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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
管理番号 1385184
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-06-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-06-16 
確定日 2022-04-05 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6800314号発明「染毛料組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6800314号の特許請求の範囲及び明細書を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり、訂正後の請求項〔1〜6〕について訂正することを認める。 特許第6800314号の請求項1、3〜6に係る特許を維持する。 特許第6800314号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6800314号(以下「本件特許」という。)に係る出願(特願2019−509235号)は、平成30年3月15日(優先権主張 平成29年3月29日)を国際出願日とするものであって、令和2年11月26日にその特許権の設定の登録(請求項の数:6)がなされ、同年12月16日に特許掲載公報が発行された。

その後、令和3年6月16日に、特許異議申立人 柴田勇一(以下「申立人A」という。)及び特許異議申立人 栗原喜子(以下「申立人B」という。)により、本件特許の請求項1〜6に係る発明の特許に対して、それぞれ特許異議の申立てがされた。

本件特許異議申立事件における手続の経緯は、次のとおりである。

令和3年 6月16日 :特許異議申立書及び甲第1〜6号証の提出
(申立人A)
特許異議申立書及び甲第1〜6号証の提出
(申立人B)
同年 9月27日付け:取消理由通知(特許権者あて)
同年11月26日 :訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年12月 6日付け:訂正請求があった旨の通知(申立人A及び
申立人Bあて)
令和4年 1月12日 :意見書の提出(申立人B)

なお、申立人Aに対しても訂正の請求があった旨を通知したが、申立人Aからは、指定期間内に何ら応答がなかった。

第2 訂正の適否

1 訂正の内容

令和3年11月26日提出の訂正請求書により特許権者が請求している訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲及び明細書を、当該訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり、訂正後の請求項1〜6について訂正することを求めるものであって、その内容は以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1における「成分Dの含有量」について、「0.01〜0.5質量%」とあるのを、「0.01〜0.15質量%」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3〜6も同様に訂正する。)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、「前記成分Aの含有量に対する、前記成分Bの含有量の質量割合[成分B/成分A]が、0.01〜1.0であり、」との構成を加入する訂正をする(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3〜6も同様に訂正する。)。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に、「前記成分Cの含有量に対する、前記成分Dの含有量の質量割合[成分D/成分C]が、0.005〜1.0であり、」との構成を加入する訂正をする(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3〜6も同様に訂正する。)。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1に、「前記成分Aの含有量に対する、前記成分Cの含有量の質量割合[成分C/成分A]が、0.05〜6.0である」との構成を加入する訂正をする(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3〜6も同様に訂正する。)。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項3の引用先を、「請求項1又は2」から「請求項1」に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項4の引用先を、「請求項1〜3のいずれか1項」から「請求項1又は3」に訂正する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項6の引用先を、「請求項1〜5のいずれか1項」から「請求項1、3〜5のいずれか1項」に訂正する。

(9)訂正事項9
願書に添付した明細書の段落【0080】に、
「以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。なお、表に記載の配合量は、各成分の配合量(すなわち、各原料中の有効成分の配合量。所謂純分)であり、特記しない限り「質量%」で表す。なお、実施例1−5及び1−10は参考例として記載するものである。」
とあるのを、
「以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。なお、表に記載の配合量は、各成分の配合量(すなわち、各原料中の有効成分の配合量。所謂純分)であり、特記しない限り「質量%」で表す。なお、実施例1−5、1−10、1−21、1−22、2−2は参考例として記載するものである。」
に訂正する。

(10)一群の請求項について
本件訂正前の請求項1〜6について、請求項1の記載を請求項2〜6がそれぞれ直接的又は間接的に引用しているから、請求項2〜6は、訂正事項1〜9によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である請求項1〜6について請求されたものである。

2 訂正の適否の判断

(1)訂正事項1について

ア 訂正の目的
訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項1及びその記載を引用する請求項3〜6において、「成分Dの含有量」の範囲を「0.01〜0.5質量%」と特定していたところ、当該範囲を「0.01〜0.15質量%」として、その上限をさらに限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

新規事項の追加の有無
本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の【0095】の【表1】に記載の「実施例1−13」では、染毛料組成物において、「成分(D)」に該当する「HC黄2」の含有量が「0.15質量%」とされているから、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アで説示したように、訂正事項1は、請求項1及びその記載を引用する請求項2〜6において、「成分Dの含有量」の範囲を、「0.01〜0.15質量%」に限定するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(2)訂正事項2について

ア 訂正の目的
訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項1及びその記載を引用する請求項3〜6において、特定されていなかった「成分Aの含有量に対する、成分Bの含有量の質量割合[成分B/成分A]」について、「0.01〜1.0である」ことを具体的に特定し、限定を加えるものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

新規事項の追加の有無
本件明細書の【0043】には、「本発明の染毛料組成物中において、成分Aの含有量に対する、成分Bの含有量の質量割合[成分B/成分A]は、特に限定されないが、0.01〜1.0であることが好ましく」との記載があるから、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アで説示したように、訂正事項2は、請求項1及びその記載を引用する請求項3〜6において、「成分Aの含有量に対する、成分Bの含有量の質量割合[成分B/成分A]」について、「0.01〜1.0である」ことを具体的に特定し、限定を加えるものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(3)訂正事項3について

ア 訂正の目的
訂正事項3は、特許請求の範囲の請求項1及びその記載を引用する請求項3〜6において、特定されていなかった「成分Cの含有量に対する、成分Dの含有量の質量割合[成分D/成分C]」について、「0.005〜1.0である」ことを具体的に特定し、限定を加えるものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

新規事項の追加の有無
本件明細書の【0044】には、「本発明の染毛料組成物中において、成分Cの含有量に対する、成分Dの含有量の質量割合[成分D/成分C]は、特に限定されないが、0.005〜1.0であることが好ましく」との記載があるから、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アで説示したように、訂正事項3は、請求項1及びその記載を引用する請求項3〜6において、「成分Cの含有量に対する、成分Dの含有量の質量割合[成分D/成分C]」について、「0.005〜1.0である」ことを具体的に特定し、限定を加えるものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(4)訂正事項4について

ア 訂正の目的
訂正事項4は、特許請求の範囲の請求項1及びその記載を引用する請求項3〜6において、特定されていなかった「成分Aの含有量に対する、成分Cの含有量の質量割合[成分C/成分A]」について、「0.05〜6.0である」ことを具体的に特定し、限定を加えるものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

新規事項の追加の有無
本件明細書の【0045】には、「本発明の染毛料組成物中において、成分Aの含有量に対する、成分Cの含有量の質量割合[成分C/成分A]は、特に限定されないが、0.05〜7.0であることが好ましく、より好ましくは0.1〜6.0である。」との記載があるから、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記アで説示したように、訂正事項4は、請求項1及びその記載を引用する請求項3〜6において、「成分Aの含有量に対する、成分Cの含有量の質量割合[成分C/成分A]」について、「0.05〜6.0である」ことを具体的に特定し、限定を加えるものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(5)訂正事項5について

ア 訂正の目的
訂正事項5は、訂正前の請求項2を削除するものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

新規事項の追加の有無
訂正事項5は、訂正前の請求項2を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項5は、訂正前の請求項2を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(6)訂正事項6について

ア 訂正の目的
訂正事項6は、訂正前の請求項3が請求項1又は2を引用するものであるところ、訂正事項5により削除された請求項2を引用しないものとするものである。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び同第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明、又は、同第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び同第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。

新規事項の追加の有無
訂正事項6は、訂正前の請求項3が請求項1又は2を引用するものであるところ、訂正事項5により削除された請求項2を引用しないものとするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項6は、訂正前の請求項3が請求項1又は2を引用するものであるところ、訂正事項5により削除された請求項2を引用しないものとするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(7)訂正事項7について

ア 訂正の目的
訂正事項7は、訂正前の請求項4が請求項1〜3のいずれか1項を引用するものであるところ、訂正事項5により削除された請求項2を引用しないものとするものである。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び同第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明、又は、同第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び同第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。

新規事項の追加の有無
訂正事項7は、訂正前の請求項4が請求項1〜3のいずれか1項を引用するものであるところ、訂正事項5により削除された請求項2を引用しないものとするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項7は、訂正前の請求項4が請求項1〜3のいずれか1項を引用するものであるところ、訂正事項5により削除された請求項2を引用しないものとするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(8)訂正事項8について

ア 訂正の目的
訂正事項8は、訂正前の請求項6が請求項1〜5のいずれか1項を引用するものであるところ、訂正事項5により削除された請求項2を引用しないものとするものである。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び同第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明、又は、同第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び同第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。

新規事項の追加の有無
訂正事項8は、訂正前の請求項6が請求項1〜5のいずれか1項を引用するものであるところ、訂正事項5により削除された請求項2を引用しないものとするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項8は、訂正前の請求項6が請求項1〜5のいずれか1項を引用するものであるところ、訂正事項5により削除された請求項2を引用しないものとするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(9)訂正事項9について

ア 訂正の目的
訂正事項9は、本件明細書の【0095】【表1】に記載される実施例1−21、1−22、及び、【0097】【表3】に記載される実施例2−2が参考例であることを記載することによって、訂正後の請求項1に係る発明に、実施例1−21、1−22、及び2−2が含まれなくなったことを明確化するものである。
したがって、訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

新規事項の追加の有無
訂正事項9は、実施例1−21、1−22、及び2−2が参考例として記載されることを明確化するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項9は、実施例1−21、1−22、及び2−2が参考例として記載されることを明確化するものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。

(10)独立特許要件について

本件特許異議申立事件においては、訂正前のすべての請求項1〜6に対して特許異議の申立てがされているので、訂正事項1〜8による訂正については、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるが、同法同条第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(いわゆる「独立特許要件」)は課されない。

3 訂正の適否についての小括

以上のとおりであるから、本件特許の特許請求の範囲及び明細書を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり、訂正後の請求項〔1〜6〕について訂正することを認める。

第3 本件訂正後の本件特許に係る発明

上記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正後の本件特許の請求項1〜6(以下、請求項の番号順に「本件請求項1」等という。)の記載は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された次のとおりのものであり、本件請求項1、3〜6に係る発明を、以下、請求項の番号順に「本件発明1」等といい、これらを総称して「本件発明」ということがある。なお、下線は本件訂正による訂正箇所である。

「【請求項1】
下記成分A、下記成分B、下記成分C、及び下記成分Dを含有し、
前記成分Aの含有量が0.5〜3.0質量%であり、
前記成分Bの含有量が0.005〜1.5質量%であり、
前記成分Cの含有量が0.1〜1.5質量%であり、
前記成分Dの含有量が0.01〜0.15質量%であり、
前記成分Aの含有量に対する、前記成分Bの含有量の質量割合[成分B/成分A]が、0.01〜1.0であり、
前記成分Cの含有量に対する、前記成分Dの含有量の質量割合[成分D/成分C]が、0.005〜1.0であり、
前記成分Aの含有量に対する、前記成分Cの含有量の質量割合[成分C/成分A]が、0.05〜6.0である染毛料組成物。
成分A:HC青16
成分B:塩基性橙31、塩基性赤51、塩基性赤76、塩基性黄87、及び塩基性黄57からなる群より選ばれる1以上の染料
成分C:HC青2
成分D:HC黄4及びHC黄2からなる群より選ばれる1以上の染料

【請求項2】(削除)

【請求項3】
前記成分D100質量%中の、前記HC黄2の含有量が50.0質量%以上である請求項1に記載の染毛料組成物。

【請求項4】
カラーリンス又はカラートリートメントである請求項1又は3に記載の染毛料組成物。

【請求項5】
さらに、下記成分Eを含有する請求項4に記載の染毛料組成物。
成分E:カチオン性界面活性剤、カチオン性ポリマー、及びシリコーン油からなる群より選ばれる1以上の成分

【請求項6】
白髪染め用の染毛料組成物である請求項1、3〜5のいずれか1項に記載の染毛料組成物。 」

第4 当審が通知した取消理由の概要

本件訂正前の請求項1〜6に係る発明の特許について、当審が令和3年9月27日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりであり、下記の引用文献1〜2は、いずれも、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能になったものである。

[取消理由1](進歩性欠如)
本件特許の請求項1〜6に係る発明は、下記の引用文献1〜2に記載された発明、及び本件特許出願前の技術常識に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

[取消理由2](サポート要件違反)
本件特許の請求項1〜6に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないから、請求項1〜6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものであり、取り消されるべきものである。

<引用文献一覧>
引用文献1:米国特許出願公開第2014/0298598号明細書(申立人Bが提出した甲第1号証(甲B1))
引用文献2:特表2016−501207号公報(申立人Bが提出した甲第2号証(甲B2))

第5 引用文献の記載事項及び引用発明

以下に、上記第4に示した引用文献1〜2の記載事項について、当審の判断に必要な範囲で摘記し、引用文献1については、記載されていると認められる引用発明を示す。なお、下線は当審による。

1 引用文献1の記載事項及び引用文献1に記載された発明

引用文献1には、以下の事項が記載されている。引用文献1は外国語文献であるため、摘記は合議体による翻訳文で示す。

摘記1(1)
「1.
(a)式(I)で示される少なくとも1種の化合物
(I)

・・・
(b)少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、を含有するケラチン繊維の染色剤。」(請求の範囲)

摘記1(2)
「【0002】本明細書は、一般に、ケラチン繊維を染色し、任意に明るくするための剤に関する。より具体的には、本願は、特定のカチオン性アントラキノン染料および特殊な非イオン性界面活性剤を含む化粧品用剤に関するものである。本明細書はまた、増加した光沢、強烈な色結果、改善された堅牢性、および低減された選択性を有するヘアカラーを製造するためのこれらの薬剤の使用に関するものである。
【0003】一般的に、ケラチン繊維の染色には、直接染料または酸化染料が使用される。酸化染料では、良好な堅牢性を有する強い色が得られるが、色の発色は一般に、例えばH2O2のような酸化剤の影響下で行われ、場合によっては繊維に損傷を与えることがある。さらに、一部の酸化染料前駆体や酸化染料前駆体の特定の混合物は、敏感肌の人に感作作用を及ぼす可能性がある。直接染料は、より穏やかな条件で適用される。しかし、これらの染料の欠点は、特に洗髪や、日光などの外的影響、プールの水などの反応性環境化学物質に対する堅牢性が不十分であることである。また、このような色は、一般的に酸化染料に比べてシャンプーに対する感度が高く、望ましくない色合いの変化や、目に見える「脱色」がより早く発生してしまう。
【0004】例えば、ブリーチされた髪や永久にウェーブされた髪のように、頻繁に処理された髪の均一な染色を達成することは、繊維が様々な長さまたは様々に処理された領域で異なる程度の既存の損傷を呈する場合、直接染料で髪を染色するという点で特に困難である。染色プロセス自体において、染色剤は、既存の損傷の程度が異なる毛髪に対して不均一な染色挙動を示す可能性があり、一方で、繰り返しの洗髪により、毛髪の異なる領域から染料が様々な程度で洗い流される可能性があり、その結果、一貫性のない、したがって望ましくない色の結果が得られることになる。
【0005】直接染料に基づくカラーリング製品の開発においては、選択性を低下させた染料配合物を製造することに依然として特別な焦点が当てられている。これは、様々な程度の既存の損傷を有する毛髪の部分に対して均一な色結果を得ることができることを意味する。特に、この選択性の低下は、染色プロセスの直後だけでなく、繰り返しの洗髪後にも存在するべきである。
【0006】従って、本明細書の目的は、他の肯定的な堅牢性に加えて、特に低い選択性(又は良好な均一化能力)及び良好な洗髪堅牢性を有する、ケラチン繊維、特に人間の毛髪のための染色剤を提供することである。
【0007】本明細書による剤で達成される色は、染色プロセスの直後と繰り返しの洗髪の後の両方で、鮮やかで強烈な色の結果をもたらすべきである。染色剤の適用後、毛髪は、様々な程度の既存の損傷を示す場合であっても、均一に染色されるべきであり、この色結果の均一性は、繰り返しの洗髪の後でも存在するべきである。特に、上述の有利な堅牢性を有する、鮮やかで中性的な青の色合いまたは青の領域の色合いが達成されるべきであり、前記色合いはまた、マットに卓越して適している。剤はさらに、塗布プロセスと染色能力の両方の観点から、最適な粘度を有するべきである。
・・・
【0009】驚くべきことに、直接染料としての特定のカチオン性アントラキノンと特別な非イオン性界面活性剤との組み合わせが、本明細書の目的を卓越した程度で達成する色につながることが判明した。」

摘記1(3)
「【0040】用語「ケラチン繊維の染色」は、本明細書の文脈における繊維の変色の任意の形態を含む。特に、染色、美白、漂白、過酸化、酸化染色、半永久的染色、永久染色及び一時染色、といった用語がカバーする色変化が含まれる。また、例えば、染色と漂白のプロセスの組み合わせなど、元の色に比較して明るい色の結果を提示する本明細書による色の変化を含む。
【0041】本明細書による剤は、化粧品用担体、好ましくは適切な水性、アルコール性または水性−アルコール性担体中における活性剤を含む。染毛の目的では、そのような担体は、例えばクリーム、エマルジョン、ゲル、または界面活性剤を含有する発泡溶液であり、例えばシャンプー、発泡エアゾール、発泡製剤、または毛髪に使用するのに適した他の製剤などである。しかし、本明細書による薬剤が、粉末または錠剤の形態で製剤に組み込まれることも可能である。」

摘記1(4)
「【0057】本明細書に記載の、ケラチン繊維を染色、および場合により同時に明色化する剤は、次から選ばれる一般式(I)の化合物の少なくとも1つを含むことを特徴とする。・・・
【0064】3−{[9、10−ジヒドロ−4−(メチルアミノ)−9、10−ジオキソ−1−アントラセニル]アミノ}−N、N−ジメチル−N−プロピル−1−プロパンアミニウム ブロミド、
・・・
【0068】式(Ia)の化合物は、本明細書に記載された目的を達成するうえで、理想的に適している。

・・・。A−がメト硫酸である式(Ia)の化合物はCationic Blue 347という名前でも知られる。」

摘記1(5)
「【0070】ケラチン繊維を染色し、任意に同時に明色化するための本明細書による薬剤は、式(I)の化合物(複数可)を、それぞれの場合において、薬剤全体に対して、好ましくは0.0001重量%より多く、5重量%より少ない量で含む。
【0071】さらなる好ましい例は、それぞれの場合において、剤の総重量に対して、0.0001〜5重量%、好ましくは0.005〜3.5重量%、特に好ましくは0.01〜2.5重量%、特に好ましくは0.05〜1.5重量%、特に好ましくは0.01〜1.0重量%の量で、式(I)の化合物(複数可)を含む剤である。」

摘記1(6)
「【0100】さらなる好ましい例では、本明細書による薬剤は、式(I)の化合物に加えて、少なくとも1つのさらなる直接染料をさらに含む。直接染料は、アニオン性、カチオン性および非イオン性の直接染料に分けることができる。直接染料は、好ましくは、ニトロフェニレンジアミン、ニトロアミノフェノール、アゾ染料、アントラキノン、トリアリールメタン染料またはインドフェノールおよびそれらの生理学的に許容される塩から選択される。追加の直接染料は、それぞれ好ましくは、塗布剤全体に対して、0.001から2重量%の量で使用される。
・・・
【0102】好ましいカチオン性直接染料は、カチオン性トリフェニルメタン染料、例えば塩基性青7、塩基性青26、塩基性紫2及び塩基性紫14、第4級窒素基で置換された芳香族系、例えば塩基性黄57、塩基性赤76、塩基性青99、塩基性茶16及び塩基性茶17、並びに少なくとも1つの第4級窒素原子を有する複素環化合物を含む直接染料、特に塩基性黄87、塩基性橙31及び塩基性赤51である。ARIANOR(R)の商標で販売されているカチオン性の直接染料も、本明細書によれば同様に好ましいカチオン性の直接染料である。
【0103】非イオン性の直接染料としては、特に非イオン性のニトロ染料、キノン染料および中性アゾ染料が好適である。好ましい非イオン性直接染料は、国際名または商品名HC黄2、HC黄4、HC黄5、HC黄6、HC黄12、HC橙1、分散橙3、HC赤1、HC赤3、HC赤 7、HC赤10、HC赤11、HC赤13、HC赤BNで知られる化合物である。HC青2、HC青11、HC青12、分散青3、HC紫1、分散紫1、分散紫4、分散黒9のほか、1,4−ジアミノ−2−ニトロベンゼン、2−アミノ−4−ニトロフェノール、1,4−ビス−(2−ヒドロキシエチル)アミノ−2−ニトロベンゼン、3−ニトロ−4−(2−ヒドロキシエチル)アミノフェノールなどがある。2−(2−ヒドロキシエチル)アミノ−4,6−ジニトロフェノール、4−[(2−ヒドロキシエチル)アミノ]−3−ニトロ−1−メチルベンゼン、1−アミノ−4−(2−ヒドロキシエチル)アミノ−5−クロロ−2−ニトロベンゼン、4−アミノ−3−ニトロフェノール、1−(2′−ウレイドエチル)アミノ−4−ニトロベンゼン、2−[(4−アミノ−2−ニトロフェニル)アミノ]安息香酸、4−[(3−ヒドロキシプロピル)アミノ]−3−ニトロフェノール、4−ニトロ−o−フェニレンジアミン、6−ニトロ−1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン、2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン、ピクラミン酸およびその塩、2−アミノ−6−クロロ−4−ニトロフェノール、4−エチルアミノ−3−ニトロ安息香酸、2−クロロ−6−エチルアミノ−4−ニトロフェノールなどが挙げられる。
【0104】特に、本明細書による薬剤が、さらなる直接染料として、D&C赤No. 33(アシッドレッド 33)、アシッドブラックNo.1、D&C橙No.4(アシッドオレンジNo.4)、アシッドレッド18、塩基性赤 76、アシッドバイオレット43、HC青12、N−(2−ヒドロキシエチル)−4−メチル−2−ニトロアニリン(メチルイエロー)、HC黄 No.2、レッドB 54および2−アミノ−6−クロロ−4−フェノールから選択される少なくとも1つの染料を、さらなる直接染料として含む場合、特に優れた色強度、輝き、および良好な洗髪堅牢性を有する染色結果が得られる。」

摘記1(7)
「【0108】直接染料、発色剤成分およびカプラー成分は、すぐに使える(ready−to−use)薬剤に対して、それぞれ、0.0001〜5.0重量%、好ましくは0.001〜2.5重量%の量で使用されるのが好ましい。・・・」

摘記1(8)
「【0119】すぐに使用できる(ready−to−use)染色剤は、好ましくは液体製剤として提供され、したがって、さらなる表面活性物質が追加的に添加され、そのような表面活性物質は、適用分野に応じて、界面活性剤または乳化剤と呼ばれる。これらは好ましくは、アニオン性、カチオン性、双性イオン性および両性の界面活性剤および乳化剤から選択される。」

摘記1(9)
「【0124】本明細書による好適な薬剤には、第四級アンモニウム、エステルクワットおよびアミドアミンタイプのカチオン性界面活性剤も含まれる。好ましい第4級アンモニウム化合物は、ハロゲン化アンモニウムと、INCI名クオタニウム−27およびクオタニウム−83で知られるイミダゾリウム化合物である。本明細書により使用することができる更なるカチオン性界面活性剤は、第四級化されたタンパク質加水分解物である。本明細書で特に適しているアミドアミンの化合物は、Tegoamid(R) S 18の名称で市販されているステアラミドプロピルジメチルアミンである。好ましい4級エステルは、トリエタノールアミンによる脂肪酸の4級化エステル塩、ジエタノールアルキルアミンによる脂肪酸の4級化エステル塩、1,2−ジヒドロキシプロピルジアルキルアミンによる脂肪酸の4級化エステル塩である。カチオン性界面活性剤は、本明細書により使用される薬剤に、薬剤全体に対して0.05から10重量%の量で含まれることが好ましい。
【0125】すぐに使用できる剤は、助剤物質および添加剤を含んでもよい。したがって薬剤は、少なくとも一つの増粘剤を含む場合に好適であることが明らかになっている。これらの増粘剤に関する原理に限定されるものではない。有機相と、純粋に無機増粘剤を使用することができる。
【0126】好適な増粘剤は以下のものである。
【0127】カチオン性合成ポリマー;
・・・
【0135】本明細書における剤はまた、更なる活性剤、補助物質および添加剤、例えば非イオン性ポリマーを含んでもよい、例えば・・・;有機官能基を有する特定のポリシロキサン、置換もしくは非置換アミン(アモジメチコン)基、カルボキシル基、アルコキシ基および/またはヒドロキシル基(ジメチコンコポリオール)、線状ポリシロキサン(A)−ポリオキシアルキレン(B)ブロックコポリマー、グラフト化シリコーンポリマーなどの追加のシリコーン、揮発性又は不揮発性の、直鎖、分枝または環式、架橋または非架橋のポリアルキルシロキサン(ジメチコンやシクロメチコンなど)、ポリアリールシロキサン及び/又はポリアルキルアリールシロキサンなどである;四級化セルロースエーテルなどのカチオン性ポリマーは、第四級基を有するポリシロキサン、ジメチルジアリルアンモニウムクロリドポリマー、アクリルアミド−ジメチルジアリルアンモニウムクロリドコポリマー、ジエチル硫酸で四級化されたジメチルアミノエチルメタクリレート−ビニルピロリドンコポリマー、ビニルピロリドンイミダゾリニウムメトクロリド共重合体および四級化ポリビニルアルコール、特にポリクオタニウム−2、ポリクオタニウム−4、ポリクオタニウム−6、ポリクオタニウム−7、ポリクオタニウム−10、ポリクオタニウム−11、ポリクオタニウム−16、ポリクオタニウム−24、ポリクオタニウム−28、ポリクオタニウム−37、ポリクオタニウム−44、ポリクオタニウム−46、ポリクオタニウム−55、ポリクオタニウム−67、ポリクオタニウム−68、ポリクオタニウム−67、及びポリクオタニウム−87;双性イオン性および両性ポリマー、特にポリクオタニウム−22、ポリクオタニウム−39など;グルコース、マレイン酸、乳酸などの構造化剤、リン脂質、例えばレシチン、セファリン等のヘアコンディショニング化合物;香油、ジメチルイソソルビドおよびシクロデキストリンである;活性剤は、繊維構造を向上させ、特にモノ−、ジ−およびオリゴ糖、例えばグルコース、ガラクトース、フルクトース、果糖、乳糖などである;薬剤を着色する染料;ピロクトンオラミン、ジンクピリチオンおよびクリンバゾール(climbazole)などの抗フケ活性剤;アミノ酸およびオリゴペプチド;動物及び/又は植物起源のタンパク質加水分解物ならびにそれらの脂肪酸縮合生成物の形態又は任意選択的にアニオン的又はカチオン的に修飾された誘導体である;植物油;光安定剤及びUV遮断剤;パンテノール、パントテン酸、パントラクトン、アラントイン、ピロリドンカルボン酸及びその塩、並びにビサボロールなどの活性剤・・・」

摘記1(10)
「【0137】本明細書の第1主題の薬剤をケラチン含有繊維に塗布し、5?60分間繊維上に放置した後、再び水で洗い流すか、またはシャンプーで洗い流すことを特徴とする、ケラチン含有繊維、特にヒトの毛髪を染色し、任意に明るくするための方法は、特に本明細書による薬剤の塗布に適している。すぐに使用できる染色剤の接触時間は、好ましくは5〜45分、特に10〜40分、特に好ましくは15〜35分である。繊維上の薬剤の接触時間の間、熱を供給することによって明色化プロセスを支援することが有利である。熱は、例えば熱風機からの熱風のような外部の熱源から供給されてもよく、また、特に髪の毛を明るくするプロセスが生きている被検者に対して行われる場合には、被検者の体温から供給されてもよい。後者の場合、明るくしたい部分を従来はフードで覆っていた。室温での接触相も同様に本明細書に従ったものである。特に、接触時間中の温度は、20℃から40℃の間、特に25℃から38℃の間である。接触時間の終了後、残った染色剤は、水または洗浄剤で毛髪から洗い流される。特に洗浄剤として市販のシャンプーを使用してもよく、特に染色剤が高い界面活性剤含有量を有する担体を有する場合には、洗浄剤を分配して、水ですすぎ工程を行ってもよい。」

摘記1(11)
「【0145】以下の例は、ケラチン繊維処理のために本明細書により製造される剤を示す。特に明示されていなければ、記載される量は重量%を意味する。
・・・



上記摘記事項、特に摘記1(1)、摘記1(11)の記載からみて、引用文献1には、製剤例4bとして、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

≪引用発明≫
「ケラチン繊維の染色剤であって、
染料として
Bluequat bromide 0.21重量%
塩基性赤76 0.075 重量%
塩基性黄57 0.075 重量%
HC青12 1.20 重量%
HC黄2 0.20 重量%
Cationic blue 347 0.50 重量%
塩基性茶17 0.075 重量%
Ext. D&C 紫2 0.075 重量%
N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−ニトロ−p−フェニレンジアミン
0.10 重量%
を含み、さらに
セテアリルアルコール 6.00 重量%
ココナッツアルコール 6.00 重量%
セテアレス−12 2.00 重量%
セテアレス−20 3.00 重量%
PEG−40水素添加ひまし油 2.00 重量%
マカデミアナッツ油 1.00 重量%
メチルパラベン 0.15 重量%
プロピルパラベン 0.15 重量%
トコフェロール 0.20 重量%
フェノキシエタノール 1.00 重量%
ヒドロキシエチルセルロース 1.00 重量%
NaOH、50% 0.10 重量%
ポリエチレングリコール MG400 5.00 重量%
D−パンテノール、75% 0.30 重量%
クエン酸 一水和物 0.10 重量%
香料 適量
水 残部
を含む染色剤。」

2 引用文献2の記載事項

引用文献2には、以下の事項が記載されている。

摘記2(1)
「【0023】
特に強くて光沢のある着色は、本発明の剤において、式(I)で示されるカチオン性アントラキノン誘導体として化合物(Ia):
【化3】

[式中、A−は、生理学的に許容可能なアニオン、好ましくは硫酸メチルイオン(H3COSO3−)または臭化物イオン、特に好ましくは臭化物イオンを意味する]
が使用される場合にもたらされ得る。
【0024】
A−が臭化物イオンを意味する化合物(Ia)は、HC Blue 16、Bluequat BまたはBluequat bromideの名称でも知られており、3−{[9、10−ジヒドロ−4−(メチルアミノ)−9、10−ジオキソ−1−アントラセニル]アミノ}−N、N−ジメチル−N−プロピル−1−プロパンアミニウムブロミドの化学名でも知られている。」

摘記2(2)
「【0044】
式(I)で示される化合物とは異なるカチオン性直接染料(b)の先に記載した群のうち、特定の染料は、他の重要な成分(a)、(c)および(d)と組み合わせてケラチン繊維の着色に使用される場合に、非常に優れた光沢を有する着色をもたらすために使用され得ることを特徴とする。
・・・・
【0047】
特に好ましいカチオン性直接染料(b)は下記化合物である。

【0048】
式(I)で示される化合物とは異なるカチオン性直接染料は、本発明の剤に好ましい量的範囲で含まれる。この量は、高光沢を達成するのに十分多く、しかしながら、染料の過剰な使用濃度に関する欠点(例えば、皮膚の増大した変色、または起こり得る皮膚炎)を回避するのに十分少なく選択しなければならない。
【0049】
これらの必要条件は、本発明の剤が、式(I)で示される化合物とは異なる1つ以上のカチオン性直接染料(b)を、剤の総重量に基づいてそれぞれの場合に0.0005重量%以上0.55重量%以下の総量で含有する場合に満たされる。
【0050】
別の特に好ましい態様では、本発明の剤は、式(I)で示される化合物とは異なる1つ以上のカチオン性直接染料(b)を、剤の総重量に基づいてそれぞれの場合に0.0005〜0.55重量%、好ましくは0.005〜0.40重量%、より好ましくは0.025〜0.30重量%、特に好ましくは0.05〜0.20重量%の総量で含有することを特徴とする。」

第6 取消理由についての当審の判断

1 取消理由1(引用文献1を主引例とした進歩性の欠如)について

当審は、本件発明1、3〜6は、引用文献1に記載された発明、及び、引用文献2に記載された事項並びに本件特許出願前の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないと判断する。その理由は、以下のとおりである。

(1)本件発明1について

ア 引用発明との対比

本件発明1と引用発明を対比する。

引用発明における「Bluequat bromide」は、引用文献2の記載事項(摘記2(1))によれば、「HC Blue 16」、すなわち本件発明1における「HC青16」に相当し、したがって、本件発明1における「成分A」に相当する。
引用発明における「1重量%」は、「1質量%」に換算できることは明らかである。
引用発明における「塩基性赤76」及び「塩基性黄57」は、本件発明1における「成分B」の染料の選択肢に含まれる「塩基性赤76」及び「塩基性黄57」に相当するところ、引用発明における「塩基性赤76」及び「塩基性黄57」の合計量は0.150質量%であることから、「成分Bの含有量が0.005〜1.5質量%」である点においても、本件発明1と一致する。
引用発明における「HC黄2」は、本件発明1における「成分D」の染料の選択肢の1つである「HC黄2」に相当する。
引用発明における「ケラチン繊維の染色剤」は、本件発明1における「染毛料組成物」に相当する。
引用発明における、成分Aに相当する「HC青16」の含有量に対する、成分Bに相当する「塩基性赤76」及び「塩基性黄57」の含有量の質量割合〔成分B/成分A〕は、0.71(=0.150/0.21)であり、本件発明1における「0.01〜1.0」の範囲内である。
そうすると、本件発明1と引用発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

<一致点>
「下記成分A、下記成分B、及び下記成分Dを含有し、
前記成分Bの含有量が0.005〜1.5質量%であり、
前記成分Aの含有量に対する、前記成分Bの含有量の質量割合[成分B/成分A]が、0.01〜1.0である染毛料組成物。
成分A:HC青16
成分B:塩基性橙31、塩基性赤51、塩基性赤76、塩基性黄87、及び塩基性黄57からなる群より選ばれる1以上の染料
成分D:HC黄4及びHC黄2からなる群より選ばれる1以上の染料 」

<相違点>
本件発明1では、
成分Aの含有量は0.5〜3.0質量%と特定され、
成分Dの含有量は0.01〜0.15質量%と特定され、
成分CとしてHC青2を含み、その含有量は0.1〜1.5質量%と特定され、
前記成分Cの含有量に対する、前記成分Dの含有量の質量割合[成分D/成分C]が、0.005〜1.0であり、
前記成分Aの含有量に対する、前記成分Cの含有量の質量割合[成分C/成分A]が、0.05〜6.0
と特定されているのに対し、
引用発明においては、
成分Aの含有量は0.21質量%であり、
成分Dの含有量は0.20質量%であり、
成分CとしてHC青2を含まず、
前記成分Cの含有量に対する、前記成分Dの含有量の質量割合、及び
前記成分Aの含有量に対する、前記成分Cの含有量の質量割合、
について、何も特定がされていない点。

進歩性の判断

上記アの相違点について、検討する。

(ア)
引用発明は、青色のHC染料としてHC青12を含有するものである。そして、引用文献1には、非イオン性直接染料として、HC青12の他にHC青2を使用できることが記載されており(摘記1(6)【0103】)、引用発明である製造例4bと並んで記載される製造例4aの染料組成物は、1.50重量%のHC青2を含有している(摘記1(11))。

(イ)
しかしながら、引用文献1には、青色のHC染料の種類に着目し、HC青2を選択したうえで、HC青16とHC青2の配合割合、HC黄2とHC青2の配合割合を所定の範囲となるよう調整すること、さらにHC青16の含有量を0.5〜3.0質量%、HC黄2の含有量を0.01〜0.15質量%、HC青2の含有量を0.1〜1.5質量%の範囲とすることについては、記載も示唆もない。

(ウ)
引用文献2にも、青色のHC染料の種類に着目し、HC青2を選択したうえで、HC青16とHC青2の配合割合、HC黄2とHC青2の配合割合を所定の範囲となるよう調整したうえで、さらにHC青16の含有量を0.5〜3.0質量%、HC黄2の含有量を0.01〜0.15質量%、HC青2の含有量を0.1〜1.5質量%の範囲とすることは、記載も示唆もされていないし、そのような各染料の組み合わせや配合量及び配合割合が、本件特許出願前の技術常識であったとも認められない。

(エ)
そうすると、引用発明のケラチン繊維の染色剤を、本件発明1の発明特定事項である各染料の組み合わせ、配合量及び配合割合を全て兼ね備えた染毛料組成物とすることに、当業者が動機付けられたとはいえない。

(オ)
さらに、本件明細書の実施例の記載によれば、本件発明1は、優れた染色性と皮膚汚れ抑制を両立させ、しかも、堅牢性及び変色抑制能にも優れる又は良好である効果を奏することが認められ、これは予測し得ない格別顕著な効果といえる。

(カ)
したがって、本件発明1は、引用文献1に記載された発明、及び引用文献2に記載された事項、並びに本件特許出願前の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)本件発明3〜6について

本件発明3〜6は、本件発明1を直接的に又は間接的に引用する本件発明1の従属発明であり、本件発明1の発明特定事項を全て備え、更に技術的に限定してなる発明である。
そして、上記(1)で説示したとおり、本件発明1が、引用文献1に記載された発明、及び引用文献2に記載された事項、並びに本件特許出願前の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件発明1を更に技術的に限定してなる、本件発明3〜6も、引用文献1に記載された発明、及び引用文献2に記載された事項、並びに本件特許出願前の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)申立人の主張について

申立人Bは、意見書において、本件発明と引用発明の、染料の種類の相違や、含有量の相違について、それぞれ個別に検討し、各相違点をそれぞれ埋めることは、想到容易である旨を主張している。
しかしながら、本件発明は、染毛料組成物に係る発明であって、染毛料組成物の「染色性」は、組成物に含有される単一の染料のみの染色性により決まるものではなく、個々の染料の彩度や染色速度の違いによっても影響されるという事情があるところ、組成物の要素がそれぞれ想到容易であるからといって、優れた染色性と皮膚汚れ抑制を両立させ、しかも、堅牢性及び変色抑制能にも優れる又は良好な染毛料組成物として、本件発明の特定事項である各染料の組み合わせ、配合量及び配合割合を全て兼ね備えた染毛料組成物を想到することが容易とはいえないことは、上記(1)イで説示したとおりである。
したがって、申立人の主張は採用できない。

(4)取消理由1についての小括

以上のとおり、本件発明1、3〜6は、引用文献1に記載された発明、及び引用文献2に記載された事項、並びに本件特許出願前の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、本件請求項1、3〜6に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえず、同法第113条第2号に該当しないから、取消理由1によって取り消すことはできない。

2 取消理由2(サポート要件違反)について

(1)取消理由2の内容

当審が取消理由として通知した取消理由2の要点は、概ね以下のとおりである。

ア 本件発明の解決しようとする課題は、本件明細書【0006】の記載からみて、「毛髪に対する十分な染色性を有するにもかかわらず、皮膚への染着性は抑えられた染毛料組成物を提供すること」と認められる。
イ そして、カチオン性染料等の染料の過剰な使用濃度によって皮膚の増大した変色といった欠点が生じることは技術常識であるから、皮膚への着色を防ぐためには、染毛料組成物全体に含まれる染料の種類や総量も制御する必要があることが理解される。
ウ しかしながら、本件発明は、成分A〜D以外の塩基性染料、HC染料は制限なく含みうると解されるものであり、しかも、製品形態を何も特定していないことに鑑みれば、酸化染料といった、塩基性染料やHC染料以上に皮膚への着色性が高い染料も含みうるものであるところ、このような他の染料を多量に含む染毛料組成物とした場合、本件発明の課題が解決できないことは明らかである。
エ そうしてみると、本件発明1〜6は、成分A〜Dを構成する染料の種類と含有量しか特定していない点において、その課題を解決できることを当業者が認識できる範囲を超えたものであるから、本件発明1〜6は、発明の詳細な説明に記載したものではない。

(2)サポート要件の判断

ア 本件明細書の発明の詳細な説明には、成分A〜Dそれぞれの役割や好ましい含有量及びその理由について、具体的な説明が記載されている(成分Aについては【0020】、【0023】、成分Bについては【0024】、【0025】、【0032】〜【0034】、成分Cについては【0035】、【0037】、成分Dについては【0038】、【0040】、【0041】)。
イ そして、質量割合〔成分B/成分A〕及び〔成分D/成分C〕を所定の範囲にする理由については、色調を、特に白髪染めにおいてより自然にするためであることが記載され(【0043】、【0044】)、質量割合〔成分C/成分A〕を所定の範囲にする理由についても、ダメージ毛に対する色ムラが生じにくく、染色性と色持ちに優れることが記載されている(【0045】。)
ウ さらに、発明の詳細な説明には、成分A〜Dを本件発明1で特定される種類、配合量、配合比とすれば、前記課題を解決できることが実施例として具体的に確認されている。
エ すなわち、発明の詳細な説明の【0095】【表1】に記載された「実施例1−1」〜「実施例1−4」、「実施例1−6」〜「実施例1−9」、「実施例1−11」〜「実施例1−20」のカラーリンス(カラートリートメント)は、成分Aを0.50〜2.00質量%、成分Bを0.02〜0.40質量%、成分Cを0.10〜0.50質量%、成分Dを0.01〜0.15質量%で含有しており、成分間の含有量割合は、成分B/成分Aが0.04〜0.64、成分D/成分Cが0.02〜0.3、成分C/成分Aが0.17〜3.0であるところ、いずれも本件発明1で特定される各成分の含有量及び成分間の含有量割合の範囲の条件を全て満たしており、染色性と皮膚汚れの抑制を両立することが確認されている。同様に、【0097】【表3】に記載された「実施例2−1」及び「実施例2−3」のカラーシャンプーも、本件発明1で特定される条件を全て満たしており、染色性と皮膚汚れの抑制を両立することが確認されている。
オ また、「実施例1−12」〜「実施例1−20」の組成物と、成分DのHC黄2の配合量が0.2重量%であり本件発明の範囲外の参考例とされる「実施例1−21」及び「実施例1−22」の組成物とを比較すると、前者の組成物では、後者の組成物と比べて、染料の総含有量が少ないにも関わらず、染色性が同等であって、皮膚汚れの抑制においてより優れたものになることも示されている。
カ そうすると、発明の詳細な説明の記載内容に基づけば、成分A〜Dを、本件発明1で特定される配合量、配合比とすることで、高い蓋然性をもって本件発明の課題を解決できると当業者は認識できるといえる。
キ さらに、成分A〜D以外の任意成分については、本件発明の課題の解決を明らかに妨げるような組成、例えば比較例1−9のように、塩基性青75を0.05質量%配合する態様の組成物は、本件発明には該当しないものと解するのが自然である。
ク また、当業者ならば、発明の詳細な説明において実際に本件発明の課題の解決の当否を認識できるように記載されている実施例及び比較例を参照することによって、当該課題を解決し得る種々の態様の本件発明の組成物を採用できることを理解し得るといえる。
ケ 以上のとおり、取消理由2で指摘した点はいずれも理由がなく、本件発明1、3〜6は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載により、その課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものであるから、本件請求項1、3〜6の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。

(3)申立人の主張について

ア 申立人Bは、意見書において、上記(2)クで検討した点に関し、本件発明の課題を解決できるかどうかによって、本件発明に該当するか否かが判断されるとすると、本件明細書の実施例に記載されている評価基準が、例えば、染色性については「◎(優れる):非常に濃く染色されている。」、「○(良好):十分に染色されている。」、「×(不良):染色が薄い」と、抽象的な表現であり明確に評価できないから、どのような場合に、本件発明の課題を解決できるかが明りょうでなく、本件特許発明の範囲が明確でない旨を主張している。
イ しかし、本件出願時の染毛料分野の技術常識に照らして、本件明細書の実施例に記載されている評価基準が、課題の解決の可否が判断できないほど不明瞭であるとは認められない。そして、発明の詳細な説明の記載から、本件発明の染毛料組成物が、発明の課題を解決できることを当業者が認識できることは、上記(2)で説示したとおりである。
ウ なお、毛髪に対する十分な染色性を有するにもかかわらず、皮膚への染着性は抑えられた染毛料組成物であることが、本件発明の特定事項として請求項に記載されているのではないから、発明の詳細な説明に記載された染色性や皮膚への染着性に関する評価基準が抽象的な表現を含んでいても、本件発明の明確性に影響を与えるものではない。
エ したがって、申立人Bの主張は採用できない。

(4)取消理由2についての小括

以上のとおり、本件請求項1、3〜6に係る発明の特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえず、同法第113条第4号に該当するものではないから、取消理由2によって取り消すことはできない。

第7 特許異議の申立ての理由について

申立人A及び申立人Bのそれぞれの特許異議申立書(以下「申立書A」及び「申立書B」という。)の記載全体からみて、申立人A及び申立人Bは、本件訂正前の請求項1〜6に係る特許を取り消すべき理由として、下記1及び4に概要を示す申立理由A1〜A3及び申立理由Bを申し立てたものと認められる。
また、申立人Aは、証拠方法として、下記2に示す甲第1〜6号証(以下、各甲号証を「甲A1」等と略記することがある。)を提出しており、申立人Bは、証拠方法として、下記5に示す甲第1〜6号証(以下、各甲号証を「甲B1」等と略記することがある。)を提出している。

1 申立人Aによる申立理由の概要

申立人Aが申し立てた申立理由A1〜A3の概要は、申立書Aの記載全体からみて、次のとおりのものと認められる。

[申立理由A1](甲A1を主引例とする進歩性欠如)
本件特許の請求項1〜6に係る発明は、甲A1に記載された発明、甲A3〜甲A5に記載された事項、及び、周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

[申立理由A2](甲A2を主引例とする進歩性欠如)
本件特許の請求項1〜6に係る発明は、甲A2に記載された発明、甲A3〜甲A5に記載された事項、及び、周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

[申立理由A3](サポート要件違反)
本件特許の請求項1〜6に係る発明は、成分A〜D以外の染料を含有する場合においても、皮膚への染着性が抑えられた染毛料組成物を得られないから、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないから、請求項1〜6に係る特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

2 申立人Aが提出した証拠(証拠方法)

申立人Aが申立書Aに添付して提出した甲第1〜6号証(以下、各甲号証を「甲A1」等と略して示す。)は、次のとおりである。

甲第1号証:特開2017−031085号公報(甲A1)
甲第2号証:特開2015−140326号公報(甲A2)
甲第3号証:特表2016−527282号公報(甲A3)
甲第4号証:特表2014−532737号公報(甲A4)
甲第5号証:特表2013−505208号公報(甲A5)
甲第6号証:特開2014−101292号公報(甲A6)

3 申立人Aによる申立理由に対する当審の判断

(1)申立理由A1について

ア 甲A1の記載事項及び甲A1に記載された発明

甲A1には、以下の事項が記載されている。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪明度向上剤及び該毛髪明度向上剤を使用する毛髪色彩調整剤・・・に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪の染色には、染毛効果が優れるという理由から、酸化染毛剤が広く利用されている。一般に、酸化染毛剤は、酸化染料及びアルカリ剤を含む第1剤と、過酸化水素を含む第2剤からなり、第1剤と第2剤を混合して使用される。第1剤中のアルカリ剤は、第2剤中の過酸化水素を分解して酸素を発生させる。発生した酸素により、毛髪中のメラニン色素が分解されて毛髪が脱色されると共に、第1剤中の酸化染料が毛髪内部で酸化重合されて毛髪が染色される。また、アルカリ剤は、毛髪表面のキューティクルを開いて毛髪を膨潤させる効果を有するため、酸化染料が毛髪内部に浸透しやすくなって、染毛効果が向上する。しかしながら、アルカリ剤は毛髪の主成分であるケラチン蛋白を分解する作用も有しており、染毛時における毛髪損傷の一因となっている。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、毛髪の脱色時や染色時における毛髪へのダメージ軽減を目的とした染毛剤が検討されているものの、未だその効果は十分とはいえず、更なる改良が求められている。
【0006】
そこで、本発明は、脱色時に毛髪に与える損傷を軽減することができる毛髪明度向上剤を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、アルカノールアミン及び/又は低級アルコール、高級アルコール、並びにアミノ酸及び/又はアミノ酸塩を含有する毛髪処理用組成物と、酸化剤を含有する酸化剤組成物と、を混合して使用される毛髪明度向上剤を提供する。また、本発明は、上記毛髪明度向上剤と、HC染料、塩基性染料、並びにアミノ酸及び/又はアミノ酸塩を含有する第1染着用組成物と、を混合して使用される毛髪色彩調整剤を提供する。
・・・
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、脱色時に毛髪に与える損傷を軽減することができる。
・・・
【発明を実施するための形態】
・・・
【0011】
<毛髪明度向上剤>
本発明の一実施形態に係る毛髪明度向上剤は、アルカノールアミン及び/又は低級アルコール、高級アルコール、並びにアミノ酸及び/又はアミノ酸塩を含有する毛髪処理用組成物と、酸化剤を含有する酸化剤組成物と、を混合して使用される。本実施形態に係る毛髪明度向上剤は、毛髪の明度を向上させる作用、即ち、毛髪の色の明るさの度合いを高める作用を有するものである。
【0012】
(毛髪処理用組成物)
毛髪処理用組成物は、アルカノールアミン及び低級アルコールのうち少なくとも一方と、高級アルコールと、アミノ酸及びアミノ酸塩の少なくとも一方と、を含有する。
・・・
【0027】
(酸化剤組成物)
本実施形態に係る毛髪明度向上剤のために使用される酸化剤組成物は、酸化剤を含有する。酸化剤は、特に限定されないが、例えば、過酸化水素、過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム、臭素酸ナトリウム等が挙げられる。・・・。これらの酸化剤の中でも、メラニン色素を分解する効果が優れていることから、過酸化水素が好ましい。
・・・
【0032】
<毛髪色彩調整剤>
本発明の一実施形態に係る毛髪色彩調整剤は、毛髪明度向上剤として用いられる毛髪処理用組成物及び酸化剤組成物と、HC染料、塩基性染料、並びにアミノ酸及び/又はアミノ酸塩を含有する第1染着用組成物と、を混合して使用される。当該毛髪明度向上剤は、上記にて詳説した毛髪明度向上剤と同一である。本実施形態に係る毛髪色彩調整剤のために使用される第1染着用組成物は毛髪に色彩を付与する作用を有する。毛髪処理用組成物と酸化剤組成物と第1染着用組成物とを組み合わせて使用することで、毛髪を明るくかつ色彩豊かに染毛することが可能である。
【0033】
(第1染着用組成物)
第1染着用組成物に含有されるHC染料は、特に限定されず、公知のHC染料を1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。HC染料としては、例えば、HC青2、HC青8、HC赤1、HC赤3、HC赤7、HC赤11、HC赤13、HC黄2、HC黄4、HC黄5、HC黄9、HC黄11、HC黄13、HC橙1、HC橙2、HC紫1、HC紫2等が挙げられる。
【0034】
第1染着用組成物に含有される塩基性染料は、特に限定されず、公知の塩基性染料を1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。塩基性染料としては、例えば、塩基性青7、塩基性青9、塩基性青26、塩基性青75、塩基性青99、塩基性赤2、塩基性赤22、塩基性赤51、塩基性赤76、塩基性黄57、塩基性黄87、塩基性橙31、塩基性茶16、塩基性茶17、塩基性紫3、塩基性紫4、塩基性紫14等が挙げられる。
・・・
【0036】
従前より、HC染料及び塩基性染料は、カラートリートメントの染毛成分として使用されている。・・・。
・・・
【0042】
本実施形態に係る毛髪色彩調整剤は、毛髪処理用組成物と第1染着用組成物とを混合して得た混合物に、酸化剤組成物を混合することにより得られる。・・・。
・・・
【実施例】
【0068】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。・・・。また、配合量の単位は、特記しない限り質量%である。
【0069】
<試験例1>
以下に示す各成分を常法により混合して、毛髪処理用組成物A−1を調整
した。(当審注:「調整」は「調製」の明らかな誤記と認める。)
[毛髪処理用組成物A−1]
モノエタノールアミン 8.0
セチルアルコール 9.0
ステアリルアルコール 2.0
プロピレングリコール 5.0
ミリスチン酸イソプロピル 2.0
10%アンモニア水 3.0
ステアリン酸 1.0
ラウリン酸ポリグリセリル−10 1.0
ステアリン酸グリセリル 1.0
アルギニン 0.1
水酸化ナトリウム 0.2
EDTA−2Na 0.1
香料 0.6
精製水 残量
【0070】
上記毛髪処理用組成物A−1と、6%過酸化水素水(・・・)とを、1:
1の質量比で混合し、実施例1の毛髪明度向上剤を調製した。
・・・
【0073】
<試験例2>
以下に示す各成分を常法により混合して、第1染着用組成物B−1(茶色
)を調整した。(当審注:「調整」は「調製」の明らかな誤記と認める。)
[第1染着用組成物B−1(茶色)]
エタノール 0.5
セチルアルコール 5.0
ステアリルアルコール 1.0
ベヘニルアルコール 0.5
ジプロピレングリコール 3.0
ベンジルアルコール 2.0
ミネラルオイル 3.0
ステアルトリモニウムクロリド 1.0
ベヘントリモニウムクロリド 0.5
ラノリン 0.5
ヒドロキシエチルセルロース 0.3
トリエタノールアミン 0.2
エチドロン酸 0.1
HC青2 0.11
HC黄2 0.041
HC赤3 0.053
塩基性茶17 0.277
塩基性茶16,塩基性青99,塩基性青76,塩基性赤76,塩基性黄57,紫401
各0.143
アルギニン 0.1
L−システイン塩酸塩 0.1
リシン 0.05
ヒスチジン 0.05
メチルパラベン 0.15
プロピルパラベン 0.05
香料 0.6
精製水 残量
【0074】
また、上記第1染着用組成物B−1(茶色)の成分のうち、色素(HC染料、塩基性染料、紫401)の種類を変更して、常法によりこれらを混合し、第1染着用組成物B−2(青色)と、第1染着用組成物B−3(赤色)を調整した。(当審注:「調整」は「調製」の明らかな誤記と認める。)
【0075】
上記毛髪処理用組成物A−1と上記第1染着用組成物B−1(茶色)とを、1:1の質量比で混合し、混合物を得た。得られた混合物と上記6%過酸化水素水とを、1:1の質量比で混合し、実施例2の毛髪色彩調整剤(茶色)を調製した。同様に、第1染着用組成物B−2(青色)、第1染着用組成物B−3(赤色)のそれぞれについても、毛髪処理用組成物A−1と混合した後上記6%過酸化水素水を混合した。これにより、実施例3の毛髪色彩調整剤(青色)及び実施例4の毛髪色彩調整剤(赤色)を調製した。・・・【0077】実施例2〜4の毛髪色彩調整剤と比較例2〜4の染料をそれぞれ黒色の人毛毛束に均一に塗布し、30分間放置した後、シャンプー処理した。その後、ドライヤーで毛束を乾燥した。・・・。【0078】・・・、実施例2〜4は、比較例2〜4と比較して毛髪の乾燥が抑制されており、損傷が少なく、また、発色がより鮮やかであった。試験例2の結果から、本発明に係る毛髪色彩調整剤は、毛髪の損傷を軽減しつつ色鮮やかに染毛することが可能であることが確認された。」

甲A1に記載された実施例2の毛髪色彩調整剤(茶色)」には、その調製工程からみて、[第1染着用組成物B−1(茶色)]の各成分が、それぞれの含有量の4分の1の量で含まれていると認められる。
そうすると、甲A1には、上記実施例2の「毛髪色彩調整剤(茶色)」について、染料成分に着目すると、次の発明(以下「甲A1発明」という。)が記載されているものと認められる。

≪甲A1発明≫
「塩基性赤76を0.03575質量%、
塩基性黄57を0.03575質量%、
HC青2を0.0275質量%、
HC黄2を0.01025質量%、
塩基性青99を0.03575質量%、
塩基性青76を0.03575質量%、
塩基性茶17を0.06925質量%、
塩基性茶16を0.03575質量%、
HC赤3を0.01325質量%、
紫401を0.03575質量%、
含有する、毛髪色彩調整剤(茶色)。」

イ 本件発明1と甲A1発明の対比

本件発明1と甲A1発明を対比する。

甲A1発明における「塩基性赤76」及び「塩基性黄57」は、本件発明1における「成分B」の染料の選択肢に含まれる「塩基性赤76」及び「塩基性黄57」に相当するところ、甲A1発明における「塩基性赤76」及び「塩基性黄57」の合計量は0.0715質量%であることから、「成分Bの含有量が0.005〜1.5質量%」である点においても、本件発明1と一致する。
甲A1発明における「HC青2」は、本件発明1における「成分C」の染料の「HC青2」に相当する
甲A1発明における「HC黄2」は、本件発明1における「成分D」の染料の選択肢の1つである「HC黄2」に相当するところ、「HC黄2」の含有量は0.01025質量%であることから、「成分Dの含有量が0.01〜0.15質量%」である点においても、本件発明1と一致する。
甲A1発明における「毛髪色彩調整剤(茶色)」は、毛髪を染毛するために毛髪に直接適用される組成物であるから(【0032】、【0077】〜【0078】)、本件発明1における「染毛料組成物」に相当する。
甲A1発明における、成分Cに相当する「HC青2」の含有量に対する、成分Dに相当する「HC黄2」の含有量の質量割合〔成分D/成分C〕は、0.37(=0.01025/0.0275)であり、本件発明1における「0.005〜1.0」の範囲内である。
そうすると、本件発明1と引用発明A1の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

<一致点>
「下記成分B、下記成分C、及び下記成分Dを含有し、
前記成分Bの含有量が0.005〜1.5質量%であり、
前記成分Dの含有量が0.01〜0.15質量%であり、
前記成分Cの含有量に対する、前記成分Dの含有量の質量割合[成分D/成分C]が、0.005〜1.0である染毛料組成物。
成分B:塩基性橙31、塩基性赤51、塩基性赤76、塩基性黄87、及び塩基性黄57からなる群より選ばれる1以上の染料
成分C:HC青2
成分D:HC黄4及びHC黄2からなる群より選ばれる1以上の染料 」

<相違点>
本件発明1では、
成分AとしてHC青16を含有し、
成分Aの含有量は0.5〜3.0質量%と特定され、
成分Cの含有量は0.1〜1.5質量%と特定され、
成分Aの含有量に対する、成分Bの含有量の質量割合[成分B/成分A]が、0.01〜1.0であり、
成分Aの含有量に対する、成分Cの含有量の質量割合[成分C/成分A]が、0.05〜6.0
と特定されているのに対し、
引用発明においては、
成分AとしてHC青16を含有せず、その配合量の特定もなく、
成分Cの含有量が0.0275質量%であり、
成分Aの含有量に対する、成分Bの含有量の質量割合[成分B/成分A]
及び
成分Aの含有量に対する、成分Cの含有量の質量割合[成分C/成分A]
について、何も特定がされていない点

ウ 本件発明1の進歩性の判断

上記イの相違点について、検討する。

(ア)
甲A1には、第1染着用組成物に含有される塩基性染料は、特に限定されず、公知の塩基性染料を1種又は2種以上組み合わせて使用することができることが記載されているが(【0034】)、塩基性染料としてHC青16を配合することは記載されていない。

(イ)
そして、甲A3〜甲A5には、カチオン性直接染料としてHCブルー16が記載されていることから(甲A3:【0034】、甲A4:【0032】、甲A5:【0054】)、HC青16は本件出願時に公知の塩基性直接染料であったことが認められるものの、甲A1には、HC青16について何ら記載もなく、青色の塩基性染料の種類に着目してHC青16を選択し、その配合量を0.5〜3.0質量%の範囲に特定したうえで、HC青16と塩基性橙31、塩基性赤51、塩基性赤76、塩基性黄87及び塩基性黄57の合計量との配合割合、HC青16とHC青2の配合割合を所定の範囲となるよう調整することについて、記載も示唆もされていない。

(ウ)
甲A3〜甲A5にも、本件発明1を構成する各染料に着目して、その配合量、配合割合を特定することは、記載も示唆もされていないし、そのような各染料の組み合わせや配合量及び配合割合が、本件特許出願前の技術常識であったとも認められない。

(エ)
そうすると、甲A1発明の毛髪色彩調整剤を、本件発明1の発明特定事項である各染料の組み合わせ、配合量及び配合割合を全て兼ね備えた染毛料組成物とすることに、当業者が動機付けられたとはいえない。

(オ)
さらに、本件明細書の実施例の記載によれば、本件発明1は、優れた染色性と皮膚汚れ抑制を両立させ、しかも、堅牢性及び変色抑制能にも優れる又は良好である効果を奏することが認められ、これは予測し得ない格別顕著な効果といえる。

(カ)
したがって、本件発明1は、甲A1に記載された発明、及び甲A3〜甲A5に記載された事項並びに本件特許出願前の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

エ 本件発明3〜6について

本件発明3〜6は、本件発明1を直接的に又は間接的に引用する本件発明1の従属発明であり、本件発明1の発明特定事項を全て備え、更に技術的に限定してなる発明である。
そして、上記ウで説示したとおり、本件発明1が、甲A1に記載された発明、及び甲A3〜甲A5に記載された事項並びに本件特許出願前の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件発明1を更に技術的に限定してなる、本件発明3〜6も、甲A1に記載された発明、及び甲A3〜甲A5に記載された事項並びに本件特許出願前の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

オ 申立人の主張について

申立人Aは、
(ア)HC青16は甲A3〜甲A5に記載される公知の染料であって、染毛料組成物の技術分野において公知の染料から好適なものを選択することは、当業者の通常の創作能力の発揮であること、
(イ)塩基性染料の含有量を多くすると染毛力が向上し、多くなりすぎると皮膚汚れが生じることは、本件特許出願日前の周知技術であること、
(ウ)各染料の配合量や質量割合は当業者が適宜設定する設計的事項であること、
(エ)本件明細書に記載される実施例1−1と比較例1−9との対比から、塩基性青75に代えてHC青16を使用することにより、皮膚汚れを改善するという効果が認められるものの、直接染料を含有する染毛料組成物の技術分野において皮膚への染着(地肌汚れ)を改善することは、本件出願前の周知の課題である(甲A6:【0006】)から、HC青16を使用する際に、皮膚への染着がどの程度であるかを確認することは当業者が通常行うことであること、
を主張する。

そこで検討するに、申立人Aの上記主張は、いずれも、本件発明と甲A1発明の、染料の種類の相違や、含有量の相違について、それぞれ個別に検討し、各相違点をそれぞれ埋めることは想到容易であるとの論理に基づくものである。
しかしながら、本件発明は、染毛料組成物に係る発明であって、染毛料組成物の「染色性」は、組成物に含有される単一の染料のみの染色性により決まるものではなく、個々の染料の彩度や染色速度の違いによっても影響されるという事情があるところ、組成物を構成する要素が、個別にはそれぞれ想到容易であるからといって、優れた染色性と皮膚汚れ抑制を両立させ、しかも、堅牢性及び変色抑制能にも優れる又は良好な染毛料組成物として、本件発明の特定事項である各染料の組み合わせ、配合量及び配合割合を全て兼ね備えた染毛料組成物を想到することが容易とはいえないことは、上記ウで説示したとおりである。
したがって、申立人Aの上記主張は採用できない。

カ 申立理由A1についての小括

以上のとおり、本件発明1、3〜6は、甲A1に記載された発明、及び甲A3〜甲A5に記載された事項並びに本件特許出願前の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、本件請求項1、3〜6に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえず、同法第113条第2号に該当しないから、申立理由A1によって取り消すことはできない。

(2)申立理由A2について

ア 甲A2の記載事項及び甲A2に記載された発明

甲A2には、以下の事項が記載されている。

「【請求項1】
下記の一般式(1)で表されるラクトン誘導体を含有する、染色した毛髪の褪色防止剤。
【化1】


(ただし式中、nは1又は2であり、Rは炭素数9〜22の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和炭化水素基を表す)
・・・
【請求項8】
請求項1に記載の褪色防止剤を含有する染毛料。
・・・
【背景技術】
【0002】
近年、白髪染めに加え、毛髪を好みの色に染めるおしゃれ染めをする人が増加し、染毛に対する消費者意識の高まりに伴い、染毛の技術は日々進歩している。しかしながら、シャンプー等の洗髪や日常のダメージなどにより染色した毛髪が褪色してしまう問題は、従来から重要な課題のひとつとなっている。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
染色した毛髪に対して優れた褪色防止効果を有する褪色防止剤、及び、これを用いた褪色防止方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、下記一般式(1)で表されるラクトン誘導体が、染色した毛髪に対して優れた褪色防止効果を有することを見出し、本発明を完成させた。・・・。
【化1】
(当審注:式の摘記は省略する。)
・・・
【発明を実施するための形態】
・・・
【0011】
本発明において、染色した毛髪とは、一般に用いられる方法で染色した毛髪であればよく、特に制限はないが、例えば、酸性染料、塩基性染料、ニトロ染料などを用いた染毛料、又は、酸化染料を主体とした染毛剤などによって染色した毛髪が挙げられる。・・・。
・・・
【0017】
本発明において染毛料とは、酸性染料、塩基性染料、ニトロ染料などの直接染料を主剤としたものであり、具体的にはヘアマニキュア、ヘアカラーリンス、ヘアカラートリートメントなどが挙げられる。・・・。
・・・
【0019】
本発明の褪色防止剤を配合した染毛前処理剤、染毛後処理剤、又は、染毛料には、一般的に毛髪化粧料に配合される添加成分、例えば油性基剤、・・・、香料、色素、着色剤、染料、顔料、水等を配合することができる。
・・・
【0032】
香料としては、アセチルセドレン、・・・、ペパーミント油、ペパー油、ヘリオトロピン、赤色223号、・・・、黄色5号等の法定色素;Acid Red 14等のその他酸性染料;Arianor Sienna Brown、Arianor Madder Red、Arianor Steel Blue、Arianor Straw Yellow等の塩基染料;HC Yellow 2、HC Yellow 5、HC Red 3、・・・、HC Blue 2、Basic Blue 26等のニトロ染料;分散染料;二酸化チタン、酸化亜鉛等の無機白色顔料;・・・;表面処理無機及び金属粉末顔料;赤色201号、・・・;インドリン等の自動酸化型染料;ジヒドロキシアセトンが好ましいものとして挙げられる。
・・・
【0036】
合成例1 γ−エルカラクトン(4−ヒドロキシドコサン酸γ−ラクトン)の合成
・・・。本化合物について1H−NMRスペクトルにて構造確認を行ったところ、下記一般式で表される化合物であることを確認した(・・・)。
【化3】

・・・
【0065】
実施例12 ヘアカラートリートメント
下記処方のヘアカラートリートメントを調製した。このトリートメントは、優れた染色性及び褪色防止効果を有し、毛髪にしっとり感、ハリコシ感を付与し、うねり、絡まりを抑制するものであった。また、その効果はトリートメント塗布後ドライヤーでブローすることで、シャンプー後も持続するものであった。

成 分 配合量(重量%)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
A部
合成例1の化合物 0.3
ステアリルアルコール 3.0
B部
ステアルトリモニウムクロリド(70%) 1.5
ステアリン酸グリセリル 1.0
コカミドメチルMEA 1.0
YOFCO CLE−S(日本精化) 0.5
ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘ
ニル)(Plandool−LG1:日本精化) 0.3
シア脂 0.5
ジメチコン(50cs) 2.0
フェノキシエタノール 0.5
コカミドメチルMEA 0.5
C部
ヒドロキシエチルセルロース 0.5
精製水 合計で100となる量
D部
BG 1.0
塩基性黄570.1
塩基性赤760.05
HC青20.15
HC黄40.03
炭酸アンモニウム 0.8
HC赤3 0.01
クチナシ青 0.05
4−ヒドロキシプロピルアミノ−3−ニトロフェノール 0.05
精製水 20.0
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(調製方法)
あらかじめ均一に混合しておいたA部をB部に添加し約80℃に加温して溶解させた(E部)。別の容器でC部を約80℃に加温し溶解させた。E部にC部を攪拌しながら徐々に加え均一に混合した後、急冷した(F部)。約40℃となったF部にD部を加え均一にした。」

甲A2に記載された実施例12の「ヘアカラートリートメント」について、染料成分に着目すると、甲A2には、以下の発明(以下「甲A2発明」という。)が記載されている。

≪甲A2発明≫
「塩基性赤76を0.05重量%、
塩基性黄57を0.1重量%、
HC青2を0.15重量%、
HC黄4を0.03重量%、
HC赤3を0.01重量%
クチナシ青を0.05重量%、
を含有する、ヘアカラートリートメント。」

イ 本件発明1と甲A2発明の対比

本件発明1と甲A2発明を対比する。

甲A2発明における「塩基性赤76」及び「塩基性黄57」は、本件発明1における「成分B」の染料の選択肢に含まれる「塩基性赤76」及び「塩基性黄57」に相当するところ、甲A2発明における「塩基性赤76」及び「塩基性黄57」の合計量は0.15質量%であることから、「成分Bの含有量が0.005〜1.5質量%」である点においても、本件発明1と一致する。
甲A2発明における「HC青2」は、本件発明1における「成分C」の染料の「HC青2」に相当するところ、甲A2発明における「HC青2」の含有量は0.15質量%であることから、「成分Cの含有量が0.1〜1.5質量%」である点においても、本件発明1と一致する。
甲A2発明における「HC黄4」は、本件発明1における「成分D」の染料の選択肢の1つである「HC黄4」に相当するところ、「HC黄4」の含有量は0.03質量%であることから、「成分Dの含有量が0.01〜0.15質量%」である点においても、本件発明1と一致する。
甲A2発明における「ヘアカラートリートメント」は、本件発明1における「染毛料組成物」に相当する。
甲A2発明における、成分Cに相当する「HC青2」の含有量に対する、成分Dに相当する「HC黄4」の含有量の質量割合〔成分D/成分C〕は、0.2(=0.03/0.15)であり、本件発明1における「0.005〜1.0」の範囲内である。
そうすると、本件発明1と甲A2発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

<一致点>
「下記成分B、下記成分C、及び下記成分Dを含有し、
前記成分Bの含有量が0.005〜1.5質量%であり、
前記成分Cの含有量が0.1〜1.5質量%であり、
前記成分Dの含有量が0.01〜0.15質量%であり、
前記成分Cの含有量に対する、前記成分Dの含有量の質量割合[成分D/成分C]が、0.005〜1.0である染毛料組成物。
成分B:塩基性橙31、塩基性赤51、塩基性赤76、塩基性黄87、及び塩基性黄57からなる群より選ばれる1以上の染料
成分C:HC青2
成分D:HC黄4及びHC黄2からなる群より選ばれる1以上の染料 」

<相違点>
本件発明1では、
成分AとしてHC青16を含有し、
成分Aの含有量は0.5〜3.0質量%と特定され、
成分Aの含有量に対する、成分Bの含有量の質量割合[成分B/成分A]が、0.01〜1.0であり、
成分Aの含有量に対する、成分Cの含有量の質量割合[成分C/成分A]が、0.05〜6.0
と特定されているのに対し、
引用発明においては、
成分AとしてHC青16を含有せず、その配合量の特定もなく、
成分Aの含有量に対する、成分Bの含有量の質量割合[成分B/成分A]
及び
成分Aの含有量に対する、成分Cの含有量の質量割合[成分C/成分A]
について、何も特定がされていない点

ウ 本件発明1の進歩性の判断

上記イの相違点について、検討する。

(ア)
甲A2には、染毛料に配合できる塩基染料として幾つか例示されているが(【0032】)、塩基染料としてHC青16を配合することは記載されていない。

(イ)
そして、甲A3〜甲A5には、カチオン性直接染料としてHCブルー16が記載されていることから(甲A3:【0034】、甲A4:【0032】、甲A5:【0054】)、HC青16は本件出願時に公知の塩基染料であったことが認められるものの、甲A2には、HC青16について何ら記載もなく、青色の塩基染料の種類に着目してHC青16を選択し、その配合量を0.5〜3.0質量%の範囲に特定したうえで、HC青16と塩基性橙31、塩基性赤51、塩基性赤76、塩基性黄87及び塩基性黄57の合計量との配合割合、HC青16とHC青2の配合割合を所定の範囲となるよう調整することについては、記載も示唆もされていない。

(ウ)
甲A3〜甲A5にも、本件発明1を構成する各染料に着目して、その配合量、配合割合を特定することは、記載も示唆もされていないし、そのような各染料の組み合わせや配合量及び配合割合が、本件特許出願前の技術常識であったとも認められない。

(エ)
そうすると、甲A2発明のヘアカラートリートメントを、本件発明1の発明特定事項である各染料の組み合わせ、配合量及び配合割合を全て兼ね備えた染毛料組成物とすることに、当業者が動機付けられたとはいえない。

(オ)
さらに、本件明細書の実施例の記載によれば、本件発明1は、優れた染色性と皮膚汚れ抑制を両立させ、しかも、堅牢性及び変色抑制能にも優れる又は良好である効果を奏することが認められ、これは予測し得ない格別顕著な効果といえる。

(カ)
したがって、本件発明1は、甲A2に記載された発明、及び甲A3〜甲A5に記載された事項並びに本件特許出願前の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

エ 本件発明3〜6について

本件発明3〜6は、本件発明1を直接的に又は間接的に引用する本件発明1の従属発明であり、本件発明1の発明特定事項を全て備え、更に技術的に限定してなる発明である。
そして、上記ウで説示したとおり、本件発明1が、甲A2に記載された発明、及び甲A3〜甲A5に記載された事項並びに本件特許出願前の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件発明1を更に技術的に限定してなる、本件発明3〜6も、甲A2に記載された発明、及び甲A3〜甲A5に記載された事項並びに本件特許出願前の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

オ 申立人の主張について

申立人Aは、
(ア)HC青16は甲A3〜甲A5に記載される公知の染料であって、染毛料組成物の技術分野において公知の染料から好適なものを選択することは、当業者の通常の創作能力の発揮であること、
(イ)塩基性染料の含有量を多くすると染毛力が向上し、多くなりすぎると皮膚汚れが生じることは、本件特許出願日前の周知技術であること、
(ウ)各染料の配合量や質量割合は当業者が適宜設定する設計的事項であること、
(エ)本件明細書に記載される実施例1−1と比較例1−9との対比から、塩基性青75に代えてHC青16を使用することにより、皮膚汚れを改善するという効果が認められるものの、直接染料を含有する染毛料組成物の技術分野において 皮膚への染着(地肌汚れ)を改善することは、本件出願前の周知の課題である(甲A6:【0006】)から、HC青16を使用する際に、皮膚への染着がどの程度であるかを確認することは当業者が通常行うことであること、
を主張する。

そこで検討するに、申立人Aの上記主張は、いずれも、本件発明と甲A2発明の、染料の種類の相違や、含有量の相違について、それぞれ個別に検討し、各相違点をそれぞれ埋めることは想到容易であるとの論理に基づくものである。
しかしながら、本件発明は、染毛料組成物に係る発明であって、染毛料組成物の「染色性」は、組成物に含有される単一の染料のみの染色性により決まるものではなく、個々の染料の彩度や染色速度の違いによっても影響されるという事情があるところ、組成物を構成する要素が、個別にはそれぞれ想到容易であるからといって、優れた染色性と皮膚汚れ抑制を両立させ、しかも、堅牢性及び変色抑制能にも優れる又は良好な染毛料組成物として、本件発明の特定事項である各染料の組み合わせ、配合量及び配合割合を全て兼ね備えた染毛料組成物を想到することが容易とはいえないことは、上記ウで説示したとおりである。
したがって、申立人Aの上記主張は採用できない。

カ 申立理由A2についての小括

以上のとおり、本件発明1、3〜6は、甲A2に記載された発明、及び甲A3〜甲A5に記載された事項、並びに本件特許出願前の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、本件請求項1、3〜6に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえず、同法第113条第2号に該当しないから、申立理由A2によって取り消すことはできない。

(3)申立理由A3について

申立理由A3は、上記第4に示した取消理由2(サポート要件違反)と同趣旨である。
そして、取消理由2については、上記第6の2(2)において当審の判断を説示したとおりであり、本件請求項1、3〜6の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。
したがって、本件請求項1、3〜6に係る特許は、特許法第113条第4号に該当するものでないから、申立理由A3によって取り消すことはできない。

4 申立人Bによる申立理由の概要

申立人Bが申し立てた申立理由Bの概要は、申立書Bの記載全体からみて、次のとおりのものと認められる。

[申立理由B](甲B1を主引例とする進歩性欠如)
本件特許の請求項1〜6に係る発明は、甲B1に記載された発明、甲B2〜甲B6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

5 申立人Bが提出した証拠(証拠方法)

申立人Bが申立書Bに添付して提出した甲第1〜6号証(以下、各甲号証を「甲B1」等と略して示す。)は、次のとおりである。

甲第1号証:米国特許出願公開第2014/0298598号明細書(甲B1:取消理由通知で引用された引用文献1)
甲第2号証:特表2016−501207号公報(甲B2:取消理由通知で引用された引用文献2)
甲第3号証:米国特許出願公開第2016/0158125号明細書(甲B3)
甲第4号証:特開2012−246284号公報(甲B4)
甲第5号証:特開2017−048153号公報(甲B5)
甲第6号証:特開2014−101290号公報(甲B6)

6 申立理由Bに対する当審の判断

申立理由Bは、上記第4に示した取消理由1(引用文献1を主引例とした進歩性の欠如)と同趣旨である。
そして、取消理由1については、上記第6の1において当審の判断を説示したとおり、本件請求項1、3〜6に係る発明は、甲B1(引用文献1)に記載された発明、及び甲B2(引用文献2)に記載された事項及び甲B3〜B6に記載される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
したがって、本件請求項1、3〜6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえず、同法第113条第2号に該当するものでないから、申立理由Bによって取り消すことはできない。

第8 むすび

以上のとおりであるから、本件特許についての訂正の請求は、適法なものであり、これを認める。そして、取消理由通知に記載した取消理由及び申立人による特許異議の申立ての理由によっては、本件請求項1、3〜6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、3〜6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件特許の請求項2は、訂正により削除されたため、特許異議申立人による請求項2に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (54)【発明の名称】染毛料組成物
【技術分野】
【0001】
本発明は染毛料組成物に関する。本願は、2017年3月29日に日本に出願した、特願2017−066454号の優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、白髪染め、おしゃれ染めといった毛髪を染色する処理剤としては、アルカリ剤と酸化染毛料とを含む第1剤と、過酸化水素を含む第2剤とからなる酸化染毛剤等が汎用されている。しかしながら、これら酸化染毛剤は、優れた染色効果を発揮し、望む髪色へと染色することができる反面、毛髪や頭皮へのダメージが生じる場合があるといった欠点がある。また、施術時に薬剤を毛髪上に留め、長時間放置しなければならないことから、セルフで処理を施す場合には非常に手間がかかるだけでなく、アルカリ剤の刺激臭や皮膚刺激が生じるといった欠点がある。また、施術の仕方によっては、染め上がりにムラが生じて均一に染色し難いといった欠点もある。
【0003】
これに対して、毛髪や頭皮へのダメージが小さい処理剤として、塩基性染料やHC染料を用いた染毛料が知られている。上記染毛料の中でも、洗髪時のシャンプーと同時に毛髪を染色することができるカラーシャンプーや、洗髪後のリンス、トリートメントと同時に毛髪を染色することができるカラーリンス又はカラートリートメントは、簡便性に優れ、さらに、染色の均一性にも優れるという利点がある(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、従来の上記染毛料は、皮膚への染着性が高く、即ち、皮膚に付着した場合に皮膚に色がつきやすいという欠点があり、特に、カラーシャンプー、カラーリンスやカラートリートメントの場合には、洗髪時に手袋等を用いずに使用するため、指先や頭皮が着色してしまう問題があった。上記着色を抑制するために、染毛料中の染料濃度を低くする場合には、毛髪に対する染色性が低下する。このため、毛髪に対する染色性は高く、皮膚への染着性は抑えられた染毛料が求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−101292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、毛髪に対する十分な染色性を有するにもかかわらず、皮膚への染着性は抑えられた染毛料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、成分A:HC青16、成分B:塩基性橙31、塩基性赤51、塩基性赤76、塩基性黄87、及び塩基性黄57からなる群より選ばれる1以上の染料、成分C:HC青2、成分D:HC黄4及びHC黄2からなる群より選ばれる1以上の染料を含有する染毛料組成物によれば、毛髪に対する十分な染色性を有するにもかかわらず、皮膚への染着性は抑えられた染毛料組成物が得られることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、下記成分A、下記成分B、下記成分C、及び下記成分Dを含有する染毛料組成物を提供する。
成分A:HC青16
成分B:塩基性橙31、塩基性赤51、塩基性赤76、塩基性黄87、及び塩基性黄57からなる群より選ばれる1以上の染料
成分C:HC青2
成分D:HC黄4及びHC黄2からなる群より選ばれる1以上の染料
【0009】
上記成分Aの含有量は0.05〜3.0質量%であることが好ましく、上記成分Bの含有量は0.005〜1.5質量%であることが好ましく、上記成分Cの含有量は0.1〜1.5質量%であることが好ましく、上記成分Dの含有量は0.01〜0.5質量%であることが好ましい。
【0010】
上記染毛料組成物は、上記成分Aの含有量に対する、上記成分Bの含有量の質量割合[成分B/成分A]が、0.01〜1.0であり、上記成分Cの含有量に対する、上記成分Dの含有量の質量割合[成分D/成分C]が、0.005〜1.0であり、上記成分Aの含有量に対する、上記成分Cの含有量の質量割合[成分C/成分A]が、0.05〜7.0であることが好ましい。
【0011】
上記成分D100質量%中の、上記HC黄2の含有量は50.0質量%以上であることが好ましい。
【0012】
上記染毛料組成物は、カラーリンス又はカラートリートメントであることが好ましい。
【0013】
上記染毛料組成物は、さらに、下記成分Eを含有することが好ましい。
成分E:カチオン性界面活性剤、カチオン性ポリマー、及びシリコーン油からなる群より選ばれる1以上の成分
【発明の効果】
【0014】
本発明の染毛料組成物は、十分に優れた毛髪に対する染色性を有する。このため、カラーシャンプー、カラーリンスやカラートリートメントとして用いる場合には、少ない回数の使用によって、十分に毛髪の染色効果を発揮し得る。また、ヘアマニキュアとして用いる場合にも、比較的短時間の施術時間で十分な染色効果を得ることができる。さらに、本発明の染毛料組成物は、皮膚への染着性が低く、使用時の指や頭皮の着色が極めて少ない。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の染毛料組成物は、染毛料として用いられる組成物である。上記染毛料としては、カラーリンス、カラートリートメント、ヘアマニキュア、カラーシャンプー等が挙げられる。中でも、簡便に染毛を行うことができ、1回あたりの施術時間が短時間であるという利点を有する観点から、本発明の染毛料組成物は、カラーリンス若しくはカラートリートメント、又は、カラーシャンプーであることが好ましい。
【0016】
本発明の染毛料組成物は、HC青16と、塩基性橙31、塩基性赤51、塩基性赤76、塩基性黄87、及び塩基性黄57からなる群より選ばれる1以上の染料と、HC青2と、HC黄4及びHC黄2からなる群より選ばれる1以上の染料とを少なくとも含有する。本明細書において、上記「HC青16」を「成分A」と称する場合がある。また、上記「塩基性橙31、塩基性赤51、塩基性赤76、塩基性黄87、及び塩基性黄57からなる群より選ばれる1以上の染料」を「成分B」と称する場合がある。また、上記「HC青2」を「成分C」と称する場合がある。さらに、上記「HC黄4及びHC黄2からなる群より選ばれる1以上の染料」を「成分D」と称する場合がある。
【0017】
本発明の染毛料組成物は、成分A、成分B、成分C、及び成分Dを少なくとも含む。本発明の染毛料組成物は、用途に応じて、さらに、必須成分である上記成分A〜D以外の成分を含んでいてもよい。中でも、本発明の染毛料組成物がカラーリンス又はカラートリートメントである場合には、本発明の染毛料組成物は、さらに、カチオン性界面活性剤、カチオン性ポリマー、及びシリコーン油からなる群より選ばれる1以上の成分を含むことが好ましい。本明細書において、上記「カチオン性界面活性剤、カチオン性ポリマー、及びシリコーン油からなる群より選ばれる1以上の成分」を「成分E」と称する場合がある。
【0018】
本発明の染毛料組成物は、さらに上記A〜E以外の成分(他の成分)を含んでいてもよい。上記の成分、例えば、成分A、成分B、成分C、成分D、成分Eや他の成分は、それぞれ、1種のみが用いられていてもよく、2種以上が用いられていてもよい。
【0019】
以下に、本発明の染毛料組成物の必須成分である成分A〜Dについて説明する。
【0020】
[成分A:HC青16]
成分Aは、HC青16であり、下記の式(1)で表される染料である。成分Aは、毛髪に対する染色性が非常に優れるにもかかわらず、皮膚への染着性が極めて低い。このため、成分Aを用いることにより、毛髪への高い染色性と皮膚への染着の抑止性を両立した染毛料組成物を得ることができる。
◎【化1】

【0021】
成分Aは、INCI名(International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,第15版,第1巻,2014年,p.1449:HC BLUE NO.16で表記される化合物であり、1−プロパンアミニウム,3−[[9,10−ジヒドロ−4−(メチルアミノ)−9,10−ジオキソ−1−アントラセニル]アミノ]−N,N−ジメチル−N−プロピル−,ブロミド:1−Propanaminium,3−[[9,10−dihydro−4−(methylamino)−9,10−dioxo−1−anthracenyl]amino]−N,N−dimethyl−N−propyl−,bromideである。
【0022】
成分Aは、市販品を用いることもできる。成分Aの市販品としては、例えば、アルテックケミカル社製、商品名「HC Blue No.16」が挙げられる。
【0023】
本発明の染毛料組成物100質量%中の、成分Aの含有量は、特に限定されないが、0.05〜3.0質量%が好ましく、より好ましくは0.2〜2.0質量%、さらに好ましくは0.5〜1.0質量%である。上記含有量が0.05質量%以上であると、毛髪に対する染色性、特に白髪を染色する効果がより向上するため好ましい。上記含有量が3.0質量%以下であると、安全性がより一層向上するため好ましい。また、水洗後に水に溶けだした染料によるタオルや衣服等への色移りがより一層抑制されるため好ましい。
【0024】
[成分B:塩基性橙31、塩基性赤51、塩基性赤76、塩基性黄87、及び塩基性黄57からなる群より選ばれる1以上の染料]
成分Bは、塩基性橙31、塩基性赤51、塩基性赤76、塩基性黄87、及び塩基性黄57からなる群より選ばれる1以上の染料(少なくとも1の染料)である。成分Bは、1種のみが用いられていてもよく、2種以上が用いられていてもよい。
【0025】
成分Bは、中でもこれらの染料を組み合わせて橙色系の色味に整えることが好ましい。具体的には、橙色単色及び黄色と赤色との組み合わせが好ましい。すなわち、成分Bは、塩基性橙31のみ、塩基性赤51と塩基性黄87との組み合わせ、塩基性赤51と塩基性黄57との組み合わせ、塩基性赤76と塩基性黄87との組み合わせ、又は塩基性赤76と塩基性黄57との組み合わせが好ましい。より好ましくは、塩基性橙31のみ、塩基性赤51と塩基性黄87との組み合わせ、又は塩基性赤76と塩基性黄57との組み合わせである。中でも、成分Bは、塩基性橙31、塩基性赤51と塩基性黄87との組み合わせであることが特に好ましい。橙色系に調製した成分Bと、青色の成分Aとを配合することにより、染毛料組成物中で、カチオン性の染料のみの組み合わせで灰色に呈色しうる。また、後述の成分Cと成分Dは共にノニオン性の染料であり、これらの組み合わせで灰色に呈色しうる。これにより、後述の通り、本発明の染毛料組成物は、カチオン性の染料とノニオン性の染料を用い、それぞれが灰色に呈色するため、短時間での染色性、色持ち、放置時間延長時の変色抑制、ブリーチ処理された毛等のダメージ毛に対する色ムラをより改善することができるため好ましい。
【0026】
上記塩基性橙31は、INCI名(International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,第15版,第1巻,2014年,p.331−332):BASIC ORANGE 31(ベーシックオレンジ31)で表記される化合物であり、2−[(4−アミノフェニル)アゾ]−1,3−ジメチル−1H−イミダゾリウムクロリド:2−[(4−Aminophemyl)azo]−1,3−dimethyl−1H−imidazolium chlorideである。
【0027】
上記塩基性赤51は、INCI名(International CosmeticIngredient Dictionary and Handbook,第15版,第1巻,2014年,p.333):BASIC RED 51(ベーシックレッド51)で表記される化合物であり、2−(4−(ジメチルアミノ−フェニルアゾ)1,3−ジメチル−1,3−ジメチル−3H−イミダゾル−1−イウム クロリド:2−(4−(Dimethylamino−phenylazo)1,3−dimethyl−1,3−dimethyl−3H−imidazol−1−ium chlorideである。上記塩基性赤51は、2−[((4−ジメチルアミノ)フェニル)アゾ]−1,3−ジメチル−1H−イミダゾリウムクロリド:2−[((4−Dimethylamino)phenyl)azo]−1,3−dimethyl−1H−imidazolium chlorideとも称される。
【0028】
上記塩基性赤76は、INCI名(International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,第15版,第1巻,2014年,p.333−334):BASIC RED 76(ベーシックレッド76)で表記される化合物であり、7−ヒドロキシ−8−[(2−メトキシフェニル)アゾ]N,N,N−トリメチル−2−ナフタレンアミニウム クロリド:7−Hydroxy−8−[(2−methoxyphenyl)azo]N,N,N−trimethyl−2−naphthalenaminium chlorideである。上記塩基性赤76は、[7−ヒドロキシ−8−[(2−メトキシフェニル)アゾ]−2−ナフチル]−トリメチルアンモニウムクロリドニ[7−Hydroxy−8−[(2−methoxyphenyl)azo]−2−naphthyl]−trimethylammonium chlorideとも称される。
【0029】
上記塩基性黄87は、INCI名(International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,第15版,第1巻,2014年,p.337−338):BASIC YELLOW 87(ベーシックイエロー87)で表記される化合物であり、ピリジニウム,1−メチル−4−[(メチルフェニルヒドラゾノ)メチル]−,メチル サルフェート:Pyridinium,1−methyl−4−[(methylphenylhydrazono)methyl]−,methyl sulfateである。上記塩基性黄87は、1−メチル−4−[(メチルフェニルヒドラゾノ)メチル]ピリジニウム メチルサルフェート:1−Methyl−4−[(methylphenylhydrazono)methyl]pyridinium methylsulfateとも称される。
【0030】
上記塩基性黄57は、INCI名(International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,第15版,第1巻,2014年,p.337):BASIC YELLOW 57(ベーシックイエロー57)で表記される化合物であり、ベンゼンアミニウム,3−[(4,5−ジヒドロ−3−メチル−5−オキソ−1−フェニル−1H−ピラゾール−4−イル)アゾ]−N,N,N−トリメチル−,クロリド:Benzenaminium,3−[(4,5−dihydro−3−methyl−5−oxo−1−phenyl−1H−pyrazol−4−yl)azo]−N,N,N−trimethyl−,chlorideである。上記塩基性黄57は、5−ヒドロキシ−3−メチル−1−フェニル−4−(3’−トリメチルアンモニオフェニルアゾ)−ピラゾール:5−Hydroxy−3−methyl−1−phenyl−4−(3’−trimethylammoniophenylazo)−pyrazolとも称される。
【0031】
成分Bは、市販品を用いることもできる。塩基性橙31の市販品としては、例えば、BASF社製、商品名「Vibracolor Flame Orange」が挙げられる。塩基性赤51の市販品としては、例えば、BASF社製、商品名「Vibracolor Ruby Red」が挙げられる。塩基性赤76の市販品としては、例えば、センシエント テクノロジーズ ジャパン株式会社製、商品名「ARIANOR MADDER RED」が挙げられる。塩基性黄87の市販品としては、例えば、BASF社製、商品名「Vibracolor Citrus Yellow」が挙げられる。塩基性黄57の市販品としては、例えば、センシエント テクノロジーズ ジャパン株式会社製、商品名「ARIANOR STRAW YELLOW」が挙げられる。
【0032】
本発明の染毛料組成物100質量%中の、成分Bの含有量は、特に限定されないが、0.005〜1.5質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜1.0質量%である。上記含有量が0.005質量%以上であると、毛髪に対する染色性、特に白髪を染色する効果がより向上するため好ましい。上記含有量が1.5質量%以下であると、安全性がより一層向上するため好ましい。また、水洗後に水に溶けだした染料によるタオルや衣服等への色移りがより一層抑制されるため好ましい。上記成分Bの含有量は、本発明の染毛料組成物中の全ての成分Bの含有量の合計量である。
【0033】
なお、本発明の染毛料組成物100質量%中の塩基性橙31の含有量は、特に限定されないが、0.005〜0.5質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜0.2質量%である。本発明の染毛料組成物100質量%中の塩基性赤51の含有量は、特に限定されないが、0.005〜0.5質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜0.2質量%である。本発明の染毛料組成物100質量%中の塩基性赤76の含有量は、特に限定されないが、0.01〜1.5質量%が好ましく、より好ましくは0.05〜1.0質量%である。本発明の染毛料組成物100質量%中の塩基性黄87の含有量は、特に限定されないが、0.005〜0.5質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜0.2質量%である。本発明の染毛料組成物100質量%中の塩基性黄57の含有量は、特に限定されないが、0.01〜1.5質量%が好ましく、より好ましくは0.05〜1.0質量%である。
【0034】
成分Bは塩基性橙31のみからなり、本発明の染毛料組成物100質量%中の成分B(即ち、塩基性橙31)の含有量が0.005〜0.5質量%(特に、0.01〜0.2質量%)であることが好ましい。また、成分Bは、塩基性赤51と塩基性黄87のみからなり、本発明の染毛料組成物100質量%中の塩基性赤51の含有量が0.005〜0.5質量%(特に、0.01〜0.2質量%)、且つ塩基性黄87の含有量が0.005〜0.5質量%(特に、0.01〜0.2質量%)であることが好ましい。また、成分Bは、塩基性赤76と塩基性黄57のみからなり、本発明の染毛料組成物100質量%中の塩基性赤76の含有量が0.01〜1.5質量%(特に、0.05〜1.0質量%)、且つ塩基性黄57の含有量が0.01〜1.5質量%(特に、0.05〜1.0質量%)であることが好ましい。
【0035】
[成分C:HC青2]
成分Cは、HC青2である。上記HC青2は、INCI名(International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,第15版,第1巻,2014年,p.1447):HC BLUE NO.2で表記される化合物であり、2,2’−[[4−[(2−ヒドロキシエチル)アミノ]−3−ニトロフェニル]イミノ]ビスエタノール:2,2’−[[4−[(2−Hydroxyethyl)amino]−3−nitrophenyl]imino]bisethanolである。
【0036】
成分Cは、市販品を用いることもできる。成分Cの市販品としては、例えば、テルカ社製、商品名「COLOREX HCB2」が挙げられる。
【0037】
本発明の染毛料組成物100質量%中の、成分Cの含有量は、特に限定されないが、0.1〜1.5質量%が好ましく、より好ましくは0.2〜1.5質量%、さらに好ましくは0.5〜1.0質量%である。上記含有量が0.1質量%以上であると、堅牢性がより向上するため好ましい。上記含有量が1.5質量%以下であると、安全性がより一層向上するため好ましい。また、水洗後に水に溶けだした染料によるタオルや衣服等への色移りがより一層抑制されるため好ましい。
【0038】
[成分D:HC黄4及びHC黄2からなる群より選ばれる1以上の染料]
成分Dは、HC黄4及びHC黄2からなる群より選ばれる1以上の染料(少なくとも1の染料)であり、即ち、HC黄4及び/又はHC黄2である。上記HC黄4は、INCI名(International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,第15版,第1巻,2014年,p.1455):HC YELLOW NO.4で表記される化合物であり、2−[[2−(2−ヒドロキシエトキシ)−4−ニトロフェニル]アミノ]エタノール:2−[[2−(2−Hydroxyethoxy)−4−nitrophenyl]amino]ethanolである。上記HC黄2は、INCI名(International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,第15版,第1巻,2014年,p.1455):HC YELLOW NO.2で表記される化合物であり、2−[(2−ニトロフェニル)アミノ]エタノール:2−[(2−Nitrophenyl)amino]ethanolである。成分Dは、1種のみが用いられていてもよく、2種以上が用いられていてもよい。
【0039】
成分Dは、市販品を用いることもできる。HC黄4の市販品としては、例えば、テルカ社製、商品名「COLOREX HCY4」が挙げられる。HC黄2の市販品としては、例えば、テルカ社製、商品名「COLOREX HCY2」が挙げられる。
【0040】
本発明の染毛料組成物100質量%中の、成分Dの含有量は、特に限定されないが、0.01〜0.5質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜0.2質量%、さらに好ましくは0.02〜0.1質量%である。上記含有量が0.01質量%以上であると、堅牢性がより向上するため好ましい。上記含有量が0.5質量%以下であると、安全性がより一層向上するため好ましい。また、水洗後に水に溶けだした染料によるタオルや衣服等への色移りがより一層抑制されるため好ましい。上記成分Dの含有量は、本発明の染毛料組成物中の全ての成分Dの含有量の合計量である
【0041】
成分Dとしては、耐光性(光安定性)により一層優れる観点から、HC黄2がより好ましい。即ち、成分DはHC黄2を必須成分として含むことが好ましく、HC黄2であることがより好ましい。成分D100質量%中のHC黄2の含有量は、50.0質量%以上(即ち、50.0〜100質量%)が好ましく、より好ましくは70.0質量%以上、さらに好ましくは90.0質量%以上である。成分DはHC黄2のみからなることが最も好ましい。成分DがHC黄2を必須成分として含むことにより、黄色の退色がより一層抑制されるため好ましい。特に、黄色の染料を用いて調製した灰色を呈色する染毛料の場合には、黄色成分の退色により、染毛料全体の呈する色調の変化が大きいため、上記範囲でのHC黄2の使用が有効である。
【0042】
本発明の染毛料組成物中、成分Aと成分Bは共にカチオン性の染料であり、カチオン性の染料のみの組み合わせで灰色に呈色する。また、成分Cと成分Dは共にノニオン性の染料であり、ノニオン性の染料のみの組み合わせで灰色に呈色する。従って、本発明の染毛料組成物においては、カチオン性の染料のみの組み合わせとノニオン性の染料のみの組み合わせのそれぞれが灰色に呈色する。カチオン性の染料は染着速度がはやく堅牢性にも優れるがダメージ毛や損傷部位に吸着しやすく染色ムラがでやすい特性を有する。一方、ノニオン性の染料は染着速度は比較的遅いものの、損傷の有無によらず均一に吸着しやすい特性を有する。このため、カチオン性の染料とノニオン性の染料の色調がそれぞれ異なる場合には、放置時間や部位による損傷度合の違い等により、色ムラが生じやすくなる。本発明においては、上述の通り、カチオン性の染料とノニオン性の染料を用い、それぞれが灰色に呈色するため、短時間での染色性、色持ち、放置時間延長時の変色抑制、ブリーチ処理された毛等のダメージ毛に対する色ムラをより改善することができるため好ましい。
【0043】
本発明の染毛料組成物中において、成分Aの含有量に対する、成分Bの含有量の質量割合[成分B/成分A]は、特に限定されないが、0.01〜1.0であることが好ましく、より好ましくは0.02〜0.8である。上記質量割合を上記範囲内とすることにより、特に白髪をより自然な色調に染めることができる。上記質量割合が0.01未満では、毛髪に染着した色調が青色になり、上記質量割合が1.0を超えると毛髪に染着した色調が赤色になり、特に白髪染めにおいて不自然な色調となる場合がある。
【0044】
本発明の染毛料組成物中において、成分Cの含有量に対する、成分Dの含有量の質量割合[成分D/成分C]は、特に限定されないが、0.005〜1.0であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.5である。上記質量割合を上記範囲内とすることにより、特に白髪をより自然な色調に染めることができる。上記質量割合が0.005未満では、毛髪に染着した色調が紫色になり、上記質量割合が1.0を超えると毛髪に染着した色調が黄色になり、特に白髪染めにおいて不自然な色調となる場合がある。
【0045】
本発明の染毛料組成物中において、成分Aの含有量に対する、成分Cの含有量の質量割合[成分C/成分A]は、特に限定されないが、0.05〜7.0であることが好ましく、より好ましくは0.1〜6.0である。上記質量割合が、0.05以上であると、染色速度を適切に調節でき、ブリーチ処理された毛等のダメージ毛に対する色ムラが生じにくくなる。一方、上記質量割合が、7.0以下であると、染色性と色持ちに優れるため好ましい。
【0046】
以下に、本発明の染毛料組成物がカラーリンス、カラートリートメント、及びヘアマニキュアのうちのいずれかである場合の好ましい任意成分について説明する。
【0047】
[成分E:カチオン性界面活性剤、カチオン性ポリマー、及びシリコーン油からなる群より選ばれる1以上の成分]
本発明の染毛料組成物がカラーリンス、カラートリートメント、及びヘアマニキュアのうちのいずれかである場合、本発明の染毛料組成物は、成分Eを含むことが好ましい。成分Eは、カチオン性界面活性剤、カチオン性ポリマー、及びシリコーン油からなる群より選ばれる1以上の成分(少なくとも1の成分)である。成分Eを含むと、染毛料組成物による水洗時のきしみ感の低減の効果が向上するため好ましい。成分Eは、1種のみが用いられていてもよく、2種以上が用いられていてもよい。
【0048】
上記カチオン性界面活性剤(カチオン界面活性剤)としては、例えば、モノアルキル型4級アンモニウム塩、ジアルキル型4級アンモニウム塩、トリアルキル型4級アンモニウム塩、モノアルキルエーテル型4級アンモニウム塩、アルキルアミン、脂肪酸アミドアミン等が挙げられる。
【0049】
上記モノアルキル型4級アンモニウム塩としては、例えば、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ミリスチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化アルキル(16,18)トリメチルアンモニウム、塩化アルキル(20〜22)トリメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ミリスチルジメチルベンジルアンモニウム、塩化トリ(ポリオキシエチレン)ステアリルアンモニウム、塩化ジ(ポリオキシエチレン)オレイルメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0050】
上記脂肪酸アミドアミンとしては、例えば、ミリスチン酸ジメチルアミノエチルアミド、ミリスチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ミリスチン酸ジエチルアミノエチルアミド、ミリスチン酸ジエチルアミノプロピルアミド、パルミチン酸ジメチルアミノエチルアミド、パルミチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、パルミチン酸ジエチルアミノエチルアミド、パルミチン酸ジエチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジエチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジプロピルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジプロピルアミノプロピルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノエチルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ベヘニン酸ジエチルアミノエチルアミド、ベヘニン酸ジエチルアミノプロピルアミド等が挙げられる。
【0051】
上記脂肪酸アミドアミンは、有機酸及び/又は無機酸により塩として用いられることが好ましい。上記有機酸としては、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、酢酸等が挙げられる。また、上記無機酸としては、リン酸、塩酸、硫酸等が挙げられる。中でも、乳酸が好ましい。上記有機酸及び無機酸の含有量は、配合される脂肪酸アミドアミンを中和できる量であれば特に限定されない。
【0052】
上記カチオン性界面活性剤としては、上記の中でも、モノアルキル型4級アンモニウム塩、脂肪酸アミドアミンが好ましく、より好ましくは、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化アルキル(16,18)トリメチルアンモニウム、塩化アルキル(20〜22)トリメチルアンモニウム、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミドである。
【0053】
上記カチオン性ポリマー(カチオンポリマー)としては、例えば、塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース等の第4級窒素含有セルロースエーテル誘導体;塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]グァーガム等の第4級窒素含有グァーガム誘導体;カチオン性澱粉、ジアリル第4級アンモニウム塩重合物、ジアリル第4級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合物、第4級化ポリビニルピロリドン誘導体、ポリグリコールポリアミン縮合物、アジピン酸・ジメチルアミノヒドロキシプロピルエチレントリアミン共重合物、カチオン化デキストラン等が挙げられる。上記の中でも、塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース、ジアリル第4級アンモニウム塩重合物、ジアリル第4級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合物が好ましく、より好ましくは、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウムである。
【0054】
上記シリコーン油としては、例えば、メチルポリシロキサン、平均重合度が650〜7000である高重合メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチコノール等の鎖状シリコーン;メチルシクロポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状シリコーン;アミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体等のアミノ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、脂肪酸変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、脂肪族アルコール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等の変性シリコーン等が挙げられる。中でも、鎖状シリコーン、アミノ変性シリコーンが好ましい。
【0055】
本発明の染毛料組成物が成分Eを含む場合、本発明の染毛料組成物100質量%中の、成分Eの含有量は、特に限定されないが、0.5〜10.0質量%が好ましく、より好ましくは1.0〜5.0質量%である。上記含有量が0.5質量%以上であると、水洗時にきしみ感がより一層低減するため好ましい。上記含有量が10.0質量%を超える場合には連続使用により成分Eが毛髪に蓄積され、毛髪にごわつきが生じる場合がある。上記成分Eの含有量は、本発明の染毛料組成物中の全ての成分Eの含有量の合計量である。
【0056】
本発明の染毛料組成物がカラーリンス、カラートリートメント、及びヘアマニキュアのうちのいずれかである場合、本発明の染毛料組成物は、多価アルコールを含むことが好ましい。上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、濃グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、グルコース、マルトース、マルチトール、スクロース、マンニトール、ソルビトール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等が挙げられる。本発明の染毛料組成物が多価アルコールを含む場合、本発明の染毛料組成物100質量%中の、多価アルコールの含有量は、特に限定されないが、染料の溶解性の観点から、0.5〜10.0質量%が好ましく、より好ましくは1.0〜5.0質量%である。上記多価アルコールの含有量は、本発明の染毛料組成物中の全ての多価アルコールの含有量の合計量である。
【0057】
本発明の染毛料組成物がカラーリンス、カラートリートメント、及びヘアマニキュアのうちのいずれかである場合、本発明の染毛料組成物は、高級アルコールを含むことが好ましい。上記高級アルコールとしては、例えば、炭素数16〜22のアルコールが挙げられ、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられる。本発明の染毛料組成物が高級アルコールを含む場合、本発明の染毛料組成物100質量%中の、高級アルコールの含有量は、特に限定されないが、経時での安定性の観点から、1.0〜10.0質量%が好ましく、より好ましくは3.0〜8.0質量%である。上記高級アルコールの含有量は、本発明の染毛料組成物中の全ての高級アルコールの含有量の合計量である。
【0058】
本発明の染毛料組成物がカラーリンス、カラートリートメント、及びヘアマニキュアのうちのいずれかである場合、本発明の染毛料組成物は、炭化水素油を含むことが好ましい。上記炭化水素油としては、例えば、α−オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、スクワラン、合成スクワラン、植物性スクワラン、流動イソパラフィン、流動パラフィン等が挙げられる。本発明の染毛料組成物が炭化水素油を含む場合、本発明の染毛料組成物100質量%中の、炭化水素油の含有量は、特に限定されないが、塗布時の染毛料組成物のなじみやすさの観点から、0.5〜10.0質量%が好ましく、より好ましくは1.0〜5.0質量%である。上記炭化水素油の含有量は、本発明の染毛料組成物中の全ての炭化水素油の含有量の合計量である。
【0059】
本発明の染毛料組成物は、毛髪の染色性をより一層向上させる観点から、脂肪酸部分の炭素数が12以下であるエステル化合物を含んでいてもよい。上記エステル化合物としては、例えば、カプリン酸グリセリル等のカプリン酸エステル、カプリル酸エステル、2−エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソノニル等が挙げられる。本発明の染毛料組成物が上記エステル化合物を含む場合、本発明の染毛料組成物100質量%中の、上記エステル化合物の含有量は、特に限定されないが、染色性の観点から、0.5〜5.0質量%が好ましく、より好ましくは1.0〜3.0質量%である。上記エステル化合物の含有量は、本発明の染毛料組成物中の全ての上記エステル化合物の含有量の合計量である。
【0060】
本発明の染毛料組成物がカラーリンス、カラートリートメント、及びヘアマニキュアのうちのいずれかである場合、本発明の染毛料組成物は、経時での安定性観点から、ノニオン性界面活性剤(ノニオン界面活性剤)を含んでいてもよい。上記ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリグリセリンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン(硬化)ヒマシ油、脂肪酸アルキロールアミド等が挙げられる。本発明の染毛料組成物がノニオン性界面活性剤を含む場合、本発明の染毛料組成物100質量%中の、ノニオン性界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、経時での安定性の観点から、0.5〜10.0質量%が好ましく、より好ましくは1.0〜5.0質量%である。上記ノニオン性界面活性剤の含有量は、本発明の染毛料組成物中の全てのノニオン性界面活性剤の含有量の合計量である。
【0061】
本発明の染毛料組成物がカラーリンス、カラートリートメント、及びヘアマニキュアのうちのいずれかである場合、本発明の染毛料組成物は、水を含む。水は、特に限定されないが、精製水が好ましい。本発明の染毛料組成物100質量%中の、水の含有量は、特に限定されないが、50.0〜90.0質量%が好ましく、より好ましくは60.0〜80.0質量%である。
【0062】
本発明の染毛料組成物がカラーリンス、カラートリートメント、及びヘアマニキュアのうちのいずれかである場合、本発明の染毛料組成物は、1−メントール、1,8−シネオール、カンファ等の清涼剤;フェノキシエタノール等の防腐剤;オリーブ油、マカデミアナッツ油、アルガンオイル等の植物油;シリカ等の吸湿剤;ヒアルロン酸又はその誘導体、コラーゲン又はその誘導体、アミノ酸又はその誘導体、抗酸化剤、金属封鎖剤、ビタミン類、動植物抽出エキス、パール化剤、着色剤、香料等を含んでいてもよい。
【0063】
以下に、本発明の染毛料組成物がカラーシャンプーである場合の好ましい任意成分について説明する。
【0064】
本発明の染毛料組成物がカラーシャンプーである場合、本発明の染毛料組成物は、洗浄性の観点から、アニオン性界面活性剤(アニオン界面活性剤)、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤からなる群より選ばれる1以上の界面活性剤(少なくとも1の界面活性剤)を含む。中でも、染色性を維持しながら洗浄性を向上させる観点から、ノニオン性界面活性剤及び/又は両性界面活性剤が好ましい。本発明の染毛料組成物100質量%中の、界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、染色性と洗浄性の観点から、1.0〜20.0質量%が好ましく、より好ましくは5.0〜15.0質量%である。上記界面活性剤の含有量は、本発明の染毛料組成物中の全ての界面活性剤の含有量の合計量である。
【0065】
上記アニオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ミリスチル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩;テトラデセンスルホン酸ナトリウム等のα−オレフィンスルホン酸塩;ミリストイルメチルタウリンナトリウム、パルミトイルメチルタウリンナトリウム、ステアロイルメチルタウリンナトリウム、オレオイルメチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム等のN−アシルメチルタウリン塩;スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、スルホコハク酸ラウリルニナトリウム等のスルホコハク酸アルキル塩;スルホコハク酸ポリオキシエチレンラウリルニナトリウム等のスルホコハク酸ポリオキシエチレンアルキル塩;ラウリルリン酸ナトリウム、セチルリン酸ナトリウム、セチルリン酸ジエタノールアミン等のモノアルキルリン酸エステル塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸トリエタノールアミン等のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩;ラウロイルサルコシンカリウム、ラウロイルサルコシントリエタノールアミン、ミリストイルサルコシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシンナトリウム等のN−アシルサルコシン塩;ラウロイルメチルアラニンナトリウム、ラウロイルメチルアラニントリエタノールアミン、ミリストイルメチルアラニンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルアラニンナトリウム等のN−アシル−N−メチル−β−アラニン塩;ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ラウロイルグルタミン酸トリエタノールアミン、ミリストイルグルタミン酸ナトリウム、ステアロイルグルタミン酸カリウム、ステアロイルグルタミン酸ニナトリウム、ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸トリエタノールアミン等のN−アシルグルタミン酸塩;ヤシ油脂肪酸アシルグリシンカリウム、ヤシ油脂肪酸アシルグリシンナトリウム等のN−アシルグリシン塩;ラウリルグリコール酢酸ナトリウム(ドデカン−1,2−ジオール酢酸ナトリウム)、ラウリルグリコール酢酸カリウム、ミリスチルグリコール酢酸ナトリウム、ミリスチルグリコール酢酸カリウム、パルミチルグリコール酢酸ナトリウム、パルミチルグリコール酢酸カリウム、ステアリルグリコール酢酸ナトリウム、ステアリルグリコール酢酸カリウム、ベヘニルグリコール酢酸ナトリウム、ベヘニルグリコール酢酸カリウム等のアルキルエーテルグリコール酢酸塩等が挙げられる。中でも、染色性の観点から、N−アシル−N−メチル−β−アラニン塩、N−アシルグルタミン酸塩等のアミノ酸由来のアニオン性界面活性剤が好ましい。本発明の染毛料組成物がアニオン性界面活性剤を含む場合、本発明の染毛料組成物100質量%中の、アニオン性界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、染色性と洗浄性の観点から、0.5〜5.0質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜2.0質量%である。上記アニオン性界面活性剤の含有量は、本発明の染毛料組成物中の全てのアニオン性界面活性剤の含有量の合計量である。
【0066】
上記両性界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等のアルキルアミドベタイン型両性界面活性剤;アルキルグリシン塩、カルボキシメチルグリシン塩、N−アシルアミノエチル−N−2−ヒドロキシエチルグリシン塩等のグリシン型両性界面活性剤;アルキルアミノプロピオン酸塩、アルキルイミノジプロピオン酸塩等のアミノプロピオン酸型両性界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルジヒドロキシエチルアミノ酢酸ベタイン等のアミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤;N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウム−N−プロピルスルホン酸塩、N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウム−N−(2−ヒドロキシプロピル)スルホン酸塩及びN−脂肪酸アミドプロピル−N,N−ジメチルアンモニウム−N−(2−ヒドロキシプロピル)スルホン酸塩、アルキルヒドロキシスルホベタイン等のスルホベタイン型両性界面活性剤;アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のイミダゾリニウム型両性界面活性剤等が挙げられる。中でも、洗浄性の観点から、アルキルアミドベタイン型両性界面活剤が好ましい。本発明の染毛料組成物が両性界面活性剤を含む場合、本発明の染毛料組成物100質量%中の、両性界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、洗浄性の観点から、1.0〜20.0質量%が好ましく、より好ましくは5.0〜15.0質量%である。上記両性界面活性剤の含有量は、本発明の染毛料組成物中の全ての両性界面活性剤の含有量の合計量である。
【0067】
上記ノニオン性界面活性剤としては、本発明の染毛料組成物がカラーリンス、カラートリートメント、及びヘアマニキュアのうちのいずれかである場合の任意成分として例示したノニオン性界面活性剤が挙げられる。中でも、粘性の付与の観点から、脂肪酸アルキロールアミドが好ましい。本発明の染毛料組成物がノニオン性界面活性剤を含む場合、本発明の染毛料組成物100質量%中の、ノニオン性界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、粘性の付与の観点から、0.5〜10.0質量%が好ましく、より好ましくは1.0〜5.0質量%である。上記ノニオン性界面活性剤の含有量は、本発明の染毛料組成物中の全てのノニオン性界面活性剤の含有量の合計量である。
【0068】
上記カチオン性界面活性剤としては、成分Eとして例示されたカチオン性界面活性剤が挙げられる。中でも、使用後の毛髪の風合いを良好とする観点から、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化アルキル(16,18)トリメチルアンモニウム、塩化アルキル(20〜22)トリメチルアンモニウムが好ましい。本発明の染毛料組成物がカチオン性界面活性剤を含む場合、本発明の染毛料組成物100質量%中の、カチオン性界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、使用後の毛髪の風合いの観点から、0.1〜5.0質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜3.0質量%である。上記カチオン性界面活性剤の含有量は、本発明の染毛料組成物中の全てのカチオン性界面活性剤の含有量の合計量である。
【0069】
本発明の染毛料組成物がカラーシャンプーである場合、本発明の染毛料組成物は、水を含む。水は、特に限定されないが、精製水が好ましい。本発明の染毛料組成物100質量%中の、水の含有量は、特に限定されないが、50.0〜90.0質量%が好ましく、より好ましくは60.0〜80.0質量%である。
【0070】
本発明の染毛料組成物がカラーシャンプーである場合、本発明の染毛料組成物は、1−メントール、1,8−シネオール、カンファ等の清涼剤;フェノキシエタノール等の防腐剤;オリーブ油、マカデミアナッツ油、アルガンオイル等の植物油;シリカ等の吸湿剤;ヒアルロン酸又はその誘導体、コラーゲン又はその誘導体、アミノ酸又はその誘導体、抗酸化剤、金属封鎖剤、ビタミン類、動植物抽出エキス、パール化剤、着色剤、香料等を含んでいてもよい。
【0071】
以下に、本発明の染毛料組成物の特徴や製造方法について説明する。
【0072】
本発明の染毛料組成物の製造方法は、特に限定されず、常法に従って、製造することができる。具体的には、以下の方法等が挙げられる。例えば、カラーリンス又はカラートリートメントの場合には、70〜90℃に加熱して十分溶解させた水相に、70〜90℃に加熱した油相を徐々に入れ、5分間しっかり攪拌し、乳化を行う。乳化後、20〜40℃まで冷却し、精製水に溶解させた染料を入れ、十分に均一攪拌した後、pH調整剤を入れ、十分に均一攪拌してクリーム状の染毛料組成物を得る。カラーシャンプーの場合には、常温において染料を十分溶解させた水相に、各種界面活性剤を徐々に入れて攪拌し、安定剤、pH調整剤を入れて十分に均一攪拌して、粘性のある液状の染毛料組成物を得る。
【0073】
本発明の染毛料組成物のpHは、特に限定されないが、染色性の観点から、4.0〜8.0が好ましく、より好ましくは5.0〜8.0である。さらに、染毛料組成物の安定性の観点から、上記pHは、6.5以下であることが好ましい。特に、本発明の染毛料組成物がカラーリンス、カラートリートメントやヘアマニキュアの場合、pHは4.0〜6.5が好ましく、カラーシャンプーの場合、pHは5.0〜6.5が好ましい。
【0074】
本発明の染毛料組成物の剤型は、特に限定されないが、例えば、液状、粘性液状、ジェル状、乳液状、クリーム状等が挙げられる。中でも、染色性と風合いの観点から、クリーム状が好ましい。
【0075】
本発明の染毛料組成物は、毛髪を灰色、黒色、茶色、緑色、青紫色等に染色することができる。より好ましくは、灰色、黒色、茶色であり、さらに好ましくは、灰色である。このため、白髪染め、おしゃれ染め等の染毛料組成物として用いることができ、色調の観点から、好ましくは白髪染め用の染毛料組成物である。
【0076】
本発明の染毛料組成物は、カラーリンス若しくはカラートリートメント、ヘアマニキュア、又は、カラーシャンプーであることが好ましい。
【0077】
上記カラーシャンプーは、洗髪に用いられる毛髪の洗浄剤であり、洗髪と同時に毛髪の染色を行うことができる。上記カラーシャンプーは、毛髪に塗布し泡立てて毛髪を洗浄し、洗浄後には洗い流す使用方法で用いられる。
【0078】
また、上記カラーリンス及びカラートリートメントは、一般的に洗髪時に用い、洗髪後に毛髪に塗布した後に洗い流して使用される毛髪処理剤である。上記カラーリンス及びカラートリートメントは、シャンプーにより毛髪を洗浄した後、カラーリンス又はカラートリートメントを毛髪に塗布し、塗布後直ぐに又は3〜10分間程度毛髪に馴染ませた後、洗い流す使用方法で用いられる。なお、上記カラーリンス及びカラートリートメントは、洗髪前に用いてもよい。その場合には、上記カラーリンス及びカラートリートメントは、濡れた毛髪にカラーリンス又はカラートリートメントを塗布し、塗布後直ぐに又は3〜10分間程度毛髪に馴染ませた後洗い流し、さらにシャンプーにより洗髪する使用方法で用いられる。
【0079】
上記ヘアマニキュアは、一般的に乾いた毛髪に塗布して使用される毛髪処理剤である。上記ヘアマニキュアは、例えば、乾いた毛髪にヘアマニキュアを塗布し、塗布後5〜30分間程度放置した後洗い流し、さらにシャンプーにより洗髪する使用方法で用いられる。
【実施例】
【0080】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。なお、表に記載の配合量は、各成分の配合量(すなわち、各原料中の有効成分の配合量。所謂純分)であり、特記しない限り「質量%」で表す。なお、実施例1−5、1−10、1−21、1−22、2−2は参考例として記載するものである。
【0081】
実施例1−1〜1−22、比較例1−1〜1−9:カラーリンス(又はカラートリートメント)
表1及び表2に記した組成に従い、各染毛料組成物を調製し、下記試験1〜6の評価試験に供した。上記各染毛料組成物はカラーリンス(又はカラートリートメント)である。評価結果は表に併記する。
【0082】
実施例2−1〜2−3:カラーシャンプー
表3に記した組成に従い、各染毛料組成物を調製し、下記試験1〜6の評価試験に供した。上記各染毛料組成物はカラーシャンプーである。評価結果は表に併記する。
【0083】
実施例及び比較例の各染毛料組成物のpHは、pHメーター(株式会社堀場製作所製、商品名「卓上型pHメータ F−74」)を用いて測定した。
【0084】
[試験1:染色性の評価]
試験用毛束として、未処理の白色人毛毛束(株式会社ビューラックス製、長さ10cm、重さ1g)を用いた。
【0085】
(評価用毛束の調製:カラーリンスの場合)
試験用毛束を市販のシャンプーを用いて洗浄した後、軽く水気を切り、以下の調製に用いた。上記試験用毛束に、製造直後の実施例及び比較例で得られた各染毛料組成物0.5gを塗布し、1分間ハケを用いて毛束(毛髪)全体に馴染ませた。次いで、5分間放置後、40℃のぬるま湯を用いて、毛束から染毛料組成物を十分に洗い流し、タオルドライを行った後、ドライヤーを用いて十分に乾燥させて、評価用毛束を調製した。
【0086】
(評価用毛束の調製:カラーシャンプーの場合)
試験用毛束を40℃のぬるま湯により十分に洗浄した後、以下の調製に用いた。上記試験用毛束に、製造直後の実施例及び比較例で得られた各染毛料組成物0.2gを塗布し、1分間手で泡立たせて馴染ませた。次いで、5分間放置後、40℃のぬるま湯を用いて、毛束から染毛料組成物を十分に洗い流し、タオルドライを行った後、ドライヤーを用いて十分に乾燥させて、評価用毛束を調製した。
【0087】
上記で得られた評価用毛束を観察し、染色性を以下の基準で評価した。なお、染色性の評価は、4名の専門評価員が行った。
<染色性の評価基準>
◎(優れる):非常に濃く染色されている。
○(良好):十分に染色されている。
×(不良):染色が薄い。
【0088】
さらに、試験1で得られた評価用毛束の色調を表に示した。
【0089】
[試験2:皮膚汚れ(染着性)の評価]
製造直後の実施例及び比較例で得られた各染毛料組成物0.5gをそれぞれ、前腕内側部における直径1cmの円形のエリアに塗布した。5分間放置後、塗布部を、ぬるま湯で洗い流し、次いで、石鹸を使用して30秒間軽く擦り、ぬるま湯で洗い流した。
【0090】
上記塗布部を観察し以下の基準で評価した。なお、皮膚汚れの評価は、4名の専門評価員が行った。
<皮膚汚れの評価基準>
◎(優れる):皮膚汚れが全く残らない。
○(良好):皮膚汚れが僅かに残る。
×(不良):皮膚汚れが明らかに残る。
【0091】
[試験3:堅牢性の評価]
試験1(染色性の評価)の評価の後、各評価用毛束を、40℃のぬるま湯にて十分に洗った後、市販のシャンプーを用いて1分間しっかり洗浄した。さらに、40℃のぬるま湯にて十分に洗い流しを行い、タオルドライ後、ドライヤーを用いて十分に乾燥させた。
【0092】
上記で得られた評価用毛束を観察し、堅牢性を以下の基準で評価した。なお、堅牢性の評価は、4名の専門評価員が行った。
<堅牢性の評価基準>
○(良好):試験後に毛髪の色の落ち方が小さい。
×(不良):試験後に毛髪の色の落ち方が大きい。
【0093】
[試験4:放置時間延長時の変色抑制の評価
試験1(染色性の評価)の評価用毛束の調製において、「5分間放置」を「30分間放置」に変更した以外は、試験1と同様にして評価用毛束を調製した。
【0094】
各実施例、各比較例ごとに、試験4で調製した評価用毛束と、試験1で調製した評価用毛束の染色された色調を対比して、放置時間延長時の変色抑制の度合を以下の基準で評価した。なお、評価は、4名の専門評価員が行った。
<放置時間延長時の変色抑制の評価基準>
○(良好):試験4で調製した評価用毛束の色調は、試験1で調製した評価用毛束の色調から変化が全くない。
×(不良):試験4で調製した評価用毛束の色調は、試験1で調製した評価用毛束の色調から変化がある。
【0095】

◎【表1】
【0096】
◎【表2】

【0097】
◎【表3】

【0098】
[試験5:耐光性の評価]
試験1(染色性の評価)の評価の後、各評価用毛束に、耐堅牢性試験機強キセノンフェードメーター(スガ試験機株式会社製、商品名「キセノンウェザーメーターX−25」)を用い、6300kJ/m2の条件で光を照射した。
【0099】
上記で得られた評価用毛束を観察し、耐光性を以下の基準で評価した。なお、耐光性の評価は、4名の専門評価員が行った。
<耐光性の評価基準>
○(良好):試験5で調製した評価用毛束の色調は、試験1で調製した評価用毛束の色調から変化が全くない又はほとんどない。
△(やや不良):試験5で調製した評価用毛束の色調は、試験1で調製した評価用毛束の色調から明らかに変化がある。
×(不良):試験5で調製した評価用毛束の色調は、試験1で調製した評価用毛束の色調から非常に大きな変化がある。
【0100】
試験5(耐光性の評価)の結果、実施例1−19は耐光性がやや不良(△)であり、実施例1−12及び比較例1−9は耐光性が不良(×)であった。他の実施例、比較例は耐光性が良好(○)であった。
【0101】
[試験6:ダメージ毛に対する色ムラの評価]
試験1(染色性の評価)の評価用毛束の調製において、「未処理の白色人毛毛束(株式会社ビューラックス製、長さ10cm、重さ1g)」を「ブリーチ処理した毛束(株式会社スタッフス製、レベル14、長さ10cm、重さ1g)」に変更した以外は、試験1と同様にして評価用毛束を調製した。
【0102】
上記で得られた評価用毛束を観察し、ダメージ毛に対する色ムラを以下の基準で評価した。なお、ダメージ毛に対する色ムラの評価は、4名の専門評価員が行った。
<ダメージ毛に対する色ムラの評価基準>
○(良好):毛束全体が均一に染まっている。
×(不良):毛束全体が均一に染まっておらず、色ムラがある。
【0103】
試験6(ダメージ毛に対する色ムラの評価)の結果、比較例1−1及び比較例1−2は、ダメージ毛に対する色ムラが不良(×)であった。他の実施例、比較例はダメージ毛に対する色ムラは良好(○)であった。
【0104】
なお、表に記載の成分は、以下の通りである。
HC青16:アルテックケミカル社製、商品名「HC Blue No.16」
塩基性青75:保土谷化学工業株式会社製、商品名「AHC BLUE SP」
塩基性橙31:BASF社製、商品名「Vibracolor Flame Orange」
塩基性赤51:BASF社製、商品名「Vibracolor Ruby Red」
塩基性赤76:センシエント テクノロジーズ ジャパン株式会社製、商品名「ARIANOR MADDER RED」
塩基性黄87:BASF社製、商品名「Vibracolor Citrus Yellow」
塩基性黄57:センシエント テクノロジーズ ジャパン株式会社製、商品名「ARIANOR STRAW YELLOW」
HC青2:テルカ社製、商品名「COLOREX HCB2」
HC黄2:テルカ社製、商品名「COLOREX HCY2」
HC黄4:テルカ社製、商品名「COLOREX HCY4」
ステアリルアルコール:花王株式会社製、商品名「カルコール 8688」
セタノール:花王株式会社製、商品名「カルコール 6870」
塩化アルキルトリメチルアンモニウム:クラリアントジャパン株式会社製、商品名「GENAMIN KDMP−J」
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム:花王株式会社製、商品名「コータミン86W」 ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド:日光ケミカルズ株式会社製、商品名「NIKKOL アミドアミンMPS」
ポリオキシエチレンセチルエーテル(5E.O.):青木油脂工業株式会社製、商品名「ブラウノン CH−305」
ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.):青木油脂工業株式会社製、商品名「ブラウノン CH−320L」
流動パラフィン:Sonneborn Inc製、商品名「CARNATION」 ジプロピレングリコール:旭硝子株式会社製、商品名「ジプロピレングリコール DPG−FC」
ポリプロピレングリコール:三洋化成工業株式会社製、商品名「サンニックス PP−400」
2−エチルヘキセン酸セチル:日本サーファクタント工業株式会社製、商品名「CIO−N」
カプリン酸グリセリル:太陽化学株式会社製、商品名「サンソフト 760−C」
ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム液:ナルコ社製、商品名「マーコート100」、純分40質量%
塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース:東邦化学工業株式会社製、商品名「カチナール HC−100」
メチルポリシロキサン:東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名「DOW CORNING TORAY SH200 C FLUID 20CS」
アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体エマルション:東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名「DOW CORNING TORAY SM8704C」、純分40質量%
ラウロイルメチル−β−アラニンナトリウム:川研ファインケミカル株式会社製、商品名「アラノンALE」
N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン:旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名「アミノサーファクト ACMT−L」
ラウリン酸アミドプロピルベタイン:新日本理化株式会社製、商品名「リカビオン B−300」
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン:新日本理化株式会社製、商品名「リカビオン B−200」
ヤシ油脂肪酸N−メチルエタノールアミド:花王株式会社製、商品名「アミノーンC−11S」
【0105】
さらに、以下に、本発明の染毛料組成物の処方例を示す。
【0106】
(処方例1)カラーリンス(クリーム)
HC青16 0.5質量%
塩基性橙31 0.05質量%
HC黄2 0.06質量%
HC青2 0.6質量%
ステアリルアルコール 7.0質量%
塩化アルキルトリメチルアンモニウム液(純分80質量%) 3.0質量%
ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド 1.0質量%
ポリオキシエチレンセチルエーテル(5E.0.) 0.5質量%
流動パラフィン 3.0質量%
ジプロピレングリコール 5.0質量%
2−エチルヘキサン酸セチル 2.0質量%
塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)
プロピル]ヒドロキシエチルセルロース 0.5質量%
メチルポリシロキサン 2.0質量%
乳酸 適量(pH5に調整)
フェノキシエタノール 0.5質量%
水溶性コラーゲン(3) 0.1質量%
アルガンオイル 0.1質量%
L−グルタミン酸 0.1質量%
精製水 残量
合計 100質量%
【0107】
(処方例2)カラーリンス(乳液)
HC青16 1.0質量%
塩基性赤51 0.08質量%
塩基性黄87 0.24質量%
HC黄2 0.08質量%
HC青2 1.2質量%
セタノール 6.0質量%
ポリオキシエチレンセチルエーテル(5E.O.) 2.0質量%
ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 2.0質量%
流動パラフィン 5.0質量%
ジプロピレングリコール 3.0質量%
カプリン酸グリセリル 2.0質量%
ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム液(純分40質量%)
1.0質量%
アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン
共重合体エマルション(純分40質量%) 1.5質量%
クエン酸 適量(pH5に調整)
安息香酸ナトリウム 0.5質量%
ヒアルロン酸ヒドロキシプロピルトリモニウム 0.5質量%
シリカ 0.2質量%
海藻エキス(1) 0.1質量%
1−メントール 0.1質量%
精製水 残量
合計 100質量%
【0108】
(処方例3)ヘアマニキュア(ジェル)
HC青16 0.7質量%
塩基性橙31 0.07質量%
HC黄2 0.1質量%
HC青2 1.5質量%
ヒドロキシエチルセルロース 2.5質量%
エタノール 10.0質量%
ベンジルアルコール 5.0質量%
ポリプロピレングリコール 3.0質量%
イソノナン酸イソノニル 1.5質量%
塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)
プロピル]ヒドロキシエチルセルロース 0.5質量%
ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 0.5質量%
エデト酸ニナトリウム 0.2質量%
グリコール酸 適量(pH5に調整)
ツバキ油 0.1質量%
パンテノール 0.1質量%
精製水 残量
合計 100質量%
【0109】
(処方例4)カラーシャンプー
HC青16 0.5質量%
塩基性橙31 0.05質量%
HC黄4 0.2質量%
HC青2 1.5質量%
ラウロイルメチル−β−アラニンナトリウム液(純分30質量%)
5.0質量%
ラウリン酸アミドプロピルベタイン液(純分30質量%) 30.0質量%
ヤシ油脂肪酸N−メチルエタノールアミド 2.0質量%
塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)
プロピル]ヒドロキシエチルセルロース 0.2質量%
ジプロピレングリコール 3.0質量%
カプリン酸グリセリル 1.0質量%
モノラウリン酸ポリグリセリル 0.1質量%
高重合メチルポリシロキサン(1) 0.1質量%
メチルポリシロキサン 0.4質量%
クエン酸 適量(pH5に調整)
フェノキシエタノール 0.5質量%
水溶性コラーゲン(3) 0.1質量%
ホホバ油 0.1質量%
精製水 残量
合計 100質量%
【0110】
(処方例5)カラーシャンプー
HC青16 3.0質量%
塩基性赤51 0.05質量%
塩基性黄87 0.15質量%
HC黄2 0.01質量%
HC青2 0.8質量%
N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸トリエタノール
アミン液(純分30質量%) 5.0質量%
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン液(純分30質量%)30.0質量%
ヤシ油脂肪酸N−メチルエタノールアミド 2.0質量%
塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)
プロピル]グァーガムジプロピレングリコール 0.2質量%
ポリプロピレングリコール . 3.0質量%
カプリル酸グリセリル 1.0質量%
アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン
共重合体エマルション(純分40質量%) 0.5質量%
クエン酸 適量(pH5に調整)
安息香酸ナトリウム 0.5質量%
ヒアルロン酸ナトリウム 0.1質量%
ラベンダー油 0.1質量%
クワエキス 0.1質量%
精製水 残量
合計 100質量%
【0111】
(処方例6)カラーリンス(クリーム)
HC青16 0.5質量%
塩基性赤76 0.15質量%
塩基性黄57 0.1質量%
HC黄2 0.03質量%
HC青2 0.6質量%
ステアリルアルコール 5.0質量%
ベヘニルアルコール 2.0質量%
塩化アルキルトリメチルアンモニウム液(純分80質量%) 3.0質量%
ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド 1.0質量%
ポリオキシエチレンセチルエーテル(5E.O.) 0.5質量%
流動パラフィン 3.0質量%
ジプロピレングリコール 5.0質量%
2−エチルヘキサン酸セチル 2.0質量%
塩化O−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)
プロピル]ヒドロキシエチルセルロース 0.5質量%
デカメチルシクロペンタシロキサン 1.0質量%
ポリメチルシルセスキオキサン 0.5質量%
エタノール 5.0質量%
乳酸 適量(pH5に調整)
シア脂 1.0質量%
フェノキシエタノール 0.5質量%
水溶性コラーゲン(3) 0.1質量%
加水分解シルク液 0.1質量%
精製水 残量
合計 100質量%
【0112】
(処方例7)カラーリンス(クリーム)
HC青16 0.5質量%
塩基性赤51 0.04質量%
塩基性黄57 0.1質量%
HC黄2 0.035質量%
HC黄4 0.015質量%
HC青2 0.4質量%
セタノール 8.0質量%
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム(純分28質量%) 5.8質量%
ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド 1.0質量%
流動パラフィン 3.0質量%
1,3−ブチレングリコール 5.0質量%
(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)デカグリセリル液 1.2質量%
濃グリセリン 0.8質量%
ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム液(純分40質量%)
1.0質量%
マイクロクリスタリンワックス 1.0質量%
エタノール 3.0質量%
乳酸 適量(pH5に調整)
安息香酸ナトリウム 0.5質量%
ケイ皮エキス 0.1質量%
カンゾウ抽出末 0.1質量%
精製水 残量
合計 100質量%
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明の染毛料組成物は、染毛料として用いられる組成物である。上記染毛料としては、カラーリンス、カラートリートメント、ヘアマニキュア、カラーシャンプー等が挙げられる。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分A、下記成分B、下記成分C、及び下記成分Dを含有し、
前記成分Aの含有量が0.5〜3.0質量%であり、
前記成分Bの含有量が0.005〜1.5質量%であり、
前記成分Cの含有量が0.1〜1.5質量%であり、
前記成分Dの含有量が0.01〜0.15質量%であり、
前記成分Aの含有量に対する、前記成分Bの含有量の質量割合[成分B/成分A]が、0.01〜1.0であり、
前記成分Cの含有量に対する、前記成分Dの含有量の質量割合[成分D/成分C]が、0.005〜1.0であり、
前記成分Aの含有量に対する、前記成分Cの含有量の質量割合[成分C/成分A]が、0.05〜6.0である染毛料組成物。
成分A:HC青16
成分B:塩基性橙31、塩基性赤51、塩基性赤76、塩基性黄87、及び塩基性黄57からなる群より選ばれる1以上の染料
成分C:HC青2
成分D:HC黄4及びHC黄2からなる群より選ばれる1以上の染料
【請求項2】(削除)
【請求項3】
前記成分D100質量%中の、前記HC黄2の含有量が50.0質量%以上である請求項1に記載の染毛料組成物。
【請求項4】
カラーリンス又はカラートリートメントである請求項1又は3に記載の染毛料組成物。
【請求項5】
さらに、下記成分Eを含有する請求項4に記載の染毛料組成物。
成分E:カチオン性界面活性剤、カチオン性ポリマー、及びシリコーン油からなる群より選ばれる1以上の成分
【請求項6】
白髪染め用の染毛料組成物である請求項1、3〜5のいずれか1項に記載の染毛料組成物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-03-25 
出願番号 P2019-509235
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (A61K)
P 1 651・ 537- YAA (A61K)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 井上 典之
特許庁審判官 進士 千尋
齋藤 恵
登録日 2020-11-26 
登録番号 6800314
権利者 株式会社マンダム
発明の名称 染毛料組成物  
代理人 特許業務法人後藤特許事務所  
代理人 特許業務法人後藤特許事務所  

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