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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1384881
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-05-17 
確定日 2022-06-14 
事件の表示 特願2019−125064「情報処理装置、ネットワークシステム、電子データ出力方法、電子データ出力プログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年10月24日出願公開、特開2019−185803、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成24年6月21日に出願した特願2012−139350号の一部を、平成28年9月28日に新たな特許出願とした特願2016−189777号の一部を、平成30年5月10日に新たな特許出願とした特願2018−91367号の一部を、令和元年7月4日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和 2年 3月26日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 5月29日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 9月 8日付け:拒絶理由通知書
令和 2年11月13日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年 2月10日付け:拒絶査定(原査定)
令和 3年 5月17日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 4年 2月 9日付け:拒絶理由通知(当審拒絶理由通知)
令和 4年 4月 7日 :意見書、手続補正書の提出


第2 原査定の概要

原査定(令和3年2月10日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1〜11に係る発明は、以下の引用文献A〜Hに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.特開2007−49271号公報
B.特開2006−163793号公報(周知技術を示す文献)
C.特開2006−243907号公報(周知技術を示す文献)
D.特開2011−66561号公報(周知技術を示す文献)
E.特開2008−228271号公報(周知技術を示す文献)
F.特開2009−55413号公報(周知技術を示す文献)
G.特開2011−232819号公報(周知技術を示す文献)
H.特開2012−49751号公報(周知技術を示す文献)


第3 当審拒絶理由の概要

当審拒絶理由(令和4年2月9日付け拒絶理由通知)の概要は次のとおりである。

本願請求項1〜11に係る発明は、以下の引用文献1〜9に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2007−49271号公報(拒絶査定時の引用文献A)
2.特開2006−163793号公報(拒絶査定時の引用文献B)
3.特開2006−243907号公報(拒絶査定時の引用文献C)
4.特開2011−66561号公報(拒絶査定時の引用文献D)
5.特開2008−228271号公報(拒絶査定時の引用文献E)
6.特開2009−55413号公報(拒絶査定時の引用文献F)
7.特開2011−232819号公報(拒絶査定時の引用文献G)
8.特開2012−49751号公報(拒絶査定時の引用文献H)
9.特開2008−211507号公報(当審で新たに引用した文献)


第4 本願発明

本願請求項1〜12に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」〜「本願発明12」という。)は、令和4年4月7日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1〜12に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1〜12は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
対象となる電子機器との間の物理的な距離と、前記電子機器から送信された信号を受信する際の受信強度とが相関関係を持つ通信方式で通信を行う第1の通信インタフェースを有し、前記第1の通信インタフェースとは異なる物理的な距離に依存しない通信方式で通信を行う第2の通信インタフェースを介して、複数の電子機器のうちの特定した電子機器へ電子データの出力要求が可能な情報処理装置であって、
前記第1の通信インタフェースを介して、1以上の電子機器それぞれから物理的な距離に依存しない通信方式で通信をするための接続情報を含む電子機器情報を受信する受信手段と、
前記受信手段によって前記電子機器情報それぞれを受信した際の前記第1の通信インタフェースにおける受信強度に基づいて、前記情報処理装置の最も近くに位置する一の電子機器を特定し、前記第2の通信インタフェースを介した前記電子データの出力要求に用いる特定した前記一の電子機器に接続するための前記接続情報を特定する接続情報特定手段と、
前記接続情報特定手段により特定された前記接続情報に基づいて、前記第2の通信インタフェースを介して電子データの出力を要求する出力要求手段と、を有する情報処理装置。
【請求項2】
前記接続情報特定手段は、
前記受信手段によって前記電子機器情報それぞれを受信した際の前記第1の通信インタフェースにおける受信強度に基づいて、前記第1の通信インタフェースを介して受信する前記接続情報であって、前記第2の通信インタフェースを介した前記電子データの出力要求に用いる前記接続情報を特定することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記接続情報は、前記受信手段によって受信する前記電子機器情報に含まれることを特徴とする請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記接続情報特定手段は、
前記第2の通信インタフェースを介した前記電子データの出力要求に用いる一の接続情報として、前記一の電子機器のIPアドレスを特定することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記接続情報特定手段は、
前記受信手段によって前記電子機器情報それぞれを受信した際の前記第1の通信インタフェースにおける受信強度が最大であった電子機器情報の発信元の前記接続情報を特定することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記接続情報特定手段は、
前記接続情報特定手段によって特定された前記接続情報を宛先とする接続性確認の結果がNGだった場合、前記受信強度が次に大きかった電子機器情報の発信元の前記接続情報を特定することを特徴とする請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記出力要求手段は、
前記情報処理装置が保存している前記電子データの出力を要求することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記第2の通信インタフェースは、無線LAN通信を行うインタフェースであることを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記物理的な距離に依存しない通信方式はルータを介して通信する通信方式であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
電子データを出力する複数の電子機器と、対象となる電子機器間との間の物理的な距離と、前記電子機器から送信された信号を受信する際の受信強度とに相関関係を持つ通信方式で通信を行う第1の通信インタフェースを有し、前記第1の通信インタフェースとは異なる物理的な距離に依存しない通信方式で通信を行う第2の通信インタフェースを介して、複数の電子機器のうちの特定した電子機器へ電子データの出力要求が可能な情報処理装置と、を有するネットワークシステムであって、
前記第1の通信インタフェースを介して、電子機器情報を1以上の電子機器それぞれから物理的な距離に依存しない通信方式で通信をするための接続情報を含む電子機器情報を受信する受信手段と、
前記受信手段によって前記電子機器情報それぞれを受信した際の前記第1の通信インタフェースにおける受信強度に基づいて、前記情報処理装置の最も近くに位置する一の電子機器を特定し、前記第2の通信インタフェースを介した前記電子データの出力要求に用いる特定した前記一の電子機器に接続するための前記接続情報を特定する接続情報特定手段と、
前記接続情報特定手段により特定された前記接続情報に基づいて、前記第2の通信インタフェースを介して電子データの出力を要求する出力要求手段と、 を有するネットワークシステム。
【請求項11】
対象となる電子機器との間の物理的な距離と、前記電子機器から送信された信号を受信する際の受信強度とが相関関係を持つ通信方式で通信を行う第1の通信インタフェースを有し、前記第1の通信インタフェースとは異なる物理的な距離に依存しない通信方式で通信を行う第2の通信インタフェースを介して、複数の電子機器のうちの特定した電子機器へ電子データの出力要求が可能な情報処理装置が行う電子データ出力方法であって、
前記第1の通信インタフェースを介して、電子機器情報を1以上の電子機器それぞれから物理的な距離に依存しない通信方式で通信をするための接続情報を含む電子機器情報を受信する受信ステップと、
前記受信ステップによって前記電子機器情報それぞれを受信した際の前記第1の通信インタフェースにおける受信強度に基づいて、前記情報処理装置の最も近くに位置する一の電子機器を特定し、前記第2の通信インタフェースを介した前記電子データの出力要求に用いる特定した前記一の電子機器に接続するための前記接続情報を特定する接続情報特定ステップと、
前記接続情報特定ステップにより特定された前記接続情報に基づいて、前記第2の通信インタフェースを介して電子データの出力を要求する出力要求ステップと、
を有する電子データ出力方法。
【請求項12】
対象となる電子機器との間の物理的な距離と、前記電子機器から送信された信号を受信する際の受信強度とが相関関係を持つ通信方式で通信を行う第1の通信インタフェースを有し、前記第1の通信インタフェースとは異なる物理的な距離に依存しない通信方式で通信を行う第2の通信インタフェースを介して、複数の電子機器のうちの特定した電子機器へ電子データの出力要求が可能な情報処理装置を、
前記第1の通信インタフェースを介して、電子機器情報を1以上の電子機器それぞれから物理的な距離に依存しない通信方式で通信をするための接続情報を含む電子機器情報を受信する受信手段、
前記受信手段によって前記電子機器情報それぞれを受信した際の前記第1の通信インタフェースにおける受信強度に基づいて、前記情報処理装置の最も近くに位置する一の電子機器を特定し、前記第2の通信インタフェースを介した前記電子データの出力要求に用いる特定した前記一の電子機器に接続するための前記接続情報を特定する接続情報特定手段、
前記接続情報特定手段により特定された接続情報に基づいて、前記第2の通信インタフェースを介して電子データの出力を要求する出力要求手段、
として機能させるための電子データ出力プログラム。」


第5 引用文献、引用発明等

ア.引用文献5について
(ア)当審拒絶理由に引用された、引用文献5(特開2008−228271号公報)には、図面とともに次の記載がある。

「【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来装置では、相互に無線到達範囲内にある複数の無線通信端末装置間の無線通信ネットワークによる接続に関し、一の無線通信端末装置から無線通信ネットワークにより接続可能な無線通信端末装置が複数検出され、当該複数の無線通信端末装置が当該一の無線通信端末装置のユーザに対し当該一の無線通信端末装置の表示画面上で表示されるような構成を想定した場合、当該表示にかかる複数の無線通信端末装置の固有情報と実際の複数の無線通信端末装置との間の対応が付けにくく、表示される複数の無線通信装置のうちのいずれを選択すればよいかが解りにくいという問題があった。
【0004】
具体例として、例えば会社内の異なるオフィスや異なるフロアにノートブック型のパーソナルコンピュータ装置(以下ノートPCと称する場合がある)を持ち込んで作業する場合を想定すると、ユーザが当該自己のノートPC上の操作によって、無線通信ネットワークにより接続されたプリンタ装置を利用して資料を印刷しようとする場合、当該自己のノートPC上の操作によって印刷可能なプリンタ装置を探す必要がある。
【0005】
このような場合、例えば多数のプリンタ装置の候補が自己のノートPCの画面上に一覧表示されるような構成を想定すると、ユーザは当該多数の候補のうちのいずれのプリンタ装置を使用すれば最も早く印刷物が得られるか、あるいは最も近くにあるプリンタ装置はどれなのか等が判りにくかった。
【0006】〜【0008】(略)」

「【発明の効果】
【0011】
したがって、本発明によれば、他の無線通信端末装置を無線通信ネットワークで接続する際、接続先の候補の表示順序が電波強度に応じて自動的に並べられる。このため、ユーザが選択操作する際に、どの無線通信端末装置を選択すればよいかを簡単に判断することができるという効果が得られる。
【0012】
ここで一般に電波強度がより大きい無線通信端末装置はより近くに位置するものと判断できる。
【0013】
このように、接続先の候補の表示順序が電波強度に応じて自動的に並べられるため、仮に最も電波強度の大きい無線通信端末装置が他のユーザによって使用されているような場合であっても、次に電波強度の大きい(すなわち次に近く位置する) 無線通信端末装置を即座に選択することができるようになる。
【0014】(略)」

「【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の第1実施例にかかる無線通信ネットワークシステムの一例を示している。
【0017】
この無線通信ネットワークシステムは、各々が無線通信端末装置としての、1台のパーソナルコンピュータ装置PCと、複数のプリンタ装置PP1〜PPnを、無線ローカルエリアネットワーク(すなわち無線LAN)を用いて接続したものであり、この場合、全てのプリンタ装置PP1〜PPnは、パーソナルコンピュータ装置PCの無線LANアダプタ(後述)との間で通信可能な物理的な領域AR(電波到達範囲)に位置している。
【0018】
無線LANとしては、IEEE 802.11a/b/gに規定されている通信方式が適用され、パーソナルコンピュータ装置PCとプリンタ装置PP1〜PPnとの間の通信モードは、アドホックモード(ピア・ツー・ピア型の通信モード)が適用される。
【0019】
図2は、パーソナルコンピュータ装置PCの構成の一例を示している。
【0020】
同図に示す如く、パーソナルコンピュータ装置PCは、CPU1,ROM2,RAM3,キャラクタジェネレータ4,時計回路5,無線LAN通信制御部7,無線LANアダプタ6,磁気ディスク装置8,光学媒体駆動装置9,表示制御部12,CRT画面表示装置11,入力制御部15,キーボード装置13,画面表示装置14,USBホストユニット16及びソケット17を有する。
【0021】
これらのうちCPU(中央処理装置)1は、このパーソナルコンピュータ装置PCの動作制御を行うものであり、ROM(リード・オンリ・メモリ)2は、CPU1が起動時に実行するプログラムや必要なデータ等を記憶するためのものであり、RAM(ランダム・アクセス・メモリ)3は、CPU1のワークエリア等を構成するためのものである。
【0022】
キャラクタジェネレータ4は、図形文字の表示データを発生するためのものであり、時計回路5は、現在日時情報の出力或いは後述するタイマとしての機能を提供するためのものであり、無線LANアダプタ6は、他の無線通信端末装置との間で無線LANを構築するためのものであり、無線LAN通信制御部7は、無線LANを介して、他の無線通信端末装置との間で種々のデータをやりとりするための各種所定のプロトコルスイートの通信制御処理を実行するためのものである。
【0023】〜【0026】(略)
【0027】
図3は、プリンタ装置PP(すなわち上記プリンタ装置PP1〜PPnの各々)の構成の一例を示している。この場合、プリンタ装置PPは、用紙を収容したトレイを複数備えた多段給紙ユニットを備えている。
【0028】
同図のプリンタ装置PPは、システム制御部21,システムメモリ22,パラメータメモリ23,時計回路24,操作表示部25,ページバッファメモリ26,プリントユニット27、上記多段給紙ユニット28、無線LAN通信制御部7及び無線LANアダプタ29を有する。
【0029】〜【0030】(略)
【0031】
無線LANアダプタ29は、他の無線通信端末装置との間で無線LANを構築するためのものであり、無線LAN通信制御部30は、無線LANを介して、他の無線通信端末装置との間で種々のデータをやりとりするための各種所定のプロトコルスイートの通信制御処理を実行するためのものである。
【0032】(略)
【0033】
以上の構成で、パーソナルコンピュータ装置PCは、起動時に、無線LANを介してアクセス可能な他の全ての無線通信端末装置の識別情報を取得する。この場合は、無線LANアダプタ6の電波到達範囲である領域ARに存在する全てのプリンタ装置PP1〜PPnの識別情報を取得する。
【0034】
また、識別情報を取得する際に、所定の無線LAN用通信アプリケーションを利用して、プリンタ装置PP1〜PPnのそれぞれについて、受信電波強度を測定し、それらの測定値を保存しておく。なおこの受信電波強度の測定については図11とともに後述する。
【0035】
そして、例えば、文書作成アプリケーションを操作していたユーザが、印刷機能を選択したとき、プリンタ装置PP1〜PPnのいずれか1つをユーザに選択させるための操作画面を表示する。その際、既に保存されている各プリンタ装置PP1〜PPnの受信電波強度の測定値の降順(すなわち受信電波強度が大きい値を最初に配置し、順次小さい値を配置する並べ方)に、プリンタ装置PP1〜PPnの識別情報(通信確立時にプリンタより通知される識別情報)を配列して表示する。このような表示形態とすることにより、ユーザが複数のプリンタ装置PP1〜PPnのうちから一のプリンタ装置PPを選択する際、どのプリンタ装置PPを選べばよいかにつき、あまり迷わないで済むようにすることが可能である。
【0036】
すなわち、全てのプリンタ装置PPが同じ無線LANアダプタ29を使用している場合、受信電波強度が強いものほど、パーソナルコンピュータ装置PCとの間の通信が効率よく行えると考えられる。また、受信電波強度が強いものほど、パーソナルコンピュータ装置PCに対し物理的に近距離に設置されているとも考えられる。
【0037】
そこで、受信電波強度の測定値の降順にプリンタ装置PPの識別情報を並べることで、ユーザは、より通信効率の良好な、あるいは、より近くに設置されているプリンタ装置PPを簡単に選択することができるようになる。
【0038】〜【0045】(略)
【0046】
図4は、この場合のパーソナルコンピュータ装置PCの処理の一例を示している。
【0047】
パーソナルコンピュータ装置PCはRAM3あるいはROM2に格納された制御プログラムによって動作するCPU1の制御の下、以下の動作を行う。
【0048】
すなわち図4中、パーソナルコンピュータ装置PCはプリンタ装置PPを検出すると(処理101)、検出したプリンタ装置PPからその識別情報を取得するとともに(処理102)、当該プリンタ装置PPとの間の通信の受信電波強度を測定し(処理103)、識別情報と受信電波強度の測定値とを関連づけてRAM3あるいは磁気ディスク装置8に記憶する(処理104)。尚上記処理101〜103は無線LAN通信制御部7及び無線LANアダプタ6の機能によって実施される。
【0049】
ここでパーソナルコンピュータ装置PCは全てのプリンタ装置PP1〜PPnについて処理を終了したかどうかを調べ(判断105)、判断105の結果がNOになるときには、処理102へ戻り、別のプリンタ装置PPについて、識別情報と受信電波強度の測定値との取得を行う。
【0050】
ここで、全てのプリンタ装置PP1〜PPnについて処理を終了した場合、判断105の結果がYESとなり、次にユーザにより印刷機能が選択されるかどうかを調べる(判断106)。判断106の結果がNOになるときには、処理101へ戻り、同様の処理を繰り返し行う。
【0051】
ユーザによるキーボード装置13あるいは画面指示装置14を使用した操作によって印刷機能が選択され、判断106の結果がYESになると、処理104にて記憶した受信電波強度順にプリンタ装置PPの識別情報を配列した表示情報をCRT画面表示装置11上でユーザに提示し(処理107)、ユーザが当該表示を見ていずれかのプリンタ装置PPを選択するまで待つ(判断108のNOループ)。
【0052】
ユーザがキーボード装置13あるいは画面指示装置14を使用した操作によっていずれかのプリンタ装置PPを選択して判断108の結果がYESになると、選択されたプリンタ装置PPへ、無線LAN通信制御部7及び無線LANアダプタ6の機能によって無線LANを介して接続し(処理109)、前記の如くの応答要求のパケットを送信する(処理110)。この場合は、その後に、パーソナルコンピュータ装置PCからプリンタ装置PPに対し、無線LAN通信制御部7及び無線LANアダプタ6の機能によって無線LANを介して印刷ジョブを示す情報を送信し、これを受けたプリンタ装置PPは、受信した印刷ジョブを示す情報に含まれる印刷データの印刷物を記録出力する。」

「【0074】
また、上記の如く再度接続要求が発生した時点で、プリンタ装置P1がパーソナルコンピュータ装置C2と無線通信ネットワークにより接続されている場合には、プリンタ装置P1ではなく別のプリンタ装置P2と無線通信ネットワークによって接続するように、パーソナルコンピュータ装置C1がユーザを誘導する動作、例えばその画面上でその旨の表示を行う等の動作を行うとよい。すなわち、例えば、パーソナルコンピュータ装置の画面上で複数のプリンタ装置の一覧を表示中、当該プリンタ装置P1の識別情報をグレイアウト(すなわち、その表示色を黒からグレイに変える)ことにより、ユーザに対し、当該プリンタ装置P1を選択することが出来ない旨を表示する方法をとることが可能である。この方法により、ユーザは別のプリンタ装置を選択するように誘導される。」

「【0129】
なお、上述した各実施例では、パーソナルコンピュータ装置とプリンタ装置との間の通信を無線LANのピア・ツー・ピア通信モードを用いて行う場合について説明したが、本発明は、無線LANのアクセスポイントを中継して通信する「インフラストラクチャモード」を適用した場合でも適用することができる。
【0130】
さらに、本発明は、無線LAN以外の比較的近距離向けの無線通信、例えば、ワイヤレスUSBやブルートゥースなど、いわゆるPAN(Personal Area Network)を適用した場合についても、同様にして適用することができる。」

(イ)上記記載から、引用文献5には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

(a)無線通信ネットワークシステムは、各々が無線通信端末装置としての、1台のパーソナルコンピュータ装置PCと、複数のプリンタ装置PP1〜PPnを、無線ローカルエリアネットワーク(すなわち無線LAN)を用いて接続したものであり(【0017】)、パーソナルコンピュータ装置PCは、CPU1、ROM2、RAM3、無線LAN通信制御部7、無線LANアダプタ6、磁気ディスク装置8を有し(【0020】)、無線LANアダプタ6は、他の無線通信端末装置との間で無線LANを構築するためのものであり、無線LAN通信制御部7は、無線LANを介して、他の無線通信端末装置との間で種々のデータをやりとりするための各種所定のプロトコルスイートの通信制御処理を実行するためのものである(【0022】)。

(b)パーソナルコンピュータ装置PCは、起動時に、無線LANを介してアクセス可能な他の全ての無線通信端末装置の識別情報、この場合は、無線LANアダプタ6の電波到達範囲である領域ARに存在する全てのプリンタ装置PP1〜PPnの識別情報を取得し(【0033】)、識別情報を取得する際に、所定の無線LAN用通信アプリケーションを利用して、プリンタ装置PP1〜PPnのそれぞれについて、受信電波強度を測定し、それらの測定値を保存しておく(【0034】)。

(c)文書作成アプリケーションを操作していたユーザが、印刷機能を選択したとき、プリンタ装置PP1〜PPnのいずれか1つをユーザに選択させるための操作画面を表示し、その際、既に保存されている各プリンタ装置PP1〜PPnの受信電波強度の測定値の降順(すなわち受信電波強度が大きい値を最初に配置し、順次小さい値を配置する並べ方)に、プリンタ装置PP1〜PPnの識別情報(通信確立時にプリンタより通知される識別情報)を配列して表示し(【0035】)、全てのプリンタ装置PPが同じ無線LANアダプタ29を使用している場合、受信電波強度が強いものほど、パーソナルコンピュータ装置PCに対し物理的に近距離に設置されていると考えられ(【0036】)、受信電波強度の測定値の降順にプリンタ装置PPの識別情報を並べることで、ユーザは、より近くに設置されているプリンタ装置PPを簡単に選択することができる(【0037】)。

(d)この場合のパーソナルコンピュータ装置PCの処理の一例として、パーソナルコンピュータ装置PCはRAM3あるいはROM2に格納された制御プログラムによって動作するCPU1の制御の下、以下の動作を行う(【0046】〜【0047】):
パーソナルコンピュータ装置PCはプリンタ装置PPを検出すると(処理101)、検出したプリンタ装置PPからその識別情報を取得するとともに(処理102)、当該プリンタ装置PPとの間の通信の受信電波強度を測定し(処理103)、識別情報と受信電波強度の測定値とを関連づけてRAM3あるいは磁気ディスク装置8に記憶し(処理104)、上記処理101〜103は無線LAN通信制御部7及び無線LANアダプタ6の機能によって実施される(【0048】)、
パーソナルコンピュータ装置PCは全てのプリンタ装置PP1〜PPnについて処理を終了したかどうかを調べ(判断105)、判断105の結果がNOになるときには、別のプリンタ装置PPについて、識別情報と受信電波強度の測定値との取得を行う(【0049】)、
全てのプリンタ装置PP1〜PPnについて処理を終了した場合、次にユーザにより印刷機能が選択されるかどうかを調べる(判断106)(【0050】)、
ユーザによる操作によって印刷機能が選択されると、記憶した受信電波強度順にプリンタ装置PPの識別情報を配列した表示情報をユーザに提示し(処理107)、ユーザが当該表示を見ていずれかのプリンタ装置PPを選択するまで待つ(【0051】)、
ユーザがいずれかのプリンタ装置PPを選択すると、選択されたプリンタ装置PPへ、無線LAN通信制御部7及び無線LANアダプタ6の機能によって無線LANを介して接続し(処理109)、その後に、パーソナルコンピュータ装置PCからプリンタ装置PPに対し、無線LAN通信制御部7及び無線LANアダプタ6の機能によって無線LANを介して印刷ジョブを示す情報を送信し、これを受けたプリンタ装置PPは、受信した印刷ジョブを示す情報に含まれる印刷データの印刷物を記録出力する(【0052】)。

(ウ)上記(ア)および(イ)から、引用文献5には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

〈引用発明〉
「無線通信ネットワークシステムは、各々が無線通信端末装置としての、パーソナルコンピュータ装置と、複数のプリンタ装置を、無線LANを用いて接続したものであり、
パーソナルコンピュータ装置は、CPU、ROM、RAM、無線LAN通信制御部、無線LANアダプタ、磁気ディスク装置を有し、前記無線LANアダプタは、他の無線通信端末装置との間で無線LANを構築するためのものであり、前記無線LAN通信制御部は、無線LANを介して、他の無線通信端末装置との間で種々のデータをやりとりするための各種所定のプロトコルスイートの通信制御処理を実行するためのものであり、
パーソナルコンピュータ装置は、起動時に、無線LANを介してアクセス可能な他の全ての無線通信端末装置であるプリンタ装置の識別情報を取得し、前記識別情報を取得する際に、所定の無線LAN用通信アプリケーションを利用して、プリンタ装置のそれぞれについて、受信電波強度を測定し、それらの測定値を保存しておき、
ユーザが印刷機能を選択したとき、複数のプリンタ装置のいずれか1つをユーザに選択させるための操作画面を表示し、その際、既に保存されている各プリンタ装置の受信電波強度の測定値の降順(すなわち受信電波強度が大きい値を最初に配置し、順次小さい値を配置する並べ方)に、複数のプリンタ装置の識別情報を配列して表示し、受信電波強度が強いプリンタ装置ほど、パーソナルコンピュータ装置に対し物理的に近距離に設置されていると考えられ、受信電波強度の測定値の降順にプリンタ装置の識別情報を並べることで、ユーザは、より近くに設置されているプリンタ装置を簡単に選択することができる、
無線通信ネットワークシステムにおけるパーソナルコンピュータ装置であって、
パーソナルコンピュータ装置は、RAMあるいはROMに格納された制御プログラムによって動作するCPUの制御の下、
無線LAN通信制御部及び無線LANアダプタの機能によって、パーソナルコンピュータ装置はプリンタ装置を検出すると、検出したプリンタ装置からその識別情報を取得するとともに、当該プリンタ装置との間の通信の受信電波強度を測定し、
識別情報と受信電波強度の測定値とを関連づけてRAMあるいは磁気ディスク装置に記憶し、
全てのプリンタ装置について処理を終了していないときには、別のプリンタ装置について、識別情報と受信電波強度の測定値との取得を行い、
全てのプリンタ装置について処理を終了した場合、次にユーザにより印刷機能が選択されるかどうかを調べ、
ユーザによる操作によって印刷機能が選択されると、記憶した受信電波強度順にプリンタ装置の識別情報を配列した表示情報をユーザに提示し、
ユーザが当該表示を見ていずれかのプリンタ装置を選択するまで待ち、
ユーザがいずれかのプリンタ装置を選択すると、選択されたプリンタ装置へ、無線LAN通信制御部及び無線LANアダプタの機能によって無線LANを介して接続し、
その後に、パーソナルコンピュータ装置からプリンタ装置に対し、無線LAN通信制御部及び無線LANアダプタの機能によって無線LANを介して印刷ジョブを示す情報を送信し、これを受けたプリンタ装置は、受信した印刷ジョブを示す情報に含まれる印刷データの印刷物を記録出力する、
無線通信ネットワークシステムにおけるパーソナルコンピュータ装置。」

イ.引用文献1について
(ア)当審拒絶理由に引用された、引用文献1(特開2007−49271号公報)には、図面とともに次の記載がある。

「【実施例】
【0031】
(実施例1)
図4は本発明に係わる画像転送システムの全体構成を示す説明図である。その図4において、11は携帯情報端末装置としてのPTP−IP対応のデジタルカメラ、12はPTP−IP対応のプリンタ、13はローカルエリアネットワークである。
【0032】
ここで、PTP(Picture Transfer Protocol)とは画像データの転送を目的とするプロトコルであり、公知の通信規約である。PTP仕様では、物理層は特に規定されていない。デジタルカメラとプリンタ間でダイレクトにプリントアウトすることが可能な”Pict Bridge”においてPTPが使用されている。”Pict Bridge”では、機器間はUSBケーブルを用いたUSBで接続される。
【0033】
PTP−IP(”Picture Transfer Protocol ”over TCP/IP networks )とは、Ethernetや無線LAN等のTCP/IPのネットワーク上で画像データの転送を可能とするプロトコルである。
【0034】
デジタルカメラ11は、図5に示すように、CPU201、ROM202、SDRAM205、フラッシュメモリ206、ネットワーク回路208、Bluetooth(R)回路209、IrDA回路210、デジタルカメラのユーザインターフェース211、残余のデジタルカメラ機能部220を有する。ROM202は処理部203、204を有し、フラッシュメモリ206はプリンタ情報保存部207を有する。
【0035】
プリンタ12は、図6に示すように、CPU301、ROM302、SDRAM305、フラッシュメモリ306、ネットワーク回路308、Bluetooth(R)回路309、IrDA回路310、プリンタのユーザインターフェース311、残余のプリンタ機能部320を有する。ROM302は処理部303、304を有する。
【0036】
デジタルカメラ11はローカルエリアネットワーク13に有線接続、無線LAN接続可能であるが、ここでは、無線LAN接続されるものとして説明する。また、そのデジタルカメラ11は、ここでは、基地局(アクセスポイント)を必要とするインフラストラクチャーモードで動作するものとして説明するが、プリンタ12と直接パケットデータの情報の授受を行うアドホックモードで動作するものとしても良い。
【0037】
なお、いずれの動作モードの場合にも、デジタルカメラ11にはLAN3上で動作させる際にIPアドレスが必要である。
【0038】
Bluetooth(R)回路209、309はBluetooth(R)規格に準拠した通信方式で無線の送受信を行うことが可能であり、図7はそのBluetooth(R)規格に準拠した通信方式で無線の送受信の概念図を示し、その送受信範囲はデジタルカメラ11を中心として半径約10mの範囲である。
【0039】
IrDA回路210、310はIrDA規格に準拠した通信方式で無線送受信を行う赤外線通信回路であり、図8はその概念図である。
【0040】
この発明に係わるデジタルカメラ11、プリンタ12は、PTP−IPに準拠してデジタルカメラ11により撮影した画像データをプリンタに無線送信可能とされている。
【0041】
その無線通信プロトコルは、図9に示す層構成とされ、プリンタ12の側からのみ接続開始要求がデジタルカメラ11に向かって送信される構造となっている。
【0042】
デジタルカメラ11に保存されている撮影画像を印刷処理(プリントアウト)したい場合には、所定の操作を行うと、デジタルカメラ11のLCDモニタ(表示部)11Aに印刷処理画面が表示される(図10のS.1)。ついで、LCDモニタ11Aに相手先のプリンタ情報があるかないかの問い合わせ画面が表示される(図10のS.2)。その問い合わせ画面の一例が図11Aに示されている。
【0043】
その問い合わせ画面で、「OK」ボタンを操作すると、プリンタ情報取得処理に移行する(図10のS.3)。プリンタ情報取得処理とは、プリンタのIPアドレスを取得する処理をいう。プリンタ情報取得処理では、検索手段を表示する検索手段表示画面がLCDモニタ11Aに表示される(図11BのS.31)。
【0044】
そのLCDモニタ11Aには「UPnP使用」、「Bluetooth(R)使用」、「IrDA使用」の文字が表示される。ユーザーが「UPnP使用」の文字を選択して、「OK」ボタンを操作すると「UPnP使用」による検索処理が実行され(図11BのS.32)、「Bluetooth(R)使用」の文字を選択して、「OK」ボタンを操作すると「Bluetooth(R)使用」の検索処理が実行され(図11BのS.33)、「IrDA使用」の文字を選択して、「OK」ボタンを操作すると「IrDA使用」の検索処理が実行される(図11のS.34)。プリンタの情報取得処理が終了すると(図11BのS.35)、プリンタ情報選択処理に移行する(図10のS4)。
【0045】
そのプリンタ情報選択処理では、例えば、図12に示すように、LCDモニタ11AにPTP−IP対応のプリンタ名、そのIPアドレス、性能等が表示される。ユーザがこのLCDモニタ11Aの表示画面を見て特定のレーザプリンタ、例えば、レーザプリンタP1を選択して、「OK」ボタンを操作すると、その特定のプリンタへ撮影画像が転送されて、デジタルカメラ11により撮影された画像がその特定のプリンタ12からプリントアウトされる(S.5)。
【0046】
以下、その検索処理の詳細について説明する。(UPnP使用によるPTP−IP対応プリンタの検索処理) デジタルカメラ11は、図13に示すように各プリンタに向けてUDPブロードキャスト(UPnPブロードキャスト)する。なお、UPnPとは、PnP(Plug and Play)の概念をネットワークに拡張した概念であり、UPnPそれ自体は公知である。
【0047】
プリンタ12は無線ブロードキャストに応答して少なくとも自己のIPアドレスを応答する。ここでは、自己のIPアドレスに加えてプリンタ名、性能等を含めて応答する。デジタルカメラ11はプリンタ12の応答を受信してIPアドレス等を取得して、この取得したIPアドレス等をフラッシュメモリ206のプリンタ情報保存部207に保存する。その取得された各プリンタ12のIPアドレス等は既述したように図12に示す表示手段としてのLCDモニタ11Aに表示される。
【0048】
ユーザがLCDモニタ11Aに表示されている各プリンタP1〜P3のうち特定のプリンタP1を選択して、「OK」ボタンを操作すると、選択されたプリンタP1に向けてUDPユニキャストパケットデータが無線送信される。
【0049】
プリンタP1はUDPユニキャストパケットデータを受信して、接続開始要求をデジタルカメラ11に向けて無線送信する。デジタルカメラ11はこのプリンタP1の接続開始要求を受信してプリンタP1に向けて応答し、これにより無線接続が確立され、この無線接続の確立によりデジタルカメラ11から撮影画像データがプリンタP1に転送され、プリンタP1は撮影画像のダイレクトプリントアウトを実行する。
【0050】
すなわち、CPU201、SDRAM205、フラッシュメモリ206、ネットワーク回路208、ユーザインターフェース211、処理部203、204は、総合して、プリンタ12に向けてUDPブロードキャストする無線ブロードキャスト手段と、プリンタ12の応答を受信してIPアドレスを取得するIPアドレス取得手段と、表示手段により表示されているプリンタを選択することにより選択されたプリンタに向けてUDPユニキャストパケットデータを無線送信する無線送信手段として機能し、LCDモニタ11AはIPアドレス取得手段により取得されたIPアドレスに対応するプリンタを表示する表示手段として機能する。
【0051】
CPU301、SDRAM305、フラッシュメモリ306、ネットワーク回路308、処理部303、304は、無線ブロードキャストに応答して少なくとも自己のIPアドレスを応答する無線応答手段と、UDPユニキャストパケットデータを受信して接続開始要求をデジタルカメラ11に向けて無線送信する接続開始要求無線送信手段と、接続開始要求に対するデジタルカメラ11からの応答に基づいて無線接続を確立する無線接続確立手段として機能する。(Bluetooth(R)使用によるPTPIP対応プリンタの検索処理) Bluetooth(R)検索処理を選択すると、図14に示すように、デジタルカメラ11に物理的に近いデバイス装置としてのプリンタ12の検索処理が実行される(S.11)。検索の結果、デジタルカメラ11の近傍に存在するプリンタ12のプリンタ名の取得処理が実行される(S.12)。ついで、Bluetooth(R)のサービスディスカバリプロトコル(SDP)を用いてプリンタ12のIPアドレスを取得する(S.13)。
【0052】
なお、そのIPアドレスを取得するために、プリンタ12の側のサービスディスカバリプロトコルのベンダー領域(製造会社が自由に使用できるBluetooth(R)のフォーマットの空き領域)に予めそのプリンタ12のIPアドレスを書き込んで置く。
【0053】
これにより、デジタルカメラ11はプリンタ12のIPアドレスを取得できる。以後、 ユーザがLCDモニタ11Aに表示されている各プリンタP1〜P3のうち特定のプリンタP1を選択して、「OK」ボタンを操作すると、選択されたプリンタP1に向けてUDPユニキャストパケットデータが無線送信される。
【0054】
プリンタP1はUDPユニキャストパケットデータを受信して、接続開始要求をデジタルカメラ11に向けて無線送信する。デジタルカメラ11はこのプリンタP1の接続開始要求を受信してプリンタP1に向けて応答し、これにより無線接続が確立され、この無線接続の確立によりデジタルカメラ11から撮影画像データがプリンタP1に転送され、プリンタP1は撮影画像のプリントアウトを実行する。
【0055】
ここでは、図12に示す形態で、レーザプリンタ名、IPアドレス、プリンタ性能等を表示させる構成としているが、これに限られるものではなく、図15(a)〜図15(c)にそれぞれ示すようにプリンタ名とカラー、モノクロの区別、プリンタ名とIPアドレスのみの表示、プリンタ名とカラー、モノクロの区別、処理速度等の性能表示をさせる構成であっても良い。
【0056】
このBluetooth(R)検索処理では、Bluetooth(R)回路209、309が、主として無線ブロードキャスト手段と無線応答手段としての役割を果たすことになる。
【0057】
このBluetooth(R)検索処理を用いると、多数のPTP−IP対応プリンタ12がローカルエリアネットワーク13に接続されている場合でも、自己が携帯するデジタルカメラ11を中心として10m四方に存在する比較的少数のPTP−IP対応プリンタ12のIPアドレスのみを取得でき、PTP−IP対応のプリンタ12の選択が容易となるという効果を奏する。(IrDA使用によるPTP−IP対応プリンタの検索処理) IrDA使用の検索処理を選択して、図8に示すように、デジタルカメラ11のIrDA回路210と特定のプリンタ12のIrDA回路310とを近づけると、赤外線送受信が図16に示すように確立される。
【0058】
ついで、デジタルカメラ11は特定のプリンタ12に向けてプリンタネットワークIPアドレス要求を送信する。そのプリンタ12はこれに応答してデジタルカメラ11に向けてそのプリンタIPアドレスを送信する。
【0059】
デジタルカメラ11はIPアドレスを取得すると、プリンタ名要求を送信し、プリンタ12はこれに応答してプリンタ名を送信する。デジタルカメラ11は、プリンタ名を取得すると、プリンタ機能、プリンタ性能要求を送信し、デジタルカメラ11はこれらの取得を完了すると、赤外線通信処理を切断する。
【0060】
そのプリンタ12の名称、IPアドレス、性能等は既述したのと同様に、LCDモニタ11Aに表示される。
【0061】
このIrDA使用の検索処理を用いると、特定の相手先との間で通信を確立して、情報量の小さい、IPアドレス、プリンタ名、プリンタ性能等を迅速に取得できるという効果を奏する。
【0062】
このIrDA検索処理では、IrDA回路210、310が主として無線ブロードキャスト手段と無線応答手段として機能する。
(実施例2)
この実施例2では、ローカルエリアネットワーク13に接続されている複数個のPTP−IP対応のプリンタ12と各プリンタ12のIPアドレスが登録されかつローカルエリアネットワーク13に接続されているサーバ14とこの各プリンタ12に向けて撮影画像データを転送するPTP−IP対応のデジタルカメラ11とからなっている。
【0063】
デジタルカメラ11はサーバ14のIPアドレスを登録する登録手段とサーバ14に向けてプリンタ12のIPアドレスを要求する無線送信手段とを備えている。サーバ14はデジタルカメラ11の要求に応答してプリンタ12のIPアドレスをデジタルカメラ11に無線送信する無線送信手段を備えている。
【0064】
デジタルカメラ11は、更にプリンタ12の応答を受信してIPアドレスを取得するIPアドレス取得手段と、このIPアドレス取得手段により取得されたIPアドレスに対応するプリンタ12を表示するLCDモニタ11Aと、LCDモニタ11Aにより表示されているプリンタ12を選択することにより選択されたプリンタ12に向けてUDPユニキャストパケットデータを無線送信する無線送信手段とを備えている。
【0065】
プリンタ12はUDPユニキャストパケットデータを受信して接続開始要求をデジタルカメラ11に向けて無線送信する接続開始要求無線送信手段と、この接続開始要求に対するデジタルカメラ11からの応答に基づいて無線接続を確立する無線接続確立手段とを備えている。
【0066】
サーバ14のIPアドレスの登録は、例えば、セットアップメニュー画面で手動入力により予めすることができる。サーバ14が単一である場合には、デジタルカメラ11からサーバ14にUDPユニキャストパケットデータを送信して各プリンタ12のIPアドレスを取得する構成としても良い。
【0067】
サーバ14が複数個の場合には、デジタルカメラ11からローカルエリアネットワーク13にブロードキャストして各サーバ14のIPアドレスを取得し、特定のサーバ14にUDPユニキャストパケットデータを送信して、その特定のサーバ14に登録保存されている各プリンタ12のIPアドレスを取得する構成としても良い。」

(イ)上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

〈引用文献1記載の技術的事項〉
(a)PTP−IP対応の複数のプリンタ(電子機器)とデジタルカメラ(情報処理装置)からなるシステムであって、
デジタルカメラはBluetooth(第1の通信インタフェース)を介して1以上のプリンタのIPアドレス(接続情報)を含むプリンタ情報(電子機器情報)を取得し、
画面表示されたIPアドレスを含む複数のプリンタ情報の中からユーザがプリンタを1つ選択して、選択されたプリンタに対して対応するIPアドレスを用いてUDPユニキャストによる無線接続(第2の通信インタフェース)を行って撮像画像のプリントアウトを要求する(出力要求手段)こと。

(b)デジタルカメラ11はローカルエリアネットワーク13に有線接続、無線LAN接続可能であるが、ここでは、無線LAN接続されるものとして説明すること、また、そのデジタルカメラ11は、ここでは、基地局(アクセスポイント)を必要とするインフラストラクチャーモードで動作するものとして説明するが、プリンタ12と直接パケットデータの情報の授受を行うアドホックモードで動作するものとしても良いこと。

ウ.引用文献2〜4について
(ア)当審拒絶理由に引用された、引用文献2(特開2006−163793号公報)には、図面とともに次の記載がある。

「【0030】
ここで、図4の例では、アドホック通信手段17は、自動選択手段19により選択された他の情報処理装置とアドホックモード通信により所要の情報通信を行う。 また、図4の例では、例えば、ユーザが最も早いと言った選択条件を条件登録手段18に登録しておけば、自動選択手段19が検出リストの中からビーコン信号の受信強度が高い順又は受信間隔が短い順に優先していずれかのプリンタ装置を選択する。
なお、本発明では、条件登録手段18は必須ではなく、自動選択手段19が検出リストの中からビーコン信号の受信強度が高い順又は受信間隔が短い順に優先していずれかのプリンタ装置を選択するようにしてもよい。」

(イ)当審拒絶理由に引用された、引用文献3(特開2006−243907号公報)には、図面とともに次の記載がある。

「【0006】
前記課題を解決するために、無線LAN端末は、無線通信の信号強度を検知する仕組みを備え、信号強度が最も強いプリンタを、無線LAN端末上の印刷指示画面もしくはプリンタ選択画面を開いた際に自動的に優先的に選ばれるプリンタ(デフォルトプリンタ)とすることで、近くのプリンタを簡単に選択することが可能となり、前記課題を解決する。」

(ウ)当審拒絶理由に引用された、引用文献4(特開2011−66561号公報)には、図面とともに次の記載がある。

「【0031】
接続相手選択部304は、同一のSSIDを有する複数の通信相手先が、接続相手の候補となる場合があるため、その場合、複数の接続相手先のうち、電波強度の最も強い接続相手先を、優先的に接続相手として選択する。もちろん、ユーザが指定したSSIDと同一のSSIDをもつ通信相手先が1つの場合は、この通信相手先を選択する。」

(エ)上記(ア)〜(ウ)の記載にあるように、「機器が通信相手と通信を行い、受信強度が最も強い通信相手を自動で選択する」ことは、本願出願時において周知技術と認められる。

エ.引用文献6〜8について
(ア)当審拒絶理由に引用された、引用文献6(特開2009−55413号公報)には、図面とともに次の記載がある。

「【0024】
受信電力強度は、プリンタ装置10と端末装置20との間に障害物がない場合には、両者間の距離の2乗に反比例する。つまり遠距離になるほど受信電力強度は小さくなる。また両者間に障害物がある場合は、障害物により信号が反射、吸収されるので受信電力強度は小さくなる。このことに基づいて、本実施形態では、受信電力強度が予め定めた所定値より小さい場合には、S/N比が悪化しても信頼性の高いSTCモードで通信が行われるように、制御部12は、STC/SDMモード選択部173を制御しSTCモードを選択させる。また所定値より大きい場合は、高速通信に適したSDMモードを選択させる。」

(イ)当審拒絶理由に引用された、引用文献7(特開2011−232819号公報)には、図面とともに次の記載がある。

「【0012】
上記発明では、情報処理端末は、自装置と各画像形成装置との距離を検出し、その距離に応じて、電源状態をオン側へ遷移させる画像形成装置を選定し、その選定した画像形成装置に対して電源状態の遷移要求を送信する。検出する距離は、直線距離のほか、途中の壁や階段などを考慮に入れた道のり(歩く場合の道程)としてもよい。また、各画像形成装置が一定強度の電波を発信するようにしておき、情報処理端末で受信される電波強度などから、各画像形成装置までの相対的な距離を検出する構成でもよい。電源状態をオン側へ遷移させるとは、電源状態が複数段階に遷移可能な場合には、現在の電源状態よりも、フル通電の状態(すべての部分へ電力を供給した状態)へ近づくように遷移させることを指し、フル通電への遷移に限定されるものではない。周辺の画像形成装置とは、たとえば、情報処理端末と同じドメインのネットワーク(LAN)に接続されている画像形成装置である。」

「【0072】
図12のような位置関係の場合、情報処理端末30が受信する電波の強度は、図13の優先順位表70に示すような順位になる。すなわち、情報処理端末30と同じ居室Aにあって距離の近い画像形成装置Bからの電波強度が最も強くなる。また、画像形成装置Cは画像形成装置Aよりも距離的には近くに存在するが、居室Bにあって壁を挟むため、電波強度は低くなる。このため、画像形成装置Cよりも距離的には遠くに存在するが情報処理端末30と同じ居室Aにあって障害物が間にない画像形成装置Aの方が画像形成装置Cより電波強度は高くなっている。同様のことは、画像形成装置Cが情報処理端末30と異なる階に存在する場合にも生じる。」

(ウ)当審拒絶理由に引用された、引用文献8(特開2012−49751号公報)には、図面とともに次の記載がある。

「【0035】
このようにして処理を繰り返すうちに、子機40と外部装置102との間で通話が行われていると判断される場合(S204:Yes)、次に、CPU11は、RSSI(Received Signal Strength Indicator)を取得する(S206)。RSSIは、その値が、MFP1と子機40との間の電波強度を示している。MFP1がDCL通信制御回路19から電波を送信すると、子機40は、受け取った電波の強さをRSSIの値としてMFP1に送信する。よって、CPU11が取得したRSSIの値が大きいほど、MFP1と子機40との間の無線通信300(図1)の電波強度が高く、したがって、MFP1と子機40との間の距離が近いことが分かる。なお、本実施形態において、RSSIは、−20から60の範囲の値であるものとする。」

(エ)上記(ア)〜(ウ)の記載にあるように、「電波強度が強いほど機器間の距離が近いということ、すなわち、機器間の距離と電波強度とに相関関係があるという」ことは、本願出願時において周知技術と認められる。

オ.引用文献9について
(ア)当審拒絶理由に引用された、引用文献9(特開2008−211507号公報)には、図面とともに次の記載がある。

「【0095】
図17は、本発明の第7の実施形態に係る音声パターンを使って接続情報を送る例を示す図である。図17には、音声出力装置7と、音声パターン701と、スピーカ702と、無線LAN用アンテナ703と、録音装置8と、マイクロフォン801と、無線LAN用アンテナ802とが示されている。第1の実施形態から第6の実施形態では画像パターン301を使ってSSIDやWEPキー等の接続情報を送っていたが、本実施形態では音声パターン701を使って接続情報を送る。
【0096】
ミュージックデータサーバ等の音声出力装置7は無線LANに接続されており、スピーカ702を備えている。また、ポータブルプレーヤ等の録音装置8は録音用のマイクロフォン801を備えている。音声出力装置7から録音装置8に音声パターン701を使って接続情報を送る。接続情報を音声パターン701に変換する方法としては、電話モデムで使われる方法等を使うことができる。音声出力装置7は接続情報を音声パターン701に変換してスピーカ702から音声として発信する。このとき大きな音だと耳障りだが、録音装置8は音声出力装置7の近くに置いておくことができるので、音量を上げる必要は特にない。録音装置8は、録音用のマイクロフォン801を使ってこの音声パターン701を受け取り、接続情報に再変換することで接続情報を取り出す。この取り出した接続情報をもとに無線LANにアソシエートする。無声LANにアソシエートした後のネットワークプロトコルについては、画像パターン301を用いる他の実施形態と同様である。
【0097】
図18は、音声出力装置の構成の一例を示すブロック図である。音声出力装置7は、スピーカ702と、無線LAN用アンテナ703と、制御部704と、記録部705と、音声出力部706と、無線通信部707とを有している。また、音声出力装置7は、図示されていないCD−ROMやMD等の駆動部を有している。
【0098】
制御部704は、図示されていないCPUとメモリを有している。制御部704は、接続情報を音声パターン701へ変換し、また音声出力部706や無線通信部707等のハードウェアをコントロールする。
【0099】
記憶部705は、例えば、ハードディスクやフラッシュメモリ等で構成されており書き換え可能である。記憶部705には、接続情報を音声パターン701に変換するためのプログラムや音声データ等が記憶されている。
【0100】
音声出力部706は、音声データをデジタル信号からアナログ信号に変換し、スピーカ702を駆動する。また、無線通信部707は、アンテナ703が接続されており、無線LANとの接続に使われる。
【0101】
なお、制御部704は本発明の第1の制御部の一例であり、スピーカ702は本発明の出力部の一例であり、無線通信部707は本発明の第1の無線通信部の一例である。
【0102】
図19は、録音装置の構成の一例を示すブロック図である。録音装置8は、マイクロフォン801と、無線LAN用アンテナ802と、音声入力部803と、制御部804と、録音部805、無線通信部806とを有している。
【0103】
音声入力部803は、マイクロフォン801から入力されるアナログ信号の音声をデジタル信号の音声データに変換する。録音部805は、フラッシュメモリやハードディスク等で構成され、書き換え可能であり、音声データ等を記録する。
【0104】
制御部804は、図示されていないCPUとメモリを有している。制御部804は、音声パターン701をSSIDやWEPキー等の接続情報に再変換し、また音声入力部803や無線通信部806等のハードウェアをコントロールする。無線通信部806は、無線LAN用アンテナ802が接続されており、無線LANとの接続に使われる。
【0105】
なお、音声入力部803は本発明の入力部の一例であり、制御部804は本発明の第2の制御部の一例であり、無線通信部806は本発明の第2の無線通信部の一例である。」

(イ)上記記載から、引用文献9には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

〈引用文献9記載の技術的事項〉
ミュージックデータサーバ等の音声出力装置7は無線LANに接続されており、スピーカ702を備え、また、ポータブルプレーヤ等の録音装置8は録音用のマイクロフォン801を備え、音声出力装置7から録音装置8に音声パターン701を使って無線LANの接続情報を送ること。


第6 対比・判断

1.本願発明1について

ア.本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

(ア)引用発明の「パーソナルコンピュータ装置」および「プリンタ装置」は、それぞれ本願発明1の「情報処理装置」および「電子機器」に対応する。

(イ)引用発明の「受信電波強度」は、プリンタ装置の識別情報を取得する際に、所定の無線LAN用通信アプリケーションを利用して、測定されるものであるから、本願発明1の「電子機器から送信された信号を受信する際の受信強度」に対応する。

(ウ)引用発明では、「受信電波強度が強いプリンタ装置ほど、パーソナルコンピュータ装置に対し物理的に近距離に設置されていると考えられ」ることから、引用発明の「無線LAN」は、「通信対象となるプリンタ装置との間の物理的な距離と、前記プリンタ装置から送信された信号を受信する際の受信電波強度とが相関関係を持つ通信方式で通信を行う」ものであるといえる。

(エ)引用発明の「無線LANアダプタ」および「無線LAN通信制御部」は、それぞれ「他の無線通信端末装置との間で無線LANを構築するためのもの」および「無線LANを介して、他の無線通信端末装置との間で種々のデータをやりとりするための各種所定のプロトコルスイートの通信制御処理を実行するためのもの」であり、これらが協働することにより、無線LANを介して通信を行う通信インタフェース手段として機能していると認められる。

(オ)引用発明では、「プリンタ装置の識別情報を配列した表示情報をユーザに提示し、ユーザが当該表示を見ていずれかのプリンタ装置を選択する」ことから、引用発明におけるプリンタ装置の「識別情報」は、複数のプリンタ装置のそれぞれを一意に識別可能な情報(機器名称等)を少なくとも含んでいるから「電子機器情報」といえるものの、本願発明1の「電子機器情報」のように、「物理的な距離に依存しない通信方式で通信するための接続情報を含む」ものではない点で相違する。

(カ)引用発明では、「無線LAN通信制御部及び無線LANアダプタの機能によって、パーソナルコンピュータ装置はプリンタ装置を検出すると、検出したプリンタ装置からその識別情報を取得するとともに、当該プリンタ装置との間の通信の受信電波強度を測定し」ているところ、この処理を行う際、「無線LAN通信制御部及び無線LANアダプタ」は、「対象となるプリンタ装置との間の物理的な距離と、前記プリンタ装置から送信された信号を受信する際の受信電波強度とが相関関係を持つ通信方式で通信を行う通信インタフェース手段」として機能しており、引用発明の「パーソナルコンピュータ装置」は、「無線LAN通信制御部及び無線LANアダプタ」を介して、プリンタ装置の「識別情報」を複数のプリンタ装置それぞれから受信しているといえるから、引用発明において、この処理を行う際の「無線LAN通信制御部及び無線LANアダプタ」は、本願発明1の「第1の通信インタフェース」に対応する。

(キ)引用発明は、「選択されたプリンタ装置へ、無線LAN通信制御部及び無線LANアダプタの機能によって無線LANを介して接続し」、「その後に、パーソナルコンピュータ装置からプリンタ装置に対し、無線LAN通信制御部及び無線LANアダプタの機能によって無線LANを介して印刷ジョブを示す情報を送信し、これを受けたプリンタ装置は、受信した印刷ジョブを示す情報に含まれる印刷データの印刷物を記録出力する」ものであるところ、この処理を行う際、引用発明の「パーソナルコンピュータ装置」は、「無線LAN通信制御部及び無線LANアダプタ」を介して、複数のプリンタ装置のうちの選択されて特定したプリンタ装置へ印刷ジョブを示す情報に含まれる印刷データの印刷出力要求が可能な」装置であるといえるから、引用発明において、この処理を行う際の「無線LAN通信制御部及び無線LANアダプタ」は、本願発明1の「第2の通信インタフェース」に対応する。

(ク)上記(カ)、(キ)より、引用発明の「パーソナルコンピュータ装置」と、本願発明1の「情報処理装置」は、「対象となる電子機器との間の物理的な距離と、前記電子機器から送信された信号を受信する際の受信強度とが相関関係を持つ通信方式で通信を行う第1の通信インタフェースを有し、」「第2の通信インタフェースを介して、複数の電子機器のうちの特定した電子機器へ電子データの出力要求が可能な」点で共通していると認められる。
その一方で、「第2の通信インタフェース」が、本願発明1では、「第1の通信インタフェースとは異なる物理的な距離に依存しない通信方式で通信を行う」ものであるのに対し、引用発明では、同じ無線LANの通信インタフェースであり、物理的な距離に依存しない通信方式で通信を行うものではない点で相違する。

(ケ)上記(オ)および(カ)より、引用発明の「パーソナルコンピュータ装置」と、本願発明1の「情報処理装置」は、「前記第1の通信インタフェースを介して、1以上の電子機器それぞれから電子機器情報を受信する受信手段」を有する点で共通する。
その一方で、「電子機器情報」が、本願発明1では、「物理的な距離に依存しない通信方式で通信するための接続情報を含む」のに対し、引用発明では、そのことが特定されていない点で相違する。

(コ)引用発明の「パーソナルコンピュータ装置」は、「無線LAN通信制御部及び無線LANアダプタ」を介して、プリンタ装置の「識別情報」を複数のプリンタ装置それぞれから受信するとともに、受信した際の受信電波強度を測定し、識別情報と受信電波強度の測定値とを関連づけて記憶しているから、引用発明の「受信電波強度」と本願発明1の「受信強度」は、「前記受信手段によって前記電子機器情報それぞれを受信した際の前記第1の通信インタフェースにおける」ものである点で共通する。

(サ)引用発明では、「ユーザが、印刷機能を選択したとき、複数のプリンタ装置のいずれか1つをユーザに選択させるための操作画面を表示し、その際、既に保存されている各プリンタ装置の受信電波強度の測定値の降順(すなわち受信電波強度が大きい値を最初に配置し、順次小さい値を配置する並べ方)に、複数のプリンタ装置の識別情報を配列して表示し」、「受信電波強度の測定値の降順にプリンタ装置の識別情報を並べることで、ユーザは、より近くに設置されているプリンタ装置を簡単に選択することができる」ことから、引用発明の「パーソナルコンピュータ装置」は、「プリンタ装置の「識別情報」それぞれを受信した際の「受信電波強度」に基づいて、」各プリンタ装置の受信電波強度の測定値の降順に、複数のプリンタ装置の識別情報を配列して表示し、いずれか1つのプリンタ装置をユーザに選択させることにより、「前記パーソナルコンピュータ装置の最も近くに位置する一のプリンタ装置を特定し」ているものと認められる。

(シ)引用発明では、「ユーザがいずれかのプリンタ装置を選択すると、選択されたプリンタ装置へ、無線LAN通信制御部及び無線LANアダプタの機能によって無線LANを介して接続し」、「その後に、パーソナルコンピュータ装置からプリンタ装置に対し、無線LAN通信制御部及び無線LANアダプタの機能によって無線LANを介して印刷ジョブを示す情報を送信し」ているところ、本願出願時の技術常識を参酌すると、「選択されたプリンタ装置へ、無線LAN通信制御部及び無線LANアダプタの機能によって無線LANを介して接続」するに際して、当該選択されたプリンタ装置の接続情報となるIPアドレスを特定すること、そして、この特定された前記IPアドレスに基づいて、無線LANを介して印刷ジョブを示す情報に含まれる印刷データの印刷出力を要求することは、自明な構成と認められる。

(ス)上記(キ)、(コ)〜(シ)より、引用発明の「パーソナルコンピュータ装置」と、本願発明1の「情報処理装置」は、「前記第2の通信インタフェースを介した前記電子データの出力要求に用いる特定した一の電子機器に接続するための接続情報を特定する接続情報特定手段」と、「前記接続情報特定手段により特定された前記接続情報に基づいて、前記第2の通信インタフェースを介して電子データの出力を要求する出力要求手段」と、を有する点で共通していると認められる。
その一方で、本願発明1では、接続情報特定手段における機能として、「前記受信手段によって前記電子機器情報それぞれを受信した際の前記第1の通信インタフェースにおける受信強度に基づいて、」「前記情報処理装置の最も近くに位置する一の電子機器を特定し」ているのに対し、引用発明では、「プリンタ装置の「識別情報」それぞれを受信した際の「受信電波強度」に基づいて、」各プリンタ装置の受信電波強度の測定値の降順に、複数のプリンタ装置の識別情報を配列して表示し、いずれか1つのプリンタ装置をユーザに選択させることにより、「前記パーソナルコンピュータ装置の近くに位置する一のプリンタ装置を特定し」ている点で相違する。

イ.以上のことから、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

〈一致点〉
対象となる電子機器との間の物理的な距離と、前記電子機器から送信された信号を受信する際の受信強度とが相関関係を持つ通信方式で通信を行う第1の通信インタフェースを有し、第2の通信インタフェースを介して、複数の電子機器のうちの特定した電子機器へ電子データの出力要求が可能な情報処理装置であって、
前記第1の通信インタフェースを介して、1以上の電子機器それぞれから電子機器情報を受信する受信手段と、
前記第2の通信インタフェースを介した前記電子データの出力要求に用いる特定した一の電子機器に接続するための接続情報を特定する接続情報特定手段と、
前記接続情報特定手段により特定された前記接続情報に基づいて、前記第2の通信インタフェースを介して電子データの出力を要求する出力要求手段と、を有する情報処理装置。

〈相違点〉
(相違点1)
本願発明1では、「第2の通信インタフェース」が「第1の通信インタフェースとは異なる物理的な距離に依存しない通信方式で通信を行う」ものであるのに対し、引用発明では、どちらも同じ無線LANの通信インタフェースであり、物理的な距離に依存しない通信方式で通信を行うものではない点。

(相違点2)
本願発明1では、前記第1の通信インタフェースを介して、1以上の電子機器それぞれから「物理的な距離に依存しない通信方式で通信するための接続情報を含む」電子機器情報を受信する受信手段を有するのに対し、引用発明では、このような電子機器情報を受信することが特定されていない点。

(相違点3)
本願発明1では、接続情報特定手段における機能として、「前記受信手段によって前記電子機器情報それぞれを受信した際の前記第1の通信インタフェースにおける受信強度に基づいて、」「前記情報処理装置の最も近くに位置する一の電子機器を特定し」ているのに対し、引用発明では、「プリンタ装置の「識別情報」それぞれを受信した際の「受信電波強度」に基づいて、」各プリンタ装置の受信電波強度の測定値の降順に、複数のプリンタ装置の識別情報を配列して表示し、いずれか1つのプリンタ装置をユーザに選択させることにより、「前記パーソナルコンピュータ装置の近くに位置するプリンタ装置を特定し」ている点。

ウ.相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点2について先に検討すると、「対象となる電子機器との間の物理的な距離と、前記電子機器から送信された信号を受信する際の受信強度とが相関関係を持つ通信方式で通信を行う第1の通信インタフェース」を介して、1以上の電子機器それぞれから「前記第1の通信インタフェースとは異なる」「物理的な距離に依存しない通信方式で通信するための接続情報を含む」電子機器情報を受信するという構成は、上記引用文献1〜4、6〜9には記載されておらず、本願出願日前において周知技術であるともいえない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献1、9記載の技術的事項、引用文献2〜4または6〜8に記載された周知技術に基づいて、容易に発明をすることができたものではない。

2.本願発明2〜9について

本願発明2〜9も、本願発明1の「前記第1の通信インタフェースを介して、1以上の電子機器それぞれから物理的な距離に依存しない通信方式で通信をするための接続情報を含む電子機器情報を受信する」という同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献1、9記載の技術的事項、引用文献2〜4または6〜8に記載された周知技術に基づいて、容易に発明をすることができたものではない。

3.本願発明10〜12について

本願発明10〜12は、それぞれ本願発明1に対応する、ネットワークシステムの発明、電子データ出力方法の発明、電子データ出力プログラムの発明であり、本願発明1と同じ理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。


第7 原査定についての判断

令和4年4月7日付けの補正により、補正後の請求項1〜12は、「前記第1の通信インタフェースを介して、1以上の電子機器それぞれから物理的な距離に依存しない通信方式で通信をするための接続情報を含む電子機器情報を受信する」という技術的事項を有するものとなった。
当該技術的事項は、原査定における引用文献A〜H(当審拒絶理由における引用文献1〜8)には記載されておらず、本願出願日前における周知技術でもないので、本願発明1〜12は、当業者であっても、原査定における引用文献A〜Hに基づいて、容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。


第8 むすび

以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-06-01 
出願番号 P2019-125064
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 角田 慎治
特許庁審判官 ▲吉▼田 耕一
稲葉 和生
発明の名称 情報処理装置、ネットワークシステム、電子データ出力方法、電子データ出力プログラム  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  

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