• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C09D
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C09D
管理番号 1384236
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-11-01 
確定日 2022-02-09 
異議申立件数
事件の表示 特許第6869753号発明「高固形分塗料組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6869753号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6869753号の請求項1〜6に係る特許についての出願は、平成29年3月6日(優先権主張 平成28年3月9日、日本)の出願であって、令和3年4月16日にその特許権の設定登録がされ、同年5月12日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1〜6に係る特許に対し、令和3年11月1日に特許異議申立人 ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング(以下、単に「申立人」ということもある。)が、特許異議の申立てを行った。

第2 本件発明
特許第6869753号の請求項1〜6の特許に係る発明(以下、「本件発明1」〜「本件発明6」などといい、まとめて「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
(A)重量平均分子量3000〜7000の2級水酸基含有アクリル樹脂、
(B)脂肪族ポリイソシアネート化合物及び/又はその誘導体、
(C)重量平均分子量1000以下のアルキルエーテル化メラミン樹脂、及び
(D)スルホン酸化合物及び/又はリン酸化合物
を含有する塗料組成物であって、
(C)成分の量が(B)成分の総量に対して、1.5〜20質量%の範囲内であり、塗装固形分濃度が57〜65質量%であることを特徴とする高固形分塗料組成物。
【請求項2】
アクリル樹脂(A)の構成成分である水酸基含有重合性不飽和モノマー全量のうち、2級水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)が50〜100質量%である請求項1に記載の高固形分塗料組成物。
【請求項3】
アルキルエーテル化メラミン樹脂(C)が、実質的にイミノ基を有しないものである請求項1又は2に記載の高固形分塗料組成物。
【請求項4】
さらに、アシル化ヒンダードアミン及び/又はアミノエーテル系ヒンダードアミンを含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の高固形分塗料組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の塗料組成物の塗膜を有する物品。
【請求項6】
被塗物に順次、少なくとも1層の着色ベースコート塗料及び少なくとも1層のクリヤコート塗料を塗装することにより複層塗膜を形成する方法であって、最上層のクリヤコート塗料として請求項1〜4のいずれか1項に記載の塗料組成物を塗装することを含む複層塗膜形成方法。」

第3 申立理由の概要
申立人は、下記3の甲第1〜3号証及び参考文献1及び2を提出し、次の1及び2について主張している(以下、甲号証は、単に「甲1」などと記載する。)。
1 特許法第29条第2項進歩性)について(同法第113条第2号
本件発明1〜6は、甲1に記載された発明に基づいて、さらに、甲2及び甲3記載事項に基づいて、当業者が容易想到可能であるから、本件発明1〜6は、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について(同法第113条第4号
本件発明1では、発明の課題を解決するために、アクリル樹脂(A)における2級水酸基の役割が重要であるにもかかわらず、アクリル樹脂(A)全体における2級水酸基の割合も、アクリル樹脂(A)中に存在する全ての水酸基含有重合性不飽和モノマーに対する2級水酸基含有重合性不飽和モノマー(a)の割合さえも規定されていない。アクリル樹脂(A)中の2級水酸基ないし2級水酸基含有重合性不飽和モノマーの割合が、如何様であっても優れた効果が発揮できるとは、当業者が認識できない。
したがって、本件特許の優先日の技術常識に照らしても、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないことから、特許発明1は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えている。請求項1に従属する請求項2〜6に係る本件発明2〜6についても同様である。
3 証拠方法
甲1:特開2002−201430号公報
甲2:特開昭61−152772号公報
甲3:特開2010−227753号公報
参考文献1:特開2010−150550号
参考文献2:「機能性添加剤製品カタログ」、TinuvinR UVA Series LignostabR IrganoxR TinopalR IrgastabR
(当審注:「R」は、○の中にR。)

第4 当審の判断
1 特許法第29条第2項進歩性)について
(1)甲1の記載
甲1には、次の記載がある(下線は当審が付与した。)。
「【請求項1】(A)カルボキシル基含有化合物とエポキシ基含有化合物との反応生成物であり、かつ重量平均分子量が1000以下で、水酸基価が200〜800である化合物、(B)重量平均分子量が500〜6000、かつ水酸基価が50〜600の水酸基含有樹脂、(C)ポリイソシアネート化合物及び(D)メラミン樹脂を含有することを特徴とする高固形分塗料組成物。」
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規な高固形分塗料組成物及びこの組成物を使用した複層塗膜の形成方法に関する。」
「【0002】
【従来の技術とその課題】塗料分野において、大気汚染に対する環境保全及び省資源の観点から、有機溶剤の使用量削減が重要な課題となっている。その対策として、有機溶剤系塗料において、塗料中に含まれる有機溶剤量を減少させて固形分濃度を高くした、いわゆる「高固形分塗料組成物」の開発があげられる。」
「【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の目的は、上記した従来の技術の欠陥が解消され、塗料の粘度が低くかつ塗膜性能の低下が認められず、しかも仕上がり外観、塗膜硬度、耐酸性雨及び耐スリキズ性のすぐれた塗膜を形成する新規な高固形分塗料組成物及びこの塗料組成物を使用した複層塗膜の形成方法に関する。鋭意研究の結果、特定のカルボキシル基含有化合物とエポキシ基含有化合物との反応生成物に、ポリイソシアネート化合物及びメラミン樹脂を併用し、さらに特定の水酸基含有樹脂を含有することにより、目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。」
「【0006】すなわち、本発明によれば、(A)カルボキシル基含有化合物とエポキシ基含有化合物との反応生成物であり、かつ重量平均分子量が1000以下で、水酸基価が200〜800である化合物、(B)重量平均分子量が500〜6000、かつ水酸基価が50〜600の水酸基含有樹脂、(C)ポリイソシアネート化合物及び(D)メラミン樹脂を含有することを特徴とする高固形分塗料組成物(以下、「本組成物」という)が提供される。」
「【0007】また、本発明は、1層以上の着色塗膜及び1層以上の透明塗膜からなる複層塗膜において、その最上層の透明塗膜が本組成物の塗装により形成されていることを特徴とする複層塗膜形成方法(以下、「本方法」という)を提供するものである。」
「【0009】
【発明の実施の形態】本組成物は高固形分型塗料組成物であって、塗装時における固形分含有率が、例えば、70重量%以上、特に75〜90重量%の範囲内であることが好ましい。」
「【0026】(B)成分:重量平均分子量が500〜6000、水酸基価が50〜600の水酸基含有樹脂であって、特に、重量平均分子量及び水酸基価がこのような範囲内に含まれるポリエステル樹脂、アクリル樹脂などが特に好適であり、上記の(A)成分は含まれない。」
「【0029】水酸基含有アクリル樹脂は、例えば、水酸基含有重合性単量体及びアクリル系単量体を含有する重合性単量体成分を通常の方法で共重合せしめることによって製造できる。」
【0030】水酸基含有重合性単量体は1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ1個以上有する化合物であり、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレ−トなどの炭素数2〜20のグリコ−ルと(メタ)アクリル酸とのモノエステル化物などがあげられる。また、アクリル系単量体は(メタ)アクリル酸と炭素数1〜22の1価アルコ−ルとのモノエステル化物であり、例えばメチルアクリレ−ト、メチルメタクリレ−ト、エチルアクリレ−ト、エチルメタクリレ−ト、プロピルアクリレ−ト、プロピルメタクリレ−ト、ブチルアクリレ−ト、ブチルメタクリレ−ト、ヘキシルアクリレ−ト、ヘキシルメタクリレ−ト、オクチルアクリレ−ト、オクチルメタクリレ−ト、ラウリルアクリレ−ト、ラウリルメタクリレ−ト、2−エチルヘキシルアクリレ−ト、2−エチルヘキシルメタクリレ−ト、シクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、イソボルニル(メタ)アクリレ−トなどがあげられる。」
「【0034】これらのポリエステル樹脂及びアクリル樹脂などの(B)成分の重量平均分子量は500〜6000、好ましくは1000〜5200、水酸基価は50〜600、好ましくは80〜200、そして酸価は15以下、特に4〜10の範囲内が適している。(B)成分の重量平均分子量が500より小さくなると塗膜物性が低下し、又6000より大きくなると高固形分化が困難となり、又水酸基価が50より小さくなると塗膜の硬化性が低下し、600より大きくなると他の成分との相溶性が低下するので、いずれも好ましくない。」
「【0035】(C)成分:ポリイソシアネ−ト化合物
ポリイソシアネ−ト化合物は、1分子中に2個以上の遊離のイソシアネ−ト基(非ブロック)を有する化合物であって、それ自体既知のものが使用できる。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネ−ト、ダイマ−酸ジイソシアネ−ト、リジンジイソシアネ−トなどの脂肪族ポリイソシアネ−ト類;水素添加キシリレンジイソシアネ−ト、シクロヘキシレンジイソシアネ−ト、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネ−ト)、イソホロンジイソシアネ−トなどの脂環式ポリイソシアネ−ト類;トリレンジイソシアネ−ト、フェニレンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、キシリレンジイソシアネ−ト、テトラメチルキシリレンジイソシアネ−ト、ナフタレンジイソシアネ−トなどの芳香族ポリイソシアネ−ト類;2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトカプロエ−ト、3−イソシアナトメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、4−イソシアナトメチル−1,8−オクタメチレンジイソシアネ−ト(通称、トリアミノノナントリイソシアネ−ト)などの3価以上の有機ポリイソシアネ−ト化合物;これらの1分子中に2個以上のイソシアネ−ト基を有するポリイソシアネ−ト化合物の2量体又は3量体;これらの1分子中に2個以上のイソシアネ−ト基を有するポリイソシアネ−ト化合物と多価アルコ−ル、低分子量ポリエステル樹脂又は水などとイソシアネ−ト基過剰の条件でウレタン化反応させてなるプレポリマ−などがあげられる。」
「【0039】(D)成分:メラミン樹脂
上記の(C)成分と共に架橋剤として使用するものであり、メラミン中の−NH2の一部又はすべてにアルデヒドを反応させて得られるメチロール化メラミン樹脂(その分子中にイミノ基>NHを有するものも含む)があげられる。アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒドなどが使用できる。また、このメチロール化メラミン樹脂のメチロール基の一部又はすべてにアルコールをエ−テル化反応させてなるアルキルエーテル化メラミン樹脂(その分子中にイミノ基>NHを有するものも含む)もメラミン樹脂として使用することができる。エ−テル化に用いられるアルコ−ルとしては、例えば、メチルアルコ−ル、エチルアルコ−ル、n−プロピルアルコ−ル、i−プロピルアルコ−ル、n−ブチルアルコ−ル、i−ブチルアルコ−ル、2−エチルブタノ−ル、2−エチルヘキサノ−ルなどの炭素数が1〜10の1価アルコ−ルがあげられる。(D)成分の数平均分子量は150〜3000の範囲内であることが好ましい。このうち、イミノ基を含有するメラミン樹脂を使用すると、塗膜の耐候性、特に光沢保持性を一層改良することができるので好ましい。」
「【0040】本組成物は、上記した(A)カルボキシル基含有化合物とエポキシ基含有化合物との反応生成物であり、かつ重量平均分子量が1000以下で、水酸基価が200〜800である化合物、(B)重量平均分子量が500〜6000、かつ水酸基価が50〜600の水酸基含有樹脂、(C)ポリイソシアネート化合物及び(D)メラミン樹脂を含有しており、これらの各成分の比率は特に制限されず、目的に応じて任意に選択できるが、例えば、(A)〜(D)成分の合計固形分量を基準に、(A)成分:5〜50重量%、特に10〜40重量%、(B)成分:5〜50重量%、特に10〜40重量%、(C)成分:30〜70重量%、特に40〜60重量%、(D)成分:3〜30重量%、特に7〜25重量%の範囲内が適しており、これらの各成分を有機溶剤に配合し、均一に混合することにより本組成物を調製することができる。」
「【0042】(E)成分:硬化触媒
これは、上記の(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分による塗膜の架橋反応を促進するのに有用である。具体的には、オクチル酸錫、ジブチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、モノブチル錫トリオクテート、2−エチルヘキン酸鉛、オクチル酸亜鉛などの有機錫化合物をあげることができる。さらに、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、ブチルリン酸、オクチルリン酸などの酸、これらの酸のアミン中和物などが好適である。(E)硬化触媒の使用量は、使用目的により任意に選択できるが、(A)、(B)、(C)及び(D)成分の合計100重量部あたり、0.005〜5重量部、特に0.01〜3重量部の範囲内が適している。」
「【0060】本組成物は、クリヤ塗料として、また、着色顔料、メタリック顔料、干渉色顔料などの各種顔料を配合してソリッドカラー塗料、メタリック塗料、干渉色塗料として使用することができる。特に、本組成物は、耐酸性、耐擦り傷性、仕上り外観(例えば、ツヤ、肉持感、鮮映性)などに優れた硬化塗膜を形成することができるので、少なくとも1種の着色塗料及び少なくとも1種のクリヤ塗料を順次塗装して複層塗膜を形成する方法における最上層のクリヤ塗料として、本組成物を使用するのに適している。」
「【0062】本方法により、複層塗膜を形成するにあたり、最上層のクリヤ塗料として本組成物を使用する方法として、例えば以下に述べる方法があげられる。」(段落0062)
「【0063】方法a:着色塗料及びクリヤ塗料を順次塗装する2コート方式において、クリヤ塗料として本組成物を使用する塗装方法。」
「【0064】方法b:着色塗料、第1クリヤ塗料及び第2クリヤ塗料を順次塗装する3コート方式において、第2クリヤ塗料として本組成物を使用する塗装方法。」
「【0065】方法c:第1着色塗料、第2着色塗料及びクリヤ塗料を順次塗装する3コート方式において、クリヤ塗料として本組成物を使用する塗装方法。」
「【0069】方法aは、自動車用などの金属製もしくはプラスチック製の被塗物に直接、又はカチオン電着塗料などの下塗塗料及び必要に応じて中塗り塗料を塗装し、硬化させた後、上記着色塗料を、エアレススプレー、エアスプレー、回転霧化塗装(これらは静電印加していてもよい)などの方法によって膜厚が硬化膜厚で約10〜50μmとなるように塗装し、約100〜180℃、好ましくは約120〜160℃で約10〜40分間加熱して硬化させてから、又は硬化させずに室温で数分間放置もしくはプレヒートしてから、本組成物からなるクリヤ塗料を同様の塗装方法によって膜厚が硬化膜厚で約10〜70μmになるように塗装し、約100〜180℃、好ましくは約120〜160℃で約10〜40分間加熱して架橋硬化させることからなる、2コート1ベーク方式(2C1B)又は2コート2ベーク方式(2C2B)により行うことができる。」
「【0070】方法bにおいて、着色塗料としては、方法aの項で説明した着色塗料と同様のものを使用することができる。また、第1クリヤ塗料は、透明塗膜形成用塗料であり、着色塗料から顔料の殆どもしくはすべてを除去してなる塗料(本料組成物であってもよい)を使用することができる。そして、第2クリヤ塗料として、本組成物からなるクリヤ塗料を使用する。方法bは、方法aと同様の工程にて、着色塗料を塗装し硬化させてから、又は硬化させずに室温で数分間放置もしくはプレヒートしてから、着色塗膜上に第1クリヤ塗料を同様に塗装方法により膜厚が硬化膜厚で約10〜50μmになるように塗装し、約100〜180℃、好ましくは約120〜160℃で約10〜40分間加熱して硬化させてから、又は硬化させずに室温で数分間放置もしくはプレヒートしてから、本組成物からなる第2クリヤ塗料を同様の塗装方法によって膜厚が硬化膜厚で約10〜50μmになるように塗装し、約100〜180℃、好ましくは約120〜160℃で約10〜40分間加熱して硬化させることからなる、3コート1ベーク方式(3C1B)、3コート2ベーク方式(3C2B)又は3コート3ベーク方式(3C3B)により行うことができる。」
「【0071】方法cにおいて、第1着色塗料としては、方法aの項で説明した着色塗料と同様のものを使用することができる。第2着色塗料としては、第1着色塗料の塗面に塗装するものであり、該第2着色塗料塗膜を通して第1着色塗料塗面の色調(ソリッドカラー、メタリック色、干渉色)が視認できる程度の小さい隠蔽性を有している着色透明塗料が使用される。したがって、該第2着色塗料膜の隠蔽性は、第1着色塗料膜の隠蔽性より通常小さい。該第2着色塗料膜の上にクリヤ塗料が塗装されるが、このクリヤ塗料は、透明塗膜形成用塗料であり、本組成物が使用される。方法cは、方法aと同様の工程にて、着色塗料として第1着色塗料を塗装し硬化させてから、又は硬化させずに室温で数分間放置もしくはプレヒートしてから、第1着色塗膜上に第2着色塗料を膜厚が硬化膜厚で約10〜50μmになるように塗装し、約100〜180℃、好ましくは約120〜160℃で約10〜40分間加熱して硬化させてから、又は硬化させずに室温で数分間放置もしくはプレヒートしてから、本組成物からなるクリヤ塗料を同様の塗装方法によって膜厚が硬化膜厚で約10〜50μmになるように塗装し、約100〜180℃、好ましくは約120〜160℃で約10〜40分間加熱して硬化させることからなる、3コート1ベーク方式(3C1B)、3コート2ベーク方式(3C2B)又は3コート3ベーク方式(3C3B)により行うことができる。」
「【0072】
【発明の効果】本発明は、環境保全及び省資源の観点から、有機溶剤の使用量を削減して固形分濃度を高くしたいわゆる高固形分塗料組成物に関し、上記の(A)重量平均分子量が1000以下、かつ水酸基価が200〜800のカルボキシル基含有化合物とエポキシ基含有化合物との反応生成物、(B)重量平均分子量が1000〜6000、かつ水酸基価が50〜600の水酸基含有樹脂、(C)ポリイソシアネート化合物%及び(D)メラミン樹脂を含有することを特徴としており、特に、塗面にワキ(発泡)などの発生がなく、酸性雨による塗膜のエッチングやシミ状汚れなどの発生を防止することができ、しかも洗車機などによるスリキズ発生も殆ど認められない、自動車用の最上層上塗り塗膜形成用塗料として特に有効であるという効果を有している。」
「【0083】2.実施例及び比較例上記の成分を使用し、表1に記載した比率で混合し、有機溶剤系高固形分型塗料(クリヤ塗料)を得た。(A)〜(F)成分の配合量はいずれも固形分比である。」
「【0084】塗膜の性能試験(仕上り性、硬度、耐擦り傷性及び耐酸性)は、化成処理を行なった冷延ダル鋼板にエポキシ樹脂系カチオン電着塗料を塗装し(膜厚25μm)、170℃で30分間加熱硬化した後、中塗り塗料(「ルーガベイクAM」関西ペイント社製、商品名、ポリエステル樹脂・メラミン樹脂系塗料、グレー色)を膜厚30μmに塗装し、140℃で30分間加熱硬化し、ついで、この塗面にメタリック塗料(「TWX−402」関西ペイント社製、商品名、アクリル樹脂・メラミン樹脂系塗料)を膜厚18μmに塗装し、室温で3分間放置した未硬化塗面に、表1に記載の実施例及び比較例の高固形分型塗料(クリヤ塗料)(粘度50秒/フォードカップ#4/20℃に調整)を膜厚35μmに塗装し、140℃で30分間加熱して両塗膜を同時に硬化してなる複層塗膜について行なった。これらの性能試験結果も表1に示した。」
「【0086】
【表1】


「【0088】(注2):「デスモジュールN3300」住友バイエルウレタン社製、商品名、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレートタイプ。」
「【0091】(注5):「サイメル303」 三井サイアナミド社製、商品名、完全アルキルエーテル型メラミン樹脂。」

(2)甲1に記載された発明(甲1発明)
甲1の請求項1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「(A)カルボキシル基含有化合物とエポキシ基含有化合物との反応生成物であり、かつ重量平均分子量が1000以下で、水酸基価が200〜800である化合物、(B)重量平均分子量が500〜6000、かつ水酸基価が50〜600の水酸基含有樹脂、(C)ポリイソシアネート化合物及び(D)メラミン樹脂を含有する高固形分塗料組成物。」

(3)対比・判断
ア 本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比する。
本件発明1の「(A)重量平均分子量3000〜7000の2級水酸基含有アクリル樹脂」と甲1発明の「(B)重量平均分子量が500〜6000、かつ水酸基価が50〜600の水酸基含有樹脂」とは、「(A)水酸基含有樹脂」である点で共通する。
また、本件発明1の「(B)脂肪族ポリイソシアネート化合物及び/又はその誘導体」と甲1発明の「(C)ポリイソシアネート化合物」とは、「(B)ポリイソシアネート化合物及び/又はその誘導体」である点で共通する。
そして、本件発明1の「(C)重量平均分子量1000以下のアルキルエーテル化メラミン樹脂」と甲1発明の「(D)メラミン樹脂」とは、「(C)メラミン樹脂」である点で共通する。
また、甲1発明の「高固形分塗料組成物」は、本件発明1の「高固形分塗料組成物」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲1発明とは、「(A)水酸基含有樹脂、(B)ポリイソシアネート化合物及び/又はその誘導体、及び(C)メラミン樹脂含有する塗料組成物である、高固形分塗料組成物」である点で一致し、次の点で相違する。
(相違点1)
「(A)水酸基含有樹脂」について、本件発明1では「(A)重量平均分子量3000〜7000の2級水酸基含有アクリル樹脂」であるのに対し、甲1発明は、「(B)重量平均分子量が500〜6000、かつ水酸基価が50〜600の水酸基含有樹脂」である点。
(相違点2)
「(B)ポリイソシアネート化合物及び/又はその誘導体」について、本件発明1では「(B)脂肪族ポリイソシアネート化合物及び/又はその誘導体」であるのに対し、甲1発明では「(C)ポリイソシアネート化合物」である点。
(相違点3)
「(C)メラミン樹脂」について、本件発明1では「(C)重量平均分子量1000以下のアルキルエーテル化メラミン樹脂」であるのに対し、甲1発明では「(D)メラミン樹脂」である点。
(相違点4)
本件発明1は「(D)スルホン酸化合物及び/又はリン酸化合物」を含有するのに対し、甲1発明は、そのようなことは規定されていない点。
(相違点5)
本件発明1では「(C)成分の量が(B)成分の総量に対して、1.5〜20質量%の範囲内であ」ることが規定されているのに対し、甲1発明では、「(D)メラミン樹脂」の量の「(C)ポリイソシアネート化合物」の総量に対する質量比(%)は不明な点。
(相違点6)
本件発明1は「塗装固形分濃度が57〜65質量%である」のに対し、甲1発明の塗装固形分濃度は不明な点。

ここで、相違点について検討する。事案に鑑み、相違点1及び6について、検討する。
(相違点1について)
甲1には、「(B)成分」について、【0026】には、「(B)成分:重量平均分子量が500〜6000、水酸基価が50〜600の水酸基含有樹脂であって、特に、重量平均分子量及び水酸基価がこのような範囲内に含まれるポリエステル樹脂、アクリル樹脂などが特に好適であり、上記の(A)成分は含まれない。」と記載され、「(B)成分」には、アクリル樹脂に限らず、ポリエステル樹脂も例示されている。
そして、甲1の【0029】には、「水酸基含有アクリル樹脂」については、「例えば、水酸基含有重合性単量体及びアクリル系単量体を含有する重合性単量体成分を通常の方法で共重合せしめることによって製造できる。」と記載され、同【0030】には、「水酸基含有重合性単量体」として、「ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレ−トなどの炭素数2〜20のグリコ−ルと(メタ)アクリル酸とのモノエステル化物など」が例示され、「ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト」といった「2級水酸基含有アクリル樹脂」ではないものも例示されている。
そうすると、甲1発明の「(B)重量平均分子量が500〜6000、かつ水酸基価が50〜600の水酸基含有樹脂」として、例示されたアクリル樹脂とポリエステル樹脂の中から、アクリル樹脂を選択しを選択し、しかも、当該アクリル樹脂として、例示された「2級水酸基含有アクリル樹脂ではないアクリル樹脂」と、「2級水酸基含有アクリル樹脂」の中から「2級水酸基含有アクリル樹脂」を選択し、さらに、その重量平均分子量を3000〜7000とすることの動機付けは乏しく、上記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を当業者が容易に想到し得るものである、とすることはできない。
なお、甲2には、上記相違点1に係る発明特定事項は示されていないし、甲3に記載されたものは、甲高固形分塗料組成物に関するものではなく、甲2、3の記載を参照しても、上記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を当業者が容易に想到し得るものである、とすることはできない。

(相違点6について)
甲1発明の固形分含有率について、甲1の【0009】には、「塗装時における固形分含有率が、例えば、70重量%以上、特に75〜90重量%の範囲内であることが好ましい。」と記載され、【0086】の【表1】には、実施例1〜3では、固形分含有率は、それぞれ78、81、80重量%であり、比較例1〜3では、それぞれ78、69、66重量%であることが記載され、甲1発明においては、「塗装固形分濃度が57〜65質量%である」ものは想定されていないということができる。
そうすると、甲1発明の塗装固形分濃度を57〜65質量%の範囲のものとする動機付けはなく、たとえ、塗装固形分濃度を57〜65質量%の範囲のものが甲2に示されているとしても、上記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を当業者が容易に想到し得るものである、とすることはできない。

(本件発明1の効果について)
本件発明1は、上記相違点1〜6に係る発明特定事項を全て備えることにより、本件明細書の【0025】に記載されるように、「本発明の塗料組成物によれば、これらの相乗効果により、耐擦傷性、耐酸性、及び仕上り外観のいずれにも優れた塗膜を形成することができ、優れたポットライフを有する高固形分塗料組成物を得ることができる、という効果を奏することができる。」という格別顕著な作用効果を奏するものであり、その作用効果は、実施例において確認されているといえる。特に、上記相違点1に関して、本件明細書の【0024】に記載された「基体樹脂であるアクリル樹脂が特定低分子量範囲の、1級水酸基に比べ反応性が穏やかな2級水酸基を含有するものであることから、ポットライフに優れ、仕上り外観に優れた塗膜を得ることができる。」という作用効果は、特定低分子量範囲の2級水酸基を含有するものが特定されていない甲1発明に基づいて、当業者が予測し得るものではない。

なお、申立人が主張する甲1発明は、甲1の記載において、複数の選択肢の中から、本件発明に対応する技術事項を適宜選択して寄せ集めたものであり、本件発明に対応する技術事項を選択する合理的な根拠はなく、採用することはできない。

(まとめ)
以上のとおり、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

イ 本件発明2〜6について
本件発明2〜6は、本件発明1を直接的又は間接的に引用するものであるから、同様に、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

ウ まとめ
上記ア及びイで述べたとおり、申立人の特許法第29条第2項進歩性)について申立理由には、理由がない。

2 申立人の特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について検討する。
本件明細書の【0024】に記載された「基体樹脂であるアクリル樹脂が特定低分子量範囲の、1級水酸基に比べ反応性が穏やかな2級水酸基を含有するものであることから、ポットライフに優れ、仕上り外観に優れた塗膜を得ることができる。」という作用効果は当業者にとって明らかである。
そして、2級水酸基の含有量によって反応性が変わるとしても、2級水酸基が含有されていれば1級水酸基に比べ反応性が穏やかなものとなるといえることから、本件発明において、2級水酸基ないし2級水酸基含有重合性不飽和モノマーの割合を特定しなくても、本件発明の作用効果を奏するものであることは、当業者の技術常識に照らして理解することができる。
したがって、申立人の第36条第6項第1号(サポート要件)について申立理由には、理由がない。

第5 むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1〜6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1〜6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2022-02-01 
出願番号 P2017-041751
審決分類 P 1 651・ 537- Y (C09D)
P 1 651・ 121- Y (C09D)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 亀ヶ谷 明久
特許庁審判官 蔵野 雅昭
川端 修
登録日 2021-04-16 
登録番号 6869753
権利者 関西ペイント株式会社
発明の名称 高固形分塗料組成物  
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所  
代理人 稲垣 謙司  
代理人 山口 修  
代理人 倉脇 明子  
代理人 江藤 聡明  
代理人 長山 弘典  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ