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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04N
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 取り消して特許、登録 H04N
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04N
審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 取り消して特許、登録 H04N
管理番号 1384764
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-02-24 
確定日 2022-05-24 
事件の表示 特願2016−103703「符号化装置、復号装置及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年11月30日出願公開、特開2017−212555、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年5月24日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和2年 4月 1日付け:拒絶理由通知書
令和2年 6月 3日 :意見書提出および手続補正
令和2年 7月28日付け:最後の拒絶理由通知書
令和2年10月 5日 :意見書提出および手続補正
令和2年11月18日付け:補正の却下の決定および拒絶査定
令和3年 2月24日 :審判請求書の提出

第2 令和2年11月18日付けの補正の却下の決定の適否について
審判請求人は、審判請求書の「6.むすび」において、
「上述致しましたように、令和2年10月5日付け手続補正書による補正は適法な補正であり、且つ、本願発明は進歩性を有すると思料致します。
よって、原査定を取り消す、本願は特許をすべきものである、との審決を求めます。」
と主張しており、かつ審判請求と同時に補正がなされていないことから、令和2年11月18日付けの補正の却下の決定に対して不服の申立てがあるものと認められる。
したがって、令和2年10月5日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下するとしている、令和2年11月18日付けの補正の却下の決定の適否について以下に検討する。

1 補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により補正された特許請求の範囲は、次のとおりである。なお、補正箇所に下線を付した。

「 【請求項1】
動画像を構成するフレーム単位の原画像を符号化対象ブロックに分割して符号化する符号化装置であって、
イントラ予測モードを用いて予測画像を生成するイントラ予測部と、
前記イントラ予測部によって生成された前記予測画像と前記原画像との差分により残差信号を生成する残差信号生成部と、
前記残差信号生成部によって生成された残差信号に対して変換処理を施す変換部と、
前記予測画像の生成に用いる参照画素の位置と前記イントラ予測モードとに応じて、前記変換部から出力された信号に対する二次変換処理を制御する二次変換部とを具備し、
前記二次変換部は、前記参照画素の位置と前記イントラ予測モードとに応じて決定した二次変換群の中から選択した前記二次変換処理を適用することを特徴とする符号化装置。
【請求項2】
動画像を構成するフレーム単位の原画像を分割して得たブロック単位で復号する復号装置であって、
イントラ予測モードを用いて予測画像を生成するイントラ予測部と、
量子化された変換係数に対して、逆量子化処理を施す逆量子化部と、
前記イントラ予測モードと前記予測画像の生成に用いる参照画素の位置とに応じて、前記逆量子化部から出力された信号に対する二次逆変換処理を制御する二次逆変換部と、
前記二次逆変換部から出力された信号に対して逆変換処理を施す逆変換部とを具備し、
前記二次逆変換部は、前記参照画素の位置と前記イントラ予測モードとに応じて決定した二次逆変換群の中から選択した前記二次逆変換処理を適用することを特徴とする復号装置。
【請求項3】
コンピュータを、請求項1に記載の符号化装置として機能させるためのプログラム。
【請求項4】
コンピュータを、請求項2に記載の復号装置として機能させるためのプログラム。」

(2)本件補正前の記載
本件補正前の、令和2年6月3日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲は、次のとおりである。

「 【請求項1】
動画像を構成するフレーム単位の原画像を符号化対象ブロックに分割して符号化する符号化装置であって、
イントラ予測モードを用いて予測画像を生成するイントラ予測部と、
前記イントラ予測部によって生成された前記予測画像と前記原画像との差分により残差信号を生成する残差信号生成部と、
前記残差信号生成部によって生成された残差信号に対して直交変換処理を施す直交変換部と、
前記予測画像の生成に用いる参照画素の位置と前記イントラ予測モードとに応じて、前記直交変換部から出力された信号に対する二次直交変換処理を制御する二次直交変換部とを具備することを特徴とする符号化装置。
【請求項2】
前記二次直交変換部は、前記参照画素が、前記ブロックの上側に隣接する位置と、前記ブロックの左側に隣接する位置とにあるか否かに応じて、前記二次直交変換処理を制御する請求項1に記載の符号化装置。
【請求項3】
動画像を構成するフレーム単位の原画像を分割して得たブロック単位で復号する復号装置であって、
イントラ予測モードを用いて予測画像を生成するイントラ予測部と、
量子化された変換係数に対して、逆量子化処理を施す逆量子化部と、
前記イントラ予測モードと前記予測画像の生成に用いる参照画素の位置とに応じて、前記逆量子化部から出力された信号に対する二次逆直交変換処理を制御する二次逆直交変換部とを具備することを特徴とする復号装置。
【請求項4】
前記二次逆直交変換部は、前記参照画素が、前記ブロックの上側に隣接する位置と、前記ブロックの左側に隣接する位置とにあるか否かに応じて、前記二次逆直交変換処理を制御する請求項3に記載の復号装置。
【請求項5】
コンピュータを、請求項1又は2に記載の符号化装置として機能させるためのプログラム。
【請求項6】
コンピュータを、請求項3又は4に記載の復号装置として機能させるためのプログラム。」

(3)補正事項
上記(1)及び(2)より、本件補正は以下の補正事項1〜5を含むものである。
(補正事項1)補正前の請求項2、4を削除する補正。
(補正事項2)補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「直交変換処理を施す直交変換部」、「二次直交変換処理を制御する二次直交変換部」から、「直交」を削除し、それぞれ、「変換処理を施す変換部」、「二次変換処理を制御する二次変換部」とする補正。
(補正事項3)補正前の請求項3に係る発明を特定するために必要な事項である「二次逆直交変換処理を制御する二次逆直交変換部」から、「直交」を削除し、「二次逆変換処理を制御する二次逆変換部」に補正し、補正後の請求項2とする補正。
(補正事項4)補正前の請求項1、3に係る発明を特定するために必要な事項である「二次変換部」又は「逆二次変換部」が、補正後の請求項1、2において、「前記参照画素の位置と前記イントラ予測モードとに応じて決定した二次変換群(又は二次逆変換群)の中から選択した前記二次変換処理(又は前記二次逆変換処理)を適用する」ことを特定する補正。
(補正事項5)補正後の請求項2において、「前記二次逆変換部から出力された信号に対して逆変換処理を施す逆変換部を具備」することを特定する補正。

2 令和2年11月18日付けの補正の却下の決定の理由の概要
令和2年11月18日付けの補正の却下の決定の理由の概要は、次のとおりである。

令和2年10月5日にされた手続補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでない。
よって、この補正は特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、同法第53条第1項の規定により、令和2年10月5日付け手続補正書でした明細書、特許請求の範囲又は図面についての補正は、却下する。

なお、この補正は上述の理由により却下するが、予備的に、補正の目的についても検討するに、この補正は、特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当せず、同法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3 補正の却下の決定の適否についての検討
補正事項2について検討するに、「直交変換処理」及び「二次直交変換処理」から「直交」を削除し、それぞれ「変換処理」及び「二次変換処理」と補正することにより、補正後の「変換処理」及び「二次変換処理」は、直交変換以外の任意の変換を含むこととなると解することができる。
したがって、上記補正事項2は、特許請求の範囲を実質的に拡張するものであるといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとはいえない。
また、補正前の「直交変換処理を施す直交変換部」及び「二次直交変換処理を制御する二次直交変換部」の記載は、文理上その意味が明らかであり、不明瞭であるとはいえないから、これらから「直交」を削除することが、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるとはいえない。
さらに、補正事項2が、請求項の削除又は誤記の訂正を目的とするものであるともいえない。

したがって、補正事項2は、特許法第17条の2第5項各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しない。
補正事項3についても同様のことがいえる。

ここで、請求人は、審判請求書の「4.目的外補正(特許法第17条の2第5項第2号)について」において、以下のとおり主張している。

「審査官は、補正前の「直交変換」、「二次直交変換」という記載における「直交」を削除し、「変換」、「二次変換」とする補正は、特許請求の範囲を拡張するものであると認定しています。
しかしながら、上述のように、符号化の分野において「直交変換」は「変換」と略同義であって、特許請求の範囲を拡張するものではないといえます。
また、令和2年10月5日付け手続補正書による請求項1の補正は、「前記二次変換部は、前記参照画素の位置と前記イントラ予測モードとに応じて決定した二次変換群の中から選択した前記二次変換処理を適用する」という事項が主たる補正であり、請求項1に係る発明の範囲を減縮していることは明らかです。
さらに、「審査基準 第IV部 第4章 目的外補正」には、次のように規定されています。
『1.1 特許法第17条の2第5項
この規定は、発明の保護を十全に図るという特許制度の基本目的を考慮しつつ、迅速かつ的確な権利付与を確保する審査手続を確立するために、最後の拒絶理由通知以降の補正を、既になされた審査結果を有効に活用できる範囲内に制限する趣旨で設けられたものである。また、第50条の2の規定による通知に対する補正については、分割出願制度の濫用抑止の観点から同じ制限が課される。
第17条の2第5項の規定に違反する補正は、新規事項を追加するものとは異なり、発明の内容に関して実体的な不備をもたらすものではないから、無効理由とはされていない。したがって、同条第5項の規定の適用に当たっては、審査官は、その立法趣旨を十分に考慮し、本来保護されるべきものと認められる発明について、既になされた審査結果を有効に活用して迅速に審査をすることができると認められる場合についてまでも、必要以上に厳格に運用することがないようにする。』
ここで、令和2年4月1日(起案日)付けの拒絶理由通知では、
1. Shunsuke Iwamura et al., “Direction-dependent scan order with JEM tools”, Joint Video Exploration Team (JVET) of ITU-T SG 16 WP 3 and ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11 3rd Meeting: Geneva, CH, 2016-05-18, [JVET-C0069](version 2)
2. Jianle Chen et al., “Algorithm Description of Joint Exploration Test Model 2”, Joint Video Exploration Team (JVET) of ITU-T SG 16 WP 3 andISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11 2nd Meeting: San Diego, USA, 2016-03-25, [JVETB1001_v3] (version 3), pp.20-22
が引用文献として引用されています。これらの文献では、直交変換(orthogonal transform)ではなく、単に変換(transform)の用語が用いられています。
したがって、「直交」を削除する補正を行ったところで、既になされた審査結果を有効に活用できなくなる蓋然性が無いものと考えます。また、この拒絶理由通知書において、審査官殿が「変換」と「直交変換」を同一視していることも考慮しますと、審査官殿が特許法第17条の2第5項の規定を必要以上に厳格に運用していると言わざるをえません。
以上より、補正前の「直交変換」、「二次直交変換」という記載における「直交」を削除し、「変換」、「二次変換」とする補正は、目的外補正に該当しないと思料致します。」

上記主張について検討する。
補正前の「直交変換処理」及び「二次直交変換処理」と、これらから「直交」を削除した補正後の「変換処理」及び「二次変換処理」が略同義であるとしても、上述のとおり、補正後の「変換処理」及び「二次変換処理」は直交変換以外の任意の変換を含むことは明白であるから、本件補正により特許請求の範囲が実質的に拡張されるといえる。
そして、仮に請求項1の「前記二次変換部は、前記参照画素の位置と前記イントラ予測モードとに応じて決定した二次変換群の中から選択した前記二次変換処理を適用する」という補正事項(補正事項4に対応)が特許請求の範囲の減縮に当たるとしても、補正事項2、3が特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しない以上、本件補正が特許法第17条の2第5項の規定に適合するものであるとはいえない。
また、請求人は、「直交」を削除する補正を行ったところで、既になされた審査結果を有効に活用できなくなる蓋然性がなく、審査官が「変換」と「直交変換」を同一視していることも考慮すると、審査官が特許法第17条の2第5項の規定を必要以上に厳格に運用しているといわざるを得ない旨主張している。
しかしながら、「直交」を削除することにより、特許請求の範囲が実質的に拡張された結果、少なくとも拡張された部分についての特許性の判断を追加的にする必要が生じ得ることから、既になされた審査結果を有効に活用できなくなる蓋然性がないとまではいえない。
したがって、出願人の上記主張は採用できない。

4 まとめ
以上のことから、補正事項2、3を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当せず、同法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
したがって、本件補正に対する、原審における令和2年11月18日付けの補正の却下の決定は適法になされたものである。

第3 本件発明について
上記第2の「4 まとめ」のとおり、原審における補正の却下の決定は適法なものであり、本件補正は却下されているので、本願の請求項1〜6に係る発明は、令和2年6月3日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。
そして、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2022-05-09 
出願番号 P2016-103703
審決分類 P 1 8・ 57- WY (H04N)
P 1 8・ 55- WY (H04N)
P 1 8・ 56- WY (H04N)
P 1 8・ 537- WY (H04N)
P 1 8・ 121- WY (H04N)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 川崎 優
新井 寛
発明の名称 符号化装置、復号装置及びプログラム  
代理人 キュリーズ特許業務法人  

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