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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1384763
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-02-24 
確定日 2022-05-06 
事件の表示 特願2019−118025「移動通信システム、および、基地局」拒絶査定不服審判事件〔令和元年10月24日出願公開、特開2019−186951〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2014年(平成26年)2月13日(優先権主張 2013年2月15日)を国際出願日とする特願2015−500277号の一部を、平成30年4月19日に新たな特許出願とした特願2018−80649号のさらに一部を、令和元年6月26日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和元年 6月26日 上申書の提出
令和2年 3月12日付け 拒絶理由通知書
令和2年 5月14日 意見書、手続補正書の提出
令和2年 7月31日付け 拒絶理由通知書
令和2年 9月28日 意見書の提出
令和2年11月12日付け 拒絶査定
令和3年 2月24日 拒絶査定不服審判の請求
令和3年10月19日付け 拒絶理由通知書(当審)
令和3年12月21日 意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明

本願の請求項1ないし4に係る発明は、令和3年12月21日に提出された手続補正書による手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものである。そして、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりの発明である。

「 移動端末およびこの移動端末と無線通信が可能な第1基地局および第2基地局を含む移動通信システムであって、
第1基地局のタイプが第2基地局と共同で前記移動端末と無線通信することが可能なタイプであることを示す情報を、基地局間インタフェースにおけるセットアップのメッセージを用いて第1基地局から第2基地局に通知し、
第1基地局が第2基地局と共同で前記移動端末と無線通信することを特徴とする移動通信システム。」

第3 当審拒絶理由の概要

令和3年10月19日付けで当審が通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)は、以下の理由を含むものである。

3.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
4.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記(引用文献等については引用文献等一覧参照)
●理由3(新規性)、理由4(進歩性)について
・請求項 1、2、4、5、及び6
・引用文献 3

●理由4(進歩性)について
・請求項 3
・引用文献 3

<引用文献等一覧>
3.国際公開第2011/016560号

第4 引用例の記載及び引用発明

当審拒絶理由で引用された国際公開第2011/016560号(以下、「引用例3」という。)には,以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与した。)

(1) 「[0018] さらに、LTEを高度化させたLTE Advancedの検討も開始され、セルエッジスループットのさらなる改善策としてCoMP送受信(Coordinated MultiPoint transmission and reception)の検討が行われている。
[0019] CoMPは、複数の基地局が特定の端末に同時に下りデータを送信したり、特定の端末からの上りデータを複数の基地局が同時に受信したりする技術である(非特許文献3)。
[0020] CoMPに関しては、サービングセル(Serving cell)、協調集合(CoMPコーポレイティングセット:CoMP cooperating set)等が定義されている。
[0021] サービングセルは、下り制御チャネル(PDCCH)で端末に制御情報を送信するセルを指す。
[0022] 協調集合(CoMP cooperating set)は、下りデータチャネル(PDSCH:Physical Down Link Shared CHannel)で端末にデータを送信する際に直接的又は間接的に関わるセルの集合である。」

(2) 「[0063]<第1の無線通信システムの形態>
図1は、本発明の一実施形態の無線通信システムの概略構成の例を示す図である。この無線通信システムは、
無線基地局(eNB: evolved Node BあるいはE−UTRAN Node B(E−UTRAN: Evolved UTRAN))eNB1、eNB2、eNB3と、
無線基地局を管理する制御局であるO&M(Operation & Maintenance server:オペレーションおよびメンテナンス・サーバ)、OMC(Operation and Maintenance Centre:オペレーションおよびメンテナンス・センタ)ともいう)と、
無線端末(UE)UE1、UE2と、を含む。」

(3) 「[0065]<第1の実施形態>
図3から図13は、本発明の第1の実施形態を説明するための図である。第1の実施形態において、eNB1、eNB2はCoMP送受信の機能を有するものとし、協調集合(CoMP cooperating set)は無線端末(UE)個別にではなくセル固有のものが設定されるものとする。
[0066] 図3は、eNB1のCell1とeNB2のCell2が同じ協調集合(CoMP cooperating set)に設定される場合のシーケンス図である。
[0067] eNB1は、UE1およびUE2に、隣接セルの測定報告(メジャメントレポート:Measurement report)をするように事前に指示を出しており(不図示)、UE1、UE2は、それぞれ、Cell1の隣接セルであるCell2のメジャメントレポートをeNB1に行う。
[0068] UE1、UE2から報告されたCell2の下り信号の受信品質が所定の条件を満たしていた場合(例えば、所定の閾値以上であった場合)、協調集合1へのセル2の追加のトリガー(Trigger to add Cell 2 to CoMP cooperating set 1)がかかり、eNB1は、Cell2を協調集合(CoMP cooperating set)に追加するための動作に入る。
[0069] まず、eNB1は、Cell2を管理するeNB2に対して、eNB1との協調によるCoMP送受信を行うための準備として、協調集合(CoMP cooperating set)設定の要求(CoMP set configuration request)を行う。本実施例では、この要求メッセージで、基地局に設定されている又は基地局が保有するCoMPに関する制御情報(CoMP control information)を通知する。
[0070] eNB2は、CoMP送受信の機能を有しており、協調集合(CoMP cooperating set)設定の要求への応答(CoMP set configuration response)を行う。この場合、eNB2は、ACK(肯定応答)又はそれに相当する情報と、CoMPに関する制御情報(CoMP control information)をeNB1に送る(Request/response Step)。
[0071] eNB1は、eNB2からACKを受け取ると、eNB1の協調集合1(CoMP cooperating set1)を更新(もしくは初期設定)する(CoMP cooperating set1 update)。
[0072] eNB1は、O&Mに、協調集合1(CoMP cooperating set1)の更新(セル2の新たな追加)を通知する(CoMP cooperating set status report (cell2 newly added))。
[0073] O&Mは、O&Mで保有するeNB1およびeNB2の協調集合(CoMP cooperating set)の情報を更新する(CoMP cooperating set 1,2 update)。
[0074] 次に、O&Mは、eNB2に対して、eNB2が保持する協調集合2(CoMP cooperating set2)を更新する指示を通知する(CoMP cooperating set update indicator)。
[0075] eNB2は、協調集合2(CoMP cooperating set2)を更新(もしくは初期設定)する(CoMP cooperating set2 update)。
[0076] そして、O&Mは、eNB1に、協調集合(CoMP cooperating set)の更新が完了したことを通知する(CoMP cooperating set update complete)。以上で、CoMP送受信のための準備動作が完了する。
[0077] eNB1、eNB2は、協調集合(CoMP cooperating set)の更新が完了した後、実際にCoMP送受信を行うUEおよび送受信形態を決定し、実行する。」

(4) 「

」(図3)

(5) 「[0082] さらに、本実施形態では、UEからのeNBヘ送信される測定報告(Measurement report)を基に、協調集合(CoMP cooperating set)の更新のトリガーがかかっているが、X2セットアップ要求(X2 set up Request)をトリガーとして、協調集合(CoMP cooperating set)の更新を行うようにしてもよい。
[0083] つまり、X2セットアップ要求/応答(X2 set up request/response)に、CoMPに関する制御情報を追加するようにしてもよい。」

(6) 「[0089] 次に、無線基地局間(eNB1とeNB2)で通信されるCoMPに関する制御情報(CoMP control information)としては、CoMP送受信の機能の有無の情報が必要最小限の情報である。
[0090] CoMP送受信の機能の有無の情報は、各無線基地局(eNB)がCoMP送受信の機能を有しているかどうかを確認するための情報である。基本的に、協調集合の設定要求(CoMP set configuration request)の送信元のeNBが当該CoMP送受信機能を有していることは自明である。このため、CoMPに関する制御情報の送信先となるeNBがその応答(response)を返信するときに、当該CoMP送受信機能を有している否かを、送信元のeNBに通知する。
[0091] 本実施形態では、eNB1とeNB2のどちらもCoMP送受信の機能を有しているので、eNB2は、CoMP送受信の機能を有していることを示す情報(例えば、フラグ)をeNB1に通知する。」

(7) 「[0159] 隣接セルリストは、端末の移動を適切に管理するために、端末がハンドオーバしそうなセルを(追加できるセル数の範囲内で)できるだけ漏れのないよう追加することが、目的である。」

引用例3の上記記載、及び無線通信分野における技術常識を考慮すると、次のことがいえる。

ア 上記(2)によれば、引用例3には「無線通信システム」について記載されており、この無線通信システムは「無線基地局・・・eNB1、eNB2・・・と、・・・無線端末(UE)・・・と、を含む」ものである。
ここで、上記(3)の[0077]には「eNB1、eNB2は、・・・実際にCoMP送受信を行うUEおよび送受信形態を決定し、実行する」ことが記載されているから、無線基地局eNB1およびeNB2は、無線端末UEとCoMP送受信が可能なものであるといえる。
また、上記(1)の[0018]には、「CoMP送受信(Coordinated MultiPoint transmission and reception)」と記載されており、また、[0019]には、「CoMPは、複数の基地局が特定の端末に同時に下りデータを送信したり、特定の端末からの上りデータを複数の基地局が同時に受信したりする技術である」ことが記載されており、さらに、同[0020]には「CoMPに関しては、・・・協調集合・・・が定義されている」ことが記載されており、そして、同[0022]には、「協調集合・・・は、下りデータチャネル・・・で端末にデータを送信する際に直接的又は間接的に関わるセルの集合である」ことが記載されている。
ここで、[0019]及び[0022]の「端末」が無線端末UEを意味することは明らかであり、また、上記(7)には、「端末の移動を適切に管理するために、端末がハンドオーバしそうなセルを・・・追加する」ことが記載されており、ハンドオーバとは、端末が移動したことに伴う無線基地局の切り替えを意味することは無線通信分野の技術常識であるから、前記無線端末UEは移動可能といえる。
そうすると、引用例3には、移動可能な無線端末UEおよびこの無線端末UEとCoMP送受信が可能な無線基地局eNB1および無線基地局eNB2を含む無線通信システムであって、CoMP(Coordinated MultiPoint)は、複数の基地局が特定の無線端末UEに同時に下りデータを送信したり、特定の無線端末UEからの上りデータを複数の基地局が同時に受信したりする技術であり、CoMPに関しては協調集合が定義されており、協調集合は、下りデータチャネルで無線端末UEにデータを送信する際に直接的又は間接的に関わるセルの集合である、無線通信システム、が記載されているといえる。

イ 上記(3)の[0065]には、「第1の実施形態」と記載されており、同[0067]には、「UE1、UE2は、それぞれ、Cell1の隣接セルであるCell2のメジャメントレポートをeNB1に行う」ことが記載されており、上記(4)からも、UE1、UE2は、それぞれ、Cell2のメジャメントレポートをeNB1に送ることが見て取れる。
また、上記(3)の[0068]及び[0069] には、「UE1、UE2から報告されたCell2の下り信号の受信品質が所定の条件を満たしていた場合・・・、協調集合1へのセル2の追加のトリガー・・・がかかり、・・・まず、eNB1は、Cell2を管理するeNB2に対して、eNB1との協調によるCoMP送受信を行うための準備として、協調集合・・・設定の要求・・・を行う」ことが記載されており、上記(4)からも、CoMP協調集合1へのセル2の追加のトリガーの後、eNB1は、Cell2すなわちセル2を管理するeNB2に対して、CoMP協調集合設定要求(CoMP制御情報)を送ることが見て取れる。
さらに、上記(3)の[0070]には、「eNB2は、・・・協調集合・・・設定の要求への応答・・・を行う。この場合、eNB2は、ACK(肯定応答)・・・と、CoMPに関する制御情報・・・をeNB1に送る・・・。」と記載されており、上記(4)からも、eNB2は、CoMP協調集合設定要求への応答(CoMP制御情報)をeNB1に送ることが見て取れる。
そして、上記(6)の[0089]には、「無線基地局間(eNB1とeNB2)で通信されるCoMPに関する制御情報・・・としては、CoMP送受信の機能の有無の情報が必要最小限の情報である」ことが記載されており、また、同[0091]には、「eNB2は、CoMP送受信の機能を有していることを示す情報・・・をeNB1に通知する」ことが記載されている。
そうすると、引用例3の上記(3)、(4)、及び(6)には、無線端末UE1、無線端末UE2から報告されたセル2の下り信号の受信品質が所定の条件を満たしていた場合、協調集合1へのセル2の追加のトリガーがかかり、まず無線基地局eNB1は、セル2を管理する無線基地局eNB2に対して、無線基地局eNB1との協調によるCoMP送受信を行うための準備として、協調集合設定の要求を行い、無線基地局eNB2は、協調集合設定の要求への応答と、CoMP送受信の機能を有していることを示す情報を無線基地局eNB1に通知する、第1の実施形態、が記載されているといえる。

ところで、上記(5)の[0082]及び[0083]には、「本実施形態では、UEからのeNBヘ送信される測定報告・・・を基に、協調集合・・・の更新のトリガーがかかっているが、X2セットアップ要求・・・をトリガーとして、協調集合・・・の更新を行うようにしてもよい。つまり、X2セットアップ要求/応答・・・に、CoMPに関する制御情報を追加するようにしてもよい。」と記載されている。
ここで、上記(5)の「本実施形態」とは、上記(3)、(4)、及び(6)の記載を含む前記「第1の実施形態」を意味することが明らかであり、また上記(5)の「X2セットアップ要求・・・をトリガーとして、協調集合・・・の更新を行うようにしてもよい。つまり、X2セットアップ要求/応答・・・に、CoMPに関する制御情報を追加するようにしてもよい。」という記載は、上記(3)の[0068]に記載された「協調集合1へのセル2の追加のトリガー」を、同[0068]の「UE1、UE2から報告されたCell2の下り信号の受信品質が所定の条件を満たしていた」ことから、「X2セットアップ要求」へと変更するとともに、X2セットアップ要求/応答にCoMPに関する制御情報を追加するようにして、協調集合の更新を行うように変更した代替実施形態、を開示しているといえる。

以上をまとめると、引用例3の上記(3)ないし(6)には、X2セットアップ要求をトリガーとして、まず無線基地局eNB1が、無線基地局eNB2に対してX2セットアップ要求を行い、無線基地局eNB2が、X2セットアップ応答にCoMP送受信の機能を有していることを示す情報を追加するようにして、協調集合を更新すること、が記載されている、といえる。

ウ 上記(3)の [0077]には、「eNB1、eNB2は、協調集合・・・の更新が完了した後、実際にCoMP送受信を行うUEおよび送受信形態を決定し、実行する」ことが記載されているから、引用例3には、無線基地局eNB1、無線基地局eNB2は、協調集合の更新が完了した後、前記無線端末UEとCoMP送受信を行うこと、が記載されているといえる。

以上を総合すると、引用例3には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 移動可能な無線端末UEおよびこの無線端末UEとCoMP送受信が可能な無線基地局eNB1および無線基地局eNB2を含む無線通信システムであって、
CoMP(Coordinated MultiPoint)は、複数の基地局が特定の無線端末UEに同時に下りデータを送信したり、特定の無線端末UEからの上りデータを複数の基地局が同時に受信したりする技術であり、CoMPに関しては協調集合が定義されており、協調集合は、下りデータチャネルで無線端末UEにデータを送信する際に直接的又は間接的に関わるセルの集合であり、
X2セットアップ要求をトリガーとして、まず無線基地局eNB1が、無線基地局eNB2に対してX2セットアップ要求を行い、無線基地局eNB2が、X2セットアップ応答にCoMP送受信の機能を有していることを示す情報を追加するようにして、協調集合を更新し、
無線基地局eNB1、無線基地局eNB2は、協調集合の更新が完了した後、前記無線端末UEとCoMP送受信を行う無線通信システム。」

第5 対比及び判断

本願発明と引用発明とを対比する上で、事案に鑑みて、始めに、本願発明の第2段落に記載された発明特定事項と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「移動可能な無線端末UE」は、本願発明の「移動端末」に含まれる。
また、引用発明の「無線基地局eNB1および無線基地局eNB2」は、「この無線端末UEとCoMP送受信が可能な」ものであり、また、引用発明において「CoMP(Coordinated MultiPoint)は、複数の基地局が特定の無線端末UEに同時に下りデータを送信したり、特定の無線端末UEからの上りデータを複数の基地局が同時に受信したりする技術であ」り、さらに、前記「CoMP(Coordinated MultiPoint)」が多地点協調を意味することは無線通信分野における技術常識である。
そうすると、引用発明の無線基地局eNB2がX2セットアップ応答に追加する「CoMP送受信の機能を有していることを示す情報」は、無線基地局eNB2が、協調して、無線基地局eNB1と同時に特定の無線端末UEに下りデータを送信したり、特定の無線端末UEからの上りデータを無線基地局eNB1と同時に受信したりする機能を有していることを示す情報、すなわち、無線基地局eNB2が無線基地局eNB1と協調して、無線基地局eNB1と同時に特定の無線端末UEと無線通信することが可能な無線基地局であることを示す情報であるから、引用発明の「CoMP送受信の機能を有していることを示す情報」は、基地局のタイプが他の基地局と共同で移動端末と無線通信することが可能なタイプであることを示す情報、に含まれるといえる。

ところで、引用発明において、「X2」が「基地局間インタフェース」に含まれること、また、引用発明の「X2セットアップ応答」は、X2におけるセットアップの要求に対する応答のメッセージを意味することは、いずれも無線通信分野における技術常識であるから、引用発明の「X2セットアップ応答」は、本願発明の「基地局間インタフェースにおけるセットアップのメッセージ」に含まれるといえる。
そして、引用発明において、「無線基地局eNB2が、X2セットアップ応答に・・・情報を追加する」ことは、情報を、X2セットアップ応答を用いて無線基地局eNB2から無線基地局eNB1へ通知することを意味し、情報を、基地局間インタフェースにおけるセットアップのメッセージを用いて基地局から他の基地局に通知することに含まれるといえる。

そうすると、引用発明の「無線基地局eNB2」及び「無線基地局eNB1」は、本願発明の「第1基地局」及び「第2基地局」にそれぞれ含まれるといえる。

以上をまとめると、引用発明の「移動可能な無線端末UEおよびこの無線端末UEとCoMP送受信が可能な無線基地局eNB1および無線基地局eNB2を含む無線通信システム」において、「CoMP(Coordinated MultiPoint)は、複数の基地局が特定の無線端末UEに同時に下りデータを送信したり、特定の無線端末UEからの上りデータを複数の基地局が同時に受信したりする技術であり、CoMPに関しては協調集合が定義されており、協調集合は、下りデータチャネルで無線端末UEにデータを送信する際に直接的又は間接的に関わるセルの集合であり、X2セットアップ要求をトリガーとして、まず無線基地局eNB1が、無線基地局eNB2に対してX2セットアップ要求を行い、無線基地局eNB2が、X2セットアップ応答にCoMP送受信の機能を有していることを示す情報を追加するようにして、協調集合を更新」することは、「第1基地局のタイプが第2基地局と共同で前記移動端末と無線通信することが可能なタイプであることを示す情報を、基地局間インタフェースにおけるセットアップのメッセージを用いて第1基地局から第2基地局に通知」する点で、本願発明と共通するといえる。

イ 次に、本願発明の第1段落に記載された発明特定事項と引用発明とを対比する。
上記「ア」で検討したとおり、引用発明の「移動可能な無線端末UE」、「無線基地局eNB2」、及び「無線基地局eNB1」は、本願発明の「移動端末」、「第1基地局」、「第2基地局」にそれぞれ含まれる。
また、引用発明において「この無線端末UEとCoMP送受信可能」であることは、本願発明において「この移動端末と無線通信が可能」であることに含まれる。そして、そのような「無線端末UE」を含む引用発明の「無線通信システム」は、本願発明の「移動通信システム」に相当するといえる。
したがって、引用発明の「移動可能な無線端末UEおよびこの無線端末UEとCoMP送受信が可能な無線基地局eNB1および無線基地局eNB2を含む無線通信システム」は、「移動端末およびこの移動端末と無線通信が可能な第1基地局および第2基地局を含む移動通信システム」である点で、本願発明と共通する。

ウ 最後に、本願発明の第3段落に記載された発明特定事項と引用発明とを対比する。
上記「ア」で検討したとおり、引用発明において「CoMP(Coordinated MultiPoint)は、複数の基地局が特定の無線端末UEに同時に下りデータを送信したり、特定の無線端末UEからの上りデータを複数の基地局が同時に受信したりする技術であ」り、さらに、前記「CoMP(Coordinated MultiPoint)」が多地点協調を意味することは無線通信分野における技術常識であるから、引用発明において「無線基地局eNB1、無線基地局eNB2は、協調集合の更新が完了した後、前記無線端末UEとCoMP送受信を行う」ことは、無線基地局eNB2が無線基地局eNB1と協調して、無線基地局eNB1と同時に前記無線端末UEと無線通信することを意味し、本願発明の「第1基地局が第2基地局と共同で前記移動端末と無線通信すること」に含まれるといえる。
したがって、引用発明の「無線基地局eNB1、無線基地局eNB2は、協調集合の更新が完了した後、前記無線端末UEとCoMP送受信を行う無線通信システム」は、「第1基地局が第2基地局と共同で前記移動端末と無線通信することを特徴とする移動通信システム」である点で本願発明と共通する。

エ 以上を総合すると、本願発明と引用発明は、
「 移動端末およびこの移動端末と無線通信が可能な第1基地局および第2基地局を含む移動通信システムであって、
第1基地局のタイプが第2基地局と共同で前記移動端末と無線通信することが可能なタイプであることを示す情報を、基地局間インタフェースにおけるセットアップのメッセージを用いて第1基地局から第2基地局に通知し、
第1基地局が第2基地局と共同で前記移動端末と無線通信することを特徴とする移動通信システム。」
である点で一致し、相違するところはない。
したがって、本願発明は、引用発明である。

第6 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用例3に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-02-24 
結審通知日 2022-03-01 
審決日 2022-03-16 
出願番号 P2019-118025
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (H04W)
P 1 8・ 121- WZ (H04W)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 國分 直樹
特許庁審判官 圓道 浩史
本郷 彰
発明の名称 移動通信システム、および、基地局  
代理人 吉竹 英俊  
代理人 有田 貴弘  

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