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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C09J 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C09J |
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管理番号 | 1384308 |
総通号数 | 5 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2022-05-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2022-01-21 |
確定日 | 2022-04-04 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6907927号発明「接着剤組成物、積層体、蓄電デバイス用包装材、蓄電デバイス用容器および蓄電デバイス」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6907927号の請求項1ないし12に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6907927号の請求項1〜12に係る特許についての出願は、平成29年12月26日(優先権主張 平成29年1月11日)の出願であって、令和3年7月5日にその特許権の設定登録がされ、同年同月21日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1〜12に係る特許に対し、令和4年1月21日に特許異議申立人 小島早奈実(以下、単に「申立人」ということもある。)が、特許異議の申立てを行った。 第2 本件発明 特許第6907927号の請求項1〜12の特許に係る発明(以下、「本件発明1」〜「本件発明12」などといい、まとめて「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1〜12に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 ポリオレフィン樹脂成分と硬化剤(C)とを含有する接着剤組成物であって、 前記ポリオレフィン樹脂成分が、 カルボキシル基または酸無水物基を有する、融点が55〜100℃、重量平均分子量が4万〜40万であるポリオレフィン樹脂(A)と、 カルボキシル基または酸無水物基を有する、重量平均分子量が200〜13000である重合体(B)とを含み、 前記ポリオレフィン樹脂(A)と重合体(B)の和100重量%に対する重合体(B)の含有量が0.2〜5.0重量%であり、 硬化剤(C)が、イソシアネート基、エポキシ基、カルボジイミド基、およびアジリジン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有することを特徴とする接着剤組成物。 【請求項2】 前記重合体(B)の酸価X(mmol/g)が1.2〜20であることを特徴とする請求項1記載の接着剤組成物。 【請求項3】 前記ポリオレフィン樹脂(A)の酸価P(mmol/g)が0.02〜1.2であることを特徴とする請求項1または2記載の接着剤組成物。 【請求項4】 前記ポリオレフィン樹脂(A)をi(g)、前記重合体(B)をj(g)、前記硬化剤の官能基をZ(mmol)とした場合に、Z/(P*i+X*j)が0.3〜10であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の接着剤組成物。 【請求項5】 前記重合体(B)が、 不飽和カルボン酸もしくはその酸無水物の単独重合体(b−1)、または、 不飽和カルボン酸もしくはその酸無水物と、芳香族ビニル化合物、脂肪族α−オレフィン化合物、および共役ジエン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種と、の重合体(b−2)であることを特徴とする1〜4いずれか記載の接着剤組成物。 【請求項6】 前記ポリオレフィン樹脂(A)が、融点が65℃〜90℃であり、かつ重量平均分子量が10万〜30万であることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の接着剤組成物。 【請求項7】 金属箔と熱融着樹脂フィルム層との間に接着剤層を有し、 前記接着剤層が、請求項1〜6いずれか記載の接着剤組成物から形成されることを特徴とする積層体。 【請求項8】 前記金属箔と前記接着剤層との間に表面処理層を有し、 前記表面処理層が、硬化剤(C)の官能基と反応する官能基を有する処理剤から形成されることを特徴とする請求項7記載の積層体。 【請求項9】 前記処理剤における硬化剤(C)の官能基と反応する官能基が、カルボキシル基、水酸基、およびアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項8記載の積層体。 【請求項10】 外側から順に、外層側樹脂フィルム、外層側接着剤層、金属箔、内層側接着剤層、熱融着樹脂フィルムを必須とする蓄電デバイス用包装材において、 前記内層側接着剤層が、請求項1〜6いずれかに記載の接着剤組成物から形成されることを特徴とする蓄電デバイス用包装材。 【請求項11】 請求項10に記載の蓄電デバイス用包装材から形成されてなる蓄電デバイス用容器であって、熱融着樹脂フィルムが内面を構成している、蓄電デバイス用容器。 【請求項12】 請求項11記載の蓄電デバイス用容器を使用してなる蓄電デバイス。」 第3 申立理由の概要 申立人は、下記3の甲第1及び2号証を提出し、次の1及び2について主張している(以下、甲号証は、単に「甲1」などと記載する。)。 1 特許法第29条第1項第3号(新規性)について(同法第113条第2号) 本件発明1〜3、5〜12は、甲1に記載された発明であるから、本件発明1〜3、5〜12は、同法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 2 特許法第29条第2項(進歩性)について(同法第113条第2号) 本件発明1〜12は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到することができたものであるから、本件発明1〜12は、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 3 証拠方法 甲1:国際公開第2016/152161号 甲2:中道敏彦、「塗料基礎講座(第VI講) 塗膜の形成〜橋かけ形塗料の硬化機構」、色材、色材協会誌、1989年、62[1]、28〜35頁 第4 当審の判断 1 特許法第29条第1項第3号(新規性)及び同条第2項(進歩性)について (1)甲1の記載 甲1には、次の記載がある(下線は当審が付与した。)。 「[請求項1] 金属箔層とヒートシール層とを接着剤層を介して積層するための接着剤組成物であって、 カルボキシル基もしくは酸無水物基を有するポリオレフィン樹脂(A)と、不飽和脂肪酸の重合体(B1)と2つ以上のエポキシ基を有する化合物(B2)との反応により得られるエポキシ化合物(B)とを含有することを特徴とする接着剤組成物。」 「[0038] 次に本発明で使用される不飽和脂肪酸の重合体(B1)と2つ以上のエポキシ基を有する化合物(B2)との反応により得られるエポキシ化合物(B)について説明する。 エポキシ化合物(B)中のエポキシ基と、ポリオレフィン樹脂(A)中のカルボキシル基または酸無水物基とを反応させた強固な架橋構造により、充分な接着強度を発現でき、より高温の電解質溶液に長期間浸漬されてもその接着強度を高レベルで維持できる。」 「[0062] <合成例1> 窒素置換した内容積500mLのガラス製オートクレーブに精製トルエン250mL、メチルアルミノキサンをAl原子換算で0.5mg、ジメチルシリル−ビス−(4,5,6,7,8−ペンタヒドロアズレン−2−イル)ジルコニウムジクロライドをZr原子換算で1.25μg原子を投入し、40℃に昇温した。続いてエチレンとプロピレンを、それぞれ50L/hr、40L/hrの一定速度で供給しながら、40℃で1.32MPaの一定圧力を維持するように1−ブテンモノマーを連続供給し、重合を開始した。40℃、8時間、重合を行った後、イソプロパノールを添加して重合を停止した。得られたポリマー溶液を、多量のメタノールに添加し、ポリマーを析出させた。析出したポリマーをろ過、乾燥することにより、エチレン/プロピレン/1−ブテン=46/33/15(モル比)で共重合されたポリオレフィンを得た。 得られたポリオレフィン20gと、セロソルブアセテート20gとを仕込み、窒素気流下、加熱溶解させ、溶液温度の110℃にした。無水マレイン酸4g、ラウリルメタクリレート2gおよび過酸化ベンゾイル0.6gをセロソルブアセテート239.4gに溶解したものを2時間かけて滴下した。滴下終了後さらに1時間その温度で反応を続けた。得られたポリマー溶液を、多量のメタノールに添加し、ポリマーを析出させた。析出したポリマーをろ過、乾燥することにより、酸無水物基を有するポリオレフィン樹脂(A1)を得た。 ポリオレフィン樹脂(A1)のMw、融点、ΔEは、それぞれ4700、103℃、45mJ/mgであった。 [0063]<合成例2〜4、6〜12> 表1に示すオレフィン重合時の混合ガスの流量比と重合温度、グラフト重合時のモノマー添加量以外は、合成例1と同様にして酸無水物基を有するポリオレフィン樹脂(A2)〜(A4)、(A6)〜(A8)を得た。 [0066][表1] 表1中、記号は以下の通り。 LMA:ラウリルメタクリレート St:スチレン [0067] <合成例10> クローダジャパン社製プリポール1013(C18不飽和脂肪酸のダイマー酸、酸価196mgKOH/g)46g、jER1001(三菱化学社製、ビスフェノールA型エポキシ化合物、エポキシ当量:475)154部、トリフェニルホスフィン4部、トルエン160部およびイソプロピルアルコール40部を4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下で加熱溶解させた後、攪拌しながら系内温度を100℃に保った。酸価が1.0mgKOH/g以下となるまで反応させ、冷却させることにより固形分50%、エポキシ当量1236のエポキシ化合物(B−1)を得た。」 「[0074] <実施例1> ポリオレフィン樹脂(A1)15部をトルエン/メチルエチルケトン(以下、MEKという)=7/3(重量比)117.9部に加熱溶解した。冷却後、jER871(三菱化学社製、エポキシ当量430のダイマー酸変性エポキシ化合物)を5.8部添加して攪拌することで、固形分15%の接着剤溶液を得た。 40μmのアルミニウム箔に、前記接着剤溶液をバーコーターにて塗布し、100℃、1分間乾燥し、乾燥後の塗布量が約2g/m2の接着剤層を得た。次いで、前記接着剤層に厚み40μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(以下CPPと呼ぶ)を重ね合わせ、80℃に設定した2つのロール間を通過させ、積層体を得た。その後、得られた積層体を40℃で3日間または5日間の硬化(エージング)を行った。こうして、得られたアルミニウム箔/CPPラミネートフィルムを、以下「Al/CPP積層フィルム」と呼ぶ。 後述する方法に従って、初期接着強度、耐溶剤性、電解質溶液耐性を評価した。結果を表2に示す。 [0075] <実施例2〜22>、<比較例1〜6> 表2、3に示す組成にて、実施例1と同様にして接着剤溶液およびAl/CPP積層フィルムを得、同様に評価した。」 「[0076][表2] 」 (2)甲1に記載された発明(甲1発明) 甲1の請求項1に記載された「金属箔層とヒートシール層とを接着剤層を介して積層するための接着剤組成物であって、カルボキシル基もしくは酸無水物基を有するポリオレフィン樹脂(A)と、不飽和脂肪酸の重合体(B1)と2つ以上のエポキシ基を有する化合物(B2)との反応により得られるエポキシ化合物(B)とを含有することを特徴とする接着剤組成物。」の具体例である実施例13は、表2から、上記請求項1における「カルボキシル基もしくは酸無水物基を有するポリオレフィン樹脂(A)」として「A6」、同エポキシ化合物(B)として「B−1」を用いたものであり、表1と[0062]から、「A6」は、酸無水物基を有するプロピレン/1−ブテン=70/28(モル比)で共重合された、質量平均分子量183×103、融点80℃のポリオレフィン樹脂であり、[0067]から、「B−1」は、「クローダジャパン社製プリポール1013(C18不飽和脂肪酸のダイマー酸、酸価196mgKOH/g)46g、jER1001(三菱化学社製、ビスフェノールA型エポキシ化合物、エポキシ当量:475)154部、トリフェニルホスフィン4部、トルエン160部およびイソプロピルアルコール40部を4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下で加熱溶解させた後、攪拌しながら系内温度を100℃に保ち、酸価が1.0mgKOH/g以下となるまで反応させ、冷却させることにより得られた、固形分50%、エポキシ当量1236のエポキシ化合物(B−1)」である。 そうすると、甲1には、実施例13として、 「金属箔層とヒートシール層とを接着剤層を介して積層するための接着剤組成物であって、カルボキシル基もしくは酸無水物基を有するポリオレフィン樹脂(A)と、不飽和脂肪酸の重合体(B1)と2つ以上のエポキシ基を有する化合物(B2)との反応により得られるエポキシ化合物(B)とを含有する接着剤組成物であって、 カルボキシル基もしくは酸無水物基を有するポリオレフィン樹脂(A)は、酸無水物基を有するプロピレン/1−ブテン=70/28(モル比)で共重合された質量平均分子量183×103、融点80℃のポリオレフィン樹脂であり、 不飽和脂肪酸の重合体(B1)と2つ以上のエポキシ基を有する化合物(B2)との反応により得られるエポキシ化合物(B)は、クローダジャパン社製プリポール1013(C18不飽和脂肪酸のダイマー酸、酸価196mgKOH/g)46g、jER1001(三菱化学社製、ビスフェノールA型エポキシ化合物、エポキシ当量:475)154部、トリフェニルホスフィン4部、トルエン160部およびイソプロピルアルコール40部を4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下で加熱溶解させた後、攪拌しながら系内温度を100℃に保ち、酸価が1.0mgKOH/g以下となるまで反応させ、冷却させることにより得られた、固形分50%、エポキシ当量1236のエポキシ化合物(B−1)である、接着剤組成物。」(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 (3)対比・判断 ア 本件発明1について 本件発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「酸無水物基を有するプロピレン/1−ブテン=70/28(モル比)で共重合された質量平均分子量183×103、融点80℃のポリオレフィン樹脂」は、本件発明1の「カルボキシル基または酸無水物基を有する、融点が55〜100℃、重量平均分子量が4万〜40万であるポリオレフィン樹脂(A)」に相当する。 また、甲1発明の「エポキシ化合物(B−1)」は、「酸無水物基を有するプロピレン/1−ブテン=70/28(モル比)で共重合された質量平均分子量183×103、融点80℃のポリオレフィン樹脂」と反応して硬化するものと解されることから([0038]参照)、本件発明1の「硬化剤(C)」に相当する。また、甲1発明の「エポキシ化合物(B−1)」は、エポキシ基を有するものであることから、「硬化剤(C)が、イソシアネート基、エポキシ基、カルボジイミド基、およびアジリジン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有すること」を充足する。 そうすると、本件発明1と甲1発明とは、「ポリオレフィン樹脂成分と硬化剤(C)とを含有する接着剤組成物であって、 前記ポリオレフィン樹脂成分が、 カルボキシル基または酸無水物基を有する、融点が55〜100℃、重量平均分子量が4万〜40万であるポリオレフィン樹脂(A)と、 硬化剤(C)が、イソシアネート基、エポキシ基、カルボジイミド基、およびアジリジン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有する接着剤組成物。」である点で一致し、次の点で相違が認められる。 (相違点) 本件発明1は、ポリオレフィン樹脂成分に、「カルボキシル基または酸無水物基を有する、重量平均分子量が200〜13000である重合体(B)を含み、 前記ポリオレフィン樹脂(A)と重合体(B)の和100重量%に対する重合体(B)の含有量が0.2〜5.0重量%であ」ることが特定されているに対し、甲1発明は、そのような重合体(B)は含まれない点。 ここで、上記相違点について検討する。 甲1には、「ポリオレフィン樹脂」に加えて、「カルボキシル基または酸無水物基を有する、重量平均分子量が200〜13000である重合体(B)」を含有させることについては、記載も示唆もなく、そのような「重合体(B)」を含有させた場合に、接着剤組成物の特性がどのようになるのか明らかではないことから、そのような「重合体(B)」を含有させる動機付けを見いだせない。また、仮に、甲1発明に、そのような「重合体(B)」を含有されることが可能だとしても、ポリオレフィン樹脂(A)と重合体(B)の和100重量%に対する重合体(B)の含有量がどのようにすればいいのかは不明としかいうほかない。 これに対し、本件発明1は、上記相違点に係る発明特定事項を備えることで、溶液としての保存安定性や接着剤の硬化性に優れた接着剤を得ることができる(本件明細書段落【0050】)という格別顕著な作用効果を奏するものであり、その作用効果は、実施例において確認されている。 したがって、上記相違点に係る本件発明1の発明特定事項を、当業者が容易に想到し得るものである、ということできない。 よって、本件発明1は甲1発明と同一であるはいえないし、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (申立人の主張について) 申立人は、甲1発明の「クローダジャパン社製プリポール1013(C18不飽和脂肪酸のダイマー酸、酸価196mgKOH/g)」は、本件発明1の「カルボキシル基または酸無水物基を有する、重量平均分子量が200〜13000である重合体(B)」に相当し、「前記ポリオレフィン樹脂(A)と重合体(B)の和100重量%に対する重合体(B)の含有量が0.2〜5.0重量%」を満たしている蓋然性が高い旨を主張している(特許異議申立書22頁14行〜24頁22行)。 しかしながら、甲1発明の「クローダジャパン社製プリポール1013(C18不飽和脂肪酸のダイマー酸、酸価196mgKOH/g)」は、甲1発明においては、「エポキシ化合物(B−1)」が生成される工程において、「jER1001(三菱化学社製、ビスフェノールA型エポキシ化合物、エポキシ当量:475)」と反応し、反応後は、カルボキシル基は存在しなくなっていると解されることから、本件発明1の「重合体(B)」に相当するものではない。 また、仮に、反応後に、未反応の「クローダジャパン社製プリポール1013(C18不飽和脂肪酸のダイマー酸、酸価196mgKOH/g)」が残っていて、それが、本件発明1の「重合体(B)」に相当するものだとしても、どの程度の量が残っているかは不明であるし、大半が反応に使われると解されることから、その量が「前記ポリオレフィン樹脂(A)と重合体(B)の和100重量%に対する重合体(B)の含有量が0.2〜5.0重量%」を満たしている蓋然性は極めて低い。 さらに、申立人の主張を「甲1発明における不飽和脂肪酸の重合体(B1)をエポキシ化合物(B2)と反応させることなく、ポリオレフィン樹脂(A)と混合して接着剤組成物とすることは当業者が容易になし得ることである。」と解して検討すると、その変更によって架橋構造が大きく変更(甲1発明ではAを(B1+B2)で架橋するのに対し、変更後はAとB1の混合物をB2で架橋することになる)されることになるから、当業者が容易になし得ることということはできない。 したがって、申立人の主張は採用することができない。 イ 本件発明2〜12について 本件発明2〜12は、本件発明1を引用し、更に限定するものであるから、甲1発明と同一ということはできないし、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。 第5 むすび 以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1〜12に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1〜12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2022-03-23 |
出願番号 | P2017-249516 |
審決分類 |
P
1
651・
113-
Y
(C09J)
P 1 651・ 121- Y (C09J) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
門前 浩一 |
特許庁審判官 |
亀ヶ谷 明久 川端 修 |
登録日 | 2021-07-05 |
登録番号 | 6907927 |
権利者 | 東洋モートン株式会社 東洋インキSCホールディングス株式会社 |
発明の名称 | 接着剤組成物、積層体、蓄電デバイス用包装材、蓄電デバイス用容器および蓄電デバイス |