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審決分類 審判 一部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B60L
審判 一部無効 発明同一  B60L
審判 一部無効 2項進歩性  B60L
管理番号 1384548
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-06-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2019-10-11 
確定日 2022-02-14 
訂正明細書 true 
事件の表示 上記当事者間の特許第4637136号発明「動力装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4637136号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、3,4、〔5及び6〕、7、8並びに〔9ないし12〕について訂正することを認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第4637136号(以下、「本件特許」という。)についての特許出願は、平成19年5月23日にされ、平成22年12月3日にその特許権が設定登録された。
これに対しなされた本件無効審判請求に係る手続の経緯は、以下のとおりである。

令和元年10月11日 本件無効審判請求
令和2年1月10日 被請求人より訂正請求書の提出
令和2年1月10日 被請求人より審判事件答弁書の提出
令和2年2月28日 請求人より審判事件弁駁書の提出
令和2年5月19日付け 請求人及び被請求人に対して審尋
令和2年6月18日 請求人より回答書の提出
令和2年6月22日 被請求人より審判事件回答書の提出
令和2年8月25日付け 訂正拒絶理由通知
令和2年9月25日 被請求人より意見書の提出
令和2年11月11日 請求人より手続補正書の提出
令和2年12月3日付け 補正許否の決定
令和3年1月8日 被請求人より訂正請求書の提出
令和3年1月8日 被請求人より審判事件答弁書の提出
令和3年4月27日 請求人より審判事件弁駁書の提出
令和3年6月24日付け 審決の予告
令和3年8月30日 被請求人より訂正請求書の提出
令和3年8月30日 被請求人より意見書の提出
令和3年11月2日 請求人より審判事件弁駁書の提出

なお、令和2年1月10日に提出された訂正請求書による訂正の請求及び令和3年1月8日に提出された訂正請求書による訂正の請求は、特許法第134条の2第6項の規定により、取り下げられたものとみなす。

第2 請求人の主張
請求人は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求めている。
そして、審判請求書、令和2年2月28日付け審判事件弁駁書(以下、「第1弁駁書」という。)、令和2年6月18日付け回答書、令和2年11月11日付け手続補正書(以下、「手続補正書」という。)、令和3年4月27日付け審判事件弁駁書(以下、「第2弁駁書」という。)及び令和3年11月2日付け審判事件弁駁書(以下、「第3弁駁書」という。)において請求人が主張する無効理由及び証拠方法は以下のとおりである。

1 無効理由
(1)無効理由1
本件特許の特許請求の範囲の請求項2ないし7に記載された発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(2)無効理由2
本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された発明は、甲第2号証ないし甲第7号証及び甲第9号証ないし甲第18号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(3)無効理由3
本件特許の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載されていない発明であるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

(4)無効理由4
本件特許の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は、特許を受けようとする発明が明確でないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

なお、審判請求書12ないし17ページ及び52ないし62ページに記載された本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された発明が、甲第8号証を主引用発明として、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとの無効理由(以下、「取り下げ無効理由」という。)については、取り下げられた(第1弁駁書55ページの3.及び手続補正書71ページの下から13行目を参照。)。
また、手続補正書において、甲第16号証に記載された発明を主引用発明とし、副引用発明を甲第2号証、甲第7号証及び甲第15号証として、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとする無効理由が追加された(65ページ18行ないし71ページ29行)。これについては、令和2年12月3日付け補正許否の決定で示したとおり、68ページ9行ないし71ページ29行に記載された事項による請求の理由の補正(令和2年1月10日の訂正請求書により訂正された請求項2ないし6に対するもの)は許可されず、それ以外の補正(同訂正請求書により訂正された請求項1に対するもの)は許可された。

2 証拠方法
請求人は、審判請求書に添付して甲第1号証ないし甲第14号証を提出し、第1弁駁書に添付して甲第15号証ないし甲第20号証を提出している。
甲第1号証ないし甲第20号証はそれぞれ以下のとおりである。

甲第1号証 特願2007−54736号(特開2008−215519号公報)
甲第2号証 独国特許出願公開第102004024086号公報
甲第3号証 特開2004−320926号公報
甲第4号証 特開2004−40975号公報
甲第5号証 特開2006−149095号公報
甲第6号証 特開2006−327335号公報
甲第7号証 特開2006−125562号公報
甲第8号証 特開2006−304420号公報
甲第9号証 特開2005−329842号公報
甲第10号証 特開2003−336700号公報
甲第11号証 特開2003−32808号公報
甲第12号証 特開2006−311784号公報
甲第13号証 オートマチックトランスミッション―構造・作動・制御(自動車工学シリーズ)、p.33−40
甲第14号証 三菱自動車テクニカルレビュー 1988 No.1、p.96−102
甲第15号証 特開平11−268552号公報
甲第16号証 特開平11−170881号公報
甲第17号証 特開平11−262195号公報
甲第18号証 特開2006−246607号公報
甲第19号証 特開平5−169991号公報
甲第20号証 特開平5−162541号公報

なお、上記甲第8号証は、上記取り下げ無効理由の主たる証拠として提出されたものである。
また、上記甲第19号証及び甲第20号証は、特許法第134条の2第6項の規定により取り下げられたものとみなされる令和2年1月10日に提出された訂正請求書による訂正の請求(以下「みなし取り下げ訂正請求」という。)による訂正後の請求項5に係る発明が無効理由2を有することを立証するために提出されたものである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めている。
そして、令和2年1月10日付け審判事件答弁書(以下、「第1答弁書」という。)、令和2年6月22付け審判事件回答書、令和3年1月8日付け審判事件答弁書(以下、「第2答弁書」という。)及び令和3年8月30日付け意見書(以下、「意見書」という。)における主張の概要は以下のとおりである。

1 被請求人の主張
(1)無効理由1
本件特許の特許請求の範囲の請求項2ないし7に記載された発明は、甲第1号証に記載された発明と同一ではない。

(2)無効理由2
本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された発明は、甲第2号証ないし甲第7号証及び甲第9号証ないし甲第18号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)無効理由3
本件特許の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載された発明である。

(4)無効理由4
本件特許の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は、特許を受けようとする発明が明確である。

2 証拠方法
被請求人は、令和2年6月22付け審判事件回答書に添付して乙第1号証ないし乙第5号証を提出している。
乙第1号証ないし乙第5号証はそれぞれ以下のとおりである。

乙第1号証 特開2005−45883号公報
乙第2号証 特開2006−136120号公報
乙第3号証 特開2008−195259号公報
乙第4号証 特開2002−129955号公報
乙第5号証 特開2004−156728号公報

なお、上記乙第1号証ないし乙第5号証は、上記みなし取り下げ訂正請求による訂正が訂正要件を満たすことを立証するために提出されたものである。

第4 当審の判断
1 訂正の適否
(1)訂正の内容
被請求人は、審判長が決定の予告において指定した期間内である令和3年8月30日に訂正請求書を提出して、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし12について請求項ごとに訂正(以下、「本件訂正」という。)することを求めた。
その訂正の内容は、以下のとおりである(下線は、訂正の内容を示すために当審が付したものである。)。

ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「輸送機関を直進・旋回可能に推進するための左右の被駆動部を駆動する動力装置であって」と記載されているのを、
「四輪駆動の輸送機関であり、他の駆動源から独立した回転駆動源を有する動力装置であって、輸送機関を直進・旋回可能に推進するためであって、輸送機関の左右に配置された被駆動部を駆動する動力装置であって」に訂正すると共に、「当該共線関係を表す共線図においてこの順で並んでいることを特徴とする動力装置。」と記載されているのを「当該共線関係を表す共線図においてこの順で並んでおり、前記動力装置は、第1エネルギ入出力装置及び前記第2エネルギ入出力装置が、旋回アシスト機能を有することを特徴とする、動力装置。」に訂正する。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「エネルギを貯蔵・放出可能に構成され、前記第1エネルギ入出力装置および前記第2エネルギ入出力装置に接続されたエネルギ貯蔵・放出装置をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の動力装置。」と記載されているのを、
「四輪駆動の輸送機関であり、
他の駆動源から独立した回転駆動源を有する動力装置であって、
輸送機関を直進・旋回可能に推進するためであって、輸送機関の左右に配置された被駆動部を駆動する動力装置であって、
エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置と、
エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置と、
前記第1エネルギ入出力装置および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間に設けられ、前記第1エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間、および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間でエネルギを伝達するためのエネルギ伝達装置と、を備え、
前記第1エネルギ入出力装置、前記左被駆動部、前記右被駆動部、および前記第2エネルギ入出力装置は、回転数が単一の直線上に位置する共線関係にあり、
当該共線関係を表す共線図においてこの順で並んでおり、
エネルギを貯蔵・放出可能に構成され、前記第1エネルギ入出力装置および前記第2エネルギ入出力装置に接続されたエネルギ貯蔵・放出装置をさらに備え、
前記エネルギ貯蔵・放出装置に回生し充電可能なことを特徴とする、動力装置。」
に訂正する。

ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に
「前記第1および第2のエネルギ入出力装置は、互いに接続され、互いの間でエネルギを授受可能に構成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の動力装置。」
と記載されているのを、
「輸送機関を直進・旋回可能に推進するためであって、輸送機関の左右に配置された被駆動部を駆動する動力装置であって、
エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置と、
エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置との
二つのエネルギ入出力装置から成る独立した動力源を備え、
前記第1エネルギ入出力装置および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間に設けられ、前記第1エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間、および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間でエネルギを伝達するためのエネルギ伝達装置と、を備え、
前記第1エネルギ入出力装置、前記左被駆動部、前記右被駆動部、および前記第2エネルギ入出力装置は、回転数が単一の直線上に位置する共線関係にあり、
当該共線関係を表す共線図においてこの順で並んでおり、
前記第1エネルギ入出力装置と電気的に接続する第1パワードライブユニットと前記第2エネルギ入出力装置と電気的に接続する第2パワードライブユニットをさらに備え、
前記第1および第2のエネルギ入出力装置は、前記第1パワードライブユニットと前記第2パワードライブユニットを介して互いに電気的に接続され、互いの間でエネルギを授受可能に構成されていることを特徴とする、動力装置。」
に訂正する。

エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「前記エネルギが電気エネルギであることを特徴とする、請求項3に記載の動力装置。」と記載されているのを、
「他の駆動源から独立した回転駆動源を有し、
輸送機関を直進・旋回可能に推進するためであって、輸送機関の左右に配置された被駆動部を駆動する動力装置であって、
エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置と、
エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置と、
前記第1エネルギ入出力装置および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間に設けられ、前記第1エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間、および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間でエネルギを伝達するためのエネルギ伝達装置と、を備え、
前記第1エネルギ入出力装置、前記左被駆動部、前記右被駆動部、および前記第2エネルギ入出力装置は、回転数が単一の直線上に位置する共線関係にあり、
当該共線関係を表す共線図においてこの順で並んでおり、
前記第1エネルギ入出力装置と電気的に接続する第1パワードライブユニットと前記第2エネルギ入出力装置と電気的に接続する第2パワードライブユニットをさらに備え、
前記第1および第2のエネルギ入出力装置は、前記第1パワードライブユニットと前記第2パワードライブユニットを介して互いに電気的に接続され、互いの間でエネルギを授受可能に構成され、
前記エネルギが電気エネルギであることを特徴とする動力装置。」
に訂正する。

オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「前記第1および第2のエネルギ入出力装置が回転機であることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の動力装置。」と記載されているのを、
「輸送機関を直進・旋回可能に推進するためであって、輸送機関の左右に配置された被駆動部を駆動する動力装置であって、
エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置と、
エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置の
二つのエネルギ入出力装置から成る独立した動力源を備え、
前記第1エネルギ入出力装置および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間に設けられ、前記第1エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間、および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間でエネルギを伝達するためのエネルギ伝達装置と、を備え、
前記第1エネルギ入出力装置、前記左被駆動部、前記右被駆動部、および前記第2エネルギ入出力装置は、回転数が単一の直線上に位置する共線関係にあり、
当該共線関係を表す共線図においてこの順で並んでおり、
前記第1エネルギ入出力装置及び前記第2エネルギ入出力装置のどちらか一方の回生電力を前記第1エネルギ入出力装置及び前記第2エネルギ入出力装置のどちらか他方へ供給し、
前記第1および第2のエネルギ入出力装置が回転機である、ことを特徴とする、動力装置。」
に訂正する。

カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に「前記第6要素が前記第2エネルギ入出力装置に連結されていることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載の動力装置。」と記載されているのを、「前記第6要素が前記第2エネルギ入出力装置に連結されていることを特徴とする、請求項5に記載の動力装置。」に訂正する。

キ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に
「前記第1エネルギ伝達装置が、第1サンギヤと、第1リングギヤと、前記第1サンギヤおよび前記第1リングギヤに噛み合う第1プラネタリギヤを回転自在に支持する第1キャリアとを有する第1遊星歯車装置であり、
前記第1要素および前記第3要素の一方が前記第1サンギヤ、他方が前記第1リングギヤ、前記第2要素が前記第1キャリアであり、
前記第2エネルギ伝達装置が、第2サンギヤと、第2リングギヤと、前記第2サンギヤおよび前記第2リングギヤに噛み合う第2プラネタリギヤを回転自在に支持する第2キャリアとを有する第2遊星歯車装置であり、
前記第4要素および前記第6要素の一方が前記第2サンギヤ、他方が前記第2リングギヤ、前記第5要素が前記第2キャリアであることを特徴とする、請求項6に記載の動力装置。」
と記載されているのを、
「輸送機関を直進・旋回可能に推進するためであって、輸送機関の左右に配置された被駆動部を駆動する動力装置であって、
エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置と、
エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置と、
前記第1エネルギ入出力装置および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間に設けられ、前記第1エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間、および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間でエネルギを伝達するためのエネルギ伝達装置と、を備え、
前記第1エネルギ入出力装置、前記左被駆動部、前記右被駆動部、および前記第2エネルギ入出力装置は、回転数が単一の直線上に位置する共線関係にあり、
当該共線関係を表す共線図においてこの順で並んでおり、
前記第1エネルギ入出力装置及び前記第2エネルギ入出力装置のどちらか一方の回生電力を前記第1エネルギ入出力装置及び前記第2エネルギ入出力装置のどちらか他方へ供給し、
前記第1および第2のエネルギ入出力装置が回転機であり、
前記エネルギ伝達装置は、
互いの間でエネルギを伝達可能な第1、第2および第3の要素を有し、前記第1〜第3の要素の回転数が共線関係を満たし、かつ、当該共線関係を表す共線図において前記第1〜第3の要素が順に並ぶように構成された第1エネルギ伝達装置と、
互いの間でエネルギを伝達可能な第4、第5および第6の要素を有し、前記第4〜第6の要素の回転数が共線関係を満たし、かつ、当該共線関係を表す共線図において前記第4〜第6の要素が順に並ぶように構成された第2エネルギ伝達装置と、を有し、
前記第1および第5の要素が、前記右被駆動部に連結され、
前記第2および第4の要素が、前記左被駆動部に連結され、
前記第3要素が前記第1エネルギ入出力装置に連結され、
前記第6要素が前記第2エネルギ入出力装置に連結され、
前記第1エネルギ伝達装置が、第1サンギヤと、第1リングギヤと、前記第1サンギヤおよび前記第1リングギヤに噛み合う第1プラネタリギヤを回転自在に支持する第1キャリアとを有する第1遊星歯車装置であり、
前記第1要素および前記第3要素の一方が前記第1サンギヤ、他方が前記第1リングギヤ、前記第2要素が前記第1キャリアであり、
前記第2エネルギ伝達装置が、第2サンギヤと、第2リングギヤと、前記第2サンギヤおよび前記第2リングギヤに噛み合う第2プラネタリギヤを回転自在に支持する第2キャリアとを有する第2遊星歯車装置であり、
前記第4要素および前記第6要素の一方が前記第2サンギヤ、他方が前記第2リングギヤ、前記第5要素が前記第2キャリアであることを特徴とする動力装置。」
に訂正する。

ク 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8に「前記第1要素が前記第1サンギヤ、前記第3要素が前記第1リングギヤ、前記第4要素が前記第2サンギヤ、前記第6要素が前記第2リングギヤであることを特徴とする、請求項7に記載の動力装置。」と記載されているのを、
請求項1ないし5を引用する請求項6のうち、請求項1を引用する請求項6について引用する請求項7を、さらに引用する請求項8について独立形式に改めて、
「輸送機関を直進・旋回可能に推進するための左右の被駆動部を駆動する動力装置であって、
エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置と、
エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置と、
前記第1エネルギ入出力装置および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間に設けられ、前記第1エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間、および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間でエネルギを伝達するためのエネルギ伝達装置と、を備え、
前記第1エネルギ入出力装置、前記左被駆動部、前記右被駆動部、および前記第2エネルギ入出力装置は、回転数が単一の直線上に位置する共線関係にあり、当該共線関係を表す共線図においてこの順で並んでいる動力装置において、
前記エネルギ伝達装置は、
互いの間でエネルギを伝達可能な第1、第2および第3の要素を有し、前記第1〜第3の要素の回転数が共線関係を満たし、かつ、当該共線関係を表す共線図において前記第1〜第3の要素が順に並ぶように構成された第1エネルギ伝達装置と、
互いの間でエネルギを伝達可能な第4、第5および第6の要素を有し、前記第4〜第6の要素の回転数が共線関係を満たし、かつ、当該共線関係を表す共線図において前記第4〜第6の要素が順に並ぶように構成された第2エネルギ伝達装置と、を有し、
前記第1および第5の要素が、前記右被駆動部に連結され、
前記第2および第4の要素が、前記左被駆動部に連結され、
前記第3要素が前記第1エネルギ入出力装置に連結され、
前記第6要素が前記第2エネルギ入出力装置に連結されており、
前記第1エネルギ伝達装置が、第1サンギヤと、第1リングギヤと、前記第1サンギヤおよび前記第1リングギヤに噛み合う第1プラネタリギヤを回転自在に支持する第1キャリアとを有する第1遊星歯車装置であり、
前記第1要素および前記第3要素の一方が前記第1サンギヤ、他方が前記第1リングギヤ、前記第2要素が前記第1キャリアであり、
前記第2エネルギ伝達装置が、第2サンギヤと、第2リングギヤと、前記第2サンギヤおよび前記第2リングギヤに噛み合う第2プラネタリギヤを回転自在に支持する第2キャリアとを有する第2遊星歯車装置であり、
前記第4要素および前記第6要素の一方が前記第2サンギヤ、他方が前記第2リングギヤ、前記第5要素が前記第2キャリアであり、
前記第1要素が前記第1サンギヤ、前記第3要素が前記第1リングギヤ、前記第4要素が前記第2サンギヤ、前記第6要素が前記第2リングギヤであることを特徴とする動力装置。」
に訂正する。

ケ 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9に「前記第1エネルギ入出力装置が第1回転磁界を発生させるための不動の第1ステータであり、
前記第2エネルギ入出力装置が第2回転磁界を発生させるための不動の第2ステータであり、
前記エネルギ伝達装置は、
磁石で構成され、前記第1ステータに対向するように設けられた第1ロータと、軟磁性体で構成され、前記第1ステータと前記第1ロータの間に設けられた第2ロータと、磁石で構成され、前記第2ステータに対向するように設けられた第3ロータと、軟磁性体で構成され、前記第2ステータと前記第3ロータの間に設けられた第4ロータとを有し、
前記第1ステータ、前記第1ロータおよび前記第2ロータは、前記第1ステータと前記第1ロータと前記第2ロータの間で、前記第1回転磁界の発生に伴って形成される磁気回路を介してエネルギを入出力するとともに、当該エネルギの入出力に伴って、前記第1回転磁界、前記第1ロータおよび前記第2ロータが、互いの間に回転数の共線関係を保ちながら回転するように構成され、
前記第2ステータ、前記第3ロータおよび前記第4ロータは、前記第2ステータと前記第3ロータと前記第4ロータの間で、前記第2回転磁界の発生に伴って形成される磁気回路を介してエネルギを入出力するとともに、当該エネルギの入出力に伴って、前記第2回転磁界、前記第3ロータおよび前記第4ロータが、互いの間に回転数の共線関係を保ちながら回転するように構成され、
前記第1および第4のロータが、前記右被駆動部に連結され、
前記第2および第3のロータが、前記左被駆動部に連結されていることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の動力装置。」と記載されているものを、
請求項1ないし4を引用するもののうち、請求項1を引用するものについて独立形式に改めて、
「【請求項9】
輸送機関を直進・旋回可能に推進するための左右の被駆動部を駆動する動力装置であって、
エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置と、
エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置と、
前記第1エネルギ入出力装置および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間に設けられ、前記第1エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間、および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間でエネルギを伝達するためのエネルギ伝達装置と、を備え、
前記第1エネルギ入出力装置、前記左被駆動部、前記右被駆動部、および前記第2エネルギ入出力装置は、回転数が単一の直線上に位置する共線関係にあり、当該共線関係を表す共線図においてこの順で並んでいる動力装置において、
前記第1エネルギ入出力装置が第1回転磁界を発生させるための不動の第1ステータであり、
前記第2エネルギ入出力装置が第2回転磁界を発生させるための不動の第2ステータであり、
前記エネルギ伝達装置は、
磁石で構成され、前記第1ステータに対向するように設けられた第1ロータと、軟磁性体で構成され、前記第1ステータと前記第1ロータの間に設けられた第2ロータと、磁石で構成され、前記第2ステータに対向するように設けられた第3ロータと、軟磁性体で構成され、前記第2ステータと前記第3ロータの間に設けられた第4ロータとを有し、
前記第1ステータ、前記第1ロータおよび前記第2ロータは、前記第1ステータと前記第1ロータと前記第2ロータの間で、前記第1回転磁界の発生に伴って形成される磁気回路を介してエネルギを入出力するとともに、当該エネルギの入出力に伴って、前記第1回転磁界、前記第1ロータおよび前記第2ロータが、互いの間に回転数の共線関係を保ちながら回転するように構成され、
前記第2ステータ、前記第3ロータおよび前記第4ロータは、前記第2ステータと前記第3ロータと前記第4ロータの間で、前記第2回転磁界の発生に伴って形成される磁気回路を介してエネルギを入出力するとともに、当該エネルギの入出力に伴って、前記第2回転磁界、前記第3ロータおよび前記第4ロータが、互いの間に回転数の共線関係を保ちながら回転するように構成され、
前記第1および第4のロータが、前記右被駆動部に連結され、
前記第2および第3のロータが、前記左被駆動部に連結されていることを特徴とする動力装置。」とするとともに、
請求項2ないし4を引用するものについて、それぞれ、訂正後の請求項9を引用する訂正後の請求項10、訂正後の9または10を引用する訂正後の請求項11、訂正後の請求項11を引用する訂正後の請求項12として、
「【請求項10】
エネルギを貯蔵・放出可能に構成され、前記第1エネルギ入出力装置および前記第2エネルギ入出力装置に接続されたエネルギ貯蔵・放出装置をさらに備えることを特徴とする請求項9に記載の動力装置。
【請求項11】
前記第1および第2のエネルギ入出力装置は、互いに接続され、互いの間でエネルギを授受可能に構成されていることを特徴とする請求項9または10に記載の動力装置。
【請求項12】
前記エネルギが電気エネルギであることを特徴とする、請求項11に記載の動力装置。」
に訂正する。


(2)一群の請求項について及び別の訂正単位とする求め
訂正前の請求項1〜9について、請求項2〜9は請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1〜9に対応する訂正後の請求項1〜12は、特許法134条の2第3項に規定する一群の請求項である。
なお、訂正後の請求項1と、訂正後の請求項2と、訂正後の請求項3と、訂正後の請求項4と、訂正後の請求項5およびこれを引用する訂正後の請求項6と、訂正後の請求項7と、訂正後の請求項8と、訂正後の請求項9およびこれを引用する訂正後の請求項10から12については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求める、という「別の訂正単位とする求め」がある。

(3)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1
(ア)訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1において、「四輪駆動の輸送機関であり、他の駆動源から独立した回転駆動源を有する動力装置であって、」との限定を加え、「被駆動部」について、「輸送機関の左右に配置された」ものであることを限定し、「前記動力装置は、第1エネルギ入出力装置及び前記第2エネルギ入出力装置が、旋回アシスト機能を有する」との限定を加えるものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、発明特定事項を上位概念から下位概念にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
よって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

(ウ)願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
「四輪駆動の輸送機関であり、他の駆動源から独立した回転駆動源を有する動力装置で」あることについて、明細書の段落【0041】に、「この車両Vには、左右の前輪WFL,WFRを駆動するための内燃機関3および回転機4と、これらの内燃機関3および回転機4の動力を前輪WFL,WFRに伝達するための変速装置5および差動ギヤ機構7と、左右の後輪WRL,WRR(左右の被駆動部)を駆動するための動力装置1が搭載されている。」、段落【0045】に「動力装置1は、図2に示すように、動力源としての第1回転機10(第1エネルギ入出力装置)および第2回転機11(第2エネルギ入出力装置)と、左右の後輪WRL,WRRに動力を伝達するための第1遊星歯車装置PS1(エネルギ伝達装置、第1エネルギ伝達装置)および第2遊星歯車装置PS2(エネルギ伝達装置、第2エネルギ伝達装置)を備えている。」と記載されており、前輪及び後輪が、それぞれ、「内燃機関3および回転機4」の駆動源、及び、動力装置1の駆動源により駆動される四輪駆動の輸送機関であることが記載されている。そして、動力装置1が、他方の駆動源(内燃機関3および回転機4の回転駆動源)からは独立した回転駆動源であることが記載されていることは明らかである。
「被駆動部」が「輸送機関の左右に配置」されることについて、明細書の段落【0007】等に、「輸送機関(実施形態における(以下、本項において同じ)車両V)を直進・旋回可能に推進するための左右の被駆動部(左右の後輪WRL,WRR)を駆動する動力装置1、1Aであって、」と記載されている。また図1には、車両Vの左右に、左右の後輪WRL,WRRが配置される様子が示されている。
よって、「輸送機関の左右に配置された被駆動部」は願書に添付した明細書中の発明の詳細な説明及び図面に基づいて導き出される構成である。
また、動力装置が第1エネルギ入出力装置及び前記第2エネルギ入出力装置が、旋回アシスト機能を有することについて、明細書の段落【0041】に「車両Vには、左右の前輪WFL,WFRを駆動するための内燃機関3および回転機4と、これらの内燃機関3および回転機4の動力を前輪WFL,WFRに伝達するための変速装置5および差動ギヤ機構7と、左右の後輪WRL,WRR(左右の被駆動部)を駆動するための動力装置1が搭載されている。」と、段落【0045】に「動力装置1は、図2に示すように、動力源としての第1回転機10(第1エネルギ入出力装置)および第2回転機11(第2エネルギ入出力装置)と、左右の後輪WRL,WRRに動力を伝達するための第1遊星歯車装置PS1(エネルギ伝達装置、第1エネルギ伝達装置)および第2遊星歯車装置PS2(エネルギ伝達装置、第2エネルギ伝達装置)を備えている。」と記載されている。また、段落【0066】に「・第1左旋回アシストモードこの第1左旋回アシストモード中には、第1および第2の回転機10,11に電力を供給し、両者10,11を正転させるとともに、第1および第2の回転機トルクTM1,TM2を、右後輪伝達トルクTWRRが左後輪伝達トルクTWRLよりも大きくなるように制御する。」と、段落【0078】に「本実施形態によれば、従来の場合と異なり、ブレーキを用いることなく、車両Vの直進および左右の旋回アシストを行うことができる。」等と記載されている。
よって、「前記動力装置は、第1エネルギ入出力装置及び前記第2エネルギ入出力装置が、旋回アシスト機能を有する」ことは願書に添付した明細書中の発明の詳細な説明に基づいて導き出される構成である。

以上のとおり、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

(エ)独立特許要件について
本件特許無効審判事件においては、訂正前の請求項1について無効審判の請求の対象とされているので、訂正前の請求項1に係る訂正事項1に関して、特許法第第134条の2第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

イ 訂正事項2
(ア)訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項2の記載が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第134条の2第1項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
さらに、訂正事項2は、「四輪駆動の輸送機関であり、他の駆動源から独立した回転駆動源を有する動力装置であって、」との限定を加え、「被駆動部」について、「輸送機関の左右に配置された」ものであることを限定し、「前記エネルギ貯蔵・放出装置に回生し充電可能な」との限定を加えるものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、発明特定事項を上位概念から下位概念にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
よって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

(ウ)願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2のうち、「四輪駆動の輸送機関であり、他の駆動源から独立した回転駆動源を有する動力装置であって、」について、及び、「被駆動部」が「輸送機関の左右に配置された」ものであることについては、上記ア (ウ)で述べたとおり、明細書の段落【0007】、【0041】及び【0045】並びに図1及び2から導き出される事項である。
また、「エネルギ貯蔵・放出装置に回生し充電可能な」構成であることは、明細書の段落【0077】に「充電モード中、左右の後輪伝達トルクTWRL,TWRRが同じ大きさに制御されるとともに、左右の後輪回転数NWRL,NWRRが同じ高さに制御される。したがって、車両Vの良好な直進性を確保しながら、左右の後輪WRL,WRRの動力を電力としてバッテリ24に充電することができる。」から導き出される事項である。
以上のとおり、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

(エ)独立特許要件について
本件特許無効審判事件においては、訂正前の請求項2について無効審判の請求の対象とされているので、訂正前の請求項2に係る訂正事項2に関して、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

ウ 訂正事項3
(ア)訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の請求項3の記載が訂正前の請求項1又は2の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1又は2の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第134条の2第1項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
また、訂正事項3は、「被駆動部」について、「輸送機関の左右に配置された」ものであることを限定し、「エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置」、「エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置」について、「エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置と、エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置との、二つのエネルギ入出力装置から成る独立した動力源」であることを特定し、「第1エネルギ入出力装置と接続する第1パワードライブユニットと第2エネルギ入出力装置と接続する第2パワードライブユニットをさらに備え」るとの限定を加え、「第1および第2のエネルギ入出力装置」は、「第1パワードライブユニットと第2パワードライブユニットを介して」互いに「電気的に」接続されていることを限定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3は、発明特定事項を上位概念から下位概念にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
よって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

(ウ)願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
「被駆動部」が「輸送機関の左右に配置された」ものであることについては、上記ア (ウ)で述べたとおり、願書に添付した明細書中の発明の詳細な説明及び図面に基づいて導き出される構成である。
「エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置と、エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置との、二つのエネルギ入出力装置から成る独立した動力源」については、明細書の段落【0007】、【0041】及び【0045】並びに図1及び2から導き出せる事項である。
また、「第1エネルギ入出力装置と接続する第1パワードライブユニットと第2エネルギ入出力装置と接続する第2パワードライブユニットをさらに備え」、前記第1および第2のエネルギ入出力装置は、「前記第1パワードライブユニットと前記第2パワードライブユニットを介して」互いに「電気的」に接続されることについては、段落【0045】及び【0046】並びに図2及び3から導き出せる事項である。
以上のとおり、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

(エ)独立特許要件について
本件特許無効審判事件においては、訂正前の請求項3について無効審判の請求の対象とされているので、訂正前の請求項3に係る訂正事項3に関して、特許法第第134条の2第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

エ 訂正事項4
(ア)訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項4の記載が訂正前の請求項3の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項3の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第134条の2第1項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、訂正事項4は、「動力装置」について「他の駆動源から独立した回転駆動源を有」するものであるとの限定を加え、「被駆動部」について「輸送機関の左右に配置された」ものであることを限定し、「第1エネルギ入出力装置と接続する第1パワードライブユニットと第2エネルギ入出力装置と接続する第2パワードライブユニットをさらに備え」ること、第1および第2のエネルギ入出力装置は、「第1パワードライブユニットと第2パワードライブユニットを介して」互いに「電気的に」接続されていることを限定するものであるから、特許法134条の2第1項ただし書き1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項4は、発明特定事項を上位概念から下位概念にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
よって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

(ウ)願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
「被駆動部」が「輸送機関の左右に配置された」ものであることについては、上記ア (ウ)で述べたとおり、願書に添付した明細書中の発明の詳細な説明及び図面に基づいて導き出される構成である。
「他の駆動源から独立した回転駆動源を有し、」との事項については、明細書の段落【0007】、【0041】及び【0045】並びに図1及び2から導き出せる事項である。
「第1エネルギ入出力装置と接続する第1パワードライブユニットと第2エネルギ入出力装置と接続する第2パワードライブユニットをさらに備え」、前記第1および第2のエネルギ入出力装置は、「前記第1パワードライブユニットと前記第2パワードライブユニットを介して」互いに「電気的に」接続されることについては、上記ウ (ウ)で述べたとおり、願書に添付した明細書中の発明の詳細な説明及び図面に基づいて導き出される構成である。
以上のとおり、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

(エ)独立特許要件について
本件特許無効審判事件においては、訂正前の請求項4について無効審判の請求の対象とされているので、訂正前の請求項4に係る訂正事項4に関して、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

オ 訂正事項5
(ア)訂正の目的について
訂正事項5は、訂正前の請求項5の記載が訂正前の請求項1等の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1等の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるためる訂正であって、特許法第134条の2第1項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
また、訂正事項5は、「被駆動部」について、「輸送機関の左右に配置された」ものであることを限定し、「エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置」、「エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置」について、「エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置と、エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置の、二つのエネルギ入出力装置から成る独立した動力源」であることを限定し、「第1エネルギ入出力装置及び第2エネルギ入出力装置のどちらか一方の回生電力を第1エネルギ入出力装置及び前記第2エネルギ入出力装置のどちらか他方へ供給し、」との限定を加えるものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項5は、発明特定事項を上位概念から下位概念にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
よって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法134条の2第9項で準用する特許法126条第6項の規定に適合するものである。

(ウ)願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
「被駆動部」が「輸送機関の左右に配置された」ものであることについては、上記ウ (ウ)で述べたとおり、願書に添付した明細書中の発明の詳細な説明及び図面に基づいて導き出される構成である。
「エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置」、「エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置」が、「エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置と、エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置の、二つのエネルギ入出力装置から成る独立した動力源」であることについては、上記ウ (ウ)で述べたとおり、願書に添付した明細書中の発明の詳細な説明及び図面に基づいて導き出される構成である。
「第1エネルギ入出力装置」、「第2エネルギ入出力装置」が、「第1エネルギ入出力装置及び第2エネルギ入出力装置のどちらか一方の回生電力を第1エネルギ入出力装置及び前記第2エネルギ入出力装置のどちらか他方へ供給」することについては、段落【0045】、【0071】ないし【0073】並びに図2から導き出せる事項である。
以上のとおり、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法特許法134条の2第9項で準用する特許法126条第5項の規定に適合するものである。

(エ)独立特許要件について
本件特許無効審判事件においては、訂正前の請求項5について無効審判の請求の対象とされているので、訂正前の請求項5に係る訂正事項5に関して、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

カ 訂正事項6
(ア)訂正の目的について
訂正事項6は、訂正前の請求項6で「請求項1ないし5のいずれか」の請求項を引用していたものを、訂正後の請求項6では「請求項5」のみを引用するものとした。
また、訂正後の請求項6では訂正後の請求項5を引用していることから、実質的に、上記の訂正事項5における請求項5の訂正と同様に特許請求の範囲を減縮しようとするものである。
よって、当該訂正事項6は、特許法134条の2第1項ただし書き1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

(イ)願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項6は、「請求項1ないし5のいずれか」の請求項を引用していたものを「請求項5」のみを引用するものとするとともに、訂正事項5における請求項5の訂正と同様に発明特定事項を上位概念から下位概念にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
よって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法134条の2第9項で準用する特許法126条第6項の規定に適合するものである。

(ウ)独立特許要件について
本件特許無効審判事件においては、訂正前の請求項6について無効審判の請求の対象とされているので、訂正前の請求項6に関して、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する特許法126条第7項の独立特許要件は課されない。

キ 訂正事項7
(ア)訂正の目的について
訂正事項7は、訂正前の請求項7の記載が訂正前の請求項1等の記載を引用する請求項6を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項6の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第134条の2第1項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
また、訂正事項7は、「被駆動部」について、「輸送機関の左右に配置された」ものであることを限定し、「第1エネルギ入出力装置」、「第2エネルギ入出力装置」について、「第1エネルギ入出力装置及び第2エネルギ入出力装置のどちらか一方の回生電力を第1エネルギ入出力装置及び前記第2エネルギ入出力装置のどちらか他方へ供給」することを限定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項7は、発明特定事項を上位概念から下位概念にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
よって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法134条の2第9項で準用する特許法126条第6項の規定に適合するものである。

(ウ)願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
「被駆動部」が「輸送機関の左右に配置された」ものであることについては、上記ア (ウ)で述べたとおり、願書に添付した明細書中の発明の詳細な説明及び図面に基づいて導き出される構成である。
「第1エネルギ入出力装置及び第2エネルギ入出力装置のどちらか一方の回生電力を第1エネルギ入出力装置及び前記第2エネルギ入出力装置のどちらか他方へ供給し、」については、上記オ (ウ)で述べたとおり、願書に添付した明細書中の発明の詳細な説明及び図面に基づいて導き出される構成である。

(エ)独立特許要件について
本件特許無効審判事件においては、訂正前の請求項7について無効審判の請求の対象とされているので、訂正前の請求項7に関して、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する特許法126条第7項の独立特許要件は課されない。

ク 訂正事項8
(ア)訂正の目的について
訂正事項8は、訂正前の請求項8が、請求項1等を引用する請求項6を引用する請求項7をさらに引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項7の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法134条の2第1項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。

(イ)願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項8は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

(ウ)独立特許要件について
訂正事項8は、特許法134条の2第1項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であって、同第1号又は第2号に掲げる事項を目的とする訂正ではないから、請求項8に係る訂正事項8に関して、特許法134条の2第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

ケ 訂正事項9
(ア)訂正の目的について
訂正事項9は、訂正前の請求項9が、請求項1等を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1等の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法134条の2第1項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
なお、当該訂正により、訂正前の請求項2ないし4を引用する訂正前の請求項9は、それぞれ、訂正後の請求項10ないし請求項12となり、形式上、請求項の数が増えた。

(イ)願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項9は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

(ウ)独立特許要件について
訂正事項9は、特許法134条の2第1項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であって、同第1号又は第2号に掲げる事項を目的とする訂正ではないから、請求項9に係る訂正事項9に関して、特許法134条の2第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

(4)訂正の適否についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第3項並びに第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項1、2、3、4、〔5及び6〕、7、8並びに〔9ないし12〕について訂正を認める。

2 本件発明
上記のとおり本件訂正が認められたので、本件特許の請求項1ないし7に係る発明(以下「本件発明1ないし7」という。)は、令和3年8月30日の訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
四輪駆動の輸送機関であり、
他の駆動源から独立した回転駆動源を有する動力装置であって、
輸送機関を直進・旋回可能に推進するためであって、輸送機関の左右に配置された被駆動部を駆動する動力装置であって、
エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置と、
エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置と、
前記第1エネルギ入出力装置および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間に設けられ、前記第1エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間、および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間でエネルギを伝達するためのエネルギ伝達装置と、を備え、
前記第1エネルギ入出力装置、前記左被駆動部、前記右被駆動部、および前記第2エネルギ入出力装置は、回転数が単一の直線上に位置する共線関係にあり、
当該共線関係を表す共線図においてこの順で並んでおり、
前記動力装置は、第1エネルギ入出力装置及び前記第2エネルギ入出力装置が、旋回アシスト機能を有する
ことを特徴とする、
動力装置。
【請求項2】
四輪駆動の輸送機関であり、
他の駆動源から独立した回転駆動源を有する動力装置であって、
輸送機関を直進・旋回可能に推進するためであって、輸送機関の左右に配置された被駆動部を駆動する動力装置であって、
エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置と、
エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置と、
前記第1エネルギ入出力装置および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間に設けられ、前記第1エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間、および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間でエネルギを伝達するためのエネルギ伝達装置と、を備え、
前記第1エネルギ入出力装置、前記左被駆動部、前記右被駆動部、および前記第2エネルギ入出力装置は、回転数が単一の直線上に位置する共線関係にあり、
当該共線関係を表す共線図においてこの順で並んでおり、
エネルギを貯蔵・放出可能に構成され、前記第1エネルギ入出力装置および前記第2エネルギ入出力装置に接続されたエネルギ貯蔵・放出装置をさらに備え、
前記エネルギ貯蔵・放出装置に回生し充電可能な
ことを特徴とする、
動力装置。
【請求項3】
輸送機関を直進・旋回可能に推進するためであって、輸送機関の左右に配置された被駆動部を駆動する動力装置であって、
エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置と、
エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置との
二つのエネルギ入出力装置から成る独立した動力源を備え、
前記第1エネルギ入出力装置および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間に設けられ、前記第1エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間、および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間でエネルギを伝達するためのエネルギ伝達装置と、を備え、
前記第1エネルギ入出力装置、前記左被駆動部、前記右被駆動部、および前記第2エネルギ入出力装置は、回転数が単一の直線上に位置する共線関係にあり、
当該共線関係を表す共線図においてこの順で並んでおり、
前記第1エネルギ入出力装置と電気的に接続する第1パワードライブユニットと前記第2エネルギ入出力装置と電気的に接続する第2パワードライブユニットをさらに備え、
前記第1および第2のエネルギ入出力装置は、前記第1パワードライブユニットと前記第2パワードライブユニットを介して互いに電気的に接続され、互いの間でエネルギを授受可能に構成されている
ことを特徴とする、
動力装置。
【請求項4】
他の駆動源から独立した回転駆動源を有し、
輸送機関を直進・旋回可能に推進するためであって、輸送機関の左右に配置された被駆動部を駆動する動力装置であって、
エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置と、
エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置と、
前記第1エネルギ入出力装置および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間に設けられ、前記第1エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間、および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間でエネルギを伝達するためのエネルギ伝達装置と、を備え、
前記第1エネルギ入出力装置、前記左被駆動部、前記右被駆動部、および前記第2エネルギ入出力装置は、回転数が単一の直線上に位置する共線関係にあり、
当該共線関係を表す共線図においてこの順で並んでおり、
前記第1エネルギ入出力装置と電気的に接続する第1パワードライブユニットと前記第2エネルギ入出力装置と電気的に接続する第2パワードライブユニットをさらに備え、
前記第1および第2のエネルギ入出力装置は、前記第1パワードライブユニットと前記第2パワードライブユニットを介して互いに電気的に接続され、互いの間でエネルギを授受可能に構成され、
前記エネルギが電気エネルギであることを特徴とする動力装置。
【請求項5】
輸送機関を直進・旋回可能に推進するためであって、輸送機関の左右に配置された被駆動部を駆動する動力装置であって、
エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置と、
エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置の
二つのエネルギ入出力装置から成る独立した動力源を備え、
前記第1エネルギ入出力装置および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間に設けられ、前記第1エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間、および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間でエネルギを伝達するためのエネルギ伝達装置と、を備え、
前記第1エネルギ入出力装置、前記左被駆動部、前記右被駆動部、および前記第2エネルギ入出力装置は、回転数が単一の直線上に位置する共線関係にあり、
当該共線関係を表す共線図においてこの順で並んでおり、
前記第1エネルギ入出力装置及び前記第2エネルギ入出力装置のどちらか一方の回生電力を前記第1エネルギ入出力装置及び前記第2エネルギ入出力装置のどちらか他方へ供給し、
前記第1および第2のエネルギ入出力装置が回転機である、
ことを特徴とする、動力装置。
【請求項6】
前記エネルギ伝達装置は、
互いの間でエネルギを伝達可能な第1、第2および第3の要素を有し、前記第1〜第3の要素の回転数が共線関係を満たし、かつ、当該共線関係を表す共線図において前記第1〜第3の要素が順に並ぶように構成された第1エネルギ伝達装置と、
互いの間でエネルギを伝達可能な第4、第5および第6の要素を有し、前記第4〜第6の要素の回転数が共線関係を満たし、かつ、当該共線関係を表す共線図において前記第4〜第6の要素が順に並ぶように構成された第2エネルギ伝達装置と、を有し、
前記第1および第5の要素が、前記右被駆動部に連結され、
前記第2および第4の要素が、前記左被駆動部に連結され、
前記第3要素が前記第1エネルギ入出力装置に連結され、
前記第6要素が前記第2エネルギ入出力装置に連結されていることを特徴とする、請求項5に記載の動力装置。
【請求項7】
輸送機関を直進・旋回可能に推進するためであって、輸送機関の左右に配置された被駆動部を駆動する動力装置であって、
エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置と、
エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置と、
前記第1エネルギ入出力装置および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間に設けられ、前記第1エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間、および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間でエネルギを伝達するためのエネルギ伝達装置と、を備え、
前記第1エネルギ入出力装置、前記左被駆動部、前記右被駆動部、および前記第2エネルギ入出力装置は、回転数が単一の直線上に位置する共線関係にあり、
当該共線関係を表す共線図においてこの順で並んでおり、
前記第1エネルギ入出力装置及び前記第2エネルギ入出力装置のどちらか一方の回生電力を前記第1エネルギ入出力装置及び前記第2エネルギ入出力装置のどちらか他方へ供給し、
前記第1および第2のエネルギ入出力装置が回転機であり、
前記エネルギ伝達装置は、
互いの間でエネルギを伝達可能な第1、第2および第3の要素を有し、前記第1〜第3の要素の回転数が共線関係を満たし、かつ、当該共線関係を表す共線図において前記第1〜第3の要素が順に並ぶように構成された第1エネルギ伝達装置と、
互いの間でエネルギを伝達可能な第4、第5および第6の要素を有し、前記第4〜第6の要素の回転数が共線関係を満たし、かつ、当該共線関係を表す共線図において前記第4〜第6の要素が順に並ぶように構成された第2エネルギ伝達装置と、を有し、
前記第1および第5の要素が、前記右被駆動部に連結され、
前記第2および第4の要素が、前記左被駆動部に連結され、
前記第3要素が前記第1エネルギ入出力装置に連結され、
前記第6要素が前記第2エネルギ入出力装置に連結され、
前記第1エネルギ伝達装置が、第1サンギヤと、第1リングギヤと、前記第1サンギヤおよび前記第1リングギヤに噛み合う第1プラネタリギヤを回転自在に支持する第1キャリアとを有する第1遊星歯車装置であり、
前記第1要素および前記第3要素の一方が前記第1サンギヤ、他方が前記第1リングギヤ、前記第2要素が前記第1キャリアであり、
前記第2エネルギ伝達装置が、第2サンギヤと、第2リングギヤと、前記第2サンギヤおよび前記第2リングギヤに噛み合う第2プラネタリギヤを回転自在に支持する第2キャリアとを有する第2遊星歯車装置であり、
前記第4要素および前記第6要素の一方が前記第2サンギヤ、他方が前記第2リングギヤ、前記第5要素が前記第2キャリアであることを特徴とする動力装置。」

3 甲号証に記載の発明および事項等
(1)甲第1号証
本件特許出願前に出願され、本件特許出願後に出願公開がされた甲第1号証(以下「甲1」という。)には、「駆動力分配装置および車両制御装置」に関して、図面を参照して次の記載がある(下線は当審が付与した。以下同様。)。

ア 「【0008】
本発明の目的は、2つの駆動源と相互に接続した2つの差動装置とを用い、各駆動源の駆動力を個別に回転駆動することで一対の被駆動対象物間で駆動力を移動できるようにした駆動力配分装置および車両制御装置を提供することにある。」

イ 「【0028】
図1は本発明の車両制御装置を説明する説明図を、図2は図1の駆動力配分装置を示すスケルトン図を、図3(a),(b),(c)は相互に接続した各差動装置の入出力特性線図を、図4は駆動力の配分割合を示す駆動力配分グラフをそれぞれ表している。
【0029】
図1に示すように、車両10には、ステアリング(図示せず)により操舵される左右側一対の前輪FR,FLと、駆動輪となる左右側一対の後輪RR,RLとが、図示しない懸架装置を介して装着されている。
【0030】
車両10は、後輪駆動方式を採用する電気自動車であり、この車両10の車体11には、駆動力配分装置12,コントローラ13,当該コントローラ13に電気的に接続される各種センサ14a〜14eが設けられている。ここで、本発明における車両制御装置は、駆動力配分装置12,コントローラ13および各種センサ14a〜14eにより構成されている。
【0031】
駆動力配分装置12は、相互に同軸上に配置された第1および第2駆動源としての第1および第2電動モータM1,M2と、同軸上に配置されて相互に接続された一対の第1および第2差動装置20,30(図中二点鎖線内)とから構成されている。第1および第2差動装置20,30には、被駆動対象物としての一対の後輪RR,RLに接続される各リアドライブシャフト15R,15Lを回転駆動するための一対の減速ギヤ列16R,16Lがそれぞれ接続されている。」

ウ 「【0032】
コントローラ13は、第1および第2電動モータM1,M2のそれぞれに電気的に接続されており、図示しない車載バッテリ(電源)を介して第1および第2電動モータM1,M2に所定の大きさの駆動電流を個別に供給するようになっている。これにより、第1および第2電動モータM1,M2は、それぞれ任意の回転速度で回転駆動可能となっている。」

エ 「【0033】
図2に示すように、第1および第2電動モータM1,M2には、各電動モータM1,M2の回転に伴って回転する第1および第2出力軸17a,17bが設けられており、これらの第1および第2出力軸17a,17bは、各電動モータM1,M2に対して同軸上に設けられる第1および第2差動装置20,30に、それぞれ接続されている。本実施の形態においては、各電動モータM1,M2と各差動装置20,30とをそれぞれ同軸上に配置するようにしており、したがって、これらを一つのケース内にまとめて収容することにより装置の小型化が図れるようにしている。
【0034】
第1および第2差動装置20,30は、それぞれ遊星歯車機構を採用している。各差動装置20,30は、第1回転要素としてのサンギヤ(太陽歯車)S1,S2と、第2回転要素としてのキャリア(遊星キャリア)C1,C2と、キャリアC1,C2にそれぞれ回転自在に支持される複数(例えば3つ)のプラネタリギヤ(遊星歯車)P1,P2と、第3回転要素としてのリングギヤ(外輪歯車)R1,R2と、第1および第2出力要素としての回転軸O1,O2とから構成されている。
【0035】
第1差動装置20のサンギヤS1には第1出力軸17aが接続されている。第1差動装置20のプラネタリギヤP1は、サンギヤS1に噛み合ってその周囲を転動するようになっており、したがって、プラネタリギヤP1を支持するキャリアC1は、サンギヤS1と同軸上で相対回転可能となっている。キャリアC1は、第2差動装置30のリングギヤR2に接続されており、キャリアC1とリングギヤR2とは一体回転するようになっている。これらの一体化されたキャリアC1およびリングギヤR2には、その回転中心に回転軸O1が接続して設けられている。
【0036】
第2差動装置30のサンギヤS2には第2出力軸17bが接続されている。第2差動装置30のプラネタリギヤP2は、サンギヤS2に噛み合ってその周囲を転動するようになっており、したがって、プラネタリギヤP2を支持するキャリアC2は、サンギヤS2と同軸上で相対回転可能となっている。キャリアC2は、第1差動装置20のリングギヤR1に接続されており、キャリアC2とリングギヤR1とは一体回転するようになっている。これらの一体化されたキャリアC2およびリングギヤR1には、その回転中心に回転軸O2が接続して設けられている。
【0037】
各回転軸O1,O2には、各減速ギヤ列16R,16Lの入力側を構成する各平歯車18R,18Lが接続されている。各減速ギヤ列16R,16Lは、その入力側から出力側に向かって、大小複数の平歯車を組み合わせることにより構成されており、各減速ギヤ列16R,16Lの出力側を構成する各平歯車19R,19Lの回転中心には、各リアドライブシャフト15R,15Lが接続されている。」

オ 「【0038】
このように各キャリアC1,C2と各リングギヤR1,R2とをそれぞれ交互に接続した第1および第2差動装置20,30の入出力特性を具体的に示すと、図3のようになる。図3に示す入出力特性線図(駆動力線図)の縦軸および横軸は、それぞれ回転数および各歯車のギヤ比を表しており、図中白抜矢印は駆動トルク(駆動力)を表している。
【0039】
図3(a)の太線は、第1電動モータM1単体の入出力特性線図を示している。第1電動モータM1が、正の駆動トルクTm1をサンギヤS1を介して出力した場合、第1出力要素としての回転軸O1、つまり、キャリアC1とリングギヤR2との接続体には、正の駆動トルク(1+λ1)×Tm1が発生する。一方、第2出力要素としての回転軸O2、つまり、リングギヤR1とキャリアC2との接続体には、負の駆動トルクλ1×Tm1が発生する。ここで、ギヤ比λ1はZr1/Zs1により求められ、Zr1はリングギヤR1のギヤ歯数を、Zs1はサンギヤS1のギヤ歯数をそれぞれ表している。図中符号N1は回転軸O1の回転数である。
【0040】
図3(b)の太線は、第2電動モータM2単体の入出力特性線図を示している。第2電動モータM2が、正の駆動トルクTm2(Tm2<Tm1)をサンギヤS2を介して出力した場合、第2出力要素としての回転軸O2、つまり、キャリアC2とリングギヤR1との接続体には、正の駆動トルク(1+λ2)×Tm2が発生する。一方、第1出力要素としての回転軸O1、つまり、リングギヤR2とキャリアC1との接続体には、負の駆動トルクλ2×Tm2が発生する。ここで、ギヤ比λ2はZr2/Zs2により求められ、Zr2はリングギヤR2のギヤ歯数を、Zs2はサンギヤS2のギヤ歯数をそれぞれ表している。図中符号N2は回転軸O2の回転数である。
【0041】
図3(c)の太線は、図3(a)および図3(b)を合成した入出力特性線図を表しており、第1電動モータM1の入出力特性線図と第2電動モータM2の入出力特性線図とは屈曲しない一の直線により形成される。
【0042】
第1電動モータM1が正の駆動トルクTm1を、第2電動モータM2が正の駆動トルクTm2をそれぞれ出力した場合、図3(c)に示すように、回転軸O1には最終的に正の差分駆動トルク(1+λ1)×Tm1−λ2×Tm2が発生する。その一方で、回転軸O2には正の差分駆動トルク(1+λ2)×Tm2−λ1×Tm1が発生する。
【0043】
このように、各電動モータM1,M2の駆動トルクTm1,Tm2を任意に調整することで、各回転軸O1,O2の駆動トルク、つまり、各リアドライブシャフト15R,15Lにそれぞれ接続される後輪RR,RLの駆動トルクToR,ToLを調整することができる。この場合、各後輪RR,RLの駆動トルクToR,ToLは、下記式(1),(2)により表され、したがって、各電動モータM1,M2の駆動トルクTm1,Tm2は、それぞれ各差動装置20,30によって合成される。その結果、図4に示すような駆動力の配分割合(図中斜線範囲)を得ることができる。
ToR=(1+λ1)×Tm1−λ2×Tm2・・・(1)
ToL=(1+λ2)×Tm2−λ1×Tm1・・・(2)
【0044】
ここで、図4に示す破線内(正方形内)は、従来技術におけるホイールモータ、つまり、差動装置を備えずに独立して回転駆動される一対のホイールモータの駆動トルクの配分割合(配分範囲)を示している。各ホイールモータが発生し得る負から正の駆動トルクの範囲を-50〜50の範囲とした場合、各ホイールモータの駆動トルクは、それぞれのホイールモータ単体の特性に依存するため50:50,-50:50,-50:-50,50:-50の範囲内において制御されることになる。
【0045】
これに対し、本発明においては、上記ホイールモータと同一特性の各電動モータM1,M2を採用した場合、図4に示す実線内(ひし形内)に示す駆動トルクの配分割合を得ることができる(ただしλ1,λ2=1.5)。
【0046】
つまり、車両10(図1参照)が直進時に加速や減速する場合においては、各後輪RR,RLの何れにも同一の駆動トルクが負荷されて、このときの各後輪RR,RLに対する駆動トルクの配分割合は50:50または-50:-50となって、上記従来技術と変わらない。しかし、後輪RRの駆動トルクToRを「0」とし、後輪RLの駆動トルクToLを「max」としたいような場合には、図中黒丸印に示すように、駆動トルクの配分割合ToR:ToLを0:80にすることができる。したがって、上記ホイールモータに比して約1.6倍の大きな駆動トルクを得ることができる。
【0047】
また、後輪RRを駆動する一方で、後輪RLを制動するような場合、つまり、左右側でそれぞれ駆動トルクを正負逆にするような場合においては、駆動トルクの配分割合ToR:ToLを200:-200にすることができ、大きな駆動トルク差を得ることができる。」

カ 「【0049】
次に、コントローラ13による各電動モータM1,M2の制御内容について説明する。図5は本発明のコントローラを示すブロック図を、図6は左旋回時における車両の挙動変化を説明する説明図を、図7(a),(b),(c)は車両の異なる挙動変化時における入出力特性線図をそれぞれ表している。
【0050】
図5に示すように、コントローラ13の入力側には、車両10の旋回時におけるオーバーステアやアンダーステア等の車両の挙動変化を検出する各種センサ(挙動変化検出手段)14a〜14eが電気的に接続されている。なお、図5に示すアクセルセンサ14a、操舵角センサ14b、横加速度センサ14c、ヨーレイトセンサ14dおよび車輪速センサ14eは、図1に示す符号14a〜14eにそれぞれ対応している。また、車輪速センサ14eは、図1および図5においては1つのみを示しているが、前後輪のそれぞれに対応して4つ設けられている。
【0051】
コントローラ13は、車体絶対速度算出部13a、ドライバ要求駆動トルク算出部13b、目標ヨーレイト算出部13c、目標車輪速度算出部13dおよびモータトルク算出部13eを備えており、コントローラ13の出力側には、各電動モータM1,M2が電気的に接続されている。」

キ 「【0058】
モータトルク算出部13eでは、まず、入力された各信号を用いて車両10の挙動変化を抑制するために必要な各後輪RR,RLの駆動トルクToR,ToLを個別に算出し、その後、各駆動
トルクToR,ToLを発揮し得る各電動モータM1,M2の駆動トルク(目標トルク)Tm1,Tm2を上記式(1)および(2)を用いて算出するようになっている。そして、モータトルク算出部13eは、図示しない車載バッテリを介して駆動トルクTm1,Tm2が出力されるように各電動モータM1,M2をそれぞれ制御するようになっている。
【0059】
車両10の直進走行時や旋回時における異なる挙動変化に対して、各電動モータM1,M2の駆動トルクTm1,Tm2は、図7(a),(b),(c)に示すように制御される。
【0060】
図7(a)は、車両10が直進走行中や各前輪FR,FLの角度δが「0」である場合の入出力特性線図を示しており、各後輪RR,RLの回転数(回転軸O1,O2の回転数)はそれぞれ同じ値(N1=N2)となっている。この場合の各電動モータM1,M2の駆動トルクTm1,Tm2は、それぞれ同じ値(Tm1=Tm2)に制御され、これにより、各後輪RR,RLの駆動トルクToR,ToLもそれぞれ同じ値(ToR=ToL)となる。したがって、車両10の直進安定性が向上する。
【0061】
図7(b)は、アンダーステアやオーバーステア等の挙動変化を伴わずに車両10が右旋回し、車両10の後輪RLの回転数N2が後輪RRの回転数N1よりも大きくなった場合(N1<N2)の入出力特性線図を示している。このとき、旋回外輪(後輪RL)の接地荷重が大きくなって後輪RLのグリップに余裕がある状態となり、一方、旋回内輪(後輪RR)の接地荷重が小さくなって後輪RRはスリップし易い状態となる。これにより、コントローラ13によって各電動モータM1,M2の駆動トルクTm1,Tm2を「Tm1<Tm2」となるように制御することで、接地荷重が小さな後輪RRに配分される駆動トルクToRのうちの一部を、接地荷重が大きな後輪RLに移動させることができる。したがって、車両10の旋回走行性能が向上する。
【0062】
図7(c)は、右旋回時において車両10がオーバーステア傾向にある場合の入出力特性線図を示している。この場合、コントローラ13によって各電動モータM1,M2の駆動トルクTm1,Tm2を「Tm1>Tm2」となるように制御することで、旋回外輪(後輪RL)に配分される駆動トルクToLのうちの一部を、旋回内輪(後輪RR)に移動させることができる。したがって、オーバーステア傾向にある車両10の進行方向を、旋回半径外側に向けることができ、車両10がオーバーステア状態になることを抑制できる。」

ク 上記イ(特に、段落【0030】)、上記オ(特に、段落【0046】)及び上記キから、車両制御装置は、車両10を直進・旋回可能に推進するためのものであるといえる。

ケ 上記オ(特に、段落【0041】)及び図3(a)ないし(c)の図示内容から、第2電動モータM2、後輪RL、後輪RR、及び第1電動モータM1は、回転数が単一の直線上に位置する共線関係にあり、当該共線関係を表す共線図においてこの順で並んでいることがわかる。

上記記載事項及び認定事項並びに図面(特に、図1ないし7を参照)の図示内容から、甲1には、「2つの駆動源と相互に接続した2つの差動装置とを用い、各駆動源の駆動力を個別に回転駆動することで一対の被駆動対象物間で駆動力を移動できるようにした駆動力配分装置および車両制御装置を提供する」ことを解決すべき課題(以下、「甲1課題」という。)とした、次の発明(以下、「甲1発明A」及び「甲1発明B」という。)が記載されている。

〔甲1発明A〕
「車両10を直進・旋回可能に推進するためであって、車両10の左右に配置された後輪RL及び後輪RRを駆動する車両制御装置であって、
相互に同軸上に配置された第1及び第2電動モータM1,M2と、同軸上に配置されて相互に接続された一対の第1および第2差動装置20,30とから構成され、前記第1および第2差動装置20,30には、前記後輪RR,RLに接続される各リアドライブシャフト15R,15Lを回転駆動するための一対の減速ギヤ列16R,16Lがそれぞれ接続され、第1および第2電動モータM1,M2の第1および第2出力軸17a,17bは、各電動モータM1,M2に対して同軸上に設けられる前記第1および第2差動装置20,30に、それぞれ接続された駆動力分配装置12を備え、
前記第2電動モータM2、前記後輪RL、前記後輪RR、および前記第1電動モータM1は、回転数が単一の直線上に位置する共線関係にあり、
当該共線関係を表す共線図においてこの順で並んでおり、
第1及び第2電動モータM1,M2のそれぞれに電気的に接続されている車載バッテリをさらに備える、
車両制御装置。」

〔甲1発明B〕
「車両10を直進・旋回可能に推進するためであって、車両10の左右に配置された後輪RL及び後輪RRを駆動する車両制御装置であって、
相互に同軸上に配置された第1及び第2電動モータM1,M2と、同軸上に配置されて相互に接続された一対の第1および第2差動装置20,30とから構成され、前記第1および第2差動装置20,30には、前記後輪RR,RLに接続される各リアドライブシャフト15R,15Lを回転駆動するための一対の減速ギヤ列16R,16Lがそれぞれ接続され、第1および第2電動モータM1,M2の第1および第2出力軸17a,17bは、各電動モータM1,M2に対して同軸上に設けられる前記第1および第2差動装置20,30に、それぞれ接続された駆動力分配装置12を備え、
前記第2電動モータM2、前記後輪RL、前記後輪RR、および前記第1電動モータM1は、回転数が単一の直線上に位置する共線関係にあり、
当該共線関係を表す共線図においてこの順で並んでおり、
第1及び第2電動モータM1,M2のそれぞれに電気的に接続されているコントローラ13をさらに備える、
車両制御装置。」

〔甲1発明C〕
「車両10を直進・旋回可能に推進するためであって、車両10の左右に配置された後輪RL及び後輪RRを駆動する車両制御装置であって、
相互に同軸上に配置された第1及び第2電動モータM1,M2と、同軸上に配置されて相互に接続された一対の第1および第2差動装置20,30とから構成され、前記第1および第2差動装置20,30には、前記後輪RR,RLに接続される各リアドライブシャフト15R,15Lを回転駆動するための一対の減速ギヤ列16R,16Lがそれぞれ接続され、第1および第2電動モータM1,M2の第1および第2出力軸17a,17bは、各電動モータM1,M2に対して同軸上に設けられる前記第1および第2差動装置20,30に、それぞれ接続された駆動力分配装置12を備え、
前記第2電動モータM2、前記後輪RL、前記後輪RR、および前記第1電動モータM1は、回転数が単一の直線上に位置する共線関係にあり、
当該共線関係を表す共線図においてこの順で並んでおり、
第1及び第2電動モータM1,M2のそれぞれに電気的に接続されているコントローラ13をさらに備え、
第1および第2差動装置20,30は、それぞれ遊星歯車機構が採用され、第1回転要素としてのサンギヤS1,S2と、第2回転要素としてのキャリアC1,C2と、キャリアC1,C2にそれぞれ回転自在に支持される複数のプラネタリギヤP1,P2と、第3回転要素としてのリングギヤR1,R2と、第1および第2出力要素としての回転軸O1,O2とから構成されており、
第1差動装置20のサンギヤS1には第1電動モータM1の第1出力軸17aが接続され、
第2差動装置30のサンギヤS2には第2電動モータM2の第2出力軸17bが接続され、
各回転軸O1,O2には、各減速ギヤ列16R,16L及び各リアドライブシャフト15R,15Lを介して、各後輪RR,RLが接続されている、
車両制御装置。」

(2)甲第2号証
甲第2号証(以下、「甲2」という。)には、「Offenlegungsschrift」(訳:自動車用駆動装置)に関し、図面を参照して次の記載がある。なお、ドイツ語の後に括弧書きでその訳文を示す。
なお、aウムラウト、oウムラウト、uウムラウト及びエスツェットは、それぞれa、o、u及びssで代用した。

ア 「[0002] Eine derartige Antriebsvorrichtung zeigt beispielsweise die US 59 10 064 A, bei der ausgehend von einem Kegelraddifferenzial oder einem Planetenraddifferenzial die Abtriebsmomente zu den angetriebenen Radern des Kraftfahrzeuges verlagerbar sind, um fahrdynamische Vorteile zu erzielen. So kann beispielsweise bei definierten Haftungsbedingungen von den Radern des Kraftfahrzeuges zur Fahrbahn am kurvenausseren Rad mehr Antriebsmoment ubertragen werden als am kurveninneren Rad, etc. Gleichzeitig kann die Agilitat des Kraftfahrzeuges beim Durchfahren von Kurven dadurch gunstig beeinflusst werden. Zur Verlagerung des besagten Antriebsmomentes sind beidseitig der Abtriebswellen Uberlagerungsgetriebe vorgesehen, die uber hydraulisch betatigte Lamellenkupplungen als Einrichtung zur Drehmomentverlagerung alternativ Drehmoment von der einen zur anderen Abtriebswelle verlagern. Die Lamellenkupplungen bedingen aber definierte, latente Leistungsverluste im Antriebssystem.」
(例えば米国特許公開第5910064号明細書は、このような駆動装置を示しており、この明細書においては走行動特性面での様々な利点を得るためにベベルギヤ式ディファレンシャル、またはプラネタリーギヤ式ディファレンシャルから始まって出力トルクを自動車の駆動輪へと移動させることが出来る。こうして例えば自動車ホィールから車道への定められた密着条件下でカーブの内側にあるホィールよりもカーブの外側にあるホィールの方により多くの駆動トルクを伝達することができる。同時にこれによってカーブを通過する際に自動車のドライバビリティに好適な影響を及ぼすことが出来る。上述した駆動トルクを移動させるためにアウトプットシャフトの両側にプラネタリーギヤが設けられており、当該プラネタリーギヤは、トルクを移動させるための装置としての油圧作動式多板クラッチを介して選択的にトルクを一方のアウトプットシャフトから他方のアウトプットシャフトへと移動させることが出来る。しかしこの多板クラッチは、駆動システムにおいて一定の潜在的出力損失を引き起こす原因となる。)

イ 「[0003] Aufgabe der Erfindung ist es, eine Antriebsvorrichtung der gattungsgemassen Art vorzuschlagen, die eine Drehmomentverlagerung effektiver und mit mehr konstruktiven Freiheitsgraden ermoglicht und die gegebenenfalls weitere vorteilhafte Antriebsbeeinflussungen zulasst.」
(本発明の課題は、より効率的に、且つより多くの構造的自由度を伴ってトルク移動を可能にし、しかも場合によっては駆動にさらに有利な影響を及ぼすところの上述した種類の駆動装置を提唱することである。)

ウ 「[0005] Erfindungsgemass wird vorgeschlagen, dass die Einrichtung zur Drehmomentverlagerung von der einen Abtriebswelle zur anderen durch zumindest eine als Elektromotor und als Generator schaltbare Elektromaschine gebildet ist. Damit werden die durch Kupplungen bewirkten Verlustleistungen vermieden und noch schnellere, fahrdynamisch gunstige Eingriffe bzw. Drehmomentverlagerungen im Antriebssystem ermoglicht. Durch Beschleunigen oder Abbremsen der Elektromaschine wird das Drehmoment von der einen Abtriebswelle auf die andere Abtriebswelle effektiv verlagert und damit an die fahrdynamischen Gegebenheiten angepasst.」
(本発明によれば一方のアウトプットシャフトから他方のアウトプットシャフトへとトルクを移動させるための装置は、電気モータとして、およびジェネレータとして接続可能な少なくとも1台の電気機械として形成されている。このためクラッチによって引き起こされる損失出力が回避され、そして駆動システムにおいてより迅速な、走行動特性的に好ましい介入、もしくはトルク移動が可能となる。電気機械を加速、または減速させることによってトルクは、一方のアウトプットシャフトから他方のアウトプットシャフトへと効率的に移動させられ、それによって走行動特性面での所与条件に適合される。)

エ 「[0021]Fig. 3 eine weitere Antriebsvorrichtung gemass Fig. 1, bei der die zwei Elektromaschinen einseitig auf einer Abtriebswelle positioniert sind;」
(図3は、図1によるさらなる駆動装置を示し、2つの電気機械が出力軸上の一方の側に配置されている。)

オ 「[0024] Die als Blockschaltbild dargestellte Antriebsvorrichtung gemass Fig. 1 weist ein als Doppelplanetensatz ausgefuhrtes Differenzial 10 auf, das uber einen Kegelradtrieb auf einer Eingangswelle 12 und einem Tellerrad 14 angetrieben ist und das auf zwei Abtriebswellen 16, 18 abtreibt.」
(ブロック線図として示されている図1による駆動装置は、ダブルピニオン式プラネタリーギヤとして製造されているディファレンシャル10を有し、当該ディファレンシャルは、インプットシャフト12にあるベベルギヤ駆動部とクラウンギヤ14とを介して駆動されており、そして2つのアウトプットシャフト16、18に出力を供給する。)

カ [0025] Das Differenzial 10 ist ein Hinterachsdifferenzial eines Kraftfahrzeuges, das uber eine Kardanwelle 20 angetrieben ist. Die Kardanwelle 20 ist in bekannter Weise mit dem nicht dargestellten Antriebsaggregat des Kraftfahrzeuges, z. B. einer Brennkraftmaschine und einem Geschwindigkeits-Wechselgetriebe, verbunden. Die Abtriebswellen 16, 18 sind uber nicht dargestellte Gelenkwellen mit den angetriebenen Hinterradern des Kraftfahrzeuges trieblich verbunden.
(ディファレンシャル10は、プロペラシャフト20を介して駆動されている自動車のリヤアクスルディファレンシャルである。プロペラシャフト20は、公知の方法で自動車の図示されていない駆動ユニットと、例えば内燃エンジンおよびトランスミッションと接続されている。アウトプットシャフト16、18は、図示されていないカルダンシャフトを介して自動車の駆動されているリヤホイールと駆動接続されている。)

キ 「[0033] Die Elektromaschine 50 kann gegebenenfalls uber eine gemeinsame elektronische Steuerung mit der Elektromaschine 34 als Elektromotor geschaltet beim Beschleunigen des Kraftfahrzeuges zusatzliche Antriebsleistung bereitstellen; ferner kann die Elektromaschine 50 als Generator geschaltet im Rekuperationsbetrieb Strom erzeugen. Der Strom kann gegebenenfalls zur Versorgung der ersten Elektromaschine 34 mit Antriebs- oder Bremsenergie eingesetzt werden.」
(電気機械50は、場合によっては自動車の加速時に追加の駆動出力を提供するために共通の電子制御装置を介して電気モータとしての電気機械34に接続することが出来る。さらに電気機械50は、ジェネレータとして接続すると回生運転で電流を発生することが出来る。この電流は、場合によっては第1の電気機械34に駆動エネルギ、または制動エネルギを供給するのに使用することが出来る。)

ク 「[0038] Durch gegensinnige oder einseitige Ansteuerung der Elektromaschinen 34, 70 kann wiederum eine Abtriebsmomentenverlagerung gesteuert werden, wobei die linke Elektromaschine 70 uber den Planetenradtrager 60 direkt auf die Abtriebswelle 16 und die rechte Elektromaschine 34 uber den Planetenradtrager 38' direkt auf die Abtriebswelle 18 das Abtriebsmoment verstarkend einwirkt.」
(電気機械34、70を互いに逆方向に制御する、または一方の電気機械だけを制御することによってまたしても駆動トルクの移動を制御することが出来る。その際に左の電気機械70は、プラネタリーキャリア60を介してアウトプットシャフト16に直接、そして右の電気機械34は、プラネタリーキャリア38′を介してアウトプットシャフト18に直接、出力トルクをそれぞれ増幅させて作用させる。)

ケ 「[0039] Durch gleichsinnige Ansteuerung der beiden Elektromaschinen 34, 70 kann ferner wie uber die Elektromaschine 50 gemass Fig. 1 zusatzliches Abtriebsmoment uberlagert oder Rekuperationsbetrieb gesteuert werden. Die beiden Elektromaschinen 34, 70 wirken dann als Elektromotor geschaltet zusatzlich antreibend oder als Generator geschaltet Strom erzeugend bzw. bremsend. Die Vorgelegewelle 74 mit den Zahnradsatzen 76, 78, 80, 82 gleichen Ubersetzungsverhaltnisses stellt dabei einen Gleichlauf der Uberlagerungsgetriebe 32, 56 sicher.」
(さらに双方の電気機械34、70を同方向制御することによって図1による電気機械50の場合と同様に追加の出力トルクを重合わせることが出来る、または回生運転を制御することが出来る。その場合に双方の電気機械34、70は、電気モータとして接続させると駆動力を追加的に及ぼす、またはジェネレータとして接続させると電流を発生する、もしくは制動力を及ぼす。ギヤセット76、78、80、82を有する中間シャフト74は、変速比を同一にし、そしてそのおりにプラネタリーギヤ32、56の同期運転を保証する。)

コ 「[0040] In der Fig. 3 ist eine ebenfalls abgewandelte Antriebsvorrichtung dargestellt, die wiederum nur soweit beschrieben ist, als sie sich wesentlich von der Fig. 1 und der Fig. 2 unterscheidet. Gleiche Teile sind mit gleichen Bezugszeichen versehen.」
(図3において同じく一部変更をした駆動装置が示されており、この駆動装置は、またしても図1及び図2の駆動装置と本質的に異なっている点を記述するだけにとどめておく。同じ部品には同じ参照符号が付けられている。)

サ 「[0041] Gemass der Fig. 3 sind die beiden Elektromaschinen 34, 70 einseitig auf der Abtriebswelle 18 angeordnet und wirken auf die ebenfalls einander benachbarten und miteinander gekoppelten Uberlagerungsgetriebe 32', 84 .」
(図3によれば双方の電気機械34、70は、アウトプットシャフト18の片側に配置されており、そして同じく互いに隣接し合い、且つ互いに接続されているプラネタリーギヤ32′、84に作用を及ぼす。)

シ 「[0042] Das Uberlagerungsgetriebe 32' ist analog zu den Fig. 1 und Fig. 2 als einfacher Planetenradsatz ausgebildet, dessen Sonnenrad 36 uber eine erste Hohlwelle 44 mit dem Rotor 46 der Elektromaschine 34 trieblich verbunden ist. Der Planetenradtrager 38'' mit dem Planetenradern 40 ist mit der Abtriebswelle 18 gekoppelt. Ferner kammen die Planetenrader 40 mit dem innenverzahnten Aussenrad 22' des Einfachplanetensatzes 32' bzw. dem Planetenradtrager 30 des entsprechenden Doppelplanetenradsatzes 10 .」
(プラネタリーギヤ32′は、図1及び図2と同様にシングルピニオン式プラネタリーギヤとして形成されており、そのサンギヤ36は、第1の中空シャフト44を介して電気機械34のロータ46と駆動接続されている。ピニオンギヤ40を有するプラネタリーキャリア38″は、アウトプットシャフト18と接続されている。さらにピニオンギヤ40は、シングルピニオン式プラネタリーギヤ32′の内歯切りされたリングギヤ22′と、もしくは然るべきダブルピニオン式プラネタリーギヤ10のプラネタリーキャリア30と噛み合う。)

ス 「[0043] Das weitere, benachbarte Uberlagerungsgetriebe 84 ist ein weiterer Doppelplanetenradsatz, der wie folgt getriebetechnisch verknupft ist: Das Sonnenrad 86 ist uber eine weitere Hohlwelle 88 mit dem Rotor 68 der zweiten Elektromaschine 70 trieblich verbunden. Der Planetenradtrager 90 ist mit dem Planetenradtrager 38'' des Uberlagerungsgetriebes 32' gekoppelt und tragt radial aussere Planetenrader 92 und radial innere Planetenrader 94, die auf dem Planetenradtrager 90 entsprechend drehbar gelagert und miteinander in Eingriff sind. Die ausseren Planetenrader 92 kammen zudem ebenfalls mit dem gemeinsamen Aussenrad 22' des Einfachplanetensatzes 32', wahrend die Planetenrader 94 mit dem besagten Sonnenrad 86 in Eingriff sind.」
(別の隣接しているプラネタリーギヤ84は、別のダブルピニオン式プラネタリーギヤであり、これは、以下のように動力伝達技術的に結合されている。サンギヤ86は、別の中空シャフト88を介して第2の電気機械70のロータ68と駆動接続されている。プラネタリーキャリア90は、プラネタリーギヤ32′のプラネタリーキャリア38″と接続されており、そしてラジアル方向において外側のピニオンギヤ92及びラジアル方向において内側のピニオンギヤ94を支持しており、これらのピニオンギヤは、プラネタリーキャリア90に然るべく回転可能なように取り付けられており、そして互いに噛み合っている。加えて外側のピニオンギヤ92は、同じくシングルピニオン式プラネタリーギヤ32′の共通のリングギヤ22′と噛み合っている一方、ピニオンギヤ94は、上述したサンギヤ86と噛み合っている。)

セ 「[0044] Die grundsatzliche Funktion der Elektromaschinen 34, 70 und der Uberlagerungsgetriebe 32', 84 ist vergleichbar zur Funktion der Antriebsvorrichtung gemass Fig. 2. Die Elektromaschinen 34, 70 konnen somit sowohl zur Abtriebsmomentenverlagerung als auch als zusatzliche Antriebsquelle und im Rekuperationsbetrieb bei gleichsinniger Ansteuerung eingesetzt werden.」
(電気機械34、70及びプラネタリーギヤ32′、84の基本的機能は、図2による駆動装置の機能と同等である。このため電気機械34、70は、駆動トルクを移動させるのに、また追加の駆動源としても使用出来、そしてこれらを同方向制御すると回生運転で使用出来る。)

ソ 「Patentanspruche
1.Antriebsvorrichtung fur Kraftfahrzeuge mit einem Antriebsaggregat, das uber ein Differenzialgetriebe auf zwei Abtriebswellen wirkt, wobei an den Abtriebswellen unter Zwischenschaltung zumindest eines Uberlagerungsgetriebes eine Einrichtung vorgesehen ist, mittels der Abtriebsmoment von der einen Abtriebswelle zur anderen Abtriebswelle verlagerbar ist, dadurch gekennzeichnet, dass die Einrichtung durch zumindest eine als Elektromotor und als Generator schaltbare Elektromaschine ( 34 ; 70 ; 130 ) gebildet ist.」
(特許請求の範囲
1.ディファレンシャルギヤを介して2本のアウトプットシャフト16、18に作用する駆動ユニットを有する自動車用駆動装置であって、前記アウトプットシャフトには少なくとも1台のプラネタリーギヤを中間配置した上で出力トルクを一方のアウトプットシャフトから他方のアウトプットシャフトへと移動させることの出来る装置が設けられているところの駆動装置において、
前記装置は、電気モータとして、及びジェネレータとして接続可能な少なくとも1台ので電気機械(34;70;130)として形成されていることを特徴とする駆動装置。)

タ 「8.Antriebsvorrichtung nach einem oder mehreren der vorhergehenden Anspruche, dadurch gekennzeichnet, dass die beiden Elektromaschinen 34 , 70 ) auf der einen Abtriebswelle ( 18 ) angeordnet sind und mittels ineinander verschachtelter Planetenradsatze ( 32' , 84 ) mit den beiden Abtriebswellen ( 16 , 18 ) trieblich verbunden sind (Fig. 3).」
(8.前記双方の電気機械(34、70)は、一方のアウトプットシャフト(18)に配置されており、そして互いに組み入れたプラネタリーギヤ(32’、84)を用いて双方のアウトプットシャフト(16、18)と駆動接続されていることを特徴とする、先行する諸請求項のいずれか1項、または複数項に記載の駆動装置(図3)。)

チ 「9.Antriebsvorrichtung nach Anspruch 8, dadurch gekennzeichnet, dass die eine Elektromaschine ( 34 ) auf das Sonnenrad ( 36 ) eines einfachen Planetenradsatzes als das eine Uberlagerungsgetriebe ( 32' ) wirkt, dessen Planetenradtrager ( 38" ) mit der einen Abtriebswelle ( 18 ) verbunden ist, dass die zweite Elektromaschine ( 70 ) auf das Sonnenrad ( 86 ) eines Doppelplanetenradsatzes als zweites Uberlagerungsgetriebe ( 84 ) wirkt, dessen Planetenradtrager ( 90 ) mit dem Planetenradtrager ( 38' ) des ersten Planetenradsatzes ( 32' ) gekoppelt ist und dass die beiden, gemeinsamen Aussenrader ( 22' ) der Planetenradsatze ( 32' , 84 ) mit dem Planetenradtrager ( 30 ) des als Doppelplanetenradsatz ausgebildeten Differenziales ( 10 ) trieblich verbunden sind (Fig. 3).」
(9.一方の電気機械(34)は、一方のプラネタリーギヤ(32’)としてシングルピニオン式プラネタリーギヤのサンギヤ(36)に作用を及ぼし、そのプラネタリーキャリア(38”)は、一方のアウトプットシャフト(18)に接続されていることと、第2電気機械(70)は、第2のプラネタリーギヤ(84)としてのダブルピニオン式プラネタリーギヤ(86)に作用を及ぼし、そのプラネタリーキャリア(90)は、第1のプラネタリーギヤ(32’)のプラネタリーキャリア(38’)と接続されていることと、プラネタリーギヤ(32’、84)の双方の共通のリングギヤ(22’)は、ダブルピニオン式プラネタリーギヤとして形成されているディファレンシャル(10)のプラネタリーキャリア(30)と駆動接続されていることとを特徴とする、請求項8に記載の駆動装置(図3)。)

上記記載事項及び図面(特に図3を参照。)の図示内容からみて、甲2には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。

〔甲2発明〕
「ディファレンシャルギヤを介して2本のアウトプットシャフト16、18に作用する駆動ユニットを有する自動車用駆動装置であって、前記アウトプットシャフトには少なくとも1台のプラネタリーギヤを中間配置した上で出力トルクを一方のアウトプットシャフトから他方のアウトプットシャフトへと移動させることのできる装置が設けられている駆動装置において、
前記装置は、
電気機械34と、
電気機械70と、
電気機械34と駆動接続されているサンギヤ36と、ピニオンギヤ40を有しアウトプットシャフト18と接続されているプラネタリーキャリア38”と、ピニオンギヤ40が共通のリングギヤ22’と噛み合うプラネタリーギヤ32’と、
電気機械70と駆動接続されているサンギヤ86と、プラネタリーギヤ32’のプラネタリーキャリア38”と接続され、外側のピニオンギヤ92及び内側のピニオンギヤ94を支持するプラネタリーキャリア90と、外側のピニオンギヤ92が共通のリングギヤ22’と噛み合い、内側のピニオンギヤ94がサンギヤ86と噛み合うプラネタリーギヤ84と、
を備え、
共通のリングギヤ22’が、ディファレンシャル10のプラネタリーキャリアと駆動接続され、ディファレンシャル10のプラネタリーキャリアはアウトプットシャフト16に接続されており、
電気機械34及び電気機械70は、駆動トルクを移動させるのに、また追加の駆動源として使用でき、そして、同方向制御すると回生運転で使用できる、
駆動装置。」

(3)甲第3号証
甲第3号証(以下、「甲3」という。)には、以下の記載がある。

ア 「【0009】
次に、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る車両のシステム構成を説明する図である。
この図1に示すように、本実施形態の車両は、左右前輪1L、1Rが、内燃機関であるエンジン2によって駆動されると共に、左右後輪3L、3Rが、それぞれ個別の駆動モータ4RL、4RRによって個々に駆動可能となっている。すなわち、左右の後輪3L、3Rは、それぞれ個別の駆動モータ4RL、4RRによって独立して駆動されるようになっている。」

イ 「【0050】
また、上記実施形態では、発電機7の発電した電圧で駆動モータ4RL、4RRを駆動して4輪駆動を構成する場合で説明しているが、これに限定されない。2台の駆動モータ4RL、4RRヘ電力供給できる共通のバッテリを備えるシステムに採用しても良い。この場合には、バッテリから電力を供給するようにすればよいし、さらにはバッテリからの供給と共に発電機7からの電力供給も併行して行うようにしてもよい。」

上記記載事項から、甲3には次の事項(以下、「甲3記載事項」という。)が記載されている。

〔甲3記載事項〕
「車両の駆動モータ4RL、4RRへ、バッテリから電力を供給すること。」

(4)甲第4号証
甲第4号証(以下、「甲4」という。)には、以下の記載がある。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、車両の左右の車輪を電動モータにより駆動する装置に関する。」

イ 「【0011】
左右輪駆動装置20には、図1に示すようにアウターロータ9L,9R相互が背中合わせに直結された一対の相反モータ41R,41L(この出願の発明における第1モータ及び第2モータ)が備えられている。」

ウ 「【0012】
相反モータ41R,41Lは、車体に固定されたケース25に収容され、インナーロータ8L,8Rおよびアウターロータ9L,9Rがそれぞれベアリング(不図示)を介してケース25に回転自在に支持されるとともに、インナーロータ8L,8Rの各先端部に、左右の各後輪1L,1Rに連係された前記減速歯車6L,6Rが取付けられている。…」

エ 「【0014】
アウターロータ9L,9Rのロータ軸にはスリップリング(不図示、それぞれ3本ずつ)が配置されており、本スリップリングを通じて駆動回路10L,10Rとアウターロータ9L,9Rのコイル間での電力の送受が可能となっている。また、駆動回路10L、10Rはバッテリ13と電気的に接続されており、バッテリ13の電力を用いて相反モータ41R,41Lにトルクを発生させることも、相反モータ41R,41Lでトルクを吸収することにより発生する回生電力をバッテリ13に蓄電することも可能である。相反モータ41R,41Lに発生(吸収も含む)させるトルクの指令値は後述するコントローラ14(制御手段)にて演算され、その演算値を受け駆動回路10L,10Rは、相反モータ41R,41Lのトルクがそれぞれの指令値に一致するように相反モータ41R,41Lへの電流を制御する。このような実施形態により、コントローラ14にて演算するトルク指令値通りに、相反モータ41R,41Lのトルクをそれぞれ独立に調整することができる。」

上記記載事項及び図面(特に、図1及び2)の図示内容から、甲4には次の事項(以下、「甲4載事項」という。)が記載されている。

〔甲4記載事項〕
「車両の左右輪駆動装置20には、アウターロータ9L,9R相互が背中合わせに直結された一対の相反モータ41R,41Lが備えられ、駆動回路10L、10Rはバッテリ13と電気的に接続されており、バッテリ13の電力を用いて相反モータ41R,41Lにトルクを発生させることも、相反モータ41R,41Lでトルクを吸収することにより発生する回生電力をバッテリ13に蓄電することも可能である装置。」

(5)甲第5号証
甲第5号証(以下、「甲5」という。)には、次の記載がある。

ア 「【0010】
図1は本発明に係る四輪駆動ハイブリッド車両の概略構成を示している。エンジン1のクランクシャフトは、変速機2、デファレンシャルユニット3を介して左右の前輪10R、10L(エンジン駆動輪)に接続されており、エンジン1の駆動力を前輪10R、10Lに伝達することができる。一方、エンジン1と後輪11R、11L(エンジン非駆動輪)の間には機械的な接続はなく、エンジン1の駆動力を直接後輪11R、11Lに伝達することはできない。
【0011】
前輪10R、10L、後輪11R、11Lには、それぞれモータ15R、15L、16R、16Lが接続されており、バッテリ、キャパシタ等の蓄電装置18から電力供給を受けて力行動作することで、前輪10R、10L、後輪11R、11Lをそれぞれ独立して駆動することができる。」
【0012】
モータ15R、15L、16R、16Lはジェネレータとして機能することもでき、ジェネレータとして機能させれば車両の運動エネルギーを回生し、その回生電力で蓄電装置18を充電することができる。なお、各モータの間には、蓄電装置18を介さず各モータの間で電力の受け渡しを直接行えるようバイパス回路19が設けられており、このバイパス回路19を利用すれば、モータ15R、15L、16R、16Lの回生電力を、蓄電装置18を介すことなく他のモータに直接供給することができ、蓄電装置18における電力の入出力に伴う損失を無くすことができる。」

ウ 「【0020】
ステップS14では、右前輪10Rに接続するモータ15Rで回生した電力を、バイパス回路19を介して右前輪10Rと左右同じ側にある右後輪11Rに接続するモータ16Rに供給し、モータ16Rを力行動作させて右後輪11Rを駆動する。これにより、モータ15R、16Rで生じる損失を無視すれば、本来、エンジン1から右前輪10Rに伝達される予定であった駆動力と同じ大きさの駆動力をモータ16Rで発生させることができ、車両に作用する総駆動力を駆動力配分制御の前後で一定に保つことができる。さらに、車両右側に作用する駆動力は駆動力配分制御の前後で変化がなく、車両左側に作用する駆動力に等しくなるので、駆動力の左右の偏りを抑えることもできる。」

エ 「【0027】
また、上記駆動力配分制御においては、モータ間の電力の受け渡しはバイパス回路19を介して直接的に行われ、蓄電装置18の入出力を伴わないので、蓄電装置18における入出力電力による損失を無くし、かつ、蓄電装置18の入出力可能電力が低く、スリップを起こしやすい低温時においても駆動力配分制御を実行することが可能となる。また、蓄電装置18から電力が持ち出されることがないので、蓄電装置18の蓄電量が少なくても蓄電装置18が過放電することはない。」

上記記載事項及び図面(特に図1)の図示内容から、甲5には、次の事項(以下、「甲5記載事項」という。)が記載されている。

〔甲5記載事項〕
「四輪駆動ハイブリッド車両の前輪10R、10L、後輪11R、11Lには、それぞれモータ15R、15L、16R、16Lが接続されており、バッテリ、キャパシタ等の蓄電装置18から電力供給を受けて力行動作することで、前輪10R、10L、後輪11R、11Lをそれぞれ独立して駆動することができるとともに、モータ15R、15L、16R、16Lはジェネレータとして機能することもでき、ジェネレータとして機能させれば車両の運動エネルギーを回生し、その回生電力で蓄電装置18を充電することができ、また、各モータの間には、蓄電装置18を介さず各モータの間で電力の受け渡しを直接行えるようバイパス回路19が設けられており、このバイパス回路19を利用すれば、モータ15R、15L、16R、16Lの回生電力を、蓄電装置18を介すことなく他のモータに直接供給することができること。」

(6)甲第6号証
甲第6号証(以下、「甲6」という。)には、以下の記載がある。

ア 「【0010】
前記CPU101は、強電バッテリ301をモニタし、SOCや温度や劣化状態に応じて入出力可能電力量を算出し、これを基にFR用インバータ302を制御することにより、第一モータ303(フロント駆動用)と発電機304を動作させると共に、エンジン305を制御する。また、RR用インバータ307を制御することにより、第二モータ308(右リア駆動用)と第三モータ309(左リア駆動用)を動作させ、ニュートラルステアを実現する左右後輪のトルク配分制御を行う。…」

イ 「【0012】
前記強電バッテリ301は、第一モータ303に対しFR用インバータ302を経由して電力を供給することで車両走行をアシストすると共に、第一モータ303が回生作動して発電した電力や発電機304が発電した電力を、FR用インバータ302を経由して回収する役目を有する。また、第二モータ308と第三モータ309を力行させる場合、RR用インバータ307を経由して電力を供給することで車両走行をアシストすると共に、第二モータ308と第三モータ309が発電作動した場合、RR用インバータ307を経由して電力を回収する役目も有する。」

上記記載事項からみて、甲6には次の事項(以下、「甲6記載事項」という。)が記載されている。

〔甲6記載事項〕
「車両において、強電バッテリ301は、第一モータ303に対しFR用インバータ302を経由して電力を供給することで車両走行をアシストすると共に、第一モータ303が回生作動して発電した電力や発電機304が発電した電力を、FR用インバータ302を経由して回収する役目を有し、また、第二モータ308と第三モータ309を力行させる場合、RR用インバータ307を経由して電力を供給することで車両走行をアシストすると共に、第二モータ308と第三モータ309が発電作動した場合、RR用インバータ307を経由して電力を回収する役目も有すること。」

(7)甲第7号証
甲第7号証(以下、「甲7」という。)には、次に記載がある。

ア 「【0033】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1による車両用差動装置が搭載された車両の全体構成図である。図1を参照して、この車両100は、エンジン12と、変速機14と、プロペラシャフト16と、ディファレンシャルギア(Differential Gear、以下「DG」と称する。)18と、ドライブシャフト20,22と、モータジェネレータMG1,MG2と、差動制御装置24と、前輪26R,26Lと、後輪28R,28Lとを備える。
【0034】
エンジン12は、たとえば車両前方のエンジンルームに搭載され、この車両100の動力を発生し、その発生した動力を変速機14へ出力する。変速機14は、エンジン12から出力されるトルクの増大や回転速度の増加を行なう。プロペラシャフト16は、変速機14とDG18との間に設けられ、変速機14からの駆動力を車両後方に設けられるDG18に伝達する。
【0035】
DG18は、プロペラシャフト16から受ける駆動力をドライブシャフト20,22に伝達する。また、DG18は、車両100の旋回時に内周側の車輪と外周側の車輪との間に回転差を発生させる。さらに、DG18は、減速機として機能し、プロペラシャフト16から受けるトルクを増加させてドライブシャフト20,22に伝達する。ドライブシャフト20は、DG18と右の後輪28Rとの間に設けられ、DG18から受ける駆動力を後輪28Rへ伝達する。ドライブシャフト22は、DG18と左の後輪28Lとの間に設けられ、DG18から受ける駆動力を後輪28Lへ伝達する。
【0036】
モータジェネレータMG1,MG2は、たとえば、3相交流同期電動機からなる。モータジェネレータMG1は、ドライブシャフト20に連結され、ドライブシャフト20の回転力を用いて交流電圧を発生し、その発生した交流電圧を差動制御装置24へ出力する。また、モータジェネレータMG1は、差動制御装置24から受ける交流電圧によって駆動トルクを発生し、その発生した駆動トルクをドライブシャフト20に付与する。モータジェネレータMG2は、ドライブシャフト22に連結され、差動制御装置24から受ける交流電圧によって駆動トルクを発生し、その発生した駆動トルクをドライブシャフト22に付与する。また、モータジェネレータMG2は、差動制御装置24から受ける交流電圧によって回生駆動され、発生した回生電圧を差動制御装置24へ出力する。」

イ 「【0040】
差動制御装置24は、モータジェネレータMG1,MG2に接続され、車両100の旋回時、モータジェネレータMG1,MG2間で電力のやり取りを行なう。差動制御装置24は、モータジェネレータMG1が発生した逆起電力を受け、車両100の旋回時、その旋回方向に応じてモータジェネレータMG2を力行駆動または回生駆動する。これにより、差動制御装置24は、車両100の旋回時、モータジェネレータMG1,MG2間に旋回方向に応じた電力フローを発生させ、ドライブシャフト20,22間すなわち後輪28R,28L間の駆動力の配分を制御する。なお、この差動制御装置24の具体的な動作については、後ほど詳しく説明する。」

ウ 「【0044】
このマトリックスコンバータ50は、モータジェネレータMG1,MG2間で相互に電力変換を行なう。具体的には、マトリックスコンバータ50は、制御装置52からの制御信号に基づいてスイッチング動作を行ない、モータジェネレータMG1から受ける3相交流電力を所望の電圧および周波数からなる3相交流電力に変換し、その変換した3相交流電力をモータジェネレータMG2へ出力してモータジェネレータMG2を力行駆動する。」

上記記載事項から、甲7には次の事項(以下、「甲7記載事項」という。)が記載されている。

〔甲7記載事項〕
「車両用差動装置の差動制御装置24は、モータジェネレータMG1,MG2に接続され、車両100の旋回時、モータジェネレータMG1,MG2間で電力のやり取りを行ない、モータジェネレータMG1が発生した逆起電力を受け、その旋回方向に応じてモータジェネレータMG2を力行駆動または回生駆動することにより、モータジェネレータMG1,MG2間に旋回方向に応じた電力フローを発生させ、後輪28R,28L間の駆動力の配分を制御すること。」

(8)甲第9号証
甲第9号証(以下、「甲9」という。)には次の記載がある。

ア 「【0025】
つぎに、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。まず、この発明を適用できるハイブリッド車のドライブトレーン、およびそのハイブリッド車の制御系統の一例を、図1に示す。図1に示す車両(ハイブリッド車)Veは、エンジン1および第1のモータ・ジェネレータMG1、第2のモータ・ジェネレータMG2、第3のモータ・ジェネレータMG3を有している。具体的には、車両Veの動力源としてのエンジン1および第2のモータ・ジェネレータMG2と、車輪としての前輪2とが動力伝達可能に連結されているとともに、車両Veにおける他の動力源として第3のモータ・ジェネレータMG3が設けられており、第3のモータ・ジェネレータMG3と、他の車輪としての後輪3とが動力伝達可能に連結されている。
【0026】
前記エンジン1は、燃料を燃焼させて生じた熱エネルギを運動エネルギに変換して出力する動力装置であり、エンジン1は燃料噴射装置、吸排気装置などを有する公知の構造のものである。このエンジン1としては、内燃機関、例えば、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジン、メタノールエンジン、水素エンジンなどを用いることが可能であり、吸気系統に電子スロットルバルブが設けられている。エンジン1および第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2は同軸上に配置されており、エンジン1と第2のモータ・ジェネレータMG2との間に第1のモータ・ジェネレータMG1が配置されている。
【0027】
また、エンジン1から前輪2に至るドライブトレーンの構成を説明すると、エンジン1のクランクシャフト(図示せず)にはインプットシャフト4が動力伝達可能に連結されているとともに、インプットシャフト4と前輪2との間の動力伝達経路には動力分配装置5が設けられている。この動力分配装置5は、第1の遊星歯車装置6と第2の遊星歯車装置7とを有している。まず、第1の遊星歯車装置6は、サンギヤ8と、サンギヤ8と同心状に配置されたリングギヤ9と、サンギヤ8およびリングギヤ9に噛合されたピニオンギヤ10を公転可能に支持したキャリヤ11とを、3個の回転要素として備えたシングルピニオン形式の遊星歯車装置である。3個の回転要素のうち、サンギヤ8と第1のモータ・ジェネレータMG1のロータとが動力伝達可能に連結され、キャリヤ11とインプットシャフト4とが一体回転するように連結され、リングギヤ9とコネクティングドラム12とが一体回転する構成となっている。
【0028】
一方、第2の遊星歯車装置7は、サンギヤ13と、サンギヤ13と同心状に配置されたリングギヤ14と、サンギヤ13に噛合されたピニオンギヤ15と、リングギヤ14およびピニオンギヤ15に噛合されたピニオンギヤ16と、ピニオンギヤ15,16を公転可能に支持したキャリヤ11とを、3個の回転要素として備えたダブルピニオン形式の遊星歯車装置である。3個の回転要素のうち、サンギヤ13と第2のモータ・ジェネレータMG2のロータとが動力伝達可能に連結され、リングギヤ14とコネクティングドラム12とが一体回転する構成となっている。そして、キャリヤ11は、第1の遊星歯車装置6および第2の遊星歯車装置7において共用化されている。」

イ 「【0031】
前記第1のモータ・ジェネレータMG1にはインバータ24が接続され、第2のモータ・ジェネレータMG2にはインバータ25が接続され、第3のモータ・ジェネレータMG3にはインバータ26が接続され、インバータ24,25,26には、蓄電装置としての二次電池27が接続されている。二次電池27としては、バッテリまたはキャパシタを用いることが可能である。第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2および第3のモータ・ジェネレータMG3は、いずれも電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを有している。
【0032】
この実施例においては、運動エネルギを電気エネルギに変換して二次電池27に充電する制御を、回生制御または発電制御と称しており、略同義として使用している。このように、二次電池27と、第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2および第3のモータ・ジェネレータMG3との間で、インバータ24,25,26を経由して相互に電力の授受をおこなうことが可能に構成されている。また、第1のモータ・ジェネレータMG1と第2のモータ・ジェネレータMG2と第3のモータ・ジェネレータMG3との間で、二次電池27を経由することなく、電力の授受をおこなうことも可能となるように、電線が取り廻されている。このように、第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2および第3のモータ・ジェネレータMG3およびインバータ24,25,26および二次電池27および電線を含む構成により、電気回路M1が形成されている。」

ウ 「【0040】
このように、エンジントルクの反力をいずれのモータ・ジェネレータで受け持つかに関して、複数の制御モードのいずれかを選択する場合に、電気回路M1における電力流通量が可及的に低減されるような制御モードを選択可能である。各制御モードにおいては、反力トルクをいずれのモータ・ジェネレータで受け持つかという事項の他に、反力トルクを受け持つモータ・ジェネレータを力行または回生のいずれで制御するかいう事項、反力トルクを受け持つモータ・ジェネレータを回生制御する場合に、その電力を二次電池27に蓄電するか、またはモータ・ジェネレータの回生制御により発生した電力を、二次電池27を経由させずに第3のモータ・ジェネレータMG3に供給するかという事項などが含まれている。」

エ 「【0056】
まず、エンジントルクの反力を第2のモータ・ジェネレータMG2で受け持つ制御が実行される。ここで、第2のモータ・ジェネレータMG2は逆回転し、かつ、回生制御が実行される。さらに、第2のモータ・ジェネレータMG2で発生した電力を、二次電池27を経由せずに直接第3のモータ・ジェネレータMG3に供給することにより、第3のモータ・ジェネレータMG3を力行制御して、要求トルクに対するエンジントルクの不足分を、第3のモータ・ジェネレータMG3のトルクで補う制御が実行される。この図3の共線図E1においては、エンジン回転数よりもコネクティングドラム12の回転数の方が低速となっており、エンジントルクが動力分配装置5で増幅される。なお、ステップS2の処理を実行する場合は、第1のモータ・ジェネレータMG1は、力行または回生もされずに空転する。」

上記記載事項及び図面(特に図1)の図示内容から、甲9には次に事項(以下、「甲9記載事項」という。)が記載されている。

〔甲9記載事項〕
「車両Veは、エンジン1および第1のモータ・ジェネレータMG1、第2のモータ・ジェネレータMG2、第3のモータ・ジェネレータMG3を有しており、第1のモータ・ジェネレータMG1、第2のモータ・ジェネレータMG2、第3のモータ・ジェネレータMG3は、第1の遊星歯車装置6および第2の遊星歯車装置7を介して互いに連結されており、第1のモータ・ジェネレータMG1にはインバータ24が接続され、第2のモータ・ジェネレータMG2にはインバータ25が接続され、第3のモータ・ジェネレータMG3にはインバータ26が接続され、インバータ24,25,26には、蓄電装置としての二次電池27が接続され、第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2および第3のモータ・ジェネレータMG3は、いずれも電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを有しており、二次電池27と、第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2および第3のモータ・ジェネレータMG3との間で、インバータ24,25,26を経由して相互に電力の授受をおこなうことが可能に構成されており、また、第1のモータ・ジェネレータMG1と第2のモータ・ジェネレータMG2と第3のモータ・ジェネレータMG3との間で、二次電池27を経由することなく、電力の授受をおこなうことも可能であること。」

(9)甲第15号証
甲第15号証(以下、「甲15」という。)には、次の記載がある。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンジンで前輪を駆動する前輪駆動車両の左右の後輪間に設ける旋回アシスト装置に関する。」

イ 「【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決すべく、本発明は、エンジンで前輪を駆動する前輪駆動車両の左右の後輪間に設ける旋回アシスト装置であって、車両の旋回時に、電動モータの出力トルクを旋回外輪側の後輪に増速方向のトルク、旋回内輪側の後輪に減速方向のトルクとして伝達して、左右の後輪により旋回方向のヨーモーメントを発生させるものにおいて、ステアリングの操舵角と車速とから目標ヨーレートを算出する手段と、車両の実際のヨーレートを検出する手段と、前輪の駆動力を検出する手段と、車両の横方向加速度を検出する手段と、目標ヨーレートと実際のヨーレートとを比較し、目標ヨーレートと実際のヨーレートとの偏差が所定値以下になるまでは、該偏差に応じて電動モータの出力トルクをフィードバック制御し、該偏差が所定値以下になったときは、前輪の駆動トルクと車両の横方向加速度とに基づいて電動モータの出力トルクをオープンループ制御する制御手段と、を備えている。」

ウ 「【0009】
【発明の実施の形態】図1は、エンジン1により変速機2を介して左右の前輪3L,3Rを駆動する前輪駆動車両を示しており、従動輪たる左右の後輪4L,4R間には旋回アシスト装置5が設けられている。
【0010】旋回アシスト装置5は、図2に示す如く、左右1対の電動モータ6L,6Rと、左右1対の差動装置7L,7Rとを備えている。各差動装置7L,7Rは、サンギア7aと、リングギア7bと、該両ギア7a,7bに噛合するプラネタリピニオン7cを担持するキャリア7dとを有する遊星歯車式差動装置で構成されている。そして、各差動装置7L,7Rのサンギア7aに各電動モータ6L,6Rを夫々減速ギア列8L,8Rを介して連結すると共に、各差動装置7L,7Rのキャリア7dを各後輪4L,4Rに連結し、また、両差動装置7L,7Rのリングギア7b,7b同士を連結している。」

エ 「【0012】各電動モータ6L,6Rには、バッテリ9から各モータドライバ10L,10Rを介して給電されるようになっており、各モータドライバ10L,10Rを車載コンピュータから成るコントローラ11により制御して、各電動モータ6L,6Rの正逆転及び出力トルクを制御する。」

上記記載事項及び図面(特に図1及び2)の図示内容から、甲15には次の事項(以下、「甲15記載事項」という。)が記載されている。

〔甲15記載事項〕
「エンジンで前輪を駆動する前輪駆動車両の左右の後輪間に設ける旋回アシスト装置であって、旋回アシスト装置5は、左右1対の電動モータ6L,6Rが、左右1対の差動装置7L,7Rを介して連結されており、各電動モータ6L,6Rには、バッテリ9から各モータドライバ10L,10Rを介して給電されるようになっている旋回アシスト装置。」

(10)甲第16号証
甲第16号証(以下、「甲16」という。)には、次の記載がある。

ア 「【0002】
【従来の技術】従来の車両の走行アシスト装置として、例えば特開平9−79348号公報に開示されたものは、第一、第二、第三の3個の回転要素を有する一対の差動装置をそれぞれ左右の車輪に配置し、両差動装置の第一の回転要素にそれぞれ連結される一対の電動機を設け、両差動装置の第二の回転要素をそれぞれ左右の車輪に連結すると共に両差動装置の第三の回転要素どうしを連結し、第三の回転要素の回転を拘束するブレーキを設けた構造が開示されている。
【0003】車両の運転状態に応じて各電動機とブレーキの作動を制御することにより、発進アシスト制御、左右の車輪間に積極的に回転差を与えて旋回性能を向上する旋回制御、左右の車輪間の回転数差を規制する差動制限制御が行われる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような従来の車両の走行アシスト装置にあっては、各差動装置を左右の車輪にそれぞれ設置し、さらに各差動装置の軸と平行に電動機を設けているため、装置の大型化を招くという問題があった。
【0005】また、車両の発進時や旋回時に、2つの電動機を同期して制御する必要があり、制御系が複雑化するという問題があった。」

イ 「【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明は、左右の車輪を電動機により駆動する車両の走行アシスト装置に適用する。
【0008】そして、第一、第二、第三の回転要素を有する差動装置と、差動装置の第一の回転要素に出力軸が連結される第一の電動機と、差動装置の第二の回転要素に出力軸が連結される第二の電動機とを備え、左右の車輪のうち一方を第二の電動機の出力軸に連結し、左右の車輪のうち他方を第一の電動機の出力軸を貫通する軸を介して差動装置の第三の回転要素に連結するものとした。
【0009】請求項2に記載の車両の走行アシスト装置は、請求項1に記載の発明において、差動装置を環状をしたリングギアと、リングギアの中心に配置されるサンギヤと、サンギアに噛合う内側プラネタリピニオンと、内側プラネタリピニオンおよびリングギアに噛合う外側プラネタリピニオンと、複数組で設けられる両プラネタリピニオンを支持するキャリアとからなるダブルピニオン式遊星歯車で構成するものとした。」

ウ 「【0014】
【発明の作用および効果】請求項1に記載の車両の走行アシスト装置において、車両の発進時や加速時に、第一の電動機を動力源として作動させることにより、第一の電動機の出力は差動装置の第一の回転要素に入力され、第一の回転要素から第二、第三の回転要素を介して左右の車輪に伝達され、前進または後進のアシストが行われる。
【0015】車両の旋回時に、第二の電動機側の車輪が外輪となる場合、第二の電動機を動力源として作動させることにより外輪を増速する一方、第二の電動機側の車輪が内輪となる場合、第二の電動機を発電機として作動させることにより内輪を減速し、車両の旋回性能の向上がはかれる。
【0016】第二の電動機に連結された車輪がスリップし易いぬかるみや低μ路にある場合、第一の電動機を動力源として駆動し、第二の電動機を発電機として作動させることにより、差動装置の第二の電動機と連結された回転要素が反力要素として作用し、第一の電動機からの出力は第二の電動機に連結されていない他方の車輪に伝達される。一方、第二の電動機に連結されていない車輪がぬかるみや低μ路にある場合、第二の電動機を動力源として作動させることにより、第二の電動機側の車輪を直接駆動する。
【0017】車両の減速時に、第一の電動機を発電機として作動させ、減速エネルギを回生することもできる。」

エ 「【0025】図1に示すように、エンジン1により変速機2およびドライブシャフト6L,6Rを介して左右の車輪3L,3Rを駆動する前輪駆動車の例で、左右の後輪4L,4R間に本発明の走行アシスト装置5が設置されている。
【0026】図2に示すように、走行アシスト装置5は、差動装置20と駆動モータ(第一の電動機)とジェネレータ/モータ(第二の電動機)8を備えている。
【0027】差動装置20は、環状をしたリングギア(第一の回転要素)21と、このリングギア21の中心に配置されるサンギヤ(第二の回転要素)22と、このサンギア22に噛合う内側プラネタリピニオン24と、この内側プラネタリピニオン24とリングギア21に噛合う外側プラネタリピニオン25と、複数組で設けられる両プラネタリピニオン24,25を支持するキャリア(第三の回転要素)23とからなるダブルピニオン式遊星歯車で構成されている。」

オ 「【0031】駆動モータ7およびジェネレータ/モータ8の作動は、図示しないコントローラにより各ドライバ回路を介して制御される。コントローラには、車速、前後輪回転数、スロットル開度、シフト位置、バックライト、転舵角、転舵方向を検出する信号が入力される。
【0032】車両の発進時に、コントローラは、シフト位置、バックライト信号から前後進方向を判断し、その方向に駆動モータ7を作動させ、ジェネレータ/モータ8をフリーとする。駆動モータ7の出力は、差動装置20を介して等配されて、サンギヤ22およびキャリア23を介して左右の車輪4L,4Rに伝達される。また、加速時にも、車速、アクセル開度信号から判断して必要な駆動力を駆動モータ7よりアシストすることもできる。このとき、ジェネレータ/モータ8は駆動せず、車輪4Lと一緒に回転する。差動装置20を構成するダブルピニオン式遊星歯車の歯数比λを0.5と設定しているため、前記式(1)より、直進時には駆動モータ7からの出力は左右の車輪4L,4Rに均等に分配され、直進性を高められる。
【0033】車両の旋回時に、コントローラは、車速、転舵角、転舵方向信号から判断して、旋回制御を行う。右旋回時には、ジェネレータ/モータ8を動力源として作動させ、外輪4Lをリングギヤ21の回転数に対してΔNだけ増速させる。このとき、ダブルピニオン式遊星歯車を用いた差動装置20により、内輪4Rは、前記式(1)より、ΔN減速されることになる。その結果、左右の後輪4L,4R間に回転差が生じ、外輪4Lに駆動力、内輪4Rに制動力が加わって、右旋回方向へのヨーモーメントが発生し、右旋回性能が向上する。一方、左旋回時には、ジェネレータ/モータ8を発電機として作動させ、内輪4Lをリングギヤ21の回転数に対してΔNだけ減速させる。このとき、前記式(1)より外輪4Rは、ΔNだけ増速されることになる。よって、同様の作用により、左旋回性能が向上する。
【0034】ジェネレータ/モータ8側の車輪4Lがスリップを起こし易いぬかるみや低μ路にあって、車輪4Lの回転数と車輪4Rの回転数の差が所定値より大きくなったとき、コントローラは駆動モータ7を動力源として作動させ、ジェネレータ/モータ8を発電機として作動させる。これにより、ジェネレータ/モータ8と連結されたサンギヤ6aが反力要素として作用し、駆動モータ7からの出力はキャリア23と連結された車輪4Rに伝達される。一方、ジェネレータ/モータ8と反対側の車輪4Rがぬかるみや低μ路にある場合、コントローラは駆動モータ7を作動させず、ジェネレータ/モータ8を動力源として作動させ、ジェネレータ/モータ8の出力は車輪4Lに直接伝達され、差動制限制御が行われる。」

カ 上記ウ(特に、段落【0014】)及びエ(特に、段落【0025】)から、車両は、少なくとも発進時及び加速時には四輪駆動であるといえる。

キ 上記エ(特に、段落【0025】及び【0026】)及び図1の図示内容から、第一の電動機7及び第二の電動機8は、エンジン1から独立しているといえる。

ク 上記ウ及びエから、走行アシスト装置5は、車両を直進・旋回可能に推進するためであって、車両の左右に配置された左右の後輪4L,4Rを駆動するものといえる。

上記記載事項及び認定事項並びに図面(特に図1、2及び4)の図示内容から、甲16には次の発明(以下、「甲16発明」という。)及び事項(以下、「甲16記載事項」という。)が記載されている。

〔甲16発明〕
「少なくとも発進時及び加速時には四輪駆動の車両であり、
エンジン1から独立した第一の電動機7及び第二の電動機8を有する走行アシスト装置5であって、
車両を直進・旋回可能に推進するためであって、車両の左右に配置された左右の後輪4L,4Rを駆動する走行アシスト装置5であって、
第一の電動機7と、
第二の電動機8と、
リングギア21と、このリングギア21の中心に配置されるサンギア22と、このサンギア22に噛合う内側プラネタリピニオン24と、この内側プラネタリピニオン24とリングギア21に噛合う外側プラネタリピニオン25と、両プラネタリピニオン24,25を支持するキャリア23とからなるダブルピニオン式遊星歯車で構成されている差動装置20であって、第一の電動機7の出力軸7sは、リングギア21に連結され、キャリア23は、第一の電動機7の出力軸7sを貫通する軸22sと、ドライブシャフト9Rを介して後輪4Rと連結され、第二の電動機8の出力軸8sは、一端にサンギア22が連結され、他端に後輪4Lがドライブシャフト9Lを介して連結されている差動装置20と、を備え、
走行アシスト装置5は、第二の電動機8を、旋回時に、動力源または発電機として作動させる走行アシスト装置5。」

〔甲16記載事項〕
「エンジン1により左右の車輪3L,3Rを駆動する前輪駆動車の左右の後輪4L,4R間に設置される走行アシスト装置5であって、走行アシスト装置5は、エンジン1とは独立した駆動モータ(第一の電動機)とジェネレータ/モータ(第二の電動機)が、差動装置20を介して連結されている走行アシスト装置5。」

(10)甲第17号証
甲第17号証(以下、「甲17」という。)には、次の記載がある。

ア 「【0007】
【発明の実施の形態】図1は、エンジン1により変速機2を介して左右の前輪3,3を駆動する前輪駆動車両を示しており、従動輪たる左右の後輪4,4間に左右1対の電動モータ5,5を有するパワーユニット6を配置している。
【0008】パワーユニット6は、両電動モータ5,5を同方向に回転駆動することで左右の後輪4,4に同方向の駆動力を伝達し、両電動モータ5,5を互に反対方向に回転駆動することで左右一方の後輪4に駆動力、他方の後輪4に制動力を伝達するように構成されている。そして、コントローラ7によりモータドライバー回路8を介して両電動モータ5,5を制御し、滑り易い路面での発進時に両電動モータ5,5を同方向に回転駆動して両後輪4,4の駆動による発進アシストを行い、また、車両の旋回時に両電動モータ5,5を旋回外輪側の後輪4に駆動力、内輪側の後輪4に制動力が伝達されるように互に反対方向に回転駆動して旋回アシストを行う。」
【0009】各電動モータ5は、定格電圧が24Vの直流モータで構成されており、電動モータ5用の24V電源を得るために、エンジン1によりベルト9aを介して駆動される発電機9によって充電される12Vのメインバッテリ10と、発電機9及びメインバッテリ10によりDC−DCコンバータ11を介して充電される12Vのサブバッテリ12とを設けている。」

上記記載事項及び図面(特に図1)の図示内容から、甲17には次の事項(以下、「甲17記載事項」という。)が記載されている。

〔甲17記載事項〕
「エンジンで前輪を駆動する前輪駆動車両の左右の後輪間に左右1対の電動モータ5,5を有するパワーユニット6であって、電動モータ5,5は、コントローラ7によりモータドライバー回路8を介して制御され、電動モータ5,5の電源として、メインバッテリ10およびサブバッテリ12が設けられているパワーユニット6。」

(11)甲第18号証
甲第18号証(以下、「甲18」という。)には、次の記載がある。

ア 「【0014】
図1は、本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続されると共にギヤ機構60およびデファレンシャルギヤ61を介して前輪62a,62bに接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに減速ギヤ35を介して接続されたモータMG2と、デファレンシャルギヤ63を介して後輪64a,64bに接続されたモータMG3と、ハイブリッド自動車20全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。」

イ 「【0017】
モータMG1,MG2,MG3は、いずれも発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42,43を介してバッテリ50と電力のやりとりを行なう。インバータ41,42,43とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42,43が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1,MG2,MG3のいずれかで発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。したがって、バッテリ50は、モータMG1,MG2,MG3のいずれかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータMG1,MG2,MG3により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ50は充放電されない。モータMG1,MG2,MG3は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2,MG3を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2,MG3の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ44,45,46からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2,MG3に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42,43へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2,MG3を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2,MG3の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。」

上記記載事項及び図面(特に図1)の図示内容から、甲18には次の事項(以下、「甲18記載事項」という。)が記載されている。

〔甲18記載事項〕
「ハイブリッド自動車20は、エンジン22と、エンジン22のクランクシャフト26に接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続されたモータMG1と、動力分配統合機構30に接続されると共にギヤ機構60およびデファレンシャルギヤ61を介して前輪62a,62bに接続された駆動軸に接続されたモータMG2と、デファレンシャルギヤ63を介して後輪64a,64bに接続されたモータMG3と、ハイブリッド自動車20全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備えており、モータMG1,MG2,MG3は、いずれも発電機として駆動することができると共に電動機として駆動でき、インバータ41,42,43を介してバッテリ50と電力のやりとりを行ない、インバータ41,42,43とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42,43が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1,MG2,MG3のいずれかで発電される電力を他のモータで消費することができるようになっていること。」

4 無効理由1についての当審の判断
(1)本件発明2について
本件発明2と甲1発明Aとを対比すると、甲1発明Aにおける「車両10」は、その機能、構成又は技術的意義から見て、本件発明2における「輸送機関」に相当し、以下同様に、「後輪RL及び後輪RR」は「被駆動部」に、「車両制御装置」は「動力装置」に、「第1電動モータM1」は「エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置」に、「第2電動モータM2」は「エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置」に、「後輪RL」は「左被駆動部」に、「後輪RR」は「右被駆動部」に、「車載バッテリ」は「エネルギ貯蔵・放出装置」に、それぞれ相当する。
甲1発明Aにおける「相互に同軸上に配置された第1及び第2電動モータM1,M2と、同軸上に配置されて相互に接続された一対の第1および第2差動装置20,30とから構成され、前記第1および第2差動装置20,30には、前記後輪RR,RLに接続される各リアドライブシャフト15R,15Lを回転駆動するための一対の減速ギヤ列16R,16Lがそれぞれ接続され、第1および第2電動モータM1,M2の第1および第2出力軸17a,17bは、各電動モータM1,M2に対して同軸上に設けられる前記第1および第2差動装置20,30に、それぞれ接続された駆動力分配装置12」は、第1電動モータM1および第2電動モータM2と後輪RLおよび後輪RRとの間に設けられ、前記第1電動モータM1と前記後輪RLおよび後輪RRとの間、および前記第2電動モータM2と前記後輪RLおよび後輪RRとの間でエネルギを伝達するためのエネルギ伝達装置としての機能を有している。
また、甲1発明Aにおける「車載バッテリ」が、エネルギを貯蔵・放出可能に構成されていることは、技術常識から明らかである。
そうすると、本件発明2と甲1発明Aとは、次の一致点及び相違点を有する。

〔一致点〕
「輸送機関を直進・旋回可能に推進するためであって、輸送機関の左右に配置された被駆動部を駆動する動力装置であって、
エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置と、
エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置と、
前記第1エネルギ入出力装置および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間に設けられ、前記第1エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間、および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間でエネルギを伝達するためのエネルギ伝達装置と、を備え、
前記第1エネルギ入出力装置、前記左被駆動部、前記右被駆動部、および前記第2エネルギ入出力装置は、回転数が単一の直線上に位置する共線関係にあり、
当該共線関係を表す共線図においてこの順で並んでおり、
エネルギを貯蔵・放出可能に構成され、前記第1エネルギ入出力装置および前記第2エネルギ入出力装置に接続されたエネルギ貯蔵・放出装置をさらに備える、
動力装置。」

〔相違点1−1〕
本件発明2においては「四輪駆動の輸送機関であり、他の駆動源から独立した回転駆動源を有する動力装置」であるのに対して、甲1発明Aにおいては、四輪駆動の輸送機関における他の駆動源から独立した回転駆動源を有する動力装置ではない点。

〔相違点1−2〕
本件発明2においては「エネルギ貯蔵・放出装置に回生し充電可能な」ものであるのに対して、甲1発明Aにおいては、車載バッテリを備えるが、回生し充電可能なものか否か不明な点。

上記相違点1−1について検討する。
車両が四輪駆動であることは、甲1には記載も示唆もされておらず、当業者にとって自明な事項でもない。また、車両が四輪駆動であることは、課題解決のための具体化手段における微差とはいえない。
よって、上記相違点1−1は、実質的な相違点であるから、上記相違点1−2について検討するまでもなく、本件発明2は甲1発明Aと同一の発明ではない。

(2)本件発明3について
本件発明3と甲1発明Bとを対比すると、甲1発明Bにおける「車両10」は、その機能、構成又は技術的意義から見て、本件発明3における「輸送機関」に相当し、以下同様に、「後輪RL及び後輪RR」は「被駆動部」に、「車両制御装置」は「動力装置」に、「第1電動モータM1」は「エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置」に、「第2電動モータM2」は「エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置」に、「後輪RL」は「左被駆動部」に、「後輪RR」は「右被駆動部」に、それぞれ相当する。
甲1発明Bの「車両制御装置」は「第1及び第2電動モータM1,M2」以外に動力源を持たないから、「第1及び第2電動モータM1,M2」は独立した動力源といえる。そうすると、甲1発明は、本件発明3における「エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置と、エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置との二つのエネルギ入出力装置から成る独立した動力源」に相当する構成を備えている。
甲1発明Bにおける「相互に同軸上に配置された第1及び第2電動モータM1,M2と、同軸上に配置されて相互に接続された一対の第1および第2差動装置20,30とから構成され、前記第1および第2差動装置20,30には、前記後輪RR,RLに接続される各リアドライブシャフト15R,15Lを回転駆動するための一対の減速ギヤ列16R,16Lがそれぞれ接続され、第1および第2電動モータM1,M2の第1および第2出力軸17a,17bは、各電動モータM1,M2に対して同軸上に設けられる前記第1および第2差動装置20,30に、それぞれ接続された駆動力分配装置12」は、第1電動モータM1および第2電動モータM2と後輪RLおよび後輪RRとの間に設けられ、前記第1電動モータM1と前記後輪RLおよび後輪RRとの間、および前記第2電動モータM2と前記後輪RLおよび後輪RRとの間でエネルギを伝達するためのエネルギ伝達装置としての機能を有している。
そうすると、本件発明3と甲1発明Bとは、次の一致点及び相違点を有する。

〔一致点〕
「輸送機関を直進・旋回可能に推進するためであって、輸送機関の左右に配置された被駆動部を駆動する動力装置であって、
エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置と、
エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置との
二つのエネルギ入出力装置から成る独立した動力源を備え、
前記第1エネルギ入出力装置および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間に設けられ、前記第1エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間、および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間でエネルギを伝達するためのエネルギ伝達装置と、を備え、
前記第1エネルギ入出力装置、前記左被駆動部、前記右被駆動部、および前記第2エネルギ入出力装置は、回転数が単一の直線上に位置する共線関係にあり、
当該共線関係を表す共線図においてこの順で並んでいる、
動力装置。」

〔相違点1−3〕
本件発明3においては「前記第1エネルギ入出力装置と電気的に接続する第1パワードライブユニットと前記第2エネルギ入出力装置と電気的に接続する第2パワードライブユニットをさらに備え」、前記第1および第2のエネルギ入出力装置は、「前記第1パワードライブユニットと前記第2パワードライブユニットを介して互いに電気的に接続され、互いの間でエネルギを授受可能に構成されている」のに対して、甲1発明Bにおいては「第1および第2電動モータM1,M2のそれぞれに電気的に接続されているコントローラ13」を備えるものである点。

上記相違点1−3について検討する。
上記相違点1−3に係る本件発明3の発明特定事項に関して、本件明細書の段落【0046】で「・・・また、第1回転機10は、第1のパワードライブユニット(以下「第1のPDU」という)22を介して、バッテリ24とECU2に電気的に接続されており、第2回転機11は、第2のパワードライブユニット(以下「第2のPDU」という)23を介して、バッテリ24とECU2に電気的に接続されている(図3参照)。これらの第1および第2のPDU22,23は、上述したPDU21と同様、インバータなどの電気回路で構成されている。また、PDU21、第1および第2のPDU22,23は、互いに電気的に接続されている。」と説明されていることを踏まえると、上記相違点1−3に係る本件発明3の発明特定事項は、その文言どおり、「第1パワードライブユニット」と「第2パワードライブユニット」とは、独立した別々のパワードライブユニットであり、「第1および第2のエネルギ入出力装置は、前記第1パワードライブユニットと前記第2パワードライブユニットを介して互いに電気的に接続され、互いの間でエネルギを授受可能に構成されている」ことを特定するものと解すべきものである。
一方、甲1の段落【0032】には、「コントローラ13は、第1および第2電動モータM1,M2のそれぞれに電気的に接続されており、図示しない車載バッテリ(電源)を介して第1および第2電動モータM1,M2に所定の大きさの駆動電流を個別に供給するようになっている。」との記載があり、甲1の図5には、コントローラ13のモータトルク算出部13cが、二つの電動モータM1,M2に接続された構成が示されているが、独立した別々のパワードライブユニットが、二つの電動モータM1,M2に接続され、二つの電動モータM1,M2がパワードライブユニットを介して互いに電気的に接続され、互いの間でエネルギを授受可能に構成されていることまでは記載されておらず、示唆もされていない。
他方、甲9記載事項及び甲18記載事項では、「複数のモータ・ジェネレータのそれぞれにインバータが接続され、該複数のモータ・ジェネレータが該インバータを介して互いに電気的に接続され、互いの間でエネルギを授受可能とすること」が示されているが、たとえ、このことが本件特許出願前の周知技術であったとしても、この周知技術を参照することで、甲1発明Bにおける「第1および第2電動モータM1,M2のそれぞれに電気的に接続されているコントローラ13」を、上記相違点1−2に係る本件発明3の発明特定事項に変更することが甲1課題を解決するための具体化手段における微差であるとはいえないし、甲1に記載されているに等しい事項であるともいえない。
そうすると、上記相違点1−3は実質的な相違点であるから、本件発明3は甲1発明Bと同一の発明ではない。

なお、請求人は、「甲第1号証の【0032】には、「コントローラ13は、第1および第2電動モータM1,M2のそれぞれに電気的に接続されており、図示しない車載バッテリ(電源)を介して第1および第2電動モータM1,M2に所定の大きさの駆動電流を個別に供給するようになっている。」と記載されている。また、甲第1号証の【図5】のブロック図には、コントローラ13(より詳細にはモータトルク算出部13c)を介して二つの電動モータM1,M2が繋がっている構成が示されている。これらの記載から明らかなように、本件特許発明3の「パワードライブユニット」と甲1発明3の「コントローラ13」とは同一の機能を持つ(実質的に同一な)装置であり、相違点1は、課題解決のための具体化手段における微差(周知技術の単なる付加であって新たな効果を奏するものでないもの)である。」(第2弁駁書4ページ)、「一般的な車両では、一つのコントローラがすべての車載機器を制御するのではなく、上位ECU(統括ECU)と、このECUにより制御される下位ECUとが搭載され、下位ECUが上位ECUからの情報や指令を受けて車載機器を制御することが通常である。なお、特許出願の明細書等において、どのECUが指令を出すか(制御するか)を発明のポイントにしていない限りは、上位ECU,下位ECUの区別をつけずに(例えば、一つのECUにまとめて)表現することは常套手段として採用されている実情がある。また、甲第1号証の【図5】には、コントローラ13(モータトルク算出部12c)から2本の矢印がそれぞれ第2電動モータM2および第1電動モータM1に延びていることが図示されている。さらに、甲第1号証の【0032】の上記記載および【0043】,【0047】によれば、コントローラ13は、各電動モータM2,M1の駆動トルクを任意に調整することができ、かつ、左右それぞれで駆動トルクを正負逆にすることもできる。こういった記載が甲第1号証にある以上、コントローラ13は、第2電動モータM2および第1電動モータM1をそれぞれ個別に作動させており、実質的に、第2電動モータM2および第1電動モータM1のそれぞれに個別対応しているといえる。つまり、甲第1号証の【図1】および【図5】では、コントローラ13が1つの長方形で図示はされているものの、その機能に着目すれば、2つの電動モータM2,M1をそれぞれ制御する機能を持っている。したがって、上記の相違点2も、課題解決のための具体化手段における微差である。」(第2弁駁書4ないし5ページ)及び「本件特許発明3の「第1パワードライブユニットおよび第2パワードライブユニット」と甲1発明3の「コントローラ13」とは、実質的に同一であることに鑑みると、上記の相違点3も課題解決のための具体化手段における微差であるといえる。」(第2弁駁書5ページ)と主張しているが、上記のとおり、上記相違点1−3に係る本件発明3の発明特定事項は、課題解決のための具体化手段における微差とはいえないから、この主張は採用できない。

(3)本件発明4について
甲1発明Bの「車両制御装置」は「第1及び第2電動モータM1,M2」以外に動力源を持たないから、「第1及び第2電動モータM1,M2」は、「他の駆動源から独立した回転駆動源」である。
よって、上記本件発明3と甲1発明Bとの対比事項を踏まえると、本件発明4と甲1発明Bとは、次の一致点及び相違点を有する。

〔一致点〕
「他の駆動源から独立した回転駆動源を有し、
輸送機関を直進・旋回可能に推進するためであって、輸送機関の左右に配置された被駆動部を駆動する動力装置であって、
エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置と、
エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置との、
二つのエネルギ入出力装置から成る独立した動力源を備え、
前記第1エネルギ入出力装置および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間に設けられ、前記第1エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間、および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間でエネルギを伝達するためのエネルギ伝達装置と、を備え、
前記第1エネルギ入出力装置、前記左被駆動部、前記右被駆動部、および前記第2エネルギ入出力装置は、回転数が単一の直線上に位置する共線関係にあり、
当該共線関係を表す共線図においてこの順で並んでいる、
動力装置。」

〔相違点1−4〕
本件発明4においては「第1エネルギ入出力装置と電気的に接続する第1パワードライブユニットと第2エネルギ入出力装置と電気的に接続する第2パワードライブユニットをさらに備え」、前記第1および第2のエネルギ入出力装置は、「前記第1パワードライブユニットと前記第2パワードライブユニットを介して互いに電気的に接続され、互いの間でエネルギを授受可能に構成されている」のに対して、甲1発明Bにおいては「第1および第2電動モータM1,M2のそれぞれに電気的に接続されているコントローラ13」を備えるものである点。

上記相違点1−4について検討する。
上記相違点1−4は、上記相違点1−3と実質的に同じものである。
よって、上記相違点1−3についての検討で述べたとおり、実質的な相違点であるから、本件発明4は甲1発明Bと同一の発明ではない。

(4)本件発明5について
甲1発明Bの「車両制御装置」は「第1及び第2電動モータM1,M2」以外に動力源を持たないから、「第1及び第2電動モータM1,M2」は独立した動力源といえる。そうすると、甲1発明は、本件発明5における「エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置と、エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置の二つのエネルギ入出力装置から成る独立した動力源」に相当する構成を備えている。
また、甲1発明Bの「第1及び第2電動モータM1,M2」は、「回転機」である。
よって、上記本件発明3と甲1発明Bとの対比事項を踏まえると、本件発明5と甲1発明Bとは、次の一致点及び相違点を有する。

〔一致点〕
「輸送機関を直進・旋回可能に推進するためであって、輸送機関の左右に配置された被駆動部を駆動する動力装置であって、
エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置と、
エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置の
二つのエネルギ入出力装置から成る独立した動力源を備え、
前記第1エネルギ入出力装置および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間に設けられ、前記第1エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間、および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間でエネルギを伝達するためのエネルギ伝達装置と、を備え、
前記第1エネルギ入出力装置、前記左被駆動部、前記右被駆動部、および前記第2エネルギ入出力装置は、回転数が単一の直線上に位置する共線関係にあり、
当該共線関係を表す共線図においてこの順で並んでおり、
前記第1および第2のエネルギ入出力装置が回転機である、
動力装置。」

〔相違点1−5〕
本件発明5においては、「前記第1エネルギ入出力装置及び前記第2エネルギ入出力装置のどちらか一方の回生電力を前記第1エネルギ入出力装置及び前記第2エネルギ入出力装置のどちらか他方へ供給」するものであるのに対して、甲1発明Bにおいては、「第1及び第2電動モータM1,M2のそれぞれに電気的に接続されているコントローラ13」を備えるものである点。

上記相違点1−5について検討する。
甲1には、電動モータM2,M1のどちらか一方の回生電力を電動モータM2,M1のどちらか他方へ供給する構成について、記載も示唆もない。
また、上記甲5記載事項、甲7記載事項、甲9記載事項及び甲18記載事項では、複数のモータ・ジェネレータのうちのいずれかの回生電力を、他のモータ・ジェネレータへ供給することが示されているが、たとえ、このことが本件特許出願前の周知技術であったとしても、この周知技術を参照することで、甲1発明Bにおける「第1および第2電動モータM1,M2のそれぞれに電気的に接続されているコントローラ13」を、上記相違点1−3に係る本件発明5の発明特定事項に変更することが甲1課題を解決するための具体化手段における微差であるとはいえないし、甲1に記載されているに等しい事項であるともいえない。

そうすると、上記相違点1−5は実質的な相違点であるから、本件発明5は甲1発明Bと同一の発明ではない。

請求人は、
「前回弁駁書の第10頁の(3)でも述べたが、回転機(モータジェネレータ)が連れ回されている状態(例えば減速時や制動時)では、回転機がジェネレータとして機能することは従来周知であり、回転機が回生し発電した電力を、他のモータに直接的に、またはバッテリを介して、供給することは、下記の証拠に記載されているように周知技術である。
・甲第5号証(特開2006−149095号公報)の【0012】
・甲第7号証(特開2006−125562号公報)の【0023】,【0040】,【0045】,【0056】〜【0060】,【0068】
・甲第9号証の【0032】,【0040】,【0056】
・甲第16号証(特開平11−170881号公報)の【0015】〜【0017】,【0033】〜【0035】
したがって、上記の相違点(構成要件V)は、課題解決のための具体化手段における微差(周知技術の単なる付加であって新たな効果を奏するものでないもの)である。」(第2弁駁書9ページ)と主張している。
しかしながら、当審の判断は上記のとおりであり、また、甲16の該当箇所には、回転機が回生し発電した電力を、他のモータに直接的に、またはバッテリを介して、供給することは直接的には記載されていないから、この主張も採用できない。

(5)本件発明6について
本件発明6は、本件発明5の発明特定事項を全て含むから、上記本件発明5について述べたものと同様の理由により、甲1発明Bと同一の発明ではない。

(6)本件発明7について
本件発明7と、甲1発明Cとを対比する。
上記本件発明3と甲1発明Bとの対比事項を踏まえ、甲1の図3の図示内容及び技術常識を参酌すれば、甲1発明Cにおける
「第1および第2差動装置20,30は、それぞれ遊星歯車機構が採用され、第1回転要素としてのサンギヤS1,S2と、第2回転要素としてのキャリアC1,C2と、キャリアC1,C2にそれぞれ回転自在に支持される複数のプラネタリギヤP1,P2と、第3回転要素としてのリングギヤR1,R2と、第1および第2出力要素としての回転軸O1,O2とから構成されており、第1差動装置20のサンギヤS1には第1電動モータM1の第1出力軸17aが接続され、
第2差動装置30のサンギヤS2には第2電動モータM2の第2出力軸17bが接続され、
各回転軸O1,O2には、各減速ギヤ列16R,16L及び各リアドライブシャフト15R,15Lを介して、各後輪RR,RLが接続されている」
との事項は、
「前記エネルギー伝達装置は、
互いの間でエネルギを伝達可能な第1、第2および第3の要素を有し、前記第1〜第3の要素の回転数が共線関係を満たし、かつ、当該共線関係を表す共線図において前記第1〜第3の要素が順に並ぶように構成された第1エネルギ伝達装置と、
互いの間でエネルギを伝達可能な第4、第5および第6の要素を有し、前記第4〜第6の要素の回転数が共線関係を満たし、かつ、当該共線関係を表す共線図において前記第4〜第6の要素が順に並ぶように構成された第2エネルギ伝達装置と、を有し、
前記第1および第5の要素が、前記右被駆動部に連結され、
前記第2および第4の要素が、前記左被駆動部に連結され、
前記第3要素が前記第1エネルギ入出力装置に連結され、
前記第6要素が前記第2エネルギ入出力装置に連結され、
前記第1エネルギ伝達装置が、第1サンギヤと、第1リングギヤと、前記第1サンギヤおよび前記第1リングギヤに噛み合う第1プラネタリギヤを回転自在に支持する第1キャリアとを有する第1遊星歯車装置であり、
前記第1要素および前記第3要素の一方が前記第1サンギヤ、他方が前記第1リングギヤ、前記第2要素が前記第1キャリアであり、
前記第2エネルギ伝達装置が、第2サンギヤと、第2リングギヤと、前記第2サンギヤおよび前記第2リングギヤに噛み合う第2プラネタリギヤを回転自在に支持する第2キャリアとを有する第2遊星歯車装置であり、
前記第4要素および前記第6要素の一方が前記第2サンギヤ、他方が前記第2リングギヤ、前記第5要素が前記第2キャリアである」
と表現できる。

そうすると、本件発明7と甲1発明Cとは、次の一致点及び相違点を有する。

〔一致点〕
「輸送機関を直進・旋回可能に推進するためであって、輸送機関の左右に配置された被駆動部を駆動する動力装置であって、
エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置と、
エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置と、
前記第1エネルギ入出力装置および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間に設けられ、前記第1エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間、および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間でエネルギを伝達するためのエネルギ伝達装置と、を備え、
前記第1エネルギ入出力装置、前記左被駆動部、前記右被駆動部、および前記第2エネルギ入出力装置は、回転数が単一の直線上に位置する共線関係にあり、
当該共線関係を表す共線図においてこの順で並んでおり、
前記第1および第2のエネルギ入出力装置が回転機であり、
前記エネルギ伝達装置は、
互いの間でエネルギを伝達可能な第1、第2および第3の要素を有し、前記第1〜第3の要素の回転数が共線関係を満たし、かつ、当該共線関係を表す共線図において前記第1〜第3の要素が順に並ぶように構成された第1エネルギ伝達装置と、
互いの間でエネルギを伝達可能な第4、第5および第6の要素を有し、前記第4〜第6の要素の回転数が共線関係を満たし、かつ、当該共線関係を表す共線図において前記第4〜第6の要素が順に並ぶように構成された第2エネルギ伝達装置と、を有し、
前記第1および第5の要素が、前記右被駆動部に連結され、
前記第2および第4の要素が、前記左被駆動部に連結され、
前記第3要素が前記第1エネルギ入出力装置に連結され、
前記第6要素が前記第2エネルギ入出力装置に連結され、
前記第1エネルギ伝達装置が、第1サンギヤと、第1リングギヤと、前記第1サンギヤおよび前記第1リングギヤに噛み合う第1プラネタリギヤを回転自在に支持する第1キャリアとを有する第1遊星歯車装置であり、
前記第1要素および前記第3要素の一方が前記第1サンギヤ、他方が前記第1リングギヤ、前記第2要素が前記第1キャリアであり、
前記第2エネルギ伝達装置が、第2サンギヤと、第2リングギヤと、前記第2サンギヤおよび前記第2リングギヤに噛み合う第2プラネタリギヤを回転自在に支持する第2キャリアとを有する第2遊星歯車装置であり、
前記第4要素および前記第6要素の一方が前記第2サンギヤ、他方が前記第2リングギヤ、前記第5要素が前記第2キャリアである動力装置。」

〔相違点1−6〕
本件発明7においては、「前記第1エネルギ入出力装置及び前記第2エネルギ入出力装置のどちらか一方の回生電力を前記第1エネルギ入出力装置及び前記第2エネルギ入出力装置のどちらか他方へ供給し、前記第1および第2のエネルギ入出力装置が回転機である」のに対して、甲1発明Cにおいては、「第1及び第2電動モータM1,M2のそれぞれに電気的に接続されているコントローラ13」を備えるものである点。

上記相違点1−6は、上記相違点1−5と同じである。そして、上記相違点1−5は実質的な相違点であるから、本件発明7は甲1発明Cと同一の発明ではない。

(7)無効理由1についてのまとめ
以上のとおり、本件発明2は甲1発明Aと同一の発明ではなく、本件発明2ないし6は甲1発明Bと同一の発明ではなく、本件発明7は甲1発明Cと同一の発明ではないから、その特許は同法第123条第1項第2号に該当ぜず、無効理由1には理由がない。

5 無効理由2についての当審の判断
(1)本件発明1について
ア 甲2発明を主たる引用発明とした場合
本件発明1と甲2発明とを対比すると、甲2発明における「自動車」は、その機能、構成又は技術的意義から見て、本件発明1における「輸送機関」に相当し、以下同様に、「2本のアウトプットシャフト16,18」は「被駆動部」に、「駆動装置」は「動力装置」に、それぞれ相当する。
甲2発明における「電気機械34と、電気機械70と、電気機械34と駆動接続されているサンギヤ36と、ピニオンギヤ40を有しアウトプットシャフト18と接続されているプラネタリーキャリア38”と、ピニオンギヤ40が共通のリングギヤ22’と噛み合うプラネタリーギヤ32’と、電気機械70と駆動接続されているサンギヤ86と、プラネタリーギヤ32’のプラネタリーキャリア38”と接続され、外側のピニオンギヤ92および内側のピニオンギヤ94を支持するプラネタリーキャリア90と、外側のピニオンギヤ92が共通のリングギヤ22’と噛み合い、内側のピニオンギヤ94がサンギヤ86と噛み合うプラネタリーギヤ84と、を備え、共通のリングギヤ22’が、ディファレンシャル10のプラネタリーキャリアと駆動接続され、ディファレンシャル10のプラネタリーキャリアはアウトプットシャフト16に接続されており」との事項は、電気機械34及び電気機械70とアウトプットシャフト16、18との間に設けられ、前記電気機械34とアウトプットシャフト16、18との間、および前記電気機械70とアウトプットシャフト16、18との間でエネルギを伝達するためのエネルギ伝達装置、としての機能を有している。
そうすると、甲2発明における「電気機械70」は本件発明1における「エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置」に相当し、以下同様に、「電気機械34」は「エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置」に、「アウトプットシャフト16」は「左被駆動部」に、「アウトプットシャフト18」は「右被駆動部」に、それぞれ相当する。
甲2発明における、「ディファレンシャルギヤを介して2本のアウトプットシャフト16、18に作用する駆動ユニットを有する自動車用駆動装置であって、前記アウトプットシャフトには少なくとも1台のプラネタリーギヤを中間配置した上で出力トルクを一方のアウトプットシャフトから他方のアウトプットシャフトへと移動させることのできる装置が設けられている駆動装置」と本件発明1における、「四輪駆動の輸送機関であり、他の駆動源から独立した回転駆動源を有する動力装置であって、輸送機関を直進・旋回可能に推進するためであって、輸送機関の左右に配置された被駆動部を駆動する動力装置」とは、「輸送機関の動力装置」という限りにおいて一致している。

そうすると、本件発明1と甲2発明とは、次の一致点及び相違点を有する。

〔一致点〕
「輸送機関の動力装置であって、
エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置と、
エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置と、
前記第1エネルギ入出力装置および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間に設けられ、前記第1エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間、および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間でエネルギを伝達するためのエネルギ伝達装置と、を備える、
動力装置。」

〔相違点2−1〕
「輸送機関の動力装置」に関して、本件発明1においては、「四輪駆動の輸送機関であり、他の駆動源から独立した回転駆動源を有する動力装置であって、輸送機関を直進・旋回可能に推進するためであって、輸送機関の左右に配置された被駆動部を駆動する動力装置」であるのに対して、甲2発明においては、「ディファレンシャルギヤを介して2本のアウトプットシャフト16、18に作用する駆動ユニットを有する自動車用駆動装置であって、前記アウトプットシャフトには少なくとも1台のプラネタリーギヤを中間配置した上で出力トルクを一方のアウトプットシャフトから他方のアウトプットシャフトへと移動させることのできる装置が設けられている駆動装置」である点。

〔相違点2−2〕
本件発明1においては、「第1エネルギ入出力装置、左被駆動部、右被駆動部、および第2エネルギ入出力装置は、回転数が単一の直線上に位置する共線関係にあり、当該共線関係を表す共線図においてこの順で並んで」いるのに対して、甲2発明においては、かかる事項を備えているか不明な点。

〔相違点2−3〕
本件発明1においては、「第1エネルギ入出力装置及び前記第2エネルギ入出力装置が、旋回アシスト機能を有する」ものであるのに対して、甲2発明においては、「駆動トルクを移動させるのに、また追加の駆動源として使用でき、そして、同方向制御すると回生運転で使用できる」ものである点。

上記相違点2−1について検討する。
甲2の段落[0056](訳文)には「自動車のリヤアクスルにこの駆動装置を使用する代わりにこの駆動装置をフロントアクスルにも、または追加的にフロントアクスルに使用することができる。さらにディファレンシャルは、四輪駆動式自動車の場合に中間アクスルディファレンシャルであってもよい(縦方向ディファレンシャル)。その際に上述したアウトプットシャフトは、フロントアクスルディファレンシャルおよびリアアクスルディファレンシャルと駆動接続されており、そしてディファレンシャルインプットシャフトは、プロペラシャフトにではなく、トランスミッションのドライブシャフトに、または中間シャフト(例えば、トランスアクスル(trans axle)原理)に接続されている。」との記載があるが、当該記載から想起されるものは、甲2発明の駆動装置を、四輪駆動式自動車のフロントアクスル及びリヤアクスルに適用したもの、あるいは、四輪駆動式自動車の中間アクスルディファレンシャルを適用したものに留まり、上記相違点2−1に係る甲2発明の構成を、四輪駆動の輸送機関における、内燃機関等の他の駆動源から独立した回転駆動源を有する駆動装置に変更することまでを示唆するものではない。
また、甲15記載事項ないし甲18記載事項が、四輪駆動の車両において、前輪に動力を伝える動力源(他の駆動源)と、後輪に動力を伝える動力源(回転駆動源)とが独立している構成を示しているとしても、上記甲15記載事項ないし甲18記載事項は、甲2発明のように、「ディファレンシャルギヤを介して2本のアウトプットシャフト16、18に作用する駆動ユニットを有する自動車用駆動装置」における「出力トルクを一方のアウトプットシャフトから他方のアウトプットシャフトへと移動させることのできる装置」において、「当該出力トルクを一方のアウトプットシャフトから他方のアウトプットシャフトへと移動させることのできる装置」を、駆動ユニット、例えば、内燃エンジンおよびトランスミッション(甲2の段落[0025]を参照。)から独立させることが、当業者にとって容易であったことを示す証拠とはいえない。
そして、甲3記載事項ないし甲7記載事項、甲9記載事項及び甲第10号証の記載ないし甲第14号証の記載、さらに、甲第8号証の記載、甲第19号証の記載及び甲第20号証の記載をみても、上記相違点2−1に係る本件発明1の発明特定事項が、当業者が容易に想到できたといえる根拠は見いだせず、他に証拠もない。
そうすると、上記相違点2−1に係る本件発明1の発明特定事項は、甲2発明、甲2の段落[0056]の記載及び甲15記載事項ないし甲18記載事項に基いて当業者が容易に想到できたということができない。

よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明、甲2の段落[0056]の記載、甲3記載事項ないし甲7記載事項、甲9記載事項、甲第10号証の記載ないし甲第14号証の記載及び甲15記載事項ないし甲18記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

上記相違点2−1に関して、請求人は、
「甲第2号証の和訳文の段落[0056]によれば、甲2発明1の駆動装置を、自動車のリヤアクスルに加えて、フロントアクスルに使用することが可能であることが記載されている。この場合、甲2発明1の自動車は「四輪駆動」となり、フロントアクスルとリヤアクスルとがそれぞれ独立した駆動装置となる。即ち、甲第2号証には、前輪側の駆動源と後輪側の駆動源とを独立して設けることの示唆がある。また、・・・甲2発明は、エンジンからの入力がなくても成り立つ機構である。
また、甲第15号証の段落【0009】〜【0010】と【図1】及び【図2】、甲第16号証の段落【0025】〜【0026】、甲第17号証の段落【0007】〜【0008】及び【図1】、甲第18号証の段落【0017】及び【図1】等に記載されているように、四輪駆動の車両において、前輪に動力を伝える動力源(他の駆動源)と、後輪に動力を伝える動力源(回転駆動源)とが独立している構成は、周知技術である。
そして、この周知技術を甲2発明1に組み合わせることの困難性はなく、阻害要因もない。」(第1弁駁書42ないし43ページ、手続補正書61ページ)と主張している。
しかしながら、上記したとおりであるから、請求人の主張は採用できない。

イ 甲16発明を主たる引用発明とした場合
本件発明1と甲16発明とを対比すると、甲16発明における「車両」は、その機能、構成又は技術的意義から見て、本件発明1における「輸送機関」に相当し、以下同様に、「エンジン1から独立した第一の電動機7及び第二の電動機8」は「他の駆動源から独立した回転駆動源」に、「走行アシスト装置5」は「動力装置」に、「左右の後輪4L、4R」は「左右に配置された被駆動部」に、「第一の電動機7」は「エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置」に、「第二の電動機8」は「エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置」に、「リングギア21と、このリングギア21の中心に配置されるサンギア22と、このサンギア22に噛合う内側プラネタリピニオン24と、この内側プラネタリピニオン24とリングギア21に噛合う外側プラネタリピニオン25と、両プラネタリピニオン24,25を支持するキャリア23とからなるダブルピニオン式遊星歯車で構成されている差動装置20であって、第一の電動機7の出力軸7sは、リングギア21に連結され、キャリア23は、第一の電動機7の出力軸7sを貫通する軸22sと、ドライブシャフト9Rを介して後輪4Rと連結され、第二の電動機8の出力軸8sは、一端にサンギア22が連結され、他端に後輪4Lがドライブシャフト9Lを介して連結されている差動装置20」は、「前記第1エネルギ入出力装置および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間に設けられ、前記第1エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間、および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間でエネルギを伝達するためのエネルギ伝達装置」に、それぞれ相当する。
甲16発明における「少なくとも発進時及び加速時には四輪駆動の」と、本件発明1における「四輪駆動の」とは、「四輪駆動状態で走行することがある」という限りにおいて一致しており、以下同様に、「走行アシスト装置5は、第二の電動機8を、旋回時に、動力源または発電機として作動させる」と「動力装置は、第1エネルギ入出力装置及び前記第2エネルギ入出力装置が、旋回アシスト機能を有する」とは、「動力装置は、旋回アシスト機能を有する」という限りにおいて一致している。
そうすると、本件発明1と甲16発明との間には、次の一致点及び相違点がある。

〔一致点〕
「四輪駆動状態で走行することがある輸送機関であり、
他の駆動源から独立した回転駆動源を有する動力装置であって、
輸送機関を直進・旋回可能に推進するためであって、輸送機関の左右に配置された被駆動部を駆動する動力装置であって、
エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置と、
エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置と、
前記第1エネルギ入出力装置および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間に設けられ、前記第1エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間、および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間でエネルギを伝達するためのエネルギ伝達装置と、を備え、
前記動力装置は、旋回アシスト機能を有する
動力装置。」

〔相違点2−4〕
「四輪駆動状態で走行することがある」に関して、本件発明1においては、「四輪駆動の」であるのに対して、甲16発明においては、少なくとも発進時及び加速時には四輪駆動の、である点。

〔相違点2−5〕
本件発明1においては、「前記第1エネルギ入出力装置、前記左被駆動部、前記右被駆動部、および前記第2エネルギ入出力装置は、回転数が単一の直線上に位置する共線関係にあり、当該共線関係を表す共線図においてこの順で並んで」いるのに対して、甲16発明においては、かかる事項を備えていない点。

〔相違点2−6〕
「動力装置は、旋回アシスト機能を有する」に関して、本件発明1においては、「動力装置は、第1エネルギ入出力装置及び前記第2エネルギ入出力装置が、旋回アシスト機能を有する」ものであるのに対して、甲16発明においては、走行アシスト装置5は、第二の電動機8を、旋回時に、動力源または発電機として作動させるものである点。

事案に鑑み上記相違点2−5について検討する。
甲2発明における、電気機械70、アウトプットシャフト16、アウトプットシャフト18、電気機械34は、甲第13号証及び甲第14号証を参考に共線図を作成すれば、回転数が単一の直線上に位置する共線関係にあることがわかる。
しかしながら、甲2発明は、駆動ユニット、例えば、内燃エンジンおよびトランスミッション(段落[0025]を参照。)から、ディファレンシャルギヤを介して2本のアウトプットシャフト16、18に駆動力が作用するものにおいて、出力トルクを一方のアウトプットシャフトから他方のアウトプットシャフトへと移動させるものであるのに対して、甲16発明においては、走行アシスト装置5の第一の電動機7及び第二の電動機8は、エンジンから独立したものであるから、両者は技術の前提が異なる。
さらに、甲16発明は、「(従来技術が)車両の発進時や旋回時に、2つの電動機を同期して制御する必要があり、制御系が複雑化するという問題があった。」(甲16の段落【0005】を参照。)という点を解決しようとする課題の一つとし、車両の発進時に、駆動モータ7を作動させ、ジェネレータ/モータ8をフリーとする(段落【0032】を参照。)とともに、車両の旋回時において、右旋回時には、ジェネレータ/モータ8を動力源として作動させ、左旋回時には、ジェネレータ/モータ8を発電機として作動させる(段落【0033】を参照。)もので、第一の電動機7(駆動モータ7)と第二の電動機8(ジェネレータ/モータ8)の役割が異なるから、甲16発明の走行アシスト装置5を、甲2発明のように、基本的に電気機械34及び70の双方の同期した制御を必要とする(甲2の段落[0044]、[0036]、[0038]及び[0039]を参照。)駆動装置に変更する動機付けは存在しない。
そうすると、上記相違点2−5に係る本件発明1の発明特定事項は、甲16発明及び甲2発明に基いて当業者が容易に想到できたということができない。
また、甲7記載事項及び甲15記載事項は、上記相違点2−5に係る本件発明1の発明特定事項を開示ないし示唆するものではない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲16発明、甲2発明、甲7記載事項及び甲15記載事項に基いて当業者が容易に想到できたものではない。

上記相違点2−5に関して、請求人は、
「甲16発明1から出発して、当業者が本件特許発明1に容易に到達する論理付けができるか検討する。
まず、主引用発明としての甲第16号証と副引用発明としての甲第2号証とでは、二つのモータ(電動機,電気機械)が左右輪に対して出力(駆動力)を伝達する点で共通するため、『技術分野の関連性』がある。なお、甲第2号証の2の段落[0009],[0056]の記載によれば、甲第2号証の駆動装置は四輪駆動の車両にも適用可能となっている。
また、甲第16号証は、旋回性能の向上を含む走行アシスト性能の向上や装置のコンパクト化等を課題とした技術である。一方、甲第2号証の2の段落[0002],[0005]の記載によれば、・・・甲第2号証は、カーブを通過する際のドライバビリティ向上や、一方のアウトプットシャフトから他方のアウトプットシャフトへの効率的なトルク移動を可能にすることで走行動特性の改善を課題としていることがわかる。従って、甲第15号証および甲第2号証には、『課題の共通性』がある。
さらに、甲16発明1の「駆動モータ7,ジェネレータ/モータ8,差動装置20」と、甲第2号証の「電気機械70,34およびプラネタリギヤ32′,84」とはいずれも、左右輪の間でトルク差を発生させる機能を持ち、これにより車両の旋回性能やドライバビリティ向上を図るものであるため、・・・『作用、機能の共通性』がある。
加えて、甲第16号証では、駆動モータ7(第一の電動機)とジェネレータ/モータ8(第二の電動機)と差動装置20とが同軸上に配置されており、二つの電動機7,8の作動状態を変更することで発進時,加速時のアシストや旋回性能の向上を図っている。これらの記載によれば、甲第2号証のFig.3に記載の機構を、甲16発明1に組み合わせることの示唆があるといえる。
(エ)被請求人は、答弁書第23〜24頁において、「本件特許発明1〜6と甲2発明の前提とする技術の違いについて」を説明している。しかしながら、この点に関しては、弁駁書第39頁第37行〜第41頁第21行・・・に記載の通り、甲2発明は、「電気機械70,34によるトルク付与機構は、主動力機構に組み込まれたものであって、それ自体が独立して存在する機構ではない(答弁書第23頁第13〜15行)」わけではなく、エンジンからの入力がなくても成立する機構であって、本件特許発明1〜6の進歩性を否定する先行技術となる。
(オ)さらに、弁駁書第43頁第16〜36行・・・に記載の通り、構成要件Y,Z,Tは、もともと記載されていた構成要件A〜Eと有機的に結合して1つの技術的思想を形成するものではなく、単なる公知技術の寄せ集めである。
(カ)以上のことから、甲16発明1に甲2記載事項1を適用する動機付けがあり、進歩性が肯定される方向に働く要素もないことから、甲16発明1に甲2記載事項1を組み合わせることで本件特許発明1に想到することは、当業者であれば容易である。」(手続補正書67ないし68ページ)と主張している。
しかしながら、上記のとおり、甲16発明と甲2発明とでは、技術の前提が異なるし、甲16発明の走行アシスト装置の機構を、甲2発明のような機構に変更する動機付けは存在しないから、上記主張は採用できない。

(2)本件発明2について
本件発明2と甲2発明とを対比すると、両者は、上記本件発明1と甲2発明との対比における一致点と同様の一致点、並びに同様の相違点2−1及び相違点2−2を有し、さらに、次の相違点を有する。

〔相違点2−7〕
本件発明2においては、「出力装置に接続されたエネルギ貯蔵・放出装置をさらに備え、前記エネルギ貯蔵・放出装置に回生し充電可能な」ものであるのに対して、甲2発明においては「電気機械34及び電気機械70は、駆動トルクを移動させるのに、また追加の駆動源として使用でき、そして、同方向制御すると回生運転で使用できる」ものである点。

上記(1)で述べたとおり、上記相違点2−1に係る本件発明2の発明特定事項は、甲2発明、甲2の段落[0056]の記載及び甲15記載事項ないし甲18記載事項に基いて当業者が容易に想到できたということができない。

よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲2発明、甲2の段落[0056]の記載、甲3記載事項ないし甲7記載事項、甲9記載事項、甲第10号証の記載ないし甲第14号証の記載及び甲15記載事項ないし甲18記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件発明3
本件発明3と甲2発明とを対比すると、両者は、上記本件発明1と甲2発明との対比における一致点と同様の一致点を有し、次の相違点を有する。

〔相違点2−8〕
本件発明3においては、動力装置が「エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置と、エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置との二つのエネルギ入出力装置から成る独立した動力源を備え」るものであるのに対して、甲2発明においては、駆動装置が、電気機械70と電気機械34を備えるが、駆動装置の動力源が、電気機械70と電気機械34から成る独立した動力源ではない点。

〔相違点2−9〕
本件発明3においては、「第1エネルギ入出力装置と電気的に接続する第1パワードライブユニットと前記第2エネルギ入出力装置と電気的に接続する第2パワードライブユニットをさらに備え、前記第1および第2のエネルギ入出力装置は、前記第1パワードライブユニットと前記第2パワードライブユニットを介して互いに電気的に接続され、互いの間でエネルギを授受可能に構成されている」ものであるのに対して、甲2発明においては「電気機械34及び電気機械70は、駆動トルクを移動させるのに、また追加の駆動源として使用でき、そして、同方向制御すると回生運転で使用できる」ものである点。

上記相違点2−8について検討する。
先ず、上記相違点2−8に係る本件発明3の発明特定事項である「エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置と、エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置との二つのエネルギ入出力装置から成る独立した動力源」(以下「事項A」という。)の意味について検討する。
請求人は「「エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置と、エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置との二つのエネルギ入出力装置から成る独立した動力源」という下線部の構成要件は、『第1エネルギ入出力装置と第2エネルギ入出力装置との二つのエネルギ入出力装置が互いに独立した動力源である』という解釈(以下「解釈A」という)も可能であり、『第1エネルギ入出力装置と第2エネルギ入出力装置との二つのエネルギ入出力装置が、これら以外の動力源から独立した動力源である』という解釈(以下「解釈B」という)も可能である。本件特許発明3を解釈Aで捉えると、令和3年6月24日付けの『審決の予告』の第69頁第19行〜第73頁第2行に記載されている、本件特許発明3と甲2発明との間の相違点2−7および相違点2−8は実質的な相違点ではなく、相違点2−10に係る本件特許発明3の発明特定事項は、甲2発明において周知技術1を適用することにより当業者が容易に想到できた、との判断がそのまま維持されるべきである。」(第3弁駁書4ページ7ないし20行)と主張している。
しかしながら、「エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置と、エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置との二つのエネルギ入出力装置から成る独立した動力源」との事項(以下「事項A」という。)は、「・・・二つの独立したエネルギ入出力装置・・・」ではなく、「・・・二つのエネルギ入出力装置から成る独立した動力源」と記載されていること、及び、本件特許明細書には、段落【0045】に「上述した動力装置1は、図2に示すように、動力源としての第1回転機10(第1エネルギ入出力装置)および第2回転機11(第2エネルギ入出力装置)と、・・・(中略)・・・を備えている。」と記載されており、動力装置1には、第1回転機10(第1エネルギ入出力装置)及び第2回転機11(第2エネルギ入出力装置)以外の動力源について記載がないことを踏まえれば、事項Aは、「第1エネルギ入出力装置と第2エネルギ入出力装置との二つのエネルギ入出力装置」が、「独立した動力源」であるという意味(請求人のいう「解釈B」に相当。)に解される。
この解釈に基づき検討すると、甲2発明は、「ディファレンシャルギヤを介して2本のアウトプットシャフト16、18に作用する駆動ユニットを有する自動車用駆動装置であって、前記アウトプットシャフトには少なくとも1台のプラネタリーギヤを中間配置した上で出力トルクを一方のアウトプットシャフトから他方のアウトプットシャフトへと移動させることのできる装置が設けられている駆動装置において」、「電気機械34」と「電気機械70」を備えるもの、すなわち、「駆動ユニット」の「出力トルク」を、「一方のアウトプットシャフトから他方のアウトプットシャフトへと移動させる」装置であるから、「駆動ユニット」(例えば、内燃エンジンおよびトランスミッション(甲2の段落[0025]を参照。))が存在することを前提に、「電気機械34」及び「電気機械70」を備えるものである。そうすると、「電気機械34」及び「電気機械70」を、「駆動ユニット」から独立させて「独立した駆動源」とする動機付けが存在しない。また、上記相違点2−1についての検討で述べたように、他の証拠を参酌しても、「電気機械34」及び「電気機械70」を、「駆動ユニット」から独立させて「独立した駆動源」とすることが、容易であるとする根拠は見出せない。
したがって、上記相違点2−8に係る本件発明3の発明特定事項は、甲2発明、甲2の段落[0056]の記載及び甲15記載事項ないし甲18記載事項に基いて当業者が容易に想到できたということができない。

よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、甲2発明、甲2の段落[0056]の記載、甲3記載事項ないし甲7記載事項、甲9記載事項、甲第10号証の記載ないし甲第14号証の記載及び甲15記載事項ないし甲18記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件発明4
本件発明4と甲2発明とを対比すると、両者は、上記本件発明1と甲2発明との対比における一致点と同様の一致点を有し、次の相違点を有する。

〔相違点2−10〕
本件発明4においては、動力装置が「他の駆動源から独立した回転駆動源を備え」るものであるのに対して、甲2発明においては、駆動装置が、電気機械70と電気機械34を備えるが、電気機械70と電気機械34が他の駆動源から独立した回転駆動源ではない点。

〔相違点2−11〕
本件発明4においては、「第1エネルギ入出力装置と電気的に接続する第1パワードライブユニットと前記第2エネルギ入出力装置と電気的に接続する第2パワードライブユニットをさらに備え、前記第1および第2のエネルギ入出力装置は、前記第1パワードライブユニットと前記第2パワードライブユニットを介して互いに電気的に接続され、互いの間でエネルギを授受可能に構成され、前記エネルギが電気エネルギである」のに対して、甲2発明においては「電気機械34及び電気機械70は、駆動トルクを移動させるのに、また追加の駆動源として使用でき、そして、同方向制御すると回生運転で使用できる」ものである点。

上記相違点2−10について検討する。
上記相違点2−8についての検討において述べたように、甲2発明は、「駆動ユニット」(例えば、内燃エンジンおよびトランスミッション(甲2の段落[0025]を参照。))が存在することを前提に、「電気機械34」及び「電気機械70」を備えるものである。そうすると、「電気機械34」及び「電気機械70」を、「駆動ユニット」から独立させて「独立した駆動源」とする動機付けが存在しない。また、上記相違点2−1についての検討で述べたように、他の証拠を参酌しても、「電気機械34」及び「電気機械70」を、「駆動ユニット」から独立させて「独立した駆動源」とすることが、容易であるとする根拠は見出せない。
したがって、上記相違点2−10に係る本件発明4の発明特定事項は、甲2発明、甲2の段落[0056]の記載及び甲15記載事項ないし甲18記載事項に基いて当業者が容易に想到できたということができない。

よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明4は、甲2発明、甲2の段落[0056]の記載、甲3記載事項ないし甲7記載事項、甲9記載事項、甲第10号証の記載ないし甲第14号証の記載及び甲15記載事項ないし甲18記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)本件発明5
本件発明5と甲2発明とを対比すると、甲2発明における「電気機械34」及び「電気機械70」は「回転機」であるから、両者は、上記本件発明1と甲2発明との対比における一致点に加えて次の一致点を有し、次の相違点を有する。

〔一致点〕
「第1および第2エネルギ入出力装置が回転機である」

〔相違点2−12〕
本件発明5においては、動力装置が「エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置と、エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置の二つのエネルギ入出力装置から成る独立した動力源を備え」るものであるのに対して、甲2発明においては、駆動装置が、電気機械70と電気機械34を備えるが、駆動装置の動力源が、電気機械70と電気機械34から成る独立した動力源ではない点。

〔相違点2−13〕
本件発明5においては、「第1エネルギ入出力装置及び第2エネルギ入出力装置のどちらか一方の回生電力を前記第1エネルギ入出力装置及び前記第2エネルギ入出力装置のどちらか他方へ供給」するものであるのに対して、甲2発明においては、「電気機械34及び電気機械70は、駆動トルクを移動させるのに、また追加の駆動源として使用でき、そして、同方向制御すると回生運転で使用できる」ものである点。

上記相違点2−12について検討する。
上記相違点2−12に係る本件発明5の発明特定事項である「エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置と、エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置の二つのエネルギ入出力装置から成る独立した動力源」の意味は、上記相違点2−8についての検討において述べたとおりである。
なお、上記相違点2−8に係る本件発明3の発明特定事項は「エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置と、エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置との二つのエネルギ入出力装置から成る独立した動力源」であるのに対して、上記相違点2−12に係る本件発明5の発明特定事項は「エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置と、エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置の二つのエネルギ入出力装置から成る独立した動力源」である(下線は当審が付与した。)。
しかしながら、一般に、「aと、bとの二つの」と「aと、bの二つの」とは、同じ意味として用いられていることや、被請求人が、令和3年8月30日付けの意見書(14ページ30行ないし15ページ4行、17ページ3ないし4行)において、本件発明5と甲2発明とは、本件発明3と甲2発明との対比における<相違点2−14>と同じ相違点を有する旨述べていることを踏まえれば、上記相違点2−12に係る本件発明5の発明特定事項は、上記相違点2−8に係る本件発明3の発明特定事項を実質的に同じである。
そうすると、上記相違点2−12に係る本件発明5の発明特定事項は、上記相違点2−8についての検討で述べたとおり、甲2発明、甲2の段落[0056]の記載及び甲15記載事項ないし甲18記載事項に基いて当業者が容易に想到できたということができない。

よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明5は、甲2発明、甲2の段落[0056]の記載、甲3記載事項ないし甲7記載事項、甲9記載事項、甲第10号証の記載ないし甲第14号証の記載及び甲15記載事項ないし甲18記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(6)本件発明6
本件発明6は、本件発明5の発明特定事項を全て含んでいる。
したがって、本件発明5において述べたのと同様の理由により、甲2発明、甲2の段落[0056]の記載、甲3記載事項ないし甲7記載事項、甲9記載事項、甲第10号証の記載ないし甲第14号証の記載及び甲15記載事項ないし甲18記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(7)無効理由2についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1ないし6は、甲2発明、甲2の段落[0056]の記載、甲3記載事項ないし甲7記載事項、甲9記載事項ないし甲18記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、その特許は同法第123条第1項第2号に該当ぜず、無効理由2には理由がない。
また、本件発明1は、甲16発明及び甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、その特許は同法第123条第1項第2号に該当ぜず、無効理由2には理由がない。

6 無効理由3についての当審の判断
(1)本件発明1について
本件発明1についての無効理由3の要点は、本件発明1は、「前記第1エネルギ入出力装置および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間に設けられ、前記第1エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間、および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間でエネルギを伝達するためのエネルギ伝達装置」(以下、「構成要件D」という。)と「前記第1エネルギ入出力装置、前記左被駆動部、前記右被駆動部、および前記第2エネルギ入出力装置は、回転数が単一の直線上に位置する共線関係にあり」(以下、「構成要件E」という。)との関係が特定されていない広範な概念であり、発明の詳細な説明に記載された範囲を越えるというものである。

ここで、本件明細書の段落【0002】ないし【0005】から、本件発明1の課題は、従来技術においては、ブレーキの分、動力装置が大型化し製造コストが増大してしまうため、小型化および製造コストの削減を達成できるとともに、旋回性を高めることができる動力装置を提供することと把握できるところ、本件発明1は、構成要件D及び構成要件Eという発明特定事項を備えている。
そして、本件明細書の段落【0007】ないし【0013】及び図25ないし27において、その作用が説明されており、構成要件D及び構成要件Eにより、ブレーキが不要となり、その分、小型化及び製造コストの削減できるということは、当業者であれば理解できる。
また、その具体的な実施形態として、図2等に示される第1実施形態、図8等に示される第2実施形態を開示している。
したがって、発明が解決しようとする課題と構成要件Dと構成要件Eとの関係は、本件明細書の記載から理解できるのであるから、本件発明1は、当業者が課題を解決できると認識できる範囲を超えているものではなく、発明の詳細な説明に記載されたものである。

請求人は「構成要件Eには、「前記第1エネルギ入出力装置、前記左被駆動部、前記右被駆動部、および前記第2エネルギ入出力装置は、回転数が単一の直線上に位置する共線関係にあり、当該共線関係を表す共線図においてこの順で並んでいる」と記載されているところ、同記載は、前記第1エネルギ入出力装置、前記左被駆動部、前記右被駆動部、および前記第2エネルギ入出力装置がどのように連結されているのかも、前記第1エネルギ入出力装置、前記左被駆動部、前記右被駆動部、および前記第2エネルギ入出力装置がエネルギ伝達装置(構成要件D)とどのような関係になっているのかも特定されず、広範な概念の記載であるのに対し、本件明細書の記載においてその全部がサポートされておらず、発明の詳細な説明の記載を超えるものである。
また、下位請求項6および9には、エネルギ伝達装置の具体的な構成が記載されているが、本件明細書には、これら二つの請求項6,9に対応する構成が開示されているに過ぎず、これら二つの構成から、本件特許発明1のエネルギ伝達装置(構成要件D)および構成要件Eにまで発明を拡張あるいは一般化することは論理が飛躍しており、およそ合理的ではない。」(審判請求書63ページ)と主張しているが、上記したとおり、本件明細書の記載事項及び遊星機構の共線図に関する技術常識(甲第13号証及び甲第14号証を参照。)を参酌すれば、第1エネルギ入出力装置、左被駆動部、右被駆動部、および第2エネルギ入出力装置の連結関係や、構成要件Dと構成要件Eの関係は理解できる。
また、請求人は、「本件明細書の段落【0085】には「また、第1実施形態において、第1および第2の回転機10,11、左右の後輪WRL,WRR、第1および第2のサンギヤS1,S2、第1および第2のキャリアC1,C2、第1および第2のリングギヤR1,R2の間の連結関係は、次の条件を満たす限り、任意に設定できる。すなわち、第2サンギヤS2および第2リングギヤS2の一方と第1キャリアC1が、左後輪WRLに連結され、第1サンギヤS1および第1リングギヤR1の一方と第2キャリアC2が、右後輪WRRに連結され、第1サンギヤS1および第1リングギヤR1の他方が、第1回転機10に連結され、第2サンギヤS2および第2リングギヤR2の他方が、第2回転機11に連結されているという条件である。」と記載されている(下線は請求人が引いた)ことからも明らかなように、本来は、下線を引いた各連結関係が、請求項1には最低限必要な構成である。」(第1弁駁書56ページ)とも主張しているが、上記下線箇所の記載は、第1実施形態において、構成要件Eを満たす具体的な例を示したものにすぎず、本件発明1の上記課題を解決するために、前記下線を引いた各連結関係が必須であると解するべき、根拠にはならない。
したがって、上記請求人の主張はいずれも採用できない。

(2)本件発明2について
本件発明2についての無効理由3の要点は、本件発明2の「前記エネルギ貯蔵・放出装置に回生し充電可能な」(以下、「構成要件U」という。)動力装置は、車両が直進のとき以外(例えば旋回時)をも含むものであるため、本件発明2は、発明の詳細な説明に記載された発明ではないというものである。

しかし、本件発明2について、本件明細書の段落【0075】ないし【0077】において、直進走行時に、発電し充電することが記載されている他、段落【0071】及び【0073】に、旋回中に第1、第2回転機10、11で発電することができることが記載されており、この発電した電力をエネルギ・放出装置に送って充電することもできることは、技術常識から明らかである。
したがって、本件発明2は、発明の詳細な説明に記載された発明である。

請求人は「構成要件Uの「回生し充電可能」であるのは車両が直進するときしか記載されていない。この点、訂正請求書の第10頁第35行及び第11頁第5〜6行においても、「エネルギ貯蔵・放出装置が直進のときに回生し充電可能」と記載されており、被請求人自ら「直進のとき」に回生し充電可能な点を説明している。従って、直進のとき以外(例えば旋回時)を含む訂正後の請求項2は、明細書等に記載のない実施形態を含むものであり、サポート要件違反に該当する。」(第1弁駁書56ないし57行、手続補正書74ページ)と主張しているが、上記したとおりであって、この主張は当を得たものではないから、採用できない。

(3)無効理由3についてのまとめ
以上のとおりであるから、無効理由3には理由がない。

7 無効理由4についての当審の判断
本件発明1についての無効理由4の要点の一つは、「本件特許発明1では、構成要件Eと、構成要件Dに記載の「エネルギ伝達装置」との技術的な関連(すなわち、発明特定事項同士の技術的な関連)が記載されておらず、発明が不明確である。」(審判請求書65ページ、手続補正書74ページ)というものである。
しかし、構成要件Eは、構成要件D、すなわち、「前記第1エネルギ入出力装置および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間に設けられ、前記第1エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間、および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間でエネルギを伝達するためのエネルギ伝達装置」において、「第1エネルギ入出力装置」、「左被駆動部」、「右被駆動部」および「第2エネルギ入出力装置」の共線上の関係を特定しているのであるから、両者の技術的な関連は明確である。

また、無効理由4に関して、請求人は、「構成要件T(前記動力装置は、第1エネルギ入出力装置及び前記第2エネルギ入出力装置が、旋回アシスト機能を有する)には「前記動力装置は、」と「第1エネルギ入出力装置および前記第2エネルギ入出力装置は、」という二つの主語が記載されており、述語である「旋回アシスト機能を有する」の主語がどちらなのかが不明確である。さらには、構成要件Tの「旋回アシスト機能」の記載が不明確である。「アシスト」というのは、答弁書第10頁で被請求人が主張するように、主があっての従(アシスト)であり、そうであるならば、主の旋回動作を生じさせる構成要件が請求項1に必要であるし、主の旋回動作を生じさせる構成要件に対して「前記動力装置」又は「前記第1エネルギ入出力装置および前記第2エネルギ入出力装置」がどのようにアシストするのかが不明確である。」(手続補正書74ページ)と主張している。
しかしながら、本件発明1の「動力装置」が「直進・旋回可能に推進する」対象である「四輪駆動の輸送機関」は、当該輸送機関を旋回させるための操舵装置等の手段を具備することが技術常識であるから、本件発明1において、上記操舵装置等の手段を、主の旋回動作を生じさせるための発明特定事項とすることが必須であるとまではいえないことを踏まえると、上記構成要件Tは、「前記動力装置」は、旋回をアシストする機能を有するのであって、第1エネルギ入出力装置及び前記第2エネルギ入出力装置が、「旋回アシスト機能」の実現手段であることを特定するものと解することができ、このような解釈は、本件明細書の段落【0066】ないし【0074】の「第1左旋回アシストモード」ないし「第2右旋回アシストモード」に関する記載内容とも整合するものである。
したがって、上記構成要件Tには、多少の日本語としての不自然さはあるとしても、本件明細書及び技術常識を参酌すれば、その意味するところは明確であるから、上記主張は採用できない。

以上のとおり、本件発明1は明確であるから、無効理由4には理由がない。

8 第3弁駁書の主張について
請求人は、第3弁駁書において、訂正後の請求項3ないし5(本件発明3ないし5)は、依然として無効理由を有する旨主張しているので、以下検討する。

(1)本件発明3について
ア 特許法第36条第6項第2号の無効理由について
請求人は、「「エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置と、エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置との二つのエネルギ入出力装置から成る独立した動力源」という下線部の構成要件は、「独立した動力源」が、何から(何に対して)独立しているのかが明確でないため、本件特許発明3は発明の範囲が明確でない。例えば、当該記載では、『第1エネルギ入出力装置と第2エネルギ入出力装置との二つのエネルギ入出力装置が互いに独立した動力源である』とも読めるし、『第1エネルギ入出力装置と第2エネルギ入出力装置との二つのエネルギ入出力装置が、これら以外の動力源から独立した動力源である』とも読める。」(第3弁駁書3ページ10ないし18行)と主張している。
しかしながら、上記5 (3)の相違点2−8についての検討において述べたとおり、事項Aは、「第1エネルギ入出力装置と第2エネルギ入出力装置との二つのエネルギ入出力装置」が、「独立した動力源」であるという意味に解される。そして「独立」の一般的な意味は「単独で存在すること。他に束縛または支配されないこと。」(広辞苑第5版)であって、これを本件発明3に当てはめれば意味は通じるし、本件特許明細書の記載内容とも整合するものであるから、何から(何に対して)独立しているのか特定がなくても明確である。
したがって、本件発明3は明確であるから、請求人の主張は採用できない。

イ 特許法第29条2項の無効理由について
請求人は、事項Aは、『第1エネルギ入出力装置と第2エネルギ入出力装置との二つのエネルギ入出力装置が互いに独立した動力源である』という解釈(以下「解釈A」という)も可能であり、そのように解釈した場合、甲2発明も、電気機械34と電気機械70とは個別にそれぞれ制御されるものであるため、互いに独立した動力源であると解されるから、本件発明3は、依然として、特許法第29条第2項の無効理由を有する旨主張している。
しかしながら、上記5 (3)の相違点2−8についての検討において述べたとおり、事項Aは、「第1エネルギ入出力装置と第2エネルギ入出力装置との二つのエネルギ入出力装置」が、「独立した動力源」であるという意味に解される。

さらに、請求人は、「甲2発明の機構は、エンジンからの入力がなくても成立するものであり、甲2発明は、「電気機械70,34によるトルク付与機構は、主動力機構に組み込まれたものであって、それ自体が独立して存在する機構ではない(令和2年1月10日付けの『答弁書』の第23頁第13〜15行)」わけではなく、エンジンからの入力がなくても成立する機構である。この主張に対し、被請求人は、第2答弁書の第25〜26頁の(2−1)および(2−2)において反論しているが、審決の予告の第71頁第10〜21行において、相違点2−8(共線関係に関する構成)は実質的な相違点ではないと認められている。このことに鑑みると、貴合議体は、共線関係において、請求人の「甲2発明の機構は、エンジンからの入力がなくても成立するものである」という主張を採用されたものと思料する。つまり、被請求人の上記主張(すなわち、「甲2発明の駆動装置は、…その前提として、…主動力源は必要不可欠な構成である」との主張)は当を得たものではない。
したがって、被請求人による、第2意見書の第14〜15頁の相違点2−14に関する主張は妥当でなく、上記の通り、「独立した」という文言だけを追加した本件特許発明3は、上記3.(1)で説明した理由とは別に、依然として特許法第29条第2項の無効理由を有する。」(第3弁駁書5ページ38行ないし6ページ14行)と主張している。
しかしながら、審決の予告の第71頁第10〜21行における相違点2−8(共線関係に関する構成)についての判断は、甲2発明においても、第1エネルギ入出力装置(電気機械70)、左被駆動部(アウトプットシャフト16)、右被駆動部(アウトプットシャフト18)、及び第2エネルギ入出力装置(電気機械34)は、回転数が単一の直線上に位置する共線関係にあり、当該共線関係を表す共線図においてこの順で並んでいるということを述べたに過ぎない。
そして、上記5 (3)で述べたとおり、本件発明3と甲2発明との間には、上記相違点2−8が存在し、これについての判断は、上記のとおりである。
したがって、請求人の主張は採用できず、本件発明3は、特許法第29条第2項の無効理由を有しない。

(2)本件発明4について
請求人は、要するに、本件発明4の「他の駆動源から独立した回転駆動源を有し、」という構成要件は、審決の予告において当業者が容易に想到できないと判断された、訂正前の請求項1に係る発明の相違点2−1に関する構成要件(「四輪駆動の輸送機関であり、他の駆動源から独立した回転駆動源を有する動力装置であって、」)の一部であるから、当該相違点2−1が、当業者が容易に想到できないと判断されたからといって、本件発明4も、当業者が容易に想到できたものではないとはいえない、というものである。
しかしながら、上記5 (4)で述べたとおり、本件発明4と甲2発明との間には、上記相違点2−10が存在し、これについての判断は上記のとおりである。

(3)本件発明5について
本件発明5に対する請求人の主張は、本件発明3に対する主張と同じものであるから、上記(1)で述べたとおり、これを採用できない。

第5 むすび
以上のとおり、本件発明1ないし7に係る特許については、無効理由1ないし4によっては、無効にすることはできない。
審判に関する費用については、請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
四輪駆動の輸送機関であり、
他の駆動源から独立した回転駆動源を有する動力装置であって、
輸送機関を直進・旋回可能に推進するためであって、輸送機関の左右に配置された被駆動部を駆動する動力装置であって、
エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置と、
エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置と、
前記第1エネルギ入出力装置および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間に設けられ、前記第1エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間、および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間でエネルギを伝達するためのエネルギ伝達装置と、を備え、前記第1エネルギ入出力装置、前記左被駆動部、前記右被駆動部、および前記第2エネルギ入出力装置は、回転数が単一の直線上に位置する共線関係にあり、
当該共線関係を表す共線図においてこの順で並んでおり、
前記動力装置は、第1エネルギ入出力装置及び前記第2エネルギ入出力装置が、旋回アシスト機能を有する
ことを特徴とする、
動力装置。
【請求項2】
四輪駆動の輸送機関であり、
他の駆動源から独立した回転駆動源を有する動力装置であって、
輸送機関を直進・旋回可能に推進するためであって、輸送機関の左右に配置された被駆動部を駆動する動力装置であって、
エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置と、
エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置と、
前記第1エネルギ入出力装置および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間に設けられ、前記第1エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間、および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間でエネルギを伝達するためのエネルギ伝達装置と、を備え、
前記第1エネルギ入出力装置、前記左被駆動部、前記右被駆動部、および前記第2エネルギ入出力装置は、回転数が単一の直線上に位置する共線関係にあり、
当該共線関係を表す共線図においてこの順で並んでおり、
エネルギを貯蔵・放出可能に構成され、前記第1エネルギ入出力装置および前記第2エネルギ入出力装置に接続されたエネルギ貯蔵・放出装置をさらに備え、
前記エネルギ貯蔵・放出装置に回生し充電可能な
ことを特徴とする、
動力装置。
【請求項3】
輸送機関を直進・旋回可能に推進するためであって、輸送機関の左右に配置された被駆動部を駆動する動力装置であって、
エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置と、
エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置との
二つのエネルギ入出力装置から成る独立した動力源を備え、
前記第1エネルギ入出力装置および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間に設けられ、前記第1エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間、および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間でエネルギを伝達するためのエネルギ伝達装置と、を備え、
前記第1エネルギ入出力装置、前記左被駆動部、前記右被駆動部、および前記第2エネルギ入出力装置は、回転数が単一の直線上に位置する共線関係にあり、
当該共線関係を表す共線図においてこの順で並んでおり、
前記第1エネルギ入出力装置と電気的に接続する第1パワードライブユニットと前記第2エネルギ入出力装置と電気的に接続する第2パワードライブユニットをさらに備え、
前記第1および第2のエネルギ入出力装置は、前記第1パワードライブユニットと前記第2パワードライブユニットを介して互いに電気的に接続され、互いの間でエネルギを授受可能に構成されている
ことを特徴とする、
動力装置。
【請求項4】
他の駆動源から独立した回転駆動源を有し、
輸送機関を直進・旋回可能に推進するためであって、輸送機関の左右に配置された被駆動部を駆動する動力装置であって、
エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置と、
エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置と、
前記第1エネルギ入出力装置および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間に設けられ、前記第1エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間、および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間でエネルギを伝達するためのエネルギ伝達装置と、を備え、
前記第1エネルギ入出力装置、前記左被駆動部、前記右被駆動部、および前記第2エネルギ入出力装置は、回転数が単一の直線上に位置する共線関係にあり、
当該共線関係を表す共線図においてこの順で並んでおり、
前記第1エネルギ入出力装置と電気的に接続する第1パワードライブユニットと前記第2エネルギ入出力装置と電気的に接続する第2パワードライブユニットをさらに備え、
前記第1および第2のエネルギ入出力装置は、前記第1パワードライブユニットと前記第2パワードライブユニットを介して互いに電気的に接続され、互いの間でエネルギを授受可能に構成され、
前記エネルギが電気エネルギであることを特徴とする動力装置。
【請求項5】
輸送機関を直進・旋回可能に推進するためであって、輸送機関の左右に配置された被駆動部を駆動する動力装置であって、
エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置と、
エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置の
二つのエネルギ入出力装置から成る独立した動力源を備え、
前記第1エネルギ入出力装置および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間に設けられ、前記第1エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間、および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間でエネルギを伝達するためのエネルギ伝達装置と、を備え、
前記第1エネルギ入出力装置、前記左被駆動部、前記右被駆動部、および前記第2エネルギ入出力装置は、回転数が単一の直線上に位置する共線関係にあり、
当該共線関係を表す共線図においてこの順で並んでおり、
前記第1エネルギ入出力装置及び前記第2エネルギ入出力装置のどちらか一方の回生電力を前記第1エネルギ入出力装置及び前記第2エネルギ入出力装置のどちらか他方へ供給し、
前記第1および第2のエネルギ入出力装置が回転機である、
ことを特徴とする、動力装置。
【請求項6】
前記エネルギ伝達装置は、
互いの間でエネルギを伝達可能な第1、第2および第3の要素を有し、前記第1〜第3の要素の回転数が共線関係を満たし、かつ、当該共線関係を表す共線図において前記第1〜第3の要素が順に並ぶように構成された第1エネルギ伝達装置と、
互いの間でエネルギを伝達可能な第4、第5および第6の要素を有し、前記第4〜第6の要素の回転数が共線関係を満たし、かつ、当該共線関係を表す共線図において前記第4〜第6の要素が順に並ぶように構成された第2エネルギ伝達装置と、を有し、
前記第1および第5の要素が、前記右被駆動部に連結され、
前記第2および第4の要素が、前記左被駆動部に連結され、
前記第3要素が前記第1エネルギ入出力装置に連結され、
前記第6要素が前記第2エネルギ入出力装置に連結されていることを特徴とする、請求項5に記載の動力装置。
【請求項7】
輸送機関を直進・旋回可能に推進するためであって、輸送機関の左右に配置された被駆動部を駆動する動力装置であって、
エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置と、
エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置と、
前記第1エネルギ入出力装置および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間に設けられ、前記第1エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間、および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間でエネルギを伝達するためのエネルギ伝達装置と、を備え、
前記第1エネルギ入出力装置、前記左被駆動部、前記右被駆動部、および前記第2エネルギ入出力装置は、回転数が単一の直線上に位置する共線関係にあり、
当該共線関係を表す共線図においてこの順で並んでおり、
前記第1エネルギ入出力装置及び前記第2エネルギ入出力装置のどちらか一方の回生電力を前記第1エネルギ入出力装置及び前記第2エネルギ入出力装置のどちらか他方へ供給し、
前記第1および第2のエネルギ入出力装置が回転機であり、
前記エネルギ伝達装置は、
互いの間でエネルギを伝達可能な第1、第2および第3の要素を有し、前記第1〜第3の要素の回転数が共線関係を満たし、かつ、当該共線関係を表す共線図において前記第1〜第3の要素が順に並ぶように構成された第1エネルギ伝達装置と、
互いの間でエネルギを伝達可能な第4、第5および第6の要素を有し、前記第4〜第6の要素の回転数が共線関係を満たし、かつ、当該共線関係を表す共線図において前記第4〜第6の要素が順に並ぶように構成された第2エネルギ伝達装置と、を有し、
前記第1および第5の要素が、前記右被駆動部に連結され、
前記第2および第4の要素が、前記左被駆動部に連結され、
前記第3要素が前記第1エネルギ入出力装置に連結され、
前記第6要素が前記第2エネルギ入出力装置に連結され、
前記第1エネルギ伝達装置が、第1サンギヤと、第1リングギヤと、前記第1サンギヤおよび前記第1リングギヤに噛み合う第1プラネタリギヤを回転自在に支持する第1キャリアとを有する第1遊星歯車装置であり、
前記第1要素および前記第3要素の一方が前記第1サンギヤ、他方が前記第1リングギヤ、前記第2要素が前記第1キャリアであり、
前記第2エネルギ伝達装置が、第2サンギヤと、第2リングギヤと、前記第2サンギヤおよび前記第2リングギヤに噛み合う第2プラネタリギヤを回転自在に支持する第2キャリアとを有する第2遊星歯車装置であり、
前記第4要素および前記第6要素の一方が前記第2サンギヤ、他方が前記第2リングギヤ、前記第5要素が前記第2キャリアであることを特徴とする動力装置。
【請求項8】
輸送機関を直進・旋回可能に推進するための左右の被駆動部を駆動する動力装置であって、
エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置と、
エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置と、
前記第1エネルギ入出力装置および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間に設けられ、前記第1エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間、および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間でエネルギを伝達するためのエネルギ伝達装置と、を備え、
前記第1エネルギ入出力装置、前記左被駆動部、前記右被駆動部、および前記第2エネルギ入出力装置は、回転数が単一の直線上に位置する共線関係にあり、当該共線関係を表す共線図においてこの順で並んでいる動力装置において、
前記エネルギ伝達装置は、
互いの間でエネルギを伝達可能な第1、第2および第3の要素を有し、前記第1〜第3の要素の回転数が共線関係を満たし、かつ、当該共線関係を表す共線図において前記第1〜第3の要素が順に並ぶように構成された第1エネルギ伝達装置と、
互いの間でエネルギを伝達可能な第4、第5および第6の要素を有し、前記第4〜第6の要素の回転数が共線関係を満たし、かつ、当該共線関係を表す共線図において前記第4〜第6の要素が順に並ぶように構成された第2エネルギ伝達装置と、を有し、
前記第1および第5の要素が、前記右被駆動部に連結され、
前記第2および第4の要素が、前記左被駆動部に連結され、
前記第3要素が前記第1エネルギ入出力装置に連結され、
前記第6要素が前記第2エネルギ入出力装置に連結されており、
前記第1エネルギ伝達装置が、第1サンギヤと、第1リングギヤと、前記第1サンギヤおよび前記第1リングギヤに噛み合う第1プラネタリギヤを回転自在に支持する第1キャリアとを有する第1遊星歯車装置であり、
前記第1要素および前記第3要素の一方が前記第1サンギヤ、他方が前記第1リングギヤ、前記第2要素が前記第1キャリアであり、
前記第2エネルギ伝達装置が、第2サンギヤと、第2リングギヤと、前記第2サンギヤおよび前記第2リングギヤに噛み合う第2プラネタリギヤを回転自在に支持する第2キャリアとを有する第2遊星歯車装置であり、
前記第4要素および前記第6要素の一方が前記第2サンギヤ、他方が前記第2リングギヤ、前記第5要素が前記第2キャリアであり、
前記第1要素が前記第1サンギヤ、前記第3要素が前記第1リングギヤ、前記第4要素が前記第2サンギヤ、前記第6要素が前記第2リングギヤであることを特徴とする動力装置。
【請求項9】
輸送機関を直進・旋回可能に推進するための左右の被駆動部を駆動する動力装置であって、
エネルギを入出力可能に構成された第1エネルギ入出力装置と、
エネルギを入出力可能に構成された第2エネルギ入出力装置と、
前記第1エネルギ入出力装置および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間に設けられ、前記第1エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間、および前記第2エネルギ入出力装置と前記左右の被駆動部との間でエネルギを伝達するためのエネルギ伝達装置と、を備え、
前記第1エネルギ入出力装置、前記左被駆動部、前記右被駆動部、および前記第2エネルギ入出力装置は、回転数が単一の直線上に位置する共線関係にあり、当該共線関係を表す共線図においてこの順で並んでいる動力装置において、
前記第1エネルギ入出力装置が第1回転磁界を発生させるための不動の第1ステータであり、
前記第2エネルギ入出力装置が第2回転磁界を発生させるための不動の第2ステータであり、
前記エネルギ伝達装置は、
磁石で構成され、前記第1ステータに対向するように設けられた第1ロータと、軟磁性体で構成され、前記第1ステータと前記第1ロータの間に設けられた第2ロータと、磁石で構成され、前記第2ステータに対向するように設けられた第3ロータと、軟磁性体で構成され、前記第2ステータと前記第3ロータの間に設けられた第4ロータとを有し、
前記第1ステータ、前記第1ロータおよび前記第2ロータは、前記第1ステータと前記第1ロータと前記第2ロータの間で、前記第1回転磁界の発生に伴って形成される磁気回路を介してエネルギを入出力するとともに、当該エネルギの入出力に伴って、前記第1回転磁界、前記第1ロータおよび前記第2ロータが、互いの間に回転数の共線関係を保ちながら回転するように構成され、
前記第2ステータ、前記第3ロータおよび前記第4ロータは、前記第2ステータと前記第3ロータと前記第4ロータの間で、前記第2回転磁界の発生に伴って形成される磁気回路を介してエネルギを入出力するとともに、当該エネルギの入出力に伴って、前記第2回転磁界、前記第3ロータおよび前記第4ロータが、互いの間に回転数の共線関係を保ちながら回転するように構成され、
前記第1および第4のロータが、前記右被駆動部に連結され、
前記第2および第3のロータが、前記左被駆動部に連結されていることを特徴とする動力装置。
【請求項10】
エネルギを貯蔵・放出可能に構成され、前記第1エネルギ入出力装置および前記第2エネルギ入出力装置に接続されたエネルギ貯蔵・放出装置をさらに備えることを特徴とする請求項9に記載の動力装置。
【請求項11】
前記第1および第2のエネルギ入出力装置は、互いに接続され、互いの間でエネルギを授受可能に構成されていることを特徴とする請求項9または10に記載の動力装置。
【請求項12】
前記エネルギが電気エネルギであることを特徴とする、請求項11に記載の動力装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2021-12-09 
結審通知日 2021-12-14 
審決日 2021-12-28 
出願番号 P2007-137172
審決分類 P 1 123・ 161- YAA (B60L)
P 1 123・ 537- YAA (B60L)
P 1 123・ 121- YAA (B60L)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 山本 信平
特許庁審判官 星名 真幸
鈴木 充
登録日 2010-12-03 
登録番号 4637136
発明の名称 動力装置  
代理人 諏訪 華子  
代理人 真田 有  
復代理人 森林 克郎  
復代理人 小菅 一弘  
復代理人 小菅 一弘  
代理人 星野 寛明  
代理人 星野 寛明  
復代理人 森林 克郎  
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