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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A41D
審判 全部申し立て 2項進歩性  A41D
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A41D
審判 全部申し立て 特29条の2  A41D
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A41D
管理番号 1384153
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-07-27 
確定日 2021-12-18 
異議申立件数
事件の表示 特許第6820096号発明「剣道用足用サポータ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6820096号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6820096号の請求項1に係る特許についての出願は、2015年(平成27年)5月9日(優先権主張 平成26年5月13日)を国際出願日とする出願であって、令和3年1月6日にその特許権の設定登録がされ、令和3年1月27日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和3年7月27日に特許異議申立人山屋産業株式会社(以下「申立人」という。)により、本件特許異議の申立てがされ、令和3年9月1日に特許異議申立書を補正する手続補正書が提出された。

第2 本件発明
特許第6820096号の請求項1に係る発明(以下「本件発明1」という。)は、本件特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
装着時に踝部位に相対する踝被覆部、踵部位に相対する踵被覆部、甲部位に相対する足背被覆部及び足裏部位に相対する足裏被覆部とから構成され、伸縮性を有する素材から成る足に着脱自在に装着される本体を含む剣道用足用サポータであって、
上記踝被覆部に設けられ、上記踝被覆部を上記踝部位に密着させる面ファスナーと、
上記本体の上記足裏被覆部における、上記足裏部位の土踏まず部に位置する第一の衝撃吸収機構部と、
上記本体の上記踵被覆部における、上記足裏部の踵部に位置する第二の衝撃吸収機構部とを具備し、
踏み込み時に床面へは土踏まず部位から踵の順で足が着くように、上記第一の衝撃吸収機構部の厚さが上記第二の衝撃吸収機構部の厚さより大きくなるよう形成され、
上記サポータの足への装着時、当該足の指の付け根部分近傍は上記足裏被覆部にて被覆されることなく露呈状態になるよう上記本体を構成するとともに、当該付け根部分側であって、上記本体の上記足背被覆部の端部にクリップの一端部を取付け、当該クリップの他端部をばね秤の先端に取り付けて当該ばね秤を垂直方向上方に引っ張りあげた際、当該クリップの一端部を取付けた上記足背被覆部の端部と上記足の上面の垂直方向の間隔が2cmに引っ張り上げられるのに少なくとも900gの引っ張り上げる力を要するよう構成した
ことを特徴とする剣道用足用サポータ。」

第3 申立理由の概要
申立人は、以下に示す甲第1号証〜甲第5号証の3(以下「甲1」等という。)を提出し、本件発明1に係る特許は、以下の理由により、取り消すべきものである旨を主張する。

1 申立理由1(明確性
本件発明1における「踏み込み時に床面へは土踏まず部位から踵の順で足が着くように、上記第一の衝撃吸収機構部の厚さが上記第二の衝撃吸収機構部の厚さより大きくなるよう形成され」という発明特定事項は機能的な表現であって、不明確である(特許異議申立書(以下「申立書」という。)3ページ20〜27行)から、本件特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に適合しない。
したがって、本件発明1に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当することを理由として、取り消されるべきものである。

2 申立理由2(実施可能要件
本件特許は、次のとおり、発明の詳細な説明の記載が、当業者が本件発明1の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、特許法第36条第4項第1号に適合しない。
したがって、本件発明1に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当することを理由として、取り消されるべきものである。

(1)本件発明1における「踏み込み時に床面へは土踏まず部位から踵の順で足が着くように、上記第一の衝撃吸収機構部の厚さが上記第二の衝撃吸収機構部の厚さより大きくなるよう形成され」ることを実施することができる程度に、発明の詳細な説明が記載されていない。(申立書3ページ20〜27行)

(2)発明の詳細な説明には、第一の衝撃吸収機構部200が、どのように足の衝撃を吸収するのか説明がない。(申立書3ページ28行〜4ページ3行)

(3)発明の詳細な説明では、土踏まず部に位置する第一の衝撃吸収機構部200は、足裏の横幅全域に一律に設けられているが、このような構成では、土踏まず部の周辺部位も第一の衝撃吸収機構部200に接触するのみであって、足裏全体が床に同時に着地してしまう構造である。(申立書第4ページ4〜8行)

(4)踏み込み時の作用について、発明の詳細な説明には、「打突のために装着者が勢いよく剣道用足用サポータを装着した足を踏み込むと、本体100に被覆されることなく露呈状態にある足趾F1及び踏み付け部F2が床面等との摩擦により、滑ることなく、しっかりとした踏み込みが行えるものである。そして、踏み込み足は、土踏まず部位F3から踵部F4にかけて床面に着くことになる。」(【0037】(当審注:申立書では【0036】と記載されているが、【0037】の誤記である。))と記載されているが、発明の詳細な説明に記載されたものは、「足裏全体が同時に床面に着くと考えられる。(申立書4ページ9〜16行)

(5)アウトソールの土踏まず部位を設置面部位に膨出させた構成であれば、踏み込み時に床面へは土踏まず部位から踵の順で足が着くようになることが考えられるが、発明の詳細な説明にはそのような構成や作用の記載がない。(申立書4ページ22〜末行)

(6)「前記第一の衝撃吸収機構部の厚さが前記第二の衝撃吸収機構部の厚さより大きくなるよう形成され」ていたとしても、「踏み込み時に床面へは土踏まず部位から踵の順で足が着くように」になることは不可能である。(申立書5ページ1〜8行)

(7)発明の詳細な説明(【0023】、【0024】、【0026】、【0044】)には、「第一の衝撃吸収機構部を第二の衝撃吸収機構部よりも厚く大きく構成してあるので、床面等へは必ず土踏まず部位から踵の順で足が着くようになるので、従来のように踵を中心とする大きな荷重負荷がかかることを解消できるものである。」と記載されているが、そのようなことは、剣道であったとしてもあり得ない足の運びになると考えられる。(申立書5ページ13行〜6ページ6行)

3 申立理由3(拡大先願:甲3の1、甲3の2)
本件発明は、その出願の日前の特許出願であって、本件特許の出願後に出願公開がされた願書に最初に添付された明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本件発明1に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。

4 申立理由4(新規性:甲3の1、甲3の2)
本件発明1は、甲3の1に係る剣道サポータ(以下「引用剣道サポータ」という。)であるから、特許法第29条第1項第1号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。

5 申立理由5(進歩性:甲3の1、甲3の2)
本件発明1は、引用剣道サポータに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するので、取り消すべきものである。

[引用文献等一覧]
甲1:特許第6820096号公報(本件特許公報)
甲2の1:福田一成代理人本谷孝夫からの通知書
甲2の2:弁護士河部康弘及び弁理士本谷孝夫からの通知書
甲3の1:剣道用サポータの写真
甲3の2:山屋産業株式会社から(有)ネットウイング、ふくだ企画、松勘工業(株)、(有)林藤武道具店に宛てた納品書
甲4の1:登録実用新案第3191411号公報(本件特許の出願後に発行された実用新案掲載公報)
甲4の2:特開2014−128544号公報(本件特許の出願後に出願公開がされた特許公報)
甲5の1:特開2002−112803号公報(周知技術を示す文献)
甲5の2:登録実用新案第3108236号公報(周知技術を示す文献)
甲5の3:実願昭47−92705号(実開昭49−50149号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献)

第4 引用文献等
1 甲3の1
(1)甲3の1は、以下の写真である。


(2)甲3の1の写真から以下の事項が把握できる。

(3)上記(2)から、次の事項が認められる。
ア 右下部が弧状になった略横長の黒色の布状物からなる本体を備えている。

イ 本体の左側端に、縦方向に延びる灰色の左端縁が設けられ、本体の上端右側に、本体の横幅の半分程度の長さの灰色の右上縁が設けられている。

ウ 右上縁は、上方が開口する環状となっている。

エ 横方向に右上縁の半分程度の長さ、縦方向に布状物の半分程度の長さの灰色の面状片が、右上縁に沿って設けられ、面状片は、右側端で本体に縫着されており、略中央部に青字で「YAMAYA」と記載されている。

(4)甲3物
上記(1)〜(3)から、次の物(以下「甲3物」という。)を認定することができる。
「右下部が弧状になった略横長の黒色の布状物からなる本体を備え、
本体の左側端に、縦方向に延びる灰色の左端縁が設けられ、本体の上端右側に、本体の横幅の半分程度の長さの灰色の右上縁が設けられ、
右上縁は、上方が開口する環状となっており、
横方向に右上縁の半分程度の長さ、縦方向に布状物の半分程度の長さの灰色の面状片が、右上縁に沿って設けられ、面状片は、右側端で本体に縫着されており、略中央部に青字で「YAMAYA」と記載されている物。」

2 甲3の2
甲3の2は、「山屋産業株式会社」が右上部に印刷された納品書の写しである。

























3 甲5の1
甲5の1には、次の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、足底板、中敷き、及び履物に係り、詳しくは扁平足、外反足及び内反足を矯正する足底板、中敷き、及び履物に関するものである。」
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】・・・
【0006】本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、単一の矯正具により扁平足の矯正と内反足及び外反足のうち少なくとも何れか一方の矯正とを良好な使用感のもと同時に実現できることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、足底板に係る請求項1の発明では、土踏まず支持部と踵支持部が前後方向へ連続するように足底板本体を形成し、同足底板本体の側縁の所定部位に外反足防止壁及び内反足防止壁のうち少なくとも何れか一方を立ち上げ形成し、前記土踏まず支持部の略中央部分を上面が滑らかに盛り上がるように形成したことを要旨とした。」
「【図1】



4 甲5の2
甲5の2には、次の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本考案は、特に、正しい足の発育形成を促進して、歩行の正常化と足の異常な変形を抑制する矯正フットパッドに関するものである。」
「【発明が解決しようとする課題】
・・・
【0005】
そこで、案出されたのが本考案であって、正しい足の発育形成を促進して、歩行の正常化と足の異常な変形を抑制する矯正フットパッドを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の矯正フットパッドに係る請求項1の考案は、上面が前方部,中間部及び後方部領域に分けられた中底と、前記中底の中央に向けて傾斜する傾斜面を有する前足ブロック,中足ブロック及び後足ブロックからなる結合部材とからなり、前記結合部材を中底の各領域にそれぞれ着脱自在に設けたことを特徴とする。」
「【0013】
この考案の図1及び図2に示すように、本考案に係る矯正フットパッドは靴の中底に使用されるもので、中底10の上面の所定位置に配設される結合部材20から構成される。前記中底10は扁平な上面11と下面15を有し、該上面11が足裏に対応した前方部12と中間部13と後方部14領域とに分けられている。又、この第1実施例では前記結合部材20が中底10の上面11に取付けられているが、下面15に設けることも可能である。」
「【図1】



5 甲5の3
甲5の3には、次の事項が記載されている。
「2.実用新案登録請求の範囲
ゴム又は合成樹脂等の弾性体で成形したアーチ形状素材を、一方より他方に緩傾斜を以て薄部とした花弁形の隆起物底部に、挿着突起を設け、該挿着突起に合致する受孔を中敷本体に多数穿設してなることを特徴とする土踏まずサポーター。」(明細書第1ページ4〜9行)
「これによつて靴着用者の土踏まず部は、対応した隆起物(1)の表面丘部の小突起(2)、(2)……により刺激され、さらに隆起物(1)裏面の空洞若しくはクツシヨン体(3)によりサポーターの伸縮性が良好であるので快適感と共に歩行の疲労を軽減し健康増進に役立ち、加えて中敷本体(b)の踵部に突縁(6)を形成したことにより突縁(6)内部が空隙を形成しクツシヨン的効果があるので、歩行着地の場合も直接足部の距骨に振動衝撃が加えられず、脳神経に及ぼす効果もきわめて大なるものがある。」(明細書4ページ5〜14行)
「第1図


「第3図



第5 当審の判断
1 申立理由1(明確性)について
本件発明1の「踏み込み時に床面へは土踏まず部位から踵の順で足が着くように、上記第一の衝撃吸収機構部の厚さが上記第二の衝撃吸収機構部の厚さより大きくなるよう形成され」るとの記載は、「踏み込み時に床面へは土踏まず部位から踵の順で足が着く」ようにするため、土踏まずに位置する「第一の衝撃吸収機構部」の厚さを、踵部に位置する「第二の衝撃吸収機構部」の厚さより大きくすること、すなわち、床面に最初に着く部分の厚さを大きくすることを特定するものである。
したがって、「踏み込み時に床面へは土踏まず部位から踵の順で足が着くように、上記第一の衝撃吸収機構部の厚さが上記第二の衝撃吸収機構部の厚さより大きくなるよう形成され」という発明特定事項は明確である。
したがって、本件発明1は明確である。

2 申立理由2(実施可能要件)について
(1)発明の詳細な説明の記載
本件発明1における「踏み込み時に床面へは土踏まず部位から踵の順で足が着くように、上記第一の衝撃吸収機構部の厚さが上記第二の衝撃吸収機構部の厚さより大きくなるよう形成され」ることに関して、発明の詳細な説明には次の記載がある。
「【0020】
(4)装着時に足の指の付け根部分近傍は被覆されることなく露呈状態になるよう足裏部位に位置して土踏まず部位に第一の衝撃吸収機構部が設けられた足裏被覆部と、装着時に踵部位に位置して第二の衝撃吸収機構部が設けられた踵被覆部とを具備し、上記第一の衝撃吸収機構部はその厚さが上記第二の衝撃吸収機構部のその厚さより大きくなるよう形成され、且つ大きな衝撃力を吸収できるよう構成したことを特徴とする。」
「【0023】
・・・
しかも、第一の衝撃吸収機構部を第二の衝撃吸収機構部よりも厚く大きく構成してあるので、床面等へは必ず土踏まず部位から踵の順で足が着くようになるので、従来のように踵を中心とする大きな荷重負荷がかかることを解消できるものである。さらに、足の指の付け根部分近傍は被覆されることなく露呈状態となるよう構成されているので、競技や稽古の際に装着者は床面等で滑ることなく適切な摩擦を得られるので、動作に支障を来すこともなく実用的なものである。」
「【0032】
足裏被覆部180は、本体100を着脱自在に足に装着すると、足裏部位を密着して覆うよう形成されている。この足裏被覆部180の上面側(本体100の内側)で足の土踏まずに対応する部位(土踏まず部位)182には、第二の衝撃吸収材300と同様、EVAから成る第一の衝撃吸収材200を設けている。
【0033】
第二の衝撃吸収材300は、上面が三日月状で、本体100を着脱自在に足に装着すると、踵を包み込むように密着し、その厚さT2は10mm程度ある。また、第二の衝撃吸収材300は、その下面部300aが踵被覆部140の上面部140a側に位置して固着されるとともに、他の外面部が伸縮性を有する素材により圧着されて固定されているものである。なお、本実施形態では第二の衝撃吸収材300の形状を三日月状としたが、形状はこれに限定される訳ではない。その形状は、半月状や楕円状等踵を包み込むような種々の他の形状でも良いことは勿論である。
【0034】
第一の衝撃吸収材200は、本体100を着脱自在に足に装着すると、足の土踏まずに対応する部位(土踏まず部位)182の上面部182a側に位置して固着されるとともに、他の外面部が伸縮性を有する素材により圧着されて固定されているものである。而して、第一の衝撃吸収材200は第二の衝撃吸収材300よりもその表面積が大きくなるよう形成されており、第一の衝撃吸収材200の厚さT1は、第二の衝撃吸収材300の厚さT2の約1.1倍〜1.2倍程度のおおよそ12mm程度ある。また、第一の衝撃吸収材200の体積V1は、第二の衝撃吸収材300の体積V2より大きくなるよう形成されている。これは、第一の衝撃吸収材200の方が第二の衝撃吸収材300よりも、大きな衝撃による荷重負荷を受けることを考慮したことによる。
なお、各衝撃吸収材200,300の厚さT1,T2は、上記数値に限定される訳ではなく、他にT1=7mmのときT2=5.8mm、T1=5mmのときT2=4.5mm、といったように、厚さに関しT1>T2の関係となればよいものである。
【0035】
上記構成につき、その作用を以下に述べる。
【0036】
本体100の内側に踏み込み足を入れ、踝被覆部120が踝に、踵被覆部140が踵に、足背被覆部160が甲に、そして足裏被覆部180が足裏に密着した状態で、フラップ型の織製面ファスナー122の一端部122aを引張って踝被覆部120の表面に取着すると、剣道用足用サポータが装着される。而して、第一の衝撃吸収材200は踏まず部(中足部、所謂土踏まず部位)F3に位置するとともに、第二の衝撃吸収材300は踵部(後足部)F4に位置することになる(図5参照)。また、足趾(足の指)F1及び踏み付け部(前足部)F2は、本体100に被覆されることなく露呈することになる(図4及び図5参照)。
【0037】
打突のために装着者が勢いよく剣道用足用サポータを装着した足を踏み込むと、本体100に被覆されることなく露呈状態にある足趾F1及び踏み付け部F2が床面等との摩擦により、滑ることなく、しっかりとした踏み込みが行えるものである。そして、踏み込み足は、土踏まず部位F3から踵部F4にかけて床面に着くことになる。
【0038】
踏み込み足にかかる荷重は、先ず土踏まず部位182に設けられた第一の衝撃吸収材200に大きな荷重がかかり、続いて踵被覆部140に設けられた第二の衝撃吸収材300に荷重がかかることになる。即ち、第一の衝撃吸収材200で大きな荷重負荷が吸収され、第二の衝撃吸収材300にてさらに荷重負荷が吸収されることになる。これにより、剣道用足用サポータの装着者にかかる荷重負荷が著しく軽減されることになる。」
「【図2】


「【図3】


「【図5】



(2)発明の詳細な説明に記載された実施形態について(申立人主張第3の2(3)〜(7)関連)
発明の詳細な説明の一実施形態では、「第二の衝撃吸収材300」は、「上面が三日月状で、本体100を着脱自在に足に装着すると、踵を包み込むように密着し、その厚さT2は10mm程度」(【0033】)あるのに対して、「第一の衝撃吸収材200」は、「第一の衝撃吸収材200の厚さT1は、第二の衝撃吸収材300の厚さT2の約1.1倍〜1.2倍程度のおおよそ12mm程度」(【0034】)あり、「厚さに関しT1>T2の関係」(【0034】)となっており、【図2】、【図5】を参照すると、「F3 踏まず部(中足部)〔土踏まず部位〕」の内側(【図5】の右側)から外側(【図5】の左側)に渡って位置している。
一般に、踏まず部F3は、内側(【図5】の右側)から外側(【図5】の左側)にかけて床面側に向かって傾斜しており、立った状態では、踵部F4、踏みつけ部F2とともに、踏まず部F3の外側においても接地していることから、第二の衝撃吸収材より厚くされた第一の衝撃吸収材を床に最初に着くものとして生産することは可能である。

(3)上記第3の2(2)の主張について
発明の詳細な説明には、一実施形態として、「第一の衝撃吸収機構部」に関して、「この足裏被覆部180の上面側(本体100の内側)で足の土踏まずに対応する部位(土踏まず部位)182には、第二の衝撃吸収材300と同様、EVAから成る第一の衝撃吸収材200を設けている。」(【0032】)と記載されている。
ここで、「EVAから成る」「衝撃吸収材」であれば、衝撃吸収機能を有するのであるから、「第一の衝撃吸収機構部」を上記実施形態のように構成することで、足の衝撃を吸収できることは明らかである。

(4)小括
したがって、発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。

3 申立理由3(拡大先願)について
甲3の1及び甲3の2で立証しようとするものは、特許出願ではなく、本件特許の出願の日前の特許出願であって、本件特許の出願後に出願公開がされたものの願書に最初に添付された明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明ではない。

4 申立理由4(新規性)、申立理由5(進歩性)について
(1)甲3の1及び甲3の2(申立人主張の剣道用サポータについて)
ア 申立人主張の剣道用サポータの構成について
申立人は、甲3の1及び甲3の2の剣道用サポータについて、次のとおり認定している。
「ア.装着時に踝部位に相対する踝被覆部、踵部位に相対する踵被覆部、甲部位に相対する足背被覆部及び足裏部位に相対する足裏被覆部とから構成され、伸縮性を有する素材から成る足に着脱自在に装着される本体を含む剣道用足用サポータである。本件特許の構成要件Aと同じであるが、これは特許権者が山屋産業が開発してきたものと同じものをアレンジして特許発明としているからである(甲第3号証の1と甲第3号証の2)。
イ.上記踝被覆部に設けられ、上記踝被覆部を上記踝部位に密着させる面ファスナーが設けられている。本件特許の構成要件Bと同じであるが、これは特許権者が山屋産業が開発してきたものと同じものをアレンジして特許発明としているからである(甲第3号証の1と甲第3号証の2)。山屋産業の製品(剣道用サポータ)にもクッションが配されているが、踵部から土踏まずにかけての厚さは同じ厚さのものである。
イ−1.上記本体の上記足裏被覆部における、上記足裏部位の土踏まず部には、第一の衝撃吸収機構部はない。山屋産業の製品(剣道用サポータ)のクッションの土踏まず位置には前記同じ厚さで及んでいるか、或いは、その先端側である土踏まずに向かって徐々に限りなく薄くなっている。
イ−2.上記本体の上記踵被覆部における、上記足裏部の踵部の位置には、従来汎用のクッションが配置されている。
ウ.上記新型のクッションは、主に踵部に配置されているもので、踵部における厚さは同じ厚さであるが、踵部側が低くなるように収納されているので、土踏まず部分に向かっては厚さが厚くなっているような感覚が得られるものである。なお、土踏まず部分を厚くする中敷き等は周知である(甲第5号証の1)。
エ.上記サポータの足への装着時、当該足の指の付け根部分近傍は上記足裏被覆部にて被覆されることなく露呈状態になるよう上記本体を構成する。本件特許の構成要件Eと同じであるが、これは山屋産業がこれまで開発してきたものと同じものをアレンジして特許発明としているからである(甲第3号証の1と甲第3号証の2)。」(申立書6ページ20行〜7ページ17行)

イ 申立人主張の各構成について
(ア)構成アについて
構成アは、「装着時に踝部位に相対する踝被覆部、踵部位に相対する踵被覆部、甲部位に相対する足背被覆部及び足裏部位に相対する足裏被覆部とから構成され」と、剣道用サポータを装着した際の足の部位と本体の各部位の位置関係を特定しているが、各甲号証には、剣道用サポータを装着した状態が示されておらず、「本体」と各部位の関係が不明であるため、申立人による認定は採用できない。

(イ)構成イについて
上記(ア)のとおり、「本体」と各部位が不明であること、また、甲3−1の写真からは「面ファスナー」であることが明らかなものが認められないことから、申立人による認定は採用できない。

(ウ)構成イ−1、構成イ−2及び構成ウについて
上記(ア)のとおり、「本体」と各部位が不明であること、また、甲3−1の写真からは、「クッション」であることが明らかなものが認められないことから、申立人による認定は採用できない。

(エ)構成エについて
上記(ア)のとおり、「本体」と各部位が不明であること、また、甲3−1の写真からは、装着時の足の状態が不明であることから、申立人による認定は採用できない。

(オ)小括
上記(ア)〜(エ)のとおり、甲3の1及び甲3の2の剣道用サポータについての申立人の認定は採用できない。

ウ 甲3の1及び甲3の2から認定できる物について
甲3の1から認定できる物は、上記第4の1(4)のとおりであり、甲3の1と甲3の2との関係は後述するとおり不明であるから、甲3の1及び甲3の2から認定できる物も上記第4の1(4)のとおりである。

エ 公知日について
(ア)申立人の主張
甲3−1の剣道用サポータの公知性に関して、申立人は次のとおり述べている。
「山屋産業の製品(甲第3号証の1の剣道用サポータ;以下「山屋製品」と言う)は、山屋産業が20年以上も前から剣道用サポータを製造してきているものである(甲第3号証の2)。なお、上記山屋産業の製品は、特許権者である株式会社福田武道具(或いはその関連会社のふくだ企画)でも販売されていたものであるから、この山屋製品については株式会社福田武道具は良く認識しているものである(甲第3号証の2のふくだ企画への納品書を参照)。」(申立書6ページ12〜17行)
「山屋産業の製品(甲第3号証の1の剣道用サポータ;以下「山屋製品」と言う)は、山屋産業が20年も前から製造してきているものである(甲第3号証の2)。なお、上記山屋産業の製品は、特許権者である株式会社福田武道具或いはその関連会社のふくだ企画でも販売されていたものであるから、この山屋製品については株式会社福田武道具は良く認識しているものである(甲第3号証の2のふくだ企画への納品書を参照)。」(申立書10ページ14〜19行。令和3年9月1日提出の手続補正書により補正あり。)

(イ)当審の判断
申立人が提出した証拠説明書によると、甲3−1の写真の撮影日は令和3年7月26日であるから、本件特許の出願後に甲3−1の写真に写った物が存在していたことは認められる。
しかしながら、甲3−1の写真に写った物が、いつ不特定の者に秘密でないものとしてその内容が知られたものであるかについては、申立人の主張からは不明である。
また、甲3−2の納品書から、2013年(平成25年)の1月、4月に、山屋産業株式会社から(有)ネットウイング、ふくだ企画、松勘工業(株)、(有)林藤武道具店に、「ネオガード帆布 かかと L」、「ネオガード帆布 かかと M」、「剣道用ゼッケン」、「かかとサポーター 紺 L HYS−2−B L 5mm」、「ネオガード皮付 かかと L」、「ネオガード帆布 かかと LL」、「柔道用ゼッケン」、「剣道用 ひじ M」、「剣道用 手首 L」、「ネオガード皮付 かかと LL」の品名の物が納品されたことが看取される。
しかしながら、甲3−1の写真に写った物が、当該納品書に記載されたどの品名の物にあたるのか、また、当該納品書によって納品された物であるのか否かが不明である。

(2)小括
以上のとおりであるから、甲3物は、特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明であるとはいえない。

(3)予備的検討
上記(1)及び(2)で示したとおり、甲3物は、特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明であるとはいえないが、仮に、特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明であるとして以下検討する。

ア 対比
本件発明1と甲3物とを対比する。
甲3物の「本体」と「左端縁」と「右上縁」を合わせたものは、本件発明1の「本体」に相当する。
甲3物の「面状片は、右側端で本体に縫着されて」いることと本件発明1の「面ファスナー」が「上記踝被覆部に設けられることとは、面状物が本体に設けられる限りで一致する。
甲3物の「物」と本件発明1の「剣道用脚用サポータ」とは、「物」の限りで一致する。
そうすると、本件発明1と引用剣道サポータとは、次の点で一致し、相違する。
[一致点]
「本体を含む物であって、
本体に設けられた面状物を具備している物。」
[相違点1]
本件発明1は「本体」が「装着時に踝部位に相対する踝被覆部、踵部位に相対する踵被覆部、甲部位に相対する足背被覆部及び足裏部位に相対する足裏被覆部とから構成され、伸縮性を有する素材から成る足に着脱自在に装着される」ものであり、「上記サポータの足への装着時、当該足の指の付け根部分近傍は上記足裏被覆部にて被覆されることなく露呈状態になるよう」構成されているのに対して、甲3物はその点が不明である点。
[相違点2]
面状物が本体に設けられることに関して、本件発明1は面状物が「面ファスナー」であって、「上記踝被覆部に設けられ」るものであるのに対して、甲3物は面状物が「面状片」であって、「面状片の右側端で本体に縫着されて」いる点。
[相違点3]
本件発明1は、「面ファスナー」が「上記踝被覆部を上記踝部位に密着させる」のに対して、甲3物の「面状片」はその点が不明である点。
[相違点4]
本件発明1は「上記本体の上記足裏被覆部における、上記足裏部位の土踏まず部に位置する第一の衝撃吸収機構部と、上記本体の上記踵被覆部における、上記足裏部の踵部に位置する第二の衝撃吸収機構部とを具備し、踏み込み時に床面へは土踏まず部位から踵の順で足が着くように、上記第一の衝撃吸収機構部の厚さが上記第二の衝撃吸収機構部の厚さより大きくなるよう形成され」ているのに対して、甲3物はその点が不明である点。
[相違点5]
本件発明1は「当該付け根部分側であって、上記本体の上記足背被覆部の端部にクリップの一端部を取付け、当該クリップの他端部をばね秤の先端に取り付けて当該ばね秤を垂直方向上方に引っ張りあげた際、当該クリップの一端部を取付けた上記足背被覆部の端部と上記足の上面の垂直方向の間隔が2cmに引っ張り上げられるのに少なくとも900gの引っ張り上げる力を要するよう構成した」のに対して、甲3物はその点が不明である点。

新規性についての判断
相違点4について検討する。
甲3の1の写真からは、本体の足裏被覆部における、足裏部位の土踏まず部及び踵部に、衝撃吸収機構部を具備している点について確認することができないから、相違点4は実質的な相違点であるため、本件発明1は甲3物ではない。

進歩性についての判断
相違点4について検討する。
靴の中底に、土踏まず部に位置する第一の衝撃吸収機構部と、踵部に位置する第二の衝撃吸収機構部とを備えることは、甲5の1(上記第4の3)、甲5の2(上記第4の4)、甲5の3(上記第4の5)に示されるように、周知の事項であるが、剣道において、急激に大きな荷重が加わる際に発生する大きな衝撃力に対して足裏の土踏まず部位から踵の順で足がつくようにして保護するものではない。
また、剣道用足用サポータにおいて、本体の足裏被覆部における、足裏部位の土踏まず部に位置する第一の衝撃吸収機構部と、本体の踵被覆部における、足裏部の踵部に位置する第二の衝撃吸収機構部とを具備し、踏み込み時に床面へは土踏まず部位から踵の順で足が着くように、第一の衝撃吸収機構部の厚さが第二の衝撃吸収機構部の厚さより大きくなるよう形成する点について、他の甲号証には記載もないし示唆する記載もない。また、周知技術であるともいえない。
したがって、甲3物において、相違点4に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、相違点1〜3及び5について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者が甲3物に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、申立人の主張する特許異議申立理由によっては、本件発明1に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に本件発明1に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2021-12-08 
出願番号 P2016-519103
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A41D)
P 1 651・ 537- Y (A41D)
P 1 651・ 113- Y (A41D)
P 1 651・ 536- Y (A41D)
P 1 651・ 16- Y (A41D)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 藤井 眞吾
矢澤 周一郎
登録日 2021-01-06 
登録番号 6820096
権利者 株式会社福田武道具
発明の名称 剣道用足用サポータ  
代理人 本谷 孝夫  
代理人 木森 有平  
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