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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C07C
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C07C
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C07C
審判 全部申し立て 1項2号公然実施  C07C
管理番号 1384285
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-05-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-12-20 
確定日 2022-04-14 
異議申立件数
事件の表示 特許第6890708号発明「1,3−ブチレングリコール製品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6890708号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6890708号の請求項1ないし2に係る特許についての出願は、令和1年9月5日に出願された特願2019−162351号の一部を、令和2年11月9日に新たな特許出願としたものであって、令和3年5月27日にその特許権の設定登録がされ、同年6月18日にその特許公報が発行され、その後、令和3年12月20日に平居 博美(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
本件の請求項1〜2に係る発明は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1〜2に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本件発明1」などと、また、これらを合わせて「本件発明」ということがある。)である。

「【請求項1】
下記条件のガスクロマトグラフィー分析において、
1,3−ブチレングリコールのピークの面積率が99.5%以上であり、
1,3−ブチレングリコールのピークの相対保持時間を1.0としたとき、相対保持時間が2.3〜2.4の範囲に現れるピークの面積率が0ppmを超え、150ppm以下であり、
前記の相対保持時間が2.3〜2.4の範囲に現れるピークに該当する成分として、1,3−ブチレングリコールとアセトアルドールとのアセタール体を含む、1,3−ブチレングリコール製品であって、
空気雰囲気下、180℃で3時間保持した後のAPHAが40以下である、前記1,3−ブチレングリコール製品。
(ガスクロマトグラフィー分析の条件)
分析カラム:固定相がジメチルポリシロキサンであるカラム(膜厚1.0μm×長さ30m×内径0.25mm)
昇温条件:5℃/分で80℃から120℃まで昇温した後、2℃/分で160℃まで昇温し2分保持する。さらに、10℃/分で230℃まで昇温し、230℃で18分保持する。
試料導入温度:250℃
キャリアガス:ヘリウム
カラムのガス流量:1mL/分
検出器及び検出温度:水素炎イオン化検出器(FID)、280℃
【請求項2】
1,3−ブチレングリコール製品における1,3−ブチレングリコールが、アセトアルドール、パラアルドール、及びアルドキサンからなる群より選択される少なくとも1つの化合物の還元体である請求項1に記載の1,3−ブチレングリコール製品。」

第3 特許異議申立人が申し立てた理由の概要

1 特許異議申立人が申し立てた理由の概要
特許異議申立人が申し立てた取消理由は、以下の理由1〜4である。

[理由1]本件の請求項1〜2に係る発明は、下記の甲第1、4、5号証に記載された本件特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明であって、特許法第29条第1項第2号に該当するから、請求項1〜2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

[理由2]本件の請求項1〜2に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第10、11号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1〜2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

[理由3]本件の請求項1〜2に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第10〜13号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

[理由4]本件の請求項1〜2に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合しない。
よって、請求項1〜2に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

理由4の具体的な理由は、次のとおりである。
理由4−1:本件発明1の「1,3−ブチレングリコールのピークの相対保持時間を1.0としたとき、相対保持時間が2.3〜2.4の範囲に現れるピークの面積率が0ppmを超え、150ppm以下であり、」との発明特定事項について、本件明細書の【0059】に「上述の1,3ーブチレングリコール製品について、後述の条件にてガスクロマトグラフィー分析を行った結果、相対保持時間が2.3〜2.4の範囲におけるピークは検出限界以下(10ppm以下)であった。」として、実施例1では検出以下であるにもかかわらず、「相対保持時間が2.3〜2.4の範囲に現れるピークの面積率が0ppmを超え」ているとされる根拠が何ら記載されておらず、当業者であっても検出限界以下のピークからピーク面積率が0ppmを超えることが理解できないため、本件発明1は不明確である。

理由4−2:本件発明1の「前記の相対保持時間が2.3〜2.4の範囲に現れるピークに該当する成分として、1,3−ブチレングリコールとアセトアルドールとのアセタール体を含む、1,3−ブチレングリコール製品」との発明特定事項について、仮に検出限界以下のピークに基づき、相対保持時間が2.3〜2.4の範囲に現れるピークの面積率が0ppmを超えていたと判断できるとしても、検出限界以下のピークに基づき、実施例1が1,3−ブチレングリコールとアセトアルドールとのアセタール体を含むことは当業者であっても理解できないため、本件発明1は不明確である。

理由4−3:物の発明についての請求項にその物の製造方法が記載されている場合において、その請求項の記載が「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは、出願時においてその物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情(以下、「不可能・非実際的事情」という)が存在するときに限られる。本件発明2では「1,3−ブチレングリコール製品における1,3−ブチレングリコールが、アセトアルドール、パラアルドール、及びアルドキサンからなる群より選択される少なくとも1つの化合物の還元体である」と特定されており、「物の発明において請求項にその物の製造方法が記載されている場合」に該当するが、本件発明1では、ガスクロマトグラフィー分析を行って、発明を特定していることから、本件発明2には、不可能・非実際的事情が存在していないから、本件発明2は不明確である。

特許異議申立人が提示した甲各号証は次のとおり。
甲第1号証:株式会社ダイセルのホームページ、インターネット、URL<https://www.daicel.com/yuuki/product/index.php?act=list_view&free_word=&ac=0&cid=19&x=61&y=5>(以下「甲1」という。下記甲各号証についても同様。)
甲第2号証:平居 博美、実験成績証明書、2021年12月20日
甲第3号証:特開2016−160253号公報
甲第4号証:KHネオケム株式会社製1,3−ブチレングリコール−Pの安全データシート、作成日:2000年8月25日、改訂日:2019年2月7日
甲第5号証:高級アルコール工業株式会社製ハイシュガーケイン BGの安全データシート、作成日:2007年4月23日、改訂日:2017年5月1日
甲第6号証:高級アルコール工業株式会社製ハイシュガーケイン BGのカタログ、インターネット、URL<https://www.kak.co.jp/mirai_lab/assets/pdf/products_03_04.pdf>
甲第7号証:特表2012−525158号公報
甲第8号証:特開2016−63823号公報
甲第9号証:特開2018−148891号公報
甲第10号証:国際公開第00/07969号
甲第11号証:特開2001−213825号公報
甲第12号証:特開2001−288131号公報
甲第13号証:特開2001−213824号公報

第4 当審の判断
当審は、本件発明1〜2に係る特許は、特許異議申立人が申し立てた理由及び証拠方法によって取り消すべきものではないと判断する。
理由は以下のとおりである。

1 甲各号証について
(1)甲各号証の記載事項
甲1:
1a)「



甲2:
2a)「
























甲3:
3a)「【0050】
・・・
*6:1,3-ブチレングリコール 化粧品グレード(13BGUK)(ダイセル社製)」

甲4:
4a)「


・・・





甲5:
5a)「


・・・




甲6:
6a)「




甲7:
7a)「【請求項1】
1,3-ブタンジオール(1,3-BDO)を産生するのに十分な量で発現する1,3-BDO経路酵素をコードする少なくとも1つの外来性核酸を含む1,3-BDO経路を有する微生物を含み、該1,3-BDO経路が 2-アミノ-4-ケトペンタノアート(AKP)チオラーゼ、AKP脱水素酵素、2-アミノ-4-ヒドロキシペンタノアートアミノトランスフェラーゼ、2-アミノ-4-ヒドロキシペンタノアート酸化還元酵素(脱アミノ化)、2-オキソ-4-ヒドロキシペンタノアートデカルボキシラーゼ、3-ヒドロキシブチルアルデヒド還元酵素、AKPアミノトランスフェラーゼ、AKP酸化還元酵素(脱アミノ化)、2,4-ジオキソペンタノアートデカルボキシラーゼ、3-オキソブチルアルデヒド還元酵素(ケトン還元)、3-オキソブチルアルデヒド還元酵素(アルデヒド還元)、4-ヒドロキシ-2-ブタノン還元酵素、AKPデカルボキシラーゼ、4-アミノブタン-2-オンアミノトランスフェラーゼ、4-アミノブタン-2-オン酸化還元酵素(脱アミノ化)、4-アミノブタン-2-オンアンモニアリアーゼ、ブテノンヒドラターゼ、AKPアンモニア-リアーゼ、アセチルアクリラートデカルボキシラーゼ、アセトアセチル-CoA還元酵素(CoA依存性、アルデヒド形成)、アセトアセチル-CoA還元酵素(CoA依存性、アルコール形成)、アセトアセチル-CoA還元酵素(ケトン還元)、3-ヒドロキシブチリル-CoA還元酵素(アルデヒド形成)、3-ヒドロキシブチリル-CoA還元酵素(アルコール形成)、4-ヒドロキシブチリル-CoAデヒドラターゼ、及びクロトナーゼからなる群から選択される酵素を含む、非天然微生物。」

7b)「【0002】
本発明は一般に、有機化合物を産生することのできる生合成過程及び生物に関する。より具体的には、本発明は、有用化学物質1,3-ブタンジオールを産生することのできる非天然生物に関する。」

甲8:
8a)「【請求項1】
1,3-ブタンジオール(1,3-BDO)を産生するのに十分な量で発現する1,3-BDO経路酵素をコードする少なくとも1つの外来性核酸を含む1,3-BDO経路を有する微生物を含み、該1,3-BDO経路が 2-アミノ-4-ケトペンタノアート(AKP)チオラーゼ、AKP脱水素酵素、2-アミノ-4-ヒドロキシペンタノアートアミノトランスフェラーゼ、2-アミノ-4-ヒドロキシペンタノアート酸化還元酵素(脱アミノ化)、2-オキソ-4-ヒドロキシペンタノアートデカルボキシラーゼ、3-ヒドロキシブチルアルデヒド還元酵素、AKPアミノトランスフェラーゼ、AKP酸化還元酵素(脱アミノ化)、2,4-ジオキソペンタノアートデカルボキシラーゼ、3-オキソブチルアルデヒド還元酵素(ケトン還元)、3-オキソブチルアルデヒド還元酵素(アルデヒド還元)、4-ヒドロキシ-2-ブタノン還元酵素、AKPデカルボキシラーゼ、4-アミノブタン-2-オンアミノトランスフェラーゼ、4-アミノブタン-2-オン酸化還元酵素(脱アミノ化)、4-アミノブタン-2-オンアンモニアリアーゼ、ブテノンヒドラターゼ、AKPアンモニア-リアーゼ、アセチルアクリラートデカルボキシラーゼ、アセトアセチル-CoA還元酵素(CoA依存性、アルデヒド形成)、アセトアセチル-CoA還元酵素(CoA依存性、アルコール形成)、アセトアセチル-CoA還元酵素(ケトン還元)、3-ヒドロキシブチリル-CoA還元酵素(アルデヒド形成)、3-ヒドロキシブチリル-CoA還元酵素(アルコール形成)、4-ヒドロキシブチリル-CoAデヒドラターゼ、及びクロトナーゼからなる群から選択される酵素を含む、非天然微生物。」

8b)「【0002】
本発明は一般に、有機化合物を産生することのできる生合成過程及び生物に関する。より具体的には、本発明は、有用化学物質1,3-ブタンジオールを産生することのできる非天然生物に関する。」

甲9:
9a)「【請求項1】
1,3-ブタンジオール(1,3-BDO)経路を有する非天然大腸菌であって、1,3-BDOを産生するのに十分な量で発現する1,3-BDO経路酵素を各々コードする少なくとも4つの外来性核酸を含み、該1,3-BDO経路酵素が、4-ヒドロキシブチリル-CoAデヒドラターゼ、クロトナーゼ、3-ヒドロキシブチリル-CoA還元酵素(アルデヒド形成)、及び3-ヒドロキシブチルアルデヒド還元酵素である、前記非天然大腸菌。」

甲10:
10a)「したがって、本発明は、臭気が無く、経時変化の少ない高純度1,3−ブチレングリコール及びその製造方法を提供することを目的としている。」(2頁6〜7行)

10b)「第2図は1,3−ブチレングリコールの特定条件(実施例の項に詳述する。)下のHPLC分析(測定波長210nm)によるチャートを示す。図2−1は実施例1の製品、図2−2は実施例2の製品、図2−3は比較例1の製品に関するチャートである。横軸は溶出時間(ピークがある場合にはその保持時間が数字で示されており、単位は分である。)、縦軸はミリ吸光度(mAbs)である。
1,3−ブチレングリコールは紫外部に吸収を殆ど持たないためにピークは極めて小さいが、その保持時間は図2−1では5.5分付近、図2−2では5.4分付近、図2−3では5.4分付近に現れる。
本発明で問題にする不純物は、その保持時間が20〜30分のものであり、品の悪い製品の場合には図2−3に示すように、23.5分、25.4分、26.4分、27.7分付近に大きなピークが現れ、即ち吸光度が大きい。品質のかなり良い場合には図2−2に示すように、23.4分、26.3分付近に小さなピーク(吸光度0.01以下)しか現れない。品質が非常に良い場合には図2−1に示すように、20〜30分の間にはピークが現れない(吸光度0.005以下)。
また、38〜42分付近のピークは臭気や経時変化には殆ど影響しないことがわかった。」(8頁下から4行〜9頁12行)

10c)「[実施例1]
第1図に示されるフローシートにしたがって本発明の方法を実施例に基づいて説明する。
原料としてアセトアルドール100部、水素6.5部を液相水素還元用反応器(図示せず)に仕込み、触媒としてラネーニッケルを3.5部加え、該反応器を温度125〜135℃、圧力150kg/cm2に保持して液相水素還元を行った。反応後の液は触媒を分離した後、苛性ソーダで中和し、アルコール類を除去して粗1,3−ブチレングリコール(A)を得た。
粗1,3−ブチレングリコール(A)を第1図に示す脱水塔1−1に仕込んだ。脱水塔では仕込み液量100部に対して塔頂より水を抜き出し、還流水として真水15部を加え、圧力50torrで蒸留塔底部より水分0.5重量%以下の粗1,3−ブチレングリコールを得た。
脱水された粗1,3−ブチレングリコールは次に、脱塩塔1−2に仕込まれた。ここでは仕込液量100部に対して蒸発残分として、塩、高沸点物および1,3−ブチレングリコールの一部が底部より5部排出された。塔頂からは1,3−ブチレングリコール、低沸点物及び高沸点物の一部が95部留出された。
脱塩塔1−2より留出された1,3−ブチレングリコール、低沸点物及び高沸点物の一部は、脱高沸点物蒸留塔1−3に仕込まれ、高沸点物および1,3−ブチレングリコールの一部が底部より20部排出された。塔頂からは低沸点物を含む粗1,3−ブチレングリコール(CR)が80部留出され、アルカリ反応器1−4に仕込まれた。この際仕込液に対して苛性ソーダ濃度が0.2重量%となるように10重量%苛性ソーダ水溶液を添加した。アルカリ反応器での反応温度を120℃に維持して、滞留時間20分で反応を行った。
反応器を出た反応粗液は脱アルカリ塔1−5へ仕込まれた。ここでは仕込液量100部に対して、苛性ソーダと高沸点物および1,3−ブチレングリコールの一部が塔底より10部排出された。塔頂からは1,3−ブチレングリコール及び低沸点物が90部留出され、次の製品塔へ仕込まれた。製品蒸留塔1−6においては、仕込液量100部に対して塔頂から低沸点物及び1,3−ブチレングリコールの一部が10重量%留出され、塔底からは製品1,3−ブチレングリコールが取り出された。
製造直後の1,3−ブチレングリコールは、臭気評点は3でり、所定条件下での紫外分光光度計による210nmでの吸光度は0.001であり、HPLC分析において、相対保持時間が4.0〜5.5の範囲に溶出する各ピークの吸光度が0.005以下であった。
この1,3−ブチレングリコールを用いて40℃での経時変化試験を行ったところ、1ヶ月後の臭気評点は3、所定条件下での紫外分光光度計による210nmでの吸光度は0.001と変化が無かった。
3ヶ月後においても所定条件下での紫外分光光度計による210nmでの吸光度は0.002と微増して若干微量不純物含有量が増加したが、HPLC分析の相対保持時間が4.0〜5.5の範囲に溶出する各ピークの吸光度が0.005以下であり、臭気評価は3であり依然として無臭であった。結果を表1に示す。」(11頁2行〜12頁16行)

10d)「[比較例1]
脱高沸点物蒸留塔1−3までは実施例1と同様な条件で運転を行い、脱高沸点物蒸留塔1−3の塔頂から1,3−ブチレングリコール及び低沸点物を留出させた。留出液はそのまま製品蒸留塔へ仕込まれた。製品蒸留塔1−6においては、仕込液量100部に対して塔頂から低沸点物及び1,3−ブチレングリコールの一部が10重量%留出された。塔底からは製品1,3−ブチレングリコールが取り出された。
製造直後の1,3−ブチレングリコールの臭気評点は3であり、所定条件下での紫外分光光度計による210nmでの吸光度は1.131であり、HPLC分析で、相対保持時間が4.0〜5.5の範囲に溶出する各ピークの吸光度が0.05以上であった。
この1,3−ブチレングリコールを用いて40℃での経時変化試験を行ったところ、1ヶ月後の臭気評点は5、所定条件下での紫外分光光度計による210nmでの吸光度は1.160であった。3ヶ月後には臭気評点は10、所定条件下での紫外分光光度計による210nmでの吸光度は1.193となり、HPLC分析の相対保持時間が4.0〜5.5の範囲に溶出する各ピークの吸光度が0.05以上であり、微臭が発生していた。結果を表1に示す。」(12頁下から6行〜13頁11行)

10e)「




甲11:
11a)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、製造3ヶ月後においても臭気の著しく低減された、経時変化の少ない高純度1,3−ブチレングリコールを提供することである。」

11b)「【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明する。
アセトアルドール類
・・・本発明において、アセトアルドール類とは水素添加により1,3−ブチレングリコールを生成するもののことであり、具体的には、アセトアルドール、その環化二量体であるパラアルドール、アセトアルデヒドの一種の環状3量体であるアルドキサン等、又はこれらの混合物である。・・・本発明においては、水添原料としてはアセトアルドール、パラアルドール、アルドキサン及びそれらの混合物が使用できる。・・・上記水添原料は、通常未反応アセトアルデヒドを縮合工程にリサイクルするため、アセトアルデヒドの少なくとも一部を留去したものであるが、残存アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、他の少量のアルデヒド成分、低沸点物、アルデヒドダイマーやトリマー等の高沸点物、水分等を含有している。水添原料は、10〜20重量%の水分を含んでいるものが使用できる。水分を除く、アセトアルドール分換算純度95〜98重量%のものが好ましく使用される。」

11c)「【0023】 [実施例1〜2]図−1に示されるフローシートにしたがって本発明の方法を実施例に基づいて説明する。原料としてアセトアルドール100部、水素を6.5部反応器(図示せず)に仕込んだ。反応器を温度125〜135℃、圧力150Kg/cm2に保持した。触媒としてラネーニッケルを3.5部加えた。反応器から取り出した反応粗液は触媒を分離したのち、苛性ソーダで中和された。その後、アルコール類を除去した粗1,3−ブチレングリコールを図−1に示す脱水塔1−1に仕込んだ。脱水塔では仕込み液量100部に対して塔頂より水15部を加え、圧力50torrで蒸留塔底部より水分0.5重量%以下の粗1,3−ブチレングリコールを得た。脱水された粗1,3−ブチレングリコールは次に、脱塩塔1−2に仕込まれた。ここでは仕込液量100部に対して蒸発残分として、塩、高沸点物および1,3−ブチレングリコールの一部が底部より5部排出された。塔頂からは1,3−ブチレングリコール、低沸点物及び高沸点物の一部が95部留出された。
【0024】脱塩塔1−2より留出された1,3−ブチレングリコール、低沸点物及び高沸点物の一部は、脱高沸物蒸留塔1−3に仕込まれ、高沸点物および1,3−ブチレングリコールの一部が底部より20部排出された。塔頂からは1,3−ブチレングリコール及び低沸点物が80部留出され、アルカリ反応器1−4に仕込まれた。この際仕込液に対して苛性ソーダ濃度が0.2重量%となるように10重量%苛性ソーダ水溶液を添加した。アルカリ反応器での反応温度を120℃に維持して、滞留時間20分反応を行った(実施例1)。実施例2ではアルカリ反応器での反応温度100℃、滞留時間30分とした以外は実施例1と同じに行った。アルカリ反応器を出た反応粗液は脱アルカリ塔1−5へ仕込まれた。ここでは仕込液量100部に対して、アルカリと高沸点物および1,3−ブチレングリコールの一部が塔底より10部排出された。塔頂からは1,3−ブチレングリコール及び低沸点物が90部留出され、次の製品塔へ仕込まれた。製品蒸留塔1−6においては、仕込液量100部に対して塔頂から低沸点物及び1,3−ブチレングリコールの一部が10重量%留出された。塔底からは製品1,3−ブチレングリコールが取り出された。製造直後と3ヶ月後の1,3−ブチレングリコールについて、過マンガン酸カリウム退色時間と、臭気評点を測定した。結果を表1に示す。」

11d)「【0026】
【表1】



11e)「【図1】



甲12:
12a)「【0024】(実施例1)アセトアルデヒドを水酸化ナトリウム水溶液の存在下に縮合して得られたパラアセトアルドール反応液を中和処理した後、未反応アセトアルデヒドの一部を回収した後の反応粗液を、下記性能のラネーニッケルの鹸濁した連続懸濁気泡塔に供給し、下記反応条件で水添反応を行い、ラネーニッケルを濾別して、水添反応粗液を得た。」

甲13:
13a)「【0018】(実施例1)アセトアルデヒドを水酸化ナトリウム水溶液の存在下に縮合して得られたパラアセトアルドール反応液を中和処理した後、未反応アセトアルデヒドを分離除去して得られたパラアセトアルドール液を、水添触媒であるラネーニッケルの鹸濁した連続懸濁気泡塔に供給し、下記反応条件で水添反応を行い、ラネーニッケルを濾別して、水添反応粗液を得た。」

(2)引用発明
ア 甲1発明
甲1には、株式会社ダイセルの製品である、1,3−ブタンジオール(化粧品用)[13BGUK]が記載されているところ、甲1はインターネット上で製品を紹介するページの画面表示の印刷物(印刷日:2021年12月10日)であるから、当該ページに「1,3−ブタンジオール(化粧品用)[13BGUK]」が掲載された時点において、1,3−ブタンジオール(化粧品用)[13BGUK]が日本国内又は外国において公然実施をされていたと認められるが、その掲載日は甲1からは不明であり、上記印刷日は分割出願である本件特許に係る出願の原出願(以下「原出願」ということがある。)の出願後であるから、甲1の記載のみからは、甲1に記載の1,3−ブタンジオール(化粧品用)[13BGUK]が原出願の出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明(以下「公然実施発明」という。)であるとはいえない。
一方、甲3には、「1,3-ブチレングリコール 化粧品グレード(13BGUK)(ダイセル社製)」との記載があり、甲1に記載された「1,3−ブチレングリコール」、「化粧品」、「13BGUK」、「ダイセル」と一致し、甲3に係る特許出願の明細書を作成するにあたって、上記1,3−ブチレングリコールが販売されていたと認められ、甲3の出願日は、原出願の出願前であるから、甲1に記載の以下の発明(以下「甲1発明」という。)が公然実施発明であったと認める。
「製品名が1,3−ブタンジオール(化粧品用)[13BGUK]である1,3−ブタンジオール。」

イ 甲4発明
甲4は、KHネオケム株式会社の製品である1,3−ブチレングリコール−Pの安全データシートであるところ、甲4には、作成日2000年8月25日、改訂日2019年2月7日との記載、当該製品が化学物質であり、化学名が1,3−ブチレングリコールである旨の記載がある。
そして、上記改訂日は原出願の出願前であるから、以下の発明(以下「甲4発明」という。)が公然実施発明であったと認める。
「製品名が1,3−ブチレングリコール−Pである1,3−ブチレングリコール。」

ウ 甲5発明
甲5は、高級アルコール工業株式会社の製品であるハイシュガーケイン BGの安全データシートであるところ、甲5には、作成日2007年4月23日、改訂日2017年5月1日との記載、当該製品が単一製品であり、化学名が1,3−ブチレングリコールである旨の記載がある。
そして、上記改訂日は原出願の出願前であるから、以下の発明(以下「甲5発明」という。)が公然実施発明であったと認める。
「製品名がハイシュガーケイン BGである1,3−ブチレングリコール。」

エ 甲10発明
甲10には、臭気が無く、経時変化の少ない高純度1,3−ブチレングリコール及びその製造方法についての記載があるところ、実施例1として、1,3−ブチレングリコールの具体的な製造方法が記載されている。したがって、甲10には、以下の発明(以下「甲10発明」という。)が記載されていると認める。
「以下の製造方法において、製品1,3−ブチレングリコールとされる1,3−ブチレングリコール。
製造方法:原料としてアセトアルドール100部、水素6.5部を液相水素還元用反応器(図示せず)に仕込み、触媒としてラネーニッケルを3.5部加え、該反応器を温度125〜135℃、圧力150kg/cm2に保持して液相水素還元を行う。反応後の液は触媒を分離した後、苛性ソーダで中和し、アルコール類を除去して粗1,3−ブチレングリコール(A)を得る。
粗1,3−ブチレングリコール(A)を第1図に示す脱水塔1−1に仕込む。脱水塔では仕込み液量100部に対して塔頂より水を抜き出し、還流水として真水15部を加え、圧力50torrで蒸留塔底部より水分0.5重量%以下の粗1,3−ブチレングリコールを得る。
脱水された粗1,3−ブチレングリコールは次に、脱塩塔1−2に仕込まれる。ここでは仕込液量100部に対して蒸発残分として、塩、高沸点物および1,3−グリコールの一部が底部より5部排出される。塔頂からは1,3−ブチレングリコール、低沸点物及び高沸点物の一部が95部留出される。
脱塩塔1−2より留出された1,3−ブチレングリコール、低沸点物及び高沸点物の一部は、脱高沸点物蒸留塔1−3に仕込まれ、高沸点物および1,3−ブチレングリコールの一部が底部より20部排出される。塔頂からは低沸点物を含む粗1,3−ブチレングリコール(CR)が80部留出され、アルカリ反応器1−4に仕込まれる。この際仕込液に対して苛性ソーダ濃度が0.2重量%となるように10重量%苛性ソーダ水溶液を添加する。アルカリ反応器での反応温度を120℃に維持して、滞留時間20分で反応を行う。
反応器を出た反応粗液は脱アルカリ塔1−5へ仕込まれる。ここでは仕込液量100部に対して、苛性ソーダと高沸点物および1,3−ブチレングリコールの一部が塔底より10部排出される。塔頂からは1,3−ブチレングリコール及び低沸点物が90部留出され、次の製品塔へ仕込まれる。製品蒸留塔1−6においては、仕込液量100部に対して塔頂から低沸点物及び1,3−ブチレングリコールの一部が10重量%留出され、塔底からは製品1,3−ブチレングリコールが取り出される。



オ 甲11発明
甲11には、製造3ヶ月後においても臭気の著しく低減された、経時変化の少ない高純度1,3−ブチレングリコールについての記載があるところ、実施例1、2として、1,3−ブチレングリコールの具体的な製造方法が記載されている。したがって、甲11には、以下の発明(以下「甲11発明」という。)が記載されていると認める。
「以下の製造方法において、製品1,3−ブチレングリコールとされる1,3−ブチレングリコール。
製造方法:原料としてアセトアルドール100部、水素を6.5部反応器(図示せず)に仕込む。反応器を温度125〜135℃、圧力150Kg/cm2に保持する。触媒としてラネーニッケルを3.5部加える。反応器から取り出した反応粗液は触媒を分離したのち、苛性ソーダで中和される。その後、アルコール類を除去した粗1,3−ブチレングリコールを図−1に示す脱水塔1−1に仕込む。脱水塔では仕込み液量100部に対して塔頂より水15部を加え、圧力50torrで蒸留塔底部より水分0.5重量%以下の粗1,3−ブチレングリコールを得る。脱水された粗1,3−ブチレングリコールは次に、脱塩塔1−2に仕込まれる。ここでは仕込液量100部に対して蒸発残分として、塩、高沸点物および1,3−ブチレングリコールの一部が底部より5部排出される。塔頂からは1,3−ブチレングリコール、低沸点物及び高沸点物の一部が95部留出される。
脱塩塔1−2より留出された1,3−ブチレングリコール、低沸点物及び高沸点物の一部は、脱高沸物蒸留塔1−3に仕込まれ、高沸点物および1,3−ブチレングリコールの一部が底部より20部排出される。塔頂からは1,3−ブチレングリコール及び低沸点物が80部留出され、アルカリ反応器1−4に仕込まれる。この際仕込液に対して苛性ソーダ濃度が0.2重量%となるように10重量%苛性ソーダ水溶液を添加する。アルカリ反応器での反応温度を120℃に維持して、滞留時間20分反応を行う(実施例1)。実施例2ではアルカリ反応器での反応温度100℃、滞留時間30分とした以外は実施例1と同じに行う。アルカリ反応器を出た反応粗液は脱アルカリ塔1−5へ仕込まれる。ここでは仕込液量100部に対して、アルカリと高沸点物および1,3−ブチレングリコールの一部が塔底より10部排出される。塔頂からは1,3−ブチレングリコール及び低沸点物が90部留出され、次の製品塔へ仕込まれる。製品蒸留塔1−6においては、仕込液量100部に対して塔頂から低沸点物及び1,3−ブチレングリコールの一部が10重量%留出される。塔底からは製品1,3−ブチレングリコールが取り出される。
【図1】



2 理由1について
(1)本件発明1について
ア 甲1発明について
本件発明1と甲1発明とを対比すると、両者は、
「1,3−ブチレングリコール製品。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1−1>
本件発明1は「下記条件のガスクロマトグラフィー分析において、1,3−ブチレングリコールのピークの面積率が99.5%以上であり、1,3−ブチレングリコールのピークの相対保持時間を1.0としたとき、相対保持時間が2.3〜2.4の範囲に現れるピークの面積率が0ppmを超え、150ppm以下であり、前記の相対保持時間が2.3〜2.4の範囲に現れるピークに該当する成分として、1,3−ブチレングリコールとアセトアルドールとのアセタール体を含む」こと、
「空気雰囲気下、180℃で3時間保持した後のAPHAが40以下である」こと、
「(ガスクロマトグラフィー分析の条件)
分析カラム:固定相がジメチルポリシロキサンであるカラム(膜厚1.0μm×長さ30m×内径0.25mm)
昇温条件:5℃/分で80℃から120℃まで昇温した後、2℃/分で160℃まで昇温し2分保持する。さらに、10℃/分で230℃まで昇温し、230℃で18分保持する。
試料導入温度:250℃
キャリアガス:ヘリウム
カラムのガス流量:1mL/分
検出器及び検出温度:水素炎イオン化検出器(FID)、280℃」を特定しているのに対し、甲1発明はそのような特定をしていない点。

上記相違点1−1について検討する。
甲1及び甲3には、上記相違点1−1に係る技術的事項については記載も示唆もないから、甲1及び甲3の記載からは甲1発明が上記相違点1−1に係る本件発明1の技術的事項を有するものであるとはいえない。
甲2は原出願の出願後の2021年12月20日に作成されたものであるところ、甲2には、甲1発明と同じ製品名を有する製品についての各種分析結果が示されている。しかし、甲2には、分析に供した試料をいつ入手した物であるかについての記載はないから、当該試料がいつ製造された物であるかは不明である。
そして、通常、各種工業製品については経時的に常に同じ物性を有する製品が製造されるという技術常識はない。
したがって、甲1発明が甲2で示された分析結果で示される物性を有するものであるとはいえない。
よって、甲1発明は本件発明1と上記相違点1−1において実質的に相違するものであり、本件発明1は公然実施発明であるとはいえない。

イ 甲4発明について
本件発明1と甲4発明とを対比すると、両者は、
「1,3−ブチレングリコール製品。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1−4>
本件発明1は「下記条件のガスクロマトグラフィー分析において、1,3−ブチレングリコールのピークの面積率が99.5%以上であり、1,3−ブチレングリコールのピークの相対保持時間を1.0としたとき、相対保持時間が2.3〜2.4の範囲に現れるピークの面積率が0ppmを超え、150ppm以下であり、前記の相対保持時間が2.3〜2.4の範囲に現れるピークに該当する成分として、1,3−ブチレングリコールとアセトアルドールとのアセタール体を含む」こと、
「空気雰囲気下、180℃で3時間保持した後のAPHAが40以下である」こと、
「(ガスクロマトグラフィー分析の条件)
分析カラム:固定相がジメチルポリシロキサンであるカラム(膜厚1.0μm×長さ30m×内径0.25mm)
昇温条件:5℃/分で80℃から120℃まで昇温した後、2℃/分で160℃まで昇温し2分保持する。さらに、10℃/分で230℃まで昇温し、230℃で18分保持する。
試料導入温度:250℃
キャリアガス:ヘリウム
カラムのガス流量:1mL/分
検出器及び検出温度:水素炎イオン化検出器(FID)、280℃」を特定しているのに対し、甲4発明はそのような特定をしていない点。

上記相違点1−4について検討する。
甲4には、上記相違点1−4に係る技術的事項については記載も示唆もないから、甲4の記載からは甲4発明が上記相違点1−4に係る本件発明1の技術的事項を有するものであるとはいえない。
甲2は原出願の出願後の2021年12月20日に作成されたものであるところ、甲2には、甲4発明と同じ製品名を有する製品についての各種分析結果が示されている。しかし、甲2には、分析に供した試料をいつ入手した物であるかについての記載はないから、当該試料がいつ製造された物であるかは不明である。
そして、通常、各種工業製品については経時的に常に同じ物性を有する製品が製造されるという技術常識はない。
したがって、甲4発明が甲2で示された分析結果で示される物性を有するものであるとはいえない。
よって、甲4発明は本件発明1と上記相違点1−4において実質的に相違するものであり、本件発明1は公然実施発明であるとはいえない。

ウ 甲5発明について
本件発明1と甲5発明とを対比すると、両者は、
「1,3−ブチレングリコール製品。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1−5>
本件発明1は「下記条件のガスクロマトグラフィー分析において、1,3−ブチレングリコールのピークの面積率が99.5%以上であり、1,3−ブチレングリコールのピークの相対保持時間を1.0としたとき、相対保持時間が2.3〜2.4の範囲に現れるピークの面積率が0ppmを超え、150ppm以下であり、前記の相対保持時間が2.3〜2.4の範囲に現れるピークに該当する成分として、1,3−ブチレングリコールとアセトアルドールとのアセタール体を含む」こと、
「空気雰囲気下、180℃で3時間保持した後のAPHAが40以下である」こと、
「(ガスクロマトグラフィー分析の条件)
分析カラム:固定相がジメチルポリシロキサンであるカラム(膜厚1.0μm×長さ30m×内径0.25mm)
昇温条件:5℃/分で80℃から120℃まで昇温した後、2℃/分で160℃まで昇温し2分保持する。さらに、10℃/分で230℃まで昇温し、230℃で18分保持する。
試料導入温度:250℃
キャリアガス:ヘリウム
カラムのガス流量:1mL/分
検出器及び検出温度:水素炎イオン化検出器(FID)、280℃」を特定しているのに対し、甲5発明はそのような特定をしていない点。

上記相違点1−5について検討する。
甲5には、上記相違点1−5に係る技術的事項については記載も示唆もないから、甲5の記載からは甲5発明が上記相違点1−5に係る本件発明1の技術的事項を有するものであるとはいえない。
甲2は原出願の出願後の2021年12月20日に作成されたものであるところ、甲2には、甲5発明と同じ製品名を有する製品についての各種分析結果が示されている。しかし、甲2には、分析に供した試料をいつ入手した物であるかについての記載はないから、当該試料がいつ製造された物であるかは不明である。
そして、通常、各種工業製品については経時的に常に同じ物性を有する製品が製造されるという技術常識はない。
したがって、甲5発明が甲2で示された分析結果で示される物性を有するものであるとはいえない。
よって、甲5発明は本件発明1と上記相違点1−5において実質的に相違するものであり、本件発明1は公然実施発明であるとはいえない。

(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1について「1,3−ブチレングリコール製品における1,3−ブチレングリコールが、アセトアルドール、パラアルドール、及びアルドキサンからなる群より選択される少なくとも1つの化合物の還元体である」ことを特定するものであるところ、上述のとおり、甲1、甲4及び甲5発明はそれぞれ、本件発明1と、相違点1−1、1−4及び1−5を有するものであるから、本件発明2についても同様に相違点1−1、1−4及び1−5を有する。
また、甲6には、ハイシュガーケイン BGが植物由来の1,3−ブチレングリコールであることが、甲7〜9には、3-ヒドロキシブチルアルデヒド還元酵素等の酵素により1,3−ブチレングリコールを製造することが、甲10及び11には、アセトアルドールの水素還元により1,3−ブチレングリコールを得ることが記載されているに過ぎない。
したがって、本件発明2についてされた上記特定事項を検討するまでもなく、本件発明2は甲1、4及び5発明と実質的に相違するものであり、本件発明2は公然実施発明であるとはいえない。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、理由1は理由がない。

3 理由2について
(1)本件発明1について
ア 甲10発明について
本件発明1と甲10発明とを対比すると、両者は、
「1,3−ブチレングリコール製品。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1−10>
本件発明1は「下記条件のガスクロマトグラフィー分析において、1,3−ブチレングリコールのピークの面積率が99.5%以上であり、1,3−ブチレングリコールのピークの相対保持時間を1.0としたとき、相対保持時間が2.3〜2.4の範囲に現れるピークの面積率が0ppmを超え、150ppm以下であり、前記の相対保持時間が2.3〜2.4の範囲に現れるピークに該当する成分として、1,3−ブチレングリコールとアセトアルドールとのアセタール体を含む」こと、
「空気雰囲気下、180℃で3時間保持した後のAPHAが40以下である」こと、
「(ガスクロマトグラフィー分析の条件)
分析カラム:固定相がジメチルポリシロキサンであるカラム(膜厚1.0μm×長さ30m×内径0.25mm)
昇温条件:5℃/分で80℃から120℃まで昇温した後、2℃/分で160℃まで昇温し2分保持する。さらに、10℃/分で230℃まで昇温し、230℃で18分保持する。
試料導入温度:250℃
キャリアガス:ヘリウム
カラムのガス流量:1mL/分
検出器及び検出温度:水素炎イオン化検出器(FID)、280℃」を特定しているのに対し、甲10発明はそのような特定をしていない点。

上記相違点1−10について検討する。
甲10には、上記相違点1−10に係る技術的事項については記載も示唆もない。
(ア)製造方法について
ここで、たとえ甲10に上記相違点1−10に係る技術的事項についての記載がなくとも、甲10発明の製造方法が、本件発明1の製造方法と一致すれば、甲10発明が上記相違点1−10に係る技術的事項を備えるといえると考えられる。
そこで、本件発明1と甲10発明の製造方法について検討する。
本件明細書には、【0031】〜【0051】に1,3−ブチレングリコール製品の一般的な製造方法が記載され、【0052】〜【0064】に実施例が記載されている。
本件明細書に実施例として記載された製造方法と甲10発明の製造方法とを対比すると、両者は、液相水素還元用反応器における液相水素還元、脱水塔における脱水、脱塩塔における脱塩、脱高沸点物蒸留塔における脱高沸点物、アルカリ反応器におけるアルカリ反応、脱アルカリ塔における脱アルカリ、製品蒸留塔における蒸留を行う点で共通する。
しかし、液相水素還元用反応器における液相水素還元について、本件明細書に記載の実施例では、「原料として30重量%の水を含むアセトアルドール溶液100部(アセトアルドール70部と水30部の混合溶液)に対し、水素10部を液相水素還元用反応器に仕込み、触媒としてラネーニッケルを15部加え、該反応器を135℃、300atmに保持して」行うのに対し、甲10発明は、「原料としてアセトアルドール100部、水素6.5部を液相水素還元用反応器(図示せず)に仕込み、触媒としてラネーニッケルを3.5部加え、該反応器を温度125〜135℃、圧力150kg/cm2に保持して液相水素還元を行う。反応後の液は触媒を分離した後、苛性ソーダで中和し、アルコール類を除去して」行うものであり、本件明細書に記載の実施例と、甲10発明とは、原料が相違し(本件明細書に記載の実施例で原料が水を含む。)、水素、触媒であるラネーニッケルの使用量が相違し、反応圧力が異なる。
したがって、製造方法が一致するとはいえない。
そして、本件明細書には「【0035】水添原料は水を含んでいてもよいし、含まなくてもよいが、1,3−ブチレングリコール製品の純度の観点からは含んでいることが好ましい。水添原料における水の含有量は特に限定されないが、例えば、2重量%以上が好ましく、より好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上、特に好ましくは15重量%以上である。なお、その上限値は、例えば、50重量%、40重量%、又は35重量%であってもよい。水の含有量が上記範囲内である場合、得られる粗1,3−ブチレングリコールに含まれる1,3−ブチレングリコールとアセトアルドールとのアセタール体が低減されるため、最終的に得られる1,3−ブチレングリコール製品の純度が高くなる傾向がある。これは、水添原料に水がある程度含まれていることにより、上記アセタール体が加水分解されて1,3−ブチレングリコールになるとともに、共生したアセトアルドールが還元されて1,3−ブチレングリコールとなることに起因する。」、「【0038】還元反応に使用する水添触媒の量、水素量、還元反応における水素圧、反応温度、反応時間(滞留時間)が上記範囲内にあることにより、アセトアルドール類から1,3−ブチレングリコールへの反応速度(水添速度)が向上する。このため、例えば、1,3−ブチレングリコールとアセトアルドールのアセタール化反応が低減され、高い純度である本発明の1,3−ブチレングリコール製品が得られる傾向がある。この傾向は、特に還元反応における水素圧に強く影響される。すなわち、還元反応における水素圧が上記範囲内にあることにより、アセトアルドール類から1,3−ブチレングリコールへの反応速度(還元速度)が著しく向上し、その結果、1,3−ブチレングリコールとアセトアルドールとのアセタール体が低減され、高い純度である本発明の1,3−ブチレングリコール製品が得られることになる。」との記載があること、一般的に化学反応において製造条件が異なれば、製造物が異なることに鑑みれば、甲10発明が本件明細書の実施例に記載の1,3−ブチレングリコール製品と同様の物性を有しているとはいえない。
さらに、甲12、13に、アセトアルデヒドを水酸化ナトリウム水溶液の存在下に縮合して得られたパラアセトアルドール反応液を中和処理した後、未反応アセトアルデヒドの一部を回収又は分離除去した後、ラネーニッケルを用いて水添反応を行う旨が記載されているが(摘示12a、13a)、当該記載はアセトアルデヒドからパラアセトアルドールの水添反応物(1,3−ブチレングリコール)を製造する方法が記載されているに過ぎず、そのことによって、甲10発明の製造方法が、甲1の実施例に記載の製造方法と異ならないとすることはできない。
また、仮に、甲10発明の製造方法が本件明細書に記載の一般的な製造方法に包含されるものであったとしても、そのことにより、相違点1−10に係る本件発明1の技術的事項を備える1,3−ブチレングリコール製品が得られているということはできない。
したがって、甲10発明は本件発明1と上記相違点1−10において実質的に相違するものであり、本件発明1は甲10に記載された発明であるとはいえない。

(イ)甲10に記載の物性等について
本件明細書【0029】には「上記アセタール体は加水分解でアセトアルドールが発生することがあるが、これは臭気原因物質であるとともに酸化(着色)促進作用を有するものであるため、着色原因物質であるともいえる。」との記載があるから、相違点1−10に係る1,3−ブチレングリコールとアセトアルドールとのアセタール体が臭気、着色に関連する物質であることが理解できる。
一方、甲10には、実施例1として「製造直後の1,3−ブチレングリコールは、臭気評点は3でり、所定条件下での紫外分光光度計による210nmでの吸光度は0.001であり、HPLC分析において、相対保持時間が4.0〜5.5の範囲に溶出する各ピークの吸光度が0.005以下であった。この1,3−ブチレングリコールを用いて40℃での経時変化試験を行ったところ、1ヶ月後の臭気評点は3、所定条件下での紫外分光光度計による210nmでの吸光度は0.001と変化が無かった。3ヶ月後においても所定条件下での紫外分光光度計による210nmでの吸光度は0.002と微増して若干微量不純物含有量が増加したが、HPLC分析の相対保持時間が4.0〜5.5の範囲に溶出する各ピークの吸光度が0.005以下であり、臭気評価は3であり依然として無臭であった。」(摘示10c)と記載される一方で、比較例1として「製造直後の1,3−ブチレングリコールの臭気評点は3であり、所定条件下での紫外分光光度計による210nmでの吸光度は1.131であり、HPLC分析で、相対保持時間が4.0〜5.5の範囲に溶出する各ピークの吸光度が0.05以上であった。この1,3−ブチレングリコールを用いて40℃での経時変化試験を行ったところ、1ヶ月後の臭気評点は5、所定条件下での紫外分光光度計による210nmでの吸光度は1.160であった。3ヶ月後には臭気評点は10、所定条件下での紫外分光光度計による210nmでの吸光度は1.193となり、HPLC分析の相対保持時間が4.0〜5.5の範囲に溶出する各ピークの吸光度が0.05以上であり、微臭が発生していた。」(摘示10d)と記載されており、また、第2図として、実施例、比較例についてのHPLC分析結果が記載されており(摘示10e)、問題となる不純物の保持時間(20〜30分)のピークについて、微臭が発生している比較例1の物はピークが現れるのに対し、実施例1の物についてはピークが現れない旨(摘示10b)が記載されている。
しかし、1,3−ブチレングリコールとアセトアルドールとのアセタール体が臭気、着色に関連する物質であるとの事項が、本件明細書に一般的な記載として存在し、甲10に、甲10発明の1,3−ブチレングリコールが臭気を有しない等の特性を有するものであったとしても、相違点1−10に係る技術的事項は、特定条件でのAPHA、特定条件でのガスクロマトグラフィー分析に係るものであるから、甲10発明が相違点1−10に係る本件発明1の技術的事項を備えるということはできない。
また、甲2に、実験4として1,3−ブチレングリコールとアセトアルドールのアセタール体を含む反応液についてHPLC分析を行った結果とされるものが記載されているが、上述のとおり、相違点1−10に係る技術的事項は、特定条件でのAPHA、特定条件でのガスクロマトグラフィー分析に係るものであるから、甲2の当該記載をみても、甲10発明が相違点1−10に係る本件発明1の技術的事項を備えるということはできない。

以上のとおりであるから、甲10発明は本件発明1と上記相違点1−10において実質的に相違するものであり、本件発明1は、甲2を参酌しても、甲10に記載された発明であるとはいえない。

イ 甲11発明について
本件発明1と甲11発明とを対比すると、両者は、
「1,3−ブチレングリコール製品。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1−11>
本件発明1は「下記条件のガスクロマトグラフィー分析において、1,3−ブチレングリコールのピークの面積率が99.5%以上であり、1,3−ブチレングリコールのピークの相対保持時間を1.0としたとき、相対保持時間が2.3〜2.4の範囲に現れるピークの面積率が0ppmを超え、150ppm以下であり、前記の相対保持時間が2.3〜2.4の範囲に現れるピークに該当する成分として、1,3−ブチレングリコールとアセトアルドールとのアセタール体を含む」こと、
「空気雰囲気下、180℃で3時間保持した後のAPHAが40以下である」こと、
「(ガスクロマトグラフィー分析の条件)
分析カラム:固定相がジメチルポリシロキサンであるカラム(膜厚1.0μm×長さ30m×内径0.25mm)
昇温条件:5℃/分で80℃から120℃まで昇温した後、2℃/分で160℃まで昇温し2分保持する。さらに、10℃/分で230℃まで昇温し、230℃で18分保持する。
試料導入温度:250℃
キャリアガス:ヘリウム
カラムのガス流量:1mL/分
検出器及び検出温度:水素炎イオン化検出器(FID)、280℃」を特定しているのに対し、甲11発明はそのような特定をしていない点。

上記相違点1−11について検討する。
甲11には、上記相違点1−11に係る技術的事項については記載も示唆もない。
(ア)製造方法について
ここで、たとえ甲11に上記相違点1−11に係る技術的事項についての記載がなくとも、甲11発明の製造方法が、本件発明1の製造方法と一致すれば、甲11発明が上記相違点1−11に係る技術的事項を備えるといえると考えられる。
そこで、本件発明1と甲11発明の製造方法について検討する。
本件明細書には、【0031】〜【0051】に1,3−ブチレングリコール製品の一般的な製造方法が記載され、【0052】〜【0064】に実施例が記載されている。
本件明細書に実施例として記載された製造方法と甲11発明の製造方法とを対比すると、両者は、反応器における水素還元、脱水塔における脱水、脱塩塔における脱塩、脱高沸点物蒸留塔における脱高沸点物、アルカリ反応器におけるアルカリ反応、脱アルカリ塔における脱アルカリ、製品蒸留塔における蒸留を行う点で共通する。
しかし、反応器における水素還元について、本件明細書に記載の実施例では、「原料として30重量%の水を含むアセトアルドール溶液100部(アセトアルドール70部と水30部の混合溶液)に対し、水素10部を液相水素還元用反応器に仕込み、触媒としてラネーニッケルを15部加え、該反応器を135℃、300atmに保持して」行うのに対し、甲11発明は、「原料としてアセトアルドール100部、水素を6.5部反応器(図示せず)に仕込む。反応器を温度125〜135℃、圧力150Kg/cm2に保持する。触媒としてラネーニッケルを3.5部加える。反応器から取り出した反応粗液は触媒を分離したのち、苛性ソーダで中和される。その後、アルコール類を除去」することにより行うものであり、本件明細書に記載の実施例と、甲11発明とは、原料が相違し(本件明細書に記載の実施例で原料が水を含む。)、水素、触媒であるラネーニッケルの使用量が相違し、反応圧力が異なる。
したがって、製造方法が一致するとはいえない。
そして、本件明細書には「【0035】水添原料は水を含んでいてもよいし、含まなくてもよいが、1,3−ブチレングリコール製品の純度の観点からは含んでいることが好ましい。水添原料における水の含有量は特に限定されないが、例えば、2重量%以上が好ましく、より好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上、特に好ましくは15重量%以上である。なお、その上限値は、例えば、50重量%、40重量%、又は35重量%であってもよい。水の含有量が上記範囲内である場合、得られる粗1,3−ブチレングリコールに含まれる1,3−ブチレングリコールとアセトアルドールとのアセタール体が低減されるため、最終的に得られる1,3−ブチレングリコール製品の純度が高くなる傾向がある。これは、水添原料に水がある程度含まれていることにより、上記アセタール体が加水分解されて1,3−ブチレングリコールになるとともに、共生したアセトアルドールが還元されて1,3−ブチレングリコールとなることに起因する。」、「【0038】還元反応に使用する水添触媒の量、水素量、還元反応における水素圧、反応温度、反応時間(滞留時間)が上記範囲内にあることにより、アセトアルドール類から1,3−ブチレングリコールへの反応速度(水添速度)が向上する。このため、例えば、1,3−ブチレングリコールとアセトアルドールのアセタール化反応が低減され、高い純度である本発明の1,3−ブチレングリコール製品が得られる傾向がある。この傾向は、特に還元反応における水素圧に強く影響される。すなわち、還元反応における水素圧が上記範囲内にあることにより、アセトアルドール類から1,3−ブチレングリコールへの反応速度(還元速度)が著しく向上し、その結果、1,3−ブチレングリコールとアセトアルドールとのアセタール体が低減され、高い純度である本発明の1,3−ブチレングリコール製品が得られることになる。」との記載があること、一般的に化学反応において製造条件が異なれば、製造物が異なることに鑑みれば、甲11発明が本件明細書の実施例に記載の1,3−ブチレングリコール製品と同様の物性を有しているとはいえない。
さらに、甲11に、水添原料は、10〜20重量%の水分を含んでいるものが使用できることが記載され(摘示11b)、甲12、13に、アセトアルデヒドを水酸化ナトリウム水溶液の存在下に縮合して得られたパラアセトアルドール反応液を中和処理した後、未反応アセトアルデヒドの一部を回収又は分離除去した後、ラネーニッケルを用いて水添反応を行う旨が記載されているが(摘示12a、13a)、これらの記載は、水添原料が水分を含んでいてもよいことが記載され、また、アセトアルデヒドからパラアセトアルドールの水添反応物(1,3ーブチレングリコール)を製造する方法が記載されているに過ぎず、そのことによって、甲11発明の製造方法が、甲1の実施例に記載の製造方法と異ならないとすることはできない。
また、仮に、甲11発明の製造方法が本件明細書に記載の一般的な製造方法に包含されるものであったとしても、そのことにより、相違点1−11に係る本件発明1の技術的事項を備える1,3−ブチレングリコール製品が得られているということはできない。
したがって、甲11発明は本件発明1と上記相違点1−11において実質的に相違するものであり、本件発明1は甲11に記載された発明であるとはいえない。

(イ)甲11に記載の物性等について
上記ア(イ)で述べたとおり、相違点1−11に係る1,3−ブチレングリコールとアセトアルドールとのアセタール体が臭気、着色に関連する物質であることが理解できる。
一方、甲11には、実施例1、2として、製造直後と3ヶ月後の1,3−ブチレングリコールについての臭気評点の測定結果が記載されており(摘示11c、d)、製造直後、3ヶ月後において臭気評点がいずれも3であったことが記載されている。
しかし、1,3−ブチレングリコールとアセトアルドールとのアセタール体が臭気、着色に関連する物質であるとの事項が、本件明細書に一般的な記載として存在し、甲11発明の1,3−ブチレングリコールが臭気が著しく低減されている等の特性を有するものであったとしても、相違点1−11に係る技術的事項は、特定条件でのAPHA、特定条件でのガスクロマトグラフィー分析に係るものであるから、甲11発明が相違点1−11に係る本件発明1の技術的事項を備えるということはできない。

以上のとおりであるから、甲11発明は本件発明1と上記相違点1−11において実質的に相違するものであり、本件発明1は甲11に記載された発明であるとはいえない。

(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1について「1,3−ブチレングリコール製品における1,3−ブチレングリコールが、アセトアルドール、パラアルドール、及びアルドキサンからなる群より選択される少なくとも1つの化合物の還元体である」ことを特定するものであるところ、上述のとおり、甲10、11発明はそれぞれ、本件発明1と、相違点1−10及び1−11を有するものであるから、本件発明2についても同様に相違点1−10及び1−11を有する。
したがって、本件発明2についてされた上記特定事項を検討するまでもなく、本件発明2は甲10及び11発明と実質的に相違するものであり、本件発明2は甲10及び甲11に記載された発明であるとはいえない。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、理由2は理由がない。

4 理由3について
(1)本件発明1について
ア 甲10発明について
本件発明1と甲10発明との一致点・相違点は上記3(1)アで示したとおりである。

相違点1−10について検討するに、甲10には、臭気が無く、経時変化の少ない高純度1,3−ブチレングリコール及びその製造方法を提供することを目的としていることが記載されている(摘示10a)ものの、甲10、12及び13のいずれにも、相違点1−10に係るガスクロマトグラフィー分析、APHAに着目して、それらを本件発明1で特定されるとおりのものとすることは記載も示唆もされていない。
甲2については、上記3(1)ア(イ)で述べたとおりである。
したがって、甲10発明において、相違点1−10に係る本件発明1の技術的事項を採用することは当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
そして、本件明細書【0013】に記載されるとおり、本件発明1は、無色透明であり、経時により着色することが少ないため、化粧品や保湿剤等の用途に好適に使用される、という効果を奏するものである。
よって、本件発明1は、甲2を参酌しても、甲10、12及び13に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることがきたものであるとはいえない。

イ 甲11発明について
本件発明1と甲11発明との一致点・相違点は上記3(1)イで示したとおりである。

相違点1−11について検討するに、甲11には、製造3ヶ月後においても臭気の著しく低減された、経時変化の少ない高純度1,3−ブチレングリコールを提供することを目的としていることが記載されている(摘示11a)ものの、甲11、12及び13のいずれにも、相違点1−11に係るガスクロマトグラフィー分析、APHAに着目して、それらを本件発明1で特定されるとおりのものとすることは記載も示唆もされていない。

したがって、甲11発明において、相違点1−11に係る本件発明1の技術的事項を採用することは当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
そして、本件明細書【0013】に記載されるとおり、本件発明1は、無色透明であり、経時により着色することが少ないため、化粧品や保湿剤等の用途に好適に使用される、という効果を奏するものである。

したがって、本件発明1は、甲11〜13に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることがきたものであるとはいえない。

(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1について「1,3−ブチレングリコール製品における1,3−ブチレングリコールが、アセトアルドール、パラアルドール、及びアルドキサンからなる群より選択される少なくとも1つの化合物の還元体である」ことを特定するものであるところ、上述のとおり、甲10、11発明はそれぞれ、本件発明1と、相違点1−10及び1−11を有するものであるから、本件発明2についても同様に相違点1−10及び1−11を有し、それら相違点に係る技術的事項は当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
したがって、本件発明2についてされた上記特定事項を検討するまでもなく、本件発明2は甲10、12及び13並びに甲11〜13に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、理由3は理由がない。

5 理由4について
(1)理由4−1について
請求項1の「1,3−ブチレングリコールのピークの相対保持時間を1.0としたとき、相対保持時間が2.3〜2.4の範囲に現れるピークの面積率が0ppmを超え、150ppm以下であり、」との発明特定事項は、請求項1に記載の「ガスクロマトグラフィー分析」についてのものであるところ、「ピークの面積率が0ppmを超え」との事項は、その文言自体に不明確な点はなく、当業者はその技術的意味を明確に把握できるといえる。
特許異議申立人は、実施例1との関係について指摘するので、念のため、その点についても検討する。
一般に、各種分析機器における分析には検出限界が存在することが原出願の出願時の技術常識であるところ、「検出限界」の技術的意味は、当該分析機器で検出できる最低の量である。したがって、検出限界以下であるとは、必ずしも対象の物質が試料中に存在しないことを意味するのではなく、当該機器によっては検出できない量であることを意味するといえる。
本件明細書の実施例1の「相対保持時間が2.3〜2.4の範囲におけるピークは検出限界以下(10ppm以下)であった。」との記載についても同様に考えることができ、「検出限界以下」との記載は、必ずしも対象の物質が試料中に存在しないことを意味するのではなく、当該機器によっては検出できない量(10ppm以下)であることを意味するといえる。
請求項1との関係では、実施例1については、試料中に対象の物質が10ppm以下の量で存在するといえ、何ら矛盾する点はない。
したがって、請求項1に係る特許を受けようとする発明は明確である。

以上のとおりであるから、理由4−1は理由がない。

(2)理由4−2について
請求項1の「前記の相対保持時間が2.3〜2.4の範囲に現れるピークに該当する成分として、1,3−ブチレングリコールとアセトアルドールとのアセタール体を含む、1,3−ブチレングリコール製品」との発明特定事項において、「相対保持時間が2.3〜2.4の範囲に現れるピークに該当する成分」が「1,3−ブチレングリコールとアセトアルドールとのアセタール体」であるとする点は、ガスクロマトグラフィーにおける特定の相対保持時間に現れるピークの成分を特定するものであって、何ら不明確な点はない。
また、請求項1の「1,3−ブチレングリコール」が「1,3−ブチレングリコールとアセトアルドールとのアセタール体を含む」とする点についても含有成分を特定するものであって、何ら不明確な点はない。
特許異議申立人は、実施例1について指摘するので、念のため、その点についても検討する。
上記(1)で述べたとおり、実施例1の「相対保持時間が2.3〜2.4の範囲におけるピークは検出限界以下(10ppm以下)であった。」との記載については、試料中に対象の物質が10ppm以下の量で存在するといえるところ、本件明細書【0018】には、「上記条件のガスクロマトグラフィー分析において、1,3−ブチレングリコールのピークの相対保持時間を1.0としたときの相対保持時間が2.3〜2.4の範囲に現れるピークに該当する成分としては、例えば、1,3−ブチレングリコールとアセトアルドールとのアセタール体が挙げられる。前記アセタール体は1,3−ブチレングリコールよりも沸点の高い副生物である。すなわち、本発明の1,3−ブチレングリコール製品は、副産物としての前記アセタール体の含有量が少ないことが好ましい。」と記載されており、相対保持時間が2.3〜2.4の範囲におけるピークに対応する成分が1,3−ブチレングリコールとアセトアルドールとのアセタール体であることが記載されているから、10ppm以下の量で存在する物質として1,3−ブチレングリコールとアセトアルドールとのアセタール体が存在するといえる。
したがって、実施例1の記載を考慮しても、何ら不明確な点はない。
よって、請求項1に係る特許を受けようとする発明は明確である。

以上のとおりであるから、理由4−2は理由がない。

(3)理由4−3について
請求項2の「1,3−ブチレングリコール製品における1,3−ブチレングリコールが、アセトアルドール、パラアルドール、及びアルドキサンからなる群より選択される少なくとも1つの化合物の還元体である」との記載は、「1,3−ブチレングリコール」がアセトアルドール、パラアルドール、及びアルドキサンからなる群より選択される少なくとも1つの化合物が還元されたものであること、すなわち、1,3−ブチレングリコールの状態を表現したものであり、当該記載は「1,3−ブチレングリコール」の製造方法を記載したものであるとはいえない。
したがって、請求項2に係る特許を受けようとする発明は明確である。

以上のとおりであるから、理由4−3は理由がない。

(4)まとめ
以上のとおりであるから、理由4は理由がない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、請求項1〜2に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由及び証拠方法によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1〜2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2022-03-28 
出願番号 P2020-186340
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C07C)
P 1 651・ 112- Y (C07C)
P 1 651・ 537- Y (C07C)
P 1 651・ 113- Y (C07C)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 村上 騎見高
特許庁審判官 冨永 保
関 美祝
登録日 2021-05-27 
登録番号 6890708
権利者 株式会社ダイセル
発明の名称 1,3−ブチレングリコール製品  
代理人 特許業務法人後藤特許事務所  
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