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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08J
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08J
管理番号 1385147
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-06-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-03-09 
確定日 2022-03-18 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6752935号発明「樹脂成形体の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6752935号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜19〕について訂正することを認める。 特許第6752935号の請求項1〜19に係る特許を維持する。 
理由 第1 主な手続の経緯
特許第6752935号(請求項の数は19。以下、「本件特許」という。)についての出願は、令和1年5月28日に出願され、令和2年8月21日にその特許権の設定登録がされ、同年9月9日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和3年 3月 9日 :特許異議申立人 野中 恵(以下、「異議申立人」という。)による請求項1〜19に係る特許に対する特許異議の申立て
同年 6月 4日付け:取消理由通知書
同年 8月 3日 :特許権者による意見書の提出及び訂正請求
同年 9月22日 :異議申立人による意見書の提出
同年11月25日付け:取消理由通知書<決定の予告>
令和4年 1月28日 :特許権者による意見書の提出及び訂正請求

なお、令和3年8月3日にされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
また、下記第2で述べるように、特許権者が令和4年1月28日にした訂正請求(以下、「本件訂正」という。)は、請求項1、2、3、4を減縮するものであるが、その内容は、請求項1、2については令和3年8月3日にした訂正請求に係る請求項1、2と同内容であり、請求項3、4については同訂正請求に係る請求項3、4の内容をさらに限定するものである。異議申立人は同訂正請求に対してすでに意見を述べていることに鑑みれば、本件訂正は特許法第120条の5第5項ただし書き所定の「特別の事情があるとき」に該当すると判断されることから、当合議体は、異議申立人に対し、同項所定の「意見書を提出する機会」を与えないこととしている。

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
本件訂正の内容は、以下の訂正事項1ないし4のとおりである。なお、下線は、訂正箇所について付したものである。

(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む樹脂成形体の製造方法であって、」とあるのを、「(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む樹脂成形体の製造方法であって、前記(A)熱可塑性樹脂がポリアミドであり、」に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項6〜19も同様に訂正する。

(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む樹脂成形体の製造方法であって、」とあるのを、「(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む樹脂成形体の製造方法であって、前記(A)熱可塑性樹脂がポリアミドであり、」に訂正する。
請求項2の記載を引用する請求項6〜19も同様に訂正する。

(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む樹脂成形体の製造において前記(B)セルロースナノファイバーの解繊性を向上させる方法であって、」とあるのを、「(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む樹脂成形体の製造において前記(B)セルロースナノファイバーの解繊性を向上させる方法であって、前記(B)セルロースナノファイバーの平均繊維径が500nm以下であり、前記樹脂成形体の引張強度が90MPa以上であり、」に訂正する。
請求項3の記載を引用する請求項5〜19も同様に訂正する。

(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む樹脂成形体の製造において前記(B)セルロースナノファイバーの解繊性を向上させる方法であって、」とあるのを、「(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む樹脂成形体の製造において前記(B)セルロースナノファイバーの解繊性を向上させる方法であって、前記(B)セルロースナノファイバーの平均繊維径が500nm以下であり、前記樹脂成形体の引張強度が90MPa以上であり、」に訂正する。
請求項4の記載を引用する請求項5〜19も同様に訂正する。

2 訂正の適否についての検討
(1) 請求項1に係る訂正について
請求項1に係る本件訂正は、(A)熱可塑性樹脂に係る特定事項に関し、「ポリアミド」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、請求項1に係る本件訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、本件訂正前の請求項17に記載される事項であるから、新規事項の追加ではない。

(2) 請求項2に係る訂正について
請求項2に係る本件訂正は、(A)熱可塑性樹脂に係る特定事項に関し、「ポリアミド」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、請求項2に係る本件訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、本件訂正前の請求項17に記載される事項であるから、新規事項の追加ではない。

(3) 請求項3に係る訂正について
請求項3に係る本件訂正は、(B)セルロースナノファイバー及び樹脂成形体に係る特定事項に関し、「前記(B)セルロースナノファイバーの平均繊維径が500nm以下であり、前記樹脂成形体の引張強度が90MPa以上」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、請求項3に係る本件訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、本件訂正前の請求項13、明細書【0053】、【0110】に記載される事項であるから、新規事項の追加ではない。

(4) 請求項4に係る訂正について
請求項4に係る本件訂正は、(B)セルロースナノファイバー及び樹脂成形体に係る特定事項に関し、「前記(B)セルロースナノファイバーの平均繊維径が500nm以下であり、前記樹脂成形体の引張強度が90MPa以上」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、請求項4に係る本件訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、本件訂正前の請求項13、明細書【0053】、【0110】に記載される事項であるから、新規事項の追加ではない。

(5) 請求項5ないし19に係る訂正について
上記(1)ないし(4)に係る請求項1ないし4を直接又は間接的に引用する請求項5ないし19についての訂正は、上記(1)ないし(4)で検討したとおりである。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
なお、訂正前の請求項6〜19は、訂正前の請求項1、2、3又は4を、直接又は間接的に引用するものであり、訂正前の請求項5は、訂正前の請求項3又は4を、直接引用するものである。
したがって、訂正前の請求項1、6〜19、訂正前の請求項2、6〜19、訂正前の請求項3、5〜19、及び、訂正前の請求項4〜19は、それぞれ一群の請求項にされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜19〕について訂正することを認める。

第3 本件発明
上記第2のとおりであるから、本件訂正後の本件特許の請求項1〜19に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明19」といい、まとめて「本件発明」ということがある。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1〜19に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

【請求項1】
(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む樹脂成形体の製造方法であって、前記(A)熱可塑性樹脂がポリアミドであり、前記方法が、
(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む主供給材料と、前記主供給材料の溶融処理生成物である補助供給材料とを準備する工程と、
前記主供給材料と前記補助供給材料とを溶融混合して樹脂組成物を得る樹脂組成物形成工程と、
前記樹脂組成物を成形して樹脂成形体を得る工程と、
を含み、
前記溶融混合を、前記主供給材料と前記補助供給材料との合計100質量%に対する前記補助供給材料の混合比率5〜50質量%にて行う、方法。
【請求項2】
(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む樹脂成形体の製造方法であって、前記(A)熱可塑性樹脂がポリアミドであり、前記方法が、
(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む主供給材料と、前記主供給材料の溶融処理生成物である補助供給材料とを準備する工程と、
前記主供給材料と前記補助供給材料とを溶融混合して樹脂組成物を得る樹脂組成物形成工程と、
前記樹脂組成物を成形して樹脂成形体を得る工程と、
を含み、
前記樹脂成形体の成形収縮率のTD/MD比が1.05〜3.0である、方法。
【請求項3】
(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む樹脂成形体の製造において前記(B)セルロースナノファイバーの解繊性を向上させる方法であって、(B)セルロースナノファイバーの平均繊維径が500nm以下であり、前記樹脂成形体の引張強度が90MPa以上であり、前記方法が、
(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む主供給材料と、前記主供給材料の溶融処理生成物である補助供給材料とを準備する工程と、
前記主供給材料と前記補助供給材料とを溶融混合することによって、熱履歴が異なる2種以上のセルロースナノファイバーを含む樹脂組成物を得る樹脂組成物形成工程と、
前記樹脂組成物を成形して樹脂成形体を得る工程と、
を含み、
前記溶融混合を、前記主供給材料と前記補助供給材料との合計100質量%に対する前記補助供給材料の混合比率5〜50質量%にて行う、方法。
【請求項4】
(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む樹脂成形体の製造において前記(B)セルロースナノファイバーの解繊性を向上させる方法であって、(B)セルロースナノファイバーの平均繊維径が500nm以下であり、前記樹脂成形体の引張強度が90MPa以上であり、前記方法が、
(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む主供給材料と、前記主供給材料の溶融処理生成物である補助供給材料とを準備する工程と、
前記主供給材料と前記補助供給材料とを溶融混合することによって、熱履歴が異なる2種以上のセルロースナノファイバーを含む樹脂組成物を得る樹脂組成物形成工程と、
前記樹脂組成物を成形して樹脂成形体を得る工程と、
を含み、
前記樹脂成形体の成形収縮率のTD/MD比が1.05〜3.0である、方法。
【請求項5】
前記熱履歴が異なる2種以上のセルロースナノファイバーが、互いに異なる繊維長を有する、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記樹脂成形体の一部を前記補助供給材料として使用する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記主供給材料が、前記(A)熱可塑性樹脂100質量部及び前記(B)セルロースナノファイバー1〜50質量部を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記主供給材料の構成成分が溶融混合系中で互いに及び補助供給材料と混合される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記主供給材料が、前記(A)熱可塑性樹脂100質量部及び前記(B)セルロースナノファイバー1〜50質量部を含む成形体である第1の材料と、前記第1の材料と組成の異なる第2の材料との組合せである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記溶融混合が溶融混練である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記樹脂成形体がペレットである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記溶融混合が溶融混練であり、前記溶融混練と前記成形とを単一の混練機内で行う、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記樹脂成形体の引張強度が90MPa以上である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記樹脂成形体において、MD方向の成形収縮率が0.2%〜0.7%であり、TD方向の成形収縮率が0.5%〜1.0%である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、前記樹脂成形体の一部を前記補助供給材料の少なくとも一部として前記樹脂組成物形成工程に戻すことを更に含むことによって、前記樹脂成形体が、前記主供給材料の溶融処理と2回以上の前記樹脂組成物形成工程とを経ているセルロースナノファイバーを含み、
前記樹脂成形体中のセルロースナノファイバーの総量100質量%に対する、前記主供給材料の溶融処理と2回以上の前記樹脂組成物形成工程とを経ているセルロースナノファイバーの比率が、20質量%以下である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記樹脂成形体の黄色度(YI)値と前記補助供給材料の黄色度(YI)値との差が10以下である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記(A)熱可塑性樹脂がポリアミドである、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記(B)セルロースナノファイバーが変性セルロースナノファイバーである、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記変性セルロースナノファイバーの置換度が0.5〜1.5である、請求項18に記載の方法。

第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
異議申立人が提出した特許異議申立書において主張する特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。

1 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性
本件特許の訂正前の請求項1に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、当該発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

2 申立理由2(甲第1号証に基づく進歩性
本件特許の訂正前の請求項1〜19に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、その特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

3 証拠方法
甲第1号証:平成28年度環境省委託業務 平成28年度 セルロースナノファイバー性能評価事業(CNFの家電製品適用に向けた性能評価および導入実証) 委託業務 成果報告書 第65〜98ページ 平成29年3月 パナソニック株式会社
甲第2号証:平成27年度 セルロースナノファイバー活用製品の性能評価事業委託業務 セルロースナノファイバーを用いた機能部品の軽量化検討報告書 第12〜16ページ 平成28年3月31日 トヨタ車体株式会社 新規事業開発部
甲第3号証:国際公開第2011/126038号
甲第4号証:特開2016−14117号公報
甲第5号証:国際公開第2017/141779号
甲第6号証:本件についての令和2年1月22日付け拒絶理由通知書
甲第7号証:ユニチカ(株)「セルロースナノファイバー(CNF)強化ポリアミド6樹脂(開発品)」2017年4月発行
甲第8号証:特開2016−176052号公報
ここで、証拠の表記は、特許異議申立書に添付された証拠説明書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。

なお、特許権者が令和3年8月3日に提出した意見書において付言した「甲1が平成29年3月に公知となったか否かは不明」との指摘に対し、異議申立人が令和3年9月22日に提出した意見書において以下の甲第11号証を提示している。これに基づいて、甲1は本件特許出願時において公知であったものと認められる。また、異議申立人は同意見書において以下の甲第9、10号証を提示している。
甲第 9号証:特開平9−59421号公報
甲第10号証:特開2004−195890号公報
甲第11号証:甲第1号証に関する国立国会図書館のデータベースのサーチ結果

第5 令和3年11月25日付けで通知した取消理由通知書<決定の予告>に記載した取消理由の概要
取消理由通知書<決定の予告>に記載した取消理由は、概略、以下のとおりである。
本件特許の請求項3〜8、10、14〜16に係る発明は、甲1に記載された発明であって特許法第29条第1項第3号に該当するものであり、また、本件特許の請求項3〜12、14〜16、18〜19に係る発明は、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって同法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

第6 当審の判断
当審は、以下に述べるように、上記申立理由1、2(上記第4)にはいずれも理由がなく、また、当審が通知した取消理由通知書<決定の予告>に記載した取消理由にも理由がないと判断する。

1 証拠に記載された事項等
(1)甲1に記載された事項
甲1には、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。以下同様。
・「平成28年度 セルロースナノファイバー性能評価事業
(CNFの家電製品適用に向けた性能評価および導入実証)
委託業務 成果報告書」(表紙)
・「4−3.リサイクル性の検証
4−3−1.緒言
家電製品への新素材の適用に当たっては、家電リサイクル法を勘案し、素材のリサイクル性を同時開発することが望ましい。本事業では、冷蔵庫および洗濯機へのCNF複合樹脂の適用を検討しているが、冷蔵庫では、鋼板をCNF複合樹脂への置き換えを、洗濯機では、ガラス繊維強化樹脂(GFRP)のCNF複合樹脂への置き換えを検討している。鋼板は、廃棄家電の中から磁力選別によって単一素材に分離・回収され、リサイクルが進んでいる。一方で、GFRPは、ガラス繊維の含有/非含有を効率よく判別する選別手段がないことからリサイクルが進んでいない。
CNF複合樹脂のリサイクル性を考えるに当たり、2つの重要工程を考慮する必要がある。1つ目は、廃家電に含まるさまざまな種類の樹脂(以後、廃家電混合樹脂)から単一種類の樹脂種へ選別する工程である。2つ目は、単一種類に選別された樹脂を、再利用するために樹脂の物性を回復、すなわち再生する工程である。
…(中略)…
(2)再生リサイクルのアプローチ
前項にて選別したCNF複合樹脂に対して、マテリアルリサイクルのアプローチについて説明する。CNF複合樹脂のリサイクルについては、PP(ポリプロピレン)樹脂以外のPA(ポリアミド)樹脂1)やPOM(ポリアセタール)樹脂2)などについては、そのリサイクル性能の可能なことが示されているが、本取組におけるCNF複合PP樹脂については、リサイクル性の検証事例などは見られない。」(第65ページ第1行ないし第66ページ第4行)
・「(2)再生リサイクルの取り組み結果
【ガラス繊維強化樹脂との機械物性面でのリサイクル性能の比較】
対象樹脂は、CNF15%複合樹脂、短繊維ガラス40%含有強化樹脂(短GF樹脂)、長繊維ガラス40%含有強化樹脂(長GF樹脂)及び、ベースレジンであるナチュラルPP樹脂である。
ベースPP樹脂以外の樹脂については、初期新材ペレット100%にて、JIS K7139 2009に準拠したタイプA1の多目的試験片(ダンベル試験片)を射出成形により作製した。射出成形は、JIS K7152−1又はJIS K7154−1の規定によって実施した。
次に、上記で成形したランナー・スプルー及び残余成形品を粉砕機にて粉砕し、100%を用いた場合と、表4−3(2)に示す比率(リグラインド率)で新材へ配合した混合樹脂を用いて、2回目の成形熱履歴を経たダンベル試験片を作製した。なお、表中のNo.1は、それぞれの繊維含有での新材ペレット100%樹脂での1回目成形を表している。」(第77ページ第3行ないし第14行)
・「


」(第77ページ)
・「(a)機械特性試験結果
(a−1)引張強度(引張降伏応力)
図4−3(15)から図4−3−2(18)に引張降伏応力の測定結果を示す。それぞれ横軸が1回熱履歴品の新材に対する粉砕再生材配合比率(リグラインド率)である。いずれも、傾向として、リグラインド率が高いほど強度は低下する傾向にある。」(第77ページ第15行ないし第19行)
・「

」(第78ページ)

(2)甲1に記載された発明
甲1に記載された事項を、特に第77ページの表4−3(2)におけるNo.2及び3に関して整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。

<甲1発明>
「PP(ポリプロピレン)及びCNFを含む2回目の成形熱履歴を経たダンベル試験片の製造方法であって、前記方法が、
CNF15%複合樹脂からなる初期新材ペレット100%にて、JIS K7139 2009に準拠したタイプA1の多目的試験片(ダンベル試験片)を射出成形により作製し、上記で成形したランナー・スプルー及び残余成形品を粉砕機にて粉砕し、25%又は50%の比率(リグラインド率)で新材へ配合した混合樹脂を用いて、2回目の成形熱履歴を経たダンベル試験片であって引張強度が略30.4MPa又は略30.1MPaであるダンベル試験片を作製する、方法。」

2 取消理由通知書<決定の予告>に記載した取消理由について
(1) 本件発明3について
ア 対比
本件発明3と甲1発明とを対比する。
甲1発明における「PP(ポリプロピレン)」は、本件発明3における「熱可塑性樹脂」に相当し、以下同様に、「CNF」は「セルロースナノファイバー」に、「2回目の成形熱履歴を経たダンベル試験片」は「樹脂成形体」に、「CNF15%複合樹脂からなる初期新材ペレット100%」又は「新材」は「主供給材料」に、それぞれ相当する。
甲1発明における「成形したランナー・スプルー及び残余成形品」は、「CNF15%複合樹脂からなる初期新材ペレット100%にて、JIS K7139 2009に準拠したタイプA1の多目的試験片(ダンベル試験片)を射出成形により作製」したものであり、「射出成形」に「溶融処理」工程が含まれることは明らかである。そうすると、甲1発明における「成形したランナー・スプルー及び残余成形品を粉砕機にて粉砕」したものは、本件発明3における「主供給材料の溶融処理生成物である補助供給材料」に相当するといえる。
甲1の「ベースPP樹脂以外の樹脂については、初期新材ペレット100%にて、JIS K7139 2009に準拠したタイプA1の多目的試験片(ダンベル試験片)を射出成形により作製した。射出成形は、JISK7152−1又はJISK754−1の規定によって実施した。」(第77ページ第8行ないし第10行)の記載を参酌すれば、甲1発明における「2回目の成形熱履歴を経たダンベル試験片」は、射出成形により作製されていることが当業者にとって明らかであり、射出成形は「溶融混合」工程を含むことは明らかである。そして、甲1発明における「2回目の成形熱履歴を経たダンベル試験片」は「成形したランナー・スプルー及び残余成形品を粉砕機にて粉砕し、25%又は50%の比率(リグラインド率)で新材へ配合した混合樹脂を用いて」作製されているものであるから、「新材」と「成形したランナー・スプルー及び残余成形品」とは、射出成形する際に「溶融混合」されるものである。そうすると、甲1発明における「CNF15%複合樹脂からなる初期新材ペレット100%にて、JIS K7139 2009に準拠したタイプA1の多目的試験片(ダンベル試験片)を射出成形により作製し、上記で成形したランナー・スプルー及び残余成形品を粉砕機にて粉砕し、25%又は50%の比率(リグラインド率)で新材へ配合した混合樹脂を用いて、2回目の成形熱履歴を経たダンベル試験片を作製する」工程は、本件発明3の「主供給材料と補助供給材料とを溶融混合して樹脂組成物を得る樹脂組成物形成工程と、前記樹脂組成物を成形して樹脂成形体を得る工程」に相当するといえる。
甲1発明における「成形したランナー・スプルー及び残余成形品を粉砕機にて粉砕し、25%又は50%の比率(リグラインド率)で新材へ配合した」は、本件発明3の「溶融混合を、主供給材料と補助供給材料との合計100質量%に対する補助供給材料の混合比率5〜50質量%にて行う」に相当する。

してみると、両者の一致点、一応の相違点はそれぞれ次のとおりである。
・一致点
(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む樹脂成形体の製造における方法であって、前記方法が、
(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む主供給材料と、前記主供給材料の溶融処理生成物である補助供給材料とを準備する工程と、
前記主供給材料と前記補助供給材料とを溶融混合して樹脂組成物を得る樹脂組成物形成工程と、
前記樹脂組成物を成形して樹脂成形体を得る工程と、
を含み、
前記溶融混合を、前記主供給材料と前記補助供給材料との合計100質量%に対する前記補助供給材料の混合比率5〜50質量%にて行う、方法。

・相違点3−1
本件発明3は、「セルロースナノファイバーの解繊性を向上させる方法」と特定するのに対し、甲1発明はそのような特定がない点
・相違点3−2
(B)セルロースナノファイバーの平均繊維径について、本件発明3が「500nm以下」と特定するのに対し、甲1発明はそのような特定がない点
・相違点3−3
樹脂成形体の引張強度について、本件発明3が「90MPa以上」と特定するのに対し、甲1発明は「略30.4MPa又は略30.1MPa」である点
・相違点3−4
主供給材料と補助供給材料とを溶融混合して樹脂組成物を得る樹脂組成物形成工程に関して、本件発明3は、「熱履歴が異なる2種以上のセルロースナノファイバーを含む樹脂組成物を得る」と特定するのに対し、甲1発明は、「2回目の成形熱履歴を経たダンベル試験片」が「セルロースナノファイバーを含む樹脂組成物」であるものの、当該セルロースナノファイバーが、熱履歴が異なる2種以上であるのか否かの特定がない点

イ 判断
事案に鑑み、まず上記相違点3−3について検討する。
甲1発明の引張強度は、リグラインド率25%のとき略30.4MPa、リグラインド率50%のとき略30.1MPaであり、いずれも本件発明3の規定する90MPaとは3倍近い開きがあるから、この点は実質的な相違点である。
そして、仮に引張強度の向上が当業者に自明の課題であったとしても、甲1発明において90MPa以上の引張強度を達成することが自明とはいえないし、どのようにして達成するのかも明らかではない。また、他に甲1において90MPa以上の引張強度とすることが容易であったとする根拠も見当たらない。
したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は甲1発明ではないし、甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたものでもない。

ウ 異議申立人の主張について
異議申立人は、特許異議申立書において「本件特許明細書の段落【0110】によれば、樹脂成形体の引張強度が90MPa以上であると樹脂成形体の機械強度が高く好適であるとのことである。しかし、樹脂成形体の機械強度が高ければ好適であるというのは当然のことであり、この点は単なる設定目標値であるに過ぎず、したがって、この点に進歩性は認められない。」と主張している。
しかしながら、上記イで述べたとおり、甲1発明において90MPa以上の引張強度とすることが容易であったとはいえないから、異議申立人の主張は採用できない。

(2) 本件発明4について
本件発明4と甲1発明とを対比すると、上記(1)アと同様であるので、両者の一致点、一応の相違点はそれぞれ次のとおりである。
・一致点
(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む樹脂成形体の製造方法であって、前記方法が、
(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む主供給材料と、前記主供給材料の溶融処理生成物である補助供給材料とを準備する工程と、
前記主供給材料と前記補助供給材料とを溶融混合して樹脂組成物を得る樹脂組成物形成工程と、
前記樹脂組成物を成形して樹脂成形体を得る工程と、
を含む方法。

・相違点4−1
本件発明4は、「セルロースナノファイバーの解繊性を向上させる方法」と特定するのに対し、甲1発明はそのような特定がない点
・相違点4−2
(B)セルロースナノファイバーの平均繊維径について、本件発明4が「500nm以下」と特定するのに対し、甲1発明はそのような特定がない点
・相違点4−3
樹脂成形体の引張強度について、本件発明3が「90MPa以上」と特定するのに対し、甲1発明は「略30.4MPa又は略30.1MPa」である点
・相違点4−4
主供給材料と補助供給材料とを溶融混合して樹脂組成物を得る樹脂組成物形成工程に関して、本件発明4は、「熱履歴が異なる2種以上のセルロースナノファイバーを含む樹脂組成物を得る」と特定するのに対し、甲1発明は、「2回目の成形熱履歴を経たダンベル試験片」が「セルロースナノファイバーを含む樹脂組成物」であるものの、当該セルロースナノファイバーが、熱履歴が異なる2種以上であるのか否かの特定がない点
・相違点4−5
樹脂成形体の成形収縮率のTD/MD比に関して、本件発明4が「1.05〜3.0」と特定するのに対し、甲1発明はそのような特定がない点

イ 判断
事案に鑑み、まず相違点4−3について検討すると、上記(1)イ、ウの判断のとおりであるので、相違点4−3は実質的な相違点であるし、甲1発明において90MPa以上の引張強度とすることが容易であったとはいえないから、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明4は甲1発明ではないし、甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたものでもない。

(3) 本件発明5について
本件特許の請求項5は請求項3又は4を引用するものであるから、本件発明5は、本件発明3又は本件発明4のいずれかの発明特定事項を全て有するものである。
そして、本件発明3及び4がいずれも甲1発明ではなく、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないことは、上記(1)、(2)の検討のとおりであるから、これらのいずれかの発明特定事項を全て有する本件発明5も、甲1発明ではなく、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(4) 本件発明6〜12、14〜16、18〜19について
取消理由通知書<決定の予告>の対象となった本件発明6〜12、14〜16、18〜19は、請求項6〜12、14〜16、18〜19のうち請求項3、4を直接又は間接的に引用するもの、すなわち本件発明6〜12、14〜16、18〜19のうち、本件発明3、4のいずれかの発明特定事項を全て有するものである。
そして、本件発明3、4のいずれも、甲1発明ではなく、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないことは、上記(1)、(2)の検討のとおりであるから、これらのいずれかの発明特定事項を全て有する本件発明6〜12、14〜16、18〜19も、甲1発明ではなく、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(5) まとめ
したがって、取消理由通知書<決定の予告>に記載した取消理由には理由がない。

3 取消理由通知書<決定の予告>において採用しなかった申立理由について
取消理由通知書<決定の予告>において採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由は、申立理由1(請求項1に係る発明に関する甲1に基づく新規性)、申立理由2(甲1に基づく進歩性)のうち請求項1〜2、13、17に係る発明及び請求項6〜12、14〜16、18〜19のうち請求項1、2、13、17を直接又は間接的に引用するものに関するものであるので、以下検討する。

(1) 本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比すると、上記2(1)アと同様であるので、両者の一致点、一応の相違点はそれぞれ次のとおりである。
・一致点
(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む樹脂成形体の製造における方法であって、前記方法が、
(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む主供給材料と、前記主供給材料の溶融処理生成物である補助供給材料とを準備する工程と、
前記主供給材料と前記補助供給材料とを溶融混合して樹脂組成物を得る樹脂組成物形成工程と、
前記樹脂組成物を成形して樹脂成形体を得る工程と、
を含み、
前記溶融混合を、前記主供給材料と前記補助供給材料との合計100質量%に対する前記補助供給材料の混合比率5〜50質量%にて行う、方法。

・相違点1
(A)熱可塑性樹脂について、本件発明1が「ポリアミド」と特定するのに対し、甲1発明においては「PP(ポリプロピレン)」である点

イ 判断
上記相違点1について検討すると、甲1発明における熱可塑性樹脂は「PP(ポリプロピレン)」であるから、ポリアミドとは実質的に相違する。
そして、甲1の「CNF複合樹脂のリサイクルについては、PP(ポリプロピレン)樹脂以外のPA(ポリアミド)樹脂1)やPOM(ポリアセタール)樹脂2)などについては、そのリサイクル性能の可能なことが示されているが、本取組におけるCNF複合PP樹脂については、リサイクル性の検証事例などは見られない。」との記載からも明らかなとおり、甲1発明はポリプロピレン樹脂のリサイクルをその対象とするものであるところ、「熱可塑性樹脂」としてポリアミド樹脂を採用する動機がない。
したがって、本件発明1は、甲1発明ではないし、甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたものでもない。

ウ 異議申立人の主張
異議申立人は、特許異議申立書において「熱可塑性樹脂がポリアミドであることは、甲第1号証の第66ページと、甲第1号証の第66ページおよび第98ページにおいて引用されている甲第7号証に記載されているとおりである。」と主張するとともに、令和3年9月22日に提出した意見書において「取消理由通知書におけるご認定のように甲第1号証に記載されている、「…(中略)…方法」において、PP(ポリプロピレン)を訂正特許請求の範囲の請求項1と請求項2とに記載されたポリアミドに置き換える程度のことは、当業者であれば、容易になし得たことであるに過ぎない。」と主張している。
しかしながら、当該記載は、ポリアミド樹脂においてはすでにリサイクル性が示されていることを述べた記載及びその参考文献の提示であって、甲1発明においてポリアミド樹脂を採用したものではないし、採用する動機もないから、異議申立人の主張は採用できない。
また、上記第4 3のとおり、異議申立人は令和3年9月22日に提出した意見書において甲9、甲10を提示して、繊維強化ポリアミド樹脂においてリグラインド率を5〜50質量%とすることが周知であったことを示すものであると主張しているが、上述のとおり、そもそも甲1発明においてポリアミド樹脂を採用する動機がない。また、仮に甲10を主たる引用発明として認定したとしても、本件発明の奏する「良好な機械強度と、良好な分散性及び少ない異方性との両立(【0025】)」という効果は記載されていないし、当業者が予測できたものともいえないから、本件発明1は甲10に記載された発明から容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2) 本件発明2について
ア 対比
本件発明2と甲1発明とを対比すると、上記(1)アと同様であるから、両者の一致点、相違点はそれぞれ次のとおりである。
・一致点
(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む樹脂成形体の製造における方法であって、前記方法が、
(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む主供給材料と、前記主供給材料の溶融処理生成物である補助供給材料とを準備する工程と、
前記主供給材料と前記補助供給材料とを溶融混合して樹脂組成物を得る樹脂組成物形成工程と、
前記樹脂組成物を成形して樹脂成形体を得る工程と、
を含む、方法。

・相違点2−1
(A)熱可塑性樹脂について、本件発明2が「ポリアミド」と特定するのに対し、甲1発明はそのような特定がない点

・相違点2−2
樹脂成形体の成形収縮率のTD/MD比に関して、本件発明2が「1.05〜3.0」と特定するのに対し、甲1発明はそのような特定がない点

イ 判断
上記相違点2−1について検討すると、上記(1)イ、ウの判断のとおりであるので、相違点2−2について検討するまでもなく、本件発明2は甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

(3) 本件発明13について
本件発明13は、上記第3のとおり、本件発明1〜12のいずれかについて「樹脂成形体の引っ張り強度が90MPa以上」と特定するもの、すなわち上記2(1)で検討した相違点3−3に係る特定事項と同一であるから、上記2(1)イ、ウの判断のとおり、甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

(4) 本件発明17について
本件発明17は、上記第3のとおり、本件発明1〜16のいずれかについて「(A)熱可塑性樹脂がポリアミド」と特定するもの、すなわち上記(1)で検討した相違点1に係る特定事項と同一であるから、上記(1)イ、ウの判断のとおり、甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

(5) 本件発明6〜12、14〜16、18〜19について
請求項6〜12、14〜16、18〜19のうち請求項1、2、13、17を直接又は間接的に引用する本件発明6〜12、14〜16、18〜19
は、本件発明1、2、13、17のいずれかの発明特定事項を全て有するものである。
そして、本件発明1、2、13、17のいずれも、甲1発明ではなく、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないことは、上記(1)〜(4)の検討のとおりであるから、これらのいずれかの発明特定事項を全て有する本件発明6〜12、14〜16、18〜19も、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(6) まとめ
したがって、申立理由1、2はいずれも理由がない。

第7 むすび
したがって、異議申立人の主張する申立理由及び取消理由通知書<決定の予告>に記載した取消理由によっては、請求項1〜19に係る特許を取り消すことはできない。また、他にこれら特許が特許法第113条各号のいずれかに該当すると認めうる理由もない。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む樹脂成形体の製造方法であって、前記(A)熱可塑性樹脂がポリアミドであり、前記方法が、
(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む主供給材料と、前記主供給材料の溶融処理生成物である補助供給材料とを準備する工程と、
前記主供給材料と前記補助供給材料とを溶融混合して樹脂組成物を得る樹脂組成物形成工程と、
前記樹脂組成物を成形して樹脂成形体を得る工程と、
を含み、
前記溶融混合を、前記主供給材料と前記補助供給材料との合計100質量%に対する前記補助供給材料の混合比率5〜50質量%にて行う、方法。
【請求項2】
(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む樹脂成形体の製造方法であって、前記(A)熱可塑性樹脂がポリアミドであり、前記方法が、
(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む主供給材料と、前記主供給材料の溶融処理生成物である補助供給材料とを準備する工程と、
前記主供給材料と前記補助供給材料とを溶融混合して樹脂組成物を得る樹脂組成物形成工程と、
前記樹脂組成物を成形して樹脂成形体を得る工程と、
を含み、
前記樹脂成形体の成形収縮率のTD/MD比が1.05〜3.0である、方法。
【請求項3】
(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む樹脂成形体の製造において前記(B)セルロースナノファイバーの解繊性を向上させる方法であって、前記(B)セルロースナノファイバーの平均繊維径が500nm以下であり、前記樹脂成形体の引張強度が90MPa以上であり、前記方法が、
(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む主供給材料と、前記主供給材料の溶融処理生成物である補助供給材料とを準備する工程と、
前記主供給材料と前記補助供給材料とを溶融混合することによって、熱履歴が異なる2種以上のセルロースナノファイバーを含む樹脂組成物を得る樹脂組成物形成工程と、
前記樹脂組成物を成形して樹脂成形体を得る工程と、
を含み、
前記溶融混合を、前記主供給材料と前記補助供給材料との合計100質量%に対する前記補助供給材料の混合比率5〜50質量%にて行う、方法。
【請求項4】
(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む樹脂成形体の製造において前記(B)セルロースナノファイバーの解繊性を向上させる方法であって、前記(B)セルロースナノファイバーの平均繊維径が500nm以下であり、前記樹脂成形体の引張強度が90MPa以上であり、前記方法が、
(A)熱可塑性樹脂及び(B)セルロースナノファイバーを含む主供給材料と、前記主供給材料の溶融処理生成物である補助供給材料とを準備する工程と、
前記主供給材料と前記補助供給材料とを溶融混合することによって、熱履歴が異なる2種以上のセルロースナノファイバーを含む樹脂組成物を得る樹脂組成物形成工程と、
前記樹脂組成物を成形して樹脂成形体を得る工程と、
を含み、
前記樹脂成形体の成形収縮率のTD/MD比が1.05〜3.0である、方法。
【請求項5】
前記熱履歴が異なる2種以上のセルロースナノファイバーが、互いに異なる繊維長を有する、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記樹脂成形体の一部を前記補助供給材料として使用する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記主供給材料が、前記(A)熱可塑性樹脂100質量部及び前記(B)セルロースナノファイバー1〜50質量部を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記主供給材料の構成成分が溶融混合系中で互いに及び補助供給材料と混合される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記主供給材料が、前記(A)熱可塑性樹脂100質量部及び前記(B)セルロースナノファイバー1〜50質量部を含む成形体である第1の材料と、前記第1の材料と組成の異なる第2の材料との組合せである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記溶融混合が溶融混練である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記樹脂成形体がペレットである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記溶融混合が溶融混練であり、前記溶融混練と前記成形とを単一の混練機内で行う、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記樹脂成形体の引張強度が90MPa以上である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記樹脂成形体において、MD方向の成形収縮率が0.2%〜0.7%であり、TD方向の成形収縮率が0.5%〜1.0%である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、前記樹脂成形体の一部を前記補助供給材料の少なくとも一部として前記樹脂組成物形成工程に戻すことを更に含むことによって、前記樹脂成形体が、前記主供給材料の溶融処理と2回以上の前記樹脂組成物形成工程とを経ているセルロースナノファイバーを含み、
前記樹脂成形体中のセルロースナノファイバーの総量100質量%に対する、前記主供給材料の溶融処理と2回以上の前記樹脂組成物形成工程とを経ているセルロースナノファイバーの比率が、20質量%以下である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記樹脂成形体の黄色度(YI)値と前記補助供給材料の黄色度(YI)値との差が10以下である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記(A)熱可塑性樹脂がポリアミドである、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記(B)セルロースナノファイバーが変性セルロースナノファイバーである、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記変性セルロースナノファイバーの置換度が0.5〜1.5である、請求項18に記載の方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-03-07 
出願番号 P2019-099379
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C08J)
P 1 651・ 113- YAA (C08J)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 細井 龍史
特許庁審判官 大島 祥吾
奥田 雄介
登録日 2020-08-21 
登録番号 6752935
権利者 旭化成株式会社
発明の名称 樹脂成形体の製造方法  
代理人 三橋 真二  
代理人 青木 篤  
代理人 齋藤 都子  
代理人 三橋 真二  
代理人 齋藤 都子  
代理人 中村 和広  
代理人 青木 篤  
代理人 三間 俊介  
代理人 三間 俊介  
代理人 中村 和広  
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