• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61J
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61J
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61J
審判 全部申し立て 発明同一  A61J
管理番号 1384139
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-06-22 
確定日 2022-02-03 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6804744号発明「薬剤分包機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6804744号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項1、〔2−7〕について訂正することを認める。 特許第6804744号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6804744号(以下、「本件特許」という。)の請求項1〜7に係る特許についての出願は、令和2年12月7日にその特許権の設定登録(特許掲載公報の発行日 令和2年12月23日)がなされたところ、令和3年6月22日に特許異議申立人中谷浩美(以下、「申立人」という。)により全請求項に係る特許について特許異議の申立てがなされた。
当審において、令和3年8月25日付けで取消理由が通知されたところ、特許権者より令和3年9月7日付けで意見書と訂正請求書が提出され、申立人より令和3年11月11日付けで意見書が提出された。
以下、令和3年9月7日付けの訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。

第2 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容
本件訂正の内容は、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記予備着座部が前記薬剤収集機構の収集範囲の外に位置していることを特徴とする薬剤分包機。」とあるのを、「前記予備着座部が前記薬剤収集機構の収集範囲の外に位置しており、前記予備着座部のそれぞれに対応させて点灯部材が設けられており、前記薬剤カセットのうち案内対象の薬剤を収容したものが前記予備着座部の何れかに装着されているときには前記点灯部材のうち当該予備着座部に対応するのものを点灯させる案内手段が設けられており、前記案内手段によって点灯制御される並灯部材が前記予備庫部の表面に設けられており、前記案内手段が、前記点灯部材のうち前記予備庫部の内部の前記予備着座部に対応するものを点灯させたときに、その点灯させた点灯部材を具備している前記予備庫部に設けられている前記並灯部材も点灯させるようになっており、前記予備庫部が前記予備着座部への前記薬剤カセットの着脱を前記薬品庫部寄りの側面からは行えるが当該側面の対向側面に加え上面からも行えないものであることを特徴とする薬剤分包機。」(審決注:下線部は訂正箇所。以下同じ。)に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記包装装置が前記薬品庫部の下方に位置しており、前記予備庫部が前記包装装置の側方まで延設されている又は前記包装装置の側方にも設けられていることを特徴とする請求項1記載の薬剤分包機。」とあるのを、「薬剤を収容しうる薬剤カセットを着脱可能に保持するベースを複数装備した薬品庫部と、薬剤を受け入れて区分封入する包装装置と、前記薬剤カセットから前記ベースを介して排出された薬剤を収集して前記包装装置に引き渡す薬剤収集機構とを備えた薬剤分包機において、前記薬剤収集機構が上部収集機構と下部収集機構とを具備したものであり、前記上部収集機構が前記薬品庫部に組み込まれており、前記下部収集機構が前記薬品庫部の下方に位置しており、前記包装装置が前記下部収集機構の下方に位置しており、前記薬剤カセットを着脱可能に保持しうる予備着座部を複数装備した予備庫部が前記薬品庫部の側方に設けられて、前記予備着座部が前記薬剤収集機構の収集範囲の外に位置しており、前記包装装置が前記薬品庫部の下方に位置しており、前記予備庫部が前記包装装置の側方まで延設されている又は前記包装装置の側方にも設けられており、前記予備庫部が前記予備着座部への前記薬剤カセットの着脱を前記薬品庫部寄りの側面からは行えるが当該側面の対向側面に加え上面からも行えないものであることを特徴とする薬剤分包機。」に訂正する(請求項2を引用する請求項3〜7も同様に訂正する。)。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「請求項1又は請求項2に記載された薬剤分包機。」とあるのを、「請求項2記載の薬剤分包機」と訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に「前記予備着座部が前記ベースの前記着座部と同じもの又は前記薬剤カセットも前記予製カセットも装着させて保持しうる互換性のあるものであることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載された薬剤分包機。」とあるのを、「前記予備着座部が前記ベースの前記着座部と同じもの又は前記薬剤カセットも予製カセットも装着させて保持しうる互換性のあるものであり、前記予製カセットが前記薬剤カセットに対応していて前記薬剤カセットを置き換えることができるものであることを特徴とする請求項2乃至請求項4の何れかに記載された薬剤分包機。」と訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1乃至請求項5の何れかに記載された薬剤分包機。」とあるのを、「請求項2乃至請求項5の何れかに記載された薬剤分包機。」と訂正する。

2 本件訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に「前記予備着座部のそれぞれに対応させて点灯部材が設けられており、前記薬剤カセットのうち案内対象の薬剤を収容したものが前記予備着座部の何れかに装着されているときには前記点灯部材のうち当該予備着座部に対応するのものを点灯させる案内手段が設けられており、前記案内手段によって点灯制御される並灯部材が前記予備庫部の表面に設けられており、前記案内手段が、前記点灯部材のうち前記予備庫部の内部の前記予備着座部に対応するものを点灯させたときに、その点灯させた点灯部材を具備している前記予備庫部に設けられている前記並灯部材も点灯させるようになっており、前記予備庫部が前記予備着座部への前記薬剤カセットの着脱を前記薬品庫部寄りの側面からは行えるが当該側面の対向側面に加え上面からも行えないものである」という構成(以下、「限定構成」という。)で限定を加えるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。

新規事項の追加について
訂正事項1が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件特許明細書等」という。)に記載された事項の範囲内でなされたものかについて、以下検討する。
上記限定構成は、(ア)「前記予備着座部のそれぞれに対応させて点灯部材が設けられており、前記薬剤カセットのうち案内対象の薬剤を収容したものが前記予備着座部の何れかに装着されているときには前記点灯部材のうち当該予備着座部に対応するのものを点灯させる案内手段が設けられて」いる構成(以下、「構成要件(ア)」という。)、(イ)「前記案内手段によって点灯制御される並灯部材が前記予備庫部の表面に設けられており、前記案内手段が、前記点灯部材のうち前記予備庫部の内部の前記予備着座部に対応するものを点灯させたときに、その点灯させた点灯部材を具備している前記予備庫部に設けられている前記並灯部材も点灯させるようになって」いる構成(以下、「構成要件(イ)」という。)、(ウ)「前記予備庫部が前記予備着座部への前記薬剤カセットの着脱を前記薬品庫部寄りの側面からは行えるが当該側面の対向側面に加え上面からも行えないものである」という構成(以下、「構成要件(ウ)という。)からなっているところ、構成要件(ア)については訂正前の請求項6に、また、構成要件(イ)については訂正前の請求項7に、それぞれ記載されているから、構成要件(ア)及び構成要件(イ)による限定は本件特許明細書等に記載された事項である。
ここで、構成要件(ウ)は、(ウー1)「前記予備庫部が前記予備着座部への前記薬剤カセットの着脱を前記薬品庫部寄りの側面からは行える」、(ウー2)「前記予備庫部が前記予備着座部への前記薬剤カセットの着脱を前記薬品庫部寄りの側面・・・の対向側面・・・から・行えないものである」、(ウー3)「前記予備庫部が前記予備着座部への前記薬剤カセットの着脱を・・・上面から・行えないものである」の各構成からなるところ、(ウー1)については、本件特許明細書の段落【0033】の「棚部62のうち本体部51寄りの右側面が解放されていることから、予備庫部60を付加部52から前方へ十分に引き出すと、予備庫部60の内部に装備されている予備着座部64が総て露出するので、予備庫部60の予備着座部64に予製カセット65を装着させたり(図1(d)参照)、そこから予製カセット65を取り出したりする作業を、本体部51の手前で行うことができるものとなっている。」という記載を図1(a)〜(d)の記載と併せて参照すれば、「棚部62のうち本体部51寄りの右側面」とは「薬品庫部寄りの側面」のことであることは明らかであり、当該側面から予備着座部へ薬剤カセットを着脱ができることが本件特許明細書等には記載されているといえるから、(ウー1)による限定は本件特許明細書等に記載された事項である。
また、(ウー2)については、本件特許明細書の段落【0036】の「予備着座部64が何れも本体部51の手前に向けて露出するので、薬剤分包機50の両隣に他の装置などが設置されていても、それによって予製カセット収納作業を妨げられることなく、隣の作業を妨げることもなく、予製カセット65を予備庫部60に収納することができる。」という記載からすれば、本件特許明細書等に記載された発明は、「両隣に他の装置などが設置されている」側の側面(すなわち、薬品庫部寄りの側面の対向側面)からの予備着座部への薬剤カセットの着脱を行えないようにしているといえるから、(ウー2)による限定は本件特許明細書等に記載された事項である。
さらに、(ウー3)については、図1(b)〜(d)の記載を参照すれば、予備着座部64は上下方向に設けられた棚63に設けられたものであるから、薬剤カセット65の着脱を上面から行えば上段の棚部62と干渉することになり、そのような着脱を本件特許明細書等に記載された発明は排除しているものと認められるから、(ウー3)による限定は本件特許明細書等に記載された事項である。
よって、訂正事項1は本件特許明細書等に記載された事項の範囲内でなされたものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更について
上記イで検討したように、訂正事項1は本件特許明細書等に記載された事項の範囲内の構成で訂正前の請求項1を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、請求項1を引用する訂正前の請求項2の請求項間の引用関係を解消し、独立形式の請求項に改めるとともに、「前記予備庫部が前記予備着座部への前記薬剤カセットの着脱を前記薬品庫部寄りの側面からは行えるが当該側面の対向側面に加え上面からも行えないものである」という構成で限定を加えるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」及び同項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
そして、当該構成は上記(1)イの構成要件(ウ)と同じであるから、上記(1)イで検討したのと同様、訂正事項2は本件特許明細書等に記載された事項の範囲内でなされたものであり、また、上記(1)ウで検討したように実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前請求項1又は2を引用していた請求項3を訂正後の請求項2のみを引用するように改めたものであるから、訂正前の請求項1の引用部分の削除であり、引用関係の数を減少させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
そして、訂正事項3は上記のように引用関係の数を減少させるものであるから、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内でなされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(4)訂正事項4について
訂正事項4は、「前記予製カセット」の記載を「予製カセット」に改めることにより、引用が明瞭でない「前記」との記載を削除し、「前記予製カセットが前記薬剤カセットに対応していて前記薬剤カセットを置き換えることができるものである」との構成を加えることにより明瞭でない記載を釈明し、さらに、訂正前請求項1〜4を引用していた請求項5を訂正後の請求項2〜4を引用するように改め、訂正前の請求項1の引用部分を削除し、引用関係の数を減少させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」及び同項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
そして、本件特許明細書の段落【0019】の「薬剤カセットと予製カセットとの交換作業が迅速かつ円滑に行えることとなる。」という記載、段落【0032】の「多数の予備着座部64は(図1(c)参照)、何れにも、量産されている既述のベース30の着座部31(静的部材)と同じものが採用されているので、何れも、既述の薬剤カセット20ひいては予製カセット65を着脱可能に保持しうるものであって、調達容易かつ低廉なものとなっている。」という記載及び段落【0039】の「補充対象の薬剤カセット20と交換可能な予製カセット65」という記載等からすれば、予製カセットは薬剤カセットに対応していて薬剤カセットと置き換えることができるものであるから、上記構成の加入は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内でなされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(5)訂正事項5について
訂正事項5は、訂正前請求項1〜5を引用していた請求項6を訂正後の請求項2〜5を引用するように改め、訂正前の請求項1の引用部分を削除するものであり、引用関係の数を減少させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
そして、訂正事項5は上記のように引用関係の数を減少させるものであるから、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内でなされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(6)一群の請求項について
訂正事項1ないし5に係る訂正前の請求項1ないし7の訂正について、訂正前の請求項2ないし7は、それぞれ訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用しているから訂正事項1によって訂正される請求項1と一群の請求項である。
よって、本件訂正は特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとに請求されたものである。

(7)小括
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1、3、4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであるから、訂正後の請求項1、〔2〜7〕について訂正を認める。

第3 本件特許発明
上記のとおり本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1〜7に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」〜「本件発明7」といい、これらをまとめて「本件発明」ということもある。)は訂正特許請求の範囲の請求項1〜7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

【請求項1】
薬剤を収容しうる薬剤カセットを着脱可能に保持するベースを複数装備した薬品庫部と、薬剤を受け入れて区分封入する包装装置と、前記薬剤カセットから前記ベースを介して排出された薬剤を収集して前記包装装置に引き渡す薬剤収集機構とを備えた薬剤分包機において、前記薬剤収集機構が上部収集機構と下部収集機構とを具備したものであり、前記上部収集機構が前記薬品庫部に組み込まれており、前記下部収集機構が前記薬品庫部の下方に位置しており、前記包装装置が前記下部収集機構の下方に位置しており、前記薬剤カセットを着脱可能に保持しうる予備着座部を複数装備した予備庫部が前記薬品庫部の側方に設けられて、前記予備着座部が前記薬剤収集機構の収集範囲の外に位置しており、前記予備着座部のそれぞれに対応させて点灯部材が設けられており、前記薬剤カセットのうち案内対象の薬剤を収容したものが前記予備着座部の何れかに装着されているときには前記点灯部材のうち当該予備着座部に対応するのものを点灯させる案内手段が設けられており、前記案内手段によって点灯制御される並灯部材が前記予備庫部の表面に設けられており、前記案内手段が、前記点灯部材のうち前記予備庫部の内部の前記予備着座部に対応するものを点灯させたときに、その点灯させた点灯部材を具備している前記予備庫部に設けられている前記並灯部材も点灯させるようになっており、前記予備庫部が前記予備着座部への前記薬剤カセットの着脱を前記薬品庫部寄りの側面からは行えるが当該側面の対向側面に加え上面からも行えないものであることを特徴とする薬剤分包機。

【請求項2】
薬剤を収容しうる薬剤カセットを着脱可能に保持するベースを複数装備した薬品庫部と、薬剤を受け入れて区分封入する包装装置と、前記薬剤カセットから前記ベースを介して排出された薬剤を収集して前記包装装置に引き渡す薬剤収集機構とを備えた薬剤分包機において、前記薬剤収集機構が上部収集機構と下部収集機構とを具備したものであり、前記上部収集機構が前記薬品庫部に組み込まれており、前記下部収集機構が前記薬品庫部の下方に位置しており、前記包装装置が前記下部収集機構の下方に位置しており、前記薬剤カセットを着脱可能に保持しうる予備着座部を複数装備した予備庫部が前記薬品庫部の側方に設けられて、前記予備着座部が前記薬剤収集機構の収集範囲の外に位置しており、前記包装装置が前記薬品庫部の下方に位置しており、前記予備庫部が前記包装装置の側方まで延設されている又は前記包装装置の側方にも設けられており、前記予備庫部が前記予備着座部への前記薬剤カセットの着脱を前記薬品庫部寄りの側面からは行えるが当該側面の対向側面に加え上面からも行えないものであることを特徴とする薬剤分包機。

【請求項3】
前記予備庫部が前方へ引出可能になっており、前記予備着座部が何れも前記予備庫部の内部に装備されており、前記予備庫部を前方へ引き出すと前記予備着座部が露出するようになっていることを特徴とする請求項2記載の薬剤分包機。

【請求項4】
前記予備庫部が、前記予備着座部を横に並べて搭載した棚を上下多段に具備しており、前記棚が、全段まとめて一体的に又は各段毎に若しくは幾つかの分割群毎に前方へ引き出せるようになっていることを特徴とする請求項3記載の薬剤分包機。

【請求項5】
前記ベースが前記薬剤カセットを保持する着座部を具備するとともに前記着座部に保持されている前記薬剤カセットの薬剤排出用作動部材を駆動する動的部材をも具備したものであり、前記予備着座部が前記ベースの前記着座部と同じもの又は前記薬剤カセットも予製カセットも装着させて保持しうる互換性のあるものであり、前記予製カセットが前記薬剤カセットに対応していて前記薬剤カセットを置き換えることができるものであることを特徴とする請求項2乃至請求項4の何れかに記載された薬剤分包機。

【請求項6】
前記予備着座部のそれぞれに対応させて点灯部材が設けられており、前記薬剤カセットのうち案内対象の薬剤を収容したものが前記予備着座部の何れかに装着されているときには前記点灯部材のうち当該予備着座部に対応するのものを点灯させる案内手段が設けられていることを特徴とする請求項2乃至請求項5の何れかに記載された薬剤分包機。

【請求項7】
前記案内手段によって点灯制御される並灯部材が前記予備庫部の表面に設けられており、前記案内手段が、前記点灯部材のうち前記予備庫部の内部の前記予備着座部に対応するものを点灯させたときに、その点灯させた点灯部材を具備している前記予備庫部に設けられている前記並灯部材も点灯させるようになっていることを特徴とする請求項6記載の薬剤分包機。

第4 取消理由通知の概要
本件特許に対する令和3年8月25日付け取消理由通知(以下、「取消理由通知」という。)の概要は以下のとおりである。

1(拡大先願)本件特許の請求項1〜7に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記甲第1号証に係る特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

2(新規性)本件特許の請求項1,3〜5に係る発明は、その出願前に日本国内において、頒布された下記甲第2号証に記載された発明であり、また、本件特許の請求項1,5,6に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記甲第3号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

3(明確性)本件特許の請求項5の記載は、「前記予製カセット」という記載が引用する記載が請求項1〜4になく、また「予製カセット」が何であるのか請求項5の記載からは不明確であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

刊行物等一覧:
甲第1号証:特願2015−227851号(特開2017−93735号)
甲第2号証:特開平8−119201号公報
甲第3号証:特開平8−119202号公報
以下、甲第1〜3号証を、それぞれ甲1〜甲3という。

第5 甲各号証の記載
1 甲1について
甲1には、以下の事項が記載されている。
(1)「調剤装置1は、処方情報に基づいて調剤を行う装置としての装置本体2と物品保管装置としての保管部3とを備える。装置本体2と保管部3とは別体である。別体であるから、装置本体2と保管部3とを別個に運搬、設置できるため、運搬および設置のための作業が容易である。さらに、装置本体2、保管部3のそれぞれの底部には図示のようにキャスターが設けられている。このため床面上での移動が容易である。
本実施形態の装置本体2は、調剤装置1において左側部分を占める装置である。装置本体2の機能を、図4も示しつつ簡単に説明する。装置本体2は薬剤供給装置21を備える。この薬剤供給装置21は、主薬剤供給部21aと副薬剤供給部21bから構成されている。
主薬剤供給部21aは、単一種類の薬剤(錠剤)を収容する薬剤収容部である錠剤カセット4を複数用いるものである。複数の錠剤カセット4…4のそれぞれには、互いに異なる種類の薬剤が収容され、複数の錠剤カセット4…4から、処方情報に基づいて薬剤を選択的に供給することができる。この主薬剤供給部21aは、錠剤カセット4を着脱可能な1または複数の薬剤収容部装着部である1または複数のカセット装着部211を備える。本実施形態では、主薬剤供給部21aは、複数のカセット装着部211…211を備える。複数のカセット装着部211…211は、本実施形態では中心軸が上下方向に延びる略円筒状であるドラム体212に設けられており、各カセット装着部211に錠剤カセット4を装着できる。」(段落【0047】〜【0049】)

(2)「主薬剤供給部21aの薬剤通路と副薬剤供給部21bの薬剤通路とはつながっており、集合ホッパー218に接続されている。集合ホッパー218の上部開口は、開閉部材219により開閉される。主薬剤供給部21aおよび副薬剤供給部21bの下方には包装部5が設けられており、主薬剤供給部21aまたは副薬剤供給部21bから集合ホッパー218を介して供給された薬剤を包装シートSで包装できる。装置本体2はパネル状の本体操作部22が設けられており、作業者が調剤および包装の操作を行うことができる。なお、調剤装置1の総合的な操作は、保管部3に設置された情報処理装置としてのノート形コンピュータ6により行われる。
本実施形態の保管部3は、調剤装置1において右側部分を占める装置であり、少なくとも物品を保管可能なロッカーとしての機能を有している。この保管部3は、設置状態で装置本体2に対して機械的に連結されている。例えば、図示はしていないが、装置本体2と保管部3とは連結金具等、両者を機械的に連結可能な連結手段により固定される。この連結手段により、保管部3が装置本体2の側方に、しかも装置本体2に隣接して設置された状態で固定される。このため、保管部3が装置本体2に対して機械的に連結された状態となるため、例えば地震による保管部3の不意の移動および転倒を防止することができる。なお、設置個所の天井や壁面に対しても装置本体2および保管部3を機械的に連結することにより、移動および転倒防止をより確実に行うことができる。」(段落【0054】〜【0055】)

(3)「保管部3は、保管装置本体としての保管部本体31と、関連物を保持する保持部32とを備える。保管部本体31は棚本体として保持部32を収納可能に支持する。本実施形態において、保管部本体31は前面が開放された筐体状の部分であり、保持部32は保管部本体31に対して前後方向に移動可能な引き出し状の部分である。保管部本体31には、複数(本実施形態では15個)の保持部32が上下方向に並んで収納される。保持部32は一般的な引き出しと同様に上方が開放されており、保持部32を保管部本体31から前方に引き出した状態で関連物を出し入れ可能である。保持部32には、関連物を少なくとも前後方向に並べた状態で保持可能である。
本実施形態の保持部32は、錠剤カセット4を保持するものにつき、1個当たり、左右方向(幅方向)に2箇所、前後方向(引き出し方向)に5箇所のカセット保持区画321を有する。このため、合計10個の錠剤カセット4…4を並べた状態で保持可能である。」(段落【0063】〜【0064】)

(4)「

」(図3)

(5)「

」(図4)

(6)「

」(図6)

(7)上記(4)の図面の記載からみて、保管部3は包装部5の側方にも設けられていることが看取できる。

上記(1)〜(3)の下線部の記載、(4)〜(6)の図面の記載及び(7)の認定事項から、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。

「錠剤カセット4を着脱可能な1または複数の薬剤収容部装着部である1または複数のカセット装着部211を備える主薬剤供給部21aを有する装置本体2と、供給された薬剤を包装シートSで包装できる包装部5と、主薬剤供給部21aと副薬剤供給部21bから構成される薬剤供給装置21とこれに接続された集合ホッパー218とを備え、集合ホッパー218を介して供給された薬剤を包装シートSで包装する調剤装置1において、保管部3は、調剤装置1において右側部分を占める装置であり、保管部3は包装部5の側方にも設けられており、保管部3は、保管装置本体としての保管部本体31と、関連物を保持する保持部32とを備え、保持部32は、錠剤カセット4を保持するものにつき、1個当たり、左右方向(幅方向)に2箇所、前後方向(引き出し方向)に5箇所のカセット保持区画321を有する調剤装置1。」

2 甲2について
甲2には、以下の事項が記載されている。
(1)「これらの錠剤分包装置1’は、上下方向に延びる排出路2に沿って複数の錠剤フィーダ3が配置され、その各フィーダ3を制御装置が処方箋情報に基づいて作動し、フィーダ3から排出される錠剤5を排出路2下方に設けたホッパー6で収集して分包装置7で包装することにより、処方に基づく分包を行なっている。
即ち、図14に示す錠剤分包装置1’では、箱型のケース8内に複数の引き出し体9を左右に組み込み、その左右に組み込まれた各引き出し体9に、前後及び上下方向に多数の錠剤フィーダ3を配置してある。
また、上記各引き出し体9は、上部案内装置10及び下部案内装置11によりスライド自在に支持され、扉12でもって解放状態とされる開口13から外に引き出せるようになっている。
上部案内装置10は、引き出し体9の上部に前後方向に長いレールを取り付け、そのレールの両側に配置された複数のローラをケース8の天板下面に取り付けた構成とされ、一方、下部案内装置11は引き出し体9の下部にレール取り付け台を設けるとともに、ケース8内部に上記レール取り付け台を固定し、その両レール取り付け台の対向面にスライドレールを取り付けた構成となっている。
錠剤フィーダ3は、図15に示すように、モータベース14とそのモータベース14に着脱自在に取り付けられるカートリッジ容器15とからなり、上記カートリッジ容器15内にロータ16を組み込み、そのロータ16をモータベース14に支持されたモータで回転してカートリッジ容器15内に収納された錠剤5をロータ16の外周に設けたポケット17内に入り込ませ、そのポケット17内の錠剤5をカートリッジ容器15及び支持台に形成した排出口18から排出路2へ一つずつ排出するようになっている。」(段落【0003】〜【0007】)

(2)「図1に、第1実施形態として請求項1及び3に係る発明の引き出し式の錠剤分包装置1を示す。
この分包装置1は、従来例で述べた引き出し式の錠剤分包装置1’に予備の錠剤フィーダ30と予備排出路31を設けたものである。この場合、予備の錠剤フィーダ30は、モータベース14がケース8側面に取り付けられ、カートリッジ容器15がケース8内の引き出し体9を引き出すことなく着脱できるようになっており、各予備の錠剤フィーダ30から排出される錠剤5は、ケース8を貫通させて設けた予備排出路31からホッパー6内に排出されるようになっている。」(段落【0040】〜【0041】)

(3)「図8に第4実施形態として4つある引き出し体の一つを予備の錠剤フィーダとしたものを示す。ここで、第4実施形態については、第2及び第3実施形態と異なり、一つの引き出し体9全てを予備の錠剤フィーダ30としたのでその使用方法を説明することにする。
このとき、予備の錠剤フィーダ1及び制御装置4については、第1実施形態と同じであるのでその説明は省略することにする。
この錠剤分包装置1では例えば、分包中にディスプレイ36に錠剤数の減少した錠剤フィーダ3が表示されると、予備の錠剤フィーダ30の取り付けられた引き出し体9を引き出す。次に、その引き出した引き出し体9のそれぞれの予備の錠剤フィーダ30にディスプレイ36に表示された錠剤フィーダ3の取り付けられた引き出し体9の錠剤フィーダ3と同じ種類の錠剤5を収容し、ケース8内に戻す。そして、制御装置4によって予備の錠剤フィーダ30から錠剤5の排出を行なわせて、その間に、錠剤5の減少した補充を行なうべき錠剤フィーダ3の取り付けられた引き出し体9を引き出して錠剤5の補充を行なう。補充が済むと補充を行なった引き出し体9を再びケース8に戻し、入力手段34から、補充した錠剤5の重量データを入力し、その入力装置によって予備の錠剤フィーダ30の取り付けられた引き出し体9に代えて補充を行なった引き出し体9から錠剤5を排出させる。この操作を繰り返すことにより、連続して分包を行なう。」(段落【0064】〜【0066】)

(4)「一方、ホッパー6の下方には、分包装置7が設けられ、その分包装置7で、錠剤フィーダ3、30からホッパー6の開口に排出された錠剤5を分包するようになっており、この形態では長方形状に形成されたホッパー6の排出口にコンベア51を設けて錠剤5を中央の分包装置7に搬送するようになっている。」(段落【0081】)

(5)「

」(図1)

(6)「

」(図2)

(7)「

」(図8)

(8)「


」(図14)

(9)「

」(図15)

(10)上記(5)の図面の記載からみて、甲2の予備の錠剤フィーダ30は、錠剤分包装置1の外に設けられているから、上記(8)の図面に1記載されたような錠剤分包装置1’においても同様に、モータベース14は錠剤フィーダ3の排出路2の収集範囲外に位置するものであることが推認できる。

上記(1)〜(4)の下線部の記載、(5)〜(9)の図面の記載及び(10)の認定事項から、甲2には特に図8に係る実施例に着目すると、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。

「モータベース14とそのモータベース14に着脱自在に取り付けられるカートリッジ容器15とからなる錠剤フィーダ3が、箱型のケース8内の左右に組み込まれた各引き出し体9に、前後及び上下方向に多数配置してあり、錠剤フィーダ3から排出される錠剤5を排出路2下方に設けたホッパー6で収集して分包装置7で包装する錠剤分包装置1において、端部の引き出し体9を予備の錠剤フィーダとし、各予備の錠剤フィーダ30から排出される錠剤5は、ケース8内に設けた予備排出路31からホッパー6内に排出されるようになっていて、予備の錠剤フィーダ30のモータベース14は錠剤フィーダ3の排出路2の収集範囲外に位置している錠剤分包装置1。」

3 甲3について
甲3には、以下の事項が記載されている。
(1)「錠剤収納棚1には、多数の錠剤カートリッジ11収納されている。 各錠剤カートリッジ11は、図2,図3に示すように、摺鉢状の底を備えた錠剤を収容するケース12と、該ケース12の底に回転自在に取り付けられ外周に複数の錠剤ポケット13を有するロータ14と、前記ケース12を着脱可能に蓋する蓋体15とからなっている。」(段落【0029】)

(2)「錠剤処理機構32は、複数の錠剤フィーダ34と錠剤ホッパ35とからなっている。錠剤フィーダ34は、いわゆる円筒形のもので、回転軸oの回りに複数個環状に配置され、かつ、上下に複数段配置されて、当該回転軸oの回りに回転自在になっている。各錠剤フィーダ34には、前記錠剤収納棚1に収納された錠剤カートリッジ11が装着されるようになっている。この錠剤フィーダ34には比較的少数設けられ、必要な錠剤カートリッジ11しか装着できないようになっている。大部分の錠剤カートリッジ11は前記錠剤収納棚1に収納されている。」(段落【0035】)

(3)「各錠剤フィーダ34には、図2(B)に示すように、錠剤カートリッジ11が装着されたときに当該カートリッジ11のロータ14の軸とギヤ36を介して連結される駆動モータ37と、カートリッジ11から排出される錠剤を中央通路38に導くシュート39とが設けられている。
また、各錠剤フィーダ34には、カートリッジ11の識別装置16と対応する位置に配置されて当該識別装置16より錠剤データを読み取る読取装置40と、表示ランプ41とが設けられている。前記読取装置40は、本発明の読取手段であり、図2(A)に示す前記錠剤収納棚1の読取装置17と同一の構成である。すなわち、前記錠剤カートリッジ11が錠剤フィーダ34に装着されたときに錠剤カートリッジ11の識別装置16の反射板に光を送る発光素子40aと、当該反射板で反射した光を受ける受光素子40bとを一体化した複数のユニットからなっている。表示ランプ41は、本発明の装着場所表示手段を構成するものである。
錠剤ホッパ35は、図6に示すように、前記錠剤フィーダ34から供給される錠剤を後述する包装機構33の包装ホッパ55に導くようになっている。」(段落【0036】〜【0038】)

(4)「包装機構33は、図6に示すように、ロール52に巻回された包装紙53を3角板54を介して長手方向に2つ折りし、該2つ折り部分に前記錠剤処理機構31又は前記散薬処理機構32から包装ホッパ55を介して供給される錠剤及び/又は散薬を1包分ずつ投入した後、ヒートシール装置56によって当該2つ折り部分以外の3辺を溶着して包装して、外部に排出するものである。なお、前記包装ホッパ55の上方開口部には、前記散薬処理機構32の分割機45から排出される散薬および前記錠剤処理機構31から排出される錠剤をそれぞれ一時的に受け止めるドア57a,57bが設けられている。」(段落【0043】)

(5)「以下、このCPU66の動作を図に示すフローチャートに従って説明する。図9は、錠剤処方に対するCPU66の動作を示す。ステップ101では処方情報を読み込み、ステップ102で装着場所記憶部64に当該処方に対応する錠剤カートリッジ11の装着場所を問い合わせることによって当該錠剤カートリッジ11がいずれかの錠剤フィーダ34に装着されているか否かを判断する。装着されていなければ、ステップ103で収納場所記憶部63に問い合わせして当該錠剤カートリッジ11の収納場所を探査し、ステップ104で発見した収納場所の表示ランプ18を点灯することによって当該錠剤カートリッジ11の収納場所を表示するとともに、ステップ105で錠剤フィーダ34の表示ランプ41を点灯することにより当該錠剤処方に適した装着場所を表示する。」(段落【0048】)

(6)「

」(図1)

(7)「

」(図3)

(8)「

」(図6)

(9)上記(6)の図面の記載からみて、錠剤収容棚1が錠剤処理機構31の側方に設けられて、錠剤収集棚1の錠剤カートリッジ11の収容場所が中央通路38及び錠剤ホッパ35の収集範囲の外に位置していることが看取できる。

(10)上記(5)の下線部の記載に照らして、(6)の図面の記載を参照すれば、錠剤カートリッジ11の収納場所のそれぞれに対応させて表示ランプ18が設けられており、錠剤カートリッジ11のうち案内対象の錠剤を収容したものが前記収納場所のいずれかに装着されているときには前記表示ランプ18のうち当該収納場所に対応するものを点灯させる中央演算処理部(CPU)66が設けられていることが推認される。

(11)上記(6)の図面の記載からみて、錠剤収容棚1の錠剤カートリッジ11の収納場所への錠剤カートリッジ11の着脱は錠剤処理機構31寄りの側面からは行えるが当該側面の対向側面に加え上面からも行えないものであることが看取できる。

上記(1)〜(5)の下線部の記載、(6)〜(8)の図面の記載及び(9)〜(11)の認定事項から、甲3には次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されている。

「錠剤カートリッジ11が装着されるようになっている錠剤フィーダ34と、錠剤処理機構31から包装ホッパ55を介して供給される錠剤を包装する包装機構33と、錠剤フィーダ34から供給される錠剤を包装機構33の包装ホッパ55に導く錠剤ホッパ35とを備えた包装装置3において、錠剤フィーダ34には、カートリッジ11から排出される錠剤を中央通路38に導くシュート39が設けられており、錠剤ホッパ35は、前記錠剤フィーダ34から供給される錠剤を後述する包装機構33の包装ホッパ55に導くようになっており、多数の錠剤カートリッジ11を収納する錠剤収納棚1が、錠剤処理機構31の側方に設けられて、錠剤収集棚1の錠剤カートリッジ11の収容場所が中央通路38及び錠剤ホッパ35の収集範囲の外に位置おり、錠剤カートリッジ11の収納場所のそれぞれに対応させて表示ランプ18が設けられており、錠剤カートリッジ11のうち案内対象の錠剤を収容したものが前記収納場所のいずれかに装着されているときには前記表示ランプ18のうち当該収納場所に対応するものを点灯させる中央演算処理部(CPU)66が設けられており、錠剤収容棚1の錠剤カートリッジ11の収納場所への錠剤カートリッジ11の着脱は錠剤処理機構31寄りの側面からは行えるが当該側面の対向側面に加え上面からも行えないものである包装装置3。」

第6 当審の判断
1 取消理由1(拡大先願)について
(1)対比
事案に鑑み、まず本件発明2について検討する。
本件発明2と甲1発明を対比すると、甲1発明の「錠剤カセット4」は、機能及び構造からみて、本件発明2の「薬剤カセット」に相当するものであり、同様に「カセット装着部211」は「ベース」に、「装置本体2」は「薬品庫部」に、「包装部5」は「包装装置」に、「調剤装置1」は「薬剤分包機」にそれぞれ相当する。
そして、甲1発明の「薬剤供給装置21」とこれに接続された「集合ホッパー218」は、錠剤カセット4からの薬剤を包装部5に供給するものであるから、本件発明2の「薬剤収集機構」を構成するものであり、甲1発明の「主薬剤供給部21a」及び「集合ホッパー218」は、それぞれ本件発明2の「上部収集機構」及び「下部収集機構」に相当する。
また、甲1発明の「主薬剤供給部21a」及び「装置本体2」は、本件発明2の「上部収集機構」及び「薬品庫部」に相当するから、甲1発明の「主薬剤供給部21aを有する装置本体2」の構成は、本件発明2の「上部収集機構が薬品庫部に組み込まれて」いる構成に相当する。
また、甲1発明の包装シートSは包装部5で包装するものであるから、甲1発明の「薬剤供給装置21とこれに接続された集合ホッパー218とを備え、集合ホッパー218を介して供給された薬剤を包装シートSで包装する」するとの構成は、本件発明2の「下部収集機構が薬品庫部の下方に位置しており、包装装置が下部収集機構の下方に位置して」いる構成に相当する。
また、甲1発明の「保管部3」及び「保持部32」は、機能及び構造からみて、それぞれ本件発明2の「予備庫部」及び「予備着座部」に相当するものである。そして、甲1発明の「保管部3」は、「装置本体2」を含む「調剤装置1」の右側部分を占めるものであり「装置本体2」の側方に設けられており、甲1発明の「保持部32」は、「カセット保持区画321」により「錠剤カセット4」を着脱可能に複数保持するものであり、当該「保持部32」は、「集合ホッパー218」が設けられた「装置本体2」の側方に設けられているから、「薬剤供給装置21」とこれに接続された「集合ホッパー218」の収集範囲外に位置しているといえるから、甲1発明の「保管部3は、調剤装置1において右側部分を示す装置であり、保管部3は包装部5の側方にも設けられており、保管部3は、保管装置本体としての保管部本体31と、関連物を保持する保持部32をとを備え、保持部32は、錠剤カセット4を保持するものにつき、1個当たり、左右方向(幅方向)に2箇所、前後方向(引き出し方向)に5箇所のカセット保持区画321を有する」ことは、本件発明2の「薬剤カセットを着脱可能に保持しうる予備着座部を複数装備した予備庫部が前記薬剤庫部の側方に設けられて、前記予備着座部が前記薬剤収集機構の収集範囲の外に位置して」いることに相当する。
さらに、甲1発明の「包装部5」は、「装置本体2」に組み込まれている「主薬剤供給部21a」から薬剤の供給を受けるものであるから、「装置本体2」の下方に位置していることは明らかであり、甲1発明の「装置本体2と供給された薬剤を包装シートSで包装できる包装部5と、主薬剤供給部21aと副薬剤供給部21bから構成される薬剤供給装置21とこれに接続された集合ホッパー218とを備え、集合ホッパー218を介して供給された薬剤を包装シートSで包装する」ことは、本件発明2の「包装装置が薬品庫部の下方に位置している」ことに相当する。

してみれば、本件発明2と甲1発明は、次の一致点及び相違点を有する。
【一致点】
薬剤を収容しうる薬剤カセットを着脱可能に保持するベースを複数装備した薬品庫部と、薬剤を受け入れて区分封入する包装装置と、前記薬剤カセットから前記ベースを介して排出された薬剤を収集して前記包装装置に引き渡す薬剤収集機構とを備えた薬剤分包機において、前記薬剤収集機構が上部収集機構と下部収集機構とを具備したものであり、前記上部収集機構が前記薬品庫部に組み込まれており、前記下部収集機構が前記薬品庫部の下方に位置しており、前記包装装置が前記下部収集機構の下方に位置しており、前記薬剤カセットを着脱可能に保持しうる予備着座部を複数装備した予備庫部が前記薬品庫部の側方に設けられて、前記予備着座部が前記薬剤収集機構の収集範囲の外に位置しており、前記包装装置が前記薬品庫部の下方に位置している薬剤分包機。
【相違点1】
本件発明2は、予備庫部が予備着座部への薬剤カセットの着脱を薬品庫部寄りの側面からは行えるが当該側面の対向側面に加え上面からも行えないものであるのに対し、甲1発明は、保管部3(予備庫部3)の保持部(予備着座部)は左右方向(幅方向)で錠剤カセット4を保持するものである点。

(2)判断
以下、上記相違点1について検討する。
本件発明2は、上記相違点1に係る構成を備えることにより、予製カセット65を取り出したりする作業を、本体部51の手前で行うことができ、薬剤分包機50の両隣に他の装置などが設置されていても、それによって予製カセット収納作業を妨げられることなく、隣の作業を妨げることもなく、予製カセット65を予備庫部60に収納することができる(段落【0033】、【0036】参照。)という特有の作用効果を奏するものである。
一方、甲1発明は、保管部3(予備庫部)の保持部32(予備着座部)は左右方向(幅方向)で錠剤カセット4(薬剤カセット)を保持するものであるから、装置本体2(薬品庫部)寄りの側面の対向側面側の保持部32(予備着座部)で錠剤カセット4(薬剤カセット)を保持しようとすれば、装置本体2(薬品庫部)寄りの側面の対向側面側又は上方から錠剤カセット4(薬剤カセット)を着脱することが必要となり、上記特有の作用効果を奏することはできない。
また、令和3年11月11日付け意見書と共に新たに提出された甲第4号証(特開平9−323702号公報)、甲第5号証(国際公開第2015/041229号)及び甲第6号証(特開2006−130307号公報)を参照したとしても、それらはいずれも、着座部に対して薬剤カセット水平方向に着脱することを示すものであるが、甲1発明において、装置本体2(薬品庫部)寄りの側面の対向側面側の保持部32(予備着座部)に水平方向から錠剤カセット4(薬剤カセット)を着脱しようとすれば、保管部3(予備庫部)の隣の作業を妨げることになるものであるから、当該甲第4〜6号証記載の技術的事項を適用したとしても甲1発明は上記特有の作用効果を奏するものとはならない。
よって、上記相違点1に係る本件発明2の構成は、本件特許明細書記載の特有の作用効果を奏するものであるから、上記相違点1は実質的な相違点である。

(3)小括
したがって、本件発明2は甲1発明と同一であるとすることはできない。
また、本件発明3〜7は、本件発明2の構成を全て含むものであるから、同様に本件発明3〜7についても甲1発明と同一であるとはいえない。
さらに、本件発明1は上記相違点1に係る本件発明2の構成と同じ発明特定事項を備えるものであるから、本件発明1についても甲1発明と同一であるとはいえない。

2 取消理由2(新規性)について
(1)甲2を主引例とする場合
ア 対比
本件発明1と甲2発明を対比すると、甲2発明の「カートリッジ容器15」は、機能及び構造上、本願発明1の「薬剤カセット」に相当するものであり、同様に「モータベース14」は「ベース」に、「引き出し体9」は「薬品庫部」に、「分包装置7」は「包装装置」に、「錠剤分包装置1」は「薬剤分包機」にそれぞれ相当する。
そして、甲2発明の「排出路2」とこの下方に設けた「ホッパー6」は、カートリッジ容器15からの薬剤を分包装置7に供給するものであるから、本件発明2の「薬剤収集機構」を構成するものであり、甲2発明の「排出路2」及び「ホッパー6」は、それぞれ本件発明1の「上部収集機構」及び「下部収集機構」に相当する。
また、甲2発明の「引き出し体9」は、機能及び構造からみて、本件発明2の「薬品庫部」に相当するから、甲2発明の「引き出し体9」の「排出路2」に係る構成は、本件発明1の「上部収集機構が薬品庫部組み込まれて」いる構成に相当する。
また、甲2発明の「錠剤5を排出路2下方に設けたホッパー6で収集して分包装置7で包装する」構成は、本件発明1の「下部収集機構が薬品庫部の下方に位置しており、包装装置が下部収集機構の下方に位置して」いる構成に相当する。
また、甲2発明の「予備の錠剤フィーダとして引き出し体9」及び「予備の錠剤フィーダ30のモータベース14」は、機能及び構造からみて、それぞれ本件発明2の「予備庫部」及び「予備着座部」に相当するものである。そして、甲2発明の「予備の錠剤フィーダとして引き出し体9」は端部の「引き出し体9」であり、その他の「引き出し体9」の側方に設けられており、甲2発明の「予備の錠剤フィーダ30のモータベース14」は、「予備の錠剤フィーダ30」を着脱可能に多数配置するものであり、「排出路2」とこれの下方に設けた「ホッパー6」の収集範囲外に位置しているから、甲2発明の「端部の引き出し体9を予備の錠剤フィーダとし、各予備の錠剤フィーダ30から排出される錠剤5は、ケース8内に設けた予備排出路31からホッパー6内に排出されるようになっていて、予備の錠剤フィーダ30のモータベース14は錠剤フィーダ3の排出路2の収集範囲外に位置している」構成は、本件発明1の「薬剤カセットを着脱可能に保持しうる予備着座部を複数装備した予備庫部が前記薬剤庫部の側方に設けられて、前記予備着座部が前記薬剤収集機構の収集範囲の外に位置して」いる構成に相当する。
さらに、甲2発明の「分包装置7」は、「引き出し体9」に組み込まれている「排出路2」から薬剤の供給を受けるものであるから、「引き出し体9」の下方に位置していることは明らかであり、甲2発明の「錠剤フィーダ3から排出される錠剤5を排出路2下方に設けたホッパー6で収集して分包装置7で包装する」構成は、本件発明1の「包装装置が薬品庫部の下方に位置している」構成に相当する。

してみれば、本件発明1と甲2発明は、次の一致点及び相違点を有する。
【一致点】
薬剤を収容しうる薬剤カセットを着脱可能に保持するベースを複数装備した薬品庫部と、薬剤を受け入れて区分封入する包装装置と、前記薬剤カセットから前記ベースを介して排出された薬剤を収集して前記包装装置に引き渡す薬剤収集機構とを備えた薬剤分包機において、前記薬剤収集機構が上部収集機構と下部収集機構とを具備したものであり、前記上部収集機構が前記薬品庫部に組み込まれており、前記下部収集機構が前記薬品庫部の下方に位置しており、前記包装装置が前記下部収集機構の下方に位置しており、前記薬剤カセットを着脱可能に保持しうる予備着座部を複数装備した予備庫部が前記薬品庫部の側方に設けられて、前記予備着座部が前記薬剤収集機構の収集範囲の外に位置しており、前記包装装置が前記薬品庫部の下方に位置している薬剤分包機。
【相違点2】
本件発明1は、予備着座部のそれぞれに対応させて点灯部材が設けられており、薬剤カセットのうち案内対象の薬剤を収容したものが前記予備着座部の何れかに装着されているときには前記点灯部材のうち当該予備着座部に対応するのものを点灯させる案内手段が設けられており、前記案内手段によって点灯制御される並灯部材が予備庫部の表面に設けられており、前記案内手段が、前記点灯部材のうち前記予備庫部の内部の前記予備着座部に対応するものを点灯させたときに、その点灯させた点灯部材を具備している前記予備庫部に設けられている前記並灯部材も点灯させるようになっているのに対して、甲2発明はそのようになっていない点。
【相違点3】
本件発明1は、予備庫部が予備着座部への薬剤カセットの着脱を薬品庫部寄りの側面からは行えるが当該側面の対向側面に加え上面からも行えないものであるのに対し、甲2発明は、そのようになっていない点。

イ 判断
事案に鑑み、以下相違点3について検討する。
本件発明1は、上記相違点3に係る構成を備えることにより、予製カセット65を取り出したりする作業を本体部51の手前で行うことができ、薬剤分包機50の両隣に他の装置などが設置されていても、それによって予製カセット収納作業を妨げられることなく、隣の作業を妨げることもなく、予製カセット65を予備庫部60に収納することができる(段落【0033】、【0036】参照。)と言う特有の作用効果を奏するものである。
一方、甲2には、予備の錠剤フィーダ30(予備着座部)へのカートリッジ容器15(薬剤カセット)の着脱方向については何ら記載がない。そして、図8を参照するに甲2発明は、端部の引き出し体9を引き出して予備の錠剤フィーダ30の着脱を行うものであるが、図1の記載も踏まえると、予備フィーダ30の予備排出路31は錠剤フィーダ3が組み込まれた他の引き出し9側に設けられているものと認められ、予備の錠剤フィーダ30(予備着座部)へのカートリッジ容器15(薬剤カセット)の着脱は錠剤フィーダ3が組み込まれた他の引き出し体9側の側面の対向面から行うようになっていることが推認されるから、構成上、上記特有の作用効果が生じるものとは認められない。
よって、上記相違点3に係る本件発明1の構成は本件特許明細書記載の特有の作用効果を奏するものであるから、上記相違点3は実質的な相違点である。

ウ 小括
したがって、上記相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は甲2発明であるとすることはできない。
また、本件発明3〜5は、本件発明2の構成を全て含むものであるところ、当該本件発明2は上記相違点3に係る本件発明1の構成と同じ発明特定事項を備えるものであるから、本件発明3〜5についても甲2発明であるとはいえない。

(2)甲3を主引例とする場合
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲3発明を対比すると、甲3発明の「錠剤カートリッジ11」は、機能及び構造上、本願発明1の「薬剤カセット」に相当するものであり、同様に「錠剤フィーダ34」は「ベース」に、「錠剤処理機構31」は「薬品庫部」に、「包装機構33」は「包装装置」に、「包装装置3」は「薬剤分包機」にそれぞれ相当する。
そして、甲3発明の「中央通路38」とこの下方に設けた「錠剤ホッパ35」は、錠剤カートリッジ11からの薬剤を包装機構33に供給するものであるから、本件発明1の「薬剤収集機構」を構成するものであり、甲3発明の「中央通路38」及び「錠剤ホッパ35」は、それぞれ本件発明1の「上部収集機構」及び「下部収集機構」に相当する。
また、甲3発明の「中央通路38」は、「錠剤処理機構31」の一部を構成するものであるから、甲3発明の「錠剤処理機構31から包装ホッパ55を介して供給される錠剤を包装する包装機構33と、錠剤フィーダ34から供給される錠剤を包装機構33の包装ホッパ55に導く錠剤ホッパ35とを備えた包装装置3において、錠剤フィーダ34には、カートリッジ11から排出される錠剤を中央通路38に導くシュート39が設けられ」ている構成は、本件発明1の「上部収集機構が薬品庫部組み込まれて」いる構成に相当する。
また、甲3発明の「錠剤ホッパー35」は、「錠剤処理機構31」を構成する「中央通路38」に接続され、薬剤を「包装機構33」に供給するものであるから、甲3発明の「錠剤ホッパ35は、前記錠剤フィーダ34から供給される錠剤を後述する包装機構33の包装ホッパ55に導くようになって」いる構成は、本件発明1の「下部収集機構が薬品庫部の下方に位置しており、包装装置が下部収集機構の下方に位置して」いる構成に相当する。
また、甲3発明の「錠剤収納棚1」及び「錠剤収納棚1の錠剤カートリッジ11の収納場所」は、機能及び構造からみて、それぞれ本件発明1の「予備庫部」及び「予備着座部」に相当するものである。
さらに、甲3発明の「表示ランプ18」及び「中央演算処理部(CPU)66」は、機能及び構造からみて、それぞれ本件発明1の「点灯部材」及び「案内手段」に相当する。

してみれば、本件発明1と甲3発明は、次の一致点及び相違点を有する。
【一致点】
薬剤を収容しうる薬剤カセットを着脱可能に保持するベースを複数装備した薬品庫部と、薬剤を受け入れて区分封入する包装装置と、前記薬剤カセットから前記ベースを介して排出された薬剤を収集して前記包装装置に引き渡す薬剤収集機構とを備えた薬剤分包機において、前記薬剤収集機構が上部収集機構と下部収集機構とを具備したものであり、前記上部収集機構が前記薬品庫部に組み込まれており、前記下部収集機構が前記薬品庫部の下方に位置しており、前記包装装置が前記下部収集機構の下方に位置しており、前記薬剤カセットを着脱可能に保持しうる予備着座部を複数装備した予備庫部が前記薬品庫部の側方に設けられて、前記予備着座部が前記薬剤収集機構の収集範囲の外に位置しており、前記予備着座部のそれぞれに対応させて点灯部材が設けられており、前記薬剤カセットのうち案内対象の薬剤を収容したものが前記予備着座部の何れかに装着されているときには前記点灯部材のうち当該予備着座部に対応するものを点灯させる案内手段が設けられており、前記予備庫部が前記予備着座部への前記薬剤カセットの着脱を前記薬品庫部寄りの側面からは行えるが当該側面の対向側面に加え上面からも行えないものである薬剤分包機。
【相違点4】
本件発明1は、案内手段によって点灯制御される並灯部材が予備庫部の表面に設けられており、前記案内手段が、点灯部材のうち前記予備庫部の内部の予備着座部に対応するものを点灯させたときに、その点灯させた点灯部材を具備している前記予備庫部に設けられている前記並灯部材も点灯させるようになっているのに対し、甲3発明は、案内手段によって点灯制御される点灯部材が予備庫部の表面に設けられたものである点。

(イ)判断
上記相違点4に係る本件発明1の構成は、本件特許の訂正前の請求項7において限定された構成であって、当該構成については甲3に記載や示唆はなく、また甲1、甲2を含め他に当該構成を示唆するような証拠も発見していない。
そして、本件発明1は上記相違点4に係る構成を備えることにより、「内部の予備着座部に対応している点灯部材については、視認性の確保が難しいところ、予備庫部の表面に設けられていて視認性の良い並灯部材も点灯させるようにしたことにより、並灯部材の点灯の視認によって、内部の予備着座部に対応している点灯部材の確認が促されることから、見落としのおそれが無い」(段落【0024】参照。)という本件特許明細書記載の特有の作用効果を奏するものであるところ、甲3発明は内部に予備着座部を設けるものではないから、上記相違点4に係る本件発明1の構成を適宜に採用し得る単なる設計的事項であるということもできない。
よって、上記相違点4は実質的な相違点である。

イ 本件発明5及び6について
本件特許の訂正前の請求項5及び6は訂正前の請求項1及び2を引用するものであったところ、本件訂正により訂正後の請求項2のみを引用するものとなった。
ここで、本件特許の訂正後の請求項2は訂正前の請求項2に係る構成、すなわち、「包装装置が前記薬品庫部の下方に位置しており、予備庫部が前記包装装置の側方まで延設されている又は前記包装装置の側方にも設けられて」いる構成(以下、「請求項2に係る構成」という。)を備えるものである。
そして、上記請求項2に係る構成については、甲3号証には記載がなく、本件発明5及び6は上記請求項2に係る構成を備えることにより、予備庫部を包装装置側方まで拡張したことにより、予備庫部が縦長になって、予備庫部の横幅を広げなくても予備着座部の装備数ひいては予製カセットの保管可能数が増える(段落【0020】参照。)という本件特許明細書記載の特有の作用効果を奏するものであるから、本件特許発明5及び6が上記請求項2に係る構成を備えている点は、甲3発明との実質的な相違点である。

ウ 小括
したがって、本件発明1, 5及び6は甲3発明であるとすることはできない。

3 取消理由3(明確性)について
本件訂正により請求項5の「前記予製カセット」の記載は「予製カセット」に訂正され、この予製カセットについて「薬剤カセットに対応していて前記薬剤カセットを置き換えることができるものである」という構成が特定されることにより請求項5の記載は明確となった。
よって、請求項5の記載について指摘した不明確な点は解消された。

4 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)甲2に基づく進歩性について
申立人は特許異議申立書において、本件発明1,3〜5は、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができた旨主張している。
しかし、上記2(1)で検討したように、本件発明1,3〜5と甲2発明との相違点3は実質的な相違点である。
そして、甲2発明は図8に示されたような構成を備えるものであり、上記2(1)イで検討したように、予備の錠剤フィーダ30(予備着座部)へのカートリッジ容器15(薬剤カセット)の着脱は錠剤フィーダ3が組み込まれた他の引き出し体9側の側面の対向面から行うようになっていることが推認される。そして、仮に甲3に上記相違点3に係る構成の記載があるとしても、これを甲2発明に適用しようとすると予備排出路31の設置が著しく困難であり、当該構成を甲2発明に適用するにあたっての阻害要因となるから、当該適用を当業者が容易に想到できるとはいえない。
また、他に上記相違点3に係る本件発明1,3〜5の構成を示す証拠も見当たらない。
よって、本件発明1,3〜5は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
(2)甲3に基づく進歩性について
申立人は、本件発明1,5及び6について甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張している。
しかし、上記2(2)で検討したように、本件発明1と甲3発明との相違点4及び本件発明5及び6と甲3発明との相違点である請求項2に係る構成は、いずれも実質的な相違点である。
そして、甲3発明は、表示ランプ18(点灯部材)が錠剤収納棚1(予備庫部)の表面に設けられているから、構成上並灯部材を設ける必要性はないから上記相違点4に係る構成を甲3発明に採用する動機付けはないし、並灯部材を示唆する証拠も見当たらない。また、甲3発明に「予備庫が包装装置の側方まで延設されている又は包装装置の側方にも設けられて」いるという請求項2に係る構成の採用を示唆する証拠も見当たらない。
よって、本件発明1,5及び6は、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
また、申立人は本件発明3及び4についても、甲3発明に甲2の記載事項を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張している。
しかし、本件発明3及び4は上記請求項2に係る構成を備えるものであり、上述したとおり甲3発明に上記請求項2に係る構成の採用を示唆する証拠は見当たらないから、本件発明5及び6についてと同様、本件発明3及び4も甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

第7 むすび
以上のとおり、本件発明1〜7に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された申立理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件発明1〜7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。


 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を収容しうる薬剤カセットを着脱可能に保持するベースを複数装備した薬品庫部と、薬剤を受け入れて区分封入する包装装置と、前記薬剤カセットから前記ベースを介して排出された薬剤を収集して前記包装装置に引き渡す薬剤収集機構とを備えた薬剤分包機において、前記薬剤収集機構が上部収集機構と下部収集機構とを具備したものであり、前記上部収集機構が前記薬品庫部に組み込まれており、前記下部収集機構が前記薬品庫部の下方に位置しており、前記包装装置が前記下部収集機構の下方に位置しており、前記薬剤カセットを着脱可能に保持しうる予備着座部を複数装備した予備庫部が前記薬品庫部の側方に設けられて、前記予備着座部が前記薬剤収集機構の収集範囲の外に位置しており、前記予備着座部のそれぞれに対応させて点灯部材が設けられており、前記薬剤カセットのうち案内対象の薬剤を収容したものが前記予備着座部の何れかに装着されているときには前記点灯部材のうち当該予備着座部に対応するのものを点灯させる案内手段が設けられており、前記案内手段によって点灯制御される並灯部材が前記予備庫部の表面に設けられており、前記案内手段が、前記点灯部材のうち前記予備庫部の内部の前記予備着座部に対応するものを点灯させたときに、その点灯させた点灯部材を具備している前記予備庫部に設けられている前記並灯部材も点灯させるようになっており、前記予備庫部が前記予備着座部への前記薬剤カセットの着脱を前記薬品庫部寄りの側面からは行えるが当該側面の対向側面に加え上面からも行えないものであることを特徴とする薬剤分包機。
【請求項2】
薬剤を収容しうる薬剤カセットを着脱可能に保持するベースを複数装備した薬品庫部と、薬剤を受け入れて区分封入する包装装置と、前記薬剤カセットから前記ベースを介して排出された薬剤を収集して前記包装装置に引き渡す薬剤収集機構とを備えた薬剤分包機において、前記薬剤収集機構が上部収集機構と下部収集機構とを具備したものであり、前記上部収集機構が前記薬品庫部に組み込まれており、前記下部収集機構が前記薬品庫部の下方に位置しており、前記包装装置が前記下部収集機構の下方に位置しており、前記薬剤カセットを着脱可能に保持しうる予備着座部を複数装備した予備庫部が前記薬品庫部の側方に設けられて、前記予備着座部が前記薬剤収集機構の収集範囲の外に位置しており、前記包装装置が前記薬品庫部の下方に位置しており、前記予備庫部が前記包装装置の側方まで延設されている又は前記包装装置の側方にも設けられており、前記予備庫部が前記予備着座部への前記薬剤カセットの着脱を前記薬品庫部寄りの側面からは行えるが当該側面の対向側面に加え上面からも行えないものであることを特徴とする薬剤分包機。
【請求項3】
前記予備庫部が前方へ引出可能になっており、前記予備着座部が何れも前記予備庫部の内部に装備されており、前記予備庫部を前方へ引き出すと前記予備着座部が露出するようになっていることを特徴とする請求項2記載の薬剤分包機。
【請求項4】
前記予備庫部が、前記予備着座部を横に並べて搭載した棚を上下多段に具備しており、前記棚が、全段まとめて一体的に又は各段毎に若しくは幾つかの分割群毎に前方へ引き出せるようになっていることを特徴とする請求項3記載の薬剤分包機。
【請求項5】
前記ベースが前記薬剤カセットを保持する着座部を具備するとともに前記着座部に保持されている前記薬剤カセットの薬剤排出用作動部材を駆動する動的部材をも具備したものであり、前記予備着座部が前記ベースの前記着座部と同じもの又は前記薬剤カセットも予製カセットも装着させて保持しうる互換性のあるものであり、前記予製カセットが前記薬剤カセットに対応していて前記薬剤カセットを置き換えることができるものであることを特徴とする請求項2乃至請求項4の何れかに記載された薬剤分包機。
【請求項6】
前記予備着座部のそれぞれに対応させて点灯部材が設けられており、前記薬剤カセットのうち案内対象の薬剤を収容したものが前記予備着座部の何れかに装着されているときには前記点灯部材のうち当該予備着座部に対応するのものを点灯させる案内手段が設けられていることを特徴とする請求項2乃至請求項5の何れかに記載された薬剤分包機。
【請求項7】
前記案内手段によって点灯制御される並灯部材が前記予備庫部の表面に設けられており、前記案内手段が、前記点灯部材のうち前記予備庫部の内部の前記予備着座部に対応するものを点灯させたときに、その点灯させた点灯部材を具備している前記予備庫部に設けられている前記並灯部材も点灯させるようになっていることを特徴とする請求項6記載の薬剤分包機。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-01-26 
出願番号 P2017-091662
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (A61J)
P 1 651・ 121- YAA (A61J)
P 1 651・ 537- YAA (A61J)
P 1 651・ 161- YAA (A61J)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 佐々木 一浩
特許庁審判官 井上 哲男
木村 立人
登録日 2020-12-07 
登録番号 6804744
権利者 株式会社トーショー
発明の名称 薬剤分包機  
代理人 佐藤 香  
代理人 佐藤 香  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ