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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23D
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23D
管理番号 1384170
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-08-10 
確定日 2021-12-06 
異議申立件数
事件の表示 特許第6830754号発明「焼成チョコレート用油脂組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6830754号の請求項1〜5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第6830754号についての出願は、平成27年10月6日を出願日とする特願2015−198475号であって、令和3年1月29日にその発明について特許権の設定登録がなされ、令和3年2月17日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和3年8月10日に特許異議申立人堀久美子(以下、「申立人」という)により特許異議の申立てがなされた。

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1〜5に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
固体脂含量(SFC)が10℃で5〜25%、20℃で3〜23%、30℃で0〜10%であり、さらに10℃におけるSFCと30℃におけるSFCとの差が10%未満であり、油分中、POOとOPOの合計量が5〜20質量%であることを特徴とする、ノーテンパー型焼成チョコレート用油脂組成物。
(但し、Pはパルミチン酸、Oはオレイン酸を表し、
POOは、1位がパルミチン酸、2及び3位がオレイン酸で構成されるトリアシルグリセロールと、3位がパルミチン酸、1及び2位がオレイン酸で構成されるトリアシルグリセロールを表し、
OPOは1及び3位がオレイン酸、2位がパルミチン酸で構成されるトリアシルグリセロールを表す。)
【請求項2】
油分中、POOとOPOの合計量1質量部に対し、StOOとOStOを合計で0.3〜3質量部含有する、請求項1記載のノーテンパー型焼成チョコレート用油脂組成物。
(但し、Stはステアリン酸、Oはオレイン酸を表し、
StOOは1位がステアリン酸、2及び3位がオレイン酸で構成されるトリアシルグリセロールと、3位がステアリン酸、1及び2位がオレイン酸で構成されるトリアシルグリセロールを表し、
OStOは1及び3位がオレイン酸、2位がステアリン酸で構成されるトリアシルグリセロールを表す。)
【請求項3】
請求項1又は2記載のノーテンパー型焼成チョコレート用油脂組成物を油分中に50質量%以上含有するノーテンパー型焼成チョコレート生地。
【請求項4】
請求項3記載のノーテンパー型焼成チョコレート生地を焼成してなるノーテンパー型焼成チョコレート。
【請求項5】
固体脂含量(SFC)が10℃で5〜25%、20℃で3〜23%、30℃で0〜10%であり、さらに10℃におけるSFCと30℃におけるSFCとの差が10%未満であるノーテンパー型焼成チョコレート用油脂組成物を油分中に50質量%以上含有するノーテンパー型焼成チョコレート生地の製造方法であって、コンチング工程後に粉末のチョコレート成分を添加する工程を含むことを特徴とする、ノーテンパー型焼成チョコレート生地の製造方法。」
(以下、それぞれ、「本件特許発明1」〜「本件特許発明5」といい、まとめて「本件特許発明」ということもある。)

以下、POOとOPOについての「(但し、Pはパルミチン酸、Oはオレイン酸を表し、POOは、1位がパルミチン酸、2及び3位がオレイン酸で構成されるトリアシルグリセロールと、3位がパルミチン酸、1及び2位がオレイン酸で構成されるトリアシルグリセロールを表し、OPOは1及び3位がオレイン酸、2位がパルミチン酸で構成されるトリアシルグリセロールを表す。)」との但し書きの内容は省略して記載する。また、POO及びOPOを合わせたものについて、「PO2」ともいう。

第3 申立理由の概要
申立人は、異議申立書において、証拠として次の甲第1号証〜甲第12号証を提出し、次の申立ての理由を主張している。

甲第1号証:特開2006−115724号公報
甲第2号証:国際公開第2013/061750号
甲第3号証:日本油化学会誌,1996年,45巻,1号,29〜36頁
甲第4号証:油脂・脂質の基礎と応用 −栄養・健康から工業まで−,2005年4月1日,社団法人 日本油化学会発行,第1版,250〜251頁
甲第5号証:国際公開第2014/141733号
甲第6号証:特開昭60−244255号公報
甲第7号証:特開昭52−148662号公報
甲第8号証:特開2011−206035号公報
甲第9号証:FUJI OIL PRODUCT CATALOG,2005年,不二製油株式会社発行,1〜18頁
甲第10号証:特開2013−202039号公報
甲第11号証:国際公開第2012/157470号
甲第12号証:特開2015−202058号公報
(以下、甲第1〜12号証を「甲1」〜「甲12」という。)

・申立ての理由1
本件特許発明の10℃、20℃および30℃の固体脂含量並びに油分中のPOOとOPOの合計量の数値範囲は、本件明細書の実施例において課題を解決できることが開示された範囲に比して著しく広い。そして、10℃、20℃および30℃の固体脂含量並びに油分中のPOOとOPOの合計量が本件特許発明の範囲内であって、且つ、当該実施例で開示されている範囲外において、ぼそぼそとした食感となることなく、チョコレート本来のなめらかさを有し、口どけの良好なノーテンパー型焼成チョコレートを得るという本件特許発明の課題を解決できると当業者が認識できるような出願時の技術常識も存在しないから、本件特許発明は、当業者が本件特許発明の課題を解決できると認識できる範囲のものではない。
よって、本件特許発明1〜5は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものである。
したがって、本件特許発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

・申立ての理由2
本件明細書の段落0040に、粉末チョコレート成分の添加量はコンチング工程後のチョコレート生地100質量部に対して1質量部よりも少ないと本件特許発明の効果が得られにくくなるため好ましくない旨の記載があることから明らかなように、本件明細書では、粉末チョコレート成分の添加量が少なすぎる場合は、本件特許発明の効果が得られにくいとしており、実施例もすべてコンチング処理後に粉末チョコレート成分を添加しており、甲12も参照すれば、実質的には、「コンチング工程後に粉末チョコレート成分を添加し、焼成チョコレート生地を製造する方法」は、本件特許発明の課題を解決するために必須の方法であることが明らかである。
よって、コンチング工程後に粉末チョコレート成分を添加し、焼成チョコレート生地を製造することが特定されていない本件特許発明1〜4は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものである。
したがって、本件特許発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

・申立ての理由3
本件明細書の実施例では、コンチング工程終了後にチョコレート生地100質量部に対して、粉末のチョコレート成分として粉末チョコレート(油分25質量%)を添加されたものが記載されている。添加されるチョコレート成分が異なれば、得られるチョコレートの食感や口どけが異なることは、当業者の技術常識であり、粉末チョコレート成分として油脂類等を使用しても、ぼそぼそとした食感となることなく、チョコレート本来のなめらかさを有し、口どけの良好なノーテンパー型焼成チョコレートが得られると認識することは、当業者といえども困難である。
よって、本件特許発明5は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものである。
したがって、本件特許発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

・申立ての理由4
本件特許発明は、甲1に記載された発明及び甲3〜10に記載された事項から当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、本件特許発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

・申立ての理由5
本件特許発明は、甲2に記載された発明及び甲3〜11に記載された事項から当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、本件特許発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

第4 本件明細書の記載事項

記載(A)
「一般にチョコレートの典型的な製造は、カカオマス、砂糖、ココアバター、粉乳等原料の混合工程、続いて微細化工程(リファイニング工程)、そしてコンチング工程という順序で行われる。リファイニング工程は原料の粒子径をおおよそ20μm以下とする工程であり、最終的に得られるチョコレートの口どけやなめらかさを整えるために行われる。コンチング工程は、チョコレート生地を50〜80℃程度でゆっくりと練り上げることで、生地に含まれる水分を蒸発させたり、不快な風味の除去、新たな香味の発現といった風味を調整することが目的で行われる。ココアバター等を多く含有するテンパリング型チョコレートの場合は、コンチング工程の後、調温し、必要に応じてシード剤を添加しテンパリング工程を行う。
このようなチョコレートは、シャープメルトタイプの油脂を多く含有し、良好な口どけが特徴である一方で、高温下で溶けやすく、喫食する際に手が汚れてしまうといった問題があった。そのため、近年では従来の本格的なチョコレートの製造工程にはなかった焼成工程を加え、表面をローストしたいわゆる焼成チョコレートが人気を集めている。これは口どけの良さをうたった本格的なチョコレートよりも、様々な場所で手軽にチョコレートを楽しみたいという現代のライフスタイルにもマッチし、その市場はますます広がる傾向にある。」(段落0003〜0004)

記載(B)
「よって本発明の目的は、ぼそぼそとした食感となることなく、チョコレート本来のなめらかさを有し、口どけの良好なノーテンパー型焼成チョコレートを得ることにある。」(段落0009)

記載(C)
「以下、本発明のノーテンパー型焼成チョコレート用油脂組成物について詳述する。
本発明のノーテンパー型焼成チョコレート用油脂組成物においては、油相のSFC(固体脂含量)が10℃で5〜25%、20℃で3〜23%、30℃で0〜10%である必要があり、好ましくは10℃で7〜20%、20℃で4〜19%、30℃で1〜9%であり、より好ましくは10℃で9〜16%、20℃で5〜15%、30℃で2〜8%である。
また、同時に、本発明のノーテンパー型焼成チョコレート用油脂組成物は、油相の10℃におけるSFCと30℃におけるSFCとの差が15%未満であることが必要であり、好ましくは13%未満、より好ましくは10%未満、最も好ましくは8%未満である。SFCの値が各温度において上限を超えると、口どけが悪くなったり、なめらかさの劣った食感となってしまい、また下限を下まわると、製造が困難となったり、油性感が強く口どけの劣ったものとなる場合がある。また10℃におけるSFCと30℃におけるSFCとの差が15%以上であると、ノーテンパー型焼成チョコレートが経日的にぼそぼそとした食感となってしまう。」(段落0012)

記載(D)
「本発明においては、油分中のPOOとOPOの合計量が5〜20質量%であることが好ましく、7〜18質量%であることがより好ましく、10〜16質量%であることが最も好ましい。
油分中のPOOとOPOの合計量が上記範囲にあることで、ノーテンパー型焼成チョコレートはなめらかな食感を維持することができる。」(段落0014)

記載(E)
「本発明のノーテンパー型焼成チョコレート生地の製造方法としては、一般的に焼成チョコレート生地の製造に用いられている方法を使用することもできるが、コンチング工程後に「粉末のチョコレート成分」を添加し、焼成チョコレート生地を製造する方法を使用することが好ましい。
・・・
次に、「粉末のチョコレート成分」について説明する。
上記「粉末のチョコレート成分」は、一般にチョコレートに使用する成分であって、かつ粉末であれば使用することができ、例えばカカオ成分、油脂類、糖類、乳タンパク質等をはじめ、各種粉末食品、乳化剤等のその他の原料、またこれらのうち1種又は2種以上を組み合わせたものや粉末チョコレート類が挙げられる。・・・
上記「粉末のチョコレート成分」に使用することのできるカカオ成分としては、カカオに由来して得られた成分を広く含むものであり、カカオニブ、カカオマス、カカオリカー、ココアケーキ、ココアバター、ココアパウダー、カカオエキスパウダー等が挙げられる。
上記「粉末のチョコレート成分」に使用することのできる油脂類としては、パーム油、サル脂、シア脂、イリッペ脂、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ひまわり油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂、魚油及び鯨油等の各種動植物油脂、並びにこれらを水素添加、分別及びエステル交換から選択される1または2以上の処理を施した加工油脂から選ばれる1種または2種以上を使用することができる。
上記「粉末のチョコレート成分」中に油分が含まれる場合は、該油分の含有量は「粉末のチョコレート成分」基準で10〜35質量%が好ましく、15〜30質量%がより好ましく、21〜29質量%が最も好ましい。
油分が10質量%よりも少ないと、最終的に得られる焼成チョコレートがざらついたものとなる場合があり、また油分が35質量%よりも多いと焼成時の保形性が十分に保てない場合があるため好ましくない。なお、油分には上記油脂類のほか、カカオ成分に由来する油脂類、その他「粉末のチョコレート成分」中に含まれる油分の合計を指すものとする。
上記「粉末のチョコレート成分」に使用することのできる糖類としては、砂糖、果糖、ブドウ糖、乳糖、ガラクトース、麦芽糖、酵素糖化水飴、還元澱粉糖化物、還元水飴、異性化液糖、蔗糖結合水飴、トレハロース等、通常食用に使用される糖類であればいずれでも良く、それらの中から選ばれる1種又は2種以上を使用することができる。
上記「粉末のチョコレート成分」に使用することのできる乳タンパク質等としては、例えば、ホエイプロテイン濃縮物、ミルクプロテイン濃縮物、カゼインナトリウム、カゼインカリウム、カゼイン等の乳タンパク質や、全粉乳、脱脂粉乳、バターミルクパウダー、ホエーパウダー、チーズ等の乳タンパク質を含有する乳や乳製品を挙げることができる。
上記好ましい製造方法においては、上記「粉末のチョコレート成分」として粉末チョコレート類を使用することがより好ましい。粉末チョコレート類を使用することで、最終的に得られる焼成チョコレートが、より雑味の少ない良好な風味を有するものとなる。上記粉末チョコレート類としては、例えばミルクチョコレート、スイートチョコレート、ホワイトチョコレート、カラーチョコレート、ビターチョコレート等を粉末にしたものが挙げられる。上記「粉末のチョコレート成分」における上記粉末チョコレート類の含有量は、好ましくは70〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%である。」(段落0030〜0038)

記載(F)
「本発明の焼成チョコレート生地の好ましい製造方法は、上記「コンチング工程」後のチョコレート生地に「粉末のチョコレート成分」を添加するものである。
一般に、チョコレート類を製造する際には、リファイニング工程、コンチング工程を経て得られたチョコレート生地を必要に応じてテンパリングし、成型することでチョコレートを得、また一般の焼成チョコレートであれば、得られたチョコレートをさらに焼成することで得られる。リファイニング工程、コンチング工程でなめらかになったチョコレート生地へさらに粉末原料を添加することは、食感の悪化を招きかねず、一部の例外を除き通常行われないものであった。
しかし、上記好ましい製造方法においては、チョコレート生地に、特にリファイニング工程、コンチング工程を経たチョコレート生地に「粉末のチョコレート成分」を添加することが特徴である。コンチング工程後に粉末のチョコレート成分をチョコレート生地に加えた場合でも、その後チョコレート生地を焼成することにより、得られるノーテンパー型焼成チョコレートは意外にも非常になめらかな食感となる。
「粉末のチョコレート成分」の添加量は、コンチング工程後のチョコレート生地100質量部に対し、1〜40質量部が好ましく、5〜25質量部がより好ましく、10〜20質量部が最も好ましい。「粉末のチョコレート成分」の添加量が40質量部よりも多いと最終的に得られる焼成チョコレートがざらついたものとなってしまう場合があり、1質量部よりも少ないと本発明の効果が得られにくくなるため好ましくない。」(段落0039〜0040)

記載(G)
「本発明のノーテンパー型焼成チョコレートの製造方法は、上記ノーテンパー型焼成チョコレート生地を必要に応じて成型し、焼成するものである。」(段落0044)

記載(H)
「【実施例】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
<エステル交換油脂Aの製造>
ヨウ素価60のパームスーパーオレインを、ナトリウムメチラートを触媒として、非選択的エステル交換反応を行なった後、漂白(白土3%、85℃、0.93kPa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、0.4kPa以下の減圧下)を行ない、エステル交換油脂Aを得た。
<エステル交換油脂Bの製造>
ヨウ素価55のパーム分別軟部油を、ナトリウムメチラートを触媒として、非選択的エステル交換反応を行なった後、漂白(白土3%、85℃、0.93kPa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、0.4kPa以下の減圧下)を行ない、エステル交換油脂Bを得た。
ノーテンパー型焼成チョコレート用油脂組成物の製造
[実施例1]
エステル交換油脂A40質量部、ハイオレイックヒマワリ油40質量部、菜種油17.5質量部、ハイエルシン菜種油の極度硬化油2質量部、ヘキサステアリン酸ヘキサグリセリル(サンファットPS−66、太陽化学社製)0.5質量部を70℃で溶解・混合し、本発明のノーテンパー型焼成チョコレート用油脂組成物Aを得た。
得られた油脂組成物の固体脂含量(SFC)、POOとOPOの合計量、StOOとOStOの合計量を[表1]に示す。
[実施例2]
パームスーパーオレイン(ヨウ素価60)49.5質量部、エステル交換油脂B20質量部、ハイオレイックヒマワリ油28質量部、ハイエルシン菜種油の極度硬化油2質量部、ヘキサステアリン酸ヘキサグリセリル(サンファットPS−66、太陽化学社製)0.5質量部を70℃で溶解・混合し、本発明のノーテンパー型焼成チョコレート用油脂組成物Bを得た。
得られた油脂組成物の固体脂含量(SFC)、POOとOPOの合計量、StOOとOStOの合計量を[表1]に示す。
[実施例3]
シア脂分別軟部油99.5質量部、ヘキサステアリン酸ヘキサグリセリル(サンファットPS−66、太陽化学社製)0.5質量部を70℃で溶解・混合し、本発明のノーテンパー型焼成チョコレート用油脂組成物Cを得た。
得られた油脂組成物の固体脂含量(SFC)、POOとOPOの合計量、StOOとOStOの合計量を[表1]に示す。
[実施例4]
エステル交換油脂A30質量部、エステル交換油脂B7質量部、ハイオレイックヒマワリ油59.5質量部、ハイエルシン菜種油の極度硬化油3質量部、ヘキサステアリン酸ヘキサグリセリル(サンファットPS−66、太陽化学社製)0.5質量部を70℃で溶解・混合し、本発明のノーテンパー型焼成チョコレート用油脂組成物Dを得た。
得られた油脂組成物の固体脂含量(SFC)、POOとOPOの合計量、StOOとOStOの合計量を[表1]に示す。
・・・
【表1】

」(段落0046〜0057)

記載(I)
「ノーテンパー型焼成チョコレート生地の製造
砂糖、カカオマス、ココアパウダー、油脂組成物(ノーテンパー型焼成チョコレート用油脂組成物A〜G、油脂組成物H〜Iのうちのいずれか)、全粉乳、脱脂粉乳を下記の分量で配合し、常法に従って混合した。続いてリファイナーに通し粒子を微細化した。その後、レシチンを加えコンチェにて50〜60℃で18時間コンチング処理し、その間に常法に従い油脂組成物の一部を加えてチョコレート生地を調製した。
続いて、上記チョコレート生地を30℃に調温し、該チョコレート生地100質量部に対して、粉末のチョコレート成分として粉末チョコレート(油分25質量%)を15質量部となるよう添加し混合した後、さらに水3質量部を添加・混合して焼成チョコレート生地を得た。なお、粉末チョコレート添加時の上記チョコレート生地の粘度はおおよそ28000mPa・sであった。
続いて焼成チョコレート生地を成形し、成型物を天板に載せ、200℃のオーブンで4分焼成し、焼成チョコレートA〜I(アルファベットは使用した油脂組成物に対応する)を得た。」(段落0058)

記載(J)
「焼成チョコレートの評価
得られた本発明の焼成チョコレートと、比較のための焼成チョコレートは、20℃で保存し、焼成1日後、2週間後後及び1か月後に10人のパネラーにより下記[評価基準]に従って官能評価をさせ、10人のパネラーの合計点を評価点数とし、結果を下記のようにして〔表2〕に示した。
44〜50点:◎+、37〜43点:◎、30〜36点:○、15〜29点:△、14点以下:×
[評価基準]
・食感(なめらかさ)
5点 …非常になめらかな食感である。
3点 …なめらかな食感である。
1点…ややぼそぼそとした食感で、なめらかさが乏しい。
0点…ぼそぼそとした食感でなめらかさがない。
・口どけ
5点…非常に口どけが良い。
3点…口どけが良い。
1点…口どけがやや悪い。
0点…非常に口どけが悪い。
【表2】

」(段落0060〜0061)

第5 甲号証の記載事項

1 甲1の記載事項

記載(1a)
「【請求項1】
油相中に、パーム軟部油をエステル交換して得られた油脂を15〜50質量%(油相基準)及び極度硬化油脂を1〜10質量%(油相基準)含有し、且つ、該油相のSFCが、10℃で5〜20であり、20℃で1〜10であって、該油相を80〜100質量%(組成物基準)含有することを特徴とする流動状油脂組成物。
・・・
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の流動状油脂組成物を含有することを特徴とするクリーム状食品。」(特許請求の範囲)

記載(1b)
「従って、本発明の目的は、特にパーム系油脂を多く使用しても、またトランス脂肪酸を含有せずとも、経日的に固液分離を起こすことがなく、広い温度域で良好な流動性を有する流動状油脂組成物を提供することにある。
また、本発明のさらなる目的は、ソフトで、口溶けが良好でありながら、耐熱性も良好なディップクリーム、シュガークリーム、バタークリーム、焼き残りクリーム等のクリーム状食品を提供することにある。」(段落0009)

記載(1c)
「本発明の流動状油脂組成物では、これらの食用油脂の中でも、10℃において液状である油脂を使用することが、広い温度域で良好な流動性を一層確実に得られる点で好ましく、具体的には、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、べに花油、ひまわり油、パーム分別軟部油、パーム分別軟部油のエステル交換油の分別軟部油の中から選択される1種又は2種以上の混合油脂が好ましく使用される。」(段落0029)

記載(1d)
「本発明の流動状油脂組成物における油相含量は、80〜100質量%、好ましくは90〜100質量%、より好ましくは99質量%〜100質量%である。
また、本発明の流動状油脂組成物における水相含量は、20質量%未満、好ましくは10質量%未満、より好ましくは1質量%未満である。
油相含量が80質量%未満、すなわち水相成分が20質量%以上であると、温度変動等によって固化してしまい、その場合には流動状を呈さなくなってしまう。」(段落0034)

記載(1e)
「次に、本発明の流動状油脂組成物の用途について説明する。
本発明の流動状油脂組成物は、固液分離を起こすことがなく、広い温度域で良好な流動性を有するものであり、スプレッド用をはじめ、ソフトな食感を有するバタースポンジケーキ等に用いる練込用や、あるいは大量生産のために機械化されたラインでパンを製造する際に用いる製パン練込用、あるいは、ディップクリーム、シュガークリーム、バタークリーム、焼き残りクリーム等のクリーム状食品練込用等に、特に好適に使用することができる。」(段落0043)

記載(1f)
「本発明のクリーム状食品について以下に述べる。
本発明のクリーム状食品は、本発明の流動状油脂組成物を含有してなるものであり、ソフトで、口溶けがよく、適度のチキソトロピー性を有しながら、耐熱性も良好であるという特徴を有する。」(段落0044)

記載(1g)
「本発明のクリーム状食品は、従来のクリーム状食品を製造する際に使用する油脂組成物の一部又は全部を、本発明の流動状油脂組成物に置換して製造すればよい。
つまり、本発明の流動状油脂組成物を使用し、各種糖類、脱脂粉乳や全粉乳等の乳製品、食塩等の塩味剤、β−カロチン等の着色料、小麦蛋白や大豆蛋白といった植物蛋白、卵及び各種卵加工品、着香料、調味料、乾燥果実、粉末果汁、粉末コーヒー、ナッツペースト、香辛料、ココアマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類等の食品素材や食品添加物を加え、常法に従って加工することにより、本発明のクリーム状食品を得ることができる。」(段落0046)

記載(1h)
「本発明のクリーム状食品は、サンドクリーム、フィリングクリーム、トッピングクリーム、ディップクリームとして、ベーカリー食品、惣菜食品、畜肉食品等の各種食品に用いることができる。また、本発明のクリーム状食品を各種のベーカリー生地、惣菜生地、畜肉生地等に、サンド、フィリング、トッピング、包餡成形等した後に焼成してもよい。」(段落0047)

記載(1i)
「〔製造例1〕パーム軟部油のエステル交換油Aの製造
ヨウ素価51のパーム油を、パーム油:アセトン=1:2の質量比率で50℃にて混合溶解し、混合物とした。この混合物を1℃/分の冷却速度で25℃まで冷却した後、結晶部(ステアリン画分)を濾別して液状部を得た。該液状部から常法によりアセトンを除去し、続いて常法に従い脱色、脱臭し、ヨウ素価55のパーム軟部油を得た。このパーム軟部油を原料油脂とし、ナトリウムメチラートを触媒として、非選択的エステル交換反応を行なった後、漂白(白土3%、85℃、9.3×102Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、4.0×102Pa以下の減圧下)を行い、モノグリセリド含量が0.1質量%であるパーム軟部油のエステル交換油Aを得た。
〔製造例2〕パーム軟部油のエステル交換油Bの製造
ヨウ素価51のパーム油を、パーム油:アセトン=1:2の質量比率で50℃にて混合溶解し、混合物とした。この混合物を1℃/分の冷却速度で25℃まで冷却した後、結晶部(ステアリン画分)を濾別して液状部を得た。該液状部から常法によりアセトンを除去し、続いて常法に従い脱色、脱臭し、ヨウ素価60のパーム軟部油を得た。このパーム軟部油を原料油脂とし、ナトリウムメチラートを触媒として、非選択的エステル交換反応を行なった後、漂白(白土3%、85℃、9.3×102Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、4.0×102Pa以下の減圧下)を行い、モノグリセリド含量が0.2質量%であるパーム軟部油のエステル交換油Bを得た。」(段落0049〜0050)

記載(1j)
「〔実施例1〕ショートニングタイプの流動状油脂組成物の製造1
パーム軟部油のエステル交換油A27質量部、大豆液状油70質量部及び極度硬化油脂A3質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ショートニングタイプの流動状油脂組成物を作成した。得られた流動状油脂組成物の油相のSFCは10℃で7、20℃で4であり、トランス脂肪酸含量は2質量%未満であり、実質的にトランス脂肪酸を含有していなかった。
・・・
〔実施例2〕ショートニングタイプの流動状油脂組成物の製造2
パーム軟部油のエステル交換油A40質量部、大豆液状油58質量部及び極度硬化油脂A2質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ショートニングタイプの流動状油脂組成物を作成した。得られた流動状油脂組成物の油相のSFCは10℃で9、20℃で4であり、トランス脂肪酸含量は2質量%未満であり、実質的にトランス脂肪酸を含有していなかった。
・・・
〔実施例3〕ショートニングタイプの流動状油脂組成物の製造3
パーム軟部油のエステル交換油B40質量部、大豆液状油58質量部及び極度硬化油脂A2質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ショートニングタイプの流動状油脂組成物を作成した。得られた流動状油脂組成物の油相のSFCは10℃で7、20℃で3であり、トランス脂肪酸含量は2質量%未満であり、実質的にトランス脂肪酸を含有していなかった。」(段落0055〜0057)

記載(1k)
「〔実施例8〕チョコ風味ディップクリームの製造1
実施例1で得られた流動状油脂組成物32質量部、砂糖38.5質量部、カカオマス6質量部、ココアパウダー7質量部、全粉乳10質量部、脱脂粉乳6質量部、レシチン0.3質量部及び香料0.2質量部を、ロールリファイニングし、チョコ風味ディップクリームを製造した。」(段落0067)

2 甲2の記載事項

記載(2a)
「[請求項1]
下記の(a)から(e)の条件を満たす油脂組成物。
(a)X3含量が1〜7質量%
(b)X2U含量が3〜23質量%
(c)XU2含量が15〜37質量%
(d)U3含量が40〜65質量%
(e)XXUとUXUの合計含量が3〜17質量%
(上記の(a)から(e)の条件において、X、U、X3、X2U、XU2、U3、XXU、及びUXUはそれぞれ以下のものを示す。
X:炭素数16以上の飽和脂肪酸
U:炭素数16以上の不飽和脂肪酸
X3:Xが3分子結合しているトリグリセリド X2U:Xが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリド
XU2:Xが1分子、Uが2分子結合しているトリグリセリド
U3:Uが3分子結合しているトリグリセリド
XXU:1位と3位にXとUがそれぞれ一つずつ、2位にXが結合しているトリグリセリド
UXU:1位と3位にU、2位にXが結合しているトリグリセリド)
・・・
[請求項3]
請求項1または2に記載の油脂組成物を使用して製造される油性食品。
[請求項4]
前記油性食品がチョコレートである請求項3に記載の油性食品。」(請求の範囲)

記載(2b)
「本発明の目的は、グレイン及び固液分離が発生しにくい、かつ、低温で硬くなく、口溶けの良い油性食品並びに該油性食品の製造に使用されるトランス脂肪酸含量の低い油脂組成物を提供することである。」(段落0008)

記載(2c)
「本発明の実施の形態に係る油脂組成物は、チョコレート用油脂(ソフトチョコレート用油脂等)、フィリング用油脂、スプレッド用油脂、バタークリーム用油脂等(サンドクリーム用油脂等)として、油性食品に使用することができる。
・・・
本発明の実施の形態に係る油性食品は、本発明の実施の形態に係る油脂組成物を使用して製造されることを特徴する。本発明において、油性食品とは、油脂を含み、油脂が連続相である加工食品のことをいい、好ましくは糖類を含むものである。油性食品の具体例としては、チョコレート(ソフトチョコレート等)、フィリング、スプレッド、バタークリーム(サンドクリーム等)等が挙げられる。」(段落0065〜0067)

記載(2d)
「〔分析方法〕
脂肪酸含量及びトランス脂肪酸含量は、AOCS Ce1f−96に準拠した方法で測定した。X3含量、X2U含量、XU2含量及びU3含量は、ガスクロマトグラフ法(JAOCS,vol70,11,1111−1114(1993))に準拠した方法で測定した。XUX含量及びXXU含量は、XUX/X2U比をJ.High Resol.Chromatogr.,18,105−107(1995)に準拠した方法で測定し、この値とX2U含量を基に算出した。UXU含量はUXU/XU2比をJ.High Resol.Chromatogr.,18,105−107(1995)に準拠した方法で測定し、この値とXU2含量を基に算出した。SFCは、測定試料を80℃で完全に融解させ、5℃で3日間保管することで測定試料の前処理を行った後、IUPAC法2.150a Solid Content determination in Fats by NMRに準じて測定した。ヨウ素価は、「基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会編)」の「2.3.4.1−1996 ヨウ素価(ウィイス−シクロヘキサン法)」に準じて測定した。
〔エステル交換油A1の製造〕
ハイオレイックヒマワリ油(オレイン酸含量85.1質量%、リノール酸含量6.6質量%、リノレン酸含量0.1質量%)22質量部とパームステアリン(ヨウ素価36.1)31質量部と大豆油の極度硬化油(ヨウ素価1.1、炭素数16以上の飽和脂肪酸含量99.5質量%)47質量部を混合した。得られた混合油(ラウリン酸含量0.1質量%、パルミチン酸含量24.7質量%、ステアリン酸43.0質量%、オレイン酸26.7質量%、リノール酸3.8質量%、リノレン酸0.1質量%、トランス脂肪酸0質量%)を、ランダムエステル交換反応を行うことにより、エステル交換油A1を得た。エステル交換反応は、常法に従い、原料油脂を十分に乾燥させ、ナトリウムメトキシドを原料油脂に対して0.2質量%添加した後、減圧下、120℃で0.5時間攪拌しながら反応を行った。
〔エステル交換油B1の製造〕
パームステアリン(ヨウ素価36.1)60質量部とパーム油(ヨウ素価52.0)40質量部を混合した。得られた混合油(ラウリン酸含量0.2質量%、パルミチン酸含量51.7質量%、ステアリン酸4.6質量%、オレイン酸33.2質量%、リノール酸8.0質量%、リノレン酸0.2質量%、トランス脂肪酸0質量%)を、ランダムエステル交換反応を行うことにより、エステル交換油B1を得た。エステル交換反応は、上記エステル交換油A1と同様の方法で行った。
〔試験油脂1の製造〕
40質量部のエステル交換油A1と60質量部のエステル交換油B1を混合した(ラウリン酸含量0.1質量%、パルミチン酸含量40.9質量%、ステアリン酸20.3質量%、オレイン酸30.2質量%、リノール酸6.5質量%、リノレン酸0.1質量%、トランス脂肪酸0質量%)。得られた混合油を36〜38℃でドライ分別し、高融点部を除去することで低融点部を得た。得られた低融点部を0〜2℃で溶剤分別(アセトン使用)し、高融点部を除去することで低融点部を得て、これに脱臭処理を行ったものを試験油脂1(X3含量:0.1質量%、X2U含量:29.9質量%、XU2含量:55.4質量%、U3含量:10.9質量%XXU+UXU含量:31.2質量%、X2U/XU2質量比:0.54、TFA含量:0.7質量%、C16〜24のFA含量:98.6質量%、C16〜24のS含量:36.6質量%、C16〜24のU含量:62.0質量%、5℃のSFC:36.7%、10℃のSFC:26.1%、20℃のSFC:1.4%)とした。
〔試験油脂2〜6の準備〕
試験油脂2〜6として、下記の油脂を準備した。
・試験油脂2:パームオレイン(ヨウ素価:65、日清オイリオグループ(株)製)
・試験油脂3:パームオレインのランダムエステル交換油(ヨウ素価:56、日清オイリオグループ(株)製)
・試験油脂4:菜種油(日清オイリオグループ(株)製)
・試験油脂5:ハイエルシン菜種油の極度硬化油(横関油脂工業(株)製)
・試験油脂6:菜種油の極度硬化油(横関油脂工業(株)製)
〔実施例1〜7及び比較例1〜5の油脂組成物の製造〕
試験油脂を表1及び2に記載の配合比(質量%)で混合して、実施例1〜7の油脂組成物及び比較例1〜5の油脂組成物を得た。実施例7の油脂組成物の製造には、乳化剤(デカグリセリンベヘン酸エステル、阪本薬品工業(株)製、商品名:DDB−750)を用いた。
[表1]

[表2]

〔実施例及び比較例の油脂組成物の分析〕
実施例1〜7の油脂組成物及び比較例1〜5の油脂組成物について、上記の分析方法に従って脂肪酸含量(質量%)、トリグリセリド含量(質量%)、SFC(%)の測定を行った結果を表3及び4に示す(SFCは実施例のみを測定した。)。表3及び4から分かるように、実施例及び比較例の油脂組成物は、トランス脂肪酸含量が低いものであった。
[表3]

[表4]

〔チョコレート評価試験〕
実施例1〜7の油脂組成物及び比較例1〜5の油脂組成物を使用し、表5の配合でソフトチョコレートを製造した(なお、ソフトチョコレートの水分含量は全て1質量%以下であった。)。製造した各油脂組成物及び各ソフトチョコレートについて、下記(1)〜(6)の評価試験を行った。
[表5]

・レシチン:日清オイリオグループ(株)製、商品名:レシチンDX
・カカオマス:大東カカオ(株)製、商品名:QM−P
・ココアパウダー:Delfi(株)製、商品名:DF−500
・砂糖:(株)徳倉製、商品名:粉糖」(段落0078〜0090)

3 甲3の記載事項

記載(3a)
「3・2 食用植物油のTG組成
食用油として使用される植物油を対象に,各油脂を構成する分子種の割合を溶出順に示した(Table 2)が,各油脂はTG組成にその特徴を明りょうに表していた。」(31頁左欄18〜22行)

記載(3b)


」(Table 2)

4 甲4の記載事項

記載(4a)
「チョコレートの主原料は、カカオマス、カカオ脂、砂糖、粉乳である。一般にカカオ分がその国の規定を満たさないとチョコレートと名乗ることができない。わが国の規格は公正競争規約に示されており、例えば「チョコレート」はカカオ分が30%以上、うちカカオ脂18%以上が要件とされる。
これらの原料をニーダーなどの混合機で均一なペーストを作る。この段階では流動状に乏しく、ざらざらした食感であるため、レファイニングと呼ばれる工程にてチョコレートの粒子を25〜30μm以下として、さらにコンチングの工程にてなめらかな流動性の良い状態とする。」(250頁右欄13〜24行)

記載(4b)
「(2)非テンパリング型ハードバター:化学的組成はカカオ脂とまったく異なるが、融解挙動が似ている油脂から成るもので、結晶状態もカカオ脂と大きく異なり、カカオ脂と混合すると融点が低下するため、混合率を抑える必要がある。非テンパリング型ハードバターには、ラウリン酸型と非ラウリン酸型がある。
ラウリン酸型ハードバターは、やし油、パーム核油を硬化、分別して作られる。非ラウリン酸型で一般的なものは高含量のトランス酸を含む油脂であって、大豆油、パームオレインなどをトランス酸が生成する条件にて硬化し、またそれを分別することにより得られる。この他に、種々の油脂を単独あるいは混合したものをランダム型エステル交換したもの、またその分別油が知られている。」(251頁右欄21〜34行)

5 甲5の記載事項

記載(5a)
「本明細書における「焼成用チョコレート様食品」とは、焼成前のチョコレート様食品であり、チョコレート様食品自体を成型し、それ単独で焼成するか、または別の可食物と組み合わせて焼成することが可能なチョコレート様食品であり、かつ当該用途に特に適したチョコレート様食品である。別の可食物としてはクッキー、マフィン、バターケーキ、スポンジケーキ、ビスケット、ウエハース等の焼き菓子およびパン類が例示できる。他の食品と組み合わせる際の焼成用チョコレート様食品の態様としては、チップ状に絞りそれをパンやケーキの生地中に分散させたり、表面に塗布したり、内部に注入、包餡したり、上部に載置したりといった工程の後に焼成するものがあげられる。焼成方法は特に限定はされないがオーブンなどによる直焼きまたは高周波加熱が挙げられる。なお、本明細書における「焼成チョコレート様食品」とは焼成後のチョコレート様食品のことをいう
前記焼成用チョコレート様食品の物性は特に限定されないが、包餡用途、絞り出しなどの加工が可能な物性で20℃〜30℃付近でソフトな物性のものが好ましい。前記焼成用チョコレート様食品は、テンパリングなどの一般的なチョコレートに必要とされる煩雑な作業を必要とせず、溶解してそのまま使用する、あるいは25℃程度に温調してソフトな物性を維持したまま焼成前の成型作業を行なうことができる。」(段落0019〜0020)

記載(5b)
「[表4]

」(段落0050表4)

6 甲6の記載事項

記載(6a)
「(1)砂糖20〜66重量%、HLB値が10以上の乳化剤0.2〜1重量%、油脂34〜42重量%を含む常温可塑性焼菓子用チョコレート。
・・・
(5)砂糖20〜66重量%、HLB値が10以上の乳化剤0.2〜1重量%、油脂34〜42重量%を含む常温可塑性焼菓子用チョコレートをドウに可塑状態で用い焼成する方法。」(特許請求の範囲)

記載(6b)


」(5頁右下欄表−6)

7 甲7の記載事項

記載(7a)
「1.チョコレート生地等の油脂性菓子生地を80℃以上にて数秒から数十分間加熱し固化させることを特徴とする耐熱性の優れた油脂性菓子の製造方法。
・・・
4.チョコレート生地等の油脂性菓子生地をセンターとしキャンディー、焼菓子等の間に挟み或は中に包合し70℃以上にて数秒から数十分間加熱しセンターを固化させることを特徴とする特許請求の範囲1.に記載の耐熱性の優れた油脂性菓子の製造方法。」(特許請求の範囲)

記載(7b)
「この発明は、チョコレート生地などの油脂性菓子生地を、80℃以上300℃以下の温度で、数秒より数十分間加熱し固化させることにより、耐熱性の優れた新規な油脂性菓子を製造する方法に係るものである。」(2頁右上欄4〜8行)

記載(7c)
「この発明に使用する油脂性菓子生地として、チョコレート生地、カラーチョコレート生地、コーテイング用油脂性クリーム生地、ナッツクリーム生地などのごとく、油脂に砂糖を混合しクリーム状となしたもの、或は油脂にカカオマス、ナッツ、粉乳、糖類、澱粉類、インスタントコーヒー、粉末果汁などの粉末飲料、乳化剤、香料、色素、抗酸化剤などを一種又は二種以上加えたものが利用出来る。」(2頁右下欄3〜11行)

記載(7d)
「しかし、この発明では、従来の方法とは逆に、油脂性菓子生地を80℃以上に加熱して固化させている。従って成形に先だってテンパリング操作を行う必要がなく、油脂性菓子生地をテンパリングせずにモールドに注入し、或は芯材に被覆し、融解状態のまゝ加熱するだけで固化が行なわれる。」(3頁左上欄2〜8行)

記載(7e)
「この発明を実施するための製造装置は第2−a図、第2−b図および第2−c図に示すごとく、通常の油脂性菓子の製造装置の冷却装置5を加熱装置6に変更するだけで良く、加熱装置は目的とする温度、時間に加熱出来る様になっている設備なら良く、連続式或はバッチ式のオーブン等通常用いられる装置が利用出来る。
また、従来の油脂性菓子の製造装置は、テンパリング装置1を有するが、本発明装置においては、テンパリング装置を使用することなく、省略して配置することが出来る。」(4頁左下欄13行〜右下欄3行)

8 甲8の記載事項

記載(8a)
「【請求項1】
レシチンが1.2重量%以上4.0重量%以下含有されていることを特徴とする油系クリーム。
・・・
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の油系クリームを包餡して焼成されていることを特徴とする複合焼成食品。」(特許請求の範囲)

記載(8b)
「本発明により、クッキー、スポンジケーキ、マフィン等の焼成食品生地に油系クリームを包餡し、オーブン等で焼成した場合でも、焼成食品への油脂移行や油系クリームの食感の劣化が抑えられ、焼成後も噛みだしがやわらかい油系クリーム及びそれを使用した複合焼成食品類を提供することができる。」(段落0007)

記載(8c)
「本発明の油系クリームは、上記のような構成を備えていれば特に製法は限定されないが、例えば、油系クリームの原料を混合し、レファイナーにかけて微粒化後、コンチングすることによって得られる。」(段落0011)

9 甲9の記載事項

記載(9a)
6頁の「洋生チョコレート」との名前の表には、商品名が、「チョコファンシー ベーカーブラウン スイート」のものの特長・用途として、「デニッシュ生地にデポジッターで連続的に絞れ、かつ焼成後も保型性を維持し、ソフトな食感を持つチョコレートフィリングです。」と記載されている。

10 甲10の記載事項

記載(10a)
「チョコレートは、通常、チョコレートの原料をミキシング(混合工程)し、リファイナー(ロール掛け)によるリファイニング(微粒化工程)した後、コンチング(精練工程)を行い、冷却(冷却工程)することにより製造する。また、コンチングを行った後、必要に応じてテンパリング(調温工程)、成型(成型工程)を行うこともある。
通常、微粒化工程に供するチョコレート生地は、生地中の油分含量が高いとリファイナーのロールが滑ってしまいリファイニングを行うことが困難になる。このため、通常、微粒化工程に供するチョコレート生地中の油分含量は、好ましくは20〜35質量%、より好ましくは23〜30質量%となるように調整する。従って、全チョコレート中の油分含量が前記範囲の上限を超える場合、通常、油脂、含油原料(カカオマス、ココアパウダー等)の一部を微粒化工程前のチョコレート生地に配合することで、その油分含量を調整する。微粒化工程前のチョコレート生地に配合されなかった油脂、含油原料は、微粒化工程以降に添加される。微粒化工程後のチョコレート生地に、微粒化工程前に配合されなかった油脂、含油原料を添加せずにコンチングを行うと、チョコレート生地はドライ状(ソボロ状)でコンチングが行われる。チョコレート生地をドライ状でコンチングすることを、ドライコンチングという。なお、本発明においてチョコレート生地がドライ状とは、撹拌していると生地がまとまらず小さい球形に分かれてしまう状態(指で押すと硬く、崩れる。)だが、手で握るとまとまる状態のことである。」(段落0021)

記載(10b)
「<チョコレートの評価4>
表7の配合のチョコレートを以下の条件で製造した。カカオマス36.5質量部、砂糖43質量部を混合し、リファイニングを行った後(リファイニングに供したチョコレート生地中の油脂含量:25.3質量%)、表8の条件でコンチングを行った。コンチングを行った後のチョコレート生地に、残りの原料を添加し、均一になるまで混合した。
得られた各チョコレート400gを完全に融解させた後、チョコレートの品温を30℃にして、チョコレート100質量部に対してシード剤0.2質量部を混合分散させることでテンパリングを行った。チョコレートの流動性を<チョコレートの評価1>と同じ評価方法及び評価基準で評価した。評価結果を表8に示した。
【表7】

カカオマス中のココアバター含量:55質量%
チョコレート中のカカオ分含量:43質量%
チョコレート中の乳製品含量:0質量%
チョコレート中の油脂含量:37.2質量%
チョコレートの油脂中のココアバター含量:100質量%
【表8】

」(段落0043〜0045)

11 甲11の記載事項

記載(11a)
「本発明の目的は、低トランス脂肪酸含量で非ラウリン酸型のノーテンパー型ハードバターとして使用可能な油脂組成物及び該油脂組成物を含んでなる耐熱性及び口溶けの良い油性食品を提供することである。」(段落0013)

記載(11b)
「〔エステル交換油A1の製造〕
ハイオレイックヒマワリ油(オレイン酸含量85.1質量%、リノール酸含量6.6質量%、リノレン酸含量0.1質量%)22質量部とパームステアリン(沃素価36.1)31質量部と大豆油の極度硬化油(沃素価1.1、炭素数16以上の飽和脂肪酸含量99.5質量%)47質量部を混合した。得られた混合油(ラウリン酸含量0.1質量%、パルミチン酸含量24.7質量%、ステアリン酸43.0質量%、オレイン酸26.7質量%、リノール酸3.8質量%、リノレン酸0.1質量%、トランス脂肪酸0質量%)を、ランダムエステル交換反応を行うことにより、エステル交換油A1を得た。
エステル交換反応は、常法に従い、原料油脂を十分に乾燥させ、ナトリウムメトキシドを原料油脂に対して0.2質量%添加した後、減圧下、120℃で0.5時間攪拌しながら反応を行った。」(段落0054)

記載(11c)
「〔エステル交換油B1の製造〕
パームステアリン(沃素価36.1)60質量部とパーム油(沃素価52.0)40質量部を混合した。得られた混合油(ラウリン酸含量0.2質量%、パルミチン酸含量51.7質量%、ステアリン酸4.6質量%、オレイン酸33.2質量%、リノール酸8.0質量%、リノレン酸0.2質量%、トランス脂肪酸0質量%)を、ランダムエステル交換反応を行うことにより、エステル交換油B1を得た。
エステル交換反応は、上記エステル交換油A1と同様の方法で行った。」(段落0058)

記載(11d)
「〔実施例1の油脂組成物の製造〕
40質量部のエステル交換油A1と60質量部のエステル交換油B1を混合した。得られた混合油を36〜38℃でドライ分別し、高融点部を除去することで低融点部を得た。得られた低融点部を0〜2℃で溶剤分別(アセトン使用)し、低融点部を除去することで高融点部を得て、これに脱臭処理を行ったものを実施例1の油脂組成物(EBMF)とした。」(段落0060)

記載(11e)
「〔チョコレート評価試験〕
実施例1〜5の油脂組成物、比較例1〜4の油脂組成物を使用し、表3、4の配合でノーテンパー型のダークチョコレート(油脂中の各油脂組成物の配合量:80.0質量%)及びミルクチョコレート(油脂中の各油脂組成物の配合量:74.0質量%)を製造した。各チョコレートは、テンパリングを行わない以外は常法(混合、微粒化、精練、冷却)により製造した。
専門パネラ5名が、得られたチョコレートの耐熱性及び口溶けについて、非常に良い(3点)、良い(2点)、悪い(1点)の3段階で採点し、以下の基準に従い評価を行った。評価結果を表5、6に示す。
各評価は、◎である場合をチョコレートの耐熱性及び口溶けが良いと判断した。
◎:5名の平均点が2.0点以上
△:5名の平均点が1.5点以上2.0点未満
×:5名の平均点が1点以上1.5点未満」(段落0072)

12 甲12の記載事項

記載(12a)
「【請求項1】
チョコレート生地に粉末のチョコレート成分を添加する、焼成チョコレート用生地の製造方法。
・・・
【請求項4】
請求項1〜3いずれか一項記載の製造方法で得られた焼成チョコレート用生地。
【請求項5】
請求項4記載の焼成チョコレート用生地を焼成してなる焼成チョコレート。」(特許請求の範囲)

記載(12b)
「本発明者等は上記課題を解決すべく種々検討した結果、粉末のチョコレート成分をチョコレート生地中に添加することで、風味に影響することなく焼成時の保形性を大きく高めることができることを知見した。
すなわち、本発明はチョコレート生地に粉末のチョコレート成分を添加する、焼成チョコレート用生地の製造方法である。」(段落0009)

記載(12c)
「「粉末のチョコレート成分」の添加量は、「チョコレート生地」100質量部に対し、1〜40質量部が好ましく、1〜30質量部がより好ましく、5〜25質量部が更に好ましく、10〜20質量部が最も好ましい。添加量が40質量部よりも多いと最終的に得られる焼成チョコレートがざらついたものとなってしまう場合があり、1質量部よりも少ないと本発明の効果が得られにくくなるため好ましくない。」(段落0027)

記載(12d)
「[比較例1]
上記チョコレート生地Iを100質量部、そのまま焼成チョコレート用生地とし、成形し冷却固化させた後、成型物を天板に載せ、200℃のオーブンで4分焼成し、比較例である焼成チョコレートKを得た。
得られた焼成チョコレート用生地Kの水分含量は1質量%であった。
焼成時には激しくダレが生じ、保形性の悪いものであった。また得られた焼成チョコレートKはややぼそぼそとした食感であった。
[比較例2]
上記チョコレート生地Iを100質量部、30℃に調温した(このときの粘度は28000mPa・sであった)。次に、水3質量部を添加・混合して比較例である焼成チョコレート用生地Lを得た。
得られた焼成チョコレート用生地Lの水分含量は3.9質量%であった。
続いて焼成チョコレート用生地Lを成形し冷却固化させた後、成型物を天板に載せ、200℃のオーブンで4分焼成し、比較例である焼成チョコレートLを得た。
焼成時にはダレが生じ保形性が不十分であった。また得られた焼成チョコレートLはややぼそぼそとした食感であった。」(段落0047〜0048)

第6 当審の判断
1 申立ての理由1〜3(サポート要件)について
(1)本件特許発明の解決しようとする課題
本件特許発明は、特許請求の範囲、明細書の全体の記載事項(特に、段落0009)及び出願時の技術常識からみて、「ぼそぼそとした食感となることなく、チョコレート本来のなめらかさを有し、口どけの良好なノーテンパー型焼成チョコレート」の提供を解決しようとする課題とするものであると認められる。

(2)判断
本件明細書の記載(C)には、本件特許発明のノーテンパー型焼成チョコレート用油脂組成物においては、油相のSFC(固体脂含量)が10℃で5〜25%、20℃で3〜23%、30℃で0〜10%である必要があり、同時に、油相の10℃におけるSFCと30℃におけるSFCとの差が15%未満である必要があり、より好ましくは10%未満であることが記載されており、SFCの値が各温度において上限を超えると、口どけがわるくなったり、なめらかさの劣った食感となってしまい、下限を下回ると、油性感が強く口どけの劣ったものとなる場合があり、10℃におけるSFCと30℃におけるSFCの差が15%以上であると、経日的にぼそぼそとした食感になることが記載されている。また、本件明細書の記載(D)には、油分中のPOOとOPOの合計量が5〜20質量%の範囲にあることで、なめらかな食感を維持することができることが記載されている。
以上のことから、本件明細書には、油相のSFCを本件特許発明の数値範囲内とすることにより、ぼそぼそとした食感となることなく、なめらかさを有し、口どけの良好な焼成チョコレートとすることができること、さらに、油分中のPOOとOPOの合計量を本件特許発明の数値範囲内とすることにより、なめらかな食感を維持することができることが記載されている。
また、本件明細書の記載(E)及び(F)には、リファイニング工程、コンチング工程でなめらかになったチョコレート生地へさらに粉末原料を添加することは、食感の悪化を招きかねず、一部の例外を除き通常行われなかったものであったところ、コンチング工程を経た後に粉末のチョコレート成分を加えた場合でも、その後チョコレート生地を焼成することにより得られるノーテンパー型焼成チョコレートは意外にも非常になめらかな食感となることと併せ、該粉末のチョコレート成分として使用することができる成分が記載されている。
そして、実施例においては、コンチング工程後のチョコレート生地100質量部に対して、粉末チョコレート(油分25質量%)を15質量部となるよう添加するという条件に合わせて、チョコレート生地に含まれる油脂組成物を異なるものとした、焼成チョコレートの製造例と比較製造例との比較が行われており、本件特許発明に係るSFCの数値範囲を満たす油脂組成物(実施例1〜7)を用いた製造例1〜7が、該数値範囲を満たさない油脂組成物(比較例1〜2)を用いた比較製造例1〜2と比較して、なめらかな食感とぼそぼそした食感のなさを評価した「食感(なめらかさ)」と「口どけ」2つの評価項目で良好なものであったこと、本件特許発明にかかるSFCの数値範囲及びPOOとOPOの合計量の数値範囲を満たす油脂組成物(実施例1、3〜6)を用いた製造例1、3〜6が、該数値範囲を満たさない油脂組成物(実施例2、7、比較例1、2)を用いた製造例2、7、比較製造例1、2と比較して、「食感(なめらかさ)」と「口どけ」2つの評価項目で、2週間後と1か月後の評価で良好なものであったことが示されている(記載(H)、(I)、(J))。
してみると、本件明細書の記載から、本件特許発明にかかるSFCの数値範囲か、SFCの数値範囲及びPOOとOPOの合計量の数値範囲を満たすことにより、ぼそぼそとした食感となることを抑制し、なめらかさ、口どけを良好なものとするという本件特許発明の課題が解決できること、さらにコンチング工程後に粉末チョコレート成分を添加する工程を設けても、なめらかさを含む本件特許発明の課題が解決できるであろうことを、当業者が理解するものである。
よって、上記申立ての理由1〜3には、理由がない。

(3)申立人の主張について
ア 申立ての理由1について
申立人は、特許異議申立書において、本件特許発明の10℃、20℃および30℃のSFC並びに油分中のPOOとOPOの合計量の数値範囲は、本件明細書の実施例において課題を解決できることが開示された範囲に比して著しく広い旨主張しているが、本件特許発明の10℃、20℃および30℃のSFC並びに油分中のPOOとOPOの合計量の数値範囲は、実施例で開示されたSFCの値やPOOとOPOの合計量の値に対して、本件特許発明の数値範囲が不当に広いとは認められず、実施例の数値以外の数値範囲において、本件特許発明の課題を解決することができないとする理由もない。
よって、上記主張は採用できない。

イ 申立ての理由2について
申立人は、特許異議申立書において、コンチング工程後の粉末チョコレート成分の添加がない場合に本件特許発明の課題を解決できることを当業者が認識できない旨主張している。
しかしながら、本件明細書の実施例と比較例では、なめらかな食感という本件特許発明の解決しようとする課題に関する評価に一定の影響を与えるであろう粉末のチョコレート成分の添加について、コンチング工程後のチョコレート生地100質量部に対して、粉末チョコレート(油分25質量%)を15質量部となるよう添加するという条件に合わせて、チョコレート生地に含まれる油脂組成物を異なるものとした、実施例と比較例の比較が行われており、当該比較により、粉末チョコレート成分の添加の有無に関わらず、本件特許発明にかかるSFCの数値範囲及びPOOとOPOの合計量の数値範囲を満たすことにより、本件特許発明の課題を解決できることを当業者が認識できるものである。
よって、上記主張は採用できない。
また、申立人は、特許異議申立書において、本件特許発明にかかる出願の日の後に公知となった、甲12に、コンチング工程後に粉末のチョコレート成分が添加されていない焼成チョコレートはぼそぼそとした食感になることが示されていること、甲12は、本件特許発明にかかる出願後に出願公開されたものではあるが、「コンチング工程後に粉末チョコレート成分が添加されていない焼成チョコレートは、ぼそぼそした食感になる」という事実は普遍的な事実であること、甲12は本件特許発明の特許権者が出願人となっている出願の公開公報であるから、特許権者はこの事実を把握していたことを根拠に、コンチング工程後の粉末チョコレート成分の添加がない場合に本件特許発明の課題を解決できることを当業者が認識できない旨主張している。
しかしながら、甲12には本件特許発明の油脂組成物を使用した場合において課題が解決できないことが示されているものではなく、甲12は本件特許発明にかかる出願の日前に公知になったものでもないから、当該主張は採用できない。

ウ 申立ての理由3について
申立人は、特許異議申立書において、コンチング工程後に添加する粉末チョコレート成分として粉末チョコレート(油分25質量%)を用いなかった場合に本件特許発明の課題を解決できることを当業者が認識できない旨主張している。
しかしながら、本件明細書の実施例と比較例では、なめらかな食感という本件特許発明の解決しようとする課題に関する評価に一定の影響を与えるであろう粉末のチョコレート成分の添加について、コンチング工程後のチョコレート生地100質量部に対して、粉末チョコレート(油分25質量%)を15質量部となるよう添加するという条件に合わせて、チョコレート生地に含まれる油脂組成物を異なるものとした、実施例と比較例の比較が行われており、当該比較により、粉末チョコレート成分の添加の有無に関わらず、本件特許発明にかかるSFCの数値範囲を満たすことにより、本件特許発明の課題を解決できることを当業者が認識できるものである。そして、記載(E)に、本件特許発明の好ましい形態としてコンチング工程後に粉末チョコレート成分を添加することが記載され、粉末チョコレートに使用することができる成分が例示されているのであるから、粉末チョコレート成分として粉末チョコレート(油分25質量%)以外のものを用いた場合にも、本件特許発明の課題を解決できることを当業者が把握できる。
よって、上記主張は採用できない。

2 申立ての理由4〜5(進歩性)について
(1)本件特許発明の「焼成チョコレート」について
記載(A)には、従来のチョコレートでは、高温で溶けやすく、喫食する際に手が汚れてしまうといった問題があったことが記載されており、近年では、従来の本格的なチョコレートの製造工程にはなかった焼成工程を加え、表面をローストしたいわゆる焼成チョコレートが人気を集めており、これは様々な場所で手軽にチョコレートを楽しみたいという現代のライフスタイルにもマッチしていることが記載されていることから、「焼成チョコレート」は、チョコレート自体の表面をローストすることで、喫食する際に手が汚れることなく、様々な場所で手軽に楽しめるようになったチョコレートのことであることがわかる。
また、記載(J)には、本件特許発明のノーテンパー型焼成チョコレートの製造方法は、ノーテンパー型焼成チョコレート生地を必要に応じて成型し、焼成するものであることが記載されており、実施例においても、焼成チョコレート生地を成形し、焼成して焼成チョコレートを得たことが記載されている(記載(I))。
してみると、本件特許発明の「焼成チョコレート」は、チョコレート生地自体の表面を焼成して、喫食する際に手が汚れない表面の性状となっているチョコレートのことをいうものと認められる。

(2)甲1を主引用例とした場合について
ア 甲1に記載された発明
甲1には、油相中に、パーム軟部油をエステル交換して得られた油脂を15〜50質量%(油相基準)及び極度硬化油脂を1〜10質量%(油相基準)含有し、且つ、該油相のSFCが、10℃で5〜20であり、20℃で1〜10であって、該油相を80〜100質量%(組成物基準)含有する流動状油脂組成物と、該流動状油脂組成物を含有するクリーム状食品が記載されている(記載(1a))。そして、実施例として、ヨウ素価51のパーム油を、分別、脱色、脱臭し、得られたヨウ素価55のパーム軟部油を原料油脂とし、ナトリウムメチラートを触媒として、非選択的エステル交換反応を行なった後、漂白、脱臭を行い、モノグリセリド含量が0.1質量%であるパーム軟部油のエステル交換油Aを得て(記載(1i))、そのパーム軟部油のエステル交換油A27質量部、大豆液状油70質量部及び極度硬化油脂A3質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ショートニングタイプの流動状油脂組成物を作成したところ、得られた流動状油脂組成物の油相のSFCは10℃で7、20℃で4であったことが記載されており(記載(1j))、当該流動状油脂組成物32質量部、砂糖38.5質量部、カカオマス6質量部、ココアパウダー7質量部、全粉乳10質量部、脱脂粉乳6質量部、レシチン0.3質量部及び香料0.2質量部の混合物をロールリファイニングしてチョコ風味ディップクリームを製造したことも記載されている(記載(1k))。ここで、当該チョコ風味ディップクリームは、合計で100質量部であるから、チョコ風味ディップクリーム中の流動状油脂組成物の割合は、32質量%である。
そして、ショートニングにおいてもテンパリング工程が行われる場合があることは技術常識であるところ(要すれば、マテリアルライフ,2000年,Vol.12,No.1,pp.8〜12の8頁左欄参照。)、当該ショートニングタイプの流動状油脂組成物は、油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化して製造されており(記載(1j))、テンパリング操作が行われておらず、当該チョコ風味ディップクリームも、テンパリング操作を行わずに製造されているから、該流動状油脂組成物及びチョコ風味ディップクリームは、ノーテンパー型である。
よって、甲1には、
「チョコ風味ディップクリームに用いられるショートニングタイプのノーテンパー型流動状油脂組成物であって、ヨウ素価55のパーム軟部油を原料油脂とし、ナトリウムメチラートを触媒として、非選択的エステル交換反応を行なった後、漂白、脱臭を行ったパーム軟部油のエステル交換油A27質量部、大豆液状油70質量部及び極度硬化油脂A3質量部からなる油相を混合して得られた、油相の10℃のSFCが7であり、20℃のSFCが4である、ショートニングタイプの流動状油脂組成物。」の発明(以下、「甲1食品発明」という。)及び
「ヨウ素価55のパーム軟部油を原料油脂とし、ナトリウムメチラートを触媒として、非選択的エステル交換反応を行なった後、漂白、脱臭を行ったパーム軟部油のエステル交換油A27質量部、大豆液状油70質量部及び極度硬化油脂A3質量部からなる油相を混合して得られた、油相の10℃のSFCが7であり、20℃のSFCが4である、ショートニングタイプのノーテンパー型流動状油脂組成物32質量部、砂糖38.5質量部、カカオマス6質量部、ココアパウダー7質量部、全粉乳10質量部、脱脂粉乳6質量部、レシチン0.3質量部及び香料0.2質量部の混合物を、ロールリファイニングする、ノーテンパー型チョコ風味ディップクリームの製造方法。」の発明(以下、「甲1製造方法発明」という。)が記載されているといえる。

イ 対比・判断
(ア)本件特許発明1について
a 対比
本件特許発明1と甲1食品発明を対比すると、両者は、「固体脂含量(SFC)が10℃で5〜25%、20℃で3〜23%であるノーテンパー型油脂組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1−1)本件特許発明1は、焼成チョコレート用であるのに対して、甲1食品発明は、チョコ風味ディップクリームに用いられているものの、焼成チョコレートに用いることは記載されていない点。
(相違点1−2)本件特許発明1は、30℃のSFCが0〜10%であって、10℃におけるSFCと30℃におけるSFCとの差が10%未満と特定されているのに対して、甲1食品発明は、30℃のSFCと、10℃におけるSFCと30℃におけるSFCとの差の記載がない点。
(相違点1−3)本件特許発明1は、油分中のPOOとOPOの合計量が5〜20質量%に特定されているのに対して、甲1食品発明は、油分中のPOOとOPOの合計量の記載がない点。

相違点の判断
上記相違点1−1について検討する。
甲1には、流動状油脂組成物を含有するクリーム状食品として、焼き残りクリームとの焼成工程が含まれると考えられるものが挙げられてはいるものの(記載(1b)、(1e))、流動状油脂組成物を焼成チョコレートに用いることは記載も示唆もされていない。してみると、甲1食品発明の油脂組成物は、チョコ風味ディップクリームに用いられるショートニングタイプのノーテンパー型流動状油脂組成物であるので、それを焼成チョコレートに用いる動機付けが見出せない。
また、甲3〜甲10の記載を見ても、甲1において、甲1食品発明の油脂組成物を焼成チョコレートに用いる動機付けは見出せない。
上記相違点1−2について検討する。
SFCは、所定温度における油脂中の固体脂含有量を示すもので、0以上の値であり、温度が高くなるほど低くなるというのが、当該技術分野における技術常識である。甲1食品発明の20℃のSFCは4であるから、甲1食品発明の30℃のSFCは、0以上4未満であることは明らかである。また、甲1食品発明の10℃のSFCは7であるから、10℃のSFCと30℃のSFCの差は、3超〜7であり、10未満である。
よって、相違点1−2は、実質的な相違点ではない。
上記相違点1−3について検討する。
甲1食品発明は、エステル交換油A27質量部、大豆液状油70質量部及び極度硬化油脂A3質量部からなる油相を混合して得られた流動状油脂組成物であるから、そのPOOとOPOの合計量は、エステル交換油A、大豆液状油及び極度硬化油脂A3のPO2含量から算出することができる。
極度硬化油脂A3のPO2含量について検討する。
極度硬化油脂は、水素添加によってすべての不飽和脂肪酸が飽和脂肪酸になっているため、不飽和脂肪酸であるオレイン酸含量も0質量%である。極度硬化油脂A3はPO2を構成するオレイン酸含量が0質量%であるから、PO2含量も0質量%である。
大豆液状油のPO2含量について検討する。
甲3には、食用植物油のTG組成が記載されている(記載(3a)、(3b))。記載(3b)の「Soy」の列の「OOP」には、「2.3」との記載があるから、大豆液状油のPO2含量は、2.3質量%である。
エステル交換油AのPO2含量について検討する。
甲1のエステル交換油Aの製造方法は、
「ヨウ素価51のパーム油を、パーム油:アセトン=1:2の質量比率で50℃にて混合溶解し、混合物とした。この混合物を1℃/分の冷却速度で25℃まで冷却した後、結晶部(ステアリン画分)を濾別して液状部を得た。該液状部から常法によりアセトンを除去し、続いて常法に従い脱色、脱臭し、ヨウ素価55のパーム軟部油を得た。このパーム軟部油を原料油脂とし、ナトリウムメチラートを触媒として、非選択的エステル交換反応を行なった後、漂白(白土3%、85℃、9.3×102Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、4.0×102Pa以下の減圧下)を行い、モノグリセリド含量が0.1質量%であるパーム軟部油のエステル交換油Aを得た。」(記載(1i))
である。
一方、本件明細書に記載のエステル交換油脂Bの製造方法は、
「ヨウ素価55のパーム分別軟部油を、ナトリウムメチラートを触媒として、非選択的エステル交換反応を行なった後、漂白(白土3%、85℃、0.93kPa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、0.4kPa以下の減圧下)を行ない、エステル交換油脂Bを得た。」(記載(H))
である。
甲1のエステル交換油Aと本件明細書に記載のエステル交換油脂Bの製造方法は、前者がヨウ素価55のパーム軟部油を得る方法が記載されているのに対して、後者がヨウ素価55のパーム分別軟部油の製造方法の記載はない点では異なるものの、それ以外の製造方法は同じである。
そして、同じヨウ素価を有するパーム分別軟部油は、ほぼ同じ組成であると考えられ、ナトリウムメチラートを触媒とした非選択的エステル交換反応は、原料の脂肪酸組成が同じであれば、同様の確率で特定のトリグリセリドが生成するものであるから、ほぼ同じ組成のヨウ素価55のパーム軟部油を原料として同じエステル交換を含む製造方法により得られた甲1のエステル交換油Aと本件明細書に記載のエステル交換油脂BのPO2含量は、ほぼ同じものである。
本件明細書に記載のエステル交換油脂BのPO2含量は、本件明細書の実施例4のノーテンパー型焼成チョコレート用油脂組成物DのPO2含量とその原料油脂であるエステル交換油A、ハイオレイックヒマワリ油及びハイエルシン菜種油の極度硬化油のPO2含量から導き出すことができる。また、本件明細書の実施例4のノーテンパー型焼成チョコレート用油脂組成物Dの原料油脂であるエステル交換油A及びハイオレイックヒマワリ油のPO2含量は、本件明細書の実施例3のノーテンパー型焼成チョコレート用油脂組成物CのPO2含量、実施例5のノーテンパー型焼成チョコレート用油脂組成物EのPO2含量及び実施例6のノーテンパー型焼成チョコレート用油脂組成物FのPO2含量から導き出すことができる。
本件明細書の実施例3のノーテンパー型焼成チョコレート用油脂組成物Cは、シア脂分別軟部油を99.5質量%含有し、PO2含量が10.9質量%であるから(記載(H))、当該シア脂分別軟部油のPO2含量は10.95質量%である。また、極度硬化油脂のPO2含量は0質量%であるから、本件明細書の実施例5及び6のノーテンパー型焼成チョコレート用油脂組成物E及びFに配合されているハイエルシン菜種油の極度硬化油のPO2含量は0質量%である。そして、本件明細書の実施例5のノーテンパー型焼成チョコレート用油脂組成物Eは、油脂として、エステル交換油脂Aを19.5質量%、ハイオレイックヒマワリ油75質量%、ハイエルシン菜種油の極度硬化油5質量%を含有し、PO2含量が10.3質量%であるから(記載(H))、エステル交換油脂A及びハイオレイックヒマワリ油由来のPO2含量は10.3質量%である。また、本件明細書の実施例6のノーテンパー型焼成チョコレート用油脂組成物Fは、油脂として、エステル交換油脂Aを15質量%、ハイオレイックヒマワリ油を49.5質量%、シア脂分別軟部油を30質量%、ハイエルシン菜種油の極度硬化油を5質量%含有し、PO2含量は10.5質量%であって(記載(H))、シア脂分別軟部油由来のPO2含量は3.29質量%(10.95×0.30)であるから、エステル交換油脂A及びハイオレイックヒマワリ油由来のPO2含量は7.21質量%(10.5−3.29)である。
ここで、エステル交換油脂AのPO2含量をX、ハイオレイックヒマワリ油のPO2含量をYとすると、本件明細書の実施例5及び6のノーテンパー型焼成チョコレート用油脂組成物E及びFのエステル交換油脂A及びハイオレイックヒマワリ油由来のPO2含量から、下記式1と式2を立てることができる。

式1:0.195X+0.75Y=10.3
式2:0.15X+0.495Y=7.21

式1と式2を連立方程式として、XとYの値を計算すると、X=19.34、Y=8.71となる。
してみると、Xであるエステル交換油脂AのPO2含量は19.34質量%であり、Yであるハイオレイックヒマワリ油のPO2含量は8.71質量%である。
本件明細書の実施例4のノーテンパー型焼成チョコレート用油脂組成物Dは、油脂として、エステル交換油脂Aを30質量%、エステル交換油脂Bを7質量%、ハイオレイックヒマワリ油を59.5質量%、ハイエルシン菜種油の極度硬化油を3質量%含有し、PO2含量が12.8質量%であって(記載(H))、エステル交換油脂A由来のPO2含量は5.80質量%(19.34×0.30)、ハイオレイックヒマワリ油由来のPO2含量は5.18質量%(8.71×0.595)、ハイエルシ菜種油の極度硬化油由来のPO2含量は0質量%であるから、エステル交換油脂B由来のPO2含量は1.82質量%(12.8−5.80−5.18−0)である。そうすると、本件明細書記載のエステル交換油脂BのPO2含量は26.0質量%(18.2/0.07)である。
上述したように、本件明細書記載のエステル交換油脂Bと甲1のエステル交換油AのPO2含量はほぼ同じであることから、甲1のエステル交換油AのPO2含量は26.0質量%程度である。
したがって、甲1食品発明のPO2含量は、8.63質量%(26.0×0.27+2.3×0.70+0×0.03)程度であり、本件特許発明1のPOOとOPOの合計量5〜20質量%の数値範囲内のものであるから、上記相違点1−3は実質的な相違点ではない。
また、仮に甲1食品発明の油脂組成物を焼成チョコレートとすることが容易であるとしても、甲1には、流動状油脂組成物が、焼成を行った後も、ぼそぼそとした食感となることなく、なめらかさを有し、口どけが良好であることの、記載も示唆もないことから、油脂組成物を焼成チョコレートに用いることにより、ぼそぼそとした食感となることなく、チョコレート本来のなめらかさを有し、口どけが良好な焼成チョコレートを得ることができるという効果は、当業者が予測し得た程度のものではない。
よって、本件特許発明1は甲1食品発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)本件特許発明2〜4について
本件特許発明2〜4は、本件特許発明1を引用し、さらに限定するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1食品発明に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(ウ)本件特許発明5について
a 対比
本件特許発明5と甲1製造方法発明を対比すると、両者は「固体脂含量(SFC)が10℃で5〜25%、20℃で3〜23%であるノーテンパー型油脂組成物を含有する、ノーテンパー型組成物の製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1−4)本件特許発明5は焼成チョコレート生地の製造方法であるのに対して、甲1製造方法発明はチョコ風味ディップクリームの製造方法である点。
(相違点1−5)本件特許発明5は、油脂組成物が、30℃のSFCが0〜10%であって、10℃におけるSFCと30℃におけるSFCとの差が10%未満と特定されているのに対して、甲1製造方法発明は、油脂組成物の30℃のSFCと、10℃におけるSFCと30℃におけるSFCとの差の記載がない点。
(相違点1−6)本件特許発明5は、油脂組成物を油分中に50質量%以上含有することが特定されているのに対して、甲1製造方法発明は、油脂組成物を油分中に50質量%以上含有することの特定がない点。
(相違点1−7)本件特許発明5は、コンチング工程後に粉末のチョコレート成分を添加する工程を含むのに対して、甲1製造方法発明は、コンチング工程後に粉末のチョコレート成分を添加する工程がない点。

相違点の判断
上記相違点1−4について検討する。
甲1には、流動状油脂組成物を含有するクリーム状食品として、焼き残りクリームとの焼成工程が含まれると考えられるものが挙げられてはいるものの(記載(1b)、(1e))、流動状油脂組成物を焼成チョコレートに用いることは記載も示唆もされていないことから、甲1製造方法発明のチョコ風味ディップクリームに用いられている油脂組成物を焼成チョコレート生地に用いる動機付けが見出せない。
また、甲3〜甲10の記載を見ても、甲1において、甲1製造方法発明の油脂組成物を焼成チョコレート生地に用いる動機付けは見出せない。
上記相違点1−5については、上記イ(ア)bにおいて相違点1−2について検討したのと同様であるから、上記相違点1−5は、実質的な相違点ではない。
上記相違点1−6について検討する。
甲1製造方法発明にかかるチョコ風味ディップクリームは、ショートニングタイプの流動状油脂組成物32質量部、砂糖38.5質量部、カカオマス6質量部、ココアパウダー7質量部、全粉乳10質量部、脱脂粉乳6質量部、レシチン0.3質量部及び香料0.2質量部の混合物であり、この内、油分が含まれるのは、ショートニングタイプの流動状油脂組成物、カカオマス、ココアパウダー、全粉乳、脱脂粉乳、香料である。ショートニングタイプの流動状油脂組成物が32質量部であるのに対して、カカオマス、ココアパウダー、全粉乳、脱脂粉乳、香料の合計量は、29.2質量部(6+7+10+6+0.2)であるから、カカオマス、ココアパウダー、全粉乳、脱脂粉乳、香料中に含まれる油分の割合に関わらず、チョコ風味ディップクリームの油分中のショートニングタイプの流動状油脂組成物の含有割合は50質量%以上である。よって、上記相違点1−6は、実質的な相違点ではない。
上記相違点1−7について検討する。
甲1には、チョコ風味ディップクリームの製造において、コンチング工程を行い、その後に粉末のチョコレート成分を添加することの記載も示唆もないことから、チョコ風味ディップクリームの製造方法において、コンチング工程後に粉末のチョコレート成分を添加する動機付けは見出せない。
また、甲3〜甲10の記載を見ても、甲1において、甲1製造方法発明において、コンチング工程後に粉末のチョコレート成分を添加する動機付けは見出せない。
また、仮に甲1製造方法発明のチョコ風味ディップクリームに用いられている油脂組成物を焼成チョコレートに用いることが容易であって、コンチング工程後に粉末のチョコレート成分を添加する工程を行うことが容易であるとしても、甲1には、流動状油脂組成物が、焼成を行った後も、ぼそぼそとした食感となることなく、なめらかさを有し、口どけが良好であることの、記載も示唆もないことから、油脂組成物を焼成チョコレートに用いることにより、ぼそぼそとした食感となることなく、チョコレート本来のなめらかさを有し、口どけが良好な焼成チョコレートを得ることができるという効果は、当業者が予測し得た程度のものではない。
よって、本件特許発明5は甲1製造方法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書において、甲1の段落0046にチョコレートに配合される主原料が記載されていること、甲4の記載から油脂を単独あるいは混合したものをランダムエステル交換したものやその分別油が、ノーテンパー型チョコレート油脂として使用されることは当業者の技術常識であること、甲1には焼き残りクリームに用いることが記載されていることから、焼成クリーム食品用ということができること、及び甲5〜甲9の記載から、ソフトな物性を有するソフトチョコレート等のクリーム状食品に対して焼成処理を施して焼成チョコレートとする点は周知であることから、甲1に記載されたチョコ風味ディップクリームに対して焼成処理を施して焼成チョコレートとすることは、当業者が容易に想到するものである旨主張している。
また、申立人は、特許異議申立書において、甲10に、チョコレートの製造において、コンチング工程後にカカオマス等を添加することが記載されていることから、甲1において、コンチング工程終了後にカカオマス等の粉末チョコレート成分を添加することは、当業者が容易に想到するものである旨主張している。
しかしながら、上記のとおり、本件特許発明1〜5は甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、申立ての理由4についての上記主張には理由がない。

(3)甲2を主引用例とした場合について
ア 甲2に記載された発明
甲2には、Xが炭素数16以上の飽和脂肪酸であって、Uが炭素数16以上の不飽和脂肪酸である、XU2含量が15〜37質量%である、油脂組成物を、チョコレートである油性食品の製造に用いることが記載されており(記載(2a))、実施例1として、5℃のSFCが8.3、20℃のSFCが4.6、30℃のSFCが3.8であり、XU2含量が23.6質量%である油脂組成物が記載されており、実施例1の油脂組成物36質量%、レシチン0.50質量%、砂糖48.15質量%、カカオマス5.25質量%、ココアパウダー10.0質量%の配合(総油分は40質量%、総油分中のカカオ脂は10質量%)でソフトチョコレートを製造したことが記載されている(記載(2d))。
ここで、当該ソフトチョコレートは、総油分は40質量%、総油分中のカカオ脂は10質量%であって、油分を含有する可能性のある配合成分は、上記油脂組成物、カカオマス、ココアパウダーのみであり、カカオマス及びココアパウダーに含まれる油分はカカオ脂のみであるから、当該ソフトチョコレートにおける油分中の上記油脂組成物が含まれる割合は、90質量%である。
よって、甲2には、
「5℃のSFCが8.3、20℃のSFCが4.6、30℃のSFCが3.8であり、XU2含量が23.6質量%である、チョコレートに用いられる油脂組成物。」の発明(以下、「甲2食品発明」という。)及び
「5℃のSFCが8.3、20℃のSFCが4.6、30℃のSFCが3.8であり、XU2含量が23.6質量%である油脂組成物36質量%、レシチン0.50質量%、砂糖48.15質量%、カカオマス5.25質量%、ココアパウダー10.0質量%を混合する、上記油脂組成物を油分中に90質量%含有するソフトチョコレートの製造方法。」の発明(以下、「甲2製造方法発明」という。)が記載されているといえる。

イ 対比・判断
(ア)本件特許発明1について
a 対比
本件特許発明1と甲2食品発明を対比すると、両者は、「固体脂含量(SFC)が20℃で3〜23%、30℃で0〜10%であるチョコレート用油脂組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点2−1)本件特許発明1は、焼成チョコレート用であるのに対して、甲2食品発明は、チョコレート用である点。
(相違点2−2)本件特許発明1は、油分中のPOOとOPOの合計量が5〜20質量%に特定されているのに対して、甲2食品発明は、油分中のPOOとOPOの合計量の記載がない点。
(相違点2−3)本件特許発明1は、10℃のSFCが5〜25%であって、10℃におけるSFCと30℃におけるSFCとの差が10%未満と特定されているのに対して、甲2食品発明は、10℃のSFCと、10℃におけるSFCと30℃におけるSFCとの差の記載がない点。
(相違点2−4)本件特許発明1は、ノーテンパー型であるのに対して、甲2食品発明は、ノーテンパー型であるかが不明である点。

相違点の判断
上記相違点2−1について検討する。
甲2は、グレイン及び固液分離が発生しにくい、かつ、低温で硬くなく、口溶けの良い油性食品の提供を目的としており(記載(2b))、当該油性食品としては、チョコレート(ソフトチョコレート等)、フィリング、スプレッド、バタークリーム(サンドクリーム等)が挙げられており(記載(2c))、甲2には、焼成チョコレートとすることの記載も示唆もないことから、甲2には、甲2食品発明の油脂組成物を焼成チョコレートに用いる動機付けが見出せない。
また、甲3〜甲11の記載を見ても、甲2において、甲2食品発明の油脂組成物を焼成チョコレートに用いる動機付けは見出せない。
上記相違点2−2について検討する。
甲2の実施例1の油脂組成物は、試験油脂1を含むものであるから、油分中のPOOとOPOの合計量を算出するためには、試験油脂1中のPO2含量が算出できる必要がある。しかしながら、試験油脂1は、混合油(ラウリン酸含量0.1質量%、パルミチン酸含量24.7質量%、ステアリン酸43.0質量%、オレイン酸26.7質量%、リノール酸3.8質量%、リノレン酸0.1質量%、トランス脂肪酸0質量%)を、ランダムエステル交換反応を行うことにより得られたエステル交換油A1と、混合油(ラウリン酸含量0.2質量%、パルミチン酸含量51.7質量%、ステアリン酸4.6質量%、オレイン酸33.2質量%、リノール酸8.0質量%、リノレン酸0.2質量%、トランス脂肪酸0質量%)を、ランダムエステル交換反応を行うことにより得られたエステル交換油B1を用い、40質量部のエステル交換油A1と60質量部のエステル交換油B1を混合し(ラウリン酸含量0.1質量%、パルミチン酸含量40.9質量%、ステアリン酸20.3質量%、オレイン酸30.2質量%、リノール酸6.5質量%、リノレン酸0.1質量%、トランス脂肪酸0質量%)、得られた混合油を36〜38℃でドライ分別し、高融点部を除去することで低融点部を得て、得られた低融点部を0〜2℃で溶剤分別(アセトン使用)し、高融点部を除去することで低融点部を得て、これに脱臭処理を行ったものである(記載(2d))。試験油脂1の原料であるエステル交換油A1及びエステル交換油B1は、脂肪酸組成が特定さており、ランダムエステル交換反応により得られたものであるから、それぞれの大体のPO2含量については、予測値を算出することができるものの、試験油脂1は、エステル交換油A1及びエステル交換油B1の混合物を、ドライ分別及び溶剤分別により高融点部を除去したものであり、当該除去された高融点部又は分別により除去されなかった低融点部に含まれるPO2含有量が不明であることから、試験油脂1のPO2含有量を算出することはできない。
そして、甲2には、POOとOPOの合計量を特定することは記載も示唆もされていないから、甲2において、甲2食品発明の油脂組成物のPOOとOPOの合計量を5〜20質量%の範囲内とする動機付けは見出せない。
また、甲3〜甲11の記載を見ても、甲2において、甲2食品発明の油脂組成物のPOOとOPOの合計量を5〜20質量%の範囲内とする動機付けは見出せない。
本件特許発明1の効果について検討する。
甲2には、油脂組成物が、焼成を行った後も、ぼそぼそとした食感となることなく、なめらかさを有し、口どけが良好であることの、記載も示唆もないことから、油脂組成物を焼成チョコレートに用いることにより、ぼそぼそとした食感となることなく、チョコレート本来のなめらかさを有し、口どけが良好な焼成チョコレートを得ることができるという効果は、当業者が予測し得た程度のものではない。
仮に、甲2食品発明の油脂組成物を焼成チョコレートに用いることが容易であって、POOとOPOの合計量を5〜20質量%とすることが容易であったとしても、甲2には、油脂組成物が、焼成を行った後も、ぼそぼそとした食感となることなく、なめらかさを有し、口どけが良好であることの、記載も示唆もないことから、油脂組成物を焼成チョコレートに用いることにより、ぼそぼそとした食感となることなく、チョコレート本来のなめらかさを有し、口どけが良好な焼成チョコレートを得ることができるという効果は、当業者が予測し得た程度のものではない。
また、実施例1ではなく実施例2〜7で甲2に記載された発明を認定した場合も、同様である。
よって、上記相違点2−3、2−4について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲2食品発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)本件特許発明2〜4について
本件特許発明2〜4は、本件特許発明1を引用し、さらに限定するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲2食品発明に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(ウ)本件特許発明5について
a 対比
本件特許発明5と甲2製造方法発明を対比すると、両者は「固体脂含量(SFC)が20℃で3〜23%、30℃で0〜10%である油脂組成物を油分中に50質量%以上含有する、チョコレートの製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点2−5)本件特許発明5は、焼成チョコレート生地の製造方法であるのに対して、甲2製造方法発明はソフトチョコレートの製造方法である点。
(相違点2−6)本件特許発明5は、コンチング工程後に粉末のチョコレート成分を添加する工程を含むのに対して、甲2製造方法発明は、コンチング工程後に粉末のチョコレート成分を添加する工程を含むかが不明である点。
(相違点2−7)本件特許発明5は、油脂組成物が、10℃のSFCが5〜25%であって、10℃におけるSFCと30℃におけるSFCとの差が10%未満と特定されているのに対して、甲2製造方法発明は、油脂組成物の10℃のSFCと、10℃におけるSFCと30℃におけるSFCとの差の記載がない点。
(相違点2−8)本件特許発明5は、ノーテンパー型チョコレートであるのに対して、甲2製造方法発明は、ノーテンパー型チョコレートであるのかが不明である点。

相違点の判断
上記相違点2−5について検討する。
甲2は、グレイン及び固液分離が発生しにくい、かつ、低温で硬くなく、口溶けの良い油性食品の提供を目的としており(記載(2b))、当該油性食品としては、チョコレート(ソフトチョコレート等)、フィリング、スプレッド、バタークリーム(サンドクリーム等)が挙げられており(記載(2c))、甲2には、焼成チョコレートとすることの記載も示唆もないことから、甲2には、甲2製造方法発明の油脂組成物を焼成チョコレートに用いる動機付けが見出せない。
また、甲3〜甲11の記載を見ても、甲2において、甲2製造方法発明の油脂組成物を焼成チョコレート生地に用いる動機付けは見出せない。
上記相違点2−6について検討する。
甲2には、コンチング工程を行い、当該コンチング工程後に粉末チョコレート成分を添加する工程を行うことについての記載も示唆もないことから、甲2製造方法発明において、コンチング工程後に粉末チョコレート成分を添加する工程を行う動機付けが見出せない。
また、甲3〜甲11の記載を見ても、甲2製造方法発明において、コンチング工程後に粉末チョコレート成分添加する工程を行う動機付けが見出せない。
仮に、甲2製造方法発明の油脂組成物を焼成チョコレートに用いることが容易であって、甲2製造方法発明において、コンチング工程後に粉末チョコレート成分を添加する工程を行うことが容易であったとしても、甲2には、油脂組成物が、焼成を行った後も、ぼそぼそとした食感となることなく、なめらかさを有し、口どけが良好であることの、記載も示唆もないことから、油脂組成物を焼成チョコレートに用いることにより、ぼそぼそとした食感となることなく、チョコレート本来のなめらかさを有し、口どけが良好な焼成チョコレートを得ることができるという効果は、当業者が予測し得た程度のものではない。
よって、上記相違点2−7、2−8について検討するまでもなく、本件特許発明5は甲2製造方法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書において、甲5〜甲9より、ソフトな物性を有するソフトチョコレート、チョコレートフィリング、チョコレートクリーム等のクリーム状食品に対して焼成処理を施して焼成チョコレートとする点は、本件特許の出願日前に当業者に周知の技術であり、甲2に記載された発明はソフトチョコレート用油脂組成物であるから、甲2において、ソフトチョコレート用油脂組成物からソフトチョコレートを作り、さらに焼成処理をして焼成チョコレートとすることは、当業者が容易に想到するものである旨主張している。
また、申立人は、特許異議申立書において、甲2に記載された油脂組成物のSFCと、甲5及び甲6に記載された油脂のSFIは極めて近似しているため、甲2に記載された油脂組成物を、甲5及び甲6と同様に焼成することは、当業者が容易に想到するものである旨も主張している。
さらに、甲10には、チョコレートの製造において、カカオマス等の粉末チョコレート成分をコンチング工程終了後に、カカオマス等の粉末チョコレート成分を添加する点は、本件特許の出願の日前に周知の技術であるから、甲2において、コンチング工程終了後に、カカオマス等の粉末チョコレート成分を添加するようにすることは、当業者が容易に想到し得るものである旨主張している。
そして、申立人は、特許異議申立書において、甲11はノーテンパー型チョコレートにかかるものであり、甲2の試験油脂1は、甲11の実施例1の油脂組成物と、製造方法がドライ分別まで同じであり、前者が溶剤分別で得られる低融点部であるのに対し、後者が溶媒分別で得られる高融点部である点のみ異なるから、試験油脂1はノーテンパー型であって、甲2のソフトチョコレートはノーテンパー型である旨主張している。
しかしながら、上記のとおり、本件特許発明1〜5は甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、申立ての理由5についての上記主張には理由がない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、異議申立書に記載した特許異議申立理由及び証拠によっては、本件請求項1〜5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1〜5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。



 
異議決定日 2021-11-25 
出願番号 P2015-198475
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A23D)
P 1 651・ 537- Y (A23D)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 吉岡 沙織
関 美祝
登録日 2021-01-29 
登録番号 6830754
権利者 株式会社ADEKA
発明の名称 焼成チョコレート用油脂組成物  
代理人 特許業務法人翔和国際特許事務所  
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