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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01F |
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管理番号 | 1384895 |
総通号数 | 6 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-06-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-05-21 |
確定日 | 2022-05-25 |
事件の表示 | 特願2016−217974「コイル部品」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月 1日出願公開,特開2017− 98544〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成28年11月8日(パリ条約による優先権主張2015年11月20日,韓国)の出願であって,令和2年7月7日付けの拒絶理由通知に対し,令和2年8月28日に手続補正がなされ,令和3年1月28日付けで拒絶査定がなされた。これに対し,令和3年5月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ,令和3年8月26日に上申書が提出されたものである。 第2 令和3年5月21日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和3年5月21日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正の内容 本件補正は,特許請求の範囲についてするものであって,請求項1に係る発明(以下,「本件補正発明」という。)については, 本件補正前に, 「【請求項1】 磁性物質,前記磁性物質で密封されたコイルパターン層を複数積層して成るコイルパターン部,前記コイルパターン部によって外周を囲まれたコア部,及び前記コア部から前記コア部を中心とする径方向に延在するように配置され,積層された前記コイルパターン層のうち積層方向に隣接するコイルパターン層同士の間に配置された絶縁層を含む本体と, 前記本体上に配置された外部電極と,を含み, それぞれのコイルパターン層は,前記コア部を中心として径方向に延びる平面内で導体パターンが螺旋状に巻回されて形成される平面スパイラル状のパターンを含み, 前記磁性物質は,前記コア部から前記径方向に延在するように配置され, 前記積層方向に隣接するコイルパターン層のうちの一方のコイルパターン層の前記コア部に配置された前記絶縁層と,他方のコイルパターン層の前記コア部に配置された前記磁性物質とが,前記コア部において接し, 前記導体パターンの前記径方向を向いた側面は,前記磁性物質と接している, コイル部品。」 とあったところを, 「【請求項1】 磁性物質,前記磁性物質で密封されたコイルパターン層を複数積層して成るコイルパターン部,前記コイルパターン部によって外周を囲まれたコア部,及び前記コア部から前記コア部を中心とする径方向に延在するように配置され,積層された前記コイルパターン層のうち積層方向に隣接するコイルパターン層同士の間に配置された絶縁層を含む本体と, 前記本体上に配置された外部電極と,を含み, それぞれのコイルパターン層は,前記コア部を中心として径方向に延びる平面内で導体パターンが螺旋状に巻回されて形成される平面スパイラル状のパターンを含み, 前記磁性物質は,前記コア部から前記径方向に延在するように配置され, 前記積層方向に隣接するコイルパターン層のうちの一方のコイルパターン層の前記コア部に配置された前記絶縁層と,他方のコイルパターン層の前記コア部に配置された前記磁性物質とが,前記コア部において,前記径方向における前記コア部の一方側において前記コア部と接する前記コイルパターン部から,前記径方向における前記コア部の他方側において前記コア部と接する前記コイルパターン部にわたり接し, 前記導体パターンの前記径方向を向いた側面は,前記磁性物質と接している, コイル部品。」 とするものである。なお,下線は補正箇所を示す。 2 補正の適否 請求項1に係る前記補正は,「絶縁層」と「磁性物質」とが「コア部」において,「前記径方向における前記コア部の一方側において前記コア部と接する前記コイルパターン部から,前記径方向における前記コア部の他方側において前記コア部と接する前記コイルパターン部にわたり」接することを限定したものである。 よって,本件補正は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで,本件補正発明が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)否かについて以下に検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は,前記1に記載したとおりのものである。 (2)引用文献1に記載された発明 ア 原査定の拒絶の理由で引用された特開2007−67214号公報(以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。なお,下線は当審で付与した。 「【0010】 (第1の実施の形態) 本発明の第1の実施の形態について図面を参照して説明する。図1はパワーインダクタの外観斜視図,図2はパワーインダクタの断面図,図3はパワーインダクタの素体の分解斜視図である。 【0011】 このパワーインダクタ1は,図1に示すように,コイルが埋設された薄型直方体形状の素体10と,該素体の両端部に形成され且つそれぞれコイル端に接続した端子電極21,22とを備えている。 【0012】 素体10の内部構造について図2の断面図及び図3の分解斜視図を参照して説明する。なお,図3はコイルの構造を説明するため素体10の層構造については図示を省略した。 【0013】 図2及び図3に示すように,素体10は,素体10には,互いに対向配置された一対の渦巻き状のコイル導体31,32と,コイル導体31,32の間に介在する平板状の第1の絶縁体41と,第1の絶縁体41を挟み込み且つ前記コイル導体31,32を埋設するように形成された第2の絶縁体51と,第2の絶縁体51を埋設した第3の絶縁体61とからなる。第1の絶縁体41及び第2の絶縁体51には,コイル導体31,32の内周部において貫通孔71が形成されている。この貫通孔には第3の絶縁体61が充填されている。この貫通孔に充填された第3の絶縁体61はコイルのコアに相当する。また,第1の絶縁体層41及び第2の絶縁体層51の外周にも第3の絶縁体61が形成されている。 【0014】 各絶縁体41,51,61は,パワーインダクタ1の製品仕様・特性・用途等に応じて透磁率が設定されている。具体的には,各絶縁体41,51,61は金属系軟質磁性材料をフィラとして含有させた有機樹脂,又は,フィラを含有させていない有機樹脂からなる。すなわち,有機樹脂に対して,フィラ含有の有無,及び,フィラを含有させる際にはフィラの分量・材質等を適宜選択することにより,各絶縁体41,51,61の透磁率(透磁率1も含む)を設定可能となっている。」 「【0034】 (第2の実施の形態) 本発明の第2の実施の形態に係るパワーインダクタについて図面を参照して説明する。図6はパワーインダクタの断面図,図7はパワーインダクタの素体の分解斜視図である。 【0035】 本実施の形態に係るパワーインダクタ2が,第1の実施の形態と異なる点は,コイルの形成層数にある。具体的には,第1の実施の形態に係るパワーインダクタ1ではコイル導体31,32が素体10に埋設されていたが,本実施の形態に係るパワーインダクタ2は,図6及び図7に示すように,コイル導体33,34,35,36が素体10に埋設されている。 【0036】 コイル導体33,34は,第2の絶縁体51と外層面において第3の絶縁体61に埋設した状態で形成されている。また,コイル導体35,36は,前記第1の実施の形態におけるコイル導体31,32と同様に,第1の絶縁体41の外装面において第2の絶縁体52に埋設した状態で形成されている。 【0037】 コイル導体33,34の外周側端部には端子電極21,22と接続するための引出電極33a,34aが形成されている。この引出電極34a,34aは,第3の絶縁体61を貫通して素体10の側面に露出している。コイル導体33,34の内周側端部には,それぞれコイル導体35,36との間の層間接続用のランド33b,34bが形成されている。 【0038】 コイル導体35,36の外周側端部には,相互に層間接続するためのランド35a,36aが形成されている。各ランド35a,36aは,第1の絶縁体41を貫通するビア73を介して導通接続している。コイル導体35,36の内周側端部には,それぞれコイル導体33,34との間の層間接続用のランド35b,36bが形成されている。各ランド35b,36bは,第2の絶縁体52を貫通するビア74,75を介して,それぞれ対応するコイル導体33,34のランド33b,34bと導通接続している。他の構成・材質等については第1の実施の形態と同様である。 【0039】 次に,このパワーインダクタ2の製造方法について図8を参照して説明する。まず,従来のプリンタ配線板の製造方法で用いられているビルドアップ法を用いて,第1の絶縁体41,第2の絶縁体52,コイル導体33〜36,ビア73〜75に相当する積層体301を作成する(図8(b))。次に,コイルの内周側及び外周側に貫通孔302,303を形成する(図8(c))。このとき,コイル導体パターンを切断しないように注意する。 【0040】 次に,積層体301の両面に,フィラが含有された有機樹脂層304をラミネート法や静水圧プレス法などで形成する(図8(c))。このとき,前記貫通孔302,303にボイドの発生がないよう有機樹脂を充填する。この有機樹脂層304は,第3の絶縁体61に相当するものである。 【0041】 次に,この積層体を単位部品毎にカットすることで素体10が得られる(図8(d))。最後に,素体10の側面にディップ法などで端子電極21,22を形成することでパワーインダクタ2が得られる。」 「【0044】 以上本発明の実施の形態について詳述したが本発明はこれに限定されるものではない。例えば,前記各実施の形態では,コイルの内周側及び外周側において第1の絶縁体及び第2の絶縁体に貫通孔を形成し,この貫通孔に第3の絶縁体を充填した閉磁路型インダクタとなっているが,貫通孔の形成及び第3の絶縁体の充填を省略することにより開示路型インダクタとしてもよい。」 イ 前記アの記載事項から以下のことがいえる。 (ア)引用文献1の段落【0039】によれば,図8とともに当該「パワーインダクタ2」の製造方法が記載されており,まず「積層体301」を形成するものである。 次に,引用文献1の段落【0039】によれば,「積層体301」の「コイルの内周側及び外周側に貫通孔302,303を形成する」ものである。 そして,引用文献1の段落【0040】によれば,「積層体301の両面に」「フィラが含有された有機樹脂層304」を形成するものである。 最後に,引用文献1の段落【0041】によれば,「積層体301の両面に」,「フィラが含有された有機樹脂層304」を形成した「積層体を単位部品毎にカットすることで素体10が得られ」,「素体10の側面に」「端子電極21,22を形成することでパワーインダクタ2が得られる」ものである。 ここで,引用文献1の段落【0044】によれば,「コイルの内周側及び外周側において第1の絶縁体及び第2の絶縁体に貫通孔を形成し,この貫通孔に第3の絶縁体を充填した閉磁路型インダクタ」に代えて,図8(b)のような「貫通孔の形成」を省略した「開示路型インダクタ」としてもよいものである。なお,「開示路型インダクタ」は「開磁路型インダクタ」の誤記と認められるので,以下「開磁路型インダクタ」という。 (イ)以上の点を考慮すると,「開磁路型インダクタ」は,当審で作成した下図(以下「参考図1」という。)のとおり,「貫通孔302,303」を形成する前の「積層体301」において(図8(a)に対応する参考図1(a)を参照),両面に「フィラが含有された有機樹脂層304」を形成し(図8(b)を省略した図8(c)に対応する参考図1(b)を参照),この積層体を切断した素体を得て(図8(b)を省略した図8(d)に対応する参考図1(c)を参照),この素体の側面に「端子電極21,22」を形成して得られるもの(図8(b)を省略した図6に対応した参考図1(d)を参照)である。 すなわち,引用文献1の段落【0044】によれば,参考図1(d)に示された,「素体10」と,「素体10」の側面に形成された「端子電極21,22」と,を含む「開磁路型インダクタ」が記載されている。 (ウ)引用文献1の段落【0036】によれば,「第2の絶縁体51」及び「第3の絶縁体61」が記載されている。 ここで,引用文献1の段落【0014】によれば,「各絶縁体」「51,61は,金属系軟質磁性材料をフィラとして含有させた有機樹脂からなる」ものである。 してみると,「金属系軟質磁性材料をフィラとして含有させた有機樹脂からなる」「第2の絶縁体51」及び「第3の絶縁体61」が記載されている。 (エ)引用文献1の段落【0036】によれば,「コイル導体33,34」は「第3の絶縁体61に埋設した状態で形成されている」ものであり,「コイル導体35,36」は「第2の絶縁体52に埋設した状態で形成されている」ものである。なお,「第2の絶縁体52」は「第2の絶縁体51」の誤記と認められる。 また,段落【0038】によれば「コイル導体33,34」及び「コイル導体35,36」はビア73,74,75を介して導通接続している。ここで,図6及び図7を参照すると,「コイル導体33,34」及び「コイル導体35,36」は,ビア73,74,75を介して導通接続することによって,当該「コイル導体33,34」及び「コイル導体35,36」を複数積層して成るコイルを構成することが見て取れる。 してみると,「第3の絶縁体61に埋設した状態で形成されている」「コイル導体33,34」及び「第2の絶縁体51に埋設した状態で形成されている」「コイル導体35,36」を積層して成るコイルが記載されている。 (オ)「開磁路型インダクタ」は,コイル導体33,34,35,36(以下,区別の必要がない限り,単に「コイル導体」という。)によって外周を囲まれた中心領域を含むものである(参考図1(d)に対応する参考図2に示した,太枠で囲まれた領域を参照)。 (カ)参考図2を参照すると,「開磁路型インダクタ」の「第1の絶縁体41」の全体及び「第2の絶縁体51」の一部は,中心領域から中心領域を中心とする径方向に延在するように配置され,積層方向に隣接するコイル導体同士の間に配置されたことが見て取れる(特に「第2の絶縁体51」については,当審で網掛けを付与した部分を除く部分を参照)。 (キ)引用文献1の図7を参照すると,それぞれのコイル導体は,中心領域を中心として径方向に延びる平面内で導体パターンが螺旋状に巻回されて形成される平面スパイラル状のパターンを含むことが見て取れる。 (ク)参考図2を参照すると,「開磁路型インダクタ」の「第2の絶縁体51」及び「第3の絶縁体61」は,各コイル導体の導体パターン間に配置された部分を含み(当審で網掛けを付与した部分を参照),当該部分は中心領域から径方向に延在するように配置されたことが見て取れる。 (ケ)参考図2を参照すると,積層方向に隣接するコイル導体同士の間に配置された「第2の絶縁体51」と,「コイル導体33,34」の導体パターン間に配置された「第3の絶縁体61」とは,中心領域において,径方向における中心領域の一方側と接する「コイル導体33,34」から,径方向における中心領域の他方側と接する「コイル導体33,34」にわたり接することが見て取れる。 (コ)参考図2を参照すると,各コイル導体において,導体パターンの径方向を向いた側面は,「第2の絶縁体51」及び「第3の絶縁体61」と接していることが見て取れる。 ウ したがって,開磁路インダクタ(図8(b)を省略した参考図1及び参考図2)に注目した前記イより,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されている。 「金属系軟質磁性材料をフィラとして含有させた有機樹脂からなる第2の絶縁体及び第3の絶縁体と, 第3の絶縁体に埋設した状態で形成されているコイル導体33,34及び第2の絶縁体に埋設した状態で形成されているコイル導体35,36を積層して成るコイルと, 複数のコイル導体によって外周を囲まれた中心領域と, 中心領域から中心領域を中心とする径方向に延在するように配置され,積層方向に隣接するコイル導体同士の間に配置された第1の絶縁体及び第2の絶縁体と, を含む素体と, 素体の側面に形成された端子電極と,を含み, それぞれのコイル導体は,中心領域を中心として径方向に延びる平面内で導体パターンが螺旋状に巻回されて形成される平面スパイラル状のパターンを含み, コイル導体の導体パターン間に配置された第2の絶縁体及び第3の絶縁体は,中心領域から径方向に延在するように配置され, 積層方向に隣接するコイル導体間に配置された第2の絶縁体と,コイル導体33,34の導体パターン間に配置された第3の絶縁体とは,中心領域において,径方向における中心領域の一方側と接するコイル導体33,34から,径方向における中心領域の他方側と接するコイル導体33,34にわたり接し, コイル導体の導体パターンの径方向を向いた側面は,第2の絶縁体及び第3の絶縁体と接している, 開磁路型インダクタ。」 (3)対比・判断 ア 本件補正発明と引用発明1との対比 (ア)本願明細書の段落【0026】に記載されているように,第1から第6の磁性層11,12,13,14,15,16(本願発明の「磁性物質」に相当)は,絶縁樹脂及び磁性フィラーを含むものである。 そうすると,引用発明1の「第2の絶縁体」及び「第3の絶縁体」は,有機樹脂及び金属系軟質磁性材料のフィラを含有するものであるから,本願発明の「磁性物質」に相当する。 (イ)引用発明1の「コイル導体」は,第2の絶縁体及び第3の絶縁体に埋設され,積層して成るコイルを構成するものであるから,本件補正発明の「磁性物質で密封されたコイルパターン層を複数積層して成るコイルパターン部」に相当する。 (ウ)引用発明1の「中心領域」は,複数のコイル導体によって外周を囲まれた領域であるから,本件補正発明の「コイルパターン部によって外周を囲まれたコア部」に相当する。 (エ)引用発明1の「第1の絶縁体」は,中心領域から中心領域を中心とする径方向に延在するように配置され,積層方向に隣接するコイル導体同士の間に配置されたものである。 また,引用発明1の「第2の絶縁体」は,中心領域から中心領域を中心とする径方向に延在するように配置され,積層方向に隣接するコイル導体同士の間に配置された部分と,コイル導体の導体パターン間に配置された部分とが一体化された構造材である。ここで,本願明細書の段落【0026】及び図5によれば,「磁性層」(本件補正発明の「磁性物質」に対応)は,「絶縁層」と同一の物質を含むものでもよく,この場合,「絶縁層」と「磁性層」との間の境界が不明確となるような一体化された構造材が形成されてもよいものである。 よって,引用発明1の「第1の絶縁体」,及び「第2の絶縁体」のうち「中心領域から中心領域を中心とする径方向に延在するように配置され」,「積層方向に隣接するコイル導体同士の間に配置され」た部分は,本件補正発明の「コア部から前記コア部を中心とする径方向に延在するように配置され,積層された前記コイルパターン層のうち積層方向に隣接するコイルパターン層同士の間に配置された絶縁層」に相当する。 (オ)前記(ア)ないし(エ)より,引用発明1の「素体」は,本件補正発明の「磁性物質」,「コイルパターン部」,「コア部」,及び「絶縁層」に相当する構成を備えるから,本件補正発明の「本体」に相当する。 (カ)引用発明1の「素体の側面に形成された端子電極」は,素体上に配置されているといえるから,本件補正発明の「本体上に配置された外部電極」に相当する。 (キ)引用発明1の「それぞれのコイル導体は,中心領域を中心として径方向に延びる平面内で導体パターンが螺旋状に巻回されて形成される平面スパイラル状のパターンを含」むことは,本件補正発明の「それぞれのコイルパターン層は,前記コア部を中心として径方向に延びる平面内で導体パターンが螺旋状に巻回されて形成される平面スパイラル状のパターンを含」むことに相当する。 (ク)引用発明1の「コイル導体の導体パターン間に配置された第2の絶縁体及び第3の絶縁体」は,中心領域から径方向に延在するように配置されているから,本件補正発明の「磁性物質は,前記コア部から前記径方向に延在するように配置され」ることに相当する。 (ケ)絶縁層と磁性物質とがコア部において接することについて a 前記(エ)のとおり,引用発明1の「第2の絶縁体」のうち,積層方向に隣接するコイル導体間に配置された部分は,本件補正発明の「絶縁層」に相当する。 ここで,引用発明1の「第2の絶縁体」は,「コイル導体35,36」を埋設するものである。このことは,本件補正発明の「絶縁層」が「積層方向に隣接するコイルパターンのうちの一方のコイルパターン層」に配置されたことに相当する。 b 前記(ア)のとおり,引用発明1の「第3の絶縁体」は,本件補正発明の「磁性物質」に相当する。 また,引用発明1の「第3の絶縁体」が「コイル導体33,34のパターン間に配置された」ことは,本件補正発明の「磁性物質」が「他方のコイルパターン層」に配置されたことに対応する。 c 前記(ウ)のとおり,引用発明1の「中心領域」は,本件補正発明の「コア部」に相当する。 してみると,引用発明1の「第2の絶縁体」と「第3の絶縁体」とが「中心領域において,径方向における中心領域の一方側と接するコイル導体33,34から,径方向における中心領域の他方側と接するコイル導体33,34にわたり接」することは,本件補正発明の「コア部に配置された前記絶縁層」と「コア部に配置された前記磁性物質」とが「前記コア部において,前記径方向における前記コア部の一方側において前記コア部と接する前記コイルパターン部から,前記径方向における前記コア部の他方側において前記コア部と接する前記コイルパターン部にわたり接」することに相当する。 d 以上の点より,引用発明1の「積層方向に隣接するコイル導体間に配置された第2の絶縁体と,コイル導体33,34の導体パターン間に配置された第3の絶縁体とは,中心領域において,径方向における中心領域の一方側と接するコイル導体33,34から,径方向における中心領域の他方側と接するコイル導体33,34にわたり接」することは,本件補正発明の「積層方向に隣接するコイルパターン層のうちの一方のコイルパターン層の前記コア部に配置された前記絶縁層と,他方のコイルパターン層の前記コア部に配置された前記磁性物質とが,前記コア部において,前記径方向における前記コア部の一方側において前記コア部と接する前記コイルパターン部から,前記径方向における前記コア部の他方側において前記コア部と接する前記コイルパターン部にわたり接」することに相当する。 (コ)引用発明1の「コイル導体の導体パターンの径方向を向いた側面は,第2の絶縁体及び第3の絶縁体と接している」ことは,本件補正発明の「前記導体パターンの前記径方向を向いた側面は,前記磁性物質と接している」ことに相当する。 (サ)以上のとおり,引用発明1の「開磁路型インダクタ」は,本件補正発明の「磁性物質」,「コイルパターン部」,「コア部」,及び「絶縁層」を含む「本体」,並びに「外部電極」に相当する構成を備えるから,本件補正発明の「コイル部品」に相当する。 イ 一致点・相違点 したがって,本件補正発明と引用発明1とは, 「磁性物質,前記磁性物質で密封されたコイルパターン層を複数積層して成るコイルパターン部,前記コイルパターン部によって外周を囲まれたコア部,及び前記コア部から前記コア部を中心とする径方向に延在するように配置され,積層された前記コイルパターン層のうち積層方向に隣接するコイルパターン層同士の間に配置された絶縁層を含む本体と, 前記本体上に配置された外部電極と,を含み, それぞれのコイルパターン層は,前記コア部を中心として径方向に延びる平面内で導体パターンが螺旋状に巻回されて形成される平面スパイラル状のパターンを含み, 前記磁性物質は,前記コア部から前記径方向に延在するように配置され, 前記積層方向に隣接するコイルパターン層のうちの一方のコイルパターン層の前記コア部に配置された前記絶縁層と,他方のコイルパターン層の前記コア部に配置された前記磁性物質とが,前記コア部において,前記径方向における前記コア部の一方側において前記コア部と接する前記コイルパターン部から,前記径方向における前記コア部の他方側において前記コア部と接する前記コイルパターン部にわたり接し, 前記導体パターンの前記径方向を向いた側面は,前記磁性物質と接している, コイル部品。」 である点で一致し,相違点はない。 (4)審判請求人の主張 審判請求人は審判請求書及び上申書において,いずれの引用文献にも,本件補正発明の「前記積層方向に隣接するコイルパターン層のうちの一方のコイルパターン層の前記コア部に配置された前記絶縁層と,他方のコイルパターン層の前記コア部に配置された前記磁性物質とが,前記コア部において,前記径方向における前記コア部の一方側において前記コア部と接する前記コイルパターン部から,前記径方向における前記コア部の他方側において前記コア部と接する前記コイルパターン部にわたり接する」構成は記載されていない旨主張している。ここで,審判請求書によれば,当該構成は本願の図3に基づくものである。 しかしながら,前記(2),特にイ(ア)ないし(ウ)のとおり,引用文献1の段落【0044】によれば,参考図1(d)及び参考図2に示された引用発明1が記載されている。 そして,前記(3)の(ケ)のとおり,引用発明1の「第2の絶縁体」のうち「積層方向に隣接するコイル導体同士の間に配置され」た部分は,本件補正発明の「前記積層方向に隣接するコイルパターン層のうちの一方のコイルパターン層の前記コア部に配置された前記絶縁層」に相当し,引用発明1の「第3の絶縁体」のうち「コイル導体33,34のパターン間に配置された」部分は,本件補正発明の「他方のコイルパターン層の前記コア部に配置された前記磁性物質」に相当する。 また,前記(2)イ(ケ)及び(3)ア(ケ)のとおり,引用発明1の,参考図1(d)及び参考図2から見て取れる「第2の絶縁体」と「第3の絶縁体」とが「コア部」で接する構成は,本件補正発明の,本願の図3に基づく「前記コア部に配置された前記絶縁層」と「前記コア部に配置された前記磁性物質」とが「前記コア部において,前記径方向における前記コア部の一方側において前記コア部と接する前記コイルパターン部から,前記径方向における前記コア部の他方側において前記コア部と接する前記コイルパターン部にわたり接する」構成に相当する。 よって,引用発明1も本件補正発明と同様の構成を備えているから,審判請求人の前記主張は採用できない。 (5)令和3年8月26日の上申書において提示された補正案について ア なお,審判請求人は上申書において補正案を提示しているところ,当該補正案の請求項1に係る発明は,以下のとおりのものである。なお下線は,本件補正発明から補正される箇所を示す。 「[請求項1] 磁性物質,前記磁性物質で密封されたコイルパターン層を複数積層して成るコイルパターン部,前記コイルパターン部によって外周を囲まれたコア部,及び前記コア部から前記コア部を中心とする径方向に延在するように配置され,積層された前記コイルパターン層のうち積層方向に隣接するコイルパターン層同士の間に配置された絶縁層を含む本体と, 前記本体上に配置され,前記径方向において,前記絶縁層の前記径方向における端部と接する外部電極と,を含み, それぞれのコイルパターン層は,前記コア部を中心として径方向に延びる平面内で導体パターンが螺旋状に巻回されて形成される平面スパイラル状のパターンを含み, 前記磁性物質は,前記コア部から前記径方向に延在するように配置され, 前記積層方向に隣接するコイルパターン層のうちの一方のコイルパターン層の前記コア部に配置された前記絶縁層と,他方のコイルパターン層の前記コア部に配置された前記磁性物質とが,前記コア部において,前記径方向における前記コア部の一方側において前記コア部と接する前記コイルパターン部から,前記径方向における前記コア部の他方側において前記コア部と接する前記コイルパターン部にわたり接し, 前記導体パターンの前記径方向を向いた側面は,前記磁性物質と接している, コイル部品。」 イ そこで,補正案の請求項1に係る発明について検討する。 (ア)参考図2を参照すると,「素体10」に配置された「端子電極21,22」が,径方向において,積層方向に隣接するコイル導体同士の間に配置された「第1の絶縁体41」及び「第2の絶縁体51」の端部と接することが見て取れる。そしてこの点は,補正案の請求項1に係る発明の補正される箇所である「本体上に配置され,前記径方向において,前記絶縁層の前記径方向における端部と接する外部電極と,を含」むことに相当する。 (イ)補正案の請求項1に係る発明のうち,前記(ア)で検討した点以外の点は,本件補正発明から補正されていないところ,前記(3)イのとおり,それらの点と引用発明1との間に相違点はない。 (ウ)そうすると,補正案の請求項1に係る発明は,引用文献1に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当する。よって,当該補正案を採用することはできない。 3 本件補正についてのまとめ 以上のとおり,本件補正発明は引用文献1に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許出願の際独立して特許を受けることができない。 したがって,本件補正は,特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので,同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって,前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は前記のとおり却下されたので,本願の特許請求の範囲の請求項1ないし15に係る発明は,令和2年8月28日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項に特定されるものであると認められるところ,請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,前記第2の[理由]1に「本件補正前」の請求項1として記載したとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由の概要 原査定の拒絶の理由のうち,請求項1については次のとおりである。 (1)(新規性)請求項1に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。 (2)(進歩性)請求項1に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 1.特開2007−67214号公報 3 引用文献1に記載された発明 (1)原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1には,前記第2の[理由]2(2)アに摘記した事項が記載されている。 (2)前記第2の[理由]2(2)アの記載事項から以下のことがいえる。 ア 引用文献1の段落【0036】によれば,「第2の絶縁体51」及び「第3の絶縁体61」が記載されている。 ここで,引用文献1の段落【0014】によれば,「各絶縁体」「51,61は,金属系軟質磁性材料をフィラとして含有させた有機樹脂からなる」ものである。 してみると,「金属系軟質磁性材料をフィラとして含有させた有機樹脂からなる」「第2の絶縁体51」及び「第3の絶縁体61」が記載されている。 イ 引用文献1の段落【0036】によれば,「コイル導体33,34」は「第3の絶縁体61に埋設した状態で形成されている」ものであり,「コイル導体35,36」は「第2の絶縁体52に埋設した状態で形成されている」ものである。なお,「第2の絶縁体52」は「第2の絶縁体51」の誤記と認められる。 また,引用文献1の段落【0038】によれば「コイル導体33,34」及び「コイル導体35,36」はビア73,74,75を介して導通接続している。ここで,図6及び図7を参照すると,「コイル導体33,34」及び「コイル導体35,36」は,ビア73,74,75を介して導通接続することによって,当該「コイル導体33,34」及び「コイル導体35,36」を複数積層して成るコイルを構成することが見て取れる。 してみると,「第3の絶縁体61に埋設した状態で形成されている」「コイル導体33,34」及び「第2の絶縁体51に埋設した状態で形成されている」「コイル導体35,36」を積層して成るコイルが記載されている。 ウ 引用文献1の図6に示された「パワーインダクタ2」は,複数のコイル導体によって外周を囲まれた中心領域を含むものである(図6に対応する参考図3に示した,太枠で囲まれた領域を参照)。 エ 参考図3を参照すると,「パワーインダクタ2」の「第1の絶縁体41」の全体及び「第2の絶縁体51」の一部は,中心領域から中心領域を中心とする径方向に延在するように配置され,積層方向に隣接するコイル導体同士の間に配置されたことが見て取れる(特に「第2の絶縁体51」については,当審で網掛けを付与した部分を除く部分を参照)。 オ 参考図3を参照すると,「第2の絶縁体51」及び「第3の絶縁体61」と,複数のコイル導体と,中心領域と,「第1の絶縁体41」及び「第2の絶縁体51」と,を含む「素体10」と,「素体10の側面に」形成された「端子電極21,22」を含む「パワーインダクタ2」が見て取れる。 カ 引用文献1の図7を参照すると,それぞれのコイル導体は,中心領域を中心として径方向に延びる平面内で導体パターンが螺旋状に巻回されて形成される平面スパイラル状のパターンを含むことが見て取れる。 キ 参考図3を参照すると,「パワーインダクタ2」の「第2の絶縁体51」及び「第3の絶縁体61」は,各コイル導体の導体パターン間に配置された部分を含み(当審で網掛けを付与した部分を参照),当該部分は中心領域から径方向に延在するように配置されたことが見て取れる。 ク 参考図3を参照すると,積層方向に隣接するコイル導体同士の間に配置された「第2の絶縁体51」と,「コイル導体33,34」の導体パターン間に配置された「第3の絶縁体61」とが接することが見て取れる。 ケ 参考図3を参照すると,各コイル導体において,導体パターンの径方向を向いた側面は,「第2の絶縁体51」及び「第3の絶縁体61」と接していることが見て取れる。 (3)したがって,引用文献1の図6及び参考図3に注目した前記(2)より,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。 「金属系軟質磁性材料をフィラとして含有させた有機樹脂からなる第2の絶縁体及び第3の絶縁体と, 第3の絶縁体に埋設されたコイル導体33,34及び第2の絶縁体に埋設されたコイル導体35,36を積層して成るコイルと, 複数のコイル導体によって外周を囲まれた中心領域と, 中心領域から中心領域を中心とする径方向に延在するように配置され,複数のコイル導体のうち積層方向に隣接するコイル導体同士の間に配置された第1の絶縁体及び第2の絶縁体と, を含む素体と, 素体の側面に形成された端子電極と,を含み, それぞれのコイル導体は,中心領域を中心として径方向に延びる平面内で導体パターンが螺旋状に巻回されて形成される平面スパイラル状のパターンを含み, コイル導体の導体パターン間に配置された第2の絶縁体及び第3の絶縁体は,中心領域から径方向に延在するように配置され, 積層方向に隣接するコイル導体間に配置された第2の絶縁体と,コイル導体33,34の導体パターン間に配置された第3の絶縁体とが接し, コイル導体の導体パターンの径方向を向いた側面は,第2の絶縁体及び第3の絶縁体と接している,パワーインダクタ。」 4 対比・判断 (1)本願発明と引用発明2との対比 ア 本願明細書の段落【0026】に記載されているように,第1から第6の磁性層11,12,13,14,15,16(本願発明の「磁性物質」に相当)は,絶縁樹脂及び磁性フィラーを含むものである。 これに対して,引用発明2の「第2の絶縁体」及び「第3の絶縁体」は,有機樹脂及び金属系軟質磁性材料のフィラを含有するものであるから,本願発明の「磁性物質」に相当する。 イ 引用発明2の「コイル導体」は,第2の絶縁体及び第3の絶縁体に埋設され,積層して成るコイルを構成するものであるから,本願発明の「磁性物質で密封されたコイルパターン層を複数積層して成るコイルパターン部」に相当する。 ウ 引用発明2の「中心領域」は,複数のコイル導体によって外周を囲まれた領域であるから,本願発明の「コイルパターン部によって外周を囲まれたコア部」に相当する。 エ 引用発明2の「第1の絶縁体」は,中心領域から中心領域を中心とする径方向に延在するように配置され,積層方向に隣接するコイル導体同士の間に配置されたものである。 また,引用発明2の「第2の絶縁体」は,中心領域から中心領域を中心とする径方向に延在するように配置され,積層方向に隣接するコイル導体同士の間に配置された部分と,各コイル導体における導体パターン間に配置された部分とが一体化された構造材である。ここで,本願明細書の段落【0026】及び図5によれば,「磁性層」(本願発明の「磁性物質」に対応)は,「絶縁層」と同一の物質を含むものでもよく,この場合,「絶縁層」と「磁性層」との間の境界が不明確となるような一体化された構造材が形成されてもよいものである。 よって,引用発明2の「第1の絶縁体」,及び「第2の絶縁体」のうち「中心領域から中心領域を中心とする径方向に延在するように配置され」,「積層方向に隣接するコイル導体同士の間に配置され」た部分は,本願発明の「コア部から前記コア部を中心とする径方向に延在するように配置され,積層された前記コイルパターン層のうち積層方向に隣接するコイルパターン層同士の間に配置された絶縁層」に相当する。 オ 前記アないしエより,引用発明2の「素体」は,本願発明の「磁性物質」,「コイルパターン部」,「コア部」,及び「絶縁層」に相当する構成を備えるから,本願発明の「本体」に相当する。 カ 引用発明2の「素体の側面に形成された端子電極」は,素体上に配置されているといえるから,本願発明の「本体上に配置された外部電極」に相当する。 キ 引用発明2の「それぞれのコイル導体は,中心領域を中心として径方向に延びる平面内で導体パターンが螺旋状に巻回されて形成される平面スパイラル状のパターンを含」むことは,本願発明の「それぞれのコイルパターン層は,前記コア部を中心として径方向に延びる平面内で導体パターンが螺旋状に巻回されて形成される平面スパイラル状のパターンを含」むことに相当する。 ク 引用発明2の「コイル導体の導体パターン間に配置された第2の絶縁体及び第3の絶縁体」は,中心領域から径方向に延在するように配置されているから,本願発明の「磁性物質は,前記コア部から前記径方向に延在するように配置され」ることに相当する。 ケ 絶縁層と磁性物質とがコア部において接することについて (ア)前記エのとおり,引用発明2の「第2の絶縁体」のうち「積層方向に隣接するコイル導体間に配置された」部分は,本願発明の「絶縁層」に相当する。 ここで,引用発明2の「第2の絶縁体」は,「コイル導体35,36」を埋設するものである。このことは,本願発明の「絶縁層」が「積層方向に隣接するコイルパターンのうちの一方のコイルパターン層」に配置されたことに相当する。 (イ)前記アのとおり,引用発明2の「第3の絶縁体」は,本願発明の「磁性物質」に相当する。 また,引用発明2の「第3の絶縁体」が「コイル導体33,34の導体パターン間に配置された」ことは,本願発明の「磁性物質」が「他方のコイルパターン層」に配置されたことに対応する。 (ウ)してみると,引用発明2の「積層方向に隣接するコイル導体間に配置された第2の絶縁体と,コイル導体33,34の導体パターン間に配置された第3の絶縁体とが接」することは,本願発明の「積層方向に隣接するコイルパターン層のうちの一方のコイルパターン層の前記コア部に配置された前記絶縁層と,他方のコイルパターン層の前記コア部に配置された前記磁性物質とが接」することに相当する。 コ 引用発明2の「コイル導体の導体パターンの径方向を向いた側面は,それぞれ第2の絶縁体及び第3の絶縁体と接している」ことは,本願発明の「前記導体パターンの前記径方向を向いた側面は,前記磁性物質と接している」ことに相当する。 サ 以上のとおり,引用発明2の「パワーインダクタ」は,本願発明の「磁性物質」,「コイルパターン部」,「コア部」,及び「絶縁層」を含む備える「本体」,並びに「外部電極」に相当する構成を備えるから,本願発明の「コイル部品」に相当する。 (2)一致点・相違点 したがって,本願発明と引用発明2とは, 「磁性物質,前記磁性物質で密封されたコイルパターン層を複数積層して成るコイルパターン部,前記コイルパターン部によって外周を囲まれたコア部,及び前記コア部から前記コア部を中心とする径方向に延在するように配置され,積層された前記コイルパターン層のうち積層方向に隣接するコイルパターン層同士の間に配置された絶縁層を含む本体と, 前記本体上に配置された外部電極と,を含み, それぞれのコイルパターン層は,前記コア部を中心として径方向に延びる平面内で導体パターンが螺旋状に巻回されて形成される平面スパイラル状のパターンを含み, 前記磁性物質は,前記コア部から前記径方向に延在するように配置され, 前記積層方向に隣接するコイルパターン層のうちの一方のコイルパターン層の前記コア部に配置された前記絶縁層と,他方のコイルパターン層の前記コア部に配置された前記磁性物質とが接し, 前記導体パターンの前記径方向を向いた側面は,前記磁性物質と接している, コイル部品。」 である点で一致し,相違点はない。 第4 むすび 以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは,この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は,その日数を附加します。)以内に,特許庁長官を被告として,提起することができます。 審判長 酒井 朋広 出訴期間として在外者に対し90日を附加する。 |
審理終結日 | 2021-12-09 |
結審通知日 | 2021-12-14 |
審決日 | 2022-01-04 |
出願番号 | P2016-217974 |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(H01F)
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最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
酒井 朋広 |
特許庁審判官 |
木下 直哉 須原 宏光 |
発明の名称 | コイル部品 |
代理人 | 龍華国際特許業務法人 |