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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23D
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23D
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23D
管理番号 1384247
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-11-11 
確定日 2022-02-15 
異議申立件数
事件の表示 特許第6868722号発明「油脂組成物および該油脂組成物を用いた食品、並びに食品の製造方法および食品の油染みを抑制する方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6868722号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6868722号の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、令和2年2月28日の出願であって、令和3年4月14日に特許権の設定登録がされ、同年5月12日にその特許公報が発行され、その後、同年11月11日に、特許異議申立人 田中 眞喜子(以下「特許異議申立人」という。)により、請求項1〜7に係る特許に対して、特許異議の申立てがされたものである。

第2 特許請求の範囲の記載
本件の特許請求の範囲の請求項1〜7に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」〜「本件特許発明7」という。まとめて、「本件特許発明」ということもある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1〜7に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
飽和脂肪酸の含有量が30質量%以下の液状油脂:90〜99.5質量%と、
飽和脂肪酸の含有量が80質量%以上、上昇融点が50℃以上、かつ、HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル:0.5〜3質量%と、を含有し、
5℃のSFCが4%以下である、油脂組成物(レシチンを配合するものを除く)。
【請求項2】
極度硬化油:1〜3質量%を、さらに含有する、請求項1に記載の油脂組成物。
【請求項3】
食品用である、請求項1または2に記載の油脂組成物。
【請求項4】
フライ用である、請求項3に記載の油脂組成物。
【請求項5】
請求項3または4に記載の油脂組成物が用いられた、食品。
【請求項6】
飽和脂肪酸の含有量が30質量%以下の液状油脂:90〜99.5質量%と、
飽和脂肪酸の含有量が80質量%以上、上昇融点が50℃以上、かつ、HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル:0.5〜3質量%と、を含有し、
5℃のSFCが4%以下である、油脂組成物(レシチンを配合するものを除く)を用いて、調理する工程を含む、食品の製造方法。
【請求項7】
飽和脂肪酸の含有量が30質量%以下の液状油脂:90〜99.5質量%と、
飽和脂肪酸の含有量が80質量%以上、上昇融点が50℃以上、かつ、HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル:0.5〜3質量%と、を含有し、
5℃のSFCが4%以下である、油脂組成物(レシチンを配合するものを除く)を用いて、調理することにより、食品の油染みを抑制する方法。」

第3 特許異議申立理由
新規性
異議申立理由1:請求項1、3〜7に係る発明は、本件特許出願前に日本国内において頒布された刊行物である下記の甲第2〜6号証を参照すれば、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項1、3〜7に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。

進歩性
異議申立理由2−1:請求項1〜7に係る発明は、本件特許出願前に日本国内において頒布された刊行物である下記の甲第1号証に記載された発明および下記の甲第1〜7号証に記載された技術的事項、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第8〜10号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

異議申立理由2−2:請求項1〜7に係る発明は、本件特許出願前に日本国内において頒布された刊行物である下記の甲第12号証に記載された発明および甲第1、7、11、12号証に記載された技術的事項、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第8〜10号証、甲第13〜15号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

異議申立理由2−3:請求項1〜7に係る発明は、本件特許出願前に日本国内において頒布された刊行物である下記の甲第11号証に記載された発明および甲第1、7、11、12号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

実施可能要件
異議申立理由3:請求項1〜7に係る発明について、5℃のSFCを4%以下にすることに関し、いかにして範囲内に調整すればよいかが記載されておらず、技術常識でもないので、調製した油脂組成物のSFCを逐一測定する必要があり、過度の試行錯誤が必要であるから、本件特許は、発明の詳細な説明の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。



甲第1号証:加藤友治,ポリグリセリン脂肪酸エステルの物理化学特性と食品への応用,日本食品工学会誌,2002年3月,Vol.3,No.1,p.1〜7
甲第2号証:特開2000−119687号公報
甲第3号証:特開2018−174782号公報
甲第4号証:特開2012−237859号公報
甲第5号証:特開2015−73464号公報
甲第6号証:特開2019−71815号公報
甲第7号証:杉山 泰崇 外1名,おいしさを引き立てるフライ食品用素材と利用,月刊フードケミカル,2014年9月,p.41〜46
甲第8号証:Medical Tribuneのウェブサイト,蒼木 学,トランス脂肪酸は本当に危ない?管理栄養士に聞く,https://medical−tribune.co.jp/kenko100/articles/160510528631/,2016年5月10日
甲第9号証:日本生活協同組合連合会のウェブサイト,日本生活協同組合連合会,?食品のQ&A トランス脂肪酸問題についてのQ&A,https://jccu.coop/food−safety/qa/qa01_02.html,2018年2月2日最終更新
甲第10号証:山崎製パンのウェブサイト,山崎製パン,トランス脂肪酸等の低減化に関する取組みについて,https://www.yamazakipan.co.jp/company/trans_fat/index2.html,2018年8月1日現在の情報として掲載
甲第11号証:特開2001−128617号公報
甲第12号証:特開2020−5627号公報
甲第13号証:太陽化学株式会社のウェブサイト,太陽化学株式会社,【第6回】乳化剤の新機能?油脂を「固める」効果,https://www.taiyokagaku.com/lab/emulsion_learning/10/,2018年8月
甲第14号証:国際公開第2021/125324号
甲第15号証:三菱ケミカル株式会社のウェブサイト,三菱ケミカル株式会社,沿革|事業情報|三菱ケミカル ライフソリューションセクター,https://www.mfc.co.jp/corporate/history/index.html,2021年10月5日確認

第4 当審の判断
請求項1〜7に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができないと考える。
理由は以下のとおりである。

異議申立理由1及び2(新規性進歩性)について

1 甲号証の記載事項
(1)甲第1号証
本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第1号証には、以下の記載がある。

(1a)「ポリグリセリン脂肪酸エステルの物理化学特性と食品への応用」(論文のタイトル)

(1b)「5. 2油脂改質剤「TAISET」
ポリグリセリン脂肪酸エステルの高エステル品はW/O乳化だけでなく構成脂肪酸の種類を選ぶことで油脂の結晶析出や液体油のウィンタリング(温度低下による固体脂の結晶析出)を防止する機能がある[12].そのためチョコレートやマーガリン,サラダオイルなど油脂の加工にも広く使われている.
高エステル化度の高度精製ポリグリセリン脂肪酸エステルに特定の脂肪酸モノグリセリドと組み合わせた油脂改質剤「TAISET」が上市されている.「TAISET」は液体油に添加すると増粘・固化させることができ,また,半固体脂に添加すると硬化を促進する[13,14].さらに,食品中の油脂を安定な粗乳化状態にすることでレトルト食品などの風味を維持することができる.
5.2.1 油脂の固化,増粘
「TAISET」は液体油に添加して加熱すると透明に溶解し,そのまま放冷すると固化する.しかし,撹拌しながら冷却すると粘稠なゲル状となる.Fig.5は[TAISET]を各種植物油に添加し加熱溶解後,20℃まで放冷して固化した硬さ(粘稠度)をレオメーターによって破断強度として測定した結果である.油の種類や添加量によって差があるがすべての液体油を固化し流動性をなくすことができる.液体油のナタネ油と半固体脂のラードに添加して冷却時の粘度変化をブルックフィールド粘度計で測定すると添加量が増えると粘度は上昇し,食感改良や安定性向上につながる.「TA1SET」を添加したナタネ油およびパー厶油の固体脂指数(SFC)を測定した結果,油脂固化剤添加による油脂中のSFCはほとんど影響を受けない.また,顕微鏡観察では非常に細かい繊維状組織が観察されたことから,油脂の固化は油脂の結晶促進によるものではなく,「TAISET」が網目状の組織をつくり,この組織のなかに液体油を包括していると推察している.
「TAISET」は油脂を使用している加工食品に使われている.高度不飽和脂肪酸を含む液体油を簡単にしかも栄養的価値を落とさずに固めることができ,食品の改良や健康をうたった食品用途に応用できる.ピーナッツバターに使用すると,保存中における液体油の分離を抑制することができ,ピーナッツバターを使用する菓子類などへ応用できる.マーガリンは一般的に水素添加した油脂を原料に使われることが多く,水素添加品はトランス酸含量が多い.しかし,とくに欧米では栄養生理学的から低トランス酸のマーガリンが要望されており,液体油に少量の「TAISET」を添加することで容易に低トランス酸マーガリンができる.その他コーヒークリー厶,アイスクリー厶,ホイップクリー厶などの乳製品に使用すると安定感や食感に特徴ある製品を作ることができる.また,低融点のチョコレートに添加すると,保型性がよく,乾きも早くてダレもなくなることから,アイスクリー厶のコーティングチョコレートに有効である.ドーナツや天ぷらなどのフライングオイルに添加すると液体油であっても染み出しを少なくすることができる.」(5頁左欄下から10行〜6頁左欄8行)

(1c)Fig.5は、「種々の植物油のゲル強度に関する「TAISET」添加の効果」との表題で、「TAISET」の含有割合が1%、3%、5%、7%の場合の4種の植物油のゲル強度(g/cm2)が示され、添加量が増えるにしたがってゲル強度が増加していることが図示されている。

(1d)「引用文献
1) 食品化学新聞社;フードケミカル,17 (2), 64-66 (2001)
2) R. T. McIntyre; J. Am. Oil Chem. Soc., 56, 835-840 (1979)
3) 山下政続,名坂基;科学と工業,63, 65-72 (1989)
4) T. N. Kumar, Y. S. R. Sastry, G. Lakshminarayama; J. Am. Oil Chem. Soc., 66,153-157 (1989)
5) S. Matsumura, M. Maki, K. Toshima, K. Kawada; J. Jpn. Oil Chem. Soc., 48, 681-692 (1999)
6) 加藤友治;食品加工技術,19, 81-90 (1999)
7) 太陽化学特許:公開平7-100355
8) 太陽化学特許:公開平8-143513
9) 中村武嗣,山下政継;フードケミカル,14 (12). 77-83 (1998)
10) 中田勝康;食品と科学,42 (2), 86-92 (2000)
11) 加藤友治;食品工業,40 (4.30), 50-55 (1997)
12) 栗山重平,坂本光宏;フードケミカル,15 (5). 76-80 (1999)
13) 太陽化学特許;公開 2000-119687
14) 中村武嗣;フードケミカル,17(12),59-63 (2001)」(7頁左欄5行〜右欄1行)

(2)甲第2号証
本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第2号証には、以下の記載がある。
(2a)「【請求項1】 炭素数20以上の脂肪酸のエステルを含有する油脂固化剤。
【請求項2】 請求項1記載の油脂固化剤にHLBが3以下のポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はショ糖脂肪酸エステルを併用することを特徴とする油脂固化剤。
【請求項3】 請求項1又は2記載の油脂固化剤を含有する油脂。
【請求項4】 請求項3記載の油脂を含有する食品。」

(2b)「【0005】
【発明の実施の形態】本発明における炭素数20以上の脂肪酸のエステルとは例えば、アラキン酸、ベヘニン酸等とプロピレングリコール、グリセリン、ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン等とのエステルである。具体的には、グリセリンモノベヘニン酸エステル、ソルビタンジアラキン酸エステル等が挙げられるがこれらに限定するものではない。炭素数19以下の脂肪酸のエステルを使用した場合油脂は充分固化しなかった。
【0006】本発明におけるHLB3以下のポリグリセリン脂肪酸エステルとはトリグリセリンペンタステアレート、ヘキサグリセリンオクタステアレート、デカグリセリンデカパルミテート等をさし、HLB3以下のショ糖脂肪酸エステルはショ糖のパルミチン酸、ステアリン酸エステルをさすが、これらに限定するものではない。これらを併用することで油脂の固化、硬さの調整を一層容易に行うことができる。本発明の油脂固化剤は特定の上記脂肪酸エステルを含有するもので、その含量、剤形等は適宜選択すればよく特に限定するものではない。本発明品を食品へ利用する場合、通常食品用として利用される乳化剤との併用は何らさしさわりなく特に限定されるものではない。その乳化剤とは、例えば食品衛生法でいう、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン等が挙げられる。また、本発明の油脂固化剤が適用される油脂は、例えば、大豆油、菜種油、カカオ脂、綿実油、パーム油、ごま油、ホホバ油等の植物油および、牛脂、ラード、魚油、スクアラン等の動物油、又は鉱物油のパラフィン等があげられるが、これらに限定するものではない。また、上述の油脂を混合、分別、エステル交換、水素添加したものにも適用可能である。本発明における油脂固化剤の添加量は、油脂に対し、有効成分の添加量として、0.1〜20%好ましくは0.5〜10%である。少なすぎる場合固化せず、多すぎる場合は硬く固化して使用しづらくなる。尚、油脂への固化剤の添加方法については、特に限定するものではなく、油脂中に固化剤が均一に溶解される方法であれば良い。以下、発明の実施の形態を実施例に基づき説明する。
【0007】
【実施例】実施例1
グリセリンモノベヘニン酸エステル 50%とヘキサグリセリンオクタステアレート(HLB=1.5)50%を加熱混合後冷却し、本発明の油脂固化剤を得た。
実施例2
大豆油 97%にグリセリンモノベヘニン酸エステル 3%(本発明品)を添加し、加熱溶解後冷却し、固化した油脂を得た。
実施例3
魚油 96%にソルビタンモノアラキン酸エステル 2%とショ糖ステアリン酸エステル(HLB=1)2%(本発明品)を添加し、加熱溶解後冷却し、固化した油脂を得た。」

(2c)「【0003】
【発明が解決しようとしている課題】従来の水素添加による固化方法の場合、油脂中の不飽和脂肪酸が飽和脂肪酸となりそれにともない融点が高くなるため、使用しづらく、食用に供した場合口解けが悪くなる等の問題があった。」

(3)甲第3号証
本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第3号証には、以下の記載がある。
(3a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数16以上の飽和脂肪酸モノグリセリドを1.3〜3.0質量%、ポリグリセリン脂肪酸エステルを0.7〜2.5質量%含有し、15℃におけるSFC当りの硬さが26〜42[g・f/cm2・%]であることを特徴とするロールイン用油脂組成物。」

(3b)「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願の課題は良好な内層や浮きを有しており、口溶けが良好でありながら、低油分化されたペストリー食品を得ることができる、ロールイン用油脂組成物を提供することにある。」

(3c)「【0049】



(4)甲第4号証
本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第4号証には、以下の記載がある。
(4a)「【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、静電印刷、ファクシミリ、プリンタ、静電記録等の電子写真方式の画像形成に用いられるトナー、該トナーを用いた現像剤、及び該現像剤を用いた画像形成方法に関する。」

(4b)「【0022】
―離型剤―
本発明のトナーは、離型剤として、グリセリン又は平均重合度が2〜10のポリグリセリンと、平均炭素数が18〜24の脂肪酸をエステル化させたグリセリンエステル又はポリグリセリンエステルを含有することを特徴とする。該グリセリンエステル又はポリグリセリンエステルの融点は、55〜80℃の範囲とするが、60〜75℃が好ましく、65〜75℃が更に好ましい。これにより、トナーの定着時に優れた耐ホットオフセット性(離型性)を示すと共に、トナーの耐熱保存性と耐フィルミング性も良好となる。該融点が55℃未満であると、トナーの耐熱保存性、及び耐フィルミング性が悪化したり、トナー中での微分散が困難となり、トナー粒子間でのグリセリンエステル又はポリグリセリンエステルの含有量のばらつきが顕著になり、離型性の低下や、トナーの造粒性の悪化に繋がったりするので好ましくない。一方、80℃を超えると、トナーの低温定着性が低下したり、画像光沢が低下したりするため好ましくない。」

(4c)「【0175】


(5)甲第5号証
本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第5号証には、以下の記載がある。
(5a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数が18以上で二重結合を2個以上有する多価不飽和脂肪酸を含む油脂、塩基性アミノ酸及び/又は塩基性ペプチド、ならびに乳化剤を含有してなる、多価不飽和脂肪酸含有油脂組成物。
【請求項2】
多価不飽和脂肪酸が、DHA、EPA、及びリノール酸からなる群より選ばれる1種以上である、請求項1記載の油脂組成物。
【請求項3】
乳化剤が、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、及びリン脂質からなる群より選ばれる1種以上を含有してなる、請求項1又は2記載の油脂組成物。
【請求項4】
乳化剤が、HLB値が10未満の乳化剤を1種以上含有してなる、請求項1〜3いずれか記載の油脂組成物。
【請求項5】
グリセリン脂肪酸エステルがポリグリセリン脂肪酸エステルである、請求項3又は4記載の油脂組成物。
【請求項6】
グリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸が炭素数10以上の飽和又は不飽和脂肪酸である、請求項3〜5いずれか記載の油脂組成物。
【請求項7】
塩基性アミノ酸が、リジン、アルギニン、ヒスチジン、及びこれらの塩からなる群より選ばれる1種以上である、請求項1〜6いずれか記載の油脂組成物。
【請求項8】
塩基性ペプチドが、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリヒスチジン、ヒストン、及びプロタミンからなる群より選ばれる1種以上である、請求項1〜7いずれか記載の油脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8いずれか記載の油脂組成物を乳化してなる、多価不飽和脂肪酸含有油脂の乳化組成物。
【請求項10】
請求項1〜8いずれか記載の油脂組成物又は請求項9記載の乳化組成物を粉末化してなる、多価不飽和脂肪酸含有油脂の粉末組成物。
【請求項11】
請求項1〜10いずれか記載の組成物を含有してなる飲食品。
【請求項12】
請求項1〜10いずれか記載の組成物を含有してなる医薬組成物。
【請求項13】
請求項1〜10いずれか記載の組成物を含有してなる化粧料。
【請求項14】
炭素数が18以上で二重結合を2個以上有する多価不飽和脂肪酸を含む油脂に、塩基性アミノ酸及び/又は塩基性ペプチドと共に、乳化剤を含有させることを特徴とする、多価不飽和脂肪酸含有油脂の戻り臭を低減させる方法。」

(5b)「【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来提案された技術はそれなりの成果はあるものの、長期保存によって戻り臭が発生するなど必ずしも満足できるものではなく、多価不飽和脂肪酸含有油脂の戻り臭がさらに抑制された組成物の開発が求められている。
【0013】
本発明は、多価不飽和脂肪酸含有油脂の戻り臭が長期に亘って抑制された多価不飽和脂肪酸含有油脂組成物、該組成物の乳化組成物又は粉末組成物、及びこれらの組成物を含有する飲食品、医薬組成物、又は化粧料、ならびに、多価不飽和脂肪酸含有油脂の戻り臭低減方法を提供することを課題とする。」

(5c)「【0110】
具体的には、精製魚油(POLARIS社製、DHA含量56重量%、EPA含量6重量%)75gに、乳化剤:ジグリセリンモノカプリン酸エステル(太陽化学社製、サンソフトQ−10D HLB=9.5)7g、ジグリセリンモノラウリン酸エステル(太陽化学社製、サンソフトQ−12D HLB=8.5)10g、ヘキサグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(太陽化学社製、サンソフトNo.818H HLB=約2)2g、ヘキサグリセリンオクタステアリン酸エステル(太陽化学社製、サンファットPS−68 HLB=3.5)1gを添加して40℃において窒素雰囲気下でパドル翼攪拌機で十分に撹拌後、撹拌しながらアミノ酸:微粒アルギニン5gを徐々に添加した。その後、10分間よく撹拌し、DHA・EPA含有精製魚油製剤を得た(実施例33)。また、乳化剤およびアミノ酸を添加しない製剤については、配合しないことによる減量分は補正せずに、合計量を75gとした(比較例51)。なお、多価不飽和脂肪酸に対するアミノ酸及び/又はペプチドの重量比〔多価不飽和脂肪酸/(塩基性アミノ酸+塩基性ペプチド)〕は9.3/1、多価不飽和脂肪酸に対する乳化剤の重量比〔多価不飽和脂肪酸/乳化剤〕は2.3/1であった。」

(6)甲第6号証
本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第6号証には、以下の記載がある。
(6a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸ナトリウム、酢酸およびモノグリセリン脂肪酸エステルを含有する食品用粉末状日持ち向上剤であり、該食品用粉末状日持ち向上剤を水に分散させて測定したモノグリセリン脂肪酸エステルのモード径が1〜100μmであり、且つ90%径が30〜140μmである、食品用粉末状日持ち向上剤。
【請求項2】
モノグリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸の炭素数が6〜18である、請求項1に記載の食品用粉末状日持ち向上剤。
【請求項3】
モノグリセリン脂肪酸エステルのHLB値が4〜8であり、且つ融点が30〜65℃である、請求項1または2に記載の食品用粉末状日持ち向上剤。
【請求項4】
日持ち向上剤全量に対し、酢酸ナトリウムを0.2〜98重量%、酢酸を0.1〜10重量%及びモノグリセリン脂肪酸エステルを0.1〜15重量%含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の食品用粉末状日持ち向上剤。・・・」

(6b)「【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、食品の味質や風味に影響を与えずに十分な日持ち向上効果が得られ、かつ、分散性に優れ、短時間で粉末化可能な食品用粉末状日持ち向上剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、酢酸を含有する食品用日持ち向上剤について鋭意検討した結果、酢酸、酢酸ナトリウムおよび特定の粒径を有するモノグリセリン脂肪酸エステルを組み合わせることにより、酸味や酸臭が抑制されると共に、分散性に優れた粉末製剤が短時間で得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
すなわち本発明は、酢酸ナトリウム、酢酸、およびモノグリセリン脂肪酸エステルを含有する食品用粉末状日持ち向上剤であり、該食品用粉末状日持ち向上剤を水に分散させて測定したモノグリセリン脂肪酸エステルのモード径が1〜100μmであり、且つ90%径が30〜140μmである、食品用粉末状日持ち向上剤(以下、本発明の日持ち向上剤とも称する)を提供する。」

(6c)「【0060】
モノグリセリンカプリン酸エステルをモノグリセリンベヘン酸エステル(理研ビタミン株式会社製ポエムB−100:HLB:3.4、融点:70〜78℃)に変更した以外は実施例2と同様にして固化物を回収した(比較例1)」

(7)甲第7号証
本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第7号証には、以下の記載がある。
(7a)「2)離油抑制によるサクサク感の維持
硬くすることなくサクサク感を維持するためには,衣を多孔質になるように仕上げる必要がある。多孔質な衣の構造は,衣に含まれる油が表面に滲み出しやすい構造である。保存時に油が滲み出すと,サクサクはするが油くどい衣になるため,保存時の離油を抑制することが重要となる。実際にTAISET (乳化剤,太陽化学)を天ぷらバッターに添加して揚げ玉を作成後,ろ紙に25℃・6時間保存した。このろ紙に滲み出た油は,TAISETを添加したバッター液の場合,その面積比より約1/2にまで抑えられた(図10)。
一方,バッター液ではなく,フライ油にTAISETを添加しても同様の効果が得られる。TAISETを添加した油でフライドポテトをフライした後,2枚重ねたろ紙の上にポテ卜を置き,25℃・3時間保持した。その結果,TAISET添加区では無添加と比較してろ紙への油滲みが少ないことが確認された(図11)。
TAISETはトランス脂肪酸を含む硬化油を使わずに液状油を固化・増粘させる特徴を持つ乳化剤である。フライ食品に限らず,カレーなどの油性食品の香味維持や,炒飯の炒め油に添加することによる,ほぐれ感の向上,焼きそばのような軽食の炒め油に添加することによる,麺のしずる感向上などに効果がある。」(45頁右欄8行〜46頁左欄14行)

(8)甲第8号証
本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第8号証には、以下の記載がある。
(8a)「
トランス脂肪酸は本当に危ない?管理栄養士に聞く
2016年05月10日公開
悪玉コレステロール、動脈硬化…ネガティブ効果いっぱいのトランス脂肪酸は、米国では2018年までに全廃を目指しているほど。実際、どれくらい危ないのか−。栄養の専門家である、管理栄養士の山野綾子さんに聞いた(関連記事=トランス脂肪酸、死亡や心臓病の危険度が2〜3割上昇)。
トランス脂肪酸は食べるメリットなし
――トランス脂肪酸とは一体どんなもの?
トランス脂肪酸には2種類あり、天然のものと人工的に作られたものがあります。人工的に作られるものは、大豆、菜種、トウモロコシ、パー厶(ヤシ)などの植物油に水素を添加して固めた「硬化油」を製造する過程で生じます。
硬化油は、カンタンに言えば、液体の油を固体に人工的に変えたものです。硬化処理によって、油の酸化による劣化や温度変化による食品の変質を防ぐことができます。また硬化油は工業的に使いやすく、サクサクとした食感などを生み出すメリットがあり、多くの加工食品に使われています。」(出力物の1/3頁1〜13行)

(9)甲第9号証
本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第9号証には、以下の記載がある。

(9a)「
トランス脂肪酸問題についてのQ&A
日本生協連は2005年4月11日、トランス脂肪酸問題について見解を公表しましたが、その後も多くのお問い合わせをいただいていますので、情報を追加、整理しました。
2018年2月2日最終更新
2005年4月11日作成
●トランス脂肪酸についてのQ&A
トランス脂肪酸の概略と日本生協連の考え
Q 1:トランス脂肪酸とは何ですか?
Q 2:トランス脂肪酸はどういうものに含まれますか?
Q 3:部分水素添加油脂とは何ですか?
・・・
●トランス脂肪酸の概略と日本生協連の考え
脂肪酸とは、食品の成分の一つである脂肪を構成している成分です。トランス脂肪酸は脂肪酸の一種で、油脂を多く含む菓子やパン、業務用の揚げ油の一部などに含まれます。その他に牛肉や乳製品などにも含まれています。
トランス脂肪酸は善玉(HDL)コレステロールを減らし、悪玉(LDL)コレステロールを増やすため、それ以外の脂肪酸とのバランスを欠いて多く摂取した場合は、心臓疾患などのリスクが高まると言われています。これが「トランス脂肪酸が体に悪い」と言われる理由です。
欧米諸国では食品への表示や含有量の規制が行われているケースがあります。一方、日本の食品安全委員会は、トランス脂肪酸の摂取量について、日本人のほとんどがWHOの目標である総エネルギー摂取量の1%未満であり、また、健康への影響を評価できるレベルを下回っていることから、通常の食生活では健康への影響は小さい。しかしながら、脂質に偏った食事をしている人は、留意する必要があるとの見解を出しています。
日本生協連としても、現在、血中コレステロ−ルの値が正常範囲内で、普通の食生活をおくっている方は、トランス脂肪酸(こついて特に心配する必要がないと考えます。また、例えば、悪玉(LDL)コレステロ−ル値が高めの方も、まずは喫煙や運動等も含めた生活習慣全体を見直すことが必要で、食生活の改善もその一部です。
トランス脂肪酸は心臓疾患の危険性を増やすかもしれない一つの要因ではありますが、とにかく卜ランス脂肪酸さえ食生活から排除すればそれでよいということではありません。あまり報道されていないことですが、例えば米国の加工食品の栄養成分表示では、トランス脂肪酸の量だけではなく、総脂肪、飽和脂肪酸(商品により不飽和脂肪酸)も表示されており、米国FDA (食品医薬品局)は消費者に対して、飽和脂肪酸とトランス脂肪酸の量の合計が少ない商品を選択するよう勧めています。これは、トランス脂肪酸だけでなく、飽和脂肪酸の摂取量や脂肪酸の摂取パランスも大切なポイントであるためです。
日本生協連は、食事からの脂肪のとり方について「トランス脂肪酸を減らすことだけにこだわるのではなく、脂肪を適切な量をとることと、農産物や魚介類も含めたいろいろな食べ物からバランスよく脂肪をとること」をおすすめします。
・・・
Q 2 トランス脂肪酸はどういうものに含まれますか?
A 2 主として、部分水素添加油脂を使った食品(油脂を多く含む菓子類、業務用揚げ油などの一部)と、乳製品・食肉製品などに含まれます。
トランス脂肪酸が生成する原因としては、主として以下の3つが知られています。
(1)植物油等の加工の際に行われる部分水素添加により生成します
植物油等の加工の際に、液体の油に水素を添加*1して、脂肪酸の不飽和結合を減らす部分水素添加という方法が取られることがあります。これにより適度な硬さの固形油を得ることができ、また酸化しにくくなるという効果もありますが、トランス脂肪酸が生成します。業務用揚げ油には、サクサク感を出すためと酸化防止のために水素添加油脂が使用されることがあります。
・・・」(出力物の1/10頁2行〜3/10頁9行)

(10)甲第10号証
本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったとされる甲第10号証には、以下の記載がある。
(10a)「トランス脂肪酸等の低減化に関する取組みについて」(出力物の1/3頁1行)

(10b)「4 トランス脂肪酸がパン類等に含まれている理由
パン類の原材料として使用されるマーガリンやショートニングなどの油脂には,大豆、菜種、とうもろこし、パームなどの植物に由来するものと、バターやラードなどのように動物に由来するものとがあります。これらの中で最も一般的に油糧原料として使用されている大豆、菜種、とうもろこしは常温で液状であることから、パン製造に適するよう固体状にしたマーガリンやショートニングが必要となります。これらの固形脂は水素添加によって得られ、硬化油と呼ばれます。この硬化油の製造過程において、不飽和脂肪酸が飽和脂肪酸に変化する反応と同時に副反応として、シス型で存在していた不飽和脂肪酸の一部がトランス型の不飽和脂肪酸へ構造が変化することが知られています。硬化油とすることで、1○(決定注:原文では丸数字。以下同様。)油脂の融点が高くなることにより油っぽさを低下させるなどの固化特性の向上、2○優れた酸化安定性の付与、3○油脂結晶の微細化の促進、がもたらされ、サクサク感、コク、しっとり感など特有の物性を付与します。デニッシュペストリーやドーナツなどの製品では、持にこの硬化油の特徴が必要となります。
動物に由来するトランス脂肪酸は、反芻動物の胃の中で微生物により生成され、乳製品、肉などにふくまれていることから、パン類にはバターなどに由来するトランス脂肪酸も含まれています。なお、工業由来と反芻動物由来のトランス脂肪酸では、重複した脂肪酸組成を示すため、現状ではそれらを分析上で判別する方法は報告されていません。」(出力物の2/3頁1〜12行)

(10c)「8 主なパン類のトランス脂肪酸、飽和脂肪酸、コレステロール等の含有量
ここで掲載している情報は2018年8月1日現在のものです。栄養情報は定期的に更新いたしますが、使用原材料の変更や製品の改廃などにより、ご案内の内容が変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。」(出力物の3/3頁6〜8行)

(11)甲第11号証
本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第11号証には、以下の記載がある。
(11a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 25℃における固体脂含量が1〜5%であり、かつ、構成脂肪酸中、炭素数20〜22の飽和脂肪酸を0.3〜4重量%含有することを特徴とするバッター液用油脂組成物。
【請求項2】 ハイエルシン酸菜種極度硬化油を含有することを特徴とする請求項1に記載のバッター液用油脂組成物。
【請求項3】 香味を有する食用油脂を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のバッター液用油脂組成物。
【請求項4】 乳化剤を配合してなる請求項1ないし3のいずれかに記載のバッター液用油脂組成物。
【請求項5】 請求項1ないし4のいずれかに記載のバッター液用油脂組成物を含むことを特徴とするバッター液。」

(11b)「【0002】
【従来の技術】バッター使用食品として代表的なものは、天ぷら、及びパン粉を使ったフライ類であるが、天ぷら、フライ類の衣は、揚げたてのサクサクした食感が好まれる。近年、家庭におけるフライ調理が行われる回数が減少し、代わってコンビニエンスストアの弁当やスーパーマーケットの惣菜の利用が増えている。しかし、一般にコンビニエンスストアやスーパーの惣菜類は、調理後数時間経過していることが多く、サクサクとした食感は失われている。これらを手軽に温め直す方法として電子レンジ加熱があるが、電子レンジ調理中にフライ類や天ぷらの衣が具の水分を吸収して軟化し、できたてのサクサク感とは程遠いものとなっているのが現状である。
【0003】こうした実情に鑑み、これまで種々の改良方法が提案されている。例えば、バッター液に食用油脂を配合する方法において、10℃における固体脂含有量が15〜35%、かつ、15℃における固体脂含有量が0〜10%である油脂組成物を使用する方法(特開平9−94074号公報)や、温度5〜20℃での固体脂含有率が2〜10%となる流動状食用油脂と、融点が45℃以上の食用油脂とを所定割合で混合した油脂組成物を使用する方法(特開平10−248487号公報)等が知られている。
【0004】しかし、前者では、専ら冷凍フライ食品を対象にしているため、常温付近で保存されるスーパーやコンビニエンスストアの惣菜については、サクサク感の維持あるいは再現性が十分ではない。後者では、融点の高い油脂を多く配合するため、口溶けの悪い不自然な食感となる上、衣がぱさついた状態となるという欠点がある。さらには、油脂組成物とバッター液との粘度差が大きく、あるいはバッター液製造の方法が複雑であったりするため、バッター調製時に特別な装置を必要とするなど、スーパーマーケットのバックヤードや、コンビニエンスストアのベンダーなどで使用するには適していないという致命的な問題があった。そのため、昨今、惣菜産業における揚げ物の需要が急増している折から、特に天ぷら、フライ食品等の製造に適したバッター液の開発が焦眉の急となっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、フライ類等のバッター使用食品の製造における上記の問題点を克服し、常温及びチルド保存後も、できたての自然な食感を再現することができ、また、フライ製品に簡便に風味を付与できるバッター使用食品を得るための方法を提供することにある。」

(11c)「【0011】一方、構成脂肪酸中の炭素数20〜22の飽和脂肪酸の含有量を0.3〜4重量%にするには、炭素数20〜22の脂肪酸を有する油脂を部分的に水添するか、あるいは炭素数20〜22の脂肪酸を含む油脂を完全に硬化したものを原料として、一定量配合することで調製できる。これらの中では、ハイエルシン酸菜種極度硬化油が特に好ましい。ハイエルシン酸菜種極度硬化油はエルシン酸含量の多い菜種油を極度硬化したもので、特に炭素数20〜22の飽和脂肪酸を多量に含有する。炭素数20〜22の飽和脂肪酸を含む形態としては、調合、配合以外にもエステル交換によって分子内に含有されたものでもよい。さらには、炭素数20〜22の飽和脂肪酸を含む乳化剤を必要量配合することも可能である。」

(11d)「【0013】本発明のバッター液用油脂組成物においては、25℃の固体脂含量及び構成脂肪酸中の炭素数20〜22の飽和脂肪酸の含有量が所定割合である油脂組成物に、さらに乳化剤を併用することにより、バッター液の分散性、調理後のバッター使用食品の食感を向上させることができる。乳化剤としては、各種レシチン及びその加工品、グリセリン脂肪酸エステル(モノグリセライド、ジグリセライド、ポリグリセリン脂肪酸エステル)、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルなどが挙げられる。これらの乳化剤は、通常、予め油脂組成物中に均一に混合しておくものであるが、バッター液調製時に添加してもよい。」

(11e)「【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施例および比較例に基づいて、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
(バッター液用油脂組成物の調製)
【実施例1、2、比較例1〜3】表1に示す配合により、それぞれ油脂組成物を調製した。それらの性状を表2及び表3に示す。表2及び表3から、実施例1及び2では簡単な攪拌で均一にバッター液が調製され、さらに、経時変化も少ないものが得られるのに対し、比較例1〜3ではバッター液調製に難があることが判る。
【0018】
【表1】


【0019】
【表2】

【0020】
【表3】


【0021】(バッター液の調製)
【実施例3〜5】実施例1の油脂組成物を用いて、表4に示す配合により、粉類と水を混合した後に油脂組成物を加えて軽く混ぜ、バッター液を調製した。
【表4】


【0022】
【比較例4〜10】表5に示す配合により、粉類と水を混合した後、油脂を加えて軽く混ぜ、バッター液を調製した。
【表5】


【0023】(コロッケをチルド保存した場合の効果)市販乾燥マッシュポテト50gと熱水175gを練り合わせて中種を調製し、表4に示す実施例3及び表5に示す比較例4〜6のバッター液を付けた後、生パン粉を付けて、菜種油を用いて180℃で3分間フライしてコロッケを作成した。これを5℃の冷蔵庫に保存後、レンジアップしたものについて、食感の経時的な変化をパネル10名による官能検査によって比較した。比較例6のバッター液は、粘度が低すぎてフライ用バッター液として不適当なものであったため、これを使用したコロッケは調製できなかった。こうして作成したコロッケの冷蔵保存中の食感変化を図1に示す。図1より、実施例3のバッター液を用いたコロッケは、比較例4、比較例5のバッター液を用いたコロッケに比べ、チルド保存した後も食感の低下が遅く、7時間経過後もほぼできたて時の食感を維持していることが判る。さらに、実施例3のコロッケは、比較例4及び5のコロッケと比較して、パン粉立ち良く、見栄えの良いものであった。
【0024】(たこ焼きにおける効果)実施例4及び比較例7、8のバッター液を使用してたこ焼きを焼成し、チルド保存した後、レンジアップしてパネラー6名で官能検査を行った。その結果、実施例4と比較例7の比較では5名が、実施例4と比較例8の比較では5名が、実施例4のたこ焼きの方が食感がソフトで柔らかいと答えた。
【0025】(天ぷらにおける効果)前記実施例5及び比較例9、10のバッター液をエビに付け、大豆油で170℃にて3分間揚げて天ぷらを調製した。4時間後、パネル10名による官能検査によって10点満点で食感を評価した。その平均点を表6に示した。
【表6】


【0026】
【発明の効果】実施例を用いて説明したとおり、本発明で得られたバッター液用油脂組成物をバッター使用食品に用いることにより、食感を改良することができ、また、チルド保存後もできたて時の食感を提供することができることが判る。」

(12)甲第12号証
本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第12号証には、以下の記載がある。
(12a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
高水分食品素材と、低水分食品素材と、油脂とを含む食品であって、
低水分食品素材が油脂に分散しており、
少なくとも一部の低水分食品素材が、油脂によって高水分食品素材から隔てられており、
25℃及びせん断速度10(1/s)における油脂の粘度が100mPa・s〜20000mPa・sであるか、又は油脂の25℃でのゲル強度が800N/m2〜51000N/m2である、食品。
【請求項2】
高水分食品素材と、低水分食品素材と、油脂とを含む食品であって、
低水分食品素材の表面に油脂の層が形成されており、
少なくとも一部の低水分食品素材が、油脂によって高水分食品素材から隔てられており、
25℃及びせん断速度10(1/s)における油脂の粘度が100mPa・s〜20000mPa・sであるか、又は油脂の25℃でのゲル強度が800N/m2〜51000N/m2である、食品。
【請求項3】
低水分食品素材と油脂の総量に対する油脂の割合が30質量%以上である、請求項1に記載の食品。
【請求項4】
低水分食品素材と油脂の総量に対する油脂の割合が6質量%以上である、請求項2に記載の食品。
【請求項5】
油脂が油系ゲル化剤を使用して増粘されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の食品。
【請求項6】
油系ゲル化剤がポリグリセリン脂肪酸エステルを含む、請求項5に記載の食品。
・・・」

(12b)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高水分食品素材から低水分食品素材への水分の移行が効果的に抑制されて、低水分食品素材の食感が維持された、高水分食品素材及び低水分食品素材を含む食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らが鋭意検討した結果、低水分食品素材を特定の粘度又はゲル強度を有する油脂に分散させて、少なくとも一部の低水分食品素材が油脂によって高水分食品素材から隔てられることによって上記課題を解決できることを見出した。すなわち、本発明は、以下に示す食品及びその製造方法を提供するものである。」

(12c)「【0008】
本発明の食品における、低水分食品素材としては、例えば水分含量が1〜35質量%のグラノーラ、ライ麦フレーク、ライスクリスプ、シリアル、ココナッツ、押麦、ライ麦、大麦、玄米、オートミール、ナッツ、ドライフルーツ、パフ、クラッカー、ひなあられ、せんべい、ボーロ、カステラ、ワッフル、ウェハース、スナック(コーンスナック、ポテトスナック、ポテトチップ)、ビスケット、サブレパイ、リーフパイ、マシュマロ、ラムネ、キャンディー、ローストシュガーチップ、もなか、香辛料、陳皮、ゼリービーンズ、グミ、チョコチップ、おこし、パン粉、フライドガーリック、フライドオニオン、クルトン、海苔、ケシの実、ゴマ、干しエビ、フリーズドライフルーツ、フリーズドライ野菜、エアドライフルーツ、エアドライ野菜、砂糖漬けフルーツ、天かす、パン粉、コーンフレーク、おこげ、ラスク、アーモンドプラリネ、キャラメル等が挙げられる。好ましくは、低水分食品素材は、グラノーラ、ナッツ、ドライフルーツ、パフ、及びクラッカーである。これらの低水分食品素材は、本発明の食品において良好な食感を有する。また、低水分食品素材は、好ましくは多孔質素材である。低水分食品素材が多孔質素材の場合、低水分食品素材の食感の維持が顕著である。
本発明の食品における低水分食品素材の含有量は、好ましくは0.1〜30質量%であり、より好ましくは5〜25質量%である。
【0009】
本発明の食品においては、油脂として、従来公知の油脂を用いることができ、特に限定されるものではないが、天然油脂、加工油脂、植物油脂及びこれらの混合物のいずれをも用いることができる。具体的には、菜種油、菜種白絞油、米油、オリーブ油、ナッツ油、大豆油、ひまわり油、コーン油、サラダ油、パーム油、亜麻仁油、中鎖脂肪酸油及び香味油等の植物油脂、豚脂、牛脂及び等の動物油脂、豚脂、牛脂、ならびにこれらの2種以上の混合物から選択される油脂を用いることができる。本発明において、油脂は、25℃及びせん断速度10(1/s)における油脂の粘度が100mPa・s〜20000mPa・sであるか、又は油脂の25℃でのゲル強度が800N/m2〜51000N/m2である。このような、粘度又はゲル強度を有する油脂を用いることにより、高水分食品素材から低水分食品素材への水分の移行を防止して低水分食品素材の食感を維持することができる。油脂の前記粘度は、好ましくは300mPa・s〜17000mPa・sであり、より好ましくは500mPa・s〜14000mPa・sであり、さらに好ましくは700mPa・s〜10000mPa・sであり、最も好ましくは900mPa・s〜7000mPa・sである。このような粘度とすることで、低水分食品素材を適度に分散でき、流動性があり、口どけ等の食感が良好となる。また、油脂の前記ゲル強度は、好ましくは800N/m2〜20000N/m2であり、より好ましくは800N/m2〜10000N/m2である。前記粘度は、1mm以上の粒子を取り除いたサンプルを回転式粘弾性測定装置(例えば、HAAKE社製RheoStress 6000)を用い、直径35mmパラレルプレート、25℃にて、ずり速度0.1s-1から300s-1までの間を低ずり速度側から測定することにより測定することができる。また、前記ゲル強度は、直径40mm、高さ15mmの容器に試料を充填し、常温(20〜25℃)で、レオメーター(YAMADEN社製 RE2−33005B)により、直径20mmの円柱形のプランジャーで圧縮速度10mm/sec、クリアランス5mmで測定することができる。
【0010】
本発明の食品において、油脂は、油系ゲル化剤を使用して増粘させることによって、前記粘度又はゲル強度を有するものとなった油脂であってもよい。油系ゲル化剤としては、例えば特開2018−42550号公報に記載の油脂の増粘又は固化剤、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。好ましくは、油系ゲル化剤はポリグリセリン脂肪酸エステルを含む。ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば市販のTAISETAD(太陽化学(株))、TAISET50(太陽化学(株))、リョートーポリグリエステルB−100D(三菱化学フーズ(株))等を用いることもできる。このような油脂を用いることにより、透明性に優れるとともに、口どけ等の食感が良好となる。
また、水素添加やエステル交換した油脂を全部又は一部用いることにより、前記粘度又はゲル強度を有するものとなった油脂であってもよい。」

(12d)「【0015】
(実施例1〜3)
菜種白絞油98gと、油系ゲル化剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル(太陽化学(株) TAISETAD))2gとを混合して70℃まで加熱した。その後、氷水浴で25℃まで冷却して、25℃及びせん断速度10(1/s)における粘度が1041mPa・sである油脂を得た。
得られた油脂と、表1に示す低水分食品素材とを、表1に示す割合で混合した。

油脂に分散させた低水分食品素材20gを、容器に入れたヨーグルト(水分含量:87.7質量%;25℃及びせん断速度10(1/s)における粘度:1500mPa・s)30gの上に乗せ、ラップをして冷蔵庫に保管した。5日後に喫食したところ、いずれも低水分食品素材の食感を維持していた。
【0016】
(実施例4)
ひまわり油100gと、油系ゲル化剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル(太陽化学(株) TAISETAD))2gとを混合して70℃まで加熱した。さらにグラニュー糖6gを加えた後、氷水浴で40℃まで冷却して、25℃及びせん断速度10(1/s)における粘度が1276mPa・sである油脂を得た。
得られた油脂70gとグラノーラ(水分含量:6.8質量%)30gとを混合してグラノーラを油脂に分散させた。
市販のシュークリームのカスタードクリーム(水分含量:61.8質量%;25℃及びせん断速度10(1/s)における粘度:15000mPa・s)18gに、油脂に分散させたグラノーラ2.5gを充填した。
グラノーラのサクサク感は、5日後であっても維持されていた。
【0017】
(実施例5)
ひまわり油100gと、油系ゲル化剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル(太陽化学(株) TAISETAD))2gとを混合して70℃まで加熱した。さらにグラニュー糖6gを加えた後、氷水浴で40℃まで冷却して、25℃及びせん断速度10(1/s)における粘度が1276mPa・sである油脂を得た。
得られた油脂64.3gと、カシス(水分含量:14.5質量%)8.6gと、クランベリー(水分含量:21.9質量%)8.6gと、ストロベリー(水分含量:6.6質量%)4.3gと、グラノーラ(水分含量:6.8質量%)21.5gとを混合して低水分食品素材を油脂に分散させた。
ボウルに生クリーム100gと砂糖15gとを入れ、しっかりと泡立てた(1)。
耐熱容器に水15gを入れ、粉ゼラチン5gをふり入れて混合し、1〜2分おいてから電子レンジ(500W)に20秒かけた(2)。
別のボウルにヨーグルト200gと、グラニュー糖15gと、レモン汁15gとを混合し、(1)を加えて混合し、さらに(2)を熱いうちに加えて全体に混合した(3)。
容器に(3)を入れ、冷蔵庫で2時間冷やして固めたて高水分食品素材(水分含量:69.8質量%;25℃及びせん断速度10(1/s)における粘度:3000mPa・s)を得た(4)。
容器に、油脂に分散させた低水分食品素材20gを入れ、さらに(4)70gを低水分食品素材の上に盛り、フルーツソース20gをかけた。
低水分食品素材の食感は、5日後であっても維持されていた。
【0018】
(実施例6〜8)
ひまわり油100gと、油系ゲル化剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル(太陽化学(株) TAISETAD))2gとを混合して70℃まで加熱した。さらにグラニュー糖6gを加えた後、氷水浴で40℃まで冷却して、25℃及びせん断速度10(1/s)における粘度が1276mPa・sである油脂を得た。
得られた油脂64.3gと、カシス(水分含量:14.5質量%)8.6gと、クランベリー(水分含量:21.9質量%)8.6gと、ストロベリー(水分含量:6.6質量%)4.3gと、グラノーラ(水分含量:6.8質量%)21.5gとを混合して低水分食品素材を油脂に分散させた。
容器に入れた、表2に示した配合でブルガリアヨーグルトLB81 プレーン((株)明治)とブルガリアのむヨーグルトLB81((株)明治)とを混合したヨーグルト20gの上に、油脂に分散させた低水分食品素材6gを乗せ、ラップをして冷蔵庫に保管した。5日後に喫食したところ、いずれも低水分食品素材の食感を維持していた。なお、実施例8では、油脂のべたつきが感じられた。

【0019】
(実施例9)
菜種白絞油99.5gと、油系ゲル化剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル(太陽化学(株) TAISETAD))0.5gとを混合して70℃まで加熱した。氷水浴で40℃まで冷却して、油脂の25℃でのゲル強度が838N/m2である油脂を得た。得られた油脂8gと小麦パフ(水分含量:6.8質量%)2gとを混合して小麦パフを油脂に分散させた。これを容器に入れたヨーグルト(水分含量:87.7質量%;25℃及びせん断速度10(1/s)における粘度:1500mPa・s)20gの上に乗せ、ラップをして冷蔵庫に保管した。5日後に喫食したところ、小麦パフの食感を維持していた。
【0020】
(実施例10)
菜種白絞油200gと油系ゲル化剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル(太陽化学(株) TAISETAD))4gと硬化油脂10gを混合して70℃まで加熱した。氷水浴で40℃まで冷却して、油脂の25℃でのゲル強度が50749N/m2である油脂を得た。得られた油脂8gと小麦パフ(水分含量:6.8質量%)2gとを混合して小麦パフを油脂に分散させた。これを容器に入れたヨーグルト(水分含量:87.7質量%;25℃及びせん断速度10(1/s)における粘度:1500mPa・s)20gの上に乗せ、ラップをして冷蔵庫に保管した。5日後に喫食したところ、適度な口どけを有し、小麦パフの食感を維持していた。
【0021】
(実施例11)
菜種白絞油98gと、油系ゲル化剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル(太陽化学(株) TAISETAD))2gとを混合して70℃まで加熱した。その後、氷水浴で25℃まで冷却して、25℃及びせん断速度10(1/s)における粘度が1041mPa・sである油脂を得た。得られた油脂10gと小麦パフ(水分含量:6.8質量%)0.5gとを混合して小麦パフを油脂に分散させた。コッペパン(水分含量:30質量%)50gの間に、油脂に分散させた小麦パフ5gを挟んだ。小麦パフの食感は、3日後であっても維持されていた。
【0022】
(実施例12)
菜種白絞油98gと、油系ゲル化剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル(太陽化学(株) TAISETAD))2gとを混合して70℃まで加熱した。その後、氷水浴で25℃まで冷却して、25℃及びせん断速度10(1/s)における粘度が1041mPa・sである油脂を得た。得られた油脂10gと小麦パフ(水分含量:6.8質量%)0.5gとを混合して小麦パフを油脂に分散させた。油脂に分散させた小麦パフ4gを、容器に入れた市販のポテトサラダ(水分含量:63質量%;25℃及びせん断速度10(1/s)における粘度:65000mPa・s)32gの上に乗せ、ラップをして冷蔵庫に保管した。3日後に喫食したところ、小麦パフの食感を維持していた。
【0023】
(実施例13)
菜種白絞油98gと、油系ゲル化剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル(太陽化学(株) TAISETAD))2gとを混合して70℃まで加熱した。その後、氷水浴で25℃まで冷却して、25℃及びせん断速度10(1/s)における粘度が1041mPa・sである油脂を得た。得られた油脂10gと小麦パフ(水分含量:6.8質量%)0.5gとを混合して小麦パフを油脂に分散させた。市販の大福のあんこ(水分含量:39.3質量%;25℃及びせん断速度10(1/s)における粘度:65000mPa・s)15gに、油脂に分散させた小麦パフ4gを充填した。小麦パフの食感は、5日後であっても維持されていた。
【0024】
(実施例14)
菜種白絞油98gと、油系ゲル化剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル(太陽化学(株) TAISETAD))2gとを混合して70℃まで加熱した。その後、氷水浴で25℃まで冷却して、25℃及びせん断速度10(1/s)における粘度が1041mPa・sである油脂を得た。得られた油脂20gと小麦パフ(水分含量:6.8質量%)1gとを混合して小麦パフを油脂に分散させた。油脂に分散させた小麦パフ20gを、容器に入れたパスタ(水分含量:65質量%)100gの上に乗せ、ラップをして冷蔵庫に保管した。1日後に喫食したところ、小麦パフの食感を維持していた。
【0025】
(実施例15)
菜種白絞油98gと、油系ゲル化剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル(太陽化学(株) TAISETAD))2gとを混合して70℃まで加熱した。その後、氷水浴で25℃まで冷却して、25℃及びせん断速度10(1/s)における粘度が1041mPa・sである油脂を得た。得られた油脂10gと小麦パフ(水分含量:6.8質量%)0.5gとを混合して小麦パフを油脂に分散させた。油脂に分散させた小麦パフ8gを、おにぎり(水分含量:60質量%)86gの中に充填し、ラップをして冷蔵庫に保管した。1日後に喫食したところ、小麦パフの食感を維持していた。
【0026】
(実施例16)
菜種白絞油98gと、油系ゲル化剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル(太陽化学(株) TAISETAD))2gとを混合して70℃まで加熱した。その後、氷水浴で25℃まで冷却して、25℃及びせん断速度10(1/s)における粘度が1041mPa・sである油脂を得た。得られた油脂30gと小麦パフ(水分含量:6.8質量%)1.5gとを混合して小麦パフを油脂に分散させた。油脂に分散させた小麦パフ30gを、市販のカップアイス(水分含量:63.9質量%)120gの上に乗せ、冷凍庫に保管した。5日後に喫食したところ、小麦パフの食感を維持していた。
【0027】
(実施例17)
菜種白絞油98gと、油系ゲル化剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル(太陽化学(株) TAISETAD))2gとを混合して70℃まで加熱した。その後、氷水浴で25℃まで冷却して、25℃及びせん断速度10(1/s)における粘度が1041mPa・sである油脂を得た。25℃の得られた油脂7.5gと小麦パフ(水分含量:6.8質量%)30gとを混合し、常温で1時間放置して表面に油脂の層が形成された小麦パフを得た。得られた表面に油脂の層が形成された小麦パフ1.5gを、カップに充填し、その上にさらにヨーグルト20gを充填し、ラップをして冷凍庫に保管した。1日後に喫食したところ、小麦パフの食感を維持していた。
【0028】
(実施例18)
菜種白絞油98gと、油系ゲル化剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル(太陽化学(株) TAISETAD))2gとを混合して70℃まで加熱した。その後、氷水浴で25℃まで冷却して、25℃及びせん断速度10(1/s)における粘度が1041mPa・sである油脂を得た。25℃の得られた油脂に小麦パフ(水分含量:6.8質量%)30gを浸漬して5分間放置した。ざるに小麦パフを上げ、常温で1時間放置して表面に油脂の層が形成された小麦パフを得た。得られた表面に油脂の層が形成された小麦パフの重量は94.28gであった。得られた表面に油脂の層が形成された小麦パフ1.5gを、カップに充填し、その上にさらにヨーグルト20gを充填し、ラップをして冷凍庫に保管した。1日後に喫食したところ、小麦パフの食感を維持していた。
【0029】
(実施例19〜23)
菜種白絞油98gと、油系ゲル化剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル(太陽化学(株) TAISETAD))2gとを混合して70℃まで加熱した。その後、氷水浴で25℃まで冷却して、25℃及びせん断速度10(1/s)における粘度が1041mPa・sである油脂を得た。25℃の得られた油脂に乾燥果実(パパイヤ)(水分含量:15質量%)とを表2に示した配合で混合し、常温で1時間放置して表面に油脂の層が形成されたドライパパイヤを得た。得られた表面に油脂の層が形成されたドライパパイヤ10gを、カップに充填し、その上にさらにヨーグルト20gを充填し、ラップをして冷凍庫に保管した。1日後に喫食したところ、ドライパパイヤの食感を維持していた。



(13−1)甲第13号証
本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったとされる甲第13号証には、以下の記載がある。
(13−1a)「【第6回】乳化剤の新機能?油脂を「固める」効果」(出力物の1/7頁2行)

(13−1b)「
より透明性の高い状態で油脂を増粘及び固化させたい場合には

TAISET50は油脂の固化時に白濁してしまい透明感が得られない点が課題ですが、太陽化学では新しく透明性を保ちつつ増粘及び固化を達成できるTAISET ADを開発しております。TAISETとTAISET ADを比較すると、以下のように同程度のゲル強度で透明感に大きな違いが出ます。
(写真省略)
菜種油にTAISETを溶解し、固化させた状態での比較(ゲル強度を同程度に揃えた場合)

また、ゲル化した油脂の融点とゲル化開始温度も以下のようになり、TAISETの融点とゲル化温度の差が40℃ほどなのに対して10℃程度と、扱いやすいことも特徴です。

融点※1 ゲル化開始温度※2 融点とゲル化開始温度の差
TAISET-AD 60.2℃ 48.9℃ 11.3℃

菜種油の増粘温度の測定
(測定は ※1 DSC示差走査熱量計による ※2 ARES-G2動的粘弾性測定装置による)」(出力物の4/7頁)

(14)甲第14号証
本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第14号証には、以下の記載がある。
(14a)「[0006] 従来食品加工に用いられる食用油脂は、麺のくっつき防止や炒め調理、炊飯釜からの炊飯米の離型性向上などに用いられている。一方、消費者の健康意識の観点から添加物の使用量削減や廃棄ロス低減のために消費期限延長などが求められている。すなわち従来の食用油脂の機能に静菌の機能を加えることでより効率的な静菌方法を提供することが可能になる。よって、本発明は、静菌効果を有する食用油脂組成物を提供することを目的とする。」

(14b)「[0058]8.静菌剤の分散条件の検討(3)
親油性静菌剤を配合した食用油脂組成物の乳化剤の配合量を検討するため、親油性静菌剤の分散性の確認を行った。乳化剤として、SYグリスターCV−1L(商標、HLB2.7、阪本薬品工業社製)及びTAISET AD(商標、HLB3.0、太陽化学社製)を使用した。SYグリスターCV−1L(商標)は0.1、1、1.5、2、5質量%、TAISET AD(商標)は1%を食用油脂としての食用なたね油(さらさらキャノーラ油(商標)、J−オイルミルズ社製)に溶解し、乳化剤を含有するサンプル油脂(サンプル10〜15)を調製した。また、食紅1質量%で着色した親油性静菌剤(AR−274(商標)、アサマ社製)を別途調製した。100mLプラカップに前記静菌剤1.8gとサンプル油脂90gを加え、7000rpmの早さで2分間ディスパーザーにかけた。その後、110mLバイアル瓶に80gを測り取り24℃に静置した。なお、比較対象として、サンプル8を用いた。3日後、親油性静菌剤の沈降度合いを目視観察し、サンプル8を基準にして、次の評価基準で評価した。結果を図4に示す。
(評価基準)◎:全く沈降なし、〇:沈降なし、△:サンプル8、×:沈降多い」

(14c)「請求の範囲
請求項1 食用油脂と、酢酸と、親油性静菌剤と、乳化剤と、を含有することを特徴とする食用油脂組成物。

請求項2 前記親油性静菌剤が、チアミンラウリル硫酸塩、ホップ抽出物、ユッカ抽出物、カラシ抽出物、トウガラシ抽出物、カンゾウ油性抽出物からなる群から選択された1種以上である、請求項1に記載の食用油脂組成物。

請求項3 前記乳化剤が、ジグリセリンエステル、有機酸モノグリセリンエステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルからなる群から選択された1種以上である、請求項1又は2に記載の食用油脂組成物。

請求項4 前記酢酸の含有量が、0.1〜10質量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の食用油脂組成物。

請求項5 前記親油性静菌剤の含有量が、0.002〜10質量%である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の食用油脂組成物。

請求項6 前記乳化剤の含有量が、0.1〜10質量%である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の食用油脂組成物。

請求項7 食用油脂の含有量が、70質量%以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の食用油脂組成物。

請求項8 前記乳化剤のHLBが1〜8である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の食用油脂組成物。

請求項9 請求項1〜8のいずれか1項に記載の食用油脂組成物を添加した食品。」

(15)甲第15号証
甲第15号証には、以下の記載がある。
(15−1a)「
三菱ケミカル株式会社
ライフソリューションセクター
事業情報
沿革
・・・
1994年10月 三菱化学フーズ(株)に社名変更
・・・
2017年04月 エーザイフード・ケミカル(株)吸収合併
三菱ケミカルフーズ(株)に社名変更
・・・」(三菱ケミカル株式会社ライフソリューションセクターの事業情報 沿革)

2 甲号証に記載された発明
(1)甲第1号証に記載された発明
ア 甲第1号証は、ポリグリセリン脂肪酸エステルの物理化学特性と食品への応用に関する論文であって(摘記(1a))、高エステル化度の高度精製ポリグリセリン脂肪酸エステルに特定の脂肪酸モノグリセリドと組み合わせた油脂改質剤「TAISET」を液体油に添加すると増粘,固化させることができること(摘記(1b))、液体油に少量の「TAISET」を添加することで容易に低トランス酸マーガリンができ、ドーナツ天ぷらなどのフライングオイルに添加すると液体油であっても染み出しを少なくすることができることが記載され(摘記(1b))、「Fig.5は「TAISET」を各種植物油に添加し加熱溶解後,20℃まで放冷して固化した硬さ(粘糊度)をレオメーターによって破断強度として湖定した結果である.油の種類や添加量によって差があるがすべての液体油を固化し流動性をなくすことができる.」とのFig.5の説明記載があった上で(摘記(1b))、Fig.5には、種々の植物油(ナタネ油、パームオレイン油、サフラワー油、亜麻仁油)に1〜7%「TAISET」を添加した場合のゲル強度が示されているので(摘記(1c))、甲第1号証に記載された発明として、
「ナタネ油、パームオレイン油、サフラワー油、亜麻仁油のいずれかの液体油に、高エステル化度の高度精製ポリグリセリン脂肪酸エステルに特定の脂肪酸モノグリセリドと組み合わせた油脂改質剤「TAISET」を1〜7%添加した油脂組成物」に係る発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。

イ また、Fig.5の説明記載とは別に、摘記(1b)には、「「TAISET」は油脂を使用している加工食品に使われている.高度不飽和脂肪酸を含む液体油を簡単にしかも栄養的価値を落とさずに固めることができ,食品の改良や健康をうたった食品用途に応用できる.」と記載されていること考慮すると、製造方法の発明として以下の発明も記載されているといえる。
「液体油に、高エステル化度の高度精製ポリグリセリン脂肪酸エステルに特定の脂肪酸モノグリセリドと組み合わせた油脂改質剤「TAISET」を添加した油脂組成物を用いた食品の製造方法」に係る発明(以下「甲1製造方法発明」という。)

ウ さらに、摘記(1b)には、ドーナツ天ぷらなどのフライングオイルに「TAISET」を添加すると液体油であっても染み出しを少なくすることができることが記載されているのであるから以下の発明も記載されているといえる。
「液体油に、高エステル化度の高度精製ポリグリセリン脂肪酸エステルに特定の脂肪酸モノグリセリドと組み合わせた油脂改質剤「TAISET」を添加した油脂組成物を用いた食品の液体油染み出し減少方法」に係る発明(以下「甲1方法発明」という。)

(2)甲第12号証に記載された発明
ア 甲第12号証は、高水分食品素材から低水分食品素材への水分の移行が効果的に抑制されて、低水分食品素材の食感が維持された、高水分食品素材及び低水分食品素材を含む食品に関するもので(摘記(12b))、実施例1〜3に「菜種白絞油98gと、油系ゲル化剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル(太陽化学(株) TAISETAD))2gとを混合して70℃まで加熱した。その後、氷水浴で25℃まで冷却して、25℃及びせん断速度10(1/s)における粘度が1041mPa・sである油脂を得た。」ことが記載されているから(摘記(12d)、実施例1〜3に係る発明として、
「菜種白絞油98gと、油系ゲル化剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル(太陽化学(株) TAISETAD))2gとを混合して70℃まで加熱し、氷水浴で25℃まで冷却して、25℃及びせん断速度10(1/s)における粘度が1041mPa・sである油脂」に係る発明(以下「甲12発明」という。)が記載されているといえる。

イ また、甲第12号証には、実施例1〜3において、甲12発明の油脂を分散させた低水分食品素材(乾燥果実や小麦パフ)と高水分食品素材(ヨーグルト)とから喫食するためのものが製造されたことが記載されているから以下の発明も記載されているといえる。
「菜種白絞油98gと、油系ゲル化剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル(太陽化学(株) TAISETAD))2gとを混合して70℃まで加熱し、氷水浴で25℃まで冷却して、25℃及びせん断速度10(1/s)における粘度が1041mPa・sである油脂を分散させた低水分食品素材(乾燥果実や小麦パフ)と高水分食品素材(ヨーグルト)とから喫食するためのものを製造する方法」(以下「甲12製造方法発明」という。)

ウ さらに、実施例1〜3において、実施例1〜3によって製造した喫食物が、「ラップをして冷蔵庫に保管した。5日後に喫食したところ、いずれも低水分食品素材の食感を維持していた。」と記載されているから、以下の発明も記載されているといえる。
「菜種白絞油98gと、油系ゲル化剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル(太陽化学(株) TAISETAD))2gとを混合して70℃まで加熱し、氷水浴で25℃まで冷却して、25℃及びせん断速度10(1/s)における粘度が1041mPa・sである油脂を分散させた低水分食品素材(乾燥果実や小麦パフ)と高水分食品素材(ヨーグルト)とから製造した喫食するためのものにおける、低水分食品素材の食感を維持する方法」(以下「甲12方法発明」という。)

(3)甲第11号証に記載された発明
ア 甲第11号証には、摘記(11a)に、「【請求項1】 25℃における固体脂含量が1〜5%であり、かつ、構成脂肪酸中、炭素数20〜22の飽和脂肪酸を0.3〜4重量%含有することを特徴とするバッター液用油脂組成物。
【請求項2】 ハイエルシン酸菜種極度硬化油を含有することを特徴とする請求項1に記載のバッター液用油脂組成物。・・・
【請求項4】 乳化剤を配合してなる請求項1ないし3のいずれかに記載のバッター液用油脂組成物。」との記載があることから、請求項2を引用する請求項4に係る発明として、
「ハイエルシン酸菜種極度硬化油を含有し、乳化剤を配合してなる、25℃における固体脂含量が1〜5%であり、かつ、構成脂肪酸中、炭素数20〜22の飽和脂肪酸を0.3〜4重量%含有するバッター液用油脂組成物」に係る発明(以下「甲11発明」という。)が記載されているといえる。

イ また、甲第11号証には、摘記(11a)には、請求項5にバッター液についても記載され、摘記(11b)には、天ぷらやフライ類をバッター液を用いて調理することが記載されているから、以下の発明も記載されているといえる。
「ハイエルシン酸菜種極度硬化油を含有し、乳化剤を配合してなる、25℃における固体脂含量が1〜5%であり、かつ、構成脂肪酸中、炭素数20〜22の飽和脂肪酸を0.3〜4重量%含有するバッター液用油脂組成物を含むバッター液を使用した食品の製造方法」(以下「甲11製造方法発明」という。)

ウ さらに、摘記(11e)に記載されるように、「【0026】
【発明の効果】実施例を用いて説明したとおり、本発明で得られたバッター液用油脂組成物をバッター使用食品に用いることにより、食感を改良することができ、また、チルド保存後もできたて時の食感を提供することができることが判る。」との記載があるので、以下の発明も記載されているといえる。
「ハイエルシン酸菜種極度硬化油を含有し、乳化剤を配合してなる、25℃における固体脂含量が1〜5%であり、かつ、構成脂肪酸中、炭素数20〜22の飽和脂肪酸を0.3〜4重量%含有するバッター液用油脂組成物を含むバッター液を使用した食品の食感の改良及びチルド保存後もできたて時の食感を提供する方法」(以下「甲11方法発明」という。)

3 対比・判断
異議申立理由1,異議申立理由2−1について(甲第1号証に記載された発明との対比・判断)
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「ナタネ油、パームオレイン油、サフラワー油、亜麻仁油いずれかの液体油」は、本件特許発明1の「飽和脂肪酸の含有量が30質量%以下の液状油脂」と、「液状油脂」という限りにおいて共通する。
そして、甲1発明の「ナタネ油、パームオレイン油、サフラワー油、亜麻仁油いずれかの液体油」の油脂組成物中の含有量は、液体油に油脂改質剤「TAISET」を1〜7%添加したのであるから、93〜99%であると考えられ、本件特許発明1の「90〜99.5質量%」に該当するといえる。
また、甲1発明の「高エステル化度の高度精製ポリグリセリン脂肪酸エステルに特定の脂肪酸モノグリセリドと組み合わせた油脂改質剤「TAISET」を1〜7%添加した」ことは、本件特許発明1の「飽和脂肪酸の含有量が80質量%以上、上昇融点が50℃以上、かつ、HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル:0.5〜3質量%」「を含有」することと、「ポリグリセリン脂肪酸エステル」を含有するものという限りにおいて共通する。
そして、甲1発明の「油脂組成物」は、レシチンを配合していないので、本件特許発明1の「油脂組成物(レシチンを配合するものを除く)。」に相当する。
したがって、本件特許発明1は、甲1発明と、
「液状油脂90〜99.5質量%と、ポリグリセリン脂肪酸エステルとを含有する油脂組成物(レシチンを配合するものを除く)。」の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1−1:液状油脂に関して、本件特許発明1においては、「飽和脂肪酸の含有量が30質量%以下」であることが特定されているのに対して、甲1発明においては、「ナタネ油、パームオレイン油、サフラワー油、亜麻仁油のいずれか」と特定され、飽和脂肪酸の含有量が明らかでない点。

相違点2−1:ポリグリセリン脂肪酸エステルに関して、本件特許発明1においては、「飽和脂肪酸の含有量が80質量%以上、上昇融点が50℃以上、かつ、HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル:0.5〜3質量%」を含有することが特定されているのに対して、甲1発明においては、「高エステル化度の高度精製ポリグリセリン脂肪酸エステルに特定の脂肪酸モノグリセリドと組み合わせた油脂改質剤「TAISET」を1〜7%添加した」と特定され、ポリグリセリン脂肪酸エステルの、飽和脂肪酸の含有量、上昇融点、HLB、油脂組成物中の含有割合が不明である点。

相違点3−1:本件特許発明1は、「油脂組成物」の「5℃のSFCが4%以下である」と特定されているのに対して、甲1発明は、「油脂組成物」の「5℃のSFC」が特定されていない点。

イ 判断
事案に鑑み相違点2−1から検討する。
(ア)相違点2−1について
a 甲第1号証においては、甲1発明の認定の根拠となった摘記(1b)以外の記載を参照しても、甲1発明の油脂改質剤「TAISET」を構成する「高度精製ポリグリセリン脂肪酸エステル」の飽和脂肪酸の含有量、上昇融点、HLB、油脂組成物中の含有量の記載がなく、甲1発明において、「飽和脂肪酸の含有量が80質量%以上、上昇融点が50℃以上、かつ、HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル:0.5〜3質量%」を含有することが記載されているに等しいとする理由はなく、そのような本願出願時の技術常識もない。
また、甲第1号証の引用文献の13として甲第2号証が引用され(摘記(1d))、「TAISET」は液体油に添加すると増粘,固化させることができ,また,半固体脂に添加すると硬化を促進する[13,14].」との部分で引用されているものの、甲第2号証を参照しても、「TAISET」との商品名や「TAISET」に関し直接関連する記載内容も明らかでないのであるから甲1発明の「TAISET」を明らかにするものとはいえず、甲1発明において、相違点2−1が記載されているに等しい事項とはいえず、相違点2−1は、実質的な相違点である。

b また、甲第3号証の記載を考慮しても、【表1】に「TAISET 50」という商品名も異なるロールイン用油脂組成物の成分として、乳化剤製剤の成分割合の記載があるだけであるし、甲第4号証の記載を考慮しても、【0022】にあるようにトナーの離型剤としてのポリグリセリンエステルの融点や表7の多数のポリグリセリンエステルの内のヘキサグリセリンオクタステアレートの融点の記載があるだけであるし、甲第5号証の記載を考慮しても、【0110】にあるように塩基性アミノ酸の精製魚油の脱臭及び戻り臭抑制効果を確認する試験例中での「ヘキサグリセリンオクタステアリン酸エステル(太陽化学社製、サンファットPS−68 HLB=3.5)」との「TAISET」とは別の商品名のHLBの記載があるだけであるし、甲第6号証の記載を考慮しても、【0060】にあるように「モノグリセリンベヘン酸エステル(理研ビタミン株式会社製ポエムB−100:HLB:3.4、融点:70?78℃)」との「TAISET」とは別の商品名の「TAISET 50」の成分とされるモノグリセリン酸エステルのHLBや融点の記載があるだけである。
したがって、そもそも、「商品名」が同じであるからといって、ポリグリセリンエステルの成分組成が同じであるとはいえない上に、甲1発明の「TAISET」自体の成分組成に関する記載や示唆がないのであるから、上記甲号証を参照しても、甲1発明において、ポリグリセリン脂肪酸エステルに関して、「飽和脂肪酸の含有量が80質量%以上、上昇融点が50℃以上、かつ、HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル:0.5〜3質量%」を含有することが記載されているに等しいとはいえず、相違点2−1は、実質的な相違点である。

c そして、甲第1号証は、Fig.5は、「種々の植物油のゲル強度に関する「TAISET」添加の効果」との表題で、「TAISET」の含有割合が1%、3%、5%、7%の場合の4種の植物油のゲル強度(g/cm2)が示され、添加量が増えるにしたがってゲル強度が増加していることを示し、「Fig.5は[TAISET]を各種植物油に添加し加熱溶解後,20℃まで放冷して固化した硬さ(粘糊度)をレオメーターによって破断強度として測定した結果である.油の種類や添加量によって差があるがすべての液体油を固化し流動性をなくすことができる.液体油のナタネ油と半固体脂のラードに添加して冷却時の粘度変化をブルックフィールド粘度計で測定すると添加量が増えると粘度は上昇し,食感改良や安定性向上につながる.」と考察しているものであるから、甲1発明の「TAISET」の成分のうち「高度精製ポリグリセリン脂肪酸エステル」を、敢えて「飽和脂肪酸の含有量が80質量%以上、上昇融点が50℃以上、かつ、HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル:0.5〜3質量%」という特定範囲のものとする動機付けは存在しない。

d したがって、甲1発明において、相違点2−1は、当業者が容易になし得る技術的事項であるとはいえない。

(イ)相違点3−1について
相違点3−1に関する「油脂組成物」の「5℃のSFC」について、甲第1号証には、記載がなく、「「TAISET」は液体油に添加して加熱すると透明に溶解し,そのまま放冷すると固化する.しかし,撹拌しながら冷却すると粘稠なゲル状となる.Fig.5は「TAISET」を各種植物油に添加し加熱溶解後,20℃まで放冷して固化した硬さ(粘稠度)をレオメーターによって破断強度として測定した結果である.油の種類や添加量によって差があるがすべての液体油を固化し流動性をなくすことができる.液体油のナタネ油と半固体脂のラードに添加して冷却時の粘度変化をブルックフィールド粘度計で測定すると添加量が増えると粘度は上昇し,食感改良や安定性向上につながる.「TA1SET」を添加したナタネ油およびパー厶油の固体脂指数(SFC)を測定した結果,油脂固化剤添加による油脂中のSFCはほとんど影響を受けない.」(下線は、当審にて追加。以下同様。)との記載があるだけであるから、油脂固化剤添加による20℃又は室温での油脂のSFCに関する記載であると理解でき、「油脂組成物」の「5℃のSFC」が記載されているに等しいとはいえない。
そして、その他の上記甲号証を参照しても、「油脂組成物」の「5℃のSFC」に関する記載も示唆もないし、甲1発明において、「油脂組成物」の「5℃のSFCが4%以下である」と特定することに動機があるともいえない。
したがって、相違点3−1は、実質的相違点であるし、当業者が容易になし得る技術的事項でもない。

(ウ)本件特許発明1の効果について
本件特許発明1は、前記第2の請求項1に特定したように、
「飽和脂肪酸の含有量が30質量%以下の液状油脂:90〜99.5質量%と、
飽和脂肪酸の含有量が80質量%以上、上昇融点が50℃以上、かつ、HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル:0.5〜3質量%と、を含有し、
5℃のSFCが4%以下である、油脂組成物(レシチンを配合するものを除く)。」
との構成を採用することで、本件特許明細書【0015】に記載される「食品分野、化粧品分野、および工業用分野において使用し得る、低温環境下においても流動性を有するハンドリングの良好な油脂組成物を提供することができる」という予測できない顕著な効果を奏している。

(オ)特許異議申立人の主張について
a 特許異議申立人は、相違点2−1に関して、甲第1号証の引用文献の欄に、甲第2号証が記載されていることから、甲第2号証において、実施例1に用いられた油脂固化剤が「TAISET」の組成を表すものであり、甲第3号証の「TAISET 50」の乳化剤製剤の成分と割合が甲第2号証の実施例のものと同じであることから、「TAISET」と「TAISET 50」が同義であるとの前提のもと、さらに甲第4〜6号証を併せて参照することで、甲第1号証に記載された「TAISET」の成分の「融点」や「HLB」の数値範囲が本件特許発明1に該当するか、または何らかの相違があっても微差であって容易想到である旨主張している。
しかしながら、上述のとおり、甲第1号証の引用文献として、甲第2号証が「TAISET」に何らかの関連があることはいえても、何ら「TAISET」について言及のない甲第2号証の実施例1に記載されたものが「TAISET」であるとの根拠はないし、商品名が同一であっても同じ組成のものを示すとは限らないことが技術常識である状況で、商品名が同じでないものを同義であるとの前提のもと、さらに他の甲号証を参照しなければ導き出せない成分の物性を合わせて、本件特許発明1のポリグリセリン脂肪酸エステルが記載されているに等しいまたは何らかの相違があっても微差であって容易想到であるとする上記特許異議申立人の主張には根拠があるとはいえない。

b また、特許異議申立人は、相違点3−1に関して、甲第1号証記載の発明には、「SFCが4%以下である」との特定はないが、その他の油脂組成物の特定事項を満たせば、該特定事項は当然満たす旨主張し、甲第1号証では、「TAISET」を添加したナタネ油の固体脂指数が添加によって変わらなかったことを理由として挙げている。
しかしながら、上述のとおり、甲第1号証及びその他の甲号証を考慮しても、「油脂組成物」の「5℃のSFC」が記載されているに等しいとする理由はないし、その他の油脂組成物の特定事項を満たせば、上記特定事項は当然満たすとする理由は存在しないし、「5℃のSFCが4%以下である」との特定は、本件特許発明1の油脂組成物における独立した特定事項である以上、その他の油脂組成物の特定事項を満たせば、上記特定事項は当然満たすとする理由は存在しない。また、特許異議申立人の指摘する甲第1号証の記載は、異なる温度における特定の添加剤と油の組み合わせにおける固体脂指数の変化について述べた結果にすぎず、上記特許異議申立人の主張を裏付けるものとはいえない。
よって、上記特許異議申立人の主張も採用できない。

c 特許異議申立人は、本件特許発明1の効果について、甲第1号証及び甲第7号証の記載を挙げて、予測し得た効果で、格別顕著な効果といえない旨主張しているが、甲1発明は、甲第1号証及び甲第7号証の記載及びその他の甲号証を考慮しても、本件特許発明1の構成とならない以上、本件特許発明1の特定事項を想定した場合に奏する効果として、別の構成において、関連する効果の言及があるからといって、本件特許発明1の構成の効果が予測できない顕著な効果でないことにはならないといえる。
したがって、上記特許異議申立人の主張も採用できない。

ウ 甲1発明との対比・判断のまとめ
したがって、相違点1−1について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明とはいえず、また甲第1号証記載の発明及び甲第1号証〜甲第7号証記載の技術的事項から当業者が容易に発明することができるものともいえない。

(2)本件特許発明2〜5について
ア 本件特許発明2は、本件特許発明1において、さらに「極度硬化油:1〜3質量%を、さらに含有する」という技術的限定を加えた発明であって、甲1発明との対比において、上記(1)で論じたのと同様の相違点(相違点1’−1〜3’−1)を有し、さらに以下の相違点を有する。
相違点4’−1:本件特許発明2においては、油脂組成物に、極度硬化油:1〜3質量%を、さらに含有するとの特定されているのに対して、甲1発明においては、極度硬化油を用いていない点。

特許異議申立人は、甲第8〜11号証を挙げて、油脂組成物に極度硬化油を1〜3%程度の量で用いることは一般的で、甲1に記載された発明に対して極度硬化油を同程度用いることが示唆されている旨主張しているが、甲第8〜10号証には、サクサク感等を出すために硬化油を用いることが記載され、甲第11号証には、ハイエルシン酸菜種極度硬化油をフライ類のサクサク感を出すために用いられることが記載されるものの、甲1発明は、油脂改質剤「TAISET」を用いることを前提としており、極度硬化油を特定量用いることの示唆はないし、上述のとおり、相違点2’−1〜3’−1が当業者が容易になし得る技術的事項でない以上、本件特許発明2も容易に発明することができたといえない。

イ 本件特許発明3
また、本件特許発明3は、本件特許発明1または2において、「食品用である」とさらに技術的限定を加えた発明であって、甲1発明との対比において、上記(1)(2)アで論じたのと同様の相違点(相違点1’’−1〜3’’−1または相違点1’’−1〜4’’−1)を有し、さらに以下の相違点を有する。

相違点5’’−1:本件特許発明3においては、油脂組成物が、食品用であると特定されているのに対して、甲1発明においては、食品用とは特定していない点。

ウ 本件特許発明4
また、本件特許発明4は、本件特許発明3において、「フライ用である」とさらに技術的限定を加えた発明であって、甲1発明との対比において、上記(1)(2)ア及びイで論じたのと同様の相違点(相違点1’’−1〜3’’−1または相違点1’’−1〜4’’−1)を有し、さらに以下の相違点を有する。

相違点6’’−1:本件特許発明4においては、油脂組成物が、フライ用であると特定されているのに対して、甲1発明においては、食品用とは特定していない点。

エ 本件特許発明5
また、本件特許発明5は、本件特許発明3または4記載の油脂組成物が用いられた食品に係る発明であって、甲1発明との対比において、上記(1)(2)ア〜ウで論じたのと同様の相違点を有し、さらに以下の相違点を有する。

相違点7’’−1:本件特許発明5おいては、油脂組成物が用いられた、食品と特定されているのに対して、甲1発明においては、油脂組成物である点。

オ 甲1発明との対比・判断のまとめ
したがって、本件特許発明2〜5と甲1発明との対比において、上記(1)で検討したのと同様に、相違点1’−1,相違点1’’−1,相違点4’’−1〜相違点7’’−1について検討するまでもなく、本件特許発明3〜5は、甲第1号証に記載された発明とはいえず、また本件特許発明2〜5は、甲第1号証記載の発明及び甲第2号証〜甲第11号証記載の技術的事項から当業者が容易に発明することができるものともいえない。

(3)本件特許発明6について
ア 対比
本件特許発明6と甲1製造方法発明とを対比すると、甲1製造方法発明の「液体油」は、本件特許発明6の「飽和脂肪酸の含有量が30質量%以下の液状油脂」と、「液状油脂」という限りにおいて共通する。
また、甲1製造方法発明の「高エステル化度の高度精製ポリグリセリン脂肪酸エステルに特定の脂肪酸モノグリセリドと組み合わせた油脂改質剤「TAISET」を添加した」ことは、本件特許発明6の「飽和脂肪酸の含有量が80質量%以上、上昇融点が50℃以上、かつ、HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル:0.5〜3質量%」「を含有」することと、「ポリグリセリン脂肪酸エステル」を含有するものという限りにおいて共通する。
そして、甲1製造方法発明の「油脂組成物」は、レシチンを配合していないので、本件特許発明6の「油脂組成物(レシチンを配合するものを除く)。」に相当する。
また、甲1製造方法発明の「油脂組成物を用いた食品の製造方法」は、本件特許明細書【0034】において、調理方法は特に限定されていないのであるから、本件特許発明6の「油脂組成物」「を用いて、調理する工程を含む、食品の製造方法」に相当するといえる。
したがって、本件特許発明6は、甲1製造方法発明と、
「液状油脂と、ポリグリセリン脂肪酸エステルとを含有する油脂組成物(レシチンを配合するものを除く)を用いて、調理する工程を含む、食品の製造方法。」の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1−1−6:液状油脂に関して、本件特許発明6においては、「飽和脂肪酸の含有量が30質量%以下の液状油脂:90〜99.5質量%」と特定されているのに対して、甲1製造方法発明においては、液状油脂の油脂組成物中の含有量、該液状油脂の飽和脂肪酸の含有量が明らかでない点。

相違点2−1−6:ポリグリセリン脂肪酸エステルに関して、本件特許発明6においては、「飽和脂肪酸の含有量が80質量%以上、上昇融点が50℃以上、かつ、HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル:0.5〜3質量%」を含有することが特定されているのに対して、甲1製造方法発明においては、「高エステル化度の高度精製ポリグリセリン脂肪酸エステルに特定の脂肪酸モノグリセリドと組み合わせた油脂改質剤「TAISET」を添加した」と特定され、ポリグリセリン脂肪酸エステルの、飽和脂肪酸の含有量、上昇融点、HLB、油脂組成物中の含有割合が不明である点。

相違点3−1−6:本件特許発明6は、「油脂組成物」の「5℃のSFCが4%以下である」と特定されているのに対して、甲1製造方法発明は、「油脂組成物」の「5℃のSFC」が特定されていない点。

イ 判断
事案に鑑み相違点2−1−6から検討する。
(ア)相違点2−1−6について
a 甲第1号証においては、甲1製造方法発明の認定の根拠となった摘記(1b)以外の記載を参照しても、甲1製造方法発明の油脂改質剤「TAISET」を構成する「高度精製ポリグリセリン脂肪酸エステル」の飽和脂肪酸の含有量、上昇融点、HLB、油脂組成物中の含有量の記載がなく、甲1製造方法発明において、「飽和脂肪酸の含有量が80質量%以上、上昇融点が50℃以上、かつ、HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル:0.5〜3質量%」を含有することが記載されているに等しいとする理由はなく、そのような本願出願時の技術常識もない。
また、甲第1号証の引用文献の13として甲第2号証が引用され(摘記(1d))、「TAISET」は液体油に添加すると増粘・固化させることができ,また,半固体脂に添加すると硬化を促進する[13,14].」との部分で引用されているものの、甲第2号証を参照しても、「TAISET」との商品名や「TAISET」に関し直接関連する記載内容も明らかでないのであるから甲1発明の「TAISET」を明らかにするものとはいえず、甲1製造方法発明において、相違点2−1−6が記載されているに等しい事項とはいえず、相違点2−1−6は、実質的な相違点である。

b また、甲第3号証の記載を考慮しても、【表1】に「TAISET 50」という商品名も異なるロールイン用油脂組成物の成分として、乳化剤製剤の成分割合の記載があるだけであるし、甲第4号証の記載を考慮しても、【0022】にあるようにトナーの離型剤としてのポリグリセリンエステルの融点や表7の多数のポリグリセリンエステルの内のヘキサグリセリンオクタステアレートの融点の記載があるだけであるし、甲第5号証の記載を考慮しても、【0110】にあるように塩基性アミノ酸の精製魚油の脱臭及び戻り臭抑制効果を確認する試験例中での「ヘキサグリセリンオクタステアリン酸エステル(太陽化学社製、サンファットPS−68 HLB=3.5)」との「TAISET」とは別の商品名のHLBの記載があるだけであるし、甲第6号証の記載を考慮しても、【0060】にあるように「モノグリセリンベヘン酸エステル(理研ビタミン株式会社製ポエムB−100:HLB:3.4、融点:70〜78℃)」との「TAISET」とは別の商品名の「TAISET 50」の成分とされるモノグリセリン酸エステルのHLBや融点の記載があるだけである。
したがって、そもそも、「商品名」が同じであるからといって、ポリグリセリンエステルの成分組成が同じであるとはいえない上に、甲1製造方法発明の「TAISET」自体の成分組成に関する記載や示唆がないのであるから、上記甲号証を参照しても、甲1製造方法発明において、ポリグリセリン脂肪酸エステルに関して、「飽和脂肪酸の含有量が80質量%以上、上昇融点が50℃以上、かつ、HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル:0.5〜3質量%」を含有することが記載されているに等しいとはいえず、相違点2−1−6は、実質的な相違点である。

c そして、甲第1号証は、Fig.5は、「種々の植物油のゲル強度に関する「TAISET」添加の効果」との表題で、「TAISET」の含有割合が1%、3%、5%、7%の場合の4種の植物油のゲル強度(g/cm2)が示され、添加量が増えるにしたがってゲル強度が増加していることを示し、「Fig.5は[TAISET]を各種植物油に添加し加熱溶解後,20℃まで放冷して固化した硬さ(粘稠度)をレオメーターによって破断強度として測定した結果である.油の種類や添加量によって差があるがすべての液体油を固化し流動性をなくすことができる.液体油のナタネ油と半固体脂のラードに添加して冷却時の粘度変化をブルックフィールド粘度計で測定すると添加量が増えると粘度は上昇し,食感改良や安定性向上につながる.」と考察しているものであるから、他の甲号証(甲第2号証〜甲第7号証)を考慮しても、甲1製造方法発明の「TAISET」の成分のうち「高度精製ポリグリセリン脂肪酸エステル」を、敢えて「飽和脂肪酸の含有量が80質量%以上、上昇融点が50℃以上、かつ、HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル:0.5〜3質量%」という特定範囲のものとする動機付けは存在しない。

d したがって、甲1製造方法発明において、相違点2−1−6は、当業者が容易になし得る技術的事項であるとはいえない。

(イ)相違点3−1−6について
次に、相違点3−1−6について検討する。
相違点3−1−6に関する「油脂組成物」の「5℃のSFC」について、甲第1号証には、記載がなく、「「TA1SET」は液体油に添加して加熱すると透明に溶解し,そのまま放冷すると固化する.しかし,撹拌しながら冷却すると粘稠なゲル状となる.Fig.5は「TAISET」を各種植物油に添加し加熱溶解後,20℃まで放冷して固化した硬さ(粘稠度)をレオメーターによって破断強度として測定した結果である.油の種類や添加量によって差があるがすべての液体油を固化し流動性をなくすことができる.液体油のナタネ油と半固体脂のラードに添加して冷却時の粘度変化をブルックフィールド粘度計で測定すると添加量が増えると粘度は上昇し,食感改良や安定性向上につながる.「TA1SET」を添加したナタネ油およびパー厶油の固体脂指数(SFC)を測定した結果,油脂固化剤添加による油脂中のSFCはほとんど影響を受けない.」(摘記(1b))との記載があるだけであるから、「油脂組成物」の「5℃のSFC」が記載されているに等しいとはいえない。
そして、その他の上記甲号証を参照しても、「油脂組成物」の「5℃のSFC」に関する記載も示唆もないし、甲1製造方法発明において、「油脂組成物」の「5℃のSFCが4%以下である」と特定することに動機があるともいえない。
したがって、相違点3−1−6は、実質的相違点であるし、当業者が容易になし得る技術的事項でもない。

(ウ)本件特許発明6の効果について
本件特許発明6は、前記第2の請求項6に特定したように、
「飽和脂肪酸の含有量が30質量%以下の液状油脂:90〜99.5質量%と、
飽和脂肪酸の含有量が80質量%以上、上昇融点が50℃以上、かつ、HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル:0.5〜3質量%と、を含有し、
5℃のSFCが4%以下である、油脂組成物(レシチンを配合するものを除く)を用いて、調理する工程を含む、食品の製造方法。」
との構成を採用することで、本件特許明細書【0015】等に記載される「食品分野」「において使用し得る、低温環境下においても流動性を有するハンドリングの良好な油脂組成物」を用いた食品の製造方法を提供することができるという予測できない顕著な効果を奏している。

ウ 甲1製造方法発明との対比・判断のまとめ
したがって、相違点1−1−6について検討するまでもなく、本件特許発明6は、甲第1号証に記載された発明とはいえず、また甲第1号証記載の発明及び甲第1号証〜甲第7号証記載の技術的事項から当業者が容易に発明することができるものともいえない。

(4)本件特許発明7について
本件特許発明7と甲1方法発明とを対比すると、甲1方法発明の「液体油」は、本件特許発明7の「飽和脂肪酸の含有量が30質量%以下の液状油脂」と、「液状油脂」という限りにおいて共通する。
また、甲1方法発明の「高エステル化度の高度精製ポリグリセリン脂肪酸エステルに特定の脂肪酸モノグリセリドと組み合わせた油脂改質剤「TAISET」を添加した」ことは、本件特許発明7の「飽和脂肪酸の含有量が80質量%以上、上昇融点が50℃以上、かつ、HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル:0.5〜3質量%」「を含有」することと、「ポリグリセリン脂肪酸エステル」を含有するものという限りにおいて共通する。
そして、甲1方法発明の「油脂組成物」は、レシチンを配合していないので、本件特許発明7の「油脂組成物(レシチンを配合するものを除く)。」に相当する。
さらに、甲1方法発明の「油脂組成物を用いた食品の液体油染み出し減少方法」は、本件特許明細書【0034】において、調理方法は特に限定されていないし、液体油染み出し減少させることは抑制できているということであるから、本件特許発明7の「油脂組成物」「を用いて、調理することにより、食品の油染みを抑制する方法」に相当するといえる。
したがって、本件特許発明7は、甲1方法発明と、
「液状油脂と、ポリグリセリン脂肪酸エステルとを含有する油脂組成物(レシチンを配合するものを除く)を用いて、調理することにより、食品の油染みを抑制する方法。」の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1−1−7:液状油脂に関して、本件特許発明7においては、「飽和脂肪酸の含有量が30質量%以下の液状油脂:90〜99.5質量%」と特定されているのに対して、甲1方法発明においては、液状油脂の油脂組成物中の含有量、該液状油脂の飽和脂肪酸の含有量が明らかでない点。

相違点2−1−7:ポリグリセリン脂肪酸エステルに関して、本件特許発明7においては、「飽和脂肪酸の含有量が80質量%以上、上昇融点が50℃以上、かつ、HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル:0.5〜3質量%」を含有することが特定されているのに対して、甲1方法発明においては、「高エステル化度の高度精製ポリグリセリン脂肪酸エステルに特定の脂肪酸モノグリセリドと組み合わせた油脂改質剤「TAISET」を添加した」と特定され、ポリグリセリン脂肪酸エステルの、飽和脂肪酸の含有量、上昇融点、HLB、油脂組成物中の含有割合が不明である点。

相違点3−1−7:本件特許発明7は、「油脂組成物」の「5℃のSFCが4%以下である」と特定されているのに対して、甲1方法発明は、「油脂組成物」の「5℃のSFC」が特定されていない点。

イ 判断
事案に鑑み相違点2−1−7から検討する。
(ア)相違点2−1−7について
a 甲第1号証においては、甲1方法発明の認定の根拠となった摘記(1b)以外の記載を参照しても、甲1方法発明の油脂改質剤「TAISET」を構成する「高度精製ポリグリセリン脂肪酸エステル」の飽和脂肪酸の含有量、上昇融点、HLB、油脂組成物中の含有量の記載がなく、甲1方法発明において、「飽和脂肪酸の含有量が80質量%以上、上昇融点が50℃以上、かつ、HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル:0.5〜3質量%」を含有することが記載されているに等しいとする理由はなく、そのような本願出願時の技術常識もない。
また、甲第1号証の引用文献の13として甲第2号証が引用され(摘記(1d))、「TAISET」は液体油に添加すると増粘・固化させることができ,また,半固体脂に添加すると硬化を促進する[13,14].」との部分で引用されているものの、甲第2号証を参照しても、「TAISET」との商品名や「TAISET」に関し直接関連する記載内容も明らかでないのであるから甲1発明の「TAISET」を明らかにするものとはいえず、甲1方法発明において、相違点2−1−7が記載されているに等しい事項とはいえず、相違点2−1−7は、実質的な相違点である。

b また、甲第3号証の記載を考慮しても、【表1】に「TAISET 50」という商品名も異なるロールイン用油脂組成物の成分として、乳化剤製剤の成分割合の記載があるだけであるし、甲第4号証の記載を考慮しても、【0022】にあるようにトナーの離型剤としてのポリグリセリンエステルの融点や表7の多数のポリグリセリンエステルの内のヘキサグリセリンオクタステアレートの融点の記載があるだけであるし、甲第5号証の記載を考慮しても、【0110】にあるように塩基性アミノ酸の精製魚油の脱臭及び戻り臭抑制効果を確認する試験例中での「ヘキサグリセリンオクタステアリン酸エステル(太陽化学社製、サンファットPS−68 HLB=3.5)」との「TAISET」とは別の商品名のHLBの記載があるだけであるし、甲第6号証の記載を考慮しても、【0060】にあるように「モノグリセリンベヘン酸エステル(理研ビタミン株式会社製ポエムB−100:HLB:3.4、融点:70〜78℃)」との「TAISET」とは別の商品名の「TAISET 50」の成分とされるモノグリセリン酸エステルのHLBや融点の記載があるだけである。
したがって、そもそも、「商品名」が同じであるからといって、ポリグリセリンエステルの成分組成が同じであるとはいえない上に、甲1方法発明の「TAISET」自体の成分組成に関する記載や示唆がないのであるから、上記甲号証を参照しても、甲1方法発明において、ポリグリセリン脂肪酸エステルに関して、「飽和脂肪酸の含有量が80質量%以上、上昇融点が50℃以上、かつ、HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル:0.5〜3質量%」を含有することが記載されているに等しいとはいえず、相違点2−1−7は、実質的な相違点である。

c そして、甲第1号証は、Fig.5は、「種々の植物油のゲル強度に関する「TAISET」添加の効果」との表題で、「TAISET」の含有割合が1%、3%、5%、7%の場合の4種の植物油のゲル強度(g/cm2)が示され、添加量が増えるにしたがってゲル強度が増加していることを示し、「Fig.5は[TAISET]を各種植物油に添加し加熱溶解後,20℃まで放冷して固化した硬さ(粘稠度)をレオメーターによって破断強度として測定した結果である.油の種類や添加量によって差があるがすべての液体油を固化し流動性をなくすことができる.液体油のナタネ油と半固体脂のラードに添加して冷却時の粘度変化をブルックフィールド粘度計で測定すると添加量が増えると粘度は上昇し,食感改良や安定性向上につながる.」(摘記(1b))と考察しているものであるから、他の甲号証(甲第2号証〜甲第7号証)を考慮しても、甲1方法発明の「TAISET」の成分のうち「高度精製ポリグリセリン脂肪酸エステル」を、敢えて「飽和脂肪酸の含有量が80質量%以上、上昇融点が50℃以上、かつ、HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル:0.5〜3質量%」という特定範囲のものとする動機付けは存在しない。

d したがって、甲1方法発明において、相違点2−1−7は、当業者が容易になし得る技術的事項であるとはいえない。

(イ)相違点3−1−7について
次に、相違点3−1−7について検討する。
相違点3−1−7に関する「油脂組成物」の「5℃のSFC」について、甲第1号証には、記載がなく、「「TAISET」は液体油に添加して加熱すると透明に溶解し,そのまま放冷すると固化する.しかし,撹拌しながら冷却すると粘稠なゲル状となる.Fig.5は[TAISET」を各種植物油に添加し加熱溶解後,20℃まで放冷して固化した硬さ(粘稠度)をレオメーターによって破断強度として測定した結果である.油の種類や添加量によって差があるがすべての液体油を固化し流動性をなくすことができる.液体油のナタネ油と半固体脂のラードに添加して冷却時の粘度変化をブルックフィールド粘度計で測定すると添加量が増えると粘度は上昇し,食感改良や安定性向上につながる.「TA1SET」を添加したナタネ油およびパー厶油の固体脂指数(SFC)を測定した結果,油脂固化剤添加による油脂中のSFCはほとんど影響を受けない.」(摘記(1b))との記載があるだけであるから、「油脂組成物」の「5℃のSFC」が記載されているに等しいとはいえない。
そして、その他の上記甲号証を参照しても、「油脂組成物」の「5℃のSFC」に関する記載も示唆もないし、甲1方法発明において、「油脂組成物」の「5℃のSFCが4%以下である」と特定することに動機があるともいえない。
したがって、相違点3−1−7は、実質的相違点であるし、当業者が容易になし得る技術的事項でもない。

(ウ)本件特許発明7の効果について
本件特許発明7は、前記第2の請求項7に特定したように、
「飽和脂肪酸の含有量が30質量%以下の液状油脂:90〜99.5質量%と、
飽和脂肪酸の含有量が80質量%以上、上昇融点が50℃以上、かつ、HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル:0.5〜3質量%と、を含有し、
5℃のSFCが4%以下である、油脂組成物(レシチンを配合するものを除く)を用いて、調理することにより、食品の油染みを抑制する方法。」
との構成を採用することで、本件特許明細書【0015】等に記載される「食品分野」「において使用し得る、低温環境下においても流動性を有するハンドリングの良好な油脂組成物」を用いた食品の油染みを抑制する方法を提供することができるという予測できない顕著な効果を奏している。

ウ 甲1方法発明との対比・判断のまとめ
したがって、相違点1−1−7について検討するまでもなく、本件特許発明7は、甲第1号証に記載された発明とはいえず、また甲第1号証記載の発明及び甲第1号証〜甲第7号証記載の技術的事項から当業者が容易に発明することができるものともいえない。

(5)異議申立理由1,異議申立理由2−1について(甲第1号証に記載された発明との対比・判断)のまとめ
以上のとおり、異議申立理由1、異議申立理由2−1(甲第1号証に記載された発明との対比した新規性進歩性の理由に関して)については理由がない。

異議申立理由2−2について(甲第12号証に記載された発明との対比・判断)
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲12発明とを対比すると、甲12発明の「菜種白絞め油 98g」は、本件特許発明1の「飽和脂肪酸の含有量が30質量%以下の液状油脂:90〜99.5質量%」と、「液状油脂」が「90〜99.5質量%」含有されている限りにおいて共通している。
また、甲12発明の「油系ゲル化剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル(太陽化学(株) TAISETAD))2g」は、本件特許発明1の「飽和脂肪酸の含有量が80質量%以上、上昇融点が50℃以上、かつ、HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル:0.5〜3質量%」と、「ポリグリセリン脂肪酸エステル」が「0.5〜3質量%」含有されている限りにおいて共通している。
甲12発明の「油脂」は、レシチンを配合しておらず、組成物であるといえるので、本件特許発明1の「油脂組成物(レシチンを配合するものを除く)。」に相当する。
したがって、本件特許発明1は、甲12発明と、
「液状油脂:90〜99.5質量%と、ポリグリセリン脂肪酸エステル:0.5〜3質量%と、を含有する油脂組成物(レシチンを配合するものを除く)。」の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1−12:液状油脂に関して、本件特許発明1においては、「飽和脂肪酸の含有量が30質量%以下」であることが特定されているのに対して、甲12発明においては、「菜種白絞油」と特定され、飽和脂肪酸の含有量が明らかでない点。

相違点2−12:ポリグリセリン脂肪酸エステルに関して、本件特許発明1においては、「飽和脂肪酸の含有量が80質量%以上、上昇融点が50℃以上、かつ、HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル」を含有することが特定されているのに対して、甲12発明においては、「油系ゲル化剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル(太陽化学(株) TAISETAD))」と特定され、ポリグリセリン脂肪酸エステルの、飽和脂肪酸の含有量、上昇融点、HLBが不明である点。

相違点3−12:本件特許発明1は、「油脂組成物」の「5℃のSFCが4%以下である」と特定されているのに対して、甲12発明は、「油脂組成物」の「5℃のSFC」が特定されていない点。

イ 判断
事案に鑑み相違点2−12から検討する。
(ア)相違点2−12について
a 甲第12号証においては、甲12発明の認定の根拠となった摘記(12d)以外の記載を参照しても、甲12発明の油系ゲル化剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル(太陽化学(株) TAISETAD))の「ポリグリセリン脂肪酸エステル」の飽和脂肪酸の含有量、上昇融点、HLBの記載がなく、甲12発明において、「飽和脂肪酸の含有量が80質量%以上、上昇融点が50℃以上、かつ、HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル」を含有することが記載されているに等しいとする理由はなく、そのような本願出願時の技術常識もない。
甲第12号証の摘記(12c)の【0010】に、「本発明の食品において、油脂は、油系ゲル化剤を使用して増粘させることによって、前記粘度又はゲル強度を有するものとなった油脂であってもよい。油系ゲル化剤としては、例えば特開2018−42550号公報に記載の油脂の増粘又は固化剤、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。好ましくは、油系ゲル化剤はポリグリセリン脂肪酸エステルを含む。ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば市販のTAISETAD(太陽化学(株))、TAISET50(太陽化学(株))、リョートーポリグリエステルB−100D(三菱化学フーズ(株))等を用いることもできる。このような油脂を用いることにより、透明性に優れるとともに、口どけ等の食感が良好となる。
また、水素添加やエステル交換した油脂を全部又は一部用いることにより、前記粘度又はゲル強度を有するものとなった油脂であってもよい。」(下線は当審にて追加。以下同様。)との記載があるが、「高水分食品素材と、低水分食品素材と、油脂とを含む食品」(摘記(12a))における「高水分食品素材から低水分食品素材への水分の移行が効果的に抑制されて、低水分食品素材の食感が維持された、高水分食品素材及び低水分食品素材を含む食品を提供することを目的」(摘記(12b))とすることを前提とした甲第12号証における、好ましい油系ゲル化剤の作用及び例示として記載であって、甲12発明の「TAISETAD(太陽化学(株))」がどのようなものかを直接明らかにするものとはいえず、甲12発明において、相違点2−12の本件特許発明1の構成が記載されているに等しい事項とはいえない。

b また、甲第13号証の「TAISETAD」の融点の記載や、甲第14号証の「TAISETAD」のHLBの記載を考慮しても(甲第15号証は、本件特許明細書と甲第12号証の例示の一つである「B−100D」が同じ商品であることを示すための社名変更等の企業情報を示すものにすぎない。)、「商標名」が同じであるからといって、ポリグリセリンエステルの成分組成や特性が同じであるとはいえない上に、甲第12号証に、甲12発明の「TAISETAD」自体の成分組成や特性に関する記載や示唆がないのであるから、商標名以外に共通点のない上記甲号証を参照し、特性等を理解する理由もない。
したがって、甲12発明において、ポリグリセリン脂肪酸エステルに関して、「飽和脂肪酸の含有量が80質量%以上、上昇融点が50℃以上、かつ、HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル」を含有することが記載されているに等しいとはいえず、甲第13〜15号証を参照してもなお、相違点2−12の構成は、記載されているに等しい事項とはいえない。
以上のとおり、相違点2−12は実質的な相違点である。

c そして、甲第12号証は、高水分食品素材から低水分食品素材への水分の移行が効果的に抑制されて、低水分食品素材の食感が維持された、高水分食品素材及び低水分食品素材を含む食品を提供することを目的とした高水分食品素材と、低水分食品素材と、油脂とを含む食品に関するものであって、甲12発明の「油系ゲル化剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル(太陽化学(株) TAISETAD))を敢えて「飽和脂肪酸の含有量が80質量%以上、上昇融点が50℃以上、かつ、HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル」という特定範囲のものとする動機付けは存在しない。

d したがって、甲12発明において、相違点2−12は、当業者が容易になし得る技術的事項であるとはいえない。

(イ)相違点3−12について
相違点3−12に関する「油脂組成物」の「5℃のSFC」について、甲第12号証には、記載がなく、SFC自体に着目していないのであるから「油脂組成物」の「5℃のSFC」が記載されているに等しいとはいえない。
そして、甲第12号証は、25℃及びせん断速度10(1/s)における油脂の粘度又は油脂の25℃でのゲル強度に着目したものであり、その他の上記甲号証を参照しても、「油脂組成物」の「5℃のSFC」に関する記載も示唆もない以上、甲12発明において、「油脂組成物」の「5℃のSFCが4%以下である」と特定することに動機付けがあるともいえない。
したがって、相違点3−12は、実質的相違点であるし、当業者が容易になし得る技術的事項でもない。

(ウ)本件特許発明1の効果について
甲12発明及び甲第13、14号証の技術的事項、さらには、甲第1号証や甲第7号証の「TAISET」に関する記載を考慮しても、本件特許発明1は、異議申立理由2−1で検討したとおり、【0015】に記載されたような予測できない顕著な効果を奏している。

(オ)特許異議申立人の主張について
a 特許異議申立人は、相違点2−12に関して、甲第12号証の【0010】の「油系ゲル化剤はポリグリセリン脂肪酸エステルを含む。ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば市販のTAISETAD(太陽化学(株))、TAISET50(太陽化学(株))、リョートーポリグリエステルB−100D(三菱化学フーズ(株))等を用いることもできる。」との記載を指摘して、甲12発明において、TAISETAD(太陽化学(株))をTAISET50(太陽化学(株))、リョートーポリグリエステルB−100D(三菱化学フーズ(株))に変更すれば、相違点2−12の本件特許発明1の構成を満たすものになる旨主張しているが、「異議申立理由1,異議申立理由2について」で検討したとおり、TAISET50(太陽化学(株))、リョートーポリグリエステルB−100D(三菱化学フーズ(株))であっても、同一商品名のものが同一成分組成や特性を有しているとは限らず、また変更した場合にその他の成分との量的関係についても変更がされない理由もない。
したがって、上記特許異議申立人の主張には根拠があるとはいえない。

b また、特許異議申立人は、相違点3−12に関して、本件特許明細書の実施例中の表3実施例5の結果を指摘して、甲12発明の5℃のSFCも同程度である旨主張しているが、本件特許明細書の記載に基いて、甲12発明を理解すること自体に無理がある上、本件特許明細書の異なる液状油脂と乳化剤の特定の実施例を指摘して、甲12発明の5℃のSFCを推定することにも合理性はない。
よって、上記特許異議申立人の主張も採用できない。

ウ 甲12発明との対比・判断のまとめ
したがって、相違点1−12について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲第12号証記載の発明および甲第1号証、甲第7号証、甲第12〜15号証記載の技術的事項から当業者が容易に発明することができるものともいえない。

(2)本件特許発明2〜5について
ア 本件特許発明2は、本件特許発明1において、さらに「極度硬化油:1〜3質量%を、さらに含有する」という技術的限定を加えた発明であって、甲12発明との対比において、上記(1)で論じたのと同様の相違点(相違点1’−12〜3’−12)を有し、さらに以下の相違点を有する。
相違点4’−12:本件特許発明2においては、油脂組成物に、極度硬化油:1〜3質量%を、さらに含有するとの特定されているのに対して、甲12発明においては、極度硬化油を用いていない点。

イ そして、甲第8〜10号証には、サクサク感等を出すために硬化油を用いることが記載され、甲第11号証には、ハイエルシン酸菜種極度硬化油をフライ類のサクサク感を出すために用いられることが記載されるものの、上記(1)で検討したのと同様に、相違点2’−12、相違点3’−12は実質的相違点であり、甲12発明において、当業者が容易に想到し得る技術的事項とはいえないので、相違点1’−12及び相違点4’−12について検討するまでもなく、本件特許発明2は、甲第12発明および甲第1、7〜15号証記載の技術的事項から当業者が容易に発明することができるものともいえない。

ウ 本件特許発明3,4,5は、本件特許発明1,2に技術的限定を加えたものであり、甲12発明との対比において、少なくとも、上記(1)で論じたのと同様の相違点を有する。
したがって、本件特許発明3,4,5も、甲12発明および甲第1、7〜15号証記載の技術的事項から当業者が容易に発明することができるものともいえない。

(3)本件特許発明6について
ア 対比
甲12製造方法発明の「菜種白絞め油 98g」は、本件特許発明6の「飽和脂肪酸の含有量が30質量%以下の液状油脂:90〜99.5質量%」と、「液状油脂」が「90〜99.5質量%」含有されている限りにおいて共通している。
また、甲12製造方法発明の「油系ゲル化剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル(太陽化学(株) TAISETAD))2g」は、本件特許発明6の「飽和脂肪酸の含有量が80質量%以上、上昇融点が50℃以上、かつ、HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル:0.5〜3質量%」と、「ポリグリセリン脂肪酸エステル」が「0.5〜3質量%」含有されている限りにおいて共通している。
甲12製造方法発明の「油脂」は、レシチンを配合しておらず、組成物であるといえるので、本件特許発明6の「油脂組成物(レシチンを配合するものを除く)。」に相当する。
また、甲12製造方法発明の「油脂を分散させた低水分食品素材(乾燥果実や小麦パフ)と高水分食品素材(ヨーグルト)とから喫食するためのものを製造する方法」は、本件特許明細書【0034】において、調理方法は特に限定されていないのであるから、本件特許発明6の「油脂組成物」「を用いて、調理する工程を含む、食品の製造方法」に相当するといえる。
したがって、本件特許発明6は、甲12製造方法発明と、
「液状油脂90〜99.5質量%と、ポリグリセリン脂肪酸エステル0.5〜3質量%とを含有する油脂組成物(レシチンを配合するものを除く)を用いて、調理する工程を含む、食品の製造方法。」の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1−12−6:液状油脂に関して、本件特許発明6においては、「飽和脂肪酸の含有量が30質量%以下」であることが特定されているのに対して、甲12製造方法発明においては、「菜種白絞油」と特定され、飽和脂肪酸の含有量が明らかでない点。

相違点2−12−6:ポリグリセリン脂肪酸エステルに関して、本件特許発明6においては、「飽和脂肪酸の含有量が80質量%以上、上昇融点が50℃以上、かつ、HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル」を含有することが特定されているのに対して、甲12製造方法発明においては、「油系ゲル化剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル(太陽化学(株) TAISETAD))」と特定され、ポリグリセリン脂肪酸エステルの、飽和脂肪酸の含有量、上昇融点、HLBが不明である点。

相違点3−12−6:本件特許発明6は、「油脂組成物」の「5℃のSFCが4%以下である」と特定されているのに対して、甲12製造方法発明は、「油脂組成物」の「5℃のSFC」が特定されていない点。

イ 判断
事案に鑑み相違点2−12−6から検討する。
(ア)相違点2−12−6について
a 甲第12号証においては、甲12製造方法発明の認定の根拠となった摘記(12d)以外の記載を参照しても、甲12製造方法発明の油系ゲル化剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル(太陽化学(株) TAISETAD))の「ポリグリセリン脂肪酸エステル」の飽和脂肪酸の含有量、上昇融点、HLBの記載がなく、甲12製造方法発明において、「飽和脂肪酸の含有量が80質量%以上、上昇融点が50℃以上、かつ、HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル」を含有することが記載されているに等しいとする理由はなく、そのような本願出願時の技術常識もない。
甲第12号証の摘記(12c)の【0010】には、上述のとおり、「高水分食品素材と、低水分食品素材と、油脂とを含む食品」における「高水分食品素材から低水分食品素材への水分の移行が効果的に抑制されて、低水分食品素材の食感が維持された、高水分食品素材及び低水分食品素材を含む食品を提供することを目的」とすることを前提とした甲第12号証における、好ましい油系ゲル化剤の作用及び例示の記載があるだけであって、甲12製造方法発明の「TAISETAD(太陽化学(株))」がどのようなものかを直接明らかにするものとはいえず、甲12製造方法発明において、相違点2−12の構成が記載されているに等しい事項とはいえないし、甲第13号証の「TAISETAD」の融点の記載や、甲第14号証の「TAISETAD」のHLBの記載を考慮しても、「商標名」が同じであるからといって、ポリグリセリンエステルの成分組成や特性が同じであるとはいえない上に、甲第12号証に、甲12発明の「TAISETAD」自体の成分組成や特性に関する記載や示唆がないのであるから、商標名以外に共通点のない上記甲号証を参照し、特性等を理解する理由もない。
したがって、甲12発明において、ポリグリセリン脂肪酸エステルに関して、「飽和脂肪酸の含有量が80質量%以上、上昇融点が50℃以上、かつ、HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル」を含有することが記載されているに等しいとはいえず、その他の甲号証を参照してもなお、相違点2−12−6は記載されているに等しい事項とはいえない。
以上のとおり、相違点2−12−6は実質的な相違点である。

c そして、甲第12号証は、高水分食品素材から低水分食品素材への水分の移行が効果的に抑制されて、低水分食品素材の食感が維持された、高水分食品素材及び低水分食品素材を含む食品を提供することを目的とした高水分食品素材と、低水分食品素材と、油脂とを含む食品に関するものであって、甲12製造方法発明の「油系ゲル化剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル(太陽化学(株) TAISETAD))を敢えて「飽和脂肪酸の含有量が80質量%以上、上昇融点が50℃以上、かつ、HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル」という特定範囲のものとする動機付けは存在しない。

d したがって、甲12製造方法発明において、相違点2−12−6は、当業者が容易になし得る技術的事項であるとはいえない。

(イ)相違点3−12−6について
次に、相違点3−12−6について検討する。
相違点3−12−6に関する「油脂組成物」の「5℃のSFC」について、甲第12号証には、記載がなく、SFC自体に着目していないのであるから「油脂組成物」の「5℃のSFC」が記載されているに等しいとはいえない。
そして、甲第12号証は、25℃及びせん断速度10(1/s)における油脂の粘度又は油脂の25℃でのゲル強度に着目したものであり、その他の上記甲号証を参照しても、「油脂組成物」の「5℃のSFC」に関する記載も示唆もない以上、甲12製造方法発明において、「油脂組成物」の「5℃のSFCが4%以下である」と特定することに動機付けがあるともいえない。
したがって、相違点3−12−6は、実質的相違点であるし、当業者が容易になし得る技術的事項でもない。

(ウ)本件特許発明6の効果について
甲12製造方法発明及び甲第13、14号証の技術的事項、さらには、甲第1号証や甲第7号証の「TAISET」に関する記載を考慮しても、本件特許発明6は、異議申立理由2−1で検討したとおり、本件特許明細書【0015】等に記載される「食品分野」「において使用し得る、低温環境下においても流動性を有するハンドリングの良好な油脂組成物」を用いた食品の製造方法を提供することができるという予測できない顕著な効果を奏している。

ウ 甲12製造方法発明との対比・判断のまとめ
したがって、相違点1−12−6について検討するまでもなく、本件特許発明6は、甲第12号証記載の発明および甲第1号証、甲第7号証、甲第12〜15号証記載の技術的事項及びから当業者が容易に発明することができるものとはいえない。

(4)本件特許発明7について
ア 対比
本件特許発明7と甲12方法発明とを対比すると、「菜種白絞め油 98g」は、本件特許発明7の「飽和脂肪酸の含有量が30質量%以下の液状油脂:90〜99.5質量%」と、「液状油脂」が「90〜99.5質量%」含有されている限りにおいて共通している。
また、甲12方法発明の「油系ゲル化剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル(太陽化学(株) TAISETAD))2g」は、本件特許発明7の「飽和脂肪酸の含有量が80質量%以上、上昇融点が50℃以上、かつ、HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル:0.5〜3質量%」と、「ポリグリセリン脂肪酸エステル」が「0.5〜3質量%」含有されている限りにおいて共通している。
甲12方法発明の「油脂」は、レシチンを配合しておらず、組成物であるといえるので、本件特許発明7の「油脂組成物(レシチンを配合するものを除く)。」に相当する。
また、甲12方法発明の「油脂を分散させた低水分食品素材(乾燥果実や小麦パフ)と高水分食品素材(ヨーグルト)とから製造した喫食するためのものにおける、低水分食品素材の食感を維持する方法」は、本件特許明細書【0034】において、調理方法は特に限定されていないのであるから、本件特許発明7の「油脂組成物」「を用いて、調理することにより、食品の油染みを抑制する方法」と、「油脂組成物」「を用いて、調理することによ」る食品に関する方法である限りにおいて共通する。
したがって、本件特許発明7は、甲12方法発明と、
「液状油脂90〜99.5質量%と、ポリグリセリン脂肪酸エステル0.5〜3質量%とを含有する油脂組成物(レシチンを配合するものを除く)を用いて、調理することによる食品に関する方法。」の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1−12−7:液状油脂に関して、本件特許発明7においては、「飽和脂肪酸の含有量が30質量%以下」であることが特定されているのに対して、甲12方法発明においては、「菜種白絞油」と特定され、飽和脂肪酸の含有量が明らかでない点。

相違点2−12−7:ポリグリセリン脂肪酸エステルに関して、本件特許発明7においては、「飽和脂肪酸の含有量が80質量%以上、上昇融点が50℃以上、かつ、HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル」を含有することが特定されているのに対して、甲12方法発明においては、「油系ゲル化剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル(太陽化学(株) TAISETAD))」と特定され、ポリグリセリン脂肪酸エステルの、飽和脂肪酸の含有量、上昇融点、HLBが不明である点。

相違点3−12−7:本件特許発明7は、「油脂組成物」の「5℃のSFCが4%以下である」と特定されているのに対して、甲12方法発明は、「油脂組成物」の「5℃のSFC」が特定されていない点。

相違点4−12−7:本件特許発明7は、「食品の油染みを抑制する方法」であるのに対して、甲1方法発明は、「低水分食品素材(乾燥果実や小麦パフ)と高水分食品素材(ヨーグルト)とから製造した喫食するためのものにおける、低水分食品素材の食感を維持する方法である点。

イ 判断
(ア)相違点1−12−7、相違点2−12−7、相違点3−12−7は、本件特許発明6と甲12製造方法発明との対比における油脂組成物に関する相違点1−12−6、相違点2−12−6、相違点3−12−6と、実質的に同一のものである。

したがって、相違点4−12−7について検討するまでもなく、前記(3)イ、ウで検討したのと同様に、甲1方法発明において、相違点2−1−7、相違点3−12−7は、実質的な相違点であり、当業者が容易になし得る技術的事項であるとはいえない。

(イ)本件特許発明7の効果について
甲12方法発明及び甲第13、14号証の技術的事項、さらには、甲第1号証や甲第7号証の「TAISET」に関する記載を考慮しても、本件特許発明7は、異議申立理由2−1で検討したとおり、本件特許明細書【0015】等に記載される「食品分野」「において使用し得る、低温環境下においても流動性を有するハンドリングの良好な油脂組成物」を用いた食品の油染み抑制方法を提供することができるという予測できない顕著な効果を奏している。

ウ 甲12方法発明との対比・判断のまとめ
したがって、相違点1−12−7、相違点4−12−7について検討するまでもなく、本件特許発明7は、甲第12号証記載の発明及び甲第1号証、甲第7号証、甲第12〜15号証記載の技術的事項から当業者が容易に発明することができるとはいえない。

(5)異議申立理由2−2について(甲第12号証に記載された発明との対比・判断)のまとめ
以上のとおり、異議申立理由2−2(甲第12号証に記載された発明を主引例とした進歩性の理由)については理由がない。

異議申立理由2−3について(甲第11号証に記載された発明との対比・判断)
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲11発明とを対比すると、甲11発明の「ハイエルシン酸菜種極度硬化油を含有し、乳化剤を配合してなる、25℃における固体脂含量が1〜5%であり、かつ、構成脂肪酸中、炭素数20〜22の飽和脂肪酸を0.3〜4重量%含有するバッター液用油脂組成物」は、本件特許発明1の「油脂組成物」に該当する。
したがって、本件特許発明1は、甲11発明と、
「油脂組成物。」の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1−11:本件特許発明1においては、「飽和脂肪酸の含有量が30質量%以下の液状油脂:90〜99.5質量%」が含有されることが特定されているのに対して、甲11発明においては、「ハイエルシン酸菜種極度硬化油を含有し、乳化剤を配合してなる、25℃における固体脂含量が1〜5%であり、かつ、構成脂肪酸中、炭素数20〜22の飽和脂肪酸を0.3〜4重量%含有する」ことが特定されるものの、飽和脂肪酸を特定量以下含有する液状油脂の油脂組成物中の含有量が明らかでない点。

相違点2−11:ポリグリセリン脂肪酸エステルに関して、本件特許発明1においては、「飽和脂肪酸の含有量が80質量%以上、上昇融点が50℃以上、かつ、HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル」を「0.5〜3質量%」含有することが特定されているのに対して、甲11発明においては、「乳化剤を配合」することの記載はあるものの、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含有させることも、そのポリグリセリン脂肪酸エステルの、飽和脂肪酸の含有量、上昇融点、HLB、油脂組成物中の含有量が不明である点。

相違点3−11:本件特許発明1は、「油脂組成物」の「5℃のSFCが4%以下である」と特定されているのに対して、甲11発明は、「油脂組成物」の「25℃における固体脂含量が1〜5%」と特定されるものの、「5℃のSFC」が特定されていない点。

相違点4−11:本件特許発明1は、「油脂組成物」が(レシチンを配合するものを除く)とされているのに対して、甲11発明においては、レシチンを配合するものを除くとのとの特定のない点。

イ 判断
事案に鑑み相違点2−11から検討する。
(ア)相違点2−11について
a 甲第11号証においては、甲11発明の認定の根拠となった摘記(11a)以外の記載を参照しても、【0013】(摘記11d)に、乳化剤として、多数の例の中にポリグリセリン脂肪酸エステルが挙げられているだけであり、甲11発明の乳化剤が仮に「ポリグリセリン脂肪酸エステル」であったとしても、その飽和脂肪酸の含有量、上昇融点、HLB、油脂組成物中の含有量の記載が全くなく、甲11発明において、「飽和脂肪酸の含有量が80質量%以上、上昇融点が50℃以上、かつ、HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル」を「0.5〜3質量%」含有することが記載されているに等しいとする理由はなく、そのような本願出願時の技術常識もない。
また、甲11発明の乳化剤として、ポリグリセリン脂肪酸エステルが選択されたとしても、そのポリグリセリン脂肪酸エステルとして、甲第1号証の「TAISET」、甲第12号証の「TAISETAD」を選択しなければならない動機付けはなく、特許異議申立理由1、特許異議申立理由2−1、2−1で検討したとおり、甲第1号証の「TAISET」、甲第12号証の「TAISETAD」の成分組成や特性が商品名や商標名が共通するだけの他の甲号証をさらに参照しなければならず、結局特定のものに決まらないのであるから、甲11発明の乳化剤として、甲第1号証の「TAISET」、甲第12号証の「TAISETAD」を適用したとしても、甲11発明において、「飽和脂肪酸の含有量が80質量%以上、上昇融点が50℃以上、かつ、HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル」を「0.5〜3質量%」含有するという相違点2−11の本件特許発明1の構成は、当業者が容易になし得る技術的事項であるとはいえない。

(イ)相違点3−11について
相違点3−11に関する「油脂組成物」の「5℃のSFC」について、甲第11号証には、常温である25℃の固体脂含量(SFC)の範囲の記載があるものの、「5℃のSFC」に着目していないのであるから「油脂組成物」の「5℃のSFC」が記載されているに等しいとはいえない。
そして、甲第11号証は、25℃における固体脂含量と構成脂肪酸中、炭素数20〜22の飽和脂肪酸の含有量に着目したものであり、その他の上記甲号証を参照しても、「油脂組成物」の「5℃のSFC」に関する記載も示唆もない以上、甲11発明において、「油脂組成物」の「5℃のSFCが4%以下である」と特定することに動機付けがあるともいえない。
したがって、相違点3−11は、実質的相違点であるし、当業者が容易になし得る技術的事項でもない。

(ウ)本件特許発明1の効果について
甲11発明及び甲第1、12号証の技術的事項、さらには、甲第7号証の「TAISET」に関する記載を考慮しても、本件特許発明1は、異議申立理由2−1で検討したとおり、【0015】に記載されたような予測できない顕著な効果を奏している。

(エ)特許異議申立人の主張について
a 特許異議申立人は、甲第11号証に記載された発明として、表1の実施例1に基づく発明として、菜種油98重量%を含有する油脂組成物を認定して、進歩性の主張をしているが、実施例1に記載された発明は、表1のとおり、「菜種油98、ハイエルシン酸菜種極度硬化油2で配合された25℃におけるSFCが2で、C20〜C22の飽和脂肪酸含量が1.6%の脂肪組成物」であり、実施例として完成したものであり、【0013】のレシチンも含めた多数の乳化剤の記載があるからといって、乳化剤を加えない態様の実施例1に係る上記発明において、レシチンではなくポリグリセリン脂肪酸エステルを敢えて選択した上で、さらにポリグリセリン脂肪酸エステルとして、甲第1号証、甲第7号証の「TAISET」や甲第12号証の「TAISETAD」の添加量をそのまま採用しなければならないことには、いずれも理由がない。
また、甲第1号証や甲第7号証の「TAISET」、甲第12号証の「TAISETAD」を適用したとしても、その成分組成や特性が明らかであるとはいえないことは上述のとおりである。
したがって、上記特許異議申立人の主張には根拠があるとはいえない。

ウ 甲11発明との対比・判断のまとめ
したがって、相違点1−11について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲第11号証記載の発明および甲第1号証、甲第7号証、甲第11〜15号証記載の技術的事項から当業者が容易に発明することができるものともいえない。

(2)本件特許発明2〜5について
ア 本件特許発明2は、本件特許発明1において、さらに「極度硬化油:1〜3質量%を、さらに含有する」という技術的限定を加えた発明であるが、甲11発明との対比において、上記(1)で論じたのと同様の相違点(相違点1’−11〜3’−11)を有し、さらに以下の相違点を有する。
相違点4’−11:本件特許発明2においては、油脂組成物に、極度硬化油:1〜3質量%を、さらに含有するとの特定されているのに対して、甲11発明においては、ハイエルシン酸菜種極度硬化油を含有することは特定されているもののその含有量自体は明らかでない点。

イ そして、甲第11号証には、ハイエルシン酸菜種極度硬化油をフライ類のサクサク感を出すために用いられることが記載されるものの、上記(1)で検討したのと同様に、相違点2’−11、相違点3’−11は実質的相違点であり、甲11発明において、当業者が容易に想到し得る技術的事項とはいえないので、相違点1’−11及び相違点4’−11について検討するまでもなく、本件特許発明2は、甲第11発明および甲第1、7、11〜15号証記載の技術的事項から当業者が容易に発明することができるものともいえない。

ウ 本件特許発明3,4,5は、本件特許発明1,2に技術的限定を加えたものであり、甲11発明との対比において、少なくとも、上記(1)で論じたのと同様の相違点を有する。
したがって、本件特許発明3,4,5も、甲11発明および甲第1、7、11〜15号証記載の技術的事項から当業者が容易に発明することができるものともいえない。

(3)本件特許発明6について
ア 対比
本件特許発明1と甲11製造方法発明とを対比すると、甲11製造方法発明の「ハイエルシン酸菜種極度硬化油を含有し、乳化剤を配合してなる、25℃における固体脂含量が1〜5%であり、かつ、構成脂肪酸中、炭素数20〜22の飽和脂肪酸を0.3〜4重量%含有するバッター液用油脂組成物」は、本件特許発明1の「油脂組成物」に該当する。
甲11製造方法発明の「バッター液用油脂組成物を含むバッター液を使用した食品の製造方法」は、本件特許明細書【0034】において、調理方法は特に限定されていないのであるから、本件特許発明6の「油脂組成物」「を用いて、調理する工程を含む、食品の製造方法」に相当するといえる。
したがって、本件特許発明6は、甲11製造方法発明と、
「油脂組成物を用いて、調理する工程を含む、食品の製造方法。」の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1−11−6:本件特許発明6においては、「飽和脂肪酸の含有量が30質量%以下の液状油脂:90〜99.5質量%」が含有されることが特定されているのに対して、甲11製造方法発明においては、「ハイエルシン酸菜種極度硬化油を含有し、乳化剤を配合してなる、25℃における固体脂含量が1〜5%であり、かつ、構成脂肪酸中、炭素数20〜22の飽和脂肪酸を0.3〜4重量%含有する」ことが特定されるものの、飽和脂肪酸を特定量以下含有する液状油脂の油脂組成物中の含有量が明らかでない点。

相違点2−11−6:ポリグリセリン脂肪酸エステルに関して、本件特許発明6においては、「飽和脂肪酸の含有量が80質量%以上、上昇融点が50℃以上、かつ、HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル」を「0.5〜3質量%」含有することが特定されているのに対して、甲11製造方法発明においては、「乳化剤を配合」することの記載はあるものの、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含有させることも、そのポリグリセリン脂肪酸エステルの、飽和脂肪酸の含有量、上昇融点、HLB、油脂組成物中の含有量も不明である点。

相違点3−11−6:本件特許発明6は、「油脂組成物」の「5℃のSFCが4%以下である」と特定されているのに対して、甲11製造方法発明は、「油脂組成物」の「25℃における固体脂含量が1〜5%」と特定されるものの、「5℃のSFC」が特定されていない点。

相違点4−11−6:本件特許発明6は、「油脂組成物」が(レシチンを配合するものを除く)とされているのに対して、甲11製造方法発明においては、レシチンを配合するものを除くとの特定のない点。

イ 判断
(ア)相違点1−11−6、相違点2−11−6、相違点3−11−6は、本件特許発明1と甲11発明との対比における油脂組成物に関する相違点1−11、相違点2−11、相違点3−11と、実質的に同一のものである。

したがって、前記(1)イ、ウで検討したのと同様に、本件特許発明6と甲11製造方法発明との相違点2−11−6、相違点3−11−6は、実質的な相違点であり、当業者が容易になし得る技術的事項であるとはいえない。

(イ)本件特許発明6の効果について
甲11製造方法発明及び甲第13、14号証の技術的事項、さらには、甲第1号証や甲第7号証の「TAISET」に関する記載を考慮しても、本件特許発明6は、異議申立理由2−1で検討したとおり、本件特許明細書【0015】等に記載される「食品分野」「において使用し得る、低温環境下においても流動性を有するハンドリングの良好な油脂組成物」を用いた食品の製造方法を提供することができるという予測できない顕著な効果を奏している。

ウ 甲11製造方法発明との対比・判断のまとめ
したがって、相違点1−11−6、相違点4−11−6について検討するまでもなく、本件特許発明6は、甲第11号証記載の発明および甲第1号証、甲第7号証、甲第12〜15号証記載の技術的事項及びから当業者が容易に発明することができるものとはいえない。

(4)本件特許発明7について
ア 対比
本件特許発明7と甲11方法発明とを対比すると、甲11方法発明の「ハイエルシン酸菜種極度硬化油を含有し、乳化剤を配合してなる、25℃における固体脂含量が1〜5%であり、かつ、構成脂肪酸中、炭素数20〜22の飽和脂肪酸を0.3〜4重量%含有するバッター液用油脂組成物」は、本件特許発明7の「油脂組成物」に該当する。
甲11方法発明の「バッター液用油脂組成物を含むバッター液を使用した食品の食感の改良及びチルド保存後もできたて時の食感を提供する方法」は、本件特許明細書【0034】において、調理方法は特に限定されていないのであるから、本件特許発明7の「油脂組成物」「を用いて、調理することにより、食品の油染みを抑制する方法」と、「油脂組成物」「を用いて、調理することによ」る食品に関する方法である限りにおいて共通する。
したがって、本件特許発明7は、甲11方法発明と、
「油脂組成物を用いて、調理することによる食品に関する方法。」の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1−11−7:本件特許発明7においては、「飽和脂肪酸の含有量が30質量%以下の液状油脂:90〜99.5質量%」が含有されることが特定されているのに対して、甲11方法発明においては、「ハイエルシン酸菜種極度硬化油を含有し、乳化剤を配合してなる、25℃における固体脂含量が1〜5%であり、かつ、構成脂肪酸中、炭素数20〜22の飽和脂肪酸を0.3〜4重量%含有する」ことが特定されるものの、飽和脂肪酸を特定量以下含有する液状油脂の油脂組成物中の含有量が明らかでない点。

相違点2−11−7:ポリグリセリン脂肪酸エステルに関して、本件特許発明7においては、「飽和脂肪酸の含有量が80質量%以上、上昇融点が50℃以上、かつ、HLBが5以下のポリグリセリン脂肪酸エステル」を「0.5〜3質量%」含有することが特定されているのに対して、甲11方法発明においては、「乳化剤を配合」することの記載はあるものの、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含有させることも、そのポリグリセリン脂肪酸エステルの、飽和脂肪酸の含有量、上昇融点、HLB、油脂組成物中の含有量も不明である点。

相違点3−11−7:本件特許発明7は、「油脂組成物」の「5℃のSFCが4%以下である」と特定されているのに対して、甲11方法発明は、「油脂組成物」の「25℃における固体脂含量が1〜5%」と特定されるものの、「5℃のSFC」が特定されていない点。

相違点4−11−7:本件特許発明6は、「油脂組成物」が(レシチンを配合するものを除く)とされているのに対して、甲11方法発明においては、レシチンを配合するものを除くとの特定のない点。

相違点5−11−7:本件特許発明7は、「食品の油染みを抑制する方法」であるのに対して、甲11方法発明は、「バッター液を使用した食品の食感の改良及びチルド保存後もできたて時の食感を提供する方法」である点。

イ 判断
(ア)相違点1−11−7、相違点2−11−7、相違点3−11−7は、本件特許発明1と甲11発明との対比における油脂組成物に関する相違点1−11、相違点2−11、相違点3−11と、実質的に同一のものである。

したがって、前記(1)イ、ウで検討したのと同様に、本件特許発明7と甲11方法発明との相違点2−11−7、相違点3−11−7は、実質的な相違点であり、当業者が容易になし得る技術的事項であるとはいえない。

(イ)本件特許発明7の効果について
甲11方法発明及び甲第13、14号証の技術的事項、さらには、甲第1号証や甲第7号証の「TAISET」に関する記載を考慮しても、本件特許発明7は、異議申立理由2−1で検討したとおり、本件特許明細書【0015】等に記載される「食品分野」「において使用し得る、低温環境下においても流動性を有するハンドリングの良好な油脂組成物」を用いた食品の油染み抑制方法を提供することができるという予測できない顕著な効果を奏している。

ウ 甲11方法発明との対比・判断のまとめ
したがって、相違点1−11−7、相違点4−11−7、相違点5−11−7について検討するまでもなく、本件特許発明7は、甲第11号証記載の発明および甲第1号証、甲第7号証、甲第12〜15号証記載の技術的事項及びから当業者が容易に発明することができるものとはいえない。

(5)異議申立理由2−3について(甲第11号証に記載された発明との対比・判断)のまとめ
以上のとおり、異議申立理由2−3(甲第11号証に記載された発明を主引用例とした進歩性に関して)については理由がない。

4 異議申立理由1、2−1、2−2、2−3の判断のまとめ
以上のとおり、本件特許発明1、3〜7は、甲第1号証〜甲第6号証の記載を参照しても、甲第1号証に記載された発明であるとはいえないし、甲第1号証に記載された発明及び甲第1〜11号証記載の技術的事項、甲第12号証に記載された発明及び甲第1、7〜15号証記載の技術的事項、甲第11号証記載の発明及び甲第1、7〜15号証記載の技術的事項から当業者が容易に発明することができるものともいえないので、異議申立理由1および2には、理由がない。

異議申立理由3(実施可能要件)について
1 異議申立理由3について
特許異議申立人は、前記第3 3に記載のように実施可能要件について理由を述べている。

2 発明の詳細な説明の記載
本件特許明細書には、本件特許発明に関して、特許請求の範囲の実質的繰り返し記載を除き、【0002】〜【0007】の背景技術に関する記載、【0008】〜【0010】の発明が解決しようとする課題及び解決手段に関係した記載、【0015】の発明の効果に関する記載、【0017】〜【0018】の油脂組成物の成分、SFCの測定方法に関する記載、【0019】〜【0021】の液状油脂の種類、飽和脂肪酸の含有量の測定法に関する記載、【0022】〜【0024】の乳化剤の特性、種類、各数値範囲の技術的意義、飽和脂肪酸の含有量の技術的意義に関する記載、【0025】〜【0026】の極度硬化油の種類、含有量の技術的意義に関する記載、【0027】〜【0031】の油脂組成物のその他の成分、用途、製造方法に関する記載、【0031】〜【0033】の油脂組成物を用いた食品、その種類、製造方法に関する記載、【0034】の食品の油染みを抑制する方法の記載がそれぞれなされている。
そして、実施例においては、フライ用油脂としてコロッケを製造した場合に、フライ用油脂に用いる液状油脂や乳化剤の種類、およびSFCが、各種効果に影響するかについて検証として、評価基準、結果の表と考察(実験例1:【0036】〜【0051】)、フライ用油脂としてカレーパンを製造した場合に、フライ用油脂に用いる液状油脂や乳化剤の種類、およびSFCが、各種効果に影響するかについて検証として、結果の表と考察(実験例2:【0052】〜【0059】)、練り込み用油脂としてマフィンを製造した場合に、練り込み用油脂に用いる液状油脂や乳化剤が、各種効果に影響するかについて検証として、評価基準、結果の表と考察(実験例3:【0060】〜【0068】)が示され、本件特許発明の範囲に入る、実施例3〜7,10〜15において、いずれの評価も優れていることが示されている(同等の効果を有する参考例、評価の劣る比較例も示されている。)。

3 判断
本願の発明の詳細な説明には、本件特許発明の特定事項である液状油脂の飽和脂肪酸の含有量、ポリグリセリン脂肪酸エステルの飽和脂肪酸の含有量、上昇融点、HLB、油脂組成物中の含有量、5℃におけるSFCの値に関して、それらの関連記載とともに、数値範囲の上下限の技術的意義が示され、実施例においても、本件特許発明に該当する実施例3〜7,10〜15と、同等の効果を有する参考例とともに、いずれかの数値範囲等の発明特定事項が外れる比較例1〜11の評価結果も示されているのであるから、上記記載及び本願の出願時の技術常識に基いて、本件特許発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。

特許異議申立人は、請求項1〜7に係る発明について、5℃のSFCを4%以下にすることに関し、いかにして範囲内に調整すればよいかが記載されておらず、技術常識でもないので、調製した油脂組成物のSFCを逐一測定する必要があり、過度の試行錯誤が必要であるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件特許発明を実施できるほどに明確十分に記載されていない旨主張している。
しかしながら、本件特許明細書には、【0010】に「本願発明者らは、広い分野で使用し得るハンドリング性に優れた油脂組成物について鋭意研究を行った結果、特定の油脂と、特定の乳化剤を用いて、かつ、固体脂含量を制御することで、広い分野で使用し得る油脂組成物のハンドリングを向上させることに成功し、本技術を完成させるに至った。」と本件特許発明の技術的思想が記載され、油脂組成物について、【0017】【0018】に「 <油脂組成物>
本技術に係る油脂組成物は、特定の(1)液状油脂と、特定の(2)乳化剤と、を有する。また、本技術に係る油脂組成物は、5℃におけるSFC(Solid fat content,固体脂含量)が、4%以下であることを特徴とする。さらに、本技術に係る油脂組成物は、(3)極度硬化油等の他の成分も含有させることができる。・・・なお、本技術において、油脂組成物のSFCは、基準油脂分析法2.2.9−2013 固体脂含量(NMR法)に準じて測定し、分析した値である。」と記載され、5℃におけるSFC(Solid fat content,固体脂含量)の測定方法について記載されている。
さらに、【0019】〜【0021】の液状油脂の種類や飽和脂肪酸の含有量測定法の記載、【0022】〜【0024】の乳化剤の特性や含有量等の上下限の技術的意義の記載、【0030】〜【0031】の油脂組成物の製造方法の記載も存在し、複数の種類の乳化剤の実施例において、本件特許発明に該当する「5℃におけるSFCが4%以下」となっており、表1〜7の乳化剤含有量と5℃におけるSFCの値との間にも一定の相関関係がある(乳化剤が増加すれば5℃におけるSFCも増加する傾向がある。)。
したがって、上記本件特許明細書の記載及び固体脂含量自体の技術常識に基づけば、製造した油脂組成物の特性確認の一定の必要性はあるにしても、特許異議申立人の主張するような、5℃のSFCを4%以下にすることに関し、いかにして範囲内に調整すればよいかが記載されていない、技術常識がない、調製した油脂組成物のSFCを逐一測定する必要があり、過度の試行錯誤が必要であるといった事情は存在せず、上記主張は採用できない。

4 異議申立理由3の判断のまとめ
以上のとおり、請求項1〜7に係る発明に関して、本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえるので、異議申立理由3には、理由がない。

第5 むすび
したがって、請求項1〜7に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1〜7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2022-01-31 
出願番号 P2020-033888
審決分類 P 1 651・ 113- Y (A23D)
P 1 651・ 121- Y (A23D)
P 1 651・ 536- Y (A23D)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 村上 騎見高
特許庁審判官 冨永 保
瀬良 聡機
登録日 2021-04-14 
登録番号 6868722
権利者 昭和産業株式会社
発明の名称 油脂組成物および該油脂組成物を用いた食品、並びに食品の製造方法および食品の油染みを抑制する方法  
代理人 渡邊 薫  
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