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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  G07G
管理番号 1385104
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-06-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2021-06-16 
確定日 2022-05-09 
事件の表示 上記当事者間の特許第6780148号発明「情報端末及びその制御方法並びにプログラム」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第6780148号(以下「本件特許」という。)についての特許出願は、平成30年3月2日を出願日とする特願2018−37877号(以下「原出願」という。)の出願の一部を、令和2年6月18日に新たな特許出願としたものであって、令和2年10月16日にその特許権が設定登録された。
そして、本件無効審判請求に係る手続の経緯は、以下のとおりである。

令和 3年 6月16日付け 本件無効審判請求
同年 9月24日付け 被請求人より審判事件答弁書の提出
同年11月 9日付け 審理事項通知書(以下「審理事項通知書1」
という。)
同年11月24日付け 請求人より口頭審理陳述要領書(以下「請求
人陳述要領書1」という。)の提出
同年11月25日付け 被請求人より口頭審理陳述要領書(以下「被
請求人陳述要領書1」という。)の提出
同年11月30日付け 審理事項通知書(以下「審理事項通知書2」
という。)
同年12月 7日付け 請求人より口頭審理陳述要領書(以下「請求
人陳述要領書2」という。)の提出
同年12月10日付け 被請求人より口頭審理陳述要領書(以下「被
請求人陳述要領書2」という。)の提出
同年12月16日 口頭審理
令和 4年 1月 6日付け 請求人より上申書の提出
同年 1月27日付け 被請求人より上申書の提出

第2 本件特許発明
本件無効審判請求に係る本件特許の請求項1〜6に係る発明(以下「本件発明1〜6」という。)は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された以下のとおりのものである。

「【請求項1】
客が売場にて買上商品の登録を行う情報端末のコンピュータに、
買上商品の登録を受け付ける機能、
前記買上商品の登録を受け付けた後、前記買上商品の会計指示を受け付ける機能、
前記買上商品の会計指示を受け付けた後、レジ袋の購入を受け付ける機能、
前記レジ袋の購入を受け付けた後、会計用のコードを前記情報端末の表示器に表示させる機能、
を実現させるためのプログラム。
【請求項2】
前記コンピュータに、
前記買上商品の会計指示を受け付けた後、前記買上商品の登録にエラーがある場合に、係員の確認が必要であることを報知する機能、
をさらに実現させるための請求項1記載のプログラム。
【請求項3】
客が売場にて買上商品の登録を行う情報端末であって、
買上商品の登録を受け付ける登録受付手段と、
前記買上商品の登録を受け付けた後、前記買上商品の会計指示を受け付ける会計受付手段と、
前記買上商品の会計指示を受け付けた後、レジ袋の購入を受け付けるレジ袋受付手段と、
前記レジ袋の購入を受け付けた後、会計用のコードを表示器に表示させる表示制御手段と、
を具備する情報端末。
【請求項4】
前記買上商品の会計指示を受け付けた後、前記買上商品の登録にエラーがある場合に、係員の確認が必要であることを報知する報知手段、
をさらに具備する請求項3記載の情報端末。
【請求項5】
客が売場にて買上商品の登録を行う情報端末の制御方法であって、
前記情報端末が、
買上商品の登録を受け付けた後、前記買上商品の会計指示を受け付け、
前記買上商品の会計指示を受け付けると、レジ袋の購入を受け付けるように制御し、
前記レジ袋の購入を受け付けた後、会計用のコードを表示器に表示させる、制御方法。
【請求項6】
前記情報端末が、
前記買上商品の会計指示を受け付けた後、前記買上商品の登録にエラーがある場合に、係員の確認が必要であることを報知するようにさらに制御する、請求項5記載の制御方法。」

第3 請求人の主張
請求人は、特許第6780148号の請求項1〜6に記載された発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めており、審判請求書、請求人陳述要領書1、2及び令和4年1月6日付け上申書において主張する無効理由及び証拠方法は概ね以下のとおりである。

1.無効理由について
請求人が主張する無効理由は、以下の理由である。

本件特許の請求項1、3、5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて、また、本件特許の請求項2、4、6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2、3号証に記載された事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

2.証拠方法
請求人は、審判請求書に添付して甲第1〜3号証を提出し、請求人陳述要領書1に添付して甲第4〜7号証を提出している。
なお、各甲号証について、「甲第○号証」を「甲○」のように簡略表記することもある。

甲1 :米国特許出願公開第2014/0175167号明細書及び日本語 訳
甲2 :特開2007−241688号公報
甲3 :特開2012−178005号公報
甲4 :「ポリ袋ブログ」、作成日;平成25年(2013年)10月5日 、作成者;不明
(https://blog.goo.ne.jp/pori3123/e/f25faf4c12f8850d62c70b3f 77ae0ca8)
甲5 :特開2008−65612号公報
甲6 :立法と調査 NO.413、「我が国のレジ袋規制に関する動向 プラスチック資源循環戦略の答申を受けて」(衆議院常任委員会調 査室・特別調査室)、発行日;平成31年(2019年6月)、作 成者;中野かおり
甲7 :特開2007−241693号公報

第4 被請求人の主張
被請求人は、本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めるものであり、審判事件答弁書、被請求人陳述要領書1、2及び令和4年1月27日付け上申書において、請求項1〜6に記載された発明は、請求人の主張する無効理由及び証拠によっては無効とすることはできない旨主張している。

第5 当審の判断
1.各甲号証の記載事項等
(1)甲1
(1−1)甲1に記載されている事項
甲1には、図面とともに、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付し(以下同様)、( )内は日本語訳で、審判請求書及びそれに添付された甲1訳文によるものである。

「[0018] Referring to FIG. 1, a customer may utilize a mobile electronic device 68, such as a smart phone or tablet computer, while shopping. In particular, the customer may have a mobile electronic device which has mobile self-checkout software loaded thereon. The customer may use the mobile electronic device 68 while shopping. In particular, the customer may use the mobile electronic device to create a shopping cart of items which the customer selects for purchase at a brick and mortar retail store. By way of example, the customer may select an item 70 for purchase and may use the mobile electronic device to scan a UPC code 72 on that item. The mobile self-checkout software on the mobile electronic device may, from the UPC code 72, obtain and store information regarding the product 70. The customer may proceed in this manner while shopping, selecting items for purchase, scanning the UPC code associated with that item, and creating a digital shopping cart on the mobile electronic device 68 which includes a list of items selected for purchase.
[0019] As illustrated in FIG. 2, when the customer is ready to checkout and pay for the selected items, the customer will typically approach a POS terminal 10. The POS terminal 10 may be a self-checkout register or a conventional sales register with a cashier. The customer will typically have a shopping cart or basket with the selected items and will have information about those items on the mobile electronic device. The customer may indicate on the mobile electronic device that they are ready to checkout. In response, the mobile electronic device 68 may prepare information for the POS terminal 10 to convey the list of items for purchase. The mobile electronic device 68 may prepare one or more machine readable codes 74, such as a 2D barcode or QR code, which have information regarding the selected items.」
([0018] 図1に示されるように、顧客は、買い物中に、スマートフォンまたはタブレットコンピュータなどのモバイル電子デバイス68を利用することができる。とりわけ、顧客は、モバイルセルフチェックアウトソフトウェアがダウンロードされたモバイル電子デバイスを所持している可能性があり、その場合に、顧客は買い物中にモバイル電子デバイス68を使用することができる。特に、顧客は、モバイル電子デバイスを使用して、顧客が実店舗で購入するために選択するアイテムのショッピングカートを作成することができる。例として、顧客は、購入するアイテム70を選択し、モバイル電子デバイスを使用して、そのアイテムのUPCコード72をスキャンすることができる。モバイル電子デバイス上のモバイルセルフチェックアウトソフトウェアは、UPCコード72から、製品70に関する情報を取得および格納することができる。かくして顧客は、購入するアイテムを選択し、当該アイテムに関連するUPCコードをスキャンし、購入のために選択されたアイテムのリストを含むデジタルショッピングカートをモバイル電子デバイス68に作成してショッピングを進める。
[0019] 図2に示されるように、選択アイテムのチェックを終え支払い準備ができたら、顧客はPOS端末10へと向かう。POS端末10は、セルフチェックアウトレジスターまたはレジ付きの従来の販売レジスターでよい。顧客は、選択したアイテムが入ったショッピングカートまたはバスケットを持ち、また、モバイル電子デバイスにそれらのアイテムに関する情報を持つことになる。顧客は、モバイル電子デバイス上で、チェックアウト準備の指示を操作し、それに応じて、モバイル電子デバイス68は、購入するアイテムのリストを伝達するために、POS端末10のための情報を準備する。モバイル電子デバイス68は、選択されたアイテムに関する情報を有する2DバーコードまたはQRコードなどの1つまたは複数の機械可読コード74を準備する。)

「[0020] 2D machine readable codes can convey significant amounts of information. The machine readable code 74 may be prepared with product information such as the numeric UPC code of the products in the shopping cart embedded in the machine readable code as a payload. If there are too many products to fit within a single machine readable code 74, a series of machine readable codes can be prepared and flashed in sequence as they are acquired by the POS terminal. An optical scanner 16a associated with the POS terminal 10 may be used (either by the customer at a self-checkout lane or by a cashier at an assisted checkout lane) to scan the machine readable code 74 and thereby receive information regarding the selected items for purchase.」
([0020] 2D機械可読コードは、大量の情報を伝達できる。機械可読コード74は、ペイロードとして機械可読コードに埋め込まれたショッピングカート内の製品の数値UPCコードなどの製品情報を用いて作成することができる。単一の機械可読コード74内に収まるには製品が多すぎる場合、一連の機械可読コードを準備し、それらがPOS端末によって取得されるときに順番にフラッシュすることができる。POS端末10に関連付けられた光学スキャナ16aを使用して(セルフチェックアウトレーンの顧客または補助チェックアウトレーンのレジ係のいずれかによって)、機械可読コード74をスキャンし、それによって選択された購入アイテムに関する情報を受け取ることができる。)

「[0024] Embodiments in accordance with the invention may be embodied as an apparatus, system, device, method, computer program product, or other entity. Accordingly, the invention may take the form of an entirely hardware embodiment, an entirely software embodiment (including firmware, resident software, micro-code, etc.), or an embodiment combining software and hardware aspects that may all generally be referred to herein as a “module” or “system.” Furthermore, the invention may take the form of a computer program product embodied in any tangible medium of expression having computer-usable program code embodied in the medium.」
([0024] 本発明による実施形態は、装置、システム、デバイス、方法、コンピュータプログラム製品、または他の実体として具体化され得る。したがって、本発明は、完全にハードウェアの実施形態、(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)完全にソフトウェアの実施形態、または、本明細書で一般に「モジュール」または「システム」として参照されるところのソフトウェアとハードウェアの側面を組み合わせた実施形態の形をとることができる。さらに、本発明は、媒体に具体化されたコンピュータ使用可能なプログラムコードを有する任意の有形の表現媒体に具体化されたコンピュータプログラム製品の形態をとることができる。)

以下の図1、2が示されている。


(1−2)甲1の認定事項
上記(1−1)の記載事項から、以下の事項が認定できる。
ア.段落[0018]の「図1に示されるように、顧客は、買い物中に、スマートフォンまたはタブレットコンピュータなどのモバイル電子デバイス68を利用することができる。」との記載、及び段落[0024]の「本発明は、媒体に具体化されたコンピュータ使用可能なプログラムコードを有する任意の有形の表現媒体に具体化されたコンピュータプログラム製品の形態をとることができる。」との記載から、甲1は、モバイル電子デバイス68を利用するためのコンピュータプログラムに関するものであること 。

イ.段落[0019]の「選択されたアイテムに関する情報を有する2DバーコードまたはQRコードなどの1つまたは複数の機械可読コード74を準備する」との記載、及び図2から、モバイル電子デバイス68は、選択されたアイテムに関する情報を有する2DバーコードまたはQRコードなどの1つまたは複数の機械可読コード74を表示すること。

(1−3)甲1に記載された発明
上記(1−1)の記載事項及び(1−2)の認定事項から、甲1には次の発明が記載されていると認められる(以下「甲1発明」という。)。
<甲1発明>
「顧客が実店舗で購入するために選択するアイテム70のショッピングカートを作成することができるモバイル電子デバイス68を使用して、
顧客は、購入するアイテム70を選択し、そのアイテムのUPCコード72をスキャンし、購入のために選択されたアイテムのリストを含むデジタルショッピングカートをモバイル電子デバイス68に作成し、
顧客は、モバイル電子デバイス68上でチェックアウト準備の指示を操作し、
それに応じて、モバイル電子デバイス68は、購入するアイテムのリストを伝達するために、POS端末10のための情報を準備し、モバイル電子デバイス68は、選択されたアイテムに関する情報を有する2DバーコードまたはQRコードなどの1つまたは複数の機械可読コード74を表示させる、
モバイル電子デバイス68を利用するためのコンピュータプログラム。」

(2)甲2
(2−1)甲2に記載されている事項
甲2には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
「【0004】
本発明は、レジ袋の有料化等の事情により、顧客に渡すレジ袋の枚数を厳しく判断することが求められる場合に対応したレジスターを提供することを目的とする。」

「【0032】
本発明の実施形態に係るレジスターは、図1及び図2に示されるように、スキャナー1、ターミナル2、及びストアコントローラー3(図1では不図示)を備えてなり、顧客の購入商品をレジオペレーターに登録させ、登録された購入商品の内容に基づいて顧客が支払う商品購入代金及びレジオペレーターが顧客に渡すレジ袋の枚数を算出する演算を行い、これらの金額及び枚数をディスプレイに表示するとともにレシートに印字する。
【0033】
スキャナー1は、商品購入代金を精算する顧客が購入商品を持ち寄るカウンター4に設置されており、バーコードスキャナー11、スキャナーキーボード12、第一オペレーションディスプレイ13、及び第一カスタマーディスプレイ14を備えてなる。バーコードスキャナー11は、レジオペレーターによって順次翳される購入商品のバーコードから商品識別番号を読み取って購入商品を登録する登録手段である。スキャナーキーボード12は、バーコードスキャナー11がバーコードを読めない場合に商品識別番号をマニュアルで登録したり、同一商品が複数購入される場合にその個数を登録したりするときに使用される登録手段である。第一オペレーションディスプレイ13は、登録する購入商品の内容を逐一表示する表示手段であり、レジオペレーターによる目視確認のためにカウンター4の内側に向けて設置される。第一カスタマーディスプレイ14は、第一オペレーションディスプレイ13と同様に、登録する購入商品を逐一表示する表示手段であり、顧客による目視確認のためにカウンター4の外側に向けて設置される。」

「【0036】
制御部26は、登録された各購入商品の容積、重量及び個数から購入商品全体の容積及び重量を算出し、その容積及び重量の商品を入れるために必要なレジ袋のサイズ(大、中、小)、各サイズの枚数、及びそのレジ袋購入代金を、図4に示される各レジ袋の容積、耐荷重、単価から算出する演算を行う。さらに、各購入商品の単価及び個数から算出される金額にレジ袋の購入代金を自動的に加算して、商品購入代金(小計)、及びその商品購入代金に応じて発生するサービスポイント(買上ポイント)を算出し、当該顧客のサービスポイント残高に加算する演算を行う。これらの演算結果に基づく情報は、第二オペレーションディスプレイ24及び第二カスタマーディスプレイ25に表示され、プリンター22によってレシートに印字される。第二オペレーションディスプレイ24には、図5(a)に示されるように、商品購入代金(小計)、顧客からの預り金(預り)、顧客に渡す釣銭(釣り)、及び顧客に渡すレジ袋のサイズ、枚数が表示されるほか、レジ袋代金がレジ袋以外の商品購入代金と区別して表示される。第二カスタマーディスプレイ25では、図5(b)に示されるように、商品購入代金(小計)、預り金(お預り)、釣銭(お釣り)と、顧客に渡されるレジ袋のサイズ、枚数及び代金が表示される。レシートには、図6に示されるように、商品購入代金(小計)、預り金(お預り)、釣銭(お釣り)が表示されるほか、顧客に渡すレジ袋のサイズ、枚数及び代金がレジ袋以外の購入商品の商品名及び代金と区別して印字され、また、レジ袋の代金合計がレジ袋以外の購入商品代金の合計と区別して印字される。」

「【0052】
上記実施形態では、顧客が算出されたレジ袋のサイズ変更、枚数変更、キャンセル等を希望する場合には、レジオペレーターに申し出て、処理操作させることとしていたが、顧客自らが変更するための入力手段を備えるようにしても良い。例えば、顧客の手元側に向けられた第一カスタマーディスプレイ14を入力操作可能なタッチパネル式ディスプレイに変更して、図12に示されるように、算出されたレジ袋のサイズ、枚数、及び金額とともに、サイズごとにレジ袋の枚数を変更入力できるボタンを表示することで対応することができる。図12(a)に示されるように、中サイズのレジ袋1枚が登録されている場合において、これをキャンセルしたい場合には、図12(b)に示されるように、同サイズのボタンの「0」を押すことで対応できる。これにより、顧客が持参した買物袋を使いたい、重量の大きい商品用にレジ袋を2重にしたい等の事情があるときには、レジオペレーターに申し出することなく速やかに対応することができる。」

以下の【図1】、【図12】が示されている。
【図1】

【図12】

(2−2)甲2の認定事項
上記(2−1)の記載事項から、以下の事項が認定できる。
ア.段落【0032】の「登録された購入商品の内容に基づいて顧客が支払う商品購入代金」との記載から、段落【0036】の「各購入商品の単価及び個数から算出される金額」は、商品購入代金といえること。同段落【0036】の「各購入商品の単価及び個数から算出される金額にレジ袋の購入代金を自動的に加算して、商品購入代金(小計)、及びその商品購入代金に応じて発生するサービスポイント(買上ポイント)を算出し、」との記載から、商品購入代金にレジ袋の購入代金を自動的に加算して、商品購入代金(小計)を算出すること。

イ.段落【0052】の「上記実施形態では、顧客が算出されたレジ袋のサイズ変更、枚数変更、キャンセル等を希望する場合には、・・・。例えば、顧客の手元側に向けられた第一カスタマーディスプレイ14を入力操作可能なタッチパネル式ディスプレイに変更して、・・・これにより、顧客が持参した買物袋を使いたい、重量の大きい商品用にレジ袋を2重にしたい等の事情があるときには、レジオペレーターに申し出することなく速やかに対応することができる。」との記載から、顧客が算出されたレジ袋のサイズ変更、枚数変更、キャンセル等を希望する場合には、顧客の手元側に向けられた入力操作可能なタッチパネル式ディスプレイである第一カスタマーディスプレイ14により対応できること。

(2−3)甲2に記載された技術的事項
上記(2−1)の記載事項及び(2−2)の認定事項から、甲2には次の事項が記載されていると認められる(以下「甲2事項」という。)。
<甲2事項>
「レジ袋の有料化等の事情により、顧客に渡すレジ袋の枚数を厳しく判断することが求められる場合に対応したレジスターを提供することを目的とし、
顧客の購入商品をレジオペレーターに登録させ、登録された購入商品の内容に基づいて顧客が支払う商品購入代金及びレジオペレーターが顧客に渡すレジ袋の枚数を算出する演算を行い、商品購入代金にレジ袋の購入代金を自動的に加算して、商品購入代金(小計)を算出し、第二カスタマーディスプレイ25では、商品購入代金(小計)、預り金(お預り)、釣銭(お釣り)と、顧客に渡されるレジ袋のサイズ、枚数及び代金が表示され、
顧客が算出されたレジ袋のサイズ変更、枚数変更、キャンセル等を希望する場合には、顧客の手元側に向けられた入力操作可能なタッチパネル式ディスプレイである第一カスタマーディスプレイ14により受け付けること。」

(3)甲3
(3−1)甲3に記載されている事項
甲3には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、商品運搬器具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にスーパーマーケットなどにおいては、ショッピングカートなどの商品運搬器具を使用して商品が運搬される。そして、多くの場合、決算前の商品も、決算後の商品も、同じ商品運搬器具を使用して運搬される。」

「【0005】
このような事情から、商品運搬器具に入った商品の決済状況を、周囲に居る人間が容易に確認できることが望まれていた。」

「【0029】
次に以上のように構成されたショッピングカート100の動作について説明する。
【0030】
CPU1は起動されると、図4に示すような処理を開始する。
【0031】
ステップSa1およびステップSa2の待ち受け状態においてCPU1は、決済要求がなされたか否かと、スキャンタイミングが到来したか否かを繰り返し確認する。そしてスキャンタイミングが到来したならば、CPU1はステップSa2からステップSa3へ進む。なお、スキャンタイミングは、例えば一定時間(数秒程度)間隔とする。
【0032】
ステップSa3においてCPU1は、商品かご101に入っている商品をスキャンする。具体的には、商品かご101に入っている商品に取り付けられたRFIDタグから情報を取得するようにタグ通信部6に指示し、この指示に応じてタグ通信部6がRFIDタグから取得した情報を取り込む。」

「【0042】
ボタンBは、顧客が決済を要求するためのボタンである。
【0043】
ここで、決済処理について説明する。
【0044】
CPU1がステップSa1およびステップSa2の待ち受け状態にあるときにボタンBを顧客がタッチしたならば、CPU1はステップSa1においてYESと判断し、ステップSa1からステップSa12の決済処理へ進む。
【0045】
図6は決済処理のフローチャートである。
【0046】
ステップSb1においてCPU1は、商品リストエリアに記憶された重量の総和として求まる総重量と、重量計8での計量値との重量差を算出する。
【0047】
ステップSb2においてCPU1は、重量差が予め定められた許容値以下であるか否かを確認する。そして重量差が許容値よりも大きいならば、CPU1はステップSb2からステップSb3へ進み、エラー処理を行う。このエラー処理は例えば、商品かご101に入っている商品の情報を正しくスキャンできないことを顧客に報知するなどの処理である。そしてこのエラー処理を終えたならばCPU1は、決済処理を終了する。」

以下の【図2】、【図6】が示されている。
【図2】

【図6】

(3−2)甲3の認定事項
上記(3−1)の記載事項から、以下の事項が認定できる。
段落【0047】の「ステップSb2においてCPU1は、重量差が予め定められた許容値以下であるか否かを確認する。そして重量差が許容値よりも大きいならば、CPU1はステップSb2からステップSb3へ進み、エラー処理を行う。このエラー処理は例えば、商品かご101に入っている商品の情報を正しくスキャンできないことを顧客に報知するなどの処理である。」との記載から、商品かご101に入っている商品の情報を正しくスキャンできない場合に、顧客に報知するなどのエラー処理を行うこと。

(3−3)甲3に記載された事項
上記(3−1)の記載事項及び(3−2)の認定事項から、甲3には次の事項が記載されていると認められる(以下「甲3事項」という。)。
<甲3事項>
「ショッピングカート100のCPU1は、顧客が決済を要求するためのボタンBを顧客がタッチしたならば決済処理へ進み、商品かご101に入っている商品の情報を正しくスキャンできない場合に、顧客に報知するなどのエラー処理を行うこと。」

(4)甲4
(4−1)甲4に記載されている事項
甲4には、以下の事項が記載されている。(写真の□囲みは請求人が付与。)

(5)甲5
(5−1)甲5に記載されている事項
甲5には、以下の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、一般小売店で使用される商品販売データ処理装置に関する。」

「【0028】
図7に示すように、レシート31には、顧客を示す『C』、販売した商品及び値段を示す『パン¥200』、『コーヒー ¥100』、レジ袋の代金を示す『レジ袋 ¥10』、『小計 ¥310』、『現計 ¥310』等が印字されている。しかしながら、レジ袋削減に関するメッセージは印字されない。」

以下の【図7】が示されている。
【図7】


(6)甲6
(6−1)甲6に記載されている事項
甲6には、以下の事項が記載されている。(□囲みは請求人が付与)

(7)甲7
(7−1)甲7に記載されている事項
甲7には、以下の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、商品購入時に使用されるレジ袋の有料化に対応したレジスターシステムに関する。」

「【0036】
ターミナル2は、カウンター4の片端に隣接して設置され、カードリーダー21、プリンター22、ターミナルキーボード23、第二オペレータディスプレイ24、及び第二カスタマーディスプレイ25、制御部26(図1では不図示)を備えてなる。カードリーダー21は、レジオペレーターが顧客から預かった顧客カードを挿入するためのスロットを備えてなり、顧客カードに記録された顧客の識別情報(顧客識別番号)を読み取る読取手段として機能する。プリンター22は、商品及びレジ袋購入代金の精算内容、並びに顧客のサービスポイントの発生・利用内容及び残高内容を印字したレシートを発行する。ターミナルキーボード23は、スキャナーキーボード12と同様に、購入商品やレジ袋を登録することができるほか、商品及びレジ袋の購入代金の小計や、顧客からの預り金を登録して釣銭を出す支払処理の操作を行うことができる。」

「【0052】
第六に、上記実施形態に係るレジスターシステムは、商品購入代金の小計ボタンが押される小計時に、レジ袋購入の未登録を警告表示するので、レジ袋購入要否の確認が行われないままに預り金の登録処理を済ませてしまい、後でレジ袋購入のために処理をやり直すことになる不都合を回避できる。」

以下の【図1】、【図5】が示されている。
【図1】

【図5】


2.無効理由について
(1)本件発明1について
ア.対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、
(ア)後者の「顧客」は、前者の「客」に相当し、同様に「実店舗」は「売場」に、「購入するために選択するアイテム」及び「購入するアイテム」は「買上商品」に、「顧客は、購入するアイテムを選択し、そのアイテムのUPCコード72をスキャンし、購入のために選択されたアイテムのリストを含むデジタルショッピングカートをモバイル電子デバイス68に作成」することは「登録を行う」ことに、それぞれ相当する。また、後者の「モバイル電子デバイス68」は、前者の「情報端末」に相当するところ、後者は「モバイル電子デバイス68を利用するためのコンピュータプログラム」に関するものであるから、後者の「モバイル電子デバイス68」がコンピュータを有することは明らかである。
そうすると、後者の「顧客が実店舗で購入するために選択するアイテムのショッピングカートを作成することができるモバイル電子デバイス68」は、前者の「客が売場にて買上商品の登録を行う情報端末のコンピュータ」に相当する。

(イ)後者の「顧客は、購入するアイテムを選択し、そのアイテムのUPCコード72をスキャンし、購入のために選択されたアイテムのリストを含むデジタルショッピングカートをモバイル電子デバイス68に作成」する機能は、前者の「買上商品の登録を受け付ける機能」に相当する。

(ウ)上記(イ)を踏まえると、後者の「チェックアウト準備の指示」は、前者の「会計指示」に相当し、後者の「顧客は、モバイル電子デバイス68上でチェックアウト準備の指示を操作」する機能は、前者の「前記買上商品の登録を受け付けた後、前記買上商品の会計指示を受け付ける機能」に相当する。

(エ)上記(ウ)を踏まえると、後者の「選択されたアイテムに関する情報を有する2DバーコードまたはQRコードなどの1つまたは複数の機械可読コード74」は、前者の「会計用のコード」に相当し、また、後者の「モバイル電子デバイス68」は「複数の機械可読コード74を表示させる」ための表示器を有することは図2等からみて明らかであるから、後者の「モバイル電子デバイス68は、購入するアイテムのリストを伝達するために、POS端末10のための情報を準備し、モバイル電子デバイス68は、選択されたアイテムに関する情報を有する2DバーコードまたはQRコードなどの1つまたは複数の機械可読コード74を表示させる」機能と、前者の「前記レジ袋の購入を受け付けた後、会計用のコードを前記情報端末の表示器に表示させる機能」とは、「会計用のコードを前記情報端末の表示器に表示させる機能」の点で共通する。

(オ)後者の「モバイル電子デバイス68を利用するためのコンピュータプログラム」は、前者の各機能を「実現させるためのプログラム」に相当する。

そうすると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
〔一致点〕
「客が売場にて買上商品の登録を行う情報端末のコンピュータに、
買上商品の登録を受け付ける機能、
前記買上商品の登録を受け付けた後、前記買上商品の会計指示を受け付ける機能、
会計用のコードを前記情報端末の表示器に表示させる機能、
を実現させるためのプログラム。」

〔相違点〕
本件発明1は、「前記買上商品の会計指示を受け付けた後、レジ袋の購入を受け付ける機能」を実現させるとともに、「前記レジ袋の購入を受け付けた後、会計用のコードを前記情報端末の表示器に表示させる機能」を実現させるのに対し、
甲1発明は、「顧客は、モバイル電子デバイス68上でチェックアウト準備の指示を操作し、それに応じて、モバイル電子デバイス68は、購入するアイテムのリストを伝達するために、POS端末10のための情報を準備し、モバイル電子デバイス68は、選択されたアイテムに関する情報を有する2DバーコードまたはQRコードなどの1つまたは複数の機械可読コード74を表示させる」ものであって、レジ袋の購入を受け付ける機能を有するものでなく、前記レジ袋の購入を受け付けた後、機械可読コード74を表示させるものでもない点。

イ.判断
(ア)甲2には、上記「1.(2)(2−3)」で示したように、以下の甲2事項が記載されていると認められる。
「レジ袋の有料化等の事情により、顧客に渡すレジ袋の枚数を厳しく判断することが求められる場合に対応したレジスターを提供することを目的とし、
顧客の購入商品をレジオペレーターに登録させ、登録された購入商品の内容に基づいて顧客が支払う商品購入代金及びレジオペレーターが顧客に渡すレジ袋の枚数を算出する演算を行い、商品購入代金にレジ袋の購入代金を自動的に加算して、商品購入代金(小計)を算出し、第二カスタマーディスプレイ25では、商品購入代金(小計)、預り金(お預り)、釣銭(お釣り)と、顧客に渡されるレジ袋のサイズ、枚数及び代金が表示され、
顧客が算出されたレジ袋のサイズ変更、枚数変更、キャンセル等を希望する場合には、顧客の手元側に向けられた入力操作可能なタッチパネル式ディスプレイである第一カスタマーディスプレイ14により受け付けること。」

(イ)甲1発明は、「モバイル電子デバイス68を利用するためのコンピュータプログラム」に関するものであるところ、「レジ袋の購入を受け付ける機能」を有することは記載されていない。他方、甲2事項は、「レジスター」に関するものであるところ、「顧客が算出されたレジ袋のサイズ変更、枚数変更、キャンセル等を希望する場合には、顧客の手元側に向けられた入力操作可能なタッチパネル式ディスプレイである第一カスタマーディスプレイ14により受け付けること」(以下「レジ袋のキャンセル等を受け付ける機能」ということがある。)が、本件発明1でいうところの「レジ袋の購入を受け付ける機能」ということはできるが、甲1発明の「モバイル電子デバイス68」や本件発明1の「情報端末」のような可搬な情報端末を用いることは記載されていない。
また、甲4〜7は、レジ袋は顧客の購入するアイテムであることが技術常識であることを示すにとどまるものであって、さらに、顧客(買物客)が可搬な情報端末に、レジ袋に関する何らかの機能を持たせる技術については記載も示唆もなく、他にそのような技術が原出願前に技術常識や周知の技術であったと認めるに足る証拠もない。
したがって、甲1発明の「モバイル電子デバイス68」において、レジ袋に関する何らかの機能を有するよう構成すること、例えば、甲2事項の「レジスター」の「レジ袋のキャンセル等を受け付ける機能」を移すよう構成することに、動機付けがあるとは認められない。

(ウ)甲2事項は「レジスター」に関する事項であるから、甲1発明及び甲2事項に接した当業者は、仮に甲1発明に甲2事項を適用しようとする際には、甲2事項の「レジスター」に相当する甲1発明の「POS端末10」に甲2事項を適用することが自然である。
つまり、仮に甲1発明に甲2事項を適用したとすれば、まず、甲1発明の「POS端末10」が、甲2事項の「顧客の手元側に向けられた入力操作可能なタッチパネル式ディスプレイである第一カスタマーディスプレイ」と「第二カスタマーディスプレイ」を備えることとなる。そして、甲1の段落[0020]にも具体的に記載されているように、甲1発明の「POS端末10」で、「モバイル電子デバイス68」に表示された「機械可読コード74」を光学スキャンして「アイテムのリストを含むデジタルショッピングカート」を展開する。その後、甲1発明の「POS端末10」は、甲2事項のように、「デジタルショッピングカート」の「リスト」にある「購入するアイテム」の内容に基づいて顧客が支払う商品購入代金及びレジオペレーターが顧客に渡すレジ袋の枚数を算出する演算を行い、商品購入代金にレジ袋の購入代金を自動的に加算して、商品購入代金(小計)を算出することとなる。 さらにその後、甲1発明の「POS端末10」が備えることとなった「第二カスタマーディスプレイ」に、商品購入代金(小計)、預り金(お預り)、釣銭(お釣り)と、顧客に渡されるレジ袋のサイズ、枚数及び代金が表示されるとともに、顧客が算出されたレジ袋のサイズ変更、枚数変更、キャンセル等を希望する場合には、甲1発明の「POS端末10」が備えることとなった「第一カスタマーディスプレイ」を顧客が操作することによりその希望を受け付けることとなる。
このように、甲2事項の「レジ袋のキャンセル等を受け付ける機能」は、甲1発明の「POS端末10」が備えるようになると考えるのが自然であって、「モバイル電子デバイス68」(本件発明1の「情報端末」)が備えるようになるとまではいうことができない。
してみると、仮に甲1発明に甲2事項が適用できたとしても、上記相違点に係る本件発明1の構成には至るものではない。

(エ)したがって、甲1発明及び甲2事項に基いて、相違点に係る本件発明1の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。

(オ)請求人の主張について
(オ−1)主張の内容
請求人は、上記相違点に係る本件発明1の「前記買上商品の会計指示を受け付けた後、レジ袋の購入を受け付ける機能」に関し、令和4年1月6日付け上申書の2ページの(1)、(2)の項において、次のように述べている。
「(1)答弁書において、被請求人がした甲第2号証の記載事項の認定は正しくないこと
・・・。
一方で、被請求人は、甲第2号証の【0032】、【0036】及び【0052】を参照しても、甲第2号証には、『顧客の買上商品がすべて登録され、購入商品の会計指示を受付けた後、』との事項は記載されていない、と認定しているが、この認定は誤りである。令和3年12月7日付け口頭審理陳述要領書で説明したように、段落【0036】には、レジ袋のサイズや枚数が、『購入商品全体の容積及び重量を算出し』た上で行われることが記載されており、当該記載は、顧客の買上商品がすべて登録された後に行われることを意図した記載であることは明らかである。被請求人は、段落【0036】の摘記事項(イ)中の『購入商品全体の容積及び重量を算出し』との事項に触れることなく、甲第2号証の記載事項を認定しているが、この認定は明らかに誤りである。

(2)『購入商品の登録が終了した旨の指示』について、何らかの操作が存在すること
甲第2号証の図1の中央に示されるスキャナー1のバーコードスキャナー11においては、段落【0033】で説明されるように、レジオペレータによって順次翳される購入商品のバーコードから商品識別番号を読み取って購入商品が登録される。そして、図1に示されるスキャナー1の背面側に備えられた第一カスタマーディスプレイ14には、登録する購入商品が逐一表示される。この表示は、スーパーで買い物をする時によく目にする画面である。段落【0052】によれば、図12は、同じ第一カスタマーディスプレイ14に映し出される表示例である(ただし、タッチパネル式ディスプレイに変更されることが想定されている。)。この図12の表示例は、購入商品が逐一表示される表示態様とは明らかに異なっている。そして、POS端末等においては、画面表示の切換には必ず操作が伴い、登録する購入商品が逐一表示される最中に、このような表示がされるということは考えられない。
登録する購入商品を逐一表示する画面から、図12の表示に画面遷移していることからすれば、何らかの操作が行われていることは明らかである。」
そして、上記(1)及び(2)の事項から、本件発明1は、甲1発明及び甲2事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものと主張するものである。

(オ−2)検討
請求人が上記(エ−1)の(1)で主張しているように、甲2事項は、甲2の段落【0036】等の記載から、レジ袋のサイズや枚数を、顧客の買上商品がすべて登録された後に算出するものである。また、その後に、レジ袋のキャンセル等を受け付けるものといえるから、本件発明1でいうところの「前記買上商品の登録を受け付けた後、」「レジ袋の購入を受け付ける機能」を実現できるものということができるが、甲2事項には、「会計指示」という概念はないから、上記相違点に係る本件発明1の「購入商品の会計指示を受付けた後、レジ袋の購入を受け付ける機能」を有するものでない。
この点に関し、さらに、請求人は同(2)で補足しているが、第一カスタマーディスプレイ14の表示が、登録する購入商品を逐一表示する画面から、図12の顧客が算出されたレジ袋のサイズ変更、枚数変更、キャンセル等に対応するための表示に画面遷移していることから、何らかの操作が行われているといえるかもしれないが、仮に、「何らかの操作」があると認めたとしても、「何らかの操作」は「顧客の買上商品の登録終了」を指示するものと解するのが自然であり、甲2には、「何らかの操作」が会計指示であることについては、記載も示唆もあるとは認められない。
したがって、甲2事項は、購入商品の会計指示を受付けた後、レジ袋のキャンセル等を受け付ける機能を有するものとはいえない。
そして、上記(イ)で説示したように、甲2事項の「レジスター」の「レジ袋のキャンセル等を受け付ける機能」を、甲1発明の「モバイル電子デバイス68」に移すことに、動機付けがあるとは認められないが、仮に、甲1発明の「モバイル電子デバイス68」に甲2事項の「レジスター」の「レジ袋」に関する機能を移したとしても、甲2事項には、上述したように「会計指示」という概念はないから、本件発明1の「前記買上商品の会計指示を受け付けた後、レジ袋の購入を受け付ける機能」を実現させる構成に至るものでない。
よって、請求人の主張は採用できない。

(オ)小括
上記(ア)〜(エ)を総合すると、本件発明1は、甲1発明及び甲2事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本件発明2について
請求項2は、請求項1を引用するものであって、本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに減縮したものである。そして、甲3事項は、上記「1.(3)(3−3)」で述べたように「ショッピングカート100のCPU1は、顧客が決済を要求するためのボタンBを顧客がタッチしたならば決済処理へ進み、商品かご101に入っている商品の情報を正しくスキャンできない場合に、顧客に報知するなどのエラー処理を行うこと。」であって、上記相違点に係る本件発明1の構成は記載されていないから、本件発明2は、上記(1)で述べた理由と同様に、甲1発明及び甲2、3事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本件発明3について
本件発明3は、本件発明1の「登録を受け付ける機能」を「登録を受け付ける登録受付手段」に、「会計指示を受け付ける機能」を「会計指示を受け付ける会計受付手段」に、「レジ袋の購入を受け付ける機能」を「レジ袋の購入を受け付けるレジ袋受付手段」に、「情報端末の表示器に表示させる機能」を「会計用のコードを表示器に表示させる表示制御手段」に替えて、「プログラム」の発明から「情報端末」の発明にカテゴリ変更したものであって、対比・判断は、上記(1)と同様であるから、本件発明3は、甲1発明及び甲2事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)本件発明4について
請求項4は、請求項3を引用するものであって、本件発明4は、本件発明3の発明特定事項を全て含み、さらに減縮したものである。そして、甲3事項は、上記「1.(3)(3−3)」で述べたとおりのものであって、「前記買上商品の登録を受け付けた後、前記買上商品の会計指示を受け付ける会計受付手段」の構成はないから、本件発明4は、上記(3)で述べた理由と同様に、甲1発明及び甲2、3事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(5)本件発明5について
本件発明5は、本件発明1が「プログラム」の発明であるところ、「制御方法」の発明にカテゴリ変更したものであって、対比・判断は、上記(1)と実質的に同様であるから、本件発明5は、甲1発明及び甲2事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはえない。

(6)本件発明6について
請求項6は、請求項5を引用するものであって、本件発明6は、本件発明5の発明特定事項を全て含み、さらに減縮したものである。そして、甲3事項は、上記「1.(3)(3−3)」で述べたとおりのものであって、「前記買上商品の会計指示を受け付けると、レジ袋の購入を受け付けるように制御し」との構成はないから、本件発明6は、上記(5)で述べた理由と同様に、甲1発明及び甲2、3事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(7)小括
したがって、本件特許の請求項1、3、5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて、また、本件特許の請求項2、4、6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2、3号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、無効理由により、請求項1〜6に係る特許を無効とすることはできない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由及び提出した証拠方法によっては、請求項1〜6に係る特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-02-17 
結審通知日 2022-02-22 
審決日 2022-03-30 
出願番号 P2020-105224
審決分類 P 1 113・ 121- Y (G07G)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 一ノ瀬 覚
特許庁審判官 島田 信一
八木 誠
登録日 2020-10-16 
登録番号 6780148
発明の名称 情報端末及びその制御方法並びにプログラム  
代理人 山田 基司  
代理人 峰 隆司  
代理人 郡山 順  
代理人 堂前 俊介  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 井上 正  
代理人 野河 信久  
代理人 佐野 辰巳  
代理人 福田 哲也  
代理人 柴田 和雄  
代理人 岩▲崎▼ 孝治  

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