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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08J
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08J
審判 全部申し立て 特29条の2  C08J
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08J
管理番号 1384244
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-11-10 
確定日 2022-03-07 
異議申立件数
事件の表示 特許第6871290号発明「ポリオレフィン系樹脂発泡シート及び粘着テープ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6871290号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6871290号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、2016年(平成28年)11月29日(優先権主張 平成27年11月30日)を国際出願日とする特願2017−534627号の一部を平成31年3月7日に新たな特許出願(特願2019−41578号)としたものであって、令和3年4月19日にその特許権の設定登録(請求項の数7)がされ、同年5月12日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年11月10日に特許異議申立人 石井 豪(以下、「特許異議申立人」という。)により、特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし7)がされたものである。

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし7に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂を発泡したポリオレフィン系樹脂発泡シートであって、前記発泡シートの発泡倍率が1.5〜20cm3/gであり、前記発泡シートのMD方向及びTD方向の平均気泡径が130μm以下であり、下記式(1)及び式(2)を満たす、ポリオレフィン系樹脂発泡シート。
TM/D≧6 (1)
TT/D≧5 (2)
TM:90℃におけるMD方向の抗張力(MPa)
TT:90℃におけるTD方向の抗張力(MPa)
D :前記発泡シートの密度(g/cm3)
【請求項2】
25%圧縮強度が10〜1,000kPaである、請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。
【請求項3】
23℃におけるMD方向の抗張力が0.5〜35MPaである、請求項1又は2に記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。
【請求項4】
23℃におけるTD方向の抗張力が0.5〜30MPaである、請求項1〜3のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。
【請求項5】
厚みが0.02〜0.8mmである、請求項1〜4のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。
【請求項6】
ゲル分率が5〜60質量%である、請求項1〜5のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂発泡シート。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載されたポリオレフィン系樹脂発泡シートの少なくとも一方の面に粘着剤層を設けた粘着テープ。」

第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和3年11月10日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。

1 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

2 申立理由2(甲第2号証に基づく新規性進歩性
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、上記甲第2号証に記載された発明に基づいてその優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

3 申立理由3(甲第3号証に基づく新規性進歩性
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、上記甲第2号証に記載された発明に基づいてその優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
なお、該申立理由3は本件特許に係る出願の優先基礎出願(特願2015−233149号)に、本件特許の発明の詳細な説明の【0053】ないし【0055】に記載された実施例8及び9並びに比較例8に相当する事項が記載されていないことにより、上記実施例8及び9を対象とする部分について、優先権が認められないとした場合の理由である。

4 申立理由4(甲第4号証に基づく新規性
本件特許の請求項1ないし4及び6に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4及び6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

5 申立理由5(甲第5号証に基づく新規性進歩性
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第5号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、上記甲第5号証に記載された発明に基づいてその優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

6 申立理由6(甲第6号証に基づく新規性進歩性
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第6号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、上記甲第6号証に記載された発明に基づいてその優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

7 申立理由7(甲第7号証に基づく新規性
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第7号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

8 申立理由8(甲第8号証に基づく新規性進歩性
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第8号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、上記甲第8号証に記載された発明に基づいてその優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

9 申立理由9(甲第9号証に係る日本語語特許出願に基づく拡大先願)
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の優先日前を優先日とする日本語特許出願であって、本件特許の優先日後に国際公開がされた日本語特許出願(特願2016−563628号、甲第9号証)の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の出願の発明者が上記日本語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、本件特許の出願人が上記日本語特許出願の出願人と同一でもないので、同法第29条の2の規定により、特許を受けることができない(同法第184条の13)ものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

10 申立理由10(委任省令要件)
本件特許の発明の詳細な説明は、下記の点で本件特許の請求項1ないし7に係る発明について、経済産業省令で定めるところにより記載されたものでないので、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

・本件特許発明は、式(1)及び式(2)を発明特定事項とするものである。
本件明細書には以下の記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発泡シートのせん断強度を高くしようとする場合、発泡シートを厚くする必要があるため小型の電子機器に用いることが困難であった。
本発明は、上記従来の事情を鑑みてなされたものであって、薄厚でも優れたせん断強度を有するポリオレフィン系樹脂発泡シート、及びこれを用いた粘着テープを提供することを目的とする。」
「【課題を解決する手段】
【0005】
本発明者らが鋭意検討した結果、高温下における発泡シートの抗張力と密度とが一定の関係を満たすように調整すると前記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させた。
(中略)下記式(1)及び式(2)を満たす、ポリオレフィン系樹脂発泡シート。
TM/D≧6 (1)
TT/D≧5 (2)
TM:90℃におけるMD方向の抗張力
TT:90℃におけるTD方向の抗張力
D:前記発泡シートの密度(g/cm3)」
ここで、【0005】の「高温下における発泡シートの抗張力と密度とが一定の関係を満たす」とは、同段落に記載の式(1)及び式(2)を意味すると解される。
しかしながら、本件明細書の比較例(優れたせん断強度を有するとはいえないポリオレフィン系樹脂発泡シート)をみると、式(1)及び式(2)を満たす発泡シートが散見される。また、本件明細書の実施例及び比較例における式(1)及び式(2)の値をみても、これらの値とせん断強度の強さに、明確な相関関係を見出せない。
そうすると、【0005】の記載が正しいとは当業者は理解しない。
その他本件明細書には式(1)及び式(2)の技術的意義を合理的に説明する記載は無いし、また、式(1)及び式(2)が発泡シートのせん断強度に関連する旨の本件優先日当時の技術常識があったともいえない。
してみると、本件特許発明を特定する事項である式(1)及び式(2)についての技術上の意義を、当業者が理解できるとはいえない。
したがって、本件明細書は、特許法第36条第4項第1号で委任する特許法施行規則第24条の2、すなわち「特許法第三十6条第4項第1号の経済産業省令で定めるところによる記載は、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしなければならない。」との規定に違反するものである。

11 証拠方法
甲第1号証:国際公開第2014/156642号
甲第2号証:国際公開第2015/146982号
甲第3号証:国際公開第2016/052556号
甲第4号証:特開2015−91920号公報
甲第5号証:特開2012−214623号公報
甲第6号証:特開2012−214626号公報
甲第7号証:特開2009−242811号公報
甲第8号証:国際公開第2013/141167号
甲第9号証:国際公開第2016/093110号
なお、証拠の表記は特許異議申立書の記載におおむね従った。以下、順に甲1のようにいう。

第4 当審の判断
1 証拠に記載された事項等
(1)甲1に記載された事項等
ア 甲1に記載された事項
甲1には、「粘着テープ及び電子機器」に関しておおむね次の事項が記載されている。

・「[0147] [比較例1]
黒色ポリオレフィン系発泡体(1)の代わりに黒色ポリオレフィン系発泡体(5)(厚さ:500μm、見かけ密度0.14g/cm3、25%圧縮強度:98kPa、流れ方向の引張強さ:414N/cm2、幅方向の引張強さ:246N/cm2、である積水化学工業株式会社製の発泡体の表面をコロナ処理で濡れ指数54mN/mとしたもの)を用いたこと以外は、実施例1と同一の方法で厚さ600μmの両面粘着テープを得た。」

・「[0150] 上記実施例及び比較例にて使用した発泡体基材、上記実施例及び比較例で得られた両面粘着テープについて、以下の評価を行った。得られた結果を下表に示す。
・・・(略)・・・
[0154] [発泡体基材の流れ方向及び幅方向の平均気泡径]
発泡体基材を流れ方向、幅方向とも約1cmに切断し、切断した発泡体基材の切断面中央部分をマイクロスコープ(商品名「KH−7700」、HIROX社製)で200倍に拡大したのち、発泡体基材の切断面がその基材厚さ方向の全長に亘って写真に納まるように、発泡体基材の幅方向または流れ方向の断面を写真撮影した。得られた写真において、流れ方向または幅方向の拡大前の実際の長さが2mm分の切断面に存在する気泡径を全て測定し、その平均値から平均気泡径を算出した。これを、任意の10カ所で測定し、その平均値を流れ方向(MD)及び幅方向(CD)の平均気泡径とした。
・・・(略)・・・
[0177]
[表2]



イ 甲1に記載された発明
甲1に記載された事項を、特に比較例1の両面粘着テープの製造時に利用される発泡体基材に関して整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1比較例1発明」という。)が記載されていると認める。

<甲1比較例1発明>
「黒色ポリオレフィン系発泡体(5)(厚さ:500μm、見かけ密度0.14g/cm3、25%圧縮強度:98kPa、流れ方向の引張強さ:414N/cm2、幅方向の引張強さ:246N/cm2、である積水化学工業株式会社製の発泡体の表面をコロナ処理で濡れ指数54mN/mとしたもの)からなる、流れ方向(MD)及び幅方向(CD)の平均気泡径がそれぞれ113μm及び124μmである発泡体基材。」

(2)甲2に記載された事項等
ア 甲2に記載された事項
甲2には、「粘着テープ及び粘着テープの製造方法」に関しておおむね次の事項が記載されている。

・「[0107] [測定方法]
本明細書における各物性の測定方法は、次の通りである。
[0108] <密度>
架発泡シートの密度を、JIS K7222に準拠して測定した。なお、密度の逆数を発泡倍率とした。
・・・(略)・・・
[0110] <比(MDにおける平均径/CDにおける平均径)>
発泡シートの拡大写真を撮り、デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製「VHX−900」)を用いてMD、CD、及びVDの気泡径を測定し、測定値を平均して平均径を算出した。算出したMD(発泡シートの押出成形時の流れ方向及)における気泡径及びCD(発泡シートの押出成形時の流れ方向及び発泡シートの厚み方向と直交する方向)における平均径から、比(MDにおける平均径/CDにおける平均径)を求めた。」

・「[0112] (実施例1〜13及び比較例1〜5)
発泡シートの作製:
ポリエチレン系樹脂(直鎖状低密度ポリエチレン、エクソンケミカル社製「Exact3027」、密度:0.900g/cm3)100重量部、アゾジカルボンアミド1.9重量部、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.2重量部及び酸化亜鉛1.8重量部を押出機に供給して、130℃で溶融混練し、長尺シート状であり、かつ厚みが0.5mmである発泡体組成物を押出した。
[0113] 次に、上記発泡体組成物の両面に、加速電圧500kVの電子線を4.5Mrad照射して、上記発泡体組成物を架橋させた。その後、熱風及び赤外線ヒーターにより250℃に保持された発泡炉内に連続的に送り込んで、加熱して発泡させて、気泡の平均径、平均長径及び平均短径が下記の表1に示す値となるように延伸して、下記の表1に示す厚みの発泡シートを得た。」

・「[0127][表1]



イ 甲2に記載された発明
甲2に記載された事項を、特に実施例1に関して整理すると、甲2には次の発明(以下、「甲2実施例1発明」という。)が記載されていると認める。

<甲2実施例1発明>
「ポリエチレン系樹脂(直鎖状低密度ポリエチレン、エクソンケミカル社製「Exact3027」、密度:0.900g/cm3)100重量部、アゾジカルボンアミド1.9重量部、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.2重量部及び酸化亜鉛1.8重量部を押出機に供給して、130℃で溶融混練し、長尺シート状であり、かつ厚みが0.5mmである発泡体組成物を押出し、次に、上記発泡体組成物の両面に、加速電圧500kVの電子線を4.5Mrad照射して、上記発泡体組成物を架橋させ、その後、熱風及び赤外線ヒーターにより250℃に保持された発泡炉内に連続的に送り込んで、加熱して発泡させて、延伸して得た、発泡倍率が1.96倍の発泡シート。」

(3)甲3に記載された事項等
ア 甲3に記載された事項
甲3には、「ポリオレフィン系樹脂発泡シート及び粘着テープ」に関しておおむね次の事項が記載されている。

・「[0010]・・・(略)・・・
なお、本発明において「MD」は、Machine Directionを意味し、ポリオレフィン系樹脂発泡シートの押出方向等と一致する方向を意味する。また、「TD」は、Transverse Directionを意味し、MDに直交しかつ発泡シートに平行な方向を意味する。更に「ZD」は、Thickness Directionを意味し、MD及びTDのいずれにも垂直な方向である。」

・「[0043]<MD方向、TD方向及びZD方向の平均気泡径、及び最大気泡径>
実施例及び比較例で得られた発泡シートを50mm四方にカットしたものを測定用の発泡体サンプルとして用意した。これを液体窒素に1分間浸した後にカミソリ刃でMD方向、TD方向及びZD方向に沿ってそれぞれ厚さ方向に切断した。この断面をデジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製「VHX-900」)を用いて200倍の拡大写真を撮り、MD方向、TD方向及びZD方向のそれぞれにおける長さ2mm分の切断面に存在する全ての独立気泡について気泡径を測定し、その操作を5回繰り返した。そして、全ての気泡の平均値をMD方向、TD方向及びZD方向の平均気泡径とした。」

・「[0048] 実施例1
ポリオレフィン系樹脂としての直鎖状低密度ポリエチレン(ポリオレフィン系樹脂A:エクソンケミカル社製「Exact3027」、密度:0.900g/cm3)100質量部、熱分解型発泡剤としてのアゾジカルボンアミド4.5質量部、分解温度調整剤としての酸化亜鉛1質量部、及び酸化防止剤としての2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.5質量部を押出機に供給して130℃で溶融混練し、厚さ約0.3mmの長尺シート状の発泡体組成物を押出した。
次に、上記長尺シート状の発泡体組成物を、その両面に加速電圧500kVの電子線を4.5Mrad照射して架橋した後、熱風及び赤外線ヒーターにより250℃に保持された発泡炉内に連続的に送り込んで加熱して発泡させると共に、発泡させながらMDの延伸倍率を1.4倍、TDの延伸倍率を1.8倍として延伸させることにより、厚さ0.06mmの発泡シートを得た。得られた発泡シートの評価結果を表1に示す。」

・「[0050] 実施例7、比較例5
ポリオレフィン系樹脂としてのエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(ポリオレフィン系樹脂B:三菱化学株式会社製「ノバテックEVA」)70質量部、ポリオレフィン系樹脂として直鎖状低密度ポリエチレン(ポリオレフィン系樹脂C:株式会社プライムポリマー社製「エバフレックス460-H」)30質量部を用い、その他の成分については表1及び2の配合にしたがい、架橋時の線量を表1及び2のゲル分率(架橋度)となるように調整したこと、TDの延伸倍率を1.4倍〜2.0倍に調整したこと以外は実施例1と同様に実施した。
[0051]
[表1]



イ 甲3に記載された発明
甲3に記載された事項を、特に実施例7に関して整理すると、甲3には次の発明(以下、「甲3実施例7発明」という。)が記載されていると認める。

<甲3実施例7発明>
「ポリオレフィン系樹脂としてのエチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(ポリオレフィン系樹脂B:三菱化学株式会社製「ノバテックEVA」)70質量部、ポリオレフィン系樹脂として直鎖状低密度ポリエチレン(ポリオレフィン系樹脂C:株式会社プライムポリマー社製「エバフレックス460-H」)30質量部を用い、熱分解型発泡剤としてのアゾジカルボンアミド1.9質量部、分解温度調整剤としての酸化亜鉛1質量部、及び酸化防止剤としての2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.5質量部を押出機に供給して130℃で溶融混練し、厚さ約0.3mmの長尺シート状の発泡体組成物を押出し、次に、上記長尺シート状の発泡体組成物を、架橋時の線量を56.0質量%のゲル分率(架橋度)となるように調整して架橋した後、熱風及び赤外線ヒーターにより250℃に保持された発泡炉内に連続的に送り込んで加熱して発泡させると共に、発泡させながらMDの延伸倍率を1.4倍、TDの延伸倍率を1.4倍〜2.0倍として延伸させることにより得た、発泡シートの発泡倍率が1.5cm3/g、発泡シートのMD方向及びTD方向の平均気泡径がそれぞれ71μm及び50μmである発泡シート。」

(4)甲4に記載された事項等
ア 甲4に記載された事項
甲4には、「多孔質シートおよびその製造方法」に関しておおむね次の事項が記載されている。

・「【0008】
・・・(略)・・・また、MD方向は、押出方向等と一致する方向であるとともに、TD方向は、MD方向に直交しかつシートに平行な方向である。」

・「【0044】
[評価方法]
各物性の評価方法は、以下のとおりである。
・・・(略)・・・
[平均気泡径]
MD、TD、厚み方向の断面をデジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス社製VH5500)を用いて拡大写真を撮り、それぞれの方向についての気泡径を測定した。各方向について測定された100個の平均値を平均気泡径として算出した。」

・「【0045】
実施例1
重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られた直鎖状低密度ポリエチレン(密度0.900g/cm3:エクソン・ケミカル社製、商品名「EXACT3027」)100質量部、アゾジカルボンアミド5.2質量部、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.3質量部及び酸化亜鉛1質量部からなる樹脂組成物を混練機に供給して130℃にて溶融混練して、厚さ0.8mmの樹脂組成物シートを得た。
得られた樹脂組成物シートの両面に加速電圧800kVの電子線を5Mrad照射した後、上記長尺状の樹脂組成物シートを熱風及び赤外線ヒーターにより250℃に保持されたオーブン炉内に入れ、樹脂組成物シートを架橋、発泡させ、多孔質体を得た。
【0046】
得られた多孔質体を130℃に保持されたオーブン炉内に入れて、面内の温度分布が均一になるまで保持した後、TD方向に3倍に延伸し、その後MD方向に2.5倍に延伸した。
なお、TD方向に延伸する際には、MD方向が縮まないようにMD方向の両端を、MD方向を延伸する際には、TD方向が縮まないようにTD方向の両端を固定して延伸を行った。固定冶具は、分割されており、延伸方向に延伸されるのと同時に冶具間の距離が延伸方向に離れるものを使用した。また、延伸に用いた両端を固定する冶具は、予めオーブン内に入れておくことで、シートの面内方向温度の均一性を損ねないようにした。こうして延伸して得られた多孔質シートを本発明の実施例1に係る多孔質シートとした。
【0047】
比較例1
TD及びMD方向における延伸を行わなかった以外は、実施例1と同様に実施して得られた多孔質シートを比較例1に係る多孔質シートとした。」

・「【0051】
上記各実施例、比較例の多孔質シートの評価結果を表1に示す。
【表1】



イ 甲4に記載された発明
甲4に記載された事項を、特に比較例1に関して整理すると、甲4には次の発明(以下、「甲4比較例1発明」という。)が記載されていると認める。

<甲4比較例1発明>
「重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られた直鎖状低密度ポリエチレン(密度0.900g/cm3:エクソン・ケミカル社製、商品名「EXACT3027」)100質量部、アゾジカルボンアミド5.2質量部、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.3質量部及び酸化亜鉛1質量部からなる樹脂組成物を混練機に供給して130℃にて溶融混練して、厚さ0.8mmの樹脂組成物シートを得、得られた樹脂組成物シートの両面に加速電圧800kVの電子線を5Mrad照射した後、上記長尺状の樹脂組成物シートを熱風及び赤外線ヒーターにより250℃に保持されたオーブン炉内に入れ、樹脂組成物シートを架橋、発泡させ、多孔質体を得、得られた多孔質体を130℃に保持されたオーブン炉内に入れて、面内の温度分布が均一になるまで保持した後得られた、多孔質シートの見掛け密度が0.080g/ccであり、多孔質シートのMD方向及びTD方向の平均気泡径がそれぞれ106μm及び95μmである多孔質シート。」

(5)甲5に記載された事項等
ア 甲5に記載された事項
甲5には、「粘着シート」に関しておおむね次の事項が記載されている。

・「【0026】
・・・(略)・・・
なお、本明細書におけるMD方向とは、図2に示すように、熱可塑性樹脂発泡シート3の押出方向をいい、CD方向とは、MD方向に直交し且つ熱可塑性樹脂発泡シート3の表面に沿った方向(幅方向)をいい、ZD方向とは、熱可塑性樹脂発泡シート3の表面に対して直交する方向をいう。」

・「【0067】
[実施例1〜3、比較例1〜3]
<実施例1>
DIC(株)製「ダイタック#8616DJ クロ」(厚さ0.1mm)を弱粘着剤層(A)とし、積水化学工業(株)製ポリエチレン系樹脂発泡体「ソフトロン S07005」(密度0.14g/cm3:厚さ0.5mm)を熱可塑性樹脂発泡シート層(B)として、それぞれ20cm角の大きさに切り出し、ローラーにて積層一体化した。次いで、前記熱可塑性樹脂発泡シート層の弱粘着剤層(A)を設けた面とは反対側の面に対して、アクリル系樹脂粘着剤(一方社油脂工業製「バインゾール R−8510E」)を、硬化後の厚さが30μmとなるように塗布して強粘着剤層(C)を形成した。この粘着シート全体の厚さは0.63mmであった。
このようにして製造した粘着シートを以下の評価基準にしたがって評価した。結果を表1に示す。」

・「【0070】
<比較例2>
熱可塑性樹脂発泡シート層(B)を積水化学工業(株)製ポリエチレン系樹脂発泡体「ボラーラXL−H#02003」、厚さ0.3mmにしたこと以外は実施例2と同様に粘着シートを作成した。この粘着シート全体の厚さは0.43mmであった。」

・「【0076】
【表1】



・「【図2】



イ 甲5に記載された発明
甲5に記載された事項を、特に実施例1及び比較例2の粘着シートの製造時に用いられている材料である熱可塑性樹脂発泡シートに関して整理すると、甲5には次の発明(以下、順に「甲5実施例1発明」及び「甲5比較例2発明」という。)が記載されていると認める。

<甲5実施例1発明>
「積水化学工業(株)製ポリエチレン系樹脂発泡体「ソフトロン S07005」(密度0.14g/cm3:厚さ0.5mm)からなり、その発泡倍率が7.1cm3/g、MD方向及びCD方向の平均気泡径がそれぞれ108μm及び56μmである熱可塑性樹脂発泡シート層(B)。」

<甲5比較例2発明>
「積水化学工業(株)製ポリエチレン系樹脂発泡体「ボラーラXL−H#02003」(厚さ0.3mm)からなり、その発泡倍率が2cm3/g、MD方向及びCD方向の平均気泡径がそれぞれ100μm及び74μmである熱可塑性樹脂発泡シート層(B)。」

(6)甲6に記載された事項等
ア 甲6に記載された事項
甲6には、「架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シート及びそれを用いた粘着テープ」に関しておおむね次の事項が記載されている。

・「【0009】
・・・(略)・・・
図1は架橋発泡シートのMD、CD及びVDを示す模式図であり、架橋発泡シートのMD〔machine direction〕とは押出方向をいい、架橋発泡シートのCD〔crossing direction〕とは、MD(machine direction)に直交しかつ架橋発泡シートの表面に沿った方向をいい、架橋発泡シートのVD〔vertical (thickness) direction)とは、架橋発泡シートの表面に対して直交する方向をいう。」

・「【0039】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1
(1)メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(エクソンモービル・ケミカル社製、商品名「EXACT3027」、密度:0.900g/cm3、質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn):2.0、融点:98℃、軟化点:85℃)100質量部、平均粒子径が2μmのアゾジカルボンアミド5質量部、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.3質量部、及び酸化亜鉛1質量部からなる発泡性ポリオレフィン系樹脂組成物を押出機に供給して130℃で溶融混練し、幅が200mmでかつ厚さが0.8mmの長尺状の発泡性ポリオレフィン系樹脂シートに押出した。
(2)次に、上記長尺状の発泡性ポリオレフィン系樹脂シートの両面に加速電圧800kVの電子線を5Mrad照射して発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを架橋した後、この発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを熱風及び赤外線ヒーターにより250℃に保持された縦型加熱炉内に連続的に送り込んで加熱、発泡させた。
(3)しかる後、得られた発泡シートを加熱炉から連続的に送り出した後、この発泡シートをその両面の温度が200〜250℃となるように維持した状態で、発泡シートをそのCDに延伸させると共に、発泡性ポリオレフィン系樹脂シートの加熱炉への送り込み速度(供給速度)よりも速い巻取速度でもって発泡シートを巻き取ることによって発泡シートをMDに延伸させて、発泡シートの気泡をCD及びMDに延伸して変形させ、表1に示した幅、厚み、架橋度及び発泡倍率を有する架橋発泡シートを得た。
なお、発泡性ポリオレフィン系樹脂シート自身の重さで縦方向に伸びる傾向がある。そのため、上記発泡シートの巻取速度は、発泡によるMDへの膨張分を考慮しつつ調整した。
発泡シートの巻取速度と供給速度との比(巻取速度/供給速度)、並びに、架橋発泡シートのMD及びCDの延伸倍率を第1表に示す。
【0040】
実施例2
架橋発泡シートのCDの幅が1300mmとなるようにしたこと以外は実施例1と同様にして架橋発泡シートを得た。
発泡シートの巻取速度と供給速度との比(巻取速度/供給速度)、並びに、架橋発泡シートのMD及びCDの延伸倍率を第1表に示す。
【0041】
実施例3
厚さが0.6mmの長尺状の発泡性ポリオレフィン系樹脂シートに押出したこと、架橋発泡シートのCDの幅が640mmとなるようにしたこと以外は実施例1と同様にして架橋発泡シートを得た。
発泡シートの巻取速度と供給速度との比(巻取速度/供給速度)、並びに、架橋発泡シートのMD及びCDの延伸倍率を第1表に示す。
【0042】
実施例4
厚さが0.88mmの長尺状の発泡性ポリオレフィン系樹脂シートに押出したこと、アゾジカルボンアミドの粒径を5μmとし、アゾジカルボンアミドの添加量を5質量部の代りに3.5質量部としたこと、発泡性ポリオレフィン系樹脂シートの厚みが0.32mmとなるように押出したこと以外は実施例3と同様にして架橋発泡シートを得た。
発泡シートの巻取速度と供給速度との比(巻取速度/供給速度)、並びに、架橋発泡シートのMD及びCDの延伸倍率を第1表に示す。
【0043】
実施例5
厚さが1.00mmの長尺状の発泡性ポリオレフィン系樹脂シートに押出したこと、アゾジカルボンアミドの添加量を5質量部の代りに1.5質量部としたこと、発泡性ポリオレフィン系樹脂シートの厚みが0.32mmとなるように押出したこと、発泡シートの供給速度と巻取速度の比(供給速度/巻取速度)、並びに、架橋発泡シートのCDの幅が640mmとなるようにしたこと以外は実施例1と同様にして架橋発泡シートを得た。
発泡シートの巻取速度と供給速度との比(巻取速度/供給速度)、並びに、架橋発泡シートのMD及びCDの延伸倍率を第1表に示す。」

・「【0047】
【表1】



・「【図1】



イ 甲6発明
甲6に記載された事項を、特に実施例4に関して整理すると、甲6には次の発明(以下、「甲6実施例4発明」という。)が記載されていると認める。

<甲6実施例4発明>
「(1)メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(エクソンモービル・ケミカル社製、商品名「EXACT3027」、密度:0.900g/cm3、質量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn):2.0、融点:98℃、軟化点:85℃)100質量部、平均粒子径が5μmのアゾジカルボンアミド3.5質量部、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.3質量部、及び酸化亜鉛1質量部からなる発泡性ポリオレフィン系樹脂組成物を押出機に供給して130℃で溶融混練し、幅が200mmでかつ厚さが0.88mmの長尺状の発泡性ポリオレフィン系樹脂シートに押出し、(2)次に、上記長尺状の発泡性ポリオレフィン系樹脂シートの両面に加速電圧800kVの電子線を5Mrad照射して発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを架橋した後、この発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを熱風及び赤外線ヒーターにより250℃に保持された縦型加熱炉内に連続的に送り込んで加熱、発泡させ、(3)しかる後、得られた発泡シートを加熱炉から連続的に送り出した後、この発泡シートをその両面の温度が200〜250℃となるように維持した状態で、発泡シートをそのCDに延伸させると共に、発泡性ポリオレフィン系樹脂シートの加熱炉への送り込み速度(供給速度)よりも速い巻取速度でもって発泡シートを巻き取ることによって発泡シートをMDに延伸させて、発泡シートの気泡をCD及びMDに延伸して変形させ得た、発泡倍率6.5cm3/g並びにMD及びCDの平均気泡径がそれぞれ111μm及び109μmである架橋発泡シート。」

(7)甲7に記載された事項等
ア 甲7に記載された事項
甲7には、「架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シート及び粘着テープ」に関しておおむね次の事項が記載されている。

・「【0034】
ここで、図1に示したように、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シート1のMD〔machine direction〕とは押出方向をいい、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シート1のCD〔crossing direction〕とは、MD(machine direction)に直交し且つ架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シート1の表面に沿った方向をいい、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シート1のVD〔vertical(thickness) direction)とは、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シート1の表面に対して直交する方向をいう。」

・「【0071】
・・・(略)・・・但し、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの発泡倍率は、発泡性ポリオレフィン系樹脂シートの比重を架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートの比重で除したものをいう。」

・「【0088】
(実施例1〜4、比較例4)
重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られた直鎖状低密度ポリエチレン(エクソン・ケミカル社製、商品名「EXACT3027」、密度:0.900g/cm3、重量平均分子量:2.0、融点:98℃、軟化点:85℃)100重量部、アゾジカルボンアミド5重量部、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.3重量部及び酸化亜鉛1重量部からなる発泡性ポリオレフィン系樹脂組成物を押出機に供給して130℃で溶融混練し、幅が200mmで且つ厚さが0.8mmの長尺状の発泡性ポリオレフィン系樹脂シートに押出した。
【0089】
次に、上記長尺状の発泡性ポリオレフィン系樹脂シートの両面に加速電圧800kVの電子線を5Mrad照射して発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを架橋した後、この発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを熱風及び赤外線ヒーターにより250℃に保持された発泡炉内に連続的に送り込んで加熱、発泡させた。
【0090】
しかる後、得られた発泡シートを発泡炉から連続的に送り出した後、この発泡シートをその両面の温度が200〜250℃となるように維持した状態で、発泡シートをそのCDに延伸させると共に、発泡性ポリオレフィン系樹脂シートの発泡炉への送り込み速度(供給速度)よりも速い巻取速度でもって発泡シートを巻き取ることによって発泡シートをMDに延伸させて、発泡シートの気泡をCD及びMDに延伸して変形させ、表1に示した幅、厚み、架橋度及び発泡倍率を有する架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートを得た。なお、上記発泡シートの巻取速度は、発泡性ポリオレフィン系樹脂シート自身の発泡によるMDへの膨張分を考慮しつつ調整した。又、発泡シートの巻取速度と供給速度との比(巻取速度/供給速度)、並びに、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートのMD及びCDの延伸倍率を表1に示した。」

・「【0096】
(比較例1)
発泡シートをCDに延伸しなかったこと以外は実施例1と同様にして架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シートを得た。」

・「【0101】
【表1】



・「【図1】



イ 甲7に記載された発明
甲7に記載された事項を、特に比較例1に関して整理すると、甲7には次の発明(以下、「甲7比較例1発明」という。)が記載されていると認める。

<甲7比較例1発明>
「重合触媒として四価の遷移金属を含むメタロセン化合物を用いて得られた直鎖状低密度ポリエチレン(エクソン・ケミカル社製、商品名「EXACT3027」、密度:0.900g/cm3、重量平均分子量:2.0、融点:98℃、軟化点:85℃)100重量部、アゾジカルボンアミド5重量部、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.3重量部及び酸化亜鉛1重量部からなる発泡性ポリオレフィン系樹脂組成物を押出機に供給して130℃で溶融混練し、幅が200mmで且つ厚さが0.8mmの長尺状の発泡性ポリオレフィン系樹脂シートに押出し、次に、上記長尺状の発泡性ポリオレフィン系樹脂シートの両面に加速電圧800kVの電子線を5Mrad照射して発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを架橋した後、この発泡性ポリオレフィン系樹脂シートを熱風及び赤外線ヒーターにより250℃に保持された発泡炉内に連続的に送り込んで加熱、発泡させ、しかる後、得られた発泡シートを発泡炉から連続的に送り出した後、この発泡シートをその両面の温度が200〜250℃となるように維持した状態で、発泡性ポリオレフィン系樹脂シートの発泡炉への送り込み速度(供給速度)よりも速い巻取速度でもって発泡シートを巻き取ることによって発泡シートをMDに1.2倍延伸させて、発泡シートの気泡をMDに延伸して変形させ得た、幅430mm、厚み1.2mm、架橋度25%、発泡倍率10.0倍並びにMD及びCDの平均気泡径がそれぞれ115μm及び100μmであるの架橋ポリオレフィン系樹脂発泡シート。」

(8)甲8に記載された事項等
ア 甲8に記載された事項
甲8には、「粘着テープ」に関しておおむね次の事項が記載されている。

・「[0017] 本発明に使用する発泡体基材の流れ方向および幅方向の平均気泡径は、特に制限されないが、10〜700μmの範囲にて調整されることが好ましく、30〜500μmであることがより好ましく、50〜400μmであることが好ましい。流れ方向および幅方向の平均気泡径を当該範囲とすることで、単位幅当たりに存在する独立気泡を確保しやすくなる。」

・「[0096][実施例1]
(両面粘着テープの調整)
上記粘着剤組成物(A)100質量部に対し、日本ポリウレタン社製「コロネートL−45」(イソシアネート系架橋剤、固形分45%)を1.1質量部添加し15分攪拌後、剥離処理した厚さ75μmのPETフィルムの剥離処理面に乾燥後の厚さが50μmとなるように塗工して、80℃で3分間乾燥し粘着剤層を形成した。粘着剤層のゲル分率は48質量%、周波数1Hzにおける損失正接(tanδ)のピーク値を示す温度は−16℃であった。
[0097] 次に、黒色ポリオレフィン系発泡体(1)(厚さ:100μm、見かけ密度0.41g/cm3、25%圧縮強度:190kPa、流れ方向の引張弾性率:964N/cm2、幅方向の引張弾性率:861N/cm2 、層間強度:16.2N/cm)からなる基材の両面に、前記粘着剤層を1枚ずつ貼り合わせたのち、23℃下線圧5kg/cmのロールでラミネートした。その後、40℃で48時間熟成し、厚さ200μmの両面粘着テープを得た。」

・「[0102][実施例6]
黒色ポリオレフィン系発泡体(1)の代わりに黒色ポリオレフィン系発泡体(7)(厚さ:80μm、見かけ密度0.48g/cm3、25%圧縮強度:350kPa、流れ方向の引張弾性率:1320N/cm2、幅方向の引張弾性率:750N/cm2、層間強度:14.4N/cm)を用い、粘着剤層の乾燥後の厚さを40μmにしたこと以外は、実施例1と同一の方法で厚さ160μmの両面粘着テープを得た。」

・「[0121][表1]



イ 甲8に記載された発明
甲8に記載された事項を、特に実施例6の両面粘着テープを製造するために利用している基材に関して整理すると、甲8には次の発明(以下、「甲8実施例6発明」という。)が記載されていると認める。

<甲8実施例6発明>
「黒色ポリオレフィン系発泡体(7)(厚さ:80μm、見かけ密度0.48g/cm3、25%圧縮強度:350kPa、流れ方向の引張弾性率:1320N/cm2、幅方向の引張弾性率:750N/cm2、層間強度:14.4N/cm)からなる流れ方向(MD)及び幅方向(CD)の平均気泡径がそれぞれ106μm及び95μmの基材。」

(9)甲9に係る日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された事項等
ア 甲9に係る日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された事項
甲9に係る日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面には、「粘着シート及び電子機器」に関しておおむね次の事項が記載されている。

・「[0137] [実施例1]
容器に、前記アクリル重合体(A−1)100質量部に対して、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂D−125(荒川化学工業株式会社製)10質量部と不均化ロジンエステル系粘着付与樹脂A−100(荒川化学工業株式会社製)15質量部とを混合攪拌したのち、酢酸エチルを加えることによって固形分31質量%の粘着剤組成物(A)を得た。
[0138] 次に、前記粘着剤組成物(A)100質量部に対し、架橋剤としてバーノックD−40(DIC(株)製、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソシアネート基含有率7質量%、不揮発分40質量%)1.4質量部を添加し、均一になるよう攪拌混合した後、100メッシュ金網で濾過することによって粘着剤(A)を得た。
[0139] 次に、離型ライナーの表面に、乾燥後の粘着剤層の厚さが50μmとなるように、バーコーターを用いて前記粘着剤(A)を塗工し、80℃で3分間乾燥させることによって粘着剤層を作製した。
[0140] 次に、前記粘着剤層を、表1に記載のポリオレフィン樹脂系発泡体1の表面をコロナ処理することによってぬれ指数を54mN/mに調整したものの両面に貼付し、40℃の環境下で48時間養生することによって粘着シートを作製した。」

・「[0158]
[表1]

[0159]
[表2]

[0160] 表1及び2中の発泡体の見かけ密度、平均気泡径、平均気泡径の比及び気泡の数は、本願明細書の記載した方法と同様の方法で測定した。表1及び2中のMDは流れ方向を表し、CDは幅方向を表し、VDは厚さ方向を表す。「MD/VD」は厚さ方向の平均気泡径に対する流れ方向の平均気泡径の比を表し、「CD/VD」は厚さ方向の平均気泡径に対する流れ方向の平均気泡径の比を表す。表1及び2中の発泡体の厚さは、尾崎製作所製のダイヤルシクネスゲージG型を用いて測定した値を表す。」

イ 甲9に係る日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明
甲9に係る日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された事項を、特に実施例1の粘着シートの製造に利用されているポリオレフィン系樹脂発泡体1に関して整理すると、甲9には次の発明(以下、「甲9先願発明」という。)が記載されていると認める。

<甲9先願発明>
「見かけ密度が0.40g/cm3であり、流れ方向(MD)及び幅方向(CD)の平均気泡径がそれぞれ95μm及び119μmであるポリオレフィン系樹脂発泡体1。」

2 申立理由1(甲1に基づく新規性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比・判断
(ア)対比
本件特許発明1と甲1比較例1発明を対比する。
甲1比較例1発明は「見かけ密度0.14g/cm3」であるから、発泡倍率はその逆数である「7.14cm3/g」であり、本件特許発明1における「1.5〜20cm3/g」の範囲内である。
甲1比較例1発明の「流れ方向(MD)」及び「幅方向(CD)」はそれぞれ本件特許発明1における「MD方向」及び「TD方向」に相当する。
甲1比較例1発明の「発泡体基材」は、「黒色ポリオレフィン系発泡体(5)」であって、両面粘着テープを形成するための材料であり、シートであることは明らかであるから、本件特許発明1における「ポリオレフィン系樹脂発泡シート」に相当する。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「ポリオレフィン系樹脂を発泡したポリオレフィン系樹脂発泡シートであって、前記発泡シートの発泡倍率が1.5〜20cm3/gであり、前記発泡シートのMD方向及びTD方向の平均気泡径が130μm以下である、ポリオレフィン系樹脂発泡シート。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点1−1>
本件特許発明1においては、「下記式(1)及び式(2)を満たす」(式(1)及び式(2)の摘記は省略する。以下同様。)と特定されているのに対し、甲1比較例1発明においては、そのようには特定されていない点。

(イ)判断
そこで、相違点1−1について検討する。
甲1比較例1発明が、相違点1−1に係る本件特許発明1の発明特定事項を有することを示す記載は甲1にはないし、他の証拠にもそのような記載はない以上、相違点1−1は実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明1は甲1比較例1発明であるとはいえない。

イ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、「本件明細書には以下の記載がある。
・・・(略)・・・
次に、甲1発明は、本件明細書でせん断強度を向上させる観点から好ましいとされている、上述の発泡倍率、MD方向及びTD方向の平均気泡径、密度、23℃におけるMD方向及びTD方向の抗張力、厚み、25%圧縮強度につき、すべて好ましい範囲に該当するものである。
そもそも、後述するように、「本件せん断強度パラメータ」(当審注:「本件せん断強度パラメータ」とは「下記式(1)及び式(2)」のことである。以下同様。)を満足することと、90℃におけるせん断強度の強さには、明確な相関関係がない。
以上の事項を総合判断すれば、甲1発明は「本件せん断強度パラメータ」を満足する蓋然性が高いというべきであり、相違点1は実質的な相違点ではない。」旨主張する(特許異議申立書第17ページ下から2行ないし第20ページ第11行)。
そこで、該主張について検討する。
甲1比較例1発明が、「本件明細書でせん断強度を向上させる観点から好ましいとされている発泡倍率、MD方向及びTD方向の平均気泡径、密度、23℃におけるMD方向及びTD方向の抗張力、25%圧縮強度につき、すべて好ましい範囲にある」としても、そのことと「下記式(1)及び式(2)を満たす」ことの関係は明らかではないから、甲1比較例1発明が、「下記式(1)及び式(2)を満たす」蓋然性が高いことにはならないし、また、仮に、「下記式(1)及び式(2)を満たす」ことと、90℃におけるせん断強度の強さに、明確な相関関係がないとしても、明確な相関関係がないだけで、甲1比較例1発明が「下記式(1)及び式(2)を満たす」蓋然性が高いことにはならない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

(2)本件特許発明2ないし6について
本件特許発明2ないし6は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1比較例1発明であるとはいえない。

(3)本件特許発明7について
本件特許発明7は、本件特許発明1ないし6のいずれかを用いた粘着テープの発明であるから、本件特許発明1ないし6が甲1比較例1発明であるといえない以上、甲1に記載された発明であるとはいえない。

(4)申立理由1についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし7は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当しない。
よって、申立理由1によっては、本件特許の請求項1ないし7に係る特許を取り消すことはできない。

3 申立理由2(甲2に基づく新規性進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比・判断
(ア)対比
本件特許発明1と甲2実施例1発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「ポリオレフィン系樹脂を発泡したポリオレフィン系樹脂発泡シートであって、前記発泡シートの発泡倍率が1.5〜20cm3/gである、ポリオレフィン系樹脂発泡シート。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点2−1>
本件特許発明1においては、「前記発泡シートのMD方向及びTD方向の平均気泡径が130μm以下である」と特定されているのに対し、甲2実施例1発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点2−2>
本件特許発明1においては、「下記式(1)及び式(2)を満たす」と特定されているのに対し、甲2実施例1発明においては、そのようには特定されていない点。

(イ)判断
そこで、事案に鑑み、相違点2−2について検討する。
甲1実施例1発明が、相違点2−2に係る本件特許発明1の発明特定事項を有することを示す記載は甲2にはないし、他の証拠にもそのような記載はない以上、相違点2−2は実質的な相違点である。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲2実施例1発明であるとはいえない。
また、甲2実施例1発明において、「下記式(1)及び式(2)を満たす」ようにすることの動機付けとなる記載は甲2にはないし、他の証拠にもそのような記載はない。
したがって、甲2実施例1発明において、相違点2−2に係る本件特許発明1の発明特定事項を想到することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲2実施例1発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、「本件明細書には以下の記載がある。
・・・(略)・・・
ここで、本件明細書の実施例1の発泡シートは、相違点1及び相違点2を満足するものである。
甲2発明と本件明細書の実施例1の発泡シートは、使用原料銘柄、混練温度、加速電圧、電子線照射量、発泡温度のほぼ全てが同一の方法で製造されたものであるから、両者の発泡シートの物性も同等であるといえる(特に本件明細書【0053】などの記載から「本件せん断強度パラメータ」を決定づけると解されるゲル分率(架橋度)の値は電子線照射に左右されるといえるが、甲2発明と本件明細書の実施例1の発泡シートにおける電子線照射量は同一であるから、両者のゲル分率は同程度といえる。)。
しかも、甲第2号証の【0093】の記載からみて、甲2発明は、MDへの延伸倍率及びCDへの延伸倍率がそれぞれ1.3倍以上かつ2.5倍以下で製造されたといえるから、本件明細書において同等の配合かつ同等の製造条件である実施例1の平均気泡径と同等の平均気泡径(ただしMDとTDの平均気泡径の比が0.9〜1.1)を有するといえる。
さらに、甲2発明の発泡倍率、密度、25%圧縮強度、厚みは、本件明細書【0008】、【0014】、【0020】、【0021】で述べる好適範囲に適合するものである。
以上の事項を総合判断すれば、甲2発明は相違点1及び相違点2を満足する蓋然性が高いというべきである。」旨主張する(特許異議申立書第27ページ第6行ないし第28ページ第16行)。
そこで、該主張について検討する。
甲2実施例1発明の発泡シートは、本件特許の明細書に記載された実施例1と製造条件は完全には一致していない(アゾジカルボンアミド、酸化亜鉛及び2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールの配合量が異なる。)から、両者の発泡シートの物性は同じになるとはいえないし、甲2実施例1発明が、「発泡倍率、密度、25%圧縮強度、厚みは、本件明細書【0008】、【0014】、【0020】、【0021】で述べる好適範囲に適合する」としても、甲2実施例1発明と本件特許の明細書に記載された実施例1は異なるし、「発泡倍率、密度、25%圧縮強度、厚みは、本件明細書【0008】、【0014】、【0020】、【0021】で述べる好適範囲に適合する」ことと「下記式(1)及び式(2)を満たす」ことの関係は明らかではないから、甲2実施例1発明が相違点2−1及び2−2を満足する蓋然性が高いとはいえない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

(2)本件特許発明2ないし6について
本件特許発明2ないし6は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲2実施例1発明であるとはいえないし、甲2実施例1発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(3)本件特許発明7について
本件特許発明7は、本件特許発明1ないし6のいずれかを用いた粘着テープの発明であるから、本件特許発明1ないし6が甲2実施例1発明であるとも、甲2実施例1発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない以上、甲2に記載された発明であるとはいえないし、甲2に記載された発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(4)申立理由2についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし7は、甲2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、甲2に記載された発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当しない。
よって、申立理由2によっては、本件特許の請求項1ないし7に係る特許を取り消すことはできない。
なお、甲2に記載された他の実施例に基づいて甲2に記載された発明を認定しても、同様である。

4 申立理由3(甲3に基づく新規性進歩性)について
(1)本件特許の新規性進歩性の判断の基準日について
本件特許発明1ないし7は、ポリオレフィン樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレンに加えて、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を使用したものを含むものであるが、本件特許に係る出願の優先基礎出願(特願2015−233149号)には、そのようなポリオレフィン樹脂は記載されていない。
そうすると、本件特許発明1ないし7が、ポリオレフィン樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレンに加えて、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を使用したものを対象とする場合には、本件特許の優先権は認められず、本件特許の新規性進歩性の判断の基準日は、本件特許の出願日である2016年(平成28年)11月29日となり、甲3は本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献であるといえる。

(2)本件特許発明1について
ア 対比・判断
(ア)対比
本件特許発明1と甲3実施例7発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「ポリオレフィン系樹脂を発泡したポリオレフィン系樹脂発泡シートであって、前記発泡シートの発泡倍率が1.5〜20cm3/gであり、前記発泡シートのMD方向及びTD方向の平均気泡径が130μm以下である、ポリオレフィン系樹脂発泡シート。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点3−1>
本件特許発明1においては、「下記式(1)及び式(2)を満たす」と特定されているのに対し、甲3実施例7発明においては、そのようには特定されていない点。

(イ)判断
そこで、相違点3−1について検討する。
甲3実施例7発明が、相違点3−1に係る本件特許発明1の発明特定事項を有することを示す記載は甲3にはないし、他の証拠にもそのような記載はない以上、相違点3−1は実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明1は甲3実施例7発明であるとはいえない。
また、甲3実施例7発明において、「下記式(1)及び式(2)を満たす」ようにすることの動機付けとなる記載は甲3にはないし、他の証拠にもそのような記載はない。
したがって、甲3実施例7発明において、相違点3−1に係る本件特許発明1の発明特定事項を想到することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
よって、本件特許発明1は甲3実施例7発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、「本件明細書には以下の記載がある。
・・・(略)・・・
ここで、本件明細書の実施例8及び実施例9の発泡シートは、相違点1を満足するものである。
甲3発明と本件明細書の実施例8及び9の発泡シートは、使用原料、配合量、混練温度、加速電圧、電子線照射量、発泡温度、MD及びTD延伸倍率の全てが同一又は類似の方法で製造されたものであるから、両者の発泡シートの物性も同等であるといえる。
さらに、甲3発明は、層間強度に優れるものである。
加えて、本件明細書の【0008】、【0009】、【0010】、【0014】、【0017】、【0018】、【0020】、【0021】に、発泡倍率、平均気泡径、密度、23℃におけるMD方向の抗張力、23℃におけるTD方向の抗張力、厚み、25%圧縮強度についての好適な範囲が記載されていることは、(4−1−2)で指摘したとおりである。
そして、甲3発明は、本件明細書でせん断強度を向上させる観点から好ましいとされている、上述の発泡倍率、MD方向及びTD方向の平均気泡径、密度(発泡倍率の逆数)、23℃におけるMD方向及びTD方向の抗張力、厚み、25%圧縮強度につき、すべて好ましい範囲に該当するものである。
以上の事項を総合判断すれば、甲3発明は相違点1を満足する蓋然性が高いというべきである。」旨主張する(特許異議申立書第37ページ第3行ないし第38ページ第21行)。
そこで、該主張について検討する。
甲3実施例7発明の発泡シートは、本件特許の明細書に記載された実施例8及び9と使用原料銘柄は異なり、製造条件も完全には一致していない(アゾジカルボンアミド及び2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールの配合量が異なる。)から、両者の発泡シートの物性は同じになるとはいえないし、甲3実施例7発明が、「層間強度に優れるものであ」り、「本件明細書でせん断強度を向上させる観点から好ましいとされている、上述の発泡倍率、MD方向及びTD方向の平均気泡径、密度(発泡倍率の逆数)、23℃におけるMD方向及びTD方向の抗張力、厚み、25%圧縮強度につき、すべて好ましい範囲に該当する」としても、甲3実施例7発明と本件特許の明細書に記載された実施例8及び9は異なるし、「本件明細書でせん断強度を向上させる観点から好ましいとされている、上述の発泡倍率、MD方向及びTD方向の平均気泡径、密度(発泡倍率の逆数)、23℃におけるMD方向及びTD方向の抗張力、厚み、25%圧縮強度につき、すべて好ましい範囲に該当する」ことと「下記式(1)及び式(2)を満たす」ことの関係は明らかではないから、甲3実施例7発明が相違点3−1を満足する蓋然性が高いとはいえない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

(3)本件特許発明2ないし6について
本件特許発明2ないし6は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲3実施例7発明であるとはいえないし、甲3実施例7発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(4)本件特許発明7について
本件特許発明7は、本件特許発明1ないし6のいずれかを用いた粘着テープの発明であるから、本件特許発明1ないし6が甲3実施例7発明であるとも、甲3実施例7発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない以上、甲3に記載された発明であるとはいえないし、甲3に記載された発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(5)申立理由3についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし7は、甲3に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、甲3に記載された発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当しない。
よって、申立理由3によっては、本件特許の請求項1ないし7に係る特許を取り消すことはできない。

5 申立理由4(甲4に基づく新規性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比・判断
(ア)対比
本件特許発明1と甲4比較例1発明を対比する。
甲4比較例1発明は「見かけ密度0.080g/cc」であるから、発泡倍率はその逆数である「12.500cc/g」、すなわち「12.500cm3/g」であり、本件特許発明1における「1.5〜20cm3/g」の範囲内である。
甲4比較例1発明の「多孔質シート」は、その樹脂組成物の組成及び架橋、発泡させて得られたものであることから、本件特許発明1における「ポリオレフィン系樹脂発泡シート」に相当する。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「ポリオレフィン系樹脂を発泡したポリオレフィン系樹脂発泡シートであって、前記発泡シートの発泡倍率が1.5〜20cm3/gであり、前記発泡シートのMD方向及びTD方向の平均気泡径が130μm以下である、ポリオレフィン系樹脂発泡シート。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点4−1>
本件特許発明1においては、「下記式(1)及び式(2)を満たす」と特定されているのに対し、甲4比較例1発明においては、そのようには特定されていない点。

(イ)判断
そこで、相違点4−1について検討する。
甲4比較例1発明が、相違点4−1に係る本件特許発明1の発明特定事項を有することを示す記載は甲4にはないし、他の証拠にもそのような記載はない以上、相違点4−1は実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明1は甲4比較例1発明であるとはいえない。

イ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、「本件明細書には以下の記載がある。
・・・(略)・・・
ここで、本件明細書の実施例1〜実施例7の発泡シートは、相違点1を満足するものである。
甲4発明と本件明細書の実施例1〜実施例7の発泡シートは、使用原料銘柄、配合量、混練温度、加速電圧、電子線照射量、発泡温度の全てが同一又は類似の方法で製造されたものであるから、両者の発泡シートの物性も同等であるといえる。
さらに、甲4発明の厚みは1.85mmであって比較的厚いので、本件明細書でいう“せん断強度”は優れていると解される(本件明細書【0004】【0020】の記載を参照されたい。)。
以上の事項を総合判断すれば、甲4発明は「本件せん断強度パラメータ」を満足する蓋然性が高いというべきである」旨主張する(特許異議申立書第42ページ第1行ないし第43ページ第5行)。
そこで、該主張について検討する。
甲4比較例1発明の発泡シートは、本件特許の明細書に記載された実施例1ないし7と製造条件は完全には一致していない(アゾジカルボンアミド及び2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールの配合量が異なるし、加速電圧及び電子線照射量も異なる。)から、両者の発泡シートの物性は同じになるとはいえないし、仮に、甲4比較例1発明が、「厚みは1.85mmであって比較的厚いので、本件明細書でいう“せん断強度”は優れていると解される」としても、甲4比較例1発明と本件特許の明細書に記載された実施例1ないし7は異なるし、「厚みは1.85mmであって比較的厚い」ことと「下記式(1)及び式(2)を満たす」ことの関係は明らかではないから、甲4比較例1発明が「本件せん断強度パラメータ」を満足する蓋然性が高いとはいえない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

(2)本件特許発明2ないし4及び6について
本件特許発明2ないし4及び6は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲4比較例1発明であるとはいえない。

(3)申立理由4についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし4及び6は、甲4に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし4及び6に係る特許は、同法第113条第2号に該当しない。
よって、申立理由4によっては、本件特許の請求項1ないし4及び6に係る特許を取り消すことはできない。

6 申立理由5(甲5に基づく新規性進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 甲5実施例1発明との対比・判断
(ア)対比
本件特許発明1と甲5実施例1発明を対比する。
甲5実施例1発明における「CD方向」は本件特許発明1における「TD方向」に相当する。
甲5実施例1発明における「熱可塑性樹脂発泡シート層(B)」は、「積水化学工業(株)製ポリエチレン系樹脂発泡体「ソフトロン S07005」」からなるものであるから、本件特許発明1における「ポリオレフィン系樹脂発泡シート」に相当する。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「ポリオレフィン系樹脂を発泡したポリオレフィン系樹脂発泡シートであって、前記発泡シートの発泡倍率が1.5〜20cm3/gであり、前記発泡シートのMD方向及びTD方向の平均気泡径が130μm以下である、ポリオレフィン系樹脂発泡シート。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点5−1>
本件特許発明1においては、「下記式(1)及び式(2)を満たす」と特定されているのに対し、甲5実施例1発明においては、そのようには特定されていない点。

(イ)判断
そこで、相違点5−1について検討する。
甲5実施例1発明が、相違点5−1に係る本件特許発明1の発明特定事項を有することを示す記載は甲5にはないし、他の証拠にもそのような記載はない以上、相違点5−1は実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明1は甲5実施例1発明であるとはいえない。
また、甲5実施例1発明において、「下記式(1)及び式(2)を満たす」ようにすることの動機付けとなる記載は甲5にはないし、他の証拠にもそのような記載はない。
したがって、甲5実施例1発明において、相違点5−1に係る本件特許発明1の発明特定事項を想到することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
よって、本件特許発明1は甲5実施例1発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 甲5比較例2発明との対比・判断
(ア)対比
本件特許発明1と甲5比較例2発明を対比する。
甲5比較例2発明における「CD方向」は本件特許発明1における「TD方向」に相当する。
甲5比較例2発明における「熱可塑性樹脂発泡シート層(B)」は、「積水化学工業(株)製ポリエチレン系樹脂発泡体「ボラーラXL−H#02003」」からなるものであるから、本件特許発明1における「ポリオレフィン系樹脂発泡シート」に相当する。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「ポリオレフィン系樹脂を発泡したポリオレフィン系樹脂発泡シートであって、前記発泡シートの発泡倍率が1.5〜20cm3/gであり、前記発泡シートのMD方向及びTD方向の平均気泡径が130μm以下である、ポリオレフィン系樹脂発泡シート。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点5−2>
本件特許発明1においては、「下記式(1)及び式(2)を満たす」と特定されているのに対し、甲5比較例2発明においては、そのようには特定されていない点。

(イ)判断
そこで、相違点5−2について検討する。
甲5比較例2発明が、相違点5−2に係る本件特許発明1の発明特定事項を有することを示す記載は甲5にはないし、他の証拠にもそのような記載はない以上、相違点5−1は実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明1は甲5比較例2発明であるとはいえない。
また、甲5比較例2発明において、「下記式(1)及び式(2)を満たす」ようにすることの動機付けとなる記載は甲5にはないし、他の証拠にもそのような記載はない。
したがって、甲5比較例2発明において、相違点5−2に係る本件特許発明1の発明特定事項を想到することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
よって、本件特許発明1は甲5比較例2発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、「本件明細書の【0008】、【0009】、【0010】、【0014】、【0017】、【0018】、【0020】、【0021】に、発泡倍率、平均気泡径、密度、23℃におけるMD方向の抗張力、23℃におけるTD方向の抗張力、厚み、25%圧縮強度についての好適な範囲が記載されていることは、(4−1−2)で指摘したとおりである。
そして、甲5−1発明は、本件明細書でせん断強度を向上させる観点から好ましいとされている、上述の発泡倍率、MD方向及びTD方向の平均気泡径、密度(発泡倍率の逆数)、23℃におけるMD方向及びTD方向の抗張力、厚み、25%圧縮強度につき、すべて好ましい範囲に該当するものである。甲5−2発明は、上述の発泡倍率、MD方向及びTD方向の平均気泡径、厚み、25%圧縮強度につき、好ましい範囲に該当するものである。
そもそも、後述するように、「本件せん断強度パラメータ」を満足することと。90℃におけるせん断強度の強さには、明確な相関関係がない。
以上の事項を総合判断すれば、甲5発明は「本件せん断強度パラメータ」を満足する蓋然性が高いというべき」である旨主張する(特許異議申立書第54ページ第1ないし18行)。
そこで、該主張について検討する。
甲5実施例1発明が、「本件明細書でせん断強度を向上させる観点から好ましいとされている、上述の発泡倍率、MD方向及びTD方向の平均気泡径、密度(発泡倍率の逆数)、23℃におけるMD方向及びTD方向の抗張力、厚み、25%圧縮強度につき、すべて好ましい範囲にある」としても、また、甲5比較例2発明が、「本件明細書でせん断強度を向上させる観点から好ましいとされている、上述の発泡倍率、MD方向及びTD方向の平均気泡径、厚み、25%圧縮強度につき、好ましい範囲にある」としても、「本件明細書でせん断強度を向上させる観点から好ましいとされている、上述の発泡倍率、MD方向及びTD方向の平均気泡径、密度(発泡倍率の逆数)、23℃におけるMD方向及びTD方向の抗張力、厚み、25%圧縮強度につき、すべて好ましい範囲にある」こと又は「本件明細書でせん断強度を向上させる観点から好ましいとされている、上述の発泡倍率、MD方向及びTD方向の平均気泡径、厚み、25%圧縮強度につき、好ましい範囲にある」ことと「下記式(1)及び式(2)を満たす」ことの関係は明らかではないから、甲5実施例1発明及び甲5比較例2発明が「下記式(1)及び式(2)を満たす」蓋然性が高いことにはならない。さらに、仮に、「下記式(1)及び式(2)を満たす」ことと、90℃におけるせん断強度の強さに、明確な相関関係がないとしても、明確な相関関係がないだけで、甲5実施例1発明及び甲5比較例2発明が「下記式(1)及び式(2)を満たす」蓋然性が高いことにはならない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

(2)本件特許発明2ないし6について
本件特許発明2ないし6は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲5実施例1発明又は甲5比較例2発明であるとはいえないし、甲5実施例1発明又は甲5比較例2発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(3)本件特許発明7について
本件特許発明7は、本件特許発明1ないし6のいずれかを用いた粘着テープの発明であるから、本件特許発明1ないし6が甲5実施例1発明又は甲5比較例2発明であるとも、甲5実施例1発明又は甲5比較例2発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない以上、甲5に記載された発明であるとはいえないし、甲5に記載された発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(4)申立理由5についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし7は、甲5に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、甲5に記載された発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当しない。
よって、申立理由5によっては、本件特許の請求項1ないし7に係る特許を取り消すことはできない。

7 申立理由6(甲6に基づく新規性進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比・判断
(ア)対比
本件特許発明1と甲6実施例4発明を対比する。
甲6実施例4発明における「MD」及び「CD」はそれぞれ本件特許発明1における「MD方向」及び「TD方向」に相当する。
甲6実施例4発明における「架橋発泡シート」は、その樹脂組成物の組成から、本件特許発明1における「ポリオレフィン系樹脂発泡シート」に相当する。

したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「ポリオレフィン系樹脂を発泡したポリオレフィン系樹脂発泡シートであって、前記発泡シートの発泡倍率が1.5〜20cm3/gであり、前記発泡シートのMD方向及びTD方向の平均気泡径が130μm以下である、ポリオレフィン系樹脂発泡シート。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点6−1>
本件特許発明1においては、「下記式(1)及び式(2)を満たす」と特定されているのに対し、甲6実施例4発明においては、そのようには特定されていない点。

(イ)判断
そこで、相違点6−1について検討する。
甲6実施例4発明が、相違点6−1に係る本件特許発明1の発明特定事項を有することを示す記載は甲6にはないし、他の証拠にもそのような記載はない以上、相違点6−1は実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明1は甲6実施例4発明であるとはいえない。
また、甲6実施例4発明において、「下記式(1)及び式(2)を満たす」ようにすることの動機付けとなる記載は甲6にはないし、他の証拠にもそのような記載はない。
したがって、甲6実施例4発明において、相違点6−1に係る本件特許発明1の発明特定事項を想到することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
よって、本件特許発明1は甲6実施例4発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、「本件明細書の【0008】、【0009】、【0010】、【0014】、【0017】、【0018】、【0020】、【0021】に、発泡倍率、MD方向及びTD方向の平均気泡径、密度、23℃におけるMD方向の抗張力、23℃におけるTD方向の抗張力、厚み、25%圧縮強度についての好適な範囲が記載されていることは、(4−1−2)で指摘したとおりである。
そして、甲6発明は、本件明細書でせん断強度を向上させる観点から好ましいとされている、上述の発泡倍率、MD方向及びTD方向の平均気泡径、密度(発泡倍率の逆数)、23℃におけるMD方向及びTD方向の抗張力、厚み、25%圧縮強度につき、すべて好ましい範囲に該当するものである。
加えて、本件明細書の【0052】の実施例1の記載は(4−2−2)で指摘したとおりであり、甲6発明と本件明細書の実施例1の発泡シートは、使用原料銘柄、配合量、混練温度、加速電圧、電子線照射量、発泡温度のほぼ全てが同一又は類似の方法で製造されたものであるから、両者の発泡シートの物性も同等であるといえる。
以上の事項を総合判断すれば、甲6発明は相違点1を満足する蓋然性が高いというべきである。」旨主張する(特許異議申立書第60ページ下から8行ないし第61ページ第10行)。
そこで、該主張について検討する。
甲6実施例4発明の発泡シートは、本件特許の明細書に記載された実施例と製造条件は完全には一致していない(アゾジカルボンアミド及び2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールの配合量が異なるし、加速電圧及び電子線照射量も異なる。)から、両者の発泡シートの物性は同じになるとはいえないし、甲6実施例4発明が、「本件明細書でせん断強度を向上させる観点から好ましいとされている、上述の発泡倍率、MD方向及びTD方向の平均気泡径、密度(発泡倍率の逆数)、23℃におけるMD方向及びTD方向の抗張力、厚み、25%圧縮強度につき、すべて好ましい範囲に該当するものである」としても、甲6実施例4発明と本件特許の明細書に記載された実施例は異なるし、「本件明細書でせん断強度を向上させる観点から好ましいとされている、上述の発泡倍率、MD方向及びTD方向の平均気泡径、密度(発泡倍率の逆数)、23℃におけるMD方向及びTD方向の抗張力、厚み、25%圧縮強度につき、すべて好ましい範囲に該当するものである」ことと「下記式(1)及び式(2)を満たす」ことの関係は明らかではないから、甲6実施例4発明が相違点6−1を満足する蓋然性が高いとはいえない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

(2)本件特許発明2ないし6について
本件特許発明2ないし6は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲6実施例4発明であるとはいえないし、甲6実施例4発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(3)本件特許発明7について
本件特許発明7は、本件特許発明1ないし6のいずれかを用いた粘着テープの発明であるから、本件特許発明1ないし6が甲6実施例4発明であるとも、甲6実施例4発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない以上、甲6に記載された発明であるとはいえないし、甲6に記載された発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(4)申立理由6についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし7は、甲6に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、甲6に記載された発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当しない。
よって、申立理由6によっては、本件特許の請求項1ないし7に係る特許を取り消すことはできない。
なお、甲6に記載された実施例5に基づいて甲6に記載された発明を認定しても、同様である。

8 申立理由7(甲7に基づく新規性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比・判断
(ア)対比
本件特許発明1と甲7比較例1発明を対比する。
甲7比較例1発明における「MD」及び「CD」はそれぞれ本件特許発明1における「MD方向」及び「TD方向」に相当する。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「ポリオレフィン系樹脂を発泡したポリオレフィン系樹脂発泡シートであって、前記発泡シートのMD方向及びTD方向の平均気泡径が130μm以下である、ポリオレフィン系樹脂発泡シート。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点7−1>
本件特許発明1においては、「前記発泡シートの発泡倍率が1.5〜20cm3/gであり」と特定されているのに対し、甲7比較例1発明においては、そのようには特定されていない点(甲7の【0071】によると、甲7比較例1発明における「発泡倍率」は本件特許発明1における「発泡倍率」と定義が異なる。)。

<相違点7−2>
本件特許発明1においては、「下記式(1)及び式(2)を満たす」と特定されているのに対し、甲7比較例1発明においては、そのようには特定されていない点。

(イ)判断
そこで、事案に鑑み、相違点7−2について検討する。
甲7比較例1発明が、相違点7−2に係る本件特許発明1の発明特定事項を有することを示す記載は甲7にはないし、他の証拠にもそのような記載はない以上、相違点7−2は実質的な相違点である。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲7比較例1発明であるとはいえない。

イ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、「本件明細書の【0008】、【0009】、【0010】、【0014】、【0017】、【0018】、【0020】、【0021】に、発泡倍率、MD方向及びTD方向の平均気泡径、密度、23℃におけるMD方向の抗張力、23℃におけるTD方向の抗張力、厚み、25%圧縮強度についての好適な範囲が記載されていることは、(4−1−2)で指摘したとおりである。
そして、甲7発明は、本件明細書でせん断強度を向上させる観点から好ましいとされている、上述の発泡倍率、MD方向及びTD方向の平均気泡径、密度(発泡倍率の逆数)、23℃におけるMD方向及びTD方向の抗張力、厚み、25%圧縮強度につき、すべて好ましい範囲に該当するものである。
加えて、本件明細書の【0052】の実施例1の記載は(4−2−2)で指摘したとおりであり、甲7発明と本件明細書の実施例1の発泡シートは、使用原料銘柄、配合量、混練温度、加速電圧、電子線照射量、発泡温度のほぼ全てが同一又は類似の方法で製造されたものであるから、両者の発泡シートの物性も同等であるといえる。
以上の事項を総合判断すれば、甲7発明は相違点1を満足する蓋然性が高いというべきである。」旨主張する(特許異議申立書第66ページ第3ないし20行)。
そこで、該主張について検討する。
甲7比較例1発明の発泡シートは、本件特許の明細書に記載された実施例1と製造条件は完全には一致していない(アゾジカルボンアミド及び2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールの配合量が異なるし、加速電圧及び電子線照射量も異なる。)から、両者の発泡シートの物性は同じになるとはいえないし、甲7比較例1発明が、「本件明細書でせん断強度を向上させる観点から好ましいとされている、上述の発泡倍率、MD方向及びTD方向の平均気泡径、密度(発泡倍率の逆数)、23℃におけるMD方向及びTD方向の抗張力、厚み、25%圧縮強度につき、すべて好ましい範囲に該当するものである」としても、甲7比較例1発明と本件特許の明細書に記載された実施例1は異なるし、「本件明細書でせん断強度を向上させる観点から好ましいとされている、上述の発泡倍率、MD方向及びTD方向の平均気泡径、密度(発泡倍率の逆数)、23℃におけるMD方向及びTD方向の抗張力、厚み、25%圧縮強度につき、すべて好ましい範囲に該当する」ことと「下記式(1)及び式(2)を満たす」ことの関係は明らかではないから、甲7比較例1発明が相違点7−1及び7−2を満足する蓋然性が高いとはいえない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

(2)本件特許発明2ないし6について
本件特許発明2ないし6は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲7比較例1発明であるとはいえない。

(3)本件特許発明7について
本件特許発明7は、本件特許発明1ないし6のいずれかを用いた粘着テープの発明であるから、本件特許発明1ないし6が甲7比較例1発明であるといえない以上、甲7に記載された発明であるとはいえない。

(4)申立理由7についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし7は、甲7に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当しない。
よって、申立理由7によっては、本件特許の請求項1ないし7に係る特許を取り消すことはできない。

9 申立理由8(甲8に基づく新規性進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比・判断
(ア)対比
本件特許発明1と甲8実施例6発明を対比する。
甲8実施例6発明は「見かけ密度0.48g/cm3」であるから、発泡倍率はその逆数である「2.08cm3/g」であり、本件特許発明1における「1.5〜20cm3/g」の範囲内である。
甲8実施例6発明における「流れ方向(MD)」及び「幅方向(CD)」はそれぞれ本件特許発明1における「MD」方向及び「TD方向」に相当する。
甲8実施例6発明における「基材」は、「黒色ポリオレフィン系発泡体(7)」からなるものであって、両面粘着テープを形成するための材料であり、シートであることは明らかであるから、本件特許発明1における「ポリオレフィン系樹脂発泡シート」に相当する。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「ポリオレフィン系樹脂を発泡したポリオレフィン系樹脂発泡シートであって、前記発泡シートの発泡倍率が1.5〜20cm3/gであり、前記発泡シートのMD方向及びTD方向の平均気泡径が130μm以下である、ポリオレフィン系樹脂発泡シート。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点8−1>
本件特許発明1においては、「下記式(1)及び式(2)を満たす」と特定されているのに対し、甲8実施例6発明においては、そのようには特定されていない点。

(イ)判断
そこで、相違点8−1について検討する。
甲8実施例6発明が、相違点8−1に係る本件特許発明1の発明特定事項を有することを示す記載は甲8にはないし、他の証拠にもそのような記載はない以上、相違点8−1は実質的な相違点である。
したがって、本件特許発明1は甲8実施例6発明であるとはいえない。
また、甲8実施例6発明において、「下記式(1)及び式(2)を満たす」ようにすることの動機付けとなる記載は甲8にはないし、他の証拠にもそのような記載はない。
したがって、甲8実施例1発明において、相違点8−1に係る本件特許発明1の発明特定事項を想到することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
よって、本件特許発明1は甲8実施例1発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、「本件明細書の【0008】、【0009】、【0010】、【0014】、【0017】、【0018】、【0020】、【0021】に、発泡倍率、MD方向及びTD方向の平均気泡径、密度、23℃におけるMD方向の抗張力、23℃におけるTD方向の抗張力、厚み、25%圧縮強度についての好適な範囲が記載されていることは、(4−1−2)で指摘したとおりである。
そして、甲8発明は、本件明細書でせん断強度を向上させる観点から好ましいとされている、上述の発泡倍率、MD方向及びTD方向の平均気泡径、密度(発泡倍率の逆数)、23℃におけるMD方向及びTD方向の抗張力、厚み、25%圧縮強度につき、すべて好ましい範囲に該当するものである。
加えて、甲8発明のポリオレフィン系発泡体シートは、層間強度が高いことが伺われる。
以上の事項を総合判断すれば、甲8発明は相違点1を満足する蓋然性が高いというべきである。」旨主張する(特許異議申立書第72ページ第10ないし24行)。
そこで、該主張について検討する。
甲8実施例6発明が、「本件明細書でせん断強度を向上させる観点から好ましいとされている、上述の発泡倍率、MD方向及びTD方向の平均気泡径、密度(発泡倍率の逆数)、23℃におけるMD方向及びTD方向の抗張力、厚み、25%圧縮強度につき、すべて好ましい範囲に該当するものであ」り、「層間強度が高いことが伺われる」ものであ」るとしても、「本件明細書でせん断強度を向上させる観点から好ましいとされている、上述の発泡倍率、MD方向及びTD方向の平均気泡径、密度(発泡倍率の逆数)、23℃におけるMD方向及びTD方向の抗張力、厚み、25%圧縮強度につき、すべて好ましい範囲に該当する」ことと「下記式(1)及び式(2)を満たす」ことの関係は明らかではないから、甲8実施例6発明が相違点8−1を満足する蓋然性が高いことにはならない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

(2)本件特許発明2ないし6について
本件特許発明2ないし6は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲8実施例6発明であるとはいえないし、甲8実施例6発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(3)本件特許発明7について
本件特許発明7は、本件特許発明1ないし6のいずれかを用いた粘着テープの発明であるから、本件特許発明1ないし6が甲8実施例6発明であるとも、甲8実施例1発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない以上、甲8に記載された発明であるとはいえないし、甲8に記載された発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(4)申立理由8についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし7は、甲8に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、甲8に記載された発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当しない。
よって、申立理由8によっては、本件特許の請求項1ないし7に係る特許を取り消すことはできない。

10 申立理由9(甲9に係る日本語特許出願に基づく拡大先願)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比・判断
(ア)対比
本件特許発明1と甲9先願発明を対比する。
甲9先願発明は「見かけ密度0.40g/cm3」であるから、発泡倍率はその逆数である「2.50cm3/g」であり、本件特許発明1における「1.5〜20cm3/g」の範囲内である。
甲9先願発明における「流れ方向(MD)」及び「幅方向(CD)」はそれぞれ本件特許発明1における「MD方向」及び「TD方向」に相当する。
甲9先願発明における「ポリオレフィン系樹脂発泡体1」は、その両面に粘着剤層を貼付して、粘着シートとするものであり、シートであることは明らかであるから、本件特許発明1における「ポリオレフィン系樹脂発泡シート」に相当する。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「ポリオレフィン系樹脂を発泡したポリオレフィン系樹脂発泡シートであって、前記発泡シートの発泡倍率が1.5〜20cm3/gであり、前記発泡シートのMD方向及びTD方向の平均気泡径が130μm以下である、ポリオレフィン系樹脂発泡シート。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点9−1>
本件特許発明1においては、「下記式(1)及び式(2)を満たす」と特定されているのに対し、甲9先願発明においては、そのようには特定されていない点。

(イ)判断
そこで、相違点9−1について検討する。
甲9先願発明が、相違点9−1に係る本件特許発明1の発明特定事項を有することを示す記載は甲9にはないし、他の証拠にもそのような記載はない以上、相違点9−1は実質的な相違点である。
そして、相違点9−1に係る本件特許発明1の発明特定事項が課題解決のための具体化手段における微差であるともいえない。
したがって、本件特許発明1は甲9先願発明と同一であるとはいえない。

イ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、「本件明細書の【0008】、【0009】、【0010】、【0014】、【0017】、【0018】、【0020】、【0021】に、発泡倍率、MD方向及びTD方向の平均気泡径、密度、23℃におけるMD方向の抗張力、23℃におけるTD方向の抗張力、厚み、25%圧縮強度についての好適な範囲が記載されていることは、(4−1−2)で指摘したとおりである。
そして、甲9発明は、本件明細書でせん断強度を向上させる観点から好ましいとされている、上述の発泡倍率、MD方向及びTD方向の平均気泡径、密度(発泡倍率の逆数)、23℃におけるMD方向及びTD方向の抗張力、厚み、25%圧縮強度につき、すべて好ましい範囲に該当するものである。
加えて、甲9発明のポリオレフィン系発泡体シートは、層間強度が高いものである。
以上の事項を総合判断すれば、甲9発明は相違点1を満足する蓋然性が高いというべきである。」旨主張する(特許異議申立書第83ページ下から4行ないし第84ページ第11行)。
そこで、該主張について検討する。
甲9先願発明の発泡シートは、上記第4 1 (9)アの[0137]ないし[0140]のとおり、本件特許の明細書に記載された実施例と原料及び製造条件が全く異なるから、両者の発泡シートの物性は同じになるとはいえないし、甲9先願発明が、「本件明細書でせん断強度を向上させる観点から好ましいとされている、上述の発泡倍率、MD方向及びTD方向の平均気泡径、密度(発泡倍率の逆数)、23℃におけるMD方向及びTD方向の抗張力、厚み、25%圧縮強度につき、すべて好ましい範囲に該当するものであ」り、「層間強度が高いものであ」るとしても、「本件明細書でせん断強度を向上させる観点から好ましいとされている、上述の発泡倍率、MD方向及びTD方向の平均気泡径、密度(発泡倍率の逆数)、23℃におけるMD方向及びTD方向の抗張力、厚み、25%圧縮強度につき、すべて好ましい範囲に該当する」ことと「下記式(1)及び式(2)を満たす」ことの関係は明らかではないから、甲9先願発明が相違点9−1を満足する蓋然性が高いことにはならない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

(2)本件特許発明2ないし6について
本件特許発明2ないし6は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲9先願発明と同一であるとはいえない。

(3)本件特許発明7について
本件特許発明7は、本件特許発明1ないし6のいずれかを用いた粘着テープの発明であるから、本件特許発明1ないし6が甲9先願発明と同一であるといえない以上、甲9に係る日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であるとはいえない。

(4)申立理由9についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし7は、甲9に係る日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、特許法第29条の2(同法第184条の13)の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、同法第113条第2号に該当しない。
よって、申立理由9によっては、本件特許の請求項1ないし7に係る特許を取り消すことはできない。
なお、甲9に係る日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された他の実施例に基づいて甲9先願発明を認定しても、同様である。

11 申立理由10(委任省令要件)について
(1)委任省令要件の判断基準
特許法第36条第4項第1号で委任する経済産業省令(特許法施行規則第24条の2)では、発明がどのような技術的貢献をもたらすものであるかが理解でき、また審査及び調査に役立つように、発明が解決しようとする課題、その解決手段などの、「当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項」を、発明の詳細な説明に記載することが規定されている。
そして、委任省令要件で記載することが求められる事項とは、発明の属する技術分野並びに発明が解決しようとする課題及びその解決手段である。
また、発明特定事項に数式又は数値を含む場合であって、当業者が発明の詳細な説明の記載並びに出願時の技術常識に基づいて、発明の課題とその数式又は数値による特定との実質的な関係を理解することができず、発明の課題の解決手段を理解できない場合には、発明の技術上の意義が不明であり、委任省令要件違反に該当する。
そこで、検討する。

(2)判断
本件特許の発明の詳細な説明の【0001】には「本発明は、ポリオレフィン系樹脂を発泡してなるポリオレフィン系樹脂発泡シート、及びこれを用いた粘着テープに関する。」と記載されており、発明の属する技術分野の記載がある。
また、本件特許の発明の詳細な説明の【0004】には、「本発明は、上記従来の事情を鑑みてなされたものであって、薄厚でも優れたせん断強度を有するポリオレフィン系樹脂発泡シート、及びこれを用いた粘着テープを提供することを目的とする。」と記載され、同じく【0005】には「本発明者らが鋭意検討した結果、高温下における発泡シートの抗張力と密度とが一定の関係を満たすように調整すると前記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[2]を要旨とする。
[1]ポリオレフィン系樹脂を発泡したポリオレフィン系樹脂発泡シートであって、前記発泡シートの発泡倍率が1.5〜20cm3/gであり、前記発泡シートのMD方向及びTD方向の平均気泡径が130μm以下であり、下記式(1)及び式(2)を満たす、ポリオレフィン系樹脂発泡シート。
TM/D≧6 (1)
TT/D≧5 (2)
TM:90℃におけるMD方向の抗張力
TT:90℃におけるTD方向の抗張力
D:前記発泡シートの密度(g/cm3)」と記載されており、発明が解決しようとする課題及びその解決手段の記載がある。
さらに、本件特許発明1ないし7は、「下記式(1)及び式(2)を満たす」という発明特定事項を有するものであるから、発明特定事項に数式又は数値を含む場合に該当するが、当業者であれば、発明の詳細な説明の記載及び本件特許に係る出願の分割前の出願の出願時の技術常識(以下、「本件特許の出願時の技術常識」という。)に基づいて、【0004】に記載された発明の課題と「下記式(1)及び式(2)を満たす」ことの実質的な関係を理解することができ、その結果として、発明の技術上の意義を理解することができる。
したがって、本件特許の発明の詳細な説明の記載は委任省令要件に違反するものとはいえない。

(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、上記第3 10のとおり主張する。
そこで、該主張について検討する。
本件特許の発明の詳細な説明の【0053】ないし【0055】に記載された比較例6は、「高温下における発泡シートの抗張力と密度とが一定の関係を満たすように調整」して、「下記式(1)及び式(2)を満たす」ようにしたにもかかわらず、90℃におけるせん断強度は0.22MPaと低いことから、確かに、「下記式(1)及び式(2)」の値とせん断強度の強さに明確な相関関係は見出せないし、【0005】の「高温下における発泡シートの抗張力と密度とが一定の関係を満たすように調整すると前記課題を解決することができる」という記載は正しいとはいえない。
しかし、当業者が、発明の詳細な説明の他の記載を参酌すれば、【0005】の上記記載は、ポリオレフィン系樹脂を発泡したポリオレフィン系樹脂発泡シートであって、発泡シートの発泡倍率が1.5〜20g/cm3であり、発泡シートのMD方向及びTD方向の平均気泡径が130μm以下である発泡シートを前提とした記載であり、「高温下における発泡シートの抗張力と密度とが一定の関係を満たすように調整」して、「下記式(1)及び式(2)を満たす」ようにするだけで、「前記課題を解決することができる」とは理解しない。すなわち、当業者は、【0005】の上記記載を、ポリオレフィン系樹脂を発泡したポリオレフィン系樹脂発泡シートであって、発泡シートの発泡倍率が1.5〜20g/cm3であり、発泡シートのMD方向及びTD方向の平均気泡径が130μm以下である発泡シートにおいて、「高温下における発泡シートの抗張力と密度とが一定の関係を満たすように調整」して、「下記式(1)及び式(2)を満たす」ことで「前記課題を解決することができる」という記載であると理解する。
したがって、【0005】の上記記載が正しいといえなかったとしても、本件特許発明1ないし7に関して、発明の技術上の意義が不明であるとはいえないので、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載が委任省令要件に違反するものであるとはいえない。
なお、仮に、本件特許の発明の詳細な説明に「下記式(1)及び式(2)を満たす」ことの技術的意義を合理的に説明する記載がなかったとしても、また、「下記式(1)及び式(2)を満たす」ことが発泡シートのせん断強度に関連する旨の本件特許の出願時の技術常識があったとはいえなかったとしても、上記(2)のとおり、発明の技術上の意義が理解できる以上、委任省令要件違反とすることはできない。

よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

(4)申立理由10についてのむすび
したがって、本件特許の発明の詳細な説明は、経済産業省令で定めるところにより記載されたものであるといえるので、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、同法第113条第4号に該当しない。
よって、申立理由10によっては、本件特許の請求項1ないし7に係る特許を取り消すことはできない。

第5 むすび
上記第4のとおり、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。


 
異議決定日 2022-02-22 
出願番号 P2019-041578
審決分類 P 1 651・ 536- Y (C08J)
P 1 651・ 121- Y (C08J)
P 1 651・ 16- Y (C08J)
P 1 651・ 113- Y (C08J)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 大島 祥吾
特許庁審判官 植前 充司
加藤 友也
登録日 2021-04-19 
登録番号 6871290
権利者 積水化学工業株式会社
発明の名称 ポリオレフィン系樹脂発泡シート及び粘着テープ  
代理人 田口 昌浩  
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