 本件特許発明2ないし8について
本件特許発明2ないし8は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲1に記載された発明であるとはいえないし、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

ウ 異議申立人の主張について
異議申立人は、令和3年12月2日付けの意見書において、「固めかさ密度の測定精度を考慮すると、上記の差は技術的意義のある実質的な差であるとは言えない。・・・それゆえ、 訂正 後の本件発明は、甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1号証の記載に基づき容易に想到できる。」と主張している。
しかしながら、上記アで述べたように、「固めかさ密度が0.750g/cm3以上であり、温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの固めかさ密度の変化量が0.020〜0.038g/cm3であり、吸湿後の当該固めかさ密度が吸湿前よりも小さ」くすることについて、甲1及びその他の証拠にもなく、また、当該事項とする動機付けは甲1及びその他の証拠にもないのであるから、本件特許発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえないし、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
よって、異議申立人の上記主張は首肯できない。

(3)甲2に基づく新規性進歩性について
ア 本件特許発明1について
(ア)甲2実施例3発明との対比
本件特許発明1と甲2実施例3発明とを対比すると、両者は以下の点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。
<一致点>
エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、当該重合体粒子の表面上に配置された無機粒子と、を含む吸水性樹脂粒子であって、
前記エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、
前記(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。
<相違点2−3−1>
本件特許発明1が、「固めかさ密度が0.750g/cm3以上であり、
温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの固めかさ密度の変化量が0.020〜0.038g/cm3であり、吸湿後の当該固めかさ密度が吸湿前よりも小さい」と特定されているのに対し、甲2実施例3発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点2−3−2>
本件特許発明1が、「前記無機粒子の含有量が、前記重合体粒子の全質量を基準として5.0質量%以下」と特定されているのに対し、甲2実施例3発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点2−3−3>
本件特許発明1が、「温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させた後の前記吸水性樹脂粒子の水分率が20質量%以下であり」と特定されているのに対し、甲2実施例3発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点2−3−4>
本件特許発明1が、「生理食塩水の保水量が40〜50g/g」と特定されているのに対し、甲2実施例3発明においては、そのようには特定されていない点。

そこで、上記相違点について検討する。
事案に鑑み、<相違点2−3−1>及び<相違点2−3−4>を併せて検討する。
甲10によると、甲2実施例3発明における「生理食塩水の保水量」は、「32.1g/g」となっており、また、甲2実施例3発明における「生理食塩水保水能(量)」が本件特許発明1の「生理食塩水の保水量」に相当する場合、甲2実施例3発明における「生理食塩水保水能(量)」は「33g/g」であるから、いずれにしても甲2実施例3発明は、本件特許発明1の「生理食塩水の保水量が40〜50g/g」である要件を満たさない。
よって、<相違点2−3−4>は実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲2実施例3発明であるとはいえない。
仮に「生理食塩水の保水量」を「40〜50g/g」に変化させることができたとしても、変化後の他の物性がどのようになるかは不明となり、もはや甲10を参照することができないし、さらに、特に「固めかさ密度が0.750g/cm3以上であり、温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの固めかさ密度の変化量が0.020〜0.038g/cm3であり、吸湿後の当該固めかさ密度が吸湿前よりも小さ」くすることについて、甲2及びその他の証拠にもなく、また、当該事項とする動機付けは甲2及びその他の証拠にもない。
よって、甲2実施例3発明において、「生理食塩水の保水量が40〜50g/g」であり、かつ「固めかさ密度が0.750g/cm3以上であり、温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの固めかさ密度の変化量が0.020〜0.038g/cm3であり、吸湿後の当該固めかさ密度が吸湿前よりも小さ」くすることは当業者にとって容易であるとはいえない。
そして、本件特許発明1は、甲2実施例3発明からは予測し得ない格別顕著な効果を奏するものである。
よって、本件特許発明1は、その他の相違点を検討するまでもなく、甲2実施例3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(イ)甲2実施例1発明との対比
本件特許発明1と甲2実施例1発明とを対比すると、両者は以下の点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。
<一致点>
エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、当該重合体粒子の表面上に配置された無機粒子と、を含む吸水性樹脂粒子であって、
前記エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、
前記(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。
<相違点2−1−1>
本件特許発明1が、「固めかさ密度が0.750g/cm3以上であり、
温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの固めかさ密度の変化量が0.020〜0.038g/cm3であり、吸湿後の当該固めかさ密度が吸湿前よりも小さい」と特定されているのに対し、甲2実施例1発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点2−1−2>
本件特許発明1が、「前記無機粒子の含有量が、前記重合体粒子の全質量を基準として5.0質量%以下」と特定されているのに対し、甲2実施例1発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点2−1−3>
本件特許発明1が、「温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させた後の前記吸水性樹脂粒子の水分率が20質量%以下であり」と特定されているのに対し、甲2実施例1発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点2−1−4>
本件特許発明1が、「生理食塩水の保水量が40〜50g/g」と特定されているのに対し、甲2実施例1発明においては、そのようには特定されていない点。

そこで、上記相違点について検討する。
事案に鑑み、<相違点2−1−1>及び<相違点2−1−4>を併せて検討する。
甲2実施例1発明における「生理食塩水保水能(量)」が本件特許発明1の「生理食塩水の保水量」に相当する場合、甲2実施例1発明における「生理食塩水保水能(量)」は「34g/g」であるから、甲2実施例1発明は、本件特許発明1の「生理食塩水の保水量が40〜50g/g」である要件を満たさない。
よって、<相違点2−1−4>は実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲2実施例1発明であるとはいえない。
仮に「生理食塩水の保水量」を「40〜50g/g」に変化させることができたとしても、変化後の他の物性がどのようになるかは不明となり、さらに、特に「固めかさ密度が0.750g/cm3以上であり、温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの固めかさ密度の変化量が0.020〜0.038g/cm3であり、吸湿後の当該固めかさ密度が吸湿前よりも小さ」くすることについて、甲2及びその他の証拠にもなく、また、当該事項とする動機付けは甲2及びその他の証拠にもない。
よって、甲2実施例1発明において、「生理食塩水の保水量が40〜50g/g」であり、かつ「固めかさ密度が0.750g/cm3以上であり、温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの固めかさ密度の変化量が0.020〜0.038g/cm3であり、吸湿後の当該固めかさ密度が吸湿前よりも小さ」くすることは当業者にとって容易であるとはいえない。
そして、本件特許発明1は、甲2実施例1からは予測し得ない格別顕著な効果を奏するものである。
よって、本件特許発明1は、その他の相違点を検討するまでもなく、甲2実施例1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(ウ)甲2実施例2発明との対比
本件特許発明1と甲2実施例2発明とを対比すると、両者は以下の点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。
<一致点>
エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、当該重合体粒子の表面上に配置された無機粒子と、を含む吸水性樹脂粒子であって、
前記エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、
前記(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。
<相違点2−2−1>
本件特許発明1が、「固めかさ密度が0.750g/cm3以上であり、温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの固めかさ密度の変化量が0.020〜0.038g/cm3であり、吸湿後の当該固めかさ密度が吸湿前よりも小さい」と特定されているのに対し、甲2実施例2発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点2−2−2>
本件特許発明1が、「前記無機粒子の含有量が、前記重合体粒子の全質量を基準として5.0質量%以下」と特定されているのに対し、甲2実施例2発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点2−2−3>
本件特許発明1が、「温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させた後の前記吸水性樹脂粒子の水分率が20質量%以下であり」と特定されているのに対し、甲2実施例2発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点2−2−4>
本件特許発明1が、「生理食塩水の保水量が40〜50g/g」と特定されているのに対し、甲2実施例2発明においては、そのようには特定されていない点。

そこで、上記相違点について検討する。
事案に鑑み、<相違点2−2−1>及び<相違点2−2−4>を併せて検討する。
甲2実施例2発明における「生理食塩水保水能(量)」が本件特許発明1の「生理食塩水の保水量」に相当する場合、甲2実施例2発明における「生理食塩水保水能(量)」は「34g/g」であるから、甲2実施例2発明は、本件特許発明1の「生理食塩水の保水量が40〜50g/g」である要件を満たさない。
よって、<相違点2−2−4>は実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲2実施例2発明であるとはいえない。
また、上記(イ)で述べたのと同様の理由により、甲2実施例2発明において、<相違点2−2−1>及び<相違点2−2−4>に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は、甲2実施例2発明からは予測し得ない格別顕著な効果を奏するものである。
よって、本件特許発明1は、その他の相違点を検討するまでもなく、甲2実施例2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(エ)小括
したがって、本件特許発明1は、甲2に記載された発明であるとはいえないし、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

イ 本件特許発明2ないし8について
本件特許発明2ないし8は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲2に記載された発明であるとはいえないし、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

ウ 異議申立人の主張について
異議申立人は、令和3年12月2日付けの意見書において、「生理食塩水の保水量は、吸水性樹脂粒子の基本的な物性であり、 その数値は通常の創作能力により適宜設定できる設計的事項である。」と主張している。
しかしながら、上記アで述べたように、仮に「生理食塩水の保水量」を「40〜50g/g」に変化させることができたとしても、変化後の他の物性がどのようになるかは不明となり、もはや甲10を参照することができないし、さらに、特に「固めかさ密度が0.750g/cm3以上であり、温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの固めかさ密度の変化量が0.020〜0.038g/cm3であり、吸湿後の当該固めかさ密度が吸湿前よりも小さ」くすることについて、甲2及びその他の証拠にもなく、また、当該事項とする動機付けは甲2及びその他の証拠にもないのであるから、本件特許発明1は、甲2に記載された発明であるとはいえないし、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
よって、異議申立人の上記主張は首肯できない。

(4)甲3に基づく新規性進歩性について
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲3実施例2発明とを対比すると、両者は以下の点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。
<一致点>
エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、当該重合体粒子の表面上に配置された無機粒子と、を含む吸水性樹脂粒子であって、
前記エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、
前記(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。
<相違点3−1−1>
本件特許発明1が、「固めかさ密度が0.750g/cm3以上であり、温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの固めかさ密度の変化量が0.020〜0.038g/cm3であり、吸湿後の当該固めかさ密度が吸湿前よりも小さい」と特定されているのに対し、甲3実施例2発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点3−1−2>
本件特許発明1が、「前記無機粒子の含有量が、前記重合体粒子の全質量を基準として5.0質量%以下」と特定されているのに対し、甲3実施例2発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点3−1−3>
本件特許発明1が、「温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させた後の前記吸水性樹脂粒子の水分率が20質量%以下であり」と特定されているのに対し、甲3実施例2発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点3−1−4>
本件特許発明1が、「生理食塩水の保水量が40〜50g/g」と特定されているのに対し、甲3実施例2発明においては、そのようには特定されていない点。

そこで、上記相違点について検討する。
事案に鑑み、<相違点3−1−1>及び<相違点3−1−4>を併せて検討する。
甲11によると、甲3実施例2発明における「生理食塩水の保水量」は「38g/g」となっているし、また、甲3実施例2発明における「無加圧下吸収倍率」が本件特許発明1の「生理食塩水の保水量」に相当する場合、甲3実施例2発明における「無加圧下吸収倍率」は「34g/g」であるから、いずれにしても甲3実施例2発明は、本件特許発明1の「生理食塩水の保水量が40〜50g/g」である要件を満たさない。
よって、<相違点3−1−4>は実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲3実施例2発明であるとはいえない。
吸水性樹脂は、ある物性を変化させるように製造すると他の物性にも影響する、という技術常識を踏まえると、甲3実施例2発明において、他の吸水剤の物性値に影響を与えずに、「生理食塩水の保水量」を「40〜50g/g」とすることは当業者にとって容易であるとはいえない。
仮に「生理食塩水の保水量」を「40〜50g/g」に変化させることができたとしても、変化後の他の物性がどのようになるかは不明となり、もはや甲11を参照することができないし、さらに、特に「固めかさ密度が0.750g/cm3以上であり、温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの固めかさ密度の変化量が0.020〜0.038g/cm3であり、吸湿後の当該固めかさ密度が吸湿前よりも小さ」くすることについて、甲3及びその他の証拠にもなく、また、当該事項とする動機付けは甲1及びその他の証拠にもない。
よって、甲3実施例2発明において、「生理食塩水の保水量が40〜50g/g」であり、かつ「固めかさ密度が0.750g/cm3以上であり、温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの固めかさ密度の変化量が0.020〜0.038g/cm3であり、吸湿後の当該固めかさ密度が吸湿前よりも小さ」くすることは当業者にとって容易であるとはいえない。
そして、本件特許発明1は、甲3実施例2発明からは予測し得ない格別顕著な効果を奏するものである。
よって、本件特許発明1は、その他の相違点を検討するまでもなく、甲3実施例2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
したがって、本件特許発明1は、甲3に記載された発明であるとはいえないし、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

イ 本件特許発明2ないし8について
本件特許発明2ないし8は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲2に記載された発明であるとはいえないし、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

ウ 異議申立人の主張について
異議申立人は、令和3年12月2日付けの意見書において、「生理食塩水の保水量は、吸水性樹脂粒子の基本的な物性であり、 その数値は通常の創作能力により適宜設定できる設計的事項である。」と主張している。
しかしながら、上記(3)ウで述べたのと同様に、異議申立人の上記主張は首肯できない。

(5)甲17に基づく新規性進歩性について
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲17実施例4発明とを対比すると、両者は以下の点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。
<一致点>
エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、当該重合体粒子の表面上に配置された無機粒子と、を含む吸水性樹脂粒子であって、
前記エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、
前記(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。
<相違点17−1−1>
本件特許発明1が、「固めかさ密度が0.750g/cm3以上であり、
温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの固めかさ密度の変化量が0.020〜0.038g/cm3であり、吸湿後の当該固めかさ密度が吸湿前よりも小さい」と特定されているのに対し、甲17実施例4発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点17−1−2>
本件特許発明1が、「前記無機粒子の含有量が、前記重合体粒子の全質量を基準として5.0質量%以下」と特定されているのに対し、甲17実施例4発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点17−1−3>
本件特許発明1が、「温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させた後の前記吸水性樹脂粒子の水分率が20質量%以下であり」と特定されているのに対し、甲17実施例4発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点17−1−4>
本件特許発明1が、「生理食塩水の保水量が40〜50g/g」と特定されているのに対し、甲17実施例4発明においては、そのようには特定されていない点。

そこで、上記相違点について検討する。
<相違点17−1−1>について
特許権者が提出した乙1によると、固めかさ密度の変化量が0,016g/cm3であるから、甲17実施例4発明は、本件特許発明1の「温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの固めかさ密度の変化量が0.020〜0.038g/cm3」である要件を満たさない。
よって、<相違点17−1−1>は実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲17実施例4発明であるとはいえない。
また、「固めかさ密度が0.750g/cm3以上であり、温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの固めかさ密度の変化量が0.020〜0.038g/cm3であり、吸湿後の当該固めかさ密度が吸湿前よりも小さ」くすることについて、甲17及びその他の証拠にもなく、当該事項とする動機付けは甲17及びその他の証拠にもない。
よって、甲17実施例4発明において、「生理食塩水の保水量が40〜50g/g」であり、かつ「固めかさ密度が0.750g/cm3以上であり、温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの固めかさ密度の変化量が0.020〜0.038g/cm3であり、吸湿後の当該固めかさ密度が吸湿前よりも小さ」くすることは当業者にとって容易であるとはいえない。
そして、本件特許発明1は、甲17実施例4発明からは予測し得ない格別顕著な効果を奏するものである。
よって、本件特許発明1は、その他の相違点を検討するまでもなく、甲17実施例4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
したがって、本件特許発明1は、甲17に記載された発明であるとはいえないし、甲17に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

イ 本件特許発明2ないし8について
本件特許発明2ないし8は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲17に記載された発明であるとはいえないし、甲17に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

ウ 異議申立人の主張について
異議申立人は、令和3年12月2日付けの意見書において、「甲第17号証の実施例4に係る吸水性樹脂の固めかさ密度の変化量は0.016g/cm3であるから(乙第1号証を参照)、訂正後の本件発明1における固めかさ密度の変化量の下限値とは、0.004 g/cm3だけ異なっていることになる。しかし、 (1) にて上述 した通り、固めかさ密度の測定精度を考慮すると、上記の差は技術的意義のある実質的な差であるとは言えない。・・・それゆえ、訂正後の本件発明は、甲第17号証に記載された発明であるか、甲第17号証の記載に基づき容易に想到できる。」と主張している。
しかしながら、甲17実施例4発明は、固めかさ密度の変化量が0,016g/cm3であるから、本件特許発明1の「温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの固めかさ密度の変化量が0.020〜0.038g/cm3」である要件を満たしておらず、本件特許発明1と甲17実施例4発明とでは、0.004 g/cm3異なる以上、両者は実質的に相違するものであって、当該測定値とは異なる証拠もないのであるから、単に測定誤差を理由に技術的有意差はないとする異議申立人の主張は首肯できない。

(6)取消理由1についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし8は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、取消理由1によっては取り消すことはできない。

2 取消理由2(甲4及び5のいずれかに基づく新規性進歩性)について
(1)甲4及び5に記載された事項等
ア 甲4に記載された事項及び甲4発明
(ア)甲4に記載された事項
甲4には、「吸水剤およびその製法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル酸およびその塩を含む単量体を重合して得られる架橋構造を有する吸水性樹脂が表面架橋された吸水性樹脂粒子を主成分とする吸水剤であって、
該吸水剤が、下記(a)〜(e)の要件を満たす吸水剤。
(a)850μm未満で150μm以上の粒子が全体の90重量%以上
(b)粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.25〜0.45
(c)0.9重量%食塩水の加圧下吸収倍率(AAPs)が20g/g以上
(d)0.9重量%食塩水の吸収倍率(CRCs)が29g/g以上、39g/g未満の範囲
(e)以下の式1で表される化学架橋指数が160以上
化学架橋指数=(CRCs)/(CRCdw)×1000 (式1)
CRCs(g/g):0.9重量%食塩水の吸収倍率
CRCdw(g/g):純水の吸収倍率」
「【0008】
粒子状の吸水性樹脂の場合、透過性は添加された液体を粒子内ないし粒子間で輸送して、その膨潤状態の中に三次元的に分配する能力として理解されている。膨潤した吸水性樹脂のゲルでは、このプロセスはゲル粒子間の隙間を通っての毛管現象による輸送を介して生じる。また、膨潤した吸水性樹脂を通過する際の、実際の液体輸送は拡散の法則に従ったものであり、衛生用品が使用されている条件においては、液体の分配に何ら役に立たないほど著しく遅いプロセスである。一方、ゲルの安定性が欠如するために毛管輸送のできない吸水性樹脂では、これらの材料を繊維のマトリックスに植え付けることによって粒子間の相互分離を確保し、ゲルのブロッキング現象を回避してきた。新世代のおむつの構造では、吸水性樹脂層は液体輸送をサポートするための繊維材料を少量しか使用していないか、または全く使用していない。従って、そこに使用される吸水性樹脂は、膨潤状態において充分に高い安定性をもたなければならず、そうであると膨潤ゲルは毛管空隙を充分な量で有して液体輸送が可能となる。
【0009】
一般的に、膨潤状態での高いゲル強度を有する吸水性樹脂を得るためには、ポリマーの架橋レベルを上げることで可能となる。しかしながら、これは、不可避的に膨潤容量および保持能力の損失を招くという結果につながる。また、特許文献6には、低中和率(5〜30モル%)での酸型重合の後、後中和してなる表面架橋された吸水性樹脂においてゲルの膨潤圧力を改善する方法が示されている。しかしながら、この方法では、酸性の強いポリマーを取り扱う上での安全性や工程が複雑になるなど、工業的な生産は困難である。また、吸水性樹脂だけでできた層をおむつ構造に取り入れることが可能になるレベルまでの液体の透過性は不十分である。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、本発明の目的は、上述した問題点を解決し、優れたゲル特性(すなわち特定の粒度分布、特定の0.9重量%食塩水の吸収倍率(CRCs)、特定の0.9重量%食塩水の加圧下吸収倍率(AAPs)、特定の化学架橋指数または加圧下化学架橋指数)を有し、紙おむつ等の衛生材料の吸水体に使用された場合、優れた性能を示す吸水剤およびその製法を提供することにある。
【0015】
また、本発明の他の目的は、上述した問題を解決し、吸水性樹脂含有量の多い薄型の衛生材料・吸収性物品に用いられるのに適した、高い吸収倍率を有し、かつ本質的なゲル安定性が高く、より高い液透過特性を有し、かつ安全性に優れた吸水剤及びその製法を提供することにある。」
「【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、優れたゲル特性を有し、紙おむつ等の衛生材料の吸水体に使用された場合、優れた性能を示す吸水剤を提供することができるという効果を奏する。また、本発明によると、優れたゲル特性を有し、紙おむつ等の衛生材料の吸水体に使用された場合、優れた性能を示す吸水剤の製法を提供することができるという効果を奏する。
【0031】
本発明の製法により得られた吸水剤は、おむつなどの吸水体に使用された場合、膨潤ゲルの安定性が高く、かつ液拡散性に優れるため、液の取り込みが早く、吸水体表層の液の残存量が少ない非常に優れた吸水体が得られる。また、本発明の製法により得られた吸水剤は、所望の液拡散性を得るために使用する無機粒子などの液透過性向上剤の使用量を低減でき、かかる吸水剤の製造およびおむつの製造ラインでの粉立ちやフィルターの詰まりなどのダスト問題を解消し、さらには消費者にとってより安全な吸収剤を提供することができる。」
「【0035】
本発明にかかる吸水剤の製法は、ある特定の吸水性樹脂を合成し、この吸水性樹脂を特定の粒度分布とし、さらに特定の表面処理剤で表面処理する製法である。また、本発明にかかる吸水剤は、必要に応じて、通液性向上剤を添加する製法である。
(1)吸水性樹脂粒子の製法
(1−1)単量体(A)
本発明で用いる単量体(A)は、アクリル酸および/またはその塩を主成分として含有してなっている。上記単量体(A)中におけるアクリル酸および/またはその塩の含有率は、吸水剤の吸収特性およびゲル特性をさらに向上させるために、70〜100モル%であるのが好ましく、80〜100モル%であるのがより好ましく、90〜100モル%であるのが最も好ましい。」
「【0082】
・・・
(2)液透過性向上剤(F)
本発明の吸水剤は、吸水性樹脂粒子と液透過性向上剤を含む吸水性樹脂組成物であっても良い。以下に、本発明で使用される液透過性向上剤(F)について詳述する。
【0083】
本発明でいう液透過性向上剤(F)とは、吸水性樹脂粒子(吸水性樹脂粒子は特に限定されない)がそれを含むことでSFCが向上し得るような物質を示す。具体的には、液透過性向上剤とは、表面が架橋処理されてなる吸水性樹脂粒子と液透過性向上剤が混合されることによって得られる吸水剤のSFCが、添加されない吸水性樹脂粒子のSFCに比べて1(10−7・cm3・s・g−1)以上、好ましくは5(10−7・cm3・s・g−1)以上向上する物質を示す。例えば、本発明の実施例7で得られた吸水性樹脂粒子(E7)に添加し、添加前後のSFCを比較することで確認できる。液透過性向上剤(F)は吸水性樹脂粒子中の内部に含まれていても、表面に存在していても、近傍に存在していても良いが、好ましくは、表面またはその近傍に存在する。また、液透過性向上剤(F)は吸水性樹脂粒子中の官能基と反応していても良い。液透過性向上剤(F)の添加は表面処理の前、中、後のいつに行っても良い。液透過性向上剤(F)はスペーサー的な役割またはイオン的な表面架橋効果などにより、膨潤した吸水性樹脂粒子間の隙間を広げ、液透過性を向上させる効果がある。
【0084】
本発明で使用される液透過性向上剤(F)は、例えば、親水性の無機化合物が挙げられ、水不溶性親水性の無機微粒子や水溶性の多価金属塩などが好ましく用いられる。本発明でいう親水性とは例えば、EP0629411に記載されている親水性度が70%以上のものが挙げられる。本発明において、カチオン性高分子化合物(US5797893のカラム11に例示されているものなど)や疎水性の無機微粒子などは液透過性を向上させ、液透過性向上剤(F)として使用可能であるが、吸水剤の接触角を増加させ、CSFの低下を招く場合があるため、使用されることは好ましくない場合がある。吸水剤の表面張力を低下させるような界面活性剤は、CSFの低下を招くため、本発明に使用されることは好ましくない。本発明で使用される液透過性向上剤(F)が無機微粒子の場合、その粒子径は取り扱い性や添加効果の点から、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましく、150μm以下であることが最も好ましい。前記粒子径は、1次粒子の粒子径である場合と2次粒子(造粒物、凝集体)の粒子径である場合の両方の場合を含む。非凝集体(1次粒子)のシリカやアルミナなどのように粒子の硬度が高く、衝撃力で容易に壊れない化合物の粒子を使用する場合は、凝集体や造粒物の1次粒子の粒子径は好ましくは5μm以下、より好ましくは1μm以下、最も好ましくは0.1μm以下である。」
「【0095】
本発明の吸水剤は、重量平均粒子径が好ましくは100〜600μmの粒子状であり、より好ましく重量平均粒子径が200〜500μmの粒子状であり、最も好ましくは250〜450μmである。重量平均粒子径が100μm未満の場合は、取り扱い性が悪く、またダストが多く、通液・拡散性が悪くなってしまう恐れがある。重量平均粒子径が600μmよりも大きい場合には、ダメージを受けやすくなり、物性の低下を招く恐れがある。」
「【0159】
・・・
(6)吸水剤の用途
本発明の吸水剤は好ましくは、紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、医療用パッド等の衛生材料に使用される。吸水剤は繊維材料と複合化されシート化されるなどして吸収体とされる。吸収体中で本発明の吸水剤は10重量%以上、さらには20重量%以上の高濃度で使用される。かかる吸収体は、液体透過性のトップシート、および、液体に対して不透過性のバックシート、の間に配置された構成で使用されることが好ましい。吸収体は二層以上であっても良いし、パルプ層などとともに用いても良い。」
「【実施例】
【0163】
吸水性樹脂または吸水性樹脂粒子または吸水剤の諸性能は、以下の方法で測定した。特に記載が無い限り下記の測定は室温(23±2℃)、湿度50RH%の条件下で行われたものとする。また、以下の測定法には具体例として吸水剤を挙げているが、吸水性樹脂または吸水性樹脂粒子においても同様の測定法が適用できる。
【0164】
なお、衛生材料などの最終製品として使用された吸水剤の場合は、吸水剤は吸湿しているので、適宜、吸水剤を最終製品から分離して減圧低温乾燥後(例えば、1mmHg以下、60℃で12時間)に測定すればよい。また、本発明の実施例および比較例において使用された吸水剤の含水率はすべて6重量%以下であった。
(1)0.9重量%食塩水の吸収倍率(CRCs)
0.9重量%食塩水の吸収倍率(CRCs)は0.9重量%食塩水に対する無加圧下で30分の吸収倍率を示す。本発明において、0.9重量%食塩水の吸収倍率(CRCs)と無加圧下吸収倍率とは同義である。
【0165】
吸水性樹脂または、吸水剤0.20gを不織布製(南国パルプ工業(株)製、商品名:ヒートロンペーパー、型式:GSP−22)の袋(85mm×60mm)に均一に入れてシールした後、室温で大過剰(通常500ml程度)の0.9重量%食塩水中に浸漬した。(吸水性樹脂のCRCsを測定する場合には、300〜500μmに分級したものを使用する。該当する粒度範囲が存在しないサンプルの場合には、分級せずにそのままの粒度で測定に用いる)。30分後に袋を引き上げ、遠心分離機(株式会社コクサン社製、遠心機:型式H−122)を用いてedana ABSORBENCY II 441.1−99に記載の遠心力(250G)で3分間水切りを行った後、袋の重量W1(g)を測定した。また、同様の操作を、吸水性樹脂あるいは吸水剤を用いずに行い、その時の重量W0(g)を測定した。そして、これらW1、W0から、次式に従って0.9重量%食塩水の吸収倍率(CRCs)(g/g)を算出した。
【0166】
0.9重量%食塩水の吸収倍率(g/g)
=(W1(g)−W0(g))/(吸水剤の重量(g))−1」
・・・
【0173】
・・・
(5)重量平均粒子径(D50)および粒度分布の対数標準偏差(σζ)
吸水剤を目開き850μm、710μm、600μm、500μm、425μm、300μm、212μm、150μm、45μmなどのJIS標準ふるいで篩い分けし、残留百分率Rを対数確率紙にプロットした。これにより、R=50重量%に相当する粒径を重量平均粒子径(D50)として読み取った。また、対数標準偏差(σζ)は下記の式で表され、σζの値が小さいほど粒度分布が狭いことを意味する。
【0174】
σζ = 0.5 × ln(X2/X1)
(X1はR=84.1%、X2はR=15.9%の時のそれぞれの粒径)
重量平均粒子径(D50)および対数標準偏差(σζ)を測定する際の分級方法は、吸水剤10.0gを、室温(20〜25℃)、湿度50RH%の条件下で、目開き850μm、710μm、600μm、500μm、425μm、300μm、212μm、150μm、45μmのJIS標準ふるい(THE IIDA TESTING SIEVE:径8cm)に仕込み、振動分級器(IIDA SIEVE SHAKER、TYPE:ES−65型、SER.No.0501)により、5分間、分級を行った。ここでいう、対数標準偏差は粒子径の対数標準偏差または粒度分布の対数標準偏差と同じ意味である。」
「【0248】
(実施例15)
断熱材である発泡スチロールで覆われた内径80mm、容量1リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸192.2g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)2.79g、およびジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウム0.01gを混合した溶液(A)と、48.5重量%NaOH水溶液156.8gと40℃に調温したイオン交換水239.3gを混合した溶液(B)を、マグネチックスターラーで攪拌しながら(A)に(B)を開放系で一気に加え混合した。中和熱と溶解熱で液温が約100℃まで上昇した単量体水溶液(単量体濃度39重量%、中和率71.3モル%が得られた。さらに、この単量体水溶液に3重量%の過硫酸ナトリウム水溶液8.89gを加え、数秒攪拌した後すぐに、ホットプレート(NEO HOTPLATE H1−1000(株)井内盛栄堂製)により表面温度を100℃まで加熱された、内面にテフロン(登録商標)を貼り付けた底面250×250mmのステンレス製バット型容器中に開放系で注いだ。
【0249】
単量体水溶液がバットに注がれて間もなく重合は開始した。水蒸気を発生し上下左右に膨張発泡しながら重合は進行し、その後、底面よりもやや大きなサイズにまで収縮した。この膨張収縮は約1分以内に終了し、3分間重合容器中に保持した後、含水重合体を取り出した。
【0250】
この細分化された含水重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で40min間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmのJIS標準篩で分級することにより、重量平均粒子径325μm、対数標準偏差(σζ)0.35の不定形破砕状の吸水性樹脂を得た。得られた吸水性樹脂のCRCsは31.4g/g、ゲル層膨潤圧は40.1kdyne/cm2であった。その他の諸物性を表12、13に示した。
【0251】
得られた吸水性樹脂粒子100重量部にエチレンカーボネート0.4重量部、プロピレングリコール1重量部、純水3重量部の混合液からなる表面架橋剤を混合した後、混合物を190℃で35分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き600μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、表面が架橋された吸水性樹脂を得た。得られた吸水剤(15)の諸物性を表12に示した。
・・・
【0270】
(実施例20)
実施例15に記載の方法においてポリエチレングリコールジアクリレートを0.05モル%に変更した以外は同様の操作を行い、重量平均粒子径323μm、対数標準偏差(σζ)0.37の不定形破砕状の吸水性樹脂を得た。得られた吸水性樹脂のCRCsは43.5g/g、ゲル層膨潤圧は35.1kdyne/cm2であった。その他の諸物性を表12、13に示した。
【0271】
得られた吸水性樹脂100重量部に1,4−ブタンジオール0.5重量部、プロピレングリコール0.5重量部、純水4重量部の混合液からなる表面架橋剤を混合した後、混合物を200℃で35分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き600μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、表面が架橋された吸水性樹脂を得た。得られた吸水剤(20)の諸物性を表12に示した。
・・・
【0282】
(実施例32)
実施例20で得られた吸水剤(20)100重量部に、ReolosilQS−20(親水性アモルファスシリカ、TOKUYAMA社製)0.3重量部を均一に混合し、吸水剤を得た。得られた吸水剤の諸物性を表14、15に示した。」
「【0297】
【表15】



(イ)甲4発明
甲4には、上記実施例32で製造された、CRCs(g/g):0.9重量%食塩水の吸収倍率が34.8g/g、重量平均粒子径(D50)が330μmである吸水剤(以下、「甲4実施例32発明」という。)が記載されていると認める。

イ 甲5に記載された事項及び甲5発明
(ア)甲5に記載された事項
甲5には、「粒子状吸水剤」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
「[0011] 本発明者らは、鋭意検討をした結果、重合後の含水ゲルの粉砕(ゲル粉砕)における粉砕エネルギーを大きくする事によって、高吸水倍率と高吸水速度を両立した粒子状吸水剤を製造できることを見出し、可能になることを見出した。」
「[0025] 本発明にかかる粒子状吸水剤は、水性液を吸収するための衛生材料として好適に使用されるものである。重合体としての吸水性樹脂は、粒子状吸水剤中に主成分として含有される。つまり、粒子状吸水剤中に好ましくは60〜100質量%、70〜100質量%、80〜100質量%、90〜100質量%含まれ、その他、非重合体として水及び/又は無機微粒子、多価金属カチオン等の添加剤を任意に含む。好適な含水率は0.2〜30質量%である。すなわち、これらの成分が一体化された吸水性樹脂組成物も粒子状吸水剤の範疇である。」
「[0027] また粒子状吸水剤の主成分となる吸水性樹脂としてはポリアクリル酸(塩)系樹脂、ポリスルホン酸(塩)系樹脂、無水マレイン酸(塩)系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエチレンオキシド系樹脂、ポリアスパラギン酸(塩)系樹脂、ポリグルタミン酸(塩)系樹脂、ポリアルギン酸(塩)系樹脂、デンプン系樹脂、セルロース系樹脂が挙げられ、好ましくはポリアクリル酸(塩)系樹脂が使用される。
[0028] (1−3)「ポリアクリル酸(塩)」
本発明における「ポリアクリル酸(塩)」とは、ポリアクリル酸及び/又はその塩を指し、主成分として、アクリル酸及び/又はその塩(以下、「アクリル酸(塩)」と称する)を繰り返し単位として含み、任意成分としてグラフト成分を含む重合体を指す。ポリアクリル酸はポリアクリルアミドやポリアクリニトリルなどの加水分解で得てもよいが、好ましくはアクリル酸(塩)の重合で得られる。
[0029] なお、上記「主成分」とは、アクリル酸(塩)の使用量(含有量)が、重合に用いられる単量体(内部架橋剤を除く)全体に対して、通常50〜100モル%、好ましくは70〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%、更に好ましくは実質100モル%であることをいう。」
「[0049] (1−10)「吸湿流動性改善剤」
本発明における「吸湿流動性改善剤」とは、粒子状吸水剤または吸水性樹脂に添加することにより、吸湿流動性改善剤の添加前よりも吸湿流動性を、向上させる化合物または組成物である(B.R.は吸湿流動性を評価する方法であり、B.R.の値が小さい程、吸湿流動性に優れることを意味する)。例えば、これに限定されることを望まないが、二酸化ケイ素、ハイドロタルサイト、リン酸塩およびアルミニウム塩が挙げられる。本発明において、吸湿流動性改善剤として、ハイドロタルサイト構造を有する2価及び3価の2種類の金属カチオンと水酸基とを含有する多元金属化合物、およびリン酸類のアニオンと2価あるいは3価の金属カチオンとからなる水不溶性金属リン酸塩が使用され得る。」
「[0122] 本発明で得られる吸水性樹脂粉末は、重量平均粒子径(D50)として、好ましくは200〜600μm、より好ましくは200〜550μm、更に好ましくは250〜500μm、特に好ましくは350〜450μmである。また、粒子径150μm未満の粒子の割合は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、更に好ましくは1重量%以下であり、粒子径850μm以上の粒子の割合は、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下、更に好ましくは1重量%以下である。なお、これらの粒子の割合の下限値としては、何れの場合も少ないほど好ましく、0重量%が望まれるが、0.1重量%程度でもよい。更に、粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、好ましくは0.20〜0.50、より好ましくは0.25〜0.40、更に好ましくは0.27〜0.35である。なお、これらの粒度は、米国特許第7638570号やEDANA ERT420.2−02に開示されている測定方法に準じて、標準篩を用いて測定される。
[0123] 上述した粒度は、表面架橋後の吸水性樹脂(以下、便宜上「吸水性樹脂粒子」と称する場合がある)のみならず、最終製品としての粒子状吸水剤についても適用される。そのため、吸水性樹脂粒子において、上記範囲の粒度を維持するように、表面架橋処理(表面架橋工程)されることが好ましく、表面架橋工程以降に整粒工程を設けて粒度調整されることがより好ましい。」
「[0257] 以下の実施例・比較例に従って本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定解釈されるものではなく、各実施例に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施例も、本発明の範囲に含まれるものとする。
[0258] なお、実施例および比較例で使用する電気機器(粒子状吸水剤の物性測定も含む)は、特に注釈のない限り、200V又は100Vの電源を使用した。また、本発明の粒子状吸水剤の諸物性は、特に注釈のない限り、室温(20〜25℃)、相対湿度50%RHの条件下で測定した。
[0259] [粒子状吸水剤または吸水性樹脂の物性測定]
[0260] (a)遠心分離機保持容量(CRC)
本発明の粒子状吸水剤または吸水性樹脂の遠心分離機保持容量(無加圧下吸水倍率、CRC)は、EDANA法(ERT441.2−02)に準拠して測定した。
・・・
[0270] (h)粒度分布(PSD、σζ)
本発明に係る粒子状吸水剤の粒度分布(PSD)および粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、米国特許出願公開第2006/204755号に開示された測定方法に準じて測定した。
[0271] 即ち、目開き850μm、710μm、600μm、500μm、425μm、300μm、212μm、150μm、106μm、75μmを有するJIS標準篩(The IIDA TESTING SIEVE:内径80mm;JIS Z8801−1(2000))、又はJIS標準篩に相当する篩を用いて、粒子状吸水剤10.00gを分級した。分級後、各篩の重量を測定し、粒子径150μm未満の重量百分率(重量%)を算出した。なお、「粒子径150μm未満の重量百分率」とは、目開き150μmのJIS標準篩を通過する粒子の、吸水剤全体に対する重量割合(%)である。
[0272] また、重量平均粒子径(D50)は、上記各粒度の残留百分率Rを対数確率紙にプロットし、このグラフからR=50重量%に相当する粒子径を重量平均粒子径(D50)として読み取った。なお、重量平均粒子径(D50)は、粒子状吸水剤全体の50重量%に対応する粒子径のことをいう。また粒度分布の対数標準偏差(σζ)は下記式で表され、σζの値が小さいほど粒度分布が狭いことを意味する。
σζ=0.5×ln(X2/X1)(X1はR=84.1%、X2は15.9%の時のそれぞれの粒径)」
「[0331] [製造例2]
アクリル酸300重量部、48重量%水酸化ナトリウム水溶液100重量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)0.61重量部、1.0重量%エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム水溶液6.5重量部、脱イオン水346.1重量部からなる単量体水溶液(2)を作製した。
[0332] 次に、40℃に調温した上記単量体水溶液(2)を定量ポンプで連続供給した後、更に48重量%水酸化ナトリウム水溶液150.6重量部を連続的にラインミキシングした。尚、この時、中和熱によって単量体水溶液(2)の液温は81℃まで上昇した。
[0333] 更に、4重量%過硫酸ナトリウム水溶液14.6重量部を連続的にラインミキシングした後、両端に堰を備えた平面状の重合ベルトを有する連続重合機に、厚みが10mmとなるように連続的に供給した。その後、重合(重合時間3分間)が連続的に行われ、帯状の含水ゲル(2)を得た。得られた帯状の含水ゲル(2)を重合ベルトの進行方向に対して幅方向に、切断長が300mmとなるように等間隔に連続して切断することで、含水ゲル(2)を得た。含水ゲル(2)は、CRC36.0[g/g]、樹脂固形分48.1重量%であった。」
「[0351] [実施例1]
(ゲル粉砕)
上記製造例1で得られた含水ゲル(1)を、スクリュー押出機に供給しゲル粉砕した。該スクリュー押出機としては、先端部に直径100mm、孔径9.5mm、孔数40個、開孔率36.1%、厚さ10mmの多孔板が備えられた、スクリュー軸の外径が86mmのミートチョッパーを使用した。該ミートチョッパーのスクリュー軸回転数を130rpmとした状態で、含水ゲル(1)を4640[g/min]、同時に、水蒸気を83[g/min]でそれぞれ供給する。この時のゲル粉砕エネルギー(GGE)は26.9[J/g]、GGE(2)は13.6[J/g]であった。尚、ゲル粉砕前の含水ゲル(1)の温度は80℃であり、ゲル粉砕後の粉砕ゲル、即ち粒子状含水ゲル(1)の温度は85℃に上昇していた。
[0352] 上記ゲル粉砕工程で得られた粒子状含水ゲル(1)は、樹脂固形分49.1重量%、重量平均粒子径(D50)994μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)1.01であった。当該ゲル粉砕工程の条件を表1に、粒子状含水ゲル(
1)の物性を表2に示す。
[0353](乾燥)
次に、上記粒子状含水ゲル(1)をゲル粉砕終了後1分以内に通気板上に散布(この時の粒子状含水ゲル(1)の温度は80℃)し、185℃で30分間乾燥を行い、乾燥重合体(1)を得る。熱風の平均風速は通気ベルトの進行方向に対して垂直方向に1.0[m/s]である。尚、熱風の風速は、日本カノマックス株式会社製定温度熱式風速計アネモマスター 6162で測定する。
[0354](粉砕・分級)
次いで、上記乾燥工程で得られた乾燥重合体(1)全量を3段ロールミルに供給して粉砕(粉砕工程)し、その後更に、目開き710μm及び175μmのJIS標準篩で分級することで、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(1)を得る。吸水性樹脂粒子(1)は、重量平均粒子径(D50)348μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.32であり、CRC42.1[g/g]、150μm通過粒子(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)0.5重量%である。
[0355](表面処理・添加剤添加)
次に、上記吸水性樹脂粒子(1)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、1,4−ブタンジオール0.4重量部、プロピレングリコール0.6重量部及び脱イオン水3.0重量部からなる(共有結合性)表面架橋剤溶液を均一に混合し、190℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂粉末(1)のCRCが35g/gとなるように加熱処理する。その後冷却を行い、上記ペイントシェーカーテストを実施し、製造プロセス相当のダメージを付与した後に、吸水性樹脂粒子100重量部に対して、水1重量部、ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム0.01重量部からなる水溶液を均一に混合する。60℃で1時間乾燥した後、目開き710μmのJIS標準篩を通過させ、二酸化ケイ素(商品名:アエロジル200、日本アエロジル製)0.4重量部を均一に添加する。こうして、粒子状吸水剤(1)を得た。粒子状吸水剤(1)の諸物性を表3〜6に示す。なお、ペイントシェーカーテスト後の150μm通過粒子増加量は粒子状吸水剤に対して、さらにペイントシェーカーテストを実施した際(おむつなどの吸収体製造時のプロセスダメージを想定したもの)の150μm通過粒子の増加量を示す。
[0356] [実施例2]
実施例1と以下に示す操作以外は同様の操作を行う。含水ゲル(1)のかわりに上記製造例2で得られた含水ゲル(2)を用いる。スクリュー押出機の先端部の多孔板の孔径を8mmに変更する。この時のゲル粉砕エネルギー(GGE)は31.9[J/g]、GGE(2)は17.5[J/g]であった。尚、ゲル粉砕前の含水ゲル(2)の温度は80℃であり、ゲル粉砕後の粉砕ゲル、即ち粒子状含水ゲル(2)の温度は84℃に上昇していた。
[0357] 上記ゲル粉砕工程で得られた粒子状含水ゲル(2)は、樹脂固形分47.5重量%、重量平均粒子径(D50)860μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.95であった。当該ゲル粉砕工程の条件を表1に、粒子状含水ゲル(2)の物性を表2に示す。
[0358] 次いで、実施例1と同様の乾燥・粉砕・分級操作を行い、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(2)を得る。吸水性樹脂粒子(2)は、重量平均粒子径(D50)355μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.32であり、CRC48.2[g/g]、150μm通過粒子(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)0.4重量%である。
[0359] 次に、上記吸水性樹脂粒子(2)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、エチレンカーボネート0.4重量部、プロピレングリコール0.6重量部及び脱イオン水3.0重量部からなる(共有結合性)表面架橋剤溶液を均一に混合し、190℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂粉末(2)のCRCが38g/gとなるように加熱処理する。その後、実施例1と同様の操作を行う。こうして、粒子状吸水剤(2)を得た。粒子状吸水剤(2)の諸物性を表3〜6に示す。」
「[0376] [実施例11−1]
実施例2で得られた吸水性樹脂粒子(2)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、エチレンカーボネート0.4重量部、プロピレングリコール0.6重量部及び脱イオン水3.0重量部からなる(共有結合性)表面架橋剤溶液を均一に混合し、175℃で40分間程度、得られる吸水性樹脂粉末(11−1)のCRCが38〜40g/gとなるように加熱処理した。その後冷却を行い、上記ペイントシェーカーテストを実施し、製造プロセス相当のダメージを付与した後に、吸水性樹脂粒子100重量部に対して、水1重量部、ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム0.01重量部からなる水溶液を均一に混合した。60℃で1時間乾燥した後、目開き710μmのJIS標準篩を通過させ、ハイドロタルサイト(製品名:DHT−6、協和化学工業株式会社製、Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O[一般式(1)のx=0.25、m=0.50]、体積平均粒子径0.5μm)0.3重量部を均一に混合した。こうして、粒子状吸水剤(11−1)を得た。粒子状吸水剤(11−1)の諸物性を表3〜5に示す。なお、ペイントシェーカーテスト後の150μm通過粒子増加量は粒子状吸水剤に対して、さらにペイントシェーカーテストを実施した際(おむつなどの吸収体製造時のプロセスダメージを想定したもの)の150μm通過粒子の増加量を示す。また、吸水剤中のXRD測定によるハイドロタルサイトの含有量は0.3重量%であった。また、上記吸水剤の表面上に存在するハイドロタルサイトの粒度測定による平均粒子径は0.5μmであった。」
「[0380] [実施例11−5]
実施例11−1の表面処理条件を、以下のとおり変更した。
吸水性樹脂粒子(2)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.030重量部、プロピレングリコール1.0重量部及び脱イオン水3.0重量部からなる(共有結合性)表面架橋剤溶液を均一に混合し、100℃で45分間程度、得られる吸水性樹脂粉末(11−5)のCRCが35〜36g/gとなるように加熱処理した。その後冷却を行い、上記ペイントシェーカーテストを実施し、製造プロセス相当のダメージを付与した後に、吸水性樹脂粒子100重量部に対して、水1重量部、ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム0.01重量部からなる水溶液を均一に混合した。60℃で1時間乾燥した後、目開き710μmのJIS標準篩を通過させ、ハイドロタルサイト(製品名:DHT−6、協和化学工業株式会社製、Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O[一般式(1)のx=0.25、m=0.50]、体積平均粒子径0.5μm)0.3重量部を均一に混合した。こうして、粒子状吸水剤(11−5)を得た。
粒子状吸水剤(11−5)の諸物性を表3〜5に示す。なお、ペイントシェーカーテスト後の150μm通過粒子増加量は粒子状吸水剤に対して、さらにペイントシェーカーテストを実施した際(おむつなどの吸収体製造時のプロセスダメージを想定したもの)の150μm通過粒子の増加量を示す。」
「[0438]
[表3-1]


「[0440]
[表5-1]


「[0453] 本発明によれば、高吸水倍率と高吸水速度を両立した優れた粒子状吸水剤を提供することができ、本発明は、紙おむつ、生理用ナプキンなどの衛生材料、さらには、ペット用シート、止水材など種々の分野において利用されることが可能である。」
「請求の範囲
[請求項1] 遠心分離機保持容量(CRC)が30〜50g/gである、粒子状吸水剤であって、
重量平均粒子径(D50)が200〜600μmであり、
以下の式であらわされるDRC指数が43以下である、粒子状吸水剤:
DRC指数(Index of DRC)=(49−DRC5min[g/g])/(D50[μm]/1000)。」

(イ)甲5発明
甲5には、上記実施例2で製造された、遠心分離機保持容量(CRC)が38.6g/g、重量平均粒子径(D50)が359μmである粒子状吸水剤(2)、上記実施例11−5で製造された、遠心分離機保持容量(CRC)が35.6g/g、重量平均粒子径(D50)が365μmである粒子状吸水剤(11−5)(以下、それぞれ「甲5実施例2発明」、「甲5実施例11−5発明」という。)が記載されていると認める。

(2)甲4に基づく新規性進歩性について
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲4実施例32発明とを対比すると、両者は以下の点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。
<一致点>
エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、当該重合体粒子の表面上に配置された無機粒子と、を含む吸水性樹脂粒子であって、
前記エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、
前記(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。
<相違点4−1−1>
本件特許発明1が、「固めかさ密度が0.750g/cm3以上であり、
温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの固めかさ密度の変化量が0.020〜0.038g/cm3であり、吸湿後の当該固めかさ密度が吸湿前よりも小さい」と特定されているのに対し、甲4実施例32発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点4−1−2>
本件特許発明1が、「前記無機粒子の含有量が、前記重合体粒子の全質量を基準として5.0質量%以下」と特定されているのに対し、甲4実施例32発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点4−1−3>
本件特許発明1が、「温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させた後の前記吸水性樹脂粒子の水分率が20質量%以下であり」と特定されているのに対し、甲4実施例32発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点4−1−4>
本件特許発明1が、「生理食塩水の保水量が40〜50g/g」と特定されているのに対し、甲4実施例32発明においては、そのようには特定されていない点。

そこで、上記相違点について検討する。
事案に鑑み、<相違点4−1−1>及び<相違点4−1−4>を併せて検討する。
甲12によると、甲4実施例32発明における「生理食塩水の保水量」は「38.6g/g」となっており、また、甲4実施例32発明における「CRCs(g/g):0.9重量%食塩水の吸収倍率」が本件特許発明4の「生理食塩水の保水量」に相当する場合、甲4実施例32発明における「CRCs(g/g):0.9重量%食塩水の吸収倍率」は「34.8g/g」であるから、いずれにしても甲4実施例32発明は、本件特許発明1の「生理食塩水の保水量が40〜50g/g」である要件を満たさない。
よって、<相違点4−1−4>は実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲4実施例32発明であるとはいえない。
また、吸水性樹脂は、ある物性を変化させるように製造すると他の物性にも影響する、という技術常識を踏まえると、甲4実施例32発明において、他の吸水剤の物性値に影響を与えずに、「生理食塩水の保水量」を「40〜50g/g」とすることは当業者にとって容易であるとはいえない。
仮に「生理食塩水の保水量」を「40〜50g/g」に変化させることができたとしても、変化後の他の物性がどのようになるかは不明となり、もはや甲12を参照することができないし、さらに、特に「固めかさ密度が0.750g/cm3以上であり、温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの固めかさ密度の変化量が0.020〜0.038g/cm3であり、吸湿後の当該固めかさ密度が吸湿前よりも小さ」くすることについて、甲4及びその他の証拠にもなく、また、当該事項とする動機付けは甲4及びその他の証拠にもない。
よって、甲4実施例32発明において、「生理食塩水の保水量が40〜50g/g」であり、かつ「固めかさ密度が0.750g/cm3以上であり、温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの固めかさ密度の変化量が0.020〜0.038g/cm3であり、吸湿後の当該固めかさ密度が吸湿前よりも小さ」くすることは当業者にとって容易であるとはいえない。
そして、本件特許発明1は、甲4実施例32発明からは予測し得ない格別顕著な効果を奏するものである。
よって、本件特許発明1は、その他の相違点を検討するまでもなく、甲4実施例32発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
したがって、本件特許発明1は、甲4に記載された発明であるとはいえないし、甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

イ 本件特許発明2ないし8について
本件特許発明2ないし8は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲4に記載された発明であるとはいえないし、甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(3)甲5に基づく新規性進歩性について
ア 本件特許発明1について
(ア)甲5実施例2発明との対比
本件特許発明1と甲5実施例2発明とを対比すると、両者は以下の点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。
<一致点>
エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、当該重合体粒子の表面上に配置された無機粒子と、を含む吸水性樹脂粒子であって、
前記エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、
前記(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。
<相違点5−1−1>
本件特許発明1が、「固めかさ密度が0.750g/cm3以上であり、
温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの固めかさ密度の変化量が0.020〜0.038g/cm3であり、吸湿後の当該固めかさ密度が吸湿前よりも小さい」と特定されているのに対し、甲5実施例2発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点5−1−2>
本件特許発明1が、「前記無機粒子の含有量が、前記重合体粒子の全質量を基準として5.0質量%以下」と特定されているのに対し、甲5実施例2発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点5−1−3>
本件特許発明1が、「温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させた後の前記吸水性樹脂粒子の水分率が20質量%以下であり」と特定されているのに対し、甲5実施例2発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点5−1−4>
本件特許発明1が、「生理食塩水の保水量が40〜50g/g」と特定されているのに対し、甲5実施例2発明においては、そのようには特定されていない点。

そこで、上記相違点について検討する。
<相違点5−1−1>について検討する。
甲13によると、甲5実施例2発明の固めかさ密度は0.725g/cm3であるから、甲5実施例2発明は、本件特許発明1の「固めかさ密度が0.750g/cm3以上」である要件を満たさない。
よって、<相違点5−1−1>は実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲5実施例2発明であるとはいえない。
また、「固めかさ密度が0.750g/cm3以上であり、温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの固めかさ密度の変化量が0.020〜0.038g/cm3であり、吸湿後の当該固めかさ密度が吸湿前よりも小さ」くすることについて、甲5及びその他の証拠にもなく、当該事項とする動機付けは甲5及びその他の証拠にもない。
よって、甲5実施例2発明において、「固めかさ密度が0.750g/cm3以上であり、温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの固めかさ密度の変化量が0.020〜0.038g/cm3であり、吸湿後の当該固めかさ密度が吸湿前よりも小さ」くすることは当業者にとって容易であるとはいえない。
そして、本件特許発明1は、甲5実施例2発明からは予測し得ない格別顕著な効果を奏するものである。
よって、本件特許発明1は、その他の相違点を検討するまでもなく、甲5実施例2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(イ)甲5実施例11−5発明との対比
本件特許発明1と甲5実施例11−5発明とを対比すると、両者は以下の点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。
<一致点>
エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、当該重合体粒子の表面上に配置された無機粒子と、を含む吸水性樹脂粒子であって、
前記エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、
前記(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。
<相違点5−2−1>
本件特許発明1が、「固めかさ密度が0.750g/cm3以上であり、
温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの固めかさ密度の変化量が0.020〜0.038g/cm3であり、吸湿後の当該固めかさ密度が吸湿前よりも小さい」と特定されているのに対し、甲5実施例11−5発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点5−2−2>
本件特許発明1が、「前記無機粒子の含有量が、前記重合体粒子の全質量を基準として5.0質量%以下」と特定されているのに対し、甲5実施例11−5発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点5−2−3>
本件特許発明1が、「温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させた後の前記吸水性樹脂粒子の水分率が20質量%以下であり」と特定されているのに対し、甲5実施例11−5発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点5−2−4>
本件特許発明1が、「生理食塩水の保水量が40〜50g/g」と特定されているのに対し、甲5実施例11−5発明においては、そのようには特定されていない点。

そこで、上記相違点について検討する。
甲13によると、甲5実施例11−5発明における「生理食塩水の保水量」は「39.1g/g」となっているし、また、甲5実施例11−5発明における「遠心分離機保持容量(CRC)」が本件特許発明4の「生理食塩水の保水量」に相当する場合、甲5実施例11−5発明における「遠心分離機保持容量(CRC)」は「35.6g/g」であるから、いずれにしても甲5実施例11−5発明は、本件特許発明1の「生理食塩水の保水量が40〜50g/g」である要件を満たさない。
よって、<相違点5−2−4>は実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲5実施例11−5発明であるとはいえない。
そして、吸水性樹脂は、ある物性を変化させるように製造すると他の物性にも影響する、という技術常識を踏まえると、甲5実施例11−5発明において、他の吸水剤の物性値に影響を与えずに、「生理食塩水の保水量」を「40〜50g/g」とすることは当業者にとって容易であるとはいえない。
仮に「生理食塩水の保水量」を「40〜50g/g」に変化させることができたとしても、変化後の他の物性がどのようになるかは不明となり、もはや甲13を参照することができないし、さらに、特に「固めかさ密度が0.750g/cm3以上であり、温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの固めかさ密度の変化量が0.020〜0.038g/cm3であり、吸湿後の当該固めかさ密度が吸湿前よりも小さ」くすることについて、甲5及びその他の証拠にもなく、また、当該事項とする動機付けは甲5及びその他の証拠にもない。
よって、甲5実施例11−5発明において、「生理食塩水の保水量が40〜50g/g」であり、かつ「固めかさ密度が0.750g/cm3以上であり、温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの固めかさ密度の変化量が0.020〜0.038g/cm3であり、吸湿後の当該固めかさ密度が吸湿前よりも小さ」くすることは当業者にとって容易であるとはいえない。
そして、本件特許発明1は、甲5実施例11−5発明からは予測し得ない格別顕著な効果を奏するものである。
よって、本件特許発明1は、その他の相違点を検討するまでもなく、甲5実施例11−5発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(ウ)小括
したがって、本件特許発明1は、甲5に記載された発明であるとはいえないし、甲5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

イ 本件特許発明2ないし8について
本件特許発明2ないし8は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲5に記載された発明であるとはいえないし、甲5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(4)取消理由2についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし8は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、取消理由2によっては取り消すことはできない。

3 取消理由3(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

(2)特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の記載は、上記第3のとおりである。

(3)発明の詳細な説明の記載
本件特許の発明の詳細の記載は次のとおりである。
「【背景技術】
【0002】
従来、水を主成分とする液体(例えば尿)を吸収するための吸収性物品には、吸水性樹脂粒子を含有する吸収体が用いられている。例えば、下記特許文献1には、おむつ等の吸収性物品に好適に用いられる粒子径を有する吸水性樹脂粒子が開示されている。また、特許文献2には、尿のような体液を収容するのに効果的な吸収性部材として、特定の食塩水流れ誘導性、圧力下性能等を有するヒドロゲル吸収性重合体を使用する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06−345819号公報
【特許文献2】特表平09−510889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸収性物品に供された液が吸収性物品に充分浸透しなければ、余剰の液はその表面を流れる等して吸収性物品の外に漏れるといった不具合が生じ得る。そのため、吸収性物品に対しては、液が優れた浸透速度で浸透することが求められる。
【0005】
本発明の一側面は、優れた浸透速度を有する吸収性物品を得ることが可能な吸水性樹脂粒子を提供することを目的とする。また、本発明の他の一側面は、当該吸水性樹脂粒子を用いた吸収体及び吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、吸収性物品の製造時、使用時等において吸水性樹脂粒子に対して機械的な負荷や衝撃が加わることに基づき吸水性樹脂粒子の固めかさ密度に着目した上で、固めかさ密度及び吸湿時のその変化量を調整することが、優れた浸透速度を有する吸収性物品を得ることに有効であることを見出した。
【0007】
本発明の一側面は、固めかさ密度が0.500g/cm3以上であり、温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの固めかさ密度の変化量が0.020g/cm3以上である、吸水性樹脂粒子を提供する。
【0008】
上述の吸水性樹脂粒子によれば、優れた浸透速度を有する吸収性物品を得ることができる。
【0009】
本発明の他の一側面は、上述の吸水性樹脂粒子を含有する、吸収体を提供する。
【0010】
本発明の他の一側面は、上述の吸収体を備える、吸収性物品を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一側面によれば、優れた浸透速度を有する吸収性物品を得ることが可能な吸水性樹脂粒子を提供することができる。また、本発明の他の一側面によれば、当該吸水性樹脂粒子を用いた吸収体及び吸収性物品を提供することができる。本発明の他の一側面によれば、吸液への樹脂粒子、吸収体及び吸収性物品の応用を提供することができる。」
「【0015】
本実施形態においては、吸水性樹脂粒子の固めかさ密度が0.500g/cm3(g/cm3=g/mL)以上であり、吸水性樹脂粒子を温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの吸水性樹脂粒子の固めかさ密度の変化量が0.020g/cm3以上である。このような吸水性樹脂粒子によれば、優れた浸透速度を有する吸収性物品を得ることができる。このような効果が得られる原因は明らかではないが、本発明者は下記のように推察している。但し、原因は下記の内容に限定されない。
【0016】
すなわち、固めかさ密度が0.500g/cm3以上であり、且つ、固めかさ密度の変化量が0.020g/cm3以上であると、同一容積の空間内において吸湿後に吸水性樹脂粒子が圧縮されやすく、また、圧縮された吸水性樹脂粒子の表面の粘性等が適度に変化(向上)するため、吸水性樹脂粒子が相互に又は他成分(例えば繊維状物)に固着しやすい。このような固着により、吸水性樹脂粒子の相互の接触面積、又は、吸水性樹脂粒子と他成分(例えば繊維状物)との接触面積が大きくなることで、液が吸水性樹脂粒子に速やかに吸収されやすい(例えば、繊維状物から吸水性樹脂粒子へ液が移動しやすい)。そのため、優れた浸透速度が得られると推察される。
【0017】
吸水性樹脂粒子の固めかさ密度は、吸水性樹脂粒子を容器に充填した後に容器をタッピングしたときの容積に対する吸水性樹脂粒子の質量である。固めかさ密度は、後述する実施例に記載の方法によって測定できる。
【0018】
本実施形態においては、吸収性物品において優れた浸透速度を得る観点から、吸水性樹脂粒子の吸湿前の固めかさ密度が0.500g/cm3以上である。吸湿前の固めかさ密度は、吸収性物品において優れた浸透速度を得やすい観点から、0.600g/cm3以上、0.700g/cm3以上、0.750g/cm3以上、0.800g/cm3以上、0.800g/cm3を超える、0.810g/cm3以上、0.810g/cm3を超える、0.820g/cm3以上、0.830g/cm3以上、0.840g/cm3以上、又は、0.845g/cm3以上が好ましい。吸湿前の固めかさ密度は、0.850g/cm3以上、0.860g/cm3以上、又は、0.870g/cm3以上であってよい。吸湿前の固めかさ密度は、吸収性物品において優れた浸透速度を得やすい観点から、1.500g/cm3以下、1.400g/cm3以下、1.200g/cm3以下、1.000g/cm3以下、0.950g/cm3以下、0.940g/cm3以下、0.920g/cm3以下、0.900g/cm3以下、0.890g/cm3以下、0.880g/cm3以下、0.870g/cm3以下、0.860g/cm3以下、又は、0.850g/cm3以下が好ましい。これらの観点から、吸湿前の固めかさ密度は、0.500〜0.950g/cm3が好ましく、0.600〜0.950g/cm3がより好ましく、0.830〜0.950g/cm3が更に好ましい。吸湿前の固めかさ密度としては、室温(25℃±2℃)における固めかさ密度を用いることができる。
【0019】
本実施形態においては、吸収性物品において優れた浸透速度を得る観点から、吸水性樹脂粒子を温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの吸水性樹脂粒子の固めかさ密度の変化量(吸湿後の固めかさ密度の変化量)が0.020g/cm3以上である。吸水性樹脂粒子が吸湿すると、固めかさ密度は減少する傾向にあり、吸湿後の固めかさ密度は吸湿前よりも小さい傾向がある。温度30℃、相対湿度80%の条件を用いることにより、高温多湿地域を想定した加速評価が可能であり、吸収性物品において優れた浸透速度を与える吸水性樹脂粒子を選定しやすい。吸湿後の固めかさ密度の変化量は、室温(25±2℃)における変化量を用いることができる。
【0020】
吸湿後の固めかさ密度の変化量は、吸収性物品において優れた浸透速度を得やすい観点から、0.025g/cm3以上、0.030g/cm3以上、0.031g/cm3以上、0.032g/cm3以上、0.033g/cm3以上、0.034g/cm3以上、0.034g/cm3を超える、又は、0.035g/cm3以上が好ましい。吸湿後の固めかさ密度の変化量は、吸収性物品の使用時にその装着感を大きく変化させにくい観点から、0.060g/cm3以下、0.055g/cm3以下、0.050g/cm3以下、0.049g/cm3以下、0.049g/cm3未満、0.048g/cm3以下、0.045g/cm3以下、0.043g/cm3以下、0.041g/cm3以下、0.040g/cm3以下、又は、0.038g/cm3以下が好ましい。これらの観点から、吸湿後の固めかさ密度の変化量は、0.020〜0.060g/cm3が好ましい。」
「【0025】
吸湿後の水分率は、吸収性物品において優れた浸透速度を得やすい観点から、5質量%以上、8質量%以上、10質量%以上、11質量%以上、12質量%以上、13質量%以上、又は、14質量%以上が好ましい。吸湿後の水分率は、吸収性物品において優れた浸透速度を得やすい観点から、20質量%以下、18質量%以下、16質量%以下、又は、15質量%以下が好ましい。これらの観点から、吸湿後の水分率は、5〜20質量%が好ましい。
【0026】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の生理食塩水の保水量は、下記の範囲が好ましい。保水量は、吸収性物品において優れた浸透速度を得やすい観点から、10g/g以上、15g/g以上、20g/g以上、25g/g以上、30g/g以上、35g/g以上、又は、40g/g以上が好ましい。保水量は、吸収性物品において優れた浸透速度を得やすい観点から、80g/g以下、75g/g以下、70g/g以下、65g/g以下、60g/g以下、55g/g以下、50g/g以下、45g/g以下、44g/g以下、43g/g以下、42g/g以下、又は、41g/g以下が好ましい。これらの観点から、保水量は、10〜80g/gが好ましく、30〜55g/gがより好ましい。保水量としては、室温(25℃±2℃)における保水量を用いることができる。保水量は、後述する実施例に記載の方法によって測定できる。」
「【0028】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、例えば、重合体粒子として、エチレン性不飽和単量体を含有する単量体を重合させて得られる架橋重合体を含むことができる。すなわち、本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有することができる。エチレン性不飽和単量体としては、水溶性エチレン性不飽和単量体を用いることができる。重合方法としては、逆相懸濁重合法、水溶液重合法、バルク重合法、沈殿重合法等が挙げられる。これらの中では、得られる吸水性樹脂粒子の良好な固めかさ密度及びその変化量、吸水特性(保水量等)などの確保、及び、重合反応の制御が容易である観点から、逆相懸濁重合法又は水溶液重合法が好ましい。以下においては、エチレン性不飽和単量体を重合させる方法として、逆相懸濁重合法を例にとって説明する。
【0029】
エチレン性不飽和単量体は水溶性であることが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸及びその塩、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。エチレン性不飽和単量体がアミノ基を有する場合、当該アミノ基は4級化されていてもよい。エチレン性不飽和単量体は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。上述の単量体のカルボキシル基、アミノ基等の官能基は、後述する表面架橋工程において架橋が可能な官能基として機能し得る。
【0030】
これらの中でも、工業的に入手が容易である観点から、エチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸及びその塩、アクリルアミド、メタクリルアミド、並びに、N,N−ジメチルアクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸及びその塩、並びに、アクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含むことがより好ましい。吸水特性(保水量等)を更に高める観点から、エチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含むことが更に好ましい。すなわち、吸水性樹脂粒子は、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種に由来する構造単位を有することが好ましい。
【0031】
吸水性樹脂粒子を得るための単量体としては、上述のエチレン性不飽和単量体以外の単量体が使用されてもよい。このような単量体は、例えば、上述のエチレン性不飽和単量体を含む水溶液に混合して用いることができる。エチレン性不飽和単量体の使用量は、単量体全量に対して70〜100モル%であることが好ましい。中でも、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が単量体全量に対して70〜100モル%であることがより好ましい。
【0032】
エチレン性不飽和単量体は、通常、水溶液として用いることが好適である。エチレン性不飽和単量体を含む水溶液(以下、単に「単量体水溶液」という)におけるエチレン性不飽和単量体の濃度は、20質量%以上飽和濃度以下が好ましく、25〜70質量%がより好ましく、30〜55質量%が更に好ましい。水溶液において使用される水としては、水道水、蒸留水、イオン交換水等が挙げられる。
【0033】
単量体水溶液は、エチレン性不飽和単量体が酸基を有する場合、その酸基をアルカリ性中和剤によって中和して用いてもよい。エチレン性不飽和単量体における、アルカリ性中和剤による中和度は、得られる吸水性樹脂粒子の浸透圧を高くし、吸水特性(保水量等)を更に高める観点から、エチレン性不飽和単量体中の酸性基の10〜100モル%であることが好ましく、50〜90モル%であることがより好ましく、60〜80モル%であることが更に好ましい。アルカリ性中和剤としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属塩;アンモニアなどが挙げられる。アルカリ性中和剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。アルカリ性中和剤は、中和操作を簡便にするために水溶液の状態で用いられてもよい。エチレン性不飽和単量体の酸基の中和は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液を上述の単量体水溶液に滴下して混合することにより行うことができる。
【0034】
逆相懸濁重合法においては、界面活性剤の存在下、炭化水素分散媒中で単量体水溶液を分散し、ラジカル重合開始剤等を用いてエチレン性不飽和単量体の重合を行うことができる。ラジカル重合開始剤としては、水溶性ラジカル重合開始剤を用いることができる。
【0035】
界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤等が挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル(「(ポリ)」とは、「ポリ」の接頭語がある場合及びない場合の双方を意味するものとする。以下同じ。)、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピルアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルメチルタウリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルのリン酸エステル等が挙げられる。界面活性剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0036】
W/O型逆相懸濁の状態が良好であり、好適な粒子径を有する吸水性樹脂粒子が得られやすく、工業的に入手が容易である観点から、界面活性剤は、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含むことが好ましい。吸水性樹脂粒子の適切な粒度分布が得られやすい観点、並びに、吸水性樹脂粒子の吸水特性(保水量等)及びそれを用いた吸収性物品の性能が向上しやすい観点から、界面活性剤は、ショ糖脂肪酸エステルを含むことが好ましく、ショ糖ステアリン酸エステルがより好ましい。
【0037】
界面活性剤の使用量は、使用量に対する効果が充分に得られる観点、及び、経済的である観点から、単量体水溶液100質量部に対して、0.05〜10質量部が好ましく、0.08〜5質量部がより好ましく、0.1〜3質量部が更に好ましい。
【0038】
逆相懸濁重合では、上述の界面活性剤と共に高分子系分散剤を併せて用いてもよい。高分子系分散剤としては、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン・ターポリマー)、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、無水マレイン酸・エチレン共重合体、無水マレイン酸・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・ブタジエン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、酸化型ポリプロピレン、酸化型エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。高分子系分散剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。高分子系分散剤としては、単量体の分散安定性に優れる観点から、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン共重合体、無水マレイン酸・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン・プロピレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、酸化型ポリプロピレン、及び、酸化型エチレン・プロピレン共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。
【0039】
高分子系分散剤の使用量は、使用量に対する効果が充分に得られる観点、及び、経済的である観点から、単量体水溶液100質量部に対して、0.05〜10質量部が好ましく、0.08〜5質量部がより好ましく、0.1〜3質量部が更に好ましい。
【0040】
炭化水素分散媒は、炭素数6〜8の鎖状脂肪族炭化水素、及び、炭素数6〜8の脂環式炭化水素からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含んでいてもよい。炭化水素分散媒としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,3−ジメチルペンタン、3−エチルペンタン、n−オクタン等の鎖状脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、trans−1,2−ジメチルシクロペンタン、cis−1,3−ジメチルシクロペンタン、trans−1,3−ジメチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などが挙げられる。炭化水素分散媒は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0041】
炭化水素分散媒は、工業的に入手が容易であり、かつ、品質が安定している観点から、n−ヘプタン及びシクロヘキサンからなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでいてもよい。また、同様の観点から、上述の炭化水素分散媒の混合物としては、例えば、市販されているエクソールヘプタン(エクソンモービル社製:n−ヘプタン及び異性体の炭化水素75〜85%含有)を用いてもよい。
【0042】
炭化水素分散媒の使用量は、重合熱を適度に除去し、重合温度を制御しやすい観点から、単量体水溶液100質量部に対して、30〜1000質量部が好ましく、40〜500質量部がより好ましく、50〜400質量部が更に好ましい。炭化水素分散媒の使用量が30質量部以上であることにより、重合温度の制御が容易である傾向がある。炭化水素分散媒の使用量が1000質量部以下であることにより、重合の生産性が向上する傾向があり、経済的である。
【0043】
ラジカル重合開始剤は水溶性であることが好ましく、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピバレート、過酸化水素等の過酸化物;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(N−フェニルアミジノ)プロパン]2塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(N−アリルアミジノ)プロパン]2塩酸塩、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]2塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}2塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ化合物などが挙げられる。ラジカル重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。ラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]2塩酸塩、及び、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}2塩酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。
【0044】
ラジカル重合開始剤の使用量は、エチレン性不飽和単量体1モルに対して0.05〜10ミリモルであってよい。ラジカル重合開始剤の使用量が0.05ミリモル以上であると、重合反応に長時間を要さず、効率的である。ラジカル重合開始剤の使用量が10ミリモル以下であると、急激な重合反応が起こることを抑制しやすい。
【0045】
上述のラジカル重合開始剤は、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、L−アスコルビン酸等の還元剤と併用して、レドックス重合開始剤として用いることもできる。
【0046】
重合反応の際、重合に用いる単量体水溶液は、連鎖移動剤を含んでいてもよい。連鎖移動剤としては、次亜リン酸塩類、チオール類、チオール酸類、第2級アルコール類、アミン類等が挙げられる。
【0047】
重合に用いる単量体水溶液は、吸水性樹脂粒子の粒子径を制御するために増粘剤を含んでいてもよい。増粘剤としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等が挙げられる。なお、重合時の撹拌速度が同じであれば、単量体水溶液の粘度が高いほど、得られる粒子の中位粒子径は大きくなる傾向にある。
【0048】
重合の際に自己架橋による架橋が生じるが、内部架橋剤を用いることで架橋を施してもよい。内部架橋剤を用いると、吸水性樹脂粒子の固めかさ密度及びその変化量、吸水特性(保水量等)などを制御しやすい。内部架橋剤は、通常、重合反応の際に反応液に添加される。内部架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール類のジ又はトリ(メタ)アクリル酸エステル類;上述のポリオール類と不飽和酸(マレイン酸、フマール酸等)とを反応させて得られる不飽和ポリエステル類;N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド等のビス(メタ)アクリルアミド類;ポリエポキシドと(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるジ又はトリ(メタ)アクリル酸エステル類;ポリイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等)と(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとを反応させて得られるジ(メタ)アクリル酸カルバミルエステル類;アリル化澱粉、アリル化セルロース、ジアリルフタレート、N,N’,N”−トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン等の、重合性不飽和基を2個以上有する化合物;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、α−メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物;イソシアネート化合物(2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等)などの、反応性官能基を2個以上有する化合物などが挙げられる。内部架橋剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。内部架橋剤としては、ポリグリシジル化合物が好ましく、ジグリシジルエーテル化合物がより好ましく、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、及び、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一種が更に好ましい。
【0049】
内部架橋剤の使用量は、固めかさ密度及びその変化量を調整しやすい観点、及び、得られる重合体が適度に架橋されることにより水溶性の性質が抑制され、充分な吸水量が得られやすい観点から、エチレン性不飽和単量体1モル当たり、30ミリモル以下が好ましく、0.01〜10ミリモルがより好ましく、0.012〜5ミリモルが更に好ましく、0.015〜1ミリモルが特に好ましく、0.02〜0.1ミリモルが極めて好ましく、0.025〜0.06ミリモルが非常に好ましい。
【0050】
エチレン性不飽和単量体、ラジカル重合開始剤、界面活性剤、高分子系分散剤、炭化水素分散媒等(必要に応じて更に内部架橋剤)を混合した状態において撹拌下で加熱し、油中水系において逆相懸濁重合を行うことができる。
【0051】
逆相懸濁重合を行う際には、界面活性剤(必要に応じて更に高分子系分散剤)の存在下で、エチレン性不飽和単量体を含む単量体水溶液を炭化水素分散媒に分散させる。このとき、重合反応を開始する前であれば、界面活性剤、高分子系分散剤等の添加時期は、単量体水溶液の添加の前後どちらであってもよい。
【0052】
その中でも、得られる吸水性樹脂に残存する炭化水素分散媒の量を低減しやすい観点から、高分子系分散剤を分散させた炭化水素分散媒に単量体水溶液を分散させた後に界面活性剤を更に分散させてから重合を行うことが好ましい。
【0053】
逆相懸濁重合は、1段、又は、2段以上の多段で行うことができる。逆相懸濁重合は、生産性を高める観点から、2〜3段で行うことが好ましい。
【0054】
2段以上の多段で逆相懸濁重合を行う場合には、1段目の逆相懸濁重合を行った後、1段目の重合反応で得られた反応混合物にエチレン性不飽和単量体を添加して混合し、1段目と同様の方法で2段目以降の逆相懸濁重合を行えばよい。2段目以降の各段における逆相懸濁重合では、エチレン性不飽和単量体の他に、上述のラジカル重合開始剤及び/又は内部架橋剤を、2段目以降の各段における逆相懸濁重合の際に添加するエチレン性不飽和単量体の量を基準として、上述のエチレン性不飽和単量体に対する各成分のモル比の範囲内で添加して逆相懸濁重合を行うことが好ましい。なお、2段目以降の各段における逆相懸濁重合では、必要に応じて内部架橋剤を用いてもよい。内部架橋剤を用いる場合は、各段に供するエチレン性不飽和単量体の量を基準として、上述のエチレン性不飽和単量体に対する各成分のモル比の範囲内で添加して逆相懸濁重合を行うことが好ましい。
【0055】
重合反応の温度は、使用するラジカル重合開始剤によって異なるが、重合を迅速に進行させ、重合時間を短くすることにより、経済性を高めると共に、容易に重合熱を除去して円滑に反応を行う観点から、20〜150℃が好ましく、40〜120℃がより好ましい。反応時間は、通常、0.5〜4時間である。重合反応の終了は、例えば、反応系内の温度上昇の停止により確認することができる。これにより、エチレン性不飽和単量体の重合体は、通常、含水ゲルの状態で得られる。
【0056】
重合後、得られた含水ゲル状重合体に重合後架橋剤を添加して加熱することで架橋を施してもよい。重合後に架橋を行うことで含水ゲル状重合体の架橋度を高めて吸水特性(保水量等)を更に向上させることができる。
【0057】
重合後架橋剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル等の、2個以上のエポキシ基を有する化合物;エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、α−メチルエピクロルヒドリン等のハロエポキシ化合物;2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の、2個以上のイソシアネート基を有する化合物;1,2−エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物;エチレンカーボネート等のカーボネート化合物;ビス[N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)]アジプアミド等のヒドロキシアルキルアミド化合物などが挙げられる。これらの中でも、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物が好ましい。架橋剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0058】
重合後架橋剤の量は、好適な固めかさ密度及びその変化量、吸水特性(保水量等)などが得られやすい観点から、エチレン性不飽和単量体1モル当たり、30ミリモル以下が好ましく、10ミリモル以下がより好ましく、0.01〜5ミリモルが更に好ましく、0.012〜1ミリモルが特に好ましく、0.015〜0.1ミリモルが極めて好ましく、0.02〜0.05ミリモルが非常に好ましい。
【0059】
重合後架橋剤の添加時期としては、重合に用いられるエチレン性不飽和単量体の重合後であればよく、多段重合の場合は、多段重合後に添加されることが好ましい。なお、重合時及び重合後の発熱、工程遅延による滞留、架橋剤添加時の系の開放、及び架橋剤添加に伴う水の添加等による水分の変動を考慮して、重合後架橋剤は、含水率(後述)の観点から、[重合直後の含水率±3質量%]の領域で添加することが好ましい。
【0060】
引き続き、得られた含水ゲル状重合体から水分を除去するために乾燥を行うことにより重合体粒子(例えば、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する重合体粒子)が得られる。乾燥方法としては、例えば、(a)含水ゲル状重合体が炭化水素分散媒に分散した状態で、外部から加熱することにより共沸蒸留を行い、炭化水素分散媒を還流させて水分を除去する方法、(b)デカンテーションにより含水ゲル状重合体を取り出し、減圧乾燥する方法、(c)フィルターにより含水ゲル状重合体をろ別し、減圧乾燥する方法等が挙げられる。中でも、製造工程における簡便さから、(a)の方法を用いることが好ましい。
【0061】
重合反応時の撹拌機の回転数を調整することによって、あるいは、重合反応後又は乾燥の初期において凝集剤を系内に添加することによって吸水性樹脂粒子の粒子径を調整することができる。凝集剤を添加することにより、得られる吸水性樹脂粒子の粒子径を大きくすることができる。凝集剤としては、無機凝集剤を用いることができる。無機凝集剤(例えば粉末状無機凝集剤)としては、シリカ、ゼオライト、ベントナイト、酸化アルミニウム、タルク、二酸化チタン、カオリン、クレイ、ハイドロタルサイト等が挙げられる。凝集効果に優れる観点から、凝集剤としては、シリカ、酸化アルミニウム、タルク及びカオリンからなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。
【0062】
逆相懸濁重合において、凝集剤を添加する方法としては、重合で用いられるものと同種の炭化水素分散媒又は水に凝集剤を予め分散させてから、撹拌下で、含水ゲル状重合体を含む炭化水素分散媒中に混合する方法が好ましい。
【0063】
凝集剤の添加量は、重合に使用するエチレン性不飽和単量体100質量部に対して、0.001〜1質量部が好ましく、0.005〜0.5質量部がより好ましく、0.01〜0.2質量部が更に好ましい。凝集剤の添加量が上述の範囲内であることによって、目的とする粒度分布を有する吸水性樹脂粒子が得られやすい。
【0064】
吸水性樹脂粒子の製造においては、乾燥工程(水分除去工程)又はそれ以降の工程において、表面架橋剤を用いて含水ゲル状重合体の表面部分(表面及び表面近傍)の表面架橋が行われることが好ましい。表面架橋を行うことで、吸水性樹脂粒子の固めかさ密度及びその変化量、吸水特性(保水量等)などを制御しやすい。表面架橋は、含水ゲル状重合体が特定の含水率であるタイミングで行われることが好ましい。表面架橋の時期は、含水ゲル状重合体の含水率が5〜50質量%である時点が好ましく、10〜40質量%である時点がより好ましく、15〜35質量%である時点が更に好ましい。なお、含水ゲル状重合体の含水率(質量%)は、次の式で算出される。
含水率=[Ww/(Ww+Ws)]×100
Ww:全重合工程の重合前の単量体水溶液に含まれる水分量から、乾燥工程により系外部に排出された水分量を差し引いた量に、凝集剤、表面架橋剤等を混合する際に必要に応じて用いられる水分量を加えた含水ゲル状重合体の水分量。
Ws:含水ゲル状重合体を構成するエチレン性不飽和単量体、架橋剤、開始剤等の材料の仕込量から算出される固形分量。
【0065】
表面架橋剤としては、例えば、反応性官能基を2個以上有する化合物を挙げることができる。表面架橋剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール類;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、α−メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物;2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物;3−メチル−3−オキセタンメタノール、3−エチル−3−オキセタンメタノール、3−ブチル−3−オキセタンメタノール、3−メチル−3−オキセタンエタノール、3−エチル−3−オキセタンエタノール、3−ブチル−3−オキセタンエタノール等のオキセタン化合物;1,2−エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物;エチレンカーボネート等のカーボネート化合物;ビス[N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)]アジプアミド等のヒドロキシアルキルアミド化合物などが挙げられる。表面架橋剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。表面架橋剤としては、ポリグリシジル化合物が好ましく、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、及び、ポリグリセロールポリグリシジルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一種がより好ましい。
【0066】
表面架橋剤の使用量は、好適な固めかさ密度及びその変化量、吸水特性(保水量等)などが得られやすい観点から、重合に使用するエチレン性不飽和単量体1モルに対して、0.01〜20ミリモルが好ましく、0.05〜10ミリモルがより好ましく、0.1〜5ミリモルが更に好ましく、0.15〜1ミリモルが特に好ましく、0.2〜0.5ミリモルが極めて好ましい。
【0067】
表面架橋後において、公知の方法で水及び炭化水素分散媒を留去すること、加熱減圧下で乾燥すること等により、表面架橋された乾燥品である重合体粒子を得ることができる。
【0068】
上述のとおり、吸水性樹脂粒子に含まれる重合体粒子は、単量体の重合時に用いる内部架橋剤を用いて得ることが可能であり、内部架橋剤、及び、単量体の重合後に用いられる外部架橋剤(単量体の重合後に用いられる重合後架橋剤、及び、単量体の重合後の乾燥工程又はそれ以降の工程において用いられる表面架橋剤の総称)を用いて得ることができる。内部架橋剤に対する外部架橋剤の使用量の比(外部架橋剤/内部架橋剤、架橋比率)は、好適な固めかさ密度及びその変化量、吸水特性(保水量等)などが得られやすい観点から、5〜100が好ましく、6〜80がより好ましく、8〜60が更に好ましく、10〜40が特に好ましく、10〜30が極めて好ましく、10〜25が非常に好ましい。吸水性樹脂粒子は、内部架橋剤を用いた反応物である重合体粒子を含んでよく、内部架橋剤及び外部架橋剤を用いた反応物である重合体粒子を含んでよい。重合体粒子において内部架橋剤に対する外部架橋剤の使用量の比は上述の範囲が好ましい。
【0069】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、重合体粒子に加えて、例えば、ゲル安定剤、金属キレート剤(エチレンジアミン4酢酸及びその塩、ジエチレントリアミン5酢酸及びその塩、例えばジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム等)、流動性向上剤(滑剤)等の追加成分を更に含むことができる。追加成分は、重合体粒子の内部、重合体粒子の表面上、又は、これらの両方に配置され得る。
【0070】
吸水性樹脂粒子は、重合体粒子の表面上に配置された複数の無機粒子を含んでいてもよい。例えば、重合体粒子と無機粒子とを混合することにより、重合体粒子の表面上に無機粒子を配置することができる。この無機粒子は、非晶質シリカ等のシリカ粒子であってもよい。
【0071】
吸水性樹脂粒子が、重合体粒子の表面上に配置された無機粒子を含む場合、無機粒子の含有量は、重合体粒子の全質量を基準として下記の範囲であってよい。無機粒子の含有量は、0.05質量%以上、又は、0.1質量%以上であってよい。無機粒子の含有量は、5.0質量%以下、3.0質量%以下、1.0質量%以下、0.5質量%以下、0.3質量%以下、又は、0.2質量%以下であってよい。」
「【実施例】
【0093】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明の内容を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0094】
<吸水性樹脂粒子の作製>
(実施例1)
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、及び、撹拌機(翼径5cmの4枚傾斜パドル翼を2段有する撹拌翼)を備えた内径11cm、内容積2Lの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコに、炭化水素分散媒としてn−ヘプタン293gを添加し、高分子系分散剤として無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社製、ハイワックス1105A)0.736gを添加することにより混合物を得た。この混合物を撹拌しつつ80℃まで昇温することにより分散剤を溶解した後、混合物を50℃まで冷却した。
【0095】
次に、内容積300mLのビーカーに、水溶性エチレン性不飽和単量体として80.5質量%のアクリル酸水溶液92.0g(アクリル酸:1.03モル)を添加した。続いて、外部より冷却しつつ、20.9質量%の水酸化ナトリウム水溶液147.7gをビーカー内に滴下することによりアクリル酸に対して75モル%の中和を行った。その後、増粘剤としてヒドロキシエチルセルロース0.092g(住友精化株式会社製、HEC AW
−15F)、水溶性ラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.092g(0.339ミリモル)及び過硫酸カリウム0.018g(0.068ミリモル)、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.005g(0.029ミリモル)を加えた後に溶解させることにより第1段目の水性液を調製した。
【0096】
そして、撹拌機の回転数550rpmで撹拌しながら上述の第1段目の水性液を上述のセパラブルフラスコに添加した後、10分間撹拌した。その後、n−ヘプタン6.62gにショ糖ステアリン酸エステル(界面活性剤、三菱化学フーズ株式会社製、リョートーシュガーエステルS−370、HLB値:3)0.736gを加熱溶解することにより得られた界面活性剤溶液をセパラブルフラスコに添加した。そして、撹拌機の回転数550rpmで撹拌しながら系内を窒素で充分に置換した。その後、フラスコを70℃の水浴に浸漬させることにより昇温し、重合を60分間行うことにより第1段目の重合スラリー液を得た。
【0097】
次に、内容積500mLの別のビーカーに水溶性エチレン性不飽和単量体として80.5質量%のアクリル酸水溶液128.8g(アクリル酸:1.43モル)を添加した。続いて、外部より冷却しつつ、27質量%の水酸化ナトリウム水溶液159.0gをビーカー内に滴下することによりアクリル酸に対して75モル%の中和を行った。その後、水溶性ラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.129g(0.475ミリモル)及び過硫酸カリウム0.026g(0.095ミリモル)を加えた後に溶解させることにより第2段目の水性液を調製した。
【0098】
次に、撹拌機の回転数1000rpmで撹拌しながら、上述のセパラブルフラスコ内を25℃に冷却した後、上述の第2段目の水性液の全量を上述の第1段目の重合スラリー液に添加した。続いて、系内を窒素で30分間置換した後、再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬することにより昇温し、重合反応を60分間行った。その後、重合後架橋剤として2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液0.580g(エチレングリコールジグリシジルエーテル:0.067ミリモル)を添加することにより第2段目の含水ゲル状重合体を得た。
【0099】
上述の第2段目の含水ゲル状重合体に45質量%のジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム水溶液0.265gを撹拌下で添加した。その後、125℃の油浴で反応液を昇温し、n−ヘプタンと水との共沸蒸留によりn−ヘプタンを還流しながら217.8gの水を系外へ抜き出した。そして、フラスコに表面架橋剤として2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液4.42g(エチレングリコールジグリシジルエーテル:0.507ミリモル)を添加した後、83℃で2時間保持した。
【0100】
その後、n−ヘプタンを125℃にて蒸発させて乾燥させることによって重合体粒子(乾燥品)を得た。この重合体粒子を目開き850μmの篩に通過させた後、重合体粒子の全質量を基準として0.2質量%の非晶質シリカ(オリエンタルシリカズコーポレーション社製、トクシールNP−S)を重合体粒子に混合することにより吸水性樹脂粒子を229.6g得た。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は342μmであった。内部架橋剤の使用量に対する外部架橋剤の使用量の比率はモル比で19.8であった。
【0101】
(実施例2)
第1段目の水性液の調製において、水溶性ラジカル重合開始剤として、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩を用いることなく過硫酸カリウム0.0736g(0.272ミリモル)を用いると共に、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.010g(0.057ミリモル)を用いたこと;第1段目の重合スラリー液の調製において撹拌機の回転数を500rpmへ変更したこと;第2段目の水性液の調製において、水溶性ラジカル重合開始剤として、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩を用いることなく過硫酸カリウム0.090g(0.334ミリモル)を用いたこと;第2段目の重合後の含水ゲル状重合体において、共沸蒸留により256.1gの水を系外へ抜き出したこと;重合体粒子の質量に対して0.1質量%の非晶質シリカを重合体粒子と混合したこと以外は、実施例1と同様にして、吸水性樹脂粒子230.8gを得た。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は349μmであった。内部架橋剤の使用量に対する外部架橋剤の使用量の比率はモル比で10.1であった。
【0102】
(実施例3)
含水ゲル状重合体の作製において、セパラブルフラスコ内の温度を25℃から28℃へ変更したこと、及び、第2段目の重合後の含水ゲル状重合体において、共沸蒸留により256.8gの水を系外へ抜き出したこと以外は、実施例2と同様にして、吸水性樹脂粒子228.8gを得た。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は321μmであった。
【0103】
(実施例4)
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、及び、撹拌機(翼径5cmの4枚傾斜パドル翼を2段有する撹拌翼)を備えた内径11cm、内容積2Lの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコに、炭化水素分散媒としてシクロヘキサン281gを添加し、エチルセルロース(Ashland製、Aqualon N100)0.564gを添加することにより混合物を得た。この混合物を撹拌機の回転数700rpmで撹拌しながら、系内に窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した後、フラスコを80℃の水浴に浸漬して75℃まで昇温した。
【0104】
次に、内容積300mLのビーカーに、水溶性エチレン性不飽和単量体として100%アクリル酸92.0g(1.28モル)を添加した。続いて、外部より冷却しつつ、27質量%水酸化ナトリウム水溶液142.0gをビーカー内に滴下することによりアクリル酸に対して75モル%の中和を行った。その後、ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.184g(0.681ミリモル)を水14.8gに溶解させることにより得られた溶液を添加した。そして、窒素ガスを吹き込み、水溶液内に残存する酸素を除去することにより単量体水溶液を調製した。
【0105】
そして、チューブポンプを用いて上述の単量体水溶液を上述のセパラブルフラスコ内に1時間かけて滴下し、重合反応を行った。その後、撹拌機の回転数1000rpmで撹拌しながら、125℃に設定した油浴にフラスコを浸漬し、シクロヘキサンと水との共沸蒸留によりシクロヘキサンを還流しながら95.8gの水を系外へ抜き出した。
【0106】
その後、上述のセパラブルフラスコ内で、表面架橋剤としてポリグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセ化成工業株式会社製、デナコールEX−512)0.036g(0.176ミリモル)を水3.61gと共に添加して溶解させた。そして、油浴で加熱しながら75〜80℃で1時間反応させた。反応後すぐに、シクロヘキサン相を目開き38μm篩で濾別して除き、吸水性樹脂含水物を得た。
【0107】
この吸水性樹脂含水物を90℃設定の減圧乾燥機で0.006MPaに減圧下で加熱乾燥させることにより重合体粒子(乾燥品)を得た。この重合体粒子を850μmの目開きの篩に通過させた後、重合体粒子の全質量を基準として0.5質量%の非晶質シリカ(オリエンタルシリカズコーポレーション、トクシールNP−S)を重合体粒子に混合することにより吸水性樹脂粒子を104.0g得た。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は370μmであった。内部架橋剤を使用しなかったため架橋比率は算出できなかった。
【0108】
(比較例1)
第1段目の重合スラリー液の調製において撹拌機の回転数を550rpmへ変更したこと;第2段目の水性液の調製において、水溶性ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.090g(0.334ミリモル)を添加したことに加えて内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.0116g(0.067ミリモル)を添加したこと;含水ゲル状重合体の作製において、セパラブルフラスコ内の温度を25℃から31℃へ変更すると共に、重合反応を60分間行った後に、架橋剤を添加することなく45質量%のジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム水溶液0.265gを添加したこと;第2段目の重合後の含水ゲル状重合体において、共沸蒸留により256.5gの水を系外へ抜き出したこと以外は、実施例2と同様にして、吸水性樹脂粒子229.0gを得た。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は146μmであった。内部架橋剤の使用量に対する外部架橋剤の使用量の比率はモル比で4.1であった。
【0109】
(比較例2)
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、及び、撹拌機(翼径5cmの4枚傾斜パドル翼(フッ素樹脂にて表面処理したもの)を2段有する撹拌翼)を備えた内径11cm、内容積2Lの、4箇所の側壁バッフル付き丸底円筒型セパラブルフラスコ(バッフル幅:7mm)を準備した。このフラスコに、炭化水素分散媒としてn−ヘプタン451.4gを添加し、界面活性剤としてソルビタンモノラウレート(ノニオンLP−20R、HLB値:8.6、日油株式会社製)1.288gを添加することにより混合物を得た。この混合物を撹拌機の回転数300rpmで撹拌しつつ50℃まで昇温することによりソルビタンモノラウレートをn−ヘプタンに溶解させた後、混合物を40℃まで冷却した。
【0110】
次に、内容積500mLの三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液92.0g(アクリル酸:1.03モル)を入れた。続いて、外部より氷冷しながら20.9質量%水酸化ナトリウム水溶液147.7gを滴下することによってアクリル酸の中和を行うことによりアクリル酸部分中和物水溶液を得た。次に、水溶性ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.1012g(0.374ミリモル)をアクリル酸部分中和物水溶液に加えた後に溶解させることによりモノマー水溶液を調製した。
【0111】
上述のモノマー水溶液を上述のセパラブルフラスコに添加した後、系内を窒素で充分に置換した。その後、撹拌機の回転数700rpmで撹拌しつつ、フラスコを70℃の水浴に浸漬した後に60分間保持して重合を完了させることにより含水ゲル状重合体を得た。
【0112】
その後、撹拌機の回転数1000rpmで撹拌しつつ、生成した含水ゲル状重合体、n−ヘプタン及び界面活性剤を含む重合液に、粉末状無機凝集剤として非晶質シリカ(オリエンタルシリカズコーポレーション、トクシールNP−S)0.092gを予めn−ヘプタン100gに分散させることにより得られた分散液を添加した後、10分間混合した。その後、反応液を含むフラスコを125℃の油浴に浸漬し、n−ヘプタンと水との共沸蒸留によりn−ヘプタンを還流しながら129.0gの水を系外へ抜き出した。その後、表面架橋剤として2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液4.14g(エチレングリコールジグリシジルエーテル:0.475ミリモル)を添加した後、内温83±2℃で2時間保持した。
【0113】
その後、水及びn−ヘプタンを120℃にて蒸発させ、系内からの蒸発物がほとんど留出されなくなるまで乾燥させることにより重合体粒子(乾燥品)を得た。この重合体粒子を目開き850μmの篩に通すことにより吸水性樹脂粒子90.1gを得た。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は360μmであった。内部架橋剤を使用しなかったため架橋比率は算出できなかった。
【0114】
(比較例3)
比較例2の重合体粒子を目開き850μmの篩に通した後に、重合体粒子の全質量を基準として2.0質量%の非晶質シリカ(オリエンタルシリカズコーポレーション社製、トクシールNP−S)を重合体粒子に混合することにより吸水性樹脂粒子を91.9g得た。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は357μmであった。内部架橋剤を使用しなかったため架橋比率は算出できなかった。
【0115】
<中位粒子径の測定>
吸水性樹脂粒子の上述の中位粒子径は下記手順により測定した。すなわち、JIS標準篩を上から、目開き600μmの篩、目開き500μmの篩、目開き425μmの篩、目開き300μmの篩、目開き250μmの篩、目開き180μmの篩、目開き150μmの篩、及び、受け皿の順に組み合わせた。組み合わせた最上の篩に、吸水性樹脂粒子50gを入れ、ロータップ式振とう器を用いて10分間振とうさせて分級した。分級後、各篩上に残った粒子の質量を全量に対する質量百分率として算出し粒度分布を求めた。この粒度分布に関して粒子径の大きい方から順に篩上を積算することにより、篩の目開きと篩上に残った粒子の質量百分率の積算値との関係を対数確率紙にプロットした。確率紙上のプロットを直線で結ぶことにより、積算質量百分率50質量%に相当する粒子径を中位粒子径として得た。
【0116】
<吸水性樹脂粒子の固めかさ密度>
粉体特性評価装置(ホソカワミクロン株式会社製、型番:PT−X)を用いて吸湿前(初期状態)及び吸湿後の吸水性樹脂粒子の固めかさ密度を下記手順で測定した。なお、固めかさ密度の測定は室温(25℃±2℃)の条件で行った。
【0117】
まず、空状態の容器(カップXS−18、内径5.0cm、高さ5.0cm、容積100cm3)の質量W0を測定した。次に、容器にキャップXS−17(内径5.1cm、高さ5.1cmの円筒状)を取り付けた後、装置付属のスコップXS−12を用いて100gの吸水性樹脂粒子を添加した。続いて、装置付属のタッピングリフトバーに載せた後、ストローク18mmの条件で180回タップを行うことにより衝撃を加えた。そして、キャップを外した後、ブレードXS−13を用いて、容器から盛り上がった吸水性樹脂粒子をすりきって除去した。続いて、吸水性樹脂粒子を含む容器の質量W1を測定した。質量W0及び質量W1に基づき、下記式より固めかさ密度を求めた。固めかさ密度を計3回測定し、その平均値を吸湿前の吸水性樹脂粒子の固めかさ密度S0[g/cm3]として得た。
固めかさ密度[g/cm3]=(W1[g]−W0[g])/100[cm3]
【0118】
また、吸水性樹脂粒子100gを底面が平滑なバット(底面のサイズ:29.5cm×23.0cm、高さ:4.5cm、SUS製)に均一に散布して試料を得た。次に、30±1℃、相対湿度80±5%の条件に調整した恒温恒湿機(ナガノサイエンス株式会社製、型番:LH21−11M)内に上述の試料を1時間放置することにより吸湿させた。吸湿後の吸水性樹脂粒子を回収し、上述の手順と同様の手順で吸湿後の吸水性樹脂粒子の固めかさ密度S1[g/cm3]を測定した。
【0119】
そして、固めかさ密度S1から固めかさ密度S0を差し引くことにより1時間の吸湿後の固めかさ密度の変化量[g/cm3]を得た。結果を表1に示す。
【0120】
<吸水性樹脂粒子の水分率>
吸湿前及び吸湿後の吸水性樹脂粒子の水分率を下記手順で測定した。
【0121】
まず、容器(アルミニウムホイールケース、8号)の質量を測定した。次に、容器に吸水性樹脂粒子(約2g)を収容した後、容器及び吸水性樹脂粒子の合計量を測定した。合計量から容器の質量を差し引くことにより吸水性樹脂粒子の質量Wa[g]を得た。
次に、吸水性樹脂粒子が収容された容器を、内温を105℃に設定した熱風乾燥機(ADVANTEC社製、型番:DRE320DB)で2時間乾燥させた後、デシケーター中で放冷した。続いて、容器及び吸水性樹脂粒子の合計量を測定し、合計量から容器の質量を差し引くことにより乾燥後の吸水性樹脂粒子の質量Wb[g]を得た。
そして、下記式から吸湿前の吸水性樹脂粒子の水分率C1を算出した。結果を表1に示す。
吸湿前の水分率C1[質量%]=[(Wa−Wb)/Wa]×100
【0122】
また、上述の吸水性樹脂粒子の固めかさ密度の手順と同様の手順で吸水性樹脂粒子を吸湿させた後、吸水性樹脂粒子の質量Wcを測定した。質量Wcから質量Waを差し引くことにより、吸湿試験前後の吸水性樹脂粒子の質量増加分ΔWを算出した。そして、下記式より吸湿後の吸水性樹脂粒子の水分率C2を算出した。結果を表1に示す。
吸湿後の水分率C2[質量%]=[{(吸湿前の水分率C1[質量%]×吸水性樹脂粒子の質量Wa[g])+吸湿試験前後の吸水性樹脂粒子の質量増加分ΔW[g]}/吸湿後の吸水性樹脂粒子の質量Wc[g]]×100
【0123】
<吸水性樹脂粒子の保水量>
吸水性樹脂粒子の生理食塩水の保水量(室温、25℃±2℃)を下記手順で測定した。まず、吸水性樹脂粒子2.0gを量り取った綿袋(メンブロード60番、横100mm×縦200mm)を内容積500mLのビーカー内に設置した。吸水性樹脂粒子の入った綿袋内に0.9質量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)500gを、ママコができないように一度に注ぎ込んだ後、綿袋の上部を輪ゴムで縛り、30分静置させることで吸水性樹脂粒子を膨潤させた。30分経過後の綿袋を、遠心力が167Gとなるように設定した脱水機(株式会社コクサン製、品番:H−122)を用いて1分間脱水した後、脱水後の膨潤ゲルを含んだ綿袋の質量Wd[g]を測定した。吸水性樹脂粒子を添加せずに同様の操作を行い、綿袋の湿潤時の空質量We[g]を測定し、下記式から吸水性樹脂粒子の生理食塩水の保水量を算出した。結果を表1に示す。
保水量[g/g]=(Wd−We)/2.0
【0124】
<吸収体性能の評価>
(試験液の作製)
内容積10Lの容器に、塩化ナトリウム60g、塩化カルシウム二水和物1.8g、塩化マグネシウム六水和物3.6g及び適量の蒸留水を入れた後、完全に溶解させた。次いで、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル0.02gを添加した後、蒸留水を追加することにより水溶液全体の質量を6000gに調整した。続いて、少量の青色1号で着色することにより試験液(人工尿)を得た。
【0125】
(吸収体の作製)
気流型混合装置(有限会社オーテック社製、パッドフォーマー)を用いて、吸水性樹脂粒子10g及び粉砕パルプ10gを空気抄造によって均一混合することにより、40cm×12cmの大きさのシート状の吸収体を作製した。
【0126】
(粉砕パルプの水分率)
吸湿前の吸水性樹脂粒子の水分率C1の測定手順と同様の手順により吸湿前の粉砕パルプの水分率C3を測定した。水分率C3は6.3質量%であった。
【0127】
(吸収性物品の作製)
吸収体と同じ大きさを有する坪量16g/m2の第1のティッシュッペーパー上に吸収体を積層することにより第1の積層体を得た後、後述の方法に従って吸湿操作を行った。次に、吸収体と同じ大きさを有する坪量16g/m2の第2のティッシュッペーパーを吸湿後の第1の積層体における吸収体上に載置した。ティッシュッペーパーで吸収体の上下を挟んだ状態で全体に196kPaの荷重を30秒間加えることにより第2の積層体を得た。さらに、吸収体と同じ大きさを有する坪量22g/m2のポリエチレン−ポリプロピレン製のエアスルー型多孔質液体透過性シートを第2の積層体の上面に載置することにより吸収性物品を作製した。
【0128】
(吸収体の吸湿、及び、水分率の測定)
吸収体を含む上述の第1の積層体を40cm×12cmの台紙(厚紙)の上に置いた。次に、30±1℃、相対湿度80±5%の条件の恒温恒湿機(ナガノサイエンス株式会社製、型番:LH21−11M)に台紙ごと第1の積層体を入れた後、1時間吸湿させた。吸湿前後の第1の積層体の質量に基づき、吸収体の水分率[質量%]を下記式より算出した。結果を表1に示す。
吸収体の水分率[質量%]=[{(吸湿前の吸水性樹脂粒子の水分率C1[質量%]×吸水性樹脂粒子の質量[g])+(吸湿前の粉砕パルプの水分率C3[質量%]×粉砕パルプの質量[g]]+吸湿試験前後の吸収体の質量増加分[g]}/吸湿後の吸収体の質量[g]]×100
【0129】
(浸透速度の評価)
温度25±2℃の室内において、水平の台上に配置された吸収性物品の中心部に、内径3cmの液投入用シリンダーを具備した測定器具を載せた。次に、25±1℃に調整した80mLの試験液をシリンダー内に一度に投入(鉛直方向から供給)すると共にストップウォッチをスタートさせた。投入開始から、試験液が吸収体に完全に吸収されるまでの吸収時間を測定した。この操作を30分間隔で更に2回(計3回)行い、吸収時間の合計値を浸透速度(単位:秒)として得た。浸透速度は短い方が好ましい。結果を表1に示す。
【0130】
【表1】

【0131】
表1によれば、固めかさ密度及び吸湿時のその変化量が適切な吸水性樹脂粒子は、優れた浸透速度を有する吸収性物品を得ることに有効であることが確認される。」

(4)サポート要件の判断
発明の詳細な説明の段落【0005】によると、本件特許発明1ないし5の解決しようとする課題は、「優れた浸透速度を有する吸収性物品を得ることが可能な吸水性樹脂粒子を提供すること」であり、本件特許発明6ないし8の解決しようとする課題は、「当該吸水性樹脂粒子を用いた吸収体及び吸収性物品を提供すること」である(これらをまとめて、「本件特許発明の課題」という。)。
本件特許の発明の詳細な説明の実施例・比較例について見てみると、固めかさ密度の最小値0.835g/cm3であり、固めかさ密度の変化量の最小値0.035g/cm3、最高値0.049g/cm3であり、生理食塩水の保水量の最小値が39g/g、最高値が44g/gである実施例ないし4は、浸透速度が94秒以下と優れた浸透速度となっているのに対し、本件特許発明1の各物性のいずれかを満たさない比較例1ないし3(比較例1は固めかさ密度の変化量0.018g/cm3、比較例2は、固めかさ密度が0.464g/cm3、固めかさ密度の変化量0.016g/cm3、生理食塩水の保水量の最小値が37、比較例3は、固めかさ密度が0.468g/cm3、生理食塩水の保水量の最小値が37)は、浸透速度が104秒以上と、浸透速度が劣るものとなっている。
そして、本件特許の発明の詳細な説明の段落【0015】【0016】には「本実施形態においては、吸水性樹脂粒子の固めかさ密度が0.500g/cm3(g/cm3=g/mL)以上であり、吸水性樹脂粒子を温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの吸水性樹脂粒子の固めかさ密度の変化量が0.020g/cm3以上である。このような吸水性樹脂粒子によれば、優れた浸透速度を有する吸収性物品を得ることができる。このような効果が得られる原因は明らかではないが、本発明者は下記のように推察している。但し、原因は下記の内容に限定されない。
すなわち、固めかさ密度が0.500g/cm3以上であり、且つ、固めかさ密度の変化量が0.020g/cm3以上であると、同一容積の空間内において吸湿後に吸水性樹脂粒子が圧縮されやすく、また、圧縮された吸水性樹脂粒子の表面の粘性等が適度に変化(向上)するため、吸水性樹脂粒子が相互に又は他成分(例えば繊維状物)に固着しやすい。このような固着により、吸水性樹脂粒子の相互の接触面積、又は、吸水性樹脂粒子と他成分(例えば繊維状物)との接触面積が大きくなることで、液が吸水性樹脂粒子に速やかに吸収されやすい(例えば、繊維状物から吸水性樹脂粒子へ液が移動しやすい)。そのため、優れた浸透速度が得られると推察される。」と作用機序の説明がある。
さらに、同【0026】に「本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の生理食塩水の保水量は、下記の範囲が好ましい。保水量は、吸収性物品において優れた浸透速度を得やすい観点から、10g/g以上、15g/g以上、20g/g以上、25g/g以上、30g/g以上、35g/g以上、又は、40g/g以上が好ましい。保水量は、吸収性物品において優れた浸透速度を得やすい観点から、80g/g以下、75g/g以下、70g/g以下、65g/g以下、60g/g以下、55g/g以下、50g/g以下、45g/g以下、44g/g以下、43g/g以下、42g/g以下、又は、41g/g以下が好ましい。これらの観点から、保水量は、10〜80g/gが好ましく、30〜55g/gがより好ましい。保水量としては、室温(25℃±2℃)における保水量を用いることができる。保水量は、後述する実施例に記載の方法によって測定できる。」、同【0071】に、「吸水性樹脂粒子が、重合体粒子の表面上に配置された無機粒子を含む場合、無機粒子の含有量は、重合体粒子の全質量を基準として下記の範囲であってよい。無機粒子の含有量は、0.05質量%以上、又は、0.1質量%以上であってよい。無機粒子の含有量は、5.0質量%以下、3.0質量%以下、1.0質量%以下、0.5質量%以下、0.3質量%以下、又は、0.2質量%以下であってよい。」と取り得る範囲について記載されている。
以上の事項を勘案すると、当業者は、エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体と、当該重合体粒子の表面上に配置された無機粒子と、を含む吸水性樹脂粒子において、「前記無機粒子の含有量が、前記重合体粒子の全質量を基準として5.0質量%以下であり、生理食塩水の保水量が39〜50g/gであり、固めかさ密度が0.500g/cm3以上であり、温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの固めかさ密度の変化量が0.020g/cm3以上」の特定事項を満たすことにより、本件発明の課題を解決できると認識するものである。
そして、本件件特許発明1は、上記特定事項より限定された事項を有するものであるから、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件発明の課題を解決できるものである。
また、本件特許発明2ないし8についても同様である。
よって、本件特許発明1ないし8に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。

(5)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、主張第4 1(3)のように主張し、さらに令和3年12月2日付けの意見書において、次の主張をしている。
<主張ア>甲第15号証の実施例3 (親水性度100%の二酸化ケイ素微粉末を0.8%添加)と、比較例12(親水性度58%の二酸化ケイ素微粉末を0.8%添加)とを比較すると、吸収速度、ドライネス、漏れ有無に大きな違いが存在している(甲第15号証の段落0046、0057、表1、2を参照 )。つまり、甲第15号証の記載は、無機粒子の添加量が重合体粒子に対して5質量%以下であったとしても、無機粒子の親水性度が低い( 疎水性度が高い)場合には、本件発明の課題が解決できないことを示唆している。
<主張イ>甲第4号証の比較例7に係る比較吸水剤(7)は、CRCsが39.1g/gであり(甲第4号証の表1)、吸水体の液の取り込み速度は非常に悪かった旨が記載されている(甲第4 号証の表4の項目B)。また、甲第4号証の追試結果を示す甲第12号証によると、本件明細書に記載の「生理食塩保水量」は、甲第4号証に記載 の「CRCs」 よりも、3g/g程度高い値になると理解される。
以上の記載を総合すると、 生理食塩水の保水量が42g/g以上であるような吸水性樹脂粒子は、浸透速度が非常に遅いと推定される。つまり、甲第4号証および甲第12号証の記載によれば、少なくとも生理食塩水の保水量が42g/g以上の範囲においては、本件発明の課題が解決できないことを示唆している。
以上の議論を踏まえると、訂正後の請求項に係る発明は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものとは言えない。

そこで、検討するに、まず、上記(4)で検討したとおり、本件特許発明1の各物性を満たすことにより、本件特許発明の課題を解決できるものである。
そして、上記<主張ア>について検討するに、甲15の吸水性樹脂粒子は、本件特許発明ではないのであるから、甲15で示される技術的事項をそのまま本件特許発明にも当てはめることはできないし、また、本件特許発明であっても、疎水性度が高い無機粒子を使用した場合に、本件特許発明の課題を解決できないことを示す実験成績証明書等の証拠もない。
また、上記<主張イ>について検討するに、甲4の吸水性樹脂粒子は、本件特許発明ではないのであるから、甲4で示される技術的事項をそのまま本件特許発明にも当てはめることはできないし、また、本件特許発明であっても、生理食塩水の保水量が42〜50g/gである場合に、本件特許発明の課題を解決できないことを示す実験成績証明書等の証拠もない。
してみると、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載及び本件特許の出願時における吸水性樹脂粒子の分野の技術常識に鑑みれば、本件特許発明1ないし8が、「疎水性度が高い無機粒子」が含まれている場合や、「生理食塩水の保水量が42〜50g/g」である場合でも、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
よって、特許異議申立人の上記主張は首肯できない。

(6)取消申立理由3についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、異議申立理由3によっては取り消すことはできない。

4 異議申立理由4(実施可能要件)について
(1)判断基準
本件特許発明1ないし8はいずれも物の発明であるところ、物の発明の実施とは、その物の生産及び使用等をする行為であるから、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。

(2)発明の詳細な説明の記載
発明の詳細な説明の記載は、上記3(3)のとおりである。

(3)実施可能要件の判断
本件特許の発明の詳細な説明の段落【0015】ないし【0026】には、本件特許発明1ないし5の各発明特定事項についての具体的な記載があり、同【0028】ないし【0071】には本件特許発明1及び2に使用する原料及びその量並びに製造方法について具体的な記載があり、同【0093】ないし【0130】には、実施例として、吸水性樹脂粒子の具体的な製造方法及び得られた吸水性樹脂粒子が記載されている。
したがって、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1ないし8に係る物を生産し、使用することができる程度の記載があるといえる。
よって、本件特許発明1ないし8に関して、発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を充足する。

(4)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、上記第4(4)の主張をしており、さらに令和3年12月2日付けの意見書において、次の主張をしている。
<主張ア>乙第2号証に記載の吸水性樹脂粒子Aの固めかさ密度を測定する際には、容器の上部までほぼ同じ高さまで吸水性樹脂粒子が充填されていると推定される。しかし、甲第2号証(当審中:「乙第2号証」の誤記と認められる。以下、同様。)に添付の写真は、容器の上部に大きな空間が生じている状態になっており、上述の推定に反している。このことから、甲第2号証に添付の写真では、吸湿後の吸水性樹脂の一部(吸湿で生じた大きな凝集体など)を事前に除去したのではないかとの重大な疑念が生じる。
したがって、乙第2号証は、吸湿後の吸水性樹脂粒子が測定容器に適切に収容されることを証明するものではない。・・・
本件明細書の段落0116によると、固めかさ密度は、計算式「固めかさ密度[g/cm3]=(W1[g]−W0[g])/100[cm3]」
により算出される。
上記計算式の右辺の分母が100になっているのは、測定用容器の容積が100cm3であるためであり、これは、W1の測定時に測定容器いっぱいに吸水性樹脂粒子が充填されていることを前提としている。しかし、乙第2号証の写真の状態では、この前提が崩れている。
したがって、本件明細書の記載では、乙第2号証の写真のように容器上部に空間がある状態において、どのように固めかさ密度を測定すればよいのか、当業者には理解できない。
それゆえ、本件明細書の発明の詳細な説明は、訂正後の発明を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。
<主張イ>本件明細書の記載には、吸湿により大きな凝集体が生成している場合における固めかさ密度の測定に問題があり、一義的に定義できない。
本件明細書の段落0116によると、吸水性樹脂粒子を測定容器に添加する際には、「装置付属のスコップXS−12を用 いて100gの吸水性樹脂粒子を添加」する。この際、吸水性樹脂粒子をスコップで掬う前に混合するなどの記載はない。すると、吸湿後の吸水性樹脂粒子に大きな凝集体が存在する場合には、凝集体がスコップの先端に位置するならば当該凝集体は測定容器の底部に入り、凝集体がスコップの奥に位置するならば当該凝集体は測定容器の上部に入る。つまり、本件明細書の記載は、吸水性樹脂粒子の凝集体が存在する場合に、当該凝集体が測定容器のどこに入るかについて、何ら指示していない。
しかし、凝集体が測定容器の上部に入るか底部に入るかは、固めかさ密度の測定結果に影響する。下記参考図2に示すように、凝集体が容器上部に位置する場合は、すりきりによって凝集体が除去され、その分測定重量が減少する。一方、凝集体が容器底部に位置する場合は、このような現象は生じない。
したがって、本件明細書の記載は、吸水性樹脂粒子の凝集体が存在する場合の固めかさ密度の測定方法について、当業者に理解できる程度の説明を与えていない。
それゆえ、本件明細書の発明の詳細な説明は、訂正後の発明を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。

そこで、検討するに、まず、上記(3)で検討したとおり、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1ないし8に係る物を生産し、使用することができる程度の記載があるといえる。
そして、<主張ア>について検討するに、乙2の写真は、単に、吸水性樹脂粒子を測定容器に添加する際の様子を示す程度のものであって、「容器の上部に大きな空間が生じている状態」で測定することを示すものではない。
また、<主張イ>について検討するに、特許異議申立人が述べるように、凝集体が容器底部に位置する場合は、上記のような現象は生じないのであるから、凝集体が存在する場合、当業者であれば、容器底部に入れて固めかさ密度を測定するのが通常である。
よって、特許異議申立人の上記主張は首肯できない。

(5)異議申立理由4についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、異議申立理由4によっては、取り消すことはできない。

第6 取消理由で採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由について
取消理由で採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由は、異議申立理由4(甲第8号証に基づく進歩性)である。
1 異議申立理由4(甲第8号証に基づく進歩性)について
(1)甲8に記載された事項及び甲8発明
ア 甲8に記載された事項
甲8には、「吸水性樹脂粒子の製造方法、それにより得られる吸水性樹脂粒子、およびそれを用いた吸収体および吸収性物品」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
「[0006] 本発明の目的は、高い保水能(吸収容量)、高い加圧下吸水能およびゲル強度を 有し、かつ、水可溶分が少なく衛生材料に好適に使用できる吸水性樹脂粒子の製造方法、それにより得られる吸水性樹脂粒子、およびそれを用いた吸収体および吸収性物品を提供することにある。
「0048]実施例1
工程1:吸水性樹脂粒子前駆体の調製
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計および窒素ガス導入管を備えた100mL容の五つ口円筒型丸底フラスコ内に、n―ヘプタン340gおよびHLBが3.0のショ糖脂肪酸エステル〔三菱化学フーズ株式会社製、商品名:S―370〕0.92gを加え、分散させながら70℃まで昇温して溶解させた後、55℃まで冷却した。
[0049] これとは別に、500mL容の三角フラスコ内に、80.5質量%アクリル酸水溶液92g(1.0モルを加えた。外部から冷却しつつ、このフラスコ内に、30質量%水酸化ナトリウム水溶液102.2g (0.77モル)を滴下して、アクリル酸の75モル%を中和した。さらに、水50.2g、水溶性ラジカル重合開始剤の過硫酸カリウム 0.11g(0.00041モル)および架橋剤のエチレングリコールジグリシジルエーテル8.3mg(0.000047モル)を添加し、1段目重合用の単量体水溶液を調製した。
この1段目重合用の単量体水溶液の全量を、前記五つ口円筒型丸底フラスコに、撹拌下で加えて分散させ、系内を窒素ガスで十分に置換し、浴温を70℃に保持し、重合反応を1時間行った。その後、得られたスラリー状の反応混合物を室温まで冷却した。
[0050] これとは別の500mL容の三角フラスコ内に、80.5質量%アクリル酸水溶液119.1g (1.32モル)を加え、冷却しつつ30質量%水酸化ナトリウム水溶液132.2g(0.99モル)を滴下して、アクリル酸の75モル%を中和し、さらに水27.4gおよび過硫酸カリウム0.14g (0.00052モル)を添加し、2段目重合用の単量体水溶液を調製し、氷水浴内で冷却した。
この2段目重合用の単量体水溶液の全量を、前記で得られた反応混合物に添加した後、再び系内を窒素ガスで十分に置換し、浴温を70℃に保持し、2段目の重合反応を2時間行った。
[0051] 重合終了後、120℃の油浴で加熱し、共沸蒸留により水234gのみを系外に除去し、吸水性樹脂粒子前駆体を得た。この時の吸水性樹脂粒子前駆体の残存水分量は84gであり、水分率は 40%であった (本実施例の理論樹脂固形分量は209gである)
[0052]工程2:吸水性樹脂粒子の製造
得られた吸水性樹脂粒子前駆体に、後架橋剤として2質量%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液4.22g (0.00049モル)を添加して混合した。
この混合物を120℃の油浴で加熱し、共沸蒸留により水のみを系外に除去しながら第1の後架橋反応を行った。この時28gの水分が除去され、残存水分量は60gで、水分率29%となった。
引続き、後架橋剤として2質量%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液2.53g(0.00029モル)を添加して混合した。
この混合物を120℃の油浴で加熱し、得られたゲル状物の水分および n―ヘプタンを蒸留により除去、乾燥しながら第2の後架橋反応を行い、質量平均粒子径が 381μmの吸水性樹脂粒子222.5gを得た。なお、この吸水性樹脂粒子の最終水分率(乾燥減量)は5%であった。
[0053]実施例2
実施例1において、第1の後架橋反応工程に用いた後架橋剤である2質量%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液の添加量を2.11g(0.00024モル)に、第2の後架橋反応工程に用いた後架橋剤である2質量%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液の添加量を2.11g (0.00024モル)にそれぞれ変更し、第1の後架橋反応工程における水分率と第2の後架橋反応工程における水分率をそれぞれ45%、29%とした以外は実施例1と同様の操作を行い、質量平均粒子径が373μmの吸水性樹脂粒子222.4gを得た。なお、この吸水性樹脂粒子の最終水分率(乾燥減量)は4%であった。
[0054]実施例 3
工程1:吸水性樹脂粒子前駆体の調製
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計および窒素ガス導入管を備えた1%0mL容の五つ口円筒型丸底フラスコ内に、n―ヘプタン340gおよびHLBが3.0のショ糖脂肪酸エステル〔三菱化学フーズ株式会社製、商品名:S―370〕0.92gを加え、分散させながら70℃まで昇温して溶解させた後、55℃まで冷却した。
[0055] これとは別に、500mL容の三角フラスコ内に、80.5質量%アクリル酸水溶液92g(1.02モル)を加えた。外部から冷却しつつ、このフラスコ内に、30質量%水酸化ナトリウム水溶液 102.2g(0.77モル)を滴下して、アクリル酸の75モル%を中和した。さらに、水50.2g、水溶性ラジカル重合開始剤の過硫酸カリウム0.11g(0.00041モル)および架橋剤のエチレングリコールジグリシジルエーテル8.3mg(0.000047モル)を添加し、1段目重合用の単量体水溶液を調製した。
この1段目重合用の単量体水溶液の全量を、前記五つ口円筒型丸底フラスコに、撹拌下で加えて分散させ、系内を窒素ガスで十分に置換し、浴温を 70℃に保持し、重合反応を1時間行った。その後、得られたスラリー状の反応混合物を室温まで冷却した。
[0056] これとは別の500mL容の三角フラスコ内に、80.5質量%アクリル酸水溶液119.1g (1.32モル)を加え、冷却しつつ30質量%水酸化ナトリウム水溶液132.2g(0.99モル)を滴下して、アクリル酸の75モル%を中和し、さらに水27.4g、過硫酸カリウム0.14g (0.00052モル)および亜リン酸二ナ卜リウム・五水和物0.54g(0.0025モル)を添加し、2段目重合用の単量体水溶液を調製し、氷水浴内で冷却した。
この2段目重合用の単量体水溶液の全量を、前記で得られた反応混合物に添加した後、再び系内を窒素ガスで十分に置換し、浴温を70℃に保持し、2段目の重合反応を2時間行った。
[0057] 重合終了後、120℃の油浴で加熱し、共沸蒸留により水224gのみを系外に除去し、吸水性樹脂粒子前駆体を得た。この時の吸水性樹脂粒子前駆体の残存水分量は94gであり、水分率は 45%であった(本実施例の理論樹脂固形分量は209である)。
[0058]工程2:吸水性樹脂粒子の製造
得られた吸水性樹脂粒子前駆体に、後架橋剤として2質量%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液4.22g(0.00049モル)を添加して混合した。
この混合物を120℃の油浴で加熱し、共沸蒸留により水のみを系外に除去しながら 第1の後架橋反応を行った。この時36gの水分が除去され、残存水分量は62gで、水分率30%となった。
引き続き、後架橋剤として、2質量%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液1.48g (0.00017モル)を添加して混合した。
この混合物を 120℃の油浴で加熱し、得られたゲル状物の水分および n―ヘプタンを蒸留により除去、乾燥しながら第2の後架橋反応を行い、質量平均粒子径が380μmの吸水性樹脂粒子223.1gを得た。なお、この吸水性樹脂粒子の最終水分率(乾燥減量)は5%であった。
[0059]実施例4
実施例3において、第 1の後架橋反応工程に用いた後架橋剤である2質量%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液の添加量を6.33g (0.00073モル)に、第2の後架橋反応工程に用いた後架橋剤である2質量%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液の添加量を0.53g (0.000061モル)にそれぞれ変更し、第1の後架橋反応工程における水分率と第2の後架橋反応工程における水分率をそれぞれ45%、29%とした以外は実施例3と同様の操作を行い、質量平均粒子径が 37Oμmの吸水性樹脂粒子222.7gを得た。なお、この吸水性樹脂粒子の最終水分率(乾燥減量)は5%であった。
[0060]実施例 5
工程1:吸水性樹脂粒子前駆体の調製
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計および窒素ガス導入管を備えた1000mL容の五つ口円筒型丸底フラスコ内に、n―ヘプタン340gおよびHLBが3.0のショ糖脂肪酸エステル〔三菱化学フーズ株式会社製、商品名:S―370〕0.92gを加え、分散させながら70℃まで昇温して溶解させた後、55℃まで冷却した。
[0061] これとは別に、500mL容の三角フラスコ内に、80.5質量%アクリル酸水溶液92g(1.02モル)を加えた。外部から冷却しつつ、このフラスコ内に、30質量%水酸化ナトリウム水溶液 102.2g(0.77モル)を滴下して、アクリル酸の75モル%を中和した。さらに、水50.2g、水溶性ラジカル重合開始剤の2, 2’−アゾビス(2―アミジノプロパン)二塩酸塩0.11g(0.00041モル)および架橋剤のエチレングリコールジグリシジルエーテル8.3mg(0.000047モル)を添加し、1段目重合用の単量体水溶液を調製した。
この1段目重合用の単量体水溶液の全量を、前記五つ口円筒型丸底フラスコに、撹拌下で加えて分散させ、系内を窒素ガスで十分に置換し、浴温を70℃に保持し、重合反応を1時間行った。その後、得られたスラリー状の反応混合物を室温まで冷却した。
[0062] これとは別の500mL容の三角フラスコ内に、80.5質量%アクリル酸水溶液119.1g (1.32モル)を加え、冷却しつつ30質量%水酸化ナトリウム水溶液132.2g(0.99モル)を滴下して、アクリル酸の75モル%を中和し、さらに水27.4gおよび2, 2' ―アゾビス(2―アミジノプロパン)二塩酸塩0.14g (0.00052モル)およびエチレングリコールジグリシジルエーテル 10.7mg(0.000061モル)を添加し、2段目重合用の単量体水溶液を調製し、氷水浴内で冷却した。
この2段目重合用の単量体水溶液の全量を、前記で得られた反応混合物に添加した後、再び系内を窒素ガスで十分に置換し、浴温を70℃に保持し、2段目の重合反応を2時間行った。
[0063] 重合終了後、120℃の油浴で加熱し、共沸蒸留により水224gのみを系外に除去し 、吸水性樹脂粒子前駆体を得た。この時の吸水性樹脂粒子前駆体の残存水分量は94gであり、水分率は45%であった (本実施例の理論樹脂固形分量は 209gである)
[0064]工程2:吸水性樹脂粒子の製造
得られた吸水性樹脂粒子前駆体に、後架橋剤として2質量%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液4.22g (0.00049モル)を添加して混合した。
この混合物を120℃の油浴で加熱し、共沸蒸留により水のみを系外に除去しながら第1の後架橋反応を行った。この時38gの水分が除去され、残存水分量は60gで、水分率29%となった。
引続き、後架橋剤として2質量%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液3.17g(0.00036モル)を添加して混合した。
この混合物を120℃の油浴で加熱し、得られたゲル状物の水分およびn―ヘプタンを蒸留により除去、乾燥しながら第2の後架橋反応を行い、質量平均粒子径が378μmの吸水性樹脂粒子223. 7gを得た。なお、この吸水性樹脂粒子の最終水分率(乾燥減量)は3%であった。」
「[0074](1)吸水性樹脂粒子の生理食塩水保水能
吸水性樹脂粒子2.Ogを、綿袋(メンブロード60番、横100mm×縦200mm)中に 量り取り、 500mL容のビーカー中に入れた。綿袋に生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム水溶液、以下同様) 500gを一度に注ぎ込み、吸水性樹脂粒子のママコが発生しないように食塩水を分散させた。綿袋の上部を輪ゴムで縛り、1時間放置して、吸水性樹脂粒子を十分に膨潤させた。遠心力167Gになるよう設定した脱水機〔国産遠心機株式会社、品番:H―122〕を用いて綿袋を1分間脱水して、脱水後の膨潤ゲルを含んだ綿袋の質量Wa(g)を測定した。吸水性#脂粒子を添加せずに同様の操作 を行い、綿袋の湿潤時空質量Wb(g)を測定し、以下の式から保水能を算出した。
[0075] [数1]
保水能(g/g) = [Wa ― Wb] (g) /吸水性樹脂粒子の質量(g)])
「[0090] [表1]


「[0098] [表 2]


「請求の範囲
[1] 水溶性エチレン性不飽和単量体を重合して得られる吸水性樹脂粒子前駆体に、少なくとも2段階で後架橋剤を添加して後架橋反応を行う工程を含むことを特徴とする吸水性樹脂粒子の製造方法。
・・・
[5] 生理食塩水保水能が40〜60g/g、4.14kPa加圧下の生理食塩水吸水能が15ml/g以上、ゲル強度が500Pa以上、水可溶分が15質量%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法で得られる吸水性#脂粒子。
[6] 請求項5記載の吸水性樹脂粒子と親水性繊維とからなる吸収体。
[7] 請求項6に記載の吸収体を、液体透過性シートと液体不透過性シートとの間に保持してなる吸収性物品。」

イ 甲8発明
甲8には、上記実施例1ないし5で製造された、各生理食塩水保水能が42g/g、45g/g、43g/g、47g/g、52g/gである吸水性樹脂粒子の発明(以下、順に「甲8実施例1発明」という。)が記載されていると認める。

(2)本件特許発明1について
ア 甲8実施例1発明との対比
本件特許発明1と甲8実施例1発明とを対比すると、両者は以下の点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。
<一致点>
エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子、を含む吸水性樹脂粒子であって、
前記エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、
前記(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量に対して70〜100モル%である、吸水性樹脂粒子。
<相違点8−1−1>
本件特許発明1が、「固めかさ密度が0.750g/cm3以上であり、温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの固めかさ密度の変化量が0.020〜0.038g/cm3であり、吸湿後の当該固めかさ密度が吸湿前よりも小さい」と特定されているのに対し、甲8実施例1発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点8−1−2>
本件特許発明1が、「当該重合体粒子の表面上に配置された無機粒子」を含むと共に「前記無機粒子の含有量が、前記重合体粒子の全質量を基準として5.0質量%以下」と特定されているのに対し、甲8実施例8発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点8−1−3>
本件特許発明1が、「温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させた後の前記吸水性樹脂粒子の水分率が20質量%以下であり」と特定されているのに対し、甲8実施例1発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点8−1−4>
本件特許発明1が、「生理食塩水の保水量が40〜50g/g」と特定されているのに対し、甲8実施例1発明は、「生理食塩水保水能が42g/g」である点。

そこで、上記相違点について検討する。
<相違点8−1−1>について
「固めかさ密度が0.750g/cm3以上であり、温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの固めかさ密度の変化量が0.020〜0.038g/cm3であり、吸湿後の当該固めかさ密度が吸湿前よりも小さ」くすることについて、甲8及びその他の証拠にもなく、また、当該事項とする動機付けは甲8及びその他の証拠にもない。
そうすると、甲8実施例1発明において、「生理食塩水の保水量が40〜50g/g」であり、かつ「固めかさ密度が0.750g/cm3以上であり、温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの固めかさ密度の変化量が0.020〜0.038g/cm3であり、吸湿後の当該固めかさ密度が吸湿前よりも小さ」くすることは当業者にとって容易であるとはいえない。
そして、本件特許発明1は、甲8実施例1発明からは予測し得ない格別顕著な効果を奏するものである。
よって、本件特許発明1は、その他の相違点を検討するまでもなく、甲8実施例1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

イ 甲8実施例2発明ないし甲8実施例5発明との対比
本件特許発明1と甲8実施例2発明ないし甲8実施例5発明とを対比すると、両者は上記アと同様の点で一致し、相違又は一応相違する。
よって、本件特許発明1は、上記アで示したのと同様、甲8実施例2発明ないし甲8実施例5発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

ウ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、以下の主張をしている。
「(構成要件B)
構成要件Bに関して、本件明細書には、『吸水性樹脂粒子は、重合体粒子の表面上に配置された複数の無機粒子を含んでいてもよい』とのみ記載されているに過ぎない。また、吸湿流動性の改善やブロッキング防止のために吸水性樹脂粒子に無機粒子を添加することは、本技術分野において通常に行われている・・・・
してみると、甲第8号証に記載された発明において、吸水性樹脂粒子に無機粒子を添加 して構成要件Bを充足させることは、通常の創作能力の範囲内で行いうることであり、格別顕著な効果をもたらすものでもない。
・・・
(構成要件F1およびG)
(ク4) に記載されている通り、本件明細書に記載された実施例1〜3と、甲第8号証に記載された実施例1〜5とは、吸水性樹脂粒子の製造方法が酷似している。・・・
以上を鑑みると、本件明細書の記載によれば、甲第8号証の実施例1〜5に係る吸水性樹脂粒子は、構成要件F1およびGを満たしている蓋然性が非常に高い。・・・
したがって、本件発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」
しかしながら、仮に甲8実施例1発明において、無機粒子を配合することが容易なことであったとしても、無機粒子の配合により吸水性樹脂粒子の物性は影響されるため、配合された変化後の他の物性がどのようになるかは不明となるのであるから、甲8実施例1発明において、無機粒子配合後に「固めかさ密度が0.750g/cm3以上であり、温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの固めかさ密度の変化量が0.020〜0.038g/cm3であり、吸湿後の当該固めかさ密度が吸湿前よりも小さ」くなるのかは依然として不明である。
よって、特許異議申立人の主張は首肯できない。

エ 小括
したがって、本件特許発明1は、甲8に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(3)本件特許発明2ないし8について
本件特許発明2ないし8は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲8に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(4)異議申立理由4についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし8は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、異議申立理由4によっては取り消すことはできない。

第7 結語
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし8に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件特許の請求項1ないし8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン性不飽和単量体に由来する構造単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、当該重合体粒子の表面上に配置された無機粒子と、を含む吸水性樹脂粒子であって、
前記エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、
前記(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が、前記吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量に対して70〜100モル%であり、
前記無機粒子の含有量が、前記重合体粒子の全質量を基準として5.0質量%以下であり、
温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させた後の前記吸水性樹脂粒子の水分率が20質量%以下であり、
生理食塩水の保水量が40〜50g/gであり、
固めかさ密度が0.750g/cm3以上であり、
温度30℃、相対湿度80%で1時間吸湿させたときの固めかさ密度の変化量が0.020〜0.038g/cm3であり、吸湿後の当該固めかさ密度が吸湿前よりも小さい、吸水性樹脂粒子。
【請求項2】
前記固めかさ密度が0.750〜0.950g/cm3である、請求項1に記載の吸水性樹脂粒子。
【請求項3】
前記固めかさ密度が0.830〜0.950g/cm3である、請求項1に記載の吸水性樹脂粒子。
【請求項4】
生理食塩水の保水量が40〜45g/gである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸水性樹脂粒子。
【請求項5】
中位粒子径が250〜600μmである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の吸水性樹脂粒子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の吸水性樹脂粒子を含有する、吸収体。
【請求項7】
請求項6に記載の吸収体を備える、吸収性物品。
【請求項8】
おむつである、請求項7に記載の吸収性物品。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-01-31 
出願番号 P2019-055309
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (C08J)
P 1 651・ 536- YAA (C08J)
P 1 651・ 537- YAA (C08J)
P 1 651・ 121- YAA (C08J)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 細井 龍史
植前 充司
登録日 2020-10-16 
登録番号 6780048
権利者 住友精化株式会社
発明の名称 吸水性樹脂粒子、吸収体及び吸収性物品  
代理人 古下 智也  
代理人 沖田 英樹  
代理人 清水 義憲  
代理人 古下 智也  
代理人 吉住 和之  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 沖田 英樹  
代理人 清水 義憲  
代理人 吉住 和之  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  
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