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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61K
管理番号 1384263
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-11-30 
確定日 2022-03-28 
異議申立件数
事件の表示 特許第6881813号発明「核酸ワクチン」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6881813号の請求項1〜20に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6881813号の請求項1〜20に係る特許についての出願は、平成27年4月23日に出願されたものであって、令和3年5月10日に特許権の設定登録がされ、令和3年6月2日にその特許公報が発行され、その後、令和3年11月30日に、特許異議申立人 亀崎 伸宏(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明について
本件特許の請求項1〜20に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」〜「本件発明20」という。まとめて、「本件発明」ということもある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1〜20に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
核酸ワクチンであって、抗原性ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有する1つ以上のmRNAポリヌクレオチドを含み、カチオン性脂質約20〜60%:非カチオン性脂質約5〜25%:ステロール約25〜55%:及びPEG修飾脂質約0.5〜15%のモル比を有する脂質ナノ粒子内に製剤化され、該抗原性ポリペプチドがウイルス抗原であり、該カチオン性脂質がイオン性のカチオン性脂質であり、前記1つ以上のmRNAポリヌクレオチドが、N1−メチルシュードウリジンを含む少なくとも1つの化学修飾を含む、前記核酸ワクチン。
【請求項2】
前記非カチオン性脂質が中性脂質である、請求項1に記載のワクチン。
【請求項3】
前記ステロールがコレステロールである、請求項1〜2のいずれかに記載のワクチン。
【請求項4】
前記ウイルス抗原が、インフルエンザA型またはインフルエンザB型またはこれらの組み合わせの株である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項5】
前記抗原性ポリペプチドが、ヘマグルチニンタンパク質またはその断片をコードする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項6】
前記ヘマグルチニンタンパク質が、
a)頭部ドメイン(HA1)の一部、
b)細胞質ドメインの一部、及び/または
c)膜貫通ドメインの一部
を含む、請求項5に記載のワクチン。
【請求項7】
前記ウイルス抗原が、H1N1、H3N2、H7N9及びH10N8からなる群から選択されるウイルスに由来する、請求項1に記載のワクチン。
【請求項8】
前記化学修飾が、シュードウリジン、2−チオウリジン、4’−チオウリジン、5−メチルシトシン、2−チオ−1−メチル−1−デアザ−シュードウリジン、2−チオ−1−メチル−シュードウリジン、2−チオ−5−アザ−ウリジン、2−チオ−ジヒドロシュードウリジン、2−チオ−ジヒドロウリジン、2−チオ−シュードウリジン、4−メトキシ
−2−チオシュードウリジン、4−メトキシ−シュードウリジン、4−チオ−1−メチル
−シュードウリジン、4−チオ−シュードウリジン、5−アザ−ウリジン、ジヒドロシュードウリジン、5−メトキシウリジン及び2’−O−メチルウリジンからなる群から選択される化学修飾をさらに含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項9】
前記脂質ナノ粒子が
a)50〜200nmの平均直径、
b)0.4未満の多分散値、または
c)中性pHにおいて中性の正味電荷
を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項10】
前記オープンリーディングフレーム内のウラシルの少なくとも80%が化学修飾を有する、請求項1に記載のワクチン。
【請求項11】
前記オープンリーディングフレーム内のウラシルの100%が化学修飾を有する、及び/または前記化学修飾がN1−メチルシュードウリジンである、請求項10に記載のワクチン。
【請求項12】
前記mRNAポリヌクレオチドが、配列番号394または395と少なくとも80%の配列同一性を有するポリヌクレオチドを含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項13】
前記mRNAポリヌクレオチドが、配列番号941〜950のいずれかと少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項14】
前記mRNAポリヌクレオチドが、配列番号941〜950のいずれかのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項15】
前記核酸が配列番号395を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項16】
対象において抗原特異的な免疫応答を誘発する方法に使用するための請求項1〜14のいずれか1項に記載のワクチンであって、前記方法が、前記ワクチンを有効量で対象に投与し、抗原特異的な免疫応答を生じさせることを含む、前記ワクチン。
【請求項17】
インフルエンザウイルス感染の予防または治療の方法において使用するための請求項1〜14のいずれか1項に記載のワクチンであって、前記方法は、対象に前記ワクチンを投与することを含む、前記ワクチン。
【請求項18】
前記ヘマグルチニンタンパク質が、頭部ドメイン(HA1)、細胞質ドメインまたは膜貫通ドメインのうち、少なくとも1つの一部のみを含む、請求項6に記載のワクチン。
【請求項19】
前記ヘマグルチニンタンパク質が、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、H17、H18である、請求項18に記載のワクチン。
【請求項20】
前記ヘマグルチニンタンパク質が、H1、H7及びH10から選択される、請求項18に記載のワクチン。」

第3 申立理由の概要
(1)申立人が主張する申立理由及び提出した証拠
申立人は、異議申立書において、証拠として次の甲第1号証〜甲第19号証を提出し、次の申立ての理由を主張している。

甲第1号証: 国際公開第2013/151672号
甲第2号証:Nat.Biotechnol.,2010,Vol.28,No.2,p.172−176
甲第3号証:米国特許出願公開第2013/0245105号明細書
甲第4号証:国際公開第2013/151666号
甲第5号証:国際公開第2013/090648号
甲第6号証:国際公開第2014/152211号
甲第7号証:国際公開第2014/081507号
甲第8号証:米国特許出願公開第2014/0275227号明細書
甲第9号証:国際公開第2013/039861号
甲第10号証:特表2013−538569号
甲第11号証:国際公開第2011/005799号
甲第12号証:特表2014−508153号
甲第13号証:Proc.Jpn.Acad.,Ser.B88,2012, pp.226-249
甲第14号証:米国特許出願公開第2013/0037977号明細書
甲第15号証:国際公開第2012/135805号
甲第16号証:国際公開第2013/043729号
甲第17号証:特表2013−543381号
甲第18号証:本件特許出願に関する優先権主張番号US61/983250(2014年4月23日)の優先権証明書の写し
甲第19号証:本件特許出願に関する優先権主張番号US62/088994(2014年12月8日)の優先権証明書の写し

なお、以下、「甲第1号証」〜「甲第19号証」を、それぞれ「甲1」〜「甲19」という。

ア 申立理由1(新規性
(申立理由1−ア)
本件発明1〜3、8、10、11、16は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1〜3、8、10、11、16に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。

(申立理由1−イ)
本件発明1〜3、8、10、11、16は、甲3に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1〜3、8、10、11、16に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。

(申立理由1−ウ)
本件発明1〜3、8、10、11、16は、甲4に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1〜3、8、10、11、16に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。

(申立理由1−エ)
本件発明1〜3、8、10、11、16は、甲5に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1〜3、8、10、11、16に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。

(申立理由1−オ)
本件発明1〜3、8、10、11、16は、甲6に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1〜3、8、10、11、16に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。

(申立理由1−カ)
本件発明1〜3、8、10、11、16は、甲7に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1〜3、8、10、11、16に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。

(申立理由1−キ)
本件発明1〜3、8、10、11、16は、甲8に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1〜3、8、10、11、16に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。

なお、本件特許は2つの優先権、すなわち優先権主張番号US61/983250(2014年4月23日)及び優先権主張番号US62/088994(2014年12月8日)の優先権を伴う特許出願に対して特許が付与されたものであるが、優先権主張番号US61/983250の優先権証明書(甲18)には、ウイルス抗原をコードするORFを有するmRNAが脂質ナノ粒子内に製剤化された核酸ワクチンであって、当該mRNAが化学修飾としてN1−メチルシュードウリジンのみを有する核酸ワクチンがワクチンとして機能し得るであろうことを裏付ける実施例が記載されていない。また、優先権主張番号US62/088994の優先権証明書(甲19)に関しても、同様のことがあてはまる。
よって、本件発明1〜20の新規性進歩性の判断は、本件特許に係る特許出願の実際の出願日である2015年4月23日を基準として判断されるべきであるから、甲6〜8は、いずれも本件特許に対する先行技術を構成するものである。

イ 申立理由2(進歩性
(申立理由2−ア)
本件発明1〜3、8、10、11、16は、甲1、3〜8それぞれに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、同法第113条第2号に該当する。

(申立理由2−イ)
本件発明1〜20は、甲1、3〜8それぞれに記載された発明及び甲12〜甲14に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、同法第113条第2号に該当する。

(申立理由2−ウ)
本件発明1〜20に係る発明は、甲9に記載された発明及び甲1、10〜15に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、同法第113条第2号に該当する。

(申立理由2−エ)
本件発明1〜20は、甲15に記載された発明及び甲1、11〜17に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は、同法第113条第2号に該当する。

ウ 申立理由3(実施可能要件
本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明1〜20に係る発明を当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、本件特許は、同法第113条第4号に該当する。

エ 申立理由4(サポ−ト要件)
本件発明1〜20に係る発明は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、本件特許は、同法第113条第4号に該当する。

オ 申立理由5(明確性
本件発明1〜20は、特許請求の範囲に記載した発明が明確でないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、本件特許は、同法第113条第4号に該当する。

(2)甲号証の記載
ア 甲1
甲1には、次の事項が記載されている(下線は当審による。以下、同様。)。
甲1は英文であるため、摘記は合議体による翻訳文で示す。
(1−1)(特許請求の範囲)
「1.対象の目的の腫瘍学関連ポリペプチドのレベルを高めることにより、疾患、障害および/または状態の治療を必要とする対象の前記疾患、障害および/または状態を治療する方法であって、前記腫瘍学関連ポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドを前記対象に投与することを含む方法。」

(1−2)([0009]])
「少なくとも1つの目的とする腫瘍学関連ポリペプチドをコードする修飾mRNA(mmRNA)分子の組成、少なくとも1つの目的とする腫瘍学関連ポリペプチドをコードする修飾mRNA(mmRNA)分子の設計、調製、製造、および/または製剤化方法、プロセス、キット、ならびにデバイスが本明細書に記載される。」

(1−3)([00017])
「本発明の単離ポリヌクレオチドのヌクレオチドは、少なくとも2つの修飾と、翻訳可能な領域とを含み得る。修飾は、少なくとも1つのヌクレオシドおよび/または当該ヌクレオチドの骨格上、あるいはヌクレオシドおよび骨格結合の両方、あるいはヌクレオシドの糖に存在し得る。修飾は、少なくとも1つのホスホジエステル結合をホスホロチオエ−ト結合に置換することを含み得る。修飾は、ピリジン−4−オンリボヌクレオシド・・・1−メチルシュードウリジン・・・を含み得るが、これに限定されない。」

(1−4)([000422])
「別途述べられない限り、修飾ヌクレオチドは、本発明の修飾核酸またはmmRNAの天然ヌクレオチドと完全に置換され得る。非限定的な例として、天然ヌクレオチドウリジンは、本明細書に記載の修飾ヌクレオシドで置換され得る。別の非限定的な例において、天然ヌクレオチドウリジンは、本明細書に開示の修飾ヌクレオシドのうちの少なくとも1つで部分的に置換され得る(例えば、約0.1%、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99.9%)。」

(1−5)([000448]、[000449])
「・・・
リポソーム、リポプレックス、および脂質ナノ粒子
本発明のポリヌクレオチド、一次構築物、およびmmRNAは、1つ以上のリポソーム、リポプレックス、または脂質ナノ粒子を用いて製剤化することができる。」

(1−6)([000452]〜[000465])
「別の例として、ある特定のリポソーム製剤は、Heyesらによって記載されるように、48%のコレステロール、20%のDSPC、2%のPEG−c−DMA、および30%のカチオン性脂質を含有してもよいが、これらに限定されず、このカチオン性脂質は、1,2−ジステアリルオキシ(distearloxy)−N,N−ジメチルアミノプロパン(DSDMA)、DODMA、DLin−DMA、または1,2−ジリノレニルオキシ−3−ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)であり得る。
・・・
一実施形態において、LNP製剤は、PEG−DMG 2000(1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−2000)を含有してもよい。一実施形態において、LNP製剤は、当技術分野で既知のカチオン性脂質であるPEG−DMG 2000および少なくとも1つの他の構成成分を含有してもよい。別の実施形態において、LNP製剤は、当技術分野で既知のカチオン性脂質であるPEG−DMG 2000、DSPC、およびコレステロールを含有してもよい。非限定的な例として、LNP製剤は、PEG−DMG 2000、DLin−DMA、DSPC、およびコレステロールを含有してもよい。別の非限定的な例として、LNP製剤は、2:40:10:48のモル比で、PEG−DMG 2000、DLin−DMA、DSPC、およびコレステロールを含有してもよい(例えば、参照により全体が本明細書に組み込まれる、Gealletal.,Nonviraldeliveryofself−amplifying RNA vaccines,PNAS 2012;PMID:22908294を参照のこと)。別の非限定的な例として、本明細書に記載の修飾RNAは、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国公開第20120207845号に記載されるように、非経口経路によって送達されるナノ粒子中に製剤化されてもよい。」

(1−7)([000763])
「一実施形態において、本発明のポリヌクレオチド、一次構築物、またはmmRNAは、自己複製RNAであり得る。自己複製RNA分子は、RNA送達の効率および封入された遺伝子産物の発現を向上させることができる。一実施形態において、ポリヌクレオチド、一次構築物、またはmmRNAは、本明細書に記載され、かつ/または当技術分野で既知の少なくとも1つの修飾を含み得る。一実施形態において、自己複製RNAは、自己複製RNAが感染性ウイルス粒子の産生を誘導しないように設計され得る。非限定的な例として、自己複製RNAは、各々が参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、米国公開第US20110300205号および国際公開第WO2011005799号に記載の方法によって設計されてもよい。」

(1−8)([000768])
「一実施形態において、本発明のポリヌクレオチド、一次構築物、またはmmRNAは、免疫刺激性であり得る。非限定的な例として、ポリヌクレオチド、一次構築物、またはmmRNAは、陽性センスまたは陰性センス鎖RNAウイルスゲノムのすべてまたは一部をコードし得る(各々が参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第WO2012092569号および米国公開第US20120177701号を参照のこと)。別の非限定的な例において、本発明の免疫刺激性ポリヌクレオチド、一次構築物、またはmmRNAは、本明細書に記載され、かつ/または当技術分野で既知の投与用賦形剤を用いて製剤化されてもよい(各々が参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第WO2012068295号および米国公開第US20120213812号を参照のこと)。」

(1−9)([0001053])
「シュードウリジン:本明細書で使用されるとき、シュードウリジンは、ヌクレオシドウリジンのC−グリコシド異性体を指す。「シュードウリジン類似体」は、シュードウリジンの任意の修飾、変異形、アイソフォーム、または誘導体である。例えば、シュードウリジン類似体には、1−カルボキシメチル−シュードウリジン、1−プロピニル−シュードウリジン、1−タウリノメチル−シュードウリジン、1−タウリノメチル−4−チオ−シュードウリジン、1−メチルシュードウリジン(m1ψ)、1−メチル−4−チオ−シュードウリジン(m1s4ψ)、4−チオ−1−メチル−シュードウリジン、3−メチル−シュードウリジン(m3ψ)、2−チオ−1−メチル−シュードウリジン、1−メチル−1−デアザ−シュードウリジン、2−チオ−1−メチル−1−デアザ−シュードウリジン、ジヒドロシュードウリジン、2−チオ−ジヒドロシュードウリジン、2−メトキシウリジン、2−メトキシ−4−チオ−ウリジン、4−メトキシ−シュードウリジン、4−メトキシ−2−チオ−シュードウリジン、N1−メチル−シュードウリジン、1−メチル−3−(3−アミノ−3−カルボキシプロピル)シュードウリジン(acp3ψ)、および2’−O−メチル−シュードウリジン(ψm)が含まれるが、これらに限定されない。」

(1−10)(実施例95)
「実施例95. mRNA含有フィブリンシーラント研究
A. 修飾mRNAおよび塩化カルシウム再構築の前に、5−メチルシトシンおよびN1−メチル−シュードウリジンで完全に修飾されたか、またはN1−メチル−シュードウリジンで完全に修飾された、ルシフェラーゼmRNA(mRNA配列は配列番号180に示される;約140ヌクレオチドのポリA尾部は配列内に示されない;5’キャップ、キャップ1)を塩化カルシウムに添加する。次いで、その塩化カルシウムを使用して、トロンビンを再構築する。フィブリノーゲンを、製造業者の指示に従って線溶阻害剤溶液で再構築する。修飾mRNAを含有する再構築されたトロンビンおよびフィブリノーゲンを二連式シリンジ中に充填する。マウスに、修飾mRNAを含有する50μLのフィブリノーゲンおよび50μLのトロンビンを皮下に注入するか、または等価用量の修飾ルシフェラーゼmRNAを含有する50μLのPBSを注入した。未処理マウスの対照群も評価する。平均全光束(光子/秒)を判定するために、マウスを既定の間隔で撮像する。
B. 脂質ナノ粒子で製剤化される修飾mRNAおよび塩化カルシウム
再構築の前に、脂質ナノ粒子中で製剤化される、5−メチルシトシンおよびN1−メチル−シュードウリジンで完全に修飾されたか、またはN1−メチル−シュードウリジンで完全に修飾された、ルシフェラーゼmRNA(mRNA配列は配列番号180に示される;約140ヌクレオチドのポリA尾部は配列内に示されない;5’キャップ、キャップ1)を塩化カルシウムに添加する。次いで、その塩化カルシウムを使用して、トロンビンを再構築する。フィブリノーゲンを、製造業者の指示に従って線溶阻害剤溶液で再構築する。修飾mRNAを含有する再構築されたトロンビンおよびフィブリノーゲンを二連式シリンジ中に充填する。マウスに、50μLのフィブリノーゲンおよび修飾mRNAを含有する50μLのトロンビンを皮下に注入するか、または等価用量の修飾ルシフェラーゼmRNAを含有する50μLのPBSを注入した。未処理マウスの対照群も評価する。平均全光束(光子/秒)を判定するために、マウスを既定の間隔で撮像する。
C. 修飾mRNAおよびフィブリノーゲン
再構築の前に、5−メチルシトシンおよびN1−メチル−シュードウリジンで完全に修飾されたか、またはN1−メチル−シュードウリジンで完全に修飾された、ルシフェラーゼmRNA(mRNA配列は配列番号180に示される;約140ヌクレオチドのポリA尾部は配列内に示されない;5’キャップ、キャップ1)を線溶阻害剤溶液に添加する。次いで、その線溶阻害剤溶液を使用して、フィブリノーゲンを再構築する。トロンビンを、製造業者の指示に従って塩化カルシウム溶液で再構築する。修飾mRNAを含有する再構築されたフィブリノーゲンおよびトロンビンを二連式シリンジ中に充填する。マウスに、50μLのトロンビンおよび修飾mRNAを含有する50μLのフィブリノーゲンを皮下に注入するか、または等価用量の修飾ルシフェラーゼmRNAを含有する50μLのPBSを注入した。未処理マウスの対照群も評価する。平均全光束(光子/秒)を判定するために、マウスを既定の間隔で撮像する。
D. 脂質ナノ粒子で製剤化される修飾mRNAおよびフィブリノーゲン
再構築の前に、脂質ナノ粒子中で製剤化された、5−メチルシトシンおよびN1−メチル−シュードウリジンで完全に修飾されたか、またはN1−メチル−シュードウリジンで完全に修飾された、ルシフェラーゼmRNA(mRNA配列は配列番号180に示される;約140ヌクレオチドのポリA尾部は配列内に示されない;5’キャップ、キャップ1)を線溶阻害剤溶液に添加する。次いで、その線溶阻害剤溶液を使用して、フィブリノーゲンを再構築する。トロンビンを、製造業者の指示に従って塩化カルシウム溶液で再構築する。修飾mRNAを含有する再構築されたフィブリノーゲンおよびトロンビンを二連式シリンジ中に充填する。マウスに、50μLのトロンビンおよび修飾mRNAを含有する50μLのフィブリノーゲンを皮下に注入するか、または等価用量の修飾ルシフェラーゼmRNAを含有する50μLのPBSを注入した。未処理マウスの対照群も評価する。平均全光束(光子/秒)を判定するために、マウスを既定の間隔で撮像する。
E. 修飾mRNAおよびトロンビン
再構築の前に、5−メチルシトシンおよびN1−メチル−シュードウリジンで完全に修飾されたか、またはN1−メチル−シュードウリジンで完全に修飾された、ルシフェラーゼmRNA(mRNA配列は配列番号180に示される;約140ヌクレオチドのポリA尾部は配列内に示されない;5’キャップ、キャップ1)を、製造業者の指示に従って塩化カルシウムで再構築された後の、その再構築されたトロンビンに添加する。次いで、線溶阻害剤溶液を使用して、製造業者の指示に従ってフィブリノーゲンを再構築する。再構築されたフィブリノーゲンおよび修飾mRNAを含有するトロンビンを二連式シリンジ中に充填する。マウスに、修飾mRNAを含有する50μLのトロンビンおよび50μLのフィブリノーゲンを皮下に注入するか、または等価用量の修飾ルシフェラーゼmRNAを含有する50μLのPBSを注入した。未処理マウスの対照群も評価する。平均全光束(光子/秒)を判定するために、マウスを既定の間隔で撮像する。
F. 脂質ナノ粒子で製剤化される修飾mRNAおよびトロンビン
再構築の前に、脂質ナノ粒子中で製剤化された、5−メチルシトシンおよびN1−メチル−シュードウリジンで完全に修飾されたか、またはN1−メチル−シュードウリジンで完全に修飾された、ルシフェラーゼmRNA(mRNA配列は配列番号180に示される;約140ヌクレオチドのポリA尾部は配列内に示されない;5’キャップ、キャップ1)を、製造業者の指示に従って塩化カルシウムで再構築された後のその再構築されたトロンビンに添加する。次いで、線溶阻害剤溶液を使用して、製造業者の指示に従ってフィブリノーゲンを再構築する。再構築されたフィブリノ−ゲンおよび修飾mRNAを含有するトロンビンを二連式シリンジ中に充填する。マウスに、修飾mRNAを含有する50μLのトロンビンおよび50μLのフィブリノーゲンを皮下に注入するか、または等価用量の修飾ルシフェラーゼmRNAを含有する50μLのPBSを注入した。未処理マウスの対照群も評価する。平均全光束(光子/秒)を判定するために、マウスを既定の間隔で撮像する。」

(1−11)(実施例97)
「実施例97. 脂質ナノ粒子静脈内研究
ルシフェラーゼmRNA(mRNA配列は配列番号33907に示される;約160ヌクレオチドのポリA尾部は配列内に示されない;5’キャップ、キャップ1;5−メチルシトシンおよびシュードウリジンで完全に修飾された)を、表148に記載されるように50%のDLin−MC3−DMAまたはDLin−KC2−DMA、38.5%のコレステロール、10%のDSPC、および1.5%のPEGを含有する脂質ナノ粒子中で製剤化した。製剤を静脈内に(I.V.)、0.5mg/kg、0.05mg/kg、0.005mg/kg、または0.0005mg/kgの用量でBalb−Cマウスに投与した。撮像の20分前に、マウスにD−ルシフェリン溶液を150mg/kgで腹腔内注入した。次いで、動物に麻酔をかけ、IVISLuminaII撮像システム(PerkinElmer)を用いて画像を取得した。生物発光を、全マウスの全光束(光子/秒)として測定した。
表148 製剤

DLin−KC2−DMAの場合、マウスを投薬の2時間、8時間、24時間、72時間、96時間、および168時間後に撮像し、平均全光束(光子/秒)を各投与経路およびカチオン性脂質製剤について測定した。背景光束は、約3.66E+05p/sであった。撮像の結果を表149に示す。臓器を8時間時点で撮像し、平均全光束(光子/秒)を肝臓、脾臓、肺、および腎臓について測定した。各臓器に対する対照も分析した。その結果を表148に示す。すべての用量レベルに対するピ−クシグナルは、投与の8時間後であった。種々の臓器(肝臓、脾臓、肺、および腎臓)への分布は、LNP用量を増加させるか、または減少させることによって制御され得る可能性もある。
表149 光束

表150. 臓器の光束

DLin−MC3−DMAの場合、マウスを投薬の2時間、8時間、24時間、48時間、72時間、および144時間後に撮像し、平均全光束(光子/秒)を各投与経路およびカチオン性脂質製剤について測定した。背景光束は、約4.51E+05p/sであった。撮像の結果を表151に示す。臓器を8時間時点で撮像し、平均全光束(光子/秒)を肝臓、脾臓、肺、および腎臓について測定した。各臓器に対する対照も分析した。その結果を表152示す。すべての用量レベルに対するピ−クシグナルは、投与の8時間後であった。種々の臓器(肝臓、脾臓、肺、および腎臓)への分布は、LNP用量を増加させるか、または減少させることによって制御され得る可能性もある。
表151. 光束


表152 臓器の光束



(1−12)([0001471])
「1−メチルシュードウリジンで完全に修飾されたか(Luc−G5−LNP−KC2)、または1−メチルシュードウリジンおよび5−メチルシトシンで完全に修飾された(Luc−G2−LNP−KC2)、ルシフェラーゼ修飾mRNA(mRNA配列は配列番号33907に示される;約140ヌクレオチドのポリA尾部は配列内に示されない;5’キャップ、キャップ1)をカチオン性脂質ナノ粒子(LNP−KC2)中で製剤化した。製剤を鼻腔内に(I.N.)0.3mg/kgの用量でBalb−Cマウスに投与した。撮像の20分前に、マウスにD−ルシフェリン溶液を150mg/kgで腹腔内注入した。次いで、動物に麻酔をかけ、IVILuminaII撮像システム(・・・)を用いて画像を取得した。生物発光を、全マウスの全光束(光子/秒)として測定した。マウスを投薬の2時間、8時間、48時間、および72時間後に撮像し、平均全光束(光子/秒)を測定した。背景光束は、約6.3+05p/sであった。Luc−G5−LNP−KC2またはLuc−G2−LNP−KC2対ビヒクルの撮像の結果を表182に示し、「NT」は試験されなかったことを意味する。」

イ 甲2
甲2には、次の事項が記載されている。甲2は英文であるため、摘記は合議体による翻訳文で示す。
(2−1)(3頁の表1)




ウ 甲3
甲3には、次の事項が記載されている。
甲3は英文であるため、摘記は合議体による翻訳文で示す。
(3−1)(特許請求の範囲)
「1.脂質ナノ粒子で製剤化された、配列番号10を含む哺乳動物を修飾されたmRNAと接触させる工程を備えることを特徴とする、哺乳動物において目的のタンパク質を製造するための方法。」

(3−2)([0004])
「本開示は、特に、タンパク質、タンパク質前駆体、またはタンパク質もしくはタンパク質前駆体の部分的もしくは全体的加工型をコードし得る修飾核酸分子を含む製剤化された組成物を提供する。」

(3−3)([0006])
「1つの実施形態では、修飾mRNAを含む製剤は、少なくとも1つの脂質を含み得るナノ粒子である。脂質は、限定されないが、DLin−DMA、DLin−K−DMA、98N12−5、C12−200、DLin−MC3−DMA、Dlin−KC2−DMA、DODMA、PLGA、PEG、PEG−DMGおよびペグ化脂質から選択され得る。」

(3−4)([0008])
「修飾mRNAの製剤は、融合性脂質、コレステロールおよびPEG脂質を含み得る。製剤は、50:10:38.5:1.5〜3.0(カチオン性脂質:融合性脂質:コレステロール:PEG脂質)のモル比を有し得る。PEG脂質は、限定されないが、PRG−c−DOMG、PEG−DMGから選択され得る。融合性脂質は、DSPCであり得る。」

(3−5)([0010])
「修飾mRNAの製剤は、サイズが4から20μmのPLGAマイクロスフェアであり得る。修飾尾mRNAは、48時間内に製剤から50%の未満放出され得る。PLGAマイクロスフェア製剤は、血清中で安定であり得る。安定性は、製剤化されていない修飾mRNAに対し90%で決定され得る。」

(3−6)([0016])
「修飾mRNAを含む製剤は、脂質ナノ粒子(reLNP)、融合性脂質、コレステロールおよびPEG脂質をモル比50:10:38.5:1.5(reLNP脂質:融合性脂質:コレステロール:PEG脂質)で含む得る速やかに排出されるreLNP脂質を含み得る。融合性脂質は、DSPCであり得、PEG脂質はPEG−c−DOMGであり得る。reLNP脂質内部もしくは末端エステルを含むDLin−DMA内部もしくは末端エステルを含むDLin−MC3−DMAであり得る。」

(3−7)([0026])
「ヌクレオシド修飾は、ピリジン−4−オンリボヌクレオシド・・・1−メチルシュードウリジン、からなる群より選択される化合物を含み得る。」

(3−8)([0028])
「1つの実施形態では、核酸分子の2つの修飾が修飾核酸分子のヌクレオシドに位置し得る。修飾ヌクレオシドは、5−メチルシトシンとシュードウリジンより選択され得る。」

(3−9)([0316])
「修飾ヌクレオチドおよび修飾ヌクレオチドの組み合わせのさらなる例を以下表2に示す。これらの修飾ヌクレオチドの組み合わせは、本発明の修飾核酸またはmmRNAを形成するために使用され得る。特に断らない限り、修飾ヌクレオチドは、本発明の修飾核酸またはmmRNAの天然ヌクレオチドを完全に置き換えてよい。非限定的な例として、天然ヌクレオチドのウリジンは、本明細書に開示される修飾ヌクレオシドの少なくとも1つで部分的に(例えば、約0.1%、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99.9%)置換されてもよい。
表2



(3−10)([0341]〜[0344])
「・・・
免疫反応の活性化:ワクチン
本発明の1つの実施形態では、mRNA分子は生物の免疫反応を引き出すかまたは誘発するために使用され得る。送達されるmRNA分子は、免疫原性ペプチドまたはポリペプチドをコードし得、2以上のそのようなペプチドまたはポリペプチドをコードし得る。
さらに、特定の修飾ヌクレオシドまたはそれらの組み合わせは、本発明の修飾核酸分子またはmmRNAに導入されると、自然免疫反応を活性化する。そのような活性化分子は、ポリペプチドおよび/または他のワクチンと組み合わせるとアジュバントとして有用である。特定の実施形態では、活性化分子は、ワクチンとして有用なポリペプチド配列をコードする翻訳可能領域を含み、したがって自己アジュバントとなる能力を提供する。
1つの実施形態では、本発明の修飾核酸および/またはmmRNAは、免疫原をコードし得る。免疫原をコードする修飾核酸分子および/またはmmRNAの送達は、免疫反応を活性化し得る。非限定的な例として、免疫原をコードする修飾核酸分子および/またはmmRMAは、細胞に送達されて複数の自然反応経路をトリガ−し得る(その全容が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2012006377号を参照)。別の非限定的な例として、免疫原をコードする本発明の修飾核酸とmmRNAは、脊椎動物に、その脊椎動物の免疫原となるのに十分な量で、送達され得る(それらの全容が参照によりそれぞれ本明細書に組み込まれる国際公開第2012006372号と同第2012006369号を参照)。」

(3−11)([0347])
「1つ実施形態では、本発明の自己複製修飾核酸分子またはmmRNAは、免疫反応を生じ得るタンパク質をコードし得る。非限定的な例として、修飾核酸分子および/またはmmRNAは、少なくとも1つの抗原をコードし得る自己複製mRNAであり得る(それらの全容が参照によりそれぞれ本明細書に組み込まれる国際公開第20110300205号と国際公開第2011005799を参照)。」

(3−12)([0351])
「1つの実施形態では、本発明の修飾核酸分子およびmmRNAは、免疫賦活性であり得る。非限定的な例として、修飾核酸分子およびmmRNAは、は、プラス鎖またはマイナス鎖RNAウイルスゲノムの全部または一部をコードし得る(それらの全容が参照によりそれぞれ本明細書に組み込まれる国際公開第2012092569号および米国出願公開第20120177701号を参照)。別の非限定的な例では、本発明の免疫賦活性修飾核酸またはmmRNAは、本明細書に記載されるおよび/または当技術分野で既知の賦形剤とともに投与用に製造され得る(それらの全容が参照によりそれぞれ本明細書に組み込まれる国際公開第2012068295号および米国特許出願公開第20120213812号を参照)。」

(3−13)([0652])
「本発明は、目的のポリペプチドをコードする修飾核酸分子またはmmRNAを組み込むことのできる装置を提供する。この装置は、上記核酸を必要とする対象(例えばヒト患者)に直ちに送達できる製剤の形で核酸を合成するための、安定した製剤にされた試薬を格納する。上記目的のポリペプチドの非限定的な例として、創傷治癒のための増殖因子および/または血管形成促進因子、感染制御を促進するためのペプチド抗生物質、および、新たに特定されたウイルスに対する免疫反応を急速に刺激するための抗原が挙げられる。」

(3−14)([0870])
「シュードウリジン:本明細書において、シュードウリジンは、ウリジンヌクレオシドのC−グリコシド異性体を指す。「シュードウリジンアナログ」は、シュードウリジンの任意の修飾体、変異体、異性体または誘導体である。たとえば、シュードウリジンアナログには、限定されないが、1−カルボキシメチル−シュードウリジン・・・N1−メチルシュードウリジン・・・が含まれる。」

(3−15)([0962]〜[0963])
「・・・
実施例14
インビボでの製剤の研究」
齧歯類(n=5)は、静脈内、皮下又は筋肉内に少なくとも1つの修飾されたmRNAを含有する製剤の単一投与量を投与される。齧歯類に投与される修飾されたmRNAは、G−CSF(配列番号6に示されるmRNA配列;・・・)、エリスロポエチン(EPO)(配列番号9に示されるmRNA配列;・・・)、第IX因子(配列番号10に示されるmRNA配列;・・・)又はmCherry(配列番号7に示されるmRNA配列;・・・)から選択される。」

(3−16)([1323]〜[1325])
「実施例95:5−メチルシトシン及びN1−メチルシュードウリジン修飾mRNAのカチオン性脂質製剤研究
EPO mRNA(配列番号9;約140ヌクレオチドのポリAテ−ル;5’キャップ,Cap1;5−メチルシトシン及びN1−メチルシュードウリジンで完全に修飾された)又はG−CSFのmRNA(配列番号6;約140ヌクレオチドのポリAテ−ル;5’キャップ,Cap1;5−メチルシトシン及びN1−メチルシュードウリジンで完全に修飾された)は、DLin−MC3−DMA及びDLin−KC2−DMAで処方される表148に記載されている。製剤は、0.05mg/kgの用量で、Balb−Cマウスに静脈内(I.V.)、筋肉(I.M.)、又は皮下(S.C.)投与される。
表148

血清は、製剤投与後のマウスから8時間、24時間、72時間及び/又は7日目に採取する。EPO及びG−CSFのタンパク質発現を決定するために、血清をELISAにより分析される。」

エ 甲4
甲4には、次の事項が記載されている。
甲4は英文であるため、摘記は合議体による翻訳文で示す。
(4−1)(特許請求の範囲)
「1.単離されたポリヌクレオチド
・・・
38.請求項1〜37のいずれか1項に記載の単離されたポリヌクレオチドを備えることを特徴とする医薬組成物。
・・・
42.請求項1〜37のいずれか1項又は請求項38〜41のいずれか1項に記載の医薬組成物の単離されたポリヌクレオチドを細胞、組織又は生物に投与する工程を備えることを特徴とする哺乳動物細胞、組織もしくは生物における目的のポリペプチドの製造方法。」

(4−2)([000151])
「コードされたポリペプチド
本発明の一次構築物またはmmRNAは、生物製剤、抗体、ワクチン、治療用タンパク質もしくはペプチド、細胞透過性ペプチド、分泌タンパク質、原形質膜タンパク質、細胞質もしくは細胞骨格タンパク質、細胞内膜結合タンパク質、核タンパク質、ヒト疾患に関連したタンパク質、標的部分、またはいかなる治療指標も特定されていないにもかかわらず、研究および発見の分野において有用性を有するヒトゲノムによってコードされたタンパク質を含むが、これらに限定されないいくつかの標的カテゴリ−のうちのいずれかから選択される目的とするポリペプチドをコードするように設計され得る。」

(4−3)([000508])
「いくつかの実施形態において、修飾核酸塩基は、修飾ウラシルである。
修飾ウラシルを有する例示の核酸塩基およびヌクレオシドには、シュードウリジン(ψ)、ピリジン−4−オンリボヌクレオシド、5−アザ−ウリジン、6−アザ−ウリジン、2−チオ−5−アザ−ウリジン、2−チオ−ウリジン(s2U)、4−チオ−ウリジン(s4U)、4−チオ−シュードウリジン、2−チオ−シュードウリジン、5−ヒドロキシ−ウリジン(ho5U)、5−アミノアリル−ウリジン、5−ハロ−ウリジン(例えば、5−ヨ−ド−ウリジンまたは5−ブロモ−ウリジン)、3−メチル−ウリジン(m3U)、5−メトキシ−ウリジン(mo5U)、ウリジン5−オキシ酢酸(cmo5U)、ウリジン5−オキシ酢酸メチルエステル(mcmo5U)、5−カルボキシメチル−ウリジン(cm5U)、1−カルボキシメチル−シュードウリジン、5−カルボキシヒドロキシメチル−ウリジン(chm5U)、5−カルボキシヒドロキシメチル−ウリジンメチルエステル(mchm5U)、5−メトキシカルボニルメチル−ウリジン(mcm5U)、5−メトキシカルボニルメチル−2−チオ−ウリジン(mcm5s2U)、5−アミノメチル−2−チオ−ウリジン(nm5s2U)、5−メチルアミノメチル−ウリジン(mnm5U)、5−メチルアミノメチル−2−チオ−ウリジン(mnm5s2U)、5−メチルアミノメチル−2−セレノ−ウリジン(mnm5se2U)、5−カルバモイルメチル−ウリジン(ncm5U)、5−カルボキシメチルアミノメチル−ウリジン(cmnm5U)、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオ−ウリジン(cmnm5s2U)、5−プロピニル−ウリジン、1−プロピニル−シュードウリジン、5−タウリノメチル−ウリジン(τm5U)、1−タウリノメチル−シュードウリジン、5−タウリノメチル−2−チオ−ウリジン(τm5s2U)、1−タウリノメチル−4−チオ−シュードウリジン、5−メチル−ウリジン(m5U、すなわち、核酸塩基デオキシチミンを有するもの)、1−メチルシュードウリジン(m1ψ)・・・が挙げられる。」

(4−4)([000533])
「修飾ヌクレオチドと修飾ヌクレオチドの組み合わせのさらなる例が以下の表9に提供される。修飾ヌクレオチドのこれらの組み合わせを用いて、本発明のポリペプチド、一次構築物、またはmmRNAを形成することができる。別途述べられない限り、修飾ヌクレオチドは、本発明の修飾核酸またはmmRNAの天然ヌクレオチドと完全に置換され得る。非限定的な例として、天然ヌクレオチドウリジンは、本明細書に記載の修飾ヌクレオシドで置換され得る。別の非限定的な例において、天然ヌクレオチドウリジンは、本明細書に開示の修飾ヌクレオシドのうちの少なくとも1つで部分的に置換され得る(例えば、約0.1%、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99.9%)。
表9




(4−5)([000575])
「一実施形態において、LNP製剤は、PEG−DMG 2000(1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコ−ル)−2000)を含有してもよい。一実施形態において、LNP製剤は、当技術分野で既知のカチオン性脂質であるPEG−DMG 2000および少なくとも1つの他の構成成分を含有してもよい。別の実施形態において、LNP製剤は、当技術分野で既知のカチオン性脂質であるPEG−DMG 2000、DSPC、およびコレステロールを含有してもよい。非限定的な例として、LNP製剤は、PEG−DMG 2000、DLin−DMA、DSPC、およびコレステロールを含有してもよい。別の非限定的な例として、LNP製剤は、2:40:10:48のモル比で、PEG−DMG 2000、DLin−DMA、DSPC、およびコレステロールを含有してもよい(例えば、参照により全体が本明細書に組み込まれる、Gealletal.,Nonviraldeliveryofself−amplifying RNA vaccines,PNAS 2012;PMID:22908294を参照のこと)。別の非限定的な例として、本明細書に記載の修飾RNAは、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国公開第20120207845号に記載されるように、非経口経路によって送達されるナノ粒子中に製剤化されてもよい。
一実施形態において、LNP製剤は、各々が参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第WO2011127255号または同第WO2008103276号に記載の方法によって製剤化されてもよい。非限定的な例として、本明細書に記載の修飾RNAは、各々が参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる国際公開第WO2011127255号および/または同第WO2008103276号に記載されるように、LNP製剤中にカプセル封入されてもよい。
一実施形態において、本明細書に記載のLNP製剤は、ポリカチオン性組成物を含んでもよい。非限定的な例として、ポリカチオン性組成物は、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許公開第US20050222064号の式1〜60から選択されてもよい。別の実施形態において、ポリカチオン性組成物を含むLNP製剤は、本明細書に記載の修飾RNAのインビボおよび/またはインビトロでの送達に使用されてもよい。」

(4−6)([000919]〜[000921])
「本発明のポリヌクレオチド、一次構築物および/またはmmRNAは、参照により全体が本明細書に組み込まれる国際公開第WO2013003475号に記載の方法を用いて免疫応答を低減するために使用されてもよい。

免疫応答の活性化:ワクチン
さらに、ある特定の修飾ヌクレオシド、またはその組み合わせは、本発明のポリヌクレオチド、一次構築物、またはmmRNAに導入されると、自然免疫応答を活性化する。そのような活性化分子は、ポリペプチドおよび/または他のワクチンと組み合わせられる場合、アジュバントとして有用である。ある特定の実施形態において、活性化分子は、ワクチンとして有用であるポリペプチド配列をコードする翻訳可能領域を含有し、このようにして、自己アジュバントとなる能力を提供する。
一実施形態において、本発明のポリヌクレオチド、一次構築物、および/またはmmRNAは、免疫原をコードし得る。免疫原をコードするポリヌクレオチド、一次構築物、および/またはmmRNAの送達は、免疫応答を活性化し得る。非限定的な例として、免疫原をコードするポリヌクレオチド、一次構築物、および/またはmmRNAは、複数の自然応答経路を誘起するように細胞へ送達され得る(参照により全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第WO2012006377号を参照のこと)。別の非限定的な例として、免疫原をコードする本発明のポリヌクレオチド、一次構築物、およびmmRNAは、脊椎動物に対する免疫原性となるのに十分に大きい投与量で脊椎動物に送達され得る(各々が参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第WO2012006372号および同第WO2012006369号を参照のこと)。」

(4−7)([000927]〜[000928])
「一実施形態において、本発明のポリヌクレオチド、一次構築物、またはmmRNAは、両親媒性および/または免疫原性の両親媒性ペプチドをコードし得る。
一実施形態において、本発明のポリヌクレオチド、一次構築物、またはmmRNAの製剤は、両親媒性および/または免疫原性の両親媒性ペプチドをさらに含んでもよい。非限定的な例として、両親媒性および/または免疫原性の両親媒性ペプチドを含むポリヌクレオチド、一次構築物、またはmmRNAは、各々が参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、米国公開第US20110250237号、ならびに国際公開第WO2010009277号および同第WO2010009065号に記載されるように製剤化されてもよい。
一実施形態において、本発明のポリヌクレオチド、一次構築物、またはmmRNAは、免疫刺激性であり得る。非限定的な例として、ポリヌクレオチド、一次構築物、またはmmRNAは、陽性センスまたは陰性センス鎖RNAウイルスゲノムのすべてまたは一部をコードし得る(各々が参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第WO2012092569号および米国公開第US20120177701号を参照のこと)。別の非限定的な例において、本発明の免疫刺激性ポリヌクレオチド、一次構築物、またはmmRNAは、本明細書に記載され、かつ/または当技術分野で既知の投与用賦形剤を用いて製剤化されてもよい(各々が参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第WO2012068295号および米国公開第US20120213812号を参照のこと)。」

(4−8)([0001297]〜[0001300])
「・・・
実施例17. 脂質ナノ粒子のインビボ研究
G−CSF(インビトロ転写に使用される、T7プロモーター、5’非翻訳領域(UTR)、および3’UTRを有するcDNAは配列番号169に示される。mRNA配列は配列番号170に示される;約160ヌクレオチドのポリA尾部は配列内に示されない;5’キャップ、キャップ1;5−メチルシトシンおよびシュードウリジンで完全に修飾)および第IX因子(インビトロ転写に使用される、T7プロモーター、5’UTR、および3’UTRを有するcDNAは配列番号177に示される。mRNA配列は配列番号174に示される;約160ヌクレオチドのポリA尾部は配列内に示されない;5’キャップ、キャップ1;5−メチルシトシンおよびシュードウリジンで完全に修飾)修飾mRNAを、シリンジポンプ法を用いて脂質ナノ粒子(LNP)として製剤化した。LNPは、最終的な脂質モル比50:10:38.5:1.5(DLin−KC2−DMA:DSPC:コレステロール:PEG−c−DOMG)で、総脂質と修飾mRNAの重量比20:1で製剤化した。表34に列挙される製剤を、粒径、ゼ−タ電位、およびカプセル封入によって特徴付けた。
表34. 製剤

LNP製剤を、100、10、または1μgの修飾mRNA用量でマウス(n=5)に静脈内投与した。マウスを投薬の8時間後に屠殺した。血清を、心穿刺によってG−CSFまたは第IX因子修飾mRNA製剤を投与したマウスから採取した。タンパク質発現をELISAによって判定した。
G−CSFまたは第IX因子の投与群に、有意な体重減少はなかった(5%未満)。G−CSFまたは第IX因子の投与群のタンパク質発現を、ELISAによって標準曲線から判定した。血清試料を希釈して(G−CSFについては約20〜2500倍および第IX因子については約10〜250倍)、試料が確実に標準曲線の線形範囲内に入るようにした。表35に示されるように、ELISAによって判定されたG−CSFタンパク質発現は、それぞれ、1、10、および100μgの用量群について、約17、1200、および4700ng/mLであった。表36に示されるように、ELISAによって判定された第IX因子タンパク質発現は、それぞれ、1、10、および100μgの用量群について、約36、380、および3000〜11000ng/mLであった。
表35. G−CSFタンパク質発現



オ 甲5
甲5には、次の事項が記載されている。
甲5は英文であるため、摘記は合議体による翻訳文で示す。
(5−1)([0008])
「修飾mRNAの製剤は、融合性脂質、コレステロールおよびPEG脂質を含み得る。製剤は、50:10:38.5:1.5〜3.0(カチオン性脂質:融合性脂質:コレステロール:PEG脂質)のモル比を有し得る。PEG脂質は、限定ではなくPEG−c−DOMG、PEG−DMGから選択され得る。融合性脂質は、DSPCであり得る。」

(5−2)([0016])
「修飾mRNAを含む製剤は、脂質ナノ粒子(reLNP)、融合性脂質、コレステロールおよびPEG脂質をモル比50:10:38.5:1.5(reLNP脂質:融合性脂質:コレステロール:PEG脂質)で含み得る速やかに排出されるreLNP脂質を含み得る。融合性脂質は、DSPCであり得、PEG脂質はPEG−c−DOMGであり得る。reLNP脂質内部もしくは末端エステルを含むDLin−DMA内部もしくは末端エステルを含むDLin−MC3−DMAであり得る。全脂質の修飾mRNAに対する重量比は、10:1から30:1であり得る。」

(5−3)([0026])
「ヌクレオシド修飾は、ピリジン−4−オンリボヌクレオシド、5−アザ−ウリジン、2−チオ−5−アザ−ウリジン、2−チオウリジン、4−チオ−シュードウリジン、2−チオ−シュードウリジン、5−ヒドロキシウリジン、3−メチルウリジン、5−カルボキシメチル−ウリジン、1−カルボキシメチル−シュードウリジン、5−プロピニル−ウリジン、1−プロピニル−シュードウリジン、5−タウリノメチルウリジン、1−タウリノメチル−シュードウリジン、5−タウリノメチル−2−チオ−ウリジン、1−タウリノメチル−4−チオ−ウリジン、5−メチル−ウリジン、1−メチル−シュードウリジン、4−チオ−1−メチル−シュードウリジン、2−チオ−1−メチル−シュードウリジン、1−メチル−1−デアザ−シュードウリジン、2−チオ−1−メチル−1−デアザ−シュードウリジン、ジヒドロウリジン、ジヒドロシュードウリジン、2−チオ−ジヒドロウリジン、2−チオ−ジヒドロシュードウリジン、2−メトキシウリジン、2−メトキシ−4−チオ−ウリジン、4−メトキシ−シュードウリジン、4−メトキシ−2−チオ−シュードウリジン、5−アザ−シチジン、シュードイソシチジン、3−メチル−シチジン、N4−アセチルシチジン、5−ホルミルシチジン、N4−メチルシチジン、5−ヒドロキシメチルシチジン、1−メチル−シュードイソシチジン、ピロロ−シチジン、ピロロ−シュードイソシチジン、2−チオ−シチジン、2−チオ−5−メチル−シチジン、4−チオ−シュードイソシチジン、4−チオ−1−メチル−シュードイソシチジン、4−チオ−1−メチル−1−デアザ−シュードイソシチジン、1−メチル−1−デアザ−シュードイソシチジン、ゼブラリン、5−アザ−ゼブラリン、5−メチル−ゼブラリン、5−アザ−2−チオ−ゼブラリン、2−チオ−ゼブラリン、2−メトキシ−シチジン、2−メトキシ−5−メチル−シチジン、4−メトキシ−シュードイソシチジン、4−メトキシ−1−メチル−シュードイソシチジン、2−アミノプリン、2、6−ジアミノプリン、7−デアザ−アデニン、7−デアザ−8−アザ−アデニン、7−デアザ−2−アミノプリン、7−デアザ−8−アザ−2−アミノプリン、7−デアザ−2,6−ジアミノプリン、7−デアザ−8−アザ−2,6−ジアミノプリン、1−メチルアデノシン、N6−メチルアデノシン、N6−イソペンテニルアデノシン、N6−(シス−ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、2−メチルチオ−N6−(シス−ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、N6−グリシニルカルバモイルアデノシン、N6−スレオニルカルバモイルアデノシン、2−メチルチオ−N6−スレオニルカルバモイルアデノシン、N6,N6−ジメチルアデノシン、7−メチルアデニン、2−メチルチオ−アデニン、2−メトキシ−アデニン、イノシン、1−メチル−イノシン、ワイオシン、ワイブトシン、7−デアザ−グアノシン、7−デアザ−8−アザ−グアノシン、6−チオ−グアノシン、6−チオ−7−デアザ−グアノシン、6−チオ−7−デアザ−8−アザ−グアノシン、7−メチル−グアノシン、6−チオ−7−メチル−グアノシン、7−メチルイノシン、6−メトキシ−グアノシン、1−メチルグアノシン、N2−メチルグアノシン、N2,N2−ジメチルグアノシン、8−オキソ−グアノシン、7−メチル−8−オキソ−グアノシン、1−メチル−6−チオ−グアノシン、N2−メチル−6−チオ−グアノシンおよびN2,N2−ジメチル−6−チオ−グアノシンからなる群より選択される化合物を含み得る。別の実施形態では、修飾は、5−メチルシトシン、シュードウリジンおよび1−メチルシュードウリジンからなる群より独立して選択される。」

(5−4)([00316])
「修飾ヌクレオチドと修飾ヌクレオチドの組合せのさらなる例を以下表2に示す。これらの修飾ヌクレオチドの組合せは、本発明の修飾核酸またはmmRNAを形成するのに使用され得る。特に断らない限り、修飾ヌクレオチドは、本発明の修飾核酸またはmmRNAの天然ヌクレオチドを完全に置き換えてよい。非限定的な例として、天然ヌクレオチドのウリジンは、本明細書に記載される修飾ヌクレオシドで置換されてよい。別の非限定的な例では、天然ヌクレオチドウリジンは、本明細書に開示される修飾ヌクレオシドの少なくとも1つで部分的に(例えば、約0.1%、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99.9%)置換されていてよい。
表2




(5−5)([00340]〜[00343])
「・・・
免疫反応の活性化:ワクチン
本発明の1つの実施形態では、mRNA分子は生物の免疫反応を引き出すかまたは誘発するために使用され得る。送達されるmRNA分子は、免疫原性ペプチドまたはポリペプチドをコードし得、2以上のそのようなペプチドまたはポリペプチドをコードし得る。
さらに、特定の修飾ヌクレオシドまたはそれらの組合せは、本発明の修飾核酸分子またはmmRNAに導入されると、自然免疫反応を活性化する。そのような活性化分子は、ポリペプチドおよび/または他のワクチンと組み合わせるとアジュバントとして有用である。特定の実施形態では、活性化分子は、ワクチンとして有用なポリペプチド配列をコードする翻訳可能領域を含み、したがって自己アジュバントとなる能力を提供する。
1つの実施形態では、本発明の修飾核酸分子および/またはmmRNAは、免疫原をコードし得る。免疫原をコードする修飾核酸分子および/またはmmRNAの送達は、免疫反応を活性化し得る。非限定的な例として、免疫原をコードする修飾核酸分子および/またはmmRNAは、細胞に送達されて複数の自然反応経路をトリガ−し得る(その全容が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第WO2012006377号を参照)。別の非限定的な例として、免疫原をコードする本発明の修飾核酸分子とmmRNAは、脊椎動物に、その脊椎動物の免疫原となるのに十分な量で、送達され得る(それらの全容が参照によりそれぞれ本明細書に組み込まれる国際公開第WO2012006372号と同第WO2012006369号を参照)。」

(5−6)([00346])
「1つの実施形態では、本発明の自己複製修飾核酸分子またはmmRNAは、免疫反応を生じ得るタンパク質をコードし得る。非限定的な例として、修飾核酸分子および/またはmmRNAは、少なくとも1つの抗原をコードし得る自己複製mRNAであり得る(それらの全容が参照によりそれぞれ本明細書に組み込まれる米国出願公開第US20110300205号と国際公開第WO2011005799を参照)。」

(5−7)([00350])
「1つの実施形態では、本発明の修飾核酸分子およびmmRNAは、免疫賦活性であり得る。非限定的な例として、修飾核酸分子およびmmRNAは、プラス鎖またはマイナス鎖RNAウイルスゲノムの全部または一部をコードし得る(それらの全容が参照によりそれぞれ本明細書に組み込まれる国際公開WO第2012092569号および米国出願公開第US20120177701号を参照)。別の非限定的な例では、本発明の免疫賦活性修飾核酸分子またはmmRNAは、本明細書に記載されるおよび/または当技術分野で既知の賦形剤とともに投与用に製剤され得る(それらの全容が参照によりそれぞれ本明細書に組み込まれる国際公開第WO2012068295号および米国出願公開第US20120213812号を参照)。」

(5−8)([00651])
「本発明は、目的のポリペプチドをコードする修飾核酸分子またはmmRNAを組み込むことのできる装置を提供する。この装置は、上記核酸を必要とする対象(例えばヒト患者)に直ちに送達できる製剤の形で核酸を合成するための、安定した製剤にされた試薬を格納する。上記関心のポリペプチドの非限定的な例として、創傷治癒のための増殖因子および/または血管形成促進因子、感染制御を促進するためのペプチド抗生物質、および、新たに特定されたウイルスに対する免疫反応を急速に刺激するための抗原が挙げられる。」

(5−9)([00964]〜[00967])
「・・・
実施例16.脂質ナノ粒子のインビボ試験
G−CSF(インビトロ転写実験に用いられた、T7プロモーター、5’非翻訳領域(UTR)および3’UTRを有するcDNAを配列番号5に示す。mRNA配列は、配列番号6に示す。およそ160ヌクレオチドのポリAテ−ルは配列中に示していない;5’キャップ、キャップ1;5メチルシトシンおよびシュードウリジンで完全に修飾されている)および、IX因子(インビトロ転写実験に用いられた、T7プロモーター、5’非翻訳領域(UTR)および3’UTRを有するcDNAを配列番号13に示す。mRNA配列は配列番号10に示す。およそ160ヌクレオチドのポリAテ−ルは配列中に示していない;5’キャップ、キャップ1;5メチルシトシンおよびシュードウリジンで完全に修飾されている)の修飾mRNAを、シリンジポンプ法を用いて、脂質ナノ粒子(LNP)として製剤化した。LNPは、最終脂質モル比 50:10:38.5:1.5(DLin−KC2−DMA: DSPC:コレステロール:PEG−c−DOMG)で、修飾mRNAに対する総脂質の重量比20:1で製剤化された。表27に、製剤の粒子サイズ、ゼ−タ電位および封入による特徴付けを示す。
表27 製剤

LNP製剤を、修飾mRNAの用量は100μg、10μgまたは1μgで、マウス(n=5)に静脈内投与した。投与8時間後で、マウスを殺処分した。心臓穿刺で血清をマウス(G−CSFまたはIX因子修飾mRNA製剤を投与されている)から採取した。タンパク質発現をELISAにより測定した。
G−CSF投与群またはIX因子投与群において、有意な体重減少(<5%)はなかった。G−CSF投与群またはIX因子投与群のタンパク質発現は、標準曲線からELISAにより測定された。血清試料を希釈し(G−CSFに対しては約20〜2,500倍、IX因子に対しては約10〜250倍)、試料が標準曲線の線形範囲内に確実に入るようにした。表28に示されるように、ELISAにより測定されたG−CSFタンパク質発現は、1、10および100ug投与群に対して、それぞれおよそ17、1200および4700ng/mlであった。表29に示されるように、ELISAにより測定されたIX因子タンパク質発現は、1、10および100ug投与群に対して、それぞれおよそ36,380および3000〜11000ng/mlであった。
表28 G−CSFタンパク質発現



カ 甲9
甲9には、次の事項が記載されている。
甲9は英文であるため、摘記は合議体による翻訳文で示す。

(9−1)(特許請求の範囲)
「1.医薬組成物であって、
i)抗ウイルスポリペプチドをコードする合成メッセンジャ−リボ核酸(mRNA)の有効量;及び
ii)薬学的に許容可能な担体、
を含むものであり、
前記合成mRNAは少なくとも1つのヌクレオシドが修飾ヌクレオチドであり、前記抗ウイルスポリペプチドは、約6〜約100アミノ酸長である、前記医薬組成物。」

(9−2)([0008])
「翻訳可能領域および少なくとも2つの異なるヌクレオシド修飾を含む単離された核酸(例えば、本明細書に記載される抗ウイルスポリペプチドをコードする修飾されたmRNA)であって、前記核酸が導入される細胞において、対応する非修飾核酸と比較して低下した分解を示す、単離された核酸が本明細書で提供される。例えば、核酸の分解率は、対応する非修飾核酸の分解率と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%>低下する。特定の実施態様において、前記核酸は、RNA、DNA、TNA、GNA、またはそれらのハイブリッドを含む。特定の実施態様において、前記核酸は、mRNAを含む。特定の実施態様において前記mRNAは、mRNAが導入される細胞の自然免疫応答を実質的に誘導しない。特定の実施態様では、前記mRNAは、ピリジン−4−オンリボヌクレオシド・・・1−メチル−シュードウリジン・・・からなる群より選択される少なくとも1つのヌクレオシドを含む。」

(9−3)([0041])
「さらに、本明細書に記載の修飾核酸を含む組成物(例えば、医薬組成物)が本明細書に提供される。特定の実施態様において、前記組成物は、薬学的に許容可能なキャリアをさらに含む。特定の実施態様において、前記組成物は、投与は静脈内である。特定の実施態様では、投与は経口である。特定の実施態様では、投与は局所的である。特定の実施態様では、投与は吸入である。特定の実施態様では、投与は直腸である。特定の実施態様では、投与は膣内である。特定の実施態様では、前記組成物は裸の修飾核酸を含む。他の実施態様において、修飾核酸は、複合体化または封入化される。例えば、修飾核酸は、リポソーム形態で複合体化されてもよく、またはナノ粒子中に封入されてもよい。特定の実施態様では、前記修飾核酸、複合体またはナノ粒子は、1つ以上の標的化部分をさらに含む。これらの部分は、特定の器官、組織または細胞へのインビボでの送達を標的化するために使用することができる。」

(9−4)([0080])
「さらに、特定の修飾ヌクレオシドまたはそれらの組み合わせは、修飾核酸に導入されると、自然免疫応答を活性化する。このような活性化修飾核酸(例えば、修飾RN)は、ポリペプチド(例えば、抗ウイルスポリペプチド)または他のワクチンと組み合わせた場合、アジュバントとして有用である。特定の実施形態では、活性化修飾mRNAは、ワクチンとして有益なポリペプチド(例えば、抗ウイルスポリペプチド(例えば、本明細書に記載の抗ウイルスポリペプチド))配列をコードする翻訳可能部位を含み、したがって自己アジュバントであるための能力を付与する。」

(9−5)([0084])
「本明細書中に記載される修飾核酸は、ウイルス感染および/または疾患、障害、ウイルス感染に関連する状態を治療または予防するための治療剤として使用することができる。」

キ 甲10
甲10には、次の事項が記載されている。
(10−1)(特許請求の範囲)
「【請求項1】
目的の免疫原をコードするRNAを中に被包しているリポソームであって、60nm〜180nmの範囲の直径を有する、リポソーム。
・・・
【請求項9】
前記免疫原は、細菌、ウイルス、真菌もしくは寄生生物に対するインビボでの免疫応答を誘発し得る、前述の請求項のいずれかに記載のリポソーム。」

(10−2)
「【0005】
(発明の開示)
本発明によれば、核酸免疫化は、リポソーム内に被包されたRNAを送達することによって達成される。上記RNAは、目的の免疫原をコードし、上記リポソームは、60〜180nmの範囲、および理想的には、80〜160nmの範囲の直径を有する。このサイズは、例えば、エンベロ−プで包まれていないアルファウイルスアイソメトリックタンパク質キャプシドの直径約40nmと匹敵する。小さなリポソームとRNA(特に、自己複製RNA)の効率的な被包との組み合わせは、強力な免疫応答を誘発するための効率的送達を可能にする。」

(10−3)
「【0034】
参考文献9において考察されるように、上記自己複製RNAは、(任意の5’キャップ構造に加えて)改変された核酸塩基を有する1個以上のヌクレオチドを含み得る。・・・例えば、自己複製RNAは、1つ以上の改変されたピリミジン核酸塩基(例えば、シュードウリジンおよび/もしくは5−メチルシトシン残基)を含み得る。・・・」

(10−4)
「【0055】・・・いくつかの実施形態において、上記免疫原は、これらウイルスのうちの1種に対して免疫応答を誘発する:オルソミクソウイルス:有用な免疫原は、インフルエンザA、BもしくはCウイルスに由来し得る(例えば、ヘマグルチニン、ノイラミニダ−ゼもしくはマトリクスM2タンパク質)。上記免疫原がインフルエンザAウイルスヘマグルチニンである場合、それは、任意のサブタイプ(例えば、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15もしくはH16)に由来し得る。」

(10−5)
「【0104】
これら使用および方法により上記脊椎動物における免疫応答を惹起することによって、上記脊椎動物は、上記で考察されるように、種々の疾患および/もしくは感染から(例えば、細菌疾患および/もしくはウイルス疾患から)防御され得る。上記リポソームおよび組成物は、免疫原性であり、より好ましくは、ワクチン組成物である。本発明に従うワクチンは、予防的である(すなわち、感染を妨ぐ)か、もしくは治療的である(すなわち、感染を処置する)のいずれかであり得るが、代表的には、予防的である。
【0105】
上記脊椎動物は、好ましくは、哺乳動物、例えば、ヒトもしくは大型の獣医学的哺乳動物(例えば、ウマ、ウシ、シカ、ヤギ、ブタ)である。上記ワクチンが予防的使用のためのものである場合、上記ヒトは、好ましくは、小児(例えば、幼児もしくは乳児)またはティ−ンエイジャ−である;上記ワクチンが治療的使用のためのものである場合、上記ヒトは、好ましくは、ティーンエイジャーもしくは成人である。小児用に意図されたワクチンはまた、例えば、安全性、投与量、免疫原性などを評価するために、成人に投与され得る。
【0106】
本発明に従って調製されるワクチンは、小児および成人の両方を処置するために使用され得る。従って、ヒト患者は、1歳未満、5歳未満、1〜5歳、5〜15歳、15〜55歳、もしくは少なくとも55歳であってもよい。上記ワクチンを受けるのに好ましい患者は、高齢者(例えば、≧50歳、≧60歳、および好ましくは、≧65歳)、若年者(例えば、≦5歳)、入院患者、ヘルスケアワーカー、軍従事者、および軍職員、妊婦、慢性疾患患者、もしくは免疫不全患者である。しかし、上記ワクチンは、これらの群にのみ適切であるわけではなく、より一般に、集団において使用され得る。」

(10−6)
「【0157】
(大型哺乳動物研究)
大型動物研究を、ウシにおいて行った。仔ウシ(4〜6週齢,約60〜80kg,5頭/群)を、全長RSVFタンパク質をコードするレプリコンvA31766μgで、0日目、21日目、86日目および146日目に免疫化した。上記レプリコンを、方法(E)によって(ただし1.5mgRNAバッチサイズで)作製したリポソームの中に処方した;それらは、40%DlinDMA、10%DSPC、48%コレステロール、および2%PEG−2000(DMGに結合体化)を有した。PBS単独を、陰性コントロールとして使用し、認可されたワクチンを、陽性コントロールとして使用した(Fort Dodgeの「Triangle4」,死滅ウイルスを含む)。全ての仔ウシに、146日目に、MF59エマルジョンをアジュバント添加した15μgFタンパク質を与えた。
【0158】
上記RNAワクチンは、ヒトRSVFをコードしたのに対して、上記「Triangle4」ワクチンは、ウシRSVFを含むが、上記RSVFタンパク質は、BRSVとHRSVとの間で非常によく保存されている。
【0159】
仔ウシに、各実験ワクチン2mlを与え、頸部の各側に2×1mlとして筋肉内投与した。対照的に、上記「Triangle4」ワクチンは、頸部に単一の2ml用量として与えた。
【0160】
0日目、14日目、21日目、35日目、42日目、56日目、63日目、86日目、100日目、107日目、114日目、121日目、128日目、135日目、146日目、160日目、167日目、174日目、181日目、188日目、195日目、および202日目に、抗体分析のために血清を集めた。個々の動物が検出限界より低い力価を有した場合、それには、力価5を割り当てた。
【0161】
図14は、210日間にわたるF特異的IgG力価を示す。最初の63日間にわたって、上記RNAレプリコンは、リポソームを介して雌ウシにおいて免疫原性であったが、上記認可されたワクチンより低い力価を与えた。全てのワクチン接種した雌ウシは、第2の用量の後にF特異的抗体を示し、力価は、上記第2の用量後の2〜6週の期間、非常に安定であった(そして上記RNAワクチンに関しては、特に安定であった)。202日目までの力価は、以下のとおりであった:
【0162】

RSV血清中和抗体力価は、以下のとおりであった:
【0163】

上記第2のリポソーム用量のために使用した物質は、新たに調製しなかったので、RNAのそのロットは、マウス免疫原性研究において効力の低下を示した。従って、新たな材料を全てのワクチン接種のために使用していれば、上記ワクチンはより免疫原性であったと考えられる。
【0164】
補体でアッセイされる場合、中和抗体を、全てのワクチン接種した雌ウシにおいて検出した。このアッセイにおいて、全てのワクチン接種した仔ウシは、第2のRNAワクチン接種の後に、良好な中和抗体力価を有した。さらに、上記RNAワクチンは、F特異的血清IgG力価を誘発し、これは、上記第2のワクチン接種の後に数頭の仔ウシにおいて、および第3のワクチン接種の後に全ての仔ウシにおいて検出された。
【0165】
MF59アジュバント添加したRSV−Fは、全ての以前にワクチン接種した仔ウシにおいてIgG応答をブ−ストでき、RNAを以前にワクチン接種した仔ウシの補体非依存性中和力価をブ−ストできた。
【0166】
大型動物におけるRNAワクチンの概念の立証は、小動物モデルから大型動物およびヒトへと移行する場合に、DNAベ−スのワクチンで以前に観察された効力の喪失を踏まえると、特に重要である。雌ウシDNAワクチンの代表的な用量は、0.5〜1mgである[40,41]ので、免疫応答がわずか66μgのRNAで誘導されたことは、非常に有望である。」

ク 甲11
甲11には、次の事項が記載されている。
甲11は英文であるため、摘記は合議体による翻訳文で示す。
(11−1)(特許請求の範囲)
「5.少なくとも1つの化学修飾を含むヌクレオシドまたは修飾ヌクレオチドが、ジヒドロウリジン、メチルアデノシン、メチルシチジン、メチルグアノシン、メチルウリジン、メチルシュードウリジン、チオウリジン、デオキシシトジン、およびデオキシウリジンからなる群より選択されるヌクレオシドを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の自己複製RNA分子。
・・・
7.前記自己複製RNA分子が少なくとも1種の高原をコードする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の自己複製RNA分子。
8.前記抗原が、ウイルス、細菌、真菌、または原生動物の抗原である、請求項7に記載の自己複製RNA分子。
・・・
13.前記自己複製RNA分子が、カチオン性脂質、リポソーム、コキレート、ビロソーム、免疫刺激複合体、微粒子、ミクロスフェア、ナノスフェア、単層小胞、多層小胞、水中油型エマルション、油中水型エマルション、エマルソーム、およびポリカチオン性ペプチド、カチオン性ナノエマルションおよびそれらの組み合わせ中に封入されているか、それらに結合しているか、またはそれら上に吸着している、請求項10〜12のいずれか1つに記載の自己複製RNA分子。」

(11−2)([0024])
「別の態様において、本発明は、本明細書中に記載される自己複製RNA分子、ならびに薬学的に許容可能なキャリアおよび/または薬学的に許容可能なビヒクルを含む医薬組成物(例えば、免疫原性組成物およびワクチン)に関する。前記医薬組成物は、少なくとも1つのアジュバントおよび/または核酸送達系をさらに含むことができる。いくつかの実施態様では、カチオン性脂質、リポソーム、コキレート、ビロソーム、免疫刺激複合体、微粒子、ミクロスフェア、ナノスフェア、単層小胞、多層小胞、水中油型エマルション、油中水型エマルション、エマルソーム、およびポリカチオン性ペプチド、カチオン性ナノエマルションおよびそれらの組み合わせをさらに含む。」

(11−3)([0056])
「本発明の自己複製RNA分子は、1種以上の修飾ヌクレオチドを含む。本発明の自己複製RNA分子は、RNAウイルスのゲノムRNAをベースとするが、1または複数の構造タンパク質をコードする遺伝子を欠く。前記自己複製RNA分子は、翻訳されてRNAウイルスの非構造タンパク質および自己複製RNAによってコードされる異種タンパク質を産生することができる。」

(11−4)([00130])
「適切な抗原としては、ウイルス、細菌、真菌、原生動物、植物などの病原体由来の、または腫瘍由来のタンパク質およびペプチドが挙げられる。自己複製RNA分子によってコードされ得るウイルス抗原としては:オルトミクソウイルス、例えばインフルエンザA型、B型およびC型;・・・からのタンパク質およびペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。」

(11−5)([00203])
「リポソーム製剤−RVO1(O1):
エタノール中の新鮮な脂質ストック溶液を調製した。37mgのDlinDMA、11.8mgのDSPC、27.8mgのコレステロールおよび8.07mgのPEG DMG 2000を秤量し、7.55mLのエタノールに溶解した。新たに調製した脂質ストック溶液を37℃で約15分間穏やかに振盪して、均質な混合物を形成した。次に、755μLのストックを1.245mLのエタノールに添加して、2mLの作業用脂質ストック溶液を作製した。この量の脂質を使用して、8:1のN:P(窒素対リン酸)比で250μgのRNAを有するリポソームを形成した。DlinDMA(カチオン性脂質)上のプロトン化可能な窒素およびRNA上のホスフェートがこの計算に使用される。各μgの自己複製RNA分子は3nmolのアニオン性ホスフェートを含有すると仮定され、各μgのDlinDMAは1.6nmolのカチオン性窒素を含有すると仮定された。100niMクエン酸緩衝液(pH6)(・・・)中の1μg/μLのストック溶液からRNAの2mL作業用溶液も調製した。3つの20mLガラスバイアル(撹拌バ−を有する)を、使用前に、RNase Away溶液(・・・)でリンスし、そして多量のMiIIiQ水で洗浄し、バイアルからRNaseを除染した。バイアルの1つをRNA作業用溶液に使用し、他を脂質およびRNAミックスを収集するために使用した。3ccのluer−lok注射器(・・・)に装填する前に、作業用脂質およびRNA溶液を37℃で10分間加熱した。2mLのクエン酸緩衝液(pH6)を別の3cc注射器に装填した。RNAおよび脂質を含有するシリンジを、FEPチューブ(・・・)を使用してTミキサー(・・・)に接続した。Tミキサーからの出口もFEPチューブ(2mm ID×3mm)であった。クエン酸緩衝液を含む第3のシリンジを、別個のチューブ(・・・)に接続した。次いで、シリンジポンプ(・・・)を使用して、ずべてのシリンジを7mL/分の流速で駆動した。管出口を、混合物を(撹拌しながら)20mLガラスバイアル中に収集するように配置した。攪拌バーを取り出し、エタノール/水溶液を室温で1時間平衡化させた。4mLの混合物を5ccのシリンジ(・・・)に装填し、これをFEPチューブ(・・・)に接続し、等長のFEPチューブに接続した別の5ccシリンジに、等量の100mMクエン酸緩衝液(pH6)を装填した。シリンジポンプを用いて2つのシリンジを7mL/分の流速で駆動し、最終混合物を20mLガラスバイアルに収集した(撹拌しながら)。次に、第2の混合ステップから収集した混合物(LNP)をMustang Q膜(・・・)に通した。リポソームを通過させる前に、4mLの1M NaOH、4mLの1M NaClおよび10mLの100mMクエン酸緩衝液(pH6)を、Mustang膜に連続的に通過させた。リポソームを37℃で10分間加温した後、Mustangフィルタ−を通過させた。次に、リポソームを2mLに濃縮し、タンジェンシャルフロ−濾過(TFF)システムを用いて10〜15容量のIX PBS(・・・)に対して透析した後、最終生成物を回収した。TFFシステムおよび中空糸濾過膜はSpectrum Labs(・・・)から購入し、製造業者のガイドラインに従って使用した。100kDのポアサイズカットオフおよび8cm2の表面積を有するポリスルホン中空糸濾過膜(・・・)を使用した。インビトロおよびインビボ実験のために、製剤を、1×PBS(・・・)を用いて必要なRNA濃度に希釈した。」

ケ 甲12
甲12には、次の事項が記載されている。
(12−1)
「【請求項 1】
少なくとも50歳の年齢を示す高齢患者における疾患の予防及び治療の少なくともいずれかにおける使用のための、少なくとも1つの抗原をコードする少なくとも1つのmRNAを含むワクチンであって、前記治療が、前記患者のワクチン接種を含み、前記患者における免疫応答を誘発することを特徴とするワクチン。」

(12−2)
「【0001】
本発明は、高齢患者、好ましくは少なくとも50歳、より好ましくは少なくとも55歳、60歳、65歳、70歳、又はそれ以上の年齢の患者における疾患の治療における使用のための少なくとも1つの抗原をコードする少なくとも1つのmRNAを含むワクチンであって、前記治療が、患者にワクチンを接種して、前記患者における免疫応答を引き起こすワクチンに関する。本発明は、更に、そのようなワクチン及び/又はその成分を含むキット及び部品のキット、並びにそのようなワクチン又はキットを適用する方法を対象とする。」

(12−3)
「【0022】
病原性抗原としては特に、例えばインフルエンザ由来の抗原、好ましくは、インフルエンザA、インフルエンザB、インフルエンザC又はトゴトウイルス由来の抗原、好ましくは、インフルエンザ抗原のヘマグルチニン(HA)及びノイラミニダーゼ(NA)の少なくともいずれか、好ましくは、ヘマグルチニンのサブタイプH1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14又はH15由来のインフルエンザ抗原及びノイラミニダーゼのサブタイプN1、N2、N3、N4、N5、N6、N7、N8又はN9由来のインフルエンザ抗原の少なくともいずれか、又は好ましくはインフルエンザAのサブタイプH1N1、H1N2、H2N2、H2N3、H3N1、H3N2、H3N3、H5N1、H5N2、H7N7又はH9N2、或いは任意の更なる組合せから選択されるもの、或いはマトリックスタンパク質1(M1)、イオンチャネルタンパク質M2(M2)や核タンパク質(NP)等から選択されるもの、或いは例えばFタンパク質やGタンパク質等を含む呼吸器合胞体ウイルス(RSV)由来の抗原が挙げられる。」

コ 甲13
甲13には、次の事項が記載されている。
甲13は英文であるため、摘記は合議体による翻訳文で示す。
(13−1)(図2)


図2 インフルエンザウイルス血球凝集素の構造的特徴
・・・」

サ 甲14
甲14には、次の事項が記載されている。
甲14は英文であるため、摘記は合議体による翻訳文で示す。
(14−1)([0065]、[0066])
「本発明の方法および装置に従って製造される脂質ナノ粒子の好ましいサイズは、直径約25〜200nmである。特定の態様において、前記脂質ナノ粒子調製物は、平均サイズ(例えば、直径)が約70nm〜約200nmであり、より典型的には、平均サイズが約100nm未満である、サイズ分布を有する。
特定の態様において、本発明の資質ナノ粒子製剤(例えば、LNP製剤)は、4つの脂質成分、すなわちリン脂質;コレステロール;PEG−脂質;およびカチオン性脂質を含む。一態様では、リン脂質はDSPCであり、PEG−脂質はPEG−S−DMGであり、カチオン性脂質はCLinDMAまたはDLinDMAである。一態様ではモル組成は湯悪60:38:2のCLinDMA:コレステロールPEG−DMGである。別の態様では、LNP製剤は、40:48:10:2のDLinDMA:コレステロール:DSPC:PEG−DMGである。・・・」

シ 甲15
甲15には、次の事項が記載されている。
甲15は英文であるため、摘記は合議体による翻訳文で示す。
(15−1)(特許請求の範囲)
「1.目的のポリペプチドを、それを必要とする哺乳動物対象の細胞、組織、または体液において産生する方法であって、
ポリヌクレオチドを含む医薬組成物を前記対象に投与することを含み、前記ポリヌクレオチドが、配列番号4、7、8、および12からなる群から選択される配列を含む方法。
2.前記ポリヌクレオチドが、5’Cap1構造および約160ヌクレオチド長のポリAテ−ルをさらに含む、請求項1に記載の方法。」

(15−2)(1頁13〜14行)
「本発明は、送達方法に関する。本方法は、修飾mRNA(mmRNA)などの修飾核酸の治療剤送達にとくに有用である。」

(15−3)(18頁27行〜19頁3行)
「治療
本明細書に記載のmmRNA(修飾RNA)およびmmRNAから翻訳されたタンパク質は、治療剤として使用可能である。たとえば、本明細書に記載のmmRNAは、対象に投与可能であり、この場合、mmRNAは、対象においてin vivoで翻訳されて治療用ポリペプチドを産生する。提供されているのは、ヒトおよび他の哺乳動物において疾患または病態を治療または予防するための組成物、方法、キット、および試薬である。本発明に係る活性治療剤は、mmRNA、mmRNAまたはmmRNAから翻訳されたポリペプチドを含有する細胞、mmRNAから翻訳されたポリペプチドを含む。」

(15−4)(84頁30行〜86頁7行)
「実施例9〜13のための材料および方法
A.脂質合成
修飾RNAを用いて製剤化されるために、当技術分野に概説される方法により、6種の脂質DLin−DMA、DLin−K−DMA、DLin−KC2−DMA、98N12−5、C12−200、およびDLin−MC3−DMAを合成した。DLin−DMAおよび前駆体は、ヘイエス(Heyes)ら著、制御放出誌(J.ControlRelease)、2005年、第107巻、276−287頁に記載されるように合成した。DLin−K−DMAおよびDLin−KC2−DMAおよび前駆体は、センペル(Semple)ら著、自然生物工学(Nature Biotechnology)、2010年、第28巻、172−176頁に記載されるように合成した。98N12−5および前駆体は、アキンク(Akinc)ら著、自然生物工学(NatureBiotechnology)、2008年、第26巻、561−569頁に記載されるように合成した。
C12−200および前駆体は、ラブ(Love)ら著、米国国立科学アカデミ−紀要(PNAS)、2010年、第107巻、1864−1869頁に概説された方法に従って合成した。アミン200(0.723g、3.36mmol、1eq)および撹拌子を含有するバイアルに2−エポキシドデカン(5.10g、27.7mmol、8.2eq)を添加した。バイアルを密閉し80℃に加温した。反応系を80℃で4日間攪拌した。次いで、純粋ジクロロメタン(DCM)からDCM:MeOH98:2までのグラジエントを用いてシリカゲルクロマトグラフィーにより、混合物を精製した。目標化合物をRP−HPLCによりさらに精製して、所望の化合物を得た。
DLin−MC3−DMAおよび前駆体は、国際公開第2010054401号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載の手順に従って合成した。10mLのDMF中のジリノレイルメタノ−ル(1.5g、2.8mmol、1eq)、N,N−ジメチルアミノ酪酸(1.5g、2.8mmol、leq)、DIPEA(0.73mL、4.2mmol、1.5eq)、およびTBTU(1.35g、4.2mmol、1.5eq)の混合物を室温で10時間攪拌した。次いで、反応混合物をエ−テルで希釈し、水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、そして減圧下で濃縮した。DCMからDCM:MeOH(98:2)へのグラジエントを用いてシリカゲルクロマトグラフィーにより、粗生成物を精製した。続いて、目標化合物を追加のRP−HPLC精製に付した。これをYMC−パックC4(YMC−Pack C4)カラムにより行って、目標化合物を得た。
B.修飾RNAナノ粒子の製剤
合成脂質1、2−ジステアロイル−3−ホスファチジルコリン(DSPC)(アバンティ・ポ−ラ・リピッド(Avanti Polar Lipids)、アラバマ州アラバスタ−(Alabaster,AL))、コレステロール(シグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)、独国タウフキルヘン(Taufkirchen,Germany))、およびα−[3’−(1,2−ジミリストイル−3−プロパンオキシ)−カルボキサミドプロピル]−ω−メトキシポリオキシエチレン(PEGc− DOMG)(NOF、ベルギ−国ボウェルベン(Bouwelven,Belgium))の溶液をエタノール中に50mMの濃度で調製して、−20℃で貯蔵した。脂質を組み合わせて50:10:38.5:1.5(脂質:DSPC:コレステロール:PEGc−DOMG)のモル比を取得し、そしてエタノールで希釈して25mMの最終脂質濃度にした。水中1〜2mg/mLの濃度の修飾mRNAの溶液をpH3の50mMクエン酸ナトリウム緩衝液で希釈して、ストック修飾mRNA溶液を形成した。合成脂質溶液と修飾mRNA溶液とを10:1、15:1、20:1、および30:1の全脂質対修飾mRNA重量比で組み合わせることにより、脂質および修飾mRNAの製剤を調製した。脂質エタノール性溶液を迅速に水性修飾mRNA溶液に注入して33%エタノールを含有する懸濁液を得た。溶液を手動(MI)でまたはシリンジポンプ(SP)(HarvardPump33DualSyringePumpHarvardApparatusHolliston,MA)の助けを借りて注入した。」

(15−5)(91頁5行〜92頁2行)
「実施例13.invivo製剤研究
修飾mRNAおよび脂質を含有する単回用量の製剤をマウス(n=5)に静脈内投与した。マウスに投与される修飾mRNAは、G−CSF(配列番号4に示されるmRNA配列;配列には示されていない約160ヌクレオチドのポリAテール;5’キャップ、Cap1)、エリトロポイエチン(EPO)(配列番号7に示されるmRNA配列;配列には示されていない約160ヌクレオチドのポリAテール;5’キャップ、Cap1)、第IX因子(配列番号8に示されるmRNA配列;配列には示されていない約160ヌクレオチドのポリAテール;5’キャップ、Cap1)、またはmCherry(配列番号5に示されるmRNA配列;配列には示されていない約160ヌクレオチドのポリAテール;5’キャップ、Cap1)から選択される。invitro転写(IVT)で使用した、T7プロモーター、5’非翻訳(UTR)、および3’UTRを有するエリトロポイエチンcDNAは、配列番号9に与えられている。」

(15−6)(表15)
「表15



ス 甲16
甲16には、次の事項が記載されている。
甲16は英文であるため、摘記は合議体による翻訳文で示す。
(16−1)([0003])
「本明細書に提供されるのは、flu血球凝集素ポリペプチド、例えば、キメラインフルエンザウイルス血球凝集素ポリペプチド、それを含む組成物、それを含むワクチン、及びそれらの使用方法である。」

(16−2)([0057])
「本明細書で使用されるように、「核酸」という用語は、DNA分子(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)及びRNA分子(例えば、mRNA)及びヌクレオチド類自体を用いて作製されたDNA又はRNAの類似体を含むことが意図される。核酸は、一本鎖又は二本鎖であることができる。」

セ 甲17
甲17には、次の事項が記載されている。
(17−1)
「【0028】
前述の方法、細胞、培養物、組成物、製剤、およびキットの実施形態は、以下の特徴の
1つ以上を含みうる。
いくつかの実施形態では、第1の単離核酸は、メッセンジャ−RNA(mRNA)を含む。いくつかの実施形態では、mRNAは、ピリジン−4−オンリボヌクレオシド、5−アザ−ウリジン、2−チオ−5−アザ−ウリジン、2−チオウリジン、4−チオ−プソイドウリジン、2−チオ−プソイドウリジン、5−ヒドロキシウリジン、3−メチルウリジン、5−カルボキシメチル−ウリジン、1−カルボキシメチル−プソイドウリジン、5−プロピニル−ウリジン、1−プロピニル−プソイドウリジン、5−タウリノメチルウリジン、1−タウリノメチル−プソイドウリジン、5−タウリノメチル−2−チオ−ウリジン、1−タウリノメチル−4−チオ−ウリジン、5−メチル−ウリジン、1−メチル−プソイドウリジン、4−チオ−1−メチル−プソイドウリジン、2−チオ−1−メチル−プソイドウリジン、1−メチル−1−デアザ−プソイドウリジン、2−チオ−1−メチル−1−デアザ−プソイドウリジン、ジヒドロウリジン、ジヒドロプソイドウリジン、2−チオ−ジヒドロウリジン、2−チオ−ジヒドロプソイドウリジン、2−メトキシウリジン、2−メトキシ−4−チオ−ウリジン、4−メトキシ−プソイドウリジン、および4−メトキシ−2−チオ−プソイドウリジンからなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態では、mRNAは、5−アザ−シチジン、プソイドイソシチジン、3−メチル−シチジン、N4−アセチルシチジン、5−ホルミルシチジン、N4−メチルシチジン、5−ヒドロキシメチルシチジン、1−メチル−プソイドイソシチジン、ピロロ−シチジン、ピロロ−プソイドイソシチジン、2−チオ−シチジン、2−チオ−5−メチル−シチジン、4−チオ−プソイドイソシチジン、4−チオ−1−メチル−プソイドイソシチジン、4−チオ−1−メチル−1−デアザ−プソイドイソシチジン、1−メチル−1−デアザ−プソイドイソシチジン、ゼブラリン、5−アザ−ゼブラリン、5−メチル−ゼブラリン、5−アザ−2−チオ−ゼブラリン、2−チオ−ゼブラリン、2−メトキシ−シチジン、2−メトキシ−5−メチル−シチジン、4−メトキシ−プソイドイソシチジン、および4−メトキシ−1−メチル−プソイドイソシチジンからなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態では、mRNAは、2−アミノプリン、2,6−ジアミノプリン、7−デア−ザアデニン、7−デアザ−8−アザ−アデニン、7−デアザ−2−アミノプリン、7−デアザ−8−アザ−2−アミノプリン、7−デアザ−2,6−ジアミノプリン、7−デアザ−8−アザ−2,6−ジアミノプリン、1−メチルアデノシン、N6−メチルアデノシン、N6−イソペンテニルアデノシン、N6−(cis−ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、2−メチルチオ−N6−(cis−ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン、N6−グリシニルカルバモイルアデノシン、N6−トレオニルカルバモイルアデノシン、2−メチルチオ−N6−トレオニルカルバモイルアデノシン、N6,N6−ジメチルアデノシン、7−メチルアデニン、2−メチルチオ−アデニン、および2−メトキシ−アデニンからなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態では、mRNAは、イノシン、1−メチル−イノシン、ワイオシン、ワイブトシン、7−デアザ−グアノシン、7−デアザ−8−アザ−グアノシン、6−チオ−グアノシン、6−チオ−7−デアザ−グアノシン、6−チオ−7−デアザ−8−アザ−グアノシン、7−メチル−グアノシン、6−チオ−7−メチル−グアノシン、7−メチルイノシン、6−メトキシ−グアノシン、1−メチルグアノシン、N2−メチルグアノシン、N2,N2−ジメチルグアノシン、8−オキソ−グアノシン、7−メチル−8−オキソ−グアノシン、1−メチル−6−チオ−グア グアノシン、およびN2,N2−ジメチル−6−チオ−グアノシンからなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオシドを含む。」

(17−2)
「【0036】
タンパク質産生のための細胞内への修飾RNAまたは一過性RNAの導入
一過性トランスフェクト細胞は、当業者に周知のトランスフェクション法、電気穿孔法、カチオン剤法、ポリマ−法、または脂質系送達分子法により生成可能である。修飾一過性RNAは、適切であれば、伝統的バッチ式工程または連続フロースルー工程のいずれかで培養細胞内に導入可能である。本開示に係る方法および組成物は、1つ以上の対象のタンパク質の産生の増大を伴う細胞を産生するために使用可能である。細胞に1つ以上のRNAをトランスフェクトまたは他の形で導入することが可能である。細胞は、2つ以上のRNA構築物で同時にまたは逐次的にトランスフェクト可能である。特定の実施形態では、本明細書で説明される方法を複数ラウンド用いて、1つ以上の対象のRNAまたはタンパク質の発現増大を有する細胞を得ることが可能である。たとえば、本明細書で説明される方法に従って、対象のRNAまたはタンパク質をコードする1つ以上のRNA構築物を細胞にトランスフェクトして単離することが可能である。次いで、単離された細胞を、対象のRNAまたはタンパク質をコードする1つ以上の他のRNAによるさらなるトランスフェクションラウンドに付して、単離することが可能である。たとえば、この方法は、タンパク質の複合体、同一もしくは関連の生物学的経路のRNAもしくはタンパク質、互いの上流または下流で作用するRNAもしくはタンパク質、互いに調整、活性化、もしくは抑制する機能を有するRNAもしくはタンパク質、互いに機能もしくは活性を依存するRNAもしくはタンパク質、または相同性(たとえば、配列、構造、もしくは機能の相同性)を共有するRNAもしくはタンパク質の発現増大を有する細胞を生成するのに有用である。たとえば、この方法は、免疫グロブリンタンパク質(たとえば、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM)の重鎖および軽鎖またはその抗原結合フラグメントの発現増大を有する細胞系を生成するために使用可能である。免疫グロブリンタンパク質は、完全ヒト、ヒト化、またはキメラの免疫グロブリンタンパク質でありうる。本開示に係る細胞内にトランスフェクトされるRNAは、対象のタンパク質をコードするRNAである配列を含みうる。本明細書で説明される方法に従って任意のタンパク質を産生することが可能である。本開示に係る方法に従って産生可能なタンパク質の例は、ペプチドホルモン(たとえば、インスリン)、糖タンパク質ホルモン(たとえば、エリスロポエチン)、抗生物質、サイトカイン、酵素、ワクチン(たとえば、HIVワクチン、HPVワクチン、およびHBVワクチン)、抗癌療法剤(たとえば、Mucl)、および治療用抗体を含むが、これらに限定されるものではない。特定の実施形態では、RNAは、免疫グロブリンタンパク質またはその抗原結合フラグメント、たとえば、免疫グロブリン重鎖、免疫グロブリン軽鎖、一本鎖Fv、抗体のフラグメント、たとえば、Fab、Fab’、もしくは(Fab’)2、または免疫グロブリンの抗原結合フラグメントをコードする。特定の実施形態では、RNAは、エリスロポエチンをコードする。他の特定の実施形態では、RNAは、細胞表面レセプタ−、すなわち、表皮増殖因子レセプタ−(EGFR)、HER2、またはc−ErbB−1に結合する、かつ任意選択により、それをアンタゴナイズまたはアゴナイズする、1つ以上の免疫グロブリンタンパク質またはそのフラグメント、たとえば、エルビタックス(Erbitux)(商標)(セツキシマブ)をコードする。」

ソ 甲18
甲18には、次の事項が記載されている。
甲18は英文であるため、摘記は合議体による翻訳文で示す。
(18−1)([0001402]〜[0001427])
「・・・
実施例15.インフルエンザ研究
本研究は2段階で計画された。インフルエンザA/PR/8(H1N1)由来のHAをコードするmRNAワクチンの免疫原性をマウスにおいて試験するための第1段階と、インフルエンザ(INFV)A/PR/8/34(H1N1)による致死的チャレンジに対する候補インフルエンザワクチンの有効性をマウスにおいて試験するための第2段階である。この研究計画を表24に概説する。この研究において使用したNAVポリヌクレオチドは、表21の構築物4(ORF配列番号2045、mRNA配列番号2118)であった。
この研究の第I段階では、0週目と3週目に、静脈内(IV)、筋肉内(IM)、または皮内(ID)経路によって、マウスにワクチン接種した。一つの群にはワクチン接種を行わず、一つの群には不活化PR8抗原を投与した。1週目、3週目(投与前)及び5週目に各マウスから血清を収集した。3つの時点のすべてについて、個々の採血物を、ウイルス中和アッセイ及びHA阻害(HAI)により、抗HA活性について試験し、5週目に得たプール試料だけはA/PR/8/34(H1N1)を用いるウェスタンブロットで試験した。
第II段階
所望の免疫応答が達成されたので(HAI力価>40)、研究の第II段階を行った。第II段階では、致死量(10×LD90;約100プラーク形成単位(PFU))のA/PR/8/34(H1N1)を、鼻腔内(IN)滴下することによって、マウスにチャレンジを行った。体重、健康状態、及び生存について、マウスを14日にわたって監視した。
この研究では、インフルエンザA/PR/8(H1N1)由来のHAをコードするmRNAワクチンの免疫原性をマウスにおいて試験した。この研究では、12群(5匹ずつ)のBALB/c雌マウスを利用した。0週目及び3週目に、鼻腔内(陽性対照)、静脈内、筋肉内、または皮内経路によって、マウスにワクチン接種した。一つの群にはワクチン接種を行わず、一つの群には、鼻腔内ワクチン接種によって不活化PR8抗原を投与した。
この研究では、候補リボ核酸ワクチン及び製剤がマウスを致死的インフルエンザA/PR/8/34(H1N1)感染から保護できるかどうかを試験した。使用したマウスは各10匹の群の6〜8週齢雌BALB/cマウスであった。マウスには、0週目及び3週目に、IM、ID、またはIV経路によってワクチン接種した。マウス血清をマイクロ中和及びHAIについて試験した。次いで、7週目に、鼻腔内(IN)投与される約1LD90のインフルエンザA/PR/8/34(H1N1)で、マウスにチャレンジを行った。エンドポイントは感染後13日目、死亡、または安楽死であった。30%超の体重減少、極度の嗜眠または麻痺によって決定される重篤な病状を呈する動物は安楽死させた。体温及び体重を毎日計測した。
LNP製剤は比が50:10:1.5:38.5のカチオン性脂質、非カチオン性脂質、PEG脂質及び構造脂質からなった。カチオン性脂質はDLin−KC2−DMA(50モル%)であり、非カチオン性脂質はDSPC(10モル%)であり、PEG脂質はPEG−DOMG(1.5モル%)であり、構造脂質はコレステロール(38.5モル%)であった。
1週目、3週目(投与前)及び5週目に、各マウスから血清を収集した。3つの時点のすべて(個々の動物)について、個々の採血物を、ウイルス中和アッセイ及びHA阻害(HAI)により、抗HA活性について試験し、5週目に得たプール試料だけは不活化インフルエンザA/PR/8(H1N1)を用いるウェスタンブロットで試験した。
マウスの鼻腔内感染に関する標準プロトコール
雌6〜8週齢BALB/cマウスを、マウス各5匹の群にして収容した。研究の開始前少なくとも3日間はマウスを研究場所(NobleLifeSciences、メリーランド州ゲイサーズバーグ)に隔離した。食べ物と水は自由に摂取させた。
INFVでチャレンジを行ったマウス群は、軽い麻酔(イソフルラン)下で、約10×LD90をPBS中のINFV100μLとして鼻腔内(IN)接種することによって感染させた。感染後は、観察とその後の投与のために、マウスをそれぞれのケージに戻した。
マイクロ中和
マイクロ中和プロトコールは、世界保健機関によって2010年12月6日に公表され、インフルエンザのサーベイランス、疫学及び管理のためのWHO協力センター(WHOCollaboratingCenterforSurveillance,EpidemiologyandControlofInfluenza)、疾病管理予防センター(CentersforDeisaseControlandPrevention)(米国アトランタ)によって概説されている、インフルエンザのマイクロ中和に関する標準プロトコールとした。これらの内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
血球凝集阻害によるインフルエンザウイルス感染の血清学的診断
血球凝集の阻害に関する標準プロトコールは、刊行物『WHOInfluenzaManual』WHO/CDS/CSR/NCS/2002.5Rev.1の37頁に見いだすことができ、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
簡単に述べると、本プロトコールは次のとおりである:
手順
I.血清の処理
1.血球凝集によるインフルエンザ分離株の特定。
2.非特異的凝集素を除去するために、上述のように血清を吸着させる。
II.RBCの標準化
当技術分野において認識されている手順に従ってRBCを標準化する。
III.対照抗原のHAタイトレーション
対照抗原のタイトレーションに関する上述の手順に従う。
IV.HAI試験用の標準化抗原の調製及び「バックタイトレーション」
各対照抗原は4HA単位/25μl、8HA単位/50μlを含有するように標準化されなければならない。
注:HA単位の計算は50μlの液量に基づいているので、4HA単位を25μlの液量で試験に加える。
V.血清学的診断のためのHAI試験
1.適当なマイクロタイタープレートを標識する。
2.各番号付き列のウェルB〜H(B1〜H12)に25μlのPBSを加える。
3.番号付き列の適当な第1ウェル(A1〜A12)に50μlの各処理血清(1:10)を加える。
4.番号付き列1〜12の第1ウェルからの25μlを連続するウェルに移すことにより、処理血清の連続2倍希釈液を調製する。
H行の後は最後の25μlを捨てる。
5.一組の処理血清中のすべてのウェル(A1〜H12)に25μlの標準化抗原を加える。
6.血清対照用の処理血清セットには抗原の代わりに25μlのPBSを加える(A1〜H12)。
7.機械式振動器上で10秒間振とうするか、プレートを手で撹拌することによって、プレートの内容物を混合する。
8.プレートに蓋をし、室温(22〜25℃)で30〜45分インキュベートする。
9.すべてのウェルに50μlの標準化RBCを加える。先と同様に混合する。
10.プレートに蓋をし、使用しているRBCに応じて適当な時間、室温(22〜25C)でRBCを沈降させる。
11.HAI力価を記録する。
陽性対照抗原及び対応する抗血清は、以前の試験と比較した場合に、一貫した結果を与えるはずである。急性期血清と回復期血清との間で4倍の力価増加は、当該インフルエンザ型/亜型に対して診断的に陽性であるとみなされる。
ウェスタンブロット
5週目にワクチン接種マウスで行った採血からの血清をプールし、ウェスタンブロットにおける解析のために1:1000希釈した。不活化PR8抗原をSDS−PAGEによって分離し、プール血清でプローブした。陽性シグナルは第2群〜第7群及び第12群に観察され、最も高いシグナルは第4群〜第7群及び第12群に観察された。
各レーン500ngの不活化PR8抗原を10%ビストリスゲルでのSDSによって分離した。タンパク質をポリビニリデンジフルオリド(PVDF)メンブレンに転写し、メンブレンをミルクでブロッキングし、5週目の採血で各群から得たプール血清の1:1000希釈液でプローブした。
ヤギ抗マウスアルカリホスファターゼ(AP)の1:3000希釈液で抗体を検出した。
マウスの観察
マウスを感染後13日間にわたって観察した(合計14日、感染後0〜13日)。
マウスをオーハウス(Ohause)計量器で毎日体重測定し、それらの体重を記録した。
すべての動物にはウイルスチャレンジの少なくとも3日前には体温を監視するチップが埋め込まれていた。体温は毎日記録した。
各マウスの生存及び健康状態を、1日に1回、評価した。
表24 研究計画

表では以下の略号が適用される:IM、筋肉内;ID、皮内;IN、鼻腔内;IV、静脈内;LNP、脂質ナノ粒子。
表25 平均HAI力価

血球凝集の阻害
ワクチン接種後1週目、3週目及び5週目に、マウス血清試料における血球凝集の阻害(HAI)を測定した。1週目の後に、第5群及び第7群はどちらも40を越えるHAI力価(それぞれ60及び114)を呈した。3週目には、第3群〜第7群が、40を越えるHAI活性を呈し、最も高い活性は群7の965であった。5週目には、第1群(ナイーブ)及び第9群を除くすべての群が40を越えるHAI活性を呈し、第7群では10,000超であった。
1:40は有効性を予測するものであることに注意されたい。インフルエンザの致死的チャレンジからの防御には40超のHAI力価が必要であると考えられる。
このデータは、1週間後の防御抗体力価の迅速な開始、ならびに無修飾mRNAの50倍及びタンパク質ワクチンの20倍という高い抗体力価を伴って、致死的インフルエンザチャレンジからの100%の救出が起こることを示した。さらにまた、本発明のリボ核酸ワクチンの場合、必要とされる有効mRNA容量がはるかに低い、すなわち無修飾mRNAの10分の1であることも示された(図10)。
マイクロ中和
マウス血清の2倍希釈液を、96ウェルプレート中の100TCID50/mlのウイルスに加えた。24時間のインキュベーション後に、1.5×104個のメイディン・ダービーイヌ腎臓細胞を各ウェルに加えた。37℃で約20時間のインキュベーション後に、ウイルスを検出し、抗NP抗体でスコア化し、490nmで読み取った。1週目の試料では中和活性は検出されなかった(シグナル<50;検出下限)。3週間目までに、第5群及び第7群のマウスが、79と250(第5群)及び250(第7群)との間の中和活性を呈した。他の群はいずれも中和活性を一切呈さなかった。5週目に、第2群〜第4群が789と2493との間の高い中和活性を示し、第7群は2494と約25,000との間の中和活性を呈した。不活化PR8によるワクチン接種を受けた対照マウス群は、5匹中3匹のマウスで、79と250との間にわたる中和活性を呈した。このデータを表26〜28に示す。
表26 1週目のマイクロ中和




第4 当審の判断
(1) 甲1に記載された発明を引用発明とする申立理由1−ア(新規性
ア 甲1に記載された発明
甲1の上記記載事項(1−11)の実施例97には、「ルシフェラーゼmRNA(mRNA配列は配列番号180に示される;約160ヌクレオチドのポリA尾部は配列内に示されない;5’キャップ、キャップ1;5−メチルシトシンおよびシュードウリジンで完全に修飾された)を、表146に記載されるように50%のDLin−MC3−DMAまたはDLin−KC2−DMA、38.5%のコレステロール、10%のDSPC、および1.5%のPEGを含有する脂質ナノ粒子中で製剤化した」と記載されているが、上記記載事項(1−6)の[000465]の記載からみて、上記記載における「%」は、「モル%」の意味であることが理解できる。
そうすると、甲1の上記記載事項(1−11)の実施例97には、次の発明が記載されていると認められる。
「5−メチルシトシン及びシュードウリジンで完全に修飾されたルシフェラーゼmRNAが、50モル%のDLin−KC2−DMA、38.5モル%のコレステロール、10モル%のDSPC、及び1.5モル%のPEGを含有する脂質ナノ粒子中で製剤化された製剤。」(以下、「甲1発明」という。)

申立人は、甲1の各所に記載された事項を指摘して、甲1には、本件発明1の発明特定事項がすべて記載されている旨主張する。
しかし、核酸ワクチンに係る発明が刊行物に記載されているというためには、当該核酸ワクチンが、目的とする用途に実際に使用できることが明らかであるように当該刊行物に記載されていなければならないところ、上記第3(2)アによれば、甲1において実施例をもって使用できるように記載されているのは、上記のルシフェラーゼmRNAを特定の組成からなる脂質ナノ粒子中で製剤化した製剤であり、実際に、当該製剤が核酸ワクチンとして使用できることを確認した試験例等は記載されていない。
また、ある抗原ポリペプチドをコードするmRNAを生体内に送達すれば、当該mRNAが核酸ワクチンとして機能するという本件特許の優先日の時点の技術常識があったことを示す証拠も見当たらない。
そうすると、甲1には、申立人が主張する発明が記載されているとはいえない。

イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると次のことがいえる。
a 本件明細書において、イオン化したカチオン性脂質の例として、「DLin−KC2−DMA」が記載されていることを考慮すると(【0014】、【0029】、【0642】)、甲1発明の「50モル%のDLin−KC2−DMA」は、本件発明1の「カチオン性脂質約20〜60%」であって、「イオン性のカチオン性脂質」に相当する。
b 本件明細書において、非カチオン性脂質の例として、「DSPC」が記載されていることを考慮すると(【0660】)、甲1発明における「10モル%のDSPC」は、本件発明1の「非カチオン性脂質約5〜25%」に相当する。
c 甲1発明の「コレステロール」は、本件発明1の「ステロール」に包含されるものであるから、甲1発明の「38.5モル%のコレステロール」は、本件発明1の「ステロール約22〜55%」に相当する。
d 甲1発明の「1.5モル%のPEGを含有する脂質」は、本件発明1の「PEG修飾脂質約0.5〜15%」に相当する。
e 甲1発明の「ルシフェラーゼmRNA」は、本件発明1の「抗原性ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有する1つ以上のmRNAポリヌクレオチド」と、「ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有する1つ以上のmRNAポリヌクレオチド」である点で共通する。
f 甲1発明の「シュードウリジン」は、本件発明1の「N1−メチルシュードウリジン」と、「シュードウリジン」である点で共通する。
g 甲1発明の「製剤」は、本件発明1の「核酸ワクチン」と「製剤」である点で共通する。

そうすると、本件発明1と甲1発明は、「ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有する1つ以上のmRNAポリヌクレオチドを含み、カチオン性脂質約20〜60%:非カチオン性脂質約5〜25%:ステロール約25〜55%:及びPEG修飾脂質約0.5〜15%のモル比を有する脂質ナノ粒子内に製剤化され、該カチオン性脂質がイオン性のカチオン性脂質であり、前記1つ以上のmRNAポリヌクレオチドが、シュードウリジンを含む少なくとも1つの化学修飾を含む製剤」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1−1
本件発明1は、「核酸ワクチン」であるのに対し、甲1発明では、単なる「製剤」である点

相違点1−2
ポリペプチドが、本件発明1では、「抗原性ポリペプチド」であって、「該抗原性ポリペプチドがウイルス抗原であり」と特定されているのに対し、甲1発明ではそのような特定がない点

相違点1−3
シュードウリジンが、本件発明1では、「N1−メチルシュードウリジン」であるのに対し、甲1発明ではそのような特定がない点

(イ)判断
上記のように、本件発明1と甲1発明は、上記相違点で相違するものであり、これらの相違点に係る事項は、甲1に記載されているに等しい事項であるともいえないから、実質的な相違点である。
そうすると、本件発明1は、甲1に記載された発明ということはできない。

ウ 本件発明2、3、8、10、11、16について
本件発明2、3、8、10、11、16は、本件発明1をさらに限定した発明であるから、甲1に記載された発明ということはできない。

エ 以上のとおりであるから、申立理由1−ア(新規性)は理由がない。

(2)甲1に記載された発明を引用発明とする申立理由2−ア及び2−イ(進歩性
ア 本件発明1について
(ア)上記(1)イ(ア)のとおり、本件発明1と甲1発明は、上記相違点1−1〜1−3で相違する。
相違点1−1及び1−2について検討する。
甲1の上記記載事項(1−1)の請求項1には、腫瘍関連学ポリペプチドのレベルを増加させることによって、疾患を治療することが記載されている。
そして、甲1において、実際に実施例等をもって、実施できるように記載されているのは、ルシフェラーゼのような構造タンパク質をコードするmRNAのインビボ産生のみである。
甲1発明において使用されたルシフェラーゼは、検出の容易性等の観点から、腫瘍関連学ポリペプチドの代替物として用いられた構造タンパク質である。
したがって、甲1発明において、構造タンパク質である「ルシフェラーゼ」に代えて、「ウイルス抗原」である「抗原性ポリペプチド」を用いて、甲1発明の製剤を「核酸ワクチン」とすることは、当業者にとって動機付けられるものではないし、甲1発明の製剤が、核酸ワクチンとして使用できるか否かは、インビボでの実験をもって実際に確認してみなければわからないことである以上、甲1発明の製剤において、「ルシフェラーゼ」に代えて、「ウイルス抗原」である「抗原性ポリペプチド」を用いて、核酸ワクチンとすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。

そして、甲12は、インフルエンザH1N1、H3N2等が本件優先日前に既に知られていたことを示すための刊行物であり、また、甲13は、インフルエンザヘマグルチニンのドメイン構造が本件優先日前に既に知られていたことを示すための刊行物であって、これらの証拠の記載内容は、甲1発明の製剤を核酸ワクチンとすることを動機付けるものではない。
さらに、甲14は、脂質ナノ粒子の平均サイズが100nm以下であることは、本願優先日前に既に知られていたことを示すための刊行物であって、甲14の記載は、甲1発明の製剤を核酸ワクチンとすることを動機付けるものではない。
他の証拠を見ても、甲1発明の製剤を核酸ワクチンとすることを動機付けるような記載はない。

(イ)効果について
本件明細書には、実際に本件発明1の実施態様である核酸ワクチンの投与を受けたマウスにおいて、ワクチン接種後に、タンパク質抗原及び他の脂質担体(リポプレックス)で製剤化されたmRNAワクチンと比較して、高い血球凝集抑制力価及び高い抗体力価を示すことが示されており(表32、図10、【1400】〜【1402】)、このような効果は、各甲号証に記載された事項から予測し得るものとは認められない。

(ウ)まとめ
よって、相違点1−3を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲12〜14に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 本件発明2〜20について
本件発明2〜20は、本件発明1をさらに限定する発明であるから、本件発明2〜20も、上記アで説示した本件発明1についての判断と同様の理由により、甲1に記載された発明及び甲12〜14に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 以上のとおりであるから、申立理由2−ア及び2−イ(進歩性)は理由がない。

(3)甲3に記載された発明を引用発明とする申立理由1−イ(新規性
甲3の上記記載事項(3−16)の実施例95によれば、甲3には、次の発明が記載されていると認められる。
「5−メチルシトシンおよびN1−メチルプソイドウリジンで完全に修飾されたEPO mRNAが、DLin−KC2−DMAを含む脂質中で製剤化された製剤」(以下、「甲3発明」という。)

申立人は、甲3の各所に記載された事項を指摘して、甲3には、本件発明1の発明特定事項がすべて記載されている旨主張する。
しかし、核酸ワクチンに係る発明が刊行物に記載されているというためには、当該核酸ワクチンが、目的とする用途に実際に使用できることが明らかであるように当該刊行物に記載されていなければならないところ、上記第3(2)ウによれば、甲3において実施例をもって使用できるように記載されているのは、上記のEPO、G−CSF、第IX因子といったそれ自体が治療薬となるタンパク質をコードするmRNAを特定の組成からなる脂質ナノ粒子中で製剤化した製剤であり、実際に、当該製剤が核酸ワクチンとして使用できることを確認した試験例等は記載されていない。
また、ある抗原ポリペプチドをコードするmRNAを生体内に送達すれば、当該mRNAが核酸ワクチンとして機能するという技術常識があったことを示す証拠も見当たらない。
そうすると、甲3には、申立人が主張する発明が記載されているとはいえない。

イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲3発明とを対比すると次のことがいえる。
a 本件明細書において、イオン化したカチオン性脂質の例として、「DLin−KC2−DMA」が記載されていることを考慮すると(【0642】)、甲3発明の「DLin−KC2−DMA」は、本件発明1の「カチオン性脂質」であって、「イオン性のカチオン性脂質」に相当する。
b 甲3発明の「EPOmRNA」は、本件発明1の「抗原性ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有する1つ以上のmRNAポリヌクレオチド」と、「ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有する1つ以上のmRNAポリヌクレオチド」である点で共通する。
c 甲3発明の「製剤」は、本件発明1の「核酸ワクチン」と「製剤」である点で共通する。

そうすると、本件発明1と甲3発明は、「ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有する1つ以上のmRNAポリヌクレオチドを含み、カチオン性脂質を含む脂質中に製剤化され、該カチオン性脂質がイオン性のカチオン性脂質であり、前記1つ以上のmRNAポリヌクレオチドが、N1−メチルシュードウリジンを含む少なくとも1つの化学修飾を含む製剤」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点3−1
本件発明1は、「核酸ワクチン」であるのに対し、甲3発明では、単なる「製剤」である点

相違点3−2
ポリペプチドが、本件発明1では、「抗原性ポリペプチド」であって、「該抗原性ポリペプチドがウイルス抗原であり」と特定されているのに対し、甲3発明ではそのような特定がない点

相違点3−3
mRNAが、本件発明1では、「カチオン性脂質約20〜60%:非カチオン性脂質約5〜25%:ステロール約25〜55%:及びPEG修飾脂質約0.5〜15%のモル比を有する脂質ナノ粒子内」に製剤化されることが特定されているのに対し、甲3発明ではそのような特定がない点

(イ)判断
上記のように、本件発明1と甲3発明は、上記相違点で相違するものであり、これらの相違点に係る事項は、甲3に記載されているに等しい事項であるともいえないから、実質的な相違点である。
そうすると、本件発明1は、甲3に記載された発明ということはできない。

ウ 本件発明2、3、8、10、11、16について
本件発明2、3、8、10、11、16は、本件発明1をさらに限定した発明であるから、甲3に記載された発明ということはできない。

エ 以上のとおりであるから、申立理由1−イ(新規性)は理由がない

(4)甲3に記載された発明を引用発明とする申立理由2−ア及び2−イ(進歩性
ア 本件発明1について
(ア)上記(3)イ(ア)のとおり、本件発明1と甲3発明は、上記相違点3−1〜3−3で相違する。
相違点3−1及び3−2について検討する。
甲3の上記記載事項(3−1)の請求項1には、配列番号10で示されるmRNAによりコードされる目的のタンパク質を製造することが記載されており、上記記載事項(3−15)によれば、配列番号10は、第IX因子をコードするものである。
そして、実施例において、目的のタンパク質として具体的に記載されているのは、第IX因子以外に、EPO、G−CSFといった、それ自体が治療薬として機能するタンパク質のみである。
このように、甲3において、実際に実施例をもって実施できるように記載されているのは、それ自体が治療薬となるタンパク質をコードするmRNAのインビボ産生のみである。
したがって、甲3発明において、そのものが直接治療薬として機能する「EPO」に代えて、「ウイルス抗原」である「抗原性ポリペプチド」を用いて、甲3発明の製剤を「核酸ワクチン」とすることは、当業者にとって動機付けられるものではないし、甲3発明の製剤が、核酸ワクチンとして使用できるか否かは、インビボでの実験をもって実際に確認してみなければわからないことである以上、甲3発明の製剤において、「EPO」に代えて、「ウイルス抗原」である「抗原性ポリペプチド」を用いて、核酸ワクチンとすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。

そして、甲12は、インフルエンザH1N1、H3N2等が本件優先日前に既に知られていたことを示すための刊行物であり、甲13は、インフルエンザヘマグルチニンのドメイン構造が本件優先日前に既に知られていたことを示すための刊行物であって、これらの証拠の記載は、甲3発明の製剤を核酸ワクチンとすることを動機付けるものではない。
また、甲14は、脂質ナノ粒子の平均サイズが100nm以下であることは、本願優先日前に既に知られていたことを示すための刊行物であって、甲14の記載は、甲3発明の製剤を核酸ワクチンとすることを動機付けるものではない。
他の証拠を見ても、甲3発明の製剤を核酸ワクチンとすることを動機付けるような記載はない。

(イ)効果について
本件明細書には、実際に本件発明1の実施態様である核酸ワクチンの投与を受けたマウスにおいて、ワクチン接種後に、タンパク質抗原及び他の脂質担体(リポプレックス)で製剤化されたmRNAワクチンと比較して、高い血球凝集抑制力価及び高い抗体力価を示すことが示されており(表32、図10、【1400】〜【1402】)、このような効果は、各甲号証に記載された事項から予測し得るものとは認められない。

(ウ)まとめ
よって、相違点3−3を検討するまでもなく、本件発明1は、甲3に記載された発明及び甲12〜14に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 本件発明2〜20について
本件発明2〜20は、本件発明1をさらに限定する発明であるから、本件発明2〜20も、上記アで説示した本件発明1についての判断と同様の理由により、甲3に記載された発明及び甲12〜14に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 以上のとおりであるから、申立理由2−ア及び2−イ(進歩性)は理由がない。

(5)甲4に記載された発明を引用発明とする申立理由1−ウ(新規性
甲4の上記記載事項(4−8)の実施例17によれば、甲4には、次の発明が記載されていると認められる。
「5−メチルシトシンおよびシュードウリジンで完全に修飾されたG−CSFmRNAが、50モル%のDLin−KC2−DMA、38.5モル%のコレステロール、10モル%のDSPC、及び1.5モル%のPEGを含有する脂質ナノ粒子中で製剤化された製剤。」(以下、「甲4発明」という。)

申立人は、甲4の各所に記載された事項を指摘して、甲4には、本件発明1の発明特定事項がすべて記載されている旨主張する。
しかし、核酸ワクチンに係る発明が刊行物に記載されているというためには、当該核酸ワクチンが、目的とする用途に実際に使用できることが明らかであるように当該刊行物に記載されていなければならないところ、上記第3(2)エによれば、甲4において実施例をもって使用できるように記載されているのは、上記のG−CSFmRNAを特定の組成からなる脂質ナノ粒子中で製剤化した製剤であり、実際に、当該製剤が核酸ワクチンとして使用できることを確認した試験例等は記載されていない。
また、ある抗原ポリペプチドをコードするmRNAを生体内に送達すれば、当該mRNAが核酸ワクチンとして機能するという本件特許の優先日の時点の技術常識があったことを示す証拠も見当たらない。
そうすると、甲4には、申立人が主張する発明が記載されているとはいえない。

イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲4発明とを対比すると次のことがいえる。
a 本件明細書において、イオン化したカチオン性脂質の例として、「DLin−KC2−DMA」が記載されていることを考慮すると(【0014】、【0029】、【0642】)、甲4発明の「50モル%のDLin−KC2−DMA」は、本件発明1の「カチオン性脂質約20〜60%」であって、「イオン性のカチオン性脂質」に相当する。
b 本件明細書において、非カチオン性脂質の例として、「DSPC」が記載されていることを考慮すると(【0660】)、甲4発明における「10モル%のDSPC」は、本件発明1の「非カチオン性脂質約5〜25%」に相当する。
c 甲4発明の「コレステロール」は、本件発明1の「ステロール」に包含されるものであるから、甲4発明の「38.5モル%のコレステロール」は、本件発明1の「ステロール約22〜55%」に相当する。
d 甲4発明の「1.5モル%のPEGを含有する脂質」は、本件発明1の「PEG修飾脂質約0.5〜15%」に相当する。
e 甲4発明の「G−CSFmRNA」は、本件発明1の「抗原性ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有する1つ以上のmRNAポリヌクレオチド」と、「ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有する1つ以上のmRNAポリヌクレオチド」である点で共通する。
f 甲4発明の「シュードウリジン」は、本件発明1の「N1−メチルシュードウリジン」と、「シュードウリジン」である点で共通する。
g 甲4発明の「製剤」は、本件発明1の「核酸ワクチン」と「製剤」である点で共通する。

そうすると、本件発明1と甲4発明は、「ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有する1つ以上のmRNAポリヌクレオチドを含み、カチオン性脂質約20〜60%:非カチオン性脂質約5〜25%:ステロール約25〜55%:及びPEG修飾脂質約0.5〜15%のモル比を有する脂質ナノ粒子内に製剤化され、該カチオン性脂質がイオン性のカチオン性脂質であり、前記1つ以上のmRNAポリヌクレオチドが、シュードウリジンを含む少なくとも1つの化学修飾を含む製剤」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点4−1
本件発明1は、「核酸ワクチン」であるのに対し、甲4発明では、単なる「製剤」である点

相違点4−2
ポリペプチドが、本件発明1では、「抗原性ポリペプチド」であって、「該抗原性ポリペプチドがウイルス抗原であり」と特定されているのに対し、甲4発明ではそのような特定がない点

相違点4−3
シュードウリジンが、本件発明1では、「N1−メチルシュードウリジン」であるのに対し、甲4発明ではそのような特定がない点

(イ)判断
上記のように、本件発明1と甲4発明は、上記相違点で相違するものであり、これらの相違点に係る事項は、甲4に記載されているに等しい事項であるともいえないから、実質的な相違点である。
そうすると、本件発明1は、甲4に記載された発明ということはできない。

ウ 本件発明2、3、8、10、11、16について
本件発明2、3、8、10、11、16は、本件発明1をさらに限定した発明であるから、甲4に記載された発明ということはできない。

エ 以上のとおりであるから、申立理由1−ウ(新規性)は理由がない。

(6)甲4に記載された発明を引用発明とする申立理由2−ア及び2−イ(進歩性
ア 本件発明1について
(ア)上記(5)イ(ア)のとおり、本件発明1と甲4発明は、上記相違点4−1〜4−3で相違する。
相違点4−1及び4−2について検討する。
甲4において、実際に実施例をもって実施できるように記載されているのは、G−CSF、EPOや第IX因子といったそれ自体が治療薬として機能するタンパク質をコードするmRNAのインビボ産生のみである。
したがって、甲4発明において、そのものが直接治療薬として機能する「G−CSF」に代えて、「ウイルス抗原」である「抗原性ポリペプチド」を用いて、甲4発明の製剤を「核酸ワクチン」とすることは、当業者にとって動機付けられるものではないし、甲4発明の製剤が、核酸ワクチンとして使用できるか否かは、インビボでの実験をもって実際に確認してみなければわからないことである以上、甲4発明の製剤において、「G−CSF」に代えて、「ウイルス抗原」である「抗原性ポリペプチド」を用いて、核酸ワクチンとすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。

そして、甲12は、インフルエンザH1N1、H3N2等が本件優先日前に既に知られていたことを示すための刊行物であり、甲13は、インフルエンザヘマグルチニンのドメイン構造が本件優先日前に既に知られていたことを示すための刊行物であって、これらの証拠の記載は、甲4発明の製剤を核酸ワクチンとすることを動機付けるものではない。
また、甲14は、脂質ナノ粒子の平均サイズが100nm以下であることは、本願優先日前に既に知られていたことを示すための刊行物であって、甲14の記載は、甲4発明の製剤を核酸ワクチンとすることを動機付けるものではない。
他の証拠を見ても、甲4発明の製剤を核酸ワクチンとすることを動機付けるような記載はない。

(イ)効果について
本件明細書には、実際に本件発明1の実施態様である核酸ワクチンの投与を受けたマウスにおいて、ワクチン接種後に、タンパク質抗原及び他の脂質担体(リポプレックス)で製剤化されたmRNAワクチンと比較して、高い血球凝集抑制力価及び高い抗体力価を示すことが示されており(表32、図10、【1400】〜【1402】)、このような効果は、各甲号証に記載された事項から予測し得るものとは認められない。

(ウ)まとめ
よって、相違点4−3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲4に記載された発明及び甲12〜14に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 本件発明2〜20について
本件発明2〜20は、本件発明1をさらに限定する発明であるから、本件発明2〜20も、上記アで説示した本件発明1についての判断と同様の理由により、甲4に記載された発明及び甲12〜14に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 以上のとおりであるから、申立理由2−ア及び2−イ(進歩性)は理由がない。

(7)甲5に記載された発明を引用発明とする申立理由1−エ(新規性
ア 甲5の上記記載事項(5−9)の実施例16によれば、甲5には、次の発明が記載されていると認められる。
「5−メチルシトシンおよびシュードウリジンで完全に修飾されたG−CSFmRNAが、50モル%のDLin−KC2−DMA、38.5モル%のコレステロール、10%モルのDSPC、及び1.5モル%のPEGを含有する脂質ナノ粒子中で製剤化された製剤。」(以下、「甲5発明」という。)

申立人は、甲5の各所に記載された事項を指摘して、甲5には、本件発明1の発明特定事項がすべて記載されている旨主張する。
しかし、核酸ワクチンに係る発明が刊行物に記載されているというためには、当該核酸ワクチンが、目的とする用途に実際に使用できることが明らかであるように当該刊行物に記載されていなければならないところ、上記第3(2)オによれば、甲5において実施例をもって使用できるように記載されているのは、上記のG−CSF等の構造タンパク質のmRNAを特定の組成からなる脂質ナノ粒子中で製剤化した製剤であり、実際に、当該製剤が核酸ワクチンとして使用できることを確認した試験例等は記載されていない。
また、ある抗原ポリペプチドをコードするmRNAを生体内に送達すれば、当該mRNAが核酸ワクチンとして機能するという本件特許の優先日の時点の技術常識があったことを示す証拠も見当たらない。
そうすると、甲5には、申立人が主張する発明が記載されているとはいえない。

イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲5発明とを対比すると次のことがいえる。
a 本件明細書において、イオン化したカチオン性脂質の例として、「DLin−KC2−DMA」が記載されていることを考慮すると(【0014】、【0029】、【0642】)、甲5発明の「50モル%のDLin−KC2−DMA」は、本件発明1の「カチオン性脂質約20〜60%」であって、「イオン性のカチオン性脂質」に相当する。
b 本件明細書において、非カチオン性脂質の例として、「DSPC」が記載されていることを考慮すると(【0660】)、甲5発明における「10モル%のDSPC」は、本件発明1の「非カチオン性脂質約5〜25%」に相当する。
c 甲5発明の「コレステロール」は、本件発明1の「ステロール」に包含されるものであるから、甲5発明の「38.5モル%のコレステロール」は、本件発明1の「ステロール約22〜55%」に相当する。
d 甲5発明の「1.5モル%のPEGを含有する脂質」は、本件発明1の「PEG修飾脂質約0.5〜15%」に相当する。
e 甲5発明の「G−CSFmRNA」は、本件発明1の「抗原性ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有する1つ以上のmRNAポリヌクレオチド」と「ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有する1つ以上のmRNAポリヌクレオチド」である点で共通する。
f 甲5発明の「シュードウリジン」は、本件発明1の「N1−メチルシュードウリジン」と、「シュードウリジン」である点で共通する。
g 甲5発明の「製剤」は、本件発明1の「核酸ワクチン」と「製剤」である点で共通する。

そうすると、本件発明1と甲5発明は、「ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有する1つ以上のmRNAポリヌクレオチドを含み、カチオン性脂質約20〜60%:非カチオン性脂質約5〜25%:ステロール約25〜55%:及びPEG修飾脂質約0.5〜15%のモル比を有する脂質ナノ粒子内に製剤化され、該カチオン性脂質がイオン性のカチオン性脂質であり、前記1つ以上のmRNAポリヌクレオチドが、シュードウリジンを含む少なくとも1つの化学修飾を含む製剤」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点5−1
本件発明1は、「核酸ワクチン」であるのに対し、甲5発明では、単なる「製剤」である点

相違点5−2
ポリペプチドが、本件発明1では、「抗原性ポリペプチド」であって、「該抗原性ポリペプチドがウイルス抗原であり」と特定されているのに対し、甲5発明ではそのような特定がない点

相違点5−3
シュードウリジンが、本件発明1では、「N1−メチルシュードウリジン」であるのに対し、甲5発明ではそのような特定がない点

(イ)判断
上記のように、本件発明1と甲5発明は、上記相違点で相違するものであり、これらの相違点に係る事項は、甲5に記載されているに等しい事項であるともいえないから、実質的な相違点である。
そうすると、本件発明1は、甲5に記載された発明ということはできない。

ウ 本件発明2、3、8、10、11、16について
本件発明2、3、8、10、11、16は、本件発明1をさらに限定した発明であるから、甲5に記載された発明ということはできない。

エ 以上のとおりであるから、申立理由1−エ(新規性)は理由がない。

(8)甲5に記載された発明を引用発明とする申立理由2−ア及び2−イ(進歩性
ア 本件発明1について
(ア)上記(7)イ(ア)のとおり、本件発明1と甲5発明は、上記相違点5−1〜5−3で相違する。
相違点5−1及び5−2について検討する。
甲5の上記記載事項(5−9)には、目的タンパク質として、G−CSFや第IX因子といったそれ自体が治療薬として機能するタンパク質をコードするmRNAを使用することが記載されている。
このように、甲5に記載された技術的思想は、治療薬となるタンパク質をインビボで直接発現させることを目的としたものである。
したがって、甲5発明において、そのものが直接治療薬として機能するG−CSFに代えて、「ウイルス抗原」を用いて、甲5発明の製剤を「核酸ワクチン」とすることは、当業者にとって動機付けられるものではない。
甲5発明の製剤が、ワクチンとして使用できるか否かは、インビボ実験で実際に確認してみなければわからないことである以上、甲5発明の製剤を核酸ワクチンとすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。

そして、甲12は、インフルエンザH1N1、H3N2等が本件優先日前に既に知られていたことを示すための刊行物であり、甲13は、インフルエンザヘマグルチニンのドメイン構造が本件優先日前に既に知られていたことを示すための刊行物であって、これらの証拠の記載は、甲5発明の製剤を核酸ワクチンとすることを動機付けるものではない。
また、甲14は、脂質ナノ粒子の平均サイズが100nm以下であることは、本願優先日前に既に知られていたことを示すための刊行物であって、甲14の記載は、甲5発明の製剤を核酸ワクチンとすることを動機付けるものではない。
他の証拠を見ても、甲5発明の製剤を核酸ワクチンとすることを動機付けるような記載はない。

(イ)効果について
本件明細書には、実際に本件発明1の実施態様である核酸ワクチンの投与を受けたマウスにおいて、ワクチン接種後に、タンパク質抗原及び他の脂質担体(リポプレックス)で製剤化されたmRNAワクチンと比較して、高い血球凝集抑制力価及び高い抗体力価を示すことが示されており(表32、図10、【1400】〜【1402】)、このような効果は、各甲号証に記載された事項から予測し得るものとは認められない。

(ウ)まとめ
よって、相違点5−3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲5に記載された発明及び甲12〜14に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 本件発明2〜20について
本件発明2〜20は、本件発明1をさらに限定する発明であるから、本件発明2〜20も、上記アで説示した本件発明1についての判断と同様の理由により、甲5に記載された発明及び甲12〜14に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 以上のとおりであるから、申立理由2−ア及び2−イ(進歩性)は理由がない。

(9)本件の優先権主張について
申立人は、本件特許は2つの優先権、すなわち優先権主張番号61/983250(2014年4月23日)及び優先権主張番号US62/088994(2014年12月8日)の優先権を伴う特許出願に対して特許が付与されたものであるところ、優先権主張番号US61/983250の優先権証明書(甲18)(以下、「第1優先権基礎明細書等」という。)には、インフルエンザH7N9、H10N8を用いた場合のワクチン効果を裏付ける実施例が存在しておらず、また、ウイルス抗原をコードするORFを有するmRNAが脂質ナノ粒子内に製剤化された核酸ワクチンであって、当該mRNAが化学修飾としてN1−メチルシュードウリジンのみを有する核酸ワクチンがワクチンとして機能し得るであろうことを裏付ける実施例が記載されていないし、優先権主張番号US62/088994の優先権証明書(甲19)(以下、「第2優先権基礎明細書等」という。)に関しても、同様のことがあてはまるから、本件発明1〜20の新規性進歩性の判断は、本件特許に係る特許出願の実際の出願日である2015年4月23日を基準として判断されるべきであって、甲6〜8は、いずれも本件特許に対する先行技術を構成するものである旨主張する。

しかしながら、第1優先権基礎明細書等(甲18)には、インフルエンザH1N1に対する核酸ワクチンについては、使用できるように記載されており(実施例15)、他のウイルス抗原についても同様に使用できることは、当業者であれば理解することができる。
よって、本件発明1〜20は、第1優先権基礎明細書等の記載に基づいて当業者が実施をすることができなかった発明であるとの申立人の主張は採用することができない。

また、申立人は、ウイルス抗原をコードするORFを有するmRNAが脂質ナノ粒子内に製剤化された核酸ワクチンであって、当該mRNAが化学修飾として、N1−メチルシュードウリジンのみを有する核酸ワクチンがワクチンとして機能し得るであろうことを裏付ける実施例が第1優先権基礎明細書等及び第2優先権基礎明細書等には記載されておらず、本件特許は第1及び第2優先権主張が認められないから、甲6〜8は本件特許に対する先行技術を構成するものである旨主張する。

しかしながら、第1優先権基礎明細書等には、N1−メチルシュードウリジン及び5−メチルシトシンで化学修飾されたmRNAであって、本件発明1で規定するモル比を有する脂質ナノ粒子内に製剤化されたものは、核酸ワクチンとして使用できることが記載されており(表25)、このmRNAは、本件発明1で規定する「N1−メチルシュードウリジンを含む少なくとも1つの化学修飾を含む」mRNAに対応するものである。
そして、第1優先権基礎明細書等には、無修飾のmRNAであっても、本件発明1で規定するモル比を有する脂質ナノ粒子内に製剤化されれば、核酸ワクチンとして使用できることが記載されている以上は(上記記載事項(18−1)の表25)、「N1−メチルシュードウリジンを含む少なくとも1つの化学修飾を含む」mRNAが本件発明1で規定するモル比を有する脂質ナノ粒子内に製剤化されたものは、核酸ワクチンとして使用できることは第1優先権基礎明細書等に記載されているに等しい事項である。
したがって、本件特許はパリ条約による優先権の利益を享受し得るから、本件の第1優先日以降に頒布された甲6〜甲8それぞれに記載された発明に基づいて、新規性進歩性を否定することはできない。
以上のとおりであるから、申立理由1−オ〜1−キ(新規性)及び申立理由2−ア、2−イ(進歩性)は理由がない。

(10)甲9に記載された発明を引用発明とする申立理由2−ウ(進歩性
ア 甲9に記載された発明
甲9の上記記載事項(9−1)には、
「医薬組成物であって、
i)抗ウイルスポリペプチドをコードする合成メッセンジャ−リボ核酸(mRNA)の有効量;及び
ii)薬学的に許容可能な担体、
を含むものであり、
前記合成mRNAは少なくとも1つのヌクレオシドが修飾ヌクレオチドであり、前記抗ウイルスポリペプチドは、約6〜約100アミノ酸長である、前記医薬組成物。」
と記載されているものの、甲9において、実際に実施例等をもって、抗ウイルスポリペプチドをコードするmRNAを含む医薬組成物が核酸ワクチンとして使用できることは確認されていない。
したがって、甲9において当業者が実施できる程度に記載されている発明は、次のとおりである。
「抗ウイルスポリペプチドをコードするmRNAを含む製剤。」(以下、「甲9発明」という。)

申立人は、甲9には、核酸ワクチンに係る発明が記載されている旨主張する。
しかし、核酸ワクチンに係る発明が刊行物に記載されているというためには、当該核酸ワクチンが、目的とする用途に実際に使用できることが明らかであるように当該刊行物に記載されていなければならないところ、上記第3(2)カによれば、甲9において実施例をもって記載されているのは、上記の修飾RNAポリヌクレオチドを特定の組成からなる脂質ナノ粒子中で製剤化した製剤を作製するところまでであり、実際に、当該製剤が核酸ワクチンとして使用できることを確認した試験例等は記載されていない。
また、ある抗原ポリペプチドをコードするmRNAを生体内に送達すれば、当該mRNAが核酸ワクチンとして機能するという本件特許の優先日時点の技術常識があったことを示す証拠も見当たらない。
そうすると、甲15には、申立人が主張する発明が記載されているとはいえない。

イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲9発明とを対比すると次のことがいえる。
a 甲9発明において、「抗ウイルスポリペプチド」は、本件発明1の「ウイルス抗原」に相当し、甲9発明における「抗ウイルスポリペプチドをコードするmRNA」は、本件発明1の「抗原性ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有する1つ以上のmRNAポリヌクレオチド」に相当する。
b 甲9発明における「製剤」は、本件発明1の「核酸ワクチン」と「製剤」である点で共通する。

そうすると、本件発明1と甲9発明は、「ウイルス抗原である、抗原性ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有する1つ以上のmRNAポリヌクレオチドを含む製剤」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点9−1
本件発明1は、「核酸ワクチン」であるのに対し、甲9発明は単なる「製剤」である点

相違点9−2
mRNAポリヌクレオチドが、本件発明1では、「N1−メチルシュードウリジンを含む少なくとも1つの化学修飾を含む」ものであるのに対し、甲9発明ではそのような特定がない点

相違点9−3
mRNAポリヌクレオチドが、本件発明1では、「カチオン性脂質約20〜60%:非カチオン性脂質約5〜25%:ステロール約25〜55%:及びPEG修飾脂質約0.5〜15%のモル比を有する脂質ナノ粒子内に製剤化」されているのに対し、甲9発明ではそのような特定がない点

(イ)判断
上記相違点9−1について検討する。
甲9発明の製剤が、核酸ワクチンとして使用できるか否かは、インビボでの実験をもって実際に確認してみなければわからないことである以上、甲9発明の製剤を核酸ワクチンとすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。

そして、甲1は、N1−メチルシュードウリジン及びシュードウリジン等の種々の修飾が同時にmRNAに含まれ得ることを示すための刊行物であり、甲10、11、15は、本件発明1で規定する脂質ナノ粒子の組成が、本件優先日前に既に知られていたことを示すための刊行物であって、これらの証拠の記載は、甲9発明の製剤を核酸ワクチンとすることを動機付けるものではない。

さらに、甲12は、インフルエンザH1N1、H3N2等が本件優先日前に既に知られていたことを示すための刊行物であり、甲13は、インフルエンザヘマグルチニンのドメイン構造が本件優先日前に既に知られていたことを示すための刊行物であって、これらの証拠の記載は、甲9発明の製剤を核酸ワクチンとすることを動機付けるものではない。
また、甲14は、脂質ナノ粒子の平均サイズが100nm以下であることは、本願優先日前に既に知られていたことを示すための刊行物であって、甲14の記載は、甲9発明の製剤を核酸ワクチンとすることを動機付けるものではない。
他の証拠を見ても、甲9発明の製剤を核酸ワクチンとすることを動機付けるような記載はない。

(ウ)効果について
本件明細書には、実際に本件発明1の実施態様である核酸ワクチンの投与を受けたマウスにおいて、ワクチン接種後に、タンパク質抗原及び他の脂質担体(リポプレックス)で製剤化されたmRNAワクチンと比較して、高い血球凝集抑制力価及び高い抗体力価を示すことが示されており(表32、図10、【1400】〜【1402】)、このような効果は、各甲号証に記載された事項から予測し得るものとは認められない。

(エ)まとめ
よって、相違点9−2及び相違点9−3を検討するまでもなく、本件発明1は、甲9に記載された発明及び甲1、10〜15に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 本件発明2〜20について
本件発明2〜20は、本件発明1をさらに限定する発明であるから、本件発明2〜20も、上記アで説示した本件発明1についての判断と同様の理由により、甲9に記載された発明及び甲1、10〜15に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 以上のとおりであるから、申立理由2−ウ(進歩性)は理由がない。

(11)甲15に記載された発明を引用発明とする申立理由2−エ(進歩性
ア 甲15に記載された発明
甲15の上記記載事項(15−4)の「B.修飾RNAナノ粒子の製剤」には、「50:10:38.5:1.5(合成脂質1:DSPC:コレステロール:PEGc−DOMG)のモル比」で脂質及び修飾mRNAの製剤を調製することが記載されているところ、上記記載事項(15−4)の「A 脂質合成」の項の記載によれば、上記記載における「合成脂質1」は、「DLin−DMA」に対応するものといえる。
そうすると、甲15には、次の発明が記載されていると認められる。
「修飾RNAポリヌクレオチドが、50モル%、のDLin−DMA、38.5モル%のDSPC、10モル%のコレステロール、1.5モル%のPEGc−DOMGを含有する脂質ナノ粒子中で製剤化された製剤。」(以下、「甲15発明」という。)

申立人は、甲15には、核酸ワクチンに係る発明が記載されている旨主張する。
しかし、核酸ワクチンに係る発明が刊行物に記載されているというためには、当該核酸ワクチンが、目的とする用途に実際に使用できることが明らかであるように当該刊行物に記載されていなければならないところ、上記第3(2)シによれば、甲15において実施例をもって記載されているのは、上記の修飾RNAポリヌクレオチドを特定の組成からなる脂質ナノ粒子中で製剤化した製剤を作製するところまでであり、実際に、当該製剤が核酸ワクチンとして使用できることを確認した試験例等は記載されていない。
また、ある抗原ポリペプチドをコードするmRNAを生体内に送達すれば、当該mRNAが核酸ワクチンとして機能するという本件特許の優先日の時点の技術常識があったことを示す証拠も見当たらない。
そうすると、甲15には、申立人が主張する発明が記載されているとはいえない。

イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲15発明とを対比すると次のことがいえる。

a 本件明細書において、イオン化したカチオン性脂質の例として、「DLin−DMA」が記載されていることを考慮すると(【0624】)、甲15発明の「50モル%のDLin−DMA」は、本件発明1の「カチオン性脂質約20〜60%」であって、「イオン性のカチオン性脂質」に相当する。
b 本件明細書において、非カチオン性脂質の例として、「DSPC」が記載されていることを考慮すると(【0660】)、甲15発明における「10モル%のDSPC」は、本件発明1の「非カチオン性脂質約5〜25%」に相当する。
c 甲15発明の「コレステロール」は、本件発明1の「ステロール」に包含されるものであるから、甲15発明の「38.5モル%のコレステロール」は、本件発明1の「ステロール約22〜55%」に相当する。
d 甲15発明の「1.5モル%のPEGを含有する脂質」は、本件発明1の「PEG修飾脂質約0.5〜15%」に相当する。
e 甲15発明の「修飾RNAポリヌクレオチド」は、当該修飾RNAポリヌクレオチドを生体内でポリペプチドとして発現させるためのものであるから、「ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有する」ものであるといえる。
そうすると、甲15発明の「修飾RNAポリヌクレオチド」は、本件発明1の「抗原性ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有する1つ以上のmRNAポリヌクレオチド」と「ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有する1つ以上のmRNAポリヌクレオチド」である点で共通する。
f 甲15発明の「脂質ナノ粒子製剤」は、本件発明1の「核酸ワクチン」と「製剤」である点で共通する。

そうすると、本件発明1と甲15発明は、「ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを有する1つ以上のmRNAポリヌクレオチドを含み、カチオン性脂質約20〜60%:非カチオン性脂質約5〜25%:ステロール約25〜55%:及びPEG修飾脂質約0.5〜15%のモル比を有する脂質ナノ粒子内に製剤化され、該カチオン性脂質がイオン性のカチオン性脂質であり、前記1つ以上のmRNAポリヌクレオチドが、少なくとも1つの化学修飾を含む製剤」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点15−1
本件発明1は、「核酸ワクチン」であるのに対し、甲15発明では、単なる「製剤」である点

相違点15−2
ポリペプチドが、本件発明1では、「抗原性ポリペプチド」であって、「該抗原性ポリペプチドがウイルス抗原であり」と特定されているのに対し、甲15発明ではそのような特定がない点

相違点15−3
化学修飾が、本件発明1では、「N1−メチルシュードウリジンを含む少なくとも1つの化学修飾」であるのに対し、甲15発明ではそのような特定がない点

(イ)判断
相違点15−1及び15−2について検討する。
甲15において、実際に実施できる程度に記載されているのは、G−CSF、EPO、第IX因子(記載事項(15−5)及び(15−6))といった、それ自体が治療薬として機能するタンパク質をコードするmRNAのインビボ産生のみである。
したがって、甲15発明において、「修飾RNAポリヌクレオチド」として、「ウイルス抗原」である「抗原性ポリペプチド」をコードするmRNAを用いて、甲15発明の製剤を「核酸ワクチン」とすることは、当業者にとって動機付けられるものではないし、甲15発明の製剤が、核酸ワクチンとして使用できるか否かは、インビボでの実験をもって実際に確認してみなければわからないことである以上、甲15発明の製剤において、「修飾RNAポリヌクレオチド」として、「ウイルス抗原」である「抗原性ポリペプチド」をコードするmRNAを用いて、「核酸ワクチン」とすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。

そして、甲11、16には、ウイルス抗原をコードするRNA分子を含むワクチンが記載され、甲17には、免疫グロブリンタンパク質をコードする核酸を細胞内に導入することにより、細胞内で免疫グロブリンを産生することが記載されているものの、甲15発明に係る製剤において、「修飾RNAポリヌクレオチド」として「ウイルス抗原」である「抗原性ポリペプチド」をコードするmRNAを用いて、甲15発明の製剤を「核酸ワクチン」とすることを当業者に動機付けるものではない。
そして、甲1は、N1−メチルシュードウリジン及びシュードウリジン等の種々の修飾が同時にmRNAに含まれ得ることを示すための刊行物であって、甲1の記載は、甲15発明の製剤が実際に核酸ワクチンとなることを示すものではない。
さらに、甲12は、インフルエンザH1N1、H3N2等が本件優先日前に既に知られていたことを示すための刊行物であり、甲13は、インフルエンザヘマグルチニンのドメイン構造が本件優先日前に既に知られていたことを示すための刊行物であって、これらの証拠の記載は甲15発明の製剤を核酸ワクチンとすることを動機付けるものではない。
また、甲14は、脂質ナノ粒子の平均サイズが100nm以下であることは、本願優先日前に既に知られていたことを示すための刊行物であって、甲14の記載は、甲15発明の製剤を核酸ワクチンとすることを動機付けるものではない。
他の証拠を見ても、甲15発明の製剤を核酸ワクチンとすることを動機付けるような記載はない。


(ウ)効果について
本件明細書には、実際に本件発明1の実施態様である核酸ワクチンの投与を受けたマウスにおいて、ワクチン接種後に、タンパク質抗原及び他の脂質担体(リポプレックス)で製剤化されたmRNAワクチンと比較して、高い血球凝集抑制力価及び高い抗体力価を示すことが示されており(表32、図10、【1400】〜【1402】)、このような効果は、各甲号証に記載された事項から予測し得るものとは認められない。

(エ)まとめ
よって、相違点15−3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲15に記載された発明及び甲1、11〜17に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 本件発明2〜20について
本件発明2〜20は、本件発明1をさらに限定する発明であるから、本件発明2〜20も、上記アで説示した本件発明1についての判断と同様の理由により、甲15に記載された発明及び甲1、10〜15に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 以上のとおりであるから、申立理由2−エ(進歩性)は理由がない。

(12)申立理由3(実施可能要件)及び申立理由4(サポ−ト要件)
ア 申立人の主張
(ア)申立人は、本件明細書において、実際に製造されているのは、50モル%のDLin−KC2−DMA又はDLin−MC3−DMA(カチオン性脂質)、10モル%のDPSC(非カチオン性脂質)、38.5モル%のコレステロール(ステロール)及び1.5モル%のPEG−DOMG(PEG修飾脂質)を有する製剤のみであるところ、本件発明1では、上記4成分には、膨大な数の物質が含まれるものであって、さらにこれら4成分の組み合わせに関しても無数の可能性が含まれるものであるから、その中には、課題を解決できないものが多数含まれることになり、また、各成分のモル比についても無限に近い可能性があり、核酸ワクチンとして十分に機能する発明の課題を解決するような核酸ワクチンを得るためには、過度な試行錯誤を必要とするから、本件明細書の発明の詳細な説明は、実施可能要件を満たさないし、同様の理由により、本件発明は発明の詳細な説明に記載されたものではないから、本件発明はサポ−ト要件を満たさない旨主張する。

(イ)申立人は、本件発明1では、「カチオン性脂質」が「イオン性のカチオン性脂質」であると特定されているが、これには、生理学的条件下では非イオン性である脂質も包含されるものであり、そのような脂質が、本件明細書で述べられているような効果を達成できることを示すデータは開示されていないから、本件発明1の全体にわたって実施可能なように、発明の詳細な説明が記載されていないし、同様の理由により、本件発明は発明の詳細な説明に記載されたものではないから、本件発明はサポ−ト要件を満たさない旨主張する。

(ウ)申立人は、本件発明1のmRNAには、たった1つのN1−メチルシュードウリジン化学修飾だけを含むmRNAも包含されるものであるところ、技術常識に基づけば、そのような単一のヌクレオチド修飾では効果が奏されないことは明らかであるから、本件明細書の発明の詳細な説明は、実施可能要件を満たさないし、同様の理由により、本件発明は発明の詳細な説明に記載されたものではないから、本件発明はサポ−ト要件を満たさない旨主張する。

(エ)申立人は、本件明細書において、「ウイルス抗原」として示されているのは、インフルエンザウイルス由来のもののみであり、さらに、インフルエンザウイルスに関しても、H1N1,H7N9、H10N8のみである。このようなインフルエンザ以外のウイルスを対象とする核酸ワクチンや、H7N9、H10N8以外のインフルエンザ由来抗原をコードする核酸ワクチンの中には、本件発明1の他の特徴(LNP製剤の組成)を備えていたとしても、効果を奏さないものが多数含まれるものであり、その中から、核酸ワクチンとして十分に機能するものを選択するためには、過度な負担を強いるものであるから、本件明細書の発明の詳細な説明は、実施可能要件を満たさないし、同様の理由により、本件発明は発明の詳細な説明に記載されたものではないから、本件発明はサポ−ト要件を満たさない旨主張する。

イ 判断
(ア)について
申立人は、脂質について特定の組成のものしか実施例に記載されていない旨主張するが、本件明細書の発明の詳細な説明には、使用する脂質及びその組成割合について、次のように記載されている。
「【0014】
いくつかの実施形態では、カチオン性脂質ナノ粒子は、カチオン性脂質、PEG修飾脂質、ステロール及び非カチオン性脂質を含む。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、2,2−ジリノレイル−4−ジメチルアミノエチル−[1,3]−ジオキソラン(DLin−KC2−DMA)、ジリノレイル−メチル−4−ジメチルアミノブチレート(DLin−MC3−DMA)及びジ((Z)−ノン−2−エン−1−イル)9−((4−(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)ヘプタデカン二酸(L319)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質ナノ粒子は、カチオン性脂質約20〜60%:非カチオン性脂質約5〜25%:ステロール約25〜55%:PEG修飾脂質約0.5〜15%のモル比を有する。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質ナノ粒子は、モル比約50%のカチオン性脂質、約1.5%のPEG修飾脂質、約38.5%のコレステロール及び約10%の非カチオン性脂質を含む。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質ナノ粒子は、モル比約55%のカチオン性脂質、約2.5%のPEG脂質、約32.5%のコレステロール及び約10%の非カチオン性脂質を含む。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質はイオン性のカチオン性脂質であり、非カチオン性脂質は中性脂質であり、ステロールはコレステロールである。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質ナノ粒子は、モル比50:38.5:10:1.5のカチオン性脂質:PEG2000−DMG:DSPCを有する。」

このように、本件明細書には、「カチオン性脂質ナノ粒子は、カチオン性脂質約20〜60%:非カチオン性脂質約5〜25%:ステロール約25〜55%:PEG修飾脂質約0.5〜15%のモル比を有する」ことが記載されている。そして、実施例ではそれらの代表的な成分及び配合割合である「50モル%のDLin−KC2−DMA又はDLin−MC3−DMA(カチオン性脂質)、10モル%のDPSC(非カチオン性脂質)、38.5モル%のコレステロール(ステロール)及び1.5モル%のPEG−DOMG(PEG修飾脂質)」を用いた脂質ナノ粒子内に製剤化されたmRNAについて、核酸ワクチンとして使用できることが実際に確認されており、この試験結果を基に、核酸ワクチンの送達性に影響をしない範囲で、これらの脂質の成分及び配合割合を変更することは、当業者が通常の実験手法に基づいて適宜なし得ることである。
そうすると、当業者であれば本件明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて、本件発明に規定される範囲内で、これらの脂質の成分及び配合割合を設定し得るのであり、そのような脂質の成分及び配合割合を見いだすために、当業者に期待しうる程度を越える試行錯誤を必要とするとはいえない。
また、当業者は、本件発明に係る脂質ナノ粒子を「カチオン性脂質約20〜60%:非カチオン性脂質約5〜25%:ステロール約25〜55%:及びPEG修飾脂質約0.5〜15%のモル比を有する脂質ナノ粒子」とすることで、本件発明の課題を解決できることは、本件発明の詳細な説明の記載から十分に理解することができる。

(イ)について
申立人は、単なる「イオン性」という記載では、生理学的条件下では非イオン性である脂質も包含される旨主張するが、本件発明は、核酸ワクチンに係る発明であるから、当然、核酸ワクチンとして使用する態様において「イオン性」であることを規定していることを当業者であれば理解できる。
したがって、申立人の上記主張を採用することはできない。

(ウ)について
申立人は、本件発明1のmRNAには、たった1つのN1−メチルシュードウリジン化学修飾だけを含むmRNAも包含されるところ、技術常識に基づけば、そのような単一のヌクレオチド修飾では効果が奏されない旨主張する。

しかしながら、本件明細書の【0067】には、「本発明は、いくつかの態様において脂質ナノ粒子(LNP)製剤が、化学修飾されたmRNAワクチン及び非修飾のmRNAワクチンを含めて、mRNAワクチンの効果を著しく増強するという驚くべき知見を包含する。」と記載され、さらに、本件明細書の表32には、本願発明で規定する脂質ナノ粒子内に製剤化された化学修飾mRNAだけでなく、本願発明で規定する脂質ナノ粒子内に製剤化された無修飾mRNAであっても、裸の無修飾mRNA及び他の脂質製剤であるリポフェクトアミン2000で製剤化された無修飾mRNAと比較して、HA阻害力価が優れていることが示されている。
このように、本件明細書の実施例において、本件発明で規定する特定の脂質の組成からなる脂質ナノ粒子に製剤化されたmRNAは、化学修飾を有しない場合であっても使用できることが具体的に示されていることから、本件発明は、「カチオン性脂質約20〜60%:非カチオン性脂質約5〜25%:ステロール約25〜55%:及びPEG修飾脂質約0.5〜15%のモル比」という組成を有する脂質ナノ粒子を用いて、修飾、非修飾にかかわらず、抗原性ポリペプチドをコードするmRNAを生体内に送達することにより、核酸ワクチンとして機能することを見出した点を特徴とするものである。
そうすると、1つのヌクレオチドのみがN1−メチルシュードウリジンである場合が包含される本件発明1の全体にわたって実施することができないとする申立人の主張は、採用できない。

(エ)について
申立人は、本件明細書において、「ウイルス抗原」として示されているのは、インフルエンザウイルス由来のH1N1、H7N9、H10N8のみであり、H7N9、H10N8以外のインフルエンザ由来抗原をコードする核酸ワクチンの中には、本件発明1の他の特徴(LNP製剤の組成)を備えていたとしても、効果を奏さないものが多数含まれるものであり、その中から、核酸ワクチンとして十分に機能するものを選択するためには、当業者に過度な負担を強いるものである旨主張する。

しかしながら、本件発明の技術的思想は、特定の脂質の特定の組成の脂質ナノ粒子を用いることにより、当該ナノ粒子内に、ウイルス抗原である抗原性ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むmRNAが製剤化したものが核酸ワクチンとして機能することを確認した点にあり(【0067】)、当該ウイルス抗原は、ワクチンとして機能することが周知のウイルス抗原から適宜選択できることは、当業者が十分に理解することができるものである。
したがって、申立人の上記主張を採用することはできない。

以上のとおりであるから、申立理由3及び4は理由がない。

(13)申立理由5(明確性
申立人は、本件発明1における「約」という記載は、発明の範囲を不明確にするものである旨主張する。

しかしながら、本件明細書中において、「約」(「おおよそ」あるいは「だいたい」の値であることを意味する。)を付して表記されている数値範囲であり、その範囲の厳密な上限や下限がどこにあるかを問題とする余地はなく、「約」という語が付されたことによって、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確になるものというものではない。
したがって、申立理由5は理由がない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1〜20に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件請求項1〜20に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2022-03-14 
出願番号 P2017-507919
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A61K)
P 1 651・ 537- Y (A61K)
P 1 651・ 113- Y (A61K)
P 1 651・ 536- Y (A61K)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 岡崎 美穂
特許庁審判官 冨永 みどり
齋藤 恵
登録日 2021-05-10 
登録番号 6881813
権利者 モデルナティーエックス, インコーポレイテッド
発明の名称 核酸ワクチン  
代理人 塩尻 一尋  
代理人 飯田 雅人  

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