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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B29C
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 B29C
管理番号 1384734
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-01-26 
確定日 2022-04-28 
事件の表示 特願2018−164648「複合射出成形方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 3月12日出願公開、特開2020− 37206〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年9月3日の出願であって、令和2年7月27日付けで拒絶理由が通知され、同年9月24日に意見書及び手続補正書が提出され、同年10月22日付けで拒絶査定がされ、令和3年1月26日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和3年1月26日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものであると認める。
なお、上記手続補正書による補正は、特許請求の範囲についてする明りようでない記載の釈明を目的とする補正であり、また、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、さらに、上記手続補正書による補正前の請求項1に係る発明と上記手続補正書による補正後の請求項1に係る発明は特許法第37条の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものとなっているから、上記手続補正書による補正は、適法なものである。

「【請求項1】
スキン層を形成するペレットをシリンダ内でスクリューを回転しながら加熱し、前記ペレットを溶かし、溶かした前記ペレットを必要に応じて射出するスキン層射出部と、
前記スキン層中にコア層を形成するペレットをシリンダ内でスクリューを回転しながら加熱し、前記ペレットを溶かし、溶かした前記ペレットを必要に応じて射出するコア層射出部とを具備し、前記スキン層射出部の溶融樹脂と前記コア層射出部の溶融樹脂の溶融温度により、最適スキン層を得る溶融温度を決定し、前記スキン層射出部の射出と同時または射出から遅れた後、高温度の溶融樹脂をスキン層の成形に、低温度の溶融樹脂を前記スキン層に包まれたコア層の成形に使用することを特徴とする複合射出成形方法。」

第3 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由はおおむね次の理由を含むものである。

1 (新規性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内において、頒布された刊行物である下記引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2 (進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内において、頒布された刊行物である下記引用文献2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
2.特開2003−62864号公報

第4 当審の判断
1 引用文献2に記載された事項等
(1)引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前に日本国内において、頒布された刊行物である引用文献2には、「射出成形機用ノズル」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は当審において付したものである。

・「【請求項8】 表層部がスキン用樹脂で形成され、その内部がコア用樹脂で形成された射出成形品を製造するためのサンドイッチ成形方法であって、
先端に開口部を備え、後端に第一ポートを備え、内部に前記開口部と第一ポートを結ぶ第一流路が形成されたインナーノズルと、
このインナーノズルの前方に接続され、先端に金型の背面に接続される吐出口を備え、内部にインナーノズルの前半部分が収容される空洞部を備え、後端部近傍に前記空洞部につながる第二ポートを備え、前記空洞部の内周面とインナーノズルの外周面との間で前記吐出口と第二ポートを結ぶ環状の第二流路を構成するアウターノズルと、
アウターノズルの後方に露出したインナーノズルの後半部分の周囲に取り付けられた第一ヒータと、
アウターノズルの周囲に取り付けられた第二ヒータと、
第一の溶融樹脂を前記第一ポートへ導く第一供給経路と、
この第一供給経路の途中に設けられた第一開閉弁と、
第二の溶融樹脂を前記第二ポートへ導く第二供給経路と、
この第二供給経路の途中に設けられた第二開閉弁と、
を備えた射出成形機用ノズルを用いて、
コア用樹脂を前記第一供給経路及び前記第一流路を介して金型内に導入し、
スキン用樹脂を前記第二供給経路及び前記第二流路を介して金型内に導入することを特徴とするサンドイッチ成形方法。」

・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、射出成形機用のノズルに係り、特に、二種類の樹脂を使用し、一方の樹脂でスキン層を他方の樹脂でコア層を形成する、いわゆるサンドイッチ成形の際に使用されるノズルの構造に関するものである。」

・「【0002】
【従来の技術】図4に、サンドイッチ成形の際に使用される従来のノズルの構造の概要を示す。
【0003】このノズルは、ノズルボディ60と、その内部に二重に組み込まれた第一及び第二のニードルバルブ61、62から構成されている。ノズルボディ60の先端には、吐出口63が設けられている。ノズルボディ60の先端は、金型10の背面に設けられたゲート10aに接続される。第一のニードルバルブ61は、第2のニードルバルブ62の内部に組み込まれ、第二のニードルバルブ62の先端には、吐出口64が設けられている。
【0004】第一のニードルバルブ61の外周面と第二のニードルバルブ62の内周面の間には、第一流路65が形成されている。同様に、第二のニードルバルブ62の外周面とノズルボディ60の内周面の間には、第二流路66が形成されている。ノズルボディ60の後端部近傍の側面には、溶融樹脂を導入するための第一ポート67及び第二ポート68が設けられている。第一ポート67は、第二のニードルバルブ62の側面に設けられた貫通孔69、第一流路65及び吐出口64を介して、吐出口63と結ばれている。第二ポート68は、第二流路66を介して、吐出口63と結ばれている。第一のポート67には、主射出装置71が接続されている。第二のポート68には、副射出装置72が接続されている。
【0005】第一流路65の開閉は、第二のニードルバルブ62の中で第一のニードルバルブ61を軸方向に移動することによって、吐出口64の手前で行われる。同様に、第二流路66の開閉は、ノズルボディ60の中で第二のニードルバルブ62を軸方向に移動することによって、吐出口63の手前で行われる。
【0006】サンドイッチ成形を行う際、スキン用樹脂は、副射出装置72から供給され、第二ポート68、第二流路66を順に通って、吐出口63から金型10内に注入される。一方、コア用樹脂は、主射出装置71から供給され、第一ポート67、貫通孔69、第一流路65、吐出口64を順に通って、吐出口63から金型10内に注入される。
【0007】(従来の射出成形機用ノズルの問題点)従来のノズルを用いてサンドイッチ成形を行う際、コア用樹脂とスキン用樹脂の溶融温度が大きく異なる場合に、次のような問題があった。即ち、主射出装置71から第一ポート67までの流路、及び副射出装置72から第二ポート68までの流路については、樹脂の種類に合わせて、それぞれ個別に温度制御を行うことができる。しかし、ノズル部の加熱に関しては、ノズルボディ60の外周にヒータを取り付けるもの以外に現実的な方法がなかったので、第一流路65と第二流路66を異なる温度で制御することはできなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、以上のような従来のサンドイッチ成形用のノズルについての問題点を解決するためになされたもので、本発明の目的は、溶融温度が大きく異なるスキン用樹脂とコア用樹脂を用いてサンドイッチ成形を行う場合、これら二つの樹脂の温度を個別に制御することができるサンドイッチ成形用のノズルを提供することにある。」

・「【0013】更に、本発明の射出成形機用ノズルによれば、インナーノズルの後半部分がアウターノズルの後方に露出しているので、この部分の周囲にヒータ(第一ヒータ)を容易に取り付けることができる。従って、この第一ヒータとアウターノズルの周囲に取り付けられた第二ヒータの出力を個別に制御することによって、第一の溶融樹脂と第二の溶融樹脂の温度を個別に制御することができる。従って、溶融温度が大きく異なるスキン用樹脂とコア用樹脂の組み合わせを用いてサンドイッチ成形を行うことが可能になる。例えば、スキン用樹脂に溶融温度が高い耐熱用エンブラを用い、コア用樹脂に熱安定性の悪いPOMやPVCなどを用いた組み合わせ可能となり、サンドイッチ成形の応用範囲を大幅に拡大することができる。」

・「【0021】
【発明の実施の形態】図1に、本発明に基づく射出成形機用ノズルの一例を示す。
【0022】図中、11はインナーノズル、12はアウターノズル、13は吐出口、14は開口部、15は第一流路、16は第二流路、17は第一ポート、18は第二ポート、21は第一ヒータ、22は第二ヒータ、31は第一供給経路、42は第二供給経路、33は第一開閉弁、44は第二開閉弁を表す。
【0023】この射出成形用ノズルは、アウターノズル12、インナーノズル11、第一の連結ブロック30及び第二の連結ブロック40から構成されている。
【0024】アウターノズル12の先端には吐出口13が設けられている。アウターノズル12の先端は、金型(図示せず)の背面に設けられたゲートに接続される。アウターノズル12の後方には、インナーノズル11が接続されている。アウターノズル12の内部には、その後端面から筒状に空洞部が形成され、この空洞部の中に、インナーノズル11の前半部分が嵌め込まれている。インナーノズル11の後半部分は、フランジ状に径が拡大した部分となっていて、この後半部分はアウターノズル12の後方に露出している。
【0025】インナーノズル11の中心には、軸方向に貫通孔15(以下、第一流路と呼ぶ)が形成されている。インナーノズル11の外周面とアウターノズル12の空洞部の内周面の間には、環状の流路16(以下、第二流路と呼ぶ)が形成されている。第一流路15と第二流路16は、インナーノズル11の前方で合流した後、吐出口13につながっている。
【0026】インナーノズル11の後端面には、第一の溶融樹脂を導入するための第一ポート17が設けられている。第一ポート17は、第一流路15及び開口部14を介して吐出口13と結ばれている。アウターノズル12の後端近傍の側面には、第二の溶融樹脂を導入するための第二ポート18が設けられている。第二ポート18は第二流路16を介して吐出口13と結ばれている。
【0027】インナーノズル11の後半部分の外周には、第一ヒータ21が取り付けられている。アウターノズル12の外周には、第二ヒータ22が取り付けられている。
【0028】インナーノズル11は、その後端面で第一の連結ブロック30を介して主射出装置51に接続されている。第一の連結ブロック30の内部には、第一供給経路31が形成されている。第一供給経路31は、上流側で主射出装置51につながり、下流側で第一ポート17につながっている。第一供給経路31の途中には、ロータリーシャットオフ弁方式の第一開閉弁33が設けられている。第一の連結ブロック30の周囲には、温度調節用のヒータ36が取り付けられている。
【0029】同様に、アウターノズル12は、その後端近傍の側面で第二の連結ブロック40を介して副射出装置52に接続されている。第二の連結ブロック40の内部には、第二供給経路42が形成されている。第二供給経路42は、上流側で副射出装置52につながり、下流側で第二ポート18につながっている。第二供給経路42の途中には、ロータリーシャットオフ弁方式の第一開閉弁44が設けられている。第二の連結ブロック40の周囲にも、温度調節用のヒータ46が取り付けられている。
【0030】第一開閉弁33及び第二開閉弁44を操作することによって、吐出口13を介して射出される溶融樹脂の種類を、第一の溶融樹脂と第二の溶融樹脂との間で切り替えることができる。また、二種類の樹脂を同時に吐出口13を介して射出することもできる。
【0031】サンドイッチ成形を行う際、通常、スキン用樹脂は、副射出装置52から供給され、第二開閉弁44、第二供給経路32、第二ポート18、第二流路16を順に通って、吐出口13から金型内に注入される。一方、コア用樹脂は、主射出装置51から供給され、第一開閉弁33、第一供給経路31、第一ポート17、第一流路15を順に通って、吐出口13から金型内に注入される。
【0032】上記のような構造を備えたノズルによれば、第一ヒータ21を用いてインナーノズル11の温度を制御することによって、第一流路15内を流れる溶融樹脂(第一の溶融樹脂)の温度を制御することができる。同様に、第二ヒータ22を用いてアウターノズル12の温度を制御することによって、第二流路16内を流れる溶融樹脂(第二の溶融樹脂)の温度を制御することができる。この様に、第一の溶融樹脂と第二の溶融樹脂の温度を、それぞれ個別に制御することができるので、溶融温度が大きく異なるスキン用樹脂とコア用樹脂の組み合わせを用いてサンドイッチ成形を行うことができる。」

・「







(2)引用発明
引用文献2に記載された事項を、特に【請求項8】、【0013】及び【0021】ないし【0032】に関して整理すると、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「表層部がスキン用樹脂で形成され、その内部がコア用樹脂で形成された射出成形品を製造するためのサンドイッチ成形方法であって、
先端に開口部を備え、後端に第一ポートを備え、内部に前記開口部と第一ポートを結ぶ第一流路が形成され、その後端面で第一の連結ブロックを介して主射出装置に接続されたインナーノズルと、
このインナーノズルの前方に接続され、先端に金型の背面に接続される吐出口を備え、内部にインナーノズルの前半部分が収容される空洞部を備え、後端部近傍に前記空洞部につながる第二ポートを備え、前記空洞部の内周面とインナーノズルの外周面との間で前記吐出口と第二ポートを結ぶ環状の第二流路を構成し、その後端近傍の側面で第ニの連結ブロックを介して副射出装置に接続されたアウターノズルと、
アウターノズルの後方に露出したインナーノズルの後半部分の周囲に取り付けられた第一ヒータと、
アウターノズルの周囲に取り付けられた第二ヒータと、
第一の溶融樹脂を前記第一ポートへ導く第一供給経路と、
この第一供給経路の途中に設けられた第一開閉弁と、
第二の溶融樹脂を前記第二ポートへ導く第二供給経路と、
この第二供給経路の途中に設けられた第二開閉弁と、
を備えた射出成形機用ノズルを用いて、
第一の溶融樹脂としてコア用樹脂を主射出装置から供給し、第一開閉弁、第一供給経路、第一ポート、第一流路を順に介して、吐出口から金型内に導入し、
第二の溶融樹脂としてスキン用樹脂を副射出装置から供給し、第二開閉弁、第二供給経路、第二ポート、第二流路を順に介して、吐出口から金型内に導入し、
スキン用樹脂に溶融温度が高い耐熱用エンプラを用い、コア用樹脂に熱安定性の悪いPOMやPVCなどを用い、
スキン用樹脂とコア用樹脂を同時に吐出口を介して射出するサンドイッチ成形方法。」

2 対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明は、引用文献2の【0002】ないし【0006】及び図4(図4から、「主射出装置71」及び「副射出装置72」のいずれもスクリューを有していることが看取される。)に記載された従来のノズル構造におけるコア用樹脂とスキン用樹脂の溶融温度が大きく異なる場合に第一流路と第二流路を異なる温度で制御することはできなかったという問題を、スキン用樹脂とコア用樹脂の温度を個別に制御することにより解決するものであり、スキン用樹脂とコア用樹脂の温度を個別に制御する点以外は、引用発明と従来のノズル構造は同じと考えられるから、引用発明における「主射出装置」及び「副射出装置」が「ペレットをシリンダ内でスクリューを回転しながら加熱し、前記ペレットを溶かし、溶かした前記ペレットを必要に応じて射出する」ものであることは当業者に明らかである。
したがって、引用発明における「射出成形機用ノズル」の「先端に開口部を備え、後端に第一ポートを備え、内部に前記開口部と第一ポートを結ぶ第一流路が形成され、その後端面で第一の連結ブロックを介して主射出装置に接続されたインナーノズル」、「アウターノズルの後方に露出したインナーノズルの後半部分の周囲に取り付けられた第一ヒータ」、「第一の溶融樹脂を前記第一ポートへ導く第一供給経路」及び「この第一供給経路の途中に設けられた第一開閉弁」から構成される部分が本願発明における「前記スキン層中にコア層を形成するペレットをシリンダ内でスクリューを回転しながら加熱し、前記ペレットを溶かし、溶かした前記ペレットを必要に応じて射出するコア層射出部」に相当する。
(2)引用発明における「射出成形機用ノズル」の「このインナーノズルの前方に接続され、先端に金型の背面に接続される吐出口を備え、内部にインナーノズルの前半部分が収容される空洞部を備え、後端部近傍に前記空洞部につながる第二ポートを備え、前記空洞部の内周面とインナーノズルの外周面との間で前記吐出口と第二ポートを結ぶ環状の第二流路を構成し、その後端近傍の側面で第ニの連結ブロックを介して副射出装置に接続されたアウターノズル」、「アウターノズルの周囲に取り付けられた第二ヒータ」、「第二の溶融樹脂を前記第二ポートへ導く第二供給経路」及び「この第二供給経路の途中に設けられた第二開閉弁」から構成される部分が本願発明における「スキン層を形成するペレットをシリンダ内でスクリューを回転しながら加熱し、前記ペレットを溶かし、溶かした前記ペレットを必要に応じて射出するスキン層射出部」に相当する。
(3)引用発明における「スキン用樹脂に溶融温度が高い耐熱用エンプラを用」いることは本願発明における「高温度の溶融樹脂をスキン層の成形」に「使用する」ことに相当する。
(4)「熱安定性の悪い」とは熱分解しやすいということであるから、熱安定性の悪い樹脂は低い溶融温度で用いることは当業者に明らかである。
したがって、引用発明における「コア用樹脂に熱安定性の悪いPOMやPVCなどを用い」ることは本願発明における「低温度の溶融樹脂を前記スキン層に包まれたコア層の成形に使用すること」に相当する。
(5)引用発明における「スキン用樹脂とコア用樹脂を同時に吐出口を介して射出する」の「スキン用樹脂とコア用樹脂を同時に」は本願発明における「前記スキン層射出部の射出と同時」に相当する。
(6)引用発明における「表層部がスキン用樹脂で形成され、その内部がコア用樹脂で形成された射出成形品を製造するためのサンドイッチ成形方法」は本願発明における「複合射出成形方法」に相当する。

したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「スキン層を形成するペレットをシリンダ内でスクリューを回転しながら加熱し、前記ペレットを溶かし、溶かした前記ペレットを必要に応じて射出するスキン層射出部と、
前記スキン層中にコア層を形成するペレットをシリンダ内でスクリューを回転しながら加熱し、前記ペレットを溶かし、溶かした前記ペレットを必要に応じて射出するコア層射出部とを具備し、前記スキン層射出部の射出と同時または射出から遅れた後、高温度の溶融樹脂をスキン層の成形に、低温度の溶融樹脂を前記スキン層に包まれたコア層の成形に使用する複合射出成形方法。」

そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点>
本願発明においては「前記スキン層射出部の溶融樹脂と前記コア層射出部の溶融樹脂の溶融温度により、最適スキン層を得る溶融温度を決定し」と特定されているのに対し、引用発明においてはそのようには特定されていない点。

3 判断
そこで、上記相違点について検討する。
引用発明は、「表層部がスキン用樹脂で形成され、その内部がコア用樹脂で形成された射出成形品を製造するためのサンドイッチ成形方法」であって、「第一の溶融樹脂と第二の溶融樹脂の温度を個別に制御することができる」(引用文献2の【0013】)ものであるから、引用発明においても、スキン層の温度はスキン層射出部の溶融樹脂とコア層射出部の溶融樹脂の溶融温度により、最適スキン層を得る溶融温度に決定されていることは当業者に明らかである。
したがって、上記相違点は実質的な相違点とはいえない。
よって、本願発明は引用発明、すなわち引用文献2に記載された発明である。

仮に、上記相違点が実質的な相違点であるとしても、スキン層を設ける以上、スキン層が最適スキン層となるような溶融温度にすることは当業者であれば当然のことであるから、引用文献2に記載された発明において、スキン層射出部の溶融樹脂とコア層射出部の溶融樹脂の溶融温度により、最適スキン層を得る溶融温度を決定するようにして、相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
そして、「スキン層射出部でスキン層を形成し、その後、コア層射出部でコア層を形成するという直列制御ではなく、スキン層射出部及びコア層射出部の射出時間が互いにかぶっているから、射出成形時間を短くできる。」(発明の詳細な説明の【0013】)という本願発明の効果は、引用文献2に記載された発明も「スキン用樹脂とコア用樹脂を同時に吐出口を介して射出する」ものであるから、引用文献2に明示はないものの同様の効果を奏するものであることは明らかである。
したがって、本願発明の効果は、引用文献2に記載された発明から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものとはいえない。
よって、本願発明は引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえる。

4 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、「本願発明の複含射出成形方法は、スキン層材料樹脂に与える温度制御において、複数回スキン層の温度を上昇させて、その後、全体の冷却を行うという熱エネルギの無駄が生じないから、省エネタイプのサンドイッチ成形を行うことができ、スキン層射出部及び/またはコア層射出部で射出した溶融樹脂温度を再加熱することなく使用することができ、即ち、スキン層材料樹脂に与える温度制御において、同時にスキン層及びコア層を含むコア層の充填形成を行い、熱エネルギの損失を少なくし、かつ、射出成形時間を短くした省エネタイプのサンドイッチ成形を含む複合射出成形方法であるのに対し、引用文献1−2は、スキン層射出部及び/またはコア層射出部に与える熱エネルギの損失及び成形時間を少なくした省エネタイプの技術を開示するものではないから、本願発明は新規性進歩性を有する」旨主張する。
そこで、検討するに、本願の特許請求の範囲の請求項1に「スキン層材料樹脂に与える温度制御において、複数回スキン層の温度を上昇させて、その後、全体の冷却を行う」ものではないことを特定する記載はないから、上記主張は本願の特許請求の範囲の請求項1の記載に基づかないものであり、採用できない。

5 むすび
したがって、本願発明は、引用文献2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第5 結語
上記第4のとおり、本願発明は、特許法第29条の規定により特許を受けることができないものであるので、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。



 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-02-18 
結審通知日 2022-02-22 
審決日 2022-03-10 
出願番号 P2018-164648
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B29C)
P 1 8・ 113- Z (B29C)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 須藤 康洋
特許庁審判官 奥田 雄介
加藤 友也
発明の名称 複合射出成形方法  
代理人 特許業務法人 Vesta国際特許事務所  
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