ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 一部申し立て 2項進歩性 G21C 審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 G21C |
---|---|
管理番号 | 1385117 |
総通号数 | 6 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2022-06-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-07-28 |
確定日 | 2022-03-29 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | true |
事件の表示 | 特許第6636902号発明「原子力プラントシステムおよびそれを用いた訓練方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6636902号の特許請求の範囲を、令和4年2月16日付け訂正請求書に添付した特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−11〕について訂正することを認める。 特許第6636902号の請求項5、8〜10に係る特許を維持する。 特許第6636902号の請求項1〜3、11に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6636902号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし12に係る特許についての出願は、平成28年11月29日に特許出願され、令和元年12月27日にその特許権の設定登録がされ、その後、その請求項1〜3、5及び8〜11についての特許に対して、特許異議申立人石橋智子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 特許異議の申立ての経緯は次のとおりである。 令和2年 7月28日 :特許異議の申立て 令和2年10月28日付け :取消理由通知 令和2年12月18日 :訂正請求書・意見書(特許権者) 令和3年 2月24日 :意見書(申立人) 令和3年 3月30日付け :訂正拒絶理由通知 令和3年 4月15日 :意見書・手続補正書(特許権者) 令和3年 6月11日付け :取消理由通知(決定の予告) 令和3年 8月27日 :意見書(特許権者) 令和3年12月13日付け :取消理由通知(決定の予告(2回目)) 令和4年 2月16日 :訂正請求書・意見書(特許権者) 令和4年2月16日になされた訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)によって、令和3年4月15日提出の手続補正書により補正された令和2年12月18日になされた訂正請求(以下「先の訂正請求」という。)は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 なお、本件訂正請求は、特許法第120条の5第5項ただし書に規定する「特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情」がある場合に該当し、本件訂正請求後に、改めて、特許異議申立人に意見書を提出する機会を与えないこととした。すなわち、本件訂正請求に係る特許請求の範囲の訂正は、後記第2によれば、(i)特許異議の申立ての対象請求項のうち、請求項1ないし3、11を削除するとともに、請求項5、8〜10を特許異議申立ての対象外の請求項4又は6に特定された事項を全て含むようにした上で、(ii)先の訂正請求に係る訂正と同一の訂正をしたものである。上記(i)の訂正については、特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないことが明らかであり、上記(ii)の訂正については、特許異議申立人は、意見書を提出する機会が既に与えられている。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容について 本件訂正請求は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲を、以下のとおり訂正するものである。なお、本件訂正請求は、一群の請求項である訂正後の請求項1〜11に対して請求されたものである。(なお、下線は当審が付した。訂正箇所を示す。) (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (4)訂正事項4 訂正前の特許請求の範囲の請求項4のうち、請求項1を引用するものを独立形式に改める。 (5)訂正事項5 訂正前の特許請求の範囲の請求項5の、 「前記実運転モードにおいては前記COP支援装置模擬装置によって構成された画面を」との記載を、 「前記実運転モードにおいては前記COP支援装置によって構成された画面を」に訂正するとともに、「を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の原子力プラントシステム」との記載を、「を特徴とする請求項4に記載の原子力プラントシステム」に訂正する。 (6)訂正事項6 訂正前の特許請求の範囲の請求項6のうち、請求項1を引用するものを独立形式に改める。 (7)訂正事項7 訂正前の特許請求の範囲の請求項8の 「を特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の原子力プラントシステム」との記載を、 「を特徴とする請求項4ないし請求項7のいずれか一項に記載の原子力プラントシステム」に訂正する。 (8)訂正事項8 訂正前の特許請求の範囲の請求項9の 「を特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の原子力プラントシステム」との記載を、 「を特徴とする請求項4ないし請求項8のいずれか一項に記載の原子力プラントシステム」に訂正する。 (9)訂正事項9 訂正前の特許請求の範囲の請求項10の、 「 前記訓練センター内に配置されて前記複数の訓練センターユニットを相互に接続する訓練センター内連携装置と、 を有すること、」との記載を、 「 を、有し、 前記複数の訓練センターユニットは、前記訓練センターユニット内で相互に接続されていること、 」に訂正するとともに、「を特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載の原子力プラントシステム」との記載を「を特徴とする請求項4ないし請求項9のいずれか一項に記載の原子力プラントシステム」に訂正する。 (10)訂正事項10 特許請求の範囲の請求項11を削除する。 2 訂正の適否について (1)訂正事項1について ア 訂正の目的の適否 訂正事項1は請求項1を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無 訂正事項1は請求項の削除であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1は、上記ア及びイに照らせば、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的の適否 訂正事項2は請求項2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無 訂正事項2は請求項の削除であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項2は、上記ア及びイに照らせば、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。 (3)訂正事項3について ア 訂正の目的の適否 訂正事項3は請求項3を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無 訂正事項3は請求項の削除であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項3は、上記ア及びイに照らせば、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。 (4)訂正事項4について ア 訂正の目的の適否 訂正事項4は、請求項4が、請求項1ないし3の何れか1項の記載を引用するものであったところ、そのうち請求項1を引用するものについて独立形式に改める訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4項に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするとともに、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無 訂正事項4は、上記アのとおり、請求項1ないし3のうち請求項1を引用するものについて、独立形式に改める訂正であるから、この訂正により新たな技術的事項が導入されることはなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項4は、上記ア及びイに照らせば、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。 エ 独立特許要件の充足性 特許異議の申立てがされていない請求項4に係る発明は、後記第6、2(1)で検討するとおり、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるから、訂正事項4は、特許法第126条第7項の規定に適合する。 (5)訂正事項5 ア 訂正の目的の適否 (ア)訂正事項5は、請求項5において、「前記実運転モードにおいては前記COP支援装置模擬装置によって構成された画面を」との記載を、「前記実運転モードにおいては前記COP支援装置によって構成された画面を」に改めるとともに(以下「訂正事項5−1」という。)、請求項5が、請求項1ないし4の何れか1項の記載を引用するものであったところ、そのうち請求項4を引用するものに改める(以下「訂正事項5−2」という。)訂正である。 (イ)訂正事項5−1について a 請求項5は、「COP表示切り替え器」を特定するものであるところ、当該「COP表示切り替え器」は、「非常時制御室内COP表示装置」に「表示」する「画面」を「構成」する装置が、「前記実運転モード」においては「前記COP支援装置模擬装置」であり、「前記訓練モード」においては「前記COP支援装置模擬装置」であることを特定している。 このように、請求項5の上記記載には、「前記実運転モード」と「前記訓練モード」という異なるモードに対して同一の内容が特定されていたことになるから、当業者であれば、当該記載中に何らかの誤記があることを明らかに認識できるといえる。 b そこで、これらの記載のうち誤記が具体的に何であるのか、さらには、その誤記を正したものが何かについて検討する。 上記aによれば、「実運転モード」においても、「訓練モード」と同様に、「非常時制御室内COP表示装置」に「表示」する「画面」を「構成」する装置が、「COP支援装置模擬装置」であることが記載されていることになる。しかしながら、「COP支援装置模擬装置」は、模擬装置である以上、「実運転モード」において用いられることは不自然であり、よって、請求項5のうち、「前記実運転モード」に係る記載が誤記であることが明らかである。 次に、上記誤記を正したものが何かについてみると、請求項5には、「前記中央制御室内の運転員が優先して対応すべき項目を選択して一つの画面に表示するためのCOP支援装置」及び「前記COP支援装置を模擬するCOP支援装置模擬装置」と記載されており、これらが、それぞれ、「実運転モード」及び「訓練モード」に対応すると解するのが自然であるし、本件特許の願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)にも、【0075】〜【0078】の記載及び図8〜10のとおり、実運転モードにおいては、非常時制御室内COP表示装置79は、COP支援装置75に接続される一方、訓練モードにおいては、非常時制御室内COP表示装置79は、COP支援装置模擬装置78に接続されていることが記載されており、これに反する記載は見当たらない。そうすると、「前記実運転モード」に係る記載のうち、「非常時制御室内COP表示装置」に「表示」する「画面」を「構成」する装置が、「COP支援装置模擬装置」であることの誤記を正したものが「COP支援装置」であることであるのが明らかである。 c よって、訂正事項5−1は、明らかな誤記を正したものにすぎないから、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものである。 (ウ)訂正事項5−2について 訂正事項5−2は、請求項5が、請求項1ないし4の何れか1項の記載を引用するものであったところ、そのうち請求項4を引用するものに改める訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無 上記アのとおり、訂正事項5−1は、明らかな誤記を正したものにすぎず、また、訂正事項5−2は、引用する請求項を削減するものであるから、これらの訂正により新たな技術的事項が導入されることはなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記アのとおり、訂正事項5−1は、明らかな誤記を正したものにすぎず、また、訂正事項5−2は、引用する請求項を削減するものであって、いずれも、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。 (6)訂正事項6について ア 訂正の目的の適否 訂正事項6は、請求項6が、請求項1ないし5の何れか1項の記載を引用するものであったところ、そのうち請求項1を引用するものについて独立形式に改める訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4項に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであるとともに、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無 訂正事項6は、上記アのとおり、請求項1ないし5のうち請求項1を引用するものについて、独立形式に改める訂正であるから、この訂正により新たな技術的事項が導入されることはなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項6は、上記ア及びイに照らせば、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。 エ 独立特許要件の充足性 特許異議の申立てがされていない請求項6及び同項を引用する請求項7に係る発明は、後記第6、2(3)及び同(4)で検討するとおり、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるから、訂正事項6は、特許法第126条第7項の規定に適合する。 (7)訂正事項7について ア 訂正の目的の適否 訂正事項7は、請求項8が、請求項1ないし7の何れか1項の記載を引用するものであったところ、そのうち請求項4ないし7を引用するものに改める訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無 訂正事項7は、上記アのとおり、請求項8が、請求項1ないし7の何れか1項の記載を引用するものであったところ、そのうち請求項4ないし7を引用するものに改める訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 ウ 実質上特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項7は、上記ア及びイに照らせば、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。 (8)訂正事項8について ア 訂正の目的の適否 訂正事項8は、請求項9が、請求項1ないし8の何れか1項の記載を引用するものであったところ、そのうち請求項4ないし8を引用するものに改める訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無 訂正事項8は、上記アのとおり、請求項9が、請求項1ないし8の何れか1項の記載を引用するものであったところ、そのうち請求項4ないし8を引用するものに改める訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 ウ 実質上特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項8は、上記ア及びイに照らせば、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。 (9)訂正事項9 ア 訂正の目的の適否 (ア)訂正事項9は、請求項10の「訓練センター内連携装置」が、一般的な技術用語ではなく、本件明細書等中にも定義されておらず、「複数の訓練センターユニットを相互に接続する」だけで、「連携装置」として意味するところが明瞭でないものを、「訓練センター内連携装置」との語を省くように改めるとともに(以下「訂正事項9−1」という。)、請求項10が、請求項1ないし9の何れか1項の記載を引用するものであったところ、そのうち請求項4ないし9を引用するものに改める(以下「訂正事項9−2」という。)訂正である (イ)訂正事項9−1について 「訓練センター内連携装置」がいかなるものであるのかをみると、本件明細書等の【0100】、【0102】、【0106】を参酌して図13によれば、「訓練センター内連携装置92」は、2つの訓練センターユニットを接続する単なる線で表現されていることから、「訓練センター内連携装置92」なるものの実態は、訓練センター13内で、2つの訓練センターユニットを接続するバスラインであるといえる。 このように、「訓練センター内連携装置92」は、2つの装置を相互に接続する以上の、「装置」としての実体的な機能を有するものではないから、請求項10の、「前記訓練センター内に配置されて前記複数の訓練センターユニットを相互に接続する訓練センター内連携装置と、を有すること」との記載を、「訓練センター内連携装置」との語を省き、「を有し、前記複数の訓練センターユニットは、前記訓練センターユニット内で相互に接続されていること、」に訂正することは、明瞭でない記載を明瞭にするものといえる。 よって、訂正事項9−1は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (ウ)訂正事項9−2について 訂正事項9−2は、請求項10が、請求項1ないし9の何れか1項の記載を引用するものであったところ、そのうち請求項4ないし9を引用するものに改める訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無 上記アで検討したことによれば、訂正事項9−1及び9−2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記アで検討したことによれば、訂正事項9−1及び9−2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。 (10)訂正事項10について ア 訂正の目的の適否 訂正事項10は請求項11を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無 訂正事項10は請求項の削除であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項10は、上記ア及びイに照らせば、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。 3 小括 よって、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号〜第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項、第6項及び第7項の規定に適合するので、当該訂正を認める。なお、請求項1ないし3、5、8ないし11は、特許異議の申立てがなされた請求項であるから、当該各請求項についての訂正には、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は課されない。 第3 本件発明 本件訂正請求による訂正後の請求項1ないし11に係る発明(以下順に「本件発明1」ないし「本件発明11」という。)は、次のとおりのものである(下線は訂正箇所を示す。)。 なお、本件発明4、6及び7は、前記第2、2(4)エ及び同(6)エで説示した独立特許要件の充足性を検討するために、便宜的にこの項において記載したものである。 「【請求項1】(削除) 【請求項2】(削除) 【請求項3】(削除) 【請求項4】 原子力プラントを構成する複数のプラント機器を備えた少なくとも一つのプラント機器ユニットと、 中央制御室内に配置されて前記プラント機器ユニットそれぞれを制御するプラント制御装置および中央操作装置を含む少なくとも一つの中央制御室ユニットと、 前記中央制御室とは別の訓練センター内に配置されて、前記少なくとも一つの中央制御室ユニットを模擬する少なくとも一つの訓練センターユニットと、 前記中央制御室および前記訓練センターのいずれとも異なる非常時制御室内に配置された非常時制御室ユニットと、 を有する原子力プラントシステムであって、 前記訓練センターユニットそれぞれは、 前記プラント制御装置を模擬するプラント制御装置模擬装置と、 前記中央操作装置を模擬する訓練用中央操作装置と、 前記プラント制御装置模擬装置および前記訓練用中央操作装置の動作内容の履歴を記憶する訓練センター内データ記憶装置と、 を備え、 前記非常時制御室ユニットは、 前記プラント機器の状況を表示可能な非常時制御室内表示装置と、 前記プラント制御装置および前記中央操作装置の動作内容の履歴を記憶する非常時制御室内実運転データ記憶装置と、 前記プラント制御装置模擬装置および前記訓練用中央操作装置の動作内容の履歴を記憶する非常時制御室内訓練データ記憶装置と、 前記非常時制御室内表示装置を、前記プラント機器の状況を表示する実運転モードと、前記プラント制御装置模擬装置の状況を表示する訓練モードとの間で切り替える表示切替え器と、 前記表示切替え器が前記実運転モードか前記訓練モードかのいずれの状態にあるかを前記非常時制御室内表示装置に表示する表示切替え状態表示装置と、 を備え、 前記中央制御室ユニットは、 前記プラント機器が所定の異常状況にあるか否かを判定して、前記プラント機器が前記所定の異常状況にある場合に、前記訓練モードから前記実運転モードへの切替えを指示する信号を発信するイベント判定装置、 をさらに備えること、を特徴とする原子力プラントシステム。 【請求項5】 前記少なくとも一つの中央制御室ユニットのそれぞれが、 前記中央制御室内の運転員が優先して対応すべき項目を選択して一つの画面に表示するためのCOP支援装置と、 前記COP支援装置によって構成された一つの画面を表示する中央制御室内COP表示装置と、 をさらに備え、 前記訓練センターユニットは、 前記COP支援装置を模擬するCOP支援装置模擬装置と、 前記COP支援装置模擬装置によって構成された一つの画面を表示する訓練センター内COP表示装置と、 をさらに備え、 前記非常時制御室ユニットは、 前記COP支援装置によって構成された画面を表示可能な非常時制御室内COP表示装置と、 前記実運転モードにおいては前記COP支援装置によって構成された画面を前記非常時制御室内COP表示装置に表示し、前記訓練モードにおいては前記COP支援装置模擬装置によって構成された画面を前記非常時制御室内COP表示装置に表示するように切り替えるCOP表示切替え器と、 前記COP表示切替え器が前記実運転モードか前記訓練モードかのいずれの状態にあるかを前記非常時制御室内COP表示装置に表示するCOP表示切替え状態表示装置と、 をさらに備えること、を特徴とする原子力プラントシステム。 【請求項6】 原子力プラントを構成する複数のプラント機器を備えた少なくとも一つのプラント機器ユニットと、 中央制御室内に配置されて前記プラント機器ユニットそれぞれを制御するプラント制御装置および中央操作装置を含む少なくとも一つの中央制御室ユニットと、 前記中央制御室とは別の訓練センター内に配置されて、前記少なくとも一つの中央制御室ユニットを模擬する少なくとも一つの訓練センターユニットと、 前記中央制御室および前記訓練センターのいずれとも異なる非常時制御室内に配置された非常時制御室ユニットと、 を有する原子力プラントシステムであって、 前記訓練センターユニットそれぞれは、 前記プラント制御装置を模擬するプラント制御装置模擬装置と、 前記中央操作装置を模擬する訓練用中央操作装置と、 前記プラント制御装置模擬装置および前記訓練用中央操作装置の動作内容の履歴を記憶する訓練センター内データ記憶装置と、 を備え、 前記非常時制御室ユニットは、 前記プラント機器の状況を表示可能な非常時制御室内表示装置と、 前記プラント制御装置および前記中央操作装置の動作内容の履歴を記憶する非常時制御室内実運転データ記憶装置と、 前記プラント制御装置模擬装置および前記訓練用中央操作装置の動作内容の履歴を記憶する非常時制御室内訓練データ記憶装置と、 前記非常時制御室内表示装置を、前記プラント機器の状況を表示する実運転モードと、前記プラント制御装置模擬装置の状況を表示する訓練モードとの間で切り替える表示切替え器と、 前記表示切替え器が前記実運転モードか前記訓練モードかのいずれの状態にあるかを前記非常時制御室内表示装置に表示する表示切替え状態表示装置と、 を備え、 前記非常時制御室ユニットは、前記原子力プラントの事故時に用いられる緊急時機器を制御する緊急時制御装置、をさらに備え、 前記訓練センターユニットは、 前記緊急時制御装置を模擬する緊急時制御装置模擬装置と、 前記緊急時制御装置模擬装置を操作する訓練用表示操作装置と、 をさらに備え、 前記非常時制御室ユニットは、 前記緊急時制御装置の状況を表示するとともに前記緊急時制御装置を操作することが可能な非常時制御室内表示操作装置と、 前記実運転モードにおいては前記非常時制御室内表示操作装置が前記緊急時制御装置の状況を表示するとともに前記緊急時制御装置を操作し、前記訓練モードにおいては前記非常時制御室内表示操作装置が前記緊急時制御装置模擬装置の状況を表示し操作するように切り替える表示操作切替え器と、 前記表示操作切替え器が前記実運転モードか前記訓練モードかのいずれの状態にあるかを前記非常時制御室内表示操作装置に表示する表示操作切替え状態表示装置と、 をさらに備えること、を特徴とする原子力プラントシステム。 【請求項7】 前記訓練センターユニットは、 前記緊急時機器と前記緊急時制御装置とを接続する緊急時機器接続装置を模擬する模擬緊急時機器接続装置、 をさらに備えること、を特徴とする請求項6に記載の原子力プラントシステム。 【請求項8】 前記訓練センターユニットは、 緊急時に前記プラント制御装置に接続されて前記プラント制御装置に電源を供給する緊急時電源接続装置を模擬する模擬緊急時電源接続装置、 をさらに備えること、を特徴とする請求項4ないし請求項7のいずれか一項に記載の原子力プラントシステム。 【請求項9】 前記訓練センターユニットは、 緊急時に前記プラント機器に接続されて前記プラント機器に給水する緊急時給水接続装置を模擬する模擬緊急時給水接続装置、 をさらに備えること、を特徴とする請求項4ないし請求項8のいずれか一項に記載の原子力プラントシステム。 【請求項10】 複数の前記中央制御室ユニットと、 複数の前記訓練センターユニットと、 を、有し、 前記複数の訓練センターユニットは、前記訓練センターユニット内で相互に接続されていること、 を特徴とする請求項4ないし請求項9のいずれか一項に記載の原子力プラントシステム。 【請求項11】(削除)」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 先の訂正請求により訂正された請求項1〜3、5及び8〜10に係る特許に対して、当審が令和3年12月13日付けで特許権者に通知した取消理由通知(決定の予告(2回目))の要旨は、次のとおりである。 請求項1〜3、5、8〜10に係る発明は、本件特許に係る出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった後記甲第1号証ないし甲第12号証に記載された発明に基いて、本件特許に係る出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、当該各請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 第5 甲号証に記載された事項及び甲号証に記載された発明 1 甲各号証は次のとおりである。 甲第1号証:特開2008−76711号公報 甲第2号証:「原子力事業者防災業務計画修正届出書」(発本原第34号)九州電力株式会社、2015年5月22日 (URL:https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/9901236/www.nsr.go.jp/data/000108303.pdf) 甲第3号証:特開平9−50230号公報 甲第4号証:特開平6−331780号公報 甲第5号証:「緊急時対策支援システム(ERSS)における運用マニュアル」原子力規制委員会、2012年9月19日 (URL: https://www.nsr.go.jp/data/000024443.pdf) 甲第6号証:特開2015−203649号公報 甲第7号証:特許第5361532号公報 甲第8号証:「緊急時対策支援システムERSS」独立行政法人 原子力安全基盤機構、平成19年12月 甲第9号証:特開2016−194773号公報 甲第10号証:特開2014−202960号公報 甲第11号証:「Toward safe and reliable nuclear power plant operation−安心・安全をめざして−」株式会社原子力発電訓練センター、2014年9月 甲第12号証:特開昭57−133471号公報 2 甲第1号証ないし甲第12号証には、下記(1)ないし(12)に摘記した事項が記載され、下記に示した発明ないし記載された事項が記載されていると認められる。 (1)甲第1号証 ア 本件特許に係る出願前に頒布された刊行物である又は電気回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証には下記各記載がある。 (ア)「【技術分野】 【0001】 本発明は、原子力防災訓練用のプラント挙動データを表示するプラント防災訓練装置に関する。」 (イ)「【発明の効果】 【0007】 本発明のプラント防災訓練装置によれば、実運用システムに模擬プラントデータを取り込んでプラント状況を把握する訓練を行なうことができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0008】 図1は、本発明の第1の実施の形態に係わるプラント防災訓練装置の構成図である。プラント防災訓練装置は、1つまたは複数のプラントの挙動を模擬するプラント模擬装置20と、プラント模擬装置20からのプラント模擬データ及び1つまたは複数のプラント31a〜31nのプラント計算機30a〜30nからのプロセスデータを受信し表示する表示システム10とから構成される。表示システム10はプラントの運転制御には直接関わらず、1つまたは複数のプラント31a〜31nのプロセスデータを各々のプラント計算機30a〜30nから受信しデータ表示を行なうシステムである。例えば、事業者の緊急時対策室、オフサイトセンターなどで緊急時のプラント状態把握に使用するシステムなどである。また、プラント模擬装置20はプラントの挙動を模擬する機能を備えた装置で、例えばシミュレータなどを示す。 【0009】 各プラント30a〜30nは、プラントプロセスデータの入出力を行なうプラント計算機31a〜31nを備えており、表示システム20のデータ受信部11は例えばn個の各プラント30a〜30nよりプロセスデータを受信し、プラント30a〜30n毎に設けられたプラントデータベース12a〜12nに格納する。データ受信部11は、複数プラント30a〜30nのデータを同時に受信することが可能である。また、データ受信部11は、プラント模擬装置20から受信したプラント模擬データをプラント模擬装置20用のプラント模擬データベース13に格納する。プラント模擬データベース13と各プラント30a〜30nのプラントデータベース12a〜12nとは同等のものである。 【0010】 データ表示部14は複数のプラント30a〜30nのプラント計算機31a〜31nとの接続を切り替えて、いずれか1つのプラント30a〜30nのプラントデータを表示する。 【0011】 表示情報設定部14aはプラント模擬装置20からの模擬プラントデータをどのような形でデータ表示部14に表示するかを設定するものであり、例えば、模擬プラントデータの「プラント表示名称」を指定する。プラント名称は実プラント30a〜30nの名称(プラント1〜n)の名前を割り当ても良いし、「模擬プラントA」のように任意に名称を指定することも可能である。実プラントの名称を割り当てた場合には、どのプラント30a〜30nのプラント模擬データを表示していることがわかるよう画面上に表示を行なう。 【0012】 また、プラント模擬装置20がプラント模擬を行っているプラント名(プラント31a〜31n)を表示上別の名前に変更したり、見えなくしたりすることも指定できるようにする。 【0013】 以上述べたように第1の実施の形態によれば、プラント模擬装置20を実プラント30a〜30nと横並びでひとつのプラントとして処理を行なうことにより、実プラント30a〜30nのデータに対する影響も無く、データを表示させることが可能である。 【0014】 また、プラント模擬装置20の模擬プラントデータを見かけ上、実プラント30a〜30nのデータとして見せることにより、より実践に近い訓練を行なうことが可能となる。 【0015】 図2は、本発明の第2の実施の形態に係わるプラント防災訓練装置の構成図である。図1に示した第1の実施の形態に対し、データ受信部11が受信したプラント模擬装置20からのプラント模擬データに、模擬プラントデータであることを示すフラグを設定してプラントデータベース12iに蓄積し、プラントデータベース12iに格納されていたプロセスデータをプラント模擬装置20からのプラント模擬データの受信中にデータ退避部16によりデータ退避エリア16aに退避させ、訓練後にデータベース12に蓄積されたプラント模擬装置20の模擬プラントデータを削除し、データ復元部17によりデータ退避エリア16aに退避したプロセスデータを復元するようにしたものである。図1に示した第1の実施の形態と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。 【0016】 プラント模擬装置20はプラント30a〜30nのいずれかを模擬したプラント模擬データを表示システム10にデータ受信部11に送信する。 【0017】 データ受信部11は、プラント模擬装置20からのプラント模擬データに加え、各プラント30a〜30nのプラント計算機31a〜31nよりプロセスデータ(実プラントデータと呼ぶ)を受信し、プラント30a〜30n毎に設けられたプラントデータベース12a〜12nに格納する。そして、模擬プラントデータを受け取る場合、模擬プラントデータに模擬プラントデータフラグを付加して、プラント30a〜30nのうちの、模擬しているプラント30iのプラントデータベース12iに格納する。模擬プラントデータが入力される実プラント30iの実プラントデータはデータ退避部16により、データ退避エリア16aに時系列に蓄積する。・・・」 (ウ)図1は次のものである。 イ 上記アによれば、甲第1号証には下記各事項が記載されていると認められる。 (ア)「プラント防災訓練装置によれば、実運用システムに模擬プラントデータを取り込んでプラント状況を把握する訓練を行なうことができる」(【0007】)とされるから、当該「プラント防災訓練装置」は、実運用システムに模擬プラントデータを取り込んでプラント状況を把握する訓練を行なうことができるプラント防災訓練装置であるといえる。 (イ)「プラント防災訓練装置は、1つまたは複数のプラントの挙動を模擬するプラント模擬装置20と、プラント模擬装置20からのプラント模擬データ及び1つまたは複数のプラント31a〜31nのプラント計算機30a〜30nからのプロセスデータを受信し表示する表示システム10とから構成される。」(【0008】)ものであるから、当該「プラント防災訓練装置」は、複数のプラントの挙動を模擬するプラント模擬装置と、プラント模擬装置からのプラント模擬データ及び複数のプラントのプラント計算機からのプロセスデータを受信し表示する表示システムとから構成されるプラント防災訓練装置であるといえる。 (ウ)「表示システム10はプラントの運転制御には直接関わらず、1つまたは複数のプラント31a〜31nのプロセスデータを各々のプラント計算機30a〜30nから受信しデータ表示を行なうシステムである。例えば、事業者の緊急時対策室、オフサイトセンターなどで緊急時のプラント状態把握に使用するシステムなどである。」(【0008】)とされるから、当該「表示システム」は、事業者の緊急時対策室、オフサイトセンターで緊急時のプラント状態把握に使用する複数のプラントのプロセスデータを各々のプラント計算機から受信しデータ表示を行なう表示システムであるといえる。 (エ)「各プラント30a〜30nは、プラントプロセスデータの入出力を行なうプラント計算機31a〜31nを備えており、表示システム20のデータ受信部11は例えばn個の各プラント30a〜30nよりプロセスデータを受信し、プラント30a〜30n毎に設けられたプラントデータベース12a〜12nに格納する。」(【0009】)とされるから、当該「プラント」は、プラント計算機を備えるとともに、表示システムのデータ受信部はプラントよりプロセスデータを受信し、プラントに設けられたプラントデータベースに格納するといえる。 (オ)「データ受信部11は、プラント模擬装置20から受信したプラント模擬データをプラント模擬装置20用のプラント模擬データベース13に格納する。プラント模擬データベース13と各プラント30a〜30nのプラントデータベース12a〜12nとは同等のものである。」(【0009】)とされるから、当該「データ受信部」は、プラント模擬装置から受信したプラント模擬データをプラント模擬装置用のプラント模擬データベースに格納するものであって、プラント模擬データベースとプラントのプラントデータベースとは同等のものであるデータ受信部であるといえる。 (カ)「データ表示部14は複数のプラント30a〜30nのプラント計算機31a〜31nとの接続を切り替えて、いずれか1つのプラント30a〜30nのプラントデータを表示する。」(【0010】)ものであるから、当該「データ表示部」は、複数のプラントのプラント計算機との接続を切り替えて、いずれか1つのプラントのプラントデータを表示するデータ表示部であるといえる。 (キ)「表示情報設定部14aはプラント模擬装置20からの模擬プラントデータをどのような形でデータ表示部14に表示するかを設定するものであり、・・・プラント名称は実プラント30a〜30nの名称(プラント1〜n)の名前を割り当ても良いし、「模擬プラントA」のように任意に名称を指定することも可能である。実プラントの名称を割り当てた場合には、どのプラント30a〜30nのプラント模擬データを表示していることがわかるよう画面上に表示を行なう。」(【0011】)ものであるから、当該「表示情報設定部」は、プラント模擬装置からの模擬プラントデータをどのような形でデータ表示部に表示するかを設定するものであり、実プラントの名称を割り当てた場合には、どのプラントのプラント模擬データを表示していることがわかるよう画面上に表示を行なう表示情報設定部であるといえる。 (ク)上記(ア)及び(イ)の「プラント防災訓練装置」は、「原子力防災訓練用のプラント挙動データを表示するプラント防災訓練装置」(【0001】)であり、「複数のプラント30a〜30n」を有していることは明らかであるから、原子力プラントシステムの一部を構成しているといえる。 (ケ)「プラント模擬装置20はプラントの挙動を模擬する機能を備えた装置で、例えばシミュレータ」(【0008】)であるから、プラント模擬装置は、プラントの挙動を模擬する機能を備えた装置であって、シミュレータであるといえる。 (コ)図1から、表示システムは、データ受信部、データ表示部、表示情報設定部を有していることが見て取れる。 (サ)上記(ア)ないし(コ)によれば、甲第1号証には下記発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「原子力プラントシステムであって、(上記(ク)) 実運用システムに模擬プラントデータを取り込んでプラント状況を把握する訓練を行なうことができ、複数のプラントの挙動を模擬するプラント模擬装置と、プラント模擬装置からのプラント模擬データ及び複数のプラントのプラント計算機からのプロセスデータを受信し表示する表示システムとから構成されるプラント防災訓練装置を備え、(上記(ア)、(イ)) 前記表示システムは、事業者の緊急時対策室、オフサイトセンターで緊急時のプラント状態把握に使用する複数のプラントのプロセスデータを各々のプラント計算機から受信しデータ表示を行なう表示システムであって、データ受信部、データ表示部、表示情報設定部を有しており、(上記(ウ)) 前記複数のプラントは、それぞれ、プラント計算機を備え、(上記(エ)) 前記表示システムのデータ受信部は、プラントよりプロセスデータを受信し、プラントに設けられたプラントデータベースに格納するものであり、(上記(エ)) 前記表示システムのデータ受信部は、プラント模擬装置から受信したプラント模擬データをプラント模擬装置用のプラント模擬データベースに格納するものであって、プラント模擬データベースとプラントのプラントデータベースとは同等のものであり、(上記(オ)) 前記表示システムのデータ表示部は、複数のプラントのプラント計算機との接続を切り替えて、いずれか1つのプラントのプラントデータを表示するものであり、(上記(カ)) 前記表示システムの表示情報設定部は、プラント模擬装置からの模擬プラントデータをどのような形でデータ表示部に表示するかを設定するものであり、実プラントの名称を割り当てた場合には、どのプラントのプラント模擬データを表示していることがわかるよう画面上に表示を行なうものであり、(上記(キ)) 前記プラント模擬装置は、プラントの挙動を模擬する機能を備えた装置であって、シミュレータである、(上記(ケ)) 原子力プラントシステム。」 (2)甲第2号証 ア 本件特許に係る出願前に頒布された刊行物である又は電気回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証には下記別図3−4が記載されている。 イ 上記アの別図3−4から、川内原子力発電所には、原子炉格納容器、原子炉補助建屋、川内原子力訓練センター並びに緊急時対策所がそれぞれ異なる設備として設けられていることが見てとれる。 ウ 上記ア及びイによれば、甲第2号証には下記事項(以下「甲第2号証に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。 「原子力発電所には、原子炉格納容器、原子炉補助建屋、原子力訓練センター並びに緊急時対策所がそれぞれ異なる設備として設けられること。」 (3)甲第3号証 ア 本件特許に係る出願前に頒布された刊行物である又は電気回線を通じて公衆に利用可能となった甲第3号証には下記各記載がある。 (ア)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、プラントの運転操作を訓練すると共に、その訓練操作を監視するためのプラント運転操作履歴監視シミュレーション方法と、その装置であるシミュレータと、発電所等の中央制御室でプラントの運転監視を行うプラント運転操作履歴監視方法と、その装置とに係わり、特に操作時の内容を表示させることにより、操作内容が的確か否かを判断するに好適なものに関する。」 (イ)「【0020】各模擬制御盤2は、盤面上に複数設けられたハードスイッチ21,図示しない表示部を夫々有するもの、或いは盤面上に設けられたソフトスイッチ22,表示部を夫々有するものからなっており、何れも、原子力発電所の中央制御室に設置されたプラント運転操作の制御盤を模擬的に構成したものである。詳細に図示していないが、ハードスイッチ21は、操作されると、表示部としての指示計が作動したり、表示灯が点灯したりなどする。ソフトスイッチ22は、フラットディスプレイやタッチ操作用CRT等の表示部に複数設けられており、操作されると、その内容に応じて表示部が動作する。これら各模擬制御盤2は訓練室内に設置され、シミュレータの運転員1によって操作される。」 (ウ)「【0022】一方、計算機4は、各模擬制御盤2のハードスイッチ21,ソフトスイッチ22が運転員1によって操作されたとき、該操作されたスイッチ21,22に基づきシミュレータをプラント挙動として模擬的に制御し、即ち、運転員1があたかも実機プラントを操作しているように制御する。」 (エ)「【0026】一方、検査・保存処理部6は、操作情報入力処理部41により、時間情報を付加したスイッチ21,22の操作信号が送信されると、その操作信号が、何れの模擬制御盤2のどのスイッチであるかを判定する。即ち、検査・保存処理部6は図4に示すように、検索処理61と保存処理62とを有しており、操作情報入力処理部41により時間情報が付加された操作信号が送信されると、検索処理61が操作信号の点番号を検索キーとし、スイッチ情報データベース7から前記操作信号に該当する一連の情報を検索し、その検索した一連の情報を保存処理62により、操作履歴情報保存手段8に格納する。 【0027】ここで、スイッチ情報データベース7に格納されている一連の情報としては、図4に示すように、複数のスイッチ21,22の何れかを特定する点No7aと、スイッチ操作された対象の名称7bと、スイッチ操作された模擬制御盤2の種類(No)7cと、系統の種類(No)7dと、スイッチのタグNo7eと、操作内容7fとからなり、予め夫々関連付けられて記録されている。」 イ 上記アによれば、甲第3号証には下記事項(以下「甲第3号証に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。 「原子力発電所の中央制御室に設置されたプラント運転操作の制御盤を模擬的に構成した模擬制御盤(【0020】)と、実機プラントを操作しているように制御する計算機(【0022】)と、操作内容とからな(【0027】)る操作信号及び前記操作信号に該当する一連の情報を格納する操作履歴情報保存手段(【0026】)が訓練室内に設置され(【0020】)た、プラント運転操作履歴監視シミュレーション方法(【0001】)。」 (4)甲第4号証 ア 本件特許に係る出願前に頒布された刊行物である又は電気回線を通じて公衆に利用可能となった甲第4号証には下記各記載がある。 (ア)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明はシュミレーションによるプラントの運転訓練を支援する運転訓練支援装置に係り、特に訓練を受けている者(以下訓練生という)がプラントの状態に応じて適宜行った操作の妥当性を評価し、操作のエラー原因を分析し、これら評価結果・分析結果に基づいて訓練方針と訓練教材の作成を支援する運転訓練支援装置に関する。」 (イ)「【0015】 【作用】本発明の運転訓練支援装置は、運転データ収集装置によって訓練生が行った操作をその時のプラント状態とともに運転データとして収集し、これを運転データ処理装置によって整理統合し、さらにこの運転データを運転評価装置によって運転評価知識ベースの評価基準と照合して運転操作の妥当性を評価するので、すべての訓練生の運転操作は自動的に記録され、かつ、評価される。」 (ウ)「【0021】この運転訓練支援装置1はプラントシミュレータ16に接続され、訓練生が訓練生用マンマシンインターフェース2を介して模擬的にプラントを運転し、この運転操作がプラントシミュレータ16に入力されるように構成されている。」 イ 上記アによれば、甲第4号証には下記事項(以下「甲第4号証に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。 「模擬的にプラントを運転するプラントシミュレータ(【0021】)と、模擬的にプラントを運転するための訓練生用マンマシンインターフェース(【0021】)と、訓練生が行った操作をその時のプラント状態とともに運転データとして収集し、記録する運転データ収集装置(【0015】)をと備える運転訓練支援装置(【0001】)。」 (5)甲第5号証 ア 本件特許に係る出願前に頒布された刊行物である又は電気回線を通じて公衆に利用可能となった甲第5号証の「プラント情報表示システム操作説明書 PWRプラント」のp.2には下記記載がある。 「(4)(丸付き数字の4)動作モード表示:模擬データ表示の場合、「訓練モード」と表示」 イ 上記アによれば、甲第5号証には下記事項(以下「甲第5号証に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。 「プラント情報表示システムは、模擬データ表示の場合、動作モードとして訓練モードと表示すること。」 (6)甲第6号証 ア 本件特許に係る出願前に頒布された刊行物である又は電気回線を通じて公衆に利用可能となった甲第6号証には下記各記載がある。 (ア)「【技術分野】 【0001】 本発明の実施形態は、運転切替装置、運転切替方法、および緊急時プラント制御システムに関する。」 (イ)「【0086】 (第5実施形態) 図5は、第5実施形態の緊急時プラント制御システム121の構成を示す図である。 【0087】 本実施形態の緊急時プラント制御システム121は、第3実施形態と同様の構成の操作表示装置1、制御装置2、運転訓練装置3、制御ネットワーク5、および訓練ネットワーク6に加え、ネットワーク切替装置4を備えている。 【0088】 ネットワーク切替装置4は、制御ネットワーク5と訓練ネットワーク6とに接続されており、制御ネットワーク5および訓練ネットワーク6用の電源の活殺を制御する。ネットワーク切替装置4は、切替スイッチ41と、第1の切替接点42と、第2の切替接点43と、第1の電源装置44と、第2の電源装置45とを備えている。 【0089】 第1の電源装置44は、制御ネットワーク5に電力を供給するための装置である。第1の切替接点42は、第1の電源装置44と制御ネットワーク5との間の電源ライン上に設けられている。本実施形態では、第1の切替接点42の開閉により、第1の電源装置44から制御ネットワーク5への電力の投入と遮断とを切り替えることができる。 【0090】 第2の電源装置45は、訓練ネットワーク6に電力を供給するための装置である。第2の切替接点43は、第2の電源装置45と訓練ネットワーク6との間の電源ライン上に設けられている。本実施形態では、第2の切替接点43の開閉により、第2の電源装置45から訓練ネットワーク6への電力の投入と遮断とを切り替えることができる。 【0091】 第1および第2の切替接点42、43は、切替スイッチ41の操作により開閉させることが可能である。本実施形態のネットワーク切替装置4は、第1および第2の切替接点42、43が同時に閉状態にならないように構成されている。本実施形態の切替スイッチ41は、第1および第2の切替接点42、43の一方を閉状態に他方を開状態に設定することで、制御ネットワーク5および訓練ネットワーク6の一方への電力供給をオンに他方への電力供給をオフに切り替えることができる。」 (ウ)図5は次のとおりである。 【図5】 (エ)図5から、制御ネットワーク5に対応するバスラインと、制御ネットワーク6に対応するバスラインとを備え、これらのバスラインがネットワーク切替装置4によって切替可能に構成される点が見てとれる。 イ 上記アによれば、甲第6号証には下記事項(以下「甲第6号証に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。 「制御ネットワーク5、訓練ネットワーク6、及び、ネットワーク切替装置4を備え(【0087】)、前記ネットワーク切替装置4は(【0088】)、前記制御ネットワーク5への電力の投入と遮断とを切り替え(【0089】)、前記訓練ネットワーク6への電力の投入と遮断とを切り替える(【0090】)ものであって、一方を閉状態に他方を開状態に設定することで、制御ネットワーク5および訓練ネットワーク6の一方への電力供給をオンに他方への電力供給をオフに切り替える(【0091】)、緊急時プラント制御システム121(【0086】)。」 (7)甲第7号証 ア 本件特許に係る出願前に頒布された刊行物である又は電気回線を通じて公衆に利用可能となった甲第7号証には下記各記載がある。 (ア)「【技術分野】 【0001】 本発明は、防災訓練支援技術に係り、特に、プラント機器のプロセス量に異常が検出されたものと仮定し、そのプロセス量の異常により如何なるプラント機器のプロセス量に異常が生じ得るかを示した訓練用シナリオを用いてプロセス量のシミュレーションを実行し、このシミュレーション結果に基づいて行われる防災訓練支援システムおよび防災訓練支援方法に関する。」 (イ)「【0038】 (3) 緊急対策拠点20は、防災訓練拠点30で実行されるシミュレーションにより得られたプロセス量のシミュレーション値Sを受け取ったとき、防災訓練が実施中である旨を報知する報知手段22を有する。このため、緊急対策拠点20において、防災訓練拠点30で防災訓練が開始されたことを迅速且つ確実に知ることができる。この結果、たとえば、緊急対策拠点20の表示手段21にプロセス量のシミュレーション値Sが表示されたとき、このシミュレーション値Sに基づきプロセス量の実データが異常であると混同して応急対策が策定されるといった判断ミスを防止できる。」 イ 上記アによれば、甲第7号証には下記事項(以下「甲第7号証に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。 「防災訓練拠点で実行されるシミュレーションにより得られたプロセス量のシミュレーション値を受け取ったとき、防災訓練が実施中である旨を報知する報知手段を有する(【0038】)防災訓練支援システム(【0001】)。」 (8)甲第8号証 ア 本件特許に係る出願前に頒布された刊行物である又は電気回線を通じて公衆に利用可能となった甲第8号証の3頁には「■原子力災害対策の体制■」として下記図が記載されている。 イ 上記アの「■原子力災害対策の体制■」の図から、原子力発電所とは異なる遠隔地に、原子力安全基盤機構、経産省、原子力災害現地対策本部などにERSS(緊急時対策支援システム)が存在する点が見てとれる。 ウ 上記ア及びイによれば、甲第8号証には下記事項(以下「甲第8号証に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。 「ERSS(緊急時対策支援システム)が、原子力安全基盤機構、経産省、原子力災害現地対策本部等に存在すること 。」 (9)甲第9号証 ア 本件特許に係る出願前に頒布された刊行物である又は電気回線を通じて公衆に利用可能となった甲第9号証には下記各記載がある。 (ア)「【技術分野】 【0001】 本発明は、例えば、複数の人員で意思決定を行う場合に情報の表示を行う表示装置に関するものである。」 (イ)「【0058】 そして、情報管理部42は、この緊急時情報のうちの意思決定に必要な情報だけを選択して表示データを生成すると共に、ネットワーク50を介して他の表示装置と表示データを共有する。即ち、緊急時の意思決定支援システムとして適用される表示装置10A,10B,10C,10D…は、原子力発電プラント、電力会社、地方自治体、国、プラントメーカなど、異なる位置に配置されていることから、必要となる緊急時情報も異なる。そのため、表示装置10A,10B,10C,10D…は、予め、緊急時情報に優先度を付け、優先度の高い情報だけを選択して表示する。」 イ 上記アによれば、甲第9号証には下記事項(以下「甲第9号証に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。 「原子力発電プラント、電力会社、地方自治体、国、プラントメーカなど、異なる位置に配置されていることから、必要となる緊急時情報も異なる表示装置において、予め、緊急時情報に優先度を付け、優先度の高い情報だけを選択して表示する(【0058】)、複数の人員で意思決定を行う場合に情報の表示を行う表示装置(【0001】)。」 (10)甲第10号証 ア 本件特許に係る出願前に頒布された刊行物である又は電気回線を通じて公衆に利用可能となった甲第10号証には下記各記載がある。 (ア)「【請求項1】 プラントにおけるプラント運転操作を模擬するための操作模擬盤ならびにシミュレーション設定を入力操作可能なシミュレーション操作端末を介して操作データを入出力可能な苛酷事象運転訓練シミュレータであって、 前記操作データに応じて、前記プラントを模擬するためのプラントモデルをシミュレーションする模擬演算手段と、 前記シミュレーション設定に応じて、前記模擬演算手段によりシミュレーションされる前記プラントモデルに模擬事故を発生させるマルファンクション実行手段と、 前記模擬演算手段により前記プラントモデルがシミュレーションされた結果を含むシミュレーションデータと、前記シミュレーション操作端末または前記操作模擬盤を介して入出力された前記操作データとを記憶するシミュレーションデータ記憶手段と、 前記プラントにおける苛酷事故の対象となるリソースを模擬するためのリソースモデルに関するリソースデータを記憶するリソースデータ記憶手段と、 模擬するリソース系統ごとに、前記プラントモデルで用いる前記リソースモデルを前記リソースデータ記憶手段から選択し、当該選択した前記リソースモデルを抽出または当該選択した前記リソースモデルに切り替えるリソース切替手段と、を備え、 前記模擬演算手段は、前記リソース系統ごとに前記リソース切替手段により切り替えられた前記リソースモデルに関する前記リソースデータを用いて、前記プラントモデルをシミュレーションする ことを特徴とする苛酷事象運転訓練シミュレータ。 ・・・ 【請求項7】 前記リソースのリソース種別には、電源、窒素供給源または水源の少なくともいずれか一つを含む ことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の苛酷事象運転訓練シミュレータ。 ・・・ 【請求項12】 前記リソースには水源のリソース種別を含み、さらに、第1リソースが給水タンクであり、かつ、第2リソースが給水車である ことを特徴とする請求項7に記載の苛酷事象運転訓練シミュレータ。」(特許請求の範囲) (イ)「【技術分野】 【0001】 本発明の実施形態は、プラントの運転等を模擬する苛酷事象運転訓練シミュレータおよび苛酷事象運転訓練シミュレーション方法に関する。」 (ウ)「【0036】 また、電力供給を受けて動作する機器の機器モデルは、例えばリソースが供給されている状態、あるいは、正しく供給されない状態を選択的に模擬できるモデルとして定義可能である。電源の機器モデルは、定義されたモデルにより、模擬演算手段7により模擬、演算等される。 【0037】 実機プラントでは、電源として、例えば通常の状態にある時にプラント内に電力を供給する常用電源(第1リソース)と、常用電源に何らかの異常が生じた時に常用電源の代替電源として切り替えられて用いられる非常用電源(第2リソース)とが備えられている。代替電源は、例えば非常用DG(ディーゼル発電機)などである。 【0038】 苛酷事象運転訓練シミュレータ20aにおいて、電源のリソースとして、少なくともこの2つのリソース(常用電源、非常用電源)がモデル化される。このモデル化された電源のリソースは、リソースデータ記憶手段9に記憶される。リソースデータ記憶手段9は、複数の種類のリソースに関するモデル(前述したリソースモデル、代表してリソースモデルRSと記す)を記憶する。」 (エ)「【0115】 [第6の実施形態]図7は、本発明に係る苛酷事象運転訓練シミュレータの第6の実施形態の構成を示すブロック図である。 【0116】 第6の実施形態の苛酷事象運転訓練シミュレータは、第5の実施形態の構成と比べて、給水系統に関するリソースを設けた構成である。例えば、図7に示す苛酷事象運転訓練シミュレータ20fは、図6に示す苛酷事象運転訓練シミュレータ20eの構成と比べて、リソースデータ#5(リソースが水源)および補機DB12fが相違する。」 イ 上記アによれば、甲第10号証には下記事項(以下「甲第10号証に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。 「苛酷事象運転訓練シミュレータにおいて、電源のリソースとして、少なくとも非常用電源、非常用電源がモデル化される(【0038】)こと、及び、苛酷事象運転訓練シミュレータは給水系統に関するリソースを設けた構成である(【0116】)こと。」 (11)甲第11号証 ア 本件特許に係る出願前に頒布された刊行物である又は電気回線を通じて公衆に利用可能となった甲第11号証の6頁には「1号シミュレータ」「2号シミュレータ」「3号シミュレータ」及び「デスクシミュレータ(3号シミュレータ対応)」として下記各写真が掲載されている。 イ 上記アの「1号シミュレータ」「2号シミュレータ」「3号シミュレータ」及び「デスクシミュレータ(3号シミュレータ対応)」として掲載された各写真から、訓練センター内に複数のシミュレータが設けられることが見てとれる。 ウ 上記ア及びイによれば、甲第11号証には下記事項(以下「甲第11号証に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。 「訓練センター内に複数のシミュレータが設けられること。」 (12)甲第12号証 ア 本件特許に係る出願前に頒布された刊行物である又は電気回線を通じて公衆に利用可能となった甲第12号証には下記各記載がある。 (ア)「本発明は発電プラント模擬装置に係り、特に原子力、火力発電プラントにおける運転操作の訓練および挙動の解析に好適な発電プラント模擬装置に関する。」(1頁右欄4〜7行) (イ)「この目的を達成するため、本発明は、CRT表示器、キィボード、ライトペン等の入力装置を用い、そのCRT表示器上にプラント系統図、制御盤配置図等、シミュレーションを行うに必要な模擬制御盤と同等の画面を表示させ、模擬制御盤と同様の運転操作を可能とすることにより、模擬制御盤を不要としたことを特徴とする。」(2頁左下欄6〜12行) イ 上記アによれば、甲第12号証には下記事項(以下「甲第12号証に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。 「CRT表示器上にプラント系統図、制御盤配置図等、シミュレーションを行うに必要な模擬制御盤と同等の画面を表示させ、模擬制御盤と同様の運転操作を可能とする発電プラント模擬装置。」 第6 当審の判断 1 令和3年12月13日付け取消理由通知(決定の予告)の理由に対する判断並びに本件発明4、6及び7についての訂正に係る独立特許要件の判断 (1)本件発明1〜3、11について 請求項1〜3、11は、本件訂正により削除された。 (2)本件発明4について ア 本件発明4と甲1発明とを対比する。 (ア)甲1発明における「プラント」が「原子力プラント」を意味することは明らかであり、また、原子力プラントが原子炉とそれに対応する1群のプラント機器とを備えることは技術常識である。そして、本件訂正請求による訂正後の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件訂正明細書等」という。)の「1基の原子炉に対応する1群のプラント機器11をプラント機器ユニットとも称する。」(【0097】)の記載を踏まえると、本件発明4の「プラント機器ユニット」は、「1基の原子炉に対応する1群のプラント機器」であってもよい。 したがって、甲1発明の「プラント」は、本件発明4の「原子力プラントを構成する複数のプラント機器を備えた少なくとも一つのプラント機器ユニット」に相当する。 (イ)原子力プラント(又は原子力プラントシステム)が、中央制御室を備えるとともに、当該中央制御室にプラント機器ユニットを制御する装置と中央制御室の操作装置を含む中央制御室設備を備えることは、技術常識である。そうすると、甲1発明の「原子力プラントシステム」は、中央制御室を備えるとともに、当該中央制御室にプラント機器ユニットを制御する装置と中央制御室の操作装置を含む中央制御室設備を備えるといえる。 したがって、本件発明4と甲1発明とは、「中央制御室内に配置されて前記プラント機器ユニット」「を制御するプラント制御装置および中央操作装置を含む」中央制御室設備を備える点で一致する。 (ウ)甲1発明の「原子力プラントシステム」は、「表示システム」を含み、「前記表示システムは、事業者の緊急時対策室、オフサイトセンターで緊急時のプラント状態把握に使用する複数のプラントのプロセスデータを各々のプラント計算機から受信しデータ表示を行なう表示システム」であるところ、当該「事業者の緊急時対策室、オフサイトセンター」が、本件発明1の「非常時制御室」に相当する。そして、当該「事業者の緊急時対策室、オフサイトセンター」が、その室内に配置された非常時制御室設備を備えるとともに、中央制御室とは異なる建物に配置されることは明らかである。 したがって、本件発明4と甲1発明とは、「前記中央制御室」「と」「異なる非常時制御室内に配置された」非常時制御室設備を備える点で一致する。 (エ)甲1発明の「プラント模擬装置」は、本件発明4の「プラント制御装置を模擬するプラント制御装置模擬装置」とは、「前記プラント機器ユニット」に関連する「装置」を「模擬する」プラント関連装置模擬装置の点で一致する。 (オ)本件発明4の「非常時制御室ユニット」に関する特定事項と甲1発明とを対比する。 a 上記(ウ)で検討したとおり、甲1発明の「事業者の緊急時対策室、オフサイトセンター」が本件発明4の「非常時制御室」に相当し、さらに、本件発明4と甲1発明とは、非常時制御室設備を備える点で一致する。 b 甲1発明の「プラント模擬装置からのプラント模擬データ及び複数のプラントのプラント計算機からのプロセスデータを受信し表示する表示システム」の「データ表示部」は、本件発明4の「前記プラント機器の状況を表示可能な非常時制御室内表示装置」に相当する。そして、甲1発明の「表示システム」は、「事業者の緊急時対策室、オフサイトセンターで緊急時のプラント状態把握に使用する複数のプラントのプロセスデータを各々のプラント計算機から受信しデータ表示を行なう表示システム」であるから、「事業者の緊急時対策室、オフサイトセンター」に存在するものであり、よって、当該「表示システム」の当該「データ表示部」も、「事業者の緊急時対策室、オフサイトセンター」に存在し、非常時制御室設備が備えるものといえる。 c 甲1発明の「事業者の緊急時対策室、オフサイトセンター」に存在する「表示システム」の「データ受信部」が「プラントよりプロセスデータを受信し」「格納する」「プラント毎に設けられたプラントデータベース」は、本件発明4の「前記プラント制御装置および前記中央操作装置の動作内容の履歴を記憶する非常時制御室内実運転データ記憶装置」とは、前記プラント「の動作内容の履歴を記憶する非常時制御室内実運転データ記憶装置」の点で一致する。 d 甲1発明の「事業者の緊急時対策室、オフサイトセンター」に存在する「表示システム」の「データ受信部」が「プラント模擬装置から受信したプラント模擬データを」「格納する」「プラント模擬装置用のプラント模擬データベース」は、上記(エ)での検討を踏まえると、本件発明4の「前記プラント制御装置模擬装置および前記訓練用中央操作装置の動作内容の履歴を記憶する非常時制御室内訓練データ記憶装置」とは、前記プラント機器ユニットに関連する装置を模擬するプラント関連装置模擬装置「の動作内容の履歴を記憶する非常時制御室内訓練データ記憶装置」の点で一致する。 e 甲1発明の「事業者の緊急時対策室、オフサイトセンター」に存在する「表示システム」は、「複数のプラントのプラント計算機との接続を切り替えて、いずれか1つのプラントのプラントデータを表示するもの」であるところ、「プラント模擬装置からの模擬プラントデータ」を表示するときであっても、当然、接続を切り替えて表示するものと解されるから、どのデータを表示するか「切り替える表示切替え器」を備えるといえる。 また、甲1発明の「表示システム」は、「プラント模擬データを表示していることがわかるよう画面上に表示を行な」っているから、「いずれか1つのプラントのプラントデータ」を表示するときであっても、当然、そのデータを表示していることがわかるよう画面上に表示を行っていると解される。よって、本件発明4と甲1発明とは、「前記表示切替え器が」どのデータを表示しているか「を前記非常時制御室内表示装置に表示する表示切替え状態表示装置」を備える点で一致するといえる。 f 以上aないしeでの検討によれば、本件発明4と甲1発明とは、前記非常時制御室設備は、「前記プラント機器の状況を表示可能な非常時制御室内表示装置」と、「前記プラント」の「動作内容の履歴を記憶する非常時制御室内実運転データ記憶装置」と、前記プラント機器ユニットに関連する装置を模擬するプラント関連装置模擬装置の「動作内容の履歴を記憶する非常時制御室内訓練データ記憶装置」と、「前記非常時制御室内表示装置を、」どのデータを表示するか「切り替える表示切替え器」と、「前記表示切替え器が」どのデータを表示しているかを「前記非常時制御室内表示装置に表示する表示切替え状態表示装置と、を備え」る点で一致する。 (カ)上記(オ)で検討したことによれば、甲1発明の「事業者の緊急時対策室、オフサイトセンター」に存在する「表示システム」が、「複数のプラントのプラント計算機との接続を切り替えて、いずれか1つのプラントのプラントデータを表示する」「接続を切り替」え、「プラント模擬データを表示していることがわかるよう画面上に表示を行な」うことは、本件発明4の「非常時制御室内表示装置」が、「前記実運転モードでは前記原子力プラントを構成する前記複数のプラント機器の状況を表示し、前記訓練モードでは前記プラント制御装置模擬装置の状況を表示する」ことと、「非常時制御室内表示装置」が、表示切替え器で切り替えられたものを表示する点で一致する。 (キ)甲1発明の「原子力プラントシステム」は、本件発明4の「原子力プラントシステム」に相当する。 (ク)以上(ア)ないし(キ)での検討によれば、本件発明1と甲4発明とは、 「原子力プラントを構成する複数のプラント機器を備えた少なくとも一つのプラント機器ユニットと、 中央制御室内に配置されて前記プラント機器ユニットを制御するプラント制御装置および中央操作装置を含む中央制御室設備と、 前記中央制御室と異なる非常時制御室内に配置された非常時制御室設備と、 を有する原子力プラントシステムであって、 前記プラント機器ユニットに関連する装置を模擬するプラント関連装置模擬装置を備え、 前記非常時制御室設備は、 前記プラント機器の状況を表示可能な非常時制御室内表示装置と、 前記プラントの動作内容の履歴を記憶する非常時制御室内実運転データ記憶装置と、 前記プラント機器ユニットに関連する装置を模擬するプラント関連装置模擬装置の動作内容の履歴を記憶する非常時制御室内訓練データ記憶装置と、 前記非常時制御室内表示装置を、どのデータを表示するか切り替える表示切替え器と、 前記表示切替え器がどのデータを表示しているかを前記非常時制御室内表示装置に表示する表示切替え状態表示装置と、 を備え、 前記非常時制御室内表示装置は、 前記表示切替え器で切り替えられたデータを表示する、 原子力プラントシステム。」 である点で一致するとともに、次の各点で相違する。 a 相違点1 中央制御室設備について、本件発明4は「中央制御室ユニット」であるのに対して、甲1発明はそういえるか不明である点。 b 相違点2 非常時制御室設備について、本件発明4は「非常時制御室ユニット」であるのに対して、甲1発明はそういえるか不明である点。 c 相違点3 本件発明4は、「前記中央制御室とは別の訓練センター内に配置されて、前記少なくとも一つの中央制御室ユニットを模擬する少なくとも一つの訓練センターユニット」を備え、当該「訓練センターユニット」は、非常時制御室とも異なる場所に配置され、当該「訓練センターユニット」それぞれは、「前記プラント制御装置を模擬するプラント制御装置模擬装置と、前記中央操作装置を模擬する訓練用中央操作装置と、前記プラント制御装置模擬装置および前記訓練用中央操作装置の動作内容の履歴を記憶する訓練センター内データ記憶装置と、を備え」るのに対して、甲1発明はこのような「訓練センターユニット」を備えると特定されない点。 d 相違点4 前記プラントの動作内容の履歴を記憶する非常時制御室内実運転データ記憶装置について、本件発明4は、「プラント制御装置」の動作内容の履歴を記憶しており、さらに、「中央操作装置」の動作内容の履歴をも記憶するのに対して、甲1発明は、プラントよりプロセスデータを受信し、プラント毎に設けられたプラントデータベースに格納する点。 e 相違点5 前記プラント機器ユニットに関連する装置を模擬するプラント関連装置模擬装置の動作内容の履歴を記憶する非常時制御室内訓練データ記憶装置について、本件発明4は、「プラント制御装置模擬装置」の動作内容の履歴を記憶しており、さらに、「訓練用中央操作装置」の動作内容の履歴をも記憶するのに対して、甲1発明は、プラント模擬装置から受信したプラント模擬データをプラント模擬装置用のプラント模擬データベースに格納するものであって、プラント模擬データベースとプラントのプラントデータベースとは同等のものである点。 f 相違点6 前記非常時制御室内表示装置を、どのデータを表示するか切り替える表示切替え器が、本件発明4は、「前記プラント機器の状況を表示する実運転モードと、前記プラント制御装置模擬装置の状況を表示する訓練モードとの間で切り替える」のに対して、甲1発明は、複数のプラントのプラント計算機との接続を切り替えて、いずれか1つのプラントのプラントデータを表示するか、あるいは、プラント模擬データを表示する点。 g 相違点7 前記表示切替え器がどのデータを表示しているかを前記非常時制御室内表示装置に表示する表示切替え状態表示装置が、本件発明4は、「前記実運転モードか前記訓練モードかのいずれの状態にあるかを前記非常時制御室内表示装置に表示する」のに対して、甲1発明は、いずれか1つのプラントのプラントデータかプラント模擬データを表示していることがわかるよう画面上に表示を行なっている点。 h 相違点8 前記表示切替え器で切り替えられたものを表示する「非常時制御室内表示装置」が、本件発明4は、「前記実運転モードでは前記原子力プラントを構成する前記複数のプラント機器の状況を表示し、前記訓練モードでは前記プラント制御装置模擬装置の状況を表示する」のに対して、甲1発明は、いずれか1つのプラントのプラントデータを表示するか、あるいは、プラント模擬装置からの模擬プラントデータを表示する点。 i 相違点9 本件発明4は、「前記中央制御室ユニットは、前記プラント機器が所定の異常状況にあるか否かを判定して、前記プラント機器が前記所定の異常状況にある場合に、前記訓練モードから前記実運転モードへの切替えを指示する信号を発信するイベント判定装置、をさらに備える」のに対して、甲1発明はこのような構成を備えると特定されない点で相違する。 イ 判断 事案に鑑み、相違点9から検討する。 「中央制御室ユニット」が、「前記プラント機器が所定の異常状況にあるか否かを判定して、前記プラント機器が前記所定の異常状況にある場合に、前記訓練モードから前記実運転モードへの切替えを指示する信号を発信する」「イベント判定装置」を備える構成は、甲第1号証には記載も示唆もなく、また、甲第2号証ないし甲第12号証を見ても、原子力プラントにおいて、相違点9で特定する上記構成となすことは記載も示唆もされていない。 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明4は、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第12号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 よって、本件発明4は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるから、請求項4についての訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第7項(独立特許要件)に適合する。 (2)本件発明6について ア 本件発明6は、上記(1)で検討した本件発明4の発明特定事項から、相違点9に係る、「前記中央制御室ユニットは、前記プラント機器が所定の異常状況にあるか否かを判定して、前記プラント機器が前記所定の異常状況にある場合に、前記訓練モードから前記実運転モードへの切替えを指示する信号を発信するイベント判定装置、をさらに備える」との構成を除いた上で、「前記非常時制御室ユニットは、前記原子力プラントの事故時に用いられる緊急時機器を制御する緊急時制御装置、をさらに備え、前記訓練センターユニットは、前記緊急時制御装置を模擬する緊急時制御装置模擬装置と、前記緊急時制御装置模擬装置を操作する訓練用表示操作装置と、をさらに備え、前記非常時制御室ユニットは、前記緊急時制御装置の状況を表示するとともに前記緊急時制御装置を操作することが可能な非常時制御室内表示操作装置と、前記実運転モードにおいては前記非常時制御室内表示操作装置が前記緊急時制御装置の状況を表示するとともに前記緊急時制御装置を操作し、前記訓練モードにおいては前記非常時制御室内表示操作装置が前記緊急時制御装置模擬装置の状況を表示し操作するように切り替える表示操作切替え器と、前記表示操作切替え器が前記実運転モードか前記訓練モードかのいずれの状態にあるかを前記非常時制御室内表示操作装置に表示する表示操作切替え状態表示装置と、をさらに備える」との発明特定事項を付加する発明であるから、相違点1ないし8に加えて、上記付加した発明特定事項(以下「相違点10」という。)で甲1発明と相違する。 イ 事案に鑑み、相違点10から検討する。 「非常時制御室ユニット」が、「原子力プラントの事故時に用いられる緊急時機器を制御する緊急時制御装置、をさらに備え」、「前記緊急時制御装置の状況を表示するとともに前記緊急時制御装置を操作することが可能な非常時制御室内表示操作装置と、前記実運転モードにおいては前記非常時制御室内表示操作装置が前記緊急時制御装置の状況を表示するとともに前記緊急時制御装置を操作」する構成は、甲1発明には記載も示唆もなく、また、甲第2号証ないし甲第12号証を見ても、原子力プラントにおいて、相違点11で特定する上記構成となすことは記載も示唆もされていない。 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明6は、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第12号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 よって、本件発明6は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるから、請求項6についての訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第7項(独立特許要件)に適合する。 (3)本件発明5、7、8〜10について 本件発明5は、本件発明4に従属する請求項であり、本件発明7、8〜10は本件発明4又は6に直接ないし間接的に従属する請求項であるから、上記(1)または(2)で検討した理由と同じ理由により、本件発明5、7、8〜10は、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第12号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 また、本件発明7は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるから、請求項7についての訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第7項(独立特許要件)に適合する。 第7 令和3年12月13日付け取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議の申立ての理由について 令和3年12月13日付け取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議の申立ての理由は、以下のとおりである。 1 特許異議申立書に記載された理由 (1)理由(明確性) 本件特許に係る出願は、請求項10及び11の記載が不備のため、当該各請求項に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (2)判断 ア 請求項10について 請求項10の「前記訓練センター内に配置されて前記複数の訓練センターユニットを相互に接続する訓練センター内連携装置と、を有すること、」は、本件訂正により、「を、有し、前記複数の訓練センターユニットは、前記訓練センターユニット内で相互に接続されていること、」に訂正されたことにより、「訓練センター内連携装置」との用語が削除された。 イ 請求項11について 請求項11は、本件訂正により削除された。 2 令和3年2月24日に提出された申立人意見書に記載された理由 (1)理由(明確性) 令和2年12月18日になされた訂正請求において、特許請求の範囲の請求項1に、「 前記非常時制御室内表示装置は、前記実運転モードでは前記原子力プラントを構成する前記複数のプラント機器の状況を前記非常時制御室内表示装置に表示させ、前記訓練モードでは前記プラント機器の前記訓練の状況を前記非常時制御室内訓練用表示装置に表示させる」という要件を追加しているが、当該要件のうち「前記非常時制御室内訓練用表示装置」との記載について、先に「非常時制御室内訓練用表示装置」との記載が存在しておらず、「前記」が何を指すのか明確でないから、当該請求項及び同項を引用する請求項に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 (2)判断 本件訂正請求によって、特許請求の範囲の請求項1は削除された。 3 小括 したがって、上記1及び2の申立人の主張は採用できない。 第8 むすび 以上のとおりであるから、令和3年12月13日付け取消理由通知(決定の予告)の理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明5、8〜10に係る特許を取り消すことはできない。そして、他に本件発明5、8〜10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、本件発明1〜3、11に係る特許は、本件訂正により削除された。これにより、特許異議の申立てについて、本件発明1〜3、11に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】(削除) 【請求項2】(削除) 【請求項3】(削除) 【請求項4】 原子力プラントを構成する複数のプラント機器を備えた少なくとも一つのプラント機器ユニットと、 中央制御室内に配置されて前記プラント機器ユニットそれぞれを制御するプラント制御装置および中央操作装置を含む少なくとも一つの中央制御室ユニットと、 前記中央制御室とは別の訓練センター内に配置されて、前記少なくとも一つの中央制御室ユニットを模擬する少なくとも一つの訓練センターユニットと、 前記中央制御室および前記訓練センターのいずれとも異なる非常時制御室内に配置された非常時制御室ユニットと、 を有する原子力プラントシステムであって、 前記訓練センターユニットそれぞれは、 前記プラント制御装置を模擬するプラント制御装置模擬装置と、 前記中央操作装置を模擬する訓練用中央操作装置と、 前記プラント制御装置模擬装置および前記訓練用中央操作装置の動作内容の履歴を記憶する訓練センター内データ記憶装置と、 を備え、 前記非常時制御室ユニットは、 前記プラント機器の状況を表示可能な非常時制御室内表示装置と、 前記プラント制御装置および前記中央操作装置の動作内容の履歴を記憶する非常時制御室内実運転データ記憶装置と、 前記プラント制御装置模擬装置および前記訓練用中央操作装置の動作内容の履歴を記憶する非常時制御室内訓練データ記憶装置と、 前記非常時制御室内表示装置を、前記プラント機器の状況を表示する実運転モードと、前記プラント制御装置模擬装置の状況を表示する訓練モードとの間で切り替える表示切替え器と、 前記表示切替え器が前記実運転モードか前記訓練モードかのいずれの状態にあるかを前記非常時制御室内表示装置に表示する表示切替え状態表示装置と、 を備え、 前記中央制御室ユニットは、 前記プラント機器が所定の異常状況にあるか否かを判定して、前記プラント機器が前記所定の異常状況にある場合に、前記訓練モードから前記実運転モードへの切替えを指示する信号を発信するイベント判定装置、 をさらに備えること、を特徴とする原子力プラントシステム。 【請求項5】 前記少なくとも一つの中央制御室ユニットのそれぞれが、 前記中央制御室内の運転員が優先して対応すべき項目を選択して一つの画面に表示するためのCOP支援装置と、 前記COP支援装置によって構成された一つの画面を表示する中央制御室内COP表示装置と、 をさらに備え、 前記訓練センターユニットは、 前記COP支援装置を模擬するCOP支援装置模擬装置と、 前記COP支援装置模擬装置によって構成された一つの画面を表示する訓練センター内COP表示装置と、 をさらに備え、 前記非常時制御室ユニットは、 前記COP支援装置によって構成された画面を表示可能な非常時制御室内COP表示装置と、 前記実運転モードにおいては前記COP支援装置によって構成された画面を前記非常時制御室内COP表示装置に表示し、前記訓練モードにおいては前記COP支援装置模擬装置によって構成された画面を前記非常時制御室内COP表示装置に表示するように切り替えるCOP表示切替え器と、 前記COP表示切替え器が前記実運転モードか前記訓練モードかのいずれの状態にあるかを前記非常時制御室内COP表示装置に表示するCOP表示切替え状態表示装置と、 をさらに備えること、を特徴とする請求項4に記載の原子力プラントシステム。 【請求項6】 原子力プラントを構成する複数のプラント機器を備えた少なくとも一つのプラント機器ユニットと、 中央制御室内に配置されて前記プラント機器ユニットそれぞれを制御するプラント制御装置および中央操作装置を含む少なくとも一つの中央制御室ユニットと、 前記中央制御室とは別の訓練センター内に配置されて、前記少なくとも一つの中央制御室ユニットを模擬する少なくとも一つの訓練センターユニットと、 前記中央制御室および前記訓練センターのいずれとも異なる非常時制御室内に配置された非常時制御室ユニットと、 を有する原子力プラントシステムであって、 前記訓練センターユニットそれぞれは、 前記プラント制御装置を模擬するプラント制御装置模擬装置と、 前記中央操作装置を模擬する訓練用中央操作装置と、 前記プラント制御装置模擬装置および前記訓練用中央操作装置の動作内容の履歴を記憶する訓練センター内データ記憶装置と、 を備え、 前記非常時制御室ユニットは、 前記プラント機器の状況を表示可能な非常時制御室内表示装置と、 前記プラント制御装置および前記中央操作装置の動作内容の履歴を記憶する非常時制御室内実運転データ記憶装置と、 前記プラント制御装置模擬装置および前記訓練用中央操作装置の動作内容の履歴を記憶する非常時制御室内訓練データ記憶装置と、 前記非常時制御室内表示装置を、前記プラント機器の状況を表示する実運転モードと、前記プラント制御装置模擬装置の状況を表示する訓練モードとの間で切り替える表示切替え器と、 前記表示切替え器が前記実運転モードか前記訓練モードかのいずれの状態にあるかを前記非常時制御室内表示装置に表示する表示切替え状態表示装置と、 を備え、 前記非常時制御室ユニットは、前記原子力プラントの事故時に用いられる緊急時機器を制御する緊急時制御装置、をさらに備え、 前記訓練センターユニットは、 前記緊急時制御装置を模擬する緊急時制御装置模擬装置と、 前記緊急時制御装置模擬装置を操作する訓練用表示操作装置と、 をさらに備え、 前記非常時制御室ユニットは、 前記緊急時制御装置の状況を表示するとともに前記緊急時制御装置を操作することが可能な非常時制御室内表示操作装置と、 前記実運転モードにおいては前記非常時制御室内表示操作装置が前記緊急時制御装置の状況を表示するとともに前記緊急時制御装置を操作し、前記訓練モードにおいては前記非常時制御室内表示操作装置が前記緊急時制御装置模擬装置の状況を表示し操作するように切り替える表示操作切替え器と、 前記表示操作切替え器が前記実運転モードか前記訓練モードかのいずれの状態にあるかを前記非常時制御室内表示操作装置に表示する表示操作切替え状態表示装置と、 をさらに備えること、を特徴とする原子力プラントシステム。 【請求項7】 前記訓練センターユニットは、 前記緊急時機器と前記緊急時制御装置とを接続する緊急時機器接続装置を模擬する模擬緊急時機器接続装置、 をさらに備えること、を特徴とする請求項6に記載の原子力プラントシステム。 【請求項8】 前記訓練センターユニットは、 緊急時に前記プラント制御装置に接続されて前記プラント制御装置に電源を供給する緊急時電源接続装置を模擬する模擬緊急時電源接続装置、 をさらに備えること、を特徴とする請求項4ないし請求項7のいずれか一項に記載の原子力プラントシステム。 【請求項9】 前記訓練センターユニットは、 緊急時に前記プラント機器に接続されて前記プラント機器に給水する緊急時給水接続装置を模擬する模擬緊急時給水接続装置、 をさらに備えること、を特徴とする請求項4ないし請求項8のいずれか一項に記載の原子力プラントシステム。 【請求項10】 複数の前記中央制御室ユニットと、 複数の前記訓練センターユニットと、 を有し、 前記複数の訓練センターユニットは、前記訓練センター内で相互に接続されていること、 を特徴とする請求項4ないし請求項9のいずれか一項に記載の原子力プラントシステム。 【請求項11】(削除) 【請求項12】 原子力プラントを構成する複数のプラント機器を備えた少なくとも一つのプラント機器ユニットと、 中央制御室内に配置されて前記プラント機器ユニットそれぞれを制御するプラント制御装置および中央操作装置を含む少なくとも一つの中央制御室ユニットと、 前記中央制御室とは別の訓練センター内に配置されて、前記少なくとも一つの中央制御室ユニットを模擬する少なくとも一つの訓練センターユニットと、 前記中央制御室および前記訓練センターのいずれとも異なる非常時制御室内に配置された非常時制御室ユニットと、 を有する原子力プラントシステムを用いた訓練方法であって、 前記訓練センターユニットそれぞれは、 前記プラント制御装置を模擬するプラント制御装置模擬装置と、 前記中央操作装置を模擬する訓練用中央操作装置と、 前記プラント制御装置模擬装置および前記訓練用中央操作装置の動作内容の履歴を記憶する訓練センター内データ記憶装置と、 を備え、 前記非常時制御室ユニットは、 前記プラント機器の状況を表示可能な非常時制御室内表示装置と、 前記プラント制御装置および前記中央操作装置の動作内容の履歴を記憶する非常時制御室内実運転データ記憶装置と、 前記プラント制御装置模擬装置および前記訓練用中央操作装置の動作内容の履歴を記憶する非常時制御室内訓練データ記憶装置と、 前記非常時制御室内表示装置を、前記プラント機器の状況を表示する実運転モードと、前記プラント制御装置模擬装置の状況を表示する訓練モードとの間で切り替える表示切替え器と、 前記表示切替え器が前記実運転モードか前記訓練モードかのいずれの状態にあるかを前記非常時制御室内表示装置に表示する表示切替え状態表示装置と、 を備え、 当該訓練方法は、 前記訓練センターユニットが訓練開始信号を前記非常時制御室ユニットに発する訓練開始ステップと、 前記訓練開始ステップの後に、前記表示切替え器が、前記非常時制御室内表示装置が前記プラント制御装置模擬装置の状況を表示する訓練モードに切り替えるとともに、前記非常時制御室内表示装置が訓練モードの状態にあることを表示する訓練モード動作ステップと、 前記訓練モード動作ステップの途中で前記非常時制御室ユニットが前記中央制御室ユニットからの実運転モード指令信号を受信した場合に、前記表示切替え器が、前記非常時制御室内表示装置が前記プラント機器の状況を表示する実運転モードに切り替えるとともに、前記非常時制御室内表示装置が実運転モードの状態にあることを表示する実運転モード動作ステップと、 を備えること、を特徴とする訓練方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2022-03-14 |
出願番号 | P2016-231124 |
審決分類 |
P
1
652・
537-
YAA
(G21C)
P 1 652・ 121- YAA (G21C) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
山村 浩 |
特許庁審判官 |
吉野 三寛 松川 直樹 |
登録日 | 2019-12-27 |
登録番号 | 6636902 |
権利者 | 株式会社東芝 東芝エネルギーシステムズ株式会社 |
発明の名称 | 原子力プラントシステムおよびそれを用いた訓練方法 |
代理人 | 特許業務法人サクラ国際特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人サクラ国際特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人サクラ国際特許事務所 |